公害対策並びに環境保全特別委員会 第13号
- 発言数
- 144 件
- 登壇者
- 24 名
- 会派数
- 5
- 開催日
- 1972/04/26
会議録
○田中委員長 これより会議を開きます。 ただいま、林義郎君、島本虎三君、岡本富夫君、西田八郎君、米原昶君から、ポリ塩化ビフェニール汚染対策に関する件について、決議すべしとの動議が提出されております。 まず、提出者の趣旨の説明を求めます。林義郎君。
○林(義)委員 私は、自由民主党、日本社会党、公明党、民社党及び日本共産党を代表いたしまして、ポリ塩化ビフェニール汚染対策に関する件について、決議すべしとの動議について、御説明いたします。 まず、案文を朗読いたします。 ポリ塩化ビフェニール汚染対策に関する件 ポリ塩化ビフェニール(PCB)汚染の人の健康に及ぼす影響が、わが国のみならず、世界において大問題となっている。 当委員会は、参考人を呼んで意見をきくなど、その調査を進めてきたが、対策を樹立する必要があると考えるので政府においては、次の諸点につき早急に適切な措置を講ずべきである。 一、PCB汚染について実態を把握するとともに汚染機構、人体影響等の解明並びに分析方法、処分方法等の技術開発に努めること。 二、PCBに関する各種基準の設定を行なう必要があると考えるがその蓄積性等の特性にかんがみ十分な検討をすること。 三、PCBの製造、新規使用を禁止し、例外的使用の際は、完全な回収を義務づけること。 四、使用ずみのPCB及びPCB使用製品は、関係者の責任において極力回収するよう指導するとともにすでに発生している汚染事態に対し、適切な対策を講ずるよう指導すること。 五、回収されたPCBの処理については、二次公害の防止に十分留意するとともに、専焼炉等の研究、開発、設置に努めること。 六、PCB代替品として開発される新製品の使用、販売については、組成を一般に公開せしめ、人体への影響のおそれがある場合には、製品として使用、販売せしめないこと。 七、PCBに類する工業原料であつて同様な特性を有するものが、今後出現しないという保証はない。PCBの人体に対する悪影響が危惧されている現状に鑑み、同種被害の発生を未然に防止する等のため、法制化等万全の措置を検討すること。 以上の決議案につきまして、若干補足説明いたします。 一、PCBによる河川、湖沼、海洋及び魚介類等の汚染が進んでいることが各方面から報告されており、PCBの特性にかんがみ、その環境汚染を通じて人の健康に与える影響がいまや重大な問題となってきております。 このような事態に有効に対処するためには、政府が各種の施策を有機的な関連のもとに総合的に実施することが切望され、なかんずく、この決議案に掲げた諸事項については、早急にその具体化を進めることを求めるものであります。 PCBが環境汚染を通じて人体に与える影響については、まだ未解明な点が多いのでありますが、カネミオイル事件の悲惨な事例にかんがみれば、何よりもまず実施すべきことは、その安全性が明らかにならない限り、製造、使用を原則として禁止する措置をとることであり、また、すでに使用されたものにあっても、極力回収の努力が払われるべきであります。政府においては、すでにこれらの措置を逐次とってきたと聞いておりますが、さらに、その実施にあたっては万全を期せられんことを要請いたします。また、PCBが回収されても、これの焼却等処分の段階で大気汚染その他二次的に汚染をもたらすようなことがないよう、処理にあたって適切な措置をとるとともに、PCBを含む故紙の専焼炉の開発とその設置を促進することが必要であり、これら措置についても格段の努力を求めるものであります。 また、このPCB汚染問題の困難さは、その汚染のメカニズムや人体影響について未解明な点が多く、しかも、汚染の分析方法や処分方法すら末確立であることであり、PCB汚染防止対策を有効に実施するためには、一日も早くこれらの枝術開発を進めることが切望されます。 そして、これらの研究の成果をも踏まえつつ、環境基準の設定、食品規格基準の設定を進めることにより、汚染による被害を未然に防止することが肝要であり、政府においては早急にその検討を進められることを求めます。 二、このようなPCB汚染問題は、PCB以外にも、新しい製品の実用化に伴い、このような問題を再び起こすおそれなしとしないという警告として受けとめるべきものと考えます。 したがって、PCBの製造、使用の中止に伴い代替品として開発される新製品については、人体影響について十分な分析を行ない、影響のおそれがある場合には製品として使用、販売を行なわせないこととすべきであります。さらに、代替品以外にあっても、PCBに類する残留性、蓄積性の高い化学物質については同様の問題があり得るので、PCB問題のような事態を再び引き起こすことのないよう、未然防止措置について法制化も含め検討を進めるべきであります。政府においては、これらの諸点について早急にその具体化をはかるよう要請いたします。
○田中委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。 —————————————
○田中委員長 討論の申し出がありますので、順次これを許します。島本虎三君。
○島本委員 ただいま提案のありましたポリ塩化ビフェニール、いわゆるPCB汚染に関する決議につきまして、私は日本社会党を代表して賛成の態度をここに明らかにしたいと思う次第であります。 周知のように有害物質、いわゆるPCBは、西日本一帯で起きたカネミ・ライスオイル事件によって有名にされましたが、それも事件当初はPCBとは直接関係がないかのようなことで全然問題にもされませんでした。その後PCBの猛毒性が明らかにされる中で、人体汚染が全国各地に深刻な広がりを見せていることが明らかになってまいった次第であります。 人体から検出されたのは、九州・福岡の第一薬科大学が分析した母乳の〇・〇二PPMが最初でしたが、その後大阪で同じく母乳から〇・七というこれまでにない高濃度が検出され、高知県衛生研究所等が明らかにした漁業従事者の場合には、世界の最高とまで思われるPCBの蓄積という実態になっておる次第であります。 ことに魚の汚染はきわめて高濃度で、東京湾のカレイ、ボラなどが二四PPM、瀬戸内海のハマチの脂肪からは二六PPMも検出されており、カネミ事件では〇・五から二グラム摂取したところで発病しておりますが、かりに一〇PPMのPCBで汚染されている魚を食べ続けると、約三年でついに発病に至るという事態になるのであります。 ところで、日本のPCB総生産量は五万七千トンをこえているといわれており、そのうち過去十年間に電気関係六六%、熱媒体一七%、ノーカーボン紙一二%、その他開放系用途として五%が使用されたといわれております。 この十年の間にPCBは回収されることなくテレビや電気洗たく機、電気冷蔵庫、螢光灯、ノーカーボン紙などが大量に投棄された結果、土壌や河川の水また海水が汚染され、それが魚に濃縮され、人体に蓄積されているものと考えられるのであります。 今日、この決議にある施策を早急に行なうことがきわめて緊急の課題であることが自明のことは申すに及ばず、おそかりしを憂えるものであります。 同時に、このように人体に有害な物質を、その残留性、蓄積性によって人体や生体へ深刻な影響を及ぼす実態を明らかにすることなく、PCBを日本工業規格品、いわゆるJISとした政府の責任もまたきわめて重大なものであります。ことにJISマークの制定方針の中には、消費者の利益の保護、産業公害の防止、労働安全、国民生活の安全・衛生に役立つことがうたわれているだけに、政府は、この決議に沿うて早急に対策を樹立すべきであります。 ことに、工業原材であって同様な有害物質が今後出現しないという保証はないので、実用化にあたっては、事前の安全性に関するチェックが十分行なわれるような制度を確立することは緊急な課題と言えるのであります。 以上、本決議案に沿って政府が早急に対策を確立することを要求して、あわせて被害者に対する救済対策に万全を期することを要求いたしまして、賛成討論とする次第であります。(拍手)
○田中委員長 次に、岡本富夫君。
○岡本委員 私は、公明党を代表いたしまして、ただいま御提案のありましたポリ塩化ビフェニール汚染対策に関する件について、賛成の討論を行ないたいと思います。 すでに御承知のとおり、PCB汚染問題につきましては、昭和四十三年のカネミ油症事件以来強く指摘されていたものであります。しかし、最近になって、再び全国各地にPCB汚染問題が出てまいりました。特に近畿地方を中心に、大阪の母親十五人の母乳からは最高〇・七PPMのPCBが検出されております。その母乳を体重五キログラムの乳児が一日一リットルの割合で飲みますと、実に〇・七グラムのPCBをとることになるのであります。これが十週間も続きますと、こうしたカネミ油症患者発生の状態に近づく危険さえあるのであります。米国のFDAは、牛乳中のPCB許容量を〇・二PPMときめております。この許容量から見れば、大阪の母親の母乳は廃棄処分しなければならないと考えるのであります。 昭和四十三年五千百三十トン、四十四年七千七百三十トン、四十五年一万一千百十トン、四十六年六千七百八十トン。これらの生産量を地域別に見ますと、最低北海道の三十トンから、最高は近畿地方の一万一千六百十トンにも及んでいるのであります。このまま放置されれば第二、第三のカネミ事件が発生することは明白であります。 また、最近、大阪府立公衆衛生研究所の調査によりますと、日本で使用されたPCBの大部分を占めるカネクロールに、PCB以外の、強い毒性を持つ不純物質が含まれていたとの実験データが発表されております。すなわち、ポリ塩化ダイベンゾフラン、ベトナム戦争の枯れ葉作戦に使うため除草剤に混入したポリ塩化ダイベンゾダイオキシン及びポリ塩化ナフタリン等であります。PCBに有害物質が含まれていることは、米国のFDAなどで以前より指摘されていたところでありますが、対策のないまま今日に至っておるのであります。PCBの七万分の一の量でも、PCBに比べて約二倍以上の死亡率を示すといわれる強い毒性を持っているのであります。しかし、残念ながら、この不純物質の正体が何であり、どの程度の含有量なのか、まだ究明されておりません。今回の食品衛生調査会の基準作成に対する諮問につきましても、この不純物質の問題もあわせて検討しなければならないと、その重要性を痛感するものであります。 私は、今回の問題で国民に一そうの不安を増大せしめていることは、汚染が広い範囲にわたっているだけでなく、その汚染の実態がまだはっきりしていないことにあると思うのであります。この意味から、通産省の総点検におきましても、重点的なサンプル調査だけでなく、日本の地上にどれだけのPCBが放出されたかを確実につかむものにすることが大切であろうと思うのであります。PCBは、理論的に、二百十個の化合物があるといわれております。食物連鎖に伴う慢性毒性についても、その汚染経路を断ち切ることが緊急の課題であり、この実情をはっきりさせることは、私たちにとっては、環境を守る新しい挑戦であると信ずるものであります。 私は、PCB汚染対策で重要なことは、対症療法的な取り組みだけでなく、食物連鎖を持った環境の汚染と、それに対する新しい挑戦といった意識を基本とすることが大切であると思うのであります。環境破壊をいかに食いとめるかが国際的に問題になっているとき、こうした一つのモデルとして、PCB対策に日本がその英知を傾けて十分に対応をはかるべきが当然であると強く感ずるのであります。また、食品衛生調査会の基準検討に際しても、廃棄物の処理をいかにし、食品中のPCBの潜在的危険の増大をどのようにして防止するかが、従来の廃棄物の処理の発想にかえて、汚染物質を外に出さない体制の確立を急ぐことが、PCB対策の前進のかぎを握っていると思うのであります。 以上申し上げました趣旨を十分踏まえまして、私は、本案に関する決議に賛成の意を表するものであります。(拍手)
○田中委員長 次に、西田八郎君。
○西田委員 私は、ただいま議題となりましたポリ塩化ビフェニール、いわゆるPCB汚染対策に関する決議案に対し、民社党を代表し、若干の意見を述べて、賛成の意を表したいと存じます。 人間がその英知を結集して開発した科学技術は、高度な文明社会を構成をすることになりましたが、その反面、人間の生活環境を著しく破壊することになりました。ただそればかりでなく、ついにはその生命を奪うまでに至りました。今日問題となっておりますPCBも同様に、電気工業などの材料としてきわめて高い性能を持っていますが、それがいろいろな経路を経て人体に侵入いたしますと、さきのカネミ油症事件でも明らかなように、きわめて強い毒性を発揮し、人体をおかします。そもそも新しい技術の開発や科学の進歩は、人間の生活をより快適にし、かつ、豊かで便利にするために未知のものに挑戦し、これを発見、開発して役立たせようとする発想にほかなりません。 しかし、それが限度を越えますと、かえって有害となることが、幾多の公害の発生状況から見て明らかなところであります。特にわが国の場合は、産業の急速な発展を期するため、これらの化学反応、特に人体に与える影響などについて、事前に十分の調査をすることなく、安易に使用されてきたきらいがあります。そのため、幾多の化学薬品、その加工物質あるいは有機物質等が公害源となっておることは御承知のところであります。このままで推移いたしますと、日本列島は、人間はおろか、動植物に至るまで、あらゆる生物の繁殖すらできない状態を招来しないとも限りません。これはきわめて憂慮すべきことでありまして、全く政治の責任であるといわざるを得ません。特に、生産優先の産業政策を推し進めてきた政府の責任は重大であるといえましょう。本日、当委員会で決議されんといたしておりますこのPCB汚染対策に関する決議は、そういった意味できわめて適切な決議であるといえると存じます。私は、この決議を政府並びに行政当事者が忠実に履行し、PCBのみならず、すべての公害に対して積極的に取り組み、環境保全のため一そう努力されんことを強く要求してやみません。 以上私の所信の一端を申し述べまして、本決議案に賛成する討論を終わります。(拍手)
○田中委員長 次に、米原昶君。
○米原委員 私は、日本共産党を代表して、ただいま提案されましたポリ塩化ビフェニール汚染対策に関する件について、全面的に賛成するとともに、若干の意見と要望を申し述べたいと思います。 PCB汚染の原因は、他の公害と同様、大企業の利潤追求本位、人命軽視の事業活動によるものでありますが、特にPCBについては、労働衛生の分野では、日本においてもすでに昭和二十四年に研究者による動物実験の結果その危険性が報告され、実際にも労働災害も発生しておりました。また、何よりも昭和四十三年のカネミ油症事件において人体への痛ましい毒性が明らかになりました。それにもかかわらず企業は、その使用に伴う危険性と安全な管理、回収の目途のないことを承知の上で生産、使用を開始または継続してきました。 政府は、PCB及び類似の工業原料について、企業に安全性の確認、安全な管理、回収等を義務づけることなく最近まで放置してきたのが実情であります。PCB汚染の重大性が明らかになった今日、政府は責任を持って直ちに万全の対策を講じてほしいのであります。その意味で今回の決議に全面的に賛成いたします。特に、一、PCB製造または使用工場の労働者を含む環境全般の汚染の全面的な実態調査を直ちに始めていただきたい。二、工場からのPCBの排出等を禁じて、すでに行なわれている汚染を企業の責任で除去させること。三、PCB使用企業・工場名、製品名及び使用地域、使用量等を直ちに公表して、その回収、管理について企業に義務づけていただきたい。四、カネミ油症患者の治療法及びPCBの慢性毒性についての研究をすみやかに強化して、同時にその上に立って食品等の安全基準を定めてほしい。五、食品等に対する暫定基準をきめられるそうでありますが、それは必要としましても、それも日本の食生活及び他物質による複合汚染等を考慮してきびしいものとしなければなりません。その場合、漁業者、農業者等に対する補償責任も明確にしていただきたい。六、現在使用されている工業原料等の安全性についても早急に総点検を行ない、人体への影響のおそれのあるものについて必要な規制を行なってほしい。七、今後新しい工業原料等の安全利用のための立法においては、その安全性の証明を企業に義務づけるとともに、使用、管理、回収、処理等についての義務をも明確にしていただきたい。 企業はさきに述べましたように、みずからの責任にかんがみて、政府の指導、立法を待つことなく、直ちにみずからの責任と負担において、以上述べた措置を行なうようにしてほしいのであります。 以上の諸点を強調して、日本共産党を代表して本決議案に賛成いたします。(拍手)
○田中委員長 以上で討論は終わりました。 おはかりいたします。 ただいまの林義郎君外四名提出の動議のごとく、ポリ塩化ビフェニル汚染対策に関する件を本委員会の決議とするに御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○田中委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。(拍手) この際、大石環境庁長官より発言を求められておりますので、これを許します。大石環境庁長官。
○大石国務大臣 ただいまの決議につきましては、その御趣旨を十分に尊重して善処いたします。
○田中委員長 次に、稻村通商産業政務次官より発言を求められておりますので、これを許します。稻村通商産業政務次官。
○稻村(佐)政府委員 ただいまの決議につきましては、通商産業省におきましてもその趣旨を尊重し、善処してまいりたいと思います。
○田中委員長 なお、ただいまの決議の関係方各方面への参考送付等の取り扱いにつきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○田中委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。 ————◇—————
○田中委員長 内閣提出の大気汚染防止法及び水質汚濁防止法の一部を改正する法律案並びに島本虎三君外七名提出、公害に係る事業者の無過失損害賠償責任等に関する法律案の両案を一括議題とし、審査を進めます。 質疑の申し出がありますので、これを許します。始関伊平君。
○始関委員 公害による被害者救済のためのいわゆる無過失賠償責任制度の法制化について本委員会に二つの案が提出されています。政府案とその対案たる性格を持つと思われる野党側案とでありますが、この両案を対比しながら審議を進めることが望ましい方法であると思うのでありますが、時間の関係もありますので、きょうはまず政府案について質疑を行ないたいと存じます。御了承を願います。 われわれはここ数年来、公害の規制と取り締まりの強化を目ざす公害行政諸法の体系的整備につとめてまいりました。特に一昨年暮れの公害国会におきましては、一挙に十四本の法律を成立せしめたのであります。しかしながら一方、公害対策のきわめて大きな、また痛切な部門であります被害者救済のために、従来から行なわれております行政上の救済措置があります。また先日は本委員会におきまして公害紛争の処理の簡易、迅速な処理をはかりますために、公害紛争処理制度を新たに強化したのでございますが、そのほかに、事業者の民事上の責任を強化して私法的な面においても一そう迅速かつ確実な救済ができるような措置が強く各方面から請要されております。政府といたしましては、去る昭和四十五年九月、宇都宮の一日内閣で佐藤総理が、企業の無過失責任を早急に検討したいと考えているというふうにその所信を表明したのであります。きょうから審議の始まることとなりました大気汚染防止法及び水質汚濁防止法の一部を改正する法律案は、このような要請にこたえるものであろうと存じます。 本改正法律案についてはそれぞれの立場からいろいろの批判もあるであろうと思います。またそういう議論が今後本委員会において展開されると思うのでありますが、それにもかかわらず、私はこの法律案のすみやかな成立を心からこいねがっております。 従来わが国においてもいわゆる無過失賠償責任制度を採用した法律が若干ございます。御承知のとおり鉱業法、水洗炭業法及び原子力損害の賠償に関する法律などがあげられるのでありますが、これらはいずれも特殊な場合における限定的な立法であるにすぎない。そしてまた諸外国においても少なくとも成文化されたものといたしましては、無過失責任制度というものはほとんど例がないのではないかというように聞いております。 今回のこの改正案は、人の健康に有害な一定の物質が大気中または水中等に排出されることによって被害が生じた場合において広範かつ包括的な無過失責任を認めようとするものでありまして、被害者保護の見地からは画期的な立法であると申しても差しつかえないと思います。また法制史の上にも残るような立法であるというふうに考える次第でございます。 この法案の提出者として、この委員会で審議が始まろうとするにあたりまして、こういう点についての長官の所見また御感想を最初にお聞かせいただきたいと存じます。
○大石国務大臣 今回政府が提出いたしました無過失公害にかかる事業者の無過失損害賠償責任に関する法律というものは、おっしゃるとおり鉱業法や原子力損害賠償法と違いまして、対象の業者も限定されておりませんし、非常に包括的なものでございまして、おっしゃるとおり世界にもあまり類例のない、わずかに西ドイツの水質規制法がその近い例であるだけでございまして、きわめて画期的なものでございます。このような新しい考え方でございますが、この法律は私は必ず公害に悩む被害者に対しましては大きな救済の手を差し伸べることになるもの、そう確信してこの成立を心から願っておる次第でございます。
○田中委員長 ちょっと待ってください。提案者から発言を求められております。提案者島本虎三君。
○島本議員 三党案についてただいまの点と若干違いますが、その補足を兼ねてこうしたほうがよろしいと思われる点を説明させてもらいます。というのは、世界にあまり類例のない立法であるといういまの長官の説明がございましたが、そのとおりだと思います。しかしこれを効果あるものにするためには、どうしてもこの中には差しとめ請求権制度を考える。なおかつ規制措置の請求制度も取り入れる。このほうが一番効果をあげ得るのであります。 なお、事業等の点については、国や地方公共団体等、非収益的な活動も当然含まれてしかるべきであり、これらを総括して、健康被害にのみ限定しないでいわばすべての損害に適用する、いわゆる財産一般も含むのが公害対策として妥当なものであり、これがいま国民が要求されている点ではないか、こう思って野党の提案をいたしましたので、この点十分に御理解願いたいと思います。
○始関委員 野党側の提案者代表の島本先生とここで議論を戦わす時間の余裕がないことは遺憾と存じますが、あなたのほうの案がいわば理想を追求した、そういう案であるということは一応了解いたします。しかしながら、現状に即してどうかということが実際政治の担当者としての立場であろうと思うのでございまして、その点につきましての議論は後日に譲ります。 そこで私はこの法案の内容といたしましては、ただいま島本君から御指摘のございました、被害の範囲を健康被害に限るかどうかというような問題とか、因果関係の推定規定がないのはどういうことであるのかとか、複数原因者の責任問題でございますとか、それから中小企業者の責任をどう考えるかとか、法案の内容につきましては法律的な追及をいたしたいのでございますが、あいにく長官は十一時で御退場だそうでございますから、私の質問原稿の順序を若干変えまして、特に長官からお答えをいただきたいことを最初にお尋ねをしておきたいと思います。 それでその第一点は、いま島本君からも御指摘があったのでございますが、本法案で被害の範囲を健康被害に限った、財産被害を含まなかったということは、どういう考え方に基づくのであろうかということ。 また、それとうらはらの御質問になるかと思いますが、無過失責任の対象となる公害による被害の範囲を大気、水の関係に限定したというのはどういうことであるのか。これは特に重要な論点であると思いますので、長官から大体のお答えをいただきたいと存じます。
○大石国務大臣 この無過失責任制度は、いままでの民法の過失責任の原則から大きな例外となるものでございます。そういう点でやはりこれは明確な範囲をきめるということが必要であると考えておりました。そうすることが第一歩の処置であると考えたわけでございます。そういうことで一応人間の健康被害に限ったわけでございますが、財産の被害につきましては、近い将来にやはりこれも十分にその点を考慮に入れなければならないと私は信じております。しかしそれには、やはり将来の問題でございますし、前に申し上げましたように明確な範囲のものをまず取り上げていきたいという考えから、また必ずしも財産被害につきましてはいろいろな点で明確でないものがたくさんございます。たとえば大事な赤潮の問題につきましても、あるいは生業の範囲内につきましてもまだ必ずしも明確でないものがございますので、近いうちにこういうものを早くいろいろな点を明確化いたしまして、こういうものはできるだけ早く総合的な法律としてそこの中に組み入れてまいりたいと願っておる次第でございます。そういうことで一応健康被害に限ったわけでございます。 また、大気汚染防止法と水質汚濁防止法の二法の改正に範囲を限りましたのは、御承知の、いま申しましたようにこれは過失責任の原則の大きな例外でございますから、できるだけその範囲を明確化しなければならないと考えておりましたが、そういうことで特に必要のあるものを最初に取り上げたわけでございます。特に必要と申しますと、何と申しましても人間の健康あるいは生命を尊重することでございます。そういう点では数々の公害に関するうちでやはり水質汚濁、大気汚染が一番人間の健康や生命に影響がございますので、この二つをまず取り上げることが最初の問題であると考えまして、ここに一応限定した次第でございます。
○島本議員 意見を若干異にいたしますので、この点について、質問者に対してひとつ解明を含めて説明をさせてもらいます。 せっかく公害対策基本法が一昨年秋に改正になりました。一応改正を見ておりました中に、典型公害としていままで五つだったものがふえて七つになってございます。国でさえももう公害対策基本法の中で典型公害として七つを認めておる。すなわち七つの被害に対しては国が責任を持ってこの行政対策を行なわなければならない、こういうようなことをきめているのであります。したがって、七つの典型公害に対する被害に対して、無過失賠償責任を当然の範囲としてつけてやるのが最も妥当であり、二つに限ったものはこれはあまりにも現状に即しない、このように思うわけでございまして、この点提案者ゆっくりとひとつ御批判を賜わりたいと思います。
○始関委員 ただいまの長官の御答弁の中の後段でございますが、大気汚染とそれから水質汚濁関係に限るということは、ボアソナード民法以来の民法の大原則であります過失主義に対する例外を今回新たに設けるわけでございますから、限定的にまず出発しようという考え方と、それから健康被害に限るということのうらはらとして、それは結局大気汚染の関係と水質汚濁の関係になるのだ、こういうことであるかと思いますが、その点重ねてお答えをいただきたいと思います。
○大石国務大臣 そのとおりでございます。
○始関委員 このようにいたしまして、無過失責任のたてまえを認めて、被害者の迅速かつ確実な救済を進めようとするわけでございますが、しかし支払い側、支払うべき立場にある事業者に支払い能力がない、あるいはあってももうそのために破産をするとかいうようなことが起こるのは好ましくありませんので、被害者救済のための賠償金の支払いを確実ならしめるために、何か特別のくふうが要るのではないか。公害賠償基金制度とかあるいは公害賠償保険制度とかいうようなものがこれにこたえ得るものであろうかと思いますが、実はわが自由民主党におきましては、政務調査会に環境部会というのがございますけれども、その中にこの問題を審議するための小委員会を置きまして、そこにおられます同僚議員の山本幸雄君が小委員長になりまして、鋭意この対策の検討を進めておる次第でございますが、この問題につきましては自動車のあの保険制度のようなわけにはまいらない、非常にバラエティーに富んだ複雑な要素が背景にございますので、立法政策的にもあるいは立法技術的にも非常に困難な問題点が多いと思うのでありますが、環境庁といたされましてはこの問題にいかに対処されるおつもりであるのか、この際明らかにしていただきたいと思います。
○大石国務大臣 御指摘のとおり、公害による被害者につきましては、その加害者が明確である場合と明確でない場合がございます。ことに加害者が明確でない場合には、なおのことこの救済に対しては特別な意を用いなければなりませんし、また加害者がはっきりいたしておりましても、おっしゃるとおりそれに対して支払い能力がなければこれはどうしても十分に被害者を救済するわけにはまいりません。そういうことでやはり何らかの形でこの無過失賠償責任制度が円滑に行なわれますためには、やはり損害賠償を担保する何らかの制度が必要であろうとは考えております。それはどういう形でいくか、まだ具体的なことはわれわれ考えませんけれども、幸い自民党のほうでもそのような制度をつくることに努力しておられますので、非常にけっこうなことでございます。われわれ環境庁といたしましても、ことしの四月に中央公害審査委員会に新たなる部会を設置いたしまして、どのような制度をつくったらいいか、どのような財源をつくったらいいかというようなことをいろいろと検討いたしまして、できるだけ早い機会に結論を出してまいりたいといま努力している最中でございます。
○島本議員 ちょっと時間がありませんので、これだけはお許しを願います。 いま始関委員が質問されたとおりでありまして、野党三党案ではその点は十分くんだのであります。と申しますのは、損害賠償保障制度を設けまして、これには損害賠償の担保として事業者に賠償のための措置をさせるということ、すなわち事業者の拠出による公害基金制度、あるいはまた一定の供託による基金制度あるいはまた保険制度等、これを考えるようにはっきりさしておるのであります。こういうような点を加えましても、やはり一歩野党案は十分考えが進んでおるということを御了承願いたいと思います。
○始関委員 野党側の案にそのような条項のあることは十分に承知をいたしております。ただ、島本君に申し上げたいことは、そういう一つのアイデアではなくて、具体的にどうするかという具体案が必要なのであります。その点を野党三党におかれましても考究されまして、すみやかに成案が発表されますことを希望したいと思います。 それから、ちょっと問題がこの法案とは離れるかと思いますが、公害防止助成の問題について、長官がここにおられる間にちょっと伺っておきたいのでありますが、最近OECDのガイディングプリンシプルというものができまして、わが国における公害防止の助成政策については批判的な見解が行なわれておるやに聞いております。わが国では公害対策として政府や地方公共団体が行なう公害防止についても事業者が費用を負担する。これは一昨年の公害国会で公害防止事業費事業者負担法というものではっきりきめたわけでございますが、そのほかに公害対策基本法二十四条でも金融とか税制というものについては助成を行なうということがはっきりときめてございます。また聞くところによりますと、ヨーロッパの諸国でもたとえばスウェーデンなんか金融、税制ではなくてべらぼうな直接の補助金を出しておるというようなことも聞いておるわけでございます。こういうOECDの動きがあるわけでございますけれども、公害対策はいまわが国が当面しております最も緊急な課題でありまして、民間企業も懸命な努力を払っておるのでありまして、政府がこれに刺激を与えるというような意味においても金融、税制等ある程度の援助を今後しばらくの間は続けてまいることが当然ではなかろうかという感じがいたすのでございますが、長官の御見解を伺っておきたいと思います。
○大石国務大臣 わが国の公害につきましては、いろいろな費用の負担は汚染者が負担することが原則になっております。しかし、いまわが国で一番大事なことは、この山積する公害を何とかして食いとめて、一日も早く公害を防止するということが一番大事な問題でございます。同時に、公害によるいろいろな被害者をできるだけりっぱに救済することが緊急の大事なことでございます。そういう点では、たとえどのような原則がありましても、とにかく国でまず最初にできるだけのことをして、まっ先に公害をできるだけ食いとめていくということ、被害者を救済するということが大事ではなかろうかと考えて、そのような努力をいたしておるわけでございます。ところが御承知のようにOECDのこの前の理事会ではPPPですね、この考え方が問題になりまして、おそらくことしの五月のOECDの閣僚理事会におきましてはこれが採択されることになる見通しでございます。そうなりますと、原則として公害に対するあらゆる費用というものは発生者が負担することになり、その費用を製・品コストの中に含ませてもいいだろうという考え方になるわけでございます。これは原則としてはけっこうなことでございますし、いずれ近い将来には日本でもそのようなことは行なわれてまいらなければならないと思いますが、この理事会におきましてもおそらくそのものを直ちにやろうというのではなくて、どのような考え方を具体的にあらわしたらいいのか、またどのような例外を認めたらいいのかといういろいろなことが問題になると考えております。いま申しましたように、私どもはできるだけPPP、この考え方、この原則を将来守ってまいりたいと思いますが、前に申し上げましたように、何と申しましてもこの公害を食いとめること、すみやかに被害者を救済することがわれわれにとりまして一番大事な問題でございますので、政府としてもできる限りのやはり当然の援助はしなければならないと考えでおる次第でございます。 ただ御承知のようにわが国の貿易、経済の現状からいたしまして、各国の間には日本に対するいろいろな批判がございます。たとえば公害の費用を全部省いて安い製品をつくってそれを輸出する、いわゆるソーシャルダンピングだというようないろいろの批判もございます。われわれはこれに対してもやはり一応の対策を立てなければなりません。またいろいろな非常に少ない環境資源というものを最も正しく利用するためには、政府がすべてのことをするというのではなくて、やはり企業者にいろいろな公害の費用を負担させることが大事なことだと思います。このような貿易の関係あるいは海外投資の関係、こういうひずみを直すためにも、いまのいわゆる環境資源の保護のためにも、このようなPPP、こういう行き方が将来は必要ではないかと考えておる次第でございます。
○始関委員 次の問題は、まさにきょうの質問の最後のところで伺うべき問題でございますが、これも長官からお答えをいただきたいと思いますのでここで取り上げますが、こういう法律を制定いたしました場合に、この法律の無過失責任というものの制度をいつから適用するかということは一つの重要な問題であると思います。島本君がそこにおられると思いますが、その点につきましても野党案と違っておるようでありますけれども、一般的に申しまして不利益をおかすものについては法的安定性というものを確保する見地から、その適用を遡及させないということが原則であると思うのでございますが、今回の法案も遡及させないという原則によったと思いますけれども、こういう規定によられたのはどういう趣旨であるか、ちょっと伺っておきたいと思います。
○大石国務大臣 この法案では無過失責任を法施行後の排出行為による損害について、また物質が政令で指定されました場合にはその指定後の排出行為による損害について適用することといたしております。このように規定いたしましたのは、一般に行為者に義務を課したり権利を制限するような規定は遡及しないというのが原則でございますので、その法の原則にこれも従ったのでございます。
○島本議員 これはやはり現行に即してみます場合には、現在イタイイタイ病なり水俣病も裁判が行なわれいろいろ進んでおるのでありますが、それらの裁判の場合は少なからずこれは遡及して行なったのでありまして、いままで御存じのように下級審の判例にもあるのでありまして、これを適当に認めたほうがよろしいのでございます。われわれはこういうように思って、野党案にはこれを最後に、遡及させてもいい、すなわち法制定以前発病したもの、または以前の病源によって発病したものは法制定以後においても遡及する、こういうことをうたっておるのであります。これを御了解をお願いいたします。
○始関委員 いまの点ですが、遡及の原則に立ったといたしましても、行為のときではなくて損害の発生時点でとらえるというのが——行為と損害の発生の時期が違いますね。汚染物質を流した時期と損害の発生時期が違うというのが普通だと思いますが、鉱業法では無過失損害の適用を損害の発生時点で押えるというようなことになっておるようでありますが、そういう方法をとらなかったのはどういうことであるか。これは船後局長でもけっこうであります。 〔委員長退席、山本(幸雄)委員長代理着席〕
○船後政府委員 御指摘のように、鉱業法で無過失損害賠償の規定を設けました際に、附則でもってそれに関する規定は本法施行前に措置した作業により、本法施行後に生じた損害にもこれを適用するということにいたしたわけでございます。つまり行為が法律施行前であって、施行後生じた損害についても無過失を適用する、このようにいたしたわけでございます。鉱業法でなぜこのようなことをいたしたかといいますと、一つには、当時無過失賠償が、いわば慣習として行なわれておりましたものを制限したものにすぎないという立法の経緯が一つございます。 それから第二の問題は、鉱業権は鉱業法によって設けられた権利により鉱業を営むわけでございますが、この鉱業法では、損害賠償の責任を負うものを、損害発生時の鉱業権者に集中するいわゆる責任集中の立て方がとられたわけでございますので、したがいまして、損害の発生時点ということで賠償義務者をきめる。このような理由から鉱業法では、施行前の行為によって施行後に生じた損害にもこれを適用したのでございますが、今回のこの公害にかかわる健康被害事案につきましては、これと同様な見解をとることは困難であると考えております。
○始関委員 そこで通産省に伺いますが、ただいまの船後局長の御説明は、無過失賠償、無過失責任を認める根拠でありますね。鉱業法の場合と今度の場合は違うというふうに私は聞き取ったのでありますけれども、それはそれでよろしいとして、一方鉱業界の立場としてみますと、同じ産業でありながら、やはり遡及ですね、こういう意味から見れば、過去の行為に対して適用されるということであって、遡及されるという効果を、そういう法律になっておるので、今度のより包括的な無過失責任制度と比べてアンバランスになっておる。何とかしてくれというような業界の強い御要望でございますが、その点は通産省はどのように考えておりますか。 〔山本(幸雄)委員長代理退席、委員長着席〕
○森口説明員 確かに今回の無過失損害賠償責任の制定に関連いたしまして、先生が御指摘なさいましたように、鉱業法の無過失賠償責任の規定と、本法案に書いてございます責任の規定がアンバランスではないかというような業界の声はあります。ただ、先ほど調整局長からいろいろお話がございましたように、鉱業法は、一般の地上産業と異なりまして、特殊な領域の産業であります。まず第一に、鉱業権は国によって賦与されておるというような特殊な性格がございます。したがいまして、国によって、鉱物を掘採する権利を与えられるものが、逆の反対の義務として一つの強い責任を課せられておるというようにも考えられますので、一般の地上産業と鉱物の掘採を行なう鉱業と同じような責任態様であるというようなことは論ぜられないというように考えるわけでございます。かりにこれを無過失損害賠償責任制定の経緯によってみましても、鉱業はその特殊性にかんがみて、早くから無過失賠償責任が制定化されておりますし、またこの無過失賠償責任制定の基本的な考え方をなします鉱害賠償につきましても、早くからそれが鉱業と地元民との間におきまして慣行化されておったというような事情もございますし、鉱業と一般の地上産業による公害ということについては、若干の法制上の違いがあるという点は、鉱業の特殊性から見てやむを得ないところではないかというふうに私どもは考えております。
○始関委員 いまの説明は一応わかりますけれども、しかしはっきりしたアンバランスになっていることは事実でありますので、今後一つ検討を続けていただきたいということを希望しておきます。 それから次に法律案の内容に立ち入りまして、私あまり得意ではございませんが、若干法律論的な議論をしてみたいと思います。 最初に因果関係の推定規定でございますが、この因果関係の立証は非常に大事でありまして、加害者、被害者と申しますけれども、因果関係の立証がない以上は、加害者ともはっきりいえないわけでございます。これはやはり不法行為に基づく損害賠償を請求する場合の因果関係というものは、因果関係があると主張する原告が証明すべきであって、したがって、個々のケースに即して裁判所の判断にゆだねるのが適当である、根本的にはまずそう考えるべきであると思いますが、この点御見解はいかがでありますか。 それから環境庁の原案の中にあったという因果関係の推定規定はいかなることを推定しようとしていたのであるか。これが第二点。 それから第三点といたしまして、これも大臣に伺えばよかったのでありますが、この推定規定に一応入っておったものを削除したのはどのような認識からであるのかを伺いたいと思います。 第四点といたしまして、因果関係の推定規定が、この法律をつくる際には何回も案ができるわけでありますから、ある段階において、いわゆる環境庁原案あるいは素案の中に含まれていたとしても、これをもって因果関係の推定規定を設けることを、環境庁なり政府が公約をしたということにはならないのではないかと思うのでありますが、以上の四点について簡単に御説明を願います。
○古館説明員 ただいまの第一点の御質問でございますけれども、先生のおっしゃるように、因果関係の立証を被害者に完全に負わせるということは非常に困難であります。したがいまして、被害者がある程度因果関係についての立証をした場合に、加害者のほうで反対事実を立証しない限り、因果関係の存在を認めるということも必ずしも不適当ではないと考えます。しかし公害の場合の因果関係の存在について、これはいろいろな形態がございます。いろいろな要素がございます。したがいまして、これにつきましては個々の事案ごとに裁判官の適当な判断に基づいて、因果関係についての適切な裁判官の判断にゆだねるということが一般論として適当かと思います。
○船後政府委員 初めに環境庁原案の因果関係の推定規定が、いかなることを推定しようとしていたかということにつきまして御説明申し上げます。 一般に公害にかかる健康事案におきまして、因果関係の存在を証明しようとする限りは、第一に病気と物質との関係、第二には物質が当該工場から排出されたこと、第三にはその物質の到達経路、この三点を被害者が証明することを要するわけでございます。 このうち特に物質の到達経路、これを直接に被害者におきまして、たとえばその工場の当該物質が自分のところに到達したんだということを証明いたしますことは非常に困難でございますので、環境庁原案におきましてはこの点につきまして考えられる一つの代表ケースを設定したわけでございます。すなわち被害者がこの病気と物質との関係及び物質が当該工場から排出されたこと、このことの証明を行ない、かつこの到達経路につきましては被害が生じ得る地域に同種の物質により被害が生じているということを証明いたしますれば、すべてにつき因果関係が認められるという推定をしようとしたものでございます。 一般的に法律上の推定は、甲という事実があれば乙という事実があるものと推定する、こういう構成をとるわけでございますが、環境庁原案におきましては、乙という事実すなわち当該損害は当該排出によって生じたという事実を証明することにかえまして、排出があり、かつ被害が生じ得る地域に同種の物質により被害が生じているということの証明をもって足りるとしたものでございます。 それから第三点でございますが、この推定規定を削除した理由でございますが、このような推定規定は事実上の推定ではなく法律上の推定になるわけでございます。ところで、法律上の推定になりますと、この被害が生じ得る地域に同種の物質による被害が生じているというこの生じ得る地域ということの解釈をめぐりまして、一方におきましてはたとえば事業者の排出量がきわめて微量でありましても被害が生じ得るというような場合にはこの推定規定の適用があるという解釈も生じ得るわけでございます。他方、公害事案につきましての最近の判例動向を見ますと、一般的には被害者に因果関係のすべてにつきまして厳密な科学的な証明を要求することはなく、いわゆる蓋然性の理論と申し上げますか、阿賀野川の裁判でも申しておりますように、状況証拠の積み重ねにより関係諸科学との関連において矛盾なく説明できればよいというような、事実上ゆるやかなしかたで因果関係の存在が認められる方向に動きつつございます。このような方向に即しまして、因果関係の推定規定を置くといたしました場合に、推定の方法といたしまして一般的な形で推定をするかあるいは一つの代表的なケースを取り上げて推定するかという二つの方法があるわけでございます。私どもは一般的な推定規定を設けることは困難でございますので、第二の代表的なケースすなわち汚染経路につきまして一つの推定を設けたのでございますが、しかし推定の前提事実をどのように定めるかということにつきましては現段階ではあまりにも判例の集積がないわけでございまして、現在因果関係につきまして明文の規定を設けますと、かえって判例動向を決定づけてしまうというようなおそれも出てまいったのでございます。 以上のような理由から、今回政府案におきましては、因果関係の推定は置かないことにいたしたのでございますが、今後の問題といたしましては、判例の動向も見守りながら判例の集積を待って、その方向がほぼ定着したと見られるような時期には成文化をはかるという方向で検討を引き続き進めてまいりたい、かように考えております。 それから最後に、因果関係の推定を政府としていわば公約したことがあるかというお尋ねでございますが、従来政府といたしましては、以上のような認識を持っておりましたので、この因果関係の推定を成文化することは技術的に非常に困難である、こういうことを申してまいったわけでございまして、無過失につきましては、これをぜひとも成文化いたしたいということを申してまいりましたけれども、因果関係につきましては、この種のことをいわゆる公約として言ったことはございません。
○始関委員 因果関係の立証は、特にいわゆる複合汚染の場合について非常に明らかでないと思います。だから、不法行為の規定でありますとか、推定が要るとかいうような議論が一方において出ますと同時に、他方面からいいますと、ある結果が生じた場合に、一体Aの行為の結果であるのか、B、C、D−X、Y、Z、だれの行為の結果であるのかということは非常にわからない。特にいまお話のありましたように、微量寄与者の場合なんかは不当な結論を下されるおそれがありますし、そのように量的規制の観念がないのでありまして、その点が公害罪法の場合の当該排出のみによってもこの被害を生じ得るというふうに規定した場合とは非常に違うのでありまして、この問題については、へたにやるとたいへんな混乱を起こすおそれもあるから、判例の動向を見定めながら今後の検討にまつという結論を出されたのは、私は賢明であったというふうに考えております。 きょうここに法務省からお見えになっておりますから、いまの問題に関連して伺いたいのでありますけれども、イタイイタイ病裁判や阿賀野川裁判において、因果関係について完全な証明は必要でないということになったというのでありますが、この両件におきましては、因果関係の中のどのような部分についてどのような点がゆるく解されるということになったのか、こういう点を伺いたいわけなんであります。
○古館説明員 因果関係が存在するということを証明するためには、まず原因物質が有害であったということが一つ、それから次にその原因物質が当該企業から排出されたということが第二でございます。それから、その有害物質が被害者に到達したということ、これが第三であります。この三つの事実を立証する必要がございます。 で、ただいまの阿賀野川裁判でございますけれども、この場合にまずメチル水銀、これが有害物質であって、これに基づく被害である、この点についての立証は十分であった。しかし当該企業が有害物質を排出したということ、それからその物質が被害者に到達したこと、この点の事実については、立証は十分でないけれども、状況証拠の積み重ねによりまして関連科学上矛盾なく説明できれば足りるという趣旨から、二点の事実についてもその存在を認め、因果関係を認めたということでございます。 次はイタイイタイ病の裁判でございますが、この件につきましては、まずその原因物質はカドミウムであるということが問題になりました。このカドミウムが有害であるかどうかということについては、科学上十分な解明はなされたとはいえないけれども、疫学的調査等の結果によりますると、大筋において一応説明が可能な程度に立証されておるということで、カドミウムが有害物質であり、それによって被害が生じたということは認定しまして、因果関係の存在を認めたということになっております。こういうように、ある程度被害者側で事実を立証いたしますと、相手側が反対の立証をしない限り因果関係の存在を認めるという方法で、因果関係の存在についての立証をゆるやかにしております。
○始関委員 ただいまの御説明を伺いますと、イタイイタイ病で特に問題になったのは、病気とカドミウムとの関係ですね。阿賀野川裁判では、昭和電工の鹿瀬工場でしたか、あれがそれを流したかどうかという点が問題になったのであって、そういうことからいいますと、今度のいまの環境庁から御説明があったような推定規定がかりにあったとしても、イタイイタイ病それから阿賀野川の水銀中毒事件の論争点には直接関係はない、あるいはことばをかえて言えば、役に立たないような推定規定だった。というのは、経路だけを問題にしておったのですから。そのように理解してよろしいですか。
○古館説明員 まず環境庁の案によりますと、少なくとも事業者が有害物質を排出しているということを立証しなければなりません。この点につきましては、新潟、阿賀野川裁判では立証は科学的に十分でないということになっておりますから、この規定がありましても、これは阿賀野川裁判に十分活用し得たかどうかは疑問でございます。それからイタイイタイ病裁判でございますけれども、これはカドミウムが有害物質であり、それによって被害が生じたかどうかということが問題になっております。これは環境庁原案によりますと、有害物質であり、その物質によって被害が生じたということを立証しなければなりません。この点についてイタイイタイ病裁判では必ずしも一〇〇%の立証をいたしておりません。またできなかったわけでございます。そういうふうなことになりますと、このような規定がありましても、この裁判で十分活用し得たかどうかは疑問でございます。
○始関委員 それでは問題を変えますが、今度の法律案で、やはり最も重要な点は、いわゆる複合汚染を取り入れたということでありまして、その結果として複数原因者の責任というものがいろいろとめんどうな法律的な問題を提起することになったと思います。 最初に小澤政務次官に伺いますが、政府案におきましては、複合公害による損害について民法の共同不法行為、七百十九条ですか、これの解釈にゆだねているのでありますが、鉱業法や水洗炭業法のように、複数原因者に関する規定を直接に置かなかったという理由はどういうことであるのか、その点ちょっと政務次官から御説明をいただきたいと思います。
○小澤(太)政府委員 水洗炭業法とか鉱業法の場合においては、御承知のように原因者が複数でありますけれども、おおむね特定される、きわめて多数広範にわたるというわけではないわけでございまして、大気汚染等の複合汚染につきましては、硫黄酸化物等の複合汚染につきましては、これは原因者が非常に多数のものが相当分かれておるということになっております。そういうふうな関係もありまして、このような法案をつくったということになっておるわけでございます。
○島本議員 三党側ではただいまの件についてはこのような考え方で立案をいたしました。それは民法七百十九条共同不法行為、これは大審院以来の判決はすべて全共同不法行為者に連帯責任を認める、こういうようなたてまえをとっておるのであります。したがってやはり複数公害といわれるこの複数原因者の賠償責任についても、当該共同不法行為者、いわゆる加害者に対しては全損害についての賠償の責任を明らかにするというたてまえはくずすべきではないのではないか、このようにわれわれ考えておる次第でございます。と申しますのは、御承知のようにもし分割して責任を認めるとすると、すべての分割責任を主張することによって立証に日数をかけ、責任を免れようとする行為が往々にして考えられるわけであります。したがって、そういうような点から私どもは複数公害者に対してはいまのような態度をとったということを御理解願いたいと思います。
○始関委員 ただいま島本さんは複合公害の場合に分割責任を認めることは著しく不当だというふうにおっしゃったのでありますが、これは民事局の古館参事官に伺いますけれども、民法の共同不法行為というものは、共媒はもとより共同の認識も必要ではないというように、かなり広くその成立を認めているようでありますが、公害の場合の共同不法行為というのはどのような場合に成立するのか。たとえば公害の原因者の数が非常に多い、地域的にも非常に広がっておる、そういう公害の例として、よく川崎などがあげられると思います。川崎型大気汚染という言い方もございますけれども、こういったような場合に、一体民法上の共同不法行為が成立するのか、こういう点をひとつ御説明をいただきたいと思います。 私はきょうは島本君には御質問しないことになっておったのですが、あなたのほうはこういう場合にはどうするのか、簡単に答えてください。
○古館説明員 民法の共同不法行為が成立するためには、各人の行為がそれぞれ独立に不法行為の要件を満たしているということと、第二は行為者の間に関連共同があるということになっております。そこでいまの複合汚染つまり公害の場合でございますけれども、いまお尋ねの川崎型汚染、この実態を私承知しておりませんものですから、具体的な結論は差し控えさせていただきたいと思いますけれども、一般論といたしまして、この二つの要件を満たしておりますれば、つまり民法七百十九条の要件を満たしておりますれば、共同不法行為が成立するということになるのじゃなかろうかと思います。なおこの関連共同ということでございますけれども、これは民法上現在は行為者間に共謀あるいは共同の意識が必要でなく、それぞれの行為が客観的に関連共同していればよろしいというのが、大体判例、通説でございます。このような考え方は公害の場合にも同じように考えてよろしいのではなかろうかと思います。そこで複合汚染、つまり公害の場合に、この関連共同、つまり客観的に関連共同しているかどうかということが、事実認定として非常にむずかしくなろうかとは思います。そういうことでございますので、それは個々のケースによるだろうと思います。しかし、なお、複合汚染の場合でも、その排出量がきわめて微量であるというような場合には、これは違法性がないというふうに判断される場合があります。そういうことになりますと、そのものの行為につきましては、不法行為の要件を満たせないということになりますから、共同不法行為責任を負わないという結果になり得る場合もあり得るかと思います。
○島本議員 島本君に質問しない予定であるということでございますが、うんと質問してもらいたい。 ただいまの点については、先ほど申しましたように、原則としては共同不法行為者、いわゆる加害者に対しては、全損害に対しての賠償の責任、この原則だけはあくまでも明らかにしておく、そういうようなことであります。それと同時に、いわゆる原因者間においては、それぞれ求償するようにしておいたならば、その寄与度の少ないもの、または微弱にして取り上げることができないようなものも当然求償されるというようなことになりますでしょうから、その点等特に、この共同不法行為者、いわゆる加害者に対して全損害についての賠償の責任を明らかにしても、実際上、運営は十分可能である、こういうふうに思っておる次第であります。
○始関委員 客観的関連共同という概念があるようでございますが、私はしろうとだから申しますけれども、川崎のような場合ですね、あるいは客観的に関連共同があるとは思えないですね。いまあなたは具体的な判断は避けるとおっしゃったが、それはそれでよろしいが、島本君の御説明によりますと、あとのことは求償でやればいいとかなんとかおっしゃるのですが、こういったような場合には、そういう考え方は明らかに実情に合わない、特に言いませんが、と私は考えておりますので、そのことを申しておきます。 次に、問題が少しややこしいですが、これは環境庁あるいは法務省の古館さんに伺いたいと思いますけれども、こういう問題どう考えますか。自動車排気ガスや一般の暖房などから大気汚染が発生する、したがって、それに伴うぜんそくとかなんとかという損害の発生にそういう町の公害が寄与しておる、これはおそらく無過失の原則が適用になりませんので、民法の過失責任が適用になって、実際上追及が困難だというようなことになると思いますが、こういう微量排出者の非常に多くのものが寄与しているというようなことになりますと、事業者の損害賠償の範囲が、こういういま申しました自動車排気ガスや暖房などから出る汚染の寄与分というものは除かれるのじゃないかと思いますが、どうでしょうか。
○古館説明員 いまの御質問の趣旨でございますけれども、二点あろうかと思います。その一つは、自動車及び一般家庭はその排出行為について不法行為責任を負うかということが一点かと思います。この問題につきましては、自動車及び一般家庭は、先生御指摘のとおり、この法案の対象にはなりませんで、民法の不法行為一般の原則が適用になるかと思います。そうしますと、この民法の不法行為の先ほどの要件を充足いたしますれば、この微量排出者につきましても、共同不法行為責任を負うという余地はあろうかと思いますけれども、先ほどもお答えいたしましたように、このような自動車の排出あるいは一般家庭の排出といいますのは、きわめて微量でございまするから、多くの場合には違法性がないということで共同不法行為責任を負わない場合が多いであろうというように考えられます。 次に、この工場の排出量のみでは被害が発生しないという場合に、工場は損害賠償責任を負うかという点が第二点かと思います。この点につきましては、特に因果関係の問題でございますけれども、この工場の排出とその四囲の状況との関係で、その排出によって被害が生じたという結果が出てまいりますと、つまり相当因果関係の要件を満たしますと、工場は損害賠償責任を負うという場合も出てこようと思います。
○始関委員 いろいろな条件の組み合わせで責任を負うことになる場合もあるというお説でありまして、必ずしも異議はございませんが、ただそういうものと合わさって被害が出てくるという場合には、それをしんしゃくするというようなことをするのが適当じゃないですか。
○古館説明員 いまの民法のたてまえからいたしますと、しんしゃくするということにはなっておりません。
○始関委員 私は常識上いまの御判断にはどうもあまり賛成できませんが、押し問答はよしまして、もう一つ、これもややこしい問題ですけれども、これを古館さんに伺いたいと思います。 過去に汚染の蓄積があった、たとえばカドミウムのメッキ工場があって、その周辺にカドミウムが蓄積しておった、それを知らない新しいメッキ業者がいて、それでわずかな排出で損害が生じたというような場合があると思いますね。これはカドミウムメッキ工場から流れたカドミウムで土壌が汚染した、しかしその操業の時期は本法施行前であった、本法施行後、だれか来て、わずかの期間そこで操業して、汚染米ができて、その汚染米を食ったことによって健康被害が生じた、これもやはり複数の原因者の責任になるだろうと思いますが、これはややこしいですが、こういう場合は少なくともしんしゃくするとかなんとかということになるのかならないのか、ひとつ伺いたいと思います。
○船後政府委員 ただいまの問題もケース・バイ・ケースに判断すべき問題であろうかと思うのでございますが、あえて一般論として考えますと、まず初めに、カドミウムならカドミウムを排出しておりました工場、それがその排出自体によって被害が生じなかったといたしますれば、これは前の工場は因果関係がない、こういうことになろうかと思います。次にあとの工場でございますが、この場合にあとの工場の排出が加わって、それによって初めて被害が生じたというケースに、あとの工場はどのような責任があるかという問題でございます。やはり一般論といたしますれば、およそ事業を営む以上は、そういった過去の事実というものも前提に置いて事業を営むべきでございますので、あとの工場が、自己の排出が加わったことによって被害が生じた以上は、やはり一般論としてはあとの工場が賠償責任を免れないのではないか、かように考えます。
○始関委員 問題の出し方が悪かったかもしれませんが、そういう場合に、前の事実を知らなかったし、そのことについて別に過失がないという場合を想定したのですが、問題があまりにややこしいので、この程度にとどめておきたいと思います。 それからそろそろ最後ですが、中小企業者の責任の問題につきまして船後さんに伺いますが、大気汚染防止法や水質汚濁防止法による排出規制の対象とならないような、そういう小規模の施設しか持っていない事業者の排出量は、一般的にはきわめて微量であると思われるのでありますが、これはやはりそれぞれが責任を負うことになるのかどうか。これにつきまして、先ほど法務省から、責任のない場合があるというふうにおっしゃったが、そのとおりに考えてよろしいかどうか、その点についてひとつお答え願いたいと思います。
○船後政府委員 御指摘のような規制法の対象とはならないような施設から出る量というものは、一般的にはきわめて微量でございますので、違法性がないとされる場合が多いのではないか、かように考えます。
○始関委員 中小企業者の責任の問題でもう一点伺いますが、今度の改正案に硫黄酸化物など複合汚染を常態とする物質を含めた結果として、二つ以上の事業者が共同不法行為者として損害の全額について連帯して賠償の責任を負う場合も多くなるように考えられます。そこで、いわゆる微量企業者の問題であります。これは微量企業者のしんしゃく規定というのはお伺いするまでもないと思いますが、そのような場合に対処するために設けられた規定だと思いますが、どうでありますか。したがって、この規定は中小企業に対する救済の規定と考えてよろしいのではないか、こう思います。 なお、それに関連いたしまして、微量企業者の責任についてはむしろこの連帯責任から除外して、原因となった程度に応じて責任を負うというふうにしたほうがよかったのじゃないか。たとえば一千万円の損害があったといたしまして、七百万円なり八百万円の損害を出しているならいいですけれども、二十万とか三十万の場合に、二十万、三十万の損害を受け持てといわれた場合に、これはしんしゃくということばだけでいけるのかどうかという疑問があるのですが、その点についてついでに伺っておきたいと思います。
○船後政府委員 御指摘のように、いわゆる微量企業者のしんしゃく規定は、法文上は「当該損害の発生に関しその原因となった程度が著しく小さいと認められる事業者」についての規定ではございますが、一般的には中小企業者がそのようなケースが多いということを想定いたしまして設けた規定でございます。 次に、先生の御指摘は、裁判所がその事情をしんしゃくするというような規定ではなくて、寄与度に応じて賠償の責めに任ずるというような規定にしてはどうかというお尋ねかと思いますが、寄与度に応じてやはり責任を持つという基本的な考え方は私どもも持っておるのでございますが、ただ厳密にこの寄与度というものを立証することはきわめて困難な場合が多うございますので、裁判所はこのような場合にはその事情、すなわち「損害の発生に関しその原因となった程度が著しく小さい」というような事情等をしんしゃくして賠償額をきめるという規定にいたしたわけでございます。
○始関委員 この辺につきましては、未然防止をはかることが非常に大事であります。このような観点から行政的手段として大気汚染防止法なり、あるいは水質汚濁防止法においては施設の改善命令や使用の一時停止という命令が出せるようになっておるわけであります。しかし、そうではありますけれども、この権限が地方公共団体に委譲されておりますが、実際は十分に発動されないというようなうらみがある場合が多い、そういったような事柄にかんがみまして、いわゆる規制措置の要求制度というものを取り入れたらいい、これは野党の案にあるのでありますけれども、なぜこの法案には入れなかったのか、またもう一つ、司法的な救済制度として差止請求権あるいは仮処分ですか、そういうようなものが立法上認められておるようでありますが、これを一歩進めて明文化したらいいじゃないかという意見もあると思いますが、それをしなかったということはどういうわけなのか、これは法務省からお答えいただきたい。
○古館説明員 まず差止請求の規定の問題でございますけれども、ただいま先生御指摘のとおり、公害の未然防止のためには大気汚染防止法等で排出基準についてきびしい規制をしているということ、それからそういった基準に違反して排出するおそれがある場合には、改善命令あるいは一時停止命令という措置を講ずることによりまして公害の未然防止をはかるという制度になっております。さらに現行法におきましても、物権的請求権の理論あるいは人格権の侵害排除の理論といったものも認められておりますし、さらに緊急に差しとめをする必要がある場合には仮処分の方法もございます。先生御指摘のとおりでございます。こういうことによりまして、あえてそのような規定を明文化しなくても被害者の保護がはかられるというように考えたわけでございます。 それから、次は規制措置要求制度の問題でございます。この規制措置要求制度の内容でございますけれども、これは規制権限を有する行政官庁がこの権限を行使しない場合に利害関係人がその権限を行使することを要求することを内容とする制度だと思います。違反状態があった場合に、当該規制行政官庁といたしまして、当然こういう違反状態を知悉いたしますれば、先ほどの改善命令あるいは一時停止命令、こういったものによりまして違反状態をなくするという努力をいたしまするでありましょうし、また、当該行政官庁がこういった違反状態を知悉し得なかったという場合に、関係者の通報がありますれば、行政官庁としましては適切な措置を講ずるというふうに考えられます。そういう制度がございますので、こういった制度につきましては、あえて立法の必要がないのじゃなかろうかというふうに考えたわけでございます。 さらにつけ加えますと、この利害関係人の要求があった場合に、裁判所が企業に対して一定の行為を命ずることができるかどうか、また、そういう制度を設けることが適当かどうかという問題はあろうかと思います。この問題につきましては、三権分立の原則との関係で非常に問題がございます。そういうような趣旨もございまして、野党案でもそういう規定がないのはそういうことをお考えの上かと思います。
○島本議員 この二つの問題については、私も提案者として、始関委員と意見を同じうする部分が多いのであります。すなわち、差止請求権の問題に対しては、いまいろいろ御答弁がございましたが、現在の日本の公害の状態を全面的に見ました場合に、確かに個々の立法はございます。おっしゃるとおりなんです。ありながらもなぜこういうように公害が激増しているような状態を阻止できないか、そこに問題があろうと思います。したがって、そういうふうに侵害された事実がある場合には、当然損害を与えるおそれのある場合も含めて、事業者に対して行為の停止や操業停止その他必要な損害防止の措置をとることの請求、これは当然もう公害を防止するためには必要な措置でございます。私どもは、そういうような観点からしてこれは入れるべきである。むしろ、これを入れない場合には、せっかく仏をつくっても魂が入らない結果になるのじゃないか、こういうような観点が本条を入れた理由であります。 次に、規制措置の請求でございます。これはもうすでに始関委員も御存じのとおりでありますが、最近の公害の実情からして、国民監視、いわば住民監視という点が大きい焦点になり、問題解決の一つの具体的な要素にもなっているのであります。したがって、これは前例のない進歩的な立法、こういうようなことでこれを入れたわけでございますが、当然これは生活環境の汚染、損傷、破壊、こういうようなものに対しては、一昨年暮れ以来大幅な権限譲渡というか、委譲というか、地方自治体に与えられてございます。その行政機関が規制権限を怠っているときは当然権限の発動を求めることができることはあたりまえでございまして、国民の権利と申しても差しつかえないでございましょう。当然これは二カ月以内に限定して措置をしなければならない、またその措置は公表しなければならない、ここに大眼目を出したのでございまして、始関委員の御質問はその点に触れていることだと思います。野党案では全部これが盛られてるということを御承知願いたいと思います。
○始関委員 この点に関する政府と野党側との考え方の違いは、実情論からいいますと、特に規制措置の要求につきましては、野党の考え方は一顧の価値だにないということではないと思いますけれども、法律論からいえばもう十分だし、屋上屋を架すようなことになるので必要はない、法律論と実情論との違いではないかという気がしております。 最後に、これは船後さんに伺いますが、今度のこの法律、いわゆる無過失賠償法は健康被害についてのみ適用するというたてまえでありますから、水質汚濁防止法並びに大気汚染防止法などにあげられておりますいろいろな公害物質の中で、健康被害には直接関係はなくて環境汚染にのみ寄与するということであげられておるものもあると思いますが、そういうものは適当に選別して整理をするということになると思いますが、いかがでございますか。
○船後政府委員 御指摘のようにこの無過失は健康被害を対象といたしておるわけでございますので、規制物質中のもっぱら生活環境のみにかかわる物質は対象から除いております。水質汚濁防止法の系統におきましては、人の健康に被害のある項目と生活環境のみにかかわる項目を明らかに区別いたしておりますので、その点の区別は明らかでございますが、大気汚染防止法におきましてはそのような区別をいたしておりませんので、今回設けました第二十五条におきまして「ばい煙、特定物質又は粉じんで、生活環境のみに係る被害を生ずるおそれがある物質として政令で定めるもの以外のもの」というようなことにいたしまして政令でもってそのような物質を指定をいたしたい、かように考えております。
○広瀬(秀)委員 これで終わります。ありがとうございました。
○田中委員長 以上で始関君の質疑は終了いたしました。 ちょっと速記をとめて。 〔速記中止〕
○田中委員長 それでは速記を起こしてください。 ————◇—————
○田中委員長 次に、公害対策並びに環境保全に関する件について調査を進めます。 質疑の申し出がありますので、これを許します。古寺宏君。
○古寺委員 最初に環境庁にお尋ねをいたしますが、岩手県の松尾村の松尾鉱山の問題でございますが、この松尾鉱山から流出をいたしますところの強酸性の鉱毒水によりまして、北上川が非常に汚濁をしているわけでございます。 〔委員長退席、始関委員長代理着席〕 この北上川の清流化対策について環境庁がいろいろと検討を進めているように承っているわけでございまして、聞くところによりますと今月一ぱいで会社は鉱業権を放棄する、こういうふうに承っているわけでございますが、環境庁としてはどういうような対策をお考えになっていらっしゃるのか、まず承りたいと思います。
○岡安政府委員 北上川の上流にございます赤川の酸性水の問題でございますが、これは松尾鉱業から排出されております水とそれから自然汚濁によりますものと両方の影響を受けまして、PHが非常に低い値を示しております。これは赤川のみならず赤川が流入いたします北上川におきましても、中流部ぐらいまで相当PHが低い状態を示しているのが現状でございます。これに対処いたしまして、松尾鉱業におきましては、相当古くから炭カルの投入によります中和処理を行なうと同時に、また坑内水の流出を改善をするという意味から、低い坑道からの流出をとめまして、高い坑道からの流出に切りかえるというような工事等をやってまいったのでございまして、その結果、赤川におきますPHの値は大体二・三から三・一程度、それから下流の四十四田ダムにおけるPH値は三・二から四・〇というようなことになっておるのでございます。 ところが、先生御指摘のとおり、ことしの三月末に松尾鉱業が会社更生法に基づきまして営業の休止をするということになったのでございまして、従来から継続しております中和処理作業の継続が困難になるというような事態が生じたわけでございます。そこで私ども環境庁が中心になりまして、関係各省庁それから岩手県を含めまして、この対策について種々相談をいたしておるのでございますが、現在私ども考えておりますのは、緊急当面の措置といたしましてこの中和処理作業をやはり継続する必要があるであろうということと、それからこの中和処理作業はやはり当面の緊急対策でございますので、抜本的な水質汚濁防止対策を講ずる必要があるというふうに考えまして、これにつきましては関係省庁それから岩手県といろいろ相談をし協力をいたしまして、精密な調査研究を行ないまして、可及的すみやかに抜本的な対策を講じたいというふうに実は考えている次第でございます。
○古寺委員 現在北上川の環境基準がまだきまっていないわけでございますが、この環境基準の設定について環境庁としてはどのようにお考えでございますか。
○岡安政府委員 実は先ほど申し上げました炭カルの投入とか松尾鉱業が実施いたしました排水口の一部閉鎖等の工事は、実は四十四田ダムの辺においてPHの値を四・〇程度にするということが目標で行なわれているのでございます。この四・〇という値につきましては、私ども了解いたしておりますのは、四十四田ダムを構成しておりますコンクリートその他の腐食を防止するというような目安でもって設定をされている値でございます。したがいまして、四十四田ダムの地点における四・〇というものもこれは暫定的な基準でしかないというふうに実は考えるわけでございまして、この北上川の水が農業用水に使われたり、また水産動植物に対する影響等を考えれば、やはりもっと改善された姿にならなければならないと実は考えております。そこで先ほど申し上げましたように抜本的な対策に取り組んでいるわけでございまして、その目安といいますか、見通しがつきますれば、私どもはこの赤川、北上川を含めました環境基準を設定するということを考えている次第でございます。
○古寺委員 次に、通産省にお尋ねいたしますが、こういうような、かつてはサケ・マスあるいはアユ等が住んでおった川が死の川に変わってしまったわけですが、なぜこういうような状態にまで通産省はいままで放置しておいたか、今後どういうような対策を考えていらっしゃるのか、その二点について承りたいと思います。
○森口説明員 かつては松尾鉱山は日本最大の硫黄鉱山といたしまして、大いに掘採を行なってきたわけでございます。その過程におきまして、私どもといたしましては鉱山保安監督の面から、鉱害を防止するためにできるだけの努力を行なってきたところでございます。ただ本河川につきましては、先ほど環境庁のほうからも御答弁がありましたとおり自然汚染することも相当ございます上に、松尾鉱山の坑内を洗いました水がPHが非常に低いというために、一般の農業その他について被害があるというような事情を聞いておりましたので、私のほうといたしましては、一体松尾鉱山のPH廃水をどういうふうに処理すればいいかというようなことで、東京大学の今泉先生を長といたします今泉調査団を四十四年の三月に現地に派遣をいたしまして、松尾鉱山のPH対策についての抜本策について調査をお願いをいたしだわけでございます。 この調査団は、今泉先生のほか、学者の方、それから通産省の工業技術院の資源技術試験所、地質調査所、岩手県及び宮城県というようなところが参加をしたわけでございまして、調査項目といたしましては「松尾鉱山および赤川流域の硫黄化合物等の湧出源に関する調査」それから「赤川および北上川流域における硫黄化合物等の挙動態様に関する調査」を行なったわけでございます。 この調査の内容でございますが、まず第一に、松尾鉱山の坑内における湧水は主として被圧地下水でございまして、この地下水の水源は鉱山北部の八幡平であるということが第一点でございます。次に、坑内の全出水量は、季節変動はございますが、おおむね二十ないし四十立米であるということでございます。それから第三点といたしまして、この点が非常に重要なわけでございますが、坑内湧出水のPHは一・七ないし三・七程度でございますが、坑道を流下いたします過程で鉱床と水が接触いたしまして、そのために酸化が起こって二次鉱害が生じ、これがPHを押える原因になって、廃水としては一・六というようなところになって流れ出ておるということでございます。 次の報告といたしましては、この汚染水はPHが単に低いということだけではなしに、鉄、アルミニウムなどの潜在酸性成分を多く含有いたしておりますので、中和処理には多量のアルカリ添加が必要であるということでございます。 それから最後の点といたしましては、鉱山地区赤川より北上川河口までの鉄、硫酸根の挙動調査結果によりますと、北上川四十四田ダムにおいて顕著な水酸化鉄の沈降が見られますが、硫酸根についてはこのような挙動が見られないというような調査報告をいたしております。こういうふうな調査報告を総括いたしまして、排水流量と汚染物濃度を減少させるためには、松尾鉱山には三メートル坑と百メートル坑と二つの排出口があるわけでございますが、下方にございます三メートル抗を閉塞いたしまして坑内下部の湧出水を遮断する、かたがた上の百メートル坑から水を出しますことによって二次汚染を防止することが有効であるというような判断を今泉調査団はいたしておるわけでございます。この今泉調査団の報告を受けまして、私どものほうといたしましては坑口の閉塞を松尾鉱山に命じたわけでございますが、松尾鉱山のほうで資金能力がないために、代執行を実施をして今日に至っておるということでございます。 ただ、そういうふうに三メートル坑口を閉塞したわけでございますが、水量は確かに減ったわけでございますが、当初三十立米の水量を半分程度に減らしたいということを考えておったわけですが、現状では二十立米程度にしか減っておりませんので、その点では若干、効果がまだ十分にあらわれてないのではないかというふうに思います。 またPH等につきましても、現在の状況では若干改善しつつございますが、なお現在PHは一・四台にとどまっておるというのが現状でございまして、いろいろやってみたわけではございますが、この現状ではいまだ松尾鉱山の排出水対策が不十分でございますので、なお今後環境庁とも御相談をいたしまして、松尾鉱山の今後の排出水対策について、基本的にいかなることをすべきかということについて精密な調査を行ないまして、私どもとしてできる限りの行政手段を使いましてこの問題の解決に当たってまいりたいというように考えております。
○古寺委員 これから精密な調査をして対策を考えるというのではおそ過ぎるわけですね。現在炭カル等を投入して中和処理を行なっておりますが、このシックナーは一分間で七トンの処理しかできないわけです。七十トンの水のうち十分の一しか処理していなかったわけです。どういうわけでこういうような指導監督をいままでやってきたのか、その点について承りたいと思います。
○蓼沼説明員 お答えいたします。シックナーの問題でありますが、百メートル坑、三メートル坑を閉塞いたしまして、百メートル坑から現在坑内水が出ておりますが、百メートル坑から出る坑内水はただいま申し上げましたように水量が分約二十立米でございますが、これが赤川に流入いたしまして、赤川の流量は約七十立米ということになっております。これを、約一割に当たる七立米は坑内処理系統に導入いたしまして石灰の中和処理、つまり炭カル投入をいたしております。この処理をいたしました水を赤川に再度入れまして、全体のPHをそこで調節しているわけでございます。この赤川のPHを上げることによって四十四田ダムのPHの数値が四以上になるということで指導を行なっております。最近における四十四田ダムのPHは四以上と聞いております。
○古寺委員 四十四田ダムは、昨年のデータを見ましても四以上ということはほとんどないのです。全部三台なんですよ。そういうようないいかげんな考えですから、これはうまくいかないわけですよ。なぜそれでは三メートル坑口を閉塞した場合に露天掘りのあとを処理しなかったのですか。閉塞した当時はPHが一・五であった。現在一・三になっています。水量は確かに少なくなりました。しかし以前よりもPHにおいては悪くなっている。この大きな原因は、露天掘りをそのままに処理しないでおいたから、こういう結果になっているということが考えられるわけです。どういうわけで、三千七百万円ものお金を使って坑口閉塞をやっていながら、一方ではこういう効果のないような処理をしたのか。その点についてお答えしてください。
○蓼沼説明員 お答えいたします。 三メートル坑閉塞の効果でございますが、これはただいま申し上げましたように、専門家の今泉調査団、委員長のほか約二十名の方々の専門家にお願いいたしまして、相当綿密な調査の結果、この閉塞の効果があるということでいたしたわけでございますが、われわれ効果というものを見ます場合に、一つは水量の問題でございます。それからもう一つはPHの数値であります。結局この効果というものがS分、つまりサルファ分のトータルというものが、昔に比べてどの程度外に流れ出すかということで考えておりまして、現実にPHが前よりも多少低いということは先生御指摘のとおりでございますが、水量が大幅に減っております。それから傾向的に見まして、当初予定の改善値よりは確かに時間がかかっておるわけでございますけれども、実態的に改善の実が徐々にあがっていく、このように考えております。
○古寺委員 それはそういうことを期待したいのであって、現実の問題としてはこれは期待できないですよ。なぜ露天掘りをそのままに放置しておくのですか。
○蓼沼説明員 露天掘りは、実はこの鉱山は坑内掘りを主として昔からやっていたわけでございますけれども、石油のS分の問題、つまり脱硫の問題ということで、御承知のように石油から脱硫、硫黄を取るというようなことが非常に行なわれるようになりまして、硫酸の原料である硫黄、硫化鉱というものが構造的な不況に見舞われたわけでございます。そのために、行なわれておりました坑内掘りというものが非常に不況に立ちまして、会社の再建という問題が起こってきたわけでございます。その再建の場合に、いままでの坑内掘りを全部やめまして、コストの非常に安い露天掘りということに切りかえて再建をはかったわけでありますが、その後硫化鉱の状況、硫黄の状況がますます悪くなりまして、ついに露天掘りも採算的に苦しくなってまいりまして、鉱山経営状況悪化あるいは閉山の見通し、こういうことになったわけであります。
○古寺委員 私がお尋ねしていますのは、露天掘りをなぜ埋め戻しをしないのかということをお尋ねしているのです。
○蓼沼説明員 PH対策といたしましては、いろいろなことが総合的に考えられるかと思いますが、技術的に見まして、先生おっしゃったような露天掘りの埋め戻しについても、PH対策の一環としてこれは効果があるいはあるかとは思われますが、どのような方法で、あるいはどの程度、あるいはどういうほかとの処理関係を考えてというものが、実はまだ明確になっておらないわけでございます。そのために、環境庁にお願いいたしまして、関係の各省、協力をいたしまして、総合計画といいますか、総合調査をいたしまして、その結果によりまして今後の対策を十分検討を進めていきたい、このように考えております。
○古寺委員 松尾鉱山には、現在一千万立方メートルのズリですよ。それから三万トンの粗鉱が野ざらしになっている。しかもこの露天掘りの埋め戻しをしませんというと、地下水が鉱床を通って全部百メートル坑口から流れてくる。それではこういうことまで通産省は環境庁に調査をさせる、こういうわけですか。あなた方のほうは全然調査をしないで一切環境庁に全部これを調査してもらう、こういうお考えなんですか。
○蓼沼説明員 調査の具体的な内容につきましては、現在環境庁あるいは関係各省御相談をいたしておりますが、われわれといたしましては、過去に今泉調査団という権威ある調査団をお願いしたこともありますし、今後の調査によりましても、われわれのできる限りの調査を実施いたしてまいりたい、このように考えております。
○古寺委員 何回調査をすれば公害の防止対策というものはできるわけですかね。はっきりわかっているじゃないですか、こういうことは。そういうことを全然やらないために、公害の問題がいつまでたっても片づかないわけですよ。何べんも精密な調査をやったとおっしゃっていながら、これからまた精密な調査をするのだ、いま会社側ももう今月一ぱいで閉山するわけでしょう。それでは、こういう非常に抜本的じゃない対策で残念なのですが、炭カル投入はどこが、何省がこれをおやりになるのですか。
○岡崎説明員 ただいまお話しの抜本的な対策ができるまでの間、建設省で、従来会社でやっておりました炭カル投入を継続してやる予定になっております。
○古寺委員 それは建設省がおやりになるわけですか。
○岡崎説明員 あの区間は直轄管理区間でございませんので、大臣の管理区間に指定いたしまして、建設省の直轄河川の維持修繕費で炭カル投入をやる予定になっております。
○古寺委員 大体一日に何トン見込んでおりますか。
○岡崎説明員 従来会社でやっておりました百五十トン・パーデーでございます。
○古寺委員 現在会社が百五十トン・パーデーで、四十四田ダムの場合には四以下なんですね。こういう状態でいきますと当然発電所あるいはダムの構造物が被害を受けるということははっきりわかっています。少なくとも環境基準にあるようにPHは六ぐらいまでに処理をしませんと、北上川も清流化ができない。ダム自体も大きな損失を受ける、こういう結果になるのですが、そういう点については考慮していますか。
○岡崎説明員 先ほどお話のありました抜本的な対策が必要でございますので、それまでの間は現在会社でつくっておりました施設を利用しまして百五十トンを予定しております。ただ実際にPHが四十四田ダムで四を下回ることが多いというお話でございますが、私どもといたしましては百五十トンの数字そのものには、そう期待とは考えておりませんで、四になるように考えていきたい、こう思っております。
○古寺委員 四の根拠というのは何ですか。四という暫定目標をきめた根拠は一体どこにあるのですか。
○岡崎説明員 私どもが伺っておる範囲では四十四田ダムが建設当時に県と建設省あるいは通産関係の方々のお集まりで、四十四田ダムの用水対策ということの協議会で、その当時の実情を考慮して四にきまったと聞いております。
○古寺委員 そういう全く独善的な暫定的な基準をきめられては国民が迷惑すると思うのですよ。 そこで、農林省にお尋ねいたしますが、この北上川の盛岡の下流でもって、大体、千六百ヘクタールの農地が実際に被害を受けておりますが、これについての調査はどうなっておりますか。
○櫻井説明員 農林省といたしましては、四十五年に農地局が、全国的な調査でございますが、水質汚濁実態調査というのを実施しております。この調査の結果報告によりますと、岩手県の北上川水系、これは主として雫石川の合流点から下流のほうにございますが、千六百ヘクタール程度の硫黄硫化物による被害があるということが報告されております。これを受けまして、四十六年度におきまして、これは岩手県に農林省から補助をいたしまして、この関係の農業用水路の水質調査を実施いたしました。この調査報告が今月届いたわけでざいますが、この調査結果によりますと、農業用水の基準PHよりはやや低く酸性水があるということで、農業水としてはやや不適当というふうに考えるわけでございますが、これの対策につきましては、この結果に基づきまして関係機関に協議して対策を立ててまいりたい、こういうふうに考えております。
○古寺委員 これはもう過去何年も前から被害を受けているわけですね。今回の調査によりますと、一年間の損失が二千七百万円というふうに出てきているわけです。これは聞き取り調査だけなんですよ。肥料代とかあるいは珪カルを使った金額を算定して出した損害額です。これに減収額を加えたらどのくらいになるかわかりません。一年間の損失がこれだけある。十年間にいたしますと、この最低の見積もりでもっても二億七千万でしょう。こういうような農家が被害を受けていながら、なぜ農林省はいままで調査をやらなかったのか。なぜ農民の側に立って農民を指導したりあるいは救済するようなそういう行政というものを農林省が考えなかったのか、その点について承りたいと思います。
○櫻井説明員 抜本的な対策につきましては、先ほどから御議論のあるところであろうと思いますが、被害があらわれております農地は、北上川本流からポンプアップしてとっておるようでございますが、これは汚濁対策というだけでございませんのですが、主として右岸側のほう、たとえば雫石川の地区とかあるいは山王海あるいは豊沢川、こういうところで、ダム群の造成あるいは取水せき改修等をいたしまして、本流からの取水を、ただいま申しましたような支流からの取水に変えるような工事を進めてまいっております。そういう面で、本流取水を避けるというような努力をしてまいっております。
○古寺委員 こういうふうに通産省の鉱山行政のずさんが千六百ヘクタールの農地にも被害を与えている。また、日本で四番目のこの北上川が死の川に変わってしまっている、この問題については、県のほうからも再三、請願あるいは陳情がなされているようでございますが、どこの省に聞いても、環境庁が全部対策を考えているんだ、こういうようなお話をなさるわけです。この新聞の報道によりますというと、五月から国がこの対策を実施する、こういうふうに報道されております。この点について環境庁の政務次官から、北上川の清流化対策、松尾鉱山の鉱害防止対策についてはどういうような決意で今後対処なさるのか、あるいは現在どういう時点まで検討が進んでいるのか、その点について承りたいと思います。
○岡安政府委員 北上川の強酸性水による汚染問題につきましては、環境庁発足以来取り組んでまいったわけでございます。いままでの結果はともあれ、この水質を改善する必要があるということで、環境庁が中心になりまして、関係省庁といろいろ検討を進めてきたのでございます。現在まで大体詰まってまいりましたのは、松尾鉱業が、おっしゃるとおり、間もなくこの中和処理を継続することは不可能になるということなので、とりあえずまずこの中和処理事業ですか、これを当面の処置として継続する必要があるということ、さらに、これはあくまでも当面の暫定的な施策でございますので、抜本的な施策を早急に講ずる必要がある。これらにつきましては、それぞれ分担はあろうかと思いますが、そういうことで、抜本策につきましても現在、それぞれいろいろ具体的な内容も煮詰まりつつあるわけでございます。そこで、新しく予算が決定いたしますれば、四十七年度予算の中におきまして、ます調査をする——これの調査も、抜本策を具体的に講ずるための調査でございまして、いままでの調査を補完をするという程度のものかと思っておりますけれども、その調査をいたしまして、できるだけこれも早く抜本策に手をつけたい。抜本策としましては、すでに坑道の閉塞等が行なわれておりますけれども、それ以外にやはり考えられますのは、露頭といいますか、鉱石の露頭部分等につきましての覆土等も含めまして、これは抜本策を講ずる必要があると考えておりまして、そういうものにできるだけ早く手をつけるということを私どもは考えておるわけでございます。この点につきましては、関係省庁ともすでに意見がほぼ一致いたしておりまして、具体的な内容の詰めに入っているという段階であります。
○小澤(太)政府委員 いま局長から御答弁申し上げましたとおり、このような事案につきましては、環境庁設置法の関係もございまして、環境庁が中心となってこの対策を進めていくというたてまえにはなっております。そのつもりでやっているわけでございます。
○古寺委員 現在、この四十四田ダムでもってPHがまだ四までいっていないわけです。これをかりにPH五に一改善するためには、現在、年間約一億という処理費がかかっているわけです。これの十倍のお金がかかる。十億でございます。ただ炭カルを投入して中和するだけでも五に持っていく場合には十億、さらに六に持っていく場合には二十億かかる。それが抜本的な対策にはならぬわけです。これをもう一切抜本的に解決をするというためには、相当ばく大な予算を考えませんというと、恒久的な解決というものはできないわけですね。したがいまして、県が独自でこれをやるということは不可能です。当然政府が積極的にこの問題と取っ組んで対処しないというと、この問題の解決はつかないと思うわけでありますが、政務次官、きょうは大臣がいらっしゃいませんので、政務次官からひとつ、政府に強くこの点を強調していただいて、早急に恒久的な対策を講ずるように進言をしていただきたい、そういうふうな今後の措置を考えていただきたいと思うのでございますが、その点はいかがでしょうか。
○小澤(太)政府委員 お説のとおり、ただいままでの暫定措置として炭カルを投入するというだけでは費用もずいぶんかかります。そこで先ほどから各省から説明しておりますように、抜本的対策を講じたい、こう思っております。炭カル投入でなしに、さらによき方法を発見するために努力をしておるわけでございます。こういう大きな問題を府県にまかせるということではとうてい解決いたしませんから、お説のとおり環境庁が中心となって政府がこれに取り組んでまいります。このような考えで現に取り組みつつありますが、将来にわたりましてもそのような態度で一貫してまいりたい、このように思う次第でございます。
○古寺委員 水産庁にお伺いしますが、この四月に北上川の下流で三万から四万尾のアユの稚魚が斃死をした、こういうような新聞報道があったわけでございますが、この原因についてはどういうふうになっているか、御報告願いたいと思います。
○松下説明員 本年四月十八日、岩手県の一関の磐井川、これは北上川の支流に当たりますが、ここにおきましてオイカワが約一万尾、また四月十九日、宮城県柳津町、これは北上川と新北上川との合流点に当たるわけでございますが、ここにおきまして蓄養中のアユが約二万数千尾斃死したことを県からの報告で了承しております。その原因についてでございますが、松尾鉱山からの排水によるものではないかという疑いが持たれているようでございますけれども、岩手県の場合には、これは支流に当たりますので、松尾鉱山とは全く関係ないというふうに私ども考えております。また東北大学の見解でも、これは病害によるものではなかろうかということを聞いております。また宮城県の場合におきましては、距離的に見ましても松尾鉱山との関連は考えられない。その原因につきましては現在水産試験場において調査中、こういった状況になっておる次第であります。
○古寺委員 まだ調査中でございますから、原因がはっきりしてないと思いますので、今後もこういうことを繰り返さないように、調査をして原因を究明し、対策を考えていただきたい、こういうふうに御要望申し上げます。 次に、時間がございませんので地盤沈下の問題についてお尋ねしたいと思いますが、最近青森市において地盤沈下が非常に問題になっておりますが、この点につきまして国土地理院のほうから御説明を願いたいと思います。
○井上説明員 青森市付近の水準測量は、昭和三十三年から四十三年にかけて実施しておりますけれども、その結果から見ますと、一年一センチくらいの沈下を示しております。これは、それ以前の水準測量の結果から見ますと。あるいは周囲の地質状況から見ますと、明らかに自然的なものではなくて、人為的なものであろうと考えられるわけでございます。われわれの水準点の置かれておりますところは、大体地盤のしっかりした国道沿いに置いてございます。あるいはそれから離れた海に近い部分などでは、年間数センチくらい地盤沈下を起こしているかもしれないと思います。このような沈下は昭和三十三年ごろまではほとんど起こっておりませんので、ここの沈下は最近非常にひどくなっているのじゃないか、このように考えております。
○古寺委員 青森市の場合には水準点が非常に少ないようでございますし、また水準点の置かれている場所が比較的地盤のかたいところに置かれているようでございますが、地盤沈下の実態を正確に把握をするためには、今後どういうような測量が必要でございましょうか。
○井上説明員 いま現実に地盤沈下を起こしております東京、大阪あるいは佐賀平野、新潟、そういうあたりでは、私のほうで一等水準点、これはもともと地盤沈下調査が主目的ではなくて、全国の位置、高さを正確につかむための基準点でございますけれども、そういう基準点を置きまして、これを明治以来繰り返し測量をやっておるわけでございます。そういう点で、大体の沈下の速度がつかめているわけですけれども、たとえば東京あたりでは、これを幹線にいたしまして、地元の市町村がそれから枝葉の部分をつけておりまして、そういう点の技術指導、基準値の調整、細部の取りまとめにつきましては地理院がこの水準測量の指導をやりまして、その結果実際の東京、大阪での地盤沈下の報告をしておる、こういう段階でございます。青森市の場合におきましても、われわれのとっている水準点というのは、もともと日本全国の高さを調べるというのが主目的でございますので、地盤が一番下がるというようなところに置いてございません。それで、そういうこまかい枝葉のところは地元のほうでも協力して置いていただきまして、大もとになる、基準になる水準を地理院が行ない、地元と協力いたしてそれをまとめていく、このように考えております。
○古寺委員 青森県の漁港課の調査でございますが、昭和三十七年に完成いたしましてから、四十七年一月までの間の青森港の防波堤及び岸壁の沈下状況でございますが、防波堤が七十四センチから八十四センチメートル、岸壁が四十八センチメートルそれぞれ沈下しておりますが、こういう点についてはどういうふうにお考えになっておられましょうか。
○井上説明員 これは、地盤沈下の機構のほうは国土地理院の本来の業務ではございませんけれども、いままでの各地方のいろいろの地盤沈下状況から見ますと、やはり地盤沈下が一番大きな原因になっているのではないか、そのように考えております。
○古寺委員 水産庁は、この問題についてはどういうふうにお考えになっておられるか、また今後の対策についてはどういう対策を考えていらっしゃるか、承りたいと思います。
○矢野説明員 御指摘の施設が、現在若干圧密沈下による沈下が起こっておりますことは事実でございます。これに対しましては現在検討しておりますが、次期漁港整備計画の中におきまして、施設の改良等の措置を講ずるということで、漁港の利用上支障のないようにいたしたいということで、現在検討いたしております。
○古寺委員 運輸省にお尋ねしたいのですが、漁港のこういうデータは出ておりますが、港湾施設についてはどうなっておりますか。
○田中説明員 青森港の漁港部分を除くその他の一般港湾の面につきまして申し上げますと、現在までのところ外見上大した変化はなく、また実際利用上港湾の機能を阻害するというようなところになっておりません。ただ、四月十八日に青森県が主催しまして、今後一般港湾と漁港と、それから国鉄との三者が中心になりまして、沈下の機構、速度等を調査するということになるというふうに聞いております。われわれとしましては、この調査の結果によりまして地盤沈下の実態が解明され、その防衛策が必要であるということになりましたときには必要な措置をとっていきたい、こう考えている次第でございます。
○古寺委員 これは地理院にお伺いしたいのですが、青森市の地盤沈下の原因として考えられる要因にはどういうものがございますか。
○井上説明員 地盤沈下の問題は、機構的にいろいろあると思いますが、やはり主原因は地下水のくみ上げではなかろうかと思います。ただ、やはり地下水くみ上げと申しましても、そこが地盤沈下を起こすような地質の条件になっているところで、地下水くみ上げをやると起こるということで、青森市の場合を見ますと、あそこは狭いですけれども、ある程度沖積層という形になっておりますので、その沖積層の中から地下水をくみ上げるということが一番大きな原因になっているのじゃなかろうか、このように考えております。
○古寺委員 こういう青森市の地盤沈下について、地下水の利用状況がどういうふうになっているかということを、環境庁、厚生省、さらに通産省はどういうふうに把握をしていらっしゃるか、承りたいと思います。
○岡安政府委員 私ども、実はこれから調査をしなければならないという段階でございまして、まだ詳細な資料を持っておりませんが、地下水のくみ上げの原因は、おそらく工業用水と上水道だろうと思っております。工業用水がどの程度の量であるかという点につきましては、現在、正確に資料を把握しておりません。上水道につきましては後ほど厚生省からお話があるかもしれませんが、青森市の上水道は年間約二千万トン程度の取水をいたしておりますが、そのうち、表流水によりますのが約六六%でございまして、井戸水等によりますのが三四%、年に大体六百万トン前後の水が水道用水としてくみ上げられているというふうに私どもは理解をいたしております。それ以外の原因等があるかどうか、今後至急調査をいたしたいというふうに考えておるわけでございます。
○森口説明員 工業用水については手元に資料の持ち合わせがございませんので、調査した上、お答えいたしたいと存じます。
○国川説明員 青森市の上水道でございますが、ただいま環境庁のほうから御説明がございましたように、水源としましては、表流水と地下水に依存しており、現在の市の計画給水人口は二十五万人、一日最大給水量は七万五千トンということになっております。
○古寺委員 こういう工業用水、ビル用水等の規制の指定地域以外のところの規制についてはどういうことをお考えでしょうか。
○岡安政府委員 現在の法律制度によりますと、工水法によります指定をしまして揚水の規制をするということ以外にはないわけでございまして、それ以外のところでもし規制を必要とするという場合には、県、市町村の条例による以外には現在の法体系ではないということでございます。
○古寺委員 地盤沈下が起きてからでは取り返しがつかないわけでございますので、何か予防的に規制をするような方法というものを考える必要があるのじゃないかと思いますが、その点についてはいかがですか。
○岡安政府委員 おっしゃるとおり、地盤沈下は一度起きますともとに戻らないという特性を持っております。公害一般がそうであるように、地盤沈下につきましては特に予防措置が必要であるというふうに考えております。私ども、現在の法律制度では、その予防措置につきまして必ずしも十分な手当てがしてあるというふうには考えておりません。私どもはなるべく予防措置につきましての手当てを考えたいと思っておりますが、ただこれは制度をつくるということだけではありませんで、やはり地盤沈下のメカニズムその他を明らかにしませんと、どこまでどういうものを予防するかということもはっきりしないという面がございます。そこで、現在中央公害対策審議会の中の地盤沈下部会にお願いしまして、予防措置も含めまして早急に抜本的な対策につきましての御検討を願っているわけでございます。 〔始関委員長代理退席、山本(幸雄)委員長代理着席〕 その結果、もし法律、制度の改正を要すれば、私どもは法律、制度を整えまして、一日も早く予防措置の整備につとめたいと考えております。
○古寺委員 地盤沈下と関連いたしまして、地下水の揚水量をやはり全国的に調べる必要があると思うのですが、今年度の環境庁の予算を見ますと、全国でわずかに二百万円です。これではとうてい現在地盤沈下が起きつつある地域に対する揚水量の把握も十分にできないのではないか、こういうふうに考えられるわけですが、この点についてはいかがでございますか。
○岡安政府委員 いまお話しの二百万円と申しますのは、現在地盤沈下が相当進んでおる地帯におきましてどの程度の揚水を使っているかという聞き取り調査等の経費を考えているわけでございます。私どもはそれ以外に、この青森を含めまして全国で大体四十一カ所程度の地盤沈下地帯があるというふうに考えておりますが、これらの地帯につきまして、個別に具体的に調査をし、対策を講じたいと考えておるわけでございまして、先ほど申し上げました中央公害対策審議会の地盤沈下部会におきましても、地盤沈下はきわめて具体的な事例でございますので、四十一地域につきまして漸次具体的な調査と対策を確立するというふうに考えております。 そこで、揚水量調査につきましても、調査の進展と合わせまして、私どもは具体的な調査を進めるという考えでございます。
○古寺委員 青森漁港の場合は、防波堤で八十四センチメートル、岸壁で四十八センチメートル沈下いたしておりまして、この漁港周辺の地域は水害の常襲地帯になっているわけです。こういうものに対して、国としては、環境庁としてはどういうような対策をお考えでしょうか。
○岡安政府委員 従来地盤沈下対策の一つとしまして、防波堤、防潮堤等のしゅんせつまたはかさ上げの工事等が、所管の運輸省、建設省等で行なわれております。私どもも、そういう工事等につきまして、やはり四十一地域につきまして具体的な調査をし、具体的な対策を立てまして、必要があればそのようなところでもって必要な工事を実施するというような具体的な計画を立てて、予算を要求し、実施をするということを考えている次第でございます。
○古寺委員 水産庁はどういう対策をお考えでございますか。
○矢野説明員 全般的な地盤対策につきましてはうちの所管ではございませんが、うちの漁港管理者が管理しております岸壁におきましては、一部水門を設けるような処置を講じております。
○古寺委員 地盤沈下の問題につきまして環境庁にお願いしましても、ほとんど資料もない。実態の調査というものは建設省にまかせられているような気がするわけですね。指定地域は別といたしましても、中小都市等では地盤沈下がどんどん進行しているわけでございますが、そういう点について環境庁がよく把握をしていない、こういう点が非常に心配なんでございますが、この点について今後の地盤沈下についての対策としては、どういうふうな姿勢で取り組まれるのか、承りたいと思います。
○岡安政府委員 おっしゃるとおり、地盤沈下につきましては、資料が不足であるのみならず、原因、影響といいますか、そういう面の研究等も必ずしも具体的には進んでいないというのが現状でございます。もちろん現在地盤沈下等の状態を把握するにつきましては、国土地理院の調査がきわめて有効でございますし、従来からいろいろやっていただいているわけでございます。今後とも私どもは、やはり国の調査といたしましては、地理院のほうにお願いをいたしまして、地盤沈下をしている地域、またそのおそれのある地域につきましては、濃密な水準点の測量、基準の測量をお願いし、その枝葉等につきましては都道府県等にお願いをしまして、調査網の完備というものを考えております。またメカニズム等の影響調査につきましては、従来から観測井等が地盤沈下のはなはだしい地帯につきましてはすでに設置されておりますけれども、不足分につきましては四十七年度さらに国からも補助いたしましてこれを補足するということも考えております。そこで私どもは、地盤沈下といいましてもわりあい限られた地域でございますので、限られた地域の実情に即しました調査なり対策を具体的にやっていきたいというふうに考えております。
○古寺委員 この観測井の問題でございますが、今年度の予算を見ますと全国で五カ所しか予定していないようでございますが、これはどのくらい要望があるわけでございますか。 〔山本(幸雄)委員長代理退席、委員長着席〕
○岡安政府委員 ちょっと私数字をいま手持ちしておりませんが、全国でも国が設けたもの、都道府県が設けたもの等既設の観測井がございます。私ども今回新しく予算をお願いいたしましたのは、従来の地盤沈下の状況等を見まして、既設の観測井では不足しているところ、そういうところを重点的に補完をいたしたいということで予算をお願いをいたしまして、五カ所の新設を考えているわけでございます。これによりまして、主として問題の地盤沈下地帯におきます観測井はある程度充足すると思いますが、今後さらに具体的な検討いかんによりましては、この観測井の増設といいますか、そういうものも今後考えてまいりたいと思っております。
○古寺委員 青森市についてはお考えですか。
○岡安政府委員 まだ具体的に四十七年度の事業計画をきめておりませんので、青森市が対象に入るかどうかは現在きめておりません。
○古寺委員 いままでの地盤沈下というのは建設省の地理院が測量をしなければそういうことがはっきりわからない、わかってもある場合にはそれを自治体が発表しないというようなケースもたびたびあったようでございますが、今後地盤沈下が進んでしまってからではどうしようもございませんので、そうなる前にやはりいろいろな予防的な措置を講ずるためにも、環境庁がやはり地理院等とも連携を密にいたしまして、これらの対策というものを進めていっていただきたい、こういうふうに要望するわけでございますが、政務次官から最後に地盤沈下に対する御決意を承って、時間でございますので終わりたいと思います。
○小澤(太)政府委員 古寺委員のお話しのとおり私どもも考えております。
○田中委員長 本日の質疑はこの程度にとどめ、次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。 午後零時五十三分散会