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66回国会衆議院1971/09/17

大蔵委員会 第3号

発言数
283
登壇者
27
会派数
5
開催日
1971/09/17

会議録

齋藤邦吉自由民主党

○齋藤委員長 これより会議を開きます。  金融に関する件について調査を進めます。  本日は、まず国際通貨問題について参考人の出席を求め、その意見を聴取することといたしております。  本日、御出席いただきます参考人は、日本開発銀行設備投資研究所長下村治君、日本経済新聞東京本社経済部長鶴田卓彦君及び日本商工会議所会頭永野重雄君の各位であります。  なお、永野参考人は正午に出席いたしますので、御了承願っておきます。  参考人各位には御多用のところ御出席いただき、まことにありがとうございます。国際通貨問題について、それぞれの立場から忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願い申し上げます。  なお、各位の御意見は最初におのおの十分程度にお取りまとめいただき、その後に委員からの質疑によりお答え願うことといたしますので、何とぞよろしくお願いを申し上げます。  それでは、まず下村参考人よりお願いいたします。下村参考人。

下村治日本開発銀行設備投資研究所長

○下村参考人 日本の経済が当面しております国際収支黒字問題には、二つの面があると思います。一つはアメリカのインフレによって生まれたことです。これはドルの弱さを示すものであります。もう一つは日本の経済の国際競争力が強いことになって出ている黒字でありまして、これは円の強さを示すものであります。  ドルの弱さということはどういうことかといいますと、これはアメリカの経済がIMFの規約でいいます赤字の基礎的不均衡になっている、そのために生じた赤字状態ということじゃないかと思います。御承知のように、ニクソン政権成立以来いろいろな赤字打開のための措置をとってまいりましたけれども、成果があがらないで今日に至っております。つまり、そういうような国内政策によってなかなか打開できないような赤字状態にある、そういう意味でこれは基礎的不均衡であるといわなければならないと思います。基礎的不均衡におちいった経済は、それを調整するために為替レートの切り下げをする以外にないというのが常識でありますが、そういうわけで今日のアメリカはまさにドルの切り下げをすべき状態にある、ドルの切り下げが必要であるし不可避であるというような状態にあると申してよろしいと思います。ニクソン大統領がとりましたドル防衛措置、いわゆる新経済政策の本質は、そういうようなわけでドルの実質的な切り下げを行なうための措置であった、あるいはそのための予備的な措置であったというように考えてよろしいと思います。  輸入課徴金が非常に問題になっておりますけれども、輸入課徴金の本質はドルの切り下げにかわるべき迂回的な手段であると考えてよろしいのではないかと思います。輸入品に対して一〇%の課徴をするということは、これは為替レートを一〇%下げたときと同じような効果が輸入にあらわれるわけであります。輸出に対しては何らの措置をとっておりませんから効果が半分だけしか出ておりませんが、その本質は、いろいろの制約、条件はありますけれども、ドルの切り下げにかわるべき措置をアメリカ政府もついにとらざるを得なくなったということではなかろうかと思います。  円の強さの問題はそれならばどういうことであるか。これは日本の経済が国際競争力をだんだん強めてまいりまして、今日の日本の経済の状況からいいますと、国際収支は年とともに黒字幅を大きくせざるを得ないようなところに来たということではないかと思います。三百六十円レートができました昭和二十四年の位置では、日本の経済はたいへん弱体な赤字基調の経済であったわけでありますけれども、それ以来十数年間、日本の産業界の必死の努力によってその赤字から脱却する経済をつくり上げたわけであります。したがって、今日のような黒字状態に入りますと、このあとは黒字幅が年とともに大きくならざるを得ない、そういうような経済状況になっているということではないかと思います。現実の黒字はアメリカのインフレによって増幅されておりますし、日本の不況によって増幅されておりますけれども、その背後にはやはり日本の国際収支が黒字であるという根本的な事態があることを否定することはできないと思います。ただ、今日の日本の国際収支の経常勘定の黒字が過大であるということはいえないと思います。日本の経済の今日の黒字そのものはまだ過大ではありませんけれども、この状態があと何年か続く間には、過大というべきような黒字もあらわれざるを得ないようなところに来ている。したがって、今日の段階においては、日本の経済はそのような事態に対して適当な、適正な調整をしなければならない位置にあるということではないかと思います。  どのような調整が必要であるかといえば、何よりもまず第一に輸入の徹底的な自由化と関税の徹底的な引き下げが必要であるということじゃないかと思います。その次に十分な資本の輸出、経済の援助が必要であるということじゃないかと思います。と同時に、その背景としましては、積極的な経済拡大政策によりまして、日本の国民の所得水準なり福祉の水準を高めるということが必要である、こういうようなことではないかと思います。そういうような積極的ないろいろな措置を通じまして、日本の経済の状態を、適当な黒字を前提にし、適当な海外的な活動によって、総合勘定に黒字を出さないような措置をしなければならない、そういうような積極的な措置を必要とする段階に日本の経済は今日到達をしているというように考える必要があるのじゃないかと思います。  これは単に今日の不況克服のための不況対策として必要であるというようなことではなくて、そもそも経済の成長を追求する場合にはそういうような考え方で考えていく必要があるのじゃないかと私は思います。われわれの能力の限りにおいて、能力の限度までいろいろなことをすべきであるというような考え方が経済政策の運営の基準でなければならないと思いますけれども、今日の日本の経済状況に即して申しますと、たとえば公害や過密のない国土を建設するためにできるだけの投資をしなければならない、あるいは世界に平和を建設するためにできるだけの海外的な活動をしなければならない、あるいはそれに関連してできるだけ日本の市場を世界に開放しなければならない、あるいはさらに、そういうようなことを前提としまして国民の生活水準なり福祉の水準をできるだけ高めなければならない。できるだけ高めなければならぬということは、おのずからそこに、経済力の限度までしなければならないし、限度以上にしてはならないという制約があるということじゃないかと思います。われわれの持っております経済的な能力の限度までそれができたとしまして、どこがその限度であるかということは、これは何によって示されるかといえば、与えられた為替相場を維持しながら国際収支がいかに均衡を維持できるかというところで示されているというように考えるほかないと思います。  そういうような観点から、今日の日本の経済状況は、われわれがもっと積極的に国内の公害防除のために、あるいは過密の防除のために、あるいは社会環境施設の整備のために積極的な建設ができる、あるいはもっと積極的な海外援助や資本輸出ができる、あるいはもっと積極的な生活水準の向上や社会福祉水準の向上ができるのだ、そういうような余地が示されているということではなかろうかと思います。そういう意味で、今日の日本の経済はもっと積極的な拡大的な経済政策が要求されている、こういうことではなかろうかと思います。  アメリカの輸入課徴金によって日本に非常に不況の影響が出てきそうであるということが心配されておりますけれども、これは端的にいいまして、アメリカのニクソン大統領の措置によって引き起こされるインフレというべきではなくて、日本の経済がたまたまアメリカのインフレによって不況が激化することが緩和されておった、この状態が、アメリカのインフレ調整の努力によって表面化しようとしているというように考えるべきではなかろうかと思います。根本的に重要なことは、ただいま申しました、ようないろいろな面から、日本の国内において積極的な成長政策といいますか、拡大政策を行なうべきであるということであって、そういうような政策が十分に行なわれればおのずから処置される、解消される問題であるということではなかろうかと思います。  そういうわけで、われわれが当面しております問題は二つありまして、ドルの弱さの問題をどのように調整するか。この問題はドルの切り下げが問題の本質でありますから、その切り下げの問題をどのように処理するか、当然に多国間調整の問題になります。多国間の調整によってそれをどういうように落ちつけるか。この問題の背後にはドル、アメリカ経済の安定、あるいはすでにたまりましたいろいろなドル資金の梗塞といいますか、そういうような問題がありますから、そう簡単には片がつかないかもしれない。時間をかけてゆっくり処理しなければならぬ問題になるかもしれません。もう一つは日本の円の強さの問題でありますが、この円の強さの問題に対して、われわれは積極的な拡大的な経済政策によって処理すべきであると考えるのが当然の態度ではなかろうかと思います。多国間の調整の問題に対して、われわれはあせってはだめだということじゃないかと思います。非常に急速に解決が生まれれば非常に望ましいわけですけれども、必ずしもそうなるとは限らないということを覚悟して、じっくりと腰をおろして、時間をかけて解決に到達してもしかたがないというような態度をとる必要があるのじゃないかと思います。  当面の日本の経済状況では、今日の為替不安のためにいろいろと取引が停とんして困ったというような話が強くなっておりまして、そのことを背景にして、何か急いで日本が飛び出して為替レートを大幅に上げてもしかたがないんじゃないか、こういうような考え方も出ているように承知しておりますけれども、それは少し早まり過ぎではなかろうかと思います。今日、日本の経済界にいろんな問題が起こっておりますのは、変動制に円が移行したことの結果というよりも、そのことに関連しまして為替不安があって、為替リスクに対して非常にそれを負担しにくいような不安な状態があらわれてくる、このことが根本ではなかろうかと思います。したがって問題の本質は、為替レートをわれわれが上げないというようなこと、あるいはもっと上げたらどうだというようなことではなくて、為替リスクに対する負担をだれが負担するかという問題について安定した状況をつくり上げるということではないかと思います。そういう点では、率直にいいまして、政府がそのような為替リスクを負担するのが当然であると私は思います。今日の状態は、いわば非常に一時的な特殊な不安、動揺の過程でありますから、これはそう長く続くわけではなくて、いつかは固定レートを前提にした安定した秩序に戻らなければならないし、戻るはずだと考えることができると思いますけれども、その過渡期間をどう処理するかという問題が問題の本質じゃなかろうか。そうだとしますと、その間の為替リスク、為替不安の問題は政府が何とかカバーするというのが本来の政府の責任であるというように考えるべきではないかと思います。金融秩序の安定ということはもともと政府の責任でありますから、今日のような国際金融秩序の安定の問題につきましても、政府がまず手をかして状態を安定へ導いていくという努力が必要であるということではなかろうかと思います。  以上であります。

齋藤邦吉自由民主党

○齋藤委員長 次に、鶴田参考人にお願いいたします。

鶴田卓彦日本経済新聞東京本社経理部長

○鶴田参考人 当面の通貨問題、特に円問題に焦点をしぼりまして私見を申し述べてみたいと思います。  御承知のように、八月の二十八日にわが国は変動相場制に移行いたしました。それから約三週間たっておりますけれども、この間における経済界の不安と動揺というものはかなり深刻なものがございます。特に為替市場の内部を見てみますと、たとえば為替相場のほうは、ドルに対して現在のところ六%高なところで推移しております。したがいまして、表面的にはかなり平静のように見受けられます。しかしながら、実態を見てみますと必ずしもそうではございません。きびしい為替管理のもとで、外貨の売買、特にドルの売買が規制されております。そのために、たとえば輸出手形の資金化というものがかなり困難になっております。この点で、特に中小企業の輸出業者がたいへん困っております。それからもう一つ、変動相場制で先行きがよくわからないという点がございまして、先物市場がほとんど不能の状態になっております。このために、輸出商談がありましても、値ぎめをどのぐらいでするかという問題ができない。つまり輸出が、値ぎめができないために事実上ストップする、そういった問題が起こっております。したがいまして、この状態をこのまま長く放置するということであれば、これから年末にかけて経済の実態はかなり悪化する、悪くなるというふうに見なければいけないと私は思っております。  それではそういった事態にどう対処するか、いろいろな考え方がございますけれども、私はいまの為替市場を安定する、つまり、きわめて変則的な為替市場を正常化する、これが第一番に考えられなければならない対策だろうと思います。目下、政府あるいは日本銀行が中心になりまして、中小企業の輸出手形買い取りのためのMOF預託あるいは日銀による外貨買い取り制度、こういったものが検討されております。これは当然の措置として私はやらなければいけないと思いますが、これだけでは必ずしも十分でないと思います。と申しますのは、これらの措置は、現に輸出成約ができたものに対する措置である。現在一番の大きな問題は、輸出がストップしているということですから、この輸出ストップの状態を何とか早く打開してやらなければいけない。このほうがむしろ重要な施策ではないかというふうに思うわけです。  それでは、そのためにどうしたらいいか、基本的には二つの道があると思います。一つは、為替市場の規制をかなり緩和するというのが第一だろうと思います。これはいろいろ、新しい実験でございますので、この結果、たとえばこの前固定為替相場のもとでかなりの投機的な資金が入ったのではないかと見られるような事態が起こりかねないということで、このやり方にも問題があります。そういたしますと、基本的にはできるだけ早く固定相場制に戻すということが考えられなければならないだろうと思うのです。つまり端的に申しますと、円の切り上げを早急にやる、こういった形でもって局面の打開をはからなければいけないのじゃないか、そういうふうに思うわけです。目下のところ、政府は多国間の通貨調整ということを前提にいたしまして、一連の国際会議の中で精力的な通貨外交というものを展開しております。これまでの経過、たとえば十カ国蔵相代理会議あるいはその後における日米貿易経済合同委員会あるいは日加閣僚委員会、さらには今回の十カ国蔵相会議、こういった一連の国際通貨会議の動きを見ておりますと、必ずしも多国間の通貨調整というものはスムーズには進んでいないように見受けられます。  この中で一つはっきりしておりますのは、欧州各国、これは日本も含めてでございますが、欧州各国がアメリカに対してドルの切り下げ、つまり金価格の引き上げを要求している。第二は輸入課徴金の撤回というものを要求しております。このアメリカに対する要請、これはまさに当然の措置というか、当然の要求といってもよろしいと思うのですが、残念ながらアメリカはいまのところそれを受け入れようとする意思がなさそうに見受けられます。これはたいへんに困ったことだろうと思います。  そういたしますと、今度の多国間通貨調整というものはかなり長引くかもしれない。つまり長期持久戦になるかもしれないという心配がございます。ある程度平価の調整というものは各国の話し合いの中で、各国の経済力のバランスを見ながら調整幅をきめる、これがもちろん理想ではございます。ところがいまの現実の通貨調整の国際会議の動きを見ておりますと、必ずしも各国はそれほど急いでいない、そういう感じがいたします。ところが、そうなりますと、今度は日本にとってはたいへん不利な状態になってまいります。先ほど申し上げましたように、中小企業の輸出手形の買い取りがたいへんやりにくくなって困っている、それから輸出商談がストップしてしまっている、こういった状態がすでに日本に起こっております。この問題を早急に解決いたしませんと、日本経済は後遺症が非常に重くなるのではないかという心配もございます。したがいまして、日本としてとるべき態度と申しますか、考えていかなければいけないのは、ある程度国際通貨会議でもって他国の感触というものが出てまいりましたら、それをすばやく読み取りまして、それで日本が自主的な判断でもって円の切り上げをやる、そういう方向に進むことが一番賢明な策ではなかろうか、そういうふうに思っております。特に欧州の場合は、いま日本を注目しております。日本がどう出るかということをたいへんに注目しておりますので、日本の態度を明らかにしない限りなかなかこの問題は解決しないのではないか。つまり、日本が先に出てしまうと、うしろから撃たれるという心配はもちろんございますけれども、そのあたりは各国間の通貨交渉、これをさらに精力的に詰めまして、相手方の感触を十分につかむということで、その上で判断をすればそれほど危険はないのではないか、そういうふうに思うわけです。そういった意味では、日本はここで自主的な判断をいたしまして、それを通貨調整の問題についてむしろリーダーシップをとる、そういう考え方が必要なのではないか、そういうふうに思うわけです。それをやらない限り国内の不安、動揺というものはなくなりませんし、またこれだけ円が強いといわれている中で、その評価が正しいかどうかは別といたしまして、とにかく国際的には円はたいへん強いのだ、たとえば今度平価調整をやる場合には日本が一番高く切り上げなければいけないというような声も出ております。われわれは必ずしもそう思うわけではありませんけれども、そういう声が出ているということでございますので、ここで対外的にはリーダーシップを発揮するということをやったほうが、日本がこれから先、国際経済の舞台の中で発言力を一そう強める一つの手段になるのではなかろうか、そういうふうに思うわけです。  以上でございます。     —————————————

齋藤邦吉自由民主党

○齋藤委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。藤井勝志君。

藤井勝志自由民主党

○藤井委員 ただいま両参考人から非常に貴重な御意見を承ったわけでございますが、私は下村参考人にちょっとお尋ねをいたしたいのですが、やはり通貨調整はじっくり腰を落ちつけて対処しなければならぬであろう。現実は持久戦に入っているような、最近の十カ国蔵相会議後の情報では御承知のとおりでございますけれども、私はやはり、ただいま鶴田参考人から御指摘があったごとく、今度の国際通貨問題が起こったということの中心は、円という問題に現実動いている。これは理論的な反発とか、いろいろあると思うのです。おっしゃるようにドルの弱さと円の強さ、そういったことがからんでおりますけれども、現に政治は現実に立脚して対策を立てなければならない、こういったことを考えますと、私はやはりヨーロッパ各国の出方を見て、そして方針をきめるというのでは、結局その点について切り上げ幅にある程度、何といいますか、低目にきめられるチャンスがあるかもしらぬけれども、また逆に、いま日本経済を襲っている混迷状態、ただいま鶴田参考人からお話がございましたような混迷状態を脱却できない大きなマイナス点、こういうような点を考えますと、私はここに決断を急がなければならぬ。しかし、おおむねいろんな専門家が数字をはじいておられるのを見ましたが、われわれしろうとから考えても直感的にまあその辺ではないかという感じもしますが、そういう点を踏まえて、私は少なくとも九月の国際会議が終わったあと、十月中には勇断を下すべきである。ざんごうから飛び出したほうが撃たれるんだ、こういうことでなくて、この国際通貨問題が起こった経緯というもの、現に国内の経済状態が混迷におちいっているというこの事実を考えた時分、また同時に、もう外貨建てが九九%であるという日本の経済の特殊性というものを考えた時分には、やはりここに目をつぶって勇断を下さざるを得ないんじゃないか、そのほうがプラスマイナス、プラスのほうが多いというふうな感じがいたす点が第一点です。  それから第二点、これは先ほどお話がございましたように、日本がいわゆる黒字基調にずっときたという点ですね。従来国際収支の天井が非常に低かった時分と全然違いますから、おっしゃるように思い切ってこの際国内景気浮揚対策を、ただ不況対策ということではなくて、積極的にやる。このためには公債発行というのが当然考えられます。公債発行に伴うインフレーションという問題に対して、市中消化、個人消化ということを一応言いますが、どういうやり方をすればいいかということも一般論として抽象的には言えますが、何かしらやはり一年くらいすると日銀が引き受けていかざるを得ないというふうな現実を考えると、そこにインフレの影が絶えずひそんでくるんじゃないか。この心配に対して下村参考人はどのようなお考えでございますか、御教示願いたいと思います。

下村治日本開発銀行設備投資研究所長

○下村参考人 第一の問題ですが、国内の経済不安を非常に重視して、それを解決するため、緩和するためにこちらが為替レートを思い切って、国際的にいわれているようなところまで上げて、そういうような固定レートをつくっていく、そういうふうに戻したほうが早くいくんだ、こういうような御意見をお伺いしたと思いますけれども、私は同じような国内経済の不安に対して根本的に重要なことは、まず第一に国内の拡大政策である。国内の不況の問題が非常に事態を混迷させている、大きな原因として働いていると思います。ですからそれに対して積極的な拡大政策が実は重要なんだ。大幅な為替レートの切り上げはむしろそのようなことに対してマイナスに働く。直接的に相当マイナスに働きますし、為替レートを大幅に上げますと積極政策をやる余地が減ってくるということで二重にマイナスになると思いますが、そういう意味で私は大幅なレートの切り上げを予定した行動は、国内の不安を緩和することには非常になりにくいんじゃないかというにおそれます。  もう一つの不安の原因は、鶴田さんのお話の中にもありましたけれども、非常に輸出成約ができにくい、国際的な取引ができにくい、それを何とかしなければならぬ、これは非常に差し迫った問題として問題が表面化しておりますけれども、この問題の本質は、レートの高低の問題ではなくて、また変動レート制であるからということではなくて、為替リスクに対して民間業界では不安であって、とてもリスクは負えないということからくる不安だと思います。ですからこれは、そのようなリスクを政府が負担するという政策が最も端的な対策であって、安心して為替取引をしてもよろしいというような条件を政府が導入する必要があると思います。そのような条件が大事なんであって、レートが上がればうまくいくとか、あるいは変動制をやめたらうまくいくということは、少し問題の性質が違っておりはしないか。つまり、早期に大幅な切り上げをするような決断も対策としての意味を持ち得ると思いますけれども、もっと端的に可能な対策としては、為替のリスクを政府が全部引き受けるという措置をとることじゃないかと思います。そのことによって政府にリスクがあるかどうかといいますと、実はそう大きなリスクは出てこないと思います。民間側からいいますと不安で、リスクは負担できないかもしれませんけれども、政府の立場からいいますとそう大きなリスクがあるわけではなくて、そのことによって国際金融取引が安定をする、国内の金融秩序が安定をする、あるいは経済状態が安定を取り戻すということであるならば、今日のような大きな過渡的な状態においては、当然に政府が負担すべきコストであるというように考えたほうがよろしいのではないかと私は思います。  それから第二の国債発行とインフレーションとの関係に関して申しますと、今日の経済状態で大幅な国債発行が行なわれるということは、経済が順調な循環、順調な成長を維持するために不可欠な条件であると考える必要があると思います。大幅な国債発行を前提にして大幅な減税、所得税を中心にした減税を行なわれる、それを背景として大幅な公共投資が行なわれる、あるいは社会保障の充実が行なわれる、そういうようなことが行なわれるといたしますと、その結果何が起こるかといえば、あり余るような生産力が十分に活動して、それが国民所得として実現される、国民の福祉向上として実現される、国民の環境条件の整備という形で実現される、そういう結果が起こるわけでありまして、その結果を起こすための条件として国債発行が必要であるというわけですから、国債発行がインフレを引き起こすという可能性は全くないというように、これは断定的に申し上げてよろしいと思います。それを金融するためにはいろいろな配慮が必要であると思いますけれども、今日の金融情勢からいいますと、国債発行が非常に困難で何らか特別の異常な措置をとらなければ消化ができないというようなことを予想する必要はないと思います。若干のくふうは初めのうちは必要であるかもしれませんけれども、しかしそのようなくふうをかりに行なうといたしまして、経済全体はそれによって順調な成長、順調な循環を維持するということになるはずでありますから、これがインフレであるというわけにはまいらない。むしろそのことによって正常な経済が実現をされるような段階に日本の経済は今日入っているというように考えたほうがよろしいんじゃないかと思っております。

藤井勝志自由民主党

○藤井委員 結論をひとつお伺いしたいのですが、国債発行の問題、御趣旨はよくわかりました。御専門のお立場で、当面国内対策、不況対策とあわせて将来の社会開発という前向きの面で、四十七年度、日本経済の能力からいってどの程度の公債発行が可能であるか、金額的にちょっと、見当でけっこうですからお答えを願いたいと思います。

下村治日本開発銀行設備投資研究所長

○下村参考人 たいへん腰だめのことを申し上げなければなりませんので、あとで責任を追及されますとたいへん困ることになりますので……。  一兆円台ではなくて二兆円台の国債発行が必要であるし、可能であるし、望ましいんじゃないか。大ざっぱにいいますと二兆円前後というようなところ、あるいは二兆五千億円ぐらいまで奮発をしなければならぬ。いまの不況状態を前提にしていいますと、一時的にそういうようなことも考えるほかなくなるかなという感じで考えております。

齋藤邦吉自由民主党

○齋藤委員長 木村武千代君。

木村武千代自由民主党

○木村(武千代)委員 両参考人、本日御多忙のところありがとうございます。  私まず下村参考人にお聞きしたいのでありますが、このドル・ショックで日本が非常に騒いでおるわけでございますが、これは名前がショックでございますから一時的みたいに見えますけれども、この円の切り上げの問題とかドルの切り下げの問題とかいうものは、これはショック的に見たものではないと私は考えるのでございます。それはもうすでにアメリカが、ベトナム戦争を契機といたしましてだんだんとドルの力が弱まってきておる。特にドイツなんかは五月にすでに為替のレートを変えておるというような実例が上がっておって、特に七月十六日のニクソン中共訪問の情報が流れて以後は、次の第二弾が何かくるんじゃないかというような予測すらもせられたときにこの八月十六日のドル・ショックがきたわけであります。それによって大あわてをしているようでございますが、これは一にかかって政府の責任である。この情報がキャッチできなかったのは政府の責任であり、その処置は政府の責任であると下村先生はおっしゃったわけでございます。しかしながら先生方のような研究所、または先生におかれましては、従来日本の財政経済につきまして非常に指導的立場におられた方でございますので、そういうことにつきましては非常に敏感に、また御研究なさっておったわけでございますが、そういう点につきまして政府のほうに、何かもうそろそろこういうようなことが起こるぞというような御注意とか、御研究の結果をしていただいたかどうか、その予見があったかどうかということにつきましてまずお聞きしたいのですけれども、いかがでございましょうか。

下村治日本開発銀行設備投資研究所長

○下村参考人 アメリカがこの段階において輸入課徴金一〇%をかける、そのことは言いかえますと私はドルの切り下げ、ドルの減価の措置をアメリカがとったというふうに考えておりますけれども、そういう措置をとるであろうということは予測はしておりませんでした。そういうことを政府に献策したことも実はございません。ただ、いま御質問に言われておりますように、状態がそういう状態にあるということは一般的には考えておりまして、アメリカのインフレ問題が現に存在をする。このアメリカのインフレ問題に対してわれわれとしては、アメリカがそれを直してほしい、ニクソンは登場以来その努力をしたわけですから、それが成功してほしいというような期待と希望は持っておりました。ただ不幸にしてここ半年くらい前から、ニクソン大統領は居直りを始めて、自分たちとしてはやるべきことはもうないんだ、あとは外国が何かしなければならぬのだというような、そういう居直りの発言が出始めましたので、これだとアメリカのインフレはこれから持続するという前提で考えなければなるまい。それに対してわれわれとしてどういう対処をすべきかということになれば、日本側が輸出課徴金をかけるとか、日本側がドルレートを絶えずアメリカのインフレにペースを合わせて上げるとか、そういうような調整をせざるを得なくなるかもしれない、そういうようなことは一般的には予想しておりましたが、具体的にいま御質問にありましたようなことはございません。

木村武千代自由民主党

○木村(武千代)委員 ありがとうございました。いまの御説明で大体当面のことはわかりましたけれども、私は今度の問題というものは、これは日米経済戦争でないかと思っておるわけでございます。アメリカは単に、日本がドルをたくさん持って、それで円がだんだん価値が上がった、こう言うけれども、実際アメリカのドルと日本の円とのほんとうの価値というものを非常に根深く考えてみましたならば、まだまだ日本の円というものはなべ底の円でございまして、アメリカのドルというものは相当な根深いところの価値を持っておる。ちょうど前の第二次大戦におきまして日米の兵力、戦力の比較の問題で、当面においては日本のほうが強かったようでございますけれども、その底力というものはやはりアメリカは持っておったというようなことから考えますと、これは国力的に考えますれば、やっとゼロから今日まで上がってきたところの日本と、アメリカの財力、国力というものと比較したならば、その比較の力のあらわれが通貨である、こう考えますれば、まだまだ本質的にはドルが強いように思うのであります。現在から見ましたらそういうように円が強いように見えますけれども、実際は私は、ほんとうの本質的にはドルが強いと思います。それについてのいわゆる根本的な対策、基本的なる日米の経済戦争がこれから相当期間、長い間起こってくるんじゃないかということを私たちは予想されるのでございますが、それについて下村先生はどういうぐあいにお考えになりますか、お聞きしたいと思います。

下村治日本開発銀行設備投資研究所長

○下村参考人 経済戦争ということば、私あまり好みませんので、実際にありますことは経済協力と経済競争ということじゃないかと思います。日本とアメリカは、やがて五年から十年もたちますと、世界をささえる二つの巨大な柱になるというようなことになると思いますけれども、この二つの経済が順調に循環をし、順調に成長して、そして国際的に平和的、経済的に建設活動を大規模に行なうという形でおそらく世界はうまく動くというようなことになると思うのです。いまの日本の経済はそこまでまだいっておりませんけれども、急速な成長の結果、そういうところにやがてなるという軌道に乗った経済であるということじゃないかと思います。  アメリカの経済が非常に強力であり強大であるということはいまも変わりませんし、これからも、五年たっても十年たっても変わりませんが、いまのアメリカの経済の問題は、その経済が強力であり強大であるということではなくて、その経済力以上のコミットメントをすることによって、経済力以上のことをやることによって経済が少しおかしくなっている、失調している、調子が狂っているということだと思います。国際収支が貿易収支でほとんど黒字が出ないようになってしまっておりますが、これは国内でコスト・プッシュ。インフレが進行し過ぎたということだと思います。それにもかかわらず、アメリカはたいへん大規模な対外援助、軍事援助あるいは軍事活動をやっておりますし、それの上にさらに資本輸出までやっているわけですが、そういうような全体の状態が、今日のアメリカのコストプッシュ経済を前提にしていいますと、維持できないような形になっている。だからといってアメリカが衰弱して弱体になったわけではありませんけれども、能力以上のことをやろうとして、そこで経済を狂わしている。アメリカが世界経済の基礎であり中心でありますために、そのことが世界経済全体を狂わしているということじゃなかろうかと私は思います。  日本の経済はそういうアメリカの経済に比べますと非常に弱小であり弱体であり、一人当たり国民総生産ではまだ二・五分の一にしかすぎません。しかし、その経済は非常に強固な堅実な基礎の上に築いている。ただそれが堅実過ぎて、弱体な時代の観念がこびりついて、これだけ堅実で、しかも十分に余力のある経済ができたのに、その経済にふさわしいような建設的な活動、積極的な活動を押え過ぎておったために、今日のようにいろいろ問題の紛糾の元凶であるかのようにいわれるような状態になってきたというようなことではなかろうかと思います。  今日の日本の国際収支の黒字は、これは先ほど申しましたけれども、大幅でありますが、今日の黒字そのものが大幅過ぎる、過大であるというほどの黒字ではない。やや少し大きいということでしょうけれども、日本の国がもっと大規模な経済援助なり、もっと積極的な資本輸出の措置なりをとるような財政金融政策を運営しているとすれば、十分に消化できる程度にしかすぎないといってよろしいと思います。それが国内の不況とアメリカのインフレでやや過大に増幅されたというのが現実の事態であって、いまの事態そのものがたいへんにおかしな状態であるということではなくて、ただこのままの状態が続きますと、日本の経済は三年、五年の間に文字どおり過大な黒字を出すような経済になりかかっている。したがって、その経済にふさわしいような調整をわれわれはしなければならぬ。その調整をすることがつまり、アメリカとともに世界経済をささえるような経済に日本がなるということじゃないかと思います。  そういうわけで、どうも、日米経済戦争の時代が始まろうということではなくて、日本側がどんどんのしてくるので、それでアメリカ人がややヒステリックになって、少しばかり間違ったことを言い過ぎているというぐらいのことじなかろうかと私は思います。

木村武千代自由民主党

○木村(武千代)委員 鶴田先生にお願いいたします。  先ほど先生は、日本の貿易を一日も早く回復する、また特に中小企業の救済をするのにはどうしても貿易は早く回復しなければならぬ、こうおっしゃいます。それにはやはり円とドルとの平価の安定化あるいはまた固定化ということを早くやらなければいかぬ、こういうように仰せでございます。それで、これは時期の問題じゃないかと思うのでございまして、私も中小企業に関係していまして、一日も早くドルと円とのレートがきまらないことには商売にならない、こういわれておるわけでございますが、しかし一方、日本全体から考えまして、ヨーロッパにおけるところの十カ国の蔵相会議におきましても、まだこれはきまらない。日本としましても、これは国内的には早くきめたほうがいいのでございますけれども、国際的にはこれは弾力性を持たしたほうがいいじゃないかというような気がいたすわけでございます。そのかね合いでございますね、そのかね合いをどういうようにお考えになっていますか。これは国民の商業関係、特に貿易に関連したところの商売人は非常に困っておるわけです。ところが、国益という点から見ましたならば、いま急にここですぐに平価をきめる、固定化するということが、国際情勢から考え、またアメリカの態度から考えましてどうかという点が、私たち関係者としまして一番悩んでおるところでありますが、それについて先生はどういうぐあいにお考えでございますか、ちょっとお答え願いたいと思います。

鶴田卓彦日本経済新聞東京本社経理部長

○鶴田参考人 いまの問題でございますが、できるだけ早くと申しましても、きょうあすにということではもちろんございません。これから先、今度のロンドンの十カ国蔵相会議で結論が出ませんでしたので、今月の二十五日に十カ国蔵相代理会議を開いて、そのあとまた十カ国蔵相会議を開くという予定があります。そのあとIMFの総会もございます。ですから、そのあたりが私は一つの判断の山場になるのではないかというふうに思っております。そのあたりでもっておそらく各国の感触も出てくるのではなかろうか。また各国の感触をできるだけ早くつかむような努力をしなければいけない。そのあたりで感触がつかめましたら、そのあと早い機会に固定平価に戻る、固定相場制に戻る、これを考えるべきじゃないか、そういうふうに思います。

齋藤邦吉自由民主党

○齋藤委員長 阿部助哉君。

阿部助哉日本社会党

○阿部(助)委員 きょうはたいへん貴重な御意見を聞かしてもらって、ありがとうございました。  下村先生に一点だけお伺いをしたいと思うのでありますが、先ほど下村先生は、今後日本の黒字幅がたいへん過大になるだろう、そのためには総合勘定で黒字を出さないようにすべきだ、そのためには自由化や関税の引き下げ、福祉に重点を置いた政策を積極的に行なって行くべきだ、こういうふうにおっしゃったと思うのでありますが、日本の円がなぜこのように国際的に強い黒字を出す、過大な黒字を出そうとするかという点で私お伺いをしたいのであります。  お答えがよく私の的を射ていただくためにちょっと私の意見を申し上げますと、日本の円は国際的には強い、こういわれながら、国内的にはむしろ弱い円だ、こう言っても過言ではないではないか。この十年間の日本の消費者物価の上がり方は七六・六%、こう発表されておる。アメリカは三一・五%にすぎない。ただ卸売り物価という点になりますと、日本は一三・七%、アメリカは一四・八%、こういわれておるときに、卸売り物価のほうから見れば強いわけでありますけれども、消費者物価の面から見ると円はたいへんに弱いのではないか。この辺に私は日本の輸出がこのように激しく伸びていくという一つの問題点があるのではないか。そうすれば、その一番大きな原因は、先生触れられなかったけれども、私は日本の低賃金の良質な労働者、労働力、ここに一番大きな問題があるような気がするのでありますが、自由化、関税、社会福祉というようなものと同時に、この労働賃金の引き上げというものをやらないと、依然として、いまかりに円の切り上げをし、多少の調整をいたしましても、また再びそういう事態に追い込まれるということになりはしないか。たとえば自動車産業の例を見ましても、アメリカの一時間当たりの収入が千四百五十一円、日本の自動車産業の労働賃金は一時間当たりわずかに三百二十六円という、四分の一以下の賃金というところに一つの大きな問題があるんじゃないか。そのほかいろいろ財政金融上の過保護という面もあろうけれども、私はここに一番大きな、いまの事態を引き起こした原因があるような気がするのでありますけれども、その点先生お触れにならなかったようでありますが、御見解を賜わりたいと思います。

下村治日本開発銀行設備投資研究所長

○下村参考人 いま御質問の中にお述べになりました御意見の相当部分は、私も同感であります。物価の話は少し違った考えでありますが、今日の日本の消費者物価の上昇率が高いということは、これは実は賃金が急速に上昇しているということの反映であるというように考えたほうが、全般の経済の動きを説明するのに統一的、コンシステントに理解できることではないかと思います。なぜ、消費者物価がどんどん高く上がっているのに国際収支は黒字になるか。インフレ、インフレといわれながら、なぜ世界一日本は国際収支面で安定しているか。国際収支が安定しておればインフレとはいえないはずであります。なぜそうなっているのかということは、つまり日本の経済が急速に成長しているから、そしてその中で急速な生産性向上が進行し、賃金上昇率がやや控え目に進行しているからだ、こういうように考えるほかないと思います。低賃金とおっしゃいましたけれども、賃金はたいへんに上がっております。たいへんに上がっていてなおかつ賃金が安いように見えますのは、生産性がそれを上回るぐらいに上がっているからであるということだと思います。したがって、賃金がまだ上がり足りない面があるかもしれないということは、まさにそのとおりだと私も思います。日本の国際収支が大幅黒字であるということは、日本の国内でもっといろいろな積極的なことが可能であるのにそれが行なわれていないことを反映しているというのは、そういうことだと思います。賃金が低いのであるのか、社会保障施設が不十分であるのか、あるいは公害防止の投資が不十分であるのか、社会環境投資が不十分であるか、あるいは経済援助が不十分であるのか、いろいろな問題がからんで、全体として結果があらわれておりますが、総合された結果として国際収支に黒字が大きく出ており、それがますます大きくなろうとしていることは、日本の経済全体として、もっと積極的な方向に経済全体を上げて、望ましい経済建設をすべき余地が十分にあるんだ、ますますそれを進めなければならない経済になったんだということを示していることは間違いないと思います。したがって、そういう積極的な財政金融的な措置が行なわれた結果どういう経済があらわれるかといいますと、その中で十分に満足すべき賃金が実現されるような経済になることは間違いないと思います。ただそれを十分に実現するためには、その条件として、今日の人手不足の状況の経済ですから、輸入の自由化、関税の引き下げは徹底して進めなければならないということになります。輸入自由化をしないで、関税をそのままにしておいて積極的な経済拡大を行ないますと、これは実質的な生活水準向上を引き起こさないで、名目的に、物価上昇を起こすだけの、つまりインフレ的な状況に非常に早く接近する危険を持っております。五千万人の就業者の生活水準全体を上げるためには五千万人全体の生産性を上げるためのくふうをする以外にないわけですから、そのためには生産性の低い仕事をできるだけ断念して、生産性の高い仕事に日本人の貴重な経営能力や技術能力や生産的な能力をつぎ込むというような、構造の高度化の努力をする必要があるということだと思います。そういう意味でも、今日の段階では輸入の徹底的な自由化、関税の徹底的な引き下げは、それは外国がやっている程度にもうやったじゃないかというようなことをいわないで、日本の国民の利益のために何が望ましいかという観点から積極的に考えるべき段階に入っているということではなかろうかと思います。  お答えになったかどうかわかりませんけれども、そういうようなことだと思います。

齋藤邦吉自由民主党

○齋藤委員長 広瀬秀吉君。

広瀬秀吉日本社会党

○広瀬(秀)委員 下村先生にお願いいたします。  この一連の国際通貨問題、そして円の問題に対して、私どもも先生の所論に対して、きわめて明快であるという印象を実は持おってるわけなんですが、少なくとも先生の所論の内容がきわめて明快であるということはいえるのでありますが、例の近代経済学者による為替研究会が小刻み調整、クローリングペッグの提案をなされたときからの先生のお考えもはっきりしておるわけなんです。そこで、最もその中で特徴的なのは、アメリカ自身に基礎的不均衡があるんだ、日本にはそれがないんだ、したがってあの提言はむしろアメリカの政府に対して提言さるべき内容だ、こういう話でございました。アメリカのそういう基礎的不均衡、いまその問題についても、アメリカのインフレーションの問題、あるいはまた相対的に日本の国際競争力が非常に強まったというようなこと、こういうようなことで、アメリカ自身が何かそういう問題について対処すべきであるということは当然出てくる結論でありますし、また日本の立場からいっても、アメリカ自身にドル切り下げを迫っていいんだという結論に、先生の考え方を発展させればそういうことになろうかと思うのです。しかしながらアメリカは、あのニクソンのドル防衛非常事態宣言においても、国内的に若干の賃金・物価の凍結、これも九十日という、これはたいした効果はまず期せられないのではないか。減税などの問題では、国内の景気浮揚という形ではかなりの効果が、これは現実的に出るだろう。それはむしろ実はインフレにつながる問題だ。そういうようなところから、今度は対外問題で課徴金を課するというようなことになってき、あるいは金交換を停止するというようなことになってきたと思うのですね。そういうことですから、われわれとしてはやはりあくまでドルの切り下げというものを迫っていく立場にあり、当然の結論としてそういう立場をとるのが正しいということでありますが、アメリカはなかなかそれを受けないだろうという。日米経済合同委員会、閣僚会議では、かなり弾力性は見えたというような報道はなされておりますが、そしてまた水田大蔵大臣も国際会議においてそういう要求も端的に——端的ではないけれども、そういうことを、実質的にはドル切り下げを要求する、公平に負担をしようじゃないかということを言っておる。しかし必ずしもアメリカがそれを受けて立つかどうかというようなことにはかなり疑問があるし、またEC諸国あたりもそういう態度を表明をいたしておりますが、この問題について一体、ドル自身の切り下げをすべきだ、アメリカ自身もやはりみずからのまいた種だからみずから刈らなければならない、そのようなことを私どもはやはりもっともっと強く要求してしかるべきだと思うのでありますが、まずその可能性の問題を含めて、先生のお考えをもう一度お聞きいたしたいと思います。

下村治日本開発銀行設備投資研究所長

○下村参考人 私、御意見全く同感でございます。ただ、その可能性の問題をお尋ねになったと思いますが、可能性の問題として言いますと、まずアメリカのドルの減価——切り下げという表現を使わないで、ドルの値打ちが下がるという表現をかりに使うといたしますと、ドルの減価はすでに現に起こっております。ヨーロッパでマルクに対して八%くらいの減価が起こっております。日本に対しては六%くらいの減価が起こっております。これを日本では円の切り上げ、円の切り上げといっておりますけれども、国際的に現実に起こっている事態はドルの値打ちが下がっているということでありまして、したがってドルの減価は現実に起こっております。ですからあとの問題は、これをどのような形で形式的にまとめるかという問題があるということが一つと、そのドルの減価を何%くらいのところで安定させるかというような問題が一つ、こういうようなことではなかろうかと思います。形式的にドルの減価をドルの切り下げという形で表現をするとすれば、一番すっきりしておりますのは、よくいわれておりますように、アメリカの金のドル価格を引き上げるということ以外にありません。これはつまりドル切り下げといわれることでありますけれども、アメリカが金のドル価格を上げるかどうかは非常にむずかしい問題で、これは不可能であるとはいえませんけれども、実行可能性については非常に問題があるということは常識的にいえることでありますが、しかし、それがなければドルの切り下げはないのだということではないと思います。実質的に起こっておりますことは現実にドルの減価でありドルの切り下げでありますから、このような事態をどのような形で調整するか。いろいろな案がすでに出ておりまして、大蔵省の案というものも出ておりますけれども、そういうような何らかの形でもって、ドルのインフレーションをアメリカが調整するための一つの措置としてのドルの切り下げに相当する形を、国際的な多国間調整においてどのように実現するかということが問題の本質だと思います。これを単純に円の切り上げ、円の切り上げと言うところに、日本としては思い違いの原因があるのじゃないかと私は思います。現実に起こっていることはドルの切り下げでありドルの減価である。  せんだって日本経済新聞、九月三日号だと思いますけれども、バーンスタインというアメリカの学者が短い論説を出しております。それによりますと、ドルの切り下げ、ドルの切り下げとちゃんと書いてあります。現に起こっていることはドルの切り下げというふうに理解しております。実質はそうであって、形式は金の価格を上げなければ切り下げない、こういうことでありますけれども、実態はドルの減価が起こっているということであります。日本にとって現実に問題になっておりますのは、そのアメリカのインフレを調整する形でのドルの切り下げ、つまりアメリカが基礎的不均衡であるとすればアメリカはドルの切り下げをしなければならない。ローカルカレンシーを前提にしていいますとそういうことは必ず起こるわけでありますけれども、それと同じことがドルに起こるとすれば何%のドルの切り下げになるか、こういう問題。これはせいぜい八%か一〇%という数字のパーセンテージしか出てまいらないと思いますけれども、そういうような形での国際的な多国間の為替調整ということが現実に問題になっているということも本質だと思いますが、それに対して日本だけは別だ、もう五%か七%か余分に実質的な意味での円の切り上げをすべきであるという論があるというところで、それを受け入れるか受け入れるべきでないか。どのような理由でそれを受け入れないのか、どのような理由で早く受けたほうが得であるかということが日本にとっての焦眉の問題ということになっておりはしないかというふうに思います。

広瀬秀吉日本社会党

○広瀬(秀)委員 それと、続いてお聞きいたしますが、先生の先ほどおっしゃられた最後の部分で、そうあわてて事を運んではいけないじゃないかということで、かなり為替不安、貿易成約が八月にはほとんどできなかったというような事態で、内圧といいますか、経済同友会あたりも、先ほどまた鶴田先生もおっしゃられましたけれども、早く日本が決断をして、そして多角的通貨調整においてリーダーシップをとりなさい、こういうような提言などもあるし、現実の経済の実態の面で、特に中小企業などを中心にして為替不安からくるあるいはリスク——先ほどの先生のことばでは、為替リスクをどこが持つかという問題が不安というので先物相場も為替市場で立たない、こういう状況にある。こういうところで、何とか早く、どっちでもいい、とにかくきまるところできめてくれ、こういう要求があるけれども、それをそうあせってはいけない、じっくりかまえないといけない。そのためにはやっぱり為替リスクをどこに持たせるかというようなことで、きちんと政府が持つという態度をとってやれ、こういう話でございましたけれども、ECもアメリカに対してドル切り下げを求める立場にあるということが新聞で報道されておるわけでございますが、ECのほうはやはり円に対しても非常な関心を、アメリカ以上とはいわぬけれども、アメリカに次いでやはり同じく激烈な競争相手という立場で持っているだろう。それをそういう形でじっくりかまえて、変動相場制のままでこのままずっといくということになると日本自身がもたなくなるではないか。そうなれば日本がおそらくしびれを切らして、耐え切れなくなって、独自の立場でアメリカとの間の円切り上げをやっていくだろう、こういうことがむしろECの読みではないか、こういうようなうがった観測もあるようでありますが、このECの動向について先生はどのように見ておられますか、この点を伺いたいと思います。

下村治日本開発銀行設備投資研究所長

○下村参考人 ECの動向という形でおっしゃいましたが、それについては私そう立ち入って詳しいことを承知しているわけでもありませんので申し上げることはできませんが、ECが主張している立場というのは、どちらかといいますと公正な立場といってよろしいと思います。アメリカがドルの切り下げをすべきであるというような前提で問題を処理するのが一番すっきりしているわけですから、そのような主張の中で多国間調整を——とにかくアメリカのドルの安定、アメリカがすでに世界じゅうにまき散らしましたドルの残高の処理、そういう問題を含めまして処理しませんとこれからあとの金融秩序の再建ができませんから、そういう問題を含めて考えますと、為替レートを調整したらそれでうまくいくのだという簡単なことでないことははっきりしておりますから、そこでじっくりと落ちついて合理的な結論が得られるようなところまで話を詰めていくという態度のほうが客観的に見ても合理的じゃなかろうかと私は思います。  日本の問題についていいますと、おっしゃったようにアメリカもヨーロッパも、そのうち日本は音をあげてくるに違いないというような読みがおそらくあるのじゃないかと思います。アメリカなどは特に日本の情報がたくさん入っているはずですから、日本の国内で何が言われているかくらいなことはわれわれよりよく知っているということかもしれないと思いますけれども、しかしアメリカの経済は、これはレートをアメリカが下げてもらわなければ困るような経済であることは間違いありませんが、日本の場合は、レートを上げなければ世界経済にたいへんな迷惑を及ぼすという状態であるわけじゃなくて、日本の経済をもっとレベルを高めるような拡大政策をとればそれで済むわけですから、そのことは世界経済に迷惑を及ぼすわけじゃなくて、そのことがむしろ世界経済に利益を与えることは間違いない。世界経済の繁栄なり安定なりにとって日本が積極的な政策で日本の経済をもっと繁栄させることのほうが利益であることは間違いないと思うのです。ただ、いまの経済の現実の状態は、その点がまだ実績をあげておりませんので、非常に大きな黒字を出さざるを得ないような経済に押え込んでしまっておりますので、それを是正するような政策がまだ軌道に乗っていないので、あらためて補正予算を組んで臨時国会でそれを可決してもらわなければ実は動かないような状況になっておりますから、日本の政府の立場は非常に苦しい立場にあることは間違いないと思います。そこで新聞で見ますと、水田大蔵大臣などは、これは日本の不況のせいだといって、苦しまぎれの答弁をしておられるようでありますけれども、不況が影響していることは確かでありますし、不況になるようなもとの財政金融政策、四十六年度予算に示されていましたようなことが非常に困った事態を増幅したことは間違いありませんから、したがって早くそれを直してほしいということだと思いますけれども、これが是正されればこれは直し得る状態にある。アメリカの場合は簡単に直りません。ニクソン大統領が就任以来いろいろなことをやった結果、結局何の効果も出ないでスタグフレーションになっただけだというのがアメリカの実態ですから、これは基礎的不均衡であり、ドルを調整してもらわなければ困る。ですから、ドルを下げろという要求は当然な発言であると私は思います。ところが、日本は円を上げるべきであるということは、アメリカに対すると同じように当然な発言とはいえないと思います。日本の政府の選択の問題でありまして、レートの切り上げを選択することも可能であります。そういうような選択をすべきであるというような早期の決断が提唱されてもおる状態でありますけれども、しかしもう一つの選択のほうが日本の国民のためにもなるし、世界のためにもなるということを考えるのがむしろ正しい考え方じゃなかろうか。そうしますと、これは少し多国間調整が時間がかかるのにじっくり調子を合わせて、その間にわれわれは積極的に国内の経済を適当な、適正な状態に変えていく。その中で、為替レートの調整の問題はアメリカのインフレのための調整の程度のところで——国際的な多国間の話し合いの場ですからそれはどこで落ちつくかはわかりませんけれども、それを基準にしたようなところで落ちつける努力をすることが、いまのように不安定な状況のもとでわれわれがどういうような努力をすべきかという形で考えますと、そういう日本の立場を前提にしてその上で折衝に入っていくというのが一番現実的じゃなかろうかというように私は思います。

広瀬秀吉日本社会党

○広瀬(秀)委員 よくわかりましたが、これは非常に答えにくいことかもしれませんが、国民経済研究協会ですか、そういうところで、日本経済が耐え得る限度といいますか、そういうことで、かりにいろいろな国際的な会議においていろいろ調整をした結果、どの程度まで——まあ最終的にドルも何ほどか、たとえばドルも二、三%か切り下げる、それと見合いながらやはり日本も切り上げる、こういうようになる。その切り上げ幅というものが、これはまあドルが切り下げればその分プラスされるという考え方で、大体一二・五%とか一五%以内ならば、日本経済は、いわゆるドル防衛措置、そして国際通貨危機、こういうような問題で何とかこれを乗り切っていくことができるだろうというような試算をいたしておるわけでありますが、その辺のところの日本経済の強さ、それに耐える力、こういうようなものをどのように評価されますか。もし数字のお見通しがあればそれらを含めてお願いいたしたいと思うわけです。

下村治日本開発銀行設備投資研究所長

○下村参考人 耐え得る限度というのはそうはっきりとは限定されていないと思います。三百六十円レートがきめられましたときに、これは日本の経済にとって相当こたえるレートであった、たいへんに苦しいレートであったわけですが、日本の経済はそれに耐えてその後十数年の間にそれを消化して、そして今日ではそれでもなお余力があるような、そういう経済をつくり上げたわけです。したがって、相当苦しくても日本の経済のバイタリティー、適応力を前提としますと、何とかやるというようなことになりますから、したがって耐え得る限度までレートを上げろ、こういうことになりますと、そう、ここが限度だというようなことにはならないと思います。したがって、私の立場からいって一番合理的なレートの調整の程度はどの程度かというところから申しますと、これはアメリカのインフレを調整するレートの変化、調整であるという形になりますと、これはせいぜい八%前後というような調整、三百六十円レートを前提にしていいますと三百三十五円とか四十円ということになりますか、千円を単位にしていいますと、千円を単位にして現在は二ドル七十八セントぐらいですけれども、これが千円を基準にして三ドルくらいになれば、ちょうどアメリカのインフレを調整するような状態に近いというようなことじゃないかと思います。これも精密にそうだというようなことじゃいえないと思いますけれども、その前後のところならば、これは日本の経済にとって特別の障害にならない、特別のショックにならない。輸出産業そのものには部分的に、局部的に影響が出るのは言うまでもないことですけれども、経済全体として追加的なショック、経済全体を撹乱するようなショックにならない調整はその程度であるということじゃないかと思います。あとは日本の経済が、経済力にふさわしいような経済拡大政策をどの程度やる余地を残すかということで、それ以上のレートの調整があればあるだけ、それだけデフレ的な圧力が強くなる、それに対する適応を強制される、それだけ苦しさが加わってくる、こういうように考えてよろしいのじゃないかと思っております。

齋藤邦吉自由民主党

○齋藤委員長 堀昌雄君。

堀昌雄日本社会党

○堀委員 最初に鶴田参考人にお伺いをいたしますが、私はこの前の大蔵委員会でも言ったのですが、今度の問題に対する日本側の受けとめ方に非常に問題があると、各閣僚及び日本銀行総裁にお伺いしたわけですけれども、私は今度のニクソン声明というのは、まず主要な点はアメリカの国内政策だと判断をしておるわけです。その国内政策、雇用政策、インフレ対策、あわせてそれに関連をして課徴金、その最終的にそれらの問題を含めた通貨調整、こういう順序だと私は認識をしておるのですが、残念ながら日本の閣僚というのは通貨問題が主要な課題だと、こう受けとめておる。私はここに発想の非常な間違いがある、こう思っておるわけです。それが第一点なんですが、日本のジャーナリズムでも、円問題、通貨問題というのが主要な課題として連日実は問題が出されておるのですが、私も実は、下村参考人がこれまでいろいろお述べになっておる点、あるいは日本銀行の吉野さんの意見、共通している点が非常にあるわけですけれども、私はこの問題は国内問題で、特にさっき下村参考人もお述べになったように、昭和四十四年からですか始めたこの金融政策による引き締め——日本の金融政策というのはたいていスタートはおくれて、そしておしまいがこれもやはりおくれる、これが長い経験なので、私は日本銀行に対しても大蔵大臣に対しても、金融政策というのはそんなに重大なことに考えるな、ちょっと締めてすぐゆるめる、まただめならまた締めるということでいいのじゃないかと言うのですが、日本では、一ぺん締めると締めっぱなしでなかなかゆるめない、ゆるめたときはたいてい手おくれだ、あとに必ず問題が残る、こういうことにずっとなっておるわけですね。何回も経験しておることだから、それを改めるべきだと思ったけれども、今回も改められなかった結果が、日本が今日非常に困難な状況になっておると判断しておるわけです。私は、国内政策をまず優先して、国内経済を立て直しをすることによって、そうして正常な状態でなおかつ不均衡があるならばその次に何を考えるかという順序でないと、国内政策をいまほったらかしにしておいて通貨問題を一番先に考えて調整をするというのは、この不況という一番悪い条件のところで、一番ギャップの大きいところで問題を調整するという、国益に非常にマイナスになることになるのじゃないか、こういう判断を持っておるのです。そういう点で、さっき通貨問題に日本がイニシアチブをとるべきだとおっしゃるのですが、私は逆であって、まず政府がいまやらなければならぬのは、できるだけの国内政策をやって、それからいまの通貨問題は長期戦でじっくりかまえて、その中で日本の景気回復をして、輸出が減って輸入がふえてきた、そういう条件でものを考えるというのが日本の国益のためだ。ですから日本はイニシアチブをとるべきでないという考えなんですが、鶴田参考人の御意見を伺いたいと思います。

鶴田卓彦日本経済新聞東京本社経理部長

○鶴田参考人 その点については、おっしゃられたように、確かにそのとおりなところもございますけれども、また、本来ならばそういう形に持っていかなければいけないということで、それは当然のことだと思うのですが、現実の問題として、問題がここまでもう燃え上がってしまったというか、持ち上がってしまったという段階では、やはり通貨調整の問題を第一義に考えなければいけないのじゃないか。もちろん、ここまで問題が来ない前でしたら、アメリカの場合でもあるいは日本の場合でも、先ほど下村さんがおっしゃいましたように、もっと拡大政策をとりまして、それで国際収支の黒字がこれほどたまらないような政策を実行すべきであった、当然そういうことはいえるだろうと思うのですが、しかしいまとなってはちょっともう手おくれではないか。いまとなってはこの混乱、不安、動揺というものを一日も早く解消する手だてというものを考えなければいけないのじゃないか。それには、先ほど申し上げましたように各国が、日本がどう出るかというのをたいへん注目しているわけですね。アメリカの場合もたいへん意地が悪くて、当然アメリカ自身がやるべきことをやらないで、それで日本に対して早く平価の調整をやりなさいというような形でこれを押しつけてきていることは間違いございません。ですから日本はこれに対して、アメリカがみずからやるべきことをやらないで、日本に対してある意味では理不尽ともいえるようなことを要求しているのはけしからぬと、ここで怒り狂ってけんか腰になる、それははたして日本にとって国益かどうか。先ほど堀先生がおっしゃいましたけれども、私はむしろこの段階ではもっと現実的な処理を考えたほうが日本にとって国益になるんじゃないか。そういった意味では、日本ができるだけ早く各国の動向をつかんだ上で、いまの変動相場制を改める、そういうふうに持っていく。それと同時に、これも先ほど下村さんがおっしゃいましたけれども、いままでと違った意味でかなり積極的な拡大政策をとる。特に財政面からの拡大政策、私はこの場合は公共事業の拡大ということもあると思いますけれども、それよりもやはり減税を中心にした施策、これが景気浮揚策としては最も即効的ではないか。そういうふうに考えますので、そういった面で、できるだけ早く平価を調整して為替市場を安定させる。それと同時に国内景気浮揚のための拡大政策をあわせて実行する。そういった処理のしかたがきわめていまとなっては現実的ではなかろうか、そういうふうに思っております。

堀昌雄日本社会党

○堀委員 私は九月一日の委員会で実は通産大臣に申し上げたのですけれども、アメリカのいまの問題というのは、ここで簡単な通貨調整をやって調整できる問題だと実は考えておりません。ですから、アメリカ自体にとっては通貨調整の問題よりも、輸出入バランスが調整のとれるような貿易調整、このほうが彼らとして望んでいる、そのことのほうが的確に物が出ますから望んでおるのではないのか、こういう実は気持ちを私は持っているわけであります。ですから、そういう意味で主要商品についてある程度の数量調整を短期間的にやることはやむを得ない。そうしてその期間の中に日本の国内政策を推進することによって正常な条件にくる。なおかつその地点で通貨上のギャップがあるのならばこれは当然考えるべきだ、こういうふうに実は私は考えておるわけです。それはどういうことかといえば、日本の主要商品というのは競争力がありますから、ある程度の数量規制にたえられると思います。雑貨だとかそういう中小企業製品というものは、これは問題がありますし、このことはアメリカ自身にとってもこういう労働集約的なものをアメリカでつくるわけでもありませんから、必然的に、これらの問題については主要商品における数量調整がある程度話がつけば、トータルとしてのギャップが調整できれば向こう側としてもそれほどそれにこだわるところではないのではないか、私はこういう考えを持っているわけであります。  それが一つの現実的な側面でありますが、理論的に考えて非常に私は問題があると思いますのは、通貨調整というのは技術論だと思うのです。やはり本質論というのは基軸通貨がいかにあるべきかという問題が解決されない限り、技術論というものは何回か繰り返さなければならない。ようやくここへきてアメリカがドルと金の交換停止をやったということは、はっきりとIMFの第四条に違反をしておるということになったわけですから、世界的にまだドルを基軸通貨だとするということであるならば、ドルと金の関係がどうなるのかという調整の問題なくしてドルが基軸通貨に戻り得ないという実は認識を私はしているわけであります。同時に、アメリカがあそこで金の交換停止をやったのは百億ドルに近くなったということが一つの理由だと思いますから、アメリカ当局の中にもいつかはやはり金価格に触れなくてはならぬという配慮があったのではないか。なければ、別に百億ドルを切れようがどうしようが、金の問題は離れておるのなら私はあそこでやらなければならぬ理由はなかったのじゃないかという気がしておりますので、どうもやはり今後のあるべき基軸通貨というのはどういうものであるかということを、これを世界各国が十分話し合ってきめた中で、そのあるべき通貨との関係の中から為替レートの問題というのが考えられるべきであって、当面したそういう技術論の末端における為替レート問題だけに終始をしておったのでは、ここで幾らかさわったとしても、これは一年なり二年後にもう一ぺん必ずさわらなければならぬ問題に発展をする。やはりいまの基軸通貨のあり方に非常に矛盾があるという問題を、この際根本的に解決するということはきわめて重要な課題であって、IMFの総会においては、日本政府はこの点をやはり十分日本側の腹がまえとしても検討しておくべき筋合いのものではないのか。ですから、やはり本質論と技術論をここで整理をしてものを進めるということが重要だ、私はこう思うのでありますけれども、これについてひとつ鶴田参考人と、あわせて下村参考人の御意見を承りたい。

鶴田卓彦日本経済新聞東京本社経理部長

○鶴田参考人 ただいまの御意見、私もそのとおりだと思うのです。ですから、一国の通貨に基軸通貨としての負担を負わしてきたということ、このこと自体が私はたいへんな間違いだったと思う。アメリカの経済が相当大きな力を持っておりますけれども、それにしても世界経済を背負って基軸通貨としての地位を保つほどの力はいまやなくなっているのじゃないか。この問題はすでにもう五・六年前から出ておりましたね。ですからこれまでの段階でその処理をする。たとえばドルを基軸通貨の地位からだんだん離しまして、たとえばその一つの方法としてはSDR、こういったものに次第にかえていく。そういった基本的な施策、これがきわめて大事だったろうと思う。ところがそれをやらずに今日まで来てしまったということであれば、じゃ今日のこの国際通貨の混乱というものをどう収拾するかということになりますと、やはり当面の問題は各国間のバランスを回復するということがまず考えられなければいけない。したがいまして、先ほどから同じようなことを申し上げるようですが、もうここまで来てしまった現在では、まず各国間の格差の調整というものをやりまして、それに続きまして基本的な基軸通貨のあり方をどうするかということを考えていかなければいけないのじゃないか、そういう感じがしております。

下村治日本開発銀行設備投資研究所長

○下村参考人 御意見、大体同感でございますので申し上げることもないと思いますけれども、お話しのように当面の問題の本質は、ドルが価値をだんだん減価をし始める。そのためにドルを基礎として成り立っておったIMF体制が動揺を始めた。そして、それを結局いままでの形で維持できなくなったということで今日の事態があらわれたということじゃなかろうかと思います。したがって、これから新しい国際金融秩序、安定した国際金融秩序を再建するという仕事が始まろうとしているということじゃなかろうかと思います。これはそう簡単にできることではないので、一番簡単なすっきりした答えが出るとしますと、ドルが昔のように安定した強固な価値を持った通貨に復活をする、したがってそのドルを基礎としてIMFが復活すればそれでうまくいくわけですけれども、現実の事態からいいますとなかなかそれが期待できない。そう簡単にドルが安定するということは予想されませんから、したがって、ほんとうの安定した国際金融秩序はドルから離れた形で、ドルの重要性を減らした形でいかにして再建するかということになるほかない。そういうような考え方がすでにだんだんと強くなり定着をして、ECの共通の意見としても出されるぐらいの状態がすでにあらわれておりますけれども、それが直ちに現実的な組織としてでき上がるかどうかということも、まだこれはそう断定できないというのが今日の状況じゃなかろうかと思います。そういうわけで、比較的に不安定な状態、やや動揺するような状態がこれからしばらくは続かざるを得ない。その中でお互いに知恵をしぼり、お互いに努力をして安定した国際金融秩序をつくり上げる。その中ではドルがいままでのように圧倒的な重要性を持つということではなくて、いわれているようにSDRのようなものがだんだんと重要性を持つ、国際的に管理された国際金融秩序という方向に進んでいくというようなことになるほかないんじゃないかと思いますが、そういうようなことを頭に置いて、その方向に向かってわれわれは建設的な努力をする、その方向にわれわれも協力をするというのが、国際金融問題としてはわれわれが考えるべき基本的な方向である。したがって、拙速で何かすればうまくいくんだというのは少しいきり立ち過ぎた意見じゃないかと私は思います。もう少し時間のかかる問題だというように覚悟をきめてかかったほうがよろしいんじゃないか。その中で、あるいは案外早く比較的中間的にいい状態が見つけ出されるかもしれませんけれども、それは予想外の事態ということで、覚悟としては、少し時間がかかってもしかたがないという覚悟で取り組んだほうがよろしいんじゃないか。ことにいま話題にもなりましたように、日本が率先して何かやればうまくいくのだろうというような期待は、これはやはり少し日本の一人よがりのところもありはしないかという感じもいたしますし、特に目先の、たとえば貿易取引に非常に大きな障害がある。この障害を取り除くためにはどうしたらいいかということに刺激されて、その障害を取り除くための手段として二、三の選択の余地があるのにそれを無視して、ただ一つの答えだけ、それは為替レートを思い切って上げて、外国が満足するようなことをわれわれが率先してやったらうまくいくのじゃないかというように、少し話が飛躍し過ぎたのじゃなかろうかというように、私はやや批判的な形で考えております。

堀昌雄日本社会党

○堀委員 もう一点。私もその点は同感でありまして、最初に下村参考人がおっしゃったように、実はいまの業界の問題というのは、商社がリスクを負うのか、為銀がリスクを負うのか、日銀にかぶせるか、MOFが負うのかという、結局この問題になっているのですから、私は、九月一日のときにも、中身は申し上げませんでしたけれども、ともかく貿易取引が正常に行なわれるような手段を日銀も大蔵省も考えろと、九月一日から注意を喚起しておるわけであります。私は、やはり変動相場制というものも一つの通貨体制だと思っておるわけでありますから、そういう変動相場制という通貨体制であっても問題はない。だから、それを固定レートに戻さなければならないというのは、貿易取引に支障があるから固定レートに戻してもらいたいということですから、貿易取引に支障のない範囲にひとつ政府で考えるということであっていいのではないか。  それからもう一つ。たとえば為銀の外貨の取り入れの規制の問題にしても、その為銀の取り入れたものがはたして確実に輸出手形に振りかわるものなのか、あるいはスペキュレーションのための短資であるかということは、私は為銀の検査をひとつしっかりきちんとやって、もしその短資に類するようなものの処置については、為銀に対して強い罰則を与えるというようなことで、少なくともこの際、国益を守るためでありますから、為銀としても国益に向かってやってもらうというきびしい姿勢を政府はとりながら、もう少し大胆にそこらをゆるめていくということで、少なくとも経常取引について支障のないだけの大幅な大胆な措置をとる。しかし、それに対しておかしな行動のあるものについては厳格に規制をするという態度、言うなれば、ある意味ではフランスが経常取引と二つに分けているわけですけれども、発想としては、私は、資本取引は完全にきびしく、経常取引はきわめて弾力的にやることによって、世界がいまある一つの変動相場制のままで少なくとも半年、一年いくということが通貨調整としての一つの手段だと考えていいのではないか。これを過渡的手段だと考えておるところに少し認識上の問題があるのではないかという不安を持っているわけですから、これについてお答えをいただいて私の質問を終わりたいと思います。ちょっと両参考人から簡単にお答えをいただきたいと思います。

鶴田卓彦日本経済新聞東京本社経理部長

○鶴田参考人 ただいまの御意見でございますが、確かに変動相場制も一つの通貨体制であることは間違いないと思います。しかしこの状態が長く続いておりますと、たとえば各国がそのときどきの国際収支状況によってこの変動相場のレートをかなり恣意的に動かすということが一つ考えられると思います。戦前、第二次大戦に入る前の状態、それと似たようなことになるのではなかろうか。と申しますのは、それによってできるだけ自国の貿易を有利にしようということで、それこそ弾力的過ぎるぐらいにレートを動かす、そういった問題が出てくるのではないかという心配が一つあろうかと思います。そういたしますとたいへん貿易がやりにくくなる。したがいまして、日本の貿易の拡大ももちろんそうでございますが、世界全体の貿易を拡大していくということを前提といたしますと、やはりいままでのような固定相場制がきわめて妥当なものではないか、そういうふうに思うわけであります。ただ、いままでのようなきわめて弾力性のない固定相場制では、これから先の国際収支調整というのは必ずしもうまくいかないのではないか、そういった議論もありますし、そういったことも確かに一つの理由があると思います。そういった意味では、いまよくいわれておりますようなワイダーバンドと申しますか、為替の変動幅を拡大する。つまり、基本は固定為替制であって、その上に変動幅をつける、そういった形に持っていくのが日本の貿易をふやす道でもあるし、世界全体の繁栄にもつながっていくのではないか、そういうふうに私は思っております。

下村治日本開発銀行設備投資研究所長

○下村参考人 いまの御質問、全く同感でありまして、つけ加えることはございません。お説のとおりじゃなかろうかと思います。固定レートに復帰するという原則は今日先進工業国すべてが承認しておりますから、このことは変わらないと思います。いつ、どういう条件で復帰するかについて現在まだ模索の段階で、そのためにお互いにいろいろ利害の調整をしなければならぬ、意見の調整をしなければならぬということで、そのことに時間がかかる。そのことにわれわれは拙速を考えないでじっくりと腰を落ちつけて解決の道を考える。世界経済の将来のバックボーンになるような秩序をつくろうというわけですから、そうあわてて答えを出す必要はないので、ゆっくりと落ちついてやっていくべきことじゃなかろうかと思います。その間のつなぎをどうするかということで現在の変動制が何とか動いているわけですし、若干の摩擦、若干の不便はありますけれども、その不便をできるだけ実際上なくすような努力をすればよろしいし、日本の場合は特にそれが大きな問題としていまなっておりますけれども、それをできるだけなくすようなくふうをしながら、できるだけ努力をして建設的な解決を見つけるという以外にないのではないかと私は思います。

齋藤邦吉自由民主党

○齋藤委員長 松尾正吉君。

松尾正吉公明党

○松尾(正)委員 貴重な御意見を伺いましたが、時間もだいぶ切迫しておりますし、まだあとがあります。  そこで端的にお伺いしたいのですけれども、たまたま御意見は、下村先生は、じっくり腰を据えてやるべきだ。鶴田先生は、ここのところで不安を除くためには円の切り上げを考えても早期に解決すべきだ。まさしくいま国や企業にしても、全体がこの二つのどっちをとるか、こういうところにあると思うのです。じっくり腰を据えて取り組んでいくことが望ましい。けれども、鶴田参考人の御意見のように、いま直面して企業等は輸出成約等がほとんどストップの状態で、長引けば長引くほど混乱が大きくなる。したがって、すみやかに解決をしなければならない。こういうことで、まことによく御両人の御意見もわかるのですけれども、ここで早期に取り組むことは、結局理論的に下村先生からお話のあった基礎的の不均衡というのがはたして日本には該当するのかどうか。こういう立場で、鶴田参考人は、理論的に日本の場合には基礎的不均衡があるのか、理論的には不均衡はないけれども、しかし直面してこうなんだ、先ほどの答弁でそういう感じがするのですけれども、その点を最初に一つだけ伺いたいと思います。

鶴田卓彦日本経済新聞東京本社経理部長

○鶴田参考人 日本の国際収支が現在基礎的不均衡があるかどうかというお尋ねでございますが、基礎的不均衡とは一体どんな状態かというこの定義、これ自体がまた必ずしもはっきりしていない。恒常的に継続的に国際収支が黒字になるような状態をもって基礎的不均衡という、そういった見方がございますけれども、その見方だけですべてそれでは割り切ることができるかということになりますと、そうはいかない。現在日本は相当大幅な黒字基調になっておりますけれども、これは先ほど来下村さんからも御指摘がありましたように、これは景気拡大政策が不十分であるがための黒字、こういったものも私は相当この中には含まれておると思います。その意味では、はたして完全な意味での基礎的不均衡であるかどうかということは若干疑問だと思いますけれども、そういった意味では景気問題との大きなかかわり合いがございますけれども、全く不均衡がないかどうかということになりますと、必ずしもそうは言えないのじゃないか。かなり日本の円というものが国際的に割り安になってきている、その傾向というものは否定できないのじゃなかろうか、そういうふうに思います。ですから絶対的な基礎的不均衡というものはないけれども、ある程度相対的に見た基礎的不均衡的なものは存在するというふうに見てよろしいと思います。

松尾正吉公明党

○松尾(正)委員 下村先生に伺いたいのですが、この問題がいま直面をしている問題点のポイントは、要するに為替リスクにあるのだ。したがって、これは政府が責任を持ちさえすればこの不安は解消するのだというお話でありましたけれども、これはもちろん政府に聞かなければならない問題でありますが、下村先生の立場で、現在の政府でこのリスクを政府が保証していく可能性が確実にあるかどうか、先生のお立場でひとつお伺いしたい。

下村治日本開発銀行設備投資研究所長

○下村参考人 政府は、御承知のようにいろいろな面で国民生活の安定、国民生活の安全を維持するためにコストを負担しております。そういうようなコストをあげればきりがないくらいたくさんあると思いますけれども、予算の非常に大きな部分がそういうことのためのコストじゃないかと思います。  金融について申しますと、日本銀行は金融秩序の安定の責任を持つという形になっております。一時的に非常に混乱が起こりますようなときには異常な特別融資をするというようなことも実はこれまで例があったことでありまして、いろいろな批判もありますけれども、しかし金融秩序安定のためには、政府は異常と思われるようなことも措置をとるのだというのが本来のたてまえだと思います。今日起こっております為替上の問題は、たまたま一時的な異常な事態が発生をして不安定な動揺の時代があらわれましたために起こっている事態でありますから、したがって、これを何とか安定させるために何らかの措置をとらなければならぬ。それについて政府に、コストのかかるということがありましても、そのために政府が行動を起こす、措置をするということは、これは当然に承認されなければならぬことだと思います。そういうような認識がはっきりしますれば、何億円のコストになりますかこれはわかりませんけれども、これは当然に政府が負担すべきだという結論になるのじゃないかと思います。現実にどれだけのコストになりそうであるかという数字を考えてみましても、それほど大きなコストになるはずはありません。せんだっての変動レート移行のときに出ましたような大きなコストではなくて、つまり現在すでに円レートは上がっております。この円レートはもうちょっと動くかもしれないというだけのことじゃないかと私は思いますが、これは政府の選択いかん、政府の決意いかんの問題だと思います。どこで日本の為替を安定させるか、どこへ日本の経済を持っていくかということは政府の為替についての考え方できまるところでありまして、これを世間では、三百二十円に上がるに違いないとか、三百十円になるかもしれないとかいったような疑心暗鬼を持っておりますから、リスクは負担できないということになっておるのではないかと思います。これは政府の立場からいいますと、いま三百三十八円なのがそのうち三百円になるかもしれない、三百三十円になるかもしれない、二十円になるかもしれない、どうなるかわからないということではおかしいわけで、政府としてはどこに目標をきめてどういう努力をするのだという考え方があってしかるべきだと思いますが、そういう観点からいいますと、そういう頭を前提にして最初に一つだけ答えが出るわけではありませんので、国際的ないろいろな討議の中で状態は最後にはきまるわけですから、まったくリスクのない状態でありませんけれども、そのようなリスクは本来政府が負担して、それを前提にして経済活動が順調に動くような配慮をするというのが、これは自然なことではなかろうか。現在の事態というのは簡単に安定化させられるような状態でありませんので、この不安定な状態の中でどうやって持っていくかというような臨時的な、一時的な問題として事柄を考えたほうがよろしいのではないかと思います。

松尾正吉公明党

○松尾(正)委員 簡単に、もう二つあります。  一つは鶴田参考人に伺いたいのですが、これを早期に解決するために各国の感触をつかんで、そうしてリーダーシップを握っていくべきだ、こういう御意見がありました。しかし、ごもっともな御意見なんですけれども、このドル・ショックにしても、中国の頭越し外交にしても、相当情報網がつぎ込んであり、鶴田さんのところでもここへおいでになっている。ところが皆目これがつかむことができなかったという状態で、はたして現在向こうの外交交渉の間に相手の感触をはっきりつかみとることができる可能性があるかどうか、こういう問題が非常に心配なんです。この点、ジャーナリストの立場でひとつ可能性についてお伺いしたいと思います。

鶴田卓彦日本経済新聞東京本社経理部長

○鶴田参考人 私はその可能性は大いにあると思います。いままでのところ、われわれが知り得た情報網もきわめて限られたものでございますけれども、当局者はもう何十回となくそういった会合を重ねておりますので、全く意味のない議論を重ねているというふうには私は思われません。かなり相互にいろいろな意見を出し合っているのではなかろうか。ただそれがいまの段階ではまだ外に出る状態ではない。ある程度はもうすでに感触が出ているのではなかろうかという感じもいたします。これから先一連の国際通貨会議がございますので、その間には必ず感触が出てまいると思いますし、また日本としては積極的にその感触をつかむという努力をしなければいけない。そういった努力をすればそれは不可能ではない、可能である、私はそういうふうに思っております。

松尾正吉公明党

○松尾(正)委員 もう一点。下村先生はじっくり腰を据えて、それから鶴田さんは早急にということなんですけれども、関心はIMFという国際会議を一つの時点として国民は非常に考えている、こういうふうに思いますが、したがって下村先生のじっくりというのは時期的に——先ほどのお話の中にも状況を見据えている中に見出せるというようなお話もありましたから、いつということは非常にむずかしいとは思いますけれども、IMFの総会を中心にしてどのくらい先がじっくりなのか、あるいは早急にということはそれを限度とするのかという点について見通しを伺って終わりにしたいと思います。御両人から……。

鶴田卓彦日本経済新聞東京本社経理部長

○鶴田参考人 早急にと私が申し上げておりますのは、大体いまおっしゃられたような線でございまして、九月末のIMFの総会が終わったあたりという、そのあたりでもって調整をするのが一番よろしいのではなかろうかというふうに見ております。

下村治日本開発銀行設備投資研究所長

○下村参考人 私は、少なくとも半年くらいは——日本の政府当局がこの段階で積極財政を思い切って打ち出されるといたしますと、半年の間に実効があがってくる。一年の間には相当はっきりした効果が出てくる。もしも半年よりも長くじっくりと検討されているとしますと、そのときには日本の基礎的不均衡というような話に対して、実績をもって日本の経済はこういうような形で変わったんだということがいえるようになると思いますが、そういうようなことが、じっくりかまえておればむしろわれわれにとっては望ましい状態になるし、われれれの望ましい状態というのは他人の犠牲においてということではなくて、世界経済のためにもそのことが利益になり、そのことが望ましい効果が出ることでありますから、自信を持ってそういうような態度をとってもよろしいのではないかと私は思います。

齋藤邦吉自由民主党

○齋藤委員長 竹本孫一君。

竹本孫一民社党

○竹本委員 私は、ただいま両参考人が申し述べられておる時期の問題について批評する立場でも判決を下す立場でもありませんが、しかし、現実問題として考えれば、先ほどのおことばにもありましたように、国民が疑心暗鬼、円不安で経済機能あるいは輸出が麻痺しようとしておる。それから世界の国は、いま日本がどういう態度に出るかということを非常に注目しておる。ぐずぐずしておれば誤解を招くだけだ、また混乱を多くするだけだという現実判断に立って、これは早急に結論を出すべきだという私は意見です。  鶴田参考人にお伺いをしたいのですけれども、私はいまの時期の問題についても大体あなたと同じように見ておる。あるいはできればもっと早くやるべきであったと思うのです。大体このドル・ショックということばはぼくはきらいなんですけれども、日本の政治というか、いまの政府は、重大な問題はみなショックにしてしまう。ニクソンが訪中をするということになると、これはまたニクソン・ショックである。それがたいてい十六日に出るのだそうですけれども、今度はドル防衛になると、これがまたドル・ショックである。しかし、これは政治がまじめに世界の政治あるいは経済の流れを科学的に受け取っていない証拠なんですね。自分の頭がないからなんですよ。私に言わせれば、外交の動きも経済の動きも大体において必然的なコースを歩んでおる。来るべきものが来たんだというふうに考えれば、これをショックとして受け取るのは、ジャーナリズムの表現としては非常におもしろいけれども、政治家のまじめな態度として見れば、いかに自分が認識不足であり、対応の手を知らないでおるかという問題だと思って、あらためてこれは予算委員会か何かで政府の態度を追及しなければならぬと私は思っておる。そういう立場でありますから、この間からの一連の動きを、私はちょっと国内にいなかったけれども、アフリカから見ておったわけだけれども、日本の政府の動きというのは、全く柏木大蔵省顧問にこの問題は全部まかせっきりみたいに、日本に政府があるのか、大蔵省があるのか、アフリカの人間は疑っただろうと思っておった。とにかく、こういう変動は来たるべきものが来たのですから、私はあの十六日あるいは十七日の段階において、少なくとも日本はこれをこう受けとめるという案を出すべきであったというくらいにも思っておるわけです。  変動相場の問題につきましても、堀委員からも御意見がございました。実は私は七月二十一日の予算委員会における質問の際にも、変動相場をとれ、フロートで行けということを前提にして、質問をすでに七月にしておるのであります。しかし、そのときと今日とはちょっと情勢が変わりました。私はあのときは、ドイツがマルクのフロートをやったと同じような意味で、日本もそれをやることがある意味において賢明な政策だと考えておったのですが、今日は世界じゅうがフロートしてしまったのですから、これはそのときと情勢が違いますので、いまはやはり新たな固定相場を考える以外にはなかろう、しかもその結論は早く出したほうがいいのだ、こういうふうに私は思います。  一言鶴田参考人にお伺いしたいのは、早期に日本が自主的にそういう提案をやるべきだ。そのやる場合に、ドルの切り下げというか金の引き上げというか、それはどのくらいのものを考えられておるのか。それから世界のいわゆる基軸通貨の問題についてはどういうふうに考えていくのか。あるいは日本の円はどの程度切り上げるべきと考えていくのか。まあ、日本が自主的な案を出すならば、課徴金の問題も含めてこういうところでわれわれは行こうということをはっきり示すべきだと私は思うのです。水田さんがロンドンの蔵相会議においても一応の発言をしておられる。だいぶもっともなところもあるのですけれども、なぜそれを日本政府の意見として東京において発表しないかということを私は非常に残念に思うのです。これが全部いいとしてもですね。そこで、東京において、日本政府の立場として、この際世界の通貨混乱の場合にわれわれはこういう考え方でこの問題を片づけたいということを提案すべきだという私は考えですが、鶴田参考人も大体そういう御意見のようですが、いま言ったような諸点について、まとめてこういうところで日本の意思統一なり日本の政策態度を決定すべきであるということについての御意見があれば承りたい。

鶴田卓彦日本経済新聞東京本社経理部長

○鶴田参考人 たいへん内容が具体的になってまいりましたので、やや無責任な発言になるかと思いますけれども、私の考え方を述べさせていただきますと、日本が自主的に円の切り上げを決断いたします場合には、当然アメリカに対しては金の価格の引き上げ、つまりドルの切り下げを第一に要求すべきである。このドルの切り下げ幅をどのくらいに見るか、これはいろいろ意見がございますけれども、やはり五%ないし八%くらいのドルの切り下げは当然やらなければいけないのじゃないか、そういうふうに思います。それからもう一つは、いま一番問題になっております輸入課徴金でございますね、これを即時撤回する。そういった二つの条件をまずつけるべきである、そういうふうに思います。  それでは、そういった中で日本が円切り上げの幅をどのくらいを選択するのがよろしいかということになろうかと思うのですが、それについては私は一〇%以下ということが一番妥当ではないか。あまり一〇%をこえるような切り上げをやりますと、それは日本経済にとって相当大きな負担になります。それからまた欧州各国に対してバランスを失するおそれもございます。ですから、どんなことがあっても円切り上げの幅は一〇%をこえてはならない。まあ先ほど下村さんが一つの考え方としてお示しになりましたけれども、やはり六ないし八%あたりで切り上げをして、必要があればそれにワイダーバンドをくっつける、つまり変動幅を上乗せするといった考え方が一番妥当ではなかろうか、そういうふうに思っています。  基軸通貨の問題ですが、これについては先ほどもここでお話をしましたように、やはりドルを中心にしたキーカレンシーというものはもはや時代おくれになりつつあるのではないか。そういった意味では基軸通貨というものは次第にドルから離れていくべきである。ドルにかわるものとして何を考えればいいか。これはたいへんむずかしい問題を含んでおりますけれども、最も現実的なものとして考えられるのは、いますでにIMFが持っておりますSDR、特別引き出し権を何らかの形でこれから先の基軸通貨に置きかえていくような努力が必要なのではなかろうか、そういうふうに思っています。

竹本孫一民社党

○竹本委員 さすがは日本経済新聞の経済部長であって、四点の項目についての御意見、私は個人としては全面的に賛成です。ぜひそういうライン、あるいはそれをまた検討していただいて、もっといい意見かもしらぬけれども、少なくとも日本がそういう積極的な案を示すということでなければ、私はこの際、国際社会において日本が名誉ある地位を占めることはできないだろうと思います。  次に、下村参考人に簡単に一、二お伺いいたしたいのでございますが、あなたのお説は、従来は円の切り上げにはむしろ反対であるという御意見であったように理解いたしております。先ほど来またお話を承っておりますと、日本の経済の自由化なりあるいは積極的な抜本的再編成なりということが先行すべきだという御意見のようでございますが、そういう意味で反対であったのか、もう一ぺんその点をお聞かせ願いたい。簡単でけっこうです。

下村治日本開発銀行設備投資研究所長

○下村参考人 円のレートを堅持すべしという私の主張は、不動のドルを前提にした主張でございまして、ドルが不動であるという前提で三百六十円レートはもともときまっているわけです。ですから、その不動のドルを前提とした三百六十円レートはわれわれも不動に維持すべきである。昭和二十四年以来そういう前提で、日本の経済は三百六十円レートを前提にした経済の成長と発展を実現し得たわけです。それが一番望ましいことであることは間違いない。ところが、不幸にしてアメリカは不動のドルから乖離を始めている。ドル自身が動揺を始めたわけです。ドルがインフレで、ドルが減価をし始めたわけです。ですから、このように減価したドル、インフレ化したドルに対しては、円はそれに不動なレートを維持するはずがありません。最初に申しましたように、アメリカが基礎的不均衡におちいったわけですから、その基礎的不均衡におちいったドルは減価するのは当然で、ドルは切り下げるべきであるということになります。切り下げるべきものはドルであって、円が切り上げるべきであるということはその中に出てまいりません。ドルが下がったら円は上がるというわけでありまして、円が上がるのはつまり円が不動であるから上がるのでありまして、ドルと一緒にインフレしておりましたら、これはやはり三百六十円は続くわけですけれども、そういうような形でインフレのドルと一緒に一蓮托生でこちらもインフレになるのだということではなくて、ドルがインフレで、ドルは切り下げざるを得なくなれば、これはドルが減価してそのかわりに円は上がる。しかしそのときの円は、IMFが設立された当初のドル、あるいは日本が三百六十円をきめたときのドル、そのドルに対しては三百六十円の実質価値を維持する、そういう経済を続けるべきであるということを主張しておったわけです。  主張のときにいつもそういうことをはっきり書いておったつもりでありますけれども、ドルがインフレであればこれは別問題で、ドルが減価するのだということをいつも主張しておったわけです。したがって、今日申し上げましたことも同じことでありまして、ドルが減価をし、ドルが切り下げをする。しかし日本は何をすべきかというと、日本が切り上げるということじゃなくて、日本は、経済をこれまでやってきたと同じように為替レートを前提にして、能力の限度までの建設的活動をすべきである。それが日本の経済としても望ましいし、同時に世界の経済としても望ましい、こういうことを申し上げたわけであります。

竹本孫一民社党

○竹本委員 時間がありませんから簡単にしますが、ドルが弱い、したがってドルを切り下げろ、このあなたの議論、私は全く賛成なんですが、ドルが弱いという問題に関連して、アメリカのワールドエンタープライズの問題をちょっと聞きたいのですけれども、御承知のようにアメリカが海外投資しているのは約七百億ドル、その生産が二千億ドル、大体日本の総生産と同じですね。伸び率も大体名目一五%くらい伸びているらしいのですが、これは結局アメリカの世界経済における支配的地位というものをいよいよ強固にしておると思うのですね。アメリカの国内におけるドルの弱さと、それから海外におけるそれだけの資本投資と、それを基礎としたアメリカの要するに経済実力というものとの関連をどう理解したらいいということになるのか、その辺をひとつ先生から……。

下村治日本開発銀行設備投資研究所長

○下村参考人 アメリカの資本自由化に対する要求は私は不合理だと思っております。資本自由化というのは、原則として合理的な原則であるわけじゃなくて、資本自由化というのはお金の自由化じゃありませんので、経営の自由、経営者の移動の自由、経営者の活動の自由が本質でありますから、したがってこれは人間に関するわけで、当然に国籍に関係しておると思います。  国籍について申しますと、国民は自由に国際的に移動することができない、制限されております。したがって、そういうことを前提にして国際関係が成り立っておりますから、それを背景にして考えますと、資本の自由化ということは、特殊な問題であるにもかかわらず、それを一般的な問題であるかのように言い違えているといってよろしいと思います。したがって、一般的にいいますと、相手国が希望し、相手国が歓迎する限りにおいて資本は自由に移動すべきであるというように考えるべきであって、相手の意思にかかわらず押しつけることが自由でなければならないということであってはならないと思います。アメリカの今日の経済状況からいいますと、資本の自由化は、まさにアメリカのドル防衛あるいはアメリカの景気政策からいうと逆行でありまして、アメリカの生産性を高めるためにも、アメリカの雇用状態を改善するためにも、アメリカの国際収支を改善するためにも、ニクソン大統領がもしもアメリカの経営者に呼びかけるとすれば——アメリカの国民に呼びかけたと同じように経営者に呼びかけるとすれば、世界じゅうに散らばっているアメリカの経営者よ、世界じゅうのドルを持って本国に帰ってくれ、そうして本国でいい仕事をやってアメリカの経済力を強めてくれ、こう言うべきじゃなかったかと思います。

竹本孫一民社党

○竹本委員 私の質問とちょっとポイントのずれた点もあるのですけれども、これは時間がありませんから……。  最後にもう一つ、円は強いという問題についてでありますけれども、はたして円が強いかということについては、基礎的不均衡の問題と関連して先ほども御意見が出ました。私は、今度は観点を変えまして一つだけ先生にお伺いしたいのは、先生の高度成長論と関連して申し上げるわけですけれども、大体日本のいまの経済というのは、たとえば今度いわゆるドル・ショックで五十億ドル輸出が落ちたといってみても、大体二〇%程度ですね。これが国内の総生産に何%響くかということになれば、数字を詳しく検討したわけではありませんが、大体二、三%か四%程度。しかるにこれを受けとめておる日本の国民の気持ち、あるいは経済の実勢からいって、これはたいへんなショックということになっておる。ということは、日本の経済の実体というものが、この程度のショックなり切り上げにたえるだけの実体があるのかないのかというところに問題があるのじゃないか。日本は、極端な例で申しますと自転車操業をしている。いたずらに金を借り入れて、資本費もコストをたくさん高めておる。何としても一五%くらいの成長率でなければいまの経営、いまの会社がやっていけないのだ、ちょっとスローダウンしたらもうやっていけないのだ、そういうせっぱ詰まったような内部矛盾、自己矛盾を持っておるので、ちょっと生産が落ちるとか輸出が落ちるとかいうことになれば、これをショックとして受け取らなければならないような体質的な弱さを持っているのだ。したがって日本の経済は、そういう意味からいうならば名目的な高度成長はしておる、表面上の高度成長はしておる。先ほど先生からもお話がありましたけれども、まだ実体はきわめて弱い脆弱な基礎の上に立っておるというような議論もあるし、また、そういう面も確かにあると思うのですけれども、これと日本の円は強いのだという議論との関係は、先生はどういうふうにとらえておられるか。これで終わりにいたしますが、ひとつ伺いたい。

下村治日本開発銀行設備投資研究所長

○下村参考人 円が強いということは、日本の産業界の全般的な国際競争力が充実してきて、今日のような経済にするとすれば国際収支が必ず黒字になってしまう、そういうような経済状態になったということでありまして、今日われわれがドル・ショックで非常にろうばいしておりますのはこれは別のことだと思います。これは日本がその前に不況状態にあったということが前提でありまして、その不況状態の上にドル・ショックが加わったということが過大に不況感を強め、それに関連しまして為替レートの変動の問題が不安定な形にありますために、さらに不安、動揺を増幅しているということが事柄の実態ではないかと思います。したがってこの問題は、積極的な財政金融政策でまず根本的に処置すべきであるし、その次には、貿易取引の不安、動揺をなくするような措置を政府は自信をもって積極的にとるべきであるというようなことではなかろうかと思います。

竹本孫一民社党

○竹本委員 ありがとうございました。

齋藤邦吉自由民主党

○齋藤委員長 これにて、下村参考人、鶴田参考人に対する質疑は終了いたしました。  両参考人には、御多用のところ御出席いただき、貴重なる御意見をお述べいただきましてまことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。どうぞお引き取りになってけっこうでございます。     —————————————

齋藤邦吉自由民主党

○齋藤委員長 これより永野参考人から御意見を承ることといたします。  永野参考人には、御多用のところ御出席いただきましてまことにありがとう存じます。国際通貨問題について忌憚のない御意見をお願い申し上げます。永野参考人。

永野重雄日本商工会議所会頭

○永野参考人 最近の経済の実情に即応しまして円の問題等について意見を申し述べろということでございました。  私ども、自分自身としましては、大きな企業としての新日鉄をやっておりますが、同時に、日本商工会議所の会頭の立場といたしますと、非常に多くの中小企業経済のためにお世話をせにゃならぬ立場にございます。そんな立場から考えますと、最近のニクソン声明、このごろはやりのドル・ショック、ニクソン・ショックと言っておりますが、これによる影響は非常に大きいのであります。そんなような立場から円対策相談所というのを東京商工会議所の中につくりまして、御相談にも乗っておるというような次第でございます。  アメリカが今度の新しい政策を打ち出しまして、したがって、将来並びに現在を通じまして円がどの程度の価格なら売れるのかという判定がつかないものでございまして、これは売り手にとっても疑問があるし、買う相手方も同じような観点から模様待ちとかいう点等もございます。一切のといえば少し言い過ぎになりますけれども、非常に大きな商談がストップであります。したがいまして、そういう中小企業の人たちの立場からは、円が一割上がろうが、二割上がろうが、三割上がろうとかまわない。自分たちは、いま目先の一切の商談がストップで、どうして食っていこうかということで悩んでおるんだということであります。もちろん、円の位置によっては、価格等について非常に大きな利害関係の違いを起こすのは当然でございます。しかし、商談がストップをすれば、その間はどうして食うかということになるので、いわばストップすれば一〇〇%の切り上げと同じ結果になるので、そんな一割や二割の問題よりも、これが早く打開されて商談ができるということが必要なんだというような、いわばデスパレートな表現すら言っている向きが相当ございます。そんなような立場にございますので、私どもの立場といたしましては、何でもかんでも円の置かれる地位につきまして、どんな位置でもかまわないということまではよう言いませんけれども、一刻も早く位置をきめてもらいまして、それによってそういうような立場の人たちが商売のしやすいような環境になることをお考えいただきたいと望む次第でございます。  私、たまたまずうたいの大きい会社も自分でやっておるわけですけれども、これももちろん大きな影響を受けます。価格と競争力等について影響を受けます。ただ、そのために商談が一時的に停滞をしましても、たまたま最近御承知のように金融市場がゆるんでおります。資金が若干潤沢になっております。そんな関係で、よもや破産はしないであろう、つぶれもしないであろうというような先に対しましては、金融機関もつなぎ資金を出してくれます。したがって、損益については影響を受ける部分が当然ありますけれども、いまのつなぎ資金という問題に対してはどうやらしのげる。しかし一面、零細あるいは中小の業界にとりましては、一時資金、つなぎ資金も、実際問題として出ないのであります。そういうときは、金融機関に頼みに参りましても、社会事業をやっている立場でないのだから、つぶれるかもしれぬ、不渡りになるかもしれないような資金にはおつき合いはしにくいというたてまえでございます。したがって、さっき申しましたような、円の位置がどんなところにきまろうとも、全然ストップしてしまって生き死にの問題よりもまだいいんだという、理屈に合わぬような意見も一部には出ておるような次第であります。  そんな観点から、ぜひ少しでも早く円の位置を決定していただきたい。商売がしやすいようにぜひしていただきたい。しかし、また同時に、円の位置が日本の経済に非常に大きな影響を与えるんだということになれば、中小の企業をやっておる人たちも、国の経済を思い、国の運命を思うことは当然ではございます。しかし、そのために事業的に自分の生死をかける問題になってくると、もしあわてて不利な条件にきまるといかぬという配慮から待てとおっしゃるなら、いまの実情に即応したように、つなぎのできるような対策を国としても考えてもらいたいというのがそういう立場の人たちの意見でございます。  いずれにいたしましても、この円の位置というものは、結局は競争力、商売につながるものでございますから、何でも有利に、切り上げ幅が小さいほうがいいというのは、気持ちからいえば当然でございましょう。しかし、実際不可能なことを言っても、相変わらずペンディングの状態が続けばただいま申しましたような不安な状態が続くわけですから、先方と、まあ世界的に各国と、またアメリカに対しましては、ことに今度のニクソン声明というのはアメリカから出ておることでございますから、アメリカとの関係において、先方ものみ込めるようなもので、二度三度にまたがってこれでどうだこれでどうだということでペンディングの状態が続くくらいなら、なるべく早いうちに固定したものを出してもらたいというのがそういう人たちの希望でございます。  この位置の問題については、これは非常にむずかしいのでございます。ただ安易な考え方をすれば、切り上げ率の少ないほどいいということになるのでありますけれども、相手あっての話ですから、一方的にこう思う、それだけでは通用しない場合には同じ状態が続きますから、そこでその辺緩急自在な考え方に立って、合理的なレートを考えていただきたいということと、それからもう一つは、私よく例にあげるのですけれども、日本がすべての資源を持ち、生産条件が整っておれば自分だけでも食っていけますけれども、日本の宿命とでもいいましょうか、立場が、世界じゅうからない資源を買ってきて、それをまた世界じゅうの需要者、いわゆるお得意さんに売って、その差金と申しますか、付加価値の幅で不足資源を買い、衣料、食料も買いということになりますので、世界で相手にされないような、ことに一番大きなお得意であるアメリカに相手にされないようなことでは、幾ら一方的にいいと思っても、いま言ったようなたてまえから通用しません。そこで、どうしてそういう方面の方たちを、まあ不満ながらでもがまんさすかという配慮を国としても考えていただいて、円のある位置がきめられるべきものではないか、私の立場としてはこう考えます。  とりあえず考えておりますことをごく簡単に申し上げた次第であります。

齋藤邦吉自由民主党

○齋藤委員長 これより永野参考人に対する質疑に入ります。佐藤観樹君。

佐藤観樹日本社会党

○佐藤(観)委員 永野さんにお伺いしたいのですが、実は私の質問はたいへん意地悪い質問になるのでございますけれども、もしお差しさわりがなければ、最初に新日鉄、これは一企業ということで申しにくいかもしれませんけれども、鉄鋼業界が債務としてドルをどのくらいお持ちなのか、もし差しさわりがなければ教えていただきたいのです。

永野重雄日本商工会議所会頭

○永野参考人 鉄鋼業界は、いまはっきり数字を覚えておりませんが、大体ドルの支払いと受け取りの関係はほぼバランスをいたしております。全体の数字で申してみますと、鉄鋼業全体の輸出が約三十億ドル、輸入が原材料で約三十億ドル。その中において、私どもの会社の話が出ましたが、これは輸出十億ドル、輸入また十億ドル。したがってこれの影響しますものは大体バランスがとれておるかということでございます。それと、計算のしかたになりますけれども、若干のドル借金がございます。これはだんだん返してまいっておりますので非常に大きな金額ではございませんけれども、これがプラスに働く面はございます。ただ、企業としますと、御承知のようにバランスシートをつくりますときに、時価に相応するようにストックの評価の調整をいたさなければなりません。それが今度下がる。原材料の相当なストックを持っておりますのが下がった計算をいたしますと、その金額だけ損に立つかっこうでございます。全体を総合しまして、こまかなはっきりしたことはいままだ検討中でございますが、ほぼ似た金額じゃないだろうかというのがいまの数字でございます。

佐藤観樹日本社会党

○佐藤(観)委員 実は、この前の九月一日に当大蔵委員会が開かれたわけですが、そのとき田中通産大臣のお話では、大体鉄鋼業界として八千六百億円くらいのドル債務があるんじゃないか、それから石油業界が一千七百億円ということを言われていたわけなんですけれども、これはちょっと数字がかなりかけ離れているように思うのですけれども、違いますか、どうですか。

永野重雄日本商工会議所会頭

○永野参考人 いまの債務の金額八千六百億というのは、借金としてはそうはないと思います。ただ、鉄鋼業界全体ということですから、私の会社だけでございませんのではっきりしたことは申しかねますけれども、われわれの想像から言うと、そんなにはとてもあり得ないという感じがいたします。

佐藤観樹日本社会党

○佐藤(観)委員 実は、これもちょっと確めたいと思って政府のほうに資料を要求したんでございますけれども、いろいろな関係があるのでちょっと出せないということでございますが、その点はまた午後からするといたしまして、実は永野さんが一番最初言われましたように、いわゆる商工会議所の会頭としての御意見、まあ商工会議所というと中小企業の代表ですね、その集まりのお話としての御意見と、もう一つは新日鉄の会長としての、たいへん大きな企業の会長としての御意見があると思うのです。いま実は数字をお聞きしたのは、たとえばこの数字がはっきりいたしませんけれども、もしも一〇%円が切り上げということになるといたしますと、鉄鋼業界はそのまま債務が一割減になるというふうになるわけですね。そうしますと、永野さんがいつも発言なされている御意見、実は中小企業の問題、これから当然また午後からも御質問申し上げるわけですが、非常に気持ちはよくわかる。と同時に、いま言ったように、円金融で滞貨金融をしていかなければならぬだろう。ただ、それだけで足りるかどうかということも実はこちらは心配しているわけなんです。そういう御意見は非常によくわかるのですが、永野さんのいつも御発言になる意見は、商工会議所の会頭、つまり中小企業者の代表としての御意見なのか、それとも新日鉄の会長としての意見はそこには入っていないのか。それは一人の人間でございますから、峻然とは分かれられませんけれども、どうもその辺が、日本の業界の中で鉄鋼業が一番ドル債務が多いといわれていることを考えますと、永野さんが円切り上げを早くしたほうがいいということを言われますと、どうも我田引水ならぬ、わが鉄のほうに、水じゃない利益を引くようにとられるという気もするわけなんですが、その辺のところは、また御発言があるので、どういうふうに今後われわれとしては受け取って永野さんの御意見をお聞きしておいたらいいか。たいへん意地悪い質問でございますけれども……。

永野重雄日本商工会議所会頭

○永野参考人 きょうは参考人名簿にも出ておりますように、日本商工会議所会頭として出てこいという御命令ですから、商工会議所会頭の立場で先ほど来申し上げておる次第であります。ただ、大きいところとの比較で中小企業はこういうふうな形になるという例を申し上げ、大企業で察知のできない困窮状態だという例に新日鉄の問題を申し上げた次第であります。

齋藤邦吉自由民主党

○齋藤委員長 広瀬秀吉君。

広瀬秀吉日本社会党

○広瀬(秀)委員 簡単に一言だけ申し上げますが、ことしの経済見通しによりますと、日本の輸出が二百四十三億ドル、輸入のほうは百九十八億ドルですか、そういう状態であります。かりに、たとえば一〇%円切り上げをやったと仮定をいたします。これはまた目下きわめて流動的でありますが、そういたしますと、輸出の面ではその分だけ輸出が減退する、競争力がそれだけ鈍化するわけですけれども、輸入のほうは、逆に今度は原材料などを中心にして安くなってくるということになります。そういう形で考えれば、そうドル・ショック、ドル・ショック——このごろドル・ショックで新聞も雑誌も一ぱいでありますけれども、それほどたまげることはないのじゃないかという、これはきわめて常識的なというか、むしろ常識的というよりも素朴な議論があります。石油の原油関係というようなもの、あるいはおたくの新日鉄の鉄鉱石、こういうものなんか、原材料一〇%下がることになるわけです。そうすれば二百四十三と百九十八で約四十何億ドルの差がありますけれども、その程度のところならば、輸入品が下がる面と輸出の打撃と、そういう面ではその差額だけというようなことに、たいへん素朴な議論ですけれども、一応国民の常識的にはそういうようなことも考えられる。ところが、これだけ大騒ぎをしているということは、やはり輸入の面では安くなるはずであるけれども下がらぬだろう、こういうようなことを、今日の物価高の中で庶民大衆が実感として、輸入自由化をやってみたところで、あるいは輸入の原材料がそれだけ下がっても、これはおそらく価格に反映されぬ、もう全然その面は見ない、こういうことが一般的に今日の状況になっていると思うのですね。その辺のところを、対米二国間調整ということはあり得ないと思うのでありますが、いずれにしてもドルに対して三一%の輸出依存度だといわれておりますから、かなりの部分、たとえば二国間調整をやったといたしましても、影響というものはそれほど出ないはずなんだがとわれわれは思わざるを得ない面もあるのです。しかし、そのことがちっとも問題にされないというのは一体どういうわけなんだろうかという国民の素朴な疑問、これについて日本商工会議所の会頭として、日本の財界の大立て役者としてどういうようにその点をお考えになっておられるか、この点一つだけ……。

永野重雄日本商工会議所会頭

○永野参考人 まず最初に、三十何%対米貿易がふえたというお話がございましたが、実は鉄は三年前から対米自主規制をやっておりますので、いままで過去三年間は一年間五%アップ、ちょうど今年末でもってその期日が切れますので、ただいま、来年度から先、これも二年、三年でございましたが、われわれは三年間受けたつもりですけれども、これはこちら側の三%の草案に対して先方では二・五%というような主張がございまして、まだきまっておりません。きまりません理由は、また何かの御参考になるかと思いますけれども、非常に近寄ってまいっておりますが、にもかかわらずこれがきまり得ません理由は、日本だけこれに調印をいたしましても、イギリス、カナダなりEECのヨーロッパ諸国がついてこなければ実効があがりませんので、これも一緒にやる必要がある。またアメリカでもそういうように考えておるようでございます。ただ、ヨーロッパの立場といたしますと、ヨーロッパもアメリカと同じように、また最近の日本と同じように、決していい景気ではございません。そこで、もし日本がアメリカと自主規制の話を取りまとめて、そのために、持っておる膨大な設備能力、余った能力を、アメリカで封ぜられた分をヨーロッパに投げ売りしてくるのじゃたいへんだ。それのお手伝い——言いかえますと、日本の自主規制ができるというようなことになればわが身に相手を引っぱり込む結果になるから、そういうことになるのじゃうっかり相談にも乗れないという危惧がヨーロッパにあるようでありまして、そんな関係でまだきまっておりません。しかし、先ほどの問題の、アメリカが三十何%伸びたからという御意見に対して、いずれにしても、三%、二%あるいは五%にいたしましても、そんな高い率ではないということを一言だけ申し上げておきます。  それからもう一つの御質問の、当然輸入が下がるではないかというお考えでございますけれども、しかしこれも先般の石油のOPECで例がございましたように、原料を供給する、これは必ずしも先進工業国でございませんで、発展途上国が多いのでございますが、経済が楽でないですから、何かおりあれば少しでも外貨を取りたい、上げたいという気持ちを持っておりますので、そこで負担力があるなら少しでも上げようかという考え方を持っております。したがって、いま言ったようなことで有利になるとすると、それだけ上げてくれという考え方がないとは保証できないのでございます。これは日本人自身の、業界自体の共同の考え方にも影響を持ちますので、必ずそうなるということは、そんな愚なことが行なえないようにわれわれ良識をもって対処はしたいと思いますけれども、たてまえからするとそういう考え方も起き得るのでございます。ただ、同様に輸出のほうはそれの逆な例になるわけでございますが、輸出条件が不利になるような、高くつくようなことになればそれを一体どうするかということですが、これも結局は消費者、購買者との強弱関係でございまして、いま言ったような、高くなるのを引き受けてくれるかくれないか、現在影響が大きいものであります。決して一割なんか利益はもちろんございません。そんな関係で、明らかに経理上は不利な条件になりますから、上げてくれないかという交渉を向こうの需要者に、また商社等を通じてやっておりますけれども、必ずしも安易には聞いてくれません。もっとも、まだなまなましい時期でございますので、折衝中の問題が大部分でございますので、できるとかできないとかということをここで明言をようしない段階ではございます。したがいまして、売るほうが当然上がり、買うほうが当然下がるというわけには商売上いかないのじゃないかというところがございまして、今後の折衝にまつ面がたくさん残っております。したがって、売るほうがお互いが過当競争をしてばかをみ、買うほうで過当競争してばかをみれば、双方ともに、上げるほうも上げられないし、買うほうも、御指摘のように有利な地位に計算上は当然なる、にもかかわらずそのチャンスを失ってもいかぬというので、われわれ業界人共同の目下模索をしておる最中でございますので、現在ではこの程度だけしか申し上げられないわけであります。

齋藤邦吉自由民主党

○齋藤委員長 堀昌雄君。

堀昌雄日本社会党

○堀委員 きょうはお忙しいのにどうもありがとうございました。  二点ばかりお伺いをしたいのですが、実は前段のほうで永野参考人が、中小企業は何にしても非常に困っておるので、早く固定レートに復帰をしてほしいという要望が強いということでありました。実はけさも議論をしてまいりましたのですが、私はアメリカが課徴金を簡単に取りはずすとは思えないという前提に立っておるわけでございます。アメリカにすれば、ああいう情勢の中で、為替レートの調整がたとえどういうふうに落ちつくにしても、ある程度の貿易収支の改善なりあるいは雇用状態の改善なり、いろいろなそういう全体の情勢に対して見通しが立たない限り、今度の政策の中で一番強い力を持っておるのは私はこの課徴金制度だと思いますので、かりに私がアメリカの財務長官であったとしましても、そう簡単に、アメリカの国益を守るためにははずしたくない、私でもそう感じるぐらいにこれは重要な問題だと思っておるわけであります。どうも通貨調整のレートの問題がその課徴金と引きかえにという話がよく出ておるわけですが、私はそんなに簡単に課徴金と引きかえにならない、こういうふうに感じておりますので、課徴金が残るという前提でレートの問題を考えるというのが一番現実的ではないか、こう実は私は考えておるわけであります。そういう観点の問題が一つ。  それから、短期的な処理をして、その結果として受ける差損的損害と、ある程度長期的に、これをつなぎ融資か何かで調整を国内的に処理をして、できるだけ小幅で調整がもしできたという場合と、どちらが中小企業にとって有利かといいますと、私はやはり国内的処理を先行して、つなぎ融資等、あるいはその他の各種の手段によって、できるだけ小幅の調整をさせることが中小企業にとっては一番大きな問題ではないのか。鉄でありますとか自動車でありますとか電機のような、非常に競争力のあるものは、私はこれは多少のレートの変更にたえられるという判断をしておりますけれども、何と申しましても、労働集約的であり基盤の弱い中小企業は、大幅なレートの変更にはまだたえられないという判断を持っておりますので、その二点から見て私は、課徴金が撤廃されないという前提で、そして非常に長期的に見て、競争力のない中小企業というもの、まあ体質改善ももちろんしなければなりませんけれども、それについては国内政策で最大のめんどうを見る中でこの問題の処理をするというほうが、全体として得策であるのではないかという気持ちを持っておりますので、この点についての御見解をひとつ承りたいと思います。

永野重雄日本商工会議所会頭

○永野参考人 ただいまの御指摘のレートと課徴金との相関関係でございますが、これは私、先般日米の、向こうでいう諮問委員会、こちらでいう協議会でございますが、諮問委員会という名前の示すように若干政府の意向も反映しているのじゃないかと思いますけれども、そういう前提で申し上げてみますと、課徴金を、円レートの置き場所いかんにかかわらず絶対にとらないとも断言できないのじゃないかと思います。要は、円レートの位置によってはとらない、位置によってはそれをやめてもよろしいという弾力的な面もあるのではないかという感じがいたしました。向こうのあるメンバーの一人のことばをかりますと、レートの問題は弾力性がある、課徴金の問題はぴしゃっとそのものずばりでいくから、円レートを考える場合には、一割した場合に一割とは読み取れないということを言っておりました。そのことばを裏から読み取りますと、位置によって、いま言った弾力的なもので四〇%なり三〇%そのものずばり響かないといっても、それを乗り越えるレートで上げれば、向こうだって課徴金は固執するものじゃないんじゃないかという感じもいたしました。したがって、そういう配慮をしながら、とっぴな円レートをするということは日本全体の経済に非常な影響を与えますから、そこまではついていけないということを前提にしますと、ただいまの御意見のように、むずかしいということを前提にして対処策を講じていいという考え方も起きるかと思います。課徴金とレートの関係ではそんなようなことを私はいま考えておるわけでございます。  したがいまして、今度レートだけにかりに問題を限ってみますと、課徴金の影響と円レートからくる値上がりの影響と両方あわせて、アメリカとの競争力、また第三国との競争力がどの辺ならついていけるかというところで御判断をいただかなければならぬ非常にむずかしい問題に直面いたすと思います。しかし、いずれにしましても当然国としてはそう考えていただきたいのですけれども、そのためにじんぜん日が延びたんでは、生死の問題があるから、どんなところでもいいからきまるようにというディスパレートな意見すら出てくるのは、先ほど御披露申し上げたような次第でございます。

堀昌雄日本社会党

○堀委員 二点目は、私この間の九月一日の委員会でも申したわけでありますけれども、アメリカ側から見ますと、輸出入ギャップが二十億ドルくらいだと推定しているようでございますが、確かに大きなギャップがございます。これは、かつて日本が対米ギャップがあった時期に、私どもはこの国会の中で何回かこのギャップを直せということで強い主張をしたことがありますが、ちょうど立場を変えて、アメリカも同じ立場にあると思いますから、これは私は日本として理解をしなければならないと思います。  そこで、対米ギャップを整えるための非常に重要な問題は、やはりいま鉄鋼がとっておられるようなある程度の数量調整というものをこの当面の間必要とするのではないのか。いまのレートの問題のほうにあまり比重をかけないで、対米の問題としては、対米のそういう情勢の悪い時期ですね、この時期に少なくとも最も即効的にきく数量調整の問題——ニクソン演説によれば、数量調整よりは課徴金のほうがいいという表現が使われておるわけでありますが、この数量調整というのを世界全国に及ぼすことはたいへん不可能でありますが、日米の間における数量調整の問題というのはもう少し配慮をしてもいい問題ではないかというふうに私は感じておるわけであります。ですから、いまの問題は単に課徴金、レートというだけではなくて、鉄鋼のほうで今度五%をさらに三%なり二・五%でお話を進めておられるように——これはもちろん新日鉄も今度方向を転換されて、中国市場にも配慮しておられるようでありますが、全体としてのそういう市場転換といいますか、そういう問題をやはり日本経済はここで考えておきませんと、いまちょっと頭を下げればこれで問題が片づくということでは私はないのではないか。アメリカ経済を考えますと、やや長期的にそういう市場転換を含めた数量的な配慮をしなければ、レートがもし変わったとしても、そのレートを乗り越えてまたいこうなどということになれば、これはレートを変更した意味がなくなるわけでありますので、私はそういう意味で、数量調整といいますか、貿易調整というものをもう少し政府も真剣に考えて、それも合わせた上で他の問題をも考えるというような考え方を、もう少し政府はとるべきではないだろうか、こう考えますけれども、これについての御意見を承りたいと思います。

永野重雄日本商工会議所会頭

○永野参考人 実は鉄鋼業自体、御指摘のありましたような自主規制、数量調整をやっておりますので、私どもは、企業全体から見てそれがいいという信念に立っての処置ですから、私もその御指摘のような御意見には全然同感でございます。極端にいえば、向こうがドルを失っている数というのを全般に出してみまして、それに合うように全商品が数量規制ができればこの問題は全部吹き飛んでしまうようなことになるのではないかと思いますが、ただ、個々の日本の企業全部でそれができるかどうかというむずかしい問題等がございますので、まあ私のような数量規制をやっている立場からこうあるべきだということはちょっと申し上げにくいのですけれども……。  それともう一つ、ニクソン大統領の言ということが御指摘ございましたが、ドルの失う金額というものは、レートの幅あるいは利益幅よりも絶対金額のほうがはるかに大きいわけでございますから、ドルの立場だけを擁護するという意味からいいますと、むしろ数量のほうが影響が大きいはずじゃないか、私はこう愚考いたす次第でございます。  しかし、先般ある種の商品で自主規制の非常なむずかしさを、日本の国としてもあるいはアメリカとしても体験をいたしておりますので、この自主規制の問題というのが、非常な数の多い中小企業になった場合に現実の問題としてできるかどうかという悩みもございます。したがいまして、そういうことを前提として考えますと、急にはすべての商品にはできない。私どものようにやれるものはやったほうがいいと思います。そのような観点から、いまの中小企業の立場を考えて、全部はむずかしいということになってきますと、また課徴金なりレートの問題にあと返りをしてくる問題でございます。  これまた御参考までに、数量規制でわれわれがやって向こうもいいはずだ。ことに私どもの数量規制は政府を相手にいたしております。にもかかわらず今度の課徴金の対象に入れてしまっておるのはおかしいではないかというので、いま反問もいたしております。現在のところ、いやそれはだめだ、この除外措置はとらないのだということでございますが、この点については、何か私のかってな想像では、ほかの事業、ほかの商品に対する配慮等からそう言っているのではないか。これはかってな想像ですから確言しかねますけれども、そうなると、筋からいえば当然排除していくべきではないかということで強く要請をいたしておるわけでございます。  いずれにしましてもいまの課徴金の問題は、筋からいいますと、ケネディラウンドのときに——きょうもさるアメリカの有力政治家、ただいま日本に参っております有力政治家と、ここへ参ります前までこの問題を実は話をしておったわけでございますが、かつての民主党内閣といいますか、ケネディラウンドは、国際的にお互いがえてとする商品を相互に出しっこする。これはいい品質のものが、しかも安く相互の国民の消費者に買い得ることになるからその政策をとるのだというので、定款で五年間に関税を半分にするという施策が御承知のようにケネディラウンドのなにでございます。そういう考え方からいうと、今度まるで逆に課徴金という問題で、それと真反対の政策を打ち出されることがわれわれわからぬのだということを、たまたま同じ党派の方でありましたからそういう質問も実はしたのでございますけれども、ただそんな抽象的な原則論を言っておるのではアメリカのドルの困窮、経済の困窮は間に合わないのだ。そこで、理屈があろうとなかろうと、アメリカの経済を支持するためにすべての問題をやむを得ざる措置でやっておるのだということでございました。したがって、そうだとすれば、落ちつくところ、結局はレートとのかね合いにまた返るのですけれども、これが合理的なレートに円とドルの関係が立ち返ってくれば、課徴金のような本質的に理屈に合わぬ制度は撤廃されてしかるべきものだということを愚考いたす次第であります。

堀昌雄日本社会党

○堀委員 誤解があるといけませんから……。私が申し上げた数量調整も、実は鉄であるとか自動車であるとか電機であるとか、競争力のあるものについて行なうべきものでありまして、中小零細企業の雑貨その他は、これは労働集約的な産業で、向こうでも必ずしもそれをせきとめなければならぬ問題ではないと思います。一番ウエートの高いものでこれをやるということが重要ではないかという考えでございますから、ちょっと誤解が生ずるといけませんので訂正させていただきます。

齋藤邦吉自由民主党

○齋藤委員長 松尾正吉君。

松尾正吉公明党

○松尾(正)委員 永野参考人から、実はニクソン声明以来、特に変動相場制移行以来、国内の産業が非常に大きな影響を受けている、一日も早く固定レートに戻してもらいたい、とにかくつぶれてしまうよりも、何とかレートの切り上げをやっても採算のとれるような方法をくふうしていきたいのだという御意見でありました。しかし、商工会議所の会頭というお立場で伺いたいのですけれども、私この推移を見てみますと、実は日米貿易経済閣僚委員会前後から、急にいまお話のあった零細中小企業があわてて手を打つということは、これはわかるのですけれども、相当対外的にも底力があって、だいじょうぶではないかというようなところで高中卒の新規の採用を見合わせる、こういうようなところがすでに相当数出ておる。それから、季節労働者はもうシャットアウトしようとか、あるいは減配その他の問題が大きく報道されておるわけです。したがって、零細中小企業に対しての手は私どもも万全を期して打っていかなければならない、これはもう同感でありますけれども、むしろ日本の企業というものは一時的に見ればもう相当底力がついてきた。そういう底力のついてきた企業でもって新規採用の中止その他という、これは少し現状をきびしく受け取り過ぎているのではないか。現状ということは、この成り行きを相当長期化するためにこういう手が打たれたのではないか、こういう感じを受けるわけです。すなわち、それまでは何とか日米閣僚会議あるいは十カ国蔵相会議等で何らかの見通しがつくであろう、しかし閣僚会議の推移等を見ると、どうもこれは長引くのではないかというようなことから、急にこういう手が打たれて、これはもう直面する零細企業等が不安を感ずるのは当然でありますけれども、一般国民が非常に大きな不安を抱いているわけです。したがって、これらに対して会頭というお立場で、この解決が一刻も早くという要望を見て大体理解できるのですけれども、相当長引くとしてこういう手を打たれたのか、あるいはこれが早く解決すれば、これらに対してはすみやかに新規採用の見合わせということでなしにそれを復活させるような指導はやっていきたいというお考えを持っておるか、それらの点をひとつ伺いたいと思います。

永野重雄日本商工会議所会頭

○永野参考人 ただいまの新規採用の問題は、むしろ中小企業の問題よりも耐え得るではないかという御推定の、いわば大きな企業に対する御質問かと思いますが、まだ私ども自身の会社としては新規採用当座ストップというのを出しておりませんので……。ただ、新聞等で見ますと、そういう考え方あるいはそういう申し出のある会社があるやに伺っておりますので、それを前提にして申し上げますと、実は今回の不景気、不況というのがすべてが今度のニクソン声明、いわゆるドル・ショックから発足したのではございませんで、すでにその前からそういう深刻な不況の様相を呈しておりました。まあスタグフレーションなんというようなことばが示しますように、物は高いけれども不景気だという状態にございました。  そこで、これをどうしようかというので、ニクソン・ショックの前から、声明の出ます前から、私どもは行き過ぎた景気の不況を打開していただきたいというので、国に対しましても、こういう不況になっておるときには一般企業の設備投資もたいして期待できない、そこで経済を平準化していくためには、こういうときにこそ国が公共事業、社会資本充足をやっていただいて、それによってこの不況を、物の需給からくる不況を打開していただきたいということを、かねがねこの問題をニクソン声明が出ます前からお願いをしておりましたことが示しますように、決してあれだけがすべての不況の原因ではございません。何年か前に、二、三十年前でしょうか、私ども若かりし日に、先輩から聞きましたのに、自由主義経済というものは、ほしいからつくる、つくるから、ある場合にはオーバーをする、そこでまた行き過ぎの反動がくる。その循環過程が、景気の大きな浮動は十年に一ぺんとか、あるいはさざ波が五年に一ぺんとか、自然の姿としてあるものだということを聞いたことがありますが、今回の去年あたりから起きました不況というのは、四十年の不況からちょうど五年目になりますので、さてはかつて聞いたことのある経済の循環がきたのかと、こう想像したことすらあるのでございます。それぐらいに今度の不況は長いかもしらぬぞということを、何ということなしに感じておったのでございます。  いろいろな国の施策というものは、どうしても若干、統計等が整備してからあとに手を打たれるものですから、おくれがちになる。たまたま不況の転換期に入ったころ、過去の行き過ぎた好況に手を打たんならぬというお考えが出ておって、そこで資金規制という手を打たれました。それがちょうど偶然では——偶然ということばは当たりませんけれども、その時期に際会したときに打たれたので、いわば山の頂上を乗り越えてこれからダウンカーブに入ろうかというせとぎわに、頂上のときの配慮で手を打たれた関係上、相当ひどいショックで不況が参ったのでございます。あたかも、頂上に荷車が荷を満載して登るときにうしろから押すべきものを、下がり勾配に入っているのを押したというようなかっこうで、したがって激しく不況の様相を呈してまいったのであります。したがいまして、ただいま申し上げましたような国の施策を、経済は行き過ぎた景気もいけないし、行き過ぎた不景気もいけないのだ、したがって国は、それを私企業に向けて、統制経済でないのでその調整は非常にむずかしいですから、国自身なら自分の意思でできる、その手でもってこの調整をやっていただきたい。したがって、不況のときの公共事業、社会資本を投下して充足していただきたいと言っておったわけですけれども、そんなことがございますので、ほかの原因が何にもなくて今度のいわゆるドル・ショックで来たのならまたそれ相応の対策はあるかもしれませんが、いま言ったような環境から来た不景気ですと、今度の対策だけではございませんで、中には人の採用等について、長期の不況を予想して対策を講ぜられた企業も起き得たのではないか、こう想像する次第でございます。

齋藤邦吉自由民主党

○齋藤委員長 竹本孫一君。

竹本孫一民社党

○竹本委員 永野参考人に一つだけ聞きたい。大体、ドル・ショックがなかりせば、日本の経済はあるいはことしの秋ぐらいから相当回復し、上向くであろうというふうに期待しておったわけですね。いま中小企業の人は、それが今度のドル・ショックで一体どの程度に不況になり、いつになったら回復するだろうかという、先ほどの為替不安とともにこの点がまた非常に関心が大きいと思うのです。これは政府の施策のやり方、程度やスケールによってきまりますから、そういう点を  一応別といたしまして、いま新聞でいわれているような、政府も相当腹をきめてやるとして、このドル・ショックによる日本経済の不況というものは、落ち込みはどの程度で、大体いつごろになったら回復するだろうか。この深さと長さの問題について先生の見ておられるところを承っておけばありがたいと思います。

永野重雄日本商工会議所会頭

○永野参考人 これは非常にむずかしい問題でございまして、私がはっきりこのくらい続く、何月ごろに逆転というかよくなるということは、非常に申し上げにくいのですけれども、私のかってな想像でいいというお許しを願っての御質問でございますので、私は、先ほど来申しましたような理由が重なり合ってやってきておりますので、一年ぐらいは覚悟せなければいかぬのじゃないか、こう考えております。

齋藤邦吉自由民主党

○齋藤委員長 小林政子君。

小林政子日本共産党

○小林(政)委員 端的にお伺いしたいと思いますけれども、先ほど、不況のもとでのドル・ショックが重なって、特に中小業者の実態というものがたいへん深刻である、これについては何らかの救済策を至急とる必要があるというお話でございました。私もその問題については一刻も早く対策をとらなければならないというふうに考えますけれども、この際私は、永野会頭さんにお考え方について伺いたいのですけれども、たとえばドル・ショック対策というようなことで、最近いろいろと業界全体おしなべて、大きな企業も小さな企業もおしなべてというような、こういう一律的な取り扱いといいますか、こういうものがずっと出てきておるように思いますけれども、私は、やはり零細中小のこういう業界と、大企業というものに対しては、考え方の上で区分をして考えるべきではないかということが第一点です。  それからもう一点の問題は、時間がないので続けて申し上げますけれども、先ほど広瀬委員からもこの問題が出ておりましたけれども、私はやはり原材料の輸入に伴う為替差益、いわゆる評価益というようなものについての考え方、これについては物価を下げるという立場から考えても、輸入差益でもうかった分については価格を引き下げるべきではないか。いま主婦連などが灯油の引き下げということで、物価を下げるという立場から大きく運動を起こしておりますけれども、私は永野さんが会長をされております鉄鋼関係の例を見ましても、やはり輸入差益というものが相当大きな額になるわけですね。ちょっと調べてみますと、ことしの五月の鉄鉱石の輸入量が一億二千六百六十四万八千ドル、いま円の六%切り上げというふうなことが変動相場の中でいわれておりますけれども、そうすると、それだけでも差益が二十七億以上になるわけでございますし、あるいはまたその他の鉄鋼原料全体の輸入額というものを見てみますと三億五千百十二万八千ドル、これも六%の切り上げということで差益を計算してみますと六十五億、一カ月にこのように大きなもうけというのですか、評価益が出てくるわけです。こういう問題については、やっぱりはっきりと鋼材の値段を下げていくというような、考え方として理論的にその点についてどのようなお考えをお持ちか、お伺いをしたいと思います。

永野重雄日本商工会議所会頭

○永野参考人 理論的に言いますとおっしゃるような考え方が起きるかと思いますが、先ほども前の委員の御質問に対して答えましたように、今回だけでなくて、前からすでに非常な不況の様相が出ておりまして、その対策をすら、社会資本の充足等考えていただくように言っておったわけでございます。従来が相当いいのならまだ抵抗力がございますけれども、すでに従来からそういう対策を考えなくちゃならぬくらいの情勢になっておりましたので、そのゆとりが非常にないということが一言にしていえるかと思うのですけれども、現にこの九月期の決算をいたします会社の損益の指標になります決算でも、従来の一割を八分に落とさんならぬような状態でございます。これは九月の締め切りでございますから、今度のドルのショックによる影響はまだほとんど入ってない、影響してない時期の決算で、すでに減配をせんならぬような状態にございますので、そこでいま言われたような、原料が安くなるからそれだけのものは製品をいまよりも下げるゆとりがあるのではないかという御指摘でございますが、今日すでに非常に耐えにくいところまで価格が来ておるのでございまして、そこでそういう余裕がほとんどないという実情だということを御参考までに申し上げたいと思います。  それから、先ほどちょっとお話のございました大企業と中小企業の今度のドル・ショックにしても、考え方は違えていいんじゃないかという御指摘がございました。これは理論的にいえば、現実の問題としまして大企業も中小企業も、輸出産業である限り今度のドル・ショックについて同じような影響を受けております。したがって、先ほど来申しましたように、従来から相当苦しい立場にあったのが、今度でダブって、重なり合って苦しくなったということが申し上げ得るのでございますが、ただ多少違いがある。御指摘のようなことを配慮しますと、最初に申し上げましたように、大きな企業ですとよもや破産はしないだろう、つぶれはしないだろうという考え方に立ちまして、金融機関がたまたま資金的に余力のあるときでございますので、つなぎ融資ができるのであります。このつなぎ融資というのと損益の関係は別でございまして、損益に関係する限りではやはり相当な影響を明らかに受けておるということを申し上げたいのでございまして、私が会議所会頭の立場に立って、同じように影響は受けるんだけれども、わけて中小企業の配慮を願いたいというのは、そのつなぎ資金が非常に出にくい環境にあるということを特に申し上げて、御配慮を願った次第でございます。

小林政子日本共産党

○小林(政)委員 原材料が下がったからといってすぐ製品の値段を下げるというようなことはちょっとむずかしいということでございますけれども、やはり日本の鉄鋼産業というものは、非常に生産性の向上というものを一貫してこの十年来続けてまいりまして、その中で約十年間で五倍以上の生産性の伸びというふうなことがいわれておりますけれども、このようなときでも製品の値段はずっと上がってまいりましたですね。そして、この間やはりこの値上げというものが行なわれてきましたし、ここで何か価格というものがいま下げられない、コストが云々というようなお話もございましたけれども、そういうことは私はちょっと納得できないのですよね。やはり、鉄というのが一般の日常生活に非常に重要な関連がございますし、すべての物価の基礎にもなっているというふうにもいわれるものでございますし、当然これはいわゆる大手五社のメーカーさんが価格を下げるべきだということを強く要望して、質問を終わりたいと思います。

齋藤邦吉自由民主党

○齋藤委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  永野参考人には、御多用のところ御出席いただき、貴重な御意見をお述べいただきましてまことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  午後二時より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後一時十四分休憩      ————◇—————    午後二時十分開議

齋藤邦吉自由民主党

○齋藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  国の会計、税制、関税、金融及び外国為替に関する件について調査を進めます。  なお、本日の議事に関し、参考人として日本銀行外国局長藤本厳三君の出席を求めております。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。藤井勝志君。

藤井勝志自由民主党

○藤井委員 きょうは、午前中参考人を呼びましていろいろ意見を聞いたわけでございますが、私はまず第一点に、当面問題の中心であります平価調整問題について、先般大蔵委員会で一応質問いたしましたけれども、何しろ時間の制約がございますし、意を尽くしておりませんので、ひとつこの機会に、たまたま先般大蔵大臣に同行された国際金融局長も見えておりますし、現場の窓口である日銀の外国局長も見えておりますので、私の疑問を率直に披瀝して、お答え願いたいと思うのであります。  私は一つ合点がいかないのは、済んだことを長く議論する気持ちはございませんけれども、ドル・ショックの直後、欧州の各国の為替市場は一斉に閉鎖いたしたわけでございますけれども、わが日本の場合におきましては、大蔵省の為替管理は世界に冠たるものであるという、こういった前提もこれあり、二十七日まで続けられた。そして、結果二十八日から変動為替相場に移行された。なぜドル・ショックの直後十六日、変動為替相場に踏み切らなかったかという、この問題点について、ひとつ国際金融局長並びに現場の一線である日銀の外国局長に御答弁を願いたいと思います。

稲村光一大蔵省国際金融局長

○稲村説明員 ただいまの御質問でございますが、日本時間で申しまして八月の十六日にニクソン大統領の演説が入ってまいりました。これはアメリカの国内向けのいろいろな要請、非常に思い切った国内経済立て直しの措置というものを前面に出しておるわけでございますが、同時にその中に金の兌換停止、輸入課徴金、その他国際金融面でも、従来の考えからいたしますと非常に思い切った新しい措置をアメリカがとるということが判明いたしたわけでございます。  たまたまそのとき、世界の為替市場の中で、時差の関係で東京市場は開いておったわけでございます。ヨーロッパ市場は実はまだ開いておらなかったわけでございます。そこで、われわれといたしましてさっそく市場をどうすべきかということが最も重大な問題でございましたから、日銀の当局とも十分慎重な検討をいたしたわけでございますが、この点につきましては大蔵大臣がすでに前回御答弁申し上げていると存じますが、日本はほかのヨーロッパ諸国と異なりまして、対外取引のほとんど大部分というものがドル建て、外貨建てでございます。もし日本の為替市場を閉鎖いたしますと、日本の対外取引というものは全くとまってしまうということでございます。そこで当時の状況といたしまして、もし一ぺんしめればおそらく二、三日、あるいはせいぜい一週間もつかどうか。それでむしろ、しめると今度は開くときにどうすべきかというところが非常な問題でございます。そのときにすでに政府といたしまして切り上げなりあるいは変動相場制その他の覚悟をいたしておりませんと、しめるということはできなかったわけでございます。当時といたしましてはまだ世界全体の様子がわかっておりませんでした。そこでしめる場合にはどうしても再開のことを考えなくてはいけない。何もしないで再開するというわけにはいかない。これは混乱を増すばかりでございます。そこで、他方為替管理その他によりまして短資の投機的な動きにつきましてはそれをコントロールし得る体制でございますので、やはり為替市場を開いたままにしておくよりほかには道がない、それが最もいい道であるという判断のもとに為替市場を開いておったのでございます。  そのときに、先生御指摘のように変動相場制をすぐとればよかったではないかということでございますけれども、やはり日本といたしましては変動相場制をとるということにつきまして慎重に検討いたした上でございませんと、はたしてそれがうまくワークするかどうか非常な問題でございますので、そういう点で実はほかの各国の市場がどうなるか。一番問題はヨーロッパの市場でございましたが、これも、ヨーロッパの市場は閉鎖はいたしましたけれども、その後約一週間の後に開いたわけでございます。二十三日から開きましたときには各国市場それぞれ、大なり小なり変動制ということで市場を再開いたしました。そういう事態に対しまして、日本といたしましてはこの推移を見ながら種々検討をいたしまして、結局このままではヨーロッパの通貨に対しましては、変動相場制を向こうがとりましたので円が切り下げられるという結果になるということもございました。また同時に、いよいよ多角的な意味の国際的な話し合いが始まるということがだんだんと固まってまいりました。九月三日には十カ国蔵相代理会議が開かれる、十五日、十六日には蔵相会議が開かれるということもはっきりしてまいりましたので、そういう事態に対処いたしまして、二十八日から日本も変動相場制に移行するという決定をいたしたわけでございます。

藤井勝志自由民主党

○藤井委員 ただいま局長から御答弁がありましたけれども、肝心なところを——私は、しめろというわけじゃない。すぐ十六日から変動相場制へ切りかえるべきではなかったか。それはやはり切りかえなかったというのは、いろいろ検討しなければならぬ節があったということで答弁をされたわけでございますけれども、それまでになぜ国際動向に対していろいろ分析しておかれなかったか。われわれすでにこういう事態になって過去を振り返ってみて、本質的にはやはり三百六十円レートというのが、日本経済の実力から見て過小評価されておったことに対して十分準備がされてなかったのではないか。昭和二十四年にきまったレート、あのときは衰弱し切った日本経済の状態でございます。それがこの自由陣営でいわゆるGNP第二番目という、こういうところまで来ているのですから、私は、そういう認識があればやはり変動相場制には少なくとも即刻、十六日には切えかえるべきであった。それだけでも国益を——日本銀行の手持ち資金が買いささえに回って現に為替リスクをカバーしている、二週間足らずで四十億ドルが入っているという、こういう事実に対しては、大蔵省はすなおに反省してしかるべきじゃないか。決して大蔵省が悪いことをしたとは言いません。結局はそういう方面に対する手当てというのが、認識が甘かったというふうにいわざるを得ない。いまの答弁ではそういうふうな感じを、私は与党の立場でございますけれども、やはりいわざるを得ないということを遺憾に思うのです。ただ、いままでのことを責任を追及したところで問題が解決をするわけではございませんが、私はあえてこれを取り上げたのは、これからのかまえとして、ひとつあやまちを再び繰り返してもらってはいけない。結局いろいろな理屈はあろうけれども、追い詰められて二十八日変動相場制に移ったということ以外には理解しにくい、こう思うのです。  そこで、きょう午前中参考人の御意見、二人の考え方はたまたま両方を代表した参考人の意見であったというふうに私は受け取るのです。理論的に筋論から考えると、やはりあの金とドルとの兌換停止ということによって、いままでの世界のお金の流れが根本において土台がくずれた。したがって、新しい通貨制度ができるまでは国際通貨は不安定な状態を続けるであろう。したがって、それまで円の通貨調整ということについてあわててはならない、これは筋論としてわかります。  ただ現実に日々経済活動をやっている現場を踏まえて判断をするならば、政治は決して象牙の塔とか理論だけでいくものではございません。現実に困っている状態、それがここまで国際的な、世論が好むと好まざるとにかかわらず、通貨問題の中心の国の一つであるのが円を持っている日本でございますし、先ほど申しましたように昭和二十四年以来固定相場でずっと来ておったということ、こういうものを踏まえますと、やはりただ相手の出方を待ってそして日本が受けて立つというかまえではなくして、ともかくこちらがいわば主体的に能動的に働きかけながら欧州各国と共同して事態の収拾をはかるという具体策が、ここまで成長した日本として、また日本の財務当局としては当然考えるべき基本的姿勢ではないか。いわば、経済戦争ということばは適当であるかどうか知りませんけれども、よくいわれるように先にざんごうから飛び出したほうが撃たれるのだという、こういうことではなくして、やはり現在の日本の置かれた国際経済社会においての円の地位を考えたら、円みずからがやはり自己の主張を持って話し合いをする。自己の主張のない話し合いというものはあり得ないわけでございますが、そういう点からこの際現在の混迷状態が続いておる。  それに、これは痛しかゆしですが、厳重な為替管理がその後しかれておりますね、投機筋のなぐり込みを防ぐために。その点はわかるが、そのためにかえってまた角をためて牛を殺すような現状になっておりますし、新しい為替平価がどの水準で落ちつくかということが全く不明であるというようなことから、現在輸出の先行きが全然どうなるかわからない。先ほど永野商工会議所の会頭もお話しになりましたけれども、これは企業あってのお互い財政である。その企業自身がもうお手上げしなければならぬというようなことになっておる。またそういうものは、この情報化時代であるし、国際化した時代でありますから、やはり相手の出方を待つまでもなくこちらが腹をきめて、こちらが独走する必要はないですから、やはりヨーロッパ各国とよく話をし、具体的な案というものを持たないといけない。  また過去において、円は一切切り上げませんという、こういうことが百八十度転換した。これはもう数年前から円の実勢レートは切り上げなければならぬという民間の声があった。その声があったにかかわらず一切やらないということで通されたことがかえって矛盾を一応拡大をして、国内の設備投資も一そう手控えになったというのがごく最近のにがい例であると私は思います。  そういうことから、われわれ、政治は生きた現実に立って処理するというかまえからいけば、ただ単なる理論の線だけで通すわけにはいかない、このように思いますが、この点についてはひとつ大蔵政務次官のほうでお答えを願いたいと思います。

田中六助自由民主党大蔵政務次官

○田中説明員 為替変動ということは日本にとっては、ちょうどいま藤井委員も指摘されましたように、二十二年ぶりのことでございますし、いわば処女で、外国は、一応西欧諸国はみんなベテランの、切り下げたり切り上げたりする経験を持った、いわばやり手ばばあみたいなもので、そういうところから考えますと、初めてのことでございますので非常にこんとんとして、ですからみずから進んでこれに対処するというかまえがなかった点は反省いたしますが、といってアメリカのいうように、いま日本の円がそれだけ強いかということを提起した場合に、はたしてそうだろうかという反省があるわけです。したがって、そう悪いことをしたような覚えはない。処女ということになるとショックがそれだけ大きいわけですから非常に問題が起こっておりますが、基礎的不均衡が日本にあるかといいますと必ずしもそうではない。午前中の参考人の方々も言っておりましたように、やはり円がほんとうに強いのかどうかという疑問があると同時に、日本の企業の場合も非常に先行して競争力の強い企業もあるかと思いますと、中小企業あるいはその他の企業でまだまだ十分そこまでいってない。つまり経済の底がそう深くないということもいえますし、社会資本のおくれなども、外国の例をとってみましても、道路一本とってみましても、イギリスを一〇〇%としますとその舗装率が日本は一〇%にも満たない。上下水道の利用率にいたしましても、アメリカと西ドイツを六五%としますと日本は一一%でございます。また総合的な観点から見ますと円というものがはたして国際的にどうかという問題。それから国際的な均衡と国内的な均衡、こういう問題を提起してもどうもわれわれも納得しない点がございまして、藤井委員が指摘しますように円というものを中心にして渦を巻いておるものが、そういう観点からだけライトを浴びせられて私どもははたしていいかどうかという疑問がある。それがそのまま為替市場に対しても反映いたしまして、これをオーブンにしておいたほうがいいのか、クローズにしておいたほうがいいのか、そういう点も迷ったのじゃないかと思いますし、いままでのいろいろ誤った点あるいは正しかったというようなことは、これからいろいろ批判されあるいは分析した結果いえることで、私どもは自分たちのやってきたことが一応正しかったというふうに考えております。

藤井勝志自由民主党

○藤井委員 先ほど申しました私の真意は、やはり日本がここまで経済を復興、発展させて、ともかく日本の円の問題ということがやはり相当大きな国際的ウエートを占めておる。その中身について、円がどの程度強くなったか、これは相対的な問題ですからいろいろ議論が分かれるところですけれども、私は現実にここまで来ていることを率直に政治が判断するならば、ただ相手の出方待ちというのじゃなくて、やはりこちらも一つの考えを持って、そうしてヨーロッパの各国といわゆる多国間通貨調整を能動的にやる、こういう姿勢が必要である。私は、現在の日本が外貨建てが九九%であり、しかも主要資源はほとんど海外依存である、こういう特殊事情を考えますと、やはりこの際手をこまねいておってはいけない。これは日本の特殊事情であるということを特に強調しておきたい。これはもう繰り返し御答弁はけっこうでございますから、お願いをしておきます。  そこでもう一つ、これはどなたにお答え願ったらいいか、外貨準備がどえらいたまったわけですね。ところが、日本はりちぎにも紳士協約を守って、アメリカとの金の兌換はしておらないために、現在六億ドルですか、そんな程度のきわめて少ない金の手持ちになっておる。これはわが国の金の政策というものが誤っておったのではないかという疑問が出るのですが、この点についてひとつ関係局長、国際金融局長ですか、お答え願いたいと思う。

稲村光一大蔵省国際金融局長

○稲村説明員 日本の金政策が誤っていたのではないかという御質問でございますが、これは非常に全般的に申しますと、日本は、戦後国際収支が余裕が出てまいりましたのは実はこの三年ぐらいのところでございまして、それまでは御承知のとおり、やっとふえて外貨準備が二十億というようなところで、そういうわずかな外貨準備、しかも三、四年に一ぺんずつは大きな国際収支の赤字の不安、危機が参りまして、そのためにいろいろ、場合によってはIMFその他外銀から借りるとか、いろいろとそういう手当てをしながら、同時に経済の成長を遂げていかなくてはいけない、こういう状況であったわけでございまして、そのためにはわずかの外貨準備を最も有効に活用していかなくてはいけない。そのためにはやはり確実性というよりも、そういう意味の運用によりまして経済成長に寄与し得るという、そちらのほうを主として考えなければいけなかった時代でございました。そのために、金では利子を生みませんし、それをもとにしていろいろな貿易金融上の外銀からの借り入れ等を受けるということもできません。そういう意味で、ぎりぎりの外貨準備をフルに活用いたしまして経済成長を続けてきたということでございます。  ところが、三年ぐらい前から非常に国際収支の余裕が出てまいりまして、黒字のほうに変わってまいったわけでございますが、たまたまそのころはすでに金の二重相場制と申しますか、六七年の秋のポンドの切り下げを契機といたしまして、いわゆるゴールドラッシュが起こりまして、六八年の三月には例の金の二重価格制というのができました。つまり、すでに金とドルとの関係につきまして一つの転機がございます。いわば国際通貨制度全体の安定と申しますか、そのためには、ドルを金にかえるということをいたしますと国際通貨制度が崩壊をするというような状況になってまいりました。したがいまして、むしろこの全体の体制のために日本としては手持ちのドルを金にかえることを要求すべきではないという判断に立ったわけでございます。そういうことで、余裕ができてまいりましたときはたまたまそういう事態になっておったということで、ただいままでのところは金準備というのは少ないわけでございますが、そのような状況になりましたあとも、IMF等を通じまして、この国際通貨制度に支障を与えないで金を取得できるという道はあらゆる道を通じてそれをいたしまして、そのために、まあわずかではございますけれども、この三年間に金は約倍増になったということは事実でございます。また他面、IMF等を通じまして、日本といたしましては金のハーモニゼーションと申しますか、金の保有がアンバランスであるというので、それを極力、金の配分をもっと調和あるものにすべきではないかという主張はしておるわけでございますけれども、いままでのところはそういうところで、戦後のいままで申しましたような事態、それから最近に至ります状況の結果、現在におきましては金の保有というのは、ほかのたとえばヨーロッパの先進諸国に比べますと割合は少ないということになっておるわけでございます。

藤井勝志自由民主党

○藤井委員 話題を変えまして、時間を急がさせていただきたいと思うのですが、答弁もひとつ簡単にお願いいたします。  私は、このたびのいわゆる変動相場制への移行によって、日本の内外の経済政策というものが抜本的に発想を転換をしなければならない。転換をしてうまくあらしを切り抜けるならば非常に輝かしい七〇年代が必ず実現する、こういう前提で意見を述べ、また当局の答弁を受けたいと思うのですが、大蔵省の主計局長は……

齋藤邦吉自由民主党

○齋藤委員長 大倉次長がおります。

藤井勝志自由民主党

○藤井委員 政務次官もおられるけれども、やはり事務方がかっちり方向を、発想を転換してもらわなければいけないので、特に、次長ではあるけれども主計局長の立場で受けとめてもらいたい、私のこれから言わんとするところを。  私は、基本的な財政運営の基調が従来と変わった、すなわち国際収支は黒字基調に定着してきておる、こういう認識。従来は、御案内のごとく国際収支の天井が非常に低かったから、ちょっと国内景気が行き過ぎますといわゆる輸入超過ということになる。絶えず財政はいわゆる警戒型という、こういうことになっておったわけでございますが、このような土台が変わったきょう今日、しかも外貨がたまり過ぎたということが円の切り上げという実力不相応な世論になってしまった。現実はそういうふうに動いてしまった。これはいかにも従来の財政運営というものが、いわゆる外貨のたまったのは、ためるために外貨をかせいだのではなくて、これを活用するために外貨をかせいだわけでございますから、私はもうすでにずっと前から、外貨は準備型ではなくして活用型になってほしいということを、資源開発問題とからんで提案をしたわけでございますけれども、そのとき依然としてやはり支払い準備に外貨というものは置くのだ、いつ支払いに回るかもしれぬ流動性の確保が絶対必要だという、こういうかまえから一歩も出ておられない。こういう態度では私は非常に遺憾だと思うのであります。  特にまた日本は、考えてみると明治から、この戦争で負け、また廃墟の中から立ち上がるという経緯をたどって、結局ドルをかせがなければならぬ。資源のない日本としてはやむを得ぬでしょう。そういうことからいわゆる生産輸出第一主義ということになって、よくいわれます国民生活犠牲型、何よりも公共投資が立ちおくれておる。もう前の代の内閣から格差是正が盛んにいわれたけれども、これが口頭禅に終わらざるを得なかったのは、金がそういうふろに回っておらぬ、資金配分がそういうふうにされておらない。結局資金配分はいわば基幹産業や新しい産業のほう、これは端的にいえばいわゆる大企業ですね、こういった方向へ優遇されて、そして、現在やはり自由化をしなければならぬけれども、これから国内に定着させなければならぬ産業としての農業あるいは畜産、こういうような問題にはなかなか踏み切れない。結局そういうものをやはりあと回しにした。国内の中小企業やあるいは農業の構造改善をやって国際競争力をつけるという、こういう方面に対しての資金配分があと回しにされたという、こういうことではないか。またことばをかえれば、いわゆる産業基盤の強化には金は使われたけれども、生活基盤を充実するという面においては十分この金が回らないという結果になっておるではないか。  これに対して一体大蔵、財政当局、経済運営を担当している当局は、四十七年度予算を目前に控え、すでに各省は大蔵省に予算を持ち込んでおりますが、当面の不況対策というこの問題のみならず、これからはやはり、何のための輸出であったかということを振り返って考えて、いわゆる国民の生活、暮らし向きを、内容を高めていくのだという線に最優先の経済運営をやるべきである、このような考え方にしかと徹してやってもらいたい。役所というのは、いわゆる従来やった前提、しいていえば既存の秩序にどうしてもこだわりがちですね。そのために大きく動いている時代の変化に対応することが非常にしにくい。発想の大転換と私が言うのはそういう意味でありまして、そういう点からいよいよ本腰でやってもらうならば、このあらしは必ず輝かしいよき七〇年の日本となってくるに違いない、私はこう思う。  お役所というのは下から積み上げて仕事をやるわけですから、そこら辺から考えると主計局長あたりが中心でそういう気持ちに徹してもらわなければ、大臣とか政務次官、幾ら上からなにしたってなかなか問題は動かない。私はもう長くは申しませんが、こういうことについて一体大蔵省は真剣に取り組むつもりか。きょうはあえて主計局長もぜひ来てもらいたいと私は理事会でも言った。それに対してどういう事情とも何ら連絡がなく、ただ次長がここへのぞいているということはまことに遺憾千万。われわれは与党の理事ですから大蔵委員会に常時なにしてますよ。しかしこういう大事な大転換期ですよ。それに対して事務局がもう少し国民の声をまじめに聞くという姿勢がなければならぬですよ。私はその絶好のチャンスだと思ったからあえて出席を求めたにかかわらず、次長で不足とは言わない、あなたもりっぱな人だから、しかしそういうかまえが私はよろしくないというのです。与党の理事としてはこういうことを言うのはよくよくのことで、真剣に考えているからそういうことを言っているのです。相澤君も東京におるのでしょう。私は主計局中心に、(堀委員「藤井君、それは主計局長を予算委員会に出すけれども大蔵委員会に出さぬという不文律を破らなければだめだ。大蔵省が一方的にそういう方針をきめているのだ」と呼ぶ)それで私は理事会で言ったでしょう。それに対して別に、差しつかえがあるから、こういうわけだからこうという何も連絡がない。これはよろしくないですよ。全然この委員会をネグレクトしている。少なくとも理事会でそういう線を出してやっているのですから、これは個人藤井勝志が言っているのじゃないのです。その点はひとつそうしてもらわなければいかぬな。(堀委員「委員長、官房長を呼んで釈明させてください」と呼ぶ)官房長もいないのだな。——審議が停滞してもいけませんから私はひとつ反省を促しておきます。そこでそういうことを主計局長以下あるいはまた各関係局長、これから軽々申し上げますから、徹底してもらいたいということを政務次官にお願い申し上げておきます。  そこでひとつ具体的に二、三なにして結論を急がしていただきたいと思うのですが、これは後ほど決議もこの場において行なわれますからもうできるだけ省略しますが、この不況に対処する国内の直接影響を受ける輸出関係中小企業、これに対して私は、一つはこの国際通貨不安というのは元口の土台がまだどうなるかわからぬということですから、そういう意味においては長期化する、こういう理解をしておる。したがって、長期化する通貨不安に対して国内の、わけても中小企業、輸出関係中小企業というものがみずからの力で防衛するという意味において、いわゆる為替リスクをカバーするための準備金制度というものをこの際積極的に検討すべきではないか。これは主税局長の守備範囲だと思いますから、主税局長にその点を御答弁願いたいと思います。

高木文雄大蔵省主税局長

○高木説明員 為替損失準備金の制度につきましては、従来から役所といたしましては通産省を中心にしてそういう制度をつくってはどうかという御意見を承っておったわけでございますが、時期として必ずしも適当な時期でないということもありますし、それからもう一つは、為替損失準備金というものの仕組みといいますか、その制度のよって来たるゆえんでございますが、はたしてそういう制度を通常の事態において用意しておくことが効率的かどうかということについて疑問を持っておりましたので、そこでいままでは私どもといたしましては賛成しかねるという気持ちがあったわけでございます。今回のような事態に際しまして、今後どうするかという問題は今後の問題として十分検討しなければならない問題でございますけれども、その場合に当面どうするかということにつきましては、準備金制度よりももう一つ前に、差し迫ってすでに発生しておる問題の処理との関係がございますので、いろいろなもろもろの税制上の措置の中で何を優先的に考えるべきかということを考えながら、来年度ないしは当面の税制を考えます際に比較考量させていただきたいと思います。

藤井勝志自由民主党

○藤井委員 ぜひひとつ検討していただきたいと思います。  次は、ひとつ通産省の諸君にお尋ねしておきますが、最近輸出の問題がレートの調整問題から非常に大きくなっておりますけれども、日本の国内市場のウエートはどのくらいですか。

大石敏朗通商産業省通商局通商参事官

○大石説明員 お答え申し上げます。  会社によっていろいろ違いますけれども、大体五割から六割くらいが国内市場という例が多いようでございます。

藤井勝志自由民主党

○藤井委員 これは私の得た資料では、品物にもよるのでしょうが、八七%、こういう数字も出ておるわけです。これはそれならいまお話しのような線として、私はこの際やはり国内の景気、有効需要を喚起するという面において、特に耐久消費財に対して、いきなり、月給取りとかそういうようなものが買えない。これに対してはやはり割賦販売制度、これを裏づけるいわゆる運転資金というものをある程度まとめて潤沢につける。こういうことによって、先ほど申しましたような、いままで生産輸出に金がずっと回っておったのを、もう少し国内の消費を拡大をする、需要を喚起するという面において買いやすいように、資金を売るほうの側につけてやる。こういうことについて積極的に考慮することが一石二鳥であるというふうに考えますが、この点について銀行局長ひとつお答え願います。

近藤道生大蔵省銀行局長

○近藤説明員 消費者金融あるいは住宅金融、そういう方面に今後一般の市中銀行が相当力を入れていかなければならないということは当然のことでございまして、特にいまのように次第に金融が緩和に向かっております時期が一つのチャンスでございますので、消費者信用、住宅金融、そういう方面にできるだけ市中金融機関としても力を入れてまいりますように指導してまいりたいと思っております。

藤井勝志自由民主党

○藤井委員 これで最後にいたしますが、大蔵省、ひとつ今度はほんとうに発想の大転換をやる覚悟をきめてもらいたいのですよ。従来のものを前提にして予算が組みにくいとか公債の発行はこの程度というようなことでなくて、ひとつ思い切った線を出してもらう。その点について、当面の不況対策としてはやはり減税というのは直接即効薬といいますか、所得税減税を中心に大幅減税ということが最近の新聞でもいろいろ出ておりますが、過去もう五年ほど手をつけておらない物品税、これは付加価値税の問題との関係においてさわらないようなことで来ておりますけれども、この際、付加価値税だってそう簡単にできるものではない。大蔵大臣も準備期間が相当要るような話ですから。生活環境が激変しておりますし、国内のいわゆる景気対策という面から、所得税減税のみならず物品税の見直しということも、この際準備あってしかるべきだ、このように考えます。主税局長どう思いますか。

高木文雄大蔵省主税局長

○高木説明員 こういう機会にいろいろの減税をやるということが経済政策として非常に重要である。この場合にどういう種目の減税に重点を置くべきかということは、ただいまお話がございましたようにいろいろ御議論のあるところであろうかと思います。その場合、物品税につきましてどう考えるかということは、たとえば前回の四十年不況のときにはかなり大幅な物品税の減税を行なった事例もございますし、そういう意味からいいますと物品税減税も十分に検討すべきことであろうとは思いますが、しかしながら過去の例に徴しましても、また現在考えましても、物品税を減税いたしました場合に、それが直ちにそのとおり価格にうまいぐあいにはね返るというふうな価格形成過程になっていないという難点もございますし、また物品税が、御存じのように非常に特定品目についてだけの個別物品課税になっておる関係もございますので、ただいま御指摘のように付加価値税というような問題があるからということとは必ずしも直接関連ないわけでございますが、減税規模はどうなるかということとも関連するわけでありますけれども、はたして物品税減税がどれだけこういう際の経済政策として適当であるかどうかについての私どもの見きわめを持っておりませんので、現在この段階で、物品税につきまして検討はいたしておりますが、そういう方向に進むであろう、あるいは進みたいというようなことを申し上げるには、私どもとしてややまだ時期が早いというふうに申し上げざるを得ないのでございます。

藤井勝志自由民主党

○藤井委員 きょうの場合、主税局長がいきなりここではっきりした答弁はできないということは私も理解します。これ以上は申し上げません。ただ時代の推移から考えると、賢明なる高木主税局長は答え以外の方策についてやはりいろいろ思案されておるというふうに私は理解いたします。  最後に、これは答えはけっこうですから……。最近、低福祉下の外貨蓄積ということがいわれております。これまたひとつ思い切って発想の転換をしてもらいたいことの中に入っておることを念のためにもう二つ申し上げたいと思います。  食管会計という、あのことしの予算で六千七百五十七億円、農林省の全体の予算が一兆八百六十億円、七割近いものが米に直結した財政支出になっておる。これは食管制度の根幹を守るとかなんとかいう、わかったようなわからないような表現ですが、大体食管制度というものの発足は昭和十七年、戦時立法です。これは当時まだ自給が十分でない、貴重品である米を公平に配給しようという配給統制が前提だった。これはいまの時代では全く時代からずれてしまっている。こういう問題に対して思い切って検討すべきである。これも発想転換の一つです。  もう一つ医療保険制度、これなんかでも四十四年の数字からいうと全体で二兆円使っていますね。国民総生産からいえば四・五%。大体イギリスやフランスや西ドイツ並みですね。ところが片や日本の国民健康保険は赤字で悩み、あるいは重病患者が負担に泣いておるという、こういう矛盾は一体どこから出るのでしょう。これに対しても抜本的な検討が必要だ、発想の転換が必要だ、このように思いますから、一、二を申し上げましたが、そういう意味で私は主計局長にあえて来てもらって、いま九月、十月、各省から持ち込んだやつをばらして検討しておるわけですから、検討しておる諸君がそういう気持ちでやってもらわないと、いつまでたっても従来の惰性の上に結局継ぎはぎでやっていかなければならぬ。これではこのあらしは明るい方向に行けませんから、とくとその点を了解の上まじめに善処してもらいたいと思いますが、最後にひとつ大蔵省を代表して大蔵政務次官からお答えをいただきます。

田中六助自由民主党大蔵政務次官

○田中説明員 先ほどから藤井さんから発想の転換をした予算をつくれということでございますが、私も、一九七〇年代を踏まえて発想の転換をしなければ国際的に立ちおくれるというふうに考えておりまして、まさしく食管会計、昭和十七年の法律がいままで適用しておるとか、あるいは中小企業対策につきましても、何か起こると中小企業対策と、しょっちゅう同じようなことを言っておりまして、これは発想の転換を加えてもらいたいという気がしますが、そういうつもりで予算を組まなければならないと思います。  それからもう一つ、主計局長がここに藤井委員から出るように言われて出ていないということにつきましても、予算委員会があっておるときなら別でございますが、予算委員会がないときはやはり出るのが至当じゃないかというふうに思いますので、帰ってよくその事情を聞いて御返事申し上げたいと思います。

齋藤邦吉自由民主党

○齋藤委員長 広瀬秀吉君。

広瀬秀吉日本社会党

○広瀬(秀)委員 最初に国際金融局長に一つお聞きしたいことは、変動相場制に二十八日に移ったわけでありますが、その後においてドルの先物相場が立たないというようなことから、アメリカにでもどこにでも出かけていって直接交渉能力のあるような大企業は、そういう点でもある程度また力もあるし対応能力もあるということでできるけれども、中小企業等の輸出契約がほとんどストップ状態で八月推移しているというような状況になって、今日たいへんな不安と混迷を中小企業に与えているわけでございます。これをドル・ショックというのでありましょうが、そういう状況になっている。ドイツはことし五月から変動相場制に移った。ドイツではそういう状態がどの程度シビアなものが出たのかよくはわからないけれども、それほどそういう点でたいへんな混乱と不安を引き起こすような事態はなかったように思います。もちろんこれは、いろいろ切り上げ切り下げ、そういうような波に、日本は今回初めてだけれども、ヨーロッパ、EC諸国はそういう点では経験が豊富といいますか、なれているといいますか、そういう問題が確かにあるだろうと思うのです。しかしそれだけではなくて、日本の為替管理の問題、ドイツにおける為替管理の問題、こういうような問題においてかなりの差があるだろうと思うわけであります。その点、ドイツで変動相場制に移ってもそれほどたいしたことがないのに、今日日本がたいへんな不安を持っておる。そしてまたそれが非常に波及して浸透していっている。こういうような点でもし問題が、為替管理がきつ過ぎて変動相場制に移ってから先物相場がずっと立たないというようなことであれば、やはりそういう問題について何らか手を打つべき問題点があるのではないかというようにも考えるわけです。西ドイツとの比較においてそれらの問題がどういうようになっておるのか。そしてどういう対策を——もちろん投機につけ込まれるというような穴をあけることはわれわれも全く反対でありまするけれども、そういうものをシャットアウトする方法というのは、大蔵省も為銀に対する立ち入り検査までやろうというようなこともあるようでありますから、かなりそういう面では規制もできているし、あるいは残高をいままで月末だったのを毎日にする、そういう規制もやっている、こういうようなこともあるわけでありますが、そういう投機につけ込まれるというような点ではかなりシビアな態度でやる。しかしながら輸出成約が変動相場制のもとでこの先どうなるのだろうという不安のままでどうもならない、あるいはまた百日、百五十日の手形も中小企業などでは買い取りしてもらえないというような状況などについて、そういう面では中小企業の今日の不安と動揺と混迷の中で打つべき手というものはあるだろうと思うのですが、それらの点についてもあわせてお答えをいただきたい。

稲村光一大蔵省国際金融局長

○稲村説明員 ただいまドイツとの比較を御質問でございますが、これは私が先般蔵相代理会議でヨーロッパに参りましたときに、ブンデスバンクのエミンガー総裁とお話をいたしましたときに、変動相場制につきましてはドイツが一種の兄貴分でございます。その点でたまたまドイツとしてもいろいろと問題が出てきた。これは五月に初めてやったわけでございますが、ちょうど三カ月日になっておったわけであります。どうも三カ月日くらいになりますと、若干ドイツでも問題が出てきたというようなことを言っておりましたが、全般といたしましては、先ほど申し上げましたとおり、やはり自国通貨建ての取り引きが多いというようなことで、日本とは若干違う点もございましょうし、その意味では日本は特別なあれでございますし、ことに、何といいましても御指摘のとおりなれておりません。初めての経験でございます。それでございますればこそ、変動相場制に踏み切るということにつきましてもいろいろと慎重な検討が必要であったわけでございますが、いずれにいたしましても、特に中小企業その他が変動相場制のために何か特別な措置を要する、その実態をいま政府といたしましても調査をいたしております。それで、やはりこの変動相場制そのものは、相場が変動いたしておりますから、元来不安定要因というものがどうしても残らざるを得ないと思いますが、そういうものにつきまして、大企業は別といたしまして、中小企業その他、御指摘のような非常に能力なり力なりというものがなくて、実際上非常に困るというような点につきましては、実情を調査いたしまして、関係の局とも打ち合わせをいたしまして、適切な措置を講じてまいりたいというふうに思っております。  為替管理につきましては、元来が一般の貿易金融に支障を来たすようなことはいままでもやらないで、その点は、そういう意味の為替管理というのは非常に自由にやっておったわけでありますが、たまたま現状におきましては短資の流入という、投機資金の流入を押えるために、変動相場制になりましてから若干きつくいたしました面もございますが、そういうものもいまのような点を考えながら、やはり中小企業について何らかの措置が必要であろうという判断になりましたならば、それはむろん善処してまいりたいというふうに考えております。

広瀬秀吉日本社会党

○広瀬(秀)委員 そういう事態になりましたならばということではなしに、この対策はやはり非常に急がれておると思うのです。たとえば中小企業諸団体などから、日銀が直接為替を買い取ってくれというような要求なども出ておるようでありますし、あるいはまた外為からの外貨預託をふやせとか、外銀からの借り入れ規制の問題などもゆるめろとか、いろいろな要求が出ているようであります。あるいは自由円の取り入れ規制をもっとゆるめてもいいのではないかとか・いろいろなことが出ておるわけですけれども、いまさしあたってやはり困っておるわけですね。輸出成約が全然できぬというような状態。これはやはりその背景には、現在大蔵省の考えとしては、通貨調整というものは短期決戦でIMF総会前後にきまるという説もあるけれども、おそらくそれではきまらぬだろう。変動相場制でかなりの時間がかかるであろう。腰を据えた、そう二年置きくらいに繰り返すような、切り上げだ、切り下げだという問題が起こらないような、安定した調整というものが、均衡のあるバランスのとれたほんとうの意味での調整というものがやはり打ち立てられなければならない。ドル切り下げというようなことも水田大蔵大臣も十カ国蔵相会議で、端的ではないにしても演説しておるようでありますが、そういうようなことも含めて、やはり落ちつくところに、適正なところに落ちつかせるということのためにはかなり時間がかかるというようなことを考えたら、こういう状態がかなり続くということになったらたいへんな国内に必要以上の不況をもたらす原因にもなるわけでありますから、その点についてもう少し具体的な考え方を述べていただきたいと思います。

稲村光一大蔵省国際金融局長

○稲村説明員 ただいま御答弁が不足しておりましたので追加させていただきますと、ただいま申し上げましたのは、実情が何も要しないということではございませんで、方法論といたしまして先生御指摘のようないろいろな手段があると思います。それぞれにつきまして一長一短もございますので、そういうものを日銀その他と検討しておりまして、大臣が明日帰られますので、相談した上で早急に措置を講じたいというように考えております。

広瀬秀吉日本社会党

○広瀬(秀)委員 主計局が来ておりますから……。いずれにいたしましても、ドル防衛の緊急措置をめぐってすでに課徴金が実施をされている。しかも変動相場制に移っても六・何%という実質円切り上げにひとしい事態が出ておる。こういうようなことから、われわれの予想外に不況ムードというものが非常な波及効果をもって広くかつ深く浸透している状況だと私どもは見ておるわけであります。どこへ行ってももうこの話で持ち切りだ。どんな小さな企業へ行っても、どうですかというようなことを言うと、もうすぐその問題にぶつかるというような状況になっておるわけでございます。したがって、午前中にも下村参考人にも来ていただいていろいろ話も伺ったわけですけれども、何といってもやはり今日まで、こういうドル防衛の緊急措置がとられざるを得なくなるような対米輸出の急テンポの増加という問題、そうして日本が完全に黒字が定着して、いまや金・外貨準備においてドイツに次いで百二十五億ドルというような、アメリカを越す外貨準備を持つというような状況になって、こういう事態を迎えているわけだけれども、それはやはり、先ほど阿部君も言いましたように、日本の生産労働者、こういう者の低賃金にささえられた面が非常に大きいだろうし、それと同時に財政支出、特に社会保障、社会福祉というような問題を犠牲にした上でのものであったのではないか、こういうことが当然いえるわけであります。  そこで、景気を回復する政策をかなり強化しなければならぬ。財政主導型の景気回復をやはりやらなければいかぬだろう。民間設備投資主導型の成長なり、そういうところに資源がたくさん配分されるということになると、競争力が一そう強化されて、国民の福祉、生活というものが向上しないままにまたもう一ぺん円切り上げだ、こういうことにもなるわけですから、この際はあくまで国民の福祉、国民の生活向上、生活基盤の強化、こういう問題に——先ほど藤井委員が言った、いわゆる財政金融の運営における基本的態度というものを、発想の根本から取りかえてかからなければならぬ、こういうお話もあったわけですが、私も全くそのとおりに思うわけであります。そういう立場からいうならば、とりあえず国民生活を豊かにするという立場から、そうして景気浮揚の力を持つ政策というのは何といっても減税だろう、こういう気持ちを持つわけであります。しかも早ければ早いほどよろしい、そういうことで、まず減税をやりなさいということを主張をしておるわけであります。また老人福祉問題が日本では特におくれている。こういう問題などについても、寝たきり老人のための養護老人ホームというようなものなども、そういう人たちを対象にして飛躍的に施設を拡充をしていく。あるいは共かせぎ夫婦のための保育所の設置というようなことも、従来の一割増しだとか二割増しなんというけちなことではなしに、少なくとも年間に倍増させるくらいの意気込みで、そういう面にも公共投資を向けていかなければいかぬだろう。あるいはまた住宅建設というようなものも同じような発想で、いままでのような少しずつふやしていくというようなことではなしに、やはり思い切った住宅建設ということをやっていかなければいけないだろう。こういうような意味での公共投資を中心にした社会資本の立ちおくれを、この際一挙に取り返すくらいのつもりでそういう政策を出していくべきだろう、こういうように思うわけでありますが、大蔵省として財政主導型における景気浮揚をはかるという意味で、どういう財政政策を構想し、国会にまたそういう意味で出してこられるおつもりなのか。その大づかみのところでもけっこうでございますが、現在のところどういうお考えがあるのか、その点をひとつお聞きいたしたい。

大倉眞隆大蔵省主計局次長

○大倉説明員 ただいまの広瀬議員の御質問、また前の藤井議員の御質問にもございました点、私どもとしましても非常に共鳴する点、多いわけでございます。来年度予算の編成は、御承知のとおりいまやっとスタートを切ったばかりでございますので、とてもまだ数字的にいろいろ申し上げる段階ではないわけでございますが、ものの考え方といたしましては、御指摘のとおりこの際社会資本の充実というところに焦点を当てて予算編成に臨んでまいりたい。またそれと同じ意味で、御指摘のございました生活環境の整備、国民生活を質的によくしていくという点につきまして、それぞれの担当省の御主張を十分伺いました上で、なるべく重点的な配分を考えてまいりたい。  ただ一言つけ加えさせていただきますと、来年度の経済見通しがまだ判然といたしませんので何とも申し上げられませんが、私どもなりに一番心配いたしておりますのは、景気の先行きいかんでは税収が非常に少ないのではないか。もちろん国債につきましては、従来の行きがかりと離れてかなり大きな国債を出すことは考えられると思いますけれども、それにいたしましても、そこにもおのずから限度がございますし、結局歳入面で必ずしも非常に大きな予算を組めるという余裕は出てこない。それであればあるだけ、従来の考え方にとらわれず、年来の既定経費で洗えるものは徹底的に洗って、新しい重点配分をできないものか。ひとつぜひ関係各省とも御協力願ってそういう予算を組んでみたいというふうにいま考えております。何ぶんにもただいまの段階では数字的に申し上げられないわけであります。

広瀬秀吉日本社会党

○広瀬(秀)委員 基本的な立場は私どもの主張に賛成であるということでございまして、まだいろいろな不確定要素やいろいろな事情があって数字的なお答えはいただけなかったわけですが、政務次官、ただいま私が申し上げたような発想に基づいてこれからの財政金融の運営をやるべきである、こういう立場において、よく地方ではシビルミニマムという、少なくとも市民生活でこれだけは、ここまではいきたいというものをシビルミニマムという形で設定をしているわけですけれども、いわゆるナショナルミニマムというものを、公共投資をやるにあたって、やはり長期にわたってしっかりした計画というものを、シビルミニマムに匹敵するナショナルミニマムというものを設定をする。そしてそこに向かって年次的にどういうものをそれにアプローチしていくかということをこの際私は考えるべきではないかと思うのですが、いかがでございますか。

田中六助自由民主党大蔵政務次官

○田中説明員 このたびのニクソン・ショックによって、いみじくも日本の国内の社会資本の充実していないということを暴露しているわけでございますので、今回の新年度の予算におきましては、やはり公共投資を中心に、減税、それから公共投資の内容は、いま御指摘のような社会資本の充実とかあるいは公害対策、あるいは国民の生活の向上というものに結びつけてやっていかなければならないというふうに考えております。ただ、先ほど大倉次長も言っておりますように、不況ということから税収というものに対する考え方が、あるいはこれの見込みというものが、これまでとずいぶん違ったことになるのじゃないかということから公債発行に結びつけるわけでございますが、そういう点でも限度があるし、ここで大きな発想の転換という抽象的なことを申し上げましても、具体的にさいふのひもとの関係がございますので、そこは十分私ども考えてやっていこうというふうに思っております。

広瀬秀吉日本社会党

○広瀬(秀)委員 財政問題では主税局長に最後に、年度内減税をやるという意思があるかどうか、この点お伺いをいたしたいと思います。

高木文雄大蔵省主税局長

○高木説明員 景気浮揚策の一つとして減税を大いにやるべきであるということが強く各方面から主張されておりますし、その場合には、せっかくやるのであれば早くやることがいいんじゃないかという主張があることはよく承知をいたしております。ただ問題は、ただいまの質疑応答の中にもございましたように、最近に至りまして税収の落ち込みがだいぶ目立ってきております。しかしまだ現在、最近の法人税や何かの深刻ないわゆるニクソン・ショックの影響は出てこないわけでありますけれども、それでも全体として税収は低調ということになっております。したがって、来年度の予算全体といたしましてどのような税収が見込めるか、それから歳出がどう組まれるかわかりませんし、さらにただいまも主計局から答弁申し上げておりますとおり、やはり国債発行に目安がなければならぬということもございますので、その辺をにらみまして、どのような税目に重点を置いてどのような減税を来年度行なっていくか、どの程度の規模の減税を行なうべきかということについては、申しわけございませんが、現在の段階では私ども自身がまだ目安を持ちかねているような状態でございます。  そこで、かりに相当大幅の所得税の減税が計画されます場合に、それを従来の普通の年の慣例のように四月から実施することになるのか、あるいは一月から実施することになるのかということにつきましては、まず来年度の税制改正の大体の、所得税の場合でございますとどのような構想で所得税減税を行なうかという構想が固まってまいりませんと、それを一月までさかのぼるべきかどうかがきまらないということで、前提となるべき諸要件がきまってまいりませんために、私どもといたしまして現段階で、早い時期から減税を実施に移せましょうということを申し上げる段階には至らないわけでございまして、率直に申しまして、私どもはもう少しその前の段階の作業をいま進めているところでございます。  いずれにいたしましても、大臣からも、せっかく減税をやるのであれば、できることならばなるべく早くからやりたいという気持ちであることを承っておりますので、私どもといたしましてもできる限りそういう線に乗りたいものだとは思っておりますけれども、いずれにいたしましても歳出歳入総体をひっくるめまして、また四十六年度のいわゆる補正予算と四十七年度予算とのからみの問題もございますので、いまの段階ではそれを明確に申し上げられないという状況でございます。

広瀬秀吉日本社会党

○広瀬(秀)委員 十五カ月予算という構想をもうすでに水田大蔵大臣は持っておられる。私が前回質問したときには、そのことはまだ私のところには来ておりませんなどと言っておったのですが、九月一日の段階では、十五カ月予算ということは、そういう考えを持って財政運営に当たるということはもうはっきり言われたわけです。  そこで、主税局長はいろいろ事務当局としての考えは述べられたんだけれども、政務次官は政治家であるのですから、この今日の事態に対処して、少なくとも年度内に減税効果が及ぶ税制改正をやるべきであるという程度のお答えはできるだろうと思うのですが、そういう立場を少なくとも次官あたりがまず持って、事務当局を叱咤激励しなければいけないと思うのですが、その点いかがでございますか。

田中六助自由民主党大蔵政務次官

○田中説明員 真理は一つでして、私があまりはったりをかけていろいろ言ってもしょうがないことで、うそを言ってもかえっていけないと思いますが、ただ言えることは、総理もそれからうちの大蔵大臣も、四月から減税をやるようならば、同じことだから、現在の景気浮揚対策というものを十五カ月予算と銘打ってやっているのですから、できるだけ早くやりたいということを私どもと話しておりますので、私どもはその意に沿ってそれを実現したいというふうに考えております。

広瀬秀吉日本社会党

○広瀬(秀)委員 これで最後で終わりますが、通産省中小企業庁から来ておりますが、通産省としては中小企業対策という問題について、まずこの国際通貨不安の問題が出る前にも、中小企業の立場というものは、特恵関税の問題であるとか後進国の追い上げ、国内における労働力不足というような立場で、非常に苦境に立っておった。そこへ特に輸出依存度の高い——私の手元の資料を見ましても、対米依存度が金属製品で四九%、玩具五八%。五〇%以上のところだけ見ましても、セルロイド六四%、運動具など五九%、さらに木竹製品六〇%、その他ゴム製品六一%、陶磁器五二%、あるいは人造真珠が六四%、こういうようなかなりの対米輸出依存度を持っている企業、こういうようなものは、今度のドル不安の問題、通貨不安の問題でたいへんな打撃を受けるであろう。こういうことで、すでに特恵関税供与に伴っての対策というものは特別措置法も前国会でできたわけでありますが、これらを総合して、いま申し上げたような業種を含めて、一体中小企業にどういうしわが寄るのかという点についてのお考え方、そしてこの状態を当面しのいでいくその当面の対策と、さらに長期的な構造政策をも含んだ対策について、中小企業問題についてどういうお考えを、特にこのドル不安で非常な打撃を受けつつある今日の段階において、この当面の対策と、それから将来やや長期に向けての業種転換などを含めた産業構造全体の立場で、中小企業をどう育てていくのか、あるいはどうしていくのか、ここらの点についてどういう構想をお持ちなのか、この際聞いておきたいと思います。

西田彰中小企業庁計画部長

○西田説明員 今回の問題が中小企業に及ぼします影響は、先生いまおっしゃいましたとおり非常に深刻でございまして、その打撃の深刻の形態といたしまして、先ほど来お話に出ておりますように、主として中小企業製品を中心にいたしまして輸出契約の成約が非常に円滑を欠いて、停止に近い状態にありますこと、またこれが多少とも成約が得られるようになりましても、課徴金及び円高の影響によりまして、やはり受注の金高は非常に減小するわけでございまして、それらの輸出の不振に結びつきました下請関係中小企業者に対しまして、滞貨・減産資金というようなものが非常に必要になるというような状況になろうかと思っております。  これに対しましてどういう対策をとるかという構想を示せというお話もございましたが、本日閣議の席で通商産業大臣が、現在検討いたしておりますところの項目を閣議で御了解を得ておりますが、それをもってお答えを申し上げたいと思います。  一つは、いま申し上げました現在の成約の不円滑を何らかの形ですぐ取り除くという対策が必要であるということ。第二には、政府関係中小企業金融三機関、この運転資金の低利、長期の融資に関する特別措置をとること。それから第三は、中小企業は信用力、担保力に乏しい企業でございますので、ここに円滑に金融が流れますように、保証協会の保証並びにこれをバックアップします国の信用保険制度の充実ということが必要であろうかと存じます。それから第四には、今後の問題でございますけれども、業種によりましては事業転換をせざるを得ない企業もあるいは出てまいろうかと存じますが、それに対しましては、事業転換を円滑ならしめるような施策に対して必要な措置をとる必要があろうかと存じます。第五に、先般来お話に出ております景気対策を含めまして税制上の措置が必要かと存ずるわけでございます。  大体現在の事態に対しまして直ちにとるべき施策は以上のものかと存じますが、なお基本的に今後の中小企業対策をどうするかという御質問もございましたのでちょっと触れておきたいと思いますが、やはり従来よりやっておりました構造改善、近代化という方向は新しい事態に沿って進める必要があろうかと存じますが、市場の問題、あるいは何か非常な事態がおきましたときにかなり弾力的に事業経営ができるような体質を整えさせるというような意味におきまして、そういった合理化施策というものを今後進めていく必要があろうかというふうに存じます。

広瀬秀吉日本社会党

○広瀬(秀)委員 またあと同僚委員が質問いたしますので私の質問はこれで終わりますけれども、特に中小企業対策は今日非常に深刻な状況になっておりますから、中小企業庁もしっかりしていただくと同時に、大蔵省も理解ある施策を強化拡充して、なるべく早く、早目早目に手を打っていただくように要望をいたしまして終わります。

齋藤邦吉自由民主党

○齋藤委員長 阿部助哉君。

阿部助哉日本社会党

○阿部(助)委員 私、この前の委員会は外国へ行っておって欠席をいたしまして、多少ダブるところがあろうかと思いますが、その点あらかじめ申し上げておきます。  八月十六日のニクソン声明をきっかけにいたしまして、いわゆる国際通貨不安というようなことによって、輸出関係の中小企業はいままでお話しのとおり危機に瀕しておりますし、また企業はもう労働者に対して合理化あるいは首切りというような形で、国内はいま騒然としてきておるのが現実だと思います。また、今回の国際通貨不安というのは、もちろん世界の資本主義の矛盾の激化であると私は思いますし、同時にまたそのことは日米安保体制の矛盾が爆発的に出てきたのだと私は思います。アメリカの侵略主義、ベトナム戦争あるいは対外投資、また日本では高度成長、つまり独占資本の大きな利益をあげる、労働者の収奪というのが主要な犯人だと私はこう思うのであります。政府当局並びに財界の動向を見ても、この点に関してはいささかも反省の色がないように私は思います。この観点を抜きにしてかりに当面の困難な事態を乗り切ったといたしましても、遠からずまた同じような形で、むしろいまよりも深刻な事態に突入する、そのたびごとに労働者に対して合理化を押しつけるというようなことが起こるのではないか。  私は、今度の十六日からのいろいろな新聞あるいは報道等を見ておりまして、何か政府の姿勢が、これは根本的に少し違っておるのではないだろうか、時代の認識が狂っておるのではないだろうかという感じがするわけであります。その点で逐次お伺いをしてまいりたいと思いますけれども、ヨーロッパの諸国は市場をしめておるにもかかわらず、日本では為替市場をあけっぱなしにして、先ほど藤井委員のお話にもありましたように、変動相場を採用する直前における為替銀行、大手商社のドル売り投機というものを野放しにしてきたなんということは、国民はこのことに対して非常な疑惑を持っておるのではないか。こういうのも、一連のいままでの経過を見てまいりますと、これは何としてもやはり大蔵当局、あるいはまたそれに関連する皆さん方の認識が少し狂っておるのではないかという感じがするわけであります。  そこで、まず第一にお伺いをいたしたいのは、これは八月十七日の朝日新聞でありますが、大蔵省の国際金融局の次長であります林大造さんが分析を発表しておるわけです。これは局長御承知ですね。——見出しは「林大蔵省国際金融局次長の分析」、こう銘を打って出しておられるとすれば、ある程度大蔵省の公式見解、こう受け取ってよろしゅうございますか。

稲村光一大蔵省国際金融局長

○稲村説明員 大蔵省の公式見解と申しますと、これは大臣がおっしゃることであろうかと存じます。いまの文章につきまして、その具体的な内容につきまして全部、たとえば大蔵省としてクリアーしたとかいうことではございませんので、その意味では公式見解とはいえないかと存じます。

阿部助哉日本社会党

○阿部(助)委員 非常にかた苦しい公式見解とはいわぬけれども、しかし大蔵省のおおむねの見解を代表しておると見て間違いないのではないでしょうか。また、こういう時期にこういう肩書きをつけて新聞発表をするということは、もしそうでないとすれば国民を惑わすものだ、こういわなければならぬと思うのですが、その辺、私が公式見解と、こういうふうに言ったから非常にかた苦しく解釈をなすったかもしらぬけれども、大蔵省の意図と全然別個に林さん個人の意見ということになるわけですか。

稲村光一大蔵省国際金融局長

○稲村説明員 ただいまの御質問は非常にむずかしいところでございますけれども、その内容につきまして一々、たとえば国際金融局なら国際金融局として合議の上で目を通したというあれではございませんので、その意味では林君の個人の見解というふうに考えるべきではなかろうかと存じます。

阿部助哉日本社会党

○阿部(助)委員 その論議をしておると時間がかかりますので、それでは局長自体は大体この見解に賛成なわけですか、どうなんです。

稲村光一大蔵省国際金融局長

○稲村説明員 いろいろたくさんな文章なりあれがございまして、的確にいまその内容につきまして私はちょっと覚えておりませんのですが、そういうものがあったということにつきましては覚えております。

阿部助哉日本社会党

○阿部(助)委員 これをいまあなたに見せますけれども、こういう非常に大きな問題が出た。しかも、国民はこれからどうなるだろうという非常な不安を持っておる。そのときに「大蔵管国際金融局次長の分析」と、こうして出ると、これはやはり国民はこの意見というものに大きな影響を受けることぐらいは当然なことなんですね。私は何も林さん個人を責めようと思っていないんですよ。しかも、この見解はおおむね大蔵省のその当時の意見を——まあ今日それを訂正しなきゃいかぬかどうかは別にして、当時の大蔵省の意見を大体代弁をしておる、こう受け取るのは私は当然のことだと思うのですよ。そうでしょう。そうすれば、この見解を皆さん自体もある程度その当時は認めておられたのじゃないか、こう私が推測するのは間違いでしょうか。

稲村光一大蔵省国際金融局長

○稲村説明員 先ほども申し上げましたとおり、内容につきまして私が、出ます前に承知しております文章ではございませんので、その点を申し上げたわけでございます。

阿部助哉日本社会党

○阿部(助)委員 では、これは簡単なところだから、私が赤じるしをつけたところだけごらんになればわかりますよ。まず一番最初の文句から私にはちょっと気に食わないというか、何か金交換を全部の国がやらないような言い方をしておるけれども、フランスとスイスはアメリカに向かって金交換を要求し、交換したじゃないですか。そういうことを、何か金交換は世界じゅうの国々が申し合わせて全部やらないのだというような言い方をまずしておられる。  その問題はさておきまして、その次に、金交換の停止は実質的に変わりがなく、いままでの事態を追認しておるんだ、こうおっしゃっておるのですね。何かニクソン声明なんというものは全然たいしたことはないのだ。それを受けて、佐藤総理も箱根で昼寝しておったなんということが週刊誌に出ておるけれども、大蔵省みんなが昼寝するような気持ちでおられたわけですか。

稲村光一大蔵省国際金融局長

○稲村説明員 全くそうではございませんで、金の兌換停止ということは、これは戦後のIMF体制につきまして、いわばその基礎になっております一つの考え方がくずれたというわけでございますから、それはまことに非常に大きなできごとでございました。その意味で、いま詳しくこれを読んでおるあれがございませんでしたが、申し上げますと、やはりある意味で私は、戦後の一つの時代が終わったなという感じを、実は個人的には持ったわけでございます。確かに、先ほども申し上げましたが、一九六八年三月の金の二重価格制のとき以来、事実上ある程度金の兌換は要求しまいという一種の紳士協約と申しますか、そういうことができていたことも事実でございますが、それにはフランスは入っておりませんし、スイスはIMFに入っておりませんし、それからまたベネルックス、ベルギーなどは、国内的にも金本位の国内法がございまして、したがって、若干国内法の要請に従いまして金の兌換を求めたということがあることも事実でございます。ただ、何と申しましても金の兌換の停止というのは、事実上の問題は別としまして、やはりそういうことをアメリカ自身が決意してそれを表明したというところは、これはいわば戦後初めての一つの大きな事態であるというふうに解しております。

阿部助哉日本社会党

○阿部(助)委員 まあ、いまの局長の答弁である程度私も了解をしますけれども、その次に私が赤鉛筆でしるしをつけたところをごらんになると、金交換がIMFの存立の必要条件ではないのだ、IMFの基礎ではないのだ、こういう意味のことをそこに述べておるわけです。これは私はたいへんな認識の誤りではないか、こう思いますが、いかがです。

稲村光一大蔵省国際金融局長

○稲村説明員 これは、この金交換の停止がそれ自体IMFをひっくり返すと申しますか、IMFが全く存立の基礎を失ってしまうという問題ではないと存じます。確かに、IMFの形式的な意味の規定のもとというよりも、実質的な意味の背景として、金とドルとの交換制があったということがいわば基礎的な考え方の一つであったということはいえるかと存じますが、しかし、これはそのことによってIMFがもうすべて意味がなくなったということではないと存じます。

阿部助哉日本社会党

○阿部(助)委員 まあ、あなた、林さんのあれを弁護しなければいかぬ立場だろうからそうおっしゃるだろうけれども、イギリスのロイ・ハロッドという有名な教授なんかの言い分からしますと、これは日経の九月十五日に出ておる論文でありますけれども、これは一九三一年九月のイギリスの金本位制停止に匹敵する、ブレトン・ウッズ体制は終わりを告げた、重大だ、こうおっしゃっておるのですね。また、わが国の大内兵衛さんの新聞に出た談話でありますか、これ等を見ましても、これは非常な重大な段階に差しかかったと、こうおっしゃっておる。私もそう思う。しかし、その論文の——いまあなたが、これが絶対必要条件ではないとおっしゃる意味なんだろうけれども、その林さんの論調を見ると、全くこれはたいしたことはない、いままでどおりなんだという書き方で、普通の日本人が読むならばそういうふうに読む以外に道のない書き方をしておるわけです。それほど軽く見ておられたのだとすれば、事態の認識が狂っておるのだ、こういわざるを得ないと私は思うのですが、いかがでしょう。

稲村光一大蔵省国際金融局長

○稲村説明員 この表現の詳細につきまして、ちょっとよく目を通すあれはございませんが、考え方といたしましては、確かにいわゆる金為替本位と申しますか、ドルが金と交換性がある、それをもとにしてできている点から申しますと、このIMFのできましたときの基礎的な一つの原則というのが今度はとまったということがあるかと思います。したがいまして、むろんこれは、先ほども申しましたとおり、ある意味でIMF成立以来初めての大きな問題でございます。したがいまして、それでございますからこそ、この十カ国蔵相会議その他におきましても、新しい今後の国際通貨制度をどうするかということにつきまして、ゆっくりと考え直していかなければいかぬのではないか。つまりその点におきましてはドルがいままで特別な地位と申しますか、ドルが金と自由に交換できるということで他の通貨と違った地位であったわけでございますが、それがほかの通貨と同じ地位になったという意味で、いわばIMF体制自体、今後の新しい通貨体制をどうするかということが、実はこれからまさに各国で検討いたしまして、新しい通貨体制を考えていかなくてはいけないという事態でございますから、その意味では確かに御指摘のとおり、いままでの制度とは一つの基礎が変わったということはいえると存じます。

堀昌雄日本社会党

○堀委員 関連。国際金融局長の答弁、非常にはっきりしないですね。国際通貨基金協定第四条を一ぺんここで読んでみてください。第四条をずっと読んでみてもらえば、今度の問題、どういうことかはっきりしますから。通貨基金協定第四条、ちょっと読んでみてください。

稲村光一大蔵省国際金融局長

○稲村説明員 第四条は「通貨の平価」でございます。第一項が「平価の表示」といたしまして、(a)項「各加盟国の通貨の平価は、共通尺度たる金により、又は千九百四十四年七月一日現在の量目及び純分を有する合衆国ドルにより表示する。」(b)項「この協定の規定の適用上、加盟国通貨に関するすべての計算は、その平価を基礎として行う。」、これが第一項でございます。

堀昌雄日本社会党

○堀委員 それがIMF協定の一番中心的な部分じゃないですか、第四条が。そうすると、いまの第四条の(a)項、(b)項ですね、これが取っ払われたということじゃないですか。実はそこに書いてあるのは、決して私は普通のドルだと思ってないのですよ。一九四四年七月一日の量目、目方と分量ですか、要するにそのときの金貨が平価だ、金及び金貨だ、こういうふうに規定がしてあるわけでしょう。それとドルとがつながらなくなったということなのだから、金と交換しなくなったということは。そこが私はIMF協定の一番中心的な、各国の平価の問題を規定する中心になっているのだから、そこの金交換をやめたということは、実質上IMF協定というものの一番かなめのところがはずされたらあとは一体何が基準になるのか。これは基準の一番根本をはずしたということになっているのじゃないですか。だから私は、いまいろいろなことで表現をされておりますけれども、実質的にはIMF協定というものはもう働かなくなっているのだという認識をするのが正しいのじゃないかと思うのですが、その点の皆さんの認識、どうでしょうか。

稲村光一大蔵省国際金融局長

○稲村説明員 ただいまの堀先生の御指摘でございますが、確かに実質的な意味の、金とドルとが一つの比率で自由に交換されるということが一つの基礎であったということは事実でございます。ただ他方、金とドルとが自由に交換されるから、ドルとしては市場に対して介入する義務を満たしたものとみなすという規定も別にございます。したがいまして、そういうものが切れたときのことも実は規定があるわけでございます。したがいましてその意味で、確かに考え方といたしまして、これが、いまの金とドルとの交換性が一つの基礎であったということは事実であろうと存じますが、だからと申しまして、それでIMFのすべてがもはや基礎を失ったというふうにはちょっと考えられないのではないかというのが私の感じでございます。

堀昌雄日本社会党

○堀委員 IMF協定は非常に大きなものですから、別に私は全部がだめだと言わないのです。しかしIMF協定の一番肝心なところは、要するに平価の問題をここで一つの基準にしようという考え、これが土台になって、あとの項目がそれに関連して全部組み立てられておるのだから、要するに扇のかなめのところがはずれても、なるほど扇は残りますよ、しかしそれをわれわれは扇と言わないというのと同じじゃないでしょうか。私はこれはかなめがはずれたと思うのです。IMF協定というものは扇子になっているわけです。ここでそのかなめのところをはずして、なるほど扇子はありますという言い方はちょっとおかしい。何もそうだからといって私はいま末梢の議論をするつもりはないけれども、認識としては、やはりドルの交換停止ということは、少なくとも現在考えられているIMFという体制というものが新しい段階に入ったという認識をしない限り、これはまだたいしたことはないのだという——私、林さんの論を読んでないけれども、そういう認識じゃ困るという点をちょっとはっきりしておかないと、さっきからの行き来が、どうも認識がきわめて重要な段階に立っているものですから、ちょっと関連質問をしたわけですが、その点をはっきりしておいていただきたいと思います。

稲村光一大蔵省国際金融局長

○稲村説明員 ただいまの先生の御指摘のとおりであろうと存じます。つまり、認識としましては、先ほどから申し上げておりますとおり、IMFの基礎になっていた考え方が変わったという意味で、あるいはこの形のことになるかもしれませんが、協定は何もこれで全部効力を失ったわけではないという意味では存在をいたしますけれども、この考え方からしまして相当大幅に今後の通貨体制をどうするのだということは、これから各国で慎重に議論をしていかなければならないことではなかろうか。むろん中にはSDRの規定、またすでにある程度、ドルと金との関係が断たれましても、今後の国際通貨体制の一つの方向と申しますか、そういうものの手がかりになるような制度は、幸いにして改正で入ってきておるわけでございますから、そういうものを両方考えまして、今後の通貨体制をどうすべきだということはこれからの問題であろうかと存じますが、いずれにいたしましても、基本的なところで大きな変化があったということは確かであろうと存じます。

堀昌雄日本社会党

○堀委員 終わります。

阿部助哉日本社会党

○阿部(助)委員 まだ質問者がたいへん残っておるからというわが党の理事の注意がありますので、なるたけ簡単に、明瞭に御答弁を願えればありがたいと思います。  人間でありますから、間違いということを私責めるわけじゃないのです。ただ間違えたら間違えたということを言って、そこでもう一ぺん正しい認識に立っていかなければこれからの対策が出てこないのじゃないか。何か前にやったことをいろいろと回りくどく言いわけをするだけでは、国民はそれは了解はしないし、間違いを直すわけにはいかぬじゃないかということで、冒頭に申し上げたように、私は林さん個人を責めようとは思っていないのです。ただしかし、大蔵省当局の全体の考えがそのように甘いのではないかという私は指摘をしておるわけです。  それならば最後にもう一点、たいへん悪いようだけれども、林さんのあれを見ると、「これは市場にあるドルが売りに出たもので、もうほとんど市場のドルはカラになったと思う。だから新たなドルの流入がない限り、東京市場でドル売りが殺到し、閉鎖に追込まれることはない。」しかも日本は為替管理が厳重であるから心配がないというようなことをおっしゃっておるのですが、事態は、私はまさにこれとは逆な、裏目に出ておると思うのですが、大蔵省はどうなんです。

稲村光一大蔵省国際金融局長

○稲村説明員 確かに御指摘のとおり、当時考えておりました、この程度のドルしか出てこないであろうという点につきましては判断が甘かったと存じます。それは、為替管理につきまして、居住者からの円に対する投機というのは非常に有効にとめられておったわけでございますけれども、主として輸出前受けというような形を通じまして、リーズと申しますか、代金の早期回収あるいは輸出の前受け代金の受け取りというのが、非常にその道を通じまして多額のドルが売られてまいりましたということは、当時の見通しからいたしますと、若干その見通しが間違ったということは事実でございます。

阿部助哉日本社会党

○阿部(助)委員 私はその認識が全般に甘かったんじゃないかと、こう思うのでありまして、これを、事態は重大であるという認識に立てば、これからの日本の諸施策も、これもまたその認識の上に立って練り直さなければならないんじゃないか。いままで国内価格は高く輸出価格は安くというような形で、何でも輸出を伸ばすほうに重点が置かれておったと思うのです。それだから日本の輸出はこの十年間毎年毎年一七・一%の伸びだと、こう言う。アメリカは七・七%、イギリスは六・七%、西ドイツですら二%なんだ。これくらい伸ばしてきた、輸出ドライブをかけてきた行き方というものがどうなのかという点もこれは考え直さにゃいかぬだろうし、ドイツの有名な、まあドイツで一番よけい出ておる雑誌だそうでありますけれども、この週刊誌のシュピーゲルというのですか、これなんか非常にきびしい批判をしております。「日本の成長はもはや頭打ちで、初期の資本主義のような」——初期の資本主義のようなというのです——「非人間的な生活を国民に要求しながら成長した日本経済は、いま至るところで公害や市民の不買運動などで行詰まりをみせ」ておる、こういっておる。「非人間的な」というのは要するに、社会資本の充実は怠り、労働者の低賃金というものの中から、特に財政金融あるいはいろいろな手当てをしながら、国内価格と国際価格とのアンバランスの中で輸出にドライブをかけておったというところに問題がある。そうすると、日本の今日まで皆さんが続けてきたところの高度成長政策そのもの自体を転換をする必要に迫られるんじゃないか、こう思うのでありますが、これは主計局のほうでありますか、どうです。どなたでもけっこうです、大蔵省がこれだけおるんだから。

大倉眞隆大蔵省主計局次長

○大倉説明員 先ほど広瀬委員の御質問にもお答えいたしたつもりでございますけれども、これからの財政運営の重要な柱として、先ほど来御指摘ございます社会資本の充実と生活環境の整備というところにできるだけ重点、配慮を加えてまいりたいというのが、いまの私どもの考え方でございます。

阿部助哉日本社会党

○阿部(助)委員 次に、時間がないので急ぎますけれども、朝日新聞によりますと、ユーロダラーの年金利が大体一〇%ぐらいだったのが、このたびのニクソン声明以来、日本の借り手がよけいになって、ユーロダラーは一七%の金利にはね上がった、こういっておるのでありますけれども、一体この十六日から二十七日一ぱい、この間に日銀の買い上げたドルは幾らですか。

藤本厳三日本銀行外国局長

○藤本参考人 これは八月一ぱいにおきまして、外貨準備としましては四十五億八千七百万ドル増加しております。約四十六億ドルでございます。

阿部助哉日本社会党

○阿部(助)委員 昭和六年でしたか五年でしたか、有名な三井のドル買いということはいまでも話題にのぼるわけです。一体この期間に一番よけいこのドルを売った会社を順次十ぐらい、為替銀行と会社を並べてもらいたい。国民はこのことに非常な不信感を持っておる。これは一ぺんここでひとつ国民の前に公表してもらいたいと思うのですが、どうです。

稲村光一大蔵省国際金融局長

○稲村説明員 ただいまの全体の数字については申し上げられるのでございますが、個々のどこがどう売ったということは、これは実は非常に銀行が代表しておりますので、そのもとまでさかのぼってあれしないといけませんので、実際問題として非常に困難でございます。その点は控えさせていただきたいと思います。

阿部助哉日本社会党

○阿部(助)委員 じゃ、為替銀行の名前だけでもまず——そんなことを、これだけたいへんな問題、これだけ大きな国民の注目をしておる問題、これを調べておりませんなんていうことでは大蔵省怠慢だ。一体国民のために仕事をしておるのかどうか、これすら疑問になるわけです。こんなものは調べておくのが私は当然のことだと思うのだが、調べておりませんなんていうのは私は怠慢だと思う。それなら私は百歩譲って、為替銀行の名前だけでも、上のほうから十番目ぐらいまで並べてみてください。

稲村光一大蔵省国際金融局長

○稲村説明員 為替銀行の全部でございまして、特定のあれに集中しているわけではございません。

阿部助哉日本社会党

○阿部(助)委員 私はそんなことを聞いているのじゃない。よけい売ったのから順番に十ぐらい並べてみろというのです。

稲村光一大蔵省国際金融局長

○稲村説明員 これは大体為替の取り扱い高によりまして、ほとんどそれに応じまして売ってきておりますので、大銀行から、ずっと上からこう並んでおるわけでございます。

阿部助哉日本社会党

○阿部(助)委員 だから上から、どの銀行はこの変動相場制の二十七日一ぱいまで、この間にどれだけ売り込んだかというのを、順番に十ばかり並べてください。

稲村光一大蔵省国際金融局長

○稲村説明員 銀行のその順位につきましてはあとから資料で差し上げたいと存じます。金額につきましては御容赦を願いたいと思います。

阿部助哉日本社会党

○阿部(助)委員 これは私個人が聞いておるのじゃないのです。国民の代表として——国会というのは、国民に対してあなたたちは答えるべきなんであって、個人阿部助哉なんてこんなチンピラに何もすることはない。そんなこと私はわかり切ったことだと思う。国会というものを皆さんは背景にしない、また国民というものを背景にしないでこういう外国との交渉をやるから、日本はいつでも大きな間違いをやったり、肝心な問題を見のがすのであって、国民世論を背景にしてこういう問題も交渉すべきなんです。そうすれば当然そういうものは国民にまず知らせるというのは皆さんの義務だし、国民は知る権利がある。これが日本の憲法の基本だと私は思うんだ。その憲法の基本の精神まで踏みにじって皆さんがおやりになるとすれば、これは政府や官僚の独裁だといっても言い過ぎではないんじゃないか。特に今度のような問題は、国民は、大資本、大商社、大銀行、役人と政府がぐるになってもうけ仕事をやった、こう見ておるのじゃないですか。私もおおむねそれに近い考えを持っておる。公表できないというのは皆さんが一緒になって、ことばは悪いけれども、ぐるになってやったから発表ができないのじゃないですか。どうなんです。それでなければ堂々と、どの銀行が十六日から二十七日までにどれだけ売りました、当然これは国民に発表すべき問題です。発表ができないということは、皆さんも一緒になってぐるになってやった。私もあとでこの問題を出しますけれども、そう言われてもしかたのない問題じゃないか。どうなんです。これはここで発表してください。

稲村光一大蔵省国際金融局長

○稲村説明員 個々の取引で、商業上の取引でございますので、それを発表いたすことにつきましては問題があろうかと存じます。その点につきましては検討さしていただきたいと存じます。

阿部助哉日本社会党

○阿部(助)委員 これは商売上の問題なんというよりも、同時にそのことによって国民にまたかぶってくる問題でしょう。国民がこれは無縁なものですか。国民に無縁だとあなたはおっしゃるんですか。無縁であるならば発表する必要はありません。商売上の秘密だとか技術的な秘密だとかというものならば、私はあえてここで発表を迫るわけじゃないのです。しかし、このことはやがてまた国民にかぶってくる問題なんです。当然これは国民の前に公表すべき問題です。できないということは皆さんがぐるだということを証明することになりますが、それでいいですか。

稲村光一大蔵省国際金融局長

○稲村説明員 先ほども御答弁申しましたとおりでございまして、全くぐるではございませんけれども、いまのようなことでございますので、ちょっと検討さしていただきたいと存じております。

阿部助哉日本社会党

○阿部(助)委員 国民は当然これは知る権利があるのですよ。それを皆さんかってにやる。最後には、二十七日は、話に聞くところによれば、三時半で日銀は窓口を締めるのが普通であるにかかわらず、三時五十分まで窓口をあけて受け入れ態勢をとった。聞くところによれば、あの日一日で十二億ドルとかあるいは二十億ドルとかが流れ込んだという話なんかもある。また、この新聞報道でもあるいはまた新聞記者の匿名の座談会でも、大蔵省から、円の転換の規制をゆるめた、それを一部に漏らしたのではないかというような疑惑も述べられておるわけであります。国民はいま、大蔵省当局、政府、財界とが一緒になってドル売りで大もうけをした、こう見ておるのです。私ももうけたことは間違いないと思う。ただ一般の人は外国からドルを持ってこれないから、そのことはもうかるとわかっておっても手が打てないだけなんです。それを大手の筋はやったということになれば、これが国民にこれから被害を負わせるということになれば、国民は当然知る権利があるわけです。いま検討しますという話じゃ、これは承知できないと思います。当然これは発表しなさい。

田中六助自由民主党大蔵政務次官

○田中説明員 政府と財界がぐるになってこのことをやったというのですが、政府は具体的にどうすればぐるになってもうけるのか、私は見当がつかないのですが、政府と財界がぐるになってこういう問題をやったということはございませんし、それからもう一つ為替の問題でございますが、基本的には、たとえばドイツが一九六九年の八月にマルクの切り上げをやったときに、キージンガー首相は永久にそういうことはしないと言った口の裏からそういうことをやっておるし、またフランスでも、一九五八年の八月のフランの切り下げのときも、ポンピドー首相はそのときバカンスでボートに乗って遊んでおるというようなことで、私どもの聞いている限り、為替に関する限りはうそをいう権利も義務もあるというようなことを聞いておりますが、やはりこのことをオープンにすることが国益になるかどうか、そういう点から——事務当局は別の観点を持っているか知りませんけれども、私といたしましては、こういうことを一々発表するというようなことはどうかという疑問を持っております。

阿部助哉日本社会党

○阿部(助)委員 私は政務次官に聞いておるわけじゃないのです。私は前に政務次官に御質問申し上げたのだけれども、考えてみると、どうも大臣がいないときの臨時大臣をやる政務次官だといいのでありますけれども、臨時大臣はほかでありますし、何か盲腸みたいな存在だからあまり聞かなかったのだけれども、この新聞、たしかこれは朝日新聞ですが、これでも「政府、日銀が外為市場を開き続けたことがドル債権を抱込んだ為銀、商社を救ったことは否定できない。」そしてその二、三行あとに、「四十億ドル近いドル売りが政府、日銀、為銀、商社という官民アベックの“日本株式会社”の団結力で初めて可能だったことは間違いない」、これは言い直せばぐるだ、こういう言い方です。これは私が言っておるのではないのです。そういうふうに国民は見ておるのです。あなたがここで発表できないということはぐるであることを認めたということになるがどうか。国民はこれで迷惑をこうむっているのです。

稲村光一大蔵省国際金融局長

○稲村説明員 先ほど御答弁申し上げましたとおりでございまして、ただいま政務次官からの答弁もございましたように、いわばコマーシャルベースの取引でございますので、それを公表するということにつきましては、私といたしましては慎重に考えさせていただきたいと存ずる次第でございます。

阿部助哉日本社会党

○阿部(助)委員 私は次の問題に移りたいのです。しかし時間がないそうだからあれなんだけれども、ここで私が引っ込むことは、皆さんが国民の知る権利を踏みにじって、そしてほおかむりをしてしまったということになると、これからの国会というものはほんとうにナンセンスだということになってしまう。だから私はほかの問題はぶん投げてもこの問題をしつこく何べんでもここに立ってやりますが、これはあなた自体の問題じゃないのですよ。あなた個人の問題じゃないのです。国民全部の問題なんです。だから私はここで発表しろ。それは商売、取引なんだから、それは処罰するわけにいかぬでしょう。それはいいでしょう。しかし、それならばなぜ十日間も十一日間もこれをあけっぱなしにしておったのかというところに——先ほど藤井委員からも質問がありましたけれども、なぜ十日間も為替市場をあけっぱなしで日銀は買い上げたのですか、それはどうなんですか。

稲村光一大蔵省国際金融局長

○稲村説明員 その点に関しましては先ほど御答弁申し上げましたとおりでございまして、この市場を閉鎖いたしますと、日本の対外取引はほとんど全部外貨建てであるということによりまして、取引が直ちにストップをしてしまいます。そこで一般の取引を続けますためにも市場は開いておかなくてはいけない。それからもう一つ、市場を開きましてしかも買い上げをやめると申しますことは、実はこれが変動相場になることでございまして、この変動相場制になることにつきましては、先ほども申しましたとおり、各国の情勢を見ながら、日本としても初めてのことでございますので、十分に検討いたしまして変動相場制に移り得るという確信ができましてからでないとできませんでしたので、開いていたわけでございます。

阿部助哉日本社会党

○阿部(助)委員 そうしますと、十日間もやっておったのは、皆さんはこの判断がつかなくて、変動制にやっていいのか悪いのか判断がつかなくてこれは十日間ももたついた。その間にこれだけのドルが流れ込んだ、こういうことですね。別なことばでいえば、無能だったために十日間あけっぱなしました。しかし十日たってみたら、まあたいへん取り込んだし、この辺でやらなければいかぬということでやった。非常に端的な表現をすれば、前半は無能であった、こういうこと示すね。

稲村光一大蔵省国際金融局長

○稲村説明員 先ほど申し上げましたとおり、事態の判断につきましていろいろとむずかしい面がございましたので、全力を尽くしたわけでございますけれども、各国の出方その他がはっきりいたしませんでしたので、そういう点を見ながら慎重に検討しておったということでございます。

阿部助哉日本社会党

○阿部(助)委員 だから初めに、私は蛇足のようだけれども林大造さんのこの問題を取り上げたのは、あんな認識に立っておる、事態の認識が狂っておる、ある意味では不勉強だ、ある意味では無能だということが事態をここまで招いた。しかし後半はそうではなしに、いま新聞を読み上げたように、一緒くたになって日本株式会社、これが大もうけをした、こういうふうに私は判断せざるを得ない。それはあなたがそれを発表するまではそれを言い続ける。これは検討するというけれども、発表するという方向で検討するということでなければ、私はほかの問題をぶん投げて何時間でもやりますよ。どうなんです。もう一ぺん言ってください。

稲村光一大蔵省国際金融局長

○稲村説明員 発表できますかいなかも含めまして検討さしていただきたいと思います。

阿部助哉日本社会党

○阿部(助)委員 これはだれと検討するのですか。あなたは局長でしょうが。大臣のお許しがなければだめなんですか。大臣と御相談をする、こういう意味ですか、検討するというのは。

稲村光一大蔵省国際金融局長

○稲村説明員 上司と相談をするということでございます。

阿部助哉日本社会党

○阿部(助)委員 それじゃ、この問題は大臣とあれしたときにもう一ぺんやることにして次に移ります。  外国為替及び外国貿易管理法というのがございますね。この法律のたてまえは大体固定相場制を前提にしてできておるのだと私は思うのでありますが、いかがです。

稲村光一大蔵省国際金融局長

○稲村説明員 外国為替管理法ができましたときは確かに固定相場制でございますけれども、これは必ずしも固定相場制が前提であるというふうにはいえないかと存じます。

阿部助哉日本社会党

○阿部(助)委員 同法の七条は「大蔵大臣が定める。」と、こう明確に規定をしてあるのですが、そうすると、いまのような変動制、これはちょっと法律違反ということになりませんか。

稲村光一大蔵省国際金融局長

○稲村説明員 これは法律違反ではございません。その点も検討いたしました上で措置をとったわけでございます。

阿部助哉日本社会党

○阿部(助)委員 しかしこの七条等を見ると、大蔵大臣があれをする。あなたはいろいろ変動制はとり得るということを言うけれども、大体この法律はIMFのあれを受けて固定制を前提にしてつくられた。したがって、ほんとうに変動制という場合には、皆さんはこじつけておっしゃるけれども、私はやはり本来ならば法律改正をしてかかるべきものだ、こう思います。この点は皆さん言いわけだけはうまいからいろいろやられるけれども、ほんとうは私はこういうことだと思う。これはあとでいずれまた別な機会に譲りたいと思います。  最後に、九月の十四日の毎日新聞を拝見をいたしますと、通産省の両角次官は定例の記者会見で幾つかの問題を言っておる。さっきちょっと出ましたけれども、為替損失準備金制度の創設だというようなことをおっしゃっておる。先ほどの主税局の局長の高木さんのお話では、まだ検討していないと、こういうのですが、どうなんです。話し合いがあったから両角通産次官はこういうことを言ったのじゃないですか。あなたのほうへ全然話なしにこれは記者会見で発表したわけですか。

高木文雄大蔵省主税局長

○高木説明員 為替変動準備金につきましては、四十六年度の税制改正のときにも十分検討の議題になっておったのでございます。したがいまして、通産省筋ではこういう事態にもかんがみて今後の税制として考えてはどうかというふうに考えておられるものと思います。ただ、私どもとしましては、先ほどもいろいろ申し上げましたように、このような事態でいろいろとたくさんの御要求があるわけでございまして、その中で、どれもたいへん多くのいわば減税財源といいますか、お金を要する問題でございますし、どれもこれもというふうにはまいりませんので、それぞれの制度の効率性ということを考えて今後検討してまいりたい。したがって、さらに差し迫った、すでに損失が発生して法人税の税収が自然的に減ってくるという形の減収もございますし、また、ただいま御指摘のような制度のほかにも新しい制度をとる必要もあろうかとも思われます。それらを相並べてみまして検討したいと思っているわけでございます。

阿部助哉日本社会党

○阿部(助)委員 検討したいと思うぐらいで通産次官が税金のことをずばずばとおっしゃるとすれば、やはりたいへんな責任問題だと思う。いずれ機会を改めて私質問をしたいと思うのですが、さらに三つ言っておるわけですが、為替損失の繰り延べだとか、あるいはすでに払った法人税の繰り戻しだとかいうようなことを言っておられるのだけれども、こういう問題、全然大蔵省の皆さんの検討もないうちにこういうことをやれば、いまでもいろいろと先行き不安を持っておる財界あるいは会社、そういうものが非常な形でこれに期待をすることは当然である。そういうものを皆さんのほうではまだ全然検討していない。話はちらっとあったかもしれぬが、検討していないという御答弁でありますが、それでいいんですね。

高木文雄大蔵省主税局長

○高木説明員 予算につきましても税制につきましても、各省でいろいろ案を立てられまして、予算なり税制なり金融につきまして私どもに御相談があるわけでございますが、その御相談のいろいろな段階でそれが報道されることはあり得るわけでございまして、その意味でそういうことが記事になっておるものと思われます。ただいまのお話の幾つかのいろいろな新しい御提案につきましても、何らかの形で、たとえば非常に非公式な形で担当の部課のほうから私どもの担当の課のほうに話があるというような形ではお話を承っておりますし、ごく最近には通産省のほうから近くそういう具体案をつくって持っていきたいという話も承っておりますが、私どものほうといたしまして、特に為替制度準備金につきましてはまだ詳細のことを承るところまでは至っていないということでございます。

阿部助哉日本社会党

○阿部(助)委員 だけれども、定例記者会見でこういうことを言っておるんだから、中身はおおむねいいところまできまっておると思う。皆さんは大体、こういう委員会で質問をすれば、のらりくらりと言って、委員会が終わると何か発表するというくせがある。大蔵省に相談なしにこういうことがやれるかのように話をするのは人を惑わすもとです。次官の責任はたいへん重大だと私は思う。  それから、時間がいまないそうですから、ほんとうならばこれだけ重大問題を二、三日かかってやるのがあたりまえだけれども、時間がない、時間がないといって責められればみなはしょらざるを得ない。今度はもう少し時間をかけて委員長ひとつやってもらうように……。非常に不満だけれども、これで私質問を終わります。

齋藤邦吉自由民主党

○齋藤委員長 堀昌雄君。

堀昌雄日本社会党

○堀委員 私も実はいろいろ伺いたいことがあったのですけれども、時間がないそうですから……。そこで、実はこの間からの一連の問題だけにしぼって日本銀行の外国局長と国際金融局長にまずお伺いをいたします。  きのうの小委員会でもちょっと伺ったのですけれども、昭和四十六年九月十四日に大蔵省が発表しました外貨準備の資料で、「為銀の対外短期資産負債残高(速報)は、八月中十億九千万ドル前後の悪化となり、八月末の資産超過は約二億五千万ドルとなった。」こういうふうに発表されておるわけであります。要するに十億九千万ドルの資産負債残高の悪化ということは、それだけこの時期に外銀から外為銀行が借り入れをふやしたということだと思いますけれども、その点についてはいかがでしょうか。

藤本厳三日本銀行外国局長

○藤本参考人 お説のとおりでございまして、まだこれは速報でございますので、正確な数字は出ておりません。おそらく今月末か来月初めになると思うのでございますが、私どもの現在の推定では十一億を少し欠けた、十億九千万ドル程度の対外ポジションの悪化に為替銀行がなっておるものと推定をいたしておるのでございます。一番大きな原因は、これはいろいろな取引の結果でございますから、一つだけにひもをつけるわけにまいりませんが、おそらく外銀に借り入れをいたしまして、その借り入れた外貨を処分をいたしまして、市場に売りました結果が一つの大きな要因になっているものと推定いたしております。

堀昌雄日本社会党

○堀委員 そこで、実は八月十九日の外銀の取り入れについては十八日の残高で規制するという処置がとられておりますね。そこで、十八日の現在高で停止をするということになっていながら、昨日の林次長の答弁では、この第一週といいますか、変動相場に移行するまでの間に実質的には十億余りの取り入れがあったような答弁が実は昨日あったわけです。そこで、皆さんのほうの外銀取り入れの現在高という中には、ユーロの取り入れのような短資のワクというものをたしか日銀は設定しておられると思います。それとその他のいまの残高というものとが私は区別をされておるのじゃないかと思っておるのですが、当時、十八日現在でそういうユーロの取り入れワクといいますか、短資の取り入れワクに余裕のあった為銀の総計、個々のものは私は聞きませんが、為銀の総計は十八日現在で幾らあったのでしょうか。

藤本厳三日本銀行外国局長

○藤本参考人 ユーロダラーの取り入れワクとして為替銀行に設定をいたしておりますものは約十七億ドルでございます。それに対しまして、十八日現在で取り入れをいたしております残高が、これも概数でございますけれども約十三億七千万でございます。したがいまして、ワク余裕はその差額でございます。三億三千万程度でございます。

堀昌雄日本社会党

○堀委員 そうすると、おそらくこれから見て、二十七日ぐらいには当然このワク一ぱいにはなっていたのじゃないですか。そこのところはどうですか。

藤本厳三日本銀行外国局長

○藤本参考人 十九日に十八日現在で、外銀借り入れ、ユーロダラーの取り入れ等をその残高でとめてくれという要請をいたしました。したがいまして、ユーロダラーとして取り入れワクに余裕があったと仮定いたしましても、それはもはや使えないわけでございます。ただ問題は、ユーロダラーについて幾ら、外銀借り入れについて幾らというふうにいたしておりませんで、両方のトータルで残高をとめることを要請したわけでございます。その間に彼比流用は自由でございますが、金額的には増加をしていないはずでございます。

堀昌雄日本社会党

○堀委員 そうすると、結局そのときのワクというのは、短資のワクのほうでは十三億七千万ドルが天井になった、けれどもトータルとしては十八日の水準だ、こういうことになりますと、たとえば外貨預託が行なわれる、二十六日に三億ドル行なわれましたね。外貨預託が行なわれれば結局それは外銀の借り入れの返済に充てられておりますから、返済に充てればその分だけワクが減りますね。その分だけ短資の分は取り入れられる、こういうことになるわけですね。

藤本厳三日本銀行外国局長

○藤本参考人 結果的におっしゃるとおりになります。

堀昌雄日本社会党

○堀委員 実は私、昨日、この外貨預託を二十六日に三億ドルやったことを、金融小委員会で少し詰めた議論をしてあるわけです。結局私は、二十六日にやったということは、言うなれば少なくともこの三億ドルが一応借り入れ返済に充てられたかもしれない。しかし同時にそれだけで、いまの制限のワクからすき間ができた分だけはいまのように取り入れる。取り入れたのを二十七日に売ってくるということになれば、少なくとも為銀はこの分についてはスペキュレーションをやったことになるということになりませんか。私は今度の問題の中には、いま阿部委員が強く追及しておられる問題があると思います。ただ、その追及の問題には二とおりあると思うのですよ。要するにリスクを回避しようという行為が今度一つありました。このリスクを回避しようという行為は、私は相対的にはもうかったと思います。相対的にはもうかったと思うけれども、本来ならば、それはリスクでなかったものがリスクになったわけだから、損を埋めたという感じで見ていいのじゃないかと思っていますよ。しかし今度は、借り入れをして売っておいてあとで売り戻すというのは、これこそまさにスペキュレーションですから、これは完全にもうけることになるわけですね。私はこれは非常に重大だと思っているわけです。私は、いまの十億九千万ドル外銀からの取り入れがこの期間にふえた、そのふえたのはほとんど第一週であったという話、それから、それにつれて、実はきのう個々に、八月十九日から、二十四日、二十六日、二十七日と政府及び日銀がとられた措置を検討していったわけです。そこでずっと見ておりますと、外国為替資金貸し付けの返済を二十四日に一応ゆるめて、さらに二十六日には円転規制の制限までは無制限によろしいということで、期限なしで返還を認めたわけですね。このことは結局どういうことになるかといえば、返済を認めた分だけは円転の天井が下がるわけでしょう。円転の天井が下がったということは買い持ちがそれだけ売れるということですね。そうじゃないですか、外国局長。

藤本厳三日本銀行外国局長

○藤本参考人 もし為替銀行として処分する外貨資金を持っておればそういうことがいえると思います。しかし、それはどこまでも手持ちの金であって、外銀借り入れをふやすなりあるいはユーロダラーの取り入れをふやすことによって得た金ではございません。

堀昌雄日本社会党

○堀委員 私は買い持ちを減らすということを言っておるわけですから、その点はおっしゃるとおりです。ですから、私はこれをずっと見ておりまして、二十四日に、要するに資金貸し付けの返済を月末までに少しゆるめて、次に二十六日にいまの円転換規制の範囲内で貸し付けの返済を無制限に認める方針になっておったようでありますから、そこへもってきて二十六日に今度は外貨預託三億ドル、そうして二十七日に実は変動相場制に移行した。そして、二十七日に変動相場制に移行して、さっき阿部委員の指摘したような問題が起きているわけですね。私、昨日、東京銀行の原さんに、二十七日にはおそらく外為銀行は買い持ちをゼロにしたんじゃないでしょうか、こういって聞きましたら、おそらくそうだろうと思うという答弁を原さんはしておられます。日本銀行は、二十七日の午後三時五十分ですか、四時前までに外為銀行は買い持ちだけは全部一ぺん円転換を終了した、こういうふうに認識しておられますか、ここのところはどうでしょうか。

藤本厳三日本銀行外国局長

○藤本参考人 私の知っております限りの資料では、為替銀行、おもな銀行十五行ほどでございますが、決してゼロではございません。相当な買い持ちを持っております。

堀昌雄日本社会党

○堀委員 どのくらい買い持ちが残ったのでしょうか。個々は要りません。全体でけっこうですから……。

藤本厳三日本銀行外国局長

○藤本参考人 約一億三千万ドルでございます。

堀昌雄日本社会党

○堀委員 では、十八日にいろいろ規制をされたときの買い持ちは御承知でしょうね。幾ら買い持ちがあったのでしょうか。

藤本厳三日本銀行外国局長

○藤本参考人 約九億ドルでございます。

堀昌雄日本社会党

○堀委員 少なくとも九億ドルあったものが——その後にふえているかもわかりませんね。これは輸出為替の買い取りをしておればそれだけ買い持ちはふえておるはずでありますから、もうちょっとふえておるかもわかりませんけれども、それは実は業者のリスクを為銀がカバーをしたわけだから、それをこっちに売ったということでしょうから、それほどとがめることはないかもしれませんけれども、どうも私どもは、この二十四日、二十六日と行なわれた措置が、われわれの目から見ると、要するに外為銀行に対して日銀及び大蔵省としてはフェーバーを与えた、特に外貨預託を二十六日に行なったことは——私は、それは行なわれたかどうかわかりませんよ。しかし、メカニズムとしては、私が言ったように、外貨預託の三億ドルで、結果的には短資を取り入れて二十七日に売ることは可能であった、こう思うのです。この三億ドル、これはどれだけがそれに使われたか、それはわれわれもわかりません。わかりませんけれども、これは為替銀行が利益を得るために行なった行為だ、こういうふうに私は認識しておるわけですけれども、そういうことがなかったと言えますか。私はあったと思うんだけれども……。

稲村光一大蔵省国際金融局長

○稲村説明員 外貨預託に関しましては、昨日林君のほうから御説明申し上げたと存じますが、これはことしの三月以来、輸入金融を国内金融へシフトさせるために毎月預託をやっておりまして、五月以降はこれは大体下旬にやるということで為替銀行を指導しております。五月が三億六千万、六、七と三億ドルずつやったわけでございますが、八月につきましても同様に、これはいわばすでにきまっておりました問題でございますので、これは本来でしたら、こういう事態でございますのでさらに手形の買い取り等を促進するためにやはり早目にやるべきであったと存じますが、十六日のニクソン声明以来いろいろとほかの問題がございまして若干おくれたということでございまして、ただ従来からやっておりました点を月末にやったということでございます。

堀昌雄日本社会党

○堀委員 それは確かに従来のことをやったに相違ないでしょうが、しかし時期は従来の時期と違うんじゃないですか。そうしていま私が言ったようなことは可能性があるのでしょう。いまの外貨預託をやった、預託をされた三億ドルを為銀は外銀の借り入れ返済に充てるわけでしょう。充てられますね、二十六日に三億ドル来たものが、それを返済すれば、十八日の残高で規制をしておったのですから、要するに当時その間にすき間がある。すき間があけば、さっきの話からくれば短資の取り入れがそれだけは可能になる。可能になった短資を取り入れて、それを二十七日に売ることは可能ではないですか。そうでしょう。不可能ですか。可能か不可能かだけ答えてください。

稲村光一大蔵省国際金融局長

○稲村説明員 可能だと思います。

堀昌雄日本社会党

○堀委員 それは事前に承知をしておられたことでしょうね。外貨預託をすればそういうことは起こり得るということは十分承知をして外貨預託をされたことですね。可能である。要するにスペキュレーションを——あなたのほうは為替管理については世界に誇る為替管理だといいながら、この重要な段階でそういうことが可能である政策を、要するに外為会計から三億円持っていって、それによって特定の者の利益をはかるというようなことは重大ですよ。そう思いませんか。私は、さっきの輸出前受け金の問題は一応のルールとしてあったのだから、それは三十一日に貿易外取引の管理に関する省令を改めてやった。これは私はおそかったと思いますよ。これはもっと早くやるべきだったと思うのですけれども、しかし、これは少なくともそういうルールがあったのだからある程度しかたがない。しかし、二十六日の段階は、変動相場にあくる日移るということは皆さんちゃんとわかっているはずだ。二十七日の朝から考えたわけじゃないでしょう。二十六日にはわかっておりながら二十六日に三億ドルの預託をして、そうしてそれが投機資金となって流れ込むことが可能なものをその時点でやったという政府の責任は重大じゃないですか。三億ドル、それは幾らそれがどうなったかは、いまわかりません。しかし、少なくとも可能な範囲までは行なわれる可能性があることは間違いないでしょう。これについては大蔵省は重大な政治的責任があると私は思う。為替管理は厳重に、誇るに足る為替管理だといって、私はここで福田さんにも聞かされたことがある。皆さんもここで自信を持って答えられた。その為替管理の一番肝心な抜け穴を政府みずから預託してやらせるなんてばかなことはありますか。これは非常に重大な問題です。答弁を求めます。

稲村光一大蔵省国際金融局長

○稲村説明員 ただいまの問題でございますが、これは先ほども申し上げましたとおり、十九日の時点におきましていろいろと為銀の窓口その他で輸出の手形の買い取りがとまったり、その他いろいろと問題がございまして、それを何とかやはり円滑にしていかなければいけないという事態でございました。そういうことで、為銀のほうとしましても、実はこの預託につきましては先ほど申し上げましたとおり、五月には三十一日にやっております。六月、七月と二十一日にやっておりますが、これが先ほど申し上げましたとおり八月の二十日前後にやるはずであったのがおくれたということはございますけれども、これをやめますと、むしろ何かそういう意味の手形の買い取りの円滑を欠くということもございます。  それからもう一つは、変動相場制につきましては、これは大臣の御決定がありますまでは、われわれのほうはやるということをきめておったわけではございませんので、通常どおりのことでやっていくということで進んでおったわけでございますので、この点は御了承、御了解いただきたいと思います。

堀昌雄日本社会党

○堀委員 ちょっと了承する、しないの問題ではないと思うのですね。いまの二十六日にやったというのは、普通なら二十一日、二十二日にやったんだ、だからかりに二十一日か二十二日にやっていたというなら、これは先月もやりました、今月もやりましたということならある程度しかたがない。しかし、二十七日にあの処理をするときに二十六日にやったというのは、はっきり言ってこれは私は問題があると思っているのですよ。それも二十七日にやっていて、二十七日の午後くらいに金が出ているなら処置できない。幾ら何でもこっちと欧州とは夜と昼と時間が違うのだからできない。前日にやってあれば、タイムラグがあっても二十七日に十分処置ができるんじゃないか、私はこう思っているわけですね。  だから、これは大臣が出席をされた時点でもう一回この問題について調べたいのですが、日本銀行にお伺いしたいのですが、今度のいろいろな問題の中に、前受け金の中にもややそういう投機的な要素があるというふうな話も実はあるわけですね、長期のものについては。短期のものについてはもちろんないでしょうけれども。そこで、一体今度の問題については、さっき阿部委員が言いましたように、最終的にはこれらの問題は国民の負担になるわけですね。日本銀行が平衡買いで買ったものも、それから外為がそれを受け入れるものも、結局日銀のある程度の積み立て金その他で処理をするといっても、もとをただせば国庫納付金に戻るものの一部だと考えるわけですから、少なくともこれは全部国民の負担に関係がある。そういうときにリスクを回避しようという問題についてはある程度やむを得ないと思う。いいとは思わないけれどもやむを得ないと思う。しかし、このシステムの中でもうけようというのは私は許されないと思っているわけですよ。いまの両方の問題について、皆さんのほうではそういう投機的なものは一切なかったと認めておるのか、あり得るのか。それは精査できるのかどうか、私もちょっと技術的によくわかりませんけれども、また精査する方法があるとすれば直ちにそういうものを精査してもらいたいと思うのだけれども、特に短資の取り入れの状態が、二十六日から二十七日にかけて短資を取り入れたというものがあるとすれば、それは三億ドルの見返りであったと見たらいいのじゃないか。システムとしてはそれ以外にはあそこで短資が取り入れられるすき間ができるはずがないと思っておりますから。そういう点については、そういう投機的なものはなかったという確信があるのか、あり得る、調査をしてみる必要がある、こういうことか、どちらかをお答えいただきたいと思います。

藤本厳三日本銀行外国局長

○藤本参考人 投機的なものがどの程度あったかということになりますと、これはもう数量的にそういう検証をすることはできないわけでございます。私どもは市場と取引をいたします場合には、銀行間の取引でありますので、いまのお話のどの程度投機的なものがあったかということは、これは業者段階の問題の御質問だと思いますので、私どもの段階ではそこのところはよくわかりません。

堀昌雄日本社会党

○堀委員 前受け金のほうはそうだと思います。しかしいまの、為銀がユーロを取り入れて、そして売っておいてまたあとで返すというなら、これは比較的可能だと思っておるわけです。まあ金に色目はないからどれがどうと言えないかもしれません。しかし、少なくとも私がこれまでずっと調べてきた中では、いまのお話から見ても十億九千万ドルというポジションの悪化の中にはそういうものが入っておる余地がある。要するに、為銀が自分のところの実際の為替買い取りその他に実際に使ったものもあると思うけれども、どうもそれ以外のものがあり得るという判断を私はしておるわけです。それはあり得るのじゃないですか。

藤本厳三日本銀行外国局長

○藤本参考人 実際に為替銀行が二十七日に持っておりました為替の持ち高は、先ほど申し上げましたように一億数千万ドルという買い持ちであります。したがいまして、当然それ以前にはもっと大きな買い持ちを持っておったはずでございますから、したがっていろんな操作を行なったでしょうけれども、それは自分の買い持ちのポジションをカバーするためであって、積極的にもうけようという意図ではなかったと私は理解しております。

堀昌雄日本社会党

○堀委員 二十七日には十二億ドルぐらい取引があったというふうに新聞は伝えておりますが、これは大体どれぐらいだったのでしょうか。

藤本厳三日本銀行外国局長

○藤本参考人 十二億ドルを少し下回りますが、ほぼそれに近い数字でございます。

堀昌雄日本社会党

○堀委員 その十二億ドルというのは、買い持ちは初めは九億ドルでしょうけれども、その後はふえておったのじゃないかと思うのです。少なくとも二十七日にはかなり買い持ちを売って、残りの買い持ちが一億数千万ドル、こういうことだったわけじゃないですか。そうすると、全体として一億数千万ドルですけれども、甲種為替銀行というのは十五行ですか、だから要するに完全に売っているところもあるのじゃないですか。買い持ちで残ったところもあるのでしょうか。私から見たら、その残ったところはよほどぼやぼやしておったのだろうと思う。よそがみんな売っておるし、三時半に終わるものが時間を延長するくらい日本銀行はサービスしてやっておるのだから、さらに買い持ちが残るというのはよほどぼやぼやした外為銀行だと思うのだけれども、少なくともこの日にその諸君が一応全部売ったというところと、買い持ちになったというところがあるということは間違いないでしょうね。全部が平均して持っているはずがないと思うのですが、どうでしょうか。答弁してください。

藤本厳三日本銀行外国局長

○藤本参考人 私の記憶では各行とも買い持ちでございまして、もちろん均分じゃございませんでいろいろでございますけれども、売り持ちにしておった銀行は十五行の中にはなかったと思います。

堀昌雄日本社会党

○堀委員 もちろん買い持ちが少し残っておっても、いまの取り入れたのと売っているのと、要するに全部は売り切れなかったという面もあるかもしれませんけれども、そうするといまの話で買い持ちが残っておるということは、少なくとも取り入れてきたものは売ってないということじゃなしに、それは売ってなおかつ買い持ちがかなりあったから結局売り切れなかった、こういうことにだって理解できるのじゃないですか。

藤本厳三日本銀行外国局長

○藤本参考人 その約十二億ドルの中身が何であったかということは、これまた記号はつきませんし、金でございますのでわかりません。もちろんその中には、輸出前受けその他あるいは正常な輸出の代金もあると思いますし、むしろそういうもののほうがずっと大きい数字ではなかったかと思います。

堀昌雄日本社会党

○堀委員 私も、そういう不当な処置をされたものが非常に大きいとは言っていないのですけれども、私はどちらかといえば外国為替銀行にたいへんフェーバーを与えて処置を進めてきたと思っているわけです。円転規制の天井までの借り入れを返させるとか、外貨預託にしても、あらゆる面で、もちろんそれは全部がフェーバーだとは言いませんよ。全部がフェーバーだとは言いませんけれども、しかし彼らに円転規制の天井を高くしてやったり、いろいろなことをして、要するに買い持ちを減らしやすい条件にしてやったことは間違いないと思いますね、一連の経緯というものは。だから、それだけのフェーバーを与えるのなら、逆にいえば外為銀行の投機心といいますか——外為銀行というのは都市銀行でありますから、甲種は都市銀行でありますから、公共性の面からいってフェアな態度を要求されるのは当然だと思います。だから、そこにそういう疑惑がいまあるということは私は非常に重要な問題だと思います。いま精査のしようがないということであります。精査のしようがないわけですね。そうすると、いまの短資を取り入れた分についてのあれはわかるわけでしょうね、調べれば。短資をあと、十八日のワクから下がった分だけいつ取り入れたというのはわかりますね。それはわかりますね。

藤本厳三日本銀行外国局長

○藤本参考人 大体はわかります。非常に正確な数字というわけにはまいりません。

堀昌雄日本社会党

○堀委員 その短資を取り入れたのが、要するに輸出手形を買い取ったとか、そこはもうわからなくなりますか、そうすると。——わからない。非常にこれは技術的な問題でありますから私の質問はここまでにしておきますけれども、最後に、三時半に普通しまるのが、時間が延長されたということはこれはどういう理由でしょうか。

藤本厳三日本銀行外国局長

○藤本参考人 為替市場と申しますものは、御案内のとおりに電話での取引でございます。為替ブローカーが間に介在してやっておるわけでございまして、営業時間と申しますものは為替ブローカー間の規約でできております。それは当然のことでございますけれども、為替銀行の了解を得てつくっておるわけでございます。その規約によりますと、平日においては午前九時から午後五時まで営業をすることになっております。ところが、これは慣例といたしましてそうあまりおそくまではやりませんで、大体三時半から、ときによっては四時近く、あるいは私の記憶で四時過ぎまでやったことはございます。特に金曜日と申しますか、週末が近づきますと、やはりポジションをある程度きれいにしておこうという意欲が各為替市場の関係者にございますものですから、自然、取引がふくそうしておそくなることはあるわけでございます。したがいまして三時半できっちりやめるんだという規約は何にもございません。ただ慣行としてそこらあたりで取引が終わるのが通例でございます。

堀昌雄日本社会党

○堀委員 終わります。

齋藤邦吉自由民主党

○齋藤委員長 松尾正吉君。

松尾正吉公明党

○松尾(正)委員 だいぶ時間が迫られてしまったのですが、まず第一点は、景気浮揚のために政策の大転換をやるべきだ、こういう意見が前委員からもありました。これに対して主計当局からも政務次官からも、これは大幅に進めていくような姿勢で取り組みたい、こういう答弁がありましたけれども、この問題について、従来この委員会でも、佐藤内閣誕生以来、公共投資の内訳を見てみると、産業関連部門が平均して七に対して国民関連部門は三だ、こういう形で推移してきている。先ほどの広瀬委員からも、この際大きく老人問題、福祉問題その他については取り組むべきだ、こういう話がありました。その姿勢をもって取り組んでいくということは理解できたんですけれども、いままでのような、公共投資は大幅にふやそう、けれども内容が産業関連部門に大きく食われるようなことであると、結局これは政策の転換にはならない、こう思うわけです。したがって、主計当局ではそういう姿勢で、この産業関連部門ないし国民関連部門の比率をどの辺まで持って取り組んでいきたいか、これだけ端的にまず主計局に……。

大倉眞隆大蔵省主計局次長

○大倉説明員 申しわけございませんが、私、いま資料を持っておりませんのと、産業関連七、国民関連三とおっしゃいます基準、ちょっと私、そういう資料を見た記憶がないものでございますから、必ずしもその比率をどうするかというお答えをいたしにくいわけでございますが、むしろ財政投資などで、私直接担当ではございませんが、聞いておりますと、徐々にいわゆる企業融資というものは減ってきておる。生活関連的なものがふえてきておるというふうに了解しておりますが、具体的な投資をどっちに仕向けるかという問題もございます。考え方としては御指摘のように考えてまいりたいのでございますが、比率のいまの七、三ということは、もう少し……

松尾正吉公明党

○松尾(正)委員 いまのはいいです。これからの……

大倉眞隆大蔵省主計局次長

○大倉説明員 なるべくそう切りかえてまいりたいという気持ちは持っております。

松尾正吉公明党

○松尾(正)委員 政務次官、これには相当選択が可能であります。事務当局としては相当むずかしい問題だろうと思うのですけれども、いま政務次官としては、確かにこの政策の大転換を行なわなければならない、こういう立場で、これに対しては国民生活関連部門に、いままで七、三という数字についてはちょっとということですけれども、これを逆に国民生活関連部門に超重点的に向けていくという考え方で、ただ姿勢だけでなしに、進めていくべきである、そういうふうに当局を鞭撻していきたいという決意をひとつ最初に伺っておきたい。

田中六助自由民主党大蔵政務次官

○田中説明員 先ほどから当局が申しておりますように、社会資本の充実とかあるいはその他社会保障制度とか、GNPは一流国でもそういうもので二流国、三流国だということでございますので、ぜひとも新年度予算ではそのような方向でやりたいというふうに思っております。

松尾正吉公明党

○松尾(正)委員 これはひとつ特にここで冒頭に要望しておきます。  それから、これはもう外務省その他においでを願っておって、現在、ニクソン声明以来、特に変動相場移行以来、輸出関連部門にウエートを占める企業並びに中小企業等が相当深刻な打撃を受けておる、こういうことについては午前中も商工会議所の会頭等からお話がありました。この原因については、きょう大臣がおりませんので当然あらためて指摘したいとは思いますけれども、いずれにしてもきょうは財政担当の委員会でありますので……。  外務省当局では、欧州にもアメリカにもそれぞれ大公使をはじめとして、相当数ベテランを派遣されて情報収集等は行なっておるわけでありますけれども、実際に事務レベルでこういうアメリカの動きがつかめなかったのかどうか、この点についてひとつお答え願います。

羽澄光彦外務省経済局国際機関第一課長

○羽澄説明員 従来からも外務省におきましては、在外公館を通じまして情報収集につとめておるわけでございますけれども、今回のごとく国際金融とか国際経済に非常に大きな影響を及ぼす措置につきましては、投機を招くというような点もございまして、その当事国において非常に厳密な秘密の維持をはかるようになっておりますので、これを知るということは非常に困難な事情があるという点も御理解いただきたいと思います。もちろん外務省といたしましては、今後とも情報収集には一生懸命やるつもりでございますけれども、こういった国際金融上の点につきましては、若干そういった投機ということがからみますのでなかなか困難な面もあるというふうに御理解いただきたいと思います。

松尾正吉公明党

○松尾(正)委員 それからもう一つは、当委員会におきましても、五十億ドル、六十億ドル、それから七十億ドル、こういうふうに外貨準備高が増高するつど、ほとんど毎回といっていいほど、円の切り上げに対してはどうか、こういうことが論議されておりました。それに対してずっと大蔵大臣は、もうこれは頭のすみにもない、こういうふうに答弁されておったのですけれども、水田大蔵大臣が就任したときに、この委員会で実際に均衡というものはどうかという点でただしたときに、まあ均衡ということについてははっきり言えないが、いずれにしても円の切り上げというようなことに対しては、円防衛八項目、これをこの目的以外につくった、したがって、これによって当然切り抜けられるんだ、こういう答弁をこの席でいただいておる。この外交面で情報がつかめなかった、それから財政当局がやはりこれはこちららの自由化促進等で十分切り抜けられるんだというような、こういう見通しの要するに甘さが根本原因であった、こういうふうに判断しているわけです。ところがさっき政務次官は、もう外国でも財政についてはうそを言うことが当然だというようなお話もあって、これは当然、こういう円をいつ切り上げるかというようなことに対しては言明できないということは理解できるのですけれども、いずれにしても甘さがあったということは免れないのです。  そういう意味で、いま問題になっておりますのは、円を切り上げるかあるいは課徴金はどうするか、こういった点が非常に中小企業等の大きな不安、困惑の原因になっておるわけであります。したがって、外務省にも来てもらっておるのですけれども、まず蔵相代理会議に出席した稲村局長から、欧州等でははたして代理会議当時の課徴金に対する見通しはどういう見通しをしておったのであろうか。たとえば時期的に相当長くかかる、あるいは円の切り上げ幅等で、これが交換条件で可能かどうか。それから平価調整というものが両方からむのですけれども、調整というものに対しては日本ではいま大蔵大臣がドルの切り下げを要求しておる、こういうことも伝えられておりますけれども、これらの感触を正確につかんでいることは非常に重要であろうと思うわけです。特にIMF体制、まあ先ほどもお話ありましたけれども、これらがどういう形で推移していくかということについても、これは中小企業対策あるいは中小企業のいまの難局を切り抜けるための心がまえとしても、非常に課徴金の問題、それから平価調整の問題等は重大な影響があります。それから全体としてIMF体制というものを欧州のほうではどう考えているか、アメリカではどう考えているか、こういったような状況をつかんできたものをひとつ聞かしていただきたい。

稲村光一大蔵省国際金融局長

○稲村説明員 ただいまの御質問は非常に広範にわたっておりますので、時間の関係で詳細に申し上げることは控えさしていただきたいと存じますが、課徴金と平価調整の関係につきましては、私が出席いたしました代理会議の場におきましても、やはり課徴金があったのではどういうふうに調整していいのかわからないじゃないか。いわばその課徴金の撤廃は、各国が調整いたしますについても一つの前提ではないかという議論が多くございました。他方、アメリカのほうは、要するに調整が十分に自分たちのほうに満足のいくものでなければ課徴金の撤廃はできない、こういうような立場でございます。  それから昨日、一昨日の蔵相会議におきまして、これは連絡を受けた限り、間接でございますけれども、同じようなあれではなかったかと存じます。したがいまして、これはけさほどの堀先生のあれにもございましたように、アメリカとして平価調整とこの課徴金とをどういうふうに関連さしていくかという点につきましては、けさほどの堀先生の御判断のように、なかなかアメリカは簡単には課徴金を撤廃しないのではないかというのが、これは私の個人的な感じでございます。  それから新通貨体制との関係でございますが、これは実はドルと金との交換は一時停止、これを将来また戻すかどうかという点につきまして大きな問題があろうかと存じます。非常に客観的に考えまして、よほど大幅な金価格の引き上げでもない限りは、当面、この金の交換の再開ということはむずかしいのではないかというのが私個人の感じでございますが、そういうことを別といたしまして、今後の通貨体制をどうするか、どういうふうに考えるかということが、実はさしあたって各国の通貨調整をどうするかということをそれぞれの国が考えるにあたりましての一つの前提ではございます。しかし、新通貨体制が少なくとも何となく形としてまとまってまいりますまでには相当の時間がかかると存じますので、それまでこういう不安定な情勢を続けるということは、これは各国ともそこまでは考えてないようでございまして、さしあたりやはり各国ともできるだけ早く現在のような不安定な情勢はやめにしたい、早くノーマルな為替市場に戻りたいという希望は強く持っておるようでございます。しかし、と申しましてもなかなか、各国ともそれじゃすぐにそういうふうにいくということで具体的に考えているかと申しますと、これはなかなかそうではないので、この代理会議のときの感じからも、また今回の大臣会議の感じからも、やはり長期戦であると申しますか、むしろゆっくりと腰をかまえたほうが長い目で見て国益に合うのではないかという感じでございます。

松尾正吉公明党

○松尾(正)委員 IMF体制については時間の関係でまた次にしたいのですが、この課徴金については、当初第一回の委員会で田中通産大臣等も、大体九十日の国内対策があるんだから九十日ぐらいではないかという、こういう答弁をしておりました。当時の見通しはそのくらいであろう、こういう見通しをしておったのです。ところがいまの局長のお話ですと、これは相当長期化するであろう、こういうことで、これに関連をして円防衛対策八項目、いわゆる資本並びに貿易の自由化ですね、これらについてはやはり第一回の委員会のときに大蔵大臣は、これは円圧力回避だけじゃないのだ、したがってこれはもう堅持していくんだ、基本どおり進めていくんだ、こういう答弁をされましたし、田中通産大臣はこれに対して、時点が変わったんだから当然考えなければいけない、こういうことで、あの時点ではこの円防衛対策八項目、いわゆる自由化等を修正していくという意見と、それからこのまま強力に遂行していくという二つの意見に極端に分かれたのですけれども、あのあと大体一カ月経過しておるわけですが、これについて検討をされたと思うのですけれども、通産省、どなたか来ておりますね、これについてはどういうお考えか、聞かせてもらいたいと思います。

熊谷善二通商産業省通商局通商政策課長

○熊谷説明員 ただいまの御質問につきまして、先般九月三日の閣僚ベースの懇談会におきまして、基本的に八項目の実施につきましては確認をされておりまして、今回の日米の合同委員会等におきましても、そういう線で先方との接触も行なわれておるわけでございますが、この九月三日の閣僚懇談会の案文の中にございますように、なお検討中ということがございます。たとえば輸入自由化その他につきましては従前どおり自由化を進めていくという姿勢がもちろんあるわけでございますが、輸出振興税制につきましてはなお検討を進めるということになっております。この点は、従来の輸出振興税制につきましては、企業体質の強化ということにかなり効果があったということもあり、通産省といたしましてはもう少し、こういった事態になった今日、情勢の推移を見た上であり方を考えていきたい、こういうふうな考えもございまして、懇談会の席上でも、そういった事情を背景にいたしまして検討をさらに続けるということになったものと理解いたしております。基本的には、八項目を従来どおり実施していくということには変わりございません。

松尾正吉公明党

○松尾(正)委員 そこで、あの当時、非常に影響を受ける輸出関連部門の中小企業対策はどうかということが中心の議題であったわけです。これに対して、時点が変わったのだから中小企業の対策としては検討していかなければならない、こういう大臣の考え方であったのですけれども、ここで再確認されたとなると、一方、貿易の自由化が非常に強く打ち出される。それからもう一つは課徴金、さらに円レートの問題が重なって、先ほど来論議されているように中小企業としては非常に深刻な打撃を受けるということは、これは理解できます。そういう点から考えて、先ほども私申し上げたのですけれども、この不況がようやく上り坂にかかったやさきにこのドルの政策が発表されたために、新規採用を停止する事業が出たとかあるいは季節労務者は考えなければならない等々の問題が起きて、問題を一そう深刻にしているわけです。こういったことに対して、これはこの問題とあわせて不況が結局企業をこういうふうにしているんだという商工会議所の会頭のお話でありましたけれども、この新規採用停止というようなものが今後もどんどん出てくるのではないかというような予想もされておるのであります。この点について労働省でこの状況、見通しについてひとつ答えていただきたいと思う。

岩田照良労働省職業安定局雇用政策課長

○岩田説明員 ドル・ショックがありまして以降、明年の春卒業いたします学卒に対する求人の取り消しが行なわれているわけでございますが、その状況を申し上げてみますと、今月十一日現在で百四社、二万四千四百四十六人というふうな状況になっております。しかし、このような求人の取り消しは、来年の春卒業します学卒に対する雇用需要の減少でございまして、その率といたしましてもわずか一%程度にすぎない状況でございますが、従来の雇用需要の状況から見ますと、このような雇用需要の減少はそれほど大きな影響を与えるものではないのじゃなかろうかと考えておる次第でございます。問題は今後雇用失業情勢がどうなるかということと、それに対しまして離職者が出てくることになるのかどうかといったことでございますが、各種の景気対策が適切に講じられると考えますので、一般的には雇用失業情勢がそう急速に悪化することはないのではなかろうか。特に若年労働力を中心とする場合には不足基調というものは変わらないのではないか。しかし、経過的にいろいろ輸出関連産業等におきまして、雇用面での摩擦というものも生ずることも予想されますので、その実情を的確に把握いたしまして、必要に応じて関係各省とも連絡をとりながら、円滑な雇用転換対策というものを進めてまいりたい、かように考えております。

松尾正吉公明党

○松尾(正)委員 いま新規採用の停止についてはわずか一%程度で、そうたいしたことはないというのですけれども、これから現実にこの通貨調整というものが長引く、あるいは課徴金というものが相当長期化して簡単には取り払われない、こういうことになりますと、午前中からも論議されておったのですけれども、輸出関連に相当なウェートを占める中小零細企業、これの倒産ということは当然予期される。これらの見通しと、もう一つは輸出関連産業の一番痛手を受ける下請関係、これらに対して新規採用中止以上に実際にもう倒産して離職をする、こういうようなことが相当起こるのではないかというふうに報道されておるわけです。これらに対する見通しはどうですか。

岩田照良労働省職業安定局雇用政策課長

○岩田説明員 ことしの八月におきます企業の倒産件数は、東京商工興信所調べによりますと七百四件ということになっておりまして、そのうちドル・ショックによるものが三件というふうなことも報道されておるのでございますが、前年同月に比べますと一〇%余りの減少となっているようでございますし、企業整備や離職者の発生状況につきましては、労働省としましてもその実態の把握につとめておるわけでございますが、現段階では特にこれが増加するようなことは起こらないのではなかろうかというふうに考えております。もしそのような離職者が出た場合には、やはり中高年齢の離職者、失業者というものが一番大きな問題になってくると思います。こういった中高年齢者の失業者に対しましては、ちょうど十月一日から実施されます中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置、こういったようなものを十分活用いたしましてその万全の対策を講じてまいりたい、こう考えております。

松尾正吉公明党

○松尾(正)委員 いま労働省では、今後倒産等はそう起こらないのではないかというふうに見通しておるのですけれども、中小企業庁としてはどうですか。

西田彰中小企業庁計画部長

○西田説明員 お話に出ましたように、中小企業に及ぼす影響は非常に深刻でございます。私どもはその倒産というような事態の起こらないための政策というのをいままでもとってまいりましたし、今後もとってまいりたいというふうに考えているわけでございますが、ただいまその関係におきまして、いろいろの産地におきましてやはり転業はしなくてはならない、いまやっておる仕事は少し見込みがないのでほかの仕事にかわるというようなきざしもございますので、そういった面に対しましても援助の手を差し伸べる必要があるというふうに考えております。目標は、これによって異常な倒産が続出するということがないようにいたしたいというのを念願としております。

松尾正吉公明党

○松尾(正)委員 労働省でも通産省でもそう起こらないように努力をするという、これはわかります。けれども、現実にドル問題が起こって以降、新聞報道でこれもごらんになっているとは思うのですけれども、非常に問題が起きているわけです。ドル・ショックで焼身自殺をした自動車部門の下請業者があるとか、あるいは課徴金不安で足利の織物業者が自殺をしたとか、あるいはドル・ショックで倒産続出、アメリカ向け輸出以外にも大きな打撃を受ける等々の記事は毎日のように報道されている。きょうの午前中の話でも、とにかくもうこの課徴金あるいは円の調整というものが長引けば、これは甚大な影響があるというのが商工会議所の会頭の見通しなんです。これに対して政府当局の見通しというのはきわめて楽観的だ。ここに私は大きな問題があるんじゃないかと思うのですよ。この問題が起きて以来、どこの企業に行っても、問題は一体どうなるのか、こういうことがもう必ず出てくる。それで私も二、三歩いてみましたけれども、うちの社長は、どうもこの問題が起きてもう配当も満足にできない、したがって君たちのボーナスは今期は一銭も払えないよ、こういうようなことを現実に言われて従業員は不安におののいている。こういう実態であるにもかかわらず、通産省としては倒産が出ないように指導するというのですけれども、現実にいまから冬場をすぐ迎え、倒産を目前にしている企業に対して倒産しないように手が打てるのかどうか。こういった点を考えると、きわめていままでの国際経済の見通しの甘さ、それから外交関係でもそういう情報がつかめなかったというところに甘さがあった、私はこう申し上げたのですけれども、さらにこの問題を中心にした審議の中で変動相場制に移行するこの問題についても、先ほど来話があったように、やはりこれは見通しの甘さでないか、誤りでないか、こういうことが論じられているのです。現実に私は昨日労働省にも、それから通産省にも、倒産の状況と見通し等について資料を提出してもらいたい、こういうことを実際にお願いしたのですけれども、八月の事例は前年の同月比減少しているのだ、こういう資料をもらいました。しかし、こういう前年の同月比減少しているから中小企業等はそんなに心配しなくてもいいんじゃないかというような判断で、もし事務レベルの間で取り組まれておるとするとこれはたいへんなことになる、こう思うわけです。政務次官、ひとつどうでしょうか。通産省、労働省の考え方が非常に甘い観測をしておるのですけれども、先ほど来お話があったように、もうこの際、政策を大転換して社会資本というものを充実していかなければならない。特にいま直面している問題に対してはもう十分な手を差し伸べるべきである。詳しくは時間の関係で省略しますけれども、こういうお話なんです。これに対して、政務次官としてはいまの影響というものをどう見てそれに対処しようとしているか、ひとつお答えを願いたいと思います。

田中六助自由民主党大蔵政務次官

○田中説明員 中小企業の倒産は——日本は御承知のように九九%まで中小企業者で、その事業数はそういう調子でございますし、従業員も七二%ぐらいは中小企業でございますし、もうこれの体質を改善することが大きな問題になっておりますが、当面の問題として、やはりこれに一日も早くあたたかい手を差し伸べてこれを救済しなければならないということは当面のまず問題だと思います。しかし、長期的に見た場合、こんなにたくさん中小企業をいつまでも置いておいていいかどうかという問題になりますと、こういう際にこそひとつ体質改善をして、これを転換するならするというようなことで、やはりドイツが日本のように中小企業者が多かったのですが、第二次大戦のときにあれをなくして非常に体質改善をしているというようなととを勘案しますと、こういうチャンスにひとつ発想法の転換をこういう面にもあらわしたらどうかという私的な考えも浮かびます。しかし当面やはり何とかこれを救うということが何よりも先決でしょうから、こういう点についても税制面あるいは金融面、あるいはその他の施策で万全の措置を講じていきたいという気持ちでおります。

松尾正吉公明党

○松尾(正)委員 見通しについては答弁なかったのですけれども、政務次官も相当深刻に見通されておると思うのです。時間がありませんので詰めることはできませんが、通産省としても大臣が、とにかくこの問題によって受ける影響を何とか考慮していきたい、それがためにはさきに決定した円対策等についても検討する余地があるとまで発言している。これに対してきわめて楽観的な考え方というものに対しては、これはもう問題であると思うのですね。どうかそういう意味で労働省当局、それから通産省当局においても、いまの実態を把握した上でひとつ真剣に取り組んでもらいたいということを要望しておきたいと思います。  それからもう一点、時計ばかり見ているのですが、私のやった時間はまだ幾らもないのです。あと沖繩問題等にまで触れる予定で準備しているのですけれども、やむを得ませんから、もう一点だけ伺いたいのですが、こういう事態に直面して、国民全体が、うちの子供が就職を当てにしておったのがはずれたらどうする、それから日曜出勤、残業等がなくなって、この埋め合わせをどうしよう、それから東北のほうでは実際に季節労働で半分生活を維持しておったのに、これが断たれたらどうしよう、こういう国民全体の不安があるわけです。こういったときに、一面輸入するものについては、かりに円が切り上げられ、ドルが切り下げられるならば安くなる、こういうことがいわれておるのですけれども、しかし結果的にそれじゃ消費物価面はどうかというと、午前中も参考人の意見もありましたけれども、現実には買い値は安い、けれどもいろいろな複雑なものがあるためにそのまま消費物価に還元はできない、こういうお話でありました。したがって、いま問題になっておりますのが、石油なんかはだれが見ても安くなるのだ、逆にこの問題が起きれば結果的には差益があるのだ。にもかかわらず、ここのところで北海道のほうでは相当大幅な値上げが打ち出されているし、さらに自動車その他運賃等の大幅な値上げ等が論議されている。こういうときだけに、先日の報道で、二、三日前だと思いますが、蔬菜品だけでも何とか消費価格を維持したいというので、流通庁云々というような構想が発表されておりましたけれども、これについてはいま監察をやっておるところで最終的な態度ではないんだ、こういうお話がありました。したがって、石油関係の場合にはこれは当然安くなってしかるべきであろう、こう思うんですが、これについても新聞では言いわけして、いままでの価格引き下げがあったから値上げにならざるを得ないのだ、こういうお話ですけれども、この石油等は、現実に企画庁としてはどういうふうに取り組んで指導されていこうとするのか。それからもう一つは、流通庁という構想は、これはまだ当局の考えではないというのですけれども、むしろこの際、関税が引き下げられたものが消費者価格に反映をしない、しかも今度は円レート変動幅をとって現実に安くなっているのですけれども、入ってくるものが消費者には影響してこない、こういう面に対しては、ここでどうしても手を打っていかなければいけないだろう。こういう意味で、基本的にこの流通庁という構想が決定したのではないのですけれども、むしろ企画庁あたりで積極的にこういったものを創設して、そうして流通機構を整備すると同時に、国民にこの関税の引き下げ分、あるいはレート調整によって価格の引き下げられた分は還元するように、こういうふうにしていくべきときであろうと思うんですけれども、その点についてひとつお答えを承りたいと思います。

山下一郎経済企画庁国民生活局参事官

○山下説明員 石油の問題につきましては、最近灯油を中心にいたしまして、業界のほうでは、先生御指摘のような最近の外貨事情の変化、為替レートの変化による価格の引き下げという状況にもかかわらず、値上げを策しておるというようなことも報道されておりますが、御承知のように、本年当初のOPECによる原油値上げの影響がありまして、一般的に石油製品について値上げがあったわけでございます。これは私ども物価対策の観点からいたしましてきわめて遺憾なことだと考えておったわけでございますが、ただいま問題になっております灯油につきましては、その後のOPEC騒動以後の市価の動きを見ておりますと、たまたま不需要期であったということもございますようですけれども、実際問題といたしましてOPEC関係を起因とする値上げがさほど行なわれてはおらないというのがいままでの実態でございます。ただこれから需要期に差しかかりますので、北海道で、新聞でも報道されておりますように、業界としては何とかOPECによる値上げの影響を末端に反映させたいということを一部考えておるようでございますけれども、私どもといたしましては、灯油が国民生活に非常に密接な関連を有しておる実態にかんがみまして、もしそのような動きがあるといたしますれば、通産省に対しまして所要の行政指導を要請するなど、この値上げを抑制するように今後努力をしてまいりたい、かように考えております。  それから輸入品一般につきまして、為替レートの変化による値下げをいかにして末端まで反映させるか、中間の流通段階で吸収されないようにするかということにつきましては、御指摘のように物資によりましていろいろでございますけれども、流通過程が非常に複雑でございますので、ともするとその間に吸収されてしまって、消費者にはせっかくの輸入原価の値下げが反映されないようなことになる恨みが非常に強うございますので、この点につきましては今後関係各省と十分に協議をしながら、そのようなことのないように必要な行政指導等を強化して、せっかくの価格の引き下げが末端の最終需要者にまで反映するように努力をいたしてまいりたいと考えております。  お話しの流通庁の問題は私どもも新聞で承知をしただけでございまして、先生御指摘のように、あれは農林省におきまして、生鮮食料品の問題を中心にいたしまして流通庁というかっこうでこの問題を取り上げるようにしてはどうかという御意見のようでございますけれども、あれも確かに一案でございましょうが、そういう機構の問題はさることながら、現行の各省の行政組織を最大限に活用しまして、末端価格の値下げに今後とも努力をしてまいりたい、このように考えております。

松尾正吉公明党

○松尾(正)委員 終わります。

齋藤邦吉自由民主党

○齋藤委員長 竹本孫一君。

竹本孫一民社党

○竹本委員 私は主として質問だけにとどめて簡単に終わりたいと思うのですけれども、一つは、先ほどもちょっと議論が出ておりましたけれどもあらためて伺いたいのですが、為替管理は、裏をかかれたり虚を突かれたりすることなく、大体うまくいっているというような政府のお考えであるかどうかということ。  それから第二番目には、百二十五億ドルもドルがふえる、そこまでふえるということを予想しておられたかどうか。裏から申しますと、思惑というものは始まるとたいへんなもので、これはドイツの例もありますように、一ぺんにふえてしまう。しかしながら日本は為替管理が強く行なわれておりますから、何十億ドルというものが一ぺんにふえることはなかろうというような楽観論の上に政府は立っていたのではなかろうかと思います。その点についてどういうふうな感想を持っておられますか。この二つをまず伺いたい。

稲村光一大蔵省国際金融局長

○稲村説明員 為替管理の問題でございますが、確かに百二十五億ドルというように大隅にふえるというふうには、実は率直に申しまして予想しておりませんでした。その為替管理のいわばどこに抜け穴があったかと申しますと、これは先ほども申し上げましたとおり、非居住者が日本に対して円投機をしてくるという点につきましては、これはドイツなどと違いまして、非常に有効に為替管理がされておったというように考えられますが、居住者がいたします取引におきまして、ことに輸出前受け代金の受け取りというところを通じまして、非常にそこが一つの抜け穴になったということは事実であろうかと存じます。その点は、ことに変動相場制に移ります前に——これは実はこの前の五月からそういうことはあったわけでございますが、これにつきましていろいろと手を打ったわけでございますが、さらにこの八月のときにはこの点につきまして、やはり相当の輸出前受けということを通じましてリーズが起こったことは事実であります。そこで八月の三十一日でございましたか、その点を、通産省ともその前からいろいろと打ち合わせ、相談をしておりましたけれども、八月三十一日にこれを抑制する措置をとりまして、それ以後はこの点の抜け道も防げたかというふうに考えております。

竹本孫一民社党

○竹本委員 変動相場制への移行の過程におけるいろいろな矛盾等につきましてはあらためて論ずるとして、ただいまはそれまでにとどめておきます。  次にいわゆる、先ほどもいろいろ論議されました八項目の問題ですけれども、私の結論を申しますと、これは経済大国日本として当然やるべきことである。だから項目を並べる、けっこうであろう。しかしながらそれを一体何のためにどこまでやるのだろうということは、初めから疑問を持っておりました。そこで簡単に伺いたいのだけれども、八項目を政府がおきめになった基本的なねらいは、国際世論に対応をして日本の自由化なら自由化というものをやろうという本筋の議論であったのか、あるいは円の切り上げ要請を回避するための努力であったのか、あるいはその両方であったのかという点をひとつ伺いたい。

高橋英明大蔵大臣官房審議官

○高橋説明員 八項目をきめましたときいろいろなことを、総合対策と申しておりますように、単に黒字の縮小をねらったというだけでなく、国際的に当然なすべきことというような問題とか、つまり国際化に応ずる問題とか、あるいは日本経済の長期的観点から見ての効率化というものを目ざしたというような点、いろいろな目的があったと思います。

竹本孫一民社党

○竹本委員 円切り上げ要請に対する、これを回避するための対策という要素があったかどうか。それから、あったとすれば、政府は事実、円切り上げの要請に対しては八項目で体をかわそうという考えがあったと思うのだけれども、もう一度あなたから、あったのかどうか。あったとすれば一体——私は逆を言いますと、思惑というものが始まれば急テンポで大規模に行なわれる。八項目はいつ効果をあげるか私もわからない。したがって、政府がこれを円対策の一つとしてかりそめにも思っておるとしたら、それはナンセンスであるというふうに思っていたが、結果においてははたしてそうなったように思うのだけれども、もう一度その点を伺いたい。

高橋英明大蔵大臣官房審議官

○高橋説明員 円対策に結果としてなるという面はあったと思います。しかし円対策だけとしてあれが考えられたとは思いません。

竹本孫一民社党

○竹本委員 どの程度なるかと思っておったか聞いておる。

高橋英明大蔵大臣官房審議官

○高橋説明員 これは進みぐあい、スピードとか、相対的に国際的な動き等によって、一がいに当初から予想はできなかったと思います。

竹本孫一民社党

○竹本委員 議論はいたさないことにいたしますから……。  そこで一つ二つ伺いたいのですけれども、八項目は、先ほど議論がありましたが、依然として出発のときの構想においてそのまま続けていかれるつもりであるかどうか。

高橋英明大蔵大臣官房審議官

○高橋説明員 基本的には変えなくていいと思います。先ほど通産省のほうからお話ありましたように、情勢が変わってきたのでニュアンスの差が出てまいったり、あるいはスピードが当初予想していたのよりは結論を急がないというようなものになるとか、いろいろあろうと思いますが、基本的には進めていくべきだと思っております。

竹本孫一民社党

○竹本委員 米国が輸入課徴金をなかなか撤廃しがたいいろいろな事情がある、見通しもあるわけですけれども、輸入課徴金を撤廃しない場合においても八項目の完全実施はできるという前提ですか。

高橋英明大蔵大臣官房審議官

○高橋説明員 その辺はいろいろ作戦的なこともあろうかと思いますので、いまはなかなか申し上げられないと思います。

竹本孫一民社党

○竹本委員 この辺は議論をすれば切りがありませんから伺うだけにいたしますが、一つ例を申し上げますが、輸入自由化については、政府の考え方は、最近は早ければ年内に残存四十品目というものをさらに十品目に減らそうとしておった。いまでもそういう考えであるか。また政府はそのときには、十品目に整理するというその整理の中に牛肉やオレンジ、それから電算機を入れるか入れないかということについていろいろ問題があったようですけれども、この牛肉、オレンジ、電算機の問題はどうなるか。これだけちょっと伺いたい。

植松守雄大蔵大臣官房審議官

○植松説明員 いまの自由化のお話でございますが、いわゆるこの八項目がきめられたときにおきましても、これは年内ということではなかったと考えます。年内もしくは年度内というような表現は何かで私も見たこともございますけれども、年内とはっきりきまっておったわけではないです。現在の情勢からいたしますとやはり年度内ということになるのではないかというように考えます。  それからその十項目ということにつきましても、政府の内部でいろいろ検討いたしましたときには確かに十項目程度という気持ちはあったわけでございますけれども、必ずしもそこまでやれるかやれないか。すでに自由化四十品目に九月末でなるわけでございます。そうなりますと、ハードコアが残るということだけになりますと、やはりそれを数合わせということで十項目というところにできるかできないかには問題があると思います。そこで現在は十項目までやれるかどうか、完全にそこまではっきり申し上げることはできない段階でございます。  それから、先ほど申しました特にアメリカの関心品目といわれて、いま先生おっしゃいました品目でございますが、これにつきましては当初からわれわれむずかしいと思っておったわけでございます。

竹本孫一民社党

○竹本委員 これで最後にしますが、今度は関税の引き下げの問題でございますが、これも審議会のほうでは生活関連物資、米国の関心品目を中心に三十品目ぐらいは下げようというようなお考えが出ておるわけですが、これはやはりそのとおりやられる意思であるかどうか。  なおこれに関連して、私は関税の引き下げけっこうだと思いますけれども、アメリカがまたああいう措置をとったというときに、それに何らの影響も受けない——これはまあ精神的にも物質的にもだけれども、影響されずにそのままやれるつもりであるか。本来やるべき仕事だからやってもいいと思いますけれども、いまのアメリカの課徴金にしても、あるいはドル切り下げの問題にしても、ああいう傲慢な、かってな態度を前提にして、こちらだけお人よく全部本筋を歩きますというような形でいってしかるべきであるかどうか、若干疑問がある。そういう意味も含めて、いまの関税は全面的に下げるのかどうか。  並びに、私は先ほど来問題になった変動相場制については早く日本が独自の案を出すべきだ。ドルはこの程度下げてほしい、課徴金は撤廃しなければ協議もしないというぐらいの態度でいきたい。円もこのくらいは切り上げを覚悟する、そのときには、同時に将来の基本基軸通貨の問題も言わなければならぬと思いますが、それと関連して世界じゅうが、まあ日本ラウンドというのか何というのか知りませんが、関税の引き下げについて取り組もうではないかというような案はあわせて言うべきだという考えを持っておりますが、日本ラウンドを要求したり主張したりする考えはあるのかないのか、あわせて伺って終わりにいたします。

植松守雄大蔵大臣官房審議官

○植松説明員 先ほどの三十品目程度の生活関連物資を中心にした関税の引き下げは引き続きやるのかというお尋ねでございます。これにつきましては、この前の日米閣僚会議のときまでにも、新聞にもありましたようにどの程度のものをやるかということは具体的にまだその段階ではさまっておりません。これから関税率審議会を開きまして、成規の手続をとってきめるわけでございます。われわれの現在の気持ちといたしましては、確かにいま先生おっしゃいますように、非常に為替不安という問題が出てまいりまして、輸入価格そのものが変動相場制によって下がってきておる。そういたしますと、関税は当然その意味で大きな影響を受けるわけでございますから、個々の品目を選ぶ場合にはその辺の影響を十分読まなければならぬ。そこで今後それがある程度落ちついた姿にならないと、十分にその辺について判断しにくいという面があると思います。  それから、われわれこの八項目におきましても特に考えておりましたのは、あくまで生活関連品目ということでございまして、やはりそれは国内の物価対策に寄与するということを大きく考えておったわけでございますから、その内容の中にはアメリカが関心を持っておるものもございましょうけれども、それだけがもちろん目標になっておったわけではございません。やはり関税が比較的高くて、かつ国内の物価対策という面から有効な寄与をし得るものというふうに考えておったわけでございます。いずれにいたしましても具体的な品目の選定につきましては、今後の情勢をながめながらさらに具体的に関税率審議会にはかってきめていかなければならない、こういう段階でございます。ただ関税そのものは、日本の関税はまだ相当高いわけでございますから、下げるという方向は基本的には持たなければいけないというように考えております。  それからもう一つ、アメリカのいまの措置で影響を受けないかという問題は、一般的に私申しましたように影響を受けるのですが、同時に、たとえば自動車の関税とかいう問題を考えましても、アメリカが課徴金をかけて向こうは一〇%になっておるわけでございますから、いまや日本の関税率は完全にイコールになっておるというわけでございますから、そういう場合には課徴金の撤廃ということが当然に前提になるというように考えます。  それから最後に、日本ラウンド、ジャパンラウンドのお話でございます。これはかねてわれわれ、現在のガットがケネディラウンド以後、悪くいえば開店休業みたいな感じになっておりまして、ここでイニシアチブをとるのはやはり日本ではないかという気持ちを強く持っておるわけでございます。そこで、そういう方向では積極的に動きたいという気持ちを持っておりますが、何ぶんにも現在ではアメリカの課徴金というのが大きくのしかかってまいりまして、保護主義的な勢力が強く内部でも台頭しておるという状況でございますから、いまここでジャパンラウンドを提唱して受け入れられるような情勢にはない。またECのほうもイギリスの加盟問題を控えておりまして、そちらのほうで手一ぱいということでございます。ただし、たとえば今度近くガットのロング事務局長が来日いたしますが、このロングさんもやはり日本がイニシアチブをとるということに非常に関心を持っておるようでございます。いろいろな情勢のからみがございますけれども、それらを見ながら、国際的な関税ラウンドの問題については積極的な役割りを果たしていかなければならない、こういう気持ちを持っておるわけでありますけれども、具体的にそれをどうするかという問題につきましては、ガットなりOECDでそれぞれ話し合いが行なわれることになっておりますから、その辺で適切な手を考えていかなければならない、そういうことに考えておるわけでございます。

竹本孫一民社党

○竹本委員 この八項目の問題は、その後のドル・ショック、情勢の変化によって、先ほどは大体その原則をそのとおり貫くのだというお話だったけれども、その貫くことが政治的にも技術的にも非常に困難になっておると私は思うのです。深く議論をする時間がないからやめますが、非常に困難になっておるし、少なくともそれをそのままやることが有利であるか不利であるかという政治的判断がまた別になければならないと思うのです。しかし、きょうは議論はいたしません。重要な問題であるということを指摘しておきたい。  それからなおこれに関連してついでにもう一つですが、アメリカに日本の輸出が、課徴金あるいはドル・ショックの問題で困難になったら、方向転換をして、カナダ、西ドイツに出ていくのではないかというので、カナダや西ドイツのほうが対日課徴金を考えるといううわさが出ておるが、政府はそれをどう受けとめておられるか。これだけにして終わりましょう。

植松守雄大蔵大臣官房審議官

○植松説明員 いま先生御指摘のような問題につきましては、確かに内外の新聞で若干そういう記事が出ておるのは事実でございます。ただし、たとえば在外公館等からの情報では、われわれ新聞記事以上のものは受け取っておりません。確かにヨーロッパ、ことにあるいはアメリカの隣国であるカナダ等が、非常に日本の出方に神経質になっておるということはあるのじゃないかと思います。これは相当メンタルなものもございまして、たとえば例の繊維の自主規制を日本がやったときにも、その結果の市場転換がヨーロッパやカナダに行くのではないかというのも、やはりそのときに相当大きな声としてあがってまいりまして、それはやがて消えたのでございます。また実際に市場転換というものはそう簡単に行なえるものではございませんし、また現在は、ここでこれまで御論議がございましたように、輸出の成約自体が非常に困難になっているような状況で、業界はまだそれどころではないという感じ、それからまた現在までの税関を通じて見ました輸出の実績では、むしろアメリカ輸出が非常にふえているという状況でございまして、いまのところまだ具体的にそういう動きを、たとえば政治的なレベルで受けとめなければならないといったような段階に来ておるとは思っておりません。ただしその動向は十分に通産省と連絡をとりまして、ウォッチしていかなければならないというふうに思っております。

竹本孫一民社党

○竹本委員 終わります。

齋藤邦吉自由民主党

○齋藤委員長 小林政子君。

小林政子日本共産党

○小林(政)委員 先ほど来からお話のございました大量ドル売りの実態をきびしく調査をして内容を公表すべきだということは、九月一日の大蔵委員会の席で私も強くその点を要求したわけでございますが、きょうのお話し合いの中で、大臣が出席をした委員会でということでございますので、この点については次回に質問をしたいと思いますが、一つだけこの点について伺いたいと思います。  国会では幾つかの党が同じような要求を掲げて、公表すべきである、こういうことを主張いたしておりましたし、また国民の疑惑の目というようなことについてもいろいろとお話のあったところでございます。こういう事態の中でこの公表をいままで渋ってきた法的な根拠というようなものがあるのかどうなのか。もしあるとすれば、その法的な根拠だけについてきょうはお伺いをしておきたいと思います。

稲村光一大蔵省国際金融局長

○稲村説明員 御質問のあれがちょっと受け取りかねたのでございますが、交渉を、何の問題……。

小林政子日本共産党

○小林(政)委員 公表できないという法的な根拠です。

稲村光一大蔵省国際金融局長

○稲村説明員 法律上できないという根拠がありますかどうかにつきましては慎重に検討さしていただきたいと存じますが、いまの段階では法律上のあれは特にはないと存じます。

小林政子日本共産党

○小林(政)委員 法的にはないということでございますので、次に参りたいと思います。  大蔵省は本年度、現在時点で租税の収入見込みというものを大体どのように見ているのかということが第一点。それから、そのことが地方税へはね返るという見通しについてはどのように考えておられるか、具体的にお伺いをしたいと思います。

高木文雄大蔵省主税局長

○高木説明員 まだ年度のちょうど半分でございますし、たいへん動いておりますので見通しが立てにくい状況でございます。ただ、数字的にどうなるかということはまだ私ども自身が持ち合わせておりませんが、傾向としては、最初の予算見込み額までは税収が上がらないであろう。つまり、若干見積もり額よりも現実の税収は下回るであろうというような感じを持っております。地方の財政への影響については主計局のほうからお答え申し上げます。

大倉眞隆大蔵省主計局次長

○大倉説明員 御質問は地方交付税の影響のお話かと思うのでありますが、ただいま主税局長が申し上げましたように、根元になります国税のほうの見込みがまだつきかねるということのようでございます。私どものほうもなるべく早く主税局のほうの見込みを聞かせていただいて、その上で判断するということになろうかと思います。

小林政子日本共産党

○小林(政)委員 法人税その他についての税収減ということが非常にいわれておりますけれども、具体的な正確な数字は年度途中ということで明らかにできなくとも、一体見込みとしてどの程度の見込みで臨んでいるのかということを当然この時点で、国債発行云々ということもからまっておりますので、明確にしてもらいたかったというふうに思います。特に政府は景気浮揚策ということで、近いうちに公共事業費の投資を五千億補正予算で組みたいというようなことが新聞でもって報道されておりますけれども、私はこの場合に、一体現在公共事業を具体的に実施していく地方自治体の財源について、その財政についてはっきりしていない段階で五千億の公共投資を行なうということを言っても、これはただ言うだけであって、具体的にどう考えているのかという点が明確でないわけです。現在地方自治体の財政の現状についてどのような状態になっているかといえば、不況のもとで、しかもドル・ショックを受けて非常に企業の打撃というものもあって、直接地方財政の上に大きな影響を持ってきていることは、これは御承知のとおりだと思うのです。特に私が調べましたのでも、法人事業税、法人都税というものが、東京の場合だけ見ても三百六十億の減収というようなことが具体的に明らかに計算もされておりますし、各地方自治体においてはそれぞれ相当の減収見込みというような状態の中で、ことしは九月の補正予算というものもはっきりと組むことができないような現状になってきている。これが地方自治体の実態でございますし、このような中で政府は、近いうちに補正予算で公共事業費を予算化するということがいわれておりますけれども、一体どうやってこれを進行していくのか、一体このような地方財政をどのようにして補てんしていく考えなのか、この点について明確にしていただきたいと思います。

大倉眞隆大蔵省主計局次長

○大倉説明員 お話しになりました補正をなるべく早い時期に組みたいというのは、私ども事務的にもそのように考えてただいま作業中でございます。ただ具体的に予定されております国会のどの段階で提出して御審議をいただくのか、これにつきましてはなお御相談申し上げなければならない関係もたくさんございますのできまっているわけではございませんけれども、少なくとも事務的には、出せと言われれば冒頭にでも出せるという気持ちで作業は進めております。  その中で、五千億以上ということをおっしゃいましたのは、ちょっと念のため申し上げますと、政府関係機関、財政投融資その他を含めまして事業量としての数字として大蔵大臣が申し上げたことがあるかもしれませんが、必ずしもそれが一般会計補正の中にございます公共事業費になるというものではございません。公共事業費の額が幾らになりますか、これは実は先ほどの冒頭の御質問にございました歳入がどうなるかということと非常に密接にからんでいることでございます。私どもはいま、給与改定でございますとか繊維対策でございますとか抱卵ニシン対策でございますとか、すでに出ております財政需要がほぼきまっておりますので、それに加えまして公共事業関連を幾ら積めるか、またそれが消化可能かということで事務的に作業しておるわけでございまして、最終的なワクは、国債発行の可能性とあわせまして歳入がどうなるかということと同時でないときまらないわけでございます。  したがいまして、地方の財政問題もこの歳入の中の特に三税がどういう見通しになるか。おっしゃるように法人税がある程度減りましても、理屈で申せば、所得税が伸びておりますれば交付税は要らないというケースもあり得るわけでございますし、その辺が見通しがつかない。ただ、見通しがつきます段階では、公共事業費の増加に伴う地方の負担と申しますか、支出増加分を一体どういう財源でまかなっていくのか。それは、国は国債を出してまかなうのだから地方も地方債でという考え方もあるかもしれませんけれども、地方税収がどうなっているかということも考えなくてはなりませんし、すべてこれから関係省と十分詰めてまいるという項目でございまして、申しわけございませんが、いまの段階で数字的にどこまではどういうことでやりますと、ちょっと申し上げかねるということで御了承いただきたいと思います。

小林政子日本共産党

○小林(政)委員 具体的な数字の積算がまだできていないということで、私この時点でたいへん残念だと思いますけれども、いまもお話が出ておりますとおり、地方交付税の場合はいわゆる国税三税の三二%、これでは国税三税が減収になるということになれば地方財政に赤字が出てくるということははっきりしてくるわけですね。それらの点も踏まえて、全体が減るわけですから、当然自治省では昨年いわゆる一九・九%の増額を見込んでいるというようなこともうわさでは聞いておりますけれども、大蔵省自身が具体的にこの問題を本腰を入れてどう考えているのかという点がいまだに出ないということでは、先ほど来から熱心に討議されておりました地域住民、国民に密接をした公共事業、生活環境に密接した公共事業ということが口先では言われていても、ほんとうにこれが進捗し、具体的に行なわれるという保証というものははっきりしないと私は思うのですね。この点については積算が出ていないということなので、至急それらの点も含めてもう一度明らかにしてもらいたいというふうに考えております。  時間がありませんので、特に今回のこのドル・ショックの直接の大きな影響を受けております中小企業と、それから農民の実態等について具体的にどう解決するかという点について、二、三私は質問をしたいと思います。  特に中小企業の問題等についてはすでにいろいろと言われておりますけれども、非常に地場産業といわれているところでやはり深刻な打撃を受けているわけです。これらの問題については、帝国興信所の発表した資料によっても、八月の十六日から九月の十四日までのわずか一カ月の間に、直接ドル・ショックというものを受けて、これが原因で倒産をした件数が十二件ということが報告もされておりますし、あるいはまた昨日行なわれました金融小委員会等においても、おそらく中小企業の場合には年末にかけての倒産というようなことが必至であろうというような参考人の方のお話もございましたし、あるいは契約についても三カ月もてばいいほうではないか、少ないもので一カ月もたないんじゃないかというような逼迫した状態にあるわけでございます。この問題等について、新聞等では連日この問題が出ない口はないといわれるほどの深刻な状況が毎日報道されております。こういう事態の中で、具体的に対策はとったというけれども、その効果というものはすでに出ているのか、あるいはまた具体的にこういうような方向でどうなっているのかという点を、ひとつ納得のいくように説明をしていただきたいと思います。  さらに農村の場合には、御承知のとおり減反問題を控え、さらにまたその上に輸入の自由化等、先ほど来からお話しのありました果汁だとかあるいはまた牛肉だとか、こういったような自由化の問題等含め、さらにまた特に東北の出かせぎ県などでは二重、三重の打撃といわれているような大きなショックを受けております。これらの問題等についても、具体的に救済措置というようなものがどのようにとられていて、現在その効果というものはどういう形であらわれようとしているのか、こういう点等について明確な御答弁をお願いいたしたいと思います。

近藤道生大蔵省銀行局長

○近藤説明員 金融面に限ってまず簡単に御答弁申し上げます。  すでに実施しました対策と現在研究中のものに分けて申し上げますと、すでに実施しましたものは、中小企業金融公庫の運転資金の代理貸し付けの限度額の千万円上乗せ措置の期限延長、これが一つ。それから中小企業信用保険公庫の上期の保険引き受けワクの増加、それが一つ。それから民間金融機関に対しまして、特に中小企業金融について特段の配慮を要請するというようなことをやっております。そうしてそれの結果について各財務局長から報告を受けております。現在までのところ、いわゆる金融的な資金需要はむしろ今後に出てまいると思われますので、ただいま御指摘のありました、すでにどういう効果があらわれておるかということはまだはっきり出ておりません。大体そのようなところが金融面の状況であります。

小林政子日本共産党

○小林(政)委員 まだ効果等も出ていないということでありますけれども、先ほど来から言われておりますとおり、日本の経済政策、これに対しての根本的な転換というものをやはりはっきりと政府がここでもって行なう、こういうことがない限り、特に対米的な貿易関係、こういうもの一本に比重をかけているようなこういう政策では、今後中小業者やあるいはまた日本経済の民主的な自主的な発展にとってきわめて重要な問題が出てくるであろうというふうなことを私は考えております。明らかに平和的、民主的な方向に転換をすべきだということを最後に強く要望いたしまして、質問を終わりたいと思います。      ————◇—————

齋藤邦吉自由民主党

○齋藤委員長 この際、自由民主党、日本社会党、公明党及び民社党共同提案によるドル防衛措置に対処する財政・金融政策に関する件について、本委員会の決議を行なうべしとの動議が藤井勝志君より提出されております。  まず、提出者からその趣旨説明を求めます。藤井勝志君。

藤井勝志自由民主党

○藤井委員 ただいま議題になりました自民、社会、公明、民社四党共同提案によるドル防衛措置に対処する財政・金融政策に関する件につきまして、私は提案者を代表して提案の趣旨の御説明を申し上げます。  去る八月十六日、ニクソン米大統領の発表したドル防衛とインフレ抑制に関する新経済政策は世界に大きな衝撃を与えたのでありますが、特にわが国におきましては円切り上げ圧力と輸入課徴金とのダブルパンチを受けたため、経済界、特に中小企業界は動揺、混乱におちいっている状況であります。  この際、政府は、従来の財政金融政策について根本的な発想の転換を要する部面も出てまいりましたので、案文に列挙いたしました諸点について早急に施策の具体化を要望する次第であります。  案文はお手元に配付してありますので朗読は省略いたしますが、何とぞ御審議の上、満場一致で御賛成あらんことをお願いいたしまして、趣旨説明を終わります。     —————————————    ドル防衛措置に対処する財政・金融政策に関する件  最近における経済情勢の激変に対処して、政府は新たな観点に立って従来の財政・金融政策の運営方針の大転換を図り、左記事項を早急に決定、実施するよう強く要望する。 一、企業優先より国民生活の充実を最優先とし、また、中小企業および農業の国際競争力の強化ならびに社会福祉政策の充実に留意すること。 一、社会資本充実のため、長期的投資計画を国民生活を中心として設定し、積極的な長期国債発行計画を策定するとともに、真の意味の市中消化、個人消化に万全を期すること。 一、国内需要を喚起して国内経済を回復することは緊急を要するので、大幅な所得税減税等を昭和四十七年一月一日実施を目途に検討すること。 一、国際通貨不安による中小企業の打撃を緩和するため、滞貨金融、つなぎ融資等当面の金融については十分な配慮を行なうこと。 一、政府系中小金融三機関等の融資枠の拡大を図るとともに、金利、返済期間等の融資条件緩和についても考慮すること。  なお、中小企業信用補完制度について、その拡大を検討すること。 一、特に中小企業の受ける為替差損については、欠損の長期繰越し、繰戻しを認める等税法上その他の特別措置を検討すること。 一、中小企業の輸出成約停滞を打開するため日銀の外国為替手形買取り制度を中小企業に限り早急に復活すること。     —————————————

齋藤邦吉自由民主党

○齋藤委員長 おはかりいたします。  ドル防衛措置に対処する財政・金融政策に関する件を本委員会の決議とするに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

齋藤邦吉自由民主党

○齋藤委員長 御異議なしと認めます。よって、本件を委員会の決議とするに決しました。  この際、田中政務次官から発言を求められておりますので、これを許します。田中政務次官。

田中六助自由民主党大蔵政務次官

○田中説明員 ただいまの御決議に対しましては、政府といたしましても御趣旨を尊重し、十分努力してまいりたいと思います。

齋藤邦吉自由民主党

○齋藤委員長 おはかりいたします。  本決議に関する議長に対する報告及び関係各方面に対する参考送付等の手続きにつきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

齋藤邦吉自由民主党

○齋藤委員長 御異議なしと認めます。さよう決しました。  本日は、これにて散会いたします。    午後六時十九分散会

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