予算委員会 第14号
- 発言数
- 109 件
- 登壇者
- 11 名
- 会派数
- 4
- 開催日
- 1971/02/17
会議録
○中野委員長 これより会議を開きます。 昭和四十六年度一般会計予算、昭和四十六年度特別会計予算、昭和四十六年度政府関係機関予算、以上三案を一括議題とし、一般質疑を続行いたします。 和田春生君。
○和田(春)委員 官房長官は来ておられませんか。官房長官はいかがしたのですか、要求大臣の中に入っておるわけですけれども。――個々の質問に入る前に、まず冒頭に官房長官にお尋ねをいたしたいと思います。 本国会の最重要法案の一つになっている健康保険法の改正案は、国会に提出をされたのかされないのか、その事実関係をまず最初にお伺いしたいと思います。
○保利国務大臣 まだ主管大臣から閣議の要請がございませんから、閣議の決定をいたしておりません。
○和田(春)委員 この健康保険法の改正案は、予算関連法案としてきわめて重要でございますから、本来ならば総括質問が終わる前に国会に提出されてしかるべきところ、たいへん政府側の怠慢のために遅延をいたしておりまして、本件について、予算委員会の理事会には木村官房副長官が出席をいたしまして、十六日中には必ず提案をするという約束をいたしております。それが、まだ出ていないということについて、官房長官の所見をあらためて承りたいと思います。
○保利国務大臣 国会の再開を前にしまして社会党、公明党、民社党の政審会長と私お目にかかりました節に、三党の政審会長から、予算委員会で実質的な論議を積み上げたいから、政府側もそのために、できるだけ総括の段階に予算関連法案を提案をするように準備を急いでもらいたいという強い申し入れをいただいております。私のほうといたしましても、とにかく予算審議の段階において関連法案が提出されないというようなことは、これはもうはなはだ望ましくないことでございますから、私は昨年来かなり部内の方々に御無理を願って、とにかく予算審議に差しつかえのないように関連法案の提案を急ぐべきであるということでお願いをして、非常な、特に法制局のごとき不眠不休といいますか、ずいぶん勉強していただいて、おおむね私どもの希望するようなことに運んできておりましたが、いまの健保法案は、これはあなたもよく御案内のように、非常に手続がめんどうのようでございまして、せっかく審議会でも委員の方々に非常な勉強をいただいておるようでございますけれども、問題が問題でございますものですから、その審議会の結論に時間がかかっておるようでございまして、非常に残念に思っております。どうかすみやかに審議会のほうで結論を出していただいて、この間厚生大臣、当局も非常な苦労をして、何とか予定いたしておったきのうまでに出したいということで、懸命の努力をいたしておるわけであります。 伺っておりますと、そう長い時間かからないで御審議をわずらわせるようになるのじゃないかと期待をいたしておりますけれども、昨日までに提案ができなかったことは、はなはだ遺憾に存じておる次第であります。
○和田(春)委員 厚生大臣にお伺いをしたいと思いますが、昨日の予算委員会で厚生大臣は、審議会等の所要の手続を経て必ず出すということを、他の委員の質問に対して答弁をされておるわけであります。まだ現実に、ただいま官房長官の遺憾の意の表明がございましたけれども、出ておりません。国会の場における発言の責任について、厚生大臣はどういうふうにお考えになるか、お伺いをしたいと思います。
○内田国務大臣 十六日中に審議会の御答申をいただきまして、所要の手続を済ませて国会に提案できる私は見通しを持ちまして、仕事を進めてまいりました。しかるところ、新聞、テレビ等でも御承知のとおり、昨晩徹宵して審議会も開いていただきましたけれども、何ぶんにも審議会が二つございまして、しかもその審議会の構成も単純な構成ではございません。そこでいろいろの御議論が最終の詰めの段階にもありまして、ただいま御答申の原案が各方面から持ち寄られまして、その詰め合わせをやっておられます。私は、ただいままでその御答申をいただいて直ちに手続をするつもりで待機をいたしておりましたが、この予算委員会が十時から開会ということでこちらへ出向いてまいりました。私は昨日もお約束をいたしましたように、これは昨日の夜中を越えれば、私も腹の中のどこかでは、見切り発車をして皆さま方に対するお約束を守らなければならないかとも思いましたが、しかし見切り発車はすべからず、また私も見切り発車はしない、こういう言明をいたしておりますので、最終段階におきましては、私がそのようなことをしないほうが、すべてのために私のとるべき立場だと思いまして、見切り発車をしないでやってまいっております。官房長官からもお話がありましたように、こうしております間にも最終手続が進みまして、そうして法律案の提案が国会にされることを私は信じておるものでございます。
○和田(春)委員 さっぱり要領を得ない御答弁でございますけれども、この問題につきましては、実は他党の社会党、公明党からの委員の質問に関連して厚生大臣がお答えをした経緯もあるわけでございまして、これらの委員諸君から関連質問の要求がございます。 委員長にお願いをしたいと思いますが、いま言ったような事情でございますので、社会党、公明党委員にも関連質問を許すように認めていただきたい。
○中野委員長 ちょっと速記をとめて。 〔速記中止〕
○中野委員長 速記を始めて。大原君より関連質疑の申し出がありますが、理事間の協議の結果これを許します。和田君の持ち時間の範囲内でありますので、御了承の上これを許します。
○大原委員 委員長もよく御承知のとおり、理事会におきましての決定は各党承知ですが、官房長官が言われた各党間の政審会長、その趣旨はありましたが、しかし予算審議を実質あらしめるために、総括質問が終わる二月の五日までに、理事会としては、予算関係重要法案は国会に提出する、そういうことにつきましては理事会における確認といたしまして政府に要求をいたしたのであります。しかし、そのことは全党一致の要求でありましたが、いろいろの経過の中から、十六日までには予算関係法案は出す、こういうことを官房副長官からも内田厚生大臣からも本院におきまして報告並びに答弁があったわけであります。そういう経過を踏まえてみまして、ただいま和田委員の御質問になりましたことの経過で明らかなことは、今日、十七日になりましてから、なおこの重要法案、健康保険法の改正法案が本院に出ていないことは確実になったのであります。これは確実であります。そこで私どもは、与党にいろいろ雑音がありますが、しかしこのことはきわめて重要な問題である。なぜ事が重要であるか。これは簡単に言えば二つある。 一つは手続上の問題である。これは昭和四十年以来、佐藤内閣が成立いたしまして以来、抜本改正総合対策を立てて、健康保険の赤字対策を立てる、こういう当然の国民の要求について、総理大臣、関係大臣は数十回にわたって公約をした経過があるのであります。内容上の問題につきましては、私が申し上げるまでもない。そういうことを踏まえて、今回の健康保険法の改正案が、諮問機関である両審議会あるいは国会におきましても重要な問題として取り上げられてきたのであります。このことは私が意見をたくさん申し述べる必要はありません。こういう点から考えてみますと、十六日が終わって十七日の段階においてなおかっこの法律案が出ていないということは、内田厚生大臣はもちろんですが、内閣全体の政治責任はきわめて私は重要であると思うわけであります。そういうことをあいまいにいたしまして議事を進行することが、医療保険の今日の赤字や混乱を来たしておるのであります。これは国会の責任であります。であるとともに、単なる政党間の問題ではない、国会対内閣の問題であります。国会の権威の問題であります。これは国会軽視の問題であります。国会無視の問題であります。内田厚生大臣の答弁を聞いてみますと、見切り発車がどうのこうのと言って、見切り発車をあたかも意図しておったかのごとき発言もありました。これは私どもは納得できないことであります。 そういう点でありますから、これらの事態を踏まえて、私どもは重大な決意をする段階にあると思いますから、この問題につきまして、議事進行といたしましての私の意見ですが、理事会を開いてこの問題についての善後措置をしてもらいたい、こういう私の関連質問を申し上げるわけですが、このことを踏まえまして厚生大臣の決意をお伺いしたい。
○内田国務大臣 私は、最善の努力を尽くしまして、十六日のとにかく夜中までには審議会の御答申もいただき、また法律案も国会に御提出するつもりで、そのような言明もいたしてまいりました。大原委員からただいまのように詰められますと、私も責任ある大臣といたしまして、この段階においては見切り発車をしてしまって、ほんとう・に国会に私どもが準備をいたしております法律案を出したほうがいいとさえ考えるような気持ちもわかないのではございませんけれども、せっかく私がここまで隠忍いたしてまいりましたので、最終段階におきまして、私はやはり、ここで見切り発車をしないほうが大臣としての私の責任を尽くすゆえんであると考えまして、先ほどまでも審議会の皆さま方に最後のその答申の案文の整理を急いでいただいておる次第でございます。さようなことを委員の皆さまのほうでも御承知だろうとも思われますので、どうか私の説明を了承していただきとうございます。
○中野委員長 ちょっと速記をとめて。 〔速記中止〕
○中野委員長 速記を始めて。 鈴切君より関連質疑の申し出がありますから、理事間の協議の結果、これを許しますが、和田君の持ち時間の範囲内において、御了承願います。鈴切君。
○鈴切委員 委員長にお許しをいただきまして、一問お聞きしたいわけでありますが、昨日厚生大臣は、社会保険審議会、社会保障制度審議会の両答申を得て十六日中に提出するという公約をされました。私どもは厚生大臣のことばを信じ、昨日その推移を見守っていましたけれども、ついに本日いまだに提出することができない。明らかに公約違反であります。これではとうてい審議に応ずることはできません。厚生大臣はいかなる政治責任をおとりになるか、答弁を求めます。 なお、委員長に申し上げますが、予算委員会は審議を中止して、この収拾については理事会においてはかられんことを要望いたします。 〔発言する者あり〕
○中野委員長 静粛に願います。
○内田国務大臣 私は、この段階におきましては、両審議会の事情がございますことも含みまして…… 〔発言する者あり〕
○中野委員長 答弁中でありますから、静粛に願います。
○内田国務大臣 私は、審議会の御答申を、もうすぐ出るわけでありますから、待ってすべてを処理することが私の政治責任を尽くすゆえんだ、かように考えまして、御了承を願うものでございます。 〔発言する者あり〕
○中野委員長 静粛に願います。 委員長より申し上げます。 この取り扱いについては、直ちに理事協議会を開き、協議をいたしたいと存じますので、この際、暫時休憩をいたします。 午前十時二十九分休憩 ――――◇――――― 午後四時三十二分開議
○中野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。 一般質疑を続行いたします。 この際、大原亨君から発言の申し出があります。理事懇談会の話し合いにより、五分の範囲内においてこれを許します。大原亨君。
○大原委員 私は、日本社会党、公明党、民社党を代表いたしまして、政府の予算関係重要法案であります健康保険の改正案の提案に至るまでの一連の事態に対する問題点を明らかにして、政府の責任ある見解を要求するものであります。 第一点は、政府はいままで、しばしば、私どもが指摘をいたしましたように、十六日までに両審議会の答申を得て、完全な姿において政府の改正案を本国会に提案をする、こういうことを裏づけといたしまして、予算審議を円滑に進めるという、そういう問題に対しましては、しばしば言明をいたしたところであります。しかるに十七日の午後に至りましてようやく法律案が出るという経過になりました。このことは、一にかかって、政府が今日まで医療保険の抜本改正と医療制度の総合的な改革に対する熱意と実行において非常に欠けるところがあった。国会におきまして、しばしば佐藤総理大臣あるいは歴代の厚生大臣が公約したにもかかわらず、じんぜん日を過ごして、その場当たりの政策を続けてきた。そこで赤字が累積をいたしまして、今回の改正案は、保険料の値上げと患者負担をもってこれを切り抜けよう、こういうふうな趣旨でございまして、このことが関係社会保険審議会、制度審議会等において問題となったことはもちろん、本予算の審議におきましても重要な問題として追及を受けたところであります。 そういう経過から見まして、政府は、時間がおくれまして十六日までに国会に提案をする、こういう公約にもかかわらず、それが実現できなかった。これは明らかに国会軽視の措置であります。この問題は単に党間の問題ではありません。国会と政府との関係でありまして、厚生大臣並びに佐藤内閣の責任はきわめて重要であると言わなければなりません。この点を第一点として指摘をいたしておきます。 第二点は、きょう午前中と午後に至りまして答申がありました答申案を見てみますと、答申案に端的にあらわれておりまするように、たとえば社会保障制度審議会、この答申には、こういう文章が結論としてあります。 全体を通じて被保険者及び事業主の負担における収入増加の対策にこれは傾いておる、対策が傾いておるだけでなく、あまりに大幅な保険料率の弾力条項、一部負担のあり方、標準報酬の範囲のきめ方等疑点のあるものが少なくない。よって、政府の再考を求める。 これは、この答申案の全文を通じまして、政府が諮問をいたしました健康保険の改正案に対する全面的な反対、撤回の要求にほかならいなのであります。 また、三者構成による社会保険審議会は、その共通事項といたしまして、国庫の補助を従来の二百二十五億円から定率の五%に引き上げたことの若干の前進を認めながら、三者の共通の意見といたしまして、政府管掌の健康保険にかんがみて定率国庫補助は二〇%を目標に当面一〇%とすべきであることを意見としてつけ加えておりますが、これらの問題等を通じまして、抜本対策について、今日までの経過と審議の結果を無視いたしまして、社会保険制度審議会等の中間答申を無視いたしまして、これに対しまして見るべき実績がない、こういう点を指摘をいたしておるのでございまして、この点は、社会保険審議会の答申が三者ばらばらの答申である、十分審議が尽くされてない、政府が追い込んで時間的にそれぞれ三者のサイドによって別々の答申をいたしておる。こういうことは答申の前例といたしまして事がきわめて重要である。そういう点にかんがみまして、きわめてきずのある答申であるということでございまして、この両審議会の答申を尊重するという従来の政府の見解からいいますならば、これはすみやかに本健康保険の改正案を撤回をいたしまして出直してくるべき問題であるべきであります。当然のそういう中身であるわけであります。あるいは担当大臣の内田厚生大臣の成績にも及ぶべき問題であると私は思うのであります。 そういう点で、二点の点におきまして、十六日の公約の期限を切れまして、そしておくれましたことについては、以上申し上げた理由からいたしましても、きわめて重要な問題であって、私は、厚生大臣のみならず佐藤内閣全体の政治責任であると考えるのであります。この点に関しまして、私は、内田厚生大臣の責任ある見解の表明を要求いたすものであります。お答えいただきたいと存じます。
○内田国務大臣 健康保険法案につきましては、昨十六日中に社会保険審議会並びに社会保障制度審議会の答申を得て提案する所存で、かねてその旨御答弁申し上げておりましたが、遺憾ながら昨日中に両審議会の答申が、当方の懸命の効力にもかかわらず、どうしても得られませんでした。 本日、先ごろ、ようやく両審議会の答申を得ましたので、直ちに手続を経て法律案を国会に提案申し上げた次第であります。さきの答弁と食い違い、お約束をたがえたことにつきましては、不手ぎわがあり、申しわけなく存じますが、あしからず御了察お願いいたします。
○大原委員 官房長官に一言……。
○保利国務大臣 ただいま主管大臣から申し上げましたとおりの事情でございますので、どうぞひとつ御了承を賜わって、お願いを申し上げたいと存じます。
○中野委員長 次に、和田春生君。
○和田(春)委員 ただいま大原委員から質問がございまして、内田厚生大臣より遺憾の意の表明がございましたけれども、予算委員会の審議ストップに至る質問をやりました関係上、重ねてその点について政府の所信をただしておきたいと思います。 実は、本朝の私の質問に対しまして、厚生大臣の答弁は、社会保険審議会、制度審議会という二つの委員会に諮問をしなければならぬ、そういう手続上の問題で手間取っているという意味のお答えがあったわけでございます。私も、社会保障制度審議会の委員、社会保険審議会の委員、また社会保険中央医療協議会の委員等を十数年にわたってやっておりまして、厚生行政ないしは法案につきましては多少経験を積んできているものでございますけれども、そういう審議会の手をくぐらなくてはならぬということは、いまにわかに起こったことではない。初めからわかっておったことだと思います。制度審議会からの答申の中にも、そういう政府のやり方について責任を追及するような形になっておるわけでありますけれども、実は、いまからさかのぼる四年前、昭和四十二年にこの健康保険法の改正案が問題になりまして、国会が非常に混乱をしたときがございました。その際に、とりあえず抜本的な改正をするまで二年間を限って応急の赤字措置を認めるけれども、政府は抜本策をその間にきめる、こういう約束が行なわれた経緯がございます。その後、その約束を半ばほごにいたしまして、料率の改定を永久立法化する措置がとられたわけでございますが、自来四年間たっている。それにもかかわらず、抜本対策の名に値するものが何も出ていない。そして社会保障制度審議会がいみじくも指摘しているように、今回の健康保険法の改正案は、単なる赤字対策、財政面からだけの対策に重点を置いているという形で、抜本策とは似ても似つかないものである。言うなればそういう趣旨のことを、表現は上品でありますけれども、この制度審議会の答申はいっていると思うわけです。一体過去四年間、政府はそのことについてどういう努力をされてきたのか、そしてこのまぎわになって、予算案の審議もほとんど衆議院では終わりに近づいた段階になって、審議会の手続が手間取っているから政府は見切り発車をするとかしないとか、なかなかできないというようなことは、政府みずからの責任を審議会に転嫁をしているということになるではございませんか。そういう点について厚生大臣のはっきりした見解を重ねてお伺いしたいと思うのです。
○内田国務大臣 昭和四十四年に、昭和四十二年の特例法延長の法律案が出されまして、それがまた本法に組み入れられた等の経緯は、私も承知をいたしております。でございますので、私は、そういう経過をたどりました後におきましては、当然私どもは健康保険制度の抜本改正についての努力をなすべきだと考えまして、昭和四十四年の八月に両審議会に対しまして、抜本改正につきまして御諮問をいたして今日に至っておりますが、旧臘両審議会からいただきました意見にもございましたが、この抜本改正のことは広範、複雑であって、なかなか、これの結論を得るのにはなお若干の時日を要する旨御指摘がございました。しかし私どもは、だからといって、責任上、四十六年度を医療保険制度についてこのまま放置することは適当でないと考えます。一方また前進的に、老人医療対策でありますとか、あるいは御承知の累積する赤字を被保険者の負担でなしに、他の一般会計等の負担によって処理をすることが適切であると考えたり、あるいはまた国庫負担などにつきましても、いわゆる定額のつまみ金の制度よりも、定率の方向をとることが抜本改正の方向として正しいというような考え方もいたしまして、それに加えてなお御批判がございますような改正の要点もございますが、私どもといたしましては、それが私どもの責任であると考えまして、両審議会につきましても、四十六年度の措置、対策について御相談を申し上げ、今回の法律案の提案をいたした、こういう次第を御了察いただきたいと思います。 〔委員長退席、坪川委員長代理着席〕
○和田(春)委員 私のお伺いしたことに的確にお答えをいただいていないようでございますけれども、具体的に一、二お伺いしたいと思うのですが、この社会保障制度審議会の答申は、満場一致で出されたということを聞いております。この社会保障制度審議会の答申は、政府が諮問した今回の健康保険法改正案に何らのアグリーメントを与えていない、むしろそれに注文をつけて、再考を求めると言っているわけでございますから、政府の諮問した改正案について、制度審議会は不賛成の意思をむしろ表示している、そういうふうに読めるわけですけれども、厚生大臣としてもそういうふうにお取りになっておりますか。
○内田国務大臣 社会保障制度審議会の御答申は、今回の案は、ただいま御指摘がありましたとおり、見るべき点もあるにはあるが、疑点のあるものが少なくないので、政府の再考を求めるとこういうことも書いてございます。これは、政府案を絶対に否定したものとも解されませんし、政府管掌健康保険の財政が悪化の一途をたどり、制度崩壊の危機に瀕している現状にかんがみますと、私ども政府の当路者といたしましては、この答申を慎重に考慮いたしながら、原案を国会に提出する以外に方法はないと判断をいたしまして提案をいたしたものでございます。
○和田(春)委員 答申を慎重に考慮しながら国会に提案すると言われますけれども、この答申が出て、そして国会に出されてきた健康保険法の改正案は政府の原案と一つも変わっていない。手が加えられておりませんですね。そういたしますと、事実上この制度審議会の答申というものは無視するというか、少なくとも尊重せずに、政府が最初から諮問したものをそっくりそのまま国会に出してきた。時間をかけて審議したけれども、制度審議会の答申というものは、少なくとも政府原案が出されている今日の段階ではから振りをしている、そういうふうに確認してよろしゅうございますか。
○内田国務大臣 単純に私はそうとも取っておりません。御批判は御批判として、すなおに胸にとどめた上で政府の原案を提出をいたしました。なおまた、これは和田さん御承知だと思いますが、昨年の十二月十九日に、今回の政府の考え方に対する意見というものも制度審議会からいただいておりまして、それには今回の簡単な御答申を、さらにいろいろの角度から批判をされたり、あるいはまた、あるものにつきましては激励をされたり、いろいろの点もうたわれておりますので、私は、それをもあわせて考えまして、今後処してまいりたいと思うものでございます。
○和田(春)委員 重ねて申し上げますけれども、この制度審議会の答申を見ますと、昨年の末に意見書を出している。その意見書をほとんど無視したような形で政府が今回のような諮問案を持ってきたことは遺憾であるといっているんです。ここに書いてありますように、「抜本対策についての本審議会の検討がようやく軌道にのり、政府の希望した期日を考慮におきつつ、審議を続けている矢先にかかる形で諮問してきたことはまことに遺憾である。」というふうに、表現はたいへん品よく言っておりますけれども、政府のやっておることはなっておらぬではないか、したがって、政府の今回の諮問した改正案には賛成できないのだ、考え直せ、出直せ、ということが社会保障制度審議会の一致した意見だと思うのです。にもかかわらずそのまま出てきている、今後の国会の審議の過程で、この社会保障制度審議会の意見に加うるにおそらく野党側からも追及がございましょう。制度審議会には御承知のように政府与党に所属する議員の方も委員として参加をしているわけです。その方々も含めて満場一致でこういうことを言っておるわけですから、今回の健保改正案について国会審議を通じ、再検討をする用意があるかどうか伺いたいと思います。
○内田国務大臣 本日の御答申はきわめて簡単なものでございますが、その中にも引用いたしてございます昨年末の意見書はかなり長文のものでございまして、今回の答申とは同じことを取り上げながらもニュアンスの違いがかなりございます。この審議会の構成はいろいろの方面を代表する方方から構成をされておりますので、答申というような形になりますと、前の意見書を踏まえながら若干ニュアンスが違うきょうの答申であろうとも私は考える面もございますので、いずれにいたしましても先般の意見書と今度の答申書を十分私は心にとめて、そしてこれから御審議をいただくつもりでおります。
○和田(春)委員 先ほども申し上げましたけれども、私も長いこと関係の委員をいたしておりました。しかし私の記憶にある限り、大体政府案についてもある程度のものは認めていく、ある程度のところには意見をつけるということがありましたけれども、諮問をしてきた形からして遺憾である、しかも再考を求める、こういう答申が出たという例はほとんどないと記憶しているのです。したがいまして、ほんとうに制度審議会を尊重するというのであるならば、原案のままで押し通そうという形ではなしに、政府の姿勢として考え直すという意見があってもいいんじゃないですか。そうでなければこんな審議会つくって時間をかけても何にもならぬと思うのです。私は特に社会保障の問題は重要だと考えるがゆえにこれを追及しているのです。ニュアンスの違いなんというものじゃないと思うのですよ、これは。その点について、もう一ぺん厚生大臣の御答弁を願いたいと思います。
○内田国務大臣 いずれ関係の審議会等で御批判もいただけることと思いますが、この十二月の意見書、きょうの御答申にも引用いたしてありますその意見書、ここで私はことばを戦わせるつもりは全くございませんが、抜本改正については、一昨年以来政府の諮問を受けて鋭意検討をいたしておるが、これは広範多岐にわたるのでなかなか簡単にはその答申のところに至るものではない、こういう書き方でございまして、きょうの答申とはニュアンスの同じといいますか、ニュアンスの違いといいますか、ございますが、それは私は責任大臣として十分両方とも読ませていただきまして、そうして今後の国会における御審議に対処してまいる、こういうつもりでお答えを申し上げております。
○和田(春)委員 いずれ健康保険法の改正案につきましては、関係委員会で掘り下げた審議をされることになると思います。この場で内容にわたることは避けたいと思いますけれども、幾ら厚生大臣のお答えをお聞きいたしましても私は納得できませんし、言外に、政府が諮問した案と社会保障制度審議会の意見とは、重大な食い違いがあるにもかかわらず、そのままの形で国会に出てきたということを私としては考えざるを得ません。そのことを申し上げまして次の質問に移りたいと思います。 まことに厚生大臣ばかりに集中して厄日のような形になって申しわけございませんが、サリドマイドの問題についてお伺いをしたいと思うのです。 あした、十年間にわたる懸案であったサリドマイドの問題に関する第一回の公判が開かれることになっております。それを前にいたしましてここ二、三日来急速にあわただしく和解の動きというものが、政府並びに製薬会社のほうから出てきているわけでございます。これらに関連して政府の所信をただしたいと考えるわけでございますけれども、東京地裁に、和解の取り扱いをしてもらいたい、こういうふうに申し入れに行ったのは、政府ではだれとだれですか。厚生大臣並びに法務省当局にお伺いをしたいと思います。
○内田国務大臣 会社側からは、私の聞いておりますところによると、社長とそれの補佐者、政府側からは、厚生省からは課長並びに課長の補佐、また、こういう訴訟につきまして、政府を代表して訴訟当事者になっておられる法務省の担当官でございます。
○和田(春)委員 それは別々に行かれたのですか。製薬会社と政府の係官とが同道して行かれたのですか。
○香川説明員 法務省の訟務部長でございますが、私からお答え申し上げます。 共同被告になっております国の指定代理人としまして、厚生省の薬事課長と法務省訟務部の第二課長、それに相被告でございます大日本製薬の代理人と打ちそろって和解の申し入れに参りました。
○和田(春)委員 これは厚生大臣にお伺いしたいのですけれども、現在の裁判は、サリドマイド児を持つ親たちが原告団になって国と製薬会社を訴えているわけです。そういう意味では国も被告、製薬会社も被告、こういう立場にあるわけですけれども、打ちそろって和解の申し入れに行ったということは、製薬会社と同じ責任を政府もとるという考え方でそういう行動をとられたのか、あるいは製薬会社の応援隊のつもりであるのか、薬務行政全体について監督的な立場にある政府としての考え方はどんなものであるか、その点をお伺いしたいと思うのです。
○内田国務大臣 御承知のとおり、この事件につきましては、製薬会社と政府が相被告と申しますか、共同被告として一つの事件の当事者にさせられております。和解のことにつきましては、国内的の問題とまた国際的の最近の動きと、私は両方の点から考えてまいりましたが、一つは国内的には昨年の七月、これは岐阜地方裁判所に係属をいたしております同じサリドマイド事件の原告から和解の申し込みが被告側にあったということ、並びに東京地方裁判所に係属いたしておりまする事件につきましては、これは昨年の十一月に裁判所当局から和解の意向について打診があった。これは和解の申し入れではもちろんございませんが、被告側として和解の意向についての打診があったというような動きがありますこと、それから国際的には、御承知のとおりこの事件は、西ドイツをはじめ、英国、スウェーデンその他多数国で同様な訴訟事件が起こされておりましたが、これらが諸外国におきまして、裁判上ではなかなか判決がつけにくい、結論がつけにくいということで、全部和解の方向がとられることになった、こういう動きがありますことがもう一つ、それに、私は厚生大臣といたしましては、その二つの状況から考えまして、この訴訟事件の原因究明とか、あるいは責任とかいうことを今後長い闘争っておりますことは、サリドマイド禍といわれるフォコメリーのお子さま方がちょうど小学校にも行くようになりまして、いろいろの意味から福祉的な、あるいは人道主義的な考え方を従来以上にとってまいらなければならない時代に来ているというようなことも考えますときに、これらは訴訟の帰結に放置しておきますよりも、いま申しますような国内、国外の動きをも考えて、そうして会社側が和解の意向を持っておりますことも会社側から政府側に申し入れがございましたので、会社の和解の意思を私どもも支持して、相被告として一緒に出向かせるようにいたしたものでございます。
○和田(春)委員 そうしますと、和解をしたいというのは、会社側が言い出した、政府がそれを支持して、会社と政府が相被告として和解の申し入れに行った、こういうふうに確認してよろしゅうございますか。――質問したことだけに答えてください。
○内田国務大臣 訟務部長がおりますけれども、確めましたところが、それでよろしゅうございます。
○和田(春)委員 そういたしますと、その前提に立って政府にお伺いをしたいと思うのです。この事件については、すでに十年の歳月がたっております。この間サリドマイド児を持つ親たちは非常な辛酸をなめ、苦しみ抜いているわけでございます。和解をするというのであるならば、いままでにも何度もその機会があったと思うのです。その間政府も製薬会社も、一貫して責任を回避し続けてまいりました。何十回にわたる事前の手続を経て、ようやく明日第一回の公判が開かれる、そういう段階になって急速に和解の申し出をするという形になりますと、おそらく和解の内容の条件等について、原告団の方々に十分理解できるような内容を準備し、政府としては財政的にもそういう面についての予定を立てた上で申し出ていると考えられるのですけれども、そういうふうに確認してよろしゅうございますか。
○内田国務大臣 先刻も申し述べましたように、私はいろいろの観点から和解にすることはいいと考えるものであります。またその和解の内容の金銭的な条件、準備等というようなことは、これは原告側との問題もございましょうし、あるいはまた裁判所の示唆もあるかもしれませんので、中身がこれで固まっておるわけではございませんが、国として製薬会社のそういう意向を支持し、私は和解の方向に踏み出すということで申し入れをさせたわけであります。
○和田(春)委員 私は金の問題だけを問題にしようとしているわけではないのです。先ほど来前提を申し上げているように、いまにわかにこれは起きた問題ではないのです。長い間の係争である、そしてようやく明日第一回の公判が開かれようとしている。その間ぎわになって長い経緯がある中で和解をしよう、しかも国が製薬会社を支持して、相被告として和解をしたいという以上、それ相応の腹がなければならぬはずだし、何らかの用意があるはずなんです。責任を認めるとか、父母にあやまるとか、あるいは金銭的にも、施設の面においても、サリドマイド児の将来についても十分なことをやるという腹を持って申し出たのでなければおかしいと思う、時間的に見て。それがあるかないかということをお伺いしているわけです。
○内田国務大臣 この訴訟はサリドマイドとフォコメリー症との間の因果関係並びに責任の所在が争点になっての訴訟であると思います。したがって和解ということになりますと、私は法律上の知識が十分ございませんけれども、その原因、因果関係や、また責任の所在を乗り越えまして事柄を話し合いのうちに、しかもこれは人道的に、また児童福祉の見地から進めることがいい、こういうことでやっております。
○和田(春)委員 質問をしたことに的確にお答えください。そういう和解に臨む条件なり原告団の人たちに、これは弁護団もついておりますけれども、納得できるだけの条件を整えるという腹を持って和解を言い出したのかどうか、用意があるかないかということをお聞きしておるわけです。用意があるならある、ないならないとはっきりお答えを願いたい。
○内田国務大臣 ない、あるという問題ではなしに、和解というものは、和解の意思が先に立って、そしてその中の用意というものは、相手方もあることでございますので、私はだんだん話し合いによって一番いい、円満な方法を見つけていくということが和解の精神だろうと考えます。
○和田(春)委員 ぼくは、とんでもないことだと思いますよ。和解の意思が先に立つというのではなくて、幾ら政府の責任を追及しても、製薬会社を相手に交渉しても、誠意ある態度を全然示さなかった、そういう過去の長い経緯がありますから。経緯を全部ここに書類を持っておりますから、読み上げてもよろしい。そこでサリドマイド児の父母たちも、やむにやまれず裁判に踏み切った、訴訟を起こしたというのが経緯ではないですか。そうすれば和解の意思があるかないかが先に立つのではなくて、政府がそこまで誠意を示すのなら、あるいは製薬会社がそこまで誠意を示すのなら、この際われわれも、いろいろなことがあっても、和解に応じてもいいという気持ちがわき起こるわけであって、そういうものを何も出さずに、十年間苦しみ抜いてきた父母たちを前に置いて、和解の意思が先に立つことが大事だなどということは、全く責任を感じていないということじゃないですか。そういう答弁は納得できません。むしろいまの厚生大臣の言っていることをお伺いしておりますと、明日の第一回の公判を前にして和解のキャンペーンをやって、父母の中にも長い裁判なり争いで苦しくなってきている人もいる、そういう心理的な動揺をねらって、裁判を政府側に有利に展開をする、製薬会社に有利に展開をするために、政府が突っかい棒をやっておる、相棒になってやっておると解釈されてもしかたがないじゃないですか。これだけ長い間苦しめてきた場合に、和解をするというのなら、和解の意思が先に立つのではないんですよ、和解に応じてくれるような条件ないしは誠意を示すということが、政府としては大前提でなければならぬと思う。もう一ぺんお答えください。
○内田国務大臣 訴訟事件として提起されておったわけであります。これは製薬会社並びに政府が訴訟上の当事者になってしまったわけでありますから、訴訟で因果関係並びに責任をどこまでも突き詰めていくというたてまえで訴訟に出されておると思いますが、私は自分が考えてみましても、この種の訴訟、しかも外国の例などを見ましても、なかなか片づかない訴訟を、訴訟一本で因果関係等を突き詰めていくことは、児童福祉の見地から、また人道上の見地からも適当でないので、何らかの和解の内容を突き詰めながら、和解の方向で行くことがいいと考えまして、先ほども申しましたように、今回の措置をとらせたわけでございます。そういう気持ちで和解の道を選ばしておるわけでございます。
○和田(春)委員 厚生大臣は、非常に事実認識を間違っておると思うのです。こういう問題が起きた初期に、政府が誠意のある態度で事件の解決に当たる、あるいは製薬会社等に指示をして適切に救済対策をとらせておれば訴訟にならなかったんですよ。しびれを切らして訴訟に持ち込まれた。訴訟に持ち込まれた結果、因果関係を争うということを、政府のほうが被告として対抗するために、サリドマイドとサリドマイド児との間には直接の因果関係がないということを突っぱっているのじゃないですか。そして因果関係を争うことは非常に時間がかかるからこの際和解で解決したほうがいいというなら、なぜそのことを、いまから何年も前にやるチャンスが幾らもあった、そのとき言わなかったのですか。当時内田さんは厚生大臣ではなかったのですけれども、政府の責任ある閣僚として、なぜその前の時期にそれを言わなかったのですか。いまそういうことをおっしゃるなら、そのことをお伺いしておきます。
○内田国務大臣 当時私はその指導的地位になかったわけでありますが、当時の薬学上の技術レベル、知識のレベルにおきましては、フォコメリー児の発生がサリドマイドに原因するという、そのことではないという考え方を、わが国ばかりでなしに諸外国でも持っておったようでございます。それに対しまして、さような障害児が生まれた当事者の方々は、あくまでもその因果関係と責任を追及するということで、わが国ばかりでなしに諸外国とも訴訟になって今日まで来たわけでございまして、あるいは私がそのときおりましたら、諸外国では訴訟になったにいたしましても、私はこんなものは訴訟にするよりも、会社を指導して円満に解決するようにという努力をしたかもしれませんが、しかし残念ながら私はそのときはおりませんで、諸外国並みに訴訟になってしまいました。しかし私が昨年就任をいたしました当時から、会社側も、正直に申しますと、和解の気持ちを私に示してまいりました。また諸外国におきましても訴訟では片がつかないということで和解の方法がとられるようになってまいりましたので、私はそれがいい、わが国もそういうことをやるべきだということでそれをエンカレッジし、そして法務省にもその意向を伝え、また今後国に一体どれだけの誠意と用意があるか、というお尋ねがございますが、そういうことにも関連することと思いまして、大蔵省のほうにも和解で行くべきだという私どもの考え方を伝えまして、そして和解に踏み切らせておる。しかしこれは原告の方々が和解に応ぜられるか、また裁判官がこの和解の申し出に対してどういう示唆をされるか、また和解の内容につきまして、どういう和解のあっせんといいますか、調停といいますか、私はそのほうの訴訟手続のことの専門ではございませんので、ことばづかいはわかりませんが、そういう手続がだんだん進んでいくと思いますけれども、私は少なくとも人道主義的な厚生大臣として、また児童福祉の面から、そういう気の毒な子供さんたちが物心両面において救われていくことを深く願うものでございます。
○和田(春)委員 この問題はただいま厚生大臣もおっしゃられたように、私は野党が政府を追及するというような考え方で質問しているのではないのです。人道的に非常に重大な問題と思うのです。しかもこれは天災ではなくて人災によって生じている、そういう問題だと思います。 そこで具体的に少し質問を進めていきたいと思うのですが、厚生大臣はケルシーという名前の人を御存じですか。
○内田国務大臣 正直に申して、知りません。
○和田(春)委員 このケルシーという人は、アメリカの薬務関係の役人であります。このケルシーという人は、年数でいいますと昭和三十五年の九月、アメリカの食品薬剤管理局に対してW・S・メレル社がサリドマイド剤の販売許可を申請したわけであります。そのときの管理局のケルシー女吏は、安全性が確認できない、こういう形で再三にわたってその申請を差し戻しておりました。アメリカではサリドマイド剤は売られなかったわけです。その功績によってケルシーさんは表彰されております。それは昭和三十五年のことでございます。その後にも日本ではサリドマイド剤が売られ続けておった。厚生省は何らの措置をしていない。人道主義的な大臣としてとおっしゃって、このケルシーという人の名前さえ知らないということは、そういう事実があったことを厚生大臣は御存じないということですか。
○内田国務大臣 これは、世界の十数カ国で、このサリドマイドに原因するといわれる事柄が紀こったことは聞いておりますが、アメリカではそのことが起こらなかった。いまおっしゃるとおり、ケルシーという人の名前は、私は浅学非才にして知りませんけれども、アメリカではこれを上陸させなかったということは聞いております。
○和田(春)委員 そういう事実があったにもかかわらず、そういうことに深く考慮を払わずに、こういうまことに不幸な事態を引き起こす薬が日本では売られ続けておったわけです。この問題について西ドイツのレンツ博士が非常に大きく取り上げて告発をしたということは、厚生大臣、お聞きになっていると思います。そのレンツ博士のキャンペーンによって、西ドイツでは昭和三十六年の十一月にサリドマイド剤の販売が停止をされているわけであります。そういう情報が日本の会社にもたらされたのは、何年の何月何日か御存じですか。厚生大臣が御存じなければ事務当局から……。
○武藤政府委員 三十六年十二月三日でございます。
○和田(春)委員 その情報がグリューネンタール社から日本の大日本製薬会社に知らされてきているということは、いま薬務局長の答えたとおりであります。それを受けまして、十二月六日に厚生省と大日本製薬が打ち合わせをしたという事実がございますけれども、その打ち合わせにおいて何を相談したのですか。ここで打ち合わせの内容を知らしていただきたいと思います。
○武藤政府委員 動物実験を行なうということと、早急に西ドイツについて調査をするという二点でございます。
○和田(春)委員 これはすべてではないはずです。十二月の六日に打ち合わせした結果を私たちが承知しているところによると、レンツ報告でいろいろな議論があるけれども、すぐに回収するというような医薬品、これを排除して社会不安を起こすと困るから、そのままにしておこうということを相談したのじゃないですか。
○武藤政府委員 そういう事実はないと思います。
○和田(春)委員 ほんとうにそういう事実がないですか。断言できますか、もしあとで事実があったということがわかったら、あしたから裁判も行なわれるのですよ、重大な食言をしたことになりますが、よろしいですか。
○坪川委員長代理 武藤君、すみやかに答弁してください。
○武藤政府委員 販売を直ちに中止するということについては慎重な扱いをする、というふうに相談しております。
○和田(春)委員 ずいぶん歯切れが悪いのですけれども、そこで相談した結果は、いま半ば事実を認められましたけれども、販売を直ちに中止することはしないということを申し合わせているはずです。そういたしますと、政府も製薬会社と相談をして、すでにアメリカでは、これは危険だからといって、その薬品は売らせないということを政府当局が防波堤になってやっておった、西ドイツでは、レンツ博士の告発以来、そういう問題がどんどん出てきて、すでに十一月の二十六日にそういう薬品の販売停止の措置がとられておるという事実もあるにかかわらず、売らせ続けるということに対して、厚生省は片棒をかついでおったという事実がここに確認できるわけです。そういうふうに確認してよろしいですね。
○武藤政府委員 まあ慎重な態度をとった、こういうことでございます。
○和田(春)委員 危険性があるかないかわからぬから慎重な態度をとって発売をさせない、慎重ということばはそういうときに使うんですよ。すでに問題が起きておって、ヨーロッパでは発売をとめている。問題があちらこちらで報道されているときに、現に売られている薬をすぐそれではとめる、回収をさせろ、そしてそれがほんとうに害があるかないかということを調べるというのが慎重なんであって、事件が起きているのにその薬の発売中止をさせない、続けて売らせ続けるというようなことが何が慎重なんですか。全くこれは職務怠慢です。人間の罪をそういう罪のない子供たちに負わせることについて、政府は責任があるんじゃないですか。厚生大臣、このことについてお答えください。
○内田国務大臣 当時の事情は私はわかりませんけれども、不安を醸成することに慎重であったというようなただいまの答弁であったと思います。しかし私が今日的に見て考えますと、これはまあ決しててまえみそを並べるわけではございませんけれども、たとえばスモン病についての原因であるかもしれないというようなことでキノホルムというような薬が浮かんでまいりました際に、私はすぐとめろということでとめさしたわけでございますが、その当時と今日と、社会のこういう問題に対する意識が違っておったり、あるいはまた、私も少し事情も確かめましたが、そういう薬がほんとうに胎児に悪影響を及ぼすかどうかというようなことについてネズミの実験を重ねたり、いま和田さんのおっしゃる意味のうしろ向きの慎重さをとっておったというような、そういう時代であったように私には考えられる点もあります。
○和田(春)委員 厚生大臣、うしろ向きの慎重さであったということを認めるという形でやや反省をされているらしいようでございますけれども、何度も言いますけれども、わからぬものじゃなくて、すでに事が起きておったんですよ。しかもこの薬は日本でつくったものではなくて、西ドイツから輸入をしてきた薬なんです。そうなんですね。それについてすでにその発売元並びに日本よりも先にそれによる睡眠薬が発売されているところで、この睡眠薬を妊娠の初期に飲むと耳のない子供が生まれる、あるいは妊娠の中期に飲むと手のない子供が生まれるとか、あるいは内臓に欠陥のある子供が生まれるとか、悲惨な実例が一ぱい起きておったんです。そのときに直ちにとめるべきじゃないですか。それをとめずにほっておいたから、日本においても不幸なお子さんがたくさん生まれたんです。そのときに薬務局長は慎重な態度をとったということを言われますけれども、私はそれでは厚生省の薬務関係の人は、西ドイツやヨーロッパでそういう事実が起こっているということを知って、自分の肉親の妊産婦の方々にこのサリドマイドを含んだ薬を飲ませましたか、はっきり答えていただきたいと思うのです。
○武藤政府委員 そういう事実については十分わかりません。
○和田(春)委員 そういう無責任な人が薬務局長なんかをしているからこういう薬品公害が起こるんですよ。自分の肉親に、こういうことを口にするのはたいへん気の毒ですけれども、アザラシ状の子供が生まれたということを考えてごらんなさい。 それでは先に質問を進めますけれども、先ほど薬務局長は直ちに動物実験をやる、そういう事実について調査をするということをきめた、こういうふうにおっしゃっておりますけれども、厚生省から調査官がヨーロッパへ出かけたのはいつですか。
○武藤政府委員 三十八年に平瀬課長が参っております。
○和田(春)委員 西ドイツのグリューネンタール社からレンツ博士の情報が日本に来たのが、昭和三十六年の十二月三日です。それが昭和三十六年の十二月の六日に厚生省と大日本製薬が打ち合わせをしている。慎重な態度をとるということを言った。そして先ほどあなたはここで調査をすぐやるということを相談をしたと言っておりました。調査に行ったのは、いまあなたがおっしゃったように昭和三十八年の五月です。一年六カ月たっているのです。厚生省ではすぐに調査を始めるということは、一年六カ月、間をおいてから、ゆるりと出かけることを意味しているのですか。
○武藤政府委員 大日本製薬のほうで一月に責任者が西ドイツに調査に参っております。
○和田(春)委員 それは知っておりますよ。しかし、その当時のことは発表されておりますように、三十七年の一月十二日に行っておりますけれども、レンツ報告は科学的な実証に基づくものではないんだ、販売停止というのは、たいへんセンセーショナルな新聞やマスコミの関係でそういうことになっているので、関係ないという結論を出したのが大日本製薬じゃないですか。いま薬務局長は、大日本製薬が翌年の一月に調査に行っているから厚生省はゆっくり行ったというなら、その三十七年の一月の段階においては、大日本製薬の調査員が行って帰ってきた、そういう報告を厚生省としてもそっくりそのまま調査をせずにお認めになったわけですね。お伺いしたいと思います。
○武藤政府委員 その調査につきまして報告を聞いて検討を続けておった、かように考えます。
○和田(春)委員 ここではなかなか言質をとられまいと思ってやっておりますけれども、厚生大臣、いまのやりとりでおわかりのように、全く当時の厚生省の状態というものは、いまのやりとりでも判断されるように、この問題については業者サイドにべったりで、薬を売らせることに対しては非常に寛大な措置をとっておって、そういう不幸な事態が起こるということについては、何らの責任感を感じていなかった、こういうふうに私は認めざるを得ないと思うのです。そのために死産した人も含めまして、たくさんの不幸な子供が生まれている。裁判では因果関係を争うといっているけれども、サリドマイド剤の発売が中止になってからほとんどサリドマイド剤に基因すると考えられておる症状のお子さんは生まれていない。そういう点から見ても蓋然性というものを考えれば、当然このことについてもっと慎重でなければならぬはずです。 そこでちょっと観点を変えて御質問いたしますけれども、佐藤内閣がずっと続いているわけであります。厚生大臣はちょいちょいかわっておられます。しかし少なくとも佐藤内閣の閣僚である大臣が言明をしたことについて、その後取り消していなければ今日の大臣としても同様責任を負う、われわれはそう理解したいと思うのですけれども、そのように理解してよろしゅうございますか。
○内田国務大臣 お尋ねの意味が必ずしも私ははっきりいたしませんでしたが、薬の問題につきましては、佐藤総理大臣をはじめ私も、最近、就任以来非常に神経質にできるだけこれは安全性の問題、またもちろん効能、効果の問題もありますが、それを重視してまいるべきだという立場から、私は、厚生省の職員も思い切った指導をいたしておるものでございますので、もし従来厚生省のとった薬品行政について御批判がありますならば、それは私微力ではございますけれども、私の時代にはぜひ改めさしていただきたいという、そういう熱意は私は持つものでございます。
○和田(春)委員 抽象的にお伺いしたのでなかなかお答えにくかろうと思うのですけれども、昭和四十三年の五月七日、第五十八国会の参議院の社会労働委員会で、委員からの質問に答えまして園田厚生大臣が答えております。やはりサリドマイドに関する質疑の最後に、これは議事録に載っておるのですけれども、こういうことを園田厚生大臣は言っております。「答弁は要求されませんでしたが、あらためて申し上げておきます。国の責任でもありまするが、同時に、先ほど申し上げましたとおりに、両親並びに」これはサリドマイド児の両親ですよ。「両親並びに本人に対する謝罪の意味においても、早急に確実に予算的措置をしてこれの解決に尽くすことを申し上げておきます。」佐藤内閣の閣僚である園田厚生大臣がこういうふうに答えているわけです。国会の議事録に残っております。この精神は今日においても内田厚生大臣、そのまま引き継いでおられると理解してよろしゅうございますか。
○内田国務大臣 そうでありたいと思います。
○和田(春)委員 ありたいでは困るんですね。四十三年のことでございます。そして「謝罪の意味においても、早急に確実に予算的措置をしてこれの解決に尽くすことを申し上げておきます。」こういうふうに言っておるわけです。その予算措置というのはどういうのをとられましたか。もし厚生大臣おわかりでなければ、大蔵大臣にこれをお伺いをしたいと思います。
○内田国務大臣 ありたいと申し述べましたのは、他の、前任者の厚生大臣が言われたことでありますが、それは私が言ったことと同じようにありたい、こういう意味で私は園田さんの言われたことをぜひ引き継いでまいりたいと思います。私がこの問題について特に準備を深くいたしたというわけではございませんが、園田さんは、その言明の反射的な行動としてでございましょうか、製薬会社一般から一億円のお金を集められて、そしてフォコメリー児の対策をも含めて、身体障害児の施設の充実等に貢献されたということを私は聞いておりますし、またその後政府が予算的にやっておりますことは、何と申しましてもああいう身体障害でございますので、電動義手のようなものを、私はこれはまだ十分開発されているものとは思いませんけれども、ここ一、二年の間に開発されたものではございますけれども、そういうものをできる限りこういうお子さまに無償で差し上げたり、あるいはまた育成、保護と申しますか、必要な場合には適当な施設に収容をいたすこと、さらにまた御家庭の所得状況によりましても違うと思いますが、いわゆる身体障害児をかかえられる御家庭に支給いたしますところの特別児童扶養手当というようなものをしっかり支給するというようなことを、今日、園田さんの時代からされておるわけでございまして、私どももさらにこれらのお子さまに対する施策として、より確実なものを見つけまして、できるだけのことをしてまいりたいという気持ちを持つものでございます。 〔坪川委員長代理退席、委員長着席〕
○和田(春)委員 財政的な措置ということになりますと、そういう非常に困難な立場に置かれている人たちに対して救済をするということがあります。もう一つはサリドマイド児、一般にフォコメリー症といわれておりますけれども、たとえば頭脳とか、そういう点については常人と全然変わらない。ところが厚生大臣も御承知と思いますけれども、非常に手が小さくなってしまって全然使えない。そういう人たちに、せめて人並みに近い生活をさせようと思えば、義手が必要だと思います。そういう義手について開発を多少手助けをしたということはございますけれども、政府はそれの開発についてすでにもう終わったという形で、昭和四十五年で特別研究費を打ち切っておるんですね。そうすると、今日の状態において、それらの義手は将来これらの子供がだんだん育って大きくなっていっても、十分用を便ずるに足る、国際的な水準で見ても、これはほぼ完成に近いといいますか、十分なものである、そういうふうに判断をして、義手に対する特別研究費を昭和四十五年で打ち切ったのでしょうか。その点をお伺いしたいと思います。
○内田国務大臣 これは研究を打ち切っておりませんで、昭和四十六年度以降は費目を変えまして、特別調査費の中から、たとえば昭和四十六年度におきましては三千万円を支出していただけるように申請を準備いたしておる、こういうことでございますので、私がさっき、ちょっと十分準備をしない発言の中で申しましたが、電動義手というものはこの一両年の開発であって、十分ではないようでありますが、そういうこともいたしておりますと申しました私の気持ちは、あれでもう開発の必要がないんだということではない、私のすなおな気持ちを表明したことにもなるものと御理解いただければ幸いでございます。
○和田(春)委員 四十六年度からそういう措置をとりたい。四十六年度はまだこれから始まるわけでありまして、始まっていないわけなんですね。ですから、現状を重点に置いて考えていかなくちゃいけないわけですけれども、子供は年とともに育っていきます。そうなりますと、大きくなったからだに合わせた義手も必要であります。そういうような点について、この不幸な星を背負ったお子さんたちは、生涯を通じてそういう不自由な目を見なくてはいけない、そういう点に政府は今後とも、毎年毎年予算を増大しながら、成長していくにつれてそれにふさわしい義手の供給を約束をする、そういう決意があっていまの答弁をされたのかどうか、お伺いしたいと思います。
○内田国務大臣 身体障害者の方々、特に子供たちを育成、保護することは私どもの任務でございます。また、一定の年齢を過ぎればおとなになるわけでありますので、私はいまのお尋ねの点につきましてはそういうことを当然にやってまいりたいと思うものでございます。
○和田(春)委員 予算委員会の時間も限られております。押し問答をしておってもなかなからちがあかぬと思いますけれども、いままでの御答弁によって、内田厚生大臣としては誠意をもって当たりたいというニュアンスのことがあったのですけれども、私は裁判の中身には介入いたしません。これは原告団があくまで争うという形になれば、裁判で争われることでしょう。また、和解をするという形になれば、それは話ができたときに和解ができることであります。しかし、この席上でこの質問をした以上、厚生大臣に確認をしておきたいことがあります。先ほど園田前厚生大臣の気持ちを、そのままでありたいということをおっしゃいました。少なくとも道義的な、政治的な責任というものは痛感をして、この不幸な子供たちのために政府としては万全の対策をとる、それは現在の佐藤内閣の厚生大臣として、一内田個人ではなく、閣僚として責任を持ってここで言明をしていただけますか。
○内田国務大臣 私は、その原因が何によるとを問わず、フォコメリーの子供さん方の一生につきましては、できる限り国が力を貸していきたいという気持ちを変えません。
○和田(春)委員 ただいま厚生大臣の決意は、十分政治的責任を感じながらやるというふうに理解をいたしますが、予算の裏づけがなければできません。ここで大蔵大臣にお伺いいたしたいのですけれども、そういう政府の措置について十分な予算措置を講ずるという点に、大蔵大臣としても応ずるだけの用意は持っている、かように理解をしてよろしゅうございますか。
○福田国務大臣 たいへん大事な問題でありますので、親身になって厚生大臣の相談にあずかりたい、かように存じます。
○和田(春)委員 それではただいまの大蔵大臣の御答弁について、政府側も誠意ある措置をとるものと理解をいたしまして、この問題の質問はこれで終わりまして、次に移りたいと思います。 残りも少ないので、通告した質問の中で一点にしぼりたいと思うのです。御承知のように国有農地の売戻し問題につきまして、非常に世論が騒がしくなってまいっております。この点について昨日から本日にかけましてのマスコミの報道等によりますと、政府も何らかの措置をとりたい、こういうことでいろいろ御相談になっているらしいのでありますけれども、いまのこの時点において、どこまでの相談とどういう対策をお考えになっておるか、農林大臣にお伺いをいたしたいと思います。
○倉石国務大臣 この前ここでお答えいたしました、つまり政府が政令の改正に踏み切りました動機、それから理由等につきましては、もうくどくど申し上げる必要がないと思いますが、そのときにも政府の方針を明らかにいたしましたように、私どもといたしましては、ああいう判決が下ります前、つまり下級審においては政府側の主張がいれられておったわけでありますので、したがって、ああいう残っておる土地をできるだけ公共の用に供したい、こういうつもりでおったわけでありますが、今回の判決では、そういうような解釈は法意を広げ過ぎているという、無効なものであるということになったものでございますが、しかし、その判決の御趣旨は十分尊重いたさなければならぬが、ひとつ地主さんに対して政府側から、政府側としてはこれこれのような公共の用途に使いたいんだという考えであるから、そのようにお願いをいたしたいというようなことで、できるだけその目的を達成されるようにしようではないかというので、農林次官を中心にいたしまして関係省集まってもらいまして、調査の上で、いま申しましたような目的が達成されるようにいたしたいということで、いま研究を進めておりますが、しかしながら、それだけのことでなくて、なお多くの問題が提起されております。したがって、法制的にも一般社会常識的にも、やはり何となくああいう措置を講じた当事者であるわれわれもあと味が悪い感じが、率直に申せばあるわけでありますので、そういうことについてどのようなことができるであろうかということで、ただいま係官等で検討を鋭意進めておる、こういう最中でございます。
○和田(春)委員 実はこの問題が新聞、テレビ等を通じて報ぜられまして、そのときちょうど私はある会合に出ておったのです。そこにおった人たちが一様にあ然といたしまして、ちょうど高校生の女の子がおったわけですけれども、こんな値段で売るのだったら、私のおこづかいでも千坪の地主になれるわねと、こういう話がありました。それぐらい国民常識とかけ離れた取り扱いだったと思うのです。法律的な問題はさておきまして、三・三平方メートル当たり二円五十三銭といいますと、一平方メートル当たりわずか七十七銭でございますから、このごろの若い人たちは、そういうお金は聞いたこともないし見たこともない。そういうことが一般の国民ないしは市民の常識としてはすぐびんとくる。にもかかわらずこういう措置が出された。その後に、これは新聞の報ずるところでありますから真偽のほどはわかりませんけれども、十五日に官房長官と農林大臣が御相談なすって再検討した結果、既定方針どおり行くということを確認したと、こういうふうに書かれているわけでありまして、官房長官にお伺いしてみようと思っておったのですが、おられません。当事者の片方である農林大臣に、何を再検討されたのか、その段階においても、十五日の段階ですよ、なお既定方針どおり行くというふうに確認をされたという理由は何であったのか、その点の御説明を承りたいと思うわけです。
○倉石国務大臣 新聞には、私も見ましたけれども、ただいま和田さんおっしゃったような記事がありましたけれども、実はちょうど予算委員会のほうが何かの都合で休憩になっておりまして、それで本省へ帰るのも時間がどうかと思いまして、官房長官の部屋に行きましたら、ちょうど官邸で食事を一人でやっておるというので、それならばひとつ行きましょうということで、小一時間いろいろなよもやま話をいたした。その中には、やはりこの問題ももちろん出ておりますが、あとでどなたかが会見されたかどうか、しかし私は特にそのことでいわゆる打ち合わせということではないのでありますが、私が官房長官に会いますその前に、きょう予算委員会でこういう答弁はいたしましたよということを申しましたのは、どのように検討いたしましても、やはり最高裁で、農林省が法八十条によって持っておりますこの政令十六条は違法なものであると判断されておるのであるから、これはやはり憲法その他の法律を尊重して最高裁の判決に従わざるを得ない。法律的にはそういうことであるが、しかしながらどうも、さっきも申しましたようにあと味が悪い。実は私、四十一年に同じこのケースを閣議にかけましたときにも、私が農林大臣をしておりましたので、事柄をよく知っておるわけでありますが、あのこと以来、農林省の中で学者先生たちに集まっていただいて、この問題の研究をやっておったわけでありますが、四十二年になって、最高裁に係属されてしまいましたので、これは最高裁の御判断を待つのが当然であろう、こういうので、まあ停滞をいたしておって今日になった、こういう過程でありますので、法的措置をとらざるを得なかったということについては、これはもうやむを得ないことであろう、そういうことを話しました。そのことだろうと思うのであります。
○和田(春)委員 新聞に報ぜられているように、官房長官と具体的に打ち合わせして再検討したことではないというお話でございます。本件に関してこの予算委員会でも質問が行なわれておりまして、農林大臣は、いまもそういう趣旨のことをお話しになりましたけれども、最高裁の判決が出た以上あの措置をとらざるを得ない、こういう答弁を繰り返しておられたと私は記憶いたしております。ところが昨日、法務委員会におきまして、わが党の岡沢委員が質問したことに対し、最高裁の瀬戸行政局長は、農地法の八十条に基づいてきめられました施行令の十六条については、法本来の趣旨よりも非常に狭く規定をされておるから、そのこと自体は違法の施行令と言わざるを得ないという趣旨の判断を示しておりますので、施行令をそういう判決の趣旨に従って変えるということについては、これは判決に従ったということになるけれども、売り戻すときの価格について最高裁の判決は何らの判示をしていない、そういう趣旨の答弁をしているわけでございます。そういたしますと、昨日のこの予算委員会で政府側答弁として繰り返し言われました、価格の問題も含めてあの措置は最高裁の判決に従う余儀なき方法であったということとの間に食い違があるように思うのですけれども、その点はいかがでしょうか。
○倉石国務大臣 最高裁から出てまいりました者がどういう答弁をいたしましたか、実は速記録ができたら取り寄せろということを言っておるのでありますが、私は、他人のやりました答弁について批判はいたしませんけれども、私どもの理解いたしますところによりますれば、あそこに対価相当という、相当とする事実が客観的に生じたときは旧所有者は売り払い請求権を有する、こういう判断をしております、その対価の相当ということでありますが、和田さんも御存じのように、政府が自作農創設のために買収いたしております土地に対して、いろいろ土地改良であるとか耕地整理であるとかという付加価値の問題がございます。そういうときには買収した価格にその耕地整理その他の経費を加算して売り渡しておりますから、その売り渡す元本の金額は政府が買収いたした当時の価格、これを相当価格といっておりますので、やはり法意はそのように読むべきものである、なるほど最高裁の判示を読んでみますといろいろな、その買収した当時の価格という文句は書いてございませんが、あの判決を全部通覧されたと思いますけれども、専門家の意見を聞きましても、やはり私がただいまここでお答えいたしましたのが判示の精神である、このように理解いたしておるわけであります。
○和田(春)委員 私も最高裁の判決文全部二回も三回も読み直してみました。そこで問題になるのは、いま農林大臣は、買収した当時の価格に、耕地整理費とか、そういうものを国が負担したときには加えろというふうにお答えになりましたけれども、農地法の八十条の第二項には、買収したときの価格というふうに書いてない。「その買収の対価に相当する額」、こういう表現になっているのですけれども、いまの農林大臣のお答えによりますと、この「相当する額」というのは買収の対価と同額――そういう別の日本語があるのですけれども、全く同じ同額、こういうふうに解釈して誤りないというふうに聞こえるのですけれども、そういうふうに理解してよろしいものかどうか、お伺いいしたいと思うのです。
○倉石国務大臣 相当な対価というのはただいまお話しのように解釈をいたしておりまするし、今日まですでに二千数百ヘクタールにわたって、何年かの間に売り渡しておりますが、いま私が申し上げたような同様のやり方で売り払っておるわけであります。
○和田(春)委員 いままでにも国が自作農創設のために買収した農地を売り渡しておりましたけれども、これは施行令の十六条がございましたために、たいへんその場合には限定をされておりました。公共の用にこれを供するという点で、たいへんシビアな条件が付されておったと思うわけです。しかし今回の最高裁の判決に従って政令を改正をしたという形になりますと、これは公共の用に供するという条件のもとに売り戻すのではなくて、ともかく地主から請求があったら、農地改革の目的に使わなくなったものは売り戻すという形になりますから、パチンコ屋に使おうがキャバレーをつくろうが、あるいはそれを転売をしてもうけようが、自由かってであるという状況に変わるわけなんです。そういう状況のもとで、なおかつ従来にそういう幾らかの実績があったから、今回も政令改正後も、同額でなければならぬという形は、著しく公平の概念というものに抵触をする。一般市民の常識というものに反する。これは盛んに新聞等でもいわれているわけですけれども、われわれはそう考えるわけなんです。そこで法的な措置いかんは、別にしまして、農林大臣の気持ちとしてやはりおかしいとお考えになるかどうか、お伺いしたいと思うのです。
○倉石国務大臣 私も法律論は不得意のほうでありますが、今度の判決が出ましたので、まあずいぶんいろいろな方にお目にかかって講釈を承ったわけでありますが、法律論は、したがって内閣でも、昨日でありましたか一昨日でありますか、統一して発表いたしておりますので、ああいう考え方でございますが、さて一般論としてどういう感じであるかという、ただいまのお話しでございます。このことは先日この席でどなたかの御質問にも率直にお答えいたしたわけでありまして、四十一年の何月でありますか、私が内閣に入りまして間もなく、つまり前の日に次官会議というので事務的な打ち合わせがあって、翌日それに基づいて閣議に提出いたしたのでありますが、いかにも、どなたもこれはどういうものだろうか、もう少し公共の用に供せられるという幅広い考えで対処すべきではないか、それが一般国民にも喜ばれることではないか、ことに現状と違いまして、そのころ下級審では政府の考え方が認められておった時代でありますので、したがってもう一ぺん考え直そうということで、撤回をいたして、ずっと今日に至った、こういう経路でございますので、そのころからこれはひとつ何とかもう少し公共の用に供したいものだ、こう考えあぐんで研究もしておった、そういう事実でございます。ところが今度は先ほどあなたのお話がありましたように、この八十条に基づいてつくっておる政令が法意の解釈を広げ過ぎている、こういうふうなことで、これは無効であるというようなことになりましたので、法律的には内閣が決定いたしました方針のようにせざるを得ないが、できるだけひとつ一般の皆さんのお考えもそうであるし、私ども自身が、まことに申しわけない話ですけれども、判決のことをそのままやればあと味が悪い感じがぬぐい切れませんので、何とかならぬかということで検討をいたしておる、こういうことであります。
○和田(春)委員 この問題について、私は農地法をこのままに置いておいたということから派生をしている問題だと思うのです。特に最近のことでいいますと、御承知のように昭和四十四年に都市計画法が実施をされまして、この都市計画法は私が申すまでもなく市街化地域と市街化調整地域に分けて、市街化区域については優先的に市街化のいろいろな仕事を進めていくというたてまえに立っているわけであります。この法律ができれば、当然線引きをやって市街化地域に含まれるところにこの種の問題が発生するであろう、こういうことは予測されたはずなんです。したがってその際に農地法の改正なり何なりというものを、政府のほうでいち早く手を打っておけば、今日のような事態は避けられたかもわからない。しかし死児の年齢を数えてもいたしかたがございません。質問の残り時間もきわめて限られておりますので、端的にお伺いをいたします。 これは農林大臣か、あるいは建設大臣か大蔵大臣、どなたでもけっこうでございますけれども、この問題を何とかしようとする場合に、一つは政令はそのままにしておいても、価格の面において時価で売り戻すように、何らかの法的措置を講ずるということがあると思います。もう一つは農地法を改正をいたしまして、これによる不当利得を防ぐということがあると思います。さらにまた税制上の問題もございますが、これはもうけを多少少なくするというだけで、私は効果的な手段であるとは考えられません。さらに進んでいえば今回の政令の改正を撤回されまして、新たな見地に立って考え直すということが必要でありますけれども、目下検討の内容は私が例示した中のどれかの措置ないしはそのかみ合わせということについて検討されておるのか、全然別のことを検討されておるのか、その点をお伺いしたいと思います。
○倉石国務大臣 私ども確かに都市計画法などその後つくりましたのですから、お話のようなことについても、実はその当時も部内で考えたこともございますが、しかし一方、法律家に言わせますというと、やはり問題が、国が被告になって、国民から訴えが起きて最高裁係属中であるので、それに対して判断が出ないうちに独断でいろいろなことをやったと思われることも、行政府としてはいかがなものであろうかというふうなことで、慎重にしてしまったという、そういうことはございます。 さてそこで、ただいまいろいろな例示をなさいましたけれども、前々から申し上げておりますように、法律的に判断いたしますと、最高裁の判示の精神をくつがえすような立法ということは政府としては困難ではないか、こう思っておりますが、そのほか先ほど来ちょっと申し上げましたような行政的なことで、できるだけのことをいたしたい、こういうので検討をいたしておると御理解願っていただきたいと思います。
○和田(春)委員 最後の一間を大蔵大臣に伺いたいのですけれども、この問題は元農地であるという形で、まあ農林大臣の御所管になっているわけですが、事は国有財産の売り戻しとか処分に関することでございまして、まことに国家財政緊急のおり大蔵大臣としても頭を痛められておるのですけれども、一平方メートル七十何銭という非常識な値段で売り戻すということはまことに困ったことだと思うのです。どういう措置をとるという具体的なお答えはむずかしいかもわかりませんが、あのままではなく善処をしたい、するつもりであるということをここでお約束願えますかどうか、その点を確かめたいと思います。
○福田国務大臣 私も、この問題は、いろいろの角度から検討してみました。どうも、最高裁の判決が出ました、その判決の趣旨を守りながらこの問題を処置するというと、この間出しました政令改正、こういう線に理論的には落ちついていく、こういうふうに思います。ところが、この理論的措置と、社会正義というのですか、社会公平というのですか、そういうわれわれの常識と非常な乖離がある。この点が問題だろうというふうに思うのですが、その乖離を何とか打開する道はないものか、こういうことで、大蔵省の事務当局にも命じまして、農林省や法制局など関係当局と相談を進めておる、こういう段階でございます。中間報告はもう毎日二回ぐらい聞くのですが、どうも最高裁の判決、非常にかたい壁がありまして、なかなか見通しがはっきりしないのでございますが、なおこの上とも最善を尽くしてみたい、かように考えております。
○和田(春)委員 質問を終わります。
○中野委員長 これにて和田君の質疑は終了いたしました。 明十八日は、午前十時より委員会を開会し、一般質疑を続行いたします。 本日はこれにて散会いたします。 午後六時二分散会