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63回国会衆議院1970/05/08

法務委員会 第24号

発言数
182
登壇者
15
会派数
5
開催日
1970/05/08

会議録

高橋英吉自由民主党

○高橋委員長 これより会議を開きます。  内閣提出の訴訟費用臨時措置法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑に入ります。質疑の申し出がありますので、これを許します。羽田野忠文君。

羽田野忠文自由民主党

○羽田野委員 訴訟費用臨時措置法の一部を改正する法律案につきまして、二、三その内容を明らかにするために御質問いたします。政府委員のほうで御答弁いただいてけっこうでございます。  まず第一番に、これは字のごとく臨時措置法でありまして、昭和十九年に施行されております。その一条を見ますと、これは特例として「当分ノ内本法ノ定ムル所ニ依ル」というふうに定めてありますが、その後二十六年間その特例がそのまま通用いたしておる。言うなれば仮設のバラックを修繕しながら使っておるというような法律でございます。昨年の審議の際も、この法律はこのまま存続させるかあるいは廃止するか、いわゆる抜本的な検討をするというような答弁があっておるようでございますが、その後どういうふうな検討がなされておるか、まずその点から御答弁願いたいと思います。

影山勇法務大臣官房司法法制調査部長

○影山政府委員 お尋ねのとおり、この臨時措置法は昭和十九年に制定されました臨時立法でございまして、当時のインフレ状況のもとにかような法律ができたわけでございますが、その後、ここには執行官の手数料等に関するものが入っておりまして、それが執行官法が別に制定されまして、その部分はそちらに移りました関係で、いよいよこの法律をそのまま存続させることが適当でないということになりまして、数年来この措置法を廃止するという方向で検討を続けてまいったわけでございます。これを廃止いたしますと、たいへん古くできました民事訴訟費用法及び刑事訴訟費用法、これに根本的改正を加えまして、これを整備するということが必要なわけでございまして、先国会以来この改正作業に着手しておりまして、現在相当進行いたしておりまして、この次の国会には御提案申し上げることができるのではないかというふうに現在のところ考えております。何ぶんそのもとになります民事訴訟費用法、刑事訴訟費用法がかなり古い法律なものでございますから、相当の検討を要しますので、いま私のほうを所管部局といたしまして、法務省民事局、刑事局、最高裁民事局、刑事局とも連絡いたしまして、数回にわたる会議を持って鋭意検討している状態でございます。

小林武治自由民主党法務大臣

○小林国務大臣 これは非常にごもっともなお尋ねでございまして、私が法務大臣になりまして驚嘆した一つのものがこの法律でございます。明治二十三年の民事訴訟費用法、それを昭和十九年からかような取り扱いをしておるということは、私はやはり法務省としては怠慢のそしりを免れない、かように考えておりまして、先般参議院の法務委員会におきましても、この法律案は相当に進捗をいたしておる、私の指示によりまして、事務当局も次の国会には提出できる、こういうことを言明いたしておりますから、私はぜひひとつさような運びにいたしたい、かように考えております。

羽田野忠文自由民主党

○羽田野委員 了解いたしました。次回には必ず御提出をいただきたいと思います。  次に、この内容に入りますが、まず日当の引き上げのほうからまいりたいと思います。私は現在の証人、鑑定人の日当はむしろ安きに失する、したがいまして、この引き上げには賛成でございます。昨年も証人、鑑定人の日当をいずれも百円ずつ引き上げた。今回の措置は三百円ずつ引き上げるということになっておりますが、この金額をきめたことについては、何かいわゆる物価の上昇とかその他の基準となるべきもの、根拠があって引き上げたと思いますが、どういう根拠でこれの引き上げを決定いたしたのか、その事情をひとつ……。

影山勇法務大臣官房司法法制調査部長

○影山政府委員 この証人日当の内容につきましては、特に法律上の定めとしてその性格についての定めはございませんけれども、大体において証人、鑑定人等が裁判所に出頭いたします際の出頭の雑費、そのほかに裁判所に出るために仕事ができなかったことによる利益の喪失、いわゆる逸失利益ということを考えておるわけでございますが、その出頭雑費は、大体公務員の日当、雑費に準じてきめておったわけでございます。それから前回の千三百円の中に、したがって当時は約四百円でございますが、それを出頭雑費として見込んだわけでございますが、そのほかの逸失利益の点を考えますにつきましても、賃金、物価等の上昇を考慮いたしますと、今回三百円を上げることが相当というふうに考えたわけでございまして、鑑定人についても同様三百円の増額をはかる、こういうわけでございます。

羽田野忠文自由民主党

○羽田野委員 この日当はいずれも幾ら以内ということで最高限をきめるということになっておりますが、実際に、この証人あるいは鑑定人に支給しておるものは最高限を全部支給しておるのではないと思います。それで現実に証人、鑑定人に支給しておる日当は、裁判所はどういう基準でおきめになっておるのか。それからその一定の基準によってきめて、現実に支払っている金額というものはおよそどのくらいなのか。あるいは証人によってそれは格差がついておるのか。ついておるならば、何に基づいてつけてあるのか。  もう一つは、証人の中には出頭しても、旅費、日当を請求しない人が相当にたくさんいる実情をわれわれは知っております。何%ぐらいが日当を放棄しておるか、こういう点をちょっと伺いたいと思います。

影山勇法務大臣官房司法法制調査部長

○影山政府委員 この法律の実施の状況は、最高裁判所からお答えを願いたいと思います。

佐藤千速最高裁判所事務総局刑事局長

○佐藤最高裁判所長官代理者 請求率のほうからまず申し上げます。  日当を請求いたします証人が全証人のうちどのくらいあるかと申しますと、約四十八%ございます。これは証人の中で、情状証人が多いということでございますが、情状証人は全証人の中で五九%ぐらいおります。その情状証人は、日当を請求いたします率が非常に低くて、二三%ぐらいでございます。情状証人を除きますその余の証人につきましては、八三%日当を請求いたしております。これが請求の実情でございます。  それから、どのような基準で日当を支給しておるかという点でございますが、これにつきましては、従前から一応の基準を示しまして、各裁判所で支給するようにいたしているわけでございますが、基準の一つといたしましては、尋問の時間というものをとっております。それから日当が損失補償的なものであることにかんがみまして、いわゆる逸失利益の有無ということに着目して、裁判所に証人として出てきたためにその日の収入が得られないというような人は、かりに尋問の時間が短くても、できる限りその損失を補償するというたてまえであります。その他、尋問のために待ち時間が長かったというような場合には、そのような待ち時間も考慮するというようなことで、尋問の所要時間、待ち時間、さらには逸失利益の補償の必要性というようなものを勘案いたしまして、そして支給をするということにいたしているわけでございます。  現在の支給の基準を参考に申し上げますと、尋問の所要時間が二時間以内でありますると四百五十円以上六百五十円以内、二時間をこえまして四時間以内でありまする場合には六百五十円をこえ九百五十円以内、四時間をこえますものは九百五十円をこえ千三百円以内、これは尋問所要時間だけでございますが、一応そういう支給基準というものを立てまして、さらに先ほど申し上げましたような待ち時間あるいは逸失利益の有無、その補償の必要性というものを個々の証人について考えて支給額を決定する、こういうふうな取り扱いにいたしておる次第でございます。

羽田野忠文自由民主党

○羽田野委員 大体取り扱いの実情はわかりました。  これは実際に裁判にタッチしておりまして感ずることなんですけれども、よく不公平だなと思うのは、いなかから出てきた純朴な証人は、旅費、日当を請求するかというと、裁判所がこわくていやもう要りませんという。実際にはそういうのに払ってやりたいというのが放棄しているというような例が多い。それから逆に、月給などもらっているような人、出てきても月給は減りはしない、それで旅費、日当はその上にもらうわけですが、こういう人は必ず請求するというような、実際の面で気の毒な人が何かびくびくして裁判所に請求しないという例を相当われわれ目撃しておるわけです。こういう面の実際の取り扱いの指導はどういうふうにやっておりますか。

佐藤千速最高裁判所事務総局刑事局長

○佐藤最高裁判所長官代理者 従前の取り扱いでございますが、証人が出てまいりますと、すぐに廷吏が日当を請求するかどうかということを尋ねまして、その手続をする。その際に、知らない方が多いので、場合によりますると質問に応じまして、これは訴訟費用になって被告人のほうの負担というたてまえになっているというようなことも説明する場合がございますが、そういうようなことをまず出頭をいたしますと確かめておきまして、そういたしまして、尋問が終わりますと、裁判所においてその額を直ちにきめまして、それから会計その他に案内して、支給を受けられるように、こういうふうにいたしておるわけでございます。先ほども申し上げましたように、情状証人はこの証人の性格上被告人の身内の人がかなりいるわけでございまするので、そういう関係からあえて日当等を請求されないという場合が多いのでございます。御指摘のような、請求したくても、遠慮するというような雰囲気は、実は私自身は現場におきまして感じなかったのでございますが、もし御指摘のような心配もございまするならば、今後私どもといたしましても十分にその点は各裁判所に連絡いたしまして、そういうことは万一にも起こらないようにいたしたい、かように考える次第でございます。

羽田野忠文自由民主党

○羽田野委員 ぜひさようにお願いいたしたいと思います。  それから次に、この車賃、宿泊料、こういう点についてちょっとお伺いしたいのですが、これも今回額の引き上げがなされておる、私は当然だと思うんです。少し額の引き上げが少なきに失するのではないかとさえ思っております。  そこで、法律案参考資料の五の国家公務員の宿泊料、車賃、それから証人、鑑定人の宿泊料、車賃というものを比べてみますと、車賃のほうでは国家公務員の一等級の職務にある者の車賃を支給するように、それから宿泊料のほうでは六等級以下の職務にある者の宿泊料、これがいわゆる最高限度になっているわけですけれども、証人、鑑定人の場合にはどうしてこれほど低くおきめになったのか、そしてそれで実際に足りるとお考えになっているのか、この点はいかがでございましょう。

影山勇法務大臣官房司法法制調査部長

○影山政府委員 この宿泊料と車賃について、お尋ねのような差違があることは御指摘のとおりであります。この点はやはりこういう経過をたどった沿革的な理由がかなり大きいかと思います。ただ、車賃のほうは公務員に準じておるわけで、公務員の場合には実費を弁償するという規定がございますのに対して、こちらにはそういう規定がございません。公務員に比して、公務員の比較的高いほうのクラスにランクしているということでございまして、これらの点も今度の改正にあたっては十分検討したいというふうに考えております。

羽田野忠文自由民主党

○羽田野委員 最後に、鑑定人は強制されませんが、証人の場合は必ず出頭する義務がある。それで、出頭しないと直接強制で拘引を受けることもあるし、あるいは間接強制で過料あるいは罰金を科せられる、こういうふうな強制までして証言させるというようになっておるわけでありますが、こういう人が出てきたら、この車賃あるいは宿泊料という実費弁償的なものは、やはり十分足りるようにすべきだと思いますし、それからひまをつぶして働けなかったことに対する損失補償も、これは強制する以上は、私は国家が十分してやるべきだと思うわけでございます。それが、いろいろな予算の関係などでむずかしい点もあると思いますけれども、今後、やはりお上の裁判だから国民はこれに奉仕すべきだというような考え方でなくて、裁判の協力者なんだから、それに対する補償や実費弁償は十分にしてやるという考え方に立ってやっていただくことが望ましいと思いますし、そうしてみるといまの額というものはやや低きに失するのではないかとさえ私は思っております。この点に対して、将来どういうふうにしたいというふうな点について、何かお考えがあれば承りたいと思います。

影山勇法務大臣官房司法法制調査部長

○影山政府委員 この点は御指摘のとおりでございます。将来この増額につとめたいと思っておりますが、予算の関係、一つにはこれが訴訟費用になりまして敗訴者の負担になる点、これらとも考え合わせまして、できるだけいま御指摘になりましたような方向で検討を進めたいと考えております。

羽田野忠文自由民主党

○羽田野委員 いまの点ですが、訴訟費用になって当事者が負担するとか、あるいは有罪になれば被告が負担する、だからこの負担を少なくするために、旅費、日当などをなるべく安くするということは、ちょっと私は筋が違うというふうに考えますので、その点もひとつ御検討を賜わりたいと思います。

影山勇法務大臣官房司法法制調査部長

○影山政府委員 訴訟費用になって、負け方の負担ということを考えて、この額を少なくするというだけのつもりではございません、やはり予算上の問題その他もございますので。しかし、額をふやすことについては私どもも鋭意努力してまいりたいというふうに思います。

羽田野忠文自由民主党

○羽田野委員 終わります。

高橋英吉自由民主党

○高橋委員長 これにて質疑は終了いたしました。     —————————————

高橋英吉自由民主党

○高橋委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決いたします。  訴訟費用臨時措置法の一部を改正する法律案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕

高橋英吉自由民主党

○高橋委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。  おはかりいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

高橋英吉自由民主党

○高橋委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕     —————————————

高橋英吉自由民主党

○高橋委員長 次に、裁判所の司法行政、法務行政及び人権擁護に関する件について調査を進めます。  なお、この際申し上げますが、昨七日、本委員会から、静岡刑務所における行刑運営の実情調査のため、委員を派遣いたしましたが、その派遣報告につきましては後刻行なうことといたしますので、御了承願います。  質疑の申し出がありますので、これを許します。畑和君。

畑和日本社会党

○畑委員 自席から若干申し上げたいと思います。  委員長以下、私もその調査委員の中に加わりまして、静岡刑務所に昨日出張いたしまして、可能な限り調査をしてまいりましたけれども、いずれその調査報告は委員長のほうから文書をもって提出されると思います。  行って、私、感じましたことでありますが、金嬉老が静岡刑務所に収監をされた当時の幹部というのは、もうもちろんおりません。所長も三人目であります。それからまた管理部長、保安課長も三人目であります。しかも管理部長と保安課長は、いずれも時を同じゅうして転任して、新しい人が入ってきている、こういうようなケースになっておりました。所長のほうは若干違っておりますが、今度の場合は所長も管理部長も保安課長もほとんど同時に新任いたした、こういう事実を見てまいりました。  しかもこの事件というのは、そもそも一番当初が大きい問題だ、それからだんだんエスカレートしてきたことは間違いないです。そもそも一番最初の受け入れの際がもうすでに特別扱いというようなことであったと思うのであります。しかもその当時の幹部職員は全部おらない。したがって、それに対して、直接われわれが調査をすることができなかったということはきわめて残念でありましたが、それにつきまして現在の幹部の三人にいろいろ聞いてみました。  それによりますると、所長が着任をして、そのあとで保安課長が管理部長あたりに、金嬉老に対する待遇が一般の者に比べてどうも過保護に過ぎているというようなことを意見具申などあったらしくて、所長もそういうことを感じ、管理部長にそれの調査を命じたということで、それで管理部長もさらに保安課長と協力をして、それを大体同じように感じ取って、しかしこれを急に一度に締めるか、徐々に締めていくかということに思いめぐらして、結局徐々に締めていこうというような考え方になって、それで管理部長も金嬉老をことさらに調べ室のほうに呼んで——いままではそうでない、金嬉老の部屋等で会っておった模様でありますが、今度の管理部長になってから、そういう見解に立って正式な立場で金嬉老と会って、したそうでありますが、それでだんだん締めていこうというような姿勢を示した。その結果、金嬉老が弁護団を通じて、ああしたほうちょう等のものを示して、それを公判闘争に利用しようと思ったのかどうか、いよいよこれでここまで締められるともう終わりだということで、いっそのことということでああいう態度を示したことが、かえって逆に自分自身の優遇ということを取りやめさせるもとになった。考えれば皮肉な話でありますけれども、そういうことであったと思う。  ついては、われわれが感じたのですが、看守等は延べ十二人ぐらいがずっと最初からはかわっているそうです。大体の人はあそこに勤務をしておる。一部の人は転任しておるが、大体勤務をしておるようであります。いずれにしろ、とにかく幹部がそれを黙認し、あるいは慫慂するというようなことでなければ、いままでああしたことがエスカレートしてくるはずはなかろうというふうにわれわれは感じました。ついては、いずれ処分というのはまだ全貌が明らかになってのこととは思いますけれども、私の一つの要望的な意見的なものになりますけれども、そうした行政処分等にあたっては——たまたま現在ちょうど問題になった、しかもその問題になったのが金嬉老のほうから残念ながら問題にされたということなんで、きわめてもうかっこうの悪いことであります。いまいる職員としてはまことにかっこうの悪い話、ただしかし、そういうようにして締めようと思って公平に扱うような方向をたどろうというようなことに決意をして着手し始めたというような事情はわれわれとしてうかがえたわけです。たまたま偶然そういう形になって、いまの幹部の人たちも一種の被害者のような立場だと思いますけれども、いろいろそういった処分関係についてはやはりもっともっともとにさかのぼって、いまよそに転任をし栄転をしているような人について、むしろその人たちのほうが、一人一人の看守以上にはるかに私は責任が重いと思っております。私はこの前にも申しましたが、矯正局長に、例の分限懲戒にあった男が人事院に処分者の評価として、おれも悪いことをしたかもしらぬけれども、処分者が一体こうしてなっておらぬ、その例として、金嬉老を特別待遇をしておるのはけしからぬじゃないか、こういうような文書を出しておったのを、そのままにした。矯正局長自身もその点について文書を見て、それを当時の所長に確かめたところが、口頭でそういう事実はありませんと、こういうことだったからそのままに見過ごしたということでありますが、そういう点も考えあわせると、私は当時の所長等も相当責任が重いと思います。矯正局長自身もその当時からの局長でありますから、もちろんだと思いますけれども、そういう点を十分配慮をしてやる。とかく事なかれ主義、その場、その場、自分の職務を行なっている間だけ無事であればよろしいといういわゆる事なかれ主義、あるいは立身出世主義というか、こういうことが私はこの矯正関係にも相当広くびまんしているのではないかと思うのです。問題があったらやはり勇敢に、自分の時代にそういう事故があったとしても、それが公表されるとしても、勇敢にこれをはっきりさせるというような者こそやはり信賞必罰という点でむしろ賞揚する。いいかげんでごまかして、転任してからあとでわかったというような人はぬくぬくといいところで過ごしておる。こういうことがやはり官僚一般に多い、大臣でもそうだと思うのです。そういう点が相当多いと思うのです。そういう点に思いをいたして、私は処分等についても十分にそれを考えてやるべきだ、そうでなければ依然として同じような気風が刑務所関係の者にみなぎっていくのではないか、かように思うのですが、その辺についてひとつ大臣の御意見を承りたいと思います。

小林武治自由民主党法務大臣

○小林国務大臣 いまお話しを承ったのでありますが、私ももうそのとおりだ、こういうふうに思います。したがって、今後の行政処分についても、お話しの趣旨をくんでひとつ対処いたしたい、かように考えます。

畑和日本社会党

○畑委員 もう一点。われわれの調査の結果ですけれども、いまの段階ではまだ出刃ぼうちょうの経路がわかっておりません。どういう経路でだれによって差し入れらたものかということがわかっておらぬ。金嬉老はもちろんふてくされてそのことについては言いませんと言ってがんばっておるようであります。そうなると、やはり出刃ぼうちょうが一体どこから入ったのかということについて、科学的な捜査から始めていかなければならぬと思います。そういう点で、実はいま現在、弁護士団のほうから証拠保全の手続をいち早くとられてしまって、そしてそれがその前に写真にとられ、しかも新聞記者団にもすぐ発表されるというようなことで、その日の夜の十一時ごろになって証拠保全の命令で裁判所の差し押えで裁判所に領置された。  こういう出刃ぼうちょうとやすりと白い粉末、この三つが裁判所の手元にある、こういうことなんです。  こういう点について、そう早くやられたのでありますから、検察のほうでは当時としては初動がおそいのだからいかんともできなかったかもしれませんけれども、しかし、裁判所の証拠保全の命令自体も若干法律的にも問題があるのじゃないかと私は思うのでありますが、いずれにいたしましても、そうした証拠を裁判所から借りて、そうして科学的な鑑定を早くしてやるべきではないか。白い粉末なども借りてはあるようでございます。それで一応借りるか何かして、そして警察研究所のほうに鑑定をしてもらっているというけれども、それがずいぶん時間がたつのにいまだにはっきりしていないようであります。こういうことではいけないと思うのであります。出刃ぼうちょうについてもしかりでありまして、検察庁のほうが動いているようでありますから、若干それは始めておるとは思いますけれども、大体粉末が一体どういう成分のものかというようなことの分析がわかれば、それによってそれを端緒としてもっと捜査を迅速にやって、その入手経路等をはっきりさせるというようなことができると思うのですが、その点がいつまでたってもわからぬから国民が疑惑を持つ。矯正関係ではそんなつもりはなくとも、やはり同じ穴のムジナというふうに世間でも考えるのは無理からぬことだと私は思うのでありまして、そういう点についてひとつ迅速に、少なくとも出刃ぼうちょうの出どころくらいはどうしてもわからぬと、これは国民に対して申しわけない、かように考えております。その辺についてどうされるつもりか、ひとつ承りたい。

勝尾鐐三法務省矯正局長

○勝尾政府委員 現在私のほうに連絡のありましたところを御報告を申し上げます。  静岡地方検察庁のほうでは、検事二名を主任検事として指名をいたしまして、刑務所内の実況検分並びに職員の取り調べを鋭意進めております。  なお、押収されました品物につきましても、裁判所のほうに対して鑑定等の促進方について協議をしながら進めている、このように承知をいたしております。

畑和日本社会党

○畑委員 終わります。

高橋英吉自由民主党

○高橋委員長 沖本泰幸君。

沖本泰幸公明党

○沖本委員 私は、この金嬉老の問題に関しまして、委員長ほか一行は静岡の刑務所にお越しになったそうでございますが、私はあることできのう岐阜のほうに行ってまいりました。岐阜の刑務所関係の問題でいろいろ事情を伺ってまいりました。そういう観点からきのう聞いたばかりで完全な裏づけはとれてないわけですけれども、非常に問題点がある、こういうことで大臣にも十分その点お聞きになっていただきたいし、矯正局長もひとつお考えになっていただいて、いろいろな措置を講じていただきたい、こういうところでお話をするわけでございます。  まず、きのう行きまして聞いた中で、これははっきり表に出てわかった問題ですが、三十九年に問題が起きて片づいたのですが、神戸の本多会のある幹部が京都から扱いかねて岐阜の刑務所に回されてきた。それが岐阜の刑務所の中でたばこを吸っておる。こういう事柄がだんだんわかってきて、結局は看守がたばこを差し入れておった。こういうことでその看守も処分されて、またその服役しておった本多会の組長の奥さんに百万円ほど寄こせ、こういうふうな要求もして、その金ができなかった。こういうことですが、もしこういう金ができておったら、やはり同じようなことが行なわれておった、こういう問題があったわけでございます。  そういう関係からいろいろ伺っていったわけでございますが、伺ってショッキングな話があったわけです。大体看守さんの中には約十名くらい程度は非常に程度の低い看守さんがいらっしゃる。大体学校は中学出くらいで、知能指数が非常に低くて使いものにならない。そういう方も入っておるから、そういう方々を結局直接の担当につけられないので、人員も少ないし、見張りに立てたり、いろいろなところに立てておるけれども、そういう人すら結局人が欠けるとたいへんだ、こういう関係になるので、頭の程度の低い方が現実におる。そういうところからこういう事件が起こりやすい要素を十分にはらんでおる、こういうことを聞いてきたわけでございます。  そこで、問題になる点でございますが、まず前静岡刑務所長は三月に退官なさったわけでございますね。そういう方が——これは犯罪が成立するとか何か不正があるとかいうことではないのですけれども、岐阜の刑務所の作業場の近くに土地をお求めになって家をお建てになっていらっしゃる。大体刑務所の所長さんがおやめになる前にはおうちをお建てになるケースが非常に多い。そのおうちをお建てになるには、中の服役者を連れていって、当然それに相当する金額のものは正規に払っていらっしゃるけれども、そういうところにいろいろ問題点がある。三十年、四十年こういう関係におつとめになって退官なさるときですから、ただ自分の家を持つということが唯一の頼みであるというわけですけれども、その辺に非常に不明朗なものが存在しておる、こういう点があったわけですが、結局前静岡の刑務所長さんも、前任地の岐阜の刑務所の作業場の近くに土地を求められて家を建てられた。こういうところにやはり近所でも疑惑が出ている、こういうお話も聞いたわけでございます。  そういう点で、つとめについて非常に過重であるという問題が多いわけなんですが、岐阜の刑務所のような殺人とか強盗とか一番重い罪を持った人たちを入れる刑務所が全回に八カ所ある。そういうところの勤務状況とその他とは相当区別される。その辺は過労に過ぎてどうにもならない。家に帰って玄関に上がったらぶっ倒れるような状態だ。月のうち二日ぐらしか休暇ももらえない。そういう勤務状態で、だからそういうところに、十分看守の教養を深めてりっぱな人柄をつくり上げていくような余裕も何も現在のところはない。そういうところに現在の金嬉老の問題の温床があるんだ。こういうことを聞いたわけでございますが、矯正局長は、その点についての御見解はどう  でしょう。

勝尾鐐三法務省矯正局長

○勝尾政府委員 現在第一線の看守が非常に老齢化しております。看守の全国平均年齢がいま大体四十三・五歳ぐらいでございます。また古い、五十歳前後の看守の中に、御指摘のように能力的に十分でない者がいるということも、私は事実だと承知いたしております。  なお、退職の施設長がその近くに家をつくるという話につきましては、私も三、四年来そういうことを聞いておりまして、ここ二、三年来退職の施設長を郷里の近くの施設長にはしない。たとえば愛知県に郷里を持っている者については、愛知県内の施設長にはしないという方針を堅持しているつもりでございますが、愛知県と静岡県ということになりますと、やはり交通の便宜上そういった疑惑を持たれることが絶無とは言えないと私は思いますので、その点はなお今後の人事異動にあたりまして、十分に配慮してまいりたいと思っております。  なお、問題になっておりますことしの三月定年退職をいたしました静岡の刑務所長は、愛知県のいなかに現在住居しているということを承知しておりますが、岐阜との間がどうい距離関係になっているか、私ここではいまはっきりしたことを申し上げられないで遺憾でございますが、愛知県に住んでいるということは承知いたしております。そういった点につきましては、人事異動の際に十分考慮いたしたいと思いますし、いやしくも収容者をいわゆる人夫として使うということは絶対に厳禁してまいる所存でございます。

沖本泰幸公明党

○沖本委員 前任者の柏木所長さんが岐阜のところにおうちをお建てになったことは事実で、いまおばあさんをお呼びになって住んでいらっしゃる、こういう点もはっきりしておるわけなんです。それで中の服役者をお使いになって、手伝わせて家を建てたということも事実である。こういうことで、代々の所長さんはそういう傾向にある。もちろんこの所長さんは、自分の郷里が栃木県だから関係がないというようなお話もありましたけれども、疑惑の点が非常に多いわけで、結局隔絶された一つの刑務所の中で所長さんはほとんどの権限を持っていらっしゃる、こういうところからいろいろな問題が起きてくるんじゃないか、こういうことになるわけです。  そこで、一番トップがそういうことなんですが、たとえば松山の刑務所の汚職事件がございましたけれども、そのときも当事者が持っている担当の区域内は保安課長が全然避けて通っておる。それで問題が明らかになるのが非常におくれてきておる。そういう汚職等の不正事件を所内の人たちが全部知っておったのに知らぬ顔をしてきたのが松山刑務所の汚職問題の根になったのであるということなんです。保安課長が必ず巡回するわけだから、保安課長さんがものごとが全部わからないことはない。また刑務所の看守さんがものを入れるにしても、独断で、ないしょでなかなか行なわれにくい。やってもたばこ程度だ。しかし、そういうことが起きるのも、受刑者が保安課長に面会を求めて、自分の不服とかそういうものを述べられる機会を与えられておるところに、保安課長が直接服役者と接触の機会が多くあって、自然にそういう形になってくる。そこでたとえて言うなら、力道山を刺した犯人ですが、これは東京の拘置所でもてあまして岐阜へ送ってきた。ところが、送られた受刑者は、保安課長との話と違うじゃないかと言って岐阜の刑務所で相当あばれたということなんです。そのときの保安課長が静岡の池浦管理部長であった、こういう点があったわけです。ですから、金嬉老に対していろいろなものが差し入れられるのは、ただ単に幹部の方々がそういう問題を大目に見たというようなところから起きたのではなくて、そこから端緒を発しているんだ。いろいろな規律に縛られておるから、一看守や看守同士がそういう内容のことをできるのではなくて、必ず保安課長なり管理部長なり上は所長なりが入っていることを一つ一つ知っているはずなんだ、知らないはずはない、こういうところに問題点がある、こういうことなんですが、この点いかがですか。

勝尾鐐三法務省矯正局長

○勝尾政府委員 御指摘のところに問題点がある、私もそのように思います。

沖本泰幸公明党

○沖本委員 柏木所長が岐阜の刑務所長でおられたときは、所内が非常に乱れて、服役者はてんで看守の言うことを聞かなかった、そういうときがあったようです。そういうことで保安課長なり管理部長なりのやり方一つで所内がいろいろなことになってくる、こういう刑務所の内部なんだということになるわけですが、この金嬉老問題に関連する三人の方々すべて、そういう問題がいろいろとついて回った方々であったということを聞いたわけなんですけれども、その点いかがですか。

勝尾鐐三法務省矯正局長

○勝尾政府委員 私も、所長、管理部長、保安課長が御指摘のようなことが行なわれる環境をつくったというように考えております。

沖本泰幸公明党

○沖本委員 前の浅井保安課長は現在網走の管理部長に行っていらっしゃるそうですけれども、うわさでは金嬉老を扱うのに最適任者だということで、こちらのほうの保安課長としてかわって来られた。こういう話も聞いたわけなんですが、そういう点にやはり疑問が出てくるわけなんですが、そういうことはおそらくないと思うのですけれども、その点についてはいかがでしょうか。

勝尾鐐三法務省矯正局長

○勝尾政府委員 浅井保安課長を網走のほうに転任させましたのは、御指摘のような理由で私としては転任させたものではございませんので、本人の勤務が二年をこえるに至るというところで、矯正全体の幹部の年齢が五十五歳から六十歳の定年に非常に片寄っておりましたので、その辺のいわゆる風穴をあけると申しますか、そういったことも考慮して網走のほうに転任させたのでございます。

沖本泰幸公明党

○沖本委員 何か金嬉老に弱みを握られておる、こういううわさもあったということですが、この点はいかがですか。

勝尾鐐三法務省矯正局長

○勝尾政府委員 その点につきましては、弱みと申し上げるよりも、浅井保安課長が小菅の保安課長補佐をやっている当時、金嬉老に数学を教えたりして、非常に金嬉老から感謝されていると申しますか、いわゆる金嬉老に数学を教えたり文字を教えたりというような特別な措置をしていたというように私は聞いておりまして、いわゆる弱みというものを握られていたという事実については、私としては承知しておりません。

沖本泰幸公明党

○沖本委員 そうすると、何らかの金嬉老と関連のあった方が保安課長としてお越しになっておったということは事実なんですね。そういうことで、結局服役者の行動についてはすべて保安課長が全権を握っており、管理部長がその上に立ってすべてをまかなっておるので、ほとんどこの方々が知らないものはないということなんですが、何を入れるにしても管理部長なり——ただ大目に見ておったからそういうものが入ったと、先ほどの畑先生からのお話も、そういうことではないか、こういう御質問もあったわけでございますが、そうではないんだ、結局何を入れるについても看守ではどうにもならないのだ、だからこれほど前代未聞、言語道断な問題が起きたことの裏には、必ずその責任者である管理部長なり保安課長がすべてを知っておるはずなんだということなんですが、その点はいかがでしょう。

勝尾鐐三法務省矯正局長

○勝尾政府委員 その点につきましては、先ほど畑先生のほうから御指摘がありましたように、最初のいわゆる金嬉老に対する処遇計画の中に、金嬉老の面会とか差し入れ、その他処遇については保安課長がすべて指揮をとるという趣旨のことが書いてあるわけでございます。この指揮をとるということばについて、今回いろいろ関係者の意見を聞いてみますと、ある者は金嬉老についての事柄は一切保安課長が決定権を持っているというように理解をして仕事を始めたというように、この指揮をとるということばについて受け取り方がいろいろまちまちであったようでございます。結局保安課長がすべて決定権まで持っているというようにこれを理解した職員が多くいたということは事実でございまして、そういう意味で保安課長がすべてを了承しまた知っていた、このように考えられているというのが実情であると私は思っております。

沖本泰幸公明党

○沖本委員 決定権を持っておったということよりも、何を入れるかにを入れるという金嬉老からの要求があったら、それに応じて保安課長がそれを入れさしておったということになるんじゃないですか。そうすると、何人も看守さんがかわったということになりますけれども、直接責任はその看守さんではなくて結局保安課長にあり、管理部長にある、こういうことになってくると思うのです。これは畑先生のお話ですと、三人の方々が現実にはいらっしゃらなくて質問ができなかった、こういうことになるわけですが、そういう点について私は疑問を持っておるわけです。

勝尾鐐三法務省矯正局長

○勝尾政府委員 その点につきましては、たとえば豚足とつけものを入れるという許可を保安課長がいたしております。そうなりますと、結局豚足、つけもの以外の食べものについて保安課長は当然これは許してくれる、こういった考え方、そういったものが交錯して品物がどんどん入っていた。一つ一つについてそのつど保安課長が具体的にこれを、許可の行為をとっている、そこまでは私のほうの調査では認められませんが、やはり特別な、通常ならばとうてい許されないのが相当であるという品物について保安課長がこれを許した。そうすれば、ほかのものは当然許される、こういうような順序を踏んできておる。またそれについて保安課長が黙認あるいは知らぬ顔をしていたというようなこともあったと私はいまのところ認めておるのでございます。

沖本泰幸公明党

○沖本委員 認めていたということよりも、むしろその事実を握って指示しており許可を与えて、実際にその品物を入れさすのは看守であるにしても、実際のその命令権は保安課長が持っており管理部長がちゃんと知っていた。こういうことはほかの刑務所の機構の中から見てもそうとらざるを得ないのであります。看守が一々やることは全部保安課長の権限の中で見ておるわけだから、当然その保安課長はすべてに対して指示もし命令も与えておるということですが、それはほかの刑務所の機構といろいろなものをあわせたらおわかりになるんじゃないでしょうか、そういう結論が出るのではないでしょうか。

勝尾鐐三法務省矯正局長

○勝尾政府委員 一つ一つの品物につきましては、保安課長はこれをかたく否定をいたしておりますが、ただいま御指摘のような機構あるいは具体的な運営といったものを総合判断いたしますと、いま御指摘のようなことであったと私は認定される、そういう意味において御意見については私はそのような認定のしかたは可能であるというように考えております。

沖本泰幸公明党

○沖本委員 そういう点から、これは結局所長さんあるいは管理部長、保安課長さんというところに一番問題点が出ておって、それを十六人の担当者が入れかわり立ちかわりかわったということにスポットが当たっておるのではないか、それだとちょっと食い違ってくる。それで上の人は全然そういう責任がないような形で、下の人たちがその責任をいまかぶされておる。そうではないか、私はそう思うわけです。  それで、いわゆる金銭の授受、そういうものがなかったのは不幸中の幸いだというお話もありましたけれども、そういう機構とか内容を考えていきますと、当然一人一人の看守さんに金銭授受が行なわれるわけはなくて、ただ上からの指示で、こういう要求がありましたからこういうものを入れていいでしょうか、入れてやれ、こういう形で行なわれてきたのじゃないか、こういうように考えられるわけです。そうなってくると、金銭授受とかそういうものが行なわれるわけはない、こういうふうに考えられるわけです。その点いかがですか。

勝尾鐐三法務省矯正局長

○勝尾政府委員 問題の把握のしかたといたしましては、私はただいまの御意見に全く同意見でございます。

沖本泰幸公明党

○沖本委員 そうなってきますと、だんだん問題が違ってくると思うのですけれどもね。大臣は全国の刑務所の総点検ということをおっしゃっておるわけですけれども、そういう点をお考えになると、これは刑務所の機構とか内容とかそういうものから何から全部変えて、もっと問題が起きないような機構に十分変えていかなければならないわけですけれども、いま私、矯正局長さんといろいろお話をいたしましたけれども、大臣としてはそういうことについてどういうお考えでございましょうか。

小林武治自由民主党法務大臣

○小林国務大臣 先ほどからもお話がありましたように、これらのことは担当の看守だけでできる問題ではありません。当然いまの刑務所の幹部が関与しておった、少なくとも黙認した、こういうことは私は事実であろう、かように考えるのでありまして、このことをもとにして今後の刑務所の機構とかあるいは運営とかいうようなことについても考えていかなければならぬと思うのであります。この席でも申し上げたと思いますが、監獄法などというものも、明治四十一年のものがまだそのまま生きておる。そしてただつぎはぎだけをして今日まで糊塗してきた、こういうようなことにも私は大きな原因があると思うのでありますから、いまお話しのようなこともひとつ同時に考えなければならない、監獄法の改正はぜひいたしたい、こういうことを思っておりますが、その前におきましても、いまの運営上の問題等につきましてはこの際十分反省をして、そしてこういうことの起きるもとをできるだけ排除する、かようなくふうなり措置なりをぜひいたさなければならない、かように考えております。

沖本泰幸公明党

○沖本委員 先ほどから述べてきたとおりでございますが、たとえて言うと、力道山を刺した犯人、殺害者ですね、これが服役中に岐阜で組関係の暴動が起きて、これはまたよそへ変えたとか、こういう話もございました。そういうことで、一番初め申し上げました神戸の本多会の幹部が入ったときには岐阜のやくざが客分として扱った、こういうつながりから刑務所内にもそういう空気がずっと流れてきている。刑務所としては現在は服役者の種別をいろいろ分けていらっしゃるわけですけれども、平均年齢が四十から五十に手が届くような看守さん、それが数が足りない。それが能力を越えたぎりぎりで、玄関でぶっ倒れるような状態まで働かされるし、月のうちに二日しか休暇もとれるかとれないか、こういう状態で休みもとれない。こういう関係で見てみますと、いつでも暴動を起こしてひっくり返せるというような状態に刑務所自体があるのじゃないか。おまけに凶悪犯人ばかり集めているわけですから、いわばよくもいままで平穏無事に終わったということも考えられますし、またいろいろ逃亡している人がよく記事に載ったりして出てきますけれども、これもやはり、そういうことも行なわれることはあり得るのだ。あり得ないところに起きたのではなくて、あり得る条件の中から起きてきた、こういうことが考えられるわけでございます。  そういう点について、もっと看守さんの能力を早急に増強して十分なことをしなければ、これはもう突発的な金嬉老のような問題は起きないにしても、常時刑務所の中ではそれに類似するようなものが必ず行なわれる、存在しているということになるわけですけれども、その点について矯正局長さん、いかがお考えですか。

勝尾鐐三法務省矯正局長

○勝尾政府委員 御指摘もございましたが、現在看守の勤務状況は月のうち週休を全国平均でとりまとす三日でございます。したがいまして、週休四日あるべきところを一日間やはり週休がとられていない。それから公務員に許されております年次休暇が二十日ございますが、行刑職員がとっております年次休暇は平均三・五日という状況でございます。  なお、第一線で直接収容者の戒護に当たっております看守、看守部長は約八千八百ございますが、これらの八千八百に相当する数の収容者同士の暴行、傷害、あるいは収容者が職員に対して暴行、暴言を吐くといった、看守の数にほぼ匹敵したそういう事件が起きているのでございます。  したがいまして、私のほうといたしましては、まず週休を確保する。年次休暇をせめて十日とれるようにしてやりたい。そのための人員をどうして捻出するかということについては、それぞれの配置個所についてテレビ等でかわり得るものがないか、あるいはこれを省くことのできる個所がないかといったことで、自分らの手でまず勤務の合理化をはかり、なおそれでも不足している看守について増員をぜひお願いいたしたい。半面、矯正研修所の研修の重点を、第一線で勤務している職員の研修を充実していくという方向でこの問題をぜひ解決いたしたい、このように考えております。

沖本泰幸公明党

○沖本委員 さらに言えますことは、たとえばこういうことがあると、大臣通達で総点検ということでくるのですが、結局下の人ばっかり上から締めつけられて、そうなってくると過酷な勤務の上にまた上からいろいろと注意事項とかいろいろな訓戒があるわけです。そうなってくるとうっせきしたものがやはり爆発してくる。それが看守さんの反抗意識につながっていって、犯罪を構成していく一つの温床になっていく。これが一番の問題だ、こういうことになるわけです。たまたま私のところへお越しになった方も、社会見学なんか全然ない。だから限られた刑務所とその周辺に官舎を与えられて住んでいるだけで、年を経て一生が終わる、こういうような人生をたどらなければならない。こういうところに問題があって、その点を改善してもらわなければどうにもならない。金嬉老的な問題はいつでも起きるということを言っておるわけですけれども、大臣、この問題に対しましてひとつ早急に改革を加えていただかなければ、これから犯罪がどんどん増加の傾向があるわけですから、どんな形の犯罪者が、出ることは好みませんけれども、出てくるような傾向は、社会情勢上どうしてもいなめない。こういうことから考えると、まあアメリカの映画なんかにあるようなセンセーショナルな大問題が刑務所の中に起きないとは限らない、こういう現状ではないか。私はそういうことを思うわけでございますが、大臣の御所見を承りたいと思います。

小林武治自由民主党法務大臣

○小林国務大臣 御注意のことはまことにごもっともでありますので、私もひとつ運営の上においてぜひさようことを実現させたい、かように考えます。

沖本泰幸公明党

○沖本委員 矯正局長はどうですか。先ほどの御答弁ですべてを尽くしたことになりますでしょうか。

勝尾鐐三法務省矯正局長

○勝尾政府委員 ただいまの御指摘は、結局第一線の看守のしわ寄せにならないようにという御指摘かと存じますが、私もその点を十分私なりに配慮をしていきたい。たとえば近く各管区にでもおもむきまして、通牒の具体的な実施の過程にあたりましてそういったことのないように、またテレビあるいは科学的な不法所持品の探知器といったものについて不十分なものがあれば直ちに予算上の手当てをしてやるというようなことで、第一線の看守にそのためにしわ寄せがいくという、このようなことがないように処置をしていくつもりでおります。

沖本泰幸公明党

○沖本委員 さらにつけ加えますと、そういうふうないわゆる重罪を犯した人たちの刑務所と軽い人たちの刑務所とを分けてあるわけですけれども、人員配置そのものが同じような条件で配置されておる。そこで、あるところではとんでもないたいへんな目にあい、あるところではひまで困っている、こういう状態がいまある、こういうことなんですが、こういう点はやはりそういう状況によって人の配置を変えていけばまだいろいろできるわけですけれども、ところが、そこを変えてもらうについては、三号俸給料を上げてもらってもあそこはごめんだ、こういう空気だというわけです。そういう問題も聞いてきたわけでございますが、そういう問題も含めて十分検討していただいて、この際でございますから十分な対策を立てていただいて、今後再び問題が起きないような十分な解決をはかっていただきたいということを要望いたしまして、質問を終わります。

高橋英吉自由民主党

○高橋委員長 林君の関連質問を許します。林孝矩君。

林孝矩公明党

○林(孝)委員 関連して、大臣にお願いいたしますが、昨日静岡刑務所を見てまいりまして、大臣が先日総点検ということを言われておりましたけれども、具体的にこういう点に関してという方針を出されておるのか、それともただ単に総点検をするという意味なのか、または静岡刑務所の問題に対して特に他の刑務所の総点検とは別個に何か指示を与えられたか、その点を強く感じたわけであります。というのは、たとえば、ほうちょう、やすり等の入手経路一つを例にとってみましても、物的証拠から犯人を割り出していくということが可能である時代において、持っておった者もわかっており、そのメーカー等もわかっておるにもかかわらず、どうしてそれがそこに入手されたかという経路に関しては口を結んで、だれもその件については話さない、そうした緩慢な現地の調査状況というものを痛切に感じてまいりました。そういうことから考えまして、今度の静岡刑務所の問題の早期解決のためにも、そうした強力な姿勢が必要ではないかと思いましたもので、大臣にお伺いするわけであります。

小林武治自由民主党法務大臣

○小林国務大臣 静岡の事件は、やはり先ほどからお話しのありましたように、単なる担当の看守だけの問題でない、幹部がある程度関与しておる、黙認しておる、こういうようなことは私はそのとおりだろうと思います。そういうふうな静岡事件を契機として、全体の収容施設について考えてまいりたい。各刑務所にはいわゆる問題の受刑者等もおる、これはそれらのことも特にひとつどういうふうな扱いをしておるか、いわゆる問題とされておる受刑者も相当な数おるということでございますから、そのことも調べると同時に、管理上全体をひとつ反省してみよう、こういうことでございます。これらのことにつきましては一応の通牒を出しておりますが、まだこまかいことの指示は続いて、矯正局長から出る、こういうことにいたしております。  なお、静岡の問題につきましては、内閣委員会その他におきましても非常に取り調べが緩慢じゃないかというふうなおしかりを受けておりますが、いわゆるあの閉鎖社会におきまして、何といたしましても行政的な調査というものには限界がある。あの程度と皆さんはお思いになるかもしれませんが、中にはそのために血圧が高くなってまた休んでおる人もある、こういうふうな状態でございまして、行政調査においてはもう黙っておれば、これは刑事事件においてだって黙っておる者はなかなか黙秘権とかいろいろな問題がありまして、いわゆるしゃべらせるということは非常にむずかしいのでございます。したがいまして、今度の問題においては外の者は調べられない。ことにやめた方ですが、こういうような者は参考にお聞きするかどうかは別として、刑務所の力では調べられない。いまお話しのように、所長も三人もかわっている、あるいは管理部長もみなかわっている。これらの中でもって退官者等についてはそれぞれそういう刑務所としては調べる事由がない、矯正局としては調べる事由がない。こういうような問題もありますので、結局これはやはり検察庁において捜査という形でやってもらう以外には行政調査ではこれ以上進展しない。いかにも外から見れば手ぬるいじゃないかという感じを持たれるのは当然だと思いますが、しかし、率直に申してこれは非常にむずかしい。たとえば看守仲間にしても何仲間にしても、とにかくしゃべらないということになれば、どうしたらしゃべらせられるか、また一方からいえば、皆さんの中には科学的にやり、外部調査もしたらどうかという問題もあるが、こういう問題はひとつ検察の手を通じてやってもらう以外にないというふうなことで、その方向にいま進んでおるということでございます。  以上で、一応お答えといたします。

林孝矩公明党

○林(孝)委員 それから矯正局長にお願いいたしますけれども、矯正局として現地の管区の刑務所内の監視、管理、そういうものも先日の本委員会で非常に不十分でありましたということでありましたけれども、実際向こうへ行ってみますと、なるほど不十分で、部屋の外からしかながめてなかったような状態で、実際こういう状態であれば幾らでもそういうことが行なわれる可能性があったのであります。先ほど来の岐阜の刑務所の問題もそうでありますけれども、そういうふうに考えていきますと、全国的にこういう内情が考えられるのではないか、非常にそういう憂慮をしながら帰ってきたわけでありますけれども、矯正局の幹部に、今回の事件に対する具体的な問題解決への姿勢というものが出てこなければ、そうした問題の解決にはならない。  そこで、矯正局としては静岡刑務所のこの問題に対して、東京管区ですか、それから事件に関する転任された前の管理部長、また保安課長、そういう人たちに対して、今後新たな方式でそうした人たちの強力な調査等をやっていくという考え方がおありかどうか。

勝尾鐐三法務省矯正局長

○勝尾政府委員 大臣の命による通達を受けまして、私のほうで全国の各管区長に対しまして、管下の各施設に収容中の処遇困難者及び取り扱い要注意者について、その処遇なり担任職員の勤務体制及び関係各部課における処遇事務の処理方法の実情を調査の上、問題点改善、指示事項対策等について折り返し現在報告を求めております。  なお、お尋ねのすでに転任をした幹部につきましては、私のほうで、検察庁のほうの捜査に支障のない範囲で逐次事情を聴取して、なお一そう真相の究明に現在努力いたしております。  なお、全般的な細部の指示を引き続き行なう準備を進めておりますが、今月の十五日に、全国の管区長を東京に招集いたしまして、この事件の詳細な実情を話をして、問題点を明らかにして、それぞれまた管区に持ち帰って、それぞれの管内の各施設に徹底をはからせると同時に、私も機会をつくりまして、各管区に出かけまして、直接所長に、幹部に指示をするプランを現在立てております。

林孝矩公明党

○林(孝)委員 終わります。

高橋英吉自由民主党

○高橋委員長 岡沢完治君。

岡沢完治民社党

○岡沢委員 法務省の刑事局長と、この事件の調査に当たられました平井検事がおられますので、率直にお尋ねをしたいと思うのですが、現時点で、ほうちょう、やすり、粉末の入手経路、だれが、いつ、どういう方法で、どういう目的で持ち込んだかということがわかっておりましたら、明らかにしていただきたいと思います。

辻辰三郎法務省刑事局長

○辻政府委員 いわゆる金嬉老の今回の事件につきましては、この事件が発覚いたしましたのが、御案内のとおり四月の二十二日でございます。検察庁の立場におきましては、静岡地検がこのことを知りまして、直ちに、二十三日からでございますが、本件のほうちょう、やすりの入手経路を——現在係属しております金嬉老の殺人等にかかわる事件の公訴の維持という観点から見ましてもたいへん重大な問題でございますので、主としてほうちょう、やすりにつきまして、この入手経路の捜査を開始いたしました。その後、先ほど来答弁がございましたように、本月の四日に矯正局、刑務所関係の調査資料の全部の引き継ぎを受けまして、これをさらに基礎にいたしまして、現在、検察庁においては鋭意捜査中でございますが、現在まで、本件のほうちょう及びやすりの入手経路は、検察面におきましてもまだ判明したという報告は受けておりません。

岡沢完治民社党

○岡沢委員 いま刑事局長の御答弁がございましたが、先ほど矯正局長から、静岡地検の二人の検事を専任に当てて事件の捜査に当たっているということでございますが、どういう被疑事件で——この捜査は、いま刑事局長は二十三日からとおっしゃいましたが、私がきのう平井検事から聞いた範囲では、五月四日までは矯正局の調査であって、捜査ではない。五月四日から、ようやく通報をして地検に移したというお話でございました。それから捜査が始まったのか、その辺を明らかにしていただきたいと思います。

辻辰三郎法務省刑事局長

○辻政府委員 ただいま申し上げましたように、本件のほうちょう、やすり等につきましては、この押収の請求が、当該事件の弁護人のほうから裁判所に出たわけでございます。これは、弁護人のほうも、本件の殺人等被告事件の公訴維持に重要な関係があるという観点から、この請求がなされたものと承知いたしておるのでございますが、同様のことは、検察庁側におきましても言えるわけでございまして、ほうちょう、やすり等の問題につきましては、直ちに、現在係属いたしております殺人等被告事件の公訴維持という観点から、捜査を、検察庁としては開始をいたしておるわけでございます。  ただ、検察庁といたしましては、まず、今回の金嬉老の不当処遇と申しますか、これにからむいろんな事案につきましては、まず矯正当局におきまて調査をいたしておったわけでございますが、その調査の経過、結果等は逐次静岡の検察庁におきまして、刑務所当局から連絡を受けておるわけでございます。そういたしまして、刑務所の調査状況が一応この辺でという段階が五月四日でございましたので、五月四日にこの関係資料を全部入手いたしまして、さらにこの資料をもとにいたしまして、前の補充捜査を含め、新たに本件の、今回の不当所持にからむ事案の全般につきまして、鋭意その真相を究明いたしておる、かような段階でございます。

岡沢完治民社党

○岡沢委員 私の横に松本善明委員がおりますけれども、二人は研修所の同期生でございまして、私たちが司法研修を受けましたときに、ある上司から、暴力団と高利貸しは強い者に弱く、弱い者に強い、弁護士になる場合でも検察官になる場合でも、この逆であれという教えを受けました。今度の事件は、前回も申し上げましたが、言いにくうございますけれども、法の執行に当たる、また法務大臣のおひざ元で最も規律が厳正であるべき刑務所で、しかも法務大臣の御出身地の静岡で起こったということがやはりわれわれとしては、国民の立場から見ても最大の不幸であります。法に対する信頼、法の支配、これは近代国家の大前提であるべきだし、国民も裁判や法について、あるいは検察行政について全幅の信頼ができるような状態であってほしいと思うわけであります。起こったことはしかたないとして、せめて起こった以後の態度につきまして、国民から信頼が持たれるような捜査あるいは処分が適時適切になされるということがせめてもの救いでなければならぬと思うわけであります。  この事件は、幸か不幸か、金嬉老みずから弁護人に暴露したということが捜査の端緒であり、発覚の端緒であった。しかも、先ほど法務大臣自身が言われたように、幹部も、明示か黙示かは別として、知っておったはずだということが推定される状況でありながら、刑務所の内部からはついに明らかにされずに、金嬉老から明らかにされた。しかも、金嬉老の弁護人側は、当日のうちに、問題のほうちょうあるいはやすり、粉末につきましては裁判所に差し押えの申請をし、タイミングを失しない、弁護人としての使命の遂行に遺憾ないような、あるいは場合によったら行き過ぎとも思われるような疾風迅雷の措置をとっておるわけであります。  この事件が発覚したのは四月二十二日、きょうは五月八日でありますから、もう十六日たっております。先ほど畑委員あるいは林委員からも指摘がありましたけれども、物的証拠というべき凶器あるいは出刃ぼうちょう——きのうも実物に類似したものを見せていただきましたが、刃渡りだけでも二十センチをこえる、柄を合わせましたならば三十センチをこえる、りっぱな凶器といえる物件であります。やすりも、普通の場合なら問題にはなりませんけれども、受刑者にとっては、拘置所の内部の者にとっては自由を得るための最大の武器だと考えられるやすりもあるわけであります。こういう物的証拠を裁判所に眠らしておいて、二週間以上も経過した現在、なお、どこで、いつ、だれが、どういう目的で金嬉老の手に渡したかということがわからない。これで一体検察に対するほんとうの国民の信頼がつなげるだろうか。最も大きな問題はむしろここにある。  きのうも、私たちが委員として保安課長に質問いたしました場合に、非常に言いにくそうな答弁をされた。結局上級幹部をかばいたい、あるいはかばうことは当然だ、人情かもしれませんけれども、しかし、この場合は、それは許されないのではないか。また、幹部の中には、前幹部の古傷を追及することは避けたいという気持ちがあるようであります。  この事件につきましても、私は平井検事の御努力については一応の敬意は表しながら、残念ながら矯正局の検事であります。私は、勝尾矯正局長にいたしましても、矯正局長としては非常に適任だと思います。また、検事の資格もお持ちだと思いますけれども、しかし、捜査官としては全く不適当だと言わざるを得ないわけであります。これは身内の犯罪者を捜査官が調べるような感じでありまして、親戚の者を身内の者が調べて、厳正さが、外部から見ましても保てるはずがない。そのとおりの結果が現に出ているわけでありまして、二週間もたった今日、これだけはっきりした今日——金嬉老に接触できる人物というのは限られております。新聞等でも、サンケイ新聞でしたか、金嬉老の内妻が差し入れたという記事もありました。四月二十八日でしたか、これは各社一斉に、金嬉老は弁護人に、前幹部が入れたんだということを言っております。弁護人で知り得る状態が、捜査官、検察官として明らかにできなかった。私はこの事件の背景には、金嬉老の頭のよさ、あるいはいろいろ特別の事情があると思います。しかし、刑務所内部の事なかれ主義が一つの原因だと思いますけれども、残念ながら事件発覚後の態度も、同じように事なかれ主義に終始しておられるのではないか。この委員会における答弁につきましても、汚職が出なかったことは幸いだとおっしゃいますけれども、汚職があるかないか、われわれ大きな疑問であります。現にほうちょうの入手一つわからないで、どうしてむずかしい汚職の捜査が、もしあったとしても明らかにできるだろうかという疑問を持つのがあたりまえだと思います。検察への信頼という点からも、看過できない現在の状態であります。  先ほど法務大臣は、内閣委員会でもすでに指摘されたとおっしゃいましたけれども、われわれが指摘をするのはあたりまえであって、むしろこれを指摘しなければ、国民を代表する資格がないといわれてもしかたがないような感じがします。どうして五月四日に、十日以上も過ぎて初めて地検が動き出されたか。私は矯正局のお気持ちがわからないではありませんけれども、この際は、一日も早く真相を国民の前に明らかにして、こういう原因でこういう事実であったんだから今後はこういうことは起こしませんという態度をとるのが、いませめてもの法務当局としての最大の御責務ではないかと感ずるわけでございますが、この点についての法務大臣及び矯正局長、刑事局長の御答弁を求めます。

小林武治自由民主党法務大臣

○小林国務大臣 これはおっしゃるとおりだと思います。私もしろうとであって第三者としては、矯正局長から、ほうちょうのこと、やすりの授受のことはわかりません、こういう報告を受けたとき、私も全くあ然としたのであります。所内のこういうことがわからないということが私にもわからない。しかし、何としてもわからない、いまの行政調査の範囲においてわかりません、こういう報告でありまして、私も実はしろうととして皆さんと同じような立場において、刑務所の中はそんなものか、こんなことがわからぬのかというふうに私自身も驚いておるのでありまして、私も、これでは行政調査ではだめだ、やっぱり何といったって刑務所の中には仲間意識があるし、きっと知っている人があるに違いありませんが、とにかくしゃべらない。しゃべらないものは、これはもういまのところ行政調査の範囲においてはやむを得ない。したがって、これらはむしろ、いまの外部関係等をある程度押していかなければだめだということで、いま申すように、刑事事件として、事件そのものとしては立件が非常にむずかしい。私は初めからひとつ捜査当局に頼んだらどうだ、こう申しましたが、とにかく事件として立てることが非常にむずかしい、こういうふうなことで多少延び延びになってきた、こういうことであります。とにかく、わからないということになったらもうやむを得ないということで、この五月四日から、先ほど刑事局長がお話しになったような手段によって、やめた人もまた外部の人も取り調べをしてもらわなければいかぬ、こういうふうなことになったのでございます。  これはやはり、世間さまはまことに驚いておると思います。そんなことがわからぬのか、どこからだれが渡したかわからぬのかというようなことは、やはり刑務行政に対して世人が非常な大きな不信と申すか、疑問を持つことは私は当然だと思うのであります。したがって、これらをぜひ解明をしていかなければならぬ、その努力を続いていたすということでございます。

勝尾鐐三法務省矯正局長

○勝尾政府委員 常識的に、涜職等が伏在してある、私もそういう考えを持っております。その点につきましては、ぜひ検察庁のほうで明らかにしてもらいたいという気持ちで、正式に事件を引き継ぐ際にそのことをお願いしたような次第でございます。

辻辰三郎法務省刑事局長

○辻政府委員 この件に関する検察庁の態度でございますが、先ほど来申し上げておりますように、決してこれを拱手傍観しておったわけではございません。このほうちょう及びやすりの入手経路等につきましては、直ちに検察庁としては捜査を開始いたしておるわけでございます。ただ、矯正局、刑務所の調査との関係でこの調査が早く完了するように、検察庁としては実は状況を逐一報告を受けながら注視しておったわけでございます。いよいよ五月四日の段階におきまして、検察庁としては刑務所側から一切の資料の引き継ぎを受けまして、この事案の究明に乗り出したわけでございまして、検察庁としては検察庁の立場で十分事に処してまいったと考えておるわけでございます。  なお、先ほど、押収をされてしまってというようなおことばでございましたけれども、御案内のとおり、係属中の事件につきまして、その証拠物として弁護側から裁判所に押収の請求があり、裁判所がその押収を認めてしまった以上は、検察庁としては法律的にはいかんともしがたい状況でございました。したがいまして、検察庁といたしましては直ちにそれをもちろんよく見せてもらい、また白い粉末につきましては、裁判所に直ちに鑑定を依頼するというような所要の手続をとっておることは申すまでもございません。

岡沢完治民社党

○岡沢委員 法務大臣は事件として立てるのはむずかしいとおっしゃいましたが、調べもせぬで立件できるのかどうか、これはわからぬわけです。常識で考えました場合、拘置所の中に勾留されている未決囚、しかも殺人犯がほうちょうを持っておる、それだけで何らかの犯罪があると思量するのがあたりまえなんで、犯罪ありと思量すれば、検察官は捜査を開始するというのが責務だと思います。これは辻刑事局長にことばを返すようですけれども、私は個人的にお親しい者なんですが、いまのような、今度の事件について検察として万遺憾なきを期したつもりだ、遺漏はなかったという御答弁に対しては、どう考えても納得はできません。これは捜査について初動捜査がいかに大事であるかということは、もうここで指摘するまでもないと思います。実際の検察の捜査の開始は五月四日だ。しかもそれは公判維持のためだ。これはどう考えても正しい検察のあり方だという解釈は出てこないと思います。  私は、きのうの刑務所の幹部との話し合い等を通じましても、非常に言いにくそうな感じ、実態を言えない立場、それは自分が言えば前任者の非をあばくことになるし、責任を追及することになる。自分だけがいい子になることは悪いという気持ちもあるでしょう。確かに御指摘のように保安課長なんかきのうは目をはらしておりました。所長は病気だということで、それでも無理をしてわれわれの視察にずっと同行しておられました。たいへん気の毒だと思いました。  特にこの機会に言及しておきたいことは、今度の事件発覚の動機は、金嬉老があえて自分に不利なことをなぜ新聞等に発表したかということにつきましては、これは金嬉老の気持ちはだれも正確にはわかりませんが、推定されるところは、新しく着任された所長、管理部長、保安課長が、むしろ厳正にいままでの特別待遇を改めようという方向で規制をされかけておる。そのことを金嬉老は感じ取って、機先を制して、逆に自分のほうから暴露したというようなことが十分に考えられるわけであります。もしそうだといたしますと、現在の所長さんなり管理部長なりあるいは保安課長はむしろ功績者であるという立場もとれないことはないわけであります。  私は、この事件全体は、個人的に見ればむしろ拘束されておる金嬉老に、逆に拘束する立場にある看守たちが脅迫をされたりあるいは金を借りられたり、被害者のような立場になるような感じもいたしますが、しかし、それはそれとして、この際厳正な処分はもちろん必要でありますけれども、厳正な処分の前提に正しい責任の所在が明らかにされなければ処分のしようがないのです。責任のない者に厳正な処分をしてやるということはかえって行き過ぎだ。決してわれわれはそれを求めようとはしない。そのためにも事実の究明といいますか、真相を明らかにする、刑事的にも民事的にもあるいは行政的にも。これが一番大事じゃないかという感じがするわけでございますけれども、これが任意の調査で、いわゆる捜査ではなしに調査でできるとはどうしても考えられない。金嬉老の殺人等の事件につきましては、公判担当検事も、静岡地検の捜査担当検事もいるはずでございます。金被告の弁護人側はむしろ行き過ぎとすら思われる証拠保全の措置を時期を失せずとっている態度に比べても、私は検察庁の行動、捜査体制は不可解というほかなく納得できないのであります。むしろ外にきびしく内にやさし過ぎる。私が松本委員なんかと一緒に教えられた、この強きに弱く弱きに強い。同じようなことが、内と外に分けた場合に、外に対してはきわめてきびしいのだけれども、内部に対しては緩慢過ぎるというような非難を受けてもしかたがないような態度ではないかと言わざるを得ないわけであります。  そういう点につきまして、特に新聞等ではすでに内妻が差し入れたとか、あるいは一部で金嬉老自身が前幹部からほうちょうも含めて差し入れてもらったんだという言明をしておるという事実もあるわけでございますから、この辺の前提がありながら、なお、この例の三点について入手経路がわからない理由がもしあれば明らかにしていただきたいと思います。

辻辰三郎法務省刑事局長

○辻政府委員 検察庁におきまましては、五月四日の引き継ぎを受けますまでは、この公訴の維持の観点からの補充捜査ということで所要の捜査をいたしておったわけでございます。五月四日に一切の資料の引き継ぎを受けまして、現在はこの資料をさらに前提にいたしまして、従来やっておりました補充捜査のレールに乗りながら、この資料をもとにして何か今回の刑務所の問題につきまして、そこに犯罪があるかどうか、あれば直ちにその犯罪の捜査に移ることは当然でございます。検察庁は同じ法務省所管に刑務所が属しておるからということで、決して捜査を控え目にするとかそういう気持ちは毛頭ございませんで、その点は厳正にやっておるわけでございます。  ただ、先ほど来御指摘のように、その時期がおそかったんじゃないかという御指摘の点につきましては、御批判もあろうかと思いますけれども、これはやはり現在刑務所内で起こったことは刑務所がまず調査すべきであるという一般の一つの常識と申しますか、そういうことに従ったわけでございまして、その間といえども、その辺の事情については逐一連絡を受けて承知はいたしておったわけでございます。また内部のことに立ち入って申すわけでございますが、静岡からも上級官庁につきましては逐一これが報告がなされておったわけでございまして、検察当局といたしましても十分の注意をもって処してきたことだけは御了承願いたいと存じます。

岡沢完治民社党

○岡沢委員 この事件につきましては、前回の委員会でも、鈴木平という分限免職を受けた前看守から、四十三年の九月あるいは十二月等にこの金嬉老に対する特別扱いについて上申までなされておる。それが無視された。それからまた、この事件の最も大きな背景といいますか、出発点をなしたと思われますのは、ここでも何回も問題になりました浅井当時の保安課長が、逆に網走の刑務所の管理部長に栄転しておるところに非常に奇々怪々といいますか、国民から見たら、悪い者がのさばってむしろ道理が引っ込んでいるというような印象を与え過ぎている事件です。  その上にさらに、捜査で内部からいわゆる汚職事件を出さない、むしろ出ないことにほっとする、出したくないという気持ちがおありの気持ちもわからぬことではありませんが、そういうおそれと申しますか、心配がかえっていわゆる捜査をおくらして、結果として本事件をこじらしておると言われてもしかたがない状態ではないか。刑事局長も、内部の事件だから内部にまずまかす、これは刑事事件の場合そういうことはまずあり得ないと思うのです。ここでその問答をすることは避けたいと思いますけれども、ほかの会社で横領があった場合に、内部の処分あるいは調査を待ってから警察が捜査を開始するかというような問題を考えていただきましても、そういうことはあり得ない。  いろいろな意味で、せめてこの事件発覚後も国民に疑惑を与えるような捜査の態度であってはならないし、またその態度だけではなしに、機構上も矯正局の内部で調査をするということに大きな形式的な誤りがあったのではないか。なぜもっと早く捜査当局が、これは警察側として当然動いていいと思いますけれども、捜査の能力からいいましても、また機構からいいましても、内部でやる、あるいは矯正局の検事さんではちょっと無理ではなかったかということを指摘いたしまして、質問を終わりたいと思います。

高橋英吉自由民主党

○高橋委員長 それでは田中伊三次君。

田中伊三次自由民主党

○田中(伊)委員 事務総長にお尋ねいたします。  私は、裁判官の思想問題、この大事な問題が、上下一貫して貫かれることが非常に必要だ。上と下との考えがちぐはぐになるようなことがあれば、これは公共の福祉の上からこれほど遺憾なことはない。こういうことで裁判官の思想問題というものを非常に心から憂慮をしておる。憂慮しておるからこれを国会に持ち出して論議をするという前に、あとうべくは最高裁の中において上下一貫の御処理を願いたいという希望を持っておったのですが、いろいろなことが新聞に出てくる。本日もこの委員会の席において各党の諸君が熱心に言及をされんとしておる。そういうときでありますので、私はこれをあえてこの大事な事柄を究明しておきたい、こう考える。  この裁判官の思想というもの、これは最高裁判所なり国会なり国民なりというものが、こうである、ああであるというときには、私は憲法に根拠のあるものでなければならぬと思うのです。憲法に根拠のない議論を国会でこうだああだ、最高裁の長官がこうだああだ仰せになることは私は遺憾だと思う。論議はすべて憲法に根拠のあることでなければならぬ、こう考える。  そこで、裁判官の思想ということを憲法に根拠を持たして考えてまいると、憲法七十六条には、御承知のとおりこの憲法で規定しておりますことは、裁判官は、良心に従って独立をして職務を行なうのだ、憲法と法律以外には拘束はされない。これが憲法七十六条明文の規定でございます。   〔委員長退席、瀬戸山委員長代理着席〕  御承知のとおり、この七十六条だけをこのまま読むと、ほかを読まないで七十六条だけを読むと、裁判官の思想は自由ですね。それは軍国主義であろうとも、共産主義であろうとも、無政府主義であろうとも、それは全く自由である、この条文だけを読めば。ところが、この条文だけを読まないで憲法の基本的人権に関する条項全体を読んでみる。そうすると、十二条という条項をお読みになるとわかるのでありますが、この憲法で与えられておる基本的人権というものは、何人もこれを奪うことができない永久の権利としてこれを与えられておる。しかしながら、この憲法で与えられておる基本的人権というものは乱用してはならない、公共の福祉のために利用する責任を負う、こういう明文が憲法十二条に明記してある。したがって、裁判官の良心に関する七十六条の条文というものは憲法十二条の条文とあわせてこれを読まなければならぬ。七十六条だけ切り離してこれを読むべきものではない。十二条をあわせて読む。  こういうことになると、裁判官の良心ないし裁判官の思想というものは一体——私は思想は良心の一部をなしておる、こう考える。思想は思想で別だけれども、良心は良心として別なんだなどということは、およそ通常の人間においてはあり得ない。よほど修養ができておれば話は別でありますが、そうでなければ、これは別のものでないという考え方が正しいと思う。そうすると、裁判官の良心というものはどういうものであるべきかということの所論である。これは私は、右でもいかぬ、左でもいかぬと思う。軍国主義でもいかぬ、共産主義でもいかぬ、無政府主義でもいかぬ。右に片寄らず左に偏せざる中庸のものでなければ良心にならぬ。裁判官の良心とはそういうものでなければならぬ。それは何を根拠にそういうかってなことを言うのかというと、裁判は国民全体のための裁判でなければならぬ。国民全体の裁判制度でなければならぬ。その裁判制度を運用する裁判であるからだ。国民の中には右の人もある、左の人もある。裁判官の裁判は右に片寄らず左に偏せざるものでなければならぬ、こういうふうに考えるべきものである。そういう良心でなければならぬ。中庸の良心、中立の良心というものでなければならぬ。なぜかといえば、国民の裁判であるからである。こういうことであります。裁判官の思想というものは良心と切り離してお考えになっていけるものとお考えなのか。  第一に聞きたいことは、通常の修養程度の人間であるならば、もっと具体的に言うと、日本の裁判官制度における裁判官という程度の人物であるならば、良心と思想というものは区別ができるのかどうか。わかりやすく言うと、思想は左なんだ、しかし具体的裁判を行なうにあたっては中庸でいくのだ、おれの思想は右なんだ、右の思想に加担をしておるのだ、しかし具体的裁判に関しては中庸でいくのだというようなことができるとするならば、良心と思想というものは切り離し得ることになる。そういうことは通常の人格ではむずかしいだろうということになれば、良心と思想とは切り離し得ないものである、切り離すことはむずかしいものであるということになるわけです。良心と思想は切り離して考えられるものか、考え得ないものか、これは最高裁としてはどうお考えになっておりますか。

岸盛一最高裁判所事務総長

○岸最高裁判所長官代理者 この問題は最高裁としても公式な見解というものを発表したことはございませんけれども、ただいまの問題は、先日の石田長官の発言とからんでおると思いますが、石田長官の発言の御趣旨は、いま申されたような意味を仰せられたのだろうと思います。

田中伊三次自由民主党

○田中(伊)委員 石田さんの発言は新聞で拝見、テレビで拝見をしたのです。直接に会うてお目にかかって話に聞いておりませんが、思想と良心は切り離しにくいものだということが前提の御議論のようです。私もこれに賛成をいたします。そうすると、切り離し得ないものだということになると、裁判官には七十六条の上では思想の自由が認められておるけれども、そういう基本的人権が認められておるけれども、憲法十二条の規定に基けば、切り離し得ないものであるということになるならば、行き過ぎた団体には参加は許すべきでないということになります。しかし、わが国の憲法には十二条という明文はあるけれども、法律にはありませんね。法律には裁判官といえども日本国民の一人であるから思想は自由であるというたてまえである。十二条の条文によって公共の福祉のために、裁判官の裁判というわが国最大の公共の福祉、そういう公共の福祉のために行き過ぎた左右両翼の思想、これは感心をしない、そういう思想団体に参加をする者、政治団体に参加をするということは遠慮をすべきものであるということが、この憲法十二条で憲法上の根拠として出てくる。石田さんの発言はそこに根拠を持たなければならぬものである。  ところが、この間の新聞の発表、テレビ、ラジオ等の発表を見ておりますと、ただこう思うと仰せになっておる。右左にそういう団体に加入することは世の誤解を招くおそれがあるから感心をせぬのだ、そういうふうに思うという程度のことを仰せになっておる。憲法十二条を根拠にしてはっきり仰せになるということが明らかに書いてない。ここのところはどんなものでしょう。

岸盛一最高裁判所事務総長

○岸最高裁判所長官代理者 裁判官の思想の自由あるいは良心の自由、これはやはり憲法で保障されておるものであります。と同時に、先ほど御指摘の十二条というものがございます。そのほかに、さらに特に裁判官については、憲法は裁判の公正ということをうたっております。そういう点でいわゆる裁判官の良心というものは、決して主観的な恣意的なものではなくて、客観的なものでなければならない。つまり具体的に申しますと、裁判の公正、中立を疑われるような種類のものであってはならないということが、これは当然に出てくる結論であろうと思います。

田中伊三次自由民主党

○田中(伊)委員 そこで、一歩前進をして最高裁に伺ってみたい。思想は原則として自由であるが、具体的裁判を行なうにあたっては中立でなければならぬ。しかしながら、思想と良心は切り離し得ないものであると思えるから、憲法十二条の条項によって、裁判官の思想団体、政治団体に参加をするということ、行き過ぎたものに参加をするということは遠慮すべきである、こういう憲法上の根拠が明らかになったといたしますと、これはただ最高裁長官が談話を発表されただけで捨ておかれない。捨ておかれると、何を言っているのか、憲法七十六条を何と考えておるかなどということを、十二条の存在を忘れて、七十六条だけを切り離して所論をすると、一体、最高裁判所長官は何を言っているんだといったようなことが全国にあろうかと思う。   〔瀬戸山委員長代理退席、委員長着席〕 私は、具体的事件に言及をしようというんじゃないのです。一般論を言うのです。こういう発言をされた以上は、この発言の御趣旨をわが国裁判官全員に徹底する道をお考えになる必要がある。将来の問題としては、司法研修所の研修の課程にこのことを織り込んで、徹底的に教育をする必要がある。現に裁判官として独立して職務を行なっておる人々に対しては、何らかの形で日本全国の裁判官にこの旨を徹底される必要がある。憲法の根拠を示して徹底される必要があると思います。言いっぱなしじゃ弊害がある。何を言っているのか、そういうことを聞く、聞かぬはおれたちの自由なんだ、どこが悪いんだというふうなことを言う人が出てくると、こういう発言があったことが非常に混乱を招く。  たいへん言いにくいことを言うのでありますが、最高裁長官の責任において、最高裁の責任において、日本全国下級裁判所に至るまで全裁判官にこれを徹底していただくということが必要であろうと思いますが、これを徹底される御意思があるかどうか、どういう方法で徹底をしようとお考えになっておるか。私に一つの案はありますけれども、そんな要らぬことは急いで言わずに、裁判所の御意見を先に伺っておきたい。

岸盛一最高裁判所事務総長

○岸最高裁判所長官代理者 裁判官と政治的な色彩を帯びておる団体に加入の問題、これにつきましては、かねてから最高裁判所の裁判官会議において慎重に討議、検討されております。その裁判官会議において出ました結論を、去る四月八日、事務総長談話の名で発表いたしております。これは全国の裁判所にも全部行き渡っております。  ただいま、石田長官の先般の発言をさらに徹底普及させたらどうかというお話でございますが、すでに四月八日の事務総長談話、これは公式見解である、最高裁判所の公式見解として発表いたしております。先日の長官発言は、ときあたかも憲法週間に際しまして記者会見の際に述べられたもので、やはりこれは憲法を中心にして話をしておられるのであります。つまり、憲法はこの二十数年の月日を経て、日本の社会、国民生活の中に根をおろし、定着しつつある。その際、裁判官として憲法を守ってその精神によって法を解釈するという職責というものを強く自覚しなければいけない。裁判というものは、当該裁判官の全人格的な判断である。したがって、この憲法を究極において否定するような片寄った主義、主張の持ち主は、裁判官としては好ましくないのだ、そういうことを長官が述べられておりました。前の事務総長談話として発表されました事柄と、表現は違いますけれども、意味は全く同じであると思います。特に長官談話といいますのは、これは別に裁判官会議にかけてまとめられたものでもなく、あくまで最高裁長官としての御見解でありまして、これはまた裁判官のいろいろな会同とか、そういう際にこういうことが取り上げられる、かように考えます。

田中伊三次自由民主党

○田中(伊)委員 敬意を表しておる最高裁に、ちょっと発言しにくいのですけれども、大事なことだから言いにくいことを申し上げますと、最高裁判官の会議の公式の見解、それを代表して事務総長の発表、続いて石田長官の個人的見解、これは言いにくいのでありますが、どの程度全国裁判官にきき目があったのでしょうか。この大事なものは、参考にせよという程度のものであるべきでない。憲法に基礎を持った論議ではないか、憲法に根拠を持った意見ではないかということになるのでありまして、これを貫く道がなければなりませんね。参考だ、そうすると、そういう参考だが、それに従う従わぬはおれのかってだ。根拠は憲法にあるのですよ。一体公式見解、事務総長の発表、長官の個人的な御見解というものは、全国にどういう拘束力を及ぼすものとお考えでしょうか。

岸盛一最高裁判所事務総長

○岸最高裁判所長官代理者 最高裁判所のいわゆる公式見解、これは裁判官会議を経て発表されたものでありますが、その見解において裁判官の身の持し方、持ち方についてきびしいモラルを示しておる。単に法律論だけの意味で、法律論として言われたことではございません。きびしいモラルを説いておるのであります。この間の長官発言も、やはり憲法に基礎を置いたきびしいモラルを説いておられるわけでありまして、こういう一つのものは、つまり最高裁の公式見解、あるいは先輩裁判官としての長官のお考え、こういうものは、当然全国の裁判官がそれを尊重し、その線に沿った態度をとらなければならない、これは当然のことだと思うのであります。

田中伊三次自由民主党

○田中(伊)委員 ずばり伺いますが、その見解に従わざる裁判官が、従わざる裁判を行なった場合はどうなりますか。

岸盛一最高裁判所事務総長

○岸最高裁判所長官代理者 これは、まあ一つの仮定論になりますが、まず裁判官としてのきびしい職業的倫理を強調し、そして全国の裁判官がよく考える、そういうことを要請しておるわけでございます。そういう事態が発生したときにどういうことになるかということは、いまの段階ではちょっと申し上げにくいと思います。

田中伊三次自由民主党

○田中(伊)委員 従わざる裁判官が起こる余地のないようにする道はありませんか。これは大事なことですよ。裁判官の裁判をやっておるのじゃない。国民の裁判をしておる。国民には右あり左ある、よってまん中でいけということを言って、その所論は憲法にも根拠がある。その大事な発言を個人としてでも長官がなさった。公式見解、事務総長さんの御発表にもある。これは大事なものですよ。モラルだと仰せになりますが、少し弱いことはないか。モラルというのは、従わなかったらけしからぬと言って終わりなのですか。裁判に罷免はない、けしからぬではないかという道徳的な責任、そういう非難を沿びるものが道徳律なのです。モラルというのは道徳律なのです。道徳律などにまかしておくべき筋合いのものじゃないでしょう、この大事なものは。憲法に、公共の福祉のために遠慮をせよということが書いてあるが、わが国の国民にとって最大の公共の福祉である裁判官の思想問題というもの、これほど大きな公共の福祉はない。モラルに従わない者は——従うことが望ましい、単に望ましいという程度のもので、そういう道徳律で処理をしていこうという考え方はいかがでしょう。もっと強くこれを徹底される必要があるんじゃないか。

岸盛一最高裁判所事務総長

○岸最高裁判所長官代理者 おっしゃるお気持ちは十分理解できますが、これは非常にデリケートな問題を含んでおりますもので、公共の福祉という面だけではなく、裁判官の思想、良心の自由と裁判の公平、政治的中立性、この二つの憲法上の大原則をどういうふうに考えていくかという問題。そうしますと、やはり裁判官という職務の重大性、性格、そういうものが決定的な判断のキーポイントになろうかと思います。いかに裁判官は思想が自由だといいましても、その公正さを疑われるような、公正さに疑惑を持たれるような言動があってはならない。そういう点で、これはモラルと申しますけれども、きびしいモラル、裁判の生命、それに触れた問題である、かように考えられるわけでございます。それと同時に、モラルと言うと、いかにも弱く聞こえますが、モラルなるがゆえに——つまり個々に強制力を持った法規範とかそういうものでなくして、モラルなるがゆえにこれがたっとばれ、これが守られるというところに価値がある。それがたっといものではなかろうか、かように考えます。

田中伊三次自由民主党

○田中(伊)委員 その大事なモラルを守らない裁判官が出てきた、また判決の結果、これはモラルを守っていないではないかという判決が出てきた——非常に微妙なことを言うのでありますが、こういう場合にどうなさる。公式見解を発表して、個人の談話を出した手前がありますね、どうなさる。しかたがないということになるのか。何か道があるのか。

岸盛一最高裁判所事務総長

○岸最高裁判所長官代理者 事柄は、事裁判に関することで、非常にデリケートな問題でございます。御趣旨はよくわかります。しかし、やり方を間違えたりしますと、これは裁判官の思想統制という非難を沿びることになります。そういう点で、先ほど来きびしいモラルということを申しております。そのお尋ねのような場合に、一般的にどうするということを、はなはだデリケートでお答えしにくいのですが、われわれとしましては、このモラルがきびしく守られるということを期待しまして、この席ではかように申し上げたいと思います。

田中伊三次自由民主党

○田中(伊)委員 もう一つ、先ほど前提で私からお断わりを申し上げたように、具体的な裁判のことを私は言っていないのです。それほど非常識でもない。非常に裁判に敬意を表し、裁判の独立ということを祈っておる者の一人です。決して私は、これをどうこうということを言うわけじゃない。言うわけじゃないのだが、総長がモラルと仰せになるこの重要な事柄を、教育を通じ、訓練を通じ——幸い司法研修所という制度というものがあるのです。裁判官も無関係じゃない。裁判所も無関係じゃない。この制度を通じて教育、訓練の道があるでしょう。行き過ぎざる公正な良心というものを抱かす道があるだろう。これは憲法の七十六条、十二条の精神をくんだ範囲内のものであるなら非難はない、こういうことですね。そうすると強いモラルなんだから、厳粛なモラルなんだからと仰せになりますけれども、それを認めざる者があったら修正をする道がなければならぬ。具体的な裁判についてこれを言うことは、時期に当たらぬことになる。一般的として言わなければならぬことになる。言わなければ足らぬことになる。何か、総長さん、これは具体的に道はないものでしょうか。

岸盛一最高裁判所事務総長

○岸最高裁判所長官代理者 かような問題が大きく取り上げられております今日の状況において、裁判官というものは、この問題を真剣にみな考えなければならないと思います。この問題は、つまり一つの法曹倫理としての面からも当然考えられる問題であります。そうなりますと、こういうような問題を研修所において十分検討する機会はもちろんあるだろうと思います。

田中伊三次自由民主党

○田中(伊)委員 まず司法研修所の制度の運用、それからそれぞれの既成の、もうすでに独立の職務を行なっておる裁判官の各位というものについては、裁判官会議というものを通じて、自後徹底することに最善を尽くす、これでしばらくいってみたいというおことばと解してよろしゅうございますか。

岸盛一最高裁判所事務総長

○岸最高裁判所長官代理者 そのとおりでございます。

田中伊三次自由民主党

○田中(伊)委員 終わります。

高橋英吉自由民主党

○高橋委員長 畑和君。

畑和日本社会党

○畑委員 私は、先ほど田中委員から質問があった最高裁長官の憲法記念日にあたっての談話、この問題を詳細に、実は田中委員とは違う発想で、違う思想の持ち主ですが、そういう見解であらためてただそうと思うのでありますけれども、それと同時に、またこれとやはり大きな関連のあります問題、いわゆる長沼訴訟事件についてどうしても法務大臣の御意見を伺っておかねばならぬと思います。そのほかの点もいろいろ質問したいと思うのですけれども、法務大臣がおられなくなるということでは困りますので、その点にしぼってひとつ法務大臣に質問いたしておきたいと思います。  この長沼訴訟について、現在の段階では源田証人を喚問をするというような段階になっている。ところが、その前に国のほうでは、この長沼訴訟に関係をされた福島裁判長に対して忌避の申し立てをされたわけであります。その過程で実は質問したいと思っておったのでありますけれども、そのうちに、きのうこの忌避の問題に対して第二部の裁判長によってこの国の忌避の申し立てが却下になっておるわけです。私の考えとしては、もともと国としてどういうわけでこの忌避の申し立てをしたかということについていろいろただそうと思っておりました。またきょうもたださなければならぬのでありますけれども、その忌避の申し立ての理由が、福島裁判長が青法協の会員である、そして青法協は政治団体である、それに所属をしておる、そして安保破棄あるいは沖繩即時返還等の政治行動をしておる団体に入っておるというようなことで、裁判の公正を妨げるおそれがあるということを理由にして国のほうで忌避の申し立てをしたのでありますが、きのうはからずもそれが却下という結果に相なって、その却下の決定に対して国としては新聞などを見ますと即時抗告を検討しておる、こういうような報道がなされておりますけれども、これを国として即時抗告をする考えでおるのかどうか、この点はきわめて重要だと思っておるわけです。  大体裁判官に対して国自体がそれは一つの原告、被告という立場で忌避はできないことはないわけでありますけれども、これをやるとするとよほど慎重を期さなければならぬと思うのであります。しかもたまたま一連の事件としてさきに平賀書簡の問題があり、それに対してわれわれの同僚である亀田議員等から国会の訴追委員会に対して訴追の申し立てがあった。反面、また飯守裁判所長、いわゆる飯守発言として平賀裁判官を弁護するような立場で福島裁判長を非難し、青法協に入っているのは裁判官として好ましくないというような発言があった。またその飯守発言に乗じてというか、福島裁判長に対してもさる弁護士からやはり国会に対して訴追の申し立てがあった、こういうような関係にある。それからそのあと続いて、先ほど来話の出ました最高裁事務総長の政治団体に裁判官が加入するのは好ましくないというような談話があった。ちょうどその直後にこの忌避の申し立てがあったわけであります。さらにまた、最高裁の長官が事務総長談話をさらにふえんするような形で、憲法記念日にあたってその見解を発表した。そのあとで今度の却下の申し立てがあった。  こういう一連のものでありまして、決してこれは一つ一つ独立したものではなく、相当関連があって次々とこうしたことがあったと思うのでありますが、裁判の結果、却下ということになったけれども、国の訴訟を担当しておられる法務大臣としては、これに対して即時抗告をする考えがあるのか、承りたいと思います。

小林武治自由民主党法務大臣

○小林国務大臣 昨日その決定があったのでございまして、この忌避の申し立てをしたことにつきましては、世上いろいろの議論があります。まことによくやった、当然だと言う人もあれば、きわめて遺憾である、こういう説もあるのでありまして、まあこれは当然なことであります。しかし、訴訟手続上、政府といえども単なる一訴訟当事者にすぎない。したがって、訴訟上の合理的な手段をとるというのはきわめてあたりまえのことである。こういうことでありまして、この事件につきましては、忌避を申し立てるだけの十分な理由がある。すなわち、公正な裁判をしてもらえる、こういうことについての疑いがある、こういうことで出したのであります。  これの是非について批判のあることは御自由なことでございますし、また衆議院の内閣委員会でいろいろ論議がありましたが、出た以上はこれは裁判所がおきめになることで、理由がどうのこうの言って、内閣委員会の席で議論をなさることは適当でない、裁判にまかしたからして、その裁判をお待ちしましょう、こういうことであったのでありますが、昨日却下の決定があったということで、決定があった以上は、われわれが忌避の申し立てをすることについては十分な理由がある、こういうつもりでやっておりますから、さらに抗告するかどうかということはこれからも検討しなければならぬ。まだ七日期間があるそうでありますから、あわてることもありません。いま慎重に事務当局において検討してもらっている。結論はまだ出ておりませんから、するつもりかどうかなどということは、いまの却下の決定の理由を十分に見きわめた上でなければ結論は出せない、こういう状態でありまして、きょうお尋ねがあって、出すか出さぬかということになると、さようなことはきめておりません、こういうお答えしかできない、こういうことでございます。

畑和日本社会党

○畑委員 きのう決定があったばかりでまだ一週間あると言われるわけだけれども、もう勝つことばかり考えて、負けることを考えてなかったかもしれない。それで若干戸惑っておるという形かもしれないけれども、きのう却下があったのだから、それを検討する時間も相当あったはずだ。大臣逃げられるのだけれども、とにかく自信をもってやったんだ、それに対して却下の決定があった、これに対して即時抗告という余地があるわけだから、自信をもってこれをやられるかどうか、その点まだ検討中だ、こう言われるけれども、それ以上答弁を求めても、この点については結論が出ないわけです。私としては、大体忌避の申し立てをしたこと自体、国が一つの当事者としてそういう申し立てをし得る立場にはあるけれども、国として、国の裁判官に対して忌避を申し立てたということは、よほどでなければやるべきではないという見解から、したがって却下になった以上は、これに対して即時抗告もやらないような方向で検討すべきだと考えます。  以上で質問を終わります。

高橋英吉自由民主党

○高橋委員長 松本善明君。

松本善明日本共産党

○松本(善)委員 法務大臣は、この問題は検討されるということでありますが、やはり恥の上塗りということにならぬようにしなければならぬと思います。といいますのは、国が裁判官を忌避するというようなことは、日本ではもちろん前例はないし、私の聞く範囲では、国際的にも前例がないのではないかと思います。もちろんすべての国のすべての例まで調べることはできませんから、あるいはあるのかもしれませんが、ないのではないかと思います。それは国が任命をした、政府が任命をした裁判官ですね。それに対して、国が当事者として忌避をするということは、これは法律上もできるかできないかということについて議論もあります。できるというふうにしましても、この問題についてやる場合には、よほどの慎重さがなければならないはずです。私はむしろ逆に、法務大臣が検討される場合に、この忌避をするということをきめていった人が、一体慎重に検討しているかどうかという問題についても逆に調べなければならぬ。  私の聞く範囲におきましては、この中では源田証人の採用に対する不服が理由になっておる。ことばの上では、もちろん法律家の書いたものですから、うまく避けるようになっておりますけれども、実際上それが理由だというふうに見えるような文章があります。それからさらに「自衛隊の現状の合憲なりや否やは、司法裁判所の審査になじまない性質のものであるのみならず、裁判に必然的に随伴する手続上の制約にかんがみても、司法裁判所が審査すべきものでない旨を主張」した。この意見が採用されないということに対する不服を述べている。この行き方でいいますと、自衛隊が違憲なりやいなやを、憲法や法律で良心に基づいて裁判をしようとする裁判官は、すべて忌避しなければならぬということになっていきます。これは重大な問題なんです。裁判の否定であります。それこそ裁判の中立をなくしていく。これは国の方針としてやったところに重大な問題がある。  法務大臣は、この問題の即時抗告を検討するにあたって、そういうような問題、一体国が忌避をするについてどういう問題を考えなければならないか、積極面のみならず消極面、一体こういうことをしていいのかどうかという点についても検討される考えがあるのかどうか、それをお聞きしたいと思います。

小林武治自由民主党法務大臣

○小林国務大臣 これはあわてて出した忌避じゃございません。十分に慎重に検討した結果出した申し立てであります。したがって、それを裁判所がどういう決定をしようが、何も恥の上塗りなどということはありません。これは訴訟手続としてやったことを、裁判所がどういう決定をしたにしても、われわれとしてはわれわれの考えをもってやっておるのでありまして、したがって、たとえば今後抗告するかせぬかは別として、その上抗告をしたところで、恥の上塗りなどということは絶対考えておりません。私は昨日内閣委員会でも申し上げたが、ある議員が抗告はすべきでない、こういうことを主張されたが、その前の質問の際には、どうせ法務省は高裁や最高裁に期待をしておるのだろう、こういうような発言もされておるのでありまして、これはもう抗告を期待された発言ではなかったかということもきのう私は申し上げておいたのでございますが、要するにあなたのおっしゃるような、たとえ結果がどうなろうと、別に政府が恥をかくとか、そういう問題とは考えておりません。

松本善明日本共産党

○松本(善)委員 いまの高裁や最高裁に期待をするというような発言が、法務大臣から出るということは、私はまことに遺憾だと思います。そういうことが裁判の独立を侵していく、裁判の信頼そのものを政府自身が掘りくずしていくということになるのだろうというふうに思うのです。  それで法務大臣、私がお聞きしましたのは、このやり方でいきますと、自衛隊が合憲なりやいなやを判断をする可能性のある裁判官は、全部忌避をしていくという方向にならざるを得ないと私は思うわけです。それについて触れる裁判官、あるいは違憲と判断をする可能性のある裁判官、これを忌避していくという方針を政府が出したというふうにしか考えられない。一当事者という問題ではないんですよ。やって、あとは裁判官にまかすんだというような性質の問題としてこの問題をお考えになっているとしたら、とんでもない間違いではないか。この点を伺っておるわけです。

小林武治自由民主党法務大臣

○小林国務大臣 ただいま、私が高裁や最高裁に期待しているというようなことは申しておりません。衆議院の内閣委員の横路委員がそういう発言をされておるから、きのう抗告をするなという発言があった、そうしてあなたは高裁や最高裁に期待をしておる、こういう発言があったということを私が御披露申し上げただけで、私は別に期待はいたしておりません。その点は誤解のないように願いたいのでございます。  なお、忌避の問題自体は、私どもは、いろいろ言われておりますが、要するにこの事件について、具体的な事件について、この裁判官が公正な判決をするかどうかについて、これは外部的に見ても疑いがある、こういうことを言うておるのでありまして、いまいろいろおっしゃっておられますが、これらのことは、私が一々その理由書を書いたわけではありませんから、私がこれを読んで了承はいたしておりますが、そういうことにつきましては、ひとつ担当の部長からお答えを申し上げます。

松本善明日本共産党

○松本(善)委員 時間がありませんから、担当の部長はけっこうです。  私は法務大臣に申し上げておきますが、自衛隊が違憲であるということについては、憲法学者の中では圧倒的多数であります。そういうような考えを持っておる裁判官を裁判から排除しようということになるならば、これはたいへんな大問題になるということを御警告申し上げて、私はもう本会議が始まりますので、質問を終わります。

高橋英吉自由民主党

○高橋委員長 この際、暫時休憩いたします。    午後一時三十分休憩      ————◇—————    午後三時十一分開議

高橋英吉自由民主党

○高橋委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  裁判所の司法行政、法務行政及び人権擁護に関する件について調査を続行いたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。畑和君。

畑和日本社会党

○畑委員 先ほども田中委員から最高裁の事務総長に対して、過般五月三日の憲法二十三周年記念にあたって、特に石田最高裁長官が記者会見をされて、最高裁長官の公的見解なるものを発表されたのでありまして、そのことについてすでに田中委員から質問がございましたけれども、私は田中委員とは思想も違いまするし、別の観点から事務総長にお尋ねをいたしたい。最高裁長官自身に会ってとくと見解を聞きたいのが正直なところでありますけれども、制度上最高裁長官は国会には呼べないということになっておるらしいので、事務総長にかわってひとつ御答弁を願いたいと思います。  今度の石田最高裁長官の見解なるものは、私は非常に重要な意味を持っておると思います。ちょっとしろうとの人がすらっとこれを読んだ場合には、しごく常識的な考え方のように受け取られがちでありますけれども、われわれがやはり法律家としての立場から、国民の代表としての立場からこの見解をしさいに検討した場合に、私は非常に危険なものがあるのではないか、きわめて軽率ではなかったか、かように思うのであります。  この前、事務総長談話で、すでに青法協への裁判官の加入の問題について談話があったわけでありまして、その問題についてもわれわれとしては大いに意見がございました。さらに今回の石田長官の見解というものは、それにさらに一歩を進めておると思うのです。ときたまたま、さきに問題になりました長沼訴訟について、国自体が、青法協に加入しているがゆえにということで、福島裁判長に対して忌避の申し立てをされたその直後であります。どうも私、そういうことでいろいろ考えてみますると、先ほど法務大臣に質問したときに、ずっと一連の裁判所関係のできごとを振り返ってみたのでありますが、それらがすべてどうも関連がある、間違いなくこれは一連のものだというふうな感を特に強うしたのでありまして、私は、最高裁長官がこの機会にこういったことを公式見解として出すこと自体が軽率ではなかったか、かように思うのであります。  どうも最近、いま言った青法協加入の問題、福島裁判長がたまたま青法協に入っておられる、メンバーではある、さらにまた福島裁判長が、いま非常に問題になっておる長沼訴訟の裁判長である、長沼訴訟においては国がその当事者の一人であるというようなことから、特にこの問題がクローズアップされておるとは思うのであります。それに必ず関連があると思うのであります。関連なしとは私は言わせないのであります。そこで、私がこの談話を読んでみまして感じましたことは、いろいろそういった一連の事件がある。これに対して国が争っておる。また裁判官を忌避をする。あるいは国会等においても、国会議員にも考え方がいろいろあります。裁判官の思想というような問題についていろいろ意見を持っておる人もあるわけですから、こういった一連の一つのムード的なものに押されて、最高裁長官がこの機会にこの見解を公表したのではないか、そうだとすれば、私はきわめて軽率ではないか、こう思う。  そのまず一つとして、新聞紙上に報ぜられるところを見てみますと、第一に、違憲審査権の問題を取り上げておるのであります。現行法によって司法権が完全に独立をして、違憲立法審査権が与えられた。この権利は、国会で多数によって成立した法律について違憲かどうかを審査するもので、その運用には慎重でなくてはならない、必ずしも違憲性が明白でないものを違憲だと容易に言うことはできない、こういったような見解、一応しごくごもっとものような響きがいたします。いたしますけれども、これを最高裁の長官が、この際言う必要があるのかどうか。長沼訴訟にも、結局自衛隊は違憲なりというような弁護団の主張が出され、源田さんを証人として呼ぶというような段階になって、裁判長忌避ということになった。その前にあなたの名前で出された青法協等の加入の問題について、青法協とは名をささぬけれども、そういう団体に加入するのは好ましくないというような見解を発表された。それに乗じてというか、国のほうで忌避の申し立てをされた。そういうことで、違憲の審査権の問題、これが当面いま問題になっておる。そうした事件を考えて、最高裁がいろいろな政府側の意見等を考慮をして、そうした考え方を入れて、こうした見解をいまさらのように発表されたのではないかというような感じがいたすのであります。  法律というものは、国会で多数できまることは間違いない。ところが、それがたまたま憲法に違反することもあり得るわけであります。非常に国会というのは政治的でありますから、したがって、多数の力によってあえて憲法にも違反するような法律がつくられることなしとしない、こういうことであります。しかし、これには慎重でなくてはならぬ。多数で成立したのだから、それを違憲かどうかを審査するのには慎重でなくてはならぬ、これも一応わかります。わかりますけれども、この期に及んでこういうことを言い、しかも違憲性が明白でないものを違憲だと容易に言うことはできない、こういったような見解を言われておるのでありますが、最高裁の独立、三権分立というような観点からして、私は最高裁がそうした機運に押されて、ムード的なものに押されて、そして先ほど申し上げましたように、下級裁判官を心理的に拘束するような意図をもって、あえてこの違憲立法審査権について言及をしたものではないか。裁判所の独立、三権分立、立法や行政に対して独立をしている。立法府に対しても違憲であれば、その法律を違憲とするという権能が裁判所にあるわけでございます。こういったものの運用等について、最高裁長官がこういうことをいまさらのごとくに言うということは、結局下級裁判官に対してその法律の適用、憲法の適正な運営というようなことに対してためらいを起こさせるようになりはしないか、私はそれをおそれるのであります。いまさらこんなことを言わなくたって、裁判官はやはり憲法に従って独立をして、良心に従って裁判をやるわけであります。法律といえども憲法に違反しているときには違憲である、こう言うことができます。  要するに、一番もとは憲法であります。その憲法に忠実に、良心に従って裁判をすればいいのでありまして、違憲立法審査権の運用についてこういうことをいまさら言うことが、やはり先ほど私が申し上げましたような意図があるのではないか。あるとすれば、きわめて重大だというふうにまず考えます。この点についてはどうお考えになりますか。

岸盛一最高裁判所事務総長

○岸最高裁判所長官代理者 まず前提問題でございますが、長沼訴訟事件と四月八日付の事務総長談話の形式で発表されました裁判官の団体加入に関する最高裁の公式見解、これは何ら関係はございません。いわんや忌避申し立て事件とも何らの関係はございません。それから五月三日の憲法記念日にあたっての長官発言、これは前の四月八日付の公式見解とは違いまして、裁判官会議の議を経たものではなく、長官限りの御見解を発表されたわけであります。しかもこのような談話を発表されるに至りました経過というものは、ちょうど先ほども申しましたが、憲法週間に当たっておりまして、その際の記者会見のテーマとして憲法問題を取り上げたものでありまして、何らこれも政治的意図をもって、あるいは政治的な力に押されて長官がかようなことを申したわけでもございません。  違憲立法審査権を裁判所が行使する権限を与えられておりますことは、そのとおりでございますが、それだけにやはり裁判所は政治的に中立でなければならないということが要請されるわけであります。そしてこの長官談話は、先ほども申しましたように、裁判官は憲法の精神を生かして、憲法を守って、そうして法律を解釈し、適用しなければならない、そういうことを強調したものでありまして、何らそこには下級裁判所の違憲立法審査権の行使に制肘を加える、そういう意図も全然ないのであります。この違憲立法審査権の行使についても慎重であれということは、今回の長官発言においてでばかりでなく、ほとんど歴代の長官が憲法記念日に申しておられることでありまして、御心配なさるようなそんな政治的な意図から出たものではないということをはっきり申し上げておきます。

畑和日本社会党

○畑委員 事務総長のお答えによりますれば、さきの事務総長の談話あるいは長沼訴訟に対する政府の忌避の申し立て、それから今回の石田最高裁長官の公式見解、こういったものは何ら関係がない、政治的には中立であるべき裁判官のあるべき姿を言ったものであって、そんな関係はないとおっしゃるわけです。まさかあるとも言われないと思う。だけれども、私はムード的にそうした機運が裁判所のほうに、特に最高裁のほうにあるのじゃないか、そういうふうに思うのです。それこそ私は、それに動かされてはならぬ、そのときそのときの状況によって一喜一憂したりして動かされてはならぬ。とにかく憲法七十六条に従って裁判官は裁判を独立にやりさえすればよろしいのであります。それをいまさらのようにこうしたことを言うことは、やはり関係はないと言ってもあるのではないか、かように疑いを持たざるを得ない。これはそう言って私が問い詰めてみましても、そうでございますということが事務総長の口から出ようとは私も思いません。したがって、ただ私そういうことで心配をしておるということを十分ひとつ肝に銘じてもらいたいと思う。いやしくも行政府あるいは立法府等に対して気がねをする必要はない。憲法にだけは気がねをしなければ絶対ならぬと私は思う。どうも私はそういった感じがするからこの点を申し上げたのであります。みずから裁判所の独立というものをむしろ傷つけることになりはしないか。ああそうなのか、いままでそうであったのか、そういう裁判官がたくさんいるのかといったような感じを国民が持たぬとも限らない。私は実はそれをおそれる。個々の裁判官はりっぱにその職責を遂行しておると思います。  いろいろ思想等の違いは若干あるでしょう。しかし、思想によって裁判をすべきものではない。最高裁の長官は、思想というものは結局良心と一緒に全人格的なものである、したがってそれがにじみ出るものだ、したがって、裁判の内容というものにも思想が影響しないということはこれはあり得ないのだ、そういった切り離すような器用なことはできないということばで言われておりますけれども、考えようによってはそういう点もありますけれども、そうであってはならぬのではないか、私はかように思うのです。思想がどうであれ、憲法に従って裁判官が職務を独立して執行すればよろしいのであると私は思う。いまさらのごとくこうして思想とか良心とかそれを並べて、そして裁判の内容、結果、これと不可分ではないということを最高裁の長官が言う必要はない。それはいまの全裁判官を侮辱していると思うのです。そういう点ではきわめて軽率だったと思うのです。私はこれを聞いて不満に思う裁判官が相当いると思うのです。先ほど田中委員から、こういう声明を出した以上、これは幾ら個人の見解としても公的見解だと事務総長は言われる、そういうものを出した以上はこれを実行していくのが、これを全部の裁判官に趣旨を徹底さして、それで思想を直して、思想教育までしていかなければならぬことじゃないか、それをやれというような意味の発想のしかたで質問をされておった。さすがに事務総長も、それにはそういうことをやるということを答えなかったけれども、しかし、こう出した以上は、確かに田中さんの言うようにこれの趣旨を徹底させるということをしなくちゃならぬという立場だと思うのです。だから田中さんはそういったようなことで質問されたと思います。  ともかくそういった裁判官の独立性、こういったものに何か最高裁長官が疑いを持っているように国民に響くのです。私はそういうことは心配はなかろうと思う。研修所でりっぱに研修をされておるし、そして憲法の規定も十分承知をしておる裁判官たちであります。しかもそれがもし間違っておるということであれば、高裁もあるし最高裁もある。若い純真な判事と最高裁のお年寄の判事とはだいぶ思想が違うと思います。これはやむを得ないと思います。したがって、あるいは逆のことになる場合が、実はわれわれ弁護士としては相当経験としてある。最高裁はきわめてうしろ向きだ。若い裁判官はなかなか勇気がある、りっぱな裁判をする。ところが、最後になって最高裁がうしろ向きでこれを否定し去ってしまうというようなことを、われわれ弁護士の立場では痛切に感じることがときどきあります。そういったものに水を差すというようなことになりはせぬか、私はかように思うのです。  何度も言いますが、いやしくも最高裁の長官が、思想、良心は結局全人格的なものであるから判決の内容とは無関係だ、切り離すというような器用なまねはできないということで心配をしているということであると、やはりそういう裁判官があちこちにおるんだということを国民が考えると思うのです。たまたま福島裁判長が忌避の申し立てをされている時期でもあるわけであります。しかし、賢明に第二部の松野裁判官は忌避の申し立てを却下いたしたのでありましたけれども、こういう時期でもあるし慎重さをを欠いたのではなかろうか、私はかように思うのです。この点いかがでございましょう。

岸盛一最高裁判所事務総長

○岸最高裁判所長官代理者 先ほどお尋ねのありました一連のムードのことについて、ちょっと申し落としました点をつけ加えさせていただきます。  四月八日付の事務総長談話の形式で発表されましたいわゆる公式見解、それが発表されるに至りました経過は、二十二期の修習生の終了者の中に、裁判官に採用されなかった者が二名ございました。たまたまその二人が青法協の会員であったわけです。しかし裁判所側は、一人の人が青法協の会員であるということは当時は知らずにおって、ずっと後になって、不採用がきまってから判明した事柄であります。とにかく二名の不採用者が出たということで、その修習終了の代表者が、最高裁判所は思想、信条によって差別待遇をするのか、そういう質問をよこしたわけであります。それをまた裁判所の記者クラブのほうにも流したわけであります。そういうことから私と記者クラブとの間の記者会見となって、そしてああいう談話が発表された。その談話の発表の経過から見ましても、前の長沼訴訟事件とは全然無関係であるということはおわかり願えると思います。  それから、長官の発言の骨子は、先ほど申しましたが、憲法記念日にあたって憲法の番人である裁判官は憲法の精神を生かして法律を解釈し、適用していく、そして法の支配を確立しなければいけない、そのためには裁判の公正、政治的中立を疑われるようなことがあってはならない、そういうことが骨子になっておりまして、やはりこの発言はすなおにそのとおり受け取っていただいてしかるべきものと考えます。

畑和日本社会党

○畑委員 ある新聞の社説、ほかの新聞も大同小異の社説をいろいろ掲げております。お読みになったと思いますが、その社説の一部を、これは私も非常に同感でありますので申し上げるのでありますけれども、そういうことになると、最高裁長官の言うようなことばからいたしますと「とすると、たまたま政府の政策に批判的であったり、特定の政党の主張と同じ内容をふくむ判決が出た場合、たとえそれが憲法、法律を正しく解釈したうえでの結論であったとしても、判決を不満とする側から、長官の発言を足がかりにして、好ましくない思想の持主という烙印を押されてしまうおそれもありうるのである。」こういうことを述べております。それから「裁判の生命である「独立」「公正」を保持するうえからみて、このようなことが許されないのは、いうまでもないことであろう。また、それは決して長官発言の意図するところでもないはずである。」こう言っておりまして、長官の真意というものはそういうところにおそらくはないだろうけれども、これはしかしこういうふうに解釈されるおそれがある、こういう心配で言っておられるのだと私は思うのです。と同時に、最後にこう言っています。「民主主義のもとでは、法的な決着を求めてあらゆる種類の重要問題が、裁判所に持ちこまれる。「憲法の番人」といわれ「人権擁護の最後のとりで」と呼ばれるゆえんである。かりにも、長官の発言の内容が拡大解釈されたり、あるいは“誤用”されて、裁判官たちの間に、立法や行政についての正当な批判をためらわせる風潮を生じさせるようなことがあってはならない。」こういう社説があるわけですが、私もやはりこれを懸念いたすのです。最高裁長官の意図するところはどうであろうとも、こうした時期にこういった意見を発表されるということは、下級裁判官に対してどういう心理的な影響を与えるか、また一般国民がそれをどう思うか。拡大解釈され、あるいは誤用されるということになって、裁判官たちの間に、こういう最高裁長官の意図では、やはり立法、行政について正当な批判をためらうというような風潮があってはならぬ、こういう心配でこれは書かれておるのでありまして、実は私も同じ意見なんです。この点について、こういう観点からして最高裁長官のこの間の発言は適当であったと思われますか、どうですか。その点をひとつ事務総長からお答えを願いたい。

岸盛一最高裁判所事務総長

○岸最高裁判所長官代理者 ある新聞の社説から御指摘になった点、五月七日の朝日新聞の社説のようでありますが、これは長官の意図がかような点でないことはもちろんなんですけれども、その長官の正しい意図が誤用され、悪用されては困るということを指摘しているわけであります。前段のほうには、この社説の中でも、「裁判官は憲法の擁護者としての重大な使命を持つ者である以上、憲法に合わない思想を抱く裁判官の存在は道義的に好ましくない、とする長官の考え方は、当り前のことを言ったにすぎないとする見方も、むろんできる。」ということを言っておりまして、やはり長官の発言を全面的にいけないという趣旨ではないと思います。  事務総長として長官の発言をどう考えるかということは、これはちょっと私の立場としてここでとやかく申し上げることはできませんが、私は長官にもお会いして、長官のお考えを聞いております。そこでかわってここで述べておるわけであります。

畑和日本社会党

○畑委員 しかし、そういう最高裁長官の意図はそうではないかもしらぬけれども、この社説も、そういうふうに一般から思われて拡大解釈をされはせぬかということを非常におそれての意見だと思います。これは大いに傾聴しなければならぬ、傾聴に値するものだと思います。それについてどう思うかという質問だったのですが、最高裁長官の言われたことだし、事務総長として、これをとかく批判することは差し控えたいということでありますが、どうも私は最高裁長官に会って御意見を聞いてみたいとすら思うのですが、非常に私はその点を心配いたしておる。最高裁長官もそのときそのときのムードに動かされるようであってはならぬのだということです。よほど発言には注意をしてもらわなければならぬと思う。  それで、考えようによっては平賀書簡と似たような影響を持ちはせぬかというふうな考え方もないではない。これは平賀さんの場合には具体的な裁判の内容について若干指導的な立場で、先輩めいた立場で、サゼスチョンを与えたものらしいが、これは明らかに私は問題だと思う。この最高裁長官の発言も、一つ一つの具体的な事件についてではないけれども、裁判官の心がまえについての立場であろうけれども、しかし、さっきも言ったように、かえって裁判の独立というものについて疑問を持たせ、また裁判官の思想というものについて一般の市民に誤解を与え、拡大解釈を与える。それ、最高裁長官こう言っておるんだということで、いわゆる偏向裁判と言ってわめき立てる人を勇気づける、私はそれではいかぬと思います。結局司法が行政府に迎合して、その介入をむしろ否定すべきであるのに、若干迎合したような感じがなきにしもあらず。そういう点で、私は裁判の独立、三権分立という点から、この最高裁長官の発言は遺憾であり、むしろ部内には裁判官にこれを文書にして出すということのほうがよかったのではないか、こういうふうな立場で私は心配をいたしておるわけなんです。それ以上答弁を求めるのも無理と思います。  それから次に進みたいと思いますが、先ほど田中委員から憲法十二条と七十六条をお引き合いに出された。これは十二条というのは、一般の例のふわっと認められている自由な権利の乱用とかなんとかそういったもので、ほんとうの思想の自由問題は十九条だと思います。十二条と十九条との関連で、両方の意味でだと思いますが、思想と良心の自由ということは、日本国の裁判官といえども、だれといえどもこれは保障されている基本的人権、奪うことのできない、生まれつきの権利であるということになっておるわけです。それとの関連で、田中委員が七十六条に触れられたわけでございます。七十六条に「その良心に従ひ」という文句が出ておりますけれども、一体十九条の場合の「良心」と七十六条の場合の「良心」というものは同じでありましょうか、違うのでしょうか。その点、裁判官の良心であるという意味だともちろん思いますけれども、その点において違いがあるはずだと思いますが、その点はどうお考えでしょうか。

岸盛一最高裁判所事務総長

○岸最高裁判所長官代理者 憲法の解釈に関する重要な問題で、また議論のあるところでございますが、七十六条の場合の「良心」というのは、裁判官個人の主観的な自主的な良心ということでなくて、裁判官としての良心というふうに説かれているのが一般だと思います。しかし長官が、そういうお考えかどうか、そこははっきりいたしませんが、極端に片寄った思想の持ち主がそういう冷静にものごとを見、判断することはむずかしいではないか、そういう意味でその使い分けはできないのではないか、そういう疑問を投げられたものと私は解釈をいたしております。  問題は、やはり裁判官個人としての思想、良心の自由の問題と、裁判の公正という、これはいずれも憲法の基本原則でありまして、その関係の問題であろうと思います。その際には、やはり裁判の公正という点を考えていかなければならない。そのことのために裁判の独立というものを保障されておるのだ。そうなると、極端に片寄った持ち主の人は裁判官としては好ましくないのだ、そういうことを言われておるものと私は解釈しております。

畑和日本社会党

○畑委員 私もいまの裁判官に、この石田最高裁長官が示唆されておるような明確な共産主義者、あるいは極端な軍国主義者、無政府主義者というものがいようとは、実は思っておらない。そういう極端な人たちは裁判官とならないと私は思う。少し甘い見方かもしれませんけれども、私はそう思う。そしてその程度の裁判官が憲法に従って、しかも良心に従って、客観的な意味の裁判官としての良心に従って裁判をする。場合によったら、先ほど申し上げましたように、憲法及び法律に従ってとあるけれども、憲法にその法律が違反している場合は、違憲であるということでこれを否定するということすらできる。結局やはり最後のとりでは憲法である。憲法に従うということで、しかも客観的な良心に従ってやれば、思想がどうであっても——極端なものであれば別ですよ。もうそのために裁判所へもぐり込んで、自分たちの、共産主義なら共産主義を信奉しての違反をやった者をみんな無罪にしてしまうというような、そういったような意図で入り込めば別ですが、一般の裁判官にはそういう人たちは私はおらぬと思うのです。ですから私は、思想がどうであっても、思想と良心あるいは判決の内容というものは切り離せないと最高裁長官は言われたけれども、私は切り離せると思います。これは切り離さなければならぬと思う。思想はどうであっても、思想はだれにも憲法で保障された権利ですから。良心もそうです。ところが、裁判官が裁判する場合はあくまで憲法に従ってやる。あくまで憲法が基本であります。思想と憲法が相克する場合には当然憲法をとるべきだと私は思う。それが私は、いまの裁判官の全部の心がまえである、こういうふうに実は信用したい。  そういうことであるから、いまさらこうしたことを言うべきではないのではないか、こういうふうな感じを深くする。かえって国民に疑惑を与え、たまたま問題になっているような福島裁判長のような場合、あくまで青法協へ入ることが違法であるかのごとき印象を持たせる。思想は裁判官でも自由のはずです。裁判所法においても、政治活動については極端な政治活動が制約されているだけであります。ですから、普通の政治活動はいいということだ。そういうことすら規定しておる。また国家公務員法はそれを受けて、いかなる政治活動かということについてさらに詳細に規定いたしておるわけです。そのくらいに憲法もあるいは裁判所法も規定しているのでありますから、そう神経過敏になる必要はない。いささか今度の場合は、いわゆるムード的なものに押されて、偏向裁判云々というような声を高らかに掲げている連中に対して迎合的に言ったものだ、またそういうことまで意識しない一般の国民に対しても、そういった裁判官がいるのかというような誤解すら招くのではなかろうかということを心配している。その点はいかがでしょうか。

岸盛一最高裁判所事務総長

○岸最高裁判所長官代理者 裁判官の中に憲法を否定するような考えを持っておる者はおらないと思います。ただ、この談話は、抽象的な一般論として、憲法記念日に裁判官は憲法の番人であるということを強調するあまり、こういうことを申されたものと思われます。極端な国家主義者とかあるいは軍国主義者、無政府主義者、そういう憲法を否定するような考えの持ち主について長官が抽象論を述べられたのだろう、かように考えております。

畑和日本社会党

○畑委員 私は、それだからこそ尾ひれはよけいだったと思う。要するに、裁判官は憲法の番人でしっかりやりますと、憲法記念日にあたってことさらにこれを重要視した、こういうことでよかろう。やはり一般の人は、たまたまそのときの話題にのぼっているそういう基地問題にも関連を持たして見ますからね。だから、そういう点でむしろみずからを律する、こういうような感じがする。それだとすると、そのほうの尾ひれだけは、裁判所部内でそういう訓令でも何でもできるとすればやったらよかったのではなかろうか。尾ひれだけは、一般に公表するにはかえってよけいだった、こういうふうに感じております。それはどういうふうに思いますか。尾ひれはよけいじゃないと思いますか、どうですか。

岸盛一最高裁判所事務総長

○岸最高裁判所長官代理者 それは、長官談話をなさったときの長官のお考えで、私からとやかく申し上げることはないと思います。しかし、やはり思想といい、良心といい、これは内面的なものです。裁判官はそれは自由を持っております。しかし、憲法を頂点とする現在の国家的法秩序、これを肯定するということを前提としなければならないと思う。それを否定するというような片寄った者は裁判官としては好ましくないのだということをただ申されておるにすぎない、かように考えております。

畑和日本社会党

○畑委員 確かに憲法が一番中心であります。ところが、たまたま例の自衛隊の問題がございます。これに対して学者の大部分は、自衛隊は違憲なり、こういう見解が大部分です。ところが、それに沿うような裁判をすると、これは偏向裁判だ。憲法をあくまで忠実に解釈する、そうすると偏向だ。たまたまその人が思想的にいま言った青法協——青法協はあくまでその目的として掲げておるところは、御承知でもありましょうが、憲法の擁護です。そのときそのときの活動方針の中には、安保廃棄とか、沖繩即時返還とかありますけれども、あくまで青法協が掲げておる目的は憲法を擁護しよう、こういうことにあるわけですからね。ところが、あたかも青法協が極端な共産主義者の団体であるかのごとき印象をいままでのいきさつでどうも一般の人が受けるようになっているのじゃないか。これが私らは非常に不満なんです。それでいままで質問をいたしたわけですが、もうこれ以上いろいろ答弁を求めても無理と思いますから、以上で私の質問を終わりたいと思います。

高橋英吉自由民主党

○高橋委員長 松本善明君。

松本善明日本共産党

○松本(善)委員 五月二日の最高裁長官の記者会見での発言といいますのは、御存じのように非常に大きな波紋を及ぼしました。それから岸事務総長の談話も同様であります。これはわが国の司法のみならず、国民の基本的人権とわが国の民主主義の将来にとっても、きわめて重要な問題だと思いますので、幾つかの点で明確にしておかなければならないというふうに思うわけであります。  御存じのように、社会主義はもう世界的な体制になっております。そして正確に言えば社会主義でありますけれども、共産主義国というふうに言う人もあります。共産主義者といいましても、私たち日本共産党のように、ソビエトのチェコ侵入をきびしく批判するとか、それから毛沢東のやっておる文化革命を批判とか、あるいは国内について申しましても、赤軍派というようなトロッキスト挑発者集団、これが共産主義だと言って盛んに宣伝しておる人もある。私たちこれを最初からきびしく糾弾をしてきておる。あるいは社会党の大会におきましても、マルクス・レーニン主義、これは一面共産主義とも言われますけれども、マルクス・レーニン主義と関係はないという決議が否決をされた、こういう状態でありますので、共産主義といいましても非常に広いものであります。私たち日本共産党は、憲法の改悪に反対をし、憲法の平和的、民主的条項の完全な実施を要求しております。それからその中にはもちろん当然のことでありますが、憲法七十六条の「すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。」この条項も当然のこととして、民主的な条項として守らなければならないものというふうに考えておるわけであります。私自身のこの委員会における裁判官の独立についての発言をごらんになりましても、この点についてきびしい態度をとっているということは明らかであろうかと思います。  そういうことから考えますと、長官の言われました共産主義者も含めて、共産主義者は裁判官に好ましくないということを言うことになりますと、共産主義とは一体何なのか、だれが共産主義者かということをやはり調べなければならない。このことは思想調査であります。本来立ち入るべきものでない内心の自由に立ち入るという思想調査ということになるのじゃないか。思想調査が憲法違反というふうに考えないだろうか、まずこのことを事務総長にお聞きしておきたいと思います。

岸盛一最高裁判所事務総長

○岸最高裁判所長官代理者 長官の発言中に、「はっきりした共産主義者」云々ということばがあります。これはしかし、その前に出ております極端な国家主義者、軍国主義者、無政府主義者と並べて言われたことで、やはりその前に例示されているようなものに匹敵するような、憲法を無視するような共産主義者、そういう意味で言われておるのでありまして、決して特定の政党とか団体、そういうものをさしているわけではないわけであります。いわんや日本共産党を向こうに回して言っていることばではないのであります。

松本善明日本共産党

○松本(善)委員 しかしながら、いま初めて事務総長が日本共産党をさしていないということを言われたので、これは長官の談話だけではもちろんわかりませんでした。それから特定の政党や団体をさしているのじゃないということももちろんわかりませんでした。しかし私どもは、私たちこそがほんとうの共産主義者だというふうに考えています。またあの談話を見れば、日本共産党が含まれているのではないかというふうに考える人もかなりあると思います。そういうことで、この思想を問題にするということは非常に大きな影響を与える。そういうようなことだから、思想の問題について軽々に触れるべきではないということになるのじゃないか。そういうような誤解を生むというふうにお考えになりませんか。

岸盛一最高裁判所事務総長

○岸最高裁判所長官代理者 あの発言自体からは、特定の団体や特定の政党をさしているものでないということは十分に読み取れると思います。右を問わず左を問わず、とにかく極端な憲法を否定するような主義、主張の信奉者、それについて言われていることで、普通の場合のことをさして言っているわけではないわけです。まして思想調査しなければならぬとか、そういうことまで触れているわけでは決してないわけであります。

松本善明日本共産党

○松本(善)委員 もう一つ進んでお聞きしますが、最高裁の長官は、裁判官の思想でありますとか個人生活に立ち入る権限がありましょうか。あるとするならば、一体いかなる権限であるというふうにお考えになりますか。

岸盛一最高裁判所事務総長

○岸最高裁判所長官代理者 それはどういう具体的な場合を考えてよろしいか、私、わかりませんけれども、個人のプライバシーに立ち入るということはあり得ないと思います。

松本善明日本共産党

○松本(善)委員 それから裁判官の思想というのは、もちろんこれは個人生活と同じような問題ではありませんか。最高裁の裁判官が、あなたの思想は間違っておる、あるいはこういうふうにしなさいとか、こうしなければならないとか、こういうふうに命令したり何かする権限がありますか。

岸盛一最高裁判所事務総長

○岸最高裁判所長官代理者 ただいまおっしゃったようなことを何も最高裁の長官はやっておりません。

松本善明日本共産党

○松本(善)委員 これは非常に大事な問題で、明確にしておこうということで私はお聞きしておるわけでありますが、そういう権限がありますかということをまずお聞きしておるわけです。やってなければやってないでけっこうです。権限がなければないでけっこうです。

岸盛一最高裁判所事務総長

○岸最高裁判所長官代理者 そういう権限もなければ、また実際にもやっておりません。

松本善明日本共産党

○松本(善)委員 そういたしますと、いまなぜこういう裁判官の思想問題を最高裁長官が発言されたのだろうか、いかなる必要があって発言をされたのだろうかということが私の疑問になるわけであります。どういう理由で長官は現在この問題について御発言になったのでありましょうか。

岸盛一最高裁判所事務総長

○岸最高裁判所長官代理者 これはやはり憲法週間と結びつけて、憲法擁護についての長官の信念、所信を述べる、それが直接の動機である、かように考えます。

松本善明日本共産党

○松本(善)委員 単に最高裁長官は憲法記念日の前日の記者会見というだけでこれが述べられたのだ、具体的な意味はないのだというふうに受け取る人は非常に少なかろう。先ほど畑委員は長沼事件との関係を言われました。それがすぐにそのとおりだというふうに言えるかどうかということはもちろん別でありますけれども、私はそういう疑惑を持つ人ももちろんあると思います。最高裁長官が持っておる権限は、具体的な裁判についての上級審としての権限、最高裁判所の裁判官の一人としての権限、それから司法行政上の権限、そういう司法行政上の問題や裁判に何らかの影響を与えるということを考えないで最高裁の長官が発言されるということは、私は考えられない。どのような影響を求めて発言されたのだろうかということをお聞きしておるわけであります。

岸盛一最高裁判所事務総長

○岸最高裁判所長官代理者 別にそう深い影響な  んかを考えて発言されたものとは思われません。

松本善明日本共産党

○松本(善)委員 はたしてそうであろうかということをまだ私はたいへん疑問に思うわけでありますが、さらに質問を続けていきたいと思います。  憲法の七十六条は「すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。」ということになっておる。ほかのことに一切拘束されない、裁判官独立して職務を行なう、その良心と憲法と法律にだけ拘束されるということでなければ裁判の公正は保障されないからだと思う。司法行政というのは、本来憲法と法律と良心に従って裁判がしやすいようにやっていく、それが司法行政の任務であろうかと思う。最高裁長官といえども、下級裁判所の裁判官の裁判の内容にもちろん干渉することはできませんし、影響を与えることもできないのは私は当然だと思います。まして、いまもお答えになりましたように、裁判官の個人生活や思想に干渉することができないのはきわめて当然だと思う。何の意図もないと言われるけれども、実際には下級裁判所の裁判官の裁判、あるいは思想や個人生活にやはり影響を与える。これは与えない、そんなことは考えていないというふうに言われるほうが、私は普通の常識から受け取る考え方とは違うと思うのだ。そういうことを意図してやられるとすれば、私は最高裁長官としてもきわめて越権であろうというふうに思います。事務総長はそういうふうにお考えになりませんでしょうか。

岸盛一最高裁判所事務総長

○岸最高裁判所長官代理者 何度も申しますとおり、憲法週間にちなんでの発言で、さような意図は持っておられないとはっきり申し上げることができると思います。

松本善明日本共産党

○松本(善)委員 もう一つ伺っておきますが、裁判官は弁解せずということが古くからいわれておる。それは裁判官の考え方、判断は全部判決に出している、なぜ自分がそういうような判断をしたかということは、判決理由の中で明確にしていく。そこに裁判官の思想ももちろんあらわれるでありましょう。その法律判断が誤っているなら誤っている、事実判断が誤っているなら誤っている、それが三審制の中で争われていく。そういう中でこの裁判制度というものが維持されていくんじゃないか。自分の都合の悪い判決が出たから、政府に都合の悪い判決が出たから、それを訴訟手続の中で争うんじゃなくて、その裁判官の思想を問題にしていく、あるいは下級審の裁判官の裁判が気に食わぬということになったら、思想を問題にしていく、そういうことになったら、これはたいへんな裁判制度の否定につながると思うのです。最高裁裁判官といえども、やはり下級審の裁判官の裁判について問題があるならば、最高裁に来たときに、それについて判断をするというのが裁判のたてまえではないでしょうか。その点について事務総長の御意見を伺いたいと思います。

岸盛一最高裁判所事務総長

○岸最高裁判所長官代理者 それはもうおっしゃることは当然で、長官もそんな具体的な裁判についてとやかくなにしようというそういう意図をもってこういう発言をされたものではないことは明らかであります。

松本善明日本共産党

○松本(善)委員 しかし、客観的に最高裁長官の今度の談話はそういう影響を持たないでしょうか。そういう意図はないというふうに否定されましたが、私は、はたしてそうかということに、完全に疑惑をなくしたというわけではありません。そういう受け取り方を社会の人がしないという保証がありましょうか。

岸盛一最高裁判所事務総長

○岸最高裁判所長官代理者 あの長官発言は、裁判に対して何らの影響を与えるものではないと考えます。

松本善明日本共産党

○松本(善)委員 それではもとへ戻ってお伺いします。  先ほど田中委員がいろいろ聞かれました。私は残念ながら田中委員とはかなり考え方を異にするものであります。田中委員は、裁判官の思想問題は非常に重要な問題であって、上下一貫しなければならぬということを最初に強調されました。これはまさに裁判官の思想統制であると私は思います。田中委員の発言だけにとどまらず、ずっと最後に岸事務総長は、その発言が長官発言の趣旨とほぼ同旨であるということを言われました。田中委員の発言につきまして、それは全体を言うつもりでおられたかどうかわかりませんけれども、議事録の結果はそういうふうになっていると思います。そういうことを事務総長はお考えになっておるのでありますか。

岸盛一最高裁判所事務総長

○岸最高裁判所長官代理者 いろいろ田中委員が言われましたので、いろいろなことが入っていると思いますが、この田中委員の質問の中に、思想と裁判とは切り離せない全人格的な判断である、そう言われました。その点が重点だと思いまして、そして、長官の発言も新聞でごらんのとおり、個人的良心と裁判官としての良心の使い分けというのは非常に困難だ、そのことを言っておられます。その点を肯定したわけであります。

松本善明日本共産党

○松本(善)委員 その点についてお聞きしましょう。裁判官の良心は客観的なものでなければならないということを事務総長は言われました。そうしてこれは憲法を否定しているという考え方の者ではいけないんだ、それは裁判官としてふさわしい思想ではないんだ、こういうことも言われました。この問題でありますが、考え方がいろいろ人によってたいへん違っておりまして、私、端的な例でお聞きいたしますけれども、先ほど来この委員会でも問題にしておりますように、自衛隊が違憲だということは、憲法学者の圧倒的多数が言っております。この自衛隊違憲ということについては、とんでもないというお考えは、同僚法務委員の中にもおいでになると思います。憲法のたてまえというのはそういうのじゃないのだ、自衛隊違憲だというような者は憲法を否定するものだ、こういうふうに考えている人もないとは言いません。そうすると、この裁判官の良心は客観的なものでなければならないという言い方は、人によって、受け取り方によって、また使い方によっては裁判官の考え方を統制をしていくということに発展をしかねない危険を持っておるというふうに思うわけです。この客観的なものでなければならないというのはどういう意味になりますか。

岸盛一最高裁判所事務総長

○岸最高裁判所長官代理者 良心に従いさえすればいいのだというふうな、そういう簡単なものじゃない。つまり主観的な、恣意的な自分の良心、かような行き方では正しくない、そういう意味で申しておる。この良心ということばが、いろいろ解釈について論議されておりますが、これはいろいろ学説の問題としまして、何代目かのアメリカの最高裁のチーフジャステスであるジョン・マーシャルという人が、裁判官というものは徹頭徹尾独立でなければならない。しかし、自己の良心とそれから神の命に従わなければならない、そういうことを言っております。その自己の良心のほかに神というのをつけ加えておるということは、やはり主観的な、恣意的な良心ではいけない、普遍妥当性を持った、つまり裁判官が裁判をするときの心がまえとしては、自分の出す判決がすべての裁判所の裁判官が妥当とするようなものでなければならぬ、そういうことが言われております。そういう意味で客観的なものと申しておるわけであります。

松本善明日本共産党

○松本(善)委員 それは当然のことでありますけれども、自衛隊を違憲だというふうに考えているというようなことが、思想の違いとか、ここで問題になる思想だというようなことでは毛頭ないということが言えますか。

岸盛一最高裁判所事務総長

○岸最高裁判所長官代理者 そういう具体的な、自衛隊の合憲、違憲とか、そういうこととは無関係であります。

松本善明日本共産党

○松本(善)委員 そうすると、この問題について田中委員の御質疑がありましたので、一応全部きちっとしておこうと思うのでありますが、裁判官全員に徹底させよということを言われる。これは、田中委員のお考えからするならば、石田長官の思想で上下一貫しろというようにも受け取られかねない。一体この徹底をさせるというのは何を考え、またいかなる権限——先ほどは司法行政上の権限でも何でもない、そういうことも毛頭考えていないということを言われました。徹底するということは、何を、いかなる権限でおやりになろうとするのか。

岸盛一最高裁判所事務総長

○岸最高裁判所長官代理者 この徹底させると申しましたのは、最高裁の公式見解を総長談話の形式で発表されました、あの公式見解の趣旨を徹底させる、あるいは裁判官にとってもきびしいモラルであるということを徹底させる、そういうわけであります。

松本善明日本共産党

○松本(善)委員 法曹倫理として修習生に教育をするということも言われました。これは一体どういう教育をしようということになるのですか。私は、憲法の精神を教育をするということなら、これはわかります。わかりますけれども、特に特定の思想を排除をするための教育をするということになると、一体何をやろうというふうにお考えになっておるのかということを聞かざるを得ない。これは何を意味していますか。

岸盛一最高裁判所事務総長

○岸最高裁判所長官代理者 教育するということばは使わなかったと思います。このような問題が法曹倫理の問題の一つとして、裁判官の場合の、裁判官の心がまえの問題として浮かび上がってきているときに、この点について十分研修所においても研究の対象として、そうして、それぞれの道義的自覚を促す、よく考えてもらう、そういう意味で申しております。

松本善明日本共産党

○松本(善)委員 修習生に教育するということを言われたように私は聞きました。まあ、それはあらためて議事録をお調べいただければわかると思います。  それから、もう一度あらためて確かめておきますが、日本共産党をもちろん対象にしておるのではないということを言われましたけれども、最高裁長官は、いまの段階では憲法を守り利用するが、実際はカムフラージュで、究極的には憲法を否定するというものもあると思う、これも憲法を否定するものと考えている、こういうことを言われています。これは、いろいろの例をあげますけれども、憲法記念日には、岸信介氏を議長とする自主憲法制定国民会議が開かれて、憲法の改正ということを言われておる。それから「憲法改正の方向」という本があります。この共同執筆者の中には、当委員会の同僚議員も入っておられる。その中には、「憲法九条は全面的に削除するのがのぞましく、これにかわってはっきり憲法に国家の安全に関する条項を規定すべきである。これに関連して憲法前文の平和的条項も全面的に改正すべきである。」こういうことが書かれてあります。自由民主党は、その政綱に、現行憲法の自主的改正をはかるということを掲げております。それから、四十三年の参議院選挙の政策解説に「憲法を自主的に改正するというのがわが党の一貫した態度である」ということをいっておられますが、こういう考え方、これは、ここの、長官の言われる中に入りますか入りませんか。

岸盛一最高裁判所事務総長

○岸最高裁判所長官代理者 長官発言は、きわめて抽象的な表現で、左右を問わず、一般論を述べたわけでございます。特定、具体的なことをさして申しておるのではないのでございます。

松本善明日本共産党

○松本(善)委員 もう一度、それじゃ、日本共産党について伺っておきます。  私たち日本共産党は、現行憲法が永久不変のものだというふうにはもちろん考えておりませんし、国民の総意に基づいて変えられることもあり得るという、これは否定していません。しかし、現在行なわれようとしております憲法の改悪に対しては断固として反対をするという立場をはっきりとっています。そうして、現在の憲法の民主的平和的条項を完全に実施をする。この憲法を変えていくことについて反対していくという態度を明確にしている。日本共産党は、憲法を否定する、裁判官にとっては好ましくないという、そういうものではないということでありますか。もう一度お聞きしておきたいと思います。

岸盛一最高裁判所事務総長

○岸最高裁判所長官代理者 そういう何々党とか、具体的なものを名ざして、長官は述べておられるのではないのでありまして、ただいま述べたことは全く無関係、こう御理解願いたいと思います。

松本善明日本共産党

○松本(善)委員 それじゃ次に参ります。  最高裁判所事務総長の公式見解として述べられたものでありますが、政治的色彩を帯びた団体に加入することは慎むべきであるということを言われました。この、政治的色彩のある団体というのは、一体だれが、どういう基準で判断をするのか。これは相当むずかしい問題であります。幾つかの例をお話し申し上げますが、事務総長は、かつて当委員会で、最高裁がアジア財団から資金援助を受けたことを認められました。アジア財団はCIAから金が出ているということであります。このアジア財団から資金援助を受けているということは、政治的色彩のある団体と関係をしているというふうに、見る人は見るかもしれません。それから、国際法曹協会という団体があります。最高裁裁判官もみな加盟されております。これは社会主義国の法曹は一切入っていない団体であります。そういう意味では、人によっては、これも政治的色彩のある団体というふうに思う人もあると思います。それから青法協自身が、長沼事件の忌避問題で法務省が問題にしたところによれば、日本民主法律家協会と関係している。この日本民主法律家協会の会員の中には、日弁連の元会長が何人もいます。青法協は、当委員会では、岡沢完治委員も私も会員であります。それから中谷鉄也議員も会員であります。東京大学の加藤総長も、この協会の創設者の一人であります。  こういうふうに考えますと、政治的色彩のある団体ということを、一体だれがどういう基準で判断するのか。これはたいへん重大な問題なんです。事務総長は、この点についてはどうお考えになりますか。

岸盛一最高裁判所事務総長

○岸最高裁判所長官代理者 ある団体が政治色を帯びているかどうか、これは政治色といいますと非常に幅の広いものでありますけれども、やはり一般の国民常識に従って判断するほかはないと思います。

松本善明日本共産党

○松本(善)委員 国民常識に従ってだれが判断をするのですか。

岸盛一最高裁判所事務総長

○岸最高裁判所長官代理者 判断するそれぞれの主体が、やはり国民一般の常識の線に沿って判断するということになります。

松本善明日本共産党

○松本(善)委員 そうすると、一人一人の裁判官が、国民常識に従って、これは政治的な色彩があるというふうに考える団体には入らないほうがよろしい、これがその趣旨でありますか。

岸盛一最高裁判所事務総長

○岸最高裁判所長官代理者 それは、裁判官が、裁判官たる地位、身分から考えて、一般から政治色の強い団体だといわれているような団体、しかも自分も、なるほどそうだと思えば、それに入るべきじゃない、入るのを慎むべきだ、そういう意味であります。

松本善明日本共産党

○松本(善)委員 青年法律家協会は、憲法を守るということを目的としてできた団体であります。この憲法の条項の中に、もちろん、先ほど来論議をされております憲法七十六条も入っております。裁判官は独立して職務を行なう、それから憲法と法律と良心に従って裁判を行なう、こういうことを守っていくという団体であります。したがって、これに加盟をしておる裁判官の独立を侵すようなことがあるということは、そのこと自身が協会の目的に反するということになるでありましょう。この青年法律家協会については、裁判官部会は独立をしておる、何らほかの弁護士や学者のきめたことに拘束されないということで運営をしている。これは長沼事件の忌避問題でもいろいろ論議をされたようであります。この団体を一方的に最高裁が政治的団体だというふうにきめつけていくということは、最高裁としては——先ほど私は、裁判官の個人生活、思想に立ち入る権限はないはずだということを申しましたところ、そのとおりだということでありました。これとの関係では一体最高裁はどう考えておられるか。その団体そのものについては、裁判官個人が政治的色彩のある団体かどうかということを判断して、なるべくそういうものに入らないほうがいい、こういう趣旨であるということでありますならば、その判断の中に最高裁が介入しようとしておるのかどうか、その点についての御見解を聞きたいと思います。

矢崎憲正最高裁判所事務総局人事局長

○矢崎最高裁判所長官代理者 青年法律家協会が政治的色彩の強い団体であるということについては、私どもはそう考えておるわけであります。なぜそう思うかとおっしゃるならば、その理由を説明してもよろしゅうございます。

松本善明日本共産党

○松本(善)委員 私のお聞きするのは、最高裁がそういうふうに見たということは委員会でも事務総長言われました。それを私自身、問題にしておるわけですけれども、その判断を各裁判官に強制することができますかというのです。

矢崎憲正最高裁判所事務総局人事局長

○矢崎最高裁判所長官代理者 強制をするとは申し上げておりません。

松本善明日本共産党

○松本(善)委員 そうすると、どういうことで話をされたのですか。公式見解としては何を目的としてこういうことを言われたのか。

矢崎憲正最高裁判所事務総局人事局長

○矢崎最高裁判所長官代理者 この前の委員会で、たしか松本委員の御質問に対して私からお答えしたとおりでございます。要するに各裁判官に対して、それぞれ十分に考えて自覚してもらうという趣旨のものであります。

松本善明日本共産党

○松本(善)委員 そうすると、各裁判官によっては、これはもちろん憲法を守る、裁判官の独立を侵すというものではない、政治的な色彩を持っておるものではないというふうに判断をされるということもあり得ると思います。そういうことはあってもやむを得ない、これは当然のことでありますけれども、お聞きしたいと思います。

矢崎憲正最高裁判所事務総局人事局長

○矢崎最高裁判所長官代理者 もちろんこちらの望むところでは決してございませんけれども、そういうことがあり得るというのはそのとおりでございます。

松本善明日本共産党

○松本(善)委員 それでは少しまた別のことをお聞きいたします。  この石田長官の発言の中で、裁判官はやたらな人と懇意にしないことが必要だということがあります。やたらな人というのはどういう人のことを言うのですか。

岸盛一最高裁判所事務総長

○岸最高裁判所長官代理者 そこまでこまかく私は長官の御意見を聞かなかったのであります。裁判官としてつき合ってはおもしろくないようなやたらな人ということではないかと思います。

松本善明日本共産党

○松本(善)委員 思想問題との関係でこういうことを言われるということは、私は最高裁長官としてはきわめて軽率であるというふうに問題指摘だけをしておきます。  それから、もう一つ申し上げておきますと、飯守裁判官の問題がたびたびこの委員会では問題になりました。この飯守裁判官は自由民主党の機関紙に青年法律家協会攻撃の論文を掲載されました。これは裁判官としては非難されないのでしょうか。

矢崎憲正最高裁判所事務総局人事局長

○矢崎最高裁判所長官代理者 非難されるとか非難されないとかいう問題は別でございますが、現在その問題につきまして訴追委員会にかかっておりまして、何か承るところでは、いろいろな点から調査が非常に進んでいるかのようにも承っております。したがいまして、ここではその問題に触れることを避けさせていただきたいと思います。

松本善明日本共産党

○松本(善)委員 訴追委員会の問題が出ましたので思い出しましたが、石田長官は「個人の思想、信条を表現するだけでは裁判官をひ免したり、再任を拒否したりする事由には当たらない。モラルの問題として「好ましくない」ということである。レッド・パージとかブラック・パージなどが裁判所側から起きることはあり得ないが、外側から、たとえば国会の裁判官訴追委員会などでそうした動きが出ることはあり得る。」ということを述べられたというふうに新聞が報道しています。一体裁判官の思想、信条の問題が訴追の対象になるというふうにお考えになりますか。

岸盛一最高裁判所事務総長

○岸最高裁判所長官代理者 裁判所の部内ではそういうレッド・パージとかブラック・パージというようなことは起こり得ない。しかし、世間でそういうことを問題にされたらしょせんやむを得ない。しかし、その結論がどうなるかということはこれはまた別問題、そういう意味であります。

松本善明日本共産党

○松本(善)委員 私のお聞きするのは、裁判官が弾劾に値するというときには最高裁は訴追をしなければならない。そういう意味で、思想、信条を訴追の対象と考えられるかどうかということを聞いておるのです。

岸盛一最高裁判所事務総長

○岸最高裁判所長官代理者 そのようなことは考えておりません。

松本善明日本共産党

○松本(善)委員 それから、飯守裁判官の問題に戻りますが、飯守裁判官は、わが国憲法のとっている政治制度は議会制民主主義であり、それは労使協調を前提としている、経済制度は修正資本主義であるという特異な見解を持っています。これはたびたび表明をされています。それから労使協調主義と修正資本主義の思想を広げる必要があるということで、共産党、社会党に対する批判、労働組合の闘争に対する批判、そういう言動を活発に展開することが裁判官の義務だというようなことを鹿児島新報紙上で論じたり、裁判所広報をそのために利用したりしておられる。労働組合の安保反対闘争とか反米闘争を批判する。それから生産性向上、合理化の名のもとに労働者の配転や首切り、労働強化が行なわれることに反対するいわゆる労働組合の合理化反対闘争も批判をしておられる。それから雑誌「自由」の四十四年十月号では、裁判官が擁護すべき体制を明確に意識していなければならないと述べられ、治安維持法はその時代の背景における立法としては合理性のある体制防衛立法だった、また、適用の結果は大体において常識的に妥当なものだった、この法律を悪法の典型のようにきめつけることは間違っている、こういう考えを述べている。これは憲法を否定するものであるというふうには言えないでしょうか。

矢崎憲正最高裁判所事務総局人事局長

○矢崎最高裁判所長官代理者 それは飯守所長御自身のお考えでありまして、それがそういうふうに発表されて、評価という点についてはやはり訴追委員会できめる問題になって調査をされるということになったのだろうと思います。

松本善明日本共産党

○松本(善)委員 私の言いますのは、そういうような思想は憲法を否定するというふうには最高裁は考えないのかということです。

矢崎憲正最高裁判所事務総局人事局長

○矢崎最高裁判所長官代理者 これは飯守所長のお考えで、私のほうとして公式にこういうところでどうこうと、最高裁の見解はどうだということは申し上げかねます。

松本善明日本共産党

○松本(善)委員 この問題は、私はやはり軽々に発言すべからざるものを最高裁やそれから長官は取り上げられたと思います。私がいまいろいろ聞きましただけでも、世間の人は、そういうことだったのか、ずいぶんさっきとは話が違うようだと思う人もあるいはあるかもしれません。むしろこういうことをやるならば、もっと慎重に、世間から疑惑を招かないように、やはりほんとうに憲法の擁護者は裁判所だということになっておるならば、その憲法を一つ一つに厳格に忠実であるように細心の配慮がなされなければならないはずであります。私は、特に最高裁長官の発言に至っては、非常に軽率なものが端々に見られる。事務総長自身がそこまでこまかくは知らなかったということを言われますが、そういうふうに新聞はきちっと報道しております。私は、この事務総長の談話自身も問題があると思うのです。公式見解自身も問題があると思います。  思想、言論、集会、結社の自由、これは日本の民主主義の根幹であります。この問題について最高裁の態度というものは、単に個人の見解だとかいうようなことで裁判所だけの問題だということでは済まない、日本の国の民主主義全体に大きな影響があるものです。そういう意味では、最高裁にとっては非常に重大な責任があるというふうに考えるわけであります。そういう意味で最高裁が、この点について国会の論議その他を通じて、その考え方についてかなりきびしく反省をされる必要があるということを申し上げまして、私は質問を終わります。

高橋英吉自由民主党

○高橋委員長 本日は、これにて閉会いたします。    午後四時三十九分散会

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