予算委員会第一分科会 第1号
- 発言数
- 145 件
- 登壇者
- 16 名
- 会派数
- 4
- 開催日
- 1970/04/13
会議録
○高橋文五郎君 ただいまから予算委員会第一分科会を開会いたします。 本院規則第七十五条により、年長のゆえをもちまして、私が正副主査の選任の終わるまで議事を主宰いたします。 まず、分科担当委員の異動について報告いたします。 予算委員異動に伴う欠員の補欠として、去る十一日渋谷邦彦君が、本日片山武夫君が本分科会担当委員に選任されました。 —————————————
○高橋文五郎君 それでは、これより正副主査の選任を行ないますが、選任は、投票によらないで、主宰者にその指名を御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○高橋文五郎君 御異議ないものと認めます。 それでは、主査に八田一朗君、副主査に片山武夫君を指名いたします。 ————————————— 〔八田一朗君主査席に着く〕
○主査(八田一朗君) 一言ごあいさつ申し上げます。ただいま皆さま方の御推挙によりまして、主査をつとめることに相なりました。ふなれな者でございますが、どうか御協力のほどよろしくお願い申し上げます。 審査に入ります前に、議事の進め方についておはかりいたします。 本分科会は、昭和四十五年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、皇室費、国会、裁判所、会計検査院、内閣及び総理府のうち、防衛庁、経済企画庁及び科学技術庁を除く部分、法務省並びに他分科会の所管外事項を審査することになっております。 なお、明後十五日の委員会において主査の報告を行なうことになっておりますので、議事を進める都合上、本日、裁判所及び法務省、明日、皇室費、国会及び会計検査院、明後日、内閣及び総理府という順序で進めていきたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○主査(八田一朗君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。 —————————————
○主査(八田一朗君) 昭和四十五年度予算中、裁判所所管を議題といたします。 慣例では説明を求める順序でありますが、これを省略し、お手元に配付してある資料をごらん願うこととし、その説明資料は、本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○主査(八田一朗君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。 それでは、これより質疑に入ります。質疑のおありの方は、順次御発言願います。
○横川正市君 予算各項目について説明を省略をいたしましたので、各項目についてその事情をお聞きすべきでありますけれども、重点的に問題を拾ってお伺いをいたしたいと思います。 まず最初に、最近の裁判の長期化という問題があるわけでありまして、今度の場合も増員関係がはかられておるようであります。説明の二の(一)の中に、判事補、裁判所書記官、家裁調査官、裁判所事務官。それから簡裁のほうでは、簡裁の判事、裁判所書記官等それぞれ増員をされております。執行官も同じであります、二十人。こういう定数が、裁判長期化と対比してみて、一体このことがどれだけ長期化を解消する役に立つのかと、予算の取りぐあいにたいへんそこに問題があるわけでして、その辺はどういうふうな処置になるわけでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) ただいま横川委員からお尋ねのございました裁判の長期化の問題は、きわめて重要な問題として私どもも終始取り組んでまいっておる問題でございます。 ただ、いわゆる長期化の問題は、大きく分けますと二つございまして、一つは、先生方のお耳に始終入りますたとえばメーデー事件でございますとか、大須事件でございますとかいうような、特殊の事件が非常に長期化するという問題でございます。それからもう一つは、一般的に大きな目で見て、大数的と申しますか、全体的に見て、平均審理期間が長引くという問題になるわけであります。 で、前者のほうは、これは簡単ではございませんで、ただ人をふやすとか、施設をよくするというだけではなかなか解消しにくい問題であると考えておるわけでございます。いわば、いわゆる法曹三者が真剣に力を合わせて取り組まなければならない問題である、かように考えておるわけであります。 後者の、全体の事件の平均審理期間を短縮するという問題は、これはまさに予算、人的物的な対策でもってある程度まで解消できる問題でございますので、従来からさような意味で増員等もお願いしてまいっておるわけでございまして、いま横川委員からも御指摘のございました裁判官その他の職員合計百三十人の増員に要する人件費を予算に計上していただいておりますし、これに関する定員法は、先般当院で御議決していただいたような次第でございます。最近五カ年間に裁判官約百人、その他の職員約三百五十人の増員がはかられたわけでございまして、数の上におきまして非常に多いということも申し上げられないかもしれませんけれども、御承知のとおり、現在内閣において定員抑制措置をおとりになっております状況下では、われわれとしては、この程度の増員ということはやはり国会なり内閣の御配慮によるものであると、こういうふうに考えておるわけでございます。そういたしまして、それに基づきまして、平均審理期間も、少しずつではございますが、短縮化の方向に向かっておるというのが実情でございます。
○横川正市君 いま言われたような理由は、これは物理的に限定されたものでなしに、法廷で争う三者がそれぞれの考えを綿密に主張することによって裁判が長期化をするということで、定数の問題とはあまり関係がないというふうに言われますけれども、私は実は、最初にお聞きをいたします前に、裁判官の健康、いわゆる肉体上の健康、精神上の健康というようなものは、これはやはり定数と非常に大きな関連があるのじゃないかというように思います。一人の裁判官が多くの案件を扱っておりますと、これはおのずといろいろな面に支障を来たしてくることなんで、定数はいわば公正な裁判をするためには切っても切れない問題であろうというふうに思うわけで、そういう点で、裁判所というのは、どうもわれわれ庶民のあまり近づけないところで雲の上のような存在ですから、外形だけを見ますと、非常に残念ながら、ちょっと人間離れをしたような顔の人が多いわけですね。ことに末端の簡裁やなんかにおられる方にたまたま会いますと、まず正常に仕事ができるのだろうかと思うような健康状態、外観状態ですね。私は、裁判所というのはもっと明朗で明るいものであってしかるべきだ、そういうところが公正な判断をする基本じゃないかというふうに、しろうとで感ずるわけなんです。これは当事者の皆さまはどういうふうに思っていらっしゃるのですか。
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 私、先ほど申し上げましたのも、裁判官なりその他の職員の定数の問題が訴訟の促進その他に関係がないという趣旨で申し上げたわけでは決してございません。きわめて重要な関係を持つというふうに申し上げたつもりでございます。同時に、裁判官等の負担の件数があまりに多くなりますことは、どうしても裁判官の精神的あるいは肉体的条件に影響を来たすわけでございますので、これの減少と申しますか、要するに、定員増による負担の適正化ということについてはまあ絶えず配慮しておるわけでございます。ただ、裁判官の場合にはいろいろ給源等の問題もございますので、増員につきましてはおのずから一定の制約があるというのが実情でございます。 それからあとで御指摘になりました裁判所の明朗化ということはきわめて必要なことで、以前にも国会で御指摘をいただいたこともあるように記憶するわけでございます。何と申しましても、裁判所は要するに争いの当事者が来られるところでございます。中には勾留中の被告人がいわゆる身柄という形で来られる。こういうことが全体の空気を暗くするという面も確かにあるわけでございまして、そういう点ではわれわれも絶えず、たとえば裁判官室に花をいけるというようなことによって少しでも明るいムードをつくりたい、こういうふうに努力をいたしておるわけでございますが、先生方からごらんになって、そういう点が不十分であるという御指摘に対しましては、われわれとしても十分考えてまいらなければならないと、かように考えるわけでございます。
○横川正市君 これは社会が非常に複雑になればなるほどむずかしい問題にぶつかるわけですね。まあことしは七〇年代を迎えて、経済では人間性豊かな社会を建設するというような表題で経済社会発展計画が出ております。しかし、一番豊かでなければならないところは、私は、やはり公正な裁判をする裁判所が、これが厳正であり、しかもきびしさを持ちながら、人間性が豊かでなければならないところなんじゃないかと思いますが、そういう面からすると、最近の裁判所を取り巻いております公安事件といいますか、学生問題であるとか、そういうようなものは適正を欠くような非常手段をとらざるを得なくなってきている。そういう状態に対して、裁判所側としてはどのようにお考えになっておるのでございましょうか、対処をされようとしておられるのでございましょうか。 実は、これは新聞に出てくる活字の面から見る国民の側からいたしますと、その人間の思想、信条にかかわらず、裁判所のやり方に対して非常に疑義を持つ問題がたくさんあるわけです。たとえば、戦前の事件が無罪判決を受けるという場合なんかは、これはいまの裁判官の皆さんには関係のないことかもしれませんけれども、しかし、無罪判決というものが、四十年も五十年もたって無罪になる。これは一体どういうことかという問題にぶつかります。それから近い問題とすれば、メーデー事件のようにこれは長期化されたことが一つの情状になるのかもしれませんけれども、しかし、その間の非常に勾留された人たちの被告の立場にしてみれば、これはやはり問題があると思います。裁判の権威というものは、もうあらゆる問題から、われわれの立場も、国民の立場も同じでありまして、高めていかないと社会生活をする安心感というものを得るわけにはいかない。そういう点で裁判所は公正なんだろうかという疑いを持たしめるような事態というものは、これはどんな微細なことであっても、皆さんの権威のために取り除かなければいけないと思うのですが、その裁判所の立場としてはどうお考えになりますか。 まず、その対処されておることがあればお聞きをいたしたい、こう考えます。
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 横川委員のお尋ねの趣旨は、学生集団事件等のことであるといたしますれば、あとで刑事局長からその点は詳しく説明してもらうことにいたしたいと思います。 一般的な問題といたしまして、裁判は最も公正でなければならないということは、これはもう動かすことのできない大原則でございます。同時にまた、公正であるように世間から、国民一般から信頼を受けなければならない。ひとりみずから公正であるということだけではなしに、やはり公正であるということの信頼を得るということはきわめて大事なことであるというふうに私ども考えておるわけでありまして、日夜、私生活の面をも含めて、すべての面にわたりみずからを清く正しく律するという気持ちで、そういうことを通じて世間から信頼を得る、こういう心がまえで常に対処している次第でございます。
○横川正市君 学生問題はどうですか。
○最高裁判所長官代理者(佐藤千速君) 先ほど話の出ましたもので具体的に例をあげますると、メーデー、あのように長くかかったのでは裁判の意味がなくなるではないか、これはまことに御指摘のとおりでございまして、私どもとしましては、まことに苦い経験をしたわけでございます。あの事件を例にとって反省してみますると、二百六十人をこえる多数の人を起訴して、しかも、そのすべてを併合した審理を進めたというような点に非常に審理の長期化、審理の困難性というようなものがあったわけでございます。一例を申し上げまするならば、証人を一人呼びましても、その反対尋問ということになりますれば、すべての被告人にその機会を与えなければならないわけでございまするので、そういう意味で証拠調べに非常に時間がかかったということが一つあるわけでございます。そのような苦い経験というものがその後見ておりますると、最近の学生事件において起訴のしかたにしろ、それから審理のしかたにしろ、それに反省が加えられているということが見受けられるのでございます。 たとえば、新宿の騒擾事件におきまして、学生が二十一名、騒擾罪ということで起訴されておりまするが、これも検察官におきまして、起訴を厳選してそのような数にしぼっているということは、メーデー事件の教訓がそこにあらわれているというふうにも見れると思うのでございます。 それから東大事件の審理のしかたにおきましても、これは非常にいろいろ意見の対立があったわけでございまするが、適正な数のグループに分けまして、グループに併合したというのがむしろ正確かと思います。と申しまするのは、各被告人ごとに別々に起訴されておりまして、それを適正な数のグループに併合いたしまして審理を進める、こういうようなことは過去の苦い経験というものを考えまして、その後の事件の処理においてその反省があらわれているというふうに見ることができるのであります。 それから先ほどお話しの先生のお話の中にございました——これは御質問に含まれているかどうかわかりませんですが、法廷の秩序を維持するという面から学生の被告が、被告人のみならず傍聴人も公判廷で喧騒をきわめる、こういう事例が相次いで発生した。裁判所といたしましては、審理の場はこれは平静に、理性に従って判断ができるような平静の場でなければならないわけで、これはもう当然でございまするが、そういう秩序を保つためにこそ法廷の秩序を維持しなければならないという事態が発生しているというのが今日の状況でございます。
○横川正市君 私どもはこうすることはいかぬとかなんとかいうような意味で質問をしているのではなしに、裁判所側として適正な方法をとられてなおかつ長期化するということは、これは戦前の裁判と違って、やはり新憲法下の裁判ですから、人権も守られ、それぞれ尽くすべきを尽くしての民主的な裁判が行なわれていれば、結果的に長くなるということは、これはもう当然のことだと思うのですが、しかし、まあそれにしても何らかの方法で長期化する裁判を防止することができないか。それには一体定数問題はどうなんだろうか、あるいは裁判所のいまの調査とか、機構とか、そういった問題はどうなのかというふうな、いわば人為的になせることがないかという点を私どもとしては、やはりお聞きをいたしたい点だと思っているわけです。そういうことが今度の場合の定数増でどれだけ一体緩和されるのか、もう少し何か裁判所側としては、実はそういうような問題を解決するために、こういう新しい方式といいますか、アイデアといいますか、そういったものを取り入れていきたい、そのための予算がありますということであれば、その点をひとつ御説明いただきたいと思う。
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) いま横川委員からのお話、いわば裁判所をバックアップしてやろうという御趣旨のようで、まことにありがたい次第と伺ったわけでございますが、訴訟遅延の問題は、先年、内閣に設けられました臨時司法制度調査会におきましても相当慎重に論議された問題でございます。御承知と存じますが、臨時司法制度調査会は、いわゆる法曹三者だけではなしに、国会からも衆参両院の与野党の議員の皆さまにも参加していただき、なお学術経験者等も入りまして、二年間にわたって審議が行なわれたわけでございますが、その際に、訴訟遅延の問題につきましてかなり詳細なレポートが出ておるわけでございます。その際の訴訟遅延の原因というものにつきまして、主として法曹三者に原因があるもの、法曹三者とは直接関係のない原因によるものということに分かれまして、また、その法曹三者に原因があるもの中がさらに裁判所側に原因があるものと、検察官側に原因があるものと、弁護士側に原因があるものと、それからまあ証人その他というような関係、こういうように分類されたわけでございます。そうして裁判所側の原因といたしましては人的原因、物的原因、管理体制、運用の問題、まあ大体こういう大ワクで四つぐらいが指摘されたわけでございます。で、この内容を一々御説明申し上げますことは、たいへん繁雑になりますので省略さしていただきたいと思いますが、その際にも増員ということはきわめて重要な要素である。しかし、増員だけですべてが解決するわけでもないので、他の方法もあわせてとりながら増員をはかるべきである、こういうような大まかな結論になっておるわけでございます。で、そういう答申を受けまして、先ほど申し上げましたようなその後における裁判官その他の職員の増員がはかられてまいっておるわけでございます。御参考のために平均審理期間というものを申し上げてみたいと思うわけでございますが、これはおそらく、ことに刑事事件につきましては、お考えになっております以上にそう長期化はしていないと思うわけでございます。たとえば簡易裁判所におきましては、刑事事件は大体四カ月程度、地方裁判所におきましても六カ月以内、五・七カ月というような数字もございますが、まあ大体そんなところでございます。高等裁判所におきまして約六カ月でございまして、まあ高等裁判所で六カ月というのは、手続の性格上、もう少し短くならないものかと考えておるわけでございますけれども、それを除きますれば、おそらくこの程度の平均審理期間というものはある程度やむを得ないものではないかという感じがするわけでございます。問題は、むしろこういう平均審理期間ではございませんで、先ほど来御指摘の特殊の事件の長期化ということだということは、実はいま申し上げました臨時司法制度調査会におきましても大部分の方のお認めになったところでございまして、これについての対処方法というものはきわめてむずかしいと、いま横川委員からも御指摘のございました裁判は適正でなければならない、証拠は十分に取り調べなければならないということと、促進ということとのかね合いをどう持っていくかというようなところにかかってまいりますので、非常にむずかしい問題であるという大体の空気であったわけでございます。一方、民事事件のほうは、これまた簡易裁判所は五・三カ月程度でございますから、そう長いとは申せないと存じますが、地方裁判所になりますと十一カ月見当、高等裁判所になりますと一年半程度ということで、まあ平均の審理期間の面におきまして、すでに民事事件においては若干の長期化というものが感ぜられるわけでございます。その促進ということがやはり当面の急務であるというふうに考えまして、増員につきましてはそういうことを相当配慮しながらいたしておる次第でございます。ただ、これまた臨時司法制度調査会でも話が出ましたけれども、刑事事件の場合には、御承知のとおり、検察庁がいわば原告側の立場に立ちます関係で、非常に立証その他についても能力を持っておられるわけでございますが、民事訴訟事件につきましては、原告側が場合によりますと、本人自身であり、かりに弁護士がおつきになっております場合でも、弁護士そのものの組織が、たとえばアメリカ等のようなローファーム制度ではございません関係で、立証活動が十分にできないという面もございまして、そういうことが一面をなすわけでございます。ただ、御指摘の裁判所としてどうするのかという点は、先ほど来申し上げました人的の問題として増員問題、それから物的の問題として法廷その他の施設の改善の問題、それから管理体制といたしましていろいろ監督体制と申しますか、むろん裁判の独立は前提といたしまして、そのワクの中における管理の機構、さらには裁判官のいろいろな運用上の配慮というような点で、絶えず会同その他の会議を通じて検討いたしておるわけでございます。今回の予算の中のどの部分が訴訟促進かというお尋ねといたしますれば、実は裁判所の予算は特別の新しい事業というものはないわけで、すべてが裁判の適正、迅速化のための予算である、こういうふうに申し上げたほうがあるいは当たっておるのではないか、全体を通じてこの予算でもって訴訟の適正迅速化をはかりたい、こういう考えでおるわけでございます。
○横川正市君 その点では、たとえば裁判の行なわれているところを私どもちらっと見まして、昔はあれは毛筆で書いたわけですか、筆記というのは。いまは何かタイプか何かになっているんですか。それともそういう証拠品の記録なんていうものは、これはもう固定物であればそのままでしょうが、そうでない調書なんていうようなものはどういうことになって、整理のしかたですね、何か非常に証拠調べをするあるいは弁護に立った人が事件の全容を知ろうと思うときに、膨大もないものを持ち出してくる、私どもは新聞で承知するんでは、たとえば戦前の事件を、これはどうもおかしいといって戦後になってから調べようと思って、その関係者が行きますと、それはたいへんな証拠を倉庫の中に入れておって、それを一から十調べなければ全容がわからないというような、いろいろな裁判所のいまの構造そのものに依然とした古さというものを持っていて、それが直らないということも管理体制としてはおくれる原因じゃないのかという気もいたしますが、どうでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) いま横川委員から御指摘のございました点は、実は私ども自身がいわば感じておりまして、絶えず反省し、改善につとめつつある中心的課題の一つでございます。何と申しましても、裁判所は現在五、六百万件の事件を持っておるわけでございます。多い時期には八百万件近くございましたが、交通反則金制度等の関係で、それよりは若干減っておりますけれども、それにいたしましても五、六百万件の事件をかかえているわけでございます。そこでいま毛筆というお話が出ましたが、実は私どもも裁判官になりました当初は、筆で判決を書いたものでございます。ただ、最近では御承知のように、タイプで判決は浄書されておるわけでございます。それから一方書記官のつくります調書は、大体においてはぺン書きが多いと思いますが、ただ、その関係で御承知のとおり、録音機というものと速記というものを取り入れておるわけでございます。録音は御承知のとおりの録音機で、これはいわゆる公の機関では裁判所が比較的早い時期から取り入れたわけでございます。ただ、何と申しましても録音のほうは、これを再生いたしますのに機械その他がございまして、直ちに利用するのにこれは不便の点がございますので、これと併用して速記制度を使っておるわけでございます。ことに裁判所の速記制度は手書きではございませんで、いわゆる機械速記でございます。ソクタイプというものを使っておるわけでございます。そうしてそういう機械速記であります関係で、いま御審議いただいております予算の中にも若干計上されておりますが、これを将来はコンピューターにかけて反訳するという研究を進めておるわけでございます。現在は速記官が自分で反訳をいたしますので、かなり時間を要するわけでございます。それに対しまして、これをコンピューターで反訳いたしますると、きわめて短い時間で反訳ができるばかりではなしに、その人的な労力というものが節約されるということになるわけでございます。その他機械化、能率化の問題といたしましては、いろいろ複写機のような問題等は、これは世間一般と同様なレベルで採用していると申し上げて差しつかえないと思います。お手元の資料の中にも「裁判運営の近代化および能率化に必要な経費」というような形で相当なものを計上していただいておるわけでございますが、そこに掲げられております事項以外のものにつきましても、そういう面のものがいろいろとあるわけでございます。
○横川正市君 指摘だけにとどめておきますが、その点はやはり構造が幾らか近代化されなければ、裁判所自体の保守性も近代化されないというふうに私どもは思うわけで、いかめしさの中にある古さというものだけでは、近代化に対応することができないんじゃないか。これは端的に私質問しようと思いましたが、けさの新聞で「「裁判の公正」を厳守せよ」という論説が新聞に出ておりまして、その中に裁判官の身分の保障の問題と、政治的な行動についての関連性というものがどうも私ども理解のできない点が一、二あるわけでございますが、その前に裁判官という適性を持った——適格者といったほうがいい、人間というのはどうもあれですから。裁判官としての適格者というのは、これは求めれば得ることのできる状態なのか、それとも逐次そういうことが困難になってきておるのか、非常に判断がむずかしいかもわかりませんが、たとえば、頭脳的に求められても思想的に求められないとか、それから現体制の裁判で考えると求められるが、しかし、実際上の社会情勢その他からすると求めにくいとか、いろいろ適性を求めるのはむずかしいんじゃないかと思うんですが、この裁判官を求めようとすれば容易に求められるというような状態になっておりますか、現状はどうでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) たいへんむずかしいお尋ねでございますし、ことにこれは私どもの内部から申しますと、人事局というものがございまして、人事局長の所官に属するわけでございますが、本日よんどころない用務で他に出張いたしておりまして参っておりませんので、私が便宜かわって申し上げます関係で、あるいは十分な御説明ができないかもしれませんが、もしそういう点があれば、しかるべき機会に人事局長に補正させることにしたいと思います。 まず御承知のとおり、裁判官の任命資格というものが裁判所法に規定があるわけでございます。したがいまして、要するにその任命資格に該当する者でございませんと任命できない、そういう点ではまず相当な大ワクがあるわけでございます。これは一億国民の中から見ますときわめて少数な方であるというふうに申し上げざるを得ないと思います。実質的な給源としましては、御承知のとおり、毎年司法試験というものをいたしまして、それから修習というのが二年ございます。修習終了後、いわゆる法曹資格を得ます者が大体毎年五百人くらいずつあるわけでございます。で、司法試験を受けます者は万をこえるわけでございますが、修習終了者は毎年五百人前後ということでございます。その中から判事及び検事及び弁護士という三つの方向に進む、きわめて少数は学者等になられますが、大部分は判検事及び弁護士になる。したがいまして、給源は毎年五百人のワクの中に一応限られているわけでございます。特別任用という制度も若干ございますけれども、大体においてはそう申し上げていいだろうと思います。その五百人の中からかなり多くの部分が弁護士を志望されるわけでございます。判検事を志望いたします者の数は毎年百名から百五十名の中におさまる程度というふうに申し上げてよかろうかと思います。大体裁判官の場合は七、八十名見当来るわけでございます。で、五百名の中で七、八十名というのが多いか少ないかというのもいろいろ見方があろうと思います。弁護士は全国で八千から八千五百くらいおられると思います。それに対しまして、裁判官は二千人から二千五百人見当でございますから、まあそういう比率と、いまの志望者の補充とがどういうふうにバランスがとれているか、こういうようなことにもなるわけでございます。同時にまた、いまいろいろお話が出ましたが、単にその資格要件を備えているだけではなしに、まず健康ということが相当大きなウエートを持つであろうと思います。それ以外に、全人格的評価と申しますか、いろいろな意味で裁判官に適する人材を得るということになりますので、幾らでも給源はあるという状態にはない。全体から申し上げますと、まず弁護士を志望される傾向が強いと申し上げてよかろうと思います。その原因は、いろいろございますけれども、一つには、まあ給与の問題もあろうと思います。また、弁護士の場合には自分の希望する土地に一生定着できる。それに対しまして判検事の場合は、ある程度任地を移動しなければならない、こういうことも相当な関連性を持つようでございますし、また、いろいろな意味で弁護士の自由な職業ということにあこがれるという面もあるように聞いておるわけでございます。それらと相まちまして裁判官が相当ゆっくりした形で得られるという状態には必ずしもないわけでございます。その辺のところは若干いろいろデリケートな問題になろうかと思います。
○横川正市君 そのたいへんデリケートさが、一般の国民の受ける側からすれば、不信あるいは信頼というものにたいへん密接な関連性を持っているわけで、私どもはやはり法治国家における国民のたよるべきところは裁判所以外にはないのだ、ここがしっかりしてくれているから、われわれは安心した生活ができるというぐらいにこの裁判所というものを高く評価をするわけです。最近そういう評価をする裁判所に起こってきた事件で、私非常にふしぎに思うことが一つあるわけですが、それは札幌で行なわれた恵庭事件という裁判があるわけです。この恵庭事件は、当初提起された問題は、憲法に抵触をするかしないかという自衛隊事件ということで取り上げたわけですね。ところがそれは、判決の結果からいたしますと、単なる傷害事件というふうに縮小されて、そしてこれは無罪判決が出たわけです。これは一つの判決の形態としてはそういうことも納得はできるわけなんですが、今度は長沼のナイキ事件ということになりますと、地方裁判所ではこれに対して原告側に有利、ところが高裁に行きますと、今度は逆転をするという事件にぶつかる。これは国が世論を分断して論議をしているものですから、その道筋を立てるところはこれは裁判所以外にないんじゃないかという期待感を持っている一般の国民側からしますと、これは一体どういうことなのかという判断をするわけですね。そこで一つ問題なのは、今度思想とかあるいは政治とかに関連した者については、これは裁判官になることは適当ではないという、これは岸さんの見解が出たわけなんですが、これは新聞のあれから見ますと、別にそれを直接言ったことではないのだけれども、結果的にはそういうことにならないかというふうに言われております。裁判官だからといって思想信条の憲法で保障されているものが保障されないということはないわけで、現行の裁判所の体系から、構造上からいけば、不適格とするものは一体何で、適格するものは一体何なのか、これは現体制において停止をしているのならばいざ知らず、流動する社会に対応していくとすれば、私はやはり対応する態勢というものがあってしかるべきだと思う。たとえば戦前におけるところの憲法と戦後の新憲法との状態からいってみても、戦前の裁判官と戦後の裁判官と、同じ人間が百八十度転換をすることの必要性というのは何かというと、それは個人の持っている思想信条にかかわらず新しい体制の中で厳正公正な裁判が行なえる、それでなければ全部裁判官がやめてもらうということになるわけで、そういう点から勘案しながらものごとを考えてみますと、どうも私どもとしていささか解しかねるものがあります。しかし、非常に頭脳が明断であった、記憶力も抜群である、だから法律に向いておった、しかし、人間としてはどうかなという点があって適格性に欠けるという点は、これはあると思うんですが、そういう点で、今回たまたま起こっております修習生をめぐっての問題点については、一体どこが問題なのか、それをひとつはっきりしていただきたいと思う。
○最高裁判所長官代理者(岸盛一君) ただいまお尋ねの件は、裁判所にとりましてもまた国民全般にとりましても非常に大事な問題だと考えております。先ほど私の談話のことがお話にございましたが、その全文は新聞には出されなかったものが多かったと思います。この談話と申しますものは、裁判官と団体加入、つまり裁判官の団体加入についての可否あるいは限界の問題について最高裁判所の裁判官会議が慎重に検討して意見をまとめ上げたものを、そのまま私が私の談話の形として、最高裁の公式見解として発表いたしたものでございます。で、全文お読みでないと思いますので、そう長くありませんから、その談話の内容をここでちょっと読み上げさしていただいて御説明申し上げたいと思います。 「裁判官の任用について、差別待遇があると二十二期司法修習終了者の代表が主張しているそうであるが、裁判官志望の某君らが不採用となった理由は、人事の機密にぞくすることなので、一切公表することはできない。ただ、同君らが青法協会員であるという理由からではない。 なお、一般的問題としてであるが、裁判官は、その職責上からして、特に政治的中立性が強く要請されているのは、当然のことである。そしてこの中立性は、裁判官の法廷における適正な訴訟指揮権や法廷警察権の行使を通じ、窮極においては、裁判によって貫かれるべきことである。しかしこれと同時に、裁判は、国民の信頼の基礎の上に成り立っているものであり、したがって裁判官は、常に政治的に厳正中立であると国民全般からうけとられるような姿勢を堅持していることが肝要である。裁判官が政治的色彩を帯びた団体に加入していると、その裁判官の裁判がいかに公正なものであっても、その団体の構成員であるがゆえに、その団体の活動方針にそった裁判がなされたとうけとられるおそれがある。かくては、裁判が特定の政治的色彩に動かされていないかとの疑惑を招くことになる。裁判は、その内容自体において公正でなければならぬばかりでなく、国民一般から公正であると信頼される姿勢が必要である。裁判官は、各自、深く自戒し、いずれの団体にもせよ、政治的色彩を帯びる団体に加入することは、慎しむべきである。 以上は最高裁判所の公式見解である。これが談話の全般でございます。そしてこのような見解発表をするに至りました直接の動機は、ことし修習を終えました二十二期司法修習終了者の代表者が、裁判所は思想信条によって裁判官の任官をきめておるのではないか、そういうことを世間にも言い、また裁判所に対しても申してきておったのでありまするが、裁判官といえども先ほどお話のありましたとおり、思想信条の自由は持っております。裁判所があらかじめ任官希望者の思想信条を調査してどうのこうの、そういうことはすべきことではございません。またやっておりません。が、問題となりました具体的な団体というのは、御承知の青法協という団体でございまして、これは決して青法協自体を裁判所がとやかく論難しているのではなくて、その青法協に加入することが裁判官として適当かどうかという裁判官のモラルあるいは心がまえ、そういうものについての所見を発表したものでありまして、これはこの談話の中にも「いずれの団体にもせよ」というふうにはっきりと明示しております。そしてこのような団体加入については、裁判はただ内容が公正であるというだけではいけないので、世間から見て公正らしく見られる、ほんとうに裁判所は公正であると信頼される姿勢が必要である、そういう裁判官の倫理を説いたものでございまして、そういう趣旨にこの公式見解を御了解願いたいと思います。
○横川正市君 しろうとがこういう深みに入っていきますと、抜きさしならなくなりますから、なるべくあまり足は入れませんけれども、こういうことは、それじゃ裁判所として形式は整っているから、別にこのことについては意見を言わないということなのかどうか。で、ちょっとお聞きしたいのですが、最高裁判所の判事の任命は、これは内閣が行なって国会の議決を得るわけなんであります。田中幹事長が最近の裁判の傾向を見て、そしてこれじゃいかぬというような意思表示をいたしまして、これに対して裁判所は激しい口調でこれを問責をいたしました。私はあれは当然だったと思うのでありますけれども、しかし、形式からいきますと、いまのところやはり議院内閣制を持った上で最高裁の判事というのが任命をされておるわけでして、その思想的なものはやはり一つの国の政党というものに支配をされることが、これはやむを得ないというような結果が出てくるのじゃないかと思うのですが、その場合に私は、裁判所独自の形態というものが守られているのかいないのかという、そういう一般国民の裁判所に対する疑惑といいますか、そういうものに対してはどういうお答えをするのかということが一つあります。 それからもう一つは、平賀さんの裁判官に対する書簡が最近出されております。それから飯守さんの案件がありまして、これは飯守さんも毛並みのいい人ですけれども、九州くんだりまで旅をいたしております。なるほどその権威維持のためには私は万全を期していると思いますが、今回のこの青年法律家協会ですか、私どもの知る限りでは、たとえば公害の追及だとかそれから平和問題についてのいろいろな案件だとか、そういったことをやっていることであって、それほど特別な団体として判を押されるようなものではないのじゃないかというふうに言われておるわけですが、裁判所自体の中に非常に大きな大流というものがありまして、その大きな流れというのは、いわゆる保守的な議院内閣制からの支配で、それと相いれないものを、今回適格性を欠くものといわれたのではないか、そういう一般の疑惑を持たれているわけなんですけれども、その点からのひとつ説明をいただきたい。
○最高裁判所長官代理者(岸盛一君) 最高裁判所の裁判官としての任命問題と、昨年の四月に起きました自民党の司法制度調査会との問題とからみ合わした、関連の課せられた御質問でございますが、これは当時あのとおり新聞で御承知のとおりのできごとがございました。しかし、その後の状況を見ておりましても、決して自民党の司法制度調査会が裁判所の人事に介入するというようなことは絶対ございません。最高裁判所の人事は、特に総理と最高裁判所長官との間のいろいろなお話し合いの結果定まることで、われわれ事務当局の者はそれには介入する筋合いのものでもなし、またいたしてもおりません。その点については、両者お話しの上公正な人事が行なわれていると御理解いただいてけっこうでございます。 それからなお、平賀書簡の問題、それから飯守所長の問題、こういう問題は、ただいま訴追委員会のほうに係属しておりますので、公式の場でわれわれの意見を申し上げることは、これは差し控えなければならないと思いまするので、その点は御了承をお願いいたしたいと思います。
○横川正市君 裁判所あるいは裁判官、独立した機関が国民の良心のよりどころとしてあるわけですから、そういう意味では、私はいろいろな意味で最近はかってないいろいろな事件がやはり裁判所を取り巻いて起こったと思うのであります。そこで裁判官の資格を一度取った人たちが年々、年をふるごとに、いわば何といいますか、再教育というのもちょっとおかしいわけでありますが、新しい情勢に適応する裁判態勢というものをマスターさせるための機関というものを持っておられるのじゃないかと思うのですが、そこで、私は端的に、地方裁判所の判決と高裁の判決とがたまたま違う判決が多過ぎるのじゃないかという感じを持っているわけですけれども、多過ぎないのか、特殊な事件が新聞の記事に出るのか、これは一体裁判所としては、裁判官は独自性を持っておりますから、その意味でいろいろこの判決が違うということは当然だと言えば当然なのですが、そういう点でちょっと奇異に思います。ところが、最高裁判所に行きますと、今度はその高裁の判決にいささかまあ修正が加えられると、そういうこの流れが地方裁判所、高裁、最高裁判所の中に波があるような気がいたします。この波は、この高裁の判事さんの年齢とかあるいはまあ経験とか何かいろいろなものがいささかやはり時流から見れば幾らかダウンしているのじゃないか。まあこれは悪い表現ですが、と思うわけなのですが、これはひが目かどうか。事案上、数の上から言えば地方裁判所で出た判決と高裁で出た判決と違う。それから最高裁に行くと地裁の判決にやや近寄った判決が出てくるというケースがあるとすれば、これは中間が少しおかしいのではないかということになるわけですが、必ずしも独自性を阻害してものを言っているわけじゃないですが、傾向としてお聞きします。それと同時に、再教育ということがどういうふうに行なわれているかお聞きします。
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) いま横川委員から御指摘のありました点は、あるいは世間からそういうふうに受け取られているという面もあるかと存じますが、私どものほうで統計的に見ますところでは、取り消し率というものは、民事でも刑事でもそう高いものではないわけでございます。まあ一般的に言って、地方裁判所の判事が比較的若い人が多く、高等裁判所がやや年長者が多い。最高裁判所は一番年齢的には老齢の方がおられるわけでありますが、しかしながら、高等裁判所におきましても、これは東京と札幌等ではかなり年齢的にも差がありますほかに、同じ東京の中でも、裁判長クラスと陪席の諸君とではかなり年齢差がある場合がございます。多い場合には二、三十歳の差のある場合もあるわけでございます。そういうことで、これは一がいに年齢と結びつけて考えるわけにもまいらないかと思います。しかしながら、同時にまた、お互いに人間として年をとれば自然に考え方が固くなってまいるということも確かでございますので、裁判所では、御承知のとおり、司法研修所でいろいろ研究会等をいたしまして、絶えず新しい知識の注入をはかっておりますほかに、事務総局におきましても会同を計画いたしまして、毎年かなり多くの数の裁判官の集まりをしておるわけでございます。そういう際には新しい法律の解説その他新しい知識の注入ということにつとめておるわけであります。同時に、これはよく大学の先生が年をとってもわりあいに若い頭を持っておられるということを言われますように、われわれもそういう研修という形とともに、若い諸君と接触しまして意見を交換することが非常に頭を柔軟にする道であると考えているわけでございますが、お話しのように、裁判所にはかなり若い方が毎年相当数入ってこられるわけでございますし、高等裁判所にも、二十代の人は少ないかと思いますけれども、三十代、四十代前半のような方は相当多数いるわけでございまして、そういう諸君といろいろな会議の機会を通じ、さらには裁判自体の合議を通じて意見を交換することにより頭をやわらかくするということがはかられていると言って差しつかえないと思います。しかしながら、確かに御指摘のような面もございまして、今後ともそういう方面には一そう努力してフレッシュな感覚で裁判をするという気持ちを持ってまいりたい、かように考えるわけでございます。
○横川正市君 実は私も経験をした点で申し上げると、裁判官の健康という、心身ともに健康を守られるという、そういう対策が一体どうなのか。これはもう相当一般の人たちとは別個に力が入れられてしかるべきじゃないか、こういうふうに思います。たとえば検事の立場にある人と裁判官の立場にある人とは同等の大体俸給表みたいな形態になっている。私は労働力不足の一般産業界とあわせて考えるわけではないのですけれども、裁判官の俸給というのは、実はあまり段階のない、そしてまた大きい小さいの序列によってどうこうというようなことに災いされない、そういう点にあまりウエートを置かない俸給体系というものが必要なんじゃないだろうか、こういうふうに思うわけですが、たとえば地方の裁判所から県なら県の裁判所に栄転をする。大体この栄転というようなことがどうだろうか。どんな小さなところの裁判官であっても、その独自性と、公正さと厳格さというものは持っているわけですから、それほど身分に差をつけた処遇のあり方というものは、これはとるべきではないのじゃないか。しかし、まあこれは一般社会の習い性ですから、全然ないというのもこれも悪平等になりますので、その点は一般の俸給体系と別個に裁判官の俸給というものはつくるべきではないかというふうな考え方をずっと持っているわけなんですが、裁判所側としてはどうでしょう。
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 裁判官の給与がいかにあるべきかということは、きわめて重要なまたしかもきわめて困難な問題でございます。先ほど来何度も引用いたしました臨時司法制度調査会の意見の中でも、その点がかなり指摘されているわけでございまして、いわばその裁判官の「職務と責任の特殊性等にかんがみ、これにふさわしい独自の体系を樹立すべきである。」というのがいわば大上段の回答でございます。ただ、その確立にはおそらく相当なまだ期間を要するであろうから、それまでの間は現行の体系のもとで改をはかれ、こういうような意見になっておるわけでございます。ところで、いま横川委員からお話のございました裁判官の給与は平等であるのがたてまえであるべきだという点は、理論としてまことにそのとおりであろうと思うわけでございます。単独で裁判をいたしますとすれば、少なくとも地方裁判所の間におきましては差があるべきものではない。俸給一本ということも確かに一つの考え方でございます。しかしながら、ただまたいまのような任用制度をとっておりますと、先ほど来申し上げておりますように、三十歳前後でも単独の裁判をいたします。中には六十歳前後でも地方裁判所で単独で裁判をしておられる方もある。年齢においても経験年数においてもそれだけの差がある場合に、これを平等なり平等に近い給与にするということには非常な困難があるわけでございます。したがいまして、裁判官の年齢なり経験年数がほぼ平等であるという形になりますれば、給与もほぼ平等であるということになってしかるべきであるというような関係になってきて、任用制度との関連が問題になるわけでございます。ただしかしながら、現在の給与体系のもとにおいても都会といなかのほうとの差をつけるべきではなくて、なるべく同じ経験年数の者は同じような給与であるべきだというようなお話がございました。これは人事局長の所管のことでございますので、私正確には存じませんけれども、しかしながら、おそらく世間でお考えになっておるような差はない。つまり、同じ経験年数の者は大体同じような給与で、これは都会に勤務する場合といなかに勤務する場合とそう大きな差はないというのが一つの基本的な考え方ではないかと、私、直接の所管でございませんから間違っておるかもしれませんが、そういうふうに受け取っておるわけでございます。むろん平等ということではございませんけれども、そういう、いわゆる行政官のような大きな差はない運用が行なわれておるようにも聞いておるわけでございまして、そういう点は人事当局としても十分配慮いたしておると考えておりますし、いわゆる栄転ということばは、都会地に出るという意味ではそうかもしれませんけれども、給与の意味ではそれは当たってはいないというのが実情ではないか、かように考えるわけでございます。
○横川正市君 まあ私も何回か内閣委員会で俸給表の審議をやりました。そのつど検察官とは別個な裁判官俸給表というもので、そして独自性をやはり持たせるべきだということを一貫してずっと主張いたしてきました。なかなかならい性もありますし、均衡論もありますし、そういう意味では、ずいぶん無理を、修正するのに無理な点があるような気がいたします。これはひとつ裁判所側が本気になって、やはり一〇〇のうちの九九%で確率があればいいというものでは実はない。一〇〇のうち一〇〇が公正なものでなければならないということを求められている。まあ具体的にはそれが可能かどうかは別問題として、そういうものが求められている裁判所の立場というものは、もっと皆さんがしつかりと構造上も機構上も確立をし、しかも人事の体系を整えていくという努力が私は必要なんじゃなかろうかというふうに思います。これはいま出された内容で、私の考えの間違っていないことだけは一つ確認することができましたし、一そうその点はひとつ努力をしていただきたい。 もう一つは、裁判所の庁舎の整備問題であります。どうもやはり予算があまりよく取れない。一般会計で取れないということもあって整備がおくれているんじゃないかと思いますが、いまどういうふうになっておりますか。
○最高裁判所長官代理者(大内恒夫君) 裁判所の庁舎を改善するということは、裁判の能率を発揮するために非常に必要な大事なことでございます。私どもといたしましても、特に裁判所の予算につきましては、営繕には重点を置きまして毎年予算の要求をいたしておる次第でございます。 裁判所の営繕費というようなものの状況でございますが、逐年非常に伸びておりまして、一例を申しますと、十年前の昭和三十五年度におきましては総額約十二億円でございましたが、現在御審議いただいております昭和四十五年度の予算におきましては、総額三十八億円が計上されているわけでございます。まだ裁判所といたしましては古い、あるいは狭い庁舎が全国にかなり残ってはおりますが、こうした営繕費の予算計上に伴いまして、私どもといたしまして毎年その改善に努力をいたしているわけでございます。一例を申しますと、明治時代に建築されました庁舎で木造の庁舎、これは地方裁判所の本庁の庁舎でございますが、現在二つ残っております。一つは浦和の裁判所、もう一つは大津の裁判所でございます。この二つとも現在御審議いただいております昭和四十五年度の予算に計上されましたので、一例でございますが、地方裁判所の本庁につきましては、明治時代の木造の庁舎はこれで解消するというような進捗のぐあいになっておりまして、私どもといたしましては、今後とも引き続きこうした改善に努力をいたしてまいりたい、かように考えております。
○横川正市君 実は浦和の裁判所の改築がどうなっているかという、直接お聞きいたしたかったわけですが、ことしの予算で改築されるとすれば、大体そういう老朽庁舎というようなものはなくなるということですね。
○最高裁判所長官代理者(大内恒夫君) 地方裁判所の本庁につきましては、そうした改善が進んでまいりました。まだ支部、あるいは簡易裁判所におきまして、なお古くあるいは狭い庁舎が残っておりますが、そうしたものにつきましても、逐次改善をはかっていきたいと、私どもは考えております。
○横川正市君 最後に何回も繰り返すようですが、最近の裁判所をめぐって、政治の場所からも発言があり、それから一般の団体別にも問題がいろいろ言われ、しかも判決の内容にもどうも私どもとしても納得ができないものがあるというふうに、やはり民主化された日本の国の中で、隠されたものがだんだんなくなってまいりますと、一番大切なところで行なわれているものに対しては、やはり一番きびしい目というものが向くのはまた当然のことだと思いますし、また、そのきびしさが受け入れられるような態勢でなければ、裁判所の地位というものは確立されないというふうに思いますから、この点はひとつ十分注意をされるように、きょう私どもの立場で問題としてあげられる幾つかを出しましたけれども、これはここで釈然としたわけじゃございませんので、一そう改善に努力をしていただきたい、これは期待をいたしまして、私の質問は終わりたいと思います。
○渋谷邦彦君 私は公害裁判の問題についてお尋ねをしたいと思うのでありますが、本論に入る前に若干お伺いしたいと思います。 ただいまも横川委員を通じましていろいろな問題点のお話がございました。この裁判の迅速化というものについては、先ほど来の御答弁を伺っておりましても、国民の当然な要求でもあろうかと、このように私も存じております。しかし、公害裁判に見るまでもなく、他の一般の裁判を見ましても、しばしば長期化する傾向がある、こういうことが指摘されているわけでありますが、現在の裁判官の絶対量と申しますか、これはちょっと妙な聞き方かもしれませんが、これはどうなんでしょうか。現在の陣容でもって十分に激増するもろもろの案件を処理するに足る体制になっていらっしゃるのかどうか、その点ちょっとお伺いをしたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 現在の裁判官数は最高裁以下で二千六百五人でございます。最高裁を除きまして、下級裁判所だけにいたしますと二千五百九十ということになるわけでございます。この数で現在の激増する事件の処理に適するかどうかという御指摘のお尋ねでございますが、これは私どもとしてはなお不十分である。今後増員の必要があると考えているわけでございます。ただ事件の趨勢はいろいろ変化いたしますので、その変化をも見きわめながら、また同時に、充員の可能性ということも頭に置きながら増員をはかっていきたい、かように考えているわけでございます。
○渋谷邦彦君 増員の点につきましても、今日まで何回か各委員会を通じまして繰り返し論議がされてこられたと思いますけれども、先ほども平均毎年五百万件から六百万件の事件処理ということになりますと、一体一人の裁判官がはたしていま御説明あった人数、体制でもって一年とか二年という短期間の間に処理できるものであろうかというしろうと考え方でございますけれども——必然的に長引く。そしてまた事件の非常にむずかしい内容というものが頻発してまいりますと、それだけに全体的におくれが出てくるのではあるまいか。人をふやすこと、それ自体が裁判官の素質の低下というようなことを招かないとも限りませんので、ふやすこと、それ自体はいろいろお考えにもなっていらっしゃるだろうと思いますけれども、しかし現状としては、これはどうしようもない事態ではなかろうか、こうしたたとえいろんな事態か変化するにいたしましても、まず現段階から見て、将来のことも含めまして、一体どのくらいの裁判官がおられれば、まあまあ国民の納得のいく事件処理、迅速化というものが望めるというふうにお考えかということと、それに対する裁判所としての今後の姿勢でございますが、どういうふうにこれから予算編成の上においても要求していくか、また人員の獲得についてもどういう考え方で今後進めていきたいか、その辺をお聞かせいただきたいと、こう思います。
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 先ほど裁判所の事件数が五、六百万件ということを申し上げましたけれども、この大部分の事件はきわめて簡単な事件でございます。で、裁判所で最も力を注ぎますいわゆる民事訴訟、刑事訴訟事件、すなわち公判廷、法廷で取り扱います事件は、昂事訴訟のほうは大体十九万件前後、刑事訴訟のほうは大体十二、三万件というのが年間の件数になっているわけでございまして、むしろ私どもとしては、かなりそちらに中心を置いて、増員等も考えているわけでございます。その他の事件も、当然考慮しておりますけれども、この事件の推移というものが、裁判官数の計算に相当なウエートを占めるわけでございます。同時に、増員は単に事件数の数の上での増加ばかりではなしに、質的な変化、先ほど来問題になっております学生集団事件というようなものになりますと、単独体で処理することは困難でございますので、合議で処理するというごとになりますれば、自然同じ事件を処理するについて、三倍の人員が必要になる、こういうことでございまして、単に数の上だけの比較もできないという面があるわけでございます。そこで、どのくらいの数が必要かということは、これは各国との比較等からいきましても、なかなかむずかしい問題でございます。先年臨時司法制度調査会が開かれましたことを御報告申し上げましたが、その際に、その点が問題になりました際に、判事についてなお約五百七十人の増員を必要とするというような意見になっておったわけでございます。で、その後これは判事を含めましての数でございますが、約百数十人の増加がはかられたということも先ほど横川委員のお話に対して申し上げたわけでございまして、そういう点あたりから今後なおどのくらい必要かというようなことも推算願えるかと思うわけでございますが、ただしかしながら、これはあくまでもその時点における見通しというものを中心にしておりまして、今日のような変動する社会になってまいりますと、一応の目標は掲げますものの、やはりそのつどそれを収拾しつつ考えてまいると、かようなことになっておる次第でございます。
○渋谷邦彦君 まあ新しく増員される御計画に反しまして、判事になられる方が、途中で退官をされる。実は私の個人的に存じておる方の中で、家裁の判事をやっておられる方がございまして、まだ年齢としては三十七、八でございますが、士にかわられたわけでございますね。そういう傾向が最近非常にふえている。先ほどもそうした理由についての御答弁がございました。結局は生活の保障等々のもろもろの要因が背景となって、そういう傾向になっているのだというふうに私は理解したわけでございますが、そこで、まあ判事になられて、これから将来とも嘱目される新進気鋭の方々が途中で退官をされる、いろんな事情が個人的にはございましょう。それを差しとめる何ものもないわけでございますけれども、年間を通じまして、途中で退官される方はどのくらいいらっしゃるでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 裁判官の退官の数でございますが、これは年によってかなりの変動はございますけれども、定年で退官いたしますものは大体三十名という見当、上回ることもあれば下回ることもありますが、そういうような見当でございます。それ以外にやはりいまお話しのようないろいろな理由でおやめになる方が、やはり三十名前後ございますので、判事につきましては、六十名見当というものが退官するというふうに申し上げてよかろうかと思います。ただし、これは年によって若干の変動があるわけでございます。
○渋谷邦彦君 六十名年間に退官されるということは、決して少ない数では私はないと思いますし、毎年約五百名前後の司法修習生の方々が出られるわけであります。その中で大体判検事になられる方が百名前後と先ほど伺っておりました。その割り振りは、検事何名、判事何名ということを、あえてお伺いしませんけれども、そうすると、ますます数が減る傾向になってきはしまいかということを心配するのでありますけれども、この点はいかがでございましょうか。
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 毎年裁判官になりますものは、平均して申し上げますれば七、八十名というふうに申し上げられるかと思います。したがいまして、若干ずつはふえてまいるという計算にもなりますとともに、判事で定年になりましたもので、さらに簡易裁判所の判事になりますものもございますので、その辺の計算は必ずしも単純ではないわけでございます。ただしかしながらストレートに裁判官がどんどんふえてまいるというわけにもまいらないことも御指摘のとおりでございまして、その辺はなかなか私どもとしてもいろいろ苦心しながら運営しておるというのが実情でございます。
○渋谷邦彦君 そこで先ほどもお話しがございましたが、やはり裁判官の身分の保障また生活の保障ということが最大のやはり眼目ではなかろうかと、このように推察をいたします。将来性があるかないか等々も当然問題になりましょう。私もこの手元に裁判官、検察官の俸給明細額を持っておりますけれども、高額所得者になられても、税金で相当引かれるということになりますと、手元にお入りになる所得がきわめて少ない、やはり将来退官をされた場合に、直ちに弁護士におなりになるとか、いろいろなそういうことが保証もされていらっしゃるお立場でございますから、お仕事だとかそういう問題には支障がないとは思いますけれども、やはり裁判官の方々といえども、一般の国家公務員と比較いたしまして、そう大きな変化がないという点は、おやめになってもおそらくうち一軒持てないのではないかと、たいへん失礼な言い方でございますけれども、これではやはり途中で有能な判検事の方々が身の振り方というものを、変える必要に迫られるという、こういうことを考えますと、これは非常に将来の法治国家のあり方として心配せざるを得ないというふうに判断されるわけでございますが、これは私がそれとなく考えた一つの点は、まあ俸給制度というものは、現体制を急激に変えるわけにはいかないかもしれません。せめて裁判所のほうの御要求として、退職金に弾力性をつけまして、これだけの、三十年なら三十年勤続した場合、あるいは五十年なら五十年勤続した方々については、一般の公務員の退職金よりも何割増しとか、そういうような新しい制度の確立というものが必要ではあるまいか、そういう点についてはどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) いま御指摘の点は人事局長の所管でございますので、私、正確にはお答え申し上げにくいわけでございますが、この点もまた先般来たびたび引用いたしております臨時司法制度調査会の意見の中でもうたわれておることでございまして、人事当局におきまして鋭意検討いたしておるわけでございますが、まだ結論に達するというような段階ではないわけでございます。
○渋谷邦彦君 ともかく審議会とか調査会というものは、その答申を待ってから、また答申が出ましても、なかなかそれが具体化するまでには日時がかかるように思うわけでありますが、やはり裁判所のほうといたしましても、たいへん言いにくい問題ではありましょうけれども、積極的にそれぞれの機関に要求を出されるなり、これは強力にお進めになることが裁判官の未来に対しての生活の保障ということができるわけでありまして、やはりその一点が解消しませんと、相当これからもいろいろな多角的な問題も出てまいりましょうし、事件の困難性というものが予測もされますし、したがって、現状の体制ではとうてい不十分である。もう私が申し上げるよりも、担当されております皆さん方のほうがより実感的にそのことはお感じになっていらっしゃる。やはりこれは早く解決することが望ましいんじゃないか。やはり答申を待ってからではなかなからちがあかないという場合がございます。われわれとしても側面的に御協力は申し上げるつもりではございますけれども、やはり当事者といたしましても、その点もっと積極的にお当たりになることが必要ではあるまいか。 それと関連いたしまして、俸給制度もさることながら、厚生福祉施設についても、一般の公務員——一般の公務員というものとはちょっと比較にならないと思うのですが、一般の国家公務員、地方公務員の場合でも必ずしも満足すべき状態ではありませんので、例を民間企業にとって、大企業あたりでは、最近非常に厚生福祉関係の施設が充実されてきているということを見ております。そういうところと比較をいたしまして、いかがでございましょうか。充実したそういう内容に置かれているかどうか、そしてまた、皆さん方としてこれからどうあるべきか、またどういうふうなこれから方向に向かって、そういう面の解決をはかっていくか、この辺のお考え方をひとつ伺っておきたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(大内恒夫君) 裁判所の職員の厚生福祉施設と申しますと、裁判所の職員の宿舎の問題でありますとか、あるいは共済組合で運営しておりますいろいろの施設の問題でありますとか、全般に関連いたすかと思いますが、宿舎の問題につきましては、私どもは毎年宿舎につきましても逐次整備をはかっておる状況でございます。ただいま特に民間の企業の関係で御指摘のございましたのは、共済組合の問題ではないかと存じますが、共済組合につきましては、裁判所におきましても裁判所共済組合というものが設けられておりまして、民間の企業に比較いたしますと、もちろん十分である、比較してそれに十分負けないだけの設備を持っていると申すことはできませんけれども、これまた予算その他の許す範囲内におきまして逐次改善をはかりつつある、将来とももちろんそうした点について充実をしていきたい、かように考えております。
○渋谷邦彦君 この予算書の内訳を拝見いたしますと、相当裁判運営のための近代化、能率化をはかられるために努力をされて、その努力の結晶としてこういう御要求をなさっただろうと思うのですけれども、しかし、見る限りにおきましては、はたしてこれで十分充足できる予算の規模であろうかどうかということなんですけれども、この点総務局長いかがでございましょうか。
○最高裁判所長官代理者(大内恒夫君) 私からお答えを申し上げます。本年度の裁判所予算の要求総額が五百三億でございまして、ただいま御審議いただいております四十五年度の予算として計上されております金額が四百八十八億九千万円でございます。私どもといたしましては、裁判官会議におきまして慎重にその内容を検討いたしまして、裁判所といたしまして昭和四十五年度におきましてはこの予算額において人的機構ないし物的施設を充実して十分にやっていけると、かように考えております。
○渋谷邦彦君 ただ、こまかい点でたいへん恐縮なんでございますが、第四項目に掲げられております「電子計算機による事務機械化の調査研究」という項目がございます。先ほどの御説明でございますと、相当この点については今後も力を注いでいかれるという御説明があったように記憶しておるのでございます。それにしてはあまりにもこの金額が少ないのじゃないかという印象を免れないのでございますが、やはりこうした機械化、コンピューターの時代に入りまして相当迅速化を要求されているたてまえを考えますと、これだけの予算措置では、はたしてほかの割り振りから見ますと、あまりにも少ないという印象を受けるのですが、これで十分充足できるものかどうか。
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 確かにここにあがっております金額はきわめてわずかでございます。ちょっと補足して御説明申し上げたいわけでございますが、コンピューターは実は現在すでに使用しておるわけでございます。ただ、これはきわめて小型のものでございまして、もっぱら統計に使用しておりまして千数百万円の費用でもって直接購入しておる、こういう実情でございます。そこにございますのは、先ほど申し上げました速記の反訳、あるいはさらに進んでは将来は判例、学説の検索等になると思いますけれども、そういうことについての研究の費用でございます。機械そのものの導入は私どもとしては一応最高裁判所の庁舎等の完成いたします時期等をにらみ合わせながら研究を進めておるわけでございまして、速記の反訳そのものがまだ企業のほうでも完全には研究が進んでいないわけでございます。同時に私どもの内部としてもいろいろその技術者と申しますか、プログラマーと申しますか、こういうものを養成してまいりませんと機械をすぐ入れましても、すぐ使用できるというわけのものでもないわけでございます。すでに昨年あたりから電子計算機の導入準備会というものを設けまして、そこに相当数の若い裁判官の諸君、それから事務官の諸君等に加わってもらいまして、通信研修等をいたしまして、そういうことで技術的な知識の向上をはかっておるわけでございまして、そういう人的な体制の進行と並行して導入の準備を進めてまいりたい、そういう関係でございますために、ここにあがっております経費の額が比較的少額になっておる、こういう実情であるわけでございます。
○渋谷邦彦君 次に本論に入りまして公害裁判の点について伺います。残念なことには先年公害裁判所法というものが廃案になりまして今後の公害裁判をお扱いになる上から、おそらく現体制でもいろいろ問題がおありになろうかと、こう思いますけれども、この公害裁判所というものについてのお考え方をひとつお聞かせいただきたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 御指摘のございました公害裁判所と申しますものは、おそらく公害紛争処理法等で取り上げられておるものではないかというふうに考えておるわけでございますが、そちらのほうは目下引き続き衆議院のほうで御審議のようでございますので、私どもといたしましては、そういったものもどういう形をおとりになるかは別といたしまして、できるだけすみやかにそういった機関ができまして、公害事件の解決の一助にでもなればというふうに考えておる次第でございます。裁判所は御承知のように、裁判所法によって定められたいわゆる訴訟事件を取り扱っておるわけでございまして、裁判所の外に、名称がどうであるかは別といたしまして、当事者間の訴訟事件を取り扱うというような機構を置くということになりますと、これは憲法上の問題が出てまいりまして、非常にいろいろむずかしい問題が出てくるのではないかというふうに考えております。世間でいわれております公害紛争の処理機関というものを中央に置く、あるいは地方の各府県に置くということ、そしてその中で和解の仲介でございますとか、調停でございますとか、あるいは仲裁を行なっていくということ、これがいわゆる俗にいう公害裁判所を設けるということでございまして、いま申しましたとおり、この点につきましては、私どもも大いに早くそういった機関を設けていただきたい、このように考えておるわけでございます。なお、裁判所の中でそういった公害に関しまする特別の裁判体をつくっていくかどうかという問題でございますと、これは私どもの担当としては公害紛争の専門部をつくっていくかどうか、たとえば、現在交通事件の非常に多いところでは、交通事件を担当いたします専門部をつくっております。また、税金の訴訟でございますとか行政事件、労働事件等につきまして、非常に事件の多い大都会の裁判所には、それぞれの専門部をつくっております。それと同じ意味での専門部をつくっていくかどうかということになりますと、現段階ではまだ、事件が一般の事件に比して、重要ではございますけれども、非常に少のうございますので、そこまでは至っていないというのが現状でございます。
○渋谷邦彦君 先月の中旬でございますか、裁判官の合同会議の中でも、たいへん御熱心にこの点についての討議がなされたと伺っております。また昨今、世界の趨勢としてこの公害問題が急速にスポットライトを浴びているわけでございまして、そのための国際シンポジウムなども非常に活発に行なわれております。ただし、わが国におきましては、最近の産業革命と申しますか、そうした激しい一つの変動というものに追いつけないような状態にあるために、法律の整備あるいはその法律の体系化というものが非常におくれているというようなことがいわれておるのでございますけれども、私どもはそうした専門的なことはともかくといたしましても、一般論的には、公害問題をこれから処理する、おそらくいろんな形において公害問題というものが起こってくるであろう、こう思われるのでありますが、そのための現在の法律体系というものを整理したりあるいは整備するというようなことは、どういうふうになっているのかお聞かせをいただきたい、こう思います。
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 公害の対策といたしましては、大きく分けまして二つの分野があるように存じております。 第一は、何と申しましても、行政の分野における対策でございます。公害対策基本法を中心にされまして、その被害者の救済をはかる面、あるいは直接企業等に規制を加えていく面、そういったもろもろの面をおとらえになりまして、行政官庁においてそれぞれの立法を行なっていかれるということが何と申しましても大事な問題でございます。で、公害の問題は公害が起こってからではおそうございまして、起こらないようにしていくということが、最も必要であるわけでございます。私どもそういった点で、内閣のほうでもろもろの施策を強くお打ち出しになっているということで、非常にけっこうなことであると存じておるわけでございます。 ところが、第二の問題といたしましては、これはそういったことにかかわらず、また現段階といたしましては、産業の急激なる拡大というようなことと関連いたしまして規制が追っついていかない、そこに現実に公害が発生しておるという問題があるわけでございます。で、しばしば引用されます裁判所に係属しております事件といたしましての四大公害事件、四日市の亜硫酸ガスの問題でございますとか、水俣病、あるいは阿賀野川水銀中毒事件、富山のイタイイタイ病、こういったことは非常に大きな問題でございますが、現に発生いたしました公害による損害を訴訟によって救済を求められました際に、これを現行法体系のもとで迅速適正に処理できるかどうか、それを処理して行く上において、実体法の関係、すなわち損害、公害が起こって、それによって被害を受けた者がある、そういった場合に、その公害と被害者、その被害を受けた者をだれが救済するかといったような実体法の関係で規制が加えられる必要があるかどうか。及び訴訟に至る場合に手続法の関係で、これを迅速的確に処理する上において、何らかの新しい手続を定めていく必要がありはしないか、すなわち手続法を改正する必要がありはしないかという問題になるわけでございます。 ところで、私どもの問題になりますのは、先ほど御指摘の先月の会同等で私どもが協議いたしましたのは、現行の体系のもとにおいて、新たなる手続というものを要するのではないかどうかという、最後に申し上げた点でございます。この点につきましては、いろいろの意見が活発に取りかわされているということに相なるわけでございますが、総じて申し上げてみますと、何しろ裁判所といたしましては、まだまだ事件が出てきたばかりというような段階でございますので、いましばらくこの現実の訴訟を運営してみて、もしどうしても現行法の手続で間に合わなければ所要の改正を、また関係方面にお願いしなければいけないのじゃないか、できるだけ現行法の手続のもとで、迅速的確な処理をやってみようではないかということに相なったわけでございます。
○渋谷邦彦君 確かにおっしゃるとおり、公害というものを考えてみた場合に、発生前において食いとめる、またそれに対する何らかの規制が加えられるということのほうが、より重要ではないか、まさに私も同感でございます。しかし、現にもう起こっておりまして、あるいは法律のワク外において起こり得るだろうというような問題も想定されるわけでございます。いずれにしましても、絶えず法律は被害者の立場に立って法の恩恵というものは与えていくというのがやはり望ましいのではないか、こういうふうに思いますときに、いまも御説明ございましたように、必要とあらば特にその手続法においてこれを改正すべき必要があるのではないか。しかし、現状としては現行法でできるだけやっていこうというふうに、一応の結論が出されたという話でございますけれども、確かに公害といえば、ただいまの御答弁にもございましたように、四大公害事件に象徴されますように、はたしてこの事件が一体これからどのくらいの期間がかかるか、一番何と申しましても、やはり被害者の方々が、はたして補償というものが得られるのであろうかどうなのか、一体その責任というものは、企業側にあるのか、国にあるのか等々、いろいろなやはりそれを立証する困難性というものがあろうと私は思います。しかし、いまのお話のとおり、現在の法律のワク内で、これからの裁判をお進めになる場合に、一体決着するまでどれだけの時間と、そうして被害者が納得するような結論が出るような方向に向けられるのか、どうなのかという見通しを言うことは、たいへん現状としてはむずかしいかとは思いますけれども、その辺の御判断をいかにされているか、その点、重ねてお尋ねをしたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) まずお尋ねの各事件の問題でございますが、最初にお断わりしておかなければいけないかとも思いますが、あくまで現地の裁判所に係属しております具体的事件でございますので、これは裁判官の独立した、何物にも惑わされない判断に帰着するわけでございます。その点はお含みおきをいただきたいと思います。 公害事件が非常にひまがかかるということは、御指摘のとおりでございます。何しろ私どもといたしましても、いままでにない新しい型の事件でございますので、一つ一つの問題が、これまで見たこともないような専門的な問題等も含んでおりますので、その点は大いに困難を感じているようでございます。ただ幸いなことに、たとえば、イタイイタイ病というものの事件を例にとってみますと、私どもにこれまでの進行経過につきまして概略の報告が参っておりますが、すでに裁判の法廷を二十回前後開いておりまして、現場検証等も四回ほどやったようでございます。また、原告側と申しますのは、これは被害者側でございますが、被害者側がこういう原因によって、このような損害をこうむったということを立証するのが民事訴訟のたてまえでございます。その原告側の立証段階をほとんど終わりまして、現在においては被告側の立証段階に入っているという状況にあるようでございます。また、阿賀野川の水銀中毒事件、これは新潟地裁で行なわれておりますが、これも大体二十回前後の双方の主張の戦わせ方を終わりまして、現場検証も終わり、大体この三月の末あるいは四月ごろから、いま申しました反対側である被告側の立証に移っているという段階にあるようでございます。で、このように見てまいりますと、私ども、これらの訴訟はそう長い期間がかからないである程度の審理を終え得るのではないかというふうな予想も実は立てておるわけでございます。しかし、なんと申しましても重要な問題は、原告の主張どおりに被告側の故意または過失によって原告の被害が起こったものであるかどうかと申します双方の、この原因によってこの結果が起こったというそこの認定がはたしてどうなりますか、その点をめぐって終始議論が戦わされ、また終始立証がなされるわけでございますので、どれくらいの期間がかかるかということについては、事件の性質上もございまして、ちょっとこの席では私ども何とも申し上げかねるというのが現状でございます。ただ、お考えいただきますよりは早くできるのではないか。また、裁判官も最優先にこれを扱っておるようでございますので、私ども十分期待を持っておるという段階でございます。
○渋谷邦彦君 そういうまあお見通しでございますと、たいへんまあ明るい方向ではないかと喜ばしいことでございますが、ただイタイイタイ病の場合にいたしましても水俣病の場合にいたしましても、私の記憶では、史上始まって以来の最高の賠償金額の要求がある——たしか六億以上だと、こういうふうに伺っておりました。そうなりますと、まあ企業者側が確かにその責任があると、あるいは企業者側の原因であったということが立証された場合に、それだけの膨大な金額の賠償をめぐって今度、はたしていま申されました明るい方向にいくものだろうかという一つの疑念を抱かざるを得ない。その辺の賠償金の、おそらく具体的に突っ込んでまいりますと賠償金の問題ということになるであろうと、こう思いますけれども、もしそうした実際の利害関係の対立が裁判の上でも尾を引くようなことはないのか、またそういうことは予測されないのであろうか。また、そういう問題が起こった場合に、適切な調停機関というものの必要性というものはないのか、その辺の御見解を伺いたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) ただいま、そう時間がかからないで解決がつくであろうということも考えられるというふうに申し上げましたが、重ねてお断わりしておかなければいけないと存じますが、解決がつくという、事件の解決がつくということは、どういう結果になるかということとは私、全然別で申し上げておりますので、これは重ねて申しますが、現地の裁判官の御判断によることでございます。この点は御了承をいただきたいと思います。で、どちらの結論になるにいたしましても、判決が出てその判決が確定いたしますれば、その内容どおりのことが実現されなければならないというのがこれは法治国家の原則でございます。 この場合に、原告の請求が棄却になりますれば、その後においてお金を支払うといったような問題はないわけでございますが、かりに原告の請求が一定の金額でもって認められたということになりますれば、私どもこれは直ちにそのとおりの内容を実現する、すなわちお金が支払われなければいけない、このように考えております。ただ、現在の民事訴訟の機構といたしましては、あくまで民事訴訟でございますので、判決の内容どおりの強力な執行を行なう、すなわち強制執行を行なうということはもちろんございますけれども、まあお金がない場合にまでそれを国で立てかえるとか、あるいはないものを取るということはできないわけでございます。民事訴訟の限界と申しますか、そういった点はこれはあらざるを得ないというふうに考えておるわけでございます。
○渋谷邦彦君 まあ被害者側の立場に立って申し上げますと、これは申すまでもなく被害者としても一刻も早く決着をつけたい、また、そのためには、被害者自身のお立場に立ってもろもろの調査というものもあるいは進めていかれるでありましょうし、あるいは弁護士さんをお雇いになる、雇わなければならないという場合もございます。そのために要する費用というものはこれはもうおそらくたいへんなものにのぼるであろう。したがって、時間が長引けば長引くほど被害者にとってますます不利な現象が出てくるということをたいへん心配するわけでございまして、そうしたもろもろの点も加味されて十分その点も御研究をされ御配慮をされていらっしゃるであろうと思いますけれども、ただ先ほど来から伺っておりますと、必ずしも現在の態勢でもって迅速化を期することは非常に困難ではないかという点でございます。どうかこの点については今後とも大きな課題でございますし、その迅速化については十分な意を用いていただきたい、このように御要望申し上げておきたいと思うのであります。 そのほかにも日照権の問題であるとかあるいは水質汚濁の問題であるとかあるいは騒音の問題というふうにあげてまいりますと、もうおそらくこれからの経済発展と相まちまして、思いもかけないようなそういう公害というものが当然出てくると思います。さてそれを今度処理するために十分な法律体系にいたしましても陣容の上におきましても態勢をとっておきませんと、ますますその国民の不信を招いていくような結果になりはしまいかという懸念がございますので、この点もあわせて私は御要望申し上げておきたいと思います。 いままでの事件を見てみますと、たとえばいま申し上げた日照権だとか水質汚濁の問題だとか、そういうような小さな、案外急速な世論の焦点にならないという場合には示談でもって済まされている、その示談で済まされているためにそれが表面化しない。公害ということが叫ばれている反面に、実際にその解決というものが何か変則的な方向に行きはしまいかという点も実は心配があるわけでございまして、したがいまして、そうしたもろもろの問題を総括的にお考えいただきまして、先ほどの御答弁にもございましたように、もし不備な点があれば、早急に公害紛争処理というものを迅速に解決をしていくという面におきましても法の改正が必要であるならば、これはもう積極的にそれをお出しになる心要がありはしまいか、総括的にひとつそれを引っくるめて申し上げて、最後に一括して御答弁いただいて、私の質問を終わらしていただきたい、こう思います。
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) まことに御適切なる御指摘でございまして、私ども御理解あるお尋ねをいただきありがたく思っておるわけでございます。 先ほど御指摘の会同等でも、結局におきまして私どもはどの事件はやらなくてもいい、どの事件はおそくてもいいというのではないけれども、不法行為ということを問題にする損害賠償事件、ことにそれが各地において大量に発生しておるいわゆる公害事件に象徴されるようなこの種事件の処理については、何としても万全を期していかなければいけないということは、会同に出席いたしました全国の裁判官の共同の見解であったわけでございます。個々の法律の解釈の問題でございますとか、手続の進め方の問題でございますとか、そういった点にはそれぞれの異論がございましたけれども、しかし、そういった最終の目的については会同員一同全く同意見であったわけでございます。で、私ども新しい事件でもございますので、あらゆる機会にこの種の会同なり研究なりあるいは設備の改善なりあるいは新しいこの予算の獲得なりもろもろの方面について万全の努力をしていきたい。で、現地の裁判官も遠慮なくそういった希望をおっしゃっていただきたい。で、そういうものをまとめて各方面にお願いするのが事務局の任務であるということで、それぞれ今後に対処する方向についての決意をかためて会同を終わったわけでございます。御趣旨を体しまして、今後とも内容の万全を期していきたい、このように考えておるわけでございます。
○主査(八田一朗君) ほかに御発言もなければ、裁判所所管に関する質疑は終了したものと認めます。 午前の審査はこの程度にして、午後一時まで休憩いたします。 午後零時十分休憩 —————・————— 午後一時十分開会
○副主査(片山武夫君) ただいまから第一分科会を再開いたします。 昭和四十五年度総予算中、法務省所管を議題といたします。 政府側からの説明は、これを省略し、本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○副主査(片山武夫君) 異議ないと認め、さよう取り計らいます。 それでは、これから質疑に入ります。 御質疑のおありの方は順次御発言願います。
○亀田得治君 若干お尋ねをいたします。 最初に、いわゆる航空機乗っ取り事件に端を発しまして、そうしてそれらに対処をする法律を早急につくるべきではないか、こういう世論で、また、法務大臣も非常に熱心に取り組まれまして、本日、法制審議会にその原案を諮問されたようでありますが、その内容を、まあおおよそはわかっているのですが、一応御披露願いたいと思います。
○政府委員(辻辰三郎君) ただいま御指摘の、いわゆるハイジャック等に関する罰則を新たに設けるという新しい法案でございますが、本日、法務大臣から法制審議会にその諮問が行なわれたわけでございます。その諮問は、「最近における航空機奪取事犯の実情等にかんがみ、早急に、航空機又は船舶の強取等に対する処罰を強化するとともに、その国外犯を処罰しうることとする法律を制定する必要があると思われるので、別紙要綱について意見を承りたい。」、こういうことでございまして、この新しい法案の要綱を諮問したわけでございます。
○亀田得治君 その内容のおもな点だけ御説明願います。
○政府委員(辻辰三郎君) この「航空機及び船舶の強取等の処罰に関する法律案要綱」は、まず第一に、航空機及び船舶の強取ということでございまして、 第一1 暴行若しくは脅迫を用い、又はその他 の方法により人を抵抗不能の状態に陥れて、 航行中の航空機又は船舶を強取し、又はほし いままにその運航を支配した者は、無期又は 七年以上の懲役に処するものとすること。 2 前項の未遂罪は、罰するものとするこ と。 第二 第一の罪を犯し、よって人を死亡させた 者は、死刑又は無期懲役に処するものとする こと。 第三 偽計又は威力を用いて、航行中の航空機 又は船舶の針路を変更させ、その他その正常 な運航を阻害した者は、一年以上十年以下の 懲役に処するものとすること。 第四 第一の罪を犯す目的で、その予備をした 者は、三年以下の懲役に処するものとするこ と。ただし、実行に着手する前に自首した者 は、その刑を軽減し、又は免除するものとす ること。 第五 第一から第四までの罪は、刑法第二条の 例に従うものとすること。 これがこの法律案の要綱でございます。
○亀田得治君 これはいずれ国会に正式に提案された後に、また詳細な質疑をする機会もあろうと思いますから、いさいはそちらのほうに譲っておきますが、問題は、船舶をこの法律の中に入れてきた点ですね。これは若干問題があったと思うんです。航空機と船舶との違いという点もあるし、また、船舶の範囲が非常に広義な解釈もできるわけですね。そういう点で、とりあえず、ほとんど世論が一致しておると思われる航空機に関する特別の処罰法を早く成立させるほうが実際的ではないかという、ふうな考え方が相当あると思うんですね。法制審議会の前に若干われわれもそういう点で議論をしたわけですが、結局、諮問案がこういう形で出ておりますが、この辺のところはどういう理解で原案がこういう形になっておるものか、若干伺っておきたいと思います。
○国務大臣(小林武治君) これは、御案内のように、法制審議会のいわゆる草案の中に船舶が入っておった、こういうことでございまして、船舶にもこういうことはあり得るからこの際どうか、こういうお話もありまして、私どもも入れてもよかろうと、こういうことで、実は非公式に国会各党にも御協議申し上げましたところ、大体船舶は非常に定義がむずかしい、したがって、この際いろいろな議論を招くようなことはやらないほうがよかろうと、こういう御意思がほとんど各党の御意見のように承りましたので、きょう諮問はいたしましたが、国会に提出する場合にはこれを除いて出すかもしれぬ、きょう、審議会のほうにもさような趣旨の説明もしておいたようでございますから、大体そういうことになろうかと、かように考えております。すなわち、早急を要する航空機の問題に限定しようというふうな気持ちで私どもは現在おる、こういうことをお答え申し上げておきます。
○亀田得治君 よくわかりました。そこで、この国会もあとわずかですから、段取りを法務省としても考えておられると思うんです。その辺のところを少し……。
○国務大臣(小林武治君) これは、先般、予算委員会等におきまして、私は大体二十日前後をめどとして国会に提出いたしたい、こういうことを申し上げたのでありまして、法制羅議会のほうではここ両三日中に終わる、こういうふうな予定をいたしておりますので、私どもとしては、二十一日の閣議にかけて、そして提出いたしたい、かような予定をいたしております。
○亀田得治君 それじゃ、この問題は一応この程度にいたしておきまして、それから次に若干お伺いしたいのは、いわゆる行政罰に対する法務当局の考え方ですね、これをお聞きしたい。それは、なぜこういうことをお聞きするかといいますと、どうしても行政罰というものに対して、一般の刑法犯と違った一種の惰性的な考え方がある。刑法犯に引っかかるのは非常に悪いけれども、まあ行政犯のほうはそれほど、質的にも違うのだというふうな考え方が一般的にあるわけですね。そういう関係で、どうも検察当局自体でも取り組みが足らない。事件の取り上げ方を見ておっても、一応刑法犯に関するものは早く取り上げ、また、人手もそっちのほうへ多く回している。行政罰的なものは、そういう人手の関係もあるんでしょうが、消極的。検察庁自体においてもそういう点が見られるのですね。
○国務大臣(小林武治君) 結果的にそういうことが言えるかもしれません。しかし行政罰は、御存じのように、行政の目的達成上の違反を処罰する、そういうことになりますから、私どもとしましては、行政官庁がもっとこれの励行に励んだらどうか。すなわち、法務当局としましては、大体もう、告発、こういうものがないと事犯というものの認知が非常に困難である。こういうことでありまして、たとえば、いまの公害関係の行政罰等につきましても、事実問題として、なかなか告発等が行なわれておらない。私どもは、これはやっぱり行政当局の処理に大きく期待せざるを得ない。こういうふうに考えておるのでありまして、告発があれば、それの処理というものは当然私どもにおいていたすべきでありまして、その間に刑法犯と区別すべきものでないと思うのでありますが、とにかく違反の存在の認知ということについていろんな困難性がある。そういうことで、重ねて私どもも、実は、これらの問題についてあまり告発のないのは行政官庁としてもどうかというふうに思うということは、行政官庁方面にも申しておるわけでございます。
○亀田得治君 第一義的には行政官庁がもっと熱心になるということが大事なことだと思います。今度の国会が始まってから、もう機会あるごとに、私、だいぶんそういう面を集中的に各行政官庁で取り扱っておる責任者の方々にお聞きしたのですが、まあとにかく、たよりないですね。実際にそういう処罰法規によって担保されておるものであるかどうかも、こちらが質問するぞというまで、なかなか気がつかないというような面すら見られるくらいなんですね。これは、はなはだ全体の姿勢として遺憾だと思っております。そうして、やはり行政処分のほうは、わりあい頭にあるんですね。業者のほうも、行政処分されるのは困る、しかし、罰金くらいのほうはいいわ、営業停止は困る——きわめて功利的なんですね、その辺の考え方は。何か、法規を扱っておる役所自身も、いつの間にかそういう考え方がある。いや、それはわずかの罰金くらいよりも、こっちのほうが痛いんですよというふうな考え方なんですね。多少言いわけがあると思うのですよ。その行政罰というものをないがしろにしておった、言いわけ的にそういう意味のことを私は言うのだろうと思いますが、法の趣旨はそうじゃないと思うのですよ。それはやはり、行政法規に違反したことに対する行政処分、悪質なものはさらに処罰していく、こういうことになるわけです。したがって、処罰までされた業者というものは非常に不名誉なんだ、したがって、当然そのことはその後の行政法規運用上大きなマイナスとしてちゃんと点がつきますよというふうなところをはっきりさせませんと、お飾りのような罰則になってしまうのですね。その点、はなはだ遺憾であって、これは全部の各官庁の責任者をここに来てもらって、というわけにもいきませんから、これは法務大臣に直接言うかっこうになりますが、しかし、考えてみますると、法務当局なり検察庁自体においても、やはりそういう考え方がある。私はやはり、そういう罰則を生かすというもとは、刑法犯であろうが、そういう行政罰であろうが、締めくくりは、これは法務当局あるいは検察庁なんですから、しっかりした考え方を持って臨んでほしいと思うのです。したがって、たとえば新聞等でずいぶんひどい事件が出ますが、告発を待たないで、私はやはり、検察庁自体がそういう社会的な問題については発動していくというふうなことでなければいかぬと思うのです。告発の関係はよくわかります。だけれども、当然みんながわかっておるような問題については、もう告発を待たずに動くということになれば、告発しなければならぬ立場にある官庁が今度はかっこう悪くなるわけだね。この次からまた気をつけると私は思うのですよ。それで初めて行政罰の運用というものがやはり軌道に乗っていくと思うのですね。だから、そういう面では、私はやはり、ときたま検察官なんかに言うことがあるのですけれども、なかなか人もおらぬのでというようなことを言われますよ。理論自体を否定する人はあまりいない。いないのだが、その点がなかなかね。私はもう現在の大きな欠陥だと思うのでありますが、大臣ひとつ……。
○国務大臣(小林武治君) 私もお話のとおりだと思います。ただ、行政罰というのは行政目的を達成するための罰である、こういうことであるから、第一義的には、行政官庁がその行政目的に違反しておるかどうかということをわれわれのほうに知らせる、こういう義務があるのじゃないか。悪いことがあれば公務員その他は当然そういう義務があるが、その義務を怠っておるのが相当あると私どもは考えております。先だって閣議でも、各庁がそういう罰則違反があったならば告発してもらいたいということを私は発言をいたしたのでございますが、いまお話しのように、告発があって初めてわれわれのほうも行政法規違反があるということがわかる、こういう事情でありますが、そこまでなくても、いろいろの事件で新聞等にそういうことが論議報道されておることがありますから、私はお話のようなことはもっともだと思いますから、場合によったら、告発がなくても独自の捜査あるいは調査、こういうことをこれからする場合もあります、いたしましょうということをひとつ申し上げておきます。私も、その点は、行政官庁全体が、私どものほうから見れば、遺憾な態度がかなりあると、こういうふうに言わざるを得ないのでありまして、したがって、いまお話しのように、検察当局が独自の発動も場合によったらすると、こういうことまで申し上げておきましょう。
○亀田得治君 まあ、大臣がそういうふうな見解をきちっと表明されるだけでも、これは各行政官庁の責任者に対して大きな警告になると思うんです。元来、大学の教育にしても、刑罰法規といったら刑法、刑事訴訟法だけで、あとのことなんか、もうほとんど触れやせぬ。学者自体もあまり興味持たぬですかね。しかし、まあこういう複雑な社会になってくると、やはりお互い、わかるように、その複雑さをいろいろ調整するために、行政の作用というものが非常にこれまた大事な作用になっているわけでして、だから、決してこれはゆるがせにできないわけなんです。だから、その辺で、もう少し行政罰ということについての社会全体の評価ですね。昔のように、刑法犯と行政犯、二つをさい然と区別して、一方ははなはだ人道的にも許せぬ、一方のほうは行政目的を達成するためにというような、そんなふうに私は分けられぬと思うんですね。たとえば、公害に関する罪なり、関係行政法規違反ということを見ても、行政法規違反即それが刑法でいう傷害なり殺人なり、それと同じ結果に結びついていくやつですからね。だから、この辺について——私はまあ、法学教育にも不満を持っているんですよ。こんな古い範疇だけでやらないで、もう少しその辺の理論構成というものを考えてほしい。同時に、私は、だから検察庁のほうでも人が足らぬでしょうが、そういう社会の需要に応ずるような何か体制がとれぬものだろうか。やっぱり、専門にそっちのほうばかり検討させるということになれば、相当またいろいろいい指導方針が私は生まれてくると思うんです。第一、刑法と違って、罰則をつけるとき、これはもちろん法制局等でいろいろバランスをとるようにやっておると思いますけれども、しかし、それほどこれは精密じゃありませんわね。いわんや、その運用面についても、それほど整理された理論的なものを私たち見たことがないんです。だから、そういうことを、この際、何か法務大臣の手元で検討さしてほしいと思いますよ。今度は、公害罪とか、たとえば飛行機乗っ取り事件、こういうことはまあ一つの特別法の形であらわれようとしているわけでしょう。でも、もともとこれは刑法の中にあったわけでしょう。だから、刑法の中にそんな区別はないんですね。実際のところ、やはり特別法になっちゃうと、何か刑法から離れたような感じ——この二つの場合はそんな感じは持たぬと思いますが、とにかく、行政罰というやつは、まま子扱いされていますよ。だから、これは一つの新しい仕事として取り組みをやってもらえますか、どうですか。
○国務大臣(小林武治君) 行政罰は、何も検察当局が捜査することは告発が要件ではございませんから、要するに、犯罪があるという端緒がつかめれば捜査ができる、こういうたてまえでございますから、お話のように、まあいままでは大体告発を待っているというふうな立場をとっておったわけでありますが、われわれのほう、検察当局が、新聞報道その他あるいは世間の話で、そういう犯罪があるという端緒が、認識が持てればやれる、こういうことでございますから、そういう方向にひとつ向かってやりましょう。これは刑事局長もおりますから、私がそういうことを申せば、当然その趣旨の部内の協議をされる、こういうふうに思いますから、私はそういう端緒がつかめれば告発がなくてもやる、こういうふうなことをひとつ申し上げておきます。
○亀田得治君 大臣ああいうふうにおっしゃるのですが、刑事局長のほうで、これはやはり末端の機構にこれが徹底しなければだめですから。これは、私は、見ようによっては相当新しい負担をかけることになるし、具体的な措置をやってもらわなければ、言うただけになるおそれがあると思うのです。どうです。
○政府委員(辻辰三郎君) ただいまの特別法犯と申しますか、行政法犯に対する検察をより一段と充実強化させよ、こういう御意見に対しましては、ただいま大臣の御答弁のとおり、私ども全く同様に考えておるわけでございます。で、現在の実情はどうなっておるかということを、ちょっと数字の上で申し上げてみたいと思うわけでございますが、昭和四十三年の検察庁の受理件数というものを見てまいりました場合に、非常に大ざっぱな数字で大体のことを申し上げますと、刑法犯の受理人員が約百万人でございます。その百万人の受理人員のうちの約六〇%、約六十万ぐらいが交通事故の業務上過失致死傷犯の関係になるわけでございまして、それを除きますと、純然たる刑法犯は、大ざっぱに四十万人と見ていいわけでございます。これに対しまして、道路交通法違反事件を除きましたその他のつまり特別法犯はどれくらい昭和四十三年に受理しておるかと申しますと、約二十万人受理をいたしておるわけでございます。そのほかに、道路交通法違反というのが二百八十万件ばかりあるわけでございまして、こういう観点から見てまいりますと、業務上過失致死傷犯を除く刑法犯は約四十万、それから業務上過失が約六十万、それから、いわゆる行政法犯、特別法犯、これが約二十万、それから道路交通取締法違反事件が二百八十万と、こういうことになるわけでございまして、必ずしも、現状におきまして、いわゆる行政法犯の検察がきわめて低調である、低い調子であるというわけではないわけでございます。 それから第二点は、先ほど、行政法規の罰則を制定するに対して、これが相当気合いが入っていないじゃないかというような御趣旨のお話でございましたけれども、各行政法規を政府提案で出します場合には、その罰則関係は全部私ども刑事局におきまして法制局からその審査事務を委託されております。いろいろの行政法規につきまして罰則規定を設けます場合には、どんな小さいな罰則でございましても、必ず刑事局が審査、検討をいたしておるわけでございます。立案に際しまして罰則規定がゆるがせにされておりますことはないわけでございます。 それから第三点は、この点をもっと強化すべきじゃないかという御意見につきまして、すでに私どももその必要性を十分痛感いたしておりまして、いま御審議をいただいております昭和四十五年度予算の中におきまして、金額はごくわずかでございますが、産業関係の検察に要する費用という新しい項目を実は出さしていただいております。四十五年度から産業検察という、ことばは非常にあいまいでございますけれども、公害を含めました産業検察ということに、初めてそういう項目で若干の予算をいただいておるということで、私どももその点をなおざりにしておるわけでは毛頭ないことを申し上げさしていただきたいと存じます。
○亀田得治君 この二十万というのは、これは選挙違反が含まれておる。それを除いたら、どれくらいになります。
○政府委員(辻辰三郎君) 実は、ちょっと亀田委員の資料の御要求が早急だったのでございますので……。いま申しました二十万という中には選挙犯罪を含んでおります。これは、毎年々々この事件数を見てまいるわけでございますが、選挙関係は、いろんな選挙がございますもんですから、それを除いていくということが、時間をかければ出てまいりますけれども、まあ大体毎年何らかの選挙があるということで、選挙関係を含ましていただいて、いまの数字を申したわけでございます。
○亀田得治君 いまの御説明でもこれははっきりしてるように、犯罪の体系の中で行政罰に関するものが非常に重要な地位を占めていることは、この統計自体からもはっきりしてるんですね。だから、まあ刑事局長が、いや行政罰をほったらかしにしてるわけじゃない、やれるだけやってるんだという意味で、二十万という数字をおあげになったと思うのですけれども、しかし、まあ逆に考えてみれば、こういう手ぬるいやり方をしておりながら二十万も出てきておるということは、刑法犯以上にそういう関係の反社会的な行動があちらこちらに散らばっているということを意味するわけです。逆に、たとえば、土曜日に、私、商品取引所の問題だけで予算で質問した。その中で、いわゆる未登録の外務員ですね、外務員の正式の許可を得ないで、そうして勧誘活動をやる、これが、いわゆる委託者に対して非常な迷惑をかける、これが中心だと思いますけれどもね。あれだけたくさん紛争を起こして、そうして社会的な批判の的になってるわけでしょう。一年半の間に、商社自身、仲買人自身から自主申告させた紛糾が約一万件をこえてるんですよ。これは自発的に出してきたものですよ。だから、実際はもっと多いと思いますよね。その中で、告発したというものは一件もないんです。きのう農林大臣、通産大臣の前で——第一、大臣がそこまで、行政官庁の大臣が知らぬですわい。局長が答えたところによると、一件もない、自分で告発したものが。しかしまた、自発的に警察がやったりしたのが、中でもほんのわずかです。五、六件。一万件の紛糾に対して。大臣も、その数字を聞いて驚いておりましたが。だから、そういたしますとね、いや二十万も受け付けてるんだと言うてみたってやね、たとえば商品取引所報告を例にとってみると、そんな状態なんですよ。それだから、きっちりやったら百万ぐらいになるかもしれぬのですわね、実際は。そうすると、現在の社会における反社会的な行為という立場から見たら、これは刑法と同等くらいのやはり価値があるんですよ、価値が。しかし、実際の関心は、もう最近はだいぶん変わってきたし、大臣もきょうのようにおっしゃれば、それがまた大いに業者に対する一つの反省の契機になっていくと思いますがね。いままでは、まるきり、それは実態に比較したら、手ぬるいわけですね。どうですか、刑事局長。あなたは二十万もやってるじゃないかと言わんばかりにおっしゃったが、実際は、なんですよ、九牛の一毛だ。
○政府委員(辻辰三郎君) いま、選挙関係が入っておるということでございますが、大体衆議院議員総選挙の場合の受理件数が大体二万ちょっとくらいのものでございます。そういたしますと、この四十三年に二十万と申しましたが、四十三年には衆議院議員総選挙はございませんから、四十三年の数字は衆議院議員総選挙は含んでいない。四十二年を見てまいりますと、二十四万二千ほどございます、選挙を含めまして。大体選挙を含まずにも二十万くらいはあるというふうに理解をしておるわけでございます。 それからいまの商品取引所法違反の問題、確かに御指摘のとおりであると思いますが、いま精細な統計は持ってきておりませんが、先ほど仰せの一万件とかいう数に比べては少ないようでございますが、大体十件ないし三十件くらいは年間検察庁は受理もし、処理しているんじゃないかと思います。
○亀田得治君 外務員の不当勧誘に関しての処理件数というものは、とてもそんな多い数じゃないんです。商品取引所法違反事件の受理調べというのをあなたのほうからもらいましたがね。これは、外務員が大衆にそういう迷惑をかけたというふうな内容のものとちょっと違うようですよ、これは。わかっていたら説明してもらいたいんです。
○政府委員(辻辰三郎君) ちょっと、商品取引所法違反の受理件数の罰条別内訳はわかりかねますけれども、いま御指摘の不当な勧誘と申しますか、これについては罰則がないと思うのでございますが。
○亀田得治君 不当勧誘は罰則がないんです。その前に、未登録の外務員が勧誘行為をやることは禁止されておる。九十二条ですかね。その違反がずいぶんあるわけなんです。しかも、上へ上がって処罰されるのは年にほんの三、四件というふうな状態であってね。不当勧誘は罰則がついておらぬ。これはおそらく不当勧誘ということでは処罰しにくいという面があったんだと思います。未登録ということになれば、これは非常に構成要件がはっきりするから、それでそこに罰則をつけたんだと思います。当然、未登録で不当勧誘をやったというのを、これは対象に実際上はしているわけですね。いずれにしても、まあ各行政法規一つ一つ私当たってみたわけじゃないですけれども、取引所の関係などは、全くこれは低調ですわね。
○政府委員(辻辰三郎君) ただいま申し上げました商品取引所法違反の検察庁が受理している犯罪内容でございますが、いまつまびらかにいたしませんが、おそらく、ほとんどその全部といっていいほどが、いま御指摘の、登録してない外務員の行為、この罰則で送致されておるのじゃないかと思います。
○亀田得治君 これ、内容を調べておらぬからわかりませんが、いずれにしても、ああいう不当行為がありますと、農林省なり通産省が調べておるわけですよ。調べた段階において、わかっておるんです。わかっておっても何もしておらぬのです。だから、それは全く低調なんです。私の希望は、何も犯罪統計の数がどんどん上がることを希望しているんじゃないので、やはり、必要な罰則規定というものが発動していくということを明確にすることによって、そういうことが起こらぬようにしてほしいということです。過渡期においては相当上がってくると思うのですね、件数は。しかし、最終的には、そういう処罰を受ければ今度は行政上もマイナス点をつけられる、こういう行政指導も並行しなければいかぬですわね。そうなっていって初めて、行政体系というものがきちんとするのですよ、きちんと。そう思っております。 それから食品衛生法、これなどは、年間三、四百件のものは検察庁に来ておりますけれども、これも、厚生大臣の話など聞いただけでも、それはもうたくさんの案件に比較してほんのわずかのものですということは、これははっきりしている。これははなはだ残念なことですわね。二十万という数字を聞いて、おそらく世間の人はびっくりするのじゃないかと思います。しかし、その二十万の数字が、実態に比べたら、ほんの一部なんだぞと言われたら、よけいびっくりするはずですよ。このままでいけば、行政法規というものは、世間全体によって、これは守っても守らぬでもいいということになってしまいますよ。これはたいへんですよ。だから、ぜひここら辺で、刑法犯と同じような比重で、そうしてひとつ筋を通すようなことを、まず法務省、それから各官庁に対しても、きちんとした申し入れをしてもらって、姿勢を正すようにしてほしい。これだけ希望しておきます。最後に、だいぶさっきから大臣の前向きの姿勢は聞きましたが、もう一ぺんお伺いいたしたいと思います。これで最後にします。
○国務大臣(小林武治君) お話のように処置いたしたいと思います。
○渋谷邦彦君 私は、法務局の窓口行政について、以下数点お尋ねをしたいと思います。 申すまでもなく、昨今の急激な社会開発あるいは経済発展に伴いまして、不動産登記、商業登記というものが著しく増加しております。それに伴いまして、非常に窓口の仕事というものが繁雑をきわめ、法務局に参りますと平均二時間は待たせられるというようなことを聞いております。そこで、この十年間の推移について、こまかい数字は必要ありません、十年前を一〇〇といたしまして、この扱われる件数が、パーセンテージでどのくらい現在の時点までふえてきたのか、その推移をお尋ねをしたい。こう思います。
○国務大臣(小林武治君) いまの、法務局の窓口が非常に混雑する、そして申請者に非常に御迷惑をおかけしていることは、よく私も認識をいたしております。お話のように、実は戦後、最近におきまして、団地の造成とか、埋め立てだとか、あるいは公共事業の非常な活況等によりまして、極端なことばで言えば、日本じゅうの土地がもう動き出したと、こういう現象があるのでありまして、特にレジャー産業が出てきたために、いままで全然動かなかった山間僻地の土地まで所有権の変更がある。こういう時代でございますから、私は、非常に忙がしくて御迷惑をおかけしておるようなことはもう当然であって、たいへん恐縮いたしておるのでございます。最近、私が大ざっぱに聞きましても、仕事は三四〇%ふえておる、人間は一一〇%しかふえなかったと、こういうふうなことを聞いておりまして、詳細な数字は局長から申し上げますが、それだけを見ても、やはりいかに仕事の状態が困難かということがわかります。 実は、いまの法務局の登記の仕事というものは、これは純粋な現業事務でありまして、受動的に仕事がふえてくる。管理事務のように、こちらの都合でふえるのではない。相手の都合によってふえる。こういうものにつきまして、私は、人員の計算、人員の増加等を一般管理要員と同じような考え方でやるのがもう間違いだと、こういうことで、まあ次の機会には、たとえば国鉄にしても郵政省にしましても、とにかく一般の管理要員とは別の人員のとり方をいたしておるのでありまして、全くこれはもういわゆる現業事務にすぎないから、その現業事務に合ったような人員の処理をしてもらわなければならぬということを、私はいま強く大蔵省に申しておるのでありまするし、法務省の事務当局に対しても、もう前々からの考えはやめなさい、そういうふうにしなければとてもこの処理はできないと、ことにまた、お話がある事務所の問題なども、全国で千五百くらいあるそうでありますが、これを年に二十や三十ずつ改築しておったらとても問題にならぬ、したがって、私はもう、十年計画などと言わぬで五年計画ぐらいでこれを改定をしてやらなければならぬ、そして特別な配慮をしてもらわなければいかぬと。要するに、根本的にいまの事務の繁忙あるいは申請者に対する迷惑を解消するためには、この際法務省としても、もう従来の考えを一てきしてやるべきだと、強く申しておるのでありまして、この問題はもう予算が始まってからやるようなことじゃいけない。いまからひとつ、いやでもおうでも大蔵省に話をして、予算に入る前には大かたの話ぐらい、大体の見当をつけておくような態度を法務当局はとるべきだということで、私は民事局長等を督励いたしております。とにかく、保存、財産の安定にはあれは一番大事な仕事である、中には民間に委託までしておるものがあるような話まで出ておって、これはもうもってのほかの対処のしかたであるというふうに私は考えております。 さようなわけで、お話のことは、もう私も十分な認識を持ってこの前の予算要求の際にも申しましたのでありまして、要するに、事務要員とそれから環境整備ということについては、ここでもってあらためて新しい考え方をもって対処すべきだと。そのためには、こういうものはみんな、いわば事務当局の折衝でいままではやってきたのでありますが、これには私自身もひとつ乗り出して、この問題の解決に当たりましょうと、こういうことまで申しておるのでありまして、まことにごもっともな御質問と、かように考えます。 なお、こまかい詳細のことは局長から申し上げますが、私がそういう考え方をいま持っておるということをひとつ御了承いただきたいと思います。
○渋谷邦彦君 たいへん前向きの姿勢で、万般の未解決の問題の処理を強力に推進して解決をはかっていきたいという仰せでございますので、私どもも期待して見守ってまいりたいと、こう思うのでございます。ただ、全体的に見た場合に、非常に設備が行き届いて、しかも機械化されて、わずかの人数できわめて円滑に事務能率があがっておる、たとえば名古屋の例なんかがそうでございますが、こうした新しい機軸を開くということも当然お考えだろうと私は思うのです。特に、この法務局の仕事は、都会、地方を問わないとは思いますけれども、なかんずく、いま大臣のお話がありましたように、団地造成、そのための土地の取得ということに関連すれば、当然、大都市を中心とした、あるいはベッドタウン地域、ここらあたりが集中的に業務量というものがふえてくるのじゃないかということになりますと、やはり勢い、東京であるとか大阪であるとか、あるいは名古屋というようなところを中心に、早急にこれを解決していかなくちゃならぬのじゃないか。いま、人手の問題も仰せでございます。何せ驚異的に案件がふえておる。それに対応するための職員の体制が全然間に合わない。言うなれば、焼け石に水のような状況でありますけれども、確かにおっしゃるとおり、これから五カ年計画ということで取り組んでいかれるということは、まことに好ましいことだと思いますけれども、実際にその処理に当たっていらっしゃる民事局長さんの、今後の、いま大臣がおっしゃった五カ年計画という基本的な姿勢をもとにいたしまして、具体的にこれから、実際国民のほうから恨みがましい不満の声がますます強くなってきておるということに多少でも善処するために、当面する問題の解決にどういうふうにお考えになっていらっしゃるか、むしろ局長から伺ったほうがよろしいのではないかと、こう思いますから、その点よろしくお願いします。
○政府委員(新谷正夫君) 法務局の現状につきましては、ただいま大臣からお話がございましたように、いろいろの面で解決を期さなければならない問題がございます。特に、現在の社会情勢と申しますか、経済情勢が最終的に法務局にその成果を持ち込まれますために、その事務が円滑に迅速にかつ的確に行なわれるかどうかということは、国民にとりましても非常に重大な問題でございます。とかく、従来、登記所の仕事というものは受け身の仕事であり、しかも最終的な処理の問題でございますだけに、あまりはなばなしく国民の目には映じなかったようでございます。しかし、現在の公共事業一つとって見ましても、登記所の処理ができませんと補償金の支払いもできないというようなことで、だんだんお困りの向きも多いようでございます。私どもとしましても、できる限りすみやかにこの登記事務の処理体制というものを確立してまいりたいということを考えておるわけでございます。それには、人員の問題もございますし、庁舎その他の施設、設備の問題もございます。また、整備そのものの問題もございます。また、事務の処理体制の問題もあるわけでございます。あらゆる角度からこれを詰めていかなければならないというふうに考えておるのでございます。これは全国的な問題といえば全国的な問題でございまして、私どもといたしましては、これは御意見が一部にはおありかとも思いますけれども、人員の充実、施設の整備のほかに、さらに法務局のあるべき姿、これは組織、機構の面でございますが、こういったものにつきましても根本的に考え直す必要があろうと思いまして、もうすでに早くから登記所の統廃合という形で実はだんだんとやってきたこともございます。しかし、これにつきましては、いろいろ複雑な事情もございまして、必ずしも現在ではそれは円滑にいってないというのが実情でございます。さればといって、これを放置するわけにはいかないだろうと私ども考えておりまして、ただいま基本的に法務局の組織がどうあるべきかという、基本的な理想図のようなものを描こう、その上に、さらに現実の登記所の配置というものも考えてみたい、こういうことで、いま鋭意作業をいたしておるのでございます。これには、国会方面からも十分な御理解とお力添えをいただきたいと思っております。 それはそれといたしまして、非常に経済事情あるいは社会情勢の変動の激しい地域が、御承知のように、随所に出てまいっております。これに実は登記所が追いまくられているというのが実情でございますために、私も実は昨年、登記所の内部の処理体制のことはおおよそ私どもわかっておるつもりでございますが、いかんせん、従来のわれわれの執務体制といたしましては、法務局から報告のございます実情あるいは統計、数字といったものを頭に置きながら、実はいろいろなことを考えてまいりました。しかし、これではとても社会の進展、進運に追随できないのじゃないかということを考えまして、実は、千葉県下、神奈川県下の背景を、役所を見ることは二の次にいたしまして、実は世の中の動きそのものをつぶさに私見ようと思いまして、そちらのほうへ重点を置いて見てまいりました。たとえば千葉県の場合、汽車に乗って、あるいは自動車に乗って素通りした場合の感じと、その問題になっておる地域に入り込んで見た場合と、これはもう私の想像以上の違いがございました。そういうことを考えまして、今後の法務局をどう持っていくかということについて、少し考え方を改めようじゃないかというので、全国一律の、先ほど申し上げましたような登記所の再配置ということもこれは必要でございますけれども、さらに、さしあたって緊急を要する地域について、たとえば首都圏とか近畿圏というふうなところで特別に開発の進んでおるようなところ、社会情勢の変動のはなはだしいところ、こういうところはこういうところで、別途また角度を変えて少し法務局のあり方というものを研究してみたい、こう思って、いまそういうことも考慮に入れながら作業をさしておるわけでございます。なかなかたいへんめんどうな問題でございます。また、地元の市町村との関係もございますし、早急に解決するということが非常に困難な問題であることは重々わかるのでございますけれども、しかし、いろいろの現在の情勢を頭に入れます場合に、どうしてもこれはやりたいという気持ちで実は研究をいたしておるというのが実情でございます。
○渋谷邦彦君 たいへん局長さん御自身も御苦労なすって、その改善の方向に努力をされていらっしゃる。ただ、心配な点は、職員が非常に少ないことに対して業務量が多い。いずれにしてもサービス業であることは間違いない、国民のために奉仕する公務員であるわけですから。えてしてそうした場合には、とげとげしい取り扱い方をよく耳にいたします。不親切、こういうささやかな問題というものが、やはり国民の気持ちを暗くさせる。あるいは法務委員会等におきましても、こうした問題が何回となくおそらく繰り返し論議されたことであろうと私は思いますけれども、まあ念のためにお尋ねするのでございますが、そうした職員の、しかも過重な仕事を持っていらっしゃるわけですが、資質の向上、また、それをなし遂げるためにどういうふうにしたらいいのか、それもいろいろと配慮されていらっしゃるだろうと思うのですけれども、職員の資質の向上ということが何としてもやはり相当のウエートを占める、こう思います。その教育また指導、どういう考え方を指示されてやっていらっしゃるのか、また実際に、職員自体の家庭環境というようなこともいろいろ問題が付随的にあるだろう、それには給料の問題だとか、そうしたことも関連してくるのじゃないか、いろいろなそういう要因を考えつつ、今後どうすればもっと明朗な、法務局に行っても気軽に相談もでき、また、いろいろな仕事がお願いできる、そうあっていただきたいわけです。その点について、いままで一貫した一つの方針というものがございましょうし、また具体的に、時に応じて教育に当たってこられたと思いますけれども、その辺はどうなっていましょうか。
○政府委員(新谷正夫君) サービス業務でございますだけに、それぞれの職員の素質が十分それにこたえられるものでなければならないということは、当然のことでございます。法務局の場合につきましては、私どもも、職員の指導訓練ということにつきましては、もうずっと前から非常に関心を持ち、またできる限りのことはいたしてまいっておるつもりでございます。現在法務省に法務総合研究所というのがございまして、そこに研修部門がございます。研修所と申しておりますが、その段階におきましても、たとえば、相当の経験を経た人を中心にした高等科研修、さらに専門分野を対象にする専門科の研修、そういったことをやっておりますほかに、さらに管理者自体の教育をそこでやろうということで、もうこれはすでに数年来実績をあげてまいっております。さらにこの二、三年でございますけれども、特に初任者の研修にどうしても力を入れる必要があろうということから、これはそれぞれの法務局で担当してもらうわけでございますけれども、初任者の訓練ということにも力を入れまして、そういったことによってできる限り法務局の職員が窓口事務を取り扱うにふさわしい素質を備えるような努力を従来いたしてきております。 そういった研修的なもののほかに、一番重要なのはやはり登記関係の責任者であります。登記課長あるいは民事行政部長というのがございますが、こういった人たちを中央に集めまして、そういった点についてのいろいろの問題点の討議をいたしております。できる限りそういうことで素質の向上につとめていきたい、今後ともかような方針はいよいよ強化する必要があるだろう、このように考えております。 なお、これは素質だけの問題ではございませんで、執務体制の問題が大いに関係のあることでございます。窓口がどぎついような空気にならないように、できるだけ国民大衆にサービス官としてふさわしいようなものにする必要がございますために、そのためには、まず人員を十分確保することは当然でございますけれども、役所の中の執務体制を改めていくということ、それから窓口の接遇についての改善の余地があるところは、これは積極的に取り組んでいく必要があるというふうなことも考えまして、各方面にわたっての施策を実はとっておる次策でございます。
○渋谷邦彦君 それからせっかく仕事になれてこられた職員の方が機能をいよいよ発揮できるという段階に、要するに転属になる。何か伺いますと、これは正確かどうかわかりませんけれども、平均年二回ぐらい人事の異動がおありになるということを伺っておりますが、かつてそこにつとめた青年を私知っておりますけれども、結局新しくかわってきますと、仕事を教えるまでの期間というものが相当かかる。通常一カ月ぐらい訓練をして業務につかせるということがたてまえになっておるやに伺っておりますけれども、とても一カ月ぐらいではもう仕事をマスターするというわけにいかない。やはり一人前として十分にこなせるまでは、どんなに有能な人であっても最低三カ月はかかる。その間やはりこの仕事の処理上たいへん支障を来たす。したがって、人事の異動等についても、いろいろ御苦心がおありになるだろうと思いますけれども、やはり業務の停滞ということを防ぐ意味においても、また少ない人員でたくさんの仕事を処理するという意味からも、その辺の配慮というものが非常に必要になってきゃしまいか、この点はどういうようになっているか、お伺いしたい。
○政府委員(新谷正夫君) 人事異動の問題でございますが、これは同一の職員が同一の職場に長期間おりますと、仕事の面から申しますと、それだけ精通していきますので、都合のいい面もございますけれども、やはりこれは窓口業務でございますだけに、いろいろな問題を生ずる可能性も含んでおります。そこで本局といたしましては、出張所の責任者については、まあこれは必ずしも一律にというわけにはまいりませんけれども、在任期間を大体三年くらいに見て、三年以上になれば、やはりそのポストを変えていくという基本的な考え方を持っております。さらに本庁の本局の責任者、課長、あるいは局長でございますが、これもまあそれ以上在任させることは適当でございません。そこで三年にならなくとも二年、あるいは場合によれば、関連異動で一年で動くというような者も実は出てまいっております。法務局の場合には比較的人事異動が多いと私は思っております。これは多いのは多いなりに、その理由があるのでありますけれども、しかし、さればと言って、あまりひんぱんに異動を行なうことは、ただいま御指摘のように、私も若干批判的な考え方を持っておるものでございます。やはり仕事に十分練達して、間違いなく仕事を処理してもらうためには、やはりおのずからそこに限度があろうかと思うのでございますが、しかし、どうしても関連移動としてそれを考えていきます場合に、必ずしも三年という基準を守り通していくということが非常に困難な場合も出てまいりますので、場合によりますと、一年でかわらなければならないという事態も実は起きてくるのでございます。原則として年二回という原則があるわけではございません。一番多いのは年度末の異動が一番多いのでございまして、その間に七月、あるいは十二月というように、それぞれ具体的な事情に応じて異動はやっておりますけれども、最も基本的に計画的に考えてやります人事異動は、大体年度末から年度初めにかけての異動がやはり多いかと思います。先ほど申し上げましたように、これがあまり度を越しますと、逆の弊害が出てくることは承知いたしております。その辺は用心しながらやっていきたいと考えております。
○渋谷邦彦君 たいへんごもっともだと思いますし、私もそういう点はやはり心配の面があるだろうと思います。そういういろいろな背景をもとにして人事異動ということをおやりになると思うのですが、これらは法務局に限らず、裁判所の場合でも同じことが言えることは、待遇の問題にやはり主たる要因がありゃしないか。まあ将来のことを考え、多少無理をしてでも生活環境、また生活それ自体が十二分に保障されているということになれば、誘惑に乗るような、そういうこともないだろうし、あくまでも公務員としての襟度を持った仕事に精通すること、精勤することができるのではないだろうかと、いずれの場合でも常に、いま局長がおっしゃられたように誘惑を防止する、いやなことでありますけれども、実は起こり得る可能性があります。また、結局考えてみると、そういう待遇の問題や何かはやはり改善してあげなければならない、これは一般公務員と、また、別個の立場において考えてやらなければならない。そういう面があるのではないだろうか、こういうように推測されるわけでございますけれども、その点についてはどのような考え方を持っていらっしゃいますか。
○政府委員(新谷正夫君) 職員の待遇改善についても、これは一つの法務局の職員の切なる要望であろうと思います。かつて本局が裁判所から分離いたしました直後、裁判所の職員は、これは行政府の関与するところではございませんので、裁判所は裁判所なりに措置をとられまして、それに応じて法務局の場合にも、前身が同じでありながら、なぜこういう差異が出てくるのかという不満も出てまいりまして、そのときには人事院と御相談をいたしまして、ある程度の措置は講じたことがございます。しかし、現在の法務局の職員の身分といいますか、役人としての地位というものは、一般公務員と原則的には差異がないわけでございます。ただ、仕事が非常に忙がしいということ、また非常に専門化しているという点で、若干の差異があるわけでございまして、これを何とかならないかということでございましょう、労働組合のほうからもそういう希望も出ております。私どもも、できることなら職員の待遇をもっと厚くしたいということは思っておるのでございますけれども、いろいろ検討いたしてみますと、そういった特殊事情というものが必ずしも法務局のみの問題ではないという問題も実はあるようでございまして、その辺にこの問題のむずかしさというものがあろうかと思うのでございます。給与法の体系そのものに触れて、法務局職員についての待遇の改善だけをはかるということはなかなか困難な問題があるようでございます。しかし、さればといって、私どももそのまま放置していいものではございません。忙がしければ忙しいなりに、それぞれの措置も講じていかなければならないのでございます。 そこで、法務局の窓口がたいへん多忙なために、超過勤務も通常のことのようになっておる。ことに特殊な事件が非常に大量に、しかも短期間に出てくるというふうな実情もありますだけに、予算の面におきましても大蔵方面にそういう実情をお話しまして、超勤の増額というようなことも重点的に取り上げていただいておる状況でございます。これにつきましては、財政のいろいろな御都合もおありと思いますけれども、かなり大蔵当局にも御理解いただきまして、超過勤務手当もこのところ毎年のように若干の伸びは示しておるのが実情でございます。 そのほかいろいろな待遇の面について検討を加える面もあろうかと思うのでございますが、必ずしも法務局職員に一律にこれは妥当する問題でもない面もございますだけに、その点も今後の問題として十分努力いたしてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
○渋谷邦彦君 いずれにいたしましても、どうか先ほどの大臣の今後の御方針に従って、できるだけ可及的すみやかにこの窓口行政の近代化、それから能率の向上どいうものをはかっていただきたい。これを申し添えておきたいと思うのであります。 次に、司法書士の問題でございますけれども、これは法律に示しますとおりに、いずれにせよ、国民の大事な権利を守るという、そういう仕事に従事しているわけでありますが、これは現在認可制度となっている。しかし、その重要性というものを考えてみた場合に、国家試験をもって認可を与えるというようなふうに切りかえることが望ましいのじゃないかというふうにも判断されるわけでございますけれども、その辺の考え方についてはいかがでございましょうか。
○政府委員(新谷正夫君) 司法書士は現在お説のとおり認可制度になっておりまして、国家試験という法律上のたてまえにはなっていないのでございます。これは御承知のように、土地家屋調査士というのがございまして、これは国家試験になっております。現在土地家屋調査士は全国で約一万六千人をこえるくらいございます。司法書士が全国で一万二千人くらいだと思います。なぜこれを国家試験にしないかということでございますが、かつて司法書士法の一部改正をお願いいたしました際にも、そういう趣旨の御意見も出たのでございます。これはやはり現在の仕事——登記所の窓口に書類をつくって出すというこの仕事が非常に、簡単なようでございますけれども、なかなかこれはむずかしいものでございます。私も実は近隣の者から頼まれて、ここをどう書いたらいいのだという相談を受けましても、私自身実は判断に迷うようなことも正直に申し上げてある状況でございます。そういたしますと、司法書士という制度、これはどうしても必要なことは間違いないわけでございます。しかし、これをいま国家試験にいたしますと、どうしても国民の需要にこたえ切れない面が出てくるのでございます。たとえば都会地にはやはり、司法書士の方がかなりの数、集中しておられると思います。これはその需要があればこそということになると思うのでございますが、地方に行きますと、これが必ずしもそうなっておりません。極端な場合には、登記所があっても司法書士さんがいないというような場合もあるようでございます。また、地域の開発によりまして、たとえば、思いがけないような山間の地域におきましても、道路の開発あるいはダムの建設等の事業が出てまいりますと、 〔副主査退席、主査着席〕 その公共団体側から、司法書士さん、ぜひ来てほしい、こういう要望も出てまいるのが実情でございます。これは現に私どもそういう経験がございます。そうなりますと、やはり現在の選考制度というものを残して、その需要にこたえていくということも必要ではあるまいか、こういうこともございますだけに、いま一気に国家試験に移行することについては若干問題があるように考えておるのでございます。
○渋谷邦彦君 そういう一つの経緯、また事情がおありになりますれば、必要が生じた場合には、新しい段階において御検討なさるであろう、こういうふうに理解をしたいと思いますが、確かに司法書士と一口に言いますけれども、相当法律的な専門的な要素が要求される。いまちょっと局長おっしゃられたように、たいへん簡単なようでむずかしいというのはおっしゃるとおりじゃないかと私も思います。それだけに非常に仕事が煩瑣である。また当然、それに伴う補助員が必要になってくる、こういう問題が関連して起こるだろうと思うのですが、現在、法務局長の認可によって認められている補助員というのは五名と伺っておりますが、この五名の中には、いわゆる通俗的に言われるお茶くみあるいは使い走り、こういう方々も全部含まれるのだということを私の知り合いのある司法書士の方から聞いたことがございます。実際はもう純然たる補助員、いわゆる仕事をしてもらえる、多少申請書でも書ける、こういう方々を五名というワクにしてもらえると非常にありがたい。それで、いま申し上げましたようなほんとうに下働きというような方々は別の、ワク外にしてもらえるとありがたいのじゃないかという御要望がございました。この点何か現在の仕事の状況を十分に勘案してみた場合に、やはり一考する必要がありはしまいか、こんなふうに判断をされるわけでございますけれども、この点いかがでございましょうか。非常にこまかい問題で恐縮でございますが。
○政府委員(新谷正夫君) 司法書士の補助者の問題でございますが、これは実は登証所の窓口において生じますいろいろのトラブルあるいは極端な場合には不正事故というふうものが過去においてございました。それを反省してみますと、全部が全部とは申し上げませんが、多くの場合に司法書士の補助者が介在している例がかなりございます。そこで法務省といたしましては、この補助者をやはり、どう扱うかということについてかなり神経を使ったわけでございます。で、各司法書士さんが補助者を使うことについての認可を必要とするといたしましたのも、そういうところに理由があったわけでございまして、一律に従来は中央の指示に基づく、方針に基づく認可制度の運用をやってまいりました。しかし、先年、司法書士会も部内の指導監督を強化する、あるいは福利厚生をはかっていくというような観点から、会を法人にいたしたのでございます。その際、会といたしましても今後の内部の規律あるいは補助者を含めての事務員の指導監督、こういったことも厳重にやっていきましょう、こういうことでございましたので、私どもとしましても、法律の趣旨がそういうところにあります以上は、何でもかんでも中央でこれを規制していくという考えは反省を必要とするのではあるまいか。この際せっかく法人化が実現し、会におきましても真摯にこの問題と取り組もうという機運になってまいりましたので、ついせんだってでございますけれども、この方針を若干改めまして、実は会の方針にまかせることにいたしました。これは地域的にいろいろ事情の差異がございまして、五人必要であるというところもございますし、会によりましては五人は要らない、むしろ三人でいい、あるいは二人でいいというところもあり、地域的に非常に差異があるわけでございます。そこで、何人くらいが適当かということは、もう会の判断におまかせしょうということにいたしております。それによりまして司法書士会それ自体の自主性も高まりましょうし、また、会の自覚というものも促されるのではないか、こう思いまして実はそのような措置をとっているのでございます。したがいまして、私どもといたしましては、中央でこれを規制する、あるいは統制するという考えは持っておりません。それぞれの会で何人くらいが適当かということをおきめになって、それで運営していこう、こういう基本的な考え方でいまやっておるわけでございます。
○渋谷邦彦君 いまの点は了解いたしました。 次に、現在行なわれております商業登記法において、御承知のとおり、決算の時期が登記記載事項にないわけでございますが、これは一般的な要望として、やはり決算時期を登記事項として掲載してもらいたいということがございます。確かに、どこどこの会社はいつが決算期であるかという、そういう非常にこまかい問題まで法務局に一々の問い合わせ、それだけでも非常に繁雑ではないか。最初に明確にそれを示しておけば、御要望される立場のほうも非常に簡便になるのではないかというふうに判断されるわけでございますけれども、この決算の時期についてのいわゆる登記事項とする考え、これについてはどういう御方針をお持ちになっていらっしゃいますか。
○政府委員(新谷正夫君) これは会、会社の内部の問題といたしましても、会社のいろいろの会計書類を備えておいて、これを株主に公開するという仕組みに現在なっております。したがいまして、利害関係を持つ人は、そういった面から会社の決算期がどうなっておるかということももちろんわかることでございましょうし、これを登記事項にして大綱要件にするという性質のものではなかろうと、このように考えておるわけでございます。確かに制度的にはあれも登記事項にしてほしい、これも登記事項にしてほしいという問題があろうかと思うのでございますが、現在の実情から申しまして、しいてそこまで持っていく必要はないのじゃあるまいかというのがわれわれの実感でございます。現在、御承知のように、商法の改正につきましてもいろいろ検討を進めておるわけでございますが、このことは当然に登記事項の問題にも触れざるを得ない問題でございます。そういった機会にさらに研究はいたしてみたいと思っております。
○渋谷邦彦君 次に、登録免許税の不合理についてお尋ねをするわけでございますが、登記、登録免許税は申請一件につき、たしか千円でございますね。ところが、会社の支店でこれを申請した場合三千円と、こうなっておるわけです。本店は千円で、支店で三千円、たいへん不合理なような、条文から見ますと感じを受けるわけでございます。この点の、いわゆる不合理性というものはどうして起こったのか、それとも私自身の理解が間違っているのか、どうなのか。さらに更正の場合の登記、登録免許税は一件につき一万円というふうに明記されております。これは資本金一億円以下の会社、ほとんど大多数わが国においては資本金一億円以下というものであろうと、このように思うわけでございます。ところが、役員変更の場合の登記は一件につき五千円、更正登記の場合は一字違っても一万円、こういうふうな不合理というものは何とか改める必要はなかろうか、こういう問題が、やはり私のところに要望されてこられた方がございますので、この機会に法務省の御見解を伺っておきたい、こういうわけでございます。この点いかがでございますか。
○政府委員(新谷正夫君) 登録免許税の点は、これは大蔵省の所管でございますので、私のほうで責任を持ってお答えすることは必ずしも適当でないかもしれません。しかし、仰せのように、確かに若干の不均衡と申しますか、そういったことは、私どものほうで新しい登録免許税ができました後に耳に入ってまいります。これは大蔵省とも、適当な措置を講ずる必要があるのではないかという相談はいたしております。したがいまして、新しい登録免許税制度というものができまして間がございませんので、そういったものを集めまして、今後の研究課題にさせていただきたいと思います。十分そういった点を是正する必要がございますので、大蔵省に、関係当局とも十分相談いたしてみたいと思います。
○渋谷邦彦君 おっしゃられましたとおり、大蔵省のほうと十二分に連携を保たれて、やはり不合理というものは、たとえ所轄外でございましても連携をおとりくださって是正されることが当然望ましいことでございますので、この点はやはり早急にひとつ改善の方向に持っていっていただきたい。局長御自身もそうした不合理を法律ができ上がってから発見なされたというお答えもございますので、その点については今後の御配慮に待ちたい。こういうふうに思うわけでございます。 次に、論点を少々変えまして、刑法の一部改正に伴うその後の状況についてお尋ねをしたいわけでございますが、これは主として罰則の強化ということが改正点でございまして、特にこの交通事犯というものは、近年申すまでもなく著しく増加をしております。はたしてこうした刑法の、いわゆる罰則強化ということによって——もちろん問題の性質によって単純に判断はできないかもしれませんけれども、いま国民的に世論を巻き起こしつつある交通事故の問題については、やはり何とかしなければならぬが、はたしてこうした罰則強化によって多少でも交通事故というものが減っているであろうかどうか、あるいは過失致死、過失致傷、こうしたものは、やはり増加の一途をたどっているのかどうなのか、この辺のことはむしろ刑事局長さんにお伺いしたほうがよろしいかと思います。
○政府委員(辻辰三郎君) ただいまの自動車によります人身傷害事件でございますが、検察庁の受理人員についてまず申し上げますと、昭和四十二年の刑法二百十一条に当たります業務上過失致死傷事件というものの受理人員でございますが、昭和四十二年は四十四万三千五百六十人でございます。昭和四十三年は五十八万三千六百七十二人、昭和四十四年は六十七万四千九百五十五人と、こういう数になっておりまして、四十二年のこの受理人員を一〇〇といたしまして、その指数を見てみますと、昭和四十三年は一三一・六、昭和四十四年は一五二・二ということで、逐年やはり増加いたしておるわけでございます。しかしながら、ただいま御指摘の業務上過失致死傷の刑法二百十一条の罰則が強化されましたのは昭和四十三年六月十日からでございます。この四十三年六月十日から見てまいりますと、ただいま申しましたとおり、件数におきましては、この罰則が強化されたにもかかわらず事件はふえているということが一応は言えるわけでございます。しかしながら、これは自動車台数そのものもまたたいへんな増加、その他やはり全国の交通事情というものがやはり反映しておる面が多いと思うわけでございまして、その意味では罰則が強化されたから事件が減ったということは言い得ないのでございます。しかしながら、この業務上過失致死傷事件のうちで、死亡事故というものを取り出して見てまいりますと、昭和四十二年の死亡された方の数でございますが、昭和四十二年は一万二千八百八十五人、昭和四十三年は一万三千五百五十六人、昭和四十四年は一万五千三百九十六人でございまして、昭和四十二年の数を一〇〇としてまいりますと、四十三年は九八・七、四十四年は一〇六・七という指数が出るわけでございまして、事件数の伸びの割りに比してこの死亡者の伸びと申しますか、むしろ四十三年は多少減っておりますし、四十四年はわずかに、四十二年に比べまして六・七%の増加にとどまっておるという一つの現象が出てまいっております。これがはたして罰則の強化の効果であるかどうかということはにわかに断定はできないわけでございますが、この死亡の割合が減ってきておるということが一つの事実であろうと考えておるわけでございます。
○渋谷邦彦君 先ほどの亀田委員の御答弁の中にございましたように、年間の刑事事犯が百万件とすると交通事犯が六十万件である。非常におびただしい数にのぼるわけであります。いま御説明を伺っておりましても逐年減っていない、こういう結果を知ることができるわけでございますが、確かに罰則強化というのはしろうとが考えましても、一種の予防策というふうにとれないこともない。ただその意味においてどの程度の効果があったかどうかということも非常に関心の寄せられる問題点ではなかったろうかという意味でお尋ねをしたわけでございますが、いまお話しくださいました中で、いわゆる悪質なめいてい運転であるとか、あるいはその他ブレーキ故障だとか、いわゆるドライバーとしての風上にも置けないというような、そういうようなきわめて悪質な事犯、ひき逃げ等も含めてこういうものがふえているかどうか、この点いかがでございましょうか。これも概数でけっこうでございます。
○政府委員(辻辰三郎君) ただいま御指摘のひき逃げでございますとか、スピード違反でありますとか、そういうものは私どものほうで、一応は刑法の二百十一条の問題ではございませんで、道路交通法違反の関係の事犯でございますが、この関係の統計、ただいま手元に持っておりませんので的確な数字を申し上げることはできないわけでございます。ただこの刑法二百十一条の罰則強化という観点から見てまいりますと、御承知のように、罰則の強化前は最高が禁錮三年という法定刑でございましたが、それが罰則強化によりまして、五年以下の懲役もしくは禁錮、こういうふうに相なったわけでございますが、新法施行後、この罰則の、加重されました罰則の適用を受けましたものが千六百件余りという数字が出ておるわけでございまして、悪質な事犯に対しましては、この加重された罰則が厳格に適用されているということが言えると思うわけでございます。
○渋谷邦彦君 特に交通事故の問題について、論点をしぼってお尋ねをしておるわけでございますが、御説明にございましたように、車両の増加ということもまたこれからも予測される問題でございますし、それには単に車を規制するとか、罰則の強化だけでは問題解決ができない、こう思います。ただいままでわれわれがいろんな人から聞いた話を総合してみますと、一回事故を起こした者は必ず二回やる、要するに再犯がわりあいに多いという傾向も聞いておりますし、特にスピード違反なんかで検挙される中には、これは警察庁か何かの資料に基づいてみますと、いわゆる知能指数の程度というものが非常に低い、表面見ると全然わからない、しかし、事故を起こした者の知能指数を測定したしますと、一般の常人よりも低い、そういうところにも非常に問題があるのじゃないか。したがいまして、これはいまここで早急にどうこうという問題ではありませんけれども、やはり未来の対策の一環といたしまして、そういういわゆる悪質ということを大前提にいたしまして、特に心身の欠陥のある者、これが明確に判断された場合には、もちろんその免許証の取り消し等もございましょう、もっと法律的に拘束する必要がありゃしまいかというふうなことも考えられますし、また、それをあらかじめ何とか調査をする、そういうようなことも考えられないだろうか。へたをすると人権問題がからんでまいりますので、あれもこれも全部法律でもって規制するということは決して好ましい状況ではないと思いますけれども、しかし、死亡者がこれだけふえ、またけがをされる、また不具廃疾になる方が激増という傾向を考えますと、これも捨てておけない。そうなりますと、やはりある程度法律をもって規制する以外に方法がないじゃないか、事故が起こってからの規制というよりも、むしろ事前に防げる方法として、ただ単に罰則を強化するという意味じゃなくて、それを何とか事前に防げる方法を考える必要があるのじゃないかというふうに、しろうと考えを持つわけでございますが、法務省として、法理論の上からどんなお考え方を持っておるのか、御参考のために伺っておきたいと思います。
○政府委員(辻辰三郎君) ただいま御指摘の点は、まことに仰せのとおりだと思うのでございます。で、この自動車運転免許という問題は、御承知のとおり、現在警察で所官をいたしておるわけでありまして、警察が免許の取り消しを行なうとか、あるいは免許を与えるときに十分検討するということは、警察において十分勘案をしてくれておることだろうと思うわけでございます。その他やはり御指摘の万々の問題については運輸省関係、あるいは警察関係、こういうものが所管の行政庁として十分の配慮をなすべきだろうと思うわけでございます。私どもの検察関係におきましては、ただいまも申し上げましたように、罰則が加重されました、強化されました後におきましては、やはり罰則を十分に活用いたしておるわけでございますし、また、常々自動車による業務上過失致死傷事犯というものがあまりにも数が多いために、検察庁の処理が画一的に、あるいは形式的に流れないように、事案に応じて適切な刑罰を実現をしていくということにつとめるように日ごろから戒心し、かつ努力をいたしておるところでございます。
○渋谷邦彦君 この交通事故、違反に関して特に刑務所に収容される人たち、千葉県の市原の刑務所の実態を聞いたことがあるんですが、ここに不幸にして入られた方は、一ぺんそこの刑務所を出られてから、たしか九八%ぐらいはもう再び事故を起こさないという何か統計が出ているんだそうです。その意味においてはたいへん理想的じゃないか。中におけるいろんな指導、啓蒙等々、万般の策をおとりになっていらっしゃるんだろう、また、今後の交通法規に十分な認識と理解を与えるような、そういうふうな御指導もおやりになっていらっしゃるんじゃないだろうか、こんなふうに考えまして、そうしたような刑務所内におけるやり方というものは相当効果をあげていらっしゃる。その点で伺いたいことは、こうした市原交通刑務所に見られるような刑務所がほかにもございましょうか。
○政府委員(勝尾鐐三君) 仰せのように、市原刑務所では、交通事犯で禁錮の言い渡しを受けた者について特別な処遇をやっております。これは昭和三十九年から実施いたしておりますが、その後、その経過を見まして、かなりの成績をあげているということで、現在、関西地方では加古川刑務所、それから名古屋地区では豊橋刑務支所、それから九州管内では佐賀少年刑務所、それから東北の管内では山形刑務所、それから高松の管内では西条の刑務支所、それから広島の管内では尾道の有井の作業場で同趣旨の処遇をやっております。
○渋谷邦彦君 先ほど申し上げましたように、いまいろんな個所の刑務所の名前をあげられましたが、やはりこの所内における指導、啓蒙の結果でございますが、相当の効果をおさめられていらっしゃる——いわゆる再び犯罪を犯さないという傾向にあるのか、それとも、やはり再犯者がまた入ってくるというような傾向にあるのか、その辺はどうでございましょうか。
○政府委員(勝尾鐐三君) ただいま、約八つの特別な囚禁施設と申し上げましたが、この中には、最近始めたものもあり、二、三年たったもの等もありますので、お尋ねの点につきましては、市原刑務所、これは御承知のように、前身は習志野でやっていたわけでございます。したがいまして、習志野、市原を通じての経験が最も長うございますので、その間の数字を申し上げて御参考に供したいと思います。すなわち、昭和三十八年の三月一日から昭和四十五年の二月十日現在まででございますが、この習志野、市原で釈放になりました禁錮受刑者の総数は二千四百十六名でございますが、このうち、いわゆる再犯を犯して刑務所に再び入ってきた者というのが二十三名でございます。さらに、この二十三名のうちで、いわゆる自動車の犯罪、業務上過失致死あるいは道路交通違反で再び入ってきたというものは七名でございます。したがいまして、二十三名を基礎にいたしますと〇・九五%、道路交通関係での再入者ということになりますと、約〇・三%という再入率でございます。
○渋谷邦彦君 まあこうした傾向が、刑務所に入る以前において啓蒙されるとたいへんよろしいかと思うのですけれども、具体的にお尋ねをいたしますけれども、所内においてどういう教育、指導をおやりになっていらっしゃるでしょうか。
○政府委員(勝尾鐐三君) 先ほどお話もございましたが、この市原に囚禁される者につきましては、事前にその心身の状況だとか性格上のひずみだとかいったものを一応専門家が診断をいたして処遇の参考にいたしております。そういたしますと、いままでの経験では、そのうちの約三分の一程度は自動車の運転業務に従事するについては問題があるという数字が出ております。したがいまして、将来釈放後に自動車の運転業務に従事するかどうかという場合に、この三分の一の者については本人によく事情を説明して、いわゆるハンドルをとることを本人の自発的な意思によってやめさせるようにまず指導をいたしております。そうして、この三分の一の者については、出所後の新しい職場を見つけるための職業選択の情報提供あるいは職業を選ぶ上についてのいろいろなまあ心がまえ等も教えて、さらにそのための職業準備教育と申しますか、熔接だとかあるいは旋盤だとかといったような面に重点を注いでおりまして、さらにやはり出所後に自動車の運転をせざるを得ない、あるいはしたいという者につきましては、結局犯罪の原因等をいろいろ調査をいたしてみますと、帰するところはやはり注意力の散漫ということと、それからやはり法無視と申しますか、順法精神の欠如という点にまあ集約されるのではないかと思っておりますので、在所期間中毎日二時間は必ずそういった精神面の訓練をやる。そうしてさらにその余の時間につきましては、自動車の構造学とかあるいは自動車の法規といったものについて新たに根本から練り直すということを重点に置いた処遇をやっております。それと同時に、具体的な処遇におきましては、やはり一般犯罪とは趣が違いますので、なるべく本人に対して自主的な行動ができるように、本人の自主性を尊重していく。したがいまして、所内のいろいろな行事にあたってはできるだけ収容者に参加させて収容者の自主性を育てていく。それから、無用なと申しますか、本人にとってむしろ有害と思われるような拘禁的な処遇はこれを排除していく。したがいまして、舎房等におきましてもかぎをかけない、あるいは面会の場合に立ち会いをつけない、あるいは所内を職員の戒護なしで一人で動かせるようにするといったような自主性、自立性を育て上げるという点に重点を置いた処遇をやっております。
○渋谷邦彦君 いまの御答弁によりますと、まあ収容者のうちの三分の一は再びハンドルを持つことの不適格者、まあ数にいたしますと相当の割合ではないかと思われるわけでございます。 そこで、これも立ち入ったことを伺うようでございますけれども、どんな階層の方々が、まあどんな階層といってもそれは多岐にわたるであろうと思いますけれども、大体職業別、むしろ職業別というふうに申し上げたほうがお答えやすいのじゃないかとこう思いますので、そうした観点からどんな人が収容されているか。
○政府委員(勝尾鐐三君) この禁錮の囚禁施設に入ってきております収容者の職業別のうち、約七七%が中小企業の関係者、それから学生でございます。その余がおおむね職業運転者ということに相なっております。
○渋谷邦彦君 それから、この三分の一に該当する方々が所内において職業訓練等を、あるいはその他の指導によって、出所後も生活の安定ができるように御配慮をされているようでございますが、出所後これらの人たちが所内においてのそうした指導を十二分に守って効果があがってれば幸いでございますけれども、出てからの三分の一に該当する方々の生活状況はどういうふうになっておるでしょうか。
○政府委員(勝尾鐐三君) お尋ねの点につきましては、出所の際に、今後の自分の生活方針といったものを感想として残していく者が多いようでございます。さらに出所後も、ときおり自分の生活状況等について施設のほうに手紙をよこしている者が多いようでございますが、それらのことを総合してみますと、やはり痛感したということは、こういう事故を起こすということについていままであまり深く考えたことがなかったが、こういう事故を起こしたということがいかに責任の重いことであるかということを身にしみたということを率直に言っております。したがいまして、出所後もそのことをかたく守って、ハンドルをとらないで、幸いにして新しい職業のほうも軌道に乗りつつあるといった手紙がほとんど全部と申し上げてよかろうかと思っております。
○渋谷邦彦君 交通違反を起こして、そうしたところへ収容される数が少ない、今後も少ないことがきわめて望ましいわけでありますけれども、しかし、まあ不本意ながら、事故を起こしてしまったという場合には、いまいろいろと御説明ございましたように、何もかも社会復帰はできないという方向に向けるのではなくて、十分罪の意識をさせながら、社会復帰ができるように今後とも十分な御配慮をいただきたいものだと、こう思います。 次に、少年法改正について、非常に断片的で恐縮でございますが、この改正を、現在検討中であるやに聞いておりますけれども、法務大臣の御所見を伺いたいと思います。
○国務大臣(小林武治君) 少年法のいわゆる十八歳、十九歳、こういうものの扱いをどうするかということは、もう長い間国民の間でも議論をされておりまするし、また、法務省におきましてもいまの法制のままに放置すべきでないと、こういう考え方を持ちまして、いまから四年ぐらい前にすでにこれの少年法改正の意見というものを一応まとめて、世間にも出し、批判を受けておる。こういうことでございますが、いまだにこれの解決がついておらぬ。私としては、もうこれは何らかの結論を出すべき時期に来ておる。こういうふうに考えますので、私が就任しましてから、前の案をもとにしまして、いまの少年法を青少年法、こういうふうな形にしまして、十八歳、十九歳をいわゆるおとなと少年の間の年齢階層としてこれを取り扱う。そうして、これらに対する年齢に応じての処遇をもっとこまかくこれを規定をしまして、実情に合うようにいたしたい。こういう考え方で、これらの問題はもう幾ら議論しておっても切りがない。やっぱり大方の意見によって結論を出すべきである。こういう考え方をいたしまして、私は、事務当局に対してこの問題はひとつ解決の方向に向かって前進すべきである。したがって、法務省はその他の機関と十分協議の上で、ことしの五月中には、私は、ぜひ少年法の改正案を法制審議会に諮問をしてもらいたい、こういうことを強く指示をいたしておるのでございますが、この問題について一番大きな関係を有するのは、むろん最高裁判所、裁判所関係でありまして、これらの法改正いかんによっては、現在十八歳、十九歳という者が家庭裁判所が第一次にこれに関与すると、こういうことになるのが、これが検察庁において関与すると、こういうことに相なるのでございまして、この点私は、非常に次元の低いなわ張り争いなんていうことは申しませんが、とにかく家庭裁判所の扱いと、検察庁の扱いをいずれに選択決定すべきか。この問題が非常な大きな問題でありまして、これにつきまして、そう近い間に十分な話し合いがつくとは私も考えておりませんが、しかし、これらをいまのまんまに放置しておいては、いつまでたっても解決しない。したがって、私はこれを法制審議会においてさらにひとつ論議をしてもらいたいと、こういうふうな考え方をいたしておるのでございます。これは、われわれ役所の当事者ばかりの話でなくて、世論のやっぱり動向と申すか、考え方があると思うんでありまして、これらのこともひとつ十分に参考にしまして、私はできるだけ早く解決することが必要だと、こういうふうに確信をしておるのであります。もう思案をしておってもきまりはつかない、どうしてもこれを解決の方向へ前進をさせたい。かような考え方をしておりまして、いま申すように、さしむきの方途といたしましては、関係者の間での話し合いをした上で、法務省案というものをまとめて、ひとつ来月中に法制審議会のほうに諮問をする手続をとりたいと、かように考えておるのでありまして、これらの点につきましては、私は十分ひとつ世論も喚起をし、その動向をひとつ見て進めたいと、かように考えております。
○渋谷邦彦君 御方針のほど了解いたしましたが、全面政正をおやりになるおつもりなのか、それとも一部改正の場合には、どこに主点を置かれておやりになるおつもりなのか。いろいろいまの御答弁の中で、世論のということで、一応御想像はできるのでございますけれども、その点いかがでございましょうか。
○国務大臣(小林武治君) これは、もう題名自体がいま少年法でありますが、青少年法というような題名にして、大体全面改正のようなことにいたしたい。しかし、何といたしましても一番焦点は十八歳、十九歳の問題であろうと、かように考えております。
○渋谷邦彦君 次に、少年刑務所についての問題をお尋ねしたいと思います。 最近、私、ある人から手紙を受け取りまして、これは矯正局長さんのあれになるだろうと思いますが、これは奈良刑務所です。刑務所の中では職業訓練だとか、クラブ活動が非常に熱心だ。表向きから見ると、それなりの成果をあげている。そういうふうに一般には受け取られているようでございます。ところが、最近出所した十六歳の少年でございますが、この中にいたときの模様を、その少年の兄に話をしたことが私のほうに手紙が来たわけでございます。世間での想像を裏切るような、非常に苛酷な状況に置かれている。たとえば何かちょっとした不始末を起こしても、まあリンチめいたようなことをされてきた。自分のみならずほかにもそういうことがあるようである。この点は、ぜひとも改めていただきたい。まあ趣旨はそういうことであります。いまここで一々読み上げて、具体的にどうこうということを論議したいとは思いません、私が確認したわけでもございませんから。こうしたようなことが起こるということは、やはりきわめて遺憾なことでありますし、また、少年の将来というものを根底から台なしにしてしまうというおそれが非常に大きいと、こう思います。いま奈良刑務所の一つの事例を出したわけでございますけれども、少年刑務所全般にわたりましてこうしたようなことがないことがもちろん望ましいし、また、ありませんか、と申し上げれば、それはそういう事実関係についてはないと、あるいはお答えになるかもしれません。けれども、実際にこういうようなことがございますので、どういうふうに一体管理運営というものがされているのか、この点からまずお尋ねをしてまいりたいと、こう思います。
○政府委員(勝尾鐐三君) ただいまお話のございました奈良少年刑務所の職員が収容者に対して暴行を加えた、こういう手紙の件でございますが、これは御指摘のように、矯正施設、特に少年矯正施設においてそのような事実というものが絶対にあってはならないことでございます。そういう意味におきまして、奈良少年刑務所の問題につきましては、暴行を受けたという年月日を中心にいたしまして、約三年間にわたりまして収容少年、奈良少年刑務所に収容された少年全部につきまして、その兄あるいは姉を持っている者について全部について調査をいたしました。それからさらにこのような事故がありますと、たとえ職員には黙っていても一緒に生活している少年には何らかの形で漏らすのが普通でございますので、その時代に一緒にいたと思われる少年につきましても可能な限り全部事情を調査いたしました。さらにもし、けが等がございますと、必ず医師のほうで手当てをしているのが普通でございますので、医務関係の者並びに医務関係の書面等につきましても、特に奈良少年刑務所の職員に調査させたのではなしに、私のほうから局づきの検事を現地にやりまして、管区という私のほうの中間監督機関がございます。それにつきまして調査をさせました。現在までのところそのような事案は見当たらないというのが、実情のただいままでの調査の報告でございます。しかしながら、とにかくそのようなうわさが流れるというだけでもきわめて遺憾なことでございますので、先般管区の中間監督機関に部長を集めた際にも、特に少年の受刑者というのはいわゆる教育可能性を非常に多分に持った者でございますので、その処遇にあたりましてはいやしくも報復的な考え方等は絶対に持つべきではなしに、その少年が出所をして世の荒波を乗り切るのに必要な精神的な心がまえ、さらに職業の技術をさらに教え込むという点に重点を置いてなお一そうの処遇を行なうように、あらためて私どもから指示いたしたところでございます。 で、お尋ねの点、全般的に申し上げますと、現在の少年収容者というものを、最近の収容者を見ておりますと、大体精神的な問題での問題点と思われますのは四つばかりあるように思います。一つは、少年刑務所に入ってくる者のうち約八%が義務教育を受けておりません。その面からのやはりコンプレックスというものが更生を妨げているように思います。さらに四四%が手に職を持っておりません。したがいまして、これがやはり更生を妨げているということで、その面から申し上げますならば、いわゆる教化教育、それから職業訓練、その職業訓練もアップ・ツウ・デートな職業訓練を身につけていくということが当然要求されると思っております。なおそれ以前の問題になるかと思いますが、最近の収容少年の特質の一つといたしまして利己主義が非常に強いというようなことが一つ。それから情操がない、特に宗教的な情操心が欠けている、それから猜疑心が非常に強い。それからいま一つは持久力がない、持続的なエネルギーに欠けているという点がやはり著しい精神的な特徴であろうかと思います。したがいまして、ただいま申し上げました教化教育、職業教育のほかに、いま言った精神面の訓練が必要だということで、俳句だとかあるいは書道だとかいった情操面の生活指導、あるいは共同動作をやらせるためのサッカーあるいはバレーボールといった体育訓練、それから持続力を養わせるためにいま言った体育的なもの、あるいは文化祭あるいは運動会といったような生活指導の面にも重点を置いて精神面、物的面両々相まってこれらの少年の社会復帰に寄与したいという理念を持って全国の少年刑務所を指導しているような次第であります。
○渋谷邦彦君 あるいはためにする手紙であるかもしれませんし、まあ一応責任ある監督官庁としての御答弁としてその、まま了解したいと思います。ただ、過去においてもそうしたような不詳事件というものはなかったかどうか、これが一点。それから先般社会労働委員会において、勤労青年のための福祉の増進をはかるための法律案が可決されましたときに、資料としてちょうだいした中で非行少年の実態を見ました。そうしますと、年間十数万というふうなそういう非常に多い数が記録されているような記憶があるのでありますが、できましたならば現在その少年刑務所に収容されている人数。この二つをあわせてお答えいただきたいのであります。
○政府委員(勝尾鐐三君) 現在少年刑務所というのは全国に九カ所ございます。この九カ所は少年刑務所ということになっておりますが、もし正確に少年といいますと二十歳未満ということでございますが、この二十歳未満のいわゆる少年が不定期刑を受けて服役しておるというのが千二百九十名ばかりございます。しかしながら、その少年刑務所におきましては、いわゆる法律的には少年でございませんが、心身の発育状況等勘案いたしまして、おおむね二十三歳までの者につきましては処遇面においてたぶんに共通的のものがございますので、現在九つの少年刑務所には二十歳未満の狭義の少年受刑者、それから二十二歳未満のいわゆる若年成人、これらを九つの刑務所に入れておりますが、全国の九つの刑務所で全体の収容数は大体三千五百名ぐらいでございます。 それからなおお尋ねのいわゆる少年間のリンチの問題でございます。これはなかなかリンチを受けた少年が訴え出ないというところに一つの問題があるわけでございますが、その点については、職員に十分私のほうから指導をいたしまして、少年のたとえば手のひらに何か傷があった、あるいはくちびるに何か切り傷があったというようなそういう点を詳細に注意深く観察いたしておりまして、もし何かそういったことがあるならば積極的にその原因等を調査をして、リンチを受けたものではないかどうかということを究明するように相つとめております。しかし、それでもなかなか実数がつかめないようでございますが、私の率直な感想から申し上げますならば、やはり集団生活をいたしております。特にいわゆる雑居生活——一室に六人ないし八人という雑居生活をいたしておりますと、やはり職員の目を盗んで、あるいは見張りを立てて、職員が来ないうちにあるいは見回りに来ないうちにリンチを加えるというようなことは、やはりときにはあるのではないか。ということは、ただいま申し上げましたように、まれではございますが、ときおりくちびるを切らしているというような少年を発見する場合がございまして、その原因を究明しておりますと、職員の目を盗んで部屋でなぐられたというような事案が、数としては少なうございますが、やはりあるのでございまして、実数はつかめませんが、まだ絶無ということを私としては申し上げられないのはたいへん残念に思っておりますが、これは何としてでも絶滅するように、なお一そうのくふうをしなければならないというように考え、かつ督励をいたしておるというのが実情でございます。
○渋谷邦彦君 これは大臣にお伺いしたいのでございますが、いまお聞きのとおり、少年刑務所に不幸にして収監されたその実態の中で、四〇%に及ぶ少年は定職を持たない、そういう非常に精神的にも不安定な要素を持った者が多い、こういうことが御答弁あったわけであります。先ほど青少年法の改正に踏み切りたい、こういうお話に関連いたしまして、収容者が、少年刑務所等に収容された者が、その改正に伴って、かえって非行を重ねるというようなことになったのでは、これはたいへん法の精神から考えましても大きな矛盾をはらむことになりはしまいかということを心配いたします。そこで、そうした点も十分勘案されながら、青少年法の改正というものを当然お考えになっていらっしゃるであろうと思うのでございますが、その点いかがでございましょう。
○国務大臣(小林武治君) いまのお話しのように、そういうことも考えてそうして処理しよう、こういうふうに思っております。
○渋谷邦彦君 どうかその点十分効果があがるようにお考えをいただきたい、こう思います。 最後にお尋ねをいたしますことは、人権擁護委員会あるいは連合会についてでございます。あと局長さん方、私の質問で終わりのようでございますから、この問題に関連する局長さんだけでけっこうでございます。現在のこの委員の方々がどういうふうにして選ばれているか。非常に基本的なあるいは単純な質問かもしれませんが、そこからお知らせいただきたい、こう思います。
○政府委員(川島一郎君) 人権擁護委員の制度は、先生御承知のように、人権擁護委員法という法律に基づいてつくられた制度でございます。そして人権擁護委員の選任方法は、法律に定められておりまして、法務大臣が委嘱するということになっております。法務大臣が委嘱する手続といたしましては、まず事前に市町村——人権擁護委員は全国の市町村に置くたてまえになっておりますので、各市町村の市町村長が候補者を定めまして、そうして市町村議会の諮問を経た上でこれを候補者として推薦してくる。それに基づいて法務大臣が委嘱する、こういうことになっております。
○渋谷邦彦君 その地域、場所等によって選ばれる方々も多種多様であろうかと思うのでありますが、やはり町内の有力者であるとかいろいろな人が、学識経験者とかいう人がなってくるだろうと思うのでありますが、いま全国でこの委員に委嘱されている方でございます、その人数と、それからどういう方々がおもに任命をされていらっしゃるか。これも概略でけっこうでございます。こまかい数字は要りません。
○政府委員(川島一郎君) 現在人権擁護委員の予算上の定数は、九千百九十人でございます。実際にも、大体その程度の方々が委員として任命されておるわけでございます。 その方々の職業の内訳でございますが、非常に多種多様でございまして、弁護士、それから教育関係者、公務員、それから団体、会社の役員、宗教関係、これは僧侶をしておられる方なども多数おられます。それからそのほか、地方の有力者として商業、農業などに従事しておられる方、こういうふうに分かれておりまして、中でも比較的多いのは、多い順番に申しますと、農林漁業の関係者が約三千名、三分の一でございます。それからほかは大体一〇%以下でございますが、宗教関係の方が約一〇%、それから商業関係、それから会社の役員、弁護士、そういうような順番になっております。
○渋谷邦彦君 御存じのとおり、最近人権問題というものが非常に、もちろん憲法でも規定されておりますように重視もされ、それだけにまた非常にそれにからむ問題が多発していると思うのでございます。そうなりますと、いまお答えいただきました陣容でもって十分に処理できる機能というものがあるのかないのか、この点いかがでございましょうか。
○政府委員(川島一郎君) 先ほど申し上げましたように、現在、全国に九千名以上の人権擁護委員の方々がおられまして、きわめて熱心に人権擁護活動をしておられるわけでございます。その活動の状況を見てみますと、人権に関する相談というのをやっているわけでございますが、その相談に関与された件数が、昨年一年の間に、統計の上では十二万件、それから人権信犯事件の調査に関与された回数が六千回、そのほか啓発活動と申しまして講演会、座談会など、これを各地で非常に頻繁に行なっております。こういうものにも数千回関与しておられる。こういう状況でございまして、かなり活発に活動をしていただいているというふうに考えます。
○渋谷邦彦君 そこで、これらの方々が実際に活動をされ、いまもお話しございましたように、講演会等もその中に含まれるであろうと、こう思います。伺いますと、そのために要する費用というものがきわめて限定されている。その限定された費用の中で十分な成果をあげられるだろうかというふうに考えられるわけでございますが、たとえば具体的に申し上げますと、旅費の問題だとか、あるいは講演会等開く場合の費用というのは一体どこから出るだろうか等々もございまして、実際委員の方々が活動に支障を来たさないというための裏づけというものはなされているのかどうなのか、これは総括的におっしゃってくだすってけっこうでございます。
○政府委員(川島一郎君) 御承知のように、人権擁護委員の関係の予算といたしましては、委員の活動に対する実費弁償金、それにそのほかの旅費というものが主体となっております。この実費弁償金でございますが、これは毎年改善をしていただいておるわけでございますが、何ぶんにもお一人当たりの単価というものが低いために必ずしも現状では十分でないというのが実情でございます。具体的の金額を申し上げますと、一人当たりの一年の実費弁償金の額でございますが、四十三年度が三千八百円くらいだったと思います。それが四十四年に四千百円、本年度のただいま国会に提出しております予算案では四千五百円というふうに逐次増額をしていただいておりますが、まだこれでも実際の運用から見ますと、だいぶ足りないという実情でございます。
○渋谷邦彦君 大臣いかがなもんでしょうか。今年度の予算で年間四千五百円の実費弁償だそうですが、これで多発的な人権問題を十分に処理できるかどうか。それから人数の上から申しましても、先ほどのお話ですと、年間十二万件という非常に多くの数を取り扱われるわけでございます。この辺いかがでございましょう。
○国務大臣(小林武治君) 人権擁護ということはもう世界的にも非常にやかましく言われておりますが、どうも言われておるほど実効をあげていない、こういうことでございまして、いまたとえば、一人当たり四千幾らというと一カ月四百円、こういうことでございまして、私もこれでまた効果をあげておるということは言い切れないと思いますが、しかしこれは非常にむずかしい問題でありまして、人権そのものについてもいろいろの議論がありまするし、人権関係の事項についてはすべて任意と、こういうことでありまして、やることが、それぞれの全体が任意である、こういう問題でありまして、それがいいか悪いかということもまた問題になります。たとえばある程度強い調査権があるかというと、それも何もない、こういうことでありまして、これは言われていることはまことにりっぱでそのとおりでなきゃならぬと思いますが、これの運営のしかた自体にも非常な、それこそまた人権をかえって侵すというふうな逆の問題も出てくるのでありまして、さようなわけでありまして、極端な言い方をすれば非常な微温的な運営しか行なわれておらぬ、こう言わざるを得ません。世界の人権宣言とか非常にやかましい問題になっておりますが、これは各国ともこの問題については理想とか主張は非常にもっともな、りっぱなものでありますが、これを実際に運営する場合にどうか、私もいろいろ考えてみましたが、非常なむずかしい問題である。しかし、これをないがしろにしていいということはもう絶対申されないのでありまするが、この問題がまた多くは自発的に人権委が発動する、こういうこともなかなか、あってはかえってむずかしいではないか、こういうふうになりまするし、また、広く日本じゅうの町村に配置されておりますが、それじゃそれを処理するに、みんなそんな一万人も適当な人ばかりそろえられるかどうか、こういうことも問題でありまして、私はいまの状態においてはいささかどうも、ただことばだけの問題が非常に多い。これはもっとやっぱりいろいろなことが進まなければむずかしい問題じゃないかと思うのでありまして、私はむしろこの問題は、非常な大きな問題であるが、実際にどうしたらほんとうに期待できるような結果があげ得られるかと、こういうことをいま心配をいたしておるのであります。要するに、人権、人権と必ず言われますが、これの処理は大いにやっているなんということは、これは口では効果をあげているということは言えるかもしれぬが、実際そのとおりかということについては疑問を持たざるを得ない。さらに私はこういうことは、御承知のように、戦後日本でこういうことを言い出したのでありまして、まだなかなか国民性全体になじみを持たない問題じゃないかというふうに思うから、やはりこれからもっと時をかしてやっていく以外にないのじゃないか。しかもやり方自体は何も法規の手続があるわけでありませんし、一種の慣行と申すか、そういうふうな扱い方をこれから実際に積み上げていかなければならないということで、非常にりっぱな局もありまするし、りっぱな人権擁護委員も一万人もおりまするが、はたして言われるような効果をあげているかどうかということは、必ずしも私から申し上げられないと思います。しかし、そういうふうな方向にこれから持っていかなきゃならぬ、どうしたらよいかと、こういうふうな問題がまだ横たわっておる。かようないいかげんなお答えしかできなくて、私は率直に見て、そういうふうに考えております。
○渋谷邦彦君 いまの大臣のお答えが現状そのまま、率直に述べられたのであろうと、こう思います。しかし、いまございましたように、非常に重大な課題であるだけに、また実効があがらないという、そういう矛盾、やはりどうしても改善の方法が、ただ時間といろいろな実績の積み重ねが将来の解決へのきめ手になるだろうという御趣旨のように伺ったわけでありますが、この問題また広げていきますと切りがございませんので、この辺でとどめておきたいと思いますが、どうか、やはり問題の性質上、当局といたしましても、特にこれからやはり人権問題というものは高く評価されてまいりますし、それだけに法務省当局としてもこれにまつ正面から当然お取り組みになる方針ではなかろうかと、こんなふうにも判断されます。したがいまして、どうかそういう実効がないというような現体制を脱皮されまして、今後の一つのビジョンというものを明確に確立をされて、そうしてせっかくのできたものが効果あるような運営のしかたに持っていっていただきたいものであるということを御要望申し上げまして、私の質問を終わらさしていただきます。
○主査(八田一朗君) ほかに御発言もなければ、法務省所管に関する質疑は終了したものと認めます。 明日は午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。 午後三時三十九分散会 —————・—————