本会議 第4号
- 発言数
- 22 件
- 登壇者
- 10 名
- 会派数
- 4
- 開催日
- 1970/11/27
会議録
○副議長(荒舩清十郎君) これより会議を開きます。 ————◇————— 国務大臣の演説に対する質疑 (前会の続)
○副議長(荒舩清十郎君) これより国務大臣の演説に対する質疑を継続いたします。春日一幸君。 〔春日一幸君登壇〕
○春日一幸君 私は、民社党を代表し、わが国政が当面ずる重要課題について、政府の方針をただしたいと存じます。 質問に入ります前に、われら国民が多年の願望であった沖繩県民の国政参加が実現し、ここに新しく五名の同僚議員を迎えたことについて、各位とともに衷心より喜びを分かちたいと存じます。(拍手)あわせてこの機会に、沖繩選出議員各位の長年にわたる本土復帰の御労苦に対し、深く敬意を表します。 そこで、まず最初に私は、本臨時国会が佐藤総理が総裁に四選された後の最初の国会であることの意義を重視し、この際、特にわが国議会政治のあり方について、総理の御所見を承りたいと存じます。 顧みるに、昭和二十三年十月、第二次吉田内閣の成立以来、わが国政は、鳩山内閣、石橋内閣、岸内閣、池田内閣、そうして佐藤現内閣と、すでに二十二年有余にわたって保守政権の聖断にゆだねられてきました。このようなことは、議会制民主国家において、他にその類例がありません。ナチス・ドイツのヒットラーは十二年、ファシスト・イタリアのムッソリーニは二十一年、これらの独裁専制政権といえども、それはわが国保守党の長期政権には、はるかに及ばなかったのであります。 古来、権力は腐敗する、絶対的権力は絶対的に腐敗するといわれておりますが、これは、新陳代謝なくしては腐敗と堕落は防ぎ得ないことを戒める普遍的原理とも称すべきものでありましょう。わけても議会制民主政治は、この道理をも含めて、当然に政党間に政権交代が行なわれることを前提とするものであります。政党間に政権交代のない議会政治は、民主主義をかたる虚像であって、いまやわが国議会制民主政治は空洞化され、形骸化されて、その実体は失われているといっても過言ではありません。かくて人心はうみ、ために国民相互間に疎外感と断絶感がかもし出され、これが、あるものは極左的破壊運動となって奔騰し、あるものはヒッピー、アングラのじだらくとなって内攻し、現にそれがハイジャックの暴挙となり、また今回の三島事件の狂乱となって暴発するなど、ここに昭和元禄の太平ムードの底流には、はかりしれない造反的エネルギーが次第に不穏な高まりを見せておるのであります。また一方、二十数年にわたって変わらぬその経済優先、人間軽視、大企業本位、米国追随一辺倒の政策は、外交の沈滞をはじめとし、現に物価高、公害、交通禍など、わが国の重要問題ことごとくに行き詰まりを来たしております。 総理は、このようなわが国政の現状について、何らの危機感もお抱きにならぬのであるか。民主政治の法則がいかがあろうとも、また国民感情がどのようにうっせきしていようとも、総理はその与党議席が表見上絶対多数でありさえすれば、それでわが国政にいささかも不安はないと自負されているのであるか。 なるほど、わが国政党分布の現状においては、政権担当能力を持つ野党が存在していないことも、保守政権の長期独裁を可能ならしめている大いなる要因でありましょう。しかしながら、われら日本の議会制民主主義者が、ここに心静かに学び取らねばならぬことは、それは英国の議会政治発達の歴史についてであります。すなわち一九二四年一月、時の英国ボールドウィン保守党内閣は、その政局の行き詰まりを打開し、人心の一新をはかるため、その政権を時の労働党マクドナルドに譲っていさぎよく桂冠いたしました。当時、労働党の議席数は過半数にはるかに及ばぬ少数党にすぎず、したがってこのことは、民主主義における多数派支配の原則に徴すれば異例のことではありましたけれども、同時にまた、議会制民主政治が政党間における政権交代をその運営原理とする観点に立つならば、これはまことに厳粛な教訓であります。すなわち、英国の議会制民主政治は、このようにして各政党がそのルールとモラルを尊重することによって、また政治に携わる者がひとしく主権者国民に対するみずからの節度、分限をわきまえることによって、本日あのようなゆるぎなき体制を確立したのであります。 佐藤総理は、英国の議会政治が、このようにして、政党間における政権交代ルールの誠実なる実践によって、その健全なる秩序が保たれていることをどのように評価するか。かりに、わが国において政権担当能力を持つと見られる野党が結集された今後において、そこに政権移動の機会が発生した場合、総理はそのときなおも多数者支配の原則に固執するか、それとも政党間の政権交代の原理に従うか、この際議会制民主主義のもとにおける政党政治のおよそあるべき理想像について、その御所信のほどお示し願いたいのであります。(拍手) 次は、総理大臣と国民との関係について率直に疑義をただしたいと存じます。 ここに昨年暮れの総選挙では、自民党の得票率は全体の五〇%を割りました。これは、国民主権者の過半数がいまや自民党政権に背を向けたことの証拠であります。(拍手)そのような政情の中で、このほど総理は自民党の全国大会において、国民一般の意表をついて、思いもかけず四たび重ねて立候補せられました。そしてあなたは、人事の佐藤さんの名に恥じず、党内派閥勢力を巧みに操縦して、その対立候補三木さんを押えられて総裁として四たび重ねてその選任を受けられました。申すまでもなく、その総裁のいすなるものは、そのまま一議に及ばず日本国総理大臣のいすにつながるものであります。かくてあなたは、さらに向こう二年、前後通算八カ年にまたがって、巨大なる政治権力をその一身に集中されることになりました。わが国政における動脈硬化の症状はいよいよ内攻して、やがてそれは手の施しようもなくなるほどに悪化するような心配はないか。 現に三木武夫氏は、その直後の記者会見において、それらの事情にも触れつつ、総理を次のごとくに批判されておるのであります。すなわち、その第一点は、佐藤政治は国民からすでに遊離しつつあると断言し、そして、佐藤氏の考えは側近ですらさっぱりわからぬから、国民にはなおさらわかるはずがないときめつけられております。(拍手)第二点は、政治指導者の信頼は言行一致に始まるとして、佐藤内閣の六年間の実績は、その発言と行動が一致していたとは思わない、と酷評し、総理が第一期組閣以来常に強調高言されてきた社会開発、人間尊重の金看板に対し、それは看板倒れと言わぬばかりに痛烈な批判を浴びせ、特に中国問題については、佐藤内閣では前進できるとは期待していないとして、総理の外交手腕を見限り、せめてこれ以上悪くしないでもらいたいと慨嘆しておられました。私どもは、この三木さんが現に自民党の最高幹部の一人であり、かつは、ついこの間まで佐藤総理に近かった有力閣僚であられたことにかんがみ、この三木発言は、佐藤総理の人間像と、自民党という名の派閥連合政党の内幕を、何かしら特別の窓からじかに見せつけられた思いがいたしました。(拍手) そこで、ここに私の心にわき上がる疑問の第一は、全国民の安危をになう一国の総理大臣が、その党のわずかな代議員たちだけの手によって、しかも国民不在の場所で、かつ国民に全然無言のままでさらに無期限にその権力の座にすわられるということは、これは憲法の精神に照らし、はたして妥当なことであろうかということ。そして疑問の第二は、いかに党内民主主義とはいえ、政治家の生命ともいうべき政策や政治理念がそのように激しく相対立しながらも、なおはばかるところなく同一の政党に結集しているその理由と目的は、それは保守と財界が、現行支配体制を維持するための至上命令に基づくものではないであろうかという、このことであります。われら革新陣営も、佐藤、三木両氏のこの対立共存の姿は、われらが革新政権を樹立せんとする場合、これは一種の他山の石とも見るべきものであろうが、それはそれとして、総理はあの三木さんの辛らつな批判をどのように受けとめられておりますか。いまにして総理はあの批判大きい四選出馬について、むしろ何らかの御反省はないか。それとも、なおやみがたき経綸があなたをそのようにかり立てたものとするならば、あなたが特にこの四選の任期をかけて実行されようとする政治目的は何々か。この際、国民の渋面をやわらげ、消沈する人心を喚起するために、総理が今後実行されんとするかくかくたるその政策対象の内容を、ここに具体的に、国民の前に御明示願いたいのであります。(拍手) 次は、外交問題について質問をいたします。 過ぐる国連の記念総会における佐藤総理の演説がさっぱりアピールせず、各国代表の退散でその議場がうつろになり、ことしもまたわが国の国連外交は失敗であったと報道されたことは、日本の名誉のため、まことにまことに遺憾なことでありました。(拍手)思うに、それは日本政府に真に自主的な外交政策がなく、そのゆえに、総理の演説は、ことさらに肝心の中国問題から逃避せられ、また鶴岡大使のそれは、ほとんどアメリカ演説のものまねのごとき印象を与えたからにほかなりません。終戦後二十五年を経過し、いまや経済大国を自負するわが国は、もはや対米追従から一転して、すみやかに自主自立の体制を確立すべきぎりぎりの段階に到達していると思うのであります。したがって政府は、当面まず対中国問題、対米繊維交渉から、その正しい姿勢の第一歩のスタートを切るべきでありましょう。 そこで、初めに、中国を事実上代表する政府は、北京政府か、台湾政府か、現時点における佐藤内閣の見解をお伺いいたします。ここに冷厳に直視しなければならないことは、北京政府は台湾を統治してはいないし、台湾政府もまた中国を統治してはいないという、この厳然たる事実についてであります。したがって、その台湾政府のみが人口七億の中国の代表権者だとの仮想に立つことは、明らかに事実に反するのみならず、それは、一方、北京政府の実在を否定するよこしまな独断であって、何ら客観性を持つものではありません。したがって、佐藤内閣が、台湾政府を今後とも中国代表権者として扱うことは、明らかにそれは虚構であり、なお、それを虚構と知りながらそれにくみすることは、これは最も慎むべき政治の邪道であります。(拍手)政府は、中国における台湾政府の国家的地位の現状をどのように弁識しておるか、総理より御答弁願います。 従来、総理は常に、中国敵視政策はとっておらぬと述べられてきました。しかしながら、その実態はいかがでありましょうか。かの国連における中国代表権の重要事項指定方式といい、佐藤・ニクソン共同声明における日台の安全保障一体化の条項といい、また日中貿易における輸銀使用禁止の措置といい、これはまさしく中国敵視政策以外の何ものでもありません。このように佐藤内閣から敵視されておる中国が、佐藤内閣を敵視し返すことは当然の成り行きであり、これでは日本と中国との関係はますますその対立のみぞを深くするばかりであります。日中両国の友好なくしてアジアの平和はなく、日中両国の親善なくして両国国民の安全と福祉は確保し得ないものであるということを、総理はこの際、実感をもってとくと熟考される必要がありましょう。従来、佐藤内閣は、台湾政府をささえて独特の一つの中国論なるものを仕立て上げ、これを切り札にして中国問題の矢面から身をかわしてきたが、その論理はもはや日本外交史の過ぎ去った記録とも見るべきものであって、本日の国際外交の舞台は、すでに次の局面に向かって新しく展開し始めておるのであります。政府はこれらの事実を踏まえて、この際、従来の敵視政策を一てきし、いまさら大使級の接触などという中途はんぱな思いつきは清算して、すみやかに両国政府間交渉を提唱し、もって中国との国交正常化を達成すべきであると思うが、政府の御方針はいかがでありますか。(拍手) 台湾問題は、国連の協力のもとに、彼ら自身の処置にまかせるしか他に手段方法はないものと断ずべきであります。政府は、一日先見の明あって、国政の進路にあやまちなきを期せなければなりません。ここに、中国政府の国連代表権に関するアルバニア案は、国連総会において可決され、さきにはカナダ、イタリアの中国承認など、国際情勢は現に急速なる変化を遂げました。中国に地理的に一番近い日本が、外交的に一番遠い地点に立って、この先とも重要事項指定方式に固執するとするならば、それは全くどうにも不自然のきわみであり、まさに愚の骨頂と申さねばなりません。政府は、今後の国連外交において、対中国政策をどのように展開する方針であるのか。また、日中関係をどう打開しようとするのであるか。総理よりこの際、今後の新事態に対処せんとする政府の態度、方針を御明示願いたいのであります。 次は、対米繊維交渉について質問いたします。 ここに、アメリカが、わが国に強圧を加えている繊維の対米輸出自主規制なるものは、それは、自由貿易主義の本旨に反し、国際経済の発展を阻害するものであって、これは明らかにガットの国際協約にそむく違法行為であります。さればこそ、本院は、昨年五月八日の本院本会議において、政府は米国に対し、かかる輸入制限を企図せざるよう強く政府間交渉を行なうべき旨決議いたしておるところであります。しかるところ、政府は、去る十一月十四日、米国側の圧力に屈し、関係業界の反対を押え、その了解も得ないままに、事もあろうに、みずから自主規制の政府案を携えて、いわゆる見切り発車をあえてしました。思えば、伝えられるところの昨年十一月の日米首脳会談における密約といい、この十月両国首脳間にかわされたという合意の予約といい、これまさしく院議に挑戦する行政権の暴走であり、政治権力の乱用であります。 一体、政府の行なっているあの繊維輸出自主規制に関する対米交渉の法的根拠はどのようなものか。たとえば、かりにその政府間交渉が妥結した場合、政府は、これを国家を拘束する条約または協定として扱い、よってあらためて国会の承認を求める方針か、まずその点を明らかにいたされたい。(拍手) また、それが一種の行政協定もしくは単なる政府間の申し合わせにすぎないものであるならば、その合意は国民に対し法律上何らの拘束力を持たないものと思うが、政府の見解はどうか。したがって、この政府間交渉がかりに妥結したとしても、その条件を繊維業界が承服しない場合は、現行貿易管理令が本件に関しては法律上重大な疑義があり、さらに、行政実務上、法の適用面において、現実の問題として機能し得ないことにかんがみ、政府がなおもその協定の効力を確保せんとするならば、それはあらためて国会に対し何らかの必要なる法的措置を求めなければならないであろうが、これに対する政府の方針はどのようなものか。 また、そのようなアメリカのエゴイズムに屈服、加担する条約、協定の批准に対しても、または不当な国家規制を求める法的措置に対しても、わが国会がこれを否決することは歴然たるものであろうが、その場合、それは外交上の背信的重大問題として、佐藤内閣の政治責任はもはやのっぴきならぬものになりましょう。総理は、その場合いかにしてその政治責任を償うつもりか。政治のモラル、憲政の常道をもってすれば、それは内閣総辞職のほか他に方法はないと思うが、これに対する政府の見解について、総理より御所信のほど承りたいのであります。(拍手) いずれにしても、あのガット協定なるものは、米国が、国際正義とヒューマニズムにのっとって世界の平和と全人類の経済的繁栄のためにせっかく努力して築いたものであり、さらに、それはケネディラウンドによって一そうにみがき上げられた歴史的金字塔であります。しかるに、本日全世界を脅かしているあの七〇年通商法案なるものこそは、米国みずからが突如として我利我執の野性に戻り、それをみずからの手によって破壊せんとする暴虐立法であります。すべからくわが国政府は、国論を背景に、国際世論とともに、この際本問題はガットの議場に持ち込むべきものであり、それと同時に、一方米国の良心にも広く訴えて、断じてそれを思いとどまらせるべきであって、事もあろうに、それに迎合屈服して、みずから進んで弱肉強食の犠牲にわが国繊維産業を追いやるがごときは、決して許されるところではありません。(拍手)このほど政府は、この七〇年通商法案が国際貿易発展のための諸原則を破壊するものとして、これが実施される場合にはわが国益保護のため必要なる対米報復措置をとることもあるとの趣、このほど米国政府に申し入れを行なった模様であります。もとよりそれは、国際正義のため、特にわが国経済防衛のため、当然の措置でありましょう。ことに政府がその対米報復措置として考慮しているというその具体的内容は何々か、この際、わが国政府は、その報復措置の具体的内容を明らかにすることによって、あの七〇年通商法案が、日米両国の国民経済と国民生活、さらにはそれが広く国際経済社会にいかに激甚なる悪影響を与えるかを米国に認識せしめ、深くその反省を求めるべきであると思うのであります。総理並びに通産大臣より、これらの諸点について明確なる御答弁を願いたいのであります。 次は、公害対策について質問いたします。 公害防除の対策は、まず公害の概念を明確にし、その公害を発生せしめた責任主体を正確に把握するのでなければ、その効果は的確を期しがたいと思われるのであります。 そこで、公害の発生条件は、これをおよそ次の三種に類別することができると思います。その第一は、全業がその利潤獲得のために行なう事業活動から生じる公衆に対する害毒、たとえばそれは、田子の浦、四日市ぜんそく、水俣病のごときものであります。その第二は、公共的事業を遂行する過程で発生する公害、これは鉄道、空港の騒音のごときものであります。第三は、不特定多数者の行為が集積することによってそれが公害となるもの、これは自動車の排気ガスによる大気汚染、家庭排水による水質汚濁のごときもの、以上であります。 そこで、特に留意すべきことは、現行公害対策基本法においては、この公害発生者の主体の区分が欠如していることによって、その責任の所在を不明確にしていることであります。すなわち、その公害なるものが、企業利潤獲得のための行為から発生しているものであるならば、それは純然たる私的加害行為であり、それは私害として区分すべきものであって、公害ではありません。したがって、その害毒は、その企業責任において防除すべきものであり、また、それによる被害に対しては、その加害者が全面的に賠償の責めに任ずべきことは当然のことであります。ここに、現行公害対策基本法が、事業活動による公害防止の対策と称して、本来私害であるべきものを公害のワクの中に組み入れていることは、根本的な誤りであると思うが、政府の見解はいかがでありますか。 次に、今回政府が、公害犯罪処罰法案の提出に踏み切ったことは、これを評価するにやぶさかではありません。しかしながら、この法律が有効に作用するためには、民法分野においても無過失損害賠償責任制度を確立することが、きわめて必要なこととして期待されておりました。ここに刑事法分野でこのように特別立法が可能であるのに対して、民事法分野でそれができないということは、法体系の均衡の上からも、さらには、この問題がいまや全国民の生命と健康に急迫していることにかんがみ、とうてい納得できません。たとえば今後、この公害犯罪処罰法が発動されたとした場合、これに見合った被害者の損害求償権が具体的にどのように措置されることになるのか、この際、無過失損害賠償責任制度に対する政府の方針とともに、これらの諸点に関する政府の見解をお示し願いたいのであります。 ここに経済企画庁の推計によれば、近く五年後の昭和五十年度における公害は、昭和四十二年度に比べ、それが現状のままに推移するときは、石油、鉄鋼、電力企業がまき散らす亜硫酸ガスが二・二倍、自動車の排気ガスが含む一酸化炭素が二・四倍、工場排水による水質汚濁が二・二倍、都市や産業による廃棄物が二・五倍に累増するとのことであります。このとき、日本のGNPは現在の二倍になるというのでありますが、いかにGNPのパイだけが大きくなったとしても、その分配を受ける肝心の国民が、そこから発生する公害のために病に倒れたり、かたわにされたり、死んでしまわなければならないようでは、その巨大なるパイは、むしろ有害有毒なものであって、国民福祉にとって何の価値もありません。(拍手) 総理は、昨日の代表質問に答えられて、政治の目的は国民福祉にあって、経済の成長はその手段にすぎないものと言明されました。ならば、政府は、いまこそ憲法第二十五条の条章をその政策の中心に置きかえて、産業と公害に対する根本理念を根本的に転換し、すなわち人間優先、経済劣後の政策体系を確立するとともに、環境保全省を設置して公害行政の強化一元化をはかるなど、いまこそ厳格なる法的措置、十分なる財政措置とまっこうに取り組むべきであると思うが、これに対する政府の決意、方針はどうか。総理並びに山中総務長官よりその御所信のほどを示されたいのであります。(拍手) 次は、沖繩対策について、当面する重要なる二、三の問題について質問をいたします。 総理は、昨日の本会議において、沖繩施政権返還の日時は一九七二年のできるだけ早い時期を期待していると述べられましたが、そのできるだけ早い時期なるものは、わが国の財政年度が四月に始まることにかんがみ、望むらくは一九七二年度の沖繩県の行財政を本国会が本予算とともに一括審議ができるよう、その時期を四月以前に決定せられたいと思うが、これについて現在における政府の努力目標について御説明願いたい。 次は、沖繩県民が最も心配しているその経済振興策について伺います。 施政権の返還によって生ずる政治、経済の激変に対処して、政府は、沖繩県民の生活がこれによって脅かされることのないように特に万全を尽くすべきであると思うが、政府が構想している沖繩経済振興策はどのようなものか。伝えられる沖繩開発公庫の設置をはじめ、その具体策について、これを短期的展望と長期的展望に分けてお示し願いたい。 次は、基地労働者対策について伺います。 ここに沖繩経済の振興をはかるには、まずいかにして基地依存経済から脱却するか、ここに問題の焦点があると思うのであります。思うに、政府の日米安保政策から見て、基地の全廃はあり得ないとしても、その縮小は当然の趨勢であり、またそのようにすべきであると思うが、これに関する政府の見通しはどのようなものか。かくて基地が縮小されれば、基地労働者の整理を伴うことは必然であるが、これに対する政府の対策措置はどのように準備されておるか。これは沖繩の返還と同時に、直ちに処理を要する重大問題であります。この際、山中担当大臣よりその構想を御明示願いたい。 なお、沖繩返還後は自衛隊が沖繩に駐留することになるとの趣であるが、その配備はどの程度のものであるか。また、この場合、自衛隊用の施設はどうするか、米軍基地の返還を受けた後それを使用するか、あるいは既存の米軍基地を日米で共同使用するか、あるいは新しく別個に新設するか。これは日米安保体制の性格、機能にかかわる問題として重視すべきであります。中曽根防衛庁長官より政府の方針を伺っておきたい。 次に、米民政府は、このほど米ガルフ石油会社に対し、平安座島周辺の水面管理権を付与したが、これは米民政府による不当きわまる背信行為というべきであります。すなわち、沖繩返還後さらに六十年の将来にわたって、わが国の領海内に外国の支配水域を存在させることは、実質上わが国にアメリカの租界を新しく容認することであり、これはわが国主権に対する陰険なる侵害行為であります。ここに琉球政府には外交権がないことにかんがみ、政府はよろしく琉球政府をバックアップして、主権国家たるの権威と責任において、厳然として外交権を行使すべきであります。(拍手)まことにこの種の不法不当な米企業のかけ込み的利権行為を黙認するときは、せっかくの施政権返還の光輝ある意義をそこねるばかりでなく、日米友好の将来に向かって、これが新しい禍根となることは明らかであります。この際、政府はき然たる態度をもって、米国政府に対してこれを取り消すよう要求すべきであると思うが、これに対する政府の見解はどうか、総理よりその態度、方針を明らかにいたされたいのであります。(拍手) 最後に、三島由紀夫らの自衛隊乱入事件について、政府の政治責任をただしたいと存じます。 あの三島事件に見る自衛隊のあり方については、国民はむしろあ然たるものがあるのであります。すなわち、凶器、刀剣を携えた一般人が自衛隊内を自由に往来できるということ、さらには、益田東部方面総監が総監室に監禁されていたにもかかわらず、だれ一人身を挺してあくまでもこれを排除しようとしなかったこと、また部隊の指導者が、事もあろうに三島らの要求に応じて、隊員千数百名を招集して、あの奇矯な演説を聞かしたことなど、かくて自衛隊東部方面総監部が、二時間余にわたり、これら闖入者のじゅうりんにゆだねられたことは、自衛隊本来の使命と責務に照らし、これは防衛政策上の問題としてまことに重大であります。 このような事態に対して、国防会議の議長である佐藤首相並びに自衛隊の直接指揮監督の最高責任者たる中曽根防衛庁長官は、その責任をどのように受けとめられておるのであるか。昨日の本議場における首相の答弁や、この事件発生後、新聞に発表されたそれらの談話には、総理も長官も、あたかも第三者のごとくに、もっぱら三島を非難するにとどまり、おのれが責任について何ら省みるところのなかったことはまことに慨嘆にたえません。(拍手)総理並びに中曽根長官は、この三島事件に対し、その政治責任をどのようにおとりになる御所存か、その御決意のほど、国民の前に明らかにいたされたいと存じます。 以上、私は、わが国政が当面する重要なる諸点について質問いたしました。総理並びに関係大臣より誠意ある御答弁を期待いたしまして、私の質問を終わります。(拍手) 〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 春日君にお答えをいたします。 まず最初に、私の自由民主党総裁としての四選について言及され、いろいろ御批判をいただきました。私も国会に議席を持つ者であり、議会政治、民主政治、これが何を意味するか、また、どういうことが守られなければならないか、このことは十分知っておるつもりであります。春日君のお話では、政権の交代が主権者である国民の意志とは別にとり行なわれるような御意見であったように聞きます。その点は、もし違いであるならば、私が誤解ならば私のほうが訂正をいたしますが、わが党は、選挙を通じて国民の支持を得ておる、その点をはっきり申し上げておきます。(拍手)そうして、まだわが党の内閣は政策的に行き詰まっておらないということ、そのこともはっきり申し上げておきます。 ただ私は、春日君の御意見を謙虚に伺ったのは、実は、ただいまのような選挙の結果は別として、同一人がいつまでも政権の座にあること、そこに一つの問題がある、かように思って、春日君の御意見もそういう意味で私は謙虚に伺ったつもりであります。したがいまして、私が、政権こそただいま他党に譲る考えは持っておりませんが、総裁として、また同時に総理として国政を担当しておる限りにおいて、私が政治信念、わが党の政治信念を貫いて、そうして国民の期待に沿うものであることを、この機会にはっきり申し上げておきます。(拍手) ところで、いろいろ具体的な質問がございましたので、それらの点についてお答えをいたしたいと思います。 まず第一に、中国問題についてであります。 春日君の政府に対するおしかりは、これまた私は謙虚に伺ったつもりであります。中国問題はアジアにおける最大の問題であります。特に中国大陸に隣接するわが国としては、その動向に深甚たる関心を払わざるを得ないのは当然と申せます。現在、中国大陸には約八億といわれる国民を支配する北京政府が存在し、一方台湾にはわが国と正式外交関係を持っている国民政府が存在していることは厳然たる事実であります。しかしながら、北京政府、国民政府、ともに全中国の主権を主張しております。ここに問題のむずかしさがあります。政府は、中国は一つであるという観念に基づいて国民政府を正統政府として認め、国府との友好関係を維持しております。そして、中国大陸との間には、人の交流をはじめ、貿易、文化の面での交流を行なっております。私は、国連演説でも述べたとおり、問題解決のため、双方——これは北京と台湾でありますが、双方があくまでも平和的な話し合いを行なうことが最も望ましいことであると考えております。武力によって現状を変更するようなことは絶対に避けなければなりません。武力による解決は真の解決にはなり得ないからであります。しかしながら、現状ではこのような方向で事態が急進展する見込みはありません。 したがって、政府としては、国際信義を重んじ、国益を守り、アジアの緊張緩和に資するという見地から、国際情勢の推移を見守りつつ慎重に中国問題と取り組む考えであります。わが国は、歴史的にも中国と深い関係を持つだけに、問題の処理のしかたもむずかしいし、カナダやイタリアのように簡明直蔵な中国政策をとることはできないことを御理解いただきたいと思います。明年以降の国連対策につきましては、今後慎重に検討する方針であります。 日米繊維問題につきましては、従来から米国に対し、ガットのルールに基づいて解決すべきことを主張してまいりましたが、この基本的考え方はいまも変わりはありません。また、これまでも繰り返し述べたように、本件を解決するためには、わが国業界の理解と納得を得ることがあくまでも前提であります。政府としては、業界の理解と協力を得られるような線で交渉をまとめるよう努力しております。国会の決議につきましては、政府としてその趣旨を尊重すべきことは当然であります。 次に、米国における輸入制限立法の動きは、深く憂慮すべきものであります。各国同様、わが国も米国に対し、万一米国が一方的な措置をとり、わが国の利益が害されるような場合には、国際ルールに沿って所要の措置をとる権利を留保する旨申し入れをいたしました。しかし、当面重要なことは、各国が協力して、このような立法の動きが現実化することを防止することであると考えます。わが国が繊維問題を話し合いによって解決しようとしているのも、もし通商法案が成立すれば、日米貿易はもちろんのこと、自由貿易体制全般に多大の悪影響を及ぼすことになるからであります。 なお、政府としては、強権の発動という形で輸出貿易管理令を発動することは、現在のところ全く考えておりません。この点でたいへん心配していらっしゃるようでありますが、私は別に政治不安を引き起こすような問題とは考えておりません。はっきり申し上げておきます。 次に、公害問題について、まず、企業活動から生ずる害毒は公害にあらずして私害ではないかとの春日君一流の御意見でありました。一流ということばが不適当なら、これはいつでも取り消します。しかし、公害、私害ということばのあやは別として、原因者が判明している場合の責任はその原因者が負うべきものであり、その企業が公害防止施設を設置し、また、被害者に対する補償等を行なうのは当然であります。なお、近く提案を予定している公害防止事業の費用負担法におきましても、その企業負担を明らかにしております。 次に、無過失賠償責任の問題でありますが、この問題につきましては、昨日この会議場において、日本社会党下平君及び公明党の浅井君の御質問について答弁したとおりでありますので、省略させていただきます。 また、春日君からは、産業と公害に対する根本理念を大転換せよとの御意見がありまして。政府としては、経済をすべてに優先させる企業第一主義をとってきたものでは決してありませんが、春日君の具体的な御指摘のように、今後の経済の拡大に伴って、公害現象が著しくなることが予想されますので、この際、国民生活優先を明確にする意味合いにおいて、公害対策基本法第一条を改正し、さらに企業者の責務を明確化すると同時に、関係各法案について、全面的に企業に対する規制を強化したものであります。いずれ、委員会で詳細に御審議をいただきますから、その際に十分御審議のほどお願いいたします。 最後に、沖繩問題についてお答えをいたします。 政府としては、一九七二年中のできるだけ早い時期に沖繩の施政権返還を実現することを基本目標として、米側と交渉を重ねております。したがって、七二年のいつかというところまではまだ煮詰まっておりません。しかし、それについて春日君から、予算審議と一緒にやれるように、できるだけ早くやれという、こういう御期待が述べられました。また、御意見がございました。私どもも、ただいま申し上げるように、できるだけ早い機会にやりたいというのが私どもの真意でありますから、御協力を得たいと思います。 また、政府としては、かねてより復帰後の沖繩経済の振興施策につき、種々検討を行なっておりますが、このうち、復帰に伴い生ずる県民生活及び産業活動への影響を緩和するための当面の施策の一部として、このほど四十項目にわたる復帰対策要綱を定めたところであります。さらに、長期にわたる振興施策については、なるべく早い機会に離島振興、産業基盤等の整備充実、産業振興対策の樹立、生活環境施設、文教施設等の整備などを内容とする経済振興計画を策定する考えであります。 なお、基地労務者の問題等につきましては、関係大臣からお答えをいたさせます。 ところで、最後に、一昨日の三島事件について、政府の責任、政府自身が何ら反省がないじゃないか、こういう御指摘がありました。私は、この事件が起こりましたことについて、まことに遺憾の意を表した次第でありますが、また、いわゆる楯の会と自衛隊との関係、これは全然関係がないものと私は理解しております。いずれ、中曽根君からお答えをいたすことにいたします。 いずれにいたしましても、いかなることがありましても、法を無視し、暴力に訴える、さようなことは許されません。これは、私どもの民主主義の基本のたてまえであります。そういう意味において、昨日もはっきり申し上げました。ただ、才能ある作家を失ったことは私はまことに残念だということを、あわせて昨日申し上げた次第であります。御了承願っておきます。(拍手) 〔国務大臣愛知揆一君登壇〕
○国務大臣(愛知揆一君) 私に対する御質問に答えいたします。 アメリカの民政府が、その指令によりまして、ガルフ社の精油基地である平安座島周辺の水域を含む金武湾港の管理運営権を付与したという問題でございます。これは、復帰後の沖繩における港湾管理については、当然本土の関係法令がそのまま適用になります。したがって、こうした指令は効力を失うことになりますので、これに基づくガルフ社の管理権も消滅することになるわけでございます。この点は米民政府とガルフ社、両者とも公式にかつ無条件に認めておるところでございます。したがって、ガルフ社に対するその管理権が、本土に復帰しました後、米国のたとえば租界のようなものになるというような御懸念は全くないものと相なるわけでございます。 また、アメリカ民政府としては、同湾内の航行の安全や海水の油濁防止等についてのガルフ社の管理責任及び権限を明確にしておくことが適切であると考えて、この指令を発出した由でございますが、この措置がそのときの事情からいえばやむを得なかったものではないかと考えられるわけでございますが、いずれにせよ、米民政府、ガルフ社、両社ともこの管理権に固執するものではありませんし、現に琉球政府と協議を続けてもおりまするし、先ほど申し上げましたように、日本政府といたしましても、本土に復帰の後におきましてはかくのごときものが続かない、効力を失うものである、かような見解を米国ともどもとっておりますから、御懸念のことは万々ないと思います。しかし、せっかくの御懸念であり、また重大な問題でございますから、今後政府といたしましても十分注視してまいりたいと存じております。(拍手) 〔国務大臣山中貞則君登壇〕
○国務大臣(山中貞則君) 公害が私害であるかどうかの議論については、総理からお話がありましたが、公害を発生しておる企業が私企業であるという意味においては確かに御指摘のとおりだと思いますが、その発生した害が相当範囲にわたるという意味において、一応、日本では公害という呼び方をしておるということでございます。企業が、公害対策をみずからの責任において行なわなければならないということは、すでに、企業が新しく立地する場合において、公害企業であるがゆえにその企業立地を困難にせしめている例、あるいはまた、その地域において企業活動を続けようにも、よき隣人たり得ない企業がそこで活動し得ない例、あるいはまた、存立しようとしても、求人をして、新しい社員を募集しようとしても応ずる人が少ない例等、やはり反社会的な企業というものの存在が許されない環境ができつつあることは、春日議員の指摘されたとおりのことであります。したがって、私どももそのような考え方で公害対策に万全を期してまいりたいと存ずるわけでございます。 なお、公害罪、それに伴って議論される無過失責任論、もしくは挙証責任転換等につきましては、今朝の閣議におきまして、司法権を背景とした全く法律の専門的な理論構成の分野が非常に多うございますので、他の十四の法案以外に、この公害関係の法案についてのみは、法務大臣の説明、質疑応答等をいただくように決定をいたしましたので、お許しを願いたいと思います。 次に、沖繩の問題につきましても、総理の沖繩に対処する決意の御表明がございました。私どもは、その決意を受けまして、基本的には沖繩の復帰に対する直接のショックをやわらげるための措置を総理の御発言のとおり閣議でとりましたと同時に、将来の展望にわたっては、予算措置、行政措置等において、沖繩振興対策特別措置法の制定、もしくはまた、沖繩復興開発金融公庫等の創設等を念頭に置きながら、さしあたり沖繩が復帰した後において、将来過疎県になることのないように、そして九十八万の人々が、さらに人口もふえ、自分たちの郷土で安定して生活が営んでいけるように努力をしたいと考えるわけでございます。 基地労務者の問題につきましては、基地労務者の方々が好きこのんで選択されたものでは大部分ないわけでありまして、沖繩の場合は、ことに本島中南部等の過密地帯の基地の存在を見ればわかりますように、その基地が基地と化した経過を見まするときに、自分たちの生活のかてであった土地を強制的に収用された経過等が厳然としてあるわけでありますから、やむなく軍のために働かざるを得ない立場の人々が多いことに思いをいたしまするときに、私たち祖国においては、できるだけこれらの人々の基地縮小に伴うところの当然の人員整理等に関する措置については、誠意をもって万全を期していく義務があると存じます。現在においても、私どもは退職給付金や退職金等の本土並みの措置を予算上努力すると同時に、退職を不幸にして余儀なくされる方々の再就職の就職あっせんや、あるいは米軍基地内を含む就職訓練等の予算措置等、いろいろと私たちとしても努力をしておるわけでありますが、さらに長期的には、沖繩の現地における雇用需要等に貢献し得るような企業をなるべく沖繩に進出ができるように促進措置を講じてまいりますとともに、政府自体においては、北部循環道路、もしくは総理の裁定によって定まりました復帰記念特別国体等の関連事業等によりまして、自分たちの分野に応じたそれぞれの職域において再就職の場所が提供されるように、できる限りの努力をしてまいるつもりでございます。(拍手) 〔国務大臣中曽根康弘君登壇〕
○国務大臣(中曽根康弘君) 三島事件は、まことに遺憾な事件でございます。調査の結果によりますと、あのように世界的に有名な人が、面会の予約をいたしまして平穏裏に入ってきたところ、突如として手足を縛り、さるぐつわをはめたというのが状況でありまして、時の要求項目を見ますと、もし要求を聞かなければ益田総監を殺して自決するということが明らかになってまいりました。八名の人間が救出に行きましたが、みな二カ月ないし四カ月の重傷を負わされまして、いま病院におるところでございます。 こういう状況を見ますと、無用の殺傷を避けて——三島事件は、覚悟の事件でありますから、いかなる場合においても三島本人はあそこで自決する覚悟で行ったように思います。そういう覚悟の事件でございますから、あの際、匹夫の勇を避けて、無用の殺傷を避けて、ああいう措置をとったことは、遺憾な事態ではありますが、やむを得ないと思います。 私は、平生自衛官に、君らが命を捨てるのは、防衛出動のときに国家のために死ぬのであって、ふだんは命を大事にしろ、そういうように教えております。 なお、将来は大いに戒めたいと思います。(拍手) —————————————
○副議長(荒舩清十郎君) 上原康助君。 〔上原康助君登壇〕
○上原康助君 私は、日本社会党を代表し、かつ、二十五年に及ぶ長期の間、祖国から分断され、米軍支配のもとで苦悩してきた沖繩百万県民にかわって、沖繩の心を国民に率直に訴えるとともに、政府の沖繩問題に対する基本的考え方について、佐藤総理をはじめ関係各大臣に質問いたします。(拍手) 御承知のように、第二次世界大戦において、沖繩は本土防衛の最後のとりでとなり、悲惨な戦場と化したのであります。ものごとの見さかいもつかない少年少女に至るまで弾薬運搬や傷病兵の看護にかり出され、乳飲み子をかかえた母親の中には、防空壕を追い出された者、あるいは集団自決を迫られて死亡した者など、実に二十万近いとうとい人命を失い、忘れることのできない民族の悲劇を体験させられたのであります。 沖繩県民は、このような言語に絶する戦争の犠牲をこうむったにもかかわらず、戦後、平和を基本とする日本国憲法の成立を心から喜び、焦土の中から本土の国民と一緒になって再び戦争のない平和で民主的な祖国日本の再建に大きな期待を寄せていました。しかしながら、その期待は完全に踏みにじられました。 昭和二十七年、沖繩県民の意思を問うことなく、平和条約と引きかえに、日本政府は、一方的に沖繩を米軍支配にゆだねてしまったからであります。(拍手) そこで、まず私は、沖繩が祖国から分断され、米軍支配にゆだねられた根拠となった対日平和条約第三条の歴史的犯罪性と、佐藤内閣を含む歴代自由民主党政府の沖繩に対する差別政策に対して、その政治的、道義的責任を追及せざるを得ないのであります。(拍手、発言する者あり) そもそも連合国軍の日本占領の目的は、ポツダム宣言に基づいて、日本の軍国主義解体と民主化だったといえましょう。一九四五年八月十五日、日本がポツダム宣言を受諾し降伏する前に、米軍に占領されていた沖繩は、当然戦時国際法であるヘーグ陸戦条約の許す範囲内での占領状態でなければならなかったはずであります。 ところが、米軍の沖繩占領は、この戦時国際法やポツダム宣言をも全く無視した専制支配であったといわなければなりません。特に、中華人民共和国の成立や朝鮮戦争の勃発により、米国が当初の占領目的をすりかえて、反共アジア政策の拠点として沖繩の米軍基地を拡大強化してきたことを、政府は黙認してきたのであります。(拍手) さらに、米国のアジアにおける軍事支配を容易ならしめる新たな法的根拠として、対日平和条約と安保条約が締結され、沖繩は平和条約第三条によって、立法、司法、行政の全権を米国に握られ、今日に至っているのであります。平和条約第三条の不法、不当性については、これまで国会内外を通して指摘されておりますが、少なくともわが国が国連に加盟した段階で、その効力について再検討すべきであったはずであります。(拍手) しかるに、自由民主党政府は、わが国の国際舞台への進出の踏み台に沖繩を利用し、平和条約第三条の不法、不当性を顧みるどころか、国連加盟後は、一段と対米従属関係を深める中で、米国の沖繩の軍事支配に積極的に協力、加担してきたのであります。(拍手)それゆえに二十五年の間沖繩県民がこうむってきた人的、物的、精神的損害は、筆舌に尽くしがたいものがあります。主権者であるべき沖繩県民が、国政に参加することさえ二十五年間も断たれてきた一事をとらえてみても、いかに差別されてきたかがわかるのであります。 このように、戦時中はもとより、戦後二十五年この方、異民族支配のもとで沖繩県民がこうむってきた数々の差別と犠牲、屈辱に対して、政治的に、あるいは道義上、いかなる責任を感じておられるか、佐藤総理から沖繩百万県民に明確に答弁をしていただきたいのであります。(拍手) この屈辱の歴史を背負った沖繩県民が、何よりも求め、叫び続けてきたことは、反戦復帰であり、軍事基地の存在しない平和な沖繩を取り戻すことであります。しかし、二十五年の心の傷あともいやされないまま、県民の血の叫びは、佐藤・ニクソン会談によって押しつぶされようとしています。 なぜならば、日米共同声明は、佐藤内閣の沖繩に対する差別政策の継続、今後の日本の危険な政治の進路をはっきりと打ち出しているからであります。(拍手) 佐藤・ニクソン会談は、沖繩県民と国民大衆が一貫して主張してきた即時無条件全面返還の要求を全く無視して、沖繩基地の機能や性格をいささかもそこなうことなしに、核つき、基地自由使用を約束させられたばかりか、沖繩基地を日米で共同管理し、日米安保体制をアジア核安保へと強化し、日本の再軍備を目ざす以外の何ものでもないのであります。(拍手) このことは、ジョンソン国務次官の、米上院外交委員会における、緊急事態においての沖繩への核持ち込みを日本政府は必ずしも拒否するものではないとの証言でも明らかであります。 また、沖繩の国政参加選挙で、自民党の応援のために来県した倉石農林大臣は、B52とか基地だとかは小さな問題だ、沖繩基地は米国から押しつけられたものではなく、サンフランシスコ条約によって日本が国家意思で設定したものであると述べ、日本政府が沖繩の米軍基地の拡大強化に積極的に関与してきたことを明らかにしたことなど、政府の沖繩に対する基本姿勢を示したものと断ぜざるを得ません。(拍手)私は、倉石農林大臣の沖繩発言について、佐藤総理の見解を明確にしていただきたいと思います。(拍手) また、共同声明とジョンソン証言との食い違い、倉石農林大臣の発言といい、一向に撤去されない毒ガス兵器、七二年返還を目前にして一そう拡大強化されている基地の実態、多幸山や辺野古一帯の弾薬庫に貯蔵されている大量の核兵器を目前に生活している沖繩県民は、佐藤政府が誇大に宣伝している核抜き、本土並み返還に幾多の疑問を抱いているのであります。(拍手) したがって、現在沖繩にある核兵器を確実に撤去した上で七二年に施政権が返還されるのかどうか、また毒ガスはいつ撤去されるのか、B52が二度と再び沖繩に来ないと約束できますか、総理の責任ある御答弁をお願いいたします。(拍手) 次に、私は、昨年の日米首脳会談以降進められている沖繩返還協定の問題についてお尋ねいたします。 返還協定は、来年六月の調印をめどに急テンポで交渉が進められているとのことであります。しかし、今日に至るもその内容は具体的には何ら県民に明らかにされず、政府は、国民不在、県民不在の返還交渉を進めてきています。われわれ沖繩県民の命運は、明治政府による琉球処分以来、一度として県民の意思を問われることなく決定されてきたのであり、このような不当な差別は決して許されないのであります。 私は、この際、国政の場を通じて、沖繩返還交渉の進展状況並びに協定に対する政府の基本的な考え方を、総理と外務大臣にお尋ねいたします。(拍手) その第一点は、軍用地問題であります。 沖繩の軍用地の面積は、全県下で一三%、沖繩本島に限るならば二三%にのぼり、町村によっては九〇%も軍用地に接収されております。したがいまして、本土の〇・一%と比較したとき、まさに基地の中に沖繩があるといわねばなりません。(拍手)これらの軍用地は、県民の生活基盤である農耕地や漁場、家屋、部落を含めて、米軍が銃剣でもって不当に接収したものであります。しかるに、返還協定において、本土復帰後も地位協定を適用し、契約を固定化させ、アメリカ軍に引き続き使用させるのではないかとの危惧が深まっております。 沖繩の軍用地は、本来、復帰と同時に契約が無効となり、日本政府が新たに地主と契約を必要とするものであります。しかるに、日本政府は、新規契約に際し、土地所有者の契約拒否や契約内容の更改要求をおそれ、現在琉球政府が形式上軍用地の借り主になっていることを利用して、地位協定の実施に伴う土地等の使用等に関する特別措置法の適用によって、従来の米軍の不当な強制収用を合法化しようとしております。 政府は、米軍の不当な実力行使に基づき接収された現行の軍用地契約の効力を否定するとともに、わが国の土地収用法の立場から検討した場合の補償漏れや補償水準の格差については、過去にさかのぼって地主に補償すべきであると考えます。 また、復帰と同時に、新たに、日本政府が直接地主と対等な立場に立って交渉すべきであり、地主が返還を要求する土地は即刻返還するとともに、不当に低い賃貸料などの諸条件の改善に誠意をもって当たるべきだと考えます。関係大臣の御見解を賜わりたいと思います。(拍手) 第二は、対米請求権に関する問題であります。 佐藤内閣の対米請求権に関する態度は、奄美、小笠原返還協定と同様に一方的に放棄するかのように聞いておりますが、これは沖繩県民の被害を放置しようとする態度といわねばなりません。日本政府の対米請求権に関する見解は、平和条約第十九条(a)項に基づいているようでありますが、同条約による請求権の放棄は、平和条約発効後も占領が継続された沖繩とは何らの因果関係もないと考えます。しかも、同条項でいうところの請求権の対象は、政府の処分可能な範囲に限定されているのであり、沖繩県民の請求権と同列に論ずべき性格のものではなく、県民がとうてい承服することのできない方針であります。(拍手) また、奄美返還協定第四条、小笠原返還協定第五条において、あらためて請求権の放棄を規定している事実を見ても、平和条約第十九条を沖繩に直ちに援用することは誤りだと思います。しかも、沖繩は二十数年にわたってばく大な被害をこうむっており、奄美、小笠原とは全く異なっております。よって、沖繩県民の対米請求権は正当な権利であります。私はこの県民の正当な権利を、佐藤内閣が正しく返還協定に織り込むことを要求いたします。(拍手)もし、それでもアメリカに遠慮して、対米請求権を否定するのであれば、日本政府自身が責任をもって沖繩県民に補償すべきだと考えます。総理並びに関係大臣の誠意ある御答弁を求めます。(拍手) また、第二次大戦当時に、旧日本軍は国家総動員法に基づいて沖繩県民の土地、資産などを軍需物資として強制徴収いたしました。その被害もばく大なものであり、今日に至るまで、損害賠償はほとんどなされないままであります。政府は、この損害に対する補償をどのように対処される所存なのか、関係大臣のお答えを願います。(拍手) 第三は、米国資産の買い取り問題であります。現在沖繩にある米国資産のうち、米国政府は、これまでの交渉で、一般民政に関する財産と見られる電力、水道、開発金融の三公社、行政構造物、軍用道路、石油施設、航海通信施設、琉球銀行の米国所有株五一%などの買い上げを、日本政府に迫っているとのことであります。また佐藤内閣も、この買い上げに応ずるかのように見受けられます。もしこれが事実であるとするならば、返還ではなく、沖繩買い上げにほかなりません。(拍手)米国資産を買い取るよけいな資金があるならば、直接沖繩復興の政府支出に充てるべきであると考えます。(拍手)沖繩にある米国資産は、県民に無償かつ全面的に移管すべきであると思います。関係大臣の明確なる御答弁を賜わりたいのであります。(拍手) 次に、施政権返還に伴う諸制度並びに諸法律の適用について。 政府は去る二十日の閣議で、沖繩の復帰対策要綱の第一次案を発表なされましたが、その内容は、沖繩県民が関心を寄せている具体的内容については、ほとんど明らかにされておりません。また佐藤総理の所信表明演説でも、沖繩の七二年祖国復帰という歴史的事業の完遂に遺憾のないようにつとめたいと述べておられますが、返還準備の具体的内容については、何ら国民の前に明らかにされていないことはまことに遺憾の限りであります。(拍手) 現在、政府が進めている復帰準備の中でとうてい受け入れがたいことの一つは、教育委員の公選制度を任命制にしようとしていることであります。(拍手)沖繩県民は、戦前の軍国主義教育が戦争への道であった歴史的事実の上に立って、さらにまた、教育行政に対する米軍権力のあらゆる介入をはねのけ、祖国と分断された中においても、なお正しい日本国民としての教育を守るために、血のにじむような努力を重ねながら、教育基本法の制定をかちとるとともに、教育委員の公選制度を守り通してきたのであります。(拍手)特殊な歴史的背景のもとで沖繩県民が守り抜いてきた民主的な公選制を、制度の一体化を口実に任命制に改悪することは、沖繩県民はもとより、日本国民の名においてもとうてい承服できないのであります。(拍手) 私は、このような立場から、坂田文部大臣がわずか八時間の日帰り沖繩視察で、「公選制は本土の土壌になじまない、復帰後は本土同様の任命制にする」と発言したことの取り消しを要求すると同時に、閣議での任命制移行の決定の撤回を強く求めるものであります。(拍手)この件について、佐藤総理と坂田文部大臣の明確なる御答弁を求めたいと思います。 さらに、日米共同声明以降、嘉手納空軍基地、普天間海兵隊基地、牧港地域など、基地機能が一そう強化されている反面、基地関係労働者に対する大量首切りが相次いで強行されてきていることは、まさに沖繩の縮図であります。五万余の沖繩の軍関係労働者は、米軍の軍事優先政策により労働基本権を奪われ、劣悪な労働条件のもとで基本的人権を侵害され、この二十五年間、特に差別と屈辱をしいられてきました。米軍は、沖繩県民の土地、財産を武力をもって取り上げ、基地に依存しなければ生活のできない社会環境をつくり上げて、安上がり基地の維持に使うだけ使って、あとは容赦なく労働者を解雇しているのが米軍の労働者無視の非人間的な政策であります。(拍手)私は、米軍の、労働者の立場を全く顧みない仕打ちに対し、心から憤りを覚えるものであります。(拍手) また、施政権が及ばないとの口実で、沖繩の基地労働者の大量解雇の問題に、政府が積極的な対米交渉と対策を講じようとしない態度に、強い不満の意を表明せざるを得ません。(拍手)軍関係離職者等臨時措置法の適用外に置かれている第四種雇用員や、ハウスメードの保護対策など、本土並みの離職者対策という感覚ではとうてい解決のできるものではありません。 去る六十三特別国会で、沖繩の軍労働者の離職者対策や間接雇用への移行について、山中総務長官は「外交ルートの詰めば残るとしても、昭和四十五年中に間接雇用への移行は可能という線はくずれていない」と言明したのでありますが、昨日の御答弁では、七二年以前にもできるだけ早い機会にと態度を変えておられます。政府のこの件に関する施策は、一体どうなっているのか、米軍側との交渉がどの程度進展しているのか、具体的に内容ある答弁を求めたいと思います。(拍手) さらに、七二年の復帰に向けて、不安にさらされているのは軍関係労働者ばかりではないのであります。復帰に際し、制度の変更による人員削減、本土資本との系列化、吸収合併等によって、たばこ産業、通関、金融、基地内の特免業者、公務員などの職場も、首切りや失業の不安にさらされている現状であります。労働者に対するこのような犠牲としわ寄せは、軍事支配という変則的な政治、経済、社会環境のもとで蓄積されてきた沖繩の矛盾と苦悩であり、その責任の大半は日本政府にあるといっても過言ではありません。(拍手)政府は、復帰に伴う労働者大衆のこのような復帰不安をどのように解決していこうとしておられるのか、所見を承りたいと思います。 次に、今後の沖繩復興、経済開発はきわめて緊急な課題でありますが、佐藤内閣の経済政策は、大資本優先であるため、利益追求のみに重点を置き、勤労国民の立場を全く無視していることを指摘せざるを得ません。その結果、第一次産業を抑圧し、離農、過密、過疎、生活環境破壊の公害となってあらわれ、大きな社会的、政治的問題に発展してきていることは周知のとおりでございます。共同声明でも明らかなように、貿易、資本の自由化を一九七一年中に完全に実施すると約束しており、このことは沖繩の農民の生命ともなっている砂糖、パインなどの基幹産業をはじめ、地場産業を直ちに圧迫し、沖繩の経済基盤を一そう混乱させる結果となりかねません。 今後の沖繩経済開発にあたっては、大企業優先、公害企業の沖繩への進出という発想を改め、当面、公共投資を中心に、経済、産業基盤の整備を行ない、本土における公害問題の二の舞いを踏むことなく、県民の立場を尊重し、産業、地域開発に大きな障害となっている基地を全面撤去させ、軍事基地の平和転用とあわせて平和経済体制の確立を政府の責任において積極的に推進していくべきだと考えます。(拍手) 特に、基地経済からの脱却をはかる一方策として、荒廃している農漁村、離島対策、糖業、パイン産業を特別に保護していく必要があります。そのためにも、いま問題となっている沖繩産糖の買い上げ価格は、少なくとも国内のカンショ糖の価格で買い上げるべきだと考えます。 これらの件に関する関係大臣の御答弁を求めます。 加えて、現在尖閣列島周辺における石油資源問題が大きな関心を呼んでおります。米国のガルフ社をはじめ、尖閣列島の鉱業権の取得をねらって国際石油資本が暗躍をはかっています。これら石油資源は、沖繩県民の固有の資源であり、沖繩の平和経済開発に有効に使わるべきものだと考えます。したがって、尖閣列島の開発にあたっては、沖繩県民に鉱業権を与え、地元の自主性ある開発を基本にすることが必要であります。(拍手)これは、わが国のエネルギー政策上からもきわめて重要であると考えますが、政府の御見解を承りたいと思います。(拍手) そのほかにも、四分の一世紀にわたる軍事支配がもたらした解決せねばならない諸問題は山積みされております。中でも、極東最大の嘉手納空軍基地から発生する殺人的爆音は、教育と生活環境を全く破壊しています。相次ぐ米軍人犯罪による人権侵害は目に余るものがあり、しかもこれら米軍犯罪に対する捜査権、裁判権は何ら確保されず、軍事優先の無法地帯となっております。(拍手)社会保障制度も全く劣悪の状態であります。 政府は、こうした広範な諸問題が山積していることを念頭に置き、新しい沖繩県づくりで県民から信頼される復帰対策を強く推進なさるよう要請するものであります。(拍手) 以上、私は、七二年復帰を前にして、沖繩県民が当面している基本的問題と県民の復帰不安について、佐藤内閣の所信を求めてまいりました。佐藤総理は、自由民主党総裁四選出馬にあたって、政府が進めている沖繩返還作業は県民の支持を得ていると大みえを切られました。しかしながら、沖繩の歴史的な主席選挙並びに今回の国政参加選挙の結果が示すように、戦争につながる日米共同声明は全面的に否定され、県民を無視した一方的な復帰準備について一大反省を求めているのであります。(拍手)これは、まさしく佐藤内閣、政府の政治の行き詰まり以外の何ものでもありません。安保条約の廃棄と軍事基地の撤去も県民の要求であることが明らかになったのであります。これは、佐藤内閣に対する事実上の不信任であります。総理は、この厳粛な県民の審判を国民全体の審判だと謙虚に受けとめられ、沖繩に対する施策と政治姿勢を根本から改めるよう強く求めるものであります。(拍手) 沖繩県民が再軍備への道である自衛隊の配備に反対するのは、悲惨な戦争体験と二十五年の不当な米軍支配から体得したものであり、憲法第九条でうたっている絶対平和を求めているからであります。しかるに、中曽根防衛庁長官は、自衛隊の配備は声なき多数の県民は支持していると独善的発言を行なって、県民の総反撃を食らいました。(拍手)そのことは、今回の選挙の結果を見ても明らかなように、県民世論は、自衛隊の沖繩配備に断固として反対をしております。 以上のことを佐藤総理及び国民の皆さまに強く訴えて、私の訴えがかなえられることを心から念願し、日本社会党を代表し、質問を終わります。(拍手) 〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 上原君にお答えいたします。 まず、戦後初めて沖繩選出の衆議院議員の声がこの議場において聞かれましたことに、あらためて深い感慨を覚えることを申し述べたいと思います。(拍手) 太平洋戦争は、日本国民に対し、はなはだしい惨事をもたらしましたが、特に沖繩は、その地理的、戦略的地位のため、戦中、戦後を通じて最も大きな犠牲を払ったのであります。本土のわれわれは、ひとしく沖繩県民に対して深い同情の念を禁じ得ませんでした。私が沖繩の実情をこの目で見て、沖繩の祖国復帰までは日本の戦後は終わらないと述べましたのも、この日本国民の共通の気持ちをあらわしたものであります。(拍手) 沖繩の法的地位について御意見を伺いましたが、要は、この沖繩の苦悩を少しでも早く終わらせる現実的な方策を求めることにありました。そのためには、今回の方法、すなわち、日米友好と信頼の基礎に立って祖国復帰を実現させるという方法を選択いたしました。結局これが最善にして最短の道であったことは、事実の示すところであります。(拍手)私は、今後とも、各位の御協力を得、七二年の復帰実現に万全を期したいと念願している次第であります。 共同声明第六項には、両国政府は、立法府の必要な支持を得て前記の具体的取りきめが締結されることを条件に、一九七二年中に沖繩の復帰を達成するよう、協議を促進すべき旨が述べられております。ジョンソン次官の発言は、かかる制約を念頭に置きつつなされたものと想像されますが、返還時期については、法的な意味での保証こそありませんが、七二年中に復帰体制という方針が変わることはありません。現に、復帰準備も返還協定交渉も着々進展しており、一九七二年の返還は何ら疑いもないところであります。 基地問題については、種々発言がなされているようでありますが、安全保障条約の目的に照らしつつ、米側と鋭意検討を進め、日本側の意向が十分に反映された形で決定が行なわれるように努力していく所存であります。 沖繩における毒ガスについては、米国政府当局はジョンストン島への移転計画を進めており、その計画がまとまり次第議会に通報し、その上で撤去計画が発表されることになっていると承知しております。したがって、撤去の実施はそう遠い時期ではないものと期待している次第であります。 次に、核の問題については、共同声明第八項に示されているとおり、米国政府の最高責任者たる大統領が核抜き返還を確約しているのでありますから、これ以上明確な保証はないと私は考えます。(拍手)また、米国政府がこれを裏づける発表をしていることも、すでに上原君は御承知のことだと私は思います。 なお政府は、復帰後の沖繩に対して、本土と同様、非核三原則を堅持する方針であることは、これまでもしばしば明らかにしたとおりであります。御了承いただきたいと思います。 政府としては、御指摘のごとき対米請求権の実態調査及びその取り扱いの検討を進めている段階であります。 いずれにしても、沖繩住民が戦後長期間にわたる種々の苦難を経験してきた事実を十分念頭に置きつつ、公正妥当な解決につとめる所存であります。 米国所有資産の交渉は、沖繩返還協定交渉の一環として日米両国政府間で行なわれることとなっております。現実に沖繩にある米国所有の資産で、復帰後において必要かつ有益なものの引き継ぎにあたっては、日米間で公正な処理を行なうとの観点から交渉を進めております。なお、米国所有資産を日本政府に引き継いだあとの利用については、沖繩県民の気持ちをくんで処理してまいりたいと考えております。 また、沖繩返還の際、米側に提供されることとなる施設、区域については、当然日米安保条約及び地位協定の手続に従って提供されることになります。しかして、不要不急の基地に加えて、沖繩の民生及び経済開発発展のためその移転、返還が必要な施設、区域もあろうかと思われますので、政府としてはこれらの点を踏まえて、日米安保条約の目的に照らしつつ米側と鋭意検討を進め、日本側の意向が十分に反映される形で決定が行なわれるように努力していく所存であります。 沖繩の祖国復帰に際しての基本理念は、いまさら申すまでもなく、本土と全く差別のない沖繩を実現することにあります。それを実現する過程で調整に要する時間の差はありましても、究極的な目標は一つでなければならないと思います。特に教育制度のような基本的な問題については、当然本土と同じでなければならないと、かように考えます。(拍手) 沖繩で行なわれた選挙の結果は、県民の意思をはかる重要な要素として十分尊重する所存であります。言われるまでもなく、自民党が過半数を占めたわけでもありません。また、上原君の所属される日本社会党が勝ったわけでもありません。(拍手)私は、さようなことにとやかく意見をつけないで、大局的に見て、政府の施策が沖繩県民を含む全国民の利益に合致したものであることは、かたく信じて疑わないところであります。(拍手)返還実現の際は、政府の約束が公約どおり守られることについて十分満足をいただけるものと、私は信じております。 最後に、今回の国政参加によって国会に議席を得られた七人の沖繩選出議員各位におかれては、七二年祖国復帰という歴史的事実に対して、党派を越え、互いに力を合わせて取り組んでいただくよう心から期待するものであります。(拍手) 以上で、私の上原君に対するお答えといたしますが、なお、それぞれの大臣から、具体的な問題につきまして補足すると思います。(拍手) 〔国務大臣坂田道太君登壇〕
○国務大臣(坂田道太君) お答えをいたします。 アメリカの施政権下にありまして、沖繩県民があげて日本人としての教育を守り抜いてこられたことに対して、私は、高くこれを評価し、深くこれに感謝をささげるものであります。(拍手) であればこそ、日本国民の教育が地域によって異なった制度のもとに行なわれることは、決して望ましいことではなく、国民のすべてが、同じ制度のもとに、同じ水準の教育を受けることができるように配慮することこそ、沖繩の本土復帰の有する大きい意義の一つであると考える次第であります。したがって、教育委員会制度についても、復帰の際、本土の関係法令を適用するよう措置する考えであります。 なお、このような行政制度の切りかえにあたりましては、必要な経過措置を設け、切りかえが円滑に行なわれるよう配慮するのが適当であると考える次第であります。(拍手) 〔国務大臣倉石忠雄君登壇〕
○国務大臣(倉石忠雄君) 上原さんにお答え申し上げますが、私の所管事項の前に、先般沖繩へ参りましたときの記者会見のことがございましたので、一言釈明いたしたいと思います。 この話のときにB52の話が出ました。そこで私は、B52というのは、最近日米両国政府の間に話の合意ができて、これを全部沖繩から撤去することになった、そのとき私が知っておりましたのは、ただ一機まだ部分品が整わないで沖繩に残っていると聞いておりましたが、それは部分品が整備し次第もう撤去するのだ、したがってB52の問題は、皆さんおっしゃるけれども、これはもう済んだことであって、小さくなった、こういうことを言ったのです。 第二の基地の問題につきまして、基地の話も出ました。そこで、基地につきましては、沖繩と違いまして、本土にあります基地は、これは日米安全保障条約によって基地を設定しているのである、沖繩が、はなはだ御迷惑ながら、終戦以来二十数年間特別なこういう行政が行なわれておったのは、これは平和条約第三条によってわれわれが三権を、つまり立法、司法、行政の三権をアメリカに一時委譲しておかざるを得なかったのだ、つまり、そういう意味でこの平和条約を批准いたしたということは、国会がその批准について承認を与えたのであるから国家意思でございます、こういうことを申したのであります。私が申しましたことをみんな書いてくだされば誤解はなかったのでありますが、そこで私は、しかしながら、いよいよ今度は、先般佐藤総理がニューヨークに行きまして演説をなされましたときにも、一九七二年には日本に返ってくる、こういうことになりました。あえてこのことを、私は、佐藤内閣の外交の成功であるなどとうぬぼれて言うわけではないが、一億日本人としては、沖繩の方を含めて、実に喜ぶべきことではないでしょうか、こういう現状を踏まえて国会議員の選挙をやっていただくのだ、こういうことを沖繩の方々に御理解願いたい、こういうことを言ったのであります。全部続けて聞いていただければ、私の申し上げようとした趣旨が御理解いただけると思うのであります。そのようでございます。 それから、沖繩の復帰対策要綱について、中身がないような御心配のお話がございましたけれども、あれには各省関係の中身が詳細にできておりまして、実は上原さんも御存じのように、私どもは、琉球政府はもちろんのことでありますが、いろいろ農業協同組合等との関連を密に農林省はいたしておりまして、いまお話のございました沖繩の糖業、これはもう全体の八一%を占めておるのでありますから、これをしっかりやらなければなりませんので、沖繩の糖業につきましては、サトウキビ生産の合理化をはかるために、今度は省力経営をやらせようということで機械装置等をやろうと思いまして、来年度予算に、今年よりも増額をいたした予算を実は大蔵省にも要求しているような次第でありまして、合理化をはかるため、それから生産振興対策を積極的に推進いたしますとともに、現在、糖価安定事業団が行なっております沖繩産糖の買い入れ措置を、復帰後本現状のような状態で継続をいたしてまいるという方針を決定いたしておるわけであります。これは、沖繩の糖業の方々に安心していただきたいと思います。 第二は、パインの産業でありますが、これも糖業に次ぐ大きな部分でございますが、生産性の向上、品質の改善をはかりますために、生産振興対策を積極的に推進いたしますとともに、パインかん詰めの自由化、関税率の取り扱い等につきましては、慎重に対処してまいりたい。これは一にかかって、沖繩パイン産業という重要な農業を御援助いたさなければならないという方針を継続するという立場でこういうふうにとっておるのでありますから、農業の面では、私ども、非常に地元から喜ばれておりますということをつけ加えて、沖繩の方にも申し上げたいと思います。(拍手) 〔国務大臣中曽根康弘君登壇〕
○国務大臣(中曽根康弘君) 土地の借り上げの件につきましては、できるだけ個々の地主と契約を結び、県民の意思を尊重して妥当な解決をはかりたいと思います。 なお、地代につきましては、個々の地主と話し合いを進めまして、合理的に再検討を加えたいと考えております。 〔国務大臣山中貞則君登壇〕
○国務大臣(山中貞則君) 二十八年ぶりに行なわれました国政参加選挙であり、婦人参政権としては初の国政参加選挙で選ばれました上原議員よりの質問を受けますること、担当大臣としても感無量のものがございます。(拍手) ただし、上原君にぜひわかってほしいことがございます。それは、私たちは、一億の国民すべて、そしてまた党派を越えて、沖繩のための償いの心をもって、あたたかく迎えたいと思っていることにおいて変わりはない、そのことだけは、ぜひわかってほしいと思います。(拍手) 軍雇用者の解雇対策の問題について、間接雇用をなるべく早くやる。それもことしじゅうに目鼻をつけたい。それは、私自身は、間接雇用は、復帰の時点においては間接雇用になることは当然であるけれども、しかし、それ以前においても、それに準ずる措置として、日本側あるいは琉球政府等のそれぞれの合意したものの機関によって、間接雇用に準ずる措置がとれることを年度内目標に努力をいたしてまいりました。現在も、先般の日米協議会等を通じて交渉を続行いたしておりますが、率直に申し上げて、非常に困難な問題が伏在しておることを申し上げざるを得ないことを残念に思います。しかし、引き続き努力をいたしてまいります。今日の米側の解雇のほとんどの事情は、財政事情によるものが主でありますので、これの問題が、やがてはまた、基地の望むべき縮小の方向等で沖繩県民の土地として利用されることに伴い、基地縮小に伴う新たなる解雇等の問題が起こってくることも予見せざるを得ませんので、私らは、この問題を、少なくとも本土政府が関与して、そしてあたたかい配慮で努力ができるような措置を講ずるために、なお努力を続けることをお約束いたします。 なお、現在の琉球政府公務員の皆さんが、首切りその他等の御心配はないのかというお話もあったようでありますが、これは、それぞれ復帰後は国家公務員、地方公務員として引き続きお働きをいただく、本人の意思に反せざる限り、そのような切りかえ措置を講ずるつもりでございますので、この機会にはっきりとその点を明らかにいたしておきたいと思います。 さらに、沖繩に対する今後の施策の前提は基盤整備の公共投資を中心とすべきであるという御意見については、私も同感でございます。 さらにまた、企業等についても、公害等を起こさない企業、あるいはまた立地等についても、中城湾等の人口過密なる地域に全部集まろうとしておりますが、私はなるべく公害等がかりに懸念される企業等は北部の、さらにまた工業用水等も北部に多いわけでありますから、北部のそれらの地域の、比較的公害の発生が影響を及ぼしにくい場所を選ぶように、いろいろと私のほうでも努力をいたし、あるいはまた御注意等を申し上げているところでありますが、業種等については、やはり現地の復帰後の新たなる雇用需要の喚起等も考えて、なるべく多くの現地の人々の働き場所がふえるような企業が行けるように配慮をしてまいるつもりでございます。 尖閣列島の石油資源をめぐる論争については、昨日、若干私のほうから申しましたが、さらに本日のお尋ねの中では、これは沖繩の権益として認めろというお話でございました。幸い、沖繩県民の方でこれに対して、エカフェの調査以前にこの先願権を持っておられる方がございますので、先願権が国際通念としての共通の前提条件であることを考えまするときに、結果としてはどのような資本が参加して開発がされることになりましょうとも、その先願権のもとに沖繩の方が設定された鉱区権の届け出は当然優先し、有効なものであると考えておる次第でございます。(拍手) 〔国務大臣愛知揆一君登壇〕
○国務大臣(愛知揆一君) いまさら申し上げるまでもないかと思いますが、特にこの六月以来、沖繩返還についての対米交渉は活発にいたしております。東京におきましては駐日大使と原則的に毎月一回は必ず私も直接話し合っておるわけでございますが、これまでのいろいろの下部機構の連絡も通じてでございますけれども、対米交渉を通じまして主要な交渉事項として明らかになっておりますことは、先ほどもいろいろ御質疑がございましたが、沖繩県民の方々の対米請求の問題、この取り扱い、裁判などに関連する諸問題の取り扱い、米国資産の処理ないしは引き継ぎの問題、沖繩在留の米国系の外資系企業の取り扱い、こういうことが直接の交渉事項であり、そしてそのほかに大きな問題として施政権返還の日から沖繩に地位協定をそのまま適用するわけでございますが、その適用について十分事前に米側と話し合って所要の準備をしなければならない、大きく分けますとこういう事項に相なります。 これらの問題はいずれも重要な問題であり、ことにただいまもるる御説明がございましたし、かねがね政府といたしましても、琉球立法院あるいは琉政あるいはその他諸団体あるいは個人的にも、政府としては沖繩県民の方々から詳細にわたり、また随時いろいろの御要請に接しておりますので、それらの御要請をじっくり腹に入れまして、ただいま申し上げましたような問題に取り組んで、沖繩県民の方々の御要請がどうかして十分に貫徹ができるようにということで、ただいま全力をあげて努力をしておるような次第でございます。 ただ、たとえば対米請求の問題にいたしましても、時間的の経過とか、そのときどきの扱い方の変化とか、これは特に沖繩県選出の議員の方々には私から申し上げるまでもございませんが、非常に入り組んだ、また非常に複雑な問題でございますので、わがほうの調査だけでも相当の時日がかかります。そしてその調査に立脚して米側の納得、理解を得ることにもなかなか骨が折れますが、要は、ただいま申しましたように戦後長期間にわたり、あるいは戦前を通じまして、非常な苦難の御体験をされてこられました事実を十分納得ができるようにし、これを念頭に置いて、公正、妥当な解決、つまり法律的にたとえていえば、米側に対して当然請求を要請し得る、あらゆる角度から見て法律的な根拠があるようなものについては、十二分にその要求を貫徹するようにする。あるいはそういう点で根拠が比較的薄いようなもので話がまとまらないようなものがありましても、これは沖繩の県民の方には御迷惑のかからないように、こういうふうな態度で処理してまいりたいと思います。 米国資産の返還の問題につきましても、これは先ほど山中長官からもお話がありましたが、これまた大きな懸案の事項でございますが、これにつきましてもただいま鋭意総力をあげてまつ正面から取り組んでいるような次第でございます。 軍用地の提供と地主との関係、これも返還になります時点を境にして、取り扱いは当然違うことになりますが、実は戦後から今日に至りますまでの間にも、いろいろのこの取り扱いの変遷がございますから、それらの点につきましても、十分調査の上で必要な折衝をいたしつつあります。 なお、不要不急の基地というものは、もちろんこれは返還を期すべきでありますし、また積極的に沖繩の民生及び経済開発、発展のために、その移転や返還が必要な施設、区域も相当考えられると思いますので、これらの点につきましては、安保条約の目的に照らしながら、米側と鋭意検討を進めて、日本側の意向が十分反映された形で決定が行なわれますように、返還協定の話と相並行して努力を進めておる次第でございます。 なお、問題がきわめて多岐にわたり、また、きわめて細部にわたる問題もございますから、いずれ委員会等におきまして、御要請に応じまして十分お答えをし、また、共同にひとつ検討もさせていただくようにさせていただきたいと思います。(拍手) —————————————
○副議長(荒舩清十郎君) 谷口善太郎君。 〔谷口善太郎君登壇〕
○谷口善太郎君 私は、日本共産党を代表して、総理に質問をいたします。 第一点は、本国会に提案予定の公職選挙法改正の問題であります。これは議会制民主主義の根幹に触れる問題でありますので、あえて冒頭に総理の御答弁を求めることにしました。 政府は今国会に公職選挙法改定案を提出するとのことでありましたが、総理の所信表明ではこの問題に一言も触れられておりません。政府は、予定された公職選挙法改定案提出を、これに反対する世論の高まりを勘案して断念されたのか。それとも、この問題は所信表明演説に取り上げるまでもない、ささいな問題であるとの見解なのか。国民には看過できない重大問題でありますので御答弁をいただきたいと思います。 伝えられるところによりますと、公選法改定案の内容は、選挙中の政党の機関紙と政治活動用のビラの配布を制限することを骨子に、その政治活動に著しく規制を加えようとするものであります。現行法は、言論、文書による選挙活動の全面的自由化が望ましいとする第五次選挙制度審議会の答申を受けて、昨年第六十一国会で、自民党も含む全会一致で改正されたものであります。これをわずか一年にしてもとに戻すばかりか、逆に規制を一そう強化しようとするに至っては、まさに民主主義への挑戦であり、かつ、朝令暮改の典型であるといわざるを得ません。(拍手) 政府・自民党がなぜこのような改悪を企てたか。去る四月二十八日、政府・自民党の首脳は、総理も含めて会議を開き、京都知事選挙における自民党の敗北の原因について語り合いました。そして、その敗因の一つが、公選法改定による政党の政策宣伝活動の自由化にあったとして、これを再び規制すべしとの結論を出したのであります。これは広く知られているところであります。自派に都合の悪い選挙法だから改悪するというのであります。この驚くべき結論に対しましては、すでに、十一月六日、朝日新聞は社説で、「身がってな感じを与える」と評し、毎日新聞十一月十三日の社説も、「このような態度は、党利党略的だというそしりは免れないであろう」と論評しております。われわれも、また、これほど破廉恥な党利党略はないと考えます。(拍手)政府は、この世論に対して何と答えるか、総理の明白な御答弁を願うものであります。 今回の公選法改悪について、自治大臣は、京都の選挙で若干の行き過ぎが起こった、それで改定すると言っております。しかし、この理由の成り立たぬことも、すでに結論が出ております。すなわち、京都の知事選挙に関しては、参議院公選法特別委員会の調査報告書が出ておりますが、これによると、選挙中、政党の政策宣伝活動が自由濶達だった結果、有権者の政治意識が啓発され、自覚ある真実の投票を引き出すことに役立ったといっております。また、政策宣伝を中心とした活動が住民の深部まで及んだ状態の中では、買収、供応などの悪質違反を起こし得なかったということも報告しております。これらの点から見まして、京都の知事選挙の事例がら、選挙の自由化を逆行させ、政党の政策宣伝を法律で規制しなければならぬという何らの根拠も見出し得ないのであります。 選挙に関して法律改正がいま求められているという点は、政治活動の自由抑制にあるのではなく、買収、腐敗選挙につながる政治資金規制の問題であります。現に、日本青年団体協議会や全国地域婦人団体協議会を含む選挙法改正運動協議会は、今回の公選法改定に対し反対して立ち上がり、政治資金規制の強化、議員定数の不均衡の是正、連座制強化による不正選挙の根絶を強く要求し、各政党に意見書を出しております。これこそまさに世論の動向であります。しかるに、政府は、政治資金規制については、第五次選挙制度審議会の答申が出たにもかかわらず、答申の趣旨は小骨一本抜かずに実現すると確約しながら、ついに今日までほおかぶりをしているのであります。しかも、今日、政治活動の自由を規制するこの選挙法改悪を持ち出してきたのであります。これこそ知らしむべからず、よらしむべしという反動的権力政治の復活以外の何ものでもなく、日本政治の将来にとって最もゆゆしい大問題といわねばなりません。議会制民主主義の擁護を常に口にされる総理は、これを何と弁明されますか。わが党は、この際、政府が、時代錯誤の今回の公選法改悪案の提出を断念し、大資本と政治との汚れた関係を断ち切るための政治資金規正法案をこそ直ちに提出すべきだと考えます。(拍手)この点について総理の所信を伺いたいと思います。 なお、一言、司法の独立問題に、民主主義の問題の一つとして触れます。 昨日、総理は、訴追委によって二百名以上の裁判官の思想調査が行なわれたことに関し、訴追委は独立の機関だから政府に関係はないと答弁されました。しかし、自民党が、司法制度調査会を党内に設置したとき、一部の幹部が訴追委や弾劾裁判所の活用を主張したこと、また自民党の運動方針に、裁判官が左傾化したと称する攻撃の主張がある以上、総理に責任がないとは決して言えません。重ねて御答弁を求めるものであります。(拍手) 次に、公害問題であります。 総理は、昨日この議場で、今回提案される公害諸法案は世界の先端を行くものになると言われました。ところが、たとえば西欧諸国では、数十年前から常識になっております公害発生施設に対する許可制さえ、今度の改正案には入っておりません。一国の総理が世界的に数十年もおくれた政策を、世界で一番よいと思い込んでいるところに、わが国の公害問題の悲劇があるのであります。(拍手)総理は、また、企業優先か国民生活優先かという問題について、もちろん国民生活優先だと言われました。しかし、国民生活優先かどうかの試金石は、企業責任を明確にし、きびしく追及するかどうかにかかっております。今回提出予定の法律案のいずれにも、この原則的な基本姿勢は見られません。企業の無過失賠償責任制もやみに葬られました。なるほど、基本法からは経済調和条項は削除されましたが、企業責任については、依然として地方自治体の責任、国の責任と同列にしております。これは総理が、自治体、企業者、一般国民のだれもが加害者であり、被害者であると言ったのでありますが、この態度と全く同じであります。企業責任を明確にしていないからこそ、企業の公害防止装置の義務づけ、企業の公害防止費用の負担もしり抜けに終わらざるを得ません。特に公害被害者の救済法は、ほとんど健康保険の負担にして、公害発生企業は責任を免れております。この救済法の改正さえ提案しないで、どうして国民生活優先などと言えますか。総理の責任ある答弁を求めるものであります。 公害の規制は、今日までの事実が示すように、被害者、住民、世論の力で初めて進んできたのであります。したがって、この国民の要求と運動を尊重し、規制の権限を地方自治体に委譲することは、公害防止のために欠くべからざるものであります。しかるに、政府は、大気汚染一つをとってみても、その三大元凶である火力発電所やガス規制の権限、自動車の構造についての規制権限などについて、地方自治体にほとんどその権限を与えようとはいたしません。それどころか、現に東京都が府中のカドミウム汚染米の買い上げを決定したことに対してさえ、山中総理府長官が食管法違反だと脅迫しております。公害対策では地方自治体を抑圧さえしているのであります。 わが党は、公害防止を国民の要求と運動に依拠して進めるため、このような政策を直ちにやめ、第一に、規制の権限を大幅に自治体に委譲すること、第二に、さしあたりすべての都道府県と公害の起きている市町村に、調査権、勧告権、告発権などの必要な法的権限を持った、公選制の公害委員会をつくることが必要だと考えておりますが、総理のお考えを伺います。 また、先ほど申しました東京都のカドミウム汚染米を買い上げるという問題につきましては、特に山中総理府長官の御答弁を求めます。 総理は、福祉なくして成長なしと言われました。だが、現在大資本の高度成長の犠牲にされて、住民の福祉がそこなわれているからこそ、公害対策の強化が必要とされているのであります。したがって、新経済社会発展計画や新全総による七〇年代の高度成長政策を根本的に再検討する必要があります。これらの政策こそ、臨海工業地帯を拡大し、あるいは大都市集中をはじめ公害激化の大きな原因となっているからであります。これを改めずして、福祉を前提とする抜本的な公害対策はあり得ません。総理の御所見を聞きたいのであります。 最後に、沖繩、中国、三島問題を一括してお尋ねいたします。 今回の国政参加選挙の結果は、沖繩県民多数の意思が日米共同声明路線による返還協定ではなく、核も基地もない全面返還を望んでいることを明確に示しました。今日、沖繩問題の眼目は、政府がこの選挙に照らして謙虚に反省し、秘密裏に進めている返還協定交渉の内容を国民に示して、沖繩県選出議員を含む今国会で、どのような返還協定を結ぶかを再検討することにあると思いますが、この点についての総理の御所見を伺います。 さらに、二十五年間米軍占領下に放置されてきた沖繩県の復興には、政府として特別の責任があります。わが党は、短期に県民本位の復興を援助するために、特別措置法をつくり、五カ年計画で、ひもつきのない、少なくとも一兆円の国家資金援助を与えるべきだと考えますが、復興援助についての政府の計画を伺います。 わが党は、さきに沖繩問題、返還協定等について公開質問状を出しましたが、政府はいまだに回答を寄せておりません。いつ回答をなさるか、ここで御返事を伺っておきます。 カナダ、イタリアの中国承認、中華人民共和国の国連復帰決議の多数獲得は、アメリカと日本が中国問題でますます孤立していくことを明らかにいたしました。総理の所信表明では、中国問題については既成事実を固執したまま、慎重に対処するというのみで、何らの積極性は見出せません。総理は、今年二月、本院の予算委員会で、日台条約によって中国との戦争は終止符が打たれたと答弁しており、台湾政権が全中国を代表するという一つの中国論の立場に立っています。総理は、台湾に亡命した蒋介石政権が存在する限り、国連での動向がどうなろうとも、中華人民共和国との国交回復はしないというのか、お答えいただきたいと思います。 わが党は、政府が国連で中国代表権問題の重要事項指定など、中華人民共和国の国連復帰を阻止する目的でとっている一切の策動を直ちにやめるべきだと、繰り返し主張してきましたが、この際、あらためてこの点についての政府の御所見を伺います。 三島事件は、単に一作家の狂気による偶発事件ではありません。問題は、三島らの楯の会が政府、自衛隊によって今日まで保護育成されてきたということにあります。(拍手)楯の会は、初めから憲法改定と国軍復活のためには非合法の暴力手段に訴えるということを公然と主張してきた、反動的武装組織であります。政府がこれを今日まで野放しにしてきただけでなく、歴代防衛庁長官と自衛隊は、これを戦友として遇し、小銃を使用する演習をやらせるなど、軍事訓練まで行なってきたのであります。これは、政府が法の乱用をもって民間武装部隊を育成し、憲法破壊行為を黙認していたものだという意味で、まことに重大な政治的な責任問題であります。(拍手)総理は昨日の本議場で遺憾の意を表しましたが、そのようなことで済まされることではありません。政府の責任をどうしますか。防衛庁長官に対してどういう処置をとるか。総理並びに中曽根防衛庁長官の具体的な御答弁をお願いいたします。 以上で、私の質問を終わります。(拍手) 〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 選挙が民主主義の基盤をなすきわめて重大な問題であることは、谷口君の御指摘を待つまでもありません。政府は現在、今国会に提案すべく、公職選挙法の改正を検討中であります。その内容は、目に余るビラ合戦など極端な行き過ぎを是正するため、合理的な手直しをしようとするものであり、これを反動呼ばわりしたり、あるいは改悪だと言われることは当たらないように思います。また、所信表明に触れなかったからといって、これをささいなものと断ずることも、これまた当たっておりません。 次に、政治資金規正法については、現在の選挙制度やその他諸般の事情を考えながら、一歩でも前進するよう今後とも努力してまいる考えであります。 次に、司法権の独立は侵すべからざるものであることは、昨日も社会党の下平君の御質問にお答えしたとおりであります。裁判官訴追委員会は、これこそ独立して、裁判官弾劾法に基づく独自の権限を行使しているものであって、私は、いわゆる司法権の独立に介入したという非難は当たらない、かように思います。(「自民党の調査委員会はどうなんだ」と呼ぶ者あり)自民党の調査委員会は、共産党にも特別なそれぞれの委員会があるように、自由な政治活動をするための必要なる機関であります。(拍手) 次に、公害問題についてでありますが、公害の犯人は大企業にありと単純にきめつけることで問題が解決するとは考えません。もちろん企業責任についても厳正に追及してまいりますが、国民一人一人がそれぞれの立場において公害を防止する、これが生活環境の改善を確保し、自然を取り戻す何よりも大切なことと考えます。私が、被害者であると同時に加害者であるというのは、自動車の場合などお考え願えれば非常にはっきりすると思います。みずから自動車を運転し排気ガスを出していて、排気ガスの公害を云々する、これなどは非常にはっきりしております。したがいまして、お互いがやはり正常な状態を保つようにこの上とも規律しなければいかない、こういうことであります。 また、公選制の公害委員会、ここまでは谷口君は御提案にならなかったと思いますが、もしさようなことまで考えていらっしゃるとすれば、これは谷口君らしい発想だと私は思います。政府の改正案におきましても、十分地域住民の意向が反映されるよう配慮していることを御了解いただきたいと考えます。 また、新経済社会発展計画や新全国総合開発計画の成長率は高過ぎないかとの御意見がありましたが、これらはいずれも国民生活の質的改善をはかり、あるいは安全、快適かつ文化的な環境の創造を通じて、国民福祉の充実をはかることを目標として策定されたものであり、福祉なくして成長なしという理念と相矛盾するものではありません。 次に、先ほども社会党の上原君にお答えしたばかりでありますが、沖繩返還協定につきましては、沖繩の本土復帰の国民的願望に沿い、かつ、沖繩住民の要望を十分に取り入れた協定をつくるよう米国側と交渉中であり、合意達成の上は、国会において十分な論議が尽くされることを期待しております。種々の問題点につきましては、日米の信頼関係、そのワク内で処理し、円滑な返還を実現する方針であります。同時に、沖繩の本土並み返還の原則を貫きつつ、現実的に対処していきたいと考えております。 沖繩の復興については、まず沖繩振興に関する基本法的なものを作成し、これに基づいて種々の具体案をつくる考えであります。 また、共産党から内閣に意見をいま聞いている、質問書が出ている、それに対する返事はいつかということでございますが、私、そこまでは気がつきませんでしたが、早く書面でお答えをすることにいたしたいと思っております。 中国大陸と台湾のそれぞれの地域において、実効的な支配を及ぼしている二つの政府が存在していることは事実であります。政府としては、条約上の関係のある国民政府を中国の正統政府と認める方針をとっていままできておるのであります。国連における代表権問題を含めて、今後の中国政策については、国際情勢の動向を見きわめつつ、国際信義を重んじ、国益を守り、極東の緊張緩和に資する観点から、慎重に対処していきたいと考えております。これは各党に対してお答えしたとおりであります。ただいま早急に結論を出すわけにまいりません。それこそ慎重に考慮しておる、これが結論でございます。 最後に、一昨日起こりました三島事件、たいへん私は遺憾の事柄だと思いますが、いずれにいたしましても、この暴力行為は絶対に否定さるべきであり、法律は守られなければならない、こういうことを一言申し上げまして、お答えといたします。(拍手) 〔国務大臣山中貞則君登壇〕
○国務大臣(山中貞則君) 私の産業公害対策特別委員会における答弁を、脅迫ということばを使われたのでありますが、そういうつもりはありませんし、またそんな、私くらいで脅迫だなんと受け取られる共産党でもないと思います。それはこういうことでございます。事実関係だけを申し上げます。 カドミウム汚染米の自家保有米を東京都が買い上げる場合、食管法との関係はどうかということで、私は、そのときも前置きをして、ここには農林大臣がおられないのでお答えするが、本来農林大臣がお答えになるべきことであります、しかしながら法律のたてまえからいけば、食管法では、たとえ地方自治体といえども、国が一義的に買うべきことを命じた米を買い上げるという場合には、農林大臣の許可が要ることに政令でなっております、したがって許可を得ないでそのような行為をやれば食管法違反であると申し上げただけでございます。(拍手) 〔国務大臣中曽根康弘君登壇〕
○国務大臣(中曽根康弘君) 三島事件は、まことに遺憾な事件であります。よく調査の上、今後注意していきたいと思います。(拍手)
○副議長(荒舩清十郎君) これにて国務大臣の演説に対する質疑は終了いたしました。 ————◇—————
○副議長(荒舩清十郎君) 本日は、これにて散会いたします。 午後四時三十三分散会 ————◇————— 出席国務大臣 内閣総理大臣 佐藤 榮作君 法 務 大 臣 小林 武治君 外 務 大 臣 愛知 揆一君 大 蔵 大 臣 福田 赳夫君 文 部 大 臣 坂田 道太君 厚 生 大 臣 内田 常雄君 農 林 大 臣 倉石 忠雄君 通商産業大臣 宮澤 喜一君 運 輸 大 臣 橋本登美三郎君 郵 政 大 臣 井出一太郎君 労 働 大 臣 野原 正勝君 建 設 大 臣 根本龍太郎君 自 治 大 臣 秋田 大助君 国 務 大 臣 荒木萬壽夫君 国 務 大 臣 佐藤 一郎君 国 務 大 臣 中曽根康弘君 国 務 大 臣 西田 信一君 国 務 大 臣 保利 茂君 国 務 大 臣 山中 貞則君 出席政府委員 内閣法制局長官 高辻 正巳君