法務委員会 第14号
- 発言数
- 102 件
- 登壇者
- 12 名
- 会派数
- 5
- 開催日
- 1972/04/12
会議録
○松澤委員長 これより会議を開きます。 この際、おはかりいたします。 外務省機密漏洩問題について、外務委員会に連合審査会開会申し入れをいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○松澤委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。 なお、連合審査会の開会日時は、関係委員長の協議により、明十三日午前十時より開会する予定であります。 ————◇—————
○松澤委員長 高橋英吉君外七名提出、火炎びんの使用等の処罰に関する法律案を議題といたします。 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中谷鉄也君。
○中谷委員 火炎びんの使用等の処罰に関する法律案について質疑をいたしてまいりましたが、本日、当委員会においてすでに質疑された問題点、さらには同僚委員の間において問題意識として指摘されなければならない諸点について、一ないし十四の問題点を本日は質疑を申し上げ、そうして本法案についての疑義を解明しておきたいと思うのであります。 まず、最初にお尋ねをいたしたいと思いますが、質問の第一点は、火炎びん立法の必要性についての法務大臣及び国家公安委員長の御所見いかんというのが質問の第一点であります。刑罰法規については、常にその必要性が強く迫られるものでなければなりませんし、いま一つは、その立法が合理性を持つものでなければならないと思うのであります。この点について両大臣の御答弁をいただきたい。
○前尾国務大臣 御承知のように、最近過激派集団の火炎びん使用が熾烈をきわめまして、不法事犯が続発をしておるわけでございます。また、その使用方法が非常に残酷な方法が用いられまして、警察官並びに一般市民が非常な不安を持っておる次第でありまして、死傷者もずいぶん出ておるというようなことであります。そして、何とかこれを未然に防止することができぬであろうか、あるいはこの不法事犯を効果的に厳重な処罰をすべきだという声が、ちまたにみなぎっておるわけであります。 そういう意味からいたしますと、早急にわれわれとしましてもこの法案の成立を急いでいただかなければならない。率直に申しましたら、われわれも法制審議会を通して出したかったわけでありますが、それではどうもいまのスピードから考えてみますと本国会において成立しないのじゃないか、こう判断いたしましたので、むしろ皆さま方のお力によってぜひこの法案の成立をはかっていただく、そのほうがより妥当ではないか、こう判断いたした次第でありまして、私としましては非常な必要性を感じてまいった次第であります。
○中村国務大臣 御承知のとおり、極左暴力集団は、火炎びんを手製爆弾とともに武装闘争に欠くことのできない武器として高く評価し、各所でこれを使用し、昨年、第二次成田代執行阻止闘争では警察官三名を、それから一一・一四渋谷闘争では警察官一名をそれぞれ焼き殺し、また一一・一九沖繩返還協定阻止闘争では、日比谷公園内の松本楼を全焼させるなどの破壊的な違法行為を繰り返しています。 ちなみに、昭和四十四年以降における火炎びんによる被害は、人的なものとして、警察官四百九十六名、警察官以外の者百八十九名が受傷し、うち警察官四名、警察官以外の者二名が死亡し、また物的には、警察関係施設、建物五十八件、警察車両二十台、警察以外の施設、建物百十一件、車両九十二台が焼かれております。 このように、火炎びんによる被害は著しいものがあり、その性能や危険性において、手製爆弾と異なるところはありません。 現在、わが国においては火炎びん自体を取り締まる法令がなく、凶器準備集合罪や軽犯罪法等の現行法令を適用して取り締まらざるを得ないところでありますが、これらの法令の適用には諸種の制約的な要件があり、火炎びんの製造、所持自体の取り締まりには必ずしも十分に機能を果たし得ず、このため、火炎びんの使用による被害はあとを絶たない現状であります。 もともと火炎びんは、善良な市民生活には何らの効用が認められない凶器そのものであり、その性能、威力からして、一たん使用されるとなると著しい被害をもたらすものであるところから、使用以前の製造、所持の段階をも含めて、火炎びんそのものを規制することが必要であると考えます。
○中谷委員 現行罰則の適用をもってしては、火炎びんを使用する不法事犯に適切に対処し得ない、そういうふうな問題点もはらんでいること、すなわち、火炎びん法が制定されることについての合理的根拠を有する旨の御答弁があったわけであります。 しからば、第三点として質問いたしたいと思うのでありますが、過去における不法事犯について、火炎びん立法があれば適切に処罰の効果をあげられたと見られるような具体的な例があれば説明していただきたい。軽犯罪法でしか処罰できなかったり、あるいは同法でも処罰できなかった事例があれば具体的に述べていただきたい。これが質問の第三点であります。
○富田(朝)政府委員 お答え申し上げます。 単独で火炎びんを自動車に積んで運搬している場合、あるいは火炎びんをアパートの部屋に置いておるというような場合、そういうような場合に、他の者との共謀あるいは共同加害の目的、あるいは殺人等の目的が立証されなければ取り締まりが非常にむずかしいという点は、すでに申し上げておるところでございますが、一、二の例を申し上げたいと思います。 昭和四十七年の二月十五日、本年の二月十五日でございますが、東京水産大学におきまして入学試験等をめぐる反対闘争がございました。大学当局としては入学試験その他学内の秩序を維持したいという目的で、警察のほうにも警備の要請があったわけでございます。その際、大学構内に警察部隊がその目的のために立ち入りをいたしましたところ、学生が中庭にたむろしておりましたが、その付近に竹製のかごに入れました火炎びん十五本を目撃いたしたわけでございますが、これはどうしても共同加害の目的というようなものがその現場におきましてはとれない、また軽犯罪法にいう隠し持った状態でもございませんというような、そういう要件を充足いたしかねましたので検挙できなかった、こういう事例がございます。 それからまた昭和四十六年の十一月十八日、松本楼等の放火事件がございました前日でございますが、都内の大田区千束の路上でパトロールをしておりました自動車警ら隊員が、学生風の男一名が軽トラックを運転しておるという状況を発見いたしまして、一一・一九の前日でもございますので、停止をさせまして職務質問をいたしましたところ、荷台に火炎びんが三十本ほど積んであったわけでございますが、その運転をいたしておりました学生風の男は、住所氏名等また運転免許証等も提示をいたすというような状況でございまして、またその運転免許証が申告をいたしました名前と相違ないという点、またそれが一人であったような状況、それからさらに職務質問で一一・一九等に対しての共同加害の目的というようなものを聞きただしたわけでございますが、そういうものを総合的に判定する資料が、どうしてもその場においては得られなかったというような状況もございまして検挙できなかった、こういう事例がございます。 逆に、軽犯罪法でしか処理できなかったというような事例に当たるかと存じますが、これは昨年の十月の二十一日夕方でございますが、井の頭線の新代田駅におきまして、当日はいわゆる一〇・二一反戦デー闘争ということで極左過激派のいわば武闘が予想をされ、また一部現実にあったわけでございますが、そこで都内各集会場に集合しつつあるそういう学生の姿を発見いたしまして職質をしたわけでございます。これは場所がこういう場所でございましたし、一人であったというような点から、凶器準備集合罪というような適用には至らず、隠し持った、これは買いもの袋の中に隠して入れておったようでございますが、そういうような点もございまして軽犯罪法で検挙した、こういう事例がございます。
○中谷委員 先ほど申し上げましたように、同僚委員との間に十四項目にわたる共通の質問をいたしたいと思いますが、私の質問は以上三点で終わりまして、以下次のような点についてお尋ねをしておきたいと思います。 要するに火炎びん立法、本法案が刑罰を含むものであり、そうしてまぎれもなしに治安立法であることは言うまでもないわけであります。しかしながら、質問者といたしましては火炎びん法案の持っているところの必要性とそしてその合理性についてはこれを了解をする。しかしながら、まぎれもなしにそれが治安立法であるといたしましたならば、そのような治安立法については、いやしくも基本的人権を侵すようなところの捜査や運用がなされては絶対に相ならないということであります。これらの点について、私は警察当局にお尋ねをいたしたいと思います。 現在、これはまさに国をあげて報道の自由、知る権利の問題が論議をされているわけでございますけれども、本日若干の新聞記事を持ってまいりましたので、その新聞記事を引用いたしながら、私はお尋ねをいたしたいと思うのであります。 四十二年一月十七日の朝日新聞に、「本社記者が警棒でなぐられてケガ 機動隊、市民にも警棒」ふるう、こういう記事の報道がなされているわけであります。直ちに朝日新聞は警視総監に抗議をした。いわゆる佐世保事件についての取材に関するところのトラブルであり、そのような事件が発生をいたしておるわけであります。四十五年五月十七日、「カメラ奪い、ける 機動隊が取材陣に乱暴」このような記事が出されているのであります。被害者はサンケイ新聞の報道関係者長田カメラマンであります。さらに、同じく五月二十日の読売新聞の記載によりましても、同じような趣旨の「知る自由の妨害続発」こういう報道がなされているわけであります。四十五年の六月二十六日には、静岡において読売新聞の記者が取材を妨害されて突き飛ばされた、こういう報道がなされております。さらに四十五年の十月二十三日、読売新聞の記者が通信機を奪われたというところの抗議をいたしているのであります。 こういうふうなことは、いわゆる火炎びん法案が法として運用される場合に具体的に適用されるところの集団犯行、集団犯罪現場におけるところの取材において、報道関係者、すなわち自由に取材し、そうしてその取材の結果を国民に知らせる義務を負うところの報道関係者に対して、非常な取材妨害が行なわれているということ、しかもそのことが、私、新聞記事を若干引用いたしましたけれども、あとを断たずに続発をしているという事実、これらの事実は、私はまことに憂慮すべきことだと思うのであります。単に報道関係者のみならず、一般市民に対する、捜査の際におけるところの、あるいは鎮圧の際におけるところの行き過ぎというものも、かねてから指摘をされている点であります。今日までのこれらの続発している事態について、警察当局としてはどのように反省をしておられるか、これは火炎びん法案が成立した場合に、特に私は基本的人権が侵害されてはならない点において、どうしても聞いておきたい点であります。 まず最初に国家公安委員長から、いわゆる知る権利が集団犯罪の取材現場において妨害されたというところの過去の幾多の事実について、どのような御所見をお持ちになるか。さらにまたそれらの問題について警察当局からは、一体こういうふうに報道ざれたそれぞれの事案が、完全に真実が明らかにされて、責任者の所在が明らかになったという事実を私は知らないのであります。これらの問題について、私は警察当局の御見解を承っておきたいと思います。
○富田(朝)政府委員 警察といたしましては、集団暴力犯罪等の取り締まりにあたりましては、冷静にこれに対処をいたし、また彼我双方にけが人等を出さない、こういう基本的な方針に立って対処をしてまいり、またそのような指導につとめておるところでございます。 ただいま御指摘のございました諸事例等につきましては、その一々のあれを私ただいま承知をいたしておりませんけれども、やはり報道の自由ということにつきましては、これは最大限に尊重さるべきものと心得ております。したがいまして、集団暴行行為のありまするような現場におきましても、警察としてはそのような態度で対処をしなければならないと思います。ただ現場では、いろいろ混乱をしておるような際に不測の事態が起こることは、われわれとしてもそのような事態のないように、今後も最大限に注意をしてまいりたいと思います。
○中村国務大臣 中谷委員の御指摘になりました諸事件につきまして、私は詳細に承知をしておるわけではございませんが、御指摘になりました事案は、おおむね混乱の中で起こっておる事態、事件のように考えられるのであります。こういう混乱の中で起こり、対処しました場合には、御指摘になったような事案が起こらないように、特に警察官は冷静さとそれから慎重な態度で対処しなければならないということを強く感ずるのであります。 特に、報道の自由というものは民主国家の基本でございますので、報道関係に携わっておられる人たちのそのむずかしさと、その職分としての報道に対する誠実な努力に対し、これを妨げたり妨害するようなことが結果的に起こらないように、格段の配慮をしながら警察の任務の遂行に当たらせてまいりたいと考えております。
○中谷委員 そういうふうな基本的人権の侵害が行なわれては断じてならないと思う。そうして報道の自由の取材に対する妨害というものが、私が読み上げました一番最後の記事は、いわゆる過激派集団のグループと思われる人が報道関係者に対して取材妨害をして通信機を奪ったという事案ですが、それ以前の私が読み上げたすべての事案というのは、警察が報道関係者に対するところの取材妨害であります。 そこで、重ねて申し上げたいと思うのでありまするけれども、警察ではこういう行為があったときには、必ずそれは誤認だ、誤解だということで弁解をされるわけでありますけれども、そういうことで見のがされていいはずはないわけであります。 では、警備局長に重ねてお尋ねをいたしまするけれども、いま私が申し上げた事案が、どのようなかっこうで処理されたかという点についての御答弁はないようであります。ないようでありまするけれども、 〔委員長退席、大竹委員長代理着席〕 今後この種の事案が起こった場合に、明確に真実を明らかにする、うやむやにしない、基本的人権の侵害があったという申し出があった場合には、集団の警察官によって行なわれたところの犯行であるが、それがだれが責任者かわからないというようなことはしない、必ず責任者についての責任の所在を明確にする、こういうことがただされなければならない。集団犯行現場におけるところの集団鎮圧の場合において、冷静さを欠く中においては、そうして本来基本的な人権を尊重するという感覚が鈍麻している中においては、論理の帰結として基本的人権の侵害が行なわれやすいと思うのです。そこで私はお約束をしていただきたい。今後この種の取材妨害等の事案が起こった場合には必ず明確に、あるいは市民に対する基本的人権の侵害が起こった場合には、これらについては徹底的に真実を究明する、うやむやにしない、このことをお約束をいただきたい。
○富田(朝)政府委員 そのような場合に、被害者から抗議あるいはその他の形で申し出がありました際には、徹底して事態の究明につとめまして、その事態の状況等をその新聞社にも申し上げ、納得をいただいておる場合もございます。御理解をいただいておる場合もございます。また中には、当方の若干の行き過ぎというような点が認められますような場合には、かつても行政処分等をいたしまして部内を戒める、こういうような措置をとってまいっておりますので、ただいま御指摘の点等については、十分御意見として私どもは将来に生かしていきたい、かように考えております。
○中谷委員 要するに、私が指摘をいたしたい点は、私の経験では、これらの問題についての決着が、明確につかないままにうやむやになってしまっていると思うわけです。今後これらの問題を起こさない、かりにそういう問題が起こった場合には、明確に責任の所在を明らかにする努力をする、この点をお約束をいただきたい。
○富田(朝)政府委員 ただいまお答えをいたしましたとおり、その事態を明確にいたしまして、責任あるべき者に対しては責任を十分とり、また将来に向かってそういうことのないように十分指導いたしたい、かように考えます。
○中谷委員 捜査と法規の適用にあたって、乱用があったり拡張解釈があったりしてはならないことは、治安立法にあって、特に刑罰法規にあってそのことが要請されるわけでありますけれども、一体火炎びん法案がひとり歩きをしていった場合に、具体的にはどのような面において一番捜査の面で留意をしなければ、基本的人権の侵害を生ずるおそれがあるでしょうか、この点については、ひとつ警察当局と法務当局のほうから私は御答弁をいただいておきたいと思います。留意点、一番注意しなければならぬ点は、捜査一般ではなしに、火炎びん法の運用にあたって、どの点が特に基本的人権との関係において留意されねばならない点か、この点はいかがでございましょう。
○富田(朝)政府委員 ただいま御指摘のように、この法案が成立をいたしました暁におきましては、私どもとしては、この法案の執行にあたりまして十分にその目的、立法の趣旨、その内容、またそれぞれの各条の定義内容、こうしたところを十分指導、教養をして、御心配のないように対処をいたしたい、かように考えております。
○中谷委員 もう少し私はその点について配慮をし、そうしてそのような配慮に基づいての質問をしたつもりであります。具体的な捜査の面にあたって、火炎びんの使用等の処罰に関する法律は、捜査のどのような場合に一番基本的人権を侵害するようなおそれを生ずる、したがって、その点については特段の配慮が必要だということが言えるでしょうか。その点をお尋ねをしておるわけであります。捜査一般について、捜査が基本的人権を侵してはならない、これはあたりまえのことであります。しかし、この法案については——それぞれの法案についてはそれぞれの留意点があってしかるべきでありますが、この点についてはどうかとお尋ねをしているわけです。一般的のお話を伺うつもりで私は質問をしているわけではございません。その点、明確にお答えをいただきたい。
○富田(朝)政府委員 いろいろそうした状態のもとで、警察官が職務質問等で事情をはっきりさせたいというような際に、たとえば三条二項等に、ただいま案文に記載されておりますように、「火炎びんの製造の用に供する目的で、」ということが明確に規定をされております。また外見的要素といたしましても、客観的に火炎びんと思われるような危険なものである、そういうような点もございます。そういう点を十分に間違いのないようにいたしまして、無関係な方々がそういうものに巻き込まれるということのない、納得のいく執行のしかたをいたしてまいるように、ひとつ強く指導をいたしたいと思います。
○辻政府委員 この法案が法律となりました場合の運用の問題でございますが、私ども検察の立場におきましてまず考えなければならないと思いますのは、第一点はこの三条二項の問題でございます。三条二項は、「火炎びんの製造の用に供する目的で、」という主観的な一つの目的要素を犯罪の構成要件にしておりますが、この点の認定というものは、何といいましても主観的な構成要素でございますので、慎重にしなければならないということが第一点であろうと思います。 第二点は、第二条の使用事犯におきまして、これは生命、身体、財産に危険を生じさせるという具体的な危険犯でございますが、この具体的な危険というものの存否についても、その認定にあたっては十分慎重な考慮をしなければならない、かように考えております。
○中谷委員 法務省刑事局長の御答弁は、私は適切な御答弁だったと思うのですが、警察当局、刑事局長のほうから、私はやはりこの点について御見解を承っておきたいと思います。
○高松政府委員 いま辻局長からの御答弁がございましたが、私も問題はその目的の認定、それをたいへん広く認定するということになると、それは乱用というふうな問題が起こる余地と申しますか、そういうことが考えられ得ることと思います。問題は、この目的の認定について、私どもが厳格にそれを認定してまいる、この点についての慎重な配慮を要するというふうに考えるわけでございます。
○中谷委員 同僚委員からこの点については、大事な点でありますので、重複して質問があろうかと思いますので、最後に私は第四点の質問をして、そうして私の質問を終わりたいと思います。 最近における火炎びんを使用した不法事犯による人的、物的被害状況を説明していただきたい。それが私の最後の質問であります。
○富田(朝)政府委員 昭和四十三年の十月十四日に福島県にございます日本大学の工学部の校舎におきまして、いわゆる校舎放火事件が起こり、その際に初めて火炎びんを手段とした放火が行なわれたわけでございますが、以来今日まで受傷いたしました警察官は四百九十七名、警察官以外の方でけがをされた方は百八十九名、また、負傷されたいま申し上げました数字のうち、死亡されました方は六名でございます。 そのほか物的な損害といたしましては、派出所が五十三件、警察署四件、車両百十二台、大学施設が二十四件、事務所、一般民家二十件、かような数字にのぼっておる次第でございます。
○中谷委員 終わります。
○大竹委員長代理 林君。
○林(孝)委員 第一問は、最近各地に火炎びん等を使用する事件が頻発して起こっているわけでありますけれども、その結果警察官が死傷したり、あるいは民家が焼かれたり、あるいは一般人が負傷する、そういう被害が現実にあるわけです。 そこで、こうした被害を受けた人が現在どのような状況において救済されているのか。たとえば、警察官に対する国家救済はどのようになっておるのか、あるいは一般民間人における被害救済はどのようになっておるのか。また、民家等が焼失した場合の被害者救済、そういう一般人に対しての犯人に対する民事上の損害賠償請求、あるいはそれ以外に何らかの救済措置が講ぜられているか、その点について、最近特に救済の必要があるというわれわれの認識でありますし、また国民の世論でもありますので、その点についてお答え願いたいと思います。
○富田(朝)政府委員 警察官が職務執行中に、火炎びん等の被害で負傷あるいは殉職をいたしました場合の救済の措置並びに民間の一般の方がけがをされた、こういうような場合、あるいは物的な被害があった場合、こういうような場合の救済いかんということでございます。 まず、警察官に対する人的な救済の点から申し上げたいと思いますが、これは国家公務員災害補償法並びに地方公務員災害補償法によりまして、それぞれ措置されるところでございます。これは先生も御案内のとおりと存じますが、この中身は、障害を受けました際の障害補償、負傷で治療するというような障害補償、それからそのために休業をやむなくされておるというような場合の休業補償、さらには殉職をいたしました際の遺族に対します補償、これは一時金と年金の場合がございますが、そういうような国家の補償体系によります補償、それ以外に警察官の場合には、警察庁長官が国家公安委員会規則によりまして行ないます賞じゅつ金の運用がございます。さらには総理大臣からの、これは殉職等の場合がほとんどでございますけれども、閣議決定に基づきます特別ほう賞がございます。その他各都道府県におきまして、都道府県条例等で弔慰金制度を制定しております。それに基づきましてそれぞれの賞じゅつ金を給与いたす、こういうのが一般的な原則でございます。 さらに、こうした非常に危険な場所に身を置いて、危険を予知しながら行動をしなければならないというような場合の特別な公務員の災害補償上の新しい制度といたしまして、いわば特別公務災害補償制度、一種の率の格上げでございますが、こういうものが今国会に提案されて、これから御審議をいただくようになっておると思います。 〔大竹委員長代理退席、委員長着席〕 それから、一般の方の民家あるいは一般市民の被害の救済の問題でございますけれども、私どもはかように考えております。他人の行為によりまして損害が生じた場合、その他人の行為が不法行為によるものであれば、当然不法行為を行なった者の責任におきましてその損失を賠償するのがたてまえでありまして、現行法令のもとでは、過激暴力集団の犯罪行為によりまして第三者が巻き込まれるということで被害をこうむったというような場合には、こうしたいわば民法等の救済の体系によった措置が考えられておるところでございます。しかしながら、御案内のように不法行為者による損害補償というものは必ずしも十分でないことは承知をいたしております。当面の行政的な措置といたしましては、都道府県あるいは市町村等がそれぞれの費用をもちまして、見舞い金のような形でその損失の一部をお見舞い申し上げる、そして救済の一助にいたすというような措置がとられておるところでございます。これは東京都の場合等におきましては、災害見舞金贈呈要領というような内部規定によりまして、若干の損失のお見舞いをいたすというような措置がとられておるところでございますが、警察としても検討すべき課題である、かように考えております。
○林(孝)委員 これは大臣にお伺いしたいのですけれども、検討すべき課題というわけでありますが、これは非常に重要な課題と思いますので、大臣の見解をこの際お伺いしておきたいと思うわけです。
○前尾国務大臣 実は、昨日吉田委員からも同様の御質問がありましたが、現在の法体系から言いますと、個別的な公務員に過失がなかった場合には、それに対する補償というものはないというのが現状であります。 しかし、大きく考えていきますと、これは国全体としてそういうようないろいろな不法事犯を押え切れなかったところに責任があるので、むしろ、無過失損害賠償という観念ではなしに、ある程度の責任を感じていかなければならない。あるいはそれが全額を補償するのが一番理想でありますけれども、その半額でも考えていくとか、いろいろなことを今後考えていくべきだというふうに考えておりますので、今後の重要な一つの課題としてできるだけ早い機会にそういうことを実現していきたい、こういうお答えをしたわけでありますが、その考えは、私はいまも変わっておりません。
○林(孝)委員 次は、先ほど同僚委員からも質問がございましたけれども、これも大臣にこの際明確に答弁をしていただきたい問題であります。 われわれがこの火炎びんの使用等の処罰に関する議案を審議してまいりました過程において、やはりわれわれが一番心配したことは、この適用が拡張解釈されて国民の基本的人権というものを不当に制限することがあってはならない、この点を一番心配してきたわけであります。私たちは、この法案の成立に対して賛成をするものでありますけれども、その点については種々の議論もされてまいりましたけれども、やはり国民の心配は当然だと私は思います。そこで、大臣よりこの点に対しての決意を、適用に対してどのような留意をされるか、御答弁を願いたいと思います。
○前尾国務大臣 先ほど辻局長から申し上げましたとおりに、この法案の第二条には、「人の生命、身体又は財産に危険を生じさせた者」ここに一つの認定があるわけであります。それから第三条には、「火炎びんの製造の用に供する目的で、」というような目的を取り入れた、ここにも認定があるわけであります。これは非常に厳格に解釈をいたしませんと、法をあまりにも広く適用すると、基本的人権を侵害するというおそれが多分にあります。その点につきましては、われわれは絶対に基本的人権を侵さないという決意のもとに、適切な運用をしていく覚悟であります。
○中村国務大臣 刑罰法令の運用につきましては、平素から適正に行なうようにつとめてまいっておりますが、この法案が成立しました場合におきましても同様であります。 ただ、新しくできる法律でありますので、取り締まりに当たることとなる現場の警察官が、その法律の趣旨や内容について正しく理解し、誤りのない運用をすることが必要であります。したがいまして、この法案の国会における審議の経過などにかんがみ、法律の意図するところを全警察官に周知徹底させ、適正な運用を行なうようにいたす所存でございます。
○林(孝)委員 次に、一番最近起こっている事件の概要について報告をしていただきたいのですけれども、今週だったと思いますが、大学の中で火炎びんが投げられたという報道がなされております。これは入学式か卒業式だと思いますけれども、その事件の概要について、警察庁のほうから御報告をしていただきたいと思います。
○鈴木説明員 お答えいたします。 いま御質疑の点は、過日ございました富山大学のいわゆる入学式でございますか、その際に、一部過激分子が入学式に反対いたしまして、火炎びんを使いまして入学式を混乱におとしいれたという事例でございますが、ちょっといま詳細な手持ちの資料がございませんので、またいずれあとで御連絡いたしたいと思いますが、その件かと思います。
○林(孝)委員 いつ提出していただけますか。
○鈴木説明員 お答えいたします。 四月の十日と記憶しております。
○林(孝)委員 私はいつ提出していただけるかと聞いているのです。
○鈴木説明員 お答えいたします。 さっそく資料を取り寄せまして提出いたします。
○林(孝)委員 私は、たとえば一つの事実関係を通して、この法案が成立しておった場合の効果、もしこの法案がなかった場合の実態、そういう点についてお伺いしたかったわけであります。 それでは、一般的に申し上げまして、この法案が成立した場合の効果、あるいは法案が成立していない現状においての実態というものを、どのように相違するかという点について、ほんとうはその富山大学の事件を通して答弁をしていただければいいと思うのですけれども、資料がないということであれば、他の例でもけっこうですが、具体的にお伺いします。
○富田(朝)政府委員 一例を申し上げて御説明をいたしたいと思います。 昨年の十一月の十日の午後八時ごろでありますが、渋谷区にございますNHKの放送センター付近におきまして、一一・一〇闘争ということで、あの辺でいわば過激派が集会を開き、まあ一種の武闘の形で行進をしたのですが、この一部セクトがNHKのあれに向かったわけであります。その途中で火炎びんを隠し持ったといいますか、袋の中に入れていわば襲撃に向かおう、こうした者を見つけたわけでございますけれども、これはその場所等、あるいはその二人以上という構成要件、共同加害の目的、こういう点がなかなか立証ができませんので、火炎びんを隠し持っておったということで軽犯罪法で処理をした、そういうのは事例としてございました。
○林(孝)委員 そこで、法案の内容の中で第二条、「火炎びんを使用して、人の生命、身体又は財産に危険を生じさせた者は、十年以下の懲役に処する。」この火炎びんを使用というその使用の意味についてでありますけれども、使用といってもことばの意味は非常に幅が広いわけです。一体その使用というのはどういう意味なのかという点が一点。 それから第三条に、「火炎びんを製造し、又は所持した者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。」という文言がありますが、その所持とはいかなる意味なのか、その範囲はどうなのかという点について、またその中には運搬あるいは交付、そういうものも含められるのかどうか、その点についてお伺いします。
○辻政府委員 この法案の第二条にいう使用でございますが、この場合私どもは、使用とは引火しやすい物質を、流出、飛散させて燃焼し得る状態に置くことをいうというふうに理解すべきものと考えております。たとえば、発火装置を備えた火炎びんを投てきし、または点火装置を備えた火炎びんを点火して投てきしたというような場合が、これに当たるというふうに考えておるわけでございます。 それから、第二点の第三条の所持とはどういう意味かという点でございますが、この所持の観念といたしまして、私どもは、自己の支配し得べき状態に置くことをいい、その態様といたしまして、保管、隠匿握持、携帯あるいは運搬等の態様を考えております。他人に交付するための所持も、また交付を受けた者の所持も、もとよりこの三条の所持に当たるというふうに考えるべきものと思っております。なお、この点につきましては、銃砲刀剣類等所持取締令当時に同種の最高裁の判例もございます。
○林(孝)委員 それでは、私の最後の質問になりますけれども、三条二項の解釈についてであります。 この三条の二項を今日まで審議してきました過程におきまして、火炎びんを製造する目的で運搬中のガソリン入りドラムかん、そういうものも含まれるという答弁がたしかあったと記憶しております。今回のこの第二項において、「火炎びんの製造の用に供する目的をもつて、ガラスびんその他の容器にガソリン、燈油その他引火しやすい物質を入れた物でこれに発火装置又は点火装置を施しさえすれば火炎びんとなるものを所持した者も、前項と同様とする。」この今回の案においてはそういうものを含まないと解釈していいのかどうか、その点を明確にしておきたいと思います。
○辻政府委員 この原案の第三条二項は、「火炎びんの製造の用に供する目的で、ガラスびんその他の容器にガソリン、燈油その他引火しやすい物質を入れた物を所持した者も、前項と同様とする。」こういうことになっております。この原案の考え方は、これは「火炎びんの製造の用に供する目的で、」という目的で、ガソリンを入れたものを所持した者は前項と同様であるということでございますから、この場合には、ドラムかんに入れたガソリン、そのガソリンをもって火炎びんの製造の用に供しようとして所持しておれば、これはこの原案の第三条二項には該当するというふうに理解すべきものと考えております。 ところで、私ども漏れ承っております第三条二項の改正の御趣旨というものを、私どもはかようなものと承っておるのでございます。「火炎びんの製造の用に供する目的をもつて、ガラスびんその他の容器にガソリン、燈油その他引火しやすい物質を入れた物でこれに発火装置又は点火装置を施しさえすれば火炎びんとなるものを所持した者も、前項と同様とする。」という御修正案があるやに承っておるわけでございますが、この御修正案を考えてまいりますと、これは火炎びんの製造の用に供する目的というほかに、一つの容器性という点において制約がかかっておるものと理解をするわけでございます。何でもかんでも目的だけで持っておるというのではだめなんで、こういう一定の容器に入れたものを所持しておるということでございますから、そういたしますと、原案の場合には、自動車のガソリンタンクの中のガソリン、これで火炎びんをつくろうと思っておった場合も積極になる余地がございますけれども、この御修正案によれば、そういうものは明確に入らないということになろうと思います。 それから、この御修正案の立場におきまして、ドラムかんに入っておるガソリン、これをもって火炎びんの製造の用に供する目的で所持しておる場合はどうかという点になりますと、私どもは、もともとこの法案の第一条におきます容器でございますが、この容器というものは、「物質が流出し、又は飛散した場合に」云々とございますから、容器から中の引火性物質が流出または飛散し得るというような容器でなければならないというふうに考えておるわけでございます。 ところで、私どもの承知いたしております限り、通常のドラムかんというものは、中に入っておりますガソリンその他につきまして、これが流出したり飛散しないように装置されておるのが通常のドラムかんであろうと思うのでございます。そういたしますと、そういう通常のドラムかんをもって、そして火炎びんの製造の用に供しようという意図でこれを所持しておるという場合には、御修正案の三条二項によれば、これは消極になるのが通例であろうと考えるのでございます。
○林(孝)委員 以上で終わります。
○松澤委員長 続いて塚本三郎君。
○塚本委員 私は、同僚議員の質問に続きまして、同じような方向で御質問申し上げてみます。 まず第一に、過去における人的被害として、資料によれば、昭和四十四年、四十五年には警察官の死亡がゼロであったのに、四十六年に至って一躍四名の死亡者が出ております。このおもなる原因を御説明いただきたいと思います。
○富田(朝)政府委員 過激暴力集団による暴力行為の態様は、御案内のとおり、昭和四十二年十月八日の第一次羽田闘争以来エスカレートと申しますか、いろいろな変遷を遂げております。最初のころは、いわゆる石、角材等によりまして、正面から警備に当たる警察官に攻撃を加えてくるという単純なものでございましたが、昭和四十三年の十月に、先ほども申し上げましたように、福島県下の日大工学部の校舎で初めて火炎びんが使われて以来、火炎びんがいわば常套手段になったような状態で、非常に多量な火炎びんが使われ出したわけでございます。その過程におきまして、新宿騒擾事件とかあるいは四十四年の一〇・二一国際反戦デー事件でありますとか、そういうような事件におきましては、いわば一般市民を巻き込むような無差別ゲリラ闘争、築地の魚市場でありますとか、映画館でありますとかいうようなものを、やや無差別に襲撃をするというようなふうに変わってまいりました。そして昨年になりますと、一一・一四あるいは一一・一九、こういうような渋谷暴動あるいは日比谷暴動というようなことをそれらのグループの機関紙が掲げまして、まっ正面から警察官の殺戮を公然と扇動するといいますか、そういうような書き方等も見られるようになったわけでございます。 そういう過程で、やはり大量に火炎びんを集中して使い、しかも彼らの戦術形態が、いま申し上げましたような明確な一つの意図を持って警察隊を襲撃する、こういうようなことになりまして、昨年の秋、四名の警察官の殉職を出すに至ったような、まことに残念な状態になったわけであります。
○塚本委員 物的被害のうち、四十六年には警察の車両八両に対し、それ以外の車両八十二両に被害を与えている。これもやはり同じような理由と受け取ってよろしゅうございますか。
○富田(朝)政府委員 ただいま御指摘のとおりです。彼らの戦術のエスカレートというものが、警戒の間隙をついて民間の一般車両にまで及んできた、かように考えております。
○塚本委員 第一条にいう火炎びんとは、どの程度の大きさ、形態のものをいうのか示していただきたいと思います。
○辻政府委員 大体いままでの事例から見ますと、現実に使用されております火炎びんは、大は一升びん、小はコカコーラびんという程度のものが使われておるわけでございます。これが実態でございますが、この法案でまいりますと、やはりその点はほとんど実際問題としては変わらないと思うのでございますけれども、一応この定義におきましては、その容器の大きさというものは直接規定していないわけでございますが、現実の問題としては、これは従来同様に、いわば投てき可能なものというようなものがこの主たるものであろうと考えておるわけでございます。
○塚本委員 同じく第一条に、「流出し、又は飛散した場合」という要件を入れた理由は何であるのか。アルコールランプのように、しんに吸い上げて燃え上がるようなものは含まれるのかどうか、この点もお聞きしたいと思います。
○辻政府委員 この火炎びんの危険性は、それが単に引火しやすい物質の燃焼ということだけではございませんで、引火しやすい物質が容器から一時に、かつ広範囲にわたって流れ出し、あるいは飛び散りまして、それに急激な燃焼が起こるというところにこの危険性があるわけでございます。「流出し、又は飛散した場合に」という要件を入れられておるのは、そういう趣旨に出たものであろうと考えておるわけでございます。 そこで、単に容器の中で燃焼する場合とか、あるいはしんに吸い上げて燃焼するというような場合は、もともとこれは火炎びんという観念には入らないというふうに理解すべきものと存じます。
○塚本委員 法務大臣と国家公安委員長にお尋ねいたしますが、本法案が成立した場合、その適正運用についての御所見を伺いたいと思います。
○前尾国務大臣 先ほども申し上げましたとおりに、この法律は、現在におきまして爆発物にも入らず、また銃砲火薬にも入らずというような点で、全然取り締まりの欠陥があって、その欠陥をついて最近のような不法事犯が行なわれておるわけであります。したがいまして、何としてもその欠陥の穴埋めをしていただかなければ、現在の不法事犯を未然に防止する、あるいは事後におきましても、一般市民からいたしますと何だか手ぬるいではないかという非難にこたえることができないという点で、適切な立法である、かように考えておるわけであります。 しかし、一面から言いますと非常に簡易なものでありまして、またびんとかあるいはガソリンという、これは平和的といいますか、通常非常に一般の人が使うものであります。したがいまして、一面から言いますと、いわゆる一般の人の基本人権に対してこれを侵害するおそれがあるというふうに考えております。したがいまして、あくまでこれは一般の人の基本人権を侵すことのないようにということで、われわれは運用に非常に気を配っていかなければならぬ、かように考えておりますので、その点について、今後運用に際しましては十分注意もし、厳格にいろいろな通牒その他で注意をする、また実際の訓練におきましても同様な考え方でいきたいというふうに思っておりまして、あくまでこの法の目的が適正に行なわれることを、私どもは決意をいたしておる次第であります。
○中村国務大臣 最近の不穏な情勢にかんがみ、火炎びんの使用等を規制する何らかの法的措置が必要であると考え、方策を検討しておりましたところ、このたびの国会において火炎びんの使用等の処罰に関する法律案が審議されるに至ったことにつきましては、治安をあずかる者といたしまして、まことに適切な御処置であり、心強く存ずるものであります。 この法律案は、火炎びん自体を不法なものとし、火炎びんの使用、製造及び所持、並びに火炎びんの製造の用に供する目的をもってする一定のものの所持を処罰の対象としておりますので、従来繰り返されてきた火炎びんの使用による不法事犯に対しては、この法律によって厳重な取り締まりができ、また使用に至る前の未然防止も期待できるようになるものと考えます。 この法律が成立した暁には、全警察官に法律の趣旨及び内容を周知徹底させ、適正な運用によって火炎びんによる不法事犯の取り締まりに万全を期し、国民の期待にこたえる所存であります。
○塚本委員 ただいま御決意のほどは伺いました。 ところで、最近各地に火炎びん等を使用する不法事犯が頻発して、警察官や一般人に多数の死傷者が出ておりますが、これに対する救済方法、これはただいま御答弁をいただきましたが、今日まで一般人に対する被害は、おおよそ金額がどれくらいにのぼっておるか、推計でけっこうですが、御説明いただけましょうか。
○富田(朝)政府委員 昭和四十二年十月八日以来過激派暴力集団がいろいろな事件を起こしまして、その過程で民間にも被害を及ぼしておるわけであります。それをずっと実は集計はいたしておりませんですが、やや顕著な事例について数件申し上げさせていただきたいと思います。 昭和四十二年の十一月十二日、これは第二次羽田事件といわれるものでございますが、これは蒲田周辺におきまして、窓ガラスでありますとか、看板あるいはライト、屋根、その他角材を盗み取ったというようなことで、当時の地元の集計では約八十三万円。それから四十三年の二月二十六日、王子野戦病院といわれるものが当時ありましたが、あの辺での暴力行為によりまして、やはり窓ガラス、看板、へい等三十四件で百八十七万円。それからさらに四十三年の十月八日、新宿のいわばターミナル周辺におきまして同じような事件がございましたが、その際、ステーションビルのフロントガラスその他四十一件で約六百万円。その他地方におきまして佐世保、成田等の事件もございますが、東京都内の大きな事件は以上申し上げたようなところでございます。
○塚本委員 たとえば、いまの御説明のありましたこういう顕著な被害というものは、どういうふうな形になっているのですか。どこかから補償されておるというようなことですか。
○富田(朝)政府委員 ごく最近の例をちょっと落としましたが、昨年十一月十九日、日比谷公園におきまして松本楼が放火により焼失をいたしております。 先ほど申し上げました蒲田周辺の問題、それから新宿のターミナル周辺の問題、これにつきましては、民間の被害の見舞い金に関する東京都の内部規定によりまして、被害の一〇%程度と聞いておりますが、お見舞いを申し上げておる。それから、王子のあの周辺での被害につきましては、北区役所から被害者に対しまして、約四十万円でございますが、見舞い金として支給をされております。その他佐世保、成田、こういうようなところにおきましては、特別交付金等の助成もございまして、やや大幅に、佐世保市役所あるいは成田市役所というところで補償をいたしております。それから、松本楼につきましては、これは実はその被害額の全体を尽くすとは考えられませんけれども、保険契約等もございまして、この保険によりましてある程度の被害のカバーがされております。これは、いわゆる市町村その他の地方公共団体が措置をしたものではございません。
○塚本委員 国としては、何らか補償に当たったようなことはないですか。
○辻政府委員 国が補償したという事例はございませんが、先ほども警察から一部御報告がございましたが、昭和四十三年十月二十一日のいわゆる新宿騒擾事件におきまして、国鉄の被害が相当出ておりますが、国鉄が一部の犯人と見られます過激派集団の者に対しまして、共同不法行為による損害賠償の請求訴訟をいたしております。 それからなお、四十四年十月二十一日にNHKの放送センターにやはり過激派が乱入いたしておりますが、この事案につきましても、NHKは犯人に対しまして、共同不法行為に基づく損害賠償の請求訴訟を提起いたしております。
○塚本委員 いま聞き漏らしましたが、NHKの場合は犯人に対してですか、国に対してですか。
○辻政府委員 新宿駅の場合もNHKの場合も、犯人に対して共同不法行為に基づく損害賠償請求訴訟をいたしておるわけでございます。
○塚本委員 一般の民間の被害を受けたところから、犯人に対する損害賠償の訴えが起きておることはありませんか。
○辻政府委員 この点は具体的に承知いたしておりませんが、一部、過去におきまして、人権擁護委員等がその訴訟の相談に乗った事例があったという報告を受けております。
○塚本委員 先ほど説明のあった国鉄、NHK等のいわゆる損害賠償の訴えは、その後どういう経過になっておりますか。
○辻政府委員 新宿騒擾事件におきます国鉄の訴訟でございますが、これは現在係属中でございます。 それからNHKの訴訟につきましては、これは一部が途中で和解をいたしまして、残りにつきましてはNHKが勝訴の判決を得ております。
○塚本委員 おそらくこれは、神田駿河台等で解放区とかいうような名前でもって何度か事件が起こされて、そして具体的にガラスが割れた、商品が損壊を受けたというだけではなくて、たとえば初めから、もうきょうは営業を休みにしてくださいということでシャッターをおろしてしまって、もう普通から考えれば、それだけでも営業補償等をしてやらなければ気の毒だという事案だと思います。しかも、国鉄とかNHKのように、損得かまわずいわゆる訴訟を起こし得るような企業体であっても、勝訴といってもどんな形になっておるか、はたして犯人からそのような賠償の金額が取り得るかどうかということが疑われておるのが今日の姿だと思います。まして商店街等がそういう形になったときに、何らか救済措置をしてやらなければ気の毒だと思うわけでございます。 したがいまして、もしたとえばこの地区が、商店街として、きょうは危険だからあらかじめ営業を中止しようではないか、あるいは中止してくださいと、警察かどちらか知りませんけれども、要請を受けて、新宿などでも店を締めた事案もあるようでございます。そういうときの営業補償なり損害賠償としての訴えを起こしたらどうなるかということに対する、ある程度の指導というようなものをしてあげる必要があるのではなかろうか。泣き寝入りになってはたいへんだと思うわけです。そういう点、法務省としては、裁判した場合に勝つか負けるかということは予断を許しませんけれども、そういう商店街などが損害賠償なり営業補償の訴えを起こしたということを仮定した場合の見解を、法務省のほうからお聞きしたいと思うのです。
○辻政府委員 ただいまの御指摘の事例でございますが、この種の事案の損害賠償の訴訟をいたしますという場合に、一番の難点は、犯人といいますか、行為者の特定でございます。だれがそういうことをしたのかということが特定しないと、具体的訴訟ではたいへん困るわけでございまして、ただいまの御指摘のように、まだやる前から、かりに予防的に商店街が店を締めておるというようなことでございますと、ますます、こういうことをした者はだれであるか、原因を起こした者がだれであるかという点において、たいへんな困難に立ち至るであろうと思うのでございます。いまの国鉄やNHKの事例の場合には、逮捕いたしました犯人のうちから、特定いたしました者につきまして訴えが提起されておるわけでございます。
○塚本委員 NHKの場合は勝訴したというお答えがいまありましたけれども、その場合、犯人は具体的にその賠償に応じて金を支払っておりますか。その金額とその点がわかっていたらちょっと教えていただきたい。
○辻政府委員 このNHKの訴訟は、百二十万四千幾らというのがこの損害額でございます。これは六人の者が共同をして不法行為をしたという訴訟になっておるわけでございますが、そのうちの二名は途中で和解をいたしまして、それぞれ父親が一応の分担分というような形で金を払いまして、残りの四人につきまして九十四万八千円ばかりが残っておるということで、最終的にはこの九十四万八千円余りにつきまして、四人とNHKの訴訟になったわけでございます。そうして、これについてはNHKが勝訴判決を得たわけでございますが、これを現実に取り立てたかどうか、その点は私、現在承知いたしておりません。
○塚本委員 もうぼつぼつ終わりたいと思いますが、確かに、特に学生の諸君、俗にいわれる親のすねかじりというそういう俗っぽい表現が使われておりますが、自分で働き、自分でお金もうけをすれば、物のとうとさ、お金のとうとさというものは身にしみていくと思うのです。しかし、そういう苦労のない諸君だからこそ破壊も意に介さないということが推理されるわけでございます。したがいまして、本人が刑罰に処せられるとともに、あくまで自分のしたことは何十年かかってでもみずから働いたお金によって償うんだ、これがほんとうの今日日本の応報刑主義の目的にも合致するのではないかというふうに思われます。 したがって、やはり犯人が社会なりあるいは特定のいわゆる被害者に対して、経済的な被害はそれはみずから経済的に償う、むしろ公園の花を逃げるときに踏みつぶしたのでも、強制的に本人がもう一ぺん、大衆の見ておる前で手錠をかけられてでも植え直させるくらいのことが、やはり最も本人を更生させる上からも、あるいはそういう破壊というものがいかにつまらないことであるかということを思い知らせる上においても必要ではないかという、これは法的にはいかがかわかりませんけれども、常識的には私どもそういうことが考えられます。 したがいまして、特に関係のない一般人に対する被害の補償というものは、やはりこの刑罰とは別に、経済的にある程度補償させる道をきちっと開いていく、そして、もちろんそれは親がかわって補償することもこれはいたしかたないかもしれませんが、究極的にみずからがその痛みを償っていくのだ、こういう体制をつくることこそが、実は、これからはそういうつまらないことはしなさんなというふうな、本人に対する戒めにもなろうと思っておりますので、そういう方向でこの法を運用していただくことが大切だと思います。 したがいまして、そういう観点に立って法務大臣の御所見をお伺いいたしまして、私の質問を終わります。
○前尾国務大臣 ただいまお話の点、しごくごもっともです。そういう意味からいたしますと、あるいは国が代行して訴訟をやるべきではなかろうかということも考えられる。非常に教えられるところが多いと思います。今後検討してまいりたいと思います。
○塚本委員 終わります。
○松澤委員長 青柳盛雄君。
○青柳委員 法務省にお尋ねをいたします。 このような法律の必要性について、昭和三十一年六月二十七日の最高裁判所大法廷の判例がしばしば引用されております。まさにそこでいわれている火炎びんは、濃硫酸と揮発油を入れたびんの外へ塩素酸カリウムをしませた紙をくっつけたもので、これを投てきした場合に、ガラスが割れて揮発油が外に出る、同時に濃硫酸と塩素酸カリウムが化学反応を起こして火を出す。そしてそこで燃える。しかし、この濃硫酸と塩素酸カリウムの爆発というものは、それ自体では破壊力を持っておらぬ。点火作用をするだけだ。ところが、これは最初治安当局では、爆発物取締罰則にいうところの爆発物であるということで起訴したんだけれども、最終的には最高裁でこうなってしまったので、今度の法律が必要なんだ、こういう説明でございます。 まさにそれは一つの理屈でございますが、同時に火炎びんといわれるものは、昭和四十五年五月二十一日の東京地方裁判所刑事第十五部の判決、それが控訴されまして東京高等裁判所刑事第十部の判決が四十六年の六月二十四日に出ました。これも火炎びんを使用したものでございますが、これに対しましては、いずれもまさに爆発物取締罰則にいうところの爆発物であるという認定が下っておるわけであります。 事実認定によりますと、これは七百二十ミリリットル入りの酒びん、日本酒のびんに約五百ミリリットルのガソリンが入っておった。予定では濃硫酸を約二百ミリリットルくらい加える予定であったけれども、それは間に合わなかったので、まだそれは入っておらなかった。さて、その外へ何をくっつけるかということでつくりました薬包は、塩素酸カリウムが約十五グラム、赤燐が四グラム、金属マグネシウムが六グラム、合計二十数グラムの点火剤のようなものでございます。発火剤と申しましょうか。ところが、これは酸化反応を起こしまして爆発力が非常に強かったから、まさにこれは単なる点火剤ではなくて、先ほど申しましたように、最高裁の判例とは違うものである、爆発物そのものであるということの認定が出ているわけであります。 こうなりますと、今度つくりました法律案には、別に最高裁判所が引用されるような第一条の規定はございません。したがって、たとえばあとから申しました東京地裁あるいは高裁の判例にいうようなものであっても、やはり火炎びんの部類に入るのか、それとも爆発物になるのかということは、その爆発の力がどうであったかということを認定しない限り、区別がつかないということになるわけでございます。こういうあいまいな形ではたしていいのかどうか。実際にこれを取り締まる立場あるいは起訴し公判を維持する立場での治安当局といたしましては、この法律でけっこう不公平なしに扱われるという見通しがあるのかどうなのか、お尋ねをいたしたいと思います。
○辻政府委員 ただいま御指摘の、東京地裁及び東京高裁の判決でございますが、確かに御指摘のありましたような量のいわゆる火炎びんであったようでございます。これにつきましてこの判決は、いわゆる火炎びんの場合には、「ガソリンの炎上によるものを除いて考えても、一メートル以内の至近距離にいる者は、爆発による反応熱、赤燐の飛沫、飛散するガラスの破片により生命に危険を生ずる程の熱傷、刺傷を負う確率が相当高く、」云々というふうに判示をいたしておりまして、まさしく先ほど御指摘の、昭和三十一年六月二十七日の最高裁大法廷判決に判示いたしておりますように、「爆発作用そのものによって公共の安全をみだし又は人の身体財産を害するに足る破壊力を」有しているというこの趣旨で、この当該火炎びんを認定しておるのだろうと思われるのでございまして、これはあくまでこの最高裁大法廷判決の線に沿った判示であろうと思うのでございます。 ところで、この本法案にいう火炎びんでございますが、これはそういう爆発物に当たらないものであるということを前提にしておると考えられるわけでございまして、そのことは本法案第一条におきまして、「引火しやすい物質を入れ、その物質が流出し、又は飛散した場合にこれを燃焼させるための」云々ということで、あくまで引火性物質が流出または飛散いたしましたものに対する急激な燃焼、これによる危険性というものに着目をしておるわけでございますので、これはやはりこの最高裁大法廷判決というものを前提にしてこれに当たらないものである、この判決に当たるものは爆発物でいくという考え方で立案されているものと理解して、何ら差しつかえないものであろうと考えるわけでございます。
○青柳委員 まさに理論的にはいまの回答のとおりでおかしくないと思いますけれども、現実には、一本だけ投げられた状況のもとでは、あるいはその区別がつきやすいわけでありますが、本法案のいわゆる火炎びんと、それからいまの地裁、高裁の判例のような種類の火炎びんとがまぜられたときには、どちらがどうなのかということが非常にあいまいな状況になる危険性があるということだけは指摘できるんじゃないかと思います。しかし、時間がありませんから、問題点だけ提起いたしまして次に移ります。 たまたまこの地裁、高裁の判例を取り寄せて読みましたところが、これはまさに驚くべき事実が明らかになっているわけでございます。それは背叛社といわれるアナーキストの学生の団体で、約二十数名の者が寄り集まっていたようでございますが、その指導者らしい人物が、まず最初に日本共産党の議会主義を非難するという目的で、日本共産党本部に火炎びんを投げることを計画して、昭和四十三年六月二十九日にそれをあえて行なったわけであります。そのときの火炎びんは、これは点火装置でやったようでございますけれども、まさにこれは火炎びんの取り締まり法みたいなものはありませんから、暴力行為等処罰法でもって処罰をされているわけです。これで間に合っているわけなんですね。要するに数名でやりましたから。一人でやったんでは、これは放火未遂ということになったかもしれませんが、あえて放火未遂では起訴していないわけであります。鉄筋コンクリートの建物の玄関で投げたんだから放火未遂にもなるまいというので、暴力行為で取り締まるということにしたわけであります。 引き続きましてこの連中は、自由民主党の本部及び公明党その他等々をも襲撃することを企てまして、それに使うのには今度はもっと強烈な爆弾のようなものを使いたいということで、やはり火炎びんの強力なものを製作の途中で爆発をしてしまった。いわゆる暴発をしてしまった。それで目的を達しなかったのでありますけれども、これはまさに爆発物取締罰則違反で打たれております。 ところで、だんだん読んでまいりますと、この被告人は、実は警視庁の公安第一課の間々田という警察官と深沢という警察官からいろいろと指示を受けたのだ、そのもとでこれはやったことであるから、有罪にされるのはおかしいという趣旨の抗弁をしたわけでございます。 そこで、証人として間々田敬作という方と深沢亮治という二人の警察官が取り調べを受けまして、その証言によってこの裁判所がどういう認定をしたかというと、大体昭和四十三年の七月八日ごろから九月二十五日ごろまでの間に約五回にわたってこの被告と会って、同人らの依頼によって、この被告らは背叛社等に関する情報を提供し、その謝礼として合計十一万円の金を受け取っておるということであります。そして本件攻撃計画については、この計画というのは、自民党本部と公明党の本部を攻撃するということについでは、九月初めごろにその警察官には報告してあるという事実が認定されたわけであります。報告はしたけれども、まだ品物は完成しておらぬ状態でありましたが、たまたま暴発した日は、間々田という先ほどの警察官の供述の記載によりますと、本件犯行の当日、背叛社というその暴発した家の周囲には数名の警察官が張り込んで、被告人らの行動を監視していた事実が認められるというのであります。だから警察監視のもとでこういうことが行なわれている。また共産党も襲撃をかけられている。これを私どもは泳がせ政策ということで要約するわけであります。 それで、火炎びん取り締まり法を今度つくっても、このような泳がせ政策がしばしば行なわれるのであるならば、これは非常に危険なものであるし、またあまり効果もないじゃないかということをおそれるわけであります。 前回、参考人が出たときにも私、引用いたしたのでありますけれども、昨年の十二月十日付のサンケイ新聞の「コンピューター一〇〇〇人調査」によりますと、このような火炎びん取り締まり法ができましても、二十代くらいの人は二割以上が、全く過激派学生の火炎びん闘争にブレーキをかける効果はないであろうということを言っておるというのであります。はたして、この二十代の人たち、そして大半の人たちが、あまり効果はないだろうと言って期待をかけていないようでありますが、この原因がどこにあるのか、そういうような意見を持つ原因がどこにあるのか、私は、このコンピューター調査の報道でははっきり理解することはできませんけれども、一つの見方としては、警察がこういう連中に対して甘いのであろうということを直観的に感じて、ああいうものができたってやはり泳がされるよ、こういうふうに思っておるのではないかというふうに、私なりに理解するわけであります。 したがって、この点について国家公安委員長にお尋ねをしたいのですが、どういうふうにごらんになりますか。
○中村国務大臣 ときどきそういうことを聞きますけれども、警察はどこにおきましても、過去の経験等を調べてみましても、そういう泳がせ政策というようなことをやっておるというようなことはございません。誤解のないようにお願いいたしたいと思います。
○青柳委員 次の点に移ります。 実は、この法案の三条二項というものにつきましては、わが党は最初自由民主党の議員から提出されました案についていろいろと検討いたしまして、これは明らかに人権じゅうりんに悪用されるおそれのある条項であるから、削除すべきであるという意見を申し述べました。その根拠の一つは、たまたまこういう事案があったわけでございます。これは昨年の十一月二十四日、沖繩協定反対のデモンストレーションが代々木公園を出発いたしまして、国会へ請願に来たわけでありますが、これを参考に見ようというので、高校生三名が、代々木公園からデモ隊のわきを通りながら出発をして国会請願についてまいった。ところが、どうも国会の近くへ来ましたときに、デモ隊の一部の中で規制を受けた際に、それで何か警察官との間でもみ合いといいますか、進行を阻止されてとまっているところのそばで見物をしていたそうでございますが、たまたまこの学生の一名がハクキンカイロをふところに入れており、もう一人は途中で買ったベンジンのびんを片手に持っていたそうでございます。そこで、このベンジンが気に入らなかったのかどうか知りませんけれども、まさにこれは火炎びんに当たるのではないかということで二人の学生が逮捕されまして、それで三日とめられたわけでございます。警察で四十八時間、検察庁で二十四時間、七十二時間とめられまして釈放をされたという事実がございます。 これは、見物したのが悪いのだ、またベンジンを持っていたのが悪いのだと言ってしまえばそれまででございますけれども、どうもまだ火炎びん取り締まり法、本法案みたいのができない前から、たまたまベンジンを持っておったということだけでやられてしまったということは、これは人権じゅうりんではないかと思うわけですね。だからこれが一つ。 それから、昨年来いわゆるローラー作戦というのが行なわれまして、これは連合赤軍の居所を明らかにするといいますか、あるいはいぶり出し作戦といいますか、その辺はわかりませんが、いずれにしても全国的に二カ月間にわたって、アパートを中心とした五百三十万戸で聞き込み作戦を展開し、四千件の情報を得たということが、ことしの二月十九日の東京新聞に報道されておりますし、またそれに近い趣旨のことも他の新聞の報道にもあります。東京の警視庁管内だけでも二十四万カ所というような一斉捜索が行なわれているようでございます。 これが、一体どういうものをさがそうということで行なわれたかということになれば、おそらく連合赤軍が持っているであろうところの爆発物あるいは銃砲といったようなものではないかと思うのですね。ところが、それはあまりひっかかりませんで、むしろ大山鳴動ネズミ一匹のようなものであったというわけでありますけれども、余禄にほかの犯罪が多少出てきたという程度でございますが、この過程で、全く罪もない、何ら疑いを受ける必要のない人々が、自分の居所を事実上の捜索を受けている。これは管理人が協力をした結果のようでございますが、これでは火炎びん取り締まり法、この法案ができますと、今度はこれをさがすのだということで、一般良民がそのプライバシーまで侵されるという危険が感じられるわけでございますが、まだこのローラー作戦なるものは継続するということをちょっと耳にいたしましたので、警察当局としては、昨年来やりましたようなこういうのを、今度はこの法律をも使って、いま通るであろうところの火炎びん処罰法も使ってやる、特にその三条二項を使ってやるというようなおそれは十分考えられるので、この点をあらかじめお尋ねしておきたいと思います。
○富田(朝)政府委員 ただいま二つの例をおあげになっての御質問でございますが、十一月二十四日の件につきましては、具体的な事実をただいま承知をいたしておりませんが、あの当時中核系あるいは反帝学評系の者がいわゆるまぎれ込みまして、現実に火炎びん等を投げるという事例もございました。そういう過程であったのかと存じますが、ベンジンを持っておる者をつかまえるとか、そういうようなことは私は全くいたしていないと思います。ただ、その現場におきまして、あるいはその他の法令の違反というようなことで逮捕したということであるかもしれませんが、具体的なただいまの例についての状況は承知をいたしておりません。 それから、ローラー作戦といわれるものでございますが、これは御案内のように、昨年末来爆発物の都内におきましての無差別使用というような傾向が出てまいりまして、これには何としてもこれを未然に防止をし、そして市民の御不安を軽くしなければならぬ、こういうことから、一般市民あるいは国民の方の御協力によりまして、その爆発物をつくっておるような状況等があればお知らせをいただく、まあこういうことでございます。したがいまして、今日までそうした国民の御協力をいただきまして、極左暴力集団の検挙も百七十四名いたしております。また、たいへん凶悪なものをつくろうとしておる、過激爆発物をつくろうとしておるような、いわゆるアジトというものを発見するということで、未然に防止するということもできたわけでございます。 今後の問題におきましては、やはり前にも申し上げましたとおり、そうした極左暴力集団の過激な、凶悪な行動というのはまだなくなったわけではございません。したがいまして、何も同じような方法には限りません。いろいろ御協力をいただきましてわれわれとしてもやるべき措置をとって、そうした犯罪の未然防止につとめてまいりたいと考えております。
○青柳委員 時間がありませんから、もう一点だけ伺います。 いまの点が、この法律ができた場合に、乱用される危険を私は感ずるわけであります。一般民間の御協力を得てというお話がいまございました。まさにこれは不動産屋さんとか、あるいはアパートの管理人というような方、御近所の方あるいは防犯協会の方などの御協力のことだろうと思いますが、これが戦前のあの隣組みたいに、人を見たらどろぼうと思えというような猜疑心を起こさせ、監視や密告を奨励するという危険を感ずるわけであります。連合赤軍みたいな連中が爆発物をつくるという危険性を未然に防止するということで一般の協力を求めるといえば、われわれも別に乱用されたというふうには思いませんけれども、反面、そのために思想調査やあるいはいわゆる情報収集といいますか、そういうようなことが行なわれる危険性も感じますし、同時に、今度はそんな危険なものではないけれども、火炎びんをつくる目的でその辺にガソリンあるいは灯油を貯蔵してはおらぬかというようなことで、戸口調査を始めるというようなことになりますと、たいていの家庭にはビールびんもございましょうし、また灯油などもございましょう。自動車のガソリンもございます。そういうわけで乱用されますと、この法律の三条二項というものは際限なく広がっていく危険性があるわけであります。そのものずばりで処罰の対象ということで起草されて裁判にかけられるなどということは、おそらくないと思います。それほど検察庁も公判維持に自信のないやり方はしないであろうと思いますし、裁判所もそれほどの人権じゅうりんの判決を下すとは思いませんけれども、それに至る二十四時間あるいは七十二時間の拘置というような問題が起こり得る危険もありますし、またそこまでいかなくとも、警察官職務執行法の乱用にわたる危険性がないとは言えないということだけは、私は指摘できると思うわけであります。 今度の法案でも決議が用意されているようでございますから、その点で歯どめはあるとは思いますけれども、そういうことは絶対にしないという証言が、この場所で政府のほうからできるかどうか、それだけお尋ねいたしまして私の質問を終わります。
○富田(朝)政府委員 先ほど国家公安委員長がお答え申し上げましたとおり、私どもとしては法の趣旨を十分生かし、また、いたずらにそれが拡張されるというような御批判を招かないように、厳に指導を強めて適正な執行をしてまいりたい、かように考えます。 —————————————
○松澤委員長 おはかりいたします。 ただいま、高橋英吉君外七名提出、火炎びんの使用等の処罰に関する法律案につき、提出者全員から撤回の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○松澤委員長 御異議なしと認めます。よって、本案は撤回を許可するに決しました。 ————◇—————
○松澤委員長 火炎びんの使用等の処罰に関する法律案起草の件について、中谷鉄也君から発言を求められておりますので、これを許します。中谷鉄也君。
○中谷委員 私は、自由民主党、日本社会党、公明党及び民社党の四党を代表して、火炎びんの使用等の処罰に関する法律案を起草し、本委員会提出の法律案とせられるよう動議を提出いたします。 この際、その趣旨について御説明申し上げます。 最近、各地においてきわめて過激な集団的、組織的な不法事犯が繰り返されており、その際、いわゆる火炎びんが主たる凶器としてしばしば使用され、これまでに人身の死傷並びに諸施設の炎上等、多大の被害が発生し、社会一般に大きな不安を惹起していることは御承知のとおりであります。 ところで、火炎びんはきわめて危険な凶器であるのみならず、正当な用途に使用される余地が全くないものであり、その上、現行法制のもとにおいては、火炎びんの使用、製造または所持等を直接処罰の対象とする刑事罰則が存在せず、また、既存の罰則をもってしては、火炎びんを使用する不法事犯を適確に処罰するには種々の難点が見られるのであります。 このような観点から、火炎びんの使用等について特別の処罰規定を設け、もってこの種不法事犯の防遏に資するとともに、社会の不安を一掃し、法秩序の維持に寄与するため本案を提出いたした次第であります。 本案の内容につきましては、御手元に配付いたしました案文により御承知願いたいと存じます。 以上が、本案の趣旨並びにその内容であります、 何とぞすみやかに御賛同あらんことをお願い申し上げます。(拍手)情等にかんがみ、火炎びんの使用、製造、所持等の行為について特別の処罰規定を設けることとする必要がある。これが、の法案を提出する理由がある。 —————————————
○松澤委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。 本動議について議事を進めます。 おはかりいたします。 この起草案を委員会の成案とし、委員会提出の法律案とするに賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕
○松澤委員長 起立総員。よって、さよう決しました。 なお、本法律案の提出手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○松澤委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。 —————————————
○松澤委員長 次に、火炎びんの使用等の処罰に関する法律案の提出に際し、林孝矩君外三名から、火炎びんの使用等の処罰等に関する件について決議されたいとの動議が提出されております。 本動議について議事を進めます。 まず、提出者から趣旨の説明を求めます。林孝矩君。
○林(孝)委員 私は、ただいま提出されました決議案について、自由民主党、日本社会党、公明党及び民社党の四党を代表いたしまして趣旨の説明をいたします。 まず、決議案を朗読いたします。 火炎びんの使用等の処罰等に関する件 一、政府は、火炎びんの使用等の処罰に関しては、捜査並びに法規の適当に当りいやしくも濫用又は拡張解釈により国民の基本的人権を不当に制限することのないよう留意すべきである。 一、最近各地において、火炎びん等を使用する不法事犯が頻発し、警察官のみならず一般人にも多数の死傷者を生じている実情にかんがみ、政府は、火炎びん等の使用による一般人の被害の救済について、遺憾のないよう速かに対策を講ぜられたい。 右決議する。 本決議案の第一点は、火炎びんの使用等の処罰に関しては、政府は、国民の基本的人権を侵害することのないよう十分注意されたいというものであります。 この趣旨は、特に、先ほど本委員会の提出法律案とするに決しました火炎びんの使用等の処罰に関する法律案が、法律として成立、施行されました場合を考慮したものであります。この法律案は火炎びんを使用する過激な不法事犯を処罰し、あるいは事前に防止するため、必要最小限にしてやむを得ない規定を置いたものでありますが、一方においては、国民の基本的人権に重大な関係を有する規定を含んでおるのであります。 政府は、特に本法の施行に際しては、捜査並びに法規の適用については、これを乱用しまたは拡張解釈等により、善良なる一般国民の基本的人権を侵害することのないよう、特段の留意をされたいというものであります。 第二点は、最近各地において過激な不法事犯が繰り返されており、その際における火炎びん等の使用により、警察官のみならず一般市民にも多数の死傷者を生じておりますが、現行法制のもとにおいては、これら善良なる一般人の被害に対し、国家による救済の規定がないのであります。 政府は、火炎びん等の使用による被害者の救済について早急に対策を講じ、遺憾のないよう万全を期されたいというものであります。 以上が、この決議案の趣旨であります。 何とぞすみやかに御賛同あらんことをお願いいたします。(拍手)
○松澤委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。 本動議について採決いたします。 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕
○松澤委員長 起立総員。よって、林孝矩君外三名提出の動議のごとく決しました。 ただいまの決議について、政府から発言を求められておりますので、これを許します。前尾法務大臣。
○前尾国務大臣 われわれがぜひ成立させていただきたいという法案であります火炎びんの使用等の処罰に関する法律案を、委員会提案として御提出くださることに御可決を願いましたことを、心から御礼を申し上げます。 さらにまた、ただいま御決議になりましたように、この火炎びん法の運用にあたりましては、あくまで基本的人権を侵害しないように、また、最近起こりますいろいろな不法事犯による被害に対する救済の対策をしろということでありますが、まさに適切な御勧告であり、御決議である、かように感じました。 今後われわれもその御趣旨に沿って、最善の努力をいたすつもりであります。まことにありがとうございました。(拍手)
○松澤委員長 中村国務大臣。
○中村国務大臣 警察におきましては、刑罰法令を含め、すべての法の運用にあたっては、常日ごろから適正に行なうようつとめてまいっているところであります。 この法律が成立しました場合におきましても、ただいまの御決議の趣旨を体し、従前同様慎重な配慮のもとに適正に運用をやってまいりたいと存じておる次第でございます。 特に、本法律案が成立すれば、新しい法律であるところから、取り締まりに当たる現場の警察官に対し、この法律の趣旨、目的及び内容につき十分なる指導、教養を行ない、誤りのない運用により、法の目的達成につとめてまいりたいと考えております。(拍手)
○松澤委員長 おはかりいたします。 本決議の関係各方面に対する参考送付等の手締につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○松澤委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。 次回は、来たる十八日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。 午後三時九分散会