P政策ポータルPOLICY PORTALウォッチ
67回国会参議院1971/12/14

沖縄返還協定特別委員会 第5号

発言数
121
登壇者
12
会派数
3
開催日
1971/12/14

会議録

安井謙自由民主党

○委員長(安井謙君) ただいまから沖繩返還協定特別委員会を開会いたします。  委員の異動について報告します。  去る十三日山田勇君が委員を辞任され、その補欠として青島幸男君が選任されました。     ―――――――――――――

安井謙自由民主党

○委員長(安井謙君) 理事の辞任についておはかりいたします。  星野力君から、都合により理事を辞任したい旨の申し出がございました。これを許可することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

安井謙自由民主党

○委員長(安井謙君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  この際、理事の補欠選任を行ないたいと存じます。  理事の選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

安井謙自由民主党

○委員長(安井謙君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事に春日正一君を指名します。     ―――――――――――――

安井謙自由民主党

○委員長(安井謙君) 琉球諸島及び大東諸島に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件  を議題といたします。  前回に引き続き、質疑を行ないます。  佐々木静子君。(拍手)

佐々木静子日本社会党

○佐々木静子君 私は日本社会党を代表いたしまして、沖繩返還協定、それ自体について、主として協定第四条並びに第五条について御質問さしていただきたいと思います。  平和条約の第三条によって日本本土から切り離されたままの状態として残されていた琉球諸島及び大東諸島が復帰するということは、まことに喜ばしいことでございます。しかしながら、この沖繩返還協定を見るときに、そして、現在着々と進められている復帰準備の施策をながめたときに、私どもはそこに沖繩の基地確保、防衛義務肩がわりなどの軍事面の強化にりつ然としないではおられないのであります。そして、この基地重視とともに中央集権的な行政の姿がはっきりと浮き彫りにされ、肝心の地元の沖繩県民のこうむった筆舌には尽くしがたい甚大な損害に対する補償がやみからやみへ葬り去られようとし、その人権を侵害された幾多の県民に対する救済が、遺憾ながらほとんど配慮を払われておらないかのように見受けられることに対して、沖繩県民をはじめとして、日本全国民はふんまんの情を押えがたく、強い抗議の声がほうはいとしてわき上がってきたのはけだし当然のことと申せましょう。  基本的人権の尊重と恒久平和主義をその第一義的な理念とした憲法を最高法規とする日本において、沖繩が復帰するに際し、総理大臣は沖繩県民の人権をどのように考えておられるのか。長い間異民族支配のもとに苦しみ泣かされてきた沖繩県民の人権尊重のためにどのように対処していかれる御方針なのか。人権問題についての佐藤総理の基本的なお考えをこの際お伺いしておきたいと思います。

佐藤榮作自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(佐藤榮作君) 沖繩が戦中戦後置かれた状態は、どうもわれわれの想像に絶するものがあるようでございます。戦時中はもちろん本土防衛の第一線になり、全島をあげて焦土と化し、三分の一の死者を出した。しかも、これは軍人ではありません。平和の市民、これが犠牲になったということであります。さらにまた、その後は、引き続いて戦時中の継続とはいいながら力による支配が行なわれたと――軍政。さらにまた、民政に移りましても、その軍政が基礎であったと、そのために人権の損害、破壊と申しますか、そういうことは筆舌に尽くしがたい。ただいま御指摘のとおりであります。私は、瀬長君の書いた本を読んでみて、ほんとうにお気の毒な状態だと、かように思っておるわけであります。  私が沖繩を訪問したのが一九六五年ですか、参りまして、そうして、ほんとうに沖繩の方がなめていらっしゃるその一部に接することができた。これは早く何としてもわれわれの祖国に迎えなきゃならない。施政権の返還と取り組むことが時代の政治家として当然の責務だと、かように思って実は取り組んだのであります。それには、ただいま御指摘になりましたような人権の侵害、これを救済しなければならないと、しかも、われわれと同じ日本人です。このことを考えた場合に、できるだけのことをしようと、こう私は感じて、この問題と取り組んだわけであります。しかしながら、今回の返還協定そのものにしても、また、さらに関連法案にいたしましても、なかなか占領軍あるいは駐留軍の壁は厚いものがあります。私は、これらのことを考えまして、十分ではございませんけれども、とにかく施政権が本土に返ること、それによって初めて百万県民と一億国民がほんとうに一体となって県づくりに邁進できるんじゃないだろうか、そのチャンス、その機会もつくりたい、かように思ってただいま奮闘しているような次第でございます。

佐々木静子日本社会党

○佐々木静子君 いま、総理のお話を伺いまして、佐藤総理が沖繩県民の人権をあくまで尊重していきたいという御見解でいらっしゃる。これは日本国憲法のもと、当然のこととは思いますけれども、沖繩県民の人権が無視されるのではないかと危惧され不安に感じておりましたところ、そのような人権尊重主義に徹していきたいという趣旨の御答弁をいただいたということは心強く思っております。  では、沖繩県民の人権問題に最も関係が深い事柄につきまして私は質問を続けさしていただきたいと思います。人権問題と最も関係が深いというよりも、むしろ県民の人権問題そのものであると考えられる請求権問題についてお伺いしたいと思います。  協定の第四条第一項には、「日本国は、この協定の効力発生の日前に琉球諸島及び大東諸島におけるアメリカ合衆国の軍隊若しくは当局の存在、職務遂行若しくは行動又はこれらの諸島に影響を及ぼしたアメリカ合衆国の軍隊若しくは当局の存在、職務遂行若しくは行動から生じたアメリカ合衆国及びその国民並びにこれらの諸島の現地当局に対する日本国及びその国民のすべての請求権を放棄する」との規定がございます。サンフランシスコ平和条約の第十九条にもその(a)項に同じく「すべての請求権を放棄する」という規定がございますが、このサンフランシスコ条約第十九条(a)項と、いま申し上げました協定第四条との関係、つまり、この協定第四条第一項において放棄されるといわれる請求権の範囲につきまして、これは総理並びに外務大臣のお考えを伺いたいと思います。

福田赳夫自由民主党外務大臣

○国務大臣(福田赳夫君) サンフランシスコ条約でいう「請求権の放棄」は、講和条約発効前のものであります。その発効後に生じました請求権といわれるもの、これを今回の条約でその外交保護権を放棄する、こういうことでございます。

佐々木静子日本社会党

○佐々木静子君 そうしますと、重ねてお尋ねいたしますが、この協定第四条第一項において「放棄する」といわれる「すべての請求権」は、時期的に見ると、サンフランシスコ条約締結後の請求権のみをさすわけでございますか。

福田赳夫自由民主党外務大臣

○国務大臣(福田赳夫君) そのとおりでございます。

佐々木静子日本社会党

○佐々木静子君 それでは、いま時期的な問題についてはわかったのでございますが、そうしますと、サンフランシスコ条約締結前の沖繩県民の、アメリカ軍あるいはその他この協定に定めておりますものに対する請求権につきましては、サンフランシスコ条約第三条の効力によって請求権は放棄されたというふうに政府はお考えになるわけでございますか。あるいは請求権はまだ残っているというふうにお考えになるわけでございますか。

福田赳夫自由民主党外務大臣

○国務大臣(福田赳夫君) いわゆる外交保護権、つまり請求権、これは放棄した、こういうふうに考えております。

佐々木静子日本社会党

○佐々木静子君 実は私自身といたしますと、このサンフランシスコ条約十九条によって、沖繩県民、沖繩諸島及びその他サンフランシスコ条約第三条によって規定された特定地域における請求権がはたして法的に日本政府が放棄し得るものかどうか、これははなはだ疑問を持っているものでございますが、時間の都合もございますので、いま政府のお考えを一応承っておくにとどめます。  そして、さらに質問を続けますが、この協定第四条第一項にいいます、国民の請求権を放棄する、というのは、いかなる意味、内容を持つものですか。これは先日、十二月八日の当委員会における質問におきましても、若干お答えがあったと思うんでございますが、これは若干重なりまして恐縮でございますが、あとの質問の関連もございますので、もう一度外務大臣に御見解を伺いたいと思います。

福田赳夫自由民主党外務大臣

○国務大臣(福田赳夫君) 日本国政府といたしまして、アメリカ政府に対し、わが国国民の持つ請求権はこれを放棄する、こういうふうに言ったわけです。非常にこれを厳密に解釈いたしますと、個人個人の持っておる請求権が放棄されたわけじゃないんです。しかし、政府が放棄したということは、その個人の権利を行使するにあたりまして、日本国政府がその請求権の行使に対しましてこれを援護しない、いわゆる外交保護権を行使しない、こういう約束をした。そこで、理論的にはそういうことでありまするけれども、実際問題とすると、各個人個人がアメリカの裁判所に対して訴訟を提起する、そういう場合には、おそらくアメリカはその請求権を拒否するであろう、その提訴を拒否するであろう、そういう場合に日本政府は文句は言わぬ、こういうことでございます。

佐々木静子日本社会党

○佐々木静子君 いま外相の御見解によりまして、いまの政府の考え方が、この国民の請求権の放棄というものが、国民の実体的な権利までも放棄したものではないという御見解であるということははっきりしたわけでございますが、しかしながら、いまお話がございましたように、実体的な国民の個々の請求権を放棄したものでなくても、現実に国民がアメリカ合衆国に対して請求をしようと思ったときに、その訴えの提起その他について日本政府がその補償をなさないということであれば、現実には訴訟によって国民一人一人の請求権を実現さす、確保するということは困難になってしまう。そのことは外相のおっしゃるとおりであろうと思います。外務大臣は、日本政府がこういう見解をとり、外交的保護を行なわないという結果、日本の国民が実体的には請求権を持っていても、現実にそれを実現さすことができない、その権利行使を実現さすことができないという結果におちいっていることにつきまして、どのように国民に対して責任を感じておられるのか。また、なぜあえてそのようなことをアメリカ合衆国とおきめになったのか、そのことについて承りたいと思います。

福田赳夫自由民主党外務大臣

○国務大臣(福田赳夫君) いわゆる請求権といわれるものですね、これは非常に種類が多い。一人一人の沖繩県民にまつわる問題です。そこで、協定を締結するときに、どんなものがあるのか、これはとてもつかみ得ないんです、全部は。つかみ得るもの、これはアメリカに請求する。アメリカはアメリカの法令に基づくもの、あるいは布令に基づくもの、そういうものは補償しましょう、こういう約束を取りつけてあるわけです。それから、さらに軍用地の復元補償、海没地の補償、これもいたしましょう、こう言っている。ところが、残った幾多の補償です。これを一人一人の人がアメリカへ訴訟を持っていく。こういっても、実際問題としてはこれはなかなか実現できない。そこで、それはもうここで打ち切りにしましょう。そのかわり、これは適正な補償――請求権がアメリカに対してあるというようなものにつきましては日本政府のほうで片づけましょう、こういうふうにいたしたわけでありまして、これは非常に親切なやり方じゃないか、そういうふうに考えております。

佐々木静子日本社会党

○佐々木静子君 いまのお話で、外相御自身、日本政府といたしましても、現実に沖繩において県民が多くの被害を受けているという事実は、これははっきりと御承認になっていることと思います。むろんその明細、一つ一つについてはいまつまびらかになさらないけれども、しかし、考えただけでも実に多くの損害が、現実に沖繩において、アメリカの軍隊あるいは米国国民によって枚挙のいとまもないほどの大きな損害が与えられているということは政府も十分御承知のとおりであると思います。もちろん、私から、るる御説明するまでもないことで御存じでございますが、いまお話にあった軍用地の復元とか海没地の、補償の問題などを例示的におあげになりましたが、大きく見ますと、アメリカ軍の土地接収に伴う損害あるいは入り会い権あるいは水利権に対する損害、また、いまの滅失地、くずれ地となったことによる損害、あるいは漁業補償、そして、米軍人、米軍属の不法行為による沖繩県民の受けたばく大な人身損害、演習による被害、また基地公害が頻発している。核及び毒ガスその他の化学兵器による損害、あるいは住民の過大な租税負担に苦しんでいるのをはじめとする幾多の損害などが次々と発生しているということは、政府も十分に御承知のとおりであろうと思います。しかし政府は、これらの救済方法として国内法的に解決するという趣旨の御答弁のようにお伺いしたわけなんでございますが、現実にこれは沖繩県民の一人一人が、加害者であるアメリカ合衆国あるいはアメリカ合衆国の国民に対して、一人一人が請求権を持っている。この持っている請求権をどういう根拠に基づいて政府がこれは放棄する、あるいは、個々的な実体権は補償するけれども、もう外交上の保護は行なわないというようなことを言われるのか。私はそこのところが非常にふに落ちないわけでございます。そこの点をもう少し掘り下げて御説明いただきたいと思うわけです。

福田赳夫自由民主党外務大臣

○国務大臣(福田赳夫君) お話しのように、請求権といわれるものは非常に、雑多というか、無数にあるわけです。それを一々取り上げまして、アメリカ政府に、あるいはアメリカの裁判所にこれを要求をする、こういうことになりましても、まあ、アメリカまで出て行かなければならぬという場合もありましょう。あるいは高い弁護士を頼まなければならぬという場合もありましょう。これはもうたいへんなことです。実際問題としては、これはそういう方法では解決できない。そういうふうに思うんです。そこで、一応条約に例外を設けて、アメリカ政府が補償の責めに任じます、こういうもの以外は、アメリカと日本の間では債権債務の関係はこれは打ち切る。そして法的関係をはっきりしてしまう。しかし、いろいろ二十六年間に沖繩の方々が苦しまれた、そういう事実はよく承知しております。でありまするから、その苦しんだ過程におきましてアメリカ軍に対する請求というものがたくさんあったと思う。そういうものを一々調べまして、そして、理由のあるものにつきましては日本政府がかわって適切なる措置をとろう、こういう考え方でございます。その調査のためには、いま、もうすでに始めておりますが、特に来年の予算では調査費まで取りまして徹底的な調査をしてみたい、そういうふうに考えております。

佐々木静子日本社会党

○佐々木静子君 いま御答弁を伺いまして、沖繩県民が非常に実現困難な請求権を確保するというのはたいへんなことである、そういう県民の立場に立った御配慮から請求権が放棄なされたのだという御趣旨の御答弁を伺ったのでございますが、しかし、これは国民一人一人がアメリカ合衆国並びにアメリカ合衆国の国民に対して持っている請求権――権利をこれは請求する、しない、あるいはアメリカまで訴訟を起こすのがたいへんだ、あるいはいま御指摘のように弁護料も高くなるだろう、いろいろ御心配をいただいているようなんでございますが、これは実際沖繩県民がこれは困るから何とかしてほしいという強い要望があって請求権が放棄されたのでないということは、外務大臣もよく御承知のとおりでございます。非常に県民のことを考えた結果このように請求権を放棄するという規定を設けたのだということでございますが、現実に沖繩県民がその権利を行使する意思がありやなしや、また、その問題に当面して現実的にどういう希望を持っているかということを十分に御配慮なさったという前提に立った場合、この御配慮なさるについてどのように沖繩県民の意見を聞かれたか、具体的にそれではどういう方法で請求権を放棄することが沖繩県民の世論であるというふうにお思いになったのか、その過程についてお伺いしたいと思います。

福田赳夫自由民主党外務大臣

○国務大臣(福田赳夫君) これはいわゆる敗戦処理という際における通例なことであります。また、現に小笠原におきましても、奄美大島におきましてもそういうことをやっているわけであります。これをほうっておきますと、これはたいへん複雑な法律関係が出てきまして、かえって沖繩の方々に御迷惑を及ぼす。これはもう御意見を聞くも聞かないもないことかと思うくらいと考えておるのです。ですから、私は、その締結当時の沖繩県民との接触ということをいまつまびらかには承知しておりませんけれども、これはもう、そういう措置をとらなければ、これは沖繩県民はほんとに立ち往生してしまうのじゃないか、こういうふうに思うのです。さあ、一人一人がアメリカへ行って政府を相手に訴訟をしたらどうですかと、これはどういうことになりますか。これは権利はあるというけれども、これを行使する、こういう道はもうほとんど閉ざされてしまう。それから、日本とアメリカとの間にそういう法律関係がややこしく残っておるということも、これも妥当ではない。この辺で法律関係は遮断をして、そうして日本政府のほうで世話を見るというほうが、もう常識的に見て沖繩県民のためにこれは親切な行き方じゃあるまいか。そういうことです。

佐々木静子日本社会党

○佐々木静子君 いまの御答弁によりまして、まあ、政府は非常な親心で請求権の放棄に踏み切ったということなんでございますが、私、考えますのに、これは沖繩県民だけではなく、日本のいまの国民からアメリカ合衆国あるいは個々のアメリカ国民に対して現実に幾つもの訴訟が提起されておるということは、十分御承知のとおりでございます。これは現実の問題とすると、その権利行使ははなはだ困難である、また負担が重いということは事実でございますが、しかしながら、今度のこの協定第四条によって、沖繩県民のみが、今度アメリカ並びにアメリカ国民に対して請求権を行使するということが事実上できなくなってしまった。この点について、これは相談するまでもないと政府はおっしゃいますけれども、これはやはり政治をする者の独断ではないか。非常に親心ではあったと善意に解釈いたしましても、やはり親は子供の意見も聞かなくちゃならないというのが、これは家の中を円満に運営していくための常識ではないかと思います。なぜ外務大臣は、広く沖繩県民のその希望なり願いを、あるいは切実な訴えをもっと聞いた上でこの請求権の放棄に踏み切られなかったのか。どうして独断的に、一方的にこのほうが沖繩県民にとって有利であるという判断の上に立ってなさったのか。その点、はなはだ私は遺憾に思うわけなんでございます。  さて、いまの御答弁に関連して申し上げます。いま外務大臣は、これはどこの国においても敗戦処理においては当然な処置であるというようなお話がございました。なるほど、日本は一九四五年、アメリカ合衆国に降伏いたしまして、そして沖繩の占領というものが始まったわけでございますが、日本が今度沖繩の復帰を受けるこの返還協定の締結ということが敗戦処理という問題で片づけられるか、これははなはだ疑問があると思います。サンフランスシコ条約締結、これは終戦処理ということであるいは情状的に――私はそれにも非常に異論を持っておるわけでございますけれども――あるいは敗戦処理というワク内に、広く範囲を広げれば絶対に入らないということは、これは見解もいろいろございますが、あるいはそういうふうに考えることもできないことはないと思いますけれども、どうしてこの沖繩返還協定の締結が敗戦処理であるのかどうか。あくまで政府はこれを敗戦処理の一環と考えておられるのか、その点をまずお確かめいたしたいと思います。

福田赳夫自由民主党外務大臣

○国務大臣(福田赳夫君) これは敗戦処理とは考えておりません。しかし、先ほど、敗戦処理の場合にはそういう措置があったということを例示したわけであります。それで、佐々木さんはいろいろこの問題について御疑念を持っているようですが、もしいま政府がとっておるような考え方をとらないで、請求権はこれは存置しますということになって、これを個々の請求権者がアメリカと一人一人交渉すると、あるいは団体をつくって交渉するということもあるかもしれませんが、そういう際に一体どうなるかということをお考えになりますと、今回の措置は非常に手厚いというか、妥当な措置であると、そういうような感じをお持ちになりませんかな。私は、それ以外に何か名案があるのかどうか、ひとつお伺いいたしたいような気持ちでありますことを申し上げます。

森元治郎日本社会党

○森元治郎君 関連。  佐々木さんが質問している点は、法律関係を遮断することはこれは親切だとかいうことじゃなくて、県民の気持ちを一体聞いたのか、聞かないのかということを佐々木さんが聞いているんです。

福田赳夫自由民主党外務大臣

○国務大臣(福田赳夫君) その交渉に当たりました政府委員からお答えいたします。

井川克一外務省条約局長

○政府委員(井川克一君) 琉球政府及び立法院の決議、あるいは地主連合会の要請書その他によりましても、この請求権の問題は、アメリカ政府かあるいは日本政府か、いずれにいたしましても、沖繩県民の満足のいくように、いずれか一方で完全に処置するようにという要請がたびたび参っていたわけでございます。それに従いまして、私たちといたしましては、ともかく現在沖繩において施行されている法令に従いまして行なわれるところの請求権は、これを四条二項によりましてアメリカ側に引き続き処理せしめること、及び四条三項、いままでなかったものでございまするけれども、非常に不公平だと思われましたものにつきまして、さらにアメリカに負担せしめること、ということにいたしまして、その他、先生御専門のことと思いまするけれども、請求権ということになりますると、つまり権利でございまするので、法律上のもとがなければならないとか、そういうふうなことがございます。したがいまして、そういうものを一括いたしましてこれはもう放棄するのはやむを得ないのではなかろうか。それからあとは外務大臣がおっしゃいましたように、日本側において処理していきたいと、こういうふうになったわけでございます。

佐々木静子日本社会党

○佐々木静子君 いま外務大臣の御答弁によりまして、私も外務大臣に意見を求められるというように、非常に偉くなったと申しますか、逆に言いますと、日本の外務省、これじゃとても心もとない。これで沖繩県民百万の運命を背負って立てるのかと、私はいま外務大臣のお話を伺って非常に心細い思いがしたのでございます。これはおそらく沖繩県民がこれを聞きますと、これはもうちょっと外務大臣しっかりしてほしいなという気持ちをお持ちになったろう。これはやむを得ないんじゃないか、私は非常に残念ではございますが、心もとない感じがしたわけでございます。  さて、いま、この敗戦処理の中に沖繩返還協定が入っておらない、締結が入っておらないということを承ったことは、これは政府の見解の一つとして私もはっきり確認さしておいていただきたいと思っております。そして、先ほどの御答弁によりまして、この個々の県民の請求権をそのまま認め、その行使をほしいままに各県民の個人の判断にゆだねるとするならば、アメリカ合衆国あるいはアメリカ国民に対して次々と訴訟が提起される。そうなると日米間にいろいろと法律上の争訟なり紛争が起こって、これは今後の日米間の問題としてまずいんじゃないかというような御答弁があったように思うわけでございます。現実に沖繩県民から、次々アメリカ政府あるいはアメリカ国民に対して訴訟が起こされた場合、日米間の今後の状態として、具体的にどういう問題がまずいとお考えになるのか、ここの点をお教えいただきたいと思います。

福田赳夫自由民主党外務大臣

○国務大臣(福田赳夫君) まず第一に、個人のその請求権というものが、おそらく私は適正に処理されないと思います。つまり、アメリカまで出て行かなきゃならぬ、あるいは高い弁護料を出して弁護も頼まなきゃならぬ、ことばも十分ではない人が多いだろう、そういう問題。そうすると、わが国としては見てもおられないと、こういうようなことになり、これが場合によると外交交渉というようなことに持ち込まれるというようなこともあるかもしれませんけれども、これは非常にまたむずかしい問題で、個人の権利を満足させるような結果にはなるまいと、こういうふうに思うのです。やはり、ある時期を画して、債権債務の関係は国際間では一応線を引く、こういうほうがいいじゃないか。そのかわり、わが日本において、わが本土はほんとうの意味においての同胞として迎え入れることができるわけですから、その立場に立って親切な処置をする、このほうが妥当じゃないか、そういうことでございます。

佐々木静子日本社会党

○佐々木静子君 いまの御答弁伺いまして、非常にその日米間の問題がまずくなるということよりも、やはり現実にはそれでは沖繩県民が十分に権利の行使ができないという配慮から出ておられるように伺ったのでございますが、一面、その沖繩県民の利害ということはさておいて、現実に権利が確保できるかどうかということはさておいて、この沖繩県民が持っている請求権、これは実に貴重なものであるということは、これは政府も十分に御承知のとおりのことだと思います。これは、まず、このような請求権を持たなければならなくなった理由、これは個々の沖繩県民一人一人についてはほとんど関係のないことから起こっているわけでございまして、大体において、このような悲惨な事態が起こったということは、これは日本政府がかつての日米戦争を始めたことに起因している。歴史的にさかのぼればそれから起こっていることでございます。そして日米戦争が起こり、不幸なことに沖繩がその戦場になった。そして、いま外務大臣のお話にもございましたように、不幸なことに沖繩が戦場になり、しかも完全に敗れた。そして沖繩県民のうちの三分の一に当たる十六万という多くの婦女子を含む非戦闘員が沖繩でなくなった。そして沖繩は死の海となり、死の島となって、そして、しかも、日本の敗戦後、日本がようやくに復興しようというときに、サンフランシスコ条約によってまた引き裂かれてしまった。これまた全く沖繩県民の意思によるものではなく、日本政府の行為によって沖繩は引き裂かれていった。そして日本の本土がようやく人権が満足――十分満足とはいかないまでも人権が保障され、そして経済が発展していくというような復興の生活に臨んでいるときに、沖繩県民はまた再び異民族支配のもとに置かれ、そして、その間に多くのこれらの被害、損害が米軍との間、あるいは米国政府、アメリカ国民との間に発生した。それがようやくいまここにやっと日本の施政権のもとに返ってこれる、この瞬間において、いままでのこの沖繩県民の血みどろの戦い、血みどろの苦しみというものは何一つ残っておらない。ただ、血みどろの苦しみの上、場合によると、命まで引きかえにして得たものが、いまアメリカに対する請求権である。やっと復帰する、日本に返ってこれる、日本の施政権のもとに戻れるという喜びもつかの間、沖繩県民にとっては一番の貴重な、かけがえのない財産であるこの請求権は放棄しないといけなくなった。これはいろいろこの権利行使について外務大臣が非常な親心で考えられたというお話なんでございますけれども、沖繩県民にとってかけがえのないこの請求権を捨てなければならない。これはよほどの納得のいく事情をお示しにならない限り、国民は納得できないのではないか、私はそう思うわけでございます。そして、外務大臣は、これは沖繩県民のために放棄したんだということを強調されておるわけですけれども、はからずも先ほど、日米間に法律問題がいろいろ残るということも今後の日米問題としてはまずい、外交上も得策でないというお話が示されたわけでございますが、この沖繩百万の人間の持っている請求権を放棄してまで得られる外交上の得策、それは何であるのかということを私は知りたいわけでございます。外務大臣の御見解をお述べいただきたいと思います。

福田赳夫自由民主党外務大臣

○国務大臣(福田赳夫君) これは沖繩県民とアメリカ政府との間にいろいろな請求関係が今度消されることになる。ですが、かりにこれが生きておって、そしてその請求権を行使するというようなことになった場合に、現実の問題として一体どうなるか。さっき手続上の問題で行使が非常に困難だというふうに申し上げましたが、請求権と申しましても、現地では請求権と申しまするけれども、これは千差万別です。一体法的に見て請求権というものが成り立ち得るか、こういうものについては幾多の疑義のあるものが請求権として並べられておるのです。そういうようなものをアメリカ政府はおそらく相手にはいたすまいと、こういうふうに思います。しかし、私ども日本政府とすれば、いま、血のにじむような思いをしてきたこの二十六年間の沖繩県民、こういうことを考えますると、どうしても――まあアメリカへ個々に要求いたしましてもそう成果のあがりそうなもののないいわゆる請求権、こういうものにつきましては、ここで一応国と国との間の外交関係は断ち切り、そして国内措置として解決するほうが妥当である、そのほうが沖繩県民に対してむしろ親切な行き方である。先ほど佐々木さん、あるいは漁業権だ何だいろいろお話がありましたけれども、それは中には請求権として成り立つものがあるかもしれない。しかし、言われておる中には、アメリカの法廷が考えた場合に、請求権として理解しない、できないような性質のものがうんとあるんです。そういうものを一体どうするか。これはとてもアメリカとの間の権利義務の関係、そういうものでは解決し切れないです、これは。しかし、わが日本におきましては、いろいろそういう二十六年間の御労苦、こういうものも考えまして、幾多の請求権といわれるものがありまするけれども、それを一々精査いたしまして、これは何とかしなければならぬなというふうに日本政府が考える、そういう際におきましては、これはアメリカに対して請求権が成立するというようなものにつきましては、それを日本がかわってひとつその手配をしよう、また請求権として成立しないというようなものでありましても、これは考えてみると何とかの措置をしなければならぬ、そういうものもあるかもしれない。そういうものに対しましては妥当な措置をとりましょう、そういうふうな考え方をとっておるわけでありまして、私はこれ以外に沖繩県民へのほんとうに親心としての配慮を尽くす道はないのじゃないか、そういうふうに考えます。

佐々木静子日本社会党

○佐々木静子君 いま外務大臣から、非常に沖繩県民の利益という見地から請求権の放棄を考えられ、そしてこれを国内的に日本政府がかわって補償してあげようというあたたかい御配慮ある御答弁をいただいたことは、私自身この請求権の放棄ということについては大いに疑義がございますが、それはそれなりに非常にその御配慮に対してはたいへんにけっこうだと敬意を表するものでございます。  さて、この沖繩県民がどのような被害をこうむっているか、いま調査費を組んで調査をしていらっしゃるという御答弁がございましたが、現実にこの調査費を、たとえばこの予算の関係においてどのぐらいの予算のもとに組んでおられるのか、また、具体的にどのような方法で現在調査を進められ、今後進めていこうとしておられるのか、それについてお答え願いたいと思います。

福田赳夫自由民主党外務大臣

○国務大臣(福田赳夫君) 取り残されたいわゆる請求権、これは法律上請求権としてアメリカに対し成立し得なかろうと、こういうものもあるし、しかし、そうじゃないけれども、日本政府として妥当な措置を講じてやったほうがいいではないかというような性質のものもあります。それらの問題は施設庁においてこれから担当してやっていくということになっておりまするので、施設庁のほうからお答えをいたします。

島田豊防衛施設庁長官

○政府委員(島田豊君) ただいま外務大臣からお答えございましたように、地元からの各種の請求につきましては、非常に多種多様でございまして、その中で、御承知のとおりに、講和前の人身被害に対する補償漏れ、これにつきましては別途防衛庁関係の法律の適用の特別措置法の中に規定をいたしまして、これは見舞い金として支給をする、現地におきます布令六十号に基づきますところの支払いの例に準じまして見舞い金を支給する、こういうことにいたしたわけでございますが、これは比較的被害者の数もわかっておりますし、請求の内容等につきましても比較的はっきりしているということで、これは実は法律化いたしたわけでございます。ことにまあ人道上の見地から特別に措置いたしましたが、それ以外に、各種の請求につきましては非常に多種多様でございまして、現実に私どもは琉球政府が取りまとめた資料をもとにしていろいろ検討いたしておりますが、その中には、項目によりましては、項目だけあがっておりまして現実に数字となってあらわれておらない、つまり、琉球政府自体でもまだ実態を把握しておらないというふうなものもございまして、その辺はこれから各種の調査をやろうと、こういうことでございます。  そこで来年度の予算の問題でございますが、一応復元補償関係、つまり原状回復の関係でございますが、この関係の調査費を二百六万一千円、それから入り会い権に関する補償の問題がございますが、これは入り会い権があるかどうか、入り会い慣行かどうか、この辺の実態、まださっぱりわかりませんので、それの入り会い関係の調査費といたしまして四百三十九万七千円、それから漁業補償、これは非常に膨大な漁業補償の要求がございます。これにつきましても、これは漁業組合等で十分その収獲額並びに海面が制限されたことによります被害額というものにつきましても実態調査を要します。そのほか農業関係のいろいろな被害もございます。そういう農業、漁業関係の被害の調査費といたしまして千五百八十二万四千円、これは請求の関係につきましての調査費――それ以外にも各種の調査がございますが、その中から請求関係の調査費をあげますと、以上のようなことで、合計におきまして二千二百二十八万二千円、これをいま概算要求中でございます。

佐々木静子日本社会党

○佐々木静子君 いまお話を承りましたが、まず、いまの御答弁の中に、見舞い金として講和前の補償漏れの金員を支払っていくというお話がございましたが、見舞い金というのはこれは請求権とは全く違うものであると私は考えているわけでございます。請求権というのは、これは被害を受けた者自身が請求する権利を持っているから請求するわけでございまして、見舞いというのは、請求ではなしに、これは見舞いを与える者が恩恵を与えるものでございます。でございますので、いまの御答弁ではこれは請求権をどう考えているのか。請求権と見舞い金とすりかえられたのでは、これでは請求権補償は全く無に帰してしまう。私はそう思うわけでございます。そういう点で根本的において、いまの御答弁からうかがわれる政府の姿勢というものに対して、私はなはだ遺憾に思うわけでございますが、これも外務大臣に承りたいと思うんでございますが、これは総理大臣に承ることになりますか、このような調査が何ゆえ防衛施設庁――これは防衛庁の管轄でございますね――そういうところで行なわれるのか。これは単なる防衛庁の管轄問題ではない。これは沖繩県民の全財産に関する問題である。これはどういうわけで防衛庁の管轄として政府は扱っておられるのか。また、今後も防衛庁の所管として処理していこうと思っておられるのか。あるいは復帰後は別の官庁が処理されるようになるのか。その点についての御方針なり御見解を伺いたいと思います。

島田豊防衛施設庁長官

○政府委員(島田豊君) ただいまの講和前の人身被害補償漏れの関係をどうして防衛庁関係の法律の中に入れたかということでございますが、これは本土の場合におきまして、実はやはり占領統治下におきますところの人身被害等に対しまして、当初いろいろ行政措置でやっておりましたが、その後御承知のとおりに、被害者給付金法というのを制定いたしまして、これに基づきましてやっておりますが、これが防衛施設庁、あるいはその前身である調達庁のころからその業務を担当いたしておりましたので、沖繩における同種の事案でございますので、これはやはり防衛施設庁なりあるいはその出先機関で処理するほうが適当であろうと、こういうことでございます。それ以外につきましても、各種の漁業補償、あるいは復元補償等にいたしましても、これは本土の場合におきましてやはり防衛施設庁が処理をいたしております。これをどうしても防衛施設庁でやらなければいけないという理論的な面はいろいろ問題があろうかと思いますけれども、従来からこの種の問題を防衛施設庁で処理いたしておりましたので、やはり政府の機関の中で担当するとすれば防衛施設庁であろうと、こういうことでいまいろいろそれに関する予算要求等も行なっておるところでございます。

佐々木静子日本社会党

○佐々木静子君 それでは、時間の都合もありますので、請求権問題、最終的にまとめまして外務大臣、あるいは所管の大臣に伺いたいと思うわけでございます。  これはこの国民の請求権を放棄し、しかも、その個々の国民が持っている請求については国内的に国がかわってこれを補償するという、非常なあたたかい親心からの御措置であるということを外務大臣から承りましたわけでございますが、そうである以上、これは沖繩県民一人一人が持っている請求権それ自体と全く同じものが補償されるということ、これは親心から出たものですから当然でございますね。親が子供のものをピンはねするというような――まあ卑しいことばでいいますと――そういうことは私どもとうてい考えられないのでございますが、個々の県民自身が持っている請求権それ自体を、一〇〇%国が親心をもって、責任を持って補償するということ、これは先ほどからの御答弁で十分外相のお気持ちがわかったわけでございますが、それを最終的に確約していただきまして、もう一度最終的な外務大臣のこの問題に対する御見解を述べていただきたいと思います。

福田赳夫自由民主党外務大臣

○国務大臣(福田赳夫君) 今回御審議をいただく法律は「見舞金」となっておる。「見舞金」となっておりますのは、沖繩県民はアメリカ政府に対して請求権を持っておるんです。それは行使できないといいますか、実際上死滅したような形になる。そこで、お気の毒でありまするから、わが国政府がお世話をいたしましょうと、こういう考え方になる。ところが、いま施設庁長官がお話を申し上げましたように、これは御認識を得ておきたいのですが、現地で請求権と言っておりますものの中に――これは千差万別でございます。これはよく調べてみると、請求権じゃないんだ、しかしお気の毒だなと、こういうものもあるわけなんです。対米請求権として成り立ち得ないものも、これはかなりあるわけであります。しかし、対米請求権として成立し得るというふうに日本政府が考えたものに対しましては、これは対米請求権の行使というような形の実体を整えさしてやる、これは私は親心ではなかろうか、こういうふうに思うわけであります。しかし、いろいろ雑多なものがありまして、現地でたくさんのものを並べ立てておりますけれども、これがはたして請求権という、アメリカに対して権利と主張し得るものであるかどうか、これははなはだ疑問のあるものもたくさんあります。そのこともよく御了知願いたい。そういう意味において最善を尽くしたい、適正妥当な処置をいたしたい、かように考えております。

佐々木静子日本社会党

○佐々木静子君 この適正妥当な処置というのは、これは本来持っている請求権を、子供が持っている財産を親がちょっと取り上げているわけなんでございますから、それに対してあめ玉一個じゃ、これじゃ話にならないわけでございます。親が子供のために預かった以上は、預かっただけ、あるいは預かった以上のものを親は子供に返すのが、補償するのが、これが人の道であり、また政治をする者の道であると思います。でございますので、請求権、これは請求権が正当である以上、それが百のものであるならば、百のものを政府が責任を持って補償するということ、そういう御趣旨でございますね、それはお約束していただきたい。いままでの御答弁によりますと、私もそのように解釈しているのでございますが、最終的に確約していただきたいと思います。

福田赳夫自由民主党外務大臣

○国務大臣(福田赳夫君) そのような気持ちでおります。おりますが、佐々木さんに御記憶願いたいのは、現地で請求権と言っているものが、すべてほんとうに請求権として成り立つかというと、そうじゃないのです。これはいろいろな種類のものがありまして、これはよく調べてみる。実態調査と言っているのはそのことなんです。そのこともつけ加えておきたいと、かように存じます。

佐々木静子日本社会党

○佐々木静子君 正当な権利である以上、十分な補償を政府として十二分に考えるという御答弁の御趣旨であったと、正当なものである以上。私は承っておきたいと思います。  それでは次に、第五条の裁判の効力について質問を進めていきたいと思います。  この、アメリカ施政権下で行なわれた裁判の効力、民事、刑事とも原則としてこれを承認し、日本国は引き継ぐ旨を協定第五条において規定しております。この裁判の効力、その中にはアメリカ民政府の裁判あるいは琉球政府の裁判による確定判決の執行も含まれているわけでございます。まず、米国施政下の沖繩県民に対する裁判のあり方がどのような状態のものであるか、この問題をとらまえるとき、まず振り返って考えてみなければならない問題だと思います。アメリカ合衆国の沖繩支配は、もっぱら軍事利用を目的としたものであり、沖繩県民に対して裁判権を持つ米民政府裁判所で適用される実体法は、アメリカの軍事利用を目的とする布令あるいは布告などで軍法会議的色彩のきわめて顕著なものであることは、これは政府においても十分に御承知のとおりでございます。沖繩県民を軍事的支配のもとに置き、その人権をじゅうりんしてきた布令刑法――米軍が沖繩を占領したときに制定された戦時刑法に始まり、これが「米国軍の安全並びにその占領区域の秩序安寧を期する」ための規定であり、この戦時刑法にもとを発した布令刑法が、人権保護規定はほとんどない、一方的な軍事目的のみの法令であるということは顕著な事実であります。この布令刑法の規定のうち、アメリカ軍隊の安全保持に反する罪がこの布令刑法の半分を占めており、五十カ条にものぼっておるという事実、この事実を考えますと、いま平和主義、人権尊重主義を基本原理とする日本国憲法の現実ときわめて相いれないところがたくさんあるわけでございます。まず法務大臣にこの点を伺いたいと思います。現在、米民政府裁判所、これはもと、米軍政府裁判所と呼んだのを後日名前だけを米民政府裁判所と変えて、中身は米軍政府裁判所と呼んだころとあまり変わりがないとのことでありますが、この米民政府の裁判所によって有罪判決を下された者が現米国の占領が始まって以来何人ぐらいいるのか、大体の概数だけでもいま法務省において把握されておられるかどうか。あるいは、ほかの外務省その他の官庁――所管が私はっきりわかりませんが、法務省あるいは外務省において把握されているのか、その点についてお伺いいたしたいと思います。

前尾繁三郎自由民主党法務大臣

○国務大臣(前尾繁三郎君) 先般も御説明いたしましたように、アメリカ施政権下の琉球の裁判権を引き継ぐということは、民事についてはおそらく疑問がないと思います。刑事の問題につきましても、引き継ぎまでの状態の混乱を来たさないためには、これはやはり引き継いでいかなければならぬ。ただ、引き継ぎますにつきましても、ただいまお話しのような、非常に軍事的な色彩の強い布令というようなものについては政令をもって引き継がないと、こういうような仕組みになっておるわけであります。その軍事裁判を受けました数字につきましては、刑事局長から御説明いたします。

辻辰三郎法務省刑事局長

○政府委員(辻辰三郎君) 今回裁判権を引き継ぎます米国民政府の刑事裁判関係の内容でございますが、これは具体的には一九五五年の四月十日以後の分でございますが、件数にいたしまして約九一千件でございます。

佐々木静子日本社会党

○佐々木静子君 現在、米民政府裁判の判決を受けた者が、いま九千件というお話を伺いましたが、米民政府裁判所の有罪判決によって琉球政府の刑務所に服役中の者が現に何人いるか、その点について法務省のほうでおわかりでございましたら……。

辻辰三郎法務省刑事局長

○政府委員(辻辰三郎君) 二人でございます。

佐々木静子日本社会党

○佐々木静子君 いま二人という御答弁をいただいたんでございますが、その二人が服役している罪名及びその刑期について伺いたいと思います。

辻辰三郎法務省刑事局長

○政府委員(辻辰三郎君) 一名は布令の殺人罪によるものでございます。これは無期懲役でございます。それからもう一名は、沖繩の刑法を適用されております傷害致死でございまして、これは不定期刑で四年以上八年以下という刑でございます。

佐々木静子日本社会党

○佐々木静子君 いま実は米民政府の裁判所の有罪判決によって現在服役中の者二人と御報告伺いまして、私、実はほっとしたわけなんでございます。と申しますのは、これはいままで米民政府の裁判によりまして非常に過酷な刑がしいられておった。これは沖繩弁護士会の報告などによりますと、実に千差万別、いろんな刑が科せられておったわけでございます。そうしますと、この復帰に際しましてか、あるいはアメリカ大統領の行政命令か何かで、いままでの非常に過酷な刑がある程度減軽されたか、あるいはこれは特赦されたのか、私はその点つまびらかにいたしませんが、こういう事案もあるわけなんでございます。これは沖繩弁護士会の報告によりますと、十九歳の少年が、たいして財産的価値のあるものではないが、アメリカ軍があまりいばるので、腹立ちまぎれにアメリカ軍の品物二十個余りを盗んだ。ところが、すぐその場で見つかって逮捕されて、アメリカ民政府裁判所の裁判に付せられ、懲役二百年の判決を受けた。そして現在服役中であるという報告を、実は私はつい一カ月ほど前に沖繩弁護士会から聞いているわけなんでございます。これ、事案を聞いてみますと、日本本土の場合は、十九歳ですから、未成年者でもあるし、せいぜい家庭裁判所で保護観察に付されるくらいで、おそらく体刑を受けないで済むくらいの軽微なものだと思うのでございますが、盗んだ品物が二十個余りであるからということで、盗んだ財物一つずつについて窃盗罪を適用し、一つ一つについて懲役十年、二十個余りあるから二百年という計算になっているわけでございまして、このようなむちゃくちゃな裁判が行なわれておる。これは百年昔ある野蛮国でそういうことがあったというのじゃなくて、ついこの間、日本の領土の中である沖繩で、しかも、日本の国民の一部である沖繩県民が、異民族にこのような目にあわされている。こういうことも政府はどの程度――十分にお考えの上だと思うのでございますが、いま、まあこの報告と法務省の刑事局長の御報告とから伺いますと、この事件はどうなったのか私もまた今後調査をしてみたいと思うわけでございます。このほかにも、たいした犯罪でもないのに、懲役百四十年の刑に処せられて現在――現在といいますか、ことしの春ごろでございますね――服役中であるという県民もいることを聞いております。これも日弁連からの報告に出ております。この事実を法務大臣は御存じでございますか。

前尾繁三郎自由民主党法務大臣

○国務大臣(前尾繁三郎君) 私はその事実を存じないのですが、もしあれだったら、刑事局長からお答えいたさせます。

辻辰三郎法務省刑事局長

○政府委員(辻辰三郎君) 私どもも、ただいま御指摘のような具体的事例があるかどうかは確認いたしておりませんが、私どもが今回引き継ぎの対象といたしております一九五五年四月十日以降の判決につきましては、ただいま御指摘のような事例はございません。ただ、私どもちょっとお話を承って感じますのは、アメリカの法制におきましては、日本の法制のような併合罪的な規定を適用しない場合がございます。各個の犯罪に一つ一つ刑を持っていきました場合に、合計してたいへん非常識な期間になる場合が理屈の上ではあり得るわけでございます。しかしながら、そうなりましても、今度は逆に、刑を執行いたします場合に、同時にまた刑期が進んでいる。一年が五年になるとか、そういうような形にもなるわけでございますから、具体的にはたいへん不当なものはないと思うわけでございます。

佐々木静子日本社会党

○佐々木静子君 いま、まあ御答弁を伺いましたけれども、現実には、形の上では彼は懲役二百年の判決を受けたのだということが残るわけでございます。現実にはこの一年を、三百六十五日を三千六百五十日ぐらいに計算してというのが実情のようにいま承ったのでございますが、しかし、これは全く行政的な裁量のみであって、これは服役している者のほうから要求できる権利ではないと思います。その点におきまして、現実にこの日本の国土の中で、日本の国民の一部である人たちが、懲役百四十年とかあるいは懲役二百年、あるいはこれに類するような非常なはなはだしい重刑を受け、苦しんでいる、またつい最近まで苦しんでおったという件について、私は、政府は、法務大臣御存じなかったということでございますが、そういうことをよく把握していただいて、そして沖繩の裁判の効力の問題も十分に御検討をいただきたいと思うわけでございます。  それからまたこのような事案もあるわけでございます。これは実は現実に沖繩民政府裁判の判決を受けて服役して出てきた者の口から聞いたわけでございますので、これは直接の話でございますから間違いないわけでございますが、名前は本人の名誉のために伏せさせていただきたいと思いますが、ある身体障害者でもあるこのKという青年が、ある日突然、全く身に覚えのないことで、爆発物不法所持ということで、これも布令違反ということらしいのですが、米軍に逮捕された。そしてすぐその日に起訴され、その同じ日に米民政府裁判所で裁判を受けた。ところが、裁判に使われる用語は全部英語であって、本人には何のことだか、全く何が何だかさっぱりわからないまま、弁護人もない、その日のうちに判決が言い渡され、そして即日刑の執行を受けたということなんでございます。そして本人はようやく刑の執行を終えて、そして現在社会に復帰しているわけなんでございます。このような状態の裁判が――これはつい最近のことでございます。むろん一九五五年以降のこと、たしか一九五八年だったと思います、本人がこの裁判を受けたのは。それがやはりこのK青年のことばによりましても、大体が同じような状態である。服役している者の話によると、K青年だけが何か非常に異常な事態で、非常にとてつもないことをやられたというのではなくて、まあ服役している者が、大体が、何が何やらわけがわからぬままに――全部英語でやられるのですから――わからないままに、何だかほうり込まれて、そして刑に処せられている。はなはだしいものにおきますと、自分はいま服役しているが、何の罪で何年の刑に処せられているのかもわからずに服役しているという者もあるという状態でございます。こういうことがこの文明国という日本で行なわれている。施政権こそ返っておらないが、日本の民族が、これがそういう苦しみを味わっている。しかも、現在の日本において、日本民族の、日本国民の一部がこのような不当な扱いを受けているということについて、これは法務大臣、いや総理大臣におかれましても十分にお考えいただきたいと思うわけでございます。こんなむちゃくちゃな、日本の法律や本土の常識では考えることのできない裁判が行なわれ、そして多くの、何人もの――いま判決を受けたのが九千人というお話でございますが、その大半が、全部が全部とは申しませんが、その大半がそういう状態で裁判を受け、そして前科者であるということになり、そして現在肩身の狭い思いで沖繩で暮らしておる。そういう国民の、全く不法な若しみに泣いているという現実を、これは総理大臣も考えていただきたいと思うわけなんでございます。この人たちが何のためにこのようなむちゃな取り扱いを受けているか、どういうわけで異民族のむちの下で泣かされているのか、耐え忍んでいかなければならないのか。これはこの一人一人の人たちには全く関係のないことでございます。これは沖繩の占領が、沖繩の米軍の軍事支配がずっと続いてきたための結果にほかならないわけでございます。私は総理大臣にお願いしたいと思います。このような不当な扱いで沖繩の獄中で泣いている沖繩県民、これは日本全体から考えればごくわずかな数かもしれません。しかし、現実に一つしかない自分の命を、あるいは一つしかない自分の一生を、前科者のらく印を押され、そして獄中で苦しまなければならない。わずかばかりの、ほんとうに取るに足らない窃盗事件で懲役二百年の刑に服しているというこの不幸な少年の親の身になって、親がどんな思いでいるかということも考えていただきたいと思うわけでございます。私は国民の一人として総理大臣にお願いしたいと思うわけでございます。どうしてこのような不当な異民族の支配による裁判の効力を承継しようとおっしゃるのか。これを日本政府が引き継ごうと言われるのか。私は総理大臣のこの問題に対する御見解、お考えをお伺いたしたいと思います。

前尾繁三郎自由民主党法務大臣

○国務大臣(前尾繁三郎君) 現実にそういう問題があったかどうかにつきましてはつまびらかにいたしませんけれども、ただいまお話しのようなものは、御承知のように返還後は日本の刑事訴訟法なり恩赦法が適用になりますから、当然再審の対象にもなり、また、いろいろ恩赦の問題もあると思います。

佐々木静子日本社会党

○佐々木静子君 これはつまびらかにしておらないというお話ですけれども、私はこれはどうあってもつまびらかにしていただかないと困ると思うわけなんでございます。この点について総理大臣の御見解を伺いたいわけでございます。

佐藤榮作自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(佐藤榮作君) いま法務大臣からお答えをいたしたとおりでございますが、ただ、実際問題として、わがほうの刑事局長が実情把握しているところと、先ほど来佐々木君の説明されるところ、ずいぶん違いがございます。いずれにいたしましても、私どもはこの実情もつまびらかにいたしますが、また、その後においての救済措置ももちろん必要でございます。とにかく異民族の支配を一日も早く祖国の支配、祖国の施政権下に置くこと、これが何よりも大事なことだと、これなくしては救済されないと、かように私ども思いますので、どうぞ御審議のほどよろしくお願いします。

佐々木静子日本社会党

○佐々木静子君 私は、これはこの事実を総理大臣あるいは法務大臣がはっきりとつまびらかにしておられないということを非常に残念に思うわけでございます。これは先ほども申しましたように、日本全体の国民から見るとわずかな数かもしれません。しかし、国民の人権を保障しようという人権尊重ということを第一義に考えている日本の憲法を持っているこのわが国において、そして人権が保障されているかどうかということは、これは位のある者、地位の高い者の人権というのは、これは野蛮国でも保障されているわけで――野蛮国ほど保障されているかもしれません。人権が保障されているかどうかというのは、一番下積みになっている人間の権利がどの程度保障されているかということが、人権が保障されるかどうかということになるわけでございます。私は、これは一人でも、三人でも、十人でも、百人の問題でも、これは大きな問題であると思います。一番下積みになっている人の人権を、これは総理大臣も法務大臣も大いに考えていただきたいと思います。そして、もしこれはつまびらかにしていらっしゃらないというのであれば、もし必要があるなら、私は聞いていただきたいのでございますが、現実に民政府裁判に苦しめられ、泣かされ、現実にまだ刑余者としてはずかしめを社会から受けて苦しんでいる人たちをこの委員会にでも御召喚なさっていただいたならば、彼らは喜んでその実情を切々と諸大臣に訴えると思います。私は聞いていただきたいと思うわけです。私は現実に刑を受けた人たちからなまの声として聞いているわけでございます。でございますので、この点を十分に考えていただきたい。これは単に沖繩県民の権利がどうなったこうなったということではなく、日本国民の権利がどのようにこの返還において扱われたかという重大な問題でございます。私はその点を十分に御配慮いただきたいと思うのでございます。  それから最後にもう一つ。法務大臣、いま、これらの不当な刑罰に服している人たちに対しては恩赦あるいは特赦なんかによって是正されるというお話がございました。私はこの救済方法というものがはなはだ片手落ちではないかと思うわけでございます。と申しますのは、恩赦、特赦の適用の対象にしていただいて、それらの不当な苦しみにいま悩んでいる人たちを解放していただくということは、その措置自体とすると非常にありがたいわけでございますが、恩赦とか特赦とかというものは、もともと罪を犯して、事実長い刑に服さなければならない者を、時の政府が、これはかわいそうだからひとつ許してやろうというのが恩赦であり特赦なんでございます。しかし、この現在服役している沖繩県民にはほとんど何の罪もないわけでございます。許しを請わなければならないのは、服役している人ではなくて、いままでそのような苦しい目にあわしておいた日本政府ではないですか。話が逆じゃないですか。許してほしいと頼まなければならない人間が、政府が、それらの人たちを許してやるというのは、私はこれは言語道断だと思うわけでございます。その点について法務大臣、どういうふうにお考えになっているのか、お述べいただきたいと思います。

前尾繁三郎自由民主党法務大臣

○国務大臣(前尾繁三郎君) われわれがそういう事実を承知しなかったということは、何らいままでそういうことに関心を持たなかったのではないのでありまして、従来から琉球政府あるいはいろんな関係の方々と話し合ってこの引き継ぎの問題もきめたわけでありますが、それにしましても、従来からそういう話は全然ありませんでした。したがって、もしただいまのようなお話がもうたくさんあるということでありましたら、いろいろいままでの交渉の経過のうちにあったと思います。まあ、そういう点から、われわれは承知していないのであります。しかし、ただいまお話もあり、またわれわれとしましても、また先ほど総理が言われましたように、われわれも返還前のことはいろいろ不都合があったと思います。返還後においてこれをほんとうに日本の施政権のもとに償っていく、あるいは、でき得る限りのことをやって、たとえば、したがって、軍人による裁判はすべて引き継がないということにもいたしておるわけであります。その辺で十分われわれはその点を周知して、ただいま非常に気の毒な点は今後明らかにして、みんなの満足のいくようにということを心がけていきたいと、かように思うわけでございます。

佐々木静子日本社会党

○佐々木静子君 いまの御答弁によりまして、この琉球政府との間の折衝の間にこの問題があまり公にされなかったということがわかったわけなんでございますが、この琉球政府の上には、何といいましてもアメリカ政府というものがあるわけでございますから、琉球政府といたしましては、このアメリカ政府のとった不法な裁判に対して、十分に日本政府に対して事をつまびらかに申すことができなかった、そういうふうな事情もあったのではないかと思いますが、ともかくこれは日本国民が異民族のもとに苦しめられていることでございますから、アメリカの政府の施政権のもとにある琉球政府の報告を待つのではなしに、日本の政府が、特に日本の国民の人権の擁護を一番考えなければならない日本の法務省、その他日本の政府が、これは進んで調査をなさっていただきたい事柄であると思いますし、またなさらなければならないのではないかと思います。なお、この裁判の問題について、これは奄美大島返還の場合には、刑事裁判については全面的にやり直しが行なわれました。沖繩の場合はこれはやり直しができない、これは数が多いからというようなことを、私は八日の協定委員会の御答弁の中に漏れ聞いたように思うのでございますけれども、その点はいかがでございますか。もう一ぺん全部やり直すおつもりはありませんか。

前尾繁三郎自由民主党法務大臣

○国務大臣(前尾繁三郎君) 数が多いというだけのことではもちろんありません。期間も長い間で、率直にいって、沖繩は沖繩なりの法的安定性というものができておるのでありまして、それを返還によって非常な混乱を起こすということは、法益という面から考えましても、とるべきではないということでありまして、ただ単に事件が多い――事実上これは不可能だとは思いますが――そういう理由だけではもちろんないんで、むしろただいま申しましたような法的安定性と法益上から考えまして、全部くつがえしていくということになりましては、これはたいへんであるというのが理由であります。

佐々木静子日本社会党

○佐々木静子君 いま数ばかりではないというお話でございましたが、これもちょっと重ねてお尋ねしたいのですが、現在沖繩刑務所――琉球政府の所管の刑務所に服役中の者、これは琉球政府の裁判も含めまして、これは全部で何人であるのか、これはちょっと法務大臣に先にお伺いいたしたいと思います。

辻辰三郎法務省刑事局長

○政府委員(辻辰三郎君) ちょっと資料が古うございますが、本年の二月二十七日現在で申し上げますと、受刑中の者は四百八十三名でございます。

安井謙自由民主党

○委員長(安井謙君) 大体お約束の時間のようですから。

佐々木静子日本社会党

○佐々木静子君 最後に一言。それでは時間がございませんので、私、最後に申し上げたいと思います。現在四百八十三名、これはこの間の十一月十九日の東京の一地方におけるデモその他によって逮捕された人の数だけでも千何百人とあるわけです。四百八十三名の裁判をやり直すということは実に簡単なことではないかと思うわけなんでございます。そして、いま法務大臣が、この裁判をやり直すことは法的安定性をそこない法益を害すると言われましたが、この法益こそ、これはアメリカ軍の安全のため、そのための法益ではございませんか。ほとんどの人が布令違反に問われており、アメリカ軍の安全を害したということで処罰されている。その人たちの裁判をもう一度やり直すべきだが、やり直さないとなると、これによって守られる法益はアメリカ軍の安全だけではございませんか。アメリカ軍の安全と沖繩県民の人権とどちらが大事なのか。日本政府はどちらを考えなければならないのか。私は、その点、総理大臣をはじめ各大臣によく考えていただきたいと思うわけでございます。そして総理は、かつて「沖繩返還が終わらなければ日本の戦後は終わらない」という名言をお吐きになりました。が、しかし、このような屈辱的な、日本人を植民地化し奴隷化した状態で沖繩返還を受けるということは、戦後が終わるどころか新たな苦難の植民地への道、奴隷への道を日本民族に歩ませる結果にならないとも限らない。私はその点を十分お考えになりまして、この協定第五条についてもう一度政府として十分な人権保障をお考えいただくことを切にお願い申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)

安井謙自由民主党

○委員長(安井謙君) 以上で佐々木君の質疑は終わりました。     ―――――――――――――

安井謙自由民主党

○委員長(安井謙君) 次に、中尾辰義君の質疑を行ないます。  中尾辰義君。

中尾辰義公明党

○中尾辰義君 私は沖繩の返還後におけるところの自衛隊の沖繩防衛についてお伺いをいたしたいと思いますが、沖繩返還は一九六九年の佐藤・ニクソン共同声明にその基礎が置かれておる。したがって、沖繩返還といいましてもこの共同声明と不可分の関係があろうかと思います。したがって、私は質問の順序といたしまして、この共同声明とどういう関係があるのか、その関係性について若干お伺いをしてみたい、このように思うわけであります。  要するに、日米共同声明というのは、アメリカがベトナム戦後ニクソン・ドクトリンによってそのアジア政策の修正を余儀なくされた。その中において、沖繩返還と同時に果たすべき日本の役割りというものを日米両国において確認したものと私は理解しているものでありますが、総理、いかがでしょうか。

佐藤榮作自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(佐藤榮作君) 私が総理として初めて沖繩を訪問したのが一九六五年でございます。それまでは、戦後の総理がなかなか沖繩にも出かけなかった。そうして私は沖繩の現状に触れて、これはこのままにしておいては、同胞の苦難というだけではない。結局日米間の関係もまずくなるのではないかと、たいへん私は心配をいたしたのであります。私が申し上げるまでもなく、日本は自衛隊は持っておりますけれども、これでわが国の安全を確保することはなかなか困難でありますから、日米安全保障条約を締結してその足らざるところを補っていくと、こういうことで、それを国是として日本の安全を確保しておる、その立場でございますから、私が出かけてみまして幾多の不都合、そういう状況にぶつかった際に、ただいまの点を深く胸に刻み込んだのであります。その後、私がアメリカを訪問したのが一九六七年、ジョンソン大統領の際であります。その際に沖繩問題の返還について何かきっかけをつかむことはできないかと交渉いたしたのであります。しかし、当時は、沖繩は御承知のように太平洋のアメリカの防衛のキー・ストーンだといわれておる、そういうことでありますので、なかなか簡単にこの返還に応じてくれるような気配すらなかった。しかし、まず第一の問題といたしまして小笠原は返そうと、こういうことでございました。小笠原が返ってくることによって、アメリカも十分考えてくれるなと、こういうことを思って私は次の機会をねらったのであります。それが一九六九年、ニクソン大統領と私との共同コミュニケになった。この際も、そのキー・ストーン的な役割りを高くアメリカは考えておりますから、話をつけるにいたしましても、沖繩の返還ということについて考えるにいたしましても、核抜き・本土並み、同時に早期返還と、かようには申しましても、その際にベトナム戦争がどういうことになっているか、これに十分の考慮を払ってくれろという、そういう条項のあったことは記憶に存するところであります。私はまあそういう経過をたどってきてこの問題と取り組んだと。とにかく日米安全保障条約のもとにおいて相互の信頼関係が一つのポイントである。同時にまた一方においては、百万の同胞が二十六年のアメリカの占領下においてその生活にはたえられないという、あらゆる機会に祖国復帰を願っておると、これがアメリカの意を動かすことになったと、かように私は思っております。沖繩の戦中戦後を通じての米軍の支配、軍政から民政に移ったとはいいながらも、やはり軍政とあまり変わらないような民政下において苦難の道を歩んでこられたのであります。このことは、私どもも沖繩をあたたかく迎えたいと、かように考えますが、同時に、県民百万の方々が祖国に復帰したい、その熱願が実って私はさきの協定がようやくできたと、かように思っております。しかし私は、これで十分なものができたと、かように言うのではございません。私は、いろいろまだまだくふうすべきものが大いにあると、こういうことを考えますが、アメリカ側の一方的な情勢の変化あるいはアジアの情勢の変化と、こういうだけで今回の返還協定、これを割り切るわけにはいかない、かように私は思っておりますが、これは何といっても日本の持つ力、そういうものが背景になり、同時に、百万の沖繩県民の祖国復帰の熱願、そういうものを取り上げざるを得ない状況になってきたと、かように考えるのが正しい見方ではないだろうかと思います。そういうことを取り上げることのできるようなアジアの情勢もかもし出されておると、そういうことが手伝ってこの状況が進んだと、かように考えるのがいいんじゃないだろうか。と申しますのは、共同コミュニケにおける第四項、いわゆるベトナム戦争が行なわれておりましても、今回の返還協定に際して、さらにその問題について触れることなしに返還協定を調印ができたと、こういうようなことなど考えると、私はアメリカ側の考え方もさることながら、日本側の考え方、これについてアメリカ自身が十分理解してくれた、かように考えるべきじゃないだろうか、かように思います。

中尾辰義公明党

○中尾辰義君 沖繩が返還することは、これは日本国民として当然歓迎することであります。なお、ただいま総理がおっしゃったように、ただ返還ということだけではなしに、やはり返還を一つの境として、米側のほうでいろんな注文がつけられているような私は感じがする。そういうことで、まあ共同声明のこの内容、少し触れてみますというと、まず安保条約の長期堅持、つまり自動延長を当然のこれは前提としておるわけですね。それから、沖繩の米軍がアジア全域に対する重要な役割りを果たしていることを認める。さらに、極東の平和と日本の安全とは密接不可分である。なお、沖繩の施政権の返還は、日本を含む極東諸国の防衛のために米国が負っている国際義務の効果的遂行の妨げにはならないといい、それから、核兵器についても、安保条約の事前協議制に関するアメリカの立場を害することなく、さらに貿易、資本の自由化の促進と、こういったような大まかな、私が申し上げたのは大まかなことになりますけれども、こういうような内容から判断をいたしまして、やはりニクソン・ドクトリンによる米軍のアジアよりの後退、さらに米国経済の立て直し、ドル防衛対策、まあ、そういったような観点から、アメリカのアジア政策の修正を余儀なくされた。そしてその穴埋めを、軍事的、経済的にも日本がアメリカの肩がわりをする。まあそういうのがこの共同声明の構想と受け取れるわけですが、この点はいかがですか。

佐藤榮作自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(佐藤榮作君) 大体ニクソン大統領と私との間の基本的な共同コミュニケの読み方は、これは中尾君と私との間にあまり相違はないようでございます。ただ、私が指摘したいのは、日本がアメリカの肩がわりをするという、それについては相当抵抗を感ずるのでございます。と申しますのは、私どもの持っておる憲法、同時にまた自衛隊、そのもとにおけるその防衛力、これはアメリカが持っているような無制限なものじゃございませんから、肩がわりなどできるはずはない。肩がわりをするにしても、それはきわめて狭い範囲、いわゆる沖繩の防衛そのものについては、これはもう本土に返ってくれば、復帰されれば日本の自衛権のその範囲内に入ることは当然でありますから、そういうことは、これはまあ肩がわりといえば肩がわりかしらないが、しかし、アメリカが持つアジアにおけるアメリカ軍の果たしておる役割り、それを私どもが肩がわりなどできるものじゃございませんから、そこらの点は誤解のないようにお願いをしたいと思います。

中尾辰義公明党

○中尾辰義君 それはまあ軍事的、経済的に、全部が全部肩がわりということはあるいはできないかもしれませんけれども、ある程度の相当な肩がわりがあり得ると、これは現実におけるアメリカの、ベトナム戦争に失敗した、まあ、その後非常にインフレになって失業者がたくさん出てくる、そして反戦機運も盛り上がってきた、どうしても経済的に立て直していかなきゃならない、そういうようなことで、やはりこのニクソン・ドクトリンというものが発表になったわけです。やはりその線に沿うて沖繩返還というものもあったんじゃないか。ただ総理がおっしゃるように、沖繩をこちらに返してもらう、そういうような単純なものでは私はないと思う。そこで共同声明、あの条文を読んでみまして、非常にこれは巧妙に書いてありまして、われわれが非常に理解しにくい点があるのですね。その辺にもう国民の疑惑がある。ですから、そういう点についてお伺いをしてみたいと思うのですがね。  まず、共同声明の七項には、先ほど申し上げましたように、沖繩の施政権の返還は、日本を含む極東諸国の防衛のために米国が負っている国際義務の効果的遂行の妨げにはならない、ここのところのくだりはどういう意味なのか、当事者の総理みずからにひとつお伺いしたいと思います。

佐藤榮作自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(佐藤榮作君) そこに書いてあるとおりでございます。ただいまお読みになったとおりであります。これが、沖繩が日本に返還されても、祖国復帰をしても、アメリカが別に変わった力にならない、これによって非常に削減されるか、さようには思えない。これはもう申し上げるまでもなく、技術、科学の進歩によりまして、私は沖繩に米軍基地が絶対に必要だと、かようには私、考えませんので、そういう点はアメリカも十分理解しておる、かように思っております。

中尾辰義公明党

○中尾辰義君 だから、そういうような答弁をおっしゃるからわれわれも理解に苦しむし、国民も日米共同声明というものが何となくべールに包まれておる感じがする、こういうことでしょう。ですから、「米国が負っている国際義務の効果的遂行」、ここのところだけそれじゃ説明をしてくださいよ、どういうことなのか。

佐藤榮作自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(佐藤榮作君) 安全保障条約、これでは日本の安全も確保いたしますが、同時にアジアの諸地域についての安全、平和も確保する、こういう二つの使命がございます。われわれがかわり得るのは日本の安全、この確保についてはわれわれは幾らでも、これは当然のことですから、わが国の自衛隊で受け持つことができる、かように思いますけれども、もう一つの広いほうの意味のものは、私どもの力の及ぶところではございません。これが、ただいまの沖繩を日本に返したからといってアメリカの力がそれによって云々されるものではないと、こういうことでございます。

中尾辰義公明党

○中尾辰義君 私は、今回の沖繩返還というものが、ニクソン大統領の共同声明におけるところの内容を現実化する一つとして行なわれているんじゃないか、このように思うわけであります。すなわち、今日アメリカはアジアにおきましていろんな条約を結んでおるわけです。米韓、米台、米比、ANZUSの諸軍事条約、こういうものがある。したがって、沖繩は極東最大の基地として極東自由諸国をつなぐ防衛線の結び目になっている。だから、これは軍事条約上は扇のかなめとして位置づけられておりまして、それは現在沖繩がアメリカの施政権下にあるからである。ところが、今回返還になる。返還になりますというと、これは法理論的にいいますと、総理がおっしゃったように安保条約が適用になる。したがって、従来のような自由発進基地としてはこれは機能に制約を受けざるを得ない。そこで、その沖繩の基地機能を返還後も維持するために共同声明にこのように盛られたのじゃないか、このように理解するわけでありますが、その点はいかがですか。

佐藤榮作自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(佐藤榮作君) いまの前段は、中尾君と私と同じ考え方でございます。その前段を承認すれば、沖繩の米軍の質的な変化、これを認めざるを得ないのではないでしょうか。私は、自由かってに基地を使用しておる、自由出撃、これもできている、こういうものが安保の体制下に制限を受けるのですから、そういたしますと、現在とはその意味において質的に変わってくる。また、量的の問題についてはこれから後の問題ですが、さらに量的にも変化を来たすだろう。最も大きな変化は、何といいましても、返還後においては核は沖繩になくなる、米軍は核は取り除く、こういうことでありますから、この点が量的にも質的にもたいへんな変化じゃないか、かように私思いますので、従前とはこれは事変わる、かように理解しておるわけであります。

中尾辰義公明党

○中尾辰義君 私も総理のいまの答弁を信じたい。信じたいのでありますけれども、あの文面を読むといろんな疑問が出てくる。また、いろんな解釈をしておる人もありますしね。ですから、そういまの答弁をそのままストレートで私は信ずるわけにいかぬのです。まあ、ただいま申し上げましたような「国際義務の効果的遂行」の項、これは非常に私は大事なことであると思います、よくよく考えてみますと。ですから、先ほど申し上げましたようないろんな極東諸国との条約の結ばれておる今日、その中にあって沖繩が返ってくる。たとえ日本が安保条約が適用になりましても、どうしても米韓、米台等の軍事条約の一端を、まあちょっとオーバーになるかしれませんが、負わなければならぬような羽目になるんじゃないか。この辺が問題になっておるところですからね、重ねて私はお伺いしたい。

佐藤榮作自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(佐藤榮作君) いまの点がいろいろ議論の分かれるところでございます。米韓、米台、そういう条約、これはいまのアジアという極東の関係におきましてそういう条約を結んでおる。それに変化を来たす、さような状態になるとこれはたいへんではないか、これはアメリカ側がそう考えるのが普通だろうと、こういうことでありますから、アメリカ側の考え方になれば、日本は、沖繩は返してもらったけれども米軍の力は変わらないという、そこらに何か密約でもあるんじゃないかと、かように疑ってかかられる、こういうこともあろうかと思いますけれども、私は、しかし、もっとまっ正面から取り組んで、アメリカ自身が沖繩の日本への返還、これを考えたと、そうしたら沖繩駐留の米軍は安保の範囲内にとどまること、これはもう当然のことなんで、そのことを百も承知で沖繩を日本に返すんだと、さようにすなおにとったらどうだろうか。私は、これはアメリカが返さなくてもいい状況にある、占領は続けられる、そういう状況下にあって日本に返そう、かように考え、みずからが制限を受けること、それも差しつかえないんだ、さように考えたからこそ初めてこれができる。むしろ、そのことのほうがアジアの緊張も緩和の方向に向かうんじゃないでしょうか。私はやはり平和というものはそういうところにも問題があるんじゃないだろうかと思います。私は対立ばかりがほんとうの平和維持ではないと、かように思いますから、このことは私ども歓迎すべき事柄だ、かように思っております。ことに、ニクソン・ドクトリン――グアム・ドクトリンなるものが、アジアにおいての、いわゆるアジアに駐留する力でどうこうというようなことはしないで、むしろこれから撤退していこうという、そういうような考え方のもとにおいてもアジアの平和は維持される、かように考えているところに私どもも思いをいたさなければならない。昔のようなままの状態なら、これはやはりもっと近いところに基地を持たなければ、安全は、また自分たちの権益は維持できない、かように考えるのが当然でしょうが、今日はさような状態ではない。そういうことを考えると、いまの沖繩を日本に返してもらう。また、米軍の基地が変わっても、そこらのことは大体維持できると、かように考えるのがこれは普通ではないだろうか、かように私は思います。

中尾辰義公明党

○中尾辰義君 それは総理は、総理の答弁を私に押しつけるような方向でおっしゃるようですけれども、そうばかり外交問題をお人よしに考えるわけにいかないと思うんですね。これはいままでもずいぶん議論もされたんですが、あなたは安保条約が適用になる、憲法の第九条がある、だからそう御心配要りませんよと、こういったような答弁、従来までの答弁の繰り返しでございますけれども、やはりこれは、まあ事前協議がありましても、この事前協議はこれまた共同声明におきまして「米国政府の立場を害することなく」、こういうふうになっております。そうしますと、アメリカの作戦行動のための出撃あるいは核の持ち込み、こういうことも、そうそうノーとばかり言えないんじゃないか、このように危惧するわけです。その辺、ひとつお伺いしたい。

佐藤榮作自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(佐藤榮作君) 衆議院でも核の持ち込みということについていろいろ問題がありました。もちろん、本会議におきまして衆議院の決議がなされて非核三原則を確認するし、また、核の持ち込みについても政府は厳粛に政府の所信を表明したのでございます。また、どんな場合でも核の持ち込みには反対だと、ノーですと、このことをもうはっきり実は申しておりますので、今日はもう疑念はないと、かように私は確信をしておりますが、どうか、ただいま申し上げますように、事前協議の対象、その場合には核の持ち込みはノーであると、これを御了承いただきたいと思います。

中尾辰義公明党

○中尾辰義君 要するに、事前協議は、理論上は総理がおっしゃったとおりと私も思う。理論上はですね。しかし、現実の場面になった場合は、非常にこれは私は心配だ。核の持ち込みにしても、一々一々それが点検できるわけじゃございませんし、事前協議の内容等も、すでに議論されておりますけれども、日本から出撃してそうして日本に帰る場合は、それはなるけれども、途中で戦闘作戦命令を受けた場合は違うとか、いろんな問題がはらんでおりますし、なお米側におけるところのアメリカの上院外交委員会におきましても、ジョンソン国務次官が、沖繩返還の問題は、われわれがそこの基地から出て行くことは何の関係もない、われわれは沖繩の基地構造を維持するんだと、こういうふうにはっきりと発言をしているんですね。こういう点から、どうもこれは単に核の持ち込み云々だけでなしにして、まあ作戦行動の出撃、そういう点から、いろんなさっき申し上げましたような極東諸国との軍事条約もあるわけですから、どうも総理のおっしゃるいまの答弁を私はそのまま信頼するわけにいかない。ですから、この点、もう一ぺんひとつ明確に答弁してくださいよ。

佐藤榮作自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(佐藤榮作君) 中尾君はたいへんものわかりのいい方だと思うのであります。ただいまのような、いつまでも疑問を投げかけられては実は困りますが、とにかく、日本とアメリカとの間には基本的には信頼関係があるからこそ安保条約を結んでおるわけであります。信頼関係のないところにいわゆる安保条約など存在するわけはございません。私どもお互いに信頼し合うからこそ安保条約を締結しておる。さように考えると、ものは疑うこともそれは必要でございますけれども、基本的には、やはり何といってもお互いに信頼し合う。信頼し合うからこそまあ夫婦にもなるということであります。私は夫婦の場合と、安保条約を結んだ場合と同一に考えておるわけじゃありませんけれども、とにかく提携するという関係においてはお互いに信頼し合うという、たより合うという、そういうものでなければならないことは、これは御了承いただけるだろうと思います。私は、そういうもとにおいて、その最高責任者――大統領と私――が返還後は核抜きにしよう、こういう約束をしたと、これは私は守られる、また守られなきゃならない、かように思いますし、また事前協議、これは祖国に復帰した後は、日米安全保障条約の諸取りきめ、本法はもちろんのこと、諸取りきめも全部そのまま沖繩に適用される、こういうことでございますから、事前協議の条項もこれはそのまま適用になる。そうすると、事前協議の場合に、日本の意向に反してアメリカは自分たちがかってな行動をとるようなことはいたしませんと、かように申しておりますから、私どもがノーと言う限りにおいて、それが実施されようとは思いません。  また私は、これはぜひ理解していただきたいと思うのは、私どもが自由出撃、そういう出撃ということに対して相談を受けた場合に何を一体心配するのか。わが国の平和と安全を一番心配するのであります。私どもが戦争に巻き込まれる、かようなことがあってはならないのであります。そういう意味で、いままでもたびたび事前協議の条章について慎重に、国益に関して、それが国益に沿う、そういう処置をとる、こういうことをたびたび申し上げましたが、その点に一番の主眼点があります。私どもが事前協議を受ける、その際にわれわれが考えなきゃならないことは、わが国の平和と安全でございます。さようなことを考えると、ただいまのような諸点は、私、これはアメリカも了承の上で祖国に沖繩を返還しようと、かようになっておるのでございますから、ただいまいろいろな話が出ておりますけれども、あまり私は気にしなくていいのじゃないかと、また本来の本筋をとにかくお互いに了承し合って進むべきではないだろうかと、かように考えます。

中尾辰義公明党

○中尾辰義君 まあ本来の本筋を理解してということでありますけれども、沖繩返還そのものには私はこれは別に――歓迎するところですけれども、やはりこういうところで問題点を検討していかなければなりませんよ。時間がありませんので、どうも時間に制約されますのでぐあいが悪いのですが、次にいきます。  そこで次に伺いたいのは、共同声明第六項の「沖繩の局地防衛の責務は日本自体の防衛のための努力の一環として徐々にこれを負う」、こうございますね。これもニクソン・ドクトリンに基づく在日米軍の縮小、これに見合うところの日本の沖繩防衛体制の確立のためということにはなりますけれども、それと同時に、また安保条約の第五条にいう日米共同防衛に加えて、沖繩の平時における日米共同防衛体制を日米間の協定によってつくり上げたと、このように理解されますが、いかがですか。

佐藤榮作自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(佐藤榮作君) 足らない点、あるいは別な点から防衛庁長官にも答えていただきたいと思いますが、過日も衆議院の本会議で、基地の整理について決議がなされました。これに対しまして私も、厳粛に政府の所信を表明したのでございます。また思い起こすのは、つい二、三年前、これは皆さん方公明党からも基地の総点検をしろ、そうして不要不急のものがずいぶん残っているじゃないかと、こういうような御指摘がありました。そうして基地の整理に取り組んだことを思い起こすのであります。横浜の市内におきましても、皆さん方の御指摘によって整理されたものがあの海岸にもあるはずであります。今日の状況において、沖繩の基地はたいへんな密度の高いものでございます。また、ことに特殊部隊だとか、あるいは演習地だとか、ずいぶん膨大なものを持っている。さらにレクリエーションの場もこれまた軍用地として特殊な使用をしている。これなど、いろいろ整理すべきものがこれからあるのではないかと、私はかように考えておりますので、これらの問題についても私どもはさらにさらに努力しなければならぬと、かように思っておる次第でございます。

中尾辰義公明党

○中尾辰義君 私は、この自衛隊の沖繩配備計画というものを、単にわが国の自主防衛体制の確立という点でのみとらえたのでは、日本国による沖繩局地防衛責務の引き受けに関する取りきめ、つまり久保・カーチス協定がなぜこのように結ばれたのか非常に理解に苦しむわけです。何ゆえ対外的に履行する義務を負わされている国際協定を結ばなければならなかったのか、この点、ひとつお伺いしたいと思います。

江崎真澄自由民主党防衛庁長官

○国務大臣(江崎真澄君) この問題は、施政権がある日、間隙なく、要するにアメリカから日本へというわけで移ります。その時点におきまして、日米安全保障条約に基づいて米軍が駐留するという事態、それと、主権が日本に戻りまして、その主権のもと局地防衛を担当する、民政に協力をする、特に災害常襲県という名称が冠せられるような島でありまするので、その災害復旧も果敢に行なうということで自衛隊が配備につくわけであります。したがって、その自衛隊を配備するにつきまして、その予定等を、日米安全保障条約によって共同防衛のたてまえにありまするので、久保・カーチス取りきめが行なわれたわけであります。  詳細については、久保防衛局長がこの席へ来ておりまするので、御説明をいたさせます。

久保卓也防衛庁防衛局長

○政府委員(久保卓也君) 沖繩に対する自衛隊の配備は、日本の施政権に基づく当然の行為でありますが、その際に、返還までは米軍が防衛を担当していたその機能を自衛隊が引き継ぎますし、また、米軍の使用しておりました施設を日本側がこれを引き継いで自衛隊の基地として利用するという関係上、いろいろの手続的なこと、あるいは事務的、技術的なことがあります。そういったことの打合わせをし、事実を確認するといった事務的な取りきめであるということでありまして、当然行なうべききことについて米側と約束をするとか、わがほうが義務を負うとか、そういったしろものではございません。これは、内容を詳しく申し上げればそういう点がおわかり願えると思います。

中尾辰義公明党

○中尾辰義君 この久保・カーチス協定は、日米安保協議委員会の承認を得ておるわけですが、私は、いままで自衛隊の配備について、たとえば自衛隊を北海道に配備すると、こういった場合に、一々日米安保協議委員会にはかったためしはないと思うんです。なぜ今回に限りこのように協議委員会にはかったのか。はかるということは、結局この沖繩の防衛というものが日米間の協定によってささえられておる。そうして沖繩の日米共同防衛という新しい日米安保の拡大強化、こういう点も考えられるわけですからですから、私はその点をお伺いしておるわけですよ。

江崎真澄自由民主党防衛庁長官

○国務大臣(江崎真澄君) 日米安保の拡大拡大強化ではありません。で、これはいま防衛局長が申しましたように、きのうまで米軍の施政権下にあったわけですから、これが一部返還をされるもの、また駐留をするものというわけですが、日本の自衛隊が入ってまいりましたときに、その交代あるいは自衛隊の配置、これは性格の違うアメリカの軍隊でありまするから、そこへ自衛隊が入ってまいりまするので、それをスムーズに事務的に行なうために協定をしたと、こういうふうに御理解願いたいと思います。

中尾辰義公明党

○中尾辰義君 それならば正式な安全保障協議委員会にはかる必要もないと私は思うんですね。それと、今度沖繩に展開される陸海空自衛隊の任務ですけれども、これは地上防衛、防空、海上防衛、それから哨戒と捜索等があげられている。そうして沖繩を中心とする防空識別圏での航空警戒管制と周辺海域の警備、これが重点になっておるように聞いておりますが、この久保・カーチス協定の中にも具体的に、これは協定の三のb、合衆国は自衛隊の受信及び送信施設の設置に協力するものとし、かつ、可能な場所では合衆国軍隊の施設及び区域内にこれらの通信施設を受け入れることを考慮する、こういうようなことから考えてみますと、沖繩の自衛隊は、日本がやはりアメリカの極東戦略の中のほうにずっと深く包み込まれた、こういうような考えを持つのですが、その点、いかがですか。

江崎真澄自由民主党防衛庁長官

○国務大臣(江崎真澄君) さっき総理の答弁にもありましたように、沖繩が戻ってくることによって、かりそめにも日本の平和確保にかげりができるようなことがあってはならぬと思います。そのために事前協議もありまするし、これはあくまで日本の平和を確保するということで事前協議に臨むわけでありまするから、御心配の点等につきましては十分慎重に考慮し、また日本の立場が通りまするように今後とも努力をしてまいらなければならぬと思います。日本がことさらに極東の防衛ということに沖繩の配備によって深く引き入れられた、そういう事実はもちろんございません。さっき申し上げましたように、この任務の分担、基地に自衛隊が配置されまするときにスムーズにいけるように、そうして新しい自衛隊がいわゆる局地防衛に、民生に協力することがこれまた円滑にできるように事務的に取りきめたのが、あの協定であります。

中尾辰義公明党

○中尾辰義君 それでは、この久保・カーチス協定がこの国会に提出されるまでの経緯について、どうも納得いかない点があります。先ほどあなたの答弁によりますというと、政府は、この取りきめは単純な事務的なものだと、こういうことでした。そうしますというと、これは条約、協定ということにはならないのか、その点、いかがです。

久保卓也防衛庁防衛局長

○政府委員(久保卓也君) 協定といいます場合にアグリーメントということばを使っておりますが、これはアレンジメントということで、政府間の約束ごとということよりも、両国防担当の部局間で事実行為を確認したと、事実を確認をしたということであります。したがいまして、条約とかあるいは協定とかいった、そういう性格を持つものではありません。

中尾辰義公明党

○中尾辰義君 どうもそういう点が私は非常にごまかしもあるように思うんです。ですから、逐次お伺いしますけれども、まず、この取りきめは日本国防衛庁代表、それから合衆国国防総省代表が云々と、こうなっておるのですね。これは日本国防衛庁を代表する者は防衛庁長官以外にないと思いますが、その点、いかがですか。

江崎真澄自由民主党防衛庁長官

○国務大臣(江崎真澄君) そこでさっき御説明申し上げたように、円滑に交代ができ、円滑に配備ができるようにというまあ事務的な取り扱い、こういうわけで事務担当の責任者である防衛局長が取りきめをしたと、こういうふうに御理解願いとうございます。

中尾辰義公明党

○中尾辰義君 それにしても、この協定の内容を見ますと、これは久保局長が日本国防衛庁の代表、こういうことになりますか。それならば、その授権行為といいますか、一局長――局長といいましてもこれは事務官ですから、それに権限を委任する、付与するというような授権行為、こういうものがあったのかどうか、その点、お伺いしたい。

久保卓也防衛庁防衛局長

○政府委員(久保卓也君) この取りきめについて、たとえば課長であってはいけないということではございませんけれども、しかし、内容が内容でありますので、事務的な責任者としては私になる。したがいまして、私がなぜできるかと申しますと、まず防衛庁としましては、防衛庁設置法の四条、五条でそういった権限、責務がある。そしてまた防衛局といたしましては、設置法の十二条でそういった部隊の配備その他を所掌する事務を負っておる。したがいまして、事務の責任者としては私である。しかし、こういった事柄を結ぶについては、当然防衛庁長官の――口頭でありますが――命令及び指示によってやったことであります。格別の授権行為というものは必要ではないと思います。

中尾辰義公明党

○中尾辰義君 防衛庁長官の口頭によってあなたが委任されたと。口頭でできるんですか、そういうことは。いつあなたにそういうことを口頭でやったのか、だれも見てない。だから、そういうことは、これは国内的にも国際的にも明確にすべきですよ。口頭で言った――そういういいかげんなごまかしじゃ困る。

江崎真澄自由民主党防衛庁長官

○国務大臣(江崎真澄君) これはおそらく中曾根防衛庁長官のときだと思いますが、その経緯については防衛局長から説明をいたさせます。

久保卓也防衛庁防衛局長

○政府委員(久保卓也君) この種の行為は通常のことでありまして、別に文書でもって長官が局長に指示をするといった必要はございません。本来、設置法に基づきまして私がそういった事務を扱う責務を負うております。しかしながら、事務を遂行するにあたっては、長官の指示を常に仰いでおります。特定のいつの日だったかは別に覚えておりませんが、そういうような性格のものであります。

中尾辰義公明党

○中尾辰義君 この取りきめの内容ですね、これは局地防衛責務の引き受けということでありますけれども、その具体的内容というものは防衛庁長官のみが決定し得るんじゃないか。そういう権限があるんじゃないか。だから、それがたとえ久保局長に授権行為をしたとしても、私は無効であると思うのです。その点はっきりしてください。

江崎真澄自由民主党防衛庁長官

○国務大臣(江崎真澄君) 久保局長に委任をしてやらせたわけでありまするから、最終的な責任はもちろん防衛庁長官にあります。

中尾辰義公明党

○中尾辰義君 ですから、さっき言ったでしょう。そういったような授権行為というものを、国内的にも国際的にも明確にしたのか。あなた方が口の先で言ったということだけでは、ここは通りませんよ。その点、いかがです。

江崎真澄自由民主党防衛庁長官

○国務大臣(江崎真澄君) これは事務処理の慣習で、何も防衛庁だけでなくて、各省にもそういう事例はあるというふうに思います。

中尾辰義公明党

○中尾辰義君 各省にもあるからという、そういうごまかしは困るんですよ。いやしくも、日米両国における防衛当局が、こういようなはっきりした協定を結んでいるんですからね。どうもこの辺に私はごまかしがある。いろいろと私が聞いておるところによりますと、どうも最初はこの協定というものは、審議を刺激をするとぐあいが悪いというのか、国会には出さない、こういうような方針であったけれども、アメリカのほうで先に上院に出してしもうたから、あわててこれは出さなければいかぬというようなことで出たんだ、こういうようなことも私は聞いている。そうしてまた、いま言ったような経緯を聞いてみると、どうも明確でない、答弁が。  それでお伺いしたいんですが、この自衛隊法によりますと、軍・師団、こういったような根幹部隊の編成、配置はこれは法律事項として国会の承認を得なければならない、それ以下の部隊についても政令できめるべき事項となっている。政令できめなければならぬのですよ。ですから、これだけの部隊の配置を外国に約束するについて、何らかの政府としての意思決定がなされたと思うけれども、これは閣議決定があったんですか、閣議の決定が。その点、お伺いしたい。

久保卓也防衛庁防衛局長

○政府委員(久保卓也君) これは部隊はこまかい部隊がたくさんありますので、法律事項に該当するものはございません。  なお、この取りきめの内容自身につきましては、外務、大蔵、官房長官、御三人の大臣の方々には御報告してあります。もちろん、事務的に各省の連絡もついております。そういったことで、事務的に進めておることでありまして、格別閣議に御報告するような案件ではないというふうに考えております。

中尾辰義公明党

○中尾辰義君 それがおかしいんです。事務的にこういう大事なことを流しちゃうという、そういうような姿勢がおかしいんですよ。当然、閣議で決定をして、そうして政令に基づいてこれこれの内容に基づく沖繩の防衛計画というものをきめた、これを発表するのは当然じゃありませんか。その辺にも私は疑問が出てくる、その点、いかがですか。

江崎真澄自由民主党防衛庁長官

○国務大臣(江崎真澄君) ただいま防衛局長がお答えをしたとおりであります。したがいまして、これは秘密でも何でもありませんので、表に出しておるというような次第です。

中尾辰義公明党

○中尾辰義君 だから、閣議で決定をしたのか、していないのか。そうして当然これは政令等できめるべきものだ、こう言ったでしょう。それを答弁してください。

久保卓也防衛庁防衛局長

○政府委員(久保卓也君) 先ほど申し上げましたように、閣議では決定いたしておりません。  なお、部隊の配備その他については長官の権限にゆだねられております。一定規模以上のものは法律あるいは政令というふうになっておりますが、今日の段階の部隊では、まだ政令の段階に至っておりませんで、防衛庁長官の専権事項として部隊が派遣できるということになっております。

中尾辰義公明党

○中尾辰義君 今日の段階では政令に至っていないなんて、すでにアメリカとこういうような協定結んでいるじゃありませんか。向こうのほうが先で、日本の国民のほうがあと回し、こういうことになります、そういうことでは。新聞等に出たのは、あれは新聞記者の皆さんが、あらあらの情報を得て出たのであって、正式には出ていないということなんです、これは。そういうところにもごまかしがあるんですよ。何となしにわからないように、やみからやみへ、あまり国会を刺激するようなのはぐあいが悪いと、そういう姿勢、そういう態度が明らかに出ておるじゃありませんか。しかも、沖繩復帰対策要綱というのは、沖繩が復帰してから今後どういうようにしていくか、第一次、第二次、第三次の対策要綱が、これは閣議決定をされているんでしょう。そうしていろいろなことが出ておりますけれども、その中には自衛隊のことは全然書いてない。当然これは復帰対策の一環として、沖繩にはこれこれの――佐藤総理がよくおっしゃる自主防衛論に基づきまして――六千名程度の自衛隊はこういうふうにして配備をしますよと、それに基づいて予算要求もしなけりゃならぬじゃありませんか。どうです、その点。

江崎真澄自由民主党防衛庁長官

○国務大臣(江崎真澄君) 当然これはわが国に主権が戻るわけですから、沖繩県の責任は自衛隊が負うと、こういうことになるわけであります。したがいまして、沖繩の防衛というものを防衛庁自体で十分検討した数字がああいう形になってあらわれ、それから、さっきも繰り返し申し上げましたように、久保・カーチスの取りきめというものは、きわめて技術的にスムーズに配置されるような取りきめ、あれによって決定したわけじゃありませんので、防衛庁独自の立場でもちろんどの程度のものを配備するかということは議せられたわけであります。

中尾辰義公明党

○中尾辰義君 防衛庁独自の立場というのはおかしいですよ。こういうことは、やはり閣議決定して、政令に基づいてそしてはかるべきものじゃないかと私は思います。こういう点は、ミスはミスとしてあなたははっきり認めなさいよ。私はいま、こういったような久保・カーチス協定の手続の欺瞞性――というのは、ちょっと表現がうまくないかもしれませんが、どうも納得いかないですよ。こういうことを伺ったわけですけれども、こういうことで、久保・カーチス協定によって、沖繩の平時におけるところの日米共同防衛態勢というものがつくりあげられた。そして、そうなりますと、わが国の自衛隊が、極東における軍事的分担を引き受けるべく位置づけられたように私は理解をするわけであります。さらにこの専守防衛――従来の考えでありますが、専守防衛から、日米共同防衛による制海権、制空権の確立へとその目的を変えているように思われる。これは中曾根長官が、四次防の構想は、当然制海権、制空権をある程度入れなきゃならぬような発言もあったわけです。そしてこの四次防の展開というものが、今後米軍の極東戦略下にもしも入るようなことがありますれば、これは大きく日本の防衛の進路というものを転換をするわけであります。非常に大事な問題ですね。大事な問題をあなた方が何となしにまあやみからやみへ――という表現はあんまりよくないかもしれませんが――流しておるというような私は感じがするんです。  そこで、四次防計画について、時間がありませんので、若干お伺いしたいと思います。  まず、四次防につきましては、総額五兆八千億というこの防衛庁の原案、過去ずいぶん論議を呼んだわけでありますけれども、最近に至りまして財政当局から、米国のドル防衛対策発表後の国内の不況、経済見通しの困難、こういうことから一年の延期論を唱え、それに対して防衛庁は五千億程度削減するから、来年一月には国防会議決定を見て、計画どおり来年度より発足させたい、このように働きかけておると私は聞いておるわけであります。過日の新聞報道では、竹下官房長官の発言として、関係閣僚間において四次防の来年度発足について確認がなされた、このように聞いております。政府はこの四次防についてどう対処するのか、これはひとつ総理からお伺いしたいと思います。その所信について。

佐藤榮作自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(佐藤榮作君) 私は国防会議の議長をつとめておりますが、まだ私のところまでは案が回ってきておりません。したがいまして、ただいまの時点で私から申し上げるものはございません。

江崎真澄自由民主党防衛庁長官

○国務大臣(江崎真澄君) 四次防につきましては、御指摘のように、経済の見通しも非常に変動的で確たるものがありません。それから、GNPについても、やはり今後落ち込みがあるというようなことも考えられまするので、これまたお話にありましたように、四、五千億程度スロー・ダウンしようと、こういう計画が前任者のときにありましたことは私もよく承知をいたしております。そこで、先般、官房長官、大蔵大臣、私、三者で話し合いましたのは、そういう状況下にありまするので、とりあえず、いま直ちに五カ年計画を策定するということは非常に困難を伴いまするので、まず年度内を目途として長期計画をできればぜひ策定したい、それには事務折衝に入ろうという根本の姿勢をきめたわけであります。この四次防につきましていろいろ議論がありますることは私どもも承知いたしておりまするが、もともとわが国の自衛隊というものはゼロから出発したわけでありまするので、まあ間隙を置かないでぜひひとつ継続をしていきたい、こんな考えに立っております。

中尾辰義公明党

○中尾辰義君 まあ、継続の面はわかっておりますけれども、時間がありませんから次にいきます。  先日も、二、三日前に、ホノルルにおきまして、日米当局両者によりまして自由貿易の問題について会議がありましたが、その席上で、アメリカより武器購入の話が出たのか、今後、武器購入をどういうふうにしていくのか、どの程度買うのか、その辺のところをお伺いしたいと思います。

福田赳夫自由民主党外務大臣

○国務大臣(福田赳夫君) よく日米間で防衛分担費の問題が起こるとか、あるいは武器購入の要請を受けるのだとか、いろいろのことがいわれますが、さような話はございませんです。今度のホノルルの会議におきましても、武器を購入してくれとか、防衛費を分担すべしとか、さような話は一切ありませんから、さように御了承を願います。

中尾辰義公明党

○中尾辰義君 そうすると、武器は買うんですか、買わないんですか、その点はいかがですか。買うとすれば、額としてはどのくらいなのか。

江崎真澄自由民主党防衛庁長官

○国務大臣(江崎真澄君) いま外務大臣からお話があったとおりでありまするが、わが国の技術がおくれておりましてどうしても必要と認められるものは、これは買う方向で御了解を願いたいと思います。それから、わが国で生産が可能なものは、これは技術開発の意味からも、やはり国産で間に合わせていくというのを原則にしたい、このように考えております。

中尾辰義公明党

○中尾辰義君 それでは、時間がないようですが、最後に、これは総理にお伺いしたいと思いますが、このような経済、財政面からする四次防の一年延期論、あるいは総額の手直し論は、私はこれは根本的に誤っておるんじゃないか、このように思います。それは、御承知のとおりニクソン大統領の訪中、中国の国連加盟、さらには中国との国交正常化、北朝鮮との関係、こういう現下のいろんな問題がある今日において、この国際情勢の変化によって四次防原案が私は根底からくずれておるんじゃないか、こういうように思うわけです。そこで、四次防原案作成の根底となっておる防衛構想の一つ一つに検討を加えて直し、その上に防衛力整備が考えられなければならない、このように思います。それには当然、中国をはじめ極東諸国に対するわが国の外交の新しい方針が決定をされ、これが前提とならなければならない、このように思うわけです。以上のことから考えて、これは来年一月決定というようなことはちょっと問題があるのじゃないか。むしろ、総理には悪いけれども、佐藤総理の次の、ポスト佐藤において新しい総理大臣がお出になる。その方によって、また新しい中国問題等を中心にした日本の外交のあり方というものができてくるだろうと思う。その外交姿勢、外交方針に基づいて、私はこの四次防というものをもう一ぺん検討し直すべきじゃないか、こう思うわけであります。その点、総理と並びに福田外務大臣に――あなたも関係がありますから――それから防衛庁長官からお聞かせいただきたい。  それから、時間がありませんからもう一つ最後に、第二番目は、来年一月、総理はアメリカへ行ってニクソン大統領とお会いになるわけですけれども、そのときに、先ほどからずっと私は共同声明の問題点等について話をお伺いしてまいりましたが、特に台湾、韓国とのあの条項のところですね、ああいう点は修正をする必要があるんじゃないか、このように思うわけですが、一月の佐藤・ニクソン会談で、そういったような一九六九年の日米共同声明の修正というものがあり得るのか。あるいは共同声明を発表するのか――新しい共同声明ですね。それがないとすれば、何らかの方法で、話し合いをした結果というものをこれは国民に知らすべきじゃないかと、こう思うわけですが、その二点だけ私はお伺いをいたしまして質問を終わります。

江崎真澄自由民主党防衛庁長官

○国務大臣(江崎真澄君) 先に私からお答えを申し上げます。  お説のように、確かに日本をめぐる国際情勢は緊張緩和の方向が見られます。これは日本のためにきわめて喜ばしいことと認識をいたしております。ただし、この緊張緩和がほんとうに極東諸国においてしっかりと踏まえられ、これが定着いたしまするまでには、まだしばらく時間がかかろうかと思います。そこで、さっき申し上げましたように、自衛隊というものはゼロから始めたわけでありまするので、世の中が豊かになってくれば、社会環境に合わせて隊員の環境をよくしてやるとか、あるいは教育内容を充実するとか、あるいは、もし五カ年間のうちにほんとうにこういう緩和状況が定着してくるというような事態ならば、民生協力の面を積極的に行なうことができるような施設をするとか、やることは一ぱいあるわけです。それから忘れてはなりませんのは、兵器というものは、御承知のとおり、ここにあるものをすぐ買ってくる、こういう性格のものじゃございませんので、やはり継続的にこれを発注し、しかも、これができたことによって、それによって熟練をする。熟練をするまでには、当然二年、三年という期間を要するわけでありまして、それらを含めてぜひひとつ発足をさせたい、こういう話し合いをしたというわけであります。

福田赳夫自由民主党外務大臣

○国務大臣(福田赳夫君) 今日の世界情勢は戦後最大の激動期である、こういうふうに思います。まあ流動期というふうに言っていいかもしれません。きのうはニクソン大統領・ポンピドー大統領の会談が行なわれた。また、二十日、二十一日にはニクソン・ヒース会談が行なわれる。おそらく年末にはニクソン・ブラント会談、こういうものが行なわれるでありましょう。また、越えて一月の六日、七日、サンクレメンテにおいて佐藤総理とニクソン大統領との会談が行なわれる。さらに、二月二十一日にはニクソン大統領の北京訪問という、これは非常に画期的な政治的なできごとが行なわれるわけであります。そういう激動期でありまするが、わが国の外交姿勢は何だというと、世界の緊張の緩和、この一点に尽きると、こういうふうに思うわけでありますが、そういう激動する中において、緊張緩和の方向を模索しながら国益を守るということで対処していくと、こういう考えであります。もちろん、私は自衛力の増強ということ、これは今日の自衛隊の状況では足らぬと、こういうふうに考えておりまするけれども、そういう世界情勢の推移を十分踏まえましてこの問題も処理しなけりゃならぬと、こういうふうに考えます。私も国防会議の一員でございまするから、私の意見も十分申し述べまして、四次防の作成には遺憾なきを期していきたい、かように考えます。  それからもう一つ、サンクレメンテ会談で――私がいま準備の担当をいたしておりますからお答え申し上げますが――これは総理大臣とニクソン大統領のざっくばらんの話し合いをすると、こういうことになろうと思いますので、いまのところは共同声明を出すということは考えておりませんです。どうなるかまだ確定はしておりませんけれども、大体、共同声明を出すというような会談にはならないんじゃないか、私はそういうふうに存じております。

佐藤榮作自由民主党内閣総理大臣

○国務大臣(佐藤榮作君) 二人から詳細にお答えいたしましたので、私からお答えすることもあまりないようですが、国防の基本方針、いわゆる国力、国情に応じてと、こういう線は日本としてはまだ変えてはおりません。したがいまして、私どもはその線に沿って、そして足らざるところを日米安全保障条約で補う、こういう基本的な態度には変わりはないと、これは御了承いただきます。そうして、ただいま兵器がだんだん古くなっておりますから、こういうものをやはり買いかえると、こういうことは必要だと思っております。この点は、国内においても成長した軍需産業を持たない日本でございますから、これはやはりおのずから、外国――外国と申しましても、それはアメリカ以外にはないだろうと思いますが――そういうところから武器を購入する、こういう段取りになるだろうと思います。この点は一応御了承いただいて、そうしてただいまの第四次国防計画、これが防衛計画をどういうふうに作成するかと、この問題が一番の眼目でお尋ねがあったと思いますが、ただいまの状況で、急いでおりますのは、来年度予算を編成すると、こういう事柄でございますので、ただいまのところ、先ほど話をしました大蔵大臣と防衛庁長官にいたしましても、その四次防の規模なりあるいはどういう点に重点を置くかということよりも、主としての話は、来年度の予算編成にあたってどういうことになるか、その際に四次防をどういうように頭に置いてそういう発想のもとからスタートするかと、こういうようなことで、来年度、四次防の発足ができればけっこうですが、私はただいまの状況では、やや、そこらの点においてはおくれておるのではないだろうかと、かように思っておりますが、いずれにいたしましても、来年度予算は、この前も指摘されましたように、今日、時代おくれの兵器、そういうものを新しいものにかえると、こういうことに重点が置かれるだろう、かように御理解をいただいていいと、かように思っております。私は別に、制空権がどうだとか、海上を制圧するだけの力がほしいとか、さような問題はこれは少し通り過ぎておりますから、そこらの問題には誤解のないようにお願いしておきます。  それから、サンクレメンテの会議の問題ですが、それまでには、新春早々、私がニクソン大統領と会見を持ちます前には、大体、欧州各国の指導者との会談を終わっております。もうすでにカナダのトリュドー首相との会談は終わった後でございますから、そういうものの最後に私が会うと、こういうことでありますから、また、これは訪中を前にしての話でありますので、どういうように話が進みますか、これは全体の問題として、大きな国際為替相場の問題から貿易の問題等々、あらゆる問題に及ぶだろうと思いますけれども、当方としては、やはり中国問題がその主眼点であると、かように私は考えております。いずれにいたしましても、このサンクレメンテに出発する前に、各党の党首会談を私のほうで呼びかけておりますので、皆さん方の御意見も十分承って、しかる上でアメリカに出発すると、こういう運びにいたしたいと思います。その会談の時期は、大体、いま予算編成等でずいぶん忙しい思いもしておりますし、またこの御審議もいただいておるので、ほんとうに年が迫っての数日が私のひまの取れるときではないだろうか、その間にただいまのような各党党首との会談を持つと、こういうことにいたしたいと、かように思っております。いずれにいたしましても、そういう際に十分の話し合いができること、そうして出かける以上実りある会談にいたしたいものだと、かように思っております。ただいま外務大臣から話しましたように、どうも共同コミュニケを出すと、こういうようなことにはならないんじゃないだろうかと、かように思いますが、これはもうざっくばらんな話し合いを通じて、今後のアジアの緊張緩和の方向にどういうふうにわれわれが進むべきか、こういうことを基本的に話し合いたい、かように思っておる次第でございます。

安井謙自由民主党

○委員長(安井謙君) 以上で中尾君の質疑は終わりました。  次回の委員会は公報をもってお知らせいたしますが、おおむね明日午後に相なるかと思いますので、念のために申し上げます。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時五十二分散会

国会会議録検索システムで原文を見る ↗