社会労働委員会 第10号
- 発言数
- 249 件
- 登壇者
- 14 名
- 会派数
- 5
- 開催日
- 1971/03/11
会議録
○倉成委員長 これより会議を開きます。 内閣提出の原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案、及び、中村重光君外十二名提出の原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律及び原子爆弾被爆者の医療等に関する法律の一部を改正する法律案の両案を議題とし、審査を進めます。 質疑の申し出がありますので、 これを許します。増岡博之君。
○増岡委員 この問題につきましては、まず医療に関する法律ができまして、後四十三年に特別措置法ができたのでございます。その問いろいろな経過をたどってきておるわけでございますけれども、今回の政府案の法律の改正につきましては、六十五歳以上という健康管理手当に関する年齢制限、これを五歳引き下げるという内容になっております。しかし、厚生省としましては過去数カ年の間にかなりな施策をしてきておられる。もっともわれわれそれで満足しておるものではございませんけれども、その概要をごく簡単に局長から御説明を願いたいと思います。
○滝沢政府委員 ただいまお尋ねのございました三十二年、医療に関する法律、四十三年、特別措置法ということでございますが、ここ最近の予算措置あるいは施策の拡大等につきまして、簡単に御説明申し上げます。 四十年に医療手当の増額が行なわれまして、予算額は十八億となりましたが、当初、出発当時の予算額は一億九百万でございますので、その間にかなりの伸びがあったわけでございます。それから、同じ四十年に特別被爆者の範囲の拡大、特に三日以内に入市した者等、入市という制度を新たに設けましたことによりまして、特別被爆者の範囲はかなり拡大されたわけでございます。それから、四十一年、予算総額は二十三億となりまして、やはり特別被爆者の範囲の拡大で長崎市新中川町を加えるというような措置が行なわれました。四十二年には、医療手当を三千円から三千四百円に増額いたしております。四十三年には、原爆被爆者に対する特別措置に関する法律が新たに制定されまして、予算額は前年の二十八億から四十五億ということで飛躍的に増額いたしたわけでございます。この特別措置法によりまして、特別手当の創設、月額一万円、健康管理手当の創設、月額三千円、医療手当は前の医療法からこれを引き継いでおります。それから介護手当の創設、日額三百円ということでスタートいたしたわけでございます。医療手当につきましても、同年やはり三千四百円を五千円に増額いたしております。四十四年に葬祭料の創設をいたしまして、特別被爆者が死亡した場合一万円の葬祭料を支給するといたしております。四十五年になりまして、各種手当の所得制限の緩和をいたしまして、所得税額一万七千二百円のものを二万九千二百円と改めた次第でございます。介護手当の増額も同時に行ないまして、従来日額でございましたものを月額に改めまして、二十日以上の場合は一万円、十日以上二十日未満の場合には七千五百円、十日未満の場合は五千円というような介護手当の増額措置を四十五年度にいたしております。四十六年度が、健康管理手当の支給対象の拡大と、長崎における特別被爆者の範囲の拡大等でございまして、予算総額は八十六億でございます。 以上でございます。
○増岡委員 過去この問題についてはたびたび議論せられまして、当委員会においてもそれぞれ附帯決議がなされております。特にいろいろな諸手当の増額、あるいは所得制限の撤廃というようなことも毎たびいわれてきておるわけでございます。ところで、それほどこの特別措置法につきましては、過去においては厚生省としてはかなり努力をしてこられたように考えるわけでございます。しかし、当委員会でいつも議論の根幹になりますのは、この被爆者に対して国家が責任を持って補償すべきかどうかという国家補償の問題でございます。四十四年でございましたか、前の厚生大臣は当分の間国家補償ということはむずかしかろうというような答弁をしておられるわけでございまして、現在の厚生大臣がそれにつきましてどういうお考えを持っておられるか、また、むずかしければどういう理由であるかということについて所信を承りたいと思います。
○内田国務大臣 原爆被爆者に対しまするいろいろの措置につきましては、ただいま増岡さんから御意見をまじえてのお尋ねもあり、またこのことにつきましては、各党その立場を乗り越えた形で原爆被爆者に対する国の手当てをより重厚にすることにつきまして、国会ごとに御意見がありますことも、私は承っております。ことにいま増岡さんからお話がございましたとおり、これまでの国会の論議におきましても、この被爆者の対策というものを国家補償、いわば戦争の特別犠牲者としての国家補償的な立場から考えられないか、こういうような御意見が常に出ておりますことも承知をいたしておりますが、結論から申しますと、いまの政府の考え方からは、そこまではまだ踏み切れない。国家補償ではなしに社会保障――保障の字が違うわけでございますが、社会保障の立場から被爆者に対する措置を現実の事態に沿いながら、またこういうことに対する意識の盛り上がりをも考慮に入れながら、でき得る限り厚くしてまいるというようなたてまえを今日までとってきておるわけでございます。何が国家補償で何が社会保障かということになりますと、なかなかむずかしい点はございますけれども、国家補償ということになりますと、原爆の被爆者の犠牲者はもちろんでございますけれども、その他戦争の犠牲により一般に健康上の損害を受けられた国民の範囲も他に広くありますために、それらをどうしても一緒に考えてまいらなければならないという問題も他方にございますので、この原爆被爆者の対策につきましては、御承知のように現実に即して社会保障的な措置を、たとえば医療の問題でありますとか、あるいは諸手当の問題でありますとか、そういう問題をでき得る限り手厚くいたしてまいるというような考え方でただいまのところは進むということで私どももきておるわけでございます。 しかし、こういうことに関しましては、いろいろ政府をも含めまして国民的、国家的意識の変遷というものもあるわけでございますので、この課題につきましては、今後も私どもの研究課題といたしてまいりたい、かように考えるわけでございます。
○増岡委員 ただいまのお話で、全国的に同時に考えなければならない問題であるということはよくわかるのでございます。しかしそうではあっても、そういう問題が解決をしないまでも、現在の法律で、特別措置法で、あるいは医療法で相当な援護をしていこうというかまえには変わりはないと思うわけでございます。私ども実際に被爆者の立場になった場合には、それが国家補償であれ社会保障であれ、現実に苦しみを受けておる人たちが救われる、そういうことのほうが実際の効果がある。いたずらに法理論をもてあそんでもいたし方がないというように考えておるわけでございますけれども、そういう観点から考えました場合に、この法律はなるほど国家保障でなくして、社会保障の一部として、原子爆弾の被爆者であって、いまなお特別の状態にある者に対して、いろいろな手当を支給する措置を講ずるということになっておるわけでございます。そのいろいろな手当の中に、健康管理手当というのが御承知のようにあるわけでございます。今回六十五歳から六十歳までに下げようとしておるわけです。しかしこれをもう少し突っ込んでわれわれから意見を申しますと、大体被爆者であって、いまなお特別の状態であるということが受給資格の要件で――十分な要件であるかどうかは別としましても、おそらく十分に近い条件であろうというふうに考えておるわけです。ところがそういう障害がある、いわゆる厚生省で八つの障害といっておられるそうでありますけれども、その障害があっても、六十五歳以下の方々、今度は六十歳以下になるのでしょうけれども、六十歳以下の方々は、その上に、いわゆる国民年金の身体障害者の別表にありますような範疇にある身体上の障害がある者、あるいは経済的な母子家庭、そういう制限に適格でなければ健康管理手当がもらえない仕組みになっております。しかもその上に所得制限がかぶさってくるわけでございます。したがって、健康管理手当をもらうためには、三つの関門をくぐらなくてはならないというのが現状であります。ほかのいろいろな社会保障に対しましての法律の中では、おそらくこのように三つの関門というのはなくして、法律自体の目的に合致して所得制限はこれはおそらくどこにもあると思いますけれども、この二つが通例ではなかろうか。なぜ、そういうふうに社会保障的なものであるといって割り切って考えられるならば、この被爆者の場合だけがそういうふうになるのか、私どもは不審にたえないわけです。しかし現に法律があるわけでございますから、今回のように逐次改正をしていただきたいと思いますと同時に、最終的にはこの第五条の一、二、三の条件というものはこれを排除する。現に八つの障害を持っておる被爆者に対しては、健康管理手当が全部行きわたるということ、これがあってこそ、初めて被爆者、いわゆるいつ白血病が起こるかわからないといって心配しておる方々が、たとえば若いとか外部的に身体が健全であるということによって健康管理の手当がもらえないという実態になっておろうと思うのであります。このことについて局長から今後の気持ちをお聞きいたしたいと思います。
○滝沢政府委員 ただいま御指摘の、今回の改正にかかわっております健康管理手当について、私もこの行政を担当するようになりましたときにこの内容を知りまして、率直に申して先生と同じような感じを実は持ったわけでございます。この健康管理手当の趣旨がやはり、日常十分な保健上の注意を払う必要のあるような八つの疾患がきめられておりますが、それがある者のうち、全部ということでなく、その中から老齢者であるとかあるいは母子の状態あるいは一定の障害のある者は、なかなかみずから保健に対する配慮をするのが困難であろうというようなことで限定した形で、特に健康管理手当というものはほかの制度ではこういう名称のものなり、こういう考え方のものがほとんどないという状態でございますだけに、原爆障害ということを根本に置いて、まず八つの疾患というものを規定しておる、こういうことでございます。したがいまして、四十六年度の予算にこの問題を取り上げまして、他の制度との均衡も考慮して、一応六十歳ということで予算措置をいたしましたが、全体的に見ますと、原爆被爆者は逐次老齢化してまいるということも考慮いたしますれば、一気に全体を、所得制限程度を残して条件を撤廃するということは、従来の長い経過から申しまして、容易ではないというふうに、財政措置その他からも私は考えます。一方、被爆者が逐次一定の年齢以下の者は被爆と関係ないという状態のもとに高齢になってまいるということを考慮いたしまして、なるべくこの健康管理手当の施策を将来すみやかに充実する方向が、全般から考えますと、この現行の特別措置法の中では最も妥当な措置ではなかろうかというふうな気持ちでおる次第でございます。
○増岡委員 ともかくその八つの障害を持っておるということは、いつの日かそれが白血病その他に爆発をするという危険性を持っておること、それは政府が認めておるところだろうと思うのです。にもかかわらず――だんだん年齢を下げていくことは非常によろしいわけですけれども、現在の一般社会通念では、四十以後はもう成人病が危険な時期であるといわれておるわけです。ですから、せめて四十にでも下げれば、これは成人病とそういう障害とが重なって、病気の症状を起こすかもしれないという、非常に危険なことであろうというふうに考えておるわけでございます。そういうことで、今後ぜひともそういう施策を進めていただかないことには、健康管理手当こそ、ほかのいろいろな社会保障政策的な法律の中に例のない、本法に限って非常に有意義なといいますか、特色のある手当であろうと思うので、それを、くどいようですけれども、三回もしぼってしまっているところに、多少法律自体の中にも矛盾をしておるものがあるのではないかというふうに考えるわけでございます。 特に、三つのワクのうち所得制限の問題に移らしていただきたいと思うわけでございますけれども、ほかの法律でも所得制限は当然あるわけでございます。私どもはこの特別措置法については、ほかの法律と違うのだから所得制限はなくてもかまわないのじゃないかという気持ちがいたすわけでございます。しかし、大蔵省その他の税法上の考え方もあるわけでございましょうから、ある程度のことはいたし方ないといたしましても、ただ、ほかの法律の所得制限とこちらとで、こちらのほうが相当高額であったものが近づいてきたような感じがするわけでございます。したがいまして、その緩和ということについて、これは来年はどうしてもやっていただかなくてはならないことだろうと思うのです。その点について、局長の御意見を承りたいと思います。
○滝沢政府委員 御指摘の所得制限の問題でございますが、今回国民年金の改正等がかなり大幅に行なわれまして、この原爆関係の諸手当についての所得制限につきましては、先ほど最初の御報告にも申し上げましたように、一万七千二百円からかなり大きく二万九千二百円と最近改定したばかりでございまして、四十六年度の予算措置につきましては、実はこの点は、原爆の場合は個人の所得税額によって二万九千二百円と定められておりますので、税法の改正によって、所得が伸びましても自動的にそれが調整できるという面もございまして、率直に申しましてその点の十分な配慮がなされていない、御指摘があればそのとおりでございまして、われわれといたしましても、この点につきましては御指摘のように、四十七年度予算要求等におきましては十分この点については配慮しなければならぬという気持ちでおります。
○増岡委員 その点についてはぜひとも、いわゆる何といいますか、比較的やりやすい問題であろうと思います。その前の第五条の三点によるしぼり方とあわせて、今後検討していただきたいというふうに思っておるわけです。私なぜこのことばかりを言っているかと申しますと、介護手当その他が上がらないという不平もあるわけですけれども、これはいわゆる公害病その他の介護手当とのにらみ合わせもありますから、本人自体の問題ではございませんので、これはある程度一般的な標準的なものに近づくということはいたし方ないかと思います。しかし、健康管理手当は本人自体の問題でありまして、その本人自体の問題であるその理由が、原爆による八つの障害ということになっておるわけでございます。したがいまして、そういうことを考えていただきますと、どうしてもこの際前向きに大臣からもこの健康管理手当の制限の問題についてお答えを願わなくてはならないと思いますので、よろしく御答弁願いたいと思います。
○内田国務大臣 増岡さんの言われること、私はこれはまあいまの立場の厚生大臣と申しますか、私も増岡さんと同じような衆議院議員の一人でございますが、そういう広い政治家としての立場から考えますときに、私は、たいへんよくわかる話で、ごもっともの話だと思います。私はこう考えておるわけでありますが、健康管理手当を受けられる方は、法律上のいわゆる認定患者ではないが、原爆に関連する幾つかの種類の病気を持っておる方々、いわば準認定患者みたいな方々であるが、準認定患者であるために特別手当あるいは医療手当というものを受けられない方々。しかし準であるという点から考えると、健康管理手当というものの支給範囲というようなものを増岡さんの御意見のようにできるだけ広くする。つまり幾つかの関門でしぼらないということはたいへんよくわかる。しかしそれを創設しました当時、おそらくしぼりをかけないとなかなか当時の意識からはこの健康管理手当というものが国の法律上の制度として実現し得なかったと私は思うわけでございます。そこで一ぺんこれが実現しまして、生まれまして、これが皆さま方の論議の対象になっておるわけでございますので、私は、この制度はできるだけやはり広く生かしてやりたいという政治家の立場を、今度は厚生大臣の立場に乗せまして、私は厚生大臣といたしましても増岡さんのお話を十分承りまして、今後しぼりをできるだけゆるめていく。言いかえると、できるだけ多くの特別被爆者にして認定患者でない方々がこの手当の支給を受けられるようにいたしてまいりたいと思います。 ところで御承知のように、幸いに今度の年齢を六十五歳から六十歳に低下するということによりまして、相当の範囲の方々がとにかく対象に入ってまいりますので、今後さらにいまの障害者であるとか母子家庭でありますとか、あるいはまたその所得制限などの問題につきましても、さらに今後引き続きこれらを私どもは親切に、いまのおことばに従いまして、検討の対象にいたしまして、私が政治家として厚生大臣としての職務に乗せてまいりたいと思いますので、皆さまのほうからもよろしくひとつ御指導いただきたいと思います。
○増岡委員 厚生大臣も昨年は広島の原爆記念日においでになったので、お気持ちはよくおわかりであろうと思います。今後ますますがんばっていただかなくてはならないのではないかと思います。 私は問題を健康管理手当にしぼって質問したわけでございますけれども、時間になりましたので、最後に大臣なり局長なりにお願いいたしておきたいと思いますのは、いわゆる被爆者自体が行ないますいろいろな手続、申請その他につきまして、都道府県あるいは市が行ないます窓口業務がたいへん不親切なのではないか。せっかく国会で法律が通りましても、いろいろなことから行き違いが生じて手当がもらえないという実例が多々あるように聞いておるわけでございまして、その点これは大臣と局長から一言だけそのことにつきましてのお返事を伺いまして、質問を終わりたいと思います。
○内田国務大臣 私はどんな制度をつくりましても、その制度の恩恵を受けられる方々に十分理解され、それらの人々の上にその制度が及んでいくような仕組みがとられていなければ、制度が死んでしまうわけでありまして、こういう制度を担当せられる現地の仕組みというものは、ここがつかえてはいけないと思います。私もそのことに心を配りまして担当者のほうにも尋ねましたところが、その被爆者の方々のこの措置法なり医療法に乗るための手続の周知のための手引き書のようなものを実はこしらえておって、こういうものを関係者に見ていただくようなことにもなっておる、こういうことでございます。こういうものをできるだけさらに見ていただきますことはもちろんでありますが、私のいまの気持ちが十分行政の第一線に伝わりますように、今後とも増岡さんの御親切なおことばを十分徹底させてまいるようにつとめてまいりたいと思います。
○滝沢政府委員 ただいまの御指摘の問題につきましては、私から事務的な面で申し上げますと、確かに、長崎、広島地区は別といたしましても、一般都道府県がこの問題にほんとうに相談の窓口になれるのは、率直に申して県庁の担当者くらいでございまして、その点まことに御指摘のようなこまかい配慮は今後必要であるということを率直に感じておりますので、これらの点につきましては具体的な研修その他を通じまして、もう少しこの問題の取り扱いの相談の窓口になれる人を増加する方向で検討いたしたいと思っております。
○倉成委員長 次に大原亭君。
○大原委員 第一は立法の趣旨についての問題ですが、昭和四十三年に医療法を改正しまして特別措置法が出たわけですが、そのときに本委員会において審議をした際に、附帯決議の中に、原爆被爆者援護審議会の設置――現在の医療審議会を援護審議会にかえる、そういう附帯決議をいたしたわけであります。その中身は何かというと、これは医療面だけでなしに原爆の被爆者、放射能の被害者、そういう特殊事情を考えて――この本質論はあと若干の時間でやりますが、考えて、医療面だけでなしに、生活の裏づけのあるそういう対策をとれ、こういう強い要望があったわけです。したがって全然別の法律で援護審議会を設置するということが趣旨であったわけですが、しかしこの法律を改正しまして援護審議会にして、そして援護という名前をかぶせて生活面についても考えていく。それからその現在の審議会のメンバーを、昭和四十年に実態調査をしたわけですから、それに基づいて、生活面をも考えた審議会の構成メンバーにする、こういうことが議論の中心であったと思うし、附帯決議の中心であったと私は思う。政府はとかく附帯決議をなおざりにする傾向がある。いままで、附帯決議をつけておいて法律案を通す、こういうことだけで、その場のがれをすることがあるのですが、私は、これは非常な国会軽視であると思うわけです。私が指摘した問題について、その後一体どのような努力をしておるか、こういうことについてひとつ明快にお答えいただきたい。
○内田国務大臣 ただいま大原さんから、いまの医療審議会を援護審議会に改組しろというお話がございましたが、このことは、さきの国会でもそのような御意見を関係者の方々からいただきましたし、また私が昨年の八月六日の記念式典に総理大臣の代理として広島の現地に参りました際にも、関係者の方々からそういう趣旨をも含めた御要請を承っておりまして、私も厚生省の関係者を集めて、この件につきましても実はあらためて協議をいたしました。結論から申しますと、私は大原さんのおっしゃることまことにごもっともで、せっかく法律が医療法と特別措置法の二つに分かれ、単に医療費支弁等のことばかりでなしに、被爆者の生活面につきましての施策も講ずるような形になっておるわけでございます。したがって、いまある審議会を、できたらば名称から構成から根本的に変えてしまえという大原さんの御意向にも沿いたいわけでありますけれども、少なくともその運営につきましては、法律が二つに分かれた趣旨、またいま私がだんだん申し述べましたような関係の皆さま方からの御要請を満たし得るような運営に直したい、こういう私の気持ちから検討をいたしておるわけでありますが、まことにおことばに沿えない結果になりますが、いまここで法律を直してこの審議会そのものの形をいじるということは適当でない。よく読んでみますと、医療ばかりでなしに、医療等その他被爆者に関する重要事項についてこの審議会に政府は諮問することができることになっておりますので、構成なり運営なりにつきまして、さらに十分の配慮を加えていくことが一番現実に適すると、いままでのところ、こういう私どもの検討の結果になっております。したがいまして、申し上げた線に沿いましてやってまいる所存でございます。
○大原委員 いままで、附帯決議をしたけれども、その後どういう努力をしたのですか。つまり大臣の答弁は、医療審議会を原爆被爆者等の援護審議会にするということの法律改正について、いま約束はできない、ただし運営においてその趣旨に沿うようにしたい、こういうことでありますが、附帯決議をつけて以来いままで、どういう点について具体的に努力してきたか、こういうことについてお伺いしたいと思います。
○滝沢政府委員 附帯決議の関係でございますが、四十三年、四十四年にわたりまして附帯決議がございます。四十四年度においては葬祭料の支給を制度化いたしました。それから四十五年度においては、特別手当等各種手当の支給制限の緩和、所得制限の緩和をいたしました。それから介護手当につきまして、日額を月額に改める等、その額の引き上げを行ないました。それから広島、長崎両市における被爆者復元調査、これは実態調査をしろということでございまして、これに対して補助を行ない、これが実施の完成を期しておる次第でございます。
○大原委員 ちょっと待ってください。医療審議会で何をやったか。医療審議会をどういうふうに改善したかと言うのです。
○滝沢政府委員 失礼いたしました。医療審議会につきましては、その後先生の御指摘等がございまして、審議会の委員の構成等について、現地の実情を十分承知しておられるような方に参加をお願いするという配慮をいたしまして、たとえば広島原爆病院長の重藤先生に御参加を願う、あるいは、ただいま交渉中でございますが、長崎の調先生、市丸先生等にも新たに御参加を願うということで、二十名の定員に対してただいま十九名で、一名欠員でございますが、十九名のうち、調先生、市丸先生等にお願いできるといたしますと、広島、長崎関係者で七名占めることになります。そのほか、社会学あるいは経済学等の先生も審議会の委員にお願いいたしまして、審議の内容がこれらの観点からも幅広く配慮できるように改善いたしたつもりでございます。
○大原委員 重藤原爆病院長その他医療専門の委員を増加した、これはいいことだと思います。それから、昭和四十年に実態調査をして、四十二年に中間報告をしたわけですが、これは最終報告をまだしておらぬわけだが、そういう面に参画した人を委員に入れるということもいい。私はそういうことをすべきだと思う。法律を改正して、医療審議会が援護面に第一歩を踏み出そうという意欲を示したのが四十三年の特別措置法ですから、それはまぎれもない事実ですから、そういうことを明確にして、そういう案について議論をし、意見をまとめて政府に答申をし、勧告をすることができるような積極的な援護審議会にしてもらいたい、そういうことを通じて改善をしてもらいたい、こういうことですから、法律の改正等についても、われわれはこの審議の経過にかんがみて問題を提起するつもりですが、これは政府においては十分善処してもらいたい。厚生大臣、いかがですか。 〔委員長退席、伊東委員長代理着席〕
○内田国務大臣 この審議会改組のことにつきましては、附帯決議もございますし、また、ただいまの大原さんの御意見のみならず各方面から意見のありますこと、よく承知をいたしておりますので、そういう精神をくんだ措置を私はとりたいと思います。しかし、私は正直者でございますから、ここで即刻申し上げてしまいますと、中に一つ、とりあえず福祉部会といいますか生活福祉部会みたいなものを設けたらどうか、そしてその部会長にはそういうことに適する方を選んでいただくというようなことで当面発足したらどうかと思います。これはまたひとつ皆さま方の御意向も承りまして、少なくともそういうことをやったらいかがかと思います。
○大原委員 これは、経過から見まして当然ですけれども、ぜひ努力をしてもらいたいし、できるならば十分議論をして詰めて、法律改正の際には名実ともに原爆被爆者の援護審議会にしてもらいたい、そういうふうに強く要望しておきます。 それから、いま増岡委員との質疑応答にもあったわけですが、この法律は影響するところが非常に大きいわけです。というのは、産業公害の医療法、カドミウムや有機水銀のそういう公害疾病に関する医療法にも実質的に関係をしてくるわけです。しかし、放射能の被害あるいは熱線その他の原爆による多面的な深刻な被害というものと公害の病気との関係については、救済法との関係はどのようにバランスをとるかという問題があるでしょう。あるいは、東京の空襲その他の問題が出てまいりました。これは週刊誌等にも出ておるし、テレビ等にも出ておりまして、大きな社会問題になっている。今日まで問題になっておらぬのはおかしいのでありますが、これはまたあらためて旧防空法との関係で議論することになるし、援護法等で議論いたしたいと思うわけです。そういうことがあるわけですが、しかし、いずれにいたしましても日本は世界で最初の原爆の被爆国であります。私はいままでずっと議論した中で、一九六〇年、昭和三十五年当時、藤山さんが外務大臣のときでしたが、原爆の投下は毒ガス以上の非人道的な兵器であるから、陸戦法規やその他国際慣行に違反をする、明らかに犯罪行為である。戦争に日本が負けておろうが負けていまいが、これについては国民は賠償を要求する権利がある。国家はそれを代表して行なう権利がある。ただし、サンフランシスコ平和条約で対米請求権は一切放棄している。こういう経過から特別立法で措置してもいいではないか、こういう問題で焼夷弾その他の問題が出てまいりました。いずれにいたしましても、そういう被害の深刻さと普遍的な被害、そういうこと等から考えてみまして、この問題については十分考慮する必要があるということが一つ。 それから、国家補償ではなしに、社会保障の面からこれを考えるのだというお答があったわけですが、日本の社会保障は、年金やその他所得保障が水準が低いわけですから、特別法をつくって医療の裏づけの所得保障をしよう、特別手当を出そうということになっている。その特別法の意味があるわけですから、佐藤総理からずっと昔からそういう答弁をしておりますが、社会保障の分野で改革するのだということを言うのですが、そういう面から考えても、所得保障の面でさらに力を入れるという余地は十分あると思うわけです。そういう基本的な立法の趣旨に従って、特別法をつくった精神をさらに一歩進めて援護法にしていくという点を十分検討し、前向きに善処してもらいたいと思うわけであります。これはややこしい答弁――議論はいたしませんが、厚生大臣のほうから所見を伺わせていただきたいと思います。
○内田国務大臣 先ほど増岡さんからも同趣旨のお尋ねがございましてお答えをいたしたとおりでございまして、現場の被爆者の病症等が、公害による健康被害者と、病理学的と申しますか、そういう面において全く異なるのみならず、あるいは社会的にも歴史的にも違った意味のあることは、私も決してわからないわけではございません。しかし、いまの段階においてこれを援護法の形に改めていくことにつきましては、ここで踏み切るまでの段階並びにその準備ができておりませんので、このことにつきましては、皆さま方のかねがねの御要望も十分頭に置きまして、なお引き続きまして今後の検討課題にしていただきたい、かように考えております。
○大原委員 この治療費の支給については、認定患者については保険とは関係なしに医療費の支給ができる。特別手当のうちの二号患者については、それが特別被爆者については自己負担分について国が見る、こういうことですね。これは一応、この問題についての議論はあるのですが、その裏づけとして、たとえば認定被爆者は、お話があったように一万円の特別手当、それから医療手当、健康管理手当、こういうふうなものがそれぞれあるわけですが、その手当は、四十三年当時特別措置法をつくったとき以来、若干の手直しはあったけれども、物価の上昇や生活費の上昇に応じたスライドがされてないわけです。これは適当でない。これはいままでの附帯決議の精神に沿うて、諸手当の支給の範囲や条件を緩和していく、金額を増大させていく、そういうこと――厚生大臣はよく、この間も本会議で、これは名答弁らしきものだけれども、小さく産んで大きく育てるというような、もっともらしいことをあなた言われたわけですが、そういう精神からいってもやはりそういう点を改善すべきである。四十三年以来、物価にいたしましても上昇しているでしょう。生活費の高騰もあるでしょう。したがってその医療に伴う必要経費の増大もあるでしょう。そういうことについてはいまや根本的に再検討して、手当の金額を増加していくということは、支給条件の緩和と一緒に緊急のことではないか。このことは公害疾病は直接関係ありませんが、しかし実際的にはバランスの問題として関係あるわけですから、公害疾病に対する改善についての強い要望もあるわけです。下から押し上げるというかっこうになりますが、ともかくも、いずれにしても原爆被爆者特別措置法についての申し上げたような三つの手当についてのベース改定を、私はいまや洗い直して改善をすべきであると思うが、これに対する見解はいかがですか。
○内田国務大臣 簡明率直にお答え申し上げますと、私は大原さんのおっしゃることに賛成でございます。ただ、今日まで制度が創設して間がない、いろいろ手直しをやってきた、また適用範囲の拡大というようなことにいわば追われておったというような面がございますが、それとまた単価の問題とは別でございますので、単価等につきましては物価、生活水準その他経済社会の変動に対応する当然の手直しというものは、他の制度においてもやるべきであると思いますが、このような場合につきましては、原爆被爆者につきましてはさらに優先的考慮を払ってまいるように努力をいたします。
○大原委員 第三の質問は認定被爆者の範囲の問題であります。認定被爆者は現在何人認定をされておるか、そういうことが第一と、それから認定被爆者の認定疾病、放射能その他等因果関係があり、こういうふうにいわれている中で、私はガンの問題について集中的に議論したいわけですが、ガンの中で認定疾病として認められておるもの、そういうものの病名、それと当初認定疾病として認められた肺ガンや甲状腺ガンその他ですが、それを附帯決議の趣旨に沿うて若干でも改善する努力をしたかどうか、そういう二点について、これは政府委員からでもよろしいが、お答えいただきたい。
○滝沢政府委員 認定疾病の現在の適用人員は約四千人でございます。従来申請が出されました数は七千五百、認定を受けましたのが六千四百、現状認定患者として動いておる数は約四千ということでございます。 それから、認定の範囲がきびし過ぎるのではないか、あるいは特段いまお尋ねのガン等の問題についてその後どういう検討がなされ、どういうふうに処置されているかというお尋ねでございますが、この問題につきましては、当初医学的な常識と申しますか、医学的な関連性の強いガンの疾患として、当面白血病とかあるいは甲状腺のガンあるいは皮膚ガン、それから御婦人の卵巣ガンそれから骨髄腫瘍、こういうようなものが学問的には原爆放射能との関係が濃厚であるという見解のもとに、逐次――もちろんその背景に研究成果、研究発表等の裏づけがございますけれども、ただいまの段階はそういう面を中心に認定いたしておる次第でございまして、したがって、ガンにはその他いろいろの臓器のガンがございますけれども、これらについては、現状においては発生原因において放射能との関連があるという学問的な根拠が必ずしもございませんので、審議会の委員のもちろんケースごとの総合判断ではございますけれども、一応そのガンそのものが主体になっている場合に、いま申し上げたようなガン以外については、放射能との関連を、いまの段階においても、さらに学問の進展がない限りは、解釈を拡大しているという実態はないわけでございます。
○大原委員 私は専門家ではないのですけれども、白血病というのは血液のガンではないですか。その白血病が血液のガンだと専門家ではいわれておるわけでしょう。これは間違いない。 〔伊東委員長代理退席、委員長着席〕 そうすると、血液が汚染をされるというかそういう放射能の障害を起こしている。そういうことになれば、からだ全体がそういうガンが転移したり発生したりするという可能性を持っているのじゃないかというふうに、私は医学的な知識はないけれども常識的に考えるわけです。それから卵巣がガンである場合に、なぜ胃ガンが因果関係がないというふうな断定ができるのか。私は申し上げた二つの点から見て、ガンは、悪性の腫瘍については転移するのはあるわけですから、その点はいままでの考え方に拘束されないで、ガンについては、それは放射能による場合もあるし、そうでない場合もあるわけです。発ガン性物質ということがよくいわれるが、放射能を含んでおる空気を吸って甲状腺や肺がおかされてガンになるということが常識的に考えればあるわけでしょう。しかし、それ以外に食物とかあるいは血液とかいろいろなことを通じて、胃ガンが関係がないということの断定は私はできないのではないか。二世、三世の問題も出てきておるわけですから。ですから、そういう点ではこの問題は審議会の専門家の意見を聞かなければなりませんが、研究の成果を無視するわけにはいきませんが、しかし従来のことにかかわらず、因果関係の範囲というものの頭の切りかえを行なって、そしてすべてのガンについては、悪性腫瘍については認定患者の認定対象にするのだ、こういう方針を確立して何ら支障がないのではないかと思うが、これに対しまして見解はどうですか。
○滝沢政府委員 たいへん具体的な問題でございますが、白血病がガンである、これは先生のおっしゃるとおりでございますが、白血病という名のことと関連して血液全体が関係するというふうに結びつけられますけれども、白血病はからだの中の血ができる造血機能の障害等によって、そこがガン的な変性をするために正常な人間の白血球のふえ方と全然違う、かってなふえ方をするための白血病という状態である。したがいまして造血臓器のガンでございますので、そのこと自体が血液全体がよごれるという問題と必ずしも結びつかないのでございますが、先生が、胃ガンが特に日本人に多い、またもちろん原爆被爆者の方々が逐次老齢化されていく、したがって日本全体に多い胃ガンが、原爆被爆者の中でも現実にそれに罹患する方が多いというような点から、前々この点について御主張があることを承知いたしておるわけでございますが、いまの御質問の転移という問題につきましては、肺ガンあるいは甲状腺ガン等がかりに他の臓器に転移したことが明らかであれば、そのもとが肺ガンであり甲状腺ガンであれば、私は認定の対象になるものというふうに理解しておりますが、逆の場合が学問的に明らかであれば、これは学問的に明らかでない場合もあり得ると思いますが、明らかであれば、場合によっては審議の過程でそれが認められないという事態も起こる可能性はあると思います。総体的に、先生がまとめられましたように悪性腫瘍、ガンというもの全体を、被爆者がかかった場合には認定の対象にしろという点につきましては、私も一つの見解であると思うのでございますが、従来胃ガン等の問題についても審議会等の御意見をお聞きした場合もございます。また事例としてそういう審議の事例が出てまいっておるわけでございまして、それが胃ガンだけの場合には現在認めがたいという見解をとっておられるわけでございます。以上のような問題はあくまで医学を根本にした専門的な立場からの審議会の御意見によってきめられることでございますので、総体的にガン全体を対象にするという包み方はなかなか困難と思いますが、学問の研究成果その他が明らかになりますれば、当然この範囲の拡大ということは積極的にその方向で対処するということになろうと思いますが、現在私の立場からはこの点についてそのような処置にいたすということでお答えするわけにはまいらないし、また専門的な立場もございますので、その点は御了承いただきたいと思うわけでございます。
○大原委員 つまりいまの御答弁は、甲状腺ガンであるとか肺ガンであるとかいうガンからガンが転移して胃ガンその他のガンになった場合は当然認定の対象になる、こういうことですが、しかし放射能とかそういうふうなものは、発ガン性という一つの性質を持っている。あるいは奇形児を発生する催奇性ということになれば、原爆小頭症があるでしょう。そういう問題もあるでしょう。奇形児を産む原因になる。それでガンについては原因がわかっていないのですよ。私だって常識で知っている。ビールス説もあれば刺激説もあるし、いろいろ論争されている。しかし根治療法はまだわからぬでしょう。ですから私はそういう面から考えてみて、ガンについては、悪性腫瘍については放射能との関係はかなりあるのだから、これを場所によってそう差別をする必要はないのではないのか。そういう点ではいままでの既成の審議会の委員の頭脳をもってしてはいけないところがあるのじゃないか。もう少し新しい感覚でやる必要があるのではないか。古い医学界のボスがおって、それがうんと言わなければだめだということではだめだ。これは実際委員になっている人だって、そういう意見を持っている人がおる。私は聞いている。ですからそういう意見の人が自由に発言できる場の構成が必要だし、こういうことが議論になったから医療審議会において、現行審議会においても議論してもらいたい、こういうふうに厚生大臣のほうから積極的にそういう問題の提起があってしかるべきだと私は思うわけです。この点はひとつ厚生大臣から御答弁願いたい。
○内田国務大臣 私もいま政府委員から答弁したように聞かされておりました。しかし、大原さんのおっしゃることごもっともでございますから、適当な機会にもう一度、胃ガンが認定対象疾病になるかならぬかについて審議会等でさらに論議をしてもらいたいと思います。
○大原委員 検討してもらいたい。 それから、たとえば特別手帳を持っている特別被爆者が甲状腺ガンになって、そうして認定患者の申請をしますね。これはなかなかむずかしくてできやせぬ。ずっと手続が、時間がかかっている。そこで甲状腺ガンを摘出する。甲状腺にはガンがなくなった。そういうことで、最後のどたんばへ行ったときには、審議会にかかるときにはそれは対象にならない、こういう場合が実際あるのであります。そういう甲状腺ガンに一度かかった人は再発、他に転移する可能性があるわけですから、そういう人は手術して摘出してもやはり認定患者として認定することが必要である。そういう方針を立てる必要がある。そうしないと、実はこの間新聞に出ておったけれども、あとの祭りになっちゃう。ガンについては根治療法がまだはっきりしていないのですから、早期診断、早期治療ということはいわれているけれども、手術が完成すればいいけれども、そういう場合は認定患者にしておいて、そうしてあとの現象を見守っていくというふうなそういう措置がなければ、これは法律にとらわれたことになっちゃって実情に即さないと思うが、この点はどうか。改革する余地があるのではないか。それは局長わかってなかったらだれでもかまわない。
○滝沢政府委員 認定患者の具体的な取り扱いでございますが、一応特別手当等の支給の関係もありまして、三年ごとに更新と申しますか認定をあれしておるわけでございますが、いまのようなケースについて再発等の問題は確かに考慮しなければなりませんし、その間に医療の必要なような実態も起こり得る可能性もございます。具体的な事例でございますから、どこをどうするというお答えをいま原則論として申し上げますならば、そういう点は十分配慮して、しかも認定期間は一応三年ということでございますので、これらのことも含めまして、特段具体的な事例として支障のないように考慮してまいりたいと考えております。
○大原委員 もう一つは被爆者の二世、三世の問題ですが、これはやはり微妙な問題です。それは遺伝に関する問題ですから。ただし、あなたの発言の中にもあったように、卵巣のガンは――私の質問には答えなかったけれども、そのことについては、卵巣のガンと胃ガンがどこが違うのか、それは放射能の影響としては同じじゃないかということを私は言ったのですが、そういう増殖機能とか卵巣に影響ありということで、胎盤その他を通じて被爆の当時おなかの中にいた子供、原爆小頭症その他あるけれども、それでなくて、後に妊娠をする、あるいはその子供、そういうふうな二世、三世の場合にこの問題がかなり社会問題になっている。ですから、それはやはり結論は慎重である必要があると思うけれども、しかし、これは結論を出さないということではない。疑わしい場合においては、そういう危惧がある場合においては、結論が出なくても政策の上に取り上げて、二世、三世の場合でも、特別被爆者の起因疾病でなくて関連疾病のような範囲を拡大する方法があるわけですから、そういう特別被爆者の関連疾病に該当するような事象が起きた場合においては特別手帳等を交付するというふうな、医療について給付するというふうな、そういう措置をとることは、必ずしも遺伝の問題について結論を出すことにはならぬだろう。したがって、この問題は社会問題となっているのですから、前向きに問題提起をして、この問題については積極的な態度をもって問題の解明と対策の樹立に当たるべきであると思うが、この点についてはいかがですか。
○滝沢政府委員 先ほどの卵巣の問題でございますが、一言だけ申し上げておきますと、卵巣あるいは卵子の性能等の生殖機能に関係のある細胞は、臓器の場所が内臓でありましても、これは特段放射能の影響が、学問的に好んで受ける面がございますということで、一応卵巣等はこれが影響があるだろうという見解のもとに取り入れられているわけでございます。 それから二世、三世の問題につきましては、全く先生のおっしゃるとおり、研究的な面においては、つい最近もそのような新聞記事等も出まして、その中身全体を、結論としては、染色体等の異常が、二世の場合におきましても、一般的に日本人に起こる染色体の変異とほぼ同率であって、この問題をにわかに二世に遺伝的な放射能の影響があるという結論にはしがたいというような、これは一例でございますが、全般的に研究の成果としては、二世問題に対する特殊な影響については確固たる見解がまだ出ていない状況でございます。しかしながら、社会的な不安というようなものにどう対処するかということについては、これはきわめて重大な問題でございますので、われわれは、事務的には、現状においては検討をさせていただくということにとどめまして、特に研究等の御意見等が具体的な疾病なり障害について明らかになった場合にそれと具体的に取り組むというような方向で検討さしていただきたいというふうに思っております。
○大原委員 被爆者の実態調査は、昭和四十年に予算を組んで行なわれました。それで四十二年に中間報告がありまして、四十三年に中間報告に基づいて特別措置法ができたわけであります。それで今日に至っておるわけですが、いままでの審議の段階や附帯決議等においても最終報告を出すということが懸案になっておったわけですが、私の承知する限りでは、いまだに実態調査の最終報告が出ていない。最終報告をすみやかにまとめて――その問題を厚生大臣の私見としてお話しになりましたけれども、そういう福祉的な部面においても、そういう機会にこの問題を活用していく、こういうことが必要だと思うわけであります。一体、なぜ最終報告を出さないのか、出したら都合が悪いのか、あるいはサボっておるのか、いかがですか。
○滝沢政府委員 実態調査につきまして、最終報告に入りますのは入院患者の実態調査なのでございます。この点につきましては、附帯決議等に続いて乗るというようなかっこうで、結論を申しますれば、まことに申しわけない次第でございますが、実はこの入院患者の実態につきまして、途中で中間的な見解を求めた場合に、その実態に対して一つの評価あるいはコメントをつけた、解説的な意見をつけた、その内容について、非常に社会的な批判等もございまして、この問題の取り扱いについて、率直に申して事務当局としては苦慮いたしたわけでございますが、この実態調査を今回見ました私の結論としては、解釈というものを一切別にいたしまして、その実態の数字についてはすでに取りまとめてございまして、仮の印刷もしてございますので、いままでおくれましたことはたいへん申しわけございませんが、途中にそのようないきさつ等もございまして、将来の施策にどのようにこれが具体的に生きるかという問題は別といたしまして、実態の数字だけは公表できる段階に至っておりますので、たいへん申しわけなかったと思いますけれども、以上御報告申し上げます。
○大原委員 時間が来ましたけれども、あとそれぞれ分担して質問するわけですが、私は、諸手当の問題は特別手当の問題あるいは健康管理手当、医療手当のベースの改定の問題についてだけ言いました。中身の問題についてはまだ質問をいたしておりません。これは同僚委員から――ただ一言だけ質問したいのは、健康管理手当というのは立法の精神はどこにあるのですか。
○滝沢政府委員 健康管理手当は、原爆を受けたということが、放射能の影響というものを基本に持っておることが、この医療法並びに特別措置法の特別の状態にあるという見解の基本になっておりまして、したがって八つの疾患についてこれを取り上げてあるわけでございます。造血機能、肝臓機能、細胞増殖、これはガンでございます。内分泌機能、脳血管機能、循環器機能、腎臓機能障害、水晶体混濁、この八つの疾病を学問的に放射能の影響あるものとして定めまして、この八つの疾病のある方に対して健康管理手当を支給する。したがってその他は手当の関係上所得制限を設けるということでチェックしてございますが、先ほどお尋ねの、さらにその上今回の改正による六十歳あるいは身障者、母子だけにまた限定しているというのは、これらの方々が、日常十分な注意を払っていただくのに、やはり一般的にはお困りの方が多いので、当面そのお困りの方を対象にして手当の支給をするということにいたしたのでございまして、健康管理手当というものの基本は、やはり原爆の放射能障害を受けた健康に対する不安あるいはそういうものに対する影響を、八つの疾患を限定いたしまして、その状態にある者、その原爆に関連する疾患を持っておる者に健康管理手当を支給する、こういうたてまえでございます。
○大原委員 これは私の意見だけ言っておきますが、健康管理手当は一万九千二百九十五人しかもらっていないわけです。二十七万人の中から一万九千二百九十五人、昭和四十四年度はもらっているわけです。二十七万四千名の特別被爆者の中で、健康管理手当はこれだけしかいない。立法の精神は、いまも増岡さんからも話があったけれども、放射能を受けた者はあるいは熱線その他を受けている。外傷もある。原爆の身体障害者で、たとえば顔面や頭部に醜痕、ケロイドを残している者もやっておるけれども、小頭症も入れているわけです、三千円という金額は問題にならぬとしても。放射能を受けている人は、そのときのからだの状況によっては、表面は元気である、しかし年をとる、あるいは他の病気になるということになれば治癒能力も劣っている、そういうふうにやはり放射能の影響というものが残存している。放射能は残存期間がある、そういう前提で健康管理をするために必要な経費だ、よくいえばこういうふうに考えられるわけです。ですから極端にいえば、病気が出ておらなくても、特別手帳を持っている者はもちろんその可能性があるのですから、病気が出ないように何らかの援助を与える、あるいは栄養補給をする、常時健康管理をする、こういう趣旨で健康管理手当は目標を達成するというわけだから、健康管理手当についてはいままで増岡委員との話があったが、三つのしぼりがある。それは予算上の措置を必要とするということでありますから、これは四十三年当時の事情を固執するのは私は当たらないと思う。金額についてはともかくとして、そういう問題については十分検討して、放射能の影響――影響ということをあなたは言ったが、影響に対してそういうことですから、そういう点は十分考慮をして、そして対策を立てるべきである、私はこう思いますが、そのことを強く要望いたしまして私の質問を終わります。これはちょっと大臣、答えてください。
○内田国務大臣 同じ趣旨の御発言が先ほど増岡さんからもございましてお答えを申し上げておきましたが、いろいろしぼりはかかっておりますけれども、とにかく私が考えますところによると、認定患者に準ずる方々なんだ、だから特別手当や医療手当を差し上げられないが、そのかわりに平素の健康管理のためにということでこの手当を出してきておりますので、そのしぼりにつきましては合理的な判断のもとに今後においてもできる限り広くするという方向をとる、私はこういう考えでございます。現在は二万人弱でございますが、今回の六十五歳から六十歳に引き下げることによりまして一万人近く、九千五百人がこの適用を受けることになるわけでございますので、でありますから、二万人弱が三万人弱になるわけでございますが、これをもって終わりとせず、この件につきましては今後とも制度の創設を生かすような方向で私どもは考えてまいりたいと思います。
○倉成委員長 次に、中村重光君。
○中村(重)委員 大臣にお尋ねします。 歴代厚生大臣がいままで前向きの答弁をいつもやってきた。特に内田厚生大臣は、被爆者の対策ということについては力点を置いてやらなければいけないのだというような考え方をいまお示しになったわけです。また私どもも、いま大原委員から指摘いたしましたように、三十九年の衆参両院の本会議における被爆者援護強化に関する特別決議をいたしました。それに前後いたしまして、数回にわたってこれまた衆参両院の社会労働委員会を中心にして附帯決議をつけてまいりました。 ところが被爆者の問題については、予算の面においては若干の伸びを示しております。また、特別措置法の制定によって一歩前進ということは評価できると思います。しかしながら、今回の改正案というものについては大きな期待を実は持っております。六十一回国会においての附帯決議というものを、私どももほんとうに与野党話し合いをいたしまして、何とか実りあるものにしようじゃないか、実現可能なものとしてわれわれは政府に対してこれを尊重させるという決意でもって附帯決議をつけようじゃないかということでつけてまいった、その旨政府にもこれが実施を要求してまいったわけでございますが、残念ながら提案されておりますものは、健康管理手当の六十五歳を六十歳に引き下げる。これも四十五年度の予算の中では、厚生省が大蔵省に要求したが、大蔵省はこれをのまなかった、ようやく二年がかりでもってこれが実ったということになるわけでありますから、その点厚生省の努力は評価をいたしますけれども、どうもこんなちゃちな改正案によって、歴代厚生大臣が私どもに対して約束したことがそれで満たされたというように理解をしておられるのか、まずその点率直に厚生大臣の見解を私は聞かせていただきたいと思います。
○内田国務大臣 中村重光先生は長崎の御出身であり、かつまた、私の承知しておりますところに間違いがなければ、御家族が現実になまなましい原爆の被害者でいらっしゃるはずでございます。でございますので、この原爆被爆者に対する対策につきましては、平素から非常に御熱心に厚生省にもたびたびおいでになり、私自身も詰め寄られておるわけでございますけれども、中村さんのお立場には御同情と同時に、中村さんのその御努力に私は非常に敬意を表しております。 ことにいまのお尋ねに対しましては、厚生省がこれまでやってきておることをもって決して十分であるとは私は考えておりません。ことに各方面から御要請のあります、いまの特別措置法あるいは医療法という体系ではなしに、援護法の体系に切りかえてほしい、こういう御要請が今日まで達成されておりませんところに問題があるかと思うわけでありますが、このことにつきましては、先般中村さんがこの委員会におきまして、社会党を代表して原爆被爆者援護法の提案理由の御説明をなさいまして、私もかたわらにおりまして拝聴をいたしておりましたが、この御努力に対しましても私はあらためて敬意を表するわけでありまして、いま私どもが乗り越え得ないところを、こういうことを十分に念頭に置いて政府の対策も進歩さすべきであるという一つの見本のような、典型のような法律案をお示しになりましたことと私は拝聴をいたすわけでございます。考え方の基本が相違いたしますことはまことに残念であり、申しわけがございませんが、あなたが説明されたああした考え方は私の胸にも十分残っておりますので、今後これに十分な検討を加えまして、私どものほうの原爆被爆者対策というものも充実をさせてまいりたいと考えております。
○中村(重)委員 今回の予算の中に、法律事項ではありませんが、特別被爆地域を放射能濃厚地区として拡大をした。そこで一万名程度の特別被爆者手帳を交付するということにされた。このことは、厚生省が大蔵省に対するこの要求を実現させるためになみなみならぬ苦労をされたであろうということは、これまた敬意を表することに私はやぶさかではないのであります。ただ先ほどから申し上げますように、二年がかりでもって健康管理手当の支給の対象を六十五歳から六十歳に下げた、それにとどまったということは、やはり被爆者対策に対して大きい壁があるのだということを私は認めなければならぬと思うのであります。 そこで私は限られた五十分以内の時間でありますが、基本的な問題についてこの際若干ただしておかなければならぬと思う。この被爆者対策というものは公衆衛生局の担当でございますが、これは公衆衛生の問題であろうかという点であります。いろいろ私なりの考え方を申し上げたいと思いますけれども、自分でおしゃべりをいたしましても、時間がたってしまいます。これは公衆衛生の問題なのかどうか、これをひとつお聞かせいただきましょう。
○内田国務大臣 私どもの被爆者対策というものは、言うまでもなく、昭和三十二年の医療法から出発をいたしました。そういう歴史と経緯がございますので、窓口といたしましては、公衆衛生局が、認定患者等の関係もございますので担当いたしておりますけれども、先ほど来他の委員の方に私がお答えを申し上げてまいりましたことからもお察しをいただけると思いますが、これは国家補償でなくとも、少なくとも社会保障の問題として、被爆者の福祉というものもあわせて考えていくものだという見地で、これは私が責任を持ちまして、社会局あるいは児童家庭局というような局もこの対策を担当し、また前進させる構想を持たせてまとめてまいってきておりますし、またそれがいいものと考えております。
○中村(重)委員 私は公衆衛生局が努力が足らないという意味で申し上げているのじゃないのです。公衆衛生局はそれなりの努力をしているのでしょう。しかし、どうしても壁があるのです。私は率直に言わせていただきますならば、本来的に次元を異にする公衆衛生の問題としてこの被爆者問題を処理しているところに、被爆者対策が前進をしない要因がそこに一つあるのだというように思っているわけです。いかに公衆衛生局が努力をいたしましょうとも、公衆衛生局の公衆衛生のワクの中で原爆問題を処理しようといたしますと、申し上げましたように限界がございます。制定いたしましたこの特別措置法の中におきましては、被爆者の特殊性というものは私は一部認められておると思います。しかしながら、特別措置法をつくりましたけれども、依然として公衆衛生のワクの中でこれを処理していくというその態度を変えていない。私はそこに、政府の姿勢に問題を感じているわけです。実は強い抵抗感を持っているわけです。ここで援護法が制定をされたといたします。そして援護強化という方向で被爆者対策を進めてまいりますならば、おのずから公衆衛生局の所管ではなくなってまいります。これは援護局の所管に移行していくのではないかと私は思うわけであります。そうした基本的な問題にものさしを当てて大臣は考えていかなければいけないのではなかろうか。だからいま大臣は、健康管理手当の拡大の問題であるとか、あるいは医療審議会の中でその運用の面よろしきを得て、かなりこれを強化してまいりたい、こう言いました。そうした気持ちであろうと思います。しかし、しょせんはいまの公衆衛生のワクの中で処理するわけでございますから、事志と違うということに大臣の立場からはなるのかもしれませんけれども、私は大きな期待を持ち得ない。だから、この際ひとつこの被爆者対策の問題につきましては、基本的にこの問題に対処していくというようなかまえをお持ちにならなければいけないのではなかろうかというように思います。あらためてひとつ大臣の見解を伺ってみたいと思います。
○内田国務大臣 段々のお話承りましたが、いまの私どもの考え方のもとにおきましては、被爆者対策を公衆衛生局から社会局あるいは児童家庭局というような方面に広げていくということで私どもは進んでおりまして、お説のように援護局に持ち込むという考え方に進んでおらないわけでございます。それはもうおわかりのように、また、たびたび議論がございますように、被爆者対策を戦争犠牲としての国家補償という立場から取り上げるか、あるいはまた、私が申し述べてまいりましたように、医療だけの立場ではございませんけれども、それに社会保障という線ででき得る限り手厚く処理していくのが一番現実的である。理論的には、中村さんのお説、また先般中村さんから御説明になりました援護法の趣旨が、私にもわからぬわけではありませんけれども、戦争の他の犠牲者一般、あるいはまた軍人軍属等に対する援護の特別の措置というようなものとの関連を考えてまいりますと、私どもといたしましては、そこに現実には処理し得ないむずかしいものがございますので、現実に処理しやすい方法をもって、原爆被爆者の医療ばかりでなしに、実質的な意味の援護あるいは国の協力というようなものもいたしてまいる線で進む、こういうことでまいっており、その点は何とぞ御理解をいただきたいと存じます。
○中村(重)委員 その点であまり議論をいたしましても時間がたちます。 それでは端的に伺いますが、先ほど被爆者対策についての基本的な考え方として局長から、身体障害者であるとか、母子家庭であるとか、いわゆる高齢の被爆者、そういった人を対象にしている、当面、非常に貧しい人というようなことを対象としているのであるけれども、しかし実際は放射能によって影響を受けた被爆者に対しての措置ということが基本であるというようにお答えになったわけです。そうなってまいりますと、私がいま申し上げましたようないわゆる大きな壁にぶつかってこようと思うわけです。そこで大臣、この被爆者対策というのはいわゆる救貧原理、そういう形の上に立ってお進めになっておるということになるのではないでしょうか。国家補償ではなく社会保障だというのです。これは言うまでもなく、貧しい人に対して生活保護を加えていくのだということでありますから、原理としては救貧原理である。それでよろしいとお考えになりますか。
○内田国務大臣 私は、被爆者対策を戦争犠牲者としての国家補償という立場からとらえることには踏み切れない面がございますけれども、しかし、私が申します社会保障の面におきましても、決して単なる救貧政策として取り上げてまいるべきものでもないと考えます。現実には、いろいろの諸手当の支給につきまして所得制限がございますけれども、これは社会保障一般の場合に、これまでの考え方としては当然についてきておる措置でございますが、現実にはこれによって制約される面ができるだけ少ないほうがよろしいと思いますので、したがって所得制限などにつきましても、所得金額何百万円以上には適用しないというような行き方でなしに、むしろ税額規制という措置をとっておりまして、毎年税の減税がございますので、自動的に所得制限が緩和をされておる、こういう仕組みになっておるわけであります。しかし、今日の所得制限につきましても、私がいま申し述べましたような趣旨から、さらに被爆者に対する私どもの考え方をより如実にあらわすためには、これにつきましても私は今後さらに検討をいたすべきものがあると思いますので、ここで所得制限を全部解くということは申し上げませんけれども、私は、そういう面につきましても十分の関心を持ち、また皆さま方の御意向も承りながら進みたいと思うものでございます。
○中村(重)委員 何か大臣は、これではいけないのだ、何とか中身としては国家補償というような方向で進めていかなければならぬという気持ちを持ちながらも、やはり壁にぶつかっておるということが、いまのお答えの中からも十分受け取られるわけです。これは、所得制限を緩和していくとか撤廃していくとかということでも、やはりいま押えられてきておる、そのワクの中でやらなければならぬ。そのことは、単に被爆者であるからという対策ではなくて、被爆者が貧しいからということなんです。やはり救貧対策なんです。これがいけない。これが基本的な問題として大きな壁になってきている。大臣、被爆者は何を求めておると思いますか。いま大臣がお答えになりましたように、ただ苦しいから何とかひとつ生活のめんどうを見てもらいたい、ただ病気になったからその病気をなおすようにしてもらいたい、そのことだけを被爆者は求めておるとお思いでしょうか。
○内田国務大臣 私は中村さんとは友人でありまして、あなたとも接触のあるものでございますので、あなたは現実に御家族を原子爆弾によってなくなされた、そのお気持ちというものは私は痛いほどわかります。 あなたは、決して国に対する物質的な社会保障を求めんとするものでもないでしょうし、あるいはまた、御親戚等の被爆者の病気について、国から医療措置を求めようとするものでもない。とにかく、日本民族が、世界で最初に用いられた原子爆弾によって民族の犠牲者としての被爆者になった。その気持ちは、一億の日本国民の代表といいますか、妙な代表でまことにことばは悪うございますが、一億の国民にかわって自分たちが犠牲者になったんだ。それを、一億の国民、ひいては一億の国民を代表する政府が十分理解して、あたたかい精神的な対策をもとってほしい、こういう気持ちがあなたにはおありだろうということは私もよくわかるわけでございます。したがって、国家補償には踏み切れませんけれども、私は、あなたがつくられた法律案というようなものも十分胸にとめながら、所得保障、またその他の資格制限等につきましても、十分いまの考え方から私は割り切ってまいりたいと思います。
○中村(重)委員 大臣、いまあなたのお答えになりました点、おっしゃるように、被爆者は、原爆のせいだという、それを認めてもらいたい。これは、被爆者だけではなくて、一億の国民がそうなんです。旧地主に対してはあのような補償をいたしましたが、これは一億国民の支持はありませんでした。しかし、被爆者に対しては、国際法を無視した、国際法に反する兵器を使った、そして無辜な善良な人間を殺してしまった、ほんとうに気の毒なんだ、この犠牲者に何とか報いなければならないのだ。被爆者対策を政府がどんなに強力に進めようとも、一億国民はこれには抵抗いたしません。その国民的な理解の上に立っておる被爆者に対して、予算の面においては、九兆四千億の中で依然として今日百億に達しないのです。そして、その中身に至っては、被爆者の権利を正当に認めていこうとする態度ではなくて、苦しいから何とかしてやろう、病気にかかっておるからこれはほっておけないのだ、そういう態度に終始をしておるということは、被爆者の大きな不満であり憤りであるわけです。 なるほど被爆者の中には、たくさん貧しい人がいるのです。栄養をとらなければならぬ、とるべき栄養がとれない、そのために健康が弱って原爆症が悪化をしていくというような形、そういうものがあるのです。特別措置法の中におきましては、若干そうした被爆者の特殊性というものを認めてきたと思います。認めてはきたようでありますけれども、だから援護しなければならないというのではないのです。その考え方に立っていないのです。やはり、貧しいからというその線を依然として出ようとはしていないわけであります。被爆者は、労働力が奪われた、低下した、これを補償してくれということを要求をしておるのであります。私は、その被爆者の要求は無理ではないということをあなたの答弁の中から理解ができます。それならばなぜ今日、被爆者に対するところの援護審議会を、何回も何回も公約しながら、委員会の附帯決議を受けながら、何のためにこれが踏み切れないのでしょうか。そのような前向きの答弁をしながら、歴代大臣もその答弁を繰り返してきながら、なぜにその答弁を生かすようなことをしないのでしょうか。あなたは先ほど、被爆者援護審議会をつくるという問題について、そこまでは一挙にいけないのだとおっしゃいました。運用の面でその趣旨を生かしていくようにつとめたいとおっしゃいました。私は、あなたのその誠意、気持ち、それを理解できないのではないのです。しかし、あなたの気持ちを理解しただけではどうにもならない。そのことが実行されなければならないのであります。園田元厚生大臣も、被爆者援護審議会をつくることをかたく約束をしました。そして、ここに私は議事録を持っておりますけれども、厚生省の前の企画課長がみずから書いて、このような答弁でよろしゅうございますかといって私に持ってきた、そしてそのとおり園田厚生大臣が読んだのがこの書類であります。この答弁内容である。被爆者援護の問題については、学識経験者その他各種の意見を十分聞く機関をつくらなければならないと大臣が理解し、大臣もそうした考え方の上に立って被爆者援護を進めていきたい、こういうことであったがどうかという私の、これは予算委員会の分科会で園田元厚生大臣の答弁に対して、社会労働委員会で私はあらためてこれを質問したのに対して、厚生大臣は、この問題につきましては十分検討するよう、事務当局に対して各省との間に積極的に意見調整をするように指示いたしております、私としても前回申し上げましたような方向で引き続き実現を期する所存であります、と答弁をしております。前の厚生大臣斎藤さんも、私の質問の関連質問に立った田邉委員の質問に対しまして、被爆者援護審議会をつくらなければならないもうその時期に来ているというようなことについて、そのように理解をしてよろしいかということについて、それでけっこうでございますとお答えになっております。あなたは、元大臣、前大臣の答弁はどうでもよろしい、つくりたいけれどもこれをつくれないのだ、そこまでいけないのだということでありますならば、納得のいくように答弁をしていただけませんか。責任を持たなくてもよろしい。私どもに理解ができるように、納得ができるように、こうした答弁に対して心から期待をしておる三十二万人の被爆者の十分納得のいくような答弁をしていただけませんか。
○内田国務大臣 中村さんのおっしゃることは、私もよくわかりました。また実は前からわかっておるつもりでもございます。前の大臣が言われたとおりに現実にはなかなかなっておりませんので、私がここでこの場だけの答弁をいたすことはかえって申しわけなく存じますので、先ほど来から、これは国家補償と社会保障との問題について越えがたいものがまだ存在するので、結局その問題との関連において審議会等の問題も論ぜられてくることにもなるわけでございますので、この問題につきましては、まだしばらくひとつ検討の過程に置かしていただきたい、こういうことを申し上げておる次第でございます。 実は私どものほうのやっておりますことにつきましても、戦傷病者戦没者遺族等援護法というような法律がございまして、軍人のみならず軍属、準軍属の方々、またその遺族等に対する処置まで講じておることは御承知のとおりでございます。でございますので、中村さんのほうで今度お出しになりました法律も、かりに形を変えますと、現行の援護法に第三章なり第四章なりというものを設けて、そこに原子爆弾被爆者、こういう規定を置くのとそれは同じことにもなるわけでございましょうが、なかなかそこまで踏み切れない。といいますのは、あの戦争のもとに、原子爆弾の被害ではございませんけれども、国内に焼夷弾あるいは一般爆弾はむろんのこと、艦砲射撃その他等によりまして、生命、身体を失われました軍人、軍属、準軍属以外の方々がたくさんおられまして、それらの広い意味では戦争の犠牲になられた方々との関連をも考えつつ、この原爆被爆者の特別の地位というものも措置をしなければならない問題も残っておるわけでございますので、さような点を考慮いたしますと、せっかくその案をつくりましてもなかなか突破できない、こういうような状況でありますことが、私が正直に申す現実であります。でありますから、そういうことにも配慮を加えながら、とにかく理論で割り切るまではほうっておくことは私は適当でないと考えますので、いまの医療法なりあるいは特別措置法なりというものの内容を、先ほど来だんだんと申し述べてまいりますように、充実し、積み上げてまいる、こういうことを現実に私が行政家としてとっておるということでございます。おしかりを受けますこと、まことに残念でございますが、そのようにどうかひとつ御理解を願いたいと思います。
○中村(重)委員 私は、内田さん個人を単に逃げの答弁をする人だとは思ってないのです。しかしあなたも、厚生大臣としていつまでもその地位におられるかどうか、これはわかりません。歴代大臣が、援護審議会一つの問題についても食言を重ねてまいりました。特別措置法を強化するとおっしゃいましたが、再三再四繰り返して申し上げておるように、二年がかりでわずか年齢制限を五歳下げた、これで信用しろというのが無理じゃないでしょうか。 それでは伺いますが、援護審議会をつくるために、元厚生大臣の答弁された各省との調整をいまやらしておるとのことでございましたが、各省との調整の結果だめだったという形は、どうしてそういうことになったのでございましょうか。どのような話し合いを各省と進めてこられたのでしょうか。それをひとつ、これは厚生大臣からでなくても、局長からでもけっこうでございます。
○滝沢政府委員 園田大臣が、各省とこの問題について、というのは、審議会でございますので、行政機関の変更ないしはということで行政管理庁との関係があります。それから財政措置的な問題として大蔵省との関係もございます。それで、ちょうどあの御答弁がございましたのが、記録によりますと五月でございまして、その後私は公衆衛生局長に就任して以来、この問題について、今回の法律改正等もありますので、いろいろ勉強しまして、この間のいきさつ、内容、当時の処理状況等について検討をしたのでございますが、具体的には、行政管理庁との関係では、当時あるいはそれ以前から行政機関の新設ないしは――もちろんこれは新設とはならずに――医療審議会を援護審議会に変えろということでございますから、新設とはならないのでありますけれども、これらの問題は審議会縮小の方向に一つつながっているということで、今回公衆衛生局におきましても、精神衛生、結核等の四つの審議会を統合いたしまして、公衆衛生審議会一つにまとめたような――これは一つの事例でございますが、そのようなことで審議会の縮小の方向というものが一つ問題点としてございます。しかし、これは何も積極的に援護審議会をつくる上に大きな問題点であるという意味ではございませんが、行政の一つの背景としてそういうものがありました。 そういう一点と、それからいま大臣が申し上げましたような基本的な問題点を、厚生省事務当局としても、いろいろ認識しておりました関係で、これを援護という方向に踏み切ることについては、次の年度の予算編成の場合でもこれを見送らざるを得なかったというのが実情であったわけでございます。
○中村(重)委員 いろいろ答弁をされましたけれども、結局できないじゃないですか。いま一挙にできなかった。先ほど来大原委員の質問に対してもお答えになりましたが、私の質問に対しても前向きの御答弁がございましたが、しかし、いまの局長の答弁から私どもが感じ取ることは、それは援護審議会というのはできない、そうでしょう。それでは答弁のための答弁じゃありませんか。逃げの答弁ですよ。援護審議会を新たにつくるのか、医療審議会を改組するという方向で厚生省はほんとうにさっそく取り組んでいかれる御意思があるのか、端的に大臣お答えください。
○内田国務大臣 私はうそを言わない人間で、わりに親切な人間でございます。それは中村さん御承知のとおりですが、それで、先ほどもお答えを申し上げたのですが、とにかくいまの審議会の中に福祉部会のようなものをつくって、そうしてそこに、そういうことに適切な部会長さんを選んで、そして、いまお互いに議論している面につきまして、審議会としても研究していただいたり、あるいはまた、いまの特別措置等の内容の充実につきましても、単に医療面からばかりではなしに、福祉面といいますか、援護面といいますか、そういう面の研究もしていただくようにしたらどうだろうかということを、私が私の考えとして大原さんにも御相談的に申し上げたところでございます。しかし、あなたがそこまでおっしゃるなら、どうでしょうか、いま私は、大原さんには福祉部会と言いましたが、この医療審議会の中に援護部会というものをとにかく設けさせる、これは私でできることでありますから、私の考え方として、援護部会というものを設けて、そして最も適切な部会長さんの御就任を願う、こういうことに私は当面いたしたいと思います。 さらに私は、決して逃げるつもりはございませんが、いまの審議会を改組して援護審議会にするということになりますと、先ほどの根本の問題を割り切らないと実はできないということが本音でございますので、ものにはやはり段階もございましょうし、また、いろいろ政府を含めて国民全体の意識の高揚というものもございましょうから、そういう方向を少しでもだんだん進めるような措置の一つとして、いま申し上げたことを私は御提案を申し上げ、また御賛成でございましょうから、そういう部会をつくることを検討をお約束いたします。
○中村(重)委員 大臣の前進した答弁には敬意を表しますが、私ども決してそれで満足するものではありません。しかし、大きく前進しようという誠意はわかるわけであります。ただ名前だけではだめなんです。いまの医療審議会の中につくります援護部会そのものが、名実ともに伴ったものでなければなりません。その内容を充実するように整備される御意思であると理解してよろしゅうございますか。
○内田国務大臣 御論議のようなことをここで論議をしていただいて、そうして意識の前進につとめる、こういうことをいたしたいと思います。
○中村(重)委員 それから、先ほど国家補償の問題等々で出てきたわけでございますが、実は、原爆被爆者というものの特殊性は何かということになってまいりますと、単に放射能だけではないということですね。ここを、これから援護部会等をおつくりになってやられる上において、十分な認識の上に立ってやっていただかなければなりませんが、要するに被爆者は、社会全体として破壊をされたという事実認識の上に立っていただかなければなりません。 先ほど局長の答弁の中で気になりましたのは、一般戦災者ということばをお使いになりました。同一次元で被爆者の問題を見たのでは、何ぼ援護部会をつくっても前進はあり得ません。被爆者というものは、家族を奪われました、近親を失いました、職場を奪われてしまいました、そして、健康を破壊され、生活力は低下させられてしまっているのであります。したがって、被爆者の苦しみというもの、被爆者をどう遇しなければならないかということは、一般戦災を受けたという経験の上に立ってものを判断をいたしましては、決して真に被爆者対策として実のあるものになり得ないということです。このことは、すなわち被爆者に対して、一般戦災者と区別をして、いわゆる国家補償の精神の上に立つということであります。それは不可能なことではありません。政府が踏み切りさえすればいいわけであります。 あとで私は学校報国隊の問題等々の点で私の意見を申し上げて、また見解を伺いますけれども、戦傷病者戦没者遺族等援護法というものが国家補償という精神の上に立ってでき上がっておることは御承知のとおりであるわけです。それがこの被爆者の場合においては不可能だということがどうして言えるのかというわけであります。一般戦災者と同一次元で見ることがいかに当たらないものであるか、また、まじめに静かに被爆者の置かれておる現状を御理解、御認識になるならば、解決し得る問題である、いわゆる壁を突き破ることができる、踏み越えることができるものだということを私は申し上げたいのであります。これからそうしたかまえでもって検討をして進めていかれることを大臣に強く要請をしておきたいと思いますが、大臣、いかがでございましょうか。
○内田国務大臣 何しろ社会党を代表して被爆者援護法を御提案になっておられる中村さんのことでありますから、あなたのお考えは私はもうよくわかります。しかし、先ほど来だんだん申し上げますように、国家補償という形では、いまこの段階で国としては踏み切れない諸般の事情がございますので、お話はよくわかりましたが、私どものほうでもさらに継続して検討をいたすことにいたしたいと思います。
○中村(重)委員 その点は議論をしたいのですけれども、時間がありませんから議論をしません。しかし、そうした置かれておる被爆者の実態というものを念頭に置いて、先ほど来大臣からいろいろ前向きの答弁があったわけでありますから、したがって、その精神の上に乗ってともかく取り組んでいく、検討はする気持であるということに理解をしてよろしゅうございますね。
○内田国務大臣 そのとおりでございます。
○中村(重)委員 そこで、具体的な問題について、先ほど、健康管理手当の拡大のことについて、大臣も局長もともにこのことについてはお答えがございました。具体的に健康管理手当の拡大についてどのようにお考えでございましょうか。これではいけないとお考えになっていらっしゃるわけですか。六十五歳を六十歳に引き下げた、これではだめだというお気持ちがあられるということは、御答弁の中から私どもは十分くみ取ることができたのですが、どの程度に拡大をしていかなければならぬとお考えですか。
○内田国務大臣 今度の健康管理手当受給資格の拡大は、たいへん小さい一こまのようには見えますが、実際は、先ほども述べましたように、人数にいたしましても五割程度の拡大になります。この特別被爆者の方々がだんだんお年を召してこられる。したがって比較的老齢者が多いというような状況でございますので、六十五歳という受給制限を六十歳に下げますことによりまして、かなりの方々が受給資格を得られる、こういう現象になるわけでございます。しかし、そのほかにまだ母子家庭のおかあさんであられるとか、あるいは他の障害を持っておられる方に限るというような制約が残っておりますし、また、先ほど来御議論がありますように、所得制限の問題もございます。また、最初にさかのぼりますと、八つの関連疾病というような前提もございます。これらの問題につきましても、今後決して検討はしないということにしないで、さらにその健康管理手当というものが、被爆者の立場を考えてこういう仕組みをつくったという当初の原点に立ち返って、この問題を引き続き前向きで検討していく、こういうことにいたしたいと思います。
○中村(重)委員 具体的に一点ぐらいお答えができるのではないかと思うのですが、五歳下げただけで五割以上とおっしゃった。それならば年齢制限だけでもはずすということが私は適当ではないかと思います。そこまでは言えるんじゃないでしょうか。
○内田国務大臣 たいへん意地悪いお答えになって恐縮でありますが、年齢制限を取っ払うことができませんでしたので六十歳ということに下げました。しかし、これは一年たちますと五十九歳の方が六十歳になられますし、そのうちに年齢制限を置くことがおっしゃるように無意味になってまいりますので、このことにつきましては、六十歳をもって終わりということではなしに、お話しの点につきましては引き続き検討をいたしたいと思います。
○中村(重)委員 それでは年齢制限を引き下げるというような方向で、来年度の予算要求にあたりましては、ともかく健康管理手当のいろいろな制限を緩和するための要求をされる御意思であるというように理解してよろしゅうございますか。
○内田国務大臣 管理手当受給の資格要件ということに限らないで、もちろんそれをも含めて、あるいは金額の問題、介護手当の問題等もございますので、一般の被爆者に対する処遇全体を、この日本の経済成長やあるいは物価や、また日本国民の生活水準の上昇等も考えながら、この制度の趣旨が十分生かされていくように、もっと広くいろいろな面から検討を加えた上で予算要求もいたしたいと思います。
○中村(重)委員 認定被爆者の制度をはずすという御意思はございませんか。私は、これははずすべきだと思う。大臣がお答えになっている方向とは逆ですから、認定被爆者の場合は。どんどん減っていく一方です、ふやさないですから。いまの医療審議会というのは、被爆者のためにあるのではなくて、認定被爆者にしないように、しないようにということで、むしろ壁を厚くする、そういう役割りを果たしているような感じがしてなりません。その面から、先ほど、調先生のような単なるお医者さんということではなくて、社会人としてもりっぱな人物、被爆者の問題について知識と高邁な抱負経綸を持っておられる方々を委員としてお加えになるという御意思を明らかにされたことは、ほんとうに敬意を表したいと思います。私は、よほど変わってくるだろうという期待を持ちますけれども、いずれにいたしましても、いまのような認定被爆者の認定のあり方はだめなんです。これをむしろ撤廃されることが適当ではないでしょうか。
○滝沢政府委員 認定そのものの中身、あるいは認定にあたって、認定をされる人と認定を受けなかった人との問題等を含めまして、この認定の問題は確かに非常にむずかしいことではございますが、それだけに、医療審議会におきまして、それぞれの専門の立場から、総合的な観点から御審議を願って、認定という制度を設けておるわけでございます。したがいまして、先ほど来大原先生等から、胃ガンの問題等も含めて、ガン全体が放射能に基本的に関係があるんじゃないかというような議論等もございますので、審議会そのものの存在はきわめて大事でございますと同時に、いまいろいろの特別手当等も含めて、認定患者というものの存在はやはり必要でございますので、われわれ、この原爆医療全体の立場から考えましても、認定という制度、そしてこれを全額国が負担してやっております制度は、患者の数そのものの変動なりその他は、今後比較的長期にわたってどういう変動をするかということについては、確かにおっしゃるとおりどんどんふえていくというような形ではないにいたしましても、制度そのものをなくすということについては、現状の段階ではむずかしいというふうに考えております。
○中村(重)委員 認定被爆者と健康管理手当の支給対象の被爆者とどれだけ違うのですか。これは科学的に画然と区別ができますか。健康管理手当の支給の対象となる八つの厚生省指定の病気、それと認定被爆者の場合、重いか軽いかというだけのことじゃありませんか。科学的な根拠がないじゃありませんか。何のために認定被爆者というような――ともかく特別手当を支給するとか医療手当を支給するということの歯どめをするための役割りしかこの認定被爆者制度は果たしていないじゃありませんか。こういうことを残しておいて、被爆者対策に前進するために取り組んでいこうという答弁が生きてまいりますか。だめですよ、そういうことでは。 もう一つ、あわせてお答えください。近距離被爆者の問題。あなたのところにもいろいろな資料として出て――もう時間がありませんから私はあえて読み上げませんけれども、こういったような近距離のところにおられて、放射能の非常な影響を受けておる、こういう人たちこそ認定被爆者の中に入れていくというぐらいの拡大の方向でなければならない。そうしてこそ初めて認定被爆者の制度というものが生きてくると思う。いまのような、手厚い措置を加えることに対して壁をつくるような認定被爆者制度というものはさっそくやめてもらう、その方向でやってもらわなければならないと私は思う。これは抜本的な問題であります。大臣、いかがでございますか。
○滝沢政府委員 ただいま先生御指摘の、近距離ということによる放射能の影響は、これはもう濃厚であることは間違いないんではないか。したがって、そういう方の健康状態に応じて、特に認定患者というようなものにしたらどうかということでございますが、これにつきましては、基本的に、近距離であることによって放射能の影響が強いというこの原理は間違いございませんけれども、それぞれの当時の実態によってからだへの影響というものは個人個人それぞれに差がございますので、一つの考え方としては、近距離ということによってとらえる方法もあろうとは思いますが、やはり認定患者というもののいまの医療の実態、こういうものから考えましたときには、近距離ということだけでこれを認定患者――極端に言えば患者でない方もあり得るわけでございますので、やはり御提案の趣旨は、近距離であることを十分考慮して認定をしたらどうかという御提案であろうと思います。この点については、現実の審議会では、まず距離が近いということが最優先の条件になっておりますので、先生のおっしゃるのは、もっとその点を強く考えて、幅を持たせていわゆる認定の上に考慮したらどうかという御提案であろうと思いますけれども、その度合いの問題だけでございまして、まず距離が近いということは最優先に、いま審議の第一条件になっておるわけでございます。
○中村(重)委員 それは、いまのように認定被爆者の数をどんどん減していっているというような姿ではなくて、ほんとうにこの認定被爆者の制度というものを有効に生かしていくために、いわゆる被爆者に対する手厚い措置を、いま公衆衛生局のあなたの所管の中でやり得ることはそういったようなことであろうと私は思うわけですから、そうした前向きで、いままでの認定被爆者のあり方に再検討を加えて、前進した方向で進んでいこうとする御意思である、そのように理解してよろしゅうございますか。
○滝沢政府委員 そういう問題に対処する姿勢としては、そういう基本的なものが大事でございますが、基本にはやはり審議会というものが存在する、その審議会に、もうこういう形でもってぜひこれを認めていただくように政府の方針をきめますからというような問題の持っていき方自体に、一つ検討しなければならぬ点がございますので、この辺は審議会の存在の意義、審議会というものの長年果たしてきた役割り、それによってできるだけ公平を期してきたその役割りというものも考慮いたしまして、十分審議会の先生方の御意見を聞いてこの問題に対処していきたいというふうに考えております。
○中村(重)委員 また議論しなければならぬようになるんだけれども、問題はそこですよ。あなた方がどんなにここで前向きの答弁をなさっても、特別被爆者の医療の法律の規定の中に、医療審議会というものが、お医者さんという専門的な立場からすべてを決定しておる、非常に狭い視野に立って。それを破らなければいけない。やはり厚生省が、公衆衛生局が、あなたのほうで情熱を傾けてやろうとおっしゃるならば、そういう窮屈な、非常に狭い視野で医療審議会が審議をしようとするその方向を拡大していくようなことでなければならぬと私は思う。私は医療審議会なんかどうでもよろしいとは申し上げないのです。その審議会がいままで非常にきびしくしてこられたから、そういう非常に狭い視野、狭い方向でいまやっておられるところに問題があるのですから、ともかく健康管理手当の支給対象の病気と認定被爆者とは科学的に区別する何ものもないわけですからして、そういった点について十分審議会にも厚生省、公衆衛生局、あなたのほうの意のあるところ、きょうの大臣の答弁、そういうものを十分体してもらってその審議に当たってもらう、こういうことでなければならぬと私は思う。そのことについてもう一度お答えください。これは専門的なことじゃないから、大臣から……。
○内田国務大臣 この特別被爆者の中で認定患者の認定制度というものはやめてしまうということは、いま直ちにはむずかしいわけでございますけれども、しかし、これはそもそも原爆被爆者の方々の利益のために、これらの人々のめんどうを見るためにできている制度でございましょうから、私は、この被爆者の認定にあたりましては、なるべく本人の利益になるように見ていく、五分五分のものは本人の利益になるように認定患者としての認定をすべきものだと私は考えます。これは私はとってつけて言っているのではございませんので、そういうふうな認定をしていただくように、私どもも審議会のほうともお打ち合わせをしてまいるのがよかろうと思います。
○中村(重)委員 実は援護局の担当になるわけでありますが、文部省その他関係省庁と関係がありますけれども、旧防空法に基づくところの犠牲者、防空従事中の犠牲者、長崎医大の学生あるいは看護学校の生徒あるいは警防団員、そうした問題についてお尋ねをしたかった。しかし時間が参りました。あらためて、戦傷病者戦没者遺族等援護法の改正案の審議があるようでありますから、その際にひとつこの問題について質問をさせていただくことをお願いをいたしまして、きょうは時間が参りましたからこれで終わりたいと思います。
○倉成委員長 次に、山本政弘君。
○山本(政)委員 原子爆弾被爆者援護法が社会、公明、民社野党三党で提案をされました。これは昭和四十三年以前に社会党のほうで一度法案を提案した。その後四十三年に十二項目にわたって附帯決議をしまして、そして今日に至った。この援護法は附帯決議の趣旨を体して実はつくられたものと思うわけでありますが、三党提案でこの法案が出されたという意義について、提案者のほうからひとつ簡単でいいですから御説明いただきたいと思います。
○中村(重)議員 先ほどの私の大臣に対する質問の中で出ているわけであります。いまの特別措置法あるいは医療法、これは被爆者の正当な権利が保障されていない。国際法違反の兵器を使って三十万の被爆者が殺された、しかも財産がすべて焼失をされてしまった。そして、生きている被爆者も実際は働く能力は低下をしていく、病勢は悪化していくという現状に思いをいたしまして、当然これは国家補償の精神にのっとって被爆者対策は進めていかなければならない、そうした考え方に立って提案をしているところであります。
○山本(政)委員 そうしますと、たいへん皮肉な質問になりますけれども、提案者が先ほど大臣に御質問なされたときに、被爆者の援護というのは救貧であり、社会保障であり、国家補償である、こういうお話があった。私は、厳密な意味で言えば救貧じゃないんだと思うのです。これは恵みではありません。社会保障的な立場に立って当然被爆者が受けるべき権利だ、こういうふうに理解をしておる。そうでないところの法案の趣旨というものは生かすことができないと思うのですが、この点についていかがでございましょうか。
○中村(重)議員 御質問のとおり考えております。
○山本(政)委員 それじゃ中身についてちょっと、援護手当の一万円と三万円の区別を……。
○中村(重)議員 これも先ほど私が質問の中で指摘したところですが、実はいまの認定被爆者に対しまして特別手当が一万円支給されているわけです。医療手当も支給されている。健康管理手当は三千円支給されておる。それぞれ対象の病名をあげているわけであります。被爆者ハンドブックによっても明らかのように、両者を区別する法的根拠は何にもないわけです。ただ重いか軽いかということだけのことであります。したがって、重い者はそれだけ働く能力が低下をいたしております。したがって生活保障的な手当を支給していく必要がある。実は五万円程度支給しなければならぬと考えましたが、財政的な関係等も実はあるわけです。その点も配慮してこれを三万円にいたしました。それから軽い人を一万円ということに区別を一応いたしました。同時に、厚生省がいま認定被爆者と健康管理手当支給の対象被爆者と区別している、それを全面的に否定をしていないという点も実はあるわけであります。そうした考え方の上に立って三万円、一万円に区別をいたしたわけであります。
○山本(政)委員 先ほど提案者が質問の中に認定についていろいろ御質問をなされておりました。これはたしか、私の記憶に間違いがなければ、認定には期限がついておる。そして、その期限が終わったらまた再申請をしなければならぬということがあると思うのです。非常に手続的にもめんどうだと思うのです。この認定の申請、それからその後の再認定の申請が必要だということについて、私は再認定の申請なんということをやめて、完治するまでずっとちゃんと続けていくということがあたりまえだと思うのです。これは一体この法案の中にどういうふうに組み込まれておりますか。
○中村(重)議員 きわめて適切な御質問であると思います。いまの健康管理手当を支給するためには、厚生省が指定をする八つの病気にかかっていなければならないというその他の制限条項が実はあるわけです。そして初めて支給の認定を受けるわけです。それには御指摘のように期限がきめられてあるわけです。そして、病気がなおらぬでもその期限がきたら再度また認定申請をしなければならぬということになる。ところが、それは届け出だけでいいじゃないか。現実の病院になりますと、医療費の加算等の制約もありまして、まだ完全に病気がなおっていないのに退院させられておるという実例すら実はあるわけです。そういったような矛盾もあります。したがいまして私どもは、もう病気がなおるまで治療する、再申請等を必要としない、そうした考え方の上に立って実は制約条件を全部取っ払いました。いわゆる特別手当、健康管理手当支給条件の制約条件を全部取っ払うということにいたしております。
○山本(政)委員 二十分だそうですから、時間が制約されておりますから簡単にお伺いいたします。障害年金制度を入れた理由をひとつ聞かしてください。
○中村(重)議員 これは、先ほど申し上げました国家補償の精神にのっとっておりますから、戦傷病者戦没者遺族等援護法は国家補償の精神であります、したがいまして、同様にこれを扱うべきであるという考え方の上に立って、年金制度を最高二十四万円、額は非常に少ないのでありますけれども、初年度といたしましてその程度を考えたわけでございます。
○山本(政)委員 一月十九日の新聞ですけれども、被爆婦人が厚生大臣に異議を申し立てた。それは、厚生省は医療は不要だ、こう言っているわけです。先ほどたいへん時間をかけて提案者が大臣に詰めておられたようでありますけれども、原爆医療審議会というのがありますね。ここには別に原子爆弾被爆者援護審議会、問題は厚生省のほうでたいへん冷ややかだというふうに被爆者のほうで受け取られておる中には、一つは秘密主義があると思うのです、ガラス張りでないという点もある。同時に、被爆者の人たちが代表として入っておらないという点もあるだろう。そうすると、ここに出ておる原子爆弾被爆者援護審議会についての構成を一体どうするのだろうか。私はいま申し上げた厚生省の審議会というものの不備は当然直さなければならぬだろうと思うのだけれども、その点についての構成を一体どうお考えになっておるのか。
○中村(重)議員 私は、いま御質問がありました点を、厚生大臣に事実を指摘して認定被爆者制度を廃止せよということを迫りたかったわけですが、時間の関係でその事実を引用することができなかったわけであります。これは明らかに私が質問の中で指摘をいたしまして、いまの医療審議会というのはきびしく運営されているわけです。したがって、認定被爆者にはなかなか認定をされないということが、あのような悲惨な事件という形になってきているものだということが考えられるわけであります。私どもはそうした制約をなくしてしまうというようなことでございますから、いまの医療審議会のあり方というものは抜本的に変わってくるし、絶対あのような悲惨な事態は起こり得ない、こういうことで御理解をいただいてけっこうだと思います。
○山本(政)委員 今度の政府の提案の法律案も、私は若干前進を示したと思うのです。それに比べて今度の野党三党で出した提案というのは、非常に前進をしておるということは、これはよくわかります。ただ、附帯決議案は十二項目出ておる。十二項目出ておるけれども、その中で全部が満たされておるかというと、必ずしも満たされておるとは私は思えない。たとえば、これは厚生省のほうからも答弁がありました附帯決議の九項目目の実態調査、これは数字は出ているけれども、いろいろな事情があるというようなことがあるけれども、これもまだ厚生省としては発表するのに時間がかかるような気がするし、それから項目の十一の沖繩在住被爆者に本土並みの措置を適用するという点については、これは全く触れられておらないわけです。もちろん、これは返還の問題ともからみ合うことだろうと思う。当面やられておることは、一九六〇年一月の琉球在住原子爆弾被爆者の医療等に関する了解覚書、これが一九六七年にたしか改正されて、医療の準備ができるようになったと思うのですけれども、しかし、実態は本土と沖繩とでは著しい格差があるのじゃないだろうかという気がしてならないわけです。この点について、一体この中で、沖繩の人たちに対して、どういうふうにお考えになっておるのか、お伺いしたいと思います。
○中村(重)議員 御指摘のとおり、いままで私どもは沖繩の被爆者に対しては、本土の被爆者と同様にこれを扱うようにという附帯決議をつけてまいりました。沖繩の被爆者対策というものは、日本本土よりもずっとおくれて発足をいたしましたから、もう大きな格差が実はあるわけです。特に沖繩の医療水準というものが低い。その面から被爆者の健康管理が不十分であるということが言えようかと思います。したがいまして、本土で沖繩の被爆者の健康診断をやるということがまず第一である。それから、原爆病院のような専門の病院をやはり沖繩に設置する必要があるのではないか、そのように考えております。さらに、医者であるとか行政担当者を本土に呼びましてこれを教育する、こういったもろもろの措置を行なうことにおいて、おくれておる沖繩の被爆者対策というものを強化をしていく、格差をなくする、そういう方向で進めていかなければならぬと考えております。
○山本(政)委員 ちょっと提案者にお伺いしたいのですが、私の聞き漏らしかもわかりませんけれども、認定被爆者についての再申請、これを取っ払うというお話がありましたね。認定制度そのものを全部やめてしまう、こういうお考えはありませんか。つまり、私が申し上げたいのは、被爆者には全部完全に、要するに無料で医療給付をやるという考えはあるのかないのか、その点です。
○中村(重)議員 前段の認定の問題ですが、認定被爆者制度というものを私は取っ払うべきであるということを先ほど質問の中でも申し上げましたから、考え方は御理解いただいておると思います。 いまの認定のワクを取っ払う、再申請をしないで医療を続けるということは、健康管理手当の支給をいたします場合、実は期限の定めがあるわけであります。その期限が参りますと、病気がなおらぬでも再申請をしなければならぬ。健康管理手当支給の制約条件というものがございますから、それをなくしていこうという考え方の上に立っておるということで御理解をいただきたいと思います。 それから後段の医療費、いま国民皆保険ということで、認定被爆者以外は社会保険というものがまず前提になっておるわけで、しかし国民皆保険ということになってまいりますなら、認定被爆者を社会保険に入っていなくても公費で医療給付をやっておるということで、これは可能であるということは明らかでございます。したがいまして、私どもはそうした被爆者に対するところの医療というものの公費負担を実現いたしたい、そういう方向で対処してまいりたいと考えております。
○山本(政)委員 ともかく、これは少しずつ前進をしてきておるけれども、まだまだ提案者自身が先ほどから厚生省にいろいろと詰めており、同時に批判をされておる、そうして中から、これは大臣がおっしゃったのですから私は間違いないと思うのだけれども、こういう原子爆弾被爆者援護法というものができたわけですね。ですから、この場で大臣に言うことは筋違いかもわかりませんけれども、これはぜひひとつ提案者、それから大臣も、前向きな法案であれば前向きのほうに受けとめてもらいたいと思います。 先ほどの質問をお伺いしておって非常にふに落ちないことがあったのは、何かあると医療審議会というものを防波堤にして、医療審議会があるから実は私どもは行政的な立場ではそれを越えられぬのだ、そういうようなことが端々に見られたと私は思うのです。それはやはり、もう少し皆さん方が大胆に勇敢にひとつ施策を進めていただきたい、こういうことをお願いをいたしまして、時間がきたようでありますから、質問を終わります。
○倉成委員長 次に、古川雅司君。
○古川(雅)委員 昨年の八月六日でございますが、総理大臣の代理として厚生大臣が、広島の平和記念公園で行なわれました原爆死没者の慰霊式、平和祈念式典に参列されました。しかし、あと新広島ホテルで記者会見をされたわけでありますが、そのとき大臣は「原爆特別措置法には所得制限などワクが多いが、さらに一歩前進するようにしたい。所得制限を緩和し、健康管理手当など支給年齢の引き下げも考えたい。」というふうにお話をしておられます。 〔委員長退席、増岡委員長代理着席〕 今回の法改正によりまして、健康管理手当の年齢制限を六十五歳から六十歳に引き下げたわけでございますが、この所得制限につきましては、今回の法改正では何も触れていないのでありますが、広島の市民並びに長崎における被爆者の皆さんに対してはどのようにこの点お考えになりますか。釈明をいただきたいと思います。
○内田国務大臣 昨年の八月六日に広島に参りまして私も感慨を深くするものがございました。地元の方々からもいろいろ御要請がございました際に、私の心にひそむことを申し述べたわけでありますが、そのうちの一つの健康管理手当支給年齢の引き下げということを今回やることによりまして、健康管理手当受給者が九千五百人くらいふえることになりまして、私は広島に参ったかいがあった、かように思います。 所得制限のほうでございますが、これは古川さんも御承知のように、所得制限にはやり方が二通りございまして、所得が幾ら以上ある場合には支給を差しとめるという行き方と、それから所得税を幾ら以上納めているものについては支給を差しとめる、こういう行き方と二つございますが、健康管理手当に対しまする所得制限はあとのほうの税額制限でできております。でありますから、たしか現在税額制限が二万九千二百円でございましたか、それくらい以上税金を納めている方につきましては健康管理手当の支給が停止されるわけでございますが、今回この二万九千二百円を上げるのを待つことなく、所得税法の改正が行なわれまして、したがって二万九千二百円の所得税を納める方は、所得について申しますと、昨年八月の所得よりもかなり引き上げられたというような結果になりまして、したがって今回の場合はそれをもって一応対処をいたす。しかし私は、この所得税の課税最低限等が今後も引き続き引き上げられて、所得税一般が減税の方向になるかどうか、その辺との兼ね合わせもございましょうが、所得制限の緩和ということにつきましては、健康管理手当の支給のたてまえを生かすために、今後もさらに緩和の方向の研究をいたしてまいりたいと思うものでございます。
○古川(雅)委員 所得制限についてでございますが、四十五年から所得額が百二十八万三千三百三十二円、所得税額としては二万九千二百円、この点については率直に、今回の法改正については十分に期待にこたえられなかったということをはっきり言っていただきたかったわけでございます。どうもいまの答弁では釈然としないわけでございますけれども、その点をもう一度はっきりしていただきたいと思います。
○内田国務大臣 弁解いたすわけではございませんが、いま申しましたとおり、所得制限の緩和のしかたには、所得額でいくか、税額でいくか、こういう両面があるわけであります。幸い今回の所得税法の改正によりまして、所得税をかけられる課税最低限の引き上げ、また一定の所得に対する税金が減税になりましたために、実質的には、この二万九千二百円という税額制限がそのまま残りましても所得制限が緩和されていることになっておる、こういう裏返しからの御説明を申し上げましたが、私はそれで万事終わったとは考えませんので、今後の減税の方向等も見比べながら所得制限の緩和についてはさらに努力をいたす、こういう趣旨でございます。
○古川(雅)委員 健康管理手当の年齢制限のほうでございますが、これは先ほどからいろいろ質問がございまして、答弁の趣旨はよくわかりましたが、今回六十五歳から六十歳に引き下げたわけでございます。こうした年齢制限を撤廃すべきだというような意見も先ほどからございましたが、今回五歳という年齢に限って引き下げた、ここには当然理由があると思います。これは予算のワクでそういう五歳の引き下げ幅になったのか、あるいはほかにもっと何か根拠があって六十五歳を六十歳に引き下げるようになったのか、この点をひとつ局長からお願いしたい。
○滝沢政府委員 結論を先に申し上げますと、この問題は予算のワクで六十歳といたしたものではございませんで、老齢というものの概念が、老人福祉法等の考え方が、大体六十五歳という考え方がございます。それと現行の健康管理手当の年齢制限が六十五歳であるという問題がございますが、原爆被爆者の健康状態が、一般的には加齢現象と申しますか、被爆ということによって一般的に――個人個人にはいろいろ問題がございましょうが、一般的には年を早くとると申しますか、そういう加齢現象というものがあるといわれておりますので、一般的な老人福祉法の六十五歳を他の制度との均衡を考慮いたしまして原案として六十歳と出し、原案が認められたわけでございます。そのように御理解いただきたい。
○古川(雅)委員 先ほど来の答弁で、六十歳に下げておけば今後だんだん年をとってこの中に入ってくるというような御答弁がございました。ということは、大体六十歳を限度として今後引き下げる目途がないというふうに、そういう誤解を受けるわけでございます。この年齢制限を近い将来に撤廃していくという方向に立つならば、そうした御答弁は出なかったと思うのでございますが、今後年を追うごとに、近い将来にまた、小刻みながら、あるいは大幅に、この年齢制限をさらに引き下げていくという方向についてはいかがでございますか。
○内田国務大臣 実質的には古川さんのおっしゃるようなことにいたしたいと思います。ただこれは、大蔵大臣みずからがおっしゃっているように、大蔵省はけちだそうでありますから、大蔵省はびっくりしてしまってなかなか話に乗ってこない。そうして実質的には六十歳とか、あるいはまたそれを引き下げる場合もございましょうが、実際問題としては、年齢制限というものはとってしまおうということになったときに 年齢制限をとって実害はないですよ、こう言って大蔵省をうまく引っぱり込んでいこう、こういう作戦でございます。
○古川(雅)委員 大蔵省に非常に弱いところであろうと思いますけれども、次の目標としては大体どのくらいまで引き下げていくお考えでございますか。
○滝沢政府委員 別段その目標というものもございませんので、大臣の先ほど来の御答弁の御趣旨を体しまして、従来の原爆対策の経緯にもかんがみまして、この点につきましては具体的な対策を――健康管理手当の年齢制限だけではございませんで、そのほか所得制限やらいろいろ介護手当の問題やら、それがまた公害の救済措置その他の諸般の施策の手当とも関連してまいりますので、厚生省全体としての議論が必要であろうというふうに考えておりますので、まことに率直に言って、ただいま年齢をどうするという考えは何もございません。
○古川(雅)委員 今回の法改正によりまして、九千五百人の人がそのために健康管理手当を受けられる資格を得るということは、これは被爆者にとっては非常な喜びであります。それだけに、今後この年齢制限をさらに引き下げていくということに対する期待が大きいのです。大臣は大蔵大臣に対する予算要求という点で先ほど御答弁になったわけでございますが、次はどこまでをその目標にして大蔵省に予算要求をしていくか、その目途が立たなければ、いまの大臣の御答弁も非常にあいまいになってくると思うのです。その点いかがですか、はっきりできませんか。
○内田国務大臣 これは古川さんよく御承知のように、大蔵省を攻めるにはあの手この手といろいろ手があるわけでございまして、ことしは六十五歳を六十歳に引き下げて、九千五百人を対象に加えることができましたが、その手ばかりで攻めるのではなしに、他のいろいろな制約をだんだん解いていくということで攻めたほうが、あるいは金額等の制約をさらに引き下げていくというようなことをやるとかということをまぜ合わせながら、私どもは、せっかくある制度でございますので、これを生かすようないろいろの手段をまぜて予算を組んでまいりたいと思います。
○古川(雅)委員 昭和四十六年度の原爆障害対策費は前年に比較いたしまして十五億ふえておるわけでございます。ところが、その中で被爆者の医療費が約十億九千万でございまして非常に大きな部分を占めております。ただいまいろいろお伺いをしております原爆被爆者の手当等の費用でございますが、その中で健康管理手当につきましては五億九千四百万という増額がはかられているわけでございます。これによって、九千五百人の増ということにもなるわけでございますが、その反面、特別手当においては一億七千八百万の減、それから介護手当については一億八百万の減、こういう数字が出ておりますけれども、一方で増額をする、一方では受給対象者の減等によってこうして減額しているわけでございます。こういう点から考えますと、もう少し強烈に予算要求をして、年齢制限の引き下げにしても、あるいは所得制限にしても、そういった点をさらに含んで大幅に措置すべきじゃないか、このように考えるのでございますけれども、いかがですか。
○滝沢政府委員 予算の内容をこまかに御指摘でございますが、その理由を御説明いたしますと、特別手当並びに介護手当等は四十五年度の予算を四十四年度に要求するときまでは理論計算的な姿でやってまいりましたので、実態とかけ離れて比較的余裕のある予算が組まれておったのですが、四十六年度の予算を編成するときには、実態に合わせるということで処置いたしましたので、金額が減になっておりますけれども、これは実態にほぼ見合うことでございます。それから原爆の予算は全体で運営できますので、予定した予算がその項目でオーバーいたしましても他のものをもって充てることができます。そういうことで御了承いただきたいと思います。全体として予算をながめて、いまのような減という姿でなく、積極的な予算を編成をすべきであるという御意見については、基本的にはそのようにあるべきだと考えますが、今回の予算書が事務的にそのようになっているという点は御了承を願いたいと思います。
○古川(雅)委員 特別手当にいたしましても、これから被爆者がだんだんお年を召してなくなっていきますと受給対象者が減っていくわけであります。そういった点は、予算を少なくすれば済むということではなく、その分をいろいろな制限の緩和に振り向けていく、そういう積極的な姿勢をとっていただきたいと思います。 先ほどに戻りますが、同じく広島での大臣の記者会見のお話をもう一つ引用させていただきたいのでございますが、先ほどからいわゆる原爆被爆者の援護審議会を設けるべきであるという質疑がたくさん出てまいりました。大臣は非常に積極的に、医療審議会の中に援護部会を設けるべきだ、その点で検討したいという答弁をなさったわけでございますが、ちょっと気がかりな点がございます。広島の記者会見で大臣はこういうことを言っております。「被爆者への総合的な援護対策のため、対策審議会をもうけてはどうかとの意見もあるが、審議会というのは、私がいうのもおかしいが、政府の施策のかくれみのになる感がなきにしもあらずだ。改善に時間がかかったり、事柄を複雑にさせる面もあるので私自身が世論によく耳を傾けていきたい。」というお話をなさっているわけです一これは多少誤解を招くおそれもあると思いますが、大臣はどういうお気持ちでこういうことをおっしゃったのか、この際説明いただきたいと思います。
○内田国務大臣 いまそうやって読み上げられてみますと、ことばづかいに不用意な点があったようでございますが、私の真意はそのとおりでございまして、ともすれば審議会というものが隠れみのになって、さっきからも皆さんからおしかりを受けているような、何でも審議会が動かなければ動かせないようなことになっては困りますが、私自身が政治家であり、また大臣として行政の地位に立っておりますので、私自身が世論に耳を傾けて、そうして前進をさせるべきものは前進をさせるほうがいいと思うこともあるので、あの際御要望がありましたけれども、審議会の改組、新しい審議会をつくるということだけが万能ではないとも思います、こういう意味でございます。 そこで、せっかくの御要請でございましたので、帰りまして省内でも担当者といろいろ論議を重ねましたけれども、審議会の改組ということにつきましては、先ほど中村先生にもお答えいたしましたような越えがたいみぞと関連する問題もございましてむずかしいとも思いますので、きょうせっかく皆さんから御議論がありましたので、私がここで決心しまして、その審議会の中に福祉部会といいますか、援護部会といいますか、そういうものを設けていただいて、そこで医療の問題あるいは患者の認定というような問題だけでなしに、より広くより高い問題をも検討してもらうということにいたしたほうが、皆さま方のお考えにも沿うし、また現地の方々も納得をしていただけるのではないかと思います。ことに古川先生、中村先生等は、広島なり長崎なりでこういう問題につきましては、ふだん一番お感じになっていらっしゃる先生方でございますので、私がここで先ほど申しましたことを実行するにつきましては、またいろいろ御意見も聞かしていただいて、そういう部会もつくるようにいたしたいと考えます。
○古川(雅)委員 被爆者の援護審議会あるいは対策審議会、この点につきましては、地元の被爆者の皆さんも非常に期待しているわけでございまして、特に生活の裏づけといった点の検討をここに大きく期待を持っているわけでございます。先ほど大臣が、その点については十分配慮を加えるというふうにお答えになっておりますし、いま申し上げましたとおり、医療審議会の中に援護部会を設けるという形で一歩進めるお約束をいただいたわけでございますので、その部会をつくってその中でさらに検討を前進させていくということと同時に、そのあとで近い将来に援護審議会の結成に向かって努力をしていく、その方向で進めていくというふうに理解をさせていただきたいと思いますが、よろしゅうございますか。
○内田国務大臣 そこまではきょうの段階で私は申し上げてもいないわけでございます。しかし野党三党から今回のような法律案もお出しになられている事態でございますので、こういうことは私は心にとめまして、一つの国民的意識の前進だとも思いますので、この野党提案の法案が全くなかったというようなつもりでやるつもりもございませんし、ことばどおり前向きでいろいろ積み上げてまいるということまでは申し上げ得ると思います。
○古川(雅)委員 次に、これは広島並びに長崎市民の市民感情であると思いますが、例年の平和祈念式典、また原爆被爆者の慰霊式に一国の総理が参加するということを非常に期待している向きがございます。その点について先日来いろいろ新聞をにぎわしたわけでございます。大臣が昨年列席されたときに、総理が出席されれば一番いいだろうという意味のことをおっしゃっておりますし、また総理代理として厚生大臣がおもむかれたということは、これは被爆者対策のためには私が一番適任だというふうにもおっしゃっておりますが、いずれにいたしましても、総理の列席ということを市民が非常に待ち望んでいるわけでございます。去年は外国の賓客が来ているというような都合で列席できませんでした。厚生大臣が広島からお帰りになって総理にいろいろ報告をされた中で、来年すなわちことしになりますが、何としてもという要望を当然されたと思いますが、厚生大臣の責任において、昨年広島の平和祈念式典に列席をされたその実感から、ことしは何としても総理に出席を求める、責任をもって出席させるというふうにお考えかどうか、その点、総理との間でどういうお話し合いをなさっているか、御報告願いたいと思います。
○内田国務大臣 私から総理を出席させるという言明はなかなか出しがたいわけでございますが、当時総理に来てほしいというような声がいろいろの方面から伝わっておった次第もございますので、私といたしましても、いまの御要望をあらためてさらに総理にお伝えはいたしたいと思います。
○古川(雅)委員 ことしの式典に総理を出席させて初めて昨年厚生大臣にわざわざ広島までおいでいただいた価値があると思います。期待して待っておりますので、ひとつよろしくお願いいたします。すぐ近くでございますので、長崎のほうもよろしくお願いいたします。 局長にお伺いいたします。これは個々の問題になりますが、先ほども出たのですけれども、葬祭料が出ているわけであります。数としては非常に少ないわけでございますが、これを遡及して給付すべきじゃないかという要望が非常に強いわけでございます。これは何年にさかのぼってという点でいろいろ技術的な問題があると思いますが、まず基本的にはいかがですか。
○滝沢政府委員 葬祭料が特別措置法の中に設けられますときにいろいろ議論があったようでございますが、特別被爆者が被爆の影響によりまして健康の上に非常に不安な気持ち、現実にも不安定な健康状態というようなことが多いのでございますので、それに着目いたしまして、精神的な不安に多少でも安らぎの寄与をするというようなことで、この制度を特別措置法の中に取り入れたということになっておるわけでございます。過去の死没者に葬祭料を支給するということになりますと、先ほど来大臣から御答弁がございましたような、国家補償的な弔慰金の性格のものとの関連も出てまいるというようなことがございますので、現行の葬祭料をさかのぼって支給するということにつきましては、きわめて困難な問題であるというふうに理解いたしております。
○古川(雅)委員 非常に困難であるということでございますが、これは被爆者の非常に強い要望でございますので、多少なりとも理論的に支障がないならば、この点は非常に強力に過去に遡及することに踏み切っていただきたいというように要望いたしたいと思います。大臣といたしましては、最近小さく生んで大きく育てるという、非常に大臣の性格を物語るキャッチフレーズになっております。この葬祭料の遡及について、一部には昭和三十二年にさかのぼってというような具体的な形で要望が出ていますけれども、小さく生むという点では一年でも二年でもさかのぼってというところから、この点についてスタートをさせていくという意図はございませんでしょうか。
○内田国務大臣 いま局長からお答えをいたしたとおりで、非常にむずかしい問題でございますが、研究はさせていただきたいと思います。
○古川(雅)委員 それは実現の可能性があるという意味で御検討いただくのでございますか。
○内田国務大臣 私は、薄情なことを言うようなことになってお答えしにくいのでございますが、現状においては、金額の多寡ということよりも、事柄が非常にむずかしい事柄である、したがって可能なものから充実をしていこう、積み上げていこう、こういう気持ちでおるわけでございます。
○古川(雅)委員 実現がむずかしいという一つの背景には、全体の実態がつかみにくいというようなこともあると思います。これは、過去にもいろいろな形で調査が進められてきたわけでございます。特に政府としては、昭和四十年にかなり大がかりの実態調査をされたわけでございます。その内容についての詳細の報告を私はまだ受けておりませんけれども、こうした被爆者の実態調査につきましては、今後も継続をし、あるいは大がかりな政府としての実態調査に踏み切っていく、実態調査を行なうというようなお考えはございますでしょうか。
○滝沢政府委員 被爆者の実態調査は、先ほど来大原先生も言明されましたように、昭和四十年十一月に全国的な基本調査と、それから健康、生活両面にわたる調査をいたしまして、そのうち健康、生活の面について、四十二年にそれぞれ二回に分けまして調査の結果の概要を発表いたし、もう一つ、入院患者のこまかい問題について発表がおくれておることで御指摘があったのでございます。 それから、ただいま四十五年、四十六年と、二年にわたりまして広島及び長崎におきまして、被炎状況の復元調査というものを実施いたしております。これによって死没というような状態がどうであるかという実態もつかむことができますけれども、その実態がつかめるつかめないということと、葬祭料問題とは、先ほど来御答弁申し上げたような性格論につながりますが、実態としては、復元調査の結果は、三キロ以内の範囲が大体四十七年度一ぱいぐらいには、現地の広島、長崎でそれぞれつかめるかというふうに期待いたしております。
○古川(雅)委員 調査ということでお伺いしたので、もう一つお伺いいたします。 先ほどございましたが、二世、三世に対する影響についての調査研究、子供さん、お孫さんに対する影響の調査研究ですね、この点はいまどの程度進んでいるのか、それに対する措置として考えられるようなものを検討する段階に達しているかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
○滝沢政府委員 二世、三世というか、従来、当時の被爆者の子供に対する影響という問題については、各方面で実は研究がございまして、ABCCとわが国立予防衛生研究所との共同におきまして、原爆被爆者の二世における白血病に関する研究について、死亡標本の五万三千人の解剖の問題と、それから三十八年までに出生いたしました十六万三千人の子供たちにどういうふうに両親の被爆状況が影響し、その間に発生した病気と白血病と関係があるかというようなことも含めまして研究がなされております。結論といたしましては、いまのところ直接的な因果関係を見出すことはできません。 それから、先ほど答弁の中で一つ例に引きましたが、遺伝に最も関係の深い染色体の異常が原爆の二世に発見されたという報道がございました。その中身を検討してみますと、その発生の度合いは、一般日本国民の染色体異常を発見する度合いとほとんど差がないというようなことを含めて、総合的には結論として出しております。 以上申し上げたような研究の段階から申しまして、現在被爆二世に放射能の影響が明らかに及んでおるという研究成果は、いまのところ出ておりませんので、この問題につきましては、もちろん新たな研究の見解等が出ますれば、それにそれぞれこまかく対処してまいりたいというふうに考えておりますけれども、現段階におきましては、そういうような根拠に基づきまして具体的な対策というものについては検討いたしておりません。
○古川(雅)委員 それに含めまして、最近の被爆者の発病の状況、疾病の内容の状況等についても相当研究は進めなければならないと思うのですが、最近のいわゆる特徴的なものも当然あると思います。そういうことを含めまして、被爆者の実態調査、それからいまお伺いしました二世、三世に対する影響の調査、被爆者の疾病状況の調査、そういういろいろな実態調査が必要になってくると思います。これは非常に大事な問題でありますが、四十六年度の予算で見ますと、予算書では原爆の被炎の復元調査費がわずか三百万円、それから原爆症の調査研究費が四百万円、国から支出しているのは大体これだけだと思うのでありますけれども、これで一体どれだけの調査研究が行なわれるのか、非常に私疑問に思うわけでございます。広島、長崎等の地方自治体においても、いまかなりの財政の負担をしながらこうした実態調査に取り組もうとしておりますけれども、国としてあまりにこれは消極的なんじゃないかというように考えられるわけですが、いかがですか。どれほどの調査になるのか。
○滝沢政府委員 いま先生のお尋ねの実態調査、確かに総合的に四十年に生活、健康の基本問題についていたしましたので、十年前――四十年にやった、三十年にはやっておりませんけれども、二十五年の国勢調査のときに、わずかに基本的な項目でございますけれども、姓名、男女別くらいの実態調査をいたしております。その後には、三十年にはいたさずに四十年にやっておりますから、私の気持ちとしてはそういうような総合的な調査が対比の必要上、また新しいいろんな施策を立てる必要上必要であるということになれば、一応十年経過した昭和五十年あたりを目途としてそういう問題を検討いたしたいというのが、私の気持ちでございます。
○古川(雅)委員 くどいようでございますが、大臣にもう一度伺います。 今後この制度の内容の充実、発展をしていくためには、よりきめのこまかい実態調査等が必要だと思いますが、さっき私申し上げましたとおり、国としての予算は非常に微々たるものであるわけです。こうした取り組み方では思うようにいかないと思うわけでございますが、今後どのようにお考えでございますか。
○内田国務大臣 従来の調査では十分でない点がございますので、いま政府委員と打ち合わせましたところが、昭和五十年ぐらいを目標により規模を大きくした調査をやる計画を立てておる、こういうことでございますので、私もそれをやらしてもらいたいと考えます。
○滝沢政府委員 先ほどお尋ねになったように、研究に厚生省の七百万程度の予算だけという御指摘がございましたが、実は文部省、それから科学技術庁の関係等を含めますと、やはり相当額で放射能全体の研究がなされておりますことをここでつけ加えておきたいと思います。
○古川(雅)委員 けさほど来、被爆者の対策の基本的な取り組み方についていろいろ議論があったわけでございます。被爆者の心情としては、非常に政府の答弁は理解しがたいというところでございますが、ひとつ確認をさしていただきたいのでございます。被爆者対策については、いわゆる他の社会保障制度との均衡上すでに上限だ、そうした思想が政府の底流にあるのじゃないか、そういう不安を非常に持っているわけですが、原爆被爆者の持つ特殊性、被害の悲惨さ、そういった点からいうと、そうした政府の考え方には非常に疑問があるわけです。けさほどから答弁はございましたけれども、その点ひとつ再確認をさしていただきたいと思います。
○内田国務大臣 社会保障あるいは社会福祉施策というものは、私は決して一本のものではないと思います。老人対策と母子保健対策とでは、そこにそれぞれの違いがございますし、また児童手当等の対策と老人対策につきましても、似た面もございますけれども、全く違った特性を持つものでありますので、私どもが原爆被爆者対策を社会保障の一環として取り上げます場合におきましても、何がゆえにこういう制度を取り上げておるか、こういう趣旨にかんがみまして処置をいたすべきものであると考えます。したがって、被爆者対策というものは、社会保障対策の中で上限にきておるので、これ以上改善、前進をさせる必要はないというふうには、私は全く考えておりません。
○古川(雅)委員 いずれにいたしましても、今日戦後二十五年を過ぎまして、被爆者の中には、原爆に対するところの恐怖、原爆のおそろしさを後世に伝えていくためには、最近そういった風潮が非常に弱い、いわゆる原爆の風化ということに対する憂いが強くなっておるわけでございまして、政府部内にそうした被爆者対策はすでに上限だというようなお考えが一部にでもあれば、これは今後の被爆者に対する対策にとって非常に大きな不安になっていくと思います。いま大臣からはっきりお答えをいただきましたので、今後さらに強力な制度の拡充を要望いたしたいと思います。 ちょっと先ほどにあと戻りをいたしますけれども、原爆被爆者の医療審議会でございますね、このメンバーにつきまして、これまで被爆者から意見が出ておりました。すなわちその構成メンバーに被爆者の代表あるいは被爆を直接受けたお医者さん等が入っていないじゃないか、この点に一つ疑問があるわけでございますが、構成メンバーについてはいかがでございましょう。
○滝沢政府委員 御指摘のように、被爆者そのものの代表という形でこのような審議会に――一般にそういう方を審議会の中に入れるかどうかという一つの基本的な問題も実はあるわけでございます。しかしながら、実態を知らない人が審議したのでは何にもならぬではないかという趣旨からいきますれば、先ほど来申し上げましたように、十九名の委員のうち七名までは広島、長崎に関係があり、なおかつ原爆障害者の問題等について、医療の面その他行政の面、両県の衛生部長等も入っておりますが、それぞれ団体等の代表としても、たまたまその方がお医者さんであるという実態もございますけれども、やはりそのような協議会の関係者もお入りいただいておるというようなことで、原爆の傷害を受けたその人が審議会に入っていない、あるいはそれを入れるべきであるという議論につきましては、この審議会の構成の上で、各種審議会とも、直接いろいろその問題に関係のある人が審議会に入るか入らないかという一つの構成の基本問題にも触れるわけでございますが、そういう点からは、われわれは十分実態に対する配慮をした上でいまの審議会の構成、特に新たに長崎から調先生あるいは市丸先生という若手の先生も加入していただくように交渉中であるというようなことで、われわれの姿勢を御理解いただきたいと思います。
○古川(雅)委員 先ほどの大臣の御答弁で、被爆者医療審議会の中に援護部会を設けていく、そういう積極的な審議会の内容の拡充を考えるときには、被爆者の団体の代表もこれに加えることを検討していただいて当然じゃないかと思うのでございますが、大臣、この点いかがでございますか。
○内田国務大臣 医療審議会の制度あるいは法律上の構成を直すことにつきましては、先ほど来、いま直ちにむずかしいことを申し上げてまいりました。そこで、しかしこれから先に被爆者施策につきましての諸般の問題、医療ばかりでなしに広い立場から取り上げる、その機能を現存の審議会の中に取り入れる一つの方法として、私は福祉部会ないし援護部会というようなものを設けるようにしてまいりたい、こういうことを述べてまいりました。しかしその場合に、被爆者の代表を入れるかということになりますと、いまの審議会が法律上学識者とそれから関係各省の関係官をもって構成するということになっておりますので、被爆者の代表という立場からだけで委員にお願いするわけにはまいりませんので、いまも政府委員からお話がございましたように、広島なり、長崎なり、現地の被爆事情に最もよく通じ、また被爆者の気持ちに通ずる学識者をこれから先も頭に置いて委員になっていただいたり、またことに、いまの福祉部会ないしは援護部会などの部会長の方には、そういうことに最も適格な人をお願いをする、こういうことにいたしたらいかがか、かように考えておるわけでございます。
○古川(雅)委員 学識経験者でないということだけで、こうした被爆者の団体の代表が審議会に加わらないということは、これは非常に残念なことであると思います。むしろ被爆者の心情、被爆者の実態、こういったものについては、学者以上に非常に見識が深く、実態をよくつかんでいらっしゃる方がたくさんいるわけでございまして、いまの大臣の御答弁を私は前向きに受けまして、そうした方々がこの審議会の中に加わって、被爆者対策についてより積極的な意見を述べられるように御検討を賜わりたい。強く要望いたしておきます。 時間でございますので、最後に、被爆者の認定の手続等でございますが、特に特別被爆者等におきまして、認定疾病の認定がきまるまで非常に時間がかかる、手続がむずかしいという批判があるわけでございますけれども、いまこうした認定を受けるのに時間的に大体どのくらいかかっておりますでしょうか。
○滝沢政府委員 確かに、御指摘のように、その認定という手続の問題は、先ほど来お答えしましたように、いろいろこのようなパンフレット類で啓蒙はいたしておりますけれども、やはり公費を支出するというたてまえ上、どうしても法令あるいは省令等によりましてこまかい様式が規定されてまいるわけでございますので、この点確かにこまかい。かわってこれを処理するような、あるいは相談事業というようなものの強化というものを考えませんと、この点については、われわれとしても具体的には今後考慮してまいるつもりでおります。 それから、審議会が現在少なくとも毎月開くということが私は一応の望ましい姿であるというふうに考えておりますけれども、現状の申請件数やら委員の方々の御都合やらで、おおむね一月半ないしは二月に一回というような開催になります。そうしますと、申請を受け付けて審議にかけるのに、本人の健康状態の申請内容の要旨を全部一覧表に印刷しまして事務当局が整理するわけでございます。そういうために要する日時、それから申請と審議との間の期間、したがって、申請を出し審議を終わってその結果が行く、あるいはその結果等について、出す前にお互いにまた資料の再調査等をいたしますと、中には半年近くかかる、早いのでも三月程度で実際の手続が終了しておるというような点で、御指摘のように、この問題は事務手続の省略をすることのむずかしさと同時に、これを簡便にやることのまたむずかしさがございまして、この点については、われわれも事務処理が、たとえ一日でも審議会に乗せればその前の審議会で終わってしまう。次の審議会ということになると二月ぐらいかかる。こういう点については、最近は特に注意いたして事務処理をいたしております。
○古川(雅)委員 御承知のとおり、原爆後遺症というのはある日突然襲ってくる。措置に対して非常に急を要する病気でございます。何とかその点――いま御説明のままを伺っているとやむを得ないということになってしまいますが、スピードアップをはかれないものか、厳重にひとつ検討をいただきたいと思います。 時間がございませんので急ぎますけれども、広島、長崎等においては比較的こうした医療機関に恵まれている、一応そういえますけれども、全国各地にわたりますとこれが十分ではない。さらにいなか等に行きますと、非常にそういう不満を聞くわけでありますが、もっと健康診断等において親切に見てもらいたい、丁寧に見てもらいたいという要望が非常に強いわけでございます。何かこの点について政府として片手落ちがあるのではないか。被爆者に対する健康診断のきめのこまかさということを強く要望されておるわけでございます。この点について御所見いかがでございますか。
○滝沢政府委員 御指摘のように、各県によって被爆者の現在登録されておる特別、一般を含めまして最低は秋田県の二十六名というのから、もちろん広島、長崎のようにたくさんあるところがございます。したがって、御指摘のようなそれぞれの県における実態、お世話のしかたというものには、人員が多ければ多いなりにまた問題が多いので、どうやら対応できておるかもしれませんが、これらの点に全く御指摘のような各県ばらばらの点が実態としてあると思います。先ほど御答弁の一部にも申し上げましたように、相談業務等は従来は県庁にまず聞かないと一般的な普通の県ではこれらの事務処理がわからないという実態を、できるだけ保健所段階等におろしまして、この問題の処理が御相談に応じられ、また諸般の手続等が御指導できるような諸施策を早急にとりたいというふうに思っております。
○古川(雅)委員 最後にお伺いいたします。被爆者が今後次第に老齢化をしていくわけでございます。長崎、広島におきましては、いわゆる原爆孤老の特別養護ホームができたわけでございますが、収容能力から見ると、まだ非常に少ないわけでございまして、今後さらにこうした施設を拡充していくあるいは増設をしていくという計画をお持ちであるかどうか。さらに、全国的にこうした特別養護ホームあるいは老人ホーム等において、原爆被爆者の老人を優先的に取り扱っていくというような措置をお考えであるかどうか、この点を最後にお伺いをいたしたいと思います。いずれにいたしましても、現地においてさらに被爆者対策が強力に前進をすることを希望いたしまして、私の質問を終わります。
○滝沢政府委員 養護老人ホーム等につきまして、広島、長崎百五十名ずつの施設でございまして、これで十分ではないということに考えますので、地元の御要望等勘案いたしまして、従来どおりこれが対策に積極的に対処してまいりたい。それから関東地区におきまして、東京の七千名等の原爆症を考えまして、一つの法人の団体が保養所等の設置について計画がございますが、これにつきましても内容を、十分健全な経営ができるというようなことを確認しますれば、この問題に対して積極的に応援をしてまいりたい、こういうふうに考えております。
○内田国務大臣 古川さんの原爆被爆者に対するあたたかいお気持ちは、私ども政府にもよく通ずるものがございます。ことに戦後二十五年を経まして、被爆者の方々がだんだんお年を召してまいられますので、いまお心づかいのことにつきましては、私どもも十分配慮をいたしてまいる所存でございます。
○増岡委員長代理 この際、暫時休憩いたしますす。本会議散会後再開いたします。 午後一時五十九分休憩 ――――◇――――― 午後三時十五分開議
○倉成委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。 質疑を続けます。西田八郎君。
○西田委員 まず最初にお伺いをいたしたいわけですが、社会党、公明党の委員の方からも御質問があったことだと思いますけれども、今回のこの改正が諸手当全部に及ぶということでなしに、ただ第五条にいう被爆者健康管理手当の一部の年齢の制限を繰り下げられて、六十五歳を六十歳というふうにされました理由ですね。なぜこれだけ下がったのか。ほかのものはもうそのままほってあるわけです。その理由についてひとつお聞かせをいただきたい。
○滝沢政府委員 この特別措置法ができましてから――最初にできました法律が三十二年の医療等に関する法律でありまして、それから四十三年に特別措置法の制定がありましてことしの予算が四十六年度と、率直に申しまして四十四年、四十五年というような法制定以来の期限が短いということでございますが、その中でも四十四年には葬祭料の新設、それから四十四年、五年にわたりましで所得制限を緩和いたしまして、それから介護手当というものが従来日額でございましたのを四十五年に月額に改めて、最高一万と逐次改善してまいりまして、四十六年度の予算要求のときに、関係の団体の皆さんあるいは現地の方々の一番御要望の強い健康管理手当の拡大という問題に取り組むということで四十六年度に予算編成をしたわけでございまして、御指摘のように確かに諸手当が据え置かれている実態は、制定後三年目ということでございますので、今後に改善を期待したいというような気持ちでおるわけでございます。
○西田委員 そうしますと、今後に改定をということですが、現在物価の値上がりだとか、生活の諸経費というものが全部上がってきておるわけです。そこで政府のいろいろな手当あるいはまた補助額の基準、そうしたものが引き上げられてきておるわけですね。そういう点から考えましたら、この法律が四十三年にできた。その後ある程度修正はされるものはされたとしても、やはり物価の水準といいますかそういうものに関連をして引き上げていくのが至当ではないか。たとえば介護手当なんかは、やはり十分に本人ではできないから介護を必要とするということで手当てをするということなら、当然その手当の基準というものは、家族がするのかあるいは他人を雇ってするのかということによって多少金額は違いますけれども、少なくともそういう人たちを必要とするために渡すということであるなら、そのために必要とする経費はふえてくるわけですね。だからこれは当然物価なり生計費の上昇に伴ってそういうものは引き上げていくべきではなかろうかと思うのですが、その辺の見解についてお伺いしたいのでございます。
○滝沢政府委員 御指摘の介護料等につきましても、確かに社会の実態から申しますと、二十日以上の一万円という限度額が十分であるとはわれわれも率直に申して思っておりませんが、鉱山の爆発事故などによる一酸化炭素事故患者などの介護料、そのほか諸制度の介護料がこの額で四十六年度一応スタートするようなかっこうになっておりまして、これはやはり厚生省全体としてこの問題に対処しなければならぬと思います。われわれは決してほかが低いから低くていいとは思っておりません。できるだけ原爆の実態に合わせましてその問題に対処していくという気持ちでおります。
○西田委員 対処する気持ちでおるならば、これは数字になってあらわれてこなければいかぬわけでしょう。それを出さなかったということは、そうすると厚生省としては、これでいまのところは十分だというふうに考えたから改正しなかったのか、あるいは厚生省としてそれよりほかに重点政策があったから、そのほうに費用を必要とするので、こっちのほうはまあまあ見送らしてもらったというのか、その辺のところをはっきりさせないと――それは、バランスをとらなければならぬことは知っていますよ。知っていますけれども、原子爆弾を受けた人は非常におっかなびっくり、毎日がたいへんなのだ。私の女房が実際に二次放射能を受けておるわけなのです。そして二人目の子供ができますときに、貧血を起こすわ、からだに発しんができるわ、びっくりして日赤病院に連れていったのです。いろいろ事情を話したところがそれは血球検査もしなければならぬということで、いろいろ精密検査も受けました。幸いにしてそういう症状は出ていなかった。しかしいつ出るかわからないから手帳を交付してやろうかという、院長から話があったのです。しかし私はそこまでしてもらわなくてもいいのじゃないかということでお断わりしているわけですが、やはりそういう心配はあるのです。ですから、二次放射能でそういう心配が出てくるわけです。二十五年たっておるわけなのです。二十六年になんなんとしておるわけですね。それは一酸化中毒も低過ぎる、そういう低いものを基準にしてものを考えるのではなしに、実際にそういう気持ちで考えなければ、私は被爆者に対しても申しわけない。しかも広島と長崎という限定された地域に落とされた、しかも世界初めて落とされた、そのあとビキニ環礁等による被爆者もおられますけれども、戦争という、爆弾という形において受けた人は世界で広島と長崎におった人たちだけしかないのですよ。ですからもっとそれは、そういう点においてあたたかい施策があってしかるべきではないかと思うのです。原爆を受けた人はケロイドを――最近ではそういう人は少なくなってまいりましたけれども、やはり人に見せるのを非常にいやがるわけです。そういう人たちの気持ちになれば、これは十分過ぎるほどしたって決して私は行き過ぎるということは、手当ての過保護ということはないと思うのです。したがって、そういう観点からお伺いしておるわけですが、もう一回大臣から。
○内田国務大臣 西田さんのおっしゃることはよくわかります。なるべく私どもも原爆被爆者に対しましては筋の通ります限り、手厚い措置を講じたいと思っておるところでございまして、先刻政府委員からも御答弁いたしましたように、この二年くらいの間に、葬祭料を設けますとか、あるいは日額三百円というようなことになっておりました介護手当を、月額にいたしまして一万円というようなことに直しましたり、また、特別手当、健康管理手当等につきまして所得制限などの緩和を、この制度ができましてから二年半くらいの間にやってまいりました。 ところで、御承知のように、この特別措置法によりまするいろいろの手当のうちで、一番広く恩恵を受けておりますのは健康管理手当でございます。約二万人弱の方々がこの手当を受けておられるわけでありますので、この健康管理手当というものについての改正は、一番大きな関心事として最近まで表明をされてまいりました。できますならば、健康管理手当の支給のしぼりをいろいろはかっておりますのをやめてしまうというようなことができれば一番いいわけでございますが、一挙にそれもできませんので、一番関心が多くて、これを手直しすることによりまして一番恩恵を受けることが広い方法といたしまして、今回、健康管理手当を受ける資格者のうち、六十五歳制限というものを六十歳制限に引き上げました。これによりまして約九千五百人の方々、つまり現在健康管理手当を受けておられる方が五割くらい増加をすることになるわけでありまして、ことばは適当ではありませんけれども、一番受益者の範囲が広くなるということでそういう制約を広げることをいたしました。 ただし御指摘のように金額は据え置きでございます。しかし私どももこれらの金額、これは管理手当のみではありません、その他の手当につきましても、やれ物価の上昇とか、あるいは国民生活全体の生活水準の上昇とか、あるいは社会福祉、社会保障そのものに対する国民意識の高揚というようなものもございますので、そういう点を十分心にとめまして、遠い将来ではなしに、今後引き続いて御指摘のような点についての改善をはかってまいりたいと考えております。
○西田委員 九千五百人と言われましたですね。そうすると、現在被爆者として登録されているのは何人ですか。
○滝沢政府委員 特別被爆者が約二十八万人、それから一般被爆者が五万人で、三十三万くらいが一番最近の数字でございます。
○西田委員 そうすると、その被爆者というのは大体全部キャッチされておりますか。まだ潜在する人は、……。その辺厚生省としてはどうお考えになりますか。
○滝沢政府委員 当初は爆心地から二キロ以内というような非常に放射能の影響の強い地域を指定しまして対策というものを考えたのでございますが、その後三キロに広げ、なお風向きあるいは地形等による影響の強いところに地域を拡大しまして特別被爆者の設定をしたのでございますが、さらに原爆の投下の日から三日以内に広島市、長崎市に入市した者もこの対象とする、あるいは二週間以内に入った者も一般被爆者として健康管理の手当をお渡しする、こういうふうに広がりましたので、入市した実態から申しますとかなりまだ潜在的に、そういえばわしもその範囲に入る立場にあったというような人も含めまして、必ずしもこれで以上終わりであるという状態ではない。したがって、年々この対策の単価も上がりますけれども、それを受けようとする人の数も年々ふえておりまして、予算全体が膨張している、こういう実態でございます。
○西田委員 ちょっと横道へ派生して質問しましたけれども、そうするといわゆる一般被爆者、特別被爆者を含めて三十三万のうち、この健康管理手当をもらっている人は何人ですか。
○滝沢政府委員 この対策以前の六十五歳までの制限では、そのほか身障者とか、母子世帯とか制限がございますが、ただいま約二万二千くらいでございます。今度の対策で九千五百が入りますので三万二千くらいになりまして、予算額で約三億四千万の増加になります。
○西田委員 三億ほどの増加ですね。微々たるものだ、実際に被爆をした人たちから見れば。ここにも、広島県、長崎県――お持ちだろうと思うのですけれども、各知事、県会議長、市長、市会議長、この人たちから幾つかの要望がなされておるわけですね。これを広げてみましても、やはり相当な苦情が並べられておるわけなのです。したがってこれは、そのほかの手当も当然この際手直しをすべきではなかったかというふうに考えるわけですけれども、それがいろいろの事情があってできなかったということであるならば、一体これらの手直しをする意思があるのかないのか、先ほど局長からの説明では、漸次今後改善していきたいということであったのですが、手直しをするのは大体来年度なら来年度手直しする意思があるのかどうか、大臣にひとつ伺いたい。
○内田国務大臣 適用の範囲なりあるいは単価の引き上げなり、そういうことをでき得る限り、経済情勢の推移を見ながら私は毎年でもやっていきたいと考えております。
○西田委員 これはぜひそうしていただきたいという要望をしておいて、次に被爆者の範囲の問題ですけれども、法の第二条でしたか、その当時被爆した人の胎内にあった胎児までは範囲とされておるわけですね。ところがからだに受けて、そしてそのからだにはなかったけれども、その後結婚して子供が生まれて、生まれた子供にそういう症状が出ておるという実例はありませんか。
○滝沢政府委員 いまのお尋ねの問題は、一般的に原爆の二世の問題といわれていることだろうと思いますが、この点につきましては研究が各方面で行なわれておりますけれども、たとえば白血病等、具体的に放射能に密接な関係があるといわれておりますものをとりましても、二世が両親の被爆の距離あるいは被曝線量の度合い等に応じて白血病の発生に現状においては差が見られない。これは一つの例でございますけれども、その他各方面からの染色体の異常があるなし、こういう問題等もございますけれども、現実では二世の問題については放射能の影響の明らかなものはいまない、こういう見解でございます。したがって、人口の多い広島、長崎地区でございますから、一般的な意味の白血病の子供の患者がたとえば従来の調査では六十名程度発生しておる、これは全国各地に人口に応じて子供の白血病がその程度発生する、ほぼ同様の率であった、そういう意味のことを含めて申し上げたわけでございます。
○西田委員 厚生省ではその結論は大体間違いないものだということで今後も当然調査研究を進めていかなければならぬと思うのですが、その調査研究は十分にやっていくだけの体制はあるのですか。
○滝沢政府委員 その点につきましては、国内の研究機関としては国立の予防衛生研究所が広島、長崎にそれぞれ支所を置きまして、アメリカのABCCの研究機関と共同で進めておりますが、そのほかにも科学技術庁の関係の放医研というのが千葉にございますが、これらでも基礎的な放射能など人体あるいは動物実験等を重ねております。したがって、この問題はいままでの結論でもはやよろしいという性格のものではなくて、やはり放射能の影響というものはこれからの人類全体にとってもきわめて重要な問題でございますので、各方面にまだ新しい企画からこの問題を検討しようという計画があることを承知いたしておりますし、われわれとしては引き続きこの問題は研究として続けて、新しい知見が出ればそれにやはり対処していかなければならない、こういうふうに考えております。
○西田委員 大体御答弁はそうだろうということで想像はしておるわけですけれども、これは私ども実際にデータを持ち合わせてないので、こうだという結論はよう言われないのですけれども、身内が広島市内に住んでおるものですから、身内にたくさん実際に焼けただれたり死んだ人がおるし、その当時は何のケロイドもやけども何にも残ってないけれども、かなりたってから、十五年も二十年もたってから、からだが変になってきたという人も聞いておるわけです。したがって私は調査研究が非常に狭い範囲で行なわれておったのでは十分な結果は出ないと思うのです。とにかくこういう初めての洗礼を受けて、しかも実際に予測できない事態というものが次から次に起こっていったわけですし、今後も起こる可能性はあるわけです。したがってこういう問題には十分力を入れて、そして非常に広い範囲にわたって調査を進めていく、そしてその中からどういう傾向にあるかということを見出していかなければならぬというふうに思うわけであります。これから原子力というものは第三の火というのですか第四の火というのですか、エネルギー革命の中で原子力というものがどんどんふえていく。そしてその原子力の放射能というものも、原子爆弾を受けての放射能も同じものではないかと思うのです。しろうとですからわからぬけれども、同じものではないか。ということになると、この原爆のそうした影響というものがどういうふうに広がり、どうなっているかということを追跡調査し――追跡というよりもむしろ実態調査をするということの中から、学問的にしっかりしたものを出していかなければならぬのじゃないかと思うのです。そういう点では非常に何か、いま御答弁では国立の研究所があって、そこの支所でやっていますということらしいけれども、私はむしろ実際にそういうところへ国立のものを設置して、そうして集中的に調査研究を持続して行なう必要があるのではないかというふうに思うわけですが、いかがでしょう。
○滝沢政府委員 全く御指摘のとおりでございまして、子供の健康状態は、いままでのそのような調査では結論は先ほど申し上げたとおりでございますが、子供たちを、経過を追って長期にわたって観察するということが必要でございますので、そういう意味でカードが用意され、定期的にこの観察が行なわれるというように、この研究はもちろんなっておるわけでございます。
○西田委員 それともう一つ、広島で生まれた人、被爆した人、その人が全国に散らばっていますね。それは当時放射能を受けたけれども、現実に症状が出てきてないからということで、そのまま手帳も何も持っていない。政府のいわゆる登録の外にある人があるというのです。そういう人たちもやはり早くつかまえて、そうして二世――三世まではまだできていないかもしれませんが、もうぼつぼつできるころです。特に二世等の調査というものは厳重に進めていただきたいと思うのです。その点についてこれは大臣、ひとつうんと力を入れていただけませんか。
○内田国務大臣 ごもっとものことだと思います。胎児までは直接の対象として取り上げられておるけれども、被爆者の二世、三世については別な扱いになっておるということにつきましては、私自身しろうとであるだけに若干のやはり懸念があるわけでございますので、当局からも説明を聞きながら、これは未解明の分野もあるわけでございますので、その方面の研究はたゆまず続けてまいるがよかろうと考えております。
○西田委員 次に、先ほどちょっと大臣からも触れられましたけれども、諸手当に対する所得制限を設けられていますね。その所得制限は、原爆の被災者に対する手当だけでなしに、ほかにも所得制限があるわけですね。国民年金にもありますし、それからもっとありましたか、そういう所得制限のあるもので、厚生省関係の制限の額といいますか、所得額の制限されておる額が違いますね。あるところでは二百万、あるところでは百八十万、あるところでは百三十万というふうに違うわけですけれども、これもまた妙な話で、それぞれによって事情が違うからと言われるのかもわかりませんけれども、今度児童手当法の中ではたしか二百万でしたね。そうして年金の場合は百八十五万でしたか、違いますけれども、原爆でいきますとものすごくこの額が低くなってまいりますね。ですから現状幾らになっておって、それをなぜ引き上げないのか、他と均衡をとらないのか、お伺いしたい。
○滝沢政府委員 ただいま御指摘の問題はまさに実態でございまして、原爆の各手当によって多少控除額に差があるものですから、具体的に申し上げますと、特別手当及び医療手当については所得税額で二万九千二百円、それはきまっておるわけでございますが、年間所得額でいきますと、四人の標準家族で百三十八万、健康管理手当及び介護手当については百二十二万というふうな形になっております。それが国民年金の福祉年金になりますと、本人の所得制限は四人家族で九十八万、それが配偶者、扶養義務者等の所得制限をとるとすると百五十四万という形に今回なる。先ほどの児童手当は一応案としては二百万ということでございますが、これは六人世帯の場合を設定して一応二百万というような形になっております。この点につきましては、われわれも予算要求にあたりまして、二万九千二百円という所得税額で、税法の改正等によってある程度それが反映される、こういう期待もございましたが、率直に申しまして国民年金がこのような改善がなされたとすれば、われわれのほうは一年おくれてしまったという気持ちでございまして、来年はどうしても追いかけなければならない、率直に申してこういう気持ちでございます。
○西田委員 それはまことに正直にお答えいただきまして、来年はひとつ思い切って大幅引き上げをしていただきたいと思います。 それから、原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律施行令の第一条第二項の中で特別手当の支給の制限を「法第三条第一項に規定する所得税の額が、三万七千円をこえるときは特別手当の全部について、三万七千円以下であるときはその二分の一について行なう」ということになっているわけですが、これは具体的にいうとどういうことになるか。
○滝沢政府委員 この特別手当は一応認定患者に支給される形のものでございまして、一応一般的な健康管理手当と違いまして、認定患者の場合、栄養の補給その他かなり生活の面に即した費用として考えている面がございます。そこで二万九千二百円という一般的な他の手当までは一万円出すけれども、その上三万七千円という数字になりましたときは一応五千円、半額です。そこまでは出す。三万七千をオーバーすればこれは支給対象にしない、こういう取りきめでございます。
○西田委員 そうすると、これは税金とのかね合いになっているわけでしょう。「所得税の額が」ということになっているわけです。だから、税金をよけい払っている者は手当が少なくなるということになるわけですか。
○滝沢政府委員 結果としてはそういうことになります。
○西田委員 それはおかしいのじゃないですか。税金を払う、払わぬということは、被爆をしたということと関係ないのじゃないですか。それから認定患者として特別手当を受けている人なんです。そういう特別手当を受けている人が、それは所得があろうとなかろうと、その被爆者として受けている苦しみは一緒なんですね。だからそれで制限をするということは、私は問題があると思う。したがってこういう特別の立法をし、特別の手当てをしているわけです。しかも先ほどから申し上げるように、わが国特有の実情なんです。そういうところで制限をするということは、私はほんとうに解せないのです。だから先ほど大臣は制限を広げると言われる。あなたもそういう答弁をされたけれども、こういうことをずっと関連して考えていくと、これは撤廃すべきだというのが私の主張なんですけれども、他の法律との関係があるということですか。またここで差がついていくということになると、やはり問題が非常に多いと思う。したがってそうした点は特別の措置をぜひ考えていただきたい。大臣ひとつ考えてください。
○内田国務大臣 いろいろの面におきまして、せっかくできております制度の趣旨が生かされるようにしなければ、むやみに制約が重なって、制度が死んでしまっておることはいけないと思いますので、検討いたしてまいりたいと思います。
○西田委員 最後に、これは三党共同提案の中にも入っているわけですけれども、法律が現在二つありますね。医療のほうと特別措置でしょう。その二つの法律を一つにして、そして原爆対策という形で一本化する必要がきているのではないか。片一方の医療のほうには審議会がある。ところがこっちの特別措置のほうには審議会がない。その審議会の性格が、医療審議会のほうの性格は違うからだと思うのです。初めての病気である、初めての経験である。したがっていろいろなものが出てくるであろうということで審議会がある。しかし、そうなれば措置法のほうにも審議会があってしかるべきだと思う。したがって法律を一本にして一つの審議会でいくか、あるいは法律はいまの場合二つに分かれているとするならば、もう一つのほうにも審議会を設けて、そしてそれらの対策について広く学識経験者、それから市民の実際に受けている人の代表あるいはそうしたものを実際に治療しておられる方々、そういう人たちを網羅して対策を立てていくということのほうが、より効果的な対策が立てられると思うのですが、そうした審議会を設ける意思があるかないか。それと、二つ質問があるわけですが、一つは二法を一法に一元化する意思があるかないか。
○内田国務大臣 医療法と特別措置法を一本にする問題でございますが、御承知のように医療対策ということだけで出発をいたしましたこの制度が、さらにそれを広く社会保障的な意味をつけ加えるということで、特別措置法をつくったわけであります。今日この二つを一本にするという意味は、今回野党三党の共同で提案をせられましたように、援護法的なものにするということを意味することにもなると私は思いますけれども、原爆被爆者に対する対策を援護法的なもの、すなわち国家補償、戦争の犠牲者として国がこれを償い補うという、たとえば戦傷病者戦没者遺族等援護法的なものにするということに踏み切らないと、形だけ一本にいたすのでは問題が残るわけでございますので、正直に申しましてその踏み切りがつかない状態でございます。でございますので、先ほど他の委員の皆さま方から同様の御趣旨の御質問の際に私は答えておきましたが、これは御質問の第二の点にも関連いたしますが、現在の医療審議会の中に幸い、この医療審議会の法律を読んでみますると「医療等」に関する重要施策とございますので、その「等」を生かしまして、福祉部会といいますか、あるいは援護部会といいますか、そういう機能を持たせた部会を設けることを検討したい。そうでないと医療等の審議会でなしに、ただ患者認定審議会で終わってしまうということにもなりかねませんので、新しい要素も加える、あるいは検討する場をつくる、こういうことでいま申し上げました福祉部会ないしは援護部会ということを設けまして、それに適する方に部会長に就任していただきまして、場合によりましては二法を一法にする問題、そういう問題にもさわりながら、今日の原爆被爆者に対する施策の合理的な改善、前進につきまして検討を進めてまいりたい、こういうふうに私どもは考えております。
○西田委員 時間のようでありますから終わりますが、要するに原爆の被爆を受けた人は、これはほんとうに特殊なレアケースで、やはり私は単なる対策だとか特別措置ということだけでなしに、国が最後までめんどう見る、責任を持つのだというくらいの姿勢で対処していただきたいと思うわけであります。しかし現行二つ法律があるわけですから、その法律の運用をできるだけ拡大解釈を――政府のお手のものでありますから、拡大解釈をしていただきまして、こういう人たちに十分なる処置がしていただけるように要望いたしまして、終わります。
○倉成委員長 寺前巖君。
○寺前委員 もう朝からいろいろ御審議もありましたことですから、できるだけ同じようなことは避けたいと思います。ただ政治姿勢の問題と、若干聞いておきたい二、三の点だけを御質問したいと思います。 まず、先ほどから論議になりましたが、私も昨年にも八月の六日広島に、八月の九日に長崎に行きました。大臣に向こうでお会いしました。現地でも当時言っておりましたが、なぜ総理がここに来てくれないのだろう、四分の一世紀たつ今日までの間、なぜ総理大臣がこの八月六日、八月九日に来ないのだろうかということを言われました。この間もまたその行脚があって、そこで問題になっています。四分の一世紀の間総理が行かなかったということは、大臣、事実ですか。
○内田国務大臣 私は四分の一世紀のことは全く存じませんが、昨年は御承知のように万国博覧会等が催されました関係から、外国の賓客が絶え間なく来日せられまして、総理はその応待に寧日ないような昨年の状態では、たいへん無理だったようでございます。 なお私、厚生大臣のことに関連いたしまして恐縮でございますが、私も実はその前日、何か四国のほうに皇室の、宮殿下を名誉会長とするような催しがございまして、そちらに参らなければならないことでございまして、広島には総理も私も参れないような状態で、一時総理府の副長官が参るということに内定をいたしておりました。しかし私は深く反省するところがございまして、厚生大臣は行かなければいけない、こういうふうに考えまして、途中まで同行を申し上げて、宮殿下にもそのお許しを得て、そこから広島にまた行きまして、あの記念式典に出席をさせていただいたような次第で、参りましたことは、厚生大臣としていささか職責に適したことであったように思っておるわけでございます。ことしは総理理大臣にぜひ広島なり長崎なりの記念式に出ていただきたい、こういう御要望もあるようでございますので、事情が許す限りそうしていただくことはたいへんいいことだと私は思いますので、一応総理にも皆さま方の御要望をお耳に入れるつもりでおります。
○寺前委員 先ほども話がありましたが、広島と長崎に対するアメリカの原爆投下は明らかに国際法の違反行為です。その行為によって生じた損害に対して、すべての被爆者はアメリカ政府に賠償を要求する当然の権利があると思います。しかしサンフランシスコ平和条約で、アメリカに対する損害賠償請求権を日本政府は一切放棄してしまいました。したがって日本政府は被爆者の医療と生活を全面的に援護をする責任がある、これは私は当然のことだと思います。したがって私は、あの八月の六日、八月の九日の日にあの現地に行って、そうしてその責任を果たすために世界的に見ても初めての原爆の投下地において、総理が謙虚に、この道を歩まさないために霊を弔うことは当然のことだと思うのです。大臣、総理が今日まで行かなかったというこの事実に対して、あなたはどういう気持ちになっておられるのですか。
○内田国務大臣 どうも私がなかなかお答えしがたいわけでございますが、少なくとも私は、厚生大臣としては行くのがいい、こう大臣の職責に顧りみまして昨年も参ったわけであります。本年八月六日とか九日には、私の寿命がおそらくないと思いますけれども、もしありましたならば、ぜひひとつ参りたいと思うわけでございます。
○寺前委員 私は、総理のとっておられる態度についてあなたはどう思われるかを聞いておるのです。日本政府の名において損害請求を放棄しているのです。日本政府の総理が、それでは私のほうが放棄しているのだから責任を持つのだ、持つ以上はなぜ明確に、あそこの地へ訪問をする、そうして霊を弔う、このことくらいはできないのですか。私が昨年その話をちょっとしたときに、大臣は、言いたいことは私にもあるということをちょっと漏らしておられた。私は、その言いたいことはどんなことなのか、ここの場で一回聞かしていただきたい。これが日本のほんとうの姿だろうか。総理がとっておられる態度について、あなたはどう思うか聞きたい。
○内田国務大臣 寺前さんからそのような御熱心な御発言がありましたことを、そのまま総理に私はお伝えをいたしたいと思います。
○寺前委員 謙虚に聞いてもらうことを期待して、もうこの質問は終わります。 次に、いま出されておるところの法案の関係の問題について、ひとつ詰めて聞いてみたいと思います。 健康管理手当の年齢を下げるということ、私は賛成です。しかし、せっかく下げるという問題を提起されるのだったら、いっそのこと、この年齢制限というのは全面的にやめたらどうでしょう。私の手元に、これは広島市の原爆被爆者の実態調査を四十二年にやった報告をいただいております。四十三年に広島の市のほうで協議会をおつくりになって、厚生省のほうにも調査資料について出したということを言っておりましたから、おそらく御存じだと思います。この広島の被爆者の健康状況の調査を見ますと、年齢に関係なく、健康状態が非常に悪いということが言えます。まず六十五歳以上の人は五〇%が病弱だ、六十歳から六十四歳も四二%、五十歳から五十九歳までは三五%、四十歳から四十九歳までが二六%、三十代で二〇%、二十代で九%。四十代になったら、すでに四分の一の人が健康破壊の状態にあるという資料を広島市は出しています。とすると、私は六十五歳を六十歳に下げたところで、いまむしろ大黒柱になっている四十歳や五十歳代にこそ、健康をささえてあげるための処置をしなければならないのじゃないか、いっそのこと、全面的に年齢を撤廃させる方向を検討すべきだと思うのですが、大臣、いかがでしょう。
○内田国務大臣 これは年齢の制約ばかりでございませんで、その本人が、母子家庭でありますとかあるいは他の障害を持っておるというような場合に限るという制約もかかっておるわけでございまして、年齢制限だけの問題ではないわけでございます。そこで私は、今朝来たびたび申し上げておるのでありますが、なるべく制度の趣旨が被爆者に対して生きるような施策を進めてまいりたい、かように思うものでございまして、そういう見地から年齢制限はもちろんのこと、いろいろな制約を逐次撤廃をしていく方向で検討をしたいとひそかに考えておるわけでございます。たとえば、今回六十五歳を六十歳に引き下げることによりまして、いままで健康管理手当を受けておられた方の約五割くらいよけいの方がこの手当を受け得ることになりますので、実際はただ五歳の問題でございますけれども、寺前さんから御賛成をいただきましたように、今回の措置の実質的意義は非常に大きいわけでございます。いろいろの面がございますので六十歳といたしましたが、いずれはあなたがおっしゃるのと実質的には同じような、年齢制限を撤廃したのと同じような形に持っていく方途を私は研究してみたいと思っております。
○寺前委員 私があえてこの問題を再度提起したのは、大臣が先ほどいずれは年がいってという話があったから、気になったから言ったのです。いま大黒柱の年齢の段階の人をささえてあげるという意味においては、早く年齢制限の撤廃をやるべきだ。その意味で私は提起した。大臣が先ほど言われた点を固執されるなら、私はたいへんな問題だ。せっかく考えるのだったら、いまのうちに処理をして責任を果たすようにしたらどうかという問題提起なんです。再度お聞きしたい。
○内田国務大臣 お尋ねの意味がたいへんよくわかりました。しかし現実にはこの制度がようやく二年ほど前に出発をいたしたばかりでございまして、いろいろな点から制約がかけられておるわけでございますので、これをにわかに撤廃するということになりますと、実際かえってなかなかやりにくい、こういう面がございますので、私はいろいろのやり方をもちまして、またいろいろの表現をもちまして一番いい方向に、また皆さま方のお気持ちに沿う方向に持ってまいりたいと思う苦心が実はございます。今回六十歳に下げましたのも、そのとおり大蔵省も通してくれました。したがって私の先ほどの表現はどうか気になさらないようにしていただきたいわけでありますが、ただ制限なしで出すと、こういうことに、ただいま全面的に賛成いたしますということは申し上げられませんので、制度の趣旨を生かすような方向で私は検討のお約束をいたしたい、こう考えます。
○寺前委員 それじゃもう一つ、矛盾の問題として大臣にお聞きしたいと思うのです。 昨年の八月に長崎市が、原子爆弾被爆者の特定地域拡大に関する要望書なるものを出しております。私もぱらぱらっとめくってみてすぐに気がついたことですが、この特定地域と一般地域との差のあまりにも不合理な設定という問題についてすぐに気がつきました。大臣、たとえば長崎の場合で調べてみますと、現在の特定地域内の認定被爆者の被爆者全体に体する割合、それを調べてみると平均一・六五%という状況になっております。認定患者が被爆者の中でどれだけ占めているか。ところが特定地域でないのにもかかわらず、たとえば本河内町二丁目というのですか、ここは爆心地から四・五キロメートル。ところが二・二八%という認定割合。平均よりはるかに高いという実情。あるいは相生町というのですか、爆心から四・二キロメートル離れているけれども、二・九五%という非常に高い実情が出ております。東琴平町というところでも二・七九%、四・七キロ離れている。そうすると現行のあの距離設定とは違った形で、いろいろな形の被爆の変化があるということはこれらの事実からも明らかだ。したがって現在設定している特定地域のああいう制度はやめてしまって、いま被爆者全体を対象にしてやって、この被爆者全体が医療を無料にすることもできる、特定地域全体をそういう取り扱いに全面的に変えてしまわないことには、この矛盾は解決しないのじゃないか。あるいは地図の面から見ても明らかに、町内別設定をやったときに矛盾が生まれている。このことを考えたときに、これは検討を要する問題じゃないかと思うのですが、大臣いかがでしょう。
○内田国務大臣 政府委員から補足させたほうがいいと思いますが、特別被爆者という方々をつくることによりまして御承知のようにこの特別手当なり医療手当なりあるいは健康管理手当というものを出し得るたてまえにいたしておりまして、だれでも放射線、熱線を受けた人々に対してはすべて特別措置を講ずるという仕組みになっておりません。そこで特別被爆者の資格を設けますために、あるいは地理的の距離制限を設け、あるいはまた時間的の尺度を設け、あるいはまたフィジカルな尺度を設けまして、でき得るだけ広く特別被爆者をつくることが私は親切なことであると思います。現に今日まででも約三十二万余の熱線あるいは放射線を受けられたいわゆる被爆者がおられるわけでありますが、その中で二十七、八万人の方を特別被爆者にいたしておりまして、その外側におられる方は五万人程度でございますので、この五万人も一緒に抱いてしまったらどうか、こういう御議論になるわけであります。それはわからぬわけではありませんけれども、やはり他の制度におきましても、税金を納めるような場合にも、税金を納める人と納めない人との境をつくったり、あるいは年金を受ける場合も、年金を受ける人と受けられない人との境ができてくるような、そういう行政上の仕組みがないと、手当などを出す場合に円滑にいかない問題もあるようでございます。そこで、いま御指摘がございましたけれども、長崎につきましては、法律改正は必要としませんが、今回長崎方面からの皆さま方の御要請も受けまして、爆心地から三キロ以外の地にわたりましても、御指摘のように地理的には変なかっこうになるわけでありますが、三十何カ町であったと思いますが、それを特別被爆地といいますか、特別被爆者となる区域に組み入れるように、法律外の政令か告示かでそういう措置をとるようにいたしております。同じことは今後実態に応じてやってまいるほうがいいと私は考えております。
○寺前委員 局長に聞きますが、いまの大臣の答弁で、私が言ったような地域を全部対象地域に入れちゃおうということで矛盾はなくなるという意味と解釈できるのですか。
○滝沢政府委員 ただいまの具体的なパーセントでございますが、われわれ従来この問題を取り扱ってきた実態から申しますと、パーセントは、戸数がどの程度の特別被爆者なりがあって、その中からたまたま老齢になったり、からだの条件で認定患者になるその率が、確かに地域によって取り上げますと、いまおっしゃったように矛盾といえば矛盾でございますが、数字的には戸数との関係によって率が多少高かったり低かったりして出てまいります。そういう点で、特に四十六年度長崎の地域を拡大した背景には、やはり認定患者の率が高いというような実態を踏まえて、地元の御要望も勘案して地域の拡大を決定いたしておりますので、今後御指摘のような地域がございまして、そしてその健康障害されている実態がその年齢構成その他によって変動いたします場合には、結局実態に応じて対処してまいる、こういうことで現在も、今度四十六年度設定した地域で大体もうこの特定地域の指定は終わりだというような考え方はございません。
○寺前委員 それじゃ大臣、さっきも言いましたように、私はむしろ被爆地全体を医療について保障するという態度で取り扱うべきだということで、ひとつ検討を願いたいと思います。しかも現に矛盾が生まれてきている。 これで私の質問を終わりたいと思います。
○内田国務大臣 実質的にはそういうような方向で地域を広げることにいたしております。
○倉成委員長 これにて内閣提出の原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案についての質疑は終局いたしました。 ―――――――――――――
○倉成委員長 次に、本案を討論に付するのでありますが、別に申し出もありませんので、直ちに採決いたします。 原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。 本案に賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕
○倉成委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。 ―――――――――――――
○倉成委員長 この際、本案について、増岡博之君、田邊誠君、大橋敏雄君、西田八郎君及び寺前巖君から、附帯決議を付すべしとの動議が提出されておりますので、その趣旨の説明を求めます。増岡博之君。
○増岡委員 私は、自由民主党、日本社会党、公明党、民社党及び日本共産党を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。 案文を朗読して説明にかえさせていただきます。 原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議 政府は、本法の施行に当たり、次の事項について、その実現に努めること。 一 最近における被爆者の疾病状況にかんがみ、被爆者対策の根本的改善を促進するため、すみやかに関係者を含む原爆被爆者援護審議会を設置するなど所要の措置を講ずること。 二 認定疾病の認定に当たっては、最近の被爆者医療の実情に即応するよう検討すること。 三 特別被爆者に対する健康管理手当については、手当額の増額、支給対象の拡大及び支給条件の緩和に努めること。 四 特別手当、医療手当及び介護手当の金額を大幅に増額すること。 五 葬祭料の金額を大幅に増額するとともに、過去の死没者にも遡及して支給することを検討すること。 六 各種手当の所得制限の緩和に努めること。 七 被爆時の気象、地理的条件等を考慮し、特別被爆者の範囲を合理的に拡大すること。 八 原爆死没者を含む被爆実態の調査(地方調査を含む。)を引き続き実施すること。 九 昭和四十年に政府が行なった被爆者実態調査の最終報告をすみやかに発表すること。 十 被爆者の相談に十分に応じられる態勢の充実に努め、被爆者に対する相談業務の強化を図ること。 十一 被爆者の子及び孫に対する原爆の影響については調査研究を行ない、その結果に基づいて適切な措置を講ずること。 十二 沖繩在住の原子爆弾被爆者に対しては、本土なみの措置を行なうこと。 十三 旧防空法による犠牲者に対し、戦争犠牲者救済の公平を確保するようすみやかに施策を講ずること。 以上であります。 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
○倉成委員長 本動議について採決いたします。 本動機のごとく決するに賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕
○倉成委員長 起立総員。よって、本案については、増岡博之君外四名提出の動議のごとく附帯決議を付することに決しました。 この際、厚生大臣より発言を求められておりますので、これを許します。厚生大臣内田常雄君。
○内田国務大臣 ただいま御決議をいただきました付帯事項につきましては、でき得る限りその趣旨を尊重いたしまして、これが実現のため今後ともなお一そう努力をいたしたいと存じます。 ―――――――――――――
○倉成委員長 おはかりいたします。 ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○倉成委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。 ――――――――――――― 〔報告書は附録に掲載〕 ――――◇―――――
○倉成委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についておはかりいたします。 勤労者財産形成促進法案審査のため、来たる三月十六日、雇用促進事業団当局より参考人として御出席願い、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○倉成委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。 なお、参考人の人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○倉成委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。 ――――◇―――――
○倉成委員長 次に、厚生関係の基本施策に関する件について調査を進めます。 質疑の申し出がありますので、これを許します。小林進君。
○小林(進)委員 私は順序なしに思いつくままに御質問いたしたいと思うのでございますが、きょうは幸いにして深夜までもやってよろしいということでございますので、ゆっくりやりたいと思います。 第一には生活保護の問題でございますが、社会保障で守られる生活というのは一体どんな水準をさしておるのか、私は社会保障の最低生活の水準をひとつお聞かせをいただきたいと思います。
○内田国務大臣 理想といたしましては、憲法二十五条にございますように、健康にして文化的な生活が営めるところを社会保障の水準に考えるべきであると考えます。しかし、残念ながらわが国の社会保障の水準は、まだそこまでは実質的には到達していない面もあるように考えております。
○小林(進)委員 私はまず生活扶助だけにしぼってお尋ねをしたいのでございます。今年度は生活保護費を一四%ぐらい値上げをされました。昨年も一四%。例年一一%ないし一三%、一四%というふうにお上げになっております。それで今年度は標準四人世帯で月三万八千九百十六円、こういうふうにお出しになったのでございますが、この毎年の値上げが、何か一四%とか一三%とかいう比率でお上げになるが、四人の人が一カ月暮らすためには、菜っぱを食うのか魚を食うのか肉を食うのか知らないが、人間としての最低生活がこれだという具体的な標準をお示しになったことがない。比率だけ毎年上げていって能事終われりとしている。これはやはり人間が人間として生きるための最低生活でございますから、そんな比率でごまかすなどというふまじめな態度では私はいけないと思う。三万八千九百十六円で四人の家族がどうやって生きていけばいいのか、その具体的な標準をやはりちゃんとお示しにならなければ、厚生大臣の権威にも関します。どうぞお聞かせを願いたいと思います。
○加藤政府委員 確かに生活保護の基準といたしましては、昭和四十六年度一級地で四人世帯で三万八千九百十六円でございますが、これは従来生活保護の基準を定めます場合には、終戦直後は先生御承知のようにマーケットバスケット方式というのをとっておりましたし、それから数年前まではマーケットバスケット方式から食料費の――エンゲル係数方式というものを採用しておったわけでございますが、三年ばかり前から、むしろ一般の家庭の消費水準に対して格差をできるだけ縮めていくという方式で、格差縮小方式という方式で生活扶助基準の改定ということをやってまいったわけでございます。 それで生活扶助基準を一四%アップいたしました根拠は、これは昨年四十五年度が四十四年度に対しまして一四%アップということと、それから人口の五万以上の都市勤労世帯の家計消費支出の伸び率、それが大体四十四年度を見ましても一二・一%であった、そういうような点を勘案いたしまして、一応一四%ということで大蔵省と話し合いがついた。これはもちろん十分な生活とは申し上げかねるわけでございますが、一応親子四人で何とかやっていける金額じゃないかということで定めたわけでございます。
○小林(進)委員 格差縮小方式だというその方式は私も一応認めるとして、ほかの予算と同じように、大蔵省あたりと折衝してそして上げたり下げたりする、そういう相場の上げ下げみたいな形で人間が生きていく最低生活をきめていくという、そのきめ方がどうしても私は気にいらない。そのことが一つです。一つだが、まあ時間もありませんからそういう理論はやめて――しかし生活保護法の八条ですか、そこには生きるための最低生活、いわゆる生活保護基準というのは厚生大臣がきめることになっているのですから、大蔵大臣の関与を受けるようなことになっていません。それをいつも予算折衝のときに上げたり下げたりしてきめている。これはほかのことと違って、人間が生きるか死ぬかのぎりぎりの線なんです。そういう線を予算折衝でかってに上げたり下げたりしてきめるという、そのきめ方が私はお気に召さないといっているのです。いいですか、ほかのことと違うのです。ぎりぎりの線なんです。人間が人間として生きるか、動物として生きるかの境目なんです。最低の生活のぎりぎりの線なんです。そういう無礼なことはいかぬと言っているのです。 理論構成は別として、まあ格差縮小方式というあなたのペースに乗りますが、それでは勤労者の平均収入を来年度、四十六年度は幾らと予定せられているか、それからまた勤労者の平均の月の生活費というものは一体幾らと見ておられるか――時間もないから、できなければ資料で、後日またやることにいたしましてもけっこうでございます。
○加藤政府委員 この一四%の伸びをきめました場合の数字につきましては、先ほど申し上げましたように、家計の消費支出の伸び率というのでやっておるわけでございます。ただ昭和四十二年度以降の平均伸び率が、人口五万以上の都市勤労者世帯で大体一一%から一二%前後、四十四年度は一二・一%でございますが、それでその伸び率より若干上回る伸び率ということで、大体一般の勤労者の世帯に対しまして生活扶助基準の絶対額は六〇%をちょっと欠けておる、五五、六%というところではないかと思っております。
○小林(進)委員 あなたが五〇%とか六〇%と言われたところで、最低生活の三万八千九百十六円という四人家族の標準ということが、これは一級地で出ている限りは、その六〇%とか五〇%とかのいわゆるその家庭生活の水準だって、その家庭というものは一体どの家庭なんです。それはやはり一般の勤労者の平均家庭というものをとらなくちゃいけないことは明らかです。だからその一般の勤労者の平均した月収は幾らか、あるいはその人たちの、一般の勤労者の月の生活費は幾らかかっておるか、それはやはり金額を示してもらわなければ、その二つの数字を比較してみて一体六〇%なのかあるいは五〇%なのかという見当がつくので、パーセンテージだけ示されても、確実な数字を見せない限りは、この論争はかみ合いませんよ。これはひとつ後日数字を出していただいて、その上でまた論争を繰り返して申し上げることにいたしましょう。きょうは一部問題点だけを指摘いたしておきましょう。 そこで今度は大臣にお伺いをいたしますけれども、一体わが日本の保障する生活水準――これは年金の問題です、いまは短期に対し長期といいますが、わが日本の社会保障で保障する生活水準というのをどこに基準をお置きになるのですか。社会保障でやっておる生活水準、共済年金だの、国民年金だの、厚生年金だの、老齢年金だの、いろいろな年金をおつくりになるけれども、あの年金というのは老後の生活を保障する金額でしょう。だとすれば、どこかに水準がなければならない。その水準をどこに置いて各種の年金をおきめになっているのか、それを聞いている。どこに水準を置いておきめになっているのか。
○内田国務大臣 わが国は国民皆年金というたてまえをとってまいってきたわけでございまして、私はその年金の水準が今日完成した段階にあるとも思いません。しかし、国際的には個々の年金の水準というものは必ずしも劣っていないということも現状でございます。しかりしこうして、その水準はとどのつまりは、それらの年金を受けられる方々が職務についておった、稼働しておった時代の賃金の何割ぐらいを目標にすべきかというところで私は設けられるように思いますが、国際的に見ますると、それはかなりのでこぼこはございますが、三割か四割程度の水準にあるように考えられますので、一応割合にいたしますとその辺の割合、金額にいたしますと今日の段階では二万円から二万五千円ぐらいのところと、こういうことに相なります。しかしながら、私が調べてみますると、先発諸国の賃金水準がまだ日本より高いところも多いわけでございますので、それに三割なり四割なりという比率をかけました年金額というものも、若干は外国のほうがまだ多いところも見出されます。それからその上さらに大切なことは、妻、配偶者の年金権をどうするかというのが、老後の夫婦の家庭をささえていく上におきまして大きな意味があるわけでございますが、その点に対しましてさらに突き詰めてまいらなければならない問題を残しているように私は考えております。
○小林(進)委員 大臣のわかったようなわからないような御答弁をいただきましたが、その前に社会局長にひとつ御注文をつけておきます。 先ほど申し上げました勤労者の平均収入は幾らか、その収入の中の勤労者の平均の月の生活費は一体幾らか、その中に対するいまの生活扶助は一体何十%を占めておるか、大体私の計算では、生活扶助費は一般勤労者の生活費の四〇%ぐらいだと私は見ておるが、あなたは六〇%程度とおっしゃったが、二〇%の開きがありますので、それはひとつあとで作業をさせてお知らせいただきたい。 それからエンゲル係数、これは、この生活扶助費三万八千九百十六円の中でエンゲル係数は一体何%まで上がっておるか、これもあわせてひとつ資料でお聞かせいただきたい。 さて厚生大臣の答弁でございますけれども、わが日本の社会保障がイギリスと根本的に違っておるところをひとつ私は申しげたいのです。これは、人間が老齢でも何でも生きるという最低の生活を保障していないのです。ともかく共済年金でいえば、定年になってやめたら、いままでもらっている給料の六割だとかあるいは四割だとか、そういうことですから、よけいもらっている人はそのよけいもらっている給料に基づいていわゆる老齢年金なり共済年金なりをもらって生活をしている。最低の賃金をもらって生活している者は、最低の賃金のまた四割とか、あるいは厚生年金のように六十五歳になったら二万円くれますというような、そういう形で老後の生活というものが保障されているから、何にも生きる生活の基準はない。いわゆる最低生活で現実に働いている者よりもよけいの生活保障費をもらっている人もおれば、一生懸命働きながらも安い賃金で働いている者は、またそのうちの何割ということになりますから、とても生きるまでの生活保障費というものをもらえないという、実に生活の保障がばらばらですな。ばらばらでございましょう。これは、私の言っていることは大臣おわかりになりますね。あなたのような高給をもらっている人がやめたら、高給の三割だから十五万円も二十万円も年金がもらえますけれども、いまの厚生年金の二万円ぐらいしかもらえない、そういう生活保障しかないということになります。 そして、御承知のとおり、イギリスは最低生活主義というものをとっている。生活扶助と同じです。ちゃんとその人の最低の生活を保障するというものを、生活扶助費でやっているが、いま言う年金形態も、何もよけいもらった人はよけい保障費をもらう、少ない人は少ない保障費しかもらえぬというようなでこぼこではなくて、やはり生活扶助費と同じような、同一のものを国民全般に与えるという保障制度をとっている。私はこれのほうが進歩的であり妥当であろうと思うのです。人間が生きるためにはそういう形の生活保障費、社会保障というものにそろそろ日本は切りかえていい時期ではないか。これはなかなか角度の高い質問です。どうですか。生活扶助と社会保障、いわゆる年金とを一緒にした質問をしているのです。こういうことに改めるべきではないですか。
○内田国務大臣 私はここで資料をもって申し上げるわけではございませんが、いまの日本の社会保障意識のもとにおける年金のつくり上げ方というものは、小林さんがおっしゃるように生活保障的な意味と、それから本人の掛け金に対応する分野と、両方を折衷した折衷式の年金になっておりますことは御承知のとおりでございます。したがいまして、標準報酬が高くて、それに対する一定率をよけいにかつ長くかけられた方は年金額も多いという面もございますけれども、しかし均等割りの制度もとっておりますので、両者が平均されておる。そしてまたその両者を平均総合した金額というものは、いまの段階ではそれだけではまだ生活していけないような程度のものである。そこで、その妻の年金権というようなもの、これは日本は家族制度でございますので、夫が年金を受給していてなくなれば、妻に対しては扶助料というような形でその二分の一が出るのが日本のたてまえの多くのようでございますが、外国の例などを見ますと、これは個人主義でございますので、夫がなくなっても妻に扶助料が出ないかわりに、夫が働いて年金をもらえるようになれば妻も一種の、夫の年金権に伴う年金権が発生して、そして妻の年金受け取り分が支給される。したがって両方合わせると、それは日本の二万五千円なり三万円なりではなしに四万円、五万円になるというようなものが見られておりますので、私が先ほど申しました妻の年金権の問題などについて、さらに今後解決すべき分野があると申し上げたのはその意味でございます。
○小林(進)委員 ひとつ問題を提起する程度にして、これはとめましょう。 しかし、生活扶助は私はひとつここで注文をつけておきます。いま言うように、これは局長のほうから資料が出ましたので申し上げるけれども、最低生活を営むための一般の勤労者の平均の四〇%か五〇%しかいかないような、そういう人間らしからぬ生活をやらしている社会保障費、生活扶助費は、まだ残酷むざんだと私は思っています。これはもっと引き上げてもらわなくちゃいけない。 第二番目を申し上げますが、生活扶助は先ほど一級とおっしゃったが、地域格差は一級、二級、三級、四級まであるのでしょう。こういうようなものは終戦直後ならともかく、もはや今日この時代、都市と農村のそれほど地域格差があるわけじゃないのですから、生活扶助の四級まで区分した格差は私はやめるべきだと思う。これも問題提起をしておきますから、厚生省で意見があれば出してもらいたい。 第三番目。失対事業を労働省は廃止する。これを廃止して新しい窓口をふさごうとしている。そんなことをやらせませんけれども、こういう法律があるからには、新しく出てくる老齢の失対者を生活保護の中でちゃんと受け入れる、そういう形ができていなければならぬ。厚生省の今年度の生活保護の中で、労働省の失対関係で新しく出てくる生活保護者を一体どれだけ受け入れする数字が含まれているか。この三つです。三番目くらいお答えができるでしょう。どれだけ含んでいますか。
○内田国務大臣 私も担当ではございませんが、今度労働省の法律の結果、現在の失業対策事業、ことに老齢者に対する失業対策事業が打ち切られるのではなしに、老齢のために他に求める職業が得られないような人々で失対事業をやっておる方は、依然そのまま今日までの状態のもとに置かれる。したがってそのはしごをはずしてしまうから厚生省のほうの生活扶助の受け入れ道をつくっておる、こういう仕組みではないように私は了解したわけです。しかしそれはそれといたしまして、人の命も長くなりますし、老齢者が働かなければならぬ場合がございますので、厚生省はそういう老齢者を救う道を労働省とは違った立場において見つけたりあるいは授産とか職業紹介もやりますし、生きがいを感じていただくような、そういう面の老齢者対策というものは導入すべきである、こういう立場に立っていろいろ検討したり、また一部は実施しております。
○小林(進)委員 これまた、議論の問題点です。これは労働省のほうは新しく失対に入る人の窓口をふさぐのです。現在ある失対の十九万はそのままにしておくけれども、新しい道はふさぐ。四十五歳から六十五歳までの新しい職業戦線に出た者はどうするのだ。全部民間会社や開発事業のほうに世話するのだと言っておるけれども、どんな人間があろうとも、役人が企画的にやれるような民間企業や開発事業へ全部おさまるものじゃない。何%かはそんな開発事業や民間の企業へ行けない者が必ず出てくる。人間の世界ですから、機械を右から左へ持っていくようなわけにいきません。それをどこで拾うのだと言ったら、厚生省と話がついているというのが労働省の言い分です。しかしあなたの話を聞いたら話は何も出てないということはわかりましたから、それはけっこうです。時間もありませんからけっこうです。次へ行きましょう。 これはちょっと漫談めくかもしれませんが、私は常日ごろ疑問に思っているのだからこの機会にあなたにお聞きするのだけれども、日本の経済成長と国民生活について私は疑問なんだ。大臣とはかみ合わぬかもしれませんが、日本のGNPが世界で二番目だとか三番目だとか、ことに個々の所得でも世界で十六番目だから、昭和二十五、六年から国民生活の所得水準は戦前に復したとか、いろいろ政府のほうでPRをされるのですけれども、われわれはわれわれだけで調べてまいりますと、明治百年の間に日本のインフレはちょうど一万倍になっているそうです。だから明治初年の一円がちょうどいまの一万円だ。いまの一万円札は、ちょうど明治初年のころの一円だというのですよ。だから実態をきわめていけば、経済の成長なんというものはちっとも中身はふえてないのだ。ただインフレでふわっふわっといかにも無限に富み栄えて、われわれの所得がふえたように欺罔されているだけの話であって、中身はちっともふえていない、こういう意見があるのです。そういう論争は別として、これはやっぱり社会保障につながっていく問題ですからあなたにお聞きするのだけれども、明治初年は、大臣、お生まれになっていなかった。だがあなたは、官僚生活――大学を卒業されてお役所にお入りになった。そのときのあなたのもらった給料と、その給料であなたはどういう生活をしたか知りませんけれども、奥さまや子供をかかえられていたその生活の実態と、現在あなたのそばで働いているお役人のもらっている給料と生活の実態をながめて、一体どっちのほうが楽でしたか。これは私はあなた自身にお聞きしたい。よそのことを言わぬで、あなたの身近な過去の生活と、現在の生活と、あなたもやっぱりサラリーマンであったというときを比較対照して、実感をひとつお聞かせをいただきたい。そんなに日本の経済成長が楽しいものであるかどうかということも含めてですよ。
○内田国務大臣 私が四十年前に学校を卒業いたしまして、初めて、就職戦線に立ちまして給料をもらったころの生活と今日と比べてみますると、現実に苦しくなったように感ずる面もありますし、昔のほうがよかったと思う面もありますし、しかし中身においては昔はえらい苦しい生活をしたが、いまは楽になったと思う面と両方でございます。それは、あとのほうから申し上げますと、なかなか車にも乗れませんでした。また家の中を整理いたしますにも、電気掃除機も電気冷蔵庫も電気何がしもないというようなことで、三種の神器みたいなものはございませんで、自分の洗いものを男手で、自分で自分のふんどしを洗ったような生活をいたしておりましたが、それと今日と比べますと、今日のほうが非常にぜいたくに私自身もなってまいりました。洋服なども、一着つくりますと裏返しをして、私は役所づとめをいたしておりましたが、ポケットが右側に、裏の縫いとりがあるものをほんとうに着てまいりましたが、今日では、どういう役所の係長さんでも、そういうものは着ていらっしゃらないようでございます。そういう面から見ますると、人間がぜいたくで、豊富になり、車を持たれているような方が私ばかりでなしにたくさんある。しかし、それだけにまたほんとうに、何といいますか、始終収入と支出に追われているような面がございまして、経済の成長の中身と、それを処理するための家計収入支出などの関係の矛盾のようなものも、いいことでございましょうけれども感ずる面が多々ございます。
○小林(進)委員 私は経済の成長で日本が豊かになったというこのことばの中に実に多くのうそが隠されていると思っているのです。私が厚生大臣に言いたいのはそれなんです。第一、人間の生活の基本は衣食住が足って礼節を知るという、いまあなたは衣食住の衣の問題をおっしゃられた。あるいはそのうちには食の問題も入るかもしれません。一体住はどうなっておりますか。衣食住という三つがそろって初めて人間は人間らしい生活ができる。住はどうなっております。あなたは車なんということをおっしゃったが、ここにおられる方々は車に乗れるでしょう。しかし住がない。大臣は家なんかいいだろうけれども、局長なんて役人としては人生の最高をいっておる。この人たちは定年に近づいて、まずどうだ。家のないサラリーマン生活をして、住は一体どうしようというのが頭のどこかにあるのじやないか。住というものはいまの生活では解決されない。昔は、それでもサラリーマンやったら、退職金で中級の家くらいできたのですよ。同時に、いまあなたは、なるほど裏返しの服を着たと言って服ばかり自慢しているのですけれども、そのころのあなたの生活は、さっき私がお伺いしたけれども、奥さんを働かしたか。子供は一体アルバイトをやったか。あなたの過去の生活はいまとこうとおっしゃるけれども、局長さんあたりの奥さんは別だろうけれども、ほとんどのサラリーマンはみな共かせぎですぞ、昔はもらってきた給料で奥さんを養い、子供を養い、しかも退職金で家をつくってゆうゆう自適、ことに小学校の校長先生だって、退職金で、年金で、あとゆうゆう自適の生活、倹約をすれば、節約をすれば、恥もかかぬでよろしい中級の生活というものができた。いまその住を与えられている者が一体いますか。しかも大半は共かせぎですぞ。そういうことを一つずつ押してみれば、決して豊かなものではないですよ。しかも毎日毎日追われるような生活の気持ちの中で、まるでうしろに火をつけられたような形のあわただしい生活をしているというのが今日の現状なんです。 私は、これもあなたと論争をしようというのではないのです。厚生大臣であるならば、やはりそういうあなたの周囲にいる人たちの生活、その衣食住の住の問題等も考えて、それを厚生行政の中で――あなたのお役所だってみんな共かせぎしておるのです。子供もいるでしょう、その子供をどうするか、保育園をどうするか、幼稚園はどうなっておるか、あるいは共かせぎの家庭の中の生理休暇はどうなっておるくらいまで、ささやかなところに気を使うのが厚生大臣ではないか。ほかの大臣と一緒になって、わが、日本経済の成長は世界の二番目になった。おれは裏返しの服を着たんだ。いま裏返しの服を着ている者はないなんという甘っちょろいものの見方をしているから、厚生大臣としてほんとうの生きた行政ができないのであるということを、いま私はあなたに忠言を発しているわけなんです。あなたも言いたいでしょうが、あなたに言わせると時間がなくなるから、そこで質問をひとつやるのですが、一体貯金をすれば――いまサラリーマンは家がほしいから貯金をするのですけれども、しかし貯金をすればそれがみなインフレで元も子もなく価値を下げられておる。これを財政学者は二重の税金だと言っておる。税金の二重取りと言っておるのです。日本の資本というものは実に冷酷で、まずサラリーマンから勤労所得税という名前でさいふの中から遠慮会釈もなく取って、その中で家を建てよう、子供を教育しようというその金も、今度はインフレという手段で全部値打ちを下げて搾取していく。そういう二重、三重でいま勤労大衆は苦しめられているというのが実態なんです。これをどこで補うか。それは現体制を直して、こんな内閣ぶっつぶして社会党でも天下を取ればそれで問題は解決なんだけれども、そこまでいかぬから、そのためにはやはりそういう生活の実態を社会保障の面で補っていくという、こういうことが私は大切だと思うのです。 私は漫談をやっておるのじゃないのです。そこで日本の経済成長率、これは二十六年度でもいいが、遠いから三十年度からの成長率をひとつ資料としてちょうだいしたい。その中で、賃金の上昇率、これはあるはずですからいただきたい。その賃金の上昇に伴う社会保障費というものがどういうふうに伸びているか、この三者をひとつ比較対照したものを、いま資料がここにあるのだったらそれをちょうだいしたい。なければあとでひとつ文書でちょうだいいたしたい。その作業の中で、皆さん方がおやりになっておる社会保障というものがどんなにインチキかということがおわかりになりますから、その作業をして資料をちょうだいいたしたい。いかがでございましょう。それでも何かお話があればひとつ簡単にお願いします。
○内田国務大臣 よろしゅうございます。そういうものをひとつつくらしてみたいと思います。
○小林(進)委員 それから、まことに失礼ですけれども、なかなか時間ももらえませんから、大臣あなたに失敬なことを申し上げるかもしれません。これも何ですけれども、いまの内閣の中に厚生大臣の地位というものは一体どれほどのウエートをお持ちになっておるか。これもまことにどうも大臣に失礼かもしれませんけれども、あなたと私の仲ですから、率直にお聞かせを願いたいのです。閣僚が十何人おいでになって、その中における厚生大臣のウエートというものは閣僚の中で一体どのくらいあるものか、お聞かせをいただきたい。
○内田国務大臣 私は、これまた決して漫談を申し上げる意味ではございませんが、よそに行きますとこういう演説をいたします。 日本は昔は軍事大国を、富国強兵を目標としておった。しかるに戦後人々は敗戦の結果食えなくなったので、経済成長を目標として経済大国になった。しかし第三の時代は福祉大国を目標とするものである。私はその福祉大国をつくり上げる目標をねらう座につくものであるから、微力であるけれども、そのような努力を続けたい。しかりしこうして、昔は軍事大国の目標を達成する陸海軍大臣がやめればその内閣はつぶれてしまった。いまや軍事大国から経済大国を経て福祉大国だから、その目標達成をつかさどる厚生大臣がやめるようでは、そんな内閣はつぶれる、そのくらいに皆さまが厚生大臣を思ってくだされば――こういう演説をするわけで、私がえらいというわけではなしに、厚生大臣に対する評価を高くしていただき、御支援御協力をいただきたい、こういう演説をいたします。それで御理解をいただきたいと思うのです。
○小林(進)委員 大臣、私も賛成です。ほんとうにぼくもそのとおりだと思っている。ほんとうに厚生大臣がやめたら時の内閣がつぶれるくらいのウエートを――この経済成長の中で公害だのインフレだの、国民は空気も吸えない、水も飲めないというくらい追い詰められている。これはみんな経済成長から生まれた全国民の悲哀です。それを人間らしい生活を与えるセクションはいろいろあるだろうけれども、厚生行政をもってほかにないのですから、それくらいの確信と自信と力を持ってもらわなくちゃならないと私は思っている。 それから、あなたがおっしゃった、いみじくも私は質問しないつもりでしたけれども、わが日本のいわゆる政治の色彩によって、軍事大国か、あるいは軍事国家か、経済国家か、福祉国家か、これは色合いによってきめられるわけです。戦前は確かに富国強兵だったでしょう。軍事大国がわが日本の情勢の中では一番色濃かったでしょう。だから日本は、あなたのおっしゃるように軍事大国だった。世界三大強国の一つだったかもしれない。いまのわが日本は経済大国とあなたはおっしゃった。私もそのとおりだと思う。日本経済は世界の二番目か三番目になった。日本という国の現在の色彩は、私は経済大国だと思う。しかし、いまの日本の経済大国の色彩がいよいよ、外国へ物も売らなければならぬ、国内ではもう飽満状態だというために、だんだん経済大国の海外進出が、いまや台湾海峡も守らなければならぬ、韓国もどうもわが日本の防衛圏の範囲だ、マラッカ海峡は日本の経済の重大な寝首だといって、だんだん戦前の満州はわが日本の生命線だというようなことばと同じような表現をし出している。これは経済大国の落ち行く先です。そうすると、その経済大国というのは、知らず知らずのうちにまた、ひとつ軍隊の海外派遣でもして経済の流れ行く道でも開こうかというような方向へ、行かないだろうと私は思うけれども、外国はそういう疑いを経済大国の日本に持ち出した。だから私どもは、そういう意味においても、経済大国変じてまた戦前の軍事大国の方向へ日本がいまや進みつつあるのじゃないかという非常に懸念を持っている。いわゆる福祉国家、福祉大国とあなたの言われた福祉国家という色彩が、経済成長とともにだんだん薄らいできているじゃないか。私は実はこれを言いたかったのです。あなた、いみじくも先ほどおっしゃったから、経済日本は福祉大国にならなくちゃならぬ。そのためには厚生大臣は内閣の中心閣僚として、厚生大臣の首が飛べば内閣もつぶれるようでなければ――名言です。実は厚生大臣一年間の行政の中で一番いいことばをお聞きしたと思って、私は心から敬服をするのでありますけれども、現実はそうじゃない。だんだん厚生大臣のウェートというものが下がってきていると私は思う。 これは昔話をして悪いけれども、きょうは橋本政務次官来ていませんが、あの人のおとうさんが厚生大臣をやったことがある。ちょっと足の不自由な人でありましたが、あの厚生大臣のころに日本の文教問題に重点政策があった。それで、文部大臣が途中でやめた、そうしたら時の内閣は、厚生大臣の橋本龍伍君を、今度は文教政策は重要だからといって文部大臣に横すべりをさせた。そうしたら、厚生行政のために生涯をささげると言った橋本君も、文部大臣のほうが居ごこちがいいと思って、さっさと文部大臣のほうへ行った。私どもは、そのとき社労に立てこもって血の涙を流して残念がったものです。それほど日本の内閣の中では、文部大臣に比較して厚生大臣の地位というものはまだそんなに低いのか、それくらいしか考えてないのかと、私どもはそこでさじを投げた。自来今日に至っておりますよ。まだしかし、厚生行政の中に、これもひとつ言いたい、あれも言いたい、これもやってもらいたいという案が出るけれども、しかし言ったところで、大臣が閣僚の中でウエートがないし、言ったってしょうがないじゃないか、じゃもうやめておこうか、こういう気持ちに間々おちいる場合が実はあるのです。本来厚生行政というものは方向は一つなんですから、与党といえども野党といえども、軍事問題や外交問題と違って右と左に分かれるようなものじゃないのです。みんな同じ方向に行くのだから、私ども一生懸命になって、ひとつ言いたいことは大臣に申し上げたいし、一緒にやりたい気持ちはあるけれども、閣内における大臣のウエートはどうなんだ、総理はどう考えているんだということを考えると、言ったってしょうがないからやめておこうかということになる。そこがいかにも残念なんです。そこで私は、いまそういうことをお尋ねしたわけです。 ところが、先ほどいみじくも、おれの首はないような話をされたけれども、これは予言じゃないから当たるも八卦当たらぬも八卦、六月、七月ともなればあなたの八卦が当たるかもしれない。しかし厚生行政は長い。内田厚生大臣の生命短しといえども、厚生行政は長いのでございますから、大臣になられたその信念でありますから、福祉国家建設のために、厚生大臣が中心であるというその信念で、どうかひとつ閣僚の中でいま少し厚生大臣のウエートというものを高めるように御奮励をしていただきたいと私は思うのです。これは心からのお願いであります。どうか軍事国家に行かないように、福祉国家が薄まってくれば――経済の成長とともにわが日本の福祉行政はだんだん細まってきましたよ。細まってきましたけれども、これが細まれば細まるほど、経済大国から軍事大国に行くというのは歴史の必然なんです。これを押えるのは、福祉大国の厚生行政のポストを握っている大臣のウェートというものは歴史の上では実に重大なんですから、そこをひとつ考えておいて御奮励をいただきたいと思うのであります。 それから次は、事のついでですから、大臣とそこに並んでいる官僚、いわゆる高級官僚との関係です。これはあなたは一体どういうふうにお考えになっているか。官僚諸君が大臣に心服、敬服いたしまして、あなたと一緒になって厚生行政を推進しようというような腹の善良な者ばかりかどうか、これをひとつ……。
○内田国務大臣 御本人の政府委員の方々がたくさんおられる前でたいへん言いにくいわけでありますが、これは、あなたはざっくばらんの方でございますし、私もせっかく厚生大臣に就任をいたしておりますので申し上げますと、これは歴代の大臣の中で一番やかましい大臣が出て困ったものだ、こう厚生省の局長諸君は思っておられるのではないかと勘ぐるくらいに、私はほんとうに誠心誠意、私の厚生大臣の在職は短くとも、厚生行政のあり方、考え方、姿勢というものはこういうものだということで進めたいくらいの気持ちでやっておるものでありますから、おことばにそのままお答えすると、こんな煙たい大臣は一日も早くもっとやさしい大臣にかわってもらいたい。私や、また社会党内閣がかりにできましても、小林進厚生大臣のような者になってもらっては困る、こうついでに思いながら、実は私につかえてくださっておるのではないかと思います。
○小林(進)委員 私も率直に申し上げますけれども、私どもも長く歴代厚生大臣の来し方行く末をながめてきましたけれども、歴代厚生大臣の中で一番官僚から排撃された人が二人いますよ。名前を言ってはやめた大臣の身分にも関しますから、まあここでは言えませんけれども、言ってもいいのですがね、――さんだとか、それからほかに外部に対しては非常に調子がよかったんだけれども――さん、これは官僚からすべて排撃を食って――それはいいです。そんなことは問題ないというけれども、私は関係するから言うのです。そういう空気ができ上がってくると、外部のわれわれがいろいろな問題を持っていったところで、情熱がないから厚生行政をともに論ずる気持ちがなくなってくるのです。それが有形無形に国全般の厚生行政に非常に影響してくるのです。まして国会の中におけるわれわれ行政にタッチをしている者は、実に迷惑しごくなんです。そういうものはぴんぴんと言えばみんな響いてくるのです。だから今日も、厚生省官僚の中に安座しておられる内田大臣に対して、この諸君が何を考えているか、私には全く無電のようにぴんぴんと響いてくる。みんなわかるのです。とにかくそれは言わぬでおきましょう。言わぬでおきましょうが、私はここで何を言いたいかということです。何を言いたいかというと、これはまじめな話ですが、わが日本の社会保障制度を未成熟のままにしておく原因が三つあると学者は言っておる。わが日本の社会保障を未成熟にしている原因は、一つはやはり自衛隊。憲法第九条に基づいて、戦争のためには兵隊を持たない、軍備は持たないといっておきながら、こうやって軍事力を増強していく、その軍事力というものが――社会保障費が削減をされるということじゃなしに、わが日本は完全雇用の状態に行きますよ、すぐにはだめでしょうけれども。一番働き盛りの満二十歳から二十五歳、三十歳、そういう若者をこの憲法に違反してまでも三十万も四十万も自衛隊というところにしがみつけて、生産に何にも協力しないでむだなところで遊ばせておくのです。この人手不足、人員不足の中で、現在日本のいわゆる再軍備、自衛隊というものがいわば日本の経済成長や社会保障のためにいかに障害をなしているか。求人難ですよ。失対事業をなくして、六十五歳のおじいさんまで連れていって無理に民間会社で働かさなければならないという、そういう逼迫しておるという求人難の中で、このまま平和でいきますという日本の中に、自衛隊などというような、若者たちをめしを食わせながら生産に協力せしめないというこの人的なむだ、これが日本の社会保障その他全般を不幸におとしいれる第一の理由だということであります。これは大臣に聞かなくたってよろしい。 その次に、第二番目に言いたいこと、第二番目は何かというと、いわゆる公務員制度にある。日本の社会保障を未成熟にしている一番障害になっているのは公務員制度。その公務員も下級じゃないのです。上級官僚制度にある。(内田国務大臣「厚生大臣になれませんよ」と呼ぶ)いやいや、ならなくたっていいのだ、なる必要ないのだ。なぜかというと、公務員というものの精神は国民に奉仕することにある。国民へのサービスにある。ところが、わが国の公務員制度というのは、高級官僚になればなるほど、地位の向上に頭が一ぱいになっちゃって、いかにして自己の地位を向上させるかということで、国民にサービスするという精神がなくなってしまう。その結果がどういうことになるかというと、一つのポストに二年以上いないのです。やれ保険行政だ、やれ医療行政だというけれども、人間が情熱をかけて一つの仕事をやるからには、石の上にも三年というが、一つのことをやるためには少なくとも五年や十年かからなければほんとうの仕事というのはできないのだ。ところが、日本の高級官僚というものは上ばかり歩いていく。立身出世の道しか望まない。その立身出世の道に行くためには一つのポストにせいぜい二年ですよ。皆さん方ここにいらっしゃるけれども、一つのポストに二年くらいしかいないでしょう。その結果が人間の生命、身体、健康に関する重大な社会保障充実の中に生涯の半生の生命をかけてほんとうにこれだけやり通すという人は一人もいない。ここにいるか。いたら手をあげて答えてください。二年たったらおれは局長になるかもしれないし、その次になったら、あいつに負けないで次官にならなければならないということで頭が一ぱいだ。その一ぱいの結果が、大体役人をしてやる仕事というのは――これは私が言うのじゃないのです。学者が言うのです。やる仕事というのは、大体二年か三年の期間内に完成するそういう仕事にしか興味を示さない。役人の習性として、高級官僚の習性として、二年か三年、そこででき上がる、まずひとつその仕事に功績をあげて次の段階に飛ぼうということで、まして五年、十年、二十年という長期の展望に立ってこの社会保障行政を完成しようという考え方はない。二年か三年の自分の在任中に功績をあげて、そして次のステップに行きたい、こういう考えしかない。これが日本の社会保障を進歩せしめない一つの理由なんです。 第二番目は役人の縦割り制度。たとえば各省の中に社会保障なんというのは全部またがっているのでありましょうけれども、全部寸断されて、縦割りだけにつながっている。総合的、計画的にいわゆる高い視野の上に立って社会保障を進めていくという形が生まれてこない。これはわれわれが何ぼじたばたしても日本の社会保障というものが進歩していけない第二の理由だ。こういう現在の高級官僚制度が社会保障を小間切れにしている。次元の高いそういう社会保障、私がそういえば、大臣わかるでしょう。 時間もありませんから一つだけ言えば、一体どうでしょう。いま問題になっている例の政府管掌健康保険だってそのとおりでしょう。六七年に臨時措置法を出して、六九年にまたそれをもみにもみ抜いて、本法に入れて初診料二百円、入院料六十円だという。一九六七年から六九年にやって、二年もたたないうちにまたこんな法案を出して同じことをやらなければならぬ。長期展望に立ったらどうですか。健康保険法一つ見たって、こんな同じことを繰り返したってだめだ、役人にまかしているから。その役人は二年か三年自分の任期のときにだけ、ひとつ初診料も取ればよろしい、再診料も取ればよろしい。そして功なり名遂げてさっと次官の席にすわり込めばよろしい。保険庁長官になればよろしい。またあとから来た者が同じことを繰り返している。ほんとうに五年なり十年なり腰を据えてやったら、健康保険法だって二年も三年もたたぬうちに同じことを繰り返す必要はないでしょう。どうです、私の主観は大臣間違いありませんか、どうですか、それだけでもちょっと答えてください。
○内田国務大臣 高級官僚の諸君のあり方についていろいろ御感想を述べられましたが、それはまたいずれ席を改めてひとつお話し合いをいたしてまいりたいと思います。同感のところもございますし、同感でないところもたくさんございます。 政府管掌健康保険のあり方につきましては、これは官僚の諸君がいま小林さんが言われましたような立場からつくり上げた法案を今度国会に出したわけでは決してございませんで、これは抜本改正ということを構想しながら避けて通ることができないことを、この際どんな御批判を受けてもどうしてもやらなければならないという、これは私をも含めましたそういうまじめなたてまえから立案をして今度国会に出したものでございます。もし何にも出さないといたしますならば、それはそれでほおかぶりで済ませたかもしれません。それから皆さんからきつい御批判を受けないで済んだかもしれませんけれども、私どもが良心的に考えてまいります場合には、今度の抜本改正着手のための法律案を出さざるを得なかった、かような次第で、これにつきましては、まただんだんお話しを申し上げたいと思いますので、御理解もいただけるものと私は確信をいたしております。
○小林(進)委員 そういう議論なら議論でよろしゅうございます。 しかし一九六七年にこの政府管掌健康保険の赤字のために、いわゆる二年間で消滅するという短期の臨時措置法を出して、二年たって六九年にまた、政府管掌健康保険のために国会をもみ抜いて、二年もたたない今日またその健康保険法を出す、そんな行政のあり方が、これでりっぱだということはだれが聞いたって了承できるものではありません。そんなことばかりやられたら世間も迷惑、こっちも迷惑です。そんな行政はなすべきではない。それは理屈ではありません。問題になりません。これはあらためて見参するというのだから、こっちもまた見参しましょう。お互いにやりましょう。 そこで、各論に入りますけれども、医療保険の問題がいまたまたま出ましたから言うけれども、あなた方の医療保険の行政を、ここ数年来見ておると、被保険者や国民全く不在の保険行政で、頭にあるものは赤字だけだ。赤字をどうしよう、どうしようということだけで保険行政をお進めになっているが、私どもは全く残念でたまらない。経済の成長が世界の二番目になったその反面、大半の国民はちっともしあわせにならない。ふしあわせになっている。呼吸もできないような大気汚染の中で生活している。水質汚濁の中で水も飲めないような苦しい生活を押しつけられて、そういう新しい病気も生まれている。そういう状況の中なんだから、せめて経済の成長があなたたちの健康にこれだけのおみやげと還元をやりますというくらいにしておいて、本人一〇〇%の給付、あるいは家族七〇%か八〇%かの給付をやるという、経済成長を自慢されるならば、それがかくのごとく還元したという医療行政くらいはあらわれてこなければならないのに、逆へ逆へと進んでいる。経済成長の陰にさらに国民を苦しめるような逆医療保障の方向だけ進んでおいでになる。まして私らが十年来叫んでいる無医地区、僻地医療なんというものは一つも解決していない。そんな無責任な社会保障、医療保険なんというものがありますか。 そこで、もう議論したってしょうがないから申し上げますが、きのうの新聞にも出ているように、阪大の――阪大ばかりじゃない大阪市立医科大学もしかりであります。この不正の試験の問題について、厚生大臣は責任をお考えになっているかどうか。私は刑務所の看守部長の責任だとか、そんな責任を言っているのじゃありません。文部大臣の責任じゃない、厚生大臣として、一体この問題に対して責任をお感じになっているのかどうか。対岸の火災であっておれには関係ないとお考えなら関係ないとおっしゃっていただければけっこうです。御答弁を願いたい。
○内田国務大臣 医師を養成する医科大学の入学試験にかかる問題でございますので、私はこれを対岸の火災とは思っておりません。そういう偽りの基礎の上に医師は養成されるべきものではないと考えますので、このことに対しましては、事態の推移と究明を待ちまして、また私どもは断を下してまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
○小林(進)委員 この問題は、与野党ともに、文部行政の一環としてその中で質問されるということですから、私は深追いはやめまするけれども、そんなどろぼうを囲っている中にどろぼうに入っていって持ち出してくるということは、もちろん許さるべきじゃないけれども、その遠い原因、基本的な原因をたどっていけば、医師の不足、僻地の医療――あなた方は太鼓をたたいて国民皆保険を自慢するが、その皆保険という名のもとに、病気になったって医者にはかかれない、医者の目も見れないという、そういうへんぱな皆保険が行なわれているのだから、医師だけは充実しなさい、医師の教育だけはやりなさい、どんな僻地でも医者が間に合うようにいたしなさいと国会の中で一生懸命叫んできたけれども、行政の前にそういう努力が一つもなされていない。やられたんでしょうけれども、われわれ野党から見るならば、目に見えるような努力は一つもされていない。その結果がこういう答案の窃盗事件になったり、不正入学事件になったりしているわけです。たまたまこの不正入学事件が出てきたけれども、その前だってそうでしょう。あなた方の知っているとおり、各医科大学の医学部だってそうじゃないですか、入学するために、一人の学生を入れるためには、一千万円の裏金がなければ入れないというのが世間の常識じゃないですか、常識でしょう。これは与野党ともに認めざるを得ませんでしょう。そういうことが半公然的に行なわれる中にも、それを担当している厚生行政あるいは文部省が、それを毎年毎年知らぬ顔をしてながめているという、そういう不当きわまる行政のあり方が、私は追い詰められてこの大阪の刑務所の答案どろぼう問題にまで波及してきた。厚生大臣に眼あるならまずわが身の至らざるを深く反省してもらわなければならない。あのどろぼうが悪いのだ、あの刑務所が悪いのだというものの言い方をしたんじゃ、問題の解決になりません。それをひとつ大いに反省をしていただいて、この医療不足の時代に情熱を傾けてもらわないと問題の解決にはなりません。いかがでございましょう。そういう責任をお感じになりませんか。
○内田国務大臣 小林さんはいま物価対策委員長に御就任でございますので、私の説明をお聞きいただく機会がないことは残念でございますが、厚生省といたしましては、いまの僻地医療等の問題にからむ医師の相対的なレラティブな不足あるいは配置の不適合という問題とともに、絶対数においても不足である、こういう認識のもとに文部省と相協力して医師の養成をふやすような手続きを進めてまいっております。今日でございますと一年間に四千三百人余りの医学部への入学の幅でございますが、昭和六十年ぐらいまでにはこれを六千人ぐらいの入学者に広げるように、定員の拡大とかあるいは学部の付設とかあるいは大学の新設というようなこともやっていただきまして、医師の充実、またそれを並行いたしまして僻地医療問題の対策というようなことも進めるいろいろな措置を講じておるところでございます。
○小林(進)委員 この問題もまたいずれゆっくりやらせていただきます。 次に、厚生省の行政の不始末といってはちょっとことばが強いかもしれませんけれども、厚生行政の立場は、常にかよわい者の方向に目を向けてやらなければならぬのでありまするけれども、その目をともすると強いほうにだけ向けて弱いほうに向けないというために、まだ解決しない問題が数点ございます。それをどう処置されたか。第一は新聞で騒がれたサリドマイドの事件をどう処置されたか、どう処置する考えであるか。第二番目が、森永乳業の砒素混入事件、これも十数年たっていまなお問題が未解決である。これを一体どう処置されたか、処置する考えであるか。第三番目は、カドミウムの事件、これも厚生省が介入していられるが、なかなか解決をしていない。これをどうする考えであるか。第四番目はイタイイタイ病であります。このイタイイタイ病も厚生省が介入していられるが、これも一体どう処置されるか。第五番目には阿賀野川の水銀事件、昭電事件でございます。これは園田厚生大臣のときには、その当時若干勇ましい厚生省の見解など発表されましたが、自来寂として声なし、その中で患者は死闘、苦闘いたしておりまするが、この問題に対してももはや厚生省の責任はのがれられないと思うが、厚生省自体はどう一体処置されるつもりであるか。これはみんな一つ一ついますぐ回答ができないとおっしゃるならば、ひとつあらためて書面でみんな回答を出していただきたい。私はこの一つ一つの問題も、厚生省がき然たる態度でしっかりしていてくれれば、こんなにじんぜん日を過ごしてかよわい人たちを泣かせないでよかったのではないかということをいまでも私は考えております。ようやく消費者や被害者の声が政治の面にも反映せられるような時代になったのでありまするから、この際厚生省も、思いを変えて、こういうすべての問題を、いわゆる被害者の立場に立って、一気かせいに勇気をもって解決するという、そういう信念でやってもらいたいという気持ちで御質問をいたしておるのでありまするから、これはひとつあとでもけっこうでございますから、回答を願いたい。 その五つの問題の中の一つのイタイイタイ病の裁判に関する問題、これは皆さん方も新聞をごらんになったと思います。きのうの新聞であります。「企業ゆ着ここにも」「三井金属の証拠研究に厚生省が百万円」富山県のイタイイタイ病の最終口頭弁論に備えて、被告側の有利な証拠をつくらせるために、厚生省が緊急に百万円の研究費を出して、そうして大資本の公害企業と厚生省が癒着をしているという姿勢を具体的に示すその一つのあらわれとして、喜田村正次神戸大学教授に動物実験中間報告書の作成を依頼させた、こういう記事でございます。またかといって、全く国民は厚生行政のあり方に根本から信頼を失わしめるようなことをおやりになっているのであります。これに対しては、これは全く誤解であるという談話が、長谷川厚生省公害課長補佐の名前で出ている。実際これは誤解であるか、真実であるか、厚生大臣から正しく御回答いただきたいと思います。
○内田国務大臣 その件は、ちょうどいい機会でございまして、私もあの新聞を見て驚いたり、また、もしそれがそうであるならば、私は厚生大臣として在職しておるのも恥ずかしいような気持ちもいたしましたので、直ちに担当者を呼びつけまして事実を確めました。その新聞もよく読みましたところが富山のほうの現地における問題の訴訟の原告の方々が言われておる、そういう報道でございまして、国民一般の認識ではないことがわかるわけでございます。それにいたしましても、先ほど五つの課題の中にあげられましたように、微量重金属でありますカドミがいかに人体なり動物なりあるいは生物なりに作用するか、あるいはまた、どういう分析測定の方法をとることが正しいか、それらの分析測定が、やる人々、やる方法によって、含有量などがみな違った結果が出るようなことでは信頼できませんために、厚生省は幾つかの研究班を委託をいたしまして、それぞれの向きの検討を前から続けておるわけであります。その検討は、厚生省が個々の学者をねらい撃ちにして委託をしているわけではございませんで、これは日本公衆衛生学会の事務局をもやっております日本公衆衛生協会という公の団体がございますが、そこに一括いたしまして、そしていろいろの研究の分野を打ち合わせまして、それぞれ主任の先生方をつくっていただいて研究をいたしておるわけでございます。その中に、たまたま新聞に出ましたカドミウムの動物の腸管からの吸収の過程における研究の課題がございまして、それがどういうわけか知りませんけれども、訴訟の原告の立場を不利にして、被告の立場を有利にするための研究であるというようなふうに誤解をせられたようでございますが、全く訴訟とは関係なしに、カドミウムに関する必要なる研究の一半としてやっていただいておることであります。しかも、新聞に出ましたその研究は、神戸大学の喜田村先生がまだ中間報告にも何にもでき上がっておらないそうでございますので、それが当該訴訟におきまして被告によって援用をされるというような事態には、全く物理的にもならないような事態であることを私は調べあげたものでございまして、私もそれについては愁眉を開いたようなわけでございます。そこには課長補佐の談話も載っておるようでありますが、文章の中身には曽根田公害部長その人の説明も引用されておるようでございますので、見出しを見て私も驚きましたが、中をだんだんと読んでまいりますと、いま私が御説明をいたしておるとおりの次第でございます。 ちょうどここに簡単なそれに対する注釈メモをつくらせて私は持っておりましたので、小林さんの御質問のために用意したものではございませんが、御参考までにこの場で差しあげておきたいと存じます。
○小林(進)委員 いま大臣がおっしゃるように、この喜田村正次神戸大学の教授の研究委託の問題を出したのは患者です。原告の側です。国民ではありません。もちろん大衆はそんなことは知りませんから、原告側が出すのはあたりまえですが、ただ原告側がなぜ出したかといえば、この喜田村さんのやっている腸管吸収率ですか、これはいわゆる被告側、訴えられているイタイイタイ病の側では最後の切り札としてこれを証人に立てるつもりだった。ところが裁判所のほうでは、もうそんなのはむだだからといって却下をした証人です。この喜田村正次さんというのは、被告側の証人から却下をされた人なんです。その却下をされるのを皆さん方が見きわめて、間髪を入れずと言っていいくらいに――これは被告側では最後の切り札にして裁判所に証人の申請をしたにもかかわらず、裁判長はそれはむだだといって却下をされた。そうすると直ちに厚生省が百万円をやって、早くその証拠をつくってくれという措置をした。だから、李下に冠を正さずというけれども、時期的にもいかにも疑わしい行動が一つ。それからいま一つは、その厚生省のやられた百万円ではたして研究したかどうか知りませんが、今月の六日に同裁判所に喜田村という人が研究の中間報告書を出しておる。この二つが、あなた方厚生省の行動に疑いを持たしめている理由なんであります。
○内田国務大臣 もう少し補充させていただきますと、カドミウムばかりではございませんで、水銀とかその他微量重金属が人体に与える悪影響等に関する研究をいろいろの方面でやっていただいておるわけでありますが、これは訴訟には全く関係ない研究でございましても、一方において訴訟の当事者は、そういう学者の研究の過程あるいは結果を、それぞれ被告は被告の立場、原告は原告の立場において援用するというような場合はあり得ることだと思います。これは、ことばは悪うございますが、被告の三井金属さんの側では何かの役に立てばというような気持ちで、もともとそれとは関係のない研究でありましても、そういう喜田村先生かなんかを証人として出廷してもらうような手続をしたのかもしれませんけれども、それは私どものほうで関知はいたしませんが、しかしその裁判というものは、聡明なる小林さんはもうお気づきのように、因果関係、事実の認定関係は、裁判所ではもう終わってしまっておるわけでございますので、そういう報告書を裁判所が取り上げるような過程にはない段階に訴訟はきておるはずでございますと、私は説明も受けておるわけでございます。それに、その中間報告というものはまだまとまっているものはないわけでありまして、かりに証拠資料として提出を求められたりいたしましても、裁判所に出し得るような客観的な状態にはなっていないということを、これは間違いがありましたら担当者から補充させますが、そういうことになっておるそうでございますので、その記事も決して厚生省に対する中傷、悪意から出たものではないと思いますけれども、原告の方々がその訴訟の進行についていろいろ御心配があられること当然でございまして、私はそれらの原告の方々にも同情を寄せておるものでありますから申し上げるのでありますけれども、何かそういう研究についての反対証拠のようなものが出されるとしたならば自分たちの不利になって、また訴訟の事実認定、因果関係の認定等が長引くのではないかという御心配をされたことも、これも私は、厚生省に対する悪意でなくとももっともであると思います。しかし、そういう事態には全くならないようでございますので、したがって厚生省に対するそういう懸念も消していただけるものと私は考えております。
○浦田政府委員 大臣からの御答弁で尽きているわけでございますが、多少補足いたしまして御説明申し上げたいと思います。 本研究は昭和四十五年度の当初の計画としてもともとあったわけでございますが、それが喜田村先生がこの研究に関与したといういきさつでございますが、先ほど大臣から御説明ございましたように、公衆衛生学会にこれはまとめて約二千万円の総体の研究費でございますが、お願いしたところでございます。 〔委員長退席、伊東委員長代理着席〕 それで学会では、適当な先生方、御専門の先生方をお互いに御推薦ありまして、そしてその一環といたしまして、人体のカドミウムの摂取と排せつ、それからその吸収ということにつきまして、ことにアイソトープを使っての吸収というようなテーマでありますが、取り上げられたわけでございます。喜田村先生はこの方面で非常に権威でもあられますし、喜田村先生がその実験に当たるということになったわけでございます。しかしながら、なかなか先生自身お忙しくて、この話が具体的にまとまりましたのは実は本年に入ってからのことでございます。 それから全般的な点で申しますと、たとえばイタイイタイ病の病因と申しますかそれにつきましては、すでに厚生省といたしましてもカドミウムがその主体をなしているということについては、厚生省の見解としても出しているところでございますし、また今度の裁判で、いろいろと厚生省からお願いいたしました研究の成果が、原告側のほうにも使われているという事実もございますので、私どもはあくまでも公正な学問上の立場として研究が行なわれることを期待しておりますし、また、おそらくは研究班の先生方も、いずれもそういった立場でやられているものというふうに確信しております。
○小林(進)委員 まああなたの説明で了承すればいいんでしょうけれども、こちらの側から言わせれば、少なくとも被告の側は、カドミウムがイタイイタイ病の原因なら、人体における腸管吸収率など五項目を医学的に説明をしなさい、こういう最後の証人を裁判所に申請していたその被告側の証人が喜田村正次氏であった。ところが、昨年の十二月に、裁判長のほうで、もはや事は明らかだからいいじゃないかと言って被告側の証人の申請を却下された。却下されると、昨年の十二月に厚生省がその鑑定の項目、いわゆる医学的解明をお願いしたいといって喜田村教授に百万円の金――その経過はあなたのおっしゃるとおりかもしれません。それは学会を通じておやりになったかもしれませんけれども、第三者から見ると、その却下の直後の昨年の十二月に百万円をおやりになった。そのおやりになった百万円の結果に基づく研究かどうかはわからぬが、今月の六日の日に同裁判所に喜田村さんのほうからいわゆる腸管吸収に関する中間報告書というものが提出されている。そして、それに基づいていま一回裁判をやってくれ、こう言っている。これが患者のほうでは、まるで厚生省が一本になってわれわれの裁判の長期引き延ばしのためにこれほどまで一体おやりになっているのか。これは原告の側からすれば疑わざるを得ないと私は思っているんです。思っているんですから、そこら辺はいま少しひとつ――ここで時間がありませんので言い合ってもしようがないが、あなた方厚生省の立場もわかりましたけれども、それをあえて疑いもする。また、原告の側も、しかし皆さん方がよく察知をしていま少し――場所をかえてこれは話し合いをいたしましょう。時間もありませんし、もういいです。 それでは私も、時間も迫られておりまするけれども、用意をいたしました質問はまだ三分の一ばかりしか進んでおりません。まことに残念でありますが、そこであとは注文といいましょうか、特に第一番目は、健康保険の問題は場所を改めてということになりますが、この問題に関連をいたしまして、医師会が中央審議会でありますか、私も新聞を見ませんが、厚生省がお出しになった資料がどうもけしからぬということで、何か厚生関係全般にわたる委員を全部引き揚げるとかどうとか、あるいはまた一斉の診療拒否をやるとか、非常に硬化をした態度を続けておられるようでありますが、その中央審議会にお出しになった資料をひとつぜひ御提出をいただきたい。それはみんな世間が知っているのに、一番足元のわれわれが、厚生省のお出しになった資料を持たないということでは話になりませんから、これは資料をひとつお出しをいただきたい。 それから第二番目。身体障害者の福祉行政についてもお尋ねいたしたいのでありまするが、これも時間がありませんから、リハビリテーションに対するPT、OTの中の期間延長の問題がいま出ておりますが、これに対して一体厚生省はどう処置をおやりになっておるのか。それからこの身体障害者の雇用の機会の増大ということがしばしば論ぜられているが、具体的にどういう雇用機会の増大をおやりになったか、これは数字があれば数字をひとつお示しをいただきたい。 それから盲人の新職業等も何か厚生省はだいぶお考えになっているようでございますが、その盲人の新職業等について具体的にどういう処置をお講じになっているのか。これはいまお答えできなければ、あとで資料でお出しいただいてもけっこうであります。 次に、精神薄弱者福祉の問題でございますが、これは施設の収容力が相対的に非常に不足しております。今年度の予算等を拝見いたしましても、とてもこれでは問題の解決にはなっていない。施設に入りたいが入れないという待機児童がどのくらいいるかというようなこと、それから精神薄弱者の援護施設の計画、これは今年度だけでありません、あるいは長期等を通じての計画があればこれをひとつお示しをいただきたい。 それから職親委託制度、これがどういうふうに生かされているのか。それからコロニー施設。これは国立の高崎山だけは大蔵大臣の足元だから一生懸命力を入れているようだけれども、どうも地方のコロニー施設の運営があまりうまくいっていない。地方の寄付金や地方行政庁のささやかな金にまかして、どうも国のめんどう見が足りないようであります。四十六年度の予算は概略私は見ております。こういうものも少し熱意が足りないように思いますので、どういうふうになっているか、御答弁をいただいてもよし、いただけないならば、これは書類でお出しをいただきたいと思います。 次に、薬務行政について、いろいろございますが、ひとつお尋ねをいたしたいのであります。薬務行政だけでも、一日も二日もやりたいような問題がたくさん介在いたしておりますが、一番の中心としては、資本の自由化と申しますか、OECDに基づく自由化の問題、貿易自由化、資本の自由化の問題に基づく中で、一体薬務行政をどのように持っていかれるお考えであるか。現在私の見たところでも、外国の製薬企業がだいぶ日本へ進出いたしまして日本の企業と合併をしているものやら、一〇〇%出資して子会社を設立いたしまして薬品を販売しているもの等、もはや八十から百くらいあるのではないか。数が間違っていたらあとで御訂正願いたいが、そういう情勢の中で、わが日本の中で薬屋がどれくらいありますかな、二、三千あるでしょう。薬屋が二、三千あって、大メーカーから裏長屋ですりばちで薬を製造するというようなものまで乱雑きわまる薬の製造が行なわれておるわけでありますけれども、これに対しては私どもこの国会でしばしば言うが、厚生省のほうではどうもこれという目に見えるような薬行政をおやりにならない。 そこで私は、薬品の自由化対策としての薬務行政について承りたい。それで、私の希望を申し上げますと、まずそれに対応するためには、何しろ外国の資本は非常に強いです。強いために、これが自由化に基づいて、まあアメリカ資本が中心でありまするが、入ってきたために、イタリアなどは、七〇%も外国資本にイタリアの薬屋、製造メーカは食われてしまった。欧米諸国においてもこの強力な外国資本の進出のために七〇%から八〇%くらいは全部自国の薬行政が追いまくられてしまった、こういう状態でございます。その中で、わが日本の薬メーカーというものは、いま申し上げましたように二千から三千もある中で、みずからの力で新薬品を開発する能力といいますか力があるものはわずか十五、六社しかないでしょう。十五、六社じゃないですか。新薬をみずから開発し、国際市場の中でいいも悪いも太刀打ちできるくらいの力を持っているものは十五、六社しかないはずです。あとのものは、だれかが開発したものに何かちょっと手を加えてイミテーション製造だ。さっとつくってそれを市場へ送り出して、そして現実につくった新開発会社のものを横取りするというか、戦国時代みたいなものだが、それを売りさばいて、あるいはダンピングをやったり、あるいは添付をやったり、あるいは割引をやったりというそういう乱脈なことが続けられているということです。これでは強力な外国資本に太刀打ちすることもできなければ、また国内においても、十五や二十の開発に精励をする国内における強力な薬メーカーも、とてもこれではやりきれないと私は思う。そういうことを考慮いたしまして、ひとつ第一番には、人間の生命と健康に関するのだから、そういう裏長屋ですりばち一つで薬をつくるような弱小のものは自然淘汰できる、つぶしてしまえとは言わぬけれども、私は自然淘汰を促進するような行政もやむを得ないだろうと思う。事は薬ですから、人の生命に関する問題ですから、それをひとつやるべきである。 第二番目は、いま申し上げますように、みずから薬を開発して外国資本と太刀打ちしながらやっていく、そういうれっきとしたメーカーは国が保護すべきである。保護というのは、別に統制に基づく保護ではないけれども、いまあれでございましょう、新薬を開発したものの新薬の特許期間といいますか、模倣できない期間は二年間でしょう。(内田国務大臣「延ばします」と呼ぶ)延ばしましたか。いまのところ延ばしてないでしょう。二年間だけだ。二年間のうちにみんな模倣されてしまって、元も子もなくなってしまうということでありますから、延ばすとおっしゃるなら大臣、それはけっこうですから、少なくとも五年や十年ぐらいは特許権というものを与えておいて、そんなイミテーションがぱっぱっと出て競争するような乱暴なことはさせない。それが一つ。 同時に、やはり新薬の開発というものは非常に金がかかるものですから、税金面においてもある程度見てやるべきだ。これは去年ですか、いまの加藤社会局長の時代ですか、新薬開発のための補助金も若干出すと言っていたが、これは出しましたか。計画だおれであれはまだ出していないか知りませんが、これは時間がありませんから聞きませんけれども、そういう形であろうと何の形であろうと、新薬の開発はそれくらい援助して、この輸入産業――いま薬の製造は日本は世界で第二番目でしょう。まごまごしたら一番目になるかもしらぬというのですけれども、しかし産業として見た場合には、私の資料は古いかもしれませんけれども、去年かおととしあたりは大体六百億円ぐらい薬を輸入しておりますよ。輸出したものは二百五、六十億円で、差し引きするとこれは非常に輸入過多です。そういうような状態を変えなければいかぬ。薬なんというものは、この世界一の頭脳明晰な、科学力のある日本の国民ですから、新薬のいいものを開発して、少なくとも薬の輸出国になってドルをかせぐぐらいの確然たる薬品行政、薬務行政というものが確立されていいんじゃないかと私は思う。ですから、そういう方向へ持っていくべきであると思うが、そういうことに対していま厚生省はどういう行政を一体進めておいでになるか。時間もありませんから、ひとつ大ざっぱでよろしゅうございますから、以上の点をお聞きをしておきたいと思います。
○内田国務大臣 いろいろ小林さんからお話がございましたが、薬のメーカーは、おっしゃられましたように、二千以上あるようであります。私が、一体薬がどれぐらいあるかというと、八千という人もあれば二万五千という人もあれば十万という人もあるようなわけでありまして、売られている薬は十万もないように思いますが、そういう意味で薬も多過ぎるというような問題。承認制のもとで、一ぺん承認をとれば、それが使われても使われなくても蓄積されているというような状態もある。また、薬産業における研究開発、投資というような金額の割合が必ずしも十分でないために、薬が外国から制圧されておる。外国の特許で薬をつくったり、あるいはバルクを輸入してそれを最終製品に仕上げるというような、ものまね製薬というようなことにもなるわけでありますし、その反面、輸出も御指摘のようにこれまでのところ多くはない、こういうような状況であります。他方また、医療の面におきまして、薬がよけいに使われておるとか、あるいは市販におきましてもいろいろな薬が町にはんらんをしているというような問題等もございますので、これらの面から思い切って薬全体を見直すべきである、そういう観点に立ちますときに、今日の薬の基本法であります薬事法というようなものにつきましても、当然時代に即して、また新しい考え方に即して手直しをすべき部分もあるようでありますので、薬事法の改正についての検討も進める必要があるわけであります。また、数の多い少ないにかかわらず、現在あります薬についての薬効の問題が、はたして積極的な薬効が十分であるのか、副作用関係は十分検討されているのかというような面で、薬の再点検をすべきであるというような観点からの議論もございますので、そういうような問題を含めまして、総合的な施策をぜひ立てるべきだ、かようなことで、私も大きな宿題を薬務局長に与えておるわけでございます。しかし薬につきましては、これまたなかなか複雑多岐、また接触する方面もなかなか広いようでございまして、薬務局長も、大臣の言うことを聞いたのがいいのか、あるいはまた、いろいろな方面からのお説を聞いたほうがいいのか、まことに迷っておられるようでありますので、私は、大臣の言うことを聞け、その大臣はまた世間の言うことを聞きまして指示する、こういうことでいきたい。大ざっぱに申しますとそういうことで私は考えております。
○小林(進)委員 たしか経済の自由化の問題について、薬の自由化も第一次、第二次、第三次とおやりになって、ことしの秋ごろには第四次の自由化をやって、いま五〇%ですが、一〇〇%まで自由化の窓口をあけなければならないのじゃないかと思って、そうなれば、さあっと外国の大きな企業資本がなだれを打って来ますよ。イタリアなんかそれで吹っ飛ばされた。そういう状態の中にあるのですから、これは緊急を要する問題です。この薬務行政というものは相当緊急を要する。だから私どもは、誇大広告だとか、悪いだとか、きかないとか、薬の有効期間の問題は、物特や公特の中でどんどんやっていきますから、私は大局の問題をやっておるのでありまして、あわせて、やはりりっぱな薬をつくり上げさして、そして外国資本に対抗しながら民族産業を育て上げるというくらいな考えで行政を進めるべきだ。問題は足元に迫ってきておる。これはひとつ大臣にお願いして、問題だけ提起して、また後日各論をやる問題でございますから、どうぞそのつもりで。健保など審議に入れません、詰めていく間は。 それからいま一つは、時間がありませんから、皆さん方に御迷惑かけては申しわけありませんから、きょうは年金問題くらいにとどめて、問題を後日に残したいと思いますが、これは、わが日本の社会保障が未成熟だといわれる中にはいろいろあります。やはり根本は医療よりは実は年金なんです。年金保障の点において、実にわが国の社会保障はおくれている。そのおくれているもろもろの理由の中で、一つは、年金の加入者に対するいわゆる受給者、年金を受けている人の比率が、わが日本はいかにも貧弱だということ。これは私は資料でひとつちょうだいいたしたい。アメリカなんかの例で言えば、これはちょっと資料が古いかもしれませんが、加入者が六千二百万人もいる。その中で、ちゃんと期限がきて年金を受領している人、年金をもらっている人が千七、八百万人いる。大体二五%から三〇%ばかり年金をもらって年金生活をしている人がいる。だから社会保障というものはありがたいという気持ちになる。イギリスだって三〇%近くのものがちゃんと年金を受領しておる。これに対して、日本は一体どれだけだ。毎月毎月掛け金だけはじゃんじゃんとられるけれども、もらっている人はどこへ行ったって見当たらないじゃないか、ほとんどない。昔の恩給は別として、ほとんどない。これが、日本の社会保障というものに対する国民の期待をさっぱり現実化させない一つの大きな理由であると私は思います。 そこで、資料としてちょうだいしたいのは、現在、年金の加入者が一体何千万人いて、その中で受給者は一体何十万人で、そのパーセンテージは一体幾らか。二%までいっているかどうか、私は一%内外じゃないかと思っているくらいでありますが、その資料をひとつ私はちょうだいをいたしたい。これが一つです。 それから、先ほど大臣はおっしゃったが、私はそのときに反論いたしませんでしたけれども、この年金も、平均所得に対しまして、欧米は大体五〇%から六〇%程度のものが年金として支給されているはずです。これは違っていたら違っていたでよろしい、その欧米の資料もひとつちょうだいいたします。わが日本は、やっと第六十二国会、四十四年の十二月、初めて二万円年金などというものを言い出してきた。その二万円も、内容を見れば、年金といえば普通二十年なのに、これは二十四年何カ月もつとめて、しかも何か戦中とか戦後の不利な一万円に足らざるところのものはみな切って、一万円から以下の平均賃金をとるとかいうこまかい細工をしながら、それで三万八千円ですかくらいの標準月収で、二十四年何カ月もつとめた者でなければ――それでもまだまだ二万円の年金はもらえない。それに加うるに細君までが何か付加給付をもらわなければならぬ。それを合わせてようやく二万円の年金。このインフレの激しい中で、六十五歳まで生き抜いて、働き抜いて、やっと夫婦あわせて二万円の年金という、そういう実に聞くも涙の物語みたいな年金をおつくりになっている。今年は、何か、ちょうだいした資料によりますと、少しそれを手直しされたそうでありますけれども、どういうぐあいに手直しされたのか、いわゆる勤務年数、そういう加算とか給付とか、そういうこまかいことはここでお伺いしてもなにでありますから、ひとつ資料でちょうだいしたいと思う。 同時に、これは厚生年金でありますが、あわせ国民年金のほうも、夫婦二万円などということをおっしゃったが、それも一体どういうことに今度お手直しになったのか、ひとつ資料でちょうだいをしたいと思う。 いろいろ申し上げたいことがございまするけれども、私も用事がありまするし、問題点は幾つか残しまして、きょうは資料の注文を申し上げたということで、一応きょうの質問を終わらせていただきます。 最後に一つ申し上げますが、先ほどの私の発言中に、――厚相、――厚相等の氏名につきましては、この固有名詞は取り消すことにいたしたいと思いますので、さようお取り計らいを願いたいと思います。
○伊東委員長代理 いまの小林委員からの発言は、しかるべく取り計らいます。次回は来たる三月十六日午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。 午後五時五十八分散会