公害対策並びに環境保全特別委員会 第23号
- 発言数
- 65 件
- 登壇者
- 9 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1972/05/30
会議録
○田中委員長 これより会議を開きます。 内閣提出の大気汚染防止法及び水質汚濁防止法の一部を改正する法律案並びに島本虎三君外七名提出、公害に係る事業者の無過失損害賠償責任等に関する法律案の二案を一括議題とし、審査を進めます。 この際、おはかりいたします。 ただいま議題となっております両案について、最高裁判所長官の指定した代理者、最高裁判所事務総局民事局長西村宏一君から、本日本委員会に出席説明の要求があります。これを承認するに御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○田中委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。 —————————————
○田中委員長 次に、両案について大石環境庁長官より発言を求められておりますので、これを許します。大石環境庁長官。
○大石国務大臣 ただいま瀬戸内海の調査の問題について御報告申し上げたいと考えておりますが、とりあえず先に、事務的な内容について局長から説明させたいと思います。
○岡安政府委員 先般、瀬戸内海全域につきまして水質の総合調査を実施いたしたわけでございますが、実施にあたりまして、これは原則としてすべての関係府県に委託をして調査をするというたてまえでございましたところ、一部の調査につきまして民間の会社に委託したわけでございます。これにつきまして多少問題があるやに承っておりますので、簡単にその趣旨につきまして御説明をいたしたいというふうに考えております。 この調査は、御承知のとおり瀬戸内海の全域につきまして、年四回にわたりまして全体の調査地点七百十六点、これは海域のみでございますけれども、これ以外に工場排水の調査、河川の調査も加わります。そういたしますと千点をこすわけでございますけれども、海域につきましては七百十六点の調査を年四回同じ地点で行なうということになっております。これを関係の府県に分担をさせまして調査をいたすわけでございますけれども、一部の府県につきましては非常に過大なといいますか、調査地点が割り当てられる結果になりまして、これは同時に、一時に調査をいたさなければならないということで、調査の能力等に問題がございまして、打ち合わせの結果、各府県ではその引き受けるべき点数をすべてについて一時にやる自信がないという話が出ましたので、やむを得ず一部につきまして民間の会社に委託したわけでございます。 委託いたしました地点の数は、七百十六点のうち百二十七点でございます。その最も関係がございますのは、愛媛県それから香川県等の周域の地点でございます。 私ども民間に委託するにあたりましては、当然やはりこれは、工場の排水の違反その他の調査ではございませんけれども、工場の排水の状態を明らかにするという意味合いにおきまして、工場排水につきましては委託しておりません。海水の状態についての委託ということに限定をいたしました。 それから、委託にあたりましても、民間の調査船のすべてにつきまして関係府県の職員が同乗をする、その指導によって行なうというふうに配慮いたしたわけでございます。しかしながら、地元のほうから、やはり公害に関係のある企業が調査をするということはいかがかというふうに指摘をされましたので、私どもはさらに、民間のそういう疑惑に問題を残さないという趣旨から、特に関係のございます香川県と愛媛県の地先の水域の調査につきましては、その分析をさらに重ねて県で分析をする、チェックをするというふうに私どもは考え、そういうふうに指示をいたしておるところでございます。 今回、調査を委託いたしました会社は、住鉱コンサルタントという調査専門の会社でございます。私ども一応、委託をするにあたりましては、この会社の調査の能力、実績等は十分調査いたしたつもりでございますけれども、今後におきましては、すべてこれを府県に採水、分析等をしていただくという方針で、関係の府県で二回目以降の調査につきましては打ち合わせて実施をしてまいりたいというふうに考えております。 —————————————
○田中委員長 両案について質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岡本富夫君。
○岡本委員 去る二十三日の当委員会におきまして、ただいま報告がありました件について私は環境庁長官に質問をいたしましたが、長官は、私はこの調査に対して直接タッチしてないからわからないから、あとで調べてはっきりと当委員会で明らかにする、こういうことであったのでありまして、いまそういったお話がございましたが、いまのお話の中で、排水を分析をするのではなくして海水を分析するのだからというようなお話がありました。いずれにしましても、この同列企業、要するに住友金属鉱山あるいはまた住友化学、こういった会社から出ている廃液によって大きく汚染されておるということを私ども当委員会で前に言ったことがあるのですけれども、そういうところに対して、その同列の系統の会社に調査依頼をしたということは、私はおそらく環境庁としては事前にチェックしたのではないだろうと思うのです。しておれば、大臣は長官としてこの瀬戸内海の総合調査については全部御存じだったと思いますが、おそらくこれは地方自治体、要するに県に対して依頼をしておる、そういうことによってこういうことが起こったのではないか、こういうふうに思うのですが、その点だけひとつ明らかにしていただきたい。
○岡安政府委員 住鉱コンサルタントを選定いたしました経過を私から申し上げます。 私ども、先ほど申し上げましたとおり、すべてこれを県に委託をするということで、県に分担をきめまして相談をいたしたわけでございますが、一部の県で能力的に不可能という事態が出まして、百二十七地点につきましてほかの第三者に委託しなければならないという結果になったわけであります。この委託は、私どもが直接住鉱コンサルタントに委託したわけでございまして、その場合やはりあそこの瀬戸内海の海水を分析するその能力、それからいままでの実績、それから経費、たとえば遠くから船を回送する、その他等も勘案いたしまして、地元に適当な機関があればよろしいというような諸条件を勘案いたしまして選定をいたしたわけです。
○岡本委員 いまこの中に、コスト、経費が非常に安くつくというような御回答もいただいたわけですけれども、そう言いながらもう一度県でチェックをする。そういうふうに二重手間なことをしなければならぬのであれば、私は初めからこんな、要するにほかの工場、ほかの系列の工場のところを調査するのだったら話はわかるのですけれども、同列の会社のコンサルタントに委託した。そしてそれに対して今度は私どもが言うと、じゃ県でもう一度調査をしてチェックするというのであれば、コストが安かったといっても、これはどちらかというと安もの買いの銭失いというようなことばがありますけれども、私はそういった姿勢というものを、この前も海上保安庁の問題も取り上げまして長官にお聞きしたわけでございます。ですから前にそこの企業が、いろいろなことで事件があったところでも、今度は事件がなければりっぱなんだという考えでなくして——それであれば私は公害はなくならないと思うのです。公害だけは疑わしきを罰していく、あるいはまた疑わしきを救済していくという長官の考え方でいけば、私はそこからこの調査にあたりましても非常に綿密な点検をして、各県でどういうふうにやるのかということを点検してからやらなければならない。この点についてはやはり環境庁としての手抜かり、それからもう一つは、こういう同列企業の会社にやらしたということに対しては、私はもう少し反省していただかなければならぬのじゃないか、こういうふうに思いますが、いかがですか。
○大石国務大臣 この計画はせっかく去年からいろいろと計画を立てまして、予算の獲得にも努力をいたしまして、幸い計画どおりの実施をするごとになった。われわれとしてはぜひともやりたいと願っておった調査でございます。そういうことで張り切ってやったわけでございまして、政務次官を本部長といたしまして、政務次官なり担当局長を前日から現地に派遣いたしまして、あらゆる手を整えてやったのでございますが、その途中におきまして、いま多少皆さまに疑惑なりあるいは不信を与えるようなことがありましたのは、まことに残念でございますし、申しわけなかったと思います。 これははっきり申しまして、各県に全部割り当てをして、そうして分担をしてやることになっておったわけでありますが、あとになりまして、たまたま山口県とそれから香川、愛媛、もう一つ、四つの県でありますけれども、たとえば百何十点とか八十点とか、いろいろな水をとるわけですね、その場合にちょっと手に余るということになりまして、多過ぎるということで、そのうちの四県の余った分百二十七点の水の採取その他は住鉱コンサルタントというのにとるように協力を求めて参加させたわけでございます。それは別に他意ありませんで、住鉱コンサルタントというのは確かにいわゆる公害関連企業との間にいろいろ系列には入っておるようでございますけれども、これは調査専門の会社でございますので、直接そのような公害を出している会社ではございません。そういうことから、その会社は相当能力もある、実績もあるということを見まして、環境庁ではその会社を一応指定、依頼したということだけだったと思いますけれども、そのあとで、直前になりまして、お話しのようなそういう企業にやらせるのはおかしいのではないかという意見が地元からあったようでございます。それもそうだということで、あわててそれをあれするために県でわざわざもう一回、県の者を調査船に同乗させたり、あるいは検査をする場合には県に持っていって県に分析をやらせるとかというふうにして、地元の不安なり誤解を解くようにやったつもりがいまの結果だと思うのでございます。その後もそういうことで、できるだけ誤解を招かないようにということで、とった水の分析検査は全部気の毒だけれども県でやってもらうということになりました。ですから、決して結果的には悪い結果は出ないと思いますけれども、そのような誤解を招くようなやり方があったのは残念でございます。 こういうことで、われわれも十分注意いたしまして、今後そのような誤解を招かないようなことに意を用いてまいりますので、その点はひとつ御了承いただきたいと思う次第でございます。
○岡本委員 長官、私たちもいろいろな検査というのをやってみまして、分析というのは、ちょっと分析の方法が違うと、分析の結果というものが非常に違うのです。ですから、私ども調査するときには、同じ水でもただ一つの衛研に持っていったり、あるいは一つの機関に持っていくのじゃなくて、何カ所かに分けてそうして正確をはかっているわけです。ですから、そういう非常にシビアなものでございますので、今後は環境庁においても長官が目を通していただかなければならぬと思うのです。 環境白書にしましても、この間私は当委員会で、同じようにイタイイタイ病の問題につきましても、これに、兵庫県ではイタイイタイ病が発生をしないのだという発表をしただけしか載っていないのですね。これは片手落ちであって、鑑別診断のほうで再調査する必要があるのだ、カドミの影響を再調査する必要があるのだということがあれば、それもやはり載せなければならぬ。これも私、局長に言いましたら、ちゃんとそういうような内容にしますというようなお話であったのに、依然として出てきたものはそのままです。私はこれをつくっているときにちょっと聞いたわけです。要するに、国民が不安を招くような、あるいはまた疑惑を招くようなやり方は、事環境庁でありますから、こんなことをしてはいけない。しかも長官はこの間奈良において、今後の公害については住民運動、住民の皆さまのお力をかり以外にないのだというようなお話もございまして、したがって、国民の皆さんに疑惑を与えるような環境庁であってはならない。特にこの姿勢について私はきびしく追及したいと思うのです。 最後に長官に、この環境白書ですか、公害白書ですか、これについても、それを通じて今後の姿勢——あるいはわれわれ野党が提案しておりますところの住民参加といいますか、そういうような考え方で差止請求あるいはまた行政官に対するところの請求、これを提案しているわけであります。ですから、それはそれとして、ひとつ長官から最後にこの姿勢について、環境白書、公害白書ですか、これについても、両方についてお伺いしておきたいと思います。
○大石国務大臣 公害白書、環境白書でございますが、御承知のように環境庁としては今度初めて出しました報告書でございます。したがいまして、大きなものでございますから、やはり内部的にいろいろ手落ちがあることと思います。そういう点でいろいろ御指摘を賜わりまして、今後の参考になりましたことをありがたく感謝する次第でございます。いろいろ手落ちにつきましては、今後も訂正してまいります。いまのたとえば生野の問題につきましても、当然これはわれわれ無視する気はございませんで、それをまとめている去年までの段階におきましては、まだはっきり方針がきまっておらないのでそういういきさつになりましたが、おそらく四十七年度の報告、来年出す報告の中にはいずれその判断がつきましょうから、いまのうちに鑑別診断その他の努力によりましてりっぱな結末がつけられると思いますので、そういうものにつきましては必ず詳しく載るものと私は考えている次第でございます。 いずれにしましても、あやまちはけしからぬというおしかりはごもっともだと思いますけれども、そういうことで初めての経験でございますので、いろいろ手落ちも、あるいは足りない分もあるかと思いますが、その点については御寛大な御判断を賜わりまして、今後は十分に注意して、りっぱな、手落ちのないものにしてまいるという努力をしてまいりますので、ひとつ御了承をお願いいたしたいと思います。
○岡本委員 じゃ、約束の時間ですからこれで終わりますけれども、長官、いま環境庁長官の一念によって、これからほんとうに公害列島の日本を救っていこうという日ごろの熱心な態度に対しては敬意を表しておるのですけれども、こうして次から次と穴があいているということになりますと、これはアドバルーンだけであってやらないのではないかという批判があるということをよく肝に銘じられまして、今後の施策に対して力を入れていただきたい、これをひとつ要求いたしまして、終わります。
○田中委員長 次に、大原亨君。
○大原委員 法案審議に入る前に、いまのことなんですが、このことは、大石長官の在任中に前向きに非常に努力をされたことは認める。その結果は、これはどう出るか、まだわかりません。われわれも、かつて私も田中委員長も予算委員会におりましたときに、かなり重要性を認めて調査をいたしまして、佐藤総理等が指示をいたしました経過もあります。したがって、私は大石長官が在任中に——あなたはかなり永遠に在任されると思いますけれども、この国会中ですね、委員長にもお願いしたいのですが、瀬戸内海の汚染対策についての問題を集中的に議論してみる、こういう委員会の運営をして、いままでの議論や討論の結果をひとつ具体的にどう処理するかという問題を国会の論議を通じて引き出していく、こういう審議のあり方等について委員長もしかるべく機会を設けて、ひとつこの問題を扱ってもらいたい。 というのは、予算委員会の私の質問に対しましても、長官は重要な点を御答弁になっておるのは、やはりこの問題は現在の環境庁の権限のワクを出る問題がある、したがって特別法の問題についても議論すべきである、こういうかなり前向きの発言をされておるわけでありまして、これは地域の都道府県知事やあるいは自治体等もひとしく住民と一緒に要望しているところですから、集中的に議論されるようにお取り計らいをいただきたい。こういうことを委員長に要請いたします。委員長、答弁を願います。
○田中委員長 大原君に申し上げます。 ただいまの大原君の御提案は、私もそう思います。したがいまして、後日理事会にはかった上で、御提案のような審議をする機会を持ちたい、このように考えております。
○大原委員 本法律案についてのいままでの質疑応答を、私はここへ出席してない場合が多かったわけですが、少し経過を追跡をいたしてみました。その結果に基づいて、簡潔にひとつ問題点について質問をいたしたいと思います。 そこで、過失責任主義から無過失責任主義へ賠償についての原則を転換をしていく、こういうことは非常に大きな問題ですが、歴史的、全面的、全体的ということでなしに、直接的なそういう転換の理由となったものは何であるか。この提案説明を見ると、非常に抽象的でよくわからぬと思うのです。時間の関係で私の見解を申し上げて、賢明な長官の見解をお聞きをしたいと思います。あるいは裁判所からきょう見えておりますから、裁判を行なわれた上でのこういう問題についての感想も聞きたいと思う。 つまり、直接的には高度成長を通じまして企業が非常に大型化して、公害源である加害者の力が被害者に比べて相対的に非常に強くなってきた、これが第一。それから第二は、公害問題というのは大きな社会的な背景があると一緒に、自然科学的なそういう経験や知識を要する。裁判所自体もその点が足りない。こういうときに被害者の立場をやはりどう守っていくか、人権を守っていくかという問題である。つまり、企業の大型化と科学技術革新に伴うて科学技術というものが非常に企業活動に入り込んできて、公害問題が非常に複雑になってきた。それから水俣裁判やその他でも明らかなように、公害裁判は非常に長く時間がかかる。金がかかる。それでは制度はできても被害者の立場は救済できない。大体こういう企業の大型化と自然科学的な複雑な原因とそれから時間がかかる、金がかかる、そういうふうな問題で被害者の立場が裁判上守られない。これを守っていくというそういう観点に立って今回の無過失賠償責任の立法化という議論が起きてきたのではないか。こういうふうに立法の趣旨を明確にする必要があるというふうに考えるが、いかがですか。
○大石国務大臣 ただいまの御趣旨を私はそのとおりと考えております。とにかく問題は、いろいろな科学技術、そういうものが非常に進歩して——進歩と申しますか、進んでまいりますと、とにかくいろいろなわれわれの予想しないような被害者が出てまいるわけでございます。これはやはりわれわれはできるだけ押えなければなりませんけれども、不幸にしてそのような被害者が出た場合に、これをできるだけ救済することが大事なことでございます。ただいままでもそのような救済の手段はなかったわけではありませんが、いろいろと不十分でありましたし、また時間的にも非常にむだがございました。こういうものをすみやかに救済する方法はないかということ、それからいままでの過失が、たとえばいろいろな基準、規制を次第次第にきびしくして監視をきびしくしてまいりますと、企業もその規制を守ることになります。しかし、いままでは、規制を守っても必ずしもそれがいろいろな条件によってその被害者が出ないとはいえません、出るおそれがございます。そのような場合には、いままでのような過失責任の考え方ではそこはとうてい救うことができません。そういう意味で、明確な無過失であってもそのような場合にはその責めを負うという明確な政府の行政の方向を示さなければならないと考えまして、そのようなことを基準といたしまして、ただいまの大原委員のお考えになりましたような大きな見地から私はこれも同感でございますが、その点からあえてこの無過失責任制度の考え方を行政の主眼としていきたいと考えたわけでございます。
○大原委員 そこで、裁判を通じまして——いろいろな公害裁判をやったわけですが、以上私が申し上げあるいは長官が御答弁になったような観点で立法政策を転換する必要は、裁判を実際に行なわれた上においてもあるのではないか。原則的な問題ですが、大まかな点について所見を述べてもらいたい。
○西村最高裁判所長官代理者 裁判所といたしましても、ただいまの御意見に対して何らつけ加えることはございません。お説のとおりだと思います。
○大原委員 この議論は一民事訴訟の問題ですが、私は非常に大きな問題を含んでいると思うのは、申し上げましたような問題の背景の中には、やはりいままでの既成の民法に対する一般的な原則を変えていくという問題があると思うのですね。いまの民法の不法行為や共同不法行為の議論等の問題は、これは企業活動の自由を認めるという資本主義の勃興期というか、企業活動というもので大気や水を汚染をする、環境を破壊するということは当然のつきものであるけれども、しかし、これをわれわれの立場、環境を保護するという立場に立ってみると、地球の自然の自浄作用の限界を越える環境破壊の問題が今日問題となった。したがって、企業の自由競争を認めながら人類の進歩をやっていこうという資本主義初期というか最盛期、ある一定の時期までのそういう考え方を変えて、このままで進むならば資本家を含めて国民全体が企業活動のために環境を破壊されて、たとえば三十年後には世界の人口は日本の人口を中心に半分になるかもしれないという議論もあるぐらいに環境破壊の問題が大きな問題になる。自浄作用の限界を越える企業活動という問題が問題になる。そうすると環境優先とか人間優先という当然の人権の自覚の上に立ったこれを中心として企業活動について責任とその範囲というものを明確にしていくというふうな、そういう大きな歴史的な転換というものが政策として出てきたのが無過失賠償責任の議論ではないか、私はこう思います。いかがでしょう。つまり逆にいうと、この問題自体を処理する自民党や佐藤内閣、保守党の資本主義内閣の政府に能力がなかったならば、資本主義自体がこの矛盾のために歴史的な存在価値を失う、こういうふうに言ってもいいほどの認識の上に立った問題ではないか、こういう議論であります。 〔委員長退席、八田委員長代理着席〕
○大石国務大臣 大原委員のいまのお説でございますが、ことばの使い方その他につきましてはいろいろとわれわれは多少違いますけれども、基本的にはやはりそのような考えで進んでおるわけでございます。
○大原委員 大臣、そのような考え方が、八田委員長代理がすわっておられますが、自民党の中には、政府には認識が足りないのではないか。大臣はともかく一生懸命理解されようとしておるのですが、この立法の準備の過程等を見てみますと、そういう考え方が足りないのではないか、欠くるところがあるんじゃないか。つまり、企業活動優先という原則が企業活動自体を死滅させてはいけないということはわかりますが、やはり、どちらを優先させて、そしてどちらの立場に立って進めていくか、被害者の意思をどうして貫徹するかという問題が、すなわち自浄作用の限界あるいは日本の経済活動を存続させる基本であるという考え方、その上に立った企業責任を明確にするという考え方、そういうものについての認識が足りないのではないか。これはまあ非常に政治的な質問になると思うのですけれども、これは与党の諸君のいままでの扱われ方を見ると、その点に根本的な認識の欠陥があるように私には思われる。これはまことに病気としては深刻な病気ではないか、こう思いますが、大臣の所見はいかがですか。
○大石国務大臣 これはいろいろな見方も、そういう判断の相違があると思いますが、直接私の口から自分の党がどうであるかこうであるか、ちょっと申し上げにくいので、それは答弁は差し控えさしていただきたいと思います。 ただ、御承知のように日本の国全体が——一部の理解ある、先見の明のある人はあったでしょうけれども、日本の国全体があの終戦の廃墟から、戦争による破壊から立ち直って、新しい国の豊かな経済をつくり、あるいは国民の福祉をはかるという立場からとられたのが要するに高度経済成長の方針でございます。そういうことで国民はその方針を受け入れまして、その方針で進んでまいりましたが、その中に不幸にして公害に対する認識なりあるいはその自覚というものが足りなかったために、このような現在の大きな公害問題を引き起こしておると私は考えます。 そこで、そのあやまちにはすぐ国民全体が気がつきまして、すでに政治の方向も経済優先から人間尊重へと進んできておりますことは御承知のとおりでございます。その結果、御承知のように、国会におきましては、公害に対するいろいろな努力が払われ、行政においても努力が払われておる。国会におきましては、公害基本法をはじめとして、その他いろいろな公害対策の法案が準備され、いわゆる公害国会といわれる臨時国会まで召集されまして、このような公害対策の方向に大きな歩みをしているわけでございます。しかし、こういうことから考えますと、国会というものはそこにおる国会議員並びに政党、政党の背後には国民がございますが、そういうものがやはりみんな集まって、そういう動きをしているということでございますから、自民党が、認識の高い低いは別として、やはりそのような人間尊重の方向に努力していることは間違いないと考えておりまして、その方向をさらに強めることが今後われわれの責任ではなかろうかと考えております。
○大原委員 そこで、その議論はそのくらいにしておきまして、無過失賠償責任に転換することと、そういう原因、直接原因や背景の認識の問題と一緒に、やはり民法上の不法行為の二つの大きな柱であったところの因果関係の推定の問題ですが、因果関係の立証について被害者に責任を負わせるということは、先ほど申し上げたいまの現状では酷ではないか。それからいまのこの法律の主題であるところの過失責任から無過失責任への転換、それから、しんしゃく規定の問題等を含めて共同不法行為に対する考え方、それから遡及の原則と不遡及の原則、こういうふうな問題は私は密接不可分の関係にあると思う。つまり、被害者の意思を貫徹する、被害者の立場を守っていく、そのことを通じて自然環境を守っていく、企業責任を明確にしていく。新しい高度成長のもとにおける技術革新や大量生産、あるいは過密、交通問題、光化学スモッグはその一つですが、そういう高度成長から起きた次から次への事態に対応して、そういう権利のあり方の問題社会的な背景の問題も変わっているんだ、こういう認識からいうならば、私が申し上げたように、野党案等は政府の考え方に対する一つの対照的な案として検討して、そして論議の中で止揚していくような問題であると思うわけですけれども、そういう関係の問題、テーマ、ここに出ている問題は、救済基金の問題もそうですが、救済基金の問題やあるいは禁止請求の問題や、行政に対する措置要求の問題もそうですが、無過失賠償責任に転換する問題として、こういう一連の問題は一体の関係で転換していかなければ、直接的なあるいは背景的な立法の趣旨を十分貫徹できないのではないか。 そういうふうに事態は、社会的なそういう条件は変わっているんだ、こういう認識について私どもが国会の論議を通じまして、お互いに資本主義や社会主義の問題を議論しているわけじゃないのです。資本主義の体制においてもこの問題を処理することが必要じゃないか。資本主義で処置できなかったならば、これは社会主義体制の問題が当然出てきてもこれは抗弁できないのではないか。こういう人間の生きる、生存権の問題として、この問題に対する考え方の認識、議論というものがなお高まっていく必要がある、高めていく必要がある、こう思いますが、こういう関係の項目についてのあなたの御理解を総括的にお答えいただきたい。
○大石国務大臣 おっしゃるとおり無過失責任の制度は、これは一つの政治の新しい方向に進む転換の土台となるものでございます。そういうわけでわれわれもできるだけ転換を完全にはかり得るような、それだけの意味のあるものをつくらなければならないと考えております。 そういうことで、いろいろ苦労しました結果、現在の段階においては、最小限度であります、これでわれわれは決して満足いたしませんけれども、まずこれによってそのような新しい考え方への転換をはかることの土台ができ得る、ころ考えまして、この程度のもので、われわれも不完全と思っておりますけれども、あえて国会に提出したわけでございます。それはいろいろな理由があります。一つは、これはあまりにも現実的な問題でありますけれども、われわれは法案をつくるのに半年余り努力してまいりました。そして一つの例として社会党案が示されております。その理由の中に、われわれとしてとるべき、賛成すべき点もたくさんございます。そういうものを取り入れて、いわゆる総合的に近い法案をつくろうとしてまいりますと、一年か二年かの時間がかかります。そうするとどうしてもこの国会には間に合いません。しかし、やはり何と申しましても、われわれは長い間の公約であり、一日も早くそのような土台を打ち立てるということ、同時に、そのことによって片方のもう一つの仕事である基金をつくって、一日も早く被害者の補償を見てあげることができるような制度をつくりたいということで、急ぎましてこの国会に提案したわけでございます。 そういうことで、時間的にいろいろなものを取り入れる余裕がございませんでした。そのような大きな法案をつくりますのには、他省庁との折衝とかいろいろなものがございます。たとえば、いずれ将来は財産請求の問題も当然これは取り入れなければなりませんが、そういうものを取り上げます場合にも、まだまだいろいろなむずかしい問題がたくさんございますが、それを考えておりますと、とうていこの国会に提案することはできないのでございます。そういうことで不十分とは承知しながら一応現在の必要な最小限度であると考えまして出したわけでございます。 したがいまして、いろいろな御議論を賜わっております。たとえば、いわゆる因果関係の推定の問題にしましても、これは確かにおっしゃるとおり患者に因果関係を証明させることは不可能であります。それはやはり当然推定の方向でいかなければならないことはおっしゃるとおり、われわれもそういうことを考えておりました。ぜひそれを入れたいという考え方でおったわけでございますが、やはりわれわれが法律をつくります場合には、現実にそれがすべての国民にとってあやまちがないように、これはやはり現実にそういう責任がありますからそういうことを考えなければなりません。そういう意味で推定の規定にいたしましても、もう少し考えるものがある。われわれは典型的な一つの例を考えておりましたけれども、いろいろなことを考えますと、やはりもう少し慎重に考えなければならぬ。いずれこの推定規定は私は要ると思います。いずれつけ加えなければならぬと思いますけれども、今回出すには少しわれわれの準備が不完全であった、不十分であったという気持ちもございます。そういうことで、最終原案に入っておりませんが、われわれいろいろなこれをつくる過程においてはそのような段階を経まして、この原案になったわけでございます。 そういうことで、おっしゃるとおりこれは不十分であります。しかし、われわれはこれが新しい考えの方向へ転換する一つの土台にはなり得る、そしてその後にあらゆる努力をいたしまして、できるだけ早い機会にいろいろなものをつけ加えまして、そしてこれを完全なものにつくり上げていきたい、そういう考えでおるわけでございます。
○大原委員 あまり議論いたしておりますと長くなりますから、裁判所のほうへお聞きいたしますが、新潟の水俣裁判の判決の中に、前文があって、「因果関係論」がございます。「汚染源の追求がいわば企業の門前にまで達したときは、むしろ企業側において自己の工場が汚染源になり得ない所以を証明しない限り、その存在を事実上推認され、その結果、すべての法的因果関係が立証されたものと解すべきである。」こういう判決、明快な歴史的な判決があるわけでありますが、そういうように、判決は非常に長時間、金をかけていって、いろんな不満や意見があったけれどもここへ到達した、そういう判例、裁判のそういう現状からいうなれば、いまのように因果関係の推定を立法化すべき段階に現実の要請は来ておる、そういうふうに考えてよろしいかどうか、裁判所側が実際の裁判をつかさどってやりました上に立っての簡潔な見解を聞きたい。
○西村最高裁判所長官代理者 実体法規定につきまして、どういう具体的な規定の内容を設けるかということは、国の立法政策の問題でございまして、裁判所といたしましては、国会の審議を経て成立いたしました法律を適用するという立場にございますので、その内容についての意見は差し控えさしていただきたいと存じますけれども、阿賀野川の水銀中毒事件あるいは神通川のカドミウム中毒事件等の判決を通じて見ましたところでは、ただいま御説明にございましたように、因果関係の経路についての推定、事実上の推定ということで裁判はまかなっております。また、有害物質であるかどうかというような点につきましても、科学的な証明でなく、疫学的な証明で足りるという考え方に立って判断をいたしておるわけでございます。 そういう意味で、現在提出されております法案に、因果関係の推定規定の有無は、必ずしも現在行なわれております裁判の点におきましてはそれほど影響がないのではないかというふうに推察いたしておりますが、もちろん具体的なケースがこれからどんどん出てまいりますと、また違った考え方もあり得るかとは存じますけれども、現在の段階では裁判所はかなり勇敢な推定、事実上の推定を活用して判断しているということが言えるのではないかと思います。
○大原委員 この点についていかがですか。つまり、立法の準備の過程の中で、あるいは論議の過程の中で、因果関係の推定については議論をされた。結果として政府案においては削除された。そういうことが、これからの裁判に影響を及ぼすかどうか。被害者の立場に立って、プラスになるかマイナスになるか、これが一つ。 もう一つは、そういう因果関係の推定について被害者の立場に立ったはっきりした規定がないことによって、これからの裁判が科学的にも、大企業との関係においても、あるいは金や時間がかかる、こういうふうな問題で、実際上被害者は自分の正当な主張を裁判上結論づける以前に、被害者としては被害を受けて死んでしまう、こういう現象があるわけです。そういう点を克服するような判例が出て、その判例に基づいてどんどん裁判が進んでいくのか。そういう問題等を含めて、裁判所としては被害者の立場に立って考えた場合には、これは二つの面においてどういう影響があるか。いかがですか。
○西村最高裁判所長官代理者 ただいまの点でございますけれども、原案について因果関係の推定規定がどういう理由で出てきてどういう理由で削除されたかという点について、私どもわかりませんけれども、因果関係推定規定がないからといって、今後の裁判に影響がある、因果関係について厳格な証明を要するような方向に裁判が変わるということは、おそらくないのではないかというふうに確信はいたしております。 訴訟の迅速化の要請につきましては、またいろいろな施策というものを裁判所としても努力いたしておるところでございますけれども、現在因果関係の推定規定がかりにあるといたしましても、推定の要件となっている事実に関する証明のために裁判所としてはかなりの長時間を要しているというのが実際ではないかと存じますので、今後急速に迅速な処理ができるということはちょっと申し上げかねるわけでございますが、ただ裁判所といたしましては、今後ともこの公害事件の処理につきましては全力をあげて迅速化のために努力をするという覚悟でおりますし、そのための準備もいたしておるわけでございますので、今後現在よりも遅延するというようなことはもちろんあり得ないことと思います。できるだけ改善されていくのではないかというふうに考えております。
○大原委員 私は、いまの質疑応答を通じまして、後者については因果関係の推定を明定するほうがよろしい、迅速その他については、迅速確実に被害者の救済が処理される立場にある、こういうふうに私はあなたの答弁を解釈する。これは自由ですけれどもね。そうして、これはついでですが、裁判所として、そういう公害裁判について、こんなに長く、金もかかる、大きなかまえが要るような裁判、これは被害者の立場に立って、いまの現行法の範囲内で、たとえば費用負担とかその他の問題を含めて迅速に処理する、確実に処理する、被害者の立場というものを結論づけていく、こういうことについてコンセンサスというか、いままでの国民的な論議の中からどういう措置をとろうとする用意があるか。
○西村最高裁判所長官代理者 裁判所は、公害事件の処理につきましては、一昨年来裁判所の最重点施策の一つとして努力してまいったわけでございます。 その一つの施策といたしまして、まず公害事件は御承知のとおりかなり科学上の知識を要する部門が多いわけでございます。裁判官は本来あまり科学的知識を持っておりませんので、そういう意味で当事者の主張なり証拠なりについての理解が十分でなければ適正迅速な処理ができないということで、まず第一に裁判官に科学的な基礎知識を提供する必要があるということで、その面から専門的な図書を裁判所に充実、配付する、また適当な専門家をお招きいたしまして科学上の基礎知識について教えを受ける、そういうようなことで、当事者の主張及び証拠調べの結果等について判断できるようなるべく処置する。また相当な鑑定人を選任した場合に鑑定人の意見を聞き、理解するにつきましても、ある程度の基礎知識を必要とするものでございますので、そういう意味での基礎知識の供給をはかる、これを第二点としてやっているわけでございます。 そのほか公害事件は非常に多数の当事者が登場してくるというような面もございまして、訴訟の運用上非常にいろいろな問題があるわけでございますし、また先ほどからもお話しのように、非常に新しい法律問題も提起されておるわけでございます。そういった点では法律問題なり具体的な訴訟の運用なりにつきまして裁判官の会同あるいは協議会、研究会等を開きまして相互に知識を交換し合う、あるいはくふうをしたところを教授し合う、そういうようなことで、お互いに訴訟の運用の適切というようなことをはかるという努力をいたしておるわけでございます。 そのほか、非常に金がかかるという点でございますが、確かに鑑定人の報酬その他証拠を収集するにあたりまして相当の費用がかかるわけでございますので、この点につきましては訴訟救助というものを大幅に認めていくという方向で努力いたしております。従来、生活困窮者でなければ救助が受けられないというような取り扱いが一般的でございましたけれども、公害訴訟に関しましては、生活困窮者ということでなしに、原告となる者の収入の程度とその訴訟に要する費用とのかね合いで相対的に考えて、できるだけ広く救助を与える、そういうことによって訴訟費用の多大にかかるという面についての負担を軽減する、そういう努力もあわせて行なっておるわけでございます。
○大原委員 時間と金がかかる立証の問題、こういう問題に対処するために——裁判所はいまのような点は確かにあります。たとえば共同不法行為の問題があるのですが、被告が非常に多い、加害者が多い、関係者が多い、あるいは被害者が多い、それらの人々は、具体的な問題をめぐって日にちを変え、場所を変えてずっとやっておったら、永遠に続く、こういう裁判になってしまう、一方が主張すれば。だから、たくさんの人が参加できて、被害者と加害者が冷静に事実の問題を中心に裁判をし、裁判官が判定できるような、そういう広い場所をつくるということも非常に必要だ。そういうことは一ぺんにできますか、いまの制度で。 それから費用の問題は、私が申し上げたとおり、あなたが御答弁になったとおりですが、この問題についてもさらに進める。 それからもう一つの、第一項であなたが指摘された問題は何でしたか、場所以外に——人数が多いから、たくさんの人を一ぺんに入れて、秩序立って議論できるような、そういう法廷が必要だろう。いまだって簡単にできやせぬか。それからもう一つ、あなたが言われたことで裁判上必要なことは何でしたか。
○西村最高裁判所長官代理者 科学知識です。
○大原委員 科学知識のある裁判官が部内においてそのことを議論できるような、そういう制度をとる必要はないのか。イギリスなどは、あとで時間があれば議論するけれども、アルカリインスペクターというような、非常に法律の知識と科学の知識を持った人が、非常に大きな行政上の権限を持っておる。そこに問題を提起していきましたならば、企業に対しては、企業の閉鎖から施設の改善、あるいは補償まで全部やってしまう、こういう権限を持った人がおる。日本は行政上は県知事以下だめなのです。保健所なんか見てもだめなのです、日本では。裁判官も、その問題については専門的に信頼するだけの判決を書いたり、手続を進めたりする際に、内部でできるようなそういう科学知識を持った人が要るんじゃないか。そういう際に、公害問題を除いて、裁判というものは、切った、突いた、だましたということはあるけれども、この問題は非常に重要だから、いまの裁判官の養成や司法制度の欠陥ではないかと思うのですね。その三つの議論は非常に重要な議論ですから、時期をあらためてやりますが、この問題は問題の指摘の程度にとどめておきます。この問題はあらためてひとつ、裁判を進めていく側における被害者の意思の貫徹、こういう問題として議論をいたしたいと思いますが、これらの問題についてまとめた意見をひとつ出してもらいたい、こういう資料としてもメモを出してもらいたい、どういう考えでするのかということを出してもらいたい、それだけ申し上げておきます。——異議がなければそれでよろしい。 それから法律適用の範囲の問題は、私ども経過の中で議論されていると思うのです。範囲の問題では、細谷委員等は、悪臭、においの問題も出しております。大気汚染の問題に関係して出しておると思います。そこで私は、時間もなんですから端的に申し上げるのですが、範囲の問題で、たとえば有機水銀はいもちに非常によくきくわけです。米のいもちに対しまして決定的にきくといわれたものでありますが、その有機水銀をいもちに使って稲の茎を汚染する、これが米を汚染する、あるいは野菜類もそうですけれども、そういうふうなものは、有害物質が植物、野菜汚染を通じて人体に被害を及ぼす、こういう経路が明確になる、こういう場合には、この法律案の無過失損害賠償責任の議論の対象になるのかならないのか。
○大石国務大臣 われわれの生命あるいは健康に影響を及ぼす有害物質につきましては、これは漏れなく網羅いたしまして、これを特定物質として指定してこの法律に入れる方針であります。したがいまして、いまの水銀とか、非常に毒性の残留度の強いものとか、そういうものにつきましては、すでに使用を禁止しておる、そういうものは使わせないようにしておるわけでございますから、いわゆる昔のようなBHCとかDDTであるとか、そういう塩素系のものについては、いま使用を禁止しております。そういうことで次第次第に——そういうようないままで有害な物質であっても、直接われわれの健康や生命に被害を及ぼす可能性のないものは取り除いてございますが、そのようなおそれのあるものは、これは漏れなく入れてまいる方針でございます。
○大原委員 私が例を引いて言ったのは、植物に対しまして有害物質として指定したようなものが直接入ってきた場合に、それで健康を害したような場合はこれを適用するのかという議論をしたわけですが、これは問題をちょっと広めてやりますと、土壌が汚染し、有毒な農薬が残留しておるわけですね、この土壌の汚染を通じて健康に被害を及ぼしたという場合には、大気汚染、水の汚濁というようなものに関係した法律との関係において、因果関係が立証された場合には、どういう関係になるかということです。
○船後政府委員 土壌汚染の関係を一般論として申し上げますと、通常、土壌の汚染は、やはり大気の汚染もしくは水質の汚濁を通じて生ずるものでありますから、因果関係が究明されるかどうか、有害物質が大気もしくは水を通じまして土壌を汚染し、それによって健康被害が起こったという場合には、この無過失が適用になるわけであります。
○大原委員 もう一つ例を申し上げますが、船後さんだって科学知識がない、だからどの程度答えられるかわからないけれども、わかるだけ答えてください。大石長官は科学知識はあるが、法律知識はもう一歩らしい。 ABSというのがあるのです。学者によって取り上げ方は違うのですけれども、中性洗剤です。ABSは優秀な作用があるといわれておるのですが、有毒物質あるいはバクテリア、有毒金属、そういうものの粉末とABSを結合して使用いたしますと、たとえば農薬でも何でもそうですが、結果的には洗濯したものが流れて、そして有毒物質と結合してもそうですけれども、結合いたしますと、植物に対しても浸透力がある、土壌に対しても浸透力がある。これは数年前から議論して、少し最近議論が足らないと思っておりますが、ABSの議論がある。つまりこれが媒介となって、そのもの自体のABSの有毒性よりも——これを間違って飲んで人間が死んだという例等があって、そのもの自体の有毒性についてもある。だから、これを有機質の洗剤にかえろという議論があるわけです。あるいは別のものにかえろという発想があるのですが、一つは抱合して浸透する力がある。 〔八田委員長代理退席、委員長着席〕 そのことによって有毒物質が井戸に流れる、あるいは他へ広まっていくというふうな——そういう当然土壌の自浄作用の中で、二メートル、三メートルと汚染された水が流れてまいりますと、きれいになるのですが、しかし、ABSの場合は、中性洗剤の場合は、二十メートルでも三十メートルでも浸透力があって、そしてカドミウムであれ、シアンであれ、有毒なものや、あるいは有機水銀その他残留農薬等を浸透させて、そして、二十メートル、三十メートル先まで土地をろ過してもこの有毒物質とABSはくっついて回ってくる。たとえば、多摩の浄水場に行きましたら、かなりの浄化装置はしているわけですが、そこへ集まったやつをひっかき回したらものすごいあわが出る。ある場所では、上水道が整備していないで井戸水であったために、家庭で使っているABS等が浸透してまいりまして赤痢やチフスが出た、こういう例があるわけですね。だから、そういうふうに、そのもの自体の毒性については議論があるが、そういう点、土壌の自浄能力をなくしていくような作用を持っている、浸透力を持っているABS、中性洗剤等は、これは問題の究明は、私は一つの大きな問題であると思うのですが、これが究明をされ、そういう一定の限度がある範囲内かもしれないけれども、有毒物質であるということが明らかに媒介物質としての本質から出てきたような場合は、これはどうなるのか。例をあげて言わぬとこれはよくわからぬから、その範囲の問題で私はこの問題をひとつ提起をする。
○岡安政府委員 ABSの問題でございますが、ABSにつきまして、それが土壌に、つまり農用地に入りましてどういうような作用を起こすかという点につきましては、現在必ずしも十分な調査等の結果が得られておりませんけれども、一部の地域におきましては農作物の生育障害を起こしているというような報告も二、三出ております。ただ、それがどういうような量の場合にどういうふうになるか、また先生のおっしゃるように、ほかの物質と合わさった場合にどういうような化学変化を起こすか、その点につきましては、現在私どももまだ科学的知見を得ておらないわけでございます。私どもの今後の対処の方針といたしましては、まずABS等の家庭洗剤は、家庭から出る量が非常に多いわけでございますので、これの下水処理ということによって大部分は対処し得るのではなかろうかというふうに考えております。ただ、ハードな形でございますABSにつきましては、なかなか処理も困難であるということもございまして、通産省の御指導によりまして、最近ソフトLBSといっておりますけれども、ソフト系のものに相当切りかえられております。これは下水、上水等の処理ができやすいというような特性を持っておりますので、それによって処理をするという方向で現在水質の問題は対処しておりますけれども、おっしゃるとおり、なお河川等は洗剤によって相当汚染されておりますので、今後これらの対策につきましては、洗剤自体の変更も含めまして、私どもさらに研究を進めていきたい、かように考えております。
○大原委員 長官、これはハード型とソフト型ということで、分解しやすいソフト型にABSの中身を変えていくという議論はずっといままであったことだ。通商産業大臣等もこれの議論に参加したことがあります。ソフト型に変わっているというのですが、比較的な問題であって、かなり効果のあるものはハード型とほとんど変わらないというこういう議論もあるし、そしてそのもの自体の毒性もさることながら、抱合して浸透していくというような作用がある、土壌の自浄能力を破壊するという問題がある。それは皮膚からでも何でも、植物に対しましても、非常に浸透力があるから、農薬と一緒に使う、それが土壌にあると、土壌の中でいつまでも残留しておる。それをいま言われたように活性炭でどうかしようと思ったって、ものすごい金がかかるから、下水装置では浄化できないという問題がある。だったら、ABS自体に対する対策が必要だということになる。いまのままでほっておけばしり抜けになるのではないか、こういう有力な議論がありますから、この議論のあるところはひとつ留意をしてもらいたい。これは範囲を考える際に、範囲を限定してはならぬ、あまり範囲を限定するということはいけないのじゃないか。水や空気だけに限定するということはいけないのじゃないか。典型公害に全部一ぺんに拡大することについては議論があるだろうが、この範囲を限定するという考え方は、いまの被害者の立場に立った議論としては問題があるのではないか。いま指摘をいたしました点についての所見を大臣のほうからお伺いしたい。
○大石国務大臣 ただいま上程されております法案は、水質と、それから大気だけに限られておりますけれども、われわれはこれだけに限る考えではございません。やはり必要なその他の土壌、あるいは悪臭もそのとおりでありますが、いずれ近い将来には、そのような実際の因果関係、そういうものが解明されてくれば、当然取り入れなければならないことは考えておるのでございます。 ただいまのABSにつきましても、そのようないろいろなむずかしい議論がございまして、非常にこれに対して不安がある以上は、私はこれは徹底的にABSのあり方を究明しなければいかぬと思うのです。初めからはっきりした毒性がまだわからないだけですぐとめるということもどうかと思いますけれども、しかし、できるだけ早くそういうものにつきましては十分な検討をいたしまして、努力をして、そうしてはたしてどのような作用があるかということをはっきり実態を突きとめることが、私はこれからの新しい公害を防ぐために必要じゃないかと考えるわけです。ですから、そういうことで何回もさっきから私は申し上げているのですが、これから新しい化学製品をどんどんつくる場合には、これは簡単に製造を許してはいけない。そのものが絶対に毒性がないという証明がない限り、そこから出る廃棄物が無害であるという証明なり実験がなされない限りは、簡単に許可してはならないという基本的な法的根拠のある行政をしていかなければならない。これが大事なことであると考えておる次第でございます。
○大原委員 いままでの範囲の議論の中では、土壌の汚染については、これは水や空気の汚染との関係において浸透していくということもあるのですから、これは広く解釈をしていって、因果関係が立証されれば法律の対象になる。それからなお、いま申し上げたようなABSが典型でありますが、これは国会でものすごく議論になって、メーカーから反撃があった問題です。メーカーからあらゆる点の反撃があった。化学産業のこれは一つの花形ですから。ですから、ABSは、中性洗剤は非常に浸透力があって、そうして洗たくとか、いろいろな洗浄その他に使う場合には非常に威力を発揮するのですが、威力を発揮するだけに、ほかの物質と結合いたしましたならば、大きな有毒物質の媒介になる、あるいはそのもの自体が有毒物質だという議論もある。なお学者の間においても結論を得ていない。そういう問題等を考えたならば、範囲について限定するということには、私は、いまの科学上の常識で法律の条文に書く場合には、できるだけ広い範囲に解釈をするという態度がないと、被害者の意思を貫徹する、救済する措置にはならない、こういうふうに思いますから、その点は、大臣の答弁があったことですから、これからの一つの研究課題としてひとつ取り上げていただく、そういうことで前に進みたいと思います。 時間ははしょってやりますが、野党の案で——法制局いますか。時間を能率的に使うためにひとつ質問を進めてまいりますが、野党の案で、共同不法行為の責任については、第四条として原則的な規定をまず設けたわけであります。政府の、共同不法行為に対する加害者に対する責任の問題についての規定がここにあるわけでありますが、その野党の案と政府の案とは、法律の概念の上からどういう差があるのか。
○川口法制局参事 御指摘のとおり、議員提出の法律案の第四条に、ことばの点から申しますと、共同不法行為とは書いておりません。複数原因者という概念でつかまえているわけでありまして、同じような現象を法律的な見地から把握する場合に、共同不法行為という観念でとらえませんで、二以上の事業者が結果的に原因を生んで、ある結果を生じたという場合には、両方とも、あるいは幾つあろうとも、それは連帯責任を負うのだ、こういう考え方にしておるわけであります。民法上の共同不法行為というのがどのような構成になっているかという点については、これはむしろ政府案の説明になりますので、私からは申しません。少なくとも、野党案では複数原因者という観念でつかまえたという点が、民法上の共同不法行為という概念とは幾ぶん違うだろう、このように考えております。
○大原委員 法制局、いまの点ですね。野党の案で原則的なそういう規定を設けておいた。これは広く言えば、加害者というか、公害源が二つ以上でありますから、共同不法行為の観念ですが、あなたの御答弁によりますと、民法上の共同不法行為と同じものではない、こういう議論です。その議論は最初に議論いたしましたが、公害が持っている社会的、歴史的な背景、そういうものがこの立法の趣旨にあるんだ、その上に基づいて第四条の二項の例外的なしんしゃく規定を置いた。議論は省略いたしますが、端的に言いますと、そういう見解であると思うのです。政府は、民法上の規定を引用しながら、この法律自体は、例外規定をきめるために、加害者に対するしんしゃく規定を規定するために設けた法律である、こういうことである。事業活動、公害の特殊性にかんがみて……。そこでは立法の趣旨、これからの適用の範囲、あるいはその程度というものが違うのではないか、これがいままでの議論の一つだと私は思うのですが、政府はそれに対しましてどういう見解を持っておられますか。
○船後政府委員 お答え申し上げます。 政府案におきましては、大気汚染防止法の第二十五条の二の規定でございますが、これは先生御指摘のとおり、二以上の事業者の事業活動によりまして損害が生じて民法七百十九条の適用があった場合には、しんしゃく規定を特に民法の例外として規定したものでございます。そこで、政府案では、損害が二以上の事業者の事業活動によって生ずるといった場合は、民法の七百十九条に共同不法行為の規定があるわけでございますから、この七百十九条の適用にゆだねる。現在、七百十九条による共同不法行為の成立の範囲というものにつきましては、学説、判例、いろいろな意見がございますけれども、私どもといたしましては、共謀あるいは共同の認識というものは必要ではなくて、少なくとも、関連共同性と申しますか、客観的に行為に共同性が認められるというような場合には七百十九条の適用がある、かように解しておりますので、こういう公害被害におきましても、複数原因者についての損害賠償は七百十九条で判断できるのではないか、このように考えております。
○大原委員 船後政府委員にもう一回質問するのですが、民法の不法行為は、故意、過失の問題、つまり、過失責任主義の問題と、因果関係について被害者側が立証するという問題、これはいままで裁判上議論いたしましたが、水俣病で判決があったように、因果関係の推定というのは判例で出ているのだから、法律に書いたらいいじゃないかという議論をいたしましたね。それを書かないという議論が一つと、それから無過失責任の原則を、不遡及の議論にはっきりするように、範囲をできるだけ限定しようという考え方がある。これが私は七百十九条をここへ引用した精神であると思うわけです。その例外、しんしゃく規定を設けるということは、しんしゃく規定、免責規定のほうが重点になる法律になるのであって、いままで議論をしたそういう議論や、あるいは野党案では、法制局のほうで答弁をいたしました案とは違うのではないか、そういう法律の仕組みというものが、被害者の立場に立ったら違うのではないか、こういう議論が成立しないかどうかということを言っておるわけですね。あなたの御答弁は、現状においては、この問題については、法制局が答弁をしたこととたいして変わりはない、こういうふうにお考えになる御答弁だというふうに理解してよろしいか。
○船後政府委員 民法七百十九条と野党案の四条との差は、「共同ノ」という字句が七百十九条にはあるわけでございまして、七百十九条の場合に、「共同ノ不法行為ニ因リ」ということがどのように解釈されるかという点は、主観的な要件というものは最近必要としない、関連共同性ということでもって判断されるわけでございますから、結果としてはほぼ同じようなことになるのではないか、このように思っておるわけでございます。 なお、野党案にいたしましても、政府案にいたしましても、二以上の事業者の事業活動によって損害が生じたという場合には、故意、過失要件は要らないということは明らかでございますが、不法行為の成立要件中、他の条件、たとえば違法性があるとか、因果関係があるとか、あるいは損害が発生しているとか、こういったことにつきましては、両案とも同じであるというふうに考えております。
○大原委員 法制局、いまの点は、私が申し上げたことを含めて、野党案は、客観的にいまの問題等説明があったわけですけれども、法律がきちっと制度上整備されているかどうかという問題を含めて、あなたは、野党案について——あなたの意見じゃないですよ。野党案はどのような立場に立っておるのか。
○川口法制局参事 非常に微妙な問題を含んで去りますが、今度の法案にまつわる全般の問題がすべて非常にデリケートな問題を含んでおりまして、因果関係の推定の問題、それからいま御指摘の共同不法行為の問題、それから過失責任主義を無過失に改める、裁判の判例で相当なところまできている、その一つの判例の発展の状況を踏まえて、立法上それを明確にするというふうなところに力点を置いてものを考える立場と、それから、そこのところのどこが、どの部分がどれだけ違うのだということは厳密には分析しにくいけれども、その立場をはっきりしようじゃないかというものの考え方、そういう相違の問題じゃないかと私は考えております。
○大原委員 いままでの公害裁判は、相手が大企業である、科学的な非常に複雑な問題である、あるいは金がかかる、時間がかかる、こういう議論をいたしました。被害者の立場を救済するために無過失賠償責任を明確にしていくという議論でありますが、共同不法行為に対しても、そういう背景の上に立った共同不法行為についての責任関係を明確にする必要がある。 そこで、船後さん、裁判では客観主義になっているのだからいいだろうと、便利のいい、これは原案を通すような説明をあなたはしたのですね。 それならば、大臣にお聞きしますが、そういう議論であるならば、いま法政局第一部長が御答弁になりましたけれども、野党案の第四条の原則的な公害に対する共同不法行為の責任ですね。共同不法行為の問題についてこういう文章を挿入して原則をぴしっとしておいて、判例で到達したそういう段階を踏まえて原則をぴしっとしておいてしんしゃく規定を野党案にも設けているわけですから、そういうふうにすれば、これは単なる免責である、何でも責任を除外していくほうに、企業の立場に立っているのだという非難を免れることができるのじゃないか。いまのような議論であるならば、いま私は審議の過程の中で政府案を野党案のように改正しても、この問題については大きな開きはない。心がまえにおいて、心がまえがよいということになるならば、こういうふうにやってもよろしい、審議の経過からそういう理由があるのではないか、この点について大臣はどう考えられますか。絶対譲れないと考えるか。
○大石国務大臣 私は、原則的には、この法案は、精神をりっぱに生かして、それがいいほうに直されるなら、どのような修正でも喜んでお受けする考えでございます。ただいまのお話につきましては、もう少し私検討しなければなりませんので、先に政府委員からお答えさしたいと思います。
○古館説明員 まず、政府案の大気汚染防止法の二十五条の二の改正案、この要件が必ずしも明確じゃないんじゃないかという点でございますけれども、これは野党案の四条との関連からいいますと、結局野党案と政府案が違いますのは、先ほど船後企画調整局長からのお答えにもありましたように、つまり、二以上の事業者の共同の事業活動によってということばが野党案にはないわけでございます。これが政府案には一応そういう要件が七百十九条を引用することによって規定されておるということが違うだけでございます。あとは全く同じでございます。ですから、七百十九条の要件のうち、企業者が事業活動に伴って有害物質を排出した、その結果被害が生じたけれども、その場合に、その事業者が複数であるという場合につきまして、二十五条の二は民法の七百十九条の特例ということになっているわけでございます。特別法ということになっております。この点は野党案とも同じでございます。そういうことでございますから、民法の七百十九条の一項を引用することによりまして、民法の七百十九条の一項の構成要件、これはきわめて明確でございます。そういうことで要件は客観的に明確である上に、その共同という要件を一応政府案では加えられてはおりますけれども、この点につきましては、民法の七百十九条のこの「共同」につきまして、判例が、結局、かつての「共同」というのは、行為者間に共謀あるいは共同の認識というふうな主観的な共同の意思というふうなことが必要だというふうに解されたこともあったようでございますけれども、最近は判例、学説ともそれは緩和されまして、そういった主観的共同の意思がなくても、各行為者間の行為が客観的に関連、共同していれば足るというふうなことになっているわけでございます。したがいまして、そういうふうな要件が一応加えられてはおりましても、裁判の実際におきましては、この野党案と同じような取り扱いがなされ、実害はないというふうに考えておるわけでございます。この点は、過日の公聴会でも我妻先生がそういう御意見を述べられておりました。
○大原委員 法制局、それでいいですね。 そこで私は、現在まで判例や学説が到達した経過というものを、端的に野党案のように第一項で原則的に規定をするということ、その上に立ってしんしゃく規定を置くということのほうが、法律としましては内容、実質ともに説明を要しないし、議論の余地のないところを裁判の出発点にする、現在到達した結果を裁判に反映させる、そういうことからいって、私はこの問題については十分議論してもらいたい。この修正は可能である、修正を否定すべき理由はない、こういうふうに私は思います。これは、環境庁長官は政府委員の答弁に譲られましたけれども、その前に概括的な答弁をされておるわけでありますが、国会で審議をする際に、いままでの経過から見て厚い壁があるということは私も実にわかるけれども、しかし、この問題だって、議論すれば、将来の問題は前向きにとらえるということを否定する何らの理由はないわけであります。こういう問題は、私は、審議の過程ではっきり政府原案を修正することが必要ではないか、また可能ではないか、こう思います。大臣にこの問題の答弁をいま求めるということになると、さらに私が質問を続けなければならぬということになる可能性がありますから、理事は全部おられることですから、委員長もこの議論を踏まえて善処してもらいたい。 私の質問を進めてまいります。よろしいですね。
○田中委員長 どうぞ続けてください。
○大原委員 それでは、これは答弁を求めませんが、ひとつお考えおきください。 もう一つの問題は、二十五条の三で、今度は加害者のしんしゃく規定でなしに、被害者の責めに帰すべき問題については、いままでの質疑応答を見てみますと、たとえばこういう例を政府側は示したそうですね。立ちのき料をネコババをしてなお立ちのかないような者があった場合、これは裁判上の保護を受けない、こういうことを例として言われたらしいですね。私はこんな例だけじゃ——そういう人は現行法で処理できるわけですから、これを特別「被害者の責めに帰すべき事由」というものをあげて加害者の立場とバランスをとる必要は、私は立法上全然理由にならぬと思うわけです。これは他にいろいろな例、事態等が推定される場合は別ですが、そうでなければ私はこれは削除すべき問題だと思う。こういうまぎらわしい規定を置くということは、被害者の意思を貫徹するといろ裁判上の、そういう立法の趣旨からいいましたならば、何ら実益がないだけでなしに、有害なことになる、逆用されるということになるのではないかと思います。 長官、私はいままでの議論は記録で見たわけでありますけれども、私の考えに対してどういうお考えを持たれますか。
○大石国務大臣 はなはだ恐縮ですが、先ほど仰せられましたように、どうも法律的に頭が弱いものですから、何とお答えしていいかわかりませんが、そういうしんしゃく規定があっても別に有害でないという判断ならば、置いてけっこうだと思いますし、もし有害であるということ、それは私にはちょっと判断しかねますが、どのような例があるかわかりません。おそらく、あるのは、われわれいま考える範囲以外のいろいろなそういう問題が提出されたことも予想されてのことかと思いますけれども、そういうことでその規定があったほうがいいか、ないほうがいいか、もう少し考えさせていただきたいと思います。
○大原委員 この際特にこういう規定を立法する——そういう立ちのき料というようなやつはだめですよ。立ちのき料をネコババしている者がなお立ちのかないというようなときは、その者は裁判上保護されない、こういうばかな例はだめですよ。ほかに例がありますか。例があれば言ってください。この立法を裏づけるような判例その他例があれば、裁判所を含めて答弁してください。
○船後政府委員 この被害者の責めに帰すべきしんしゃく規定は、やはり一方におきまして無過失責任、それに対する公平の考え方からきておる規定でございまして、先例といたしましては、鉱業法にも同様の規定があるわけでございます。私もまだ、鉱業法で実際にこのような条文が引用された判例があるかどうか存じませんが、学説といたしましては、こういう場合は、単に損害の発生を予見したり、普通の注意をもってすれば予見できただろうというような程度では足りないのであって、もっと、故意と申しますか、被害者の側におきまして、たとえば鉱業法でございますと、陥没がほぼわかっておるような土地にわざわざ安普請の家を建てて、それで補償金をもらうというふうな場合には、やはりこの条文によってしんしゃくさるべきであるということが、当時もいわれておったわけです。 それで、公害のような場合は、ちょっと鉱業法と違うケースでございますので、確かに先生おっしゃるとおりに、じゃ具体的にどのような被害者の責めに帰すべき例が予想されるかということになりますと、やはりしばしば申し上げておりますような、立ちのき料のネコババというようなことしか申せないのでございますが、具体的なケースにつきましては、どのような事態が起こるかもしれないというところから書いたわけでございまして、かりにその規定がないといたしますと、やはり民法七百二十二条の過失相殺の規定にもとるわけで、そうなりますれば結果は同じではないかというような議論も出てまいりますが、ただ、七百二十二条は過失があった場合の相殺規定でございまして、被害者に故意があったというような場合にはどうするか、ここら辺が民法の場合には多少取り扱いがむずかしい問題になるのではないか、、このように考えます。
○大原委員 法務省や裁判所なんかもいるんだけれども、この議論は、私は積極的にそんな判例はないと思う。そういうのが特にあれば、こういう規定は、単なる注意でなしに、置く必要があるんじゃないかというふうになるけれども、これはやはり私は削除すべきじゃないかと思います。 それから、時間もありませんから、最後にもう一つ二つあるんですが、一つは不遡及の問題です。この政府の原案によりますと、附則の最後の規定におきまして「施行前の排出(地下へのしみ込みを含む。)による損害については、なお従前の例による。」といって、故意、過失の要件で処理する、こういうふうにいっていると思うのです。しかし、この問題は、野党案とは違うわけであります。しかし、野党案も、無制限に私はさかのぼっているんじゃないと思うんです。野党案はどこまでさかのぼっているんですか、法律的に。法制局のほうからひとつ……。
○川口法制局参事 議員提出法律案の附則の第二項は、鉱業法の例をとったものでありまして、原因のほうは、理屈がはっきりいたしますと無限にさかのぼる、しかし、結果はこの法律施行後に生じたという場合には、原因が幾ら昔であっても、新しい方式で法律的に処理される、こういう考え方であります。繰り返し申しますが、これは鉱業法の無過失損害賠償責任制度を打ち立てた立法例にならったものでございます。したがいまして、仰せのように、この被害事実、被害自身がこの法律施行前に生じたものについては、さかのぼりません。
○大原委員 これは科学的な知識や認識の問題にも関係があると思うんですけれども、公害、環境汚染というのは、許容量という一つの法律の制度が示しておるように、やはり健康という立場で見るならば、からだの内外に汚染が進んでおる、環境破壊が進んでおる、これがずっと蓄積されまして限界を越えるという問題だと思うんですね。ですから、その問題を時間的に法律の施行のところで切るよりも、原因が発生したところで切っていってそしてこの被害者を保護していくという立法をしなければ、高度成長の中で、十数年あるわけでありますけれども、その中で発生いたしました問題に対する被害者の救済としては、全然これはしり抜けになるという可能性があると思う。これはもちろん過失責任を無過失責任に及ぼしていく、あるいは因果関係の推定の問題をどうする、共同不法行為の問題についてどう考える、こういう問題と本質的に同じような問題であって、公害の本質、社会的、歴史的な背景をどう考えるか、これを法律上どういうふうに法制化して権利を守っていくかという問題と深い関係があると思うんですね。ですから、この問題はそれほど突き詰めて考えないにしても、公害の本質から考えてみまして、私は長官もよくこの点については認識をされておると思うわけですね。ですから、野党案は無制限に拡大をしていこうというのではなしに、原因が発生したのが法律施行前であるならば、そういうことを結果において十分予測できるならば、この問題については遡及してこの法律を適用していくべきだ、立証すればよろしいんだ、こういうことはしごく当然ではないかと思うわけですが、この点について野党案について譲歩する余地があるかどうか——野党案を理解をし、そして協議をする余地があるのかどうか。譲歩といったら政府としてはむずかしいだろうから、協議をする余地があるかどうか。いかがですか。
○船後政府委員 法律の不遡及の原則ということがございますが、私も、私法の領域におきましては、これは絶対的なものであるというようには解しておりません。やはり問題は、法的安定性と申しますか、法的秩序と申しますか、こういうものをどのように考えていくかということに帰するのではないかと思います。政府案におきましては、やはり不法行為が行なわれる場合の行為というところに注目いたしまして、その行為が法施行後のものでなければ無過失を適用しないということで、過去の法的秩序というものを尊重いたしたものでございます。ただし、先般の公聴会でも御意見がございましたように、無過失あるいは過失、こう申しましても、今回の法律で、人の健康被害について、ある特定の態様についての無過失が認められたからといって、その他のものについては、逆に反対解釈として、厳密なる過失が要求されるというものではございませんから、私ども、実際の取り扱いといたしましては政府案のような考え方でも支障がない、このように考える次第でございます。
○大原委員 いままでの議論の蒸し返しになりますが、つまり法律施行前の問題についても過失責任——故意、過失を問題とするけれども、原則はそこでやるけれども、過失といったって、いまの議論や判例等については、かなり客観的なそういう事由があれば足りるというふうな議論になっておるんだから、接点があるんじゃないか、こういう議論です。これは原案を防衛しようという非常に苦しい議論でございますが、そういう議論になっておると思うんです。ですから、逆に言うならば、そうであるならば明確にしたほうがいいのではないか。なぜかと言うならば、この法律は被害者の利益を守るというんだから、これは無制限にはいかないけれども、調整しなければいけないが、問題は、その接点があるのであるならば遡及してもよろしいではないか、一定の段階までは遡及すべきではないか、因果関係が物理的に科学的に明確なものについてはやるべきではないか、そうしなければ現在のこの法律は施行できないではないか、実際上有意義でないではないか、無過失責任制度を設けた趣旨がないではないか、こういう議論は依然として残っておるのです。であるならば、いま申し上げた共同不法行為の問題と大体一致するところがある。それは加害者にとっては、公害事業者にとっては不利益だから遡及しないという原則があるけれども、しかし、裁判その他を通じて長い時間をかけての結論は客観主義になっているのだから、不遡及の原則を、野党的に一定の限界を設けて遡及するということは何も支障がないではないか。私は、立法政策としては、前向きにやる場合には野党案がいいと思う。この問題はやはり十分議論をして結論を出してもらいたい。 そこで、時間が参りましたから、こういう原則でいくならば、この救済基金の問題、救済制度の問題ももちろんあります。野党側には、禁止請求、つまり差止請求の問題があります、仮処分の問題があります、あるいは行政措置の要求の問題があります。しかし、いまの行政措置で知事のやっておること、保健所がやっておることはどういう実態を持っているのかという議論が一つある。立法、司法、行政全体を通じて被害者の立場をどう救済するかということをわれわれは議論しておる。そのことを明確にしなければ、公害立法についての歴史的、社会的な背景に対応するような、そういう立法ができないではないかという議論をしておるわけですが、そういう無過失賠償責任の問題を中心といたしました議論、これは野党案の具体的な提示があるわけですから——私は野党案でも足りないところがある。私は辛らつな質問をしようと思っていたが、きょうは野党の提案者はいろいろな支障があっておられぬから、やらぬけれども、なお足りない点があると思う。問題は、そういう司法、立法、行政を通じて、やはりこの問題は一つの焦点ですから、それに関連した諸制度がなければ、この問題は制度としては意味がないではないかという議論がある。 そこで、この問題は、いままでの議論を踏まえて、たくさん時間はかかりませんが、できるならば委員長のほうで議論をする時間をいただいて、政府と自民党の独断によりまして会期延長されたわけですから、幸か不幸か審議をする時間があるということになりましたから、その審議の時間でこういう実質的な議論をして、ほんとうに法律案の審議が、ノーかイエスか、オール・オア・ナッシングでない議論をしてもらいたい、こういうことを最後につけ加えまして、私の質問を一応ここでとどめておきたい、こう思います。
○田中委員長 本日の質疑はこの程度にとどめ、次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。 午後零時二十四分散会