法務委員会 第22号
- 発言数
- 119 件
- 登壇者
- 7 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1972/05/12
会議録
○松澤委員長 これより会議を開きます。 おはかりいたします。 本日、最高裁判所矢口人事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○松澤委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。 ————◇—————
○松澤委員長 内閣提出、罰金等臨時措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。 質疑の申し出がありますので、これを許します。土井たか子君。
○土井委員 それでは、罰金等臨時措置法の一部を改正する法律案について質問を始めたいと思います。 まず、今回のこの改正によりまして、刑法の各条にございます罰金刑の額の中身が変わるということになるわけですが、そこで、まずお尋ねしたいのは、刑法改正それ自身の問題をどういうふうにお考えになっていらっしゃるか。現に、刑法の改正草案についてはいろいろな作業が進みつつあるわけでありますから、その間の経過も含めてひとつお聞かせをいただきたいと思うのです。
○辻政府委員 刑法の全面改正の問題でございますが、これは昭和三十八年に、法務大臣から法制審議会に対しまして、刑法を全面改正する必要があるかどうかについて御意見を承りたいという旨の諮問が出されたわけでございます。そういたしまして、その際、改正刑法準備草案というものをかねてから法務省において準備をいたしておったわけでございますが、それを参考案として添付いたしまして、刑法改正について意見を求めたわけでございます。 自来、三十八年から今日まで、法制審議会におきましては刑法全面改正のために、特に刑事法特別部会という部会を設けまして、鋭意審議を重ねてまいりました。この間、この刑事法特別部会におきましては、昨年の十一月末までに部会を三十回開いたわけでございます。そして、なおこの部会に五つの小委員会を設けまして、その各小委員会はおのおの約百五十回にわたる審議を終えまして、それを部会に上げてまいりまして、部会の審議は約三十回ということになったわけでございまして、その結果、昨年の十一月二十九日に、刑事法特別部会におきましては刑法に全面改正を加える必要がある。その内容は、この部会で決定した改正刑法草案によることが適当であるという旨の決定をいたしたわけでございます。 そういたしまして、これは法制審議会の刑事法特別部会でございますから、この特別部会長は当省の特別顧問であられる小野清一郎博士でございますが、小野特別部会長が、その手続といたしまして、法制審議会にこの刑事法特別部会の決定を報告されまして、法制審議会の総会において、この刑事法特別部会の決定を審議するという段階になっておるわけでございます。そして、この法制審議会の総会におきましては、去る四月の上旬に、刑法のこの問題を審議する第一回の総会を開いたわけでございます。 大体、今後の見通しといたしましては、法制審議会の総会におきましては、本年一ぱいあるいは来年の三月ごろまでに、この刑事法特別部会から報告されました改正刑法草案についての審議が終わりまして、法制審議会としての正式の答申が法務大臣になされるというような見通しになっておるわけでございます。 法制審議会の手続は、およそ来年の三月末ごろには終わるということになりまして、以後、政府においてこの答申をどういうふうに処理するかという問題、それからさらに、これを国会に提案いたすことに相なろうと思うわけでございますが、その後は、国会の御審議をお願いするという段階になろう、かようなことになっております。
○土井委員 その法制審議会の作業の中で、罰金に関係のある部分が、いままでのところどういうふうに取り扱われて、改正の必要があるかなしかというふうなことについてどういうふうな御意見がございましたでしょうか、その辺、少し述べていただきたいと思います。
○辻政府委員 この刑法の全面改正の作業におきましては、ただいま申し上げました改正刑法草案ということになっておるわけでございますが、これにおきましては、罰金はすべて一万円以上、科料は五百円以上一万円未満というふうに、一律にまずその罰金と科料の額を定めておりまして、その範囲内でそれぞれ各罪につきまして一々検討をいたしておりまして、それぞれの罰金刑または科料刑というものを案として定めておるわけでございます。
○土井委員 そうしますと、いまお話しになりましたその作業の中で問題にされております案と、今回のこの罰金等臨時措置法の一部を改正する法律案で問題にされております罰金、さらに科料についての中身とは、どういう関係にございますか。
○辻政府委員 今回のこの臨時措置法の改正案は、ただいま御指摘のように、刑法及び暴力行為等処罰ニ関スル法律、並びに経済関係罰則ノ整備ニ関スル法律、この三つに定めます罪につきましては、一律にこの罰金法定刑を四倍にするということになっておるわけでございます。しかもまた、罰金は四千円以上、それから科料は二十円以上四千円未満という形になっております。 そういう関係で、おおむねこの改正刑法草案に定めております各罪に関する罰金刑よりも、今回の改正案により四倍いたしました金額は、おおむねの場合は、この改正刑法草案に定められております罪よりも低くなっております。ごく例外的に、今度機械的に四倍いたしました場合に、改正刑法草案よりも高くなるものが少しございます。若干の罪につきましては改正刑法草案よりも高くなっておりますが、大多数のものは、改正刑法草案のほうが高いというようなことになっております。
○土井委員 それでは、それぞれの趣旨でございますね、改正刑法草案のほうで罰金あるいは科料について中身をこのように改正したいという案の根拠、さらに今回の罰金等臨時措置法の一部を改正する場合について、こういうふうに四倍に引き上げたいと言われるところの罰金並びに科料について、これが必要だと言われる根拠、それぞれについてどういうふうになっておりますか、御説明賜わりたいと思います。
○辻政府委員 改正刑法草案におきましては、ただいま申し上げましたように、刑法の改正草案にある各罪の罰金刑について、それぞれ個別的に十分検討してまいったわけでございます。その前提といたしましては、先ほど申しましたように、改正刑法草案においては、罰金というものはすべて一万円以上であるということを前提にしておるわけでございますが、その前提のもとでそれぞれ検討いたしております。それが、やはり慎重な検討の結果でございますから、私はそれに従うべきものと思うのでございますけれども、この刑法の改正作業でございますが、先ほど申し上げましたように、早くて来年ということで、来年に国会に提案されたといたしましても、国会の御審議というものは、これは基礎的法典でございますから、相当の期間国会の御審議があろうと思うわけでございます。それにさらに、この刑法の全面改正ができますと、関連法制の改正作業が要るわけでございます。そういうことがいろいろございまして、この刑法の全面改正が施行されるという時期は、なお相当の時日を要することになろうと思うのでございます。 ところで、そういたしますと、現在の刑法をはじめ罰金刑の状況を見てまいりますと、経済事情の非常な変動によりまして、現在の刑法並びに罰金等臨時措置法に定めております罰金刑では、これはある特殊の罪につきましては、法定刑の上のほうに実際の裁判によって言い渡されます罰金刑が集中してまいりまして、法定刑の頭打ちという現象が出てきておるわけでございます。こういう事態が近年急速に出てまいりまして、これをほっておきますと、罰金としての機能が非常に失われるというような面も出てまいりますので、今回は、刑法の全面改正が行なわれますまでの間の暫定的な措置といたしまして、とりあえず現在の罰金等臨時措置法を手直しさしていただきまして、特に刑法に定める罪につきましては、その法定刑を 一律四倍ということにして、刑法の全面改正が行なわれますまでの暫定的な措置をとらしていただきたいということでございまして、今回のこの法案はそういう意味から、現行刑法及び罰金等臨時措置法に定めております罰金を、刑法に関するものに限り一律に四倍ということで、今回の改正案は経済事情の変動によって一律に四倍、個々的な罪の評価というものにつきましては、現在法制審議会でやっておるわけでございますので、その点の評価はいたさなかったわけでございます。 そういうことで、あくまで暫定的なつなぎの法律改正であるというふうに御理解を賜わりたいと思うわけでございます。
○土井委員 暫定的なつなぎの法律改正であるというふうに理解をすべきではなかろうかという御発言でございますが、そこで、少しお尋ねしたいことがございます。 いま、法定額が近年だんだん頭打ちになってきたのでということをおっしゃいまして、そして、やはり経済変動に伴って法定額を上げていかなければならない、緊急を要する問題のために今度は改正をした、改正に迫られたというような御発言でございましたが、近年とおっしゃいますが、いつごろから、多額についてきめられている法定額のところが頭打ちというふうに認識されてまいったのでございましょう。
○辻政府委員 これは、大体昭和四十三年ごろからであろうと思います。
○土井委員 昭和四十三年ころからでございますね。それは具体的に言うとどういうふうな状況になってきたか、御説明賜わることができれば、ひとついただきたいと思います。
○辻政府委員 刑法犯について申しますと、まず大ざっぱな概数を申し上げてまいりますと、昭和三十年には、刑法犯により略式命令で罰金を科せられた者の総数が九万二百九十九人でございましたが、そのうちで、一万円以上五万円以下の罰金に処せられた者は、そのわずか九%の八千百三十五人でございましたけれども、昭和四十四年に同じように見てまいりますと、四十四年では略式命令で罰金に処せられた者が、総数五十万八千六百三十二人ございますが、そのうちの七四、一%に当たる三十七万六千八百七十二人が一万円以上五万円以下の罰金に処せられておるというような概数が出るわけでございまして、そこで、刑法犯につきましては、実際の裁判額が非常にふえているということがまずわかるわけでございます。 次に、具体的に申し上げますと、お手元に配付いたしております法律案関係資料がございますが、これの四の科刑関係統計というのがございます。この科刑関係統計の二五ページ、通しページの六九ページでございますが、そこに略式事件と書いてございますページがございます。前ページの六八ページに傷害罪の科刑の状況が書いてあるわけでございます。傷害罪は、現在罰金の最高の法定額は二万五千円でございます。この罰金のうちで、大部分は略式命令で裁判が言い渡されるわけでございますが、この六九ページの資料を見ていただきますと、四十三年というところに一万円以上の者が二万五千三百十九という数字がございます。それから四十四年は二万四千七百三十というところで、ここで黒い二重の線がしてございますが、大体この罰金額によりましてどの程度のばらつきがあるかというものを見てまいりますと、四十三年という欄に至りますと、一万円以上というものがたいへん多い数字になってきておる。四十年においてはまだ五千円以上というほうが多いという数字が出ておるわけでございます。 傷害についてはかような状況でございますし、特に見ていただきたいのは、通しページ七二ページ、科刑関係統計の分の三一ページでございますが、業務上過失致死ということになりますと、業務上過失致死罪の罰金の最高額は五万円でございますが、このうち、この犯罪につきましては相当前から、三十五年ぐらいから、三万円以上五万円以下というところに二重の線がございますが、この三万円以上五万円以下というものの科刑がもう大多数になってしまっておるということで、法定刑の上限にこれが集中いたしておるということがおわかり願えると思うのでございます。 さらに、ちょっと前に戻りますが、同じ資料の一五ページでございます。一五ページには住居侵入罪につきましての科刑の実情がございます。これはもともと法定刑が現在非常に低いのでございまして、二千五百円以下の罰金でございますが、そういう関係もありまして、これはもうすでに昭和三十年ごろから非常に高いほうに集中しておるというのが、一五ページの資料で御理解賜われるんじゃなかろうかと存じます。大体、例を申し上げましたが、かような状況になっております。 ただいま、先生のほうにお手元に資料がございませんでした関係で、もう一度先ほどの二五ページを見ていただきますと、傷害につきまして、たいへん顕著な例が、かような状況に相なっているわけでございます。
○土井委員 そうしますと、いまの御説明のとおりでいくと、これは大体昭和三十年以降についての資料に従っての御説明だったわけですが、四十三年からこの方激増している。激増しているということばはおかしいですね。多額について、法定額が頭打ちというふうなことが認識できるような現象が出てきたということを理解していいわけでございますね。 さてそこで、いまの罰金等臨時措置法の問題なんですが、これの一条を見ますと、ここで「当分の間、」の特例だということが書いてございますね。それで私、特に四十三年以降、多額の中身の引き上げが必要であるというふうに考えられてきたという由来なんかを考えますと、やっぱりこれは高度経済成長政策そのものと無関係じゃなかろうと思うのです。どうも超大型予算によるところの景気回復だけが、いままでの施策の中では考えられてきたんじゃなかろうか。どうも相変わらず高度成長とGNP至上主義というものを固執しているというきらいもある。したがって、今後もこういうふうな経済政策そのものが根本的に手直しをされない限りは、物価の上昇と貨幣価値の下落というものは避けられないだろうというふうに一応考えておいていいと思うのです。 そうなりますと、刑法各条にある何万円以下とか何千円以下とかいうふうな罰金刑の中身についても、この罰金等臨時措置法で引き上げるというシステムは、額によるところの罰金刑制度をとる限りにおいて、永久に続くと見なければならないのじゃなかろうか。 そこで、二十三年にこの法律が制定されて、二十四年から施行されて今日まで手直しかなかったわけですから、その間だんだん物価は上昇する、それから経済の変動、貨幣価値の下落がずんずん具体的に露骨になってくるというふうな状況の中での今回の手直しですから、常識的に考えても、もう非常に罰金の中身、科料の中身がばかげている、ナンセンスだ。あるいはこれは罰金刑の刑罰としての真剣味というものを維持する結果から考えていっても、もはや手直しをしなければどうにもならないという時点に来ていると考えての改正だと私たちは思うのです。そうしますと、この意味からしましても、額による罰金刑制度というものは、どういうふうに考えていいかという問題が出てこようかと思うのですよ。 そこで一つお伺いしたいのは、いま問題にしているこの本法の、改正案でない本法のほうの第一条にいう「当分の間、」の特例ということじゃなくて、額によるところの罰金刑制度ということを考えていくと、一条そのものは今度の改正の対象になっておりませんけれども、一条そのものについても、やはりこれは、臨時の措置であるとか当分の間の措置であるとか、あるいは刑法が改正されるまでの時間かせぎであるとかというふうな意味でなくて、この点は当分の特例だということのワクをはずして、これは物価の変動とか経済の変動とかいうふうなことに従って罰金刑の中身、科料の中身というものは、時宜に適して考えていくのである、そのための法律そのものなのだというふうな手直しが必要ではなかったかと思われるのですが、その点いかがですか。
○辻政府委員 御指摘のとおり、経済の伸展ということと金額による罰金刑等の基本的な問題につきましては、御指摘のような問題があることは、基本的に当然理解できるわけでございます。 ところで、この罰金刑の場合は、金額で定めております従来からの罰金刑、これは法定刑といたしまして、相当の余裕を持ってこの法定刑がつくられておるというのが一つの本質でございまして、多少の経済変動というものについてはたえられるということになっておるわけでございます。それで、明治四十年の刑法が昭和二十年まではそのままできたわけでございますが、終戦後のたいへんな経済の変動によりまして、とうていこの金額ではだめだということで、罰金等臨時措置法ができたわけでございます。 今回、これが昭和二十三年から二十数年を経まして、また間尺に合わなくなったということで、これの手直しをお願いをいたしておるわけでございますので、そうこれは経済変動に直ちに鋭敏に、法定刑のワクが相当ゆとりを持って定められておりますから、そういう関係で、直ちにこれが経済変動の影響を受けるというものではないという本質がございます。しかしながら、それは基本的にはやはり金額で定めておる以上は、どうしても変動というものの影響を受けるという基本観念には変わりはないわけでございますから、それを一挙に解決してしまいますためには、罰金というものは金額で定めずに、何か日額で定めていくというような考え方も十分できるわけでございます。 そういう考え方もあり、現にそういう立法例もあるわけでございまして、そういう問題も刑法の全面改正におきましては議論をされたわけでございます。しかしながら、やはりこれは日本の法制としては難点があろうということで、この罰金というものは金額で考えようという基本的な考えに立ちまして、しかも、その法定刑というものに相当の余裕を持って定めておけば、これは経済の大激変でもない限りは、相当の期間はこれでたえ得るというふうに考えて、今回の一部改正案をお願いいたしたようなわけでございます。
○土井委員 刑法にいうところの罰金なり科料という問題になると、これは犯罪に対する刑罰の一種ですね一刑罰としての効果あらしめる中身として罰金を考えた場合に、その罰金の金額が十分に犯罪に対するところの刑罰的意味を持たないと、存在意義がないだろうと私は思うのです。そういう点からしますと、やはりこれはあくまで額に上る罰金刑というものを考えていかないと、罰金が刑罰として存在している意義そのものがないということになってまいります。 これは二十三年に制定されて、二十四年に施行されて以後、物価の変動というのはかなりあって、そして先ほどおっしゃったとおり、四十三年からずいぶん多額の法定刑に対しても頭打ちになってきたという現象があるのに、今日までこれに対しての手直しというものがなされなかったというこの理由、それはどういうところにあると考えていいですか。
○辻政府委員 これは、ただいま申し上げましたように、法定刑そのものに相当のゆとりがございましたから、経済変動にたえ得た。ところが、一般的に申しまして、昭和四十三年ごろからは、裁判の科刑の実情を見てまいりますと、法定刑の上限に科刑が集まってきたということで、これでは現行の制度では罰金刑としての十分な効果を発揮できない。しかも、刑法の全面改正というものにつきましての将来の見通しを考えました場合に、近々一年や二年でこれが法律になるということはまず考えられませんので、その間のつなぎとして、とりあえずこの罰金等臨時措置法を改正さしていただきたい、そのように考えておるわけでございます。
○土井委員 かなりの幅があったとおっしゃるのですが、そこで、それじゃ先ほどの四十三年以後について、上限が頭打ちになってきたという現象はどのように考えていいでしょうか。
○辻政府委員 これは、罰金刑の本質にかかわる問題でございますが、結局、罰金刑といいますのは犯人から金銭を剥奪することによって、犯人に金銭的な痛い目を感じさせるということであろうと思います。その場合に、その犯人の収入あるいは資産というものとの関連におきまして、痛いというふうに感ずる金額は幾らであろうかということを、各罪についての法定刑の範囲できめていかなければならぬという場合に、資産とか収入というものが非常に向上してまいっておる段階におきまして、裁判においては実際の科刑を上げていかなければならぬ。ところが、法律のワクのほうは一定の限度があるということで、ワクの上のほうに全部科刑が集まっていく、こういう現象になった。これが、先ほど来申し上げております、科刑の頭打ちの現象の原因であろうと考えるわけでございます。
○土井委員 そこで、そういう現象があるからこそお尋ねしたいのです。むしろ御意見を聞かせていただきたいと申し上げなければいけないかもしれませんが、いま行為者に対して、つまり犯罪者に対して痛い目を見せるということが、処罰の目的だということも加味しての御答弁だったわけですが、確かにそれはそうなんですが、罰金刑というものは、その量定を考える場合には、犠牲の平等原則というものがやはりあろうと思うのです。それからしますと、行為者の経済状況というものを裁判官は考慮しなければいけないのじゃないでしょうか。情状酌量あるいは状況に対しての判断というふうな場合に、行為者の経済状況というものを考慮しなければいけないのじゃないでしょうか。そうしますと、行為者の支払い能力による限界づけというものが一応出てくるわけですから、多額を法定刑として定めなくても、これは別に刑法上の罪刑法定主義に矛盾しないと思うのです。つまり、最低額を問題にして多額を問題にしなくとも、刑法にいうところの罪刑法定主義に矛盾するものじゃないというふうに考えていいんじゃないでしょうか。そういう点からしますと、今回のこの臨時措置法の手直しについても、上限を問題にしないで下限について問題にするというふうな、一つの立法政策上のあり方というものがあってもよかったんじゃなかろうか。 現実に見てみますと、罰金については、刑法の各則規定で何円以下の罰金というふうに規定して、ただ総則規定では何円以上というふうな定め方がある。科料については、これは各則規定ではほとんど額の定めがないわけでしょう。総則では、何円以上何円未満というふうなきめ方をしているわけです。だから、これは刑法それ自身の問題ということになってきますけれども、先ほど一番最初にお尋ねしたとおりに、刑法の改正草案がだんだん作業として進んでいる段階も踏まえまして、この臨時措置法についての改正というものが多大な影響を与えるだろうと私は思うわけですから、今回、上限を問題にしないで下限を問題にするという思い切ったあり方というものがあってよかったのではなかろうかとも考えられるわけです。 そういう点についての見解というものが、今度の改正案を問題にされる際にあったかなかったか、またあったとすれば、それがどの程度、どういうふうな意味においてなされたかという点を聞かせていただきたいと思います。
○辻政府委員 御指摘の趣旨を私、十分理解できたかどうか、やや疑問なんでございますが、この罰金の多額というものは、これは各則の法定刑として定められておるわけでございまして、その多額というものが何円以下の罰金ということで、常にそこは最高限度というものがきめられておるわけでございます。これは各罪について定められておるわけでございまして、その多額を取っ払うという御趣旨であるとするならば、それは罪刑法定主義に反することになろうと思います。ある罪を犯した場合に、最高幾らの罰金に処せられるかわからぬということになるわけです。そういう御趣旨ではなくて、各則の最高の額はそのままにしておいて、この総則のほうの額を、多額を問題にするなという御趣旨であるといたしますならば、これは今回、この罰金というものは四千円以上でございますということで、むしろ寡額、低いほうの金額を問題にしたということに相なるわけでございます。 私、御質問の趣旨を十分理解できたかどうかちょっと疑問でございますが、一応お答え申し上げます。
○土井委員 それじゃいまの御答弁で、少し私もかみ砕いて質問の切りかえをいたしますが、多額というものを法定刑として定めることが罪刑法定主義の要求するところですか。必ず多額を法定刑として定めなければならないという鉄則が、罪刑法定主義のたてまえとしてはあるのでしょうか。その辺です。
○辻政府委員 現在のわが国の法制におきましては、罰金というものを金額で定めておるわけでございますから、そういたしますと、この多額を各罪について定めておくということは、罪刑法定主義からいって欠くべからざることであろうと思います。 ただ、先ほど私が理論の問題としてちょっと申し上げましたけれども、罰金を日割りで言い渡すというような考え方が理論としてはございます。たとえば、ある罪を犯しました場合に、その犯人が、先ほど御指摘のように、たいへん資産の多い人もあろうし、資産の少ない人もあろうと思います。その場合に、同じ金額の罰金刑を言い渡しました場合には、痛さが違うわけであります。金持ちに対する一万円と、貧乏人に対する一万円とは違うわけでありますから、その意味におきましては罰金の効果が違っている。これはおかしいではないかということになりました場合には、一律に罰金十日に処すということにしまして、金持ちについては、この十日というものは、おまえの場合は一日幾らであるという割合で計算する。貧乏人の場合には、十日とやっておいて、君の場合は一日幾らとみなすというふうな形の裁判をするということになりますと、この経済状態の差というものが、痛さという関係においては緩和されてくるわけであります。そういう法制をとるということになりますと、この何日に処すというのが、やはり罪刑法定主義としてきめておかなければならないということになるわけで、金額制で考えました場合には、どうしても最高額というものをきめておかないと、罪刑法定主義に反するであろうと思うのであります。
○土井委員 まずはいまおっしゃったとおりだと思うのです。額によるところの罰金刑制度では、結論として何円の罰金刑というものが言い渡されるわけですから、その中身が、あらかじめ上限はこうだ、下限はこうだとはっきりすれば、この額は、これは本来の罪刑法定主義の要求するところに合致するかもしれません。 しかし、そこでもう一度それでは確かめてみたいことがあります。いまそういうふうな額というものが問題にされているのは、責任に応じて額の中身が勘案されるのか、あるいは経済状況によって額の中身が勘案されるのか、つまり、責任主義でいくのか経済主義でいくのか、この点はっきりせられていないと実は思うのです。これは意見はいろいろあるし、賛否両論あるし、また学界でもいろいろな学説というものが併存しているわけですね。ですから、その点を考えてまいりますと、額によるところの罰金刑制度が続く限り、その額というものは責任に応じて高いまたは低い、あるいは経済状況によって高いまたは低い、いずれのものであるか。これは論争はどこまでも尽きないだろうと思うのですが、このいずれの立場をとるかによりまして、罪刑法定主義の要求するところの基本をどこに置くかという側面も違ってくると実は私は思うのです。いまの責任主義か経済主義か、その点は端的に割り切って言うわけにはいかないかもしれませんが、ひとつどういうふうな考え方を持っていらっしゃるかということをお聞かせくださいませんか。
○辻政府委員 これは犯罪に対して刑事責任を問うということでございますから、刑罰というものは、刑事責任というものの軽重によってきまってくるという大原則があろうと思います。そういう観点で、刑法典なら刑法典は一律に、こういう犯罪についてはこれだけの刑罰に処するということで、抽象的に平均人の立場ということで、この刑事責任に対して幾らの刑罰を科するということは、むしろその責任に応じてきめておるということであろうと思います。具体的にその定めておる範囲内において、当該具体的な犯人に対して幾らの刑事責任を負わすかという場合に、特に罰金刑の場合におきましては、裁判官が具体的な刑の量定をなさいます場合には、その具体的な状況に応じて、その経済状態というようなものも、罰金刑の本質との関係においてお考えになっているということであろうと思います。
○土井委員 それはいまおっしゃったところではちょっとよくわからないのですが、責任主義か経済主義かという側面から言うと、いまの罪刑法定主義の要求として、必ず上限というものを法文上明記する必要があるとお考えになる点、それはどういうふうな関連性といいますか、理由づけというものがその点で説明できるかという問題、それについて私はお伺いしているわけです。
○辻政府委員 ちょっと私、御質問の趣旨をはっきりと理解していないかもしれませんが、要するに、一定の犯罪を犯しました場合に罰金刑に処せられるという場合に、幾らの罰金刑に処せられるのだ、最高幾らの罰金、それ以上の罰金には処せられることがないという一つの保障が要るわけであろうと思います。 〔委員長退席、小島委員長代理着席〕 これが罪刑法定主義のやはり基本原則でございますから、犯罪を犯した場合に幾らの罰金に処せられるかわからぬということであれば、これはやはり犯罪を犯す者の人権と申しますか、保障という点において非常に欠くるところがある。何といたしましても最低限度の保障という意味におきまして、これ以上のものには処せられないということは必要であろうと考えます。
○土井委員 そうしますと、それは立法政策論になりますが、いまの刑法の条文の中からしますと、なるほどおっしゃるとおりでありまして、責任主義に立っておるのか経済主義に立っておるのか、その辺がどうもあいまいもことしております。しかし近来、特に二十世紀に入ってからこちらの刑罰思想というものが、だんだん変遷してきておりますし、刑罰そのものに対するものの考え方というのも、日本においては、やはり戦前、戦中と戦後を比較しますと、憲法そのものの取り扱いからしても、これはもう十分明白な事実として認識しておかなければならないことだろうと思うのです。 だから、そういう点から考えてまいりますと、これはいかがですか。いまこの資本主義経済のもとで、平均的財産などというふうなものは考えられないわけですね。平均的財産というのは出せと言われたって出すことは非常にむずかしいと思います。これに対してはいろいろな計算方法があるかと思いますけれども、客観的にどのような平均的財産というふうなものを基準に置いて、そしていろいろ経済的負担というふうなものを問題にしつつ、この罰金、科料というふうなものを量定していくかというふうな問題は、非常に一律に論じられにくい問題だと思うのです。 だから、そういう点から見ますと、やはり罰金額というふうなものについて、行為者の経済状況をしんしゃくするということを、法文上明記する必要というものがやはりあるんじゃないか。これは先ほどおっしゃったように、幾ら取られるかわからないというふうなことを、被疑者やあるいは犯罪者、当事者が心配するという種をなくすことのためにも必要である。また当然、そういう規定を置かないでおいても、現在の憲法上の、たとえば憲法三十一条の条文であるとか、十三条の条文であるとか等々から考えてまいりました限りでも、私は、やはり裁判官は裁判官としての立場で考える際に、犠牲の平等の原則というものを考えなければいけない。つまり、経済負担にたえ得るかどうかという経済能力の点を、被疑者の立場、あるいは被告の立場、あるいは犯罪者の立場に立って考えるという態度がやはり要求されておりますね。だから、そういう点からすると、別にこのことについては明文の規定を置く必要がないと言ってもいいかもしれませんけれども、ことさらそういう心配があるために、立法政策上刑法なんかの総則の中に、行為者の経済状況のしんしゃくというものを明文で規定していいんじゃないか。 だから、そういうこともあわせて考えていきますと、やはりこれは罰金あるいは科料について、上限を問題にしないで下限を問題にしていくということのほうが、むしろ今回、第一条について、改正案じゃなく本法の第一条について、手を加えなかったというふうなことの理屈が通ると思うのです。だから本法において、特に「当分の間、」の特例ということが第一条にそのまま据え置かれているわけですから、だから「当分の間、」の特例というふうなことから考えていきますと、またまたこれはこの法律についての手直しというのが、いずれの日にかあるということを予期しておかなければならない。つまり暫定措置であって、先ほどのおっしゃったとおりの意味しか持たないということになりましょうから……。 だから、そういうふうな点から見ますと、今度の抜本改正といわれておる刑法の改正草案の中に、先ほどお聞かせいただきましたとおりですけれども、国会審議で長時間かかるというようなかね合いも考えて、今回のこの法律の改正案というふうなことも意味もあるというふうな御答弁でありましたから、その点をひとつあわせて考えて、刑法のほうの総則について手を加える場合に、今回この問題をずっと押していけば、責任主義か経済主義かということについて、なおかつ論争が巻き起こるだろうから、そういうことに対して雌雄をはっきりさせなければいけないんじゃないか。その雌雄をはっきりさせるという点からいうと、やはり今後あるべき罰金刑のあり方あるいは科料の考え方というものについて、刑法の中身で一歩前進的にはっきり打ち出すということからいえば、いま申し上げたようなことが考えられていいのではなかろうかというふうにも思うわけです。そこのところを、ひとつ御意見がございましたら賜わりたいと思います。
○辻政府委員 罰金刑につきまして、犯人の資産、収入との関係において適正な科刑が行なわれなければならないという点は、もう御指摘のとおりでございます。現在、裁判実務におきましても、法定刑の範囲においてそういう運用がなされておるわけでございますけれども、これをまたあまり極端に考えてまいりますと、これはまたある意味で平等に反する。金持ちには高い罰金、貧乏な人には低い罰金、同じ犯罪を犯してもそういう結果になる。また極端にそこを考えてまいりますと、ある意味の弊害も出てくるだろうと思うのであります。その辺は、現在裁判の実情におきましては、それぞれ具体的な事案に応じて、法定刑の範囲において適正な科刑がなされておると思うのでございます。 なお、いま御指摘の刑事責任の基本的なお考え方の問題でございますが、これにつきましては、先ほど来申し上げておりますように、この法制審議会の特別部会で一応の結論を出しました改正刑法草案におきましては、御指摘の趣旨のような規定が置かれております。これは第四十八条におきまして、この刑の適用の原則を書いておるわけでございまして、四十八条の一項では、「刑は、犯人の責任に応じて量定しなければならない。」ということで、一つの責任主義をはっきりとしておりまして、二項におきまして、「刑の適用にあたっては、犯人の年齢、性格、経歴及び環境、犯罪の動機、方法、結果及び社会的影響、犯罪後における犯人の態度その他の事情を考慮し、犯罪の抑制及び犯人の改善更生に役立つことを目的としなければならない。」というように、刑の適用についての一般的な考え方を鮮明にいたしておるわけでございます。この点は、刑法の基本的な、根本的な改正の場合におきましては、当然解決される命題であろうというふうに考えておるわけでございます。
○土井委員 そういうことであれば、多額を法定刑として定めなくても、罪刑法定主義に違反しないという理論も出てくるのじゃありませんか。
○辻政府委員 それは先ほど来申し上げておりますように、犯罪を犯して罰金に処せられる場合に、幾らの罰金に処せられるかわからぬということは、やはり罪刑法定主義の原則に反する。やはり犯罪を犯した場合には、最高幾らまでの罰金である、それ以上の罰金には処せられないということは、一つの刑罰法規としては必要な保障であろうというふうに考えるわけでございます。
○土井委員 これは、あくまでやはり人権尊重という立場に立って問題を展開していかないと、罪刑法定主義の趣旨というのは生きてこないと思うのですが、その人権尊重主義という立場から、上限というものを明確にするという積極的な保障の意味というのがございますか。
○辻政府委員 これは罰金の場合ももちろんでございますが、一般の自由刑について考えました場合には、もうその問題はきわめてきびしい姿をあらわしてくるだろうと思うのでございます。犯罪を犯した場合に、最高幾らの懲役に処せられるかわからないということであれば、これは罪刑法定主義に反すること著しいものがございまして、これは基本的人権の保障もこれではとうてい考えられない。罰金刑の場合におきましても、事柄の本質は同じでございまして、ある犯罪を犯した場合に、これこれ以下の罰金しか処せられないという保障は、これはやはり絶対に必要なことであろうと思うわけでございます。
○土井委員 確かにおっしゃるとおり、この罰金、科料以外の刑罰について、たとえば懲役、禁錮等々などについては、上限をはっきりさせておくというのは、人権尊重の初歩的な問題だと思うのですね。また、懲役だとか禁錮については、各人についてこれは基盤は一つですけれども、こういう経済問題になってまいりますと、経済能力に応じて考えなければならないという問題が出てまいりますから、罰金、科料は基盤が一つとはいかないだろうと思うのですね。だから、その辺をここで再三再四私が繰り返して言うように、やはり犠牲の平等主義の原則というものが非常に強力に要求される問題になってくるだろうと思うのです。つまり、この平等主義の原則というものを貫く場合に、お金持ちと貧乏人を同額の罰金を科することによって全うできるかというと、それはそうじゃない。これはだれでもがすぐ即断できるところですね。 だから、そういうところは、言うまでもなく裁判官の自由裁量に属する問題ということになってこようと思います。その自由裁量に対する押えさえきかしていけばいいんじゃないでしょうか。つまり、裁判官が行為者の経済状況というものを考慮する場合に、的確にその行為者についての支払い能力の限界というものを探知して、これを裁量の上で生かすということを配慮すれば、またそのことに対しての保障があれば、それでいいのじゃなかろうかと私は思うのです。 だから、その点から、繰り返し言うように刑法の総則、この中に、行為者の経済状況についてしんしゃくするということの明文の規定を置くという立法政策上の要求が出てくるわけでありまして、そのことをやれば、これは裁量の上で裁判官がそれぞれの場合に応じて、その当事者についての経済状況と支払い能力について考えるという条件がやはり保障されるということになるのじゃないか。とすれば、これは繰り返し繰り返し同じことばっかり言っていて時間の浪費かもしれませんけれども、罪刑法定主義の立場から考えていくと、別にこの罰金とか科料、つまり経済問題について問題にしていく場合に、この上限をはっきり認めなければ罪刑法定主義にもとると、なおかつそれに固執して言わなければならないことであるかどうかという議論が、必ずわいてこようと思うのです。その点を再度お伺いして、先に行きたいと思います。
○辻政府委員 先ほども申し上げましたように、今回の改正刑法草案におきましては、その第四十八条におきまして、「刑の適用にあたっては、犯人の年齢、性格、経歴及び環境」云々「事情を考慮し、」ということで、環境ということばの中に、この本人の資産状態、収入状態というものも当然入るという趣旨で、いまの御趣旨に沿うような一般的原則規定もあるわけでございます。 それはそれといたしまして、ただいまのお考えを徹底さしていきますならば、罰金刑、その量刑につきましては、先ほど私が申し上げましたような日数罰金制というものの採用の御議論になろうかと思うのでございます。日数罰金制というものを採用いたしました場合には、この形は、ただいま御指摘のような問題は、非常に正確に理論的には解決できるわけでございますけれども、実際上の面におきまして、たいへんむずかしい問題が出てくるということで、この日数罰金制の問題は、刑法の全面改正におきましても結局は採用されなかった。結局、この四十八条にございますように、刑の適用にあたっての一般的な考え方を鮮明にしておくということで、ここでその財産状態、収入状態をも考えるということを鮮明にしておくという態度になっておるわけでございます。
○中谷委員 質問の問題が変わるようでありますので、土井委員の質問に関連して、資料要求を私のほうからさせていただきたいと思います。 要するに、今度の法案の改正は、法定刑の上限のほうへ量刑が集中してきた、こういうことでございますね。そうしますと、先ほど御引用になりました科刑関係統計、たとえば適例として傷害をおあげになって、二四ページの傷害というところなんですが、その傷害の罰金最高額が二万五千円でございますね。これは法定刑。それで、これは一万円以上ということ、その次の欄が五万円以上ということでこの統計ができておるわけでございますね。ですから、上限に片寄ってきたということについて、その関係をしさいに吟味をするならば、一万円、一万五千円、二万円、二万五千円というのは一体どういうふうになっておるのかというのが、やはり私は分析されなければならないだろうと思うのです。そういうふうに読めるのでしょうか、この統計は。 それと、いわゆる量刑そのものの現在持っている刑事政策的な意味というものとの関係において、自由刑、すなわち懲役刑との関連をやはり統計上見なければいけないのじゃないかと私は思うのです。そこでお願いしたいのは、私の質問が次の次の次ぐらいに予定されておるそうでありますが、ひとつそれまでに、土井委員のほうから質問されるかもしれませんが、私のほうは、傷害でいえば一万円という欄のところから、それから暴行でいえば、暴行も一万円から、一万五千円、二万円、二万五千円という分け方、このあたりが私は知りたいわけですよ。上限に寄ってきているのですから、これは一万円、一万五千円、二万円、二万五千円というように私は分けていただきたいし、それから、懲役四カ月の科刑があった、六カ月の科刑があった、八カ月、十カ月、一年と、そのあたりの自由刑、懲役刑との関係の一覧表をつくっていただきたい。なお、求刑がどういうふうにあって、それが罰金に変わっていったというあたりもつくっていただきたい。 要するに、最初は懲役求刑があったけれども罰金のほうに転化していくという判決も、かなり私はあるのじゃないかと思うのです。だからそういう表、上限に片寄ってきたというような刑事政策全体の流れの中から、懲役刑を科するよりも罰金のほうがいいだろうというので、昔なら懲役にするところを罰金にするのだから、かなり高い罰金にする。経済変動だけじゃないと思うので、そのあたりを、私はやはり知りたいと思うのですが、それらについては、十日ぐらいかければそういう資料はつくっていただけますか。要するに、一万円と五万円の表を、もう少し全体にわたって精密にしていただきたいという点が一つ。 それから、一番知りたいのは、法定刑の最高限、上限きちきちの罰金刑になったものが、一体ずっと次々、それぞれについて幾らあるかという点、それと、罪質は違いますけれども、懲役刑あるいは禁錮刑の一覧表、それから、求刑が禁錮及び懲役刑を求刑したところ罰金に変わったというもの、このあたりをやはり知らしていただくことによって質疑はさらに深まる、こういうふうに思うわけなんです。それをどの程度で御準備いただけるか、ひとつお答えいただきたいと思います。
○辻政府委員 ただいま御要求の資料でございますが、裁判所の統計で出ておる限りにおきまして、十分御要望に沿うように罰金額の細分化、これはまず統計に出ておる区分の限りにおいてはできるわけでございます。 それから、自由刑との関係、これの裁判統計に出ておる刑期との関係においては十分できるわけでございます。ただ、求刑との関係になりますと、これは具体的な事案全部に当たっていかないとわからないということになると思いますので、求刑との関連につきましては相当の日時を要するであろう。求刑の点を除きましては、できる限りの資料はお出しできると思います。
○中谷委員 量刑の実証的研究というようなことは、法務総合研究所あるいは司法研修所等でずいぶん努力して御研究になっておられると思うのですが、そうすると、検察官はこの程度の量刑がいいだろうということで求刑される、それについて裁判官がこういう科刑をされた、いわゆるそのあたりの点は、一つの刑法学というか、あるいは刑事実務の面から見て興味のある点だろうと思うのです。そして、検察官はいつも求刑表と、それから科刑があればそれについてそういう表をつくって、結局それは統計として上へ上がってきているわけでございますね。どんな事件にどれだけ求刑したけれども、どれだけ判決があった、それがずっと上に上がってくる、そして統計として集約しておられるわけでしょう。そういうのは二週間程度あればつくっていただけるわけでしょうか。
○辻政府委員 求刑と判決との関係の資料は、これは結びつきがうまくつくのかどうか、ちょっと疑念を持っておるわけでございます。この点については、求刑との関連の資料につきましては、急ぎ検討さしていただきたいと思います。
○中谷委員 かなりむずかしいことかもしれませんけれども、どの程度できるかどうか、またあと御連絡をいただきたいと思います。いずれにいたしましても、資料要求ということですから、委員長もよろしくお願いいたします。
○土井委員 それじゃ、いまの資料要求については、私のほうからもお願いするといたしまして、先に進みたいのです。 今度は、罰金、科料という刑法九条の刑罰についての措置であって、刑法政策上いうところの過料については、今度は何ら問題になっていないわけですね。御承知のとおりに、わが国の過料制度というのは一般総則的な規定がございませんで、きわめてこれは不統一で、かつ、たいへんむずかしい、複雑だということが考えられてよかろうと思うのです。 しかし、確かに一般論としては、過料も法令に違反した者に対するところの制裁だということでありますから、そういう点からしますと、違反行為とのつり合いから考えましても、制裁を実効あらしめるためには、財産刑である罰金、科料と同じように、貨幣価値の下落に合わせてつり上げる必要が出てくるんじゃなかろうかと思われるのですが、この点についてどういうふうにお考えになっていらっしゃるか、ちょっとお聞かせいただきます。
○辻政府委員 御指摘のとおり、過料は刑罰ではございませんから、行政罰でございますから、今回の改正法案とは関係がないわけでございます。 しかしながら、過料も行政罰として、ある意味では罰金、科料と似た性格を持っておるわけでございます。そういう点におきまして、かつ過料につきまして、ただいま御指摘のようにたいへん——たいへんと言うとなんでございますが、ばらつきがある、統一を欠いておるという面があるのみならず、また、経済変動等の関係において改定を要する点があろうかと思いますが、これは、それぞれ関係省庁におきまして、適当な時期に所要の改正措置がとられるものと私どもは期待いたしておるわけでございます。
○土井委員 その額について、過料の中身というものを改正するという必要があると同時に、いかがでしょう、現行の過料制度というものはどうも複雑怪奇ですね。刑罰と行政罰との理論的な区別に合致していないという部分もあるじゃありませんか。ですから、これが行政罰なんだ、刑罰ではないのであるというふうな趣旨を過料の中に明確にすることのためにも、現行の過料制度というものを整理することが必要だというふうな、学識経験者の意見というものがやはりこのところあるわけですが、そういうことについて、これはちょっと傍論めいた問題になってくるかもしれませんが、どういうふうにお考えになっておりますか。
○辻政府委員 これは私の所管ではございませんけれども、確かに過料制度につきましては、いろいろ検討すべき問題があろうかと思います。この点につきましては、当省におきましては民事局において、またいろいろ検討することと考えております。
○土井委員 それじゃ、ひとつその御検討というふうなことをお願いすることとして、これはやはり全体の法体系というものの整備という点からすると、これは外国にこういう制度というものはないようでありますから、日本においてやはり法体系の整備というものをはっきりさせる上からすると、一つのきめ手というものはこの辺にあるのじゃなかろうかと思います。だから、そういう点での作業について、やはり明確に刑罰と行政罰との区別をけじめをつけるというふうな趣旨で作業に取り組んでいただいて、その作業も促進していただきたいということを申し上げておきます。 さて次に、これは洗いざらい出していくと幾らでも問題点があるかもしれませんが、一つは、現行法では、刑訴法二百八十四条の中でいっております「五千円以下の罰金」、二百八十五条の二項にいうところの「五千円を超える罰金」を、一律にそれぞれ「五万円以下の罰金」、「五万円を超える罰金」としていたのを、今度は刑訴法の三百九十条を加えた上に、本法の三条一項各号に掲げる罪については二十万円というふうに四倍にしているわけですね。そのほかの罪については二万円というふうに分けて規定しているわけですね。ここに一つの問題点が出てきはせぬかと思うのです。 端的に申しますと、刑事訴訟法自身がこのように区別しておりません。その点を、別法で区別をしていくというところに問題が出てくるのじゃないか。特に技術的と一般的に見られている本法で、基本法であるところの刑事訴訟法についての実質的な改正ということを、これによって行なうという意味を持ってまいりますから、そういう点からしますと、二百八十五条の場合は、被告人に一そう不利益になるという側面もあったりいたしまして、法律によるところの法律の改正だからいいじゃないかという形式論一点ばりでは、まかない切れない問題が私は出てくるだろうと思うのです。しかし、まあこれは臨時措置の法律というふうに考えてもらいたいというふうな御発言もあったりいたしますけれども、本法の場合を考えますと、刑訴法でいっている中身を本法によって実質的改正を行なうということにゆだねていってはたしていいのかどうか、この点についてはどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
○辻政府委員 刑事訴訟法二百八十四条、二百八十五条及び三百九十条に関しますただいまの御指摘でございますが、これは現在のところ臨時措置法におきまして、御指摘のとおり、刑事訴訟法の二百八十四条や二百八十五条にございます「五千円以下の罰金」とあるのは、刑法等の三法については「五万円以下の罰金」にするというふうに詰みかえております。これが今回は、刑法のほうは法定刑の上限が四倍になるわけでございますから、その五万円を四倍いたしまして、二十万円ということにいたしておるわけでございます。 ところで、刑法等の三法以外のいわゆる特別法につきましては、現行法は何ら規定がないわけでございます。それで五千円ということになるわけでございます。ところで、五千円ということでまいったわけでございますが、現行の罰金等臨時措置法の場合におきましては、これら特別法につきましては、罰金の多額が二千円に満たないものは二千円にするという改正をいたしたわけでございまして、その場合に、刑事訴訟法のほうは五千円ということに規定がございますから、特別法につきましては、現行罰金等臨時措置法の場合には何らそこに問題が生じなかったわけでございます。刑訴のワクまでこなかったわけでございます。刑事訴訟法のほうは五千円と、こう書いてあります。特別法のほうは、多額が二千円に満たない罰金は、多額を二千円にするというだけの改正しかしておりませんので、この点を全然考慮する必要がなかったわけでございます。ところが、今回はこの罰金等臨時措置法の改正によりまして、刑法等三法以外の特別法につきましては、罰金の多額が八千円に満たないものについては八千円にするということにいたしておりますので、そういたしますと、この刑事訴訟法の五千円という点をそのままにいたしておきますと、むしろ被告人のほうに不利益になるわけでございます。いままで出頭しなくてもよかった者が、今度は出頭しなければならないという結果になるわけでございまして、そういう観点から、今回はこの五千円というものにつきまして、これを四倍して二万円ということにいたしたわけでございます。その結果、むしろ現在よりも特別法につきましては、出頭義務の関係におきましては被告のほうに有利になるわけでございます。出頭しなくていい場合がなおふえてくる、そのような趣旨でございます。ここを手当てをいたしませんと、一定の特別法の被告についてたいへんきびしい結果が出てぐるということで、この四倍という数字をここに持ってまいりまして、今回はこれを二万円にするということでございます。
○土井委員 その点はわかりました。そうすると、二百八十五条の場合については、被告人に対して不利益にならないようにという配慮のもとに、いまの二万円という額が勘案されたわけですね。 さて、その次に附則の問題になるのですが、附則の問題の中で、本法の四条が「条例の罪を除く。」というふうに定めているところから、多額四千円未満の罰金を定めました条例の罰則規定は、本法二条の一項との関係で、本法が施行されるとともに失効しますね。
○辻政府委員 ただいま御指摘の附則の第二項というのがございまして、附則の第二項で、「条例の罰則でこの法律の施行の際現に効力を有するものについては、改正後の第二条の規定にかかわらず、この法律の施行の日から一年を経過するまでは、なお従前の例による。」という規定がございます。で、今回の改正法の二条におきまして、罰金と呼ぶものは「四千円以上とする。」こういう一般規定が出たわけでございます。そういたしますと、現在条例で四千円に満たない罰金を定めておりますものにつきましては、この第二条と抵触するわけでございますが、直ちに失効さすということは、地方自治といいますか、条例の性格からいってよろしくございませんので、ここで附則の二項におきまして、「改正後の第二条の規定にかかわらず、この法律の施行の日から一年を経過するまでは、なお従前の例による。」といたしまして、この一年間の間に各地方自治体におきまして、もし条例で四千円未満の罰金を定めておるものがございましたならば、条例の改正をお願いいたしたい、かような趣旨でこの二項の規定ができておるわけでございます。
○土井委員 それでは、そもそもこの四条で条例の罪というものを除外した理由というのはどの辺にあるのか、最初にその辺の確認からまず始めたいと思います。
○辻政府委員 条例に定める罪につきましては、これはやはり地方自治の本旨に基づきまして、地方自治体のほうでそれぞれきめていただくということで、この四条は一律に、「その多額が八千円に満たないときはこれを八千円とし、その寡額が四千円に満たないときはこれを四千円とする。」こういうふうに法律措置をいたしておりますが、そういうふうに各地方自治体の条例について、一律にこの法律でかぶせるということは、地方自治の本旨に反する、これはそれぞれ地方自治体においてきめていただきたいということで、この四条は特に条例の罪を除いたわけであります。そういたしておきまして、この附則の二項におきまして、一年の間に各地方自治体において、それぞれこの法律の趣旨に沿うように改正をお願いしたい、こういうことでございます。
○土井委員 地方自治のたてまえというのを、いまるる御説明になったわけですが、そういう立場を貫くのなら、むしろこれは一年のそういう期間経過があった後も、従前の例によるということでいいのじゃなかろうか。別にここで一年の猶予期間を設けて条例の改正、つまり条例の手直しを期待するということの必要はなかろうというふうにも考えられるわけです。本来地方自治の本旨ということを尊重すればするほど、いまそういう立場からすると、各自治体の自主性にゆだねてこの問題は考えていくべきだ。だから本法の改正案によって、各自治体が向こう一年間の猶予期間の間に、条例そのものに対する手直しをせよと命ずること自身が、やはり地方自治の本旨にもとるという側面もありはしないかというふうな議論がおそらく出てくるだろうと思う。私もまたそれに対しては一まつの疑惑を持ちます。その点で、だから先ほどからお尋ねをしてみたわけです。 罰金刑制度そのものは、たとえば自由刑とかあるいは過料なんかとのかね合いから考えて、その関連性は、一本の原則にはっきりと貫かれておるわけではありませんね。だから、そこはいろいろ、罰金刑制度というものが一本化されていくことについて、この地方自治体の条例についてはワクをはずして、自主性というものを認めれば、そういう点で調整がとれないというふうな意見が必ず出てくるとは思いますけれども、しかし、本来のいまの刑罰の中身を見ていった場合に、罰金刑制度そのものは、ほかの自由刑とのかね合いからすると、制度一本化ができているかというと、そうはなかなか言えない点も出てくる。また過料とのかね合いから考えると、一本の原則に貫かれているわけでもない。しかも、この罰金刑制度の一本化ができないということについてのマイナス点を、それでもなおかつ固持して言われるならば、その問題と地方自治の本旨に反するという問題と、どっちが大事かというふうな、やはり比較考量の問題も出てくると思うのです。むしろ忍ばなければならないのは、罰金刑制度の一本化のほうじゃなかろうか。地方自治の本旨というものを貫けば貫くほど、人権尊重であるとか住民自治というものについては保障されることになるわけでありますから、そういう点から考えていくと、特に最近は公害政策なんがをめぐります条例と法律とのかね合いというものが、ずいぶん問題にされているやさきでありますから、そういう点からしまして、この附則の中身にあるところの一年の猶予期間というふうなものを置いて、そしてこの一年の猶予期間の結果、条例に対しての改正、手直しというものを期待しているということの意味というのが、私はちょっと中途はんぱなように思うわけです。いっそのことこの点は思い切って、条例については各地方自治体にゆだねる、地方自治体に自主的に判断させるという方向に踏み切るべきじゃなかったか。この点についてどういうふうにお考えでいらっしゃいますか。
○辻政府委員 附則二項の問題につきまして、すべての条例について、地方自治体でそれを改正していただきたいというような考えを持っているわけじゃございません。これは、今回の法律案で第二条におきまして、罰金というものは四千円以上でありますということを規定いたしたわけでございますから、地方自治体の条例で四千円未満の罰金を定めておりますものだけにつきまして問題が起きるわけでございます。それはもしこの法律施行後に、条例におきましてそのまま手当てをしないと、この法律が施行された場合に、条例で四千円未満の罰金を定めております場合には、これは法律に違反した条例になるわけでございます。この点は、もちろん御承知のとおり地方自治の場合におきましても、憲法の九十四条で、「法律の範圍内で條例を制定することができる。」ということでございますし、地方自治法の十四条におきましても、当然そういうことを前提にして、地方自治体は、「その条例中に、条例に違反した者に対し、二年以下の懲役若しくは禁錮、十万円以下の罰金、拘留、科料又は没収の刑を科する旨の規定を設けることができる。」という規定になっておるわけでございまして、国の法律制度との関係におきまして、この条例の罰金の問題も考えていかなければならぬということに相なるわけでございます。 〔小島委員長代理退席、委員長着席〕 そういう関係で、四千円未満の罰金を定めておる条例だけは、この附則の規定がなければ、本法施行とともに失効してしまう。法律違反の条例になりますので失効する。だから、それは地方自治体のほうで失効してもよろしいということで、何ら手当てをおとりにならないという場合には、その部分が法律違反の条例で失効するだけでございます。 しかし、すぐにそれが失効してはお困りであろうということで、この附則の二項は、四千円未満の罰金を定めておる条例につきましても、一年間だけは有効でございますということをいっているにすぎないのでございます。地方自治体が何もおやりにならなければ、これは一年間はそのままの状態である、一年後に四千円未満の罰金を定めておる条例というものは、その部分だけが失効する、こういう考え方でございます。
○土井委員 罰金と科料というものは、やはり行為自身が違うからこそ罰金、科料の区別というものがあると思うのです。そこで、どうしてもその行為に対しては、条例等で罰金に該当する行為だという認識があって、しかもなおかつ罰金額を四千円以上にしなければならないということに対して拘束されると、その自治体自身の事情からして、実情にそぐわないと自治体の長が考えたときには、一体どういうふうに措置すればいいわけですか。
○辻政府委員 これは、四千円未満の科料にしていただけばいいわけでございます。
○土井委員 本来、科料と罰金は中身、意味が違うのでございましょう。
○辻政府委員 私の申しておりますのは、当然のことでございますが、とが料のほうの科料でございます。罰金と科料とは財産刑という本質においては同じでございます。金額においてそこに一つの差が設けられておるということでございますから、刑罰という意味におきましては、しかも財産刑という意味におきましては同じでございますから、もしただいまのように地方自治体においてお考えであるということでありますれば、これは金額だけの問題でございますから、罰金を科料に改めてもらっていいと私は考えております。
○土井委員 少し飛躍するかもしれませんが、本来罰金刑で臨むべき行為に対して科料で臨むということは、これは構成要件について中身の変革をもたらすということになりはしませんか。
○辻政府委員 ただいまのように、これは国といたしましては、この法律で、財産刑のうちで四千円以上のものは罰金という刑に当たる、そういう犯罪であるというふうに考えるわけでございます。 ところで、地方自治体の条例で、それは国がそう考えてもそのワク内には考えないということで、依然として四千円未満の罰金に当たるというふうに御判断をなさって、そのままにしておかれましても、条例の罰金といえども国の法律制度にいう罰金でございますから、その考え方は通らない。国としては、この法律ができれば、財産刑のうち四千円以上の財産刑に当たるものは、これは罰金という評価をいたしますということを、この法律で明らかにするわけでございますから、そのことを前提にして地方自治体はお考え願うわけでございます。金額を同じにしておきたいということであれば、国の考え方が変わったわけでございますから、地方自治体のほうでは、これはもう罰金という刑罰には当たらない、科料に当たる犯罪であるというふうに理解をお変え願って、金額をそのままにしていただくということは可能である、かように申し上げたわけであります。
○土井委員 確認させておいていただきたいと思うのですが、罰金と科料というのは金額の差だけが問題なんですか。
○辻政府委員 これは、金額の差及びそれからくる刑罰としてのウエートと申しますか、比重というものは当然あると思います。
○土井委員 そうしますと、逆に言えば、罰金に当たる罪、科料に当たる罪、罪についての構成要件の中身は違うということにもなってまいりますか。
○辻政府委員 罰金でありましょうと、科料でありましょうと刑罰でございますから、刑罰を科します場合には、それに応じた構成要件を定めるということでございます。
○土井委員 そうしますと、再度その辺について確かめさせていただきますが、罰金と科料というものは、金額だけの差というふうに認識してよろしいかどうかという問題、これはこれ以上聞きませんから、一言お答えいただきたい。
○辻政府委員 財産刑という面におきましては、これは同じ性格であろうと思います。ただ、そこに金額の区分がございますから、その財産刑のうちで重いものは罰金刑であり、軽いものは科料である。そういたしますと、科料に処せられる犯罪というものは、犯罪の性格として比較的刑事責任が軽いということに相なろうと思います。
○土井委員 それでは、まだ法案についてもお尋ねしたいことがありますけれども、法務大臣先ほどからお見えでいらっしゃいますし、少し法案にも関係をする、罰金の問題にも関係することでありまして、いまどうしてもお尋ねしたいことがありますので、法務大臣にお答えを願いたいわけです。 伝えられるところによりますと、きょう閣議決定で、いわゆる沖繩恩赦というものが具体的に公表されるやに聞きました。それについての政令がどういうふうに考えられつつあるか、また考えられたかという点について、ひとつお尋ねしたいと思います。
○前尾国務大臣 ちょっと御質問を聞きませんでしたので、恐縮ですがもう一度お願いします。
○土井委員 きょう政府のほうの閣議決定で、いわゆる沖繩恩赦の中身が具体的にきめられたかどうかという点を、まずお伺いします。
○前尾国務大臣 実は、きょうは閣議決定をいたしておりません。
○土井委員 それじゃ、やはりそのことについて、具体的にお考えを進められるのは法務大臣であるはずですから、法務大臣としては、これは巷間にこのことについて、もうすでに恩赦の中身はこういうことじゃないか、ああいうことじゃないかというふうないろいろな論議がわいておりますし、またそのことに対して、いろいろ心配をしたりあるいは期待をかけたりする向きも必要以上にあるように思われますので、この節、法務大臣としてどういうふうな腹案をお持ちであるか。特に、この恩赦についてはいろいろな中身はあろうと考えます。たとえば、大赦それから特赦、減刑、復権等々あるはずでございますが、どういうふろにいま沖繩についての恩赦について考えを進められつつあるか、その点ひとつお聞かせいただきたいと思うのです。
○前尾国務大臣 御承知のように、恩赦というのは事前にいろいろなことが出てくることは、恩赦の本質上私は正しいことではないと思っております。 したがいまして、いろいろ恩赦制度について一般的な意見は、いままで法務委員会でもずいぶん申し上げたわけでありますが、具体的に沖繩恩赦についてどういう態度をとるとか、あるいはどういう措置を考えているとか、そういうことについては一切申し上げておりません。したがって、いろいろ新聞紙上にも出ておりますが、これは全部推測記事でありまして、私としましては一切いままで申し上げておりませんし、現段階におきましても同様で、申し上げるべき問題ではないということでありますので、その点御了承願いたいと思います。
○土井委員 しかし、巷間いろいろこのことに対して、取りざたがこれほど騒がしくなってまいりますと、一体いつごろこの恩赦について具体的な内容が決定されるかというのは、一般の関心事だと思うのです。また中身がどういうふうなものになりつつあるかというのは、一般の関心事だと思うのです。そこでまず、いつごろそれでは閣議決定ということが具体化されるか、その辺ひとつお聞かせください。
○前尾国務大臣 明日決定するつもりでおります。そして発表されますのは、あくまでやはり五月十五日であるというふうにお考え願いたいと思います。
○土井委員 その基準日は五月十五日でありますね。この前、例の明治百年でのいろいろな記念恩赦があったわけです。あの明治百年での記念恩赦ということを例にあげますと、一つどうしてもお伺いしておきたい点が出てくるのです。 それは、例の明治百年の場合、十月二十三日というものが基準日になるはずの祝賀日でありました。ところが、それから一定の期間、これは基準日後三カ月以内に、罰金を納めていなくても、三カ月以内に刑が確定して罰金を納めれば、その対象になるというふうなことが具体的になされた。これは恩赦として非常に特徴が一つあったわけであります。したがいまして、実質的には、この三カ月以内に罰金を納めた者はすべて復権に浴するというふうなことが具体的になりまして、基準日以降三カ月以内、当時係争中の、いま一番問題点として出ております選挙違反の容疑者についても、救済措置がこれで講じられる、実質上刑の確定前の者まで復権させるというふうな恩赦が、具体的になされたということでいろいろ取りざたされたのは、御承知のとおりであります。 そこで今回、これは五月十五日から向こう何カ月というものを限って、その基準日以降何カ月以内に、いろいろ係争中の事件についてまでも対象にされるというふうな恩赦のあり方を考えていらっしゃるかどうか。私は、そういうことは一切考えていただきたくないと思うわけでありますが、そういうことについてどのように考えていらっしゃるかという点を、少しお伺いしたいと思うのです。
○前尾国務大臣 今回、それをどうするかという問題は、ただいま申し上げましたように、何ごともこれは申し上げるわけにまいりません。 ただ、前回においてそういう制度がとられましたについては、やはり公平の原則というような点から、いろいろ問題があるということによりましてそういうような措置がとられたのだと私、承知いたしておりますが、今回それをとるかとらぬかにつきましては、まだ決定いたしておりません。
○松澤委員長 関連として、中谷鉄也君に質問を許します。
○中谷委員 いまの点ですけれども、十月二十三日が記念日で、十一月一日を基準日にされた。基準日であるべき日が基準日にならずに、十一月一日になった。この点はずいぶん論議を集中した点ですが、それで十一月一日から、先ほど言った食い込みあるいは猶予期間を設けたということです。 そこで、猶予期間を設けることが公平の原則からということですが、猶予期間を設けるべきだという考え方と設けるべきではないという考え方、これは二つあると思うのです。これはどういうふうな両論があるのか、これは保護局長のほうからひとつお答えになっていただきたいと思います。 それと、猶予期間についても、国連恩赦の場合などについては、三カ月ではなしに六カ月というふうな猶予期間も設けられたことがあったわけですから、猶予期間が非常に長いということは、一体刑事政策上どういうふうな悪い面を持つのだろうか。法務大臣は、猶予期間、食い込み期間というのが、刑事政策の観点から、公平の原則というのも考え方の一つとしてあるということですが、ただしかし、猶予期間を設けることが、土井委員がいま発言されたように非常に問題がある。その問題というのは、法務当局としてはどういうふうに問題点があるとお考えになっているか。この点をひとつ、これはずいぶん検討されている点でありますから、お答えをいただきたいと思います。
○笛吹政府委員 明治百年記念恩赦が、昭和四十三年十一月一日を基準日として行なわれたのでございますが、これはその明治百年の記念の式典が十月二十三日……(中谷委員「それはいいんだ」と呼ぶ)明治百年記念恩赦のときの復権令の第一条の第二項で、基準日の前日までに確定した者について、基準日後二カ月以内に執行の終わったものは、執行の翌日資格を回復する。それから第三項において、基準日の前日までに略式命令とかその他、一言で言えば、第一審判決の言い渡しがあった者については、基準日後確定し、三カ月以内に執行が終わったものについては資格を回復する、こういう条項になっているわけです。これは明治百年のときに初めて出たものでもなく、その前の昭和三十四年四月十日に出された復権令においても同様のことがやられておるわけでございます。明治百年はそれを踏襲したのであろうと思いますけれども、そういういきさつでございます。 これについて、まあこれはいけないんだという論議もいろいろあるようでございますけれども、法的な解釈からいきますと、こういうことはいけないんだという解釈も出ないということで、これは別に恩赦法そのものに違反するものでもない、こういう解釈を私たちはとっているわけでございます。
○中谷委員 関連質問ですから簡単にしておきますが、これは保護局長は御担当の局長だから間違いないと思うのですけれども、基準日の前日までに罰金刑の確定した者に対して、基準日以後であっても、二カ月以内に刑の執行を終わったものを復権の対象にした。そのあとちょっと聞き取りにくかったのですが、さらに係争中のものでも、三カ月以内に刑が確定して罰金を納めればその対象になるということでございますね。そういうことでございましょう。
○笛吹政府委員 係争中と申しますと非常に広いことになるわけでございますけれども、基準日の前日までに略式命令の送達、それから即決裁判の宣告または有罪、無罪もしくは免訴の判決の宣告を受けている者で、基準日の前日までに確定したものについては二カ月以内に、その他のものについては三カ月以内にその執行を終えたものというのが、この三項の大体意味するところでございます。
○中谷委員 そういうふうにお答えいただいて、その点をきょう何とか論議をするつもりはないのです。 そこで、法務大臣が特にお答えになったのは、いま答弁されたことは、公平の原則の立場から見て、そういう措置をすることが許容されるだろうという考え方、そういうことをするかしないかは別として、そういう考え方があるとおっしゃったわけでございますね。したがって、その点をもう一ぺん私、お聞き申し上げたいのですが、公平の原則と言うなら、一体何との比較において公平だというふうにおっしゃられるわけなのか。そして保護局長の御答弁は、そういうものを積極的に認めるとすれば、公平の原則という考え方が導入されるべきでしょうという大臣の御答弁を補足されるべきだと私は思うのです。そういうものを認めないと言うなら、認めるべきでないという意見も従来からずっとあったわけですから、それはどういうふうな意見、考え方に立脚しているものでしょうか。この点については十分御検討になっておられると思うので、この両論をひとつ御説明いただきたい、こういう趣旨であります。
○笛吹政府委員 これがいけないという論も、先ほど申し上げましたように若干あるわけでございます。それは、基準日までに確定したものが恩赦の特典を受けるのだというこの復権令の問題でございますが、そういう解釈をする人が若干ございまして、そういう論を吐いた人があるようでございます。しかし、恩赦法の条文からはそれは出てこないということを申し上げるわけです。
○土井委員 恩赦法の条文に合致しているか違反しているかという論はとかくあろうと思いますが、恩赦法の条文に合致しているというそのことを前提として考えましても、本来恩赦というのは、これは公訴権を消滅させたり、刑の言い渡しの効果というふうなものの全部または一部を失わせるというところにその特徴があるわけですね。したがって、そういう点からいいますと、行政権によって司法権の作用の効果を変更せしめる行為であるというふうに見なければならないと思うのです。 ですから、この恩赦というものが、本来、君主制の国において、君主の政治的な配慮あるいは君主の恩恵的な措置、仁慈として行なわれてきたという沿革があるということ等も加味しまして、このことについて行なう場合には、いまの憲法の統治構造から考えて、この問題を一体どういうふうに取り扱うべきかということは、相当深刻に、相当留意をして考えていただかなければならない問題だと思うんです。 それからしますと、猶予期間というものを設けられるんじゃないかというふうなことに対しての思惑があったのでしょうか、御承知だと思いますが、最近、水戸裁判所にかかっている事件の中に、選挙違反と職務強要罪事件というものが併合審理されていたやさき、それを分離しまして、そして選挙違反だけについては求刑抜きで大急ぎでの判決をやったということが有力新聞にも載りまして、一般の人から、これは恩赦目当てじゃなかろうかということも問題にされつつあります。 こういうふうな事例については、これは裁判官がどうのこうのということ以前に、恩赦それ自身が行政権によって司法権の作用の効果を変更せしめるところに問題があるということを考えれば考えるほど、いまの恩赦法に適合しているからとか、あるいは恩赦法に違反していなければそれでよいとか、法律に対して矛盾しさえしなければそれでよいというふうな感覚以前に、問題としては、この恩赦の取り扱い自身がはたして当を得たものであるかどうか、それから国民の目から考えて疑惑を呼ぶようなものであるかないか、その点の配慮こそ、政治的な配慮として忘れてはならない大事な問題だと私は思うのです。この点については、法務大臣は一体どのようにお考えでいらっしゃいますか。
○前尾国務大臣 恩赦制度が、ただいまお話しのとおり、司法権の決定したものを行政権によって変えるということでありまするから、非常に慎重に考えていかなければならぬことは当然でありますし、さらにまた、恩赦と申しましても政令恩赦もあり、個別恩赦もあり、また情状恩赦もあります。ことに情状恩赦というものをほんとうに活用していくべきでありますが、これもまた裁判権の変更でありますから、それに対して非常に慎重にやる意味において、現在のような恩赦制度の審議会でありますか、中央更生保護審査会につきましても、片手間式の考え方でいったんではいけないんだということで、この委員長だけでありますが、今度常勤にしていただく。これを手始めにして、これを今後重要な機関として、それだけの体制を整えていくべきだというふうに考えております。 ただ、政令恩赦につきましても、これはもちろん君主の恩恵という観念から出てきておりますが、新憲法においても認められておるわけであります。そうして内閣の責任においてこれを活用していく。ことに、国の慶事を国民みんなが相ともに喜び、またそれを機会に、今後罪を犯さないようにという考えのもとに立って再出発する、更生させていくという意味は、それはそれなりの意味を十分持っておるわけであります。 ただ、それがいろいろな点でゆがめられますと、率直に言っていろいろと問題を起こし、あるいはその趣旨に沿わないというようなこともあるわけであります。したがって、そういう問題につきまして、常に恩赦制度について慎重に考えていくということは、当然なされなければならぬことだと思います。この恩赦制度をいかに活用していくか、そういう意味で私も常に考えながら、今度の沖繩恩赦につきましても、恩赦制度の本質にできるだけ沿っていきたいという考えで努力し、検討しておることは申し上げて差しつかえない、かように私は考えております。
○土井委員 活用はけっこうですが、悪用はごめんだと私は思うんです。 そこで、この問題を考えてまいりますと、過去における恩赦の一つのあり方としては、罰金刑というものが基準になったといういきさつがあります。今回もこの恩赦を問題にされる場合に、どういうふうなことを基準に置いて考えられるかというのが、やはり一つのきめどころだと思うのですが、その点はいかがでございましょう。
○笛吹政府委員 過去において罰金が基準になったということは、ちょっとその意味がわからないのでございますが、もう一回詳しくおっしゃっていただけませんか。
○土井委員 それじゃお尋ねしますが、例の明治百年のときの恩赦の中身は、どういうふうなぐあいに具体的にきめられましたか。その点をおっしゃっていただければ、私の言っている意味もおのずとおわかりいただけると思うのです。
○笛吹政府委員 過去の恩赦とおっしゃいましたために、過去全部かと思いまして、ちょっとその点を疑問を抱いたわけでございます。 明治百年の記念の復権令におきましては、第一条に対象を記載しておるわけでございますが、罰金に処せられた者で、その第一条の各号に掲げるもの、第一項では、基準日の前日までにその全部の執行を終わり、第二項では、先ほど申しましたように、基準日の前日までに罰金に処せられ、基準日から二カ月以内に罰金の執行を終わったもの、第三項では、基準日までに第一審判決があった者が、基準日以後三カ月以内に執行を終わったもの、こういう規定をしておるわけでございます。この明治百年記念恩赦の復権令は、全部対象を第一条に掲げる罪によって罰金に処せられた、その罰金だけに制限しておるわけでございます。
○土井委員 恩赦ということになってくると、今回も当然やはり罰金ということも含めての問題ということで、大きく考えていかなければならないということは、大前提としてあるはずでありますが、しかし、罰金であるにしろないにしろすべてが、その行為自身が本来的に反社会性や悪質というふうな問題について、やはり現に罰金、科料というふうなことが問題にされてきているわけですし、また、犯罪構成要件もそれに従って考えられているということからしますと、私は、やはり恩赦そのものが政治的な一つの政策につながる問題であるというふうなことを考えれば考えるほど、いろいろあるところの反社会的な悪質な行為の中でも、わけても私は選挙違反というものは、議会制民主主義を根底からくずしていくところの反社会性とそれから悪質性を持った行為というふうに言い切れると思うのです。特に、この選挙違反の中でも買収というのはその最たるものというふうに考えられなければならぬじゃないかというふうにも思うわけです。 そこで、本来、形式犯というものはともかくとして、いまこの大問題について、どのようにお考えでいらっしゃるかという御所見のほどを、法務大臣から伺っておきたいと思うのです。
○前尾国務大臣 選挙違反につきましては、考え方は次第に変わりつつあると思います。率直に言いまして、終戦以前のことは別にいたしましても、終戦後もかなり国事犯であるという考え方が強かったかと思います。しかし、だんだんそれが変わってきつつあるわけであります。 したがって、将来を考えてみますと、選挙制度というものが一つの固定した制度までいけば、私は刑法に盛り込まれるような犯罪ということに将来はなっていくのじゃなかろうかと思いますが、現段階ではそうなっておりませんし、また現在の刑法草案におきましても、いろいろ議論がありましたが、結論的にはそこまでいかなかったということであります。いわゆる自然犯とは考えられていない。と申しまして、悪質犯罪、これはいかなる犯罪もそうでありますが、選挙違反にしましても非常にあくどいものもありますし、また軽いものもありますし、文書違反もありますし、これはそれぞれによって一がいにというわけにもまいりませんし、まだ選挙法の改正につきましても、いろいろなことが議論されておる段階であります。したがって、これが刑法犯と同じだというところまでいっていないことは事実であります。 したがって、この際においてどういうふうに考えていくのが、現在において最も即応した考え方であるかということについては、私もいろいろ苦心をし考えもしておるところでありますが、まだ、申し上げましたように結論は得ていない、こういうわけであります。
○土井委員 期間の猶予なんというようなものを設けてみたり、罰金さえ納めておれば復権できるというようなことをやすやすと認めるということがないように、しっかりと今度の恩赦の中身についてはやっていただきたい。きょうも参議院のほうで、選挙違反というものを除くというふうなことを問題として取り上げたといういきさつもありますし、これは国民の世論として聞いた場合にも、ごうごうたる世論があるということは、事実として認識していただきたいと思うのです。ひとつこのことを肝に銘じて、いまの恩赦の取り扱いということを法務大臣としてはやっていただきたいと思うのです。 ただ、ここで一つお尋ねしておきたいのは、恩赦法の一部を改正しなければこれはそうはならないと思いますけれども、恩赦のあり方について考える審議会の構成というものを、今後、いままでと同じようなあり方を相変わらず続けていくのではなく、民間人の意見というものもその中に織り込んで、やはり恩赦が本来の生きた恩赦として活用できるような方向に持っていくべきではないかという意見が、非常にこのところ強く出てきております。昭和二十三年にすでに法制審議会で、この恩赦について考えるところの審議会の構成メンバーに、民間人も入れて考えろという答申が出たといういきさつがあるのに、そのことがいままで何ら実行されてまいりませんでした。 そこできょうは、沖繩恩赦ということを目の前にしてお尋ねしたいわけですが、恩赦についての審議というものを、民間人も含めてやるべきであるとお考えであるかどうか、この点ひとつお聞かせいただきたいと思います。
○前尾国務大臣 審議会という問題に二つあると思います。 現在の中央更生保護審査会というものにつきましては、先ほど申し上げましたように、私はこれを強化して、ほんとうに活用していくべきだ、こういうふうに考えております。 ただ、要するにどういう恩赦をやるかについて審議会を設けるということにつきましては、これはいろいろ重要な問題を含んでおるわけでございます。一つには、何と申しましても内閣が責任をもってやる、その責任が、ただ単に審議会の制度に従って、意見が出されたら、これは審議会が責任を負うので、内閣が責任を負わないのかというような、この責任の問題、諮問機関だからいいだろう、こういうお話もありますが、それに従わない諮問機関なら、別に諮問機関というものを設ける必要もないではないかという議論も成り立つわけであります。また、率直に申しまして大赦というような制度、それを大衆的な議論をするということは、大赦の本質から考えまして、それが世間一般にわかるということになりましたら、これは無法律状態にするわけであります。したがって、そういうことは絶対に秘密を保っていかなければならぬ。そういうときに、審議会にかける審議会の制度がいいかどうかということにつきましては、非常な問題点を含んでおるわけであります。 そういうような意味合からいたしますと、軽々にただそれがいいというだけのことを考えるわけにもまいりません。今後いろいろと検討されてしかるべき問題だと私は思っております。
○土井委員 無法律状態になるということをたいへん心配の御様子でありますが、政治家が汚職をやったり選挙違反をやるということは、無法状態の始まりであると私は考えております。ですから、そういうことについての恩恵的な措置をやりながら、無法状態になるという心配をするということは、まさしくこれはおかしな話であります。そういう意味も込めまして、再度、しつこいようでありますけれども、選挙違反に対する取り扱いというものは、慎重にお願いしたいと思います。 さてここで、いまおそらくこの恩赦の中の個別恩赦として取り扱われるであろうという期待をかけて、中央更生保護審査会のほうに、個別恩赦の審査をするためのいろいろな手続をとっている件数がもう相当出ているかと思いますが、どれくらいこの個別恩赦についての手続をとっている問題がいま出ているか、おわかりになるならちょっと教えていただきたいと思います。
○笛吹政府委員 御質問は、個別恩赦で、現在中央更生保護審査会が受理している事件の件数は幾らかということでございますか。
○土井委員 そうです。
○笛吹政府委員 本日現在と申しますと、刻々に動いておりまするから、多少正確を欠くかもしれませんが、約百二十件でございます。
○土井委員 それぞれについては、手続上いろいろ御苦労があると思いますけれども、いま審査は順調に進んでいるわけでありますか。
○笛吹政府委員 百二十件ございますから、順次審査が行なわれております。
○土井委員 その中には、今回初めてではなくて、いままでに二度出したとか、あるいは三度、こういう恩赦のたびに出したというような事件もあるだろうと思うのです。そういうことについてはどういうぐあいになっておりますか、ひとつおわかりになる範囲でけっこうです。
○笛吹政府委員 二度出すという意味が、一度出願して、中央更生保護審査会で審査された結果、不相当であるということになって内閣に申し入れされなかった者が、もう一度出願したという意味かとも思いますが、そういったものも若干ございますが、それが全部で何件あるかということは、いま私、宙のままでは申し上げられないのでありますが、あとで調べてお知らせいたしましょうか。——どういう罪質のものか具体的におわかりでしたら……。
○土井委員 それをいまから言いますが……。
○松澤委員長 発言を求めてからお願いいたします。
○土井委員 全部が全部件数に従って、具体的にどういうふうな中身かというものをお知らせいただくのはたいへんだと思いますから、それをひとつ具体的に言いますと、連合軍が占領していた当時行なわれた裁判で、裁判の手続上、いまから考えると、これは十分審理を尽くしていないと思われる事件がございますね。旧刑訴から新刑訴への移りかわりということもあったりいたしまして、刑事手続上、いまから思うと、憲法上保障しているところの、刑事事件におけるところの人権保障という点からすると、十分そぐわない審理をして、そうして、これは先日参議院のほうでも取り上げられて問題にされましたけれども、中には死刑が確定しているという事件があります。御承知だと思いますが、福岡事件と一般にいわれている事件なんです。こういうふうな問題も含めて、今度はおそらく審査をされるであろうと思いますが、こういうことについては、具体的にはどのような御配慮をなすっているかという点を、ひとつ伺っておきたいと思います。
○笛吹政府委員 その点でございますと、いまここでもわかっておりますから、何件か申し上げます。 六十一国会で取り上げられました、いわゆる再審特例法案の対象になる死刑確定者の恩赦の出願の件数でございます。当時は七件ありましたが、二件既済になりましたので、現在五件かかっております。五件というのは五人でございます。五人のうち四人は、この出願が二度目でございます。それから一人は三度目でございます。これは件数だけ申し上げます。 それから、福岡事件と具体的におっしゃいましたので、この件について申し上げますと、一回目の恩赦の刑務所からの上申で、中央更生保護審査会が受理しましたのが昭和三十四年と三十七年でございます。これがそれぞれ三十六年、三十七年に不相当ということで取り上げられておりません。その後、昭和四十四年に、この二人の者が二回目の出願をして、それが中央更生保護審査会に回ってきて受理されております。それで、当時この二名につきまして、民事事件が福岡の地方裁判所に係属いたしておりまして、そのほうに刑事関係の記録も必要だということで取り寄せられておったわけでございます。御承知のように死刑事件でございますので、相当記録が膨大になり、また中央更生保護審査会においてこういった恩赦の審査をいたしますのは、お説のとおりまことに慎重にいたしております。したがいまして、やはり刑事事件記録を取り寄せて審査しなければ慎重な審査ができないものでございまするので、一回目の審査のときの状況はわかりまするが、二度目の出願によりまするこの受理事件につきましては、実質的には審査できなかった状況でございます。そこで今日まで至っておりまするが、審査は継続しておる形式をとっておりまするが、実質的には進み得なかったということでございまするが、先般、参議院の佐々木議員からお話を聞きますと、民事事件を取り下げたということでございますので、おそらくその刑事記録は、民事の裁判所から検察庁のほうに戻ってくるだろうと思いますので、いずれそういったときには、中央更生保護審査会のほうが記録を取り寄せることになります。この点を早くするようにということを、中央更生保護審査会のほうに申しております。したがいまして、この刑事関係記録が参りますと、この二名の個別恩赦の審査につきましては、また審査が進んでいく、こういう段階でございます。
○土井委員 個別恩赦の審査については、一体何日間くらいを要するとお考えでいらっしゃいますか。
○笛吹政府委員 これは事案によりましていろいろ差がございます。事案が比較的簡単なものはわりあい早く片づきますし、それから複雑であり、また記録が膨大であり、あるいはまた対象者が複数であるということになってまいりますると、やはり相当な日数はかかるのでございまして、相当長い日数がかかっておる事件もございます。
○土井委員 今回の恩赦で個別恩赦として審査をしようということになりますと、この福岡事件の場合なんかは、やはり死刑が確定している事件でもあり、これは記録自身も非常に膨大なものだと私は思うわけで、これは時間がかかるかかからないかという点からすると、しろうと判断ですが、かかるであろうということが即断できるわけでありますね。ですから、これはできる限り迅速に記録を取り寄せていただいて、そうして審査もできる限り迅速にしていただきたいと思うわけですが、その御用意がおありになるかどうかということを、再度はっきりひとつお聞かせいただきたいと思うのです。
○笛吹政府委員 この事件に限らず、すべての事件につきまして、中央更生保護審査会におきましては、能力のある限り迅速に審査を進めておるわけでございますので、本件についても、他の事件と同様に審査を促進するものと考えております。
○土井委員 法務大臣も、ひとつこの点はよろしくお願い申し上げたいと思います。 さて、最高裁の人事局長さんがお見えでいらっしゃいまして、時間のほうが、もうすぐ本会議の予鈴が鳴るということにもなってまいりましたので、私はごく簡単に一つお尋ねしたいことがあります。 もうすでに、これは四月の十一日に参議院の法務委員会のほうで、佐々木静子委員が取り上げられて御質問された事柄でありますが、きょうも私はこの罰金の問題をいろいろ質問させていただいて、やはり裁判官の裁量、裁定というものが非常に重要な意味を持つということも、ここで思わざるを得ないわけです。そうなってまいりますと、裁判官の人員が十分に、各裁判所において審理を迅速に、しかも公正にやるために確保されていなければならないという至上命題があるわけですね。この前私はこの法務委員会で質問させていただいたときにも、これは人事局長さんにお尋ねをしたわけでありますが、司法修習生になった当初は判事志望者であるのが、任官期になってくるとだんだん人員が減る。年々見ていくと、裁判官志望者の数が減少していっているということを取り上げて、どういうふうにお考えかという質問をさせていただいたという経過があります。 そこで、ことしは特にその裁判官の志望の中に三人の女性があったということで、わけてもその三人の女性の一人が、婚約者も同じく判事志望者であったということから、週刊誌で取り上げられて記事にもなり、それから有力新聞の中にもこれが具体的に取り上げられて、女性に対して裁判官の道は狭い、裁判官に対する道はけわしい、特にこれは、男女差別というような具体的な問題として考えられる事例ではなかろうかというふうな向きもあるわけです。 そこでお尋ねしたいのは、これは週刊誌の中に述べてある事柄でありますが、私は週刊誌を読んで、これは先日お答えいただいた人事局長さんの御答弁と照らし合わせて考えてみた場合に、どうもしっくりいかないものがあるものですから、きょうひとつお尋ねして御見解をお聞かせいただきたいわけです。 それは、任官説明会というのがございますね。司法修習生が任官する前に、任官説明会では人事局長さんが出られて、いろいろ説明をなさるわけでありますか。
○矢口最高裁判所長官代理者 任官を希望する方々に集まっていただきまして、そこで御説明をするわけでございます。
○土井委員 ことしの任官期を前にいたしまして、昨年十二月に任官説明会というものが催されたというふうな報道がございますが、それは事実でございますか。
○矢口最高裁判所長官代理者 日時は正確に記憶いたしておりませんが、説明会をいたしました。
○土井委員 その席上、それは表現の具体的な中身というものは、私は現場にいてこの耳で聞いているわけじゃありませんから、はたして的確に一言一句違っていないかどうかということについては疑義がありますが、こういう趣旨のことをおっしゃいましたかどうか、確認さしていただきます。現場の裁判所長が、女性判事補の配属を歓迎しないので云々というふうな表現の御説明があったやに伝えられているのですが、いかがでございますか。
○矢口最高裁判所長官代理者 もうずいぶん前のことでございますので、私、そのようなことを申したかどうか、実は正確な記憶がございません。 ただ、これまでの、これは私と申しますよりも、人事局長が毎年大体その時期に説明に参っておりますので、やはり女性の裁判官に対して、まあ一線の裁判所で必ずしも歓迎されない場合があるという趣旨のことは、申し上げておるかと思います。
○土井委員 それについては、これは別にあらためて一回私は質問をぜひさせていただきたいと思うのですが、ただ一言、これについての御感想だけ伺って、きょうは終わりにしたいと思います。 最近、女性の各職場で結婚定年制や退職制ということが問題にされて、それは労働協約という形であったりあるいは内規であったり、いろいろな形をとっている場合がございますが、これを提訴いたしまして、そうして地裁、高裁、最高裁でそれぞれの事例についての判決が出ております。最高裁で、御承知のとおりに、結婚定年制それ自身は公序良俗に反するという、民法の条文違反ということをはっきり言い切った判決、さらに、そのことは憲法違反とははっきり言い切っておりませんが、憲法十四条の趣旨にもこれはかなわないというふうなことを明らかにした判決が出ております。これは御承知でいらっしゃるはずです。こういうことについてどういうふうにお考えでいらっしゃいますか。
○矢口最高裁判所長官代理者 判例そのものにつきましては、十分その判例の趣旨のとおりに尊重すべきものであるというふうに考えております。 なお、私どもとしましては、女性の裁判官というような意味で、男性の裁判官と差別した扱いをするというようなことは、これは実際に考えていないことを申し上げたいと思います。
○土井委員 この問題についてのさらに質問は、宿題として残しまして、本会議五分前になりましたから、私、これできょうの質問は一応打ち切らせていただきたいと思います。
○松澤委員長 次回は、来たる十六日午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。 午後零時五十五分散会