法務委員会 第3号
- 発言数
- 37 件
- 登壇者
- 5 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1971/12/16
会議録
○委員長(阿部憲一君) ただいまから法務委員会を開会いたします。 まず、委員の異動について報告いたします。 去る十一月十六日、中村禎二君が委員を辞任され、その補欠として平泉渉君が選任されました。また、昨十五日、野坂参三君が委員を辞任され、その補欠として塚田大願君が選任され、本日、松下正寿君が委員を辞任され、その補欠として栗林卓司君が選任されました。 —————————————
○委員長(阿部憲一君) 裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案を便宜一括して議題といたします。 まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。前尾法務大臣。
○国務大臣(前尾繁三郎君) 裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案について、その趣旨を便宜一括して説明いたします。 政府は、人事院勧告の趣旨にかんがみ、一般の政府職員の給与を改善する必要を認め、今国会に一般職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律案及び特別職の職員の給与に関する法律及び沖繩復帰のための準備委員会への日本国政府代表に関する臨時措置法の一部を改正する法律案を提出いたしましたことは、御承知のとおりであります。そこで、裁判官及び検察官につきましても、一般の政府職員の例に準じて、その給与を改善する措置を講ずるため、との両法律案を提出した次第でありまして、改正の内容は次のとおりであります。 第一に、最高裁判所長官、最高裁判所判事及び高等裁判所長官の報酬並びに検事総長、次長検事及び検事長の俸給は、従来、特別職の職員の給与に関する法律の適用を受ける内閣総理大臣その他の特別職の職員の俸給に準じて定められておりますところ、今回、そのうち、内閣総理大臣及び国務大臣等を除く特別職の職員についてその俸給を増額することといたしておりますので、これに準じて、高等裁判所長官の報酬並びに次長検事及び検事長の俸給を増額することとしております。 第二に、判事、判事補及び簡易裁判所判事の報酬並びに検事及び副検事の俸給につきましては、おおむねその額においてこれに対応する一般職の職員の給与に関する法律の適用を受ける職員の俸給の増額に準じて、いずれもこれを増額することといたしております。 これらの改正は、一般の政府職員の場合と同様、昭和四十六年五月一日にさかのぼって適用することとしております。 以上が、裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案の趣旨であります。 はなはだかってなことを申し上げまして恐縮でありますが、事情御賢察の上すみやかに御審議、御可決くださいますよう心からお願い申し上げます。
○委員長(阿部憲一君) 以上で説明は終了いたしました。 これより質疑に入ります。両案に対し質疑のある方は順次御発言を願います。
○佐々木静子君 いまの御提案の裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案の御提案に対しまして、実は私のほうといたしましても、この報酬並びに俸給を改定する、まあ給料を上げるということに対しましては、原則としては賛成でございますが、そのことに関連いたしまして若干お尋ねさしていただきたいと思います。 まず、この裁判官の給与を改定して報酬を上げるということでございますが、一般行政官の給与が上がるから、これに準じて裁判官の報酬も上がる。そういうふうな理由で上がるということであるとすれば、これはいささかおかしいのではないか。検察官の場合は、検察官は御承知のとおり、行政官でおられますから、それはけっこうといたしまして、裁判官の場合は、行政とは全く別個の司法官であり、司法官という独立の立場に立っておられるわけで、予算も全く別の裁判所予算の中でまかなわれるわけでございますから、この点、裁判官という独立の立場で報酬改定を行なうべきではないかと考えますので、その点について最高裁当局は、どのように考えていらっしゃるのか、御意見を伺いたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 裁判官は、一般の政府の職員と違うものであることは当然でございまして、裁判官の報酬は、その職務と責任にふさわしく相定められなければいけないものであると私どもは考えております。しかし、裁判官の報酬の中にも、一般の賃金事情、それから生計費の事情といったようなものによりまして、これを増額しなければいけないといったような面もあるわけでございます。先ほど大臣が、提案理由説明でもお述べになりましたが、今回の改定といったようなものは、そういった一般的な賃金事情の変更といったようなものを前提にして勧告がなされたというふうに承っておりますので、その関係におきましては、やはり裁判官も同様の趣旨でもって、新しい改定が加えられるべきではないか、このように考えておるわけでございます。
○佐々木静子君 これはいまの御答弁で、むろん裁判官は独立しているが、一般の給与事情というものを考えなければならないということ、ごもっともだと思うんでございますが、憲法七十九条の第六項に、これは最高裁判所の裁判官は、在任中相当額の報酬を受けるということを、わざわざ憲法で規定してございます。また、憲法の第八十条の二項には、「下級裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。」というふうに、わざわざこれも報酬についての規定が、法律ではなくて、憲法に定められております。これはほかの職業、たとえば行政官その他につきましては、憲法上こういう定めがないわけでございまして、わざわざ憲法でこういうことをうたっているのは、いかにいまの憲法が裁判官の独立、その地位の保全ということに重点を置いてつくられたかということがわかるわけでございます。そういう意味におきまして、裁判官の待遇ということにつきまして、これは最高裁当局といたしましても、特別の御配慮を払っておられるということはわかるわけでございます。 が、私これは参考までに申し上げたいと思うんでございますが、これはイギリスのチャーチル首相が、かつてイギリスの国会で、司法権の独立は大切だということで、司法部が行政部から完全に独立する、これはわが国と——イギリスのことですが、イギリスの生活における多くの事柄の基礎をなすものである、この原則は、程度の差こそあれ、自由世界の中で広く模倣されてきた。チャーチル首相が演説しているこれは有名な演説の一部であります。そしてこれ外国の例をあげますと、これはちょっといまよりさかのぼる資料なんでございますが、比較においてこれはわかると思うんでございますが、たとえばイギリスの大法官、これは日本の最高裁の長官に該当すると思うんでございますが、イギリスの大法官が年収一万二千ポンド、これはちょっと十年ほど前の資料でございます。それから上告常任判事、これは最高裁の判事に該当すると思うんでございますが、日本の場合。九千二百ポンドという待遇を受けております。これはイギリス首相が一万ポンドであるわけです。首相が一万ポンドで、大法官が一万二千ポンド、それからイギリスの閣僚は、そのときに五千ポンドなんです。それに対して最高裁判事は九千二百ポンドという待遇を受けているわけでございまして、そういうことなどももちろん最高裁では、いろいろと御検討のことだろうと思いますが、そういう点につきまして、裁判官の身分保障に関連いたしまして、人事当局といたしましてはどういうふうに格段の御努力をなさっていらっしゃるか、もう少し具体的に述べていただきたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 裁判官というものの重要性ということにつきまして、格別の御認識をいただいておるということで、私ども非常に心強くありがたく思っておるわけでございますが、いま佐々木委員がおっしゃいましたように、裁判官の待遇というものは、司法制度というものと切り離し得ない深い関連をもっておるものでございます。裁判官の身分保障等とともに、その待遇が適正であるということが、司法の独立上欠かし得ざるものであることは仰せのとおりでございます。私どもといたしましても、その点に関します限りは、夢寐の間も念頭から去らなかった問題でございまして、抽象的に申し上げれば、これまでの私どもの事務当局の努力というものも、裁判官の待遇というものをそのふさわしいものに維持する、向上させるということの一点に向けられてきたといっても過言ではないわけでございます。 しかし、実際の問題といたしますと、いま御指摘がございましたイギリスにおける大法官が、総理——首相以上の待遇を受けておるということは、そのとおりではございますが、御承知のように、イギリスの大法官はいわば日本で申しますと、参議院の議長といったものも兼ねておられる。むしろ参議院の議長が大法官をなさっておるといったような事情もあるわけでございまして、イギリスにはイギリスのまあ長い歴史と伝統があるということであるわけでございます。で、私ども決して裁判官が、日本の総理あるいは国務大臣、そういった方々以上であってはいけないというふうに考えているわけではもちろんございませんけれども、日本のこの国民的な感情その他から考えまして、現在のところ、最高裁判長官は、総理と同額、衆参議長と同額、最高裁の裁判官は国務大臣と同額というような考えでまいってきておるわけでございまして、私どもは、日本の裁判官の実際の姿が、いわばキャリア的に運用されておるといったような点等も勘案いたしまして、そのようなイギリスあるいはアメリカとの違いというものも十分にこれを見つめながら、その違いの範囲内におきまして、あとう限りの高い待遇ということを考えて努力してまいってきたわけでございます。 具体的に申し述べますと、現在でも裁判官の待遇というものは、これを平均いたしました場合には、一般の行政官あるいはまあそういった方々に比べて、数割高いところの報酬制度というものを維持し得ておるわけでございます。これもまあひとえに関係の方々の不断の御声援と努力、御理解とによるものであると深く感謝いたしておるわけでございます。イギリスのそういった制度あるいはアメリカにおきます裁判官の制度、そういったものの長所を取り入れるとともに、しかしまたイギリスやアメリカと違って、日本はずっと若い判事補から判事になって、しかも判事になって四十年近く続けて裁判官をしていくという現実の姿、そういったものもとらえまして、全体としてこれをながめて、水準の維持ということに努力してきておるというのが実情であるわけでございます。
○佐々木静子君 いま最高裁の当局のほうから詳しい御説明をいただき、いろいろ国情の差はございますが、裁判官の身分保障に関連して、その相当な待遇を保障しなければならないということで、鋭意御努力中であるということをよく承知いたしたわけでございますけれども、これは実は歴史的にさかのぼってみますと、終戦後、日本のこの新しい憲法ができ、そして新しい裁判所法が発足いたしました直後におきまして、裁判官の待遇は、行政官のそれよりもはるかに上回っておったわけでございます。これは一九四八年七月の資料でございますが、行政職員の最高俸は、十四級の六号俸であったところ、判事の五号俸は、これと同額だったわけでございます。すなわち行政職員の最高俸と同額であったわけでございます。ところが、わずか五カ月後に、一九四八年の十二月に、政府職員に対して新たに十五級俸が認められ、その一号から四号までの額が、判事四号から一号までに相対して同額ときめられた。それで判事五号俸と同額であった各省の事務次官クラスが四段飛びに一足飛びに昇格して、それから四年後の一九五二年の十二月には管理職手当、これは二五%ほどが政府職員に対して設けられた。それによってまた大きく開きがつくようになったというような、こういうふうな歴史的な過程がございまして、だんだんと事実上、行政優位の姿に変わっていった。報酬の面においても行政官に上回られるというような結果になったというような歴史的事実がございます。そしてこの各省の事務次官の経歴を調べてみますと、大体大学卒業後二十四年から二十八年という人たちによって大部分が占められているわけでございます。もちろん、法務省だけは事務次官は非常に御年輩の方が多うございまするので、法務省は別でございます。ほかの官庁は大体大学卒後二十四年ないし二十八年ぐらいの人たちによって占められている。 ところが、裁判官の場合は、これと大体同額の東京高等裁判所長官になるには、大学卒業後三十年でなられた人はまずないというのが現状でございまして、各省の事務次官に相当する経歴、年輩の人は、大阪とか東京とか、その他大きな裁判所には、まあ失礼だが、ごろごろしているという状態でございます。そういう意味におきまして、実質的には、各省の次官とか、局長とかいうような方が、非常に給与の面では優位に立っているというのが現実でございます。最初はそうではなかったのがだんだんと行政優位に変わっていったわけでございまして、そういう点につきましては、これは最高裁の予算は別でございますが、事実上一緒に提案していただいております法務大臣は、この点について裁判官の身分保障のためにどのような御努力をなさっていらっしゃるか、また、なさっていただけるか、その点について御意見を承りたいと思います。
○国務大臣(前尾繁三郎君) 先ほど来いろいろお話を聞いておりまして、私も十分その点については努力をしてまいる覚悟でありますし、率直に申しましていろいろないきさつはありましたが、最近において裁判官の報酬はかなり引き上げられたというふうな事情になっておるのではなやかと思います。しかし今後におきまして——今回は先ほどの理由でありまするが、これは人事院の勧告に従って相対的に上げていくと、こういうことでありまするから、今回の点につきましては、特別の努力をしたというわけではありませんけれども、今後においてあらゆる機会をとらえて十分御趣旨をいかしていくと、こういう考えでおります。
○佐々木静子君 これはどなたに伺ったらいいのか、この御提案になっているやはり法務大臣にお伺いすることになると思いますが、法務省の「昭和四六年・第六七回国会提出」としました資料の、これは添付の表でございますが、ページ三五ないし六のこの表に載っておりますたとえば、第四十七回のところでございますね。ちょうど中央部あたりに、「次長検事その他の検事長」の下が「政務次官」となっております。この政務次官と事務次官の給与は違いがあるのかどうか。ちょっと私その点よくわかりませんので、政務次官と事務次官の給与が同じなのかどうか、ちょっと御回答願いたいと思うのでございますが……。
○政府委員(貞家克巳君) 事務次官の格づけにつきましては、若干時代によって変遷がございますが、最近の格づけにおきまして比較をいたしますと——政務次官のほうはここでごらんいただますように、東京高裁長官以外の高裁長官、それから東京高等検察庁の検事長と同格でございます。その他、検査官、人事官、議員の歳費と、そういうものがこれと同じになっているのでございます。それに対しまして、事務次官のほうは判事、検事一号と現在は同格でございまして、これに類するものといたしましては、国家公安委員会の委員、公正取引委員会委員、式部長官あるいは会計検査院の事務総長あるいは人事院の事務総長、そういったものと現在は同じになっております。
○佐々木静子君 いまのお話承ってよくわかったんでございます。この判事一号俸をもらっている、あるいは検事一号俸の待遇を受けている者、これは行政官庁におけるそれと同じく、現在の制度では、もとの高等文官試験の合格者で、そのうち、まず相当に経歴のりっぱな、業績をあげた方々がその職についていられると思うんでございますが、そこら辺が大学卒業後の年数などに比較して、ひとつ均衡がとれますように、おそらくこの判事一号俸を受けている人は、その定年の六十五歳に近い方が多い、あるいは検事一号俸の場合は、六十三歳の定年に近い方が多い。事務次官の方のほうが、非常に年齢的にも若いことが多いと思いますので、むろん年功序列制度ばかりがいいというわけじゃございませんが、そのこともひとつ均衡がとれますように、今後最高裁当局及び法務大臣にいろいろと御尽力を賜わりたいと思うわけなんでございます。 それから、これはいままで理屈の上で、裁判官の待遇をよくしなければならないということを、強調さしていただいたわけなんでございますが、これは実際問題といたしましても、先日来もう十分に皆さま方御承知のとおり、司法修習を終えた人の中から近時、裁判官あるいは検察官を志望する者の数が少なくて、弁護士志望の数が非常にふえてきている。そういう状態でございますが、やはり日本の司法制度というものをりっぱにしていくためには、在野法曹に人材を得るということもむろん大切なことではございますが、それと同じように、あるいはそれ以上に裁判官にりっぱな方を得て、あるいは検察官にりっぱな人を得るということが何より大切だと思います。そういう意味におきまして、最高裁当局あるいは法務当局におかれまして——いろいろといままでは、ちょっと裁判官のうちで一番ピラミッドの頂点の方のことを申し上げたんでございますが、まあ第一線にある、いわば裁判官として一番最初の、第一歩を踏み出した裁判官の待遇について、最高裁当局はどのような御配慮をいただいているか、それをお聞かせいただきたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 裁判官に優秀な人材を得たいということはかねてから念願いたしておるところでございます。御承知のように、必ずしも意に満たない点もございました。実は、本年の四月から裁判官の中の判事補のうち、大体任官をいたしまして数年の間という者につきまして、いわゆる初任給の調整ということを認めていただきました。ここにございます俸給の本俸のほかに、二万三千円から三千円までの間の上積みをしていただくというふうな措置をとったわけでございます。
○佐々木静子君 いま非常にこの裁判官に対して御配慮を、努力くださっているということはわかりましたが、その二万円ないし三千円でございますが、その上積みというのは、本俸がそれほどふえたわけでございますか。その点をちょっと伺いたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 本俸はそのままにいたしまして、いわゆる初任給調整手当という形で二万三千円から二、三千円刻みで三千円まで、二万三千円から三千円の間の調整を行なうということでございます。
○佐々木静子君 これはいろいろ最高裁として御努力なさったのだと思いますけれども、手当というのは、やはりこれは不安定なものでございますので、これは何とか、一ぺんにはいかないにしても、鋭意御努力いただきまして、何とか本俸の中に組み込まれるように今後とも御配慮なさっていただきたいと思うわけでございます。 それからこの表で見ましても、簡易裁判所の判事、これはもう一号から順次ございますが、これが高等裁判所あるいは地方裁判所の判事のそれと比べまして、額がかなり劣っているように思うわけでございます。ところが、簡易裁判所の判事の中にも、正式な法曹資格を持った裁判官がかなりにおられると思うのでございますが、その法曹資格のある裁判官に対する最高額ですね、そこら辺について、今回はまあこれといたしまして、今後どのような方針を考えていらっしゃるか。特に最高額を増額するというふうなことについて御検討になっているか。その点もお聞かせいただきたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 実は、簡易裁判所判事の報酬の最高額につきましては、数年前でございますが、臨時司法制度調査会というのがございまして、そこで国会に議席をお持ちの先生方にもお加わりいただきまして、十分にその点を御検討いただいたわけでございますが、その結果といたしまして、やはり簡易裁判所判事の報酬をもう少し上げるべきである、新しい上に号俸を上積みすべきであるという御意見をいただきまして、それに基づきまして一号上につけ加えたという経緯がございます。で、簡易裁判所の仕事もまた重要な仕事でございますし、有資格の裁判官がここで御活躍いただいていることは御指摘のとおりでございますので、今後ともこれらの面につきましても十分に検討をいたしていきたいと考えております。
○佐々木静子君 それから、これは裁判所と検察庁、両方に関係することでございますが、戦後の法曹体系といたしまして、法曹一元ということが叫ばれているわけでございます。法曹一元ということの実際の最も理想としている趣旨は、裁判官はすべて、弁護士あるいは検察官などの法律実務家、主として弁護士の経験十年以上の者から採用しようではないかという、これはアメリ方法にちなんだ方針が打ち出されているわけでございますが、一ぺんにそこまでいかないといたしましても、これは裁判官、検察官、弁護士がおのおのそのいままでの職域を通じての経験を生かして、お互いに交流し合って、法曹の向上のためにつとめようではないかということは、これは最高裁も法務省も弁護士会もお互いに一致した意見としていままで実現してきたところでございます。が、現実の問題といたしまして——弁護士から裁判官になるあるいは検察官になる、これは弁護士のうちで最も優秀な人に裁判官、あるいは検察官になってもらって、そしてお互いのいままでのよい経験を交流し合う、その分野で生かしていくというのが理想的な姿でございますが、現実の問題として、この裁判官あるいは検察官の待遇というものが、これは弁護士の報酬とこれが大体同じレベルに達しないと、実際問題として法曹の一元というものは、これは金銭上の問題ばかりで解決するものではございませんが、なかなか実現しにくい。そういう点につきまして、最高裁当局あるいは法務大臣におかれて、またそういう面でもいろいろ待遇の向上ということに御努力なさっているかどうか、それも重ねて承りたいと思うわけでございます。
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) その点も御指摘のとおりでございまして、優秀な弁護士経験のおありの方に、できるだけ多くの方に裁判官になっていただきたいと私どもも日ごろから考えておるところでございます。それとの関連ということになりますと、実は先ほど御説明申し上げました初任給調整手当にいたしましても、これは修習を終わって弁護士として事務所に入られる方の収入といったものとの関係において、そのいわば差額分を初任給調整手当の形で支給するというふうな考え方から、この手当の新設ということに関係方面の御了解を得たわけでございます。私ども基本的にはそういう考えは常に持っておるわけでございまして、できるだけそれに合わせていきたいというふうに考えております。
○国務大臣(前尾繁三郎君) ただいまお話の法曹一元化、これはもう全く理想であり、われわれもできるだけ進めたいと思っておりますが、実際問題として、裁判官にしましても、現在では最高裁にはお入りになる希望の方はありますが、それ以外ではなかなか入られない。いわんや検事になろうという方は非常に少ないということで苦慮しておるのでありまして、もちろん報酬の関係もありますが、年齢の関係、いろんなことがありまして、われわれが理想に考えているところへなかなかいかないというのが実情であります。しかし、われわれとしては常にそれを心がけ、希望しておることについては間違いないのでありまして、機会のあるごとにわれわれもそれに努力していきたいということは心がけております。ただいま申し上げましたような実情であることは間違いないと思います。
○佐々木静子君 それから、いま法務大臣のお話にございましたように、弁護士から最高裁の判事になる、そういうことはいままでの慣習上からもございますし、つい最近も弁護士から最高裁判事にお入りになった方があるわけでございますが、特に最高裁裁判官になるといえば、弁護士会の最も優秀な方に最高裁の裁判官になっていただきたいわけなんでございますが、現実の問題として一番の隘路になっておるのが、ずっと裁判官をされている、あるいはずっと国家公務員をされておった方が最高裁の判事になられた場合、これは七十歳の定年でおやめになった場合に相当額の退職金が入り、かつ恩給もいただけるわけでございますが、弁護士から最高裁の判事になるといえば、勢い相当年齢のいった方が事実上最高裁に入られる。そのときに、何年間かたって七十歳になって定年になってやめた場合に、退職金が在職期間が短いから少ない、あるいは恩給がいただけないというようなことで、相当な財産的な経済的な理由から、それじゃそんなことやらずにせっかく何十年やってきた弁護士をやっていたほうが老後のために安心だということのために、そこの踏み切りがつきにくいという状態でありますので、弁護士から裁判官になった方に対する特別な共済年金と申しますか、こういうことも法務省、あるいは最高裁の管轄になりますか、御配慮いただいているか、前向きの姿勢で御検討いただいているかどうか、そこのところをお聞かせいただきたいと思います。
○政府委員(貞家克巳君) ただいま佐々木先生御指摘の点は、実は先般の昭和三十九年の臨時司法制度調査会でも非常に問題になったところでございます。これは法曹一元の基盤を醸成し、あるいは人事交流を盛んにするためにぜひとも必要ではないかという御意見が非常に強かったわけでございます。 そこで、私どもその後検討を進めまして、昭和四十一年に最高裁判所裁判官退職手当特例法というものを御提案して、これが制定されたのでございます。昭和四十一年の四月十八日からこの法律が施行されることになったのでございますから、その趣旨は、最高裁判所の裁判官の退職後の処遇につきましては、その地位、職責は非常に重要であるということがまず第一でございますし、また、現にそのうち数人は弁護士の経歴だけを持っている方が任命されているという任用の実情も考慮したわけでございまして、この法律によりまして、最高裁判所の裁判官におなりになる方につきましては、よほど事態が改善されたのではないかというふうに考えているわけでございます。つまり、この法律によりますと、最高裁判所裁判官としての在職期間は、全く他と切り離しまして、それだけの在職期間をとらえまして、非常に高い支給率、つまり最高裁判所の裁判官としての勤続期間一年につきまして報酬月額の六・五カ月分という計算になっているわけでございます。これは一般の公務員につきましては、一年について報酬月額の一カ月あるいは一・二カ月とか、そういうことになっておりますのに比べますと、非常に高い支給率になっているわけでございます。したがって、最高裁判所の裁判官としてふさわしい退職後の処遇という点につきましては、ある程度事態が改善されたのではないかというふうに考えているわけでございます。 なお、共済年金ということになりますと、これは御承知のとおり、実は共済年金制度自体が保険数理に基づく制度でございます。したがいまして、任官経歴をどうこれに反映させるかということにつきましては、いろいろ制度の根本について検討いたさなければならない点が多うございまして、さしあたりまして、現在のところでは、この最高裁判所の裁判官の退職後の処遇を改善したというところでございます。 なお、その他の問題につきましても、引き続き今後十分検討を続けたいと存じております。
○佐々木静子君 非常に前向きの姿勢で取り組んでいただいておるということを伺いまして、たいへん心強く思いました。 それから待遇問題に関連しまして、やはり最高裁判所の司法研修所において、研修所の教官が、裁判教官あるいは検察教官と比べて、弁護教官の待遇が非常に悪いということを聞いております。そのために、民事裁判、あるいは刑事裁判、あるいは検察教官はその修習生の指導に専念できるが、弁護教官の場合は、待遇が非常に悪いために、弁護士の仕事をしてその余暇に修習生の指導をやらなければならない。そういう意味におきまして、弁護修習がどうしても弱体になるということが現実なように承っておりますので、そこら辺について、弁護教官についての待遇をひとつ最高裁のほうで特に御配慮いただけるかどうか、まずその点についてちょっと伺いたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 弁護教官には日ごろから非常に犠牲を払っていただいておるというのが現状でございます。御指摘のとおりであります。ただ、隘路と申しますのは、実は正式に教官として公務員におなりいただきますれば、少ないながらも報酬は、裁判官の報酬に相当する報酬というものを差し上げることができるわけでございます。そうなりますと、弁護士をおやめいただかなければならないということになりまして、これも実はジレンマでありまして、そういうことになるならば、せっかくいい方でも行かない、事務所をあけるわけにはいかないというふうなことであります。現在のところ、いわゆる非常勤の講師と申しますか、そういう形でおいでいただいておる。そうすると、それには予算的な一般的な限度がございまして、とても御満足のいただけるような報酬を差し上げるということが非常にできにくい現状であるわけでございます。しかし御指摘の点はまことにごもっともでございます。今後ともできるだけ少ないながらも多い金額を差し上げることのできるように努力をいたしたいと思います。
○佐々木静子君 どうぞひとつその点も、修習制度をよくするためにも、前向きで取り組んでいただきたいと思うわけでございます。そして、いま裁判官の身分保障ということで、相当額の報酬を保障するということが、これ身分保障の中でもまた不可欠のものであるということを、私強調さしていただいたわけでございますが、それと同時に、一言つけ加えさしていただきたいことは、実は、との間も、近畿地方で、裁判官の人たち、有志の人たちがかなりな数、非公式に集まったわけでございます。そして、その際に、裁判官の身分ということについて、自分たちがいま何を一番不安に思っているかということが、そのことが当然話題にあがったわけでございますが、これはみなが口をそろえて十年後、再任の時期に達した場合に、自分が良心に従って——憲法と良心に従って裁判をやっていた場合に、再任を拒否されるという問題が、自分の前に待ち受けているのではないかと、そういうことが非常に不安だということを、そこに集まった裁判官、これは百人に満たなかったのでございますが、何十人という数でございますが、異口同音に言ったわけでございます。そして、もし自分が、何年か後の、十年の切れ目に、再任を拒否されるならば、そのときになってあわてて弁護士になると言っても、これはいままでずっと弁護士をやっていた人間と比べると、そのとき非常に劣位に立たなければならない。そういうことに対する不安と嘆きというもの、そういうものが非常に深刻に裁判官の上に姿を投げかげているわけでございます。 そして、その裁判官のうちで優劣をつけるということは、穏当を欠く言い方なんですけれども、ここで特に同期のうちで、非常に優秀だと言われている裁判官の方々が、期せずしてそのことを一番痛切に感じておられるわけでございます、もっともだと思います。自分がずっとまあ同期のうちでも先頭に立ってやってきたところが、今度は地位を失ったならば、弁護士一年生からやり直さなければならない。そういう不安に立たされているということは、耐えられないということなんでございます。そういう意味におきまして、今度三月が十四期の再任の時期になっております。 この報酬の問題とあわせまして、裁判官の再任拒否、この間の宮本裁判官になされたような、こういう暴挙は、だれが見ても不穏当である。今度はなさらないということを、この際人事局長に約束していただきたいと思うのでございます。その点について人事局長の御回答を求めます。
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 裁判官が安んじて仕事ができるための身分保障ということは、不可欠のものであることも私どもは十分に承知をいたしております。ただ、裁判官のこの身分保障というものは、戦前の裁判所構成法当時と異なりまして、やはり任期を十年とするというふうに、先ほど佐々木委員も御指摘の、憲法の条文そのものに明記をきれておるのでございまして、私どもこの任期十年という制度は、裁判官の職責というものを軽んじたというものではなくて、むしろそれほど重い職責であるというふうに、高くこれを評価されてできたものであるというふうに考えておるわけでございます。と申しましても、決して十年の任期制があるから、あらゆる人間について、そう簡単に再任制度と任期制というものを利用し運用していこうということを申し上げたわけではないわけでございまして、一生懸命おやりいただいておる裁判官について、いやしくもこの任期制があるがゆえに、裁判官として働かれる場を失わさせるというようなことがないようにはいたしていきたいと思います。これを念願して、この任期制の運用については、いやが上にも慎重を期しておるわけでございます。暴挙とおっしゃいましたけれども、私どもといたしましては決してそういうものではなくて、十分の上にも十分に検討をした上で、これまでもこれを運用してきておるものと確信をいたしております。今後もそういうつもりで裁判官の再任問題等には取り組んでいきたいと考えております。
○佐々木静子君 これは私どもが裁判官の報酬を、これは国民の声としてできるだけ高くしようと申し上げておるのは、これは裁判官が、ほんとうに憲法と良心とだけに従って裁判ができるような身分を保障してほしいという願いから、私どもこれに賛成しておるわけなんでございます。最高裁当局は、これみな国民の苦しい税金です。この苦しい税金の中から裁判官には、ほかの行政官よりももっと優位な多くの報酬を出してほしいということは、裁判の独立を持っておるからのことなんです。そのような国民の願い、国民の声というものも十分に受け入れていただいて、そうしてこの来たる十四期の再任の問題、これは国民の声に謙虚に耳を傾けていただきまして、国民が最高裁というものに非常に信頼を寄せる、これならだいじょうぶだという納得のいく審議を行なっていただくよう、最後に私からお願いいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。
○委員長(阿部憲一君) 他に御発言もなければ、両案に対する質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(阿部憲一君) 御異議ないと認めます。 それでは、これより両案について一括討論に入ります。 御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べを願います。——別に御意見もないようでございますが、討論はないものと認めて御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(阿部憲一君) 御異議ないと認めます。 それでは両案につきまして順次採決を行ないます。 まず、裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。 〔賛成者挙手〕
○委員長(阿部憲一君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。 次に、検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。 〔賛成者挙手〕
○委員長(阿部憲一君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。 なお、両案についての審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(阿部憲一君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。 —————————————
○委員長(阿部憲一君) 連合審査に関する件についておはかりいたします。 沖繩及び北方問題に関する特別委員会に付託されている、沖繩の復帰に伴う特別措置に関する法律案外六件について、沖繩及び北方問題に関する特別委員会に対し連合審査会の開会を申し入れることに御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(阿部憲一君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。 なお、連合審査会開会の日時につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(阿部憲一君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。 本日はこれにて散会いたします。 午後二時二十八分散会 —————・—————