P政策ポータルPOLICY PORTALウォッチ
65回国会衆議院1971/03/18

外務委員会 第9号

発言数
104
登壇者
9
会派数
4
開催日
1971/03/18

会議録

田中榮一自由民主党

○田中委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。戸叶里子君。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 私はこの間の続きといいますか、中国問題についてもう少し詰めてみたいと思います。  それで最初にお伺いしたいことは、まず、四十五年の十一月十七日に私が、法律的な観点から見て、もし一つの中国ということで、かりに北京政府というものを認めたときには、当然法律的には台湾政府というものが消滅するというふうに解釈していいかということに対して、それは純法律的にいえばそうだという御答弁がありました。それからずっといろいろ議論をいたしまして、この間の委員会で鯨岡さんの質問からだんだん発展していきまして、結局そういうふうな、たとえば中華人民共和国、北京政府なら北京政府を認めた場合に、台湾政府というものは消滅するけれども、日華平和条約というものは残るんだということを、外務大臣はその後の予算の委員会等におきましてもたびたびお答えになっていらっしゃいます。  そこで私がお伺いいたしたいことは、旧政府が締結した条約をそのまま新政府が受け継ぐということは、これは昔の国際法であって、十九世紀ごろまでは通用したかもしれませんけれども、二十世紀においては必ずしも旧政府の締結した条約を踏襲するということが慣行となっているとはいえないんじゃないか、こういうふうなことを私はいろいろな本を読んでみて考えられるのですが、こ  の点について外務大臣はどういうふうにお考えになるか、まず最初にお伺いしたいと思います。

井川克一外務省条約局長

○井川政府委員 いわゆる政府の変更の場合における国家間条約の承継の問題が、戸叶先生ただいまおっしゃいましたところによりますると、十九世紀においては必ず承継した、二十世紀に至りましてそのようなことがなくなった、こういうお話でございまするけれども、私は何も世界の国際法を全部知っているわけではございませんけれども、やはり伝統的国際法の承継の理論と申しますものは、現在国際法社会におきましていまだ確立しているものであるというように私は理解いたしております。確かに御指摘のような意見というものがあることは確かでございます。それはいまちょっと持ってこなかったと思いますが、ソ連国際法学におきましてはそのような意見が述べられております。しかしながら、私、浅学でございまするけれども、ソ連国際法学の主張は、やはり国際法の大原則である合意は拘束する、これは絶対に動かすべからざるものである。したがって政府変更の場合の承継というものが大原則である。しかしながら政府が変更する場合に、いわゆる革命であっても、その人民の意思というもの、つまり従来の条約が、旧封建的勢力によって人民の意思というものを抑圧しているというような場合、つまりそういうふうな場合に人民革命が起こったようなとき、そういうふうな場合においては前の条約を承継するものではないというふうなことがソ連国際法でいわれております。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 私もそれがなくなったということは言ってないのです。必ずしも承継するものではないというような意見が最近あちこちに出てきているように私は読んでいるわけなんです。そこでその点を申し上げたわけでございますけれども、大前提としてはなるほどそういうことを言いながらも、やはりそれには問題があるという言い方をしている学者があちこちにいるようでございます  その一、二の例を引いてみますと、香西、高林という学者が「国際法概説」の中で「政府承認は承認を与える国家と与えられる国家との間に一般国際法が適用されるだけでなく、旧政府が締結した条約をも復活する効果を生ずることを当然とした従来の考え方は、今日再考を必要とするのでないか。それは国内にとって便宜であるというが、実際には既存の国家にとって便宜ではあっても、新政府にとっては困る場合が多いかもしれない。一律にすべての条約が復活されると考えるより、何を廃棄または無効とし何を復活ないし再締結するかについて新政府の自由意思を認める必要があるのではないか。もっとも、そうすると他国にとってはなはだ迷惑な結果になることもあるから具体的には両者の間の外交交渉によって決定すべきであろう。」こういうふうな意見も述べられております。必ずしも承継するものではない。そこで、いろいろ権利義務の問題が出てくるからこれを取捨選択するようにという言い方をしている。  あるいはまた安井郁氏が「政府が前政府の負担した国際義務を履行することが必要とされ、」ここまでは認めています。「その不履行を理由として承認が拒否された実例もあるが、これを承認の要件とすることの当否についてはなお検討の余地があるといわれている。」こういうふうな形を述べておられますし、また横田喜三郎氏が「前政府が負担した条約上の権利義務も継承することになる。」これは前提を認めております。「前政府が承認国に対して持っていた条約上の権利は新政府が主張し行使し得るに至るし、前政府が承認国に対して持っていた条約上の義務も新政府が負担して履行の責に任じなくてはならない。この条約上の義務を革命政府が承認する意思を有するかどうかはしばしば政府の承認に際して問題とされ、その意思のないことが承認を拒む理由とされることがあるそのため前政府の条約上の義務の承継を承認の要件と解することもあるが、これは適当と言えない。」まあ多少は消極的ながらも考慮の余地があるというような意見を吐かれております。  また今回の日華平和条約と非常にそれを意識したかのように思えるような意見といたしましては「国際法概論」で高野雄一氏が「新政府が事実上成立する前に旧政府を相手にその国と結んだ条約と」これはまあ普通のですね。それから「新政府が事実上成立し旧政府との対立関係に入ってから旧政府を相手に結んだ条約とでは、その間に差異が考えられる。前者の承継は当然であるが、後者は必ずしもそうではない。」というような言い方をされております。  これを外務省が、それは学者の意見だといってしまえばそれまでのことですけれども、そういうふうな意見が出てきているわけで、そういうものを総合してみますと、旧政府の結んだものを新政府との関係で承継すべきであるというふうに言えるかどうか、必ずしも言えない場合もあるのじゃないか、こういうふうに考えられるのでございますけれども、ことに高野氏のいま述べておりますような、新政府が事実上成立して旧政府との対立関係に入ってから旧政府を相手に結んだ条約は必ずしも承継できないんじゃないかというふうに私も考えられますが、この点については大臣どういうふうにお考えになるでしょうか。——いいですか大臣、もう一度申し上げますが、新政府ができてそして旧政府との対立関係に入ってから、つまり旧政府を相手に結んだ条約、それでもなおかつ承継しなしなければならないのかどうか、この点をお伺いしたい。

井川克一外務省条約局長

○井川政府委員 先ほどちょっと私、いま書類を見つけましたので、ロシアのコロービンという人の書いた本の中に、いわゆるソ連の承継に関する理論が書いてございますけれども、すべての国際協定というものは社会秩序、ソーシャルオーダーの表現である、したがってこのソーシャルオーダーが続いている限り、これらの条約は、パクタズンド・セルバンダ、合意は拘束するの大原則に従って継承され、順守されなければならない。しかしながらこのソシアルオーダーが変わった場合云々というのがソ連の国際法学説でございますただいま諸先生の御説をお引きになりました。これは国際法の何と申しますか、原理の部分に入りまして、私自身もあまり深い専門的知識を有してはおりませんけれども、ただそれらのただいま御引用になりました諸先生のあれを伺っておりましても、私自身その中で読んだものも相当ございまするけれども、しかし根本原則が国家承継、政府の変更の場合における根本原則が国家承継であるということについては、諸先生が一致なさっておられるんではないかと思います。  それから一番現実問題といたしまして、最も最近の事象をとらえましたのが、高野雄一先生のではないかと思います。確かに分裂国家の問題につきましては非常にむずかしい問題でございます。分裂国家がすでに二十年、二十五年というふうに確立して、あのように二つに明白に分かれている分裂国家が四つある。これらをしからは統一的に国際法的にどう説明するか、どういうふうな新しい法理があるかといいますならば、おのおのの立場というふうな主張はあるわけでございまするけれども、現実的に国際法として確立したものはいまだ特定の部分にしか出てきてないんじゃなかろうか。特定の部分としてどういうふうなところに出てきておりますかと申し上げますと、まず第一に、御存じの軍縮関係条約におきましてはいわゆるオールステーツ・フォーミュラというものをとっております。こういうようにオールステーツ・フォーミュラつまり両方の分裂国家にはいままで根本的に申しまして、伝統的国際法の法理が妥当いたしております。したがって一国一正統政府というのが根本的な原理で、これを根本的にいままだ直すというところまで立ち至っておりません。中国代表権その他の問題が国際社会においても取り上げられておるわけでございます。しかしながら、ただいま申し上げましたようなオールステーツ・フォーミュラにつきましては、軍縮の世界、そういうふうな世界におきましてもやはり一国一政府という観念よりもあらゆる政府がこれに入るほうがいいというのが一つの新しい観念として生まれてきているんではないかと思います。  もう一つの事象は、やはり集団安全保障の問題でございます。これは分裂国家の成立の経緯その他からいたしまして二つの世界に分属しておりますので、したがいまして、二つの世界の国々との間で集団的安全保障関係に入るわけであります。このような集団的安全保障関係から見ますると、一つの国の一政府という関係ではございませんでやはり二つの政府があって、その政府との間にあるいは国的なものがあって集団的安全保障関係に入っている、こういうことが現状でなかろうか。それ以外のことにつきまして、統一的にこの分裂国家を支配する法理というものはまだ確立されていないというのが現状でなかろうかと私は思います。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 そうしますと、いろいろだいへん専門的な立場から条約局長のお話があったわけでございますが、いま私が引用しました高野氏が述べているような意見、つまり具体的な意見、新政府が事実上成立してそして旧政府との対立関係に入ってから旧政府を相手に結んだ条約は必ずしも承継できないんじゃないかというような意見には同意しかねる、こういうふうに結論的に考えるわけでございますか。

井川克一外務省条約局長

○井川政府委員 そこが、ただいま私が申し上げました分裂国家に対する伝統的国際法が妥当する部門であるかあるいはそういう部門でないかというふうなところで分かれてくるんではなかろうかと私は思うわけでございます。  たとえば、先ほどオールステーツ・フォーミュラのことを申しました。その場合に二つの政府が入れるわけでございます。この二つの政府が入れるという前提のもとに、はたして承継というものを伝統的国際法で考えるのかどうかというふうな点は、確かに疑問があるわけでございます。しかしながら、そのような新しい法理が妥当しない世界、社会におきましては、それがいまだ、現実的に申しますと国際社会の大部分を占めているわけでございまするけれども、そういうところにおきましてはやはり伝統的国際法というものが妥当するのではなかろうか、そう考えるのが現実的国際法として一もちろん将来非常な変化があるいは起こり得るかとも思いまするけれども、現実の段階における国際法の解釈はそういうことになるのではなかろうかと私は考えております。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 主としてそういう場合に、たとえば今回のような日華平和条約が残るという言い方をされる、具体的に申し上げまして、いまのその議論を現実的、国際法はこうである、ああであるという議論を展開していくと、ちょっとあとの質問ができませんからあとに回しますけれども、現実的にいまある条約として日華平和条約を残しておくんだ、ずっと残っているんだ、いつのときまでも残っているんだという政府のいまの考え方は結局は権利義務といいますか債権債務、そういうふうなものがあるからそのまま残っているんだというふうな考え方であるのかどうか、この点をまず伺いたいと思います。

井川克一外務省条約局長

○井川政府委員 私、抽象的また一般的に申し上げます。  平和条約の問題……(戸叶委員「抽象的ではなく具体的に」と呼ぶ)平和条約の問題、つまりちょっといま日華平和条約そのものから離れまして平和条約一般の問題というふうに申し上げたほうがいいのではなかろうかと思いまするけれども、この平和条約というものは領土割譲条約、その領土割譲条約の条項もその中に入っておるのが多うございますけれども、平和条約というもののいわゆる存続とか云々とかいうことにつきましての、これは一般的な国際法上の通説がございまして、これは平和条約というものは廃棄とか無効化とかそういうものの対象になるものではない。つまり一ぺんで、平和条約ができまして発効いたしましたならば、そこで平和関係が出てくるわけでございます。そこで処分が終わるわけでございます。使命を達成するわけでございます。あるいは領土割譲の場合には、そのことによりまして領土が割譲されるわけでございます。したがいまして、領土が割譲されるという平和条約ができまして、かりに万一どこかの相手国がそれを廃棄いたしましても、そのことによって当然その領土が前の国に戻るという性格のものではございません。この点は私だけ言っておるわけではございませんで、むしろ非常な国際的な通説でございまして、御存じの条約法条約という条約がございますけれども、これはまだ発効もいたしておりませんし、たしか批准した国はわずか五つぐらいの国でございますけれども、これは国連の国際法委員会で準備された条約でございますが、その準備いたしました国際法委員会のコメンタリーにつきましても、「或る条約については、その性質そのものが、個々の当事国の意思によって条約を一方的に廃棄又は脱退できるものと締約国が意図した可能性を排除している。平和条約及び領域の境界を劃定する条約はそのような条約の例である。」というのが、この国際法委員会の条約法草案に対するコメンタリーでございますけれども、平和条約というものはまず第一にそういうふうな性質のものであるということを申し上げたいと思います。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 私は、条約局長ときょう条約の議論をしようとはちっとも思っていません。いろいろと学のあるところをお示しいただいているのですけれども、これはあとのときにしていただきたいと思うのです。  私がいま伺っているのはもっと具体的な例で、日華平和条約の問題をとらえてこれがずっと残るということだもんですから、それでは一体旧政府と結んだ条約というものが、新しい政権が出てきて、その一つの政府というものが出てきてもその条約がそのまま残ると言うので、残らない場合もあるじゃないかという議論をしておるのであってほかの条約のことをいろいろ言っておるわけじゃないのです。  そこで、さっき私が聞きました、そのことずばりの返事をしていただきたいのです。たとえば高野氏の述べているようなそれが、私はそう思いませんなら思いませんでいいのですよ。それだけ聞かしてください。ほかの条約を引き出さないでけっこうですから。  もう一度繰り返します。高野さんが言っているように、新政府が事実上成立して、この政府との対立関係に入ってから旧政府を相手に結んだ条約は必ずしも承継できないんじゃないかということを聞いているのですが、それともいや大原則からいって承継しなければいけませんというお考えなのかどうか。そしてそれは大体債権債務ということがあるから、主としてそういうものを含んでるからというのかどうか、まずそれだけ伺いたい。

井川克一外務省条約局長

○井川政府委員 高野雄一先生の意見は、確かに新しい分裂国家の状態というものが第二次大戦後にできまして、そのことに着目いたしましてその事実に基づきまして、伝統的国際法がどこまで適用できるかということについて疑問を提示しているのではないかと思います。私が先ほど来申し上げておりますのは、伝統的国際法というものが現実国際法の段階においては妥当するのが原則である。しかし先ほど来申し上げておりますようなところでは、おそらく例外的な観念が、あるいはオールステーツとか集団安全に出てきたのではなかろうか。しかし一国及び政府の代表権などにつきましては、いまだ国連でずっと争われて、少なくとも現在までの段階におきましては、一国一政府が全体を代表するという伝統的な国際法は変更を受けていないということを申し上げているわけでございます。したがいまして、一つの国と、一つの正統政府と結んだ条約は、その正統政府が——これはきわめて抽象的に申し上げますと、先生から前回も御注意をいただいたわけでございますけれども、政府の変更にかかわらず承継されるもの、普通に承継されるべきものは承継されるのが伝統的国際法の法理でございます。  債権債務の関係につきましては、私自身高野君の本は読みましたけれども、そういう債権債務があるからという感覚ではないと思います。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 外務省の考えがそこでわかりました。  それで、もう一ついまの問題で触れたかったのですが、それに触れてると私の時間がなくなってしまいますから、次の問題に移ります。  この間ちょっと自民党の鯨岡さんが出されて、そのまま質問を続けられなかったのですが、昭和二十七年の一月二十五日に吉田総理が本会議でこういうふうに答弁をされております。「何がゆえに名誉のない講和会議であるかというその理由はすなわち領土の割譲を規定いたしたことであるようでありますが、領土の割譲、すなわち日本が四つの島及びその附属した島に領土を限られるということは、これはポツダム宣言の無条件受諾の結果であります。サンフランシスコにおける講和会議の結果ではないのであります。」つまりポツダム宣言によって領土を割譲した、こういうことをはっきり言われておる。しかもそのポツダム宣言というのはカイロ宣言を受けたものであり、そしてこれによって日本が領土を割譲した、サンフランシスコ平和条約ではこれをはっきりと認めたんだこういうふうに言っているわけです。そして、愛知外務大臣に伺いたいのですが、その中で吉田さんが言われていることは、台湾を台湾省にして自国に編入した、そのことについて連合国は何も抗議をしていない、そういう現象がそこで出ているのですが、吉田さんが何を説明したかといいますと、「台湾政府は、すでにある中国の一部の領土を現実に支配し、これが統治権を実行いたしておるのであります。交戦団体といえども、ときに条約の関係に入るということがあり得るのであります。いわんや台湾政府は、すでにある領土の統治を現実においていたしておるのであります。」はっきり台湾政府が中国の一部の領土を支配しているということを吉田さん自身は言っていらっしゃるわけでございます。それに対してどこからもこういうふうなことを——ポツダム宣言で日本がそれを履行して、そして平和条約でもってはっきりと日本は四つの島に限られるということを言って、それでもなおかつどこからも抗議をしなかったということを見ましても、台湾は中華民国の一部であったということがはっきりしているのではないかと思いますが、この点について外務大臣はどういうふうにお考えになりますか。

愛知揆一自由民主党外務大臣

○愛知国務大臣 私は条約局長のように専門的な立場でなくお答えする立場にありますから、それを前提にして申し上げますと、ポツダム宣言を受諾した日本、そのポツダム宣言にどういうことが書いてあるか。これは、日本は確かにそれを受諾いたしましたけれども、政治的といいましょうか、効果というものはそこに大きくあるだろうと思います。ですから、たとえば中華民国政府あるいは中国の人が、台湾は自分のものになったのだと思われても、政治的には、これはポツダム宣言の関係から、そういう思い方をしてもいいのではないかと思います。  しかしながら、やはり領土主権というようなものは、きちんとした条約によってこそ確定されるものであって、そういう点からいえば、サンフランシスコ平和条約によって、日本は、台湾というあるいは膨湖島という領域を放棄したのであってそして放棄した先の帰属というものは条約で確定していないということは、ポツダム宣言によっていかに書いてあろうとも、条約的には効力を発生していない、こういうふうに見るべきものであろうかと思います。  それから、同時に、サンフランシスコ平和条約は、日華平和条約によって、台湾、膨湖島の領土権というか、法律的にいえば、法律用語はございますが、私のことばでいえば、領土権を放棄したということが確認されてあるわけであると思います。そして台湾の帰属というものが条約的にはっきりしていないからこそ、日華平和条約における交換公文において、現に支配している地域ということばが使われて、これは台湾というところがまだどこにも帰属していないというがためにこういう交換公文が必要であった一つの大きな理由ではないかと私は考えております。そういう立場に現政府が立っておることはしばしば申し上げたとおりでございます。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 外務大臣のおっしゃることはわかるのですけれども、ここに吉田総理が言われていることをもう一度読みますと、「台湾政府は、すでにある中国の一部の領土を現実に支配し、これが統治権を実行いたしておるのであります。」そしていわんや台湾政府は、すでにある領土の統治を現実においていたしておるのであります。」もうある領土の一部を支配しているのだということを繰り返しているわけです。ですから、これは中国の一部であるということがこのことばから見てもはっきりしているのではないかと思うのですが、このことはお認めになりますか、いかがでございましょうか。

愛知揆一自由民主党外務大臣

○愛知国務大臣 条約の文言からいえば、日華平和条約の交換公文では、現に支配している云々とあり、現に中国においてとは書いてない、そこからいいまして、日本としては日華平和条約第二条ですか、これで放棄したことを確認して、帰属については何もいっていない、このことと、現に統治している云々の交換公文とは完全に結びつく考え方であると思います。したがって、条約上からいって、私どもの政府の解釈は間違えてないものと思います。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 ちょっと吉田さんの言われるのとニュアンスが違うのではないかと思うのですよ。台湾はいまある中国の一部を支配しているということを言っていらっしゃるのですよ。ですから、別に中国の一部であるということをはっきりここで言っておるわけですよ。だからいま愛知さんのおっしゃるのとはちょっと違うのではないかと思います。ですから、台湾は中国の一部であるということをはっきり講和条約の交渉に行かれた吉田さんが認めていらっしゃる、ポツダム宣言を受諾した吉田さんが認めていらっしゃるのですから、やはり台湾のその帰属がどうのこうのという前に中国の一部であることははっきりしているのじゃないですか。

愛知揆一自由民主党外務大臣

○愛知国務大臣 ニュアンスといいますか、言い方が違うことはそのとおりでございます。違うのでございます。御引用になりました吉田さんの答弁には中国において現に支配している云々と書いてございます。それから私が申しましたのは条約的、法律的にただ単に現に支配している地域領域ということばを使ったわけでございます。これは条約的、法律的には私の申し上げるところがきわめて忠実に条約を追っている見解でございます。それから何といいますか、批評家的にいえば御引用になりました吉田さんのことばの中には、ポツダム宣言というものの持つ意味あるいはその解釈ということもございましょう。そこへこれは国会での答弁でございますから、法律用語ではないかと思います。そういう点が、御指摘のようにニュアンスが私の申しますことと違っておる点だと思います。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 大臣、ここの文章から読みますと吉田さんははっきりと台湾政府は中国の一部の領土を支配している、こういうふうに本会議でおっしゃっているわけですよね。ですから、そういうふうに言われれば、別にいまの政府が心配するようなことなしに、台湾が中国の一部であるということはすなおに出てくるのじゃないか。当時交渉した吉田さんはそういうお考えであったのじゃないかということを私は思うのですけれども、なくなられた吉田さんのことですから、外務大臣行って聞くわけにもいきませんし、残されたものによって私たちが、しかも交渉に行かれた総理のおっしゃったことですから、信じるよりしかたがないそうすると、いまの政府になるとだんだんに変わってきたとしか私どもは思われないのですけれども、その点をもう一度念のためにおっしゃっていただきたいと思います。

愛知揆一自由民主党外務大臣

○愛知国務大臣 これは私は故意にぎくしゃく申し上げているわけではございませんで、あのときの経過をずっと思い起こしていただければ、やはりポツダム宣言以来のいろいろのことを頭に置いて、吉田さんが御答弁になっておることだと思いますし、それからそこにいわれておる中国の一部の領域とか地方とかいっておられるのは、台湾のことをいっておるに、前後の文脈からいって間違いありません。それはポツダム宣言のことなどが頭にあられて言われたことであろうと思います。しかし同時にサンフランシスコ平和条約、それから次いで日華平和条約、多数国間あるいは二国間の条約として、台湾の帰属が未決定であるということは、これは条約上一つの判こをついた証文のことばでございます。これはこういうはずだったのであるから、台湾はそのとき中国の領土であった、そういう意味でこうやったのだといっても、これには条約上解釈としては私は相当無理があると思います。だって約束をした証文で、多数国の条約、そして二国間の条約なんでございますから、これをそのときのこうこうこういう沿革や背景や、こういうことばがあるから、そのときすでに台湾は中国政府のものであると日本政府はきめていたのであると申しますことは、少し言い過ぎになるのではないでしょうか、国家間の約束したことについては。私は、日本国政府がサンフランシスコ平和条約を忠実に守っていく立場にある限りにおいて、台湾という領域がどこの地域に帰属したということを日本の政府は主張するという立場にはないという、日本政府としてはそういう立場をとるべきであると思います。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 吉田さんの解釈がだんだん変化してきたようにしか私は思えないのです。そこで、そういうふうな吉田さんのような解釈をすなおにしてないからやはり帰属の問題ということが何だびか国会でも議論されてきて、そして歴代の政府の言っていたことは、帰属の連合国がきめるものだとか、放棄させた国々が、それを承認した国々がきめるのだとか、速記を読んでみますと、そういう言い方をずっとされています。まあ愛知さんになってからは、私どもが何も言うべきものではない、こういうふうな言い方をされているのですけれども、いままでのうちにすでにもう各国が台湾は中国の一部であるというふうな形でずっと進められてきても何の抗議もなかった今日、一体どういうふうにして日本以外の連合国なり日本以外の国が台湾の帰属を認めるだろうかということを私どもは非常に疑問に思うわけです。一体いかなる国際機関あるいはどんな国際会議によって台湾の帰属を決定するのだろうか、そういうことはあり得ないのじゃないかというふうにさえ思うのですけれども、そんなことをいま日本の政府はなお考えていらっしゃるのですか。どこかの連合国なりあるいは日本以外の国々で、この帰属を決定するのだというふうなことをいまでもずっとお考えになっているのかどうか、私はたいへん疑わしく思うのですが、この辺をお伺いしたいと思います

愛知揆一自由民主党外務大臣

○愛知国務大臣 私が政策論で何か隠された意図をもってがんばっているかのようにおとりの印象を受けるので、そうだとすれば私、非常に情けなく思うのですけれども、私はサンフランシスコ平和条約の確定解釈並びに日華平和条約の政府としての確定解釈を申し上げているのであって、私の理解するところでは、御引用になっております吉田総理の見解は、その平和条約の解釈あるいはサンフランシスコ平和条約の公権的解釈として当時の総理大臣が公式に発表された御意見ではないと承知しております。もしそういうことでありますれば、またその点に限ってよく調べてみる必要があるかと思いますけれども、私は、条約の公権的解釈については政府の見解以外にはとりょうがないと思うのです。  それから同時に、一体それなら台湾についてはどうするのかということについては、これは条約的あるいは条約を守る誠実な立場からすれば言うべきでないということであって、そして、言え言えとおっしゃるから、それなら考えてみれば、これはしいて言えば連合国がきめるべきものかなというようなことを申し上げたのはむしろ言い過ぎでございます。あまりに御追及が激しいので、しいて申せばそういうことかなと申したことはございますけれども、これは条約を守る立場からいってそこまでは私は言うべきでない、そういうふうに考えます。  それからなお、これは少しドキュメンタルにきちんと私も調べてお答えしたいのですけれども、サンフランシスコ平和条約のできるときに、プロセスにおいて、たとえばソ連の代表、グロムイコだったと思いますけれども、これは台湾の帰属がきまっていないのがおかしい、きめなければならぬといって反対をしたことなども、この私が申しておりまする解釈を日本政府としてとるべきだということの反証になるのではないでしょうか。私はそういういろいろの点から申しまして、この台湾というところの帰属については日本政府は何も言うべきではない。もうそれ以上何も、今後幾ら御追及がありましても私は申し上げません。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 外務大臣がそうおっしゃっちゃえばもう質問ができなくなるわけですよ。私たちは非常に重要な中国問題ですから、ずっと過去のことを振り返りながら前進していかなければいけない。そして私たちのわかるようにやはり政府に解明していただきたいというので質問するのですから、それ以上答えませんなんておっしゃらないでいただきたいと思います。私はたいへん残念なんです。まだ重要なことが一ぱいあるのですけれども時間がないといいますからやめますけれども、ただ、いまの問題にいたしましても、ずっと歴代の外務省の答弁を見ておりますと、決して私たちが帰属はだれがきめるのですか、だれがきめるのですかなんてきゅうきゅう言ったことはないのですね。さっと聞くと、またあるときには聞かれないうちに外務省のほうでは、これは連合国できめることですとか、そういうふうな答弁をさっささっさとすなおに出していらっしゃるのです。ずっと昔にさかのぼってお読みになっていただけばわかりますけれども、だから、じゃ連合国がきめるのならこれはいつどうやってきめるのだろうなと疑問を抱くのは私だけじゃないと思いますが、外務大臣、無理ないんじゃないんですか。これを外務大臣にお考えになっていただきたいのが一つとそうしていまの答弁では、これは連合国もなかなかきめられないのだ、きめるところはちょっとわからないのだというふうにもとれますし、いやわかるかわからないかそれも言えませんというふうにもとれますし、その辺のところがちょっと理解に苦しむのですが、外務大臣にそのことについて最後に結論づけていただきたいと思うのです。  それからもう一つ、一体外務省が台湾の帰属未決定ということをほんとうに考えておるのかどうかということが私はちょっと疑問になった資料があるのです。これはたいへん小さいことかもしれませんけれども——小さいということでもない、普通の人々がいろいろ勉強しようと思って読んでみると、「世界の国一覧表」という外務省の情報文化局で出している本なんですけれども、所属未決定の地域の中に台湾は入っていないのですよねだから、台湾が所属未決定なら当然この中に入っていていいのではないかと思うのですけれども、外務省がお出しになったのの中に入っていないので、これは一体どういうわけなんだろうと思ってふしぎに思いましたので、この点もお伺いしておいて私の質問を終わろうと思います。これはちょっと古いのですけれども、四十三年のです。これに入っておりません。このアジアの所属未決定の国、ほかに入っている国は入っているのですけれども、台湾は入っていません。これは故意に落していらっしゃるのか、そういうことをお忘れになったのか、あるいは考えていないのか、その辺のことをお伺いしたいと思うのです。

愛知揆一自由民主党外務大臣

○愛知国務大臣 その四十三年の何か冊子のことはちょっと私いまここでわかりませんから、後刻御返事申し上げます。  先ほどから、私も誤解いただくとたいへんどうも失礼でもありますし、私も困るのですけれども決して政策論を申しているわけではないのです。このサンフランシスコ平和条約のときできた条約並びにその環境から考えまして、台湾については日本は何も言うべきでない。まあ、ある意味からいえば、これは非常に残念なことであるかもしれません。放棄させられてしまっただけで何もできなかったということは…。  ただ、私は国際的に現在においても台湾の所属は未定だと思います。というのは、たとえばカナダが中華人民共和国を承認して協定をつくりましたときの有名なテークノートというのはどこから出てきたか、おそらくカナダ政府の意図の中には台湾の帰属が不明であるということがあのテークノートということの背景であろうと、これはほとんど国際的にさようにいわれている通念でございまして、カナダ国も台湾の帰属は未定である、どこにも帰属していないということをたてにとってというか、その立場に立って中華人民共和国政府が台湾は中華人民共和国の領土の一部であると言われたことに対して、テークノートしたにとどまって、そうして別にあの中華人民共和国の態度に対してはエンドースもしない、チャレンジもしないというステートメントを別に出しているというところは、やはり台湾の帰属がきまっていないということが国際的な通念であるということを、私はここに明らかにしているものかと思います。  そういうわけでございますから、私は先ほどこれ以上申せませんと言ったのは、条約論としては日本は別に何も言うべき立場にない、これ以上は何とも申し上げようがない、こういうわけでございます。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 いまの大臣のに関連してちょっと伺います。  それじゃ、カナダの例を引いておっしゃいましたが、そうするといつの日かどこかで台湾の帰属は決定されるのだというふうにいまの日本政府はお考えになっていらっしゃるのかどうか、これだけ念のためにお伺いします。

愛知揆一自由民主党外務大臣

○愛知国務大臣 これはたいへん常識的なお答えになって恐縮なんですが、これはいつかはいかなる方法かによりまして帰属が決定さるべきものだと思います。それにはいろいろの国のいろいろの意見や期待や取り上げ方についての方法論などがあるのではないかと思いますが、これは先ほど申しましたように、日本政府としては何ら言及すべきではないと考えます。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 さっきの資料のことを、どなたか事務局お答えになっていただきたい。

須之部量三外務省アジア局長

○須之部政府委員 その資料のことは、私、特に気をつけて見ておりませんので、いずれよく調べた上で御返事申し上げたいと思いますが、おそらく日華平和条約の中でも現に中華民国の政府の支配下にある領域という観念はございますからその観念に基づいてその表をつくっておるものだというふうに私は考えます。しかし、いずれにしましても、その資料一応よく調べた上で御返事申し上げたいと思います。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 一度調べてから返事していただきたいと思います。  これで終わります。

田中榮一自由民主党

○田中委員長 永田亮一君。

永田亮一自由民主党

○永田委員 私、いま戸叶先生のお話を伺っておりまして、それに引き続いて、それでは条約論を私もお伺いしたいと思います。  私は全く条約の問題についてはしろうとでありますので、専門家の条約局長かあるいは外務大臣か教えていただいたらありがたいと思います。  いま、条約の継承の問題がございましたが、それを別の方向から今度はお尋ねしたいと思うのですが、条約の廃棄という問題です。  条約の廃棄論、これは最初に条約を締結したそのときは双方がその条約が自分の国の国益に合う〜思うから条約を結んだ。これは当然だと思うのであります。しかし、それが五年たち、十年たちあるいは二十年たって国際情勢がだんだん変わってくる。国益というものの見方もまた変わってくるわけでもありますから、最初は国益に合致したと思って結んだ条約が二十年たって国益に合わなくなったどいうことを判断した場合に、その条約を廃棄するというのはどうしたらいいのか。一ぺん条約を結んだら、もう未来永劫いつまでもその条約を順守しなければならぬというものではないと私は思うのです。国益に合わなくなれば、その時点において政府がその条約をやめたいと申し出るのはあたりまえだと思うのですが、その方法その他についてお教えをいただきたいと思います。

愛知揆一自由民主党外務大臣

○愛知国務大臣 専門的な答弁は条約局長からのほうが適当だと思いますけれども、条約の廃棄の問題は、廃棄の原則は条約の中に規定された文言によって廃棄さるべきものである。これがもう第一の原則だと思うのであります。  で、廃棄の規定がない場合には、まずその廃棄のしかたというものがきわめてむずかしいと思います。たとえば条約の一方の締約国が非常に大きな義務違反をしたというようなことは、通念としては廃棄を要求する原因になし得ると思いますけれども、しかし他方がその義務違反の事実あるいはその程度を認めないというときには、これはやはり第三国なり国際機関を通じてなり、そういう方法でなければ廃棄の実をあげることは非常にむずかしいことではないかと思います。  それからもう一つ、事情変更があった場合にどうか。その場合に、国際法としてどういうことを基準として考えるべきかということについては国際法関係者の間にもいろいろの意見があり、またこういう形ではどうかという一つのフォーミュラもできたようですが、各国の承認することにはなっていないということは御承知のとおりであると思います。   (委員長退席、青木委員長代理着席)  それからもう一つは、先ほど条約局長から戸叶さんにも御答弁申し上げておりましたように、平和の回復とか領土の割譲、一方でいえば領土を取ることになりましょうが、そういういわば一発限りの条約というような場合においてはほとんど廃棄というようなことは通常あまり考えられないのではないだろうか、こういうふうに考えるわけでございます。  それともう一つ、日本の場合には憲法との関係をどう考えるべきかという問題も国内的にあるのではなかろうかと思いますが、要するに非常にむずかしい問題である、かように存じます。

永田亮一自由民主党

○永田委員 大体わかったような気がするのですが、たとえば期限というようなことをその条約に書いてあれば、それに従ってその期限が来たときに廃棄することができる。安保条約であれは、最近の改定後は一年前に通告をすれば廃棄ができる。戦争中、日ソ不可侵条約というのを結んでおったけれども、 これはまだ期限が切れてない、あるいは廃棄の通告をしたのかもしれぬが、それの期限が来ないうちにかってにソビエトが廃棄したわけですから、これはまことに不法、不理だと思うのですが、こういう廃棄のしかたもないことはない。  日英同盟はどうだったのですか。日英同盟というのは、日本と英国が第一次大戦の前に、ドイツがアジアに進出してくることを押えようと思って結んだ。それは日本と英国と両方とも国益に合うドイツが進出するのを押えようという意味だったと思うのですが、第一次大戦が終わって、ドイツが負けてしまって英国はもうその目的を達した。ところがあのころ、たしかアメリカの移民法か何かあって、日本とアメリカがうまくいかなくなってきた。そういう場合に、日本の立場からいえば英国との同盟は続けておったほうがいいと思ったけれども、英国の国益からいうと、日英同盟をやめてしまったほうが英国とアメリカの関係がよくなるということを考えて、英国が廃棄を通告してきたのじゃなかったですか。私は詳しいことはわからないので、ちょっと……。

愛知揆一自由民主党外務大臣

○愛知国務大臣 日英同盟は、一九二一年ワシントンにおいて署名調印されましたいわゆる四国条約によって日英同盟が終了したことを確認し合ったわけでございます。四国条約というのはアメリカ合衆国、英帝国、フランス国及び日本国、この四国条約の第四条です。第四条に、「本条約ハ締約国ノ憲法上ノ手続ニ従ヒ成ルヘク速ニ批准セラルヘク且華盛頓ニ於テ行ハヌヘキ批准寄託ノ時ヨリ實施セラルヘシ千九百十一年七月十三日倫敦ニ於テ締結セラレタル大不列顛国及日本国間ノ協約ハ之ト同時ニ終了スルモノトス」云々というわけで、つまり日英同盟条約はこの英、米、仏、日の四国条約によってとってかわられたと申しますか、これによって両国間の同盟条約が終結をしたわけでございます。

永田亮一自由民主党

○永田委員 さっき、平和条約のようなものは別に期限が書いてあるわけじゃないので、一ぺんこっきりのものだ、そういうものをやめるというようなことはちょっと考えられないというようなお話があった。確かに平和条約というのは戦争が終わったという条約なんだけれども、戦争が終わったということだけ書いてあればいいけれども、そのほかにもいろいろ書いてある場合があるわけですね。たとえば漁業協定を結ぶとか航空協定がどうだとか、そういうような問題が平和条約の中にあるわけなんです。そうすると、戦争をやめたということは一ぺんぽっきりでいいですけれどもところが漁業協定なんかが、時間がたって、十年たち二十年たってきて、どうも自分の国の国益に合わなくなってきた、あるいは航空協定でもそうですが、そういうようなものが平和条約に書いてある場合に、そいつを直すとかやめるとか、そういうときにはどうしたらいいんですか。

愛知揆一自由民主党外務大臣

○愛知国務大臣 中華民国との平和条約でございますが、先ほど申しましたように、ことばが練れないのでたいへん恐縮なんですが、これはいわば一ぺんこっきりの条約というものの種類に入ると思います。要するに、第一条において戦争状態が終了する。第二条において領土権の放棄をする。それから第三条において請求権の処理が規定されている。第四条に戦前の条約の効力、これは無効になったことを承認しており、それから第五条は権益の放棄が規定されているというように、総体的に一時的の規定ばかりだと言ってもいいと思います。そして第七条の通商航海条約とか、第八条の民間航空、第九条の漁業協定といったようなものはここに条文にありますように、これらについての協定をできるだけすみやかに締結することにつとめるものとするというのが内容なんでございまして、平和が克復したからこういう問題についてすみやかに協定をいたしましょう、こういうことが書かれてある、こういうきわめて臨時的なものでございます。同時に、平和宣言だけでなくて、平和回復に伴う措置をすみやかにやろうということを規定したものである。そういう意味でこれは特殊的なものでございまして、この中に廃棄の規定がないのは条約の性質上当然であろうと思います。それから、期限のないのも当然かと思います。したがってまた、それだからこそこれを廃棄だとかなんとか言うのは条約論としてはたいへんおかしいことだ、これがわれわれの見解でございます。

永田亮一自由民主党

○永田委員 私はいままで一般論を聞いたのですが、日華平和条約についてお話がございましたので、それじゃ日華平和条約についてお尋ねしますと、いまおっしゃったように七条は通商航海条約、八条は民間航空、九条は漁業協定、こういうものをすみやかに締結するようにつとめる。それをやってその漁業協定なら漁業協定、通商航海条約なら条約と、結んだやつがだんだん時間がたってきて日本の国益に合わなくなってきた。その場合にはそれだけを直せばいいということですね。平和条約そのものはそのまま、そういうことですか。

愛知揆一自由民主党外務大臣

○愛知国務大臣 そのとおりでございます。

永田亮一自由民主党

○永田委員 それでは日華平和条約のことをちょっとお尋ねいたしますが、さっきも戸叶先生の御質問にお答えがあったようですが、この日華平和条約の適用される範囲、適用地域ですね、そこは一体どこまでなのか。この交換公文を読んでみますと、さっき大臣がおっしゃったように「この条約の条項が、中華民国に関しては、中華民国政府の支配下に現にあり、又は今後入るすべての領域に適用がある」云々と書いてありますね。そうすると、その中華民国政府の現に支配下にあるというのはどこを言うのか、今後入るすべての領域というのはどこを言うのか、日本政府のお考えを聞きたいわけです。

愛知揆一自由民主党外務大臣

○愛知国務大臣 まずその適用範囲の交換公文がございますのは、本来いえば先ほど来申しておりますような性質の条約でございますから、こういった交換公文があることはむしろ奇異に感ぜられるかもしれませんけれども、第七条、第八条第九条といったような通商航海とか、あるいは漁業とかいうことについては、現実にその有効に支配している地域とこれは直接切っても切れない関係がございますから、特にこの交換公文をつくられたのがそのそもそもの必要性であり背景であると思います。  それから適用される、現に支配される地域ということは、いま申しましたような関係が一つと、それからまだ現実に台湾、膨湖島は国際的に帰属がきまっていないんだ、それを前提にして、しかし現実に中華民国政府がこれを支配しておりますから、そのことをここに特に言及した、これは領土権を是認したものではない、ことに意味があると思います。  それからさらにこれが広がるのはどう予想したかというのは、これはもう将来の可能性に備えただけであって、もし事実上有効に支配する地域が広がれば、こういう第七条、第八条というようなものはそこにも広がるであろうということを書いたものである、かように解しております。

永田亮一自由民主党

○永田委員 そうすると中国、まあ現に支配しているというのは台湾とか房湖島とかいうことをおっしゃっているんだろうと思うんだけれども、将来、今後入る地域というのに中国大陸を考えておられるのでしょうかしら。常識的に見て、中国大陸がこれからあと中華民国の支配下に入る地域というふうにはちょっと考えられないのですが、将来といっても五年先か十年先か三十年か百年か知らぬけれども、そんな先でもあるいは永久に、中華民国の支配下に中国大陸が入る可能性があるとお考えになっているのでしょうか。

愛知揆一自由民主党外務大臣

○愛知国務大臣 これはむしろ条約論というよりも政治論の領域かと思いますけれども、政府としてはたとえば台湾側から大陸反攻というようなことがあろうとは思いませんし、そういうことはぜひとも慎んでもらいたい。逆にまあ本土のほうから台湾解放も武力でやってもらっては困るということをしばしば表明しているわけでございますが、そういう点から申しましても、これが大陸に広がるというようなことは予見できるとは決して考えておりません。

永田亮一自由民主党

○永田委員 そうすると中国大陸は将来中華民国の支配下に入ると思わない、入らないということになると、中国大陸とはまだ戦争状態が続いているということにはなりませんか。

愛知揆一自由民主党外務大臣

○愛知国務大臣 そこがまた一つの論点と思いますけれども、われわれは中華人民共和国と中華民国、国民政府とが一つの中国をこれほど双方ともにがんばられるなら、どうか双方で話し合いで結着して下さい、その結果を尊重いたしましょう、こういう立場をとっておりますが、しかし武力抗争だけはやめてほしいということをこれまた明らかにしているわけで、武力抗争は場合によれば国際紛争にもなりかねないものである、こういうふうな立場をとっているわけですが、それ以上こちら日本としては言及すべきではないのではないかと思います。

永田亮一自由民主党

○永田委員 それじゃ別の質問をいたしますが日華平和条約の第四条が、戦前の条約の効力について、「千九百四十一年十二月九日、前に日本国と中国との間で締結されたすべての条約、協約及び協定は、戦争の結果として無効となったことが承認される。」戦争の結果すべての条約とか協定というものは無効になった。無効になったということは有効でないということですね。無効になったということはなくなったと解釈していいのですかこれはたとえば台湾が日本領土になったのは、日清戦争をして、それでその日清戦争の結果下関条約というものがあって、その下関条約で台湾は日本の領土になった。ところがこれ、前の条約がすべて無効になったというのであれば、下関条約ももうなかったのと同じだ。なかったとすれば下関条約がなかった前は台湾は中国の領土であったわけでしょう。そうすると下関条約がなかったということを認めれば、帰結は台湾は中国の領土に戻る、こういうことになるのじゃないですか。

愛知揆一自由民主党外務大臣

○愛知国務大臣 台湾が日本の領土であったそしてその期間が何十年続いていた。その事実の上に立って日本国は台湾と膨湖島を放棄したということがサンフランシスコ条約においてきまっているわけで、その放棄と領有の関係はそういうように律すべきではないかと思います。つまり効力がなくなったわけですけれども、しかし同時に数十年の期間その現実の姿は続いていた。それを日本としてはその領有権を放棄して、そしてその帰属がなくなった。この状態が現実の状況である。このほうが領土の問題については優先するというか、これが当然の帰結だろうと考えております。

永田亮一自由民主党

○永田委員 私はしろうとだからそこのところがちょっとはっきりわからぬのですがね。日清戦争の前には台湾はどこの領土だったのですか。

愛知揆一自由民主党外務大臣

○愛知国務大臣 当時の清国政府によって代表される清国のものだったわけです。

永田亮一自由民主党

○永田委員 そうすると、日清戦争の終わった段階で下関条約を結んで初めて台湾は日本の領土になったわけなんです。ただしこの前の条約が全部無効になったことを承認したということになれば下関条約も無効である。なかったのと同じだ。そうするとその前に戻るということになれば台湾は清国の時代の中国に所属する、しろうと考えだけれども、私はそう解釈するのですけれども、どうでしょうか。

愛知揆一自由民主党外務大臣

○愛知国務大臣 しかしたとえば裏から申しますと戦後処理の問題などがいろいろあるわけですね。そういう点から考えましても、何十年にわたって台湾を領有していたということについてのその事実に対して日本として戦後の処理や台湾籍の人たちに対する処遇の問題、その他特殊の問題の処理がございますが、そういう点が頭からなくなったことになれば私は法制的な体系が全部くつがえるんじゃないかと思うのです。領土については先ほど申しましたように、日本国が領有して主権を及ぼしていたことの事実の上に立ってサンフランシスコ条約において放棄したということが優先するといっていいのかどうかわかりませんが、法律用語かどうかわかりませんが、その角度をとるべきではないだろうか、かように存じます。

永田亮一自由民主党

○永田委員 それじゃ別の方向からちょっとお尋ねするのですが、中国は一つであるということを佐藤総理がよく国会でおっしゃるのです。中国は一つですね、二つじゃないということを政府のほうは一ぺん再確認をしていただきたい。

愛知揆一自由民主党外務大臣

○愛知国務大臣 中国は一つでありますし、それから少なくとも現在までの国際法的な考え方から申しましても一国一政府ということが国際通念であり、また国連その他においても少なくとも現在まではそうという考え方をとっておりますから、唯一の合法政権は一つでなければならないということになると思います。そういう意味で一つの中国ということばがしばしば用いられておる、そしてまたこれを両方の政府が強く主張しておられる限りこれは両当事者で話し合いをつけてもらいたい、こういう態度を終始一貫政府がとっておりますことはいまさら申し上げるまでもないと思います。

永田亮一自由民主党

○永田委員 その点は佐藤政府も中国は一つだ毛政権も中国は一つだといっているし、蒋介石政権も中国は一つだといっている。これは三つの政府が期せずして一致した点でありますが、しかし台湾が中国の領土とならないんだったら一つにならないでしょう。台湾と中国は別のものだというのであれば一つの中国ということはいえないじゃないですか。

愛知揆一自由民主党外務大臣

○愛知国務大臣 ですから片方も一つの政府片方も一つの政府といっておられるから一つの中国ですね。ですからわれわれも一つの中国であらねばならぬでしょう。それならお二人で話をきめてください、私らのほうがとやかくいえば内政干渉になります、これが日本政府の立場でございます。

永田亮一自由民主党

○永田委員 そうすると、いまのお話だと台湾は中国の領土であるということをお認めになるわ  けですか。

愛知揆一自由民主党外務大臣

○愛知国務大臣 台湾といいますか国民政府は、中国という国家を代表する機関としての立場を持っているという意味において中華民国の政府である、こういう立場を政府はとっているわけであります。

永田亮一自由民主党

○永田委員 ちょっとわかりにくいんだけれども、国民政府とかなんとか言わないで、台湾という地域は中国大陸の地域の一部であるとお考えになりますか。

愛知揆一自由民主党外務大臣

○愛知国務大臣 そこがそう簡単ではないところでございます。つまり国を代表するものは政府である。日華平和条約に例をとれば中華民国を代表する機関としての国民政府と日本政府が平和条約を締結をしたわけであって、国を代表する機関としての政府が国民政府である以上は、国民政府と日本政府との間に結んだ合意というものは法的には両国家を拘束する、こういうふうに日華平和条約についても政府の見解を説明申し上げているわけです。つまり中華民国という国家を代表する機関としての政府なんであって、これが台北に存在するこの政府であるということは事実上の問題である、こういうふうに申し上げたらよろしいかと思います。同時に、たとえば日本はその政府と条約を結んでいるけれども、台湾を、あなたの政府が有効に主権を行使し得る立場にはいないということを明らかにするためにも、日華平和条約における交換公文というものの必要性があったということは先ほど申し上げたとおりでございます

永田亮一自由民主党

○永田委員 もう時間がなくなったのでやめますが、中華人民共和国も中華民国も中国は一つだといっておって、それはどういうふうにきめるかということは、結局、いまのお話を伺っていると台湾の問題は向こうの内政問題だときめていいわけですか。

愛知揆一自由民主党外務大臣

○愛知国務大臣 中華人民共和国政府とそれから国民政府とそのいずれが一つの中国を代表するものであるかということについては、お二人で話し合いをされる筋合いの問題である。かように存じます。  それから、台湾という地域をどこのものにするかということについては、日本としては、放棄したものであるから、その放棄したということ以上には何も言うべきでない、こういう態度を堅持しておるのが現状でございます。

永田亮一自由民主党

○永田委員 これで終わりますが、放棄したということは間違いない。これはもうカイロ宣言を受けたポツダム宣言を受諾したから間違いないのだけれども、その放棄したものが、どうも私はまだ、第四条の戦前の条約、協定みんな無効になったのだということから考えて、もとに戻るような気がしてしようがないのですがね。そこのところもうちょっとしろうとにわかるように説明してくれませんか。前の条約、協定がみんな無効になってしまったということであれは、私は台湾はみんな無効になったのだからその前の状態に戻るのが普通じゃないかと思うのだけれども、しろうとにわかるように説明してください。

井川克一外務省条約局長

○井川政府委員 第四条にも書いてございますとおり、これこれの協定、条約は戦争の結果として無効となったことが承認されるというわけでございます。平和関係にあります国は多くの条約を持っております。その条約が戦争によってどういう影響を受けるか。停止されるものがあり、失効するものがあり、あるいは戦後復活されるものがございます。サンフランシスコ平和条約では連合国の選択にこれをゆだねております。しかしながら、この日華平和条約におきましては戦争の結果として戦前にあった条約を無効といたしましたしかしこのことは戦争前までそれが有効であったということを否定するものではございません。それに、その上に先ほど来愛知外務大臣が申されておりますとおりに、平和条約の本質と領土割譲条約の本質というものがございます。その条約に基づきまして一ぺん日本国の領土となりました台湾澎湖島は、サンフランシスコ平和条約によって日本国が放棄いたしますまでは完全に日本国の領土として、そして日本国の領土であるからこそサンフランシスコ平和条約で日本国が放棄できたものでございます。日本国の領土でなければ日本国はこれを放棄するも何もできないものでございますしたがいまして、下関条約において処分を受け日本の領土となり、その条約の有効無効、この戦争の結果として失効した云々ということは関係なくまさしくサンフランシスコ平和条約までは日本の領土であった。これはたとえばほかの平和条約、領土割譲条約で、どこかの国がどこかの土地をとりまして、その一万の国が不満で、これをかりに廃棄できるものではございませんけれども、廃棄したところでその土地がもとの国に戻るような性質のものではございません。それには、いままでの状態でございますと、戦争が要り、勝つことが必要で、領土を取り戻すということがいままでは必要であったわけでございますけれども、これからはあるいは平和的な話し合いで新しい条約ででき得ることかと思いますけれども、しかしながら領土割譲とかそういうものはそれが無効になったからもとに戻るという性格のものでは全くございません。

永田亮一自由民主党

○永田委員 下関条約があったから台湾は日本の領土になったんでしょう。下関条約がなければ台湾は日本の領土にならない。その下関条約が無効になったというんだから台湾は日本の領土じゃなくなった……。

井川克一外務省条約局長

○井川政府委員 同じことを申し上げまして恐縮でございますけれども、下関条約で日本国の領土になったわけでございます。そしてこの領土というものの移動というものをきめますためにはさらに新しい条約が必要なわけでございます。それによってどこに帰属するということが新しい条約によってきめられなければならないのが通常の状態でございます。この前の条約が無効になったからそれではもとに戻るのか、こういうことは国際法秩序からあり得ないことでございます。そういたしませんと、だんだんだんだん、たとえばフランスとドイツとの関係におきましてだんだん前の条約を全部無効にいたしますと、アルサス・ローレンははたしてどこにいくのかというふうなことにさえなりかねないわけでございまして、あるいはフランクフルト条約、ベルサイユ条約という過程を経て領土というものが確定されていく、そのために平和条約、領土割譲条約が絶対に必要である、こういうことになるわけでございます。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 関連して。いまの領土の説明は説明として聞いても、ではこの四条の具体的な内容はどういうことなんですか。「条約、協約及び協定は、戦争の結果として無効となったことが承認される。」、では、具体的にどういうものが無効になったんですか。

井川克一外務省条約局長

○井川政府委員 相当数の条約があったはずでございますけれども、いまちょっと手元に条約の名前を持っておりませんので、これを調べまして次の機会に必ず御報告申し上げます。

青木正久自由民主党

○青木委員長代理 中川嘉美君。

中川嘉美公明党

○中川(嘉)委員 先ほどの沖繩北方問題に関する特別委員会におきまして、大臣に米側資産の問題について伺いましたけれども、当委員会におきましても引き続いて沖繩問題についてお尋ねをしたいと思います。  沖繩返還に関しては、最近の情報によりますと条約として正式に上院にかけるということがいわれているわけですけれども、その真偽のほどについて、まず明らかにしていただきたいと思いますすなわち、外務省として何か具体的な連絡を受けておられるか。受けておられるとするならば、その内容について御報告をいただきたいと思います

愛知揆一自由民主党外務大臣

○愛知国務大臣 ごく最近、アメリカ国務長官がアメリカ上院外務委員長のフルブライト氏に対して、前々から沖繩返還協定の扱い方について御照会があったが、このほど米国政府といたしましてはなるべく早く協定調印にこぎつけて上院に審議を受けるためにお送りをいたしたいと思っております、こういう連絡といいますか通知をフルブライト委員長にあてていたしました。フルブライト委員長のほうから、そういった連絡を受けたということが世に伝わりまして、そのことが新聞等に報道されたわけでございますけれども、アメリカ国務長官がさような段取をとるということについては、事前にもちろん日本側も連絡を受けておりました。

中川嘉美公明党

○中川(嘉)委員 返還に関するところの文書ですけれども、条約とした場合と、協定とした場合とでは、条約の文書内容のほうが変ってくるかどうかという問題これは当然内容が変わり得るこのように推測されますけれども、この点はいかがでしょう。

愛知揆一自由民主党外務大臣

○愛知国務大臣 全然、当方としては変わることを考えておりません。

中川嘉美公明党

○中川(嘉)委員 私はいまの御答弁に対して条約であるならばこれは当然上院における審議の結果、三分の二の承認を得なければならないということからしても、かなり、協定に比べた場合に内容的に米側に不利と思われる文言がはずされていくんじゃないだろうか。すなわち日本側の譲歩を意味するわけですけれども、あるいはまた特に問題と思われる個所がどうにでも解釈ができるような、表現をぼかすといいますか、そんなふうにも実は心配されるわけですけれども、こういった考えはどうでしょうか。先ほども御答弁をいただいたわけですけれども、実はこちらとしては非常に心配しているわけです。

愛知揆一自由民主党外務大臣

○愛知国務大臣 いずれにいたしましてもあまり卑屈に考えないで堂々と、返還ということはもう政治的にはきまっておるのでございますから、返還協定はきれいにつくりたい。またアメリカの扱い方は、御承知と思いますけれども、名前には別に制限はないわけでございます。トリーティーである場合もアグリーメントである場合にもその内容の扱い方いかんによって上院の手続がきまるわけでございますから、条約という形式をとるからといって上院で議決するわけでも何でもない。これはきわめて融通性のある取り扱いを従来いたしております。

中川嘉美公明党

○中川(嘉)委員 いずれにしましても条約と決定した場合にはいまの御答弁として了解をしておきますけれども、あくまでも国家間の約束という形をとることにもなるわけですから、さきにも述べましたように条約にうたわれる文言については日本側だけが不利になるようなことがないように正確さをあくまでも期すべきではないか。これは質問じゃございません。たいへん重要な問題でもあるので、このようにお願いをしておきたいと思います。  次に、返還条約が五月または六月に米国上院で審議されるということになりますと、基地返還の概要ですけれども、この基地返還の概要はほぼ明らかにされていなければならないのじゃないか、もうこういう時点にきているわけです。目下交渉中であるとも聞いておりますけれども、大体いつごろコンクリートな結論を出したいと大臣は思っておられるか。この点をまず伺いたいと思います。

愛知揆一自由民主党外務大臣

○愛知国務大臣 協定調印のときにそんなに詳細にはきめ切らないと思います。

中川嘉美公明党

○中川(嘉)委員 実際なぜこういうお尋ねをしたかと申しますと、米議会で現実に審議が行なわれるとすれば五月、六月という時点に間に合うかどうかということが心配のあまり伺っているわけです。本来ならその概要が明らかになっていなければならないのではないかという時点であって、これによって現実に地主との交渉が始まるわけです。政府は各地主だちの土地提供についての契約を結んでいかなければならないわけですが、そういった意味でこの二カ月間でこういった大事な作業ができるかどうか。こういった立場からお伺いしたわけですが、いかがでしょうか。

愛知揆一自由民主党外務大臣

○愛知国務大臣 先ほど御説明いたしましたから重複するかと思いますけれども、アメリカ側の体制は率直にいって日本とずいぶん違うわけでございます。アメリカ側とすればできるだけ早く協定に調印をして上院に送り込む。上院としてはそれからいつこれを日程に組み入れるかということで、その日程組み入れの幅は、政府から送り込まれたときから勘定して半年あるいはそれ以上の幅で日程に組み入れることになって、そしてこれは上院の完全な自主的な判断にまかされるようでございますから、いまお話がございましたように、五月、六月に審議ということもあり得るでこざいましょうけれども、ことしぎりぎりのところで審議ということもあり得るかと思います。いずれにいたしましても七二年のできるだけ早い時期に実際の返還をしようとする以上は、なるべく早く前広に上院に送りつけてもらって上院の幅の広い日程の中でしかるべきときにうまく審議ができるようにしたいというのが先方の関係者の配慮でございまして、そういう意味でできるだけ急いで両者の合意を得たい、こういっているわけでございます。したがって、送ったら直ちに審議が始まるということは必ずしも予想いたされません。

中川嘉美公明党

○中川(嘉)委員 それじゃいまの御答弁はまずここで信頼するといたしまして、数多くのやはり地主との交渉という問題があるわけですけれども何だかんだいいましてももう来年の四月ということになれば一年先の話である。長いようでほんとうにいろいろな問題をかかえている以上は短過ぎると私は思うのです。この地主との交渉ですけれども、ほんとうに交渉がうまくいかない場合、また時期的にもどうしても間に合わないようなことが発生してきたというような場合は、政府としては強制収用するつもりですか。それともそうでない場合はどのような形で進めていこうとお考えになっていますか。

愛知揆一自由民主党外務大臣

○愛知国務大臣 私は、この点は何べんもお答えいたしておりますけれども、政府としては、民有地である場合には地主さんとの間に政府が契約をいたしまして、安保条約の目的に沿うような施設区域として提供をいたしたいと考えております。あくまで地主さんとの間の円満な話し合いで事を処理していく、これがあくまでわれわれの願望でございます。いまそれから先こうなった場合はどうだというようなことまで予測いたしたくございません。しかし、しいて答えろとおっしゃるならば、あらゆる場合を予想しておかなくてはならないでしょうが、これは同時に防衛施設庁の直接の担当の仕事であるわけで、御案内のようにもうそろそろ始まりますから、とりあえず二十人のその道の専門家の人たちを防衛施設庁が沖繩に送りまして、そうしてなお一そう仕事の進捗をはかろうとしておられるように仄聞いたしております。

中川嘉美公明党

○中川(嘉)委員 それではまた次回にでも防衛施設庁にさらにこういったことの詳しいことを伺いたい、こう思います。いろいろ考えると、すんなりいけばいいわけですけれども、せんだっての成田のようなああいうようなことに発展しかねないというような問題も出てくるのじゃないかという立場から心配するわけで、いろいろ次回にまた伺ってみたい、このように思います。  先ほど大臣に米側資産の買い取りについてお伺いしました。それについて具体的な一例だけお尋ねしたいのですが、買い取りに際して、最近基地外の道路を買い取りの対象にする、こういうふうに出ております。基地外の軍用道路というのは一体この場合何をさすのか、この辺をまずお答えをいただきたいと思います。−それではこの問題は施設庁に対して次回に伺いたいと思いますけれども、私の感じるところでは、基地内、基地外と言われますけれども、基地内というのはもうすでに米軍基地の中にあるのはあたりまえで、米軍基地の中にある以上は何も返還の対象にもならないし、買い取りの対象にもなるはずがない。なぜこんなふうに基地外ということばを使ったかということです。   〔青木委員長代理退席、委員長着席〕 これから今度発展して考えますと、基地外としいて表現するからには、こういうような想定も成り立つのじゃないかと思います。御存知のように那覇市からずっとコザのほうに向かって走る一号線を走っていきますと、両側にいわゆる基地がございます。このちょうど両側に基地があるということは、そこを通っておる一号線というのはあくまでも基地内というふうにみなされるのじゃないか、このように発展して考えるわけですけれども、そういったことになってくると道路分断ということになって大問題になってくるのじゃないか。そういうことはいまの基地内外の表現では出てこないということでお答えがあるかもしれませんけれども、現実に一号線では、現在軍用道路として使用されて、労組員たちがこの道路でビラまきをすると、基地内とみなされて処罰される、このように聞いております。これは一号線の問題ですが、こういった意味で基地外云々ということについては相当慎重を期して、今度また機会をあらためてこの問題についても伺ってまいりたい、このように思います。  次に、那覇空港の返還の問題ですが、これは本ぎまりのようなんですが、これは完全に日本に返還されて一〇〇%民間の使用になるのか、それとも自衛隊との共同使用となるのか、あるいはまたアメリカ海軍の航空機も使用することになるか、この三つがいま考えられると思いますが、この点はいかがでしょうか。

愛知揆一自由民主党外務大臣

○愛知国務大臣 たいへん申しわけないんですけれども、この沖繩返還問題は非常に範囲が広くなって、そして本土並みでございますから、本土の政府もあらゆる面におきまして、本土並みに手を広げてやっておりますので、そこまでのところは、ちょっと外務省だけではいまお答えできないような状況になっております。非常に広範になりましたものですから、対米折衝の問題だけでもたいへんなんでございますが、そういった各地点においての完全返還か、共同使用か、一部民間使用か、いろいろなケースが各地それぞれにございますものですから、ちょっと外務省だけではお答えできませんので、たいへん恐縮でございますが、お許しいただきたいと思います。

中川嘉美公明党

○中川(嘉)委員 それではただいまの大臣の御答弁を一応そのように受けました上で、これは大臣の御見解としてあくまでも所見を伺いたいわけですけれども、もし米国海軍が使用する那覇空港いまあそこへ降り立つと、小さい米海軍のジェット機が置いてありますけれども、もしもその状態があのまま続くというふうに仮定するならば、これは地位協定第二条とどういう関係になりますか。第二条4、(a)になるか、(b)になるか、これはどれが適用されるかという問題なんですが、もう少しこれは質問を続けますと、私は(a)になるわけはないと思います。それで(b)になった場合、これには「一定の期間を限って使用すべき施設及び区域」こういうふうになっているわけで、現在まだインドシナの火が消えていないというような国際情勢を見た場合にも、この一定期間というのは、たとえば半年、百八十日というふうに想定すると、百八十日であそこの米海軍のジェット機が全く格納庫から一機もなくなる、姿を隠すということも私は考えられないと思います。そういう意味で、どちらかといえばやはり常時そこに駐機するのではないか、こういうふうに私は考えるのですが、そうなると(a)でもなければ(b)でもない。こういうことになってくると思います。すなわち、アメリカの基地そのものではないか、こういうふうに考えられますが、こうなってくると返還を意味しない。そういった点で返還とは一体何をさすのかな、こう思うわけですけれども、先ほども御答弁がありましたので一これ以上はお聞きしませんが、大臣のこれに対する御見解だけでけっこうですから、ひとつこの際伺っておきたいと思います。

愛知揆一自由民主党外務大臣

○愛知国務大臣 防衛庁長官にもよく御意見を伝えて善処いたします。

中川嘉美公明党

○中川(嘉)委員 それでは最後に、これも関連するので、はたしてどのような御答弁かと思いますが、念のためにお聞きしますと、那覇空港が返還された場合の所管なんですが、これは運輸省になりますか、防衛庁になるのですか。どちらでしょうか。

愛知揆一自由民主党外務大臣

○愛知国務大臣 実はそこまで行っておりませんで、これももうしばらく時間がかかります。いずれになりますか……。

中川嘉美公明党

○中川(嘉)委員 きょうはそれでは大体このぐらいにして置こうかと思うのですが、要するに、防衛庁が管理をするというような結論が出てきた場合なんですが、これは当然肩がわり的な色彩が非常に強く、沖繩には民間の空港はないことになってしまいます。そして使わしてもらっているというような、そういう形が実現するのじゃないかと思うが、自衛隊の管理になった場合に、先日の委員会で政府はたしかアメリカに使わせる法的な根拠はないというふうに御答弁になったと思うのですが、そうすると前に伺ったこととも関連しますが、どういうような法的根拠でアメリカに使わせるようになるのか、こういったことも引っかかってくると思います。こういうふうに考えてまいりますと、安保条約にないことまで外国に便宜を供与する必要がどこにあるのかというような問題が出てくる。条約論の立場からいってそのように思います。そういう意味で安保体制は一体何だろうか、アメリカのいうなりになるのが安保体制なのか、このような感じが強くするのですけれども、こういったことも含めてひとつ十分大臣のほうから、また大臣自身も御検討いただきたいし、先ほどのように防衛庁のほうにも申し入れていただきたい、このように要望いたすわけですが、これに対して御答弁があれば……。

愛知揆一自由民主党外務大臣

○愛知国務大臣 きょうのところは各省庁への連絡がたいへん悪うございまして、ここへ来てもらえなかったものですから、たいへん答弁が抽象的になりまして申しわけございませんが、いずれもうそう長くない時期におきまして、私といたしましてもよくタスクフォースと言っておりますけれども、各省庁にお願いしてそれぞれ返還作業を展開しておるわけで、ずっとこれがまとまってまいりましてワンパッケージにだんだん固まってまいりますれば、私も自分の責任において相当お答えできる時期になると思いますが、何しろいまこれはほんとうにたいへんな仕事でございまして、一つ一つのところまで突っ込んでそれをかつ総合してバランスをとって煮詰めるところまでもうしばらく時間がかかりますので、その点御了察願いたいと思います。

中川嘉美公明党

○中川(嘉)委員 それではいまの御答弁にありましたように、そういうような私の申し上げたような考え方も出てくるという前提で、ひとつ十分御配慮願って、そのパッケージにこぎつけるように御尽力をいただくよう要望いたしまして終わりたいと思います。

田中榮一自由民主党

○田中委員長 曽祢益君。

曾禰益民社党

○曽祢委員 最初に日米繊維交渉に関連いたしまして、大臣に伺いたいと思います。  実は繊維交渉が最終段階に至りまして、日本の繊維産業連盟、業界の決意と、またアメリカの下院の歳出委員長のミルズ氏のサゼスチョン等がありまして、急転直下的に業界自主規制という形で一つの転換を見た。これはたいへんけっこうなことだと思っておったのでありますが、ところがニクソン大統領が異例の声明を発しまして、この自主規制を拒否するというこういう事態が起こったわけであります。その自主規制を拒否するのには内容的にこれでは自分の考えている必要と思われる米国の繊維産業保護に足りないという内容的の意見もございますけれども、それもそうですけれども、私は非常に重大な問題がこの声明の中にあるように思います。それは正確な訳文ではないかもしれませんが、声明の中でニクソン大統領は日本政府は日本繊維業界の異例の措置、あるいは新聞によっては策動と訳しているところもあります。異例のアンオーソドックスな措置もしくは策動を支持し政府間交渉を打ち切ると公式声明を発した、こういうことばでかなりきつい調子で日本政府の態度を非難していると思うのであります。またこれに伴いましてフラニガン補佐官もやはり十二日でございますか、声明のあとだと思いますが、日本の牛場大使に対しまして日本政府が交渉中に一方的な宣言で打ち切った、しかも事前にアメリカ側に通告なしに保利長官が長官談話で、この日本業界のいわゆる一方的自主規制を支持したということに非常に強い不満を述べたと伝えられておるのでございます。そこで私は、外務大臣にお伺いするのでありまするが、外務省といたしましては最近のミルズ委員長と日本業界との間のいわゆるミルズサゼスチョンを中心とする話し合いですね。これが伝うるところによればダニエルズ氏等のいわゆる法律家といいますか、ワシントンのロビースト、こういう人たちが直接ミルズ氏あたりと連絡されたようでありまするが、とにもかくにもこのような急転直下で、いわゆるミルズ案承諾という形で自主規制が業界においてとられた。この動きについてどの程度御承知であったか、この点に  ついてまずお知らせ願いたいと思います。

愛知揆一自由民主党外務大臣

○愛知国務大臣 先週の月曜日の夜九時、日本繊維産業連盟会長谷口氏の来訪を、あらかじめショートノーティスではありましたが、同夜六、七時ごろからのノーティスによって九時にお目にかかりまして、そのときに対米一方的自主規制の原文を拝見いたしました。政府としては、私のところへ谷口氏が来られる前に、直前に宮沢通産大臣のところを訪ねられて、同じくそのデクラレーションをお持ちになり、その内容の説明がございました。私はその後宮澤君と連絡をし、その場ででしたか、明朝でしたか、官房長官談話ということの運びになったわけであります。  それから、私としては政府間の接触が実らなかったことは非常にもう遺憾の上にも遺憾でございますが、ただ谷口氏にそのとき伺ったデクラレーションの文言からいい、それまでの苦心を伺いましてともかくもこれで日本業界が大所高所に立ってこれだけの決意を示し、かつ実行の意図を表明されたことは私としては歓迎した次第であり、これでどんどん実行が進んでいけば、アメリカはもちろん非常に不満ではあろうけれども、アメリカ側も結局この誠意のある態度に理解を示してくれるであろうと私は瞬間的にかように感じとりました。その気持ちが政府の態度その他にあらわれておるように思います。

曾禰益民社党

○曽祢委員 私もしろうとながらずっとこの交渉の新聞記事等を見ておりますると、自民党の福田一委員長等が向こうに参られて、いろいろ議会筋とも話したけれども、その一種の結果として、業界の自主規制案はどうかというようなお話が今日突然出たわけじゃないのですね。それはよくわかっております。最終的な段階でミルズ歳入委員長との連絡がとれて、向こうで議会筋の方がだいじょうぶだ、こういう裏書きを得たので、それを契機として業界のほうでも、アメリカから見ればいろいろ御不満もございましょうが、従来の業界の大きな基本的立場からいえば相当思い切った譲歩による自主規制案に踏み切ったということについては、これはわれわれも好感を持ったと思うのですね。ですから繊維関係の労働組合のほうも、やむを得ずといいますか、労働者にしわ寄せされないならばこれに賛成だという態度を出したのも当然だ。ただ問題は、それは日本側の業界の譲歩によってけっこうだし、しかもミルズ委員長と話し合いがついているならばまずまずこれで向こうによる輸入割当法案を阻止できるという点についてのメリットを大きく感ずるとともに、だがしかし、こういう形でこういうことをやった場合に、立法府対行政府との関係が一体どうなるのだ。これは日米の外交交渉は決裂しておったわけじゃないのですね。いましばらくいわゆるしお待ちの状態にあったと思うのですね。ですからこれをきっかけとしてあらためて外交交渉で正式にこれを裏書きするのがいいかどうか、これは両方で相談すればいいことであって、ただ日本の業界が両方の執行部というか、両方の行政府抜きで立法府と話し合いをつけたからというので、両国の外交関係がそのまま見のがしていいということではないのじゃないか。特にアメリカの大統領が非常に政治的な立場からこの繊維問題を、内政的もからんで取り上げておった経緯からいうならば、かりに内容が日本としてはけっこうなことであり、アメリカもその辺で手を打ってほしいということが、私ども日本人としてそう思いますが、ただそれを最終的におさめる形として考えた場合に、やはり両国間の交渉によってこの自主規制というものをオーソライズするというか、あるいは少なくとも歓迎するとか、そういうのが両方の行政府当局の間に意思が確定しておらないでやれば、これは非常に問題が変にこんがらかりはしないかということをわれわれも考え、私はこれは当然だと思う。ですからいま谷口さんから話を聞かれて歓迎的な態度をとられたことに何ら私は非難すべきものはない。ただそれの仕上げの問題として、外務省としては当然に牛場大使の意見も聞かれるであろうし、そうでなくても外務大臣が総理大臣あるいは官房長官に対する当然のアドバイスとして、待てよ、これいきなりこのままでいいのかどうか、ワシントンの大統領あるいは行政府との関係をうまくやるということが非常に大切だというアドバイスをされたと思うのですが、その点はどうなっているか伺いたいのです。

愛知揆一自由民主党外務大臣

○愛知国務大臣 何分にも長い間かかった問題ではありますが、最後のところがきわめて急でありましただけに、わずかの時間の間ですが、私といたしましても、外務省としても、また牛場大使としてはもちろんでございますが、百方手を尽くしまして、最善と思う方途をとったわけでございますが、大統領並びに大統領府の態度というのが御承知のとおりであって、今日のような状況になっておりますことは、私はたいへん残念に思っております。それだけに現在は策がないといわれればそれまででございますが、静観する以外に道はない、かように存じております。まことにどうも遺憾であり、残念に思いますけれども、現在のところはそれ以外に方法がないように思います。

曾禰益民社党

○曽祢委員 もう過ぎちゃったことを何か傷あとに触れるようで、ぼくはその点で自分みずから必ずしも気持ちいいと思っていないのですけれども、事非常に私は重大だと思うのですね。やはりその詰めの外交というものがはたして十分であったかどうか、たとえば日本政府としてはこれをやむを得ない、それは外交交渉でやるのが原則かもしれぬ、しかし異例の措置であるけれども、業界の思い切った決意と、それから事実上議会側の有力者も祝福されておるようだから、その外交問題についてはひとっこれで円満にやってくれぬかというような、いわゆる交渉打ち切りというと非常にかどが立ちますが、そこら辺のところについて大使に訓令され、あるいはマイヤー大使にお話しになったというようなことがあるのですか。あるいは一部新聞に出ておりましたように、総理大臣が特に大統領にメッセージを送ったとかこういうような、何といいますか向こうの行政府に対する儀礼とだけ言い切れない、やはり外交上の詰めというものについて手は打った、こういうことに考えてよろしいのでしょうか。それにもかかわらずいろいろな、あとでも出るような内政上の理由もありましょう、もともと政治的な問題なんですから。大統領としては非常にきつい、われわれが残念に思うくらい予想外にきつい態度で声明を出したというのについて、つまり日本としては相当詰めに対していわゆるきめこまかな、そしてこれは儀礼的にも外交上からいっても当然の打つべき手は十分に打っておられたのか。この点を伺っておるわけです。

愛知揆一自由民主党外務大臣

○愛知国務大臣 これはただいま申しましたように、短時間の間ではありましたけれども、なし得る限りの手は打ったつもりでありますが、結果がおもしろくなかったのですから、これは一切私どもの責任でございます。

曾禰益民社党

○曽祢委員 静観はいいのですけれども、何らか特に特使を送るとかなんとかということをされるおつもりはないのか、くどいようですけれども伺っておきたいと思います。

愛知揆一自由民主党外務大臣

○愛知国務大臣 ただいまのところは考えておりません。

曾禰益民社党

○曽祢委員 これは何と言おうと最後の段階で非常にしこりを残したというか、幕切れが非常にすっきりしない感もいたしますが、これは非常に残念です。外交上としてはその点は失敗だったという感じがしてなりません。政府はその大統領の声明を何か国内の強硬論向けのゼスチュアと軽く見ておられるのか、何かそういったような政府筋の、静観はこれはやむを得ないかもしれませんがどういうふうに見ておられるのか。あるいはマイヤー大使が佐藤総理と水入らずで話したということも伝えられておりますので、そこら辺のところを含めて、お差しつかえのない限り、どのように単なる内政上のゼスチュアなのか、どうその辺を見ておられるのか、御説明願いたいと思います。

愛知揆一自由民主党外務大臣

○愛知国務大臣 アメリカ側の態度についてあるいは大統領声明については私どもとしては静観をいたしたいまたすべきではないというのであって、何もコメントする立場にないと考えております。わがほうとしては、せっかく業界があれだけ苦心をされてまとめ上げられたものでございますから、これはまた私の願望になるのですけれどもこれを内外に公表されたように実行に移していただくようにすることが、何より日本全体の誠意を示すゆえんではないかとひそかに御期待申し上げておりますが、ただいま何べんも申しますが、静観ということに尽きる次第であります。

曾禰益民社党

○曽祢委員 再々申し上げて恐縮ですが、私も業界の決意を多とし、そしてこれが成功裏に、いわゆる業界が自主的にオーダリーマーケティングに進んで、そしてこの問題のとりあえずの解決をしてもらいたいということを念願することにおいては大臣に劣らないつもりです。ただわれわれお互いに政治家として考えた場合に、単に内政上のゼスチュアで、突き上げに対して大統領が強いことばで罪を日本側に着せたとのみ言えない点が、ぼくはありはしないかという感じがするのです。やはり大統領としては立法府との関係において、やはりどうしても立法府よりも自分がこれをやるんだ、行政府がこの衝に当たるんだという当然の気持ちもあると思いますし、ダニエル氏の表現をかりればプレジデントより偉いミルズはキングだと、そういうことばがちらちら出れば、しかも党は違うし、相当なライバル関係という点から見れば、自分のほうはたな上げにしておいて、そして日本の業界が一番議会の実力者で、自分のライバルと取引をしてやってしまって、日本政府も祝福ばかりしていて、ほんとうにどうも済まないという気持ちがなかったとすれば、これはどうもいわゆる烈火のごとく怒ったということは単なるゼスチュアばかりじゃないのじゃないかという気もしないわけではございません。その点はとにかくもう過ぎてしまったことでありますからそう言ってみてもしようがないのですけれども、私はこの点について、日本側もやはり最後の外交上の詰めを怠ったということだけでなくて、初めから日本政府、総理大臣をはじめとしての沖繩問題との取引であるかのごとき感じで、繊維問題を向こうがいわゆる非常に政治的に——もっとちゃんとした経済問題、通商問題であるべき繊維の問題を、非常に政治的な立場で取り上げ、また総理大臣が沖繩返還交渉に行かれたときの問題であったためもあろうが、どうもやはり最初から沖繩との取引というインプレッションを与えてしまった。それからさらにまた、昨年の国連総会に行かれたときに交渉を再開しよう——再開するのはいいのでありますけれども、いわゆる協定の締結を目的として再開しようと言ったときに、向こうに与えた印象はまあ日本側が譲るのだな、例のカテゴリーの問題等についても日本側が譲るのだなというようなインプレッションを与えてしまった、そうして今度政府間の交渉が行き詰まって、最後の段階になると、今度は業界がロビーストを使ってミルズ氏と直接取引をする、何だというような感じを与えたのではなかろうか。その点はこれが直ちに沖繩返還交渉にどうこうというものではないでしょうし、これはロジャーズ長官も繊維問題と沖繩問題とは完全に別問題だということを言っております。しかしアメリカの最高の実力者にそういう意味で非常に不快な感じを与えたとすれば、その点はやはり日米の外交上決してそう軽々に見過ごしていい問題ではないのじゃないか、私はそういう気がしてならないわけです。  これ以上御答弁を要求いたしませんが、その意味で、私は今後の見通しについて、繊維問題についての後の点を伺いますが、まず政府は、日本の業界の決意を実らせるためにも、やはりアメリカ政府を含めて、議会における立法措置がないようにひとつしていかなければならないと思うのですが、国内立法に関する見通しをどう思っておられるか。——申しわけありませんが、時間がないので箇条的に申し上げますからお答えを願いたい。  第二に、業界の自主規制がほんとうにスタートするためには、台湾、韓国等の競争者においてもこれに似たような自主規制をやってもらわなければ困る、これは直接行っても 何を言うか、日本がかってにやっておいてということになるから、これはどうしてもアメリカのそれこそ行政府かの外交的な力を利用しなければ、なかなか彼らを説得するのはむずかしい、もし台湾、韓国等がこの方向に賛成しない場合には、はたして日本側の業界の自主規制はそれにもかかわらずやるのか、やらないのかということについてもまた一まつ以上の不安定な要素があるわけですから、そういう意味からいっても台湾、韓国等にアメリカの外交の力をどうしても使わせなければいかぬと思うので、そういう点からいっても私は行政府との関係の疎隔がないようにする必要があると思うのですが、その点をどうお考えでございましょうか。この二点だけお伺いいたしたいと思います。

愛知揆一自由民主党外務大臣

○愛知国務大臣 先方の立法の見通しその他については、いま軽々に政府の当局者として申し上げるべきじゃないと私は思います。もちろん保護貿易主義が勢いづいて台頭するということは、日米両国のためにも日本の立場からいえば好ましくないと思いますし、また国際的にも決して喜ぶべき現象ではないと思いますから、そうならないようなことを期待する以外に申し上げることはございません。日本といたしましては、先ほど申しましたように、これは政府がやることでないものですから、たいへん言い方も恐縮なんですけれども業界の方々があそこまで決意をされた以上は、どうかそれを通していただきたい。そして、それについて政府としてお手伝いをすることがあれば何でもいたしますという態度で、いろいろおあげになりましたような問題等についても十分慎重に態度をきめていきたいと思っております。  韓国、台湾の問題については、日本業界が態度をきめましたときに、即時に両国に対しては政府から通知をいたしましたが、その後微妙な段階でございますから、ただいまのところは、それだけにまだとどめてございます。

曾禰益民社党

○曽祢委員 日米外交にしこりを残さないように、しかも自主規制に踏み切った業界の意図が実現するように、今後とも外交上の努力をお願いいたしたいと思います。  最後に、時間がなくなりましたが、せっかく、この間議員派遣で沖繩に行ってまいりました。その団に加わる光栄を賜りました一員として、沖繩の問題についてごく簡単に二、三の点だけを触れさせていただきたいと思います。  よく、沖繩には、軍事基地が沖繩の中にあるのではなくて、軍事基地の中に沖繩があるということをいわれるのですが、私は、もっと率直に言うならば、軍事基地がのさばっている陰に——その軍事基地が全島で一二・八%ですか、琉球列島だけでは二二%の面積を占めておる。そこに十万のアメリカ軍人及び軍属が住んでいる。その陰にひそかに百万の沖繩の人たちが住んでおるというのが実情だということが如実にわかったわけであります。そこで、お互いにこの不要不急の軍事基地は返還までに整理すべきである、こういうふうに言っているのでありますが、これらの点については、外務委員長田中先生を団長とするわれわれが幸いに向こうの司令官でもあり高等弁務官でもあるランパートさんにも一時間半にわたって相当ゆっくり意見を交換をいたしました。希望は述べておきましたが、どう考えても、あのままで返したのでは、とてもこれは、返したはいい、これはかえって沖繩の人たち、沖繩県民と米軍との関係はステータスが変わることによってかえって感情を悪化するのは当然だという感じがしてならないわけです。たとえば、アメリカの現にとっておる軍事基地、これは非常に広いのです。集団住宅にしろ、純粋に兵隊のバラックにしろ、そういうところ以外に、中部の東海岸のよょうど目抜きのいわゆるビーチ、海水浴地帯、道路のすぐわきにさくを立てて、あそこが軍人に限らずアメリカ人だけの専用の海水浴場になっているのが二カ所もあるのです。そんなことをいまごろ知ったのかとおしかりを受けるんじゃないかと思いますが、現に私は、そこまでということが如実にわかったような感じがします。  そういったような不要不急のものは、これは確かにあります。五万人も家族がいるのですから、こういう問題について、彼らのレクリェーションについて妥当な考えをしてはいけないことはないでしょう。しかしそれは彼らが現に軍として、海兵隊として占領している広大な海岸線でも決して不可能じゃないのですね。そういう点も、やはりこの基地をこのままにして返すようなことがあれば、これはもう米日感情が、沖繩のこの基地のあまりにも、何といいますか、わがままな態度によって、返還まではがまんしてても、返還後にそういうことは悲常に悪くなるという感じがしてならないのですが、そういう点に関して当然お考えだと思いますが、私が申し上げたような例についてはどういうふうにお考え願うのか。  それから第二の点は、これも、当委員会で外務大臣もむしろわれわれにその努力を誓われたような関係でありますが、よく言うのですが、基地と駐留というものは、これは一つの事態のうらはらです。広大な基地も問題でありますけれども、駐留軍のその目的、任務等が非常に重要なことになるわけでございます。われわれも向こうの軍側のブリーフィング、説明会に出ましたが、その中に出ておりますように、第七心理作戦グループとでもいうのですか、そこの仕事というのは、向こう側の説明によっても、ゲリラ戦、平定作戦、諜報活動それからカウンターインテリジェンス、対敵諜報活動、民事活動、心理作戦——心理作戦としては、宣伝ビラを年間五億枚もつくっている。そういうような部隊がおることは、むろんそれが直接直ちに戦闘作戦行動のために飛び立つようなものではないでしょう。だがしかしそういったもののあまりにも刺激的な部隊は、これはやはりよく外務大臣が言われる日米安全保障条約のために日本の防衛を主とし、また極東の平和と安全にディフェンシブな意味で、その部隊とはちょっと性質が違うのじゃないか、こういう感じがしますが、ボイス・オブ・アメリカの問題も問題になっているそうでありますが、こういったような種類の部隊の存在については、これは核兵器の問題とかあるいはB52とは性質が違います。戦力的の直接の攻撃問題ではないと思うのです。しかしやはり性質上おだやかでないような感じがいたしますが、こういう部隊の撤収といいますか、それを縮減といいますか、これについても当然にお取り上げ願っていると思うのでございますが、いかがでございましょうか。  それから戸叶さんもお触れになりましたと思いますが、請求権の問題です。やはりこの請求権の問題は、戦争中の請求権について放棄していくのはあたりまえですけれども、これも当委員会で外務大臣が言われたように、その後の二十六年のアメリカ支配の間に起こったいろいろな請求権がある。その問題が片づいておらない。それは個人の問題だからだけでは困る。現地の住民及び政府の考えとしては、そういう問題を一括返還前に片づけ、もしくは片づけができなかったら、日本国の責任において肩がわりしてアメリカに対する請求権を残しておいてくれ。そうでないと、各個撃破をやられてしまうという不信感があるわけです。ですからこれは一般の財産の継承の問題等もございますけれども、請求権の問題は、やはり民心の安定上非常に重要だと私は思うので、この点についてぜひお考え願いたいということが第三の点です。  最後に、先ほど中川委員が触れられた点でありますが、道路が、米軍というか——彼らは米軍とは言いません。合衆国が維持している道路が百十マイルある。むろん基地の外にもりっぱな道路をつくっている。これは米軍がつくってしまったのですね。そういうものについての返還が、当然国がアメリカから継承し、そしてそれを国道にするのか、あるいは地方道にするのかは別としまして、その際にやはり有償、無償の問題があると思うのですが、継承の問題とこの請求権の問題があると思うのです。これらの広大なる百十マイルの道路の権利の継承とそれから有償、無償の問題についてどうお考えになるか、以上数点にわたってお答えを願いたいと思います。

愛知揆一自由民主党外務大臣

○愛知国務大臣 非常に的確に御視察いただいて御質疑をいただいてありがとうございます。  基地の縮少についてはかねがね言っておりますが、要するにできるだけ少なくしてもらいたい。同時に、率直に申しまして、タイミングの要素も多少考えていただく必要があると思うのです。この点は大いに苦心していま折衝に当たっております。つまり原則について米側にも異論のあるはずはないのです。つまり、安保条約の目的に沿うように施設区域を提供するのだから現在の基地よりは縮少されるのであるという原則、それからどうしても沖繩の人の立場から見ればこんなところはどうして必要なのかというところが一目しておありになるわけですが、そういう点を提供しないという、そういったような基本原則に抵抗はないのですけれども、いざこの地点この地点ということになりますと、いろいろかってのわが国の歴史上も回顧されるようなことも実はあると思いますがなかなか現実問題としてはむずかしい。これは精力的に折衝を続けてまいりたいと思います。  それから軍の任務の問題は、これはまた提供する施設区域とうらはらの問題でございますけれども、たとえばお気づきかと思いますが、訓練、訓育というようなことの施設の中にも第三国の軍人軍隊を訓練しているような施設もあるようでございますが、こういうところはやはり沖繩に残すのには適当でない部類のほうだろうと私は思います。いろいろ区分けをいたしまして、だんだんと話を煮詰めてまいるべきであると思います。  それから請求権の問題は前々からお話をしておりますように、政府といたしましてはアメリカ側に対して十分説明のつく根拠のあるものについてはこの上とも十分にがんばってまいりたいと思いますが、同時に沖繩県民の方々の請求権ありといわれておる個々の要請については十分に検討いたしまして、日本側独自においてもこれに対する配慮をしなければならない。こういう点については、国内的にはまだ政府部内の大蔵省との間の折衝の問題にもなるものが相当あるように思われますが、それらについて遺憾なきを期してまいりたいと思っております。  いまお尋ねの中に、何か対米請求のワクとして残しておいてもらわなければ困るというような御趣旨のことがございましたが、これらは私は率直に言って若干無理ではなかろうかと思います。といいますのは、やはり合理的な処理をしなければなりませんから、つかみでこれだけは対米請求のワクだなどということは合理的な処理の中に入らない。(曽祢委員「国の責任としてやってくれ」と叫ぶ)国の責任としてやることはもちろんでございます。  それから軍の道路、これは先ほども中川委員から御説明がありまして私答弁を留保いたしましたのですが、御趣旨はよくわかります。なお細部にわたりまして日本側の要請が十分通るようにこの上とも努力をいたしたいと存じます。

曾禰益民社党

○曽祢委員 これは何か私が抜けがけしたような意味では決してないのです。ぜひ大臣にもこの次にじっくりわれわれの視察の結果をまとめて、もっと本格的な質問をさせていただきたいと思いますし、委員長にもこの次の機会にぜひそういうことをやっていただきたいことをお願いいたしまして、本日の私の質問はこれで終わらしていただきます。

田中榮一自由民主党

○田中委員長 本日はこの程度にとどめ、次回は明十九日午前十時より理事会、午前十時十五分より委員会を開会することとし、これにて散会いたします。    午後六時三十五分散会

国会会議録検索システムで原文を見る ↗