農林水産委員会 第16号
- 発言数
- 127 件
- 登壇者
- 13 名
- 会派数
- 5
- 開催日
- 1970/05/07
会議録
○委員長(園田清充君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。 委員の異動について御報告いたします。 昨六日、田渕哲也君が委員を辞任され、その補欠として向井長年君が選任されました。 —————————————
○委員長(園田清充君) 農地法の一部を改正する法律案及び農業協同組合法の一部を改正する法律案を一括して議題といたします。 これより質疑を行ないます。質疑のある方は順次御発言を願います。
○向井長年君 今回農地法、農協法の改正の法案が出ておりますが、これに対して農政の基本的な方向として倉石農林大臣にお聞きしたいと思いますが、わが国の農地法は世界にもまれにみる特殊な法律を位置づけしてまいったのであります。一つは、戦後の食糧不足に対応して農民に土地の所有権を持たせることによって所有意識を増産の方向に意欲を持たそう、こういうことが大きな目的であった。と同時に、もう一つは、やはり国民経済の要求を解決するものとして、根本的には農村の民主化が必要である、農地所有関係者を民主的に改革するという両面があったと思うのであります。そういう中で特に今回、今日のごとく高度工業社会において非常に農業のあり方が内外から問題になっておりますので、特に都市化が全国的に推進するにつれて、住宅なりあるいは産業及び公共用地等の需要が非常に増大しつつあるのではなかろうか、こういう中で農地法と農協法の改正を国会に農林省が提出しなければならぬということは、このねらいはまずどこにあるか、たとえば非農業者からの強い要請にこたえるためであるか、あるいはそれとも高度成長に対して機会をとらえて農業近代化を行なわんとするものであるのか、いずれに重点があるのか、そしてまた現状はどうなっておるかということはこの法律案が出なくともそういう方向をいまたどっているのではなかろうか、こういうふうに思うわけでございますが、この点についてまずお聞かせいただきたいと思うのでございます。
○国務大臣(倉石忠雄君) 御存じのように、今回の農地法改正にあたりまして、私どもはただいまのお話のように、社会経済情勢の変転に伴いまして、それに対処いたしてまいりますためにもいわゆる総合農政という方向をとることにいたしまして、その目的を達成いたしたいと思いまして、そのためにはまず農地の流動化が必要だ、つまり規模を大きくいたしまして農業の体質をしっかりしたものにしてまいりたい。そのためには御存じのように、現行法は若干硬直いたしておる面もございますので、そういう点を改めることによって規模拡大、近代的経営を増進いたしたい、こういうことが法律の改正の主眼でございます。
○向井長年君 この非農業者からの強い要請もあるやに聞くんですけれども、そういう点は現状をにらみ合わしてそういうような状況がただいま出ておるのか、あるいは現実にこの法案がもう今日までの農地法というのは無視されて現状がこうなりつつある、したがって、言うならば、法律がおそまきに失した形で追いかけておるんじゃないかと、こういう感じがするわけですが、この点どうでしょう。
○国務大臣(倉石忠雄君) 御存じのように、この改正案におきましても、耕作するものが土地を得るという原則、そういうたてまえは変わっておりません。非農業からの圧力等、ただいまお話がございましたけれども、私どもといたしましては、やはり国民の必要とする農作物の需給度をある程度維持してまいりたいという大きなねらいを持っておるわけでございますから、したがって、そのために先ほど申しましたように、農業それ自体をしっかりしたものにいたしたい、こういうのが目的でございますので、非農業からのいわゆる圧力等というふうなものについて、農地法改正には何らの関係もないわけであります。
○向井長年君 私は別に圧力とかそういうものじゃなくて、現実がそうなりつつある。したがって、それを追いかけてこの法案の改正をしなければならぬ事態が起きているんではなかろうか、こういう感じがするわけです。そういう意味で別に圧力をかけて政府にやらしておると、そういう意味じゃなくて、現実はくずれつつある、現に。したがって、それを明確にしなければならぬ、現実に合った形で即応しなければならぬという形で、改正案が出されておるんじゃないかという意味で言っているわけです。これは必ずしも悪いというわけじゃありません。言うならば、今日までの農地法が自然と都市化に従ってくずれつつある、これを明らかに離作という立場から規制しなければならぬ、こういう中でこういう法案が出されてきておるような感じがするわけであります。したがって、これは私の感じでありまして、必ずしもどうということじゃありません。そこで、そういう中で農協法の改正が論議されまして、そういう中でいろいろ考えますと、政府はこの財政金融面において、金融政策において、都市サイドを非常に重点的に考えておるんじゃないか、本来の農業についてはもちろん近代化というような形で推進する形が盛られておりますけれども、本来予算上見た場合に、都市サイドに重点が置かれているような感じがするんです。この点はどういうように大臣考えておられますか。
○国務大臣(倉石忠雄君) 昭和四十五年度予算の中の一般会計の中に占めております農林関係の予算は御存じのように九千百七十七億、前年度の当初予算に比べますと金額で千五百十二億円、国全体の予算の伸びは一一八%でありますが、農林予算は一一九・七%、若干一般より伸びております。私どもといたしましては、この国の予算の中に占める全体の比率も、前年度から一一・四%から一一・五%と上昇いたしておるわけでありまして、最近の農業及び農業を取り巻く非常にむずかしい諸情勢に対処いたしまして、農政に十分重点を置いて所要の予算額を確保し得たと私どもは考えておるのでありまして、私どもといたしましては農政のより一そうの強化につとめてまいりたい、このように考えておるわけであります。
○向井長年君 大体いま都市サイドにある程度重点を置いているのではなかろうかということで私いま申し上げたのですが、大体昨年からことしに比較いたしますと、まあ道路とか港湾とか住宅、生活環境その他を入れまして農林予算の場合一九%程度ですね、増額になっているのじゃないか。それから治山治水あるいは農業基盤整備等、本来のこれに対しましては一六%程度の伸びである、こう数字がなっておるかと思うのです。そういう中から本来のほうにやはりもっと力を入れていかなければならぬのじゃないか、こういう立場から都市サイドに重点が置かれているのじゃないか、これは二つを追っているような感じがするのですよ。したがってこの点本来の農業行政という立場でやはり予算を見なければならぬのじゃないかというところに私はいまの質問をしたわけでありまして、もちろん昨年度から考えますと相当増額していることはわかるのです。われわれはそういう意味で非常に二つを両面してやらなければならぬにいたしましても、両面を追うとどちらも中途はんぱになるということを憂えて、いま重点的にやはり農業政策という立場に持っていかなければいかぬのじゃないか、こう思うわけでございます。そういう意味から質問を申し上げたのですが、この点はいま大臣が言われた答弁とちょっと違うのじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(倉石忠雄君) 政府の四十五年度予算に対処いたしました姿勢をごらんいただきましても、まあ米の生産調整もやらずして、ああいうことをいたしますけれども、その他のことにつきましては、たとえば構造改善関係あるいは圃場整備等従来どおり、あるいはものによりましては従来よりも増加率を多くして農業予算を確保いたしておるのでありまして、政府はしばしば言明をいたしておりますように、わが国の必要欠くべからざる農作物についてこれは自給度を維持していくということに全力をあげているのであります。特に森林、海岸等の予算につきましてもごらんのとおりにかなり私どもは努力をいたしておるのでありまして、政府自体といたしましてはそういう面にかなりの力を入れているということを御了解願いたいと思います。
○向井長年君 力を入れてないと私は言っているのじゃなくて、都市サイドのような道路、港湾とかそちら方面に相当やはり強く力を入れられて、本来の農業基盤整備、その他につきましては、若干予算的に見て、それとも比較するならば、若干薄いのじゃないか、こういう意味でこの問題も取り上げたわけでございますが、まあその問題それくらいでけっこうでございます、時間がございませんから。 そこで特に、第二番目の問題といたしましては、農業就業人口もどんどんと減りつつございます。あるいは農地も都市化で他に転用されつつある状態でございまして、農業の近代化、特に投資効率は高まるであろうが、政府は長期の見通しに立った計画というものをみずからやはり持たなければならぬと思うのです。というのは、まあ言うならば未来像ですね、ビジョンと申しますか、これをまず示すことによって、農業者はもちろん全国民からも理解をされると同時に協力体制がとれるのじゃないか。ところが、政府はこれに対して具体的なビジョンというものを出されておらない。これはやはりどういう理由であるか。おそらく離農者がとどまってしまうとか、あるいは農業に逆流することを避けて、まあ悪く言うならば戦略、戦術という配慮から考えられておるのか、それとも全くビジョンや計画を持っていない、まあ言うならば悪く言えば場当たり的な態度であるのか。あるいは、もう一つは、一部に反対があるように農民の首切りだと、あるいは独占資本の利益に奉仕するんだと、こういうことで反対運動をおそれてそういうものを出さぬのか、まあ二つ、三つこういうようなことを私は考えられると思うのですけれども、その点は大臣、どう考えておられますか。
○国務大臣(倉石忠雄君) 私ども「総合農政の推進について」でも申しておりますように、いまの一般的、社会的、経済的情勢の変化の中で農業というものをどのように位置づけるかという考えは「総合農政」の中で申しておるとおりでございます。 で、私どもといたしましては、しばしば申し上げておりますように、農業それ自体、米の生産調整は必要やむを得ざるものとしていたしますが、さらにそれにかわるべきいわゆる選択的拡大の方向で自給度を強化してまいるというたてまえのもとに、やはり農業それ自体が、農業を取りまくいろいろむずかしい諸情勢の中で農業というものが近代的な経営にできるだけ移されるように努力するために種々の方策を講じまして経営規模の拡大をいたしてまいりたい。その経営規模を拡大していくことによりまして自立経営農家をある程度育成できるでありましょう。しかし、長期的に見てかなり長い年月わが国においてはやはり兼業農家が存在いたすことは否定できません。したがって、そういう方々をも糾合いたしまして集団的な営農をやってまいりたい。同時にまた、御自分が農業から他に転業いたしたいと考えられるものは、それができやすいような、あるいは農業者年金制度その他、または農協が委託経営をするとかというふうなもろもろの手段を講ずることによって農家としての所得をその面で増進すること。または、他に転職しやすいように仕向けてあげるなどの方策によりまして農業それ自体が、いまわが国の農業を取りまく国際的な影響等も考慮いたしまして、やはり体質をしっかりしたものに育成してまいりたい。こういう眼目は向井さんも御理解いただけますように、私はやはり農業それ自体の経営体質をしっかりしたものにしなければならないというねらいがそこに集約されて出てきておるわけでありますので、私は地方を歩きまして、まあ農林省などでも一年に何回かの若いあと継ぎの御夫婦たちに集まってもらって、その経験談等を聞く催しをいたしておりますが、そういう若い階層の後継者が非常に楽しみを持って前途に光明をみずから描きながらそれに精進、努力している方々がかなりあります。 私どもといたしましては、農村の社会環境の整備等を含めてそのような後継者を育成してまいるということが絶対に必要である。これがやがてわが国の農業の中核のにない手となって育ってもらうように仕向けてまいりたい、こういう考え方でありますので、私どもといたしましてはいまの変転する社会情勢の中で農業というものはしっかりした基盤を持つ一つのりっぱな経営として成り立つように育ててまいりたい、こういうわけであります。
○向井長年君 そこでですね、国民はその政府の方針や政策が民主的で合理的なものならば協力をすると思いますし、また理解も深まるわけでありまして、そういう中で政府の信ずるところの構想をやはり国民に明確に出して私は理解を求めるべきだと思います。したがってこの点につきましては、ひとつ要望として申し上げておきたいと思います。 それから具体的に若干のこの法の改正の具体的要件につきましてお聞きいたしますが、農地法改正は農業構造を近代化するために農業経営の規模拡大に資するよう農地の権利流動化をはかるためと、こういうように私考えるわけであります。そうですね。したがって、そうなってまいりますと、農地法は流動化を押さえている規制的な事項を緩和するにすぎないのじゃないか、こういうように思うわけであります。 そこで要は、流動化を具体的に推し進めるその政府の施策がまず先行しなければならぬ、先行しなければならぬのじゃないかと思いますが、政府はこの先行させるべき具体案を、具体的な策を持っておるのか、こういうことを私はお聞きしたいんです。これは特に大臣じゃなくともけっこうでございますけれども、一応この点いかがでしょうか。
○国務大臣(倉石忠雄君) たいへん大事なことを御指摘になったと思いますが、私どもといたしましても農業を営んでおられるそれぞれの個人が、自分の立場をお考えになるという方もありましょう。そして自分はこういう環境に立っている。そこで規模を拡大して自立経営の農家を目指したい、こういう考えの方もありましょう。または現にいま八〇%近くを占めておる兼業農家の方々は、まずもってその集団的なものに参加して、そして自分の持っておる面積の耕地をそこに提供することによってある程度の農業収入を得ると同時に、自分の余剰の労働力をもって他産業で所得をふやしたいという考えをお持ちになる方があるでありましょう。しかし私どもといたしましては、先ほど申し上げましたような方向を示すことによってそれぞれの方々の御選択があるだろうと思います。また農業団体等もそれに十分協力なさるでございましょう。 私はそういうことを考えてみますというと、もちろんこの各個人に対していろいろすすめるということは政府じかにはなかなかそういうことはありますまいけれども、農業団体その他と協力いたしましていま政府が考えております方向にどのように沿うていただくかということをやはり農業団体その他を通じて奨励してまいることが必要ではないか。そうして究極においては私どものねらっております方向を打ち立てたい。たとえば四十五年度予算で御存じのように大型農道等の建設を始めました。ああいうようなことにつきましても、こういうものはどういう効果を将来地方の農村に及ぼしてくるかということはみなおわかりいただけるわけでありますから、そういうことを考えてみますというと、いま申し上げましたような方向で私どものねらっておることをだんだん実現してまいりたい、こう考えております。
○向井長年君 まあやはり政府自身が具体策を、やはり一般のそういう農業団体等の意見も聞き合わせて樹立すべきじゃないかと思うんですよね、まず。そういう形でやはり指導性を持っていかなければ、その問題は、ただいろんな諸君がそれぞれ考えておるということだけであって、私は、本来の方向の目的を達することはできないんじゃないか、こういう意味で、この具体策がまず先行しなきゃならぬ、こういうことを申し上げたわけであります。 なお、もう一つ、農地保有合理化法人というものにつきましては、これは特に県段階において公社をつくらせようとするものであると思います。これは公社が積極的に事業を推進しない限り、実行は期されないのでございます。政府は県公社の設立について、これまたどんな対策を持っておられるのか。あるいはまた、各県の公社が国の統一ある農政の方向に沿うように、それぞれの県の実情に合わせて事業展開をさせなきゃならぬと思います。この方針について、どういう方針を持って臨もうとしておるのか、ひとつお聞きいたしたいと思います。
○政府委員(中野和仁君) 今回の農地法の改正によりまして、農地保有合理化法人につきまして農地の取得を認めるということにしたわけでございます。すでに先ほども御指摘がありましたように、県の公社がぼつぼつつくられてきております。すでにできましたものが八つございますし、準備中なり、そういう公社をつくろうという方針の県を合わせまして約三十六県ございます。そこでわれわれといたしましては、本年度の予算ですでに財政上の措置を講じておりまして、こういう公社が売買をやります場合の事業経費の補助を三分の二の補助をもちましてやりたいということで、本年は、来年の一月から事業開始を考えておりますのでまだこの金額は約三千百九十万円でございますが、四十六年度からは大幅にこれを拡充したいと考えております。それからまた、公社をめぐります税制上の問題がいろいろ出てまいりますので、それにつきましても、たとえば譲渡所得税については軽減をはかる、あるいは登録免許税についても軽減をはかるということで、いろいろ税制当局とも折衝いたしまして、大体そういうめどもつけておる段階でございます。 そこで、こういう公社の運営の問題でございますが、これは地域によりまして非常に運営の実態が違うと思います。たとえば岩手とかそういう過疎地帯を含めたような地域、あるいは都市近郊の地域によりまして運営の実態が違うと思いますけれども、その地域それぞれの実態に応じましての経営規模の拡大をはかるような方向をとらしたいということで、われわれといたしましては、政令なりその他指導方針といたしまして、経営規模の拡大、農地の集団化、それからその間にありまして農用地を造成していくというような方向をやはり具体的にきめまして、実施基準を明確に示しまして指導をしていきたいというふうに考えております。
○向井長年君 一定の地域で、特にこの農地保有合理化の事業として農業委員会があるわけですね。それから農業者年金基金があり、そして今度は公社があると、こういう形で非常に入り乱れておるわけなんです。というか、それぞれの機関があるわけでありますが、農協法の改正においても、農協を農地保有合理化法人に指定するという、その能力を付与せしめることになるわけでございますが、一定の地域でこういうように、農協なり、農金なり、あるいは公社なり、農業委員会なり、こういう四者入り乱れて保有合理化の事業を行なうということになってくると、統一性というか、これを欠いてくるであろう、あるいは、構造政策としては好ましくない状態もあらわれてくるんじゃないかというような感じがしますが、政府はこの辺をどう調整するか、あるいはどう整理しようとしておるのか、この点、それぞれ地域において実情も違うと思いますけれども、この点はどういうように考えておりますか。
○政府委員(中野和仁君) 御指摘のとおり、この事業が、各団体がばらばらにやるということは、決して望ましいことではないと思います。基本的な考え方としましては、できるだけ競合をすることは避けるべきであると考えております。そこで、あるいは昨日の御質問もあったわけでございますが、われわれといたしましては、県の公社がやります事業は、やはり一つの市町村だけではできないような大きな規模の事業を念頭に置きまして、県の公社の活動を期待したいというふうに考えております。それから末端の段階になりますと、ただいま御指摘のように、農協それから市町村、両方がこの事業をやるということになっておりますが、この点につきましては、農業振興地域の整備法によりまして、その町村が中心になりまして農村における整備計画を立てます。この整備計画の中で、農地保有合理化事業を進める方針を立てるわけでございますが、この場合に、事業主体を町村にするか、あるいは農協にするかをきめさせたいと考えています。間々、どちらがやるか、なかなか調整がつかぬ場合は、これは最終的には知事に調整させるということを考えております。 なお、農業委員会という御指摘もあったわけでございますが、すでに農業地域振興法が成立しました際に、あの法律にもありますように、農地の権利移動の円滑化をはかるための、農業委員会のあっせん事業ができるということになりまして、五千数百万円の予算をことしからつけております。この農業委員会のあっせんを、市町村なり、農協の買い入れと結びつけて考えたいということで、交通整理をしたいと考えております。 それからもう一つ、農業者年金基金は、御承知のように離農者の土地の買い入れ、あるいは年金の資格者に対する融資ということでございますので、これは離農者に限られておりますので、おのずから、その辺の調整がついてくるということだと思いますけれども、なお、この事業の具体化に従いまして、末端における調整は十分配慮をいたしたいと考えております。
○向井長年君 まあそれぞれ一つの任務を持ち、範囲があると思うんですけれども、必ずこれはやはり問題が起こる要素だと思うんですよ。したがって、最終的には知事にその調整をしてもらう、こういうことでございますが、知事にそれをさすという権限は、どういうかっこうでそれをするのですか。
○政府委員(中野和仁君) これは法律にもございますように、「営利を目的としない法人で政令で定めるもの」ということにしてございます。この政令でそういう方向を明確にしたいと考えております。
○向井長年君 県公社の問題について、これはやはりあれですか、各府県にこれを一つそれぞれつくらせる予定ですか。いま三十何県と言われましたが、そういう予定でいま進めておるわけですね。これは範囲が、ただ一地域だけじゃなくて、広がるということが明確になっておるのですか、そういう範囲ですね。
○政府委員(中野和仁君) 県公社は、国のほうで強制的に各県につくらせるつもりはございませんけれども、やはり各県が実情に応じて、経営規模の拡大のために県が間に入りまして、いろいろ土地の売買あるいは貸借をやっていきたいという希望が非常に強いものですから、多くの県ではこれができてくるだろうと思います。ただ、たとえば、東京とか大阪とか、そういうところではこれはおそらくできないというふうに考えております。 ただ、いまの地域の問題でございますが、これは県公社でこういう事業を開始しますと、一応事業範囲は、農業振興地域に限ってやらせるつもりでございますが、その振興地域は、法律の施行が順次進んでまいりますと、全面的に広がりますので、大体農業地帯につきましては県公社がこの事業を行なうということになるかと思います。具体的な事業になりますと、全部の町村全部入り込むということはなかなかできない。やはり重点的に、町村との話し合いをずっと続けながら、農業委員会のあっせんも加えながら、重点的にやっていくということになろうかというふうに考えております。
○向井長年君 もう一点、小作地の所有制限についてでありますけれども、いま一ヘクタールということで所有の拡大を認めておる、こういうことでございますけれども、実際、田畑を入れますと、自作農の標準としてわれわれが知る範囲におきましては、一ヘクタールでは非常にこれは少ないじゃないか、したがって一・五ヘクタール程度が一応標準になるんではなかろうかと、こう思うのであります。そういうことからこの問題につきましては、特に中間的な自作農の、この決断がしかねると思うんですよ。そういう意味で、特に一ヘクタールという限度を特たれたこの理由はどこにあるのか、あるいはまたこれが一・五ヘクタールという形にしてはまずいのか、この点をお聞きいたしたい。特にこれは若い、すぐれた青年諸君がほんとうに百姓に打ち込もう、こういう諸君が意欲を持つならば、それくらいはやっぱり耕作したい、こういう希望もあるかと思うんですよ。そういう中で一ヘクタールと限度を持たれたのは那辺にあるのか、この点お聞きしたい。
○政府委員(中野和仁君) 小作地の所有制限を一ヘクタールと置いておりますのは、これは農地改革の当時、耕作をしないで所有できる面積を在村地主に限って認めた、したがいまして不在地主であればこれは認めないということでございます。その点につきましては、いま先生の御指摘があったわけでございますが、これはあくまで耕作をしていないものの所有をどこまで認めるかという問題でございます。今度の改正案におきましては、離農者につきまして、初めて不在地主になりましても一ヘクタールまで認めるということにしておるわけでございます。ただ、いまの御指摘のように新しく青年が農業をやりたいといった場合、これは耕作をするわけでございますから、この一ヘクタールという制限は何らございません。今度の改正案によりましても、農地の取得を五十アールを越えれば許可をするということにいたしております。その青年の能力が三ヘクタールやれるのであれば、これは三ヘクタールの農地の買い入れ、あるいは借り入れということは当然できるわけでございます。
○向井長年君 それを言っているんじゃないんですよ。いわゆる貸したい人が、不在地主といいますか、貸したい人が一・五ヘクタール持っておる、それを全部貸そうとしても結局〇・五ヘクタールだけ残るわけですよ。そうなると〇・五ヘクタール持っていてもしかたがないから全部貸したい、借りる人は一・五ヘクタール借りたい、こういう現象が起きるではないか。そういう場合、この一ヘクタールだけでは、この制限では、規制では少ないんじゃないか、こういう意味を言っているわけなんです。
○政府委員(中野和仁君) やはり農地法の原則といたしまして、耕作しないものが土地を無限に持っておるということは、われわれ避けるべきだというふうに考えております。この点は、改正案におきましても同じ考え方をとっております。そこで先ほど申し上げましたように、この原則、一ヘクタールという所有制限を変えなかったわけでございますけれども、ただ政策的な観点から農協に経営を委託する場合、あるいは農業生産法人に土地を貸す場合、それから農協の共同利用施設等に貸す場合、こういう特別の場合には制限なしに貸し得る、こういうことにいたして、農地法の原則であります耕作者が土地は持てないということとの調和をはかったわけでございます。単に個人が土地を幾ら貸しておっても持てるということは、やはり農地法のたてまえから避けるべきだと考えております。
○向井長年君 農地法、農地法と言うけれども、農地法はもうくずれているんですよ。過去の農地法はくずれている。そんな中途半ぱなことは言わなくてもいいと思う。実際の小作農にいくのがたてまえであるし、それに対しまして、現状、やはり一・五ヘクタール程度は大体今日まで持っている、そういう諸君が一・五ヘクタールを貸したいと、こういう場合、一だけ貸して〇・五だけ自分で耕作しなければならぬということは半ぱじゃないか。話は小さくなりますけれども、そういう意味で意欲を持った青年が一・五ヘクタール耕作したいというならば貸してもいいじゃないか、こういう意味で私はいまこの意見を言っているわけです。あまり農地法、農地法と言って何のためにこんなのを出しているのですか。過去のものはそのままでいい、現にくずれてきているんだ、そういう農家の耕作者、自作農自体は、これはたてまえとしてとるにいたしましても、いま申しましたように、一・五ヘクタールでもいいんではないか、こういう意見を出したんですが、これもやはり過去の問題からきめたんですか。
○政府委員(中野和仁君) おことばを返すようで恐縮でございますけれども、やはり農地法がくずれておると言われる面でございますが、その点は確かに賃貸借の関係ではかなり私も率直に申し上げまして、くずれかかっておると思います。いまの不在地主は認めない、在村地主は一ヘクタールまで認めるという原則は厳重に貫かれておると思います。現に現行農地法におきましても、不在地主の土地を買収したい。在村地主は一ヘクタールをこえる場合には国が買収しておるということで、年々若干でございますが、数百ヘクタールは国が買収しておるという現状でございます。そういう点は、繰り返して恐縮でございますけれども、やはり農地法のたてまえは守って、できるだけ耕作者の土地をつぶすべきではないというふうに考えます。
○向井長年君 それから零細の、言うならば小さい農家でございますが、三反、五反とか、こういう農家がある程度、相当あるわけでございますけれども、こういう農家の取り扱いについて、やはり意欲を旺盛にして、それから技術習得をさして高い農業者の農地の集中化というものが必要ではないかと、こう思うのです。したがって、言うならば、たとえばその地域においての共同化といいますか、そういう方向に今後しなければならぬのじゃないか、そういう方向をたどっていかなければならぬのじゃないか。そういう場合に、そういう農家に対して政府が自創資金制度とか、それから生産法人とか、一般的な施策はあるわけでございますけれども、これに対して、具体的に重点的に施策を講じなければ、こういう諸君は貧農がますます崩壊をしていく。したがって、これに対しては地域集団的と申しますか、共同化的な方向をたどらすべきではないか、こういう点について政府はどう取り組むお考えでございますか。
○政府委員(池田俊也君) いまお話のありましたように私どもも実は考えておるわけでございます。もちろん自立経営農家というものは育成したいという方向であるわけでございますが、全部にそれを期待するわけにまいりませんし、やはり相当経営規模の小さい農家が今後も残るだろうと思います。その場合の一つの対策といたしましては、これをなるべく集団化して高能率の農業にしていくということが必要でございまして、それに対する助成を相当きめこまかくやるべきではないか、こういう御意見だと思いますが、実はこの点につきましては、従来も私どもはそういう観点でいろいろな面の配慮をしておるわけでございます。たとえば直接的にはあまり金額は大きくございませんが、集団的生産組織の育成事業ということで、そういうものを育成するためのいろいろな準備的な事務費的なものに対する助成というものもやっておりますし、またそういう集団的な技術を導入していくという場合に、これに対しまして無利子の金を融資する、これは改良資金の内ワクでございますけれども、たとえば本年度でございますと、十一億くらい、そういう金も予算として組んでおるわけでございます。それからさらに、これはあまり特に集団的ということを表の看板にいたしておりませんけれども、たとえばいろいろな生産対策、これは畜産でございますとか、あるいは園芸でございますとか、その他米等も、ございますけれども、生産対策で共同利用のための機械の導入でございますとかあるいは流通関係のいろんな施設、集中化施設に対する相当いろんな面の助成をやっておりまして、そういうことの金額を合わせてみますと、かなり、数十億、私どもの手元にありますやつだけでも約六十億くらい、そういう助成をいたしております。そのほかにさらに、御存じのような構造改善事業というようなものも相当規模を大きくしてやっておりますので、まあそういういろんな面からやっておるわけでございますが、なお十分でない点もあると思いますので、そういう点には特に私どもも留意してまいりたいと思います。
○向井長年君 非常にけっこうですが、このいま言う集中化というか、あるいは共同化というか、こういう諸君がやはりもう百姓じゃだめだと、こういう形で非常に意欲を失っている状態があると思うんですよ。あるいはまた、そういう助成問題も相当政府としてはいま考えられておるようでありますけれども、非常にむずかしいと思うんだ。これはかなり、非常に、やはり指導して理解さすということがまず必要じゃないかと思うんです。そしてそういう農村の若いエネルギーというものを結集さしていこうと、意欲を持ってここにやはり一つの精神的な指導というものをもっと真剣に考えないと、もちろん助成とあわせてこの面を、ひとつ、強くやはり指導をしていただくように、私はこれは要望しておきたいと思います。 それから、続いてこの農協法の改正でございますけれども、これはさっきの皆さんの質問の中にあったと思いますし、衆議院の附帯決議にも出ておりますけれども、この農協が持つ、今度の不動産の、不動産業者と同じような何が出てくるわけでありますけれども、特に農協の大きな農民のためのダイナミックな経済活動あるいは協同主義、こういうものが本来の使命でございますが、これが、場合によれば非常に市街化区域等がどんどんとこれがふえてくることによって、組合員の土地利用の公共的なねらいというもののような事業であっても、地権者というこの農業者が参画しない形においてこの運営がなされるということは、極力避けなければならぬのじゃないかと、こう思うわけです。この点について、どういう形において参画しその意見を出していくかということですね、一組合員の。この点はどう考えておられますか。
○政府委員(池田俊也君) 今回、法律改正をお願いしております農協の土地の関係の事業でございますが、これは私どもは、基本的には比較的都市に近いような地帯で御存じのようなスプロール化が相当行なわれておる、こういう事態の上に立ちまして、やはりそういうことではなしに、土地の農業上の利用というものを十分見きわめながら、どうしてもやむを得ない場合には転用もこれは認めざるを得ませんので、計画的にそういうことをやっていくのがよろしかろうと、そういうことで農協にそういう事業をやらせるようにしたのでありますが、そういう観点からいたしますと、当然これは組合員の意思を十分に反映しましてやらなければならないわけで、私どもは、やはりこれをやる場合には、当然あらかじめ事業計画というものを、相当できるだけ具体的に立てさせまして、そうしてそれを総会でございますとかあるいは総代会でございますとか、さらにもう少し具体的には、それの下部的な組織といたしまして、部落のいろんな会合等もあるわけでございますから、そういうものを通じて、十分組合員の意思の上に積み上げた計画を立てさして、そしてそれに沿ってやらせる。単に農協が民間の業者と同じように、御注文があったから扱いますということじゃなしに、計画的にやらせる。しかも、その場合に、当然市町村等と連絡をいたしまして計画的にやると、こういうふうに実は指導いたしたいと、こういう考えでございます。
○向井長年君 そういうことでしょうが、少数のリーダー格が特に借地権を設定して、それから事業運営をもっぱら独占するような形になってくると思うのです。そういう場合に、これは最悪の場合、世間によくあることですけれども、不動産業者なんかがいま非常に団地等で目をつけておりますね。そういう諸君と結託と言ったらちょっと悪いようでございますけれども、何らかのそういう形の手段というものがあらわれないとも限らない。そうして、一農民なりあるいは農民の利益を非常に害すると、こういう状態がこれはあったらたいへんですね。そういう問題に対してどう取り組み、あるいはまたそれに対して政府は確信を持ってそんなことは絶対ない、こういうくらいの形でやれますか。これは必ずどっかで問題を起こす基本が私はあると思う。私は、現に大阪府でそういうものを見ております。もと開墾地であって、その開墾地がいまいよいよ都市化が進むに従って調整区域に入ろうとしておるようですよ。いまそれに対して不動産業者が買い上げにかかっておる。そうして、この際うっかりすれば、ただもらったような開墾地ですから、売っていかにゃ損だという形で飛びついておる開墾者もおるし、あるいは、これは死んだおやじが一生懸命戦時中から戦後にかけて開拓したんだから、おれは子供だから、継承して大いにやりたい、これは果樹園ですけれども。そういう状態がいまあるのですよ。そういうことになってくると、今後やはり農協とあるいは不動産業者の大きな幹部と、そういうような形で非常に私は不純な状態があらわれる要素が出るのじゃないかという懸念ですけれども、これに対しては確信ありますか。絶対またやらさないという、やり得ない、またやらぬという確信ありますか。
○政府委員(池田俊也君) 私どもも一、二そういう事例を聞いておるわけでございます。そういう事例があるにもかかわらず、こういうことを認めようということでございますが、私どもは、やはりそういう、農協がそういうことを直接やるということをはっきりさせまして、そうして事業計画なりあるいは経理なりというものを組合員の意思の上に立って、いわゆるガラス張りの形でやらせるということのほうが、むしろそういう現在みたいな、直接農協が表に出ませんで、実際上何がしかの裏のほうでやるということよりもよろしいのではないだろうかという気持ちも一方ではございますが、確かに非常に相当大きな金の動く事業でございますので、私どもはこれをやる場合には、相当かっちりした形で、厳重な監督のもとにやらせたいということで、たとえば具体的には、先ほど申し上げましたように、事業計画はよく組合員との討論の上でつくるということのほかに、経理ははっきりそれを区分させる。それから、これはまだ現在検討中でございますが、大体こういうふうにしたいと思っておりますのは、その土地関係の事業の結果、若干の収益が組合に残るということも、これはあろうかと思います。たてまえは組合員に還元をするというたてまえでございますが、結果としてはそういうことが若干あろうかと思いますが、そういうものもはっきり積み立てをさせまして、みだりに取りくずしを認めない、こういうことによりまして、何かそれを使ってうまいことをやろうということができないような縛り方をしたいというふうに、実は具体的に考えておるわけでございまして、終局的にはこれは私どもは、農協の指導者のモラルの問題だとは思いますけれども、なるべくいろいろな面からのそういうくふうをいたしまして、まあ御指摘のような事態がないようにいたしたいと思います。
○向井長年君 そういう答弁をせざるを得ないと思いますよ。それ以上何も言えないと思うのだが、しかし、これは考えてみれば歯どめがないわけですね、そういう問題については。モラルの問題であるということですが、これは必ずどっかで問題を起こす私は材料をつくると思うのですよ。したがって、それに対する監督はやはり農林省ですか、農協ですから。監督は農林省ですね。政府ですね。地方自治はどうですか、これに対しては。
○政府委員(池田俊也君) 普通の単協の場合でございますと、これは知事の権限になるわけでございます。
○向井長年君 そこで、そういう歯どめをやはり考えさせる。そういうことは伺っちゃいかぬけれども、何らかの形を考えなければ、自主的にというかっこうでやると、やはり問題を起こすような気がしますんですけれどもね。これはひとつ研究をしていただきたいと思います、十分。なお、これはまあひとつの要望で終わりますが……。 続いて農協の合併法案が出てまして、どんどんと合併を促進されておりますね。これ、しかし実際問題としちゃどうなんですか。非常に大小ばらばらな農協というものが生まれてくるんじゃないか。これに対してやはり標準と申しますか、農協の実態に即応した適正な組合規模と申しますか、こういう問題につきましては何らかの方針を出して指導されておりますか。
○政府委員(池田俊也君) これはいろんな地理的な条件とかあるいは経済的な条件だとかがございますので、なかなか一律にこういう形がよろしいということを指示するというのは非常にしにくい状況があるわけでございますが、従来私どもが一般的な基準として指導しておりますのは、いろんな経済事業をやる場合に一つの合理的な単位というのがございますから、そういうような意味で一般的に考えておりますのは、まず大体千戸くらいの、組合員が千人くらいの規模というのが一応の目安になるのではないか。もちろんこれはそれが先ほど申し上げましたようないろいろな事情で、あるいは二千人になる場合もございましょうし、あるいは若干減る場合もございましょうが、大体はそのくらいを一応めどにして指導するのが適当である。こういうことで実は通達等もかつて差し上げたことがございます。一般的には大体そのように考えております。
○向井長年君 それを千人くらいというかっこうで一つの方針を政府として考えている程度で、それを中心にして合併の促進と申しますか、そういうことを今日までやってきておるんですか。それともただそういうふうに考えておるので、自主的にやりなさいというだけであるんですか。
○政府委員(池田俊也君) これは合併助成法が施行されましたのが昭和三十六年でございまして、現在は期限切れになっておりますが、この合併助成法を施行いたします場合に、いま申し上げましたような方針を示しまして、もちろんそれがそのまま常に当てはまるわけでございませんが、一般的にはそういうことで指導してまいっておるわけでございます。
○向井長年君 終わります。
○委員長(園田清充君) これにて午後一時まで休憩いたします。 午前十一時二十二分休憩 —————・————— 午後一時十六分開会
○委員長(園田清充君) ただいまから農林水産委員会を再開いたします。 休憩前に引き続き、農地法の一部を改正する法律案及び農業協同組合法の一部を改正する法律案を一括して議題とし、質疑を行ないます。質疑のある方は順次御発言を願います。
○川村清一君 私は農地法の改正案について御質問申し上げたいと思うわけであります。 まず最初に総括的な質問を申し上げますが、大臣の御答弁をいただきたいと思います。 申し上げるまでもなく、御承知のように、現行農地法というものは、昭和二十七年に制定いたされまして、今日まで約二十年間、その間昭和三十七年に一部改正が行なわれましたが、大体二十七年制定法律のまま今日に至っておるわけでございます。この二十年間にわたりまして、農地法が日本の農業発展のために尽くした役割りというものは私は大きなものがあったと、かように評価しておるわけでございます。終戦後の農地改革を支柱となってささえてまいったものはこの農地法、まあ私はそう考えておるわけでありますが、大臣は現行農地法というものに対しましてどのような評価をされておるのか。日本農業の発展、ひいては日本経済の発展の上から、さらには農業者の社会的、経済的地位の向上といったような観点から、この農地法が尽くした功績というものについてどのような評価をされておるか、まずお聞きいたしたいと思います。
○国務大臣(倉石忠雄君) お話しのございましたように、戦後の農地改革によりまして広範に自作農が創設されまして、これによりましてわが国の農業生産力は画期的な発展を遂げました。そして農業者の経済的、社会的地位の向上をもたらしたばかりだけでなくて、戦後の日本経済の復興と繁栄に大きく寄与いたしましたことはお示しのとおりであります。現行農地法は、このような農地改革の成果を維持し、わが国の農業が経済的に発展してまいった、こういうことに非常な、十分にその使命を果たしたものであると私どもは見ております。
○川村清一君 現行農地法の評価につきましては、大臣と私と意見が全く一致したわけでございます。 そこで現在、農地法の改正案が提案されているわけでございますが、私は、昭和二十七年制定以来、今日までの農政の推移といったようなものを関係立法過程の中から考えてみたいと思うわけでございます。 二十七年に現行農地法が制定されまして、昭和三十六年には御承知のように農業基本法が制定になったわけであります。同じく農地法の一部も改正を見たわけでございますが、これは全く同文でございます。ですから、本質的には農地法は変わっておらないわけであります。それから昭和四十年に農地管理事業団法案というものが国会に提案されまして、これは廃案になりました。引き続いて昭和四十一年に再度、農地管理事業団法案が提案されましたが、これまた廃案になったことは御承知のとおりでございます。そして昭和四十二年に構造政策の基本方針が政府から発表されまして、引き続いて昭和四十三年に農地法、農協法の改正法案が提案されましたが、これは廃案になったことは御承知のとおりでございます。昭和四十四年、去る六十一国会でございますが、この国会に再び農地法、農協法の改正案が提案されたわけであります。衆議院におきましては、六十一国会の会議録を検討してみますというと、実に十日間審議しております。実質審議四十時間に及びます。しかもこの間、参考人の意見を聴取し、さらに委員会は、委員を遠く近畿、九州方面に派遣いたしまして現地の実態を調査いたしております。そういったような審議過程を経て衆議院を通過いたしましたが、参議院におきましては、御承知のように防衛二法あるいは大学法案、健康保険法案、こういった強行採決のあおりを受けて審議未了、廃案、こういうことになったわけであります。同じく四十四年、昨年の通常国会におきまして——六十二国会でございますが、提案されましたけれども、衆議院が解散になってこれまた廃案。そしてこの四十五年、現在行なわれております六十三特別国会に再度大体そのままの形でこれが提案されております。この四十四年と四十五年のこの国会の合い間に、いわゆる本年の二月でございますが、政府は「総合農政の推進について」というものを閣議了解を得て発表しておるわけであります。 こういったような関係法律案の立法の経過の中で、私は日本農業の変遷の姿というものを理解することができるわけでございますけれども、廃案になってもまた出す。廃案になってもまた出す。農地管理事業団法案は二年間連続廃案になりましたからあきらめてしまった。これだけは絶対あきらめない。執拗に提案されてまいっておりますが、このように、この農地法の改正というものに政府が固執しておるのは一体どういう理由なのか、こういうことを考えて、どうしてもこの農地法を改正しなければならないものか。相当の勢力は国会の中でもこれは反対しておるわけです。その反対を押し切っても、廃案になっても、繰り返し繰り返し執拗に提案してまいられるその根拠は那辺にあるのか、この際ひとつ大臣の忌憚のない御意見を承りたいと、かように思う次第でございます。
○国務大臣(倉石忠雄君) ただいま川村さんから農地法制定以来の経過につきましてお話がございまして、そのとおりでございます。私どもは構造政策を考えまして、ただいまの変転きわまりない経済社会情勢の変化に対応して、どこまでもやっぱり農業というものを守り抜きたいと、こういう念願が強いわけでございます。その点は多くの共鳴を得られておることだろうと思いますが、したがって先ほどもお答えいたしましたように、現行農地法の精神、同時にまたこれが果たしてきた役割りについて、十分に評価いたすわけでありますが、さらに農業全体を見ましたときに、こういう状況の中で、農業というものを、しっかりした体質を備えた農業を育成してまいりますためには、前々申し上げておりますように、規模を大きくした、体質のしっかりした農業を育て上げて、国際競争にも立ち向かえるような農業を育成しなければならない。そういうことのために、やはり農地の流動化が必要であります。かたがた、いろいろわれわれのねらっておるところを実現してまいりますために、今回引き続いて農地法の改正を御審議願っておるわけでありまして、要は当初私どもが考えておりましたとおり、やはり農業というものの構造をしっかりしたものにしていく、りっぱな農業として育成したいというのが今次改正案の中心的ねらいでありますので、これはどうしてもぜひ御了承を得、御賛成を得て成立させたい、こういう熱望を持っておるわけでございます。
○川村清一君 さらに重ねてお尋ねいたしますが、先ほど申し上げましたように、政府は昭和四十年と四十一年の国会に続けて農地管理事業団法案というものを提案されまして国会の審議を受けたわけです。これは廃案になりました。で、ここであきらめたのか、中一年おきまして四十三年に農地法の改正法律案というものを提案してまいったわけであります。その間に、昭和四十二年でありますが、この年に「構造政策の基本方針」というものを出されておるわけです。 そこで私がお尋ねしたいのは、この農地管理事業団の構想というものとこの農地法改正の考え方というものとどのような違いがあるのか、また、別に尋ねますが、かりにこの管理事業団法案というものは廃案になりましたが、あの法案がもし成立しておった場合には一体これはどうなったか。あの昭和四十年、四十一年に提案された農地管理事業団法が成立しておればもう四十三年にはこの法律案を提案する必要がなかったのかどうか。あの法律が制定されておったとしても農地法を改正しなければならなかったのかどうか。この辺のいきさつをひとつ御説明願いたいと思います。
○国務大臣(倉石忠雄君) 農地管理事業団法案は御指摘のように、昭和四十年それから四十一年、若干手直しをしまして提出をいたしましたわけでございますが、御承知のようにそのねらいといたしますところは、農地にかかります権利の取得、農業経営規模の拡大、その他農地の保有の合理化に資するようにするために特殊法人をつくりましてやっていこうということをしたわけでございますが、当時はまだ現行農地法を前提にいたしましてこの特殊法人のみについて若干農地法の例外を設けるという考え方をとったわけでございます。したがいまして現在提出しております農地法との関係から申し上げますと、今回の農地法の改正案は単にいまの農地保有の合理化という観点だけでなくて、それ以外のいろいろの問題をここに加えておりますので、その辺に違いがあるわけでございます。 一面、たびたび当委員会でも御審議がございましたように、農地保有合理化法人という新しい考え方を出してまいりましたが、かつて農地管理事業団法案が国会での御審議でいろいろな御批判がございました。当時これは全国一律に全部国がやっていこうというものの考え方でありましたわけでございますが、こういう国会での御批判をいろいろ勘案をいたしまして、やはりそういう規模拡大のための公的な機関の介入というのは地域の実情に応じてやったほうがいいんではないかということから、今回は県の公社なりあるいは市町村農協というそういう団体に地域の実情に即してやらせよう、こういう違いがございますけれども、規模拡大のための農地の保有の合理化、方向づけというものについては同じでございます。 そこで、もし管理事業団法案が成立しておったら一体農地法を新しく出したか、こういうことでございますが、はなはだ仮定の問題でございますので答えにくい問題でございますけれども、あるいは私見にわたって恐縮でございますが、その後昭和四十年五月からかなり農地法自体の運営と申しましょうか実態と申しましょうか、そういう面でも午前中もかなりくずれているではないかという御批判がありました。特にその点は賃貸借関係の問題につきましては、昭和四十年のころと現在とではかなり様相が違っております。非常にいわゆるやみ小作、請負小作等が出てまいりまして、そういう賃貸借の面での農地法の秩序というものは、率直に申し上げまして現行法のままでは維持しがたいという問題が出てきております。それからまた農業就業人口が外部に出ていって減少する、あるいは離農の問題が起こってくるということも、五年前と比べますればますます離農の促進あるいは援助ということが強くなってきておりますので、やはり管理事業団法案が成立いたしておりましても、農地保有合理化の事業ということは別にいたしまして、農地法は新しい時代に即応すると申しましょうか、現在のとおりでありますかどうかその辺はわかりかねますけれども、若干の手直しを必要としたと私は考えるわけでございます。
○川村清一君 農地局長は、昭和四十年、四十一年の段階と、現在の四十五年の段階とを比較されて私に御説明になっているわけでございますが、この農地法の改正法案というものは初めてこの国会に提案されたのじゃなくて、先ほど経過をちょっと申し上げましたように、逆にさかのぼっていきますというと、昨年四十四年にもこれは国会に出されておるわけであります。もう一年先に繰り上がって、四十三年にも出されておるわけですね。したがって私は、四十年、四十一年というものと四十三年というものとを比較されないとこれはいけないのではないかと思うわけであります。 そこで四十年、四十一年の農地管理事業団法案審議の際に、いろいろ政府が御説明になったり御答弁になった会議録等を検討してみますというと、こういうような御説明をされておるわけでありますね。当時、現実に流動しておる農地というものが七万ヘクタールある、そのうち北海道は四万ヘクタールある——、七万ヘクタールの土地が流動しておる。ところが現実に流動している七万へ一タタールというこの農地が効率的に使われておらない、いわゆる規模拡大、自立経営農家育成、こういう面において効果的に使われておらない。そこで、農地管理事業団という特殊法人をつくってこれが買収あるいはあっせん行為等を行なう、また土地取得金のめんどう等も見る。この実際に動いておる七万ヘクタールという農地を、効率的に実際この規模拡大に使われるようにするためにこの法案を出したのだ、こういう御説明を私どもは承っておったわけであります。 ところが私どもは反対しましたが、これは廃案になったわけであります。そうして政府も断念されたとみえまして、中一年おいて四十三年に農地法改正に踏み切ったのです。ところが農地管理事業団法案審議の際には、政府のほうは農地法に手をかけるということは考えておらないということをはっきり言明されておるわけであります。農地法を改正するといったようなことは考えておらない、こういうふうにはっきり言われておった政府が、廃案になって翌年、四十二年には「構造政策の基本方針」というものを打ち出されて、そうして農地法改正に踏み切った。まあ君子豹変とまではいかないかと思いますけれども、国会で大見得を切って、農地法には絶対手をつけないといって見得を切った政府が、中一年おいたら突然農地法改正に踏み切ったということは一体どういうことなのか。もしも昭和四十年なり四十一年に管理事業団が成立しておったら、よもや四十三年にはこういうことはできないでしょう。そういう意味から言えば、皮肉なことかもしれませんけれども、管理事業団が廃案になったことは政府のためにはしあわせだったかもしれない、こういうふうにも考えられるわけであります。こういう点について私はなかなか納得いきませんので、よく御説明をいただきたい、こう思うわけであります。
○政府委員(中野和仁君) その点につきましては、やはり管理事業団法案を提出いたしましたあと、国会での御審議の経過をわれわれ反省してみる必要があるということをあの当時考えたわけでございますが、いわば戦艦一隻だけ出撃、構造政策のために出撃をいたしました。たとえば、離農対策もないではないか、あるいは賃貸借の面をどうするかという御批判、それからなかなかいまの農村の状況では離農も進まないではないか。七万ヘクタール程度のもちろん農地の流動は年間あるわけでございます。そのうち三万ヘクタールは北海道、内地は動かないというようなこと、それからこれは非常に申しにくい話ではありますけれども、どうも管理事業団というのは、官僚機構を拡大して、農村に直接介入するのはよくないではないかという御批判等もあったわけであります。 そこで現在おられます農林大臣がそのときの大臣のときに、戦艦一隻出撃、これは比喩的に申し上げて恐縮でございますが、やはり全体として構造政策を考え直す必要があるではないかということになったわけでございます。そこで四十一年の秋から四十二年の夏にかけまして、省内あげて検討をいたしました結果、やはり根本的に日本の農業構造を直していくためには、単に管理事業団法案だけではだめではないかということから農地法の改正あるいは農協法の改正、それから農業振興地域整備法をつくり、その他もろもろの政策を盛りまして、構造政策の基本精神ということを取りまとめたわけでございます。結局、いわば管理事業団だけで構造政策をやっていくよりも、全体として構造政策を進める必要があろうという反省の上に立ちました場合には、やはり農地法そのものにも手をつけなければいけないんではないかということになってきたというふうに私は理解しておるわけでございます。
○川村清一君 局長のおっしゃっていることはよくわかるわけなんです、また理解もできるわけです。ただ私がお聞きしておりますのは、もしこの農地管理事業団というものが成立しておれば、そして審議の過程では農地法には手をつけませんと、こうはっきり申しておったのですから、成立しておったと仮定の上に立って質問するのは、これは妙な話でございますけれども、まさか四十三年に農地法改正に踏み切るわけにはいかないでしょう。やっぱり法律を提案し、そして国会の中ではっきりとそういう意見を述べた立場にある政府としては、中一年をおいて今度は農地法の改正に踏み切るというわけにいかぬでしょう。そう思うのです。そういう無責任なことは私は農政責任者としてできるものじゃないと思うのです。そこでそういう面から考えてみれば、むしろ管理事業団がつぶれたほうが、政府のためにしあわせであったではないかということがまず一点、これをはっきりお答えいただきたい。 それからいまの御答弁によりますというと、この法案の審議の中で、国会でいろいろ議論がありました。そしてその議論を聞いて、それで廃案になった時点において、もっと根本的に考え直さなければならないということで、四十二年に構造政策をいろいろ検討するというような機関を設けて、倉石農林大臣はそのときはその委員会のほうの何か中心的な役割りをされた方であるというようなことも聞いておりますが、そういう検討の中から、根本的にこれを改善しなければならないということで農地法改正に踏み切った、こういうことです。 そうしますと国会でいろいろ議論されたその意見をすなおに聞かれて、そうして検討の素材にされたことは、その姿勢は私はりっぱなことだと考えて評価します。と同じように、そういう立場から考えてみますというと、約二十年間にわたって日本の農地行政をささえてきた、農政の中心的な役割りを果たしてきた農地法の改正というものは、そう軽々にできるものではないのではないか。二十年間続いてきたこの法律であります。ここで改正か改悪かしりませんが改正して、そうしてまた都合が悪くなったからといって、今度はまた変えるといったようなことはなかなかできないことではないかと私は考えるわけです。そういうような点からいって、農地法の改正というものは、もっともっと慎重でなければならないのではないかというふうに私は考えるわけでございますが、この辺についてもひとつ御意見を承りたいと思います。
○国務大臣(倉石忠雄君) 農地法は先ほども申し上げましたように、創設以来りっぱな任務を果たしてまいっておりますし、これからのわれわれの考え方も、やっぱりその農地法のたてまえである精神というものをくずしていこうとは思わないわけでございます。いまお話のございましたように、時代の変転に伴って農業をしっかりしたものにしていきたいという検討をいたしました。すなわち、構造政策についてわれわれ研究をいたしました過程におきましても、やはり農地管理事業団というものは、ああいう性格のものが必要であるという意見もたくさん出てまいりました。また学者などでも、あれは惜しかったということを言っておるものもございます。 しかし、いずれにいたしましても、規模を拡大してわが国の農業を国際競争に立ち向かえるようなしっかりしたものに育成していく必要がある。そういう前提に立ってものを考えてみましたときに、やはり農地法の精神そのものは動かす必要はないのでありますが、さらに時代に合うように改めていくべきではないか、こういう考えに立ちましたので、今回の改正案を企図いたして御審議を願う、こういうことになった次第であります。
○川村清一君 そこで、大臣お立ちになる前に大臣のお考えをお聞きしたいのでありますが、現行農地法の立法の趣旨といいますか、基本的な思想、この法律が持っておる基本的な思想、これをどのように把握されておるのか、これについて。
○国務大臣(倉石忠雄君) 現行農地法につきましては、農地が農業にとりまして最も基本的な生産基盤であるということから第一条の目的に示されておりますように、農地はその耕作する者みずからが所有することが最も適当である、こういう考えのもとに、耕作しない者の農地取得の禁止、それから耕作者の農地取得の促進、耕作者の権利の保護等の措置を講じまして、所有と経営と労働のいわば三位一体となる施策の推進を基本理念といたしまして、耕作者の経営の安定と農業生産力の増進をはかることを目的といたしておる、私どもはこのように理解をいたすわけであります。
○川村清一君 その考え方につきましても私は同感でありまして、意見が一致しておるわけであります。その法律の精神というものは、第一条の目的に明示されておるわけでありまして、あくまでも農地は耕作者みずからが所有すべきものである、いわゆる自作農主義である、これがこの法律の立法のたてまえである、したがって、今日までの日本の農地行政というものは、常に耕作者がその土地を所有することが正しいのだという観点から耕作者を守っている。つまり、耕作者の地位の安定と、そして農業生産力の増進をはかるという精神を貫かれて農政が志向されてきた、かように考えておるわけであります。したがってこの法律の体系というものは、この第一条の精神を実現するためにいろんな規定がございまして、その法律全体がいわゆる一つの第一条の目的を達成するというために法体系ができておる、かように私は理解しておるわけであります。 ところが、今回の改正はこの第一条の目的を改正しようとしている。第一条の目的を改正するということは、つまりはその法律の体系をこれを改正することであります。われわれの側から言うならば、改正でなくて改悪することである、こういうふうに評価するわけでございますが、一体この第一条を改正するということは、その農地というものは耕作農民が所有すべきものであって、その耕作者を守るということが農地法のたてまえだという基本原則を変えようとしているのかどうか、この点をはっきりひとつ御説明願いたいと思います。
○国務大臣(倉石忠雄君) 今回の農地法の改正案の基本的な考え方は、しばしばここでもお話し合いに出ておりますように、農業に専念していこうとする農家などの生産性の高い経営によって農地がより効率的に利用されるようにその流動化を促進しようといたすことにあるわけであります。このために賃貸借に関する規制の緩和、それから小作地所有制限の緩和等の措置を講ずることといたしておるわけでありますが、同時に耕作をしない者による農地所得を認めないという原則は堅持することは御承知のとおりでございます。耕作者の経営の安定をはかることにもわれわれは十分配慮いたしておるわけでありまして、今回の農地法の改正によりましても現行農地法の基本理念が受け継がれておるのでありまして、これをいささかも否定しようとするものではないのです。
○川村清一君 大臣が行かれますというと局長にお尋ねいたしますので、大臣もそろそろ時間になったらお立ちになってけっこうでございます。それまでお尋ねいたしますが、いまさら私が申し上げるまでもなく、日本の国民総生産というものは世界第二位という地位にまで上がったわけであります。そうして日本は世界有数の工業国として高度経済成長したわけであります。このように工業国として成長する日本の経済の中で日本の農業というものはどういう位置を占め、いわゆる日本の経済の中における農業の持つ地位というものをどのように政府としては考えておるのか。この点をお尋ねいたします。
○説明員(内藤隆君) ただいまのお尋ねでございますが、経済が一般に成長発展いたします場合に、国民経済の中におきまして農業がたとえば所得、就業人口というような面に着目してみます場合には、相対的に低下してまいりますことは、欧米先進諸国の例に見られるとおりでございまして、いなめない傾向であるというふうに私ども考えておるわけでございます。わが国につきましては、このたび決定になりました新経済社会発展計画におきまして、その若干の数値を見てみますと、一次産業が今回計画の基準年次の四十三年で生産額が四・二%でございます。就業人口は一九・八%でございまするけれども、目標年次である五十年にはそれがそれぞれ二・五%弱及び一三%程度になるというふうに見ておるわけでございますが、それは一応の中期モデルによる試算でございまして、計画自体といたしまして、農業部門は本計画の中におきまして、国民食料の安定的供給という面で非常に重要な役割りを演ずるというふうにされておりまして、農業をめぐります現在のきびしい内外情勢のもとで、積極的に農業の生産性の向上につとめまして、そのために高生産性農業を実現するということをビジョンとして掲げまして、生産、構造、価格、流通などの施策を強化する、こういうふうに一応本計画ではなっておる次第でございます。
○川村清一君 たとえば日本の農業というものは、国全体の経済の中でどういう姿になるのか。具体的に言って、たとえばイギリスのようなああいう産業構造の国になることを予想されているのか。
○説明員(内藤隆君) いま先生のお話の、イギリスというような例でございますが、主として食糧の供給と申しまするか、国内の自給というような面についてお話になっておるのでございますが、食糧全体といたしましての自給率はどの程度が適当であるかということにつきましては、おのおのの国の国民経済、それから自然の置かれております状況等によりまして非常にむずかしい問題でございますが、昨年秋農政審議会が総合農政答申といわれております答申をしておりまするけれども、その中におきまして、人口が一億をこえるようなわが国におきまして、国民の必要とする食料をなるべく国内でまかなうことが望ましいという趣旨の提言をしておるわけでございますが、私どももそれはむろんそういうことだというふうに考えておりますので、自然条件、生産条件を全然無視するというような供給構造ということを考えるわけにはまいりませんけれども、英国の場合、まあ現在自給度が非常に低く、なおかつその将来の自給度というようなことについて、まあいろいろ議論があるようでございまするけれども、私どもとしますれば、総合農政答申の言っておりますように、現状程度の総合的な食料の自給率としては、将来も可及的に維持してまいることが日本の場合には当適である、こういうふうに考えておる次第でございます。
○川村清一君 食料自給率というものはどの程度に考えておられるのですか。まあ八〇%程度を考えられておるのか。それから、世界の食料の需給関係はどう、その世界の食料の需給関係を展望して、わが国の食料の自給率というものを考えるのが当然だと思うわけでありまして、その辺をどういうふうに把握されておるのか。
○説明員(内藤隆君) 何%程度ということにつきましては、昭和四十三年にわが国の、これは価値学で計算した全体自給率でございますが、これは再々申し上げておりますように約八三%になっておるわけでございますが、これは御案内のように米が非常に多いというようなことになっておりますので、これをかりに国内の需要に見合いますだけの米の生産というふうに置きかえて考えてみますると、昭和四十三年におきまする自給率は七八%程度になるわけでございます。私どもも先年公表いたしました「農産物の需要と供給の長期見通し」に基づきまして一応概算でございますがいたしてみますると、昭和五十二年にはそれが七七%程度というようなことを一応見込んでおりまして、大体現状程度の、これはもちろん非常に具体的な予測をすることが困難でございますので、程度というふうに申し上げる以外にないんでございますが、大体現状程度の自給率を維持したい、こういうふうに考えておるわけでございます。 それから後段の世界の食料の需給の見通しでございますが、これも非常に低開発国、それから先進国の生産計画、それから人口、所得の伸びというようなことの見通しに伴いまして、強気、弱気いろいろございまして非常に困難な問題でございますが、最も新しいというふうに考えられておりまするOECDがFAOと協力して作成いたしました「世界の主要農産物の需給見通し」、これは一九七五年を見通しているのでございますが、それによりますと、肉は若干不足ということがはっきりしておりますが、まあ小麦——粗粒穀物、米を含めます穀物は全般的に過剰、それから、それ以外の生鮮の食料品につきましては大体需給が権衡するというふうになっておりますので、一応そういう世界的な穀物の過剰傾向というようなことを前提にした自給度の考え方というものをとっているわけでございます。
○川村清一君 そうしますと、ただいまの御説明によってわかったことは、大体わが国の食料の自給率というものは五十二年で大体七七%、現状とたいして違いがない。したがって、二〇%から二五%ぐらいは供給が不足であるということになるわけでございます。「世界の食料需給見通し」というものは肉のほうは若干不足ぎみであるけれども、穀物のほうは全体として過剰ぎみである、こういうような御説明でございますから、したがってわが国の不足分は、やはりこれは輸入に依存するというような、こういうような考え方で農政を進められる、こういうお考えでございますか。
○説明員(内藤隆君) 先ほども申し上げましたように、たとえば従来も申し上げておりますように、米につきまして、これを完全に国内で自給することは当然といたしまして、自然条件、それから土地条件というようなものによって非常に現在生産性に差のございます粗粒穀物のようなものにつきましては、従来どおり日本の国内におきまする畜産物の増産に応じまして必要となる分の輸入というようなことは当然考えなければなりませんし、小麦につきましても、午前中でございましたが若干御議論ございましたように、そういう傾向を考えているわけでございますが、それ以外の畜産物、それから果実というようなものにつきましてはおおむね一〇〇%近い自給を達成するように努力するということを昭和五十二年の見通しで一応予定しているわけでございまして、そういうものを踏まえました先ほどの数値でございますが、いま先生のおっしゃったことにほぼ近いというふうに考えおります。
○川村清一君 そうしますとわが国の食料というのは大体需要量の、需要量ということばが当てはまるかどうかわかりませんが、国民が摂取します食料の四分の一というものは、これはやはり外国の輸入に期待しているということでございまして、これをひとつ置いて、次の問題をお尋ねしますが、将来の農地面積は現在と比べてふえるのか、減るのか、ふえるとすればどの程度ふえていくのか。減るとすればどの程度減ってくるのか。さらにその農地を使って耕作をする農家戸数、それからその農業に従事している従事者の数、こういったようなものがどういうふうに変わっていくのか、この点御説明いただきたい。
○政府委員(中野和仁君) 一昨年の秋、農林省で「農産物の需要と生産の長期見通し」を出したのでございますが、それによりますと、基準年次を昭和四十一年にしておりますが、そのときの田畑合計は六百万ヘクタールでございます。昭和五十二年には田畑合計で五百七十五万ヘクタールということで、二十五万ヘクタール減というふうに見ております。ただしこれは草地面積を除外をしております。昭和四十一年に草地面積は十六万ヘクタールでございましたが、昭和五十二年までに六十一万ヘクタールというふうに草地造成を画期的に進めたいということでいまやっております。そういうことで合計いたしますと約二十万ヘクタールの農用地面積の増を見込んでいるわけでございます。それからそのときに推定いたしました農家戸数は昭和四十一年五百五十万戸でありますが、五十二年には四百五十万戸に減少をするというふうに見込んでいるわけでございます。なお先般発表になりました新全国総合開発計画によりますと、耕地面積は五十四年五百五十万ヘクタールということで、先ほどの五十二年の見通しよりもかなり減っておりますが、一方畜産の増強ということで草地面積は百五十万ヘクタールという試算をいたしております。
○川村清一君 農業従事者。
○政府委員(池田俊也君) 農業就業人口でございますが、これは最近は大体の数字は約九百万でございます。先ほど農地局長から話がありました「需要と生産の長期見通し」からいたしますと、昭和五十二年に六百万程度になるであろう、大体年率四%ぐらいの減少というふうに見込んだわけでございますが、あるいはこれは今後の推移いかんによるわけでございますが、苦干もうちょっと減少率が大きくなる可能性はございます。
○川村清一君 その次にお尋ねしますことは、農家戸数をただいまお尋ねしましたが、この農家戸数の中に占める形態でございますが、法人形態、それから自作農、この自作農の中にはさらに兼業農家が入っておるわけでございますが、こういったような数をどういうふうに大体見通されておるか、この点伺います。
○政府委員(中野和仁君) 御承知のように、日本の中心はやはり家族の個人経営でございます。それの戸数の減少が四百五十万戸というふうに見たわけでございますが、現在法人経営ということで有限会社とか組合法人ということでやっておりますのは約二千五十事業体ございます。したがいまして、全体のウェートからは現段階は低いわけでございます。それは昭和五十年にどうなるかという具体的な推計はわれわれいたしておりません。
○川村清一君 局長、現在法人経営というのが二千五十経営体といったような御説明で、これが将来どうなっていくか、ちょっとわからないというような、こういう御説明では納得いかないんです。と申しますのは、この農地法の改正というのとこれは非常に大きな関連があるわけですね。この法人というのは農業法人でございますよ。まあ、いまあなたのほうはだいぶこれを利用されていらっしゃるわけでしょう。ですから一体どのくらいになるのかわからないという御答弁では何をもって法律改正をされているか、その根拠が非常に薄弱になるんじゃないかと私は思うんです。 それからさらにお尋ねしますが、いま農地面積が六百万ヘクタールが五十二年には五百七十五万ヘクタール、大体二十五万ヘクタール減る。それから農家戸数でございますが、五百五十万戸が四百五十万戸に減る。就業人口も九百万から六百万に減少する。こういったような数字の見通しというものは、これは現行農地法のままでいった場合に、こういうふうに推移していくという、こういう計算なのか、それともこの農地法を改正することによってこういう数字が期待されると、こういうことを言っていらっしゃるのか、この辺はどういうふうに理解したらいいんですか。
○説明員(内藤隆君) ただいま申し上げました農業就業人口、それから農家戸数、耕地面積等の数値につきましては、「農産物の需要と生産の長期見通し」をつくりましたときの参考数値として試算したものでございまして、その場合にはその予見等につきまして、特に条件を設けるというようなことをいたしませんで、従来の変化の傾向値を一応五十二年まで伸ばして参考数値をつくったという過程になっております。
○川村清一君 この農地法の改正の必要というものについて冒頭私が大臣にいろいろ御質問を申し上げた。少くともこの農地法というものは昭和二十七年以来今日まで約二十年間にわたって行なわれてきた法律であって、この法律によって日本のいわゆる農地改革の成果というものが維持されてまいって、そうしてこのことによって農業が発展し、この農業が日本経済の発展に寄与し、これに従事している農民の経済的、社会的地位の向上がはかられるのだと、高く評価していらっしゃる。しかし、いまや社会的、経済的変遷があって、しかも大きく変動してしまって、この現状にマッチしなくなった。そこで農業の近代化をはかり、農業の生産力を増大し、あわせて農業従事者の経済的、社会的地位の向上をはかるために農地法を絶対に改正しなければならない、こういう意思で改正案を提案されておるということを強く大臣はおっしゃっておったのです。そこで農業の規模の拡大、近代的農業経営、生産力の増大、こういうものをはかるためには必然的に日本のそれでは農地はどうなるのか、農業戸数はどうなるのか、就業者はどうなるのか、そうして食料の需給等はどうなるのか、世界の農業の中でどういうふうに考えていかなければならないのか。こういうことが必然的に全部これは大事な要素になって私はくると思うのです。そういうことでお尋ねをしたのです。だから農地法を改正しなくても、いまのような数字になるのか、農地法を改正することによってもっともっと農家戸数が減る、そういうことによって今度は耕地がもっとふえるのか減るのか、その耕地がきまっておって、それを農家戸数が減ることによって一戸当たりの今度は保有面積がふえて耕地面積がふえてくる。規模が拡大されてくるということにつながってくるでしょう。そのことによって生産力が増大し、農業経営そのものが近代的になってくる、こういうふうに全部関連してまいるのではございませんか。 そこで私がお尋ねしておりますことは、農地法を改正することによってこの数字はもっと変わり、好ましい姿の日本の農業の姿というものがここにできてくるのだという一つのビジョンというものを、青写真というものをここに提示していただかなければ私どもはこの農地法を改正することに反対なんです。反対の立場であるけれども、もしそういうことをあなた方がよく説明された場合には、なるほどそういうことになるのか、それならば賛成すべきであると、こういうふうに考え方も変わるかもしれない。法律は出したけれども、法律が施行されることによって日本の農業の姿がどう変わってくるものだ、変わった姿がこういうものになるのだというものを出していただかないで、そうしてこの法律はいい法律だから賛成せい賛成せいと言われたって、これはなかなか賛成できないでしょう。そういうものでないですか。私は子供ではないですから、もう少しよく納得し、了解できるように御説明願いたい。
○政府委員(中野和仁君) 先ほど「農産物の需要と生産の見通し」についての数字を御説明申し上げました。これは官房のほうのお答えのように、当時のいろいろの予見から、傾向値で推計をしているわけでございますが、農地法がこういうふうに今回改正になりますれば、そういう傾向が一そう円滑になるということは私言えると思います。ただ、農地法のどの条文のどの条項を直したら計画的にこういう数字にこれだけを持っていくんだということは実際問題としてはその直接のつながりをもって積算 するということははなはだ困難ではないかというふうに思います。この点につきましてはもう昨日もるる御議論があったわけでございますが、直ちにこの農地法の改正と結びつけまして具体的な数字でぴしゃっと出すということはなかなか困難ではないかというふうに考えておりますが、最初に申し上げましたように、今回の改正によりまして自立経営を志向する農家の経営面積を広げていく、それからまた地域によりましては集団的な生産組織あるいは協業の助長ということを進めていきまして、先ほどから申し上げておりますような数字、あるいは若干それ以上上回るような数字で先ほど大臣が申されました日本農業の体質の改善ということに少しでも近づきたいと、こういうふうに考えております。
○川村清一君 日本農業の体質の改善ということは、要すれば生産性の低い農業というものを生産性の高い農業に引き上げていくんである、そしてその農業経営そのものを近代的な農業に変えていくんだと、こういうことだと思うわけであります。そのことを逆に言えば、農地法があるからして近代的な農業経営、そして生産性の高い農業経営になかなか移行することが困難だ、だからこの際農地法を改正することによってこれらの面の向上をはかっていくんだと、こういうことになるわけですね。
○政府委員(中野和仁君) もちろんただいま申し上げました農業の体質の改善ということにつきまして農地法の改正だけではなかなか実現はむずかしいということは私たちも十分承知をしているわけでございますが、やはり現行農地法の面から見ましてもそういう将来の農業に向かって進めていく場合にはそれを阻害しているような各条項、と申しましょうか、そういう面もかなり出てきております。現に賃貸借の面を見ましてもかなりやみ小作等の発生、このこと自体それじゃ現行法で取り締まるか、なかなかむずかしい面もございますので、やはり農地法の中でも直していかなければならない面があるんではないか。しかし農地法の改正だけで構造政策が推進されるというふうにもわれわれ考えておりません。同時にそれを促進するための各種の対策を講ずる必要があろうというふうに考えております。
○川村清一君 それじゃ農地法がいわゆる構造改善をはばんでおったというのはどういう面ではばんでおったのですか。
○政府委員(中野和仁君) 今回の改正法案によりましていろいろな点を改正しておりますが、その中で特に申し上げてみますと、たとえば農地の権利移動の制限について現在統制をしておりますけれども、現在一応標準としまして、上限面積は三ヘクタールがよかろうと、こういうことになっておるわけでございます。しかしその後の技術の進歩、機械化の発展ということから考えますと、そういう三ヘクタールの上限はもはや要らないんではないかということが考えられますし、それから最近都市周辺を中心にしていろんな都市問題が起こってきております。その中でほんとうの意味で、農業をやるつもりでなくて、資産保有的に農地を取得したいという農家もある。やはりその点につきましてはほんとうに農業をやるかどうかの判断を加える必要があるんではないかと思います。 それから農業生産法人の問題にいたしましても従前は先ほども川村先生からお話がありましたように、農業基本法をつくりました際の農地法をかえましたいわばあのときにつくりました農業生産法人は、個人自作農の延長というような考えが非常に強かったわけでございますけれども、その点は新しく機械化の進展、あるいは技術の進歩等に応じて、それからまた零細な農家に土地提供を願うという面から進めていくことがいいのではないかというようなこと。それからこれは先ほど管理事業団のときにお話がございましたけれども、個人の相対販売だけに土地問題をまかしておけないということから、やはり公的機関の介入ということが必要ではないかといった面。それからまた小作地の所有制限、現在は御承知のように不在地主は認めない、これは個人負担ということになっておりますが、現に農業をやっておる農家の中でもこういう他産業のほうに転身をしたい、しかしなかなか土地は放しにくいという農家に対して、その土地を貸しまして、借りたほうが安定して経営ができるというためにもやはり所有制限の緩和の必要があるんではないかということ。 それから最後にもう一つ、賃貸借関係の問題につきまして、これは昨日からもいろいろ議論があったわけでありますが、現行農地法の耕作権が——残存小作地の保護、この点のために非常に強い耕作権の保護をやっておるわけでありますが、新しく貸借を始めようとする場合は、いわゆる昔のような地主が小作人に貸すというのではなくて、農家同士の貸し借りが中心になりますものですから、これらはもう少し貸しやすく、あるいは借りるほうも安定した経営がやれるという観点から、賃貸借関係を考え直す必要があるのじゃないかというようなこと等、われわれそういう点はぜひこの際直す必要があるんじゃないかというふうに考えておるわけです。
○川村清一君 そうしますと、ただいま局長が御説明になったそういう事項を農地法の改正によって改善することによって農業の構造というものが改善され、近代的農業の育成に非常に貢献することができる、こういうような判断で改正案が出されておると、こういうふうにひとつ了解いたします。賛成、反対は別として、また反論があるわけですが、あなたは一応そういうふうにおっしゃっておるわけで、すし農地法を改正をしても、これだけで近代的農業育成への道をすべて解決するものではなくて、それ以外にも阻害要因があるから、その阻害要因をあわせて改善していく努力をするというような御説明が先ほどあったわけでありますが、しからばそれはどういうことなのか、農地法の改正以外にどういうことをあわせて行なおうとしておるか、この点をひとつ御説明いただきたい。
○政府委員(中野和仁君) この問題につきましては、農地局長だけであるいは御答弁がしにくい、もっと広範な問題でございますけれども、大臣が御退席になります前にお話がありましたように、最近の目まぐるしい農業を取り巻く状況からいたしまして、基本法のラインに沿いながら、もっとそれを深めていくというために、すでに「総合農政の推進について」というのを先般農林省としてきめました。四十五年度の予算もその方向に沿ってやってきておるわけでございますが、やはりそのねらいといたしますところは、経営規模の大きい、生産性の高い近代的な農業を育成するということで、各種の予算を盛ったわけでございますが、特に具体的に農地法との関連で申し上げてみますと、一つには、やはり流動化のためには自作地として流動化するほうが望ましいわけでありますので、農地等の取得資金の拡充ができるということが別にわれわれとしては必要だと思っております。このために四十五年度の予算は相当増額をしておるわけでございます。 それから農地の流動化が行なわれましても、それが望ましい方向に動く必要があるということから、すでに四十四年度の予算から農業委員会による権利移動のあっせんについて相当の助成をして、末端での権利移動の円滑化をはかりたいというようなこと、それから先ほども申し上げましたが、農地保有合理化法人についての各種の助成ということを具体的には考えているわけでございますが、なおもう少し広めて申し上げますと、今回衆議院で通過をいたしました農業者年金制度の拡充あるいは大臣がしばしばお話しになります工場の地方分散によります雇用機会の増大、それから転職を希望する農家に対する職業訓練、そういう各種の施策が広範に行なわれる必要があろうというふうに思います。
○川村清一君 経営の近代化ということを考えると、何といいましても生産規模を拡大してまいらなければならない、こう考えております。生産規模を拡大するためには土地の流動化がはかられなければならない、これは当然であるわけです。ところが流動化が思ったようになかなか進んでおらない。それはすなわち現行農地法というものが大きな阻害的な役割りをしておる、農地法が硬直して、そのために農地の流動化が思うように進まない、こういうような御説明もこの委員会でなされておるわけであります。そうしますというと、土地流動化を阻害しておる責任は農地法にあるのだ、こういうふうにもなるわけでありますが、われわれは農地法がある意味において硬直しておるということを決して否定してはおりませんけれども、これも一つの要因であることはこれは認めますけれども、それ以上に大きな要因があるというふうに判断しておりますが、この辺につきましてはどのように把握されておりますか。
○政府委員(中野和仁君) 私も先生と同じように考えておりまして、農地法自体の中に、先ほども申し上げましたように、硬直化しておる面がかなりあるわけでございますけれども、農地法のみが流動化を阻害しておるということは考えておりません。たとえば地価の問題を取り上げてみましてもそうでございますし、それから土地の利用という面から、あるいは都市計画の問題その他いろいろな問題が出てきておりますし、それから就業人口の減少に伴いまして中高年齢層が農村に滞留していくというような問題、これをどう解決するかというような問題等、農業外の要因も含めまして、非常に多岐にわたってあろうかというふうに思います。
○川村清一君 農地局長にお尋ねするのですから、別な分野のことについてお尋ねしてもお答えができないと思うので、そこで大臣がいないので残念ですが、私は農地法そのものも若干の要因はなしておると思うけれども、それ以上に大きな要因があって土地の流動化をはばんでおる、かように考えるわけです。そこで、どういう問題があるかということをお尋ねしましたら、地価高騰、地価がもうあまりにどんどんどんどん上がっていく関係で、なかなか農民の方は土地を離さない、そうしてその土地そのものをある一つの財産としてこれを保有しておる、こういう傾向が強くなっている、これは当然だと思っております。 そこで、地価対策をどうするかということが大きな問題で、この解決なくして農地法を改正したところで土地の流動化というものはそうあなた方が思ったように私は動かないと、さように考えております。 その次にはこの農外雇用条件というものを考えてみましてもなかなかいいものはない。幸いその農地の近くに大きな工場でもあって、そうして働ける場所があるならいざ知らず、そういう働き場所のない農業地帯においては、離農しようとしたってなかなかできる問題ではございません。こういったような農外の雇用条件というものをどういうふうに改善していこうとするのか、この問題は大きな問題で、これなくしてなかなか土地の流動化を促進するということは困難な問題だと思います。 もう一つは社会保障制度、これがきわめて不安定である。こういうようなことが兼業農家をしてなかなか離農せしめない要因にもなっておる、かようにも考えております。むしろこれらの条件が農地法以上に土地の流動化をはばむ、このことがいわゆる近代農業の育成のためにマイナスの要因になっておる、私はこう判断しております。 そこで、農地法改正だけではとうていこれはできるものではないというあなたの先ほどの御説明は全くそうだと思います。したがって、この問題をどうするかというやはり政府の具体的な方針というものが示されなければいけないのじゃないか。これは農地局長にお尋ねしても答弁はできないと思いますがどうですか。次官、ひとつお願いしますよ。この二月に閣議了解で発表された「総合農政の推進について」という、この中にもそういうことが書かれておりますので、農林省の責任者としてひとつ次官の説明を承りたいと思います。
○政府委員(宮崎正雄君) ただいまお話しになりました問題点はごもっともだと思います。したがってわれわれも先ほどお答えいたしましたように、農地法の問題だけで解決できるとは思いません。いまお話しになったようなもろもろの条件を解決するためにそれぞれ努力をしておるわけでございますけれども、とりあえずやはり農業問題の第一に着手すべき問題は、農地法の改正問題じゃないか、こういうようなことで今度提案したわけでございまして、社会保障の問題にいたしましても、あるいは工場の地方分散の問題にいたしましても、土地問題にいたしましても、御承知のように政府といたしましてはそれぞれ鋭意その対策を検討中でございますので、もちろん今後それらの問題が逐次解決されました暁において問題がすべて解決される、こういうことになるのじゃないかと思いますが、そのためには多少のやはり時間が必要じゃないか、こういうふうに考えておるわけでございます。
○川村清一君 そういとうこでは全然農民の方々は納得しませんよ。いま次官がおっしゃったこと、それじゃ具体的に何一つない。何か御説明になりましたが、何があったか、何にもない、それではとてもいけないと思います。農地法を改正すると問題は解決するのか、それはできません、農地法は一つのこれは要件です。私は、こっちを手をつけるよりも、もっと解決することがたくさんあるのじゃないか、このことをひとつ示してください、そうでなければ農民の方は納得しません、こういうことを申し上げている。ところがそっちのほうは、ちっとも具体的にない。これはすべてこれからの問題です。そうして農地法だけを改正する。ですから、農地法を改正してもすべて問題は解決しないということは、農林省御自身がそういうことを局長が認められているように全部解決しないわけですね。私どもはこれは改正ではなくて改悪だと思っている。 なぜ改悪だと思っているか。いわゆる第一条の目的、これを改悪しようとしている。第一条の目的とは何か。農地というものは耕作農民がこれを所有すべきである、これが原則である。そうしてこの耕作農民の農地の取得を促進することによってその農業経営というものの規模が拡大されて、そうして耕作農民が持つ権利というものをこれを保護していく、そのことによって耕作者の地位の安定と農業生産力の増進をはかる、この現行農地法の目的というものはまことにりっぱなものですけれども、これを一体何で改正しなければならないのか私にはわからないわけです。で、どこを改正するかということ、ここに土地の効率的な利用をはかる、これだけのことばを入れているだけです。土地の効率的な利用をはかることに反対する人はだれもいないわけですね、このことばだけでは。この現行の農地法の目的というものははっきり書かれている。この目的にどういうことを入れるのかというと、土地の効率的な利用をはかる、これだけのことばをここに挿入するだけですね。土地の効率的な利用をはかる分に反対する人はだれかいますか。私も賛成です。絶対賛成です。それじゃ土地の効率的な利用をはかるためにどういう具体的なことをされようとしておるのかということをお尋ねすれば、先ほど私がお聞きしたときにお答えになりました農地法が阻害しておることはこのことである、したがって農地法を改正する、どういうふうに改正するかというと、こういうふうに改正する、することによって土地の効率的な利用がはかられるのだ。土地の効率的な利用をはかるということばには賛成でありますが、具体的な内容になってまいりますと、いささかこれは賛成できかねるものがたくさんあるわけです。それが改正の条文となって、ずっと二条、三条、四条、五条と書かれているわけですね。これを一条ずつやってる時間がないわけですよ。もう三時半にはやめるそうでございますから、残念ながらそこまでいけないわけですね。はなはだこれは困ったことです。いささかこれには私も困っているわけです。 そこでお尋ねしますが、要すればこういうことなんでしょう、現行農地法のいわゆる基本、根幹というものは、農地というものはその耕作するものが所有することが大原則、この大原則のもとにずうっと農政が進められてまいってきたが、これでは思うようにいかない点がたくさんあると。そこでこの中に、先ほど大臣はこの大原則はごうも変えないのだ、耕作農民が農地を所有するという原則はいささかも変える意思はないんだと、変えないとすればどうするか。借地主義、いわゆる自作農主義に借地主義というものを入れて、これを併用してこの法律を運用してまいろうと、こういうことなんですね。私はそういうふうに理解するんですが、それでいいんですか。
○政府委員(中野和仁君) 先ほどからお話のように、われわれといたしましても農地法の大原則であります自作農主義を否定はいたしておりません。しかし、現在の目的に沿う中身の法律だけでは、先ほど先生御指摘のように、なかなか思うようにいかない面も出てきております。それは、たとえて申し上げますれば、耕作しているものが土地を持ち、かつそこで全部労働するという原則だけでいかないような事態になってきております。それは機械化の進展あるいは技術の進歩という面、それから農業外の経済の進歩というようなことから、兼業化の進展というようなことから見ましても、そういう事態が出てきていることは御承知のとおりでございます。そこで、そういう中におきまして、従来の自作農主義に加えまして、やはり農業をやっていこうとする農家が土地を買えればそれが一番よろしいわけでございます。なかなか土地は買えない場合がございます。その場合には自作地プラス借地を加えまして、経営規模の拡大をはかるのがいいんではないかというふうに考えているわけでございます。
○川村清一君 端的に申し上げますが、先ほどお聞きしましたように、日本の耕地面積はふえるのでなくて減るわけです。農業従事者もこれは減るわけです。それから農家戸数も減るわけです。これははっきりしていますね。ですから減った分を借地にするとか、あるいは農協その他農業法人に貸し付ける、また個人的にも貸し付ける。それから小作というものも認める。それから不在地主も無制限でございませんが認める、こういうふうに変えようと、こういうことですね。そこで、それをひっくるめてもっと端的に申し上げますと、この農地法の改正によって、要すれば離農を促進する、いわゆる農家をもっと減らすんだ、農業人口をもっと減らすんだ、端的に言えばそういうことをねらっていらっしゃるんでしょう。そのことによって、まあ離農された方の土地は、これはもっと規模拡大に使っていく、これが効率的な使用である。その間に農地の保有合理化の法人というものも出てくる。そういうような中で土地取得資金といったような問題も考えていくと、もろもろの農業施策を講じていくと、こういうことでございましょう。どうですか、端的に言ってください。
○政府委員(中野和仁君) 先ほどから私の申し上げておりますのは、先生いまおっしゃいましたような筋でございます。
○川村清一君 農地法改正の本質というものはそこにあるというふうに私は理解するわけであります。そこで、これは賛成、反対は別として客観的な事実だけをお聞きしますが、まあ離農しやすいような環境をつくってやる、そうしてその環境をつくることによって離農される方々がふえてくことをやはり期待しておる。そこで離農されるいわゆる階層というものは農家経営、つまり保有面積とか経営面積とかいったそういうような姿の中でどういう方々が多いんですか。またどういう階層の方々の離農、離された土地の取得、こういうことを考えていらっしゃいますか。
○政府委員(池田俊也君) 従来の傾向から申し上げますと、離農して他の職業につくというような方は規模から申しますと非常に小さい規模の方が多いわけでございます。具体的には、たとえば五十アール以下、ちょっと正確に数字をいま覚えておりませんが、大体五十アール以下の方がほぼ八割ぐらいの割合を占めているのではないかと思います。大体そういう状況でございます。
○川村清一君 大体八割程度、八〇%程度がそういう方々が離農されておる。この傾向はいただいた資料の上でうかがえるのでございますが、しかし池田局長さん、ちょっと資料の十二ページを見ていただけませんか。ここに「経営耕地階層別にみた耕地の増減事由別の農家」というのがあります。上のほうは「差引き増加したもの」であります。これが出ておるんですけれども、買い入れて自分で耕作している、何といいますか、いわゆる自分でもってもっと土地を取得して規模を大きくしていこうと、言うならば非常に生産意欲に燃えている農家、こういう農家が〇・五ヘクタール未満で三四・九%、いわゆる〇・五未満の農家が全部で一〇〇としますと、その中で約三五%の農家は買い入れて自分で耕作しておるわけですね、昭和四十二年には。それから貸し付け地を返してもらって規模拡大をはかっていらっしゃる人が一〇・五%、新たに買い入れて経営規模を拡大しておる方々が三四・四%あるわけです。ところが二ヘクタール以上、これは自立農家であろうと思いますが、二ヘクタール以上の農家全体を一〇〇と見た場合に、買い入れて自分で耕作するいわゆる規模拡大をはかろうとして努力しておる農家は二七・三%しかない。もっとも開墾、干拓などでもって規模拡大した農家は四〇・八%ございますが、ですから、全体的に言えば離農しておる階層というものは八〇%ありますけれども、そういう階層の中でも非常に生産意欲に燃えておる農家があるわけですね。こういう方々を一体どういうふうに理解されておるのか。 逐条ごとに審議できませんのでやめますが、一点を取り上げますならば、たとえば現行農地法では取得前三十アール以上の人ならば農地の取得ができた。ところが今度は五十アール以上でなければ農地の取得ができない。ところが現に五十アール未満の人々であっても、こういうふうに生産意欲に燃えておる農家があるんです。こういう方々が互いに規模を拡大してひとつ大きくなろうとして努力する、そういうまじめな農家の人々に対して土地取得の道を講ずる。大きくなろうとすると押さえる、もうおまえさんは農家やめなさい、離農しなさい、どこか工場へいって働きなさい、こういう考え方というものは私は納得できないわけであります。そうして二ヘクタール以上の方々であっても買い入れて自分で耕作しようとする人は、むしろこの方々が数は私は少ないと思う。こういう事実をどういうふうに把握されておるか。それから下のほうの差し引き減少したものの数字を検討してみましてもそういう議論というものは成り立つわけでございます。ひとつ局長この点を御説明していただけませんか。
○政府委員(中野和仁君) ただいま御指摘の農林省の農業調査でのお話でございますが、先生おっしゃいましたのは当然おわかりのことと思いますけれども、パーセンテージでおっしゃいましたわけでございますが、絶対数といたしましては、やはり五反未満の零細な農家の差し引き増加した農家は七千五百。それに対しまして差し引き減少している農家が三万七千というふうに傾向といたしましては小さな農家、主として第二種兼業農家が多いのでございますが、順次農業から離脱していくのが多い。それは全体の傾向でございますが、ただこの中で二ヘクタール以上で非常に開墾、干拓などでパーセンテージがふえておりますのは、これは最近の北日本、東日本を中心としての開田ブームが非常に反映しているんではないかというふうに考えております。 そこでお尋ねの農地法との関連でございますが、いまお話のように現行の農地法におきますれば、取得前三十アールあれば農地を取得する資格がある。それを今度は取得を五十アールに引き上げたわけでございます。この点はかつて三十アールということをきめました際には、その三十アールをなぜきめたかといいますと、大部分は三十アール以下は第二種兼業農家で農業にウエートを置いてないということであったわけでございますが、その後の時勢の推移によりまして、もはや現在五十アール以下の農家の大部分は第二種兼業農家、どちらかといえば農業から離脱していく農家が多いということで、そこで一般論といたしましては五十アールということに引き上げたわけです。しかし、もちろんこれを全国一律ということになりますとかなり問題が出てまいります。そこで現行法にもありますし、今回の改正案でも残しておりますけれども、地域によりまして非常に集約的な経営をやっている地域もございます。あるいは過疎地帯あるいは漁村というようなところでは、知事がこの面積を三反あるいは二反に引き下げるということはできるということにいたしたいというふうに考えております。それからまた個別の経営に着目いたしまして、ハウス経営その他集約的な経営をやります場合には、取得を五反でなくてもそういうふうに認定をいたしますれば、農業経営はやっていけるというふうに認定をいたしますれば、これは知事なり農業委員会なりは許可をするということにいたしたいと考えておりまして、原則はそういうふうにいたしておりますけれども、決して一律にそういう五反歩以下の農家を全部取得を認めないというふうなことまではいたさないつもりでおります。 〔委員長退席、理事亀井善彰君着席〕
○川村清一君 私は先ほど申し上げましたように「離農農家の離農前の経営耕地規模別構成」というこの資料もよく検討いたしましたら、離農する階層の方々は〇・一ヘクタール未満から〇・五ヘクタールまでの階層の人で全体の離農戸数の約八〇%以上を占めているということはこれはわかっているのです。それから先ほど申し上げました〇・五ヘクタール未満の増加したこの数字というものはパーセンテージであることも前置きして申し上げているわけでありまして、たとえば〇・五ヘクタール未満のそういう階層全体を一〇〇とすると、その一〇〇の中で、自分で買い入れて自分で耕作するという非常に意欲に燃えた農家が約四〇%あるではないか、新たに買い入れてさらに規模拡大をはかろう、そういうまじめな農家も三五%近くあるではないかということを申し上げているのです。ですから離農される方々はそういう階層の大体八割であるということを了解し、そうして零細農家の中でも非常にまじめな生産意欲に燃えた農家があるのではないか。だから、一律にこういう法律をきめて押える、しかしいまの局長の御答弁では、それは一律にやるのじゃなくて、それはこういうふうにして別に考える道もあるのだということでございますが、しかし法律でこうきめてしまいますと、それはなかなか実際にあなたそうおっしゃいましても、現実の問題としてはそううまくいかない。私は取得前三十アール、これを取っ払うということは、こういう農家の生産意欲をいわゆる阻害することになる。こういう方々のもっと経営規模を拡大しようとする意欲を全然つぶしてしまう、みなやめてしまえというような行政が実行されるということをおそれるわけです。 そうしてもう一つ、この改正の中にはこういう点もあるわけです。三十アール未満の方々が、結局五アールでも十アールでも自分の資金が融通がつくならば少しでも土地を取得して大きくなろう。残念ながら五十アールまでにはいけない。まあ三十アールから三十五、四十、四十五と少しでも大きくなろうとする人は押さえておいて、全然農業をやってないいわゆる新規の人、新規の方が、わしは農業を経営するんだ、こういう意思を表明すれば、全くいま努力しておる人でなくても、何にもやっておらない人でも五十アールの土地を取得しようと思えばその取得はできる、こういうことですね。したがってお金があれば全然農業に関係していなくとも五十アール以上の土地ならば取得できる。ところが現在まじめに農業をやっておる、ところがお金がないから五十アール以上になることはできないとすれば、その方々の土地取得の権利は認められない、許可されない、こういう点は一体どういうわけですか、どうですか。こういうばかなことは私はいけないんではないかと思いますが、局長はどういう御見解を持っていますか、これに対して。
○政府委員(中野和仁君) なるほどいまの法律では取得前三十アール持っていなければ土地の取得はできないということになっておりますけれども、これは農地法を制定しました際に国会での御議論がございまして、政令で、取得後三十アールになればよろしいということにして運営をしてきております。したがいまして結果といたしまして、というと言い方がおかしいわけでございますが、現在でも農地を持っていない人が初めて農業をやりたいということで、三十アール以上を取得すればそれはできるということになっております。それを今度は五十アールに引き上げた、実態としてはそういうことになるわけです。ただ法律のたてまえは、おっしゃいますように現行法が取得前に三十アール、今度は取得前五十アールということになっておるわけでございます。
○川村清一君 だから私が申し上げておりますように、法律の本文にそういうふうに規定しておいて、そうして片方、政省令でもってその面をカバーすると、救済してやろうとしても、現実の問題として私はなかなか容易でない。行政指導される方も、とにかく法律論でもって押さえられて、かりにやったとしても選別されるんですよ。そういうふうにあなたがおっしゃるならば、法律を改正しなくてもいいんではないですか。なんで法律を改正するのですか。時間がないから私はやめますけれども、お金があれば、農業を私はやりますということになれば五十アールの土地は取得できる。土地を取得し、まあちょっと農業をやった。それなら今度は、そのほかの第二条の改正をずっと読んでいくというと、今度は土地の保有面積は上限がないのでしょう。幾らでもこれは保有できる。結局お金さえあれば幾らでも土地は持てる。さてその土地は今度は無制限に売り渡すことはできませんけれども、しかしながらこれを農協なり、あるいは農地保有合理化事業を行なう法人に対して、あるいは農業法人に対してそれを貸し付けることができる。そうして不在地主も認めるというようなことをずっとつないでみれば、これは現行の農地法というものは、農地というものは耕作する農民が保有すべきであるという原則、逆に言えば、耕作しないいわゆる地主、こういうものは認めない、否定するのだと、こういう思想につながっているのですよ。ところがいま私が申し上げたようなことをずっとやっていくというと、農地法の大原則であるところの、もちろん農地というものは耕作する農民が持つことが適当であるかもしれないけれども、農業のいわゆる体質改善といいますか、生産性の向上、近代的な農業経営を規制するためにつけた道というものは、どうあなた方が御説明になっても、これはやはり地主というものを認めるということにもなりましょうし、農業経営そのものが大資本農業にだんだんとこの体質が変わっていく、しこうして、しまいには欧米諸国にあるような、いわゆる大農業経営に——いまは法人となっている。法人といいましても、いわゆる農業法人でございますが、将来においては株式会社、こういう法人にまで移っていくことにならないかどうか、絶対そういうことがないということを断言できるかどうか。 それから今度の改正は、現に行なわれている農地法でとられている請負耕作であるとか、あるいはやみ小作というものをこれは追認する。現実の問題としてあるんだから、これを農地法の改正によって、これは追認する。いままでは私生児であったものを認知する。こういう考え方につながりませんか。 それから、きのうこの委員会で議論がありましたところの、いわゆる擬装法人といったようなものをつくることにもならないかどうか。で、きのう局長は、たしか河田委員の質問に対する御答弁であったと思いますが、北海道の問題に関して、われわれはそういうことはないというような御答弁でございました。ところがないことはないのです。私は北海道出身、特に私の家のあるところは日高といいまして、これは日本一の競争馬の生産の地域でございます。なるほどまあ法律的な手続はちゃんとされているのでしょう。自民党のある有名な代議士は、私の地域におきまして個人で八百町歩の土地を持って、大牧場を経営しておる。 〔理事亀井善彰君退席、委員長着席〕 それはどうやって一体、そういう土地を取得したものか、民間の所有地を八百町歩も。これは必ずしも原野とか山林ではない。農地法によって規制されておる採草放牧地、これは農地です。これを取得しておる。それからごく最近でございますが、これは私がいま調べようとしているわけでございますが、これも登記簿のほうを調べて見ると、何も農地法上においては誤りはなく手続はされているわけでございますが、実際の経営者は東京にある株式会社です。そこから金が全部出ているし、それからその牧場も農地転用をいたしまして、そうしていろいろな牛舎やりっぱな建物が建っておりますが、これも工事契約は東京の株式会社がやっておる。ところがその経営はだれかというと農業法人です。有限会社です。これが経営をやっておる。それは帳面づらは確かにそういうことになっている。実経営は東京の株式会社がやっているということははっきりわかっている。現行農地法で、やはり裏をくぐってこういうことができるのです。だとすれば、この農地法の改正によって、こういうものがもう歯どめもなく幾らでもできるということにつながるんじゃないかというおそれを私は現地の実態を知っておる者として大きく心配しておるわけです。こういうふうな問題についてどう対処しようとしておるのか。 最後に倉石農林大臣にお尋ねするのですが、現行農地法のこの基本思想、理念というものは、これは変わらないと、しかしながら、農業を取り巻く社会的、経済的実態というものはなかなかそぐわないものが出てきた。ことばをかえて言えば、現行農地法が一つの空洞化されてきておる。それは請負い耕作ですね、あるいはやみ小作、こういうものが現実の問題として行なわれておる。この現実の問題を考えてみるときに農地法は空洞化しておる。だから、現実に合わせるように法律を改正していかなければならないという議論に私はなっていくと思うのです。そういう議論はこれまた非常に危険な議論につながる、ちょっと比べるにしても次元が違いますけれども、前に倉石さんがこういうことをおっしゃって問題を起こされたようでありますが、たとえば現行憲法、日本憲法、これはあくまでも主権在民、民主主義の原理、絶対戦争否定の平和の原理、そうして個人的人権を守る原理、この三つの原則において現行憲法というものがある。ところが、現実の姿として自衛隊はばんばんばんばん拡大していっておる。いわゆる憲法の絶対戦争否定の平和の原則と現実の姿というものはだいぶ違ってきて、憲法がすでに空洞化されたではないか。だから、この憲法を改正して実態に即するようにすべきではないかという議論に、これは次元は違いますけれども、同じ私は論理ではないかと思うのですよ。こういう点はどういうふうに解釈されますか。私はほんとうに一条ずつ問題点を指摘して議論をしたいのでございますが、残念ながらもう時間がないのでやめます。 そこで、これは大臣にも、委員長にも聞いておきたいのです。私は六十一国会の衆議院の会議録をずっと調べてみましたよ。そうしたら、この農地法の審議は、先ほど冒頭申し上げましたように、十日間やっています。実質四十時間やっています。そうして参考人の意見も聞いています。現地に委員が派遣されて現地のなまの農民の方々の意見を聞いております。こうして慎重審議した。向こうでは六十一国会でさんざんやったんですよ。だから、六十三国会ではいささかやってこっちへ上がってきた。ところが、当委員会は、参議院は農地法改正案の審議をするのは初めてなんです。この間じゅうからずっと皆さんの委員の方々の御意見を承っておりますと、農地法と農協法とどういう意味で二本一緒に並行審議になったのかわからないのですけれども、一緒になっておる。そうして大体は農協法の審議をされておる。この二本の、二十年間ささえてきたこの農地法というものを変えるということは、これはもう画期的な改正なんです。重大な問題なんです。これをですね、あんまり審議をしないで、それでぜひこれは通したいのだからこれを成立するように、会期ないかきょうこれやってくれ、やっていただくと、こう期待されていらっしゃる大臣のお気持ちと、それらをやろうとする委員長の一体お考えと、この際ひとつお聞きして私は質問を終わります。
○国務大臣(倉石忠雄君) 農地法に関しましては、川村さんおっしゃる、非常に大事なことをたくさんお話しいただきまして、慎んで拝聴いたしたわけでありますが、いまたとえばまあやみ小作みたいなものがある。それを、そういうものを現実に追認するような考え方ではないかというようなお話もございましたが、そういうことは少しも考えておりません。やっぱり先ほど来申し上げておりますように、現在のいろいろな農業を取り巻く諸情勢の中で農業というものをりっぱな産業として位置づけていきたい。そのためにはあらゆることを再検討しなければならない、そういう見地に立って農地法の改正、またそれに付随してやはり農協を取り巻く諸情勢にも変化がありますので、そういうことに対応するために農協法の改正案を提出いたした次第でありますが、われわれといたしましては先ほども申し上げましたように、根本的にはやはり農地法のたてまえというものを、この考えを少しもくずしておらないのでありまして、そういう上に立って現状にマッチするような改正をしてまいりたいと、そうすることによって初めて近代的農業が育成されていくのではないか、このように考えて改正案を御審議願っているわけであります。
○委員長(園田清充君) 委員長は各党理事と協議して円満に運営をしておるつもりでございますので御協力願います。
○北村暢君 私は、もう先ほどから質問が続けられておりますが、どうも時間の関係であと十五分くらいしか質問する時間がないようでございますから、ごく簡単に一、二の質問をいたしまして終わりたいと思いますが、いま川村委員からも出ておりますように、今度の農地法の改正は、農地法制定以来画期的な改正でございますが、そこで、いま大臣から御答弁がありましたように、農地法の精神はこれを守っていくのだ、こういうふうに言われておるのでありますが、まず第一点、農地の所有に関する上限面積の撤廃をした、このことについてとにもかくにも本人並びに世帯家族の者が農業経営をし、そうして常時農作業に従事しておれば、どれだけ農業労働者を雇用をしても制限はなし。そうして面積の所有制限も一挙に撤廃をした。従来まで都府県で三ヘクタール、北海道で十二ヘクタールというものを一挙に撤廃したということは、これは当然私は農地法の精神から言えば、一挙にこの上限を所有制限を取っ払っちまうということは、これは無謀ではないかというふうに思うんです。「総合農政の推進について」における自立経営農家の今後の経営面積についても、政府は今後十年後に目標を置いて、四ないし五ヘクタールという自立経営農家を育成する。これすらも経営規模拡大していくというのでありますが、非常に困難であるということを言いながら、反面、上限を取り払うということについて、ほかに意図があるのかないのか。この点をまずお伺いしたい。
○国務大臣(倉石忠雄君) 今回の改正案では、農地等の権利を取得する場合に、本人のまたは世帯員のだれかが耕作すべき農地等のすべてについてみずから耕作の事業を行ない、そしてまた、かつその農作業に常時従事する場合でなければ、農地等の権利取得を認めないことといたしておりますので、上限面積とそれから雇用労働力に制限をいたさなくても弊害を生ずることはないではないか。われわれはこう思うんであります。特に最近における農業経営の多様化に伴いましてくだものとか、畜産等の部門でも、みずからも農作業に従事しながら、その不足する労働力について、雇用労働力をかなり用いて経営規模の拡大等をはかりたいといたしておる農家がかなりありますので、したがって、画一的な面積基準によって新しく伸びようといたします規模拡大の芽をつむことは、かえっておもしろくないんではないか、こういうふうに考えておるわけであります。
○北村暢君 農地法が自作農主義を貫いているということはしばしば質問からはっきりしているのでありますが、いま農業政策について、農民側の要求ではなしに、経団連その他から、日本の農業は、自作農ではなしに企業農業に志向すべきである、資本主義的な経営というものを取り入れるべきである、こういう農業に対する提言がございます。これはもう御存じのとおり、そういうものを取り入れる道をこの上限を取り払ったことによって、可能であるという方向に向かうのではないか、こういう心配が、心配というよりもこういう方向がいいのかもしれませんが、そういう方向に道を開いたのではないかというふうに思われますが、これの運用についてどのように考えておりますか。
○国務大臣(倉石忠雄君) いまの政府は、ただいまお話のございましたような考え方を少しも持っておりません。ただいま経団連のお話が出ましたが、経団連が何を言っておるか、まだ私は詳細にはよく存じませんが、いまお話のようなことで農業というものの経営主体をだんだん転換させていくような考えは、われわれには毛頭ございません。これは、しばしば本改正等を議会で御審議を願う最中にわれわれが申し上げておるとおりであります。
○北村暢君 次に下限面積についてお伺いしますが、下限面積については、いま川村委員からもお話しありましたが、従来は三十アールの所有者でなければ農地の権利を取得することができない、法律のたてまえは。政令で、それ以下でも取得後三十アールであればできるようになっておる。こういう御説明もありますが、今後の規定は五十アール以上でなければならないわけですね。取得後五十アールでなければ。したがって、三十アールのものが十アール取得して四十アールになるということは、法律的には認められない。 したがって、お伺いしたいのは、そういう場合であっても、三十アールのものは政令その他において権利を取得することが可能なようになるのかどうなのか、先ほどの話では五十アール以下であっても運用によって農業が行なえるものは可能だと、こう言っていますが、そういう点はできるのかどうかあらためてお伺いしたい。
○国務大臣(倉石忠雄君) 政府委員から申し上げます。
○政府委員(中野和仁君) ただいま川村先生の御質問にお答えを申し上げたとおりでございまして、法律の改正が取得後五十アールということになっておりますから、いま御設例の三十アールの農家が十アールを取得するということは原則としては許可にならないわけでございます。しかし、それだからと言って、全部だめだということを申し上げたわけではございませんで、その農家が、たとえばハウス経営等集約経営をやっている場合、これは農業に将来見込みがあるということで許可されている場合がございます。それから、地域的に申し上げましても、非常に零細な経営地帯、またこれを一律に五十アールということをきめますれば、ほとんどの農家が農地の取得ができないということになりますので、その場合は、知事が農林大臣の承認を受けまして、その指定されました地域は、たとえば三十アールに下げるということが可能である。現に現行法でもそういう運用をしておりまして、約二千ぐらいの市町村は、現在の三十アールを二十とかあるいは十五に下げておるという事例がございますので、その辺の運用は十分慎重に取り扱いたいと考えております。
○北村暢君 次に小作地の所有制限についてお伺いいたしますが、今回の改正で離農して他町村に移るものについては在村地主と同様に平均一ヘクタールまでの小作地の所有を認める。こういうことになっておりますが、これを私は長い間自作農としてやってきた人が何かの都合でどうしても土地を離れなければならないという人について小作地の所有を認めるということはやむを得ないとしても、これを所有者並びに相続者が無期限に所有するということについてはこれは不在地主を認めることで、不在地主を、私は根本的には認めるべきでないという立場に立っておりますが、これを無期限に認めるということにはどうかと思う。それから、生産法人その他の非営利法人等の場合は面積についても制限がない。その場合の不在地主もまた認めておるわけです。これは完全に不在地主というものを認める結果になりますか。私どもはせいぜいこれは十年——小作地というものを私どもは、八年から十年、小作人はしんぼうをすれば自作地として将来自分が所有できるんだと、こういう望みを持って小作人は努力してる。まあ大体その限界が八年から十年というのが、これは農地問題の権威の人が言われてる。したがって私どもは、せいぜい認めても一代限り、十年というのが適当であると、このように思うのです。ところがこれは全然制限がないということについて、これでもあなた方は自作農主義というものを貫くということを言い得るのでしょうか。これは私どもは自作農主義というものを大幅に譲歩した考え方である、緩和した考え方だと、このように思いますが、いかがですか。
○国務大臣(倉石忠雄君) 御存じのように、農家にとりましては農地というのはまあ先祖伝来の基本的な財産でございますし、したがって農地への執着が強いわけであります。これを自分の一代だけで手放すということにしなければならないのでは、貸すほうでも思い切ってその気に踏み切ってなれないんではないかと、まあそういったような農家には感情があると思うのであります。それからまた、農村では、その経営の主体はむすこに移っていても、所有名義を変更されないで、おじいさんの名前なんかでもずっとやってるような例もたくさんあるわけです。そういうようなことから、その小作地の所有期間を一代限りとしたり、十年間に限ったりいたしましたのでは、実際の農家の心情としては貸す気持ちになれないんではないかと、こういうふうにわれわれも思うわけであります。したがって、離農にあたりまして農家間で賃貸をするような場合には、その小作地所有を二代認めることといたしたわけであります。また、小作地所有が認められております間にその小作地が借り手に売り渡されることも期待されるのでありまして、そのほうが現実的ではないかと思うわけであります。 で、後段のほうは政府委員からお答えいたさせます。
○政府委員(中野和仁君) 農協への経営委託あるいは生産法人への貸し付けには、われわれとしまして、これは昨日からの御議論にも始終出ておりましたが、政策的に好ましいものであるというふうに考えております。そこで、その対象となりました農地につきましては不在地主となりましても小作地の所有を認めるということにしたわけでございますが、この場合でもやはり、先ほど大臣が個人の場合御答弁になりましたように、離農後十年に限るというようなことにもしいたしますれば、その法人としての経営ということがなかなか成り立たないということでございますので、やはり法人の経営をやってる間にその農家があるいはその法人に貸しておるのを売るというふうなこともわれわれ期待をいたしまして、政策的に、先ほど申し上げましたようにこの場合は一ヘクタールという制限を置かないで、農業生産法人の経営なり農協の経営委託を進めるというふうにわれわれ判断したわけでございます。
○委員長(園田清充君) 他に御発言もなければ、両案についての質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(園田清充君) 御異議ないと認めます。 達田龍彦君から委員長の手元に両案に対してそれぞれ修正案が提出されておりますので、この際修正案を議題といたします。 達田君より両修正案の趣旨説明を願います。達田君。
○達田龍彦君 この際、農地法の一部を改正する法律案並びに農業協同組合法の一部を改正する法律案に対する修正案を日本社会党を代表いたしまして私から提出いたします。 両修正案の案文につきましてはお手元にお配りいたしました文書で御了承願うこととし、朗読をこの際省略いたしまして、修正案の趣旨を御説明申し上げます。 まず、農地法の一部を改正する法律案に対する修正案の趣旨について申し上げます。 すでに当委員会における質疑応答を通じて明らかにされておりますように、政府案は、自作農主義に土地の効率利用をつけ加えるとの名目のもとに、小作統制を大幅に緩和し、零細農の締め出しを実行し、富農的、資本主義的農業経営の出現さえ可能な、農地制度の全面的な規制の緩和を行なおうとしております。私どもも現行農地制度の若干の手直しはやむを得ないと考えますけれども、現に大幅に空洞化している現行制度の運用に対してほとんど見るべききめ手を用意することなく、現状追認的な改正を行なうことは、本制度の空洞化に一そう拍車をかけるおそれが強いといわなければなりません。 農地価格が自作収益価格の水準に落ちつくまでは農地法は必要である、という考え方は、農地法発足当初の基本的な考え方でありました。農地価格が農業採算価格を大きくこえる水準で形成されているという現実は、日本農業の矛盾を如実に示しているのであります。したがいまして、農業の内部にも地価を押し上げる要因があるとされている今日、目前の現象的な事態にまどわされて小作統制を大幅に緩和することはつつしまなければならないのであります。特に、小作地所有制限、賃貸借の解約等の制限及び小作料最高額統制の制度を同時かつ大幅に緩和することは、縮小の傾向にある小作地を再び増大させ、自作農主義の形骸化をもたらすだけでなく、所有が経営に優越し、小作料水準が農業経営を圧迫して、農業の発展を阻害するおそれが強いのであります。その上、近い将来農地の流動性は加速度的に高まると政府自身も認めているのでありますから、政府原案では、自作農主義に即した所有権移転による流動化すら、小作権設定による流動化に方向転換する危険が強いのであります。一口にいえば、政府原案は、土地の効率利用に名をかりた階層分解促進法案であり、自作農主義とは正反対の小作農創設法案であります。 わが党は、このような立場から、自作農主義本来の趣旨に即しつつ、農業の動向に即応した改正を行なうべきであるとして、本修正案を提出した次第であります。 次に、お手元にお配りしました修正案要綱によって、修正内容を説明いたします。 修正点の第一は、第一条の目的についての改正規定を削除して、現行法のとおりとすることであります。土地の効率的利用が重要な課題であることは申すまでもありませんが、耕作者自身がその農地を所有する自作農主義が土地の効率的利用上最も理想的な形態なのであり、あえて効率利用をうたう必要性はごうも認めることができないのであります。その上、土地の効率利用の手段として政府原案が採用した小作統制の緩和などの措置は、不労所得の源泉としての農地の価値を高め、転用期待の農地取得ないし所有権維持の風潮を助長するなど将来に大きな禍根を残すおそれが強いのであります。 修正点の第二は、農地等の権利移動統制に関するものであります。 まず、政府原案の上限面積及び雇用労働力制限の全面的な廃止につきましては、先進国の多くが一定以上の規模拡大を規制していること、自作農主義がわが国の実情に最も適しており、資本主義経営は望みがたいこと等からこれを存置することとし、最近の動向に即して上限面積を現行の二倍に引き上げる。すなわち、北海道二十四ヘクタール、都府県平均六ヘクタールとし、この上限面積をこえても、主として自家労働力によって効率的に農業を営める場合は、現行法同様権利を取得できるものとする修正であります。 次に、下限面積制限につきましては、政府原案は、都府県の取得前三十アールを取得後五十アールに改正しようとしております。しかし、たとえば政府資料によれば、昭和四十三年の所有権有償移転の都府県における一件当たり面積は平均十一アールでありまして、現行法で権利取得を認められている三十ないし五十アール層の中には、この改正により、本人に農業に精進する意思と能力があっても、締め出されてしまう不合理が生ずるのであります。したがいまして、三十アール以上層については現行法どおりの規定とし、それ以外の者について取得後五十アール以上にするというのが政府原案を修正する趣旨であります。 次に、国が自作農創設の目的で売り渡した農地等、すなわち、いわゆる創設農地につきましては、永久に貸し付け禁止となっている現行法を、政府原案では、売り渡し後十年を経たものは貸し付けることができるとしておりますが、この点については政府案に同調するものであります。農業経営の状況、通作距離等から見た効率的利用基準に関する改正点につきましても同様であります。 次に、農業生産法人の要件につきましては、政府原案は、六つの要件のうち、借入地面積制限、常時従事者の議決権要件、雇用労働力制限及び出資配当制限の四つを廃止して、土地提供者であり、常時従事者である構成員がその法人の業務執行権者の過半数という要件を設けることにしております。しかし、自作農の発展形態として存在する農業生産法人の要件を、このように大幅に緩和することは、土地取得が目的の擬装的な生産法人や、資本に牛耳られる生産法人が発生する危険がありますので、廃止される四つの要件のうち、借入地面積制限及び出資配当制限の二つの要件を現行法どおり存置する修正を加えようとするものであります。 次に、農業協同組合が組合員等から委託を受けて農業経営を行なう場合の権利取得を認めるとの政府原案につきましては、同調いたすものであります。農地保有合理化促進事業を行なう非営利法人の権利取得及び転貸も同様であります。しかし、これについては、農林大臣または都道府県知事の非営利法人が行なう合理化促進事業に対する監督規定を検討いたしましたが、農地法の体系上断念した次第でありまして、政府当局におかれては、私どもの意のあるところをくみ取って運用の適正を期していただきたいのであります。 次に、政府原案では、三条統制の許可権をかなり大幅に農業委員会に委譲することにしております。しかし、農業委員会につきましては、せっかく選挙制度がありながら無投票当選者が多いこと、転用統制をめぐって不正事件を起こしたこと等からみて農業上最も重要な土地の権利移動に関する許可権者をみだりに変更すべきでないとの見地から、現行どおりとする修正を加えることにいたしました。 修正点の第三は、小作地所有制限に関するものであります。政府原案によりますと、かなり大幅に不在地主を認めることにしておりますが、これは農地法上からみれば重大な改正点であります。われわれ社会党といたしましては、自作農主義に大きな風穴をあけることとなる政府原案に対して全面的に賛成することはできません。 まず、政府原案は、一定期間以上在村し農業を経営していた者が離農する場合、離農者及びその相続人に限り在村地主並みの平均一ヘクタール以内の小作地の不在地主たることを認めることにいたしております。われわれはこの思想には基本的に反対であります。しかし、現在の社会情勢や農業の事情を十分勘案いたしまして、自作農として精進してまいりました土地所有者が諸般の事情によって離農離村しなければならない場合には、その所有者及びこれと苦楽を共にしてきた配偶者に限り、十年間だけ在村地主並みの不在地主たることを認める修正を加えることにいたしました。これは、離村した土地所有者に対して、政府案のごとく、将来にわたって農業経営への復帰をあまり予想しない考えではありません。この修正は、不在地主が今後社会事情の変化によって帰農をよぎなくされる場合に備えてそれが可能な余地を残しておくと同時に、その農地の耕作を引き受けた小作人については、ほとんど無期限にわたって所有の機会を与えない政府案とは逆に、十年間の経過期間の後は、自作農主義の原則に立って所有の機会を与えるという配慮によるものであります。配偶者を含めての一代限り、十年間の不在地主を認める修正の趣旨は、以上のとおり、政府案と大いに異なっている点をこの際強調したいのであります。 次に、政府原案では、農業生産法人の構成員がその法人に貸し付けている小作地及び農業協同組合が組合員等から委託を受けて農業経営を行なっている小作地につきましては、農地保有合理化促進事業を行なう非営利法人が借り受けている小作地などと同様、小作地所有制限の適用を除外して、何ヘクタールでも、また不在地主となっても所有を認めることにしております。しかし、農業生産法人の構成員につきましては、生産法人が自作農の発展形態として位置づけるべきものでありますだけに、全面的な適用除外は不合理であります。また、農協の受託経営地につきましては、農地保有合理化促進事業を行なう非営利法人の場合と同様、進歩的な側面も認められますけれども、この事業は盛んになればなるほど組合員の脱農を促進し、員外利用制限の規定に触れないようにするためみなし組合員の特例を設けなければならず、相続後はそれでもできなくなるという矛盾をもっているのであります。したがいまして、この二つの場合については、不在村地主は離村後十年間に限り、小作地所有制限の適用除外とする修正を加えることにいたしました。これにより、在村地主は一般の小作地と同様平均一ヘクタール以内とし、不在地主には十年後は小作地の所有を認めないということになるわけであります。なお、この措置はさきの場合と同様、所有者とその配偶者が相続した場合に限り認めるものであります。 次に、小作採草放牧地に所有制限を適用しない点については、現下の事情等を勘案いたしまして、政府原案と同じであります。 修正点の第四は、農地等の賃貸借の解約等の制限につきまして、政府原案の改正事項をすべて削除することであります。すなわち、政府原案におきましては、引き渡し前六カ月以内に成立した合意解約、十年以上の定期賃貸借と水田裏作の更新拒絶については知事の許可を要しないことにしようとしております。しかし、この改正案の企画が伝えられただけで土地取り上げや小作料引き上げが行なわれたといわれる昨今の情勢であります。初めに申し上げましたように、地価ややみ小作料が農業採算価格から大きくかけ離れている現状におきましては、地主と小作人が対等の立場で交渉する場はまだ十分成熟していないとみなさざるを得ないのであります。これがこれらの改正規定を削除する理由であります。 修正点の第五は、小作料の規制に関するものであります。政府原案は、一筆ごとの小作料の最高額統制の制度を廃止して、標準小作料の制度を設け、あわせて当事者の増減額請求権の規定を設けることとしております。小作料の規制をこのように大幅に緩和する場合は、おそらく、小作料の水準は現在のやみ小作料程度に上昇するでありましょう。政府の答弁によれば、平均二俵程度、金額にして一万六千円程度ということでありますが、しかし、三俵、四俵あるいは四俵半といった事例は枚挙にいとまがありません。その上、請負耕作の場合は、作業請負的な実費方式、受託者の取り分を一定にした委託方式、委託者の取り分を一定にした小作方式の三つがあり、小作方式よりも委託方式が、また委託方式より実費方式の方が地主の取り分は一般に高率といわれております。ところが、政府原案によりますと実費方式を合法化した農協の経営受託事業が正式に認められますし、作業請負は農地法に抵触しないものとして今後も行なわれるわけでありますから、権利内容に大きい差があるといっても、小作料水準を押し上げる効果は大きいでありましょう。政府が考えている標準小作料においては、新たに経営者利潤を折り込みたいとの説明でありますが、その一方で実費主義の経営委託と作業請負とが併存したのでは、小作料水準がこれらに影響されることは明らかであります。加うるに、何よりも重要なことは、農村社会には小作料水準について一定の常識的な水準があり、この水準を大きく越える高率小作料の場合は小作人の側にその小作地について先買権を行使できる期待意識があり、この水準を大きく下回る小作料の場合は、地主の都合に応じていつでも土地取り上げに応ずる意識がある。また、その常識的な水準とは凶年の年でも取れる収穫量の半分であるということであります。これは地価問題に造諸の深い阪本東大授教の説でありますが、もしこれが事実とすれば、小作料は少くとも三俵程度に上昇する可能性があるわけであります。 したがいまして、小作料の規制を緩和することは反対であります。この修正案は、最高額統制の制度を存置し、標準小作料や増減額請求権の規定を設けることを取りやめることにしております。ただし、現行のような全国一律方式は現地の実態に適合しない面も考えられますので、最高額統制の制度を存置するという前提に立って、その額の設定につきましては、農林大臣が都道府県ごとに生産条件、農業経営の状況等を参酌してこれを定める規定を新たに設けることにいたしております。なお、このような修正に伴ない附則第八項第九項等の残存小作地に十年間最高額統制を継続する規定を削除することにいたしております。 草地利用権につきましては、社会党としても賛成でありますので、修正を加えておりません。しかし、政府の考えているように、現行法にある未墾地買収の規定を眠らせて、それにかわる措置として草地利用権制度を新設したごとき消極的な運用を行なうことには賛成できないのであります。必要な場合に十分未墾地買収の制度を活用するという積極的な姿勢のもとに、草地利用権制度を新設してこれを補完するという趣旨で政府案を認めるものであります。 第六の農業委員会等による和解の仲介制度の整備につきましては、権利移動統制の許可権者を現行どおり知事主体にしたこと、小作地所有制限、賃貸借の解約等の制限、小作料の規制等の小作統制の主要な規定をほぼ現行どおりに戻したことにより、当事者間の自由な話し合いにゆだねる部分が少なくなることなどから、このような規定を設ける意味がなくなりますので、これを削除して、現行に戻すことにする修正を行なうことにしたわけであります。 第七の「その他」につきましては、開拓財産の無償譲与と違反転用に対する行政命令の規定を設けることにつきましては、当然の措置でありますので、政府案に同調するものであります。ただし、違反転用に対する行政命令につきましては、米の生産調整の一環としての水田転用促進策が進められている際でもあり、せっかく新設された伝家の宝力も画餅に帰するおそれなしとしないのであります。農業地域の優良農地を積極的に確保し、単なる投機的土地取得であることが明白な転用に対しては、この規定を積極的に活用することを期待いたします。第七の「その他」に記載した事項はすでに申し上げたとおりであります。 以上が、農地法の一部を改正する法律案に対する修正案の趣旨であります。 次に農業協同組合法の一部を改正する法律案に対して、この際修正案の趣旨と概要について御説明申し上げます。 まず政府の提出案について見ますと、本委員会の質疑を通じても、その問題点が指摘されているように、協同組合原則に立った正しい観点からの組合の管理運営に反するような改正点が見受けられますと同時に、また一面においては転用相当農地等に関する事業のごとく、農協の真の姿からしてかけ離れた事業を取り入れる等、部分的な改正事項のみに走っている結果、無定見で農協の健全な発展に阻害条件となるとも考えられる改正規定が多いのでありまして、われわれは全面的には賛成することができないのであります。 そこで以下わが党の立場から政府案に対して、具体的に修正案を提出して、これを是正しようとするものであります。 第一には、農業協同組合による農業経営の受託制度についてであります。 この改正規定は農協に新しくその事業の能力を与えるものでありますが、出資制農業協同組合が組合員の委託を受けて、農業の経営を行なうことができることとしている政府案につきましては、農民の兼業化の実情に対処し、農地の集団的利用等をねらいとして、農協による農業生産面に関する事業の整備を指向している点が見られ、われわれもこれを承認するものであります。しかし、政府の改正案はこの受託事業について、適正な事業実施方針をとるための、具体的な根拠規定を欠いているのでありますから、法律事項として、たとえば信託規程等の例にならい、農業経営に関する委託規程を定め、行政庁の承認を受けることとする規定を加えようとするのが、この修正案の内容であります。 第二には、組合の農地供給事業に関する規定につきましては、地域農民の実情に沿い、わが国農業が経営規模の拡大、農地の集団化等の円滑化をはかる方向づけの一つと考えられる趣旨から、政府案に同調いたすわけでありますが、この事業の目的と実効をあげるには、農民の営農意欲に適合した厳正な運用条件が必要であります。すなわち、われわれは農協が民主的な農民の協同組織であり、全組合員へのサービスを本来の使命としている点にかんがみ、この農地供給事業は、農地法改正によって認められる農地保有合理化事業の一環としての性格を持つものとはいえ、農協が事業主体となりますので、事業運用上において十分な規制が加えられるべきであると考えます。また事業の実施にあたっては、協同組合の運営原則をみだりに逸脱させないための指導を徹底するよう要請いたします。 また政府案による出資組合は、組合員の委託等により、転用相当農地等の売り渡し及び区画形質の変更の事業を行なうことができるとしている改正点に対してであります。 この点については、農協法第一条の目的からしても、農協の性格になじまず、その本来の事業とは異質のものと判断せざるを得ないのであります。われわれはこの改正事項を恒久規定として加えることには反対であり、農協の性格、機能をただ単にあいまいにするものでありますので、政府案に対しましては、この改正部分を全面削除するよう修正の提案をいたします。 第三には、政府提案にかかる信用事業にかかる規定の整備についてであります。この事項は、農協の現状を判断いたしましても、地域住民の実情、他制度等にも準じた資金貸付のあり方として限定的な員外利用の取り扱いに関連する改正でありますので、政府原案どおり認めることとするのであります。 第四には、農業協同組合連合会等の会員の一会員一票制の特例規定の追加部分に関してであります。この規定は、政府案では農協連合会、中央会の会員の議決権、選挙権を二個以上不平等に与えることができるとする措置でありまして、われわれの考えからこれを見ると、承認できないところであります。もともと農協は組合員各人の共同の利益を確保するための平等な権利に基づき、相互扶助組織であるところに協同組合の理念も置かれているのであります。 今回のこの改正措置は、単位組合を除いたものであるとはいえ、組織運営を片寄らせる危険を含み、一会員一票制を正面からくずすものであります。よって政府提案の改正点を削除して、農協運営の健全性を確保しようとするのが修正の趣旨であります。 第五には、現行法に規定されている役員の選任制についてであります。これは政府案において触れていない事項でありますが、組合の役員は、協同組合民主主義の観点からいたしますと、組合員の選挙によることが本筋であることは異論のないところであり、選任規定の必要性は少ないと考えられます。そこで、現行法第三十条第九項による例外規定である総会における役員の選任規定を削除することといたしたいと存じます。 第六には、総代会制度の改正規定についてであります。政府案は、総代会の権限の強化をはかることとし、従来できなかった役員款選挙または選任及び定款の変更の議決をなし得ることとし、また、解散及び合併については総代会で議決をし、これを組合員投票に付し、三分の二以上の多数による賛成を得ることによっても行なえることとしております。 これに対し、われわれといたしましては、組合員の意思を反映させる手段として、組合運営の基本とされる総会はできるだけ正しく活用されるべきであるとする趣旨から、この政府案のうち、総代会において役員の選挙及び定款の変更の議決ができるという点については賛成できないのであります。 そこで、これを修正し、役員の選挙については総代会においてはできないこととし、総会において総代の選挙と同様に役員の選挙を行なおうとするものでありまして、定款の変更については単に総代会の議決できめるのでなく、総代会の議決を経て、さらに組合員の投票による三分の二以上の多数決の例にならい行なうこととする手直しをいたしておるのであります。 また、総代についての代理は、現行法の規定を修正し、総代については代理権を認めないこととして、可及的に広く組合員の意見を汲み取り、充実した総代会の運営を進めるように提案いたしておるわけであります。 第七には、農事組合法人の要件の緩和についての政府案についてでありますが、この点については、農家の兼業化の進展、農民転職等、その流動的な実情と農業の発展過程における一定限の組合員資格及び員外従事者に関する制限を改善する必要性があるものとして、これを承認することとしたのであります。しかし、農地法改正案で見られるような不在村の土地所有を大幅に認めるという方向は、厳に規制する必要があることをここで強調したいのであります。 以上農業協同組合法の一部を改正する法律案に対する修正案の趣旨説明といたします。何とぞ両修正案が委員の皆さま方の御協力により可決されんことを期待申し上げ、説明を終わります。 以上であります。
○委員長(園田清充君) それでは、ただいま御説明のありました両修正案に対し、質疑のある方は順次御発言を願います。——別に御発言もないようでありますから、質疑はないものと認め、これより両原案並びに両修正案について一括して討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べを願います。
○北村暢君 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となりました達田君提出の修正両案に対し賛成、政府の両案に反対の討論をいたします。 私は、具体的反対理由を申し述べる前に、両案提出の経過にかんがみ、わが国農業の現況について言及せざる得ません。 政府は本年二月、「総合農政の推進について」の方針を決定し、その一環として、農地法、農協法の改正案並びに農業者年金法を提出し、その成立のために異常な熱意を示したのであります。このことは今日の日本農業が完全に行き詰まっていることを政府みずからが告白したも同然であると言わなければなりません。農業の行き詰まりの実態は、第一に他産業との所得格差の是正の目標は、三十五年以来、生産者米価の連続の引上げによってかろうじて所得格差は大幅な開きには至らなかったのであるが、昨年の米価据え置きの結果、農家所得は対前年比二%の減少どなり、所得格差の拡大は決定的となったのであります。 今後当分、国際価格との関係からも農産物価格の上昇を期待することはむずかしく、このままでは基本法の所得格差是正の目標は放棄しなければならないところに追い込まれている実情であります。 第二に、重要施策の選択的拡大については、政府の無計画な生産政策によって、米過剰の深刻な事態に当面すると同時に、ミカン、乳製品など一部の成長作物にも過剰傾向があらわれていると言われております。その反面、大豆、麦類、濃厚飼料などは大幅に減産し、輸入に依存しております。食用農産物の総合自給率は四十三年度は、昨年同様八三%であるが、米を除いた自給率は六九%で、飼料を含めると五〇%台に低下すると言われております。まさに過剰と不足の併存で混乱状態であります。 第三に、農業就業人口は大幅に流出し、農地の移動も相当行なわれているにもかかわらず、経営規模の拡大には結びつかず、兼業農家が激増しております。そのため農業従事者の老齢化、婦女子化が進み、労働力の質的低下は避けられない状態であります。さらに構造改善の重要施策である自立経営農家は、四十三年度は全農家の一二・九%から九・九%に減少し、四十四年度は米価の据え置きでさらに減少が見込まれております。このように基本法農政の実績は、政府の意向とは逆の方向に進み、日本農業を取り巻く情勢はきわめてきびしいものがあります。いま農民は米価の据え置きで所得の低下に苦しみ、その上、食管制度がくずれるとおどかされながら、米の生産調整に半強制的に協力させられております。昨年は作付転換、休耕の区別なく補償金をもらうことができましたがことしは補償金がどうなるのだろうか、米のかわりに一体何をつくればよいのだろうと農業の将来に大きな不安を抱き、政府に対する農民の政治不信はたいへんなものであります。政府は農民の怒りをしり目に総合農政を打ち出し、農業の危機打開の特効薬のように宣伝していますが、農民の納得するような具体的対策は何一つ見出すことができません。 農業基本法を制定して十有余年を経た今日、その主要な政策目標の達成にはほど遠く、将来の見通しもまた暗たんたるものがあります。日本農業を今日のきびしい状態におとしいれた政府の責任はきわめて重大であることを指摘しなければなりません。 以下、政正案の具体的内容について反対の理由を明らかにしたいと思います。 まず第一に、農地法の目的改正についてであります。政府案は現行法の基本理念である自作農主義に「土地の農業上の効率的な利用を図る」ことをつけ加えたのであります。土地の効率的利用が重要な課題であることは申すまでもありませんが、耕作者自身がその農地を所有する自作農主義が土地の効率的利用上最も理想的な形態であり、あえて効率的利用をうたう必要はないわけであります。にもかかわらず、これを加えたことは、土地の効率的利用の名目のもとに小作統制を大幅に緩和し、零細農家を締め出し、富農的、資本主義的農業経営の再現さえ可能な農地制度の全面的な規制の緩和を行なおうとする意図にほかならないのであります。 私どもも、農地の流動化そのものに全面的に反対するものではありません。現行農地制度の若干の手直しはやむを得ないと思いますが、現にやみ小作の横行など現行制度の運用が乱れていることに対し、適正運用のきめ手を用意することなく現状追認的な改正を行なうことは本制度の空洞化に一そう拍車をかけるおそれが強いと言わなければなりません。 政府の改正案は農地価格の高騰に対する基本的な安定対策を放棄しているため、所有権移転による農地流動化は困難であることを認め、安易な賃借権あるいは小作権の設定による流動化を大幅に取り入れようとしているのであります。 わが党は、農地法の基本精神である農地は耕作農民が所有することの原則を堅持しながら、農業の動向に即応した農地の流動化を促進すべきであることを強く主張するものであります。 第二は、農地等の権利移動の制限緩和についてであります。 その一は、農地所有の上限面積及び雇用労働力制限の全面撤廃についてであります。 政府案は、所有者または世帯員がみずから農業を行ない、かつ農作業に常時従事すると認められれば雇用労働力は幾ら使用してもよく、現在の農地所有制限の土限面積、都府県三ヘクタール、北海道十二ヘクタールを全面的に廃止し所有制限は受けないことになるわけであります。政府は総合農政の推進の中で自立経営農家の中核的にない手として育成するとうたっているにもかかわらず、農地の所有制限の全面廃止は選別政策を明らかにし零細層の思い切った締め出しを実行することによって富農的、資本主義的大規模農業の実現の道を開いたものと断ぜざるを得ません。 わが党は現行農地法の基本的理念である自作農主義に立つ限り所有制限を維持することは当然であると考えます。しかし、農業技術の進歩によって上限面積の合理的な改定もまた当然のことであります。わが党は現下の農業事情、技術水準などを勘案し、上限面積を現在の二倍の都府県平均六ヘクタール、北海道二十四ヘクタールとし、家族労力による場合は現行どおり制限を越えてよいことにすることが最も妥当であると強く主張するものであります。 その二は、下限面積を現在の取得前三十アールを取得後五十アールに改正することは零細農の切り捨てに通ずる考え方であり、少なくとも取得前三十アールの既得権は認め、取得後五十アールは規新の三十アール以下のものに限定すべきであります。 その三は、農業生産法人の大幅な要件緩和については、土地取得が目的の擬装法人や大資本に牛耳られる法人の発生するおそれがありますので、借入地面積制限及び出資配当制限の二つの要件は現行法どおり存置することが適当であると考えます。 その四は、政府原案の三条統制の許可権を農業委員会へ大幅委譲することは無理であり、最も重要な土地の権利移動に関する許可権者はみだりに変更すべきでないと考えます。 第三は、小作地の所有制限の緩和についてであります。 政府案は一定期間以上在村し農業を経営していた者が離農する場合は、その離農者及びその相続人に限り半永久的に在村地主並みの平均一ヘクタール以内の不在地主となることを認めることとしておりますが、われわれは不在地主を認めることには基本的に反対であります。しかし、現在の社会情勢や農業の事情を勘案して、離農離村する本人及び苦楽をともにした配偶者一代に限り、十年間の期間を限定して不在地主を認めることはやむを得ないと考えます。十年間の経過後は、自作農主義の原則に立って小作人に小作地の所有の機会を与えるべきであることを強く主張するものであります。 農業生産法人の構成員がその法人に貸し付けている小作地、農業協同組合が経営を受託している小作地などは小作地の所有制限の適用を除外しているが、これらの小作地の不在地主も前と同様に十年間に期限を限定すべきであります。 第四は、耕作権の保護の緩和についてであります。 政府案は引き渡し前六カ月以内に成立した合意の解約や十年以上の定期賃貸借と水田裏作の更新拒絶については知事の許可を要しないことにしております。これは明らかに耕作権保護の後退であります。高地価ややみ小作が農業採算価格から大きくかけ離れている現状では地主と小作人が対等の立場で交渉する環境はいまだ十分成熟しているとは言えないのであります。合意の名のもとに一方的に土地取り上げが頻発することも予測されますので、耕作農民の生産意欲の低下を防ぐためにも許可制度は継続すべきであります。 第五は、小作料統制の撤廃についてであります。 政府案は一筆ごとの小作料の最高額統制を廃止して、標準小作料の制度を設け、あわせて当事者の増減請求権の規定を設けることとしております。政府は標準小作料は十アール当たり平均二俵程度、金額にして一万六千円程度を考えているようであるが、三俵、四俵の例は幾らもあります。さらに各種の請負耕作などの実費方式も小作料水準を押し上げる作用をすることは明らかであります。 小作料統制の撤廃による農地流動化の効果を期待する政府の意図に反して、小作料の上昇が地価問題の解決を困難にし、農産物価格上昇を刺激するなど物価政策に混乱を与え、あるいは当事者間の紛争を激化させるなど思わざるマイナス効果や弊害を誘発することが予想されるのであります。農業の健全な発展のために小作料の統制撤廃は断じて行なうべきでありません。ただし、規制の全国一律方式は地方の実態に適合しない面も考えられますので、最高額統制を維持する前提で農林大臣が都道府県ごとに生産条件、農業経営の状況等を参酌してその額を定めるよう規定の整備を行なうべきであると考えます。 次に、農業協同組合法の一部改正案に対し、反対の理由を申し述べます。 政府はこの改正案で、農協の事業の拡大並びに組合管理運営の簡素化などを行なうとしておりますが、農業協同組合は農民の協同組織であるという基本原則に反する便宜主義的改正が見受けられると同時に農業協同組合の健全な発展と民主的管理運営に逆行するものが多く全面的には賛成することができません。 第一は、組合員の委託による農業経営の受託制度についてであります。 この改正は農地法の改正に伴い農業協同組合が新しく農業生産面に関する事業の整備を指向するもので賛成であります。しかし、政府の改正案はこの受託事業の適正な実施に関する具体的な根拠規定に欠けているのであります。たとえば信託規程等の例にならい、農業経営に関する受託規程を定め、行政庁の承認を受けることの規程を設け慎重を期すべきであります。 第二は、組合の事業範囲の拡大についてであります。 農業協同組合が農業の目的に供するための土地の売り渡し、貸し付けまたは交換の事業を行なうことは、農地保有合理化事業の一環であり農地流動化のため必要な事業であることからこれに賛成するものであります。しかし、もう一つの出資組合が組合員の委託を受けて転用相当農地等の売り渡し、及び区画形質の変更の事業を行なうことは農協法第一条の目的からしても農協の性格になじまず、その本来の事業と異質のものと判断せざるを得ません。したがってこの事業を恒久規定として農協事業に加えることには反対するものであります。 第三は、農業は農業協同組合連合会等の会員議決権及び選挙権の数の特例についてであります。 政府案は農協連合会、中央会の会員に対し二個以上の議決権、選挙権を与えることができることとするものであります。 連合会等が組合員から遊離し、官僚化の傾向があらわれていると批判の出ている現状にかんがみ、組合民主主義のたてまえからも一会員一票制は厳正に守るべきであり、更宜主義的改正には反対するものであります。 第四は、総代制度の整備についてであります。 政府案は、総代会の権限を強化し、従来できなかった役員の選挙または選任、及び定款の変更の議決を総代会でできることとしております。 組合員の意思による組合運営が基本であり、その意思決定機関は総会であります。組合の役員の選挙という重要事項は総会で選挙を行なうことは当然のことであります。組合員と役員の離間することを防止し、組合の健全な発展のためにも総代会で役員の選挙または選任することには反対せざるを得ません。定款の変更も単に総代会で議決するだけでなく、組合の解散、合併の場合と同様、総組合員投票の三分の二以上の多数の賛成を得る方法をとり慎重を期すべきであります。 最後に、今回の農地法、農協法改正の主要なねらいは農地の流動化を促進し、農業の経営規模を拡大することにあります。しかし農地の流動化は単に農地法の改正で解決するような簡単な問題ではないことは申し上げるまでもありません。農地の流動化の阻害要因は政府の説明のほかにも兼業零細農の転職先の劣悪な労働条件、雇用の不安定、社会保障制度のおくれ、農村地帯の生活環境の不備、地価の高騰による財産保持的傾向の高まりなど農業内外の悪条件が複雑に山積しているのであります。 これらの農地流動化の阻害要因の排除は、単に農政問題のワク内で解決できるものではありません。政府関係機関の意思の統一によって積極的な努力によって初めて可能であると考えます。政府の従来の対策は抽象論に終始し、実績があがっていないのが実情であり、政府の重大なる反省をうながし、達田君提出の修正案に賛成し、政府提出の両案に反対するものであります。
○亀井善彰君 私は自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となっております、農地法の一部を改正する法律案並びに農業協同組合法の一部を改正する法律案につき、政府原案に賛成をする反面、日本社会党提案の修正案に対し反対の討論を申し上げます。 まず農地法の一部を改正する法律案について申し上げます。 申し上げるまでもなく、現行農地法は農地改革の成果を維持するため制定されたのでありまして、戦後の農地改革がその後のわが国農業の発展にきわめて大きい貢献を果たしたことは、何人もひとしく認めるところであります。 しかしながら、昭和三十年代に入って以来今日まで持続し、今後もこの傾向が続くと考えられるわが国経済の旺盛な高度成長により、農業をめぐる諸条件は、われわれがいまだかつて一度も経験したことのない変動を遂げつつあるのであります。 これを本法案に即して申し上げますと、農地改革によって創設された零細農耕制に立脚する自作農、これは、農地改革後の一定期間は、当時の農業情勢にきわめて適合した現実的な存在形態でありました。しかし、その後のわが国経済の高度成長により、このような零細自作農では、他産業に伍して発展を期することが次第に困難な情勢が強まってきたのであります。 農業基本法が制定され、いわゆる基本法農政が展開されるようになりましたのも、このような情勢変化にできるだけ合理的に対応するためであったわけでありますけれども、現行農地法は、この、次第に矛盾を内包するようになった零細自作農を維持する方向で制度が仕組まれておりますために、農地移動の硬直性を助長する傾向が次第に強まってきたのであります。 たとえば、上層農は、三ヘクタールという上限面積及び雇用労働力制限以上の規模拡大を目ざすようになっております。また、最近の全国総都市化といわれるほど急テンポの都市化傾向等により、地価上昇が著しく、特に都府県においては、土地を手放したがらない傾向がきわめて強く、しかも農地制度がきびしいため、小作に出すことも消極的である状況であります。このため、農業の土地生産性や労働生産性は、経営規模の大きい階層のほうが零細層よりかなり高いのに、生活水準は専業農家より第二種兼業農家のほうが高いといったさか立ちした状況に置かれ、農地が必ずしも効率的に利用されているとはいえない状況であります。 また、米をはじめ多くの農産物は過剰傾向にあるわけでありますが、このような中で、国民の必要とする食料を安定的に供給し、農業者の所得水準を他に均衡させるには、どうしても農業経営の規模を拡大しなければなりませんし、規模拡大をはかるためには、農地移動の硬直性を緩和する措置が、今後の農政の大前提となるのであります。 言うまでもなく、農地移動の硬直性の要因は、農地制度だけにあるわけではありません。この点は、政府も答弁しているとおりでありますし、すでに多くの人たちが指摘しているように、農地を需要する上層農、農地を放出する下層農の両方にいろいろの問題があることは、皆さまの御了承のとおりであります。しかしながら、硬直的な農地制度をそのままにして、他のいかなる政策も十分な成果をあげることができないことも、指摘しなければならない問題であると考えます。 要するに、農地改革によって創設された零細自作農は、経済の高度成長とともに、次第にその矛盾を深くしつつあり、現行農地法は、矛盾を深めつつある零細自作農を維持するため制定されたところに今日改正を要する必要が生じたと存ずるのであります。 今回の農地法改正法案は、昭和二十七年の本法制定以来初めての本格的改正であり、この意味で、画期的な改正であります。その改正の内容ははなはだ多岐にわたっておりますが、最も中心的なねらいは、第一に、農地保有面積を拡大することであり、第二に、地主、小作人の双方が対等な立場で契約し、両者の均衡のとれた権利の保護を目的とする賃貸制度を確立して、農地の流動化を促進することであり、第三に、このために必要となる統制小作料の制度を廃止して、標準小作料の制度を設けることであります。 本改正案がこのような内容を持っておりますため、いろいろな論議を呼んでおります。しかし、このように、賃貸借の規制を緩和いたしましても、戦前と違って、土地の提供者は主として脱農を志向している零細層であり、借り手は自立経営ないしは専業化を志向している上層農が主体であります。また、この改正により、流動化が現在より促進され、やみ小作も合法化の方向に向かうと考えられますし、他に雇用の機会も多いのでありますから、戦前のような高率小作料、寄生地主制が発生する条件は、今日ではすでになくなっております。また、正常な農業経営にとって経営の圧迫とならない小作料水準が形成される条件は、この改正によりほぼ整い、今後一そう成熟していくと考えるのであります。 私どもは、いままでの、零細自作農、零細農耕制を温存することとなる自作農主義のみに固執していては、天下の大勢におくれ、むしろ日本農業の停滞を来たすおそれがあると考えるのでありまして、このような観点から、政府原案に賛成をし、社会党御提案の修正案には遺憾ながら反対するものであります。 もとより、零細自作農、零細農耕制を克服する立場からの自作農主義は、今後も農地制度の根本理念でなければなりません。したがいまして、本法の改正に併行して、土地取得資金融通制度の拡充強化につとめ、農地保有合理化促進事業の円滑な運用を期し、あわせて農地制度以外の農地流動化の阻害要因を排除する施策を強力に進めることを、政府に強ぐ要請するものであります。 次に、農業協同組合法の改正案に対してでございます。この案につきまして若干の討論を行ないます。 わが国の農業協同組合は、戦後の新しい法律のもとに昭和二十二年発足して以来、農業生産力の増進と農民の地位の向上をはかるため、農民の協同組織として重大なる役割りと使命を果たし、農業の歩みとともに発展してきたのであります。しかし、政府の説明にも明らかなように、近年、農業及び農協を取り巻く諸条件は著しい変化をたどり、現在、総合農政の展開に見られるとおり、米の過剰対策、農業構造改善等による高生産性農業をいかに確立するか、農民の生活向上をいかに進めるか等々、諸般の課題をかかえるに至っておるのであります。 農業協同組合自体についても、組織基盤であります地域社会の変化、大規模農協の出現等により、組織、事業等の制度面、あるいは管理運営面で解決すべき問題が多いのはこれまた事実であります。このような事態に対応して政府案は提出されたのでありますが、現在の農協問題に対処するには、客観的に見て、きわめて現実的な取り組み方であり、適切な改正案と判断をするものであります。 そこで、これを、内容に触れてみますと、第一にいえることは、集団的生産組織に関連して、農業経営面の事業として付加された、農協による農業経営の受託制度は、兼業農家の増大、労働力不足のもとで、新しい農業経営の受け持ち方として制度化され、きわめて有効な、そして農協本来の事業面での役割り、活用方式として、評価に値するものであります。なおまた、就業事情の変化等の観点から農事組合法人制度の要件の緩和を見ますると、その円滑な運営が期待されるところであります。 第二は、新しい農協事業の拡充措置であります。まず、農地法改正とも関連して取り上げられた農地保有合理化事業がありますが、これは組合員の農業経営規模拡大を誘導するため、必要な農地流動化をはかるものでありまして、今日もっとも要請される施策でありましょう。さらにまた、転用相当農地等に関する農協事業につきましては、農住都市構想を推進し、土地の農業的利用と都市的利用の調和に取り組むため、増大しつつある都市農協等の地域性を踏まえた場合、その実態に対応した公益性のある事業といえるのであります。 第三は、本改正案は農協の管理運営面に資する措置が含まれております。この点につきましては、農協の合併後の事情に基づき運営に困難を生じている実態等に対処したものでありますが、それは総代会の権限の拡大、総代の定数の是正等による効率的運営に資する点が意義が大きいと存じます。また農協連合会等の一会員一票制の特例措置がありますが、この改正は国際的にも認められる範囲の特例であるのでありまして、協同組合原則にも反せず、組合間の規模の差を反映した、実質的に平等の権利を認めようとするものであるとみることができます。 このほか、信用事業に関する整備等が行なわれているのでありまして、いずれも今後の農協運営と組合員の実情に沿った妥当な改正内容と考えられるのであります。もちろん農協のあり方をめぐって今後検討課題とすべき事項は残されていることは言うまでもないところでありますが、将来の改善に待つことといたしたいのであります。 以上政府案に賛成の意見を述べ、修正案に反対の討論といたすものであります。
○河田賢治君 私は、日本共産党を代表して、ただいま提案された政府の農地法、農協法両改正案に対し、反対の討論を行なうものであります。 現行農地法は、言うまでもなく、戦後の農地改革の成果を基礎にして、日本農業を耕作するものが、土地を所有するという、自作農主義の原則に立った農民的土地所有制、耕作権の保護等を定めた農業上の憲法とも言うべきものであります。したがって、その改正は日本農業と農民の将来に重大な影響をもたらすものであります。今回、農地の所有、耕作形態に重要な変化を与える改正案提出の背景とそのねらいについて、われわれは次の点を指摘するものであります。 今回の農地法改正案提出の背景は、独占資本中心に産業界が高度経済成長政策のもとに、農村から大量の労働力、土地、水資源を収奪してきたが七〇年代における政府、財界による独占資本のための新たな産業と国土の独占的再編成を目ざす新全国総合開発計画の実現を目ざして、さらに一そうの農村からの土地、労働力を大量に確保することにあります。すでに新都市計画法の実施、水利権の農民からの取り上げ、また税制面からの土地放棄の強要などによって、土地収奪を強めつつあるのであります。また、産業界の強い要求を背景に、日米共同声明の経済協力、これに基づいて貿易の自由化、資本の自由化、残存農産物の輸入制限の撤廃をはかり、日本の農業を国際競争のもとにさらし、食管制度のなしくずし、農産物価格保障制度の後退等を推し進めながら、農民の中の一部上層農を選別的に育成し、大量の農民の切り捨て、離農、脱農化をはかることを要求しており、食管法、農地法の廃止すら公然と今日主張するに至っております。現行農地法の一部改正は、政府、独占資本のこのような農政の長期見通しにおける第一歩というべきであります。 次に、農地法改正案の内容について検討してみたいと思います。 第一の、農地法第一条の目的に、「農地の効率的利用」を挿入するとともに、農地所有の上限撤廃、下限の引き上げ、その他によって零細農の農地取得制限と、富農、上層農民への選別的な農地集中による規模拡大をはかっている点であります。これらは現行農地法の農民的土地所有制、自作農主義を根本的に大きく後退させ、同時に農地の流動化、規模拡大化を阻害する最大の原因が零細な兼業農民の土地執着に求め、これを敵視し、この立場から零細農の離農促進を強引に推し進めようとするものであります。今日の兼業農民がしばしば生命を失う危険な出稼ぎに出たり、劣悪な労働条件と低賃金で不安定で、他産業にも従事したり、農民の要求である老後保障要求にさえ、欺瞞的な離農年金しか提示しない政策のもとで、しかも民間資本の土地投機、無秩序な土地買占めが主要な原因となっている地価騰貴が有効に規制されていない状態では、農地の資産的保有傾向を、政府みずから助長しているものといわねばなりません。一方、この傾向を助長しながら、零細農民の土地所有を敵視し、改正案と農業政策によって、離農政策を推進することは、反農民的な改正案だといわざるを得ません。 第二に、農業生産法人の要件の大幅緩和をはかり、借り入れ地制限、常時従事者の議決権要件、雇用労働力の制限、出資配当制限の撤廃をうたっている点であります。もともと農業生産法人は労働、経営の分離による企業的農業の性格を持ち、そのため現行法はきびしい要件を設けて自作農主義からの大きな逸脱を規制したのであります。しかし現実には、田農業外の資本による擬装法人の設立を生み、土地の買い占め、富農的経営、さらには不動産業者による土地開発と投機に悪用されてきたものも少なからずあります。したがって今回の生産法人緩和が農地の権利移動制限の緩和とあわせ、資本家的農業企業管理者と低賃金の賃労働者への分化と、富農に見られるように、大資本、外国資本を含めて、擬装法人の拡大に拍車をかけるきわめて危険な内容を内包するものであります。 第三に、賃貸借解約制限緩和、小作料統制撤廃、小作地所有制限緩和についてであります。 借地法形態による規模拡大を目ざすこれらの統制緩和は、現行法二十条の耕作権保護を骨抜きにし、実質的に地主の一方的解約を許し、借地農の経営不安定性をそこない、土地改良、経営改善への投資を手控えさせるなど、そういう結果を招くものであります。 また残存小作農に対しては、小作料の大幅引き上げとあわせて、その生活権を脅かすものであります。 第四に、草地利用権の設定についてであります。 未墾地買収売り渡し制度を国が活用し、国費で農用地を造成し、土地を求める中小農民に安く売り渡すことを、わが党は一貫して要求してきたのであります。今日ではこれがサボタージュされてきたのですが、今回の農地利用権の設定が真に中小農民の利益にこたえるものとなり得ず、逆に入り会い権を奪われ、富農的農民を育成の手段となる危険性を指摘しておきたいと思います。 われわれは、今日の内外情勢のもとで自作農主義の原則を貫き、未墾地その他の開墾拓地の大規模な農地の国費による造成、農地その他有効土地の保全と投機的土地取得の禁止、農業基盤の整備、そうして農業の機械化と科学技術の採用、こうした基盤を今日可能にするような施策を土地の問題についても行なうべきであると考えます。 以上が農地法一部改正案に対して反対の論拠であります。 次に、農協法の一部改正案についてであります。 三十六年以降推し進められた農協合併と大型化の推進、都市農協の進展の中で次第にゆがめられてきた農協運営は、今日金融事業への傾斜を深め、共済部門における保険会社化、さらには務独占的立場を利用した販売・購買事業での営利主義的な運営は目に余るものがあり、農民の間に強い不満と不信を引き起こしているのであります。 一方、こうした営利主義的農協運営のもとで働く農協労働者もまた驚くべき劣悪な賃金、労働条件のもとに置かれ、農民のための営農指導、生活改善等、真に農民に奉仕する業務の削減で農民からも保険外交員、セールスマンとして敬遠されるなど、農協労働者としての自覚と誇りを持ち得ない状態に追い込まれているのであります。 しかも、政府の反農民的な総合農政構想への追随、米の生産調整に対する農民の批判を無視して協力の道を歩む農協中央の姿勢を批判し、真の協同組合主義原則への農協の復帰を目ざす農協労働者の戦いあるいは運動に対しては、その民主的な権利を不当に押え、農協短大の廃止を強行するなど、とみにその反動性を強めているのが今日の実態であります。 本改正案は、このような農協の現状のもとで第一に員外利用の拡大をはかり、新たに転用相当農地の取得、売り渡しの権限を与えようとしているのであります。 都市近郊農協の中にには、すでに農協としての存立基盤を掘りくずされ、金融機関化してしまった農協が数多く存在する現在、これらの改正はその傾向を一そう助長するのみか新たに農協の宅地業者化、不動産業者化への道へ引きずり込むこと明白であります。 第二に、総代会に組合解散、合併、役員選任などの権限を与え、大型農協における総会制を事実上廃止の方向に追い込み、同時に一会員一票制の原則を放棄している点であります。総代会制については現状では総代の民主的選出の保障はないばかりか、組合員に対する議案の事前討議も保障されない状況のもとでは運営の非民主化、形骸化を助長し、組合員の意思の反映が一そう困難にならざるを得ないのであります。その上現在でも実質的発言力の強い大型農協に二個以上の議決権、投票権が与えられるならば農協運営は上から下までその非民主的な体質を強めることになり、中小農民の利益に重大な打撃を与えるおそれがきわめて強いと言わざるを得ません。 第三に、農協の経営受託を認める改正案は今日の農協の経営管理能力から見て実効性のきわめて薄いものであるとともに、農民相互の自主的な協業化の動きを押える役割りをも果たすと考えられ、多くの問題を含んでいることは質疑を通じて明らかにされたとおりであります。 以上、農協法改正が農地法改正と相補完して全体として政府・自民党の総合農政構想へ農民を引き込み、これを推進する下請機関化の方向を一そう強める役割りを果たすものであることを最後に指摘して、両法案の改正に強く反対すること並びに社会党提案の農地法、協同組合法の修正案に対しては棄権することを表明して討論を終わります。
○委員長(園田清充君) 他に御意見もないようでございます。討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(園田清充君) 御異議ないと認めます。 それでは、これより両案について順次採決いたします。 最初に、農地法の一部を改正する法律案について採決に入ります。 まず、達田龍彦君提出の本案に対する修正案を問題に供します。達田龍彦君提出の修正案に賛成の方の挙手を願います。 〔賛成者挙手〕
○委員長(園田清充君) 少数と認めます。よって、達田龍彦君提出の修正案は否決されました。 次に、原案全部を問題に供します。本案を原案どおり可決することに賛成の方の挙手を願います。 〔賛成者挙手〕
○委員長(園田清充君) 多数と認めます。よって、本案は原案どおり可決すべきものと決定いたしました。 続いて農業協同組合法の一部を改正する法律案について採決に入ります。 まず、達田龍彦君提出の本案に対する修正案を問題に供します。達田龍彦君提出の修正案に賛成の方の挙手を願います。 〔賛成者挙手〕
○委員長(園田清充君) 少数と認めます。よって、達田龍彦君提出の修正案は否決されました。 次に、原案全部を問題に供します。本案を原案どおり可決することに賛成の方の挙手を願います。 〔賛成者挙手〕
○委員長(園田清充君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。 藤原房雄君から発言を求められておりますのでこれを許します。藤原房雄君
○藤原房雄君 私はただいま可決されました農地法の一部を改正する法律案並びに農業協同組合法の一部を改正する法律案に対する自由民主党、公明党及び民社党の三党共同のそれぞれの附帯決議案を提出いたします。 案文を朗読いたします。 次に、 以上でございます。
○委員長(園田清充君) おはかりいたします。 藤原房雄君提出の両決議案に賛成の方の挙手を願います。 〔賛成者挙手〕
○委員長(園田清充君) 多数と認めます。よって、藤原房雄君提出の両附帯決議案は多数をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。 ただいまの決議に対し、倉石農林大臣から発言を求められておりますので、これを許します。倉石農林大臣。
○国務大臣(倉石忠雄君) ただいまの附帯決議につきましては、決議の趣旨を尊重いたしまして善処いたしてまいりたいと存じます。
○委員長(園田清充君) なお、本院規則第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(園田清充君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。 本日はこれにて散会いたします。 午後五時三分散会 —————・—————