法務委員会 第15号
- 発言数
- 41 件
- 登壇者
- 7 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1971/03/26
会議録
○高橋委員長 これより会議を開きます。 民事訴訟法等の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。 本法律案につきましては、去る二十三日に質疑を終了いたしております。 本法律案に対し、青柳盛雄君から修正案が提出されました。この際、提出者から趣旨の説明を聴取いたします。青柳盛雄君。
○青柳委員 ただいま議題となっております民事訴訟法等の一部を改正する法律案に対する私の修正案の趣旨を御説明申し上げます。 その要旨は、 民事訴訟法等の一部を改正する法律案の一部を次のように修正する。 第一条のうち、第百五十条第三項、第百五十一条第四項、第二百七条及び第二百四十四条の改正に関する部分中「、第百五十一条第四項、第二百七条及び第二百四十四条」を「及び第百五十一条第四項」に改める。 第一条のうち、第二百五十条第一項の改正に関する部分の前に次のように加える。 第二百七条に次のただし書を加える。 但シ最高裁判所規則ノ定ムルモノヲ除キ署名捺印ニ代ヘテ記名捺印スルコトヲ得 第二百四十四条に次のただし書を加える。 但シ署名捺印ニ代ヘテ記名捺印スルコトヲ得 第二条のうち、第十七条の改正に関する部分を次のように改める。 第十七条第二項中「署名、捺印」を「署名捺印」に改める。 第十七条第三項中「署名、捺印」を「署名捺印」に改め、同項に次のただし書を加える。 但署名捺印ニ代ヘテ記名捺印スルコトヲ得 第十七条第三項の前に次の一項を加える。 前項ノ署名捺印ハ最高裁判所規則ノ定ムルモノヲ除キ記名捺印ヲ以テ之ニ代フルコトヲ得 第三条のうち、第二十四条第二項、第二十五条第二項及び第四十一条第一項の改正に関する部分を次のように改める。 第二十四条第二項中「署名、捺印スベシ」を「署名捺印スベシ但署名捺印ニ代ヘテ記名捺印スルコトヲ得」に改める。 第二十五条第二項中「署名、捺印スベシ」を「署名捺印スベシ」に改める。 第四十一条第一項中「署名、捺印スベシ」を「署名捺印スベシ但署名捺印ニ代ヘテ記名捺印スルコトヲ得」に改める。 第四条のうち、第四十三条第二項及び第四十五条第二項の改正に関する部分中「及び第四十五条第二項」を削る。 これが要旨でございます。 その理由は、決定、命令は国民の権利に重大なかかわりを持つものであって、その影響が判決に劣らないものもある。裁判官がその作成に慎重を期すべきことは当然であるが、これら裁判書に署名捺印すべきか、記名捺印すべきかを、全面的に個々の裁判官の判断にゆだねるべきではなく、特に慎重を期すべき裁判書の署名捺印については、最高裁判所の定める規則に従うべきものとし、全国的な統一をはかるべきものである。なお、競売法及び鉄道抵当法による競売手続の開始決定は署名捺印を維持すべきである。これがこの修正案提出の理由でございます。 何とぞ慎重御審議の上、御賛同あらんことをお願いいたします。
○高橋委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。 —————————————
○高橋委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決いたします。 まず、青柳盛雄君提出の修正案について採決いたします。 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕
○高橋委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。 次いで、原案について採決いたします。 本法律案に賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕
○高橋委員長 起立総員。よって、本法律案は原案のとおり可決すべきものと決しました。 —————————————
○高橋委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、鍛冶良作君外三名より、自由民主党、日本社会党、公明党及び民社党四党共同による附帯決議を付すべしとの動議が提出されました。 この際、提出者から趣旨の説明を求めます。鍛冶良作君。
○鍛冶委員 自由民主党、日本社会党、公明党及び民社党四党を代表いたしまして、私から附帯決議案の趣旨を説明いたします。 まず、案文を朗読いたします。 民事訴訟法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案) 一、決定、命令の中には、判決におとらぬ重要なもののあることにかんがみ、裁判所は、本改正による記名押印方式の実施にあたり、適正な運用がなされるよう配慮すべきである。 二、政府及び裁判所は、司法制度の改正にあたり、在野法曹と密接な連絡をとり、意見の調整を図るように努めるべきである。 右決議する。 以上でございます。 申し上げるまでもありませんが、裁判は、決定であろうが命令でありましょうが、裁判でございまするから、国民の信頼を得るということが何よりも大切なことだと存じます。それには、その裁判をなしたる裁判官が、自分でやったものであるということの責任をとる意味において、みずから署名捺印するということが私は大原則であろうと考えるのです。またその半面裁判官というものはみずから裁判に署名捺印をするということが一つの誇りであらなければならぬ。こういう意味におきましてできるものならばすべての裁判に署名捺印をすることは、最もいいことだと私は思うのであります。しかし、だんだん事件も多くなりまするし、また、それほど責任を負わなければならぬほどの重大でないものもあるものですから、そういうものにまで一々やっておっては繁雑でありましょうから、それほど国民の権利義務に直接関係のないものならば、記名はひとつ別にいたしまして、捺印だけは責任をもってやるということに変えたらよかろうというのが本法律案の出されたゆえんであろうから、この点にも一理あると思いまするが、問題はどの点までが必要であって、どの点からそれでやってよろしいかという、このことをこの間からいろいろ審議いたしておりまするがなかなかそのめどはつかないのであります。 そこで、いろいろ考えました結果、法律は原案どおりに通しまするが、ここに書いてありますとおり、判決に劣らぬ重要なもの、国民の直接の権利義務に重大な影響を及ぼすようなものに対しては、できるだけみずから署名捺印をするようなことにしてもらいたい、こういうのがこの附帯決議の根本精神であります。 この附帯決議がありますると同時に、今後裁判所におかれましても、だんだんいい慣例をつくりまして、おのずからここらまではやらなければならぬ、ここらからはいいものだという、だれが見てもこれならというふうに納得のいくような慣例ができることを希望してやみません。また、そのようにつとめられることも、ここに書いてはありませんが、その意味においてわれわれはこれに賛成するものでありますから、どうかそういうことにつとめていただきたいのであります。 それから第二の点は、いまさらここで申し上げることではございませんが、今後司法のすべては法務省、裁判所、在野法曹の弁護士会、この三者がうまくいくことでないと、りっぱにいくものでないことはいまさら申し上げるまでもありません。どうも出るたびごとにぼつぼつやることは、私ははなはだ残念だと思いますので、われわれもできるだけのことをつとめまするが、今後は一そうこの点おつとめくださいまして、うまくいかぬようなときには、失礼ながらわれわれもその中に入れていただいてもよろしゅうございますから、それでスムーズに法律も通り、行政事務までもりっぱにいくようにやっていただきたいと、この機会に附帯決議としてこれを出した次第でございます。 どうぞそのおつもりで、今後スムーズにいくことをひとえに希望いたしまして、附帯決議の趣旨説明といたします。
○高橋委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。 採決いたします。 鍛冶良作君外三名提出の動議のごとく決するに賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕
○高橋委員長 起立総員。よって、鍛冶良作君外三名提出の動議のごとく附帯決議を付することに決しました。 ただいま議決いたしました附帯決議に対し、植木法務大臣より発言を求められておりますので、これを許します。植木法務大臣。
○植木国務大臣 ただいまの附帯決議の御趣旨につきましては、とくと了承いたしました。裁判所当局におきましても、この趣旨の周知徹底について努力すると申しておられまするし、政府といたしましても、一、二ともに前向きに十分検討いたしまして、遺憾なきを期する所存でございます。どうぞよろしく……。 ありがとうございました。 —————————————
○高橋委員長 おはかりいたします。 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。異 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○高橋委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。 ————————————— 〔報告書は附録に掲載〕 ————◇—————
○高橋委員長 民法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。 質疑の申し出がありますので、これを許します。岡沢完治君。
○岡沢委員 根抵当につきましては、十分御承知のとおり、実際の商取引においても重要な機能を現に果たしておりますし、明治三十五年の大審院の判例以来、その有効性が認められておりますし、学説も一致してその有効性を肯定しているわけですね。それをこの段階であえて法制化される理由、あるいは逆に明治三十五年の大審院の判例で認められた根抵当が、いままで七十年間も法制化されなかった理由、その両面から考えられると思うのですが、その辺の事情を明らかにしていただきたいと思います。
○川島(一)政府委員 このたび民法を改正いたしまして、根抵当に関する規定を法制化することにいたしました理由でございますが、これは一口に申し上げますと、根抵当に関する法律関係を明確にするということでございます。 御承知のとおり、根抵当は、明治時代から取引界の慣行として行なわれておりまして、現在も非常に広く利用されております。また仰せのとおり、その有効性は判例によって認められております。しかしながら、民法に根抵当に関する基本的な法律関係を規定した条文が一つもございませんので、そのために根抵当の取り扱いにつきまして実務上いろいろ疑問が生じておったわけでございます。このような事情から、取引界におきましては、早くから根抵当の法制化を要望いたしておりました。ことに戦後日本の経済が発達いたしまして、根抵当取引も非常に数多く行なわれるようになりましたのに伴いましてこの改正が急務であるというふう感ぜられるようになりましたので、法制審議会におきましては、すでに昭和四十年ころからこの改正の準備に着手いたしまして、昨年改正の要綱を決定いたしたわけでございます。 そのような次第で、今回の法律案は、長年懸案となっておりました根抵当の法律関係の明確化、根抵当に関する法制化を実現する、こういう線に沿って立案されたものでございます。
○岡沢委員 それはよくわかるのです。が、法律関係の明確化ということは、当然従来からも要請されておったわけです。それが七十年間も放置されて、この段階であえて、まあ悪いという意味ではないのですが、法制化される。戦後取引業界からの要請もあった。しかし、戦後二十六年たっていますね。その間放置されたこと自体に、やはり何か問題点があったからか、法制化に無理があったのか、あるいは法律関係を明確化することに幾らか問題点があったればこそ、明治三十五年の大審院判例で有効性が認められながら従来法制化されなかったのだろうと思うのでございますけれども、それには特別な理由があるのかどうか、なぜ七十年間も放置されていたのかということを聞きたいのです。
○川島(一)政府委員 なぜいままで立法化されなかったかという点につきましては、実は前回の委員会でも申し上げたわけでございますが、根抵当に関する規定を置くとすれば、これは民法に置くことになります。民法は御承知のとおり国民生活を規律する基本法でございます。基本法の改正につきましては、従来から非常に慎重な手続をとっておりまして、法務省におきましては、法制審議会に諮問する、そこで十分な審議を経た上で改正案を作成する、こういう手続をとってまいりました。戦前のことはしばらくおきまして、戦後におきましても、民法の改正はいろいろな点が問題になりまして、法制審議会でも極力懸案の問題を解決するように努力いたしたわけでございまして、根抵当だけが取り上げられたわけではございません。ほかに緊急な改正事項がございましたために根抵当の改正が今日まで実現しなかった、こういう経緯でございます。
○岡沢委員 それでは別の質問に移りますが、従来の根抵当に関連して、裁判上あるいは実務上問題になった点は、どういう点がございますか。
○川島(一)政府委員 それは非常にたくさんの点が問題になったわけでございますが、そのおもな点を少し申し上げますと、まず根抵当権を設定することにつきまして、根抵当権で担保されるべき債権を発生させる基本的な法律関係が必要である、その法律関係というものは一体どういうものであるかという点につきまして、いろいろに説が分かれたわけでございます。一番オーソドックスな見解としましては、基本契約、たとえば当座貸し越し契約であるとか、手形割引契約であるとか、こういった継続的な契約関係が必要であるという説がございましたし、他方反対の立場からは、何もそういった法律関係は必要がない、いわゆる包括根抵当というものも認めて差しつかえない、こういった議論に至るまで、その中間の説を含めまして非常にたくさんの見解に分かれておりました。この点が一番大きな点であろうと思います。 それから第二には、根抵当権の処分につきまして、たとえば根抵当権の転抵当ができるかどうか、根抵当権の順位の譲渡、放棄といったような処分ができるかどうか、この点も根抵当の特殊性に基因する問題としていろいろ議論がございました。またさらに、いま申し上げました根抵当の転抵当あるいは順位の譲渡、放棄、こういったものを認められるとした場合に、それではその効果が一体どういうものであるか、その効力の内容につきましてもいろいろ考え方が分かれておりました。 それから第三には、根抵当権と民法三百九十二条との関係でございます。共同抵当の規定でございますが、根抵当権につきましても、民法三百九十二条の共同抵当に関する規定の適用があるかどうかという点も非常に議論の分かれるところでございまして、この点もまだ判例によってはっきりした見解が示されていないという状態でございます。 そのほかこまかい点はたくさんございますが、おもな点は以上申し上げた三点でございます。
○岡沢委員 大体わかりましたけれども、根抵当を法制化する場合に、単に法律関係を明確にするというだけではなしに、やはり問題は関係の権利者の利害をどのように調整するかということが一番大事だと思うのですよ。特に根抵当権設定者の権利保護というものが大事だと思うのですが、そういう点について今度の法案ではどういう配慮をされているか、お伺いします。
○川島(一)政府委員 今回の法案は、根抵当に関する法律関係を明確にするということを第一義に考えておりますけれども、同時に根抵当関係者の利害の調整、特に根抵当権の設定者の立場というものを重く考えまして、その保護には十分の配意をいたしておるわけでございます。 その要点を申し上げますと、第一には、いわゆる包括根抵当を否定いたしまして、根抵当権で担保される債権の範囲というものはある程度限定をいたしたわけでございます。これは要するに、根抵当権が設定者や債務者の予想しなかった債権を担保するようになることを防ぐわけでございます。同様の趣旨から、回り手形についての制限措置でありますとか、あるいは根抵当権の譲渡の際の設定者の承諾権、こういった規定を設けております。そのほか設定者といたしましては、根抵当権を設定いたしました場合に、取引が非常に長く続く、そのために設定者の財産の持っております担保価値が長期間非常に拘束を受けるという点を重視いたしまして、この法案にも規定がございますが、元本の確定請求という制度を認めております。これは取引が三年以上続いているという場合には、元本の確定を請求することができるという権利を設定者に与えたものでございます。そのほか、極度額の減額請求あるいは根抵当権の消滅請求というものを一定の要件のもとに認めまして、設定者の保護をはかっておるわけでございます。
○岡沢委員 いまの御答弁の中にもあったのですけれども、今度の法案の三百九十八条の二ですね、いわゆる包括根抵当を認められなくなった。しかし、従来の学説では、包括根抵当を認める有力な意見もあるわけですね。なるほど根抵当権設定者の保護の面では今度の法案のほうがすぐれていますけれども、債権者の保護ということになりますと、また問題は別だと思うのですね。いわゆる包括根抵当を認められなくなった理由、いま設定者の保護の立場からの御説明がありましたけれども、ほかに特別の理由があったのか。その根拠ですね、包括根抵当を否定された根拠。
○川島(一)政府委員 お説のとおり、今回の法案は包括根抵当は認めておりません。その理由は、先ほども申し上げましたし、御質問にもございましたように、設定者の立場というものを特に重く考えたということが一つでございますが、それに加えましてほかの事情もいろいろ考慮いたしたわけでございます。この法案の立案の際に、関係団体、経済団体あるいは学界等の意見もいろいろ求めたわけでございますが、その中にはやはり債権者の立場から包括根抵当を認めてほしいという意見も確かにございました。しかしながら、たとえば日本弁護士連合会などにおきましては、包括根抵当というものは予測しない債権を担保する結果になる可能性が非常に強いので、根抵当権者の権利があまりにも大き過ぎる。そうしますと設定者のみならず債務者あるいは後順位の債権者、権利者などの不利益にもなって影響するところが大きいという御意見がございました。それからまた経済界の意見も詳しく聞いてみますと、必ずしも包括根抵当という形でなければ現在の取引がうまくいかないというものではない。要するに、問題は債権の範囲の定め方である。それを合理的に定めてくれるならばしいて包括根抵当という形をとらなくても十分に現在の取引の需要にこたえ得るものである、こういうことでございました。 そういうような点から、いろいろな意見の調和点としまして、この法案におきましては被担保債権の範囲を定めるにあたりまして、一定の種類の取引というものを原則として掲げたわけでございます。これによって、いま申しましたような実際の需要に十分こたえられるというふうに考えております
○岡沢委員 いまの被担保債権の範囲に関連して、先ほど局長の答弁にもありましたが、いわゆる回り手形を被担保債権の範囲に含めるかどうか。日弁連は反対していますね。今度の法案では一応認めておられる。その辺の調和といいますか、日弁連の反対等はこの法案ではどの程度取り入れられているのか、その点を明らかにしていただきたいと思います。
○川島(一)政府委員 ただいま御質問にございました日弁連の意見というのは、参考資料にございます日本弁護士連合会の意見のことを言われておるものと存じますが、この意見は、この資料についております。昭和四十三年の四月に作成いたしました法務省民事局参事官室試案というものに対する意見でございます。この試案におきましても、御指摘のようにいわゆる回り手形というものを被担保債権の中に加えることにいたしております。これに対しまして日本弁護士連合会の意見としいうものは、回り手形というものを特に認めることにいたしますと、債権の範囲が非常に広くなるということ。特に債務者の信用状態が悪化したような場合にその手形が安く債権者の手に入る、それが根抵当権によって担保されるということになるのは不合理ではないかといった点が中心になっておると考えられるわけでございます。 そこで、この法案におきましては、まず回り手形というものは特に設定者と根抵当権者との合意によってこれを根抵当の被担保債権に含ませるという、その合意をした場合に限って根抵当権で担保されるという形に規定をはっきりいたしておるわけでございます。これによって、当事者が予測しない手形上あるいは小切手上の債権が根抵当に組み入れられるということがないように配慮したわけでございます。 それから、債務者が信用状態が悪くなったという場合につきましては、そのような事情が生じた後に取得する手形、小切手につきましては、根抵当権で担保されないという趣旨の規定を三百九十八条ノ三の二項に設けたわけでございます。さらに、この債務者の信用状態が悪化した後に取得した手形あるいは小切手であるかどうかという点についての立証責任を、これは法律の規定の形を考慮いたしまして、この法案におきましては、根抵当権者に負わせる、根抵当権者にその点の立証をさせるということにいたしまして、このこの規定が厳格に適用されるように考慮をいたしたわけでございます。 〔委員長退席、小澤(太)委員長代理着席〕 そういうことによって、日弁連の懸念されていた点につきましては、かなりこまかい配慮を払っておりますので、完全に日弁連の御意見が満たされたということにはならないかもしれませんが、日弁連の懸念される点は今度の案ではほぼ解消しているというふうに考えております。
○岡沢委員 今度の法案の第三百九十八条ノ三によりますと、その第一項で、「根抵当権者ハ確定シタル元本並ニ利息其他ノ定期金及ビ債務ノ不履行二因リテ生ジタル損害の賠償ノ全部二付キ極度額ヲ限度トシテ其根抵当権ヲ行フコトヲ得」いわゆる根抵当の極度額について、債権極度の制度を料用しておりますね。御承知のとおり、この極度額の問題については、従来から元本極度と債権極度の両方の意見があって、判例も両方認めておりますね。いただきました資料によりましても、元本極度を認めるべきだという意見もあるわけですね。あえて債権極度に一本化された理由をお尋ねします。
○川島(一)政府委員 御質問のとおり、今回の法案は、第三百九十八条ノ三におきまして、極度額の定め方を、従来の債権極度額の定め方にしぼっておるわけでございます。なぜ元本極度額の定めを認めないことにしたのかという点につきましては、これも一口に申し上げますと、法律関係の簡明化をはかったということでございます。御指摘のように、判例では現在、元本極度額という定め方を認めまして、この場合には、民法三百七十四条の規定の適用があるというような説明をいたしております。しかしながら、この判例につきましては、学者の間に相当批判がございまして、根抵当についてこのような考え方をとると、非常に法律関係が複雑になって好ましくないのではないか、こういう意見も非常に多いわけでございます。それと、今回の法律案におきましては、根抵当権の処分、特に根抵当権の上の転抵当でありますとか、あるいは根抵当権の譲渡というような制度を認めております。このような場合に、元本極度額という形を認めますと、非常にその関係が複雑になってまいりますので、そういう複雑な法律関係はなるべく避けよう、こういう趣旨で認めないことにしたわけでございます。
○岡沢委員 その次の三百九十八条ノ四によりますと、「元本ノ確定前ニ於テハ根抵当権ノ担保スベキ債権ノ範囲ノ変更ヲ為スコトヲ得債務者ノ変更に付キ亦同ジ」債務者の変更が根抵当権者と設定者の合意だけでやれる、債務者の承諾が要らない、この点について、やはり幾らか問題があろうと思うわけですね。この辺、債務者の知らぬうちに債権者が変更することになるというようなことは、どういう趣旨でこの三百九十八条ノ四が法案化されているのか、お尋ねします。
○川島(一)政府委員 債務者の変更に債務者自身の承諾を必要としなかった理由でございますが、これは債務者の変更も、要するに根抵当権の内容の変更でございます。つまり根抵当権という物権の変更でございますから、物権の内容を変更するには、その物権の所有者である設定者にそれから物権の権利者である根抵当権者のこの二人によって行なうというのが、物権法上の通則でありますし、この場合もそれで足りるのではないか、根本的にはこういうことでございます。 債務者が知らない間に変わってしまっては困るではないかという、債務者の立場からの心配があるわけでございますが、この点につきましては、物上保証の場合におきましては、通常、物上保証委託契約というものが債務者と物上保証人との間にあって、それに基づいて物上保証人が根抵当権を設定しておるわけでございますから、債務者の変更自体は、物上保証人が根抵当権者との間ですると申しましても、実際には、そういった物上保証委託契約というものが存在する限りは、物上保証人はまず最初に債務者の承諾を得なければならないということは、物上保証委託契約のほうから当然出てくる関係であろう、このように考えております。
○岡沢委員 このいただきました参考資料の三七ページの四の「担保期間に関するもの」の大審院の判例ですね、昭和五年六月三日の判決、これによりますと、根抵当権の存続期間を延長した場合には、延長後に生じた債権については、延長前の後順位者に対して優先弁済権を主張できないとなっているのですね。これと今度の法案の三百九十八条ノ六ですね、確定期日を変更する場合には後順位者の承諾を得ることを要しないことになっている。これと矛盾するんじゃないか。この判例の趣旨が否定されているんじゃないかと思うわけですけれども、その理由はどういうことでございましょうか。後順位者に不利益にならないのかどうか、お尋ねいたします。
○川島(一)政府委員 御指摘の点はまさにそのとおりでございまして、今回の規定によりまして従来の判例の趣旨と異なった法律関係を認めようとするわけでございます。 〔小澤(太)委員長代理退席、委員長着席〕 まず、判例でございますが、この判例が存続期間の延長に後順位者の承諾が必要であるというふうに言っておりますのは、要するに、従来きまっておりました存続期間以後において発生した債権を根抵当権で担保させるということは、後順位者の不利になるという考えからでございます。しかしながら、はたしてそのような考え方が妥当であるのか、どうかそれからまた、一般の取引の実情から申しまして、そういった構成が適当であるかどうかという点につきましては、従来からいろいろ意見のあったところでございます。ことにこの法案におきましては、根抵当権を非常にはっきりした権利といたしまして、そうしてある程度財産権としては強化していこうという方向が一つあるわけでございます。そういう意味におきまして、根抵当権というのは、要するに債権極度額までの担保価値を把握している権利であるという考えで、後順位者としては、それだけは常に覚悟していなければならないのではないか、こういう立場で規定をいたしておりますので、従来の判例とは異なることになりますけれども、要するに根抵当権というものが極度額一ぱいの優先弁済権がある、優先弁済権を持っている権利であるということを貫きますと、必ずしも従来の判例のようなこまかい点にこだわる必要はないというふうに考えられます。そういう趣旨で規定をいたしたわけでございます。
○岡沢委員 そうすると、従来の判例とは全く反対の意見だという見方は正しいわけですね。
○川島(一)政府委員 この点に関しては、まさにそのとおりでございます。
○岡沢委員 三百九十八条ノ十二、「元本ノ確定前二於テハ根抵当権者ハ根抵当権設定者ノ承諾ヲ得テ其根抵当権ヲ譲渡スコトヲ得」いわゆる絶対的譲渡が認められているわけですね。これを認めますと、もちろん根抵当権設定者の承諾は要るんですけれども、一般に設定されるとなかなかその根抵当権が消滅しない。根抵当権設定者の保護に幾らか欠ける点があるのじゃないか。それからまた、後順位者の立場からしましても、かなりな不利益になるのじゃないかと思うわけでございますけれども、あえてこの三百九十八条ノ十二を規定された趣旨は那辺にあるのか、お尋ねします。
○川島(一)政府委員 法案の第三百九十八条ノ十二で根抵当権の譲渡というものを認めております。これを認めましたのは、たとえば営業譲渡の場合であるとか、あるいは債務者が会社をつくって自分の営業を会社に引き継がせるといったような場合に、根抵当権をある権利者から別の権利者に移すという必要が生ずる場合が少なくないので、このような場合の必要を満たすためにこのような規定を置いたわけでございます。 この規定が設定者や後順位者の不利益にならないかというお尋ねでございますが、根抵当権の譲渡の場合には設定者の承諾が必要であるということにいたしておりますので、設定者は自分に不利益だと思えば、この承諾を拒否することによって譲渡をさせないことができるわけでございますから、格別設定者に不利益な規定とは申せないわけでございます。それから後順位者に対する関係でございますが、これは先ほど元本確定期日の変更についても申し上げましたように、要するに根抵当権というのは、極度額一ぱいについて優先弁済権を持っている権利であるというように考えますと、その点では根抵当権が譲渡されましても後順位者の地位には何ら影響がないということになりますので、後順位者の関係は特に考慮する必要がないというふうに思います。
○岡沢委員 いただきました資料の四八ページに最高裁の昭和四十二年十二月八日の判決がございます。この判決では判決要旨で「債権者が根抵当権の極度額をこえる債権を有する場合において、抵当物件の第三取得者は、右極度額の限度で弁済したにすぎないときは、その根抵当権設定登記の抹消登記請求権を有しない。」これと今度の法案の第三百九十八条ノ二十二、消滅請求、これと矛盾するのではないか。第三取得者が非常に有利になってきているわけですけれども、この四十二年十二月八日判決と三百九十八条ノ二十二はまっこうから対立する思想だ、考え方だと思いますが、この辺はどうなんですか。
○川島(一)政府委員 この法案の第三百九十八条ノ二十二は仰せのとおり、根抵当権の「極度額二相当スル金額ヲ払渡シ又ハ之ヲ供託シテ其根抵当権ノ消滅ヲ請求スルコト」ができるということにいたしております。これに対してお示しの最高裁判所の判例は、根抵当権の極度額をこえる債権が存する場合には、極度額だけを弁済しても根抵当権は消滅しないということになっておりまして、 一見矛盾するような感じがするわけでございますが、しかしながら、この三百九十八条ノ二十二という規定は、特別にこういう金銭の払い渡しまたは供託によって根抵当権を消滅させるという制度を新たに設けたわけでございまして、この規定によって金銭の払い渡しまたは供託をいたしますと、そこで根抵当権の消滅ということが生ずるということになるわけであります。 〔委員長退席、小澤(太)委員長代理着席〕 これに対して、こういう規定によらないで単純に根抵当権者の債権を弁済していくという場合には、この三百九十八条ノ二十二の規定の適用がありませんので、従来の判例どおりの取り扱いになる、こういうことになるわけであります。 しからばどういう点が違うかと申しますと、三百九十八条ノ二十二のほうは、弁済するというのではなくて、金額の払い渡し、供託と根抵当権の消滅の請求、これを同時にするわけでございます。そうしてこの場合には単純に根抵当権が消滅してしまって、弁済したものはその根抵当権を代位するという関係は生じないわけであります。ところが、この規定によらずに単純に根抵当権者に対して債権を弁済するという場合には、その債権額を全部弁済しなければ根抵当権は消滅しないことになりますが、いわゆる民法の五百一条による弁済者の代位でございますか、そちらのほうは代位の法律関係が成立する。弁済者は代位によって根抵当権を取得することができる、こういう差異が出てくるわけでございます。
○岡沢委員 まだ質問したい点もあるような気がしますが、急に質問の機会を与えられましたので、不勉強でございます。もし新しく質問事項が出た場合は、あらためて質問させていただくことを留保させていただきまして、本日の質問を終わります。 ————◇—————
○小澤(太)委員長代理 去る二十四日、本委員会から、大阪刑務所の行刑運営等の実情調査のため、委員を派遣いたしました。派遣委員より派遣報告書が委員長の手元に提出されております。 この際、口頭報告を省略し、本報告書を本日の会議録に参照掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○小澤(太)委員長代理 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。 本日は、これにて散会いたします。 午前十一時二十一分散会 ————◇—————