外務委員会 第11号
- 発言数
- 276 件
- 登壇者
- 19 名
- 会派数
- 5
- 開催日
- 1971/03/24
会議録
○田中委員長 これより会議を開きます。 最低賃金決定制度の創設に関する条約(第二十六号)の締結について承認を求めるの件、開発途上にある国を特に考慮した最低賃金の決定に関する条約(第百三十一号)の締結について承認を求めるの件及び国際労働機関の総会がその第三十二回までの会期において採択した諸条約の一部改正で条約の運用に関する報告の国際労働機関の理事会による作成に関する規定の統一を目的とするものに関する条約(第百十六号)の締結について承認を求めるの件、以上三件を一括議題として審査に入ります。 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。戸叶里子君。
○戸叶委員 ILO条約は採択されているのが九十八というふうに私は聞いておりますけれども、そのうちで、日本が当然批准すべきと思われるようなものでまだされておらないものがたくさんあると思います。それに対しましては、専門的な社労の委員の方あるいはILOを研究していらっしゃる方がわが党からあとで来られましていろいろ質問されますので、私はきょうはこの出された三本の条約について二、三点お伺いをしておきたい、こういうふうに思う次第でございます。 そこで、この採択された中で日本がこれを批准する、これを批准するというふうにセレクトなさる基準というものは国内法に照らしてであろうと思いますけれども、国内法ではある程度整備されておっても、そういう採択されたILO条約のほうを批准しないというような場合があり得るのではないかと思いますが、こういうことはあり得ませんか。
○道正政府委員 現在までにILOで採択いたしました条約の数は百三十四ございます。そのうち日本が批准いたしておりますのは二十六でございまして、今回三つお願いしておりますので二十九ということになるわけでございます。 ただいま先生御指摘のように、百三十四の条約の中でたとえば非本土地域を対象にする条約というものがかなりございます。そういうものを除きますと、約百が検討の対象になるわけでございます。それで、批准に対する政府の方針、態度は各国でいろいろあるようでございますが、日本政府といたしましては、国内法との矛盾抵触がないようにという配慮をしつつ批准を検討するということになっておりまして、こまかな点になりますと各条約それぞれ問題点のあるのが多いのでございます。中には現在でも批准が可能ではないかというふうに私どもも考えて考えられるものもございますので、政府といたしましては関係各省とも御相談いたしまして、今後極力批准を進めるようにいたしてまいりたいと考えております。
○戸叶委員 あとから皆さん専門的にお聞きくださると思いますから私は伺いませんけれども、いま批准可能と思われる条約としてたとえばどういうようなものをお考えになっているかを承りたいと思います。
○道正政府委員 たとえば一九六四年、第四十八回のILO総会で採択されました雇用政策に関する条約、条約の番号は百二十二号でございますが、これは現段階においても批准が可能ではないか。ただ若干検討を要する点がございますので今回お願いしておりませんけれども、こういうものはすぐ検討をいたしまして、早い機会に国会の御承認を得られるように手続を進めたらどうかというふうに考えております。(戸叶委員「それだけですか」と呼ぶ)そのほかは、われわれとしては鋭意検討をいたしておりますけれども、こまかい点になりますといずれもどうも問題点があるわけでございまして、現段階でこの条約は批准可能であるというふうにこの席で申し上げ得ないわけでございます。
○戸叶委員 あとはあとにまかせまして、それでは百十六号条約ですが、つまり一部改正についての条約ですけれども、百十六号について一問お伺いしたいのは、この条約の発生の規定というものがここにあるわけですけれども、効力が発生してからこの条約に加盟する国については、いつ効力が発生するかというような規定が書いてないわけですけれども、これはどういうわけでしょうか。たとえば二十六号条約とかあるいは百三十一号条約等によりますと、それぞれ七条、八条に書いてあるわけですが、この条約には、加盟する国についていつ効力が発生するかというような規定が書いてない。これはどういうわけでしょうか。これは外務省の方に……。
○山崎政府委員 先生御指摘のとおり、条約そのものの発効に関しましては、第四条第二項に「この条約は、事務局長が国際労働機関の二の加盟国の批准書を受領した日に効力を生ずる。」というふうに書いてございますが、普通の、ほかの条約にありますように、その後に批准する国についていっ効力が生ずるのかということは書いてないわけでございます。われわれもこの点につきましては事務局にもいろいろ照会し確かめました結果、われわれとしましては、これはわが国の場合この批准書をILOの事務局長に寄託するその日に効力が生ずるものと解釈いたしております。と申しますのは、百十六号のこの規定第二項によって事務局長が受領した日に効力を生ずる、その日に生ずるということの一種の類推の解釈でございます。たとえば百三十一号条約の場合には、条約の効力の発生規定をごらんいただきますと、第八条の第二項では「二の加盟国の批准が事務局長に登録された日の後十二箇月で効力を生ずる。」第三項として「その後は、この条約は、いずれの加盟国についても、その批准が登録された日の後十二箇月で効力を生ずる。」要するに、効力の生ずる期間についてはいずれも十二カ月後となっております。それと大体同じやり方として、この百十六号条約については、日本の場合のようにあとから加盟する場合には、その批准書をILO事務局長に寄託した日に効力が生ずると解するのが妥当であると考えております。この点につきましては、ILO事務局の実際の取り扱いもそういうふうにやっておるというふうに確かめておる次第でございます。
○戸叶委員 そうしますと、いまのお話で、結局批准書を寄託したときが効力の発生する日、こういうことになると思うのですけれども、そういうふうなことを入れなかった理由が何かあるのですか。別に効力を発生する口口はこうであるということを入れなくてもこういうような場合にはそういうふうに理解して読むわけなのでしょうか。その点伺っておきたいと思います。
○山崎政府委員 立法論的に申しますれば、やはり入れておいたほうがよかったと思います。ただ、この点につきましては、実はほかの条約にも拾いましたところ、ILO条約の第八十号条約にもそういう例がございます。この条約をつくった関係者の考え方を推測しますに、これは全く技術的な規定でございますので、一年の経過期間を置くとかそういう必要はないということで考えておったのであろう、そして条約そのものも二カ国の批准があればすぐその日に発効してしまうということでありますから、ましてやその後の加盟国については即日発効して差しつかえないと考えておったのであろうとわれわれは推測し、事務局の実際の慣行を問い合わせたところそういうことでございましたので、まずそう考えて間違いないと思うわけでございますが、おっしゃるとおり立法論としてはやっぱり書くべきであったとわれわれは思います。
○戸叶委員 次に移りますが、百十六号条約によりますと、結局この改正というのは、第三十二回までの会期で採択をした条約でも、この百十六号の改正が通ったあとはこの改正が通ったものとみなして条約を扱うというふうになっているわけです。そうしますと、第八十号条約のときのように認証謄本というものは直していたと思うのですけれども、今回も認証謄本は直っているのかどうか、この点をお伺いしたいと思います。
○山崎政府委員 実は一般的に申しまして、ある条約の一部改正条約が作成されました場合には、そのもとの条約に改正を織り込んだ原本を作成して認証謄本をつくるというようなことは行なわれておりませんで、もとの条約とその一部改正条約とをあわせ読むということによって新しい条約のテキストが得られる場合が多いわけでございます。したがいまして、認証謄本につきましても通常は二本立てになっておりまして、この第百十六号条約についても同様でございます。 御指摘のとおり、第八十号条約、これは一九四六年の最終条項の改正条約でございますが、この条約の場合には特にこの条約によって改正される諸条約の原木まで毛改めて認証謄本を作成するというふうにまでいたしましたのは、実は国際連盟の消滅及び国際連合の成立ということに伴って必要となった事項でございまして、たとえば国際連盟事務総長というのを国際労働事務局長と改めるというふうな形式でございまして、もうすでに存在しておりません国際連盟に関する文言を含んでいるそのもとの条約の原本をそのまま残しておくのもどうかということで、いかにもそれでは現実に合致しないということで特にそういう措置をとったのだと思いますが、これは条約の慣行としては例外的なことでございます。したがいまして、原則としては、条約の一部改正がありましても、それによって一々認証謄本を改めるということはしていないのでございます。この百十六号条約についても同様のことであったと承知しております。
○戸叶委員 そうしますと、大体認証謄本は改めないけれども、八十号条約のような特殊な場合に、特殊といいますか、いままでの連盟が連合になるというようないろいろな名前が変わってくる、そういうふうなときには認証謄本を直すけれども、ほかのものは認証謄本を直さない、こういうふうに解釈していいわけですか。
○山崎政府委員 そのとおりでございます。
○戸叶委員 日本の最低賃金制というのは業種別、地域別だと思うのですけれども、そういうような国がどのくらいありますか。
○岡部(實)政府委員 お尋ねの業種別、地域別で典型的なのはイギリスでございまして、イギリスの場合には五十四業種くらいに分かれておりまして、それぞれ賃金審議会ができておりまして、業種別の最賃をさらに地域別にイングランド、 スコットランド、ウェールズというように分けてやっております。それから、そのほか各国でそれぞれ違いますけれども、たとえばチリ、エクアドル、トルコ、ユーゴスラビア、これらそれぞれの諸国は、地方審議会を設けて地区別にやるという制度を基本としてとっております。それからさらに、オーストラリア、ビルマ、チリ、その他の国は、特定の業種、職業または業務ごとに委員会をつくってやる、こういうようなことで、それぞれの基本的な制度ができておるわけであります。
○戸叶委員 その点についての問題等は、あとから質問される方が専門的にいろいろやってくださると思いますので、私はその程度にいたしまして、この百三十一号条約、開発途上にある国を特に考慮した最低賃金の決定に関する条約、これを読んだときに、ちょっと奇異な感じがするわけです。最低賃金決定制度の創設に関する条約に、さらにまた開発途上にある国を特に考慮した最低賃金の決定に関する条約というものを出すといった……、これは日本でこういうものが必要なのでしょうか。この点をまずお伺いしたいと思います。
○西堀政府委員 まことにごもっともな御質問でございまして、私自身も、最初この条約を見ましたときに一番に生じた疑問なんでございます。で、あえて言いますならば、この開発途上にある国を特に考慮した最低賃金の決定に関する条約、名称がいわば非常に誤解を招きやすいという欠点があろうかと私は考えるのでございますが、これは実は決して開発途上国のみを対象としたものではないのでございまして、一般的に適用されるものであるということは前文にも明記されているところでございます。 この条約は、二十六号条約が一九二八年に採択されましてから相当の時間が経過いたしておりますので、この際に、その最低賃金関係諸条約とともに、これらを再確認の上に若干補足したものというものでございまして、その一部に、開発途上にある多くの加盟国の事情をも考慮しよう、こういうのがこの条約の趣旨でございます。 それではなぜそういう名称がつけられたかということに関しまして考えられますことは、先生御指摘のとおり、第三条に、最低賃金の水準の決定にあたって考慮し得る要素として経済開発の必要ということをいってございますけれども、この点だけなのでございます。 それからもう一つは、このようにして最賃制度を導入するというと、経済競争力を減じはしないかといったような開発途上国の危惧があり得るかということをおそらく考え、そういった危惧を解消しようといったILO側の心づもり、そういったような考慮から、この名称の中に「開発途上にある国を特に考慮した」ということが入れられたわけでございまして、冒頭に申し上げましたとおり、決してそのデベロッピングカントリーズのみを対象としたものでなしに、一般的に適用される条約でございますので、わが国もこれに入るということは十分に意義のあることなのでございます。
○戸叶委員 言ってみれば、最低賃金決定制度の創設に関する二十六号条約を少しワクを広げたようなものだというふうな説明を聞いているのですけれども、日本が入ったほうがいいというその特典が何かあるわけでしょうか。その点と、もう一つは、これをすでに批准して効力を発生している国というものがほかにあるのかどうかということを伺いたいと思います。
○西堀政府委員 先ほど申し上げましたとおり、決してデベロッピングカントリーズのみを対象としたものでございませんで、いままでの最賃関係諸条約の内容、相当時間がたっておりますけれども、それらの内容を今日的なものとしてひとつ確認をするというのがこの条約の趣旨でございます。その上に若干これを補足することとしたわけでございますので、十分に意義のあることであるとわれわれは考えておるわけでございます。 それから、いままでに批准した国でございますが、これはエクアドル一カ国のみでございまして、日本がこの国会の御承認を経まして批准するということになりますと、それまでによその国がいたせばともかくでございますが、われわれの得た情報ではそれほど諸外国は進んでおりませんので、おそらく日本が第二番目の批准国になるのではないかと考えております。 ちなみに、諸外国のこの批准に対する態度を申し上げますと、イギリスにつきましては、雇用省といたしましては批准する方向で関係省と折衝したいという意向を有しているようでございます。フランスは、現在検討中ということでございます。それからブラジルは批准する方針を決定しているそうでございます。ソ連は国内法との関連で若干の技術的な問題はありますけれども、第二十六号条約を含めて前向きで検討しよう、こういったような状況でございます。
○戸叶委員 そうしますと、この条約が効力を生ずるのは、二つの加盟国の批准が事務局長に登録された日の後十二カ月で効力を発生するということになっていますから、エクアドルと日本が批准書を提出したならば効力を発生するのだというふうなことになるのじゃないか、日本が二番目だとすればそういうことじゃないかと思いますが、そうでしょうか。また日本が、開発途上にある国を特に考慮した最低賃金の決定に関する条約に対してそういう役割りを果たすようなことをしなければならないのかどうかということも、私はちょっと割り切れないような気がするわけですけれども、この点をお伺いしたい。
○西堀政府委員 第一の点はそのとおりでございます。日本が批准書を寄託いたしましてから十二カ月たって発効するわけでございます。 さて、その日本が、それじゃなぜいままでの例にあまりないような二番目の批准国になるのかという点、特に開発途上国といったことばとの関連での御質問でございますが、やはり最初に御説明申し上げた点、まだ不十分であったかと思いますけれども、その開発途上国ということばにまだ先生はひっかかっておられるのじゃないかというような印象を受けるのでございますけれども、決してそうではございませんで、一般的に適用されるのだということは、繰り返し申し上げているとおりでございます。それはなぜかということでございますと、いままでわれわれといたしましては、ILO条約において諸般の条約それから勧告といったものにつきまして、なるべく積極的な姿勢を示したいという希望をかねがね持っておったわけでございまして、幸いにして、このたびの条約につきましては国内法の整備もできることになっておりますので、何もいままでのように諸外国の立場をながめてその驥尾に付するという必要は毛頭ないので、この条約においてその積極的な姿勢を示すことが非常にいいのじゃないかというだけのことでございまして、われわれとしてはその点非常に心強く感じておる次第でございます。
○戸叶委員 それではもう一点だけお伺いしたいと思いますが、アメリカがILOの分担金の未納をやっているということを聞いているのですけれども、それはどういうふうな理由によるものか。それから、時間の関係もありますから簡単に伺いますが、一体、そういうふうな未納をやっていて脱退でも考えているのか、この辺おわかりになったら説明していただきたい。
○西堀政府委員 これは実は昨年十月でございますが、米国議会がILOに対する一九七〇年後半期の米国の分担金の予算を、ILOの左傾化傾向を理由として承認しなかったために、米国政府が当該分担金不払いのやむなきに至ったのでございます。これは先生御承知のとおり、長年ILOの事務局長をやっておりましたアメリカ人のモース、かつてはアメリカの労働次官もやったりっぱな方でございますけれども、長年事務局長をつとめまして昨年実は引退をされました。そしてイギリス人のジェンクスというのにかわったのでございますけれども、その後あまり時間もたたないときに、実は事務局長補にソ連人のマスタペンコというのが任命されることになった。これは別に事務局長の交代とは何ら関係なかったわけでございますけれども、われわれ推測いたしまするに、このジェンクス事務局長がこういったマスタペンコというソ連人を事務局長補にすることに、日本流に申しますならば、いわば根回しというものをあまりされなかったのではないかという点を実はわれわれサスピションいたしておるわけでございます。いずれにいたしましても、ILO全体につきまして、かねてからアメリカの労働代表と申しますか、労働界の重鎮でありますところのAFL・CIOのジョージ・ミーニー、これがILOという機関に対して、これが彼なりに言わせれば左傾しておるといった点から、かねがねある程度の不快感を持っていた。それがこのマスタペンコの任命を一つの導火線といたしまして大いに怒りまして、これがミー二−が米国議会に働きかけまして、その一つの、何といいますか、不快感を示す方途といたしまして、米国の一九七〇年の後半期の分担金の予算というものを削ってしまったわけでございます。したがいましてこの結果、ILOにおいて深刻な財政問題を惹起いたしまして、ILOの事業計画に大きな支障を及ぼしているというのが現状でございます。 それでは先生いまお尋ねのように、米国はこれを機としてILOから脱退というようなことを考えているかというお尋ねでございますけれども、全然そういう考えはアメリカ政府にはないわけでございまして、この不払いになりましたところの分につきましても、行政府といたしましては、この不払いの相当分を一九七二会計年度の予算として要求するということを表明いたしております。もちろんこの見通しにつきましては、まだ彼らとしても、もちろん確たるものを持っているわけではございませんけれども、行政府としては何とか一九七二会計年度予算としてそれを通したいということを考えておりますし、それを言明いたしております。わがほうといたしましては、こういった分担金不払いということにつきましては、もちろんアメリカのほうにもそれなりのあるいは理由はあろうかと思いますけれども、どのような理由を述べましょうとも、それはILOの加盟国として、しかも有力な理事国として、その不払いを正当化するものであるとわれわれとしては思われませんので、非常に遺憾に考えておるわけでございます。したがいまして、米国政府がいわば大局的な立場に立ちまして、本件解決のために特別の努力を行なって、今後円満な解決が行なわれるということを希望している、こう申し上げる次第でございます。
○戸叶委員 アメリカともあろう国がたいへんけちな考えだと思うのですよ。事務局の局長補にソ連人が任命されたからといって、何か分担金を払わないとか、それからILO全体が左傾化したというような批評をしていく、これは国際的な機関ですから、そういうところにそんな態度を示すというのは、少し私はおかしいし、また非難されるべきことだと思うのです。そういうようなことについて、やはり外務大臣も何らかの機会にアメリカを教育するといってはおかしいですが、お話しになるような態度を持っていただきたいと思うのですけれども、この点についてはどうお考えになりますか。
○愛知国務大臣 私もごもっともと考えます。たまたまいま話に出ましたジェンクス氏が近く来日いたします。私もかねがねよく知っている間柄でもございますから、ただいまお話がありましたようなことも十分胸にいたしまして、いろいろ話し合ってみたいと思います。
○戸叶委員 こんなけちな問題を起こすようなことではちょっとおかしいと思いますので、早くそんな気持ちをなくすように、こういうときには日本も少し大きな外交を示していただきたい。まあ大きくはない、たいしたことじゃないですけれども、しかしアメリカを教育していただきたい、教育する外交を示していただきたい、こういうふうに思います。 そこでもう一点伺います。これでおしまいにいたしますが、このILO憲章からいいますと、額の未納が二年間続いているときには投票権を停止する。けれども、そこにただし書きで「総会は、支払の不履行が加盟国にとってやむを得ない事情によると認めたときは、出席代表の投票の三分の二の多数によって、その加盟国に投票を許すことができる。」となっていますけれども、こういうふうな理由で分担金を払わないということは、とてもやむを得ない事情とは思えませんけれども、日本としてはそういうようなときには賛成の意を表しなさるか、それともどういうふうな態度をおとりになるか、伺っておきたいと思います。
○西堀政府委員 先ほども申し上げましたように、米国行政府といたしましては、何とか一九七二会計年度におきまして不払い分をも含めてこれを要求するということを言明いたしておりますし、この規定によりますと、一九七二年後半以降も不払いが続くといった場合においていまのような問題が起きるわけでございますから、そういった事態は万々あり得ないだろうとわれわれ考えております。
○戸叶委員 あり得ないことを期待しますけれども、あった場合にはやむを得ない事情と日本はおみなしになりますか、お考えにならないか。その点だけ、ちょっと伺っておきたいと思います。
○西堀政府委員 そのときになりましてから、諸般の情勢を考えて実は決定いたしたいと申し上げる以上のことは、現段階においては遺憾ながら申し上げられないと思います。
○戸叶委員 それ以上のことをおっしゃらないとちょっと困るのですけれども……。政府答弁というのはいつでもそうなんですよ。諸般の情勢を考えまして、そのときになりましてから何とかいたします、私も大体暗記いたしましたけれども、そういうふうな態度だからいろいろな問題を起こすのですよ。やはりいまはっきりわかるでしょう。こんなことでもって分担金を払わないなら、もうこれはやむを得ない事情にはなりませんぐらいのことはおっしゃれないのですか。そして、これから外務大臣もはっきりとアメリカに対してこういうことはたいへんに不当なことだということをおっしゃろうとしているときなんですから、これはこの十三条の四項にいうやむを得ない事情には考えられませんぐらいのことはお考えでしょう。それともやむを得ない事情も出てくるとお思いになりますか。この点、外務大臣ちょっと聞きたいと思います。
○愛知国務大臣 私は率直に申しまして、お金を払わせることがまず第一のことで、幸いに払う態度を示しておりますから、そういうやむを得ざる事情であるか、やむを得る事情であるか、そういうことがまず起こらないようにしたい。それについて、微力でございますが、あっせんをしたいと考えております。
○戸叶委員 私の質問からちょっと死弁がみんなじょうずに逃げちゃっていますけれども、これ以上追及しません。次の方に譲ります。(拍手)
○田中委員長 山口鶴男君。
○山口(鶴)委員 戸叶先生がすでにお聞きになったことかと思うのですが、最低賃金決定制度の創設に関する条約、ILO第二十六号条約ですが、これが採択されましたのは一九二八年、四十三年前ですね。ILOが創設されましたのが一九一九年。ILO創設直後に採択されましたこの条約が四十数年間ずっと今日まで批准されずに至ったということにつきまして、私どもはたいへん遺憾に思うわけであります。四十三年間も経過したこの時点に立ちまして、外務大臣としての御感想をひとつ承りたいと思います。
○愛知国務大臣 先ほど来政府側としても御説明いたしておりますように、昨年秋まででILOが百三十四の条約を採択しております。その中で日本が批准したのは二十六であります。これは数の上においても非常に少ない。しかし、これは実は経過をずっと見てまいりますと、たとえば常識的に考えてもヨーロッパ諸国の場合と、そうでない場合とではだいぶ事情が違っているというようなこともありまして、必ずしも数だけで判定すべきものではないと思います。しかし、日本といたしましては、数にこだわらないにしても国内的な諸般の立法やあるいは国内的ないろいろの環境条件がマッチするようになることを努力しながら、それと照応してILOの条約の批准をするというのが一番堅実な行き方であろうということで、今回この最低賃金関係のものも批准をすることにして国会の御審議をお願いしておる次第でございます。 それからこれも先ほど来御論議のあったところでありますけれども、今後どうするかということについては、さしあたり一、二のものについては批准の対象として現実に考えるものがございまして、またその他の問題についてもいま申しましたような原則的な考え方で前向きに検討していく、こういうふうに考えている次第でございます。
○山口(鶴)委員 あまり押し問答してもしかたがありませんから次の問題に移りますが、ILOの第一号条約は、「工業的企業に於ける労働時間を一日八時間且一週四十八時間に制限する条約」ですね。これはまだ批准されていない。それから四十七号条約「労働時間を一週四〇時間に短縮することに関する条約」、これも批准をされていない。いま労働時間の短縮というのは世界各国の大勢だと思うのですね。しかも一週二日休日にするという国も非常にふえている。いま日本が貿易その他の関係におきまして、日本人は働き過ぎるのじゃないかという批判をずいぶん受けているのじゃないかと思うのですね。そういう際に、週休二日にすることを当然考えなければならぬと思うのでありますが、同時に労働時間に関する条約をいまなお批准していない。特に一九一九年ILOが創立されました直後に、第一号条約として採択をいたしました一号条約すらいまだ未批准であるということについて、外務大臣としてもそういうことであってはならぬ、外交を展開する場合にも、あるいは経済外交を展開する場合にも、非常な差しつかえがあるというお気持ちがあろうと思うのですね。この点はいかがでしょうか。
○愛知国務大臣 これは経済外交あるいはその他多面的な外交の立場から申しまして絶対的な制約になるというふうには私は考えませんけれども、とにかくILO関係の条約については、先ほど申しましたように、やはりそれぞれの国の立場というものもあり、それからそれぞれの環境、法制というようなものもございますから、その整備ということと相まって処理をすべきものである。この考え方というものは、私としてはILO当局あるいはILO関係の諸国も日本のそういった誠意のある態度というものについては相当の評価をしてくれているように感ずるわけでございます。でありますからこれからもそういう態度で、先ほど申しましたように前向きに批准手続をとるように考えているということによりまして、私は日本の態度というものは十分に評価されていっているもの、かように考えておる次第でございます。 なおそれからこれは国内的にはもちろんですけれども、関係各省等の意見を十分調整していきたいところでございまして、まあこれを単純に表面的にいえば、外交担当という立場からいえば、国際機関でせっかく合意ができたことについてはこれを積極的に、数にいたしましてもなるべく多く批准をしてこれに参加するということがもちろん好ましいことであると考えておりますが、いま申しましたように国内諸官庁とも十分連絡をして、そして相互の調整をはかっていく、こういうふうに考えてまいりたいと思います。
○山口(鶴)委員 労働省どうなんですか。一号条約、四十七号条約等、こういうものはわが国の労働政策の上からいっても当然批准しなければならぬ問題で、しかも国際的には週休二日ということも論議をされ、しかもそういう状態が各国においても実現しつつある。こういうときに一号、四十七号すらまだ批准していないということでは、これは問題にならぬと思うのですね。それから週休二日に対して当然これ日本としても早急に実施すべきじゃないか。新経済社会発展計画の改定にあたってそのことも検討しなければいかぬということだそうですけれども、この点に対する考え方もあわせてお聞かせをいただきたいと思います。
○愛知国務大臣 ただいま私申しましたように、国内的にも非常に大きな問題でもございますので、おっつけ労働大臣も見えると思いますが、労働省の見解をまずお聞き取りいただきたいと思います。
○岡部(實)政府委員 御指摘の労働時間に関する問題でございますが、第一号条約は原則として一日八時間一週四十八時間制、これは現行の労働基準法でその原則はこのとおり規定されているわけでございます。ただその条約の中で例外として若干の規定、例外時間、これをこえての就労の例外を認めておりますが、わが基準法におきましてもいろいろな例外を規定している。この例外規定のところで実は条約の規定とかみ合わない点がございますので、したがいまして条約を批准する場合の国内法との調整の問題がございますので、実はそういう法律の解釈上あるいは手続上の問題から批准し得ないという状況であります。 そこで労働時間全体については、御指摘のように日本の経済が相当高度に成長してまいっておりますし、現実の就労の態様から見ましても労働時間の短縮という方向が大勢でございます。私どもも目下この就労時間の問題については、その実態、今後の見通し等についていろいろ検討を重ねております。どういう形で法的に整備をしていくかという問題につきましては、目下基準法研究会という研究会でいろいろ検討を願っているところであります。全体の方向といたしましては先生の御指摘のとおりでございますが、これをどう法制化するかについては、研究会その他各方面の御意見を聞きながら検討を進めてまいりたい、こういう状況でございます。
○山口(鶴)委員 検討するのもけっこうですが、非常におそ過ぎると感ずるわけですね。公害国会以来労働安全衛生規則の問題でもずいぶん議論がありましたカドミウム公害等ありますときに、労働安全衛生規則の規定の中にカドミウムというものすら入ってないじゃないかということはずいぶん指摘されながら、いまなおまだ検討中のようですね。そういうことでは私は労働省としては怠慢だといわざるを得ないと思うのです。少なくとも一九一九年最初に採択された第一号条約——労働基準法で例外規定がある、合わぬ分があれば合わせるように国内法を直せばいいのであって、そういうことを直すのがいやだからいつまでも批准をおくらしておるということでは、私はこれはお話にならぬと思うのです。そのことについて重ねてお尋ねしてもいいのすが、労働大臣も参るそうですから、労働で大臣にお尋ねするといたしまして、週二日制についてはどうお考えですか。
○岡部(實)政府委員 最近の各企業の実態で週休二日制を採用しているところもだんだん出てきているようでございます。そこで、現在週休制をどう取り扱うかの問題につきましては、原則といたしましてやはり労働時間が短縮されるべきであるという方向で検討すべきものであろうということは御指摘のとおりであり、私申し上げたとおりでございますが、法制的にこれを週休二日制を義務づけるというためには、やはりその規定が実行可能な社会経済の条件整備というのが必要でございますので、もう少し実態を見きわめながら、条件がどこまで整備されるかということとにらみ合わせながら、その問題を労働時間制の一環として考えてまいりたい、こう思っています。
○山口(鶴)委員 ひとつ前向きにすみやかに検討するように強く要請をいたしておきたいと思いますが、次に条約の内容について若干お尋ねをいたします。 この開発途上にある国を特に考慮した最低賃金の決定に関する条約、わが国は国民総生産ではまさに先進国でありますが、労働条件あるいは労働者一人当たりの所得、こういうものでは残念ながら先進国とはいえない、開発途上にある国とほぼ同様な状態のものすらあるということから、この条約の名前、先ほど政府委員の方がいかがかというようなお話をしておりましたが、私どもはたいへんけっこうな名前ではないかと思いますが、さてそこで、この第一条一項に「すべての集団について適用される最低賃金制度を設置することを約束する。」、こうありまして、すべての集団でありますから、当然私は公務員労働者もこの中に入るべきだ、かように思います。しかしこの三項で「この条の規定の適用上最低賃金制度の対象とされない賃金労働者の集団をその対象とされない理由を付して列記するものとし、その後の報告において、」云々こう規定がございます。聞くところによりますと、どうも公務員労働者は除外をするというのが政府の方針であるやに聞いておるわけでありますが、そうですか。さらに除外する方針のものとしては一体どのような集団を予想しておるのか、この点まずお答えをいただきたいと思います。
○岡部(實)政府委員 御指摘のように、この条約では「雇用条件に照らし対象とすることが適当である」という前提で、「すべて」、そういう適当な「賃金労働者のすべて」、そして御承知のように公務員につきましてはその賃金、給与については法律をもってこれを規定しておりますので、この条約の規定に基づく最低賃金制を適用する必要が現実にはない、むしろそのほうで賃金の規定をしていくべきだということでございますので、条約は全部をカバーいたしますけれども、この法案の規定で、実行上必ずしもその必要がないということに考えております。
○山口(鶴)委員 公務員以外はどういう集団を考えておるのですか。
○岡部(實)政府委員 たとえば家事使用人の問題とか、あるいは家族従業者の問題、そういった特別の、いわゆる一般の雇用労働者外のものであって、この対象として取り上げるに適当でないものを考えております。
○山口(鶴)委員 ただいまのお話を伺いますと、公務員労働者は除外をする、法律その他によってある程度労働条件が規定をされているからというのが理由のようでありますが、それではお尋ねしますけれども、常勤の臨時職員、国家公務員、地方公務員、たくさんおりますね。こういう人たちが一体日給幾らで働いておるのか。いただきましたこの資料によりますと、昭和四十五年十二月三十一日現在、六百円未満が五万二千人、〇・六%、以下、六百円以上七百円未満、七百円以上八百円未満、八百円以上九百円未満、九百円以上千円未満、千円以上千百円未満、千百円以上千二百円未満、千二百円以上、こうなっておりまして、人員と比率がそれぞれ出ております。先ほど言いました公務員の常勤の臨時職員、一体統一単価は幾らであるか御存じですか。
○岡部(實)政府委員 ちょっと手元に正確な資料がございませんので、至急調べて御報告いたします。
○山口(鶴)委員 これは外務大臣に、ひとつ政治家同士という意味で御感想を承りたいと思うのですが、一体公務員の臨時職員の日給は、このランクのどの辺に位置すると御想像なさいますか。
○愛知国務大臣 まことにどうも不勉強で、いますぐにお答えができませんで、まことに申しわけございません。
○山口(鶴)委員 まあ、この高いほうにおるだろうと思うのが常識だと思うのが、そうじゃないのですよ。私は地方行政委員会におりますので、地方財政計画でいつも議論しておるのですが、昭和四十五年における道府県、市町村、これの人夫賃の統一単価ですよ。ですからこれはより高いものもあれば、低いものもあるわけですが、八百十円ですよ。としますと、このランクからいきますと、八百円以上九百円未満、このランクですね。人員といたしまして百六十万六千人、比率が一七・六%、ですからちょうどまん中、あるいはまん中よりちょっと低いぐらいのところですよ。 私はそういう実態を踏まえた上で労働省にお尋ねしたいと思うのですが、公務員といってもいろいろあるわけですね。人事院勧告による俸給表、そういうものの中で賃金のきめられている公務員諸君もおる。それが数は多いでしょう。しかしそれだけではなくて、いま私が指摘をしたような常勤の臨時職員、統一単価一日八百十円というような労働者も公務員のワク内に入っておるのですから、これは一般職ではなくて特別職という形だと思いますけれども、とにかくそういうものも公務員労働者の中におるのですから、ある程度、法律で規定されておるからいいじゃないかというような事情は——これらの人たちには適用されない。そういうきわめて劣悪な条件の人もおるという実態をどうお考えになりますか。それで、その上に立ってなおかつ公務員グループは差しつかえないのだ、適用除外だという考えが通るとお考えでございますか。この点いかがですか。
○岡部(實)政府委員 最低賃金制度の本来の趣旨はこの条約にもございますように、一般に比べて非常に低い賃金が現実に行なわれているものについてはこれをできるだけ底上げするというか、最低の賃金を引き上げて保障するという趣旨でございますので、現実にはこの条約、またそれに基づく最低賃金制度はそういう必要のあるものについてはできるだけカバーをしていくという方向で検討すべきものであろうと思っております。そこで先ほど申し上げましたように、家事使用人とか家族従業者とかいう特別の性格を持つもの等を除きまして、さらに公務員等につきまして、法律によりまして現実にそういう保障をされ得るものは除いていく。したがいまして、御指摘のように非常に低い賃金を受けている公務員、これはあるいは単純労務者とか公営企業の職員とかいうような形で多くあるのではないかと思いますが、そういうものについてはその業種によっては最低賃金等の適用も考えていってしかるべきであろう、こう思っておるわけでございます。
○山口(鶴)委員 公務員労働者の中にもそういう劣悪な条件で働いておる諸君があるという実態をひとつよく認識をいただきまして、公務員であっても単純労務に従事する諸君、いわば常勤の臨時職員ですね。そういう諸君に対しましては十分待遇改善をはかり得るように、またその条約の適用につきましてもそういう諸君はできるだけ拾い上げて一定の歯どめを実施していただくということについてはぜひともやっていただかなければならぬし、またそういうことではいけないと私は思うのですね。この点、どうも労働省も認識が少し不足だったようでありますから、十分認識を改めていただきますように強く要請をいたしておきます。 さてそこで次の問題に移りたいと思いますけれども、公務員労働者の問題に関係いたしまして、三月二十三日から四月二日の間、ジュネーブにおきましてILOの第一回公務員合同委員会が開かれることになっており、きょうは二十四日でありますから現に開かれておるということだと思います。この公務員合同委員会はことしが初めてです。ILOが発足いたしましたのが一九一九年でありますから、実に五十二年ぶりに初めて公務員部会というものがILOに設置された。そういう意味で画期的な事柄ではないか、私はかように思うわけです。 なぜ公務員合同委員会というものが設置されるようになったのか。その理由について、これは総理府に聞いたらいいのですかな、ひとつお答えをいただきたいと思います。
○宮崎(清)政府委員 ただいま御指摘の、ILOにおきまして理事会のいわば機関として公務員合同委員会の設置が決定されましたのは、たしか一九六六年の十一月であったかと存じます。昭和四十一年にあたります。なぜそういう機関が設置されることになったかという理由につきましては、実は私それほど詳細には存じておりません。おそらくILOにおきましても、公務員の労働条件その他に関します問題がその前後からいろいろと議論されまして、その結果に基づいて一九六六年にそういう決定がされたのではないかと推測しております。
○山口(鶴)委員 ILOが設置をされました一九一九年のころは、現在の公経済の占める位置と当時の公経済が占める位置とは大きな相違があった。これは十分おわかりいただけると思うのですね。当時はチープガバメントということで、政府というのはできるだけ安上がりのほうがいいんだ、こういう時代でした。現在はそうではありませんね。いわば福祉国家ということになれば国が行なうサービスというものは大きければ大きいほどよろしい。そういう意味で国民経済の中に占める公経済の地位というものも非常に大きくなりまして、したがって当時は官公労働者の比重というものはせいぜい二%か三%程度でしかなかった。しかし現在におきましてはいわば一般職の公務員以外に現業の公務員労働者、まあ五現業がありますね。それから三公社というものもわが国においてもある。それから地方公共団体におきましても地方公営企業というものがずいぶんふえてきました。したがって、国際的に官公労働者の占める比重が著しく上がったということが特徴的にいえるだろうと思うのですね。さらに昔は、いわば監督官庁につとめる公務員労働者の諸君がほとんど大部分だったけれども、現在は民間労働者の職種とほとんど相違のない、全く同じような仕事をしている。だから民間の労働者と公務員労働者との職種や状況というものがほとんど差異がなくなったという点が現在の状況だろうと思います。そういう中でもっと早くILOの中に公務員部会というものが設置されて、公務員労働者の労働条件なりあるいはその他の問題について十分論議をする、そうして一つの結論を得て新しいILO条約を採択するということが時の勢いとして最も必要なことではないだろうかと私は思ってきました。 さてそこで、そういう上に立ってお尋ねしたいと思うのですが、今度の第一回の公務員合同委員会の議題は一体どういうものが予定をされておりますか。
○宮崎(清)政府委員 今回のILO公務員合同委員会の議題といたしましては三つあるようでございます。第一議題は公務員の雇用条件の一般的検討となっております。これは公務員の給与、勤務時間、休暇、社会保障等の公務員の勤務条件の水準をどのように決定すべきかという問題が取り扱われているようでございます。それから第二議題は、公務員に関します結社の自由及び公務員の雇用条件の決定に対する職員参加のための手続というものでございます。これは公務員の組織、交渉手続、争議等に関する問題が取り扱われるように聞いております。第三議題は公務におけるキャリアの問題でございまして、これは公務員の任用、研修、服務等の問題が取り扱われるように聞いております。
○山口(鶴)委員 それでは、わが国の政府代表七名の方がジュネーブへ行かれたわけですね。一体これらの議題に対してわが国の政府としてはどういう態度で臨もうとしておられるのですか。少なくともILO八十七号条約、この九条の中には軍隊と警察は別だが、それ以外は団結権を認めなければいかぬということになっているわけですね。そうでしょう。しかるにわが国におきましては、たとえば監獄につとめております監獄職員、これらの方々の団結権というものは全くない。それからまた消防職員、これらの方々の団結権というものもないですね。これは明らかにILO八十七号条約の第九条違反ではないですか。こういう問題はわが国におきましても公務員制度審議会でずいぶん議論をされたわけですね。この議題にも結社の自由及び公務員の雇用条件決定に関する職員参加のための手続というのが第二議題にあがっておるわけですが、監獄職員それから消防職員、これの団結権というのを認めるつもりで政府は出席をするのですか、どうですか。少なくともイタリアなんかでは交通警察に携わる警察官まで、これは団結権もあるし罷業権もあるのですね。そういう国だってあるわけでしょう。わが国はそういう点は非常に公務員労働者の権利ということを侵害しておるわけです。少なくとも九条にずばり違反をする監獄職員の団結権それから消防職員の団結権、こういうものは認める態度で政府は行っておると私は思うのですが、どうですか。
○宮崎(清)政府委員 今回のILO公務員合同委員会は、先ほども御指摘がございましたように第一回目の委員会でございます。したがいまして、私たちも事前にいろいろ連絡を受けておりますが、その範囲内で承知しておりますことは、今回の合同委員会におきましては、必ずしも委員会としての意思決定といいますか、そういうことをするかしないかはわからない、こういうことでございます。したがいまして、私たちといたしましては、今回の委員会におきましては各国の実情等、いろいろ御意見が出ることと思いますので、そういう御意見等を通じまして問題点を整理する、どういうことが問題になるかということを整理する、そういう心がまえで代表団を出しておるわけでございます。
○山口(鶴)委員 先ほど私が指摘をいたしました問題は、ILOから八十七号条約に違反をしているのではないかという質問を日本政府は受けたことありますね。そうじゃありませんか。
○宮崎(清)政府委員 御指摘の点がILO事務当局で問題になったということは承知しております。ただこれに対しましてはいろいろ考え方があるわけでございますが、現在政府といたしましては監獄職員あるいは海上保安庁の職員でございますか、これらの者はやはりILO条約に申します軍隊、警察に近いきわめて公共性の強い職務を担当している、こういう点でやはり例外として取り扱うべきではないかという考え方に立っているわけでございます。
○山口(鶴)委員 例外的に扱う、こういうお話ですが、しかしILO八十七号条約はすでにわが国は批准もしておるわけで、しかも軍隊と警察、これは除外しようということは各国一致してそうなっておるわけでしょう。その他のものについては認めてもいいじゃないかというのがILOの結論だったわけでありまして、わが国だけが何かそれに対して異論を唱えて、例外をかたくなに守っておるということは、やはり世界の大勢に私は反することではないかと思うのですね。 さらに聞きますが、公務員労働者の労働基本権ですね、これにつきましても公務員制度審議会でずいぶん議論になりました。これらについても当然私は認めていくべき問題だ、かように思うわけですが、それらの問題については一体どう総理府では考えておられますか。
○宮崎(清)政府委員 公務員の労働基本権につきます現状につきましては御承知のとおりでございます。この点につきましてはいろいろ問題がございまして、先ほど先生も御指摘になりましたように、第一次公務員制度審議会、第二次公務員制度審議会でいろいろ御議論があったのでございますが、残念ながら結論が出ないで今日に至っておるわけでございます。したがいまして、政府といたしましては当面は現在の制度がしかるべきであるとは考えておりますが、なお御指摘のような問題もいろいろございますので、今後また第三次の公務員制度審議会が開かれました場合には、その場で十分に御検討いただけるだろう、このように期待しておるわけでございます。
○山口(鶴)委員 第三次の公務員制度審議会はどの程度まで準備が進んで、およそいつごろ発足をする見通しでございますか。
○宮崎(清)政府委員 第三次の公務員制度審議会につきましては、現在部内でいろいろ議論、検討中でございます。ただこれは過日の参議院の予算委員会であったと記憶いたしますが、議員の方の御質問に対して山中総務長官がお答えいたしておりますとおり、現在公務員制度審議会は御承知のように委員が大体三者構成になっております。そのうち公益の委員の方あるいは使用者側の代表の委員の方につきましては、人選その他が非常にむずかしい問題がございまして、特に地方公共団体の代表の方が委員として参加されることになっておりますが、この点につきましては、四月の統一選挙が終わりませんと適格な代表者が選べないというのが率直な実情でございます。したがいまして、過日総務長官も御答弁いたしましたように、統一選挙が終った以降におきまして早急に開くべく所定の準備を進めたい、このように考えております。
○山口(鶴)委員 地方統一選挙という、四年に一度の大きな行事のある本年でありますから、そういう事情は私どもよくわかります。早急に発足をさせていただきたいと思います。そうしていままでの公務員制度審議会の議論を議事録等で拝見いたしておりますと、三者構成になっているわけですが、どうも使用者側いわば政府側の委員の頭がかたいといっては恐縮でありますが、国際的な水準から見ると、ヨーロッパ各国その他の国の公務員労働者の置かれた条件を全く承知しないような、全くべらぼうな議論をやっておる。そのためにいつまでたっても結論が出ないという状態だと思うのですね。少なくとも今年の三月二十三日ILOの第一回公務員合同委員会も開催される、こういう時期に入ったわけでありますから、当然私は、先ほど私が申し上げましたように、公務員労働者の置かれた位置というものがILO発足のころとはずいぶん違ってきたわけで、当然公務員労働者の労働基本権をどうするかあるいは労働条件をどうするかということは、もう緊急の課題なんですから、これを機会に政府側も頭のかたい議論ばかりせぬで、少なくとも近く発足する第三次の公務員制度審議会では、そういった新たな情勢を踏まえて、すみやかにこの問題について前向きな結論を出すということが私は必要だと思うのです。その点に対するお考え方は、あなたに聞くより山中総務長官に聞かなければいかぬだろうと思いますが、人事局長としては一体どうお考えでしょうか。公務員合同委員会が開かれるという、こういう新しい情勢があるわけです。
○宮崎(清)政府委員 先ほども申し上げましたように、今回のILO公務員合同委員会におきましては、私のほうの局次長が代表格で出席しておるわけでございまして、いずれ四月の中旬には帰ってくるわけでございます。おそらくいろいろ情報なり知識なり資料なりを持ち帰ると思いますので、それらをよく検討いたしまして、今後将来第三次の公務員制度審議会が開催されるにあたりましては、そういう諸外国の資料等も事務局といたしましてこれを提出いたしまして、御検討に供したい、こういうふうに考えております。
○山口(鶴)委員 終わります。
○田中委員長 島本虎三君。
○島本委員 開闢以来、外務委員会は私は初めてでありますから、委員長はじめ、どうぞひとつよろしくお取り計らい願いたいと思います。 いままでの格調の高い質疑やそれに対する応答を聞いておりまして、私自身も一、二、ちょっと本題に入る前に触れておきたい案件があるのでありまして、その点に対して懇切にお知らせ願いたいと思います。 まず、西堀国連局長にお伺いしますが、ILO条約批准ということは、日本の立場を国際的によくすることなんですか。たいした変わりばえのないものなんですか。あるいはそういうようなことに対してはあまり考慮しなくてもいいものなんですか。この辺のかね合いをまず伺いたいと思います。
○西堀政府委員 非常に簡単にお答えできると存じます。 ILOで諸般の条約、それから勧告等を採択されるわけでございますけれども、これはやはりできるだけ大きく、国内法が許す限りこれは批准するという方向でいったほうが目的に合致するものである、しかも、それは決してある程度のものじゃない、非常に益するものであるということを申し上げることができると存じます。
○島本委員 この条約の批准は、国内法の改正、整備、こういうようなのが必要な場合には、条約批准のほうがまず先でしょうか。それともまず国内法を整備してそれから批准するほうがいいのでしょうか。大体このやり方についての国際的慣例または見通しについてお知らせ願いたい。
○西堀政府委員 これはわが国の条約一般について申し上げることができるのでございますけれども、ある条約をその締結について国会に承認を求めます場合には、その条約を批准いたしまして締約国になった場合に、それを履行するために必要な国内法というものはこれは整備をして、その締結について御承認を得るということになっておりますので、普通の場合におきまして、条約の締結について御承認を求めます場合には、同時にその条約を履行するために必要な国内法というものは、それぞれの委員会において同時に審議をされるのが通常でございまして、要するに、国内法の整備をやって批准を行なうということが慣例でございます。
○島本委員 大体ILO条約、現在は百三十四号までつくられておられるようであります。しかし、すでに日本が批准した条約はこれは二十六であります。百三十四と二十六というと、これはまだまだ——先ほど誠意を示したい、積極的な姿勢を示したい、こうおっしゃっておりましたが、百三十四に対して二十六しか批准をしておらないのだ、こういうことになりますと、国際的な立場も日本はいばっていられないようなまた立場なんじゃないか。したがって、これは開発途上にある国を特に考慮した云々というようなことをいま出されなければならない立場に日本が追い詰められたのじゃないか、こういうようにちょっと思って、いまの点を設定して説明を求めたわけなんでありますが、大体私の考えたとおりであります。もしそうだとすると、今回政府は、最低賃金関係を中心にしていま三本の条約の批准案件を提案をしておられるようであります。しかし、これはどうなんでございましょうか、先ほどもいろいろな御意見また質問に出たように、社会保障の最低基準に関するような、世界的な一つの日本がレベルアップを示すようなこういうような条約または労働時間に関して、これは自由主義の国GNP第二位を誇るに非常な裏づけになるような労働時間に関するこういうような条約案、それから先ほども出されましたが、有給休暇に関する条約案、こういうようないわば国際的レベルに達したこういうような日本の労働者の生活の改善に重要な意義を持っておる条約、こういうようなものはやはり十分批准されてあるものである、こういうように私は考えておるのでありますけれども、これは残っておりますか、それとも批准されたものでありますか、この点をお伺いしておきたいと思います。これはいずれでもけっこうであります。
○岡部(實)政府委員 いま御指摘のILOのほかの条約でございますが、先ほど時間の条約については申し上げましたが、社会保障の条約その他につきましても、実はそれぞれの条約の規定のしかたと国内法との関係がいろいろございまして、基本的には条約の定めている原則を満たしている場合においても、そのほかの規定がたまたま一致しないようなことがあります場合には、条約全体としては国内法との関係で批准ができないということがございますので、そういう意味で、私どもできるだけ条約を批准したいとは思っておりますけれども、そういう関係で取り残されたものが現実にございます。
○島本委員 あとになってこの問題をなお言うとはっきりするのですが、しかし、いまついでですから片づけておきたいと思います。 いろいろな国際的な情勢で日本がいわば自由主義国のGNP第二位を示しておる、公害が続発しておる、国民の健康と生命をだんだんむしばんでおる、こういうことからして、日本の労働条件そのものはまだまだ十分じゃなくて、それから日本の工業そのものも、経済的なダンピングそのものも世界から疑われておる。日本の公害に対する一つの対策を見せてくれ、こう言われたのが、私が先年参りましたフランスと英国であります。急遽こういうようなことができるわけはないのだが、日本はできた、しかし、公害が出た、この公害に対する一つの対策を見せてもらいたい。冬季オリンピックまでには青い空それからきれいな水にしておいてもらいたいと皮肉を言われたのであります。むしろこういうような問題を世界的に流布される前に、まず社会保障の最低基準の問題であるとか、もうすでに労働時間の問題であるとか、有給休暇に関する問題であるとか、こういうようなものは、他の規定が満たされていないとするならば、どういうような規定が満たされてなくて世界的なレベルまでいけない状態にこの問題に限ってあるのか、あえてこういうようなもののために、日本の一つの経済的なダンピング性さえも問われておるとするならば、その怠慢は労働省にある、こういうことになってしまうのではないか。どうも私も、社労委員の一人として外務委員会へ来て労働省をたたくということはまことに切ないのでありますが、見れば見るほどそういうような感を深くするわけであります。これはどういうような規定が満たされていないのですか。労働時間——他は週休二日もやっておるのが、GNPが日本より下がっておる国です。それから有給休暇、こんなものに対してはもうとっくに解決済みの問題だと私自身も思っていたのです。ところがまだされていない。これはどの点なのか。せっかくですから、労働省、この際、この点はこうだ、今後こうする、これを中外にはっきり声明しておいてほしい。
○岡部(實)政府委員 個々の点の詳細にわたりましては、それぞれ条約と法律とつき合わせをいたさなければならないわけでございますが、たとえば先ほど問題になりました第一号の労働時間に関する基本的な条約でございます。この条約は原則として一日八時間、一週四十八時間、ただし例外として一週四十八時間のワク内で一日九時間まで、また一定の条件のもとに時間外の労働が認められるということでございます。この一定の条件がどういうことであるか、これが問題でございますが、日本の基準法では、御存じのとおり、一日八時間、一週四十八時間の原則で、ただし緊急の場合における労働時間の例外規定、それからその他協定をした場合の所定時間外の労働時間の問題等の例外規定がございますが、そういう原則のほかの例外を認めた規定の細部にわたりまして違いが現実にございます。そういうところ。それからたとえば一番はっきりいたしますのは母性保護に関する条約というのがございまして、これは労働基準法でも出産休暇等について規定しておりますが、たとえば条約の場合には出産休暇の期間が少なくとも十二週間、かつ産後の強制的休暇の期間を含む、これは最低六週間ということになっております。労働基準法では休暇が原則として十二週間であるということは一致しておりますが、ただし産後の五週間後は本人の請求があれば就業させることができるという規定を設けております。こういうような原則は一致しておるけれども、その例外を認めるケースが、条約の規定と法律の規定とがかみ合っておらないというような例が指摘できると存じます。
○島本委員 指摘してこれからどうするのかも言いなさいというのに言わないで、何ですか。——この次に言いなさい。 それと、いまの場合に、そういうような法律についてそのままにしておくほうが、国際的な立場として日本は有利なのか、早く解決してこの三案と一緒に批准したほうがより一そう国際的に有利なのか、これについて西堀国連局長の御高見を賜わりたいと思います。
○西堀政府委員 個々の条約につきましては、それぞれ関係省の慎重な御考慮を必要としますので、私からその個別の条約について意見を申し上げるわけにはまいりませんけれども、ごく一般論として申し上げますならば、やはりILOの批准というものはできるだけこれを受けるような方向で対処するのが望ましいということは申し上げることができると存じます。
○島本委員 ごく一般論というのは世界共通の理念だということであります。したがって、これをやらないのは労働省の怠慢だということをいまここではっきり外務省から指摘されたことになるじゃありませんか。ごく一般的なことをいえばこうなる、特別な例外じゃないのだ。ごく一般というのは世界共通の理念です。また基準局関係が、ここへ来てこんな恥を外務省にさらすなんてとんでもないことだ。これはやはり早く批准するように手配し、準備し、もし国内法に触れるようなことがあれば、それを早く払拭してやるべきだと思います。この点、準備と決意を、大臣いないから、あなたがかわって言っておいてください。
○岡部(實)政府委員 条約の一般的な見解として、いま国連局長からお話がございました。私どもも、一般論といたしましては、ILO条約の基準に示されたところに近づけていくというか、それに合致させるということが望ましい姿であろうと思っております。ただ御承知のように条約そのものも、やはりその規定の中に、労働条件については国内の慣行あるいは国内の実情等を考慮するというようなことも現実にうたわれておる条約もございますし、またそうでないものも、その審議の過程等において十分そういうことがいわれております。そこで私ども総合的に労働基準を引き上げて、労働条件の改善をしていく。その目標としてILO条約が示している線を目標にすベきだということは、私ども十分念頭に置いておるわけであります。ただいろいろな条約そのものに非常に細部にわたります詳細な規定があったりいたしまして、そういうところがたまたま合致しないというような純技術的な面もあったりいたします。そこで基準法全体につきましては、法制化されましてから今日まで相当な年限がたっております。したがいまして、ILOの条約と照らすと同時に、またわが国の最近の経済、社会の発展の状況、あるいは企業における実態等も十分考慮しながら、いろいろ検討もすべきだということで、実は基準法の研究会を設けて、そこで学識経験者にお集まりいただいて、まず基準法と現実の労働条件、また国際的な基準がどういう状況になっているかということを事実を把握して、その上で必要があれば措置を講じてまいるということで、目下研究会で総合的に御検討願っているわけであります。
○島本委員 じゃ意思はないのだな。ただ検討願っているだけでははっきりした意思を示さぬじゃないですか。労働省、そんな態度じゃだめだな。これからこれを早く批准したいという意思がありますか。あって研究会にかけているのだ、こういうふうに了解していいですか。
○岡部(實)政府委員 私どもまず条約に定めるいろいろな目標も見きわめながら、国内法をどうすべきかということを検討すべきだと思うのです。要するに国内法をまずどう検討するかということが先だと思います。
○島本委員 もうよろしい。そんな態度じゃだめだ。 大臣がせっかく来られましたから、今回承認を求めている三本の条約案、その二本が最低賃金関係になっている。その一本がかねがねわれわれのほうでいえば社労委員会のほうでもだいぶ論議をした二十六号条約になっております。他の一つは昨年の夏の総会で採択されたばかりのほやほや条約、こういうようなことになります。そうすると、一九二八年ですから四十年も前に出されたこの条約案と、昨年の総会で採択されたばかりの新しい条約と一緒に批准をしようとする意図、これは何か意図があるのでしょうか。それとも繊維の自主規制問題、こういうような海外からのダンピングの非難をかわすための安直なる一つの手段として利用しようとする配慮でしょうか。古いのと新しいのと一緒にぽんと出す。一方は四十年も前のやつ、一方は去年の総会のやつ、こういうようにして同じような最低賃金に関する条約を出してきて批准しようとする。これに対して、いかなる意図があるのか、どういう配慮なのか、私少し理解に苦しむので、この点を解明願いたい。
○野原国務大臣 ILO条約はできるだけ批准を急げと言っておりますが、たまたま二十六号条約が四十年前に批准されたものであるということで、昨年の百三十一号のものと一緒に出すのはどうか。これはどういう経緯でそうなったか、内容的にはよく存じませんが、とにかく同じような形のもので、一方はなかなかいろいろな経緯があってむずかしかった、どうせ出すならば、この際条件が整ったならばできるだけ早くやるべきだということからそれを一緒にやることになったわけでございまして、この経緯、詳細につきましては政府委員からお答えいたさせます。
○岡部(實)政府委員 いま大臣の答弁にございましたように、たまたま実は古い条約と新しい条約とあわせて御審議をいただくことになったわけでございますが、それは先ほどもございましたように、基本的な最賃条約は二十六号条約できめられておったわけでございます。しかし、その後ILOの中でも最賃問題について再度少し検討すべきだというようなこともありまして、新しく条約をつくる。ただし、それは従来の条約を補完したものであるということが前文の中でもはっきりいたしております。したがいまして、最賃条約としては二十六号と百三十一号が相補う関係にある、実質的には一体的なものであるということで、批准可能な情勢になりましたので、この際一体的にこの二つの条約の批准をお願いする、こういうことにいたしましたので、ほかに他意はございません。
○島本委員 昭和四十三年の第五十八国会で、業者間協定方式であったいわば九条方式、これを廃止して、二年間の経過措置を置いて四十五年の八月末に法律で事実上これは廃止されてしまった、だからこれは提出できるようになったのだ、こういうようなことであろうと思います。しかし、それにしても条約数が百三十四のところに二十六しか批准していない、こういうようなことはほんとうにまだまだ国際的にもさびしい次第である、こう思わざるを得ないのですが、この二十六号条約にしても、最低賃金法の制定当時から二十六号条約に触れるのではないか、これは一切否定してまいりましたが、それらの点を是正してきた、これらの点はよくわかります。したがって、ここで最低賃金決定制度、この運用の労使平等参与の原則、こういうようなものがはっきりといま盛られているかどうか、これは国際的にも重要なポイントになる問題であります。いままでの職権方式やこういうようなものでやっているのでは、世界どの国だって、日本は進歩的な労働政策をやっているというようなことに対して宣伝してもがえんじない、こういうようなことはおわかりのとおりなんでありまして、国内法の規定が抵触するおそれのある規定については、今回そういうようなことが全然なくなった、こういうことで提案されたと思いますが、そのとおりでありますかどうか、念のために伺っておきたいと思います。
○岡部(實)政府委員 御指摘のとおり、条約で示されておりまするいろいろな原則的な規定、これはたとえばいま仰せの労使が平等な立場で最低賃金の決定に参与する、こういうことは、御承知のように全国的なものについては中央最低賃金審議会、地方では都道府県に設けられます地方最低賃金審議会に労使の委員が参画をいたしまして、審議会の決定方式で参与をいたすということで、条約の規定を完全に満たしておるというふうに考えておるところでございます。
○島本委員 次に、そうするとこのいわゆる百三十一号の開発途上にある国を特に考慮した最低賃金の決定に関する条約について、内容について二つばかり触れてみたいと思います。 その一つ、この百三十一号条約の第一条一項、これには「この条約を批准する国際労働機関の各加盟国は、雇用条件に照らし対象とすることが適当である賃金労働者のすべての集団について適用される最低賃金制度を設置することを約束する。」こういうふうにはっきり盛られておるわけであります。そうすると、この条約そのものが各国に求められている条件について、日本の最低賃金制度の適用対象とする労働者はどの範囲が開発途上のこれに該当するのであるか、条約の要請を満たす条件は十分整っているのかどうか、この点についてまず伺います。
○岡部(實)政府委員 私どもこの条約の規定と照らしながら今日まで最低賃金法の改正をいたしてきました。最低賃金法は原則としてすべての労働者に適用される。ただし、国家公務員、地方公務員等、国が直接法律等で労働条件を決定する者、あるいは家内労働、家事使用人あるいは家族従業者等、いわゆる賃金労働者と一般的に性格を異にする者等、特別な者を例外といたしまして、そのほかの労働者は一般的に最低賃金制の適用を受ける、したがって、条約の対象とも考えられるということでございますので、ここにございまする条約の基準に照らして、現実には特定の者を除くすべての者をカバーするように考えておるわけでございます。
○島本委員 それなら第三条はどうか。「最低賃金の水準の決定にあたって考慮すべき要素には、国内慣行及び国内事情との関連において可能かつ適当である限り、次のものを含む。(a)労働者及びその家族の必要であって国内の賃金の一般的水準、生計費、社会保障給付及び他の社会的集団の相対的な生活水準を考慮に入れたもの(経済的要素(経済開発上の要請、生産性の水準並びに高水準の雇用を達成し及び維持することの望ましさを含む。)」こういうふうになっているわけです。このうちの「社会保障給付及び他の社会的集団の相対的な生活水準を考慮に入れたもの」なかなか含蓄のあるようなこういうような一つの規定が第三条にきめられてありますが、この点なんかについても現行の国内法において十分充足されておりますかどうか、この点を念のために伺っておきます。
○岡部(實)政府委員 三条で(a)、(b)とそれぞれ規定しておりまして、特に(a)の中で先生御指摘のような要素が加えられている。わが国の最低賃金法では、第三条で「労働者の生計費、類似の労働者の賃金及び通常の事業の賃金支払能力を考慮して定められなければならない。」こういうことで規定しておりまして、この(a)でいっておりまする「労働者及びその家族の必要であって国内の賃金の一般的水準、生計費」等は、まさにいまの最賃の規定でいっておるところと一致しております。 そのほか、これらの要素をあげておりますが、その三条の前文のところにもございますように「考慮すべき要素には、国内慣行及び国内事情との関連において可能かつ適当である限り、次のものを含む。」ということで、いろいろな要素を、それぞれの国の実情に応じてこの最賃の制度の目的に合致するような要素を取り上げていくということで一般的にここに例示したものでございますので、私どもは事実上こういったものを最賃の具体的設定にあたっては考慮するということにしておりますので、三条の条項を満足しているものと考えております。
○島本委員 並びに第四条第一項では、この最賃の決定だけではなく、金額の調整も随時なされるものでなければならない、これははっきりいわれておりますが、日本の場合の決定された金額はどのようにして改定し、それに何回やってあるのか、これもひとつ御答弁願います。やりっぱなしでさっぱりこの改定はしてないんじゃないか、こういう声がほうはいとしてあるのでは困るのでありますが、いかがでしょう。
○岡部(實)政府委員 賃金審議会で決定されました賃金につきましては、法律のたてまえは十六条にございますが、労働大臣または都道府県労働基準局長が必要と認めるときはいつでも改正ができるということにいたしております。もちろん当然審議会の議を経ることになりますが、そういうことにいたしております。さらにそのほか関係労使がその改正を申し出ること、その他労働大臣には特に都道府県労働基準局長が決定したものについて、特に改正を必要とするものについては改正するようなアクションがとれるという規定になっておりまして、現実にいまの慣行あるいは実態からいいますと、二年に一度くらいの割りで必要な改定を行なうということになっておるわけでございます。
○島本委員 いろいろ御答弁によりますと、なかなかよくできているようであります。しかしながらさっぱり批准はされてないということだけは事実として残るのであります。ただ四十年の八月に諮問されて以来、懸案の中央最賃審議会の最低賃金制のあり方についての答申、先般去年の九月に提出されたと聞いておりますが、これはその内容についてはまだつまびらかにされないのであります。政府はこの答申を受けて今後日本の最賃の制度をどのようにして進めていくつもりなんだろうか、こういうようなことについてはやはりいろいろ労働階級のほうでも注目しているところであり、世界的にもいま日本は注目されている状態じゃなかろうかと思います。こういうような点について一つの年次推進計画、こういうようなものについても策定されているのかどうか。また全産業の全国一律の最低賃金制、この実現の見込みについてはどうなのか。こういうような点についてはこの機会に、せっかく条約批准を前にして日本の労働当局もはっきりさしたほうがいいんじゃないか、こう思いますので、ひとつこの際大臣からはっきりした決意を承っておきたいと思います。
○岡部(實)政府委員 事務的な点について御説明を申し上げまして、後ほど大臣からお答えいただくことにいたします。 御指摘の中央最低賃金審議会からの答申でございますが、私どもいただきました答申には「基本的考え方」 「具体的考え方」として、今後の最低賃金制度の進め方についていろいろしるされております。それで基本的な考え方といたしましては、できるだけ全労働者について最低賃金が適用されていくような状態に持っていくこと、その場合、これが推進にあたっては「労働市場に応じ、産業別、職業別又は地域別に最低賃金を設定することを基本とするべきである。」ということと同時に、ただいま御指摘の全国全産業一律制につきましては「全国全産業一律制については、なお地域間、産業間等の賃金格差がかなり大きく存在しているという事実を確認せざるを得ず、現状では実効性を期待し得ない。」ということが基本的な考え方で述べられております。なおこれについて具体的には、御指摘のように年次推進計画を中央最低賃金審議会の意見を聞いて策定しようということになっておりまして、私どもは目下中央最賃審議会に対しまして、この答申の線に沿った年次計画、すなわち五年程度を目途に事実上全労働者が適用を受けるような最低賃金制度を産業別、職業別、または地域別に策定をしていくという方向で御審議をいただいているところで、まだ正式に御意見を得ておりません。したがって、年次計画はまだ策定されておりません。目下策定のための御審議を願っているという段階でございます。
○野原国務大臣 これはもうたいへん議論のあるところでございますが、昨年の九月、全国全産業一律制については中央最低賃金審議会の答申におきましても、地域間、産業間の賃金格差がかなり大きい、したがって現状では実効性を期待し得ないというような御答申を得ておりました。したがって、現在直ちに全国全産業一律制を実施することは、いまの段階では適当ではないと考えまして、今後の最低賃金制は、同答申で示されました年次推進計画の案で、中央最低賃金審議会に現在おはかりをしております。その御意見を伺った上で、同計画を作成し、行政を進めたいというふうに考えております。
○島本委員 昭和四十三年五月九日の衆議院の社会労働委員会、この議事録によりますと、当時の労働大臣はこの点について明確に言及されておるわけであります。そして全国一律の最低賃金制については、最低賃金審議会で十分これを検討いたします、と。それと同時に、二番目として、結論が得られるまではILO条約を批推するようなことはいたしません、こうさえ言っておるわけです。それと同時に、四十三年の五月十六日、参議院の同じく社会労働委員会では、最低賃金法の一部を改正する法律案に対する附帯決議の中で、「政府は、昭和四十四年三月三十一日までに、最低賃金制のあり方について、中央最低賃金審議会の結論が得られるよう努めるとともに、その答申に基づいてすみやかに法律の改正を含む所要の措置を講ずること。右決議する。」こうあるわけであります。当時、私もこれに携わっておりました。いろいろな交渉の段階がございました。経過もございました。その経過の中で、含みとして、全国全産業一律の最低賃金制ということであるということにして、含んでこれを進めたものなんです。私としてはこれがまだいろいろな手続の問題で困難であるということは、わからないわけではありません。しかしながら、まだまごまごしているという点については少し私としては納得できない。これは四十三年五月であります。いまもう四十六年でありますから、これはほんとうに困るのであります。そういうふうな点からしても十分これは考慮しておいてもらわなければならない問題点であろうかと思います。私自身もこの点は強力に国内法の改正をこの線に沿うて実施するように、私は過去のいきさつからして要請しておきたいと思います。条約を批准するにあたって国内的な体制を整備するためにこれは重要な一つの案件であります。この点を労働大臣にきつく要請しておきたいと思います。いかがでしょう。
○野原国務大臣 もう前にも申しましたとおり、その後昨年の九月において、最低賃金審議会が全国全産業一律制については問題である、特に地域間、産業問の賃金格差がかなり大きいという点から、現状では実効性を期待し得ないというふうな明確な答申が出ました以上は、全国全産業一律制ということに決定を見るというふうなことは、きわめて困難な問題でございます。したがって、なお中央最低賃金審議会におはかりをしておりまして、その御意見を伺った上で、その計画を作成し、行政がこれを取り上げることになりますれば、その時点においてこの改正をいたしたい、それまでは全国全産業一律制という問題に関する限りは、しばらくお預けの状態やむを得ないことではないかというふうに考えております。
○島本委員 条約を批准するのですから、再度、全国一律の、全産業に通ずる最低賃金制の実施、これについてはせめて私どものほうでは、リードしてそういうような線に近づけたい、努力すると、これまでの言明もほしいわけであります。そうでなければ、内容的に世界的な共通の基盤までまだ達しておらないということになる。私どもは、その点は労働大臣としても今後十分決意してやってもらわないとだめなのです。最近大臣の間ではやめるということばがはやるそうでありますけれども、それにしてもです。もういかなる時期であって、だれであっても、この問題はだれかがやらなければならない問題なのですから、おそらくもう皆さんもそれをはっきり考えておられると思いますが、ひとつここで決意してほしい、こう思います。それと同時に、労働省自身の体制を大臣が責任をもって整備しなければだめだと思います。いまここでやっている基準局関係、そういうのをやってみましても、けさでもすでに年少労働者が国内でアルバイトに行って死傷事件を起こしている。それだけじゃなしに、今度どこを見ても、いま工場の点検、一つの工場をやるのに十年もかかってやるような体制だ。公害だというと公害のほうを一生懸命やって不備を指摘している。指摘するのはいいことですけれども、それをやったならば、あと何年あとでないとそこの工場へ手がつけられない、こういうのはまことに−労働省自身がこういうような条約を批准する。このためにりっぱな答弁をなさっている。その事態の内容は寒いのです。寒々しいのです。一体この内容でどれだけ整備されているのです、労働基準関係が。そしてまた世界的にこの条約を批准しようとしている。国内的にはおそらく、もう少し具体的にいうと、公害が発生するということは工場内から発生するのであって、工場内から発生するそういうようなものは、いまでは法律ができていますから社会的な犯罪です。それで罰せられるから、そういうのはしてはならないことになっている。しかしながらやはり安全性は、働いている労働者にも当然求められるわけでありまして、これは基準関係がいままで手を抜いていた結果にほかならないのであって、公害の問題でも労働災害の問題であっても、何一つ見てもなかなか不十分なのであります。労働省内部でもっとこの点に対しては徹底的な内部改革にメスを入れなければならない。そして批准と合わせて今度は全国全産業一律の最低賃金、これに踏み切って大いに進軍するのでなければ、せっかくやってもまた世界の笑われものになってはだめだ、こういうふうに思います。せっかくGNP自由主義国二位を誇る日本ですから、そうなったからには、中に働いている労働者の条件も、社会保障の条件もこれほど高いのだと、これだけが世界の誤解を解く唯一のものですから、その点十分注意して当たってもらいたいことをこれは最後に労働大臣、外務大臣に強く要請して私はこれで終わります。
○田中委員長 曽祢益君。
○曽祢委員 私は、このILO関係三条約について、明日の本委員会でわが党の専門家である西田八郎君が私にかわって詳しく御質問することになっておりますので、細目は西田君の質問にゆだねまして、いま主として労働大臣並びに外務大臣に対しまして、ごく一、二の、私から見て重要と思われる点を御質問いたしたいと思います。 第一の点は、すでに各同僚委員から御質問になっておった点でありまして、いまさら言ってもしようがないようでありますけれども、何ゆえに四十三年もたなざらし、といっては語弊があるかもしれませんが、ILOの条約の最も基本の一つである二十六号条約をこの際、延ばしたことは別として、なぜこの時点になって国会に承認を求めてこられたのか、これが必ずしも納得できないのであります。数ばかりじゃございませんが、百三十四件の中二十六件という数が少ないというだけでなく、やはりILO条約の中の、言うならば目玉商品というべき、たとえば八十七号条約、二十六号条約等のものが、政府側の国会に承認を求め、これを締結するのが、そのタイミングが非常に恣意的だ、何もそれにふさわしい理由なしに非常に恣意的に出されているような感じがしてならないのであります。ことばじりとらえるわけではありませんが、たまたま島本委員の御質問、これもやはり、なぜ三条約がこの時点で承認を求めるのかという御質問に対して、労働大臣は、どうせやるのなら一緒だと、労働基準局長はそれを取りつくろうような立場からでしょうけれども、たまたまということばを使った。私は、どうせやるなら一緒とか、たまたまというような恣意的なことであってはならないと思うのですね。そこで、何ゆえにこの時点でこの三条約を一緒にやったか、たまたまなのか、どうせやるなら一緒なのか、四十三年の壮年期に達した条約と、生まれたばかりの赤ちゃんと一緒に出すというのはどういう特定の理由があるのか。いわゆる、いままで二十六号条約を承認するのに必要な国内の法制的あるいは慣行等が成熟していなかったというのなら、そんなことならもうとっくに二十六号条約を承認していい時期が来ていたと思う。たまたまか何か知らないけれども、この二十六号条約をふえんし、そうしてある意味で補強する条約ができたから、それまでたまっておったものをあまり悪いということで、さすがに道徳的のうずきを感じて出されたのか、いままでほうっておったものを何ゆえにこの時点になって三条約を一緒に出されたのか、これは非常に政治的な判断の問題でありますから、労働大臣から御意見を伺いたいのであります。
○岡部(實)政府委員 事務的な経緯がございますので、私から説明をいたします。
○曽祢委員 要らない。大臣の答弁を……。
○野原国務大臣 かねてから、もっと早く批准をすべきだという省内の議論が多かったわけでございます。しかし提案の二十六号条約につきましては、四十三年の最低賃金法一部改正の際の経緯もございます。最低賃金制度のあり方につきまして、中央最低賃金審議会の審議結果を待って検討したいということでありました。昨年の九月にその答申が出ましたので、今回批准についての具体的な手続を進めることにしたわけでございます。 第百三十一号条約につきましては、この条約は二十六号条約を補足するものでありまして、現行の国内法との適合上問題点もありませんので、今般第二十六号条約と合わせまして批准をしたいというふうに決定したわけでございます。
○曽祢委員 大臣の御答弁によりますと、とにかく国内的に二十六号条約を締結していい、批准していい条件が整ったから、なるべく早い機会にやったのだ、ときたまたまそこに百三十一号条約ができておったから、こういうふうに理解いたしまして、おそかったことに対する政治的な問題は別として、一応それならばわかるわけであります。 ただ、私が第二に伺いたいのは、百三十一号条約が補強だというのですが、私はずっと読んでみると、確かに二十六号条約よりも進歩している、発展している点も多々あるように思います。たとえばこの条約の第二条の第一項、第二項、これのごときは確かに、特に第一項のごときは、いままでのは二十六号条約では、どっちかといえば、ばく然となるべくこういう最低賃金制を適用するようにということをいっているだけで、今度ははっきり「最低賃金は、法的効力を有するものとし、引き下げることができない。また、最低賃金の適用を怠った場合には、関係者は、相当な刑罰その他の制裁を受ける。」こういうはっきりした規定をつくっておるし、また第二項においては団体交渉の自由は十分に尊重する。いろいろその他の条項も大体において前向きであるし、必ずしも開発途上の国に向けてだけでなくて、確かに改善であるし、補強だというふうに思うのです。ただ第三条なんかを見ておりますと、はたしてこれが前向きなのかうしろ向きなのか、ちょっと心配になる点もある。たとえば第三条の(b)「経済的要素(経済開発上の要請、生産性の水準並びに高水準の雇用を達成し及び維持することの望ましさを含む。)」ということになると、特に「経済開発上の要請」というのはどういう意味なのか。私は、むしろ発展途上の国からいえば、経済開発のためなんだからかなりチープレーバーでもやむを得ないじゃないかという主張がありはせぬかと思うのです。それもしようがないから、とにかくかっこうだけ最低賃金制をやれというので、最低賃金制というものを、開発途上のためのチープレーバーと妥協してこういうことを入れたのではないか。うしろ向きになりはせぬかと思われる要素ではないかと思うのです。これは大臣でなくてけっこうですから、その点についての労働省並びに外務省からこの意味についてちょっと御説明願いたいと思います。
○岡部(實)政府委員 御指摘の経済的要素、特にその中で「経済開発上の要請」という字句につきましては、実は審議の経過につきまして手元にはっきりしたやりとりのあれがございませんので明確にお答えできないかと存じますが、ILO自体の基本的な考え方、特にこの条約等につきましても賃金労働者についてこれを保護するというたてまえから最低賃金条約を設けるという基本がございますので、この条項についても賃金労働者の保護という目的に反するように解釈をされるべきではないというのが一般的に言えると思います。ただ具体的に各国にもございますように「国内慣行及び国内事情との関連において」ということがございますので、それぞれの国においていろいろな要因がからむ、その一つの中で経済、特に発展途上国等におきましては経済開発上のいろいろな要請もあろうかということを引いたのではないか、こういうふうに思います。
○西堀政府委員 この経済的要素、特にそのうちの第一項目にあげられております「経済開発上の要請」というところでございますけれども、これはその前文をお読みいただくとおわかりになりますとおり、こういった要素には「国内慣行及び国内事情との関連において可能かつ適当である限り、次のものを含む。」ということでございまして、それぞれ開発途上の諸国あるいは日本のように先進国といった場合におきましてこれらのいろいろ掲げられておりますところの要素については考慮する場合もあるし、考慮しない場合もある。「経済開発上の要請」というものに関する限りは、日本につきましては考慮すべきところではない、こういうふうに読むべきであろうとわれわれは考えております。
○曽祢委員 何のことやら全然わかりませんが、私の申し上げておるのは、やはりこれがいかに国内事情の理由といいながらあまりに最低賃金制ということの形にとらわれて、それで開発途上の国に、しかもかなり低い開発、いわゆる開発を始めたような国に経済開発上の理由からといって低賃金を認めるようなことは確かによくないと思うのです。またこの条約が、もし開発途上の国だけに適用する条約だったら私は問題にしません。いま国連局長の、そこを察知しての答弁のようですけれども、私は実はそれを心配するのです。わが国の政府がとにかくこういったような進歩的な条約、二十六号条約等の批准を渋ってきた。今度は開発途上の国を見ると、その国の経済事情特に経済開発の必要上ということで、相当低賃金でもいいんだというふうな条約が出ると、それでは一緒にこれを通しておこうかというかっこうだと、もしすれば、これはとんでもないことで、日本の場合には経済開発上の必要というのでは通らないでしょうけれども、まだまだいわゆる労働生産性が低い職種だとかそういったところで、あるいは地域的におくれているから低いのでいいんだというような理由にこの条約のこういう条項がもし利用されるようなことがあるならば、何のために二十六号条約をこの際あわせて批准するのかわけがわからなくなる。私はそういうことを憂える意味でこの第三条(b)の規定を非常に重視する。全体として、低開発国といっては悪いけれども、ただ形だけ最低賃金法ができるならばいいのじゃなくて、開発のために必要だということで低賃金に押えつけるような理由になってはいけないし、またわが国の場合、非常におくれている産業、おくれている地域のいわゆる業種別——私は地域別は現状においては当然だと思うのです。全国一律というのは私は必ずしも賛成しないのだけれども、こういうことによって低くていいんだということの理由にしてはならないと私は思うから質問しているわけなんです。その点をどういうふうに解釈されるか。これは条約の解釈よりも労働行政上の責任者として労働大臣から明確な御答弁を願いたいと思います。
○野原国務大臣 この点はまさに御指摘のとおりかと存じます。先ほど岡部局長から御答弁がございましたとおり、全体的にはあくまでも働く人たちを守る、保護しようという性格から考えましてもこの理解のしかたとしましては労働条件等を、特に低開発国の地帯では安くしてもいいんだというふうなことであってはならないと考えております。 〔委員長退席、坂本委員長代理着席〕
○曽祢委員 あとの質問は西田委員に譲ります。
○坂本委員長代理 松本善明君。
○松本(善)委員 先ほど来この条約の批准が、特に二十六号がおくれているということに関係をして、どういう方針でいるのかということがいろいろ聞かれておりますが、私はこの点について、ちょうど外務大臣も労働大臣もおいでになりますので、根本問題をひとつお聞きしておきたいと思います。 それは国際労働機関憲章の十九条の五項によりますと、このILO条約の批准の問題がはっきり書かれておるわけです。多少条約論にもなりますけれども、お聞きしたいのでありますが、この五項の(b)ないし(e)に書いてあります「権限のある機関」というのは一体どこなのか。特に(b)項には、各加盟国は立法または他の措置のために一定の期間内に条約を「権限のある機関に提出することを約束する。」ということが約束をされておる。これは当然わが国の場合は国会であろうかと思いますが、この点についてまず伺いたいと思います。
○西堀政府委員 この憲章にいう「権限のある機関」と申しますのはそれぞれの条約の内容であります個々の事項について立法する権限を有する機関、すなわち一般的に国会をさすものと国際的に解釈されております。
○松本(善)委員 そこで私はたいへん疑問を感ずるのでありますが、今度の場合には「千九百七十年の国際労働機関第五十四回総会において採択された条約及び勧告に関する報告書」というものがこの二十六号それから百三十一号等に関係をして出されております。これは出したところの名前もないし、それからあて先もなく国会議員に配られておる。これは一体どういう考えで処理をされているのであろうか。だれがだれに対してこの報告書は出すということになっておるのか。これは大臣もよく聞いておいていただきたいと思うのです。これはどういう考えでありますか。
○西堀政府委員 確かに先生のおっしゃいますとおり、この報告書で見ますと表書きに相当するものがないようでございますけれども、実はわれわれ外務省といたしましては、国会の御考慮のために提出するということで閣議の御承認をいただきまして、内閣にそれを送付するわけでございます。したがいまして、この報告書は内閣から国会に提出されるという形式になるわけでございます。 しいて申しますと、ことばを返すようでございますけれども、この一枚目の紙の最初の三行、これが要するに送付書と申しますか、それになるのじゃなかろうかと存じます。「国際労働機関憲章第十九条の規定に基づき、この報告書を提出する。」さてその憲章の第十九条の五項でございますけれども、それは「条約を、当該事項について権限のある機関に提出することを約束する。」したがいまして、この最初の三行に書いておりますところがこの提出の次第であり、しかもその目的、これはことばを引っぱってはおりませんけれども、「第十九条の規定に基づき、この報告書を提出する。」ということで、提出者並びにその目的は明らかではなかろうかと存じます。
○松本(善)委員 大臣は国会議員でもあり、政府の閣僚でもありますので、私は外務大臣にお聞きをしておきたいと思う。 内閣が国会に提出するという場合は一体こんなことでいいのかどうか。ちゃんと衆議院議長とか参議院議長とかいうあて先をはっきりきめ——しかもこの十九条の(b)項によれば、立法または他の措置のために、権限のある機関に同意を求める。同意が得られた場合には批准書を出す。それから同意が得られなかった場合にはILOに報告することになっている。そういう重要な性質の報告なんです。それがあて先もなければ出した者も書いてない。一体こういうことでいいのかどうか。
○西堀政府委員 要するにここに活版刷りで載っておりますところの報告書というのは、内閣から国会に提出されるときの内容だけをここに御提出申し上げているものだと存じます。内閣からの送付書は国会の事務局のほうに置かれているのではないかと私は推測するものでございます。と申しますのは、ここに提出の手続というものがございまして、「報告書は関係省(外務省及び当該報告書に関係のある省)が協議して作成し、その共管で閣議決定を求めた上、総理大臣から両院議長宛提出する。」ということになっておりますので、当然そういうことになっていると存じますけれども、その点さだかでございませんので、しかと調査をいたしまして、ひとつあらためて御回答申し上げたいと存じます。
○松本(善)委員 あらためて調査をするというのですけれども、この問題がはっきりされていないことが——ことばではILO条約を批准する方向で積極的に取り組みたいとここでも何べんも言っているにもかかわらず、何十年も批准しない。この十九条によれば、一定期間内に、少なくも「総会の会期の終了後十八箇月以内」に「権限のある機関に提出する」なんです。それは立法のために、批准のために提出するのです。同意が得られれば批准書を送る、得られない場合には、その条約の批准を妨げ、遅延させている障害を報告しろということになっている。これを確実にやればそういうことはなくなるのです。国会に提出するという以上、これははっきり国会でも会議で報告をし、そうしてそのことが議事録にも載るということにならなければならないはずであります。外務大臣、これでいいとお考えになっておるかどうか、お聞きしたいと思います。
○愛知国務大臣 いまお尋ねのような形式がどういうふうな形式になっておるかということを私自身もいま確かめたいと思っているところでございます。そうしていまここでも言っておったところですが、ILO条約の批准については、前にも国会に審議をお願いしたこともほかの条約についてあるわけですから、そういう前例等に従って私はやったことと思いますけれども、なおこれは形式上といいますか、手続上の具体的な問題でございますから、調べてさっそくこうこういうやり方でこういう国会に対する手続をとったのである、こういうことをはっきり申し上げたほうがよろしいと思います。想像を交えてこの場で何とか申し上げることはいかがかと思いますから、ちょっと時間をおかしいただきたいと思います。
○松本(善)委員 私は、その根本問題について、ここで答弁をすることができないでいるということはきわめて遺憾なことであると思いますけれども、ここでそれ以上お聞きしても、やむを得ませんから、これは明日の委員会でお答えいただいて質問をさしていただくように、委員長、お取り計らいを願いたいと思います。それでよろしゅうございますか。
○坂本委員長代理 そのように取り扱いいたします。
○松本(善)委員 それでは次の問題にいきたいと思いますが、労働大臣に伺いたいのは、先ほど全国一律最低賃金制の問題が議論になりました。この問題について、先ほどの議論も聞いておりますので、重複をしないようにお答えをいただきたいと思うのでありますが、これは労働大臣も御存じのように、わが国の憲法は二十五条で、「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」があるということがはっきり書かれております。 〔坂本委員長代理退席、委員長着席〕 労働大臣に伺いたいのは、そういう憲法の趣旨も考慮に入れまして、どういう条件の悪い場所においても、どういう条件の悪い職種においても、人間が八時間の労働をした場合に、一体最低これだけの賃金はもらえるんだということがきめられるということが望ましいというふうには考えられないかどうか。その点を労働大臣に伺いたいと思います。
○野原国務大臣 御指摘のとおりでありまして、当然最低賃金は、勤労をやっておるところの人が最小限度の生活を十分満たすものでなければならないというふうに考えております。
○松本(善)委員 私のお聞きしますのは、先ほどは大臣が、地域の差でありますとかあるいは業種の中での差があるので、全国一律最低賃金制というのは無理だという趣旨の答弁をされた。それで、それについて聞いておるわけでございますが、いまお話しのことをもうちょっと詳しくお答えいただきたいのです。私の申しますのは、この憲法二十五条の規定を見ましても、一番悪い条件の業種、一番悪い条件の地域において、そして最低の八時間労働をするならばだれでもがもらえるという賃金の最低が全国一律にきめられるということは望ましいことだというふうにはお考えにならないかということです。
○野原国務大臣 先ほど、私が、全国一律ということはなかなか困難である、地域間あるいは業種間の格差がまだかなりあるということを申しましたのは、これは私が言ったというよりも、むしろ中央最低賃金審議会の答申でございます。中央最低賃金審議会がそういう結論を昨年の九月に出された。したがって、その中央最低賃金審議会の答申を受けて、われわれは最低賃金の行政をやる必要がある。したがって、その結論が出た以上は、いま直ちに全国最低賃金を一律にやるということは非常に困難でございます。したがって、しばらくの間は、新しい最低賃金審議会の結論が出るまでは困難だということを申し上げたわけでございまして、その意味で話したわけでございますが、ただいまの御指摘のことは、普通の人が八時間働いた場合には、少なくとも最小限度の生活をささえるだけの賃金でなければならないということについては御指摘のとおりでございます。
○松本(善)委員 この辺は、こまかいことは、審議会の答申やその他に関してのことは、場合によっては事務当局にあとからお聞きしょうと思いますが、時間がありませんので、大きなものの考え方を労働大臣にお聞きしておるわけです。いまの御答弁は、もう一度大臣の直接のおことばで言っていただきたいのですが、いまは困難だけれども、全国一律の最賃制は望ましいとは考えている、こういうふうに受け取ってよろしゅうございましょうか。 もう一回言いましょうか。いまの御答弁の趣旨は、いまは最低賃金審議会の答申もあるから困難な点があるけれども、しかし、将来の問題として考えるならば、全国一律の最賃制、どんな人でも八時間働けばこれだけの賃金をもらえるというようになることは望ましいと労働大臣はお考えになっているかどうかということであります。
○野原国務大臣 まあ大体お説のとおりだと理解していただいてけっこうだと思います。
○松本(善)委員 そうすると、やはりそういう方向を実現をしていくというために努力をしなければこれはできないと思います。この方向の努力を労働大臣としてはどういうふうに——この最賃の百三十一号、二十六号の批准の機会に、この努力についての御決意を伺いたいのでありますが、いかがでしょうか、全国一律最賃制についてのですよ。
○野原国務大臣 最低賃金制につきましては、中央最低賃金審議会の答申にもございますように、産業別、職業別あるいは地域別にできるだけ最低賃金が設定されることが基本でありますが、その基本においては、それが全部おのおの労働条件において、最低の生活あるいは要求を満たすものであってほしい。そうなりますれば、自然に全国地域間の格差もなくなり、産業間の格差も解消されるであろうというふうに考えるのでありまして、条件は漸次整ってまいるのではないかと考えております。
○松本(善)委員 その程度の御決意でやられては、私は不十分だというふうに思いますけれども、これはまたあらためてお聞きすることにして、もう一つ根本の考え方として大事な問題を伺いたいのでありますが、それはわが国憲法では、団結権や団体交渉権を保障をしております。この趣旨から考えますならば、労働者の賃金といいますのは、使用者と労働者の代表との間の団体交渉によって決定をされていくというのが根本にあるというふうに考えなければならない。いま所得政策についてもいろいろ議論があり批判がありますけれども、根本は、この団体交渉によって賃金が決定されるということをわが国としては考えておるのだということについては、労働大臣どういう御意見をお持ちでありましょうか。
○野原国務大臣 賃金はいかなる場合でも労使の話し合いによって決定されるものであって、それが、労働者が労働組合を持っておる場合には労働組合が中心になりましょうが、あるいはまた組合のないものは雇用者とじきじき話し合いをして円満に話がつく場合もあるかもしれません。いずれにせよ働く人とそれを雇用する側の者とがお互いに緊密な連絡をとり、理解の上に話がまとまるというのが姿であろうと考えております。
○松本(善)委員 それでもう一つ伺いたいのでありますが、この最賃制の問題にいたしましても、現行の最賃法でいきますと、この最低賃金をきめるのはいわゆる十一条方式にいたしましても十六条方式にいたしましても、最終的には労働大臣がきめるということになるわけですね。これは私は、やはりある意味から言えば所得政策と同じような考え方に通ずると思うのです。本来この最低賃金というのをきめるのもやはり労働者の代表と使用者の代表がきめて、そしてそれを政府が基準として認めていく、それに違反をすれば処罰するという方向にいくべきであろうというふうに私どもは考えるわけです。その点についての労働大臣のお考えを聞きたいと思います。
○野原国務大臣 これは中央最低賃金審議会において勤労者の代表と使用者の代表、学識経験者、その三者が慎重に審議をして答申が出ます。その答申の線に沿って労働大臣が最低賃金を決定するわけでございますが、その決定した以下のものではうまくない、常に最低賃金といいますから決定した賃金以上でなければならぬということで、その幅はそれぞれの業種によりあるいは地域によってどうとるかということはおのずからきまってくるわけでございますが、しかし最低賃金の決定は全国一律ではないのでございますから、一応地域間の格差が多少出てまいります。とにかく大声が決定する範囲内において、それ以上の賃金であれば、それが労使の話し合いによって直ちに採用されるということでございまして、それがお互いに労使だけが話し合っていった場合においてはどうも円満に話がつかない場合もあろうかと思いますが、そういう面は一応の基準を示したほうがよかろうということで、大臣が最低賃金を決定するのではないかと考えます。事務的なこまかいところは基準局長から御答弁させます。
○岡部(實)政府委員 賃金が基本的に労使の話し合いによってきまるということは、御指摘のとおりでございます。そこでこの条約にもありますように、たとえば二十六号条約の第一条のところに、この条約を批准する国際労働機関の各加盟国は、労働協約その他の方法により賃金を有効に規制する制度が存在しない若干の産業または産業の部分であって、賃金が例外的に低いものに使用される云々ということがございまして、そこでそれを受けまして、そういったものに対しまして低賃金の労働者を保護するというたてまえから最低賃金制度を設ける。そこで労働大臣が決定することになっておりますが……。(松本(善)委員「また聞く機会がありますから簡単でいいです」と呼ぶ)最賃審議会の審議、意見を求めて、その意見を尊重してきめる、そういうことになっております。
○松本(善)委員 大臣のお時間がありませんので、最後に一言お聞きしておきたいのですけれども、私が聞きますのは、やはり最低賃金についても労使の代表がきめていくという方向をとるべきではないか、そういう方向を目ざすべきではないかということなんです。確かに審議会の中には労使の代表が入っていますけれども、しかし団体交渉ではないのですね。これは制度的には全く別のものであります。最終的には労働大臣がきめているのが現状です。その基本的な方向として、最低賃金についても労使の代表がきめていくという方向は望ましいとはお考えにならないかということを、大臣に大きな考え方としてお聞きしておるわけです。
○野原国務大臣 これは団体交渉の問題ではなかろうと存じます。つまり、最低賃金というものを決定する、その最低賃金以上に労使が話をきめていくわけでございますから、あくまでも最低賃金で賃金を低く決定してしまってこれを押しつけるというふうなことではないのでございますから、そこは労使が円満に話し合いをしていったほうがよかろうと考えます。
○松本(善)委員 時間がないのでたいへん残念ですが、これをほんとうに詰めるためには諸外国の例や規則をお話しをして大臣に意見を聞かなければならない。私は、大臣が日本の最低賃金ということについて、このILO条約の批准の機会にもっといろいろ諸外国のことも考えられて、この日本の賃金を引き上げるというために努力をしてもらいたい。これは外務大臣も閣僚の一人として、この問題については内閣全体としてもっと真剣な努力を払われるべきだというように思います。 そのことを要求して、私は質問を終わります。
○田中委員長 午後二時再開することとし、この際、暫時休憩いたします。 午後一時六分休憩 ————◇————— 午後二時十九分開議
○田中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。 質疑を続行いたします。小林進君。
○小林(進)委員 外務省にお伺いいたします。 ILOの二十六号条約の批准についてでございますが、これを批准するための必要な条件は一体何と何であるかをまずお伺いいたしたいと思います。
○西堀政府委員 第二十六号条約は、その名の示すとおり、最低賃金決定制度の創設に関する条約でございまして、この条約に規定されておりますところの最低賃金決定制度に関する原則は、わが国内法に関します限り、最低賃金法それから家内労働法等によってすべて満たされております。したがって、新たな国内立法措置をとることなく、本条約の御承認を経ましたならば批准するものと考えております。
○小林(進)委員 私は、満たされているか満たされていないかというところまで伺っているのではないのでありまして、ただ、第二十六号条約、この国際条約を批准するための条件は何かということをお尋ねいたしておるのでございます。
○西堀政府委員 この条約の中に包含されておりますところの規定を国内的に執行する、そのために国内立法を要するならば、その国内立法が必要なことでございます。
○小林(進)委員 その必要な国内法は何でございましょう。
○西堀政府委員 先ほど申し上げましたように、現在のところ最低賃金法でございます。
○小林(進)委員 それが最低賃金法であると申しまするならば、わが日本では、最低賃金法が制定されたのが昭和三十四年でございます。もちろん私どもは、この法案が成立いたしましたときには、これを称してにせの最賃と呼んだのでありまするけれども、政府のほうは胸をはたいて、国際上恥じなきりっぱな最低賃金であるということをお言いになった。それならば、直ちにその国際条約である第二十六号を御批准になったらいかがですかということを私どもは強く要望いたしました。それに対する当時の速記録もありまするが、御趣旨に沿うてすみやかに批准をいたしますと政府側は答弁をいたしました。昭和三十四年以来、政府は公約されているのでありますから、三十四年、三十五年……、一体どんな批准の手続をされたのか、その過去の歴史をひとつ承っておきたいと思うのでございます。
○岡部(實)政府委員 先生御指摘のように、昭和三十四年に最低賃金法が制定されました。そのときの中身は、御承知のように、また御指摘がありましたように業者間協定方式を中心といたしまする最低賃金の実施ということであったわけであります。 その後、この条約との関係で問題があるという御指摘もございましたが、さらに、そのILO条約の問題との関連と同時に、この最低賃金自体についても、国内法の検討もすべきだということで、中央最低賃金審議会におきまして、その後最賃制のあり方の問題についてもいろいろ検討が加えられてまいったわけでございます。そこでその間相当な時日を要したわけでございますけれども、中央最低賃金審議会におきましては、昭和四十二年五月に一応中間報告という中間的な答申を取りまとめられまして、現段階において業者間協定方式を廃止して、今後引き続いて、徐々にではありますけれども、本格的な最低賃金、これは賃金審議会で決定するという制度を中心とした最低賃金制に改めるべきだ、こういう答申がございました。政府はこの答申を尊重いたしまして、最低賃金法の改正法律案を第五十五国会に提出、その国会では可決されませんでしたが、その次の国会におきまして、四十三年一月、第五十八国会に再提出いたしまして、同年六月公布を見て、現在の法律ができたわけでございます。 さらに、これと同時に、最賃の基本的なあり方について引き続き最賃審議会に答申を求めておったわけでございます。それが昨年の九月、いわゆる最終答申として、今後の進め方、あり方という形で答申が出まして、この答申等の線に沿って、目下最低賃金の現実的な決定を賃金審議会及び地方の審議会で行なっておる。そういう段階になりまして、条約と照らしていまや全くその手続その他内容が条約の規定しているところに十分かなっておるという状況がはっきりいたしましたので、今回この条約の承認をお願いすることにしたわけであります。
○小林(進)委員 私は外務省にお尋ねいたしたのでありますが、労働省のほうは、何も私が問いもせぬことに立ち上がってお答えになっておる。委員長、ちょっとこれは交通整理しなければいけませんな。同時に、私は、三十四年にこの法律が通過をするときに、当時の労働大臣は、直ちにこの条約の批准をいたします、と言ったにもかかわらず、なぜやらなかったのかということを聞いているのでありまして、私は、四十二年のその中央審議会の答申やら四十五年の答申やらを何もお聞きしているわけではない。 もっと言いましょうか。ここに私の三十四年の本会議揚における討論がありますから、お聞き願います。「労働大臣は、本法案の通過成立次第、ILO第二十六号の批准をすることを言明しておられます」これは本会議場のあれですから、私がうそを言うわけじゃない。「言明しておられますが、その際、必ず今日政府が遭遇していると同じ事態が再び起るであろうことを、私は心から忠告せざるを得ないのでございます。(拍手)すなわち、政府は、現在、ILO八十七号批准に際し、労働者の団結の自由を奪っている反動的な国内法を整備して、その自由権を復活せしめなければ仲間に入れることができないという厳重なる勧告を受け、世界から嘲笑をこうむっているというがごとき事態が再び繰り返され、国際的世論と圧力の前に、この業者間協定を泣く泣く削除しなければならぬ急場に追い込まれるであろうことは、これまた火を見るよりも明らかなる事実であります。」と、やるならやってみなさいと言ったんだ。そうしたら、業者間協定なんて世界の嘲笑を受けることは火を見るよりも明らかだという私の質問に対して、必ずすみやかに批准をいたします、と、胸をはたいて労働大臣は言ったのだから、なぜその後おやりにならなかったのかということをお聞きしているんですよ。何も今日の四十二年や四十五年のことを聞いているのじゃない。いまここで批准をするという事態に立ち至ったのだから、当時を顧みて、その直後に批准するという約束をどうされたのですかということをお聞きしているのですから、やったのかやらないのか、当時の労働大臣が公約を違反したのか、ちゃんとそれだけ言っていただけばよろしいのです。余分なことは言わなくてよろしい。
○岡部(實)政府委員 最初に最賃法を制定いたしましたときに、いま御指摘のように、業者間協定のやり方が、二十六号条約でいろいろ規定しております点とまごうことなく抵触しないかどうかと いうことについていろいろな御疑問が出されたわけです。そういう事態に対しまして、国内において条約と国内法との適合についていささかでも疑念を残すままで批准に踏み切るということもいかがかという考慮から、そういう点につきましてILOの事務当局にいろいろ照会をするというような手続をとったりいたしました。その間に日時がたってしまいまして、条約の批准に至らなかったというのが率直なそのときの情勢でございます。
○小林(進)委員 すみやかにやるというのは、それではやらなかったのではなくて、事務的に折衝してみたら相手のほうで受け付けなかった、それはにせの最低賃金だからこれだけではだめですよと断わられたということですか。そこを明確にしなさい。ことばのあやじゃないので、明確にひとつ……。
○岡部(實)政府委員 実は非公式に——非公式と申しますのは、正式には照会するという手続が明確にございませんものですから、条約の解釈について事務局にいろいろ問い合わせをいたしましたけれども、事務局自体は、本来そういう有権解釈をするという機能を持っておらぬということもこれあり、明確な回答が得られないままに時日を過ごしたわけでございます。したがいまして、いまの御指摘の点については明確に事務局からの回答がなかったということが事実でございます。
○小林(進)委員 そうすると、労働大臣は、本法案の通過成立次第ILO二十六号の批准をいたしますと言明したということは、それは言明どおりに行なわれなかったということですな。
○岡部(實)政府委員 ただいま申し上げましたような事務的な経緯もありまして、行なわれなかったわけでございます。
○小林(進)委員 事務的経緯だけでございますか。事務的経緯だけで、事務の手続だけの問題で、このすみやかにやるという三十四年の国会における約束を——きょうは昭和四十六年三月二十四日彼岸の末日だ。そのままで十二年間日を過ごしたのは、ただ手続の不備だけで、すみやかにやるという仕事をおやりにならなかったということですか。これは重大なことですから……。
○岡部(實)政府委員 条約と国内法の解釈上の問題がある、これは事務的な問題でございますが、そういう疑念がある段階において批准に踏み切るという、これは大臣の御判断だと思いますが、することが必ずしも適当でないという判断を、これは政治的におやりになった、こう思っております。
○小林(進)委員 そうすると、手続上の問題とあわせて、当時の日本の最賃法というものが内容的に、これを批推するためには不備だ、そのためにすみやかにおやりにならなかった、こういうことで解釈してよろしゅうございますか。そうだとおっしゃるなら、私はそれで了承いたしますけれども。
○岡部(實)政府委員 業者間協定方式による最賃制が二十六号条約の完全に条件を満たしているかどうかというところに疑念があったということでございます。
○小林(進)委員 疑念ですか。業者間協定は、ILO第二十六号の最賃の精神にマッチしない、いわゆる不備だから批准できなかったのじゃないですか。単なる疑念ですか。これは疑念じゃないと思うのです。内容的に不備だから、残念ながら批准ができなかったのだと私は解釈しておるのですが、この点どうですか。またごまかざれたら困りますから、もしあなたで回答できなかったら労働大臣呼んできなさい。労働大臣がここで言明しなかったら次の質問に進めませんから……。
○岡部(實)政府委員 先ほどもちょっと触れましたが、明らかに違反しているという有権的な解釈がどこからも出されなかったので、はっきりと申し上げられないのでございますが、私どもはその後改正をいたしておりますし、そういう意味で業者間協定方式については、二十六号条約との関係で必ずしも十分でない点があるのではないかという点までは考えておったわけでございます。ただ、さっき申し上げましたように、正式に、おまえ最賃法が条約に違反しているぞということを、どこからも有権的な、はっきりした見解が出されたわけではございませんので、実はその辺たいへんあいまいな表現になって申しわけございませんが、あくまで明確にはちょっと申し上げかねる、ただ、いろいろ疑問が残されておった、こういうことを申し上げているわけでございます。
○小林(進)委員 繰り返して言いますけれども、当時から私は、ああいう業者間協定等を含めた当時の日本の最賃法は、国際舞台にもの笑いになる、そんなことでは批准なんか不可能だ、できるわけがないということを繰り返し申したのでありますが、われわれのほうから言わせるならば、そのものずばりだ。そのものずばりだが、あなた方のほうはそういう巧みな——これを官僚的答弁というのですよ。岡部さん、あなたの答弁は官僚的答弁で、のらりくらりとおっしゃるが、いま少しそのものずばりで言われたらどうですか。じゃ、私はいま一ぺん繰り返しましょうか。あなたは業者間協定とおっしゃいますが、昭和三十四年、この法律が国会を通過する前に、一体わが日本の最賃法で問題になりました点はどことどこですか。それを私はひとつお尋ねしましょう。温故知新、古きをあたため、新しきを知るということがありますから、ちょっと話が古くなりますけれども、当時、わが日本の最賃法の中で、与野党血みどろになったときに問題になりました点は、どことどこかということをお尋ねしたい。
○岡部(實)政府委員 その当時一番問題になりましたのは、業者間協定方式がどうかという点、それから労使の参加の問題について、それは審議会方式でございますが、この労使の平等参加の手続がそれで十分であるかどうか、それから現実にきめられまする賃金決定の方式が、全国的な規模で行なわれないというような点から十分であるかどうか、そういうような点であったと承知しております。
○小林(進)委員 私は質問するほうで、あなたは答えるほうであります。私が何も回答者の側に立ってものを言う必要はないが、参考までに申し上げますと、当日の論点の第一は、あなたがおっしゃっておるように全国一律ではないじゃないか、当時でいえば、一カ月働いて二千円の賃金もあるし、四千円の賃金もあるし、八千円もらっているのもいるのです。三十四年当時は、わが日本の労働者の一カ月の基本生計費というものは、一均大体七千円ですよ。二千円しかもらっていない労働者もいる。それをそのままあなた方は最低賃金として認めようというのがこの法律の精神なんです。そんな最低賃金というものがどこにあるかというのです。私はいまでも覚えていますよ。犬や豚や鶏ならば二千円のあてがいぶちでも生きていけただろうけれども、人間が人間らしく生きていくためには、そんなあてがわれた賃金で生きていけったって生きていけませんよ。人間としての最低賃金をひとつ示しなさい。その基準がこの最賃法のどこにあるのだと私は聞いた。それは生計費の問題です。第一は全国一律だ。二千円も五千円も八千円もあるばらばらをそのまま認める最賃法がどこにありますか。全国一律、これならば人間が人間らしく生きていけるという最低の賃金の線をまず最低賃金できめる。第二番目は生きるための生計費です。生計費の具体的な基準が一つもないじゃないか、これを示しなさい。それから三番目には、賃金なんというのは労使対等の原則できめるのがわが近代労働法の原則でしょう。労使対等の原則で賃金をきめるという条項が一体どこにありますか。労働者の発言はどこにありますか。その問題が一つ問題になったのだ。特に問題になりましたのは第四点、通常の事業の——日本の最賃法の第三条を出してみてください。私があなたに教育するようなものだ。第三条、「最低賃金は、労働者の生計費、類似の労働者の賃金及び通常の事業の賃金支払能力を考慮して」、「支払能力を考慮して」、これは労働者の側じゃないのだ、経営者の支払い能力を考慮し、最低賃金をきめるなどという、一体こういう最賃のきめ方がありますか。こういういま申し上げました四点が当時の国会における論争の中心点なんです。単に業者間協定だけではございません。業者間協定のインチキ性とあわせて、いま申し上げました四つの点が実はこの国会における最低賃金法の最大論点の内容であった。これがどう改められましたか。どう改められているのか。いま批准をされるについて、先ほどのお話しのとおり、すみやかにこれを批准をすると言いながら十二年間も批准できなかった理由は、あなたがどんなうまいことをおっしゃろうとも、これを批准でき得るような国内法じゃないから、あなた方はうまいことを言いながらほおかぶりをしておいでになった。ところが、その間にいわば審議会の勧告を受けて、二回くらいさっきあなたが言われたようにそれを手直しをされた。手直しをされてようやく批准をするだけの自信がつかれたから、いまそろりと批准の行為をおやりに出てきたのだと思うのだが、われわれに言わせれば、そんなこそこそと手直しをするのではなくて、批准するなら正々堂々と世界の舞台で胸を張って、わが日本にはこれほどりっぱな最賃があります。だから批准をいたしますというくらいな堂々たる態度で批准をしたならいいじゃないか。ならば、私どもの国会で問題になった、いま申し上げました四つの矛盾点も、この際からりと解決をしてやっておくべきじゃないか、その点がどうなっておりますかということをいまお尋ねをしておるのです。いかがでございますか。
○岡部(實)政府委員 お尋ねの点につきましては、中央基準審議会でもその後そういう問題点につきまして御審議になり、その結果答申が出されたわけであります。それを尊重いたしまして、政府としてはまず業者間協定というものをやめることにいたしました。いわゆる審議会方式を中心にして最賃をきめていくという方式にいたしました。それから決定の基準につきましては、生計費等の問題もございますが、これらは現実にはおっしゃるように、この法律自体が労働者の生活の安定に資するということが目的になっております。最賃もまさにこれを達成するための一つでございますので、生計費を一つの要素として決定をしていく。その場合には、具体的には、人事院あるいは中央人事委員会等で示す標準生計費等を参考にしてまいる。それからいまの全国一律の問題、この問題につきましては、その答申の中で、最低賃金は労働市場の実情に即して職業別、産業別、地域別にこれを決定して積み上げていくという方向で進めるべきだという御答申を得ましたし、そういう方向でこの問題は処理してまいるということにいたしたわけでございまして、そういうことを中身といたしまして法改正をいたして、それでその後最終的な答申もいまのような線で出されておりますので、ここであらためて二十六号ないし百三十百万との関連を見まして、その各条項を満足させているということがはっきりいたしましたので、ここに批准の承認を求めることを提出するという運びにしたわけでございます。
○小林(進)委員 私がいまあなたに申し上げているのは、日本もGNPが世界で二番目だ三番目だとかいって、世界各国の中で大手を振って一、二をいうならば、昔といまは違うんだから、ILOの労働者の最低賃金くらいを決定するこの条約を批准するときにも、いま少し大手を振って世界の舞台に、こんなりっぱな国内法があるんだ、最賃法があるんだ、だからひとつ批准をいたしますというくらい、胸を張っていただくくらいの国内法の改正をおやりになってからこれを批准されたらどうですかということを言っているんです。十有余年の前に、われわれすぐ批准しますなんとことばだけ言っても、批准もできないで、よたよたと十二年も歳月を経過したんだから、いまあらためてやるときには、少し天下の表玄関からすっと入っていけるような批准のしかたをしたらどうか。三十四年に日本の最賃法をきめるときに一番問題になった最賃法第三条に、労働の最低生活を保障するなんということばは一つもないんで、雇用者だ、雇い主の支払い能力を考慮して最賃法をきめますなどという、世界のどこの国にもないようなこういう条文をまず直すということからおやりになったらどうですかということを言っているんだ。それをお直しになりましたかと私は言っているんです。第三条に言っている「通常の事業の賃金支払能力を考慮し」という点、親方や雇い主の支払い能力を考慮して考えてから、労働者が生きるか死ぬかの賃金をきめますなどというこんな恥ずかしい条文は世界のどこかにありますか。外務省にお聞きしますが、どこの国にこんな恥ずかしい条文がありますか。そういうことをちゃんちゃんと整理をしておいてからおやりになったらどうですかということを私は言っているのです。
○岡部(實)政府委員 御指摘の各国の最賃法の中にそういう条項があるかどうかという点については、現在ちょっとつまびらかにいたしておりません。ただ各国の事情から申しますると、いろいろな形がとられておるようでございますので、必ずしもこの法律でそういう事項を明確にしているものばかりであるとは言えないと思うのです。 ただここに一九六八年にILO事務局が作成いたしました第五十三回総会のための議事報告書では、最賃の基準としてどういうものが使われているかということを報告しておりますが、その中に労働者の生活のための必要、使用者の支払い能力、第三が他のところで類似の労働者に支払われる賃金というようなものを基準にしておるということが報告され、また現実には、たとえばこれは法律にどうこうということではございませんけれども、イギリスにおきまして御承知のように賃金審議会によって規定しておりますが、賃金審議会におきまして、賃金規制、特別な固定した基準というものは定めていないけれども、一般的には主として他産業、他職種の一般賃金動向や生計費の上昇等を考慮して、これらの比較性を最も重要九考慮点として決定しているというようなことが報告されている次第でございます。
○小林(進)委員 それはわかるのです。それが最低賃金です。比較対照するというのです。これを私読みましょうか。アメリカの公正労働基準法第二条、「健康、能率及び一般的福祉に必要な最低生活水準を維持するに足る賃金でなければならぬ」、いいじゃないですか。今度はメキシコ——メキシコなどは後進国だ。連邦労働法第九十九条において、「最低賃金とは、労働者が世帯主であること並びに各地域の諸条件にかんがみ、労働者の生存、教育及び適当な娯楽に対する正常な要求を満たすに足りると思われる賃金」、これが最低賃金だ。具体的にいえば家族を含めた生存費、教育費、娯楽費を含めたものを最低賃金という。こういうふうに各国は明確になっているにもかかわらず、わが日本には、その最低賃金法には何もないじゃないですか。ただ雇用者、雇い主の支払い能力を考慮して賃金をきめるという、まるで生存費もなければ娯楽費もなければ教育費も入れないで、雇った親方の支払い能力を考慮してきめたものを最低賃金というがごときは、実に世界文明国家の中に出して恥ずかしいと私は思う。(「未開発国だ」と呼ぶ者あり)未開発国以下ですよ。そういうものを、国内法が整備されたからいまここで批准いたしますなどというのは、恥多いやり方ではないかということですよ。親心をもっていま労働省当局に御忠告を申し上げているわけなんです。まじめにひとつ答えてくださいよ、まじめにね。そういうことだ。
○岡部(實)政府委員 御指摘の点は、私どもの法律は、賃金の低廉な労働者について労働条件の改善をはかって労働者の生活の安定に資するということでございます。そういう目的に沿って、すべての規定が運用されていく。そこで御指摘の最低賃金の原則としてうたっておりますところは、労働者の生計費、類似の労働者の賃金、さらにいま最後に御指摘になっておりまする事業の支払い能力をこの一つの要素として取り入れただけでございまして、これを適用するにあたっては、やはり目的に従いまして、労働者の保護を達成するということを主眼に置いて運用されるわけでございます。ただその一つの要素として、現実に賃金は強制をいたすものでございます。支払われる能力がない場合には問題を残しますので、その点も一つの要素として取り入れたということでございまして、それのみを大きな要素に考えているわけではございません。
○小林(進)委員 一般的に客観的に見てこれが最低賃金だというちゃんと基準に基づいて支払うというのが最低賃金です。あなた方の、雇用者の支払い能力なんて最低賃金の要素に入れるなんというのは、何といってもこれは恥ずかしい次第です。そういうのをちゃんと削除する、整備をおやりなさい。私はここであなた方と議論はしませんが、これは私の言うことが筋が通っているのだから、将来ともそういう恥ずかしいのは削除することをお考えなさい。私はそう言っておく。 それでは今度はILO二十六号の第三条の二項の二号ですか、ここでいうこの労使対等の原則、「関係のある使用者及び労働者は、国内法令で定める方法により、国内法令で定める程度において最低賃金決定制度の運用に参与する。もつとも、その使用者と労働者とは、いかなる場合にも、等しい人数で、かつ、平等の条件によって参与する」というもの、このILO二十六号条約が、わが日本の最賃法のどこで一体生かされておりますか。具体的にどこに生かされているかをひとつお聞かせいただきたい。
○岡部(實)政府委員 最低賃金法の中では、最低賃金の決定を労働大臣が行ないます場合、最低賃金審議会の調査及び審議に基づいてきめる、こういうことになっておりまして、労働大臣が全国にわたる最賃をきめる場合には中央最賃審議会の審議を経、また都道府県労働基準局長がきめる場合には都道府県の賃金審議会の審議を経る。その賃金審議会は労、使、公益の三者で構成をするなり、労働者委員については労働組合の代表者、代表機関から推薦を受け、使用者は使用者団体から推薦を受け、そういった労使の代表者が同数この審議会に参加をいたしまして、賃金決定の審議に具体的に参与するということになっておるわけでございます。
○小林(進)委員 もうこれ一つでやめますがね。私も定められた時間が経過しているようでありますから、人の委員会に来ましていやがらせをやってうらみを残しては悪いですからやめますけれども、ILOの第三条というものの内容は、最低賃金制度の運用に参与するという、非常に具体的に示しておるのですよ。それをあなたは、中央最低賃金審議会、地方における最低賃金審議会が三者構成でできているから、それだからちゃんとこの法律の運用に労働者が参画しているというこの理屈は、これも理屈なんですよ。じゃ実際この地域における労働者の代表が、自分たちがもらっている賃金に特に参与できますか。あなた、できますか。一つの企業の中における自分たちの最低賃金のいい悪いに対して具体的に発言力がありますか。そういう中央審議会やら地方における審議会が三者構成でできているというだけの理由をもって、ちゃんと労働者がその最賃制度の運用に参加しているなどという理屈自体も私は了承できません。できないです。こういうことは将来禍根を残す問題です。あなたたちがそういう理屈を言われれば、これは永久にその理屈は平行線です。また何かの場合にこれは問題が飛び出して議論しなくちゃならない問題であります。これもひとつ十分御考慮をいただいて、これで能事終われりといったようなことのないように御記憶にとどめておいていただきたいと思うのでございます。 それからいま一つ申し上げますけれども、あなたは中央審議会の四十五年九月八日ですか、その最終的な勧告だとおっしゃったが、その勧告を例にとって、この勧告の中には、産業別、職業別または地域別に最低賃金を設定せよというそういう勧告が出ているから、その勧告に基づいて国内法はこれでいいんだとおっしゃったけれども、この勧告の趣旨はそういう趣旨ですか。そういう趣旨じゃないでしょう。現在は地域別、職業別、産業別に最賃というものをきめているが、将来はやはり全国一律にいくのが最終の目的だというのが、この議論の中に入っているのじゃないでしょうか。入っていませんか、いかがでございます。
○岡部(實)政府委員 全国一律制の問題は、多年にわたる大きな課題でございます。ただこの基本答申におきましては「基本的考え方」の第三項目のところに、「全国全産業一律制については、なお地域間、産業間等の賃金格差がかなり大きく存在して、いるという事実を確認せざるを得ず、現状では実効性を期待し得ない。」ということで、仰せのように将来の問題として、この制度をどうしていくかということは、今後の課題に属すると思いますが、現状におきましては、実効性の面から、これを実施していくことは、非常に困難であろう。そこで、どうするかといえば、労働市場の実態に即しまして、産業別、職業別または地域別に最低賃金を設定することを基本とすべきである。ただ、仰せのように、労働者につきましては、全国、全産業の労働者をカバーしていくような方向で最賃の設定をしていけ、こういうことになっております。したがいまして、私どもはこの基本的な答申を受けまして、具体的にはいまの職業別、産業別、地域別に具体的な最賃をきめていく。そして年次的にできるだけこの制度の整備を促進いたしまして、全産業、全労働者が何らかの形の最賃でカバーされるのだという方向にまず持っていきたいということが、この答申の基本的な考え方であろうと思いますし、そういう方向に沿って、いま年次的な計画を具体化しようとして、さらに中央最賃審議会に御意見を聞いておるところでございます。
○小林(進)委員 これは私はあなたの答弁は重大問題だと思っているのですよ。確かに有沢勧告の中には、「全国全産業の労働者があまねくその適用をうける状態が実現されるよう配慮されるべきである。」といって、この全国あまねく適用を受けるということは、産業別、職業別、地域別に格差があってもよろしい、まず網だけ打ってしまえば一いいというだけにとどまる勧告であるというならば、私は重大問題だと思う。そうお思いになりませんか。現在、労働者の中には、まだ求人難などといって完全雇用だ、大企業も中小企業も賃金の格差はなくなった——それは昔のような差はなくなったが、いまは地域別にずいぶん差がありましょう、ありませんか。産業別にも差があるでしょう、業種別にも差があるでしょう、熟練工未熟練工の差もあるでしょう。それをそのまま現在には実現性がないからということで、その差別をそのまま認めるような最賃制でこれはよろしいという、そういう解釈のしかたである勧告ならば、私はこんな勧告自体の返上をしなければいけません。最賃法というものは、国民、労働者が生きる最低の賃金を定めるとともに、その線において格差をなくするというのが、一つの最賃法の目的じゃないですか。先ほどから繰り返しております、現在の段階でいえば、一カ月三万円も最低賃金だ、二万円も最低賃金だ、あるいは一万二千円も最低賃金だ、日当でいえば六百円も最低賃金、千二百円も最低賃金ならば、一体人間として生きる生計費の最低基準をどこに置くのか。いま六百円なら人間として生きていけません。しかも、世帯主として家族を養っていく者の最低賃金が六百円だなんて言われたら、それは人間の生活を保障する最低賃金じゃない。それは馬になり、牛になり、牛小屋におってウーウーうなっていけという最低賃金です、動物的最低貸金ですよ。そういう現実をそのまま認めながら、それを業種別、産業別、職業別で違うのはあたりまえだ、何でも網さえかぶしておけば、最低賃金はこれで制度は完備したのだという考え方でこんなのが出されたとするならば、これは人道問題です、たいへんな問題です。あなたはそう解釈しているのですか。中央最低賃金審議会の勧告をそのように解釈しているのか。最低賃金という形の賃金を食わしていけば、日当が四百円でも五百円でも、これで能事終われり、最低賃金をこういう解釈をしておいでなんですか。それは天下の一大事です。
○岡部(實)政府委員 この勧告自体、最賃法をどう進めていくかということでございまして、最低賃金そのものをなぜきめるのか、なぜそういう法律を必要とするのか。これはやはり、本来賃金は労使が団体交渉等できめるべきであるけれども、それが現実にはなかなかそうまでいかない。そこで低賃金が現実に存在するということでは、労働者の生活の安定に資するゆえんでない。そこでそういう場合には、要するに国が関係者の意見を聞きながら最低賃金という形で、不当に低賃金な条件を引き上げていくべきだ、こういう思想から出ておるものでございますので、基本的に低賃金を押しつけようという思想があって、その上に立ってこういう制度を実現するということでは毛頭ございません。したがいまして、この勧告自体の意味するところも、いかにして具体的にそういう低賃金労働者を保護していこうかというところにあることは間違いございません。 そこで、現実のやり方といたしまして、あまねく労働者に及ぼすべきであるけれども、なかなか現実には一挙にそうはいかない、そこで労働市場の実情に応じて、こういういろいろな形のものをやりながら、それで行く行くは全産業、全労働者にカバーされる、その場合にはある一定の水準に達する最低賃金が、しかも労働者の生活の安定に資するような形で当然設定されることを予想してのことであろうと思いますが、現段階におきますこの具体的な進め方については、ここにございますような、さっき申しましたようなことを答申の中身としておるというふうに受けとめておるわけでございます。
○小林(進)委員 もう時間がきましたからこれで終わることにしますが、最後に——最後といいますか、あなたと議論するのはやめまして、ちょうどきのう社労委員会に、わが社会党の最賃法が提出されて提案の説明があったのであります。私は私の委員会がありましたから出ませんでしたが、あなたはお聞きになったと思う。そのわが党の提案理由の中に「中小企業労働者千三百万人のうち、八〇%は日額七百円以下、月額に換算すると二万円以下という賃金なのであります。」ということを説明しているが、あなたは労働省の基準局長としてこの数字をお認めになるかどうか、これが一点です。それから、わが国のように、産業別、業種別、地域別の賃金格差がはなはだしく、低賃金労働者が多数存在する状態のもとでは、何といっても最低賃金の適用方式は全国一律でなければならない、こういうことも述べている。この社会党的発想をあなたは無理とお考えになるか。このあまりにもはなはだしい賃金の格差、これを是正するためには、やはり全国一律でなければならぬじゃないかというわれわれの考え方——それは可能、不可能は別です。いますぐやれということは不可能だというこの中央審議会の答申の内容はわかりますけれども、一つのアイデアとして、一体これを妥当であるとお認めになるかどうか、これが二点です。 第三点は、三十四年最賃法がしかれてもはや十二年の歳月を経過してまいりましたけれども、まだこういう最賃法に縛られない、いわばその底にいる低賃金労働者というものが三分の二いる、三分の一しか中小企業者の中では最賃法の適用を受けていない。三分の二は野放しのままだという、この数字をあなたはお認めになるかどうか。 以上三点、的確にお答え願いたいと思います。
○岡部(實)政府委員 第一点はちょっとあとで数字を照合いたして御答弁申し上げたいと思います。 第二点は、低賃金労働者の賃金条件を引き上げるために、全国一律の制度を実施することが実効ある措置ではなかろうかという御質問だったと思います。 私どもは、最低賃金が現実にどういう形で生かされていくかということは、それぞれ職種の実態、また労使関係の実態、労働、経済、社会情勢の実態等に関連して、いろいろな問題が含まれておる、それは各国におきましていろいろな形の最低賃金制が設けられて、それぞれ実効をあげつつあるということから見てもわかりますので、現段階におきまして、やはり有効なる措置は、答申にもございますような線で実施をしてまいる。しかし目標といたしまして、将来賃金格差が縮まってくることが、それである程度の水準を保つことが望ましいことでありますから、そういう意味で目標としてはそういう姿をねらっていく、ただ具体的なやり方としては、それぞれの実情に沿うやり方をやっていくべきだ、こういうふうに考えております。 それから最低賃金が現在は、昨年の暮れで約一千万適用されておりまして、全体の雇用労働者は大ざっぱにいって三千五百万といたしますと、そのうちの一千万の人が昨年の十二月で何らかの形の最低賃金額の適用を受けている、こういうふうになっておる次第でございます。 それから賃金の問題については的確な数字がございませんので、後ほど提出さしていただきたいと思います。
○小林(進)委員 これで私の質問を終わりますが、私があえて、社会党代議士会長戸叶里子先生の御要請を受けて、木外務委員会に出てまいりました意のあるところは、いま短時間に私が数点を指摘いたしましたように、わが日本国内の最賃法はかくのごとく問題点があるのであります。三十四年これが法律化して以来これだけの問題がある。その問題の中の一つである業者間協定だけはようやく削除せられて、国際場裏に恥を少なくされたことは事実でありまするけれども、その他の問題はまだ解決されていない。解決せられていないままにいま政府はこれを批准されようとする。私は、批准することによってもはや国際場裏におけるわが日本の最賃法も承認を受けたのであるから能事終われりだ、こういうことで、もはやすべての問題点に将来ともほおかぶりされるのではないか、これを非常におそれるがゆえに、あえて大きい声をあげてこの席で問題を提起したわけであります。批准されることに対しては私個人としては反対でございまするけれども、党としては賛成することになっているそうでありまするからやむを得ず賛意を表しまするけれども、どうかそれをもって、社会党もわが日本の国内の最賃法それ自体をも承認したのであるなどということは絶対にお考えくださらないで、問題は依然として残るのである。その問題点をさらに改正いたしまして、全労働者の期待に沿うよう、さらにひとつ御尽力賜わるよう切に要望いたしまして、私の質問を終わりたいと思うのであります。
○田中委員長 石井一君。
○石井(一)委員 皆さんお疲れだろうからできるだけ簡潔にいたしたいと思いますが、現在日本はILOの常任理事国の一つであり、百二十一の加盟国の中でその十の中の一つの理事国にもなっておるわけでございますけれども、一見拝見いたしますと、たいへん批准しておる条約の数が少ない。フランスで八十一、イタリアでも六十七、イギリスで六十五ということでございますし、インドでも三十やっておるわけでございますけれども、別にILOの批准と、産業経済の、あるいは労働条約の雇用条件の高い低いということが、一概に規定できないとは思いますけれども、やはり一つの国際的な示唆を与えておる、こういうふうに思うのでありますが、国内的に一体どういう手続でこの条約を批准しようというふうな話が労働省と外務省の間で行なわれ、進んでおるのか、外務省はILOの条約加盟ということに対してどういう考え方を持っておるのか、両省から一つ一つお伺いしたいと思います。まず外務省からひとつ……。
○西堀政府委員 わが国は先生ただいま御指摘のとおり、ILO発足以来の加盟国でございまして、過去五十一年間加盟国でございます。また最近では理事国の一つとなりまして、ILOとの協力ということは大いに推進いたしたいと考えております。その一つのメルクマールと申しますか、それはできるだけたくさんの条約を批准するということにあろうかと存じます。しかしながら、いろいろ法制上の問題もありますので、労働省のほうとよく協議をいたしまして、わが国内法の許す限り、また必要があるならばその所要の国内法を新たに制定してでも、なるべく多くの条約を批准してまいりたい、このように考えております。
○岡部(實)政府委員 労働省といたしましては、ILO条約の中身が実態的に私どもの省の所管しているいろいろな法律と関連いたしまして、そこで、全体にいわゆる労働関係法の中身が、もって国際的な基準とするべきものが条約であろうということで、その国際基準をながめながらというのはおかしいですが、それを基準としながら法律の制定改廃等しておりますが、条約の個々の条項について、原則は別として、詳細にわたりまして国内法とぴったり一致しない点が多々ございますために、批准をしようと思っても、全般的に条件はほぼ満たされておっても、個々の条項の詳細にわたって必ずしも十分満たされていないというために批准の手続がなかなかできないということでございまして、たとえば解釈等の問題については、外務省を通じ、事務局ともいろいろ折衝しながら、解釈で何とかなりそうなものはできるだけ批准の運びにしようというような努力はいたしておりますが、現実にはそういう実情でございます。
○石井(一)委員 そういたしますと、いろいろ御説明がございましたけれども、端的に申しますと、労働省が担当しておる労働行政の中で、これは国内法に抵触しないということがわかったら、外務省のほうへこれを批准していただきたいという希望を申し述べると、外務省が正規の条約手続をとられる、かように解釈してよろしゅうございますか。
○西堀政府委員 そのあとさきの問題非常にめんどうでございまして、鶏と卵のようなものでございます。ある条約がILOにおいて採決されます、それにつきましてわが国内法がどうなっているかということで、できるならば批准をいたしたいという方向で進むわけでございますけれども、そのときに、外務省と労働省双方が相互に協議いたしまして、どちらから申し入れる、これはもうできたからやってくれと、労働省のほうから言ってこられるのを別に外務省のほうは拱手傍観して待っているわけでもございませんし、また外務省のほうから労働省のほうに、これは是が非でも何とかしてもらえないかといってプレッシャーをかける、そういったような間柄でもございません。要するに協議をいたしまして、そして最も適切と思われる措置をとっているというのが現状でございます。
○石井(一)委員 双方の御意見に何ら特別な差が出ておるわけでもございませんし、私はそれは十分理解いたしておりますが、これは私のかってな解釈かもわかりませんけれども、どちらかというと労働省のほうは、先ほどの議論もございましたように、国内的ないろいろな問題もありますから、解釈面に非常にナーバスになられまして、加盟ということについて消極的にならざるを得ない。外務省のほうは多少積極的で、国際的地位を高めたいというお気持ちもあろうかと思いますが、やはりそういう発議がなければ、そう積極的に動けない。ほかにもいろいろあろうと思いますが、そういうふうな国内事情が一つにはあって、現在ILOの基準からいうとまだまだ非先進的といいますか後進的な状態に一見見え得る体制が少なくともこの問題においては言えるのではなかろうか、こういうふうに考えております。したがって、そういう面で今後は労働省のほうにおかれましては、多少国内的に問題のある点もあろうかと思いますが、必要があれば、われわれ法律を変えてもかまいません、しかしそこまでしなくてもそれに加盟したからといって、それぞれの国内事情は違うわけですから、必ずしもそれに対する絶対的実効性というものがあるわけでもございませんし、まだたくさん残っておるようでありますから、積極的にもう少し法案を見ていただいて、外務省の協力を得ていただきたい。それから外務省のほうにおかれましても、他の国の条件などもあわせて、もう少しILO条約批准という面での先進的な、日本の国際社会における立場ということも御勘案いただいて、積極的にお進めいただきたい、私はこういうふうに思うわけでございます。 そこで、いろいろ言いたいことがありましたが、あと二、三点にしぼりたいと思います。 先ほど労働省の官房長が戸叶議員か何かの質問に答えられて、現在対象になっておるのは百二十二号条約、雇用政策に対するものだ、こういうふうなお話でございましたけれども、私はこの条約集をささっと見ておりまして、これはしろうと考えで、内部的には問題があろうかと思うのですが、まだこんなものも落ちているのかこんなものも落ちているのかというのが非常にたくさん目についたのであります。そこでまず第一、先ほどからも多少問題になっておりました一号案でございます。これは御承知のように特殊国条約と申しますか、日本に対する特別の規定が設けられております。これは要するに一九一九年に発効した条約のようでございますけれども、条約の名前は御存じのように「工業的企業に於ける労働時間を一日八時間且一週四十八時間に制限する条約」でございますが、現在まあまだそこまでいっておりませんけれども、週四十時間制、五日制ということがだんだんと時代の趨勢としてなってきておるときに、日本は例外条項としてこの九条の(b)に書いてございますけれども、これは大正時代の条文でありますが、「一切の公私の工業的企業又は其の各分科に於ける十五歳以上の者の実際労働時間は、一週五十七時間を超ゆることを得ず。但し、生糸工業に於ては其の制限を一週六十時間と為すことを得。」こういうふうに書いてある。これは裏を返して言いますと、結局日本は非常に労働搾取、ということばはもうはやりませんけれども、非常に労働の激しい国であるために四十八時間の条約であるけれども、例外として日本においては一般には五十七時間をこえたらいけないという例外規定を設け、かついわゆる女工のいろいろの問題が大正時代にございましたけれども、それに対しては六十時間まで許すというふうな条項がきめられておる。しかしもう大正時代ではない。昭和の末期と言ったらおかしいけれども、それから何十年も経過して、日本というのはいまだに一号条約すら批准できない、そういうことに相なると思うのですけれども、われわれの現在の労働条件からしても何からしてもこれはよほどアウト・オブ・デートな状態になっておるにかかわらず、この条約すら批准をしておらないという理由はどういうところにあるのですか。
○岡部(實)政府委員 ただいま御指摘の一号条約は仰せのとおり古典的な条約でございまして、日本の基準法も四十八時間制を基本として採用しておるわけでございます。ただ、三十二条で基本的な時間を週四十八時間としておりますが、その他例外の規定を置いておるわけでございます。その例外の規定が条約の規定にぴったりと合っていないために、その法律解釈上、条約と国内法が——要するに批准をいたします場合には国内法が条約の規定に違反することはできませんものですから、その詳細の規定が整っていないということで、実は大原則は当然満たしておるのですけれどもその詳細なところで批准できない、こういうことになっておるわけでございます。 そこで、先生に異を立てるわけではございませんが、たとえばいまの条約でもイギリス、アメリカ、ドイツ等は必ずしもいま批准はしておらない。たとえばイギリスなどの場合には、労働時間は本来的に労使がきめるべきもので、法律ではあまりいろいろ書くべきではないというような基本の立場があったりいたしまして、それぞれ国のいろいろな立場で、法制上批准できるような立場にあるのとないのとございまして、そういうような実態があるわけです。ただそうは申しましても現実にこの一号条約の中身に大きく抵触するような、いわゆる労働条件が非常に悪いというようなことでは実はない。ただ手続的に必ずしも規定が合わないというようなことでございますので、いま申しましたようなことで、実態が非常におくれて、四十八時間を大幅に上回って許しておるからだということではないわけでございます。
○石井(一)委員 十分納得できない面があるわけですが、要するに日本はチープレーバーの国でダンピングをやり、エコノミックアニマルのように激しく働くんだという評価が外国にあるわけです。これはそれなりにいい面もありますし、悪い面もあるのですけれども、一九一九年に、条約を制定するときに、世界各国全部、一日八時間、週四十八時間にしようじゃないかという協定を結ぼうとしたときに、日本だけは特別に五十七時間なり六十時間を与えようということをここに規定しておるわけでしょう。それをそのまま放置して今日に至るまで批准していないということは、日本はまだ特殊条件国である、五十七時間なり六十時間をも受け入れないという印象すら与えるのじゃないですか。そういうことになるのじゃないですか。これは現実の問題として当然四十八時間から四十時間に移行しようという時代が来ておるのに、こういう条約を残したままでこちらが批准されていないということは、もう少し説明の必要があるのじゃないですか。
○道正政府委員 先生御指摘のように一号条約の九条に、日本に関する例外規定がございます。ただし、この規定は最後のg項に、「本条前各号の規定は、千九百二十二年七月一日迄に之を実施すべし。」ということがございまして、結果的になりますが実施いたしておりません。法律的にはこれは死んでいる規定でございます。したがってこれは条文には出ておりますけれども、死んでる規定になりますので、八時間、四十八時間という原則に戻ってくる。ただしそれは基準法でも規定いたしておりますけれども、先ほど来基準局長から御説明いたしておりますように、例外規定の取り扱いについて食い違いがございますので批准に踏み切れない、こういうことになっております。
○石井(一)委員 それでは、それでよくわかりましたが、要するにこういう例外的な規定が日本国に対して与えられたということは、潜在的に日本に対して激しい労働の国であるということがあり、その後批准してないということはそれを十分に解消し切ってないということにもつながると思うのですよ。現在このたとえば一号が一体なぜ批准できないのですか。そういう理由はあまりないと思うのですが、どうですか。二二年に消えたとしてもそれから後の四十八時間という条項が一九二二年から一九七一年に至るまでの五十年の間に批准できないというのはどういうわけですか。
○岡部(實)政府委員 これは法技術的になってまいるわけでございますが、たとえばこの条約の各項にいろいろなただし書き規定が一応ございます。たとえば「被用者を交替制に依り使用する場合に在りては、三週以下の一期間内に於ける労働時間の平均が一日八時間且一週四十八時間を超えざる限り、或日に於て八時間又或週に於て四十八時間を超えて之を使用することを得。」こういうような規定があるわけです。この規定の書き方と労働基準法の変則四十八時間制を規定した規定とが必ずしも一致しておらないことがありますので、そういうような細部のところに厳重に法解釈いたしますと解釈が違ってくるわけです。したがいまして、厳密に条約を批准いたしますのは、法制局で法令審査をいたしますので、そういうときにそういう規定についてそれぞれの国内法と条約の規定のこまかいところが抵触してまいる個所が出てくる。そのために全体的には批准できない、こういうことに御理解いただきたいと思います。
○石井(一)委員 そういう面でむずかしい面もあろうかと思いますが、私は基本的な問題は、フランスだとかイギリスだとかの数と日本との原則的な大きな差が四十も五十も出ておるのは、何もILOの条約を批准したからといって、法律的にいろいろむずかしい問題もありますけれども、そう実効性が強いものじゃない。いわゆる一つの日本という国のステータスを国際的に示すものである。そういうことから考えますと、私、一号は非常に問題があるというふうに見ましたのと、それからその次にもっともっとありますが、たとえば例として申し上げるのですけれども、百二号の社会保障最低基準条約。これはどうも日本の健康保険のいま問題になっております問題あたりとのからみ合いがあるようですけれども、私が調べたところでは、ILOの場合は病気の前の予防的な給付に対してもある程度の問題が規定されておる。あるいは出産の問題その他もカバーされておるというふうな問題があろうと思うのですけれども、私はそういうこまかい、小さいところを一点、二点とりますと、それは国々全部事情が違うわけですから、どれもこれも入れなくなってしまうと思うのですよ。やはり基本的な法の精神というのは、一番最初にどんとうたってある社会保障がおくれておるか進んでおるか、また基本的に社会保障に対してどういう考え方を日本政府は持っておるか、労働者に対してどういう保護をしておるかということですから、あなたは非常に能吏だからそこまでこまかく見られると思いますけれども、私はILOの条約なんというものはある程度のところは法制局なり外務省との話し合いによって加盟するべきが、それのほうが本筋だと思うのですが、その点が一点、それと問題の指摘だけしておきますから……。 あとは百三号の母性保護条約、これも母性保護の団体その他が盛んにキャンペーンをやっておる問題であります。おそらく労働省側から言われますと問題点の指摘があると思います。国内法に多少の疑義が生まれることは確かでありますけれども、母性保護という大原則からいくと、国内法の整備をするなりあるいは解釈を広義にするなりして、これは先進国日本としてやはりもっと前向きに労働省は取り上げていただきたい。 それからもう一つは、百五号の強制労働廃止条約、これもこの法律をぱらぱらとめくってみますと、奴隷制であるとかなんとかおもしろいことばがたくさんありますが、何か労働省のほうは、公務員に関する争議の問題がひっかかるというふうな考え方をしておられるようであります。しかしそういうマイナス面であるとか、微々たるところだけを気にせずに、奴隷制をそれじゃまだ日本で廃止しないのかということにも、極端にいうとそれが大原則なんですから私はつながると思うのですけれども、私はそういうふうな面でもう少しリベラルな、広義な取りきめ方をしていただきたい。できるだけ時間を簡潔にしよう、建設的にやろうと思っておりますから次々に申し上げましたが、いま申し上げました全般について労働省はどういうふうにお考えになるか、ひとつ簡潔にお答えいただきたい。
○岡部(實)政府委員 先生御指摘の各条約につきましては、それぞれ規定の細部にわたりまして必ずしも十分国内法と合ってないということがございますので、実は批准になっていないという、それが一つの大きな理由でございます。ただ仰せのように、基本原則がいかにも日本において実行されてない。したがって非常におくれた体制にあるのだということの認識を与えることは、これまた実態と非常に違うことでございますので、そこで一つはこの条約を批准するにあたって、国内法との解釈の問題につきましては、実は政府部内で法制局、外務省、関係各省と私どもと一緒にいろいろ相談をするわけで、そのときにいま仰せのように大原則さえ満たしておればということでいけるものかどうか、その辺の一つの技術的な問題が残りますが、私どもはさればといって、そういうような先生御懸念のようなことが、誤解を与えることは本旨ではございません。そこで、いろいろな条約がつくられますILOの会議には、労働省からも専門家を派遣いたしまして、その条約をつくる過程におきまして、たとえばあまり細部にわたって厳密な規定をしないで、ある程度国内の慣行あるいは国内法にまかせるというような条項を差し入れるとかいうようなことをして、条約の批准しやすいようなことをすると同時に、またその審議の過程において日本の実情を十分納得させるというような手だてをあわせて講じておりますが、今後の条約全体の批准の問題につきましては、基本的には仰せのようにできるだけ前向きに取り組んでいく必要があろう、場合によりましてその法律改正を要するものにつきましては、たとえば最賃法なんかにつきましても、実はいろいろないきさつがございましたけれども、ああいう経緯をとって今度は批准することになったわけでございます。したがいまして、方向といたしましては、仰せのようなことを踏まえながら進んでまいりたいと思っております。
○石井(一)委員 私が言いたいことは大体申し上げたつもりでございますけれども、十二年前に起こったことをどうのこうのといって私は突っついておるのじゃありません。これから先、日本の現在の置かれておる国際的な立場、また国内の労働条件の改善されておるこの姿、こういうふうなものを、踏まえて、労働省はもう一歩前へ出た形でILOというものを私はやはり見られるべきだと思います。それから外務省も受け身の立場で、国内法にいろいろ問題があろうからというふうなことで、上がってきた時点でとらまえるというのではなしに、もっと国際的に明るい、しかも国際的立場を高められなければならぬ立場にあるお役所ですから、そういう形でILO条約というものを見ていただきたい、私はこのことを強く要望いたしまして、終わらせていただきます。
○田中委員長 中川嘉美君。
○中川(嘉)委員 この三本の条約について伺う前に、ILO条約ですけれども、第十九条の五項この「条約の場合には、」というととろがありまして、(a)が、「条約は、批准のためにすべての加盟国に送付する。」 伺いたいのはこの(b)のところですが、「各加盟国は、立法又は他の措置のために、」いまこの内容は省略いたしますが、最後のところに、「権限のある機関に提出する」こういうふうなことばが載っているわけです。 それで、いま二点だけ確認しておきたいのですが、総会で採択された条約を加盟国は必ず批准しなければならない義務があるのかどうか、それとも選択にまかされているのかどうか、まずこの一点を伺いたいと思います。
○西堀政府委員 第十九条の五項の(a)でございますが、「条約は、批准のためにすべての加盟国に送付する。」となるほど書いてございますが、これは要するに、批准ができる国については批准をすればよろしい、批准のできない国はできない、とにかく、加盟国に送付するということの規定でございます。 先生のお尋ねの(b)でございますけれども、これは、その送付を受けた「各加盟国は、立法又は他の措置のために、」「権限のある機関に提出することを約束する。」とあって、ここで「権限のある機関」といいますのは、その条約の内容たる事項につきまして立法をする権限を有する機関、すなわち一般的に国会をさすものと国際的に解されておりまして、わが国におきましても、この規定に従いまして、ILO総会において採択されましたあらゆる条約及び勧告——この勧告の規定は、このあとのほうに同じような規定がございますけれども、これを国会に提出申し上げているわけでございます。したがいまして、先生御質問の、批准する義務があるかどうかという点は、各加盟国の判断にまかされているわけでございまして、義務があるわけではございません。
○中川(嘉)委員 (b)に関連していま少し御説明がありましたけれども、そうしますと、政府が権限ある機関、つまり立法機関ですね、に提出するという行為ですが、これは単に国会に出せばいいということなのか、それとも、批准を前提とした一つの報告義務なのか、この点をはっきりしていただきたいと思います。
○西堀政府委員 その送付を受けました各加盟国の政府は、この規定にありますとおり「立法又は他の措置のために、」国会に「提出することを約束する。」こういうことでございまして、要するに、条約につきまして申しますならば、条約の新たな成立をその権限のある機関に報告をして国内立法政策の参考に供するということがその目的でございます。
○中川(嘉)委員 そうしますと、あくまでも、参考に供するというふうにいまおっしゃられたと理解してよろしいわけですね。
○西堀政府委員 そのとおりでございます。
○中川(嘉)委員 それでは、最低賃金決定制度の創設に関する条約、二十六号のほうですが、この説明書の「条約の成立経緯」この二行目に「この条約は、一九三〇年六月十四日に効力を生じ、一九七一年一月三十一日までにこの条約を批准した国は、次の七十八箇国である。」「七十八箇国」というふうに出ておりますが、これにはどうもアメリカ及びソ連が入っていないわけですね。どうしてそういうふうに入っていないかは、それぞれ国情も違うわけですから、大体想像はつくわけですが、この際その理由をはっきりしていただきたいと思います。
○西堀政府委員 確かに先生御指摘のとおり、アメリカ、ソ連両国ともこの条約を批准いたしておりません。 アメリカについて申しますならば、アメリカの最低賃金制度は連邦法に基づきますものと州法に基づきますものとに分かれておりますけれども、前者、すなわち連邦法に基づきますものは、いわゆる州際産業といいますか、二州以上にまたがります産業にのみ適用されます。後者、すなわち州法に基づくものは、当該州によってその内容が種々に分かれているといった特殊な状況にあるわけでございます。 このように国内の最賃制度が一般に共通の基準に従って行なわれておりませんので、一州でもおくれているところがあれば連邦全体としてILO条約の水準を満たしていないということになって批准に踏み切れない、こういわれておるわけでございます。 一方、ソ連邦につきましては、ソ連邦の最低賃金制度は全労働者を対象とする最低賃金に関する最高会議幹部会令というのによりまして施行されておりまして、この幹部会令はこの第二十六号条約の内容に照らしまして原則として問題ないわけでございますが、法律技術的な問題が若干ありすして、検討中であるということでございます。 これは余談になりますけれども、ソ連におきましても、わが国と同じように非常に厳重なと申しますか、綿密な法制的な検討をしているようでございまして、そういうた難点があるようでございます。その問題点と申しますのは、たとえば最低賃金の監督を政府機関が行なうという条約の規定になっておるわけでございますけれども、ソ連では労働組合がその監督を行なうことになっておりますので、そういった点が、厳密にいいますと条約に適合しない。われわれの法制局の審議におけるような非常に綿密な態度をソ連もとっているということをわれわれ発見いたしまして、心強いといいますか、また非常におもしろいと申しますか、非常に興味のあった点なのでございます。 〔委員長退席、青木委員長代理着席〕
○中川(嘉)委員 それでは関連して、いまソ連、アメリカ等の御説明があったわけですが、このILO加盟国は百二十一カ国ですね。にもかかわらず、いま申し上げたこの件に関しては七十八カ国ということです。だからあと四十カ国近くのいわゆる未批准国というものがあるわけですけれども、これはどうして入らなかったのか、特別の理由があるかどうか。この辺は、四十カ国ですからどういう御答弁があるかわかりませんが、この辺どうでしょうか。
○西堀政府委員 恐縮でございますが、何ぶんにもよそのことでございますし、それぞれの国についてすべてそれをチェックしておるわけでもございませんので、申しわけございませんけれども、われわれとしてその理由をつまびらかにいたしておりません。
○中川(嘉)委員 そうしますと、きょういただいたデータの三枚目ですが、これに「金額階級別最低賃金決定状況」というのがあります。これを見ますと、昭和四十五年十二月三十一日現在、こういうことで、ずっとランキングがあるわけですけれども、十二月三十一日現在というその時点における表なんですね。われわれが希望するのは過去数年来の最賃の動向というものをむしろ知りたいわけです。このランキングごとのですね。そういうわけで、もしそういった状況について御説明いただければ非常にありがたいし、それでなければ、あしたまた委員会があると聞いておりますが、あしたまでにそういった関係のデータを出していただけるかどうか。この三枚とも非常に参考にはなります。しかしながら、私が申し上げたようにむしろこの動向そのものですね、ずっと年次別の。そのほうが非常に大事じゃないかという気がするのですが、この辺についてはいかがでしょうか。
○藤繩政府委員 手元にあります資料で御報告申し上げますと、昭和四十年の最低賃金の日額中位数でございますが、四百二十七円、これが四十一年四百六十八円、四十二年六百五円、四十三年六百六十四円、四十四年八百二十八円、四十五年度に決定しましたものの中位数が千五円、かようになっておりまして、四十年を一〇〇といたしまして、指数であらわしますと、四十一年が一〇九・六、四十二年が一四一・七、四十三年が一五五・五、四十四年が一九三・九、四十五年が二三五・四、かようになっております。ただいまのは中位数でございまして、それを金額、階級別に分けましたのが先ほどの資料であります。
○中川(嘉)委員 いまのデータがもしあとでいただければと思います。
○藤繩政府委員 けっこうでございます。あとでお届けいたします。
○中川(嘉)委員 それから引き続いて伺いますが、この二十六号の第一条の二項でありますが、「この条約の適用上、「産業」とは、製造業、商業等をいう。」こうなっておりますが、こういった第二項の適用を受けない労働者であるとか、あるいは勤労者の最低賃金の保障というものは、はたしてどのように行なわれるのか、こういった疑問が出てくると思います。この点はどうでしょう。
○岡部(實)政府委員 この二十六号条約がこの適用の対象をいま御指摘のように「製造業、商業等」というて、等でどこまでが入るか、この点がいろいろ問題になろうかと思いますが、百三十一号のほうは実はそういう特別の産業の規定はございませんで、これはこの第一条のところにございますように、むしろ対象でとらえまして、「雇用条件に照らし対象とすることが適当である賃金労働者のすべての集団について適用される」ということになっておりまして、したがいまして、私どもの受けとめ方は、全般的に最低賃金制を必要とする低賃金労働者に適用されるような最低賃金制、こういうふうに受けとめておるわけでございます。
○中川(嘉)委員 そうしますと、この「等」という表現は非常にあいまいな感じがするわけですね。どこからどこまでかさっぱりわからない、そういうわけで、こういう表現自体確かに実際当事者はながめてみて心配になる場合が出てくるわけです。そういったところをもう少し具体的に書き直せないかという問題も出てくると思います。要するに、いま御答弁があったようにすべてというふうに解釈をして間違いありませんね。
○岡部(實)政府委員 現実には農業に関しましては別の条約がございますので、農業はそのほうでカバーされる。したがいまして、それ以外の商業及び製造業というところでは、ほぼそれを除く一般の製造業及び商業以外の産業も含まれるというふうに、広く解すべきものと思います。 〔青木委員長代理退席、委員長着席〕
○中川(嘉)委員 次に三条の二項でありますが、いつも条約が出てきますと、どこか一カ所ぐらい文字といいますか、ことばの問題がひっかかる。あまりこだわるつもりはないのですが、この二項を見てみますと、ちょっと途中から読みますが、「最低賃金決定制度の運用に参与する。」ずっときまして、「平等の条件によって参与する」、この「参与」という字ですね。これは私は読んでみて「参加する。」でいいのではないか、こういうふうに思うのですが、どうしてこういう用語を使われたのか。あるいは翻訳上の都合なのか。よくこういうのが一回ぐらい必ず出てくるのですが、これはどうでしょう、何か理由があるのですか。
○山崎政府委員 仰せのとおり参加と日本語をしましたほうがわかりやすいかと私、思いますが、実は原文の関係で、ここのところはアソシエートということばが使われております。一方別のところで、百三十一号にパーティシペーションということばがありまして、これはやはり「参加」と訳しております。そこでパーティシペーションのほうは「参加」と訳し、アソシエートのほうは「参与」と訳しておるわけでございます。内容的にどこまで違うのかということになりますと、実体的にはそれほど変わってはいないと思いますが、感じとしましては、アソシエートのほうは若干弱いような感じがいたします。
○中川(嘉)委員 そうしますと、要するにパーティシペーションを「参加」とやってしまった関係で、同じことばを使えないというようなふうに感ずるわけですが、私の、初めそっちのほうだけ読んだ感じとしては、当然「参加」でよいのではないかというふうに受け取れたものですから、一問だけお聞きしたわけです。 次に百三十一ですが、開発途上国のほうですね。こっちに入りたいと思いますが、けさほど戸叶委員等からもいろいろ御質問があって、開発途上にある国ということについては、もうすでにかなりの議論があったように私は思いますけれども、これは何か開発途上にある国からの特別な要請があって、この条約が作成されたのかという問題が一つお聞きしたいわけです。開発途上にある国のことを思えば、特に要請がなければ、こんなような表現はむしろ途上国そのものを刺激するのではないかという気がするのですが、この点。この二点について先に伺いたいと思います。最初に、この作成に関してですが、何か特別の要請があったのですか。
○西堀政府委員 この条約の作成過程におきまして、開発途上国から特に要請があったとはわれわれ承知いたしておりません。ただ先生御承知のように戦後ILOが、そのほかの国際機関と同じように多数の開発途上国が参加いたしましたし、またここ十四、五年のいわゆる南北問題という観点から、何もILO条約に限りませず、南北問題の要素というものが、あらゆる国際条約ないし国際機関の大きな重要な要素になってきております関係上、これが入れられるということになったものと承知いたしております。
○中川(嘉)委員 時間もある程度限られておりますから、次に移りますけれども、百三十一号のこの条約ですが、これは何カ国ぐらいの批准が予定されておるか、これが一つ。それからこの条約は二十六号条約を補足するものであるというふうに理解するわけですね。であるならば二十六のほうを批准していたところの七十八カ国が当然入ると見てよいか。これは第二点です。それから次に、二十六号条約で批准をしながら、百三十一号に入らないという態度をとっている国があるかどうか。もしあればその理由はどういう理由か。時間の関係で三つ合わせて伺ったわけです。
○西堀政府委員 これは先ほど申し上げましたように二十六号の条約を補足する条約でございますので、二十六号条約の批准国でありまして百三十一号条約を批准しない方針をとっているという国はほとんどないものと思われます。 御参考までに主要国政府の事務当局の百三十一号条約批准についての考え方を申し上げますと、イギリスは第二十六号条約を批准いたしておりまして、百三十一号についても雇用省として批准する方向で関係省と折衝するという意向でございます。それからフランスも第二十六号条約を批准いたしておりまして、百三十一号につきましてもフランスの現行最低賃金制はこれを充足しているということでございまして、批准を現在検討中だそうでございます。ただインドは二十六号条約は批准済みでございますけれども、百三十一号条約につきましては国内の最低賃金制はこれを満たしていないとしておりまして、批准する可能性はいまのところございません。 これで、どのくらいの数が批准されるかという御質問に対しましては、おそらくいま申しましたインドのようなきわめて少ない例外を除きまして、それ以外の国はおそらく批准に至るであろうと考えております。
○中川(嘉)委員 それではいまの御答弁を信頼して次のほうに移りますが、この百三十一号条約の第二条一項「最低賃金は、法的効力を有するものとし、引き下げることができない。また、最低賃金の適用を怠った場合には、関係者は、相当な刑罰その他の制裁を受ける。」それから二十六号のほうですけれども、四条の一項に——読んでると時間がかかりますので、場所だけ先に申しますと、一項の終わりのほうですが「監督及び制裁の制度によって必要な措置をとる。」こういうふうになっていますね。いま刑のほう及び制裁のほうですけれども、この場合の制裁が民事的なものかあるいは刑事的なものかちょっとわからないわけですが、これはどっちですか、まずそれを答えていただきたい。
○岡部(實)政府委員 これ自体ではその点が明確に指摘されておりませんが、この条約の趣旨が、ここできめられる、想定される最低賃金というものが一種の法的な効力を持つものということを想定いたしておるといたしますならば、それに違反して当事者が引き下げるということについては、民事上の問題ばかりでなく、刑事的にも責任が生ずるのではないか、こういうふうに考えられるわけでございます。
○中川(嘉)委員 そうしますと、それではここでもって締約国がこの二つの条約、二十六と百三十一の両方に入っている場合に、どちらの条約がはたして優先するのか、すなわち前法後法の関係で、あとの百三十一号のほうが優先するということになりますと、刑罰のほうになりますね。「相当な刑罰その他の制裁を」というその刑罰というのがかかってくるわけですが、こういった百三十一号の刑罰によって規制されるのか、当然こういう疑問が生じてくるのですが、その点はどうでしょうか。
○岡部(實)政府委員 条約の前文等からいいまして、一般的には百三十一号が二十六号を補完するということでございますので、この両方の規定が相互に矛盾するものであってはならないことになろうかと思います。したがいまして、両方の条約を批准した場合にはどちらということよりも、これを相互に矛盾なく国内法で適用をしていくことになろうかと思います。決して百三十一号が二十六号条約の趣旨を全面的に排除しているものと実は解することはできないのではなかろうかと思っておりますので、その両方が矛盾しないように配慮されていくべきであろう、こういうふうに解しております。
○中川(嘉)委員 矛盾しないようにという御答弁ですが、私はどっちが優先するかということがはっきりとこの際出てくるのではないかという判断をしたわけで、そういう御質問をしたわけですけれども、それではいまこれに関連してわが国においては国内法でどのような刑罰が制定されておるか、この点をちょっと関連して伺っておきます。
○藤繩政府委員 まずわが国の最低賃金法の第五条では最低賃金の効力を規定いたしておりまして、「使用者は、最低賃金の適用を受ける労働者に対し、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならない。」とございまして、罰則に持っていきまして、第四十四条でございますが、「第五条第一項の規定に違反した者は、一万円以下の罰金に処する。」とございますので、刑事罰をもってこれに当てておるのでございます。なお第五条の第二項では「最低賃金の適用を受ける労働者と使用者との間の労働契約で最低賃金額に達しない賃金を定めるものは、その部分については無効とする。この場合において、無効となった部分は、最低賃金と同様の定をしたものとみなす。」という規定がございまして、いわゆる民事的効力でございます。したがいまして、民事的にも刑事的にもさような効力が担保されておるわけでございます。 なお、監督面につきましても、第三十七条及び三十八条におきまして、労働基準監督官のこの法律施行に関する権限が明らかにされておるわけでございます。
○中川(嘉)委員 それでは先ほどの百三十一号の賃金のほうですね。さっきちょっと読みましたけれども、これはこれから行きます百三十一号のほうの二条一項ですね。「引き下げることができない。」とさつきのところで読み上げたわけですが、この引き下げることができないということを二十六号のほうの三条の二項の三号、これによりますと、「個人的契約により、又は権限のある機関の一般的若しくは個別的許可を受ける場合を除くほか」という例外規定みたいなものがここにあるわけです。これを見ますと、こういった例外規定が認められておるわけですが、この場合もいまと同じようなことが考えられると思うのですね。両条約に入った締約国ははたしてどっちを優先するだろうか。先ほど御答弁あったように、矛盾のないようにということかどうか、私はどちらかが当然優先されるべきだと思うのですけれども、あわせてひとつ御答弁をいただきたいと思います。
○藤繩政府委員 御指摘のとおりになっておりますので、第二十六号条約は個人的契約によって引き下げることができませんが、「権限のある機関の一般的若しくは個別的許可を受ける場合」には、労働協約によって引き下げることがあり得るわけでございますが、百三十一号を批准した暁におきましては、労働協約をもってしても最低賃金は引き下げることができない、かようになるわけでございます。いずれにしましても、わが国の場合は労働協約をもってしても引き下げることができない、法令規定が労働協約に優先いたしますので、問題はないということでございます。
○中川(嘉)委員 そうしますと、百三十一号のほうが優先というお答えが出てきたわけですけれども、そうすると、さっきの矛盾のないようにという御答弁がどうも気になってしようがないのですが、これはどうですか。百三十一号の「刑罰その他の制裁を受ける。」というほうが優先するのではないでしょうか。
○岡部(實)政府委員 どうも私の矛盾ないようにということがちょっと不正確でございまして、争ういう制裁その他の規定につきまして、やはり強いというか、その効力の強いもののほうがやはり優先するというふうに、両方に入った場合には、そっちのオブリゲーションを受けるということにならざるを得ない、締約国といたしましては、そういうことになろうかと思います。
○中川(嘉)委員 それでは、、けさほどもアメリカが七〇年度の分担金を未納している問題については当委員会でもいろいろ論議されたわけでありますけれども、新聞報道によりますと、分担金の支払いをめぐって米国とILOが冷たい対立関係を続けている、このように出ております。アメリカとILOが冷たい対立関係、はたしてILOとしてはアメリカ側に対してどういう意思表示をしたかという問題が出てくるわけですが、今日まで何か外務省としてお聞きになっておられますか。
○西堀政府委員 けさほど申し上げましたように、昨年の十月ですか、不払いをアメリカの議会がきめましてから、ILOとしてはその仕事の運営に非常に支障を来たしましたので、ILOから再三にわたってアメリカの行政府に対しまして、その不払いを何とかやめて、一刻も早く支払ってもらいたいという要請をしておるということはわれわれ聞いておりますが、それ以上のことはちょっとわかりかねます。
○中川(嘉)委員 けさほどからの議論で、要するに、払った、払わないという単なる事実関係だけで過ぎたような気がするわけですけれども、これを見ますと、予定した会議、セミナーを中止したのですよ。それから新規職員の採用を中止、臨時雇い職員の契約更新の停止あるいは職員出張旅費、これの七五%削減、さらには現職員が給料の五%を預託して万一に備える、こういった非常体制をしいた。ILO当局の計算だと、会議とセミナーの中止だけで何か七十万ドルの節約にしかならない。アメリカが払ってないのは三百七十万ドルですから、これはえらい開きだと私はこれを読みながら思ったわけですけれども、急場しのぎはこれでできても、米国が本気で腹を固めなければ事業の縮小に追い込まれることは必至である。 そこで伺いたいことは、日本政府として、こういったILO自体の未納、渋滞を打開するために分担金以外に何か特別の財政的な援助をするという意思表示があるかどうか。大臣がおられないで非常に残念ですけれども、外務省として何かそういったことについて今日まで検討されたことはありますか。
○西堀政府委員 けさほども申し上げましたとおりアメリカの行政府といたしましては、これは非常に遺憾なことだということをたびたび表明いたしておりますし、それから一九七二年の予算にはその年のILO分担金はもちろんのこと、この不払いになりましたところの一九七〇年の後半期の分担金もこれを追加をいたして要請をし、これを獲得するつもりであるということを言明いたしておりますので、これはもちろんアメリカの議会のことでございますからわかりませんけれども、われわれといたしましてはアメリカ行政府の言うこと、あるいはその希望というものをそのまますなおに受け取りまして、それ以外に、ILO加盟国がこのアメリカの不払いになった点をカバーするというようなことは考えなくても、いずれはアメリカが行政府のその希望どおり払うということに相なろうかと存じまして、その点はああいった大国でございますから、一時のかっとなったことでこういったことにはなったんでございましょうけれども、おそかれ早かれアメリカの手でこの不払い分を支払うということになるものと私は確信をいたしておりますので、日本政府としてあと払い分をカバーするというようなことを考えたことは毛頭ございません。
○中川(嘉)委員 アメリカが役職についた人が気に食わないということで分担金を未納にするということは、国際機関の中で私は許されぬのじゃないか。いまいろいろ御答弁があったわけですけれども、アメリカ上院が七〇年度のILO分担金の半分、三百七十万ドルの支払いの停止をきめたのが八月の下旬、それから続いて十月上旬には下院がこの上院の決定をそのまま承認した。これは向こうの議会に関係してのことでもあって、希望的にという御答弁もあったようですけれども、私は今後の見通しとしてちょっと伺いたいのですけれども、スエズの紛争あるいはコンゴの紛争、サイプラスの紛争のときに、これは国連軍が派遣された。そのときにはソ連はそれに対して反対したわけですね。これはもう御承知のとおりであります。したがって、それに要した費用の問題で分担をソ連が拒否した。その際には日本とアメリカが大いに非難をした先例があるわけです。今回も役職についたそういう人に対する感情的な問題と私は理解しておるわけですけれども、そういったことで分担金を払わないということは、先ほど申し上げた先例から見て、当然これは非難されていかなければいかぬと思います。あるいは解決を希望するものでありますということの御答弁もあったようですけれども、やはり日本側としては当然あくまでもその反省を求めていかなければならないし、当然日本として非難すべき行為じゃないかと、私は先例から見て伺うわけです。これから先は大臣に伺いたかったのですけれども、この点について、どうですか、希望的に解決する確信があるという消極的なものじゃなくて、当然そのとった行為に対して、日本側としても堂々とした意思表示といいますか、非難を一回はしていかなければならぬのじゃないか、こういう考えからいま私伺っているわけですが、この点どうですか。
○西堀政府委員 私けさほど申し上げた点が強く印象をお与えしたかもしれませんけれども、要するに、ソ連のマスタペンコ事務局長補の任命、これはもう全くちょっとした火つけ役になったわけでございまして、かねがねアメリカの労働界がILOに対してあきたらないと申しますか、若干完全な支持をするという体制になかったのが、たまたまこの事務局長補の人が導火線になっただけでございまして、したがいまして、非常に感情的なものといえばいえるわけでございますが、同時に、アメリカの行政府としては非常に遺憾であるということは、これは重々認めておりますし、その点先生がおあげになりましたところの、ソ連がコンゴ紛争、サイプラス、それからスエズ、これに対する国連軍の分担金といいますか、拠出金、それを支払っていないというのとは、若干状況が違うと私は考えております。と申しますのは、ソ連の場合におきましては、これはもう国会とかそういうのじゃございませんで、国策といたしましてコンゴ、スエズ並びにサイプラスの国連軍に対するところの拠出金、これを払わないということは、これは明確な意思表示でございまして、今後ともおそらく払うことにならないだろうと思います。したがいまして、国連におきましてもこの点はずいぶん非難、攻撃の的になったわけでありますけれども、このILOに対しますところのアメリカの分担金不払いというものは、全く一時的なものであろう。これは決して私の非常に希望的観測というのではなしに、とにかく米国の行政府自体が非常に遺憾の意を表しておりますし、これは議会の一時の気まぐれ的なと言っちゃミーニーに非常におこられるかもしれませんけれども、気まぐれ的な行為ということでございますので、これは国連軍の場合とはだいぶ状況が違います。われわれとしてはやはりアメリカに対して非難攻撃というよりは、ひとつ行政府よしっかりやれといった鼓舞激励のほうに力点を置きたいといまでも考えております。
○中川(嘉)委員 これはそっくり比べられたんじゃ困るんです。先例としてそういうものがあったということを私は申し上げているわけです。ただソ連が払わなかったというようにおっしゃったのですが、実はソ連は別の名目で払っているらしいんですね。そのように私は聞いたので、またもしそれが事実であればどういう名目であったかというような問題にも発展するとは思います。 いずれにしても、気まぐれというか、それよりも実はもう大国意識的なものがあるんじゃないかという気がいたします。たとえば国連に中共が入るなら辞退するとか、そういうようなこともアメリカの議員が言っていたということを耳にしておりますけれども、そういう大国的な意識というものは−私は、こういうときにきちっと言っておくべきことは言っておかなければいけないと思ったので、こういった、ちょっとしつこいような質問を続けたわけです。 この百三十一に関連しまして、あと二つだけ簡単なのをお聞きしておきますが、ILO事務局では何名くらいの日本人が入っておるか。要職についている人がどのくらいおられるか、これをちょっと参考までに伺いたいと思います。
○西堀政府委員 これは先生御承知だと思いますけれども、昨年労働省の安全衛生局長をやられましたところの大野さん、これが事務局長補といたしまして入られまして、それ以外にも邦人の事務局員は約十名……。
○中川(嘉)委員 次に、今度のILO総会、これは五十六総会だと思いますが、いつごろ行なわれ、またどういう条約及び勧告が討議され、検討されるか、この辺わかっておられれば教えていただきたいと思います。
○大坪説明員 私どものほうに最終的な通達はまだ参っておりませんが、六月二日に始まりまして六月の二十四日に終わる予定でございます。 それから議題は主要なものが三つほどございます。一つは、世界雇用計画に関する議題でございます。それから一つは、名称はちょっと正確を欠くかもわかりませんが、企業内における労働者代表の地位に関する問題という議題でございます。それからいま一つはベンゼンから生ずる危害に対する保護という問題でございます。 これは先生すでに御承知のとおり、まず討議を一般的にいたしまして、その後にこれを条約に取り上げるか、勧告に取り上げるかという議論に移るわけでございまして、世界雇用計画は一般討議でございます。それから企業における労働者代表に与えられる保護と便益という議題、これが正確な議題でございますが、これは昨年に引き続いて本年が二回目の討議でございます。それから三つ目の議題は、ベンゼンから生ずる危害に対する保護、これは第一回目の討議になる予定でございます。
○中川(嘉)委員 それでは最後に第百十六号、これは二、三の質問でとどめますが、一番最初のページ「国際労働機関の総会は、」というところから始まりまして、四行目の「その第三十二回までの会期において採択した諸条約」というところがありますが、この諸条約は三十二総会までに採択をしたすべての条約ということを意味するのか、それとも除外されるものがあるのか。もしすべてということであれば、すべての条約をと、ここにすべてを入れたほうが間違いないと思うのですが、表現の問題にまたなりますが、その辺どうでしょうか。諸条約とした点ですね。すべて入りますか。
○山崎政府委員 これはこの以前の条約、もちろんすべてが原則でございますが、一つだけ例外として、八十号条約には、ここで訂正されるような最終条項が入っておりませんので、それは除きますが、この八十号条約を除きましてはすべてこの条約にはこの種の最終条項がありますので、これがこの百十六号条約によって自動的に改正されるわけでございます。
○中川(嘉)委員 それではこの条約の当事国となったものはいわゆる読みかえでもって処理されるわけですけれども、この条約に入らない加盟国は依然五年とか十年とかそういうような規定が適用されるのじゃないかと思います。当事国となったものとならないものとの間にそういった何らかの差異が生じるという場合ですけれども、その場合はどういうふうに処理されますか。
○山崎政府委員 その点は確かにちょっとおかしなことになるわけでございまして、実際のILOの理事会及び総会におけるプラクティスはこの条約によって改正されたように行なわれておるわけです。この条約自体は発効しておるわけでございます。ただこれに批准していない日本も、すでにこの条約がつくられてからだいぶたっておるわけでありますから、いままでも日本はその理事会に出席しておるわけでございますが、実際のプラクティスとしては改正されたごとく扱われておる。ただ法律的に論ずればやはり五年ないし十年ごとに定期的なレビューの問題なんかも提起し得るわけでございます。その点こういう国際条約におきまして批准しない国と批准する国がある場合にそごが生ずるという問題がございます。実際問題としてはその問題について特に問題を提起した国はないと承知しております。
○中川(嘉)委員 時間ももう来たものですから最後にもう一つだけ伺いますが、きょうは当委員会において各委員からもいろいろな御意見があったわけで、少なくとも理事国であり、しかも先進国であるというわが国がより多くのILO条約を批准するということは、わが国の立場をよりよくするものと私は考えます。多くのILO条約を批准することによって、とかくわが国が低賃金及び不当に長い労働時間、こういったことが依然として企業において見られる、またチープレーバーの疑いを今日もなお払拭できない、こういうような事態を考えるならば、多くの条約に入るということがこれらの疑いをはね返すことになるのじゃないか、私はこのように思いますが、この点、将来の見通しといいますか、姿勢ですね、最後に伺いまして終わりたいと思います。
○岡部(實)政府委員 直接には労働省の関係の法律等が関係いたしますので私からお答え申し上げますが、御指摘のようにかってわが国が例の八十七号条約の問題をめぐって非常に大きな国内的国際的な問題をかかえたことがございます。いろいろな経緯を経まして条約を批准いたしましたことは御承知のとおりでございますが、その後ILOの中におきまする日本の評価というものもその一事で非常に変わったわけです。というのは、従来必ずしも十分な評価を制けておらなかったわけですが、まあ八十七号条約の批准を契機といたしまして、非常に国際的な機関の中におきまする日本の評価も変わったというような一事が示すごとく、ILO条約についていろいろな技術的な難点もありましょうけれども、できるだけ批准をしていくということが、おっしゃったように国際上におきましてILOあるいは条約批准を通じてやはり日本の国際的地位を高からしめる一助に資することは御承知のとおりでございますので、今後条約の作成される過程におきましても、十分私どもとしては、その審議に参加する姿勢についても、これを将来批准するというような方向と結びつけながら、その条約作成の過程においてもいろいろ議論をしながら進めていくというようなことを通じて、前向きに取り組んでまいりたいと思っております。
○中川(嘉)委員 以上で終わります。
○田中委員長 松本善明君。
○松本(善)委員 先ほど来ILO条約の批准を促進すべきであるという意見が同僚の各委員から述べられたわけでありますが、私はILO条約については、これですべてが解決するというようには考えておりませんけれども、しかし、この批准をやはりやっていく必要があると思います。先ほど来の答弁を聞いておりますと、国内法との抵触のないように批准をするということも労働省の官房長は言われるし、積極的にできるだけ批准をしていくという御答弁もいま基準局長から言われた。全体としては、できるだけ批准をしていこうという話のようでありましたけれども、このことを解決をしていくのには、やはり批准をして、国内法が矛盾をしていれば国内法を改正していくのだ、そういうかまえの考え方を持っていきませんと、これは矛盾なく解決をすることができないのじゃないか。いまの国内法と抵触をするからこれは批准をしないでいくのだというかまえでいくならば、これはいつまでたっても批准はできない。ILOで採択された場合は、国内法を改正しても。できるだけ批准をしていく、こういう方向をとらなければならないと思うのです。その点についてはどうかという点を確かめておきたいと思います。
○岡部(實)政府委員 国際労働条約につきましては、この審議の過程におきまして、いろいろ国内の社会経済情勢も違う各国の代表が集まりまして、いろいろ議論の末採択される条約でございます。したがいまして、全般的には国際的な水準を示すということは間違いありませんけれども、冬条項のでき上がる過程を見ましたときに、その各国のいろいろの代表の意見を折衷するような場合もありますし、解釈上必ずしも明確でないようなものもあったりいたしますので、いままで、国内法を矛盾なく一切条約に近づけるということ自体について、技術的な困難性もいろいろあるということを申し上げておったわけです。しかし、基本的には仰せのように国際水準を示すものでございますので、私どもが国内の立法を取り扱う場合には、一つの大きな目標として当然考えていかなければならない。ただ具体的に個々の条項になった場合にいろいろ問題がございますので、批准を、全体的にできても、極端な場合に一カ条ちょっと合わないところがあるとできないというところがあったりしますもので、その辺をどう調整するか等、技術的な困難な問題が含まれるということでございます。精神としてはできるだけ条約の批准ができる方向に進めていくということは当然なことだろうと思います。
○松本(善)委員 そこで聞いておきたいのは、ILOに派遣をされている政府代表が賛成をした条約で、批准をしていないものがあるかどうか。
○西堀政府委員 何ぶんにもたくさんの条約がございますし、過去のレコードを全部調べなければなりませんので、あしたまで御猶予いただければわかるのではないかと思います。
○松本(善)委員 それではあしたまでに準備をしてもらいたいと思いますが、こういう問題については、やはり国会であらゆる観点から論じられるのですから、当然事務当局で準備をさるべきであろうというふうに思うのです。この点は苦言として一言だけ言っておきます。 それから、先ほど国際労働機関憲章十九条の問題をお聞きしましたけれども、この点について、あした大臣からまとめて御答弁をいただきたいというふうに思うのですが、いまもう少し詰めて意見を聞いておきたいと思います。 この十九条の五項の(b)は、先ほどは国連局長は立法政策の参考のためにというふうに答えられましたが、これは「権限のある機関に提出する」ということなんですね。機関といえばやはり国会、衆議院か参議院か、議員ではないですね。そこに提出をするので、報告ではないのですね。これには報告書と書いて、まことに私は、たいへん奇怪な文章だというふうに思うのです。先ほど大臣にお聞きした、提出者もあて先もないという文章ですね。これはやはり機関に提出をするということをはっきりさせることが必要なんじゃないかと思う。先ほど十分時間がありませんで、国連局長の意見を聞けませんでしたけれども、この点の意見を聞きたいと思います。
○西堀政府委員 先ほど私もよく知らなかったものですから、明確にお答えできなかった次第でございまして、ただ想像によって、おそらくそうなっているであろうと申し上げたのでございますが、調べてみましたらやはり想像のとおりでございまして、内閣総理大臣から衆議院議長にあてまして、——この諸先生に配付申し上げております活版刷りのものにカバーリングノートがつきまして、このカバーリングノートには、内閣総理大臣から衆議院議長殿ということで「国際労働機関憲章第十九条の規定によって一九七〇年の国際労働機関第五十四回総会において採択された条約及び勧告に関する報告書を別冊のとおり提出する。」これがついて、これを御提出申し上げたわけであります。したがいまして、この本信は衆議院の事務局に保管してあると存じます。
○松本(善)委員 この条約ができましたときには、(d)号、(e)号を見ますと、同意を得たときと同意を得なかった場合の区別をつけて(d)号と(e)号がきめられてある。これはやはり同意を得られるようにということを考えて、全体の趣旨から見ますならば、同意を、わが国でいえば国会の承認を得て批准をしてほしい、批准が得られなかった場合には、その障害について報告をしてもらいたい、こういう趣旨のものだというふうに理解はできるわけですか。これはそうではないのですか。この提出というのは、全くそういうことと無関係に、ただ紙をほうり込んでおくというだけでいいのかどうかということです。
○西堀政府委員 これはこの第十九条五項(b)の読み方でございますけれども、ここに書いてございますとおり「各加盟国は立法又は他の措置のために」国会に提出することを約束しているわけでございます。したがいまして、先ほど申し上げましたように、要するに政府として約束いたしましたことは、ある総会において採択された条約がございましたならば、その条約の新たな成立を権限のある機関に報告をいたしまして、国内諸政策の参考に供するということが目的でございます。これは何もわれわれ日本政府だけの解釈ではございませんで、ここに実はILOの事務局から来ておりますところのメモランダムもございまして、これは、権限ある当局へ条約を提出する義務に関するメモランダムというのがございます。それの五ページでございますけれども、ある委員会がございまして、そこでこの解釈を確定したようでございますが、ちょっと読み上げてみますと、「この委員会は次のことを確認することを適当と考える。すなわち提出と批准ということの間には明確な区別がなされなければならぬ。前者、すなわち提出は、ILOの憲章で確立されたところの一般的性格の義務を構成するものである。それはその条約が批准をされるべきであるとか、また」——勧告についてはここで言っておるのでありますが、「勧告が受諾されるべきであるとか提案する義務を課するものではない。したがって各政府は条約及び勧告を権限ある機関に提出する際になさるべき提案の性質については完全な自由を有するものである。」こういうILO事務局の確定解釈、といいますよりはコミッティがございまして、コミッティの確定解釈を実施したものがILO事務局のものでございます。 外国の例を申し上げますと、国々によって区々でございますが、たとえばベルギー、カナダ等はごく簡単な報告書を付して条約及び勧告を議会に提出し、イタリア、スウェーデン等は、わが国と同様に、一応政府の処理方針と申しますか、意見を付して提出しておる、こういう状況でございます。
○松本(善)委員 そうしますと、この例で、今回出されました報告書で、聞いてみますと、百三十二号についてはこれはさらに検討したいという報告になっていますね。この場合には(e)号の条約の批准を妨げ、遅延させる障害という報告は、どういう報告をILOにされるんですか。
○岡部(實)政府委員 御指摘は年次有給休暇条約のことだろうと思いますが、それにつきましては、条約で規定しているところとわが国の国内法の規定とが明らかに違っておりまして、これを批准するためには国内法の改正という問題が必要になってくる。そこで国内法の改正が現在できるかどうかというところが問題になろうかと思いますので、それについては、具体的には、目下基準法全体につきましていろいろ検討を行なうその一環の一つの重要な事項になりますが、政府部内においては、それらの点についてまだ明確な措置をとり得る段階になっておりません。そういう事実をはっきりさせて報告するということになろうかと思います。
○松本(善)委員 この(d)号によれば、機関の同意を得たときには「条約の規定を実施するために必要な措置を執る。」これはおそらく立法措置も含めてのことだろうと思います。だからこれは同意を得てからの問題なんですね。国内法との矛盾という問題はむしろ批准をして矛盾があれば国内法を変えるんだ、こういうたてまえで十九条全体が私はできていると思うのです。いまのように国内法と違うんだということがこの障害の理由として(e)号で報告をするということになりますれば、これは私はこの十九条全体の趣旨が通らないんじゃないか、こういうふうに思うんですけれども、その点についてはどういうお考えですか。
○西堀政府委員 確かにこの第十九条五項の(d)を見ますと、先生がおっしゃったふうに読めないことはございません。しかしながらこれはもう各加盟国のいわば国内事項と申しますか、各国がその慣行と申しますかあるいは憲法解釈によって実施すべき事項だと存じます。さてわが国におきましては、これはもうある条約を国会に提出いたしましたときには、その国内法の手当てはどうなっているかということは、われわれもう非常にやかましく国会でいわれてまいった次第でございまして、わが国の場合に、まず批准をして批准書を寄託してしまってからゆっくりとひとつ国内法を考えるというようなことは、とてもいままでの国会の慣行では、ちょっと口はばったい言い方でございますが、許されぬのではないかと、私存ずる次第でございます。
○松本(善)委員 私の言うのは両方一緒にやるべきだ、国連尊重主義ということを言う以上は、批准をしていく、そして矛盾があれば法律を改正していく、そういうふうにしていくのが十九条の趣旨ではないか。それを国内法が違うからといっていつまでもほうっておく、改正が間に合わないからというようなことは理由にならぬじゃないか、こういうことを言っているんですよ。違いますか。
○岡部(實)政府委員 おっしゃる精神といいますか、基本的な考え方はわかるわけでございますが、ただILOで採択されました条約を批准するかしないかは、加盟国の自由にあるわけでございます。したがいまして、先ほどもちょっと申し上げましたが、条約の中身が相当技術的なものであり、また各国の社会経済の実態に関係のある内容である場合に、百数十九国の国のいわば平均的なものをとっていろいろ議論した結果が条約の中身になるわけでございますので、したがいましてある国にとってはそれは尺度としては非常に低いものであったり、ある国にとっては非常に高いものであったりいたします。そういうものがいろいろミックスされておりますので、実はすべての条約の条項が、この技術的な規定をも含めて国内法と抵触しないということが保証されることは、非常にむずかしいわけでございます。したがいまして、その条約について、技術的な条約については、たとえば国内法の規定その他について、その国内法がそれに矛盾するというようなこともあるようなものもあるわけであります。したがいまして私どもはやはり条約が採択されました場合に、それが日本の実情と照らしましてその批准が可能であるかどうかということの検討はやはりしなければならない。その場合にその条約のいろいろな条項がわが国の実情に十分沿い、かつしかもそれは引き下げるという意味でなくて合わせるような形で、しかも合うかどうかという検討を行なっていかなければならないわけでございますので、その辺の検討がやはり先に立つ。その場合には批准できるかどうかという目標を条約に合わせながら検討していくということに具体的になろうと思います。
○松本(善)委員 いろいろ説明をされますが、与党の議員も含めて、おかしいじゃないか、条約の批准について政府のいままでやってきたやり方が納得できないということを言っておるわけです。その根本の原因は、私はいま申しましたように、条約の批准をしていくという基本的な方向じゃなくて、合わないのは批准をしないんだ、こういうかまえ方にあるんだ、そこの辺を変えなければ、幾らここでじょうずなことを言いましても、これは始まらないんだということを真剣に労働省も外務省も考えてもらわなければならぬと思います。そのことを指摘しておこうと思います。 それから日本の最低賃金制のもとでの最低賃金額について、多少部分的に触れられた点もありますが、この際お聞きしておきたいのですが、十一条方式の場合と、それから十六条方式の場合とで、単身の場合、四人世帯の場合というぐらいに分けてひとつ実情をお話しいただきたい。
○藤繩政府委員 現在、最低賃金法に基づきましてできております実際の最低賃金は、いわゆる十六条方式、賃金審議会の調査、審議に基づいて決定されるものがほとんどでございまして、昭和四十五年十二月末の、全体では三百六十六件の最低賃金がございますが、そのうち三百六十二件が十六条方式でございます。十一条方式は四件でございます。最近そのうち一つがまた廃止されまして、実は現在三件でございまして、これが決定を見ました時期も非常に古うございまして、十一条方式では金額は非常に低いものになっております。 なお大部分の最低賃金でございますこの十六条方式の最低賃金の額でございますが、四十五年度四月から十二月までに決定されたものの中位数は、先ほどお答え申し上げましたように、一日千五円に減っております。なおいま単身あるいは四人世帯というお話がございましたが、わが国の最低賃金の場合、現在家族構成によって金額を別建てにするということになっておりませんで、業種別、地域別、産業別に最低賃金がきまっておりますが、大部分一日幾らというふうにきまっております。
○松本(善)委員 この状態は、国際的に比較いたしますとどうですか。アメリカ、イギリス、フランスあたりと比較して……。
○藤繩政府委員 手元にございますのでは、アメリカとフランスとイギリスとがございますので申し上げますと、日本の最低賃金が、いま申し上げましたように本年度で決定されたもの千五円、アメリカは非農業が時間当たり一ドル六十セント、農業が一ドル三十セントでございます。それからフランスが時間当たり三・六五フランでございます。それからイギリスはいろいろございますが、男子の場合、週当たり二百十七シリング十ペンスから二百四十五シリング十ぺンス程度の分布になっております。これを為替換算をいたしてみますと、一時間当たりを出しまして、これを八時間にかけてみますと、日本は八時間で一日千五円ですが、これで比較をいたしますと、アメリカの非農業が四千六百八円、農業が三千七百四十四円、フランスが千八百九十六円、それからイギリスが幅がございますが、大体千六百五十六円から二千四十円程度になる。ただしフランスの場合は、先生御承知のとおり十六歳の者は七〇%に減額するという規定がございます。したがいまして、千八百九十六円を七〇%に減額いたしますと、千三百二十七円になるということでございます。これを大体各国の平均賃金と比較いたしますと、アメリカの場合非農業で四千六百八円という数字は、大体四九・九%、ちょうど平均賃金の半分になります。農業が四〇・一%になります。それからフランスが五九・八%、ただし十六歳の減額の金額が四一・九%でございます。イギリスは四四・二%ないし五一・六%でございます。日本の千五円というのは大体四五%程度になっております。
○松本(善)委員 それから日本の労働分配率、これをやはり国際的に比較をしてお話をいただきたいと思います。
○藤繩政府委員 分配率の見方がいろいろございますが、雇用者所得と法人所得との合計に対しまして雇用者所得の割合をとらえまして分配率というふうに見ます場合に、一九六九年で日本は七八・七%になっております。国際比較をいたしてみますと、六九年はあまり出ておりませんが、六八年でわが国が七八・八%でございますが、アメリカが八八・三%、西ドイツが九一・八%、イタリアが暫定値でございまして八九・六%、カナダが八五・六%、かようになっております。
○松本(善)委員 それはどういうふうに分配率を見ておられるかわかりませんが、国連の世界統計年鑑の六九年度からのものでいけば、日本は三一・八%、西ドイツが四一・八%、カナダが五〇・三%、アメリカが五〇・五%、デンマークが五八・四%、イギリスが五三%、これは違いますか。
○藤繩政府委員 ただいま先生のおっしゃった数字は、先ほどいろいろ見方があると申し上げましたが、おそらく製造業の工業統計表に基づく企業ベースの分配率であろうかと思います。これでまいりますと、少し古くなりますが、大体比較できるところで見ますと、六六年で日本が三四・四%、アメリカが五〇・〇%、カナダが五〇・四%、フィリピンが二七・四%、トルコが二七・六%、ユーゴが三三・一%、かような数字になっております。
○松本(善)委員 いまのような数字から見ますと、やはり発達した資本主義国の中では日本の賃金というものはもっと上げなければならないということになるのじゃないかと思いますが、基準局長はどう思いますか。
○岡部(實)政府委員 いまお話の分配率等を見ますと、全般的には欧米諸国に比べてやや低い。それから製造業の場合は、それほど大きな差は見られないというような数字も出ております。しかしながら御指摘のように、最近日本のいわゆる賃金が相当上がってきているということがいわれておりますけれども、欧米諸国に比べまして、いろいろな比べ方がございますが、アメリカに対してはまだ四分の一程度、ヨーロッパ諸国に比べましても一・五分の一あるいは二分の一というようなこともいわれております。そこで私どもはやはり賃金は日本の経済の成長に伴って今後さらに改善をされていくべきが至当であろうと考えております。
○松本(善)委員 最賃法の五条違反ということで、違反事件というものはどのくらいありましょうか。
○岡部(實)政府委員 手元に四十四年の定期監督におきまする主要違反状況がございますが、このうちの最低賃金の場合には違反件数四百三十六件ということになっておりまして、定期監督の実施に対しまする違反件数は〇・二ということであります。
○松本(善)委員 一万円以下の罰金というのが刑事罰でありますけれども、これは金額的に考えるとむしろ違反をしても一万円払えば済むというふうに考えた場合には、最賃制を実行させるための保障にならないのじゃないかというふうに思いますが、この点について基準局長はどう考えていますか。
○岡部(實)政府委員 いま御指摘の、最賃の不払いにつきましては一万円以下の罰金という少額だという御指摘であろうと思いますが、それは賃金不払いの期日ごとに、各労働者ごとに一回の独立した違反ということで処理をいたしておりますので、一件ということが実質的には相当な累進という形で出てまいるということでございますので、そう仰せのように軽いものではないだろうと思います。
○松本(善)委員 それから先ほどお答えの最低賃金千五円ということであります。これで実際にいわゆる憲法で言います健康で文化的な最低限度の生活ということについては、基準局長どういうふうにお考えになりますか。
○岡部(實)政府委員 中央最低賃金審議会の答申等にもございますように、現実に具体的な額をどうしてきめるかということとの関連になろうかと思います。そこで労働市場の実態に着目して、これを産業別、職業別あるいは地域別にきめていく、その間にいろいろな意味の、先ほどもちょっと申しましたけれども、いわゆる標準生計費等もその資料として調査をし、あるいは各地域の実情を調査しながら審議会の各委員が検討されるということになっておりますので、客観的にいまおっしゃるような健康にして文化的な生活を維持できるかどうかという議論は別といたしまして、現実に妥当なる賃金額が、ただいま申しましたような過程を通じて算出されてまいる、こういうふうに考えております。
○松本(善)委員 明日に質問を留保して終わります。
○田中委員長 本日はこの程度にとどめ、次回は明二十五日午前十時より理事会、午前十時十五分より委員会を開会することとし、これにて散会いたします。 午後五時五分散会