法務委員会 第28号
- 発言数
- 26 件
- 登壇者
- 6 名
- 会派数
- 1
- 開催日
- 1972/06/02
会議録
○松澤委員長 これより会議を開きます。 理事補欠選任に関する件についておはかりいたします。 理事沖本泰幸君及び理事麻生良方君の委員辞任に伴い、現在理事が二名欠員になっておりますので、その補欠選任を行ないたいと存じますが、先例により委員長において指名するに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○松澤委員長 御異議なしと認めます。よって、委員長は、理事に林孝矩君及び麻生良方君を指名いたします。 ————◇—————
○松澤委員長 おはかりいたします。 本日、最高裁判所牧刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○松澤委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。 ————◇—————
○松澤委員長 内閣提出、出入国法案及び刑事訴訟費用等に関する法律の一部を改正する法律案の両案を議題とし、順次提案理由の説明を聴取いたします。前尾法務大臣。
○前尾国務大臣 出入国法案につきまして、提案の理由を御説明申し上げます。 現行の出入国管理令は、昭和二十六年にいわゆるポツダム政令として制定されたものでありますが、最近におけるわが国の国際的地位の目ざましい向上、国際旅行の急激な活発化、航空機の大型化、高速化に伴い、ここ数年来、出入国者が飛躍的に増加しており、かつ、その大半を占める短期の外国人旅行者につき、旅行手続の簡易化に関する国際的要請も強くなっておりますので、現行制度を改善し、出入国手続を簡素化するとともに、年を追って増加しております在留外国人に関する在留制度の合理化をはかり、もって、今日の諸情勢に対応できるわが国にふさわしい出入国制度を確立することは、喫緊の要務となっているのであります。よって、この際、現行の出入国制度を改正するため、出入国管理令を廃止し、この法律を制定しようとするものでありますが、この法律案は、諸外国における立法例、内外における出入国行政の運用例等、広範囲にわたる調査と検討の上成案を得たものであります。 次に、この法律案による改正の主要点につきまして、その概要を御説明申し上げます。 第一は、わが国を訪れる外国人の大半が、九十日以内の短期の滞在を目的としている実績にかんがみまして、現行の出入国管理令では、短期滞在者の在留資格が「観光客」に限られているのを改め、新たに「短期滞在者」という在留資格を設けることにより、観光客のほか、スポーツ、親族訪問、見学、会議参加などの目的で短期間訪日する外国人の出入国手続を簡素化して、いわる航空機時代に即応した迅速な手続をとり得るようにしたことであります。 第二は、査証を必要としない一時的な上陸、すなわち、来日する外国人の寄港地上陸及び通過上陸につきまして、現行の出入国管理令では、全般的に船舶中心のたてまえである上、わが国で同一の船舶等を乗り継いで出国する者のみを対象としているのを改め、航空機の乗員、乗客にも同一の考慮を払うとともに、航空機等を乗りかえて出国しようとする場合にも許可できることとして、その対象範囲を大幅に拡大し、国際旅行の途中短時日の日本観光を希望する外国人の入出国を容易にしたことであります。 第三は、商用活動者その他特定の在留資格を付与する場合などにおいて、その者の活動が日本人の職域を侵害するおそれがあるなど必要があると認められるときは、その在留資格について許される活動の範囲内で、活動の種類または場所などを指定することができるようにするとともに、在留資格によりあるいは指定により定められた活動以外の活動を、許可を受けないで行なっている外国 人に対しては、まず中止等を命じてその是正をはかり、これに従わないときに初めて退去強制等の対象とすることとして、外国人の在留制度の合理化をはかり、また、日本国の機関が決定した政策の実施に反対する公開の集会等を主催するなど、外国人として当然慎むべき一定の政治活動をした者に対しても、まず中止等を命じて是正をはかることができるようにしたことでありまして、この程度の規制は、主権国として当然の措置というべきであります。 第四は、重要な犯罪について訴追されているなどの外国人について、関係機関から通知があったときは、一定時間出国確認の手続を留保してその国外逃亡を防止し、刑事手続等を適正に実行し得るようにしたことであります。 第五は、退去強制事由に該当した外国人に対して法務大臣が与える特別在留許可に関し、その性格が法務大臣の自由裁量処分であることは、現行の出入国管理令のそれと変わりませんが、これを与える段階につき、現行制度のもとでは、必ず退去強制手続を進めた上で法務大臣が裁決する場合においてのみ行なわれ得ることとなっているのを改め、違反調査の前であっても、また、退去強制令書の発付後であっても、いかなる段階においても特別在留許可を与え得ることとし、この制度適用の段階を拡大したことであります。 第六は、現行の出入国管理令では、退去強制手続を進める場合には、容疑者を必ず収容しなければならないこととしているのを改め、一定の事由が認められる場合には、容疑者を収容しないで手続を進め得ることに改めるとともに、収容できる期間も短縮し、人権の保障を全うするようにしたことであります。 第七は、退去強制令書が発付された者について、現行の出入国管理令では、その者の本国に向け直ちに強制送還すべきたてまえになっているのを改め、退去を強制される者が自費でみずからの希望する地域に向けて退去することのできる、いわゆる自費退去を優先させることとし、また、送還にあたっては、本国に送還することができないときのみならず、本国へ送還することが適当でないと認めるに足りる相当の事情があるときにも、本国以外の国をその送還先とすることができ、その決定にあたっては、できる限り本人の希望を尊重することとして、現行制度の硬直性を改めたことであります。 第八は、現行の出入国管理令では、限られた在留資格についてのみ、その変更が認められているのを改め、在留資格を有する者すべてについて、その変更を認め得ることとしたほか、出国猶予期間の制度を新たに設け、在留の延長が許可できない場合でも、出国準備のため六十日間までの在留を認めることとするなど、在留外国人の便宜をはかったことであります。 第九は、外国において再入国許可の有効期間を延長することができるようにし、再入国の許可を受けて出国した者の外国における長期滞在を可能にしたことであります。 第十は、戦前から引き続きわが国に居住する朝鮮人、台湾人及びこれらの子につきましては、長年わが国に在留してわが国社会に定着している特殊性を考慮して、精神障害者、麻薬中毒者、らい病患者または公共の負担になっている者であることを理由としてこれらの者の退去強制をしないことを明文で規定したほか、永住者と同様、中止命令の対象となる政治活動の規制条項を適用しないこととするなど種々の特例を設け、一般外国人に比し優遇措置を講じたことであります。 なお、この法律案は、第六十一回国会及び第六十五回国会に提出した法律案に関して、各界から寄せられた意見について検討した結果に基づき、修正を加えて改善し、特に第六十五回国会に提出した法律案に対し、退去強制手続をより慎重に行なうこと、戦前から在留する朝鮮人、台湾人及びその子に対し、中止命令の対象となる政治活動の規制をしないこととしたほか、法律の名称も出入国法に改めることとし、面目を新たにして今国会に提出したものであります。 以上が、この法律案の提案の理由であります。 何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決くださいますようお願い申し上げます。 引き続きまして、刑事訴訟費用等に関する法律の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。 この法律案は、刑事訴訟法第三十八条の規定によって弁護士の中から選任される弁護人・すなわち、いわゆる国選弁護人に支給すべき旅費のうち、船賃については、裁判所が相当と認める等級の運賃によって算定することとしようとするものであります。 現行の刑事訴訟費用等に関する法律によりますと、運賃の等級を三階級に区分する船舶による旅行の場合に国選弁護人に支給される運賃は、中級以下の等級の運賃に限られることとされておりますが、国選弁護人の職責、社会的地位及び国家公務員等に支給される旅費額との権衡を考慮いたしまして、これを裁判所が相当と認める等級の運賃によって算定することとし、上級の運賃を支給することもできるように改めようとするものであります。 以上が、この法律案の趣旨であります。 何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決くださいますようお願いいたします。
○松澤委員長 これにて提案理由の説明は終わりました。 —————————————
○松澤委員長 引き続き、刑事訴訟費用等に関する法律の一部を改正する法律案について審査を進めます。 質疑の申し出がありますので、これを許します。大竹太郎君。
○大竹委員 いま問題になっておりますこの法律は、非常に簡単なものでございまして、たいして質問する点はないのでありますが、たまたまこの国選弁護人が問題になりましたので、この法律には直接関係がないかもしれませんが、国選弁護人に関しまして、この際二、三質問をいたしておきたいと思います。 〔委員長退席、羽田野委員長代理着席〕 ところで、刑事訴訟法を見ますと、第三十八条で、国選弁護人は弁護士の中からこれを選任しなければならないことになっているようでございますが、弁護士の中から選任するのにどういうようなやり方でやっておられるか、まずそれからお伺いいたしておきたいと思います。
○貞家政府委員 現実の運用の問題になりますと、裁判所当局の御説明のほうがふさわしいかと思いますが、一応法律のたてまえにつきまして簡単に御説明申し上げます。 裁判所は公訴の提起がありました場合に、被告人に弁護人がついておりませんときには、遅滞なく被告人に対して、いわゆる必要的弁護事件につきましては、弁護人を選任するかどうか、その他の必要的弁護事件以外の事件につきましては、国選弁護人の選任を請求するかどうかということを確めなければならないことになっております。この場合、裁判所は一定の期間を定めまして、その間に回答するようにということを言うわけでございます。 そこで、必要的弁護事件につきましては、その裁判所のきめました期間内に回答がない場合、または被告人みずからが弁護人を選任いたしません場合には、裁判長は直ちに国選弁護人を職権で選任しなければならないということになるわけでございます。その他の任意的弁護事件につきましても、被告人が貧困その他の事由によりまして弁護人を選任することができない場合には、被告人の請求によりまして、裁判所は国選弁護人を付さなければならないわけでございます。 国選弁護人は裁判長が選任するわけでございますが、裁判所の所在地にある弁護士の中からこれを選任しなければならないということが原則でございます。裁判所の所在地に弁護士がおりません場合には、その他やむを得ない事情がある場合も同様でございますが、その裁判所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄区域、または隣接する他の地方裁判所の管轄区域内にある弁護士の中から選任することができるということになっておるわけでございます。 以上、申し上げましたように、国選弁護人は裁判長が弁護士の中から選任するということになっておるわけでございますが、現実の運用といたしましては、最高裁判所の事務総局と日本弁護士会連合会、これはいまの日弁連の、大ざっぱに言うと前身的なものでございますが、昭和二十三年当時、各弁護士会を会員とする任意団体でございますが、その日本弁護士会連合会との協議の結果、昭和二十三年七月以降におきましては、国選弁護人の人選については、各裁判所はその地の弁護士会に一任するという運用が行なわれておるようでございます。そこで、裁判所におきまして国選弁護人を選任しようといたしますときには、各弁護士会に人選を依頼する、そして各弁護士会は、あらかじめ作成されました国選弁護人のリスト、これを受任希望者名簿と申しておりますが、それに記載をされたものに基づいて人選をする、そういう運用になっておるようでございます。
○大竹委員 そこでお尋ねしたいのでありますが、このいただきました資料を拝見いたしますと、参考資料の一ページに、昭和四十一年から昭和四十五年、この五年間の数字が出ております。せっかくこの数字が出ておりますのでお尋ねするのでありますが、これは一般の事件、それから国選弁護人をつけた事件の人数等が出ております。いまちょっとお触れになりましたように、この国選弁護人をつけるのには、どうしてもつけなければならない事件、それから刑訴の三十七条で、裁判所が職権でつける案件と両方あるようでありますが、その内訳はどういうようになっているでしょうか。
○貞家政府委員 実は、恐縮でございますが、この内訳につきましていま手元に資料がございませんが、感じから申しますと、必要的弁護事件は重大事件でございますから、非常に少ないものと思われます。 これはちょっと古い資料でございますが、昭和四十四年、四十五年の統計によりますと、刑事訴訟法の三十六条によりますものが九〇%から九二%、簡裁におきましては九三%から九四%が被告人の請求によって、法の三十六条によってつける弁護人でございまして、その他のごく少数が、法律の規定で申しますと三十七条、二百八十九条、二百九十条といった条文で、いわゆる重大事件の必要的な国選弁護人をつける事件でございます。
○大竹委員 そこで私、御質問したいのでありますが、最近の集団的公安事件等で非常に問題になっておるようでございますが、裁判所が、先ほど弁護士会のリストによって選任されるとおっしゃったんでありますけれども、選任をした弁護士が引き受けない。弁護士法を見ますと、選任された者はどうしてもそれを引き受けなければならないというような条文はない。権利義務のところを見ましてもないようでありますが、たとえば引き受けない、また引き受けても途中でやめてしまう、まあ辞任をするというようなことも、ああいう事件には十分ありがちなようであります。また、やめないけれども被告人のほうから忌避と申しますか、弁護士は困るというようなことでやめざるを得なくなるというようなこともあるようでございます。 そういうようなことで、結局だれもこの事件を引き受けない、まあ引き受ける国選弁護人がないというような事態が起きる可能性が非常にあるように私は思うのでありますが、そういうような場合には、一体裁判所はどういうお取り扱いになるのでありますか。
○貞家政府委員 詳細は裁判所当局から説明をしていただくことにいたしまして、たてまえだけを申し上げます。 私が承知いたしております範囲では、当初から弁護士の方が、この事件の受任はいやだと言ってお断わりになる事例はないようでございます。これは裁判所、弁護士会が非常な御努力をされて、慎重にお考えになった結果であろうと思います。ただ、若干の事例といたしまして、事後におきまして被告人との間に訴訟進行の方針について見解が違う、あるいは裁判所の訴訟指揮の方法に対しまして不満があるというようなことであるとか、あるいは被告人から暴行を受けるというような事例が若干ございまして、辞任をしたいというような申し出があったという事例を聞いております。 ただ、法律のたてまえといたしましては、なるほど正面から国選弁護人を引き受けなければならないという、そういった条文はございませんけれども、国選弁護人の選任ということを考えてみますと、憲法上、被告人が請求いたします場合には、国が必ず弁護士の中から国選弁護人をつけなければならないという責務を負っているわけでございます。また弁護士法によりましても、弁護士は、正当の理由がなければ官公署の委嘱した事項を行なうことを辞することができないというような規定がございます。そういった国選弁護人というものの本質から考えまして、一々承諾を要するというふうには考えていないわけでございます。 それでは辞任はできるかという問題でございますが、一たん国選弁護人に選任されました後は、選任をいたしました裁判長によって解任されるまでは、国選弁護人の意思表示だけでは、いわゆる辞任ということはできないのではないか。したがって、国選弁護人を辞する正当な理由があると客観的に認められる場合におきましては、国選弁護人のほうから、裁判長に対して解任をしてほしいという申し出をすることができるという解釈になるのではないかと思うのでございます。要するに、客観的に特別の事情がある場合には、裁判長に対して解任をしてくれという申し出をいたしまして、それについて裁判長が正当な理由ありと判断いたしました場合に解任される、それによって国選弁護人としての職務を行なう義務がなくなるというふうに、私どもは、法律論でございますが、そう解釈いたしております。
○大竹委員 そこで、私は非常に疑問に思うのでありますが、同じ自由職業でも、医者のようなものは、これは人命に関することであり、ことに時間を争う問題でありますから、急病人である場合、不在であればこれはもちろん問題でありませんが、医者の義務として治療しないというわけにはいかないと私は思います。この弁護士の仕事といたしまして、どうも自分にはこれは不向きだ、あるいはある意味においてはどうも気に食わぬというような場合もあるかもしれませんが、場合によっては、たとえ選任されても断わることができるべきであろうと私は思いますし、また事件の途中においても、辞任することができると私は思うわけであります。 そういうようなことを考えてみますと、最近の非常に集団的で弁護士もたくさんつけなければならない事案等において、この国選弁護人の選任ということができないといいますか、弁護人がなくて裁判所として実際上お困りになり、弁護士がなくて事件は進まぬというようなこともあろうかと思うのでありますが、具体的にそれらの問題について、裁判所として一体どう考えていらっしゃるのですか。
○牧最高裁判所長官代理者 御承知のように、昭和四十四年のいわゆる十月、十一月に起こりました事件につきまして、当初ついておりました私選弁護人が全員辞任されて、そのあと被告人のほうから国選弁護人の請求がありまして、弁護士会の非常な御努力によりまして、ようやく二百名余りの国選弁護人を選任することができたわけでございます。しかしながら、この事件の審理方式をめぐりまして、被告人と裁判所との間で対立がございまして、それにつれて弁護人も被告人の意思を受けてか、あるいは被告人との間に弁護の方針を異にしたのか、それはいろいろの事情がおありかと存じますが、そのうち約五十名足らずの方が辞任の申し出をなされたという事態がございました。 弁護人の辞任の申し出につきましては、先ほど貞家部長からもお答えがございましたように、一応辞任の申し出によって訴訟上の効果が発生するのではなくて、訴訟法のたてまえは、選任が裁判長の権限でございますので、一応裁判長の解任ということが必要であろうかというふうに考えております。 ところで、解任することにつきましては、弁護士法の二十四条によりますと、弁護士は、官公署等の委嘱については、正当な理由がなくては辞することができないという規定がございますので、それと同様の趣旨になろうかと存じますが、裁判所として解任するときには、やはり正当な事由がある場合にのみ解任すべきではなかろうかというふうに考えており、恣意的に裁判長の権限で交代させるということではございませんで、やはり正当な事由のあった場合に解任するということでなければならないのじゃなかろうかと存じます。 ところで、正当な事由というような場合がどういう場合であろうかということは、なかなかむずかしい問題でございますが、普通考えられておりますのは、弁護人が長期の旅行とか病気というようなことで、弁護活動をすることができないような場合とか、あるいは弁護人が被害者と特殊な親族関係みたいような関係にあって、その事件を引き受けることが必ずしも適当と思われないような場合とか、その他あるいは被告人と弁護人との間で、あるいは弁護人が暴行を受けるというようなことがあったりして、その弁護人が弁護活動をするということを期待することが、社会的に見ても無理であろうと考えられるような場合、そういうようなことが、普通正当な事由に当たるのではなかろうかと議論されおります。 それで、先ほども申し上げました十月、十一月事件につきましては、弁護人からお申し出のあった辞任の理由というのは、それぞれ違っておりますが、あるいは病気という理由で辞任の申し出をなされた分もございますし、あるいは被告人から暴行を受けたというようなことで、もうこれ以上弁護活動はできないということで辞任の申し出をされた方もございますし、種々でございますけれども、いまのように、病気とかあるいは被告人から暴行を受けたというような場合は、正当な事由に当たるということは言うまでもないと存じますが、その他の方々から辞任の理由として出された大部分は、いわゆる被告人との間に弁護の活動方針について意見が合わないというような御趣旨だったり、あるいは裁判所の審理方式に不満であるというような御趣旨が辞任の理由になっておりますが、そういうものは、先ほどあげた正当な事由の中には入らないのではないかということで、裁判所のほうとしては、その弁護人については解任をいたさないということで、訴訟の手続がそのまま進められているのが非常に多いわけでございます。 その場合には、方法といたしましては、あるいは解任してあらためて選任をするというようなこともできることではないかとは思いますけれども、この事件に関しまして国選弁護人を選任するにあたりましては、弁護士会のほうで非常に苦労されたわけでございまして、選任を依頼いたしましてから平均二カ月以上の期日を要するほどそれぞれ弁護士会が努力されたもので、それを簡単に、辞任の申し出があったらまたお願いするというような形に、なかなかいきにくい面もあろうかと存じます。 そういうことで、現実の姿としては、一応辞任の申し出をなされたけれども、説得して、なお弁護活動を続けてほしいということをお願いいたしまして、大部分の方は、そのまま現在も弁護活動に従事していただいておるのが現状でございます。
○大竹委員 いまいろいろ例を出して説明されたのでありますが、たとえば被告人から暴行を受けたような場合には云々というお話もございました。あの事件の新聞その他を持ってきておりませんからあれでありますが、たとえば被告人が、あの弁護士はどうも自分と意見が違うし困る、ほかの弁護士にしてもらいたいというような、忌避とでも申しますか、不信任とでも申しますか、そういうような意思をはっきり裁判所に表明した場合には、どういうお取り扱いになりますか。
○牧最高裁判所長官代理者 被告人に国選弁護人の解任請求権というものは、現行法にはございませんので、一応被告人がそういう趣旨の申し出をいたしましたときは、裁判所が職権で解任されることを促して、お願いするという趣旨だろうと存じます。 ただ、国選弁護人制度といいますのは、いわゆる私選弁護人のように被告人が自分の好きな人を選ぶという趣旨ではございませんで、憲法で定められておりますのは、資格ある弁護人を付するということが定められておるわけでございますので、弁護士としては当然あらゆる事件について弁護活動をなし得る能力のある者というふうに一応認められる分でございますから、その分を弁護士会の推薦に基づいて裁判所が選任いたしました以上、被告人の恣意的なことで解任ということは適当ではないのじゃないだろうかということで、たいていそういう場合には、そのままその弁護士の方に弁護活動を続行していただいておるというのが普通だろうと存じます。
○大竹委員 大体わかりましたが、先に戻って恐縮でございますが、弁護士会にまかして、弁護士会のリストによって、その中から裁判所のほうで選任されるというお話でございましたので、これは弁護士会によってそれぞれ多少違うかと思うわけでございますが、たとえば東京あたりの弁護士会の例にとってみますと、その中でリストに載っていらっしゃる人というものは、一体どんな割合になっているものですか。
○貞家政府委員 その点につきましては、昨年の四月八日現在の調査でございますが、これは地方裁判所事件のみについてでございますが、国選弁護人受任者名簿に登録されております弁護士は、東京弁護士会で、当時の会員数二千三百四十名中千五百五十名、約六六%でございます。第一東京弁護士会で、会員数九百三十八名中五百六十名で約六〇%、第二東京弁護士会で、会員数千四十一名中六百四十一名、これは約六二%に当たりますが、その程度でございます。
○大竹委員 それでは、問題になっておりますこの法案について、一、二お聞きいたしておきたいと思います。 現在問題になっておりますのは、旅費のうち、船賃の問題が改正になっておるのでありますが、この国選弁護人の船賃を除いた一般の旅費、日当、宿泊料、それから報酬、これはいずれも国選弁護人に関係のある問題で、資料もいただいておりますけれども、順序といたしまして、これについて簡単に御説明をいただきたいと思います。
○貞家政府委員 お手元の資料の、ページ数がございませんが、参考資料の直前でございますけれども、刑事訴訟費用等に関する法律の第八条が弁護人の旅費、報酬等の規定でございまして、国選弁護人に支給すべき旅費、日当、宿泊料につきましては、三条から五条まで、つまり証人等の旅費、日当、宿泊料の規定が準用されるわけでございます。また報酬につきましては、刑事訴訟費用等に関する法律の第八条第二項に別に規定がございまして、「刑事訴訟法第三十八条第二項の規定により弁護人に支給すべき報酬の額は、裁判所が相当と認めるところによる。」法律上はそういう規定になっているわけでございます。 そこで、具体的に逐次簡単に申し上げますと、旅費のうち鉄道賃、航空賃、路程賃というようなものにつきましては、証人、鑑定人と同様でございまして、等級をつけておりますものにつきましては、運賃の等級を三階級に区分するのは、現在のところ船賃だけでございますので、これを省略することにいたしますと、二階級に区分するものについては、裁判所が相当と認める等級の運賃を支給する。したがいまして、裁量によりまして上級も支給することが可能でございます。それに一定の距離に応じまして、急行料金、特別急行料金、特別車両料金というようなものが、それに合わせて支給されるわけでございます。路程賃は鉄道、船舶の便のないところでございますが、これは最高裁判所の制定されました刑事の手続における証人等に対する給付に関する規則というものよりまして、一キロメートルにつき十三円以内ということになっております。 日当につきましては、出頭、取り調べ及びそれらのための旅行に必要な日数に応じて支給されるわけでございまして、これは昨年の法律制定の段階におきまして、いわゆる旅行日日当という制度も設けたわけでございますが、この金額につきましては、先ほど申し上げました最高裁判所の規則によりまして、一日当たり千五百円以内ということになっているわけでございます。日当につきましては、証人と同額が支給されるわけでございます。 宿泊料につきましては、法律は五条でございますが、具体的にはやはり、最高裁判所の、先ほど申し上げました規則によりまして、一夜当たり、甲地方と乙地方に分けまして、甲地方は二千七百円以内、乙地方は二千三百円以内ということになっているわけでございます。なお、この日当及び宿泊料につきましては、最高裁判所におかれまして規則の改正によって、若干の増額をされる予定であるというふうに承知いたしております。 報酬につきましては、各裁判所が諸般の事情を考慮いたしまして支給されるわけでございますが、この点につきましても、一応の基準のようなものが最高裁判所から出されておりまして、各裁判所におきましては、その基準を参考としてそれにのっとった運用が行なわれておるというふうに承知しております。具体的な報酬額の決定にあたりましては、事件の難易、あるいは弁護人の訴訟活動、開廷回数、あるいは各地の実情というようなものが考慮されて運用がなされておるというふうに承知いたしております。
○大竹委員 それでは、この改正案でありますが、提案理由の説明を拝見いたしますと、「国選弁護人の職責、社会的地位及び国家公務員等に支給される旅費額との権衡を考慮いたしまして、」云々、こういう提案理由の説明になっておりますが、非常に抽象的でありますので、これをもう少し具体的に説明をしていただきたい。
○貞家政府委員 国選弁護人の職責あるいは弁護士の社会的地位という問題につきましては、大竹委員の前でるる御説明する必要がないと思いますが、その点は、重大な法上の国の義務の遂行に不可欠のことに対して協力をされるわけでございまして、そういった職責、社会的地位というものが非常に高い、重大であるということは当然だと思われるわけでございます。 そこで、問題はその次にございますが、「国家公務員等に支給される旅費額との権衡」という点でございます。非常に具体的に問題ではないかと思われますのは、同じく弁護士の方が、たとえば司法研修所の教官であるとか、あるいは裁判所関係の委員会の委員というようなものに任命されまして旅行されます場合には、弁護士としての経験年数、これはむろん裁判官、検察官も含めて、法曹としての在職年数ということでございますが、十年以上の方には、国家公務員で申します指定職相当額の旅費が支給されるようになっているわけでございます。指定職というのは、一般職の国家公務員では最高のクラスでございまして、むろん船賃につきましても、三階級に分かれている場合には、上級が支給されるということになるわけでございます。そういった特殊の場合にそういう待遇を受けますのにかかわらず、弁護士としての本来の職務活動である国選弁護人の場合に、その額が中等以下に押えられているという点は、非常に不合理ではないかというぐあいに考えられるわけでございます。 また、ほかの公務員との比較ということは非常にむずかしい問題でございますが、たとえば、裁判官、検察官が国選弁護人と一緒に行動いたします場合にも、裁判官、検察官につきましては、相当な経験年数を持っております者につきましては、上級の運賃が支給されるということになるわけでございまして、国選弁護人のみが経験年数のいかんにかかわらず中等以下であるというのは、同じく不合理であると思われるわけでございます。 また、国選弁護人とやや似ている制度といたしまして、刑事訴訟法の二百六十八条一項の規定によって審判に付される事件、準起訴事件の指定弁護人制度がございますが、この場合に手当はどうなるかと申しますと、政令に規定がございまして、検事の一号は相当上位でございますが、一号の検事に対して支給する旅費の額にひとしい額を手当に加算するというような規定になっているわけでございまして、どれを見ましても、国選弁護人としての活動についてのみ船賃を中級以下ということは、合理性を欠くのではないかというふうに考えた次第でございます。
○大竹委員 これで終わります。
○羽田野委員長代理 次回は、来たる六日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。 午後零時十二分散会