社会労働委員会 第30号
- 発言数
- 91 件
- 登壇者
- 8 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1972/05/25
会議録
○森山委員長 これより会議を開きます。 勤労婦人福祉法案を議題といたします。 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。古川雅司君。
○古川(雅)委員 勤労婦人福祉法案について若干お伺いをしてまいりたいと思います。 勤労婦人、すなわち働く婦人の福祉に関して今回立法をお考えのようでありますが、最初にお伺いしてまいりますけれども、いわゆる働く婦人というのをどういうふうに定義なさっていらっしゃるのか、その辺から入っていきたいと思います。 いろいろ考え方はあると思いますけれども、労働時間あるいは労働環境、いろんな視野から分類もできると思いますが、たとえば労働時間から考えてフルタイマー、パートタイマーという分け方もあると思いますし、それから仕事の内容からいえば事務作業あるいは手工業、肉体労働、サービス業というような分け方もあると思います。企業の形態からいえば、大企業、中小企業、零細企業、家内工業、内職、農業あるいは商店の手伝いというようなものも入ってくる。また、勤労を必要とする目的といいますか、全面的に生計の中心になっていかなければならないという場合もあると思います、生計の補助的な必要のために働いている場合、あるいは社会的要請から働いている場合、また社会経験を通して要請されている場合と、いろんな勤労の形態があると思います。勤労婦人福祉法の目ざすいわゆる働く婦人というのをどの辺までカバーしてお考えになってるのか、そういういろんな立て分け方からひとつ分析をして所見をお伺いしたいと思います。
○高橋(展)政府委員 勤労婦人福祉法案におきまして勤労婦人としてとらえておりますものは、主として職場に出て雇用されて働く婦人でございます。その場合、ただいまお尋ねのような働くタイプあるいは動機等がいろいろあるわけでございますが、この法案におきましては、働くタイプあるいは動機というようなことによる差異ということは考えませんで、職場に出て働くという姿をとっております婦人はすべて対象として考えているということでございます。 また、お尋ねの農業あるいは内職その他、あるいは商家等で自家の営業のために働く婦人も多いわけでございますが、この法案の主たる対象は職場に出て働く婦人でございます。 しかし基本理念であるとか、地方公共団体のサービス等につきましては、これは職場に働く婦人以外の者を排除するいわれもございませんので、働く婦人の家等の利用につきましても、いま申し上げたような方々の御利用ということは考えているところでございます。
○古川(雅)委員 以下お伺いをしてまいりますけれども、この福祉法案は、本法案の段階では働く婦人に与える恩恵といいますかそうした施策というのは非常にあいまいでありますし、そうした福祉施策というのは少ないわけでありますけれども、今後この法案が段階的に内容を充実さしていった場合に、恩恵を受ける範囲が雇用関係を結んで職場に働いている婦人というふうに限定をいたしますといろいろ支障が起こるのではないか、これは将来の問題でありますけれども、そういう懸念を一つ持ちます。いま一例をあげて、働く婦人の家についてはそうした範囲を設けない、どういう方でも一応働いている御婦人であれば御利用願えるというような例でおっしゃいましたけれども、どうも働く婦人ということが、ただ職場に出ているということだけに限定することには何か無理があるのではないか。いわゆる働いている御婦人の方々の実情というか、実態というものをまだ十分に掌握していないのではないかという疑問が起こってくるわけでございまして、たとえばさっき私、ずっと列挙いたしましたけれども、その一々について伺っていきますが、労働時間について、労働時間が長いとか短いとか、フルタイマーであるとかパートタイマーであるとかということについては、本法案のカバーする範囲はやはり職場に出ている出ていないことが第一義的になるわけでございますか。
○高橋(展)政府委員 おことばのとおりでございまして、フルタイマーであろうとパートタイマーであろうと、職場に出て働くという姿において対象として考えているわけでございます。
○古川(雅)委員 二番目にあげました職種でございますけれども、いわゆる事務的な作業、それから手工業といいますか、そうした仕事の内容もあると思いますし、それからいわゆる重労働といいますか、肉体労働というような仕事の場合もあると思いますし、それからサービス業という場合もあると思いますが、これもやはり職場に出て働くということが前提でございますか。
○高橋(展)政府委員 おことばのとおりでございます。
○古川(雅)委員 それから企業の内容について分けて申し上げましたけれども、その中でいわゆる農業とか自営の商店等の業務に従事している人については含まないというお答えでございましたけれども、その辺はちょっと疑問を感ずるわけでございます。そのように断定をなさったのはどういう理由によるのか。特に農家の御婦人等は確かに雇われておりませんし、いわゆる職場には出ていないわけでありますけれども、働く婦人としていわゆる労働の程度や労働の時間、そういった観点から考えますと、勤労婦人福祉法の範囲からはずされるということは何かそぐわないものを感ずるのでございますが、その辺の意図をどうお受けとめになっていらっしゃいますか。内職婦人等もずいぶんあると思いますし、その辺も含めてお答えいただきたいと思います。
○高橋(展)政府委員 おことばのとおり、農家で働く婦人あるいは商家で働く婦人等も非常に労働が過重であったり、そのほか問題が多いということは私どもも重々認識しているところでございますが、この法案におきまして進める措置と申しますものが、たとえば事業主に責務を課しまして、何がしかの配慮を要請するというふうなことであるとか、あるいは職業指導それから職業訓練というような面の充実をはかる、このようなことをこの法律では内容としているわけでございます。したがいまして、農家の御婦人が就職の機会を得るために職業指導を受けるということ、これはもちろんその段階におきましては求職者でございますから当然この法案の対象になるわけでございますが、たとえばこの法案によって農業技術あるいは商家の経営の技術を学びたいというようなことにつきましては、私たちの行政ののりを越えると申しますか、その範囲、責任と申しますか、力の範囲としてそれを越えますので、この法律におきましてはそこまではサービスがいたしかねるのではないか。 しかし、たとえばこの法律の中で地方公共団体はいろいろな相談、講習等に応ずることになっております。その相談、講習の中身といたしましては、家庭生活に関する講習、相談、あるいは職業につくために必要な教養的なこと等が入っております。またそれらの相談、講習等を働く婦人の家が拠点となっていたわけでございますが、そういうサービスに関しましては、先ほど申し上げましたように、農家の御婦人の方あるいは商家の御婦人の方にも御利用いただく、こういう考えでございまして、この法案に基づきまして今後基本方針をつくっていくわけでございますが、そういう中で展開されていきます施策との関係におきまして、この法律案におきましては雇用されて働く婦人というものを主たる対象といたした、こういうことでございます。
○古川(雅)委員 先日来の議論を伺っておりますと、まずこの法案を審議するにあたって、婦人の就労が是か非かという議論が非常に多かったと思います。特に幼児をかかえた婦人についてそれが是か非かということは、いろいろな社会的な背景が問題になってくると思いますけれども、どうも労働省としてその態度がはっきりしていらっしゃらないのではないかと思います。この勤労婦人福祉法案の立法化を目ざす背景に、いまの産業界ないし資本家のそうした要請に従って非常に低賃金で、しかも不安定な雇用による婦人を職場に引き出していくのではないか、それを進めていく法律であるという感が強かったと思います。これは、そういう議論を聞けば何かそれを目ざす立法かのような感じも強く受けるわけでございますけれども、いわゆる現在の婦人就労者、勤労婦人に対する一つの性格として第一に印象にあがってくるのは、非常に賃金の安い労働力としてそうした産業界、企業の要請によって有効に活用されている、その域を出ていない、そういう意味においてはかえってこの法案が法律としてできた場合に何がしかの不安を残すのではないか、そういう議論でございましたけれども、それについてひとつはっきりした見解を伺っておきたいと思います。
○中山政府委員 いま御指摘の、この法律が、日本の婦人に対する労働政策の基本的な問題とからみ合わせて、資本との関係はどうであるかというお尋ねであろうかと思います。労働省といたしましては、長い日本の産業発展の経過を見てまいりますと、御存じのように農業時代から工業時代、これから情報化社会というふうな社会に向かっていく、その中で、生産の場にありましては手工業から機械工業、それから経済の発展によって自動化が進むと同時に、それに並行していわゆる勤労者の所得水準が増加する、あるいは余暇が増大してくる、そういうふうな現状に到達するのではなかろうかと思います。 ここで考えられることは、勤労者の所得というものが、経済の発展と自動化の進行によって大きな企業を中心にして所得が上がっていく。大企業の所得の水準のアップにからみ合わせて、一般の中小企業の所得も上がっていることは御案内のとおりであります。 〔委員長退席、小沢(辰)委員長代理着席〕 そういうことから考えてまいりますと、勤労者の子弟がいわゆるブルーカラーとして労働市場に出ておった従来の歴史的な経過から脱却して、いま上級学校への進学の率が非常に増大していることは御案内のとおり。そういうことになってくるといわゆる若年労働力が逼迫してきているということは、御理解を賜われると思います。そういうことからからみ合わせると、さらにこのままの経済の成長、幾分のダウンがあっても、日本の経済が発展していくという過程においては、当然婦人労働力が市場に入ってくるということも否定できない現実であろうと思いますが、それを拒むか拒まないかということはあくまでも婦人の自主的意思によって判断されるものではなかろうかと思います。そういうことから考えてまいりますと、私どもはこれから十年余りの将来をいろいろ予測いたしておりますけれども、さらに婦人の勤労者がふえていく、そういう中でいわゆる育児との関係はどうなるのか、あるいはまた職場と家庭との関係はどうなるのかという点に思いをいたしまして、働く婦人たちに不安のない、いわゆる勤労者としての生活を確立するという基本的な問題にひとつ触れてみたい、こういうことでこの法案を提案さしていただいたことと考えております。さよう御理解いただきたいと思います。
○古川(雅)委員 そこでお伺いしたいのでありますが、確かに勤労婦人は漸増の傾向をたどっていると思います。かなりの見通しもお立てになった上での立法措置だという御答弁でございますけれども、今後どういうふうに具体的にしようと思っていらっしゃるのか、また、その中に占めるいわゆる既婚婦人の割合はどうなっているのか、その辺をお教えいただきたいと思います。
○中山政府委員 御案内のように、いまの一千万になんなんとする婦人勤労者の中で、未婚者の率と既婚者の率というものは、死別離婚というものの約一〇%を除いて、四百八十万人と四百二十万人ぐらいのパーセンテージを示していると了解をしております。こういう婦人たちが、将来婦人労働力というものが労働市場に要求されてくるということになってくると、結婚を前提にして離職をするということから、結婚後さらに働くという姿が出てくるのではなかろうか、そういう観点から見ていくときに、そこに出産というものが考えられてくる。今日、勤労婦人の出産の件数というものは年間二十四万件、さように考えております。そういうことから考えてまいりますと、昨日もいろいろ御審議をいただいているようでありますが、かっての電電公社の育児休職制度の問題、あるいはまた今度の教職員の問題等を含めて、将来はやはり育児の占める問題というのが大きな日本の労働政策の上での施策の一つになろうか、そういうことを考えますと、決して安易な考え方でなしに、長期的な構想に立って、今後さらに、いわゆる有夫家庭婦人が勤労市場に出てくるということで対策を立ててまいりたいと考えております。
○古川(雅)委員 この法案は「勤労婦人の福祉の増進と地位の向上を図ることを目的とする」ということを掲げていらっしゃるわけでありますが、先日来の質疑応答を伺っておりますと、具体的内容についてはいわゆる労働基準法、それから児童福祉法、それから母子保健法などの関連法規、こうした内容を上回るものでなければいけない。そうしたこれまでにあります関連法規の中で、いわゆる婦人労働者を保護する規定、こうしたものの実施を強化することが先決であって、むしろこの勤労婦人福祉法については、大臣が重ねておっしゃっているように、ベストではないけれどもベターなものであるとして提案していらっしゃるということでありますが、むしろよりベストに近づけた上で提案をしてもおそくはないのではないか、そういう議論が非常に強かったわけでございます。その辺も、ひとつ労働基準法等の関連法を含めて、今回立法なさった、またしいてここに立法を急がなければならないというその理由をお示しいただきたいと思います。
○高橋(展)政府委員 この法案と基準法あるいけその他の労働関係法規との関連ということに相なるかと思いますが、御存じのように、労働基準法は職場における労働条件の最低基準を定めたものでございますし、また職業安定法、職業訓練法はそれぞれ機能的な役割りを持つ法律でございます。それぞれの法律の中に婦人を対象とする条文が、たとえば基準法には特に設けてございますし、また訓練法その他も、婦人も男子と同様に適用を受けることにはなっているわけでございますが、勤労婦人というものを一体的にとらえまして、それをどのような位置づけにしたらいいかというふうなことから始めまして、総合的な施策を進めようという法案は、今回のこの法案が初めてでございます。したがいまして、この法案は働く婦人というものを総体的にとらえまして、その福祉のあるべき姿というものを基本理念としてはっきり打ち出して、その実現ということを国の意思として目標に掲げるというところに非常に大きな意義があると思うのでございます。したがいまして、その基本理念というものは関係の諸法律の適用にも指針を与える、こういうことに相なるわけでございます。基準法、訓練法、あるいは児童福祉法、母子保健法、そのような関連諸法律の運用にあたりましては、この法案成立の上は、この法案にいうところの基本理念というものがその施行には指針を与える、こういうことに相なります。また、勤労婦人の福祉の実現のためには、この法案だけで解決を求めるということではございませんで、他の関係法規と相まって進める、このような関係に相なるわけでございます。具体的に申しますれば、この法案が成立いたしましても、労働条件の最低基準の確保ということにつきましては労働基準法にゆだねられるところでございますし、また、職業指導、職業訓練実施につきましては、それぞれ安定法、訓練法等に規定されている一般的な規定についての施行はそれらの法律にゆだねられます。なおこの法案で、職業指導、職業訓練につきましてはさらにきめこまかな規定も加わっているところでございます。これらをあわせて施行することによりまして、勤労婦人の福祉の増進をはかってまいろう、このような考えに立つものでございます。
○古川(雅)委員 関連法に対して、いわゆる勤労婦人の地位、立場、またその保護規定というものの指針を与えるということは、この福祉法を成立させることによって関連法における勤労婦人の保護を強化することができるというふうにいまの御答弁では受け取ることができるわけですが、しかしこの間から繰り返し議論がありますとおり、この法案自身は内容が非常に抽象的な面がありますし、いわゆるベストではないわけであります。とりわけ努力規定にとどまっている条項が非常に多い。いわゆる強制規定になっていない。その辺に実効として期待できる面が非常に少ないのではないかという議論が多かったわけでございます。関連法における規定について、それを強化するというふうにはどうしても期待が持てない感じを受けるわけでございますが、その辺はいかがですか。
○高橋(展)政府委員 関連法の施行につきましては、その厳正な施行と申しますか、従来から行なっているところでございますけれども、当然それぞれの持つ法律の使命ということのために、その厳正な施行ということは今後とも私どもとしては進めるところでございますが、さらにその運用にあたりまして、今回の法案に掲げたところの基本理念というものを体して進めていただく、こういう立場に立つわけでございます。 〔小沢(辰)委員長代理退席、増岡委員長代理着席〕
○古川(雅)委員 勤労婦人に対する風当たりと申しますか、非常にきつい面も社会の一部には確かに起こっているわけですね。その一例として、御存じだと思いますが、昭和四十五年、東京商工会議所から、現在の労働基準法は女性に対して非常に過保護である、甘やかし過ぎている、そういう指摘がなされておりまして、労働省の見解を求めているわけでございます。これについてはまだ労働省から正式な見解は示されていないと思いますけれども、こうした一つの傾向も社会の一部にはあるわけです。勤労婦人の福祉を向上させる、あるいはその地位を向上するといった理念をここに強く打ち出してきた反面、かなりそうしたリアクションといいますか、それに反する意見や議論もあるのではないかと思いますが、その辺についてのお考え方を示していただきたいし、その中で、これまで以上に強力な勤労婦人に対する施策の推進ができるという、その御確信のほどがあれば、はっきりお示しをいただきたい。
○中山政府委員 御指摘は東京商工会議所の労働基準法に関する意見書に関してのお話だと存じますけれども、労働基準法ができて相当長年月たっております。現在労働省におきましては、労働基準法研究会でこの問題についての新しい取り組み方を考えておりますが、東京商工会議所から出されました意見書は、ただ単なる経済界としての意見書でありまして、国の政策に干渉できるものではない。私どもは、国としての立場で今後考え方を固めてまいりたい、かように考えております。
○古川(雅)委員 さっき局長のほうからはっきりした御答弁を伺えなかったのですが、何か答弁をぼかされたような感じがするのですが、法案の内容がいわゆる努力規定にとどまっている、強制規定にはなっていない、そういう部分が非常に多いということを申し上げましたし、これまで再三議論があったわけでございます。したがって、その効果を高めるためには、やはりこの法律がもし成立した以後においては、いわゆる努力規定から強制規定への移行ということが検討されなければならないし、いわゆる法そのものとしての強化がはかられていくことになると思いますけれども、その辺についての見通し、お考え方はどうなのか。当面これでやむを得ない、一応、成立させておいて、以後そういう方向にしていくのだ、その辺にはいろいろなからみがあるのだと思いますが、その辺いかがですか。
○高橋(展)政府委員 先ほども申し上げたと思いますが、この法案の意義と申しますか、意図といたしましては、勤労婦人の福祉の増進ということについての国の基本的な姿勢をまずはっきりと示すということが第一でございまして、それとともに事業主、地方公共団体につきましてもその責務を明らかにいたしました、いわゆる基本法的な性格というものを持つものでございます。その際、国につきましては、これはこの法案で国の責務を書きますことによって、国みずからはもちろん拘束されるわけでございますが、御指摘の点は、事業主についても訓示規定では実効があがらないではないか、このような点であるかと思います。おっしゃいますとおり、事業主の責務につきましての規定は、この法案におきましてはいわゆる訓示的な規定でございます。これは私どもといたしましては、勤労婦人を雇用し、その労働力を管理、支配するところの事業主というものについて、勤労婦人の福祉に関する多くの責任というものをとっていただきたいという要請に出たものでございますが、それはしかし、何と申しますか、勤労婦人の勤労の態様、あるいは勤労婦人自体の属性等が非常に多様化しております今日、一律にきつい要件の義務というものを事業主に課すよりも、ゆるい努力規定ということの中で、きめのこまかい、幅の広い配慮を求めるということがより効果的なのではないか、このように考えておるわけでございます。しかも、もちろん訓示規定ではございますが、ということは罰則等は伴わないわけでありますが、法律という形で国の意思として事業主に努力義務を課すということは、その求められた配慮を行なわない場合には、事業主は、道義的なものではございますが、努力義務違反、そのようなことに相なるわけでございまして、単なる行政指導とは異なって、国の意思を明示するということで効果というものを期待してまいりたいと思いますし、もちろんまた、この法案が成立の上は、私ども行政機関といたしましては、この法律の期待するところの配慮というものを事業主が行ないますよう、それに対する指導、助言等をいたしまして、実効をあげてまいりたい、そのように考えております。
○古川(雅)委員 そこにこだわるわけではないのですけれども、いわゆる訓示規定あるいは事業主に対する要請というような形にとどまっているわけですね。その理由はいまずっとおあげになったわけでございますが、これを裏返していえば、いわゆる法的な強制規定を強化できないということには、これを強化すればいわゆるその逆作用として、婦人の就労の機会と申しますか、それを妨げることになるのではないかという、そういう危惧、それからまた事業主が弱小であり、あるいは零細である場合に、そうした婦人労働者を雇用することができなくなっていくという、企業としての限界、その辺を踏まえて、そしていわゆる強制規定には踏み切れなかった、訓示規定にとどまっているというふうな考え方も私たちできるわけでございます。その辺ははっきりおっしゃいませんでしたが、いかがなものでしょう。
○高橋(展)政府委員 そのような点につきましても、条項によりましては十分に検討をいたしたことはございます。それともう一つは、強行規定にいたします場合には、やはりその要件を非常に厳格に定めなくては、強行規定としては書けないわけでございますが、ここの法律で期待しておりますところの事業主の配慮は、むしろ幅の広い配慮というものを求めよう、こういう姿勢でございますので、そのことも含めて、それからいま言われました逆選択と申しますか、そういうこともあってはならない、その面も含めまして、このような形をとることにいたしたわけでございます。
○古川(雅)委員 そこで先ほど来事業主ということばがたくさん出てまいりましたが、本法案は事業主という表現で規定しておるわけでございます。非常につまらないことをお伺いいたしますけれども、労働基準法では使用者、先般審議をいたしました安全衛生法などを例にとりますと、事業者といういい方をしております。また勤労婦人につきましても、いわゆる公務に携わっている公務員もいらっしゃるわけでありますが、その辺の事業主ということになるとどうなるのか、この辺の定義をひとつはっきりしておいていただきたいと思います。
○高橋(展)政府委員 本法案におきまして「事業主」という用語は、事業の経営の主体という意味で使っております。すなわち企業主あるいは法人そのものをさしているわけでございます。一方労働基準法でいうところの「使用者」は、事業主のほかに、工場長であるとか、支配人であるとか、あるいはもっと下のと申しますか、第一線の労務担当部長等、あるいは労務担当の班長等も含めまして、労働者に関する事項について使用者の代理をつとめる者を含めまして使用者ということばを使っているようでございます。この法案で特に使用者といたしませんで、事業主といたしましたのは、この法案が基本法的な性格を有するものでございまして、個々の第一線的な使用者の配慮、判断というよりは、その事業の経営主体、トップに配慮を求める、こういう姿勢で考えておりましたために、このような用語を用いたわけでございまして、これはこの法案の姉妹法とも言うべき、一昨年成立を見ました勤労青少年福祉法の場合にも、同じように「事業主」の配慮を求める、このようにいたした、こういうわけでございます。 それから、お尋ねの第二点で、公務員の場合どうなるのかということでございますが、この法案の事業主という用語には、公務員を雇うものとしての国、地方公共団体も含まれているわけでございます。
○古川(雅)委員 条文に入ってまいりますが、第五条の「啓発活動」の中に「勤労婦人の能力の有効な発揮を妨げている諸要因の解消を図るため、必要な啓発活動を行なう」、このようになっているわけでございます。いわゆる勤労婦人の能力の有効な発揮を妨げているという、その諸要因ですね、これは具体的にはどのように認識をなさっていらっしゃるのか。婦人の就労に関する懇話会の報告の中にも若干触れられていると思いますけれども、その点を端的にひとつお示しをいただきたいと思います。たとえば、勤労婦人の能力発揮を妨げている要因の中に、女子の若年定年制あるいは結婚、出産による退職制、そういったものが指摘できると思いますけれども、これを啓発していくという、啓発活動を行なっていくという、これは何か非常に弱いのではないか、啓発というだけでそうした妨げという諸要因の解消をはかることができるのかどうかという、そうした一つの疑問が起こってくるわけでございます。啓発活動についてひとつ御説明をいただきたいと思います。
○高橋(展)政府委員 第五条で「勤労婦人の能力の有効な発揮を妨げている諸要因の解消を図る」と申しているところでございますが、この能力の発揮を妨げている諸要因、これは非常にたくさんあるわけでございますが、特に啓発活動の対象として考えておりますことについて申し上げますと、啓発活動の対象でございますから、これは人々の考え方の問題というところに大きな点があるわけでございます。今日勤労婦人が職場においてその能力を十分に発揮できないというように考えられますところの問題といたしましては、やはり基本的には婦人の労働というものに対する評価、あるいは婦人が働くということに対する認識というものが一般的に十分でないということ、また、従来、長いこと女子が職場においては少数であり、一時の間に合わせ的労働力としての働き方ということが長いこと続いてきたわけでございますので、そのようなイメージというものが今日においてもなお残っておりまして、これだけ婦人労働が重要な役割りを果たしていながら、それに対する正当な認識というものが欠如しております。この点にいろいろな職場における不公平な待遇であるとか、あるいは制度、慣行等の原因があるように思われるのでございます。その点を是正してまいるというためには、これはやはり根気よく啓発活動と申しますか、それを続けることによりまして、人々の理解、認識を深めるということが先決ではないか。若年定年の問題、結婚退職の問題につきましても、これはやはり女子というものは若い間一時的に働くものだという先入観がまずあって、それにももちろん他の要因もからみますでしょうが、まずその先入観があるわけでございますので、そこを改めてもらう、そして今日において、あるいは今後において婦人の勤労に期待されることが非常に大きいということについての認識を、職場における使用者はもちろん、社会全般にも深めてもらう、そのための啓発活動というものをいたしたいと思いますし、これはそれなりの効果というものは期待できると思っております。
○古川(雅)委員 そうしますと、この啓発活動については、いわゆる本法でうたっております事業主に対する一つの意識変革といいますか、啓発も含めて、社会全般に対する勤労婦人の現在置かれた立場そのものに対する意識変革を求めていく、考え方を啓発していく、そういう目的になるわけでございますね。先ほど申し上げましたとおり、これはそうした勤労婦人の能力の有効な発揮を妨げている諸要因を取り除いていく、解消をはかるための措置としては非常に弱いのではないかという指摘、これははっきりお認めになりませんでしたけれども、根気強く繰り返し、時間をかけて啓発をしていくのだ、そうすれば、必ずそうした諸要因を取り除いていけるという御確信に満ちているようでございますが、具体的にどういう啓発活動から本法成立後お始めになっていくのか、それをまずお示しいただかないと、その辺がどうもはっきりしないのですが、いかがでしょう。
○高橋(展)政府委員 本法が成立いたしますと、まず本法第六条の定めるところによりまして、労働大臣が基本方針を策定するということになっているわけでございます。基本方針を策定いたしまして、その中で今後数年にわたるところの施策の展開についての展望というものを明らかにしてまいるわけでございまして、具体的には、その基本方針の中に啓発活動につきましても明記されてまいる、このようになるわけでございますが、考えておりますことは、それは常時活動といたしまして、事業主あるいは社会一般に対するところの相談あるいは指導といった活動、それから一定時期を限ってのキャンペーンのようなもの、それからまた特に働く婦人自体を対象といたしましての講習、そのようなものを手段的には考えているところでございます。
○古川(雅)委員 いまここで問題になりました若年定年制やあるいは出産による解雇等については、最近法廷闘争でやはり違法だという判決がしばしば下っておりますし、法の上では一応そうした厚い壁が取り除かれてきつつある、そういう障壁がくずれつつあるというふうには理解できるわけでございます。しかし個々の職場の現実の中では、非常に陰に陽に圧力がかかってきている、それが非常に長い間潜在しているわけでありまして、これを取り除いていくという観点から見てまいりますと、いわゆる啓発活動というようなことでは、それは全く否定するわけではありませんけれども、今後長い期間にわたって粘り強くそれを繰り返していくということは確かに大事な要素の一つでありますけれども、現実の問題としては、啓発活動あるいは訓示規定、努力規定の羅列では非常に無力ではないか、全く無力にひとしいのではないかという感じを受けるわけでありまして、ここでもこうした若年定年制や出産解雇等の障壁を取り除くためには、やはり福祉法におきましても強力な条項に改めるべきだという議論がここにまた出てくるわけであります。その点、いかがですか。
○高橋(展)政府委員 またこれも繰り返しで恐縮でございますが、この法案では基本理念といたしまして、これからの勤労婦人の福祉というものの目標といたしまして、婦人が能力を有効に発揮して充実した職業生活を営むことができるようにするということを明示しているわけでございまして、そのためのいろいろな施策も進めてまいろう、こういう組み立てになっておるわけでございます。先ほどのお尋ねの啓発活動というものもその一環として進めるわけでございますし、また勤労婦人の能力の有効な発揮のためにはまた、勤労婦人自身の能力を高めて、そしてそれに対する一般の理解、認識を求めるということもきわめて重要でございますので、七条、八条におきまして勤労婦人の能力を高めるためのきめのこまかな措置もここでうたっているところでございます。そのようにいたしまして、片や行政指導を通じまして、いわゆる若年定年であるとか、結婚退職等につきましてはその改善方を進めてまいる、このようにいたしたいと考えているところでございますが、若年定年あるいは結婚退職につきましても、これは私どもの調べたところによりますと、その制度を行なっております事業所のうち、それを文章による契約として行なっておりますところはきわめて少ないわけでして、慣行的に行なっているというようなところが多いようでございます。そのような慣行というものにつきましては、啓発あるいは行政指導で改めていただくということが可能でございます。また文章によるそのような制度を設けておられます場合には労働協約の形をとっているところが多いわけでございまして、このような場合は事業主のみではございませんで、労働組合双方に対してこの問題について理解を求めなくてはならない、そういうことにもなるわけでございますので、啓発活動、行政指導ということに、よりなじむ問題ではないかと思います。
○古川(雅)委員 その点では、今後労働協約の締結、あるいは出産解雇等の問題や強制的な若年定年というような問題が起こった場合には、本法が一つの基準を示すことにはなると思いますけれども、実際問題として、そうした問題が起こって、労使間に対立状態が起こったときに、本法によって働く婦人を守る立場での効力がどれほど期待できるか、そういう声が聞かれたわけでございます。実際そういう問題が起こって、本法をそこに引き出してみなければわからない。いわゆるケース・バイ・ケースということもいえると思いますけれども、その辺についてのお考え方はいかがでしょうか。実際労使間にそういう若年定年制とかあるいは出産解雇というような問題が起こって、いわゆる訴訟問題に至る前に、勤労婦人福祉法をもって、こういう基本理念があるんだからどうこうというような効果を期待できるかどうか、その辺はどの辺まで見通されて提案されていらっしゃるかお示しいただきたいと思います。
○高橋(展)政府委員 初めに申し上げましたように、この法律案は勤労婦人というものを一体的にとらえまして、勤労婦人の福祉というものはどのようにあるべきかということを初めて法律の形で明確にいたすものでございます。勤労婦人が男子と違うところの特質を持っているということにかんがみまして、職業生活と家庭生活との調和をはかる、そしてまたその能力を有効に発揮して充実した職業生活を送る、そのような配慮がなされるべきであるということを、この法律で初めて宣言をいたしたわけでございます。そういう意味で、従来は若年定年の問題等につきまして、労働行政としてはもちろん行政指導という形はとっておりましたが、法律という形で、国の意思として勤労婦人のあるべき姿というものが宣言されるということは非常に大きな意味合いがあるのではないかと思います。もちろんこのことが周知されなくては意味がございませんので、私どもは法案成立の暁は、いろいろな手段を通じましてこの法律の内容の周知、特にここに掲げております基本理念の周知ということには努力をしてまいりたいと考えております。
○古川(雅)委員 勤労婦人の職業生活と家庭生活の調和をはかるというその基本理念、基本理念としてはよくわかるわけでありますけれども、職業生活と家庭生活の調和をはかるということは、単なる理念にとどまる問題じゃない。これは繰り返しいわれてきていることでございます。したがって、具体的に一体その基本理念がどういう効果を及ぼして勤労婦人の職業生活なり家庭生活を高めていくことになるかということが問題にされているわけでございまして、たとえば労働基準法の中の最低基準の引き上げについては、本法案には私は明記されていないというふうに記憶いたしておりますけれども、この辺はどうなんでございますか。最低基準の引き上げ、改正をはかるべきであるということが理念の中にはっきりしてこなければならないというふうに私は思うのでございますが、局長としてはいかがお考えでございますか。
○高橋(展)政府委員 労働基準法の規定の改正の問題につきましては、数年前から労働省の中に労働基準法研究会が設けられまして、基準法全般にわたる検討が行なわれております。労働基準法が制定されてから四分の一世紀になるわけでございまして、いろいろと新しい問題なども考えられ、また社会一般からも御意見がいろいろあるところでございまして、先生の御指摘のような御意見等も私ども伺っておるところでございます。それらを含めまして労働基準法の規定の総点検のようなことにつきまして、研究会をわずらわしておる段階でございます。研究会の御報告を待ちました上で、改正が必要であるならばまたこれは審議会等におはかりをして改正の方向を考えてまいる、そのようなことになるかと思います。
○古川(雅)委員 そうしますと、たとえば産前産後の休暇、これについてはいま労働基準法で最低の基準を設けておるわけでございまして、さしあたって本法が成立して最低基準を引き上げていくというようなことは、本法を提案する立場から、この際強力に労働省内で調整をして働きかけていくという動きはないのですか。
○高橋(展)政府委員 先ほど申し上げました基準法研究会のほうの進行の段階といたしまして、ただいまから婦人の保護に関する問題に具体的に入っていくという段階でございますので、現段階におきましてはこの問題は直接議論の対象とはなっていないところでございますが、この法案で基本的理念としてこれこれのことがうたわれております以上、この法案が成立の上は、基準法を検討する場合にもこの理念というものを踏まえた御検討ということが期待できるのではないかと思います。
○古川(雅)委員 意地悪く言えば、一つの参考資料に供される程度だというふうにも受け取れますが、ちょっと言い過ぎでしょうかね。むしろこの法を提案する前提として、本法が成立すれば具体的にこうした労働基準法の中で勤労婦人の最低の労働基準についても、こういう引き上げが期待できるのだ。ただあなたまかせの、そちらにあとおまかせして検討願うということだけでは非常に消極的だというような感も受けるわけでございます。その辺はいかがでございますか。高橋(展)政府委員 ことばが足りなかったかもしれませんが、現段階では研究会で基準法の問題を総体的に御検討中でございまして、その御研究をお待ちしているという段階でございます。その御研究の結果を御報告いただく、そしてその結果改正が必要であるとなれば、また審議会等へおはかりしながら検討してまいるというわけでございますが、そのような際、私どもの取り組む姿勢といたしまして、もちろんこの法律ができます場合には、ここに掲げる基本理念を踏まえた取り組みをすることは当然でございますし、また審議会の先生方あるいは研究会の先生方もこれを踏まえて御検討いただくことが期待できるのではないか、このように申し上げたわけでございます。
○古川(雅)委員 本法案のポイントでございます「育児に関する便宜の供与」、これは第十一条でございますが、第四条には(関係者の責務)として、国及び地方公共団体、事業主の責任がはっきりと規定されておるわけでございますが、この十一条に限ってはいわゆる事業主の規定だけで、国及び地方公共団体の措置については全く触れられていないわけでございます。これまでも御指摘がありましたけれども、これについてひとつはっきり御答弁いただきたいと思います。
○高橋(展)政府委員 御指摘のように、第四条におきましては、事業主、国、地方公共団体、それぞれが関係者として責務を有することを明記いたしております。十一条におきましては、これは事業主の責務と申しますか、努力義務として育児に関する便宜の供与をうたっているところでございます。十一条で事業主の配慮を求めたゆえんは、事業主は勤労婦人をじかに雇用いたしまして、その労働力を管理、支配と申しますか、そういう立場でございますので、十一条におきましては事業主の労務管理というものを通しまして、勤労婦人のために便宜の供与を行ない、福祉を増進するように、その努力義務を規定いたしたものでございます。この法案は、国それから地方公共団体、事業主がそれぞれの立場で勤労婦人のための福祉対策を講ずることを促しておるわけでございますので、具体的な措置の内容によりまして、それを進める主体が異なってくるのは別に片手落ちといいますか、そういうことではございませんで、十一条の場合も、この配慮を求めるのは事業主がまず第一義的にあるわけでございまして、ここに書いたわけでございます。ただ、この十一条も含めまして、事業主がいろいろ努力をする、それに対して国は傍観しているという趣旨ではございませんで、十五条に(国の助言等)という規定を設けております。それにごらんいただきますように、事業主を含めまして、勤労婦人の福祉を増進するための事業を行なうものに対しましては助言、指導その他の援助を行なうということにいたしているわけでございまして、第一義的には事業主に配慮を求めますが、その事業主の行なう配慮につきましての助言、指導は国が行なってまいりたい、このように考えております。
○古川(雅)委員 事業主とはっきり書かれておりまして、そこに国及び地方公共団体ということが明記されていないということについてお伺いをしたわけでございますが、これは母子保健法に定められておりますいわゆる保健指導や健康診断についても、事業主については時間その他の配慮につとめるように規定されているわけでございますが、これも同じように国、地方公共団体については明記されていなかったように思いますけれども、これも同じ理由でございますか。
○高橋(展)政府委員 私ちょっと聞き違えたかもしれませんが、母子保健法自体には、事業主に対する配慮ということは規定がございません。したがいまして、この法案におきまして初めて事業主に対してその配慮を記載いたしたわけでございます。
○古川(雅)委員 ということは、先ほどの場合と同じですか。母子保健法で定められているこうした保健指導や健康診断については、やはり事業主の責務が定められておりますね。だけれども、そこでも国と地方公共団体は明記されていない、これは先ほどの場合と同じかと言っているのです。
○高橋(展)政府委員 十一条の場合と全く同じでございまして、九条、十条におきましては事業主の努力を要請いたしておりまして、特に国、地方公共団体について触れておらないわけでございますが、しかし十五条はやはり同様に受けますので、このような事業主の努力に対しまして国としては指導、援助をいたしてまいりたい。たとえば九条、十条につきましては、健康の管理につきましての指導の方針等を明らかにいたしまして、行政指導の形で関係機関と協力の上進めてまいる、こういう考えでおります。 〔増岡委員長代理退席、橋本(龍)委員長代理着席〕
○古川(雅)委員 次に、授乳のための設備、乳幼児の保育についての便宜の問題でございますが、先ほど政務次官のほうからは、いわゆる働く婦人の出産は二十四万人というふうに掌握していらっしゃるというお話がございましたけれども、いわゆる勤労婦人の出産後の実態、これはどの程度掌握されているのか、たとえば働く婦人が出産をする、それが総数が大体二十四万人とつかんでいらっしゃるのか、出産後退職する方もいらっしゃると思いますし、それから職場にとどまる方もいらっしゃると思います。職場にとどまった場合、乳幼児をかかえた御婦人が、その生まれた赤ちゃんをどうしているか、その辺の実態の掌握ができておりましたら御説明をいただきたいと思います。
○高橋(展)政府委員 必ずしも御質問の全体にわたって詳細な掌握は行なわれていないわけでございますが、出産件数につきましては、これは各種健康保険における出産手当の支給状況等から推測いたしまして二十四万人、最近ではもう少し高いようでございますが、それが考えられております。 それからその子供を産まれた方がその後仕事を続けるか続けないかということは、個々人について調査をしたものはないわけでございますが、結果的に、子供を持ちながら働いていると考えられる方々、これは乳幼児と限りませんのですけれども、学齢前の子供があると考えられる方が大体勤労婦人の一割程度でございます。それから勤労婦人に子供がある場合、その子供の保育というものをどのようにしているかという点でございますが、これは年齢によっていろいろでございます。ゼロ歳の子供につきましては、約半数は家庭の中で家族が見ておるという数字が出ているようでございます。それからいわゆる保育所に預けている、これは無認可も含めますと、八%がそのような施設保育をしているようでございます。その他は近所に預けているというような形をとっているようでございます。で、年齢が少し高くなりますと、保育所に預けているという割合が高くなっているような傾向が見られます。
○古川(雅)委員 十一条ではその辺の便宜をはかることについての規定を非常にぼかしているという感じを受けるわけでございますが、婦人少年問題審議会の答申の段階では「授乳のための設備等乳幼児の保育のための便宜を供与するよう、実情に応じた配慮をする」あるいは「乳幼児の保育についての便宜等の供与を行なうにあたっては、児童福祉の理念が生かされるよう配慮されなければならない。」というふうに述べられているわけであります。これはどうなっているのか。それからいわゆる勤労婦人の出産後の実情については、非常に概括的な数字をお示しになったわけであります。確かにつかみにくい非常に流動的な実態でおるということはよく理解できますけれども、この辺については非常に認識も浅いし、本法案の規定も何かあいまいだという感じを受けるわけでありますが、これはどうなっているのでしょうか。
○高橋(展)政府委員 お尋ねの中で婦人少年問題審議会の答申との差異という点があるように伺ったわけでございます。おことばのとおり審議会からちょうだいいたしました答申には「授乳のための設備等乳幼児の保育のための便宜を供与する」というようになっております。育児休業もそうでございますが、この法案では育児休業だけを例示として用いまして、授乳のための設備というほうは明記いたさなかったわけでございます。しかしこの「その他の育児に関する便宜の供与」という表現の内容といたしましては、答申に明示されております授乳のための設備の設置も含んでおりまして、またその他のものも含めてより広く表現をいたした、このような次第でございます。
○古川(雅)委員 育児休暇中の所得保障の問題がいろいろと議論されてまいりましたけれども、いわゆるこうしたはっきりした育児休暇中の所得保障の制度なり体制が確立されるまでのいわゆる過渡的な措置として、何か考えられないかというそういう意見もあったのではないかと私は思いますが、たとえば育児期間中の一定期間、その働く御婦人の身分は常用のままでいわゆるパートの勤務体制をとれるとか、そういうふうに定時制社員制度といいますか、そういった考え方もこうした「育児に関する便宜の供与」という解釈の中に入れることができるのじゃないか。一例でございますけれども、この辺はどのようにお考えになっていらっしゃるか。育児休暇中の所得保障、この辺についてお考え方をはっきりお示しいただきたいと思います。
○高橋(展)政府委員 ただいまおことばにありました定時職員制度でございますか、いわゆる身分はそのままにして勤務時間を短くするというようなやり方でございますね。 〔橋本(龍)委員長代理退席、小沢(辰)委員長代理着席〕 これなどは育児についての事業主の配慮として非常に有効なものであるかと思いまして、行政指導の面ではそのようなことを進めてまいりたいと思います。
○古川(雅)委員 そうすると今回のこの法案の審議にあたっていろいろ議論された、これは私ども新聞の上で理解しているわけでありますが、いわゆる育児休暇中は有給にすべきか無給にすべきかという議論、この辺はどうも労働省としてのお考え方がはっきり新聞報道の上では出ていなかったように思うわけです。その辺の姿勢からまずお考えをお示し願いたいと思います。 なお、有給でいいんだというような決断がはかりにくい、決断を示しにくいというのであれば、いま御答弁いただきました過渡的な措置というものは、それ以外にもっといろいろお考えになっているのか。たとえば児童手当制度、現行制度ではいろんな制約があるわけであります。これを勤労婦人については特例を設ける措置とか、これは厚生省とのお話し合いになっていくわけでありますけれども、あるいは失業保険について特段の措置を考えるとか、あるいはまた母子保健法の中で考えられることでありますが、ミルク代の支給というような考え方、そういういろいろな考え方がここに出てくると思うのであります。有給か無給かという議論もひとつはっきりさしていただきたいし、あわせてそうした考え方が確立してないそれまでの期間の過渡的な措置として、この育児休暇中の所得保障をどう具体的にお考えになっているか、その辺をお示しいただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。
○高橋(展)政府委員 本法案におきましては、育児休業につきましては有給とも無給とも規定いたしませんで、もっぱら労使の自主的な決定にゆだねているところでございます。といいますのは、この法案は全産業、全企業を対象といたしたものでございますので、一律にこれを有給と規定するということは中小企業、零細企業等の実情から見てはなはだ無理であること、あるいはまた婦人労働者にとりましても、いろいろその雇用機会を狭めるというような影響も考えられるのではないかというふうな考え方から、労使の自主的決定で、そこはその事業所の実情に応じたやり方でお進めいただこう、こういう趣旨で有給、無給ということに触れないという線を出した次第でございます。 なおその際、休業中の所得の問題につきまして、ただいま先生からいろいろ御示唆もあったわけでございますが、そのような考え方もあるかとは思いますが、非常に大きな問題でございますので、私どもとしてはここではお答えいたしかねるわけであります。
○古川(雅)委員 大臣、いま育児休暇中の所得保障の問題をお伺いしたわけですが、局長もおっしゃっているように、非常に大きな問題であります。いま私は、その有給、無給という問題の決断をつける以前の、いわゆる過渡的措置としていろいろ考えられるのじゃないかというようなことで二、三例をあげたわけでございますが、そういうことも含めて今後どうお考えになっているか。ということは、育児に関する便宜の供与について育児休業の実施を本法案は特に取り上げたわけであります。これは何ら働く婦人にとっての身分あるいは所得の保障については規定されていないわけでございまして、むしろこれが今後逆作用によって、一時帰休とかあるいは出産による退職というような事態も生みかねないという心配も一面にはあるわけでございます。やはりこれは、育児休暇中の所得の保障については十分な配慮がここでは必要ではないか。一つの制度を確立するということも当然でありますけれども、さしあたってやはりできることからいろいろ考え方を示して、各省との連絡等もあろうと思います、これは非常に大きな問題になると思いますが、労働大臣いかがですか。
○塚原国務大臣 育児休業ということばが法律にうたわれたのは、私は今度が初めてだというふうに考えております。いま局長が御答弁いたしましたように、有給、無給と規定してあると、これはちょうど繰り返すようになりますが、この法律というものは全企業、全産業を対象としておりますし、それぞれの会社の内部事情等もあるでしょうし、ことに中小企業、零細企業等においては、いま先生御指摘のような、これをかりに有給とするというようなことがあるとすれば、これは非常な負担になるというようなことも当然出てくると思います。また日本の今日の実態から考えまして、これを有給、無給ということはあえてこの際は書かなかったのも、そういうところに理由もあるわけでございます。と同時に、たとえばかりに有給ということを書いたならば、せっかく女性が職場に進出しようというものに対して、これをチェックするような傾向も、私はあるいは出てくるんではないか、そういうことはまた、働く一つの権利というもの、働く方に対する非常な御迷惑をかけるようなことにもなるというふうにも考えております。 なお、前にも申したと思うのですが、過般衆議院の教特法、これは両院を通過いたしましたが、そのとき参議院の文教委員会において、例の教職員のこの問題が大きな論議の対象となった。いまもってこれが議論されて、案が提示されたということを聞いておりますが、このときに今度はこれに看護婦さんとか保母さんとかいうものを加えろべきだというような議論が各党から出されておるということを聞いておりますし、それだけやはり大きな問題が含まれておると思います。この法律があえて規定しなかったのは、有給と無給とを書かなかったのは、以上のような理由によるわけでございます。最後の教職員の場合は、これはちょっとつけ加えたことで、御質問になかったことでございますが、関連として申し上げたわけでございます。
○古川(雅)委員 働く婦人の職場生活と家庭生活の調和をはかるというその基本理念でございますが、いわゆる勤労婦人福祉対策の基本方針といいますか、その検討の材料に一つ考えられることがありますけれども、これは海上労働科学研究所の神田道子先生の御説が非常に示唆に富んでいるものではないかと思います。ここでは、特に能力のすぐれた少数の女性だけが能力を発揮するというのではなくて、一般の人たちが能力を発揮できるようにするために、いわゆるだれもが同じスタートラインに立てるような状態をつくるべきである。そのためにいわゆる勤労婦人にとって必要な最低条件という、神田先生はこれをウーマン・ミニマムということばを使っていらっしゃいますが、その策定を提唱していらっしゃるわけでございます。当然この辺も御検討なさっていると思いますが、当局としては、この辺の御見解、いかがなものでしょうか。
○高橋(展)政府委員 神田先生の御意見というものは、申しわけございませんが直接は拝見しておりませんですが、お考えはかねがね伺っておりますので、私どもの考え方と離れるものではないと、このように理解いたしております。
○古川(雅)委員 先ほど来育児の問題を伺ってきたわけでございますけれども、いわゆる働くおかあさんが乳幼児を職場に連れていって、一緒に働いているという場合がたくさんあると思います。これは職場の種類によってずいぶん違うと思いますが、ある場合には非常に有害物、危険物を取り扱っている作業場にそうした乳幼児を置くということも当然あるわけでありますけれども、こういったことも育児休暇中の所得が保障されない限り、どうしてもやむを得ずそうせざるを得ないという人も非常に多いのではないかと思います。先ほど乳児のための設備あるいは保育等の便宜ということについての規定についてお伺いをしたわけでございますけれども、この辺どうお考えになっていらっしゃるか、これは今後非常に大きな問題になると思います。現に私ども見てまいりましたところでも、おかあさんの働いている、小さな家内工業のようなところでございましたけれども、ベンゾール類を扱っている工場で、おかあさんと一緒に職場に来て放置されているというようなことがあるわけでございます。これはただ単に事業主の責任だ、あるいは事業主に対して勧告をしておくということだけでは、放置できない問題だと思いますが、その辺はいかがお考えでございますか。
○高橋(展)政府委員 働く母親が乳幼児を自分の職場に連れていって就労中そばに置いておくというケース、これは大都会また大きな企業等ではほとんど考えられない状態でございますが、地方などに参りまして小さな規模でやっておりますところでは、ないことではないようでございます。先ほどちょっと触れました婦人労働者の就労中の保育状況の中でも、本人と一緒にいる、本人のそばに置いておくという声が、若干でございますが出ている状態でございます。その場合御指摘のように、そのことは非常に有害でございますし、また母親といたしましてもおちおち仕事もできないという、母子双方にとってたいへんに残念な事態だと思います。そのような状態を解消してまいりますためには、やはり乳幼児を預かる適正な施設の増設と申しますか、それが非常に必要なことではないかと思います。で、施設といたしましては、地方公共団体が設置いたしますところの保育所、これが各地域に設けられているところでございますが、それの増設を一そう求める声は強いわけでございますし、また企業の立地条件等によりましては、あるいは企業主の努力で、みずからの労働者のための福祉施設として設置するということもあり得るかと思いますが、しかしそのことを法律ですべての事業主に要請するということは、これは無理と申しますか、合理的でないと思いましたので、この条項には規定していないわけでございます。
○古川(雅)委員 その辺の表現をぼかされたところが、非常に問題であると思いますし、先日来大臣がおっしゃっているように、本法案がベストではないというゆえんではないかと思います。これは今後の大きな問題として残っていくと思いますが、時間がございませんので次にどんどん進めさせていただきますけれども、いわゆる働く婦人としての能力の再開発といいますか、第八条では職業訓練についての規定があります。いろいろ申し上げたいのでございますが、端的に二点伺います。 まず職業訓練の場所の問題ですけれども、いわゆる女子のための施設について、これは現状では非常に弱体である、全くそうした設備が考慮されていない。小さなことでありますけれども、更衣室とかトイレの問題等もあると思いますが、その辺は今後予算の上でもかなり強化されていかなきゃならないと思いますが、その辺の見通しはいかがでありますか。 もう一点は、いわゆる職業訓練のカリキュラムの問題ですが、これは訓練年限というのがきちんといま定められておりまして、これがいま非常に実情に即さない問題が多いと思います。その非常に無理なカリキュラムのために、そうした婦人が職業訓練を受ける機会を逸しがちである。具体例を申し上げるまでもないと思いますが、今後その辺についての配慮も当然必要ではないかと思いますが、この二点についてお伺いいたします。
○山口説明員 御質問の点につきまして、勤労婦人に対しまして、教科、期間など柔軟な内容につきましてとるべき訓練、養成の柱といたしましては、勤労婦人に対しましてたとえば短期の職業講習等も含めまして、御指摘のように無理なカリキュラム等もなるべく考慮いたしまして、きめこまかな施設の設備の改良など、弾力的に職業訓練の受講をされる方々の希望に即したような配慮をするよう実施をいたしたいと思っておるわけでございます。予算面につきましても、現在の予算の範囲内で、あるいはまた今後できることにつきまして努力しております。
○古川(雅)委員 具体的にお伺いしなければなりませんけれども、そのカリキュラムの中で訓練年限ががっちりきめられているわけですね。非常に柔軟性がないわけでございます。たとえば大工さんの訓練の場合には、高所労働のため女性はだめであるというふうに、初めからあきらめてしまうわけでありますけれども、そういう部分を除いた場合にはけっこう役に立つ場合もあるということ、これは一例にすぎませんけれども、そういう場合も起こってくると思います。 〔小沢(辰)委員長代理退席、橋本(健)委員長代理着席〕 それから、御婦人に多い裁縫等のコースも、全コースを終了しなければ卒業させないというふうになっておりますけれども、これも部分的に終了して、その一部についてマスターすれば修了と認めるということにならなければ、非常に支障が多いのじゃないかと思います。とにかく長期間定められて、一定期間訓練校に入所したりすることは非常に無理だという声が高いわけでございますけれども、そういうことでは具体的にどうなっておりますか。
○山口説明員 婦人の職業、能力開発、向上のために、御指摘のように種々な配慮をいたさなければなりませんが、訓練コースが非常に多様化しております。そういった婦人の受講希望者の多い訓練科目、たとえばタイプ、経理事務、洋裁、縫製、そういったような訓練科目につきましては、女子向けの職種の訓練科を増設し、一般職種につきましても、受講を希望する婦人を受け入れるような職業訓練を実施しております。施設の増設等につきましても、それからまた婦人のためのきめこまかな配慮につきましても十分に考慮しつつ、職業訓練のカリキュラム等も実施してまいっております。
○古川(雅)委員 時間になりましたので、最後にパートタイムについてお伺いして質問を終わりたいと思います。 最初にお伺いしましたとおり、本法ではフルタイマーとかパートタイマーという、その辺の関係はないのだ、いわゆる職場に出て雇用関係を結んでいる働く婦人を対象にしているのだ、そういう御答弁をいただいたわけであります。特に勤労婦人の中で、パートタイマーがいま年々増加していると私は思います。パートタイムの雇用の定義といいますか、その辺もまだ非常にあいまいじゃないかということが一つ。現在パートタイムについては、労使ともに臨時雇い的な感覚が非常に強いわけであります。パートタイムについての明確な定義がなされなければ、いろいろ矛盾の解消ということには事がむずかしいのじゃないかと考えますので、ひとつお伺いするわけであります。たとえばパートタイムであるがゆえに社会保険、これは健保とか労災、失保、厚生年金等、そうした社会保険に加入させないとか、あるいは昇給、賞与の問題、あるいは有給休暇の問題、それから手当の問題、雇用関係ですから労使間の話し合いになるでしょうけれども、いわゆるパートであるがゆえにいろいろな支障がここに起きてきておるのじゃないか。そういう意味も含めてパートタイムについての定義をはっきりなさったほうがいいと思うし、特に勤労婦人に多いわけでありますから、本法案の成立によって何らかその辺の方策というものが明示されていいのではないかと思います。その辺の御見解をお伺いしたいと思います。 最後に、新聞で御承知のとおりでございますが、沖繩のいわゆる特殊婦人の問題がこの間から非常に議論されております。これは本法案からすれば、働く婦人とはいえないわけでありますし、どの範囲に入れるかなんということは非常にむずかしい問題になってくるわけであります。現に借金や病気やあるいは暴力団に苦しみ、なかなか更生もできない。しかもこの報道によれば、少なくとも常習者は七千六百人くらいいるであろう。潜在者を含めれば一万人はいるはずだ。しかもその四〇%が母子家庭の母親であるというような実情が紹介されているわけであります。働く婦人としてはとらえにくいという面もあると思いますけれども、こうしたことに対してもやはり婦人少年局としては傍観しておることではない。何らかの方法は当然お考えになっておるのじゃないかと思いますが、その辺の御見解をお伺いしておきたいと思います。 時間でございますから、私の質問はこれで終わります。
○高橋(展)政府委員 初めに、パートタイマーの定義についてお答えいたします。 御指摘のように、確かにわが国におきましては、パートタイマーの定義というものがだいぶ混乱をいたしているようでございます。と申しますのも、わが国の女子労働の歴史の中で、このパートタイム形式をとるということは、諸外国と比べて比較的歴史が浅いということがあるかと思います。一般にパートタイマーといいますと、何か身分上の区分であるかのような、つまり臨時雇いといってはかっこうが悪いからパートタイマーと言うふうなケースさえございまして、そして働く時間は通常の者と変わらないような極端な例さえございます。しかしパートタイマーは、一般的に申しますと、これは労働時間が一般の労働者よりも短い、つまりフルタイマーに対する観念のパートタイマーというわけでございまして、一日の労働時間あるいは一週の労働時間、あるいは一月でもよろしいわけでございますけれども、その労働時間が一般労働者よりも短い労働者ということがその定義であるかと思いまして、ILOなどでもそれを採用しているようでございます。また私どもも、いろいろな調査等を行ないます場合にも、それを基準として調査をいたしております。 御指摘のように、このパートタイマーにつきましては、定義の混乱ということからも見られますように、何かいろいろな点で婦人の保護の点から欠ける面もございますので、私どもといたしましては非常にその点につきましては関心を持ちまして、数年前に専門家会議を設置いたしまして、特にこの問題を研究いただきました。その後また婦人少年問題審議会の御検討による建議等もちょうだいいたしまして、二年ほど前にパートタイマーに関する取り扱いの基本通達を関係各局の連名で下部機関に流しております。その中でいま問題のパートタイマーの定義というものも明らかにいたしまして、パートタイマーというものは労働時間が短いというだけの違いであって、労働者としての権利あるいは責任というものは一般の者と違わないのだということを周知するように指導を続けているところでございます。また、本法案成立の上は、一そうそのような線で指導をしてまいりたいと思っております。 それから沖繩の問題でございますが、これは特殊婦人の問題でございまして、勤労婦人というサイドもございますが、また婦人の人権という面もございまして、非常に複雑な問題でございます。私どもといたしましては、これらの婦人に対しまして、従来からその実情把握あるいは相談等に応じるというふうなこともいたしておりましたけれども、特にただいま力を入れておりますことは、復帰に伴いまして、沖繩におきましても売春防止法が全面適用になっているということの認識を広く広めるというキャンペーンをただいま行なっておりますことのほか、特にこれらの婦人の社会復帰をはかるために、就業の援助ということを出先の機関が関係各省の機関と協力いたしまして行なっているところでございます。また、一般的に売春が非常に多いということにつきましては、これは経済の問題あるいは基地の問題といった大きな問題がございますが、それらと並びまして、やはり売春というものを悪であるというように考える認識が往々にして欠けているというような場合に売春が多いということもございますので、やはりそのあたりの世論の啓発という点に力を入れてまいりたいと思いますし、また、婦人につきましては、就業の援助とともに、自立心といったものについての啓発もしてまいりたい、このように考えております。
○橋本(龍)委員長代理 西田八郎君。
○西田委員 大臣があとわずかで退席をされるようでありますから、最初に大臣にまとめて質問をいたします。 まず第一は、今回、勤労婦人、特に雇用されている婦人に対しての福祉法というのがこうして提案をされてまいったわけでありますが、一体、自営の婦人、特に商業、農業等に従事する婦人との関係をどうなさるのか、これは私が本年、大臣の所信表明があったときにもお伺いした問題でありますが、こうした問題に取り組んでほしいということを私は要請をいたしておきましたが、一体それに対してどのようになさるおつもりなのか、ひとつその点をお聞きしたい。 もう一つは、この法案は労働基準法との関係が非常に密接でございます。したがいまして、労働基準法の改正の話は一体どの辺まで進んでおるのか。そして、その改正の内容の中に、婦人関係の条項が非常にたくさんあります。これらの条項とこの勤労婦人福祉法との関係をどのように調整なされようとしておるのか。 第三点は、これはもう再々私はお伺いしておりますが、満足なる答弁が得られずに、非常に残念でありますけれども、ILO条約の婦人に関連をする条約で、まだ日本の未批准の条約が四つばかりございます。それらの条約について早急に批准をされるおつもりがあるのかどうか、これは高橋局長にはあとでまた説明を聞きますけれども、まず大臣から、するのかしないのか、一体いつごろになったら国会に批准を出すのか、その点をひとつお伺いをいたしたいと思います。
○塚原国務大臣 第一の御質問、この法律案は勤労婦人を対象としたものでありまするので、いま御指摘のような中小企業に働く方、農村に働く婦人というものを対象といたしておりません。私はこの法案の説明を最初に大臣になりまして伺いましたときにも、そのことに一番大きな関心を持ったわけであります。同じ働く者として、その恩典その他の面で欠けるところがあっては、それはきわめて、政治の原則であるわれらの生活を豊かにし、幸福にする目的から反するものでありますから、そういう点をだいぶ問題にいたしたことは、これは事実でございます。それで、これは勤労婦人を対象としておりますが、これから漏れているというか、いまおっしゃった中小企業、農村婦人の問題については、これは関係各省と私はよく相談いたしまして、労働省ではこういうものを出している、だから基盤として、たとえば農村なら農村の基盤の整備も必要であろうし、季節労務者を出さないような措置をとることも必要であろうし、また働く農村婦人の立場というようなものは農林省、それから中小企業については通産省ともいま鋭意相談をいたしておるところでありまして、では具体的にこの法律案でそういうものをうたっているかといえば、これはうたっておりません。 それから第二の御指摘の点は労働基準法との関係でありまするが、労働基準法は言うまでもなく戦後つくられまして、もう約二十数年も経過いたしておるのであります。当初は戦後の混乱した時代でありまするし、労使間の関係も必ずしも円滑にいっておりません。むしろ大きな対立のあった時代も相当あったと私は考えております。今日はかなりその点では批判は少ないとは思いまするが、やはり一般になじまない面もあったと思うのであります。ことに婦人の問題については基準法ではかなりのものが含まれている、このように私は思っております。それでは、今回なぜこれを出したかというような御批判もありまするが、審議会等の御意見その他の御意見も承りまして、基準法は基準法として、そしてこの勤労婦人福祉法というものはこれなりに、決して労働基準法を形骸化するものでも何でもございません。これは働く婦人の基本法的なもので、そういう観点から御審議を願っておるわけであります。 第三にILOの問題でありまするが、御指摘のように八十九、百二、百三、百十一とございます。われわれ労働省といたしましては、働く者の味方という立場から、ことに婦人に関するこういう問題は早急を要する問題でありまするので、すみやかなる批准にこぎつけるための努力はいたしております。しかし、国内法との関係もあり、また、ほかの省、特に厚生省との関係もありまして、まだその日の目を見ないことはまことに残念でありますが、これはおそらく西田委員も批准を急げという御趣旨であると思いますので、御趣旨に対して努力していきたい、このように考えております。
○西田委員 私、勤労婦人の福祉を守ろうという本法案が提出されてまいりました背景は、最近、いわゆるミセスパワーといいますか、ウーマンパワーといいますか、女性労働力というものが産業の高度化によって非常に貴重になってきたわけでありますね。したがって、そうした中から、働く婦人の福祉を守ることによって、企業の雇用の増大をはかり、かつまたそれをもって産業の発展を期していこう、こういうところに問題が一つあろうと思う。その反面、そうした婦人の職業進出に伴って、家庭におけるところの婦人の責任と言うといささか語弊がありますけれども、婦人の役割というものがどうもおろそかになりはしないか、そうした両面から、これを調和させることによってさらによりよい婦人の職場を拡大しよう、求めよう、そういうことから出されてきたと思うのです。 しかし、職場にあろうとなかろうと、婦人を大切にしなければならぬということは、それは単に婦人がかよわいから、あるいは生理的にハンディがあるからという意味ではなしに、婦人の母性を守るために、やはり国民あげてその母性を守るという精神でなければならないのではないか、そういう考え方から、基準法におきましても、婦人に対しては、重いものを持たしてはならない、特に生理時におけるところの休暇等については、これを与えなければならないというような規定が設けられたと思うのであります。しかし、それらの基準法の精神も正しく理解されずに、従前、いわゆる基準法が成立いたします以前、といいますならば戦前、戦中を通じて、日本の勤労婦人は過酷な労働条件の中に置かれてきた。その過酷な条件を救済するというような意味と、そして、婦人は弱いものであるからこれを保護しなければならぬというような女性保護という立場から解釈をされ、またそのように運営をされてきたのではないかというふうに思うわけであります。したがって、私がこの法案と労基法との関係を再々にわたって口にいたしますことは、やはりこの法案を実のあるものにするためには、この法案はほとんどが宣言規定であるわけでありますから、その実効行為の伴う基準法の改正こそ重要ではないかということを指摘しておるわけであります。そういう点に対して、大臣のただいまの答弁をもうちょっと詳しく、私の言いましたことに対してどのようにお考えになっておるか、ひとつお聞かせをいただきたいと思います。
○塚原国務大臣 御指摘のように、勤労婦人の今日果たしている役割りは、たとえばその人数から見ましても三分の一にも達している。しかも、母体を守り、育児と家事というこの二つの重要な仕事をどう調和させながら快適な職場で働かすことがよいかという問題は、大事な問題だと考えております。 それから、かよわいとかなんとかという気持ちはありません。われわれは男女平等の立場に立ちまして、性別をあえて書かなかったのも、男女平等の立場に立ってやっていることでありますので、決してウーマンリブだからといってどうこうとか、女性がかよわいというようなことは毛頭考えておりません。あくまでも家事と育児をどう調和させ、どう調整していくかということを主眼としてこの問題は考えたわけであります。 それから、労働基準法との関連でありますが、確かに訓示規定であり、私がしょっちゅう言っている、ベストではないがベターであるというのは、そこにあるわけでありますけれども、まず勤労婦人の基本法として——労働基準法は労働基準法として、別に形骸化するものではございません。これは厳然として存在し、また女性の諸問題についてのいろいろなよい規定もあります。また、これをどうしなければならぬかということは、労働基準法研究会でも前向きに御審議を願っておるところでありますが、やはりこれは基本法として、今度御審議を願うというのはそういうところに意義がありますので、所管大臣がベストではない、ベターであるというようなことを言うことははなはだ不謹慎かとも思いますが、やはり勤労婦人にとっては一つの前進であり進歩であろう、私はこのように考えております。
○西田委員 もう一言だけ伺いますが、いまのお話の中で、男女の差別はしていない、こうおっしゃった。しかし女性には家事の責任と育児の責任がある、こういうことであります。 そこで問題になってくるのは、男女が同権であるなら、それは社会の中、職場の中のみならず、家庭の中においても同権である。そして、生まれてくる子供は女性だけのものではないはずであります。そうだとすれば、男性にも家事の責任はあるし育児の責任があると私は思います。しかし、これは生物のすべてがそうであるように、やはり子の母親に対する心情というものは、理屈やそんなものでは解決できないものである。そこに母性というものの存在を認めなければならないのだと私は思うのですが、大臣はこの母性についてどうお考えになりますか。
○塚原国務大臣 母性は一番大事なものであります。母性の保護がなければ、日本の前進も、快適な職場も、われわれ人間生活の幸福もあり得ないわけでありますから、これは最重点を置かなければなりません。そのために男性の果たすべき役割りというものも十分考えられなければならない。その点私は、今日は昔と違ってだいぶ進んでいると思います。私自身、家庭内のことを言うと御批判をいただくかもしれませんが、私自身はあくまでも全女性のために立ち上がっており、また努力いたしておるつもりでございます。あるいは御批判があるかもしれませんが、あればまともに受けまして、間違った点があればこれを是正するにやぶさかではございません。
○西田委員 私も女性の味方であるということをもって任じておるわけでありまして、その味方同士が議論をすれば一体どうなるかということになるわけでありますが、大臣に対する質問時間がないので、そのことは後日に譲ります。 そこで局長にお伺いしたいのですが、それではこの法案の中で母性を保護する立場から、一体どういう施策をとろうとしておられるのか、そしてこの法案の成立によって一体どこまで母性というものが保護されると考えておられるのか、ひとつ具体的にお答えをいただきたいと思います。
○高橋(展)政府委員 この法案の第二条に(基本的理念)といたしまして、勤労婦人は「母性を尊重されつつその能力を有効に発揮して充実した職業生活を営むことができるように配慮されるものとする」というように明記いたしております。すなわち勤労婦人はその母性を尊重されるべきものであるということを、ここに国の意思として、法律の形で初めてはっきり出すということに相なるのではないかと思いますが、この基本理念の宣言によりまして、今後すべての関連法律の施行にあたりましては、この母性の尊重ということを踏まえてお進めいただくという基盤になると思います。 また、この法案の中で、具体的な母性の尊重ということのための配慮といたしましては、第九条、第十条あるいは第十一条で、妊娠中、出産後の健康管理であるとか、あるいは育児に関する便宜の供与であるとかを規定いたしておりますし、さらにまた十二条、十三条等では、地方公共団体の行なう相談、指導の業務という中で、これらの点につきましてのサービスというものを規定しているところでございます。
○西田委員 それは規定はしておられますけれども、「配慮をするように努めなければならない」とか、「供与を行なうように努めなければならない」とかいうことで、すべて訓示規定です。これは大臣もお認めになった点です。実際に一体どうなっているか。 私はやはり、職場に出る勤労婦人の生活パターンというかライフサイクルというか、そういうものをこの辺で変えて、そしてその指導をしていくべき時期にきているのではなかろうか。すなわち、だれもかれもが職場へ、職場へということで足を運んでおるために、今日のような親子の断絶であるとか、あるいはかぎっ子の問題とかということが出てくるわけですよ。したがって、そういうものを解消するために一体どうしたらいいかということを、具体的に考えていかなければならない時期にきていると思うのです。 そういう時期にきておるとするならば、当然「育児に関する便宜の供与」というようなことではもう済まされない時代ではないか。すなわちスキンシップといわれる、母親のはだにさわる子の感情、そしてその愛情というものを有効に働かせるためには、やはり少なくとも子供が小学校へあがる年限まで、もしくは幼稚園へあがる年限までの期間、母親は育児に専念する時期を権利として与えられていいのではないか。したがって、いまは嫁入り前の腰かけというようなことばがよく使われますが、結婚してしまえばやめてしまうというパターンを、結婚してもなおかつやめなくていい、そして育児の期間も十分にとれるというような措置をとることこそ必要ではなかろうかというふうに考えるわけでありますが、それについてどのようにお考えになっているのか。そしてまた、ただ単に「育児に関する便宜」というものは一体どういうことなのか。たとえば保育所等については、それは厚生省の問題だといって逃げられるかもわかりませんが、しかしこれは厚生省だけの問題ではないわけでありますから、一体どのようにお考えになっておるのか。その辺、これは規定がないのですね。そうした点について訓示もしておられない。一体そういう点について、今後は行政指導の上において行なわれていくのかどうか、そういう点をお伺いしたいと思います。
○高橋(展)政府委員 婦人の職場進出をめぐりまして、特に乳幼児を持つ婦人の職場進出ということをめぐりまして、非常に多くの関心が寄せられて、また、いろいろと御意見があるところでございます。その御意見の一つといたしましては、やはり子供にとりましては、特に精神的発育といいますか情緒的発育にとって、先生も御指摘の母親のスキンシップでございますか、こういったことが非常に重要でありますし、また、婦人が家庭で子供を育てるということは、それは職場に出て経済的な活動をすることに劣らない社会的貢献であるというような御意見から、乳幼児がある間は母親は家庭にいるべきだ、この強い御主張が社会にあるということは私どもよく存じております。また一方、しかし、婦人がいろいろな理由で働きたい、能力を生かすため、あるいは家計をになうため、その他もろもろの理由で働きたいという主体的な希望を持つ場合、それも尊重しなくてはいけないし、また、現実に経済社会が婦人の労働を求めているという現実も、これも評価しなくてはいけない、そのような御意見から、ここ数年来、婦人は家庭にいるべきか職場に入れるべきかという議論が、非常ににぎやかと申しましてはちょっと不謹慎でございますが、盛んにございました。私どもといたしましては、そのような御意見につきまして、行政機関として軽々に一方的な断定を下すということはいかがかと思われます。それで、実は一昨年、この問題を主として研究していただきますために、有識者によるところの専門家会議を設けまして、婦人の就労に関する懇話会という名称でございますが、こちらで、婦人の就労に関する諸問題と、児童心理の立場から、あるいは国民経済の見地から、あるいは家庭管理の観点から等々、いろいろな角度からの分析をしていただきました。その専門家会議でおまとめになりました基本的考え方というものが、昨年の七月、労働大臣に提出されているわけでございます。その御結論といたしましては、乳幼児を持つ婦人が職場に出るという問題につきましては、これは非常にデリケートな問題であって、結論的には、やはりこれは一方的に断定すべきではない、婦人自身の自主的な選択によってきめるべきことであって、家庭に帰れとかあるいはみんな働けとか、そのように当局等がきめるべきではないというふうな御結論が出たわけでございます。私どもも、その御結論を尊重し、また、従来の行政の姿勢もそのようなものでございましたので、この法案の準備にあたりましても、婦人が就労するかいなかということは、これはあくまでも婦人自身の自主的な判断にゆだねるということを前提といたしております。そして婦人が自主的な判断に基づいて勤労に従事する場合には、このような配慮がなされるべきであろう。そういう姿勢をとっているところでございます。また、婦人が自主的な判断で自主的に選べと申しましても、選ぶためには条件がそろっていなくては選べませんので、それが選べるための条件整備ということをこの法案でも心がけているところでございます。
○西田委員 そこが大事なところなんですよ。自主的に判断をする、これはもうきわめて重要なことであります。しかし、判断ができるような社会的環境があるかどうかということです。私は、そういう社会的環境になっていないと思う。だれしもが、母親は自分の手で育てたいのですけれどもも、それが育てられない。しかも、出産ということによって、職場を失うという非常に大きなデメリットがあるわけです。それなるがゆえに、乳飲み子を置いてでも働きに出なければならない環境に置かれているわけでしょう。だから私は、それを、安心して職場に戻れる環境というものをつくっていくべきではないかというふうに考えておるわけであります。もちろん、自分の生活的な経済そのものが許すならば、それまたそれで育児に専念することでもいいでありましょうが、しかし、乳飲み子あるいは乳幼児を預けて職場に進出する婦人の多くは、そうした環境に恵まれていない、また、職場もその環境を整備していない、こういう状況にあるわけです。そういうことをお認めになっていながら、かつまた、そうした答申を受けていながら、この法案、特に勤労婦人の福祉を守る法案の中にそうした問題が具体的に明記されていないのは、どういう理由でございますか。
○高橋(展)政府委員 この法案の十一条(育児に関する便宜の供与)の中で、育児休業というものをうたっているところでございます。この育児休業は、働く婦人が乳幼児を持つ場合、一定期間育児に専念したいという希望をかなえつつ、しかも雇用関係は継続して、その期間が終わったときは職場に戻れる、そのようなシステムをさしているものでございまして、この育児休業というものを普及することによりまして、多くの働く婦人が、いまかかえておりますジレンマから解放と申しますか、のがれられる。そしてその家庭生活、育児責任との調和をはかりながら、長期的に職業生活を続けていくことが可能となるのではないか、かように考えております。
○西田委員 それは、そのように答弁なさるだろうと予想をいたしておったのであります。だけれども、十一条の規定は、事業主にその責任を課せられておるだけですよ。私は、事業主にその責任を課すだけでいいのかどうかということを言いたいんです。少なくとも勤労婦人の福祉——私は、先ほど広義に言って、農業婦人、商工業婦人もすべて勤労婦人でありますから、これは含むべきだという主張を唱えておるわけですが、今回の場合は、勤労婦人だけであります。しかし、それにしても、私は、事業主だけでそれでいいのか、そしてまた、国の施策としてそういう休業を与える便宜を供与することを訓示するだけでいいのかどうか、そういういま時代なのか、卒直にひとつ局長のお考え方を聞かしていただきたい。
○高橋(展)政府委員 この十一条におきましては、事業主の努力義務として育児休業を規定いたしております。それは九条、十条も同様でございます。この三条におきましては、勤労婦人を雇用する事業主の責任といたしまして、まず第一義的にこういう配慮するように要請をいたしているわけなんでございます。これに対して国は知らない顔をしているのかということのお尋ねでございますが、これは第十五条におきまして、(国の助言等)という規定を設けております。ここで、これは事業主には限りませんで、あるいは労働組合でもけっこうでございますが、勤労婦人の福祉を増進するための事業を行なう方たちに対しまして必要な助言、指導その他の援助を行なう、こういうことを国みずからに義務を課しているところでありますので、育児休業の実施につきましても、その指導と申しますか、助言、指導等を行なってまいりたい、このように思っております。
○西田委員 国の助言、指導が一体どこまで波及するものであるか、いままでのいろいろな事例に即してみますと、私はあまり期待ができないと思うのです。特に私は、大臣にかわって政務次官がお見えになりましたが、ひとつその点、政務次官としても、大臣にかわって強い態度で臨んでもらいたいと思うのです。せんだって、前大臣であった原さんもそのことはお約束されましたけれども、決して任期中によくなったとは私どもは考えられない。むしろまだその職場の中には、男女差別がはっきり残っておるわけです。そういうときでありますから、ひとつ責任ある次官の答弁を求めたいと思います。
○中山政府委員 勤労婦人の育児に関する国の方針というもの、いま局長が答弁いたしました中に基本的なものは含まれておると思います。それで、いま二十四万、最近少しふえておりますが、勤労婦人の出産の経過から見まして、私どもは、単なる婦人が出産によって解雇される、あるいは不当な処理をされるということだけでこの問題をとらえてはおらない。むしろこれから将来の日本を背負っていく子供たちと母親との関係というものを基本に実は考えているのであります。その場合に、ただいまでは御存じのように保育所、育児所というものは、ソ連に次いで日本が世界第二の実数を持っております。しかし最近の少年犯罪、いろんな問題を考えてまいりますときは、いわゆる親子のスキンシップということも見のがせない問題になってきた。そういうことになってまいりますと、単なる婦人の出産による職場からの追放というようなことでなしに、将来の日本の人間像ということをいかにこの際考えるかという、ほんとうの基本的なビジョンを実は私どもは検討をして、それを法律的な制度に打ち立てていく時間もおそらく近い将来であろうと思います。まず第一義的に勤労婦人福祉法をひとつ御審議いただき、成立させていただいて、さらにこれに柱を立てると申しますか、そういう方向で実は作業をいたしたい。いろいろと社会党並びにほかの政党の先生方も御指摘のように、育児の休職、有給休暇の問題、この問題につきましても労働省としては真剣に目下考慮をしております。電電公社の育児休職制度の問題、あるいは女子教職員の休職制度の問題、こういうものも含めながら、単なる電電公社の職員あるいは学校の先生方ということにとらわれずに、全勤労婦人というものを考えるべき立場に私どもは立たされておると実は考えておりまして、いわゆる有給か無給かという問題については、財政問題が伴いますので、今日の時点では直ちにこれをどうこうするということはできません。しかし一方においては、御承知のように失業保険の不正受給者がきわめて多い。この不正受給を徹底的に摘発して、将来はそのような不正者が——この不正な利益を、こういうふうな婦人の有給のときに支給するように配慮すべきであるという、私、考えも持っておることをこの際申し上げて答弁を終わらしていただきます。
○西田委員 これは、ぜひともいまおっしゃったことを実現さしてもらいたい。いつも委員会での答弁は前向きに、あるいは考えておりますと言うだけで、出てくるまでには二年ないし三年、長いものになればあわのごとく、一体どこに行ったのか消えてしまうものもありますから、ひとつぜひともお守りをいただきたい。強く要望をいたしておきます。 次に局長、大体ずっと福祉法を読んでみますと、主として既婚婦人を中心にしておられるわけですけれども、未婚婦人に対する対策というものは、一体何かお考えになっておりますか。
○高橋(展)政府委員 今日におきますところの勤労婦人の配偶関係別の分布といたしましては、未婚者が四六%でございまして、残りが既婚者になります。既婚者の中には約一〇%程度の死離別者がおるわけでありまして、それを除きますと、未婚者と同じくらい現在夫のある方がおるわけでございます。この分布といいますか、比率は近年、ここ十年ぐらいの間に非常に大きな変化をしたものでございまして、かつては日本の婦人労働者といえば未婚の若い人ばかりといえるほどでございましたのが、急速にこのように夫を持つ者がふえてきたわけでございます。また、いろいろな機関で行なっておりますところの将来の予測によりましても、今後この既婚者の割合が一そうふえるであろうという予測がされております。また諸外国、アメリカ、イギリス等を見ますと、これは未婚者が非常に割合として少なくなりまして、既婚婦人が圧倒的に多いわけでございます。そのようなことで、私どもといたしましては、この法律案を準備いたします段階では、今後の婦人労働の分布としてそのような図が描かれるということは当然前提として考えているところでございます。したがいまして、この法案では初めて「勤労婦人が職業生活と家庭生活との調和を図り」というような文言をうたいまして、家庭を持ちながら婦人茶職業に従事をするのだという前提を打ち立てているわけでございます。 しかしこの法案が、それでは家庭を持つ者だけを対象にしておりますかといいますと、決してそのようなことではございませんで、これは職場で働く婦人すべてを対象にいたしておるわけでございます。でございますから、未婚の婦人につきましても、その母性を尊重されつつその能力を有効に発揮して充実した職業生活の営むということは、これは未既婚を問わないところでございまして、これからの働く婦人の姿として大いに生きがいを持って、働きがいを持って能力を発揮して充実した職業生活を営んでほしい、その願いをここに基本理念としてうたい込んでいるわけでございます。 また具体的な措置といたしましても、この法中の中で七条、八条等は職業指導、職業訓練でございますが、これはもちろん未既婚を問わず婦人に対して行なってまいりたいところでございますし、あるいは十二条は、国及び地方公共団体が行なう相談あるいは講習等でございますが、これらももちろん未既婚を問わないところでございます。あるいは働く婦人の家の利用等につきましても、未既婚を問わずそのように考えておるところでございまして、家庭を持ちながら働くということを非常に重視はいたしておりますが、しかしそのような者たちだけのための対策を進めようというものではございません。
○西田委員 いまおっしゃったように、その比率が変わってきた、だから今度は多くなったほうを重点にやるのだ。そうすると以前は少なかったほうに重点を置いてきたということに、皮肉なとり方ですけれどもそういうふうに考えられます。確かにそうだったのです。若い未婚の勤労婦人を集めて、生理休暇をとりなさい、あるいは寄宿舎の自治を守りなさいというようなことを盛んに労働省は指導してこられた。ここ数年来、そういうことはどこやらに消えてしまっておる。そして事業附属寄宿舎規程も二十五年前につくられたものが、もう今日の実情に合わない状態に置かれているのですよ。それでもなおかつその改正をしようとされていない。一体そういうことでプライベートな勤労婦人の生活が守れるのかどうか。しかも未婚婦人はやがて既婚になるのです。そういう人たちが自分の未婚時代に受けたそうした教育というもの、あるいは育ってきた環境というものが、既婚後一体どういうことに変化していくかということをお考えになったことがあるのかどうか。私はそうした点についても、もっと真剣に考えるべきではないのかと思う。今日まではそうした人たちが非常に集まりやすかった。だからそこに重点を置いてきた。しかし最近はそのウエートが変わってきたのだ。それでは私は婦人全体の職場の環境の改善、あるいは条件整備ということにはならないと思うのです。その点についてどうお考えになりますか。
○高橋(展)政府委員 私の申し上げ方がことばが足りなかったかもしれませんが、私どもはこれからの勤労婦人像というものを描きますときに、家庭を持ちながら働く者が多いであろうということを申し上げまして、それを前提といたしまして、これからの勤労婦人対策というものはやはり職業生活と家庭生活との調和がはかられるように、それからまた母性を尊重されつつ能力を有効に職場で発揮して、充実した職業生活を送れるように、この二つを大きな柱といたしまして、国としてそれを配慮していくという姿勢を打ち出しているところでございます。 おっしゃいますように、確かに未婚の者がやがて既婚になるわけでございまして、私どもはこれからの婦人の働く姿といたしましては、生涯のうちかなり長い期間職業に従事しているというように、全体的にはなっていくと思うわけでございます。その長い生涯の職業期間を通じまして、婦人が充実した生きがいのある職業生活を営むということは、これは非常にむずかしいことではございますが、それにはまず若いときに基本的な職業教育と申しますか、そういうものを身につけておくということ、これは非常に重要なことだと思います。 また同時に、婦人の職業生活は中断されるということが非常に可能性としては大きいわけでございますので、中断された場合にも職場に復帰できるよう、再教育、再訓練といったことが整備されまして、婦人がその自主的な選択で職場に戻りました場合にも正当に評価され、また正当にその能力を発揮できるような条件をつくってまいりたい、そのような考えでございまして、未婚と既婚とを別々のグループに分けてというふうな考えではございませんで、婦人の生涯というふうな形で考えているので、御理解いただきたいと思います。
○西田委員 非常に重要な問題だと思うのです。いまもおっしゃるように、未婚者は必ず既婚になるのですし、しかも未婚の間の教育なり環境というものが将来に影響するところは非常に大きいわけであります。ですから、分けよとは私は言っておらぬが、少なくとも勤労婦人という総括的な立場で今後の指導なり、また事業に対するいろいろな要請なりを強力に行なっていただきたいと思うわけでございます。私は決してこの法案の成立に対して、けしからぬと言ってどなりつけたり、おこったりしておるわけではないのです。少なくとも私は労働省婦人少年局を支援したい、そして必要あらば予算の獲得にもお役に立ちたいと思う気持ちで一ぱいなんです。ところが、当の労働省自体がなかなかそうした気持ちになってもらえないのか、あるいは政府がそういう気持になってもらえないのか、私はきわめて遺憾に思うから申し上げておるわけであります。先ほど出ました問題にしましても、産業政策を中心として進められてきておる婦人対策であるとしか考えられないわけであります。そういうことでは、この法案が幾らできても実際に効果を発揮することはできないのではないか。すなわち、能力ある婦人のその能力並びに技術を開発することによって、国全体の発展のために大きく寄与していこう、こういうことであります。ですから、今五十、先百というような考えではなしに、やはり将来を展望してものごとを考えていかなければならない、こういう立場からいろいろと質問をし、私の所見も申し述べておるわけであります。 最後に、労働省がこれからみずから行なっていこうとされる行政指導なり政策に一体どんなものがあるのか、聞かしていただきたいと思います。
○高橋(展)政府委員 この法律案が成立いたしました上は、第六条に基づきまして、労働大臣が基本方針というものを策定することになっております。この基本方針の中におきまして、今後数年にわたるところの進めるべき施策を明示してまいる、こういう手続と申しますか、段取りになってまいるわけでございますが、これは婦人少年問題審議会の御意見を伺って定める、こういう趣旨のものでございますので、現段階におきまして決定的なことは申し上げられないわけでございますが、およそ考えられますことは、この法律の中で書いてございます啓発活動をどのように進めるか、あるいは第七条、八条で職業指導、職業訓練に触れておりますが、それらの具体的な措置をどのようにするかということを明示いたします。それからまた九条、十条、十一条では、事業主に対しまして健康管理であるとか育児についての配慮を求めているわけでございますが、この条文の施行につきましては、事業主に対する指導方針と申しましようか、それを定めまして、それに沿って事業主を指導してまいる、そのことを明らかにしてまいりたいと考えております。あるいは十二条、十三条等では、地方公共団体がもろもろのサービス、相談、指導あるいは講習等をするわけでございますが、それらについて地方公共団体に要請をしてまいる。また特に十三条では、働く婦人の家の規定があるわけでございまして、この働く婦人の家を今後計画的に増設してまいりたい。私どもの夢と申しますか、願望といたしましては、全国の勤労婦人のたくさんいる町には、この働く婦人の家が何年かあとには網の目のようにたくさんできて、そこでいろいろな地方におけるサービスというものが行なわれるように、そういう状態を実現いたしたいと考えておるところでございます。
○西田委員 現存する男女の差別に対してどう取り組まれようとしておるのか。これからの勤労婦人の福祉を守ることはいいのです。しかし、その前提として、いまある差別というものをなくさなければなりませんね。賃金格差がある。そして就業年限、いわゆる定年に対する格差がございます。あるいはまた、職業の就労の範囲において格差がつけられておるところもあります。そういうものについて一体どうされるおつもりなのか。 それから、私は一時半でやめる予定にいたしておりますから、あわせて聞きますが、婦人の家ですね。これは一体どういう計画を持ってお建てになるのか。これはあちこちで、働く婦人の家というものを建てたらどうだというお誘いがあっても、地元負担や県の負担が大きいのでこれはかないませんということでお断わりになっているところがいままでにあったはずなんです。私もそれは事実自分で知っておるのです。そういう婦人の家の制度を確立するということ、さらには指導員というものも養成していくということでありますけれども、肝心の家が建たなければ、入れるものがなければどうにもならない。労働省はこれを大幅に建ててやるとおっしゃるのか、一体どういうふうにお考えになっているのか。
○高橋(展)政府委員 まず第一に、現在ある格差と申しますか、勤労婦人の賃金であるとかあるいは定年であるとかにおける男子との開き、その問題につきましては、賃金につきましては、仰せのとおり、全女子の全産業の一人頭の数で平均いたしますと、男子の半分に満たないというのが現状でございます。ただ、これは労働時間あるいは職種、年齢等を考慮しない、全婦人労働者の平均でございますので、これをたとえば時間当たりの賃金に直す、あるいは年齢別の賃金に直す、あるいは職種別の賃金に直しますときには、この格差はもっと縮まるわけでございます。いずれにいたしましても格差があるということは事実でございまして、その一番大きな理由は、やはり婦人のついております職種というものが、男子の場合と比べまして単純と申しますか、補助的な職種に分布が大きい。男子が占めておりますような管理的職種あるいは専門的職種につく者が少ない。あるいは、一部の技能的な職種は、これは法律が禁止しておりますので、婦人がつけない。そのようなことが相まって婦人の平均というものが低くなっていると思うのでございます。これに対する対策といたしましては、婦人の能力というものを開発いたしまして、婦人がいろいろな職場で働けるような実力というものをつくっていくということが片方において要求されますし、他方におきましては、婦人の能力を正当に評価するという機運を、これは職場の事業主あるいは社会一般の中に盛り上げていくということが非常に大切だと思いますので、この法案におきましても、そのような方向に向けての啓発活動を特に強力に行なってまいろう、このような考えでございます。そのことによって職場における不合理な差別等も排除してまいりたい、このように考えております。 それから働く婦人の家でございますが、これは御存じのように、現在まで国庫補助によりまして地方公共団体が設置してまいったところでございます。今後も同じような財政措置でまいりたいと思っております。 ただ、この法律によりまして、働く婦人の家は、地方公共団体が必要に応じて設置するようにつとめなければならないという積極的な一つの意思が表明されたわけでございますので、地方公共団体といたしましても、これを根拠に今後はこの働く婦人の家を設置していただく機運が強まると思います。 なお、お尋ねの中にございました点で、若干違ってまいっておりますのは、最近ではやはり地方公共団体におきましても、働く婦人の家についての関心が高まりまして、これを設置する要望、すなわち国からの財政援助を求める要望も非常に強く出てまいっておりまして、私どもは、限られたこの財政の範囲で配分に苦しんでいるというようなのが最近の情勢ではございます。
○西田委員 最後に、大臣も先ほど冒頭に述べられましたように、この法案は訓示規定でありまして、まあ、ああしなければならないとか、つとめて努力をしなければならないという程度のことでありますが、しかし実際に、法律そのものは訓示規定であっても、各事業主がそれを忠実に履行するようにつとめさしていかなければならぬのであって、それには何としてもやはり、日本の国民性なり社会情勢からいって、労働省の強力な指導が私は必要であろうと思うのです。どうも今日までの姿勢というものは消極的に過ぎました。ですから、ひとつ積極的にこの面を推進をしていただきたい。それは、ただ単に産業あるいは自分の企業そのものに貢献せしめるというだけではなしに、やはり日本将来の産業、ひいては日本の将来の社会のあり方についてまで波及する問題だと私は考えるわけでありますから、どうかそういう意味で積極的な姿勢を期待をいたしまして、私の質問を終わります。 —————————————
○橋本(龍)委員長代理 この際、一言御報告を申し上げます。 土井たか子君から、去る十六日の同君の発言中、その一部を取り消したいとの申し出がありましたので、理事会において協議の結果、委員長において適当な措置をとることといたしました。 次回は、明二十六日金曜日、午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。 午後一時三十二分散会