法務委員会 第21号
- 発言数
- 16 件
- 登壇者
- 4 名
- 会派数
- 1
- 開催日
- 1970/04/24
会議録
○高橋委員長 これより会議を開きます。 内閣提出、航空機の強取等の処罰に関する法律案を議題とし、政府に提案理由の説明を求めます。小林法務大臣。
○小林国務大臣 航空機の強取等の処罰に関する法律案について、その趣旨を説明いたします。 この法律案は、最近の航空機奪取事犯の実情等にかんがみ、航行中の航空機を強取する行為等について特別の処罰規定を新設しようするものであります。 さる三月末に発生したいわゆる日航機乗っ取り事件が国民に大きな衝撃を与え、ハイジャッキングに対処する立法措置を要望する声が各方面から聞かれるに至っておりますことは、御承知のとおりであります。 さて、ハイジャッキングと呼ばれる犯罪行為は、一般社会から隔絶した航行中の航空機内という特殊な環境を巧みに利用して行なわれるものでありますが、これによって、多数の乗客及び乗組員が恐怖と不安の伴う監禁状態のまま遠隔の地に連れ去られることとなるだけでなく、航空機の安全な運航が著しく脅かされ、脅迫状態における運航によって不慮の事故が生ずる危険も少なくないのであります。さらに、この種の行為によって生ずる財産上の損害及び航空業務の妨害という面をも見落とすことはできないのでありますが、このように悪質かつ危険な手段を用いて自己の不法な目的を遂げようとする犯人に対し、きびしい社会的非難を加える必要があることは言うまでもないところであります。 このようなハイジャッキングは、世界的にはここ数年来急激に増加しており、しかも、民間航空の今後の発展、国際情勢の推移等の諸事情から見て、決して一時的な現象として看過することはできないものと考えられるのでありまして、その防止及び処罰のための国際的な協力態勢を確立することが、緊急な国際問題の一つとして真剣に検討されているのであります。 以上の諸事情を考慮いたしますと、この種の行為に対する処罰を強化する等の措置を講ずる必要があると思われるのでありますが、現行法制のもとにおいては、その実態に適合した罰則がなく、既存の罰則では刑が軽きに失すること、日本国外における行為を処罰できない場合があること等、十分でない点が少なくないと考えられるのであります。そこで、この際、早急に、この種事犯について特別の処罰規定を設けるとともに、日本国外での犯罪をも広く処罰し得ることとするため、この法律案を提出することといたした次第であります。 この法律案の骨子は、次のとおりであります。 第一点は、ハイジャッキングという犯罪の実態に適合した処罰規定を新設する点でありまして、航空機の乗客、乗組員等に暴行、脅迫等を加えて、航行中の航空機を強取し、あるいは、ほしいままにその運航を支配した者は、現在の強盗罪よりも重く、無期または七年以上の懲役に処し、その未遂をも処罰するとともに、この犯罪を犯した結果、人を死亡させた場合には、死刑または無期懲役に処することといたしております。 第二点は、右の罪の予備を罰することとする点でありまして、強盗予備罪より重い法定刑を定める一方、この種事犯をできる限り未然に防止する観点から、実行に着手する前に自首した者に対しては、必ず刑を減軽または免除することといたしております。 第三点は、偽計または威力を用いて航空機の針路を変更させるなど、典型的なハイジャッキングには至らないものの、乗客や乗組員の自由及び安全を脅かすことにおいてこれに近い運航妨害行為を処罰する規定を設ける点であります。 第四点は、ハイジャッキングの防止及び処罰に国際的協力が必要であることにかんがみ、以上の犯罪の国外犯を広く処罰し得ることとする点であります。 以上が航空機の強取等の処罰に関する法律案の趣旨であります。 何とぞ、慎重御審議の上、すみやかに御可決くださいますようお願いいたします。
○高橋委員長 これにて提案理由の説明は終わりました。 本案に対する質疑は次回に譲ります。 ————◇—————
○高橋委員長 次に、内閣提出、民事訴訟手続に関する条約等の実施に伴う民事訴訟手続の特例等に関する法律案を議題とし、質疑に入ります。 質疑の申し出がありますので、これを許します。羽田野忠文君。
○羽田野委員 これは民事局長にお答えをいただきます。これは手続規定で比較的はっきりしておることですが、一応概貌だけをひとつ説明をしていただきたいと思います。 まず第一番に、民訴条約のほうからお尋ねをいたしたいと思います。この民訴条約の目的、それから条約がいつ発効しているか、発効日、署名国、批准国、条約を批准ずる理由、それから条約の内容並びにその必要性、こういう点を御説明いただきたいと思います。
○新谷政府委員 民訴条約でございますが、これは一九〇五年にハーグの国際私法会議におきまして採択されました同じ題名の条約がございました。ところが、その後第一次、第二次の大戦を経まして国際関係にかなりの変動が出ましたために、一九五四年に至りまして、国際私法会議におきましてあらためまして民事訴訟手続に関する条約を採択したわけでございます。要するに国家間のかなりの変動に対応しまして、一九〇五年の条約がほとんど無意味になったので、新しい条約をつくって情勢に対応しよう、こういう趣旨でできたものでございます。 この条約は、一九五四年の三月一日に採択されまして、発効いたしましたのは一九五七年の四月十二日でございます。それからこれを批准いたしております国が現在二十一カ国ございます。国を申し上げますと、ドイツ、オーストリア、ベルギー、デンマーク、スペイン、フィンランド、フランス、イタリア、ルクセンブルグ、ノルウェー、オランダ、ポルトガル、スウェーデン、スイス、さらにイスラエル、ユーゴスラビア、チェコスロバキア、ハンガリー、ポーランド、バチカン、ソビエト、これが新しく加入いたしておりまして、合計二十一カ国、現在当事国になっておるのでございます。 この条約ができました理由でございますが、主として民事訴訟手続上の書類送達を簡易迅速にしようというところに最も大きなねらいがあるわけでございまして、これは一九〇五年、条約ができましたとき、ちょうど明治三十八年でありますが、この年にわが国におきましては、外国裁判所ノ嘱託ニ因ル共助法という法律が出ております。この法律は、外国から嘱託がありました場合に、わが国においてどういう措置をとるかということを規定した法律でございますが、それによりますと、まずその国相互間に特別の取りきめをいたしました場合にのみこの規定が働いていくわけであります。しかもその司法共助の法律にありますが、書類の送達と証拠調べを行なうにつきましては、外交上の経路を通じて行なうということになっております。これは非常にその事務手続が煩瑣でございます。各国におきましても、こういった方法を従来とっておったのでございますけれども、これがたいへんめんどうであるというところから、この民事訴訟手続に関する条約というものが締結されるに至ったのでございます。 この条約はいま申し上げましたように、主として送達をその条約の内容といたしております。そのほか証拠調べについての共助関係、さらに訴訟費用の担保を免除する規定が入っております。これは現在のわが国の民事訴訟法におきましては、原告が日本に住所、居所を有しない場合には、訴訟費用の担保を課さなければならないことになっております。締約国相互間におきましては、そういうようなことを省いて、担保の提供を免除しようということでございます。さらにその担保を免除いたしますかわりに、原告が敗訴した場合に、被告に訴訟費用の取り立てを容易にする必要がございますので、その点もあわせて執行認許という形におきまして訴訟費用の取り立てを容易にしようという規定を設けてございます。さらに民事訴訟法にもございますが、貧困者の訴訟上の救助の規定がございます。これもこの締約国相互間におきましては、同じような扱いをしていこうということでございます。さらに、この救助の関係におきまして必要な身分上の証書を無償で交付するというふうな便宜もはかっております。 大体以上のようなことがこの条約の内容でございまして、先ほど申し上げました共助法によりますと、個別的な国家間の取りきめが必要であり、しかも外交上の経路を通じてやらなければならないということになっておりますのを、これによって簡素化していこうというところにおもなねらいがございます。 そこで、その送達について簡単に申し上げますと、民訴条約におきましては、外交上のルートを経由しないで外国にいる者にあてた文書の送達の際には、その各締約国が当局を指定しておきまして、その当局に対して駐在の領事官が送達の請求をすれば手続に乗っていく、こういうふうな簡便な方法を講じておるというのが、この民訴条約の趣旨でございます。
○羽田野委員 非常に懇切な御説明でよくわかるわけでございますが、これは法案を読めば内容が比較的はっきりしておりますので、お答えは要点だけ簡単でよろしゅうございます。 次にお伺いしたいのは、わが国の裁判所と外国の裁判所間の共助関係の現状についてどういうぐあいであるかということをちょっとお伺いしたい。——わが国の裁判所と外国の裁判所間の共助関係の現状ですね。
○新谷政府委員 わが国から外国の裁判所に対する送達、証拠調べの嘱託の実施状況、あるいは逆に外国の裁判所からわが国に嘱託した場合の状況等について申し上げますと、昭和三十年から昭和四十四年までの間にドイツその他三十カ国から送達につきましては三百八十人、証拠調べにつきましては五十三人の嘱託がございます。ただいまのはわが国から外国裁判所に対する送達と証拠調べでございます。外国裁判所からのわが国に対するものは、昭和二十八年から昭和四十四年までの間に、ドイツほか十二カ国から百一人についての嘱託がございました。証拠調べにつきましては、同じ期間にドイツほか十カ国から百八十二人についての証拠調べの嘱託がございました。なおそのほかに、日本の領事で外国に駐在しておりますものに対しまして送達あるいは証拠調べの嘱託を実施いたしております。これは昭和二十七年から四十四年までの間に、送達につきましてはドイツほか二十七カ国に対しまして千七百四十二名。証拠調べは数が少のうございまして、昭和三十九年から四十四年までの間に十四名についての証拠調べを嘱託いたしておるのでございます。
○羽田野委員 民訴条約の関係はよくわかりました。 次に、送達条約関係でちょっとお伺いしたいのですが、やはり同様にこの条約の目的、発効日、それから署名国、批准国、こういうふうなものはどういうふうになっておりますか。
○新谷政府委員 送達条約は一九六五年の十一月十五日に採択されたものでございまして、同じくハーグの国際私法会議において行なわれております。これが発効いたしましたのは一九六九年の二月十日でございます。批准いたしております国がデンマーク、アメリカ合衆国、フィンランド、ノルウェー、アラブ連合、連合王国、スウェーデンの七カ国、そのほかにボツワナ、バルバドスが加入いたしております。したがいまして、現在九カ国がこの送達条約についての加盟国ということになりますが、なお署名を終えております国がドイツ、ベルギー、フランス、イスラエル、オランダ、トルコの六カ国でございます。これらの国はいずれも批准のためにそれぞれ国内で検討中のように承知いたしております。 この送達条約と民訴条約の関係でございますが、先ほど申し上げましたように、民訴条約におきましては、当局を指定いたしまして、その国に駐在する領事館から送達あるいは証拠調べの要請をいたすのでございますが、それでもなおかつ手続が煩瑣であるという声が出てまいりましたために、この送達条約というものが新しくできたのであります。民訴条約の送達に関する規定が第一条から第七条までに規定されておりますが、これを改善することを目的といたしまして、若干の事項をつけ加えてこの送達条約ができ上がったのであります。 送達条約におきましては、中央当局をそれぞれ指定いたしておきますと、その中央当局に対して嘱託国の権限のある当局、言いかえれば裁判所が直接嘱託することができるという方法を講じております。これによって民訴条約以上にこの送達が簡易化する、こういうことでございます。 なお、そのほかに民訴条約におきましては、その要請する場合の文書の様式を定めまして、これによって手続を簡素化しようということ、さらにこの送達を間接的に義務づけていこうということを規定いたしております。これは中央当局の責任を明確に規定し、さらに送達ができなかった場合あるいは被告が出頭しない場合には裁判を延期するかわりに、中央当局に要請いたしまして、六カ月間たっても何らの連絡もないというふうな場合には裁判を行なってもいい、こういう規定を設けることによってこの送達を義務づけていこう、こういう趣旨の条約でございます。
○羽田野委員 終わります。
○高橋委員長 これにて質疑は終了いたしました。 —————————————
○高橋委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決いたします。 民事訴訟手続に関する条約等の実施に伴う民事訴訟手続の特例等に関する法律案に賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕
○高橋委員長 起立総員。よって、本案は、原案のとおり可決いたしました。(拍手) おはかりいたします。 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○高橋委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。 ————————————— 〔報告書は附録に掲載〕 —————————————
○高橋委員長 次回は、来たる二十八日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。 午前十一時九分散会