本会議 第10号
- 発言数
- 86 件
- 登壇者
- 27 名
- 会派数
- 4
- 開催日
- 1970/04/08
会議録
○議長(重宗雄三君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。 —————・—————
○議長(重宗雄三君) これより本日の会議を開きます。 日程第一、所得税法の一部を改正する法律案、法人税法の一部を改正する法律案及び租税特別措置法の一部を改正する法律案(趣旨説明) 三案について、国会法第五十六条の二の規定により、提出者からその趣旨説明を求めます。福田大蔵大臣。 〔国務大臣福田赳夫君登壇、拍手〕
○国務大臣(福田赳夫君) 所得税法の一部を改正する法律案、法人税法の一部を改正する法律案及び租税特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。 政府は、本年一月、税制調査会から提出された昭和四十五年度の税制改正に関する答申に基づき検討を重ねた結果、昭和四十五年度の税制改正におきましては、最近における国民の税負担の状況にかんがみ、給与所得者を中心とする中小所得者の負担軽減を主眼として、平年度約三千五十億円にのぼる大幅な所得税の減税を行なう一方、当面の経済社会情勢に即応して、法人税の負担を引き上げるとともに、利子・配当課税の特例について漸進的な改善合理化措置を講ずるほか、企業体質の強化、中小企業対策、公害防止・過密過疎対策等に資するため所要の措置を講じ、あわせて既存の租税特別措置について整理合理化をはかることといたしております。 初めに、所得税法の一部を改正する法律案につきまして、その大要を御説明申し上げます。 まず、中小所得者の所得税負担の軽減をはかるため、課税最低限の引き上げを行なうこととしております。すなわち、基礎控除及び配偶者控除をそれぞれ現在の十七万円から十八万円に引き上げるとともに、扶養控除を現在の十万円から十二万円に引き上げることにいたしております。この結果、夫婦と子供三人の給与所得者の課税最低限は、現在の九十三万五千円から百二万九千円に引き上げられることになります。 次に、給与所得者の給与所得控除を拡充することといたしております。すなわち、その控除率を引き上げるとともに、適用範囲も拡大し、十万円の定額控除後の給与の収入金額百万円までは二〇%、二百万円までは一〇%、四百万円までは五%を控除することといたしております。 さらに、税率につきましては、主として中堅以下の所得者層の負担軽減をはかる見地から、税率の刻みとその適用区分の大幅な緩和を行なうことといたしております。 以上のほか、障害者控除等の特別な人的控除の引き上げを行なうとともに、医療費控際について実情に即するよう改善をはかる等、所要の規定の整備を行なうことといたしております。 なお、配当控除については、課税総所得金額一千万円以下の部分の控除率を一〇%、同じく一千万円をこえる部分については五%に引き下げることといたしておりますが、これに関する経過措置は租税特別措置法の改正案に織り込んでおります。 ————————————— 続いて、法人税法の一部を改正する法律案につきまして、その大要を御説明申し上げます。 この法律案は、中小法人の税負担の軽減とその内部留保の充実に資するため、同族会社の留保所得課税についての控除額を引き上げるほか、同族会社の範囲の縮減簡素化、完成工事補償引当金制度の創設、中間申告書の提出不要限度額の引き上げ等、所要の規定の整備合理化をはかることといたしております。 ————————————— 最後に、租税特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、その大要を御説明申し上げます。 第一は、現下の経済財政事情にかんがみ、法人税負担の引き上げを行なうことであります。すなわち、二年間の臨時措置として、普通法人の所得のうち、留保分に対する法人税負担を現行の五%増に引き上げることといたしております。ただ、中小法人の所得のうち、年三百万円以下の部分の税負担については、特に現状のまま据え置くことといたしております。 第二は、利子・配当課税の特例について、国民の貯蓄態度に与える心理的影響をも考慮し、漸進的な改善合理化の措置を講ずることとすることであります。 まず、利子課税につきましては、定期預金その他資産性の強い預金等の利子について、源泉分離選択課税制度を創設し、他方、普通預金等要求払い預金の利子については、新たに申告不要制度を創設することにいたしております。 次に、配当課税につきましては、利子課税の改正に見合った措置を講ずるほか、配当控除率につき、所得税法の改正に関連して、所要の経過的調整措置を定めております。 第三は、企業体質の強化、中小企業対策等に資するための措置を課ずることであります。 その一は、企業体質の強化をはかるための措置でありまして、法人が産業体制の整備に資する合併をした場合について、割り増し償却制度を創設するとともに、合併登記の登録免許税軽減の特例の適用期限を延長することとしております。 その二は、中小企業対策のための措置でありまして、下請中小企業振興法の制定に伴い、下請中小企業振興準備金制度及び共同利用施設の特別償却制度を創設するほか、中小企業構造改善準備金、中小企業の貸倒引当金の特例等、中小企業に関する課税の特例の適用期限を延長することといたしております。 その三は、過密過疎対策に資するための措置でありまして、ガス事業者の特定ガス供給設備について特定ガス導管工事償却準備金制度を創設するとともに、産炭地域の工業用機械等について特別償却制度の対象となる事業及び資産の範囲を拡大することといたしております。 その四は、基礎資源の開発を促進するための措置でありまして、石油開発法人の発行する株式について石油開発投資損失準備金制度を創設するとともに、探鉱準備金及び新鉱床探鉱費の特別控除制度の適用期限を延長することとしたことであります。 その五は、情報化の促進に資するための措置でありまして、一定の電子計算機について特別償却制度を創設するほか、電子計算機買戻損失準備金の積み立て限度額を引き上げることといたしております。 そのほか、住宅貯蓄控除制度等の住宅対策のための措置、株式売買損失準備金制度、試験研究費の特別税額控除制度及び民間外貨債の利子の非課税措置等について適用期限を延長することといたしております。 第四は、既存の特別措置について、実情に応じた整理合理化を行なうこととしたことであります。すなわち、特別措置のうち、すでにその政策目的を果たしたと認められるものまたは政策手段として期待された効果をあげていないと認められるものにつきましては、その適用期限の到来とともにこれを廃止することといたしておるのであります。 以上のほか、相続財産を譲渡した場合の譲渡所得の計算方法を合理化する等、所要の規定の整備をはかることといたしております。 以上、三法案の趣旨について御説明を申し上げた次第でございます。(拍手)
○議長(重宗雄三君) ただいまの趣旨説明に対し質疑の通告がございます。順次発言を許します。戸田菊雄君。 〔戸田菊雄君登壇、拍手〕
○戸田菊雄君 私は、日本社会党を代表して、ただいま趣旨説明のありました所得、法人、租税特別措置の三法案の一部を改正する法律案に対し、佐藤総理並びに関係大臣に質問を行なうものであります。 〔議長退席、副議長着席〕 初めに基本的問題について若干質問いたしたいと存じます。政府の今日までの税改正は、産業構造の高度化に対応する租税政策の装置づくりに重点があったと思うのであります。 すなわち、法人税率の引き下げ、減価償却ワクの拡大、輸出振興税制の再編強化、各種特別措置による独占企業への優遇など、企業課税への徹底した減税政策を通じ、一貫して高度経済政策をささえる大きなてこにしてきていたのであります。 政府が現在、日本経済は世界第二位と言って胸を張り、歩行優先、人間尊重と内政重点を口にしているのでありますが、いまの国民生活の実態をどう考えておるのでありますか。重税、物価高、公害、住宅難、交通難など、高度経済成長政策でわずかに一にぎりの大企業のみが肥え太り、善良なる国民の大多数はその重圧に押しひしがれているのが現状ではないでしょうか。ちょうど豊臣時代に、「村々にこじきの種も尽きずまじしぼり取られる公状の米」という句がありますが、現在の国民の心情とよく似通っておるのではないでしょうか。今年度の政府予算を見ても、これらに対し何一つ改善される気配はございません。加えて、社会保障の水準は低く、教育費の完全国庫負担もはなはだしく不備であり、国民のための公共社会福祉は、欧米資本主義国に比べてはるかに立ちおくれているのであります。このような状況下で、本年度の租税及び印紙収入は総額において六兆九千三百八十四億円で、実に歳入の八七・三%に達しているのであります。昭和四十四年度に比べて一兆二千二億円の増収であります。ほかに自然増収は、一兆三千七百七十億円増税が見積もられ、総体八兆円をこえる膨大な額にのぼっているのであります。しかし、国民の大多数は、この多額の税金がだれのためにどこに使われているのか全くわからないというのが真意なのであります。この原因は、一つには、現在の税制が勤労所得に重く、特に物価高の中で勤労者に税の重圧感を高めていること、第二には、利子・配当優遇など、不労所得、資産所得に軽いことと相まって、税制の不合理と不公平を拡大していることにあるのであります。しかるに、政府は、これらの根本的問題には一切手をつけず、逆にこの仕組みを利用して、例年の減税を名目だけにとどめ、かえってインフレ効果を悪用して、実質増税を国民大衆に押しつけているのであります。政府は、今後、これら税制の基本問題についてどう改善しようとしているのか、総理の御所見を承りたいのであります。 次に、七〇年代の租税政策がどのような形で推し進められるかが重要な問題でありますが、これは七〇年代の日本経済の展望の中で位置づけられると思うのであります。そしてこれらの経済政策のワク組みは、近く閣議決定を見る新経済社会発展計画であろうと思うのであります。租税政策も、こうした全体の経済的構造政策の一環として内容が決定されると思いまするけれども、今後の税制の見通しと国民の税負担はどのようになるのでありましょうか、具体的にその内容について企画庁長官の御意見を伺いたいのであります。 また、政府は、今年度の予算編成で高福祉、高負担政策を提唱してまいったのでありますが、これは明らかに大衆福祉の支出を極力押え、負担をますます大衆に転嫁しようとするものではないかと考えるのでありますが、一体、高福祉、高負担とは、一般的、抽象的なお題目ではなく、現実にどのようなことが行なわれ、どのような政策を行なおうとしているのか、具体的内容について企画庁長官の御見解を承りたいと思うのであります。 前述したとおり、国民は、増大する財政需要を充足するために常に増税を余儀なくされているのであります。そして、増大する財政需要の中には、軍事的膨張主義的傾向へ向かっての支出の増加だけではなく、それに伴って行なわれております赤字公債の発行率の引き下げと元利償還という問題が待ちかまえているのであります。赤字公債発行——四十年でありまするけれども——以後は、租税収入の増加は、財政支出の増大と減税のためだけでなく、公債依存度の低下、元利償還のためにも必要になってきているのであります。私たちが過去主張いたしましたように、公債は増税を必然化するという公式がみごとにあらわれてきているのであります。増税は一そうきびしくなると思うのでありますが、福田大蔵大臣の御見解を伺いたいと思うのであります。 さて、以下、私は各税法改正についての具体的な内容についてお尋ねをしてまいりたいと思います。 その第一は、今回の所得税の減税内容についてであります。政府は、史上最大のサラリーマン減税だと言っておりますが、所得税の自然増収は六千四百八十億円にのぼっているにもかかわらず、所得税の減税額は二千四百六十一億円であります。これから法人税、利子等の増分を差し引いた一千七百六十八億円が実質減税となるのであります。自然増収一兆三千七百七十一億円に対する減税率は一二・八%であり、昭和三十五年から四十四年の平均一七・三%より低く、かつ三十二年の三一%よりもはるかに低いのであります。前述したように、自然増収に対しても所得税収に対しても減税率は決して高くないのであります。政府の言う史上最大の減税は、全く国民の期待を裏切るものではないかと思うのでありますが、大蔵大臣の見解を伺っておきたいと思うのであります。 第二は、課税最低限についてであります。五人世帯で年収百万円という家族が、はたしてゆとりある家計と言い得るでありましょうか。これは大いに事実と反していると言わなければなりません。全国サラリーマン同盟でさえ、課税最低限百万は五人家族の生活実感としては極貧に近いと言っておるのであります。むしろ、このような層に課税していること自体が問題ではないかと思うのであります。政府案によりますと、五人家族百万一千六百五十円、四人家族八十六万五千七百七十二円、独身者三十三万八千六百三十七円となっております。年収百万円と言いますと、ボーナス四カ月分として、月収六万二百円余りであります。通常の場合、夫婦子供三人が住むのに必要な住宅を公団規格で三DKといたしますと、家賃は月二万円であります。したがって、家賃控除後の収入は四万円余りとなります。総理府の家計調査による全国勤労者世帯、世帯人員四名でありますが、この消費支出額は四十二年で五万八千七百六十三円であります。四十年以降消費支出は年八・八%増加いたしておりまするから、今年度の推定は九万一千六百三十三円となるはずであります。答申や税法上定められている生活費には課税をしないという原則にいかに違反しているかが明白だと思うのであります。国家の最高責任者であります総理と財政を握る大蔵大臣の明確な御答弁と、この際、大英断をふるって、わが党の主張するきわめて妥当で現実的な五人家族で百五十万円、四人家族で百三十万円まで無税とするように課税最低限の引き上げを実行することを希望いたすものであります。 第三は、給与所得控除と税率についてであります。税調答申の中では、給与所得の最高控除額は四十五万円とされていたのでありますが、自民党総務会の要望で四百万円まで五%が追加され五十万円となったのであります。控除適用限度を三百十万円、定額控除を含め一から四百十万円に高めることによる恩恵は、二千百万人の給与所得者のうちわずか一%にあたる重役、部課長クラスのみであります。また、税制改正の重点とされる税率改正でも、低所得層の課税所得の刻みをこまかくし、税率も百五十万円まで二%、三百五十万円まで三%刻みに改めはいたしましたが、前述の給与控除の引き上げを含め、減税の恩恵が最も高いのは年収二百万円から三百万円までの減税が最高なのであります。そうして、これらのわずか一%の部課長を中心としたものに総額五十億円、——実質減税の三分の一に近い——これを使用することは、全く政治的であり、許されないことだと思うのであります。現在、給与所得者の中で年収百万円以下の納税者は総体七〇%、すなわち一千七百万人もいるのであります。負担軽減を行なうならば、まっ先にこれら大多数の低所得者を重点に行なうべきだと考えますが、大蔵大臣の御見解をお願いを申し上げたいと思うのであります。 次に、法人税についてであります。大企業の法人税率は、昭和二十七年、いわゆる朝鮮動乱ブームの時期に四二%に引き上げられたのであります。それ以来、資本蓄積を理由に、昭和三十二年四〇%、同三十三年に三八%に引き下げられ、四十、四十一年には、不況対策を理由に三七、三五%と引き下げられ、今日に至ったものであります。その間、昭和三十六年からは、支払い配当に対する軽減措置がとられているのであります。今回の改正では、当初の二%税率引き上げさえも財界の圧力で一・七五%に引き下げられ、支払い配当分の税率は据え置かれた上に二年間の時限立法ということになっておるのであります。政府は、法人税の改正は景気調整にあるのか、財政確立にあるのか、税率復元にあるのか、明確にしていただきたいと思うのであります。また、法人の実行税率は、欧米諸国と比較して日本はきわめて低く、税収の硬直化の原因になっておりますが、八年連続企業収益を示し、景気過熱すら懸念される現在、法人の担税力に適合した課税強化を行なうべきだと思うのでありますが、御見解はいかがなものでありましょうか。そのために、法人税率を三%引き上げること、中小法人軽減率二八%は現状どおりとして、これを前提に法人税にも軽度の累進税率を採用し、能力に応じて適正課税を行なうように改正すべきだと思うのでありますが、どうですか。また、法人利潤税を導入し、これに伴い法人間受け取り配当の利益算入、交際費課税を強化し、減価償却の適正をはかる意思はありませんかどうですか。以上、法人税について大蔵大臣の御見解を伺いたいと思うのであります。 次は、租税特別措置についてであります。 その第一は、利子・配当優遇措置についてであります。当初の税制調査会の答申の柱は、一つは所得税の過重負担の緩和であり、一つは社会資本の増大の要請に応ずる法人税の増徴であり、一つは利子・配当優遇措置の是正であったのであります。このうち最も徹底を欠いたのが利子・配当優遇措置なのであります。今回の改正ではわずか三十億円の増収でお茶をにごし、実質上高額所得者を優遇し続けることになったのであります。すなわち利子については源泉徴収税率の軽減の特例、これは現行一五%、本則二〇%でありますが、この適用期限を五年間延長すること、資産の強い貯蓄の利子については原則として総合課税の対象とすること、新たに源泉選択制度を創設し、四十六−四十七年の二年間は二〇%、四十八 五十年は二五%の税率による源泉徴収を選択できるようにすることになっているのであります。しかし、結果的には二百七十万円以上の高額所得は従来どおり源泉分離を続けるであろうし、これ以下の所得者も少額貯蓄非課税制度を利用することになり、源泉選択制度の導入の意義は無に等しいと思うのであります。 また本改正は、五年後の昭和五十年にならなければ全制度が効力を発生しないのであります。また、今日までの経過は、大蔵省案では四〇ないし五〇%の源泉選択税率を想定しておったのでありますが、金融界の圧力で二五%になり、さらに二年間は二〇%という線に落ちついたということであります。これらの金融界の圧力等に対してどう総理、大蔵大臣はお考えでございましょうか、お聞かせを願いたいと思うのであります。 第二は、配当についてであります。配当控除は、低所得者よりも高所得者にきわめて有利であり、給与所得者に比べて所得税の非課税限度が三倍以上にも上がっているのであります。四十四年度には、株の配当のみの生活者は年収二百八十二万円まで免税であり、今回の改正では、何と三百四万円まで免税なのであります。このように、大企業、金持ちだけに有利な利子配当の優遇措置をすみやかに撤廃し、租税特別措置を大整理し、四十七年までに全廃の計画を具体的に樹立する意思はありませんかどうですか、大蔵大臣の見解をお伺いいたしたいのであります。 最後に、住民税と、税制調査会の構成と今後の運営について御質問いたしたいと思うのであります。住民税の課税最低限は、今回の改正では七十二万九千七十一円となりましたが、所得税の課税最低限との差は三十万円に及んでいるのであります。ことに、その税率は昭和三十八年以来そのままであります。所得構造の変化と税の見直しがなされないまま今日に至っているのでありますが、この住民税の重圧を抜本的に改善する意思はないか、自治大臣の見解を承わりたいと思うのであります。 以上で、私の質問を終わります。(拍手) 〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕
○国務大臣(佐藤榮作君) 戸田君にお答えいたします。 私も、税負担の公平が税制制度におきまして、また税の執行におきましても守らなければならない第一の課題であると、かように考えております。しかしながら、税金の性格上、これがすべての人々から完全に公平であると認められることは、これまたたいへん困難なことのように思います。それぞれの立場なり、考え方に相違がある以上、戸田君の御質問のような感じをお持ちになることも十分理解されますが、私は今回の改正も税負担の公平の課題においてやはり一歩前進したものと、かように考えております。所得税負担の調整、利子・配当課税の改善等はその顕著なあらわれであります。それぞれの経緯なり、他の政策目的との関連もあって一挙にはまいらない、一挙にこれを廃止することにまいらぬ面もありますが、今後とも税負担の公平、これは第一義的に重要視してまいる決意でございます。 次に、課税最低限についてのお尋ね、御意見がございました。まあ百万円が実現すれば、その次に百三十万とか、あるいは百五十万とか、かように言われると、これまた当然だと思います。しかし、今後の所得税の軽減、減税につきましては、私は特に中堅サラリーマン階層を中心にした減税というのが、今後十分に考えられ、またそれの方向で努力をすることが適当ではないかと、かように考えております。具体的な方向につきましては、税制調査会において慎重に御検討をいただき、これを適切に実現してまいりたいと、かように考えます。 次に、租税特別措置を全廃せよ、かような御提言でございますが、そう一挙に極端な措置をとるわけにはまいりません。課税の公平の原則と特別措置のねらいとしている政策目的との調和をはかりつつ、実情に即した改善を行なっていくべきであり、今回の改正におきましても適切な改善をはかったものであると、かように考えております。 利子・配当課税につきましても、ただいま申し上げたような趣旨において所要の改正を行なったものであります。今後におきましても、総合課税の原則に帰することを基本的方向としながら、国民の貯蓄動向や税制に対する国民の気持ちを十分くみ取りながら、実情に即した改正を考えてまいります。 また、その他各般にわたって、具体的に専門的な御意見等を交えてのお尋ねがございましたが、それらの点については、それぞれの担当の大臣からお答えいたしますから、お聞き取りいただきたいと思います。(拍手) 〔国務大臣佐藤一郎君登壇、拍手〕
○国務大臣(佐藤一郎君) お答えいたします。 今回答申を受けようとしております新しい計画でございますが、新経済社会発展計画でございますが、この中では、御存じのように、特にこれからの来たるべき計画期間、社会開発ということをたいへん重視しております。したがいまして、その中でも、特に社会福祉政策の推進、それからまた生活環境に関連するところの公共投資の推進、こういうことを非常に重視しております。それで、いま試算いたしておりますところでは、目下ちょうど四十四年度現在で財政支出が中央、地方を合わせたり財政投融資関係を合わせますと大体十三兆になっておりますが、これが大体三十三兆円ぐらいに昭和五十年度においてなる、こういうことになっております。そして、いま申し上げましたような社会開発を非常に重点にしております関係で、その中でも社会福祉は現在の約三倍ぐらいになるという見込みを立てております。それから公共投資も二倍半ぐらいになる見込みであります。こういうことで、どうしても社会福祉関係の支出増大を中心にいたしまして財政支出が全体としてふえてまいります。そしてまた、同時に、御存じのように、社会福祉のもう一つの大きな柱である社会保険、このほうの支出も非常にふえてまいります。そういうことで、最終年度の五十年度におきまして、現在の国民総生産に対する振替支出の比率は大体二%くらいアップしてまいろう、こういう考え方でございます。したがいまして、それらに伴いましてある程度の税負担がふえる。それからまた、社会保険料等の社会保険負担がふえてまいる、これはやむを得ないところであろうと思います。その計画期間の最終年次には、わが国の一人当たりの個人所得もたいへん上昇してまいりまして、いわゆる西欧諸国水準に達する、こういうことでございます。所得も上昇いたしますし、また、いわゆる所得再配分機能という点も考えまして、こうしたある程度の高負担ということが考えられることになっております。 そして、その際、それではその税はどうなるか、これは大蔵大臣から御答弁があると思いますが、大ざっぱに言いまして、所得税、住民税、こういうものはなお減税をしていかなければならない。そして、法人税あるいは間接税、特に法人税につきましては、法人の状況等もにらみながら適切に処置をしてまいらなければならないと思っております。また、間接税につきましては、御存じのように、直接税が非常に負担感が重いから、間接税にせよというような意見もだいぶございますが、これらにつきましては、やはり物価問題等もあり、十分検討をしながらやってまいらなければならない。地方税なんかでは固定資産税等をやはり再検討をして上げていくとか、いろいろと間接税、流通税系統について今後適切な処置をしまして、そしてこの二%ばかりの負担アップというものをまかなっていくような形ができてくると、こういうふうに思っております。この税の中身につきましては、そのときの情勢を十分勘案しまして、今後検討してまいらなければならない、こういうことでこの答申ができているわけであります。(拍手) 〔国務大臣福田赳夫君登壇、拍手〕
○国務大臣(福田赳夫君) お答え申し上げます。 ただいま戸田さんから、今日の財政、ことに税制は冷酷無情で、もうしぼれるだけしぼれというような高負担国家というような御所説でございましたが、これは今日のわが国の租税負担、これは世界各国の水準から比べますると、かなり低いんです。数字にいたしますと、大体わが国では一八%、先進諸国では三〇%をこえる、こういう状態でございます。かなり低いと、こういうふうに存じておりますが、ただ、租税負担感が重いという訴えを聞きます。それはなぜかというと、低い全体の租税負担にもかかわらず、その中の大部分が直接税で負担されている、そういうところにあろうかと思うのです。そういうことを考えまして、今後といえども所得税の負担軽減、これには努力をしていきたい、かように考えております。 そうすると、しかしその減税の財源をどうするかということになりますが、その財源、またこれから、あるいは道路計画あるいは国鉄の新幹線だとか、いろいろ社会需要が出てきます。そういう財源をどうするか、こういう問題とあわせまして、私は、この間接税あるいは法人税等についていろいろ考えてみなければならぬ。特に直接税にあまりに偏重しておる今日の税制を多少間接税によって修正をする、こういう考え方をとらなければならぬだろう、かように考えております。 それから第二に、戸田さんは、公債発行が今日重荷になってきた、これが結局増税ではなかったかと、こういうふうなお話でございまするが、これは昭和四十年度に歳入補てん公債を発行しました。その当時におきましてはそれだけ租税負担を軽減したわけです。その当時の国民に対しましての軽減になったわけです。それが償還期に入りますると、その償還期における国民の税負担の増加になるということにおいては、まあ、そういうようなことも言われないこともないかと思いまするけれども、しかし、公債はそれなりに非常に大きな力を発揮しておる。あの不況を乗り切るためにこの公債政策がいかばかりの効果を発揮したか、またその公債を償還し得る十分な余力が今日そのおかげで出てきたということを考えますると、私は適切な措置であった、かように考えます。これが増税であるというような感覚は持ちません。 それから所得税につきましていろいろの御質問でございますが、自然増収に対しまして減税幅が過小であるということでありまするが、とにかく地方税と合わせると三千五十億円にのぼる減税です。まあ、いろいろ御所論もありましょうが、私は国民全体とすれば、まあよくやってくれたと、こういうふうに考えておるのではあるまいか、かように見ておるのであります。 また、課税最低限を引き上げることに今後努力せよ、こういうお話でございまするが、また給与所得者の控除拡大についても努力すべし、こういう御所論でございまするが、これらにつきましては、今度の税制改正によりまして、税制調査会の長期答申が完全実施になるわけです。しかし、完全実施になりましたからといって、これで一休みするつもりはございません。先ほども申し上げましたように、直接税の割合が非常に大きいということは是正したいと思っておるのです。その直接税の中核は何であるかというと所得税である。御所論のことも十分配慮いたしながら考えていきたい、かように考えております。 次に、法人税についてのお話がありましたが、まず第一に、法人税は景気調整的意味であるか、財政という意味であるかというと、今回とりました措置は主として景気調整という考え方であります。したがいまして、これは時限的な意味にしてあるのであります。なお今後、累進税あるいは法人利潤税の導入等を検討したらどうかというようなお話でありますが、これは法人の税制の基本にかかわる問題であります。つまり、擬制説をとるか、あるいは実在説をとるかというような問題とも関連しまして、かなりむずかしい問題でありますけれども、まあこれは検討に値する問題であります。慎重に検討を加えてみたい、かように考えております。 交際費につきましては、昨年度におきましてこれを増徴するということをいたしましたので、ことしはこの増徴につきまして休みといたしましたが、しかし、今後交際費の状況、支出の状況等をみまして、また検討はいたしてみます。 減価償却費の適正な運用、これにつきましては常に検討を怠らないつもりでやっていきたい、かように考えております。 それからさらに、今度は特別措置につきましていろいろ御批判があり、特に利子・配当等に対する課税が手ぬるい。これは資産者偏重のやり方であるというお話でありまするが、私どもといたしますると、かなり踏み切ったと思うのです。ことに利子につきまして総合課税と源泉分離を選択する、これはつまり総合課税方式へ一歩踏み切ったということでありまして、これは税制体系とすると、かなり大きいできごとであるとみております。さような評価も広く行なわれている、かようにみておるのでございます。まあ、お話のように、今回利子・配当に対する特別措置を全廃する、これは一つの理屈でございます。理屈ではございまするけれども、これでもし今日貯蓄性向に影響を及ぼすようなことがあったらどうなるか。今日の、この繁栄の成果、その最大の理由というものは、私は、国民が貯蓄をしてくれたからである、こういうふうに思うのでありますが、そういう現実的な見方も十分やっていかなければならぬ。これが私どもの政府としての立場であります。ひとつ御了承願います。(拍手) 〔国務大臣秋田大助君登壇、拍手〕
○国務大臣(秋田大助君) 戸田さんからは、住民税の重圧を軽減するよう、また、どう考えておるかというお尋ねでございます。結局、問題の焦点は、住民税の課税最低限の大幅引き上げということに帰結するかと思いますが、この点につきましては、政府は毎年意を用いているところでございまして、現に低額所得者の負担軽減ということを中心に考えまして、四十四年度に引き続きまして、四十五年度も課税最低限の大幅引き上げを考えまして、六百数十億円の減税をはかっているわけであります。現に、この案の結果、昭和四十四年度におきましては所得税と住民税との課税最低限の差額が、これは夫婦と子供三人の給与所得者のものについて考えておるのでありますが、推算でその差額が二十八万六千七百四十七円であるのに比較いたしまして、今回の案によりますと二十七万二千五百七十九円と推定されますので、この課税最低限の幅は一万四千百六十八円縮まったということに相なりまして、この点に政府の意のあるところをひとつおくみ取り願いたい。今後、低額所得者の負担軽減を中心に所得税と住民税との課税最低限の幅の縮小に大いにつとめてまいりたいと考えております。 —————————————
○副議長(安井謙君) 上林繁次郎君。 〔上林繁次郎君登壇、拍手〕
○上林繁次郎君 私は、公明党を代表して、ただいま趣旨説明がありました税制三法について質問を行なうものであります。 租税は平等でなければならず、国民に重税を課するものであってはならないと思うのであります。特に税の自然増収は一兆四千億円という巨額なものになっているにもかかわらず、八兆円近くの大型予算の中での二千四百三十億円は決して多いとはいえないと思うのであります。実質減税にしても二〇%に満たない千七百六十七億円にとどまっていることは、財政硬直化のしわ寄せを大きく国民に負担させる結果となっているのであります。したがって、史上最高と言いながら、二〇%に満たないという減税規模は、決して誇示できるものではありません。自然増収とのかね合いから考慮すべきであると思うのであります。また、自然増収を一般会計の歳入にそのまま組み込むという予算編成に問題があるのではないかと思うのであります。政府は、三年前の税調の長期答申を実現したことによって、所得の減税は一応達成したとお考えのようでありますが、経済成長は今後ますますインフレ的な傾向をたどり、これによって税の増収も間違いないものと考えられるのであります。したがって、その相当額は当然減税に充てるべきであると主張するものでありますが、この点について総理、大蔵大臣の所信をお聞きしたいと思うのであります。 給与所得控除は、限度額が所得の三百十万円超の三十六万五千円から四百十万円超の五十万円に引き上げられましたが、これはサラリーマンの必要経費ともいうべきものであり、一方では比例的に必要経費を容認している点を見るならば、昔から論議の中心となってきた租税の公平という見地から、はなはだ納得ができかねるのであります。たとえば納税人員と国税総額を占める割合を見た場合、納税人員は国税総額の伸びをはるかに上回っており、自然増収も七・一%に見込まれているのであります。したがって、物価の上昇率の二・一%と年々の生産性の上昇、名目所得の上昇、生活水準の向上とで、毎年繰り返される減税効果は皆無に等しく、三年前の百三万円の答申達成も、いまでは色あせたものと言う以外ありません。国民の税負担の軽減を総合的に考えた場合、わが党がかねがね主張してまいりました課税最低限を百三十万円にすべきであることを再び強く主張するものであります。総理、大蔵大臣の勇断を特に期待してやみません。 次に、法人税についてであります。税調の答申案を見ますと、当初は、「新しい財源を見つけることが困難である事情からこの際は法人税負担を引き上げるのが適切な方法である」と、税率の引き上げに対しては積極的に支持をしておりましたが、最終の答申では、「若干の税負担の増加を求める以外にない」と変わり、「諸外国に比べて相対的に低い」といった個所が削減されて、はなはだ消極的なものになってしまったのであります。この点については、当初は確かに大蔵省では二%の引き上げを予定していたはずであり、それが保留分については現行に五%増税し、三六・七五%になる付加税を課するようになったのであります。ここで非常に疑問に思うことは、なぜ当初の線から後退した税率で終わってしまったのか、財界の圧力に屈してしまったのではないかということであります。 第二は、新税が計画されているということで二%に満たない税収を自動車新税等に充てるのではないかということであります。私は付加価値額の配分から見ても、三%以上に引き上げるべきであると思うし、そうすることが民間設備投資の抑制につながり、さらにまた民間投資の急速な拡大が社会資本とのアンバランスを生んでいる実情を是正するためにも、三%以上引き上げることが社会資本を充実させることになり、膨大な歳出需要にも充てることができると思うのでありますが、この点について総理、大蔵大臣の御見解を承りたいと思います。 続いて、利子・配当の特別措置についてであります。利子・配当課税優遇については、かなり以前から論議されてまいりましたが、現在、わが国がなぜこのような措置をとったかについては、シャウプ勧告導入以来、経営と資本が一体化するところのいわゆる古典的資本主義を基礎とする法人擬制説の税法体系であるからであります。しかしながら、現在の経済の体制は、株主と会社は一体にあるのではなく、分離現象を起こしており、いわゆるアメリカにおけるコングロマリット化が進んでいるのであります。言いかえれば個人株主は経営と資本の分離によって力を失い、利子化した配当を受け、それを売るだけのものになっているのであります。そうして企業は互いに株を持ち、異種企業を合併していくという、いわゆる機関株主となっているのであります。これらの経済的権力を持つ大企業法人すなわち、機関株主の台頭が現代の資本主義下の大きな特徴になっており、このような状態が確立されつつあるとき、経済的権力を持つ機関株主は、ますます法人擬制説を主張してくることは論を待ちません。したがって、税調の答申が何回となく本則に戻すべきであると述べてきたにもかかわらず、実施でき得なかった理由はここにあると思うのであります。したがいまして、過去の市民社会の法理論上の法人擬制説を排して、法人実在説をとるべきであり、勤労所得者と配当所得者には平等に課税すべきであります。時流にかなわぬ改正は改悪にひとしく、これらの優遇措置は即時に廃すべきであると主張するのでありますが、大蔵大臣の御見解を承りたいと思うのであります。 最後に、税制の長期ビジョンについてお尋ねいたします。国民総生産世界第二位にランクされ、世界の注目を集めながら、その反面、放漫的財政によってインフレ的傾向はますます高進していくばかりであり、諸物価の相次ぐ高騰は国民生活を脅かし、所得税をはじめ電気ガス税、たばこ税、酒税消費税、または新税創設等、徴税攻勢はわずかな減税を追い越し、いまや税制に対する国民の非難は大きくなっていくばかりであります。政府は、この七〇年代にどのようにして、繁雑で、しかも難解な税制を改正し、税負担の公平をはかっていかれるのか、お伺いいたしまして私の質問を終わります。(拍手) 〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕
○国務大臣(佐藤榮作君) 上林君にお答えいたします。 先ほども戸田君にお答えいたしましたとおり、税は公平であり、また重税感を国民に与えてはならないことは、これは御指摘のとおりでございます。そこで、この重税感を与えないようにするためには自然増収の大部分を減税に充てよ、こういう御意見であったかと思いますが、私は、今回の税法改正は、中小所得者の所得税負担の大幅な軽減を実現した積極的な大型減税であると自負しております。特に、御承知のように、社会資本の充実その他財政需要の非常に大きい中で、一方におきまして法人税負担の引き上げもやると、こういうことをしながら大幅減税として減税をいたしましたことは、これはむしろ高く評価していただきたいと、かように存ずるのでございます。 次に、課税最低限をさらに百三十万にしろと、こういうお話でございました。先ほども申しましたように、百万円が実現すれば百三十万あるいは百五十万と、こういうような御意見になるのは、これは当然かと思います。しかし、私は今回の改正、これで全部がこと足りたと、こういうのではございません。しかし、今回の改正によりまして、税制調査会の長期答申、これを計画どおりに実施したい、おおむね国際水準にも達していると、かように思いますので、これをさらに大幅にこの際引き上げるというようなことは考えておりません。 今後の減税の方向は、どちらかといえば、社会党の戸田君に先ほどもお答えしたように、中堅サラリーマン階層、これを対象にした税率緩和が中心となるのではないだろうかと、かように考えております。なお、これらは専門的な税制調査会の御意見等にも待たなければならない、かように思っております。 次に、民間投資の急速な拡大が社会資本とのアンバランスを生じていることは御指摘のとおりと考えます。今回の法人税の増税は、資源の適正な配分を一つのねらいとしたものであり、時宜にかなった措置であります。かつ、その程度も現下の経済、財政事情から見てきわめて適切なものと、かように考えております。一部資本家の圧迫その他等を云々されましたが、私は適切な処置ではなかったかと思います。 その他の問題につきましては、大蔵大臣からお答えさせます。(拍手) 〔国務大臣福田赳夫君登壇、拍手〕
○国務大臣(福田赳夫君) まず第一は、減税の規模が自然増収に対して過小ではないかと、こういうお話でございますが、まあ自然増収がありますれば、これを減税に全部充てるわけにはいかないことはもちろんであります。国の財政需要、だんだんとふえてまいります。その国家的需要にも応じなければならない。また、現に国債を発行している、好況時に国債を発行している、非常に異例なことでございますので、これも減らさなければならない。さような国家需要というか、その全局をながめまして減税に充てる額というのも妥当なところに置くという配慮をしなければならないと、かように考えておるのでありまするが、しかし、先ほども申し上げましたように、国民の税負担は、今日世界的にはそう高いほうではございませんけれども、直接税の負担感というものは、これはいろいろと国民からも声を聞いております。そういうので、直接税の減税につきましては、今後とも努力をいたしていきたいと、かように考えております。また、所得税につきまして、給与所得控除を拡大せよ、また課税最低限を向上せよ、こういうようなお話でございまするが、今回の税制三法の改正案は、税制調査会の答申の完全実施をいたすものでございまするけれども、これをもって減税をピリオドというふうには考えておりません。なお、この上とも所得税につきましては、特に重点を置きまして減税をいたしていきたい、かように考えておりますので、その際、重要な問題として給与所得者の控除拡大、また課税最低限の向上ということには努力をいたしたい、すべきものである、かように考えます。 法人税につきまして、今回の一・七五%増徴というのが財界の圧力によってそうなったのではないか。二%という原案がそういうふうに修正されたのは財界の圧力ではないかというようなお話でございますが、これは財界の圧力というようなことは全然ございませんです。これは税制調査会において、この際、このような法人税の増徴を行なうべしという答申をいたしておるのであります。答申どおりにこれを実行したというのが実情でございます。また、将来これを三%に引き上げる考えはないかというお話でございますが、これは今後の問題として考えたいというふうに存じておりまするが、私は先ほども申し上げましたが、まあとにかく今後財政需要がだんだんふえる。それに対しましては、直接税という方面にはあまり重点を、財源調達を置かない、こういう考え方をいたしておることをつけ加えて申し上げさしていただきます。 次に、利子・配当税等の優遇措置、これは法人税体系の根本的な改革から手をつけなければ実現できないじゃないかというようなお話でございまするが、これは理論的にはそういう根本的な考え方と関連させずに実現はできるわけであります。しかし、それはそれとして、法人税の税法のあり方を実在説をとるかどうかというような問題は、今後の大きな議論の対象となるというふうに考えております。これらは慎重に検討をいたしてみたいというふうに考えておるのであります。 最後に、税制の長期ビジョンを示せというお話でございますが、これは先ほど戸田議員にもお答え申し上げましたが、今後わが国といたしましては、社会資本の立ちおくれという問題に取り組んでいかなければならない。道路五カ年計画の遂行、あるいは、おそらく新しく新幹線網の整備というような問題も出てくるでしょう。また、経済がどんどん進化するに伴いまして、この進化に均てんしない国民階層への配慮、社会保障、これの充実をはかることの必要ということも出てくるでしょう。そういうことを考えますと、私は先ほどわが国の租税負担率は一八%だ、先進諸国は三〇%以上になっておるということを申し上げましたが、この一八%という負担率が多少私は上がる傾向を持ってくる、こういうふうに思うのであります。その上がる差額はどういうふうに負担するかといえば、あるいは保険制度なんかにつきましては、保険料という問題も起きてまいりまするけれども、直接財政の負担となる面につきましては、これは物価に影響をしないということを特に配慮しながら、間接税の負担にこれを寄せていくということを考えるべき時期に来ておるんじゃあるまいか、さように考えます。しかし、それにいたしましても、先進諸国が三〇%というような高負担でやっていく、わが国は二〇%という程度の負担でやっていく、私は、それにいたしましても、低負担、高福祉国家、これが実現し得る、かように考えております。(拍手) —————————————
○副議長(安井謙君) 中沢伊登子君。 〔中沢伊登子君登壇、拍手〕
○中沢伊登子君 私は、民社党を代表いたしまして、ただいま趣旨説明のありました所得税法、法人税法及び租税特別措置法の租税三法につき、一括して質問を行ない、政府の見解をただしたいと思います。一、二重複する点があるかもしれませんが、およそものごとには原則というものがあります。租税政策においても二つの大きな原則があると思います。 その一つは、勤労者の生計費には課税すべきではないということであり、もう一つは、税の負担は公平平等でなければならないということであります。この二つの原則を踏まえて今回の政府税制改正案を見ますと、所得税の免税点の十万円引き上げ、税率の緩和、法人税の引き上げ、利子・配当課税の手直しなど、広範な税制改正を行なっているのでありますが、いずれも不徹底、不十分な措置に終わっていると申さねばなりません。大幅減税の推進、税負担の公平を求める国民の期待からは遠く離れたものであると断言せざるを得ないのであります。 以下、私はこれらの点について具体的提案を織りまぜて数点の質問を行ないます。 第一は、所得税の減税問題についてであります。政府は、今回の措置をもって課税最低限度額は欧米水準並みになったとし、今後とも所得税減税を行なう必要性は薄くなったと述べているのであります。確かに各国の標準家族の課税最低限度額を見ますと、アメリカ百三十三万円、イギリス七十九万円、西ドイツ八十八万円、フランス百十七万円と、わが国限度額とほぼ同じ水準にあります。しかし、これをうのみにするわけにはまいりません。その理由は、第一に、欧米の所得税制は、二分二乗方式に見られるように、わが国税制より給与所得者に有利になっていることであり、第二に、現状を手直しする程度の減税では、今後自然増収が大幅に増大し、租税負担率が急上昇すること、そして第三に、わが国の物価上昇が激しい今日、最低生活費が毎年大幅に上昇していることなどであります。これら三点を十分に考慮するならば、今後も所得税の大幅減税は緊急最大の課題であると確信するのでありますが、政府の今後の所得税減税の構想を承りたいのであります。あわせて、私ども民社党の主張する標準家族百五十万円までの減税を行なう意思が政府にあるのかどうか。また、いつまでに実現するのかについて御見解をただしたいと思います。 質問の第二は、共かせぎ世帯における配偶者控除の問題でございます。現在、共かせぎ世帯において配偶者控除を受けることができる所得限度は、給与所得者の場合十万円であり、これを給与の収入金額に直しますと、わずかに年二十二万五千円という低さであります。具体的に申しますと、家庭の妻が子供の将来のため、あるいはささやかでも一軒のわが家を持ちたいために働きに出ますと、月収入が約一万五千円をこえただけで、それまで夫の収入において受けていた十八万円の配偶者控除がなくなってしまうのであります。これはあまりにも酷薄無情な措置と申さねばなりません。しかもなお、ここ十年間上がりに上がり続けてきた物価高の中で、夫の収入のみではあすの暮らしにも困る世帯もあるのでございます。その上、政府は、昭和三十五年以降、労働力不足に対処するため、婦人の労働力活用を説き、その結果、現在では婦人労働者は一千四十八万人に達し、全雇用者総数の三二・八%にまでなっているのでございます。このうち夫を持つ婦人雇用者は四百二十一万人の多きにのぼっているのであります。その平均給与総額は三万二千円であります。したがって、これら夫を持つ婦人雇用者のほとんどは、働きに出たばかりに、夫の所得税において配偶者控除をなくし、税負担の増大を招く結果になっているのであります。まさに、政府の婦人労働力活用政策の片手落ちであると断言せざるを得ません。この点について、昭和四十一年の税制調査会の答申においても、配偶者控除を受けることができる所得限度を引き上げるべきであると政府に勧告をしているのでありますが、昭和四十二年に改正されて以来、今日まで三年間も所得限度は十万円で据え置かれているのであります。この際、政府は、来年度においてこの所得限度の大幅引き上げをはかり、家庭の主婦が安心して働きに出られ、勤労者の財産形成の一助になるよう勇断をふるうべきであると思うのでありますが、大蔵大臣の御見解を承りたいと存じます。 同時に、妻の勤労所得については、イギリスの例に見られるように、夫婦共かせぎによる家庭生活の快適さの犠牲並びに家事関係の費用の増大に伴う担税力の低下などを配慮して、妻の勤労控除を新しく設けるべきであると考えますが、あわせて御答弁をお願いいたします。 質問の第三は、法人税並びに交際費課税についてであります。現在の税制において、税負担の公平、平等の大原則を侵すものは、すでに論じ尽くされております利子・配当の優遇課税は言うに及ばず、その他、法人税並びに交際費課税をあげなければなりません。政府は、今回の改正において、実質上一・七五%の法人税引き上げを二年期限の臨時措置として行なったのでありますが、これは明らかに、法人税引き上げに反対する財界の圧力に屈した不徹底きわまりない措置と断言せざるを得ません。わが国の法人税は、昭和四十年に、当時の不況打開のため、三八%から三七%に、さらに昭和四十一年には三七%から三五%へと引き下げられ、現在に至ったのでございますが、この結果、先進諸国と比較して、わが国法人税は非常に低くなっているのであります。したがって、政府は、今後中小企業は別ワクとしても、法人税をもとの三八%にまで引き上げるべきであると思うのでありますが、政府の御見解をお聞かせ願いたいのであります。 次に、交際費課税についてでありますが、わが国ほど社用族が横行する国は他に見当たらないのであります。昭和四十四年度の交際費の支出見込み総額は実に九千十億円にのぼっているのでありますが、そのうち、課税対象になる金額はわずかに二千億円前後であります。交際費の増大は会社における一部高級幹部に対する実物給付になっている現状にかんがみ、この不公平、不平等を抜本的に改革するため、この際、政府は交際費の益金算入率を大幅に引き上げるべきであると考えるのでありますが、政府の決断のほどをお聞かせ願いたいのでございます。 以上三点の質問を申し上げたのでございますが、政府の明快なる御答弁を期待いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。(拍手) 〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕
○国務大臣(佐藤榮作君) 中沢君にお答えをいたします。 まず、税そのものが公平、平等、また、重税感を持たないように、小額所得者に高額に所得税を取ってはいかぬ、かように御指摘になりましたことについては、先ほどお答えをしたとおりでございます。したがって、もうおわかりだと思いますが、今度の課税最低限を引き上げることによりまして、欧米水準並みになった、かように考えても、これから所得税減税の必要性が全然なくなったと、かようには私も考えておりません。もちろん、これから国民所得の成長に応じた所得水準の上昇に伴う減税は当然に必要であろうと思いますし、特に、中堅以下の給与所得者に対する減税は今後とも努力してまいります。 中沢君は、百五十万円の減税を主張されましたが、これは、先ほども公明党や社会党にもお答えをいたしましたとおり、その気持ちはわからないではございませんけれども、税の体系から申しましても、所要財源から見ましても、いま直ちにこれを実施するということは無理でもあり、また、その必要もちょっと考えられないように思います。今後、具体的に所得税の減税をどのようにはかっていくべきかについては、税制調査会の御意見を十分伺った上で検討してまいりたいと、かように思います。 次に、法人税についてお尋ねがございました。今回の改正は、財界の圧力に屈したと、かような御発言でありましたが、決してそのようなことはありません。中沢君は、法人税率をさらに引き上げよとの御意見でありましたが、過去における法人税率改定の経過と、主要諸外国の法人税率の水準を考慮し、さらに、現下の財政経済事情を総合的に判断して決定したものであり、必要にして妥当なものと私は考えております。また、今後の法人税負担についても、今回と同様、そのときどきの財政経済事情や法人の企業活動状況等を総合的に判断しながら、弾力的に対処してまいる所存でございます。 次に、交際費課税につきましては、昨年度の税制改正でその強化をはかったのでありますが、なお問題を残していることは御指摘のとおりでありますので、来年度の税制改正の課題として税制調査会の御検討を願うこととしたい、かように思っております。 以上、私に対するお尋ねにお答えをいたします。他は大蔵大臣からお答えいたします。(拍手) 〔国務大臣福田赳夫君登壇、拍手〕
○国務大臣(福田赳夫君) お答えを申し上げます。 総理からもお答えがありましたが、所得税減税につきまして所得税の免税点をもっと引き上げろ、私も先ほど来申し上げているんですが、今回の免税点百三万円というのは、もう欧米先進国並みである。ではありまするけれども、それで決して満足しているというわけではないんです。直接税に対する負担感、こういう問題が、いま国民の間で広く話題になっていることはよく承知しておりますので、今後とも努力をいたしたい。ただ、百五十万円というと、私といたしますると、どうも失心しそうな数字に相なるわけでございます。まあそういうところまではなかなかむずかしいんでございまするが、逐次、漸進的に考えていきたい、かように考えております。 共かせぎの場合につきまして、特別の配慮をせよというような御意見であります。配偶者控除を受ける所得の限度額をきめておりますが、このきめておりまする趣旨は、これは小額不追求というか、そういう趣旨でやっておるのであります。給与の場合では、二十二万五千円ということになりまするが、他の所得者の処遇と比べるとかなり高い優遇措置を、妻なるがゆえにということでやっておる、そういう制度でございます。英国の場合を引例されましたが、英国の場合は、もとがこれは夫婦合算制であります。わが国の場合におきましては、個別に課税をするというたてまえをとっておりますので、このもとが違うので、ちょっとこれをなぞらえるというわけにはまいりませんけれども、婦人の問題につきましては、総理もいろいろと配慮をいたしておりまして、私にも何かと指示がありますが、共かせぎの問題以外の問題につきましても、まあいろいろと考えてみたいと、かように考えております。 それから、交際費の問題につきましては、総理からお答えがありましたが、ことし、四十五年度の税制改正につきましては、これは改正はいたしておりませんけれども、交際費使用の実情等をよく見守りまして、その見守った結果に従いまして、今後これが改正の要あるかどうかよく考えてみたいと、かように考えておる次第でございます。(拍手)
○副議長(安井謙君) これにて質疑の通告者の発言は全部終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。 —————・—————
○副議長(安井謙君) この際、日程第二及び第三をあとに回したいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(安井謙君) 御異議ないと認めます。 —————・—————
○副議長(安井謙君) 日程第四、訴訟費用臨時措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)を議題といたします。 まず、委員長の報告を求めます。法務委員長小平芳平君。 〔小平芳平君登壇、拍手〕
○小平芳平君 ただいま議題となりました訴訟費用臨時措置法の一部を改正する法律案について、法務委員会における審議の経過と結果を御報告いたします。 本法律案の要旨は、第一に、証人及び民事訴訟における当事者の日当最高額千三百円を千六百円に、また、鑑定人等及び刑事訴訟における国選弁護人の日当最高額千百円を千四百円にそれぞれ改めようとするものであります。第二は、国家公務員等の旅費改定に準じ、民事、刑事の訴訟における証人、鑑定人等の宿泊料、車賃の最高額を引き上げようとするものであって、宿泊料については、特別区において二千円を二千七百円に、その他の地において千六百円を二千三百円に、また、車賃については一キロメートルごとに八円を十三円にそれぞれ改めようとするものであります。 委員会におきましては、証人等の日当、宿泊料等の最高額を引き上げる根拠、証人日当の支給基準、国選弁護人の報酬等との関係、本法の臨時措置的性格にかんがみて、根本的改正の見通しについて等、熱心な質疑がありましたが、その詳細は会議録によって御承知を願います。 質疑を終わり、討論なく、採決の結果、本法律案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。 以上御報告いたします。(拍手)
○副議長(安井謙君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。 本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕
○副議長(安井謙君) 総員起立と認めます。よって、本案は全会一致をもって可決せられました。 —————・—————
○副議長(安井謙君) 日程第五、国立学校設置法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。 まず、委員長の報告を求めます。文教委員長楠正俊君。 ————————————— 〔楠正俊君登壇、拍手〕
○楠正俊君 ただいま議題となりました法律案について、文教委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。 本法律案は、秋田大学に民学部を増設し、佐賀大学に大学院を設置しようとするものであります。 委員会におきましては、秋田大学に医学部を増設する理由及び経過、医師及び看護婦の養成計画、大学院の機能、学術振興のあり方、産学協同、大学の管理運営の問題などについて熱心な質疑が行なわれましたが、その詳細は会議録によって御承知願いたいと存じます。 質疑を終了し、次いで永野理事より各党共同提案にかかる施行期日についての修正案が提出されました。 討論もなく、採決の結果、修正案及び修正部分を除く衆議院送付案はいずれも全会一致をもって可決せられ、よって、本法律案は全会一致をもって修正議決すべきものと決定いたしました。 以上御報告申し上げます。(拍手)
○副議長(安井謙君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。 本案の委員長報告は修正議決報告でございます。 本案全部を問題に供します。委員長報告のとおり修正議決することに賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕
○副議長(安井謙君) 総員起立と認めます。よって、本案は全会一致をもって委員会修正どおり議決せられました。 —————・—————
○副議長(安井謙君) 日程第六、道路交通法の一部を改正する法律案(内閣提出)を議題といたします。 まず、委員長の報告を求めます。地方行政委員長山内一郎君。 〔山内一郎君登壇、拍手〕
○山内一郎君 ただいま議題となりました道路交通法の一部を改正する法律案について、地方行政委員会における審査の経過及び結果を御報告いたします。 本案は、最近における道路交通の実情にかんがみ、その安全の確保と円滑化をはかるため、所要の措置を講じようとするものであります。 そのおもな内容は、酒気帯び運転の規制及び罰則の強化等、悪質事犯の排除の徹底をはかり、少年に交通反則通告制度を適用することとし、新たに歩行者の通行の安全及び駐停車の規制等を職務とする交通巡視員制度を設けるほか、都市交通の規制、歩行者及び自転車の保護、自動車運転者の資質の向上等に関する規定の整備をはかろうとするものであります。 委員会におきましては、酒気帯び運転の排除の徹底、少年に対する反則金制度の適用、交通巡視員の職務内容等について質疑が行なわれましたが、その詳細は会議録によって御承知願います。 質疑を終局し、討論に入りましたところ、別に発言もなく、採決の結果、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。 なお、本案に対して、自由民主党、日本社会党並びに公明党の共同提出にかかる附帯決議案を、全会一致をもって委員会の決議とすることに決定いたしました。 以上御報告いたします。(拍手)
○副議長(安井謙君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。 本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕
○副議長(安井謙君) 過半数と認めます。よって、本案は可決せられました。 —————・—————
○副議長(安井謙君) 日程第七、建築物における衛生的環境の確保に関する法律案(衆議院提出)。 日程第八、検疫法の一部を改正する法律案(内閣提出)。 以上両案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(安井謙君) 御異議ないと認めます。 まず、委員長の報告を求めます。社会労働委員長佐野芳雄君。 〔佐野芳雄君登壇、拍手〕
○佐野芳雄君 ただいま議題とされました両法律案の審議の経過と結果について御報告申し上げます。 まず、建築物における衛生的環境の確保に関する法律案は、興業場、百貨店等、多数の者が使用し、利用する特定の建築物について衛生的な環境の確保をはかるため、維持管理に必要な衛生基準を定めるとともに、建築物環境衛生管理技術者の制度を設けることを内容とするものであります。 ————————————— 次に、検疫法の一部を改正する法律案は、検疫伝染病から、発しんチフスと回帰熱を削除すること及び検疫対象の増大、コンテナ輸送の増加に対処して、検疫手続の効率化をはかる改正を行なうことを内容とするものであります。 委員会における両法律案の審議の内容は会議録により御承知願います。 採決の結果、両法案とも、いずれも全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。 以上御報告申し上げます。(拍手)
○副議長(安井謙君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。 まず、建築物における衛生的環境の確保に関する法律案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕
○副議長(安井謙君) 総員起立と認めます。よって、本案は全会一致をもって可決せられました。 —————・—————
○副議長(安井謙君) 次に、検疫法の一部を改正する法律案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕
○副議長(安井謙君) 総員起立と認めます。よって、本案は全会一致をもって可決せられました。 —————・—————
○副議長(安井謙君) 日程第九、国家公務員等の旅費に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。 まず、委員長の報告を求めます。内閣委員長西村尚治君。 〔西村尚治君登壇、拍手〕
○西村尚治君 ただいま議題となりました法律案につきまして、内閣委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。 本法案は、最近における国家公務員の旅行の実情等にかんがみ、旅費の定額を改定しようとするものでありまして、第一に、日当、宿泊料及び食卓料の定額を、内国旅行において約四〇%、外国旅行において約一五%引き上げること、第二に、移転料の定額を、内国旅行において約三五%ないし二五%、外国旅行において約三五%引き上げること等であります。 委員会におきましては、旅費の性格、今回の法改正の基礎となった実態調査の方法とその結果、宿泊料についての甲、乙両地方の区域区分の解消、移転料の等級区分の縮小等について質疑が行なわれましたが、その詳細は会議録に譲りたいと存じます。 質疑を終わり、討論なく、採決の結果、本法案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。 なお、本法案に対し、経済情勢等の変化に即応して旅費の改正につとめることを要望する旨の自民、社会、公明、民社四党共同提案にかかる附帯決議が付されました。 以上をもって御報告を終わります。(拍手)
○副議長(安井謙君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。 本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕
○副議長(安井謙君) 総員起立と認めます。よって、本案は全会一致をもって可決せられました。 —————・—————
○副議長(安井謙君) 日程第十、ガス事業法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。 まず、委員長の報告を求めます。商工委員長村上春藏君。 〔村上春藏君登壇、拍手〕
○村上春藏君 ただいま議題となりました法律案は、ガス使用者の利益の保護と、ガスによる災害の防止をはかるために、一般ガス事業者及びそのガス工作物に対する保安規制を強化するとともに、ガス用品の製造、販売について規制を行なうこととし、また、液化石油ガスの小規模導管供給事業の一部を新たに簡易ガス事業として公益事業規制を行なうことにするものであります。 委員会では、ガス事業のあり方を中心として質疑が行なわれましたが、その詳細は会議録に譲りたいと存じます。 質疑を終わり、討論なく、採決の結果、本法律案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。 以上報告いたします。(拍手)
○副議長(安井謙君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。 本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕
○副議長(安井謙君) 総員起立と認めます。よって、本案は全会一致をもって可決せられました。 —————・—————
○副議長(安井謙君) 日程第十一、空港整備特別会計法案。 日程第十二、経済及び技術協力のため必要な物品の外国政府等に対する譲与等に関する法律の一部を改正する法律案。 日程第十三、国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案。 (いずれも内閣提出、衆議院送付) 以上三案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(安井謙君) 御異議ないと認めます。 まず、委員長の報告を求めます。大蔵委員長栗原祐幸君。 〔栗原祐幸君登壇、拍手〕
○栗原祐幸君 ただいま議題となりました三法律案について申し上げます。 まず、空港整備特別会計法案は、公共の用に供される空港の設置、改良、災害復旧、管理等の整備事業に関する経理を明確にするため、一般会計と区分して特別会計を設置しようとするものであります。 ————————————— 次に、経済及び技術協力のため必要な物品の外国政府等に対する譲与等に関する法律の一部を改正する法律案は、譲与等のできるものとして現行の物品のほか、船舶、建物等を加えるとともに、譲与等の相手方として、新たに国連以外の国際機関を追加しようとするものであります。 ————————————— 次に、国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案は、国際通貨基金及び国際復興開発銀行への増資に応ずるため、出資額に関する規定を改めるとともに、基金に対する出資を外国為替資金特別会計の負担において行なう等の措置を講じ、さらに、これら基金及び銀行の理事の任命を内閣が行なえるようにするものであります。 委員会における三案の質疑の詳細は会議録に譲りたいと存じます。 質疑を終了し、討論なく、三案を順次採決の結果、いずれも多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。 なお、日程第十一及び第十二の二法案につきまして、沢田委員より自民、社会、公明、民社の四党共同の附帯決議案が提出されましたが、前者は全会一致、後者は多数をもって、いずれも本委員会の決議とすることに決定いたしました。 以上報告を終わります。(拍手)
○副議長(安井謙君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。 三案全部を問題に供します。三案に賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕
○副議長(安井謙君) 過半数と認めます。よって、三案は可決せられました。 —————・—————
○副議長(安井謙君) 日程第二、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とマレイシア政府との間の協定の締結について承認を求めるの件。 日程第三、所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国政府とオランダ王国政府との間の条約の締結について承認を求めるの件。 以上両件を一括して議題とすることに御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(安井謙君) 御異議ないと認めます。 まず、委員長の報告を求めます。外務委員長長谷川仁君。(拍手) 〔長谷川仁君登壇、拍手〕
○長谷川仁君 ただいま議題となりました二重課税の回避のためのマレイシアとの協定及びオラン.ダとの条約につきまして、外務委員会における審議の経過と結果を御報告申し上げます。 これらの条約は、わが国とマレイシア及びわが国とオランダとの間で、相手国にある支店等の恒久的施設を通じて事業を行なう場合の利得に対する相手国の課税基準、船舶、航空機の運用利得に対する課税減免並びに配当、利子及び使用料に対する課税軽減等について定めるとともに、二重課税を排除する方法について規定したものでありまして、マレイシアとの協定は、昭和三十八年に締結した旧条約にかわる新たなものであります。 委員会におきましては、これら二件について熱心な質疑が行なわれましたが、詳細は会議録によって御承知願います。 四月七日質疑を終え、別に討論もなく、採決の結果、両件はいずれも多数をもって承認すべきものと決定いたしました。 以上御報告申し上げます。(拍手)
○副議長(安井謙君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。 両件全部を問題に供します。両件を承認することに賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕
○副議長(安井謙君) 過半数と認めます。よって、両件は承認することに決しました。 これにて休憩いたします。 午前十一時四十九分休憩 —————・————— 午後一時三十四分開議
○副議長(安井謙君) 休憩前に引き続き、これより会議を開きます。 日程第十四、国務大臣の報告に関する件(日航機乗取り事件に関する報告)。 運輸大臣から発言を求められております。発言を許します。橋本運輸大臣。 〔国務大臣橋本登美三郎君登壇、拍手〕
○国務大臣(橋本登美三郎君) 報告を申し上げる前に、今回の日航機乗っ取り事件に関して、参議院各党の議員各位にたいへんな御協力にあずかり、かつまた、御心配をかけましたことにつきましては、心から御礼申し上げると同時に、今回の事件に寄せられました御協力に対して、深く感謝申し上げる次第であります。 日航機乗っ取り事件について、概略を御報告申し上げます。 去る三月三十一日発生いたしました日本航空機「よど」号乗っ取り事件は、御承知のとおり、関係者の努力により、同日、板付飛行場において、老人、女子、子供ら二十三人が救出され、次いで四月三日、韓国金浦空港において、山村運輸政務次官が身がわりとなることを条件に、残りの九十九人の乗客全員とスチュワーデス四人が救出され、さらに四月五日には、北朝鮮から山村運輸政務次官及び機長をはじめ三人の乗務員が「よど」号とともに帰国し、今後の犯人の取り扱いを別にいたしますと、一応の解決を見た次第であります。 本事件の解決に至りますまでの間における各党各派こぞっての御協力、御支援に対しまして、深く感謝申し上げる次第であります。 私は、事件発生後、即日、山村運輸政務次官を韓国に派遣し、乗客及び乗務員の救出に当たらせることといたしましたが、私自身も、四月一日、政府の方針により、韓国へ運輸省の特別機で十七時十分金浦空港に到着し、同日夜から直ちに韓国当局と協議しつつ、みずから事態の処理に当たることとなったのであります。 私は、韓国に出発するに際し、総理大臣、官房長官、外務大臣等と協議し、乗客の安全を何よりも優先させるという人道主義の立場を政府の絶対的基本方針とすることを確認いたしました。 このような基本方針に基づき、金浦空港においては、四月一日及び二日の両日にわたり、犯人たちに対し、乗客を安全におろせば希望の場所へ飛行させる、したがって、何とか乗客をおろしてもらいたい旨の懸命の説得を続けたのであります。 一方、この間、犯人たちの興奮状態をなだめて落ちつかせるように努力するとともに、当方の最後の提案を受け入れさせる素地をつくるための懸命の努力も続けました。まず、韓国政府の好意により、食料等をはじめ、くだもの、ジュース、たばこなどの嗜好品を犯人の要求どおりの差し入れを遅滞なく続け、犯人が心やすく気楽に申し出るような状態になり、毛布、薬など平常の状態に近いまでに飛行機内の空気を緩和することに成功したのであります。 翌日もまた、たばこ、チューインガム等の嗜好品など要求するなど、休戦状態となり、犯人が平静を取り戻したと思われます状態になりましたので、この時機を失せず最後の説得を行ない、無条件では乗客をどうしてもおろさないという犯人たちのかたい決意がわかりましたので、最後の手段である山村政務次官を身がわりとして乗客全員をおろすように提案し、これが犯人たちの受け入れるところとなったのであります。この時間が二日の午後五時ごろであります。私としては、山村政務次官の申し入れでありましても、最愛の部下を人質に出すことはまことに断腸の思いでありましたが、百余名の乗客を救出するためにはやむを得ない措置であったことを御了承願いたいと思うのであります。犯人たちはこの真実を込めた提案を承諾し、一挙に解決の方向に向かったのが二日の十七時、私が金浦空港に到着いたしまして二十三時間と五十分目であります。金山大使、山村次官、韓国政府当局との水も漏らさぬ協力一致の人道主義的な立場、体制がこの結果を生んだことと確信をいたしております。 この間、韓国当局は、軍事的にきわめて緊迫した状況下にあるにもかかわらず、このような日本の立場を理解され、最大限の協力をしていただいたのでありまして、この点、深甚なる謝意を表するものであります。特に、韓国閣僚が続々と空港に詰めかけ、乗客全員をおろすために不眼不休の説得を行なわれたこと、人道主義的立場からこの問題の解決に努力されたこと、また、北朝鮮向けに出発することに同意され、旅客に水、食糧、ジュース、薬品等の支給を行なったこと、あるいはわれわれに対して事務所、秘書を提供されたことなどにつきましては、まことに感謝にたえないところであります。さらに、北朝鮮を含めまして、今回の事件に際しまして人道主義の立場が関係者すべてに御理解をいただいたことに感謝するとともに、各国がそれぞれの立場において乗客の救出のために御尽力いただき、ついに事件の無事解決を見るに至りましたことは、人道主義の強さと正しさを示したものとして真に意義深いものがあると考えております。 なお、今回の事件がこのような形で解決を見るに至りましたことは、さきに述べました関係者、韓国政府、北朝鮮当局、ソ連その他国連関係者のこの人道主義に対する理解とともに、機長をはじめ乗務員の冷静、沈着な判断及び行動、並びに山村政務次官の勇気ある行動が大きな要因となっております。 今回の事件に関し、関係者一同は心身ともに極限を越え、冷静に最大、最善の措置を講じました。いまもなお、当時を思えばりつ然たる思いがいたすのであります。 今後かかる事件の再発を防止するために、政府といたしましては、直ちにやれるものは最善を尽くし、その上、法的に必要なるものは法律等を考えまして、諸般の対策を早急に講じてまいる所存であります。 以上御報告申し上げます。(拍手)
○副議長(安井謙君) ただいまの報告に対し質疑の通告がございます。順次発言を許します。青木一男君。 〔青木一男君登壇、拍手〕
○青木一男君 私は、自由民主党を代表して、日航機「よど」号乗っ取り事件について、政府の報告に対し質問を申し上げます。 まず、百余人の乗客が飛行機の中で三日間監禁され、全国民を深い憂慮におとしいれた「よど」号の事件が比較的すみやかに解決し、全員無事に母国に帰還したことは何よりも喜ばしいことでございます。 この結果を見るに至ったことは、ひとえに韓国政府と北鮮政府当局の人道主義の理念に基づく行為と協力によるものであり、深甚の謝意を表する次第であります。また、石田機長以下乗務員が、乗客の安全を第一義とし、冷静沈着、事に処し、よくその大任を果たした労苦を多とし、深く感謝するものであります。さらに、身をもって全乗客を救出した山村政務次官の勇気と犠牲的精神に対し深甚なる敬意をささげるとともに、かかる責任感の強い政治家をわれわれの同僚から出したことについて、無限の誇りを感ずるものであります。(拍手) 私がふしぎに思うことは、「よど」号事件についての国会の論戦、新聞の論調、「よど」号の羽田帰着のときの記者団の質問を通じて、題目が「よど」号の福岡出発以後のことに集中されておるということであります。しかし、外国に飛んでしまってはわが国の思うとおりにならないことはあたりまえであります。私は、問題の重点は、福岡を立たせたことにあると思います。全員無事に帰れたのであるから、今回のコースが最善であると思っている人もあるかもしれません。しかし、今回の成功には偶然の要素が多く、当時の条件下で福岡を立たせたことは、乗客の安全という見地からも非常に冒険だったと思います。また、乗客の安全、即犯人の命に従うことであるときめている人も少なくありません。空中にあるときは、まさにそのとおりでありますが、地上で警察の保護圏内にあるときに、なお、同じ方式が通用するとなると警察無用論となるのであります。それでは犯罪の成功を保障するようなもので、事件の再発防止ではなく、奨励になりかねないと思います。私は、地上では警察の責任で乗客の救出に全力を尽くすべきであって、その点は他の犯罪の場合と異なるところがないと思います。警察の責任といっても、直ちに実力を行使することを意味するものではありません。警察も常に乗客の安全第一を考えるべきものでありますから、ケース・バイ・ケース、最善の道を講ずることになるのであります。 「よど」号事件を顧みて反省すべき点は多々あります。今回のような大事件は未然に防止できなかったものかどうかという点、また、「よど」号の福岡出発を阻止して国内で問題を解決することができなかったものかどうかという点、これらは、私だけでなしに多くの国民の疑問とするところであります。国会における質問によってこの間の実情を明らかにすることは、国会の責務であるとともに、今後の事件の再発防止のかぎとなるわけであります。その見地に立って、以下質問申し上げます。 まず、運輸大臣に質問します。私は、運輸大臣の現地における苦心と努力に対しては敬意を表するものであります。ただ、率直に言って、あれだけの必死の努力を福岡空港で試みていただけば、なおよかったと思うものであります。「よど」号を北鮮に向け出発させるかどうかはきわめて重大問題であり、日航からも指示を求めてきたと思います。運輸省としては、警察その他関係方面と協議して「よど」号を出発させない方針を決定し、現地に指令したと聞いておりますが、そのとおりであるかどうか、当時の経緯を伺いたい。政府の方針どおり、「よど」号を福岡にとどめて現地解決をはかることができれば、外国をわずらわすこともなく、最も好ましい方法であったことは明らかであります。ただ、乗客の安全という基本方針から見て適切であったかどうかという点に問題があるわけであります。北鮮への出発を遅延した場合の機内の危険の程度についてはいろいろの見方がありましょう。さりとて、北鮮に飛ぶことが必ずしも安全の道とは考えられなかったと思います。安全航空の保証をとりつける前の北鮮行きは、明白に不法侵入でありますから、非常な冒険であり、少なくとも早期帰還はむずかしかったと思う。したがって、警察庁や運輸省が出発させないと決定したのは正しい判断だと思います。政府の方針に反しての離陸は、何ぴとの責任において行なわれたものであるか、伺いたいと思います。石田機長の独断によるものと伝えられておりますが、その理由について、機長の報告したところを伺いたいと思います。独断専行であっても私は機長を責める気持ちはありません。それは日航の定めたこの種の事件に対処する準則に従っていると考えるからであります。 中央で「よど」号を出発させないと決定した以上、機長の意思いかんに関係なく、出発を阻止する方法と時間は十分にあったのであります。現地では、最終的に給油バルブを閉じる方法をとることに決定したが、実行段階での行き違いで失敗したと伝えられておりますが、真相はどうであったか、伺いたいと思います。 次にお尋ねする問題は、運輸大臣、国家公安委員長及び総理に対する共通の質問でありますが、運輸大臣から一括して御答弁されてもけっこうであります。 本件のような事件の起きた場合、現地の最高責任者は何ぴとが当たるべきものであるか、行政機構及び責任上の問題としての政府の見解を伺いたいと思います。 機長が飛行中に武器を使用して脅迫された場合、犯人の命令に従うことは不可抗力と認むべきであります。しかし、一たん着陸し、警察の保護圏に入った場合は事情が異なる。福岡に着陸してからの「よど」号は、もはや経常の航空業務の対象ではなく、純然たる犯罪の対象と化したのであります。乗客救助の責任も警察の手に移っていることは明らかであります。したがって、乗客をいかにして救出するか、乗客の安全を確保するため、最後の手段として犯人の指示する北鮮向け離陸を認めるかどうかということも、警察を中心とし、関係当局が、機内の状況、外交関係までも考慮した上の総合判断で決定すべきであって、もはや機長や日航独自の判断にまかすべき段階ではなかったと思いますが、政府の見解を伺います。 次に、運輸大臣にお尋ねします。今回の事件で、「よど」号が着陸してからも、機長が、乗客の安全のためには北鮮に飛ぶ以外に方法なしと即断したことに問題があるのである。この点は、日航の平素の教育訓練に関連があります。日航の制定した「機上不法行為に対する乗員の対応措置」という規程を見ますと、犯人から着陸を命ぜられたる場合には、乗客がすみやかに解放されるように努力することとあるだけで、警察との連絡については一言も触れておりません。自力解決の意気は壮としますけれども、警察の力を借りずして乗客の解放を実行するという案は、現実を無視したものであり、解放の努力が成功しないときは、乗客の安全のために犯人の指示に従うという飛躍した結論になりかねないのであります。また、日航の対応措置中には、犯人から国外へ飛ぶことを命ぜられた場合の措置については一言も触れておりません。これも大きな欠陥であります。政府は、日航及び他の航空会社のこれらの規程を改めさせる考えがあるかどうかを伺いたいと思います。 次に、国家公安委員長にお伺いします。今回のような大規模な乗っ取り事件が起きたことに対し、国民は非常に遺憾に思っております。また、「よど」号が長時間福岡空港に滞留していたのに、重大犯人を国外に逃亡させ、また、乗客救済の任務を自己の手で果たし得ず、韓国及び北鮮、その他諸国の援助を求めねばならなくなったということについて、心ある国民は非常に残念に思っております。いかなる事情があるにせよ、警察の威信を内外に失墜したものと思いますが、「よど」号事件について国家公安委員会の見るところを委員長より伺いたいと思います。 犯人は赤軍派の学生であったということでありますが、武装蜂起の演習までやって、大量に逮捕された過激分子の仲間である。また、北鮮またはキューバに渡って軍事訓練を受ける計画を持っていると報ぜられた連中のしわざであります。徹底的に捜査し、今回のような大事件の発生を防止すべきではなかったかと思う。公安委員長の見るところを伺いたいと思います。 現行法制は、国民の自由と人権を尊重擁護することに徹しておるために、犯罪予防を目的とする捜査が非常に困難となっている。この法制上の不備が警察の事前防止の活動を制約しているという事情があるかないかを伺いたいと思います。 三月三十一日、警察庁は関係方面と協議の上「よど」号を発進させないことを決意し、現地に指令したと聞いておりますが、その決定の理由と、それがどうして守られなかったか、その間の事情を伺いたいと思います。 私は、あのときラジオを聞いていて、「よど」号を出発させるべきではないと考えた。イスラエル人を乗せたスイス機と異なり、乗客に怨恨を持つわけでもなく、また外国に脱出を目的とする犯人が、自分も犠牲となる爆破をやるはずがないと思いました。また、逃亡不可能な場合であります。乗っ取りだけであるなら比較的軽い刑で済むのに、極刑を覚悟して殺傷をやるはずがないと思いました。また、やけくそになるという危険もありますが、犯人が多数ということは、冷静な判断を期待できると思ったのであります。したがって、「よど」号の出発を阻止しても、乗客に危害を加える危険性は比較的少ないと判断した。これに反し、北鮮へその了解なしに飛ぶことの危険率がはるかに高いと判断したのであります。北鮮の空中、地上の警備が厳重で、不法侵入機が撃墜される危険性があり、またかりに機が安全に着いたとしても、乗客の早期帰還は期待できないと判断したからであります。日航の長野部長は、参議院で、韓国が撃墜しないように米軍に頼んだと証言しているほどであります。一部には、金浦に寄ったのがいけない、平壌に直行することが一番安全で、早期解決の道であったと論じている人もありますが、それは当時すでに北鮮から安全保証の了解を得ていた人でなければ言えない論であろうと思うものであります。したがって、警察庁が出発阻止を決定したことは当然であると私も思う。 この種の重大犯罪の再発を防止するには、万難を排して犯人を逮捕して処罰し、その犯行目的を失敗に終わらせることが一つのきめ手であります。今回の事件で、犯人が国外脱出の目的を達成したことは遺憾であります。この見地から、今後に処する方針について、委員長の見解を伺いたいと思います。 次に、外務大臣にお伺いします。外務大臣は、三月三十一日夜の段階で、「よど」号の金浦空港出発に反対されていたようでありますが、その理由について伺いたい。また、その理由は、「よど」号の福岡出発にも適用されるものであったかどうかを伺いたいと思います。 次に、金浦における「よど」号の国際法上の地位についてお伺いします。「よど」号は航空協定による合法的の存在ではない。犯罪による略奪された飛行機であり、その犯罪は金浦空港でも継続しており、「よど」号処理の管轄権は韓国側にあったと思うが、どうでありますか。韓国政府はその法的地位にもかかわらず、よく日本側の意図を了解し、乗客の救出に全力を尽くしていただいたことは感謝にたえないところであります。二日まで説得を続け、三日に乗客全部が日本に帰ったのであるから、大成功であったと私は思います。外相の見るところを伺いたいと思います。 「よど」号の北鮮側の取り扱いについてお伺いします。北鮮側が四月三日の「よど」号の乗り入れについて、事前の了解なしに入ったのであるから不法侵入であり、有罪であるという見解をとったにもかかわらず、人道主義の立場から、山村政務次官と乗務員を直ちに帰さしてくれたことは、重ねて感謝しなくてはなりません。犯人たちがいま北鮮でいかなる処遇を受けているか、判明しているならば伺いたいと思います。 次に、法務大臣にお伺いいたします。昭和四十三年三月の参議院予算委員会で、私は過激派全学連の暴力行動に対し、破壊活動防止法を発動して取り締まるべきではないかと質問したのに対し、法務大臣から、破防法を適用する方向で検討中であるとの答弁がありました。公安調査庁では、赤軍派学生に対して破防法を適用したのであるかどうか、これからやる方針であるかどうかを伺います。現行破防法は、その適用についてこまかい制約があって、有効な事前取り締まりに適しない事情があるというならば、その事情を伺いたいと思います。 次に、総理にお尋ねいたします。今回の「よど」号事件でいろいろの国際問題が起こったのは、「よど」号を福岡から出発させたためであります。政府のとった措置について批判や反省があるとすれば、その重点は福岡出発までの措置についてであるべきであります。三月三十一日、警察庁は「よど」号を出発させないという方針を決定した。しかるに、事実「よど」号が出発してしまった。それは中央でも現地でも関係者間の連絡が不十分であり、中央の方針が現地に徹底しなかったためであると思います。現に日航の長野部長の証言によれば、「よど」号を板付に帰るように命令してほしいと米軍に依頼しておる。私はそれくらいなら、なぜ板付を出発さしたかと言いたいのであります。今後に備え、警察を中心として、空港における総合行政体制を定めておき、事あったとき迅速妥当な処理をはかることが必要であると思いますが、総理のお考えを伺います。 次に、この種犯罪の再発防止には、政府はいかなる対策を考えているか伺いたい。刑罰法や条約の整備その他いろいろな案が含まれますが、根本的には、小学から大学に至るまで教育を刷新し、人倫の道を教え、この種の社会の平和を乱す犯罪は人道と文明への敵であり、許しがたい悪であるということをたたき込む必要があります。それと同時に、大学や高校の学生が過激活動におちいる原因を除くことに努力せねばなりません。また、過激派学生に対する警察の取り締まりを徹底的に実行することであります。 また、この種非人道的の犯罪を許さないという世論の強い圧力が必要であると思います。犯人は英雄気分でおるかもしれません。若い世代の人々がその風潮に感染しないようにすることがきわめて肝要であると思います。総理のお考えを伺いたいと思います。 国の最も重要な行政である警察について、総理大臣が指揮監督権のないいまの制度は憲法に抵触するというのが私の持論であることは、総理も御存じのとおりであります。総理は今度の事件に関連し、この種犯罪の予防と事後の処理について、中心機関として働くべき警察が総理の指揮下にないということの不合理と不便を感じられたかどうかを伺います。私もこの席で総理に対し、警察行政についての責任に触れ得ないのをすこぶる遺憾に考えております。 次に、韓国と北鮮に対しては無条件に感謝すべきであり、非難めいた言辞を弄するのは非礼であると私は考えます。今回の事件を機として北鮮との関係を改善すべしとの説があります。漸次友好関係を増すことはもちろん努力しなければなりませんが、今日の両国に対するわが国の基本的外交姿勢の差異は、複雑な国際的沿革のある結果でありまして、これを変更することは慎重を要するものと考えます。総理の御所見を伺って私の質問を終わります。(拍手) 〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕
○国務大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。 警察及び空港関係機関が、乗客の安全と救出という見地から、「よど」号の板付空港からの発進を阻止し、犯人を説得する方針で臨んだことは、当時の状況下では妥当なものであったと私は考えます。しかし、残念ながら、結果的には、関係者の期待した日本国内での解決はできないで、近隣諸国に多大の迷惑をかける次第となったことはきわめて遺憾に存じます。また、乗客、乗務員を板付空港で救出することができなかったのは、犯人たちが凶器を用いて乗客、乗務員を脅迫し、無理やりに「よど」号を発進させたためであり、機長としては、急迫した機内の情勢から見て、乗客の安全を確保するためには、犯人の目的地に飛行する以外に方法はないと判断して、空港の許可なく離陸したものでございます。この点をぜひ御理解いただきたいと思います。 青木君が御指摘のとおり、今回の事件は人間性を逸脱した、手段を選ばぬ暴挙であり、憎むべき反社会的行為であると言わざるを得ません。政府としては、再びかかる事件が起こらないよう万全の措置を講ずる方針であります。特に極左暴力集団の取り締まりを徹底させると同時に、航空機利用の犯罪に対して重い刑罰を定めた特別の罰則を設けることを検討しております。また、若い世代が正しい価値観を持つように、今後、学校教育の面についても徳性の涵養に一そう努力したいと考えております。いずれにいたしましても、これは国民全体の問題であり、人間尊重の国民世論を喚起するようつとめてまいる決意であります。 次に、警察の指揮監督の問題でありますが、本件処理にあたって、警察が直接総理大臣の指揮監督下にないことによって不都合が生じたことは一つもありません。現在の国家公安委員会が警察を管理している体制で何ら問題はないと考えております。 次に、昨日も衆議院本会議で橋本運輸大臣が御説明したことによりまして、本事件については、大多数の国民の御理解を得たものと確信いたしますが、今回の事件発生にあたって、韓国政府は人道的見地に立って乗客の救出に誠心誠意協力していただいたのであります。日本国民として、その善意に対し、心から感謝するのは当然であります。また、北朝鮮当局にも多大の迷惑をかけましたが、山村運輸政務次官、乗り組み員及び「よど」号をすみやかに送還せられたことに、私は深く心から感謝しております。 近隣諸国との友好関係を増進することは、わが国の基本方針でありますから、今後ともその方針に沿って努力いたしますが、未承認国との接触については、国際情勢全般を考慮しつつ慎重に対処する考えであります。誤解のないようにお願いをいたします。 以上、お答えをいたしますが、本件が起こりまして以来、国民、また、社会党をはじめ、各党から寄せられました一致した政府の御鞭撻に対しまして心から感謝の意を表しまして、ただいまのようなお答えを申し上げます。ありがとうございました。(拍手) 〔国務大臣橋本登美三郎君登壇、拍手〕
○国務大臣(橋本登美三郎君) 青木さんの御質問にお答えを申し上げます。 このうち、佐藤総理から御答弁がありましたので、重複を避けまして、私関係のものだけを申し上げたいと存じます。 御承知のように、今回の事件は非常急迫の事件であります。通常いわゆる飛行機の運航という、平常運航の状態ではありませんので、したがって、福岡空港における事態は、すでに刑事事件とともに、航空行政といいましょうか、飛行行政とが一緒になった事件であります。したがって、飛行機が地上にあります場合は、当然、警察を中心にして空港当局が協力してこれを解決する、これが大体の、当然の方針でありますし、もし、この飛行機、問題を持った飛行機が国外に出た場合は、外務省その他防衛庁、関係当局と協力してこれを解決する、これが私たちのとっておる態度であり、また、今回もその方針で処したわけであります。 第二の機長の意見についてのお話でありまするが、先ほども総理からお話がありましたように、私たちも機内の状況というものは十分に察知することができません。しかしながら、当時におきましても爆弾を持っておる、あるいは日本刀を持っておる、こういう状況は外部からも察知されましたが、それによって機長がどのような急迫の状態におるかということは、十分に察知しないわけであります。しかし、問題は国内に起きた問題でありますからして、これを国内において解決したい、また解決すべきである。こういう方針のもとに関係当局と相談をいたしまして、この問題の解決に当たり、まず犯人を説得し、乗客をおろそうということをいろいろの方法で試みました。この結果、御承知のように、老人、子供、病人二十三名をおろすことができたのであります。しかし、なお犯人は、緊急、急迫なる状態において、機長その他をいわゆる脅迫し続けて当局の命令を聞かずして出発したことは、当時の報道等によっても御了解が願えると思います。したがって、機長がほんとうに自由の意思で飛行機を運航できるかどうか、あるいは今回のように北朝鮮という地理について、機長及び副操縦士、あるいは機関士ともに全然知識がない。当時、北朝鮮に行くということでどうしても聞かないという状態でありましたので、載せました地図は、小学校で使った、全く京城と平壌との差がほとんどないような地図だけで、現在持っているいわゆる飛行地図というものを持っていない、そういう状態でもできるだけの資料は提供せしめる、こういうことで、いわゆる機中にそのような地図だけを載せて出発させる、こういう状態でありましたからして、機長としては安全運航について非常に心配せられたであろう、かようにわれわれは想像できるわけであります。したがって、外部からしてこれをいろいろな指図をすることは非常に困難であります。機内の状況がわかりませんので困難であります。もしまた、いろんな連絡が可能であったといたしましても、その機内には犯人がおるのであります。したがって、これを犯人が聞いておるのでありますからして、いわゆる警察的な連絡というものはもちろん困難であります。したがって、機長がいかにしてこの飛行機を安全に、人命を助けることができるかという機長の判断によってこれを行なう以外に道がなかった、その点も、当時の状況からして御判断が願えるかと存ずるわけであります。 なお、この問題が、御承知のように、国際関係に発展いたしました後におきましては、外務大臣からして適切なる措置をお願いして手配をしてもらったことは、外務大臣からもお話があろうと思いますので、そのほうに譲ることにいたします。 政府としては、私、運輸大臣として、このような問題、ハイジャック問題は、今後二度と起こしてはいけない、これは青木さんがおっしゃるとおりであります。したがって、あらゆる時点において、事前にこれを防止することをまず考えなければならぬ、しかし、起きた場合にはどうするかという問題があります。これらにつきましても、今後、今回の経験を十分なるわれわれの資料といたしまして、いかにして人命を安全にこれを救出し、あるいは安全を保つことができるか、こういうところに重点を置き、何せ犯罪によってはいろいろありましょうけれども、今回のごとき、いわゆる異常神経を持った犯人が乗った場合には、どうすれば人命が尊重できるかということに主眼を置いて、そうして今後の対策も考えていきたい。と同時に、この犯罪が二度と起こらないようにすべき道はどうだろうか、たとえば空港内におけるところの警察権を含めた統一、あるいは機長の権限、こういう問題等もあわせて十分に検討をして、二度とこのようなことのないようにいたしたいというのが運輸大臣としての私の考え方であります。 以上、十分でありませんが、御答弁申し上げます。(拍手) 〔国務大臣荒木萬壽夫君登壇、拍手〕
○国務大臣(荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。 今回のような大規模な乗っ取り事件は未然に防止できなかったものか、福岡で犯人を逮捕し、乗客全員を警察の手で救出することができなかったものかというお尋ねでございます。赤軍派については、その構成員の動向を厳重に監視していたのでありますが、本事案については事前の情報をキャッチし得なかったことは、まことに遺憾であります。 また、本事案の処理にあたっては、警察としては、あくまで「よど」号を板付空港から発進させないという、空港関係機関との間でも一致した方針のもとに、考えられるすべての手段を尽くして安全救出につとめましたが、発進を阻止し得なかったものでございます。本件事案を未然に防止し得なかったこと、並びに板付空港で乗客、乗組員の全員救出及び犯人の逮捕をなし得なかったことは、まことに残念に存ずる次第であります。今後この種事案が再び起こらないよう、関係機関とも緊密に連絡、協力して、万全の措置を講じてまいりたいと存じます。 次に、赤軍派は武装蜂起の演習までした過激分子の仲間であるので、予防措置について、もっと万全をはかるべきではなかったかというお尋ねでございます。警察は、赤軍派の不法行為を未然に防止するため、従来からその行動の把握につとめてまいりました。その結果、今日まで、四十四件、二百八十八人を検挙し、三月に入ってからも、赤軍派の最高幹部である塩見孝也議長ら四人の幹部を検挙しております。今回の日航機乗っ取り事件に関する企図を事前に把握できなかったことはまことに残念でございます。赤軍派は、相次ぐ検挙によって、最近では組織を地下にもぐらせており、その動向を把握することはかなり困難な状況になっていますが、警察としては、国民から負託された治安維持の重責を果たすべく、現行法令に基づき厳正な警察措置を講じて、赤軍派などの不法事案の未然防止に万全を期する所存でございます。 次に、三月三十一日、警察庁は「よど」号を出発させないと決定しているが、その理由等についてどう考えるかというお尋ねでございます。警察が「よど」号を板付空港から発進させないという方針をきめましたのは、本事案が日本国内において発生した事案であるので、警察としては、乗客、乗り組み員の安全救出及び犯人の検挙を行なうべきものであると判断したからであります。このような観点から、警察、空港関係機関の一致した方針として、「よど」号を板付空港から発進させないためにあらゆる手段を尽くし、その上で救出、検挙のため種々対策を講ずるよう準備していたところであります。しかしながら、犯人たちは、乗客、乗務員を人質として、凶器を使用して脅迫態度を変えず、また、老人、子供など一部乗客をおろすやいなや、突然の発進をしたために、結果的には、発進阻止のための技術的手段も功を奏せず、まことに残念ながら、本事件を国内で解決できなかったものでございます。 〔国務大臣愛知揆一君登壇、拍手〕
○国務大臣(愛知揆一君) 本件の処理にあたりましては、終始一貫、人命の保護、人道的な取り扱いということに徹してまいりました次第でございます。 お尋ねの第一点でございますが、三月三十一日夜の段階ではどういう考え方であったかということでございますが、三十一日夜の段階では、日航機「よど」号の安全航行について、いまだ北朝鮮側からの保証は得られていなかったわけでございます。そういう点からいたしましても、人命尊重の観点から、金浦において何とか乗客が自由になってもらうことがどうしても必要である、こういう観点に立って、私といたしましては、関係の方々の御協力によって、金浦において解決することについて努力を傾倒いたしたわけでございます。なお、その前、福岡出発についても同様な考え方であったかと、こういう趣旨のお尋ねでございましたが、私は、いま申しましたような気持ちでございましたから、あの時点におきましては、私としては、関与し得ないままに航空機が出発いたしたわけでございますが、もし、できるならば、板付で処理ができたらもっと望ましいことであったと、こういうような当時も心境でございました。 それから、第二のお尋ねは、金浦における「よど」号の国際法上の地位についてどういうふうに見ておるかというお尋ねでございましたが、ただいまもお述べになりましたように、航空協定による合法的な存在では「よど」号はなかったと解釈いたします。犯罪によって略奪された飛行機でありますし、その犯罪は金浦空港でも継続しており、同時に、「よど」号処理の管轄権は韓国側にあった。こういうふうに、お尋ねのとおりに私どもも考えるわけでございます。国際法上、国家は、国際民間航空条約の第一条にもございますように、自国の領空に対して排他的な主権を有しておるということが明記されておる関係もありまして、外国の航空機は出入や航行の安全その他に関して、その相手国の規制に服するのが当然でありますから、領土内、つまり韓国領土内に着陸している外国航空機、すなわち、「よど」号も同様でございます。そのような法律関係でありますにもかかわらず、韓国政府は、わがほうと完全な協力体制をとって、人道主義の立場に立って、乗客の全員救出のためにあらゆる努力を払ってくれた。韓国側の対処方針が、わがほうのそれと終始一致して非常な努力をしてくれたということにつきましては、この点から申しましても、私どもとしては感謝にたえない次第でございます。 それから、第三の、犯人が現在北鮮においてどういう状況にあるかというお尋ねでございますが、これについて、関連いたしますから、ちょっとその背景と申しますか、そこに至る環境を簡単に申し上げたいと思います。 四月一日には、日航機が、赤軍派学生が強硬に北鮮行きを主張してやまない状況にありましたことにかんがみまして、旅客の生命の安全の観点から、あるいは北鮮行きがやむを得ざる事態になることも考慮いたしまして、いろいろなルート、考えられるいろいろなルートを通しまして、平壌までの安全飛行について北鮮側の理解、協力を求めてまいりました。そうして、軍事休戦委員会を経て、平壌までの安全飛行、搭乗しておる者に対する人道的待遇を保証する旨の回答をわりあい早く入手することができました。このことは、同日の日赤に対する朝赤の回答によっても裏づけられておったわけでございます。 引き続き四月三日に、山村次官の勇気ある行動によりまして、一般旅客の安全が保証され、そうして、次いで同次官及び乗り組み員三名の出発が確定いたす時期におきまして、時を移さず、さらに、日航機が平壌に到着したならば、山村次官及び乗り組み員を乗せて、平壌から直ちに日本向け出発できるよう休戦委員会を通じて北朝鮮側に申し入れをいたしたのでございます。その要請に対しまして、北鮮側は、同日の午後七時ごろ、この要請に言及しつつ、「変化した状況のもとにおいては、貴方の要請に述べられた内容は保証することができない」と回答してまいったわけでございます。なお、「よど」号が金浦を離陸いたしましたのは午後六時八分でございましたので、おおむね北鮮内に着陸したほぼ同時刻にこうした回答が当方に入手できたわけでございます。 こうしたような経緯でございますから、政府といたしましては、あの環境の中、条件のもとにおきましてなし得る限りのことをいたしたつもりでございますけれども、御承知のように、北鮮側は、山村次官等に対して、日本側からは何の連絡もなかったということにして、不法入国として取り扱う旨述べた由でございますが、それはそれといたしまして、それにもかかわらず、政府が当初から、人道的な取り扱い、早期返還ということを申し入れておりました、その期待に沿って、山村次官等を機体ともどもすみやかに返還してくれましたことは、私どもとして、北鮮側に対して、この人道的な措置に対して深く感謝をいたしておる次第でございます。以上が、「よど」号が平壌に参りました、また帰りましたときの背景でございます。 次に、残された犯人が北鮮においてどういう状態におるかということにつきましては、ただいま現在のところでは、遺憾ながら、その現状はどういうふうになっておるかということについて御報告を申し上げ得る的確な諸情報あるいは資料を持ち合わせておりませんことを御了解いただきたいと存じます。 以上お答え申し上げます。(拍手) 〔国務大臣小林武治君登壇、拍手〕
○国務大臣(小林武治君) 破防法の適用の問題でございますが、過去におきまして、これらの団体に対して破壊活動防止法を適用したことはありません。しかし、実は四十三年の、青木議員の御質問の次第もあったのでありますが、当時、いわゆるまあ第一次、第二次羽田事件と、こういうものを契機にいたしまして、当時の三派全学連に対しまして破壊活動防止法を適用するということを法務省当局においても真剣に考慮したのでありまするが、その際の調査におきましては、彼らの組織がきわめて流動的であり、また、たとえば一昨年七月には三派全学連は中核派全学連と反帝全学連に分裂し、さらに昨年七月にはこの反帝全学連から解放派全学連と、こういうものが分離をいたしたのでありまして、彼らの離合集散がきわめてひんぱんであり、しかも役職員というものが相当数が毎年交代をいたしておる、一方、多くの役職員が刑事犯人として検挙されるなどの諸般の事情を当時総合判断いたしまして、その効果の点に疑問を持ったために実は適用しなかったと、こういうことに相なっておるのであります。 しかして、今回の赤軍派の問題でありますが、これは昨年九月、共産主義者同盟から分裂したきわめて過激なグループでありまして、昨年の秋、山梨県等におきまして彼らを大量に逮捕し、壊滅的な打撃を与えておったのでありまするが、本年に入りましてやや勢力を回復してきておると、こういう状態であります。私どもは赤軍派に対しましてはその実態の調査を進めておりますが、何と申しましても、ただいま申しましたように、その状態はきわめて流動的で、十分なまだ調査ができておらないのであります。これをいま推し進めておりますので、その結果いかんによっては、われわれとしても決然たる態度をもってこれに対処いたしたいと、かように考えておるところでございます。(拍手) —————————————
○副議長(安井謙君) 瀬谷英行君。 〔瀬谷英行君登壇、拍手〕
○瀬谷英行君 私は、日本社会党を代表して、ただいま報告のありました日航機乗っ取り事件について、総理はじめ関係閣僚に若干の質問をいたします。 今回の事件が、乗客及び乗務員に一名の犠牲者も出さず、機体もろとも無事帰国できたことを、何はともあれ喜びたいと思います。 また、今日に至るまでの経緯は別といたしましても、橋本運輸大臣並びに山村政務次官の献身的な御努力と、石田機長をはじめ乗組員各位の冷静沈着な措置に対して深く敬意を表明する次第であります。(拍手) われわれは、今回の事件では、何よりも人命が大切である、一刻も早く乗客と乗務員を無事に救い出さなければならないという立場に立って、党派を越えて協力し、国会における問題の取り上げ方にも慎重な配慮をしてきたつもりであります。 しかし、いま、この事件を振り返って詳細に検討してみますと、依然として不可解ななぞが残されております。昨日の衆議院本会議における各党の質問、参議院の予算、運輸両委員会の質疑を通じて明らかにされた限りでは、われわれの抱いている疑惑が少しも解明されておりません。その疑惑の最大のポイントは、「よど」号が、なぜ板付を飛び立ってから金浦に着陸するに至ったかという点であろうと思います。問題の解決は板付に着いているうちにすべきであったという点では、青木議員と私も同意見でございますが、金浦に着陸するに至ったという点では、多くのわからない点が残されております。三月三十一日、事件発生直後、これはテレビにも新聞にも明確に伝えられたことでありますが、警察庁より福岡県警に対する指示は、人質を乗せたまま飛び立つ場合でも、北朝鮮に直行せず、国内の他の空港か韓国に着陸せよという内容だったはずであります。また、総理の予算委員会における戸田君の質問に対する答弁では、議事録によればこのように述べておられます。「どうも北鮮の飛行場は使えそうにないというか、北鮮で入国を拒否しているんではないかと思える節があるわけでございます。したがって、北鮮上空から南下をしつつあるような話でございます。ただいま行く先がわからない。案外、われわれは心配はしているが、福岡まで帰ってくるかもわからない、あるいは途中でとまるかもわからない、そういうような状態でございます。」、総理は、こう述べているのでありますが、飛行機は途中でとまるかもわからないといっても、空港のないところで、かってに鳥がとまるようにはとまれないのでありますから、このことは、暗に韓国の金浦に着陸することを暗示しているように聞き取れるわけであります。そしてその次に、「いまメモが入ったところのその情報では、一たん北鮮に入り、三十八度線以南では韓国の飛行機がエスコート、それから北鮮上空になってから、北鮮の飛行機がこれを追っ払ったということになり、日航機を南下さして、金浦飛行場に着陸許可を求めている」云々、以上が総理の答弁の一部であります。警察庁から福岡県警に対する指示や、当日の総理の報告、答弁から推定をすれば、だれが考えても政府が日航機を北朝鮮にやりたくない、福岡で押えられないときでも韓国に着陸させようとしていたものと判断したくなるのであります。ところが、いままでの質疑の過程では、衆参両院とも、警察庁、外務省、運輸省、防衛庁、いずれも知らぬ存ぜぬの一点ばりであります。つまり政府としては、日航「よど」号を金浦空港に着陸させようなどとはみじんも考えていなかった。機長にまかせて平壌に飛ばせようとしていたということであり、韓国に着陸させようとしていたという話はマスコミのかってな想像ということになってしまうのであります。しかし、そのようにはたして理解してよろしいのでありましょうか。昨日の衆議院本会議をはじめとする国会答弁で、政府は、「よど」号の金浦着陸については全く関知しないし、指示した覚えもないと明言をされているのであります。したがって、われわれもそれを信ずることといたします。 しかし、それならば、「よど」号を金浦に誘導し、着陸をさせたのは一体だれが何のためにという疑問が出てまいります。この点、昨日も質問があったにもかかわらず、明確なお答えがありませんでした。石田機長は、平壌と思って着陸をしたら金浦だったと記者会見で述べております。北鮮のつもりでおりてみたら南鮮だったというのでは、これこそナンセンスということになるのであります。しろうとが風船に乗って飛んでいったのならいざ知らず、行ったことのない平壌に、夜間でも着陸できるほど経験の豊かな熟練をしたパイロットが、天気晴朗な日本海を、昼間、半島沿いに北方して、平壌と金浦を間違えるなどということは、われわれの常識ではとうてい考えられません。もし、機長をはじめ搭乗員がほんとうに金浦を平壌と信じて着陸をしたのならば、金浦空港の擬装工作や管制塔の応答等、いわゆるトリックプレーがよくよく巧妙に準備をされていたということになります。つまり金浦着陸は偶然の間違いや不時着ではなく、周到に、綿密に計画をされ、誘導された「よど」号捕獲のためのわなであったということになるのであります。 赤軍派と称せられる犯人グループの意図が那辺にあるか知るよしもありませんが、もちろんこのような事件を計画し、実行することは、犯罪の中でも悪質で、その動機のいかんにかかわらず、全く許しがたいものがあります。したがって、犯人を逮捕するためにわなを準備することをあながち非難すべきことではないかもしれません。しかし、日本政府が関知せず、依頼もしていない段階で、多くの危険をおかしてこの種のわなをかけることには、きわめて重大な問題があるのではないでしょうか。まかり間違えば、金浦に着陸したために「よど」号乗客の生命はどうなっていたかわかりません。もしも犯人が、山村政務次官と乗客との交換交渉をあくまで拒否したならば、あるいは韓国政府が、伝えられるように乗客をおろすまで無期限抑留という強硬態度に固執したならば、どういうことになったでありましょうか。不測の犠牲者を出す可能性は十分にあったと言わなければなりません。結果において、飛行機も乗客も無事で済んだものの、全く危険な橋を渡り、乗客は長期監禁の世界新記録の中で、四日間にわたる地獄の責め苦を味わったのであります。金浦着陸というよけいな道くさは、人命尊重という大原則が全く名ばかりで、人権も人命も、政治的思惑、国のメンツの犠牲になった好例であります。なぜ「よど」号を金浦に着陸させなければならなかったのか。このようなばかげた小細工に日本政府がほんとうに関与していないのならば、一体だれがたくらんだことか。アメリカか、韓国か、あるいは両国共謀か、いずれかということにならざるを得ないと思うのであります。調査をして真相を明らかにすることが国民の疑惑を晴らすことではないかと思うのでありますが、総理の御答弁を求めるものであります。 今回の事件で韓国と朝鮮民主主義人民共和国双方に多大の迷惑をかけたことは、率直に認めなければならないところでありますが、それはそれとしても、世界じゅうに知れ渡った今回の事件の最も疑惑に満ちたポイントを明らかにすることは、どうしても避けてはならないことであると信じ、いままで明らかにされていないだけに、あえてこの点を質問をするものであります。 また、今回の日航機乗っ取り事件は、乗客、乗員、飛行機が無事帰っただけで、犯人はみな取り逃がしております、その意味では、問題が解決したことにはなりません。国交のない国に逃げ込んだ犯人の処置は、今後の類似犯罪行為を防止する上でもきわめて重要だと思うのでありますが、政府としてはどのように対処されるか、この点も総理の見解を承りたい。 次に、運輸大臣にお伺いをいたします。すでに運輸大臣には、各委員会等においても質疑が行なわれておりますので、あえて重複を避けまして、いままで触れられていない問題について若干質問いたします。 今回は国内線の飛行機が対象になりましたが、飛行機の場合だけではなくて、船舶の場合もあり得ると思わなければならないと思うのでありますが、そのような想定に基づいた教育、訓練等をやっているのかどうか。特に、最近は合理化で船舶乗り組み員も少なくなっておりますので、もしも今回のような集団での乗っ取りを計画されるとすると、やはり相当考えなければならない問題があるのではないかと思うのであります。機長の権限、機長の判断、あるいは船の場合は船長の権限、判断を尊重することが、乗客と乗員の人命を守るためにも大切だと思うのでありますが、はたして船舶並びに飛行機ともども、立法措置を講ずる場合には考える気があるのかどうか。緊急の必要性については、船も飛行機も同じだと思うのでありますが、運輸大臣の見解を承りたいと思います。 防衛庁長官は事件当初、未確認情報でだいぶ人の気をもませております。講釈師、見てきたようなうそをつきという話があるのでありますが、撃ち上げられた対空砲火がおよそ五十発、前方にあらわれたるはミグ戦闘機八機と、こうなりますと、きわめて具体的で、「よど」号は硝煙弾雨の中をかいくぐって金浦にかろうじて帰り着いたと、こういうふうに聞こえるのであります。いままで明らかになったところでは、誇張されたうそが非常に多い。しかし、共産圏のことならまっかなうそでもかまわないということになるのでありましょうか。ミグ戦闘機八機をはるかにレーダーで捕捉するということはあり得ることでありますけれども、日本刀を持った犯人が幾らたくさん乗っているとしても、旅客機一機にミグ戦闘機八機が迎撃をしてくるということは常識的に考えられません。また、対空砲火五十発という点は、これはあったかなかったかわからないというふうに、きのうの衆議院本会議でお答えになっておりますけれども、対空砲火などというものは、もしあったとすれば、ごまかしがきかないのであります。人知れずぶっぱなすという性格のものじゃありません。この種の情報源がいずれも米軍ということでありますけれども、うその情報で自衛隊が行動するような事態が起きたならば、その危険度は「よど」号事件の比ではないと思うのであります。米軍筋の未確認情報に、当てにならない情報が意外に多いということを発見したのは、「よど」号事件の収獲ではないかと思うのでありますが、わが国が他国の紛争の渦中に巻き込まれないためにも、米軍情報に対しては冷静に対処する必要があると思うのでありますが、大臣の見解を承りたいと思います。 法務大臣にお尋ねをしたいと思います。今国会に間に合うように航空機強奪の罪に対する罰則をきめるということでありますが、先ほど運輸大臣にも質問したとおり、飛行機と同時に船舶のことも考える必要はないのかどうか、罰則はどう強化しようとも、乗っ取りに失敗をするか、計画が事前に発覚した場合でないと事実上は無意味であります。今回のように国外に逃亡した場合は、法の制定を急いでも間に合いません。逃げた魚の料理法を論ずるにひとしいことになります。気違いに刃物ということばがありますけれども、このことばは大体において単数を意味していると思うのであります。ところが「よど」号の乗っ取りの犯人の場合は、気心の合った気違いが集団で刃物を持っていたというような状態でありますから、このケースで事を起こされた場合には、飛行機の場合はもとより、船舶の場合も手がつけられないということになるのではないかと思います。そこで、法律は事実上制裁の目的を達することができなくとも、この逃げそこなってつかまった場合、あるいは失敗した場合を想定をして新たな法律を用意するとしても、船舶も飛行機と同様に、忘れては片手落ちになると思いますし、案外盲点となるおそれなしともしないので、法務大臣にお尋ねをする次第であります。 最後に、外務大臣にお尋ねをいたしますが、いかに法律を制定し、条約を批准し、国際協定を締結しても、この種の犯罪が起きて犯人が逃げ込むおそれのある当事国と国交が結ばれていなければ、実効が上がるわけがないのではないでしょうか。今回の事件を複雑にした要因の一つには、北朝鮮との政府間接触がなく、パイプが通じていないということがあげられるのであります。もしも北の権威を認め、朝鮮民主主義人民共和国との間に通常の国交関係が存在をしていたとすれば、犯人がこの国に逃げ込むことを可能とする条件もなかったかもしれません。また、この種の犯罪を防止する何よりも有効なきめ手としては、重い刑事罰を用意する以上に、わが国の周辺の国々と条約を結び、犯人の逃げ込める国を置かないことではないかと思うのであります。おそらく航空機がいかに発達をしても、日本から中南米まで乗っ取りの飛行機で飛ぶことは困難だと思います。だとすれば、今後のことを考えた場合、類似の犯罪者の目標となる対象国は、朝鮮民主主義人民共和国と中華人民共和国が考えられますが、総理は昨日の衆議院本会議で、北朝鮮を敵視したことはないということをお答えになっております。しかし、実際は鎖国同然の関係が何ら進展しておらないのが実情であります。人道上の問題である在日朝鮮人諸君の帰国問題すら暗礁に乗り上げ、万国博のような平和的催しすらボイコットして、ことばの上だけで敵視しないと言っても、実感はわかないのであります。南北朝鮮という分裂国家の不幸な現状は、われわれの手で簡単に片づくものとは思われませんが、今回の事件からは、政府も多くの教訓を得たはずであります。教訓を生かすことのできない者は政治家の資格がないと言わなければなりません。今回のような事件の再発を防止するだけでなく、ゆがめられた国と国との関係を打開するために、いかなる努力を払う用意があるか、決意のほどを明らかにしていただくことを期待いたしまして、私の質問を終わります。(拍手) 〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕
○国務大臣(佐藤榮作君) 瀬谷君にお答えいたします。 今回の問題で、ただいまも御指摘になりましたように、乗客並びに搭乗員、また山村政務次官、さらに「よど」号自身も無事に帰ってきたことは、何よりも喜ばしいことであり、私どもも、その間、関係された社会党はじめ各党、また関係各国にも御協力願ったことを心から厚くお礼を申し上げておきます。 そこで、そういう中にもただいま御指摘になりましたように、反省してみますると、なお幾多の問題があるようでございます。あのときにこうしたらどうだったろうか、ああしたらどうだったろうか、こういう反省がないわけではございません。その中の一つに、いま、金浦空港に着いたというその問題がございます。最初から金浦空港に着くことが予定されていたんじゃないか、こういうような疑問をなお持っておられる方も多数あると思います。昨日の衆議院での質問にも答えたのでございますが、だれも金浦空港に着くことを指示したものはございません。私は、機長は——(「そこがおかしいんだ」と呼ぶ者あり)それがとにかくわからないことですが、機長自身が幾多の通信をいろいろ発しておりますが、どうもその点が、平壌からの通信をキャッチできなかった、こういう状態でございますので、そこらに問題があったんではないだろうかと思います。私は、とにかくいずれにいたしましても、経過から見まして結果はよかった。しかし、ただいま言われるように、最初からだれか指示したものがあるのじゃないか、こういうような疑問が残る。こういうことについて、私は、もうだれもそういうことについて指示したものはございませんと、はっきり申し上げます。ただいまこれは、記者会見で石田機長が帰ってからこの間の事情もお話をしておりますので、私どもは、この石田機長の記者会見、その事実をそのまま御報告申し上げる以外に材料のないことをこの際御了解願いたいと思います。 ところで、まだ問題は、御指摘になりましたように全部が解決したわけではありません。これからまだ犯人がどういうようになるのか、犯人を取り逃がしておいて問題解決したと、これの言えないことも、ただいま瀬谷君の御指摘のとおりであります。しかし、との犯人がただいま北朝鮮当局からどんな扱い方をされるか、また、これに対して、その点がまだ現在では明らかでございませんから、ただいまのところ政府の考え方ははっきり申し上げるわけにはまいりませんが、国法を乱ったということ、これはもうはっきりしておりますので、私どもは、犯人が北朝鮮でどんな待遇を受けるか、それは別といたしまして、政府自身としては、この犯人が早い時期にわが国に帰ってきて、わが国においてこれの処置ができるように、そういうような事態が起こることを心から望んでおります。当面の状態は、いましばらくその推移を見なければ、今日とやかく申し上げると、せっかくの問題がいろいろこんがらがって、誤解を受けるようなことがあってはならない、かように私思います。ただ、いま申し上げ得ることは、これらの暴徒学生、これは国法を乱った者であるということだけをはっきり申し上げておきます。 また、この際に分裂国家についての取り扱い方についての態度をはっきりきめろ、そう簡単には片づかぬだろうがと、こういうようなことでお話がございました。この点では外務大臣が後ほどお答えするだろうと思いますが、私どもはあらゆる国とも仲よくするというたてまえでございますし、また、北朝鮮の場合は、韓国の関係をも含めて、私どもがいかにすればいいかということを判断すべきその状態の問題でございまするから、その点を、北鮮だけと云々というような狭い考え方でこの問題を解決するわけにいかない、これまた御了承をいただきたいと思います。(拍手) 〔国務大臣橋本登美三郎君登壇、拍手〕
○国務大臣(橋本登美三郎君) 私に対する瀬谷さんの御質問は、機長の権限と船舶の乗っ取り事件等について、今回の法改正等の考えがないかという二つの問題に限られているようであります。その他の問題は運輸委員会等でまた御質問があろうと存じますので、この二点についてだけ答弁いたしたいと存じます。 機長の権限につきましては、現行法ではほとんどその権限が明らかになっておりません。ああいうように数が三百、五百と、将来だんだんと大きくなってまいるのでありますからして、したがって、やはり警察権といいますか、機内の秩序維持の権限及び機内におけるところのさような警察権的な権限は、どうしてもこれは与える必要がある。ただ、機長だけでよろしいか、あるいは副操縦士なり機関士なり、これらにやはり補助権限を与えるべきかどうか、その他いわゆる保安官的なものが必要かどうか、これらについては、法務省当局並びに各方面の意見を聞いた上できめていきたい。 また、この機会に、瀬谷さんからは、船舶乗っ取り事件もあり得るのであるからして、法改正を考えておるかどうか。これは御承知のように、昨年十一月にやはり過激派学生によって沖繩に不法渡航しようということで、浮島丸という船によって行ったことがありまして、これは途中でつかまりましたが、かような事件がすでに昨年の十一月に起きておるわけであります。ただ、問題は、船の場合に、飛行機でもそうでありますけれども、特に船の場合になりますというと、ある程度の船自身を規定しなければならぬ。小さな船までもやはり船であります。あるいはまた、農船だって船だといえば船であります。漁船も同様である。したがって、奪取される被害者になるべき船というものをどういう時点でとらえるか。それからもう一つは、国外に逃亡する、あるいは外国航路といいますか、それと国内航路とを分ける必要がある。ところが、国内航路にいたしましても、三千トン、五千トン、一万トンという船がありますからして、そういう点を考えますというと、はたして今回急いでやろうという飛行機乗っ取り——ハイジャックに対する対策の法的改正というものと、この船も重要な問題でありますけれども、はたして間に合うかどうか。しかし、運輸省といたしましては、法務省に対して、できれば今回の機長の権限強化と同様に船の乗っ取り事件にも備えるための法改正をいたしたい、ただ、時間的に間に合うかどうか問題であるが、これらを検討の上で、さようにこれをまとめていきたい、かような方針でやっておりまするが、目下検討中でありますので、今回の改正に船の奪取事件を入れることができるかどうか、その点はしばらくの時間的の猶予をいただかせていただきたいと思いますので、御了承願います。 〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕
○国務大臣(中曽根康弘君) 日米安保条約に基づいて日本とアメリカとの間には情報の交換をやっておりますが、今回の事件につきましては、飛行機の安全航行を韓国の領域外においてもお願いするために、米軍を通じまして韓国軍に「よど」号の安全航行をお願いをいたしました。そういうかげんで、米軍からもいろいろな情報が当方に入ってまいりましたが、その中に、韓国軍から米軍を通じて来た情報として、対空砲火やあるいはミグ戦闘機の機影の問題があったのであります。これらは未確認情報として参考のために新聞記者の皆さんに申し上げたのでございまして、公式の話として申したのではございません。当時、どういう情勢かということを非常に聞かれて、何でもいいから国民に知らせろと、そういう御要望もありましたので、手のうちを全部さらけ出して、秘密主義をとらなかったのでございます。そこで、対空砲火につきましては、これはいまでもよくわかりません。しかし、そういう記録は確かに残ってございます。ミグの機影につきましては、韓国の三十八度線のこっち側のレーダーに写ったというのがございます。想像しますに、三十八度線に沿って「よど」号が入ってくるときには、最初は一万八千フィートくらいであった。それが八千五百フィートくらいにまで下がってまいりました。ですから、ミグ戦闘機が、先方で一万五、六千フィートの高いところから見ておれば、当然「よど」号にはわからないわけであります。あるいは対空砲火にいたしましても、うしろで撃った場合には、前の「よど」号の機長は前方を注意しているからわからない。だから、あったという事実もございませんし、なかったと断言することもできない。そういう意味で未確認として考えておるわけであります。 私は、きのう実は山村政務次官並びに松尾日航社長と直接いろいろお話をしまして聞いたのですが、実は非常に奇々怪々なことを聞いたのであります。もしお許しを得れば、ここでちょっと申し上げたいと思いますが、よろしゅうございますか、瀬谷さん。よろしければ申し上げますが、あとにしろというならあとにいたします。それでは申し上げますが、実は、金浦飛行場においては非常に緊迫した空気があったようです。と申しますのは、これは韓国の飛行場だということを賊が知ったときに非常に激高して、犯人の一人が酸素のバルブをあけたそうです、酸素マスクの。機内に酸素が非常に充満してきて、マッチ一本すったら、ばあっと爆発するという危険が出てきた。主犯の田宮があわてて飛んでいってバルブを締めた。そういうことがあったそうです。それから山村君を乗せて飛び立ちましたときに、田宮は、初め非常に激高して山村君をなじったそうでありますが、そのうちに気分がとけてきて、田宮が来て言うには、これから東京へ行こうと思うがどうかと、そう言ったそうです。それで、山村君が言うには、とんでもない話だ、福岡県でも実はバルブを締めて飛ぶのをやめさせようとしたのだ、それで作業員がころがり落ちたのを君は見なかったのかと言えば、そう言えば何かそういうようなことがあったと言っておりました。それから平壌の美林の飛行場に来たときには夕方で、あと五分くらいで視界が見えなくなった。そこで、一つ小さい飛行場があったそうですが、三回くらい回って、ここは降りられない、次の飛行場に来て、もう時間がないということで強行着陸しようということで降りたそうでありますが、ところが非常にバウンドしまして、そのために犯人のからだの中に持っていた爆発物の液が飛び出しまして、そうして、洋服や下が非常に焼けたそうです。それくらい非常にバウンドした。それから翌日、車輪がずっと沈んでおった。ということは、三万ポンドの燃料が入っておるものですから、滑走路が弱くて中に沈んでおった。もし百数十人、百人のお客さんを乗っけてあそこへ降りれば車輪が中にめり込んで、大惨事が起きていたかもしれぬ、幸いにそういうことがなかったと言っておりましたけれども、九九%はあぶない仕事であったと言っておりました。それから翌日、今度は、出るときは二十メートルの視界しかなかったそうです。それで滑走路にセンターラインがないために前方が見えない、これはもう非常にむずかしいといって、決死の勢いでそのときは上がったそうです。そうして飛行機をようやく浮揚したときに、あのおとなしい沈着な江崎副操縦士が山村君のほうを見て、「政務次官やった」と言って、こおどりして喜んだ。ですから、よほど上がるということもむずかしかったのではないかと思います。しかし、それらの事態も、ああいう異常なところで、着陸自体が北鮮の正式の許可なしに入ったことでございますから、正常なものとしては考えられませんが、そういう事態があったよしであります。われわれといたしましても、正確な情報を得ることが自主防衛の基本でありますから、御趣旨を体して、情報機能の充実につとめていきたいと思います。(拍手) 〔国務大臣小林武治君登壇、拍手〕
○国務大臣(小林武治君) この凶悪犯罪を犯した者たちに対しまして、通常の筋を申し上げれば、日本は犯罪人の引き渡しを要請するということが当然でございます。しかして、私どもといたしましては、これらの者の最近における処置いかんにかかわらず、時効を——外国逃亡の者は、いかなる時点において日本に来ても時効を中断できない。そういう趣旨のために、これらの犯罪人の身柄、身元等が判明いたしますれば起訴手続をとる、こういうことも検討いたしておるのでございます。 それからなお、お尋ねの船舶の問題につきましては、実は法制審議会におきまして刑法の全面改正を企図いたしておりますが、この中に航空機、船舶、こういうものを包含さしておるのでありまして、このたびの単独立法の際にも、できたら船舶も包含せしめたらどうか。かようなことも考えておるのでありまして、各方面にこれらのことを協議を申し上げたいと、かように考えております。(拍手) 〔国務大臣愛知揆一君登壇、拍手〕
○国務大臣(愛知揆一君) すでに総理大臣からお答えがございましたから、ごく簡単に申し上げますが、国際緊張の緩和を旨とするということは、政府としての外交政策の基本の一つの大きな柱でございますから、情勢の許す限り未承認国との関係を改善したいという考えは持っております。しかし、それぞれの未承認国につきまして、また、その未承認国の周辺の環境、日本との関係、いろいろ複雑な事情がございますから、冷静に勘案いたしまして、わが国益の上に立って適切な措置を慎重に講じたい、これが原則的な考え方でございます。北朝鮮につきましては、今回の事件の経緯のみから、百八十度にこれに対する外交政策を転換するというのには、私は率直に申しまして、あまりにも現実の情勢がきびしいと考えるものでございまして、外交姿勢の転換ということを考えるのは、冷静に、また慎重にいたすべきことと考えております。(拍手) —————————————
○副議長(安井謙君) 内田善利君。 〔内田善利君登壇、拍手〕
○内田善利君 私は、公明党を代表して、このたびの日航機「よど」号乗っ取り事件に関する運輸大臣報告について、重要な幾つかの問題点をあげ、総理並びに関係閣僚にその見解をお伺いするものでございます。 第一に、今回の事件は、わが国にとって初めての経験であり、いろいろの教訓が含まれていることに心をとどめねばならないと思うのであります。中南米諸国のように、この種事件に対するなれがないだけに、事件をより複雑にし、その解決がおくれてしまったことを深く反省すべきであると思うのであります。こうしたハイジャックに対する国際慣例としては、人命を第一として、犯人の言いなりになることとされているのであります。このことはグアテマラ政府が犯人の要求をけったがために起こったグアテマラ駐在の西独大使殺害事件からその教訓を学ぶことができるのであります。この点、幸いにも今回、全乗客、全乗務員が救出されました。国民にとってまことに喜ばしい限りでございます。しかしながら、無事生還したからといって、それでよしとするのではなく、ハイジャックの事件解決対策として、人命尊重のあり方について大いに反省しなければならないと考えるものであります。山村政務次官の平壌到着後、北朝鮮側が一時態度を硬化させたことがあったにせよ、ともかく無事帰還に全面的に協力してくれた人道的行為に対して、そこに至るまでの政府の態度の中に、わが国の信義が国際世論からかえって疑われることにもなりかねないような言動があったことはいなめない事実であります。再三否定はしておられますが、政府の作為的行為、さらにはトリック、小細工等があったのではないかという点について、深く反省を求めるものであります。この点について総理の御見解をお伺いしたいと思うものでございます。 第二に、この種乗っ取り事件は、わが国航空史上初めてのことであり、痛憤やる方なきことでありますが、いわゆる七十年の問題として、ことしは特にこのような悪質な事件が予想されるわけであります。そこで、このたびの事件に照らして、今後、航空機の乗客のチェックについてはどのような態度で臨むのか、運輸大臣並びに国家公安委員長にお伺いするものであります。 第三に、私は凶器探知機について積極的に研究開発すべきだと思うのであります。米国では切符販売時におけるチェックの方法に心理学まで応用しようという動きもあるやに聞いておるのでありますが、今回の事件の重大さから考えても、科学的な予防措置についても取り入れる必要があるのではないかと思うものであります。国家公安委員長にその見解をお伺いするものでございます。 また、特に国内線、国際線を問わず、旅客機を利用する人々が急増しており、加えて万国博覧会に来場する多くの海外の人々を安心して気持ちよく迎え入れることが、今後の国際社会におけるわが国の立場がより深く理解されることにつながるわけであります。しかし、万が一、警備のあり方に不手ぎわを生ずるならば、わが国の立場を不利にしかねない要素をはらんでいるだけに、その丁寧な作法と慎重な取り扱いを強く要望するものであります。 第四に、航空機の安全航行に関してお伺いしたいと思います。御承知のように、航空機の構造上やむを得ないことではありますが、そのためにも、今後は航空機に何らかの特殊な装備を考える必要があるのではないか。特に人質をたてにして乗っ取りを企てても、その実行が不可能になるような構造を考えるべきではないか。また、機長の航空機内の警備権の強化、航空保安官の配乗等をきめるべきだと思うが、この点についてどのように考えられるのか。先ほどの乗客に対するチェックの強化にも関連して、今後の研究課題ではないかと考えますが、これらの点について運輸大臣並びに国家公安委員長の見解をお伺いいたします。 第五番目に、報道規制についてでありますが、福岡における警察の処置に関しては、その情報が犯人に筒抜けであったことを各新聞が報じております。これは犯人側が持ち込んだと思われるラジオによるものでありますが、こうした事態が起こり得ることはきわめて常識的なことであります。各放送局に対して、事件の急迫性にかんがみて、報道について協力を依頼する等の何らかの措置がとられてしかるべきでなかったかと思うものであります。国家公安委員長はどのように考えておられるのか、お伺いするものであります。 第六に、今回の事件発生の原因となりました学生運動についてお伺いいたします。学生運動の行き過ぎ、はね上がりの極にある者が今回のような不法な暴挙に出、国家、社会に多大な損害をもたらしたのでありますが、政府は、学生運動についてどのような態度で臨むのか。また、大学問題の根本的解決のなされていない責任を明らかにするとともに、治安と警備に当たる警察が、健全なる学生運動の発展と育成を阻害することのないよう強く要望するものでありますが、この点について総理並びに国家公安委員長にお伺いするものであります。 次に、赤軍派学生集団についてお伺いするものであります。彼らの暴挙の芽が見えていたにもかかわらず、事前に防ぎ得なかった治安当局の責任と、今後この過激派学生の取り締まりについてどのように臨むのか、総理並びに国家公安委員長にお伺いいたします。 第八番目に、この悪質きわまりない事件を機に、この種事件を二度と起こさないよう、将来の教訓として生かさなければなりません。日本こそ世界の人々が同じこの地球に住むという運命共同体であるという共同意識を育てていくオピニオン・リーダーとなっていくために、今後の外交政策を再検討すべきではないかと思うものであります。これは確かに難問ではありますが、こうした事件の背景にあるものを考えた場合、この地球に対立した二つの世界があることが、どれほど問題を複雑にしているか、はかり知れないものがあります。全人類の平和と繁栄のため、この種乗っ取り事件等はもちろんのこと、すべての暴力を否定し、全力をあげて世界の平和、人類の真の幸福を招来するための新しい外交政策を展開すべきであると思うものであります。この点について外務大臣にその見解をお伺いいたします。加えて、国交のない北朝鮮側に犯人の逮捕と身柄引き渡しの要求を今後とも続けられるのかどうか、この点について外務大臣にお伺いするものであります。 次に、一九六三年九月に東京において締結された東京条約の批准については、その準備を進めているのかどうか。さらにハーグにおいて予定されておりますハイジャック防止に関する国際会議にいかなる態度で臨むつもりなのか、総理にお伺いするものであります。 次に、この種乗っ取り事件には、専門家をはじめ、一般国民の中にも厳罰主義で臨むべきだとの機運が高まっておりますが、法改正について法務大臣にお伺いいたします。現在、法制審議会で検討されている刑法改正の審議の中では、この種事犯の刑罰法規を検討していると聞いておりますが、純粋な刑罰理論のみとして考えられておるのか、あるいはまた、単独立法とか、一部改正とかを具体的にどのように考えているのか、お伺いいたします。 最後に、私は今回の事件に、みずからの生命の危険をも顧みず勇気ある行動をとられた山村運輸政務次官と、沈着冷静な石田機長その他の乗務員の皆さまに、心から敬意を表するとともに、今後再びこのような不法不当なる犯罪が起こらないことを願って、私の質問を終わります。(拍手) 〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕
○国務大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。 初めから犯人の言うとおりにすればよかったかどうか、その点につきましてはいろいろな見解があると思いますが、政府としては、第一段階では、まず板付空港で乗客の救出に全力をあげる方針をとったわけであります。これはもちろん国内でもありますし、また、幸いにしてガソリンもないということでありましたから、そういう意味でこの板付ですべてを解決したいと、かように思ったわけであります。そうしてその次には、われわれの全然予想しなかったことではありますが、金浦着陸後は、犯人を説得して、乗客全部を金浦空港で救出することが最も適切な措置であると判断し、結局その実現を見た次第で、この事件に対しまして、終始一貫、人命尊重の人道主義に徹して解決に当たったと確信しているのであります。同時にまた、これはひとり山村運輸政務次官だけの問題ではなく、関係者一同並びに関係国、すべての国々の御好意により、ただいまのような結果がもたらされたのでございまして、この点では感謝にたえないところであります。 次に、今回の問題から、治安対策は行き過ぎないようにとの御注意でありましたが、今回の事件のみならず、従来から見られた一部の過激な学生による犯罪行為は、健全な学生運動とは無縁のものであります。これに対する治安当局の取り締まりが、健全な学生運動の育成を阻害するおそれはありません。この事件を奇貨として、政府が必要以上の措置をとることは絶対にありませんから、御安心をいただきたいと思います。なお、条約等についてお尋ねがございましたが、これらは一括して外務大臣からお答えすることにいたします。(拍手) 〔国務大臣橋本登美三郎君登壇、拍手〕
○国務大臣(橋本登美三郎君) 内田さんの御質問についてお答え申し上げます。 今回の日航機不法奪取事件の発生にかんがみまして、定期航空運送事業者に対しましては、事件発生当日、直ちに手荷物検査の厳格な実施を指示したところでありますが、さらに去る六日、手荷物等についての持ち込み規格の厳守、内容確認の励行、必要な場合における開梱請求の実施、危険物品の客室外保管の励行など、詳細に通達して、万遺憾なきことを期しておる次第であります。今後さらに、空港ターミナルにおける改札手続の改良、検査の機械化、送迎方式の改善等につきましても、関係各方面とも打ち合わせつつ、すみやかに有効な対策の確立をはかってまいる所存であります。なお、法制化につきましても、目下、法務省と検討中でありますので、これが実現を見ることと存じます。 この機会に、一言皆さんにお願いいたしたいのは、私、現地に参りまして、そうして韓国政府、あるいは直接ではありませんが、米軍当局、あるいは北朝鮮当局等、日本政府と同じように人道主義の立場からものを解決しよう、全くそれ以外に意図はありません。真剣に、韓国政府にいたしましても、米軍当局にいたしましても、もちろん北朝鮮当局もそうでありまするが、真剣にこの問題は政治問題を離れ、イデオロギーを越えて、人命尊重という立場から、これを解決しよう、非常な真剣な気持ちであります。私は到着いたしまして、韓国政府の高官に対して、日本政府は何としてもこの人命を助けたい、やむを得なければこのまま全部を出さざるを得ないことがあるかもしれぬけれども、できれば、このいわゆる乗客だけはここでおろしたい。というのは、めくら飛行でありますから、その点を心配している。しかし、それにいたしましても、全員がいわゆる出なければいけないという状態であるなれば、その場合もひとつ御了承を願いたい。これは私は現地の責任者として、到着後、直ちにお願いをいたしますと、これに対して韓国政府当局は、最終的にはあなたの判断でけっこうである、その必要があった場合には、直ちにその申し入れをしてもらいたい。かように韓国政府高官責任者は、私に対して、最悪の場合をも考慮して、私に時期の判断をまかせます、韓国政府はそれによって直ちにその措置をとります。また、北朝鮮当局にいたしましても、私は山村政務次官の勇気ある行動によって全員おろすことができまして、私の最愛の部下を向こうに送ることになったのでありますが、そのときに、私のほうからは、これをMAC委員会を通じましてお願いいたしました。しかし、もちろんいろいろな時間の差で、山村政務次官が出発するまでには、その回答を得られませんでした。が、その後間もなく、状況が変化したから云々という通報を受けましたが、それでも私は、なおかつ、当時、金山大使及び韓国の高官にも申しましたが、この問題だけは人道を越えた問題で、人道上の問題であるからして、私は条件の変化とは考えません。百人の命と十人の命の違いはありません。であるからして、必ず北朝鮮当局は人道上の立場をもってこれを解決してくれるに違いないと信じておりますと、こういう答えをいたしました。韓国政府の高官もそうでありましょう、こう言われたのであります。こういう点から考えて、私は今回の事件における日本の国内のいろいろの意見、世論、そういうものが関係各国にも伝えられるわけでありまするが、どうかお願いすることは、この人道主義の上に立っての関係各国の努力であります。その努力を傷つけないように私たちはいたしたい。私自身もいたしたい。私自身がその場において一切の責任、神経をすり減らし、そうしてやってまいったことでありますが、この各国の誠意とその善意、人道主義的な信義をわれわれが理解しなければ世界の平和はできないのであります。どうかこの点も十分に御理解願って、そしてこの問題のもちろん真相究明はけっこうでありますが、その根本精神は人命救助である。人道主義の立場から関係各国がやってくれたんだ、こういうことを十分にひとつ皆さんにおいても御理解願って、そしてこの問題に対処せられるように心からお願い申す次第であります。(拍手) 〔国務大臣荒木萬壽夫君登壇、拍手〕
○国務大臣(荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。 今回のような事件が起きて学生に対する治安問題もあろうが、一方では健全な学生運動との関係において問題があるだろうというお尋ねに対しまして、総理からもお答えがありましたが、学生運動であるといなとを問わず、違法行為はこれを取り締まらなければなりません。学生の正しい運動については、何ら治安当局はこれに介入するものではない。違法行為を行なうものはもとより一部の者であるので、多くのまじめな学生を正しく育成していくことにつとめるのは当然のことであると思います。 次に、乗客の手荷物検査等について今後万全の措置を講ずべきじゃないかというようなお尋ねでありますが、乗客の手荷物等の検査については、諸外国の例等も参考にしながら、凶器探知機の利用なども検討してまいりたいと考えております。とりあえずは空港関係機関、なかんずく航空会社と緊密な連携のもとに、十分人権上の配慮を加えながら、乗客などの協力を得て、凶器、危険物などの機内持ち込みを防ぐことを処置してまいる所存でございます。 今回の事件は、福岡空港で解決すべきであったと思うがどうだということでありますが、すでに青木さんの御質問にお答えしましたとおり、御所見のとおり、わが国としては本事案は国内の板付空港で解決すべきものであったと考えております。板付空港においては、空港関係機関や現地警察当局では、相互に緊密な連携のもとに、何よりも乗客の安全救出を最重点に、犯人の説得につとめる、このため「よど」号の発進をさせないという方針で、種々対策を講じたのでありますが、遺憾ながら結果的には本事案を国内で解決することができなかったことは、まことに残念に存じている次第であります。 報道の関係で、福岡空港に着陸していたときに、ラジオによる情報が犯人に筒抜けになった、何とかすべきじゃないかというふうなお話でございますが、現在までの捜査の結果によりますと、航空機内で犯人がラジオを聞いていたことはほぼ間違いないものと考えられますが、犯人がラジオのニュースによって本件に関する各種対策措置を承知していたとすれば、この種事案の処理上問題のあるところと考えられるので、警察としてもその活動を犯人に知られないよう配意すべきものと考えます。しかしながら、この種事案の報道上の取り扱いについては、今後報道機関において自主的に配慮さるべき問題であると考えております。 以上お答え申します。(拍手) 〔国務大臣愛知揆一君登壇、拍手〕
○国務大臣(愛知揆一君) 第一は、今回の事件の犯人についての問題でございますが、すでに本件についての総理大臣の声明にも触れてございますように、日本国内において行なわれた重大な犯罪であります以上、引き渡しを求めるのが筋道であると政府は考えております。ただ、先ほど法務大臣からも御答弁がありましたように、犯罪人引き渡しについての条約の適用がある場合でも、政治犯の認定等については、身柄を保持しておる国の態度、意見というものが尊重されることになっておる関係もございまするし、北鮮側の今後の態度も注視しながら、具体的な措置についてはいましばらく検討させていただきたいと考えております。 それから第二の、いわゆる東京条約についてでございますが、ハイジャッキング防止の見地から見ました場合、これだけでは不完全なものであると存じますが、この問題を国際協力によって解決していくという上ではきわめて意義のある条約と考えるわけでございます。わが国としては、すでに条約に署名もしておりまするし、また、今回のこうした大事件を契機にいたしまして、今国会に御承認をいただくため至急提出いたすべく、大至急準備を進めております。そして、東京条約をさらに補完するために、目下、国際民間航空機関が中心となりまして、ハイジャッキング防止条約の作成準備を急いでおりますが、すでにその草案が作成され、本年十二月にハーグで開催される予定の外交会議においてこれが採択される運びとなるものと思われます。わが国は、この条約の作成に従来から積極的に協力を行なってきておりますので、これを、本年十二月にできましたならば、早期に批准をはかりたいと、こういう所存で進めてまいりたいと考えておる次第でございます。(拍手) 〔国務大臣小林武治君登壇、拍手〕
○国務大臣(小林武治君) 航空機不法奪取の処罰の法律、これは刑法の草案の中にありまするが、この際のことでもあり、これを抜き出して単独に立法をしたい。そうして、この国会において成立を期待し、近く御提案を申し上げたい。 いま問題になっておりますのは、先ほどからのお話で、この際のことであるから、船舶についても同様の事態が起こり得る、したがって、この際これを包含せしめたらどうかと、こういう御意見がございますので、これもあわせて検討をいたしておる。なお、この罪の重大性にかんがみまして、その未遂あるいは予備行為等も処罰すると、こういうふうなことを考えておるのでございます。(拍手) —————————————
○副議長(安井謙君) 松下正寿君。 〔松下正寿君登壇、拍手〕
○松下正寿君 私は、民社党を代表して、日航機乗っ取り事件に対する政府の御所見を伺いたいと思います。 第一に、本件が人命の損傷なく一応落着いたしましたことは御同慶の至りでありますが、このような事件を未然に防止し得なかったことについて、政府に若干の怠りがあったのじゃないか。いわゆる東京条約は一九六三年九月に成立いたし、すでに一九六九年、つまり昨年の十二月四日に効力を発生しております。そして、すでに二十二カ国がこれに批准しておるのであります。日本はこの条約の署名国であるにかかわらず、どうしていままで批准しなかったのでありますか。もちろん、日本が東京条約に批准していたら今回のような日航機乗っ取り事件が起きなかったであろうというようなことを言っておるわけではございません。しかしながら、私は、世界における有力な航空国であるところの日本国の政府が、その責任の重要性を十分に認識していなかったのじゃないかということを指摘したいのであります。ハイジャッキングは、一九六七年までは例年十件以下でありました。しかるに、六八年には三十四件、一九六九年には七十件をこえております。日本も早晩その被害国になるということは、当時すでに当然予想されていたはずであります。そして日本としては、日本の航空国としての重要性にかんがみまして、むしろ率先して批准するだけではなく、共産圏やアラブ諸国に対しても批准を呼びかけるべきであったと思いますが、一九六三年九月条約成立以来、呼びかけなかったことはもちろん、批准すらしなかったということは、これは怠慢の至りではないかと思われますが、いかがでありましょうか。 現在、東京条約を補充する目的で、いわゆるICAOにおきまして、ハイジャッキング防止条約が審議されております。ただいま外務大臣の御答弁を伺いますというと、大体今年の末ごろまでには条約が成立するだろうというお話でありました。私は、日本政府が単に、でき上がった条約に協力するとか、あるいは批准するとかというような程度ではなくして、むしろ、リーダーシップをとってこの条約の作成を促進し、十二月を待たずして条約を成立させる、そうしてまた、これに対しては、自由圏のみではなくして、共産圏及びアラブ諸国をも含むところの世界各国に、この条約を批准することを積極的に、活発に勧請するところの意思があるかどうか、その点について、総理大臣並びに外務大臣の御所見を伺いたいと思います。 第二に、私は、今回の事件に関して、政府の分裂国家に対する認識がいささか甘かったのじゃないかという点を指摘したいと思います。「よど」号事件の特徴というものは、事件が日本国の領土内で起きたのに、そのとばっちりが、日本と正常な国交を結んでいるところの韓国及び韓国と敵対関係にあるところの北鮮に及んで、外交史上かつてない複雑な性格を帯びた事件になっております。純粋に人道上の立場から見ますと、「よど」号をすぐに金浦空港から——これは犯人が承諾しなかったわけでありますから、すぐ金浦空港から平壌に出発させたほうがよかったのかもわかりません。しかしながら、韓国と北鮮とは敵対関係にあり、また、ついこの間、韓国の民間航空機の不法奪取事件があったことは御承知のとおりであります。このような情勢のもとに、韓国が簡単に「よど」号の平壌行きを認めなかったということは当然予想さるべきであったと思うのであります。また、北鮮がこれを不法入国と認めたのも、これまた当然であります。私は、このように事件を複雑にしたことについて政府の責任をただしたいと存じます。 また、この機会に、私は政府が日本、韓国、北鮮の複雑な関係について、いわゆる空論ではなくして、現実的な解決策の立案を強く要望するものであります。日本は、御承知のとおり、韓国と正常な国交を結んでおりますが、北鮮は、韓国にとっては法律上敵国の関係にあります。そうして、日本としては、そのような事情のために、北鮮を法的に承認することができない立場に立っております。しかしながら、同一民族から構成されるところの南北の両鮮が対立抗争を続けるということは、まことに悲しむべき事態であります。南北両鮮が、どうしても現在の段階においては法的に敵対関係を続けなければならないというのが、遺憾ながら現実であるとするならば、その現実を率直に認めることとし、純人道的事項に限って南北両鮮の交流を促進するような方法はないか。現実に戦闘行為が行なわれているところの交戦国間におきましても、準平和関係というものが存在することは国際法の認めておるところであります。南北両鮮は現在休戦状態にある。ゆえに、純粋の人道的事項に限って両鮮の交流を促すということは、これは現状に対して重要な変更を加えることなく、また、現行国際法のもとに可能なのではないか。政府は、アメリカ、ソ連あるいは中共等と連絡して、両鮮、両国民の福祉のために、また、間接にはわれわれ日本人の平和及び自由のためにイニシアチブをとる意思があるかどうか、総理大臣、外務大臣の御所見をお伺いしたいと思います。 第三に、私は、今回の事件に関連して、政府の文教政策についてお尋ねをいたしたい。 今回の事件の犯人は大部分学生であります。そこに本事件の特殊性があります。彼らの行為がきわめて悪質な犯罪であることは明らかでありますが、その動機は、いわゆる物取り強盗ではなくして、現体制の破壊という政治的な性格のものであったことは、これは確かであります。ところで、体制破壊という思想は、必ずしも彼ら学生の犯人の独占ではなくして、過激学生一般に共通しております。そうして、この思想に同情的な者、あるいは好意的な者、あるいは少なくとも敵意を持たない者の数を加えますというと、あるいは学生において半分ぐらいになるのじゃないかと考えられるわけであります。その意味において、日航機乗っ取り事件は、これは、ある意味においては氷山の一角であります。 政府は、前国会におきまして大学運営臨時措置法を強行採決いたしました。この法律は大学の紛争を一時排除することには成功いたしました。しかし、私どもが当時しばしば指摘し、力説したように、大学の紛争の処理のみにあせることは、事態をかえって深刻化させ、かえって陰性化させることになり、きわめて危険であるということを当時指摘したのであります。教育理念及び教育制度の抜本的な改革こそ焦眉の急であります。わが党は、前国会におきまして大学基本法案を提出いたしましたが、一ぺんの審議も行なわれずして葬り去られました。政府は、中教審の答申待ちと称して何らの措置もとっていないうちに、事態はますます悪化してまいるのであります。最も望まないことながら、大学のキャンパスを追われた過激学生は、治安当局の想像もつかないような凶悪な犯罪を行なうのではないでしょうか。私は、大学問題についての治安対策の重要性を認めることについては決して人後に落ちるものではありませんが、一そう重要なのは政府の文教政策であると信じます。そうして文教政策は、その及ぼす影響が大きく、かつ、きわめて深刻でありますから、前国会のような議事妨害や強行採決は、これを避け、超党派によるところの慎重審議の行なわれることを切に望む次第であります。右について文部大臣の御所見をお伺いいたします。 最後に、私は、今回の不幸な事件に際して、忍耐と勇気を持って職責を尽くした石田機長、江崎副操縦士、相原機関士の功績をたたえ、その英雄的行為に対して叙勲の手続をとられるよう総理大臣にお願いし、かつその御所見をお伺いいたします。 なお、類似の件としては、昭和三十五年七月渕上百合子の前例があることを申し添えて、私の質問を終わります。(拍手) 〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕
○国務大臣(佐藤榮作君) 松下君にお答えいたします。 まあ、今回の「よど」号事件は、相当の日数はかかりましたが、いわゆる関係者、犯人を除きましてすべてが無事に帰ってきた、この点は私どもも喜んでおります。しかし、御指摘になりましたように、かような大問題を未然に防止することはできなかったかと、こういう御注意がございました。政府といたしましても、この点では深く反省しておるところであります。それが条約の批准になったり、あるいは立法措置になったり、あるいは今後の取り締まり等、それぞれの面で、個人の権利をいわゆるそこなうことなく、公序良俗と申しますか、公の秩序を維持することのできるような、その方向で各界各層、国民の御協力を願わなければならない、かように思います。どうかそういう意味で、政府もこの問題と真剣に取り組みますから、この上とも御協力のほどお願いをいたします。 条約の問題につきましては、先ほども公明党の内田君に外務大臣からお答えしたところがございますから、この点で私からは重ねて申し上げません。 その次に、いわゆる分裂国家の問題につきまして、先ほども外務大臣からお答えをいたしましたが、私からももう少し詳しく説明してみたいと思います。松下君からは、分裂国家に対する政府の認識が甘いのではないか、こういう意味で、むしろおしかりというような意味合いで御批判があったと思います。政府といたしましては、朝鮮半島の複雑な情勢を十分承知していたからこそ、今回の事件の発生に際して、人命尊重の立場に徹して、慎重にその処理に当たったものであります。その結果、韓国の好意的協力と、北朝鮮の理解を得て、事件の解決を見たのでありまして、決して認識が甘いなどというようなことはございません。先ほど来説明するところで、政府がいかに、板付空港を「よど」号が出発してから後、気をもんで各方面と連絡をとったか、それ自体が甘く見ておらないゆえんでございます。わが国といたしましては、北朝鮮との人道的な問題につきましては、今後とも、従来同様、誠意を持って対処していきたい所存であります。しかしながら、お説の中にありましたように、韓国と北朝鮮との交流は、第一義的には当事者自身が決定すべき問題でありまして、当面、両当事者においてそのような動きがないのに、外部から、わが国などから云々すべき性質のものではない、いわゆる内政に干渉するということにもなるわけでございますので、さようなことは差し控える、これが当然のわが国の態度だ、かように思っております。どうか、その点も誤解のないようにお願いをしておきます。 学生問題等について、いろいろお話がございましたが、この学生問題については、文部大臣から詳しく説明するのが妥当と思いますので、そのほうに譲らせていただきます。 しかして、これらの暴徒が学生であり、学校に籍を持っておるからといって、いわゆる学生運動そのものでないことははっきりしておりますから、これはなかなか根深い複雑な問題である、これはまたいわゆる学生運動とは別個の問題だと、かように考えざるを得ないということも明らかにしておきます。 なお最後に、これらのいわゆる功績のあった方々人命救助に功績のあった方々に叙勲の手続をしたらどうか、こういう御提案でございました。私どもは、叙勲が適当なのか、ただいま、こういう善行、いわゆる人命救助というような行為をした人に対して、総理大臣顕彰というような制度もございますので、いわゆる国家的な顕彰事項に該当するのではないだろうか、こういうことで、ただいま内閣で、どういうように顕彰するか、いろいろその内容等について考えておる次第でございます。いわゆる叙勲ということとは別に考えておるということをこの機会にお答えしておきます。(拍手) 〔国務大臣愛知揆一君登壇、拍手〕
○国務大臣(愛知揆一君) いわゆる東京条約は、御承知のように、安全、それから機内における危害というような行為一般に対する規定が主でございまして、今日まで調印はしておるが批准をしていないということにつきましては、一口に言って、これでは内容が不十分である。同時に、先ほども御説明いたしましたように、ことしの十二月にはICAO、つまり国際民間航空機関で不法奪取自体をカバーする条約案ができるということになって、これに協力しておった関係がありまして、今日まで批准が延びておったわけでございます。もう一つ、国内航空法との関係の整備ということもございます。しかし、いずれにいたしましても、先ほど申しましたように、今日の時代に即して、とりあえず、この東京条約の批准はお願いいたしたい、かように考えております。同時に、今後こうした種類の多数国間の条約等につきましては、いわゆるオール・ステーツ・フォーミュラと申しますか、共産圏あるいはアラブ諸国という話もございましたが、こういうところにも実質上にこの条約の効果が及ぶような方式を、各国と協力して、あるいは協議をいたしまして、そういう形にすることができれば、これは相当な進歩が期待されるのではないかと思いますが、これは日本だけが一方的に考えましても、条約のことでございますから、にわかにそういうことになるかどうかわかりませんけれども、そういう努力は、この種の案件につきましては、日本といたしましても、ただいま御主張がございましたように、まあ主導的な立場に立って、こういう異例なこの事件を経験したこの際でもございますから、前向きに、また時間的にも早急に、ひとつ関係各国にも呼びかけて成果を得るようにいたしたい、かように考えておる次第でございます。 ただいま総理から大きな角度の問題については御答弁がございましたから、省略さしていただきます。(拍手) 〔国務大臣坂田道太君登壇、拍手〕
○国務大臣(坂田道太君) 今回の事件は全く人間性を逸脱した反社会的行為でございまして、もはや学生運動とか、あるいはいわゆる一般の大学紛争とは全くかかわりのない、きわめて悪質な犯罪であると考えるのでございます。ただいま松下さんから大学立法についてお話がございましたが、もし大学の運営に関する臨時措置法というものが成立をしなかったといたしましたならば、学内学外を問わず、暴力が横行し、昨年の大学紛争はさらに激化して、大学それ自体が暴力の温床化し、収拾すべからざる状態におちいったと思われるのでございます。まずもって大学から暴力を排除することが、大学改革の第一歩であると私は確信いたしておる次第でございます。 また、大学の改革につきましては、単に紛争対策という観点からのみでなく、社会の進展や大学の大衆化に伴う使命、性格等の変貌に対応して、新しい高等教育のあり方を確立する必要があると考えておりますが、高等教育のみならず、初等、中等含めまして、学校制度の改革はわが国の将来にかかわる重要かつ基本的な課題でございますので、国民的な合意と理解のもとに慎重にこれを取り運ぶ必要があると考えておるのでございます。現在そのような立場から、中央教育審議会では、本年一月に公表いたしました改革の基本構想試案を中心として、大学関係者をはじめ広く各界各層の意見を求めておるところであり、文部省におきましても積極的に検討を進めておるところでございます。 なお、人間性豊かな教育の回復とか、あるいは入学試験制度の改善の問題とか、関係者の意見の一致を得られる事柄につきましては、中央教育審議会の最終答申を待つまでもなく、積極的に改革を進めてまいる所存でございます。(拍手)
○副議長(安井謙君) これにて質疑の通告者の発言は全部終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。本日はこれにて散会いたします。 午後三時五十七分散会