予算委員会 第6号
- 発言数
- 303 件
- 登壇者
- 22 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1970/03/24
会議録
○委員長(堀本宜実君) ただいまから予算委員会を開会いたします。 昭和四十五年度一般会計予算、昭和四十五年度特別会計予算、昭和四十五年度政府関係機関予算 以上三案を一括して議題といたします。 昨日に引き続き、総括質疑を行ないます。
○鈴木強君 議事進行について。 私は、この際、議事進行について一言政府にお尋ねをいたします。 実は、昨日の羽生委員の対米繊維交渉の実情についての政府の説明を聞いておりますと、総理大臣みずからがおっしゃっておりますように、包括的な規制はやりません、あくまでも業界の話し合いの中で事を進めたいという趣旨の御発言がございました。われわれはそのことを了とし、あくまでもひとつ、むずかしい話であってもがんばってほしいと、かように願っておりました。ところが、けさほど各新聞を見ますと、その中に、一つは、ワシントンの吉野公使がトレザイス米国務次官補とお会いになっております。これには一つの譲歩案を持っていっておられる。しかも、その内容についても、どうも、一年間の制限はついておりますが、包括規制であるというふうに思います。それからもう一つは、きのう通産省の大慈弥事務次官が記者会見をされておりますが、その中でも、政府の最高方針である早期解決をはかるために通産省として今週から業界の説得を始める、こういう趣旨の記事が出ております。 私は、少なくともこの二つの点を思うに、私たちに総理以下皆さんが御答弁をいただいているのと、実際にやっておられることとに、食い違いが出ておるわけであります。これは一体どういうことかと非常に疑問を持つわけでございます。したがって、国会の権威にかけても、この問題は、きょう冒頭に明らかにしておいていただきたいと思います。 私は、昨日関連質問で、ケンドールさんと宮澤通産大臣とのお話し合いがあったようですから、そのことをお聞きしようと思いましたが、ちょっと大臣の姿が見えませんでしたから、私はそのときは保留しておきました。要するに、二十一日に参りましたケンドールさんと宮澤さんとのお話の中でも、すでに一つの妥協案というものはでき上がっておったんではないかというふうにもとれます。したがって、これらの点についても、ひとつこの際明らかにしておいていただきたいと思います。 以上議事進行として発言いたしました。
○委員長(堀本宜実君) 愛知外務大臣。
○国務大臣(愛知揆一君) 昨日も申しましたように、非常にこれは大きな問題であり、かつ、関係者もきわめて多数でございますので、アメリカの民間人を含めまして、いろいろと、この難局を打開するのにはよい考え方がないかというようなことで、各種各様の考え方が出ていることは事実でございまして、政府としても、これを承知いたしております。しかし、政府といたしましては、かねがね明らかにいたしておりますように、基本的な、原則的な考え方はきわめて大切なことでありますので、その基本的な考え方の中でいかにして話し合いをまとめることができようかということについて現に苦心をいたしておるわけでございまして、政府として、ある一つの考え方、あるいは対案というものをすでにまとめている、あるいはそれを基本的にアメリカ政府側と話し合いを進めているというところには至っておりません。あくまで基本的な、原則的な考え方に立ちまして、そのワクの中で何とか円満な妥結ができないだろうかと、こういう点について鋭意検討を続けておるというのが実情でございます。
○委員長(堀本宜実君) 宮澤通産大臣。
○国務大臣(宮澤喜一君) ケンドール氏とは何度か会談をいたしておるわけでございますが、その際、私が政府の立場として申しておりますことは、政府は誠意をもってすみやかにこの案件を片づけたいと考えておるのであるけれども、政府としては堅持しなければならない原則があり、また、国会の御決議もあることであるということを繰り返し述べておりまして、ケンドール氏個人としては、そのことはよく了解をするに至ったわけでございます。しかるところ、その間何日かの日がたっておりますけれども、今度はケンドール氏が、一財界人として、日本の財界あるいは関係業界に働きかけを考えたようでございまして、今朝伝えられておりますケンドール案となっておりますが、私はこれはケンドール氏が起草したものとは考えませんし、私自身もまたケンドール氏からそういう案を手交されたということはございません。おそらく、私が日本政府として譲り得る限界というものをケンドール氏に示しましたので、したがって、ケンドール氏としては、政府でなく一財界人として、日本の財界、業界に接触をする、そういう努力を始めたものというふうに考えておるわけでございます。 なお、このことについて通産事務次官がかくかくのことを申したがという御指摘でございましたが、これは、政府としては譲れない限界というものがあるわけでございますが、日米の財界、業界同士で円満に話かつくということであれば、これは他の業界、たとえば鉄などにも例があることでございますから、それはそれとして、この際いろいろなことを考えますと、やむを得ないのではないか、役所として仲介する、あるいはあっぜんをするということを申したものではないと、こういうふうに思っております。
○鈴木強君 何をもって説得するのですか、説得するっていうのは。何もなかったら説得できないでしょう。
○国務大臣(宮澤喜一君) 役所として説得と申せば、ことばにかどが立つかもしれませんが、両方の業界が日米間で話し合ってとにかく事が落着するものならば、それは非常にベストとは申しませんが、この際としてはそれもやむを得ないことであろうと考えれば、おそらく非公式な形でそういう接触を助けるというようなことは、これはいたしても私は差しつかえないと考えるわけでございます。 —————————————
○委員長(堀本宜実君) 木村禧八郎君の質疑を行ないます。木村君。
○木村禧八郎君 私は、昭和四十五年度予算に関連する財政経済問題について質問をいたします。 焦点を、物価、税金、防衛費及び社会保障費の三点にしぼって、総理大臣及び関係大臣に質問いたしたいと思うのであります。 まず、物価問題から質問を始めますが、それに先だって、大蔵大臣に……。 昨年度、大蔵委員会で、大蔵大臣は、入場税の問題につきまして、四十五年度に前向きで——これはまあわれわれ、廃止の方向で処理してくれ、こういう要求だったんですよ。四十五年度に前向きに処理すると、こういう御答弁だったんですが、何ら処理がされておらない。これに対して、どういうお考えであるか、お伺いしておきたいと思うんです。
○国務大臣(福田赳夫君) 入場税の問題についてのただいまのお尋ね、伺いまして、私も実はこの問題について非常に遺憾に思っておるんです。ぜひ四十五年度予算と関連して入場税の減免を実行したい、かように考えた次第でございます。もう大蔵当局としては、その減免の案までつくりまして、たとえば競輪、競馬でありますとか、さようなものは除きまして、手直しを行なう、こういうふうにいたしたわけでございまするが、税制全体としてこれを取りまとめる、こういう段階になりました際に、物品税との間の権衡問題が出てきたわけであります。私どもは、物品税は昭和四十五年度は一切これをいじくらない、こういうかたい方針をとることにしたんですが、その方針に、入場税が改廃されるということになりますると、影響しそうな形勢が出てまいりました。ずいぶんその調整方に努力いたしましたけれども、どうも物品税に影響しそうだ、こういうことに相なりまして、選挙後の非常に短い予算編成でありましたので、やむを得ずこれを見送る、かようにいたしたわけでございますが、私自身もこのことについては非常に残念に思い、また、大蔵委員会等におきまして申し上げたのは、いま木村さんのおっしゃるとおりでございますので、来年はぜひこれを実現いたしたい、かように存じておる次第でございます。
○木村禧八郎君 なお、詳細については、大蔵委員会等でまた質問いたしたいと思います。 それで、物価問題の質問に入るわけですが、まず、総理大臣が、現在この物価問題が新しい重大な局面を迎えるに至ったとお認めになるかならないか、まずその点を伺いたいのであります。
○国務大臣(佐藤榮作君) 最近の物価動向につきましては、私たいへん心配しております。ことに消費者物価が、季節的なものがあるにしろ、卸売り物価のほうに上昇的傾向がある、これはたいへん実は心配しておる次第でございます。
○木村禧八郎君 もう一つ伺いたい。 昨年九月、景気過熱の心配があるので金融引き締めに転換したわけであります。その後、景気過熱の問題はどうですか。金融をもうゆるめてもいい段階にあるかどうか。
○国務大臣(佐藤榮作君) 私より大蔵大臣のほうが専門で、木村君とお話しするのはそのほうが適当かと思いますが、まだゆるめる段階ではないと、かように政府は考えております。
○木村禧八郎君 物価問題は心配されている、それから景気過熱の問題についてはまだ金融引き締めをゆるめる段階でないと、そういうお考えでありながら、なぜ四十五年度の予算で一これは景気刺激的であります。物価刺激的であります。インフレ拡大の予算であります。なぜそういう予算を組まれたか、その理由を伺いたいのです。
○国務大臣(福田赳夫君) お話のとおり、私どもは、昨年の景気の動きは、これは警戒を要すると、かように判断をしたわけです。そこで、景気のかじをとる方法はどうかというと、いろいろありますけれども、どうしても一番その主軸になるのは金融と財政であります。そこで、金融につきましては九月から調政政策に乗り出した。そこで、その推移をずっと見守っておるわけでありまするけれども、なお今日過熱の心配はまだ消えたわけではございませんです。そこで、金融政策としては、ただいま総理からお話がありましたように、今後といえどもこの基調は変えないという方針でございますが、財政のほうからこの対策のねらう効果が減殺されては困る、かように考えまして、昭和四十五年度予算では、歳出につきましては社会資本の充実というような要請もある、あるいは社会保障を充実ぜいという要請もある、その他幾多の要請があるのでございまするけれども、財政が景気を刺激するというような結果になっては困るというふうに判断いたしまして——まあ地方交付税の交付金の関係もありまして財政の総ワクはふえました。しかしながら、その中身におきましては、きめこまかい配意をいたしておるのでありまして、公債の発行額を減額をする、また、政府保証債においても同じく減額を行なう、あるいは法人に対しまして法人税の増徴を行なう、さような配意をいたしておるわけでございまするが、問題は、予算の実行面にあると思うのです。実行段階におきましては、景気の動向とにらみ合わせて慎重な配慮を加えていきたい、かように考えておるのであります。
○木村禧八郎君 いま大蔵大臣は、四十五年度予算が景気刺激的でない理由として、政府財貨サービス購入、この伸び率が経済成長率より低い、だから景気刺激的でない、こういうことですね。また、ほかでも述べております。それは、そういうふうに考えていいのですか。
○国務大臣(福田赳夫君) それも有力なる一つの理由であると、かように考えております。
○木村禧八郎君 それと、増税をやった、公債発行を減らした、金融引き締めをやっている、そういうようなことですね。
○国務大臣(福田赳夫君) そのとおりでございます。
○木村禧八郎君 ところがですね、いま大蔵大臣が言われた、四十五年度予算が景気刺激的でないと言われる一番有力な理由である政府財貨サービス購入の伸び率が経済成長率より以下であるから景気刺激的ではないと、そういう論拠は間違いだと思うのです。そこで、私は、具体的に間違いであることを、これを論証し、大蔵大臣と論戦したいと思うのです。 まず、政府財貨サービスというのは一体どういうものか、それが経済成長率以下であれば景気刺激的でないという理由をはっきりさしてもらいたい。
○国務大臣(福田赳夫君) 予算が景気に及ぼす影響は、その予算によって政府の需要するところの物財、またサービス、つまり労働力、その程度いかんということにあろうと思うのであります。したがいまして、政府が取り組む予算が景気にいかなる影響があるかということは、いろんな面から判断しなければなりませんけれども、重要なる一つの指標といたしまして、その政府財貨サービス、これがどういうふうになるかということを判断するのであります。
○木村禧八郎君 一般には、四十五年度予算の伸び率が前年度に比べて一七・九五%だ、これは経済成長率よりはるかに高い。ところが、政府は、予算の伸び率が一七・九五であるけれども、財貨サービス購入は一四・八なんだ、そして成長率以下であるから景気刺激的でない、と説明しているのですけれども、どうして財貨サービス購入が政府の予算の伸び率一七・九五%より以下であれば景気刺激的でないのですか。
○国務大臣(福田赳夫君) ただいまも申し上げましたが、財政によって喚起する物財並びに労働力の需要が成長率以下であるからだと、こういうふうに思うわけであります。結局、財政と経済とのつながりはどこで出てくるかというと、いろいろな面はあります。ありますが、主たる面は物財と労働力にある、かように判断しているのであります。
○木村禧八郎君 振替所得等、そういうものは除いてあるということだと思うのです。 それでは伺いますが、国民総生産ですね。これは、言いかえれば国民総支出ですね。その中身はどういうものですか、伺いたい。
○国務大臣(佐藤一郎君) いま御質問の、政府財貨サービスと、それから政府の予算全体、一般会計予算全体の伸びとの関係でございますが、木村さんも御存じのように、政府財貨サービスの計算は、振替所得をはじめ、いわゆる重複計算を控除したものでございます。そういう意味におきましては、ほんとうの意味の最終的な需要というものをあらわしておる。そういう意味において、全体の総需要の伸びに対して、その伸びが比較して低いと、こういう意味で大蔵大臣は答弁されていると思います。
○木村禧八郎君 総生産の内容ですよ。
○国務大臣(佐藤一郎君) それは、御存じのように、消費需要と、それから民間設備投資需要、それから政府関係においては、いわゆる政府の経常的な財貨サービス、それと、政府の固定投資、それに、御存じの輸出入の剰余と、こういうものが構成しております。
○木村禧八郎君 そうしますと、総生産、これは総支出でいいですね。その中には政府財貨サービスというものは入っているのでしょう。
○国務大臣(佐藤一郎君) そのとおりであります。
○木村禧八郎君 そうしますと、総生産というのは総需要でしょう。総需要の中の一部として政府財貨サービスというものがあるわけです。これはみんな需要サイドでしょう。需要サイドですよ。需要と需要と、これを比べて、比較して、これが景気刺激的であるかないかということになりますか。全体の総需要の中の一部の政府財貨サービス、この伸び率が全体の伸び率より大きいか小さいか、いわゆるアーマンドサイド、需要サイドだけの比較、これは相対的比較ですよ。それで、それが景気刺激的であるかないか、それの基準になりますか。
○国務大臣(福田赳夫君) 御質問の趣旨がやっとわかりましたが、要するに、総生産、総需要、これをにらまなければいかぬという御意見のようでありますが、そこを私どもは実はねらっておるんです。この過去三年間は二二%をこえる高成長である。これが続きますと、これはたいへんなことになるわけです。そこで、これは需要の面からも供給の面からも、この成長の速度というものを落とさなければいかぬ、こういうふうに考えたわけであります。それは、まず大事なことは、の面について抑制を加えることである。その一番の需要の要因は何であるかというと、国民消費であります。国民消費を抑制する。これにはなかなか手がないのです、実は。これは五一、二%のシェアを占める大きな要因でありまするけれども、手がない。そこで、第二の要因は何であるか、こういいますると、これは設備投資需要であります。そこで、金融調整政策をとりまして、この設備投資を抑制しようといういま考え方を出しておるわけです。それから第三の需要は何だというと、これは政府財貨サービス需要である。これは先ほども申し上げましたが、公共投資、ずいぶん行政に迫られておるわけであります。また、社会保障のいろいろな諸施設もしなければならぬ。これも、物財、労働力を伴うわけであります。そういうようなことでありまするけれども、いま、総需要を抑制するという見地から見て、これをあまり高くするわけにいかぬという配慮を行なっておる。それからさらに、第四の需要要因は輸出要因でありますが、これも水をかけるわけにはいかない。そうすると、どうしても政府財貨サービス需要と設備投資、この二つを抑制をして、もって総需要を抑制するという考え方に立たなければならぬわけでございまするけれども、先ほどから申し上げているとおり、財政におきましては、とにかく成長率よりはやや下回る財貨サービスの需要を喚起するという程度にこれをとどめたいという配慮をしておるわけであります。
○木村禧八郎君 成長率というのは総生産の伸び率でしょう。名目総生産の伸び率ね。それは総需要でしょう。総需要の中身をいまずっと説明されたのですよ。個人消費なり、あるいは政府財貨サービスなり。その中で、ちょっと大蔵大臣言われたが、需要と供給との関係と言われましたね。予算がいくらたくさん伸びても、供給がふえればインフレ的にならないでしょう。刺激的にならないでしょう。経済学のイロハですよ。需要と供給との関係ですね。ですから、供給サイド、生産が、生産力がどのくらい伸びるか、それに対して総需要がどれだけ伸びるか、予算がどれだけ伸びるか、この比較をやらなければ、予算が景気刺激的であるかどうか、その比較ができないじゃありませんか。供給との関係で対比しなければならないんですよ。いまのお話は需要同士じゃないですか。需要の中の相対的な関係ばかり説明しているんでしょう。ですから、供給サイドと需要サイドではどういうギャップがあるか、需給のギャップがあるか、これが景気刺激的であるかないかを判定する基準でありますよ。ところが、そういう基準に基づかないで、需要同士の比較で、そうして景気刺激的であるかないかということを政府は発表しているんでしょう。これはナンセンスじゃないですか。
○国務大臣(福田赳夫君) それは、もちろんお話のとおりに考えているんです。これはもう、需要の面、需要の面の抑制をするのは、需要のない生産が行なわれるはずはないのであります。そこで、供給力が下がってくる。しかし、それだけでは足りませんものですから、金融調整、これで供給力の抑制もしよう、こういうことなんです。お話のとおりの考え方でやっております。
○木村禧八郎君 それは違いますよ、考え方が。四十四年の予算編成のときも、やはり、財貨サービス購入の伸び率が総生産の伸び率より以下であるから、名目的な予算の伸び率は総生産を上回っても景気刺激的でないないと言いながら、昨年九月、金融を締めざるを得ないほど景気刺激的になったじゃありませんか。だから、政府の予算が景気刺激的であるかないかを判定をする場合の考え方が間違っておるのですよ。
○国務大臣(福田赳夫君) 財政は、先ほど申し上げましたように、需要要因といたしますと、第三の要因になるわけなんです。一番大きなのは、何といったって国民消費、その次に大きいのが設備投資なんですから、まず第一の要因につきましては手がなかなかつけられないものですから、第二の要因である設備投資、これを抑制するという考え方、それから同時に、第三の要因である財政ということなんです。財政からだけ見れば、お話のように、よしのずいから天井のぞくようなかっこうになります。そうじゃないので、私どもは、財政はまあ、よしのずいからではございまするけれども、これを通して経済全体をながめてみる、そうして需要供給のバランスをとる。それでこそ経済計画というものが毎年毎年つくられておるわけでありまして、予算編成方針におきましても、昭和四十五年度の経済計画に基づきまして、のっとって、これを編成するというたてまえをとっておるわけであります。財政需要は比較的小さな要因ではありまするけれども、そうじゃない、それを通して国全体の物財、労働力の需給を見ておる、こういう考え方でありますので、あなたの考え方と少しも変わるところはない。そういうふうに理解いたします。
○木村禧八郎君 ぼくの論点をまだ正確に理解されてないようですから、企画庁に伺いますが、四十五年度の能力GNPです、いわゆる生産能力の伸び率をどれだけに見ておるのですか。四十五年度の供給サイド、供給面の伸び率をどのくらいに見ておるのか。
○国務大臣(佐藤一郎君) 実質で一四%ぐらい見ております。
○木村禧八郎君 供給面が一四%ぐらいで、政府財貨サービスの伸び率が一四・八%じゃ、上回っちゃうじゃありませんか。どうですか。
○国務大臣(福田赳夫君) いま企画庁長官が申し上げた一四%は、実質の量的伸びなんです。ですから、これを名目にすると、かなりのものになります、一八、九%になりましょうか。実質であるというふうに御了承願います。
○木村禧八郎君 それは、ここに私ちょっと……。私は、これまでの——予算の規模が景気刺激的であるかないかを判定する場合、総需要の中の政府財貨サービス、やはり需要の一部なんです。その一部と全体の需要の伸び率を比較して景気刺激的であるかないかをこのように判定するのは間違いだ。それは、供給と需要との関係——いくら予算がたくさん伸びても、多くなっても、供給サイド、生産力がうんと伸びれば、これはインフレ的でないし、景気刺激的でないのでしょう。いわゆる需給ギャップを計算してみたのです、三十一年からずっと。それで、この黒のほうが供給の伸び率なんです。これはサプライ・サイド、供給の伸び率。赤のほうが需要の伸び率ですよね。不景気のときには供給の伸び率より需要のほうが下回るわけです。ダウンする。ところが、四十一年から景気は回復しまして、このように需要がずっと伸びておるのです。四十五年度は、需要と供給との需給ギャップは大体二兆八千九百億になるのです。需給ギャップが。だから、これから見ると、景気刺激的でないとは言えないわけなんですよ。需要同士の比較じゃだめなんで、供給サイドと需要サイド、こんなにいわゆる需給ギャップがあるでしょう。ですから、これでどうして景気刺激的でないと言えるかということなんですよ。こんなに需給ギャップがあるじゃないですか。黒い線が供給サイドです。これは私が過去の統計でずっと調べた、コンピューターで。企画庁でやってごらんなさい。このとおりになりましょう。これは過去のデータがあるのですから。
○国務大臣(佐藤一郎君) 木村さんのおっしゃっていますように、実質で一三%以上の好景気がこのところ三、四年続いております。したがいまして、需給のギャップというものが徐々に狭まってきておる、こういうことは言えると思います。加速度化しつつあります。しかし、もちろん、そうでありますけれども、この需給ギャップというものが別に、御存じのように、ゼロなわけじゃございません。大体これ、いろんな計算の方法がありますけれども、過去十年ぐらいで大体三%ぐらいの実績が依然ありますが、そういうことに照らしてみますと、現在の需給ギャップは、ややきつくなってきておる、これは確かに言えると思います。まあその程度のところでございまして、これを土台にしてその政策の効果をどう判断するか、こういう問題になろうと思います。その際には、いま御指摘になりましたけれども、総需要の中におけるところの各需要の強さというものをやはり比較するということは、政策を選択する上において一つの根拠になると思います。民間設備投資が、御存じのように、二割五分もこの三、四年間平均でもって伸びておる。この異常な伸びがやはり今日の需給逼迫の大きな原因になっておるということで、これを中心にして考えておる。財政についても、もちろん総需要の一部分ですから、御指摘のとおりなんですけれども、その伸びが、大蔵大臣が御説明になりましたように、相対的に見て低い、そういうことでございます。
○木村禧八郎君 ですから、私は非難しているのじゃないんです。いままでの大蔵省の予算の規模が景気刺激的であるかないかという判定の基準として、総需要の中の一部の政府財貨サービス購入の伸び率を持ち出したのでは間違いだと思うんです。やはり、供給サイドと需要サイドを比較すべきであって、能力GNPというものをはかって、それに対して、いわゆる名目成長率、総需要がどのくらいか、ここのギャップを問題にして景気刺激的であるかないかを判定する基準にすべきだと思う。それは今後の物価対策なりあるいは財政規模をきめる場合の非常に重要なポイントですよ。だから私は問題にしているのです。私の計算では、能力GNPは四十五年度一三・六%ですよ。これに対して政府の財貨サービス購入は一四・八%でしょう。ですから、はるかに上回っているんですね。供給の伸び率よりさらに上回っているんです、財貨サービス購入の伸び率が。いわんや、名目的な政府の予算の伸び率は一七・九五%でしょうが。非常に上回っているんです。大体、実質成長率と名目成長率のギャップ、これが大体において需給ギャップと見ていいと思うんです。ですから、そういう点から、これは景気刺激的でない一警戒型の予算、そう考えて今後財政政策をやっていったんでは間違いである。必ず四十四年度みたいに景気が過熱化してきますから、その点を私は言っているのです。この点、いかがですか。
○国務大臣(福田赳夫君) 考え方としては全く同感です。ただ、供給の物財ですね、それは比較的正確に算定できる。しかし、できた工場が一体どのくらいの生産力というものを持っているかどうかということは、これは算定が非常に困難なんです。昭和四十年、四十一年のころはたいへんなデフレギャップがある。木村さんのお話なんかでは、二兆円くらいなギャップがあるじゃないかというお話があったかと記憶しておりますが、そういう状態が今日かなり改善されておる。あるいは鉄におきましても、電力におきましても、かなり需給状態は均衡を得た状態にあるわけでありますが、考え方といたしましては全く同感でありますので、供給力の測定ということですね、この面につきましても、今後はさらに一これは経済企画庁の問題かと思いますが、力をいたさなければならぬ問題だ、さように存じます。
○木村禧八郎君 次に、増税をしたから景気刺激的でないとおっしゃいますけれども、この論点も私はおかしいと思うのです。それは、増税はなるほど七百十二億の増税になりますね。法人税、物品税、利子配当。ところが他方において、三千百七十億減税しているわけですよ。四十四年度のように、増税をし、同じ額を減税するなら景気刺激的でないのですけれども、増税分より減税分のほうが大きいのですからね。それとまた、法人税の増税は、総需要の抑制政策をやらないと、これは転嫁されるわけです。物価に転嫁されます。ですから、これも、増税をしたから景気刺激的でないという根拠としては薄弱じゃありませんか。
○国務大臣(福田赳夫君) いまの経済情勢から言いますと、所得税の減税を行なうというのはその時期ではない、それは私はあなたと同じような見解を持ちます。しかし、政治的判断といたしますと、これは今年度において減税を行なわなければならない、こういうふうに考えまして、三千五十億円の大所得税減税を行なうと、こういうことにいたしたわけなんですが、しかし、この面とても、完全に、あなたのおっしゃるようなわけじゃないと私は思う。つまり、減税はいたしまするけれども、その減税で減収になる、その差額が自然増収という形で、これはまた税の面から吸収をされるわけです。ですから、私は、その辺は結果的に見ると効果はとんとんである。むしろ、実際から言いますれば、これは本年度はとんとんでなくて、ここで五一%にも当たる国民消費に多少のブレーキをかける、そのためには増税をするとか減税を行なわないとか、そういう措置さえとりたいというところでございますが、そういう、ただいま申し上げました二つの理由から減税を行なうと、こういうふうに判断をいたしたわけであります。 一面において、法人税の増徴をいたしましたが、法人の設備投資はどういうふうにしてまかなわれるかといいますると、大体、大ざっぱに言うと、半々くらいになりましょうか。自己資本、これでまかなうのが約半分くらい、大ざっぱに言ってです。しかし、またあと半分くらいが借り入れ資本によるわけでございまするが、借り入れ資本のほうは、これは金融調整政策によって制約を受ける。また、自己資本——七百億円の増税は少ない額ではございまするけれども、自己資本によってまかなわれるところの設備投資、これにブレーキがかかる。そういう意味において、これはかなりの効果があろう。なお、この措置をとる心理的影響——増税ばかりじゃありません。金融調整政策だ。そういうようなことともあわせ考えるときには、私は、かなりな鎮静効力を持つであろう、さように判断をいたしております。
○木村禧八郎君 私は、所得税の減税をすべきじゃないという意見じゃないのです。所得税の減税をしたら、それが景気刺激的にならないためには、他方において、それに見合うだけの増税をすべきですね。ところが、法人税は、あれは二%増税だったが、一・七五になってしまいまして、私はもっと法人税については増税すべきだと思うのです。この点はあとでまた質問します。 これは、いまのような、資本金一億円以上と一億円以下に分けて、新日本製鉄みたいな、あんなマンモス企業も一億円以下の企業と同じような税率じゃいけないと思うのです。やはり、超過累進の制度をとるべきだと思うのです。それで、もっと増税すべきだと思います。ですけれども、景気刺激的であるかないかを判定する場合、片方で増税し、そして減税のほうがそれよりはるかに大きい。しかも、法人税は、総需要を押えなければ転嫁されるのですよ。租税転嫁について諮問したことがありますか、税制調査会に。これは私は、もっと検討してみる必要があると思うのです。そういうことを言っているのです。いかがですか。
○国務大臣(福田赳夫君) 所得税の減税は行ないまするが、一方、国民の手元からは自然増収の形で一兆三千億円にものぼる購買力が吸い上げられるわけなんです。今回の増税は一兆三千億円の一七%に相当する。一七%を開放するということでありまして、いまの木村さんの御所見に、その面だけは私は意見を異にする。
○木村禧八郎君 もう一つ、景気刺激的でないという理由として、公債発行を減らしたというのですね。四十四年度公債はまだ発行の余りがありますか。四十四年度の公債はもう全部発行したのですか。
○国務大臣(福田赳夫君) まだ幾らか残っているはずであります。それで、結局におきましては、申し上げておるよりはさらに二百億ないし三面億円くらい公債発行を差し控えるということになりそうな形勢であります。
○木村禧八郎君 私の計算では、額面で四百八十一億、手取り四百七十二億くらい。ところで、昨年では三月発行が二十五億なんです。こんなに金融が逼迫しているとき、四百八十一億も発行して、これは完全に消化できますか。
○国務大臣(福田赳夫君) 発行予定額は、自然増収と歳出の不用額、そういうものとなって不用となりまする額を除きまして、必要な額は全部消化できます。
○木村禧八郎君 そうすると、大蔵大臣は、四百八十一億の発行残りのうち、自然増収等を見込んで、また減額するということですね。
○国務大臣(福田赳夫君) 補正予算をお願いいたしましてからの多少の変化があります。つまり、さらに自然増収の額が二、三百億円ふえそうな形勢でございます。それに歳出の不用額が乗っかるわけであります。その歳出の不用額と合計した額が、先ほど二、三百億円減らすと申し上げましたが、公債の発行額はもっと多くなる、こういうふうに考えております。——発行の停止額はもっと多くなる、かように見通しております。
○木村禧八郎君 この前、大蔵大臣、戸田君の補正の質問のとき、私、関連して、四十四年度の自然増収はもっとあるんじゃないかと……。そうしたら、ないと言われたですよ。やはりあったじゃありませんか。どうですか。
○国務大臣(福田赳夫君) はっきり覚えておりますが、私は二、三青億円はありそうだと申し上げております。
○木村禧八郎君 いや、そのときは、ないと言った。とにかく、公務員給与の問題が片づいちゃうと、そういうふうに答弁されるのだと思うのですが、それで、公債は消化されても、こんなに金融が逼迫していますと、結局また日銀引き受けになるのじゃないか。 それともう一つ、公債問題について基本的に大蔵大臣に伺いたい。 大蔵大臣は、建設公債であるから四十一年度以後の公債はインフレにならぬと、あれほど言われたでしょう。どうして公債発行をどんどん減らすのですか、インフレにならぬというのに。
○国務大臣(福田赳夫君) それは、木村さんから先ほどお話のあるような理由によって公債の発行額を差し控えておるのであります。つまり、公債を発行して財政による総需要をふやすということは、今日の経済情勢から適当でない、さように判断しておるわけであります。
○木村禧八郎君 そうすると、やはり景気刺激、物価を引き上げるインフレ的な作用を営むからでしょう。
○国務大臣(福田赳夫君) それは、財政の幅、つまり、公債を増発いたしまして、そうしてこれによって政府の需要するところの物財、労働力の需要をよりよけいに拡大することは今日の経済から見て適切でない、そういう判断からです。
○木村禧八郎君 四十年度から今日まで発行した公債のうち、日銀引き受け分はどのくらいになっているのですか。
○国務大臣(福田赳夫君) 約二兆五、六千億になりますか。そのうち、資金運用部で五、六千億持っておりますので、民間というか、民間消化分は二兆円くらいです。そのうち半分を日本銀行が保有しております。
○木村禧八郎君 結局、回り回って日銀引き受けになって、これが通貨増発になってインフレ的作用を行なうのでしょう。ですから、大蔵大臣のお説によれば、財政法によればまだ公債発行余力がうんとあるわけでしょう、建設公債なら。そんなら、もっとうんと減税して公債発行したらいいんじゃありませんか。
○国務大臣(福田赳夫君) まあ、一兆円の国債を日本銀行が持っておるのです。持っておりますが、公債を持つようになりましてから、日本銀行の通貨発行方式が大変化をしているのです。それまでは貸し出しの方式で通貨を供給しておる。ところが、公債を発行したときから今日までは、通貨発行の方式が、買いオペレーション、この形で行なわれるということになってきているのです。これは木村さん、もうよく御承知だと思います。ところが、問題は、通貨の発行量がどうなるかということです。発行の方式が変わっただけなんです。ですから、国債の発行によって、それ自体が通貨発行量を刺激するとか、あるいはそれによってインフレを招いたとか、そういうふうには考えておりません。
○木村禧八郎君 私は、いままで、政府が四十五年度予算が景気刺激的でないと、それを示した論拠について論争してきたわけですけれども、ですから、私は納得できない。 そこで、今度最初に戻って、総理はいま物価問題が非常に重大になっていると言われましたが、佐藤内閣になってから、物価対策は明らかにしたと思うのですよ。それは、現在の経済社会発展計画でかなり明らかにしたと思うのですよ。それがそのとおり行なわれていないのです。ですから、この際、経済社会発展計画では物価対策をどういうふうに規定したか、それをここで読んでいただきたいのです、そこのところを。
○国務大臣(佐藤一郎君) 御存じのように、現行計画は、新計画とやや異なりまして、政策を中心に、特に物価安定をうたっております。そうして、その中身につきましては、すでに木村さんがよく御存じのように、いわゆる税制三部門の近代化であるとか、あるいはまた、競争条件の整備、特にまた輸入政策についての活用等々、私どもが考えておりますその政策をうたっております。なお、この従来の計画におきまして特に指摘できることは、土地政策と、いわゆる所得と生産性、賃金の問題については、これは研究問題としてあとに残しております。そういうことで、最近の論議からしますと、だいぶまだ総合性という点においては必ずしも十分でない点がございますが、しかし、いずれにしましても物価問題が最重点事項であるということで、やはり重要政策の一番大きな柱の一つとして掲げておることは御存じのとおりであります。
○木村禧八郎君 肝心のところを言わないんですよ。これは時間がありませんから私はあなたに読んでと言ったんですが、一番肝心な点はどういうことかというと、「当面重要なことは、消費者物価の上昇率が着実に低下するという実績をつくり出すこと」になっているんでしょう。着実にですよ。それから四十六年ですね、計画の最終期間においては三%程度まで引き下げるという点ですよ。ところが、着実に引き下がってきているかどうか問題なんです。佐藤内閣になってから、物価の見通しについては、四十二年度、政府見通し作業で四十二年度は四・五%です。四十三年度は四・八%です。四十四年度は五%です。着実に引き上げられているんですよ、着実に。それから実績はどうか。四十二年度四・二%、四十三年度四・九%、四十四年度五・七%——四十四年度は五・七ですが、おそらく六%こえるんじゃないですか、企画庁どうですか。
○国務大臣(佐藤一郎君) 御存じのように、四十四年度は六名ぐらいになると思います。
○木村禧八郎君 こえるでしょう。
○国務大臣(佐藤一郎君) こえるかもしれません。最後の三月がどうなりますか、野菜の落ち方ですが、そこでいま木村さんの御指摘になりました点でありますけれども、三十年代の後半ですね、これが大体六%をこえておりました。それに対して四十年に入りましての平均では四十四年度までで、これは十二月までとったわけですが、そこらあたりで見ますと、五%ぐらいに大体なっておるということで、三十年代の後半に比べまして四十年代、それを佐藤内閣と言っていいかどうか知りませんが、決して上がっておるのではなくて、水準は私たちはやはり下がっておる。こういうふうに考えております。
○木村禧八郎君 そんなばかな話はないんですね。はっきりと経済社会発展計画では着実に下げるとなっておるのに、政府の政策目標自体は着実に上がっておるじゃありませんか。四十二年度四・五%、四十三年度四・八%、四十四年度五%、一時下がりかかった消費者物価の政策目標は上がっておる、着実に上がっておる。着実に下げるというのが上がっておるんですよ。実績も上がっておるじゃありませんか、ずっと。それで四十四年度は六%こえるかもしれないというんでしょう。その上に卸売り物価の値上がりが加わってきているんですよ。私はこのようにはっきりと物価対策を打ち出して、それと逆の方向にいっておる。佐藤内閣の物価政策は虚像ですよ。虚像と実像というのがあるんですよ。佐藤内閣のこういう物価政策は虚像ですよ。実像はもっと逆に上がっているでしょう。これは私は政治的責任を感じられないんですか、総理大臣いかがですか、これは逆の方向にいっている。
○国務大臣(佐藤榮作君) いま企画庁長官から説明いたしましたように、私は三十年代の後半、それに比べれば四十年代は下がった。しかし、最近——きわめて最近また上がっておる。そこに責任を感じておる。だからこれも何とかしてもう少し引き下げる努力を積極的にしなければならぬ、かように申しておるわけです。木村君にこういう話をするのもどうかと思うんですが、物価は先ほど来言われておるように、需給の関係で決するものが非常に多い。その関係から国内だけの問題もあるし、国際的な問題もあるだろう。その両方をミックスして、そうして物価を引き下げるような努力をしなきゃならない。いまの対外的な関係では、むしろ上がるような方向に大体がなっておる。国際価格の変動、これは物価を上昇さすようになっておる。輸入するほうが大体利益ではなくて、輸出するほうが利益だ、こういうようなところにいま物価がおかれておる。また、国内の需要もなかなか先ほど来からいろいろ言っておる、われわれが押え得るような予算やあるいは国の面、あるいは設備投資だとか、こういうようなものについてはわれわれが力をふるい得るというか、ある程度押え得るけれども、なかなか一般消費面のその需要は強い、そういうところでございますから、いまの物価を引き下げる努力を政府はいろいろしておるにかかわらず、それは十分効果があがっておらない。それらの点でただいまおしかりを受けておるというのが現状だと思っております。私はしかし、この状態が片一方でいまの経済力を増大しておると、そういう観点から見ますると、ある程度物価が下がらないという、そういうことについては理解もあってしかるべきじゃないだろうか、まあその点では同情していただきたいような気がするのでございます。しかし、私はかように申したからといって、五%台がいいとか、あるいは六%台でも成長すればいいじゃないかと、かように申すわけではございません。もちろん五%台、そういうところは少し目標としても高いのじゃないか。したがって、もう少し低いところに目標をおけばその効果もあがり得るんじゃないだろうか、こういうことでただいま指導しておる、またいろいろ相談しておるというのが実情でございます。
○木村禧八郎君 この低いところに目標をおけば、それが努力目標となって安定的になるかもしれないと言いますけれども、佐藤内閣になってから目標がだんだん上がっておるのですよ。着実に上げているじゃありませんか。そこに問題がある。 それから私は、総理大臣の物価感覚というものに疑いを抱いているのですよ。今度四十五年度の物価の目標を四・八においておるでしょう。これは定期預金の一年ものの五分五厘、税引きで考えますと、それより上回っておるのですよ。大蔵大臣は、貯蓄の点からいって物価の値上がりが定期預金の利息より上回ることはしたくない、もっと下げたいと言っておるでしょう。ところが税引では四分六厘七毛五糸ですよ、以下じゃありませんか、どうなんです。そういうところが私は物価感覚がおかしいと思うのですよ。
○国務大臣(福田赳夫君) 私は最近の物価の情勢を見まして、これは定期預金の金利を上回るというような状態ではこれは困る。絶対にこれは避けなければならぬというふうに考えております。いま一年ものの定期預金は五分五厘でございますね。われわれの四十五年度における物価の目標は四・八なんです。その点ではまあまあというふうに思っておるわけでございますが、いま税の話がありましたが、これは百万円の少額貯蓄につきましては免税をしておるわけです。それから郵便貯金につきましても百万円免税をしておる。それから国債につきましては五十万円の免税がある。その少額免税貯蓄ですね、これがいわゆる貯蓄性預金の大半を占めておるのです。そういうようなことで、あなたがいま税引きということをおっしゃられることは必ずしも私は適切ではないと思いまするけれども、しかし、とにかく貯金の利息よりも物価の上昇が高いと、こういう状態は好ましくない。しかし、だからといって私は物価が上がったから貯金の利息を上げろと、こういう議論じゃありません。そうじゃなくて、物価のほうを下げなければならぬと、こういうふうに考えておるのです。
○木村禧八郎君 だからその免税以外のものは対象にしないというんですか。おかしいですよ。
○国務大臣(福田赳夫君) それは関連はないとはいたしません。しかし、大半が免税の貯蓄でありまして、したがって、あなたが税引き利回りと物価上昇率を比較されて議論をされておりますが、それは全面的には正鵠を得てないと、こう申し上げておるわけなんです。しかし、私の考えとしては、まあその税引きだあるいは額面だというふうにとらわれません。とにかく物価上昇率、これが貯蓄の利息を上回るということは、もう大衆に非常に悪い感覚を与える、さように考えまして、ぜひとも物価を引き下げるという方向に努力をいたしてまいりたいと、さように考えております。
○木村禧八郎君 私は政策の基本目標として質問しているんですよ。これまで政府の全体の行政の総合的ないわゆる調整のめどは国際収支と物価なんでしょう。いままでは、国際収支が赤字になる、そういうときは全体の政策を引き締め的に持っていくんでしょう。いま国際収支が黒字になりましたから、今度は行政の全体の調整——統制と言っては語弊がありますが、調整のめどは物価なんですよ。その物価を安定するときにどこにめどを置くか、そうでしょう。個人の利害関係、これももちろん私はあとで問題にしなければなりませんけれども、生活に与える影響、問題にしなければなりませんけれども、私がいま質問しているのは、大きな政策を調整する基本目標として、国際収支が黒字になったんだから今度は物価なんですよ。その意味で物価が新しい重大な段階に来ていると。政策面から佐藤内閣が、今後全体の政策を調整するときに何を政策調整の目標に置くか。物価でしょうが、国際収支は黒字ですから。そのときの調整のめどを聞いているんです。それが、大蔵大臣はいわゆる貯蓄の金利を上回っちゃいけないと言ったでしょう。ところが、今度預金の利息を二〇%上げましょう。また開いてしまいますよ。その点はどうなんですか。
○国務大臣(福田赳夫君) いま日本銀行政策委員会に対して、私が発議をいたしまして金利の引き上げ方を検討してもらっておるんです。いま五・五の一年ものの定期預金の利子が五・七五が適切であるというような結論が出そうだなというようなうわさがありますが、その辺はまだはっきりしたことはわかりません。しかし、預金の利子がかりに五・七五になったからそれまで消費者物価を上げてよろしいんだというような考え方は毛頭持っておりませんです。それとは離れて物価は下がらなければならぬが、しかし、上がる場合におきましても預金の利子をこえるようなことがあっては絶対に相なるべきものではないと、金融当局としては固くそれを要望しておるわけであります。
○木村禧八郎君 そうなりますと、今度は定期預金の金利を上げます、そして今度は利子に対する税金を上げるんですよね、四十六年一月一日から。そうしますと、利回りは四分六厘になります。四・六%。政府の物価安定の目標が四・八なんです。そっちのほうが上回ってしまう。それは訂正するんですか、そういう場合には。
○国務大臣(福田赳夫君) かりに預金の利子が〇・二五上がりまして五・七五になったという場合の税引き利回りは四・八八ぐらいになります。まあ四・八という消費者物価をちょっと上回ることになりますが、しかし、まあ先ほど来申し上げておりまするとおり、貯蓄性預金の大半は税引きでありますので、大体まあその辺は私はがまんし得るところではあるまいかと、そういうふうに考えております。
○木村禧八郎君 おかしいですね。だから預金の利子を上回るような物価値上がりは認むべきじゃないと言われておるのに、税引きのことを言われるのですけれどもね。預金の利子、どうもその点が私はおかしい。 次に、時間ございませんから次の質問に移りますが、物価関連の予算というのは、四十四年及び四十五年どのくらいでありますか。
○国務大臣(佐藤一郎君) 非常にとり方いろいろでありますが、私たちのいま手元で集計しておりますので約八千億ございます。
○木村禧八郎君 それは特別会計も入れてですか。
○国務大臣(佐藤一郎君) 一般会計だけです。
○木村禧八郎君 特別会計入れて。
○国務大臣(佐藤一郎君) 特別会計を入れますと九千百です。
○木村禧八郎君 それでどういうような物価対策を行なってきておりますか。
○国務大臣(佐藤一郎君) まあ御存じのように一これはいま御質問は、この予算の中身の話ですか、それとも従来の。
○木村禧八郎君 いや項目でいいです。柱でけっこう。
○国務大臣(佐藤一郎君) これは農産物関係の流通関係の経費でありますとか、あるいはまた、これは公営住宅等のいわゆる低家賃住宅の建設等も含めております。あるいはまた、交通関係では、地下鉄の建設補助金、こういうものも一切含めまして、そうして九千五百億円、こういう計算をしております。ごく大ざっぱに言いますと、低生産部門の生産性向上、これが大体六百億ございます。それから流通対策が三十四億円、労働力の流動化促進が十八億円、競争条件の整備、これが四百九十九億円、それから生活必需物資の安定供給、これが五百六十八億円であります。それから家賃地代の安定百六十億円、交通施設の整備七十四億円、それに特別会計に同様のような低生産部門の生産性向上、労働力の流動化促進、こういうようなものが二百三十九億円ばかりございます。これらが増加額でございます。
○木村禧八郎君 われわれがいただいた資料と金額が非常に違っているのですが、どういうわけですか。
○国務大臣(佐藤一郎君) これたぶん差し上げた資料であると思います。私いま増加額を申し上げましたが、絶対額で言いますと、低生産性部門が三千七百九十九億円。
○木村禧八郎君 特別会計入れてですよ。
○国務大臣(佐藤一郎君) 特別会計が、これはごくわずかです、その分が。ですから三千八百億ぐらいです。それから流通が七十五億円、労働力の流動化が二百十五億円、競争条件の整備、これちょっと私さっき単位を……五億七千万円、生活必需物資の安定供給が五千八百四十五億円、家賃地価安定が九百六十五億円、交通施設の整備二百六十一億円、これで八千四百四十五億円、一般会計。そうして特別会計が七百億円、このうちの大部分が労働力の流動化促進、合わせまして九千百四十五億、こうなっております。
○木村禧八郎君 大体一兆円近いものですね。物価対策関連予算として使っています九千百四十五億円、一般会計、特別会計、これだけの税金を使って物価の引き下げにどの程度寄与したのですか、この部門別にどの程度、何%程度寄与したか報告してください。
○国務大臣(佐藤一郎君) これは実は数量的に効果を測定することはなかなかむずかしいと思いますし、まあ政策判断でやる以外にはないと、こういうふうに思っております。
○木村禧八郎君 最近大蔵省あるいは経済企画庁が中心でPPBSの作業をやってるわけですね。こういう問題について作業をやらないんですか。
○国務大臣(佐藤一郎君) PPBSは、現在企画庁、大蔵省その他でもって——私のほうの企画庁だけで言いますと、システム分析の手法というのを研究対象にいたしまして、いま研究室で研究いたしております。なかなかいろいろとむずかしい問題もありますので、これは早急に研究をまとめたいとは思っておりますけれども、まだすぐにそれを利用するというところまでいっておりません。
○木村禧八郎君 PPBSは、いろいろ問題ありますけれども、私はもっと推進すべきだという考えです。御承知のように、PPBSはプランニング・プログラミング・バジェッティング・システム。プランニングがあって、予算があって、その中間のプログラム、だから物価安定という政策があるんです。全体で一兆円近い予算を組むんでしょう。そうする間がプログラミングでしょう。ですから、今後努力目標として、これで一兆円近い物価対策費を使って、それがどの程度物価安定に寄与したか、これが全然わからぬというんじゃ、これじゃ何のために国民の税金を使うのか、そういう作業をこれからやるべきじゃありませんか。
○国務大臣(佐藤一郎君) これは、実績検討の上からも、予算を編成する上からも、できるだけ早く実現したいと、こう思っております。
○木村禧八郎君 この際伺いますけれども、PPBSについてはいまどういう作業をやってるのですか、具体的にちょっと伺いたいんです。
○国務大臣(佐藤一郎君) 政府委員にひとつ説明させます。
○政府委員(鳩山威一郎君) PPBSのことにつきましては、企画庁とともに、私ども大蔵省におきましても、鋭意勉強いたしているところでございます。御承知のように、四十四年度予算では一億円の経費を計上いたしていただきまして、これで各省におきましてそれを移しかえをして使っておりますが、現在におきまして主として一番必要なことは、やはり要員の訓練でございます。現在何といたしましても、アメリカにおきましても、一般的にPPBSが行なわれましてまだ二年でございます。その間にやはり二年の準備期間を置きました上にやっとやっておるわけで、まあ要員の確保がたいへんでございます。そういった目的で、今年は主として研修、まず最初にやはり各省の幹部の頭を切りかえなければならないというので、各省の官房長クラスを集めまして研修をいたしました。それから、中堅の職員を六カ月間研修所に入れまして、研修を行なっております。各省におきましてテーマを選びまして、五十ばかりのテーマを選びまして、いろいろケース・スタディを始めております。そういったことで、まだ全体としていわばまだほんの初歩の段階のスタディでございまして、ただいま木村委員のおっしゃいましたあれだけの大きな項目を、物価に与える影響というものをやりますまでには、私どもの見込みではまだ相当な日にちがかかるというふうな、そういう状況でございます。
○木村禧八郎君 われわれ予算委員としまして予算を審議する場合、予算の行政効果というものを判定しなきゃならないんですよ。一兆円近い物価安定予算を組んで、われわれこう見て、これがどれだけ効果があるかわからぬじゃ、しようがないですよ。国会にも問題あると思うのです。国会図書館を充実してもっとそういう作業をするとか、あるいは会計検査院でもう少し作業をするとか——アメリカあたりではずいぶん会計検査院を動員しているそうでありますけれども、新しい経済発展計画策定にあたりましては、これを導入する必要があるのじゃないですか、活用する必要があると思うのですが、どうですか。
○国務大臣(佐藤一郎君) できるだけひとつ研究を急ぎまして、そうしていまお話しのような方向に持っていきたい、こういうふうに考えています。
○木村禧八郎君 私は資料をいろいろいただいて勉強してみて、これは非常に重要なものでありますし、今後国会としても考えていかなければ、われわれこの予算を実行してどの程度の行政効果があるのか判定の基準がないのですよ。大福帳を見ているようなものです、われわれとしては。だから、国会自身もそういうきちんと行政効果を判定する基準というものを持たなければならぬ、こう思っておるんでありますが、そういうことは総理・総裁としてはいかがですか。そういう点につきまして、総裁として、今後予算を見る場合のあり方ですね。
○国務大臣(佐藤榮作君) PPBSについては、先ほど来関係大臣からも説明をし、同時にまた担当事務当局からも説明がありました。新しい方式をとにかく取り入れないことには予算の効果が十分あがらない、かように思っておりますので、そういう意味で十分検討してみたいと思っております。衆参両院とも、各党からと申し上げたいが、ことに社会党からいろいろそういう御注文が出ております。ただ、いままでのところでは、アメリカ自身始めたところで、十分の成績があがっているとまだ確言できないという状況でございますから、私どもこれを採用するについては、さらにさらにもっと検討を要するのじゃないか、かように思っております。
○木村禧八郎君 私も、メリット、デメリットいろいろと、完全なものじゃありませんし、日本でもやはり新しく開発していく必要があると思うのです。ですから、数量的に計算できないものまでも数量的にあらわしていくという問題もありますし、いろんなデメリットもありますが、しかしこれはやっぱり私は前向きで採用していくべきものと思うのです。 そこで伺いますが、これだけの一兆円近い物価安定関係予算を組んで、逆にこれが物価引き上げになっているんではないかという疑いがあるのです。前に中山伊知郎氏が指摘しましたね。物価安定費はけっこうだけれども、それが有効需要になっちゃうんですよ、購買力になって、むしろ物価安定に寄与するよりは、一兆円近い物価安定費は物価引き上げの役割りをするのじゃないか、そういう点もわれわれは判定がつかないのです。いまお話しのように、わからぬというのでしょう、政治的に言って。どこでそうでないと言えますか、その保証がございますか、その点どうなんですか。
○国務大臣(佐藤一郎君) 木村さんのおっしゃいます意味は、これは総需要の一部でございまして、需要は立つわけでありますから、そういう意味であるいは物価を上げる要素になっている、こういうお話だと思います。そういう意味におきましては、予算すべてそういう効果を持つわけでありますけれども、しかし、そういう意味で議論いたしますと、これは全体としての総需要をどのくらいのレベルに置くかということであろうと思います。私たちも実質一一・一%、名目で一五・八%という見通しを御存じのように立てておりますが、そうした全体の総需要のレベルの置き方、その一部の中でもってどういうこれが効果を持つか、こういう問題になろうと思うのであります。まあ一方において、もちろんこれらが逆にそれぞれの政策目的に従っての効果というものを発揮する、こういうふうに私たち期待しておりますから、それらが差し引きしてどういうことになりますか、具体的にはなかなか言いにくいところでありますけれども、これが非常に逆に物価騰貴の原因になるというところまでは言い切れない。ただ私たちも、公共事業関係の経費等につきましては、それが一時に殺到したりしますと、短期的にやはり物価引き上げの需要になる可能性がありますから、そうした点はよほど実行上、運用上注意しなきゃならぬ、こういうふうに考えています。
○木村禧八郎君 これは私が言うだけじゃないのですよ。物価安定推進会議で問題になったのですよ。中山伊知郎氏が指摘したでしょう。ですから、私は、一兆円近い予算ですから、ほんとうに物価安定に寄与しているのか。物価騰貴に寄与しているのだったら、全く意味がないわけですよ。ところが、その判定の基準がないじゃありませんか。ないから、ノーと言えませんよ。言えないでしょう。根拠がない。ですから、私はそういう質問をしたわけです。 次に伺いたいのですが、きょうの新聞に新経済社会発展計画の概要が出ておりました。あの中で、物価対策、物価安定の目標をどういうふうに置いているのか。
○国務大臣(佐藤一郎君) 昭和五十年度最終におきまして三%台のところへ持っていきたいと、こういうふうに考えております。
○木村禧八郎君 前の経済社会発展計画でも、三%程度に持っていきたいと、着実に引き下げていきたい、きょうのこれと全く同じこと書いてありますよ。ちっとも実行されないじゃありませんか。それの保証がありますか。もうすでに六%こえようとしているでしょう。それを、いまここであの作文ではたして三%台に五十年代に持っていけますか、こういう状況で。
○国務大臣(佐藤一郎君) 昭和四十五年度は四・八%の目標を掲げておりますが、それから五十年度までにこれからの物価対策を大いに努力していかなきゃならぬ、そして三%台に持っていきたい、こういうことでございます。
○木村禧八郎君 やはり依然として虚像ですよ。虚像です。実像じゃありません。国民にただ物価安定に努力しているごとく見せるだけであって、実像というものは逆じゃありませんか、いまのあんな無責任な答弁では。どういうわけで三%になるか、その筋道がちっとも明らかでない。もうすでに実験済みでしょう、いまの経済社会発展計画で着実に上げているのですから、政府が。また上がっているのです。 そこで次に伺います。物価安定ということをこれまで政府は何回も言っています。ところが、もう物価は上がって十年たちます。昭和三十六年から急速に上がりました。なぜ物価は安定しないのですか、なぜ成功しなかったか、その原因はどこにあるのか、はたして政府に物価安定の意思があるのかどうか、あるけれども能力がないのか、実際能力がないのか、いずれなんですか、その根本の原因はどこにあるか。十年間のこの物価値上がりがこんなに長く続いておって、何回も安定させる安定させると言って、ちっとも安定しない、逆に上がってしまう根本の原因を、この際私は総点検してみる必要があるのじゃないかと思う。どこかに欠陥があったのじゃないか。物価値上がりの認識に何か欠陥があったのじゃないか。欠陥車ですよね。欠陥車的物価の認識であり、物価対策であったのじゃないか。これは一党一派の問題じゃありませんよ。世界的にも問題ありますが、根本的にここで謙虚に総点検してみる必要があるのじゃないか。過去の経過をずっと洗ってみてどこかに欠陥があったのじゃないか、総需要の考え方に欠陥があったのじゃないか、あるいは生産力格差理論に基づいてやってきた対策に間違いがあったのじゃないか、あるいはコスト・プッシュ、あるいは管理価格、いろいろな面に問題があって、その把握のし方が間違っておったのじゃないか、この際総点検してみる必要があるのじゃないですか。その一体根本的な原因はどこにあるのですか、伺いたいです。
○国務大臣(佐藤一郎君) 政府といたしましても、御存じのように、各種の、物価懇談会、あるいは推進会議、安定会議、いろいろなものを持っております。そして政府として、各省と企画庁が一体になって物価政策を推進してまいったつもりでございます。ただ、御存じのように、経済計画ということになりますと、この見通しと実績というものに相当の乖離が生じてまいりました。これはよく御存じのとおりであります。この計画の全体の見通しが現実と乖離した。まあたくさん原因があると思いますが、特に今日まで私たちが反省をしなければならないと思いますのは、やはり見通しの過小評価の点があったと思うのであります。一つは国際貿易、この国際貿易の関係から見まして、国際収支の見通しにしばしば狂いが生じました。そうして、したがってまた輸出需要というものの見通しに違いを生じてまいりました。こういうものが見通しを狂わせた一つの原因になっております それからまたもう一点は、御存じの民間設備投資の需要でございます。まあ日本の潜在成長力といいますか、非常に高度な成長を常に見通しを上回って実現してきておる、その高さが相当激しい、こういうことで、したがってこの経済成長率そのものも結果的に見ると常に見通しを上回る結果になっております。そしてこの経済成長をささえておりますところのもろもろの原因が、やはり同時に物価に大きな影響をもたらしてきたと思います。そういう意味においては、従来の見通しと計画との食い違いというものは、ある意味で経済成長の見通しというものの狂いというものは、ある程度物価に影響していることはいなめないと思います。経済成長と物価との関係、まあそのかわりと言いますとあれですが、高い経済成長を実現してまいったと、まあそのほかそうした相殺的な要素というものがありましたけれども、なお政府としてもできるだけの努力はしてまいった。あるいは数字についてまたあとで突き合わせなければいけませんが、そういうことで三十年代後半のあの高い消費者物価高というものは一%ぐらい四十年度に入ってダウンしてまいった、しかしこの三、四年のまた好景気の連続でもってだんだんと需給の逼迫を生じつつある、そういうことでこの一両年非常に消費者物価高という要素が少し出てきております。そういうことで、また政府としましても、今回の総需要の抑制をはじめとして、いろいろと物価対策をやろうと、こういうことで現状に至っておるわけであります。
○木村禧八郎君 核心に触れた答弁がないのが遺憾ですが、これまで何回も物価を安定させようと、またさせるように声明してきたけれども安定しなかった一つの大きな原因は、やっぱり安定させる意思がなかったということが一つだと思うのですよ。それは名目的に総生産がふえても実質的にふえているからいいじゃないかと、あるいは消費者物価が上がっても卸売り物価が安定しているからいいじゃないかと、そういう安易感があったのじゃないか、そういうことで国民に納得させてきた。あるいは納得しない国民もいますけれども、一応そう合理つけてきたのじゃないですか。
○国務大臣(佐藤一郎君) おっしゃいますとおりに、卸売り物価と消費者物価、だいぶ乖離した状況が続いてきました。そういう意味で、卸売り物価が安定してきておるということは、やはり日本の物価問題においては一つの強みだったと思います。そしてまた、それが乖離してきましたところにまた日本のいわゆる経済における特別な構造が原因をしておった、こういうふうに理解される。したがって、その構造面についてできるだけ政策を推進していかなければならない、こういうことで今日までその方面の政策の推進をできるだけはかる、こういうことをやってきたわけであります。
○木村禧八郎君 どうも物価対策に安易感があったのじゃないかと思うのですが、総理は前に、高度成長のもとでは五%ぐらいの物価値上がりはがまんすべきではないか、そういう感覚ですね、考え方。それが安易感があったんじゃないかと総理に伺いたい。
○国務大臣(佐藤榮作君) いまの経済成長のもとで五%ぐらいはという、これはたいへんな失言であったと思っております。当時ずいぶん責められ、またその他物価審議会等でもこれはやはり問題になっております。やはり目標数字としてもっと低いところに置かなければならなかったものだと、かように私いま考えております。しかして、ただいままでの御議論いろいろ聞いておりまして、私まあ一番、だれも物価が上がっていいと言う人はない、しかし、これを政府だけの責任で引き下げろと、かように言われることも、少し無理ではないだろうかと、政府ももちろん真剣に物価問題と取り組む姿勢がなければなりません。そういう意味で、鞭撻されることは私ども当然だと思うので、先ほど来お話を聞きながらも、やはり物価を下げることについては各界・各層の御協力がぜひとも必要だと、かように思っております。と申しますのは、申すまでもなく、基本的には、先ほども触れたように、やはり需給関係でものごとはきまるだろう、かように私どもの理論からすればなるわけであります。そうすれば、やはりその生産性を高めるということをやる。各方面で要望される。これは政府自身がやる場合もありますが、やはり政府ではなくて企業家自身でそういうことはくふうされなければならない。ことに低生産部門の物価が一番問題になっておりますから、そういう面ではやはり生産性を上げるような構造的な改革をしなければならない。しかも、このことは、自由経済のもとでは、やはり何と言ってもその面に積極的に協力願わないとできるものではないと思います。また、先ほど来お話にもありましたように、コスト・プッシュというようなことばまで使われたのですから、私はやはりそういうことも、それぞれの関係の方々がそういうことについても目を開いて、そうして積極的に協力しようということでなければならぬだろうと思います。私は、そういうことで、政府自身がそういう場合の音頭をとる責任があるのでありますから、政府自身が音頭のとり方が悪い、そういうことで、もっとおれたちも協力する十分の用意はあるのだ、音頭のとり方が悪いじゃないか、こう言っておしかりを受けていると、かように先ほど来のお話を伺った次第であります。私は、そういう意味で、ぜひともこれだけはりっぱな成績をあげたいと、かように思っております。どうも自分の国のことよりも外国のことのほうが目につきやすいのであります。御承知のように、アメリカでとにかく不景気になった。何とかして景気を上げよう、かようにしているが、ところがやつ。はり景気は上昇しない。その上昇しない最近の一番の問題は、やはり経営者とユニオンとの関係のようでございます。これも、生産性を上回る賃金、そういうものがアメリカの景気をどうしても上昇させないんではないかと思っております。また、イギリスにおいて所得政策ということが云々された。しかし、この所得政策はなかなか成功しておらない。しかし、成功はしないが、労働党内閣のもとでこの所得政策をさらにさらに推進しようとしておる。私はここに労働党内閣の一つの面目があると思っております。この政策が成功はまだ今日はしておらないが、そういうところにやはり立ち上がる機会を見出そうとしているのじゃないか、かようにも思っております。またドイツの状態、これなどは、いろいろの問題がマルクの切り上げ等々とからみ合って、なかなか経済が正常化しておらない。こういうような外国の例を見ながら、わが国の姿勢を正していかなければならぬ。先ほど来木村君から御指摘になった点、私もそれぞれがみんなぜひとも考えていかなければならぬもっともな問題だと、しかしてそのもとは何と言っても各界・各層の協力が必要なんだ。このことを政府が強い決意を持つと同時に、その御協力をお願いするような次第であります。 以上、私感じたところの感想を率直に申し上げた次第であります。
○木村禧八郎君 企画庁長官に。消費者物価と卸売り物価の乖離する原因はどこにあるのですか。
○国務大臣(佐藤一郎君) 日本におきましては、御存じのように、いわゆる生産性の格差というものが、大企業の部面とそれから中小企業その他の部面とでだいぶ異なっております。生産性の上昇に伴いまして、そうした大企業において相当の賃上げが当然のこととして行なわれてまいる。結局、そうなりますと、それが生産性の低い部門にどうしても影響してまいる。いわゆる賃金の平準化運動、そうしてこの賃金の平準化運動を通じまして、結局、中小企業その他低い生産部門、こういうところにおいては価格へ転嫁することによってのみ労賃を確保する、賃金の引き上げを確保することができる。まあこういうようなことで、いわゆる主として低生産部門を通ずるところの価格の上昇が行なわれてくる。この際に、低生産部門というのが、御存じのように、農産物をはじめとして生活の必需物資部門が中心になっております。で、一方において、御存じのように、高い成長と急激な都市集中ということで、雇用者の増加とあわせまして、いわゆる生活必需物資部門に対する急激なる需要の増加がまいった、それといまとの問題がつき合いまして、そして必需物資部門を中心とするところの物価高を招来してまいった、こういうふうに考えられています。
○木村禧八郎君 やはり生産性格差論を言いましたね。実質は、いわゆる卸売り物価を安定させるために消費者物価が犠牲になっているのですよ。逆だと思うのですね そうですよ。本来なら物も金も労働力も重点的に大企業に投入されて、したがって大企業のほうは生産性が上がって卸売り物価は上がらないのですね。そのかわりに物も金も労働力もいかなかったほうは、そのほうの生産性は上がらないでしょう。だから、消費者物価が上がって卸売り物価が安定している。安定している卸売り物価のほうを下げれば、全体の物価水準はもう上がらないのですけれども、そこに管理価格があらわれてきてしまうと、そういう関係だと思うのです。これは議論になりますから、私はこれで打ち切ります。 次に伺いますが、経済企画庁長官はインフレということばを今度の財政演説で初めて使いました。日本の現状はいまインフレの状態にあるかないか、この点ひとつ。
○国務大臣(佐藤一郎君) 目下のところ、インフレとは私たちも考えておりません。へたをすると、このままいくとインフレになるおそれがあるからと、こういう気持ちで使ったわけであります。
○木村禧八郎君 総理はどういうふうに考えておりますか。総理、いまの日本の物価の状況です。
○国務大臣(佐藤榮作君) いま経済企画庁長官が答えたとおり、私も、こういう状態が長く続けばインフレのおそれ、インフレが出てくると、かようなおそれのある状態がいまの状態だと、かように思っております。
○木村禧八郎君 インフレの状況というのは、中身はどういうことをさすのですか。
○国務大臣(佐藤一郎君) これは木村さんのほうがよく御存じと思います。で、まあいろいろの議論もありますけれども、いわゆる消費者物価、卸売り物価、これが相当長期、継続的に上昇をするという見込みがある。こういうような事態になりました結果としまして、いわゆる換物運動の一般化、あるいは貯蓄の低下と、こういうような現象を来たすような事態になりましたときに、われわれはインフレと、こういうふうに考えております。
○木村禧八郎君 私は経済企画庁から出した本を見たのです、「年次世界経済報告」。外国のことはみんなインフレ、インフレと書いてあるのです。アメリカ、ドイツ、イタリアのことはみんなインフレと書いてあります。ところが、日本はインフレの状況でないというのですね。アメリカその他の物価の値上がりと日本の物価の値上がりと、どう違うのですか。ここではみんなインフレと書いてあるのですよ。
○国務大臣(佐藤一郎君) アメリカやドイツでは、二%上がってもインフレと、こういうことばの使い方をしておるようであります。もちろん、一体アメリカとどう違うかという点は、なかなかむずかしい問題でありますが、私たちは同じ物価高——最近アメリカも非常に御存じのように上がってまいりました。そして、アメリカの場合には、特に卸売り物価と消費者物価の乖離というものは、日本のようにあまりございません。そこいらにやはり日本とアメリカの差があると思うのでありますが、御存じのように、ただいま四十五年のたとえば経済の見通しで申しますと、アメリカは実質でもって経済の成長率が一ないし一・五%といわれております。そうして、そのときに名目で五、六%くらいの経済成長が行なわれるであろう、こういわれております。この名目成長率と実質成長率との乖離、これはデフレーターでありますが、これが実質、全体の名目成長率の中で占めるデフレーターの割合が非常に高い。日本ももちろん、物価は上がっておりますけれども、四十五年には私ども大体一五、六%の成長で、まあその中でもって実質一一%を確保しよう、こういう気持ちでおりますが、そういうような点からいきましても、まだアメリカのいわゆるインフレというものと日本の物価高というものとでは、だいぶ質的な相違があるように考えております。
○委員長(堀本宜実君) 木村君の質疑の途中でありますが、午前の審査はこの程度にとどめます。午後一時再開することにいたします。 これにて休憩をいたします。 午前十一時五十三分休憩 —————・————— 午後一時六分開会
○委員長(堀本宜実君) 午前に引き続き質疑を行ないます。 なお、佐々木日銀総裁が、御多忙中にもかかわらず、参考人として出席をされております。 木村君。
○木村禧八郎君 日銀総裁は予定があるようですから、先に御質問します。 端的に伺いますが、国際収支が大幅に黒字のもとで金融を引き締めるということは、異例のことだと思うのですね。なぜこういう異例の金融引き締め措置をとられたか、まずその点について伺いたい。
○参考人(佐々木直君) お話しのように、国際収支がこれほど大幅な黒字のもとで金融引き締めを実施いたしましたのは、戦後初めてのことでございます。今度こういうことをいたしました理由は、経済の成長が非常に高いことが続いておりまして、そのことが結局労働力の不足その他に影響いたしまして、物価の上昇を招き、その他各方面にいろいろ問題を起こしてまいっておりましたので、それに対する対策としてこれを実施いたしたのでございます。
○木村禧八郎君 その卸売り物価が最近非常に上がりだした、これはまた従来と非常に違った現象だと思うのです。で、日銀が金融引き締めを行なう主たる目的ですね、この卸売り物価の安定、ここに重点が置かれていると聞いているのですが、この物価問題について、どういうお考えを持っておりますか。
○参考人(佐々木直君) 日本の卸売り物価は、一昨年の暮れまでは非常に安定しておりました。昭和二十九年から約十五年間というものは非常に安定をしておりましたが、昨年の二月から上昇が始まりまして、今日まで上昇が続いております。その原因につきましては、海外における物価高、それが日本の輸入いたします原材料の価格に反映いたしまして、それが国内においての卸売り物価上昇の一つの原因でございます。もう一つは、国内における総需要が相当強いものでございますから、そちらの面から、需要の強さということから物価に対してやはり引き上げの影響をもたらした。したがって内外両方の事情によって物価が上がってきております。したがいまして、海外から輸入いたします原材料の価格の上昇の影響は、これはなかなか防ぎ得ませんけれども、国内における需要の調整によりまして、国内需要に基づく物価の上昇というものに対して、これは十分対処し得るものだと、こういうふうに考えておる次第でございます。
○木村禧八郎君 内外の原因によって卸売り物価は上がってきていると、海外の物価高は、やはり国内で総需要がふえなければ、ぼくは、海外で物価が上がっておりましても、これは調整できると思うのです。問題はやはり総需要にあると思うのですね。最近日銀が総需要に着眼して、物価安定に乗りだしたということは、これは私は賛成で、そうでなければならぬと思うのです。いままでの財政政策でも、それから金融政策でも、物価値上がりの原因について私は間違っていたのじゃないか、全部間違っていたとは少し極言かもしれませんが、ウエートの置き方ですね。それはいろいろ値上がりの原因ありますね。総需要とか、あるいはコストプッシュとか、あるいはまた管理価格とか、いろいろあると思うんですよ。しかし、一番重要な点は総需要にあるんじゃないかと、私はそう思うんです。この点について、これまでの金融政策は私は甘過ぎたんじゃないかと、あるいは財政政策も、総需要の調整について甘過ぎたんじゃないかと。それで昨年の九月の金融引き締め以来、総需要の抑制ということが相当強くいわれてきた。それで、いままで物価安定推進会議等でも総需要論は相当ありましたけれども、かなりこれは軽く見られておったんじゃないか。この点は金融政策を今後担当する日本銀行総裁として、どういうふうにお考えかですね。
○参考人(佐々木直君) ただいままでの金融調整というものは、戦後の経験にかんがみますと、いつも国際収支の天井にぶつかって手を打つということがならわし——ならわしと申しますか、いつもそういうふうなやり方でやっております。したがいまして、いままでは物価問題を直接金融政策の対象とするまでに至りませんで、とりあえず、国際収支の赤字を何とか埋めなければならないということに焦点を合わせてやってまいりました。それで今度は、先ほど申し上げましたように、国際収支にはまだゆとりはございますけれども、物価問題ということが新しい制約条件として登場してまいりました。したがって、それに対して金融政策の面から総需要の抑制ということを目標にして実行してまいった、こういうことでございます。
○木村禧八郎君 総理に伺いますが、今後の物価対策として非常に重要なポイントだと思いますので、総理大臣としてどういうふうにお考えですか。いまの問題につきまして、いわゆる総需要論。
○国務大臣(佐藤榮作君) まあ先ほど来議論しておられるが、やはり総需要、これは物価の決定に非常な影響のあるものだと思います。適正な需要というか、そういうものであってほしいと思います。しかし、もう需要は何でもかんでも押えるんだと、こういうわけにもいかないと、かように思いますので、そこで総需要が大きな原因には違いございませんけれども、いま適正な規模であることが必要だと、かように私は考えております。
○木村禧八郎君 私も何でも総需要を押えるというわけじゃありません。それから、物価値上がりの原因も総需要だけじゃない。それには管理価格もあるし、それからコストプッシュもあるし、いろいろありますけれども、最近、ハーバラーなんという人も言っておりますが、コストプッシュがあって総需要が抑制されれば、適正なところに物価は押えられるんだと、いままで総需要的なものの抑制についてはかなり軽視されておった。かなりインフレ的な金融政策なり財政政策がとられてきたと、それは高度成長をもたらした。だから名目成長を追うと同時に、実質成長が可能になったからいいじゃないかという安易な気持ち、もう一つは、卸売り物価が上がらないからいいじゃないか、そういう気持ちです。それで卸売り物価のほうは資本の安定に役立つ、消費者物価の安定は庶民の安定に役立つんです。その庶民の安定のほうを犠牲にして、資本の卸売り物価安定のみに努力してきた。これがいままでの佐藤内閣の物価政策の本質だと思うんですよ。 そういう立場から、今後の物価の安定について、私は具体的に伺っていかなければならぬのですけれども、いま日銀総裁おられますから、日銀総裁に主として伺いますが、そこでいまの物価の段階ですね。大幅国際収支のもとで金融引き締めをやるという異例なこういう政策をとっていることについて、いまの物価問題が、これは非常な深刻な状態にあると見ておられるんじゃないか、いわゆるインフレ段階にもう入っていると、こう見ているのか、私はあとで質問しますが、そう見ております。もう重大段階にきていると、資本にとっても重大になってきたわけですね。卸売り物価が上がったことは資本のための物価が上がったことである。この点いかがでしょうか。
○参考人(佐々木直君) 私はいまの物価上昇につきましては、十分これは警戒を要すると思っておりますけれども、インフレ、いわゆるインフレ段階に入っているとは思っておりません。それで、いま国際収支の黒字のもとでそういう金融引き締めをやっておりますこと、それは、先ほども申し上げましたように、物価問題をおもに頭に置いてのことでございますけれども、いま世界各国がやはり物価の上昇を問題にしておりまして、国際収支の黒字の国でも、やはり財政金融政策で、物価上昇について総需要の抑制というような手段をとっております。そういう意味で、私は現状はインフレだとは思っておりません。しかし、その物価の上昇をできるだけ総需要の抑制その他を通じて押えていく必要は非常にあると、こういうふうに考えておる次第でございます。
○木村禧八郎君 いままで金融引き締めの効果はどうなっているか。支店長会議でいろいろ報告されているようですが、その金融引き締めの効果は十分成果をおさめているのかどうか。また、今後どの程度までこういう政策を続けていかれるのか、この点伺います。
○参考人(佐々木直君) 昨日から私のほう支店長会議を開いておりまして、昨日一日かかりまして各地方の実情報告を聞きました。それで、きょう午前中その実情報告に基づきましてディスカッスをしておったわけでありますが、いままでのところでは、各地の状況というのは非常に区々でございまして、ある地域につきましては相当影響が出ておる。それで、将来についての企業家の見通しもそうそう楽観ばかりではないという報告もございます。また一部には、ほとんどそういう引き締めの影響をまだ受けないという地域もございます。これはいろいろ各地の産業、あるいはいろいろ金融機関のあり方その他によって差があるのは当然だと思いますが、いまのところは、まだもう少し模様を見ませんと、全体として引き締めの影響が強く出てきておるというふうに申し上げる段階まではきていない。区々の状況のように報告で知ったわけでございます。
○木村禧八郎君 まだ異例の引き締め政策を続けていく必要がある、こういうことなんですね。
○参考人(佐々木直君) いまのような状況でございますので、いまとっております政策の基調は変える必要もなし、変えるべきでないと、こういうふうに考えます。
○木村禧八郎君 きょうの新聞によりますと、三月ごろからまた輸出が非常にふえまして、それで国際収支が黒字が相当ふえてきているのですね。国際収支の黒字の大幅にふえているところで金融を引き締めれば、また黒字がふえるわけですよ。そうしますと、これは円の切り上げの圧力がまた私は強まってくると思うのです。ですからこれは矛盾した政策になってきているんじゃないですか。
○参考人(佐々木直君) 先ほどから申し上げておりますように、いままでのわれわれのほうの金融政策の発動というものは、国際収支の赤字対策ということでございまして、したがって金融引き締めが輸出を伸ばしている、あるいは輸入を押えるという効果を持つというのは、一般論としては確かであります。ただ、いまわれわれの置かれております国際環境を見ますと、先ほども申し上げましたが、海外各国とも、主要工業国は物価の上昇に悩んでおりまして、この物価の上昇を押えるために総需要の抑制ということで、金融政策なり財政政策が発動されております。そういう国際環境の中でございますので、そういう中で日本がいまのような引き締め政策をとりますことは、ほかの国が普通の状態にありますときの引き締め政策とは、影響も違いますし、また外国から受ける影響も違っておる。そういうようなことで、ちょっといままでとは違う姿に、そういう国際収支、特に貿易収支には影響があるんじゃないか、そういうふうに考えております。
○木村禧八郎君 私昨年欧米回ったとき、日本はこんなに黒字がたまっているのになぜ金利を引き上げたかという質問を相当受けましたよ。ですから大蔵大臣、いまのあれでしょう、きょうの新聞見ると、国外貨準備四十億ドル台へ接近、大蔵省対策に苦慮、こういうことになっている。そうすると、金融を引き締めれば、それは黒字はふえますよ、どうしたって輸出にドライブがかかる。この矛盾なんですよ。これをどういうふうにお考え、どういうふうに対処していかれるのかですね。
○国務大臣(福田赳夫君) お話のとおり苦慮しておる状態でございますが、結局、輸入の自由化ということが当面論議されておりますが、この方向を進めること、それからもう一つは関税政策、これを考えなければならぬ、こういうふうに考えますが、また他方において、対外経済協力、そういうこともまた活発にやっていく必要がある。さようなことで当面対処しようという考えております。
○木村禧八郎君 日銀総裁に伺いますが、新聞報道ですから確かかどうかわかりませんが、景気過熱を調整しまた物価の値上がりを押えるためには財政面の協力が必要であるということを言われているわけですよね。これはポリシー・ミックスの立場から当然だと思うのです。ところで、四十五年度予算を審議しているのですが、私はこれはインフレ的な膨張予算、景気刺激的予算と思うのですが、総裁はどういうようにお考えですか。
○参考人(佐々木直君) 今度の四十五年度の予算では、法人税の増徴、それから国債、政保債の発行の削減、そういうように景気に対して配慮された措置がとられておる、こういうふうに思います。先般、大蔵委員会で木村先生の御質問に対してこの点についてもお答えいたしましたが、実際の予算の運用にあたりましては、そのときそのときの経済情勢に合わせまして弾力的な運営をしていただくように大蔵大臣に要請しておりますし、大蔵大臣もそれを確約しておいでになりますので、そういう点で今後の財政・金融政策の調整、協調というものはうまくいくものだと考えております。
○木村禧八郎君 昨年九月から金融引き締めの段階でこの景気過熱を押える段階に入ったわけです。その場合、政府はどうして繰り延べをやらなかったのですか。前には、景気過熱化するような場合には政府は繰り延べをやったものですよね。ところが、繰り延べを全然やらないで金融調整だけでやっている。その点はどうも私、ふに落ちないのですが、諸外国では財政のほうは締めて金融で緩和する、こういうやり方をとっていますよ。その点、逆と思うのですが、どうなんですか。
○国務大臣(福田赳夫君) 繰り延べというと公共事業費ということになるかと思いますが、公共事業費は、いまでも、たとえば道路につきましても交通ふくそうだというようなことでこれをふやさなければならぬという状態に来ておるわけであります。少し長い角度から見ると、公共投資、これをやっておくことがまた物価の抑制の効力を持つというふうにも考えておるわけでありまして、これをそう押えるわけにもいかぬ。そういうようなことで、人事院勧告に基づきまする給与費、この財源は全部官庁諸経費の整理節約でこれを充当するということはいたしましたが、さような公共事業費というようなものにつきましては、これを繰り延べということは考えなかったのです。しかし、金融政策がまあかなり浸透してきた、まあ、しばらくその推移を見ようという気持ちであったわけであります。
○木村禧八郎君 最後に一つだけお伺いしますが、それはなかなかお答えにくいと思うのですが、私は七〇年代は円の切り上げの問題が現実的な政策課題となると思うのですが、この点について日銀総裁は金融当局としてどういうふうにお考えになっておりますか。
○参考人(佐々木直君) いまの円の強さの問題につきましては、いまの円というものが現在どういう状況にあるかということから判断しなければいけないと思います。いまの日本の円は、外国為替管理法の非常に厚いとりでに囲まれておりまして、したがって、たとえば海外投資その他も自由にはできないわけでございます。それから一方、先ほど大蔵大臣のお話にもございましたが、輸入の面においてもずいぶんいろいろ制限が行なわれておる、こういうような情勢でございますので、いまわりあいに円高という実情にありますけれども、それはあくまでも自然な状態、自由にされた状態における円の強さを表現しておるものとは思いません。したがって、私どもは、そういうようないろいろな制約を除々にはずしてまいりまして、ほんとうに円の強さがわかるところまで持っていかなければ、いまのような、たとえば円の切り上げとか等々の問題は、問題とするべきでもなく、時期でもない、そういうふうに考えております。
○木村禧八郎君 日銀総裁に対する質問はこれでけっこうです。 大蔵大臣、いまの点いかがですか。
○国務大臣(福田赳夫君) 私も、円の切り上げについては、そういうことをまだ考える時期ではないというふうに考えまして、検討すらもいたしておりません。海外で円の切り上げの圧力があるのだというような話がよくありますが、私に対して現に正式に円の切り上げの意見を申し入れてきた国は一つもございませんでした。おそらく、日本が広範な輸入制限をやっておる、そういうものをねらいとして、それを撤廃させようというような援護射撃というような意味における円の切り上げ論というようなものもあろうかと思うのでありまするが、まともに円の切り上げを言ってきておるような状態ではございませんです。
○木村禧八郎君 これまで物価問題についていろいろ質問してまいりましたが、現在の日本の物価情勢がインフレではないという政府側の見解ですが、どうしてアメリカその他諸外国、アメリカの問題については成長率がわりあいに低いということや、卸売り物価と消費者物価との相違についてありましたが、しかし、フランス、西ドイツ、イタリア等、そういう国の物価の値上がりと、日本の物価の値上がりとどこが違うのですか。日本は十年間も上がっている。長期に上がっている。最近ではインフレ・マインドが起こってますよ。これは重大な段階だと思うんです。だからもうインフレの中へ入ったという立場で対処するのと、まだそうでないという立場で対処するのとではたいへんな違いが出るんです政策に。この点はどうですか、総理はインフレでないとお考えですか。
○国務大臣(佐藤榮作君) けさほどからたびたび各大臣もお答えしておるとおりでございます。ただいまの段階でもって、もうすでにインフレに入っている、かように断定することは、私は事態を正しくはつかんではいないのだ、かように思います。しかし、ただいまの状態について、インフレの危険は多分にある、かような認識のもとに対策を立てているというのが現在の段階でございます。
○木村禧八郎君 私は、インフレ段階に入ったかどうかで一番重要な判断の要素になるのは、いわゆるインフレ・マインドというものが起こっているかどうか、これは非常に重要だと思うんです。ニクソンもそういうことを述べておりますね。ところが、実際にインフレ・マインドに入っているんですよ。インフレ・マインドが出ています。そう思わないですか。
○国務大臣(福田赳夫君) 今日この段階でインフレ・マインドに国民がなっているというふうには考えません。貯蓄も非常に旺盛でございます。ことに長期貯蓄、保険の成約、そういうものも非常な活発な状況で、私はインフレ・マインドが一般化してきたというふうには考えておりません。
○木村禧八郎君 この点、私は非常に重要だと思うのですが、私は、インフレ・マインドに入っている、マインドが起こっているという一つの証拠として、国民が政府の物価対策を信用していないわけです。総理は、この物価安定に対して国民の協力ということが必要であるということを言われる、たびたび。それはもちろんそうです。協力した結果、物を買わないでいた、家を建てないでいた。そのために、どんどん物価が上がっちゃって、非常におくれて損をした人がたくさんいますよ。あるいは、企業だって、早く設備を拡張したやつが得ですから、ですから、みんな設備競争をやって、四十四年度も二六%も設備投資がふえているでしょう。政府の見通しよりははるかに大きいんです。これは私はインフレ・マインドに入っている証拠だと思う。企業はもう早く設備競争をする。個人は早く家を建てたい、土地を買いたい。そうしなければ、政府の物価対策に協力していたら、あとでみんな損してしまうわけです。そういう形じゃ協力できないでしょう。ですから、私は、政府の物価対策に対しても信頼させるということが一つであると思う。十年間も物価安定させる、させると言いながら安定しないんですから、信用しないということは、インフレ・マインドにこれは私はおとしいれると思うのです。 それから、具体的には三菱銀行の調査ですが、貯蓄の話が出ましたが、個人貯蓄を個人の可処分所得で割りました平均貯蓄率ですが、これがもう下がってきているのですよ。昭和二十八年は七・八%、昭和三十六年には一九・二%まで上がったわけですよ。しかし、その後、四十三年では多少はふえましたけれども、一九・七尾程度で横ばいです。それから、これは経済企画庁の調査でありますが、貯蓄形態が変わってきているのですね。変わってきています、貯蓄形態が。金融資産的な貯蓄の形態から財産的な、いわゆる物的な資産に貯蓄が切りかわりつつあるんです。そういう調査はもうできている。出ているんですよ。これでも私はインフレ・マインドに国民はおちいっていないと言えるかどうか。これは私はもう十分政府はこの点を認識されて対処しなければならない段階に来ていると見なければならないんじゃないでしょうか。
○国務大臣(佐藤榮作君) まあ、インフレ・マインドということばによほど使い分けしなきゃいかんと思います。アメリカのニクソンが使っている場合、私ども、これはインフレ・マインドと言っているが、これはインフレ・マインドじゃなくてこれこそインフレそのものじゃないかと、はっきりかように考えますが、なにかインフレ・マインドというと、まだ実際はインフレじゃないがそこに一つのおそれがあるというような点に考えられやすいのです。で、いま木村さんがお取り上げになった一つ一つの例、これはたいへん極端な場合ではないだろうかと私は考えます。その極端な場合で全体を批判することは、これは間違いであること。これは先ほど大蔵大臣からも、今日どんどんその貯蓄性向やあるいは保険成約の高はどんどん伸びていると、こういうことも申しておりますし、これなどのほうに重点を置けば、これはインフレじゃない、たいへん落ち着いていると、かようなことにもなるんだし、また一方で、とにかく自分たちの家が持ちたいんだ、マイホームだ、とにかくもう借家はごめんだと、こういう意味で家を建てると、そのこと自身が非常に取り急いでおる、それが一つの換物だと、換物思想が現にもうあらわれたのだと、こういうことになると、これまたインフレということにもなりましょう。だが、その総体はそういうような一つ一つの事例ではきまらないので、総体を見たときにどういうように見るかということ、ここに問題があるのじゃないだろうか。私は、まあ経済通の木村さんですから、まさかいまのような一つ一つの例で、そのとおりに世の中が動いていると、かようにはおっしゃらないだろうと思います。ことに、私はまあ、片一方でいまちょうど春闘の時期にもなっております。賃金の上がることについてもいろいろ問題があると思います。まあコスト・プッシュというような話にもなっております。しかし、これも今日の状況で生産性を上回った賃金アップというものではなくて、生産性との間にはある程度のちゃんと開きを保ちつつその問題が進んでおると、かように考えると、とにかくお互いの所得がふえる、生活が向上する、充実する、こういう意味では喜ぶべきことではないかと思っております。私は、経済総体が、生産性は総体としては上がっておると思います。しかし、その中には、全然生産性に関与しない国家公務員などもいるのですから、そういう部分で一これは直接でないというだけで、間接的にはもちろん関係ございますが、そういうものもやはり給与を上げていくということにもなるんですから、ここらにそれぞれの問題があろうかと思いますけれども、適正な行き方というふうなこと、これが望ましいんだろう。そうして、まあ、全体の物価、これをいきなり下げるということ、これができれば一番けっこうでございますが、私はやはりいわゆる、いわれておるような、角をためようとして牛を殺すたぐいになっちゃいかんのじゃないかと。いまこれは、何と申しましても好景気が続いておるというが、そこに私どもの、これは政府のそれが遁辞だと、こう言って非難されるかわかりませんが、私は、好景気であるところに世の中の安定もあり安心したところのものもあるんじゃないかと、かように思います。そういう意味で、この好景気は続けたいし、同時にまた、諸物価は上がらないようにと、こういうような、まあ、二つが必ずしも矛盾したとは申しませんが、とかく背反しがちな条件を満たしていこうと、こういう、まあ、たてまえでございます。いままで生産性の低い農業部門やあるいは中小企業やサービス部門で、そういう点で特に問題が起こっておるのも、ただいまのような点ではないだろうかと、かように思います。 これは、先ほどあげられた例が特殊な例だから、それについて一言申し上、げたのでございます。御了承いただきたい。
○国務大臣(福田赳夫君) ちょっと補足して。 いま木村さんが貯蓄は減ってきておると、こういうようなお話……
○木村禧八郎君 いや、伸び率が。
○国務大臣(福田赳夫君) 伸び率がというようなお話でございますが、さような状態ではございません。 木村さんのような偉い人から、貯蓄が減ったというようなことを国民が聞くと驚きますから、この際、はっきり訂正をいたしておきます。
○木村禧八郎君 さっき具体的に数字を示したんですよ。伸び率が一九%程度で、貯蓄率が横ばいになっているということです。それまで、それ以前は非常にふえているんですよ。昭和二十八年が七・八が、三十六年に一九・二に急にふえたんですよ。そしてその後は横ばいだと言うんです。 これは時間がありませんから、そんなことにこだわっておりません。 最後に私はインフレ対策について一つ要望をします。インフレ対策について、物価対策につきましてですね。 その第一は、何といっても、政府の物価値上がりに対する認識ですよ。これは、いまも総理が言われましたが、景気がいいからいいじゃないかというお話ですけれども、ところがね、実際はですよ、景気がいいにもかかわらず貨幣価値がどんどん低落してくると、そうして所得の再分配に非常に悪い影響があるんですよね、低額所得層については、たとえば恩給生活者についてはね。どんどん上がって、そうして所得のうんとふえる人もある。所得の再分配に非常に悪い影響がある。そこで安心していられないんですよ、金銭的財産を持っている人はね。昭和三十五年から最近まで六〇%貨幣価値が下がっているんですから、安心していられないですよね。そうでしょう。だから、何とかして、いつかは自分の財産はインフレによって減価しないようにしょっちゅう頭を悩ましている、所得の少ない人は少ない人、多い人は多い人でね。これは非常に最近のいらいら現象のやはり一つになっていると思うのですよ。安心できない。貯蓄しても長期の老後の安定ができないでしょう。三十五年に百万円で家が建った。現在では百五十万円でも建たないのですから、よけい貯蓄しなければならない。そういう物価値上げ、インフレによる国民の心理の不安、そういう長期の生活に対する不安があるわけであります。こういう点について政府が十分にこの認識を持つことですよ。景気がいいからいいというような安易な形じゃいけないと思うのです。非常に重大な時期に来ていると、こう考えるべきことが一つ。これをお聞きします。 第二は、総需要対策としましてはさっきお話ししましたように、当面四十五年度はいわゆる能力GNPですね。供給能力が一三・六%の増加なんです。これに対して政府の財貨サービス購入が一四・八なんです。上回っているのです。ですから予算ができてしまった以上は、これはわれわれが反対しても通りますよ。運営するにあたりましては、大体供給能力の一二・六程度になるように、目安にして運営すべきである。そのことを要求します。これは予算の伸び率に直しますと大体一六%ぐらいの伸び率です、私では。ところが政府は一七・九%でしょう。だから一七・九%を大体一六%の伸び率ぐらいに運営において考慮すべきだ。その点が第二の要求です。 第三は管理価格です。これについて公取に伺いたいのですが、いまどういう状況になっているかですね。やはりこんなに生産性が高まっているのに卸売り物価が上がるというのは、やっぱり管理価格に一つ問題があると思うのですね。管理価格について十分、これは通産省にも伺いたいのですが、いまの現状、それから今後の管理のしかた、これは今後重大な私は物価対策としてのテーマと思うのです。この点について十分政府が管理価格対策を講ずべきこと。 第四は生産性対策、これは日銀の前の吉野調査局長の言われたことに非常に私は感銘を受けたのです。西ドイツでは五千九百万人の人間で約千四百億ドルの生産をしているわけですよ。日本は一億をこえる人間で大体西ドイツとあまり変わらない千四百億ドルくらいの生産だ。ですから生産性において非常にまだ差があるわけです。ですから生産性をあげることによって、物価を上げないで高度成長を達成する可能性はあると思うのです。この点は要求しておきます。これについての政府の見解を承りたいと思います。
○国務大臣(福田赳夫君) 第一の金銭的貯蓄の減価が行なわれて老後の安定を阻害する、これはゆゆしいことだというお話でございますが、そのとおりに考えます。それだからこそ物価の安定対策に全力をあげて取り組む。また安定を期し得ないその過程におきましても、あるいは恩給生活者でありますとか、あるいは共済年金の支給を受けておる者でありますとか、そういう方々、あるいは生活保護でありますとか、日雇い労務者でありますとか、そういう者に至るまで事こまかに対処をいたしておるわけであります。ただスライド制という議論がよく行なわれますが、スライド制、あれは私はあまり歓迎をいたしません。これはもう物価と追っかけっこになる。そういうようなことで、物価を抑制するという方向へ全力を傾倒すべきであって、完全スライド制というような対策はあまり好ましくないんじゃないか、そういうふうな感じを持っております。 それから第二の問題は何でしたかね。
○木村禧八郎君 総需要対策ですね、予算の伸び率。
○国務大臣(福田赳夫君) 総需要対策、需要と供給力、この関係をよく見て予算を編成しなさいというお話、これは全く理論的にはそのとおりだと思います。ただ昭和四十五年度予算において、どうも供給不足が起こるんじゃないかというような御懸念のようでございますが、あげられました一三・何%でございましたか、このパーセンテージは、これは実質なんです。これをノミナルに直せばおそらく一八、九%というようなことになろうかと思いますので、当面そういう御懸念はない。しかし、もう常に予算を編成するにあたりましては、総供給の面また総需要の面、それを踏まえて、その一環としての財政であるという立場をとらなきゃならぬ、これはまことにそのとおりであると、さように考えます。
○国務大臣(宮澤喜一君) 御指摘のように西ドイツの生産性がわが国にあるならば、ただいまの労働力人口をもってしてもGNPは二倍になってもいい道理でございますから、結局生産性の低い部門に対する省力化投資あるいは機械装備率を上げるというようなことが当面のわが国の経済政策の大事な部分であると思いますし、またそれによって、かりに労賃の上昇が不可避だと考えましても、省力によってそれが消費者物価あるいは卸売り物価に波及する程度を防げるわけでございますから、物価対策にもつながるというふうに考えております。 管理価格につきましては、気がついたことがあればすぐに処置をしてまいっておるつもりでございますけれども、概してわが国の経済全体は、市場経済原則による競争体制に入っておると考えております。なお、万一のことがありましたら公正取引委員会にも十分御連絡もし、また公取の力によって排除をしてまいらなければならないと思っております。
○国務大臣(佐藤榮作君) 四つばかりあげられましたが、私もその好景気の上にあぐらをかいている、こういう意味ではございません。これは誤解があると困ります。しかし、非常に単純な理論を言えば、物価を安くする方法、これは不景気になれば必ずそう安くなるか、そのことを考えると、やっぱり好景気になることが何よりも望ましいことではないか。そうして物価を安定さすようにこれに努力をすべきだと、そういう意味で政府は積極的に取り組め、かような鞭撻を受けたこと、これはもう当然だと思います。 また予算の運用にあたりましても、これは先ほどお答えいたしましたとおり、大蔵大臣が答えたとおりです。実際の運用にあたっても、景気の動向等を見ながら、適時適切に金融政策と非常なそごを来たさないようなそういう仕組みであるべきだ、かように思います。 また管理価格について、これは必要があればいまのように特別な取り締まりに乗り出す、こういうことだと思います。 それから最後の生産性の問題で、西ドイツを言われました。私はよくGNPの問題も申しますが、同時にパーキャピタの問題が一つの問題じゃないのか。だから人口やはり一千万以上ならばどうなのか、五千万以上ではどういう地位にあるのかということ、こういうことを絶えず考えてみようじゃないか。いまのように全体で二十番目とかいうことはあまり意味がないように思う。もっとそれは細分して、人口の五千万以上で何番目になるのか、あるいは一千万でどの辺か、こういうようなところを十分に把握していくことが必要じゃないのか。これが言われるように生産性を高めるゆえんでもあろう、かように私も考えておりますので、そういう方向で努力したい。ただいまの御注意はそのまま私も承って、これはたいへんけっこうな方向を示していただいたと厚くお礼を申し上げます。
○木村禧八郎君 公取のちょっと現状を……。
○政府委員(谷村裕君) 総理が御答弁になりましたので、あと私が出てまいるのもどうかと存じますが、現状といたしましては、私どもはある数種の業種を選びまして、比較的価格が、いわゆる価格メカニズムによる動き方が少ないのではないかと思われるものについてのその流通の状況あるいは市場の状況、生産の状況等を調べておるというところでございます。なお詳しく申し上げれば何でございますが、それだけ一応申し上げておきます。
○木村禧八郎君 あとで資料をいただきたいと思うんですね。 もう時間が二分しかございませんから、最後に簡潔に二つ、総理に一つとそれから防衛庁長官に一つ質問したい。 一つ、総理に質問したいことは、佐藤・ニクソン会談によって日本の防衛にどういう影響があるのか。それからもう一つは、今度国連の総会ですね、秋にある。そのとき国連の五十三条問題、いわゆる敵国条項ですね、あれがなぜ存続しているのか、いままで。あれがあることによってどういう支障があるのか。あれがあると日本に対して介入できるわけでしょう。依然としてドイツや日本やイタリーは再び軍国主義になって侵略的になるおそれがあるので、敵国条項があるのか。いまだになぜあるのか。それで今度はそれを撤廃する要求をするのか、しないのか。そうしないと、自主防衛、自主防衛と言ったって、国連の制約下にあるわけですよ、敵国なんですからね。その点が一つ。 それから防衛長官には、自主防衛と言っても、MSA協定の防衛義務を負っているわけですよ、ミリタリーオブリゲーションを。どういう条件でこのMSA協定によって軍事援助を受けているのか、どういう条件で受けているか。それから軍事援助の実態です、有償あるいは無償の実態。それからもう一つは、きのう羽生委員に対するあなたの御答弁の中で、日本は外形的には侵略のおそれがないけれども、潜在的に侵略されるおそれがあると言われました。潜在的に侵略する国はどこですか。これに対処するにはどうするのか。それは重大な問題だと思うんですね。この点についてお答えを願いたいと思います。
○国務大臣(佐藤榮作君) ニクソンと私とのいろいろの話し合い、この取りまとめたものが共同コミュニケでございます。これには、わが国の自衛隊組織、また駐留する米軍の問題について、ただ単に日米安保条約を、これを守っていくという、そういうことだけでございます。それ以外に、それじゃ特別な話があったか。これは特別に話はございませんけれども、当然沖縄が帰ってくれば、沖縄の防衛はわが国でやるべきものだ。かように私は心得ておるし、また相手も、返す以上、日本が第一の防衛責任者だ、こういうことを認識しておると思います。それ以外に特に御報告をしなければならないものはないように思っております。私は、ニクソンと相談をして、日本の憲法問題などについて意見を交換したような機会もございませんし、これはもういままで申し上げたとおり、私は忠実に日本の憲法を守っていく。そうして、共同声明で両者の意見の一致した点は明らかになっておる。その範囲を出ないということを重ねて申し上げておきます。 それから、国連に行く行かないは別にいたしまして、私はもう二十五年たった今日、いまなお過去の敵国条項が残っているのは、これはおかしなことじゃないか、まずいんじゃないか。もうすでにそういう点は削除するというか、改正すべき、そういうところに来ているんじゃないか。そうして、やっぱり分裂国家というものができておるその原因は、何と言いましても、二大強国の米ソの対立からかもし出されているものだ、かように考えますので、二十五年たった今日、新しい国際情勢に即して、平和を守る各国が全部加入できるような、そういう仕組みに変わるべきじゃないだろうか、かように私は思います。しかし、なかなか一足飛びにはそこまでいかないかと思いますけれども、ただいまの敵国条項だけは、もう今日よほど情勢が変わっておりますから、その点は削除なり、その他の方法はとられてしかるべきじゃないか、かように考えております。
○木村禧八郎君 要求されるんですか、要請されますか。
○国務大臣(佐藤榮作君) 要求、要請、これは昨年の外務大臣の演説がそういう点を示唆しております。私は、まだ行くか行かないか、そういうことが今日の状態でまだきまっておりません。したがって、私はことばを濁しておりますけれども、情勢がとにかく変わっているもとでは、新しい国連のあり方というものが考えられるべき、そのことは二十五年という、そういう機会に、一番いい時期じゃないだろうか、かように思います。ただいま私自身行って要求するのかしないのか、こう言われると、まだちょっとそこは濁しておりますが、私はいい機会だろうと、かように思っております。
○木村禧八郎君 外務大臣どうですか。なぜ、どういう支障があるのか。
○国務大臣(愛知揆一君) 先ほどお話の敵国条項でございますが、これは常識的に申しまして、日本の立場において現在実害がある規定とは思いません。しかし、国連が成立いたしましたとき、まさにこの敵国条項はきいていたわけでございますし、いまさしあたり実害は考えられないとしましても、その経過その他から申しまして、こういう条項はもう排除されてしかるべきであるということで、ただいま総理も言われましたように、私の演説の中で、これは示唆しているわけでございます。これはまあいろいろ議論をいたしますと、日本以外の国との関係などにおきましてこの敵国条項というものがどういう意義を有し、どういう働きを期待されているかというようなことになりますと、また論議は展開されると思いますけれども、日本に関する限り、いま申しましたようなことでございますから、どうかしてこの新しい時代に、これから将来を展望して、国連の成立のときなどの古くさいこういうものは断ち切って、敵国条項などは削除するほうがしかるべきであるということは、日本としては堂々と主張すべきであるし、今後も努力を続けていきたい、かように考えておるわけでございます。
○国務大臣(中曽根康弘君) きのう羽生議員にお答えしました自主防衛の原則でございますが、これは現在の情勢にかんがみまして、防衛力が独走しないという配慮をもって、特に私はそういう原則を持っておるわけなのでございます。 それで、けさの新聞を見ますと、一部の新聞に誤解されているように思われてはなはだ残念でございますが、たとえば国力国情に応じて自衛力を漸増するという考え方に対して、私は「外交と一体、諸国策と調和を保つ。」、こういう表現が差があるという記事もありました。しかし私の考えでは、国力国情に応じて自衛力を漸増するということばをそのままにしておいてはたしていいか。たとえば、国力がそれじゃ増大したら、そのパリティで防衛費も増大するのか。日本のGNPはどんどんこれから伸びていくわけです。そういう場合に、それじゃ国力の増大に応じて漸増するということになると、いわゆるパリティで伸びるという感じだけを出しておけば、防衛費だけでも相当な額が要ります。だからこの場合には、必要性というのが第一なんであって、必要性に応じて選択が行なわれなければならない。政治が選択をする、選択の意思を持つということがこの際強く出なければいかぬと思うわけです。あるいは国情に応じて漸増するという表現をとった場合に、国情はいろいろ変化しますから、それじゃ自民党は三百議席取って、社会党が負けたからといって、それじゃ急に漸増していいかというと、そういうものでもない。やはり科学的に管理して、これは行わなければならぬ。そういう意味において、国力国情に応じて漸増するという表現を、このGNPが増大して変化している時代にとっていいか。それよりもむしろ「外交と一体、諸国策と調和を保つ」というほうが、内政におけるバランスというものを考えておるのであって、政治における意思と選択がここへ出てきているわけであります。そういう意味において、このほうがはるかに民主的統制のもとにある、国民の世論であるとかあるいは議会であるとか、そういう意味において、この「諸国策と調和を保つ」という考え方を出しておるのでありまして、私は、私の真意はこういうところにあるということを重ねて申し上げたいのでございます。 それから第二に、MSAの問題でございますが、MSA協定によりますと、次のような文章がございます。 第八条に、「日本国政府は、国際の理解及び善意の増進並びに世界平和の維持に協同すること、国際緊張の原因を除去するため相互間で合意することがある措置を執ること並びに自国政府が日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約に基いて負っている軍事的義務を履行することの決意を再確認するとともに、自国の政治及び経済の安定と矛盾しない範囲でその人力、資源、施設及び一般的経済条件の許す限り自国の防衛力及び自由世界の防衛力の発展及び維持に寄与し、自国の防衛能力の増強に必要となることがあるすべての合理的な措置を執り、且つ、アメリカ合衆国政府が提供するすべての援助の効果的な利用を確保するための適当な措置を執るものとする。」こういう文章がございまして、前半でうたっているのは、国際緊張の緩和、平和の維持ということなのであり、それから後段においては、やはり憲法の範囲内において、それから政治経済条件の許す限度において行なう。ただし、やはり自助ということは要望されておるわけであります。この範囲内において自衛力の漸増並びにアメリカとの提携ということも行なわれるべきものであると思います。それで昭和二十五年警察予備隊発足以来の防衛関係の調達を申し上げますと、総額において昨年まで二兆三千五百五十六億円でございます。そのうち、国内調達が六七・八%、一般輸入が四%、有償援助が三・八%、無償援助が二四・四%です。これはいままでの総計でございますが、四十三年度だけを限ってみますと、国内調達が八八・三%に上がっております。一般輸入は四・五%、有償援助は七・一%、無償援助が〇・〇五%に下がりまして、国内調達が九〇%近く伸びておるわけでございます。それでいままでの無償援助の中には、保安隊あるいは自衛隊発足以来のアメリカが供与したタンクであるとか、小銃であるとか、あるいは艦艇であるとか、飛行機とか、そういうものがまだだいぶ残っております。それらの部分品や何かを補給する意味において、向こうから持ってきているものもございます。有償援助については、ナイキ、ホーク、ライセンス生産等が入っておるわけでございます。あとはしかしほとんど国内調達でございまして、私は将来の動向を考えますと、この国内自主開発ということが非常に大事であって、ライセンス生産等においてアメリカと提携するというものを除いてはほとんど自己生産に持っていくべきである、自己開発に振り向けていくべきであると、そのように考えております。
○木村禧八郎君 ちょっと、有償の場合はどこに払うのですか、金を。有償の場合。
○国務大臣(中曽根康弘君) 相手ですか、相手はたとえばアメリカが自国内で一括発注するわけです。その中に日本の分を少し入れておいてもらう。それによってその一部として発注されるものですから、単価が非常に下がるわけです。日本の分だけで別個に発注すると相当単価が高くなる。しかしアメリカの発注のワク内の一部分をこっちがもらってそれで発注すれば、単価が非常に安くなる。そういうものがかなり多いようです。
○木村禧八郎君 その発注する会社に払うのですか、ライセンス……。
○国務大臣(中曽根康弘君) 相手のことはよく存じませんから、局長に答弁させます。
○政府委員(蒲谷友芳君) 米国政府でございます。
○国務大臣(中曽根康弘君) もう一つ、仮想敬国の問題がございましたが、私が危機あるいは日本の危険の可能性という問題について申し上げたのは潜在的だと、顕在的なものはないと、私はそう思っております。したがって、平和は持続するので、そう心配することはないと思っておりますけれども、しかし安心はできないと。それで、局地紛争あるいは代理戦争、そういうようなものは世界の各地にも起こっておるのであって、日本の周辺及び日本についても起こらないとは限らない。あるいはいままでの戦乱の情勢を見ますと、きわめて政治的な要素が強くなってきている、あるいは中近東問題、あるいはいまインドシナ半島に行なわれている問題、かつて朝鮮半島に行なわれている問題、こういうようなものはほとんど民族主義とか政治が介入しているものであり、純軍事戦争というものは非常に少なくなってきております。そういう面から見ましても、日本の内部の安定ということが非常に重要なファクターであって、軍事的配慮ばかりするということは政治全般としてはバランスを欠いているという情勢にあると思います。それでどの国が敬国だと申されるかもしれませんが、日本は仮想敬国を設けておらないということは一貫した態度でございます。そういうような核の抑止力が破れて世界的な混乱が起こるとか、あるいは周辺にそういうようないろんな紛争が起こるとか、あるいは日本の内部においてはそういうような国政の破綻、あるいは内乱、暴動状態が起こるとか、そういうあらゆるファクターがからまってきておるのでありまして、そういう全般に目を注いで防衛問題も考えていく、そういう考えに立っているわけでございます。
○鈴木強君 いまの、たいへん重要な問題があるので、ちょっと簡単にやりますから。 これは総理大臣にひとつはっきりしておいてもらいたいのですけれども、あなたは今度の施政方針でも、日本の自衛隊については国力、国情に応じてふやしていくのだ、こうおっしゃっています。新しい自主防衛というものが出てきてその構想をと尋ねたときに、いま中曽根防衛庁長官の意見が出てきているわけです。私はいまの自衛隊をふやすことについては、三十二年でしたか、国防会議がおきめになったその方針を今日まで踏襲してきていると思う。第三次防の前にも三十二年の決定は変更なく今日きているわけですね。ですからして、もしこういう構想を持たれているとするならば、これはきわめて重大なことだと私は思うのです。ですからして、国防会議の議長でもある総理に対してそういう構想でこれからいかれるのかどうか、この点をはっきりしておいてもらいたいのです。
○国務大臣(中曽根康弘君) ちょっとその前に、きのう私が羽生議員にお答え申し上げましたのは、四次防編成に関する私個人の心がまえとしてこういうようなものを考えておりますと、そう申し上げたのでございまして、現在は三次防進行中でございます。四次防はこの秋ごろまでに防衛庁としての考え方をつくり、やはり来年の夏ぐらいまでに閣議決定をつくりたい。そのときに国防会議を開く。正式にはそういう考えで防衛庁の内部においていまいろいろ検討させておる。心組みとして私が自分で考えているということを申し上げたのでございます。まだ国防会議とかそういう段階に至っておる問題ではございません。
○国務大臣(佐藤榮作君) いま長官からお話をいたしましたからもう私から何もつけ加えなくてもいいかと思いますが、いずれこの三次防が終了した暁に、四次防、それとどういう態度で取り組むか、こういうことはあらためて私どもが会議をしてきめることでございます。ただいまは三次防の進行中でございます。さように御了承願います。
○木村禧八郎君 それじゃあこれで終わります。 国連五十三条の問題、これは敵国条項がなくならなければ日本の戦後は終わったといえませんから、一日も早く削除される、あるいは修正される努力をされることを望みまして、私の質問を終わります。(拍手)
○委員長(堀本宜実君) 以上で木村君の質疑は終了いたしました。 —————————————
○委員長(堀本宜実君) 次に、山本利壽君の質疑を行ないます。山本君。
○山本利壽君 佐藤内閣が成立いたしましてから今日まで、日韓交渉あるいは小笠原諸島の返還、さらには沖縄問題に対する交渉等非常に順調に運んでおりまして、われわれ国民としても喜んでおるわけでございますが、総理はこの次の問題は北方領土だとはっきり言っておられます。またわが自由民主党といたしましても、先般の衆議院の総選挙の際に、次は北方領土返還であると、ポスターに高く掲げて国民に公約しておるところでございますから、何としてもこれからこの問題に努力をしていただきたい。ところが、政府としては長年にわたってこの問題に携わっておられますから、もう微に入り細にわたって十分国民も知っておることと思われるかもわかりませんけれども、日韓交渉や沖縄問題の陰に隠れて、国民としてはまずそれを先にという気持ちもありました関係からか、国民が承知していない、あるいは疑問に思っておる点が多々あるように思うのでございます。こういう領土の問題を片一つけるのには、国民一致結束して政府のあと押しをするのでなければ、なかなか事はむずかしいと考えるのでありますから、この際を出発点として、政府におかれましては国民の思想あるいは理論的な疑問というものをここではっきりと解決して、そうして進んでいただかなければならぬと思うわけであります。 で、まず総理にお尋ねをいたしますが、日本政府としては長年にわたってソ連側と交渉を重ねてきておるわけでありますから、この問題に対する感触と申しますか、返還に対する見通しは総理としてはどういうぐあいに考えておられるか、まずその点からお尋ねいたしたいと思います。
○国務大臣(佐藤榮作君) この問題、なかなかむずかしい問題でございまして、私も東京に駐在するソ連大使とは話し合ったことがございます。しかし、その壁というか、相手方としてもこれを返還するという意思は大使級ではつかめないというのが現状でございます。さらに、外務大臣が昨年モスクワに参りまして、その当時交渉したところもございますし、また、国会関係の方々等もそれぞれ出かけられたそういう機会に、北方領土の早期解決について発言をしておられるし、また、産業界の方々がシベリア開発等で協議をされる、そういう機会にもこの話を出しておられますが、ただいままで遺憾ながら私どもが喜ぶような情報は何ら得ておりません。したがって、このことは非常にむずかしいことだ、かように考えておる次第でございます。しかし私は、本来の固有の領土、いまだ一度も外国の領有したことのない固有の領土、これは当然、前戦争で負けた国ではございますけれど、これは日本に返さるべきものだと、かように私は考えておりますので、今後ともこの考え方を実現すべく、あらゆる機会をとらえて最善の努力を続けていくつもりでございます。
○山本利壽君 それでは、御質問申し上げる順序としてお伺いしたいことは、いま日本政府が返還を要求しておる北方領土というものの範囲について、総理にお尋ねをいたします。
○国務大臣(愛知揆一君) 総理からお答えがあります前に私から申し上げますが、日本政府として要求をいたしておりますのは、歯舞、色丹は御承知のとおりでございまして、国後、択捉をわがほうの固有領土として、つまり歯舞、色丹、国後、択捉はあらゆる意味において日本の固有の領土であると、この主張に立って交渉をいたしておるわけでございます。
○山本利壽君 佐藤内閣が範囲をそこにきめて交渉をしておられますから、世間では佐藤内閣は北千島及び南樺太を放棄したと非難しておる者がございます。特に先般の総選挙の際にもこの議論は相当行なわれた。そうしてこれは一般の民衆の耳には私非常に入りやすいと思うのであります。南樺太も、千島も日本は放棄したことは事実であるけれども、これをソ連が領有するという理由は少しもないのであるから、それでいまは主権者のない領土でありますから、もとの主権者である日本がこの千島全体あるいは南樺太もひっくるめて返してくれと交渉するのが筋である、そういう演説をされるというと、国民はそれはそうだと考えがちでございますが、それを特にこの択捉、国後、歯舞、色丹に限られたことについて説明をいただきたいと思うのであります。
○国務大臣(愛知揆一君) サンフランシスコで平和条約ができましたときに、日本としては南樺太と千島列島を放棄いたしたわけでございます。その放棄いたしました千島というものの中に、ただいま申しました国後、択捉は入っておらないわけでございます。この点はあらゆる機会に、あらゆる角度から御説明をいたしております点でございまして、何ならば詳しく御説明してけっこうでございます。 ところで、サンフランシスコ条約にはソ連は参加いたしておりません。したがって、ただいまもお述べになりましたように、南樺太にしても、あるいは通例言われております北千島等につきましても、ソ連はこれを占有する権原はないではないか、こういうことは一応理屈としてうなづける点もないではございません。しかし日本といたしましてはサンフランシスコ条約を締結して、そして放棄すべきところは放棄いたしましたから、日本としてソ連に対する要求の根拠は一八五五年でございますか、日露通好条約以来いかなる条約上からいっても、沿革上からいっても、ソ連か国後、択捉を占有するという根拠は全くないわけでありますし、また、サンフランシスコ条約で日本が放棄したわけでもございませんから、いかなる点からいいましてもこの歯舞、色丹を除いて、国後、択捉の両島というものが日本として十二分の根拠をもって固有領土として主張し得るものである、この立場に立ってソ連に対してはいわば根拠なき占有であるという立場に立って、ソ連から返還といいますか、原状に、固有の領土として復帰をさせるべきものであるということの主張を続けておりますことは、一九五六年の日ソ国交回復交渉以来の一貫した交渉の経過であり、また根拠であると、これが政府の態度でありますことは御理解をいただきたいと思います。
○山本利壽君 ただいまもちょっとお触れになりましたし、これまで外務委員会等でも拝聴しておるのでありますが、この択捉、国後というものが安政元年の日露通商友好条約でも、あるいは明治八年の樺太千島交換条約等のいきさつから考えても、日本の固有の領土だという説明は相当いままで政府もしておられるのでございます。あるいはまた一九五一年九月七日にサンフランシスコの平和会議の際に、吉田茂首席全権の発言にも、これは固有の領土だということが言ってあるわけでございます。その点は一応了承するのでありますが、日本の固有の領土であるから放棄しなかったということは必ずしも言えないと思うのです。私は与党でありますから納得いたしますけれども、一般の国民に了承させようと努力する場合にはまことに困る。固有の領土だから返還を求めるのだといったって、固有の領土でも放棄することはあり得るわけです。それで、悲しいかな吉田総理は、これは固有の領土であるから、今度の条約には加えて放棄しないということはおっしゃっていないわけです。しかし、先ほど、固有の領土であるし、日本はこれを放棄していないということを外務大臣言われましたから、ここで少し話を進めていきますが、ここに非常に困難な問題がございます。それは、昭和二十六年十月十九日の衆議院における平和条約及び日米安全保障条約特別委員会で、政府委員として出席していた西村条約局長の発言が非常に災いをなしておると思うのであります。その席に実は私もおったからその懸念が特に強いのでありますけれども、そのときの記録も持っておりますが、時間を節約するために要約して申しますと、「條約にある千島列島の範囲については、北千島と南千島の両者を含むと考えております。」云々とはっきりそこで言ったわけでございます。そのときに高倉委員が、明治八年の樺太・クリル群島交換条約のことを持ち出して、クリル群島の中には択捉、国後は含まれていないのではないかということをしきりに、これは強調したわけでございます。いまからいえば、日本の政府としてはほんとうに助け舟であったと思う。にもかかわらず、そのときに西村条約局長は、「平和條約は一九五一年九月に調印いたされたものであります。従ってこの条約にいう千島がいずれの地域をさすかという判定は、現在に立って判定すべきだと考えます。従って先刻申し上げましたように、この條約に千島とあるのは、北千島及び南千島を含む意味であると解釈しております。」と、こうまことに自分の頭のよいことを誇るかのごとくきっぱりとここで言っておるのでございます。このことが、もちろん現在の野党の方にはそういう方はないと思いますけれども、当時はなかなかソ連びいきの人々もあった。しきりにこれは放棄したものであるという議論がその国会において論戦されたわけでございますが、ここで私がお尋ねいたしたいのは、この西村発言というものをいまでも信じておる国民がおりますから、必ずこれはどこかで取り消されておるに違いないと思うし、もし取り消されていないならば、これは非常な私は困難な問題だと思いますから、どういう場所で公式にこの政府委員の発言は取り消されたかについておはかりいたします。
○国務大臣(愛知揆一君) このいわゆる西村答弁というものは、その当時におきましてもしばしば問題になりましたが、政府といたしましては、この答弁は正確でないということを私まず第一に申し上げたいと思います。そして、いついかなる場合においてさような意図が経過的に表明されるかと申しますと、たとえば三十年十二月九日衆議院外務委員会における中川政府委員、それから三十一年二月十一日衆議院外務委員会森下政府委員、このときは特に政府の統一見解として統一見解を朗読いたしまして、政府の態度を明らかにいたしております。それからこのときに、なお当時の池田総理大臣から、いわゆる西村答弁というものは、その表現その他において適当でなかったという趣旨の答弁がございます。そしてその後佐藤内閣になりましてからは、終始一貫機会あるごとに先ほど私の申し上げましたような根拠に立って国後、択捉は固有の領土である、サンフランシスコ会議においても放棄しておらない、これをそのつど明確にいたしておりますし、また同時にソ連側に対しましても、あるいはまた御承知のように本件に対して関心を持つ他の国々、方面等におきましても、この見解の支持は受けていることは御承知のとおりかと思います。
○山本利壽君 それではさらに一般のものが疑問に思う点をお尋ねいたしますが、二十六年の会議で西村君はその発言をした、ところが政府が取り消したのは三十年である。先ほどおっしゃったようなのをそれぞれ私も調べ上げまして、記録を持っておりますが、それはなぜそんなにおくれたか。普通ならばその西村君の発言いたしましたときに吉田総理もおられたのである、あるいはその他政府の高官もいたのである、だからすぐにいやいまの条約局長の発言はあれは間違っておりますと、すぐにあるいはその翌日でも翌々日でもけっこうでありますけれども、直ちにこれが取り消されているならば、一般に今日のような誤解は生まなかったのに、なぜそういうぐあいにおくれたかということについての御説明を承りたいと思います。
○国務大臣(愛知揆一君) その当時の状況は私もつまびらかではございませんけれども、しかし西村答弁が行なわれました当時におきましても、私は政府全体の見解というものはいま申し上げたところと変わらないと思います。 同時になぜおくれたかというお尋ねでございますが、これも私の想像が多少入って恐縮なんでありますけれども、特にこの北方領土問題につきましては、昭和三十一年に日・ソの国交正常化問題が正式に取り上げられて、そのときの日本政府としての態度を特に明確にする必要がありました。そういう環境の中におきましてこの点が一そう明確にされたという、こういう経緯であると思います。 それから当時の、鳩山内閣当時でございますけれども、この日ソ国交正常化の交渉にあたりましては、特にこの国後、択捉問題を日本政府が強く主張し、そして平和条約の締結ということが共同宣言に変わりました経緯も、こういう北方領土の問題がありましたことがあの経過をたどったことになっていることは、いまさら申し上げるまでもないことでありまして、私はこれを要するに長い経過をたどりまして西村答弁というものがある時期において若干の波紋を描いたことはたいへん残念に思いますけれども、しかし終始一貫日本政府としては国後、択捉についての主張を変えていない、この厳然たる態度でありますということは御了承いただきたいと思います。
○山本利壽君 いま外務大臣の御説明を承ったのでありますが、こういうことは一体国民としては決して少しのごまかしもないという点で納得して協力しなければならぬわけでございますから、ことにいま外務大臣は自分は当時その衝に当たっていなかったということもおっしゃいましたから、私はそのときから自由民主党の外交問題にずっとかかわっておりますから、こうではないかと思いますことを申し上げて、御判断をいただきたいと思うのでございます。ああいう西村発言が出ましたために、政府も与党のほうも実は困った。しかしこの問題はただ日本政府だけで取り消したのでは、放棄したのではないと言っても、いろいろ物議をかもすから、アメリカにお聞きになったと思うのであります、政府は。アメリカ政府はこの平和条約の起草者でございますから、そこでその事情をよく聞いてみればわかると思って、日本からはそれについての質問の書面が行っておるはずであります。それで一九五六年の九月七日付をもってアメリカ政府は覚え書きを日本に送っておるはずであります。それによりますと、「アメリカは歴史上の事実を注意深く検討した結果、国後、択捉の両島は北海道の一部たる歯舞、色丹とともに常に日本の固有領土の一部を構成してきたものであって、正当に日本の主権下にあるものと認めなければならないとの結論に到達した。ソ連がこのことに同意するならば、極東の緊張緩和に積極的に寄与する」と答えてきたはずであります。また、さらにアメリカは一九五七年の五月二十三日、ソ連政府に対して、「対日平和条約とヤルタ協定とに千島列島とある文字には、常に日本固有領土の一部たる歯舞、色丹、国後、択捉を含んでいない。また含ませる意図もなかった。ゆえに、これらの島々は正義の上から日本の主権下にあるものと認めなければならない。したがって、ソ連がこれらの諸島を領有し、これに対し主権を行使せんとする行動は不正かつ不法である。アメリカ政府は対日戦争における同盟国間に結ばれたいかなる協定も、ソ連が日本のいかなる領土、特に歯舞、色丹、国後、択捉の領有を正当化することを否定する」と、これはアメリカからソ連に通達しておるはずであります。だから、私どもが今日まで考えたことは、一般の人には誤解を与えたけれども、政府は念のためにこれをアメリカに向かってただされた。ところが、アメリカからこの返事が、覚え書きが来ましたのが先ほど申しましたように一九五六年の九月でありますから、ここに日本の政府は自信を持って、われわれがこの島を放棄したものではないということを、平和条約の起草者であるところのアメリカもはっきり認めたのであるから、そこにおいて日本は絶対これは放棄したものではありません。西村発言というものは誤まりでありましたと訂正されたように解釈するのでありますが、政府はいかがでございますか。
○国務大臣(愛知揆一君) 私、先ほどちょっと抽象的に申しましたが、本件について関心を有する国も云々と申しましたのは、この点にも触れておるわけでございまして、ただいまおあげになりました一九五六年九月七日のアメリカの公文書による意見の発表並びに一九五七年五月二十三日のアメリカからソ連に対する書簡、いずれもただいまお読み上げになりましたとおりでございまして、このサンフランシスコ条約の起草者でありましたアメリカ政府の見解というものは、私も繰り返し読み上げることを省略さしていただきますけれども、これを要約いたしますと、「国後、択捉をソ連が占有しておることは不当であり不正である。そしてこれは世界の平和のためというような趣旨において、これは日本に返還すべきものである」という趣旨がこの二つの公文書においてきわめて明らかになっております。このことはただいまお述べになったとおりで、これが政府としても全く同じ見解に立つものでございます。
○山本利壽君 それでは、さらに国民を納得させるために必要だと思いますことは、この昭和三十六年十月三日の衆議院の予算委員会において池田総理がこういう意味のことを述べておられます。それは、「千島列島は十八の島からなっておるが、この千島列島に北とか中とか南とかいうことはないのである。南千島を放棄したというようなことを言う人があるけれども、そういう北とか南とかの区別は千島列島にはない。だからこれは、西村発言等もこれは誤解である。そうして択捉、国後島は歯舞、色丹とともにこれはわが国の固有の領土で放棄したものではない。」こういうぐあいに言っておられますが、この意味を整理した場合に私はある程度納得がいくように思うがいかがでございますか。
○国務大臣(愛知揆一君) 政府といたしましても同様の見解でございます。先ほど申し上げましたように、当時池田総理の発言がございますが、その根拠は私は一八七五年の樺太・千島交換条約等も頭においての御発言であったと思うのでありまして、そのとき、樺太、千島交換の当時において、日本側に引き渡されるクリル諸島の範囲として云々云々と十八の島があげられておる。したがって、国後、択捉はその中に入らない。こういうことがきわめてこの条約においても明白になっておる。これと先ほど私もあげました一八五五年の日露通好条約というようなことも考慮の中に入れて池田総理の発言となり、したがって、また、いわゆる西村答弁というものには不正確ないしは誤まりと言ってもいいようなくだりがあったということを認め、かつ自主的に取り消された、政府の見解を明らかにされた。かように現政府も理解し、それと同様の根拠に立っておる次第でございます。
○山本利壽君 この問題について択捉、国後、歯舞、色丹と一括して論議されることが多いようでございますけれども、この歯舞、色丹については千島に全然含まれていないということがいろいろな点から、さらに択捉、国後よりも別個にこれは論議されておることがあります。それは講和会議においてもアメリカのダレス全権も別個に述べておりますし、先ほど言った西村条約局長も、アメリカ外務当局も明言したとその委員会で述べておりますから、日本が放棄していないことはあらゆる面からこれは明瞭でありますから、ソ連に対して返還要求をする場合に、この歯舞、色丹島は択捉、国後とはさらに切り離して、当然のこととして、これはまず第一段階として要求し、それは時は同じくしてもいまの択捉、国後というものが放棄したものでないということを交渉されるほうが有利なように思うのでありますが、この点いかがでございますか。
○国務大臣(愛知揆一君) この点はいろいろの考え方があると思いますけれども、政府といたしましては、歯舞、色丹については、昭和三十一年の日ソ交渉に際して、平和条約が締結されたならば引き渡すという趣旨のことの合意が一応できたわけでございますから、もつぱら今後の交渉におきましては、この歯舞、色丹は北海道の付属島嶼であって、すでにソ連側といたしましてもこの点についてはその日本の立場というものを認める立場にあるものと理解してかかっていいのではないかと思います。したがって、もっぱら国後、択捉が固有領土であるということの主張において、また、昭和三十一年のあの当時の経過に顧みてみましても、これもよく話題になります松本・グロムイコ書簡というようなもののくだりもございますから、国後、択捉の返還ということに最大の重点を置いて交渉に当たるべきではないかと、かように存じております。
○山本利壽君 この際申し上げますが、この西村発言というものが過去足かけ二十年にわたっていろいろ取り上げられてきたのでありますが、現在の佐藤内閣においてはそういう官僚の方はないと思いますけれども、非常に不謹慎なことがある。その場限りを何かうまく言いのがれさえすれば良吏であるかのごとく考えて、ごまかして通ろうとするような気風がかつてはあったと思うのです。これが後になって非常に災いを及ぼしております。たとえば、昭和二十六年の十月二十二日の衆議院の平和条約及び日米安全保障条約特別委員会で、私は、そのときに、「日本領域参考図」というものが配られましたので、よく見ると、日本海の上に黒い線が引かれてあって、その線の上に竹島がありましたから、この竹島は島根県の管轄下にあって重要な漁区でもあるから、これが万一この領有が平和条約の発効した際によその国に移るというようなことがあるとまことに困るから、この際は、アメリカあるいはその平和条約に関与した国々へ、この線上にあるけれどもこれは日本の領土であるということをはっきりここで指摘しておかれるほうがよいのではないかという質問をしたわけでございます。すると、そのときの政府委員の一人は、こう言いました。「現在の占領下の行政区画には竹島は除かれておりまするが、今度の平和條約におきましては、竹島は日本に入って来ると申しますか、日本領土であるということをはっきり確認されたものと存じます。」と、こういう答弁をしております。ところが、一体、その後の実情はどうでございますか。竹島は実力によって韓国に占領せられておる。幸い、人の住んでいない島でありますから、これは戦争してまで取り戻せというような声は国民の中にはもちろんございませんけれども、これは私は重大なる問題であると思う。その後の竹島問題については、政府は、いかなる態度をとっておられるか、ここでお尋ねをいたします。
○国務大臣(愛知揆一君) 竹島問題は、日韓正常化のときに遺憾ながら最終的な結論が出ませんでしたことはたいへん残念でございますが、その後、政府といたしましては、韓国政府側に対しまして、竹島の主権はわがほうにあるということ、このことを書類をもって申し入れ、注意を喚起し、そしてこれについての話し合いをしようということを随時提案をいたしております。また、竹島の実情を、周囲から、海上保安庁等にお願いをいたしまして、これはやはりときによってそのまわりを巡航して島の状況等を視察をすることをいたしておるようなわけでございまして、竹島に対するわがほうの主張というものはかような手段によって引き続き当方の主張を明らかにし、かつ、話し合いに入ってこの結末をつけるようにという段取りはつけておるような次第でございます。
○山本利壽君 先ほど申しました地図に歯舞、色丹というような島がやはり領域外になっておりますが、その地図にはわが領土として書きあらわしておくほうが今後あらゆる場合に有利ではないかという意味の発言を私はいたしたのであります。そのときの私の気持ちは、いまの竹島の問題にしても、この歯舞、色丹の問題にしても、これは仰せのとおりでありますから、政府は、注意いたしましてそれに対する手配をすぐいたしますとか、今後の地図にはよくその点を書きあらわしておきますという答えがほしかったのであります。ところが、そのときに、西村条約局長は、すぐに立ち上がって、「御注意申し上げます。それはマッカーサー・ラインでありまして、領土の境界ではございません。御質問は全部お取消しを願いたいと思うのであります。そういう疑念を平和委員会で起したということそれ自身、私はおもしろくないと思いますので、お願いいたす次第でございます。」というきびしい発言であります。その国会議員の質問、質問者、これを軽く追いのけたら政府に対する御奉公であると考えておったらしい。こういう役人というものはどんどんその後出世して、フランスの大使までいっております。けれども、国民としては、これはまことに困った問題だと思うのでございます。これは今後の注意のために申し上げるわけでございますから、いまさらその責任を追及しようとは考えません。 続いて、外務大臣にお尋ねいたしたいのは、北方領土返還に対する交渉で、ソ連の回答が常にすでに解決済みということであって、その解決済みの理由ということは一向政府からもあるいは報道機関からも国民の前に出ていないのでございます。解決済みだと言ってはねのけるからどうにもしようがないのだというふうに国民にはとれますから、まことに弱腰のように思うわけでございます。しかし、これは政府と政府との交渉でございますから、解決済みならば、なぜ解決済みだと理由がなければならぬ。そのことについてお尋ねをいたします。
○国務大臣(愛知揆一君) この問題につきましては、まず、私自身の印象を申し上げたいと思いますが、昨年の秋、ソ連に参りまして、コスイギン総理大臣やグロムイコ外相と会談をいたしまして、徹底してこの問題を取り上げて主張をあらゆる角度からいたしたわけでございますが、私の印象から申しますと、解決済みであるということはともかくといたしまして、ソ連側としては、第二次大戦後一般的にいって国境問題はおさまりがついたのである、どこか一つのところでまたこれが取り上げられると、ほうぼうの問題になる可能性があるというような、ある意味では非常に率直かと思いますけれども、そういうふうな考え方を持っているやに受け取られるような発言もございまして、私これは非常に印象に深いわけでございます。それからいま一つは、きみはそう言ってがんばるけれども、これは日本の国民あげての意見ではないのではないでしょうかということを疑問にいたしております。一部の人たちの何か思い違いの主張ではないかというような考えを持っているやに私は察知されるような印象を受けたわけでございます。そういうわけでございまして、これに切り込んで話し合いの線に乗せてくるということはなかなか困難だと思いましたけれども、 〔委員長退席、理事吉武恵市君着席〕 しかし、御案内のように、日ソ関係は、私は現在の状況においては正常な状態になっておると思います。また、むしろ友好関係が増進しつつあるとも私は言えると思いますので、この日ソ友好関係というものがほんとうに本ものになって日本国民も心からソ連と友好関係になることにするためには、平和条約の締結ということが望ましいことではないか、その考え方のもとにこの国後、択捉の問題をひとつ心を開いて解決しようではないかというところへ話を積み上げていくことがわがほうとしての適切な態度あるいは措置ではなかろうかと考えております。 なお、こういうことを申し上げることは、この際そういう意味からいって私はいかがかとは思いますけれども、ソ連側が書類その他において明確にしております例としては、昭和三十六年十二月八日、池田当時の総理大臣あてフルシチョフ書簡というものがございますが、そこであげております先方の主張は、カイロ宣言、ヤルタ宣言、ポツダム宣言、そしてサンフランシスコ平和条約第二条というようなものを論拠にいたしておる、これが書きもので先方の態度を明らかにしている一つの文書でございますことを、これも御承知のとおりかと思いますが、これは昭和三十六年で、だいぶ前のことでございます。
○山本利壽君 いまも大臣がおっしゃいましたが、日本の国内ではまだ異論があるのではないかと先方が言うぐらいでございますから、いまその国論を統一してこの外交交渉に当たる必要がある、それをこういう場所ではっきりさしてもらいたいという意味で今日の質問をしておるわけでございますが、いまお述べになりました池田総理あての返書等に書いてありまするヤルタ協定とかポツダム宣言とかいろいろなことに対しての反駁は、ここで私が申し上げるまでもなくもう政府としては十分その反駁の理由は御存じだと思いますから、その点は時間の都合で割愛をいたしますが、あの鳩山内閣のときの日ソ交渉で、領土問題の解決を待っておったのではいつまでも日ソ間の戦争状態は終了しないし、また、日本があの際国連に加盟しようとしておることの妨害をされるという懸念もあったので、領土問題は継続することにして日ソ共同宣言が行なわれたものと思うのであります。そして、そのために領土問題に対するところの交渉は打ち切ったのではないということのために、わがほうの松本全権とソ連の第一外務次官であったグロムイコとの間に交換書簡ができたのでございまして、この領土問題は今後も継続して協議するということがその書簡にははっきり書かれておる。先ほどちょっと外務大臣はそれに触れられましたけれども、 〔理事吉武恵市君退席、委員長着席〕 この書簡は生きておって、そしてソ連側はまじめにこの領土問題についての折衝に応じておるのかどうか。これは解決済みだからといって突っぱねるならば、領土問題についての交渉は彼のほうとしては打ち切ったものであって、この松本・グロムイコ書簡というものを破棄しておると考えるのでございます。この点についての外務大臣の御所見を承りたいと思います。
○国務大臣(愛知揆一君) 先ほど申し上げましたように、政府といたしましては、この松本・グロムイコ書簡の少なくとも趣旨は生きているものと、かように解釈をいたしております。ただ、お話しのように、先方の態度というものは、その後に至りましていつも、この問題については、解決済みであるとか、あるいは他の理由をあげまして、この協議に現在までのところ入ろうとするけぶりを見せない、あるいは峻拒していると、これが実情でございます。
○山本利壽君 話を進めてまいりますが、一九六七年の七月にモスクワで行なわれた第一回日ソ定期協議会において、コスイギン首相は、三木外相に対して、中間的なものをつくる可能性を検討してみてはどうかという発言をいたしました。これは直ちにわが国に報道されまして、国民はある程度の明るい思いをしたのである。何だかこの領土の返還問題については手がかりができたのではないかというふうに感じたのでございますが、その後とんと様子がわからなくなってしまった。この中間的なものをつくる云々ということについて、政府はいかなる提案をされたか、提案にも至らなかったのか、その後の状況についてお聞かせを願いたいと思います。
○国務大臣(愛知揆一君) 政府といたしましては、それをもとにして、それでは直ちに領土問題を含んでいろいろの懸案についての協議に入りましょうということで、モスコーにおきまして駐ソ大使に訓令をいたしまして直ちに協議に入ることを命じたわけでございますが、その会談というものは実りがなかったわけでございます。ということは、率直に申しまして、中間的な文書云々ということがきわめて雲をつかむようなものでございまして、ソ連側がどういう意図でそういうことを言うたのか、その後の折衝あるいは接触においては捕捉ができなかった、率直に申しましてこれが真相でございます。あるいは領土問題以外のことなども考えておったのかもしれませんし、あるいは先方の態度が豹変したのかもしれませんし、その辺のところは十分に捕捉ができかねておるわけでございますが、それはそれとして、領土問題はわがほうの強い主張であるということで、引き続きと申しますか、機会あるごとに折衝にのぼせておりますことは、御承知のとおりでございます。
○山本利壽君 昭和三十四年九月二日に、大日本水産会の幹部会が開かれております。そのときに、北方近海の安全操業を実現させるため、国後、択捉両島の潜在主権を認め、歯舞、色丹の返還で領土問題には終止符を打ち、対ソ平和条約を締結すべきだ、そうして十月初旬訪ソを予定しておる河野一郎氏にソ連の意向を打診させることにしたという話しが伝わったのでございますが、この点について外務大臣はどうお考えになっておりますか。
○国務大臣(愛知揆一君) 私は、遺憾ながら、そのときの状況は承知いたしておりません。
○山本利壽君 特に私がこのことを持ち出しましたのは、中間的なものをつくるというその話の際に、あの択捉、国後に対して潜在主権を認めてはどうかというようなことがちらほら新聞紙上等にあった、その後消えたようでありますけれども。だから、その潜在主権云々ということは、私は、ここから出発しておると思うのでございます。だから、あれも一つの手であるというふうに考えがちなことだと思うのでございますが、国民としては、いまさら潜在主権等を認めさせるということでなしに、はっきりと返還を強く求められるべきだと思う。ことに、こういう大日本水産会の話がありましてから、河野一郎氏に対してもある程度の疑惑が飛んだわけであります。あの漁業交渉に行って、河野さんは、択捉、国後までも放棄して、そしてあの際の漁業交渉を有利にして来たのではないかという疑惑が世間に飛んだことは事実でございます。だから、これはうそだと思いますけれども、この潜在主権云々ということに対して、今後もあるいはこういう線が出てくるかもわかりませんが、外務大臣はこれに対してどう対処されようとされますか、お伺いいたしたいと思います。
○国務大臣(愛知揆一君) 領土問題と、それから魚業の安全操業の問題というものが二つここにお話が出たわけでございますけれども、私は、領土問題については、もう不退転の決意で固有の領土の返還を求むべきものである、これはゆるがすべからざる日本側の主張であると考えております。それはそれとして交渉の開かれること、話し合いが実ることにできるだけの努力をしながら、一方において安全操業の問題を進めていかなければならない。そこで、これも昨年九月に私参りましたときに、安全操業につきましては国後、択捉、歯舞、色丹等の距岸三海里以遠、十二海里以内において日本側漁夫の操業を安全に認めてほしいと、この原則のもとにさっそく話し合いに入ろうという提案をいたしました。そして、その原側について向こうが前向きであるならば、具体的な細部にわたっての交渉については、当方としてもいろいろ話に乗ることもあり得ると、ただ、入漁料というような問題はこちらは考えておらぬ、たとえば安全操業を認めるならば、日本側に若干の自主規制というようなことも考えられるであろう、あるいは日本側の安全操業とはいいながら、万一遭難したり、事故が起こったようなときの先方に対する謝礼的な意味で何がしかの経済協力をするというようなことは考える余地があるというようなことを骨子にした安全操業の提案はいたしたわけでありまして、先方はとくとその点について検討いたしますと、これは比較的前向きの応対を見せたわけでございますが、これについても、いまのところまだ進展を見せていない、督促をいたしておると、こういう状況でございます。
○山本利壽君 先ほど大日本水産会のことに触れましたし、いま外務大臣が安全操業のことに触れられましたので、ここで農林大臣にお尋ねをいたします。 日ソ漁業関係については、昭和二十七年にサケ・マス、同二十八年からカニと、北太平洋の資源がわが漁民のために開放されたようでありますけれども、一体、その後交渉するたびにソ連の態度というものは、この漁業問題については相当きびしいようでありますが、その点はいかがなものでありますか。ことに現在の北洋漁業について及びこの日ソ交渉について御説明を賜わりたいと思います。
○国務大臣(倉石忠雄君) 御指摘の昭和三十二年、第一回委員会をいたしましてから、毎年資源状態についての科学的検討を行なって漁獲量を取りきめてまいりましたが、三十二年にはサケ・マスの規制区域が、現行で申せばA地区のみでございましたが、その漁獲割り当て量はA地区だけで十二万トンでありました。その後三十七年に、もっと南のほうにB地区が設定されまして、A、B区域合計で十一万五千トンとなりました。サケ・マスは、御存じのように、一年おきに豊漁年、不漁年とございますが、昭和四十三年の不漁年の漁獲割り当て量は九万三千トンでありました。四十四年は豊漁年でありまして、十万五千トソでありました。カニにつきましては、三十三年以来、日ソ漁業委員会で西カムチャッカのタラバガニ漁業につきまして漁獲量等を取りきめ、同年の日本の漁獲量は三十二万箱でございましたが、その後漁獲量は資源量に応じ漸次減ってまいりましたが、昭和四十四年にはソ連側の要望もありまして、今度は、カニだけは日ソ漁業条約とは切り離して別個に日ソカニ協定を締結いたしました。これはソ連が、御承知のように、大陸だなを主張いたしておるので、大陸だなにありますカニはソ連固有のものであるという、こういう主張で別個に扱うことになったわけであります。したがって、当方からは同じ日ソ漁業委員会が出ておりますけれども、当初はカニをやり、今もカニは解決しておりませんから、サケ・マスも継続してやっておりますが、相手方は二つに分れております。この西カムチャッカのタラバガニ漁業の日本の漁獲量を二十一万六千箱といたしますとともに、これ以外の各種のカニにつきましても、漁獲量などを取りきめることになったわけで、今日までの経過はそういうことであります。
○山本利壽君 一点お伺いいたしますが、その交渉にあたって、数量のことは私しろうとでございますから、とやかく言う資格はございませんが、一体、ソ連はこの日ソ漁業交渉にあたって非常に親善的であるか、友好的であるか、それとも、ただ単にできるだけ自分の国の漁獲を多くするためにこう圧力的な態度をとるのか、その点だけをちょっとお伺いしておきます。
○国務大臣(倉石忠雄君) もちろん政府の方針どおり、当方はいずれの国とも親善関係を保つという前提に立ってやっておるわけであります。したがって、この漁業及びカニの協定につきましては、いまの申し上げた立場を厳守しながらも、やはり技術的には当方の主張をどこまでも主張いたしておる、そういうことのために、現在、なおカニ協定のほうもまとまっておりませんが、本年は、非常にきびしい態度で相手側がこちらに対処いたして難航いたしておるというのが現在の実情でございます。
○山本利壽君 農林大臣けっこうでございます。 それでは、続いて通産大臣にお尋ねをいたしますが、最近ソ連の経済状態は非常に悪いという報道が各方面からあります。ソ連の経済状態について御説明をいただきたいと思います。
○国務大臣(愛知揆一君) 私から常識的にお管えいたしたいと思いますが、ソ連の経済の現況は、たとえば成長率から申しますと、ある程度減退傾向にあるようでございます。その原因は、生産性の向上ということがある限度で天井打ちの傾向になっているのではなかろうか、こういうようなことで、この再建築にいろいろとソ連の当局は苦心されているようでございます。また、そういう状況でございますから、日本に対しましても、日本の経済の最近の発展に対して非常な興味を持ち、また、特に生産性向上等についての日本の経験あるいは考え方というようなものも参考にしたいというような意図もあるように見受けられますし、また、いろいろの資源の開発等について協力を求めたいという気持ちも相当にあるように思われます。
○山本利壽君 それでは、通産大臣にお尋ねをいたしますが、日ソ両国間の貿易の現状と、そうしてシベリア開発に対する先方の要求、これに対するわがほうの応待といいますか、協力体制といいますか、そこらのことについて承りたいと思います。
○国務大臣(宮澤喜一君) 日ソ貿易は、昨年四十四年、七億ドルを往復で少しこえたところでございまして、過去数年大体順調に伸びております。ただ、わが国が、御承知のように、かなりの入超でございます。昨年は少し入超の度合いが改善されましたけれども、いまだにかなりの入超でございます。 それから、いわゆるシベリヤ開発でございますが、過般もわがほうから経済のミッションが参りましたところでございますが、幾つか問題が、プロジェクトがございまして、一つはパルプ材、チップ材の開発、輸入の問題でございます。もう一つは、当初はサハリンと考えられておりましたが、最近では、またイルクーツクだとも言われております天然ガスの輸入の問題であります。第三にウランゲル港というんでございますか、港の構築の問題でございます。それらはいずれもわがほうからの資材等々の輸出、それに伴うクレジットの話がついておりまして——ついておりますというのは、その話に付帯しておりまして、そこで木材関係が比較的早く進行しそうな模様でございます。天然ガスのほうはサハリン、オハを考えておりましたために、今度交渉が行なわれまして、それが埋蔵量等々をめぐってむしろイルクーツクのほうが大きいというような、先方の改めた話がありましたりしまして、ちょっと立ちどまったわけでございます。 それからウランゲル港の構築につきましては、わが国が設計をして、その後資材等も持ち込むかどうかというところでございますが、これにつきましては、どのくらいのクレジットをわが国が与えるべきかという問題がございます。 概して、私どもといたしましては、ソ連側に、ことに天然資源などになりますと、はたして適当なものが相当量賦存しておるかどうかということは、一応私ども日本側でも調べなければわからないものでございますから、現地の調査もいたしたい、その上でなければという態度をとっておりますが、先方も今回は幾らかそれに対しては協調的であったと聞いております。いずれにいたしましても、確かなことでございましたら、わが国の資金力にもいろいろ限度もございましょうけれども、前向きに考えていっていい問題が多いのではないだろうか、これが私は基本的には政府の態度と考えております。
○山本利壽君 それでは、総理にお尋ねをいたします。 領土問題の解決ということは、この両国間に親善ムードがなければ私はこれは不可能だと思うわけです。ことにシベリア開発ということは、わが国の燃料であるとか、住宅資材あるいは。パルプ材等を輸入するについても、非常に近いところでありますし、先ほど申しますように、領土問題へのきっかけをつけるという観点からも、ここでは大いに私は日本はこのシベリア開発というものに積極的に協力して、親善関係に入るべきではないかと、かように思いますが、総理のお考えはいかがでございますか。
○国務大臣(佐藤榮作君) いずれにいたしましても、ただいま日本は武力を用いてどうこうするという、こういう関係ではございませんし、どこまでも話し合い、また十分了解を取りつける、こういうことで領土の問題を解決すべきだ、かように私は思っております。したがいまして、領土の問題は領土の問題として解決しなければならない、かように思いますが、シベリア開発の問題がただいま起きております。ちょうどそういう際に経済開発を日本の手で進めるというこのことは、効果があるなしにかかわらず、たいへん両国間の友好親善を増すゆえんだと、かように私は思って、そういう意味でこの問題と取り組む、前向きでいま折衝さしておると、こういうのが日本の態度でございます。
○山本利壽君 それでは、外務大臣にお尋ねいたしますが、最近と申しますか、もうかれこれ十年くらいも前からか中ソ国境の紛争が絶えないようでございます。この中ソ国境紛争の現況についてお話を承りたいと思います。
○国務大臣(愛知揆一君) 中ソ両国間、一番最近のところで、この一年間くらいのところを概観いたしますると、昨年の三月から八月にかけて国境紛争が相当頻発したわけでございますが、その後九月に周恩来、コスイギン両首相間の会談が実現して、昨年末から北京で両国の外務次官会談が行なわれておりますことは御承知のとおりでございます。これは双方からの、国境紛争を話し合いによって平和裏に解決しようという努力のあらわれであると思いますし、また、実際的にも昨年九月以降、中ソ国境の状態は平静化している模様に見受けられるわけでございます。しかし、北京の次官会談が始まりましてから——会談については公式の発表がございませんので的確な判断はできにくいわけでございますけれども、やはりおりおりあらわれてまいります公開の資料、発表等によりますと、両国の立場というものは相当鋭く対立しているように見受けられます。それから、すでにこの会談が始まりましてから五カ月もかかっているわけでございますから、そういう点から見ても難航しておるのではなかろうかと推定されるわけでございます。しかし、先ほど申しましたように、国境紛争を平和的に解決したいという気持ちと認識があるわけでございますから、これから両国関係が改善されるであろうという可能性もありますし、また、それにもかかわらず対立が激化するという可能性もある、両面の可能性というものが私は予想されるのではなかろうか、こういうふうに存じておる次第でございます。
○山本利壽君 一応静かになったようだというお話がありましたが、新聞あるいは週刊誌、ことに英国あたり、西ヨーロッパあたりでは、この中ソ関係が非常にきびしい、開戦必至ではないかといったような報道も行なわれておるようでございます。たとえたらば、ソ連は四十万の軍隊をシベリヤへ回した、飛行機二千機、あるいは六十万トンの海軍をウラジオストックに入れたといったようなことが事こまかに報ぜられるわけでございますが、これは、わが国の防衛庁の長官にお尋ねいたしましても、自分の所管事項ではないから答えにくいというお考えもあるかと思いますが、もし防衛庁のほうで入手されております資料で、この両国の国境間の緊張を示すようなものがありましたらお話をいただきたいと思います。
○国務大臣(中曽根康弘君) 中ソ両国の資料はなかなか手に入りませんのでよくわかりません。しかし西欧の書物等から想像してみますと、ソ連側が約三十個師団ぐらい、中共側が五十個師団ぐらいの兵力を国境線に配置しているというような情報がまいっております。しかし、真相のほどはよくわかりません。しかし、全般的な動きを見ておりますと、話し合いによって解決しようという気分が両国にきわめて織烈でありまして、ことばの上では多少激しいやりとりも新聞記事等にはあるようでございますけれども、実際の真意というものは、話し合いの上で解決したいという方向に動いておるんではないかと想像されます。
○山本利壽君 外務大臣にお尋ねいたしますが、中共の領土もロシアの帝政時代において相当強引に奪われておるように歴史の本はいろいろ書いておるのでございますが、この旧中国領土に対するソ連と中共との態度は、一体どういうことになっておるかということ。もう一点は、日本に北方領土を返還すれば他の国々からも返還要求が出て困るから、なかなかむずかしいのではないかという説もございます。でありますから、この際、日中以外でソ連と領土問題のいざこざを持っておる国国がございましたら、お話をいただきたいと思います。
○国務大臣(愛知揆一君) 北京政府は、かねがね十九世紀当時において、当時のロシア国との間に結ばれたいろいろの条約——その中には国境確定の条約も相当あるわけでございますが、これが不平等条約であるという主張をかねがね時あるごとに主張しておったり、あるいはおることも事実のようでございます。そして、そういったような不平等条約できめられた国境ですらも、なおかつ現在またソ連側から侵犯されているのはけしからぬ、珍宝島事件というようなものもその一つだということが中共側では言われておるわけでありますが、これに対してソ連側としては、そういうことはないんだという立場をとっておると、しかし今日の状況において、国境の改定あるいは不平等条約改定というようなことが、今日のイッシューというか、議題になっているというわけではないように私は見受けておるわけでございまして、先ほど申しましたような、最近起こりました国境事件にからんで、何とかこの紛争を平和的に解決しようということで、両者の話し合いが行なわれている、こういう状況かと思います。 それから、ソ連が他の、わが国あるいは中国以外のどういうところで領土問題を持っているかというお尋ねでございますけれども、これは現在公式に領土問題をソ連側に提起している国はないように見受けられます。ただ、しかしながらソ連が第二次大戦中並びに戦争の直後に領土を獲得した国々——まあおおよそ、こういうような国々がソ連から領土を獲得せられた国ではなかろうかと思います。それはフィンランド、チェコスロバキア、ポーランド、ルーマニア、これは国境確定条約等が結ばれて、ソ連との間で現行の国境を確定する旨の合意がされておるわけでございますから、第二次戦争中及び戦後に領土を獲得されたけれども、その現状に対しては条約上は合意がされていると、こういうかっこうになっておるように見受けられます。
○山本利壽君 それでは、この日中関係につきましては、なかなか複雑でございますから、時間の都合上、詳しい御質問は申し上げませんけれども、一体、中共は日本に対して何か要求をしておるのか。つまり、親善関係に入ろうとか、大使を交換しようとか、何かの提案を今日までに中共のほうからしておるのかどうか。それがもし全然ないとすれば、いたずらにいま国内においては、中共のごきげんをそこなわないようにと思って、右往左往し過ぎておるのではないかという気持ちが国民の中には相当強いわけでございます。中国と貿易をしてもうけようという人が一生懸命になることはまあ想像ができますけれども、国として先方から何らの申し出もないのに、あれではごきげんをそこなうといって、日本側が騒いでおるのではないかといったような気持ちをする部面もありますから、この点について中共からの呼びかけがあって、それに応じての対策を各方面で練っておるのかどうか。私としても、中共とけんかをせよとか、不仲になろうとか、そういう意味ではございませんけれども、少し納得のいきかねるところがありますので、外務大臣にお尋ねいたします。
○国務大臣(愛知揆一君) 中国本土に対し、あるいは北京政府に対しましては、政府といたしましても、中国本土にあれだけ大きな国があり、人口を擁しておる、そうして中華人民共和国政府があると、この事実をよく承知しているわけでございますから、何とかもう少しこの間の関係を前向きに改善をいたしたいという気持ちを持っておることは、しばしば政府側から御説明しておるとおりでございます。 ところで、たとえばよく申し上げますように、中国に抑留されている邦人の問題などもある状態でございますから、第三国に所在する中共側の大使館と日本の大使館と接触をしたいということで、これは日本政府といたしましては相当の努力をしておるわけでございますけれども、いまだ反応がない。御報告を申し上ぐべき事実はその線からまだ出てきておりません。こういう状態でございますから、政府として先方から、こういうことをやれとか、こういうことをやめろとかいうような要請や希望に接したことはございません。やはり先方の政府あるいはその他の立場の人たちがこういうことを言っておる、あるいは人民日報にこういう記事が出ている。あるいはそのほかの情報によりまして、こういうふうなことを言っておるということは知っておりますけれども、いま申しましたように、公式には接触する方法もない、政府機関同士では対話も持っておりませんものですから、いずれそのうちに現在訪中中の松村さん、藤山さんというような方たが帰られてからも、いろいろお話を伺うことはできると思いますけれども、政府といたしまして、ただいまのところ、先方がどういうことを考えているかということについてわかりませんし、またこちらからとかく言うべきではなかろうと考えております。
○山本利壽君 一体、この北方領土返還ということについては、国内の世論も相当喚起されなければならぬと思うのでございます。国民がわき立つような空気になってこないと、なかなかそれはむずかしい。沖縄の場合においては現地に九十何万という住民がおった。けれども、北方領土においてはみな追い帰されておるのでありますから、これの国民の世論を喚起するということは非常にむずかしいと思うが、この所管は総務長官だと考えますから、総務長官としては、この国内世論を北方領土返還のために喚起していくのにはどうしたらよいか。あれはだれそれの役所にまかしてありますというのでは、私は、長官としては答えにならないと思います。こまかくいろいろ御指示をされて、この国内の世論というものを喚起していただきたいと思うのでございますが、これに対するお考えをいただきたいと思います。
○国務大臣(山中貞則君) 答弁する前から、それでは答弁にならぬとおっしゃるんでは答弁もしにくうございますが、昨年の十月一日に北方領土問題対策協会というものができまして、御指摘のように国民運動というものを底辺にいたしませんと、ただいま総理、外務大臣その他の責任者の各位からるる長時間にわたる答弁がありましたけれども、これは一方交通でございますので、どうしてもやはり国民世論というものの強力なささえと国際世論というものがそれに順応して、日本の主張に対して目をそむけられないというところまで、私たちは育てていかなければならない責任があると考えます。したがって、北方領土問題の対策協会に対しまして、あるいはまた千島列島の復帰同盟の方々、あるいは千島・歯舞群島等の居住者同盟の方々、それらの社団法人の方々等にも御協力をいただきまして、いろいろの国民に対する啓蒙、宣伝もしくはそういう広報に関する宣伝等を、今後は北方領土に重点的に指向いたしまして、全国民の世論の喚起をいたしたいと考えます。沖縄も返ってくることがきまりましたものの、どのような形になるかにたいへん心配をしておられますけれども、その沖縄の中にわれわれは、いずれにしろ返ることがきまった、この次は北方領土にわれわれは日の丸を立てようじゃないか、北方領土をわれわれも国民運動の先頭に立ってあげようではないかという声すらあがっておるようでございまして、私はたいへん頼もしく、かつうれしいことに存じております。一方、仄聞いたすところによりますと、松本俊一君等も加わりまして、先ほど申しました北海道のそれぞれの団体の代表者等がサンフランシスコ平和条約の調印国各国に対しまして、渡米を——形はアメリカに行くのでありますが、国連に参られましてこの北方領土の帰属については、最終的に調印諸国においてはっきりさせる義務があるのではないか。ましてや、固有の領土については日本の主張について、関係各国がいつまでもほうっておいてはいかぬではないかという国民の運動を展開されるやに聞きまして、たいへん力強く、かつ政府といたしましてもこれらの人々の応援をいただきながら、私には外交権はございませんけれども、総理、外務大臣の外交を展開されるに当たりまして、国民世論その他の強力なる行動もしくは応援ができるように、全力を傾けていくつもりでございます。
○山本利壽君 たいへん心強い御発言でございますが、大いに世論喚起につとめていただきたいと思います。ことにこの問題は、国内の世論だけでなしに、これは国際的世論の喚起ということが非常に必要でございまして、その方向に向かってもいろいろ働きかけがあるようでありますが、非常にこれほどはっきりした有利な条件がそろっておりながら、今日までのところ各国への呼びかけが少なかったのではないかというふうに考えますが、外務大臣は今後これについて、世界の世論を喚起するために、いかような措置をとられようと思いますか。
○国務大臣(愛知揆一君) 国際的な世論の喚起も大いに必要なことだと考えるわけでございまして、これからもいろいろ努力いたしたいと思います。ただ、ソ連という国と日本との間の問題でございますために、国際的世論の喚起の上にも、ただこれは国内の世論を喚起すると同じような方法だけではいけない、いろいろとまた配慮を要する要素もございますので、その辺のところは国際政局の流動する中において、どういう方法が一番適切であるか、十分な配慮をしながらこの上とも努力を続けたいと考えております。
○山本利壽君 それでは、この問題の最後に総理にお尋ねをいたしますが、いまいろいろ各方面からのお話を伺いますと、ソ連は日本とも手をつなぎたいと思っておるようである。そうして中共とは非常に困難な関係にある。そうしてアメリカ及び西欧諸国に向かってもソ連は手を差しのべておるようでございますが、幸いにアメリカという国は、この北方領土の問題に関しましては初めからまことに好意的であって、いろいろ公文書等も出しておるほどのことでございますから、ここで私はただ、長年日本とソ連とは交渉を続けてきたけれども、まだ前進があまりできていないというような現状から考えて、この際アメリカにも相談を持ちかけて、そうしてこの問題についてソ連に話をしてもらい、アメリカ、ソ連、日本というものが固く手をつなぐ体制に入ることが、世界の平和に貢献することではないかと考えますが、これについての総理の御見解を承りたいと思います。
○国務大臣(佐藤榮作君) この問題は、いろいろアプローチのしかたがあるだろうと思います。私どもはいままで、両国間だけでそういう話がつかないものだろうか、あまり世界各国に呼びかけるということをしないで、両国だけで話をつけたい。そういう形でいままで努力してまいりました。しかし、今日までの結果は、十分の成果をあげておると、こういう状態ではございません。しかし、まあ先ほど来から申し上げますように、わがほうの正当な理由、根拠、それはどこまでも主張をするつもりでございます。しかし、その行き方については、おのずから成果があがるような方法をとらなければならない。ただいま御指摘になりました点も一つの方法かと思いますけれども、これらの点は十分よく考えて、しかる上で進めないことには、ただいま唯一の方法——唯一最良の方法、こういうことにはたしてなっておるかどうか。さらにもっと検討を要するのではないか、さように私は考えております。
○山本利壽君 そこで私は、先ほど外務省の役人というものの態度についてちょっと触れたわけでございますが、何しろ日本国を代表して各国に行っておる外交官というものに対しては、相当な優遇方法がなければならぬと思うのでございます。あまり次から次と独立国ができましたために、最近では皆大使でございますから、どうかと思われる方も大使になられるかもわかりませんけれども、一日も早くりっぱな大使をそろえて外交問題に進んでもらいたいと思う。そこで私、外務省から資料をいただきましていろいろ調べましたところ、まことにこの外交官というものの在勤年数というものが、私は短いように思うのでございます。これは若い人たち——書記官であるとか参事官であるとかいうクラスの人たちはできるだけ動かして、世界を多く見せて、そうして勉強させるということも必要でございますが、大使ともなり、あるいは総領事ともなった場合には、この役目が非常に重い。そこの現地の人たちとの折衝ということも必要でございますから、これは大使級の人についてはもう少し在勤年数というものを長くされてはどうかということを、私は考えるわけでございます。ただ、気候の悪いところとか、人情の険しいところとかに駐在する大使というものは、早くかわりたいかもしらぬけれども、現在のように平均二年数カ月でかわるということになると、着任したときから、もう次の任地についての心配を始めるわけでございまして、これでは私は、外交折衝に当って支障があると思うのですが、少なくとも大使級の在勤年数というものは、これは専門として、その地に骨を埋めるほどの覚悟を持って外交官をつとめるべきだと、そうしむけるべきだと思いますが、外務大臣はいかに考えられましょうか。
○国務大臣(愛知揆一君) ただいまも御指摘のように、最近非常に多くの国ができましたし、また日本の国際的な地位も上がりました関係上、各国それぞれいわゆる実館の大使館を非常に要望しておられます。どういう国も全部専任の大使を置いて、そして公館を持ってやってほしいということがもう次々と要請されまして、実は、ほとほと私としても困っているような状況でございます。まだ現状においては、限られた人員でもございまするし、人事の配置等についても非常に苦労いたしておりますが、ひとつ御高見を十分体しまして善処いたしたいと思います。 なお、ただいまも待遇等についても言及していただきまして、まことに心強い次第でございますが、わずかなことではございますが、この会期中にも、その方面におきましても法律案等を御審議願っておりますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。
○山本利壽君 大蔵大臣にお尋ねをいたしたいと思いますが、外務省の在外公館というもの、それもやはり国威を示す意味で、相当りっぱなものを建ててもらいたいと、私どもも希望するわけでございますが、現在、もう日本の国有としてお買い上げになっておるのが三十八ございます。そのうちで土地だけのものが六ございますから三十二にすぎません。で、借用しておるのが百三十でございます。これは早く買うほど得なわけでございます。ところが、外務省予算というものを、ほかの省と同じように、毎年その何割増し、何%増ということでやられたのでは、こういう方面への金が回らないから、だんだん、これは年を追うて買い整えようと言われても、そのたびにこれは値が上がってくるわけでございますから、何とか日本の外交を重からしめる意味においても、外交官を一つは喜ばせるという意味においても、これは早く国有にしていただきたいと考えるのでございますが、大蔵大臣いかがでございましょう。
○国務大臣(福田赳夫君) お話はまことにごもっともかと存じます。そのように心得ておりますが、かなり進捗いたしまして、公邸でいいますと、主要の在外公館二十八をとってみますと、土地をそのうちに二十二も買い入れております。それから建物の国有のものが二十一と、かなり進んできておる状態でございますが、ごもっともなお話でございますので、なお今後とも努力をするように心がけましょう。
○山本利壽君 海外公館をあちこち歩いてみまして、その装飾品といいましょうか、そういうものも非常に貧弱でございます。文部大臣にお尋ねをいたしますけれども、文部省では年々歳々、いろいろな絵画であるとか彫刻であるとか、お買い上げになっておると思いますが、これを海外公館に配付して貸し与えられますならば、それは、私は日本の美術を海外に宣伝する絶好の場所だと思うのでございますが、この点について、どういう支障があるのか。今日までは、少しいいものがあるなと思うと、これは私の私有物でございますといったような答えを聞くのでございますが、この点についてのお考えを承りたいと思います。
○国務大臣(坂田道太君) 突然の御質問でございましたので、用意をいたしておりませんが、われわれのところでも多少買い込んでおるようでございます。十分、その点につきましては、いいアイデアであると思いまするので、検討させていただきたいと思います。
○山本利壽君 これはちょっと変わったことを言うようでありますが、日本ではいま七十歳以上になると勲章をもらっておるわけですが、その勲章をもらったからといって、それをつけて歩くわけでも何でもございません。けれども、外国へ行っている外交官というものは、いろいろな公の席に出るときに、勲章をつけて出る他の国の外交官が非常に多い。日本の外交官というものは、勲章は当然ないわけでございますので、何となくさみしいような気がしないかと思うのでございます。そうすると、これは勲章を出すわけにいかないから、外交官章というようなものの制定が私はしかるべきだと思う。日本のほんとうの美術品として、世界中の人がこれはみごとだというふうな、そういう記章を、何階級かに分けてもよろしいが、外交官に関する限り、それを外交官章として私はつけてもらうということは、外国でのそういう公の席に出られる場合に、少しでも肩身が広いのではないか。別にそういうものを差し上げたからといって、東京へ戻ってそれをつって歩くわけでもありませんから、やはりこれはちょうどわれわれがネクタイをつけたりあれこれするのと同じように、一つの装飾でありますから、こういうことも考えられるが、いかがでございましょうか。その点についてのお考えを承りたい。
○国務大臣(山中貞則君) 賞勲局を担当いたしておりますので、私からお答えいたします。私は政治家といたしましては、位階勲等、勲章等に全く魅力を持たない政治家の一人でございますが、しかし、所管しておりまする以上、勲章なり位階勲等につきましては、定められた規則に従ってきちんと処理をいたしてまいっております。ただいまの外交官の国際外交儀礼等における体面上の勲章の問題につきましては、御趣旨はわかるような気もいたします。しかしながら、今日の基準におきましては、生存者叙勲の年齢の特例を外交官のみに引き下げるわけにいかず、あるいはまた外交官に勲章は貸す制度というものはございませんので、外交官である間だけ勲章を貸して、それを佩用せしめるということもちょっと考えられません。しかし、まあ馬子にも衣装ということもあるいはあるかもしれませんが、外国は大体そういうもので、勲章というものを、そういう外交のいろいろな場合に着用して威厳をつくろうとか、あるいはそういうかっこいいという流行語ではありませんが、そういう感じのする国もあるようでございまして、その意味では日本の外交官においては、若干、そういう立場からする感傷的なさびしさがあるかもしれませんが、ここらのところは中身のりっぱなところでカバーしてもらって、堂々と外交を展開してもらっておりますと、そのうちに生存者叙勲の年齢に達して、その功績によって勲章等も授かる日はくるわけでありますから、目下のところは、外務大臣の要請もございませんし、そのような基準を特別に外交官、ことに外国におる外交官に対して設けるということは考えておりません。たいへん御趣旨に沿えない答弁でありますが、御許容願いたいと思います。
○山本利壽君 先ほど大蔵大臣は、この海外公館等については特に考えて、国有に買い上げるように努力したいという意味の御発言がございましたが、もう一つこれは法務省についても言えると思います。時間の関係がございますから、法務大臣に御質問はいたしませんが、資料をいただいておりますから……。ずいぶんこの法務省というところは、その法務省にしてもあるいは裁判所にいたしましても、最も国民の信頼するところであって、明治時代あるいは大正の初めごろには、そういう役所の建物というものは、一般よりは私はすぐれておったと思うのです。それで、こういうところに対しては、今後社会秩序であるとか、あるいは治安維持の関係もございますから、これは十分施設を整えるべきだと考えるのでありますが、ずいぶん地方の登記所といいますか、法務局の出張所あたりはぼろが多いのでございます。ところがその登記所あたりで手に入れます登録免許税というようなものも約八百六十五億円からございます。その他の収入が二百八十七億円ございますから、法務省の者が働いて収入とするその金額は約一千百五十二億円からになっておるのでありますが、まことに狭いぼろなところで仕事をしておるということは、能率の点からいっても、役所としてのその威厳といいますか、そういう点からいっても、これは捨ておくべきではない。実際に働いてこれだけの収入のあるところでございますから、大蔵大臣においては、この収入は完備するまでは、法務省の所管にするとか、あるいはその点については特に今後ワクをはずして考えようとか、そういうおことばがいただけたら、法務省関係の者も満足ではないかと思うのですが、いかがでございましょうか。
○国務大臣(福田赳夫君) 裁判所や法務省の施設がおくれておると、中央官庁というか高級官庁ですね。これのほうはかなり進んで、数年のうちには全部近代建物に整備されると思いますが、区検察庁でありますとか登記所でありますとか家庭裁判所、そういうほうはかなりおくれておる。明治時代のものまでまだ残っておるという状況で、逐次近代化したいと、こういうふうに考えますが、登録税ですね、その収入を全額充てるというのは、なかなかむずかしいと思いますが、この収入もお話しのようにかなりあるわけでございますので、そういうものともにらみ合わせながら努力をいたしていきたいと、かように考えます。
○山本利壽君 私に与えられました時間がほとんどなくなりましたので簡単にお伺いしますが、文部大臣、いま日本の教育制度というものについての改革というものは非常に重大だと考えますが、中教審等へ諮問中ではございましょうけれども、文部大臣として、どういう点は特に改革していかなければならぬかと、そういう点についての御報告を承りたいと思います。
○国務大臣(坂田道太君) いま御指摘のございましたように、ただいま中央教育審議会におきまして、幼稚園から大学までにわたる制度の根本につきまして検討をしていただいておるわけでございますが、特に私といたしましては、学齢に達しまするまでの就学前の教育というもの、これについて義務教育にするのか、あるいはまた五歳から学齢年齢として出発したほうがいいのかというような問題、あるいは幼稚園から特に高等学校の段階までの教育におきまして、知的な教育というものはかなり進んでおるようでございますけれども、どうも人間性の教育と申しますか、全人的教育と申しますか、徳性であるとか、徳育であるとか、体育であるとか、情操教育であるとか、そういうようなことが欠けておるのではなかろうか。それは制度自体に問題があるのか、あるいは入学試験制度にあるのか、それとも先生それ自体にあるのか。そういうようなことについても検討をわずらわしておるわけであります。ことに高等学校の段階におきましては、やはり本人のいろいろの才能、それから適性等々を考え合わせた場合におきまして、いまの制度だけでこれを受けとめることができるだろうか、つまり後期中等教育の多様性の問題が一つございます。それから、昨年紛争を続けました大学それ自体について、今日の変化しておりまする社会に対応する新しい大学はどうなければならないかという課題があるかと思うのでございまして、これにつきましても、特にこの管理運営の問題、あるいは国民の意思と申しますか、税金を納めておりまする国民の意思をどういうふうに反映をさして、なおかつ学閥の自由と大学の自治の基本線を守って大多数の学生が静かに研究、教育ができるか、それからまじめな教官の方々が研究に没頭できるか、そういうようなことについて、もう少し大学それ自体がやはり具体的に学生の意思をくみ取る方法なり、あるいは、一般教育とそれから専門教育との関係におきましても、四年間を通じてカリキュラムを組むというような事柄も、考えの中に入れるべき重要な問題ではなかろうか、というふうに考えておる次第でございます。
○山本利壽君 それでは、時間が参りましたので、教育問題についてはまた別のおりにお伺いいたします。 これで私の質問を終わります。
○委員長(堀本宜実君) 以上で山本君の質疑は終了いたしました。 —————————————
○委員長(堀本宜実君) 次に、足鹿覺君の質疑を行ないます。足鹿君。
○足鹿覺君 私は、内政問題の中で未曽有の危機に立つ日本農業、並びに産業の底辺にあって苦悩する中小企業の問題にしぼって質問をいたしますが、都合により質問が今明日二日間にまたがるようなことになりましたので、本日は便宜上中小企業問題を中心にお伺いをいたし、明日農業問題を中心にいたしまして伺いたいと存じます。 そこでまず、資本及び貿易の自由化と中小企業政策について伺います。 まず第一に、自由化の促進と第三次資本自由化について総理並びに通産大臣に伺いますが、最近ケンドール米国貿易緊急委員会委員長らの米国財界人が続々来日し、日本側財界と資本貿易の自由化促進を申し合わせました。これら米側財界人とお会いになりました総理並びに通産大臣は、自由化をさらに前向きに促進すると約束されたと聞いておりますが、これからの自由化方針をどうお考えになっておりますか。特に前向きに促進するとの意味についてお伺いをいたしたいのであります。 第三次資本自由化を行なう方針ともまた聞いておりますが、この業種、時期等内容をどう考えておられますか。この点についても明らかにしていただきたいのであります。
○国務大臣(宮澤喜一君) 私どもは、物の自由化並びに資本の自由化は、わが国自身のためになるべく早く行なうことがいいという基本的な考え方を持っておりまして、外国から言われたからどうというようなものの考え方をいたしておりません。そこで、物の自由化につきましては、御承知のように、昭和四十六年の末までに大体六十品目の自由化を少なくとも完了したいというふうに考えておるわけでございまして、ただいま百九品目あるわけでございますが、これ百二十から実は始めましたので、百二十を半分は四十六年の末までに済ましてしまいたいということで、ただいまそれが進行をいたしております。なお、そういたしますと、残りの六十が残るわけでございますが、この残りの六十につきましても、いわゆるハードコアといわれる、最後に自由化にならない何がしかのものを除きましては、どのようなスケジュールで進めていくかについて、やがて政府部内でも相談をいたさなければならないと考えております。 資本の自由化につきましては、いわゆる第三次の自由化を今年の秋に行なうということが、すでに長い前からきまっておるわけでございます。このスケジュールはそのとおり守りたいと考えておりまして、できればなるべくその内容を充実した形で、今年秋の第三次自由化をやりまして、そうして次の第四次の自由化になるべく重荷をかけないようにということで、いませっかく第三次の自由化の内容を各省考えつつあるわけでございますけれども、まだ多少時日もございますので、どういうものが第三次になり、どういうものが第四次に残るかということは、ただいま申し上げるまでの段階に至っておりません。
○足鹿覺君 聞くところによりますと、第四次を第三次に繰り上げていくのであると、こういうふうに聞いておりますが、ただいまの通産大臣の御所見では、四次の分をなるべく肩荷を軽くしたいという御表現でありますが、その間のお考えを、もう少し詳しくお尋ねをいたします。
○国務大臣(宮澤喜一君) 第四次までで自由化を完了してしまいたいと考えております業種が、たしか二百余りございます。二百三十とか四十とかいうものであろうと思いますが、そこでこの第三次でできるならば、そのうちの過半となればよろしいのでございますが、できるだけ第三次に実現をいたしまして、そして残り第四次、第四次の予定はただいまのところでは昭和四十七年の三月になるわけでございますけれども、なるべく第三次によけい実現いたしましたら第四次が楽になるわけでございますが、ただいまそんな見当で考えておるわけでございます。
○足鹿覺君 総理にお伺いいたしますが、ケンドールさんたちとお話し合いになりましたときに、前向きに促進するという意味のお話し合いがなったと聞いておりますが、そのことについて明らかにしていただきたい。
○国務大臣(佐藤榮作君) 御承知のように、ただいま日本の経済力、これはたいへん伸長してまいりました。また国力もそれに沿ってだんだん強くなり、りっぱなものができつつあります。したがって、この非常な制限品目を貿易の面、さらにまた資本の自由化等についても制限を幾つも設けておくような状態では、だんだんなくなってまいりました。ただいまお話のありますケンドールさん、これは産業の国際化の主唱者でありまして、そういう意味で、日本の産業界でもケンドールさんや何かと御一緒に産業の国際化とそういう方向で活動しておられる方が数人ございます。それらの方々等も考えてです、いまの国力相応に、国力に見合った状況で自由化を進めていこう。こういうようなお話はしておるわけであります。すでに、私どもは一応貿易の自由化についての閣議決定をしておりますので、この閣議決定の線に沿って、先ほど宮澤通産大臣から御説明いたしました百二十の半分の六十品目、そういうものを来年の末までにやることになっているものを、できるだけ早目にそれを実施するようにしたいと、こういうような希望を述べております。
○羽生三七君 ちょっと関連して一言。 ただいまお話しの自由化問題と繊維の規制問題と何か関連がありますか。全然これは別個で無関係なのか、あるいはケンドールさんの言っておるようなことで自由化を促進して、これが繊維の規制問題と何らかの関連性を持つのかどうか、関連があるのかないのか、この点をお聞かせいただきます。
○国務大臣(佐藤榮作君) 私はケンドールさんが来たときに、あるいは特別なニクソン大統領の伝言でもあるのか、こういうふうに思いまして、警戒しながら実はお話を聞いたのでございます。ところがただいま申すように自由貿易論者でございまして、積極的にただいまのような日本の自由化の全般についての話、これが主たるケンドールさんの話でございます。そこで、私のほうからそれとは逆な方向で、ただいまの繊維問題が起きておるのだが、こういう問題についてどういうように考えるか、こういう話をこちらのほうから出した。ところが先方は、私はネゴシエーターではない、そういう問題について積極的に意見を述べることはできませんという、むしろこれでは私に対しては否定的な態度でございました。最近は新聞等で積極的にケンドールさんの試案なるものが新聞等で伝えられておりますが、私が接触したところでは、ただいま申し上げるとおりでございます。
○足鹿覺君 自由化と中小企業の育成についてでありますが、要するに資本、貿易の自由化を急ピッチで実施しようというわけのようでありますが、この時点で貿易、資本自由化の打撃を受ける各業種のうち、特に影響は強く受けるであろう中小企業の保護育成をどう考えておられるのでありますか、通産相より御所見を承りたい。
○国務大臣(宮澤喜一君) 中小企業の近代化促進あるいは構造改善という問題は、私ども大体三つの観点からとらえております。一つは、ただいまの自由化の観点でございます。それからもう一つは、やがてくるであろう特恵問題との関係でございます。それからもう一つは、労働不足、それからそこからきます賃金の高騰、物価問題という、そういう観点からでございまして、いずれの観点から見ましても、中小企業の近代化あるいは構造改善というようなものが必要でございますから、御承知のように中小企業振興事業団あるいは近代化促進法等々によりまして、もうすでに前からそれらの施策に入っておるわけでございます。
○足鹿覺君 わが国産業の事業所数にして九五%を占め、産業の根幹をになう中小企業の育成こそ、自由化政策上の最重点的に取り組まなければならないものだと考えます。昭和三十八年、中小企業基本法もすでに実施されまして、現在七年に及んでおります。しかるに中小企業関係の四十五年度予算は、対四十四年度比で見まして、七十二億円の増、五百三億円にとどまり、増幅も低く、佐藤総理御自慢の経済大国をささえる中小企業政策としては、おざなりと言わざるを得ないように思いますが、この点について総理の御所見を承っておきたいと思います。
○国務大臣(福田赳夫君) 中小企業問題は、いま、税と金融のお話がありましたから私が申し上げますが、これは国の予算にはそうなじまない——補助とかそういうものにはなじまないものでありまして、結局税、金融で措置するほかはない、こういうふうに考えておるのであります。しかし構造改善のための国費、これはまあかなり増額しつつあるわけでありますが、税におきましては、御承知のように今回、法人税の増税をいたしまするけれども、中小企業につきましては据え置きというような配慮をいたしますとか、その他特別措置においてもろもろの優遇措置をとっておるわけであります。 それから金融につきましては、これはかなり中小企業対策というものを重視いたしておるわけであります。昨年の上半期のごときは、これはいわゆる過熱になるかどうかが心配された時期でございまするけれども、銀行、これは大部分が中小企業じゃないほう、大企業のほうになりますが、これの貸し出しなんかは、前の、一昨年の同期に比べまして七〇%ふえたわけです。ところが、中小企業を担当する相互銀行ということになりますと、実に一七〇%その貸し出しがふえる、こういう状態であります。そういう状態ではありますが、まあ金融調整措置が九月にとられた、これは中小企業に特にかぶるところがあっては相ならぬ、そういうふうに考えまして気をつけておるのでありますが、この引き締め体制下におきましても、なお中小企業に対する貸し出しは大企業に対する貸し出しよりも非常にゆるやかな調整を受けている、こういう状態でありまして、政府としては、税と金融と、この両面におきまして中小企業にきめのこまかい配慮をしておる、かように御承知くださってこれはもう差しつかえない、かように考えております。
○足鹿覺君 このまま自由化を強引に進めてまいりますと、力のある大企業はますます強化され、中小企業との経済力格差は開くばかりだと思います。この際、体系的抜本的に、中小企業をわが国経済の基盤企業として位置づける強力な育成策が必要な段階と考えます。昨年十二月十五日、中小企業政策審議会は相当きめこまかく政策のあり方を具申したようでありますが、その具体策につきまして、御所信のほどを総理から、これは特に明らかにしていただきたい。こういう膨大なものが出ておるのです。総理ですよ、これは。
○国務大臣(宮澤喜一君) 中小企業政策審議会の答申について、ただいまお触れになりました。これはかなり考え方において画期的なものであります。私どもはそこに述べられておりますような現実の姿というものをよく把握いたしまして、系列化するものは、適当なものは系列化をする。そうでない特殊の技術、サービスの技能を持っておりますものは、それとして確立していく。また、どの観点から考えましても、先ほども申しました世の中の変動に現在の業種では処していけないというものに対しては、積極的に転換のためのいろいろな助成を行なう、こういうことをその政策審議会の答申にございますような方向で進めてまいりたいと考えておるのであります。
○足鹿覺君 総理からその評価なり受けとめ方を聞きたいのですけれども、時間がありませんから先に進みます。 中小企業の最も大きな問題の一つは労働力の確保、定着が悪いということである。で、中小企業庁には、たった二名の労働力担当官がおるだけで、この問題は労働省まかせになっていると聞いておりますが、一方、労働省では、特にわが国の経済の根幹である中小企業をはっきり対象にした労働力確保、労働力定着性の増大対策等が明らかでないようでありますが、労働大臣の構想なり所信を承りたいと思います。
○国務大臣(野原正勝君) お答えいたします。 中小企業の近代化、あるいは合理化、協業化といったような通産省の行なっておりますいろいろな政策を通じて魅力ある存在にすることが必要であろう。そういう面で、実は労働省では、労働条件の問題や、あるいはそこに従事する人たちのいろいろな中小企業就労に対する魅力ある職場ということでいままでやってまいりましたことは、雇用促進の住宅の問題、あるいは雇用促進の誘致の問題、また、中小企業レクリエーション・センター、あるいは共同福祉施設、あるいは勤労青少年ホーム、勤労青少年センターといったようないろいろな施設を共同でつくりまして、大いに使わせるといったような政策、あるいは、最近は中小企業退職金共済制度、これは今回改正案が出ておりますけれども、こういったことを中心にしましていろいろな問題をやっておるわけでございます。そうしてなお、中には最低賃金制度との関連もございます。労働災害の問題であるとか、中小企業のいろいろな雇用条件の近代化というようなものも労働省が担当して進めておるわけでございます。なおまた、中小企業集団に対する指導、助成という問題、あるいは職業訓練の問題、あるいは事業所内における訓練の問題等も積極的に取り組んでいこう。そういったことで、まあ中小企業に対しては特段のこれから配慮を払いまして、できるだけ中小企業を健全に育てていく、近代化を達成できるような配慮を側面からやっていく。これはもちろん中小企業庁、通産省の仕事に対する側面から労働省としての積極的姿勢で臨みたい、こういうように考えておるわけでございます。
○足鹿覺君 次に、金融の引き締めの問題と中小企業金融対策につきまして、先刻蔵相からその一端を御披露になりましたが、特に目下金融引き締めが強くなっているおりでもありますし、中小企業金融対策につきましては特別の配慮を行なうということでありますけれども、具体的に長期資金の借り入れについても、大企業に比べて極度にむずかしい。したがって、短期借り入れ金でその不足を補おうとしてきておりますが、金融引き締めの影響を最も強く受けておると思います。しかも、政府の示す統計でも、大企業と中小企業との取引条件が、中小企業に不利になっており、中小企業はこの面から金融引き締めの影響を受けておることは御承知のとおりであります。引き締めが長引けばということを前提にして考えますと、ようやく三月危機は一応切り抜けたようでありますが、三月末には税金の納付等もあり、四、五月ごろが一つのまた山になるのではないか、そのころには中小企業の黒字倒産も心配されているのでありますが、引き締めの長期化に伴う中小企業向け金融の緊急措置、あるいは、その他何らかの対応策をお考えになっておりますか、二の点についてお伺いをいたします。
○国務大臣(福田赳夫君) 金融引き締めをいたしますと、まあ普通でありますと、どうしても中小企業にしわ寄せがいく、こういう状態が出てくるのであります。そこで私どもは注意深く今度の金融調整措置の成り行きを見ておるわけでございますが、まだ今日、この時点では、中小企業に深刻な事態が起こっているというふうには見ておりませんです。たとえば企業の倒産ですね、これは中小企業になりますが、倒産件数を見ましてもずっと横ばい、むしろ減っておるというような状態であります。前年度同期、同月、前年に比べますと、去年の二月は七百二十一件の倒産があったんですが、ことしは五百九十二件、かなり減っております。一月は六百十一件あったんですが、それが五百八十五件、去年の暮れは六百七十二件あったんですが、これが前の年、おととしの暮れは六百八十三件、こういうように倒産件数というものがむしろ減ってきておるというような状態であります。 それから手形が決済できないで取引停止処分を受けるというのを見ておるんでありますが、昭和四十二年から申し上げますれば、四十二年の上期には月平均千七十件あった。それから下期には月平均千二百十一件、四十三年になりますと上期に月平均千百七十八件、それが下期に千二十九件。それから四十四年になりますと、上期に月平均八百七十六件、それが下期に八百九十八件。それで一月の状況はどうかと、この一月はそれが七百四十七件に減り、二月も七百六十四件である。かなりこれが改善されておる。 それから取引条件でありますが、月中の支払い比率を見ますと、四十四年の三月ごろは八二・四%、六月には八一%、九月には七八・八%、十二月に八〇・二%というんで横ばいの推移。 それから現金で決済した比率を見ますと、これも去年の三月、二二・五%が六月に二二・一%、九月に二一・〇%、十二月に二一・五%だと。 それから手形、いろいろ台風手形とかなんとかいわれますが、手形の期間を見ましても、去年の三月が百十九・四日、六月が百十九・六日、九月が百十八・二日、十二月が百十七・九日と、こういうふうになっておりまして、金融調整の悪影響というものがまだ中小企業に出てきておらぬ。むしろ、いまの金融調整の効果というか、影響は大企業に出てきておるんです。それから先ほど申し上げましたように中小企業に対する貸し出し、これはかなりまだゆとりを持った状態になっておるのであります。しかし、大企業に相当の緊迫感が金融上出てきておりますので、やがては中小企業にも影響するところがなかろうかというので注意深く見守っておりますが、まあこれがこの二、三月の間にどういうふうに中小企業のほうに影響するか、それを注意深く見守っております。そしてまあ、私どもは地方財務局に通達を出しております。そして中小企業の状態をよく見ておれと、また異変があるというような状態があれば、その経営相談に応ぜよというようなことで、十全の配意をいたしておりますので御安心を願いたいと思います。
○足鹿覺君 だいぶん御楽観になっておるようでありますが、私の見るところとはちょっと違っておるのでありますが、そこでひとつ伺っておきたいんでありますが、歩積み両建てと中小企業金融についてであります。 この、「今後の中小企業政策のあり方について」の「意見具申」によりますと「歩積両建などの拘束性預金の自粛については、政府の強力な指導によって漸次改善されてきてはいるが、なお、大企業と比べるとかなりその割合は高く、中小企業の実質金利を高める結果となっている。中小企業の金融上の不利をできるだけ是正するため、民間金融機関がさらに歩積両建預金の自粛に努力することが強く望まれる。」と指摘しておりますが、金融引き締め下のただいまの一応の楽観論は別といたしまして、金融対策の一環として、また恒常的な政策としてですね、これに対する従来の大蔵省のとられた努力に対しまして私も存じておりますが、さらに一段と強化されるおつもりはございませんか、この際明らかにしていただきたい。
○国務大臣(福田赳夫君) こういう際には、やつ。はり歩積み両建ての傾向が出るおそれがあるのであります。そういう心配がありますので、ただいま申し上げました財務局長に対する通達におきましては、歩積み両建てが頭をもたげるというようなことがないように、特に配意せられたいというふうにしておるわけであります。 金融調整政策をとりますと金利が上がる、これは普通の常識でございますが、その金利の上がる状態を見ておりますと、全国の銀行では、調整政策をとった九月からことしの一月までに〇・二四三%上がっております。ところが相互銀行を見ますると、〇・〇六八%と非常に軽微な状態であります。そういうことで、金利の上昇状況も、今度の調整政策は中小企業にまだ大企業に比べて非常に浸透がおそい、こういうような状態でありますが、特に歩積み両建てにつきましては、この上とも特段の配意をいたしてまいりたいと、かように存じます。
○足鹿覺君 大企業の資金調達と中小企業金融へのしわ寄せについて、重ねて蔵相にお伺いいたしますが、現実の問題といたしまして、資金量、金利、その両面で大企業と中小企業の金融格差は拡大しておりますが、二、三年前に比べて、どう改善されたかの実績があれば、この際お聞かせをいただきたいと思いますが、いかがですか。
○国務大臣(福田赳夫君) 中小企業と大企業との金融条件でありますが、これは大体二、三年前と比べましてそう開きがない、両者のバランスはまあ横ばいであるというふうに思います。たとえば、中小企業向け金融の量的方面を見てみますと、大体銀行、相互銀行等の融資比率、中小企業に何%というような融資比率、相互銀行は主として中小企業ですが、−まあ銀行ですね。銀行の融資比率を見ますと、大体四六%が中小企業だというようにずらっと落ちついております。それから金融調整後は、中小企業のほうに大企業よりは有利に諸条件が展開して動いておる。かように御了承願います。
○足鹿覺君 しかしながら大蔵大臣、最近では設備投資に狂奔する大企業が、資金不足で地方銀行、信用金庫など、中小企業向けの金融機関まで資金調達を手を伸ばしておることが表面化しております。聞くところによりますと、最近大企業が系列の中小企業にあてて、商品売買の裏づけのないいわゆる融通手形を振り出す。これを中小企業が信用金庫などに割り引いてもらい、その金を大企業が吸い上げるという動きがかなり出てきておると言われております。これには金詰まりで大企業が中小企業に売った資材、商品の代金決済を現金でやれと強要することなどとも関係しておるようでありますが、これらを野放しにいたしますと、中小企業自身が資金を必要とするとき、調達ができなくなるおそれもあると思います。というような心配が中小企業関係に出ておりますが、その真相と対策について、大蔵大臣並びに通産大臣に御所見を承りたい。
○国務大臣(福田赳夫君) いま設例がありましたが、大企業が手形を出して、しかもその手形が融通手形である。そして中小企業から、信用金庫などからその手形を割り引きさして、その金を大企業が使う、こういう傾向があるんだというようなお話でありますが、寡聞にして、私はさような事例は聞いておりません。しかし、そういうことがありますれば、これはもう、もってのほかの話なんです。これはしかも融通手形であるというところに大問題があると思います。さようなことがないように、私どもの出先財務局等を通じまして、十分これは指導をしてまいりたい。 また、先ほど中小企業、大企業の融資バランス、これは中小企業にきわめて有利な状態であるというふうに申し上げましたが、この三、四月、いよいよ金が詰まってくるというような時期においては、いろいろな現象が出てくると思います。しかし、しわ寄せがいやしくも中小企業に不当に波及するということがないように、きめこまかく金融行政上配意してまいりたい、かように存じます。
○国務大臣(宮澤喜一君) ただいま本年度の、昭和四十五年度の設備投資計画を各企業からとっておるところでございますけれども、ことしは特に私注意をいたしまして、従来あまり資金のソースについては通産省は深入りをしないということになっておったのでございますけれども、ことしのような年は、そうしておりますと、結局自己資金とか、銀行借り入れとか書いておりましたものが、最後には、企業間信用になって、中小企業に押しつけられる。非常にそういうことの起こりやすい年と考えましたので、ことしは設備投資を見ますときに、資金の手当てについて、少し確認をするようにということを私、役所の者に申しておきました。これはそうしておきませんと、設備投資は予定どおりやる、しかし金は借りられない、となれば、必ず企業間信用になりやすい。それは中小が結局かぶる、こう考えたからであります。その点かなりことしは、したがって、からの資金ソースというようなものを、そのままのみ込むというようなことはしないようにしたいと考えております。 なお最近、比較的従来なかったことでございますけれども、中小企業の中で、中あるいは小でも、何かしっかりしたところのあります企業は、親企業との関係で、かなり立場が強くなりつつあります。それはおそらく労働不足等々から、親企業が子の企業を大事にしておきませんと、将来非常にむずかしい問題が起こるというような力関係が多少変わってきたということも関係をしておるように思います。まだ残念ながら全部そうはなっておりませんけれども、そういう気配もございますので、ただいまのような行政指導ともあわせまして、昔でございましたら、必ず足鹿委員のおっしゃるようなことの起こりやすい年でございます。そうなりませんように、注意をいたしておるところでございます。
○足鹿覺君 両大臣からあまりそういうことは知らぬということでありますが、れっきとした天下の大新聞がちらちら出しておる。十分に御調査になって、しかるべく強い御処置をさらにお願いいたしますが、御所信いかがですか。
○国務大臣(福田赳夫君) 融通手形のことかと思いますが、融通手形につきましては、これは非常に悪質なものでありますから、そういうことがないように厳重に手配をいたします。 なお、中小企業問題につきましては、各重要地方の拠点に地方通産局というのがあるのです。地方通産局に中小企業相談所というのが特設されておるわけであります。また、商工会議所にも相談所が設けられておりまして、何か黒字倒産というようなこと、これはもう何とかして避けなきゃならぬ。そういうようなケースにつきましては、でるだけ御協力をいたしたいという態勢を整えておるわけでございますが、万全を尽くしたいと、かように考えます。
○足鹿覺君 次に、過疎地域総合対策と中小私鉄バスの休廃止欠便対策について伺いますが、過激な経済成長の結果、都市の過密化と地方の過疎化が進み、悲惨な農民出かせぎをはじめ、重大な社会問題が提起され、人道上の問題にまで発展しつつあることは御承知のとおりであります。 この中で、出かせぎの問題あるいは国鉄ローカル線の廃止問題等は別の機会に譲り、当面する切実な過疎地域の中小私鉄バス路線の廃休止、欠便が増大し、その中でも、高知、鳥取、和歌山県をはじめ、全国的に従業員の大量整理、地域住民は足を奪われる等、関連労働者と地域住民が犠牲となりつつある現状でありますが、この全国的、地域別、年次別休廃止欠便路線等の現状と、これに対する対策について、自治大臣なかん、ずく運輸大臣に伺いたいのであります。
○国務大臣(橋本登美三郎君) 御承知のように、最近、経済拡大、高度成長といいましょうか、さような構造上の変化からして、市街地形成すなわち地域によっては極端な過疎地帯が出てくるわけであります。その結果、軌道、乗り合いバス等が、いわゆる経済的な行為としては成り立たない状態が出てまいって、まことにこの悪化しておる状態については非常に関心を持っておるわけであります。このために、これら地域におけるバス路線の運行の確保を目的にしまして、昭和四十一年度から離島辺地の事業者に対する車両購入費の補助制度を設けたり、あるいはまた、四十四年度からは助成の強化をはかりまして、過疎バス路線の運行費の一部を補助するというような路線維持の制度を設けたのであります。さらに、四十五年度からは、利用人員が著しく少ないために廃止することとなるような路線につきましては、地方公共団体がかわって運行する場合に、車両購入費の一部を補助するというような制度を設けることとして、このために、経費を政府は予算化しておるわけであります。 今後とも、これらの問題につきましては、積極的にやってまいりたいと思いますが、当初申しましたように、いわゆる産業構造の変化からして、市街地いわゆる都市化傾向が非常に激増してまいっておる。その場合に、民営企業について、この程度の補助をしてまいりましても、なかなか実際上の問題はむずかしい問題が横たわっております。これらの根本対策は、ある意味においては、国がどうこれを維持し、補助するかという大きな問題に差し当たっておりますので、それぞれの審議機関にかけまして抜本的な措置を講じたい、かように考えております。 なお、現状等については政府委員から答弁させます。
○国務大臣(秋田大助君) バス路線の休廃止等がしきりに伝えられております。政府といたしましては、過疎対策に積極的に取り組んでおる際、バスが運行を停止をして、住民が他の地域との通行ができないということになりますと、これは過疎状況がますます深刻になるわけでございますから、この状態はどうしても避けなければなりません。したがいまして、従来交付税あるいは地方債等で措置をしておりましたが、ただいま運輸大臣のお話のありましたバス購入費を一部運輸省のほうで補助をするという場合は、そのなおこれは残りがございますから、その裏負担等、交付税その他、今度は過疎債等も準備をいたしておりますから、これらの運用によりまして、過疎対策に万遺憾なきを期してまいりたいと考えております。
○足鹿覺君 資料はあとで書面で時間の節約上御提示をお願いいたします。 そこで運輸大臣に伺いますが、競合路線の調整の問題であります。これら過疎地域における私鉄バス路線の休廃止続出の背後には、比較的採算のよい路線で過当競争が行なわれ、経営合理化のためやむを得ず過疎路線を休廃止するに至る事情があるようであります。同一路線における過当競争は、政治力の介入等によって許認可が行なわれていることが大きな原因と見られておるのでありますが、まず、不当競合路線を調整する強力な行政措置が必要と思われますが、従来どうやってきたか、今後さらに強力にどうするか、大事な問題でありますので、運輸大臣から具体的に承りたい。
○国務大臣(橋本登美三郎君) ただいまのお話のように、利益のあがる路線については競合状態がなしとは言えないのでありますけれども、最近は必ずしもさような状態ではないのでありまして、ある意味においては資本投下を相当必要としますからして、そう簡単に競合状態がたくさんあるとは考えませんが、ただ、従来は地方に、これは非公式の制度でありますけれども、地方交通審議会という制度がありまして、これを今回の国会では強化しまして、地方交通協議会という形で地元の人々、あるいは公共団体の代表者、利用者等を加えまして、いわゆる審議にかけて、そうしてこれが廃止する、あるいは廃止しない、こういう問題について、地元の利用者の権利を強化する、そのような審議会によって円満なる遂行を期していきたい。できるだけさようなことのないように処理する方法を目下検討いたし、これが近く実施する方向に考えております。
○足鹿覺君 運輸大臣は、実情についてもう少し深く御検討になる必要があろうと思いますが、きょうは時間の関係上これ以上申し上げません。 そこで、休廃止路線の取り扱いと運行維持については、ただいま若干お触れになりましたが、路線の許認可権を持つ国、地方公共団体の問題につきまして、運輸省と自治省へ伺いますが、これら過疎路線の整備、振興をはかる義務は国及び地方公共団体にあると思います。そこで、過疎路線の運行維持について、いま運輸大臣が仰せられたような措置よりももっと強い特別立法等を行なうべきだと考えますが、その点はいかがでありますか。また、具体的に休廃止申請が出ましても、関係地元議会等の住民代表の同意なくしては許されない、こういった行政措置もあわせて行なわれるべきだと思いますが、ただいまそれに近い御構想の一端を述べられましたが、この点について自治、運輸両大臣から、さらに具体的な御所見を承りたい。
○国務大臣(秋田大助君) ただいまのお尋ねに対しまして、先ほどある程度お答えになっておると思うのでございますが、バス路線の廃止について地方議会の同意を得てこいということは、なかなかこれはむずかしいことではなかろうかと存ずるのであります。とても会社としてはやれないという場合でありますから、そのときには地方議会同意せいと言われましても、地方議会はなかなか同意しないでございましょう。したがって、これはケース・バイ・ケース、事実問題に即しまして、地方自治体が会社との間に十分かけ合い、いろいろ折衝もありましょう、なるべく円満に解決すべく自治省としても指導してまいりたいと思いますが、実際問題としては、当事者の間において話し合いをつけるということはむずかしかろうと思う。そこ・で、万やむを得ない場合に、やはり交付税あるいは特別交付税、あるいは地方債等で処置をしてまいらざるを得ないと思っております。それらにつきましては、ケース・バイ・ケースに応じまして処置をいたしたい、善処したいと考えておりますが、なお、これについての立法といういまお話でございましたが、ただいま考えておりまする過疎地域対策特別措置法、これは議員立法でございますが、これらの成立を期待いたしておるわけでありますが、これとただいま申し上げましたような交付税あるいは地方債等の運用によりまして、実地に即して、そこにどうもぐあいの悪いところがあるというようならば、そのときはまた適当の処置を講じたいと思っております。
○国務大臣(橋本登美三郎君) 公共的性格は持っておるといいましても、本来が私企業でありますからして、私企業に対してそのようなきつい措置を講ずることが妥当かどうか。ただし、公共的な事業であることには間違いありません。その意味において、立法措置といいましても、これが補償、助成とか、そういう問題の点から、過疎地帯に対していわゆる交通機関を維持するという基本的な考え方は必要と思いますけれども、無理やりに私企業であってもどうしても仕事をぜいというわけにもいかぬところにむずかしさがあると思いますが、しかしながら、今後とも過疎現象というものはだんだん拡大していくと思いますからして、その地域に住む人たちがいわゆる社会人としての生活ができないという状態であるということは好ましくないことでありますからして、根本的な立場に立ってこれが検討を加えてまいりたいと思っております。
○足鹿覺君 もっといろいろとお尋ねしたいことがありますが、きょうは時間の都合で、最後に総理にお伺いいたしますが、過疎対策の統合化の問題についてであります。山中総理府長官が昨年中心となられまして、議員立法として、過疎地域対策特別措置法が提出されました。その労を多とするものではありますが、これは当面の財政措置を主としたものでありまして、かかる立法は統合的なものであることが必要であり、山中さんが出されましたものを見ましても、関係省庁は八つの省庁に及んでおるというものであります。したがって、これは議員立法もけっこうでありますが、政府の責任において総合的な基本立法とこれに伴う十分な財政措置を講じ、もって地域住民の期待にこたえるべきであると考えますが、特にこの点、総理におかれましては、総合的な立場からいかようにお考えになり、対策を講じられようとしておりますか御所見を承りたいし、また、起案者でありました山中総理府総務長官にも、この問題について御所見があったならば承りたい、かように存ずるのであります。
○国務大臣(山中貞則君) 私が議員立法の提案者になりまして国会に提案いたしました内容については、あるいはまだ足らざる点が多かったかと思いますが、なぜ議員立法をしなければならなかったかと申しますと、経企庁にこれを収拾させるにも、あるいは自治省に財政的な、行財政の面で主管させるにも、遺憾ながら御指摘のような多くの各省にまたがっておりまして、とても所管省の問題で起草の段階に入れないと見ましたので、私のほうで議員立法として、財源主管省の大蔵省も含めて、あの提案をいたしたわけでございます。しかしながら、大学法等のあおりを受けまして、大体各党のおおむねの御了解を得ていながら成立していなかったことを痛恨事といたしておるわけでありますが、幸い今回の四十五年度予算に関連をいたしまして、この法律が議員立法ながら成立するであろうことを前提といたしまして、日本一のけちんぼうをもって自任する大蔵大臣も快く過疎債百三十億をはじめといたしまして、学校統合その他の補助率の引き上げ、以下各般の各省にわたる予算措置を十分に、表に出しておりませんが、法律が成立したと同時に四十五年度予算から動き出すようにいたしておるわけでございまして、その意味では一歩前進しておるかと考えます。なお、私ただいま総務長官でありますが、私のところに統計局が実は所管でございます。この法律をつくりますときに一番私が心配いたしましたことは、三十五年から四十年までの五カ年間の人口流出率をとらざるを得なかった。この国勢調査が四十五年に行なわれることはわかっておりましても、住民登録等の趨勢値をもって該当市町村を設定する、流出率一〇%以上、財政指数〇・四以下というこの基準に趨勢値を当てはめるわけにもまいりませず、東北地方を主とする出かせぎ地帯の最近の流出傾向というものが、この法律で直ちに救われないということを心痛いたしました。そこで、就任いたしまして直ちに統計局に、コンピューター等の導入により非常に事務処理能力がすみやかになっておりますので、最もすみやかに市町村の流出人口のみを四十年から四十五年度に至る統計が出せるのはいつかということを督促ぎみの調査をさせましたところ、大体十二月の上旬には終了することができる、その点だけでありますならばできるということの確証を得ましたので、東北各県もほぼ三三%平均の該当の町村が出るようでございます。おおむねこれで実態に即応いたしましたものが四十五年の十二月の初旬に出ますると、四十六年度の予算編成におきましては、この法律が成立をいたしますれば、大体全国的に一番現状に近い町村数が的確に反映されるものと考えております。 なお、私から答弁すべきかどうか知りませんが、その立場にあるかどうかはわかりませんが、力強なる行政機構をこれに対して設けろということもごもっともだと思いますが、いまのところ、成立をいたしましたならば、自治省にこれを所管せしめまして、各省の協力を得ることが了解をされておりますので、その運用を期してまいりたい、その法律の成立いたしましたあとの進捗状況を見まして、これではなお行政の全きを期しがたいと考えましたならば、あらためて検討するのにやぶさかではないと私は考えておる次第でございます。 以上です。
○国務大臣(佐藤榮作君) ただいま、議員立法の提案者である総務長官からお話がありまして、私はそれを骨子にすると申すとあるいは十分でないかもわかりませんが、過疎対策に対して政府が前向きの姿勢で積極的にこれと取り組む、こういうことをこの機会に発言しておいて、ただいまの法案、その他の処置の成果等をも勘案して前進したいと、対策に前進をするということをこの機会に申し上げておきます。
○足鹿覺君 本日は、一応これでとどめておきます。
○委員長(堀本宜実君) 足鹿君の質疑の途中ですが、残余の質疑は明日午前十時から行ないます。(拍手) —————————————
○委員長(堀本宜実君) 次に、参考人の出席要求に関する件についておはかりをいたします。 三案審査のため、明日、澤田国民金融公庫総裁を参考人として出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(堀本宜実君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。 本日はこれをもって散会いたします。 午後四時五十五分散会