科学技術振興対策特別委員会 第13号
- 発言数
- 66 件
- 登壇者
- 11 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1972/06/01
会議録
○渡部委員長 これより会議を開きます。 科学技術振興対策に関する件について調査を進めます。 まず、参考人出頭要求に関する件についておはかりいたします。 原子力開発に関する問題について、本日、日本原子力研究所理事長宗像英二君を参考人として意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○渡部委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。 なお、御意見の聴取は質疑応答の形で行ないますので、さよう御了承を願います。 —————————————
○渡部委員長 質疑の申し出がありますので、これを許します。石川次夫君。
○石川委員 きょうはたいへんお忙しいところを宗像理事長に御出席をいただきまして、心からお礼を申し上げます。 実はきょうは、原研にかねて問題になっておりました労使問題について質問をしたいと考えておったわけですけれども、実はきょうから団体交渉といいますか、そういう交渉が決裂をして原研がストライキに入るという状態を一応回避するために、団体交渉をきょう持って再考するというお話がございましたので、その件についての問題はきょう取り上げないことにいたしたいと思います。ただ若干御要望だけを申し上げておきたいと思うのであります。 私ごとでたいへん恐縮でありますけれども、私も終戦直後勤労担当の責任者をやっておりました関係で、労使の問題というものは非常にむずかしいものであるということは身をもって体験をいたしております。まあしかし、私の体験といっても、終戦後の非常に古いことでございまして、いまその経験を呼び起こしたところで、時代は変わっておりますから参考にも何もなりませんことはよく承知をいたしておりますけれども、しかし、終戦後の非常な混乱時期であっただけに、私なりにいろいろな苦労もしてまいったと思っておるわけでございます。考えようによってはいま以上に困難な要素というものがたくさんあったわけでございます。それだけに、管理者側のお立場というものもよく理解をいたしておるつもりであります。 そこで、私がいまいろいろ申し上げることは釈迦に説法のそしりは免れないのでありますけれども、どうも労務担当をやっておりますと、宗像さんはほんとうに純粋の学者ですからなおさらのことでございますが、どうもその担当の理事あるいは担当の職責にある方々、原研などでも外側だけから様子を見ておるというふうな感じがしてならないのであります。これは官公労関係おしなべてそういう傾向があるわけで、いろいろ官公労の労働組合の行き方についての御批判も立場によってあるだろうと思うのでありますけれども、外側から批判をしこれを強力に指導するという形で成功することはまずもってないのではなかろうかと思っておるわけであります。民間のわれわれの経験あるいは現在の状態を見ますと、大体内側に入ってその労働組合、従業員の悩みを聞き意見を聞くというようなことから出発をするということでないと、労使の慣行、労務管理というものは十分な対策を立てることが不可能ではなかろうかということを身をもって私は体験をいたしておるわけであります。 そこで、特に原研の場合には、ただ単に労使問題ということだけではなくて、それが非常に重要な、日本の原子力の推進にかかわる中心の、核としての原研の研究体制にも非常な影響を及ぼすというようなことで、いろいろな点で私ども憂慮をいたしておるわけであります。原研は何といいましてもあらゆる角度の原子力を取り巻く学者が集まっております。それに特に若い科学でございますから、若い科学者の意見というものは特に尊重されなければならぬ。安全性と開発の中核としての原研に期待するところ大であるだけに、その研究体制と密接なかかわりを持つ労使問題については、国民としても相当重大な関心といいますか、憂慮の気持ちでもってこれを見詰めておるということをひとつぜひ忘れないでいただきたいと思っておるわけであります。 特に、原子力研究所の労働組合の代表をしている人でも、あるいは単なる労働組合の一員でも、平和利用のためにこの原子力というものを推進していくのが自分たちの責任なんだということだけは十分にみな認識をしておるわけでございまして、原子力を全面的に否定をするという立場の人は一人もないわけなんです。そういう立場で共通な場があるわけです。私は実はいろんな反対運動その他でもって、原子力研究所の労働組合の代表の方々と一緒になることがあるわけですけれども、原研の当局の方が御心配になるように、反対運動をとことんまでぶち上げて、その反対運動に油を注ぐというようなやり方はしておりません。学者の立場として、こういう問題点があります、こういう点は気をつけなければなりませんということは言いますけれども、こういうことがあるから反対だ、こういうことがあるからやるべきではないというようなことは、学者の立場であるという分別をわきまえた発言をしておりまして、われわれなんかよりは非常な控え目な謙虚な発言をしておるという事態をひとつ御認識をいただきたい。私も席を同じくするまではそういうことがわからなかったわけでありますけれども、そういう立場で話をしておるんだということをひとつ理解をしてやっていただきたいと思うのです。 原研の労働組合としては、平和三原則の中で公開の原則が破られるのではなかろうか、こういうことを非常に心配をする。私も心配しております。これは国民ひとしく心配しております。国民はひとしく知る権利があるけれども、どうも秘密のベールというものは少し厚過ぎるんではなかろうかというふうな懸念を持っておる。その懸念にこたえて、やはり公開の原則は国民の知る権利というものにこたえて、十分に国民の要望を満たしていかなければならぬ、こういう気持ちを組合の側として非常に強く持っておるということは、私は無理からぬことではなかろうかと考えておるわけであります。 そこで、たとえば再処理問題で反対の署名運動を、労働組合の組合員というよりは原子力研究所の従業員の立場で署名をいたしますと、一軒一軒のうちへ行ってまでそういうところで署名することはけしからぬ、そういう請願をすることはけしからぬ、こういうふうなことをやっておったことを私は知っておるわけでございますけれども、これは憲法で認められた公然たる請願権なんです。請願権の抑圧をやることはけしからぬということをこの前も私は原研のほうへ参りまして申し上げたことがございますけれども、再処理それ自体は、なければならぬということはわれわれとしても理解はするけれども、非常な多くのクリプトンやトリチウムというものが出るということで、不安の念のあることもまた、これは争えない現実であります。したがって、そういうことで再処理をいまつくることは反対であるという意見の出ることも、原子力に関連してその知識を持てば持つほどそういう気持ちを持つことも、私は無理からぬことではないか。ところが、これは所の方針だということだけで請願権を押えつけるというふうなことは、どう考えても私は理屈に合わないんではないか、こう思うのです。この点はこの前、理事の方がその点は反省をいたします、直します、こういうふうなお答えがあったわけでございますけれども、そういう行き過ぎがかつてあったのではないか。 それからあと一つは、ロックアウトの問題なんかはいま裁判中でありますから、その結審が間近に出るということでありますから、私はあえて申しませんけれども、普通の会社で労働組合が労働争議というものをやめて、ストライキは撤回をする、やめましたというときに、片方はロックアウトしているときには直ちにロックアウトを解くということがこれは常識なんです。それをあえて解かないで、ロックアウトを解かないでがんばるというときには、その会社をつぶすという決意のもとに行なわれる、そういうこと以外には考えられないわけです。ところが、原研ではあえてこれを強引に押し切って、ロックアウトだけは解かなかったという事実があるわけです。これはちょっと私は、われわれの常識を越えたことではなかったのだろうか。こういうふうに何か力づくで外から強引に引っぱっていこうというような考え方では、労使慣行というものが常識的な線になるまでには百年河清を待つにひとしいのではないか、こういう感じを痛感いたしたわけであります。 それから原発の交渉をやる場合にも、賛成派のほうには当局からどんどん、どんどん出すけれども、労働組合から行くというと、何か反対演説をぶってアジテーションでもやるのじゃないかということで全部押えつけちゃうというようなことも、これは原研の労働組合として行くのならかまわないということは言っておりますけれども、どうも原研に期待するところの中立性というものとはたいへんかけ離れておるのではないか。もっと自由に発言させていいのじゃないか。そして原研の労働組合も代表として行った場合も、私が先ほど申し上げたように、決して一方的なアジテーションをやるというふうな形はとっておりません。私はこれは十分にこの目で確かめておるわけであります。そういうことを考えて、何とか労働組合との間を近づけてお互いに理解を深めるということにしないと、いつまでたってもこの労使慣行というものがもめにもめ抜いて今日に至っているということは、私は非常に残念だと思うのです。もちろん組合側としても反省すべき点が大いにあるだろうし、管理者側としても言いたいことはたくさんあるだろうと思うのですけれども、きょうは管理者側のあなたに申し上げることでありますから、こういうことをあえて申し上げるわけでありますが、もっと内側に入って組合の意見というものをくみ上げてやるという姿勢がまずなければ、私はこの労使慣行は常識的な線に戻るということはできないということを申し上げておきたいと思うのであります。 いまのところは、勤評の問題、人事考課の問題が問題になっております。私も人事考課というものを初めて行ないました。そのときには、これは何を基準として人事考課をやったらいいんだということになりまして、人間が人間を裁くのでありますから、非常な問題があります。非常に苦労いたしました。基準をどうやら求めても、それ以上に困難なのは、それについての理解を得るということがこれまた難問題であります。非常に困難であります。私も体験上それをよく認識しておるつもりでありますけれども、しかし、それをやらなければいかぬ。何とか納得させるという努力をしなければ、人事考課をやることがかえって職場の不安感あるいは非常な不満感、こういうものを醸成するだけに終わるということについては、私は十分考慮していただかなければならぬ、こう思っておるわけでございます。 きのう、担当の理事の方にお会いしますと、もうやるだけはやった、話をするだけはした、もうこれ以上はどうにもならぬ。したがって、六月一日がもう期限だ、団体交渉も受け付けない、地方労働委員会では団体交渉をやりなさいと言うのだけれども、団体交渉をやったって同じです。だから六月一日には断固としてこれを決行いたしますと、こういう御返事だったので、私はちょっとがく然としたのであります。もう破綻をしてもかまわないということがいわれておるわけなんですが、破綻をしてしまったら一体それをまたもとに戻すということはたいへんな時間も労力もかかるわけであります。何とか破綻をしないような努力をあと一回やってもらいたい、こういうことを強くお願いをしたわけでございますけれども、もうそれに対応いたしまして、きょうは団体交渉を持ちましょうということになりましたから、私はこれ以上申し上げません。私の言ったことは釈迦に説法のそしりは免れませんけれども、ひとつ十分おくみ取りをいただいて善処してもらわなければならない、こう思っておるわけでございます。 以上、私はこれを強い要望として一応申し上げて、あえて御答弁は求めません。 次に、きのう予告をいたしましたのは、クリプトンの処理についてたいへん明るいニュースが新聞に出ておりまして、それについて伺いたいと思ったのでありますが、その前に一つ、これはたいへん突然のようなことで申しわけないのでありますけれども、大洗の研究所というところは、新しくつくるもので人間の節約を余儀なくされるという関係から、たくさんの下請を使っておるわけです。これからどんどん使われるということにかなのではないか。これは原研それ自体ではほとんどないわけですけれども、中身を見ますとたいへんな人数になってくるようであります。これは原発でいつか「放射能男町を歩く」ということでたいへん新聞をにぎわしたことがございますけれども、この下請の人を使うときには、下請については十分な教育をいたします、もちろんこれはそのと滑りだろうと思うのです。しかし、現実の問題とすると、はたしてそのとおりいけるかどうかということになると、実際直接の従業員といえども徹底した安全な訓練をほどこすということはなかなか容易ではない。ところが、下請になりますと、どうしてもそれほどの責任感がないところに、かてて加えて中高年齢層の人をそこら辺から雇ってくるということが多いわけで、しかもしょっちゅうそれが入れかわるということにならざるを得ない。はたしてそれで放射能男が町を歩くというようなことが再現しないかというと、これは再現しないという保証はどこにもないのではないかということが非常に私は心配なんです。下請の状態やそれから訓練の状態などを見ますと、これはこまかく言うときりがないのでありますけれども、この安全会議に参加をしているかどうかというふうな下請の連中のあれを見ますと、参加していないというところがほとんどであります。安全会議にも参加していないというのがほとんどであります。それから定期健康診断を受けているというところが幾らもございません。ほとんど定期健康診断も受けていない。従業員とは違うわけであります。それから必要の資格というものが十分であるかどうかというところについても、資格の十分でないところがあるわけであります。そういうふうな下請というものをたくさん、いまのところは五十六名という数字が出ておりますけれども、それで職員と比べて勤務条件がどうかというと、悪いというのがほとんどでございます。 そういうことでありますので、下請を使って清掃をさせるとか廃棄物の処理をするとかというようなことになりますと、いろんな問題がこれは波及して出てくるのではなかろうか、これは地元の人たちが非常に心配をいたしておるわけであります。これは宗像さんだけのことではないのでございまして、原子力当局あるいは科学技術庁自体としても、下請などを使わなくてもいいような体制をしくという方策が当然とられていいのではないのだろうかということを私は痛感をいたしておるのですが、まず原子力局長、これに対する御意見を伺いたいと思います。
○成田政府委員 原研あるいは敦賀等の発電所におきましても下請がかなり入っております。ただ、これは仕事の性格上あるいは人的な制約等もあっていたしかたないことと思いますが、ただ下請が入る仕事は、外部に委託しておる仕事は非常に単純労働であって、たとえば清掃とか洗たくとか、あるいは螢光灯の取りかえとか、そういう非常に単純労働であって、しかも原子炉等の安全運転にあまり影響のない、非常に付随的な単純労働で、専門業者に委託したほうが仕事の能率からも非常にいいという場合に限って委託しておるのであります。したがいまして、われわれは安全の問題も、単なる原研なり研究機関や発電所の職員だけでなくて、下請にも十分徹底するように、去年の事故等があって安全教育の徹底等も指示しておりまして、特に下請についてはとかくおろそかになっているのではないかという意味で十分な指示をやり、またそういう面の点検も、政府職員による検査もやっております。 それで、実際の作業におきましても、原研等はいろいろマニュアルをつくりまして、これに従ってそういう単純労働をやらせておる。そして何か故障とか異常等の判断ある場合にはすぐ正規の職員に連絡をしてその指示を受けるというふうな形でやらせております。ただわれわれは下請職員の安全管理、安全教育等さらに徹底する必要があるので、これは絶えず忘れないように安全管理の連絡会議等も定期的に持っておりますので、そのつど管理者に対して十分連絡をとって安全問題の起きないように厳重な注意を促しておる状態でございます。
○石川委員 きょうはこの問題、あまり深く突っ込むというつもりもございませんし、そうしたのではあとの質問の時間がなくなりますからはしょりたいと思うのですけれども、よく官庁は官僚的といわれることばの中に、一片の通達といいますか、通達を何回も出して、通達を出しているんだから下部のほうはやっているはずだというようなことになりがちなんであります。これは官僚のやり方の一番悪い点だ、こういうふうに批判をされておるわけですけれども、この中身を見ますと保安会議に出ていないところがある。課内会議とか保安会議とか、そういうものに参加していないところがほとんどです。こういうところは当然参加すべきではないかと思うのですが、実態はそうなっておらないのです。それから軽い作業でもってそういう安全問題にはあまり関係ないということをおっしゃいますけれども、廃棄物処理なんかでも十四名ぐらい下請が入っている。これなんか徹底した教育が必要だと思うのですけれども、これも教育は一応やっておりましょうけれども、どんどん人がかわっているというのが下請の実態です。 そういうことで、ここで一つだけ申し上げておきたいのですけれども、健康管理とか請負契約、そういうものを十分にとりかわして、最低限これだけの責任は持て、それから健康管理上もこういうことをやれ、あるいは勤務状態もあまり過酷になってはかえって安全体制というものにひびが入るのではないかというような点まで含めての規則というものはやはり確立していく必要があるのではなかろうか、こう思っておるわけであります。 その他のこまかいことはたくさんありますが、基本的なそういう体制から始めて、組織的にとにかく下請のほうから問題が起こらないような体制をつくる。一片の通達で警告を与えるというようなことだけでない組織というものをまずつくっていきたい、こう思うのでありますが、その点はどうお考えになっておりますか。
○成田政府委員 御趣旨のとおりでありまして、われわれも下請問題は一片の通達でなくて、毎月の定例連絡会議でも管理者に十分注意をし、また、先月行ないました科学技術庁の職員による業務監督におきましても、原研、動燃等の下請関係の安全管理の契約関係、あるいは実際の実施状況がどうなっているか、あるいはそういう業務が適当な分野について下請関係を使うべきところに使って適当でないところに使っておらないかどうか、そういう問題もきめこまかくやっておる次第でございまして、今後さらに御趣旨の徹底をはかって、単なる一片の文書でなくて、実際に行なわれているかどうか、厳重に監視していきたいと思っております。
○石川委員 以上でこの質問は打ち切りたいと思うのですけれども、地元としてまた付近の有識者としてはその点が非常に不安だ。どこの原子力施設についても、そういうことは言い得ると思うのです。たとえば原子力発電所を民間でつくった場合も、その点の下請関係をどう扱うかということについては、原子力局としてはひとつ十分な注意を払って、組織的にそういう間違いが起こらないようにするという体制をまずつくり上げるということをお願いしたいと思います。 ところで、次に移るのでありますけれども、クリプトン八五の照射装置というものが最近原子力の研究所でもって開発をされたというようなことなんで、これは私がちょっと聞いてもしろうとにはなかなかわかりにくいのでありますけれども、どういうふうな状態になっておるのか。それで、これは一体実験の段階なのか、あるいは机上のプラントしての考え方なのか。あるいはまた、これは実験段階というものは一応終わって工業化というところまで進め得るという確信をお持ちなのか。そして工業化するということになるとどの程度の経費というかそういうものが考えられるのかというようなことについて、せっかくおいでいただいた宗像理事長から御報告を願いたいと思うのであります。 御承知のように、朝日新聞の四月二十四日あかりには「不安消えぬ核燃料再処理工場、三原則忘れて出発」という記事がでかでかと出ておる。非常な不安を再処理工場あたりでは持っておるのが付近の住民の実態です。この中で何が一番問題になるかというと、言うまでもなくクリプトンであります。そのほかトリチウムというものもありますし、あるいはまた、その他のいろいろな放射性物質があるわけでありますけれども、何といっても一日八千キュリーという量でありますから、これが野放しになったのではたいへんだ。しかもこの放射性物質の半減期は十二年だったかと思います。非常に長い。最悪の状態を考えると、空気よりも重いわけでありますから、一カ所に停滞をしてしまって、しかもこの影響が相当出たということになれば、とんでもないことにならざるを得ないということは火を見るより明らかであります。したがって、このクリプトン八五というものについては、どうしてもこれを処理するということはたいへんな課題で、アメリカあたりでもいろいろやっておるようでありますが、何といっても日本の単位面積で使われるところのエネルギー消費量は、アメリカの十二倍だというのが定説になっておるようでありますけれども、ますますこれがアメリカよりも密度が高くなっていく。ということになれば、まずクリプトンの対応策、処理というものがまず確立をされなければとんでもないことになる。これは再処理だけではなくて、御承知のようにBWとPWでは多少性格は違いますが、クリプトンが多いかあるいはトリチウムが多いかという違いが出てくるわけでございますけれども、この二つにまず焦点をしぼった形で何とかこれを捕捉をする。単純な言い方をすれば、人間が製造過程でつくり上げた不活性元素でありますから、人間が処理できないなんて無責任なことはないじゃないかという議論も、非常に乱暴な議論でありますけれども、あるわけであります。そういうようなことで、これは天然の放射線の中では全然ない物質であることも言うまでもないし、また、これは不活性であるだけに非常に困難な放射性物質であることはよくわかるのでありますけれども、何とかこのクリプトンの処理だけは急速に対策を立ててもらわなければならぬ。私は再処理にもこれを適用するというようなことがなければ安心感を得ることは不可能ではないかと思っておるわけでございますが、たいへんな朗報だと思うので、これの現在の進捗状況というものをひとつわかりやすく御説明を願いたいと思います。
○宗像参考人 ただいま石川先生からお話がありましたクリプトンの関係のことにつきまして、私どものほうで実施しております様子を申し上げて、よく事情を御理解いただきたいと思います。 日本原子力研究所の高崎の研究所は、ちょうど十年前につくることになりまして建設——あれはもともと放射線化学中央研究機構という放射線化学の研究を国、学会、民間一緒になってやろう、そのときに、研究題目は、学会、民間それから国、そういう人たちが集まってきめまして、それまで日本の国でももう十年、それより以前、ですからいまから二十年前から学会や民間の有志が国立研究所でもやっておりましたが、すでに放射線化学の基礎研究的なものをやっておりましたのを、それをもう少し大きな装置を使って大じかけに実験をしてはっきりさせようというようなことで、研究が始まりましたときに取り上げられた題目が四つございました。その四つの題目を中心にして取り上げるということにして、現に高崎の研究所は動いておりましたのですが、そのときにその四つだけでなしにまだほかにもこれから出てくる問題があるんじゃないかしらということで研究者がいろいろ考えてもらうように仕組んであったわけであります。 でありますから、形の上では高崎の研究所に開発試験場というのがありまして、そこに大きく発展させる四つの題目、具体的には繊維の橋かけ重合をして、繊維の品質を変えること、それから世界でもあまりやっていることがないけれども、見込みがありそうだと思われるエチレンを気相で放射線のもとに重合させること、それから京都大学の先生方が主として研究をなさって見通しが立ちそうな強い工業用プラスチックスができそうだという、それに関係する固相重合の関係のもの、それからプラスチックスの——いまから十年以上前だものですから、その時分、プラスチックスがこれからうんと発展するだろうと思って、プラスチックスの品質改良に関係するもの、その四つの題目を大きく取り上げたのでありますが、そのほかにいま申しましたように、まだこれから新しい問題が出てくるのじゃないかしらというので研究をしているその一つに、将来クリプトンが必ず出てきてそれを何とかしなければならないということを若い研究員の人たちが考えている。私もその相談に乗りまして、ものを処理するときに、結果はマイナスでもいまのように環境問題や何かの——そのころも私自身としては環境問題のことは考えていたわけです。実は環境問題のことについてはずいぶん昔から考えておりまして、たとえば昭和十年前にベンベルグの排水の環境問題のことがあり、近くは昭和三十二年だったと思いますが、浦安の町である製紙会社の排水の問題が起こったときに、私は、日本の国ではマグネシウムパルプ法に変えなければいけないということで、その当時海水からマグネシアをつくることを工業化していたので、マグネシウムパルプ法を実施することをすすめました。亜硫酸カルシウムの場合は、亜硫酸マグネシウム法に比べて排水が数倍多く、排水の影響が大きいわけです。そういうようなやり方をやっているから、排水問題が問題になるんだということもそのころから関心を持っておりましたので、結局環境問題のようなものについては、結果はマイナスになるけれども、ただ、しなければならないというのではどうしてもやりだしても手を抜く。だからやれば必ずプラスの結果が出るようなものに持っていかなければいけないなということを、私はもうずいぶん昔から考えていた。ですから、クリプトンも結局プラスになるように仕組めるような研究をしなさい、それでないと、研究をしてもそれを実施するときにどうしても手を抜く、プラスの結果が出るようになれば手を抜かないから、そういうようにしようじゃありませんかということで、相談しながら若い人たちが——その具体的なものについては、クリプトンの話だとか、それからクリプトン八五はどういう反応をするかというようなことは私はあまりよく知りませんでしたけれども、研究方針としてそういうようにしなさいよということでそのころから実は研究はしていたわけでございます。非常に根強く研究をしておりました。 というのは、クリプトン八五は御承知のようにいろいろ影響のあるものでございますので、取り扱っている場合にこれが漏れたりしますとなかなかやっかいだ。しかし、これはなかなか有力な放射線の資源でございますから、これを何とかうまく使えるようにしよう。たとえば高崎には試験装置でありますけれども、五十万キュリーのコバルトを持っている。クリプトンでも、もしも放射線化学が非常に大きく発展して——ただいまはまだそこまで行っておりません。ただいまは放射線化学的なもので具体化して民間でやっている一つの例は、栃木県の小山の町の在の栃木精工という会社で三十万キュリーばかり使って工業照射をしております。近くは群馬県でまたそれと同じ程度。ですから数十万キュリーとかあるいはそれ以上の大きさの放射線源を使って工業を営むような時代がいずれそのうちに来るだろうということを期待しているときに、このクリプトンが出てくる、それをそっちに仕組めたらいいなということを若い人たちと夢に描きながらその研究を進めていたわけでございます。 ずいぶん困難がありました。というのは、外国にそういう例がないものですから、本を読んでも参考文献はないし、そうしているうちにいろいろくふうをして、やっと最近新聞にも注目されるような、引用されるような、報道されるような、そういうようなところまで進んできたわけであります。それは研究している人たちに言わせれば、もうできるのですよ、もうできるのですよと言っております。私も非常にいい見通しを持っております。そして、すでに特許出願を外国にもし、日本でも特許がとれたりしております。その特許が科学技術庁で注目発明として重視していただいております。ですが、先ほど石川先生がおっしゃるように、直ちに工業化できるところまでそれじゃ来ているかというと、それはちょっとまだ早いのでありまして、クリプトンを使って放射線化学的な反応をいまはアクリルアマイドという薬品の重合に使っております。重合反応だとか、それからいろいろ放射線化学的なほかの反応については高崎研究所でいろいろなものをやっておりますので、それぞれにクリプトンのようなああいう特殊な放射線源を使える道が開けるかどうかについては、これから調べていきますけれども、もう研究も、いままで十年近くやっていましたそのテンポ、それは基礎を積み重ねて、それがだんだん上へ出ていく、ふもとこそ積み重ねにひまがかかりますけれども、上へ伸びていくときになると、おそらくテンポは早く、成果があがってくると私は思っておりますが、そういう関係で、工業化をいまじきにできるかということについては、私はまだ若い人ほど強くは言いかねますけれども、しかし、非常に有望であるということはお耳に入れておいていいと思うのです。 そして、たとえば量的な関係でも、いま試験装置あるいは小さな工場でも何十万キュリーというソースを使わなければならない。それでなければ放射線化学はやれないというのに、いまこれから先、原子力発電所ができて、再処理工場ができて、そういうところから出てくるのがかなり大きな数字には違いありませんけれども、そして半減期は十年というのでありますから、かりに三十万キュリーを使う小さな工場、そういうようなもののところに十五万キュリー十年間に供給するというようなことをすれば、それでちゃんと出たものはそこで消化していくわけでございます。ですから、ぜひそういうふうにしまして、ちょうど、何といいますか、原料が消耗していくようなふうに、触媒のような作用をするものでありますけれども、そういうふうにクリプトンをそこに織り込めば、きっと道が開ける、それも来年できるかということはまだ申し上げられないことは先ほどから申し上げているとおりでございますけれども、原子力発電が相当盛んになっていく時分には、きっと間に合うようにこの利用の道は開けるのじやないかと期待をしております。ですから、うんとこれについても研究をこれからするように、しかも、それを工業化に結びつくように研究するようにしていきたいと思います。 そのほかにもクリプトンに関係して、この高崎研究所だけでなしに、原子力研究所の中でも、たとえばクリプトンを加速して違う金属の中に押し込んで、それでただガスとして取り扱うと漏れる心配がありますが、違う金属の中に押し込んで、そうしてとっておく。それもいずれは放射線源として使えるようなものに仕組むことができると私は思いますが、そういうようなくふうを言う者もおりますので、そういう連中の研究ももちろん育てて、そしてこの前学者さんたちがアイソトープ会議のときなんかにも御心配なさったような、そういうようなことも研究の結果、数年あるいは十年たったときにはそういう心配が昔はあったのだというふうになるようにと思っております。あのときの学者さんのお話ですと、紀元二〇〇〇年には問題になる、こう言われたのでありますから、そのテンポでは二十年間に道を開けばいいということですが、そうでなしに、できるだけ早く、やはりそうしてしかも日本の固有の技術なんですか、ぜひ日本で独自の技術をつくって、そうして外国の方にも教えてあげて、そのかわり外国のいいものをわれわれはまたそれと交換してもらって、そうして日本の研究なり技術のレベルを高くするということにしたいと考えております。 そういうことでよろしゅうございますか。
○石川委員 これは非常に専門的なことで、私などはなかなか理解できないところがたくさんあるわけですが、非常にしろうと考えで言いまして、これは加圧をしてアクリルアマイドのポリマーにすることに成功した、こういうことは一応確認してよろしゅうございますか。——そうなりますと、非常に進歩したということだけは、実験の段階であっても、これは認めざるを得ないと思うし、非常な大きな成果だろうと思うのです。アメリカあたりでは何でもマイナス百八十度に温度を下げて、それによって液化をさせて、それでボンベのほうに詰め込んでいくというふうなこともやっておるやに聞いておる。これだと利用がなかなかむずかしいのじゃないかと思うのですが、完全回収ができた上で、さらにこれはコバルト六〇をいままでは照射に使っておりましたが、これは御承知のようにつくり出すものでありますから、コバルト五九に中性子を当ててつくるというかっこうでありますから、価格は非常に高い。それよりは非常に安価なものができるというふうな見通し、それから完全回収ができるのではないかというふうなことがいわれておるのですが、実験段階で完全回収ができて、しかもガンマ線でなくて、このクリプトンのようなベータ線であっても、線量を同じくすれば、同じような目的には使えるのだというようなことが明らかにされた、こういうふうに報道されておりますけれども、その点はいかがでございますか。
○宗像参考人 いま先生がおっしゃった内容は、そのとおりでございます。 クリプトンはガンマ線でなくてベータ線なんです。しかし、化学反応によってはガンマ線でも、ベータ線でも同じような影響がある。そうしてアクリルアマイドの重合という反応、それが一つの研究をするちょうどいい例だったものですから、それを取り上げてやりまして、進めております。 それから使ってアクリルアマイドの製品に一緒になってどんどん出ていったら、これはあぶのうございますから、それがうまく回収できるか、これが一番くふうをしたところです。それができなければ、それをやってみても妙なものが流れ出るのじゃしようがありませんので、そこのところは非常に入念にやって、それが相当うまくいくようになったので自信を持ち出したのです。 それから、もう一つついでに申し上げておきますが、アメリカでは液化してボンベに詰めてどこかにとっておく。これはやはりクリプトンを運んでくるためには、そういう液化するようなことをして再処理工場なり、どこか出るところから持ってこなければならぬと思います。持ってきても、ただ置いておくのと、それをどんどん使って役に立てていくのとでは、そこで非常に違いがありまして、われわれのほうもやはりその液化したものを持ってきて、あるいは何かに吸収させて持ってくるようになるかもしれません。どっちがやりやすいか、事故が起こりにくいかというようなことを考えて、どっちにするかはこれから先の問題でありますけれども、しかし、アメリカで研究しているようなことも十分に加味してやっていくつもりでございます。
○石川委員 環境問題も非常に大きな問題になっているのでありまして、きのうもここで環境問題についていろいろお話をしたので、繰り返す必要はございませんが、原子力についても、私は原子力発電所は将来のエネルギーの豊庫としてどうしても育てなければならぬという基本的な立場に立っておりながら、しかも環境衛生という観点から見ると、相当大きな問題がある。いまのようかスピードで、きょうは原子力エネルギーの長期計画が発表されるというふうなことを漏れ伺っておりますけれども、これはまた読んでからさらに御意見を申し上げたいと思っておりますが、そのようなスピードで進めるかどうかということも、かかってこの放射線が排出をされる、排気ガスとして出てくる、これをどう捕捉するかということにかかっておると思うのです。その中の一番の大きな焦点でありますクリプトン八五が一応そういう解決のめどがついてきたということは非常な朗報だと思って、私はこの関係の研究者の方々に敬意を表したいと思います。私の聞いた範囲では、日立製作所の研究所でも、私のほうでは一応成功いたしました、こういう報告を私聞いております。現場へ行って一回見てこなければならぬと思っておりますけれども、これも相当熱心にやっておるようで、担当重役の方がおっしゃっているんですから、これも間違いないだろうと思うのです。こういう民間の知識も糾合して、ぜひひとつ何とか工業段階にまでこれは使い得るような形に早急に持っていってもらわなければならぬ。それでなければ原子力発電はできませんよ、こういうことを私どもはあえて申し上げたいのです。 そういうことで、科学技術庁長官に申し上げたいのですが、これは非常に目立たない仕事なんです。開発の、高速増殖炉をつくるとか新型転換炉をつくるとか、あるいは高温ガス炉が今度新しいプロジェクトに入るというふうなことを新聞で報道されておりますが、原則的には私はこういうふうな方向は賛成です。賛成でありながら環境衛生が一体どうなんだということが絶えず伴っていかなければ、その時点においてブレーキをかけざるを得ない、こういうことにならざるを得ないのです。これは二十一世紀に人類が生き残れるかどうかということとの大きなかかわり合いを持っているだけに、私は重大な関心を持っているわけです。そこで長官に伺いたいわけですが、こういう研究は大いに促進してもらいたい。高速増殖炉とか新型転換炉あるいは高温ガス炉、こういうものをやるということもこれは決して私は否定いたしません。否定いたしませんが、それと同じ比重あるいはそれ以上の比重——私は原子力委員会の使命は開発のほうへ向けないでむしろ安全のほうにだけしぼったらいいんじゃないかという積極的な意見を最近持ち始めている。そのくらいにしないといかぬのじゃないかと思う。そういうことになりますと、こういうふうに日の当たらない研究とあえて言えば申せると思うのですが、こういう研究に対して日を当ててやる、これについても思い切った研究というものを促進する体制をぜひつくってあげなければいかぬと私は思うのです。こういう点をどうお考えになっているかということと、つけ加えて、違った次元の質問をして恐縮なんでありますが、高温ガス炉を来年から大型プロジェクトに入れるという御計画をお持ちになっておるのかどうか、この二点を伺いたいと思います。
○木内国務大臣 石川委員からたいへん貴重な御意見を伺ってありがたく思っておるのですが、いまお話がありましたように、原子力の発電、平和利用というものは今後大いに進めていかなければならぬ。これは石川委員も御了解願っていただいて私はたいへんうれしく思っておるのですが、それに伴って安全管理と環境保全、これも非常に力を入れていかなければならぬ問題であるということは、いまお説のとおりであります。 そこで、私どもといたしましては、かねがねこの貴重なエネルギーを開発し得た人間は必ずこれに伴う弊害を解決する能力はあるというのが私の夢であり、一つの理想であるのでありますが、私はいま宗像理事長からいろいろ御説明を伺いまして非常に力強くうれしく思っておるのです。こういう研究に対しましては、予算の獲得その他について最善の努力をして御期待に沿い得るような、この貴重な研究を実りあるものにするように努力をいたしたい、かように考えております。今後ともひとつ御鞭撻を願いたいと思います。 それから、いまの高温ガス炉の問題は、科学技術庁としても非常に関心を持っております。私もかつてドイツの高温ガス炉の研究等を見に行ったりしたのですけれども、これは非常に多目的に使いまして、非常に力を入れなければならぬと思っておりますが、この問題については、新聞などで御承知のとおり、通産省のほうがこの問題に特に力を入れていこう、こういうことでありますので、私どもも力を合わせてこの問題の促進につとめてまいりたい、かように思っております。
○石川委員 高温ガス炉の問題は、これだけでもたいへん大きなテーマですから、ここで簡単に結論を出してどうこうというわけにまいりません。あらためて質問の機会を持ちたいと思っておりますが、これはいま聞きますと通産省所管ということで、おそらく製鉄関係なんかとの結びつきでそう考えているのだろうと思うのですが、これは私はやはり科学技術庁が主管でやらなければいかぬのじゃなかろうかと思うのです。これはきょうはただ意見を申し上げるにとどめますけれども、業界の要望に従ってやるということになるとどうしても環境問題、安全対策というものは、おろそかにするつもりはないのだろうけれどもおろそかになるという結果にならざるを得ないのではないかという心配をしておるのです。科学技術庁自体だって、開発のほうと安全対策のほうを比べたら、まだまだ開発のほうに重点がかかっていると私は思っている。そう思っているので再三、きのうもそのことについて申し上げたわけでございますけれども、人間が二十一世紀に生きられないんだ、極端な意見を言う人は——極端かどうかわからぬ、いまから検討してみますけれども、二十一世紀に入っていったときに日本の人口は三千八百万だという意見を学者が出しているくらいの非常にきびしい環境になっているということを十分踏まえた上で、この安全対策というものは考えてもらわなければならぬし、クリプトンはどうやら曙光が見えたということですが、これは何とか早く工業化する、費用は多少かかってもやむを得ないと思うのです。そういうことで、ぜひこれを実現をさせてもらいたいと思うのです。 同時に、クリプトンと同様に問題になっておるのがトリチウムであります。トリチウムのほうがまだクリプトンより処理しやすいのではないかという学者の意見もございますが、トリチウム。それから問題になるのはアルゴンではないかという感じがします。そのほか問題になる放射線、これは二百種類も全部にまたがって一々やるということはなかなか容易ではなかろうと思うのですが、同性質のものもたくさんあるわけです。そういうことで、どういうものに焦点をしぼったらいいのだろうかということを、宗像さん御意見があったらひとつ伺いたいと思います。クリプトンのほかにトリチウム、アルゴンなどというものがまず浮かんでくるわけですが、そのほか何がございますか。
○宗像参考人 取り扱うものはたくさんございまして、それぞれやはりクリプトンでわずかな経験をしましたのと同じようなほんとうに基礎的なものからやっていかなければならないということを考えておりますから、われわれのほうでぜひそういう基礎的なものに打ち込んでやれるような研究者を育てだしてそしてやっていこうと思っておりますが、しかし先生、こういうことだけはひとつ御理解願いたいのです。 世界じゅうにかりに百万人の研究者がいて日本に十万人の研究者がいるとしたら、やはり世界じゅうの発明の一〇%が日本でできたらその水準以上だ。何もかもやろうとすると手が薄くなりますから、やはりそのできる範囲、それをしかし深く掘り下げてやって、そして自分のほうでできたものとそれから外国でできたものと交換して、そして結果として必要なところには間に合わせられるということにしたいと思います。いまのトリチウムの話やそのほかのいろいろな放射性物質の問題がございますが、さしあたって量的にクリプトンが大きな問題だったものですから私どもは取り上げたわけでございますが、ほかにも研究者がおりますから、その連中にもさせることにいたしますが、たとえばセシウムなどというものも出てまいります。ストロンチウム。そのほかいろいろなものが出てまいりますが、セシウムなんかもすでにわれわれのほうもある程度いじったりしております。ストロンチウムなどについても考えて、いま研究者がストロンチウムのことについても、二、三日前ですか、もうある程度の見通しが立った、こういうことを言っておりますが、まだこれは研究をする方針の見通しですから、特許出願をしましょうなどと言っているから、まあしておきなさい、入念にやろうじゃないかというようなことをしております。ぜひできること、われわれの能力がそれに合ってそして特徴の生かせる、それこそ自主技術が開発できる、そういうものについては突っ込んでいくつもりでございますので、また先生いろいろお気づきのことがありましたら御忠告いただきたいと思います。
○石川委員 一番最大の当面の問題はクリプトンでありますから、この問題について一応の曙光が出たという程度でありますが、これは科学技術庁長官、実はこのほかにもたくさんあるのですよ。ストロンチウム半減期二十八年、セシウムが三十年、コバルト六〇が五・三年、コバルト六〇はたいしたことありませんが、そういうことでここの放射能もひどいのは二百年というものがありますけれども、主として人体に影響を与えるという、量的に多いという問題。それで蓄積性の高いもの、残留性の高いというふうなものを選択をして、やはり少なくともクリプトンと同じ程度の研究体制をしいていかなければならぬと思うのです。しかし、日本だけではなかなかできないということになれば、これは世界的な協力という体制をつくらなければならぬし、しかも分担ということも必要になってくるんじゃないか。お互いに研究の成果というものは分かち合って、その分担をどこでやるかというふうなことも一つ考えていい問題ではないのかという感じがするわけです。そういうことで環境衛生の問題を徹底的にひとつ洗い直していく。そのための研究体制をどういうふうにするかという問題も、国際協力を前提として、日本としても相当程度これは外国とは違った条件なんですから、気象条件からいっても、地理的な条件からいっても、エネルギーの密度からいっても全然違うのですから、どうしても解決をしなければならぬ最大の課題だと思うのです。そういう点で、いまのところはやっとクリプトンのほうの入り口についたという程度では非常にこれから先が憂慮されるということになるわけなんで、この研究体制を思い切ってひとつ積極的に進めてもらうということをぜひやってもらいたいということを強くお願いしておきます。 一つ聞きたいことがあったんですが、時間がだいぶ迫ったというか、別に約束もしていなかったんでありますが、長時間になりましたので、ただ一つ申し上げておきたいのは、カリフォルニアの住民団体が州民投票でもって、環境保護の関係でもって住民投票に問うということになりましたですね。その中には原発は五年間つくらせない、こういうことも含めて住民投票の結果がどうあるかということはこれから先の問題でありますけれども、これも結果いかんによっては日本に与える影響というのは非常に大なるものがあるだろうと思うのです。この原発炉を五年間つくらせないというピープルズ・ロビーという団体の中身もよくつぶさに読んでみますと、つぶさにというのは詳しく原文を見たわけではございませんけれども、絶対に原発反対という立場ではないわけですね。五年間のうちには安全対策もできるであろう、ECCSはこの前お話ししましたけれども、ECCSも含め、環境衛生も含め、五年間たてば原子力の安全性ということが確認できるところまで技術がのぼるであろう、だから五年間はとりあえずとめろということであって、これは絶対反対という立場ではないわけです。しかしながら、この考え方は私はある意味では非常に正しいと思うのです。そういう点で、アメリカでさえこういうふうな問題ができ上がっている。 〔委員長退席、木野委員長代理着席〕 それから何回も申し上げますように、ミネソタ州ほか十州では裁判を起こしているわけです、原発反対、設置させないと。それから現実には温排水の問題やECCSの問題があって一年ぐらいはアメリカの原子力委員会では設置を許可しておらないという現実がある。こういうことと照らし合わしてみますと、日本はとにかくエネルギー源としての原子力発電を急がざるを得ないというふうな事情はわかるにしても、ちょっと性急過ぎるのではないだろうかという感じがするわけでございます。 そういう点で、これは何回も申し上げておりますから繰り返しませんけれども、アメリカでさえこれだけ大きく住民が関心を持ち、絶対反対という立場でなくて、とにかく五年間だけはストップをしておいて、その中でもっと研究体制を完備して安全対策を確立しろということは、これは人類が二十一世紀生きられるかどうかということと関連して考えると、無理からぬ要望ではないだろうかという感じがしてならないわけで、こういうことを踏まえた上で原子力の安全研究体制というものを十二分に早急に確立をするということを強くお願いをして、きょうの質問は一応これで終わりたいと思います。
○木野委員長代理 次に近江巳記夫君。
○近江委員 きょうの原子力委員会で原子力開発利用長期計画というものが一応きまる、そのあと次官会議あるいは閣議にかけて今後の長期計画というものがきまるということを聞いておるわけです。そこで、私はきのう委員会でマン・レムの考え方等聞いたんですが、ちょうど成田さんは外務のほうへ出ておられるということでおられなかったものですから、もう一つ私も納得をしなかった、そういうことで若干お聞きしたいと思うのです。 私がなぜこんなことを言うかというと、一つは東海村をはじめ敦賀等におきましても集中の問題ということが非常に出ておるわけです。そこできのう私がお聞きしたところは、半径五キロなら五キロ以内における被曝線量というものについて考えておる、それはわかるわけです。しかし、それと集中の問題とはまた別なんです。私がきのう申し上げたのは、このマン・レムという考え方は、いろいろな半径のとり方がありますが、円周五キロメートルにおける熱出力かける人口です。これによって集中の問題点というのは大きく浮かび上がってくる。こういうことは実際上科学技術庁として研究してないでしょう。私がきのう申し上げたのは、東海の原電三号炉を含みますと、いま申し上げた円周五キロメートルにおける熱出力かける人口、これでいきますと、原電三号炉を含んで1.3×10の8乗です。敦賀が5.5×10の5乗´、美浜が1.9×10の6乗´、福島が6×10の7乗´、高浜が2.5×10の6乗´、島根が1.5×10の7乗´浜岡が2.7×10の7乗´、玄海が1.2×10の7乗´、こういうことなんですね。これで見ますと、驚くことには東海の場合は五キロメートル以内の人口は約三万三千人に達しているんですね。他の国内原発周辺人口の約二倍から百倍になっている。平均七倍以上になっているんですよ。しかもその二、三キロメートル内に原研、動燃、東電の社宅団地があるわけです。妊婦、幼児の数は他地域以上に多いわけです。日立、水戸地区のベッドタウンとして急速に最近は人口がふえている。こういう中でこの三号炉の設置をしていく。ここで私は思うのですが、そういう原子力機関の建設の長期計画と、こういう考え方を基本としたこの都市計画をどのように関連させているんですか。きょう決定されようとする開発利用長期計画の中でもそういうことを検討していますか。
○成田政府委員 御指摘の点でございますが、マン・レムの考え方は安全審査の場合も十分検討しておりまして、事故時の場合、平常時の場合など十分検討して、そうして影響がないという考え方に基づいて個々の許可をしておるわけでございます。具体的には発電所の境界線においてどのくらいの放射能が出るかという計算をやりまして、これが御承知のようにICRPでは五百ミリレムが許容基準の限界になっておりますが、大体これの五十分の一ぐらいの値、あるいは最近はもっと低い五ミリレム以下のような計算で許可をしておりまして、これがいろいろな集中的な設置をされても、たとえば若狭湾における小浜でどのぐらいかという計算も非常に詳しくやって、そして心配ない、影響ないということで安全審査をやっているところでございます。 それから、きょう原子力委員会で発表になりますところの原子力長期計画、昭和六十年度六千万キロワットという、これは一応の見通しでございますが、この立地地点がどこに入るのかというのは具体的にきまっておらないので厳密にはやれないのでありますが、しかし、マクロ的にどういう環境放射能の影響を与えるかという点も担当の分科会で検討をやっておりまして、その点もマクロ的に問題ないという計算をしております。ただ御承知のように放射能の問題は、計算をやってそれが許容基準以下であるからいいという問題でなくて、なるたけ低いことが将来の問題としても当然必要なことでありまして、そのための努力を今後——おそらく今度の長期計画でも原子炉施設の安全性の確保と環境放射能対策、これを政策の方向として最重点に取り上げておりますので、今後大いに研究開発を重点的にやっていく方針は打ち出されております。 それから原電三号炉につきましては、現在申請があって安全審査をやっと始めた段階で、具体的に境界線で何レムになるかということはまだ審査段階でわかりませんが、そういう意味で日本の原子炉の審査基準は発電所の構内の境界線でほとんど影響のないようなところまで放射能を押えておりますので、これが非常に過度に集中した場合の——安全性の計算では問題ないと思います、ただ国民的な感情その他の問題もありますので、われわれは極力過度集中にならぬようにしたいと思っておりますが、安全性の問題としては十分検討して、マン・レムの考え方も挿入して検討してやっております。長期計画においても環境放射能対策は最重点として今後取り上げてまいる方針が打ち出されるはずになっております。
○近江委員 この年間五百ミリレムであるけれども、現実は五ミリレムになっておる。米国原子力委員会においても一九七一年の六月、軽水発電炉による公衆被曝限度を従来の百分の一、つまり年間五ミリレムに引き下げる提案を行なっておる。これは世界的なことですよ、日本だけやっておるのと違う。しかもこの東海村の、先ほど私が申し上げた三万三千人なんというのは世界一ですよ。世界のデータを見たって、五キロの範囲内にそんなにたくさん密集しているところがありますか。一人当たり五ミリレムだからいいという、それだけの単純な考え方では私は大きな問題だと思う。いま申し上げた熱出力かける人口というこの考え方からいって、それを押えるある程度の、これ以上はもうふやすわけにはいかないという考え方を当然導入すべきだと思うのです。どう考えていますか、私はそれを聞いてるのです。
○成田政府委員 原電三号炉につきましては、先ほど言いましたように、これから審査で、具体的に何レムになるかというのはまだ委員会としてははっきりつかんでおらないのでありますが、ただ境界線におきまして十分そういうマン・レム上の問題がないということがはっきりしまして初めて許可になる問題であります。したがいまして、周辺に非常に人口が集約することは決して望ましいことではないのでありますが、安全性の問題としては、境界線の中で放射能が問題ないように吸収されて、境界線外では心配ないという確信があって初めて許可されるということであります。ただ東海地区は地帯整備等もやっておりますように、周辺の人の国民感情的な問題とか、あるいは万が一、考えられないのでありますが、事故時の場合とかいろいろな問題も、災害防止計画等も立てまして県と一緒になって十分な検討をやっております。世界的にも例の少ないほどあそこは人口が近くにあるということも確かでありまして、今度の安全審査におきましては、周辺の人なり都市計画等との関係も十分考慮して安全上問題があるかないか、ないということになって初めて許可が出るという考え方でございます。
○近江委員 私が申し上げたこういう基本的な考え方に立って、それで都市計画と原子力機関が別計画でやっておるというところに問題があると思うんです。どこでも、各市においては市営住宅だとかいろいろなものを、用地がないというようなことで建てていく。これから環境問題を論ずるならば、当然そういう都市計画と、原子力をはじめいろいろ計画なさっていく点において、十分密着した考え方でいかなければ、こういう問題は幾らでも出てきますよ。それを私は言っておるんですよ。そういうことは今後十分取り入れますか。
○成田政府委員 東海地区の都市計画等につきましては、県がいろいろ計画を持って、そして県の処理に際してはこちらとも十分連絡をとって従来もやってまいっておるし、今後も県と十分連絡をとって調整をはかっていく方針でございます。
○石川委員 関連でちょっと質問したいと思うのですが、いま十分考慮をしてというふうな局長の答弁もあったのですけれども、考慮された結果というものは何も出てないのです。ということは、道路ができたとかなんとかという部分的にはございますよ。しかし、これは私かつて建設委員会で理事をやっておりましたときに、東海村の周辺整備ということについては法律をつくれ、法制化してもらいたい、こういう要望を強く出したのです。ところが、建設省のほうでは、これはちょっと科学技術庁の所管であってわれわれのほうではどうにも処理できないということがございました。それで今度は科学技術の委員会でその提案をいたしました。ところが、科学技術庁のほうでも、これは建設省の所管であって、われわれがかってにどうこうというわけにはいかぬということで、法制化しなければならぬということはだれもわかっておりながら、とうとう法制化されないままで今日に至っておるということでございますから、部分的にいかに十分考慮をしているといっても頭の中で考慮しているだけであって、法制的な裏づけも何もないというのが現実なんです。これは科学技術庁としても認めざるを得ないと思う。非常にむずかしい問題だということはよくわかっている。しかし、この中で私は周辺整備の問題もぜひ法制化をしなければならぬ義務が課されておると思うのです。 それからあと一つ。これは来年度に科学技術庁長官にも十分考えてもらいたいと思っておるのですけれども、エネルギー問題が相当うるさくなっております。どこでも反対運動が出ておる。これは無理からぬことである、当然であると私は思っておる。ところが、そうかといってエネルギー問題というのは無視できない重要な問題であることも、これまた否定できない。そこで環境整備ということについて政府は思い切った対策を立てなければならぬということを同時に、エネルギーの基地、私はCTSまで火力発電あるいは原子力発電というものに含んでいいと思うが、そこに建設をしたために地元負担が相当ふえてきているのです。ですから、そうい勢ものを誘致しても地元負担がどんどんふえてくる。周辺整備をするということになれば国の費用も相当出ますけれども、地元負担も多いのです。固定資産税が入るなんということではとても追っつかない、マイナスの部分が相当多い。そういうことで地方行政自治体としてはここから拒否したいという気持ちも徐々に芽ばえつつあるという現実も無視できないと思う。これに対しては、公益の立場で、国益の立場でやるんだということならば、それだけの負担、犠牲というものは、その地方に対して負担をさせておるわけですから、税制上の問題とか、還元金の問題とかあるいは負担金を持たせないという問題とか、いろいろな点を考慮をしながらこのエネルギーの促進を一面ではかり、一方では環境衛生というものを、それに対応するだけのきちっとしたものをつくり上げる、あるいは周辺整備を法制化するということがなければ、原子力発電というものは私は進捗しないと思うのです。そういう点で、これは要望として強く申し上げて——要望ばかりさっきから申し上げておるわけですけれども、来年度の立法だけはぜひやってもらいたい。これは自民党の人たちと私は内々で話は進めております。やろうじゃないか、やらなければだめだということになっておるわけです。そういう点を含んだ上で、科学技術庁、これに対して御意見があればあわせてひとつ伺いたい。
○木内国務大臣 いま各省間の連絡が非常に不十分だというお話でありました。あるいはそういう点もあるかと思うのです。これまではそういう点もあったかと思うのですが、今後におきましては、その連絡を口先だけでなく、自分の頭の中だけでなく、十分に連絡をとってまいるようにしたい、かように思っております。皆さん方のほうからひとつこの問題について特に御鞭撻をお願いいたしてまいりたいと思っております。 それから、いまお話にありました地域開発に伴う経費その他の問題、これはもちろんわれわれはたびたび繰り返して申し上げてきたのですけれども、今後においてもその開発地域は、ことばは熟さないかもしれぬが、二十一世紀を先取りするような地域になるような努力をしてまいりたい、私はいつもかように思っております。
○近江委員 その二十一世紀を先取りするために私も次に聞こうと思ったのが石川さん言ってくれたので、当然そういう心がまえだけじゃだめなんですね。やはりその基準になる法整備なりそういうことを、骨格をつくっていかなければ私は進むことはできないと思うのです。ですから、そういう二十一世紀という壮大なことをおっしゃっておるわけでありますから、現実にもっと近づけてもらって、その周辺の地域開発ということを含めた立法措置ということは、これは関係閣僚にはかっていただいて、ぜひともひとつ努力をしていただきたいと思うのです。努力していただけますか。
○木内国務大臣 いま申し上げた点は私のかねがねの主張でありますので、そういう点については努力をしていきたいと思いますし、また、立法権者であるところの皆さん方においてもひとつ格別の御協力、御支援をお願いしたいと思います。
○近江委員 前向きにおっしゃったわけでありますから、それはほんとうに真剣に考えていただきたいと思います。 それから、先ほど石川委員からもお話がありましたが、労組のそういうような問題につきましても、何といってもやはり原研の場合は日本の原子力研究機関として最も柱としての存在でもあるわけでありますから、そこはひとつ民主的な、それも努力なさっておると思いますけれども、さらに一そう努力をしていただきたい。これは要望だけで終わります。宗像さん、なんでしたらけっこうですから……。 それから本委員会におきましては、PCBの問題をはじめとしまして、いままでどんどん言ってきたわけです。ところが、また新たなそういう公等が続々と出ているわけですね。一つはPCB後の新汚染物質としてプラスチック添加のフタル酸エステル、これは溶けて生物に蓄積する。これはガムなどにも広く使用されておるわけですが、このフタル酸エステルの有毒性について政府は報告を受けておりますか、まずこれについてお聞きしたいと思います。
○千葉政府委員 ただいまの件につきましては、通産省、環境庁、厚生省あたりといま盛んに打ち合わせをしておるという段階でございます。
○近江委員 その打ち合わせばわかりますが、可塑剤の安全性について、この研究をどの程度やってきたのですか、きょうは関係各省みんな来られておりますから。
○小島説明員 フタル酸のエステルにつきましては、私ども厚生省におきましては、食品添加物としてジブチルフタレートを許可いたしております。それからまた食品の塩化ビニール樹脂の容器、包装につきましては、フタル酸のエステル類がやはり可塑剤として用いられますので、私どもとしてはこれらの毒性については従来その資料をいろいろ検討してきたところでございますが、昨日の新聞にも紹介されておりますように、このフタル酸のエステル類の急性毒性というのは非常に低い。それから慢性毒性についても種々の報告がございまして、慢性毒性についても、これは非常に弱い化合物であるということがそれぞれ実験の結果わかっておるわけでございます。ただ最近になりまして、いろいろな特殊な試験、たとえば輸血の際パイプに塩ビを使いました際に、こういったものが溶けて出て、血液障害を起こすとか、あるいは組織培養いたしまして、たとえば肝臓の中の酵素障害を起こすとか、そういうような非常に特殊な実験が行なわれておりますが、食品中に添加をいたしまして動物を飼いました試験では十分な安全性が確認されているといった化合物でございます。 それからまた催奇性の問題につきましても、すでにアメリカにおきまして三世代にわたります実験が行なわれておりまして、相当大量の投与でも次世代に対する影響はないということが確認されております。ただ新聞報道の中で催奇性があるという報告が最近あったということでございますが、これは昨年のアメリカにおきます学会の講演報告でございまして、印刷物がないということと、それから詳細の投与方法についての資料が私ども得られておりません。これにつきましては、その詳細の入手につとめておるわけでございますが、まだ印刷物としての発表がないという段階でございます。 私どもといたしましては、このフタル酸のエステル類の安全性につきましては、さらに種々資料を検討をさせていただきたいというふうに考えておる段階でございます。
○近江委員 慢性毒性なり急性毒性なりが弱いというので認めてきたというようなお話であったわけですが、こういう可塑剤が溶け出さないようなものと考えて行政指導なりそういうことの基準なりをお考えになってきたのかどうか、これについてひとつお聞きしたいと思います。
○小島説明員 私どもといたしましては、現在これらに対する規制としてやっておりますのは、たとえば食品の容器、包装の問題でございますが、塩化ビニール樹脂につきましては、私ども昨年からその規格を検討いたし、また業界には、その規格の完成前でありましても、自主的な規制を指導しておるわけでございますが、現在塩化ビニール業界が自主規制をやっております形といたしましては、油あるいはアルコール性、あるいは水性の食品につきましては、こういったプラスチック可塑剤としてのフタル酸エステルを使わないものを食品の容器、包装とするというような形をとっております。これはなぜかと申しますと、このフタル酸エステル類は油に溶けますので——いままでの試験でございますと、フタル酸エステルを五%ほど添加いたしました塩ビを使いますと、油の食品の中に大体百万分の三ぐらい溶けて入るということがわかっておりますが、そういった危険性がございますので、油とかアルコール性とか水性の食品には使用させない。そうしていわゆる固形の食品、お菓子とかあるいはくだものとかを入れますもの、こういうものですと溶けて出る心配がございませんので、そういうものに限るという形で実際には業界はやっておるわけでございますが、私どもといたしましは、今後塩ビの規格を告示いたしますときに、そういった点も十分加味いたしまして、こういったものが出てこないという形の指導をいたしたいというように考えております。 それからまた、現在食品添加物として許可しておりますのはガムでございますが、このガムにつきましては、実は戦後におきまして日本が経済的な困難のために、ガムの原料でございます天然の樹脂の輸入が非常に困難な時代に、酢酸ビニール樹脂を使いましてガムのベースをつくるということが日本で広く行なわれるようになったわけでございますが、その際にフタル酸エステルを可塑剤として使うということが行なわれたわけでございます。現在は天然の樹脂の輸入が非常に楽になりましたので、現在は天然の樹脂がほとんどベースとして使われておる。ただ一部風船ガムというようなものは酢酸ビニールをやはり使いますので、それらに一部使われておるというような状況でございますが、これらにつきましても、先生御指摘がございましたように、毒性等の問題をさらに十分検討いたしまして、規制すべき点は規制してまいりたいということで考えております。
○近江委員 非常に用途が広いわけですね。レインコート地とか食料品の包装用、チューインガム、ラッカー、接着剤、安全ガラス、セロハン、染料、あれだけPCBが問題になったわけですが、それにまさるとも劣らない、そういう広範囲のものに添加されておるわけです。きょうは通産省も来られておるわけですが、わが国の場合、年間これはどのくらいつくられ、どのくらい使用されているのですか。また、生産会社あるいは輸出入等についても説明を願いたいと思います。
○小幡説明員 フタル酸系の可塑剤の生産量といたしましては四十六年で約三十三万トンでございます。 それで、それがどういう用途に使われているかと申しますと、全体の八割以上が塩ビの可塑剤といたしまして、農業用ビニール、一般用フィルムシート、レザー、電線用フィルム、それから製品を製造いたします際の原料分であるコンパウンド、それから床材等に可塑剤として使われておるわけでございます。その他塩ビの可塑剤以外にも用途があると思いますが、それにつきましては私どもでは現在まで正確に把握しておりませんので、これは早急に調査をいたしたいというように考えております。 それからフタル酸系可塑剤のメーカーでございますが、これは、現在私どもで把握しておりますのは十九社、二十三工場でございます。 それから輸出入の点でございますが、これはただいま資料を手元に持っておりませんので、後日御報告をいたしたいと思います。
○近江委員 範囲が非常に広範になっておりますし、特にこういうチューインガム等の場合、先ほども課長さんからお話があったように、やはり油にも溶けるわけですし、人間の唾液の中に当然溶け込むことが考えられるわけですね。そうなってきますと、PCBの例からしても、特に抵抗性の少ない幼児のことでもありますし、やはりこういう直接心配されるものについては緊急に何らかの措置を考える必要があるのじゃないか、こういうことも私思うのです。 そういうことで、このフタル酸エステル類のそういう毒性等の研究も、科学技術庁大いに張り切ってもらって、研究費も出してもらわなければいけないし、早急にこれは研究に力を入れてもらわないと第二の、PCB以上の、使用量だけでもばく大なものですから、さらにそういう被害が拡大するのじゃないか、私はこう思うわけです。 そこで、このフタル酸エステル類の添加量の規制とかあるいは環境基準として、この前のPCBにおいては食品のそういう暫定基準等もきまったわけでありますが、そういうものを設定する必要性についてはどのようにお考えになっておられるのか、また、諸外国の例はどのようになっておるか、その辺のことについてひとつお聞きしたいと思うのです。
○小島説明員 先生いま御指摘の食品の問題につきましては、私どもといたしましても十分にその後の新しい研究等の入手につとめますとともに、私ども先生方にお約束をしてやっております食品添加物再点検という大方針がございますので、そういった線から最も新しい学問知識をもちまして毒性を再検討いたしまして、そしてその結果によって国民の安全を考えた措置をとってまいりたいと考えております。 また、私ども厚生省といたしましては、PCBの場合にも環境汚染からまいりますいろいろな食品についての基準というものを検討しておるわけでございますが、これらのフタル酸エステルにつきましても、毒性面の評価と並行いたしまして、そういった面を検討してまいりたいと存じております。 ただ、私きょうこの神奈川県立衛生短大の片瀬先生のところに御連絡をとったわけでございますが、片瀬先生の御意見では、先生のお書きになったものでも、まだ日本はアメリカなどに比べてはそれほどよごれていない状況なので、いま対策をスタートさせるということによってやっていけるのではないかというような御意見もございます。また昨日の新聞で、多摩川の水に三五〇PPMというようなことが書いてございましたが、これは片瀬先生の御意見では、多摩川の水は〇・〇二から〇・三五PPMである、この数字は間違っている、それから大牟田川の数字は〇・〇二PPMだ、こういうことでございまして、私どもとしてはこういった環境汚染の進行というものを先生の御意見のように大いに重視いたしまして、私ども厚生省としては食品全般の汚染というものが起こらないように、また実態も調査いたしまして早急に対策を立てていくようにいたしたいと考えております。
○近江委員 課長さんは主として食品担当の分野の立場からお述べになっておられると思うのですが、プラスチックにしましても生活の面で使われておりますし、非常にいま漁業の問題等におきましても海にも大量に放出されておりますし、もうあらゆる環境の中にこのプラスチックなどは環境を汚染しておる。当然添加のフタル酸エステルというのはその中にあるわけであります。米国の学者が分析しましたところ、人間の臓器から二五から二七〇PPMとか、血液からも五〇から七〇PPMとか、魚からも検出されておりますし、結局こういうことがわが国ではまだ本格的に取っ組んでいないからそういう数値がまだ具体的に出てきていない、こう私は思うのですよ。ですから本格的にそういう分析とかそういう試験をすれば、私は驚くべき数値が出てくると思うのです。こういう点の分析とか検出器具とか技術的な方法について、わが国の現状はどうなっておるのですか。これは千葉局長にひとつお聞きしたいと思うのです。
○千葉政府委員 いま御指摘のこの分析技術でございますが、これは先般商工委員会で吉田先生からも御質問がございまして、日本のこの分析技術が非常におくれている、したがって、こういったことで実際人間のからだに悪影響を及ぼすような毒性の物質が検出できないのじゃないか、そういうところが問題なんだという御指摘でございます。私のほうもさっそくいろいろ調べたのでございますが、こういった面の分析につきましては最近急速に研究が進んでおります。確かにいま御指摘のとおり、従来は非常に弱い点であったわけでございます。やはりこの環境問題が非常にシリアスな問題になってきておりますので、たとえばPCBの問題につきましても、ガスクロアナリシスの、もう御案内と思いますが、マススペクトロメーターを使ってくっつけまして、それで分析をすると、かつての性的な分析から量的な分析へいくというようなことで、非常にお金のかかる、一つのセットだけで三千万ぐらいかかるわけでございますが、そういったものもいま急速に整備をしつつあるわけでございます。 それで、実はいま御指摘のフタル酸エステルとか、それから昨今問題となっております光化学スモッグの実態の分析でございますとか、こういったものにつきまして、やはり御指摘のとおり分析が若干弱いということを私ども認めざるを得ないのは残念でございます。実は科学技術庁におきましては、たとえて言えば、光化学スモッグにつきましてはレーザー光線を使っての測定のしかたなどをすでに四十五年から特調費を使いまして促進をいたすなど、いろいろこういった面の分析の発展につきまして手は打ちつつあるわけでございます。こういったような状況でございます。
○近江委員 この急性毒性はPCBに比べて低いけれども、ある種の水棲生物が千三百倍に濃縮したという実験結果が報告されておるわけですね。ネズミの実験では肝臓に障害を起こしたり、奇形児が生まれたことから慢性毒性は決して低いのじゃない、こういうように思われておるわけです。汚染経路についてもまだ研究が進んでおらないような先ほどの答弁ですが、塩化ビニール管を水につけておくと、数%のフタル酸エステルが湧出する。そうすると、家庭や工場などで使ったプラスチックから溶け出て自然界を濃縮しながらめぐるということは、これはもう道理であります。先ほど小島課長さんは、油に溶けるけれども水はどうもというお話でしたけれども、水にも溶けるわけですね。現に塩ビ食品衛生協議会でも、通常の使い方なら心配ないと思うけれども、プラスチックから溶け出すことは避けられず、食品の包装などに多量に可塑剤の入ったプラスチックは使わない等の対策はできるだけとっておる、こういうようなことを言っておるわけですね。そうしますと、これはほんとうに最高の専門家である皆さん方のお話を聞いておっても、われわれとしては依然として不安がぬぐえない。そういう調査研究も進んでおらないし、分析方法も、あるいはそういう試験器具等においても完備しておらない、こういう五里霧中のような考えであれば、これはほんとうに国民は何を食っていっていいかわからない。PCBに次ぐまたこういうような問題が起きておる。これは政府の責任において、二千万かかろうが三千万かかろうが、そんなものはどんどん買えばいいのですよ。ばく大な国家予算をどこに使っておるかと私たちは言いたい。人の生命、健康等に一番関係のあることについては、別に何も予備費から持ってこようが、補正予算が出たってかまわぬですよ。早急にこういう問題について私は手を打つべきだ、このように思うのです。そういう点で、チューインガムとかそういうものは特に幼児が食べるのですよ、おとなも食べますけれども。そういう特に心配のあるものについては緊急な手を打たなければいかぬと思うのです。 そういうことで、可塑剤の安全性について全面的に再検討すべきじゃないかと思うのです。これについて長官、どのようにお考えですか。
○木内国務大臣 いま近江委員がたいへん大事な問題について御指摘になり、また御意見がありましたが、まことにごもっともでありまして、政府におきましては、関係各省において、その所管の問題についておのおのいま懸命の努力をしておるところでございます。 このフタル酸エステルにつきましても、早急に関係各省が集まって研究の方途について相談をしておるところでございますが、残念ながら今日まで資料が十分ありませんし、また、この汚染の経路あるいはメカニズムなどについても詳細な研究がまだ欠けておりますので、その方面にも力を入れてまいりたい、かように思っております。ことに食品関係のものにつきましては、厚生省のほうにおかれましても総点検をしておられるのでありまして、われわれのほうといたしましても、あらゆる機関を動員して御協力申し上げて、この問題がいまお話しのような御心配のないように解決してまいるようにひとつ努力したい、かように思っております。
○近江委員 いま長官は大きな立場から、非常に前向きの長官としての御所感であったと私は思うのです。 それで、小島課長さんにお聞きしたいと思うのですが、こういう問題について全面的に再検討すべきなんですが、急速にしなければならないこと、そして今後の問題としてやらなければならないことでいま具体的なことをお考えでしたら、何点かについてひとつ伺いたいと思います。
○小島説明員 私どものほうとしては、昨日の新聞記事によりますと、慢性毒性については必ずしも低くないというような記事でございまして、私どもとしてはこれらに関する最近の研究をすべて集めまして、食品衛生調査会においてその毒性の評価をあらためてしていただくということを早急にやる、それからまた、必要があれば国立衛生試験所等においてその実験を特殊な立場からさらにこまかくやってみるというようなことも必要ではないか、またその毒性の評価を調査会において行なった結果、使用量の制限あるいは禁止等が必要な場合にはそういうことに踏み切りたいというふうに考えておる次第でございますが、私どもとしては、従来いろいろな資料を検討いたしまして、相当安全ではないかというふうに考えておったわけでございますが、ただそういったものがガムからだけでなしに——ガムの場合には量的にもそれほど入ってまいりません、というのは、やはりかみましたものを捨ててしまいますから、食べる場合に比べて低いので、私どもとしては安全ではないかと考えていたわけでございますが、そういったものがさらに環境汚染等を通じ、食品を通じて入ることになりますと、やはり全体の摂取量という観点から考え直さなければいかぬということで、そういった面の検討も早急にやらしていただきたいと思っております。 それから、先ほど先生から御指摘のありましたように、これは油に一番溶けるわけでございますが、水にも溶けるという御指摘でございまして、こういった水とか油とかアルコール性の食品につきましては、塩ビの容器を使う場合にはこういった可塑剤を使わない、これは業界のほうもそういうことでやると申しておりますので、さらに徹底してまいりたいというふうに考えております。
○石川委員 関連して伺います。 これは小島さん、食品添加物では前から私、この委員会でもって話をしたことがありますから、あえてここであらたまって申し上げるまでもないと思います。それから食品衛生法の法案の審議が社労のほうでいま審議をされようとしておりますので、その場合にわれわれのほうから連合審査を申し入れて、その機会に食品添加物はあらためてひとつゆっくりと討議をしなければならぬ、こう思っております。 PCBのあと、また新しいフタル酸エステルの問題が出ましたけれども、これは九牛の一毛なんですよ。こんなものではないのです。まだまだ私の勘では、催奇性のもの、あるいは劇物性、毒物性のものはたくさん添加物として認められておる。それは慢性毒性の検査はどうなっているかというと、ほとんど行なわれておらないというのが実態だと思うのです。それはネズミでやっておりますよというふうな答弁があるでしょう。しかし、ネズミには一グラム飲まさなくてもころりといくものが、ネコに食わしたら、茶わん一ぱい食べさしたって何でもないというのがたくさんあるわけです。そういう意味での慢性毒性検査というものが行なわれておるとはとうてい思えない。それから外国で許可されておらない添加物が日本ではたくさん許可されておる。これらについては特に問題が多いというようなことを含めて、私は、二十一世紀に人類が生きられるかどうかということの最大の眼目は、大気汚染、それから水質汚濁ももちろんございますけれども、食品添加物が一番大きな原因になっているのではないかという危険を痛切に感じているのです。そういう点で、小島さんは非常に楽観的な御意見をいつも言われておるのでありますが、私はとても楽観的な気持ちにはならないのです。これはあとでゆっくりお話をいたしますけれども、この点は、今度フタル酸エステルというものが出てくるとまた新聞で大きく取り上げるでしょうが、これに類するもの、これ以上のものはたくさんあるわけですね。おそらく小島さんだって大体頭の中に描かれて、催奇性のものは十何通り、それから外国で認められておらないで日本だけで認められておって、しかも非常な毒性のあるものはこれこれ、名前をあげてここでは申し上げません、相当あるわけなんです。 そういうことで、いろいろなことを考え合わせますと、日本人の生命というものは一体どうなるのだという、極論すると農林省の食糧研究所の西丸さんのように、日本の人口はあと二十八年たてば、二十一世紀になれば四千万人を割るなんということは荒唐無稽ではないのじゃないかという気すらするのですが、そういう観点に立って、食品添加物を徹底的に洗い直さなければならない。これはたいへんな問題だと思う。小島さんは科学者として自信をお持ちになって、もう二百倍以上もの余裕を見ておるのだから絶対心配ないのだとおっしゃるけれども、私はそうは考えない。最近の病気の出方、新しい奇病なんかの続出、いろいろな点から考えて、これは大気汚染とか水質汚濁だけの問題じゃない。PCBだって、回ってくるのは、大気中から海へ落ちてプランクトンが食べて魚が食べて、それを日本人が食うという循環系列、しかもこれは、全部開放系に回ったとしても一万トンちょっと上回る程度じゃないかといわれている。食品添加物はそれどころじゃないです。われわれの単純な計算でいくと、四十一・六グラム毎日飲まされておるという数字が出てくる。これは計算のしかたはいろいろあります。いろいろありますけれども、そういうことになる。これを洗い直さないで自信満々とお答えになるという態度は実に私は言語道断だと思う。この点はあらためて別な機会に十分お話し合いをしたいと思いますけれども、それだけ申し上げておきます。
○小島説明員 先生にはあらためて御質問いただけると存じますので、その際にいろいろ御説明したいと思いますが、私は、先生が最後に言われた自信満々としていうことにつきましては多少異議があるわけでございまして、私といたしましては、添加物の行政をおあずかりしております以上、真剣にこの問題に取り組みまして、私は自由世界では一番きびしい規制をやっているというふうに信じておりますし、また、そうありたいというふうに考えてやっておる次第でございまして、その点につきましては、ひとつこの次の機会にまた先生に御説明申し上げますが、私どもが一生懸命やっているという点について、ぜひ御了解をいただきたいというふうに考えております。
○石川委員 関連ですからこれ以上申し上げません。申し上げませんが、きびしい規制をしているとおっしゃいますが、そういう事実を全然認めないわけじゃないのです。規制どおり行なわれているかどうかという点が問題なんです。一つはその問題です。一つは相乗効果がどうなっているかということはほとんど検討されておりません。それからあちこちでいろいろなものが重なり合った場合に、一体人間のからだにどのぐらい入っておるかというふうな検討も全然されてない。これは非常にむずかしい問題です。そういう全体の可能性を含めて、それに対応する基準というものがどうあるべきか、それをどう実施させるかということについて、私は厚生省が万全な対策をとっておるとはとうてい考えられない。そういう点で問題がございますけれども、きょうはこれでやめておきます。
○近江委員 それでは、この前にも本委員会で私は通産省の課長さんにも申し上げたのですが、今回のこの問題について通産省としてはどう対処しようとなさっていますか。
○小幡説明員 通産省といたしましては、まず、この問題につきましては、用途が一〇〇%把握されてないという現状でございますので、たとえ量はわずかでも、どういうところに使われているかということをこの際徹底的に調べたいということが第一点でございます。 それから次に、これがいろいろな製品を通じて環境を汚染するという点につきましての調査といいますか、通産省でできますことは、たとえばこのフタル酸系の可塑剤がどのような自然界での分解性を持つかというような点について、当省の研究所でそれの試験をさせたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
○近江委員 環境庁は、環境に溶け込んでいったこういうものについては、どのような調査研究、また対策をとられますか。
○木内国務大臣 これは、もちろん、いまもお話にありましたように、人間の健康に大きな害があるのでありますから、環境問題としても無視できない問題でありまするけれども、食品関係その他いろいろな用途に使われておる人工的の問題でありますので、おのおの所管の官庁においてその問題を研究していただく、こういうことにせざるを得ないと思うのであります。もちろん全体としても多大の関心を持っておりまするので、科学技術庁あるいは関係各省と十分に連絡してこの問題を究明し、かつ、それに対する適当な対策を講じてもらうようにいたしてまいりたい、こういうふうに思います。
○近江委員 それからまた、最近光化学の元凶としてアクロレインというのがあるわけですが、これが芳香族炭化水素を非常にまき散らしておるわけです。そこで今回、神奈川県の公害対策の事務局が、プロジェクトチーム、光化学スモッグ生成機構調査班というものをつくって、それで発表しているわけですが、ハイオクタンあるいはレギュラーのそういう中で、芳香族炭化水素、こういうものがどのぐらい入っておるかと調べたところが、レギュラーの場合で平均含有量が二二・〇%、最高三四・九%、最低でも一六・五%、ハイオクタンでは平均二八・五%、最高三七・五%、最低二二・七%も含まれておるというわけです。これは前に添加剤として鉛があったのが、そのかわりとしてこれは用いられたものでありますけれども、しかし、これも非常にいろいろ毒性というものが実験で裏づけされておるわけです。こういうような問題が出ておるのですが、これについて報告を受けておりますか。
○根岸説明員 お答え申し上げます。 私ども新聞紙上でアクロレインの問題を承知しておりますが、御承知のとおり、ガソリンの構成物質としまして、いま先生のおあげになりましたような芳香族あるいはオレフィン分、そういうようなものが昔から全部まじってガソリンというものを構成しているわけでございます。それで、これは四十五年、例の鉛の問題が出まして、鉛を全部四十九年四月に抜いてしまうというようなことで、しかし、自動車のエンジンそのものはそう変わるものでございませんから、やはりどうしてもオクタン価は維持しないと交通事故その他の問題が起きているというようなことから、鉛を抜いてもオクタン価は維持しなければならぬということになりますと、どうしても直留ガソリンだけではオクタン価は維持できませんので、いま御指摘のありました芳香族その他オレフィン、そういうようなものをまぜてオクタン価を高くしなければならない。要するに、いままで入っていた比率よりある程度高くしなければならぬというのが一般的傾向でございます。ただし、芳香族だけで見てまいりますと、これはかつてはやはりオクタン価を維持するために四〇%以上レギュラーでも入っておったわけでございますが、オレフィン分の比率をふやすということを努力してまいりまして、いまのところ全国平均では、これはちょっと古いデータでございますが、レギュラーで三三%というふうになっておりまして、神奈川県のデータにつきましては、いまお話がありましたように、全国平均から見ますと、多少低くなっておりまして、最近の趨勢としましては、鉛も抜くし、芳香族もなるべくふやさない。それから、その他のいろいろなくふうでオクタン価を維持するという方向で努力しておるわけでございまして、正確な全部の報告はまだ受けておらない状態でございます。
○近江委員 こういう問題について、その安全性についての研究対策というものについていままでどういう行政措置をやってきたのですか。 〔木野委員長代理退席、委員長着席〕
○根岸説明員 これは炭化水素そのものによります危害という問題につきましては、先ほど御指摘がありましたように、それが紫外線等によって分解され、あるいは燃焼の過程において分解合成された形で出てまいる状態が問題になっておるわけでございまして、当然これはエンジンのほうの問題がまず出てまいるわけでございます。それで、われわれとしましては、先ほど申し上げた鉛抜きの問題というのがございまして、これを鉛を抜いてまいりますと、バルブ・シート・リセッションという問題がありまして、これは気筒の上についておりますバルブが摩耗してエンジンがとまってしまうという現象があります。そういう問題もございますけれども、いずれにしても、それはエンジンの改造ということで鉛を抜いていかなければなりませんし、それから、先ほど申しました排気ガスとして出てまいりますそういう炭化水素につきましては、これはアフターバーナーという装置でとっていくということが必要なわけでございまして、それと同時に、エンジンが今後どういうふうに変わってまいるか、エンジンの変わる過程といいますか、そういう方向に合わせて、それに適した燃料をつくってまいらなければならぬというような相関関係がございまして、われわれとしましても、いま申しましたバルブ・シート・リセッション及び排気ガスの処理装置、それからそれに適当なガソリンの開発というようなことにつきまして、鋭意、業界とも協力しまして、現在研究しておるという状況でございます。
○近江委員 いままで結局、こういう点を考えていきますと、こういうことが人体にどういう影響を及ぼすか。確かに先ほどは、日光に当たっていろいろな現象を起こすというようなこともあったわけですけれども、そういうあらゆる心配な点をチェックして、その上でそういう使用等についても考えていく。そういう安全性についてのチェックというものが非常に私は放置されておったのじゃないか。鉛がないからこれはしようがないからこれでいけ、極端にいえばそういう態度じゃないかと思うのですね。そういう点で、あくまでも人間ということを忘れておる。すべてそういう基本的な考え方からこういう現象が出ておると思うのです。科学技術庁としては、こういう問題についてはどういうふうに反省して、どうあるべきだと考えておりますか。
○千葉政府委員 実は、この光化学スモッグの問題につきましては、すでに四十五年から総合的な研究を進めておるわけでございます。 その内容は、まず第一点が、自動車の排気ガスが一番の元凶であろう。そのほか、いろいろな石油の燃焼その他からこれが合成されて出てくるのではないかというようなことで、まず第一に、自動車の排気ガスの成分につきまして、排気ガスというものは一体どんな成分なんだろうか、これがどういったような状態で出てきて光化学スモッグになるかというような点のメカニズムを研究しようということが第一点。それから第二点が、この光化学スモッグの現象をさらに一段と解明しよう、しかもこれは実験室でこれを実際に実現できるかどうかというような点で、この点が第二点。第三点が、先ほどちょっと触れましたように、大気汚染の物質の測定につきまして、これが弱い。レーザーレーダーの開発によってこういったものを簡単に測定できやしないかというような点が第三点でございます。 こういった点を進めておりまして、実は、この第一点の自動車の排気ガスの成分に関する特別研究、これはいま申し上げた研究は、関係各省の研究機関にやっていただいているわけでございます。これは運輸省関係の研究所でやった結果でございますけれども、これが出てまいりました。これはきわめて非常に重要な研究結果が出てまいりました。自動車がハイスピードで走れば走るほどこの酸化窒素が出てくる。したがいまして、のろのろ走っていたんでは酸化窒素の量は少ない。つまり、都心の部分においてはわりに酸化炭素が多い。このNOXというものは、どっちかといいますとハイスピードで走るようなハイウェーの付近で出てくるのではないかというような結果が出てきております。そのほか、二、三重要な、鉛のとり方とか、さらに鉛のかわりに芳香族を入れた場合にはこのNOxがさらに急速にふえるというような、つまり、鉛を芳香族に変えた場合にはたいへんな勢いでこのNOxが出てくる、そういったような結果が出てきております。こういった結果をもとにして関係各省でさらにいろいろな対策をとられるように、その結果を関係各省には回しておりますし、それを公にしたわけでございます。 そのほか、二つのこの研究はまだ結果が出ておりませんが、この現象の解明、これにつきましては、どうもいい結果が出ておりません。つまり、実験室の中では、こういった光化学スモッグの現象がどうもはっきり出てこないというむずかしさが逆に判明してきておるわけでございます。したがいまして、いままでいろいろ研究したところでは、このメカニズムの詳細がわかっていない。したがいまして、このたびのアクロレインが原因じゃないかということ、つまり、低オキシダントのもとにおけるいろいろな今度の被害でございますが、こういったものはアクロレインじゃないかというようなことを言い出したのは、どうもまだ現象の解明ができておらぬということでございますので、実は環境庁ともどもこの現象のさらに解明を一段と促進しなくちゃならぬというように考えております。 それで、四十六年度からは、大気の複合汚染と申しますか、先ほど申し上げましたような排気ガスその他のこういう一緒に混合したような大気の汚染の防止に関する総合研究を、四十六年度から三年計画で進めることになっておりまして、これは環境庁のほうに移しかえしまして、四十七年度からは環境庁でこれを引き継ぐということに相なっております。こういったことで鋭意、その光化学スモッグの本質の解明にいま努力しているわけであります。
○近江委員 すべてこういう心配な現象面が次から次へ出ていって、そしてあとを追っかける、こういう姿はよくないと思うのですね。ですから、いつも大臣もおっしゃるように、二十一世紀を目ざすということであるならば、もっと先取りをしてもらって、先手を打ってもらいたいと思うのですね。なかなかむずかしい問題ではありますけれども、真剣になれば、いま気がつかないことであっても、手が打てるはずだと私は思うのですね。それをやっていただくのがやはり科学技術庁であり、また政府の姿勢じゃないかと私は思うのです。ですから、根本的なひとつ姿勢を改めてほしいと思うのです。 時間もありませんから、結論を急ぎますが、そこで、添加剤がいろいろな問題について一つの元凶をなしておるということは、大体これはみんなが一致するところであります。そういうところで、通産省としてもこういう問題については今後真剣に研究をやるのですか、環境庁も。
○小幡説明員 お答え申し上げます。 化学品の安全性の検討につきましては、この前この委員会の御決議もございます。それを踏まえまして、通産省といたしましては化学品一般についてその安全性を事前にチェックするという体制づくりをしたいということで、当省の付属の審議会でございます軽工業生産技術審議会に化学品の安全性のチェックをすることを検討するための部会を設けまして、この問題に対処していきたいというように考えて、現在準備を進めておる段階でございます。
○近江委員 これは関係各省聞いていけば同じようなことを言うと思いますけれども、やはりばらばらではだめなのですよ。ですから、科学技術庁は研究調整機関としてあるわけですから、もっと強力に各省に呼びかけもして、招集もして、もっと総合的なそういう研究、または対策をとってもらいたいと思うのですね。それがどうも、うちは調整機関だからということで、金は出すけれども、あまり力を——金を出せばもっと強いことを言えばいいのですよ。そういうことをもっと総合的に、これだけじゃなくして、もっと対策をとってもらいたいと思うのです。それについてひとつ千葉局長の御決意を伺いたいと思うのです。
○千葉政府委員 いま御指摘のとおり、従来は、どっちかというと金は出すけれどもものは言わぬ、それでいろいろな会議その他の取りまとめだけを行なうということだったのでございますが、最近のいろいろな情勢から、それだけではなかなか研究その他進みませんので、御指摘のとおりだと存じまして、先般御決議もちょうだいいたしまして、あのときに決意を披瀝したわけでございます。プロジェクトチームをはっきりつくりまして、それでその中に責任者をきめていただいて、それで私のほうも責任者をはっきりいたしまして、これを強力に推進していくというようなことをいま考えておるわけでございます。
○近江委員 時間がありませんから、これで終わりますが、最後に長官に、いま私一連の問題を申し上げたわけですが、局長さんも今後の考え方、いままでの姿勢を改めてやっていくということをおっしゃったわけですが、何といっても大黒柱である長官のそういう決意、また今後の実行ということが一番大事じゃないかと思います。特に長官は環境庁長官の代理もなさっておりますし、いまや長官の一身に大きな問題が集中しておるように思うわけです。そういう点で、長官の今後のそういう問題に対しての御決意を最後にお聞きして、終わりたいと思います。
○木内国務大臣 いまあらゆる場合にあらかじめ適当な対策を講ずるように努力しろという御意見、それに関連していろいろお話がございましたが、あらゆる場合にというのは、このごろ経済、社会の発展が非常に複雑であり、広範にわたっていき、また科学のほうも非常に進歩しますが、同時に、これは非常に広範かつ多岐にわたり、複雑になってきておりますので、すべてのものを予測してやっていくということは、非常に困難な問題でありますけれども、環境の汚染あるいは人間の健康被害というような問題がいろいろ出てまいっておりますので、ひとつそういう問題等は、今後は関係各省と一致協力しまして積極的にその打開に努力してまいりたい、かように考えております。
○近江委員 以上で終わります。 ————◇—————
○渡部委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についておはかりいたします。 対ガン科学に関する問題調査のため、参考人を招致し、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○渡部委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。 なお、参考人の人選、出頭の日時等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○渡部委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。 午後零時三十七分散会