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65回国会衆議院1971/02/18

農林水産委員会 第2号

発言数
72
登壇者
9
会派数
5
開催日
1971/02/18

会議録

丹羽兵助自由民主党

○丹羽(兵)委員長代理 これより会議を開きます。  本日は、委員長所用のため、その指名によりまして私が委員長の職務を行ないます。  この際おはかりいたします。  物価問題等に関する件について、物価問題等に関する特別委員会に連合審査会開会の申し入れをいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

丹羽兵助自由民主党

○丹羽(兵)委員長代理 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお連合審査会の開会日時につきましては、委員長間において協議の上決定いたしますが、明十九日及び明後二十日の両日、午前十時より開会の予定でありますから、御了承ください。      ————◇—————

丹羽兵助自由民主党

○丹羽(兵)委員長代理 農林水産業の振興に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。美濃政市君。

美濃政市日本社会党

○美濃委員 今回農地法施行令の一部を改正して、旧自作農特別措置法で買収した土地の政府管理分になっておる部分を旧地主に売り戻すということを決定したそうでありますが、これはどういう考え方でこういう措置をとろうとするのか、まずそれを最初にお伺いしたいと思います。

倉石忠雄自由民主党

○倉石国務大臣 御存じのように、一月二十日の最高。同裁判所の判決で、農地法施行令の規定が法の委任の範囲をこえた無効なものである、こういう判断が示されたわけでございます。つまり、農地法第八十条に基づく政令を農林省、つまり政府は持っておるわけでありますが、その政府の持っております政令は、法意の範囲を逸脱しているものであって無効である、こういう判決であります。したがってこういう最高裁の判決がありました以上は、法律を誠実に執行する憲法上の義務を負うております政府としては、これを放置いたすわけにはまいりませんことはもうおわかりのとおりであります。  そこで、判決全体の趣旨とこの判決に伴ってとるべき措置につきまして、早急にかつ慎重に検討いたしました上で今回の政令の改正を行ないました。そういう次第であります。

美濃政市日本社会党

○美濃委員 こういう判決が出る背景には政府当局の怠慢があると思うのですね、この土地の今日の管理状況あるいは処理について。たとえば、これを売り戻すことによって、まず第一に国民公平の原則を失すると思うのですが、まず売り渡しをできなかった最大の原因は、私は、過小面積売り渡しの制限に該当するものが管理地となっておるのではないかと思うのですが、その状況はいかがですか。すでに買収当時から近く宅地になる現況のものであって、旧自作農特別措置法の三条の買収に該当しないものを買って、それが今日まで管理地になって接続しておったのか。それとも買収当時には旧自作農特別措置法の三条の当然買収に該当する現況のものが、小面積売り渡し制限のために売り渡せないで今日まで貸し付け地となって持続しておったという原因によるものか。一、二の特例は別として大宗はどういう現況によってこうなってきておるのか。

倉石忠雄自由民主党

○倉石国務大臣 御存じのようにすでに二千ヘクタール余りは処分されております。これは当時の法律に基づきまして自作農創設という精神、農地制度の改革という考え方に基づいて行なわれた法律でございますので、当時の政府としてはできるだけその趣旨に沿うように尽力いたしたと思いますが、実はこの農地として旧地主に売り渡すべきも一の、つまり農地として政府が買収いたしておったのにそれには不向きであると見られます土地につきましては、もうすでに昭和四十一年でありますが、当時の政府部内の相談に基づいて今回のような措置をしようと考えたときもあったわけであります。しかし、その当時もやはり農地として不適格であると思われる地域、妥当でないと思われる地域が市街地にありますので、そういうものはせっかく政府がこれを地主から買い上げて政府が保有したものであるから、これはひとつできるだけ国民の多くの人に喜ばれるような公共の用に供することができれば、そうありたいものであるというので、それ以来農林省に専門家たちに御参集願って研究をさしておる間に、昭和四十二年に愛知県の某地主から国を相手に起こされた訴訟が最高裁に係属することになったわけであります。そこでわれわれのほうは、せっかく最高裁に法律的判断を国民が求めておるのであるから、われわれのほうがそれに先行していろいろな判断を下すよりも、一応最高裁の意思の下るまで待とうということで、いわば調査も足踏み状態になっておった。ところが今回は御存じのような判決が出てまいった。そこで先ほど申し上げましたように、われわれとしては急遽その最高裁の判断に従った手続をとって処置せざるを得なくなった、こういうことでございます。

美濃政市日本社会党

○美濃委員 その最高裁の判断といいますが、最高裁の判決文にも、正当な対価を払って取得した土地は国の裁量によって処分することが必ずしも悪いというのではないが、ただ農地法八十条二項の規定があるから、返すことが妥当でないかという法律があるから、そういう判決になっておるわけです。これを判断すると、同じ現況の土地で、同じ強制買収をしながらすでに売り渡し済みの土地が、今日その後の二十年間の変化によりましてかなり宅地になっておるのではないですか、同じようなものが。そうすると、この現況というものは——小面積制限についての答弁はないですが、そういう制限事項を設けて売り渡しができないから、それを政府が管理しておるうちにこういう状況の変化によって起きてきた、当初の買収の間違いによるも一のではない、こう解釈が一つできます。そうすると、この条項は、二十七年に自作農創設特別措置法を改正して農地法にしたときに、これはやはり一定の時効年限を、買収後十年を経過した場合にはこの措置はしないという、そういう時効というものをひとつ適用すべきであったと私は考えるわけです。いまここで、これだけの年限を経過して同様の措置をとった土地を、売り渡し済みのものには適用しないという、もしこういう法律を設けて——いわゆる憲法二十九条の該当条項でいうならば、そういう旧地主に資産的な期待を持たしておるというところに私は政府、農林省の怠慢があると思う。どうしてこの法律をつくったときに時効というものを加味した一定年限の時限措置をしなかったのか。その後法律にまだ買収規定がありますから、その後買収したものもありますけれども、これについては買収確定後何年間を経過すれば適用しないという条項を付すべき性格のものである、こう私は考えるわけです。最高裁の判決も、国が公共の目的をもって収用した土地といえども、正当な対価を払っている場合には、必ずしもそれを旧地主に復権しなければならぬというものではないというふうに、この場合と違ってこれは収用法のことを言っておりますが、しかしこの場合は、農地法八十条の二項の規定で返すという表現を政府はしておるんだから返したらどうかということですね。この場合、これは施行令十六条のことを言うわけですが、返すということになれば、返す土地に対して公用だとか公共用に供すとかなんとかいうのは、法律の主文を施行令で拘束し過ぎておる。返した以上は、それは何に使おうと、自分がみずから宅地に使おうとどういうふうにしようと、それは復権した所有者の裁量にまかすべきであって、そこまで国が立ち入るということは、法律本文を施行令が拘束しているということを言っておるのでしょう、拘束し過ぎているということを言っておるのですよ。どうしてそういう——しかもこれは完結して、この売り渡しに対して直接打ち切りという意味になっておるかどうかは別といたしましても、去る四十一年には軽少ではあるけれどもいわゆる協力報償金を支払った、そうして二十年以上経過して、こういう現況に立って、その時効の措置をとっていないというそこに問題があると私は思うのです。だから、また当然類似の買収地については、これだけ情勢の変化した中では、時効として措置することが妥当ではないか、こう考えるのですが、全く根本的に、最高裁の判決が出たからといって、それにかこつけてこの措置に出てきたということは、非常に国民に対し、同様のこれに対する公平の措置を誤るものである、政府としてとるべき手段のあやまちであると私はあくまでそう解釈するわけです。どうですか。

倉石忠雄自由民主党

○倉石国務大臣 おっしゃる御意見の中にはいろいろな意味があると思うのですが、一つは最高裁の判決についての御批評がありましたけれども、私どもの立場としては、先ほども申し上げましたように、従来政府が買い上げておりました農用地、しかもこの買い上げたのは自作農創設の維持という目的をもつて買い上げておりましたのですから、その目的に反した、妥当でないと思われる土地は旧地主に返還すべきものである。先ほど美濃さんは、そもそもそういう法律を制定すべきときにもつと考えておくべきではなかったかという御意見でありましたが、それはもう一つの御意見であろうと思いますが、ともかく現在は法律を持っておる、その法律に基づいて政令第十六条というものを出しておる、その政令が法意を逸脱したものであって無効であるという判決、これは御存じのとおりであります。したがって、われわれといたしましては、われわれの持っておる政令、つまり行政府が政令に基づいて法を施行すべきその手続規定が、最終的に判断すべき最高裁判所において無効であるといわれて、そのような無効である政令を一日も持っておることは、これこそ憲法上重大な問題でございますので、慎重に検討いたしました結果、最高裁の判決の趣旨に沿うように改めた、こういうことでありますが、それについて、法律の制定いたしました当時のことにつきましては、御意見として承っておきます。  それから、いまお話しのように、買収いたしました当時の経済状況と二十数年たった今日の状況とにおいては、同じ地価でも、特に市街化区域などにおいては著しい経済的格差がございますので、だれが見ても、この判決をそのまま実行いたしていくときには何となくあと味が悪い、それはおかしいではないかという感じを持つのでありまして、私自身もこれは実に困ったことになったものだということを考えまして、したがって私どもの範囲では、この上はできることは、つまり公共の用に供するようなことの計画をできるだけ各省協力してつくって、その趣旨をひとつ返還を受ける権利を取得した地主に説得をして、そして公共の用に供するようにしなければならないではないかということで、各省協力してそういう方向をとろうと、まあこういうことまで決定いたしておるわけでありますが、どうもその判決はやむを得ないけれどもこの趣旨はまことに何といっても常識的でない、ということばを使うことは判決に対して失礼かもしれませんが、法律はそのように解釈すべきかもしれませんが、現実にはこのまま実行することはまことにあと味の悪いものだという考えは私どもも同感でございますが、政府というものの立場に立ちますと、やはり最高裁の判決の精神は尊重せざるを得ない、こういうことでございます。

美濃政市日本社会党

○美濃委員 もう一度確認しますが、私は行政府の怠慢がこういう結果をもたらした、こう申し上げておるわけです。それに対する反省はどうですか。  それからもう一つは、この判決そのものについて、本件としては法律があることですから判決どおり処理しなければならぬけれども、いま残っておる土地については判決は出ておるわけじゃないのです。たとえば三条二項で時効によって削除するあるいは買収してから十年経過したものについてはこれを適用しないというただし書きを直ちにこの国会に提出して削除するか、その後買った土地もありますから、買収した土地もあるはずですから。そうしなければ、買収が完結してから十年間経過したものについてはこれは適用しないという時効、中断の措置をとらなければ、これはあとになって——今回処分するのが三千数百ヘクタールのうち全部ではないはずですから、子々孫々に至るまで、継承人に至るまで、これから百年でも二百年でもこの法律でなにしていくのですから、そういうものじゃないと思うわけですね。適正な時価で払い、そして報償金も払っておるわけですから、時効で打ち切って処理しても私は差しつかえないと思う。そうしないことには、大臣みずからが言っておるように国民感情上おかしいんではないか。国民の常識というものに対して合わないことができる。それは判決が悪いのでなくて、あなたのほうの怠慢で、こういうものに対する時効の措置をとっていないところに、時代の趨勢とともに、道徳でも常識でも国民感情でも全然割り切れない、変なことをやりますということをあなたは言わなければならぬのじゃないですか、どうですか。

倉石忠雄自由民主党

○倉石国務大臣 その点は私は美濃さんのお説に全面的に賛成するわけにはいきません。私どもは、なるほどこの法律の運用をすべき当事者でございましたけれども、先ほども申し上げましたように、すでに数年前からこれは訴訟になっておるわけであります。したがって、そういう国民がいろいろなお考えで法の判断を司直の手にゆだねておる途中で私どもがいろいろなことを処置することはいかがであろうかということで、先ほどもお答えいたしましたように、しばらく裁判所の意思決定を待つのが一番妥当であろうということであったわけであります。したがって四十一年の当時にも、これは私が当時農林大臣でございましたけれども、そのときはまだ最高裁の判決はもちろん出ておりません。下級審では政府の主張が容認されておった面がたくさんあることは御存じのとおりでありますが、そういう時代に同じような問題が起きまして、もう少しこれは公共の用途に使うほうがいいではないかということで、ずっと続けて検討いたしてまいりました。そのころやはりいまの東大の学長の加藤君、これはこのほうの専門家でありますが、彼の書いた論文の一節に「農地法八〇条は「その買収の対価に相当する額」で売り払うものとしている。そこで、この「相当」の解釈から、売払い価格を時価に引きなおすことができそうにもみえる。しかし、これは、法律用語としては、買収の対価と同額を意味しているので、時価で売り払うためには農地法の改正が必要である。」これは当時の昭和四十一年の毎日新聞に掲げられた加藤君の論文でありますが、私どもはあれ以来ずっとこういったようないろいろな専門家に御意見を聞きまして、今日まで検討いたしておりました。けれども、やはり最高裁の判決を待つのが妥当であろう、こういうことでやってまいったわけでありまして、その辺の事情はひとつ御了察を願いたいと思います。

美濃政市日本社会党

○美濃委員 どうも答弁がすれ違いになりますから、私はあくまでそういう答弁では了解できませんし、あとまだ価格上の問題もありますけれども、お互いに申し合わせた時間になりましたので、あと総理大臣が出席してから質問をいたしたいと思います。

丹羽兵助自由民主党

○丹羽(兵)委員長代理 斎藤実君。

斎藤実公明党

○斎藤(実)委員 先ほど大臣から最高裁の判決についてのお話がございました。確かに現在の農地法から見れば、本法がそうなっておりますから当然かもしれません。しかしながら、この二円六十銭の売り戻しに対する世論というものは、これはただ単なる心情論だけではないわけであります。私が申し上げたいことは、形式的にはなるほど大臣の言うとおりであるかもしれませんけれども、しかし、政府のとった政令の改正については、社会常識から見て非常に法外ともいえる利益を与えるということになると私どもは思う。これに対する世論の反発というものが大きくなっている。ですから、このままでいきますと、政治に対する国民の信頼というものは低下をしていくのではないかというように私は考えるわけです。大臣から先ほどお話がありましたが、一体このままでこの問題をどう処理されるのか。大臣は現在の政令で、そのままでやっていくつもりなのか、あるいは国民の世論というものに対して政治的にどう対処されようとしているのか。先ほどの法律論はわかりましたけれども、大臣、この問題についてどうされるおつもりなのか、基本的な考えを承りたいと思います。

倉石忠雄自由民主党

○倉石国務大臣 法律的に政府はああいう措置を講ぜざるを得なかったということにつきましては御理解を賜わりましたようで、感謝をいたします。  私どもいろいろ研究をいたしましたが、やはり行政府としてとるべき手段はあれ以外にありませんでしたけれども、私自身が政令改正のために閣議に持ち出しますときに、またことばを慎まないといけませんが、提案しながら何となくあと味が悪い。これは四十一年でも同じことであったのであります。当時次官会議でこの方針が決定されたということが世間に伝わりましたときにも、当時の新聞、雑誌その他をもう一ぺん開いてみましても、それからいま私がここで材料にしましたあの当時の学者たちの意見を聞いてみましても、法律はまさにそうだけれども何となくあと味が悪い。いまも全く同じであります。そこで最高裁判所がああいう判断をいたしまして、四十一年の当時と違いまして、今度は明らかに農林省が責任をもってつくっております政令は法の解釈の範囲を逸脱したものであって無効なものであるというきついことばを使われた判決が出ております以上は、政府の立場としてはこれを尊重せざるを得なかった。それはおわかりいただきました。  そこでその裁判所の判決の精神は精神として、それに逆行しないようにその精神は尊重しながら、一般社会通念でなるほどそういう考えはよかろうというふうなことが何かないだろうかということについて、私ども日夜苦慮をいたしておるわけでありますが、ひとつ斎藤先生、何かいい知恵がありましたら御遠慮なくおっしゃっていただければ私どもはそういうことをも十分に考慮いたしまして、行政の範囲でできることはいたしたいと、実はそういう気持ちでおるわけであります。

斎藤実公明党

○斎藤(実)委員 私は行政府の大臣に伺っておるわけですからその点ひとつ御理解いただきたい。  それで、なぜこの農地の問題が大きな国民の世論となって盛り上がっているかといいますと、買収当時の対価で売るとしますとそこに問題が起きてまいりますのは、開発利益プラス報償金、これは農地改革当時二円六十銭で国が買収しました。その二円六十銭以外にこの小作料に見合う程度の報償金を出しておるはずです。しかもさらに昭和四十年には一千五百億予算を計上してこれにも充てておるわけです。こういったことが非常に不公平だということが大きな原因なんです。ですから私は、この間わが党の瀬野委員が予算委員会で資料を要求いたしましたが、どれだけどんな面積でこの旧所有者に払い下げたかという資料をちょっと参考に申し上げてみたいと思います。  昭和二十八年から四十四年まで十七年間、そのトータルは件数にしまして二万二千七百八十四件、払い下げられた面積が二千五百六十二・四ヘクタール、金額は千六百二十七万九千百七十四円、こういうふうになっております。それから転用事業者、これに対する払い下げの件数は九千六百五十五件、面積は千七百九十九・七ヘクタール、価格は三十五億八千五百六十一万九千九百二十二円、こうなっております。それで、それでは  一体旧所有者に対してどういう価格で払い下げられているのか。時間もありませんから私が申し上げますけれども、特に低いというのは昭和三十九年、これは一平方メートルわずか一銭です。それから昭和三十七年、八年、これが一平方メートルわずか二銭。坪に直すと六銭六厘です。一平万メートル一銭のほうは坪に直せば三銭三厘という、まことに現在の社会情勢に合わない低い単価で払い下げられておる。ですから、先ほど、先般の政府の答弁でも、市街化区域にある農地は約三百ヘクタールということをいっておりますけれども、おそらくこういった低い価格で払い下げられるということはこの資料を見てもはっきりしておる。さらに転用事業者に売り払ったこの資料を見ますると、昭和二十八年、最低が七円。昭和二十九年、七円。三十年には十五円。三十一年には十七円。非常に安い。昭和四十年には一平方メートル四十三円。四十一年には六十円。四十二年には三十五円。四十三年には百三十円。こうなりますと、もちろんこれは国有財産の中でも普通財産と同じ程度に時価売買方式ということになると思うのです。ですから、一方では司法上の行為でありますから、払い下げるにしても現在の時点、昭和四十年から四十三年までの間に坪に直せば百四十一円とか百九十八円とか、こういう低い価格で一方では転用者に売り渡している。一方においては私先ほど申し上げましたように、坪六銭六厘とか三銭五厘とかいう、こういうことが私は問題なんだ。こういうことに対して、国民が大きな憤りを感じておるわけですね。大臣、この問題についてどうお考えですか。どう対処されようとしていますか。

倉石忠雄自由民主党

○倉石国務大臣 資料でごらんいただいておると思いますが、やはり昭和二十八年から四十四年まで旧所有者に売り払っております代価は、いまその資料でごらんになりましたような対価であります。私どもといたしましては、やはりこういうことで農用地として自作農創設ということでその法律に基づいて政府が買い上げました土地は、その農用地として適当でないと判断される土地については、今回の判決でも示しておりますように、その対価に相当する額にて国が売り払いを行なう、こういうふうになっておるわけでありますので、最高裁の判決、法の精神からいいまして、まことにあと味の悪い、これをやりながらも困ったことだという感じを持ちながらも法に従わざるを得ない行政府の立場としては、残念ながらこういう措置をとらざるを得ない。しばしば申しておることでありますが、この法律の中に、カッコ書きの中に対価のことについて明示をいたしておりますが、耕地整理組合費を国が負担したときは、その額を、耕地整理に要した費用を、その買収の対価に加算した額と、こう書いてありますので、政府が地主から買い上げましたその価格に耕地整理費をプラスして売り渡せ、こうなっておるのでありまして、法律の明文にもそういうことがありますので、政府が法律に従ってやる行為はこれはやむを得ないことである。法を曲げるわけにいかない、こう解釈しておるわけでありますが、これがいかにもあと味の悪いものであることは全くお説のとおりでありますので、先ほど申し上げましたように、判決の趣旨を曲げない程度に尊重しながら大ぜいの方々の御納得のいくような何か方法はないであろうかということを研究しなければなるまい、こういう立場でございます。

斎藤実公明党

○斎藤(実)委員 いま法の精神を尊重するということはこれは当然です。ですけれども、十六日の法務委員会ですか、最高裁の瀬戸行政局長は、判決は買収した農地をもとの所有者に戻さなければならないというものであり、この売り渡し価格を幾らにすべきかについては判示をしていない、ですから価格決定と判決とはもう無関係だ、こう言っておるわけですよ。ですから、私は国会というものは立法権がありますし、私は国民が納得するような価格にしてもよいのではないか。それが当然国民の期待にこたえる政府の方針ではないか。ですから一応私どもは農地補償で買収をしていますし、もう所有権は喪失をした。しかも先ほど申し上げましたようにこの報償金というものも出しておる。ですから、いまの法律がもう現在の社会発展の状況についていっていない。このことを私は指摘をしておるわけです。それについての答弁をお願いします。  それからもう一点、先ほど私が申し上げましたような資料にあります転用事業者の売り払い、これは具体的にどういうことになっておりますか、転用事業者についての答弁をお願いします。

倉石忠雄自由民主党

○倉石国務大臣 法務委員会におけるお話をよく聞いてみました。最高裁の事務当局の方が来られて何か説明をされたようでありますが、最高裁の裁判官が十三名一人の反対論者もなく、御存じのような判決を下しておる、これは裁判官であります。事務当局が出てまいりましてどのような証言をいたしたか、私新聞等で知っただけでありますが、こういう方がおっしゃることがどの程度法律上有権解釈であるか、そういうことは存じませんし、またこれから、お話もございましたので、速記録等によって調べてみたいと思いますが、この判決を私どもが読みます限りは、先ほど申し上げましたように、やはり法の解釈というのは、先ほど私が参考に申し上げましたように、加藤一郎君が解説いたしておりますように、やはり買い上げたときの価格というものが対価ということばで表現されておるというふうにとるのが法意の説明である、こういうふうにわれわれも理解いたしておるわけでありまして、したがって法律的問題はやはりそのように進めていかなければならぬと思っております。あとの問題につきましては農地局長から御説明申し上げます。

岩本道夫農林省農地局長

○岩本政府委員 御指摘の資料にあります転用事業者の売り払いの問題でございますが、農地法八十条第二項は、「政令で定める場合を除き、」「その買収前の所有者又はその一般承継人に売り払わなければならない。」というふうに規定をしまして、政令でもって旧所有者に売り払わなくともよろしい場合を規定をしております。  その政令の内容は、施行令の第十八条にきめておりますが、内容を要約して申し上げますと、その土地の、買収農地の買収前の所有者またはその一般承継人が買い受けを希望しない場合、または旧地主が所在不明といったような場合に、公告をしてさがすわけでございますが、その買収前の所有者に対する売り払いの通知もしくはその所在不明の旧地主の公告の日から起算して三カ月以内に買い受けの申し出がなかった場合、これは旧所有者に払い下げなくてもよろしいということに相なっております。  それから、その土地を一度国が買収をいたしまして自作農創設の用に一たん提供する、たとえば未墾地を買収して、開拓者を入植させて自作農の創設の用に供した。しかし、その売り渡しを受けた開拓農家が離農してしまったというふうな場合には、その土地を国がもう一度再買収する。再買収いたしましたものが今度過疎地域になって、自作農創設の用に供する必要がなくなったという場合におきまして、また旧地主に売り払うのかと申しますと、そうではなしに、一たんもうそれは自作農創設という本来の公共目的に供して目的を達したのであるから、今回は旧地主に売り払わなくてもよろしい、こういうことになっておるわけでございます。  それから第三に、旧地主と申しますか、その土地の買収前の所有者が、農地法六十九条等の規定によりまして代地の売り渡しを受けております場合、こういう場合はすでに土地を、代地を提供しておりますから、買収した農地がかりに自作農創設の用に供さなくなりましても、これは旧地主に売り払う必要がない。これらの土地につきましては、一般の売り払いの手続によって処理をしておりまして、これは八十条二項によって旧地主売り払いという処置をとっていないものでございます。

斎藤実公明党

○斎藤(実)委員 私は、大臣の答弁にはちょっと納得しかねます。私は、政府の農地政策、土地政策、こういった基本的な考えが非常に足りないと思う。ですから政府も、昨年地価対策閣僚協議会を開いて、国有地を公共の目的に使用するという努力をするというふうに言っておるわけです。あるいは、地価を公示、あるいは線引き、市街化農地の保有税強化等、多少土地政策について前向きな姿勢を示した。こういったおりから、私はこういった国民感情というものを無視し、非常識な措置をとられるということは大きな逆行だ、このことを指摘をして、私の質問を終わります。

丹羽兵助自由民主党

○丹羽(兵)委員長代理 小平忠君。

小平忠民社党

○小平(忠)委員 時間がありませんので、端的に農林大臣にお伺いいたします。  農林大臣は、去る一月二十日の最高裁の判決の内容は、国有農地のいわゆる売り戻し価格ですね、これを買収当時の価格で売り戻すというように最高裁の判決がなされたと解釈されておられるのか。それとも、過日法務委員会で最高裁の事務当局が、最高裁の判決はその価格には触れておりませんということを国会で言明しているのでありますが、大臣はどのようにこの点把握されておりますか。

倉石忠雄自由民主党

○倉石国務大臣 おきめになったお時間も短いようでありますから端的に申し上げますが、いろいろ法律専門家等との相談もいたしましたけれども、先ほど来申し上げておりますように、政府が買収いたしました当時の価格、これを判決にいっておる対価と称しておるものである、このように理解しております。  それから、最高裁からだれが来ておるか知りませんが、先ほど申し上げましたように、私はよその官庁の者の説明について批判を申し上げることは、決して批判するわけではありませんし、御遠慮申し上げます。また、実際の速記録を見ておりませんのでわかりませんけれども、その方が来られておやりになりました説明というものが、法律上の有権的解釈であるかどうかというようなこともあるでございましょう。裁判官がなかなか出てくるわけにもいきますまい。けれども、いやしくも最高裁に籍を置く者の説明であるならば、よく調べてみたいと思いますが、小平さん御存じのように、あの判決をずっと通覧いたしますと、やはり当初私が申し上げましたように理解する以外には法意を解釈することはできないのではないか、このように政府側は解釈しているわけであります。

小平忠民社党

○小平(忠)委員 農林大臣は、結局買収当時の価格で今回売り戻すというように解釈されておるから、やはり去る十二日の閣議で施行令十六条の改正、すなわち政令改正の際も、ただいまも斎藤委員の質問に答えて、どうもあと味が悪い、いまも悪い、何とかしなければならぬ、こう考えておられるようでありますけれども、これは非常に重要な問題で、そのように考えるのであるならば、政府がこの時限で最高裁の判決があったから直ちにその法令の改正に手をつけるというところに問題があると私は思う。端的に伺いますが、あと味が悪いということは、国民感情からも許さない、非常に問題が多いということなんです。現に従来の農地法施行令によって、これまで二千ヘクタール以上の結局売り戻しをされておる。この従来のいわゆる政令によってなされた問題と、今回十二日の閣議で十六条の改正をして行なう、この現実において、この不平等、この開き、これをどうするのですか。これをどう処置されるのですか。

倉石忠雄自由民主党

○倉石国務大臣 ちょっとよくわかりませんでしたが、その前、冒頭におっしゃいましたことについて先にお答えいたしますが、政令改正が早まったんではないか、こういうお話でございます。これはちょっと私は意外なことを承ると思うのでありまして、小平さん方がやがて内閣をおつくりになりまして、そして、そのときに法律をつくるのはわれわれ国会議員でございまして、国権の最高機関におりまして唯一の立法機関でありますから、法律をつくるのはわれわれ国会であります。しかし、その法律の解釈、判断については裁判所がこれを行なうことになっておることは申すまでもありません。その最高裁判所において、政府の法解釈は法意を逸脱したものであって、それに基づいてやっておる政令十六条は無効なものであるという判断が下されて、それに対応して処置をせざるを得ないというのは、行政府としての当然の義務でなければならない、私はそのように解釈いたします。どなたが内閣をおつくりになってもそうじゃないかと思うのであります。  もう一つの御質疑についてちょっとわかりませんでしたから、おそれ入りますがもう一度……。

小平忠民社党

○小平(忠)委員 第二の問題は、十二日の政令改正前にいままで本件に該当するいわゆる国有農地の売り戻しを行なってきたその中身と、今回の改正によって行なうその中身とのいわゆる不平等、その差をどうするかということです。どう処置されますか。

倉石忠雄自由民主党

○倉石国務大臣 旧地主に返還する場合はやはり買い上げた当時の対価である、これはもう御了解願っておることだと思います。さっき斎藤さんの御指摘になりました——わがほうから差し上げておる資料によってもおわかりのとおりでありますが、お尋ねはもう一つの転用されたほうのことだろうと思いますが、それはひとつ事務当局から申し上げます。

岩本道夫農林省農地局長

○岩本政府委員 先ほども斎藤先生の御質問にお答え申し上げましたように、転用事業者というのは、旧地主に売り払う場合と違いまして時価で売り払うということに相なっております。これは法律のたてまえがそういうふうになっておるわけでございます。

小平忠民社党

○小平(忠)委員 それは全然答弁になっていないのです。これは大事なことでして、時間がないから私は結論だけを申し上げておるのですが、まず第一にここに問題があるわけです。  それから今回の最高裁の判決というものは、いわゆる法律解釈論としては一応妥当でありましょう。そういう点から、この問題自体について、最高裁の法律解釈論についていろいろ批判するものではありませんけれども、これは若干政治論も加わってまいりますけれども、現にこういう不平等な問題が出てくるのです。というのは、いわゆる本件に該当する農地の旧地主の買い戻し請求権というのは、確かに憲法、農地法から見れば一応認められる点であります。しかし、従来の農地被買収者などに対する給付金の支給に関する法律というのがあります。これは被買収者及びその遺族等に対する給付金の支給を定めたものでありますから所有権者のこうむった損害補償的性質を持つものでありまして、憲法第二十九条三項の「正當な補償」に当てはまらないという解釈もできるのです。同時に、先ほど斎藤委員の質問にもありましたように、従来自作農創設に伴う戦後の農地処理においてはやはり報償金等も出しております。そういうような点から見ると、旧地主の買い戻し請求権というものは、結局政府が買い入れをした当時の買収価格で払い下げるというようなことはむちゃな話なんです。だからこれは問題の発展によっては、最高裁の判決そのものが法理論からいって不当でなくても、こういう現実論からいうならば非常に不当な問題も起きてくるというようなことも考えられるわけであります。そういう点からいいまして、これらの点について農林大臣はどのようにお考えになっておられるか。

倉石忠雄自由民主党

○倉石国務大臣 その点はきわめて明白だと思います。いま問題になっております農用地として買い上げたものを、不適当であるという判断が下れば、それは旧地主に売り渡すべきものであるという判決が出ましたので、そのことの手続をいたしました。ところが、そういう人たちに対して農地報償がすでに行なわれておるではないか、こういうお説でありますが、あの農地報償の法案の議員立法の提案者等もるる申し述べておられますように、これはそれに対する対価の補償金ではなくして、あの当時のああいう政策、国のとった政策に対しての協力に対する報償である、こういう御趣旨の説明がありましてわれわれもあの法律に賛成をいたしております。したがってこれはいまおっしゃったような趣旨のものではない。私どもみずから賛成をいたしておった代議士の一人としてそういうふうに理解をいたし、また法律もそのように説明をいたしておるように理解しておるわけであります。

小平忠民社党

○小平(忠)委員 総理がお見えになりまして、約束の時間も参りました。重要な問題点が残っておりますけれども、後刻総理にお伺いすることにいたしまして、私のただいまの質問を終わりたいと思います。

丹羽兵助自由民主党

○丹羽(兵)委員長代理 美濃政市君。

美濃政市日本社会党

○美濃委員 総理大臣が出席されましたので、今回、農地法施行令の一部を改正して旧自作農特別措置法で買収した農地を一部旧地主に当時の買収価格で売り払う、こういうことが閣議で決定された、このことにつきまして伺いたいのですが、全体的に見ると旧地主に対する不公平な面も出てまいりますし、また適正な価格で買収して二十年の年限が経過し、いまその価格で売り払うということに対する国民感情もきわめて悪いわけです。これは農地法の法律整理に対しても政府当局として配慮が欠けておったのではないか。こういう点もいま総理出席の前に農林大臣にただしたわけですが、それに対する反省点はなく、ただ今回出ました最高裁の判決一点にしぼっておる。これは非常に問題があると私は思うのであります。しかしその当該農林大臣がこの政令改正を閣議にはかるに際して、非常に釈然としない気持ちでこれを提案した、何かいい方法はありませんかという態度なんですが、この時点で総理大臣としてこの問題について、このまま閣議決定どおり処理しようとするのか。所管大臣はそう言っておるのですが、総理として、これでは国民感情にも合わないし、実態に合わないから何かせんならぬとお考えになっておるか、まずそれをお聞きいたしたいと思います。

佐藤榮作自由民主党内閣総理大臣

○佐藤内閣総理大臣 ただいまも美濃君が御指摘のように、最高裁の判決があった。とにかく三権分立のたてまえから、法の解釈、これはもう最高裁の判決による以外にはございません。われわれ行政府といえどもかってなことはできない。これはもう基本的な態度であります。ただ、いま御指摘になりますように二十年も前の価格、ただいま物価が非常に高騰した、また銭というような単位は考えられない。そういう際に昔の買収価格で払い渡す、こういうことになるとどうも国民感情が納得しない、何かいい方法はないか、こういうことで農林省もいろいろ考えておる。この検討の段階であることだけは一応わかるのです。しかしながら判示があった以上、それに従わないで在来の政令をそのままにしておくわけにはいかない。やはりその判決があればそれに従っていく、そういうように法令は整備していかなければならない。それにかわる何か救済方法があるかどうか、国民感情で納得のいかないようなもの、それをどういうようにやれば片がつくか、法律改正ができるのか、あるいはまた税法の処置で不当利得とでも申しますか、そういうようなものを国に吸い上げるような方法があるかとかいろいろ検討はしておりますけれども、いずれにいたしましても判決があった以上それに従わなければならない、かように私ども考えております。

美濃政市日本社会党

○美濃委員 いろいろお考えになっておるようですが、その中で総理大臣として考えなければならぬ、何かしなければならぬ、あるいはいまの時点で煮詰まっていないですから、たとえば具体的にこのくらいのことはしなければならぬと思うという判断事項がありましたら、この際お聞かせを願いたいと思います。

佐藤榮作自由民主党内閣総理大臣

○佐藤内閣総理大臣 政府も政府ですが、皆さんからもひとつ御批判、御意見も伺いたい、かように私思います。  これがいま逆な場合といいますか、買収されないでいたら一体どうなっているか、これが農地法が適用されないで買収されていたら、いまの地価によってその持ち主はたいへんな地価の高騰、その利益に浴しておるのじゃないかと思う。当時農地改革、この制度のもとでこれが買収された。そうしてその価格は、そのときは適正な価格だと思いますが、それで取り上げられた。それが今日になって買収される、こういうことでございますから、その農地法の適用そのものは目的を達しておる。これは全体の農地法適用から申せば部分的な問題でございますから、個々の問題の救済ということと農地法適用の効果、それはもう十分あげておると私は理解しておりますが、そういう場合にただいまのようなものが残っておる。たまたまもっと早く買収されて、そうしてそれが旧地主に返された、こういうことになると、おそらく買収価格そのままで返されただろう。そのときはあまり問題にならない。しかしその後それが二十年も経過しているところに問題があるのですね。どうもそれが納得がいかない、こう言われるのだが、法律はそういう点まではどうしようもないんじゃないだろうかと私考えるのです。でありますが、どうも静かに考えてみまして、現実にもっと適当な使い方はないのか、こういうようなことも部政府の部内で考えておることは事実でございます。しかしながら農地法を適用されて、自作農創設ということと結びつけてこの法の運用をされる、買収される。そうするとただいまのような結果が生じてきてもやむを得ないんじゃないか、実はかように思っております。これが一体いつになったら断ち切られるのか、後継者もやはり買い取る権利がある、こういうようなたてまえですから、これは法律的にはなかなかむずかしい問題だろう、かように思います。

美濃政市日本社会党

○美濃委員 この法律は、具体的ないろいろの検討は別といたしまして、このまま続ける意思であるかどうか、その判決にも一たん国が収用の例をとっておりますが、適正な価格で収用したものは、その目的が変わるとしても必ずしも売り戻さなければならないというものではないが、農地法八十条第二項で戻すと政府は国民に約束したんだから返しなさいというのが判決の趣旨だと私は思うのです。そうすると二十年もたてば、ものには時効というものもあるわけですから、これは買収を完結してから十年あるいは十五年を経過したものは返さないということは、立法府でありますから、国会できめれば、これは国会できめる権能があると思うのです。時効という考え方でしないと、一回代金を正当な金を払った、さらに報償金を出した、そうしてまた法文の整備が悪いためにその時効にかかって返すという、それに対する国民感情は、いかにも行政の怠慢でないか。いまごろ返すのはおかしい。そうして所管大臣も政令改正はあまり釈然としないのだ、こういう態度で行政が執行されるということについては私は問題があると思う。どうでしょうか。

佐藤榮作自由民主党内閣総理大臣

○佐藤内閣総理大臣 冒頭に申しましたように、二十年たった今日、ただいまのような点がやはり納得がいかないだろう、こういうことだと思います。これは国民感情として必ずしもすっきりしたとは思いません。しかし買収にかからないでその土地を所有していたら一体地主はどうなっているか。自作農でない場合ですね。その土地はそのままやはり地価が上がってくる。その利益は受けておるだろう。たまたまこれが農地であった。そういうような立場で、ただいまのように自作農創設の趣旨で農地法で買収された、こういうことになると、自作農の目的、それに合致しないというか、そういう意味でそれが処分されないでいる、こういうことだと、やはりいまのような判決もわからないわけでもないように思います。しかしいま美濃君の言われるように、それじゃいつまでも旧地主並びにその後継者はその権利を主張することになるのか、こういうことでございますが、その点の時効という制度があるのかどうなのか、私にちょっとわかりかねますので、それは法制局長官に説明させます。

高辻正巳内閣法制局長官

○高辻政府委員 仰せのとおりいろいろな問題がございますし、またいま総理大臣がおっしゃいましたような基本的な考え方があるわけです。時効の点に関しては確かにそういう関連の問題がございましょうけれども、最高裁の判決をごらんになりますればおわかりになりますように、自作農創設の目的に供しないことが客観的に明白であるというような場合には、旧所有者がこれを取り戻す権利がある、こういっておることは御存じのことと思いますが、その権利というのは法律所定の条件によって、つまり対価でいえば買収の対価に相当する額でこれを回復することを請求する権利があるというふうに自然になると思います。そういうような権利が、いいか悪いかは別としまして判決のいうようにすでに発生しているといたしますと、これをあとの立法で侵害をするというようなことになりはしないかというのが、立法にあたってわれわれが一番頭を痛めるところだと思います。いずれにしましても、そのような問題を含めたいろいろのこういう場合に対処する方策としてどういうものがあるか、そういうようなことはもしも検討の余地があるものなら検討したいと考えておりますけれども、いまの問題につきましてはざっとそんなふうな考えを持っております。

美濃政市日本社会党

○美濃委員 もう一つ単純にお伺いしますが、いま総理は買収されてなかった場合という表現をされておりますけれども、しかし同様に今回売り戻すというあるいは売り払うという同じ類似の土地の周囲に、これは最小面積制限か何かで売り渡しができなくて貸し付けになっておる、それですでに売り渡し完了しているものもあるわけですね。ですからそう一がいに、買収されていなかったらという——国民公平の見地からいくと、買収されていなかったらという表現は、同様に、同じ現況の土地が売り渡されて、変わった所有権者によって宅地化されておるものもかなり多いわけですから、そういう点は何らかで規制していかないと、同じ条件にある国民に対する公平の措置に欠けてくる。法理論は法理論として欠ける、こう思うわけです。

佐藤榮作自由民主党内閣総理大臣

○佐藤内閣総理大臣 美濃君の御意見、あるいは私が聞き違えたかわかりませんが、私いま申し上げた事柄があるいは適当でなかったかもわかりません。適当でなければ、取り消したいと思いますが、私考えますのに、一応土地を持っておる、これが自作農創設という趣旨から見て、地主だというだけで、耕作者は別にいる。こういうことで、これを買収した、農地法を適用したということで済むわけですが、適用したが、その次に耕作者に移っていないような土地、その場合に先ほどのような問題が起こるんでしょう。それが何年かたった後に、耕作者、自作農に移ってないじゃないか。それをひとつ旧地主に返してもらいたい。目的がもう明らかに自作農創設じゃないようだから、買収に応じない、こういうような話になると、たいへん問題になるだろう、かように私は思います。そこでいろいろいままでも考えたのですが、ただいまのように一ぺん政府が農地法を適用した。その当時は確かに自作農創設のために国が買収し得るような環境にあっただろう、その後その付近に道路ができたり、また事情の変化もいろいろある。そうしてどうも耕作には適しないような土地になってきた、こういうときにその土地を何か利用する方法はないか、公共に利用されれば旧地主も御満足なんだろう、こういうようなわけで、一時チビッコ広場というようなことがいわれました際に、そういうような土地をチビッコ広場などに利用したらどうだ、そういうような方法もありはしないか、こういうようなことも提案したことがございます。そういうようなことで、おそらく使えるものはやっておっただろうと思いますが、しかし相当の広さのもので、やはり耕地として適当に使われるというのが望ましい、こういうようなものが後になりましてもやはり適当な自作農が見つからないで、そのまま国が所有している、こういうようなことで、あとで自作農創設の趣旨に合ってないから返してもらいたい、こういうようなことになるだろうと思います。そこらに問題があると思います。国が買収したことが間違いではなかった、またそのこと自身は、一部分でございますから、いわゆる自作農創設というような制度そのものとしての大きい弊害にはなっておらない、目的は達した、こういうときに、それじゃ今度返す、こうなってくると、その扱い方がいま言われるように非常にむずかしい。適当なる価格、相当なる価格とは一体何を意味するか、もうすでに買収当時の価格で返された旧地主もある。最近になって地価が非常に暴騰しておる、今度は高いところで買い取るということになると、それもずいぶん迷惑な話だろう。政府としても返すということ自身を考えておらなかっただけに、この問題の処置には非常に困っておる。ただいまの実情は、率直に申しましてあの判例が出たことによって非常に困った状態だ、このことを私も感ずるわけであります。これは先ほど来農林大臣がお答えしたことだと思います。私は、旧地主の方にいたしましても、いわゆる買い取り権者の方々が、その土地がいわゆる自作農創設とは違うが、何らかの公共の用に供せられる、こういうことで御納得がいくなら、それが一番円満なる解決方法だろう、かように思います。しかし、いまの判決そのものから見ると、やはり返すとなると、相当なる価格、これはやはり買収時の価格、こういうことにならざるを得ないようでございます。政府が当惑しているのもその点であります。したがって、皆さま方からのいろいろの建設的な御意見も、こういう際ですから聞かれるだろうと思いますので、そういう点では御遠慮なしに政府にも教えてやる、こういう態度でひとつお話を聞かしていただきたい、かように思います。

丹羽兵助自由民主党

○丹羽(兵)委員長代理 斎藤実君。

斎藤実公明党

○斎藤(実)委員 佐藤総理に国有農地の払い下げ問題について若干お尋ねをいたします。  私の手元にあるこの資料は、政府から提出をされた資料です。ちょっと何点か読み上げますからよくお聞きをいただきたいと思います。この「農地法第八十条による売払実績」によりますと、これはもちろん国有農地であります。昭和四十二年は千二百十三件が払い下げられております。それで、面積は百二・二ヘクタール。旧所有者に金額はどれくらいで払い下げられたかといえば、最高は一円六銭、最低は七銭。昭和四十三年には千七百八十六件、八十二・二ヘクタール、これの最高金額は一円二銭、最低は三銭。これは一平方メートルです。昭和四十四年には千八百八十一件で、百四十九・四ヘクタール、そのときの一平方メートルの最高価格は一円三十三銭、最低は三銭。こういう現時点では当然考えられないような金額で払い下げられております。総理、このような価格についてどうお考えになっていらっしゃるか、承っておきたいと思います。

佐藤榮作自由民主党内閣総理大臣

○佐藤内閣総理大臣 いまの資料は、たぶんただいま農林大臣からいただいたこの資料かと思います。ただいまお読みになったように、最初買収したときの価格はずいぶん安い値段だ。当然現在からは考えられないような価格でございます。また、単位なども、現在の価格と比較すれば十万倍、そういうような数にもなるのじゃないか。百倍だとか千倍だとか一万倍だとか、そういうような問題ではないように私はいま土地を考えております。たいへん高い倍数だろう、かように思います。

斎藤実公明党

○斎藤(実)委員 今度の政令改正によりまして、農地として不適当だ、こういう土地に今度はワクが広げられました。ここに問題があるわけですね。当然農地としてもう利用できないという市街地、こういうところをいま私が申し上げましたような価格で払い下げられるということ、これがいま大きな問題となっておるわけです。ですから、先ほど総理からいろいろ答弁がございましたように、法律によってこれは払い下げられるんだという御答弁でもございますけれども、この例の二円六十銭、その当時の二円六十銭以外に小作料に見合うような報償金も出しているわけです。しかも昭和四十年には千五百億という報償金を出しておる。ですから一応この問題はもう所有権が離れた、こういうふうに私どもは判断をするわけです。ですからこれがいま問題になっておるわけですね。大きな国民の世論となっておるわけです。これに対して政府として何らかの処置、対策といいますか、当然それを講ずべきではないか。私は総理に、どういう具体的な施策をお持ちなのかお尋ねしたいと思います。

佐藤榮作自由民主党内閣総理大臣

○佐藤内閣総理大臣 ただいま当時の買収価格並びに報償費等分けてお話でございます。これは当然分けるべき筋のものであると思います。しかしただいま問題は、政府が進んでということじゃなしに、法令の解釈の最高権威は何といいましても最高裁にあるんだ。最高裁の判決あるいは判示と異なる処置は行政府といえどもとれない。ここにわれわれがつい立てにぶつかったようなもので、これはどうも納得がいきかねるけれども、その処置をとらざるを得ない。先ほど来申しましたのも、もしも本人が引き続いて所有していたら最近の地価の高騰でどんどん上がってその利益はもっぱら受けているだろう、あえて私がこういう話をしたのも、これは特別な例であります。(発言する者あり)しかしいま言われるように、農地報償で土地制度は回復になったけれども、そのときに支払われた政府からの金額、これは幾ら金利を生んだとしてもいまのような物価の高騰でない、いま不規則発言がありましたとおりだ、かように思います。そこらに問題があり、なかなか納得いかないことだろう、それが先ほど来農林大臣からもお答えした点だろうと私は思います。

斎藤実公明党

○斎藤(実)委員 総理から最高裁の判決についての答弁がございました。この最高裁の判決をよく続んでまいりますと、こういう一項がございます。これはプリントした八ページのまん中ごろですけれども、「同条による売払いの要件も、」同条というのは八十条ですが、「当然、長期にわたる社会、経済状勢の変化にも対処できるものとして規定されているはずのものである。」こういっているのですね。ですからこの農地法八十条というものは、恒久立法ですから、当然最初から今日のような社会情勢の変化を見通してつくるべきではないかという、これはおそらくは忠告だと思う。最高裁の判決もこういっておるわけです。もう実情に沿わないんだ。ですから私は総理にお尋ねしたいのは、この八十条をこのままにしていくのか。この実情に、社会経済の変化にもうそぐわないような状態になっておる、こういう現実ですね、そういった観点から、将来とも八十条をこのままにしていくのか、あるいは何らかの立法措置を講ずるのか、この点をひとつ御答弁願いたいと思います。

佐藤榮作自由民主党内閣総理大臣

○佐藤内閣総理大臣 最高裁の判決があった。この際、旧来のものをそのまま残しておくわけにはいかない。とにかく違法な状態は一日も早く解消しなければならない、かように思います。したがって今回とった処置はその意味で皆さまにも納得していただきたいと思います。  それではこの状態をいつまでも続けていくのか、こういう問題になると、最初申しましたように、そういう意味でなかなかいい案が見つからない。ありましたら、ひとつ教えても一いただきたい。ことにこれを私が申し上げますのは、責任を皆さま方に転嫁するわけではないので、政府はもちろん処理する責任があると思いますが、政府がやるといたしましても、いままで処置したものとこれから処置されるものとそれに非常な差ができるというわけにはいかないと思います。法律の遡及効果というものが——これから買収してこれからやるものについてなら何か変更をすることも可能かと思いますが、いままで処理したものが昨年処理されたものと今日以後処理されるものと、同じ条件で買収されたものに違った扱い方をするわけにいかぬ。これは納得されるだろうと思います。そういう意味で、ただいまのような何か新しい方向でそこらの問題を納得さすようなことはないか。これは理屈を言わないで一応公共の用に供してくれることについて賛同を得る、こういうような事柄を行政的な相談というか、そういうようなことを農地関係でも農林省のほうでやるべきじゃないか、かように私は思いますけれども、法律で遡及さして権利を変えるというのはどうもむずかしいことじゃないか、ここらに問題があるので、なおその辺は法制局を中心にしていろいろ検討さしておる段階でございます。しかしなかなかむずかしいような感じがただいまのところはしております。  なお、この点で法制局長官からも私の不十分な点を補足させますので、一応お聞き取りをいただきます。

高辻正巳内閣法制局長官

○高辻政府委員 補足をするようにというお話でございますが、実は筋はもう総理大臣おっしゃったとおりでございまして、特につけ加えることはございませんが、この政令の関係とそれから対価の問題は必ずしも関係がない。政令は御存じのように売り払う場合についての認定の要件を実は制限されていましたのを緩和することにしただけのことでございまして、これは法律の誠実な執行に当たる政府として当然最高裁の判決に従わなければならぬということでその職責を果たしたくらいの実はつもりでございますが、料金のほう、対価のほうは、買収の価格に相当する額ということで、法律のほうの解釈問題に実はなることは御存じのことだと思います。しこうして対処の方策としては、何といってもその価格がいまから見ればずいぶん低いではないか。実を申しますと、買収されるときの対価としてもこれはたいへん低いものではないかという議論が実はそのときもあったわけでございますが、それが今日また売り払う場合の対価として同じ問題が出ておるわけでございます。何と申しましても時代の変化に応じて価格の点における不均衡感といいますか、これがかなり大きいのは無理からぬことだと思います。そこでこれをどうして、どういうぐあいに処理していくかというのは、解釈問題ではなしに立法問題にならざるを得ないわけでございますが、大体の方向としては——方向としてと申しますよりも考え方としてどういうことが考えられるか。時価ということにするのが一部の考え方には一番適合すると思いますけれども、この方法は最高裁の判決による限り、すでにそういう事態が発生している場合には請求権がもうそのときに生じているんだ、その請求権たるや実は法定の条件において一これは書いてはございませんが、法律の解釈としては当然そうなるのではないか。つまりその請求権が発生したときの条件において権利の内容が固まっているのではないか。そういたしますと、あとからこれをくつがえすということは権利を害することになるのではないかというような問題がございます。  それからまた、税法の上で対処できないかという問題もございますが、これはどうしても残る問題は、いままでもずいぶんたくさんに売り払われてきておるわけでございますが、この辺との均衡の問題、これはまあすべての場合に通じる問題でありますが、これもやはり正義公平の見地から見てその辺はどうであろうかというような問題が、実はたくさんにございます。法律問題として考えますと、確かに考えるにふさわしい問題だとは思いますけれども、いま申し上げたような問題について、やはり一つ一つ法律的に解決していかなければならぬものでありますから、にわかにこの解答が出てこないというのが実情でございます。しかし、そのほかにもいろいろ解決方法があるかもしれません。それは、総理大臣が先ほど申し上げましたように、そういうことがあれば、むしろひとつお教えを願いたいというようなのが率直な考えでございます。

斎藤実公明党

○斎藤(実)委員 時間が参りましたから、最後に一点だけ総理にお尋ねをいたします。  私は法律論でやりとりする気持ちはございませんけれども、現に森林法あるいは鉱業法では土地収用法の準用規定を取り入れているわけですね。ですから、この土地収用法によりますと、買い受け権の規定も買し戻し価格の増額を請求できることになっておるわけです。ですから、私はこういったものを取り入れる、そしてもとの買収価格でなければ憲法二十九条に違反するということは、私はないというふうに判断をしておる。ですから、法律で公正妥当な売り渡し価格をきめることも可能ではないか。ですから私は、今回とった政府の政令を撤回をして、国民がほんとうに納得するような立法措置を早急に講ずるべきであると、この点について最後に総理の答弁を伺いたい。

佐藤榮作自由民主党内閣総理大臣

○佐藤内閣総理大臣 私も、実は新聞に出た際に、しばしば一市民からも質問を受けております。いま時分二円六十銭とか、あるいは二円幾らだとか、そんな値段の土地があるんですかと、どうも納得がいきませんと、こういうようなお話を聞いております。しかし、ただいまのように最高裁の判決がはっきりしておりますので、これはどうも動かすことができない。私自身が説明に困るのですから、おそらく皆さんもお困りだろうと思います。責任のないことだが、さように思います。  それならば、これを一体救済する方法はあるのか、こういうことで、いま御提案になりましたようなことをも含めて、ただいま検討はいたしております。検討はいたしておりますが、なかなか簡単に結論は出ないだろう、かように私いま考えておりますので、ただそれだけをお答えといたしまして、なお私ども十分に検討したい、かように思います。

丹羽兵助自由民主党

○丹羽(兵)委員長代理 小平忠君。

小平忠民社党

○小平(忠)委員 総理に率直にお伺いしたいと思いますが、戦後の農地改革は、わが国の新憲法の制定にも次ぐ画期的なものであったと思うのであります。戦前の地主対小作という封建制から脱皮して、すべての農民に耕作権を付与する。このことはまさにわが国農業にとって非常に重大なことであったと私は思うのであります。今回、その最高裁の判決を契機に政府は政令の改正を行なって、すなわち当時の買い入れ価格坪二円六十銭という価格で国有農地を旧地主に売り戻しする。このことは、先ほども農林大臣が、閣議にこれを出すのにどうもあと味が悪い、いまもあと味が悪い感じなんですということを率直におっしゃっておられたのです。それで最高裁が判決を出したからやむを得ないということで政府は政令改正に踏み切ったと農林大臣はおっしゃっておられ、ただいまも総理大臣もそのような前者の質問に対して答えられておるようでありますけれども、本件について、総理は、これはやはり農林大臣と同じように、どうもあと味が悪い、あるいはどうもまともな政令改正ではないがしかたがない、こういうふうにお考えなのか、総理の率直なお考えを承りたいと思います。

佐藤榮作自由民主党内閣総理大臣

○佐藤内閣総理大臣 これは率直に申しますが、四十一年時分から、裁判所では旧地主に買収価格で返す、どうもそういう意向のようだ、何かいい方法はないだろうか、こういうことでその時分からいろいろと考えておるわけであります。それでさっき一音申しました。当時は子供の遊び場がない。チビッ子広場というような表現で、そういう土地こそ中途はんぱなわずかな狭いところでもできるのだから、チビッ子広場などにしたらどうだ、こういうようなお話をしたこともあります。今日もなおそういうような考え方をしておるようであります。しかし相当、数ヘクタールに広がっておるような土地もございますから、運動場というような子供の遊び場というわけにもいかない。やはり協力者がない限り、買い戻す、こういうような話になってくると、やはり理屈を申して裁判所に訴え出る、こういうようなことにもなるだろうと思うのです。そういう点がこれからの行政上の指導だろう。もうすでに相当年月を経ておりますし、先ほどは時効はないかというようなお話まで出ておりますが、さような意味からもやはり旧地主というものがこういう事柄について御理解を得れば問題を円満に解決する方法、いわゆる社会的にその土地を使っていただく、こういうようなことも考えられるのじゃないか、かように思います。ただどうも正面から申しまして、農地法で買い取ったもの、それは旧地主、これがやはり優先的に買い戻す権利を持っておる、こういう状態でございますから、この点がどうもいまのところ割り切れないというので、さっきからのような議論が出ておる、かように思います。したがって、基本的には、いまさら法律を遡及さすわけにはまいりませんけれども、これから同様な事件が起こらないように、これからの立法については、やはり前もって十分注意しておくことが必要じゃないか、かように思っております。先ほど来お答えしたのもそういう意味でございまして、誤解のないようにお願いしたい。

小平忠民社党

○小平(忠)委員 ともあれ、戦後農地改革が行なわれてからもう二十数年たっておって、経済情勢の変動で価格にいたしましてもたいへんな変動をいたしております。先般の最高裁の判決では政府がいわゆる買い入れた、買収した当時の価格で売り戻しをするという、その最高裁の判決というように解釈する向きと、先般本院の法務委員会で最高裁の事務当局が、いや最高裁はそういう価格には触れておりません、農地法第八十条第二項によって旧地主に売り戻しをせなければならぬのだということを最終的にそれはいわゆる判決をしたのであって、価格に触れてない、こういう問題が実はあります。これらの問題を、これはあくまでも法理論的に解釈をせなければならないけれども、総理大臣として、最高裁のどういう判決があったから、きわめて非現実的な問題でもそれを行政府はやっぱりやらなければならぬというところに私は問題があろうと思うのです。現に、この政令改正後、この不平等を何らか処置しなければなりません。現にただいま総理も、この政令の改正によって国民的感情からいってもいろいろ問題があるが、これは目下法制局で何か適切な方法はないか、検討中だとおっしゃいました。私は一歩進んで、この際やはり農地法八十条の第二項そのものに問題があるならば、農地法八十条第二項の改正を行なうべきである。さらに公共の用に供するためのすなわち転用です、これらの問題については、やはり新たな立法措置を行なうべきだ、こういう前向きの考え方をこの際政府はとるべきでないか。一たん政令の施行したものについては、国民感情からこの不平等性をどうして排除するかについては、私はすみやかに対処すべきであると思うけれども、いまのようなこの矛盾をこのままに推移することはできないと思うのです。いかがでございましょうか。

佐藤榮作自由民主党内閣総理大臣

○佐藤内閣総理大臣 後ほど判決の内容については法制局長官から補足説明させますが、いま法律を改正して云々という話がございますけれども、八十条を改正しても遡及力をこれに付与するというわけにいかない。過去の問題をこれを改正することで解決はできない。それだけは誤解のないように願っておきたい。

小平忠民社党

○小平(忠)委員 総理、私はそれを聞いたのじゃないのです。過去の問題を遡及するということでないのです。現実のこれからの問題、これから必ず起きてくる問題です。したがって、私は今後のことを孝えて、やはり農地法八十条第二項を改正すべきである、さらにまた、いわゆる公共の用に供する転用等についての問題については、やはり特別立法の措置を講ずるか、あるいはもう農地法改正そのものでいいと思うのですけれども、何らかのそういう処置を講じなければ、将来ともこの問題は解決しないと思うのです。そのことを伺ったのです。

佐藤榮作自由民主党内閣総理大臣

○佐藤内閣総理大臣 さっきもお答えいたしましたように、これからの問題としては十分ひとつ考えようと、こういうことを申したのは、まさしくいま御指摘のとおりであります。したがって、ただいま補足させますのは、価格の問題やあるいは遡及力の及ばない点、これなどももう一度法制局長官からお聞き取りいただきたい。

高辻正巳内閣法制局長官

○高辻政府委員 判決に対価の額について何か触れているところがあるとかないとかいう意見があるがというところが最初にございました。これはどこを見ましても、対価についての直接的に触れたところはございません。それは今度の政令もまた同様に、対価については何も触れておりません。いま申し上げたように、判決の内容は、売り払いを認定すべき場合について制限をしているのがけしからぬという判決をいただいたものでありますから、そこで判決の趣旨どおりに政令を改正いたしまして、判決と全く同じ方向をとったというのが政令の唯一の中身でございます。  そこで、判決には確かに価格については触れておりませんし、政令もまた触れてはおりませんけれども、先ほど申し上げましたように、二円六十銭という額がどうして出るのかと申しますと、これはまさに御指摘の八十条二項の法律の解釈の問題になるわけです。で、その法律の規定には、「買収の対価に相当する額」とあるものですから、それは買収の価格としていままでも取り扱ってまいりましたし、今後もまたその点は変わりがないものとして議論があるわけです。これは私は、いままでとってきた買収の価格そのものととっておる解釈は間違っておらないと思っておりますが、もしそうであるとすれば、判決の示すがごとくに農地として供用する、自作農創設の目的に供しないことが明白であるということになると、そのときに旧所有者は請求権を持つといっておるものですから、その請求権の内容としては法律の定める条件によるというのがこれは当然のことであろうということから、いわゆる買収の対価に相当する額で請求をする権利を有するのだという法律の解釈をそれに付加をして、そういう結論になるわけでございまして、政令もまたその対価には触れておらないということを特に申し上げておきたいと思います。  それからもう一つは、八十条二項について改正をすることがどうかというのがお尋ねの一点でございました。私も今度の事件がありましたので、これは全く最高裁は、国家権力の中では法律を解釈する最高のあるいは最終の機関でございますので、政府は憲法の命ずるところに従って法律を誠実に執行するという意味合いから、その解釈に従って政令を改正した、これは私どもの立場からいいますと当然のことをしたといっていただいていいのではないか、ほんとうにそう思っておるわけでございますが、この八十条二項というのは、今度のような問題に関連して立法経緯を私よく調べてみました。立法の経過で、まさにいま御指摘のように八十条二項を削除すべきであるという意見が衆議院でも実は参議院でも出ております。が、しかし、そういう意見は意見としてとどまって、法律の現行規定八十条二項が厳として誕生をしたものでございますから、誕生をした以上は八十条の現行規定に従ってものごとを処理するのが政府としては当然であるというわけでございますが、これをその当時にありましたように改正するということは確かに一つの考え方でございますけれども、判決を再び引用して恐縮でございますが、自作農創設の目的に供しないことが確かである、客観的に明らかであるというようなものは、その際に旧所有者が請求権を持つ、ということになりますと、八十条二項をいかに改正をしましても、そういう状態に現にあるものについてはすべて遡及ができないことになります。で、せいぜい、と申しては恐縮でございますが、今後そういう事実が発生するものについてだけ将来に向かって効力を有するということにならざるを得ないことになります。またそういうものは、従前のものから比べると実際上どの程度の比率になるか存じませんが、かなり多くのものが処理されておりますので、比較的少ないのではないか。これは想像でございますが……。そうなりますと、なおさらいままでのものとの均衡がそこに大きな顔をして出てくる、そういう問題をどう考えるかというような問題がございます。  せっかくの御指摘でございますので、ただいまわれわれがそれについて考えることを率直に御説明申し上げたわけでございます。

小平忠民社党

○小平(忠)委員 時間がないようですから一点だけお伺いして終わりたいと思いますが、ただいま法制局長官の法解釈、考え方、私もそのように思います。遡及して云々はできない問題であって今後の問題である、同時にいま最高裁の判決の中身は確かに明瞭にその対価、いわゆる価格を指定してない、ただ、解釈論としては買収当時の価格で売り戻すという解釈論だということだと思うのです。私はそういうようなことから、やはり遡及してできないことはできないとして、これはやむを得ざる問題であろうが、しかしおよそ二十数年たって非現実的な坪当たり二円六十銭で旧地主に売り戻しをするというような農地法八十条第二項、これをそのまま今後も継続しておくというようなことは、きわめて非現実的な法律である、こう考えますから、先ほども農林大臣は、本法案の改正、本政令の施行にあたっての主務大臣として、非常にあと味が悪い、いまもあと味が悪いんだというようなことで行政に当たるなんということは、これは正常な姿ではないと私は思うのです。したがって、この際、進んで、やはりそういう点は改正をして、現実に沿う行政を行なうべきである、このように考えます。私は、端的に申し上げて、十二日の閣議で、あのような政令についてはもう少し十分なる検討、配慮をして、少なくとも法八十条第二項の運用をどうすべきか、これらも、単なる法解釈だけでなく、一つの政治論的な上に立って、十分なる配慮をすべきであったと私は思うのです。しかし、これは、すでに過ぎ去ったことはやむを得ぬとしても、根本的に今後の問題をどう処理するかということについては、前向きの姿勢として、法八十条第二項の改正以外にない、このように考えておりますが、最後に総理の考え方を伺いまして、質問を終わりたいと思います。

佐藤榮作自由民主党内閣総理大臣

○佐藤内閣総理大臣 これからの問題としての立法問題、これはひとつ政府も十分注意しなければならぬと思います。しかし、この農地法の問題は、先ほども斎藤君から御指示がありましたように、昨年あるいは一昨年に、現に買い戻している、そういうような利得を得ている、そこに及ぶわけにはまいりませんし、もうこれからの法律は、遡及せずというその原則を乱るわけにもいきません。したがって、いろいろ救済しろと言われるが、返す限りにおいては、どうも救済というか、みんなが納得がいくような処置がなかなかとれない。ただ、売り渡さないで国が持っていて、そして公共の用にこれを供する、こういうような御理解をいただいてやっていく限り、これならみんなも、一般も納得がいくけれども、売却するという処分をした場合には、どうも公平な処置がとれない、かように思うので、まことに残念に思っております。先ほど来いろいろお話がございましたので、これからの政府の、こういう問題が重ねて起こらないように注意すること、もう過去の起きた問題についてはいまさら遡及力がございませんので、どうもその救済方法がない、かように御理解をいただきたいと思います。

丹羽兵助自由民主党

○丹羽(兵)委員長代理 津川武一君。

津川武一日本共産党

○津川委員 私たちは、戦後の農地改革とそれを規定した農地法が、日本の民主化と社会進歩に非常に役立ったと評価しておるのでございますが、総理のお考えを伺わしていただきます。

佐藤榮作自由民主党内閣総理大臣

○佐藤内閣総理大臣 農地改革は、まさしくただいまのように、日本の民主化に非常に役立った、かように思います。

津川武一日本共産党

○津川委員 とすれば、この日本の民主化に大きな役割りを果たした農地改革に対して、これを阻止するために、地主勢力が対抗したり利用したりするために使った条文が八十五条の二、私たち、民主化する上において、これはほんとうにてこずりました。今度は八十条でございます。そこで私は、しかもこの八十五条の二も、八十条も雑則です。したがって、総理のいまの評価からいくとすれば、八十条はやめるべきだ、改廃すべきだと思うのでございます。これが一つ。この立場から……。  もう一つ世論でございます。先ほども話したとおり、二円六十銭、これはとても世論が承知しない。まして、地主勢力に加担するんだというふうな世論も盛んに出ております。世論も背景にしていただきたいと思うのです。  三つ目の問題は、農地法第六条によって、憲法の二十九条に規定された所有権を、それ以上の立場から、これはとめております。つまり、六条によって、地主たちは、持っておった土地をも放棄しなければならぬ、これをさらに八十条で農地法の基本的な精神であるこの精神を踏みにじるようなかっこうになりますので、私は、総理が、蛮勇を持ってとは言いません、ほんとうに勇気を持って、三つの観点から、いま直ちに、この間の二月十二日の政令を廃止して——せっかく長官も何かするほうが正しいと言っていますから、まず廃止する。そうして特別立法に当たる。特別立法にあたっては、総理がせっかくチビッ子にこれを利用させるなどと言っておりますから、こういう意味合いの目的もつけたかっこうで特別立法すべきだ、こう思うのでございますが、総理の意見を伺わせていただきます。

佐藤榮作自由民主党内閣総理大臣

○佐藤内閣総理大臣 津川君にお答えいたしますが、雑則だという、いかにもごみみたいな言われ方をいたしますけれども、雑則でも、これはれっきとした法律です。れっきとした法律である以上、われわれはこれを守らなければいかぬ。どうも雑則雑則と言われると誤解をいたしまして、そんなごみみたいなものだ、かように思われると困りますから、やはり法は尊重することにいたしましょう。雑則である、そういう考え方は取り消しましょう。また同時に、いま八十条で処理いたしましても、いわゆる地主制度が復活する、さような危険はないと思っております。農地法改正の大目的、これはもう津川君と私、同意見でございまして、それにまた、階級制度が復活するというようなものでないこと、これはひとつ御了承いただきたいと思います。したがって、地主制度が復活しない、それについては十分われわれは注意していく、そういうことでこの法の運用は誤らないように思いますし、また法律は、できた以上、どこまでもこれは尊重していかなければならない。  また、先ほど来のお話でおわかりがいっておると思いますが、いまさら法を改めましても遡及はしない、遡及力がない、こういうことで、この問題の解決には、これからの問題は新しい法律でいろいろきめてかかりますけれども、今回法律を改正することによって、過去の問題が解決するということではない、かように御了承いただきます。

津川武一日本共産党

○津川委員 私も地主制度の復活とは言っていないのです。地主勢力を強める、加担する傾向が、現在、これであるわけですよ。  そこで、総理にもう一つ、農地法の基本精神は、旧地主の持っておった所有権に非常に大事な、旧地主の、所有権という憲法で保障された二十九条のこの権利に対して、やはり制限を加えて、この所有権を制限したり、時によると、所有権を放棄させたものであるので、法改正にあたって、農地法のほんとうの精神をくんで、再び地主に返るようなことのないような立法措置をすべきだと思うのですが、念を押して答えていただきます。

佐藤榮作自由民主党内閣総理大臣

○佐藤内閣総理大臣 どうも津川君の御意見、やや私わかりかねるのですが、いわゆる地主制度、それの復活ではない、これはまあ御理解いただいた。けれども、何だか政府のやっていることは旧地主制度復活の方向への危険をはらんでいる、こういうふうにとれるようでございます。(津川委員「旧地主勢力……」と呼ぶ)地主勢力というのがどういうことなのか、おそらくいまのような点を含んでだろうと私考えますので、そういう点は自作農創設法、これはもうどこまでも私どもは守っていかなければならない新しい法律でございますから、この自作農創設法を守ることによってただいまの点は解消する。これまた御理解をいただきたい、かように思っております。  もう一つ何かありましたね。

津川武一日本共産党

○津川委員 旧地主に売り渡さないように……。

佐藤榮作自由民主党内閣総理大臣

○佐藤内閣総理大臣 旧地主に売り渡さないように、かようなお話ですが、先ほど来いろいろ私申し上げたように、公共の利益に使うように、一たん国有になった土地でございますから、なるべくそういう意味で御協力を得たい、かようにお願いしております。

丹羽兵助自由民主党

○丹羽(兵)委員長代理 次回は来たる二十四日開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後五時四十一分散会

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