法務委員会 第27号
- 発言数
- 57 件
- 登壇者
- 7 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1972/05/24
会議録
○松澤委員長 これより会議を開きます。 おはかりいたします。 本日、最高裁判所牧刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○松澤委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。 ————◇—————
○松澤委員長 内閣提出、罰金等臨時措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。青柳盛雄君。
○青柳委員 ただいま議題となっております罰金等臨時措置法の一部を改正する法律案について、お尋ねをいたしたいと思います。 この案は、昭和三十年代から、具体的にはどのくらい上げるというようなことはきまっていないんでしょうけれども、政府の内部で検討をされつつあったように聞いておりますけれども、具体的にはどんな経過をたどって今日に至ったのか、簡単に御説明いただきたいと思います。
○辻政府委員 罰金等臨時措置法につきましては、これは何ぶん昭和二十三年の法律でございますし、その後著しい経済の進展と申しますか、変動がございましたので、これでは経済事情との関係において、そのままにしておいては罰金の機能が低下するのではないかという観点から、すでに昭和三十年代におきまして、一応事務的に法務省の刑事局におきまして、この改定というものを検討いたしておったわけでございます。 しかしながら、同時に、当時刑事局におきましては、刑法の全面改正の部内的な検討作業を開始しておったわけでございまして、それとの関係におきまして、この罰金等臨時措置法だけの改定というよりも、刑法の全面改正のほうで一緒に解決したほうがいいんじゃないかという結論に達しまして、もっぱらその後は刑法の全面改正の作業に取り組んできたわけでございます。 ところで、その後刑法の全面改正作業のほうは、昭和三十八年に至りまして、法務大臣から法制審議会に、この改正に関して諮問がなされたわけでございます。昭和三十八年から現在まで、法制審議会においてこの全面改正作業をいたしております。 ところが、一方罰金のほうは、その後いよいよ経済変動というものの進展がございまして、このままではとうていこれは罰金の機能が低下するのじゃなかろうかという危惧が強くなってまいりました。のみならず、昭和四十三年ごろになりますと、刑法犯の一部におきまして、いわゆる裁判で言い渡されました刑が法定刑の上のほうに集中してまいる傾向が出てまいりまして、いわゆる頭打ちの傾向が顕著になってまいったわけでございます。 かような事態に至りましたので、刑法改正作業の今後の見通しというものとの関係におきまして、とりあえずこの際、刑法全面改正までの一つのつなぎの応急的なものとして、罰金等臨時措置法の一部改正をお願いするのが至当であるという考えに達しましたので、今回この法案を提出いたした次第でございます。
○青柳委員 先ほどお話のありましたように、刑法の改正案について法制審議会に諮問をされるという経過があって、そこの過程で、罰金刑の法定額についても適当に是正される可能性が含まれておったということでございますが、政府のほうから審議会に諮問するにあたっての原案というようなものがつくられたと思うのですが、その場合に、その刑法各条の罰則の幅については、新しい刑もありますし、削除される刑もあって、一律には言えないと思いますけれども、大体現行刑法に対応する形でいろいろ部分的な修正のあるものについて、どの程度の上げ幅を考えて案をつくられたのか。たとえば第一次参考案というようなものがあったと仮定いたしますと、それはどのくらいの倍数にするのがよろしいという、おおむねの標準をどの辺に置いたか、それはおわかりになりますか。 〔委員長退席、羽田野委員長代理着席〕
○辻政府委員 刑法の全面改正作業におきましては、特にそのうちの罰金刑をどの程度の額にするかという問題を検討するにあたりましては、もとよりその時点におきます経済事情というものを検討の根底にしなければならないことは申すまでもございませんが、他面、やはり刑事法制全体を全面的に、刑事法という立場から検討していくという考え方が強く出ておるわけでございます。そういう関係で、刑法の全面改正作業の罰金刑の問題につきましては、経済的な変動ということだけを考えてはいないわけでございます。 そういうことを前提にいたしまして考えてまいりますと、最初刑法全面改正作業の諮問に際して参考案として提示されました改正刑法準備草案、これは昭和三十一年以来事務的に検討してまいった草案でございますが、この準備草案におきましては、御案内のとおり罰金は五千円以上とするということで、刑法に関する限り罰金刑を五千円以上とするというような考え方をとっておったわけでございます。 それが、今回の法制審議会の刑事法特別部会で採択いたしました改正刑法草案によりますと、罰金は一万円以上という形になっております。これが刑法全面改正作業における罰金刑の取り扱い方及び考え方でございます。
○青柳委員 この案を、刑法の改正とは別に、臨時の措置として当分の間ということで改正をされるにあたっては、これを四倍にする、あるいは最低額をどのくらいというようなことをきめるについて、法制審議会に諮問するということはしなかったようでございますが、それにしても、最高裁判所あるいは在野法曹その他の関係方面の意向を打診するというような作業は行なわれなかったかどうか。この点はどうですか。
○辻政府委員 今回の罰金等臨時措置法の一部改正案でございますが、これにつきましては法制審議会に諮問をしております。そして法制審議会の調査、審議を経まして、これでよろしいという答申を得ておるわけでございます。 一方、関係の裁判所その他の機関についても、非公式には意向を打診いたしました。
○青柳委員 最高裁にお尋ねをするのですけれども、刑法の改正については裁判所も無関心ではおられないので、会同などにおいて話題にされていると思いますけれども、罰金を現行法からどのくらいまで上げるのが妥当かというようなことについて、何らかの意見の交換があったような事実はございますか。
○牧最高裁判所長官代理者 罰金の額をどの程度に上げたらいいかというようなことで、議論の交換をいたしたことはございません。ただ、刑法の全面改正というのが当時法制審議会で審議されておりましたので、罰金の制度に関して、その他日割り罰金制度だとか、あるいは短期自由刑の罰金刑への転換の関係だとか、そういうような制度的なことを若干意見の交換はいたしたことがございますけれども、金額の引き上げをどの程度にするのが適当かということでの議論はございませんでした。
○青柳委員 たとえば、私の知り得た情報によりますと、昭和四十三年の仙台高裁管内の刑事裁判官ブロック会同では、協議事項は「刑法改正に関する諸問題」ということであったそうでありますけれども、その中で、現行の罰金等臨時措置法は、経済界における実際の貨幣単位から見て著しく低く、第一次刑法の改正参考案では、罰金はこれを六倍としているが、まだ低過ぎると思うというような意見があったというし、それから、やはり同じ年の福岡高裁管内の刑事裁判官会同でも同じ趣旨の議論があったし、また変わった考え方としては、罰金を、現行法のたてまえでは拘留よりも重い刑罰とされているが、多額が著しく低いために、現実には拘留のほうが被告人にとっては重いという感じがする、だから、たとえば道路交通法にも拘留という法定刑を加えたほうがいいんじゃないかというような意見も出たというのですね。 こういうような裁判官の考え方というのは、一般的に見受けられるのですか、どうでしょうか。
○牧最高裁判所長官代理者 個々の裁判官が、現在の罰金刑の法定額が低いというふうにお考えになっておられるようなことは、間々承っておるわけでございますが、それは個々的な御意見でございまして、裁判所として、その点について幾らにしたのが適当であろうかというようなことを、問題にしまして議論をしたことはないように聞いております。
○青柳委員 法務省にお尋ねいたしたいのでございますけれども、罰金は全体の刑の中では事実上非常に多くの部分を占めておるというのが実情のようでございます。その中でも、道路交通法違反あるいは刑法の業務上過失致死傷といったようなものが多いようでございますが、最近の統計で、罰金の一年間における総額、それから、罰金になる事件の全体に占める割合、そういうものがどうなっているか。繰り返して申しますけれども、罰金になる事案の大半は道路交通法違反ではないだろうか、あるいはそれと関連のある業務上過失犯ではないだろうかということを、計数的にあらわすものが調べられてあったらお知らせ願いたいと思うのです。
○辻政府委員 御指摘のとおり、罰金刑というものは、現在の刑事司法の実務におきましてたいへん多い件数を示しております。昭和四十五年に確定いたしました確定人員が全部で百六十六万五千人ばかりおりますが、そのうちで罰金刑に処せられた者が百五十九万人ばかりでございまして、全体の九五・五%という数字に相なっております。 そこで、この罰金刑を受けました者の内容はどうかという点でございますが、これはまさしく御指摘のとおり、刑法犯におきましては、交通違反に基づく業務上過失傷害または業務上過失致死罪が非常に多いわけでございまして、刑法犯のうち六二%ぐらいは、現在、業務上過失傷害または致死の事件でございます。 他方、道路交通法違反につきましては、これまた罰金が大多数を占めるわけでございます。お手元に資料として提出いたしております法律案関係資料の七一ページをごらんいただきますと、これは昭和四十四年におきます各罪名別の罰金の言い渡し状況が掲記いたしてあります。この七一ページによりますと、道路交通法で略式命令を受けました者は総数九十四万九千百二十一名、即決裁判を受けました者が二万四千三百七十五人という数字でございます。そういたしまして、この特別法で罰金を同じ年度に受けました総数が五八ページにございますが、略式命令で罰金を受けました者百三万九千七百六十五名、即決で二万四千三百七十五名ということになっておりますから、これは九〇%以上は道路交通関係であるということがおわかり願えると思うのでございます。
○青柳委員 ついでに大まかなところ、罰金総額のうち、いま指摘された道路交通関係の刑法犯あるいは道交法違反、そういったものの納めた、あるいは納めなければならなかった罰金の総額のうちに占める割合などはわかりますか。
○辻政府委員 昭和四十五年一年間に、全国の検察庁で徴収と申しますか、労役場留置を含むわけでございますが、罰金を徴収して処理しました金額は、二百四十五億三千百四十七万八千円でございます。これは全部の罰金という形で統計をとっております関係で、このうちでどの罪名のものが何%になるかということは、実は統計ではわかってこないのでございますが、大よそ考えまして、先ほどの事件数との関係からいきまして、おそらくこの七〇%以上のものは交通関係の罰金であろうということを申し上げることができると思います。
○青柳委員 今度の法律が実施されるという段になって、直ちにその四倍にすべてがなるということでもないとは思いますけれども、いままでの実績を見ますと、やはり道路交通関係の罰金というものも、決して比率が落ちるということは考えられないから、要するに四倍の額に相当する罰金が納めさせられるというような状況になるのではないかと思われますけれども、そこで、いままで罰金を上げた場合に、法定刑を上げた場合に、それが実際上あまり不自然でなく、そのまま改正を必要としないような状況に定着するまでの間にどのくらいな期間が経過するのか。急遽上がるのでもないし、さりとてすぐ頭打ちになるわけでもない、要するに、何年かの間には四倍なりその倍数に上がっていくというようなことは、調べたことはございますか。 要するに、この前五十倍に上げたわけですけれども、五十倍というのはすぐ実現したのかどうかということは、二十三年以前の罰金の収入と、その後の収入とを比較してみればおのずからわかるのじゃないか。それがそのまま一つの実績になって、今度の場合もそれと同じになるとばかりも言えないと思いますけれども、参考にそういうのは調べたことはございますか。
○辻政府委員 二十三年の罰金等臨時措置法の施行直後の状況にといては、遺憾ながら調べておりません。 ただ、資料にもございますように、昭和三十年以来の罰金の実際の科刑状況というものは提出いたしておるわけでございまして、昭和三十年では一件当たり平均罰金額が三千十五円でございますが、昭和四十五年になりますと、一件当たりの平均罰金額が一万四千四百八十四円という形になっておりまして、この十五年間の推移を見てまいりますと、緩慢ながら毎年逐次平均罰金額が上がってきておるということが言えると思います。
○青柳委員 最高裁にお尋ねするのですけれども、裁判官が法定刑が上がったからといって、すぐ判決の中で、いままで抑制されていたものがせきを切ったように、罰金額が上がってくるとばかりも言えないと思いますけれども、見通しとしては、いままでの実績等々勘案して、今度の法律が実施されるようになればどうなるであろうというようなことは、正確ではないまでも調べられたことがございますか。
○牧最高裁判所長官代理者 そういう種類のことを調査いたしたことはございません。 ただ、従来の経験からいたしまして、法定刑は上がりましても、実際の事件におきましては、その量刑にあたりましては、同種の事犯の量刑との比較というようなことが非常に重要なことになってまいろうかと思います。したがいまして、この罰金等臨時措置法案が通過いたしまして施行されました場合でも、七月一日というようなところを境にして、急激に罰金刑の額が上がるというようなことは考えられないので、やはりそれはなだらかな形でしか上がっていかないのではなかろうかと存じます。 一般的に申し上げますとそういうことになりますが、これは個々の具体的な事件によって違うので、たとえば、現在の住居侵入というようなものは非常に罰金額が低いということになっておりますが、これらのものになりますと、法定刑が上がったことによって、あるいは言い渡される罰金刑の額も相当上がるというようなことは出てこようかとは思いますが、全体としては、きわめてなだらかな線をたどって、一年や二年で金額が四倍になるというようなことは、とうてい考えられないというふうに私のほうは考えております。
○青柳委員 事実そんなところだろうとは思いますけれども、実務的に考えてみると、略式命令はほとんど、検察官のほうからこれだけにしてくれという案を出して、それが裁判所で認められるというのがほとんどでございます。よほど異例なことでない限りは、減額されるとかいうようなことはないと思います。正式の裁判の場合でも、検察官のほうの論告求刑という形で、罰金を幾らにしてくれという意見が述べられる。したがって、それを裁判所は相当程度参考にしていくという可能性があるわけですね。必ずしも裁判所は論告求刑に左右されるものじゃございませんけれども、実際問題として、全国的にあまり不公平でないようにするのには、裁判官はそれぞれ独立でございますから、人の判例も参考にするでしょうけれども、大体統一するのには、検事一体の原則で、検事のほうでこの種の事件はどのくらいの求刑をするのがよろしいというようなことを、上部のほうできめて下の現場の検事のほうに流すのじゃないかと思うのですね。 そういう点で、今度法律が改正になった場合に、それを実施された場合に、法務省とすればどういうようなことが考えられますか。いま言ったようなことについて、下部の現場の検事のほうに指示をするというようなことがあり得るのか、ないのか。
○辻政府委員 罰金と求刑の問題でございますが、ただいま御指摘のように、罰金というものの大多数は略式命令で請求されるという関係になっております。そこで、検察庁におきましては、刑法犯の罰金刑の大多数を占めます交通関係の業務上過失傷害または業務上過失致死罪につきましては、従来から非常に大まかではございますが、全国的に一つの、均斉もとれるという観点から基準を設けておりまして、その基準の範囲におきまして、個々の事案によっていろいろかげんをしていくというような取り扱いになっております。 今回この法案が法律として施行されるという段階になりました場合には、やはり刑法犯のうちの業務上過失傷害と過失致死につきましては、この求刑の基準というものを、新しい法律との関係で再検討していくことは当然であろうと思います。現に私は、再検討しなければならないと考えておるわけでございます。 その場合に、やはり司法の連続性といいますか、非常に大きな変革を急激にやっていくということは、司法の本質からいって適当ではないんではなかろうかという大きな考え方があろうと思います。おそらく検察庁におきましては、この法律施行の際には、そういう意味の求刑基準あるいは処理基準というものを再検討いたすと思いますけれども、急激な変動というようなことは考えずに、徐々に現下に即応した適正な罰金刑が実現するように、取りはからってやっていくというように考えております。
○青柳委員 もう時間がありませんから、一言だけにいたします。 この法律は、今後どうなるかよくわかりませんが、かりに成立し、実施されるという暁に、一番影響を受けるのは、先ほど私、質問し、回答を得たように、九十何%が交通運輸に関係する労働者、いわゆる業務上過失あるいは道路交通法違反の人たちです。道交法違反の方は反則金とのかね合いがございますから、そう急にはね上がるということもないと思いますけれども、業務上過失の罪につきましては四倍になるわけですから、この前刑罰を三年から五年に上げたのと同じように急激に上がったといたしますと、その及ぼす影響は非常に大きいと思うのです。一方、道路交通上の違反というのは、必ずしも運輸労働者の個人個人の注意義務が緩慢であるということによってのみ生ずるわけではない。したがって、刑罰によってこれを防止するということはあまり期待はできないんじゃないかという感じがいたします。 したがって、ただ刑罰のみ重くすれば何か犯罪を防止できるというような考え方、あるいはこれによって収入を得るなどということは論外でございますが、そういう点で政府とすれば、よほど慎重にこの実施については注意を払わなければなるまいというふうに考えますが、法務大臣はどうお考えになっておられますか。
○前尾国務大臣 ただいまお話しのとおりに、われわれは罰金を引き上げることによってのみ犯罪が減るとは考えておりません。また罰金の効果は、何も金額を上げることばかりではなしに、何といいますか、不名誉さというものによる威嚇的な効果もあるというふうに考えております。 現在の罰金額そのものを考えましても、あまりにもかけ離れておる。昭和二十三年の社会情勢、ことに所得の状況、そういうことから考えまして、もう現在の実情にはあまりにも沿っていない。そのことが、逆に法の権威といいますか、そういうものを害するのではなかろうか。また、その最高限が低いために頭打ちの状況で、いろいろな問題が起こっておりはしないか。先ほどもお話がありましたように、罰金ではどうもあまりにも軽過ぎるから体刑、あるいは拘留のほうがいいじゃないかというような議論も出てくるわけであります。さりとて、現在考えられております刑法草案そのままの金額をとるわけにはまいりません。また、刑法草案が実際に採用されるときには、どういう金額になるかもわかりませんが、高過ぎて下げなければならぬというようなことになりましては、これはかえってまた非常に公平の原則を害するわけであります。 あれやこれやいろいろ考えました末に、四倍というような線を考えたわけでございまして、ここらが非常に妥当であり、これなら少なくとも数年間は、いままでありましたような頭打ちによって起こるいろいろな弊害といいますか、選択が非常に窮屈だという感じを与えなくて済む、また、そのことによりましてやはり法の権威を保つについても有効である、こういう判断に立ったわけであります。 そういう考えのもとに、もとよりこれは重要なことでありまするから、それが行き過ぎて妙なかっこうになるというようなことは、もちろんわれわれも十分注意していかなければならぬ、かように考えておるわけであります。
○青柳委員 終わります。
○羽田野委員長代理 中谷鉄也君。
○中谷委員 司法の連続性ということばが、同僚委員の質問の中に何回か出てまいりました。この点に関連をいたしましてお尋ねをいたしたいと思います。 前回法務省のほうから、「法定罰金の多額に相当する額の罰金が言い渡された事例数」という資料をいただきました。調査の対象庁は、東京ほか二十七簡易裁判所、調査対象期間は、東京ほか七簡易裁判所については、昭和四十六年七月一日から同年九月三十日まで、その他の簡易裁判所については、昭和四十六年四月一日から同年九月三十日までの期間ということであります。 そこで、まず最初にお尋ねをいたしたいのは、この調査対象庁と調査期間について、資料に基づいて申し上げますると、多額相当額の罰金が言い渡された事例数については、総数四百二十四、封印破棄については一、犯人蔵匿については三、証憑隠滅については二、証人威迫については一、建造物等失火については二、業務上過失往来妨害については一、住居侵入については九十一、公然わいせつについては五、賭博については十三、傷害については二百三、暴行については三十一、凶器準備集合一、重過失致死二、脅迫十六、遺失物横領四、毀棄五、暴力行為等処罰法違反四十三というふうになっております。 そこで、すでに配付されました資料、すなわち罰金等臨時措置法の一部を改正する法律案関係資料の傷害の点について、いま申し上げました資料との関係を検討してみたいと思うのでありまするけれども、この二つの資料の中からは、傷害等についての通常第一審事件と略式事件についての一万円以上という刑についての表はありまするけれども、法定罰金の多額は、それぞれの年度においてどの程度言い渡されたかということは、必ずしも明確でないわけでありまするけれども、この二つの資料をどういうふうに検討し、この資料からどういうふうな傾向を読み取ったらいいのかどうか、この点をお尋ねいたします。 罰金が頭打ちになっている、いわゆる法定罰金の多額に集中をしているということでありまするけれども、必ずしも封印破棄、犯人蔵匿その他、先ほど読み上げましたところの多額相当額の罰金の言い渡された事例数は、全庁にはわたっていませんけれども、それほど多数ではないのではないか、こういうふうな疑問を持ちますけれども、いかがでございましょうか。
○辻政府委員 ただいま御指摘の東京簡易裁判所ほか合計二十八庁の、昭和四十六年の一時期でございますが、その時期におけるこの「法定罰金の多額に相当する罰金が言い渡された事例数」これを御指摘になったわけでございますが、これは私どもも、急遽この実態を調べたいということで、特定の庁につきまして、しかも一定の期間について急遽調べましたわけで、全体との関係で、この数字がどういうふうになっておるかということを把握することはきわめて困難でございます。 ただ、しかしながら、ただいま御指摘のように、この実態を見ますと、昨年におきますと、住居侵入と傷害、これは一番法定刑の上にいっておるものがきわめて多い。私は、むしろ案外と思っておりますのは、そのほかのほうがむしろまだ少ないんじゃなかろうかというふうに考えられる面もございます。しかしながら、住居侵入、傷害は、予想どおり非常に多くなっておるというふうに思うのでございます。 他方、ただいま御指摘のこの法律案関係資料にございます傷害における一例で、言い渡し状況の資料がございますが、これは何ぶん四十四年の言い渡しの状況でございますから、先ほどの表とは、そこに二年間の期間の経過がございます。しかもこの表は、統計の関係で併合罪として一緒に処理されておるというような関係のものが含まれております関係で、非常に厳密な正確性を欠くということに相なるわけでございますけれども、しかしながら、この二五ページの略式の傷害の四十四年の分につきまして、やはり一万円以上というものが非常に多くなっておるということは、本来この法定刑が二万五千円でございますから、この二万五千円で、一万円以上のものが約七〇%以上になっておるということは、これはこの数字を見ましても、すでに四十四年におきまして、傷害に関する限りは頭打ち現象が出ておるということが言えるのではないかと考えております。
○中谷委員 法定罰金の多額が、たとえば傷害の場合は二万五千円で、ただいま局長のほうから指摘をされました、私自身が引用さしていただきましたところの資料の二四ページないし二五ページによりますると、一万円以上の分について、先ほど御答弁がありましたとおり、略式命令等においては七〇%近く量刑されておる。この点はよくわかりました。 ただ問題は、頭打ちということが、二万五千円の法定刑で一万円以上に七〇%が集中しておることが、イコール頭打ちというふうに言っていいのかどうか、この点についてはかなり疑問を感ずるわけでございます。 〔羽田野委員長代理退席、委員長着席〕 急遽たいへんめんどうな資料を用意していただいたわけでありまするけれども、一万円以上の内訳については、今日なお、分析してお答えいただくわけにはまいりませんか。
○辻政府委員 実は、これは統計そのものがあの区分に従っておりますので、一万円以上とこの二万五千円の間がどうなっておるかということにつきましては、現在資料がございません。
○中谷委員 そういたしますると、先ほど冒頭に申しました司法の連続性ということは、御説明によりますると、かりに法定刑の多額が上がっても、直ちに罰金の額が急激に重く量刑されるわけではない、こういうふうな御答弁があったと思うのであります。 だといたしますると、統計そのものが一万円以上という統計区分に相なっておりまするので、最高額の二万五千円を科したものがどの程度あるのか、二万円がどの程度か、一万五千円がどの程度かということについて知る機会がないわけでありまするけれども、司法の連続性というのは、単に求刑、量刑の面のみならず、法定の多額を定めるにあたっても、司法の連続性というふうなことが考慮されてしかるべきではなかろうか。逆に申しますると、即断はいたしかねまするけれども、かりに法定刑を四倍ではなしに、二百倍ではなしに、三倍ということにした場合、これでも十分まかなえるのではないか、こういう感じがいたしまするけれども、いかがでございましょうか。
○辻政府委員 今回の法案で、刑法犯等につきましては法定刑の上限を四倍にするという考え方になっております。この考え方につきましては数回御説明をいたしておるわけでございますけれども、結局は、昭和二十三年を基準にいたしますと、昭和四十五年におきまして国民所得は十・八倍、賃金のほうは、四十六年におきまして十五・九倍ということに相なっておるわけでございますから、まずこの昭和二十二年と対置して現在を考えますと、むしろ十数倍になってしかるべきということが一応は言えるわけでございます。 しかしながら、そういう考え方はとりませんで、これはやはり経済事情が比較的安定いたしました昭和三十年を一応基準にとってみまして、三十年と四十五年とを考えますと、賃金の上昇率は約四倍、国民の一人当たりの国民所得は約六倍となっている。それから司法実務の運用という状況を見てまいりますと、昭和三十年の一件当たりの罰金額は平均で三千十五円でございましたものが、昭和四十五年には約四・八倍の一万四千四百八十四円になっておる。かような事情を考えますと、ちょうど三十年というものを基準にいたしますと、大体四倍というところが妥当な線ではなかろうかということに相なっておるわけでございます。 本来、むしろこの四倍が、理屈の面でいくと少ないのではないかというように考えられるべきものだと思いますが、そこは、司法の連続性その他とかいうようないろいろな要素を考えまして、この四倍という線に落ちついたというふうに理解をいたしております。
○中谷委員 その点についてでありますけれども、要するに司法の連続性ということが非常に大事なことである。すなわち、司法の連続性ということは、法的安定性その他、すでに処罰を受けた現行の刑法によるところの罰金を科せられた者との公平の原則その他等々が配慮されて、司法の連続性というふうなことが大事だという御説明であろうかと思いますけれども、そうだといたしますると、求刑、量刑の面において司法の連続性については担保されるのだ、保障されるのだというお話でありまするけれども、本来司法の連続性ということを最も強く担保するのは、現に定められたところの法定罰金の多額が、四倍でなしに三倍ということになりますと、司法の連続性は法定刑の中においてむしろ一番強く担保されることになるのではないでしょうか。刑法改正の大きな作業との関連において、かりに四倍になったとしても、結局最高の量刑、重い量刑を受けるのが、たとえば傷害でいえば二万五千円ですが、それの何倍というようなことではなしに、なだらかに量刑されていくんだということになるとするならば、三倍程度で十分まかなえるのではないか、こういうふうな感じがいたしますけれども、いかがでございましょうか。 経済事情が比較的安定したと見られる昭和三十年を基準として、そして賃金が約四倍になった、一人当たりの国民所得が約六倍になった、したがって四倍にしたんだとおっしゃるわけでありまするけれども、本来量刑、求刑の面において司法の連続性というものが尊重されて、必ずしも直ちに量刑、求刑の面において四倍に上がっていくのではないのだということであるとすれば、重ねて申し上げますけれども、司法の連続性というものを担保するというのは、求刑よりも、量刑よりも、むしろ法定刑の多額が四倍以下に押えられるという点にあるのではないか。しかも、同時にそのことによって、何ら実務上科刑の面において支障を来たすものではないのではないか。あくまでこれは臨時措置法なんであるから、そういうふうな要請にこたえるだけで十分ではないかというふうな感じがいたしますが、いかがでございましょうか。
○辻政府委員 先ほど申し上げましたとおり、本来二十三年を基準にいたします法律の改正をお願いいたしておるわけでございます。その場合に、何よりもまず基準となりますのは、これは名目収入の上昇率というものが、この罰金刑の場合に一番最初に考えなければならない問題であろうと思うのでございます。そういたしますと、この名目収入の上昇率は、先ほど申し上げたような十数倍になっておるわけでございます。それを基準にいたしまして、司法の運営の連続性と申しますか、あるいはその他の要素というものを考えていくということに相なるわけでございまして、ただいま御指摘のように、連続性という点だけを考えれば、法定刑の上限を三倍にすればどうかという御意見でございますが、その連続性という点だけを考えますと、御指摘のとおりであろうと思います。 しかしながら、本来罰金の法定刑というものをまず第一義的に考えました場合には、この四倍というものは、むしろ理論的には倍率が低いのではないかというような考えを持っておるわけでございます。
○中谷委員 そういたしますると、かりに四倍にした場合に、すなわち改正案どおり四倍にした場合に、それが、たとえば今日と同じようなかっこうで物価、賃金が上昇していくということになれば、頭打ちの状態を来たすというのは、いつ、どんな状態で頭打ちの状態が来るというふうに推測されるでしょうか。
○辻政府委員 これは先ほども申し上げましたように、昭和三十年からのこの経済状況の進展というテンポは非常に緩慢といいますか、それ以前に比べて緩慢になっております。そこで、この際刑法犯につきまして法定刑を四倍ということで改正がなされますと、これは十分のワクがございます。これは私、一がいに将来の見通しを申し上げることは困難であると思いますけれども、私は十分、刑法の全面改正が実現するまでは、この四倍ということで適正な罰金額の量刑ができるというふうに確信をいたしておるわけでございます。
○中谷委員 刑法改正の見通しを一応外に置いて、四倍に増額した場合、今日と同じような頭打ちの状況というものが、物価、賃金の伸び率等が今日と同じような状況で伸びていくと考えた場合に、そういう頭打ちの状況を招来するというのはどの程度後のことになるでしょうか。それは私は三年とか四年とかいうことでなくて、かなり先のことになるだろうと思うのです。すでに詳細な資料をいただいているわけでありますが、昭和二十五年から四十四年までについての長期的な資料をいただいているわけでありますが、この資料等から、現在、四十七年において改正をした、それが四倍になって同じような頭打ち状況というのは、物価、賃金という点に焦点を合わせた場合に、いつごろ頭打ちの状態が来ることになるでしょうか。
○辻政府委員 私、経済のことは暗いのでございまして、これはとてもいつごろということを、確たるお答えはできないわけでございますが、この提出いたしております資料によりますと、これは相当期間は、四倍になれば十分適正な科刑が実現されるということで、頭打ちがいつになるかということは、私、自信をもってお答えすることは、遺憾ながらできないわけでございます。
○中谷委員 昭和三十年を基準として賃金が四倍、そうして一人当たり国民所得が六倍になった、こういうような状態において、結局四倍にすること、それが妥当だと思われる、こういうことであります。二十数年間における経済事情の変動が著しい、賃金も一人当たりの国民所得も十倍以上に上昇したというように、過去にさかのぼってもこの点についての説明をしておられるわけであります。非常にざっぱくな、あるいは大まかな見通しをさせていただきますならば、四倍にしたということは、少なくとも五年以上あるいは十年くらいはこれによって十分まかなえるのではないかというふうな感じがするわけであります。 だといたしますと、昨日大臣のほうから御答弁がありましたけれども、刑法の大改正についての作業が済んで、来年はこの刑法改正について国会の審議に付することになるだろうというふうなお話があったわけであります。そういたしますると、要するにこの臨時措置法というのは、これは一つの推測でしかないかもしれませんけれども、かなり長期間経過した後に頭打ちになるということが見通されるならば、それまでに刑法改正の作業というもの、刑法改正の審議というものが済むというふうに考えてまいりますと、非常に頭打ちの状態にならないうちに臨時措置法そのものの運命というものはきまるわけでございますね。 刑法改正の国会審議が終わってしまえばということになってまいりますると、刑法改正の作業について、来年提出をしたいけれども、来年それが可決されるかどうかわからぬという御答弁でありましたけれども、かりに来年というようなことはなかったとしても、それは提案をして数年後には、そういうものがとにかく日の目を見るだろうというふうな、つなぎの問題としてこの臨時措置法は考えていくのが筋ではないでしょうか。そういうような感じがいたしますけれども、いかがでしょうか。
○前尾国務大臣 この四倍でどの程度まで続いてやっていけるかという御質問は、先ほど来いろいろ答弁いたしておりますように、今後所得の状況がどうなるか。成長率がどうなるか。成長率から考えますと、かなり鈍化するのではなかろうかというふうにいわれておるわけであります。したがって、私も五年以上は四倍でまかない得るというふうに考えておるわけです。 一方、もちろん刑法改正が国会を通りましたら、これは廃止されることは当然のことであります。しかし、率直に申しまして、来年法案がはたして提出できるかどうか、再来年ということになりまして、再来年にそれが成立するかどうかということを考えてまいりますと、少なくともこの法律があるがために、新刑法の改正案をぜひ通してもらわなければならぬ、こういうことになったら非常に逆効果だと私は思います。だからそういう点は考えずに、とにかく五年以上くらいはこれで改正せずにでもやっていけるというものでなければならぬ、かように考えておるわけであります。 また、先ほど来申しておりますとおりに、やはり法の権威ということになりますと、またこの罰金刑というのは、何も実際にかけるのではなしに、一般予防のために制定されておるわけであります。そういう意味合いから考えましても、現在の経済情勢あるいは所得の状況、それによって与えられる苦痛度というものを考えていきますと、もちろん実際にはいわゆる司法の連続性ではありますが、実情に近いものでなければ、むしろ逆に法の権威を害するのではなかろうかという配慮に基づいておるわけであります。 そういう意味合いからいたしますと、先ほどもお答えいたしましたように、現在の草案程度にまで引き上げたのでは、逆にこの法案で、また御審議の過程において引き下げられるとかいろいろな問題があることを考えますと、まず四倍というところが、一番現在の実情に適しておるのではなかろうか、こういう判定をいたしておるわけであります。
○中谷委員 四倍にするのが妥当か、三倍にするのが妥当なのかというふうな問題は、これは計数的に説明がつくものではないと思うのです。本来量刑というもの、刑事罰そのものの中にはかなり、合理的なものでなければいけないでしょうけれども、非合理的なものも含んでいるわけです。でありますけれども、私自身少しく不安に感じますのは、司法の連続性ということを強くおっしゃるならば、むしろその歯どめは、罰金における法定罰金の多額の点で歯どめをしておくべきではないのだろうかというふうな感じがするわけです。いずれにいたしましても、疑問だけを提起いたしておきます。 そこで、お約束の時間があと五分ということになりましたので、一点だけこの機会にお尋ねをしておきたいと思うのですが、要するに時代の流れ、経済事情の変動に伴って、罰金等臨時措置法の改正が提案されて審議をいたしておるわけでありますが、この機会にひとつ私は大臣並びに刑事局長にお尋ねをしておきたいことがあります。 と申しますのは、いわゆる尊属関係の殺人あるいはその他の刑法犯として規定されておりますところの、尊属に関する事案についての質問をいたしたいと思うのでありますけれども、特に罰金等臨時措置法の改正をして、少なくとも刑法改正の作業が行なわれるまでの時代の流れに対応していくという考え方と同じようなことが、私は尊属関係の刑法の規定の中にもあるのではないかと思うのであります。 そこでお尋ねしたいのでありますけれども、かりに現在最高裁判所の大法廷に係属をいたしております裁判において、尊属殺人の規定について、憲法違反というふうな判決が出た場合に、現行刑法の尊属関係についての尊属殺人のみならずその他の規定がございますが、そういう規定については、刑法改正の作業を待つことなく、それ以前に改正をされる、すなわち削除をされる、こういうふうなことが、私は最高裁判所において違憲の判決が出たときにおいては、当然対応されるべきことであろうかと思うのでありますが、まずこの点はいかがでございましょうか、お答えをいただきたいと思います。
○辻政府委員 御案内のとおり、この尊属関係、特に尊属殺人の問題につきましては、改正刑法草案におきましては尊属殺という規定は削除いたしております。それから、現行刑法のもとにおける尊属殺人につきましては、現在までは、これは御案内のとおり最高裁判例において合憲であるという判断が示されておるわけでございます。 そこで、ただいま御指摘のように、近くこの尊属殺について最高裁判所においてまた判断がなされるという場合に、かりにその判断におきまして、これが憲法違反であるというような判断があるといたしますならば、当然憲法違反の刑法典というものを持つわけにはまいらないわけでありまして、万一そういう事態が出ましたならば、当然事務当局としてもその部分だけは法律の改正作業を検討すべきことは、もとより言うをまたないところであろうと考えております。
○中谷委員 時代の流れの中において、何べんも何べんもその種の上告がなされて、またたいへんな最高裁の重いといいますか、重要な判決が出されるような時期でありますけれども、そういうふうな判決が出された場合、当然削除という問題が出てくるということでありますけれども、事は憲法違反だという判決が出た、それで当然削除という問題と、改正刑法草案の中にすでに削除されているという立法上の問題とは、おのずから別個の問題であろうと思うのであります。刑法改正の作業を待つことなく、立法上の問題としてこの問題について改正をするというようなことについては、お考えになっておられないでしょうか。
○前尾国務大臣 ただいま局長から答弁いたしましたように、改正刑法草案にはこれが入っていないわけであります。しかし、この改正法案が通るか通らぬかということはただいま未定であり、また尊属殺の規定が最高裁の判例によって憲法違反ということにきまれば話は別でありますが、その以前にわれわれが改正刑法草案を先取りして改正するということになりますと、これは法制審議会としても、あれをできるだけ一体として取り扱っていきたいという意向を持っておられるわけでありますから、そういう面からも、ただいまのところわれわれは、あの刑法草案を先取りしていろいろな改正をやろうという考えは持っておらぬわけであります。
○中谷委員 あと一点だけ。これも法務当局のほうからいただいた資料について、どういうふうに分析をすべきかという点についてお尋ねをしておきたいと思います。 「通常第一審事件および略式・即決事件の有罪人員」という資料をいただきました。それによりますと、昭和四十三年度、八百四十四人が六月末満の懲役刑を受けている。傷害であります。昭和四十四年度に六百八十一人が六月未満の短期自由刑の判決を受けている。そうして罰金については、昭和四十三年四万二千八百四十四、昭和四十四年三万九千八百四十一ということに相なっているわけであります。 この点で、総数の変化があります。総数の変化がありますけれども、特に六月未満、そして六月以上一年以下、これらの刑が、四十四年が四十三年に比べて減っているというのは、総数の減少に伴う減である、こういうふうにこの資料を読めばよろしいのでしょうか。罰金についての減もそのように読めばよろしいのでしょうか。前回から指摘をいたしているような、短期自由刑の弊害などというようなことがあらわれたところの量刑であるのかどうか、この点について御答弁をいただいておきたいと思います。
○辻政府委員 これは確たる分析はできないわけでございますけれども、短期自由刑の弊害という点を特に裁判において考慮されまして、罰金のほうに持っていくというような顕著な傾向は、この資料からは出てこないと思うのでございます。これはやはり総数が減っておりまして、それから六月未満のほうも減っていっておるという形でございまして、裁判例におきましては、懲役刑選択のもの、罰金刑選択のものということで、事案に応じて判断されておるわけでございまして、そこに特段顕著な、御指摘のような傾向は、この資料からは私は見出せないというふうに考えております。
○中谷委員 そこで、罰金の法定多額が四倍になった場合に、最高裁の刑事局長にお尋ねをしたいと思いますが、見通しでありますけれども、罰金を選択をして短期自由刑を選択をしないというふうな状況は、傾向としてあらわれてくるでしょうか。 前回、刑のあり方について、寛刑化の傾向にあるということは御答弁があり、私もその点については、長期的に見て寛刑化の傾向にあるということは当然のことであると認めておりまするけれども、この罰金が四倍に上がったということ、そのことが、懲役刑を選択せずに罰金の刑を科するというような傾向に転化をしていく、そういう傾向が顕著になってくる、こういうことは考えられますか、考えられませんか。
○牧最高裁判所長官代理者 個々的の事案の判断がどうなりますか、これはわかりませんけれども、長期的に見ます限り、先ほど申し上げましたように、量刑が寛刑化の傾向にあるということが看取されるように思いますので、罰金刑がある程度上がってくるということは、いわゆる短期自由刑の弊害が考えられるというような場合に、罰金に量刑するというようなことの可能性は、そこで出てくるように思います。
○中谷委員 いまの御答弁は、寛刑化の傾向は一般にある、そうしてそのような傾向の中において、罰金の多額が上昇したということは、そういう可能性を含んでいる、こういうふうな御答弁としてお伺いすればよろしいわけですね。
○牧最高裁判所長官代理者 全体的に見ますと、そういうことが考えられるのではなかろうかということでございます。
○中谷委員 じゃ、終わります。
○松澤委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。 —————————————
○松澤委員長 引き続き討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。 採決いたします。 本案に賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕
○松澤委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。 おはかりいたします。 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○松澤委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。 ————————————— 〔報告書は附録掲載〕 —————————————
○松澤委員長 次回は、来たる二十六日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。 午前十一時四十五分散会