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65回国会衆議院1971/05/18

社会労働委員会 第26号

発言数
148
登壇者
23
会派数
5
開催日
1971/05/18

会議録

倉成正自由民主党

○倉成委員長 これより会議を開きます。この際、参考人出頭要求に関する件についておはかりいたします。  厚生関係の基本施策に関する件、特に、医療保険及び医療に関する問題について、本日、横浜市立大学教授小山路男君、東京大学講師高橋晄正君、日本病院協会会長神崎三益君及び全国保険医団体連合会副会長田村清君に参考人として御出席願い、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

倉成正自由民主党

○倉成委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。      ――――◇―――――

倉成正自由民主党

○倉成委員長 次に、労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。質疑の申し出がありますので、これを許します。山本政弘君。

山本政弘日本社会党

○山本(政)委員 四月でしたか、実はタクシーに添乗いたしました。添乗の体験から、乗車拒否をしないでお客の言うままに動く、しかも水揚げのノルマと時間の管理に追いまくられる、そういうような状況で、運転者というのは非常に非人間的な状況にあるような感じが実はしたわけであります。運輸当局も業者も、口を開くと、悪質の運転者を追放しようじゃないか、あるいは良質の運転者を養成しよう、こういうことをよく言われておる。もちろん私は悪質の運転者がおらぬとは言いません。しかし非常に少ない。現実に私どもが乗ってみて、悪質だと思われる運転者もおることはおったけれども、非常に少ないし、そしてそういう札つきの会社というのもきわめて少ないような感じがしたわけであります。しかし率直に言うと、人間としてあたりまえな生活、欲求というものを満たそうというふうに考えるならば、いまの運輸行政の中では乗車拒否をせざるを得ないのではないか。ちょっと妙な言い方かもわかりませんが、そういうところに運転者が追い込まれておるということも事実じゃないかという感じがしてならなかったわけであります。そういうようなことを非常に深く感じたわけであります。  そこでまずお伺いしたいのは、労働省の二・九通達というのがかつて出ましたね。それで二・九通達に基づく監査というのが昭和四十三年以降進められてきたと思います。しかし、違反事業場というのは依然として増加の傾向にある。一体労働省はそういう結果に対してどういう考えを持っておられるのか、これが第一点であります。  同時に、今後の具体的な監督指導の方針といいますかそういうものと、それから違反事業場に科する行政措置の点について一体どう考えておられるのか、この点をまずお伺いしたいと思います。

岡部實夫労働省労働基準局長

○岡部(實)政府委員 御指摘のハイヤー、タクシー等を中心といたします自動車の運転者の労働条件の改善につきましては、御指摘のいわゆる二・九通達でその主要な、一種の是正勧告的な内容へ持つ点を示しておりまして、その後監督を実施して、御指摘のように必ずしも違反件数が減っているということが明らかでない点もございます。しかし二・九通達でいっております、たとえば賃金の中で最も問題になります非常に刺激的ないわゆる歩合給制度等につきましては、二・九通達を実施いたしました時点における調査と四十六年の一月、本年の一月に調査いたしました時点とでは相当な改善を見ております。  たとえば歩合給を採用しておりました比率等を見ましても、いわゆる二・九通達実施のときの事業場が五三%累進歩合制をとっておりました。これがそのうち、四十六年一月の調査時点におきましては九九%がそれを廃止するというような状況が見られておりまして、四十五年の調査によりますと、全体にタクシー乗務員の賃金構成の比率は、四十二年のときに固定給五七%、歩合給四二・九%でございましたのが、四十五年にはその比率は逆転いたしておりまして、固定給が七八・七%、歩合給二一・三%というようなことになっております。特に歩合給の廃止あるいは改善ということを中心としました賃金制度につきましては、このいわゆる二・九通達等の実効がそういう面ではあがってきておるものと承知をいたしておるわけでございます。  ただ、全般的にそのほかの点において十分改善されているかということになりますと、労働時間あるいは休日等につきましての違反は必ずしも改善されてない点も見られるというのが率直なあれでございますが、なお今後それらの点につきましては、法的に罰則をもっていろいろ強制していくということがむずかしい点もございますので、いわゆる基準法違反等の事例に該当しないようなものにつきましては、やはり行政指導を重ねてできるだけ改善につとめていく、こういうことの努力を積み重ねる以外ちょっとなかろうかと存じておるところでございます。

山本政弘日本社会党

○山本(政)委員 歩合給の問題はあとでお伺いいたしますけれども、これは私自身が現実に体験したことです。十二時半に池袋の駅でお客さんに呼びとめられた。そしてお客さんを乗せたわけであります。お客さんは所沢に行けという。十二時半ですから、所沢に行って帰るとちょうど帰庫時間くらいになりますね。それで所沢に行ったわけであります。そうしたら所沢じゃなくて、所沢からもう少し先だということで狭山に行った。狭山に着いて、そこがおりる場所かと思ったら、今度はお客さんのほうから、狭山台に行ってくれ、もう少し先だというわけです。行ったところがいなか道のようなところです。そして今度帰り道がわからなくなって八王子のほうに出たわけであります。それで道を反転しまして小平からずっと帰ってきたわけでありますけれども、これは帰庫時間にはるかにおくれておるわけです。それから洗車をするというようなことからいけば、休むのはたいへんだと思うのであります。  それで、私ども当初出るときにあれしたのは、基準法による労働時間帯を設定したのは、午前八時から八時半の間に仕業点検をやる。それから八時半に出庫して午前一時三十分が入庫です。そして午前一時三十分から二時に納金をして洗車する。その中で途中二時間の休憩。場外労働時間十五時間、仕業点検、洗車、納金等車庫内の労働時間が一時間、これで拘束十八時間になりますね。そして実働十六時間になる、こういうことで時間帯を組み立てて行ったのだけれども、その時間帯どおりにはならなかったというわけであります。そして帰って総括しました結果は、安全運転のあれでやったところが二百七十三キロ、乗車回数が四十二回、営業収入は一万一千百円、これは平均であります。ところがいまの通常の運転の現状は三百三十五キロですね。これはきまったあれでしょう。そしてこれは平均して四十七回、一万三千六百六十六円というような数字が出ております。そうしますと一日大体六十二キロの超過走行をやっておるのじゃないだろうか。そしてその差額といいますか、二千五百六十六円の営業収入増というものは一体どこから出ておるのかといえば、六十二キロの超過走行から出てきておるのじゃないだろうかというふうに感じられる。一つは何といっても労働時間の問題になってまいります。労働時間を厳守して走行しておったのでは、いま申し上げたような状況からいけば、三百三十五キロの走行ということをやるには、かなり時間としてはオーバーをして働かなきゃならぬだろう。もう一つは、そういう中でスピード違反が出てくるだろうし、無謀運転が出てくるだろうし、あるいは行く先を聞いて、都合が悪いというふうに感じれば、乗車拒否をして猛スピードで逃げ出しちゃう、こういうことになるのではないだろうか。この二つがどちらとも私は事故に結びついてくる、こう思うのです。そうしますと、タクシーによる交通事故というものは、走行キロと実は相関関係にあるのじゃないだろうかという気がしてならないわけです。とすると、東京のタクシーの一日の走行キロの三百六十五キロですかね、これはどうも実情に見合ったキロ数かどうかということが問題になってくるのじゃないか、こう思うわけであります。この辺を一体どう一きょう運輸省の方来ておられますか、どういうふうにお考えになっているのだろうか。これが第一点。  それから、走行キロと労働時間の超過について賃金の面から見ると、これは先ほど申し上げましたようにもっとはっきりする。そうすると、会社のほうは労働時間を守れと言って指示をしておりますと言って、監査をすればそういうふうに言って逃げてしまう。しかし、労働者のほうは、労働時間超過をやりながら基準法による時間外手当というものは受け取らないという問題が出てきておる。これは私は何人かに聞きました。実態としてそういうふうになっておる。そして賃金というのは、先ほど基準局長からお話がありましたけれども、あとでお伺いいたしますけれども、賃金体系というのが刺激的な能率給になっている、その辺に実は問題があるのではないか。運輸行政については運輸委員会でもきょう質問されておると思いますし、時間があれば私は若干触れたいと思いますけれども、ともかくも走行キロ、労働時間超過、あるいはそれと賃金との関係、これを一体どういうふうに運輸当局としては理解をしておるのか、これをひとつお伺いしたいと思います。

小林正興運輸省自動車局業務部長

○小林政府委員 ただいま御指摘のタクシーの走行キロの問題でございますが、現在東京都内におきましては一日の最高乗務キロを三百六十五と定めてございます。これは今日ほど交通渋滞がひどくなかった当時、世間で神風タクシーあるいは神風運転というようなことが言われた当時に制定されたものでございまして、ほうっておきますと三百六十五以上幾らでも走るというような状態がありましたので、その当時の情勢から最高を定めたわけでございます。したがいまして、これは最高でございますので、今日現在三百六十五がいいかどうかというような点につきましてはいろいろ御意見があるようでございますが、私どものほうの考え方といたしましては、現実に走れる距離というようなものが、先ほど先生の御指摘のように、三百二、三十のように私どもでも数字を持っております。したがいまして、現実に三百二、三十しか走れないという問題と、最高をどこで押えるかという問題が直接結びつかないわけでございまして、今日その問題が若干関連されて問題になるといたしますれば、事業者が最高乗務キロを給与の基準に使っておる、あるいはそれを給与の基準といたしましても、標準あるいは低いほうの基準、ノルマといいますか、そういうものとして使うというようなことから、あるいは労使間で問題が起こっているのではないかと思うわけであります。私どもといたしましては、あくまで交通事故防止の観点から、最高乗務キロをこれ以上は走ってはならないという意味で定めておるわけでございまして、それと労働条件とは直接関係がないわけでございます。  それから、ただいまの三百二、三十しか走れないという問題は、これは直接タクシー経営にも響くと思いますし、またその収入から受けるところの個々の労働者の賃金、こういったものにも影響することは当然だろうと思います。そういった点は、一つは運輸省の関係といたしましては、運賃政策の問題であるかと思うわけでございます。非常に交通渋滞などがひどくなってまいりましたので、タクシー営業がやりにくくなっておるということは事実でございますので、先般の運賃改定の際にもいわゆる時間・距離併用メーター制度というものを新たに導入いたしまして、運賃制度の面から若干でも事故防止あるいはタクシー運転者のサービスの改善に対する心理的な効果というようなものをねらって、わずかではございますが、若干の時間運賃制度を取り入れたわけでございます。その結果は、最近事故は若干減っております。また乗車拒否の苦情の申し出というものも減っておるようでございまして、非常に交通渋滞が激しいおりから、日常の業務そのものが非常にたいへんだということは御指摘のとおりでございますけれども、漸次改善の方向に向かっておるということを申し上げる次第でございます。

山本政弘日本社会党

○山本(政)委員 一日に三百六十五キロというのは最高走行キロでしょう。そうすると、経営といいますか、営業といいますか、そういうものを、何というか、経営の能率をあげさせるために最高三百六十五キロを走らしておるのが実態なんですよ。三百二、三十で、要するに、何といいますか、通常運転をやりなさいという、そういう指導というものを会社というものは現実としてはやらなかった。目一ぱい三百六十五走らして、そうしてノルマを課して、そうして何といいますか、水揚げをあげるという、こういうのが実は実態だから、三百六十五キロというものを減らせば事故数も減るということが明らかならば、少なくとも三百二、三十キロに最高走行距離というものを低めるということは、当然考えていいのではないか。そうでしょう。走れば走るほど、これはもうかるということは事実なんですよ。しかし、走れば走るほどもうかるけれども、事故も多いだろうし、労働条件も結局悪くなるということは事実なんだから、そうすると、最高の走行距離数というものを制限をする。そうして少なくとも三百か、私は適当なキロ数というものはよくわかりませんけれども、乗った距離からすれば、安全運転からすれば二百七十三という数字が出ているけれども、しかしそれが妥当かどうかは別として、少なくとも最高を下げるということは必要だと私は思うのですよ。そのことに対してどういうふうな態度をおとりになっているのか。つまりそれを下げるという気持ちがあるのかどうかということです、運輸当局としては。

小林正興運輸省自動車局業務部長

○小林政府委員 最高でございますので、これ以上走行させるというようなことは当然禁止せられておりますし、違反になるわけでございます。したがって、そういう点からいやしくも三百六十五キロ以上を走るようなことを事業者あるいは運転者がしないようにつとめていただきたいということは当然でございます。  先ほど来出ました三百二十とかあるいは三百三十というものは、一定の条件における一つの標準的な走行状態の場合に三百二、三十という数字があるいは出たかと思いますし、また私どもが平均的に、統計的にとった数字では、三百三十何がしという数字もとったことはございます。しかし、これはあくまで平均でございまして、いかなる場合においてもこれ以上出てはいけないという規制値、最高の規制値として三百六十五というものがあるわけでございまして、それをどこまで下げるのが妥当かという科学的な数字は非常にむずかしいかと思います。

山本政弘日本社会党

○山本(政)委員 あなた方が調査をして平均値が三百二、三十になるのだったら、少なくともそこまでは下げる必要があるじゃありませんか。つまり三百六十五という最高のキロ数を設定すれば、そこまで会社は運転者を追い立てていきますよ。これは実態としてそうなっていくのです。三百二、三十というのは通常の運転のキロ数になるわけでしょう。そして安全運転からいえば、二百七十何キロというデータが出ているのです。われわれの調査が間違いであれば別ですけれども。そうすると、三百六十五というのは最高ですから、そこまでやる必要はないんですといったって、会社はそこまでやれといって追い立てるに違いないわけです。ノルマを課するに違いない。そこに事故が発生するわけですよ。しかも今日の交通の状況から見れば、渋滞をしているから、あなたのおっしゃるように三百二、三十しか走れない。通常運転をやっていたって走れないということになれば、最高を少なくとも三百二、三十キロまでには――一歩譲っているわけです。私は安全運転だったら二百七十何キロまで下げろと言うのだけれども、しかし一歩譲っても三百二、三十までに下げる必要というものがあるはずでしょう。そうじゃありませんか。

小林正興運輸省自動車局業務部長

○小林政府委員 運輸省で定めております最高走行キロは、いわゆる走れる状態においてほっておきますと際限なく走るというようなことが考えられますので、最高をきめておるわけでございます。したがって今日のような場合において、それ以内においてどういった走行が標準であるかというようなことを、企業の活動の程度といいますか、営業活動の程度というものを役所が法令をもって定めるということは――そういう趣旨から出ているわけではないわけであります。したがって、現実に三百二、三十しか走れないかどうかという問題に対してどういうふうに取り扱うかということと、最高のキロ数を下げるかどうかということとは、直接関係がないことだと思います。

山本政弘日本社会党

○山本(政)委員 関係あるのですよ。三百六十五キロというキロ数を定めているから、通常運転をやって三百二、三十で水揚げがあがらぬということになれば、オーバータイムをやるわけですよ。そのオーバータイムに対して賃金を払わないで会社側は目をつぶっている、そういうことになるわけですよ。そこに事故を起こす原因があるだろうし、そして乗車拒否をやる原因も出てくる。これはもう間違いない事実ですよ。命が大切なのか会社の経営が大切なのか、どっちかと私は言いたいのです、極端な言い方をすれば。そういうことに対して、走行キロ数の最高、上限というものをあなた方はもう一ぺん再調整するお考えがあるかないかということを私はお伺いをしているのです。

小林正興運輸省自動車局業務部長

○小林政府委員 東京都内の場合でございますので、いろいろな状況が、走りやすい状況あるいは走りやすい道路、その時間帯、いろいろあろうかと思います。そういった際に、最高を出しましても三百六十五キロということが現在きまっておるわけでございまして、先ほど来申し上げましたのは、平均的に見ますと、三百三十五というような数字もありますが、それ以上は絶対にいかぬという数字とはたして言えるかどうかということ。  それからもう一つ、ただいま先生のお話のように、走らなければ走らないほど事故がないということも、あるいはあろうかと思います。このことについて否定しておるわけではございませんけれども、現在の法制で三百六十五という最高距離の性格でございますが、そういったものの性格として、これ以上は走ってはならないということを行政側で云々すべき問題としては、まだこれを下げなければならないという状況ではない。つまり三百六十五を走る場合には、いかなる場合においてもこれが事故につながるというようなことまではなっていないのではないか。つまり走れる場合もあり得るのじゃないかというふうに考えております。

山本政弘日本社会党

○山本(政)委員 だから、可能性の問題としては走れる場合もあるだろうけれども、事故が出てくる可能性だってあるわけでしょう、可能性の問題からいえば絶対と言えないのだから。三百六十五キロ走れる場合があるということで、ずっと業者がそれを労働者に強制をしていく過程の中で事故の発生が出てくるだろうし、いま言った乗車拒否というものも出てきやしないかということを私は言っているわけです。とするなら、どちらをおとりになるか。依然として三百六十五をおとりになるのか、あるいは乗車拒否とか事故というものを起こさないようなことをおとりになるのか。それが運輸省のほんとうの態度じゃありませんか。

小林正興運輸省自動車局業務部長

○小林政府委員 この最高乗務距離の制限というものにつきましては、これは自動車運送事業等運輸規則という省令で規定されておるわけでございますが、東京のような都市につきましては、地域を陸運局長が指定した場合に、これに基づいて事業者が最高乗務距離を定めて届け出るという法制になっておるわけでございまして、最高乗務キロの三百六十五というのが非常に無理だということになりますれば、当然そういったものは変わり得るものではございます。しかしこれを私どものほうでもって科学的に何キロというものを出し得るかどうかというような点については、いま直ちにその自信はないということでございます。そういう方向で関係者間で検討もされておりますし、また議論もされておるということは承知しております。

山本政弘日本社会党

○山本(政)委員 だから私のお伺いしたいことは、三百六十五というものが東京の場合でも地域的に検討して変え得るのだとするならば、その検討を進める、運輸当局としてもこれを進めていくということは私は必要だろうと思うし、当然そうしなければならぬと思う。そのことについて検討するおつもりがあるかどうか、そのことをお伺いしているわけです。もう一ぺん……。

小林正興運輸省自動車局業務部長

○小林政府委員 事業者の届け出制度になっておりますし、乗務距離の問題でございますので、事業者としましてもあるいは運転者としましても最高の制限でございますので、直接流しタクシーの運転者、関係者が守り得る限度というようなものを自主的に定めていただいて、そうして改正の手続を適法にとっていただくならば、われわれとしても先生の御趣旨の線に沿って検討するのにやぶさかでないわけであります。

山本政弘日本社会党

○山本(政)委員 基準局長にちょっとお伺いいたしますが、二・九通達を口実に拘束時間の延長あるいは休憩時間の短縮、時間外百五十時間の押しつけというものが現実に行なわれてきたという実態がある。そういう実態をつかんでおられるのかどうか、これが一つ。もしそれをつかんでおられるならば労働省の見解、並びにその出先機関といいますか、これは大阪とか京都なんかにもあったと思うのですけれども、その出先機関が二・九通達の指導にあたって、労働省がさきに示した解釈と異なる指導をやっておるとした場合には一体どういうふうになさるおつもりなのか。私の質問の意味わかりますか。それをひとつ聞かしていただきたいと思います。

岡部實夫労働省労働基準局長

○岡部(實)政府委員 御指摘のように二・九通達は、従来とかく自動車運転者の労働時間が非常に長時間にわたりまして、それからまた労働条件等が自動車運転者の場合には非常に特殊な形態をとっておるというために、労働者の労働実態が非常に過酷になる、過労にわたるというようなことのためにいろいろ事故その他の発生の源となる。そこで、労働基準法できめられた基本線は基本線といたしまして、現実に自動車運転者として働く勤務の実態が一般の場合と違いますから、その差異に着目しながら、そういう勤務形態の中で、最低労働条件として順守すべき基準を示した、こういうことになっておるわけでございます。  そこで御指摘の、その中でいろいろ示されたことを逆に事業主側のほうがいろいろ逆用するといいますか、そういうような事態について、現実に必ずしも適確に把握しておるわけではございませんが、先ほど申しましたように基本的な指示の線につきましては、監督にあたりまして重点的にこれを取り上げて、その是正につとめてきておるところでございまして、その面については相当改善の実が上がってきておるものと思っておるわけでございます。ただ、それで十分でないことは御指摘のとおりでございまして、いろいろな機会をつかまえまして、さらにこの通達の実施については引き続き努力をしてまいりたい。  ただ、この違反の問題についての、どう処分をしていくかということにつきましては、基準法の条項に照らしまして、明らかに違反するという事態に対しましては、法の規定に従いまして処置をしてまいるということで、あとはこのいろいろ規定しておりますことについては、たとえば運転者手帳の採用その他労働時間の改善等、監督とあわせながら、改善に自主的な努力をも行政指導をしてやっていく、こういうことになろうかと考える次第でございます。

山本政弘日本社会党

○山本(政)委員 一昨年の十一月だったか、運賃値上げの認可にあたってこういうことがあったと思います。物価対策閣僚協議会、交通関係閣僚協議会は、二・九通達の完全実施と労働条件の改善を条件とすることを決定したはずであります。昨年の三月一日に東京でこれが実施されて、タクシー料金の値上げに際して、運輸省と陸運局、そして業界は、三者とも、料金を値上げして、その半分を賃上げに回します、厚生施設をつくって待遇を改善し、それによって乗車拒否と暴力運転手を追放する、同時に乗客の安全とサービスを確保する、こういうことだったと思うのであります。運賃の値上げはされた。しかし結果は、実はこれがから手形に終わっておるわけであります。と申しますのは運輸省は、間違っておれば間違っておるというふうに御返事願いたいんだけれども、閣僚協議会の約束というのは法律じゃないんだ。運賃値上げの際の許可基準ではあっても、営業継続の基準ではない。つまり、ことばをかえていいますと、法律ではないから経営者に強制をしようがないんだ。サービスの改善とか労働条件の改善をしない業者に営業停止させてでも約束を守らせる権限というものは、当局にはないんだというようなことをおっしゃったというふうに私は聞いておる。これは事実なのかどうなのか。   〔委員長退席、増岡委員長代理着席〕 しかも、運賃値上げのあとには、今度は業者のほうは足切りの引き上げということで実質的には労働条件を下げてきた、これは事実であります。とすると、一体どういう指導をやっておられるのかということが私としては疑問として頭に浮かんでくるわけであります。その点、一体そういうことがあったのかどうか。つまり、運賃値上げ後に、約束に対してそれを無視するような、そういう指導を実際に行なったのかどうか。私はそういうことはないのだろうと思うのですけれども、ことばとしては明確に、閣僚協議会の約束は法律ではない、運賃値上げの際の許可基準ではあっても営業継続の基準ではないということが私のところには文書になってあるわけでありますけれども、これは一体ほんとうなのかどうか、これをひとつお伺いしたいわけです。

小林正興運輸省自動車局業務部長

○小林政府委員 先般の運賃改定に際しまして、労働条件の改善の問題、あるいは乗車拒否を防止するための運転者の登録制度の実施というような問題が、物価対策閣僚協議会におきましての決定事項の中にうたわれていることは、先生御指摘のとおりでございます。その協議会の決定の線に沿いまして運賃改定の作業をやったわけでございます。つまり、労働条件の改善につきましては、先ほど来お話しのありました二・九通達に適合した就業規則あるいは賃金規程の提出、さらに実態監査というものを労働基準局の監査を経まして、それに合格したものから運賃改定を認めたわけでございまして、当時、第一次監査においては合格しなかったというようなことで、東京におきましてたしか六十八営業所が運賃改定がおくれたわけでございます。  また、二番目の登録制度の問題につきましては、タクシー業務適正化臨時措置法という法律が昨年の国会で通りまして、その法律に基づきまして、東京及び大阪におきましては、近代化センターというものが発足いたしまして、そして現在の運転者の登録制度を実施しておるわけでございます。  このように、閣僚協議会におきまして決定された事項、その線に沿って運賃改定を認可し、それを進めたわけでございまして、私どものほうといたしましては、今日何か約束云々というようなことにつきましては、特に具体的に御指摘の点についてはわかりかねております。ただ、乗車拒否を防止するためという大きな目的、目標というものが完全に達成されているかどうか、こういうことから申し上げますと、先ほど来お話がございましたように、いまだ東京及び大阪においては、乗車拒否というようなことに代表されますようなサービスの低下というようなものが相当多いこと事実でございます。そういった点について、あるいは運賃改定は済んだけれどもサービスの改善は十分でない、こういうような意味合いにおきましては、いろいろ御批判のあったことも十分承知しておる次第でございます。

山本政弘日本社会党

○山本(政)委員 そういうことはないのだろうと思うのですけれども、しかし足切りの額の引き上げというのは、これは現実に出てきているのですね。  あと十五分しかないですから、はしょりますけれども、四十二年の二・九通達、これによると、「いわゆる歩合給制度のうち、極端に労働者を刺激する制度を廃止することとし、歩合給の歩率は水揚等の多寡にかかわらず一定率にするよう逐次改善に努めること。」こういうふうにたしか出ておったと思うのです。  四十二年三月七日の、基準局賃金部長の、二・九通達の説明の要旨は、「賃金形態に関し留意すべき事項について」という題で、「本項は、歩合給制度のうちで、極端に労働者を刺激する方式を廃止し、歩合給制度を改善していく趣旨であって、歩合給制度そのものを廃止する意図ではない」と、こう書いてある。また、累進歩合給制及び積算歩合給制は廃止することを意図するが、一律歩合給は廃止する意図はないものである。こういうふうに書かれてある。そこで、タクシー労働者の賃金を見ますと、大まかには三六・六%が基本給、三一・五%が歩合給、三一・九%が諸手当であります。しかしそのどれをとってみても刺激的賃金であることは間違いないのであります。固定給ですら――固定給というのは月々きまって支払われる部分だと理解していいでしょう。しかしその固定給そのものが、本質的には出勤日数によって支払われるようになっているわけです。休めばその分だけ引かれるというので、完全な意味の固定給ではないのです。これが一つ。歩合給というのは、私が申し上げるまでもなく、個人の水揚げ高に応じて支払われるわけでしょう。そして諸手当というのはたくさんあります。皆勤手当、乗務手当、無事故手当、愛車手当、深夜手当、物価手当、こういうものがある。これも出勤状況によって、欠勤日があると削り取られる。いわば時間給的な性格を持っているわけであります。それから深夜手当、これは深夜割り増し賃金と別でありますけれども、深夜手当というものの中にも水揚げ高によって支給される、こういうものがある。もう一つは、旧車手当あるいは型別手当とか、そういうものがあります。これは運転能率とかあるいは排気ガスとか振動そういう点で労働者に影響があるからといって、わずかな手当で労働者のきらう車をあてがっていく、こういうものがある。そして最後にはキロ手当、燃料手当などというものがありまして、これは自動車の走行距離に対して水揚げが多いほど加算をされる。いわば歩合給の変形であります。とすると、固定給であれ、基本給であれ、歩合給であれ、諸手当であれ、すべてが、何と言いますか、つまり完全な意味の固定給ではないし、歩合給にしたって、刺激的な賃金というものは別だというような基準局長のお話があったけれども、これとても刺激的な賃金であることに変わりはないわけです。そして諸手当といえども歩合給的な性格を持つ。これも刺激的であるということになれば、タクシー労働者の賃金というものはすべてが水揚げとか、あるいは能率とか言ったほうがいいのかもわかりませんが、つまり総体的にいえば、能率給というのですか、そういうふうに理解されてもしようがないのじゃないかと思うのです。先ほどどなたかがおっしゃったけれども、運転をする人がおらぬから会社によっては減車をするというようなことが出てくるというのは、つまり労働条件というものがよくないから逃げていくのであって、労働条件がきちんとなれば減車をする必要もないだろうし、労働条件がよければいろいろな事故も起こらないだろうし、乗車拒否もしないだろうと思うのです。そうすれば経営が成り立たぬじゃないかということはあるかもしれぬ。しかし、経営については私はよく知りませんけれども、別途に運輸省でも対策があり得るはずだと思うのです。なぜならば、それは要するに公共的な交通という性格を持っているからだと思うのです。交通機関である。しかも大都市においては特にそういうことが言われている。とすれば、ほんとうの意味の固定給というものをやはり労働省としては大幅に認めてやる必要があるのではないだろうかと私は思う。そういう方向に指導なりあるいは政策というものを持っていくということも考えていいし、そういう時期に来ているのではないかという感じがするわけであります。その辺について労働省としては一体どういうふうにお考えになっているのか、これをひとつお伺いしたい。

岡部實夫労働省労働基準局長

○岡部(實)政府委員 自動車運転者の給与の関係につきましていろいろ御指摘がございましたが、給与の構成なりあるいはそれをどういうふうに支払うかということについては、基本的には労使が自主的にきめてまいるというのがたてまえであろう。ただ自主的にきめてまいるにつきましても、実は自動車運転者の労務の実態が一般の工場、事業場に働く人たちと非常に違っておりまして、そのためにいろいろな形がとられている。その中で労働条件そのものに対しまして悪影響の最も大きいのが歩合制。なかんずく累進歩合制という制度が刺激性が非常に強い。これが賃金形態の大きな流れになることは放置することはできないということで、まず私どもといたしましては、累進歩合制というものに対しましては、これをとにかくやめてもらうという方向を打ち出したわけでございます。そのほかの歩合制につきましても刺激的な要素が完全にないとは申せませんけれども、賃金形態の中で一部刺激的な要素を含めるといいますか、あるいは労務の実態に即した賃金の形がとられるということもある程度容認せざるを得ない。そこで、すべての歩合制を一切いかぬということはなかなかむずかしいということでございますので、先ほど申しましたように、最も悪い影響が起こりやすいものを改善させるということで、この点については、先ほど申しましたように改善が三つあります。なお、引き続きこの点については改善に努力をいたします。  さらにいま御指摘の点につきましては、二・九通達の基本の考え方は、適正な労働条件が十分確保されるために労働の実態に応じていろいろ指導していくということにございますので、そのほかの刺激的な給与形態につきましても、非常に問題があるものについては今後とも引き続き改善指導に努力することにやぶさかではございません。

山本政弘日本社会党

○山本(政)委員 つまり累進制、それから積算制から一律制というように歩合形態がかりに変わっても、経営者というのは足切り額を引き上げますね。そして一律歩合給というものをまた刺激性を強めていくということになれば、結果的には同じことじゃないだろうかという感じが実は私はするわけです。問題は歩合給制度の改善ではなくて、一切の歩合給制度を廃止するということ、いまそれが直ちに可能であるとかなんとかいうことを申しておるわけではありません。しかし将来の方向としては、やはりそういう方向を追求しなければいかぬのじゃないかという感じが私はするわけです。その辺についての労働省の見解を再度お伺いしたいと思います。

岡部實夫労働省労働基準局長

○岡部(實)政府委員 御指摘の点はまことにごもっともであろうと思います。  そこで私どもは、実はやはり労働時間に、あるいは労働の実態に応じた給与が固定的に安定して保障されることが望ましいと思いますので、それに反するような運営をされるおそれのある歩合給制度につきましては当然改善をすることが望ましいことでございますので、今後の監督にあたりましてはそういう実態をさらに十分見きわめまして、御指摘のような現実の運営が刺激性が強く行なわれるというような形については、改善のための指導をしていくべきだと思います。

山本政弘日本社会党

○山本(政)委員 それでは最後の質問です。  MKシステムというのがありますね。これは一体どういう仕組みになっているのかというと、労働者一人の月間水揚げから固定経費と走行経費を差し引き、残りを運転者の賃金とする、こういうものだと思うのです。そうするとこれもやはり、いま言う刺激的賃金ではないけれども、要するに労働を刺激するといいますか、そういうものだと思うのです。私は、MKシステムというのは、ある意味ではメンズキラーというか、人殺しだと考えているのです。つまり、賃金はそれによっておそらく高くなるだろう。固定経費と走行経費を差し引いてあとはあなたのものでございます、だから御随意にということになれば、自分のからだを考えずに目先の欲にかられて運転していく。当然賃金は上がっていくかもしれぬけれども、自分自身は結局はさいなまれていくということになると思うのです。そういうシステムに対して、労働省は一体これを是としているのかあるいは否としているのか、これはどうでしょうか。

藤繩正勝労働省労働基準局賃金部長

○藤繩政府委員 いま先生の御指摘のMKシステムでございますが、先ほど来歩合給につきましてはいろいろ御議論がございますけれども、問題は、基本的には賃金は労使の間で自主的にきめるべきだ、しかしながら自動車運転者の場合は労働の形態が特殊であり、かつ交通事故との関係があるので、ある程度行政指導をしなければならないということと、それから歩合給は走行を刺激し事故につながるという点で好ましくないが、いま直ちに歩合給を全廃するということもたいへんむずかしい問題だというようなことにつきましては、大体御了解いただけたと思うのでございます。  そこで問題は、極端に刺激的な歩合給というものをできるだけ排除していく、そういう行政指導をすることは、政府の介入ではなくて必要な指導ではないかということで二・九通達以来やってまいっておりますが、累進歩合給の廃止等についてはかなり顕著な成果をあげ得たというように自負いたしております。ただ、先ほど足切りの問題も御提示がございました。またいまMK方式について御提示がございましたが、こちらを押えますとまたあちらということで、いろいろな形態が出てまいります。私どももそれについて逐一対応していかなければならないと考えておりますが、問題は、どこまでわれわれが立ち入っていいのかということは、正直に申し上げまして非常にむずかしい限界に触れる問題だというふうに、いつも私どもは考えておるわけでございます。  いまの御指摘のMK方式というのは御説明のとおりでございまして、したがいまして、一言で言えば、水揚げのうちで経費を差し引いた残りの全部が歩合のような形になっております。そういう意味では刺激性を持ったものである。しかしながら累進歩合のような非常に悪質な極端な刺激、あるいはトップ賞のようなものかというと、それに比べればややゆるい歩合ではなかろうかというような評価もあると思います。  いずれにしましても、労働基準法あるいは二・九通達で指示いたしましたようなものに反する限りにおきましては、私ども厳重に処置もし、指導もいたしておりますが、現在のこの形式につきましては、やはり各社のそれぞれのケースによって判断をしなければならない、一がいに評価は下しにくいのではないかというふうに考えておるわけでございます。

山本政弘日本社会党

○山本(政)委員 いま賃金部長は、累進歩合よりもMK方式、MKシステムというのは刺激性が強くないと言うけれども、逆ですよ。累進歩合給よりかさらに刺激性の強いのがMK方式なんですよ。ここにデータがありますが、一人当たり二十五万六千円の水揚げが出ている。そうすると、これは一日一乗務に直すと大体二万円ですよ。そうするとこれは一日五百キロ以上の走行ということになりはしませんか。そうすると、これはたいへんな刺激性があるということになると私は思う。だから、あなたのおっしゃるような刺激性からいえば、これほど刺激性の強いものはないのですよ。私はむしろ、あなたのおっしゃるように合法だという理由がわからない。累進歩合制よりかMKシステムというのが刺激性が強くないということが、あなたは立証できますか。刺激性が強くないというふうに立証できれば、私はいい。しかし少なくとも数字から見た場合には、累進歩合制を考えた場合だってこんなにかせげやしませんよ。つまり、かせげるということは刺激性が強いということを意味しているわけでしょう。それを合法だというふうに理解をしようしておる労働省とかあるいは運輸省の態度のほうが、私はむしろわからない。累進性歩合よりかMKシステムのほうが刺激性が弱いという、その実証があるなら出してください。どんなに累進性をやったって一人当たり二十五万六千円という水揚げは、累進性歩合の場合はぼくは出てこないと思う。これはMKシステムだから出てきているのです。ということは、MKシステムはそれほど刺激性が強いということを意味しているわけではないですか、もう一ぺん……。

藤繩正勝労働省労働基準局賃金部長

○藤繩政府委員 賃金形態について合法か非合法かという問題は、そもそも賃金形態については特段の規制がございませんで、保障給を置くとかいうような点だけでございます。ただ問題は、適当かどうかということになると思いますけれども、先ほどお答えしましたように、ケース、ケースによりましていろいろございます。いま御指摘のような非常に長いものであるということになれば、もとより相当刺激性の強いものというふうにいわざるを得ないと思います。問題は走行時間との関連もあるわけでございまして、賃金形態だけで先ほど私お答えいたしておりますが、それと労働時間、先ほど三百六十五キロメートルの問題がだいぶ議論になっておりましたが、そういうものとの関連において、一つの形態としましても、それぞれにおいて非常に刺激性の強いもの、あるいはそれほどでもないものというふうになると思いますが、そういう意味でケース・バイ・ケースで私どもは見ていかなければならない、こうお答えをいたしたわけでございます。

山本政弘日本社会党

○山本(政)委員 労働時間だけではないのですよ。これは名前は私は申しませんけれども、つまり昨年十一月から試験的に始めたという、そこではMKシステムを採用しているのですよ。採用しておって、今度は自主的に採用しておる人たち、つまり運転者の中で、今度は自分たちみずから経費の節減をはかっているのですよ。だから仮眠室のストーブを、大きなやつを今度は小さくしている。そうして管理職というものを今度は相談づくで、六人を二人にしている。そしてその穴埋めに非番の運転者が交代に手助けをしておるわけです。だから単に労働条件とか賃金とかという問題に限らないで、いろいろな総合的な問題がそういうところから派生をするわけですよ。その結果が一体どうなるかといったら、経費を節減して、そうして自分たちのインカムをふやそうというために、そういう無理をした結果はどうなるかといえば、これはそんなむちゃをやっていれば事故につながりますよ。当然休むべき時間に自分が起きて、そうしてつまりほかの仕事をするわけですからね。そういうものが派生的に当然出てくるのですよ。MKシステムというものはそういう派生的なものがほかにだんだんと起こってくるという実態というものを考えてもらわなければいかぬだろうと思うのです。だから、そういうことをぜひひとつ検討してもらいたい。  同時に、私がお願いしたいのは、これはいろいろとそういうことで何も業者をどうこうするということでないのです。しかし、ともかくもタクシーというものは公共輸送機関として認められておると思う。そうしてタクシーが都市内の旅客の輸送機関をして果たしてきた役割りというものはやはりあるわけだし、実績もあるわけですね。とすると、どういうふうにタクシーを都市内の旅客輸送機関として位置づけたらいいのかということを考えなければならぬだろう。その結果から出てくるものは、いろいろな私は政府としてなすべき方策というものをやはり考えていいんじゃないかと思う。助成金の問題もあるかもわかりません、補助金の問題もあるかもわかりません、よく知りません、私は。あるいは長期低利の融資というようなことがあるかもわかりません。そういうものをやはり当然国としても考えていって、公共的なそういう輸送機関というものをどうすればいいかということを考えていく必要があるんではないだろうかというふうに考えるわけです。そういうことを申し上げて、ひとつ最後に運輸省と労働省の御意見をお伺いしたいと思います。

小林正興運輸省自動車局業務部長

○小林政府委員 タクシー問題、御指摘のとおり非常に重要でございまして、現在運輸省におきましては、運輸政策審議会に大都市におけるバス、タクシーのあり方という問題につきまして諮問をいたして、現在検討中でございます。鉄道の整備と並びましてバスの使命、輸送分野、あるいは太らにタクシーをどう位置づけるかということにつきまして、現在の輸送の実態に合うような新しい見直しをやっておるわけでございまして、その結果、タクシーに対しますいろいろな行政面での問題、たとえば運賃制度の問題あるいは免許更新の問題等、いろいろ出てくると思いますが、そういったことについて現在詰めておりますので、早晩結論が出るものと思います。

岡部實夫労働省労働基準局長

○岡部(實)政府委員 労働省といたしましては、先ほど来御指摘のございます二・九通達がほんとうに実施されているか、またそのための監督が十分行なわれているかということに尽きるのではないか。そこで私どもは、基本線はやはり二・九通達がほんとうに実効があげられれば相当な効果があがるのではないか。そこでたとえば、御指摘のようにMK方式一つをとりましても、それが単なる一つの歩合制の形ということだけでなくて、それがいろいろの面の労働環境、労働条件全体に関連を持ってくるということは御指摘にもございました。私どもは、今後の自動車運転者の労働条件の監督にあたりましては、そういった総合的な労働環境、労働条件を含めまして、二・九通達の線に沿って、それが実質的に実効があがるような方向でさらに格段の努力をしてまいる。そういうことで、運輸省の監督面に対しましても、必要なことがありますれば、私ども監督を通じまして得た情報を提供いたしまして協力を求めていくということでやってまいりたいというふうに考えております。

山本政弘日本社会党

○山本(政)委員 以上で終わります。

増岡博之自由民主党

○増岡委員長代理 次に後藤俊男君。

後藤俊男日本社会党

○後藤委員 一番最初に、現在私鉄関係のストライキがまだ収拾されておらぬわけでございますけれども、現在あっせんの段階がどういうような情勢に至っておるか、この点を御存じの範囲でけっこうでございますから、簡潔にお知らせいただきたいと思います。

石黒拓爾労働省労政局長

○石黒政府委員 あっせんの段階は、大体新聞、テレビ等で報道されておりまして周知のとおりでございますが、昨日の夕方以来のことを申し上げますと、夜社長会をやりまして、それから経営者側が事情聴取の席上におきまして八千九百五十円の前年度の額を必ずしも下回らないでよろしいというような話以来、それを足がかりにして中労委はあっせんを進めておりましたが、なおそれ以上には労使の開きが縮まらないという状態で、一時中断をいたしまして、さらに朝から続行をしておりますが、やや弾力性が出てきたものの、なお労使の懸隔ははなはだ遠く、あっせんはきわめて難航しているというのが現在の状態であると承知しております。

後藤俊男日本社会党

○後藤委員 これは私が申し上げるまでもなく、昨年の運賃改正のときに、この財源については簡単にべースアップのほうへ回すというようなことは考えない、こういうような条件もつきまして昨年運賃改正が行なわれておる、これも事実だと思います。現在私鉄におきましては労使で自主的団交を進め、さらに中央労働委員会のあっせん段階にきておるわけでございますが、やはり政府の動きというのがかなり大きく収拾する際における力になると私は思うわけでございますけれども、ぜひひとつ今次私鉄の闘争につきましても、一刻も早く収拾される方向へ全力を尽くしていただく。実はぎのりも官房長官のほうへ、党といたしまして申し入れをいたしました。そのときに、官房長官としましては、昨年のことをどうこうということは一切考えておりません、あくまでも労使の間における自主団交で、こういう話もあったわけでございますけれども、いま申し上げましたように、昨年の経過等もありまして、いろいろと表面に見えないところの圧力もかかるということになれば、最終段階における集約というのも非常にむずかしくなるというふうにも考えられますので、今回の私鉄の闘争につきましては、政治的にも非常に重大な問題であろうというふうに考えますから、ぜひ早急にこれが集約できますように御尽力いただきたいという点を冒頭にお願いをいたしたいと思います。  それからその次には公労協関係の闘争でございますけれども、これも大臣も大体大綱につきましてな、今日までの経過につきましては十分御承知だろうと思うのです。  簡潔に今日までの経過を申し上げますと、四月の十六日に、公労協関係の各単産の委員長、さらに官房長官なり労働大臣がお会いになりまして、第一回の政府交渉が行なわれました。その中身につきましては、私が申し上げるまでもなく大臣十分御承知だと思います。さらに、四月の二十二日には第二回目の政府交渉が行なわれました。さらに四月の三十日には、いわゆるストライキを背景にしたところの自主交渉が行なわれました。そこで、いま申し上げました四月三十日の闘争につきましては、公労協関係の、国鉄を除くと申しましょうか、当局といたしましては、現在のところではこれ以上の回答はできないけれども、調停段階に入った場合にはできるだけ努力をする、自主団交なりあるいは調停委員会における事情聴取ですか、こういう中でそういうふうなことを言われまして、そこで三十日のストにつきましては一応中止になっておる。さらにまた五月の十三日でございますが、これは第三次の統一闘争で、これまた当局交渉なりさらには公労委の事情聴取等が行なわれた、これも御存じのことであろうと思います。そこで公労協関係の第二次の積み上げた有額回答、こういうことも考えておったわけでございますけれども、なかなか思うように進まない。あくまでも公労協関係の当局側といたしましては、調停の場で、民間賃金の動向をも十分考えて、公労委の使用者側委員を通じてこのことを反映するように努力をするというようなことで、国労なり動労、全逓を除いてストを中止をしておる、こういうふうな経過を経ておりますのが今日の情勢だと思います。  それからさらに、問題になっておりますところの国労、動労関係です。これは御承知のように五月の十七日に事情聴取が行なわれました。そこで問題になりますのは五月の十八日、きょうからでございますけれども、私鉄の闘争と相呼応しまして、公労協関係につきましても第四次の統一闘争ということで戦っておるわけでございますけれども、公労協そのものも二十日からは、テレビ等でも放送いたしておりますように、幹線関係のストライキということで、戦後最大といいましょうか、私鉄がこういう状態にある、公労協がこういう状態にあるということになりますと、全国三千万人の人に及ぼす影響があるのだというふうな報道もされておるわけでございますけれども、公労協自体の闘争も大体二十日をめどに決着をつけたいというふうな考え方で、極力組合のほうといたしましても精力的に現在行動をいたしておるというのがただいま現在の情勢である、こう申し上げましても間違いないと思うわけでございます。  こういうような状態を目前に控えておるきょうでございますけれども、私鉄の争議につきましては、先ほど言われましたような情勢である。さらに公労協といたしましては、きょうから入って二十日には最高のストライキということで、かなり大きな影響がある。これまた政治的にも実に大きな問題であろうと私は考えるわけでございますけれども、こういう事態に対しまして、労働省といたしましてはどういうふうな方向にこの問題を解決すべく努力されようといたしておるのか。たとえて申しますると、昨年なり一昨年あたりは、電機労連にしても私鉄の賃金にいたしましても、大体公労協の仲裁裁定が出るまでに決定をしておる。ところが、ことしは全般的に非常におくれまして、私鉄自体が今日先ほどのような情勢である。そういう点を考えてまいりますと、公労委といたしましても非常にむずかしい場面に入るのではないかというふうなことも想像できるわけでございますけれども、いま申し上げました情勢下におきまして、二十日に向かって進む大闘争を、政府といたしましてもさらに労働省としてもできるだけ早く集約するという方向へ全力を尽くさなければいけない、そういう義務は十分あろうと思いますが、いま申し上げました問題に対するお考えを承りたいと思います。

石黒拓爾労働省労政局長

○石黒政府委員 ただいま国鉄を含めまして、全部の公企体の労働組合が公労委に調停を申請しております。したがいまして、当面の賃金紛争の収拾は、公労委の調停によって収拾するという手段しかないわけでございまして、これにつきましては、ぜひここ数年来の慣行を重んじまして、公労委の特段の御尽力をお願いいたしたい。政府といたしましては公労委の自主性を重んじ、独立性を重んじて公労委の十分なる御尽力をお願いする、公労委が働きやすいようにすると同時に、また当局側も十分に自主性を発揮して公労委の作業に協力するということを切望しておる次第でございます。

後藤俊男日本社会党

○後藤委員 そこで、いま言われました方向でやっていかれるということには間違いないと思うわけでございますけれども、現在のところ、大体百十七万、これだけの人を擁する組合は今次春闘で妥結をしておる。さらに残りの百二十万くらいが第一回の回答を受けて、最終的な段階にこれから向かおうといたしておる心こういうふうな情勢でございまして、大体の春闘の民間賃金というのは出てきたんじゃないか、大体推定できるんではないかというふうなことも予想されるわけでございます。  そこでお尋ねいたしたいのは、現在における民間賃金の引き上げ状態は昨年に比べて一体どういうふうにお考えになっておるのか、この点をお尋ねいたしたいと思います。

石黒拓爾労働省労政局長

○石黒政府委員 民間賃金の動向は、申すまでもないことでございますが、本年は例年に比べまして大幅におくれまして、妥結回答状況も非常におくれておりまして、妥結した組合の、あるいは企業の数も例年のいまの時期に比べますと非常に少のりございます。そして特に御指摘のございましたように、例年私鉄の賃金というのは大体春闘の相場に非常に近いものでございますが、これが出ていないということは、全体の相場の見当をつけるのに非常にむずかしいものがあるというふうに考えております。例年は、前年度に対しまして、ここ四、五年は額、率ともにアップするという傾向がございまして、見当も非常につけやすうございました。本年度におきましては、これが業種によりまして非常に高低がはなはだしいという点がございます。昨年よりも上回っておるものももちろんございますけれども、昨年を下回るものもかなりある、また昨年と同程度のものもあるということでございまして、全体的にどの程度であるという見当は非常につけにくいというのが現在の実情でございます。

後藤俊男日本社会党

○後藤委員 いま、昨年に比較してどうなんだと言われても、現状からでは非常につかみにくい、一口に言えばそういう返答だと私思うわけですが、われわれが全国的な情勢を集約いたしまして検討をいたしてみますると、半分ぐらいは妥結をいたしておる。あとの半分が回答を受けておる。妥結いたしておる金額につきましては、昨年を上回っておる。回答を受けておる金額につきましては、昨年を下回っておる。これが現実の今次春闘における現在の全般的なべースアップの情勢ではないかというふうにも考えておるわけでございますけれども、あなたも言われましたように、私鉄関係がまだきまっておりませんので、最終的にどうこうということは言えないかもわかりませんけれども、現在、私が申し上げましたような情勢につきましては、これは間違いないというふうに考えておりますし、さらに、昨年の春闘における公労委の調停段階におきまして、これは私、実情を聞いたわけでございますけれども、公労委の使用者側委員は、終始政府と連絡をしながらやられておった。政府というのは大蔵省です。大蔵省というのは主計局長である。ですから、公労協関係の当局としましては、もう最終段階になりますと、つんぼさじきに置かれておる。最後にはもう政府の、大蔵省の考えが、公労委の使用者側委員を使って、とにかくなるべく低く押えよう、こういうふうな実情であったということも、私漏れ承っておるわけでございますけれども、あなた方にお尋ねをすれば、あくまでもそうではなしに、これは第三者の公労委で、公平なる判断に基づいてあっせん集約してもらうんだと、こういうふうに言われますけれども、その中身というのは、いま私が申し上げましたようなことで、最終段階ではいろいろとあなた方のほうとしては動かれる、こういうような点もあると思いますので、こういう点につきましては、十分ひとつ考えていただかないと、これまた、闘争がかえって長引く、国民の皆さんにいろいろ迷惑をかけることになる、この点は十分配慮をしていただきたいと思うわけでございます。  それから、その次には、昭和三十九年でございますけれども、時の総理大臣の池田、さらに総評議長の太田、この池田・太田会談というのがございました。これは十分御承知であろうと思います。そのときの問題といたしまして、公労協関係の賃金と民間の賃金にはかなりの隔たりがある、いわば公労協の賃金が民間に比較をすると低い、安い、この点も池田・太田会談で話が出まして、いわば民間と公労協の賃金格差の問題につきましては、一挙にこれを直すことはできないけれども、順次、毎年毎年民間の賃金に近づけるべくやっていくんだ、このことも池田・太田会談で話はついておるというふうに、私もこれは記憶いたしておるわけでございます。  それじゃ一体、現在のところ、民間と公労協の賃金はどれぐらいな差があるかといえば、一三%ないし一五%ぐらい公労協の賃金が安い、こういうことも私は言えると思うわけでございます。公労委におまかせしたんだ、おまかせしたんだと言われますけれども、政府そのものの考え方は、この民間との格差の問題についてどういうふうにお考えになっておるか、この点をお尋ねいたしたいと思います。

石黒拓爾労働省労政局長

○石黒政府委員 三十九年のいわゆる池田・太田会談におきまして、民間賃金にいわゆる右へならえをするという方式が決定いたしまして、その方式は以後数年にわたりまして準拠されておるものと考えております。それで、そのときどきに、年によりまして賃上げ率が公企体と民間ともちろん多少の上下がございますけれども、それほど大きな格差はない。たとえば昨年の公労委の仲裁裁定におきましても、民間賃金との関係については、公共企業体等の職員の賃金水準は、民間産業のそれと格別の差はなく、委員会としては、昨年と同様、民間賃金水準との関連において特に考慮を払う必要を認めなかったといりようなことが仲裁裁定書に書いてありますように、民間賃金に準拠するという方式は今後も踏襲されるべきものと考えております。

後藤俊男日本社会党

○後藤委員 次には、国鉄の関係でございますけれども、現在でも国鉄のほうは無回答である。ゼロ回答ではなしに無回答で、回答がないということなんです。それからさらに、いまから半月ほど前でございますか、この委員会におきまして、公労協関係の賃金につきまして、財政問題がどうこうというようなことで格差をつけない、これはもう労働大臣もはっきりここで言明されたわけでございまするけれども、いよいよ最後の段階で、賃金のベースアップにつきましてもやがて決着をつけようといたしておる非常に重大な今日でございますが、労働大臣といたしましては、先ほど言いましたこの格差問題につきましては、どういうふうにお考えになっておるか。この前言明された方向で今次公労協の賃金ベースアップにつきましても決着をつけるんだ、そういう方針に変わりはないかどうか、この点をお尋ねいたしたいと思います。これは大臣にお願いいたします。

野原正勝自由民主党

○野原国務大臣 公企体の各企業によってその格差があることは、あまり大きな格差は好ましくないというのが私のかねがねの持論でございまして、その点はそういう指導をしておりますが、これは賃金決定に際しては労使の理解と協力によって自主的に話がきまっていくべきものでありまして、ただいまの段階におきましては、一にかかって公労委の御努力に期待をしておるということでございます。

後藤俊男日本社会党

○後藤委員 それから、国鉄の無回答ということ、三公社五現業の中でも、今日に至っても無回答である。ところが、中身を聞いてみると――中身というとおかしいですが、いろいろと自主団交なりそういう情勢の中からうかがえますのは、合理化の問題がからんでおる。いま当局が出しておる合理化を労働組合が了承すれば、これは無回答ということではなしに話を進めていい。さらに、聞くところによりますと、この合理化問題については、政府のほうといいましょうか、あるいは自民党関係のほうといいましょうか、絶対にこの合理化問題につきましては解決せぬことにはというようなことで、こまかい資料まで持ち出されておる。この問題を解決しない以上は春闘のこのベースアップの問題につきましてもそう簡単には解決できないぞ、こういうふうなかっこうで今日まで無回答で進んできておるということも私にはうかがえるわけでございますけれども、確かに合理化問題につきましては、いい悪いは別として、非常に重要な問題として取り上げられておることは事実だろうと思いますが、賃金問題につきましては合理化とからみ合わせて、これをうんと言わぬ以上はこっちの問題は解決しないぞ、こういうふうな態度につきましては一考を要するのじゃないかというふうに私は感ずるわけでございます。そのことが最終段階におきまして今次春闘にどう反映していくか。そのことが悪く反映しますと、先ほどの話じゃございませんが、全国的に集約できる闘争すらむずかしいところへ追い込んでしまう。そういうような結果になるとするならば非常に重大ではないかというふうに私は考えるわけでございますけれども、いま申し上げました無回答である国鉄等に対する合理化問題につきましては、労働大臣としてどういうふうにお考えになっておるにろうか。情報につきましては大臣のほうが私以上に詳しいと思うわけでございますけれども、いかがでございましょうか。

野原正勝自由民主党

○野原国務大臣 私実はタッチしておりませんかりあまり事情は詳しくございませんで、合理化の問題等もあると伺っておりますがそういった問題と切り離しができるのかどうか、それもよくわかりませんが、いずれにしましても、これは労働組合と当局側との話し合いで進めておることでありますからいろいろな話が出ておると思います。それでそういった面もあわせて考えておると思うのでありまして、賃金そのものについてはそういったことがどこまで影響するのかよくわかりませんけれども、とにかくこの段階におきましては私どもがこまかく言うべき筋合いではないので、あくまでも当局側と組合側との話し合いで円満に話を進めていただく。条件等の問題につきましては公労委の調停にゆだね、公正な妥結点が出ますれば何よりけっこうなことだというふうに考えております。

後藤俊男日本社会党

○後藤委員 いま大臣が言われましたようにそう簡単な問題じゃないと思うのです。こまかいことはおれは知らぬけれども合理化問題も関係はしておるだろうと言われますけれども、特に財政的にも非常に窮迫しておる国鉄の情勢というのはわれわれ十分承知しておるわけでございまして、そういう情勢の中であるから、三公社五現業の中でも現在無回答で非常に苦しい闘争が続けられておる。その中で一番焦点になっておるのは何かといえば、合理化問題である。こちらをうんと言わぬ以上はこちらの問題は進めないよ、そういうふうにやらなければいかぬといってうしろで綱を引いているのが政府であり、さらに先ほど言いましたような党の関係から出ておるというようなこともはっきりいたしておるわけなんです。ですから、大臣は、おれは詳しいことはあまり知らぬがとおっしゃいますけれども、そういうふうなことではなしに、いわば政府なり党が、それじゃひとつ解決しよう、そういうお気持ちになられるならば、これは解決のできる問題だと私は思うわけなんです。なるほど表面は、公労委で一生懸命おやりになっていただいております。そのことはよくわかるわけなんです。そのことをわれわれはとやかく言っておるわけじゃございませんけれども、その中身におけるいろいろな動きを考えますときには、政府のやり方次第、政府の出方次第によりまして、いま申し上げたような情勢も打開し得ると私は思っておるわけなんです。その辺のところをあいまいにしていくかどうかによりまして、最後の二十日の闘争が国民皆さんが希望しておられるような方向へ集約できるか、あるいはどうかというところへかかっておるような気が私はするわけでございます。この点につきましては、ひとつ大臣としましても、ぜひその中身につきましても十分考えていただいて、三公社五現業の今次春闘もいよいよこれから二、三日がたいへんでございますので、できるだけ早く集約できるように全力を尽くしていただく。そういう方向を私としてはお願いをいたしたいと思うわけでございます。  そこで私、大蔵省に一言お尋ねしたいわけでございますけれども、先ほども言いましたように大蔵省の給与課長ではなく、できれば私は主計局長なりあるいは次長あるいは大蔵大臣にもお尋ねしたいぐらいな気持ちでおるわけでございますけれども、ただ表面を見ただけのことを言うつもりは私はございません。そんなことを百万べん言っておりましても何の多足にもならぬし前進にもならぬと私思うのです。  ただ私言いたいことは、重ねて言うことになって申しわけないと思いますけれども、昨年なり一昨年の春闘の最終段階におきましては、先ほど私が言いましたように、公労協の当局は使用者側を通じて、民間賃金などのことも考えてできるだけ公労委に反映させるということを自主団交等で返答をしておるわけでございますけれども、大蔵省自体が使用者の委員を使って公労委の最終段階におきましてもなるべく押える。すべてのことを大蔵省と使用者側委員とがツーツーの仲で公労委の調停が進められる。こういうふうなことも私聞いたわけなんです。事実かどうであるか調べてみましたら、これは事実でございます。正面切ってそんなことはやっておりませんけれども、一枚めくってみると中身としてはそういう動きがあって、極端なことを言いますと公共企業体関係の使用者側の人には、いわゆる当局の人には、おれらをつんぼさじきに置いて一体何だということを言っていた人もおられたわけでございますけれども、そういうふうな点につきまして一まあ給与課長でございますので、それじゃどうこうというようなこともここで簡単に申すわけにもまいらないと思いますけれども、最終段階におけるこの問題に対しまして大蔵省のとるべき一番正しい姿というものはどういうものであろうか、この点をお答えいただきたいと思うわけです。

谷口昇労働省労働基準局賃金部長

○谷口説明員 先ほど来先生からもお話がございましたように、私どもといたしましても、三公社五現業の職員の給与につきましては申すまでもなく公共企業体等労働関係法の定めるところによりまして労使間の団体交渉で定められる、これはそのとおりであると思います。しかしながら、一方で公共企業体等の事業は国家財政あるいは国民経済と密接不可分のような関係にありますし、その運営は国会の議決を経て定められる予算に基づいて行なわれる、こういうことになっておりますこともまた御承知のとおりであります。  このような制度から見まして、賃金要求につきましては三公社五現業の当局側は、もちろん自主的に判断して措置すべきであると考えておりますけれども、同時に、この問題は各機関の経理に関する問題でもありますし、ひいては国家財政あるいは国民経済にも関連してまいりますので、当局側の相談がありますれば、その面から大蔵省としても十分検討いたしたい、このように考えております。  なお三公社五現業のベースアップの問題は、御承知のとおり目下公労委の調停に係属中でございますけれども、われわれといたしましても、三公社五現業の当事者が前述のような公企体等の公共性あるいは特殊性を十分御勘案の上で自主的、平和的に問題を解決されるように希望しております。

後藤俊男日本社会党

○後藤委員 御相談があれば意見を申し上げる、  これはそういうことだと思いますけれども、あなたが一番最初に言われましたように、さらに公労協関係の当局側が言っておりますように、今次春闘の民間賃金の動向等も考えて、あくまでも公平無私、第三者という立場に立って判断すべき賃金だろうと思いますので、先ほど申し上げましたような、みずから出ていってその使用者といつも連絡をとるというような、聞いても非常に不愉快なような行動につきましては今後一切慎んでいただく、この点だけはひとつ明確にしていただきたいというふうに私は考えておるわけでございます。  さらに、ちょうど大蔵省の給与課長と話が始まりましたので、その関係問題としまして政労協関係の春闘の問題でございます。これはこの間あなたともかなりの時間いろいろ話をしたわけでございますけれども、さらに労働大臣も、この政労協関係の闘争につきましては、これはいままでに二、三回この委員会で話をしましたので、内容のあまり詳しいことは申し上げる必要もないと思いますけれども、ことしで四年目でございますか、御承知のように、政労協関係の春闘というのは毎年毎年人事院勧告が出なければ集約することができない。ところが政労協関係は労働法の適用組合でありまして、公務員法でもなければ公共企業体労働関係法でもないわけでございます。あくまでも賃金というのは労使の団体交渉によって自主的にきめるんだ、これは法律できめられたとおりの適用をされる組合でございますけれども、そうなりますと、いままで春闘におきまして政労協関係の組合も二回、三回もうストライキをやっておるわけなんです。これがことしの八月のいつかわかりませんが、大体人事院勧告が出る。それが出ないことには、この政労協の春闘も解決しない。四年間同じようなことを繰り返しておるわけなんです。ですから一昨年でございますか、副官房長官もあるいは時の労働大臣も最終的には総評との会談になり、あるいはここの社会労働委員会でも問題にしまして、毎年毎年こんなことを繰り返しておるということは全く芸のない話だ、来年からは自主団交できめるような方向へ全力を尽くしましょう、これは政府のおえらい方がそういう約束を二回も三回もされておるわけなんです。約束はされましたけれども、中身は全然前進をしない。全然と言うとおしかりを受けるかもしれませんが、時期的には全然前進をしない、これが現状なんです。そういう点を考えてみますと、労働組合のほうも非常にむだなエネルギーを使うことになるでありましょうし、またその闘争によりましてそこの上部機関と申しましょうか、そこの団体もいろいろと仕事の上でも影響があるでしょうから、われわれとしましては、このことを毎年毎年繰り返すというのは労使にとってもプラスではない、ですからこの辺で労働大臣なりあるいは労政局長なりあるいは副官房長官あたりが、いままで御尽力をいただいておることはわかりますけれども、もう今次春闘くらいでは思い切って労働法適用の組合の春闘を解決させる、こういう方向で一歩前進させる、こういう段階に来ておるのが政労協の闘争に対する情勢ではないかというふうに考えておるわけでございますけれども、大臣、この問題はいかがでございましょうか。

野原正勝自由民主党

○野原国務大臣 政府関係特殊法人の給与改定問題につきましては、政府としては従来から政府関係特殊法人の事業の特殊性、公共性を踏まえながら、なるべく早期に自主的に円満な解決ができることを期待しておりまして、その方向に沿って、たとえばいわゆる内示の時期を早めるとか内示の内容を弾力的にするとかの努力を積み重ねてきたわけでございます。本年の給与改定にあたっても、政府としましては従来と同様の態度で臨むつもりでございますが、ただ、組合側のいうように春闘時にすべて解決するということは実際問題として種々問題があるようでありますので、労使関係者の意見を十分聞きながら慎重に研究してまいりたいと考えております。

後藤俊男日本社会党

○後藤委員 そうしますと、いまなかなか回答はうまくつくってあると思いますけれども、やるようなやらないような、いままでどおりであるけれども労使で慎重に、こう言われましたが、私が何回も何回も同じことを聞きましても、中身の前進がない以上は何もならぬわけなんです。ですから何べんも繰り返しますけれども、労働法の適用の組合である春闘傘下の百五の組合が、精力的に一年間やらぬことには解決しない。これは全くやり方といたしましても、労使とも非常なむだな骨折りだと思うわけなんです。ですからことしの春闘としても、やがて私鉄が出るでしょう。さらに公労協の賃金がきまるでしょう。そうなってまいりますと、ことしの春闘の相場というものが大体出てくるわけなんです。ですから極端なことを言えば、百五の各団体に、ことしの春闘相場を十分考えておまえら自主的団交によって賃金のベースアップをきめなさい、そのけつは大蔵省が責任を持つ、これくらいな太っ腹なやり方にもう踏み切るべきじゃないかというふうに私は考えておるわけでございますけれども、ただいま労働大臣は、いままでどおりの態度でいくけれども労使間で慎重に、こう言われますが、そうなりますと、昨年と同じ道をたどることになるわけなんです。結局は年末になり来年の三月にならぬことには、前の年の初めから戦った政労協関係の春闘がきまらない。このことは、仏の顔も三度といいますが、ことしは四年目でございます。  そこで、大臣の話を聞けば、やはり同じことを繰り返すのだという感じを受けるわけでございますけれども、一歩前進させて、いま私が言ったようなところへ見切りをつけて前進させる、腹をきめる、一体なぜそういうことができぬのでしょうか。それがもしできないというのなら――大蔵省の給与課長あるいは労政局長あるいは労働大臣、この問題につきましてはきょう初めてではございません。二回も三回も同じことをひっくり返しひっくり返しやっているわけです。その返答に、いま労働大臣が言われたような返答を二回も三回も私は聞いておるわけです。いかがでしょうか。一体なぜ私が言ったような方向へ踏み切ることができないのか、その点の御説明をいただきたいと思います。

石黒拓爾労働省労政局長

○石黒政府委員 後藤先生のおっしゃることは、私ども、御趣旨としては非常によくわかるのでございますが、一面、政府関係機関というのは法律上いろいろな制約がある。また予算上も、政府からの交付金あるいは補助金というものによって細めて成り立っておる団体が非常に多いわけでございます。この補助金、交付金というものをどういう基準でめんどうを見てそれによって団体を成立せしめるかというのにつきましては、一定の基準がなければならない。この基準というのをいま片人事院勧告に求めているわけでございます。それにかわるべき基準というのがなかなかむずかしい。政府から金を全然もらわないでもいけるという場合になりますと話が非常に違ってまいりますけれども、多くの場合は、そういったものがなければ成り立たない団体が多うございます。人事院勧告準拠方式というものを動かすだけのかわるべきいい考えがなかなかない。そこで一応いまのところはこの人勧準拠方式に上りながらも、そのワク内で何とか少しずつでも前進させようという努力をいたしておるというのが実情でございますので、何とぞ御了承賜わりたいと思います。

後藤俊男日本社会党

○後藤委員 私もこれはくどいようなことを言いますけれども、いま労政局長が言われましたのは、基準がない、ですからいままで人事院勧告が出たらそれを基準にして内示をして、それによって最終的な団体交渉できめさせておるのだ、こういうことでございますけれども、その基準というのは、今次春闘では、大体民間がきまり公労協がきまればベースアップの基準というのはできるのじゃないですか。必ずしも人事院勧告が出ないことには基準がきまらないということではないと思うのです。そうだと思っておられるのなら、その思いを変えていただいて、今度の春闘の大体の相場というと語弊がありますけれども、べースアップの基準というものはできると思うのです。どうしても予算を大蔵が握っているのだからかってなことはやらせないというのなら、いま言いましたのを基準にして内示をして、自主的団交できめさせる、そういう方法だってあると私は思うのです。  ところが、こういうふうなことを私が言いますと、給与課長あたりは、いや百五の組合の中にもいろいろございます、公労協に似ているところもあれば、まるがかえのところもある、いろいろありましてなかなかそうはいきませんのでと、これは返答を聞かなくてもその回答は十分あると思うのでございます。それでは何べん繰り返しておりましても同じことなんです。それは、百五の中にはいろいろな団体があると思うのです。だったら、ことしの春闘で大体基準が出れば、その基準を内示をして、政労協問題も自主的団交できめさせる、これが労働法でいっておるところの精神じゃないですか。いろいろ予算の関係があって労働法を守らしておらぬのは、あなた方が守らしておらぬわけなんです。少なくとも政府がきまった法律を守らせる。これが一年や二年じゃなしに、四年間もいま言ったような方向で、少なくとも労働法適用組合が自主的団交で春闘のベースアップがきまらぬ、金の関係がございますので、金の関係がございますので、そう言われますけれども、それは私は通らぬと思うのです。人事院勧告、人事院勧告と言われますけれども、人事院勧告そのものは、ことしの春闘を見て人事院勧告が出るのでしょう。それだったら、一歩先んじてことしの春闘の基準というものを出して、それを内示をして政労協関係の闘争を終結する。もうそこへ踏み切らないことにはこの問題は解決せぬと思うのです、何べん同じことをここで繰り返してみましても。そうでなく、ほかに手段があるというのなら別問題でございますけれども、この間も実はそこにおられる給与課長なり主計局の次長さんですかと、約一時間にわたってすったもんだいろいろやったわけでございますけれども、その人方は、口には出しておりませんけれども、政府がその気になってくれぬ一大蔵省のえらい人がその気になってくれぬのでやれぬのだ、というようなことを、一時間ほどしゃべっておる中から私も感じたようなわけでございます。ですからもうこの辺ではっきり踏み切る、基準は出そうと思えば出せる、こういうふうに私は思うわけでございます。そこまで一歩前進させるという決意は、労働大臣、ないでしょうか、いかがですか。

野原正勝自由民主党

○野原国務大臣 非常にむずかしい問題ではございますが、その可能性等につきましては至急に検討いたしてみたいと考えております。

後藤俊男日本社会党

○後藤委員 いまの問題につきましては至急に検討すると大臣が言われましたのですが、何回も繰り返しておる問題でございますから、この辺で一歩前進するようにぜひひとつ御尽力をいただきたいというふうに思います。  そこで、約一時間にわたりまして春闘の問題をいろいろとお尋ねいたしたわけでございますけれども、先ほどから私申し上げておりますように、特に私鉄の問題これはもう時間の問題になっておると思います。これは極力早く集約する方向でやってもらう。さらに続いて公労協の問題につきましても、いままで労使の間で自主的団交も重ねられておるわけなんです。中には、専売でございますか、あるいはその他の組合につきましても、民間賃金も昨年を上回っておる、ですからそのことも使用者側委員を通じてできるだけ調停段階で反映させたい、こういうようなことを言っておられる当局の意見等もあるわけでございます。  さらにもう一つの問題としまして、私鉄関係、電機労連関係がまだ解決しておりません。毎年でございますと解決しておりますから、そのことも参考にして、公労委の最終段階にこれは入ると思うわけでございますが、先ほど労政局長が言われましたように、民間賃金が非常におくれておる、この関係はあろうとは思いますけれども、いままでの公労協関係の事情聴取なり当局の考え方等も十分考えていただいて、この二十日をめどに、ひとつ政府は責任をもって今次春闘を終結すると申しましょうか、決着させる、そういうような方向で全力を尽くしていただきますようにお願いをいたしたいと思います。  この問題に対する最後の労働大臣の決意をお聞かせいただきたいと思います。

野原正勝自由民主党

○野原国務大臣 私鉄の問題につきましても、御指摘のとおりぜひこれは円満解決を望むわけでございまして、至急に双方が妥結されますような案が提出されることを望んでおります。なお、そのことが公労協の問題にも非常に重大な影響がございますので、公労協の問題につきましても、ここ一、二日の間に円満な解決ができますよう最善を尽くす決意でございます。

後藤俊男日本社会党

○後藤委員 終わります。

増岡博之自由民主党

○増岡委員長代理 次に、寒川喜一君。

寒川喜一民社党

○寒川委員 私は、私鉄ストに関連をいたしまして、基本的な問題点を運輸省並びに労働省にお聞きしたいわけでございます。承りますところによりますると、大臣は一時に参議院のほうにお出まし願わなければならないというような御日程で、法案審議でございますので、私はもう簡潔に質問をいたしますが、質問内容が理解できるものでありますならば十分でも済むことなんで、そういう配慮でひとつ御答弁をいただきたいと思います。  と申しますのは、御承知のように技術革新が進行いたしまして、労働省御当局におきましても、特に労使の近代化、なかんずく労働法のたてまえからいたしましても、労使の自主交渉、そういったものを通して労働条件その他の問題を円満に解決してほしい、こういうことをしばしば承っておりまするが、今次私鉄ストの状況を見ておりまして、前段申し上げましたようなロジックとは全く違ったようなレベルで動いておるように私は判断をするわけでございます。したがって、そういう意味から一般利用者からも、私鉄労使のあり方について強い批判が出ておる。御承知のように最近はテレビも発達しまして、交渉の具体的な内容の報道はございませんけれども、労使が会議の場所に集まられる態度等をテレビで皆さんごらんになるわけでございます。これはたいへん困った争議になった、あるいはたいへんだというような、そういう実感が労使双方の顔に出ておらないことを国民大衆はよく知っておりますので、私はいろんな批判が出ておると思います。したがって、特に春闘の相場の問題にしましても、私は主として同盟の関係かよく知りませんけれども、全国組織である海員あるいは金属、化学、主要なところがほとんどもう相場がきまっております。ただその中で、会社の特殊事情によってストに入ったりしておるようなところもございますが、そういうことを踏まえますならば、私鉄の経営者の態度というものがあんな低額回答を出して、また相も変わらずスケジュールで中労委のごやっかいになって片づけばいいという戦術自体が、私は基本的に問題だと思うのです。中労委にごやっかいになるといいましても、やはり国民の税金を使うことになろわけなんです。そういった意味合いで、こういったあり方について労働省当局はほんとうにどう思っているのか、ひとつ率直なお答えをいただきたいと思います。

石黒拓爾労働省労政局長

○石黒政府委員 労使間の賃金問題等につきましては自主交渉、自主解決が原則でございます。これが自主交渉に上りまして解決しない場合には労働委員会を利用するということはもちろんあるべきことでございますし、また、特に私鉄のような公共性の強いものの場合には、そういうことが多くなりがちであるということもこれは当然であろうかと思います。しかしながら、これは労働委員会におまかせしたということは、決して労使の自主解決の努力の責務を免除するものではない、これは労調法にもはっきり書いてある次第であります。  そういう意味で、今回私鉄の賃金問題が労働委員会に係属いたしておりますけれども、この場合におきましても、労使というのはやはり特に強い公共性というものに思いをいたして、必死になって解決をするための尽力をしていただきたいというふうに切望している次第でございます。

寒川喜一民社党

○寒川委員 そこで、新聞の報道かわかりませんけれども、出てくると大体昨年より若干上のことをせなければいかないというようなことで、新聞に数字が出始める、このことはやはりほんとうに実りある内容の自主交渉が行なわれておるかどうかというところにかかっておるわけなんです。   〔増岡委員長代理退席、委員長着席〕 そういった面でやはり基本的に個々の企業に対してどうというような関係でなしに、労政当局すなわち労働省自身がいわゆる自主交渉のあり方について一つのモラルというものを提供して、なかんずくいま御答弁にございましたように、公共事業という性格であればあるほど、私はもうここらで中労委を利用して問題を解決しようという態度を、経営者側からやめるんだという態度、したがって、ぎりぎりのところにきて、地方の労働委員会なんかでやっておりますように、何としてもやはり最後、中央労働委員会の判断に仰がなければいかない、こういうような内容を持っておれば、私は国民一般からの批判もまた寛恕されるのではないか、いわゆるせっぱ詰まってストライキをやっておるというような態度でないところが私は残念でたまらないのですが、そういった面について再度将来のあり方について御見解をお聞かせいただきたいと思います。

石黒拓爾労働省労政局長

○石黒政府委員 自主交渉のモラルを示せというお話でございますが、私ども労使の責任性、自主性といったようなものにつきましては、かねて労働教育というような手段を通じましていろいろと啓蒙をはかっております。しかしながら、具体的な場合にそれをどう応用していくかというのは、これはもう自分でやってもらうよりしょうがない、はたからとやかく言う筋合いでもないわけであります。  今回の私鉄のやり方がはたしてそういったモラルに十分適合したものであったかどうかということにつきましては、新聞等にはいろいろ書いてございますが、私ども当事者の心のうちにまで立ち入ったわけでもございませんので、私どもこの席から何とも批判はいたしかねるわけでございますが、しかし、ともかくここまで来てしまったことでありますので、これから先のことであっても、まだ解決しておらないようでございますが、その解決にあたって、解決のために労使が一そうのこん身の努力をふるってもらいたいということを切望している次第でございます。

寒川喜一民社党

○寒川委員 それでおきたいと思いまするが、ことしの問題はともあれ、ここしばらくこういう形が続いておるわけなんです。したがって、ひとつ来年度のこの時点で、いま労働教育というお話がございましたけれども、まあかた苦しくいえばそういうことになろうかと思いますけれども、ひとつ労働省当局も勇断をふるって、関係者の理解を深めて、公共事業がこういった形で労使関係を持つという、このことを改めるためにひとつ最善の努力をされんことを要望して、労働省に対する質問を一応終わります。大臣、御退席いただいてけっこうでございます。  あと続きまして運輸省にお聞きしたいのでございますが、まあ金が出せない、出せない、こう言っておりますが、私鉄の経営状態というものが一体どうなっておるのか。私が判断いたします範囲内においては、一般の産業の場合には不況という問題が表へ出てもこれを否定できないようなファクターは私はあると思います。しかしながら、最近における都市構造の状態、あるいは国民生活の中におけるレジャーの問題等々を判断をいたしますならば、利用者が減少するということでなしに、むしろ拡大の方向にあるのではないか、こういうふうに私は見ております。したがって、先般自主交渉の中で出されたような低額回答それ自身が、ただいま労働省に対して質問を申し上げたことをお聞きいただいたと思いますが、やはり公共事業を営む経営者としてのセンスと申しましょうか、そういったものに対して著しく欠ける側面を持っているんじゃないか、そういうような感じが私は実はいたしております。したがって、現在私鉄の経営というものは一体どうなっておるのか。経済的にどうなのか。なぜこういうことをくどくどしくお尋ねをするかと申しますと、過去の例を見ても、こういう争議がありますと必ず料金値上げにつながった実績を持っております。したがって、こういうことばが適当であるかどうかいささかちゅうちょいたしますが、一般大衆は労使のアベック闘争でなかろうかというような批判等も、現在の労使関係の状態を見ておってする人もかなりいらっしゃいますが、私鉄の経営状態をひとつ聞かしていただきたいと思います。

須賀貞之助運輸省鉄道監督局民営鉄道部長

○須賀説明員 お答えいたします。  最初に、十四日に引き続きまして本日もストに突入いたしました。これは労使の紛争でございますが、鉄道に関係する者といたしまして、利用者の皆さまその他御迷惑をかけた方々に厚くおわびを申し上げる次第でございます。  ただいま御質問がありました私鉄の経営状況でございますが、これは先生御指摘のとおり、一般産業界に比べまして好不況といったものの波を受けるという影響度は比較的少ない産業ではないか、こういうふうに考えておるわけでございます。ただ、御承知のように地方鉄道におきましては、もともと過疎化というものが進んでおりますし、それから道路の改良によりまして、またモータリゼーションの普及によりまして、地方におきます中小私鉄の経営状況は非常に悪いということで、毎年線路を撤去するものが相次いでおる、こういうことでございます。それから、私の専門ではございませんが、バス事業におきましても、いわゆる過疎バスというもので、これよりもはなはだしい状況を呈しておるということでございます。  最後に、都会のいわゆる十四私鉄の経営状況について申し上げますと、十四私鉄と申しましてもいろいろ規模に格差がありますし、立地条件にいろいろ差異があるわけであります。中には前年度よりも、中小私鉄と同じようにほとんど伸びがない、あるいは若干利用者が減るといったようなところも、道路の状況あるいは自動車工場のある場所とかということによりまして相当そういう会社もあるわけでございます。ただ、その反面、もちろん平均よりも伸びの高いところもありますが、概して申しますと、年率で申しまして利用者が大体四%程度ふえるというのがここ数年の例でございます。  一般産業界の好況のときに比べましても非常に少ないわけでございます。片やいわゆる都市のドーナツ化現象によりまして、団地が郊外にできるということで、いわゆるラッシュというものがあらわれておるわけでございます。このラッシュが二〇〇%をこすとかあるいは二五〇%、こういうような状況になりまして、従来は国鉄の中央部とかそういうところにおいてあったものが、郊外部にも漸次及んでいっておるということで、その事態におきましては非常にいんしんをきわめておるというふうに見えるわけでございます。  ただ、御承知のように、こういう二〇〇%をこすというようなものは、朝の一時間か一時間ちょっとというものでございまして、その他の時間につきましては、車が半分くらい車庫に入る、あるいは列車回数が減るということでございますが、乗車効率が五〇%程度ということで繁閑が非常に激しいということになっております。片方、朝のラッシュのための乗客の混雑緩和に対する要請というものも非常に激しいわけで、これに対します輸送力増強といった要請が強いために、工事費を非常につぎ込んでおるわけでございます。御承知のように現在第三次五カ年計画をやっておりますが、これは四十二年から四十六年までの五年間で本年で終わるわけでございますが、約四千八百億の工事、これは保安工事並びに輸送力増強工事でございます。そういうことで、これは大体この規模で申しますと、そういう比較があるかどうかわかりませんが、毎年収入の半分を工事につぎ込んでおる、こういうことで、その金利負担、資本費負担が非常に大きいわけでございます。そういうことでございまして、しかもそれが朝の一時間だけのために使われてあとは遊休化するという非常に稼働率の悪い投資をして、しかも金利がかさむ、こういう現象でございます。  そういうことでございまして、先般四年九カ月ぶりに運賃改定をお願いして、お願いしてから一年九カ月ぶりに大体認可になったということでございます。従来に比べまして本年は若干豊かではないだろうかという説があるかと思いますが、これは当然そういう考え方をすべきものだと思うわけでございます。ただ、これが運賃改定の際に物価抑制その他の関係がございまして、平年度と申しますか、上げたあくる日からの一年間におきまして鉄道事業においてペイするというところまで運賃改定が行なわれてないというのが実情でございまして、そういった状況で十四私鉄それぞれ運賃改定直後であるにもかかわらず比較的苦しい状況にあるのではないか、こういうふうに考えるわけでございます。

寒川喜一民社党

○寒川委員 ぼくはいまお話を聞いておったら、私鉄協会の会長さんの答弁みたいな感じを受けて非常に心外なんです。したがって、運輸当局が監督官庁として、先ほどからしばしば出ておりますように、公共事業という性格にかんがみて、ことしだけで済む問題でないこういった給与の問題等につきましては、平素から一つの準備と考え方というものがやはり統一をされ、かつ今日までも主要なところでだんだんと相場がきまってきておる、そういう中でどういうあり方を示さなければいけないかという、先ほど来から申し上げておるいわゆるモラルを経営者に持ってもらうための指導もまた私は重要でなかろうかと思います。したがって、極端な低額回答が最初に飛び出すというような、古いといいますか、いまから十五年ぐらい前はそういうことが他の民間産業でもございましたけれども、鉄鋼の一発回答に対してとかくの批判はございますけれども、いわゆる労使で煮詰めるためのまず出す側の姿勢というものに対して、運輸省の一つのあり方というものがなければ、ぼくはただ現象として公共事業、公共事業と言ってみたところで、ほんとうの意味の監督にはなっておらないと思うのです。したがって、そういうことについて将来あなた方がどういうお考えを持っておるかということと、それから、参考までに大手十四社で無配の会社があるのかないのか、あればおっしゃっていただき、かつ現状として株式の配当はどの程度しておるのかお聞かせをいただきたいと思います。

須賀貞之助運輸省鉄道監督局民営鉄道部長

○須賀説明員 スト解決のための賃金提示その他についての御質問でございますが、私ども絶えず経営者あるいは労働組合側と一年じゅういろいろな機会に接するのでございますが、そういう場合に、ストだけはひとつ回避するようにということをお願い申し上げておる次第でございますけれども、こういう事態になる直前から、いろいろ両方に対して少しでもものを言うということになりますと、干渉がましいということで、なかなかタッチする機会もありませんし、情報もどちらかというとおくれがちであるというような状況でございまして、賃金回答についてこうしたらどうだとか、あるいは相談を受けるといったようなことは一つもないわけでございまして、われわれはストが回避されるのを望んでおるということでございまして、それ以上何らのものはないわけでございます。気持ちとしては、ぜひ何とか早目に解決していただきたい、できたら初めから突入しないようにということを念願しておるわけでございます。  また、配当の面につきまして御質問がありましたので申し上げますと、現在九分の配当をしているというふうに承知しております。

寒川喜一民社党

○寒川委員 予定の時間が参りましたので、特に公明党さんにかわっていただいたということでございますので、これで終わりますけれども、いま私が労使の介入に入って、むしろ支配介入というような関係で混乱に導くようなことを言っておらないことは、特に御案内だと思います。したがって、そういう意味でいまの答弁自体私はいただけないのです。したがって、労働省にも申し上げましたように、一番おくれておる民間の労使関係のように感ずるわけなんで、労働省にも要望いたしておきましたが、ひとつ来年を目ざして、平素から経営者というものはどうあらなければならぬ、中労委の調停を一つの隠れみのとして様子を見てみようじゃないか、最終が出てくれば払ったらいいんだ、そういうけつをまくったような根性はないと思いますけれども、第三者が受ける印象というものは、そういう面で指導が平素の関係において不十分だ、こう私は判断をいたしますので、ひとつ今後十分後注意をいただきたい。とりわけいま配当の問題がございましたが、企業によっては合理化という問題もございまするけれども、いわゆる回答に対する制約というような問題まで考えて、こういう労使関係の安定ということに努力をされておる企業はたくさんあるわけなんで、繰り返すようでございますが、いわんや公共性の強い企業においてはよりそういう面の配慮を願わなければ、十年同じようなことを繰り返しておっても前進はないと私は思います。そういう点は御答弁は要りませんから、特に要望して、運輸省の内部でそういう空気をぜひともつくっていただきたいということをお願いして私の質問を終わります。

倉成正自由民主党

○倉成委員長 古川雅司君。

古川雅司公明党

○古川(雅)委員 染料工場で泌尿器系統のガンが多発をいたしまして、この問題が新聞紙上で取り上げられて久しいわけでございますが、この発ガン性が高い染料の中間原料であるベンジジンとべータナフチルアミンによる膀胱ガンあるいは膀胱の腫瘍の患者の問題につきましてきょうは若干お伺いをしてまいりたいと思います。  実は昨年の三月十八日、予算委員会の第三分科会で私自身労働省の見解をお伺いしたところでございまして、ここにそのときの会議録を持ってきておりますので、若干確認をさせていただいて本題に移らしていただきたいと思います。このとき私は、諸外国においてはこのベンジジンやべータナフチルアミン等の製造を禁止しあるいは使用を中止しているという措置がとられている点を取り上げまして、なぜわが国ではこの点放置されているのか、スイスでは一九三八年、ドイツでは一九四二年、イギリスが一九五二年というふうに、それぞれ製造あるいは使用の禁止に踏み切っているという点をお伺いしたわけでございます。昨年の和田労働基準局長の御答弁は次のようでございます。「諸外国におきます禁止状態は先生からいまお触れになりましたのですが、そのうちでイギリスについてでありますが、イギリスも一応製造禁止はいたしておりますが、一切いけないというわけではございませんで、要するにベンジジンあるいはベータナフチルアミンが吸収をされないような状態で製造される場合については差しつかえない、そういう予防措置が講ぜられておるという場合には差しつかえがないというようなことにいたしておるようでございます。  私どもも、これは実は昭和三十年以来の問題でございまして、従来すでに六回も指導をいたしておりますし、三十九年につきましては、先ほど申し上げましたような製造過程における製造工程の指導等もいたしたり、あるいは密閉の指導をいたしたり、あるいはそういうことに耐えられない企業につきましては、企業のほうでみずからその製造をやめまして、現在では、当時メーカーとして十七社ありましたものが五社に集約をされておりますが。それからユーザーとしては五十一社ありましたものが二十六社に集約をされておりますが、私どものほうの指導に従った工場につきましては、いまのところ尿道障害の問題が出てくる可能性はない、こういうふうな考え方でおりまして、事実発病状態を見ましても、その以後出ておるようには考えませんので、厳格にこれが行なわれる限り禁止をするまでもないのではないか、かように考えております。」このような見解の御答弁をいただいております。  あれから一年を経過いたしておるわけでございますが、この点について労働省当局の見解はその後変わらないか、引き続きこのようなお考えでこの問題に取り組んでいかれるのか、まずその点から冒頭にお伺いをしてまいりたいと思います。

岡部實夫労働省労働基準局長

○岡部(實)政府委員 ベンジジンの取り扱い、時にその製造等に従事している労働者の健康管理等につきましては、先ほど議事録でお読み上げになりましたように、ずっと昭和三十年以降この装置の密閉化等によりまするベンジジンの飛散防止について通達をいたしまして、さらに最近におきましては、有害物による障害防止規則をつくりまして、ここでさらに具体的にいろいろその装置等につきまして、一定の基準を規制するというようなことで規制を強めてまいっておるわけでございます。そこで私どもは、この規則に基づきまして、健康診断、またその設備等の規制も十分に監督をしてまいるつもりでおるわけでございまして、今後ともこの規則の完全なる実施を監督の主要目標として実施してまいるということに目下いたしております。  ただ、御指摘の今後の諸外国におきまするいろいろな例については、必ずしも詳細でない点もございますので、その点はさらに現地に人を派遣する等の方法によりまして、十分新しい情報も握りながらその辺の実情の調査をあわせて進めてまいる、こういうことで臨みたいと思っております。

古川雅司公明党

○古川(雅)委員 ベンジジンとベータナフチルアミンでございますが、これは染料の中間原料でございますけれども、常温では固体の芳香族物質であって、これがからだの中に入りますと尿の中に排出をされ、膀胱ガンや腫瘍を非常に起こしやすい物質である。これはいろいろな種類の染料の中間原料になるわけでありまして、これが染料工業の非常なかなめになっているということがいわれております。労働省のお調べだと思いますけれども、ベンジジンなどのメーカーは現在三菱化成のほか住友化学、これは大阪でございます。去年この工場につきましては取り上げまして御答弁をいただいているわけでありますが、そのほか協和化学(和歌山)、日本化薬(東京)、この四社になっている。これを含めて原料として使っている染料製造工場は十五社であるというふうに聞いておりますが、その点間違いございませんでしょうか。

岡部實夫労働省労働基準局長

○岡部(實)政府委員 御指摘のように、現在のところはいまの最初におあげになりました四工場ということでございまして、従来基準法施行から今日までの間いろいろ製造をやってきたのが全体で十五工場ありましたが、そのうちいま残っておりますのが四工場ということになっております。

古川雅司公明党

○古川(雅)委員 これは昨年の九月でございますが、労働省がいわゆる有害物質を取り扱っている事業場の総点検を行ないました。これはすでに新聞で報ぜられたところでありますが、非常に大規模な労働省あげての総点検でございました。いろいろな有害物質が職業病あるいは公害を引き起こしている、そういう重要性にかんがみて総点検を行なったわけでございますけれども、総じて有害物質の取り扱い事業場における有害物質の排出あるいは処理の状況は不十分であるという判断をなさいました。特にこうした事業場における労働衛生の水準は必ずしも高くないという判断をなさったようでありますが、総点検の中でいわゆるベンジジンを扱っている事業場を点検なさった結果、ここでは監督事業場数として二十二場をあげておりまして、排気の清浄装置あるいは廃液の処理状況あるいは残滓物の処理状況、そういった点でチェックをしておりますが、この去年九月の総点検においては特に未設置の事業場数というのはあげられておりませんけれども、これはベンジジンに関してはこの総点検では問題点は見出すことはできなかったのか、その点ひとつお答えをいただきたいと思います。

岡部實夫労働省労働基準局長

○岡部(實)政府委員 総点検のときに対象といたしまして点検をいたしましたのは二十二でございますが、この中には製造しているところも、それから製造はいたしておりませんが使用をしているところも両方含まれています。そこで、そのときのたとえば排気の清浄装置その他につきましては、未設置の事業場はございません。みんな設置をしておる。それから廃液につきましては一カ所だけ未設置であるというような点検の結果が出ております。しかしながら、全般的に必ずしも十分でないということもございましたので、その後本年の四月に至りまして、その点検の結果に基づきまして、ベンジジンを含めました四十幾つかの有害物質につきましてそれの障害予防規則を新たに制定をいたしまして、この中で製造のものについては、製造装置の密閉化とかあるいは排気、廃液の用後処理の問題とか、あるいは作業場の床の浸透性の問題とか、取り扱う場合の容器等への表示の問題とかいうようなもの、さらに健康診断というような項目を含めまして、これらの有害物質を製造または取り扱う事業場におきまする障害予防のための基準を設定をいたしまして、さらに今後この基準に基づきまして各事業場がその基準を完全に順守して実施されるよう監督してまいるという、新しい基準を総合的に設定をした、こういうことになっております。

古川雅司公明党

○古川(雅)委員 このベンジジンとベータナフチルアミンにつきましては、先ほど局長の御答弁の中にもございましたが、労働省としては労働安全衛生規則を改正して、このベンジジンなどを対象に排気、廃液の処理施設あるいは特殊の健康診断等を義務づけるといったような措置をおとりになったわけでございます。一方、この二つの物質についてですが、古くなりますけれども、一九二〇年にILOが発ガン物質として断定をしております。さっきもちょっと触れましたけれども、イギリスあたりでは生産、使用を禁止した。特にわが国の労組あたりからも、特に昨年あたりをピークとして、生産を中止すべきだという要求がかなり強く出されておりますが、その辺をどう受けとめていらっしゃるか。

岡部實夫労働省労働基準局長

○岡部(實)政府委員 こまかい点につきましては、必要により衛生課長から補足的に説明をしてもらうことにいたしまして、全般としていまのべンジジンの製造につきまして、禁止をすべきではないかというような声が出ておることも実は承知いたしております。現実に先生御承知のように、西独におきましてはバイエル社が製造中止の措置をとったということも聞いておりますので、冒頭にに申しましたように、私どもは、いままでのいわゆる完全密閉方式によりまして飛散防止をするならば、このベンジジンによる障害が防止できるものということで進めておりますけれども、諸外国において現実にそういう事例があるということについては重大な関心を持たざるを得ませんので、それにつきましては近く専門の医官をヨーロッパに派遣いたしまして、その実態について詳細現地に当たりまして調べてくるということを考えておりまして、その結果を待って、データを総合的に判断した上で、最終的にどうすべきかを決定してまいりたい。ただ現在ほうっておくというわけ下はございませんで、そういう事例等については、業界の関係者にも十分注意を喚起いたしまして、そこいらについて業界自体としてもさらにそういう角度から十分情報を収集して、万全を期するというようなことも警告いたしておるところでございます。

古川雅司公明党

○古川(雅)委員 そこで、時間がございませんので、具体的な問題点に入るわけでございますが、最近の新聞報道によりますと、北九州市八幡区の三菱化成黒崎工場、工場長は森本一郎さんという方でありますけれども、ここで起こっている染料中間原料による職業性膀胱ガンの問題について福岡の労働基準局が検討をしておる。問題点としては、特に労災の未認定患者がいるのではないかという問題点が一つと、それから、染料工場での発ガン物質のベンジジンとベータナフチルアミンの取り扱いを中心に近くこの工場の立ち入り監督をする方針をきめた。すでに立ち入り監督を行なっているかに聞いておりますが、これは非常に思い切った措置であると思いますし、これまでにない非常に大規模な行政措置であると思いますが、このような措置をおとりになった経過、推移についてひとつ御報告をいただきたいと思います。

岡部實夫労働省労働基準局長

○岡部(實)政府委員 いま御指摘のベンジジンを製造しておりまする三菱化成黒崎工場につきましては、かつてベンジジンによる障害患者の発生を見てきております。そういうようなこともあり、また現にこの工場の従業員から膀胱等の疾病があるということで労災保険の認定の請求が出されております等の事情がございますし、ベンジジンにつきましては、さっき申しました総点検の結果等によりましてもいろいろ問題があるということで、去る十一日に総監督ということで、福岡局の監督官その他専門官が現場に立ち入りまして総合的な監督をいたしました。それで、規則その他で規定されているような設備等についていろいろ監督をいたしまして、全般といたしましては、直接その具体的な規定に違反したという事実は発見されなかったようでございますけれども、その結果については二十二日に総合的な判定をいたすことにしておりますので、まだ最終的にそこの監督の結果の所見を申し上げる段階になっておりません。二十二日の判定によりましてはっきりいたしましたときにはまた御報告を申し上げたいと思うわけでございます。

古川雅司公明党

○古川(雅)委員 今回のこの大がかりな現地における行政措置でございますが、これがいわゆる基準監督署の自主的な判断、あるいは去年の総点検の結果に基づく措置とは私どうしても考えられません。今回新聞報道で大がかりに取り上げられているのも、この措置が、患者の中から、また患者の同僚の労働者の中から、いわゆる内部告発という形で取り上げられ、問題化して、それにようやく出先の監督署が腰を上げた、そういう印象が非常に強いわけでありますが、どうもこの染料ガンの問題について労働省の取り組み方が手ぬるいのではないか。いまさら始まった問題ではございませんで、すでに昭和三十年に労働省としてはこの問題点に気づいているわけでございます。非常に手の打ち方、判断のしかたが手ぬるいという印象が強いわけでございますけれども、先ほどの御答弁とあわせて、今回の九州の三菱化成黒崎工場におけるこうした措置をとるまでの経緯についてはっきりしていただきたいと思います。これはいわゆる労働者内部からの告発によってこうした思い切った措置に出ることになったのですか、その点確認をさしていただきたいと思います。

岡部實夫労働省労働基準局長

○岡部(實)政府委員 黒崎工場の従業員の中のある方から、そういうような申告といいますか、そういうものが当局にありましたことも事実でございまして、私ども普通のたてまえからいたしましても、申告を受けた場合に、必要と認めるときには監督するというたてまえをとっております。かつ、先ほど申しましたように、有害物質による障害の問題が先般来非常にやかましく論議の対象にもなっております。公害問題とあわせて論議をされまして、私ども去年の九月には総点検をしたことでもございまして、その一連の動きの中で、私どもも安全衛生規則の不備な点も改善をして、ともかくこういった有害物質による職業病については、今後さらに万全を期して進めていこう、こういう施策を先ほど申しましたように、規則の面でも、また現実の監督の面でも強化をしていこうという、ちょうどそのときでございましたし、また現実にその当該関係の労働者の方からも、こういうような申告もあったことでございますので、あわせて総合監督というものに踏み切ったわけでございます。  なお、もう一つは、黒崎工場におきましては、これは過去においても現実にベンジジンによる膀胱ガン等の患者の発生した事実もございますので、その点の従来の情勢、それから最近のいま申しましたような一連の私どもの職業病と取り組む姿勢等も関連いたしまして取り上げたわけでございまして、特に騒がれたから取り上げたという趣旨ではございません。ただ、そういうふうな点については、特に黒崎については、従来もいろいろそういう実績もございますので、昭和四十三年以来また特別の衛生指定事業ということで、特別指定をいたしまして、監督、予防等も強化してまいっておる事業場でございますので、この際総合点検を行なったということでございます。総合的な判断によったものでございます。

古川雅司公明党

○古川(雅)委員 ベンジジンを原料にしている全国の染料工場でこうした泌尿器系統のガン、腫瘍患者が出ておるわけでございますけれども、この実態はかなり業界自体で掌握をしていると思われます。ただ、きょうお伺いをしているこの黒崎工場の場合におきましては、要注意人物を含めて四百人という非常に規模の大きいものでございまして、その点特に問題になると思いますが、この黒崎工場では昭和十一年から製造を始めております。患者が大量に発生し始めたのが三十二年から三十六年にかけてで、三十二年ごろから製造設備を開放式から密閉式に改めているわけでございます。ベータナフチルアミンについてはすでに製造をやめたというふうに工場側では説明いたしております。製造過程で密閉式にすれば問題は一応少ないという労働省の見解でございますけれども、現に現場で作業をしている方々の声によれば、いまでも黄色いガスが出て、頭やのどが非常に痛いときがある、そういう訴えが出ておりますし、御承知のとおり、職業ガンにつきましては非常に潜伏期間が長い。十年、二十年あるいはひどいときは三十年という潜伏期間があるわけであります。そういうことで非常に判断もむずかしいわけであります。密閉式にしたということだけで、今後従業員の健康と安全が守れるかどうか、その点はまだ非常に疑問が残ります。  これも資料で拝見をしたわけでありますが、九州大学医学部の公衆衛生学教室では、発ガン物質の生産、使用を禁止せよというような警告も出しているようでございます。この点についての判断は、これから欧州等に調査員を派遣して、あちらの状況も見た上で判断をするというようなことでは非常に手ぬるいのじゃないかと思います。くどいようでございますが、その辺の見解をもう一度お伺いしたいと思います。  あわせて、新聞紙上の談話でございますけれども、この黒崎工場の清水さんという総務課長のお話で、「この問題について、話すことは何もない。すべては監督官庁である福岡労働基準局に報告してある。これがこの問題に対する当工場の正式な態度だ。」非常に開き直っておりまして、全面的にその責任を監督官庁にゆだねているというような姿勢でございますが、会社工場との連携はどういう話し合いになっているか、監督指導上支障はないのか、さらに工場の施設等については所管が通産省であろうかとも思います。通産省との連絡はどうなっているのか、通産省との話し合いはどう進められてきたのか、その結果、今日に至るまで製造禁止、製造中止までは踏み切らなくてもよかったんだ、そういう態度をとってきたんだということもはっきりさせてもらいたいのであります。

岡部實夫労働省労働基準局長

○岡部(實)政府委員 先ほどもちょっとその点に触れましたけれども、私どもも従来のベンジジンの製造等に直接従事している労働者の方が、過去、基準法施行以来今日まで相当の数の方が泌尿器系統、膀胱ガンとか膀胱炎、そういう障害を受けて補償され、そのうちには一部なくなられた方もあり、治癒された方もございますが、いずれにせよ、そういう危険性が非常に高い物質であるということは十分認識して、過去十年以上にわたりましていろいろ予防措置を講じてまいりました。  そこで、先生の御質問にもございましたように、この疾病が相当長い潜伏期間を持っているというようなこともありまして、この密閉装置をやってから、その後ベンジジンによる障害がはっきりとつかめたものはまだないわけでございます。したがいまして、一応完全密閉装置にいたしますれば、現在のところ予防の措置としてはほぼ完全なものというように一応考えられておるわけでございます。  ただ、それにもかかわらず、諸外国において同じような措置をとったものと思われている国におきましても、さらに製造禁止という措置に、バイエルの場合は自主的に製造を禁止したと思います。そういう事例が現に出ているということについては、私ども放置しておくわけにいかないということから、さっき申しましたように、いまの手当てだけで済むのかどうかということを、もう一歩検討すべきだということで、いまごろ外国に人を派遣して何だというおしかりもあろうかと思いますけれども、いろいろなデータを取り寄せて調べてもらっておりますが、必ずしも明確ではないということもありますので、現地に派遣することにしたわけでございます。私どもは、そういう点については謙虚に実態を十分把握して、もし疑わしいというような事例が把握でき、また、そういうような実態が諸外国においても十分立証されるならば、当然それに沿った措置を考えなければならないということで、その点はあくまで慎重に考えて――慎重にというのはそういうことも考えなければならないという方向で、慎重に考えておるところでございます。  なお、黒崎工場につきましては、先ほど申しましたように、衛生の特別指定事業場にしておりますし、従来から基準局の監督に対して協力が得られないとかなんとかいう事態はございません。そういう面の協力は十分得ております。さらに、先般もそういう意味で全面的に黒崎工場の協力を得て、立ち入り総合監督をやったような次第でございまして、その結果については、必要により事業場のほうに十分協力を求めることにしようと思いますし、また当然できると思います。  それから、通産省との関係でございますが、この問題につきましては、私のほうが安全規則その他の措置によりまして、働く労働者の生命、健康の管理ということから、はっきりしたデータがあるならばいつでも通産省にも協力を求めるという体制になっております。したがいまして、はっきりしたデータを一日も早くつかんで措置したい、いまこういう段階でございますので、御了解をいただきたいと思います。

古川雅司公明党

○古川(雅)委員 先ほどこの黒崎工場の総務課長の談話を、新聞によるものを読み上げたわけでございます。同じ紙面の中に、九大の医学部の倉恒匡徳教授という、これは公衆衛生学専攻の方ですが、その人の談話が載っておりまして、こういうことを言っております。「患者の実態を調べようと、労働省などに資料を要求してきたが、ほとんどこたえてくれなかった。知られている資料から推定すると、全国で二百人から三百人の染料によるガン患者がいると思われる。」もう一つ問題になる発言があります。「染料の最終製品の中にも不純物として発ガン物質が含まれる可能性があるので、最終的には生産を停止するしかあるまい。」この後段のほうですが、この点につきましては、昨年私が分科会でお伺いした段階では、製品の中に発ガン物質が残留する危険は全くない、そういう不安はないというふうに、和田さんがはっきりお答えになっております。この辺どうも学者の見解と労働省当局の見解がはっきりしないわけでございます。最初の、学者に非協力的であるというお医者さんの言い方ですね、この点が一つ問題です。それからもう一つ、最終の製品の中の不純物の問題、そういったことをひっくるめて、最終的に生産を停止するしかあるまいと、はっきり学者が見解を述べている。こういう段階に立ち至ってなお慎重に検討しなければならないという、その辺の姿勢が私は納得できないのです。  三番目に、時間がございませんのでまとめてお伺いしてまいりますが、工場側としては非常に協力的であるというような印象をいまの御答弁の中から受けたわけでございますが、もう一つの新聞のキャンペーンの中で問題になりますのは、十三年前にこの黒崎工場の付属病院につとめておりました林さんというお医者さんが、当時患者が集団発生をいたしまして、集団検診をしたわけでありますが、そのときの実態を報告をいたしまして――時間がございませんので、詳細は省略をいたしますけれども、そのときの検診の結果、発ガン性の問題の重大さに非常に驚いて対策を求めている報告書でございますが、これが今日まで十三年間埋もれていた。もちろんこれは労働者にも報告をされていないはずであります。  こういったことが今日浮かび上がってきているわけでございますが、どうも工場側がこうした職業ガンの問題を工場の中でひた隠しに隠してきたのではないかという印象を強くするわけでございます。先ほどの局長の御答弁と考え合わせますと、何か釈然としないものがございます。  取りまとめて三点お伺いいたしましたけれども、よろしくお願いいたします。

岡部實夫労働省労働基準局長

○岡部(實)政府委員 工場のほうの態度についての御質問でございますけれども、実は私ども、総点検以来、この有害物質を取り扱っている工場、事業場に対する協力、特にそういうはっきりしたいろいろな問題を含んでいるところにつきましては、業界に対しましても、先般規則をつくるにあたりましては、私どものほうに担当の人に来てもらいまして、その趣旨を十分徹底し、協力を求め、今後その線に沿って私どもは厳重に監督をしていく、したがって、もしその施設等において不備な点があるならば一日も早く改善を率先してやってもらう、こういうようなことで、協力を求めたような形でやっております。  黒崎のほうも、責任者も本省にも参っておりますし、そういう意味で、具体的にどうこうという非協力な点は現在ございませんが、しかしそういういまのお話のようなことが事実であるといたしますれば、そういう態度で臨まれては非常に問題だろうと思います。したがいまして、十一日の監督のところの状況についても、二十二日には私どものほうに総合的に報告が参ることになっておりますので、そういう点もあわせて、会社側が真剣にこの問題に取り組んでおるかどうかというような点についても、御質問の点もございますので、はっきりさせてまいりたいと思います。  それから、大学の先生からのいろいろの御要望に対して労働省が十分協力していないではないかというお話でございますが、私ども、こういう技術的な、あるいは医学的な問題を含んでいる場合には、その問題、問題の専門のお医者さんには事前に十分連絡をし、むしろこちらから御協力を賜わっているような次第であります。私どもの担当の衛生課長も御本人が医学博士でありますし、そういうことで、特に九大の倉恒教授等とは、ほかの問題でも常にいろいろ連絡があるわけでございます。そういう中でいま御指摘のようなことがあったとすれば、何かの行き違いだろうと思います。  ただ、私ども事務の立場からいろいろ見ておりますと、たとえば鉛中毒なんかの問題でも、先般専門の先生に七、八人集まっていただいていろいろ御検討願ったのですが、やはり意見が非常に違うことがあるわけです。私ども事務屋の立場からすると、鉛なんというのは昔からの話なのに、まだその辺がはっきりしないのかなあと思うようなこともあります。そういう意味で、データがはっきりそろってない場合には、専門の方の御意見も必ずしも一致しないようなこともありますので、役所の専門家、また各大学、研究所等の専門家が衆知を集めて、やはり労働者の健康と安全の問題には取り組むべきだということで、積極的に御協力を願い、私どもの研究所その他のデータについては、いつでも利用できるようにということで進めてまいりたいと思っておりますので、いまのような問題、具体的に何かございますれば、それは何かの行き違いであろうと思いますので、さっそくよく調べまして、そういうようなことのないようにしてまいりたいと思っております。

古川雅司公明党

○古川(雅)委員 昨年でございますが、広島県の福山市にございます日本化薬の福山工場で、このベンジジンの問題が新聞でやかましく取り上げられた直後に製造中止に踏み切っております。私のほうで資料がちょっと時間的に間に合わなかったので、当局から御説明をいただきたいのでございますが、これは当然会社部内の経営上の理由等もあると思いますが、一方、発ガン性のある有害物質であるというそういう判断も当然あったのではないかと思います。日本化薬福山工場においてベンジジンの製造中止に踏み切った経緯について御承知であれば御答弁をいただきたいし、当然これまで製造を続けてきたわけでありますから、今後の従業員の健康診断その他従業員の救済措置についてはすでに指導はなされていると思いますが、その辺の事情についてお答えいただきたいと思います。

岡部實夫労働省労働基準局長

○岡部(實)政府委員 御指摘の日本化薬の福山工場におきまする――実は詳細がまだつかまっておりませんので、知り得た範囲でお答えを申し上げますと、この福山工場では昭和十年ぐらいから製造いたしまして、その後一時中止をしてほかの生産会社から購入をしたりしてやっておったようでございますが、さらにまた製造をし、四十五年三月末に一時使用を中止した。中止当時の使用量は年間で十ないし十二トン程度でございまして、その後断続的に操業して、月百キロ程度は使用しておる。ですから、自分のところで製造いたしませんで、ほかのほうから購入して使用をしている。一時、これははっきりいたしませんが、組合との間でいろいろ問題があって、その話し合いをする間使用を中止して、さらにその話し合いのあとで、断続的ではありますが、百キロ程度を月三、四回にわたって断続的に使用しているというような状況であると聞いております。  ただ、そういうようなことをした動機ないしはどういう意図からということについては、実はまだ詳細把握しておりませんので、その事実だけ、把握したところを申し上げておきます。

古川雅司公明党

○古川(雅)委員 いまの局長の御答弁の中にも感じられますが、従業員としては労組を中心として、この発ガン物質に対する不安を非常に強く訴えているわけであります。結論は、早く生産をやめてほしいという声でありますが、会社側のいわゆる経営ベースの中でこの声がもみ消されているという印象が非常に強いわけでございます。時間がございませんので、最後に私は、一人の従業員のほんとうに血のにじむ職業ガンとの戦いの模様を読ませていただきたいと思います。  これは朝日新聞の四月二十八日西部版の夕刊の記事でございますが、こういう彼の訴えです。名前をあげても支障ないと思いますが、この三菱化成黒崎工場コークス部精炭課につとめていらっしゃる扇崎光男さんという四十一歳の方であります。もうがまんしていられないという訴えであります。  「三十二年、夏も終わりに近かった。職業ガンが発生した染料部門の職歴者という理由で、三菱化成黒崎工場付属病院で集団検診を受けた。尿道から、ぼうこう鏡を突込む、いわゆるぼうこう鏡検査機械に身をさらしたときは、まだ二十七歳。独身だった私にとって、屈辱と恥ずかしさで身がふるえた。検診のとき、初めて薬物障害があると聞かされたが「私に限ってまさか……」の気持だった。検査前、やや尿が近いな、という不安はあっても。この第一回検診は「異常なし」だったが、その直後から排尿のたびに激痛が走り、便器にしがみついた。ひたいに油汗が流れ、尿に血が混じっていた。出血は一週間も続き、下着は赤く染った。同僚が「男の生理だな」と笑う。  九月二十四日。勤務中、五-十分間隔に尿意を覚えて労働不能となった。翌日の再検診で、ぼうこう腫瘍が発見された。  「百姓さんは田んぼに米つくる、わしたちゃおなかに米つくる、なんでわしたちゃおなかに米つくる」  夕やみの病室に当時流行していた「おさらば東京」の替歌が流れていた。患者のぼうこうをぼうこう鏡で見ると米つぶのようなでき物がみえる。  集団検診から一カ月後、私は三菱化成病院に入院した。当時、決定的な治療方法はなかった。電気焼灼やX線治療が行なわれたが、すぐに再発した。同じ病気で入院した仲間十七人のほとんどが家族持ち。働き盛りであった。それだけによけい沈痛な空気が病室を包んでいた。替歌は絶望的な気持の現れだった。私も妻と婚約していた。多くの障害を乗越えて私たちは入院中の三十三年に結婚した。同時にガンとの戦いがはじまった。  最初に入院した年の暮れから翌年はじめにかけて十八人がつぎつぎに開腹手術を受けた。その苦しみはまさに生地獄だった。下腹部をおそう激痛に私は幾度となく「殺してくれ」と叫んだ。その苦しみを知りながら多くの患者が手術を受けたのは、当時の医者がいった「開腹すれば絶対に再発しない」という言葉を信じたからだ。  三十三年九月から現場に復帰した。「再発しない」という医師の言葉は、私にとって一時期は信用できた。が、不安はぬぐいされなかった。それは同僚の死だった。三十三年一人、四十年に二人――。私と同じ苦しみのなかで仲間たちは死んでいった。いつかわが身にも――そのたびに子どものこと、妻のことが……。  不安は的中し、医師の言葉は裏切られた。四十三年四月、こんどは九大に入院、また開腹手術を受けた。このとき絶対納得できないことが起きた。最初の入院は労災に認定されながら、こんどは認められないというのだ。会社はこういった。「慢性ぼうこう炎という診断で、最初の入院時の病名と違う。だが、ぼうこう腫瘍の疑いで入院したのだから会社内では準公傷扱いにしてやる。経済的には変らないのだから……」患者がでていることを世間に知られたくない、という態度である。  患者発生以来、会社は「会社の物質による病気ばかりとはいえぬ。一般にもぼうこうガンや腫瘍があるのだから」といってきた。その考えが現実のことになった。しばらくたって、私以外の再発患者のなかにも労災適用を受けていない人がいることを知った。手術による第二次障害についても補償はない、と聞いた。  ことしの三月、私は九大に入院し、いまも北九州市内の病院に通院している。三度も入院を繰返すと子どもも何かを感じるらしい。小学四年の長男は「お父さんはなぜいつも入院するの」と聞く。妻はあまり口に出さないが再発の間隔がだんだん短くなっていくのに気づいている。腹に爆弾を抱いた夫を持つ苦しみに耐えているようだ。しかし、一生この病気からのがれられないことを知った私にはどうすることもできない。  全国の染料工場には隠れた患者がたくさんいることを聞く。会社や政府がもっと早く適切な措置をとっていたら多くの患者が苦しまずにすんだのに、と思う。会社や国は患者に十分な生活補償をするとともに、一日も早く発ガン物質の生産を停止してほしい。」  このように結んでおります。この扇崎さんの訴えの中には数々の問題があると私は思いますが、残念ながら時間がございませんので、一点だけ。いわゆる彼の訴えの中にもございました法的には私傷である。会社内では公傷扱いにする。外私内公というような表現をしておりますが、この点について地元の福岡労基局長の見解は「会社に問合わせたところ四、五人未認定者がいるという返事だった。どういう理由でそのような扱いになったのか、医学的にも問題はあろうし、このほかにもまだ未認定者が大勢いるのか今後調べる。」調べてみなければわからないという見解をとっていらっしゃるようです。こうしたいわゆる法的には私傷扱いにして会社内では公傷扱いにするというような、そういうことが労災の取り扱い上あり得るものかどうか。何でこうした事態が起こったのか。これに対する対策をどうしていくのか、この点をお答えいただきたいと思います。五分間ほどございますので私が読み上げましたこの新聞に掲載されました手記に対する局長の所見を含めて御答弁を賜わりたいと思います。

岡部實夫労働省労働基準局長

○岡部(實)政府委員 最初にお話のございました労災の適用の問題につきましては、これはいやしくも業務上の疾病であるということがはっきりいたしてある場合には、外も内もございません。当然法の手続により労災の業務上疾病として認定をして補償を受ける、こういうことでございます。そこでそういうことにつきましては、十一日の総合監督によりまして、基準局がそういう点もあわせて実情をはっきりさせて報告をすることになっておりますので、それを受けまして必要な措置があれば指示をしていく、こういうことで臨んでまいりたいと思っております。  なお、ただいまお読みになりました手記につきましては、有害物質による職業病のおそろしさというものをまざまざと見るような気がいたします。また、そういう中で不安に包まれながら労働するということは、いかに情けないことかという御本人のお気持もまことに察して余りあるものがございます。そこで私どもは、やはりいろいろな製造過程を通じて、健康あるいは生命に危検のあるものについては、これを厳正に規制をいたしまして、いやしくも働く労働者が不安の中で毎日を過ごすということがあってはならないということで臨むべきだと思っております。従来ややともいたしますと、科学的に必ずしもはっきりしていないというようなこと等に籍口いたしまして、措置についてなまぬるいことをやってきているというようなことも間々あるかとも思われます。したがいまして、私どもはできるだけ実態をはっきり科学的につかむと同時に、しかしつかみ得ないもので、しかも何か危険性が残るというようなものについては、やはり疑わしいものはこれを予防していくというたてまえから措置は考えていかなければならないということでございますので、そういう方向で今後進めてまいりたい。  そこで、先ほど申しましたように、有害物質については規則等を一応つくりまして、これについては専門家のいろいろな意見も聞きながら、はっきりした点についてははっきりした措置を規制するということにいたしますが、取り残された部分についてどう考えていくかということが大きな課題であろうと思いまして、ベンジジンにつきましては、国際的にもそういう危険がいろいろあるようでございますので、その点をさらにもう一回はっきりさせながら、その間でも、業界にもいろいろ慎重に、その問題をデータを隠しておくとかなんとかいうことをせずに出してもらって、相ともに健康を保っていく職場をつくるために全力をあげたい、こういうふうな気持ちを一そう強くした次第でございます。

古川雅司公明党

○古川(雅)委員 一時間にわたって若干お伺いをしてきたわけでございますが、私といたしましては、ベンジジン系統の染料の生産につきましては、疑わしい以上即時生産を停止するという措置、そしてまた、患者やなくなった方の遺族に対する完全な生活の保障、さらに今後ますますこうした問題が深刻になってまいりますので、いわゆる職業ガンに対する徹底した実態の究明、そういった点を今後労働省として真剣に取り組んでいかれることを強く要望いたしまして、質疑を終わらしていただきます。

倉成正自由民主党

○倉成委員長 この際、午後三時三十分まで休憩いたします。    午後二時一分休憩      ――――◇―――――    午後三時五十一分開議

倉成正自由民主党

○倉成委員長 休憩前に引き続き、会議を開きます。  厚生関係の基本施策に関する件、特に、医療保険及び医療に関する問題について調査を進めます。  この際、委員会を代表して参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は御多用中のところ御出席いただき、まことにありがとうございます。  本委員会においては、現在、健康保険法等の一部を改正する法律案について審議中でありますが、この際医療保険及び医療一般に関し、参考人各位にそれぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、もって当委員会の審議の参考にいたしたいと存ずる次第であります。  なお、議事の都合上、最初に御意見を十五分程度に要約してお述べいただき、そのあと委員からの質問にもお答え願いたいと存じます。  なお、念のため申し上げますが、参考人は委員には質疑できないことになっておりますので、あらかじめ御了承ください。  それではまず小山参考人にお願いいたします。

小山路男横浜市立大学教授

○小山参考人 それでは私から意見を若干申し述べさしていただきます。  御存じのように、昭和三十六年度から国民皆保険になりました。このことは非常にわが国の誇るべき制度でありました。国民の健康と福祉の増進にあずかって力があったものと考えております。しかし、その後医療需要が急速に伸びたこと、あるいは医学、薬学の進歩、それにも増して社会的な環境の変化、公害等に象徴されますような問題とか、あるいは交通事故の多発でありますとか、いろんなことで国民の医療に対する依存度が非常に高まってまいりました。したがいまして、国民総医療費等の統計から勘案いたしますと、わが国の医療保険制度ないしは医療保障の費用というものは先進国レベルに達しているわけでございます。  しかるところ、医療担当者も保険者も相互に反目を繰り返している、あるいは患者自身も現状に満足していない、こういう事態に立ち至っているわけでございます。それはやはり医療保険制度に比較いたしまして、医療制度等の基本になるものが不備であるというように私は考えております。しかしながら、保険と医療とはもともとたての両面でございまして、保険の側に基因するがゆえに医療制度を著しくゆがめるという問題もありますし、医療制度の不備が保険にはね返って、そうして矛盾を大きくしていくという面もあろうかと存ずるわけであります。いずれにいたしましても、そういうようなことでありますので、保険と医療の両面にわたって、われわれはこの際時間をかけてしっかりと正しい方向を見出していかねばならないと思っております。  何が一番問題かといえば、医療保険についていえば、現在七つの制度が分立しているわけでありまして、しかもその中でも、同じ制度の健康保険におきましても、組合管掌健康保険と政府管掌健康保険に分かれておる。念のために申しますと、政府管掌健保の被保険者は千三百万、組合管掌健康保険の被保険者は九百万であります。しかも、組合と政管との比較等をいたしますと話が長くなりますが、何といいましても、組合のほうが拠出能力が高くて、しかも健康度に恵まれ、あるいは年齢的に見ましても政管のほうが年寄りが多いのであります。こういういろいろなデータから考えてみますと、政府管掌健康保険というものは保険制度の中でも財政能力の非常に弱い制度であります。これに反して組合管掌健康保険というものは大企業に属しておりますので、財政能力も非常に高い。あるいは企業の幅利施設の一環というような意味合いもありまして、組合健保というものの水準が高いことは、これはもう皆さん御存じのとおりであります。そこで、三十六年以後、医療費が非常に上がってまいりました。そのたびに法改正をやるのでありますけれども、やはり一番財政能力の弱い政管健保が赤字に悩むのは当然のことであります。したがいまして、もし制度全般について抜本的な再編成をするのでなければ、弱い制度である政府管掌健康保険につきまして、国が国庫補助をするなり相応の補助をして保護をすべ夫だということは、これは理の当然であります。  しかしながら、そのような財政対策のみではたして今後の日本の医療が守れるかという点になりますと、これは決してそうではないと私は考えるのであります。つまり医療保険と申しますのは、病気になったときの医療費を分担する、費用負担のシステムであります。これに対しまして疾病を予防する、あるいは正しい医療の受け方をするというような意味での健康管理の問題が、従来ややもすると、と言いたいのだが、ほとんど行なわれてきていなかったわけであります。健康の問題しいうのは、本日の参考人の方々は皆さん、私を除いては医学者でいらっしゃいますから、そちらのほうから御発言があると思いますが、個人の健康保持というものはやはり個人の自覚にまつべきところが多大であります。したがって、そういう健康保持についての国民の努力を促進するような、そういった立場で正しい情報を、流してやる。そうして正しい医療の選択ができるような方向に全体の行政を持っていくべきであると思うのであります。しかしながら予防、治療、リハビリテーション、こういう一連の健康管理というものを考えてみますと、従来の政府のやり方というものは、保険は保険局でやり、保健所は公衆衛生局でやるというようなことでありました。縦割り行政そのままで、はたして国民の健康管理が今後うまく行なえるかということになりますと、これは残念ながらそうはいかないであろう。つまりこの変動している社会の中で医療というもの、医療サービスいうものをどのようにして国民に提供するか、そちらのほうにわれわれは重点を置かなければならない。  ところが従来――これは私の感想なのでありますが、従来の公衆衛生といったようなものは、たとえば結核、伝染病等の予防対策一本やりできたわけであります。それはそれで非常に効果をあげたのでありますけれども、今後人口構成が老齢化し、成人病が非常に重要化してきている段階では、従来のような集団検診、一括的に診察をし、その中で疾病の問題を予防するという方向から、次第にパーソナルサービスといいますか対人サービスに移らざるを得ないのであります。  そこで、そういうようなことになってまいりますと、従来行なってまいりました公衆衛生のやり方とか、あるいはさらには現在の保健所行政のあり方とか等についてもやはりこの際抜本的に考え直して、そうして国民の生活に密着した健康指導あるいは全体の地域的な計画の中での健康管理体制の確立、こういうことをやらねばならないと考えているものであります。  次に医療機関についての国民の不満は、医療機関の適正配置がなされていないという点に最も強くあらわれるのでありまして、無医地区の存在、保険という制度に入っておりましても実際には利用すべき医療機関等が欠けている、こういうところに国民の不満が非常に多い。そういうことでありますので、どうしてもこういう医療機関の適正配置について国としても、あるいは国会の先生方としても今後の施策をお考え願いたいと思うのであります。  このあたりになりますといろいろと議論のあるところでありましょうが、たとえば病院と診療所を分けてしまえ、診療所を通さなければ病院に入院させないようにしたほうがいい、病院に診察に行かないようにさせたほうがいいという機能分化論というようなものも一方でいわれておりますし、短い時間でとうてい尽くせませんけれども、しかし私ども患者の立場からいえば、単純に機能分化をやってしまうというようなこともはなはだ困るわけでありまして、われわれの医療選択の自由ということから考えますと、病院と診療所の機能分化というようなことはやはりちょっと考えものだろう。  それから将来の方向としては、どういった場合にどういう医療機関に行けばいいかという意味での医療のコンサルテーションの機関を設けて、そういうところで相談すれば適切な医療機関を指示してもらえる、相談してもらえるというようなことが可能かと思うのでありますけれども、遺憾ながらこれも言ってみたところで実現上はなはだむずかしい問題が多いわけであります。  それからよくいわれることでありますけれども、公的医療機関を大いに拡充すべきだ、しかも独立採算制を排除して公費負担、公費を投入して公的医療機関を拡充すべきである、これはまことにけっこうでありまして、私もそれは賛成でありますけれども、しかしながら病院の効率的な運営というものがそれではたして担保されるかどうか、独立採算制ということと効率的な運営という問題、この矛盾をどう調和させるかというようなことについてもわれわれは考えなければならぬと思います。  さらにまた、現在の勤務医の待遇が悪い、あるいはパラメディカル職種が著しく不足している、それはやはり待遇の問題にからむわけでありますけれども、こういった人々、つまり医療サービスに従事する人々の処遇を思い切って改善する必要があろうかと思うのであります。こういうことになりますと、私どもといたしましては薬の多用という、日本の医療の非常に重要な問題である薬剤の多用についてどうしても一言触れざるを得ないのでありますが、少なくとも医療費の四〇%以上が薬剤費によって占められているという現状は、正当な姿とは言えないとわれわれは思うのであります。  この点は後に医師である参考人の先生方からお話があると思いますけれども、やはり医療機関が投薬行為によって利潤を得ているというようなあり方は望ましくない。正しい医療といいますか、きちんとした医療を行なうことで正当な報酬が与えられなければならぬ。しかるに現在の診療報酬支払い体系というのは、これは御存じのように出来高払い方式であります。そうして投薬することによって医師に利潤が集まるような仕組みになっている。こういう現状でございますので、どうしてもこの際医薬分業というような問題をこの場合に考えなければならぬだろう。さらにまた、製薬産業のあり方についてもいろいろと考えていく必要があろうかと思うのであります。  さて、そのようなことをいたしまして、そしてなおかつ私どもが考えておりますのは、その場合にそれでは国としてはどういうことをやるべきか。つまり医療保障の問題で、保険で見られるものは保険のほうでやっていくにいたしましても、そこからはみ出していく問題はどのようにして処理すべきかということをちょっと申し上げますと、私の考えでは人生の初めと終わり、つまりライフサイクルの初めと終わりはサービス化の方向を歩まざるを得ないだろうと思うのであります。つまり老齢者医療というのがいま非常に問題になっておりますけれども、それと同じように児童、乳幼児等の疾病等につきましてもやはり公費負担医療の導入等を行ないまして、そうしてライフサイクルの初めと終わりにつきましてはサービス化する必要がある、このように思っております。  そこで以上のようなことを概略申し上げまして、一言で申し上げますと、保険のサイドをいじることは同時に医療のサイドをいじることにもなるわけであります。つまり保険と医療が別個にあるものではなくて、医療保障の立場からいえば保険のサイドをいじることは同時に医療のサイドをいじることにもなりますので、そういう意味で保険の改正と同時に医療の問題、日本の医療をどちらへ持っていくかということについて慎重に考慮しながら、今後の日本の医療保障の向こうべき道をもっと相互に謙虚に語り合う場を持ちたいものだと私は考えております。  以上で発言を終わります。

倉成正自由民主党

○倉成委員長 次に、高橋参考人にお願いいたします。

高橋晄正東京大学講師

○高橋参考人 高橋です。  私は二つの点について申し上げたいと思いますが、その一つは、わが国の医療保険制度が致命的欠陥を持っているということについてであります。いま一つは、これを根本的に変革する方向はどういうものであるかということ、この二点について申し上げたいと思います。  わが国の医療保険制度が致命的欠陥を持っているということは、これは幾つかの点に要約できますが、第一は、医ということの本質に反した医博の商品化を行なったということでございます。病人は与えられます医療の質、すなわちこれがほんとうに病気をなおすのに必要な医療であるかどうかということを判断することができませんし、薬の量が適当であるかどうかという購入する医療の量に関する判断もできない。したがって、そういう医療行為に対しまして個別的に価格を定めて医療の商品化を行ない、医師が一方的にこれを売りつけるしいう、健康保険の制度そのものに必要のない医療の押し売り、またすでに金を払っているから医療をなるべく受けたほうがいいという誤った医療観を、医師並びに国民の双方に植えつけるという根本的な精神の誤りがあるというふうに考えます。  第二には、そういった点で無限に乱用される医療に対しまして無制限の支払い保証をしているということでございます。結局医療費が足りなくなってくれば保険料を上げるという形で無限の支払い保証をしておるということによって、行き着く先はどこかといいますと、経済的破綻よりほかに方法がないというふうに考えます。  第三にそのことの結果といたしまして、これが先ほどの小山参考人も言われましたように、医療費の問題だけではなくて国民の健康破壊、人間破壊に進んできているということがおそれられなければならないわけであります。そのことは具体的な調査が十分やられていないと思いますけれども、たとえば広島県の医師会で昭和四十一年の「広島医学」に調査データを出しているのを見ますと、三十何年かごろから国民皆保険になって医療費が公的に支払われるようになり、またそれと同時集が、かつては二〇%程度のところから四十何%で進んでくる間に、急速に薬剤ショックによる死亡がふえてきている。すでに四十一年までの間に、約十年足らずの間に三十数名が薬剤ショックで死んでおります。死ななかった者は六百名に及んでおります。人口二百万の広島県一つにしましてもこのくらいですから、大ざっぱに計算しましてその五十倍は日本じゅうで存在することになります。こういった薬剤の乱用による人体破壊行為というものは、諸外国ではきわめて少なく押えられていると考えられます。その理由は、一つは医療行為の有効性ということに関する評価の客観的な基準がきわめてきびしい。たとえばイギリス、アメリカなどにおきましては終戦直後からいわゆる二重盲検法のもとでの対照試験といわれる方法によりまして、有効でない医療行為は徹底的に排除されてきております。その結果が、たとえば医療品の種類にしてみましても、イギリス並びにそれにならいましたアメリカでは二千数百しかないのに、わが国では十万五千許可された中に、現在まだ残っているものが、自然消滅を除きましても二万幾らないし三万くらいあるといわれております。こういうことからもわかりますように、わが国では薬剤の整理が全くなされていない。その中で医師の処方権の絶対性の中で薬が無限に使用されているという事実があります。それに対して支払い上の制約がなくなったことのために、ますますもって乱用に拍車をかけているということが考えられます。その点は私たちが、すでに十年前から市販しておりますグロンサン並びに最近世界じゅうの文献を調べまして一つの結論を出しましたアリナミンのごときものが――グロンサンは最高五十億円、アリナミンは現在なおかつ二百五十億円という高額のものが、全く科学的根拠なしに保険の中において、しかも医師によって七四%も乱用されているという事実がございます。  また、わが国の国民の健康状態が急速に悪化しつつあることの一つの例証といたしまして――これは必ずしも薬のせいとはいえません。あるいは農薬とか食品添加物、中性洗剤、そういった私どもの口を通して入りますものすべてが関係すると思いますけれども、肝硬変による死亡率がここ十年の間にウナギ登りに上昇してまいりまして、先般死亡順位の第十番目に入りましたが、この間にイギリス、アメリカにおいてはどうかといいますと、イギリス、アメリカにおいてはほとんど肝硬変死亡率は動いておりません。したがいまして私たちは、薬剤を含めて口から入りますもののわれわれのそういった飲食物環境が急速に悪化しつつあるということをここに見得るのではないかと思います。こういった欠陥がございます。  さらにもう一つは、いまの営利主義の医療制度のもとでは、過疎地帯約三千地区には、六十万の人間が医療を受けられない状態で放置されている。また都市におきましても、必要な場合に直ちに信用できる医療を受けられるような病床が手に入らない。また夜間、休日には必ずしも適確な治療を受けられる機関がない、あるいは救急医療においても十分高度の医療を受けられない、こういう点におきまして、日本の医療は諸外国と比べましてきわめて不完全である。この不完全度はどのぐらいかということはなかなか測定しがたい問題でありますが、昨年の「科学朝日」の五月号で座談会をやったときに、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、ソビエトに十年以上もおりました医師の集まりの中で、アメリカでほぼ百人助かるぐらいの病気が出た場合日本でどのぐらい助かるかというような話が出ましたが、五十人前後じゃなかろうか――それは救急医療の体制をも含めましてでございますが、個々の医療技術は高いところはあるけれども、医療の受けられるチャンスということまで考えに入れますと、五十人以下じゃないかという話が記録されております。こういう点を考えますと、日本の資本主義形態をとっている医療の矛盾は、単に経済的破綻を来たすだけではなくて、われわれ日本民族の身体を強くむしばみつつあるということでございます。  これをまとめますと、科学的な妥当性を欠いたままに、医ということの本質に反して商品化されました医療に対しまして無限の支払い保証をしておりますわが国の医療保険制度は、いまや人間破壊の凶器となりつつあるだけではなくて、国民総医療費の無限の増大によって、おそらく一九七〇年代に経済的破綻を来たすものと思われるというのが、第一の問題に関する結論でございます。  次に第二の、しからばこの医療制度をいかに変革するかということでございますが、これはたとえば薬は全部無料にしましても、手術は無限に使うあるいは検査を無限に行なうということによりまして、やはり患者の受ける被害並びに経済的な破綻は免れない。そこで私はやはりこれは医療の公営よりほかに方法がないというように考えます。すなわち第一に医療機関の社会的接収。第二に医療従事者の教育と身分の社会的管理。その中で、医師を頂点としました特権階級的基本構造、看護婦、検査技師、薬剤師、すべて医師に従属する形態を、医師もそれらの人々も同等に公務員となるということによって解消するということをしなければならないだろうと思います。第三には、地方自治体を主体としました地区医療管理委員会の中で、住民と密接な意思の疎通をはかりながら、その運営方式の確立、医療内容の科学的な妥当性の確立をやっていかなければならない。  こういったことを可能にしますためには、おそらく立法措置としましては医療基本法という形態をとらざるを得ない。なぜわが国におきまして、教育だけが社会化された形態をとっていながら、教育という精神に対する働きかけよりももっと基本的な、生きるということの生物的な人間の側面に対して社会化が行なわれていないのかということは、はなはだ私疑問に思うわけでありますが、教育の社会化の必要であること以上に医療の社会化が必要であるというふうに思います。  さらに、こういった医療社会化がはたして可能であるのかいなかという問題がございますが、これはいまから十年前、総医療費が五千億時代には不可能でありましたけれども、現在のように二兆五千億の総医療費を使っておりまして、これは昨年の統計でありますが、今年度はおそらく三兆円弱になるだろう、一九七五年にはおそらく四兆から六兆になるだろうという推測がされておると伺っておりますが、そういう状況の中では、大体GNPの五%、二兆五千億ありますと、私の推算に上りますと、大体医療従事者――医師十一万、看護婦その他の医療従事者八十万に対しまして公務員給の二倍を支給していく。それから薬はもちろん現在の使用額は半減いたしますけれども、患者さんの食事はいまの倍以上よくいたしましても、なおかつ五千億毎年余る。余った五千億によって十分私的医療機関の接収、一件一億円としましても五千件を一年に接収できます。各府県ごとに、医学校のない府県に十五校建てる。医学校を建てますのには一校二百億、運営費は五十億で済みます。私立学校の公的な管理のための経済援助は、一校五十億としましても十五校で幾らでもない。また開局薬局の転廃業二万五千件、これは薬の自由販売制度をかなり規制しなければあぶないということから始まりますけれども、かりに一千万円ずつ補助いたしましても二千五百億で済んでしまう。製薬会社二千五百件に関しまして無効有害な薬の販売を禁止し、転廃業を進めましても、一件一億円としましても、二千五百億あればまあまあ小さいほうは何とか転廃業できて、もっと世の中の役に立つような仕事をしてもらえるだろう。こういったようなことを考えますと、五年間で相当余ってしまう。こういうことを考えますと、いまの二兆五千億ないし三兆という総医療費がいかにむだであるか、むだ使いしているかということがおわかりいただけるだろうと思います。  それに関連いたしまして、人間のからだの中に病気を追い込んでしまってから、そこに薬を注ぎ込んでさらに内部環境公害を起こしながら治療するということよりは残った金で予防対策を十分いたしまして病気を寄せつけないということのほうが、はるかに科学的にも妥当性を持つし、また経済的にも安くつくだろうということを考えるわけであります。したがいまして健康保険制度そのものの中にあるところの誤った思想、つまり個々の医療行為を一々金銭に包括する、そうすると当然、よけいやればやるほどもうかるというその根本思想をまず排除しなければならない。それを徹底的に行ないますならば、教育に準じた医療の行為、ただし国営ではない、公営の形で、住民と意思の疎通ができる段階におきまして医療の社会化を行なわなければならない。特に医療の社会化は従来からやっているじゃないかといわれる方もありましょうけれども、お金の支払い面だけではなくて、医療機会の均等性ということと医療内容の科学性、この二点を背景にとりましたところの医療公営、こういう方向を考えるよりほかに方法はないのではないかと私は考えます。

倉成正自由民主党

○倉成委員長 次に、神崎参考人にお願いいたします。

神崎三益日本病院協会会長

○神崎参考人 私も、高橋参考人ほどではございませんが、現在の医療保険制度を全面的に肯定するものではありません。思い切ってイギリスのナショナル・ヘルス・サービス方式にするか、あるいは高橋君の言われたような公営方式にする。それができないのであれば、現行の健康保険制度の改善でいくよりほかはない、かように考えております。  保険方式では、いろいろ言われておりますが、私は組合方式のほうをより可としております。ということは、それは一つの集団で経営努力をすることによって効果が見える、効果があがるという、そこに組合方式をとるものであります。政府管掌方式ということになりますと、そのプールが拡大しますから、プールの拡大ということは無責任の拡大ということに相なろうかと存じております。そうではありますが、保険方式である限りは収支均衡の原則は守られなくてはならない。そこで低所得階層の多い、先ほど小山参考人も言われましたような政府管掌の保険におきましては、これは同じ医療を受けるのでありますからやはりその保険料においても国庫からこれを補助して、そして支出に見合うだけの収入を用意すべきものと思っております。そして前二人の参考人の言われましたように、私も医の本道というものは予防であり、治療であり、リハビリテーションだ、かように考えております。  現在の健康保険方式でありましても、予防に力を尽くす方法はございます。またよく言われまするところの、医師と患者の人間関係を保持する家庭医制度につきましても、私は健康保険だからできないとは考えておりません。これは方法がある。またいまの現物給付、出来高払いという、高橋参考人は商品化していると言われましたが、まことに程度の差はあれまったくそれを施す医師の経験、技術、知識というものが何ら支払いの上に反映しない、ただ数だけを提供すればいいといういまの健康保険のやり方は、致命的なものだと思っております。薬品はいま最も目をつけられておるものでございますが、これは徹底的にやりますれば、現物で医療担当者に償還するという方針、これも不可能ではございません。たびたび言われますように、薬品費が総医療費の四〇%をこすというような、こういう異常な事態、こういうことを見過ごしておることは許されないと思います。ある人は、いまの方式は医療担当者と製薬産業の営利性確保に奉仕しておる、こういうことを言っておられますが、思い当る節があるのでございます。まず医師に払うものにつきましては、さように医療担当者の自信に応じた支払いをするということであろうし、また医療費をきめる場合には、物と技術を分離すれば、スライドによって変動に応ずる適正な値がさめられる、かように考えております。先生方を前にしてたいへん失礼なたとえ話でございますが、いまの現物給付、出来高払いというものは、火事が起こらないと消防は報酬がもらえない、こういう制度でございます。火事も出火と同時に発見してこれをじょうずに少ない注水で消しとめたといたしますと、へたでやたらに水をかけた消防よりも報酬は少ない。どなたがお考えになっても、こういう矛盾したものが今日まで続いておるということについては、まあ理に合わないどころか、私はこれはむちゃくちゃだ、かように思っております。したがって火災件数の少ない、まあ言ってみますと病人のいないところには消防は出かけません、行きたがらない。これがいわゆる無医地区が発生する原因でありまして、またいろいろ先生方はお聞きになっていらっしゃると思いますが、ある村があげて離村する、都へ下がる。病気になって医者に手も握ってもらえないようなところには住んでいるわけにいかないという一人の老人の申し出にみんなが賛成して、山を下ったという話がございます。かようなことで、無医地区であるがために過疎地区になる、過疎地区だから医者が行かない、こういう悪循環を絶えず繰り返しておるということでございます。  こういう問題を今日まで放置することなく、いろいろと衆知を集めれば、日本においても改善ができたであろうと思いますが、どうも医療に関係する、あるいは保険に関係する各種の審議会がありますが、この審議会というものは、御承知のように決して話し合いのムードというものがない。脱退する、退席するというようなことで、何でいいものが実ろうか、かように私は考えておるのでございます。なおその審議会の構成を見ますると、たとえば私どものような医療担当者側の構成を見ますると、単に医師であるというそのことだけで、既存の医師団体に属さない限り代表権は得られない。これがそのまま見過ごされております。私は病院協会の会長として本日ここへ呼ばれておるわけでございますが、どなたにしても、いよいよとなれば入院しようかということになる。だから医療の根幹は病院医療にある、こう思っております。その病院医療というものは医療のチームによって行なわれておるので、決して医者だけが病院においての医療を独占しておるわけではございません。多くのパラメディカルの協力によって完全な医療ができる。代表者たる院長は一医師であるということのために医師団に拘束されておる。こういうことが許されるべきではない。諸外国の例を見ましても、非医師である者がたくさん院長になっております、そのことを考えるときに、チームの代表者というものが、ただ医師のライセンスを持っておるがために一団体に拘束されてしまうというようなことで、いい医療が生まれるわけがない。私はここに大きな改めるべき眼目がある、かように思います。そういうことでやっておるから、いま御承知でしょうが、健康保険の入院料というものは千四百六十円でしたか――最近、国民宿舎は二食つきで千五百円に改められました。じょうぶな人が泊まって、ふとんの上げおろしもする、部屋のそうじまでもする。その者が一夜に千五百円払う。それにも及ばない。医療、看護はもちろんのこと、寝具、給食、すべてにわたってのサービスを提供して、それしかいただけない。あるいは汽車の寝台に乗ってみますと、これはよっぽど病院よりも割りがいい。薄い毛布一枚くれて、それで千五百円前後鉄道は持っていくのでございまして、こういう状態に――いわゆる代表者が出ないのだから、どんなむちゃな値段でもきめられる。そういう状況に置かれておるから、御承知のように、勤務者はどんどん減って、そして看護婦不足、看護婦不足という。これはもうすでに種をまいておいて、そうして看護婦が実らない、いまの現実だけをお考えになるということはとんでもないことだと思います。なお、入院した患者さんは、室料差額に苦しめられる。とにかくわれわれは現行の制度のもとにおいても、当然主張すべき立場の者をそれに加えるということをまず第一に――これは法律改正を要せず、かつてそういう実績を持っておるのでございますから、そういうふうにやられる。  なお、当面の問題といたしましては、病院は軒並み赤字でございまして、私の属しておる赤十字病院のごときは、これはその運営においてはいささか模範的にやっておると思っておりますが、これが昭和四十年には九十三病院中の九病院、九・六%だけが赤字でありましたが、四十四年には九十三病院中六十二病院、六八%が赤字でございます。こういう状況の中で、なおかつその病院の建設費、これを自力で償還せい、看護婦も養成しろ、こういう言ってみれば無理難題ほかにあろうかとすら考えておるのでございますが、まずまずそれはさておいても、目下のような労働界におけるベースアップ、その声の強いときに、また物価の上がるときに、われわれのかかえておる従業員をそのままには見過ごせません。そこで先行きのことは別といたしまして、保険である以上原資がふえるということが前提とまでは申しませんが、それは当然だろうと思うのです。そこで現在の支出増に見合うだけの収入増、これはぜひおはかりいただきたい、かように思います。  現在提出されておる保険法の改正案の中の一部負担というようなものは、まあ入院すれば隣近所から、あそこのだれそれは入院したそうだというので見舞いを持ってかけつけるという中で、入院した者から一部負担を取り上げようというのは、私はこれは社会感情に逆行しておる、こう申し上げたいと思っております。  なお、先ほど冒頭にも申し上げましたように、今度の原案は、いろいろと従来の赤字のたな上げであるとか、あるいは国庫補助の定率制であるとか、まことに善政をお考えになっておりますけれども、政府管掌の被保険者の標準報酬と、そうして組合管掌の標準報酬の格差をごらんになったら、五%足らずの国庫補助ではとうていカバーができない。私は、数字を詳しくは存じませんが、まあ私の目の子でも少なくとも一〇%、一五%、これは当然所得の少ない階層のために国民全体が出してやるという、その措置はぜひ講じられたいと思います。そうしてすみやかに、私は、野党の先生方には、少し――そういうことを言っちゃいけないというお話もございましたけれども、私の意見としてこれをどうなさるのかという、そういうことを申し上げたいと思うのでございます。  まあいずれにいたしましても、先ほど来のいろいろないい案もございますから、予防から治療までの、そういうりっぱな青写真をつくっていきたいものと考えております。

倉成正自由民主党

○倉成委員長 次に、田村参考人にお願いいたします。

田村清全国保険医団体連合会副会長

○田村参考人 私は、開業保険医の団体を代表いたしまして、開業保険医の立場から意見を述べさせていただきます。  現在、日本の医療のあらゆる仕組みがうまくいかないということで、常に問題が出されております。その中に、開業医というのはもうけ主義で取り組んでいる、開業医はもうかっているというふうな形で、現在開業医に対するマスコミの攻撃がたいへん強くなっております。一部には作為的に行なわれているんではないかと私どもは考えております。これにつきまして、すでに先生方のお手元に一部ずつ差し上げました、最近私どもがっくり上げました「開業医の生きる道」という小冊子がございますので、いままで三人の先生方がお述べになりましたような問題について現在の開業保険医がどう考えているかということについては、八〇ページばかりのものでございますので、ぜひお目通しをいただいて御参考にしていただきたいと考えます。したがいまして、この中に盛り込みましたことの私どもの考え方、考え方というよりも、日本の医療が明治七年にいまの制度の発足がございまして、大学の付属病院とあとはほとんど開業医まかせでやってまいりました日本の医療が、国も社会も責任をとらずに、開業医に全部しょわせてきたと極言しても言い過ぎではないという状態でやってまいりました医療が、いまの混乱をつくっているもとと私ども考えております。なお、健康保険が実施されるようになりましてから、いろいろ社会的に考えられてきておりますけれども、これも健康保険の制度がはたしてどれだけ国民の健康を維持するのに役に立ったかという点では、私どもたいへんな疑問を持っておりますし、現在でも問題点がたくさんあるわけでございます。  わが国のこの医療制度という入れものの中の問題と、それからその中で実際に患者さんに医療をサービスしておりますいまの医療保険の問題とあるわけでございますが、いま一番問題にされておりますのは、やはり医療費がふえ過ぎたというふうなとらえ方で問題にされているようでございます。しかし、医療費がふえたということ、それが役に立っているのかいないのかというふうな点のほうがはるかに問題であろうと思います。最近十年間に患者が二倍にふえた、医療費は五倍にふえたといわれます数字に並んで、薬のほうが十倍こしたという数字もお忘れなしにお考えいただきたいと思うのでございます。先ほど来、薬の問題を解決しなければということが一つのポイントだという御指摘がございましたけれども、私どももそのとおりに考えます。  それで、私どもが医療費の問題を取り上げますのには、私たちは医療を担当いたします、町や村の最前線の第一線医療をになっている開業医でございますが、その開業医の生活と経営をささえ、またこれから先患者さんにどれだけ中身のいい医療サービスができるかという用意をいたしますもとになるのは、診療報酬でございます。この診療報酬に対して、医療保険制度が始まりましてから今日に至るまで、全部の開業医が常に不満を持ってまいりました。ことに高度成長といわれます現象が日本の社会に起こってまいりましてから、この物価と人件費のたいへんな上昇に置いてきぼりを食いまして、まともに町の中、村の中で大ぜいの患者さんにあたふたと接しております開業医の経営というものは、マスコミが書いているような実情ではないわけでございます。この点もぜひお取り上げていただきたいと思うところでございます。  それで、開業保険医の団体であります私たち全国保険医団体連合会、現在一万三千五百人の会員がおりますが、この全国保険医団体連合会で中心の問題として常に考えておりますのは、健康保険をどういうふうにしたらよくなるか。ところが次次と出てまいります健康保険法の改正案といわれるものは、私たちの立場で考えまして、常に健康保険の改悪でございますので、この悪くされる面に対しては全面的に反対するという立場を続けてまいっております。  もう一つは、先ほど触れました診療報酬をまともなものにしてくれ。最近におきましては、保給料を払い込みます被保険者の方々からもかなりにこの点について理解を受けられるようになりました。私たちの催しに対しまして、先生方の要求を支持するというビラがまかれるようになりました。これは労働組合からまかれるわけでございます。まともな医療が担当できなければ、私たちの存在理由がないわけでございます。しかも、この六万以上になります日本の開業医が現在の日本の医療の六五%を担当しているわけでございますので、開業医というものは悪者だ悪者だというマスコミの表現だけは早くやめてもらいたいというふうに考えている次第でございます。  それで、医療費がふえたということが、いかにも私たちが何かやっているというふうにとられるような報道が行なわれておりますけれども、私たちはこの問題についてどう考えているか。患者さんがふえたということ、これが一つの原因でございましょう。それから、医療の中身について費用がかかるようになった。この二つがかけ合わされて現在の医療費のたいへんな増加を来たしていると考えます。それじゃ患者さんがふえたということはどういうことなのか。十年間に二倍になった。人によっては日本人は一億総半病人という表現をしておられます。私どももそれに近いのではないかというふうに感じとっております。国民の健康が非常に破壊されております。先ほど来お話のございました公害の問題にいたしましても、それを生み出しました急速な都市化、工業化の波で、至るところにいろいろな種類の公害がふえて環境が破壊されております。交通事故もございます。職業病もふえております。労働災害もふえております。その上に現在の人間の住み方からいいまして、たいへんな交通地獄でございます。ちょっと遠距離を通勤いたしますと、一日に五百カロリーを失ってしまうという数字さえも出されておりますが、わずか二千カロリー程度の栄養をとっている日人が、五百カロリーを通勤に費やしてしまってほんとうの仕事ができるのかどうか。それで家へたどり着きますと、現在の住宅状況で人間らしいゆったりとした休養を与えてくれる住まいではないわけでございます。こういうふうなものがからみ合った上に、最近の消費者物価の値上がりで、患者さんたちのとっております食事を見ますとだんだん中身が悪くなっていく。これで病人がふえなかったらふしぎでございます。これは決して私たちの責任でもございませんし、患者さん一人一人の責任でもないと考えます。それと人口の老齢化がございます。老齢化によってまた病気の種類も変わってまいります。それから薬の開発によりまして病気の種類も変わってまいります。先ほどお待ち合わせをしておる間に、先輩の神崎先生からも、昔チフスの患者だらけの部屋に入っていくと高い熱の人がいてむんむんしていたというお話まで出ましたけれども、そういう伝染病というものがほとんどなくなりましたかわりに、なおりにくいいろいろな病気がふえてきております。これらのことが医療費の増加をもたらさないはずはないわけでございます。  その上に、冒頭に小山先生の言われました、三十六年からの皆保険による、医療を受ける機会を全部の国民が持ったということ、これはたいへん喜ばしいことでございます。ところが、皆保険でだれでも何かの被保険者証を持っているということになりますが、それじゃ医療が均てんしているかという点になりますと、非常な問題点がございます。小山先生と御一緒に横浜市の国民健康保険のことをお手伝いをしたことがございますが、その当時つくってもらいました医療統計を見ますと、所得階層別に見まして、国民健康保険の被保険者の受診率が非常に違うわけでございます。最低の所得階層の人たちは、上のほうの人たちの半分ししか受診率を持っておりません。しかも、この方たちが一番多く病気をかかえている人たちでございます。医者ぎらいだから医者のところへ行かないのではなくて、国民健康保険の、見方によりましてはわずかと考えられる三割の負担金のために受信ができない。その方たちは保険料だけは徴収されますから納めております。その方たちの納めた保険料は、どこへ行ったのか。保険料を納めるのには困らないし、負担金を払うのには困らない階層の人たちがこれを使っているわけでございます。まさに社会保障がさか立ちしている形でございます。貧しい方たちのお金を集めて、豊かな人が使うということでございます。このことは、所得の少ない政府管掌の健康保険の人たちにも同じく当てはまることと思います。保険料は天引きで取られているけれども、負担金というものがありますと、医療を受けるチャンスをむざむざ失うという、そういう点で、私どもは、負担金のない、あらゆる医療保険が本人でも家族でも十割の給付が行なわれるようにということをかねがね主張しているものでございます。  負担金には、定額の負担金あるいは定率の負担金とございますけれども、現在の健康保険で初診のときに二百円の負担金というのがございます。これだけについて考えてもたいへんな矛盾したことが起こるわけでございます。被保険者本人が診察を受けた、薬も何にも要らないでほかの先生のところへ紹介状をもらって行くという場合に、その医療費は三百円でございますがその中から私どもは二百円の負担金をいただいております。そうしますと、その方が保険で出してもらったお金は百円だけでございますので、三三%の給付でございます。ところが、本人だから十割給付なんだ、十割給付なんだといって宣伝されております。その人の奥さんが同じ状態だった場合には、五割給付でございますから、百五十円払えばいいわけでございます。それから、定額負担でわずかだからという表現は私はとらないものでございますし、どうしても負担金のない医療を行なっていただきたいと考えるわけでございます。  それで、負担金のことにつきまして、ついでに申し上げますと、お手元に配付さしていただきましたこの一枚のガリ版刷りのものがございますが、先ほど来社会保険審議会その他で問題がありましたときに私どもつくりました表でございますが、これは療疽の患者さんが切開手術を受けまして、そうすると第一日には切開して化膿どめの薬を二日分もらって、今夜痛いからというので頓服を一つもらって帰ります。そのときには初診のときの現行の負担金二百円払えばいいわけでございます。ところが、これに再診時の負担金がつくというふうなことになりますと、二日目には再診料の五十円と処置料、まだじくじくしているからというので四十六円でございます。同じ包帯を巻きかえてもこのときは四十六円もらえることになっている。三日目がそのとおりでございます。そしてこのときには百円以下でございますので、九十六円というものは全部患者さんの負担でございます。そうすると、十割給付の患者さんが、二日目も三日目も四日目も五日目も、最後のもうきょう包帯をかえてこれでよろしゅうございますという日まで全額を保険の本人で払うというのがこの負担金の仕組みになっているので、こんな矛盾はないのだろうということでつくりました資料でございます。それで、結果としては合計六百三十二円の負担をいたしまして、この方の給付を受ける割合は四割だけでございます。十割給付、十割給付という名のもとにこういうことが行なわれていいのかどうかということを御判断いただきたいと思います。なお、この場合に、これが奥さんの場合ですと、被扶養者は五割でございますので、五百三十一円の負担で済むという矛盾した問題が出ているわけです。  それでは、先ほどの医療費のふえた中身のところに戻りまして、診療内容のほうから考えますと、厚生省の統計で見ておりますと、薬がふえたということと検査がその次にふえたという数字が出ております。しかも、薬が医療費の中の四割以上を占めるというので攻撃目標になっておりますが、この薬というのは一体どうしてふえてきたのか。私どもには一つの言い分がありますのでお聞きいただきたいと思います。昭和三十二年から医療費を支払います診療報酬の点数に甲表と乙表というものがございます。甲表というのは幾つかの医療行為をまとめて支払うというしかたでございますが、この中で薬については六十円までの薬は幾ら、六十円以上は薬についてそのままの値段を支払うという仕組みになっておりますので、甲表でやっております病院では、六十円以上の処方を書かなければ病院が困る、経営にマイナスになるという点数表がつくられたわけでございます。現在六%程度の甲表の病院がこれを使っておりますが、これがみな大病院でございますので、これが薬をたくさん使う方向を引き出しましたのと、もう一つは製薬会社のもうけの問題でございます。このようなことについて、私どもはたいへん不満がうっせきしておりますので、最近におきまして総辞退というふうな問題まで出てきているわけでございますが、これはまた御質問のときに述べさしていただきたいと思います。  一応第一回目の意見の陳述を終わります。

倉成正自由民主党

○倉成委員長 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。     ―――――――――――――

倉成正自由民主党

○倉成委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田邊誠君。

田邊誠日本社会党

○田邊委員 四人の参考人の方々からいろいろと御意見を承りまして、たいへんありがとうございました。  時間がございませんから、多くの質問をするわけにまいりませんから、簡単に、私どもの意見は申し上げませんで、質問だけさしていただきますので、端的にお答えをいただきたい、こういうように思っておるわけでございます。  最初に小山参考人にお伺いいたしますが、現在の医療保険制度がいろいろな面で矛盾があることはわれわれも承知をいたしておるわけであります。それが医療制度全体とからみ合っているという御意見も、私はそのとおりだろうと思うのです。これを解決するためには、まず医療保険制度の中身についてメスを入れることが要ると思いますけれども、小山さんがおっしゃいました中に、現在の医療保険制度が非常に分立をしておるというお話がございました。このことがいろいろな面で障害になっておるというお話でございますが、われわれもこの分立した医療保険制度について、これが将来のあり方を考えなければならぬと思っておるわけでありますけれども、小山先生は、この分立した医療保険制度というものをどういうふうなぐあいに整理統合といいましょうか、あるいはあり方としてはどういうものが適当であるとお考えでございましょうか。  第二番目には、医療費が非常に増大をしておる。その中でつい最近の傾向としては、確かに医者にかかることも非常に多くなってきましたけれども、ここ四十二年から四十五年ぐらいの傾向を見ますると、受診率なりあるいは一件当たりの日数なりというものは横ばいであって、一件当たりの金額、まあ一日当たりの金額と申しましょうか、これが四十二年から四十五年にかけますと、入院ないしは通院、大体二割五分から三割ぐらい増高しているという傾向でありまして、すなわち診療報酬いわば非常に支出がかさんでおる、こういう形であります。いま私は医療保険の分立の問題とあわせて考えたのですけれども、いわばこれと相互関連をして考えたときに、これのいわば増高に対する対策というものは、保険主義をとっておる日本において一体どうあるべきか。その度合いは別ですけれども、いわば国民なり、あるいは患者なりというものの負担と、あるいはまた国の負担なり地方自治体の負担と、それからまた診療に携わる人たちの、それに対するところの責任というもの、こういうものがあると思うのでありまするけれども、これに対して一体どういうふうなお考え方を基本に置いて、われわれはこれから先のこの問題に対処すべきであろうかということを、基本についてだけちょっとお伺いしたいと思うのでございます。  それから次に高橋参考人にお伺いをしまするけれども、われわれは医療保険制度の矛盾を解決する前提としては、現在の診療報酬体系のいろいろな誤りというか、あるいは矛盾というものをまず取り出して、これが解明をしなければならぬと思います。その中で高橋先生が特に強調された薬の問題については、薬のいわゆる薬効等についての御意見は別の機会に承りたいと私は思いますので、きょうは省きますから、その点に対する御答弁はいただかなくてもけっこうでございまするけれども、先生は最終的には薬は無料にすべきであるという、こういう御意見を吐かれましたが、現状の中で、いわゆる保険システムをとっている中で、薬の問題は直ちにそこに手をつけることがなかなか困難な要素はたくさんあります。まずとりあえずはやはり、大衆保健薬を含めて薬の値段を引き下げる。もちろんこれは要らない薬やあるいは有害の薬をそのまま放置しておくということではございませんけれども、いずれにいたしましても薬の値段を引き下げる。このために原価公表は必要であり、あるいは再販制度を改革しなければならぬ。あるいはまた最近いわれておるところの現品添加の禁止というものを厳格に実行しなければならない。あるいはまた供給機構というものを、いわゆる公的にわれわれは整備確立をしなければならない。そういう上に立って実勢価格に見合った薬剤というものを、われわれはこれを国民に対しても、あるいはまた医者向けに対しても、しっかりと確立しなければならない、こういうように思っておるわけでありまするけれども、この薬価の引き下げというものは、いろいろな合理化も必要でありまするけれども、毎年いろいろ問題になって、三%なりというものの薬価の引き下げの問題が出ているのですが、いま私がざっと申し上げたようなことを含めて、一体どのくらい薬の値段というものは下げられる、こういうようにお考えでございましょうか。  それから第二番目には、医療保険の抜本改正という問題が種々いわれるわけでありますけれども、これはひとつ小山先生にもお伺いしたいのでありますけれども、私はこれはただ単に診療報酬体系なり、あるいは保険料なり国庫負担なりというだけの問題ではないと思うのです。言うなればこれは小山先生のおっしゃった医療機関の適正配置の問題なり医療担当者の育成、養成の問題なり、あるいは予防医学の問題なり、そういういろいろな問題が含まれてくると私は思うのでありますけれども、まず一体順序立てからいいますなら、何から手をつけるべきであるとお考えですか。これは非常にむずかしいから、端的なお答えは非常にむずかしいわけでありますけれども、ひとつ今後のわれわれの国会におけるいろいろな審議等の参考にしていく意味で、お答えをいただけますならば、簡単でけっこうでございますからお答えをいただきたいと思います。  それから神崎参考人と田村参考人にお伺いいたしますけれども、いまお話のありましたとおり、また、われわれ自身も考えておりますとおり、診療報酬体系のこの矛盾を解決しなければならぬ。そのためには何といっても一つには技術料中心の、技術料に重点を置いたところに方向を見出さなければならない。あるいはまた予防からリハビリまで至るところの、いわば新しい医療法の方向というものに対しても、われわれはこれを考えていかなければならない、こういうふうにいわれておるわけでありますけれども、このことを突き詰めてまいりますと、田村参考人が甲表、乙表のことも言われましたが、点数システム自身についてわれわれは再検討をすべきではないかと思っておるわけでありますが、いまのお話を受けて現在の診療報酬体系における点数制というものに対して、これをただ単に手直しという形でいけばいいのかどうか、この点に対してひとつお教えをいただきたいと思うのであります。  それから神崎参考人は特に病院協会の会長さんでございまして、いま病院が特に赤字でございます。それは入院料の問題も含めてお話がありましたが、したがってひとつこの点数制のいろいろな改正なり改革なりというものの中で、開業医と病院の現在の状態というものを、これをひとつ解消するためには一体どういう方法をとるべきかということを、病院の側からひとつお考えがあればお教えいただきたい。  それから田村参考人に最後に二つお伺いしたいのは、一つはいま保険医総辞退という問題が起こっております。この直接の原因は今度の健康保険法の問題もありますけれども、一つには診療メモといわれる、いわば中医協におけるところのこの問題が出ておるわけであります。この診療メモは確かに中身についていろいろ問題があります。しかしまた一面において、今後の医療保険制度の改革のために一つの手がかりになるものも実はその中に含まれておるのではないかと私は思うのであります。ですからこの中でどうしても保険医総辞退をしなければならない原因としての、一体この診療メモの要素というのはどれなのか。これは実は国民にはわかっておるようでなかなかわからないのでありまして、したがって、ひとつお教えをいただきたいと思う。  それから最後に、実はお医者さんはもうかっておるというけれども、カミカゼ診療、たいへんな労働をしている中で正常な診療ができるはずはないと私は思う。したがってそういう意味合いで、われわれは安かろう悪かろうの医療を欲しておるわけではございません。しかしそうはいっても、開業医が実はかなりの所得を持っているということは一般的にいわれておるのであります。いま申し上げたように技術料の再評価等も含めて見ますならば、さらに正常な医療ができ、医療担当者、特にお医者さんの正常な生活が保障できる。たとえば予防等においても、これが予防医学を開業医がすることによって、決して生活の存立が脅かされることはない、そういう方法を見出すべきであると思いますけれども、それにしてもやはり現在の保険主義の中で、どうもやはり水増し、濃厚、不正請求、こういったものが医者にあるのじゃないかという国民の疑惑が解けないと私は思うのです。そのことは大部分の良心的な医師にとっては耐えられない一つの批判ではないかと私は思うのですけれども、しかしなおかつ国民の側からすれば、やはりそういったことに対する危惧があるのですね。群馬県の私の住んでいる郷里ですが、戦前に、百人以上医者がおるというと何人か夜逃げをしなければならなかったという。いまはそれの五倍くらいの医者がおるけれども、共存共栄しておる。これは保険のおかげだ。そこに濃厚、いわゆる水増し、不正請求があるのではないか、こういう国民の心配があるわけです。この不正請求についてはやはりこれを明らかにすることが、大部分の医師の倫理感というものを国民にしっかり植えつけるという意味から必要ではないかと私は思う。これに対して一体医療担当者側はどういう御意見とどういうようなことをいわば医療行政、厚生行政の中で求めていらっしゃるのか。それに対してはまさかほおかむりをされるというようなことはないと思いますけれども、これに対して端的にお答えいただくことが、国民に対して医療担当者に対する信頼をさらに増すゆえんではないか、私はこういうように思うので、たいへん申しわけない質問ですけれども、最後にこのこともつけ加えてお答えいただきたい。いずれにいたしましてもあまり時間がございませんから、ひとつ簡明でけっこうでございますので、それぞれお答えいただきたいと思います。

倉成正自由民主党

○倉成委員長 参考人に順次お答えいただきたいと思います。小山参考人。

小山路男横浜市立大学教授

○小山参考人 お答えいたします。  医療保険の分立につきましてどうおまえは考えるか。筋から申しますと、国民皆保険でございますから一本の制度でやるのがこれは当然だ、こういう議論が根強くございます。いわゆる統合論というものでございます。しかしながら、実際問題といたしまして、過去の制度がそれぞれそのときの事情によってできてきた、しかもかなり強い利害関係をそれぞれの保険集団が持っている、こういうことになりますと、統合すべきだという理屈は、理屈としてわかっても現実にはできない、それが現状でございます。それならば財政能力に余裕のある集団から、余裕がないというか財政能力の低い保険集団へ財源を分配したらどうだ、いわゆる財政調整案というようなものも出されたわけでありますけれども、これすらも事業主と被保険者の猛烈な反対でどうにもならぬ。つまり集団間のそういう個人主義的な、あえて個人主義と言いますけれども、個人主義的な利害主張を繰り返す限りは、医療保険の分立はどうにもならぬであろう。ただ、今後の問題といたしましては、やはりわれわれとして共通に見ていかなければならぬ分野がございます。たとえば冒頭に申しましたように、老人についても児童についても公費負担医療をする。あるいはその間老人医療の確保について保険の側からも協力する。これはあたりまえであります。そういうときに、保険者集団で相互に協力をするというようなかっこうで地ならしがあるいはできるかもしれない。ただ、現在のような雰囲気の中では、言ってみるだけのことでなかなか実現は困難だ、私は非常に悲観的であります。ただし筋としては、私が先ほど申しましたように一本でいくべきが当然であります。これが第一点のお答えであります。  次に、医療費の増大傾向は、おっしゃいましたとおり一件当たりの単価が上がっているわけでございます。これにつきましては、医療内容が高度化したということ、それから疾病構造が変わったということもございます。そういうこともありますが、それと検査等がふえたとかいろいろな事情がございます。しかし、この場合に増加対策としておまえは何を考えるかと言われましても、かかる医療費はどうやってもかかるんだというふうに覚悟をきめるのか、値切っていくのかという、そこが肝心のところだろうと思います。やはり私は、医師に対する正当な診療費は当然払うべきだし、そのためにはみんなが負担すべきだ。そういう点から申しますと、やはり費用負担のあり方が問題でございます。医療について申しますと、それは医療サイドでもって改善してもらうよりしようがない。そこで費用負担ということになりますと、やはり一つは国が政府管掌健保についてもっと格段の努力をしてもらう、これは当然であります。また、所得の高い者が高い保険料を負担するのはこれも当然であります。その費用負担のあり方について国民的な合意が成立する――していないのが現状なんでありますけれども、しかし私は、どんなことをしてもかかる費用はかかるんだ、こう考えますと、費用負担のあり方についても、やはりそれはそれなりにお互いに討論して考えるべきものであろうと思います。  それから、たとえば一部負担等につきましてかなり強い反対があるのですけれども、しかし一部負担をかけることで受診が抑制されるだろう、こういう意見がありますが、それならば野放しに受診量を増大させて、現在のただでさえ繁忙をきわめている医療機関に今後患者を殺到させてもいいか、こういうことになりますと、費用負担ばかりではなくて、問題は医療の荒廃を招くであろう。ですから、受診をコントロールするという意味ではある程度の一部負担があっても当然だ、私はこういうふうに考えております。  それから、診療報酬体系の欠点等につきましては、これはほかにお答えがあると思いますので、省略させていただきます。

高橋晄正東京大学講師

○高橋参考人 先ほど薬の乱用と、それから薬の費用が医療費の中の相当高額を占めてきておるということに関連いたしまして、どこまで薬の価格は下げられるかという御質問が最初にございましたが、これは私の専門外でございまして、むしろ薬学関係の方とか製薬関係の方が国と一緒になって調べられれば、どこまで下げられてどのくらいが適正値かということが出てくるだろうと思いますが、聞いておるところによりますと、たとえばアリナミンのような薬、一万円のアリナミンの実際の値段は、私のところなら五百円でつくれるというさる製薬業者がございましたので、そのぐらいの開きはあるだろうと思います。ただし、これは広告料その他に――日本の製薬会社は一兆円の生産に対して四百億円の広告費を払っております。研究費のほうは百五十億しか払ってないという状況でございますので、その広告費をどこまで許すのかというようなことに関係してくると思いますが、ただ薬の値段は幾ら下げてもだめだ。医師の処方権の中で、われわれ二十でも三十でも処方を書くことができます。それをたとえ厚生大臣といえどもとめることはできない。医師免許証を持ってしまいましたら、絶対これはだれからも干渉を受けませんものですから、幾ら値段を下げてもだめですね。安くすればするほどよけい使って、われわれは薬ヘドロ公害を受けるということで、値段を下げることはあまり重要な問題じゃないのじゃないかと私は思います。必要なだけは幾らでも取るということが医師の場合は可能であるという点です。  それから第二には、医療保険の抜本改正その他の問題に対しまして何から手をつけるべきかということでございますが、これは何をおそれるかによって違ってまいります。第一が身体障害をおそれるのか、われわれの日本民族の中に薬ヘドロがたまって、あるいは切られっぱなしの人が多くなって身体障害が起こることをおそれるならば、医療を外国並みに最小限に押える、医療手段の行使を最小限に押えられるようなことを第一にしなければならぬ。私はそれが一番大事じゃないかと思います。金のほうは二の次でございまして、経済的破綻はやむを得ないけれども、人間破壊のほうは非常に困るというふうに考えますので、私としては医療の科学性を世界的規模で調査いたしまして、日本の医者のかってな判断でやらせない。たとえば、これも群馬県のある医師会に私が参りましたときに調査の話を聞きましたが、いまかぜひきでペニシリン、ストレプトマイシンを使うお医者さんが八〇%おるし、それから、ある革新医師集団がつくりました臨床医の治療学なんという本の中にも、そういったことを当然のことのように書いておりますけれども、これはとんでもない間違いでございまして、アメリカの医学の本には、かぜには抗生物質は使ってならないということを書いてございますし、かぜにはきく薬がない。それにもかかわらず、現在かぜに対して薬を注射し抗生物質を投与しない医者というのはむしろまれなくらいに日本の医療は狂ってきておる。そういうことがございますので、非科学的な、科学的妥当性を持たない医療を排除するということが緊急の課題であるというふうに私は考えます。しかしながら、それもいまの医療保険制度を前提としてお考えになるということであれば、これはとめようがない、必ず破局まで進行せざるを得ないと思いますので、医療保険制度を前提としてという前提がなぜなければならないのかというのが非常にふしぎに思っておりまして、医療を考えます場合には、国民が正しい医療を正しく受けられるということを前提に考えなければなりませんので、そうなってまいりますと、何から手をつけるべきかといいますと、どうしても先ほど申し上げましたようなところから全面的に手をつけなければならないということになるのじゃないかと思います。

神崎三益日本病院協会会長

○神崎参考人 点数単価の再検討という御質問でしたが、これはわれわれ病院関係ではいろいろなやり方をやっております。それは、第一は原価補償主義というので、部門別の原価を計算しまして、最近、公私病院連盟が要求しておりますのは、医療費としては二一%全体として上げてもらいたい、その中で先ほど私が強く言いました入院料を八一%上げてくれ、こういうこと。これは原価補償主義から出ておるものでございます。しかし、それは入院料だけの問題でございませんで、御承知か存じませんが、胃ガンで胃を切るという大きな手術、これは一万八千円でございます。ところが、私がここに着てる洋服、あまりいい洋服ではございませんが、これは生地は別で仕立て代は二万五千円。これを着る主人公の命がけの手術、どれだけの人間がそこに要るか、これがたった一万八千円。こういう不当な値段がきめてある。こういうものは即刻改めるべきでありますが、また一つこういう考え方もございます。  保険の項ですけれども、収入面のふえるのを、われわれは支払いを受けてるんだ――記録を見ますと、一生懸命に値上げ値上げとやりましても、大体結果を見ると、保険料の収入が上がる率と医療費が上がった率がほぼ同じなんですね。だから私は、医者というやつは気のいいやつだ、えらいはち巻きしたようにしてがんばってるけれども、ふえたものしかくれていないじゃないか。こういうことで、それは一面は患者さんが室料差額というようなことで直接痛むふところから出していらっしゃるので、それがどうやら崩壊を防いでいるんだろうと思うのです。でございますから、もう点数概算払いで、スライドにして、そしてことし入院一件が五万円だったら、来年は七万円もらおう、こういう言い方もございます、確定的なものではございませんが……。  それから、病院と開業医の問題これはしばしば言われることでございますが、われわれも一日に千人も押しかけられて廊下が歩けなくなるというようなのは胸が痛むわけです。どうかそういう方はその地域の開業の先生のところに行っていただきたいと思う。三時間待って三分なんということは耐えられないのです。しかし、見てみますと、外来へいらっしゃる患者さんでお医者さんの紹介状、名刺を持っていらっしゃる人はもうほんの数%にすぎないのですね。われわれは、積極的に自分の病院のフェローの開業医さんをつくって、そしてスムーズに必要なものだけを見させていただくというようにしたいとすら考えております。しかし、たくさんの病院の中には、入院料も安い、手術料も安い、外来で少々かせがなければならぬというものがないとは私断言できない。かようなことで、連絡には十分考えております。

田村清全国保険医団体連合会副会長

○田村参考人 田邊先生から御質問のありました最初の点は、中医協の審議メモといわれるものに対して保険医は総辞退をするんだという取り組みをしておるように見えるが、その審議メモについてどう考えるかというふうなことでございますが、私どもは医師会から指令が出まして、それぞれ都道府県の医師会の決議機関でそれぞれ別個に総辞退をするかしないかということを十分論議しました上で、都道府県なりに辞退の理由を決議しております。日本医師会から刷りものとして出ましたものには五つの辞退の理由が載っておりますが、きわめて抽象的な表現でございます。その中身を整理いたしますと、いまの健康保険の改正案というものは医療保障の後退であるから、これに全面的に反対するということと、診療報酬問題について出されました中央医療協議会の審議メモははなはだしく不当なものだから、これに反対する、その審議メモそのものの考え方ということについて、日本医師会で徹底的な会員PRをやっておりますけれども、結果としては、政府管掌健康保険の赤字を被保険者と医師にかぶせるということ、それから従来いつも診療報酬を考える場合に、先ほど来きわめて弱いといわれております政府管掌の健康保険の財政に見合った形で診療報酬がきめられているので、低いところに押えつけられ通しだという不満、これが根本でございまして、そのほかに高度成長に取り残されました診療報酬のスタイル、物価と人件費がどんどん上がりましても、これに一対して対応できない診療報酬、それを何とかしろ、これが三つの点でございます。それに都道府県によりましては、昨年行なわれました薬剤の添付禁示によって経営上大きな打撃を受けている。この面は薬剤の添付禁止という措置がとられた事実から考えまして、それに対応する私たちの経営を保障するだけの診療報酬の緊急是正をしろという要求を出しております。  私ども開業保険医の団体としましては、日本医師会から出ました抽象的な総辞退の理由ということでなしに、自分たちのかねがね要求しております要求項目を掲げまして、これだから総辞退をするのだという理由をつけております。そのもとになりますのは、ごく近いところでございますと、昨年十二月に大阪で開かれました――近畿の幾つかの医師会の会員が一緒になりまして、これは保険医協会が中心になりましたけれども、地元の郡市の医師会が幾つか参加いたしましたし、またそれぞれの専門分野の医会が参加いたしまして行ないました医療危機突破近畿医師大会で出されました決議、自分たちはこの要求をするのだ、これがどうしても実現しない場合には、最終的には自今たちの最後の武器であります総辞退という方法によらざるを得ないという決議をしてございます。これは新聞等に発表になっております。これが全国的に影響を及ぼしまして、日本医師会でも今度のような措置をとられたものと考えますし、また中医協の審議メモだけが目のかたき、あるいは健康保険の今度の改正の中の改悪部分に対する反対ということではないわけでございまして、受けとられ方は都道府県によってみんな少しずつ違います。  それで、その七つの項目と申しますのは、「健康保険法の改悪を全面的に阻止すること」、二番目に  「診療報酬単価五割引上げを今年一月に遡って実現すること」、「毎年四月に物価人件費の上昇に見合って単価を引上げること」、「各科の不当に低い健康保険点数を即時改定すること」、「社会保険破扶養者の給付率を七割とすること」、「政府管掌健保の国庫負担を定率二〇%以上とすること」、末尾に「健保の赤字を医師と患者に負担させる方式「審議用メモ」に反対すること」、これが保険医団体の現在持っております考え方でございます。  なお、後段にございました、正常な診療をおまえたち担当していないではないかと受けとられます田邊先生の御指摘でございますが、私ども保険医団体といたしましては、それぞれの保険医協会が毎月診療内容向上の研究会というものを持っております。そして、そのテキストを会員に配付したり、そのほかに各科別の勉強の会をしておりますが、何のためにしておるかということは、いまのままでは自分たちの医療のレベルを維持することができないということ、新しく開発されました検査方法あるいは治療についての考え方等を、毎月毎月そういう形で保険の上で実際に患者さんに適用したらどういうことになるか。現在いろんな締めつけ方法がございます。その審査委員会で問題にするのはこういうふうな点だけれども、これはどうしてでも認めてもらわなければならないというふうな研究会を、毎月各地の保険医協会でやっているわけでございます。その中には、こうやれば水増しができるとか、ここのところにこうやって置きかえて請求しろとかいうものは一つもないわけでございます。そういう勉強の結果として出てきました豊かな診療内容で点数がふえるという問題については、これは高橋先生も御指摘のように、医師の持っております良心に基づいての活動を制限するものは何もあり得ない。ただ制限することのできるのは、現在の審査委員会の査定ということだけであろうと思うのです。  ただ、それではその内容がそのままで、学問的に世界じゅうに通用する正しいものかどうかという点になりましては、私ども大きく疑問を持たざるを得ないと思います。これは現在の大学の研究と教育、そこから直さなければ、ほんとうに科学的にどのような検討にも耐えることのできる水準のある医療というふうにはいえないと思うのです。  前に私、参議院の委員会で卒後研修の問題についての参考人として意見を述べさせていただいたことがございますけれども、ある国立病院の請求明細書を審査いたしましたところ、そこの小児科の外来の八割五分の患者さんに対してアクロマイシン・シロップが使われている。これは国立病院でございます。しかもそのときに、審査委員長は国立病院の院長がなっておられましたので、委員長のところへ参りまして、かねがね先生のお話とこの内容とは大きく食い違っていますので、このままでは私審査ができませんと申し上げました。委員長は、明日小児科の医長を呼んで注意しておくという返事だけで、その現実の問題をどうしろという御意見はございませんでしたけれども、そういう事実が日本じゅうにたくさんあるということを高橋先生は強くおっしゃっておるわけでございます。なぜ外来の子供さんの八割にアクロマイシン・シロップが使われなければならぬのか。私どもがこれをやりますと、審査委員会では呼び出しをしまして、あなたの診療は傾向的であるという注意を受けますし、その中からこれとこれは削りますというような取り扱いを受けます。しかし、これが国立病院ともなりますと、これをチェックする審査委員というのはいないわけです。たまたま私のような、へその位置が少し横向いたのがおりましてそういう取り組みをしたわけでございますが、これが日本の医療の現状でございますのでそれを直すのには、その先生方が育ってきました大学の中での育てられ方、それから卒後研修の正しい姿というものが打ち出されない限り、いまのような状態はおそらく続くのではないだろうか。これで先生にお答えになるかどうか知りませんが、もし御不満でございましたら、重ねておしかりを受けたいと思います。

田邊誠日本社会党

○田邊委員 ありがとうございました。

倉成正自由民主党

○倉成委員長 後藤俊男君。

後藤俊男日本社会党

○後藤委員 最初に小山参考人にお願いいたします。  先ほど貴重な御意見を聞かしていただいたわけですが、その中のお話としまして、医療制度が確立しておらないところへ七つの保険が積み重ねられた、それによっていろいろな矛盾と申しましょうか、いろいろな問題が起きておる。これは私も全く同感で、そのとおりだと思うわけでございます。先ほどのお話は、組合管掌とそれから政府管掌の比較をされましていろいろとお話しになったわけでございます。それで、いたずらに今日の保険制度をなぶるよりかは、根本的に医療制度をまず改正すべきである、これが第一番の問題ではないかということを主張されたのだというふうに私は理解したわけでございますけれども、まあこの点につきまして、もし間違っておればあとから御訂正をいただきたいと思います。  それからその次には、高橋参考人にお尋ねするわけでございますけれども、いま田邊委員のほうからちょうど私が思っておることをお尋ねになりまして、初めから最後までまことに筋のよく通ったりっぱな御意見だと思うわけでございますけれども、はたしてこういう事態に何から手をつけるのがいいのだろうかというふうな気持ちに私もなったわけでございます。私も、参考人がおっしゃいましたようなことを今後十分考えながらひとつ検討をさしていただく、こういうことで御了承をいただきたいと思うわけでございます。  それからその次には神崎参考人でございますが、イギリス方式であるとか、あるいは組合方式のほうがよろしいとか、いろいろな御意見を聞かしていただきまして、その中で最終的に、日赤病院でございますが、ほとんどが赤字である、こういうお話を承りました。ところが、一般の開業医につきましてはどういうふうな経営内容になっておるのであろうか。これは一つの参考になるかもわかりませんけれども、昭和二十九年度には医療関係のお医者さんで高額所得者といわれるのが二千百二十人おられました。それが昭和四十三年になりますと一万三千二百八十二人に増加をいたしておる。これもやはりある医療関係の先生が発表された文章の中の一部でございますけれども、そうなってまいりますと、日赤等の病院の経営につきましてはほとんどが赤字である。先ほどの話で六十何%が赤字で非常に苦労しておる。一方におきましては、いま申し上げましたように高額所得者が非常にたくさんおいでになる。同じ医療に関係しておられる病院には変わりはないと思うわけでございますが、どういうところにこういうような差がつくというとおかしゅうございますけれども、違いがあるのだろうかという点を、簡潔でけっこうでございますからお答えいただきたいと思います。  それから最後に、田村参考人でございますけれども、いろいろとお話を聞かしていただきまして、その中で先ほど田邊委員もちょっと触れたと思うわけでございますが、不良請求の問題です。これは昭和四十四年度につきまして約一億四千万近い不良請求があった、その中には不良といわれるものもあれば、不正といわれるものもあれば、不当といわれるものもあるだろう。これはいろいろ中身は分析しなければわからないわけでございますが、いずれにしても架空の請求とか、いろいろな請求が合計一億四千万あった。そこで厚生省としましては、現在のところ昭和三十五年の日本医師会、歯科医師会との協定を少し強化をして、不正と思われる場合には必要があれば監査をする。この程度のことで通達としてはなっておるわけでございます。さらに、日本医師会なり、歯科医師会としましても、ほとんどのお医者さんがりっぱなお医者さんである。その中で、武見会長に言わしますと、〇・〇五%くらいそういう間違ったお医者さんもおるのだ、こういうような話もしておられますし、さらに日本医師会なり、歯科医師会としましても、これは非常に正しくないことであるから、お互いにひとつ自粛して間違ったことをやらないようにしよう、万一やった場合には除名をしますよと、こういうふうな態度に出ておられることも、私十分承知をしておるわけでございますけれども、現状のままで、いま申し上げましたような対策と申しましょうか、考え方でこれから進んでいったといたしますると、はたしてこういう不良請求、これらがきれいになくなるだろうか、そこがやはり一つの問題点であろうと思うわけです。私もこの問題をいろいろと突き詰めて考えてみますると、最終的にはお医者さんのモラルの問題になってしまうのじゃないかというふうなことも私としては痛感いたしておるわけでございまするけれども、この点、田村さんは日本医師会の代議員でもあろうと思いますし、会員でもあろうと存じますので、感じられたままを率直にひとつお答えいただきたいと思いますし、さらに、私がいま申し上げました問題に対しまして一つつけ加えますと、全く間違った、不正請求をされたお医者さんに対しましては厳罰主義で臨む、指導監査云々ということではなしに、非常にりっぱなお医者さんのためにも、厳罰主義で臨むべきではないか。そうすることが、将来の問題といたしまして一番いい解決の方途ではないかというふうにも感じておるわけでございますけれども、この点につきましてもひとつお答えをいただきたいと思います。  それから、最後にもう一つ田村さんにお尋ねいたしたいのは、これは感想でけっこうでございますけれども、この前実は大阪の刑務所へ私はあの大学の不正入試の問題で調査に参りました。ところが、二十何名おいでになるわけでございますけれども、その中で九五%ですか、ほとんど医科系の生徒さんであるという実情を私は見てきたわけでございます。なぜ一体こういうふうなことになるのだろうか。何が一体原因なんだろうかということも、それぞれ考え方があろうと思いますけれども、直接医療関係の中でやっておいでになり、さらに連合会の副会長もおやりになっておる、こういうふうな立場から、いま申し上げました問題につきましてもお考えがあればひとつお答えをいただきたい。  以上でございます。

小山路男横浜市立大学教授

○小山参考人 お答えいたします。  私は医療制度を根本的に改革するべきであるということを考えてはおりますけれども、しかしこれは、保険をいじらないで医療をいじることはできない。やはり保険の改善と同時に医療のほうも改善していく、両面相まつべきものであろう、それが一つ。  それからもう一つ、医療制度の改革をするにいたしましても、それは診療担当者である医師たちの同意するものでなければならない。この辺の同意が得られないと、幾ら理想的なことを言っても絵にかいたもちになるだろう。その辺がまことに心もとないのであります。そこで、できる範囲の改革といえば、やはり健康管理体制とか、外側で徐々に改革していくよりしかたがない。あまり景気のいい話ができなくて申しわけないのですが、お答えといたします。

高橋晄正東京大学講師

○高橋参考人 私は、先ほどのお話によりまして、今後ずっと私が申し上げましたような医療改革と申しますか、ほとんど医療革命に近いような路線でいろいろ御検討くださるということ、たいへん心強く存じる次第でございますが、これはいま小山参考人からお話しがございましたけれども、医療制度の改革は、医師集団の同意を得るだけでいいのかということが問題でございますね。私は一億の国民の同意を得なければいけないのであって、五万人の営業的医師の同意が優先するかどうか、はなはだ疑問に思うわけでございますので、むしろこれはかつての、明治のことにさかのぼりますというと、板垣退助その他の人たちが立憲制度をつくれということで、大国民運動をやったわけですけれども、これに近いくらいの大きな国民運動をやって、一億の国民の要求として医療制度をわれわれはこういう形で持ちたいというふうにいかなければいけないのじゃないか。私自身はそう考えて、その方向の市民運動というものをこれから展開していきたいと思っております。もちろん、直接政治を担当していらっしゃる皆さまは、それとはまた別な観点もございましょうと思いますけれども、私たちは市民運動の形で医療を市民あるいは国民の手にという形の運動をこれから展開していきたいというふうに考えております。

神崎三益日本病院協会会長

○神崎参考人 日赤と公的病院は困っておるという話だが、開業医さんのほうはということですが、よそさまのふところぐあいは私存じませんが、しかし、先ほど申し上げましたように、原価補償方式でやれば、全体を二一%上げる中において入院料は八一%上げなければならないということを申し上げた。その裏を返せば、入院によってたくさんの赤字を生じている。それから卑近なたとえで、仕立て屋が一人か半人でできる洋服の仕立て代にも及ばないようなものを、何人となく、医者、看護婦がかかってやっておる胃切除術が一万八千円で据え置かれている。そういう行為をやり、入院をたくさん扱うところがだんだん赤字がふえる、これは当然なことだと思っております。

田村清全国保険医団体連合会副会長

○田村参考人 後藤先生から不正請求と不正入試という二つの不正のついた御質問をいただいたわけですが、それというのは、日本の国民が日本の医師に対して、こうあってほしいという願望は非常に強いけれども、現実にこういうものがあるということで問題にされていることと思います。数字の上で見ますと、先ほどあげられましたように、〇・〇五%とごくわずかだということになるわけでございますが、不正はあくまで不正でございます。私ども自分の協会の会員の保険医を指導いたしますときに、現在の医療保険の仕組みにはあらゆる面で不満足な点があるし、腹の立つところばかりだが、個人的な解決は決してしなさんなという指導をしております。この不正請求というのは、お金がもっとほしい、病院の経営なりあるいは自分の生活のためなり、ほしいけれども、いまの支払われる診療報酬ではその先生は足りないと考える場合、個人的にほかのものにしたり、あるいはふやしたりという問題が起こってくるわけでございます。それと本人が医療保険のいろいろな仕組みに習熟していないために不用意におかす間違いも間違いでございます。その点は、監査なり指導なりをされます立場からは、全部一緒にどのような動機でという、あるいはそのもとはどこにあるかというふうなことは追及されないまま、私どもお白州裁判といっておりますが、現在の監査の場合の状態というのは、非常に人権を無視されたような形で取り扱われておりますので、いろいろ実情から離れた報道やら取り扱いを受けているのもまた事実でございます。その場に何度か立ち会ったこともございます。  一つの例をあげますと、ある先生が呼び出しを受けて指導を受けました。あなたのは往診が多過ぎる。ところが、その地域の方々の往診の需要が多ければ――往診というのは行って見なければ、その往診が必要であるかどうかはわからないことですが、ただ非常に気の小さいその先生は、往診ではいけないのだということ、しかしそれだけ働いたものに対する報酬はほしいというので、個人的な解決をいたしまして、これを薬のほうに振り向けた。御当人にしてみれば、自分のもらう金額に変わりがないのだから、罪の意識はないわけでございます。しかも、あなたのは往診が多過ぎるという指摘を受けたので、往診の回数を減らしてそっちに振りかえた。しかし、これは法の上からいいますと、同じく不正でございます。  それから、ごく貧しい人たちの多い僻地にたった一軒あります先生のところで起こりましたケースは、請求明細書を奥さんがいつも書いていて、先生は仕上がったものを丁寧に目を通すということなしに出しておりました。奥さんに村の人が泣きついてきて、私がかかったのは半額払えないから何とかしてもらえないか。ほんとうに払えないなら生活保護法の手続なり何なりすればよろしいのでしょうけれども、健康保険法の仕組みに習熟していない奥さんは、それをその人のだんなさんの名前で、私どもの技術で申しますと、赤い請求明細書で書くべきものを黒い請求明細書で、だんなさん本人の請求書にして出しました。これが指摘を受けまして、これは振りかえ請求でございますので、処分を受けました。その方が処分を受けたときに、御同席の小山先生が神奈川県の地方虜療協議会の公益代表の委員をしておられますので、そういう僻地でその医療機関を保険からはずしたときにどういうことが起こるかという御指摘が賜りました。そのような地域でございますが、その先生の場合には、これは明らかに間違いでございます。しかし、先生御自身にしてみれば、入ってくるお金は全然同じなんだから、うちの女房のやったことはそんなたいへんな間違いだとは受け取れなかったわけでございます。あとから、処分を受けて話を聞いて、なるほど間違いをやったのだとわかったようなものでございます。そういう事例も、監査指導等で問題になります中にはたくさん含まれております。  もちろん、悪意に満ちた、私どもどうにもならない、この人が私たちの同業者であってくれてはというふうな方もたまにはございます。そういう方は、先ごろの医師会の発表やら、当局の発表のない前でも、地元の医師会から除名を受けたというふうなケースもございます。しかし、前の経験から申しますと、そういう方たちにも何らかの理由があったのではないだろうか。その理由のあったところを直さずに、この人が二年たったらまた再指定を受けるということでは、同じ間違いを起こすのではないだろうかという心配もございます。私どもの団体としましては、新規開業の方に、あるいは中途に、保険医療の仕組みについて説明をいたしますときに必ず念を押しているのは、個人的な解決はしないように、絶対してはならない、問題があったら正々堂々と支払基金なり保険課なりに抗議を申し込むなり意見を出すなりすべきであって、向こうから押えられたからその分を別に振りかえて請求するというふうなことは、自分の身をあやまつだけでなしに、日本じゅうの保険医の信用にかかわる問題だからという指導をしているわけでございます。その問題については、その程度で御了承いただけるかと思います。  それから、不正入試の問題でございますが、これは日本の医学教育が医師養成に対していまのような仕組みになっている限り、別な形でまた起こってくる可能性はあろうと思います。残念でございますけれども、別な形でいろいろ起こってくる可能性はあろうと思います。昔からインチキ入学とか、私どもが学校教育を受けますころにも、寄付金を積んで入学したという友達を何人か知っております。クラスメートにそういう者がおりまして、勇ましいのは、落第点をもらったというので教授会にどなり込んで、おれと兄貴で、その当時の金で五万円でございますね、昭和の初めのときに五万円といいますと、いまどのくらいになりますか、兄弟で五万円学校へ寄付して入学したのに、おれに落第点をつけるのはどのやろうだと言って教授をにらみつけたという勇ましいのがおりました。彼は幸か不幸かその後進級できませんで、医師にならずに終わってしまいましたけれども、これはいまに始まった問題ではありませんで、現在伝えられているところによりますと、私立大学医学部の寄付金を、入学の際に一千万円あるいはどこそこでは二千万円とられたというふうな話を耳にしますところから見ますと、決してないことではないと思います。しかし、大学医学部の教育に必要な費用というものが病院の上がり等でまかなわれている限り、入り用な金はどこからか入ってこなければならない。私学振興費が一つの学校に十分出されたらということでございますが、日本のように大企業が医科大学に寄付金をするというふうなのはほとんどございません。病院にいたしましても、外国では個人が病院を建てて経営をするというふうなケースは、文明国にはあまりないわけでございます。国と社会が医療に責任を持たない形で、しかも日本のように税制の問題その他で世襲的に開業医がやっていかなければならない条件に置かれていて、その点だけを追及いたしましても、この問題は解決しないであろうと思います。また、今後も別な形で出てくる可能性があるのではないかと思います。この際、国と社会が医師を育てるということにほんとうにまじめになって取り組んでいただきたいと思います。

倉成正自由民主党

○倉成委員長 次に、大橋敏雄君。

大橋敏雄公明党

○大橋(敏)委員 参考人の皆さんにはほんとうにきょうは御苦労さまでございます。皆さまの肉体的御疲労のところも考慮されまして、質疑応答の時間がきわめて制限されておりますので、御答弁のほうは簡明に、要領よくお願いしたいと思います。また、私の党からもう一名質問することになっておりますし、これは医療の専門家でございますので、よろしくお願いしたいと思います。  まず最初に、小山先生にお尋ねいたしますが、学者という立場から率直な御意見を聞きたいのでございます。  その一つは、今回の改正案と抜本改正との関係についてどのような御意見をお持ちであるかということです。私が言うまでもなく、健康保険の改正案が国会に出るたびに深刻な事態が生じてきたのであります。そのつど国民大衆は改悪反対を叫び続けてまいりましたが、政府・自民党の強度手段で押し切られてまいりました。しかしながら、抜本改正の公約といいますか、政府の公約を取りつけたのでありますが、その抜本改正の諮問を受けております社会保険、社会保障制度、両審議会の審議内容は、一年有半になっているにもかかわらず、まだその本題に入っておりません。そういう実情の中にこのような改正案が出されたということでございます。厚生省が言っていることについては、抜本改正の第一歩である、あるいはその一環云々、こう主張しておりますけれども、事実は単なる政管健保の赤字対策である、医療費の支出の歯どめ対策がない、片手落ちの内容である、私たちはそう感じている次第でございます。これが一つでございます。  もう一点は、医療費制度の問題でございますが、点数単価、出来高払いの制度というものについてどうお考えになっているかということでございます。医師の技術料というものが反映されていないこういう制度は非常に問題であるといわれている反面におきまして、いわゆる売薬医療といいますか、これは適当な言い方かどうか知りませんけれども、そういう立場から見た場合におきましてはきわめて好都合な制度である、こういうふうにいわれております。これについてどのようなお考えを持っておられるかということと、その問題点の解決のための具体策というものがあればお示し願いたいということです。  また、実際問題としまして、医師の技術料をきめる場合、一体どのようにやってきめていったならば妥当なのか、非常にこの点われわれも心悩ましておりますので、その点もお願いいたしたいと思います。  小山先生に対する質問は以上でございます。  次にお尋ねしたいのは高橋晄正先生でございます。先ほど医療の公営化、社会化について御説明があったわけでございますが、私もこの公営化、社会化については非常に関心を寄せている一人でございます。いろいろと御説明がありましたけれども、短い時間でありますし、具体的な内容も相当出ていたようでございますが、もっと詳細な内容が知りたく存じますので、できましたならば、これは要望になりますけれども、後日でけっこうですが、詳しい内容の資料を出していただきたいということでございます。  もう一つの問題、これは質問になりますけれども、最近医薬品の薬効の問題が云々されております。また、薬事行政の欠陥が大きく浮き彫りされているわけでございますけれども、これを改善するポイントといいますか、これはどこにあると考えておられるか、率直な御意見を聞きたいのであります。すなわち、そういう問題を改善是正していくその目標といいますか、ここに集中攻撃していけばその問題は解決するのだということの問題であります。  それからもう一つの質問は、高橋先生は武見哲学云々という論文を出していらっしゃったわけでございますが、武見会長に対して非常に関心を深くお持ちのようでございますのでお尋ねするわけでございますが、日医の理事会で次のようなことが言われたそうでございます。診療報酬体系の適正化というものと診療報酬そのものの適正化は非常な違いがあるのだ。いま日医が主張しているのは後者のほうである、そのような趣旨の発言があったようでございますけれども、こういう点についての先生の率直な御意見をお伺いしたいと思うのであります。なぜならば、これが審議メモに対する日医の姿勢、態度に非常に深い関係があると思うからでございます。  次に、神崎日本病院協会会長にお尋ね申し上げます。  病院の協会というものは幾つにも分かれていると聞いておりますが、横の連絡が非常に悪いそうでございます。そういう点はどうなのかということです。さらに、日本医師会側と反医師会側とに分かれているということを聞くわけでございますが、そういう実態があるのかないのか。というのは、先ほどお話しなさっておりました物価の上昇だとかあるいは人件費の上昇、そういう支出上に見合った医療費の値上げ等を考えているというようなお話もありましたけれども、こういういろいろな病院のほうの要望等があまり反映されていないというのが事実であろうと思うのであります。そういう立場から、実際には組織力が弱体で要望が通っていないんじゃないかという懸念を持っている一人でございますので、率直な御意見をお聞かせ願いたいと思います。  それから、病院経営の実態というものは、診療所のそれと比べてきわめて経営内容というものは苦しいというのが一般的な認識のようでございます。というのは、そもそも病院の管理がへただということをよく聞くわけでございますけれども、病院の経営管理、これは非常にむずかしいことも私はしろうとながらわかるわけでございます。医師とかあるいは薬剤師、看護婦、レントゲン技師、事務員等々、職種の違う人々を管理していかなければならない。そういう実情の上から非常にむずかしいことであろうと思いますが、こういう点について医師そのものが管理者になっている、院長そのものが管理者になっていることは、わが国でも非常に問題になっていることだと思いますので、その点も含めてお願いしたい。  もう一点は、無医地区解消のお話が出ておりましたけれども、その具体策があればお聞かせ願いたいということであります。  それから最後に、全国保険医団体連合会副会長の田村さんにお尋ねいたしますけれども、中医協の審議メモに端を発しました医師会の動き、また、その問題点については私も新聞報道その他で大体承知しているつもりでございますけれども、保険医総辞退などということは大きな社会問題化しようとしている今日であります。この説明が先ほどありましたけれども、もう一歩深いお話を聞かせていただきたいと思います。それから保険医の総辞退などということは、われわれは絶対にやってもらいたくないと切望したい気持ちでございますけれども、医師会の話では、総辞退後は医師会独自の医療料金を定めて患者に請求をする、ただしその対象は組合健保の被用者本人と家族だけに限る、こういうことが報道されているわけでございますが、この医師会のとった措置に対しましては、国民はもちろんのこと、医師会内部からも、そういうものは撤回せよという批判の声が強いと聞いております。この点もあわせてお尋ねしたいと思います。  最後にもう一点、診療報酬をまともなものにしてほしいというお話が先ほどあっておりましたけれども、診療報酬の問題は中医協で論議することになっているかに思っております。ところが、その中医協から医師会の代表が引き揚げる、そういう事実があるわけでございますけれども、話し合いの場がなくてその審議が進むであろうか、一体どこでだれがそれをきめるのかということでございます。  以上でございます。

倉成正自由民主党

○倉成委員長 参考人に申し上げますが、質問が多岐にわたっておりますので、お答えは簡潔にお願いをいたします。まず小山参考人。

小山路男横浜市立大学教授

○小山参考人 お答えいたします。  今回の改正案と抜本改正との関係をおまえはどう思うか。今回の改正案につきましては若干の給付改善と定率国庫負担を導入することでかなり手荒な財政措置をやっていることは事実であります。その点で確かにこれは財政対策にすぎない、それは私はそう思います。ただし、それでは政管の財政がどうなってもいいのかということになりますと、これはそうはいかぬだろう。まあそういうことが率直な感じ……。   〔「それは政府が言うことだ」と呼ぶ者あり〕

倉成正自由民主党

○倉成委員長 お静かに願います。

小山路男横浜市立大学教授

○小山参考人 いや、そんなことはないです。私はそう思います。もっと基本的にやれば、組合間の財政調整までいく問題だろうと思いますけれども、ともかく今回の案は、そういうことで財政対策にすぎないけれども、財政対策をやらない限りは保険自体が破綻してしまう。その問題をどう考るかということはございます。  それから、医療費の支払い制度について技術料評価のむずかしいことはおっしゃるとおりでございますけれども、しかしそれならばどういうふうな判断、ものさしで評価するかということになりますと、私も名案がございません。少しまたいろいろと勉強させていただきたいと思います。

高橋晄正東京大学講師

○高橋参考人 第一点の医療公営化についての詳細な資料ということでございますが、これはある程度のプランを持って、あとは出発しましてから国民と一緒に考える、こういうことでございますが、委員長の手元に「医者にかかる前に」という本を委員の皆さんの数だけ差し上げてございます。これは「医者にかかる前に」として「医療の矛盾を考える」こういう副題がついておりますが、これはあるところで六回にわたって講演いたしましたことの記録でございますので、いまのところその中におおよそのプランが書いてございます。あと、これから書きます本の中で刻々に具体的なデータに基づいて考えを進めてまいりたいと思いますが、しかし、まず現状の医療矛盾はその方向では改善の可能性なしとしまして、新しい方向に出発して、その中で国民とともに考えていく、こういり基本方針をとっております。  それから二番目に、薬効ないし薬務行政のあり方の問題点を改善するにはどこがキーポイントかということでございますが、これは日本ではそういう問題に医師会が全然手をつけない。アメリカでは職業人としまして医師会が薬効に関するカウンシル・オン・ドラッグズというのが載っていまして、みずから科学的な自己規制をするためにコンサルタントを数千名使いまして、そしてFDAで許可しましても、なおかつ自分たちがそれを調べて、悪いものは捨て、危険なものは、副作用のチェックに関する医師会雑誌の中に発表しております。これはニュードラッグズという雑誌が出ておりますので、私たちはそれを一つの基準にとつております。したがいまして、もし日本においてあえて科学的な医療体系を確立するとするならば、現在厚生省にも日本医師会にもこれは期待できない。したがって、もし議会のしかるべきところでおやりになるならば、アメリカからFDAの担当者ないしは医学者を招請して、日本でいま使われておる個々の批判をさせて、それによってそれを変えていくことが一つ。  あと一つは、私たちが実は監視する国民運動の会というのをつくっております。これは私発起人でまだ正式な会になっておりませんが、「薬の広場」という雑誌の中で、危険な薬から刻々と科学的なデータに基づいて摘発しておりますので、こういういわば民間活動によって個々の薬を個別的に摘発していく。しかしこれはたいへんな仕事でございまして、いま全国にそれを手伝ってくれる青年医師、薬剤師が徐々に拡大しておりますけれども、たいへんな仕事でございますので、できるならばこれは議会のしかるべきところで外国の学者を呼んできて、日本の学者と対決させて、なぜアメリカでこれを使わないのかということを証言さして、それに対して日本の学者ないしは医師会の実際使用している人たちが、明確な答弁ができるかいなかということを皆さんで判断して、この薬は不当であるという決定を国民の立場できめていただきたいという感じがします。  三番目に、武見哲学といいますか、先般テレビで対談されましたものに対しまして、私はこれは武見さん御自身の考えですから、個人の自由でございましょうけれども、私たちの医師集団の代表者としては、一言でいいますと、あらゆる点においてきわめて不満かつ不当なものであると思っております。したがいまして、ただいま診療報酬体系の適正化と診療報酬の適正化なんという話が出ましたが、これは実は私読んでおりませんので明確に把握できませんが、いずれにしても個別的な医療行為に対する診療報酬を考える立場を全然とっておりませんので、医師の生活を保障せよ、その中でわれわれは患者さんをみた場合に、これが利潤源であると見ないような立場にならなければ、科学的にも倫理的にも妥当な診療はできないという立場をとっておりますが、そういう立場は武見哲学には全くない。あくまでも医療資本主義の形態で、しかも科学的な妥当性を検討する機構を持たずにいこうというのが、先般テレビで見ました武見哲学のように思われますので、あらゆる点において、私どのは科学的に見て不当な立場であるというふうに考えております。そういうようなことでございますし、医師の技術料の評価を神崎参考人も考慮してない、あるいはまたほかの方方も、古い経験豊かな医師と若い人を同等にすることは不当であるなどということを書いておられる方がありますけれども、これはそういうふうに考えるべきじゃない。技術修練のための機会を、イギリスですと二年半ごとに無料で一カ月の研修の機会があるそうですが、そういう形で技術水準を平等に上げて、そしてそれに対しては平等の報酬――多少生活年齢差ぐらいはあってもいいでしょうけれども、この人はうまくできる人だからこれぐらいという形の差はっけないほうが穏当であろうと思います。特に技術差を放置しておいて、患者には医師を選ぶ自由があるということで、欠陥車に乗ったのは乗ったほうが悪いのだというような考え方は根本的に誤りである。車においてさえそうでありますから、医師そのものの欠陥医がその辺にぞろぞろおって、選びそこなったのはおまえが悪いというこういう哲学は根本的に誤りだと思います。私は個々の問題の診療報酬とか技術というようなものを個別的に審査するのは誤りであって、それは平等化する路線におきまして、むしろ医師の生活保障、危険のない、あぶなげのない医師を全面的につくるということがわれわれの方向ではないかというふうに考えます。

神崎三益日本病院協会会長

○神崎参考人 病院協会の横の連携というお話でしたが、その前に、後段の質問の親日医であるか反日医であるかというような御質問でしたが、私も古いことでそろそろ記憶から薄れておりますが、私が初めて日本医師会の理事になったことがあります。たしか昭和三十年ごろでございました。当時の会長は小幡惟清という会長でしたが、その当時日本医師会、これは小幡先生も開業医の団体だとお考えになっていた。神崎君を日病から迎えて、そうして相携えて日本の医療をよくし、また適正な報酬を要求しようじゃないかということでスタートいたしましたが、その後年移り人かわればおのずから事情が変わってくる、これだけ申し上げておきます。  なお、横の連絡でございますが、日本に病院は七千ございますね。それで二十床以上であれば病院なんでございますね。ところが、先ほど来申しますような、入院を主体とし、大きな手術を主体にする病院も病院であれば、外来診療が主体である病院も病院なんでございます。そこで性格が、病院と名前がついておりましてもいろいろ違いがございます。したがって地域における医師会との結びつき等も人間的結びつきが長い間ついておる。そういうことになりますと、これは親日医も何もない。やはり医師会サイドにつかれるのもやむを得ないと思います、実質もまたそういうふうでございますから。しかし最近、先生御心配いただきましたが、いまできております日病のほかの全日病と申しますのも――公私病院連盟というのは、あれは日病もその会員団体の一つでございます。同じでございますが、かつて日医にそむく者はともに天をいただかずというようなことでたもとを分かった人も、現実がこういうふうになりまして、先ほど申し上げますように、全体は二一%ふやしてもらえばいいが、入院料については八一%ふやしてくれ、こういう事実が出ますので、事実の前には少々のつながりだの感情というものは、いま無視されつつあります。これだけ申し上げておきます。

倉成正自由民主党

○倉成委員長 無医村対策についての御質問がありました。

神崎三益日本病院協会会長

○神崎参考人 無医村対策はちょっとつけたりに申しましたのですが、私は私なりの考えを持っております。無医村は個人医にまかせるべきものじゃありません。それはせんだっての不正入学のときのある岡山県の山奥の医師がそう申しましたように、ここの建物はおれが二千万円出してつくったんだ、おれがこの建物を子供に譲らなかったらどうなるんだということで、あの娘さんを大阪大学へ入れましたね。そして、わしがここを去ったら無医村になるじゃないかと言われたのを聞いて、私は日本の施策の大きな穴がそこにあったと思う。イギリスではそういうところにはみんなサラリードクターが行ってやっております。

田村清全国保険医団体連合会副会長

○田村参考人 保険医総辞退という問題について、大橋先生から絶対やるべきでない、国民はとんでもないことだと受け取っているというおしかりでございます。一部にはそういう面もあろうかと思います。しかし、保険医を辞退したから私たちが診療をやめてしまうということではないわけでございます。それから現実に健康保険を取り扱っていない医師もかなりおります。私の地元ですと、区内の百四十人ばかりの開業医の中で五人ほど保険を取り扱っておりません。これは自分の技術が前に保険で否定されたからといって腹を立ててやめた、これは世界的レベルの技術を持っている人ですが、日本の学会を相手にしないで、毎年自費で外国の学会へ出て報告をしている人でございます。そういう方もおります。それで、そういう方の存在に対しては世の中は問題にしておりません。それで日本じゅうの医師が保険医をやらなければならないという法律もございません。それで私たちは、保険の仕組みについて先ほど申し上げました幾つかの要求がどうしても実現しないなら、当局に考え直してもらうという意味で保険医を辞退するわけでございます。最後の手段でございます。しかし、私たちは医師をやめてしまうわけでもありませんし、診療をやめてしまうわけでもありません。また、健康保険法の中には、被保険者に何か都合の悪いことがあった場合には、被保険者が訴えて出て審査を受ける方法がございますけれども、健康保険の中には、私たち保険医を保護する条文は一つもございません。そういう状態の中で、どうしても自分たちがやっていかれないというときには、辞退をする以外に道はないと思います。辞退をすることに対して国がどうするという条文もないわけでございます。ただ、せっかく辞退をするからには、一人一人ぽつんぽつんとやるよりは、みんなでそろってやったら社会的な反響が強いであろう、威力を示すことができるであろうし、政府も考えてくれるであろうというのが総辞退という戦術でございます。しかし、これはあくまでも戦術でありまして、目的ではございません。ただ、私どもが心配しますことは、いまの医療保険制度に対する不満があまりに多いために保険をぶちこわしてしまえという一部の開業医の意見もございますし、この際やめちまえという意見もございます。それでは皆保険という日本の国の状態で、国民のほんとうの医療はどうなるのかということは絶えず心配しているわけでございますし、また一カ月の予告期間がたちまして実際に私たちが保険医でなくなったという日からの診療の問題について御心配がありますようですが、日本医師会からは、文書になって特別な料金という形で幾ら幾らというものは出ておりません。口頭でいろいろなことが医師会のルートを通じて流されてきております。しかし私どもは、保険医辞退をして保険をよくするためにやる戦いの中で、将来を見込んでこのくらいの料金をとろうというふうな考え方は、私の団体では毛頭持っておりません。そして、被保険者の方に医療が拒否されるようなことの起こらないような取り組みはどうしたらいいかということに心を配っているわけでございます。その場合に、被保険者の方たちが、自分の療養費を請求するのを私どもに委任するということが保険者によって認められますなれば、いまと同じ形で診療は続くわけでございます。若干の手数がふえるということ、私たちにはたいへんな手数がふえるということでございますが、そういう方法でやれば、政府が音をあげるまで総辞退を続けて、国民全体の問題として真剣にお考えいただけるというふうに考えております。

大橋敏雄公明党

○大橋(敏)委員 それでは時間の関係もありますので、あと省略してけっこうです。済みません。

倉成正自由民主党

○倉成委員長 古寺宏君。

古寺宏公明党

○古寺委員 非常に時間がございませんので、簡単にお尋ねを申し上げたいと思います。  最初に小山先生にお願い申し上げますが、先ほど保険の一本化が望ましいことである、こういうお話がございましたが、今後組合健保あるいは政管との財政調整の問題等いろいろと困難が予想されます。こういう点についてはどういうふうに解決をしていかれたらいいとお考えでございましょうか。  それから高橋先生にお尋ねしたいのですが、先生は日本医学総会に対抗いたしまして新しい医学総会をお開きになりましたが、この基本的な考え方についてお伺いしたいと思います。  神崎先生は、先ほど病院の代表も、中医協なりあるいはいろいろな審議会に当然加えるべきである、こういうお話がございました。その点については現在どういうふうな実態になっているのか、なぜそういう中医協なりあるいは審議会に入っていらっしゃらないのか、その点についてお尋ねしたいと思います。  田村先生には、今回の改正案がかりに通った場合に、実施された場合に、最も心配な点はどういう点であるかという点についてお尋ねしたいと思います。

小山路男横浜市立大学教授

○小山参考人 お答えいたします。  保険の一本化、財政調整、非常にむずかしい問題でございまして、理論的にはといわれれば、先ほど申し上げたようなことになると思います。ただ、財政調整さえもできない現状でございますので、結局は将来の医療水準を高めるときに、各保険集団が協力し合うという形で、なしくずしにでも持っていけないか、そういうふうに思っております。  以上でございます。

高橋晄正東京大学講師

○高橋参考人 私たちが医学会総会に対しまして反医学会総会、あるいはもっと詳しく言いますと「日本の医療を告発するすべての人々のつどい」という会をつくりましたが、これの基本的な方針は、日本の医療矛盾はいまきわめて激化しているにもかかわらず、日本の政府も医師会も医学会もどこでもまともにそれと取り組んでいない。したがってわれわれは、国民の苦悩をなまのままで受け取って、そして一緒に国民みずからの手で新しい医療体系をつくっていこう、これが基本的方針でございます。たまたま日本医学会総会が四年ごとに東京でありまして、その内容を見ましたところが、きわめて現実離れのした、外国の雑誌の表題を寄せ集めたような、日本人にあまりオリジナリティのないような、ただ医学界のトピックスであるにすぎないようなものばかりをいじっているということに憤りを発しましたものですから、四年目ごとに、反医学会総会という名前を名のりますけれども、これから持続的な運動としましては「日本の医療を告発するすべての人々のつどい」、毎年各地でわれわれのつどいを行ない、また毎月勉強会その他を行ないまして、この中で国民の告発を受けながらその新しい建設に向かう、こういう方針でございます。その告発は精神的な告発もございますけれども、現に医者に切り殺された、薬でこっぴどい目にあった、一生だめにした、裁判闘争に持ち込みたいけれども方法がわからない、それから医学的に判断ができない、こういう訴えがたくさん出てきております。私ども法律の専門家ともいま相談いたしまして、そういうのを一つ一つ引き受けて、日本の医療の中からむしろ人間破壊的な医療そのものをなくしていく、そしてほんとうにわれわれが健康に生きられるような医療体制をつくっていく、そういう動きとして動き始めた段階でございます。まだあまり皆さん、ないしは国民の中に知られていないでしょうけれども、私たちはそういう一つの動きとして、あるいはこれは私どもだけではなくて、全国的にもいろいろ起こるかもしれませんが、そういう人たちと手を握って、今後新しい医療のあり方を考え、かつ実現してまいりたい、そういう方針でございます。

神崎三益日本病院協会会長

○神崎参考人 先ほどの話の中にも詳しく申し上げたつもりでございますが、病院という医療チームの代表者は、これは医師であるとかないとかいうことにかかわらず、当然そういう場に出るべきものと思っております。現に私自身がかつて年表、乙表が出ましたときに、神崎問題なるものを引き起こしまして、当時の堀木厚生大臣の勇気によりまして、私は医療協議会にそのまま席を置く、とどまることになりました。その後引き続きまして、何年かはやはり病院協会の代表が中医協には出ておりました。そういう実績がちゃんとありまして、当時の法制局の解釈も何ら違法ではない。機関指定と保険医指定の二重指定でございますから、その機関の代表が出ることは、これは法のたてまえから当然なんでございまして、出ないからこそ先ほどのような不当なものがきめられるとまで私は申します。わずかずつ病院側に有利になっておるのは、被保険者代表のほうが応援して上げてくだすっているという、まことにふがいない話ですが、これは私はこういう世の中で、みんなが集まってものをきめるというときに、利害のけんかをするのじゃないけれども、そのことの真相を知っておる者がその場に出ないでものをきめるというようなことは、これはとうてい許されないことだと思います。  ついででございますが、被保険者代表も、いまやもう国民皆保険で、労働者の労働力確保の保険ではないにもかかわらず、見ますところ労働団体の代表は出ていらっしゃいますけれども、一般の市民、たとえていえば国保の被保険者というものが出ていないということは、私は間違いだと思います。もう今日の世の中に、いろいろな者が出て、そしてなごやかに話し合いながらいいものをつくり出すということは、これは高橋晄正君のドラスチックな改革の前に一つやる段階がそこにある、私はかように考えております。

田村清全国保険医団体連合会副会長

○田村参考人 いま問題になっております改正案の中で、診療を担当する立場で何が一番心配かというお尋ねのように受け取りました。  全部が心配でございますが、保険料が上がって負担がふえるということ、現在の物価高の中で、ことに食料品その他の日常生活を維持していくものの値上がりで楽でないという訴えをされます主婦の方々の実情から見まして、入ってくるものがふえないで、出ていくものがふえるということ、これは健康に必ず悪いだろうと思いますし、まず第一にそれを心配いたします。  ただ、私どもの診療室の中で考えます問題では、負担金の問題でございます。入院の場合には、入院が続かなくなるという問題がございます。それから外来の再診時の負担金百円というお金がいまどの程度のことなんだということが、その人その人によってみんな違うわけでございます。負相金は全部なくして、全部十割の給付にしろという私どもの要求はそこに出発点があるわけでございますが、四十二年の特例法の定めによりまして、一日一剤の薬で十五円負担金を取るということで死亡した患者さんの実例を私ども自分の協会の全員から報告を受けまして、法律がとうとう人を殺したかというて嘆いたわけでございます。川崎で起こりました実例で、五十何歳か六十歳に近い方が、血圧が高くて、心臓に故障があって、ずっと薬を飲んでいなければならない状態なのに、薬剤一部負担、一日について十五円ずつの負担ということで治療をやめてしまって、それから一月ぐらいあとに、出先で心筋梗塞でなくなられたという報告を、その患者さんをみておられた私どもの会員から受けましたことを思い出しましても、負担金が人を殺してはならない、人によっては百円というのも全然問題ではないでしょうし、人によっては百円ということも大きく響くのだという立場で、しかもその百円の響く階層の方たちが非常に多いのだという立場でお考えいただきたいと思います。

倉成正自由民主党

○倉成委員長 次に田畑金光君。

田畑金光民社党

○田畑委員 参考人の方々に一つずつお尋ねしてまいりたいと思います。が、初めに小山参考人にお尋ねいたします。  小山参考人は社会保険審議会の委員をなさっておると承っておりますが、抜本改正について、政府はすでに昭和四十年の八月に社会保険審議会、保障制度審議会に諮問をいたしておるわけです。これに対して社会保険審議会は昨年の十月、保険制度改革の前提として意見書を出されておるわけです。お話しのように、保険と医療とはうらはらであり、一体である、こう思いますが、今後の審議会における審議の見通し、結局四十六年度は今回の健康保険法一部改正という形で処理されておりますが、抜本改正について、本格的な抜本改正がこれから発足するについては、あなた方の審議会の答申を待ってと、こういうことを政府はいっておりますが、その答申の時期等の見通しについて、これが第一点です。  第二点は、先ほどのお答えを聞いておりますと、今回の健保一部改正は財政対策である、しかしまた、財政対策なくしては健保の運営はできない、こういうお答えでございます。財政の安定なくして確かに健康保険の制度の運営はできないと思いますが、そうしますと、今度のこの法律改正は抜本改正の第一歩であると評価していらっしゃるのかどうか。  と申しますことは、財政の面を離れましても、たとえば七十歳以上の被保険者の家族の方については五割給付を七割給付に引き上げておりますし、あるいはまた国庫の定率補助という制度が新しく設けられておりますし、あるいは定年退職者についての継続給付制度等、あるいはまた四十六年度末の赤字をたな上げするという措置も講じられておりますが、抜本改正の第一歩であるとするならば、どの点を第一歩とみなしておいでになるのか、この点をひとつ小山参考人から承りたいと思います。  次に高橋参考人にお尋ねいたしますことは、医療の社会化あるいは公営論、まことに斬新な構想、お考え方で非常に傾聴したわけでございますが、また今日の医療の商品化を憂えられておる、医療の押しつけであるとか、また患者もともすれば保険であるという安易な制度によりかかっておる、これがわが国の医療費の増高をもたらしておるゆえんだ、それはそのとおりだと思いますが、お話の中にもありましたように、皆保険制度であって、全部がそれぞれの立場に立って、違う保険に入っておるが、保険料は納めておるけれども医療にかかれないというこの無医地区の存在、三千個所近くにのぼるわけであります。同時にまた医師の偏在という問題も、これは非常な問題だと思います。御存じのように、わが国の今日の医師の数は人口十万に対して四十四年度百十三名といわれておりますし、アメリカが百五十名、ソ連が二百十五名、大体日本はイギリス、西独、スウェーデン並みかと思いますが、しかし問題は、日本は相対的にまだまだ医師が足りないと申しますものの、七大都市においては大体アメリカ並みの分布状況かと思います。ところが市町村に至りますと、十万に対して六十名、七十名。特に僻地の医療をどうするか、僻村の医療をどうするか、これが一番の問題ではなかろうかと私は思いますが、いま自由開業医制度のもとにおいてはなかなかこの問題の解決はむずかしい。幸い医療公営論を唱えておいでになりまする高橋参考人のお考え方からいたしますならば、この問題の解決にも一歩を近づけるんじゃないか、こういう感じも持ちますので、ひとつこのような問題について、どうすれば日本の医師の偏在するあり方――ほんとうに国民の必要とする医療を確保するためにはやはり医療担当者の適正な配置ということが大事な問題でありますが、この点についてお考えを聞かしていただきたい。  それから神崎参考人にお尋ね申し上げたいことは、先生ほどの大家であり、経験の豊富な方が、今日問題となっておる特に政府関係の医療関係審議会等の中で十分な発言の機会を持っておられないということは、まことに残念であります。特に私は、今日の病院経営というものがほんとうに人件費、物件費等々の値上がりから、また何と申しましても病院は、先ほど来提起されておりますように、組織医療を行なう機関であるだけに施設、機械、人員の充足等、そういう面から今日経営がほんとうに苦しいんじゃないか、われわれはそういう感じを持つわけであります。したがいまして、公私病院協会等から緊急に医療費の引き上げを要望されておることも、われわれはさもあらん、まことにこれは早く何とか処理してあげなければたいへんだ、こういう気持ちを持つわけでありますが、ただ先生も御存じのように、医療費の引き上げについてはやはり中央医療協議会の議を経て厚生大臣に提起されるわけでございますが、残念ながら中央医療協議会が動いていないというところに、今日また大きな悩みがあるわけであります。したがいまして、私はこのような機関に、先ほど来お話がございましたように、国保の被保険者の代表も参加する、また医療担当者も、日本医師会に所属するお医者さんだけでなく、やはり病院協会等に所属するお医者さんがこういう機関に参加されて公正な議論が反映するような仕組みに持っていかぬと、まともな医療制度をつくることはできない、こう考えておるわけでありますが、この点について政府やあるいは厚生省等に対して、公私病院協会等も今日まで努力されてきたのかどうか、折衝されてきたのかどうか、この点をお答えいただきたいと思います。  最後に、私は田村参考人にお尋ねいたしますが、開業医の立場からいろいろ勇気をもってその立場を主張しておられることに対しては、私は敬意を表します。ただそこで、私は参考人のおことばの中でさらにただしておきたいと思いますことは、保険医総辞退の今回の医師会のとられておる措置については、おことばの中にありましたが、政府が音をあげるまで威力を示すのである、これは戦術であって目的ではない――非常に正直にお答えになってほっといたしましたが、戦術であって目的ではないということでありますが、目的は何かということであります。世間で伝えるところによれば、今回の日本医師会の保険医辞退という戦術は、健保改悪反対とかあるいは審議用メモを粉砕するとかいうようなこと等がいわれておるけれどもざっくばらんにいうと、その焦点は診療費引き上げにあるような見方がなされておりますが、この点について目的が何であるかということをお答えいただきたいと思うのです。  それからもう一つ、私おことばの中で、これもまた非常に同感でございますが、いまわが国の医療というものは国の社会が医療に責任を持っていない。あげて開業医に医療の責任が負わされておる。これは矛盾しておる。私はまことに、そういう面においては同感であります。わが国の病院を見ますと、私立病院が六五%。西ドイツを見ますと、公立病院が九二%。診療所はどんどんふえていくけれども、公的病院などというものは、なかなか育っていっていない。どこに原因があるのであろうか、こういうことを深く考えさせられるわけでありますが、特に私は現在の医療法等の中において、公的病院の病床をふやすこともいろいろ規制措置が講ぜられておるわけで、こういうような点等についてはやはり公的病院をもっと大事にしていくというようなあり方が、日本の医療制度としては望ましいのじゃなかろうか、こういう感じを持ちますが、この点についてどのようにお考えになっていましょうか。  第三の点として私がお尋ねしたいのは、昭和四十四年度の政府管掌の医療費を見ますと、一人当て医療費の高いところは京都府、年四万六千円、ところがこれに対しまして東京は二万三千円、こういうことでありますが、これはどういうところにこのようなことが生まれてくるのか、これらの点についてひとつお教えをいただければありがたい、こう思います。

小山路男横浜市立大学教授

○小山参考人 お答え申し上げます。  抜本改正の諮問につきましては、お尋ねのとおりでございます。現在、社会保険審議会では、医療費問題の小委員会をつくりまして、これが発足して別個に作業をいたしております。  それから、検討項目につきましては、前にきめてありますので、至急にこれも審議が始まると思います。いつまでおまえやる気かと言われましても、私一人でやることではございませんのではっきりしたことは申せませんけれども、早く審議するように、これは各側委員とも同意見でございますので、できるだけ早い機会に答申を出したいと私個人は思っております。  二番目のお尋ねでございますが、政府のいうような抜本改正の第一着手であるかないかということでございますが、率直に言いまして、なしくずしだろう、つまり、制度の根幹に触れるような改正もやっているわけなんでして、財政対策だけではどうもあまりみばが悪いので、制度の根幹に触れるような改正も若干つけ加えた、評点をつけますとそういうことです。ですから私は、あまり甘く評価しているわけでは決してございません。それだけでございます。

高橋晄正東京大学講師

○高橋参考人 僻地医療をどうするかということでございますが、日本は医師の絶対数はやはりドイツに比べて少ないのでありまして、ドイツは六百名に一名ずつの診療所許可が可能でありますが、日本ではそれができない。それから、日本の医師の総数が戦後一〇%しかふえておりませんが、西ドイツは五〇%ふやしております。したがいまして、戦後われわれの生活が豊かになるにつれまして、医療需要は確かにふえてくる。その間において、当然医師数を増すべきであったのを、これが日本では、だれが締めあげたのかはっきりわかりませんのですけれども、まあ厚生省、文部省、医師会というようなそこら辺のところで増員をさせなかったという話でございますが、詳細にだれが主導権を握ったか私はまだ調べておりませんです。しかし、いずれにしても、医師になるための障壁を高めて、それで医師の価値を高めるというような作戦であったのではないかという分析をしている経済学者もあります。したがいまして、いま医師不足の状況ですね、たとえば人口六百名に医師一名ぐらいにふやすためには、あと五万人ぐらいの医師をふやさなければならない。ところが、五万人の医師をふやすためには、一年に十五校建てて千五百人ずつふやしましても、これから六年後からしか出てまいりませんから、三十年かかりましても四万五千人しかできない。したがいまして、日本が人口六百名に一名ずつの、最近の医療需要に応じ得るような体制をつくりますのは、二十一世紀に入りましてから十年目ぐらいになるだろう。とうていそういうのを待っているわけにいきませんので、私は、いま日本には、潜在保健婦、潜在看護婦が相当たくさんございますから、こういう人たちにも手伝ってもらいながら、やはり地域中心の医療センターをつくって、そこを中心にして、医師、看護婦、保健婦というものが出かけていって、再教育をしながら、ある程度の軽診療をやるような体制をつくっていかなくてはいけないのじゃないかと思います。ソビエトの準医師というのはそういうような形態でございますですね。そういうことを考えながらいかないというと、とてもこれから二十一世紀までの三十年間を持ちこたえられないだろうというふうに考えます。  さらに、医師の都市集中を放置したままではそういうことは絶対成り立たない。したがいまして、医師、看護婦、保健婦その他の医療従事者の身分の社会的管理がまず先決問題でございまして、いまのままでやれるならやってみろと、もしだれかが言いましても、いまのような状態では、ほとんど都市に集中してしまって、僻地医療対策はできない。しからば僻地医療用の医師養成校をつくるかといいますと、これまたたいへんなことでございまして、結局、医療の中にまた上級医と下級医をつくる、それから、金がないために僻地医療に入って十年間僻地にいなければならないというような医師間の差別をつくるということは、決して望ましいことではございませんので、すべての医師が平等に日本の国民の健康に関して責任を負うというような形態をとらなければ、この問題は解決できないのじゃないかというふうに考えまして、どうしてもこれは医療社会化の路線をいくよりほかに根本的な解決の方法はないというふうに考えております。

神崎三益日本病院協会会長

○神崎参考人 本日の諸先生も、みな病院の実情については、ことばにお出しになるならないにかかわらず、十分御理解いただいておること、先ほどの田畑先生の発言を通じて私は非常に感謝しておるものでございます。しかし、なぜそういう重要な場所におまえたちは委員を送らなかったかという話でございますし、また、送るための努力をしたかということでございますが、これも重複いたしますからやめますが、先ほど申したように、堀木厚生大臣、現在の坂田文相が厚生大臣当時には、ちゃんと日本病院協会が推薦母体になって出ておりました。しかしながら、世間は波風の立つことをおきらいになるという風潮がございますし、加うるに、先ほどお話しのありましたように、議員立法をもって公的病院の病床を規制するというような、こういうムードの中からあえて波風を立ててまでというのではないかと、これは私の邪推かもしれません、そういうことで、もうわれわれは、総会を開くたびに、決起大会を開くたびに、真の病院代表を出せということは、もう声をからして叫んでおります。ただ一つ不幸なことを言えば、われわれがそのときに、じゃ、出さないなら実力行使をやろうかという、それをやるのにはわれわれのモラルが高過ぎると申しますか、強過ぎる。それでこれが常に聞き流しという実情で今日まできておるんだろうと思います。いずれさんたんたる実情が皆さんにおわかりになれば、そのときには、きょう私が申していることが決して不当なことを申しておるのでないということを御理解いただける、かように考えております。

田村清全国保険医団体連合会副会長

○田村参考人 第一番目の問題といたしまして、今回準備されております保険医総辞退の目的は何なんだということでございますが、これは先ほど申し上げましたように、日本医師会が刷りもので用意いたしました総辞退の理由、五項目というものがありますし、それから、都道府県によりましてそれぞれ医師会の代議員会で辞退の理由を取りきめております。私ども開業保険医の団体としては、これだけのことを実現させてもらうんだという七つの目標を先ほど申し上げたわけでございますが、もう一度申し上げさせていただきますと、健康保険法の改悪を全面的に阻止すること、診療報酬単価五割引き上げをことしの一月にさかのぼってやってもらうということ、各科の不当に低い健康保険点数、これは十年間据え置きになっております。それを即時改定すること、社会保険被扶養者の給付率を七割とすること、政府管掌健康保険の国庫負担を定率二〇%以上とすること、健保の赤字を医師と患者に負担させる方式をとっております審議用メモを撤回すること、これが私たちの昨年来掲げております目標でございます。それで、これが実現の可能性がないとどうしても非常手段で世の中に訴えなければならないというのが現在の利たちの状態でございますので、御理解いただきたいと思います。  次に二番目に、公的病院をどんどんふやしたほうが日本の医療をよくする近道ではないかというふうに承りましたけれども、医師数の問題が先任ほど来出ておりますように、建物を幾らつくりましても、医師数が足りない。一ころ病院の数がふえております。全国でベッド数がどんどんふえておる時期がございましたけれども、そのころに新しく医師になります私たちの後輩の数、その中から勤務医と開業医と勘案いたしますと、その年につくられます非常にたくさんのベッドに対して医師が一人も用意されていないということを私指摘したことがございます。他の看護婦以下パラメディカルの人たちついても同じでございますし、それを並行しておやりいただかなければ、建物だけできて、いまところどころワンフロアーは締めてあるというような病院がありますように、医師の不足という問題を並行して解決しない限り、建物だけできましても、その地域の住民の方々にお役に立たないんだろうと思います。  それからもう一つ、先生の御質問の中に、公的病院が建てられるという計画が出ると、地元の医師会がいつも反対するではないかという問題も含まれていようかと思います。この問題につきましては、現在全体の問題になっております、病院と診療所の機能の分化ということばが使われておりますけれども、機能の分化でなしに、分担をきめるという考えでなければ、診療所だからかぜひきと腹くだしだけを取り扱って、その先は病院でやるんだという簡単な荒っぽい議論がよく出てまいりますけれども、そうでなしに、日本の開業医の実情を見ていただきますと、西欧諸国にない特別なスタイルになって、私たち国民医療になってきたわけでございます。この点は、冒頭に触れました私たちの書きましたものについてお目通しをいただきたいと思いますが、その上でそれぞれの役割りを果たしていくという形になりますればもっともっとベッドをふやすことは私たち大歓迎でございます。ただ、いまのままでございますと、外来でせり合うというふうな病院と診療所の情けない、状態がありますので、えてして地域の医師会が病院の新設に反対するという問題が出ておりますが、これも根本にさかのぼって早く解決すべき問題であろうと思います。  それから、医療費の格差が地域によって非常に強いという問題をお出しになっておりますけれども、端的に申しまして、私どもが年じゅうその地域で行なわれております医療内容を一つの指標として、被保険者の外来の一月の平均点というものを見ております。全国平均というのも出ておりますし、毎月支払基金から報告が出ておりますが、全県的に非常な違いがございます。これが若干医師の分布とも関係しております。京都のように全国一高い診療に従事している医師の密度を持っておりますところでは、一人一人の先生方あるいは一つ一つの医療機関の取り扱っております件数がずっと少ない。これは、この資料の中で平均して出しますとすぐ出てくる問題でございますが、そういうところでは行き届いた診療をする時間的な余裕がありまして、また、長年かかって京都府の医師会と京都の保険医協会がどうやって現代の医学の進んだところを日常診療に取り込むかという努力をされております結果、全国に飛び抜けた平均点を示しているわけでございますが、残念なことに私の住んでおります神奈川県のような地域では、取り扱い件数は非常に多い。と申しますのは、先ほど医師の都市集中という問題がございましたけれども、これも政府の資料等にあらわれてきておりますのは時代おくれだということを私申し上げたいと思います。この新経済社会発展計画というものが出ておりますけれども、この中に使われております資料等は、神奈川県の場合には適用できないのでございます。全県的に都市化が非常なスピードで進みましたために、あらゆる社会的に必要な施設が立ちおくれを来たしております。それで、これに載っておりますのは全国平均して取り扱われておりますので、三万程度の人口のところはだんだん人口が減っていく。五万程度のところは横ばいで十万以上のところがふえるといっておりますが、神奈川県にはそのようなところは一カ所もございませんで、全部がおびただしい勢いでふえております。その中に医療機関も病院もベッドも医師数も絶対数が不足しております。埼玉県よりは少しましでございますけれども。大都市集中といいましても、神奈川県の平均よりも横浜市のほうが医師数が少ないわけでございます。病院数も少ないわけでございます。これは東京の区のところと他の五大市と比較した表がございますが、これで見ますと、横浜市の場合には一けたそれぞれ少ないわけです。こういうふうな問題からいいまして、とうていこれは私たち民間の者の力ではどうにもならない。ぜひはっきりした角度でこういう問題を取り上げていただきまして、医師の分布にしましても、医療機関の分布にしましても、ほんとうに地域の住民の方たちに役に立つような施策を早く立てていただきたいというふうに考えております。

倉成正自由民主党

○倉成委員長 次に、寺前巖君。

寺前巖日本共産党

○寺前委員 四人の先生方にお聞きをしたいところですが、私に与えられた時間は私の質問と答弁者を合わせて十分でありますので、残念ながらしぼらしていただきます。御了承いただきます。  私は医療陣営の中で患者の六五%の方々に仕事をしておられ、そして開業医の過半数を組織しておられるところの、全国保険医団体連合会の田村先生にお聞きをしたいと思います。  問題は二つお聞きします。一つは先ほど小山参考人のほうから受診をコントロールしなければならない、そのために一部負担が必要ではないかという意味の発言があったと私は聞きました。これに対して、これははたして正しい見解なのかどうか。多くの保険医の皆さん方を代表してその点についての簡単な御答弁をいただきたい。  第二番目の問題は、現在の保険制度のもとにおいて赤字になってきた。そこで一つの改正案が出されたわけです。この改正案をめぐって、お医者さん方の中でも、私たちの診療報酬がこのままでは経営が成り立たぬじゃないか。むちゃな話だ。しかも患者に負担をかけるというやり方では、これまたたいへんなことだということで、戦術的には総辞退という形態が出てきたと思います。ところが、その戦術形態をめぐってまたいろいろお医者さんの中にも、また患者の側にも意見が出ました。それは、結局のところ保険組合に対して大きな打撃を与えるということになるんではないかという意見が出てきたと思います。私どもとしては、ほんとうに現在の皆さん方の診療報酬を上げなければならないという問題は当然だ。しかもみんなが安心してお医者さんにかかれるという状態をつくることが必要だ、そういう方向で考えていくならば、一つは独占薬価についてメスを入れなければならないんじゃないか。また、国の医療負担についても、これではだめなんじゃないだろうか。与党の自民党さんのこの委員会におけるところの質問の中でも、五%負担に対する批判が出されました。私は当然だと思います。そこで、全国保険医団体の先生方は、赤字問題についてはどの方向で解決の方法をやったらいいというふうにお考えになっているのか。この二つについて簡単に御意見をお聞きしたいと思います。  以上です。

田村清全国保険医団体連合会副会長

○田村参考人 お答えさせていただきます。  受診をコントロールしなければならないという考え方は、現在国民が医療を受け過ぎるという考え方であろうと思います。ところが、先ほど来申し上げましたように、だれが好んでひまをつぶして医者通いをするかということでございます。私ども日常接しております患者さんは、どうしてもっと早く来なかったのという人が非常に多いわけでございます。乱診乱療ということばがやたら使われますけれども、乱療という点では、高橋先生がおっしゃるように、正しい科学的な立場からいったら乱療だという面があろうかと思います。しかし、私どもは現在でもまだいろいろな点で患者さんに治療が足りないという考え方を持っておりますし、患者さんが私どものところへよけいに来過ぎるということは全然考えておりません。  次に、赤字に対してどうしたらいいのかということでございますが、私どもは、現在の状態でございましたら二〇%の国庫負担をして千二百億円出していただければ何にも騒ぎは起こらないで済むであろうと考えております。それで総辞退をした効力が発生しましたときに、健康保健組合に打撃を与えるために健康保険組合の被保険者に高い技術料を負担してもらうという考えがあるようでございますけれども、私どもは健康保険組合と健康保険組合の被保険者とは全然別に考えております。健康保険組合の被保険者に高いお金をふっかけることによっていまの日本の強大な健康保険組合が痛めつけられるなどとは毛頭考えませんし、そういうことによって患者さんに不利益を与え、患者さんの医療のチャンスを失わせるというふうなことがあっては、医療を担当する者として申しわけないことと考えております。政府管掌の被保険者と健康保険組合の被保険者と、治療あるいは料金の受け渡しに差別があるというふうなことでは、医師としてこの世の中に存在できないものと考えております。  それから薬の問題につきましては、現在薬の値段が、私どもが考えてまともな値段――ものによっては半値になると思いますし、高橋先生の御意見ではもっともっと安くなるということでございますが、ここにメスを入れることができましたなれば、いまのとおりに薬を使っておりましても医療費はぐんと減るわけでございますし、国庫負担と相まって財政の問題で医療保険がどうこう言われるということはなくなろうかと思います。

倉成正自由民主党

○倉成委員長 最後に、小沢辰男君。

小沢辰男自由民主党

○小沢(辰)委員 私は、時間がありませんのでやらないつもりでいたんですが、ただいま寺前君の質問に対しまして田村参考人は、医療費を二割国庫負担をすれば何にもすることはないじゃないか、したがって一部負担やその他改正は要らないのだとおっしゃいました。そこで、ちょっと聞いておりまして私は奇妙な計算をしたので、その私の計算に対して一言答えていただきたいと思いまして立ったわけであります。  先ほど総辞退の理由の一つに、医療費を五割一月にさかのぼって上げてもらいたい。四十六年度の政府管掌の医療費の見込みは六千億であります。そうしますと五割上げますと三千億必要なわけであります。そういうことで二割の国庫負担では解決ができません。それをどうお考えになるのか。そうすると五割上げないうちはもうずっと総辞退をなさるおつもりなのか。私の計算が間違っていれば別ですけれども、その点だけ一言お伺いしたいという気持ちになりましたので、簡単でけっこうですから……。

田村清全国保険医団体連合会副会長

○田村参考人 数字的に御指摘のようなことが必ずあると思います。あくまで私どもの要求でございまして、その要求を出しております根拠は、物価と人件費をそれぞれ三〇%、それから固定部分を四〇%見まして、私どもの個人のささやかな診療所を経営していきますのに、薬価が下げられましたり診療報酬が若干引き上げられましたりしてきました。その両方を比較いたしますと、一方上がりましたほうの必要な経費は、十年間に一七〇という数字を示しておりますが、診療報酬のほうは一二〇でございますので、その間の五〇の差というものが自分たちを苦しめているもとなんだという考え方を一つに持っております。したがいまして、これだけは保障してくれという要求でございまして、それがびた一文欠けても総辞退をやめないんだというかたくなな姿勢ではございません。

小沢辰男自由民主党

○小沢(辰)委員 もう一点お伺いしますが、先ほど保険料の引き上げにも反対をされておりました。入るものが少ないのに出るものが多いことは暮らしを担当する主婦の方に非常に気の毒だ。それで私は、もし今度の改正が与野党合意の上で、国民的な合意を得ていろいろな点の修正を一部しながら健康保険法が通る、そうしてある程度財政的な――まあ根本対策は私は別だと思うんですが、当面そういう根本対策を考えるにしても、政府管掌の健康保険の財政というものをある程度はめどをつけておかないと、いろいろな問題を考えるにしてもできないんじゃないだろうか。たとえば診療報酬の緊急是正はどうしてもやらなければいかぬだろう。あるいは神崎さんのおっしゃったように、病院の現状から見ますと、私ども自民党も、看護婦さんやあるいは病院の従業員の方々のことを考えましても、どうしても引き上げをしなければいかぬ、緊急是正は何らかの意味でやっていかなければいかぬなという考えを持っております。しかし問題は、全然対策なしに、また財源なしにこれをやれ、すべて国庫でまかなえという――根本的にいろいろ制度を否定していくんなら別ですけれども、一応現状を是認して、何らかそこに改善を加えつつ一方において医療費の緊急是正をやっていこうという場合には、やはり譲るべきはみんなで譲り合いながら、健康保険法の改正というものを、悪い点はやめなければいけない、あるいは直さなければいけない。国庫負担もある程度はひとつ考え直してくれというんなら、そういう線でみんな相談をしなければいけない。そういうことでこの改正法を成立さしていくほうが、より医療機関側のためにも、また国民のためにもいいんじゃないかと思うんですけれども、そうだとおっしゃいますか、それとも、いやそうじゃない、当面の問題はどうでもいいから、根本問題が大事だから絶対に反対だというお気持ちか。神崎先生と田村先生それぞれ一言ずつおっしゃっていただきたいと思います。

神崎三益日本病院協会会長

○神崎参考人 私は冒頭、ちょっと超過しましたけれども十五分の間に、これは保険である以上、支出がふえれば収入をふやすのは当然だ。私も高橋参考人のような根本的な意見も持っております。それは現状に合わなければ間に合わないじゃないかということで、私は収入の面をふやすべきだ。しかもいままで十万四千円の上限で打ち切っていた。それがどうですか、このごろの所得のふえ方は。だからその上限の十万四千円というものは大体一%をねらっておるとおっしゃいましたが、いま二十万円にしてみたって、それはちっとも負担にはならない。相互扶助であるのだから、たくさん取る者がたくさん出すという原理は、私はほんとうだと思っているのですよ。だけれども、お見舞いに物をやるような人からまで取りなさるなとか、あるいは政府管掌と組合管掌の差ですね、これは国が持ちなさい、そういうことを言っておるので、私も保険でやっておる限りは、当然上げるべきだ。上げるべきというか、収入をふやす措置を講ずべきものであろう、かように思っております。

田村清全国保険医団体連合会副会長

○田村参考人 一つの健康保険の中で組合管掌の健康保険と政府管掌の健康保険がございますが、その中で厚生省の指導によりまして、財政的に間違いのないという企業だけが健康保険組合をつくることを許されて、その企業の中でやっております。これは相互扶助の性格が強いと思います。しかし、全国一本プール計算でやっております他の政府管掌の健康保険につきましては、たいへん悪い表現でございますけれども、健康保険組合を次次とつくっていった残りのかすの集まり、財政的にはそういう状態にあります。それに対して政府が当然責任を持たれるべきであって、一方には家族まで含めて還元給付で十割の給付を受けている。しかも同じ法律の中でございます。それが、保険料は取られる上に家族は五割しか見てもらえない、他の付加給付はないというような、同じ法律の中でそういう取り扱いを受けておられて、その方々が被保険者千二百万もいるということ、しかし政府管掌の赤字、赤字と申しましても、東京都のように四十四年の決算で百何十億という黒字を出している政府管掌の健康保険もあります。私どもの地元のほうに、四十二億でございますか、黒字を出している政府管掌の健康保険もございます。そして、若い人たちの多いのは太平洋沿岸の工業化の進んだ地域でございますが、そこは若い人たちが大ぜい流入したところでございますので、黒字を出しているというふうに私考えておりますが、その黒字を出している都道府県の政府管掌健康保険の被保険者の方々が、赤字を理由にこの上にどろぼうに追い銭的な保険料の引き上げと負担金を背負わなければならないということ、これがもし組合健保のように都道府県ごとに行なわれていたらどういうことになろうかという発想を持っているわけでございます。そういたしますと、一本プールでやっている中でも、ほんとうに赤字になるところの分について、政府でごめんどうを見られるというのが、健康保険を医療保険にして使っております限り、政府の責任ではなかろうかと考えるわけでございます。

小沢辰男自由民主党

○小沢(辰)委員 終わります。

倉成正自由民主党

○倉成委員長 各参考人には長時間にわたり御出席いただき、ありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。  次回は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後七時二十四分散会

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