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63回国会衆議院1970/03/02

予算委員会 第9号

発言数
212
登壇者
22
会派数
5
開催日
1970/03/02

会議録

中野四郎自由民主党

○中野委員長 これより会議を開きます。  昭和四十四年度一般会計補正予算(第1号)、昭和四十四年度特別会計補正予算(特第1号)、右両案を一括して議題とし、質疑を行ないます。近江巳記夫君。

近江巳記夫公明党

○近江委員 私は、公明党を代表いたしまして、質問したいと思います。  まず初めに、この四十四年度補正予算歳出の中で、畜産振興事業団への交付金が組まれておりますが、この点について二、三お尋ねをしたいと思います。  四十四年度当初予算において交付金百五十億円を組んでおりますが、その中で加工原料乳の不足払い金は幾らであったか、この点をお聞きしたいと思います。

倉石忠雄自由民主党農林大臣

○倉石国務大臣 御承知のように、不足払い制度では加工原料乳に対する不足払いの財源を一般会計から繰り入れておるわけでありますが、需給の不均衡のときに生ずる輸入乳製品の売買差益をも財源に充当することも許されておるわけでございます。  そこで、いまお話しの昭和四十三年度予算の編成準備をいたしました四十二年度の当時に、需給は、生産に対しまして需要が非常に大きくて超過する状態にありましたために、前期の輸入差益を見込んで一般会計からの交付金を計上いたしたわけであります。ところが、その後の事態の推移は、予想に反しまして生産の著しい増大がありました反面、需要が予期に反して伸びませんでしたために、バター、脱脂粉乳等の輸入を行なわずに、したがって、輸入差益は発生いたさなかったわけであります。  当初輸入差益を見込みましたのは以上の事情によるものであります。予算編成時とその執行の段階において需給事情の変動を十分に予測できなかったということは、まことに遺憾であると思いますが、そこで明年度におきましては、需給は輸入の必要を認めない状況にありますので、一般会計のみによって財源の措置を講じておる次第であります。需給の関係がそういうふうな状態でありましたので、輸入差益を計上いたさなかった、こういうことであります。

近江巳記夫公明党

○近江委員 私は、加工原料乳の不足払い金は幾らであったか、これをお聞きしたわけでありますが、農林大臣は非常に先々のお答えになったわけでございます。  この差益金の問題でございますが、もうすでに、私もここにデータを持っておりますが、四十三年のときからほとんど輸入はストップしておるということになっておるわけです。そういたしますと、当然四十四年においても、これだけ国内生産がダブついておる、こうなってくれば輸入をしないということはわかっておるわけです。それを同じような組み方をしておるというところに、私は問題があるのではないかと思うのです。要するに四十三年以降の輸入はほとんどストップしておる、それを今回も同じようなことをしておる、この点についてどう思われますか。

倉石忠雄自由民主党農林大臣

○倉石国務大臣 御指摘の四十三年度予算の編成のときには、飼養頭数の伸びが停滞いたしておりました。そこで生乳の生産はきわめて低調でございました。すなわち、四十二年の対前年比は一〇四・六%でありますが、一方、牛乳、乳製品の需要は、引き続いて御承知のように堅調に推移してまいりましたために、たいへんな供給不足の状態にあったわけであります。そこで四十三年度においても、生乳換算で四十四万八千トンの乳製品の輸入が予測されました。このために四十三年度予算は、その乳製品の売買に伴う差益を予算に七十一億円を見込んで編成したわけであります。それはいまお話しのとおりであります。  しかし、その後多頭化の進展によりまして、飼養頭数も急激な上昇を見せてまいりましたと同時に、飼養技術の向上等も加わりまして、一頭当たり乳量も著しい上昇を見てまいりました。すなわち、生乳生産は急速な回復を見るに至ったわけであります。ところが他方、飲用の消費は、夏寒かった等の現象もありまして、その影響で伸び悩みを続けてまいったことは御承知のとおりであります。そこで四十三年度の牛乳、乳製品需給は、国内自給量のみで大体需給が均衡する事態にまで回復するに至りましたので、当初予算に予定いたしました輸入差益を生じなかったのでありますが、四十三年度における加工原料乳の発生量は百七万一千トンでございますので、六十四億の補給金の支払いが必要となったので、事業団におきましては、国の交付金の不足額のうち、前年度からの積み立て金の取りくずしによって、なお不足するものについて借り入れによって支払ってまいったのでありますが、これによる欠損額も確定いたしましたので、今回の補正予算におきまして、その欠損額に見合う額を交付する、こういうことにいたしたわけであります。

近江巳記夫公明党

○近江委員 要するに、四十三年度においてそうした生産の状況、輸入の状況を見たときに、この四十四年度の補正においてさらにこのように約二十億円を補正しなければならない、これは全く見通しの誤りだと思うのです。すなわち、総合予算主義と言いながら、そういうわかり切った状況のもとでこうした農林中金からの借金を肩がわりをしておる。非常に私は政府の方針と違うと思うのです。この点について総理にお聞きしたいと思います。

福田赳夫自由民主党大蔵大臣

○福田国務大臣 確かに御指摘のような点があろうかと思います。とにかく生乳の買い入れ量が増加する、また輸入が予定のようになかった、これは見込み違いでありますので、今後は見込み違いの起こらないように努力をいたしていきたいと存じます。

近江巳記夫公明党

○近江委員 それで、現在見てまいりますと、四十四年度実際に必要とする数量が、これは農林大臣が決定された数量と思いますが、百三十五万トン一これに要する金額が八十七億円と思いますが、そうすると、当初四十五億円組んでおられますので、その差額は大体四十二億不足するような勘定になるわけです。この四十五年度の当初予算を見ますと、四十四年度の不足額十二億円を組んでおられますが、あとの三十億円を今後どうなさるか。いま大蔵大臣は今後気をつけますとおっしゃったわけでございますが、この三十億円をまた今度補正をなさるのかどうかという問題なんです。総合予算主義は、いま大蔵大臣がおっしゃったけれども、それではうそじゃないかということなんです。この辺のところをもう一度お聞きしたいと思います。

鳩山威一郎大蔵省主計局長

○鳩山政府委員 本年度につきましても、ただいまお述べになりましたような不足を生ずるのではあるまいかという推算はいたしております。これらにつきましては、来年予備費を充当するとか、あるいはこれは決算を確定しないとわかりませんので、ただいま来年度予算に計上いたしましたのは、第三・四半期末までに確定した分を計上いたしまして、まだわからない分はその後の処理にゆだねる、これも予備費でまかなわれればまかないたい、こう考えております。

近江巳記夫公明党

○近江委員 予備費からまかなうということについては、これはもう前から議論のあることでございますし、いままでの実績はそういうように予備費からまかないます。ところが毎年のこれに組んでくる。いままでは差益金で埋め合わせしておったわけです。四十五年度も非常にその点を私たちは——総合予算主義ということをいつも政府がおっしゃっております。その辺のところがどうもあいまいなんです。ですから、必ず総合予算主義のそれを貫き、今後は補正を組まないか、その辺のところを——それはやむを得ない場合も、いろいろな財政の運用の考えなければならない問題も出てくるかと思いますが、その辺の総合予算主義という点から、もう一度大蔵大臣に念を押しておきたいと思うのです。

福田赳夫自由民主党大蔵大臣

○福田国務大臣 予備費を四十五年度は多額に組んでおりますので、そういう義務的な費用の不足に備えるという意味も込めておるのです。総合予算主義というものはいい主義でありますので、これはどこまでも堅持してまいる。つまり、異常なまたは非常なことがなければ何とか追加補正なしにやっていきたい、今後ともそう考えております。

近江巳記夫公明党

○近江委員 当然三十億くらいがまた足らなくなるだろうと関係者が言っておるわけですが、それを、やはり予算を少なく組むというのは、結局、生産がいまだぶつきつつある、それを抑制しようとする、ひがんでとればそういうような考えが政・府にあるのではないか、このように非常に心配をしておるわけです。その辺についてはどうでございますか。

福田赳夫自由民主党大蔵大臣

○福田国務大臣 その種の費用は、これは義務費でありますから、支払わないわけにはいかないのです。数字さえ固まりますればこれは支払う。予算が足らなければ、これは一予備費から支出をする。これを支出を回避するというような考えは持っておりませんです。

近江巳記夫公明党

○近江委員 それからもう一点お聞きしておきたいのですが、四十三年度は大臣の決定数量から結局八万トンオーバーしたわけです。その間の事情については御承知のとおりですが、非常にもめた末、これを生産者と指定生産者団体へ交付したわけでありますが、そのときに、これは非常に異例のことである、このようにおっしゃったと思うのです。ここで四十四年の大臣が決定された百三十五万トンと本年の生産見通しを見てまいりますと、約四、五万トンはオーバーするのは避けられないだろう、このように見られておるわけでありますが、そうすると、四十三年度限りと政府はおっしゃったわけでございますが、もしもオーバーした場合に、この処置をどうされるかということなんです。どうお考えになっていますか、農林大臣。

太田康二農林省畜産局長

○太田政府委員 御承知のとおり、加工原料乳の不足払い制度には限度数量というものを設けておりまして、限度数量をオーバーしたものはいわゆる不足払いの対象にしないという制度になっておったのでございますが、昭和四十三年度におきましては、たまたまこの趣旨が、まだ実は末端の農家にまで十分徹底していないというようなこともございますし、米作から酪農への転換というようなこともございまして、ただいま先生のおっしゃったような措置を講じたことは事実でございます。四十四年度は、そういうこともございまして、不足払いの対象になる限度数量も百三十五万トンということで、相当大幅にふやしたのでございます。その後、生産も順調に続いておりましたが、十一月、十二月、一月とやや生産が落ちていることは、御承知のとおりでございます。そこで本年度末、三月末にどのくらいこえるかという問題、あるいは中に入るのかという問題、現在せっかく検討中でございます。一説には、五万トン以内でおさまるであろう、あるいは二万トンくらいにとどまるであろうというような意見もあるわけでございまして、これらは前年度の経緯もあるわけでございますが、制度のたてまえからはめんどうを見るわけにはまいらぬ。しかし、なお問題が問題でございますので、今後十分財政当局とも相談申し上げて、処置いたしたいというふうに考えております。

近江巳記夫公明党

○近江委員 残ったらそのめんどうを見ないといま言われたわけですが、これは非常にけしからぬと私は思うのです。酪農近代化基本方針に基づいて、農民は一生懸命生産に励んできたわけです。むしろ生産をある程度——そんなにきっちり絵にかいたような状態に現実はいくものではないわけですよ。それをわずか四、五万トンオーバーしたからということで、四十三年度にはそういうように交付しておきながら、ちょっと余ったからそれにはもう交付できない。政府はその生産を奨励しておきながら、わずかそのくらいのオーバーしたことについてはめんどうを見れないという。もう一度この点のところを農林大臣にお聞きしたいと思うのです。これはどうなさるのですか。

太田康二農林省畜産局長

○太田政府委員 先ほども御説明申し上げましたとおり、限度数量制度というのが加工原料乳不足払いの一つの骨子になっておるのでございまして、財政の補給をいたしておるわけでございますから、非効率的な生産を助長するわけでない、これが限度数量を設けられたゆえんであろうと考えるのでございます。そこで、昨年はああいった経緯がございましたが、本年度は年度当初から、限度数量をこえたものはなかなか対象にするわけにまいらぬよというような指導も、私のほうは十分いたしておったのでございます。生産か最近落ちてまいりましたので、限度数量をどのくらいこえるかということは、なお四月になってみないとわからぬわけでございますが、その段階におきましてなお十分検討の上、どういたしますかということはその段階で決定いたしたい、かように考えております。

近江巳記夫公明党

○近江委員 私はこまかいことは言いたくありませんけれども、私がこういうことを言うと、あと残るかどうかわからないと、またそういうぐあいに逃げられる。残るか残らないかは、あと一つしか残っていないわけですよ。残ることは目に見えているわけです。非常にそういう無責任な答弁はよくないと思うのです。この点、もしも残った場合、農林大臣はどうされますか。これは農林大臣答えてください。

倉石忠雄自由民主党農林大臣

○倉石国務大臣 ことしは多分畜産振興事業団は買い入れをふやさなければならないような状態になるのではないかといわれておるのが大体常識でありますが、いま畜産局長もお答え申し上げましたように、限度数量、これは審議会にはかりまして、大体そういう限度をきめておるわけでありますが、なるべくそれはあまりオーバーしないようにという指導はいたしておるわけでありますけれども、ことしの状況を見まして、そのときにさらに審議会にもはかりまして相談をいたしてきめてまいりたい、こう思っております。

近江巳記夫公明党

○近江委員 非常に態度があいまいだと思います。酪農農家は、四十年作成されたこの酪農近代化基本方針に基づいて、一生懸命今日まで生産に励んできたわけです。そうしますと、この方針によりますと、四十六年の需要見通し目標として加工原料乳百九十四万六千トン、この方針から大体線を引いてみますと、四十四年に百四十万トンは妥当なそういう生産である、われわれはこのように判断するわけです。この点、確かに大臣は百三十五万トンということをおっしゃったわけですが、当然最初からこの近代化基本方針に乗って生産をしていけば、ある程度そのくらいのオーバーをすることは、目に見えているわけですよ。これだけ米がだめになってきておる。農民はそれじゃ今後どうしていけばいいか。いま生産調整は迫られている。酪農、果樹あるいはそうした近代化、いろいろな課題があるわけですが、第二の食管といわれているこういう酪農の問題について、政府のそういう基本的な態度というものは非常にあいまいだと思います。  ここでもう一点続いて聞いておきたいのですが、計画の変更が非常に目立つわけです。この酪農近代化基本方針と四十三年度末に作成した農産物の長期需要見通しによりますと、五十二年において八百四十四万トンから九百二十八万トン。この酪農近代化基本方針によりますと、四十六年で七百八万四千トン、私もこれをグラフで線を引いてみましたが、非常に傾斜しておるわけです。低い線になってきておるわけです。もう農林大臣は御承知だと思いますが、こういうような基本計画自体が変更されてくるというようなこと、あるいはまた現実の問題でちょっと目標をオーバーしたからといって、それはめんどうを見ないというような発言、非常に農家を見捨てていくような感じがするわけです。  そこで、基本計画のここのところの食い違いをお聞きしたいと思うのです。

倉石忠雄自由民主党農林大臣

○倉石国務大臣 事務当局から御報告いたさせます。

太田康二農林省畜産局長

○太田政府委員 昭和四十年度に酪農振興法を改正いたしまして、酪農近代化計画というものを立てることにいたしまして、四十一年度を初年度として四十六年度、向こう五カ年間の見通しを立てたのを先生はおっしゃっておるんだろうと思いますが、その後、御承知のとおり、昭和四十三年の十一月に「農産物の需要と生産の長期見通し」を出しまして、四十一年度を基準として五十二年の見通しを立てたのでございます。  そこで、その際われわれは、四十六年度の現在の近代化基本方針の目標等を当然改定すべきであったのでございますが、実は事務的に今日までおくれておるのでございまして、四十五年度にはこれを改定いたしまして、向こう五カ年間の新しい基本計画を立てるということで準備を進めておるのでございます。

近江巳記夫公明党

○近江委員 そうすると、基本方針というものは変更なさらないということですね。もう一度……。

太田康二農林省畜産局長

○太田政府委員 一応四十一年度に立てたものが、先ほど申し上げたように、四十六年度を目標年度として立てたものがあるわけでございますが、これを改めまして、四十五年度を初年度といたしまして、向こう五年間の新しい近代化の基本計画を立てるということで、四十五年度にそれをやってまいりたい、こういうことでございます。

近江巳記夫公明党

○近江委員 そうすると、それは中途変更になるのと違いますか。それはどうですか。

太田康二農林省畜産局長

○太田政府委員 酪農近代化計画というのは、向こう五カ年間の計画を立てることになっておるのでございまして、一応四十六年度のものがあったわけでございますが、これは四十五年度を初年度として五十年を目標年度といたしました計画に当然改められるというふうに、われわれは理解をいたしておるのでございます。

近江巳記夫公明党

○近江委員 要するに、こういう中間からいつもそういう計画を変えるようなあいまいな点があるわけですよ。ですから、こういうことを繰り返していきますと、少なくともその政府が出された基本方針に乗って各都道府県でもいろいろな方針が出るわけですから、農家はそれに乗ってやはり生産を進めておるわけです。それが、途中からのそういうあいまいな、言うなら変更にひとしいような計画を出されますと、非常にまごつくわけです。ですから、この辺の食い違いについての問題、そういうようなことからも、政府の方針ですらやはりこういうようなことになってくるわけです。ですから、先ほどの四、五万トン余るじゃないかというような問題などは、そんな手品のように、政府がぴちっと百三十五万トンとおっしゃっても、そういうことでおさまるわけがない。ですから、その辺の幅は、政府が四十三年においてもこのようになさっておるわけですから、当然今回も、やはり前向きに検討なさる必要があるんじゃないかと私は思うのです。  この点、私は総理にお聞きしたいと思います。  農民をほんとうに守られるお気持ちがあるかどうか、この辺のところを考慮されるかどうか、お聞きしたいと思います。

佐藤一郎自由民主党経済企画庁長官

○佐藤内閣総理大臣 先ほど来農林当局からの話を聞いていながら、私も、とにかく国民としては政府の命じたことについて十分信頼を持つ、そのことが大事だろうと思います。ひとり畜産ばかりではございません。その他一般の問題についても同様であります。私は、ことに農政の改革、改善をはかろうという今日、ただいまのような点が一番大事なことだと、御指摘になったことをとくと注意いたしまして、そうして国民から信頼を失う、信を失うというようなことがないように、一そう気をつけてまいるつもりでございます。  お答えいたします。

近江巳記夫公明党

○近江委員 非常に含みのある御答弁だったと思いますが、そういう現実の問題が出てきているわけです。この点をひとつ十分に配慮願いたいと思うのです。やはりさいふを握っておられるのは大蔵大臣ですから、総理がいまああいう非常に含みのある答弁をなさったわけですが、その点大蔵大臣として、総理の先ほどの御答弁に対して今後どうされるか、その辺のところをお聞きしたいと思います。

福田赳夫自由民主党大蔵大臣

○福田国務大臣 先ほど近江さんから、第二食管というようなお話もありましたが、この問題もそういうことになっちゃ困る、そういうことから農林当局がいろいろ配意をしておるということかと思いますが、農民が非常に見通しが困難だというようなことで困っても困る。  そこで、そういうようなことを総合的に検討して、結論が出ますれば、大蔵省としても善処すべきものである、かように考えます。

近江巳記夫公明党

○近江委員 だれよりもだれよりも農民を愛すとおっしゃったこともあるわけですし、だれかが英語のアイスだと言っておりましたが、日本語の愛すということでひとつ……。  それから、もう一点お聞きしておきたいと思いますが、豚肉ですけれども、やはりこの畜産振興事業団が相当な赤字を出しておる。膨大な金を今回もまた補正なさるわけでございますが、こうした肉対策ですね、特に豚です。非常に豚の生産というものは波があるわけです。三年周期といわれておりますが、この間も私ある農家の人といろいろ話しておったのですが、いま非常に豚が高い、ところが、私は前に飼っておったけれども、高低が激しい、こういうことで、結局ならしてみれば残るのは豚小屋と借金しか残らない。畜産振興事業団というのはそういう安定をするためにありながら、それだけのまた補正を毎年、毎年しなければいけない。  そこで、実際に抜本的な対策としての役目を果たしておるのかどうか、こういうことなんです。この辺のところを、農林大臣としてはどうお考えになっていらっしゃいますか。

倉石忠雄自由民主党農林大臣

○倉石国務大臣 御承知のように、畜産振興事業団というのは、私はいま御指摘の豚などにつきましては、最も安定させるために効果を発揮していると思うのであります。いま御指摘のような赤字のことですが、豚肉の売買の赤字は、御承知のように約四十八億ございますが、出資金の運用益、乳製品の売買利益などを差し引きますと、事業団の一般勘定としては、いま四十億円弱の赤字となっております。この四十八億の内訳は、金利、倉敷、その他解体処理費、手数料等でございますけれども、買い入れ代金と売り渡し収入とは、ほぼ見合いになっておるわけでございます。  私どもは、先ほどから御指摘のありましたように、輸入差益を計上いたしたりなどというふうなことは、これは見込み違いでございましたけれども、ことしの状態などは、御存じのように、大体衆目の一致するところ、若干買い上げ幅を大きくしなければならぬだろうと思われておりますが、畜産振興事業団それ自体の過去の実績を見ますと、やはり豚肉安定のために、また生産者及び消費者の生産及び消費の安定のためにはかなりの実績をあげているものではないか、こう思っておりますが、なるべくその経営を合理化させるようにいたしまして、さらにこういう機関の効果を発揮できるように指導いたしたいと思っております。

近江巳記夫公明党

○近江委員 それじゃ、次の問題に入りたいと思います。  私は、最近問題になっておりますイペリットの毒ガス弾の問題について、きょうは質問したいと思うのです。これは、戦後の処理の一つとして残された大きな問題じゃないかと私は思うのです。特に本日は、銚子沖合いにおけるイペリット毒ガスかんによる底びき漁船の被害、あるいはまたそれに対する補償、あるいはその他それに関する事故について質問をしたいと思っております。  まず第一点は、昭和四十五年の一月十七日、千葉県銚子沖合いにおいて底びき網の漁船がイペリット毒ガスかんに触れ、漁船員五名が重軽傷を受けたわけですが、引き続き同様な被害が相次いで発生しておるわけでございます。その経緯について説明願いたいと思います。

山中貞則自由民主党総理府総務長官

○山中国務大臣 ただいま御指摘の銚子沖イペリットの漁民に与えました損害につきましては、関係する各省庁が非常に多うございますので、私のほうで一応所管をいたしまして、各省庁からお集まり願いまして、今日まで数回の協議をしていただきました。この問題については、局地的ではございますが、関係漁民や県その他の方々がたいへん御心配になっておることでありますから、念のためにメモで順を追って御説明申し上げます。  まず、経過を申し上げますと、直ちに海上保安庁は、当分の間現場海域に巡視船を派遣する。これは実施いたしました。  次に、防衛庁においてはイペリットに関する講習を現地で行なう。これは二月七日に行ないました。  次は、水産庁より千葉、茨城、福島各県知事あて通達を出し、イペリット引き揚げの際の医学的取り扱いに対する注意事項について関係者に周知徹底させる。これも実施いたしました。  次に、緊急措置として関係各省庁、防衛庁、厚生省、水産庁、海上保安庁が共同して掃海を実施する。  以上の点を直ちに手配をいたしたわけでございますが、問題の掃海につきまして、次のような点をさらに具体的に明らかにしておきたいと思います。  掃海の方法といたしましては、漁船をチャーターいたしまして、底びき網により掃海を実施いたします。上がりましたかんにつきましては、指定海域に投棄をいたします。この掃海方法は、漁船三十二隻をもちまして延べ四百五十回、一回二時間。掃海の海域は、銚子沖の漁業協同組合の意見を聞いてきめますが、延べ掃海面積は約四十五平方キロメートルということでございまして、本日、三月二日より三日間ということで、すでに掃海に当たっておるわけでございます。  指定の投棄海域につきましては、そのまま陸上まで運んできて、中和させるか埋没するか等のいろいろの議論もありましたが、外国の核燃料廃棄物質等の投棄水深というものが一応あるそうでございまして、今後ガス漏れ等が海中であっても危険はないという深度等を勘案をいたしまして、約二千百メートルの深度でございますが、この海域といたしましては、銚子一ノ島灯台の方位七十度、三十二海里の地点に投棄するということでございます。  とれらの業務の分担につきましては、防衛庁におきましては、イペリットかん等の引き揚げ、懸垂作業の指導及び被覆防止と消毒の指導、並びに被毒用防止服等の用意を行なう。海上保安庁におきましては、引き揚げられ、懸垂されたイペリットかん等の指定投棄地点への投棄、及び掃海実施海域付近の警戒を行なう。厚生省ば、掃海等実施期間中における障害の排除、医療救護等に当たる。水産庁は、漁船を用船し、かつ燃油、漁油、漁網等の所要経費を支出し、千葉県に掃海事業を委託する。  これの財源といたしましては、年度末でございましたけれども、水産庁のほうで約五百万円流用をいたしまして、千葉県にこれを委託費として支出いたしました。千葉県は、これは正確にわかっておりませんが、約三百万円をさらに支出し、銚子市におきましてはさらに四十八万円追加いたしまして、約九百万円をもってこの実施に当たるようでございます。  したがって、この掃海を実施して、かかったものにつきましては、二千百メートルの沖合いに投棄すると同時に、操業中にこれらの漁船の方々が漁獲物がありました場合には、当然この漁獲物はそれぞれの漁船の収入とみなしてよろしい、けっこうであるということでございます。  なお今日まで、きょうからというのではおそいではないかというお話もあるいはあるかもしれませんが、実は掃海を実施してもらうには国の船ではできませんので、底びき網を持っておりませんから、したがって、どうしても千葉県の漁業協同組合を中心とする底びきの方々の用船に協力してもらわなければなりません。その点で操業が一区切り、いわゆる漁獲時期が一区切り済むまでは、当然用船に応じてくださる方々の漁業者の要請に応じなければならないという点で、少し遅延をいたしまして今日に至りました。  さらに、イペリットかんを引き揚げたことによる被害等が数名あったのでありますが、これらの地域に対して魚群が遊よくいたしておりました時期がだんだん変わってまいりまして、イペリットかん、毒ガスかん等の心配のない海域に魚が遊よくし始めましたので、漁業者の方々は、その心配が永続することは別にいたしまして、操業には当分その海域は関係ないということもありまして、遅延をいたしましても、おくれましてもかまわないという現実の漁業の実態を踏まえて、三月二日、本日より掃海を実施する、こういうことにいたしたわけでございます。  あと、こまかな掃海の方法なり、あるいは引き揚げたときの注意なり、それらの問題等に関しましては、各行政主官庁において御説明を願うことにいたしたいと存じます。  総括所管庁として説明をいたします。

近江巳記夫公明党

○近江委員 私は、要するにこの事故の被害、これの発生したいままでどういうことがあったかということを聞いたのですが、対策とか相当ずっとおっしゃったわけであります。この被害者ですが、あなたのほうではすでにいままでつかんでおられますね。官庁はどこですか。答弁はできるだけ簡潔にしてください。

大和田啓気水産庁長官

○大和田政府委員 底びき網の漁船がイペリットのかんを引き揚げましたことは、一月を中心にして約十一件ございますけれども、その中で事故が現実にございましたのは、一月十七日の分でございます。これは五名、そのうちのけがと申しますか、事故といたしましては、手あるいは顔、のど等でございまして、四日ないし十数日の休業を要する状態でございます。それ以降もイペリットの引き揚げがございましたけれども、あとは目が痛くなったという程度で、それほど大きなけがはございません。

近江巳記夫公明党

○近江委員 私もここに資料を持っておりますが、四十五年の一月十七日、一月十九日、一月二十五日、ずっと出ております。その前にもずっと出ておりまして、直接被害者も約三十名、正確には二十九名と私、聞いておりますが、そういう事故者が出ております。私は非常に大きな問題じゃないかと思うんです。  そこで、次にお聞きしたいのですが、米占領軍による旧日本軍保有の爆弾、砲弾あるいは毒ガス弾の投棄海域、投棄数量及び種類、投棄期間、投棄の方法、あるいはまた特にイペリットの毒性について、人体にどういう影響があるか、簡潔にひとつお聞きしたいと思います。

中曽根康弘自由民主党防衛庁長官

○中曽根国務大臣 いままで防衛庁で掃海をいたしましたのが約三万二千平方キロメートルぐらいです。大体九二%ぐらいのところが終了いたしました。あと八%ぐらいが残っております。  それから、イペリットの性能等でございますが、イペリットは常温で暗褐色ないし淡褐色の液体をなしておる。それでカラシ、ニンニクないしタマネギ様の刺激を有する。常温でわずかに揮発性を示す。常温で効力の持久性は二日ないし七日間である。最初くしゃみを生じ、目に刺激の痛みを持つ。被爆後四ないし十六時間以内で目、鼻、咽喉各部に症状を発生する。まずかゆみを生じ、次いで水泡となる。そして発泡は二、三週間で治癒し、六ないし八週間後にかいようとなる。重症呼吸器障害の場合には、肺水腫の原因となることがある。治療の場合は、大体火傷の場合と同じようにやる。除毒はさらし粉を用いる。通常水または土砂と混和した状態でこれを使用する。  それから、いかにこれを処分したらいいかという問題でありますが、結論は、深海に投棄するということが一番安全である。と申しますのは、処理が簡単であるということと、それから、銚子の場合には水深が二千百メートル以上あるものですから、これを投棄した場合に、かりに出てきても、比重の重いイペリット液が海面に浮き上がることはない。百八十五時間で分解して海水に吸収され無毒となる。これを地中とかあるいは除毒処理をするという場合には、非常に作業が困難で、作業する地点自体について問題がある。特に地中埋没のような場合には、埋没させる場所であるとか、埋没した場合に地下水に汚染の危険が出てくる。そういう意味において海中投棄が一番適当である。今回も、引き揚げられたものは船上に上げないで、そのままつるして海の中を牽引しながら投下地点に持っていく、そういう計画のようであります。

近江巳記夫公明党

○近江委員 私が聞いた点について、これから各関係の方は簡潔にお答え願いたいと思います。  私は、要するに米占領軍が旧日本軍のそういう保有の爆弾とか毒ガスかんを、大体どのぐらいほうったかということを聞いているわけですよ。そのときの状況、これは引き継いだ書類はないんですか、どうですか。

中曽根康弘自由民主党防衛庁長官

○中曽根国務大臣 米軍による投棄等の問題については、現地占領軍が爆破、埋没、海中投棄等によって処置したもののようでありまして、その実態は明らかではありません。  いまの銚子の場合を調べてみますと、現地の地元の住民たちの報告聴取等によりますと、昭和二十年十月から二十一年二月まで投棄した模様です。投棄した漁船等の隻数は約六百隻、投棄出航回数は二千五百回、投棄砲爆弾、毒ガス弾等の投棄数量は約七万トン、投棄海域は利根川の河口から北東約三十キロの海域で、水深約四百五十メートルぐらいあったといわれております。  それ以外の問題については、いまのところまだよくわかっておりません。

近江巳記夫公明党

○近江委員 非常に膨大な量が投棄されたわけでございます。その中には、イペリットというような非常に毒性の強いものも含まれておる。現実に、このように非常に被害者が続出をしておるわけであります。  そこで、先ほど山中長官からも緊急掃海のそういうお話があったわけでございますが、過去に、農林省、水産庁において三十二年の九月の十三日、イペリットによる人身事故があって掃海をされたと聞いておりますが、そのときの海域、規模あるいは費用、期間、実績等について簡潔にお聞きしたいと思うのです。

大和田啓気水産庁長官

○大和田政府委員 お答えいたします。  三十二年の被害にかんがみまして、三十四年に水産庁で底びき網の漁船一隻を用船いたしまして、被害海域の掃海を一週間ほどいたしたわけでございますけれども、そのときは、イペリットのかんは、かからなかったという経過がございます。

近江巳記夫公明党

○近江委員 かからなかったので、その後どうしたのですか。九月以降どうなさったのですか。

大和田啓気水産庁長官

○大和田政府委員 試験掃海をやりました結果、イペリットかんがかからなかったわけでございますが、水産庁といたしましては、知事等に通達をいたしまして、当該地域におけるイペリットのかんが上がった場合の注意等を、よく伝達をいたしておるわけでございます。

近江巳記夫公明党

○近江委員 かからなかったからあと掃海しない、そういう無責任なことだから、今回のこういうような事件が続出してきておると私は思うのです。この地域は底びき漁業が最近まで行なわれておったのですか、どうですか。

大和田啓気水産庁長官

○大和田政府委員 漁場は相当動くわけでございますから、この地域だけということではございませんけれども、この地域にかけて底びきの漁業はよく行なわれておるわけでございます。

近江巳記夫公明党

○近江委員 そういう危険な海域について、いままでどういう対策をとってきたかということですが、非常にその辺があいまいじゃないかと思うのです。そういう点でこうした事故が起きてきておる。  そこで、先ほど山中長官からずっとお話があったのですが、掃海に対する責任官庁、それから掃海の海域、規模、私もこの資料をもらっておりますけれども、少なくとも防衛庁長官がおっしゃった七万数千トン、それだけの弾薬あるいはガスかん、少なくとも四百五十メートル沈むまでにも相当は移動するし、あるいは海流によって相当広範囲にも広がっておることが考えられる。そういう点において、今回の掃海の規模、あるいはまた掃海の海域、あるいは期間等について、これは適当であると判断されていらっしゃるわけですか。

山中貞則自由民主党総理府総務長官

○山中国務大臣 適当であるかどうか一応やってみたいと思いますし、適当でない、もっとやるべきだという結果が出たら、予算その他の関係がありましても、これは事、間違えば生命に関する問題であり、漁業者にとっては漁場は死活の場でありますから、したがって、それを守るために、国は義務を積極的に果たしていかなければならぬと思います。  なお、責任官庁はどこかという話でありますが、それが実施や相談をする場合に各省庁ばらばらでありますので、私のほうが総括的にあずかって相談を進めていったということでございまして、旧軍の関係のものの総括的な責任は防衛庁でありましょうし、漁業者がそれに関係が出てまいりまする漁場については水産庁でありましょうし、常時海上等については海上保安庁であろう。また事故が起こってけが人等が出れば厚生省であろう、こう思うわけであります。

近江巳記夫公明党

○近江委員 とにかくそういう責任が、各官庁のセクトといいますか、できるだけこういうことについてはかかわりたくないというようなことが、先ほどの長官の発言でもにじみ出ているように思うのです。やはり少なくともこれだけ漁船においてもあるいはまた船員においても事故が出ておるわけです、被害が。それについて政府が、ここが防衛庁、ここが水産庁、そういうような無責任なことであっては、私はもう話にならぬと思うのです。その問題はあとでまた煮詰めていきたいと思いますが、どうですか、長官。

山中貞則自由民主党総理府総務長官

○山中国務大臣 誤解をされるといけませんので……。私のほうがそういうものを逃げ回っているのではなくて、はっきり申し上げて、あなたの党の山田太郎君外一名が申し入れに来られて、私は即刻電話を取り上げて、私の判断によりそれぞれの所管庁の責任者に電話をいたしまして、直ちにこのようなことを始めるからその準備をしろということで、私が緊急招集をかけたわけでありまして、私はむしろ、陳情を聞いて、わかりました、あとで何とかやっておきましょうという性格の大臣ではございませんので、直ちに実行に移しました結果、各省庁がばらばらで、それはこちら、それはこっちということをまとめて私がやったということでありますから、そのあとの行為については、それぞれ責任をもって実施するように、なお監督指導いたしてまいります。

近江巳記夫公明党

○近江委員 確かに今回の長官のとられた措置は、いままでの例から比べますと非常に早かった。その点は私もわかっております。だけれども、これからまた補償の問題とか本格的な掃海とかいろいろな問題になってきたときに、山中さんが、私が命じてやります、非常に心強い発言でございますけれども、あと各省にもう少しそうした点でまたお聞きしたいと思います。  それで、今回こういう規模で掃海を本日から始められるわけでありますが、いわゆる緊急に掃海をして発見できなかった場合は、一つは、そのままに放置しておくかという問題です。それからもう一点は、緊急掃海をしてガスかんが見つかった場合、これを水産庁、海上保安庁、防衛庁のいずれが本格掃海をするのか、また、その経費負担はどうなっておるか、この点について明確にひとつお答え願いたいと思うのです。

山中貞則自由民主党総理府総務長官

○山中国務大臣 私の乏しい知識でありますが、それらの掃海等をやってみて、漁業者の底びきにはかかったけれども、いま申しました三日間の、相当広い範囲の、相当な回数の底びきをやってみてなおかからないという場合において、政府が建造いたして持っておりまする潜水調査船「しんかい号」、これを使って、海中の実際の沈んでおる状態はどうなのか、流砂に埋もってどうなっておるのか、あるいはなぜ漁業者の底びき網にはそれがかかった原因となっている状態にあるのか等を直ちにやらせようと実は思っておったのですが、ちょうどタイミング悪く、潜水調査船のほうがオーバーホールをいまやっておりまして、すぐに動けないものですから、直ちに漁船をお願いして、まず引っぱってみろ、こういうことから始めておるわけでございます。

近江巳記夫公明党

○近江委員 山中長官の非常に前向きな、それはよくわかります。私も海洋開発については非常に興味を持っておりまして、いろいろ勉強もしておりますが、海に入れば非常に見えなくなるのです。深く入れば入るほどですね。そういう点で、「しんかい」一隻くらいでは、大きな期待はできないと思います。そこで、いま私がお聞きしました、緊急に掃海して発見できなかった場合は、そのままにしておくかという問題です。これはかつての三十二年の事故のときも、やったけれども上がらなかった。だからだいじょうぶだろう。ほうっておいたがゆえに、今回の事故が起きている。だから、今回も掃海をして上がらなかったら、それじゃそれでほうっておくかという問題です。私はもう一回繰り返しておるわけです。見つかった場合は本格的な掃海を一体どこがやるかということです。順番に聞いていきたいと思います。水産庁、海上保安庁、防衛庁、いずれが本格掃海をするか、順番に答えてください。

大和田啓気水産庁長官

○大和田政府委員 今回の緊急掃海の結果でございますけれども、総理府を中心にして、関係各省連絡をして措置をいたしたいと思います。

河毛一郎海上保安庁長官

○河毛政府委員 お答え申し上げます。  ただいまいろいろ御説明がございましたように、海上保安庁といたしましては、引き揚げられましたイペリットかん等を指定投棄場所に投棄すること、及び掃海海面の巡視警戒ということが分担となっておりますが、海上保安庁の任務からいたしまして、今後もそのような範囲のものが任務であろう、このように考えております。

宍戸基男防衛庁防衛局長

○宍戸(基)政府委員 防衛庁といたしましては、引き揚げ作業中あるいは懸吊作業中の被毒の防止指導、このために今回も陸上自衛官十四名を派遣いたしております。それから引き揚げましたイペリットかん等の指定投棄地点への投棄、このためには掃海艇を派遣いたします。そういうことを今度分担いたしております。要するに技術的な指導をいたしたい、助言もいたしたい、そういうことでございます。

近江巳記夫公明党

○近江委員 要するに、あなた方の一分担、一分担のことでは、ぼくは解決しないと思うのですよ。これはどこが責任を——やはりどんなものでも、しんがなかったらだめですよ。これは枝ばかりじゃないですか。そんなことで、ただ国民がみな心配しておるから、それじゃそれをやればいいわ、そういうことじゃ困ると思うのです。ですから、この点防衛庁長官にやはり私一番責任があるような官庁のように思いますので、これはどう答えられるか知りませんが、この辺のところを、いま申し上げた点について、二点についてお聞きしたいと思います。

中曽根康弘自由民主党防衛庁長官

○中曽根国務大臣 しんは総理府総務長官の山中長官でございまして、強力なしんでございます。われわれは山中長官の指示によりまして、政府一体となって、分担、分担に応じてやっておるのです。政府が一体になってやっているということがしんでありまして、そこに強力な山中さんがいるから、われわれはその指示に従ってやればだいじょうぶだと思っています。

近江巳記夫公明党

○近江委員 それじゃ山中長官に、強力なしんであるそうでございますから、もう一ぺんお聞きしますが、発見できなかった場合はそのままに放置しておくかという問題が一点、それから緊急掃海をしてガスかん等が見つかった場合、さらに本格的な掃海をなさるかという点です。経費についても、ちゃんと長官が責任をもってそれだけのことは調達をするかということです。

山中貞則自由民主党総理府総務長官

○山中国務大臣 先ほども申しましたけれども、掃海の結果見つからなかった、あるいはわずか一個か二個しかかからなかったという場合に、防衛庁のほうでお話のありましたような相当数の数量が投棄されたことは事実でありますから、それを確認するための手段として、先ほどの潜水調査船等も、現場というものがどうなっておるかということを調べる必要があろうかと思います。さらに総合的にどうこれを運用していくか。役所というものは自分のなわ張りについてはたいへん忠実でありますか、一歩踏み越えると、たいへんこれは遠慮をいたします。いい表現で言っても遠慮をいたします。でありますから、私の一応の指示といたしましては、たとえば海上保安庁の船はかってに海上保安庁で行くのではなくて、その船の中にはちゃんと防衛庁の、たとえば瀬戸内海等の防毒処理に当たりました等の経験者がおりますから、それらの者を乗せまして、さらにけがをした人たちがもし出た場合においては処理できるような厚生省の人も一緒に乗り組ませまして、共同行動をとるということが、一番合理的な、あるいはまた有機的な方法であろうと考えて、そのような指示をいたしておるわけでありますが、経費等の問題につきましては、大蔵大臣は日本一の渋ちんであるとみずから認めておりますけれども、事、人命に関する問題について渋ちんぶりを発揮すると私は思っておりませんので、そのような費用がかかりました場合には、当然大蔵大臣のほうにツケを回すつもりでおります。

近江巳記夫公明党

○近江委員 ツケを回された大蔵大臣は、それをどうしますか。

福田赳夫自由民主党大蔵大臣

○福田国務大臣 これは各省にそれぞれ行動の費用もあることでありますから、それで極力やってまいります。しかし、万一それで足らぬということがありますれば、これは予備費等で処置をする、さようなことに相なろうかと思います。

近江巳記夫公明党

○近江委員 今後のそうした本格的な掃海ですね、これについて、山中長官からも非常に前向きの答弁があったわけです。大蔵大臣からも、そうした予算の点でもお話がございました。総理としても、この点はよく検討していただけますか。

佐藤一郎自由民主党経済企画庁長官

○佐藤内閣総理大臣 以上御説明したとおりでございます。

近江巳記夫公明党

○近江委員 それから、私たちは国民の立場として思うのは、やはりどうしても防衛庁という意識——やはりいざというときには防衛庁のそういうあれがやってくれる、そういう意識が強いんじゃないかと思うのです。そういうことで、今回の問題も、現地でも非常に大きなショックを受けておりますし、山中長官ともよく連携をとられるわけでありますが、やはり山中長官がしんになられて、その実質的な動きはやはり防衛庁長官になろうか、このように思うのです。防衛庁長官としては、山中長官とともにしんとなって今後の本格掃海をやられるかどうか、この点についてお聞きしたいと思います。

中曽根康弘自由民主党防衛庁長官

○中曽根国務大臣 山中長官の指示するところに従いまして、最大限の協力をいたしたいと思っております。

近江巳記夫公明党

○近江委員 それから、事務的な問題は別として、実際の問題は防衛庁がやるべきである。ところが、一部聞いたところによりますと、自衛隊法九十九条というものがある。ここにひっかかりがある。ですから、全面的に防衛庁がこれを責任を持ってやりていくということについては、ちょっと問題がある。こういうようなことがあったのですが、この点についての見解はどうですか。

中曽根康弘自由民主党防衛庁長官

○中曽根国務大臣 九十九条によりますと、「爆発性の危険物」ということでございまして、機雷でないとむずかしいのです。イペリットのように爆発性のないものについては、権限外になっております。しかし、政府は一体でありますから、命令があればいかなることでも最大限の努力をしたいと思っております。

近江巳記夫公明党

○近江委員 そこのところの解釈ですけれども、現実にこのガスで非常に多くの人が死んだりしておるわけですよ。それは長官も御承知のように、くず屋さんで親子三人が死亡したとかいうような事故、私も事故のそれは全部持っておりますが、そういう危険なものについてガスの場合は爆発物でないからどうもその点がというようなことは、少しおかしいのではないかと私は思うのです。これだけの猛毒なものなんです。その辺は見解はどうですか。

中曽根康弘自由民主党防衛庁長官

○中曽根国務大臣 現在の法律ではそういう権限になっておりますけれども、官庁間の協力ということがございまして、その主に当たる官庁からいろいろ要望があれば、そういう公益のために必要なことは、最大限の協力をするという精神でやっておるわけでありまして、今後もそのようにさせていただきたいと思っております。

近江巳記夫公明党

○近江委員 事故につきましては、この前にも伊豆七島の新島で、投棄した旧陸軍の砲弾が前浜に漂流して、たき火をしていた中学生が爆発によって一人死亡、一人重傷という悲惨な事故があったわけです。掃海をしたところが、六千発からの砲弾が出てきた。そのように、政府はいつも事故があってから、後手、後手とそういうような処置をなさっているように思うのです。あるいはまた話は別ですが、「かりふおるにあ丸」のああした沈没においても、いろいろなそういう問題、救難の問題等出てきておりますし、特に防衛庁の場合、九十九条のその辺のところがもう少し明確でないという点です。そういうことで、いまの関係各省の間の打ち合わせ、調整というものについて、まだ何か本格的な姿勢というものが感じられないわけです。防衛庁長官にお聞きしたいと思いますが、過去においてイペリット毒ガスについて掃海したことがないのですか。

中曽根康弘自由民主党防衛庁長官

○中曽根国務大臣 いままではないと聞いております。

近江巳記夫公明党

○近江委員 別府のほうでそういうことがあったのと違うのですか。

中曽根康弘自由民主党防衛庁長官

○中曽根国務大臣 防衛局長をして詳細に御答弁申し上げます。

宍戸基男防衛庁防衛局長

○宍戸(基)政府委員 三十年に別府沖でイペリット毒ガス弾の掃海を実施したことがございます。

近江巳記夫公明党

○近江委員 そうしますと、その規模ですね。あるいはそのときの、何千発中何発引き上げたかとか、その辺の記録をひとつここで報告してもらいたいと思います。

宍戸基男防衛庁防衛局長

○宍戸(基)政府委員 三十年の九月でございますが、別府湾で掃海をいたしました。掃海海域は四十五平方キロ、水深が約四十メートルのところでございました。そのときに、イペリット弾約百十五トン、そのほか砲弾類がございましたが、このときは防衛庁が主になりまして、海上保安庁、水産庁、警察庁その他の協力を得て行なっております。このときには、先ほど申し上げましたように、水深が四十メートルでございましたので、防衛庁が実施可能でございました。令回の銚子沖の水深は約二百メートルから三百メートル程度でございます。海上自衛隊の掃海能力は約数十メートルのところしかできません。といいますのは、もともと掃海部隊は、敵のといいますか、侵略者の機雷を掃海するための任務でございます。機雷は二百メートルとか三百メートルのところに置きません。機雷は船をねらいますので、浅いところに置きます。その浅い数十メートルのところにある機雷を掃海するのがそもそもの任務でございますので、海上自衛隊の掃海能力が数十メートルということになっております。  そこで、別府湾のときには、掃海を実施いたしましたが、今回の場合は残念ながら二百メートル、三百メートルの水深でございますので、掃海の力を持っていない、こういう実情でございます。

近江巳記夫公明党

○近江委員 これは非常に問題が出てきたわけです。技術上掃海ができない。この別府湾のときには費用は総額どのくらいかかったのですか。

宍戸基男防衛庁防衛局長

○宍戸(基)政府委員 約一億二千万円程度でございます。

近江巳記夫公明党

○近江委員 過去にこういうような事例があるわけです。私がなぜ過去にそういうことはなかったかとお聞きしたのは、要するに、九十九条の適用について、その辺がそのときの判断にまかされるというようなあいまいな点がある、その点が心配だったのです。だけれども、過去に自衛隊はすでにこのように一億二千万円もかけて、別府でこれだけの掃海をやっておられるわけです。したがって、今回の掃海の問題についても、技術的にはそれは無理が——いま掃海艇の話がありました。しかし、その辺のところは、愛される自衛隊として国民はみんな見ているわけですよ。これだけの心配ごとが起きたときに、あらゆる困難を通り越して自衛隊がそうした活動をする、ここに大きく国民の信頼を得られるところがあるんじゃないか、私はこのように思うわけです。過去にもこういうようにやっておられるわけです。ですから、この九十九条の運用についても、過去にもあるわけでありますから、今後の掃海についても、こうした事例と同じように全力をあげていただきたいと思うのです。  ただ、本格掃海を実際今後やるとした場合、具体的にどういうぐあいにやるわけですか。先ほど山中長官は本格掃海を今後やるとおっしゃったわけですが、どういうぐあいにされるのですか。いま自衛隊のほうではそれだけの能力はないということをはっきりおっしゃったわけです。どうしますか。国民は何とかしてもらわなければ困る。これはどうされますか。

山中貞則自由民主党総理府総務長官

○山中国務大臣 これは、いま能力ということばをお使いになりましたとおり、能力の問題だと思うのです。ですから、漁船の底びきというものが、非常に深いところをいま操業できる能力がありますから、水産庁のほうが、これは予算としては気の毒だったのですけれども、水産庁予算を流用してまでやるということをやっておりますわけで、防衛庁にはその能力がない、深いところをやる能力がないというふうに御理解を願えれば幸いだと思います。

近江巳記夫公明党

○近江委員 そうしますと、当然本格掃海をすれば、別府のような規模でも一億二千万要っているわけです。そうすると、水産庁は、今後少なくとも本格掃海をすれば五億、六億は最低要るであろう、このようにいわれているのですが、全額それじゃそういう底びきを雇ってなさるおつもりですね、水産庁長官。それをはっきりここで言っておかないと、長官はおっしゃっているわけですから……。

大和田啓気水産庁長官

○大和田政府委員 別府湾の掃海をいたしましたときも、防衛庁の船ばかりでなしに、実は漁船の用船をしてやっておるわけでございます。したがいまして、今後緊急掃海のあとで銚子沖をどういうふうにするかということは、これからの検討すべき問題でございますけれども、能力の問題によって水産庁がすぐこの予算を組むということでは必ずしもございませんで、どういう省がどういう責任でやるかということに従って予算は組まるべきものであるというふうに理解をいたしております。

近江巳記夫公明党

○近江委員 そうしますと、この辺のところの、いまも非常にそのそれぞれの役目がある、そのところで今後考える、こういうような点でございますが、大体私らもしろうとですから何億かかるかということはわかりませんか、いろんな話を総合すれば、いままでの過去の実績からして大体五億ないし六億ぐらいかかるであろう。そうしますと、今回のこの掃海によって出てこなくても本格掃海をやる、出てきたならばさらに海域を広げて本格掃海をする、これについてはもうなさるわけですね。そうして予算等の点についても努力なさるわけですね。この点もう一回確認しておきたいと思います。

山中貞則自由民主党総理府総務長官

○山中国務大臣 旧日本軍のそういう兵器、特殊兵器等に関しましては、防衛庁の施設庁というものが所管を一義的にはしておるものと思います。しかしながら、掃海をいたしまする目的は、その地域で操業をする漁業者の方々に不慮の災害なり不測の事態が起こらないようにということが前提でございますから、そういうことはなくなってもなおかつ投棄されたと思われる全部を回収するまでしなければならぬということにはならないかと思いますので、そこらはやはり関係者に危険のないような程度まで掃海が可能であった、あるいはそれが実現できたということをもって終わりにすべきじゃないかと思います。

近江巳記夫公明党

○近江委員 だから、その辺のところは、またあいまいになってくるのですよ。三十二年のときも、やってみて、引き揚げて、なかった。だからそれでやめた。ところが、また今回のこういう事故が次々起きてきているわけです。少なくとも海は動いているのですから、やはりその辺のところが出てきたり、出なかったり、そういうことをするわけです。現実に七万二千トンのそれだけのものはほうられているわけです。あるのは間違いないわけですよ。あるのは間違いないのです。ですから、その辺のところを本格掃海をするかしないかということについては、これは大問題だと思うのですよ。それは、そういう山中長官が今回とられた処置については非常に敏速であった。私が申し上げたとおりです。しかし、あと本格掃海をほんとに長官が責任をもってやっていくとおっしゃっていただかないと、やはりその辺のところは何だということになるのじゃないかと思うのです。その辺、山中長官が、私がそのしんになってやっていくとおっしゃっているわけですから、その辺のところをもう少し明確にはっきりひとつ言ってもらいたいと思うのです。

山中貞則自由民主党総理府総務長官

○山中国務大臣 本格掃海とは何ぞやという問題にもなると思うのです。東京湾の中には日本刀も数万本ほうり込まれているわけなのです。ですから、その地域で漁業をやってみてもだいじょぶであるという見通しがつくことが掃海であるということでありまして、投棄された数量のトン数全部のものが引き揚げられなかったら、それは本格掃海でないという結論にはならないのじゃないかと思います。

近江巳記夫公明党

○近江委員 そういう点は、それはことばのニュアンスであって、いま私が申し上げているのは、やはり今回の規模程度では掃海といえどもほんの序の口じゃないかと思うのです。ですから、私が申し上げているのは、それだけの危険が続発しておるわけですから、その辺のところをさらに今後力を入れてなさるかどうか、この点なんですよ。どうですか。

山中貞則自由民主党総理府総務長官

○山中国務大臣 もちろん、私は掃海を適当にしてお茶を濁そうと言っているのではなくて、そのような漁業者、関係海域に出漁する方々が御不安のないようにしてあげなければいけない、これが国の責任であるということを申し上げているわけです。

近江巳記夫公明党

○近江委員 それから次に、被害者に対する救済を政府がどのようにお考えになっているかということですが、一つは、占領軍による被害者に対する給付金によって対処なさるおつもりでございますか。ここのところをひとつお聞きしたいと思います。

中曽根康弘自由民主党防衛庁長官

○中曽根国務大臣 占領軍の投棄行為に過失があり、そのために生じた人身災害等については、連合国占領軍等の行為等による被害者等に対する給付金の支給に関する法律に基づきまして、遺族葬祭料あるいは療養給付金、休業給付金、障害給付金等を支給することになっております。もし過失がないという場合には、これはこの法律等によって支出する根拠がないのであります。そこで、見舞い金をやっているという例がいままでございます。

近江巳記夫公明党

○近江委員 そうすると、本件については、占領軍による過失があったかなかったかという判定はどのようになっているのですか。

中曽根康弘自由民主党防衛庁長官

○中曽根国務大臣 そういう深い海域に投下したのでございますから、過失はないと一応考えられます。

近江巳記夫公明党

○近江委員 過失がないとおっしゃるけれども、結果的に人身障害を起こしているわけですよ。そういう点から見て、過失がないということは私はおかしいと思うのですね、現実の問題として。大体四百五十ぐらいのところへほうったって、海流がやはり二百、百五十ぐらいのところを流れてくるわけですよ。そういうような点から考えていったときに、現実にいまこのように被害が出ておる。それでもまだ占領軍には過失がないと言われるのかどうか。たとえば外国の場合、西ドイツなんかの場合は、コンクリートの箱に詰めてああしたものは全部深海へ捨てているわけです、当時。日本の場合は、わずか二百メートル、四百メートルの海域に七万二千トンもの投棄をしておる。はたしてこの辺が、過失がないということが言えるかどうか。どうなんですか、この辺の判断は。

山中貞則自由民主党総理府総務長官

○山中国務大臣 中曽根長官の申されましたのは、占領軍の直接のわが国民に対する過失の有無の問題を言っておられるわけでありますから、そのことをいまから二十何年前にさかのぼって、占領軍に一体どれだけの過失として請求をするか、国が金を出すかという、占領軍過失の起因論の問題でありますから、直接被害という形ではありませんので、そこでやはり今後考えられるのは、不幸にしてそのような事態になった人々に対してどのようにするか、漁業共済あるいはまた船員保険、それらの問題を担当する役所が、万が一不幸な事態にあった人たちに対しては処理をすべきではなかろうかと私は判断をいたしておるところであります。

近江巳記夫公明党

○近江委員 そうすると、見舞い金とかそうした船員保険等で出すとおっしゃっておりますが、三十二年の九月の十三日に事故がありましたね。このときにはどこが幾らの見舞い金を出しているのですか、過去の事例としてお聞きしておきます。

大和田啓気水産庁長官

○大和田政府委員 三十二年の被災事件では、実はいろいろな事情がございまして、労災法の適用がございませんものでしたから、各官庁連絡の上、水産庁から、乗り組み員に対する休業の見舞い金と療養の見舞い金として百十九万円ほどの支出をいたしております。

近江巳記夫公明党

○近江委員 そのように過去にも見舞い金を出していらっしゃるわけです。ところが見舞い金の場合は、なかなかその基準というものもはっきりしないわけです。そういうようなことでなかなか満足のいくようなものができないというような点がありますし、そうした点、過去にもこうした事例があるわけですから、該当しない分については、そういう見舞い金を今後十分配慮していただきたい、これについてどうですか、長官。

大和田啓気水産庁長官

○大和田政府委員 三十二年の被災の例と今回と違いますのは、今回の乗り組み員はいずれも船員保険法の適用を受けておる人たちでございますから、休業手当的なものないし、療養費は、船員保険法によって当然支出されるものというふうに考えております。それ以外に、実は県のほうで調整をいたしまして、船主の休業補償をしてほしいということ等を含めて六十万円ほどの要求がまいっておりますけれども、関係各省相談をいたしておりますけれども、なかなかこれは困難な問題があるというふうに考えております。

近江巳記夫公明党

○近江委員 船員保険法では二十トン未満の船は適用を受けられないのと違いますか、これは。今度改正なさるのですか。

大和田啓気水産庁長官

○大和田政府委員 今回被災を受けました船には船員保険法の適用があるはずでございます。  なお、これは運輸省の所管でございますけれども、船員法の改正によりまして、五トン未満の船の乗り組み員についても船員法の適用があるような法の改正が行なわれるというふうに伺っておるわけでございます。

近江巳記夫公明党

○近江委員 それで一応いま出ておるケースは、そうしたそれぞれの適用が受けられる。しかし、こうした適用が受けられない場合もあるわけですよ。たとえば陸に引き揚げてこうなったとか、その場合は十分な見舞い金を補償されるわけですね、山中長官。

山中貞則自由民主党総理府総務長官

○山中国務大臣 先ほどもちょっと触れましたけれども、休業補償等については漁業共済、並びに漁網等については漁具共済等がございまするし、それらの具体的な事実の上に立って、そういう見舞い金等の支出が考えられると思います。

近江巳記夫公明党

○近江委員 引き揚げて、たとえば子供がそこでガスを浴びて死ぬとか、現実にくず屋さんが三人死んでおるわけですよ。そういうような事故が起きておるわけです。ですから、そういう適用のない場合のこと……。

山中貞則自由民主党総理府総務長官

○山中国務大臣 ガス弾……。

近江巳記夫公明党

○近江委員 そうそうガス弾で。これはわかっておるでしょう、事故……。

大和田啓気水産庁長官

○大和田政府委員 先ほども申し上げましたけれども、船員保険法の適用がありますもの、それから船員保険法の適用がないものにつきましても労災法の適用があるのが普通でございますから、それによって療養補償等が行なわれるものと考えております。

近江巳記夫公明党

○近江委員 二十六年の四月に「銚子市内のYさんが海岸で鉄製ガス弾を拾い、解体中ガスを全身に受け、母親と長男の三人が死に、手伝ったSさんが中毒になり二年後死んだ。」こういうような事故がたくさん出ておるわけですよ。そういうようなことについて、要するに法の適用が受けられる人であればいいですよ。しかし、いろいろなケースが考えられるわけです。その辺のところは、要するに政府として責任を持って、今後見舞い金等についても十分納得のいく線で支出をするという明言をなさるかどうかということなんです。

山中貞則自由民主党総理府総務長官

○山中国務大臣 私、今回のことではそういう事故が起こっていないと思っておりましたが、昭和二十六年のことであるとすれば、私の知らなかったできごとでございます。当時私も国会議員でもございませんでした。ただ、今回やろうとしておる目的は、そのようなことが起こらないようにしようということをしておるわけですから、たとえば沖合いで網にひっかかったという場合には、いままで網を切った人かおる。そういうことのないように、ひっかかったら直ちに付近を警戒中の海上保安庁の船に連絡をすれば、行って切らないで、そのまま懸垂して沖合いの二千五百メートルに持っていくということになるわけでありますから、それが陸上に運ばれてそのような不慮の事態が起こらないようにするというのが目的でございまして、起こらないようにしたいということについては、起こったらどうするかという御質問は、ちょっと質問としては酷ではないかと思うのですが、いかがでしょう。

近江巳記夫公明党

○近江委員 これは現実に過去にもこういうことがあるのですからね。起きた場合についてはどう考えるかということなんです。それはまとめて返事をしてもらいます。  あなた、網を切るとかいうお話をなさったので、物件損害について聞きたいと思います。  一つは、そういう危険なことがあるというので漁船が出漁しておらない。したがって、この漁業経営者の休業による損害、これをどうするか。  それから二点は、漁船の破損です。たとえば四十五年一月の二十五日には、爆弾を浴びて甲板に大きな穴があいた。同じく甲板にもう一隻穴があいております。ほとんど底びきの船は、ひっかかった場合に網を切っております。そうすると、原価で十五万円するのです、あの網は。全部流しています。  それからガス弾が上がった場合、とった魚が一斉にガスを浴びて変色をする。全然売りものにもならぬわけです。そういうような物件損害についてどうやって補償するかということです、この点。

大和田啓気水産庁長官

○大和田政府委員 私ども水産関係の共済といたしまして、まず漁船保険がございます。爆弾等によって漁船が破壊されたものは、当然保険金支払いの対象になり得るわけでございます。それから漁網につきましても実は漁具共済がございますが、これは相当価格の高いサケ・マスの流し網でありますとか、あるいは定置網等々について現在行なわれておりまして、沖合い底びきの網は、網といたしましては比較的価格の高くないものでございますので、まだこの適用はいたしておりません。  それから休業の補償の問題でございますが、私ども漁獲共済をやっておりますから、いろいろな事情によって漁獲高が減った場合は、当然漁獲共済の対象になるわけでございます。ただ、漁獲共済の制度はございますけれども、残念ながらこの銚子の沖合い底びきの人たちは漁業共済を利用しておらない、そういう問題はございます。

近江巳記夫公明党

○近江委員 そういうような共済を利用しておらないとかいろいろな問題が出てきておるわけです。こういう物的な損害、人的な損害について、政府としては責任を持ってそれだけのことを補償してあげるべきであると私は思うのです。この点、最後に総理にお願いしたいと思います。

佐藤一郎自由民主党経済企画庁長官

○佐藤内閣総理大臣 戦時中の処理、戦後の処理、当を得ないものも相当あると思います。そこらでずいぶん危険なものがあり、直接人命を損傷する、こういう重大事故が起きておる。したがいまして、これらについて政府といたしましても万全の処置をとるつもりで、あらゆる機会にあらゆる国民の注意を喚起しております。ただいまのような問題にいたしましても、物的損害を補償すること、これはわりに簡単でございますが、人命となりますとそう簡単には補償はできません。したがって、政府自身のなすべきこともさることながら、そういう危険物が引き揚げられた、こういう場合の扱い方についても、国民の皆さん方もよほど注意してもらわないといけないんじゃないかと思います。いまイペリットの問題が議論されておりますが、いままでも魚雷等が海岸に打ち上げられた、そういうものの扱いがずいぶん乱暴に扱われておる。近代的な国民であろうかと思うような考え方までする。おもしろいからひとつこのたき火の中に投げ込んでみょうじゃないかという話までして、そしてそれが爆発して死傷事故を起こしておる、こういう事故もございます。したがって、こういう漂流物あるいは引き揚げ物あるいは網にかかったようなもの、それらの事後の処理というようなもの、これはやはり国民の協力を得なければ何ともならないものじゃないだろうか。私どもも積極的に処置はいたしますが、同時に、国民に事態をよく認識していただいて、そうしてみずからが事故にならないような、事故を起こさないような協力もぜひともほしいと思います。したがって、これらの点については農林省、まず漁民に対してもう少し事態の認識を徹底さすことが必要じゃないだろうか、かように思いますし、また厚生省等におきましても、どういうものだということもよく話をしてやる。また、自衛隊におきましても、海上保安庁におきましても同じようなそれぞれの役割りがございますから、国民の協力を得るように積極的処置をとりたいと思います。  ただいまいろいろ質疑の形で政府に御注意のありましたことは、ありがたく私どももそのままちょうだいいたしまして、今後とも万全を期する、かような態度で臨んでいくつもりでございます。御了承を得たいと思います。

近江巳記夫公明党

○近江委員 今後とも万全を期すということで、そうすると補償のそうした点についても万全を期す、こういうことでございますね。

佐藤一郎自由民主党経済企画庁長官

○佐藤内閣総理大臣 そういう点をも含めてでございます。

近江巳記夫公明党

○近江委員 次に、私は緊急の問題として一つ質問したいと思うのです。それは総理も御承知のように、昨日新聞、テレビ等マスコミを通じまして知りましたが、非常に痛ましい事故が起きておるわけです。それは血漿注射で水銀中毒死をしたという問題でございます。この問題についてお聞きをしたいと思うのです。この血漿剤事件でわれわれ国民は非常に大きなショックを受けたわけでございますが、事、生命に関することでもありますので、早急に私は政府の姿勢をただしたいと思います。  まず一つお聞きしたいことは、この事故は何に原因するものかということです。医師の処置に誤りがあったものか、それとも血漿剤そのものに欠陥があったものか、この辺の判断をどうなさっているかということです、厚生大臣。

内田常雄自由民主党厚生大臣

○内田国務大臣 今回、防腐剤として有機水銀が入っておる血漿の注射に関連いたしまして、少年がなくなられるという不幸な事件が起きまして、私も非常に心を痛めておるものでございます。ただいまお尋ねの点でございますが、今日、血液の保存期間というものが、御承知のとおり非常に短い、二十一日程度でございますので、長期にわたって血液を保存する、特にまた血球等を抜きまして血液型に関係のない血漿というものをつくります際には、いまのところ水銀剤というものを使う以外に他に適切なる方法がないわけでございまして、さような見地から、この有機水銀を使いました血漿剤というものが容認をせられているところでございます。しかし、これの使用につきましては、水銀というものが蓄積性のあるものでありますことは、これはおおむね関係者の承知いたしておるところでございますので、その辺の使い方にも十分注意を要するところでございまして、いま厚生省といたしましては、この事態の経過等につきましても、東大付属病院の担当方面から報告を求めたり、また関係の専門家にお寄りをいただきまして検討を進めておるものでございます。

近江巳記夫公明党

○近江委員 この血漿剤は、交通事故の場合等応急に使用すべきものだ、連続使用をすべきものではない、一部ではこういう声もあるわけです。しかし、厚生省の使用基準はどうきめられているかというと、一日二千cc、これは体重五十キロの成人、こうなっておりますが、注意書きだけになっているわけです。ですから、医師は、要するに成人で二千cc——子供でありますから割ってもあくまでも基準内で使用している。医師としてはその責任がない。そうしてくると、厚生省の使用基準がずさんであるからこういうような事故が起きた、こういうことになる。厚生大臣どうですか。

内田常雄自由民主党厚生大臣

○内田国務大臣 そこのところに問題があると私は思うわけでありまして、決してそれによって厚生省の基準を私は弁明するつもりはございませんけれども、これは近江委員も御承知のように、製剤上の基準でございます。したがって、この有機水銀を防腐剤として用いた場合の血漿のつくり方は、その有機水銀をおおむね一万分の一程度、百PPMとか百五十PPMとかいうように水銀の種類によっても違うのでありますが、そういうような配合によってこの血漿をつくるべきことを内容としてきめられているものでございます。最後に注意的に、これが通常の五十キロくらいの重量のあるおとなについては、二十四時間について二千cc以上を注射すべきものではないという注意書きは添えてありますけれども、その基準そのものは製剤上の基準であって、使用上の基準ではございません。使用上の基準というものにつきましては、これは私どもの判断では、その薬を使う際に、いろいろの劇物も毒物も、またある場合には放射性物質等もあるわけでありますので、それぞれその用法に従って使っていただくことも考えなければならない問題、しかし、その辺が私は非常に問題を生じておる課題であると考えるものでございます。

近江巳記夫公明党

○近江委員 連用してはいけないとか、そんなことは何も書いてないわけですよ。ですから、この基準というものがいかにずさんであったかという点にあるんじゃないかと私は思うのです。この有機水銀というのは、御承知のように、水俣病をはじめとして最近非常に大きな問題になってきております。それが血漿に防腐剤として入っておる。これは国民にとっては大きなショックです。これだけ問題になりながら、医薬品にそういうような水銀が使われておる。われわれとしては取り扱いが非常にルーズじゃないかと思うのです。なぜいままで、安全な防腐剤を開発するとかあるいは腐敗を防止する方法の研究を進めなかったかという問題です。それはまあどっちみち、いままで研究してましたとおっしゃるでしょう。要するに、そういう人命軽視でない行政姿勢というものがはっきりしておらない。この点、反省なさっておるかどうかということです。これは厚生大臣の次に総理にお願いしたいと思う。

内田常雄自由民主党厚生大臣

○内田国務大臣 御指摘の問題は非常に大切な問題でありまして、今度の事件が起こりましても、私は厚生大臣として、千人の病人を助けることももちろん大切だけれども、使用上の間違い等によりまして、一人の生命を失うというようなことがあっては何にもならないので、むしろこれは厚生省としても、とっくにこの製剤等に関連しては有機水銀等を使わせないという処置を講ずべきではなかったか、こういうこともただしましたところが、その一人の生命を救うために最善の努力をやっている結果が、この血漿というものをつくっておる次第である。近江さんのことばの中にも出てまいりましたが、有機水銀を使わない血漿のつくり方というものも全然ないわけではありませんけれども、しかし、今日におきましては、それはごく微量を除きましては、その製造は客観的にむずかしいことになっております。したがって、この水銀入りの血漿というものは、交通事故の直後でありますとか、あるいは出産等で多量の出血があったときでありますとか、大手術の直後などに一時応急に血漿を補充するために使われるものであって、これに水銀が入っておりますことは表示もしてございますし、水銀そのものが毒物及び劇物取締法上の毒物にもなっておるものでございまして、これを使用する場合には、これは最善最大の注意をしていただくことを私どもも実は期待をいたしておるものでございます。しかし、これからでもおそくない。私は、水銀というものを排除できないかということをあらためて検討もしてもらうわけでありますけれども、これは水銀が単に医薬に使われるばかりではなしに、産業上も工業上も使われる金属の化合物でありますために、この金属化合物というものを全部抹殺、排除するということができないところに問題であるわけであります。しかし、今回の事件に対処いたしまして、血漿等のつくり方につきましては、これは血漿がなければならぬものでありますから、最大最善の研究を専門家を集めて至急にやっていただくと同時に、とりあえずは全国の各方面に通達をいたしまして、取り扱い上十分注意していただくという趣旨を徹底させる所存でおります。

近江巳記夫公明党

○近江委員 要するに、人命軽視の行政姿勢から、こういう基準もあいまいであるし、こういうような今回の事故が起きたと私は思っているのです。特にこれは非常に危険なものでありますし、即刻回収、廃棄すべきである、私はこのように考えるわけです。政府としてはどういう処置をとられるか、この点を厚生大臣にお聞きしたいと思う。時間がありませんので、あなたは答弁をもう少し明確にお願いします。

内田常雄自由民主党厚生大臣

○内田国務大臣 回収、廃棄を私もしたいと思うのでありますけれども、専門家の意見を総合いたしますと、いまこれを廃棄してしまうということは、応急の血液注射等の必要が大きな事態にかんがみて、それはとうていやれない。あくまでもこれは使用上の注意をこの際喚起しつつ、次のこれにかわるべき方法が開発されるまでは廃棄はできないであろうということが、おおむねの専門家の意見でございます。

近江巳記夫公明党

○近江委員 総理は、最高責任者とされて、今回のこの事件についてどういう反省をなさり、また、私がいま申し上げたそうした処置について、どういうお考えでいらっしゃいますか。

佐藤一郎自由民主党経済企画庁長官

○佐藤内閣総理大臣 まず第一に、昨日のニュース、これは私にとりましてもたいへんなショッキングなことでございました。とにかく、不幸にして生命を失われた少年に対して、心からお悔やみを申し上げたいと思っております。  ところで、先ほど来のお話を聞いておりまして、私はなるほどそういうものかなあと、応急的な処置としてやはり血漿の必要なこと、これはどうもいなめない。その血漿をある程度保存するためには、それが腐敗しないような処置をとる。どうも水銀をきわめて微量使わざるを得ない。しかしながら、それを長期に使用すると水銀がからだに残って、そういうものがだんだんたまっていくと、これが有毒性なものを発揮しだしてくる。そこらに、使用上も考えなければならぬのだなということがわかります。厚生省も厚生省だが、使われる先生方も、この有機水銀の結果のおそろしさというものはわかりそうなものだということを、まず私は考えたのでございます。そこらにも、ただ単に厚生省がこの使用の基準を示しているからというだけでは、どうも解決はつかないのじゃないだろうか、かように思います。  私は、ただいま御指摘になりましたように、新しい科学の進歩、そういう際にもっと有害でないもの、害のないもの、そういうもので血漿を保存するような方法はないか、その研究はぜひとも続けていただきたいと思います。しかし、今日まで努力されたにかかわらず、そういう結論、そういうものが見つからない、やむを得ずただいまのような含有で初めてそれを腐敗から防いでおる、これが実情だろうと思います。私は、諸先生方もこれを最もいい方法だ、かように考えてはおられない、やむを得ずしてやられたのだと思います。  そこで、近江君からは、ただいまのような点についていろいろお話があって、全部回収しろ、新しい方法を研究しろ、こういうようなお話がございます。ただいま言われておりますように、直ちに回収、これは厚生大臣が言っているようになかなかできないことらしい。交通事故その他の場合に、やはり対策上必要だ、かように申しておりますから、これはやむを得ないとしても、使用上においては、とにかくこの悲惨な例にわれわれは学んで、今後長期に使用することはいかがか、かように思いますから、そういう点ではお医者さん方ともよく相談をした上で、医者のほうが何といっても専門ですから、それらの点についてよく意見を交換して、しかる上で処置したいと思いますし、また御指摘になりましたように、他の方法はないのか、さらにその方法について積極的な研究をしろということにつきましては私も同感でございますから、そういう意味でこの問題に対処したい、かように思っております。

近江巳記夫公明党

○近江委員 今後連用しないとか、そういうようなことを通達すると厚生省はおっしゃっておるわけですが、ある学者によりますと、厚生省の基準による有機水銀の添加量は、ただの一回の注射でもこれは非常に危険であるという判定を下しておる。そうであれば、このまま放置しておいていいかという問題です。それと具体的にこの血漿剤の使用基準に関して根本的に考え直すべきではないかという問題です。この二点について……。時間がありませんので、簡潔にお願いします。

内田常雄自由民主党厚生大臣

○内田国務大臣 この製造基準が昭和二十何年かにつくられ、その後一度、三十六年かに検討されているようですが、さらに私は製造基準について再検討してもらいます。  また、これの使用基準を変えるというお話でございましたが、そもそもこれは使用上の注意の問題でございますので、使用上の注意につきましては、先ほども申しましたように、厳重に関係方面に注意を発する所存でございます。

近江巳記夫公明党

○近江委員 それから、昨日もNHKテレビでずっと特別番組で報道されておったわけですが、そのときにもこの有機水銀の入らないものを使うこともできるけれども、血漿のロスが大きいので、有機水銀が防腐剤として使われることになったという発言が中で一部あったわけです。それはさっき大臣の答弁でも、非常にいますぐといって、ないからしかたがないというようなことも含まれておるのじゃないかと思うのです。  そこで、人命の安全と物質のロスとどちらを優先にするかという、この点なんです。この辺の考えが非常にさか立ちしているのじゃないか、そのように思うわけです。その辺のところ、厚生大臣として、あなたとしては人命第一主義の立場でいかれるのか、あるいはそれはなかなかそうした廃棄回収をするとかという問題になってくればいろいろな問題が起きてくるのはわかっておりますが、その人命尊重という立場から今後その辺のところをどう、国民の皆さんに安心できるようなそういう処置をしていくか、その辺のところをもう少し突っ込んだ答えをいただきたいと思うのですが……。

内田常雄自由民主党厚生大臣

○内田国務大臣 もちろん、私といたしましては、人命第一主義でまいりたいと思います。しかし、先ほども述べましたように、千人の人を救う機能も持っておるものでございますので、この際、残存するものを廃棄するということもその見地からできないのでありますから、たびたび申し述べますように、至急に製造基準を再検討し、あるいはまた専門家の皆さんを集めて、これにかわるべき有効なる資材を開発するような努力をいたしてまいる所存でございます。

近江巳記夫公明党

○近江委員 それから、今回のこの事件を通じてさらに、一度許可したものについても再点検が必要ではないか、このように私は思うのです。ところが、昨夜のその放送においても、厚生省は、非常にまれな例であるから、こういったことまでカバーするような基準をつくることはむずかしい、そういうような発言があったわけです。そうして使用上の基準を守ればこのようなことを防止できる——そういう使用上の基準を守って今回の事故が起きておるわけです。非常に無責任な発言をしておるわけです。こういう無責任な行政の態度では、私は事故は防止できないと思うのです。  したがって、今回の問題に限らず、いろいろなそういう心配のあるそうした医薬品について、この際、総点検をすべきじゃないか、このように思うのですが、総理。

佐藤一郎自由民主党経済企画庁長官

○佐藤内閣総理大臣 私も昨夜のNHKの特別番組を聞いた一人でございます。ずいぶんこれはたいへんな問題だな——幸いにして先ほど厚生大臣が点検し直す、かように申しておりますから、私は厚生省の役人の、あの番組で話をしたことに対して厚生大臣自身が、これは点検し直します、こうお約束しておりますから、しばらくひとつおまかせをしていただきたいと思います。  もちろん、私どもの専門でない医学の問題ですから、お医者さんの意見も十分聞かなければ、せっかく助かるべきものも助からない、こういうことになりましても問題だと思います。問題は、結局血液不足、そういうところから出てきている問題だと思っておりますので、血液の献血運動その他を通じまして、やはり血液を適当に保存する、それがやはりむずかしい問題なんだろうと思っておりますが、とにかくただいま近江君が御指摘になりましたように、私も特別番組を聞いて驚いておる一人であるということ、それを申し上げて、先ほどの厚生大臣の決意のほどをひとつ私も一緒になって点検し直すつもりでございます。御了承いただきたいと思います。

近江巳記夫公明党

○近江委員 もう時間がないようですので、あと一、二問で終わります。  それから、薬事行政について最後にお聞きしたいと思うのですが、非常に、文明国とも思えぬような不祥事が起きておる。やはりこの根本原因は、私は薬事行政に根本的な欠陥があるのではないか、このように思うわけです。たとえば医薬品の製造許可の手続についても、製薬メーカーの提出する動物実験、臨床実験データ、書面審査を厚生省はやっている。ところが、国の機関がなぜ独自の立場でそれをチェックをしないか。これは厚生大臣、やっていますか、その辺のところは。国の独自の機関で厳密にチェックをやっていますか、どうですか、お聞きしたいと思います。

内田常雄自由民主党厚生大臣

○内田国務大臣 薬のことでございますから、まず有効性、安全性というものに主眼を置いて審査をいたしますことはもちろんでございますけれども、昭和四十二年に医薬品の製造承認に関する基本方針というものができましたことは、近江委員も御承知のとおりと存じますけれども、この四十二年の基本方針に基づきまして、厚生省に設けられております中央薬事審議会に幾つかのそれぞれの専門部会、特別部会等を設けまして、そして極力必要に応じてこれらの専門家の機関を活用いたしながら、自主的に審査をする、そういう方向にさらに一そう進めてまいりたい所存でございます。

近江巳記夫公明党

○近江委員 じゃ、もう時間がありませんので……。  要するに、そうした国の独自の機関が独自で厳密なテストをしておらない、そこに私は問題があるのではないか。それから、私、間違っていたらあとで言ってください。配合薬に至っては、実質的には無審査である。やはりそれ自体は毒性がなかったとしても、相乗作用というものはあるわけですよ、重なってくれば。その辺のところもチェックされていない。輸入医薬品については、これも無審査でしょう。ですから、そのためにサリドマイド事件等が起きておる。そういう点で、医薬品の副作用については非常に無防備であるということです。先ほど中央薬事審議会、これも厚生省の原案のほとんどがパスをしておる。そういうような——それはそれぞれ真剣にやっていただいておると思いますけれども、やはり今回のような事故が起きれば、ほんとうにそれじゃ審議をやってもらっているのかという点にもなるわけです。そういうような点で、やはり根本的に薬事行政を考えるときに来ているんじゃないか、私はこう思うわけです。  もう時間がありませんので、最後に、根本的に薬事行政全体についてもいろいろな点をチェックしていただいて、国民の皆さんが納得できるような体制を確立していただきたい、こう思うわけです。これについて、最後に厚生大臣と総理にお答えいただいて、終わりたいと思います。

内田常雄自由民主党厚生大臣

○内田国務大臣 御趣旨を十分尊重いたしまして、慎重を期してまいる所存でございます。

佐藤一郎自由民主党経済企画庁長官

○佐藤内閣総理大臣 私は、最近の薬のはんらんについては、この席でもしばしば取り上げられておりますが、たいへん問題が多いように思います。したがって、この問題と真剣に取り組まないと、国民の保健、衛生、また病気、そういうものから見ましても、これはたいへんな重大な問題だと思っております。したがって、先ほど来の御意見はとくと私の胸にとめまして、厚生大臣とも今後の対策についてよく相談してみたいと思います。

近江巳記夫公明党

○近江委員 以上をもって終わります。

中野四郎自由民主党

○中野委員長 これにて近江君の質疑は終了いたしました。  午後の会議は一時より再開することといたします。  この際、暫時休憩をいたします。     午後零時十一分休憩      ————◇—————     午後一時十七分開議

中野四郎自由民主党

○中野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。山中吾郎君。

山中吾郎日本社会党

○山中(吾)委員 私は、総理大臣の施政演説並びに中教審の大学改革に関する基本構想を中心として、人間形成の立場から、あらゆる政策にわたりながら政府の施策に批判を加えて、若干の提案をしながら質問いたしたいと思います。  まず、首相にお聞きいたしたいのですが、現在の政府の経済政策あるいは社会開発に関する政策、政治の姿勢を含んで、あらゆる矛盾が国民の人間形成にひずみを起こしているのではないか、私はそういう一つの視点に立ってお聞きしたいと思うのであります。たとえば、物価あるいは地価の暴騰を中心として住宅難という問題が出ておるのでありますけれども、これはすでに単なる経済問題、単なる社会保障の問題ではなくて、教育問題になっておると私は思うのであります。そういう立場でこの政策について政府の反省を私は促したいと思います。  それで、文部大臣にお聞きいたしたいと思いますが、全国の図書館が図書館の本来の目的を果たすために利用されておるかどうか。この質問では意味がおわかりにならぬと思いますが、図書館の利用者の一体何%が図書館の書物を利用しているのか。あるいは住宅難のためにうちで勉強する勉強部屋がない、あるいはテレビ、ラジオその他の騒音の中で勉強できないために、図書館に行ってただ自分の学校の書物を読んでいるだけの利用者が何%あるか、御存じですか。

坂田道太自由民主党文部大臣

○坂田国務大臣 最近テレビ等が非常に発達をいたしまして、なかなか子供たちが本を読まない、そういうような傾向にあることは御承知のとおりです。また図書館の充実等につきましても、相当努力はいたしておりますけれども、私ども十分だとは思っておりません。正確な利用率がどうだということについては、手元に資料がございませんので、もしわかりましたならば、後刻御報告を申し上げたいと思っております。

山中吾郎日本社会党

○山中(吾)委員 突然質問したので、文部大臣は答えられないと思いますが、大体全国の公立図書館の六割から七割にわたる利用者は、図書館の利用者ではなくて、住宅難から来ておる、勉強室のかわりにしている。だから、一部の者は読書館をつくったらどうだという提案まである。これはすでに住宅政策の貧困というものが教育政策に大きい被害を与えておるところまで来ておるということなんです。  なお、一例として厚生大臣にお聞きいたしますが、これも予告なしですから、わからなければわからないでけっこうですが、厚生大臣の諮問機関の人口問題審議会の報告に、日本の人口出生率が非常に低下をしておる、その報告が発表されておりますが、原因は何ですか。

内田常雄自由民主党厚生大臣

○内田国務大臣 出生率は確かに低下をいたしております。もっとも最近はやや上がってもきておる面がございますが……。その原因はいろいろあろうと思います。それは住宅問題、物価問題等々、いろいろあろうと思いますが、私は、やはり今日のマイホーム主義というようなものを中心とした享楽的の風潮というものも、かなり出生率に影響もあるのではないかとも考える者の一人でございます。

山中吾郎日本社会党

○山中(吾)委員 厚生大臣のお答えもお答えにならないのですが、それでけっこうです。  私は、総理大臣に、次にお聞きせなければならぬと思うのは、人口問題審議会の報告を見ますと、出生率が非常に低下をして、このままでは日本の人口は増加はしない、あるいは減退するのじゃないかという心配を披瀝しておるようであります。その原因には、一つは家族制度というものを廃止をしたために、昔のように家の後継者たる子供をつくる必要はなくなったということが一つ。それから社会保障その他もだんだんと進んできたので、老後を世話になる子供は要らなくなった。残っておるのは愛情の延長線として子供がほしいという最も人間的な動機に基づいた子供だけが出生の動機になっている。同時に、いまちょっと厚生大臣が言ったように、まず夫婦がよい生活をというので、子供を生むよりは、テレビ、ラジオを先に買いたいというマイホーム主義のものが一つある。いま一つだけ言われた。ところが、その出生の原因に一番大きい障害を来たしておるのは、住宅難、物価である。子供は生んでも、その子供をそこに養っていくだけの住宅が十分ない。そういう住宅難ということが出生について非常に大きい障害になっておる。こうなってまいりますと、住宅政策も人間形成、教育の問題に及んできておるのです。さらにテレビ、ラジオ等によって、朝から晩までスイッチをあけっぱなしにしておる中で、子供の教育に大きい影響があることも総理大臣以下心配されておるはずであります。人間の身体の成熟と人間の形成、成熟と形成がアンバランスになっておるということも住宅からきておる。物価の問題についても、単なる経済問題でなくて、ここまで地価が不合理に暴騰したということから、まじめに生産意欲を持つというようなことができなくなってしまっておる。  こういうことを考えてみますと、この国会において、経済問題その他は数字に出てまいりますから、数字に出てくるものだけが論議をされて、人間の形成の問題というものは数字に出てこない。出てこないから国会でほとんど論議をされない。総理大臣は、いままでの施政演説の中では一番多く教育に触れたことには敬意を表します。しかし、ここの質疑の中で正面玄関からこういう国民の人間形成は論じられない、数字に出ないから。私は、しかしそういうことでは相すまないところまでこの問題の矛盾が来ておると思うのであります。  そこで、総理大臣が施政演説の中で、七〇年代の日本というものに非常に希望の持てた、そうしてそこに大きい飛躍があることを前提として、国家目標にも触れられておる。しかし、私はある意味においては、日本は経済の繁栄を期待しておると思っておるけれども、このままで推移をすれば、二十一世紀は日本の世紀なのか、民族の興廃の世紀になるかは、私はまだ決定されていないと思うのです。そういう深刻な立場に立って、物価の問題にしても、住宅の問題にしても、日本の未来に責任を持つ総理大臣、政府・与党の諸君は、国民の人間形成の立場からこの問題をもう一度考え直す必要はないのですか。質問の前提として総理大臣にお聞きいたしたいと思うのです。

佐藤一郎自由民主党経済企画庁長官

○佐藤内閣総理大臣 ただいま山中君から種々御説明になりました。多分に御意見もまじえながらと最初に断わられましたが、確かに御意見の点もある。しかし私はお述べになりましたことについておおむね賛成でございます。  最近、非常な経済発展はしておる。しかし、経済発展がもたらしておるアンバランス、そういうものが各方面に悪い現象として出てきておる。そういうものを克服しない限り真の繁栄はないだろう、真の民族的繁栄はないだろう、かように思います。昔は、たいへん古い話をして相すまないことですが、衣食足って礼節を知るという、私ども小さいときにはそういうことばをずいぶん教え込まれたものです。また、それが政治の課題であるような言われ方もしたものです。そういう点から見ると、最近はよほど衣食は足ったはずだ。少なくとも不服は言いながらも、過去の状態そのものではない。非常な前進があった。それならば、それに比例して礼節を知るような、お互いがやはりのりを越えないような仕組みがだんだん進んでいるか、かように見ますると、逆な方向に行っている。ただいま御指摘になりましたとおりです。それこそ経済は発展するが、二十一世紀、ほんとうに民族の興廃に関する問題でもあるんじゃないか、七〇年代はそういう大事な転機じゃないか、かように御指摘になったこと、私は全面的にさように考えるのであります。  でありますから、私は、七〇年代に民族的なビジョンをやはり示すことが必要じゃないだろうか。そういう意味から、やはりこの際に経済的発展もますます進めていくが、同時に社会開発も進め、ひずみを生じないような均衡のとれた、ことにどうも忘れがちな精神面をこの際に大きく取り上げていかなければならないのじゃないか、その点が今後の教育の課題ではないだろうかと実は思っておるのであります。  ただいまお述べになりました点について、私はいま率直に私の感じた点を御披露した次第でございます。共鳴する点が非常に多いことをこの際につけ加えさせていただきます。

山中吾郎日本社会党

○山中(吾)委員 そういう趣旨が施政演説にあらわれておると私も確認いたしたいと思います。  そこで、国の目標というものを演説の当初に述べておられますが、その点について私も論議をいたしたいと思いますけれども、時間の関係を考えて、時間があれば最後にもう少し突っ込んで総理大臣の意見を聞きたいと思います。私は、日本の現実は、一口に言えば、経済は繁栄して精神は荒廃しておる、経済は成長して人間は後退しておると私は分析しておるのです。したがって、七〇年代の認識は、経済の明るい面だけを見られて、そして施策を施されることについては大いに論議をしなければならぬ問題があると私は考えておるから、前提として申し上げておるわけであります。  そこで、総理大臣の演説の中に入っていきたいと思いますが、総理大臣は、一つの新しい指針についての所信を述べられたあとに、国内的課題の第二の柱に教育の刷新充実と社会道義の確立を述べられた。その内容を見ますと三つあるようであります。一つは教育制度の抜本的な改革、一つは教育の目的ということばで、教育のあり方、最後に教育者のあり方と三つ柱を立てておられます。教育制度のことについては、中教審の問題であとで触れたいと思いますが、総理大臣の教育のあり方についての演説を見ますと、国民の一人一人が市民としての良識を持ち、他に対するおもんばかりを持つ人間であることが要請される、あるいは豊かな情操あるいは近代生活にふさわしい倫理感、社会連帯感、こういうことを強調されておるのであります。もっとも、そのとおりでありますけれども、一国の総理大臣としてお述べになるについては学校長の訓辞のような感じで、そのあとに私に教育の改革のプログラムが頭に浮かんでまいらないのであります。  私は、ここで総理大臣にお聞きいたしたいことは、現代の人間形成のひずみというもの、資本主義社会における人間形成のひずみあるいは科学技術がここまで飛躍的に進歩したことについて、この文明社会と人間形成のひずみというものに触れて、一国の総理大臣が教育を根元的に再検討すべきであるという識見をお聞きいたしたい。そうでないと、これは学校長と同じことになってしまう。国民に対する説得力が非常に少ないと思うので、この機会に一、二お聞きいたしたいと思います。  現代の資本主義社会においては、これは資本の本能から、あらゆるものに経済合理主義というものが支配をしてくることは現実にあらわれておるとおりであります。それから人間まで商品化する、学問、芸術あらゆるものが経済価値で換算されてくる、これが資本主義社会の構造的な性格だと思うのです。このことを認識をして、この資本主義社会における人間の形成については、どういう教育政策でなければならぬという識見がなければならぬと思うのであります。私は、ことに現代ほど経済合理主義が学問からあらゆるものに及んでおる時代は、日本の歴史始まって以来ないと思っております。ところが一方に文部行政のほうではマル・バツ式教育方針をそこへ加えることにまって、ますます助長してしまっておる。最少の費用で最大の利潤をあげるという、そういう合理主義が一方に教育のほうではマルかバツかという判断力だけ養成して、それに努力の過程を抜きにした人間、これをマル・バツ式人間といっておるようでありますが、そういうものがつくられてきておるのだと思うのです。だから、その教育効果、現代の社会構造の当然の成果として生まれて最も模範的なものは、私は、銀行から三億円を盗んでまだつかまえることのできない、あれは最も合理主義の典型だと思うのです。綿密なる科学的計画を立てて三億円を何の努力もなしに盗んで、犯人がわからない。完全知能犯的人間が生まれつつある。そういう教育をしているのではないか。そこで、教育のあり方については、こういう資本主義を否定する思想の者も肯定する人も——この現代のあまりにも経済合理主義になっている中で、こういう知識を与えれば知能犯的人間になるし、そういう者に対して、もう少し非合理的なロマンを与えるというものがなければ、やはりこれは七〇年代の、私は民族荒廃の方向に向いたものだと思うので、この点に識見をお求めになる必要があるんじゃないか。総理大臣はどう思われるか。

佐藤一郎自由民主党経済企画庁長官

○佐藤内閣総理大臣 ただいま山中君のお説、なかなかおもしろい——と言うと語弊がございますが、なかなか深い考え方でお話しのようです。現代の科学が、現代の社会が合理主義的な方向に行っている、しかし、人間の生活そのものは合理主義では割り切れないものもあるんだ、これは資本主義だろうが社会主義だろうが、私は同じじゃないかと思います。  そこで、そういうものを、その割り切れないものをどういう方向で補っておるのかというと、これが私どもの社会、資本主義社会におきましては自由という形で補っておると思います。合理主義といいながらも、片一方で自由、同時にそれぞれの人権は尊重される、こういうところが資本主義社会の構成としては最も大事な点ではないかと思います。学問、科学の研究におきましてもやはりそういうところが考えられてしかるべきでございます。よく資本主義社会と社会主義社会と対照して比較されますが、私はその点を見過ごさないように願いたい。だから、いまの合理主義であることはとにかくよくない、これは悪い。御指摘のとおりであります。合理主義に堕した、そういうことはよくない。しかし、もっと人間的であるためには、各人が人権が尊重され、自由濶達に行動ができる、思想の自由もある、そういう社会でなければならない、かように私は思っております。

山中吾郎日本社会党

○山中(吾)委員 資本主義社会、社会主義社会にかかわらず、自由と平等を求めておることに間違いはないのであって、社会主義社会は自由を否定しておるんだ……そういう社会主義社会は私は認めておりません。私は、経済合理主義という、企業合理主義になりますか、相手の一人ぐらい殺したって金もうけが大事だということに対して歯どめを政治が考えない限りは、これはどこまで精神が退廃するかわからぬ。そこで、イデオロギーでなくて、一国の総理大臣としては、人間というものは何かということを深刻に考える政治姿勢の中で、この問題を教育の問題として取り上げるべきであるということを申し上げたわけです。ある意味においては、人間性に合う合理主義、人間性合理主義といっていいのですが、科学と結びついて、そういうものを、現代において、七〇年代の課題として、総理大臣が深刻に検討してもらいたい、私はそれを申し上げておきます。  さらに、科学文明の世の中になってまいりまして、いま自由とおっしゃられましたが、生活が豊かになり欲望が拡大するのですから、どの欲望を選んで、自分の生きがいというものを何に定めて、そしてこの欲望を押え、この欲望を発展させて、自分の人生を主体的に生きる生き方を教えることが一番大事だ。現在の与党、政府の教育政策は、何もそういうことを考えていない。私は、坂田文部大臣がおるのでお聞きしてもいいのでありますが、そこに大学の荒廃も私はあると思うのですから、イデオロギーでどうだこうだ、あるいは選挙に都合のいい人間をつくるようなことを考えないで、本質的に論議をしていただきたいと思うので申し上げておきます。これも論議をすると一時間過ぎますので、今後のお互いの論議の姿勢だけを言って次に移りたいのであります。  次に、総理大臣は教育者のあり方についてここに述べられておるのであります。私はこれも真剣に論議すべきことであると思いますが、戦後自民党政府のもとにおいて教員養成政策は私はゼロだと見ている。何かありますか。文部大臣、教員養成政策に何かありますか。

坂田道太自由民主党文部大臣

○坂田国務大臣 山中さんも御案内のとおりに、かつて中央教育審議会におきまして日本の教員養成制度につきましての答申がございましたけれども、残念ながらこれがまだ確立するような形になっておりません。でございますけれども、教育の問題を取り扱う場合におきまして、その教師それ自体の問題が一番大きいということは、御指摘のとおりだと思っておりますし、今度の中央教育審議会の大学制度の問題につきましても、この教員養成制度の問題について検討を行なうつもりでおります。

山中吾郎日本社会党

○山中(吾)委員 文部大臣も教員養成政策ありやなしやという質問には、ありと断言できない答弁であります。これは事実そうだと思う。  私は、教員養成政策には三つの条件が必要だと思うのです。一つは、よい素質を教壇に吸収する政策がなければならぬ。第二には、学問を身につけて、金もうけを越えて学び教えることに生きがいを感ずるような人生観を持ったいわゆる学問と教養を身につける養成政策が必要である。第三には、教壇に立ったあと生活が安定して自由に研修ができることを保障する政策、この三つが必要であると思うのです。ずっと並べても一つもないではないか。ことに、よい素質を教壇に立てるということがその国の発展のための第一条件である。明治時代に近代化の成功したのは教育にあるということは総理大臣も言い、われわれもそう思っておる。しかもその教育にある一番の成功のもとは、よい素質を教壇に立てたことである。旧制師範教育というものが問題になっておるけれども、農村の小学校の優等生を師範学校に吸収するためにどういう政策をとったのか。あの軍国主義はなやかなときに徴兵忌避さえ認めた——悪いことばですが。師範に入った者は短期現役で戦争に行かなくてもいいんだ、そして裏では国防より教育がさらに大事であるという一つのバックをつくりながら、しかも子を戦争にやらしたくないという親の弱点を利用して——これも悪いことばですが、心理学的に分析すればそうなる。そうして師範に農村の、農家の育ちのいい、しかも優等生を集めて、そうして明治から近代にかける発展の基礎をつくり、そこに日本の発展の秘密があったと思うのであります。戦後に何がありますか。地域社会において、あの教壇に立っておる先生は小学校から中学からひとつも成績がよくなかったとわかっておれば、もう教育は成り立たない。     〔委員長退席、坪川委員長代理着席〕 その意味において、よい素質を吸収する政策を何としても考えなければならない。教師のあり方を施政演説で責任をもって強調された総理大臣は、プログラムがなければならぬでしょう。プログラムをお持ちになっておりますか。

佐藤一郎自由民主党経済企画庁長官

○佐藤内閣総理大臣 ただいま言われるように、先生が一番大事だ、かように思っております。いま山中君が言われるように、いい素質、そういうものを教育界に持ち込めるようにしろとおっしゃること、私は全面的に賛成でございます。私はいまいろいろの方面から意見を徴しつつある最中でございますが、しかしいまの状態は、とにかくくふうすべきものじゃないだろうか。それかと申しまして、直ちに昔のような師範学校ができようとは私も考えませんから、その学校のあり方については必ずしも師範学校にとらわれることばない、かように思います。いまりっぱな大学制度がございますし、そのもとにおいてりっぱな先生方が幾らでも選べるのですから、そういう方向で資格審査等がもっとよく考えられるように、そうして教員の数が十分そろえられるような、そういう仕組みを考えなければならぬだろうと思っております。ただいま文部大臣の諮問機関である教育制度審議会、これもいろいろ答申を述べようとしているし、教育職員養成審議会等もございますので、それぞれがこういう問題と取り組んでおるようであります。しかし、私の直接の諮問機関ではございませんから、私はそれらの諮問機関の答申をも十分考慮しながら、さらに必要な考え方を盛り込んで、ひとつりっぱなものをつくりたい。ただいま山中君の言われることに私は賛成でございます。そういう意味で、ひとつこれは真剣に取り組むべきだ、かように思っております。

山中吾郎日本社会党

○山中(吾)委員 答申待ちということはしょっちゅう言われるのですが、私は、そういう意味において、内閣の直属の諮問機関を持つべきだという主張を前にもしたことがあるのですが、いまの文部省の中教審のメンバーでは、どうしてもそういうビジョンは出ないと私は見ておるのであります。  それはそれとして、よい素質を吸収するということは、教員養成コースの大学にいい者がみずから喜んで入るという刺激がなければならぬのだ。教壇に立ったあと再教育しても、これは先生方には悪いかもしれないけれども、質のいい者をまず教壇に立てるのだ、これが一番キーポイントであると思うのであります。だからといって、私は昔の師範教育を肯定しておるのではない。あれは、せっかくいい素質の者を学校に吸収して悪い教育をしたからいろいろと弊害が出たのであって、いい教育は当然やらなければならぬのですよ。  そこで私は一つの提案を申し上げるわけです。教壇に立ったあとではなくて、立つ前に、教員になる者全部を世界視察をさせ、そして見聞を広め、世界を見ることによっておのずから日本の国際的地位を自覚をして、そこに教えることに使命感を感ずる教師を養成することが、これが教壇に立ってから勤評をやったり何かして権力で支配する必要がない人間ができるのであり、そういう教育に志す者については国は世界を視察さすという、一つのロマンチシズムを考えれば、十七、八歳の青年諸君は喜んでそこに行くのです。昔のように義務づけるわけにいかない。十七、八歳の青年諸君は、そのときから教育に魅力を感ずる人はほとんどない。われわれのように生活経験をしたあとで教育は大事だということがわかるのです、年輩になってから。一つのロマンというものを持たなければ、私は魅力のある教壇に立つという刺激は出ないと思うのであります。今度の文部省の予算で五百名の教師の海外視察計画を立てておることについては、一応その着眼については私も認めるわけでありますが、もうすでに校長、教頭その他だんだん退職するに近い人におみやげを与えるような世界視察をやらすくらいならば、これから教壇に立つ人にやるのが私は一番有効なる使い方であると考えるのであります。佐藤総理大臣が二月二日の記者会見において、これは新聞の記事でありますから、私は直接聞いたのではありませんけれども、一つの自慢として、教育の問題だが、私が自慢できるのは小中高の先生に五百人ばかり外国に行ってもらうために、金額は大きくないがその旅費を計上したことだと言われたのでしょう。これは新聞の記事に載っておる、首相と書いてある。これは一つの着眼としては認めますけれども、教壇に立っている中堅以上の者を外に出すというくらいならば、教壇にこれから立つ者に計画を立てるべきである、私はこう思うのであります。さらに私は、総理大臣はそれについて一つの考えを持っておられることを確認をしておるのでありますけれども、これは二月二十二日の「今週の日本」ですか、これに元東大学長の茅さんと対談をした中で、「青年の船があるのだから、先生の船もつくって外国に行っていただくことも必要だと思う」という趣旨のことを言われておる。それは間違いないんでしょうが、総理発言の要旨「五百人の学校の先生が外国を視察することになったが、青年の船があるのだから、先生の船もつくって、先生方に外国に行っていただくことも必要だと思う。今後は先生をもっと大事にすることをお互いにくふうしないといけない」ということが発言の要旨としてこれに載っておる。どうですか。

佐藤一郎自由民主党経済企画庁長官

○佐藤内閣総理大臣 どの新聞にどう出たかそれは別として、ただいま言われた茅先生の話、これは対談をいたします際に、茅先生から先に、前もって私のところへ陳情がありまして、青年の船があるんだから教員の船をつくってはどうか、こういうことを先生から提言がありました。私はそれは総理官邸で伺ったのでございます。そのときに、どうも先生と青年の場合ちょっと違うようですからひとつ研究さしてください、こういうことでその場ではそのまま返事をしないで過ごしたのであります。その後テレビ対談をする機会がありまして、そのときに茅先生からいきなり、今度は五百名の海外派遣をなさる、これはたいへんお礼を申し上げます、私どもは教員の船を願ったんだが、同じような事柄になるんでしょうからけっこうです、とにかく教員をそういうように待遇してくださることはたいへんありがたい、こういうことで礼を言われたのでございます。そのときに私が申しましたのは、いま山中君の提案のごとく、これから先生になろうという人、そういう人が一つのロマンを持つ、こういう意味で外国へ派遣できるという、こういう制度も望ましいことですが、外国を視察するというのにやはり適当な時期があるのじゃないだろうかと私の経験から申したのであります。実は私は鉄道にいまして、鉄道では約十年たった後に外国に派遣する。そういたしますと、日本でやっておる事柄と外国の制度と比較研究ができる。どうも日本の実情も知らないでいきなり外国のものを見まして、何もかもそれぞれ感心してばかりおっても、実は効果がどうも十分あがるように思わない。私どもの先輩はそこで一通り日本の国の国内事情を知った暁に外国へ出して、そして勉強してこい、こういうことを実はやらされたのです。私は外国に広く知識を求めること、これはもう望ましいことでございますから、あらゆるチャンス、機会にそういうことをとるのがいい、かように思います。このことを否定するのではありませんが、その時期はやはり効果の最もあがるときがよろしいのじゃないだろうか。ただいまも言われましたように、もう校長や教頭になって、そうして長いこと教育界で尽くし、あとはもう今度は退職するだけだという人をいまさらやっても、これは後継者に対する一つのいろいろのさとしその他はできるかと思いますけれども、直接には効果がなかなかあがらないだろう。やはり若い先生が必要なんじゃないだろうか。今度の五百名はそういう意味で必ずしも校長や教頭に限らない、若い先生にも出かけていただこう、こういうことでございます。そういう意味で効果のあがる方法を十分考えて、またそういう人たちが、自分たちが行ったことによって、その同僚並びに後継者に対しても引き継ぎあるいは自分たちが注意すべき点もそれぞれあるだろうと思いますので、そういうような道を開こう、こういうことを実は考えたのであります。  ただいまの教員の船、これは制度そのものとしても、船上でお互いが話し合うばかり、ただ着いた港だけで過ごすというようなことで必ずしも適当かどうかもっと研究する必要があるのじゃないだろうか、かように私は思いますので、この教員の船はちょっと私すぐには賛成しかねております。  ただいま言われるように、もっと広く知識を求める、そうしてそれが効果があがるような、そういう年齢層をやはり考えていくという、若い人をなるべく出せとおっしゃることについては私も賛成でございますから、ただいま老人ばかりを出すような考えでもございません。適当な人を出す。そういう意味でこの選考はなかなかむずかしいだろうと思います。しかし五百人、また来年も五百名、あるいはさらにそれがふえるか、いままでの三十五名からそこまで数をふやしたというところを評価していただいたと先ほどもおっしゃいましたから、私もたいへんありがたくお礼を申し上げるわけですが、やはり制度としてはもっと拡大していくような方向で、そうして十分その効果があがるようにすべきものだ、かように思っております。

山中吾郎日本社会党

○山中(吾)委員 その点については、私は一〇〇%賛意を表しているのではないのです。  もう少し論議を深めたいと思いますが、文部大臣、わからなければ局長でもいいですが、毎年小中高に教壇に立つ先生は何名ですか。

宮地茂文部省初等中等教育局長

○宮地政府委員 お答えいたします。概数でございますが、小中高合わせまして一万八千人程度でございます。

山中吾郎日本社会党

○山中(吾)委員 私は、この一万八千人の教壇に立つ——これは高等学校を入れると二万人だと思うのですが、すでに日本の国に生まれ育って二十前後になれば、やはり自分の学問、それと通じて外に出て見てくることによって正しい意味の愛国者になると私は思っているのです。こういう人たちを思い切って国が全額負担をして船に乗せてみせる。当面東南アジアのヨーロッパ人の数百年の植民政策の中で、貧困と無知の中で悩んでおる姿を見たときに、私は問題意識を持って、アジアにおける日本の使命であるとか、そういう中で教育に対する原動力が生まれてくるのだという考えで私はこの問題を論議してみたいと思うのですが、かりに現在の文部省の計画を見ておりますと、研修費か一人五十万と計上しておる。二万では大体百億である。一人当たり五十万の費用で全国の教壇に立っている先生に全部東南アジアを二カ月見せてたった百億である。なぜたった百億かといいますと、先生の給与の一号俸というのは、高額のものと、低いものとを平均しますと、平均月二千四百円である。期末手当その他を入れますと、年三万九千円くらいの持ち出しになります。これを三十年勤続をいたしますと、三十年間で国費が百十八万になる。二万人に計算すると三百億である。教壇に立つ前に、この人に一号俸三十年分三百億という国民の税金の持ち出しに比して、船に乗って世界を見せるために百億使うのは、それは人間形成をする一つでありますから、どれだけ大きい役割りを果たすかわからぬじゃないか。一人の先生が毎年自分の何らかの授業を持って卒業さす者は、大体百五十人くらいだと思うのです。小学校の十八学級、中学校で九学級の学校に三十年先生をしておれば、四千五百人の国民の人間形成に影響力を与える人間なんです。そういうことを考えて、教師になろうとする人々を、教壇に立てる場合に、立ったあとで勤務評定その他でしりをたたいたって教育なんてできるものではないんでありますから、そういう金の使い方こそ、私は最も有効な——もし教育者のあり方あるいは現在の教育のひずみを考えるならば、そういう着想をお持ちになるべきではないかと思うのです。これはどうでしょう、文部大臣。

坂田道太自由民主党文部大臣

○坂田国務大臣 山中さんのお話ですが、いま総理大臣がお答えになったのが私は非常に適切であると考えておるので、まだ教師になったばっかりで、あまり教育者として、はたして本人自身としてもこれを続けていくかどうかということもわからない人もたぶんおります。それからまた、実際上もまだ習熟もしていない、そういう人でなくて、やはりかなり使命感を持って、生徒、児童に実際的なこともやって、あるいはその悩みを悩み、あるいは自分としても勉強をし、あるいは国内における研修等も積み上げて、かなりの経験を持った人が外国に行くということのほうが、本人のためにもなるし、同時に生徒、児童に与える教育的影響というものははるかに、はるかに大きい。私どもはほんとうにいいことでございまするならば、むしろ教育というものについてはお金をかけるべきものだと考えておるわけでございますけれども、山中さんがいま御提案になっておるようなことが、それほど価値があるかどうかということについては、私はそうは思わないんで、むしろ今度われわれが計画いたしておりまする中堅の先生方を外国に視察をさせ、そしてまた帰ってきて、いろいろ日本という国を見直し、あるいは世界というものを見て、そしてりっぱな日本人というものはどういうものか、日本人であると同時に世界の中の日本人として恥ずかしからぬ日本人はどういうものでなければならないのか、そういうようなことに対する使命感を持たせるということが大事なんで、いま総理からもお話がございましたように、むしろこの五百名をふやしていくとか、あるいはこのやり方についていろいろ考えるとか、その中に一応われわれは航空機によるやり方をして、時間の短縮等も考えておるわけでございますが、場合によって船を使うということも将来においては考えられることではあるというふうに思うわけでございます。

山中吾郎日本社会党

○山中(吾)委員 総理大臣が言ったから、文部大臣はそのベースの上でただ答弁されておられるようでありますが、教壇に三年、四年の経験が必要なら、それはあとでいいと思うのです。少なくとも日本の国民の人間形成に三十年、四十年勤続する先生に対して、少なくとも二十年、また在職二十五年する前に、私は全部の先生を東南アジアでも、あるいは二月かけて世界を視察し、日本の国際的地位を自覚せしめるということは、非常に重要なことじゃないか。現在五百名というのは一県にたった十名なんですよ。そんなもの影響ないですよ。そこで、さらに教師の船ということの中で、洋上大学という構想で、そこに教授も乗り、そして共同生活をし、戦後集団生活のほとんど経験のない者であるからゼミナーをやり、そして教授を持ち教育計画を持って、そこで勉強しながら同時に他国を見て帰ってくる。すべての教師にそういう経験をさすということが、私は一番いいと思う。国民の七〇年代の国家目標を明示される立場からいうならば、そういうプログラムがなければ作文に終わるのじゃないか、こう思うのですが、それはいかがでしょう。

佐藤一郎自由民主党経済企画庁長官

○佐藤内閣総理大臣 山中君の構想はあまりにも雄大過ぎて、ちょっと取り組めないのです。いま民間でもすでに青年諸君の国際交流、これはなかなか盛んに行なわれております。先ほども顔を見ていて、わが党の予算委員の川崎君などはそのほうの熱心なる指導者で、国際交流協会、そのほうを主宰して、そして欧州にまで若い青年を送る、また同時に青年を迎える。また日米間でも、高等学校の学生自身が相互に夏休み中やっぱり交歓、交流しております。私は、ひとり先生の場合に限られるこのことも大事なことであろうと思いますが、どうもいま山中君が御指摘になるような点ならば、これは国民全体においてただいまのような交流の機会をもっとたくさん持つべきだろうと思います。政府は政府としてそれぞれ関係してまいりますけれども、私は、いまどうも学校教育、教員の立場でものを考えたときに、教員御自身がやはりある程度日本で教育の実情を知り、同時に比較研究の意味で外国から学ぶものがあれば学んでくる、こういう制度のほうが望ましいのじゃないだろうか。数は少ないようですが、私は長期にこれが計画されることによって、よほど改善されるだろう、かように思います。  ただいまさらに洋上大学、海洋大学まで実は発展した構想を発表になりました。私は、これなぞはたいへんおもしろい方法だと思いますけれども、これはいま青年の船がそれに該当するような仕組みで仕事をしております。この青年の船はただ物見遊山に歩いているわけじゃありません。もちろんその船の上でいろいろの勉強をしながら、また寄航地においてのそれぞれの土地の事情、あるいは友好関係を進める、こういうような努力をしてまいっておりますから、私は青年の船がある程度お役に立つのじゃないだろうかと、かように思います。ことに山中君が御指摘になりますように、二万人近い新規採用者、それを事前に船に乗せてやるとすれば、これはたいへんな船も要るだろうし、大船団が必要なんじゃないだろうかと実は思いながら、そこらはどうかな、ただ借りるだけで済むわけでもないだろう、かように思って、これは最初にロマンを与えろとこう言われるから、その辺であまり議論しないほうがいいのかなとも思いながら、お話を承っていたのですけれども、私は実際的に実施のできる範囲で、こういう事柄は地についた方向で御趣旨を尊重した方向で進めたい、かように思っております。

山中吾郎日本社会党

○山中(吾)委員 総理大臣まだ十分にその内容について検討する時間がないのでと思いますけれども、青年の船を私は否定をしません。しかし青年の船はその人の身につけたままで、その人自身の精神に影響を与えるだけである。昨年東南アジアに行ったときに、青年の船と一緒になりましたよ。途中で会っておるのです。それはみやげものを買ってくるだけとは思いませんけれども、その人に影響を与えても、その人、青年一人なんです。私は、教師というのは、かりに一年百五十人ずつ影響を与えたならば、三十年で四千五百人に影響を与えるのです。二万人が全部その影響力を見ると九千万です。もう国民の何らかに影響を与えるものなんですね。私はこれは国民の税金の使い方としては最高だと思うのです。そして世界に行けるということで優秀な青年諸君が教壇に立つ選択をするのではないか。しかし、体験が必要ならば教員を五年したあとという時期は検討していいと思うのです。  それから船についても、国産の船ですから、私は調べてみましたが、一万トン三十五億円の建造費だそうです。四百名の教員を乗せる、教授が二十名、操作をする者を入れて九十名くらい要るので、維持費が一億であるから、大体五十万の研修費とプラス八万何ぼの六十万くらいの金が要る。建造費については一隻一万トンで三十五億になる。しかしファントム一機二十億じゃないですか。私は一番大事な自衛体制というものはそういう人間形成にあると思うので、安い費用ではないかと思うのです。また古い船を改造することもできる。それで大体四百人の教員を乗せて、そこで海上大学を開きながら行って、十六隻でいいのである。それを五カ年計画でやれば、三隻ずつ建造していって五カ年で十六隻はできるのだ。あるいは古いものを改造すれば半分でいいかもしれない。そうして各教員養成大学の教授陣、あるいはその他から選ばれた人あるいは教育行政の担当者が乗って、二カ年の洋上大学をしながら、そうして全国のブロックに一つずつ船を配置していけば、私はそのプログラムを考えて提案を申し上げているので、これは党がどうだこうだと言っておるのではないのであります。しかし、いまそういう構想を検討され、いろいろな意見を聞くようなお話でありますから、私はそこに直ちにどうとは申し上げませんけれども、昔のように軍隊のない日本の国でありますから、優秀な者を教壇に立てて、そうして外からかれこれ言わないで、教えることに生きがいを感ずるエネルギーを持つ教師をつくるのにはこれ以外に道はないのじゃないかと思い詰めて私は申し上げているのです。ぜひこの辺については、方法論にいろいろあるでしょう、御検討願いたいと思うのです。もう一度お聞きいたしたいと思います。

佐藤一郎自由民主党経済企画庁長官

○佐藤内閣総理大臣 いろいろ御説明になりました。私もここに三百億の金があればどういうように使うか、こういうことを考えながらただいまのお話を聞いたわけであります。御承知のように、日本一渋い大蔵大臣でございますから、私もこれを説得するのはなかなか骨が折れる、かように思いながらただいまのお話を聞いていたのであります。しかし、かようなことを申しますと、いかにも冗談に話をごまかしたようにお聞き取りでは私の真意でございませんから、私も教育が最も大事なことだ、かように思えばこそ皆さんとお話をするのでありますし、どうかそういう意味でその気持ちだけは御理解をいただきたい。ただいまのことばかりが一つの方法でもないだろうし、私はいまの教員の諸君の待遇そのものからして実は問題なんだ。外国を見ることも問題だが、現在の待遇自身がすでに問題ではないか。あるいはその養成する前に、外国へ出かける前に、まず勉学の途中からでも、過去のような徴兵免除はないにしても、何か援助の方法はないのかとか、いろいろもっと身近な方向で考えるべき事柄があるのじゃないだろうかと実は思っておる次第でございます。そういうような点がおそらく次々に審議会等から意見が出てくるのじゃないだろうか、かように思っております。そういうものを実は期待しながらただいまその答申を待っておるというのが真の実情でございます。途中で冗談めいた話をしてまことに恐縮でございましたが、真意はただいま述べたような気持ちでございますから、この上とも建設的な御意見をどんどん聞かしていただくようにお願いします。

山中吾郎日本社会党

○山中(吾)委員 一つだけなお総理大臣に認識を深めておいてもらいたいのですが、教壇に立った人を教育するだけでなくて、優秀な青年諸君を教壇に吸収する政策、ここに重点があるのでありますから、よほどあらゆる検討をしないと、そういう政策は出ない。私は、教壇に立ったならば、すべての者が外国を視察することができるというビジョンは非常に大事ではないか、真剣に御検討願いたいと思うのです。  大蔵大臣は財政的にというので、いま冗談めいて一言われたので大蔵大臣にお聞きしますが、大蔵大臣の施政演説は、外務大臣は外交基本方針を述べて、あなたは今後の展望について国家的目標を述べられて「新たな展望に立って、真に世界に誇るに足る日本国を建設すること、これこそが、新しい七〇年代の国家的、国民的目標でなければならないと思います。この目標に向かって立ち上がるべきときが来たのであります。」と本会議において施政演説と間違われたとおり、施政演説と同じように国家目標を明示されておるので、総理大臣と間違われることも無理はないと私は思って敬意を表して読んだのでありますが、そういう立場から、私は日本のあらゆる経済政策の基礎に国民の人間形成というものが伴わなければ、経済は成長し精神は荒廃するのである。そういう立場に立って、少なくとも日本の民族の素質でA級の者が教壇に立つ、そういう政策を立てるためにある程度の金は惜しくないじゃないか。そうしてその素質が優秀な者が立って、再教育することによってはじめて効果が出るのでありますから、教壇に立つ者が一定の経験のあとでけっこうです。少なくともアジア民族の中で、一つの大きい貧困と無知の中で悩んでおる人々の、視察の中で問題意識を持って教壇に立つ、そういう人をつくることも含んで、私は教壇に立つ全教員の一号俸の二分の一にしか相当しない費用、そういう費用で見せる、教壇に立つ全教員を、年々二万人程度の者を見せるというふうなこと、それに大体百億くらいかかる。しかし、そういう着想というものは、私は国家目標を施政方針演説と同じような気概をもって述べられておる大蔵大臣の検討に値するものではないかと思いますが、いかがです。

坂田道太自由民主党文部大臣

○坂田国務大臣 山中さんの御提案、気持ちはよくわかります。私もなるべくいい先生が子弟の教育に当たってもらいたい、こういうふうに思いますが、さてそれを実行するにはどうしたらいいかという具体的な方法になりますと、いま政府が予算案で御審議をお願いしておるあの方法を拡大する、これが実際的じゃないかというふうな感じがいたします。

山中吾郎日本社会党

○山中(吾)委員 五百名から拡大して二万にするんなら百年もかかるのでして、やはり着想というものは次元の違った立場において着想しなければ、そういう大蔵大臣のような着想からは積み重なっていかない。すべての教師に世界を見せるという着想で私はいってもらいたいと思うのです。まじめに検討してください。  次に中教審の答申についてお聞きいたしたいと思います。  中教審の答申を見ますと、私は、基本的にあの答案からは日本の大学の新しいビジョンあるいは安定した制度の改革というのは、あの延長線、あれをたたき台にしたら出ないのじゃないかというふうに考えておるのであります。  一つは、六種類の大学を出しておりますが、現在の工業高等専門学校、短大全部を大学のイメージに入れるために六種類になってしまった。高等教育の中では、後期高等教育が研究と教育に値するいわゆる大学制度であり、前期高等教育は専門学校と、前期の高等教育と後期の高等教育を分けないと大学のイメージは全部混乱をする、私はそう思っておるのです。逆に、現在の六三制は、分ける必要のない中学を、後期中等教育、前期中等教育に分けてこまかく三、三にしてしまっておる。中等教育は一つの学校でいいのです。高等専門学校と大学と、いわゆる教育を主とする高等教育と、教育と研究というものを含んだ大学の後期高等教育とをごっちゃにして六つもつくろうとするから、混乱をして始末がつかないのじゃないか。そういう意味において、大学制度と同時に六三制全体をやはり検討するという発想でないと、私はこれはどこへ持っていってもまた振り出しに戻らざるを得ないと思うのです。基本的に再検討をされる必要がある。いかがですか。

坂田道太自由民主党文部大臣

○坂田国務大臣 その点は初めから、幼児教育から大学までの教育制度の総点検、どうあるべきかということを諮問いたしまして、その中間におきまして大学問題か非常にシリアスになってまいりましたので、その中で特に大学の問題については早く答申をしてくれという形で、大学制度の答申を早急にお出しいただくという形をとってきておる。したがいまして、御承知のように、二十五特別委員会には、いま御指摘になりました幼児教育から大学までの制度の改革についての検討をわずらわしておるし、二十六特別委員会には新しい大学の制度について答申を求めておる、こういう形になっておるわけで、お説のとおりをいたしておる、こう御了解を賜わりたいと思います。

山中吾郎日本社会党

○山中(吾)委員 その御答弁は振り出しに戻して検討する余地もあるというお話ですか。私の申し上げておるのは、あの発表された——総理大臣も常に答申待ち、答申待ちと言われておるものですから、御本人の識見をもってどうというのではなくて、答申待ちと言われる。答申が決定的になるということを前提としますと、あの答申では未解決、どうしても解決はないということ。その解決をするのには、大学そのものに、前期高等教育と後期高等教育の中で、後期高等教育が大学なんだ。戦前において旧制高等学校、旧制専門学校というものは前期高等教育なんだ。逆に、現在の六三制のほうは、中学教育を二つに分ける必要がないのに、前期中等教育と称して中学校、後期中等教育といって高等学校という名前をつけて、戦後マスコミその他から非常に人間の成熟が早いのに中等教育に押えつけて、そしてどちらも前期、後期の中等教育にしてしまった。全体を整理をしなければ安定した制度はできないのだ。したがって、あの出し方を、別々に答申されておるのだから、結局はせっかくの国の予算を計上しながら努力をしても混乱をするのではないか。またもとの振り出しに戻すということもお考えになっているのかどうかということです。

坂田道太自由民主党文部大臣

○坂田国務大臣 最初に申し上げておきたいと思うのですけれども、振り出しには戻らないつもりでおります。  それから、いまお話しの後期中等教育の問題と、それから大学を前期と後期に分けるというお話、それはいろろろの分け方もあると思うのです。と申しますのは、戦後短大から旧制の帝国大学を移したような新制大学、つまり研究中心の大学というものまでを含めて大学ということばで包含をしておるわけですが、しかし、これはむしろことばと内容とを一致させるとするならば、高等教育機関という形の中に、短大あるいは商専、そして一般教養の大学あるいは研究中心の大学、こういうふうな目的、性格を持った種類分けをしたほうがいいのではないかというふうに思いますし、また前段の義務教育、そして高等学校との関係を前期、後期と分ける必要はないのじゃないか、つまり義務教育の中学校の部分を前、それから高等学校の部分をあとと、そう言われればそうだとも思うのですけれども、しかし、いまの制度として高等学校を後期中等教育という形でとらえてもこれはいいのじゃないか。ただ、いま御指摘になりました二十五特別委員会と二十六特別委員会との境目のところを一体どうするのだ、それをやっておると今度また最初の振り出しに戻らなければどうにもやれないのだという御意見は、一応のお考えはわかるわけでございますけれども、私といたしましては、その辺二十五、二十六合同委員会も四回も開いておりますし、今後もまた開くつもりでおりますから、そう御心配になる点はないのじゃないかというように、ただいまは考えております。

山中吾郎日本社会党

○山中(吾)委員 戦前においても十八歳というのは旧制高等学校、高等教育の第一段階だ。いまマスコミその他、あるいは栄養もよくて人間の発達のスピードが速くなっておる。しかし、それは成熟と人格の問題もあるけれども、わざわざ高等学校の名前において中等教育に押えてしまっている。十八歳くらいはもうむしろ高等教育、専門教育の段階に進めて、そして教育の効率化をはかって早く社会のために尽くせるような構想が正しいのではないか。逆に押えてしまっている。こういうことを前提として、その上に大学をまた混乱した状況に置くようなあり方を発想の原点にしておれば、またもとに戻るのだ。だからそういう意味において中教審は——私はイデオロギーのかれこれと言っているのじゃないのです。いわゆる純粋の教育制度論として、あのままでは混乱をするだけであるということから、答申待ち、答申待ちという責任回避のようなことをなさらないで、国会という場面もあるのですから、もう少しオープンにこの問題を、百年の大計なんですから、発想についてもっと論議をすべきじゃないか。いかがでしょう。

坂田道太自由民主党文部大臣

○坂田国務大臣 制度の問題、特に大学教育もさることながら、幼児教育、小中高の教育というものは国民的課題であり、国民一般の非常に心配もし、考えておる問題でございますから、私どもがただ考えたからすぐこれを法制化するとか制度化するとかいうようなことは毛頭考えておらないのでございまして、この中教審の段階におきましても、試案として世の中に発表して、国民各界、各層の意見を取り入れる、あるいは公聴会も開くというような手だてもいたしております。また二十五特別委員会の幼児教育から高等学校の制度改革の問題についても、そのように国民に問いかける、そしていろいろ各政党の御意見も承る、そういう手続関係を踏んで、そしてやはり国民の大多数の合意をまとめつつ、制度の改革をやらなければならないと私は考えておるわけであります。

山中吾郎日本社会党

○山中(吾)委員 これを深く論議をする時間はないので、私、結論を先に申し上げて、次に進みたいと思いますが、先ほど申し上げましたように、高等教育即大学教育というイメージで、大学教育をむしろ逆に混乱をせしめるという発想は、これは根本的に欠陥が出るであろう。  第二には、学生の地位が不明確である。学生はすでに二十五、六歳から大学院二十七、八歳までにわたる、いわゆるりっぱな成人の教養ある民族の部分を占めるものであるから、それを教わる立場だからといって無権利の立場に置いて解決するはずはない。一つの変革においては、大きい歴史的役割りを果たす年齢なのであるから、やはり学生の地位を明確にして——国民に開かれた大学ということは、同時に国民の一部分であり、成人年齢以上に達しておる学生にも開かれたというイメージでなければ解決はない。その意味において、学生の地位は不明確である。おそらくこれでは解決はないであろう。  さらに、依然として一番大事な幼児教育が教育体系の中からはみ出ておる。就学前という矛盾した概念で、四歳、五歳、六歳のこういう一番大事な人格形成をする教育、それを教育制度からはみ出して、いわゆる小学校から教育体系というイメージがある。そうでなくて、いわゆる幼児教育は、一方において厚生省管轄のただ保護するだけの社会保障政策としての保育園、あるいは教育制度として考える幼稚園という二元的な、そういう制度を教育体系の中に入れて、そうして幼児教育から大学に至るまでの一貫した教育ということを制度の発想にしない限りは、これも人間形成としては大きい欠陥が出る。極端なことを言う人は、幼児教育の欠陥が現在の大学学生の一つのイメージをつくっておるとさえ言っておるのに、やはりこれもはみ出しておる。その意味において、基本的に再検討すべきであるということを申し上げておきたいと思うのです。  そこで最後に、国際的な視野に立った新しい大学の創造というものが欠けておることを私はさらに遺憾に思っておるのであります。このときに、総理大臣が、新幹線大学というのですか、一つの新しい大学というもののビジョンをお出しになったことを記憶しております。この新幹線大学は、橋本国務大臣ですか、担当で何か発表されたことも聞いておりますけれども、放送大学以外に筑波山ろくその他に何か考えている。途中立ち消えになったかどうか知りませんが、新聞で見たことがあります。私は、どういう大学の理念というもので新しき大学構想をお立てになっておるのか、不敏にして認識をしていないのですが、そういう新しい大学構想についての総理大臣の御意見をお聞きしたいのです。

佐藤一郎自由民主党経済企画庁長官

○佐藤内閣総理大臣 大学教育、これは教育の一部門だ、教育の最高部門だといってもいいかと思いますが、そういうように世間では扱われておる。ところが、教育自身がその期待にこたえるような状況でない。そこに大学紛争が起きたり、あるいは大学紛争という形までならなくとも、非常に不信な大学が出てきている。これはもう山中君も御承知のとおりだと思います。そこで、いろいろな説が出てきて、とにかくいままでの大学を直してみたって始まらないのじゃないか、やはり政府は大学に必要な予算だけ提供して、大学の先生方に思い切って教育の最高機関にふさわしいような機能を発揮してもらいたい、そういうのがいいのじゃないか、こういうようなことを実は申したのであります。  これは冒頭にお尋ねのありました、教育そのものが人格形成、人物をつくる場所だ、かように私は考えておりますので、ただ単に経済的に生産性の上がるような知識を身に備えるというようなところではないんだ、かように私は思っておりますので、いわゆる新幹線大学だとかあるいは新構想だとかいうような話が次々に出たのであります。そのうちで比較的具体的なものと考えられるのがいわゆる放送大学、これはこれからの問題ですが、ひとつ取り上げてみよう。これはいま新しく大学をつくろうということなしに、いままである大学、これに改善を加えたらどうかという方向にいまは落ちついておると思います。しかし、われわれの期待に沿わないならば、これはやはり改善でなしに、全然新しいものをスタートしてみよう、これも一つの行き方ではないか、かように思っております。

山中吾郎日本社会党

○山中(吾)委員 そうすると、放送大学が具体的なビジョンとして出ておるということのようであります。  そこで、私、現在の混乱をした大学そのものは、その大学自身で解決をしなければならぬと思うので、これはこれとして、大学立法ができて収拾ができても、解決のない収拾では、そのままではおさまらないのです。したがって、日本の大学制度は、中教審とともに根本的にお互いに努力して解決したいと思いますが、この新しい大学制度を改革するときに、どうしても日本の平和憲法のもとにおいて、さらにまた七〇年代の日本というビジョンの中で、経済的発展が、同時に外からはエコノミックアニマルといわれ、非常に危険視されるという要素も入っておるので、こういう大学構想のときに、幸いに昨年の国連総会においてウ・タント総長が年次報告の中で国連大学という提案をいたしたのであります。これを日本に誘致をするということが、私は、東南アジア、世界に対して——日本は経済大国から軍事大国になるのではないかという誤解も生んでおる、そういうときに、こういう国際機関を日本に誘致するということは非常に適切なる方策であると思うのですが、これは文部大臣いかがですか。

坂田道太自由民主党文部大臣

○坂田国務大臣 昨年ウ・タント事務総長が国連総会におきまして国連大学構想について表明をいたしましたことは、御指摘のとおりでございますが、ちょうどそのころでございます。昨年の九月の第八十三回ユネスコ執行委員会に、私のほうのユネスコ国内委員会の事務総長伊藤君が参りまして、ちょうど本年一九七〇年が国際教育年でございますから、その記念事業として新しい形の国際的な大学の設立を考えることは有意義である、それについての議論をしたらどうか、あるいは調査研究をしたらどうかという発言をいたさせておったわけでございますが、たまたまウ・タント事務総長がそのころそういう構想を発表いたしまして、そうして国連総会におきまして、十二月満場一致でこれに賛成をし、そして具体的な専門委員会でございますか、それを設けて、いろいろの国連大学の構想を練り合おうあるいは話し合いをしよう、調査研究をしようということで、本年度の国連総会におきまして、またそのことについて話し合いが行なわれるということでございます。  私どものところにおきましては、ユネスコの中に小委員会を設けまして、これらにつきましてわれわれも関心を深く持っておりまするので、一体どういうような大学ができたほうがいいのかということについて検討いたさせております。また、国連におきましてこれからどういうふうな取り扱いになるか知りませんけれども、それに委員を派遣させていただきまして、そうしてわれわれもその中に入って、その問題の国連大学なるものが一体どういうものであるべきかということの検討にまず参画をいたしたい、かように考えておるわけでございます。われわれといたしましては、非常に深い関心を持っておる。しかしながら、これに対してはやはり謙虚に、慎重に、しかし意欲的に取り組まなければならない、かように考えておる次第でございます。

山中吾郎日本社会党

○山中(吾)委員 坂田文部大臣は、二十八日の日本ユネスコ委員会において積極的な姿勢を示したが、この会議に来ると少し遠慮をして、慎重にと言っておりますが、賛意を表されておることについては、一応確認しておきたいと思います。  このウ・タント事務総長の年次報告を見ますと「最近、私は国際大学の設立を真剣に考えてきた。この考えが私に起こったのは、国際的性格を持った学問の機関を設立しようとの個人の働きに注目したからである。」「私は、国連大学の設立を真剣に考慮すべき時期が到来したと思う。それは、真に国際的性格のもので、平和と進歩とをうたった国連憲章の目的に沿ったものである。多くの国から派遣された教授がスタッフとなり、学生はいろいろな国や文化の中で育った男女となろう。世界の各地から集まった学生は、国際的雰囲気の中でともに学び、生活することによって、お互いの理解をさらに深めることができるだろう。その創立期においてさえも、単に誤解と不信をつくり出すにすぎないいろいろな国家や文化との間の障害を打ち破ることができるだろう。」ということを主唱して、国連大学の設立を提案し、その「大学の所在地は寛容の精神と思想の自由のために知られている国にすべきである。」私はそういう意味において、この憲法を持っておる日本、しかしまた、経済的に誘致できる実力を持った日本、東西南北の接点である日本が最適の国であると思うのです。この機会にこの国連大学誘致を積極的に進めるべきであると思うのですが、外務大臣のこれについての御意見をお聞きいたしたいと思うのです。

愛知揆一自由民主党外務大臣

○愛知国務大臣 この大学、ウ・タン事務総長の提唱しましたのは、国際大学という名で呼ばれているようですが、いままでの経過は、ただいま山中委員がお述べになりましたとおりと承知いたしております。そしてこれは実は比較的簡単な提案でございますから、こういう趣旨を提案したそのウ・タン事務総長のイニシアチブに対しては政府としても高く評価しておりますけれども、同時に、具体的なまだ構想というものが示されておりませんし、それはまた当然なことだと思います。これから国連事務当局としても、ユネスコと協力してこの国際大学の目的とか機構とか規模とかいうようなことを検討して、そしてこれをだんだんものにしていこう、こういうふうな段取りになっておりますので、わが国としても、ただいま文部大臣が言われたとおりでございまして、非常に強い関心を持って、まずこの目的、組織等について各国の協力の上にりっぱなものが構想されるように、そしてそれとの関連においてわが国への誘致というようなことを考える段取り、こういうふうに考えておりますが、その構想ができ上がる経過においても、わが国としては積極的に意見を述べ、また献策することが必要ではないか、かように考えております。  同時に、各国も非常に関心を持っておりますし、たとえばこの組織を一カ所に、膨大な、いわゆる既成観念の大学というものをつくるという構想になるか、あるいは国連からの発想でございますから、しかるべき各国に分散をしたような考え方の構想になるか、それらのところについても、いま確たる見通しはないわけです。同時に、日本の国内におきましても、すでにある程度の関心を呼びまして、私のところへもすでに国内数カ所から、ぜひ日本に誘致してほしい、誘致する場合にはここの土地に、ぜひつくってほしいというようなことが出てきておるようなわけでございまして、各方面の非常に強い関心を呼んでおることは事実でございます。

山中吾郎日本社会党

○山中(吾)委員 外務大臣の外交演説の中に「平和への戦い」という非常に私も共鳴する表現があるのですが、単なる平和に徹するのでなくて、平和を新しくつくっていくという意味で、こういうプログラムというものを実現する積極的姿勢をお示しになることが平和の戦いだと思う。だから、ウ・タント総長が一つの構想を出すのを待つのでなくて、積極的に日本はこういう構想を持つんだ——あるいはフランスが学部分散という主張をしておることも聞いておりますが、それならば、アジアにとって一番大事な開発学部でもいいでしょう、そういうものを積極的に出して、これを誘致する方向に努力されるべきだと思うのだが、いかがでしょう。

愛知揆一自由民主党外務大臣

○愛知国務大臣 ただいまお答えしたところで、趣旨はおわかりいただいていると思いますけれども、まずその構想を具体化するその段取りにおいて、日本としては積極的な協力をしたい、そしてそういうことが実れば、自然また日本への誘致ということも結びついてくるのではないかと思われるわけでございます。  先ほどもお述べになりましたように、こうしたものを設置する国としては、寛容な精神と自由な精神の横溢している国が望ましい。主観的に言えば、お互いにまさに日本はその最大の適した国ではなかろうかと思っております。

坂田道太自由民主党文部大臣

○坂田国務大臣 ウ・タントの話を待つまでもなく、実はわれわれの国内ユネスコ委員会におきましても、アジア文化センターというものをぜひつくるべきである、そしてユネスコ活動を通じてアジアにアプローチしなければならない。単に経済的に貢献をするばかりでなくして、文化、教育、技術、そういうような面においてわれわれは協力を惜しまない、そのことが日本のこれからの役割りとして最もふさわしいものであるという一つの理念のもとに着々と、われわれユネスコ委員会におきましては、活動、調査を進めておりますし、本年度の御審議を願っておりますこの予算におきましても、わずかなお金ではございますけれども、この調査費が組まれておるということもよく御了承を賜わりたいと思う次第でございます。

山中吾郎日本社会党

○山中(吾)委員 私は、戦力放棄、戦力不保持という高い理念を掲げておる憲法を持っておる日本では、武力による集団安全保障条約よりも、日本の国土がどこにも侵されないような平和機構を日本の国土に確立していくということが、非常に大事な憲法の線に沿うた平和への戦いだと思うのです。自衛隊の三次防、四次防と、そういう増強の方向に対する歯どめは、こういう国連大学というふうないわゆる国際的な機関を誘致して平和機構を確立する、それ以外に歯どめはないのではないか。そういう意味において、教育政策であると同時に、自衛政策なんだという意味において、検討すべき価値が十分にあるのではないかと思うのですが、総理大臣、いかがでしょう。

佐藤一郎自由民主党経済企画庁長官

○佐藤内閣総理大臣 目的はともかくとして、私もこういう問題が、外務大臣や文部大臣からお答えしたとおり、日本に誘致できればこんないいことはない、かように思っております。

山中吾郎日本社会党

○山中(吾)委員 外務大臣にこの機会になおお聞きしておきますが、平和の戦いについて。現在平和機構として第二次世界大戦後にできておる国連の本部が、ベトナム侵略戦争を遂行しておるアメリカのニューヨークにあるということに不信感を持ったことは、外務大臣、ありませんか。     〔坪川委員長代理退席、中野委員長着席〕

愛知揆一自由民主党外務大臣

○愛知国務大臣 これはお話しをすると長くなりますから、簡単に申しますけれども、まず第一の、ベトナムで侵略戦争を行なっている云々ということについては、私は意見を異にするわけでございます。  それから国連はことしいよいよまる二十五周年を迎えるわけでございますが、ニューヨークにおきまして従来期待される活動をしておる。足らざるところもあり、また、わが国から見れば、特に国連憲章や運営等についていろいろ建設的な意見も持っているわけでございまして、こういった点については、すでに国連の場におきましても、日本の立場というものを鮮明にしております。かつ提案もしておるくらいでございますが、その設置の場所ということよりも、国連の機構というものが、われわれの望むように、なお一そう世界的な期待にこたえ得るような運営ができるようにしたい。そのことを主たる重点にして、今後とも考えていきたいと思います。

山中吾郎日本社会党

○山中(吾)委員 少し問題をずらしたようですが、自由国の、しかも最大の戦力を持っておる——侵略といわないかどうかということは別にして、太平洋を越えてアジアまで出兵をしておるアメリカの二ューヨークに国連本部があって、世界の民族が全幅的に信頼する平和機構に発展はなかなかしないではないか。かりにソ連にあったらどうなるか。そのときに、平和憲法を持ち、総理大臣は平和に徹する憲法を守ると言っているならば、国連本部は日本に誘致するぐらいの気概を持って言わなければ、平和の戦いにならぬと思うのです。またそれだけの資格があり、そういう決意をもって日本が世界史における存在理由を主張できるのではないか。現在の総理大臣以下ロマンチシズムが少しもない。現実が政治である。しかし、高い一つの民族が世界に胸を張って主張できる、そういう意味のロマンを持たなければ、七〇年代はたいへんなことになると私は思うのです。国連本部を誘致するぐらいの姿勢をなぜ示さないのか。それが現実にできなければ、せめて国連大学という国際機関を持って、新しいそういう角度から世界に対する平和の戦いを遂行するプログラムがやはりなければならぬ。そういうものを少しも出さないから、全部施政演説あるいは外交演説が作文に終わるんじゃないですか。一つぐらいは具体的平和のプログラムをお出しになったらどうですか。自衛隊の増強ばかり考えて、芸のないことはなはだしい。だから、私はそういう意味における平和のプログラムとして国連誘致にもう少し積極的に努力をされてしかるべきではないか。あらためて総理大臣にもう一度お聞きいたします。

佐藤一郎自由民主党経済企画庁長官

○佐藤内閣総理大臣 国連はいまさら新しい組織、機構ではございません。さきの大戦の結果、各国が国連憲章をつくり、そうしてニューヨークに置いたものでございます。いまさらこれをそのまま誘致してみても、これはあまり芸のないことだろうと思います。私は、ただいま国連自身が改良をする、その時期に来ているとかなんとかならともかくですが、いまのままでやはり続いておる、そういう際でございますから、あらためて誘致するとかどうとかいうような問題じゃないだろうと思います。  私どもはいま国連に加入し、やはり常任理事国になるというようなこともまだなかなかできないような状態であります。しかし、会費そのものの負担はだんだん日本も多くなりまして、おそらく近く世界第三位くらいのところへいくのじゃないかと思います。そういたしますと、会費だけを支払うことが日本の能ではない。日本はやはりそれにふさわしい立場が必ず与えられるし、またそれを要求するだけの資格ができてくるのじゃないだろうか、かように私は思っております。ことに御指摘になりましたように、平和憲法のもと、このまま進んでまいるのですから、日本が一番ふさわしい状況じゃないだろうか、かように思います。いまの国連を新しく誘致ということとは別に、いまその機能の中におきましても、日本の果たすべき役割りはあるのじゃないだろうか。それをもっと積極的に認められた形で、進んでわれわれの役割りを果たしていく、これが望ましいことではないかと思います。

山中吾郎日本社会党

○山中(吾)委員 私の申し上げたのは、国連本部の誘致ぐらいのロマンを出すべきだと言ったが、現実にはそうはいかないだろう、せめて国連大学に対する積極的な誘致の姿勢をお示しになる必要がある、それをあらためてお聞きしたいと申し上げたのです。

佐藤一郎自由民主党経済企画庁長官

○佐藤内閣総理大臣 そのほうは、先ほど外務大臣並びに文部大臣のとっている答弁、またお答え、これを私は先ほど了承しておりますし、またそれに力をかしておる、こういう状況でございます。御了承いただきます。

山中吾郎日本社会党

○山中(吾)委員 総理大臣、外務大臣、文部大臣がその方向に努力を積極的にされることを確認をいたしましたので、これは私は、これこそ超党派的に、こういう国際問題であり、同時に教育問題であり、平和問題であるから、努力すべきだと思うので、国会の中においても、そういう誘致の特別委員会でも設置くらいして努力すべきだと思うし、あるいはこの国会で誘致の決議でもするくらいの姿勢をお示しになるのが非常に好ましいことではないかと思うのです。その点はいかがでしょう。

佐藤一郎自由民主党経済企画庁長官

○佐藤内閣総理大臣 この点は、先ほども外務大臣並びに文部大臣が答えておりますのは、ウ・タンさんの発言というものが非常に簡単なことばでございますから、中身が十分まだ固まっていない。いまどういう中身にしようか、国連大学はどういうような内容を持ち、あるいはどういうような機構にしようかという、それをただいま日本もその委員の一人になりまして協力しておる最中でございます。ただいまきまらないうちから、この次必ず日本に誘致する、こういっているのはやや時期が早過ぎるのではないかと思っておりますが、私どもはただいま協力しておりますことは、これが実現すること、実現する以上当然日本の国にまず持って来たい、そういう希望を持ちつつ、ただいま協力している、このことだけ御理解いただきたいと思います。  またもちろん、そういう意向はできるだけ早く表明しておかないと、各国ともものがきまってからでは案外おそいだろうと思いますから、そういう時期を失しないこと、これも大事なことでございますから、せっかく御注意がありましたので、そういう点は委員の一人として中身をいまきめつつある際でございますので、そういう際に十分明確にしておきたいと、かように思います。

山中吾郎日本社会党

○山中(吾)委員 ウ・タント事務総長が原案を構想される前に、その原案に影響を与える立場も含んでわが国における具体的な構想をやはり国内的に立てて、それを助言案として、そしてあらわれたときに日本の見解が入っている、そういう立場が積極的立場だと思うんです。それはどうですか。

坂田道太自由民主党文部大臣

○坂田国務大臣 先ほどお答えいたしましたのはそのことでございまして、われわれのユネスコ国内委員会においてその具体案を練っておる。そして今度参りましたときに、中に入ってそれを主張するということでございます。

山中吾郎日本社会党

○山中(吾)委員 大蔵大臣、さいふのひもを持っておられるのですが、これを誘致するとすれば、それに応じた財政支出がまた出てくると思うのです。この国連大学誘致については国際的な問題であり、日本の国際的地位を考えたときに、平和に対する世界史に貢献する立場で非常に有効な、日本の現代の国の基本方針のもとに最も妥当なプログラムであると思うのですが、大蔵大臣は、これについても、ここでひとつ御意見を表明していただきたいと思います。

福田赳夫自由民主党大蔵大臣

○福田国務大臣 これはできますればたいへんけっこうなことだと思います。大歓迎であります。

山中吾郎日本社会党

○山中(吾)委員 できますればというのは、出す覚悟だというのですか。間違いないですか。——国連大学について私は各責任者のほうから積極的な姿勢を持った答弁を大体確認をいたしまして、大いに期待をいたしたいと思うのであります。  それでは、最後に総理大臣に。施政方針演説の中で一番最初に国の目標、新しい指針についてお書きになっておるところを見ますと、相当抱負を持ってお書きになっておると私は見ておるのであります。すなわち、模倣、追随の時代は去ったという一つの立場から、日本は軍事的手段によって世界政治上の役割りを果たす国ではない、これを一つ明確にされておる。第二には、単なる福祉至上主義の国家を目標とすべきではない、これを出しておられる。そしてそれに基づいて——私が明確に確認をしておきたいという興味を非常に感じたのは、結びの最後に、日本という国が存在することが人類を豊かにするゆえんであると世界からひとしく認められる、そういう国をつくりたい、これについて私は一つの日本の未来に対するプログラムをお持ちになっておられると思うのだが、中身は、一体その中で一番何をお考えになっておられるか。     〔「ことばだけだ」と呼ぶ者あり〕

佐藤一郎自由民主党経済企画庁長官

○佐藤内閣総理大臣 まあ聞き手によりまして、いろいろのとり方があるだろうと思います。いま言われるように、不規則発言もございます、ことばだけだろうというようなお話もございますが、しかし、私は、山中君はまじめにこの問題についてお尋ねだと思いますので、私もそういう意味でお答えしたいと思います。私は、いままで日本という国はとかく誤解されがちだ。これは過去の戦争、まあ終戦、敗戦前の状態、そこらに非常な誤解を招くものがあったと、かように思いますので、それがまず完全に払拭されることが望ましいのです。そういうことを考えますと、やはり東洋的な国のあり方、ほんとに自由を愛し、平和に徹する国柄、そういうものが同時に道義的な国でもあるというそういう形のものが出てこないと、これはなかなか理解してもらえないんじゃないだろうかと、かように私は思います。ただ単に経済の成長だけを誇るエコノミミックアニマル、それにかわる今度はいわゆる軍国主義、そうでない限り、また今度はただ単にマイホーム主義だとか、こういうようなことでは、私は世界の各国はほんとに尊敬はしないだろうと、かように思います。東洋の日本、もちろん日本だけの問題じゃない、東洋の日本だといわれた時期ももう過ぎた、今度は世界の日本だ、こういう立場で進んでいかなければならない。ここに私ども一つのロマンがあり夢があり、これから努力する目標があるんじゃないだろうか、各国から誤解を受けないで、そして真にあれはたよりになる国だ、かように認められる、そういう国であってほしいと、かように思うのであります。  これにはいろいろな見方がございますから、その中身についても詳しく申し上げるのは、短時間の間にはそうはいかぬだろうと思いますが、言わんとするところのものは、私どもがいわゆる軍事力あるいは経済力、それでものをいうというようなそのものではないんだ、そういう意味でほんとに自由を愛し、平和に徹する国柄、それで各国ともつき合いがあり、尊敬し合う、そういう仲になるときにこちらが尊敬される、そういう形になるように進んでいきたいと、かように思うわけであります。

山中吾郎日本社会党

○山中(吾)委員 私の質問もいつも抽象論に入るんですが、総理大臣のいまの御答弁も非常に抽象的なので、具体的には十分理解できないのでありますが、最後に私の見解を述べて終わりにいたしたいと思います。  日本の国の進むべき道ということについては、私は三つの基準で明確に、日本の国政を担当するものは決断をしなければならぬのじゃないか。一つは日本の国際的地位、第二は日本の歴史の教訓から、第三はやはり日本の経済の発達段階からきめるべきだと私は思うのです。  第一の国際的地位については、東西の接点とか南北の接点とはいいますが、天変地異が起こっても、アジアの中の一国であることは、これは変わらない。そのときに、一体アジアにそむく道を歩むのか、アジアとともに進む道を歩むかという決断、やはり日本の国民はまず第一に日本の進むべき道としては考えなければならぬのじゃないか。そのときに、戦前において朝鮮半島、満州、その方向にアジアにそむくその地域の侵略という立場に結果はなっておると思いますが、そういうアジアにそむく道を歩んで失敗をしておるんだ、再び日米安全保障条約というのでアジアにそむく道を歩んでおるのではないかと私は思う。アジアに向かって軍備を予定する、日本はそうでなくても、集団安全保障条約を結んでおるアメリカ自身が、アジアに対して一つの偏見を持って出兵をしておるというならば、そういう一つのベースの中で動く日米共同声明も、自主的に、佐藤総理大臣が完全にアジアの立場に立っておると言っても、結果はそうでない。私はそういう意味において、一日も早く日米安全保障条約は解消すべきである。アジアとともに進む立場というものは、やはり一番最初に日本の国の進むべき道をきめるときに、私は決断をすべきものではないかと思うのです。それはいかがでしょう。  それから第二に、日本の歴史を考えてみたときに、上代から戦国時代から現代に至るまで、島国であるという関係から、大陸に出兵をして失敗を繰り返してきておる歴史なので、逆に仏教でも儒教でも、いわゆる大陸からの文化を吸収して近代化をしてきている。私はそういう意味において平和憲法を高く評価をして、平和主義に徹するという日本の進む道の決断は、これは間違いなくしていかなければならぬ、やがてまた自衛隊をだんだん増強して、歯どめのないいわゆる再軍備の道に走るようなことは、断じてあってはならないと思うのです。  第三に、発達段階からいって、資本主義に到達しない以前にヨーロッパの植民政策から民族を解放しようとして革命を起こした中国型の発達段階が一つアジアにある。東南アジアは日本の明治維新のようなもので、近代化をする前に、いわゆる植民地から解放されて、東南アジアの民族の諸君が近代化をはかる道を選ぶのか、あるいは中国型の革命でそういう道を選ぶかの選択に迫られておる。その中に大国主義のソ連及び中国、アメリカがおのおののイデオロギーでその東南アジアに一つの働きかけをしておるところに東南アジアの発達段階がある。日本の国ひとり近代化の道を歩み、すでに資本主義段階の中で一つの階級的な矛盾を含みながら、あるいは経済的に成長して、その過剰エネルギーをまたアジアに向かって実質的経済的侵略をはからざるを得ないような、いわゆる危険性を持った一つの繁栄のしかたをしておる。その中で、この三つの違った発達段階を持っておるアジアの中で、日本はどういう道を進むのかという、やはり真剣に考えなければならぬ問題があると思うのです。そういう中で、日本独自の日本の進むべき道をお互いに探求していくのが、私は日本の政治家の課題である。資本主義だ、共産主義だという偏見の中で、最初から不信感を持って、日本の進むべき道を偏見を持って論ずべきものではないのではないか。私はそういう意味において、民主主義による社会主義という一つの進み方の中に、他民族を搾取しない、自由というものを前提としながら新しい第三の日本の進む道というものも真剣に考えるべきであると私自身は確信を持って考えているのです。総理大臣は何かわれわれの顔を見ると最初から真剣に話をすることができないような、かってに一つの断絶を考えておるのでは困る。私はそういう意味において、施政演説において堂々と七〇年代のことを一国の総理大臣が——作文でないのでしょうから、責任を持って書かれておるのだが、この表現の中からは、具体的に日本の進む道に何を考えているか私は受け取れないので、私は総理大臣の前で予算委員会のこの席上で、私の責任において、日本の進むべき道を考えるについての私の所信をいま表明いたしました。  どうか、新しい一つの段階の中に入り、やはり日本の繁栄の道であるが同時に非常に危険な道である——私はこの質問において終始一貫、国民の人間形成の立場から、経済政策も住宅政策もあらゆる政策もそういう立場でもう一度見直すべきである、経済問題は単なる経済問題に終っていない、社会問題は単なる社会保障政策で終わっていないところまで矛盾が来ておると思うので、私の所信を申し上げまして、今後の参考にしていただきたいと思うのであります。  以上をもって私の質疑は終わります。

中野四郎自由民主党

○中野委員長 これにて山中君の……

佐藤一郎自由民主党経済企画庁長官

○佐藤内閣総理大臣 答弁が要るのか要らないのかちょっとわからなかったので、一番最初は要るようでしたが、これをもって終わるとおっしゃるから、委員長も間違えたようです。  そこで、私は、いま三つに分けて問題を提供されました。過去日本が歩んだ軍国主義的な道、これは間違いであるという、これはそのとおりでございます。私がいま、もうアジアの日本から世界の日本になったんだ、こういうことを実は申しました。この点があるいは誤解があるのか知りませんが、それはもう何と言われても、アジアに位する日本であることに間違はございません。このアジアの国のいずれの国とも仲よくしていく、そうして平和を保つというのが日本の国の行き方であります。そこで、私は、いまや交際の範囲は広くなって国際的にまで発展しているから、アジアの日本というその狭い観点でなしに、世界の日本として世界人から評価される、そういう立場になりたいんだ。これでこの点はよろしいのですが、ただいまの間違いが起きた、その点から見て日米安保条約は、これは廃止すべきだ、こういう結論を出しておられます。  私は、アメリカ自身の行き方を侵略国家あるいは米帝国主義と、かようにきめつけるような気持ちはいたしておりません。アメリカも日本同様平和を愛好しておる。私も昨年アメリカに行っていろいろ話してみますると、十分その点では理解している。やっぱり平和でなければならない。そうしてお互いがしあわせになるように各国ともやっていきたいということを心から望んでおりますから、私はただいまの国際情勢のもとにおいて集団保障条約、そういうような形のものがあることは、いずれはなくなるだろうと思いますが、ただいまの状況においては、これまたやむを得ないものだと思いますので、山中君が一つのビジョンを持って、それをやめていこうとおっしゃることは、これは一つの見識でもあろうかと、かように思います。ことに対立する二つの勢力、米ソ、これが和解の状況にある、とにかく話し合い、共存の状況に入っておる。そして第三の勢力、中共、この三つが、ただいまそれぞれがなかなか同席はしないけれども、米中、また中ソ会談、こういう形で話し合っておりますから、それぞれがもっと積極的に片がつくのではないだろうか。私は世界の三大勢力がただいまのような状況で話し合うことが非常に望ましいことだと思います。私は、そういうものが何か結論が出てくることがほしい。  そこで日本の歴史の分解。これは私はどちらかというと、日本の歴史は平和主義の民族、その民族にふさわしいいわゆる大和心、大和精神というものが実はあるのじゃないかと思っております。これは私の理解でありますし、私どもがその精神をもっとさらに拡大していくようにしたいものだと、かように思っております。  ただ、いろいろアメリカを批判しながら、そこで問題になりますのは、民主主義による社会主義ということばを言われました。いわゆる民主主義による社会主義ということば、概念的には実はちょっとことばが私の耳には耳新しいのです。これはこの機会でなくて、いずれの機会かに十分明らかにしていただきたいと思っておりますが、私は、いまのそれぞれの国がその国民の自主的判断でそれぞれの政治体制を整えておる。これはもう民族自決の方向であってしかるべきで、もうそれより以上言うことはない、かように思いますから、それぞれの国がそれぞれ選んだところで繁栄する。それにはお互いに助け合う、協力し合う、力を差し伸べる、こういうことでよろしいのではないか。それより以上、とやかく言う必要はないように思います。ただ私残念なことには、日本の国自身が、ただいま言われること自身、私が理解できない、こういう事柄がある。これを山中さんのほうから見れば、佐藤はものを知らないから、民主主義による社会主義というようなことばがわからぬのだ、こう言われるかわかりませんが、これはことばじりをとったわけじゃございませんが、それぞれの政治形態はその国が自主的にきめる。そうして、ここで誤解のないように重ねて申し上げておきますが、米国は侵略主義の国、米帝国主義という表現がかつてされましたが、いまや米国も変わっておる。やはりここで私どもが国の安全確保のために必要な日米安全保障条約、これが必要だ、この辺がやはり国民的コンセンサスができるように私どもは努力してみたいものだ、かように実は思っております。  この補正予算の審議にあたりまして、たいへんだだいま思い切った分析をされた、わかりいい御意見を述べられました。私の感じた点をこれまた率直に御披露いたしまして、お答えといたします。

中野四郎自由民主党

○中野委員長 これにて山中君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして、昭和四十四年度補正予算両案に対する質疑は、全部終了いたしました。     —————————————

中野四郎自由民主党

○中野委員長 これより昭和四十四年度補正予算両案を一括して討論に付します。  討論の通告があります。順次これを許します。西宮弘君。

西宮弘日本社会党

○西宮委員 私は、日本社会党を代表いたしまして、昭和四十四年度補正予算に対して、反対の討論を行ないます。  まず、総合予算主義を振りかざして編成されました四十四年度予算は、四十三年度に引き続き増額補正を行なわざるを得なくなったのであります。これは政府の総合予算主義が完全に破綻したことを示すものであり、しかもこのことは、政府の総合予算主義が、すでに四十四年度予算審議を通じてわれわれが指摘してきたとおり、経済の変動と国民生活の実態を無視したものであるばかりでなく、予算編成時における民主的経費の抑制のための口実として悪用されたことを暴露しているのであります。その結果物価の値上がり、自然増収による税の取り過ぎによって国民に犠牲を押しつけ、金融の引き締めにもかかわらず民間設備投資を押え切れず、そのしわ寄せを中小企業や農業に押しつけておるのであります。  特に、政府の無能無策により農業政策が完全に失敗した責任は、きわめて重大であります。政府は米の長期需給計画を持たず、たとえば八郎潟干拓のようにばく大な投資を行ないながら、途中から自衛隊の飛行場に転換するなど、稲作対策の失敗は明らかであります。しかも米が過剰傾向になるや、何らの抜本的対策を立てず、総合農政と称して自主流通米の導入など食管制度をなしくずし的に破壊し、農民と消費者の犠牲によって切り抜けようとしておるのであります。現在の米の過剰生産も、米以外に安定的作物がなく、畜産、果樹等の構造政策を誤り、生産が米に集中した結果であります。その上、配給米はまずい米を売り、消費にブレーキをかけております。これはアメリカの余剰小麦市場拡大のための米作破壊をねらいとし、同時に労働力不足をカバーするための農民犠牲による農業再編成への道であります。米の生産調整を農民に強要しようとしているもの、政府の農政の失敗をしりぬぐいさせ、米の買い入れ制限の布石にしようとするものであり、米生産調整対策費はうしろ向きの農業手切れ金であります。  次は、補正純追加額は千九百十二億円になっておりまするが、これは税の自然増収が千九百六十八億円も出たからであり、国民への実質増税によってまかなわれておるものであります。これは、総合予算主義をいうならば、本来国民から取り過ぎた分を減税によって返還してしかるべき性質のものであり、さらに少なくとも当初予算編成時にとっていた方針に基づくならば、国債発行の減額に振り向けるべきであります。にもかかわらず、減税が行なわれないばかりか、国債発行減額も四百億円にとどめております。四十三年度補正においては千六百二十三億円を国債減額に充てていることを考えると、四十四年度は同程度の規模の自然増収を見込みながら四百億円の減額にとどめておるのは大きな後退であります。  次に、追加項目の内容を見ると、政府の恣意的な財政運用が一そう顕著となり、財政法二十九条の精神を逸脱した補正の乱用が目立っております。  特に地方交付税交付金九百九十四億円の追加計上の内容を見ると、財政調整財源としての本来の機能を拘束して、国の恣意によるひもつき財源化しようとしております。たとえば交付税交付金九百九十四億円のうち、三税の増収に伴う義務的計上費は六百十四億円、かつて国が借り上げた分で四十五年度国が返済すべきものの繰り上げ返済分が三百八十億円となっておりまするが、そのかわり、四十五年度地方交付税から三百億円を国が借りるというものであります。しかも繰り上げ返済分については、国の指示によって土地基金への組み込みを行なわせようとしております。これは地方交付税の役割りを否定するだけでなく、地方自治体の自主性を侵害し、自治破壊につながる危険をはらんでおります。  さらにこれとあわせて米生産調整特別対策費、土地需要緊急調査費などの計上は、財政法にいう、本来の意味での四十四年度中に生じた理由で、緊急性があり、かつ不可避の経費不足によるものではなく、四十五年度予算の財源対策であり、あらかじめ四十五年度負担の軽減を行なおうとする操作にほかなりません。これらの経費を四十四年度補正で組み込むことは、財政法二十九条の精神を踏みにじる補正の乱用であり、財政法違反の疑いが濃厚であります。  次に、補正内容のうち給与改善費は五百六十六億円計上されております。これは、第六十二回国会で成立した一般職の職員給与法改正等、給与関係法の改正に基づく公務員のベースアップのためのものでありまするが、人事院勧告すら完全実施することなく、財源難を理由に実施の足切りを行なっております。今日の人事院制度のもとで、勧告の完全実施は政府の最低限度の義務であります。自然増収が巨額に見込まれておるときに、足切りの正当な理由はどこにも見出せません。  また、物価高の中で生活を圧迫されている生活保護家庭などへのあたたかい思いやりは、一片も見られません。医療診療報酬の改正に伴う義務的増加経費は計上されておるものの、国民健康保険事務費補助金をはじめ、地方自治体の深刻な悩みである超過負担の解消には、何らの配慮も見られません。  最後に、このように四十四年度補正予算は単に総合予算主義の破綻の証明であるばかりでなく、一九七〇年代財政において歯どめのない膨張政策へと向かう契機となることが懸念される内容を含んでおり、きわめて危険な方向をとりつつあることを物語っております。  以上の理由によって、私は強く反対をいたします。(拍手)

中野四郎自由民主党

○中野委員長 次に、大村襄治君。

大村襄治自由民主党

○大村委員 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となっております昭和四十四年度一般会計補正予算第一号及び特別会計補正予算特第一号について、賛成の討論を行なます。  この補正予算は、昭和四十四年度の本予算作成後に生じた事由に基づき、特に緊要となった経費の支出を行なうためのものであります。  以下、意見を交えながら補正予算の内容を検討いたしますと、まず一般会計の歳出は、追加額二千四百七十九億円、修正減少額五百六十六億円、差し引き一千九百十二億円の増加であります。  歳出追加の第一は、公務員の給与改善費であります。給与改善の所要額は一千八十八億円でありますが、当初予算にあらかじめ計上してある分と人件費の不用見込み額の引き当て分を差し引いた五百六十六億円が歳出追加額として計上されております。公務員の給与引き上げは、四十四年度は当初予想されていた水準をかなり上回るものでありますが、しかも従来より一カ月早めて六月にさかのほって実施することにいたしました。このことにより、財政運営の混乱を避けながら人事院勧告の精神を実現しようとするものであり、明四十五年度予算では五月実施の線に引き継いでいくことができるのであって、適切な措置であると考えられます。  したがいまして、今回の公務員の給与改善には政府・与党としては十分な配慮をしているものと認めるのでありますが、同時にまた、国民一般からは、官庁機構の簡素化と業務能率の向上に関して強い要請がなされておりますので、私は、政府に今後その面の施策を怠らないように要望いたしておきます。  歳出追加の第二は、食糧管理特別会計への繰り入れ五百六十億円であります。これは主として米の買い入れ数量の増加に伴う食管会計の損失補てんでありますが、同じく損失補てん措置としては、ほかに琉球政府への米穀売り渡しに伴う分が五億七千万円ほどあります。さらにまた、米の生産調整特別対策事業費として二十億円、土地需要緊急調査費が一億円追加計上されております。  これら一連の諸経費の計上を通じて、米の生産過剰という緊急事態に対処して食管制度の根幹を維持し、米作農民の立場を守りながら新農政の展開をはかっていくという政府・与党の基本的姿勢の一端が示されているのであり、私は強く賛成の意を表するものであります。  歳出追加の第三は、地方交付税交付金の九百九十四億円、さらには国民健康保険助成費その他の義務的経費の追加でありますが、これらの経費の計上を通じて、三千有余の地方団体の財政運営と国民健康保険等の運営を健全化しようとするものであり、私は賛意を表するものであります。  次に、一般会計歳入についてでありますが、このうち特に申し上げることは、公債発行を四百億円削減している点でありまして、現在の経済情勢とにらみ合わせてまことに適切な措置と思われるのであります。  以上述べましたような理由により、私は、野党の皆さんもこのような義務的な補正予算には御賛成くださるように要望して、私の賛成討論を終わります。(拍手)

中野四郎自由民主党

○中野委員長 次に、松尾正吉君。

松尾正吉公明党

○松尾(正)委員 私は、公明党を代表して、ただいま議題となりました昭和四十四年度補正予算二案に対し、反対の討論を行ないます。  反対理由の第一は、四十三年度予算から佐藤内閣が掲げている財政政策の基本方針である総合予算主義が完全に破綻し、政策の失敗をびほうするための補正だからであります。  四十三年十二月二十八日に閣議決定をされた四十四年度予算の編成方針を見ますと、総合予算主義を堅持することを強調し、そのためには、補正要因の解消につとめ、公務員給与、食管会計等への追加補正が必要とならないように措置をするとうたっておるのであります。  今回の補正予算の総額一千九百十三億円のうち、機会あるたびに政府が追加補正はいたしませんと広言した給与費と食管特別会計の経費が一千百三十億円と、総額の六〇%を占めているのであります。追加補正防止のため、具体策がどこに準備されていたのでありましょうか。  佐藤内閣の財政政策の中には、この点について何らの対策が講ぜられていなかったと断ぜざるを得ません。対策もなしに対策があるといい、補正なしの総合予算と称するものを閣議決定することは、国民を欺き、国会の予算審議権を実質的に無視し、国会審議の内容を空洞化する行為でありまして、このような態度は許されるべきものではありません。  このような佐藤内閣のやり方は、政治への信頼を失わせる行為でありまして、わが党としては認めることのできないところであります。  反対理由の第二は、昭和四十四年度補正二案は財政法二十九条が規定している補正予算編成の要件を満たしていないことを指摘せざるを得ないのであります。  その一つは、本補正に計上されている地方交付税交付金三百八十億円、この減額修正の措置であります。この三百八十億円の減額は、政府がいかように弁明しようとも、その実体が四十五年度に国が地方から借り入れる三百十億円の見返りの措置であることは、あまりにもはっきりしているのであります。したがいまして、この補正は四十四年度の補正であるよりも、四十五年度予算編成の段階で与党や圧力団体による財源食い荒らしのしわ寄せの補正であり、しりぬぐいのための補正であるといわざるを得ません。しかりとすれば、この補正予算は、目下本委員会が審議中の四十五年度予算の先食い的性格の補正なのであります。  このように、この補正予算の性格は財政法第二十九条違反の疑いを持っている。したがって、内容的に法律違反の疑いを持った補正に賛成できないことは言うまでもないところであります。  さらに、この補正に計上された米生産調整特別対策事業費二十億円についてであります。  政府の説明によりますと、四十五年度からの米の生産調整対策の実施を円滑に行なうために、都道府県が四十四年度においてあらかじめ実施するための事業補助だとしておりますが、この費目には、翌年度に繰り越して使える繰り越し明許をつけております。補正予算の提出を認めている財政法二十九条には、緊急性が要件となっておることは政府も御承知のとおりであります。補正予算提出のときからすでに翌年度に繰り越して使うことを予定している費目が、どうして緊急性があるといえましょうか。したがって、こうした財政法を無視したといわざるを得ない経費を計上している本補正に反対するものであります。  反対の第三は、公務員給与の改善であります。このたびの措置は、例によって、またもや人事院勧告の完全実施を怠り、公務員の生活や要求を無視している態度は、明らかに国家公務員法違背のおそれがあり、絶対に許すことはできません。  特に本年度は、経済の好況を反映し、民間給与が二八ないしば一七%も上昇しているおりから、人事院勧告一〇・二%アップそれ自体、必ずしも十分なものとはいえないのであります。それをもむざんにカットするに至っては、多数の公務員の雇用者であるはずの政府は、一体人事院の給与勧告をどのように考えているのでありましょうか。  元来、人事院の給与勧告は、公務員の労働基本権制限の代償として設けられたものでありまして、勧告の完全実施は政府の義務であると思います。しかるに政府は、口を開けば、賃金の上昇は物価の騰貴をもたらす、このように宣伝しておりますが、物価が上がるから賃金のアップを要求せざるを得ないのが実情であります。また、公務員のベースアップは民間賃金の上昇に刺激を与える、このように言っておりますが、事実はその逆であって、給与の勧告は常に民間給与の水準に追いつかせる趣旨のもとで行なうものであります。私は、この意味から、あくまで人事院勧告の完全実施をすべきであると主張するものであります。  反対理由の第四は、政府の税収見積もり過小の責任を見のがすわけにはいかないのであります。  わが党は、四十四年度当初予算審議の際、政府の租税収入予算は、最大限の安全度を見ても一千億円余りの税の過小見積もりがあることを強く指摘し、適正な税収見積もりに改むべきであることを内容とした組みかえ予算を本委員会に提案したのであります。当時、政府は、租税収入の見積もりは適正であると強調していたのでありますが、この補正の財源に一千九百六十八億円の租税の増収分を計上しておるのであります。当初予算で意識的に過小な見積もりをしたことによって、国民的要望である四十四年度の減税を小幅に押えたばかりでなく、財源配分の適正を欠くに至った政府の責任はまことに重大であります。さらに、年度途中で行なわれた公務員給与の改善も、尊重を口にしながら不完全実施するなど、国民生活無視の政策を行なってきたことは断じて許されません。このように意識的に租税の過小見積もりを行ないながら、年度途中に生じた税金の取り過ぎ分を政府の都合でかってに歳出に充てようとする補正に強く反対するものであります。  以上、本案に反対する数々の理由をあげてまいりましたが、これを要するに、政府は政治的公約を忠実に実行しない、しかもこれを恥としない政治姿勢に対して国民は強い不信の念をもって糾弾しているのであります。政府は、この国民のきびしい世論をすなおに受け入れ、いさぎよく本案を撤回することを強く要求するものであります。  以上で反対の討論を終わります。(拍手)

中野四郎自由民主党

○中野委員長 次に、河村勝君。

河村勝民社党

○河村委員 私は、民社党を代表いたしまして、ただいま提案されております昭和四十四年度一般会計並びに特別会計補正予算案に対し、反対の討論を行なうものであります。  反対の第一の理由は、政府の予算に対する無責任な態度についてであります。  すでに述べられたように、政府は一昨年、われわれの反対を押して総合予算主義を採用したのでありますが、早くも昨年にして補正予算の提案を余儀なくされ、総合予算主義は崩壊したのであります。にもかかわらず、政府は今年度の当初予算においても総合予算主義の堅持を予算編成の基本方針としているのであります。この観点から、政府は公務員給与費、食糧管理特別会計繰り入れ等の追加補正をなくすることとし、予備費を例年になく大幅に増額する等の措置を講じているのであります。それがまたしても今年度補正予算を出さざるを得なくなったということは、政府の財政に対する無計画性、無責任性を如実に示しているものといわなければなりません。  かくのごとく、ことばあっても実行なく、公約あっても実現なしというべき無責任な政治姿勢こそ佐藤内閣の象徴であり、まさに国民の政治不信を招く根源であるといわなければなりません。この際、政府は言行不一致の財政政策を改めるためにいわゆる総合予算主義を放棄するか、さもなくば、今後補正予算は絶対に出さないと確約するか、その態度を明確にすべきであります。  私が反対する第二の理由は、大幅な租税増収とその背景にある経済見通しの根本的な誤りについてであります。  今回の補正予算を見てみますと、租税及び印紙収入は当初予算に比較して実に千九百六十九億円の増収を予定しております。このうち所得税の増収額は九百四十億円にのぼっております。なぜかくのごとき大幅増収額が年度末に出るのであろうか、このなぞこそ政府の租税政策並びに政府経済見通しの作為的姿勢が明らかに示されておるのであります。すなわち、政府は、当初経済見通しにおいてそれがあたかも客観的予測であるがごとく国民に発表しながら、その実、過去の例でも明らかなように、いつも経済実態とかけ離れた過小見通しをしてきたのであります。かくして、いまや政府経済見通しの信用たるや全くゼロといっても過言ではありません。この政府の過小見通しの意図は、当初予算において租税及び印紙収入を必要以上に過小に見積もることを容易にし、それをたてにして、国民の切実な要求である大幅減税を阻止する口実に使うことにあると断言して差しつかえないのであります。もし、この補正予算案に計上されている一千九百六十九億円の租税収入の増加を当初見通しにおいて正しく見積もるならば、国民の念願である大幅減税は今年度においてすでに実現できたはずであります。かくのごとき政府の作為的なやり方は、国民の期待を裏切るほかの何ものでもありません。  このような弊害をなくし、政府の経済政策の責任を明確にするため、経済見通しのあり方を根本的に改革するとともに、事後的な税の自然増収については、その翌年度に自動的に国民に還元する方途が講ぜられてしかるべきであります。  次の反対理由は、農業政策の失敗についてであります。  今回の補正予算案において、政府は食管会計へ五百六十億円の追加繰り入れを行なっておるのでありますが、その原因の大半は、政府が当初提唱していた自主流通米制度の破綻を示す以外の何ものでもないのであります。政府は、今年度自主流通米として百七十万トンを見込んでいたのでありますが、これがきわめて不評であり、そのしりぬぐいが食管会計では予定せざる米の買い入れ増になっておるのでありまして、現在の場当たり農政の欠陥がここに象徴的にあらわれているといわざるを得ません。  以上の理由をあげて、補正予算に対する反対の態度を明らかにしてきたのでありますが、最後に私は、政府に対して、今後これら諸点の欠陥を真剣に検討され改革されんことを求めて、私の反対討論を終わります。(拍手)

中野四郎自由民主党

○中野委員長 次に、谷口善太郎君。

谷口善太郎日本共産党

○谷口委員 私は、日本共産党を代表して、昭和四十四年度補正予算両案に反対いたします。  本予算案は、さきに政府がきめた総合予算主義が破綻したことを示すとともに、国民収奪、大資本奉仕の財政政策を一そう激しくしたものであります。  第一に、自然増収二千億円を計上していますが、それは独占企業や大資本に特別の減免税をしながら勤労大衆には低い免税点を押しつけ、物価値上がりや名目賃金の上昇に伴って一そう生活費に食い込む重税を課し、収奪を強めた結果であります。しかも、この財源をもって国民生活の改善をはかるのではなく、国民に背を向けた自民党の政策の補強をはかる、ここにこの予算案の反動的な性格があります。  第二に、国家公務員等の給与問題であります。  公務員の要求は、大幅賃上げであり、公務員の団結権、スト権等の労働基本権の回復の問題であります。しかるに政府は、基本権の問題については今回も全く無視したばかりか、賃金問題でも人事院勧告さえ踏みにじったのであります。すなわち、あくまでも期末手当抜き一カ月繰り上げの六月実施の不当行為に出たのであります。しかも、公務員がこれに反対すると、実に一万人にも及ぶ不当処分の弾圧を加えました。勧告が出た当時、大臣六人までが五月実施は妥当だと言ったではありませんか。人事院勧告さえじゅうりんする政府の態度は、ただに公務員だけでなく、全労働者に対する政府の低賃金政策をさらに新たに示したものとして、これを非難ぜざるを得ません。  第三に、食管会計の問題であります。  政府は、四十四年度に自主流通米制度を創設して食管制度のなしくずしをねらいました。そうして、本年度の米買い上げ数量を七百五十万トンと不当に低く押えましたが、実際には八百八十六万トンの買い入れとなり、五百六十億円の補正をせざるを得なくなったものでありまして、これは自主流通米制度の破綻を意味し、政府の重大な責任であります。しかるに政府は、その責任に反省もなく、さらに、この補正予算で、米生産調整特別事業費補助二十億円、土地需要緊急調査費一億円を組んだことは重大であります。これらの経費の目的とするところは、農民に作物転換を強要し、土地から農民を強制的に切り離すところにあるのでありまして、四十五年度で大々的に推進しようとしている米作制限、農民切り捨てのいわゆる総合農政の布石にほかなりません。政府のこのような政策は、日本農業の自主的、民主的発展にとって許されないものであり、この点において本補正予算に賛成できないのであります。  最後に、地方交付金借り上げに対する返済の問題であります。  この補正予算において、三百八十億円を繰り上げ返済することにしていますが、これは四十五年度で三百億円を借り上げるための操作であります。本来、地方自治体固有の財源である交付金を国が借り上げること自体、地方自治体の財政自主権に対する重大な侵害であります。現在、地方自治体は、地方道、教育、衛生施設、交通、公害対策など財政事情が全く逼迫しております。この財政を圧迫することは許されません。まして、地方財政を国の反動的予算編成の調整財源として吸い上げることは、言語道断であります。  以上の理由から、日本共産党は本案に反対するものであります。(拍手)

中野四郎自由民主党

○中野委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより昭和四十四年度一般会計補正予算(第1号)、昭和四十四年度特別会計補正予算(特第1号)の両案を一括して採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕

中野四郎自由民主党

○中野委員長 起立多数。よって、昭和四十四年度補正予算案は、いずれも原案のとおり可決いたしました。(拍手)  委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中野四郎自由民主党

○中野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————

中野四郎自由民主党

○中野委員長 明三日は、午前十時より委員会を開会し、昭和四十五年度総予算に関し、公聴会を行ないます。  本日は、これにて散会いたします。     午後三時五十二分散会

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