大蔵委員会 第5号
- 発言数
- 68 件
- 登壇者
- 10 名
- 会派数
- 4
- 開催日
- 1970/03/05
会議録
○委員長(栗原祐幸君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。 利率等の表示の年利建て移行に関する法律案を議題といたします。 まず、参考人の出席要求に関する件についておはかりいたします。 本案の審査のため、日本銀行総裁佐々木直君から意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(栗原祐幸君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。 それでは、これより質疑を行ないます。 質疑のある方は、順次御発言願います。
○木村禧八郎君 日本銀行総裁にお忙しいところを時間を都合していただきまして、あまり出席時間がないようですから、ひとつ端的に伺いたいと思います。 昨年九月一日からいわゆる日歩の公定歩合を年利に改めたわけですね、日銀も。いままで、日銀の金融政策は、大体国際収支の調整と景気調整等であったのですが、今度卸売り物価が急に上がって、物価安定のための公定歩合の引き上げだと、こら言われているわけです。その他、設備投資が相当行き過ぎて、設備投資をある程度その伸び率を抑制するとか、あるいは、鉱工業生産の伸び率、日銀券の伸び率等、かなり異常と見られるような伸び率を示しておったので、その抑制のために公定歩合を引き上げたと言われるんですが、国際収支の黒字下における金融引き締めで、これは私は非常に異常な状態だと思うんです。その目的、それとその後の影響ですね、どの程度浸透しているか。最近また財界では金融の緩和を要望する、そういう傾向が出てきておりますが、そういう点についてまず総裁の御所見を伺いたいと思います。
○参考人(佐々木直君) ただいまお話がございましたように、戦後の日本では、金融調整をいたしますときには、国際収支の天井にぶつかって行なうということがいつも通例でございました。昨年九月の例は全く新しい例でございまして、国際収支では相当大幅な黒字が出ておりますのにかかわらず、公定歩合の引き上げをいたし、金融、資金量の調整も始めたわけでございますが、これは、すでに御案内と思いますけれども、経済の成長の非常に高いのがずっと続いておりまして、それがいろいろの方面に緊張を与えておる。物価の面にもそうでございますし、労働力の面でもいろいろ需給が逼迫しておる。そういう点を考えまして、経済の成長をよりおだやかにし、そして息の長いものにしようということを考えて実行いたしたわけでございます。 その後の実情についての御質問でございますが、昨年の暮れくらいまでは金融面にはある程度影響が出ておりましたけれども、経済の実体面にはまだほとんど影響していないということが通説でございました。ところが、ことしに入りましてから、一月の半ば過ぎになりまして、だいぶ企業の手元のほうにもそういう金融の引き締まりの状況が影響を与え始めたというようなことになっております。しかし、私どもとしては、今度の金融調整の目標がいま申し上げましたような点でございましたことにかんがみまして、現状におきましては、そういう生産の状況、あるいは物価の状況などから見まして、まだ金融引き締めの目的が達せられたというような状況ではないと思います。したがって、現状においては金融緩和のできる状態とは考えておりません。
○木村禧八郎君 日銀の公定歩合の引き上げに続いて、長期金利の引き上げが行なわれた。これは、社債とか、国債、公債等の売れ行きが悪いことも関連しているのですが、この長期金利の改定ですね、引き上げ、ひいては私はこれは預金金利の調整の問題引き上げの問題が起こってくると思うんですけれども、そういう全体を通じての金利の改定の問題が起こってきておる。それで、長期金利の問題について。それから大蔵省からは、預金金利等についてやはり問題が出てくると思うので、それについてはどう考えているか。これは引き上げになるならどのくらい引き上げるのか。この間、最高限ですか、それについて大蔵省では引き上げをきめられたと言われていますが、その点について。いまの金利の問題について、まず長期金利について日本銀行総裁に伺います。
○参考人(佐々木直君) 今回の長期笠利の変更につきましては、まず問題になりましたのは、事業債でございます。と申しますのは、現在の公社債市場において現実に既発債が取引されております条件が新しい債券の発行条件と非常に離れておりまして、そのためにいろいろな面で矛盾を生じておりますので、何とかこの乖離をできるだけ狭めてそういう点を正常化いたしたいというのがまずきっかけであったわけでございます。この事業債の動きにつれまして、利付金融債の率についても変更が行なわれました。そういうようなことの起こりから考えまして、いまのところ、こういうような長期金利の上昇というものが徐々には一般の長期金利に影響を及ぼしてくると思います。ただ、預金金利につきましては、いまのところまだ関係者の間で相談中でございまして、これがどういうふうに落ちつきますか、いまのところちょっと私どもにも見当がついておりません。しかし、そういう長期金利全体の動きが影響する可能性はあるかと存じております。
○政府委員(近藤道生君) ただいまの預金金利でございますが、いま日銀総裁のほうからお話がございましたように、関係者の間で相談をいたしておりますが、おそくとも今月中にめどをつけたいと考えております。
○木村禧八郎君 それはどの程度の引き上げになるのか、これは物価対策とも関連があると思うんです。四十五年度の消費者物価の見通しは四・八%で、いまの預金の一年もの五分五厘を税引きにしますと、それ以下なんです。四分六厘ですから、四・八%に安定させることもまだ高過ぎるのです。それで貯蓄奨励するなんというたっておかしいと思う。だから、そのバランスからいっても預金金利をかなり引き上げなきゃならぬ。大体どの程度引き上げるのですか、今月いっぱいに結論を出されるようなお話でございましたが。
○政府委員(近藤道生君) その幅等につきましては、ただいま関係者の間で協議をいたしておりますので、まだただいまの段階ではちょっと申し上げかねる問題でございますが、ただいまおっしゃいましたような御趣旨をも十分に踏まえて関係者の間で相談をしてまいりたい、かように考えております。
○木村禧八郎君 そうしますと、税引きで四.八%より上回るというそういう見当ですか。それ以下だったらおかしいと思う。やっぱり異常なる状態ですよ、物価の四・八%というのは。それとの関連において、それより上回らなければ貯蓄奨励ということは意味がないと思いますが、政府においてはその点はどうなんですか。
○政府委員(近藤道生君) 今後全体としての弾力化をはかってまいりますので、一挙にどこまでやれるかということにつきましては、なお関係者の間で慎重に相談をいたさなければなりませんので、今回どのくらいになりますか、ちょっとまだ申し上げる段階ではございません。
○木村禧八郎君 これは日銀総裁も含めて御答弁願いたいのですが、金利がだんだん高くなってきて、引き上げざるを得なくなってきた。これは資金需要その他から来ているのでしょうけれども、 一つは、私は非常に心配しているのは、インフレ・マインドになってきているところにあるのではないか。多少金利を上げて金利負担をふやしても、最近のようにいくら政府が物価安定、物価安定と言ったって、かなり物価は上がっているんですからね、政府の見通し以上に。そうすると、企業は、早く設備投資をしちゃったほうが、競争して多少の金利負担をふやすよりはそのほうが得である。そういうことで、金利機能が、設備投資を抑制しようとしても、なかなか機能しにくくなってきている、そういう点に一つの問題があるのではないか。だから、公定歩合を昨年九月に上げましても、依然として設備投資を押えることができない。設備投資を抑制しようとしても抑制できない原因には、省力投資とか、海外の経済力強化のためとか、いろいろ言われるのですが、私は最近になってインフレ・マインドになってきているという点がかなり作用しているのではないかと思う。四十四年度は政府見通しでは一六・二%くらいの設備投資の伸び率を見ましたが、二六%をこえているんですからね。そういう点、日銀総裁、これは通貨政策に相当問題があると思いますが、この関係はどういうふうにお考えで、それに対して今後どう対処されるか。大蔵当局も、いまの点をどうごらんになっているのか。いわゆる金利機能というものを多少上げても、いまのインフレ・マインドを押えませんと、金利機能が十分に機能しないような状況になってきている。これは重大な問題だと思う。日本銀行が昨年九月に公定歩合を上げたということもその点では非常に重大な意味を持つていると思いますが、総裁はどうお考えですか。
○参考人(佐々木直君) お話の点は、確かに理論的に非常に問題の点だと思います。海外における最近の金利高につきましても、そういう点を指摘する学者もあるようでございます。ただ、私ども、いま日本の状況を見まして、それがインフレ・マインドのために設備投資が非常に大きくなっているという段階に来ておるとは判断しておりません。しかし、そのおそれがありますので、今後の経済運営につきましては十分に注意をして、そういう心理が一般に広がっていくというようなことのないように予防的な措置をできるだけ強くとらなきゃならない、そう考えております。
○政府委員(近藤道生君) ただいま総裁からお話のございましたとおりに私どもも考えております。
○木村禧八郎君 私は、総裁に対する御質問として、インフレ・マインドのみを言っているわけじゃないんです。省力投資とか、あるいは海外経済力強化とか、あるいは技術革新投資とか、その他いろいろ設備投資を促進させる理由がいろいろあると思うんですよ。しかし、その一つにやはりインフレ・マインド的なものが起こってきてるんじゃないか。ニクソンなんかはっきり言っていますね、経済報告で。ニクソンは、アメリカではインフレ・マインドになっているということをかなり強調していますよ。ですから、通貨当局としては、私はこれからも御質問したいと思うんですが、やはりインフレ。マインドを押えるということがこれから新しい非常に重要な政策になっていくと思うんです。そうなったらたいへんだと思うんです。しかし、いくらなんでも、昨年、一六・二%の設備投資の伸びが二六%以上になっていることについては、一部の要因としてそういうことも懸念されるのではないか、こう思うわけです。それで御質問しているわけですが、その点をもう一言、くどいようですが。
○参考人(佐々木直君) 二六%という非常に高い設備投資の増加が見られましたことはおっしゃるとおりでございますが、ただ、いまのそういう大きな設備投資の内容をいろいろ見てまいりますと、大きなものには、電力でございますとか、あるいは鉄鋼でございますとか、そういうようなものがおもでございます。電力などにつきましては、これは電力の使用量が多くなるということに対応して、供給義務を持っている産業としての設備投資、これが伸びている。それから鉄鋼などは、海外に対する輸出が非常にふえております。 そういうことから需要が相当強いということで設 備投資が相当大幅に行なわれたというような、そういう点がございます。 そういうふうに、具体的な例を見てまいりますと、インフレ・マインドによるそういう大きな設備投資の進みというものはまだわれわれとしては認めなくてもいい状態であるように思います。ただ、しかし、御指摘のように、今後にそういう心理がだんだん強くなってくる可能性があることは確かに否定できませんので、できるだけ早目にわれわれとしては対策を考えなければならない、こう考えておる次第でございます。
○木村禧八郎君 アメリカなんかは、財政を締めて金融を緩和する、日本の場合は、逆に財政のほうを——これはいろいろ議論があると思うんですが、四十五年度予算なんかはかなり大型インフレ的な予算で、金融のほうを締めると、こういうような状況になっていると思うんです。しかも、黒字でしょう。私、昨年の八月、九月に欧米に行きまして、OECDあたりに聞きますと、九月の金利引き上げについて非常に疑問を持っていますね、諸外国では。おかしいじゃないか、こんな黒字国が金利を締めるのはおかしいじゃないか、こういう批判も聞いたわけですね。ですから、非常に変則的なんです。ですから、私は、やはり財政と金融との関係につきまして、どうも日本は逆ではないかと思います。財政といわゆるポリシーミックスとか、いろいろ言われますが、そういう点について総裁はどういうふうにお考えですか。
○参考人(佐々木直君) 確かに、今度の財政計画が昨年四十四年度に比較しまして非常に伸び率が高いということは事実でございます。したがいまして、その実際の運営につきましては、いまの金融引き締めをやっております実情にかんがみまして、十分慎重な態度をとっていただくように要望しておる次第でございます。ただ、現状判断並びに今後の経済の運営の目標、要するに経済の成長を適当にしてかつ息長く持っていく、こういう目標については、大蔵当局の御判断とわれわれの判断全く一致しておりますので、おそらく今後の財政運営については十分こちらの考えもいれていただけるものと考えております。
○木村禧八郎君 最初から大型インフレ予算ということがわかっていて、そうして、これが行き過ぎたら繰り延べをやるとかあるいは金融を締めて調整するとか、そういうことをやったのでは、それはもう意味がないと思うんです。これは最初からわかっている。もうすでに、総理も大蔵大臣も、もしこれが行き過ぎるようであったならば繰り延べる、行き過ぎるようだったら金融を引き締めて調整する、こういうことをおっしゃっているのですね。その点は、いま総裁の言われるように、行き過ぎたら繰り延べをやるとか、あるいは金融を調整してうまくいくと言われますけれども、最初からわかっているのにそういう予算を組むのはおかしいと思います。それから国際的な関係から見てもおかしいし、黒字下の金融引き締めというのも変則的だし、おかしいと思うんです。 これに関連して大蔵当局に伺いますが、経済企画庁でシミュレーションをやっていますね。あれによりますと、四十五年度予算の編成としては金利は下がるという作業ですよ。金利が下がるという作業なんですよ、四十五年度から。そうしてあの見通し案ができている。その上に予算が組まれている。そうなると、もし、金利のいまの引き上げ、あるいは引き締めが続いていくということになると、あの四十五年度予算の編成の前提が狂ってしまうのです。そこで、先ほどもお話がありましたが、様子を見て、四十五年度予算編成の前提となっているあのシミュレーション作業、それに基づく見通しがございますが、大体それに従うように今後持っていくかどうか。ですから、いま金融をいつ緩和するかということが非常に問題になっておりますが、四十五年度予算の実行の段階に入れば、金融をゆるめる方向に、それから国際的に見て正常の方向に 国際収支が黒字なのに金融を締めるのはおかしいのですから、正常状態に戻すのかどうか、その点を伺いたい。
○政府委員(近藤道生君) ただいまお示しのございましたシミュレーションのほうは一応五カ年の計画でやっていますので、これはよく御承知のことと存じますが、本年度直ちに金利を云々するということはやっておりませんが、ただ、おっしゃいましたように、黒字下における引き締めのやり方、あり方という問題、これは非常にむずかしい問題でございまして、民間の世論などでは、たとえば税とかそういう方面における調整が金融による調整よりも望ましいといったような論調もだいぶございます。そのような観点で、本年度の予算の編成にあたりましては、法人税の負担の増強であるとか、国債の減額であるとかいうようなことで、極力予算面から需要の抑制ということに努めております。また、日本銀行も、先ほど来総裁からお聞きになっておられますような方向でいろいろ御努力になっていることでございます。
○木村禧八郎君 五カ年間というのは、計量モデルのほうですよ。シミュレーションはもっと短期でしょう。ですから、短期の四十五年度の予算の編成の前提になったシミュレーションのほうは、ずっと金利が下がる設定ですよ。もちろん計量モデルのほうの長期的なものもそうなっているでしょうけれども、それはそれでいいです。 しかし、日銀総裁に伺いたいのですが、最近金融をいつごろ緩和するかということが非常に大きい問題になっているようですが、いまお聞きしてまいりましたように、四十五年度予算の前提では、金利を下げるというような方向に持っていくことが前提になっているわけです。 そこで、いま非常にデリケートな段階のようですが、日本銀行としましては、金利政策を今後どういうふうに運営されていくのか。 それから引き締めの影響が最近かなり深刻になってきている。それで、中小企業、あるいはまた中企業あたりでも、だいぶ詰まってきて、この三月の決算あたりでも決済なんかでかなり問題が起こる可能性も出てきているとも聞いておるわけです。ですから、その影響がかなり深刻になっているようですが、そういう点から考えて、今後の金融政策は、公定歩合のほうをいじるのか、あるいはまた、いじらなくても、窓口規制等、いろいろ操作はあると思うんですが、今後の見通しについてはどういうふうにお考えになっていますか。
○参考人(佐々木直君) 先ほど申しましたとおりに、現状におきましては、金融調整のいままでのやり方は変更する考え方は全然ございません。 それからいまちょっとお話がございました四十五年度中に金利が下がるという見通しだということでございますが、われわれは、金利政策を考えてまいりますときに、年間の予定を立ててまいるということは、もう先生御承知のとおり、いたしておりません。したがって、今後の情勢いかんでこういうものはきまってくるもので、今後下げるという前提でものを考えていくということは、現在のところ、私どもとしてはいたしておりません。 それからいまの金融引き締めの影響がどういうふうになっているかということでございますが、先ほど申し上げましたように、ことしに入りましてから、主として大企業から、資金が非常に苦しいという訴えがございまして、特に大幅な設備投資をやっております企業が非常に資金繰りが苦しい状況でございます。中小企業、中堅企業につきましては、最近、たとえば相互銀行とか信用金庫とかいう大衆資金を吸収します金融機関の預金の伸びが非常によろしゅうございまして、これらの金融機関の貸し出しも、そういう資金源が豊富になるにつれまして相当伸びております。そういうふうなことで、いつもとはだいぶ様相が違いまして、むしろ今度は大企業のほうが先に苦しくなってきているということのようでございます。 この三月末がどうなるかということでございますが、私ども、全体の金融機関の貸し出しの増加の総計を見ておりますと、やはり相当な勢いでまだ伸びております。そういう量的な面から見まして、三月末に特に決済に支障を生ずるというようなことが起こるとは思いません。ただ、しかしながら、これはマクロ的に見た場合でございまして、個々に見ればそれぞれの企業にいろいろの事情もあると思いますので、そういうものにつきましては、できるだけきめのこまかい相談もいろいろいたしまして、いわゆる角をためて牛を殺すといったようなことのないように十分注意してまいりたいと考えております。
○木村禧八郎君 私が一番最初に質問いたしました黒字下における日銀の金融引き締め、これはいままでに珍しい画期的なもので、それは、卸売り物価が急騰し、物価対策としての意義ですね、インフレ対策といいますか、それを非常に持っているというように承ったわけです。 そこで、物価対策と金融政策について、これまで過去においても、日本銀行の通貨政策が、間違っておったとは言いませんけれども、どうもあまかったのではないか。そこで、この物価対策としての金融政策の転換の機会に、今後は、やはり日本銀行の通貨政策は、いわゆる総需要抑制の方向に急転をしていかれる必要があると思いますし、また、そういう方向を志向しているのではないか、そう私は理解しているのですが、いわゆる総需要抑制としての日本銀行の通貨政策、金利政策なり、あるいは資金の量の調整政策なり、これは今後非常に重要になってくると思うのですが、そういう方向に転換したものと理解してよろしいか、また、今後そうされていく必要があると思うのですが、どういうふうにお考えになっておりますか。C参考人(佐々木直君) 先ほど申し上げましたように、いままでの金融調整が、国際収支の赤字という事態にぶつかってやっておったのが例でございます。したがって、目がいつも国際収支というところに主として注がれていたということは確かに御指摘のとおりだと思います。それからまた、一昨年の暮れまでは卸売り物価は非常に安定しておりまして、世界でも最も安定した卸売り物価指数であるというふうに世界的にもいわれておった状況でございます。それで、私どもとしては、消費者物価指数のほうはいろいろ金融の影響の外にあるものがずいぶんありますので、金融政策を取り運びます上での物価指数としては、卸売り物価指数に重点を置くというやり方でまいりました。これは、卸売り物価指数というものが、結局、日本の輸出に結びついておるという観点で、国際収支に関心の深かったいままでのやり方からいえばそういうことになったのが自然であろうかと思います。 今後、いまのように国際収支の黒字のもとで金融政策を運営していきます場合の物価に対する考え方は、御指摘のように、だんだんわれわれとしても考え直していかなければならない、そういう意味でいろいろ勉強もしておるのでございますが、総需要を調整するということによって物価の基本的なあり方に影響を及ぼすと、そういうラインでやはり考えていかなければならないと、こう存じております。
○木村禧八郎君 私の考え方と総裁の考え方とは大体同じようで、私もそういう方向で行かれることを望んでおりますが、これは単に金融政策だけでなく、財政もそうならなきゃならぬと思うんですよ。それについて、たとえば昨年の一月二十八日、これは物価安定推進会議の「財政金融政策と物価」という部会があって、そこで、「財政金融政策の運営について、とくに当面留意すべき点」の一つとして、「従来、消費者物価の上昇は、経済成長に伴う構造的変化に起因するものと認識され、主として生産性向上を主体とする構造政策が推進されてきた」と。私は、それはほんとうは物価対策でないと思っておる。価格対策であって物価対策でないとわれわれも思っておったんです。ところが、「最近の消費者物価の上昇要因には、必ずしも構造政策のみでは対処しえないものがあると認められるので、景気変動の平準化に努めるとともに、総需要の増加を抑制気味とし、いやしくも、需要圧力による物価上昇をきたさないよう誘導すること。また、この観点から、通貨供給の経済活動に及ぼす影響にかんがみ、経済成長と通貨供給量との妥当な関係について検討すること。」と、こういう答申がなされておるわけですね。 そこで、日本銀行総裁にお伺いしたいのですけれども、最近では、総需要論というのは、フリードマンとかあるいはハーバラーとかの学者の間でだいぶまたこのごろそういう主張が強くなされております。私はやはり前からデマンドプル的な要素というものを軽視してはならないと、こういう考えでおったのですが、構造変化論ですか、それの物価騰貴の原因としての認識が強くて——必ずしも私はそれは否定はしません。しませんけれども、どうも総需要抑制については不十分であったと思うんです。こういう答申もなされておるのですが、政府はちっともこれを尊重していないのですね。そこで、これには通貨供給との妥当な関係、経済成長、物価との、そういう面について検討する必要がある。まあ日銀でもこういう点についてはやはり研究される必要があると思うのですが、研究されておるかどうか。それから学者によっては、通貨の増加量のガイドラインですか、ガイドポストですか、そういうものを大体定めるべきだという学者もおるようであります。そういうことについて日本銀行といたしまして、どういう御調査をなされて、そしてまたどういうような考えをお持ちになっているのか、この際伺っておきたい。
○参考人(佐々木直君) 御指摘の点は、私ども確かに非常に問題視しておりまして、先般来いろいろな角度から研究を続けております。いままでの研究の結果では、これは当然のことでございますけれども、通貨供給高の額というものが急にふえますと、これがある程度の期間をおいて物価にも影響し、あるいはまた経済成長にも影響するということは、これは事実でございます。ただ、どれだけの通貨供給量の増加がどれだけの物価の上昇に結びつくかというような、数字的な、あるいは表現は悪いかもしれませんが、機械的な関係は、まだわれわれとしてはつかめておりません。これについては、アメリカその他の国々もいろいろ検討しておるようでございますけれども、そこのところに一定の方式といいますか、数式的な関連方式を見い出すことはまだどうも成功していない。おそらくこれはほかのいろいろな要素が影響し合いますので、なかなかそうすなおな関係といいますか、ものを見出すのがむずかしい性格のものではないかと思います。しかしながら、この問題は、通貨量の調節をいたしますわれわれといたしましては、非常に大事な問題でございますので、今後もさらに検討を続けてまいりたいと、そういうふうに考えております。
○木村禧八郎君 今度新しく調査局長になられた呉さんの書いた論文を私拝見いたしましたが、いま総裁のおっしゃるように、通貨の伸び率、あるいは経済成長率、それから物価の上昇率は、なかなか機械的には相関関係でつかみにくいと申されましたが、しかし、その論文の最後で、いままでの調査の結果大体大づかみにわかったことは、通貨供給量が二〇%をこえたような場合、やはり成長率も二〇%をこえる、そういうことは概括的にそれぞれわかってきていると、こういうような論文を拝見したんですが、その程度のことはやはり調査の結果かりにわかっているとすれば、これまで通貨の供給量が二〇%をこえつつあるわけです。こえた場合もありますね。そういうことが一つの今後のきちんとしたガイドポストではありませんけれども何かの目安になるのではないかと、こう思うんですけれども、そういう点についてどういうふうにお考えですか。
○参考人(佐々木直君) いままでの実績をいろいろ検討してみますと、調査局長が申しておりましたように、通貨供給量の増加が二〇%をこしますと、どうもいろいろな方面に好ましからない影響を及ぼしておるということは事実のようでございます。去年の九月に金融の予防的引き締めをいたしました。あの踏み切りをいたしましたのも、実は、資金供給量の増加高が非常に高かった、その事実を踏んまえて実行いたしたような次第でございます。ですから、そういう通貨供総量の増加の足どりにつきましては、われわれとしては非常に慎重に注意しており、今後の政策の決定にもそういうものの動きを十分考慮していきたい、こう考えておるのが現実でございます。
○木村禧八郎君 次に伺いたいのは、円切り上げの問題なんですがね。これは私は現実の問題として処理しなければならない問題がかなり出てきているのではないかと思いますので、通貨当局の御所見を伺っておきたいのですが、それは、円切り上げは現実の問題ではないでしょう。しかし、実際問題として円切り上げ説がいろいろ伝えられるばかりでなく、現実に円為替はやはり強くなってきていますね、最近。まあ四十四年中は一ドル三百五十七円台ですね。そうしますと、実際の取引をする場合に、円の為替リスクというのはかなり多くなってくると思うんです。それで、最近、ニクソンの教書にもございましたですね。それからまた、今度のIMFの総会ですか、あそこで、クローリングペッグ——為替変動に関するいろいろな方法がございましょうが、協議されて、大体何らかの結論に到達するのではないか。アメリカは、固定為替のみ最近固執しているようじゃないですね。そうしますと、かりにクローリングペッグになりますね。そうした場合、円が強い強いといいますから、為替変動の場を自由にした場合、高いほうのレートに絶えず固定化されていくのじゃないかと思うんですね。そうすると、その限りにおいては、実質的に円が切り上げられたと同じような効果が出てくるのじゃないかと思うのです。ですから、円切り上げ問題については、いろいろな賛否もありますし、各産業にいろいろな影響もございますし、これはまたいろいろなサイドから検討しなきゃならぬと思うんです。われわれも、革新の側として、円の切り上げをやったほうがいいのか、やらぬほうがいいのか、いま詳細に検討中なんです、その点については。軽々にはなかなか結論の出にくい問題ですけれども、現実問題として、そういうようにもう円の為替は非常に強くなってきている。それと、いまの為替変動幅についてはIMFでの決定がなされようとしているということになりますと、実際問題としてこの問題は放置できないと思うんです。そこで、それについては日本銀行としてどういうふうにお考えになっておるのか。これは通貨政策とも為替政策とも関連してくるわけですから、どういうふうにお考えになっておるのか。それから政府のほうも、こういう状況をただ見ていていいのかどらか。円の切り上げは大蔵省はもちろん反対でしょうが、反対だからといっても、もう差し迫ってきておるのです。固定為替を今後変えていこうと、こういう機運が高まってきていますね。そういうことについて、一体大蔵省はどういうふうに処理しようとしておるか。この点について、まず総裁から御答弁いただきたいと思います。
○参考人(佐々木直君) ただいまお話がございましたように、最近の日本におけるドルの取引の相場を見ますと、大体三百五十七円五十銭くらいのところで続いております。したがって、円高が続いておるわけでございます。現在のように国際収支の黒字基調が続いておりますと、どうしても市場におけるドルの需給関係から円が高くなる。これはいまの状況ではしばらく続くのではないかと思います。しかしながら、いまさら申し上げるまでもなく、いまの日本の円の強さというのは、外国為替管理法とか、あるいは輸入制限でございますとか、そういうとりでに囲まれた強さでございまして、まだほんとうの意味の裸での強さというものはためされておらないわけです。したがいまして、今後、輸入の自由化でございますとか、そういうものをだんだん実行しまして、しかもなお円が強いかどうかということの判断をする必要があろうと思います。 それからもう一つ、いまの為替相場のあり方につきましては、おっしゃいますとおりにIMFで検討しております。それから各国の中央銀行の間でもいろいろ話もしております。しかし、現在ではなかなか議論が分かれておりまして、どういう姿で落ちつきますか、まだちょっと見当もつかないような状態でございまして、世界の為替相場の動かし方をこういうふうにしてやるんだというような結論が出ますまでにはまだ紆余曲折があるのではないか、こういうふうに存じております。
○政府委員(近藤道生君) ただいま総裁からお話しになりましたとおりでございまして、私どもも、まず、裸になった場合の円の強さがどういうものであるか、自由化のための諸措置の推進、そういうことのほうを重点に考えております。 それから後段のクローリングペッグその他の検討にいたしましては、これもただいまおっしゃいましたようにいろいろ議論が分かれておりますので、まだどういう方向に行きますか全くわからない状況でございます。 なお、切り上げに関しましては、この前大蔵大臣が、外人記者会見でございましたか、頭のどのすみにもそういう考えは少しもないという答え方をしておられます。大蔵省は、いま、みなそういうふうに考えております。
○木村禧八郎君 きょうは持ち時間があれですから、あと簡単に質問いたしますが、私は、円の切り上げ問題については、いかに政府が切り上げたくないと言っても、やはり国際環境からは、あるいはその他からは、切り上げざるを得ないような——たとえば、さっき総裁が言われましたように、いろいろ切り上げ以外の方法、輸入をふやすとか、海外の投資をふやすとかいろいろやって、なおかつ円が強い場合は、これは切り上げざるを得なくなるだろうと。私どももそう思っておりますけれども、しかし、現実の問題として、たとえば、海運とか、あるいは造船とか、そういう非常な長期の取引をやる場合、為替リスクがすぐに出てくるわけですよ、円高のレートになって。そういう場合の態度ですね。これはもうある意味では部分的な円切り上げみたいなものですね、そう言っていいかどうか知らぬけれども。とにかく現実問題としてそういう円切り上げにひとしいような影響が出てくるわけです、業界によっては。ですから、ただそれをほうっておくわけにはいかないんじゃないか。 それから円切り上げを政府は当分やらぬ、やりたくないというなら、もっと明快に、はっきり、こうこうこういう理由で円は切り上げるべきじゃないと。先ほど総裁も言われましたが、それも一つの理由でしょう。私も、いろいろほかにも議論がありますけれども、これは議論する場じゃありませんから申しませんけれども、もっとはっきりすべきじゃないかと思うんですね。何か部分的に、大蔵大臣が、沖繩が返るまでは三百六十円は変えたくないとか、ただこう言っているけれども、これは非常に重大な問題なんですから、もう現実にそういういう取引に影響が出てきておるわけですから、ここで円切り上げに関して声明ぐらい出すとか、その根拠についてはっきりした態度を出すべきじゃないかと思うんです。そうしないと、非常に動揺する、ほうぼうで。もう円切り上げに関するいろいろな木や何か相当売れていますね。雑誌なんかにも相当出ている。これはけっこうです、議論は。しかし、やはり政府としてはこれをただほうっておくわけにいかんと思うんです。ある程度ははっきりした考えを出すなり、同時に批判すべきである。 それで、最後に日銀総裁にお伺いしたいのは、いま、諸外国から、円切り上げ等につきまして、あるいはまた、円を切り上げないなら、為替の自由化をうんと急ぐとか、海外投資をふやすとか、いろいろ言われましたが、要するに、国際収支の黒字幅がもうどんどん大きくなっている。そういう際に、これまでの日本銀行の輸出に対するいろいろ金融上の優遇措置がございますね。それから大蔵省の税制面からのいろいろな優遇措置があるわけですよ。いわゆるドルの獲得、外貨獲得のための。そういうものをここで考え直す必要があるんじゃないかと思うんですね。いままで、外貨獲得のみのサイドから優遇措置を考えた。今度は、外貨獲得じゃなくて、むしろ円決済のほうを奨励しなきゃならぬような状況じゃありませんかね、現実は。そういう点が、金融面の優遇措置が、輸出手形とかああいうものについて特別の優遇措置があると思うんです。あるいは税制面においてあるんですね。これを、ここで、いままでどおりでいいかどうか、考えを変える必要があるのじゃないかと、こう思うんですが、その点について最後にお伺いして終わります。
○参考人(佐々木直君) おっしゃいますとおりに、輸出関係につきましては、輸出増進という点から金融面でも優遇措置を講じてきておりました。それは主として金利の面でございます。この金利の面で優遇をいたしましたのは、従来は海外の金利が日本の金利よりはだいぶ安うございましたので、したがって、海外の低い金利を使っているものとの競争だから、やはり金利の面では同じベースで競争してもらうという考え方であったわけであります。ところが、その後、最近になりまして急速に海外の金利が上がってまいりました。ほんとうは、そういうときには、やはり輸出関係の金利もある程度これに合わせて上げるべきであったかと思うのであります。しかしながら、輸出というものに対する重要性を帯びておる点から、なかなかそれが実行できないで今日に至っております。しかし、ここで、いまのような国際収支の状況でもありますので、この金利の問題につきましては何か適当な機会をつかまえて十分検討したいと、こういうふうに思っております。
○政府委員(近藤道生君) 税制面の優遇措置でございますが、特別措置全般につきまして絶えず検討をしてまいるというたてまえからも、特に最近のお示しのような状況のもとでは、できるだけ検討をしてまいりたいということで、主税局もいま研究をいたしております。ただ、輸出入の状況につきまして、黒字定着ということがほんとうに断言できるかどうかという状況にはまだやや時間がかかるようでございますし、それからこういう輸出やなんかについて、一度、くせと申しますか、くせがつきますと、あとでまた挽回をするということが非常にむずかしくなるとか、いろいろな観点から、いまきわめて慎重に検討をいたしておる段階でございます。
○岩動道行君 木村先生から円の切り上げについての御質疑があったわけですが、私は、これに関連して、国際決済銀行に日本が入ることになったので、あそこではいろいろなそういう問題についても情報交換なりあるわけですが、かつてヨーロッパの通貨交換制の問題なんかはあそこの中で各国の大臣が集まって話をしてきまったというような状況であります。したがって、そのBISの中でどういうふうに円の問題が考えられているか、最近の実情と、それからユーロダラーの動きがどういうふうになってきているのか。これは円の切り上げの思惑といったようなことから自由円がかなり入ってくるような状況にあるのではないか。これに対しては一定のワクを金融機関に設けた、こういうような話も聞いておりますが、この自由円の扱い、あるいはその動き、こういったようなものの近況をひとつお聞かせいただきたいと思います。
○参考人(佐々木直君) 国際決済銀行には、ことしの一月一日から日本銀行が株主になりました。戦前、日本は、有力な株主であったのでございますが、敗戦によってそれが消えておりました。したがいまして、BISとの関連は従来もだいぶ深くなっておりましたが、いよいよ深まってまいりました。あそこでは、中央銀行総裁が週末に集まりまして忌憚のない意見を交換することになっております。日本も、もう二、三年前からその総裁会議には毎月だれかが必ず参加をしてまいっております。私も近いうちに総裁会議に出席するつもりでおりますが、いままでのところ、BISの中央銀行総裁会議の中で日本の円について具体的な意見が交換されたということは聞いておりません。一つは、これは、為替相場の決定というものが政府の決定事項だものでございますから、中央銀行の総裁の間ではこれをあまり表立って議論をするということを避けている傾向もございます。ただ、情報の交換につきましては、いろいろなことをもちろん遠慮なく話をしております。 それから自由円のほうにつきましては、いままでのところ、さほどまだ大きな動きはございません。多少千万ドルとか二千万ドルとかというような動きはございますけれども、基本的にたとえばいま御指摘のありましたユーロダラーが日本に流れ込んでくるといったような傾向はまだ全く見られておらないように存じております。
○鈴木一弘君 総裁に一つ二つお伺いしたいのですが、コールレートが、昨年の九月の引き締めのときに比べて、その後かなりはね上がっておるわけです。四十二年のときに比べるというと相当な開きがある。この水準は四十年の不況以来の最高の水準だろうというふうに考えられますし、こういう金融の逼迫状態が続くと、中小企業関係へのいろんな影響、波及というものが考えられてくると、倒産状態ということがどうしても出てくるわけでありますけれども、そういう点について総裁はどういうふうに考えておられるか、これを一つ伺いたいと思います。
○参考人(佐々木直君) ただいまお話しのように、コールレートはいま相当高いところで横ばいになっております。そういう点がどういうところから来ているかと申しますと、結局、都市銀行の資金ポジションが非常に悪くなっている。都市銀行の資金ポジションが悪くなっているということは、預金以外の外部負債、これは主としてコールマネーでございますが、コールの取り入れが非常にふえておる。そういうことで、要するにコールレートがどうしても需要が強いものですから上がっているわけです。ただ、中小企業金融機関がその資金をコールマーケットに出しております出し方は、かつてもっとコールが高いときその他の時期に比べますと、今度はそれほど大きくはございません。さっき木村先生の御質問のときにちょっとお答えいたしましたが、相互銀行や信用金庫などは、最近だいぶ金繰りが楽でございますけれども、その大部分を直接の貸し出しのほうに回しておりまして、コールヘの増加というものはそれほど大きくなってはおらないようでございます。したがいまして、このコールレートの高さが有価証券の価格等にいろいろな影響を与えておることは確かでございますが、中小企業金融機関の融資態度に著しい障害になっておるとはいまのところでは考えておりません。
○鈴木一弘君 もう一つは、これはこういう意見があるわけですが、七〇年代は物より質であると。そういう点で、どうしても設備投資というものを進めて力をつけていく必要があると、そのように思われるけれども、物価との関連から見ても、いろいろ投資を減らすというようになると、これは需要というものが非常にいまのところは強いわけでありますから、その点で供給不足という事態を招くのではないかと思う。総需要を押えるという物価政策、それもあるわけでありますが、そういう点からいろいろ押えられる。まあ何となくその辺で相矛盾したというか、どこかで調整点を考えなければならないというような問題があるようにも思われますけれども、その点についての日銀当局の考え方について伺っておきたいと思います。
○参考人(佐々木直君) 確かに、物価の問題につきましては、需要と供給とのバランスがうまくとれていないと、いろいろむずかしい状況になりますので、需要が強ければこれに対してある程度の供給力をふやしていくということが必要であることは、これはもう間違いないところでございます。私どもも、決して、省力投資とかいろいろな合理的な目標を持った設備投資全体にこれを押え込むというような気持ちは持っておりません。先ほども話が出ましたように、総体の伸びの中で特に二六%という高い伸びを示しておる設備投資について、その伸び率を少しモダレートにしてもらいたいということを要望しておるのでございまして、今後の日本の商品の国際競争力の維持、あるいは安定した成長を続けるためにも、合理的な設備投資が適当な範囲内において行なわれることは、これまた非常に必要なことだと、こういうふうに考えております。
○渡辺武君 ほんの一言だけ御質問したいと思います。 ただいまの中小企業金融の問題について、お答えの中で、いまの金融逼迫というのは主として大企業の設備資金に起こっていると。同時に、相互銀行その他の中小企業関係の金融機関の資金繰りはまだ楽だというようなお答えがあったかと思いますけれども、一番最初のお答えにもありましたように、いまの金融引き締めが金融面から漸次経済の実体面に波及しつつあるというような状況もありますし、特に私ども心配しますのは、いままでの金融引き締めの結果が結局のところどこへ来ているのかといえば、中小企業の深刻な金詰まりこと、それに伴う倒産というような形であらわれてきたのが通例だと思うのですね。それで、特に総裁から御指摘はなかったのですけれども、私ども特別に心配しておりますのは、大企業の金詰まりが深刻になってくれば、これが大企業のほうから必然に中小企業のほうにしわ寄せさせられるという点なんです。たとえば下請系列の中小企業に対する手形サイトの長期化とか、あるいは検収期間の遅延だとかというようなことで中小企業にずっとしわ寄せがいくというのが、これがまあ普通の金詰まりの波及のしかたの一つの常道だろうというふうに思うのです。ですから、いまのところは中小企業関係の金融機関は資金繰りが多少まあ楽だといっても、今後どうなるのかという点では、十分に配慮しておかなくちゃならぬことじゃないのだろうかというふうに考えます。特に、この間、技研工業といういわゆる中堅企業の手形の不渡りが出ました。この原因についてはいろいろな論議の余地もあろうかと思うのです。たとえば、経営状態が放漫だったというような議論もありますし、いろいろな原因もあるだろうと思いますけれども、しかし、私は、漸次この金融引き締めの影響が中小企業に及びつつある一つの例としてこれをとらえておくことがいまの情勢のもとでは適切ではなかろうかというふうに思うのです。そういう意味で、特に年末金融の決済期間もこの三月には集中することですし、それに加えて、先ほど申しましたように、大企業の金融逼迫ですね、これが中小企業にずっとしわ寄せされていくと、今後それがますますひどくなるだろうというふうに思われることから、特別に中小企業の金融についてはいまのうちに手を打っておかないと、非常にたいへんなことになるのじゃないかというふうに予想されるわけです。したがって、特別にどういう手を打とうと考えていらっしゃるか、その辺を伺いたいと思います。
○参考人(佐々木直君) 先ほど、今度の引き締めの企業に対する影響がまず大企業に出ているということを申し上げました。現在の段階ではそうだと思いますが、お話しのように力の関係もございますし、大企業の金詰まりがやがてはだんだん中小企業のほうへ及んでいくということは想像にかたくないところでありまして、そういう影響が出てまいりますときに十分な対策を講じておかなければならぬということは、私ども十分承知しております。ただ、これは、中小企業金融について特別なことで一般的な措置をとるということはなかなかむずかしいことでございます。政府の中小企業金融機関などでたとえば増ワクを行なうとか、あるいは一般的に金融機関が融資全体の貸し出しの中における中小企業に対する融資比率を相当に高いところに維持するとか、そういうような程度のことはできますけれども、特定の問題につきましては、やはり個々の問題について取引銀行と十分話ができるように、そういう話し合いの場を皆で用意するということが現実の問題としては最もいい解決の方法ではないかと思います。年度末はいろいろ決済の重なりますこともございますので、そういう点についてはあらかじめ関係者の中でよく連絡したいと思っております。
○渡辺武君 政府関係の中小企業金融機関の……。
○政府委員(近藤道生君) ただいま日銀総裁からお話のございましたとおりの情勢であろうと思いますので、ただいまの段階ではまだそれほどとは思いませんが、いずれそういうような状況に立ち至りました場合には、極力遺漏のないように努力したいと考えております。
○委員長(栗原祐幸君) 速記をとめて。 〔速記中止〕
○委員長(栗原祐幸君) 速記を起こして。
○成瀬幡治君 施行期日が、「公布の日」と、こうなっておるわけですが、かりにこれが三月の中旬なら三月の中旬に国会で成立したということになれば、その日からもうやられますか、どういうふうに政府当局としてはお考えになっておるのか。
○政府委員(近藤道生君) その日からというふうに考えております。
○成瀬幡治君 その日からほんとうにやりますか。法律はそれでいいわけだね。 それとともに、こういうふうに五十八ですかの関係法律で日歩を年利建てにされますが、たとえば地方自治体の問題がありますですね。それから民間でいえば、やみ金融——と言っちゃいかぬ、やみ金融のことは別として、金融機関もございますですね。それから政府関係の問題もございましょう。そういうところはどういうふうにされますか。
○説明員(後藤達太君) 技術的な点は私から説明をさせていただきたいと思います。 今回の法律案では、附則で経過措置を講ずるようにいたしてありまして、水準が若干変わるべきものにつきましては、個々の利率の性格に応じまして経過措置を講じております。新しいものからやるとかいうような経過措置を講じておりますので、その間問題はないものと考えております。
○成瀬幡治君 いや、私の質問しておるのは、そういうことじゃなくて、政府関係の問題は、法律案で出てくる五十八のものはここにリストアップされておりますから、これでいいわけですね。ところが、町の金融機関もございます。これはまだ日歩で言っておるとか、あるいは地方自治体関係のものも日歩で言っておって、この法律案には出てこない。そうすると、片方では日歩をやめて年利一本になるたけ合わせていくことが好ましい、日歩よりも年利がいいんだというふうに政府が判断をして、そのことが国民的によさがあるというか、そういうようなことが提案理由に書いてあった。そういうふうに判断をされるなら、町の金融機関が、私はやりません、日歩ですよと、こう言ったときにどういうことになってくるのか、そういうところに対してはどういうふうにしようとしておられるのか。それは地方自治体もございましょう。政府関係機関の問題もございましょう。それをどうされるかということを聞いたわけです。
○政府委員(近藤道生君) 地方自治体につきましては、閣議了解の線に沿いまして行政指導でやってまいりたいと考えております。 それから、ただいま御指摘の町のいわゆる高利貸しとかやみ金融というものにつきましては、これは強制をいたす手段もございませんので、ちょうどメートル法と尺貫法の関係のように、だんだん世の中が年利建てに移行してまいりますと、自然にそちらのほうが多くなるということを期待いたしておりまして、すぐ即座にこれを年利建てのほうに強制的に移行せしめるというような具体的な手段はございません。
○成瀬幡治君 あげ足をとるわけではないが、メートル法はいまびしっとやっておりますね、何年か期間をおいて。ですから、そういうような一つの目標なら目標を——確かに、強制することはできない。行政指導でやる。ところが、行政には服しませんよと。ずっといくと思うんです、二本立てである期間。ですから、そういうことに対しては何らかの考え方があるのか。まあ成り行きにまかせて、年利のほうがいいよということだけ言っていって、そして成り行きを見てそのときに何かまた対策を立てようと、そういう態度ですか。
○政府委員(近藤道生君) ただいまおっしゃいましたとおりでございます。
○成瀬幡治君 年利建てに書きかえたり、いろいろなことをやらなくちゃならぬが、どのくらい時間とか金というものはかかるものなんですか。
○政府委員(近藤道生君) これは初めての経験でございますので、まず期間にしましても非常に予測がむずかしゅうございますが、ただいままでに政府関係の機関あるいは民間金融機関そのほかについてかなり急速に年利建てに移行してまいるようになっておりますので、ただいまお話しのような町の金融機関につきましても、まわりじゅうがほとんど年利建てになったということでかなり早い期間に変わってまいりまして、期間としては、まあこれは予測がつきませんのでございますが、二、三年の間には全部変わってしまうのではないかというふうに考えております。 それから移行に伴うコストでございますが、これもまだ初めての経験でございまして、よくわかりません。ただ、個々の金融機関につきましては、それぞれまあそれほどの経費をかけずにやるというようなめどで準備を進めておるようでございます。
○説明員(後藤達太君) 補足して申し上げます。 ただいままでに、金融機関の関係のものは、貸し出しのほうを全部年利建てに改めるように処置をいたしております。それから預金金利につきましては、この四月一日から年利建てにする予定でございますが、貸し出し金利を年利建てに改めました経験のほうから申し上げますと、移行いたしますのにほぼ半年の期間を要しております。半年の期間と申しますのは、新規の貸し出しから改めてまいりましたが、コンピューターの関係でございまして、コンピューターのプログラムを変えるのにそれくらい時間を要したということでございます。それから経費のほうは、そのプログラムを変えますために若干の費用を要したと承知いたしております。
○鈴木一弘君 この年利建ての利率は〇・二五%刻み幅をつけるわけですけれども、例外措置がここにございます。例外措置の税関係、社会保険関係、こういうのには七・三とか一四・六とかいうのが残ってきておりますけれども、これは経過措置そのものの中には入ってこないと思いますが、将来この本法施行以降の場合にはことごとく〇・二五%刻みということになるんだろうと思いますが、そういう何かめどみたいなものは、各省間等で話し合いは大体おやりになったのか、また、何か一つの計画的なものはおありになるのかどうか、それだけ一つ伺っておきたいと思います。
○説明員(後藤達太君) いま先生御指摘の〇・二五刻みになっていないもののこれからの進め方でございますが、これは、〇・二五%刻みにできませんでしたものが税金関係、社会保険料の関係等、きわめて件数が多うございまして、かつ、一般の国民がみずから計算をするという不便を省くためにこういう措置をとりましたものでございます。したがいまして、その状況がどういうふうに今後なっていくかという関係もございますので、目下のところ何月何日というような計画は立てておりません。今後実情に応じて検討を進めてまいりたいと考えております。
○鈴木一弘君 検討を進めるというのは、今後は〇。二五%刻みにだんだんしていきたいと、こういうことですね。
○説明員(後藤達太君) 基本的にはその方向で考えております。ただ、いつからということは、いまのところ申し上げられない段階でございます。
○戸田菊雄君 問題は別なんですけれども、この機会に聞いておきたいんですが、四十三年度の水田大蔵大臣のときに、東北開発会社に対する政府出資の金利、この金利を引き下げるというようなことを一応約束しておったんですね。約束というのは、そういう方向に向けて検討いたしましょう、こういうことだったのです。この問題について何か特別検討されておるかどうか、その辺の見解を伺いたいと思います。
○政府委員(近藤道生君) ただいまのお話は、北東公庫のお話と理解して……。
○戸田菊雄君 それも含めてです。
○政府委員(近藤道生君) 北東公庫につきましては、そのときに水田大臣からそういうふうにお答え申し上げたと存じますし、実際にそのような方向で検討をしてまいったと聞いておりますが、ただ、全般の金利情勢が御承知のような状況で、いま長期金利の改定、引き上げというようなことが話題にのぼっておるという情勢にだんだん相なってまいっておりますので、それらとの関連におきまして、もちろん個々の特別の金利につきましてはこれはまた別個の政策的な観点というのが当然ございますけれども、ただ、全般の情勢というのが、いま申し上げましたような傾向でございます。なお検討中であるというふうに承っております。 それから東北開発のほうは、企画庁のほうの所管でございますので、私は承知いたしておりません。
○戸田菊雄君 ただ検討ということですが、この北東開発公庫の政府出資金については、年利の片方を上げる、預金金利も少し引き上げていこう、金利全般について一つ一つ検討されていきつつあるようです。ですから、二年も前に検討を約した事項だから、もし出てくるならばそういう問題についても当然検討されていいのではないかと、こういうことなんですが、その検討の端にもまだ上がっていないわけですね、いまの段階では。それはどうなんですか、大蔵省当局としては。
○政府委員(近藤道生君) 私、着任早々でまだ十分知っておりませんが、検討中であるというふうにただいま聞いております。
○委員長(栗原祐幸君) 他に御発言もなければ、本案の質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(栗原祐幸君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。 本日はこれにて散会いたします。 午後零時二十四分散会 —————・—————