地方行政委員会 第23号
- 発言数
- 104 件
- 登壇者
- 13 名
- 会派数
- 5
- 開催日
- 1970/05/07
会議録
○菅委員長 これより会議を開きます。 航空機内で行なわれた犯罪その他ある種の行為に関する条約第十三条の規定の実施に関する法律案を議題とし、質疑を行ないます。 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。綿貫民輔君。
○綿貫委員 今回の「よど号」のハイジャック事件をめぐりまして三つの法案が出ておりまして、すでに航空機の強取等の処罰に関する法律案は四月二十八日に衆議院を通っておりますし、航空法の一部を改正する法律案も運輸委員会で質疑を終わっております。きょうは外務省もお呼びしましたが、都合で出られないということでございます。各委員会でいろいろと質問があったと思いますが、今回の処置をめぐりまして、いわゆる行政の縦割りの欠陥というものが非常に大きく出ておると思います。そういう意味で、また委員会で同じ質問かというような形が繰り返されるということは、わが国の行政執行上の欠陥がそのまま放置されるというふうにも私考えまして、重ねて各省の御出席を要求したわけでございます。問題は、第十三条の規定の実施に関する問題をめぐって質疑をするわけでございますが、そういう点で各省とも関連ということで十分皆さんにお聞きいただきたい、こういうわけでございます。 外務省がお見えになっておりませんが、東京条約というものが今日までなぜ批准されなかったかということは、これは非常に重要な問題だと思います。日本には乗っ取りはあり得ない、あるいは条約に不備、欠陥がある、批准に伴う国内法の改正を検討中であるというようなことがおもな理由になっておったようでございます。しかも外務大臣すら、昨年のニクソン演説で初めて東京条約というものがあったんだということに気がつかれたというような、全くお粗末な事実もあるわけでございます。すでに世界じゅうではこの一年間に四十件以上のハイジャック事件があるというようなことを考えますと、今日までとられてまいりましたわが国の行政の対策というものは、非常に大きな問題を残しておると私は考える次第でございます。これについては、ほんとうは外務大臣にお聞きすればいいのでありますが、横割りの行政という面から、皆さん方に強くこの点を御認識願いたいと思うわけでございます。 なお、非同盟国あるいは紛争国に行った場合どうなる、あるいは政治的犯人というものの規定について、近代国際法におきましては、政治的犯人は本国の引き渡し要求があってもこれを引き渡さなくてもいいというような慣習法があるようでございます。わが国ではどの範囲が政治的犯罪人なのか、どの程度が亡命者なのか、こういう点についてひとつ見解をお聞きしたいと思うわけであります。
○高松政府委員 政治的犯罪人の不引き渡し、引き渡しをしないということは、一応国際法上の原則であるというふうに考えております。逃亡犯罪人引渡法においても、政治的犯罪人は引き渡しの対象にならないという規定を設けております。その場合の政治的犯罪についてはいろいろ議論が分かれているわけでございますけれども、いわゆる純粋の政治犯罪、たとえば内乱とか反逆というふうな純粋な政治的秩序にかかわる犯罪、こういうものについては慣行上あるいは学説上もおおむね引き渡しを行なわないというのが通説でございます。また、いわゆる相対的政治犯罪といわれるもの、政治的な秩序の侵害に関連して普通犯罪が行なわれる、こういう場合につきましてもおおむね引き渡しを行なわないというのが例のようでございますけれども、各国の取り扱いもまちまちなようでございまして、こういう相対的な政治犯罪のあるものについては引き渡しを行なうことができるというふうな取り扱いも一部あるようでございます。そういう意味で、結局引き渡しの請求を受けた国の判断にかかわる問題でございまして、そういう相対的政治犯罪の場合には、いろんな事情をしんしゃくいたしまして、そうしてこれをそのつどケース・バイ・ケースに判断してまいるということに相なろうかと思います。
○綿貫委員 一九五一年に亡命者の地位に関する条約というのができ上がりまして、世界で五十四カ国がこれに加入いたしておりますが、わが国はこれに加入をしていないのでございますが、この理由についてお聞きいたしたいと思います。
○高松政府委員 一九五一年の難民の地位に関する条約についてわが国が加入していない理由をお尋ねでございますが、これについては、私どもどういう理由で加入してないのかよく存じておりません。
○綿貫委員 いずれにいたしましてもこの問題は、国内で犯罪者あるいは国外で犯罪者であった者が亡命をすることによって、それが一つの亡命者という名前に置きかわる。いわゆる犯罪者が他国へ行った場合に一つの保護を受けるというような形で、その責任の範囲というものが非常にあいまいになるというふうに考えるわけでありまして、この問題は、どの範囲が政治的犯罪人なのか、あるいはどの程度が亡命者なのか、これは国際的な基準もあると思いますが、わが国においてやはり判然としておくということは非常に重要なことだと考えるわけであります。今後この点について十分お考えおきいただきたいというふうに考える次第でございます。 国連の専門機関でICAOといわれております国際民間航空機関というのでハイジャックの防止条約の検討をいましておるようでございますが、この内容とか見通しについてお知りであれば、ひとつお聞かせ願いたいと思ったのですが、これは警察のほうでお答え願えますか。
○高松政府委員 直接の所管は外務省でございまして、私どもそう詳しいことを承っているわけでございませんが、私どもの承知している範囲でお答え申し上げます。 現在いわゆるハイジャッキング防止条約はまだ草案の段階でございますが、この条約はいわば今度批准を求めるために提出いたしておりますいわゆる東京条約を補完する目的で、現在草案の作成準備を行なっている。本年十二月へーグで開催される予定の外交会議において採択される、こういう運びになっているように聞いております。 この内容は、いわば東京条約の不十分な点を補正する。たとえば乗っ取り犯人が飛行機からおり、あるいは着陸国当局に引き渡された後の訴追、あるいは関係国への引き渡しについての具体的な規定を求める、あるいは裁判権を航空機の登録国及び着陸国の双方に認める。それから一定の条件のもとにハイジャッキングを行なった犯罪者を引き渡すか、あるいは引き渡しを行なわない場合には、その国は犯人を必ず起訴し処罰する。つまり、双方の国の法制上の問題から、ハイジャッキングの犯人が処罰を免れるようなことにならないようにするというふうなところに、最も根本的なねらいがあるようでございます。
○綿貫委員 これは世界的な動きでございますので、わが国においてもその動向について十分な関心を持っていただきたいというふうに考えるわけでございます。 次に、この十三条の引き渡し規定の実施につきまして、犯人の受け取りというのは警察官または入国警備官ということになっておるわけでございますが、空港内の警察権の問題に関連いたしまして、命令指揮系統というものはどういうふうになるんでしょうか、ちょっとお伺いいたしたい。
○高松政府委員 空港内につきましても警察権の行使ができることは当然でございます。それで、一般的な警察権の行使につきましては警察がその任に当たる。それから出入国管理の関係につきましては入国警備官がこれに当たるということでございまして、双方の問の指揮命令関係はございません。
○綿貫委員 四月六日付の日経新聞に川島警備局長の対談が載っておりますが、この中でその辺が非常にあいまいなように私は受け取ったのでございます。しかもまた今回の「よど号」の事件にいたしましても、警察、日航、空港、こういう管理者の問で非常に意見の不統一があったように一般に受け取られております。これは事実かどうかわかりませんが、私のほうもある程度そういうふうに受け取っておるわけでございます。 そういう点で、日ごろから、たとえば空港の警備員が制服の警官を職務質問したということがこの間新聞に載っておりました。そういうような一つのなわ張り争いみたいものがあるように受け取るわけであります。したがって、ただいま指揮系統がないというお答えでございましたが、やはり指揮系統が私はあるべきだと思う。ないがために非常に混乱を起こしておる。この点について、特に警察側は犯罪ということを中心にして考える場合には、その主導権を握っていくべきだ、そういうふうに私は考えるのでございますが、第二条に特に再び乗り込むことを防止する行為ということが規定されておりますが、この判断あるいは行動、これについて警備官、警察官、どなたがこれをおとりになるのか、これはあわせてお聞きいたしたいと思います。
○高松政府委員 法案第二条の精神につきましては、警察官も警備官も双方ができる、こういうことでございます。
○綿貫委員 警備官と警察官との関連についてはあまりはっきりおっしゃりたくないように私は見受けますので、あまり深くは申し上げません。しかし、この面についてはやはり私は行政の欠陥が出ておるというふうに強く感ずるわけでありまして、これは事実があったなかったということはもちろんでございますが、一つの今後の対策として十分お考えいただくべき問題だと私は考えますので、どうか御留意を願いたいと思うわけであります。 また第三条に、今回の法案で警察官の拘束権を認めております。しかし、逃亡犯罪人引渡法の二十二条、二十三条におきましては、東京高検の拘禁停止条項というものがあるわけでございまして、これとの関連についてはどういうふうにお考えなのか、お聞きいたしたいと思います。
○高松政府委員 第三条の抑留につきましては、これは逃亡犯罪人の引き渡し手続の一つの前段階であるというふうに考えております。それで、機長から引き渡しを受けました重罪容疑者につきましては、その所在を明らかに、確実に担保するために、身柄の拘束を行なう。その問に逃亡犯罪人引き渡しの要求のあるものが参れば、そうして逃亡犯罪人引渡法の手続に従って手続が進められまして、そしてこれを引き渡すというふうに日本政府で決定してまいれば、その後は逃亡犯罪人引渡法に基づく拘禁という手続に移っていく。そのための時間がそれまでに若干かかりますので、それまでの問の前段階の措置として、この身柄の拘束を考える、こういうことでございます。
○綿貫委員 この三条の規定の拘束でございますが、この第二項の規定で拘束を続けられなくなったとき、このときに入国警備官に引き渡すということになっておりますが、入国警備官は、これの引き渡しを受けた場合に、どういうふうに処置をされるのか、これについてお伺いをいたしたいと思います。
○伊藤説明員 法務省の入管警備課長の伊藤でございます。 警察で拘束しましたものを入国管理官に引き渡していただく具体的な扱いにつきましては、この法案の検討の段階で警察御当局といろいろ協議を重ねまして、大体羽田でおろされたものであれば、羽田で引き渡しを受けるというぐあいに、一応お話し合いがついておるわけでございます。そうしますと、羽田で引き渡されました重要犯罪人は、入管令の関係では、外国から羽田へおり立ったちょうどそのような状態になろうかと思われるわけであります。したがいまして、その者がさらに外国へ旅行を続けるということでありますと、そのまま旅行を続けさせるということになろうかと思います。またその者が本邦に上陸を希望するということで上陸申請をいたしますと、これまた入管令にのっとりまして慎重に審査をしまして、上陸の許否をきめるということになろうかと思います。
○綿貫委員 その容疑者を警備官に引き渡したあとで、この警備官はこれまた機長に戻すのでしょう。
○伊藤説明員 必ずしも機長には戻しません。本人がさらに自分の意思と費用で旅を続けるということでございますと、別の便で出発させる。それからわが国に上陸申請すれば、そこで上陸の許否を審査して、上陸を認めるということになりますと、一般の外国人と同様に上陸させることになりましょうし、上陸させるのが好ましくないということでございますと、そこで上陸を拒否しまして、外国へ行っていただくということになろうかと思います。
○綿貫委員 ただいま法務省と警察庁とよく打ち合わせをするというようなお話もございましたけれども、この法案そのものは犯罪あるいはそれに類する行為をした者を対象にし、前提にしてつくられるわけでありますが、警察として、こういうものの犯罪者を拘束し、そしてそれを予備調査して一つの結論を得るまで追及するというのが本筋だと思うのですが、それが時間が来たからこれは引き渡してしまうんだというようなことについて、これはあまりにも私はざる法じゃないかというふうに考えるのですが、これについてどういうお考えか、お聞きしたいと思います。
○高松政府委員 この法案の対象にしておりますものは、日本の刑法の適用されるもの、あるいは国外犯につきましても、日本の刑法の適用があり、日本の裁判権が行使される事件につきましては、当然刑事訴訟法の手続で入ってまいります。ところが、たとえば外国の航空機の中で日本の領域、領空に達する前に、公海の上その他で外国人が犯罪を行なったというふうな場合には、日本の法律、日本の刑法の適用はないことになります。だから、日本からいえば、刑法的にいえば、犯罪でないと申しますか、そういう形のものになってまいりますが、そういうものについても一つの飛行機の航空の安全を確保し、あるいは国際的な司法共助という面から、そういう点についても身柄を拘束して予備審査をやり、相手方から犯罪人の引き渡しの要求があれば、必要なものはそれに応じて身柄の引き渡しをやる、こういうものを考えているわけであります。したがいまして、そういうものについての手続をこの法律で定めているわけでございますので、時間の制約につきましても、七十二時間という時間が、あるいはもっと長くあれば、それは長いにこしたことはないと思いますけれども、ただ一つの行政手続でございますけれども、身柄の拘束につきましては、そう長期間というものを考えにくい。それで、外国からの連絡あるいは身柄の引き渡しに必要な何らかの意思表示がされることに要する時間を一つ考える。それからもう一つは、国内法的に令状なしに身柄の拘束ができる、たとえば事の性質からいって、刑事訴訟法的に申せば、現行犯に非常に近い性質のものでございますが、その場合の最大の拘束時間が七十二時間というのが現在の法制でございますので、それらを勘案して七十二時間、こういうことにきめたような次第でございます。
○綿貫委員 何かこうむずかしい説明でございましたが、ひとつ実際に実行する場合に、やはり犯罪を憎むという精神に徹してやっていただかないと、何か逃亡者とか、政治的亡命者とかいう名前がつくと、その犯罪の影が薄らいでいくような感覚でおやりになっては私は困ると思うわけでございまして、特に国際問題がからんでまいりますと、責任の所在があいまいになってまいります。これは外務省の問題だとか、あるいは法務省、これは警察だ、これは運輸省だ、こういうことがあり得るわけでございまして、特に警察の第一線に立つ皆さん方は、罪を憎むということを主眼にして、ぜひひとつこの法律の執行に当たっていただきたいということを私は言いたかったわけであります。 最後に、これは法律以前の問題になるかと思いますが、乗っ取り防止の立場から、事件の直後に運輸省からこれは各局長が各空港に電話をいたし、その後四月六日局長通達で、不審物件の輸送拒否の励行、あるいは警察等関係当局との連絡協調体制の確立、あるいはまた構内における監視用のテレビの設置などを通違いたしておるわけでございますが、警察庁としてはどういう対策をお立てになったでしょうか、お伺いいたしたいと思います。
○川島(広)政府委員 ただいまお話がございました運輸省の通達につきましても、警察庁と両者で慎重に検討を加えまして出された次第でございます。それに先立ちまして、警察庁といたしましては、四月の一日に全国の都道府県警察に対しまして通達を流しました。 問題は、御案内のとおりに、この種の犯罪の最大の防止策と申しますのは、事前にこのような犯行の企図を察知いたしますことが何より大事でございますので、そのような意味合いにおいて、情報収集の強化について指示をいたしました。さらにまた、水ぎわと申しますか、空港そのものにつきましては、現在も全国に五十八の空港がございますが、これらの空港につきましては、全部について総員三百六十名の制私服の警察官を配置いたしました。人権上の配慮を十分に加えながら、乗客の方々の自主的な協力のもとに、危険物の機内への搬入防止のために適切な措置をとるように指示をいたした次第でございます。
○綿貫委員 私どもことしの予算審議の段階で、警察庁関係で五千人の警察官の増員というものを審議いたしましたが、そのときの名目としては、万博の警備あるいは交通戦争に対する要員というようなことを伺っておったわけでありますが、おそらくこの空港の治安対策というもので相当の警官がまた増員されるだろうと思います。これらの問題についてもどのようにお考えか、お聞きしたいと思います。今後ともあり得る問題ですから、こういうことで遠慮をされる必要はないのでありまして、やはり治安は未然に防止するということが何よりも肝要でございます。今後さらにそういう警察官の増員態勢というものが必要であるならば、堂々と要求されてしかるべきだと考えるわけであります。 なお、今回の「よど号」事件が非常にめでたしの結論を得たために、まあよかったという考えと同時に、この問題が、のど元過ぎれば熱さ忘れるでございまして、安易に考える方向に行きはしないかということを非常におそれるものであります。今後ともあり得る問題であり、しかもその第一線に立たれるのは警察官である。二度とこういうことがないように、しかも今回は山村新治郎氏の身がわりによって、この事態が円満に収拾されたということを強くお考えいただかないといかぬわけであります。今後とも身がわりで何でも解決がつくんだというようなことは必ずしも言えないわけであります。 そこで、今回は運輸大臣はじめ山村次官が非常に活躍をされましたが、きょうは荒木国務大臣もおいででございますが、重大事件が起こると、いつも大臣が辞表を出そうとか、あるいはあやまられるというような、一片のことで片づけられる傾向がいままでありました。そういうことが繰り返されておりますが、今回のハイジャック事件がもしも不幸な事態におちいって、あるいはだれか死亡者が出るとか、あるいは乗客が帰ってこないとかというような事態があったとしたならば、これは内閣の問題にも関することでございますが、大臣はその場合に、これは運輸省の問題だからということでお片づけになるつもりであるのかどうか。おそらく腹の中で何か覚悟をきめておられたと思いますが、その点についてひとつお伺いしたいと思います。
○荒木国務大臣 率直に申して、事前に情報をキャッチして未然に防止し得なかったことは、アウトであると思います。政治的には大いに責任を感じますが、ハッピーエンドに終わったということによって、死一等を減ぜられたものと心得ます。さりとてお話のごとく、無事におさまったからこれでいいんだ、やれやれということで済ますべきではなくて、今後同じような事件は断じて起こさないという腹がまえのもとに、万全の措置を講ずる。責任を感じておる次第であります。
○綿貫委員 赤軍派の九人の中で、七人までがいわゆるブラックリストに載っておったという事態でありながら、今回こういう事件が起こったということは、やはり治安対策上非常に大きな問題を投げかけたと思います。この点について、今後十分なる対策をお立ていただきたいと同時に、冒頭に申し上げましたように、いろいろ予期しない事態が起こった場合に、いわゆる縦割り行政というものの欠陥がすぐ出てくるというのが、今日の大きな問題だと私は考えます。その場合にもすぐ対処できるような横割りの関係、しかもそういう犯罪関係については、警察が私はリーダーシップを握るべきだというふうに考えるわけでありまして、そこで協議をするとか、あるいは時間をかせぐというようなことは許されない問題だと思うわけであります。その覚悟をひとつ、大臣は特に勇気のある方ですから、そういう体制をお考えいただきたいということを強く要望申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。
○菅委員長 山本弥之助君。
○山本(弥)委員 今回の日航機「よど号」強奪事件は、国民に大きな衝撃を与えたわけでありますが、この種の事件の重大性にかんがみまして、急拠いわゆる東京条約の承認が国会に求められ、また、これに関連いたしまして、特殊犯罪としての刑法の特別立法、それから条約締結に関連いたしましての航空法の一部改正、さらに本委員会に上程されております十三条の規定の実施に関する法律というのが提案されておるわけでありますが、私どもも条約をはじめといたしまして、三法律案につきましては賛成をいたすものでありますが、この機会に、過般の「よど号」事件等に関連いたしまして、二、三の質問をいたしたいと思います。 まず第一点といたしましては、今日の航空機は、輸送機関といたしまして非常な発達をとげておるわけでありまして、多数の乗客を乗せたジャンボの実現等、重要な輸送機関、ことに国際的な輸送機関として今後ますます発達をするものであろうと思うのであります。それに関連いたしまして、欧米諸外国におきましては、過般の「よど号」のような航空機内の悪質事案も激増しておるという状況にあると聞いておるわけであります。こういった、すでに諸外国において航空機内における犯罪ということがふえてまいっておるということに関連いたしまして、当然私は、警察庁におかれましてもそれらの情報を集め、またこれが対策ということにつきまして、すでに検討を加えてきておられるものと思うのであります。すでに関係委員会におきましていろいろ御答弁がなされておるとは思うのでありますが、この機会にあらためまして諸外国におきますこれらの事件の発生の状況、あるいは犯罪者の犯行の動機の類型、あるいは犯人の処罰が可能になっておるかどうか、あるいは犯人の引き渡しはどういうふうに行なわれているか、それらの問題。さらには第三番目には、それら事案における、発生した場合の旅客の安全がほとんど保持されておるのかどうか、あるいは旅客に対して事故が起きたのかどうか、それから旅客の安全の保持の状況。さらには、当然警察といたしましては重要な問題であるわけでありますが、これら激増する航空機内の犯罪に対する諸外国における対策の状況。この四点につきまして警察庁のほうから、長官でも局長でもけっこうでございますので、御答弁願いたい。
○高松政府委員 航空機が非常に発達してまいりまして、それに伴っていろいろな犯罪が起こってくる。ハイジャッキングというふうなきわめて特殊な犯罪も最近は頻発をしておるというふうなことで、外国の各国におきましても、いろいろな対策を考え、いろいろな措置を検討しておるようでございます。たとえば法制の面では、アメリカ、アルゼンチン、オーストラリア、メキシコ、イタリアというふうな国では、国内法上ハイジャッキングを犯罪と規定するというふうな法制をとっておるようでございますし、また一般的な刑事法令によって処罰しているという国もあるようでございます。それからオランダでも、ハイジャッキング防止のための単独立法を今度国会に提出するというふうな話もございます。 それから技術面におきましては、航空機の構造あるいは設備というふうな面の改善の研究がそれぞれ進められております。ただ、こういう空港での治安対策あるいは空港での防止対策それから航空機の構造、設備の問題というふうなものは、各国ではわりあいに機密事項ということに取り扱われておりまして、その詳細は必ずしも明らかでございません。ICPOという国際刑事警察機構という会議がございまして、日本もこれに参加しているわけでございますが、これにおきましても、一九六九年のメキシコにおける総会におきましても、この問題は一つの委員会を設けて取り上げられました。日本からもこれに参加いたしておりますが、これもこの内容自身はひとつ機密事項ということで取り扱うというふうなことに申し合わせができているような状況でございます。 各国とも非常に関心が強い。そしていろいろな方法を考えてきてまいっておりますけれども、これは絶対有効であるという方策はなかなかないようでございます。それで、旅客の身元なり手荷物あるいは貨物のチェックを厳重にやる、あるいは空港への警察官の配置を強化する、あるいは空港内のパトロールを強化する、また航空機内の点検を実施するというふうなことをさまざまに考えておりますし、ややとっぴなようでございますけれども、たとえば乗客の行動を観察して、あらかじめ準備している性癖一覧といいますか、癖の一覧みたいなリストをその係が持っておりまして、それでチェックして、疑わしい人に対しては金属探知器によって武器の携行を検査するというふうなことを考えておるようなところもあるようでございます。いろいろさまざまの方法を考えておりまして、私どももできるだけそういうふうな状況についての情報を入手いたしまして、これを参考といたして施策を進めてまいりたいと思っております。 それから犯罪の発生状況でございますが、過去十年間の発生状況、これは主としてアメリカの統計からとったものでございますけれども、全部で百四十六件ございます。そのうちいわゆる乗っ取りが百三十七件、それから爆破とか通常襲撃というものが九件あるという数字になっております。乗っ取り百三十七件のうち、既遂が百十一件、未遂が二十六件ということでございます。 それで、一九六一年には大体十件、六二年二件、六三年二件、六四年二件、六五年三件、六大年四件、六七年六件、こういう数字でまいりまして、一九六八年になって実に三十二件、六九年が六十九件、本年が三月末現在で七件、こういう統計上の数字になっております。 このハイジャッキングの実態の詳細についでは、実はまとまった十分な外国の資料がございません。ただ、先ほど申し上げましたICPOが、一九六三年一月一日から一九六九年三月までのものを分析したものがございます。それによりますと、未遂も含めまして四十五件のうちで、成功した比率は三十四件で七五%、失敗した比率が十一件、二四・五%ということでございます。三分の一が失敗をしている。 それから、ハイジャッキングされた航空機の着陸先は、成功した三十四件のうち三十件がキューバに着陸しております。アルジェリアニ件、パリ一件、その他一件、こういう数字が出ております。 それから、ハイジャッカーの犯人の人数からいきますと、二人組、三人組、四人組というのがございますが、一番多いのは単独犯でございまして三十六件、七割は単独犯であるという数字になっております。 犯行の動機から申しますと、いわゆる政治的汁動機によるものが二十九件、六四%、そのほかに裁判からのがれることを目的とする、つまり犯人が逃げるということを目的とする、あるいは脱走兵というふうなものがやったのは八件、一七%、精神錯乱者というのは五件、一一%という数字になっております。 使用した武器も、外国の例でございまして、ピストル、ライフル、機関銃あるいは手投げ弾、爆発物というふうなものがそれぞれあげられている。 こういうような状況でございます。
○山本(弥)委員 四項目お聞きいたしたわけでありますが、百四十六件ですか、いろいろこれはあると思いますが、そのうち成功率も多いようでありますが、成功した場合に、旅客の安全というのはほとんど守られておるわけですね。
○高松政府委員 大体キューバに行っているのは、この数の上からいきますと非常に多いわけであります。これらにつきましては、大体旅客の安全は守られているというふうに聞いております。一件だけ、どこかで、撃ち合いをいたしまして、損傷があったという事件がございました。
○山本(弥)委員 ただいまの御答弁で、いままでの実例、やはり増加の傾向にあると同時に、取り締まりの点につきまして、対策につきましても非常にむずかしい点がある。しかもそれが極秘になっておるというようなことも、これらを防止するということにつきましては、やはり対策の手の内がわかるということにつきましては、今後の激増の傾向にあるものを防止するということがなかなか困難になるということであるわけでありますが、その点は私ども十分了承するわけでありますが、十分それらの点も適当な機会には——いまお聞きいたしますと、犯人も政治的犯人が多い、しかもキューバとかアルゼンチン、そう遠くではなくて、パリが一件というお話がありましたけれども、近くに政治犯として逃亡するというような実態が多いようでありますが、しかもほとんど旅客の安全はそのことによって守られておるということ等を考えまして、今後警察庁の措置も、私は、それらの判断を十分考慮の中に置くべきである。しかも対策等も、機会があればその実態を調査においでになりまして、これは人権にも関連をいたしますので、いたずらに取り締まりを強化するということで私ども目的に到達できるものではないと考えるわけでありますが、それらの実態もそれとなく把握をなさる必要がある。そしてそれらを参考に、今後再びこういう事案が発生することに対する万全の対策——長官は万全の対策をとるというふうな御答弁でありますが、私はその点深く突っ込みませんが、人権を尊重することとのかね合いでの取り締まりということは、警察にとりまして、今後航空機が利用されればされるほど最も至難な問題になろうかと思います。対策の点につきまして私ども深く突っ込む意思はございませんが、その辺十分慎重に、警察本来の使命をどの程度の限界で考えるべきかということについての御・配慮は今後ともおとりを願いたいと考えておるわけであります。ことにそういう近距離のハイジャッキングにつきましては、旅客の安全がほとんど保たれているということ等も、今後警察が対処する上の有力な参考になるのではないか、かように考えております。その点十分御検討を願いたいということだけを要望しておきたいと思います。 それから次に、ただいまお話を承りますと、外国の例におきましては、単独犯が多いようでありますが、今回の「よど号」の乗っ取り事件につきましては、赤軍派九名でございましたか、九名の過激学生により行なわれたということは明らかになっておるわけであります。事前の調査、特に赤軍派に至りましてはマン・ツー・マンというような濃密な事前情報収集、捜査等の行なわれておる間隙を縫われたという事態にあるわけであります。私どももむずかしいとは思いますが、せっかくそれだけ慎重に、しかも綿密な事前情報収集等をおやりになっておきながら、九名もがことに日本刀、拳銃、爆発物その他を持って実行したということは、情報収集にも欠陥があったのではないか、あるいは赤軍派が壊滅した状態ということについての情報収集に甘さがあったのではないかというふうに考えられますが、その後この事件が発生いたしまして、これら赤軍派の過激学生の動向等につきましては、犯人がいないわけでありますけれども、ある程度捜査を進められたというふうに聞いておるわけであります。その後の捜査によりましてどの程度まで内容等が明らかになったか、あるいは資金も相当かかっておると思いますが、資金の関係とか、ことに日本刀その他につきましては、今日銃砲刀剣類所持等取締法等によりまして、暴力団等に関連しましてこのほうの取り締まりも十分おやりになっておったのではなかろうかと思うのであります。多量の武器の入手経路あるいは情報収集について、特に赤軍派に対する努力をなすっておられたにもかかわらず、こういう九人の犯人に集団的に欠陥をつかれたという外国にも例のないような事件につきまして、一応その後調査を進められたと思う。これは詳しくお聞きしたいでありますけれども、いろいろ今後の捜査上の関係もあろうかと思いますので、お話し願える程度でけっこうでありますので、その後の経過をお聞かせ願いたいと思います。
○川島(広)政府委員 ただいまお尋ねがございました乗っ取り犯人の九名につきましては、氏名その他につきましてもほぼ特定できた段階でございます。特にいまお話のございました凶器の入手経路、方法等につきましては、残念ながら犯人が外地におりますので、捜査が十分行き届いておりません。ただ、これら赤軍派の昨秋の一連の事犯がございまして、特に御案内のとおり、十一月五日の大菩薩峠の事件などの捜査の過程で得ました情報等によれば、おそらく大学その他の研究室で爆弾等をつくりましたことはほぼ明らかでございまして、たとえば弘前大学でございますとか、東京薬科大学でございますとか、これらの研究室においてつくられたことは明瞭でございまして、おそらくそのような個所でつくられたものと考えている次第でございます。 なお、赤軍派についてマンツーマンというお話がございましたが、昨年の十一月五日の大菩薩峠の事件でほぼ幹部全員の逮捕ができましたので、あの段階では、お話もございましたように、ほぼ壊滅的な結果になったわけでございますけれども、その後十一月、十二月、一月にかけまして彼らは全国的に活発なオルグ活動を展開いたしました。本年の一月十六日に都内の全電通会館で政治集会が行なわれたわけでございますが、これにはほぼ二百名の赤軍派が集まりました。そうしますと、これが発足しましたのが昨年の九月の四日で、その当時ほぼ二百名の勢力であったわけでございまして、本年の一月中ごろの段階でほぼ原状への回復を見たということでございます。次いで四月一日に、彼らの言っております革命戦線の大会を日比谷の公会堂で開くということに相なりましたので、三月一日からきびしい行動確認の体制に入っておったわけでございまして、その過程で三月十九日に赤軍派議長といわれます塩見及び最高幹部であります前田、これらを都内において逮捕することができたわけでございます。はなはだ弁解がましくはございますけれども、もう一歩というところで実はこのような事件が引き起こされたわけでございまして、はなはだ残念に存ずるわけでございます。 その後もこれらの幹部その他は、残留幹部で組織の再建に目下努力している段階でございまして、先般の四・二八その他の集会でもそれぞれ高校生等を加えまして数十名の者がデモ等に参加しておる。しかしながら、彼らは本年の秋にいわゆる武装蜂起をたくらむということを広言いたしておりますので、今後ともこれらの赤軍派を含めました過激集団の学生等に対して十分な警戒体制身とってまいりたいと考えている次第でございます。
○山本(弥)委員 警察の機能としまして、警備あるいは保安、司法というふうに分担があるわけでありますが、それぞれの機能が有機的に結びついていかなければならぬ。あまり警備に重点を置くと、警備に関連するたとえば銃砲刀剣類の所持の取り締まりといった問題が形式的に流れる。そういう取り締まりについて十分な能力のない警察官が配置されるというふうな、いわば機動隊的な行動ということについての重点——そっちのほうが手薄になるというよりも、本来そういう仕事をやる過程におきまして、不法所持あるいは秘密の場所において爆発物の製造等が堂々と行なわれておる。大学の研究室というようなお話がありましたが、それらのものが警察の情報の中に早く入ってくるためには、警察全体の網の目というものがただ単に治安警備ということだけでなく張りめぐらされなければならぬ。銃砲刀剣類の不法所持のごときは、右翼あるいは新左翼その他に結びつく問題であるわけでありまして、そういった保安行政、司法行政等、有機的な——できるだけそういう不法所持は許さないんだ、経路は直ちにわかってくるんだという程度にまで今後配慮すべきではないか、それらの有機的な結びつきについて警察の検討を行なうべきではないか、こういうふうに考えておるわけでありますが、それらの点についても御配慮願っておりますかどうか。今度の事件を契機としまして、これは警備だ、これは単に指導だということではなくて、そういった本来の使命が完全に機能を発揮できるような体制につきましても、十分都道府県警察のほうに御配慮になっておるのかどうか、その辺のことをお聞きしたいと思います。
○後藤田政府委員 先ほどの御質問にもございましたように、各省行政につきましても縦割り行政の弊害について御意見がございましたが、警察の内部の仕事もやはり次第次第に縦割り、専門化の傾向ということは否定しがたい。また当然一つの方向としてそうならざるを得ない状況にあると私は思います。そこで問題は、御質問にあるそういった場合のそれぞれの部門別の有機的な結合、この点に欠陥を出さないように警察全体の力をうまく使っていく、これは何よりも必要なことだ、私はこう考えております。ことに、ややもすると組織が大きくなればなるほど、横の連絡というものは非常にむずかしくなります。そういうような意味合いから、私どもとしても従来からそういう点を十分配慮いたしておるつもりでございますけれども、今回のような事件もあり、またお説のように、銃砲、刀剣類あるいは爆発物といえば専管は保安部関係、防犯部関係の仕事になっております。そこで、とかく警備との関連がうまくいかないんじゃないか、こういうふうな点もございますので、そういった点については、今後とも一そう私どもとしては十分配慮してまいりたい、こう考えております。
○山本(弥)委員 いろいろ詳しいことは、私ども情報を新聞、ラジオその他によりまして、この前の事件については承知いたしたわけであります。委員会の質問等にもあったようでありますが、諸外国の発生状況に関連いたしまして、日航関係者、日航会社あるいは警察との間に、こういう事件が発生した場合に、いわば機長はどうするのかというようなことについての打ち合わせ等はすでにあったわけでございますか。今回の事件発生以前において、ハイジャッキングの発生状況にかんがみて、こういう事例が発生した場合にはどうするのかというようなことについての処置等すでに打ち合わせが十分できておったのかどうか、お聞かせ願います。
○川島(広)政府委員 今回のハイジャッキングが起こります前に、関係当局との協議があったかというお尋ねでございますが、一般論といたしましては、運輸省の航空局とは常時連絡をとっておったわけでございます。特に昨年の総理訪米阻止闘争というのがございました。あの際に、この種の情報が現実にございましたので、当時運輸省その他と種々協議を遂げて、羽田空港の一部閉鎖ということも実は行なったわけでございます。そのような際に、一般論としていろいろ話し合ったことはございますけれども、詰めて、万一起こった場合どうするかというようなことについてまでは十分な協議は遂げておりません。
○山本(弥)委員 やはりそういう問題について詰めておくべきではなかったか。ことに日航会社におきましては、機長に対してすでに、そういう問題が発生した場合にはどうすべきであるという、いわば外国の例に従っての指示がなされておったというふうに聞いておりますが、それは事実でございますか。
○川島(広)政府委員 運輸省からのお話によりますれば、日航その他の関係航空会社ではいわゆるマニュアルというものをつくって、機長、関係者にそれぞれ配付してあるというふうにお聞きをいたしております。
○山本(弥)委員 そのマニュアルの内容はどうだったのですか。
○川島(広)政府委員 いま正確には記憶いたしておりませんが、万が一の場合、ハイジャッキングのような事犯が起こりました場合には、できる限り乗客に対して刺激的なことは行なわないというふうなことが書いてあったように記憶いたしております。
○山本(弥)委員 事前に打ち合わせもしておらぬし、事後、機長に対する指示ですか、オペレーションズマニュアルというような指示が行なわれておったということの内容も記憶がはっきりしない。何か言いたくないようなお話で、私は深くつきません。これはもうすでに論議されておると思うのであります。しかし、こういう事件が起きたあと、どういう指示がなされておったかということにつきましては、警備局長としましてもそれらの点は、事後においてもその指示が生きておる限りにおいては、はっきりわからないという御答弁でなくて、答弁しなくてもけっこうですが、どういう指示がなされておるということは十分把握すべきではないでしょうか。そしてそれらの指示の出されておることに対して警察が今後どう対処するかということにつきまして、やはり発生した場合の判断を的確に行なうということが必要ではないかと思いますので、今後こういう事件が発生することを私は極力防止を願いたいと思いますけれども、そういった重要な機長に対する指示、おそらく乗客の安全ということを考えた指示であり、あるいは航空中の安全ということに重点を置いての機長に対する権限の付与、指示ということであったと思うのですが、それに警察がどう対処するかということが重要ではなかろうか。しかも先ほどは、すでに発生した百数十件の前例等につきましては成功率がほとんど七〇%以上。そういうことからいいますと、やはり乗客の安全が第一である。今後こういう問題が起きた場合に、どういうコースでどういうふうなハイジャッキング、犯人はどういうことを意図しておるかということもそれぞれ想定できるわけであります。それは警察だけの問題ではなく、政府としてそれにどう対処するかということは、今後十分検討すべき大きな問題だと私は思うのであります。少なくともそういう指示が出されておるというようなことは、指示が出されておること自体は私は当然だと思うのであります。すでに毎年増高しておるわけでありますから、それらは警察も十分承知の上で、警察としてどう対処するかということをはかるべきではないかと思いますので、中途半端にしないで、警察庁としては腹がまえあるいは対策を考えておくべきであるということだけを私は申し上げておきます。 ただ、この前の事件に関連いたしまして、警察庁の指示四点だとか二点だとか、いろいろこの前の合同審査会においても論議されたと思うのでありますが、私はかりに二点にしぼりましても、乗客の安全なり救出を第一義として、そうしてそのためにあとう限り板付から発進させないためにあらゆる手を尽くせということを警備局長から、長官なりあるいは委員長の了解のもとに、福岡の県警本部長に指示されたということであります。これを受けたほうは、そういった重要な国際空港を持っておる、あるいはそれに近い空港を持っておる本部長としては、当然事前にそういうときの処置というものは考えるべきであると思うのであります。この一件二つの指示を警察として——指示そのものはそうありたい、そうあるべきであるというふうには私は了承いたしますけれども、現に旅客を人質にして目的を到達しようという犯人から判断いたしますと、乗客の安全こそあらゆる方法を通じて飛行機を発進させないということは、現地の受けた警察の本部長としては、おそらく適切な措置ができないのではないか。これをするためにこれこれの措置をすべきであるという具体的な指示がない限りは、これはきわめてむずかしい問題でありまして、乗客の安全な救出ということは、犯人が了承しない限りは航空機の中から出してもらえないでしょうし、犯人はあくまでも目的を到達しようとしている。その安全をはかるためには、あるいは発進もやむを得ないという事態、これが遺憾ながら成切率を高くしていると思うのでありますけれども、それらは今後重ねて、時間の関係がございますので、私はいろいろこまかく質問する意思はございませんが、こういう方面を今後十分検討なさいまして、現地の本部長が矛盾するような、どうこの二つの問題に対処するか措置に困るというような指示は今後再検討する必要がある。そうでないと、この二つの問題を解決するために、指示の重点である旅客の安全な救出を第一義とするということが、今回はうまくいったわけでありますけれども、万一これが失われるということであれは——これは諸外国の例からいきますと、ほとんど安全に乗客が救出されている。機内で撃ち合いをするとかいうような被害がなくて、ほとんど安全に乗客が救出されている。問題は、それらの人間を乗せないということが、今後の対策の重点になろうかと思うのでありますが、万一そういう事態が起こった場合に、警察がこれをどう見るか、どう指示するかということにつきましては、私はさらに同じような議論を蒸し返すことは避けたいと思いますけれども、警察としては、それらの腹がまえを事前に関係方面とも十分相談をしていただいて、より高い次元でこれに対処するという配慮、外交問題もございましょうし、あるいはその他の方法もあろうかと思うのであります。そういうことによって、諸外国で旅客の安全を第一義としている問題にはずれるような、警察だけの視野からの問題の処理のしかたというのは、一つ間違えば非常に危険な状態になるのではないか、私はかように感じまして、この点今後こういう事案の取り扱いにつきまして十分検討もし御配慮も願い、事前に十分そういう場合の現地の警察の動き得る態勢−臨機応変ということはあり得るだろうと思いますけれども、基本的な問題は、矛盾して動きがとれない、それを熱心にやればやるほど問題がかえって悪い状態にならないような配慮の検討が必要ではないかと思います。幸いに板付の場合は、時間をかけたことによりまして婦女子がおろされることができた。もう少し多くおろすことができればよかったわけでしょうけれども、それらのかね合いにつきましての今後の対策というものについての御配慮をお願いしたいと存じております。 なお、今後の対策等につきましては、万全の措置を委員長さんとしてもいろいろおとりになっているということで、私は詳しく申し上げませんが、おそらく国際線では、日本の場合は該当の事案が少ないのではないか。これはいろいろ関税の手続その他の関係もありましょうし、問題はバスと同じような国内線の問題だと思うのです。これらの対策につきましても、いずれまた私どもの考えを申し述べる機会もあろうかと思いますけれども、その詳細につきましては、先ほど来私自身が申し上げておりますように、深く突っ込むことを避けたいと思いますが、その点は警察自体としてどう対処していくか、しかも人権を尊重しながらどう対処すべきか、非常にむずかしい問題ではありますが、十分御検討願いたいということを申し上げておきたいと存じます。 なお、私の気になりますことは、週刊誌等にも出ておりましたが、「隠れた演出者、米第五空軍」というような見出しで出ておること等につきましても、警察のハイジャッキングに対する事案からだいぶ高次の次元の問題が今日の「よど号」事件ではあったようであります。これらも警察の生命と財産を守るという立場からもどう対処するかということは、十分政治に振り回されないような警察自体の対策ということをお考え置き願いたいということを申し上げるにとどめたいと存じます。 なお、先ほど御報告の中で、飛行機の構造と設備というようなお話があったわけでありますが、これは今後万一の場合の事故を防止し、機長の権限で犯人に対する拘束をするという場合には、非常に参考になることではなかろうか、かように考えるわけであります。これらの点についても検討する必要があろうかと思います。 なお、法案につきましては、別にもうとりたてて申し上げるようなこともないわけでありますが、条約に加盟することによって、とりあえず犯人の引き渡しを受けるその権限、義務等につきましての簡単な法律のようであります。このいわゆる東京条約に加盟しておる加盟国で国内法を制定しておるのでありましょうが、ほとんど大部分がこういったわが国の法律と同じような法律をつくっておられるのかどうか、その点伺いたい。
○高松政府委員 外国の東京条約実施に関しましてどのような方策をとっておるかということにつきまして、外務省を通じていろいろ調査してみました。まちまちでございます。それから国の法律と条約の関係自身に対する考え方がたいへん違っております。たとえばカナダその他におきましては、条約が批准されれば当然国内法と同じ拘束力を持つ。これに抵触する国内法は当然無効であるというような考え方を持っております。したがって、何ら国内法的な手続は要らないんだ、こういう考え方の国もあるようでございます。それから特にこれに対する新しい立法を計画しておるという国は、北欧三国が新しい立法を企画中であるというふうに聞いております。その他の国につきましては、大体現在の国内法の警察の権限あるいは国内法の手続、そういうものによって大体まかなっていけるという見解をとっておるところが大部分のようでございます。
○山本(弥)委員 この第三条に「拘束することができる。」ということになっておりますが、これは「逃亡犯罪人引渡法の規定による引渡しに係る犯罪に該当する行為をした」というふうに、犯罪人引渡法に関連した拘束というふうな規定のしかたになっておるわけであります。これはもしわが国の刑法あるいは今回のハイジャッキングに対するわが国の特別刑法、そういったものに該当するというふうな場合には、直ちにこの拘束ではなくて、いわゆる刑事訴訟手続によって捜査あるいは取り調べを進めるということになるわけでございますね。
○高松政府委員 そのとおりでございます。刑事訴訟法の手続によって逮捕し、取り調べをやるということに相なります。
○山本(弥)委員 次に、この第四条の予備調査でありますけれども、これはやはり同じような事例ですね。直ちに刑事訴訟手続によりまして、取り調べあるいは逮捕その他を開始できるという状態なら、そのほうに直ちにやるわけでございますか、あるいは予備調査というものは、一応前提になるわけでございましょうか。これは逃亡犯罪人引渡法に該当する場合にだけこういった予備調査というものが始まるのか、あるいは条約に基づく予備調査というものは、わが国の刑法あるいは刑法の特別立法によって取り調べが進め得るということではなくて、予備調査の段階を省略して、直ちにそれらの手続を開始することができるということになるわけでございますか、どうでしょうか。
○高松政府委員 条約によります予備調査は、直ちに予備調査をやって、その結果を相手方に報告をする、それによって相手方の国が、あるいは関係の国が引き渡しを要求するかどうかをきめる、こういう考え方のものでございます。したがいまして、刑事訴訟法の手続によることのできます犯罪、日本の裁判権の行使ができる犯罪につきましては、われわれはその取り調べをしたことをそのままその内容を伝えてやればいいことになります。それから、日本の裁判権の及ばない犯罪についても、この条約上の義務として、予備調査をやって、それを向こうへ伝えてやる、こういうことになると思います。
○菅委員長 桑名義治君。
○桑名委員 今回のハイジャックに関する件につきましては、合同審査等でいろいろと論議が重ねられておりますけれども、ここで、法案に基づくというよりも、むしろそれに付随した問題として、今回のハイジャックの問題について多少質問をしておきたいと思います。 先ほどからの答弁にもございましたように、一九六八年からこのハイジャックの問題が世界的に見た場合には急激にふえております。そういった問題に対処して当然警察当局としても、このハイジャックに対する対策を練っておった、このように考えたいわけでございます。もちろんこの問題は、いわゆる航空法等の関係もございますし、国内法の改正の問題もいろいろとございますけれども、警察当局としてのこのハイジャックに対するいわゆる考え方なり対策がどのように練られておられたかという、この問題が大きな問題になるんじゃないか、このように思うわけですが、その点がまず第一点。 さらに今回のこの問題は、赤軍派のいわゆる強行手段であった、このようになっておりますが、この赤軍派の調査につきましては、過日からいろいろと新聞紙上にも出ておりましたが、昨年のいわゆる大菩薩峠の事件の前まではマン・ツー・マンシステムで徹底調査をやってきた。その結果がいわゆる大菩薩峠の大量逮捕につながったんだと、このようにいわれているわけでございます。その後この問題が惹起したわけでございますが、三月三十一日の大臣の答弁の中で、抜かったということばがあったわけでございます。前々から大菩薩峠までのような調査が行なわれておったとするならば、おそらくこの問題が未然に防げていたんではなかろうかという推測もできるわけでございます。そういった意味で、大臣の抜かったという答弁の中身はどういうお気持ちで言われたのか、その点についてまず伺っておきたいと思います。
○荒木国務大臣 先刻もお答え申し上げましたように、どんな理由がありましょうとも、事前に情報をキャッチして、これを押さえることができなかった。それが残念しごくという意味合いでございます。
○桑名委員 前段の、ハイジャックが世界的に一九六八年から増高しておりますが、それに対して警察当局として打った対策があれば、お知らせ願いたいと思います。
○高松政府委員 ハイジャッキングの問題は、先ほども申し上げましたが、外国においてここ二、三年来かなり真剣に取り上げられ、それらのことにつきましてはICPOの会議でも特別委員会みたいなものができまして、その対策をやったり、それにわれわれも入ったりいたしまして、私どもとしてもそういう実情についてはかなり承知をいたしておりました。ただ、何ぶんにもこういう全く目新しい型の犯罪、そういうものにつきまして、たいへん対策がむずかしいものであるというふうなことはいろいろ話を聞いておりましたし、また東京条約なりあるいは今度の来たるべきハイジャッキングの防止条約なりの問題というふうなものも承知をいたしておりましたけれども、ただ、これが起こった場合の具体的な対策という点につきましては、率直に申し上げまして、これについての十分な措置はとっていなかった、これはまことに申しわけないことに存じます。私どもは、頭の中でいろいろなことは承知しておりましたけれども、それを直接自分ではだで感じて、こういう問題についての取り組みというものを十分にやることができなかったという点は、まことに申しわけないことに存じておりますが、それが実情でございます。
○桑名委員 このハイジャックの問題につきましては、各航空会社においては非常に敏感に反応しまして、内部規定でもハイジャックに対する項目ができ上って、その対策が練られておったわけでございます。しかしながら、警察当局並びに運輸省関係のほうにおいては、ただ指示を流す程度の問題であった、このように考えるわけでございます。 〔委員長退席、砂田委員長代理着席〕 運輸省としましても、いままでのハイジャックの問題については傍観的態度でなかったか、こういうふうに考えられるわけであります。運輸省としてはこの問題に対してどのような手を打っておられるか、お伺いしておきたいと思います。
○范説明員 事件が起きまして、直ちに四月六日、航空局長から関係の航空会社に局長通達を流しました。そのおもな内容は、危険人物あるいは危険物、これらを飛行機内に持ち込ませないように、それから空港においては警察と十分密接な協力体制をとって、危険人物、危険物が機内に持ち込まれないように格段の注意をすべきであるというのがおもな内容でございます。それから、これから関係機関、関係会社とも問題を詰めて措置をとろうとしております事項といたしましては、運送約款についても、たとえば虚偽申告などの場合には搭乗を拒否するという運送約款の改正をする、あるいは危険物運搬の場合、危険物は運搬してよろしい場合もありますので、その場合の機内における保管場所を規定すること、それから空港ターミナルにおいては、搭乗客と送迎人とをできるだけ分離する方式を考える。それから凶器発見のための凶器発見機を設置して凶器の発見につとめる。それから構内監視用のテレビ等を設置して、不穏分子、不審な人間を発見する。さらに航空会社による警備専門職の配置を行なうというようなことは、これから行なおうとしておる事項でございます。それから、さらに航空機自体におきましては、操縦室と乗客室とを分離することがハイジャック防止の面に役立つということから、操縦室ドアの施錠を考えております。さらに操縦室から客室を監視できるように監視窓を設け、これは防弾ガラスにして十分監視ができるようにする方策を考えております。さらに客室にテレビカメラを設けるというようなことをいま考えておる段階でございます。
○桑名委員 次に、赤軍派の今後の問題に対してお伺いをしておきたいと思いますが、小林法務大臣が三月三十一日に、赤軍派に対して破防法適用の容疑団体として認定できるかどうか検討する、こういうふうに発言をされているわけでございますが、この問題に対して、現段階における法務省の考え方、また、これが適用された場合に直接の指揮をとられる大臣の見解を伺っておきたいと思います。
○荒木国務大臣 破防法による解散などの団体活動の規制に関しましては、法務大臣の所掌するところでありまして、私からかれこれ申し上げる筋合いではないと思います。しかしながら、警察は、破防法の罰則適用については、すでに昨年の四・二八沖繩闘争に際して、革命的共産主義者同盟幹部二名及び共産主義者同盟幹部三名を同法第四十条違反として検挙し、すでに起訴済みとなっておるところであります。今後においても、警察としては、破防法の罰則を適用すべき事態に際しては、従来どおり厳正にその運用を行なっていく所存であります。繰り返し申し上げますが、団体の規制につきましては、法務大臣の所掌するものでありますから、言及することを避けたいと思います。
○伊藤説明員 破防法の関係は、御承知のとおり、公安庁の所管でございまして、入管は所管しておりませんので、御了承いただきたいと思います。
○桑名委員 次に移りたいと思います。 今回のこの問題が起こりましたときに、私ちょうど板付空港におったわけでございますが、その方策なりあるいはその動態なりをこの目でつぶさに見たわけでございます。そのときに、たしか十一時ごろだったと思いますが、地元の有吉警察本部長の記者会見がございました。そのときの記者会見のお話の中では、飛行機を外国に飛ばしたならばこの問題の解決が非常に困難になるので、極力この時点で押えたい、解決をはかりたい、こういう意味合いの発言があったわけでございます。ところが、それとほぼ同時刻にテレビで運輸次官の発言がございまして、事態が非常に緊迫をしてきたために、北鮮へ送り込む腹をきめたらしい、こういう意味合いの放映があったわけでございます。私は、ちょうどその場に居合わせまして、奇異に感じたわけでございますが、このような重大問題になれば、当然警察、運輸省あるいは地元の航空会社といった三者の綿密な連絡の上に立った対策が行なわれていかなければならないわけでございますが、そういうそごを来たしたという事柄は、内部の連絡が密に行なわれていなかったのではなかろうか、こういうふうに思うわけでございますが、この点について、これは各省のセクトが災いしたのか、それとも緊密な連絡が足りなかったのか、その点についての見解を伺っておきたいと思います。
○川島(広)政府委員 現地で有吉本部長が記者会見をいたしましたのは、正確には十二時十五分でございます。記者会見で発表いたしましたのは、いまお尋ねがございましたのとほぼ同趣旨でございます。ただ、運輸次官のお話がございましたが、これについて私も承知いたしておりませんけれども、これらの今回の措置につきましては、事前に福岡の現地の運輸省航空局の空港事務所長、それから日航の所長、三者で、十一時十五分から何度も連絡会議を開きまして、ともかく乗客の安全な救出をはかることが第一義である、そのためにはあとう限りのあらゆる手段を尽くしてその間説得に当たるということ、そういうことで、あとう限り手段を尽くして発進させないということにつきましては三者で意見が完全に一致をいたしました。事柄は警察だけで運べる内容でもございませんし、事柄は密室の中で行なわれているわけでございますから、もちろん機長はじめ機内の乗客等も皆目わからない、そういうような状況でございますので、三者で種々連絡協議を遂げて記者会見に臨んだ次第でございまして、三者の間にいささかもその間におきまして意見のそごはなかった、こういうふうに本部長からも聞いております。
○桑名委員 実はあの飛行機が飛び立ったときも、私はちょうど空港長の部屋にいたわけでございますけれども、空港長も——もちろんあれは一切の指令を無視して飛び立ったわけでございますが、いろいろあの中においては問題がございました。 たとえば、まず飛行場をクロスするために自衛隊の飛行機を滑走路にパンクをさせた。あるいはその次の時点の中では、飛行機の外部から、移動したときに赤ランプをつけるようにしよう。その次には、バルブをあけよう。あるいはまた、女子あるいは老人をおろす場合には、そのときに警察官の方がいわゆる医者のかっこうをして、そして時期を見て乗り込もう。こういうような対策をしたわけでございます。それと同時に、最終的にはまた飛行機が移動をしましたが、自動車を飛行場の前にクロスさせまして、そして発進をふさいだ、こういうふうな手だてをやったわけでございますが、あの場合、空港長の部屋におった私の聞いた話では、空港長はあくまでもクロスしたあの自動車は最後まで取り除かないという約束だった、ところがいつの問にか取り除いてしまった、こういうように、非常に連絡の悪い問題が現地では起こったわけです。 そういった問題を加味しながら私はいまの質問をしたわけでございますが、いずれにしても、この種の問題は初めての問題でもございますし、突発的な問題でもございますし、現地も非常に混乱をしておりましたので、多少の手違いがあったかと思いますが、この種の問題については今後も緊密な連絡を取り合った上での対策を練っていただきたい、これは要望でございます。 次の問題に移りますが、板付空港における対策の中で、当局の対策がすべて犯人に知られていた、こういうふうにいわれているわけでございますし、実際に私もその場に居合わせたわけでございますが、そういうふうな感を非常に深くしたわけでございます。その後いろいろな新聞紙上でもその問題については非常に反省の材料として報道をされているわけでございます。ここに新聞の切り抜きを持ってきておりますけれども、「突発で忘れた?〃配慮〃福岡県警本部長カンカン」「「ラジオだ!」最高指揮官の有吉県警本部長は、ホオをこわばらせた。「機内に受信機がある。ラジオでこちらの警備態勢はつつ抜けだ」」こういうふうな新聞記事もございます。まだ詳しく載っているわけでございますが、そういうふうに、この種の問題につきましては、いわゆる手の行き届いた配慮が必要であります。 そういった意味で、私は、きょうここで取り上げる問題は、報道関係の方々との話し合いにおけるいわゆる協力要請が必要であったのではないか、その点に多少の落ち度があったのではなかろうか、このように思うわけでございますが、この点についての御答弁をお願いをしておきたいと思います。
○川島(広)政府委員 まさしくお話がございましたとおりでございまして、今回のような突発の場合に、人命の安全を第一に考えます場合、機内の犯人にわれわれのやっております措置の内容がわかってしまう、手のうちがわかってしまうということでは、いま申しましたように、人命の安全を考えました場合にはなはだ危険でございます。そういう意味合いで、警察庁の本庁の記者クラブに対しましても、また現地有吉本部長を中心とします幹部の側でも、それぞれあとう限り新聞報道機関に対しましても自主的な報道の規制についてお考え願うように、実はお願いをした経緯がございます。ただ、当時、率直に申しまして、実はテレビであれば差しつかえなかろうではないかという話もマスコミ機関のほうからございましたが、ともかくも今後の問題を考えます場合には、そういう意味の報道機関の自主的な規制と申しましょうか、協力ということが望ましいことは、お話しのとおり、きわめて明白でございますので、先般来関係機関との間でもそのことについていろいろと打ち合わせを遂げている次第でございます。
○桑名委員 その問題につきまして、「放送文化」の五月号の中にも対談が載っておりますが、この対談の中に「今回は、犯人が乗客の命にかかわる可能性のある行動を起しやすい要素になるニュースをなるべく押えたということだと私は思います。ただこれは一社だけが押えても何にもならないので、この種のものがやはり今後の問題として報道機関自体が、それから当然情報を流す警察なり政府なりというもの、そういう一環の中で考えるべきことだと思います。」こういうようにマスコミ自体も大きな反省をしているわけでございますし、この種の人命にかかわる重大な問題のときには、そういう報道関係の方々にもいわゆる強力な協力要請が必要だ、このように反省をしたわけでございますが、さらに一そうこの点にも今後留意をしていただきたいと思うわけでございます。 次の問題でございますが、今後この問題につきまして、ハイジャック防止をするという立場につきまして、新聞紙上によりましても、空港における事前調査を厳重にするように、これは首相も発言をしているわけでございますが、この事前調査という問題になってきますと、人権問題が非常にからんで種々問題を起こすおそれがあるのじゃないか、このように思うわけでございますが、その点についての警察当局としての配慮はどのようになっておるか、伺っておきたいと思います。
○川島(広)政府委員 この種の事案の防止のためには、申すまでもございませんが、ともかく事前にいわゆる犯行の企図を察知するということが何よりも大事でございまして、いわゆる防止が何よりも今後の関心事でございます。 さらにまた、いまお話しのございましたように、空港その他でいわゆる犯人等に凶器その他危険物を機内に持ち込ませない、そのための措置。これはお尋ねございましたように、人権問題とのかかわりも非常にございますので、警察側といたしましても、あくまでも人権を尊重するというたてまえを絶対にくずすことなく、いわゆる乗客その他の方々の自発的な御協力というものを前提にして努力してまいりたい、かように思っております。
○桑名委員 いずれにしましても、この種の問題は二度とあってはならない問題でございます。しかしながら、現在の世界の動向から見た場合に、これは予測できないところに突発的に起こる問題でございますが、警察当局といたしましても、もちろん事前のいわゆる防御は当然ながら、空港における取り締まり等についても、人権問題とからんで非常にむずかしいと思いますが、その点も十二分に配慮しながら、この種の問題が二度と起こらないように最大の努力を続けていただくことを要望しまして、私の質問を終わります。
○砂田委員長代理 門司亮君。
○門司委員 この問題についてごく簡単に質問をして、法案の審議に対する私の態度をきめたいと思いますが、この事件が起こりましたときには、ちょうど私自身は国内におりませんで、モナコで行なわれた列国議会同盟に出席をいたしておりました。ところが、ちょうど列国議会同盟の会議にこれが一つの案件として取り上げられておりまして、いわゆる東京条約の批准を各国は急ぐべきであるということの趣旨を決議しようという会議の最中にこのニュースが入って参りまして、私ども非常に驚いたのであります。そういういきさつでありまして、したがって、私はその当時の国内の情勢等については十分に了承しておりません。おりませんから、きょうはその点は同僚各位の御質問で大体了承することといたしまして、ごく簡単にこういう問題についてこういう法律が出された——この条約の文面からいいますと、条約の十一条を受けた十三条、この十三条を受けたこの法律だ、こういう順序になっているかと私は思います。その中で私が非常に遺憾に考えておりますのは、御承知のように、一九六九年の十二月にワシントンで十六日から十九日の間、この問題について十三カ国の代表が協議をした事実がある。これには日本も参加いたしております。そうしてこの会議は、主としてこの国際法について早く批准をすべきであるということが大体の会議の趣旨であったと考えております。ところが、その後今日までこれがなおざりにされておったということ。なるほど去年の十二月の十六日からでありまするから、日にちは非常に少ないのだが、しかし、少なくとも国会が開かれることは大体おわかりのことであって、したがって、この事件が起こったから急遽あわてて東京条約を批准する、それに基づいてこういう法律をこしらえるということは、私は日本政府の行き方としてはいささか手落ちじゃないかと思うのですがね。これは、外務省の諸君もおいでにならないようでありまするしするから、直接航空機関係に関係のある運輸省の方から——おそらくこの会議に出席されたのも私は運輸省の諸君ではないかと考えるし、あるいは外務省の諸君が行っておったかもしれないが、その間の事情をこの際もう少し明らかにして、やはり政府の責任は責任としての態度を国民の前に明らかにする必要があると思うのです。この点について何かお話しが願えるなら、運輸省からでもどこからでもいいのでありますが、ひとつ御答弁を願いたいと思います。 —————————————
○范説明員 ━━━━━━━━━━━━━━━━
○門司委員 飛行機は非常に早くなったのですからね。事件もやはり早くなる。昔のプロペラで動いておったときの飛行機とは全然違いますからね。私はこの事件が起こって、きょうここで審議するにあたって、さっき申し上げましたように事件のときにはいなかったけれども、ずっと考えて、経過を調べてみますると、そういう経過が中から出てくるのであります。実はいま非常に遺憾に考えておりまして、いまの御答弁で満足するわけには、これは実際国民もいかないと思いますよ。私は国民の前に率直にあやまられたほうがいいと思う。これでは不十分だというなら、この法律を出さなければいいじゃないか。不十分でも出さなければならない事態に追い込まれておるということである。この原因は警察当局や何かにいろいろあろうと思いますが、しかし、条約自体についてはもう少し忠実であってしかるべきであると思う。もう少しいい条約ができるまで待っているというのでは、いつまで待っているんだかわからない。そういう不親切な、人を何かこうばかにするということばを使うと少し悪いかもしれませんけれども、あまり国民にぴんとこない答弁だけはこの機会にひとつ避けてもらいたいと思います。この事件はそれだけなまやさしい事件ではないと私は思っているのです。こういう事件がたびたび起こってみなさい、えらいことになってしまう。にもかかわらず、そういうふうに、この条約は十分でないから十分な条約ができるまで見守っているんだという不親切なことでは、東京条約自身というものはどうにもならぬ。もしあなたのほうでそういうことを言うなら、経過がずっと書いてありますから、これから私が朗読いたしましょうか。どういう経過を今日までたどってきたか、この条約が六三年にできてから今日までの問。だから、いまのような答弁でなくして、もう少し親切な答弁をこの際要求いたしておきます。これは会議録に残りますので、私の文句の言いっぱなしではぐあいが悪いから……。
○范説明員 ━━━━━━━━━━━━━━━━
○門司委員 どうもおかしな答弁ですね。そういうことを言われますと少し話がこんがらがってきますが、それなら、そういう完全に近いような条約が一体いつできて、国民がほんとうに納得のするようなことが、条約がいつできるのか。責任をもって答弁してもらいたい。
○范説明員 ━━━━━━━━━━━━━━━━
○門司委員 これはせっかく外務委員会のほうで、批准がきょう本会議でもきまるという段取りになっておるときに、まぜっ返すようで悪いのですけれども、いまのような答弁だと、大臣にでも来てもらって責任ある答弁をやはり聞きませんと、この条約はたいしたことはないんだ、これに基づいてこしらえた法律は、したがってたいしたことはないということになりますと、国民が不安でしょうがない。もう少しはっきりした答弁を要求するために、委員長、大臣にここへ出てきてもらおうじゃありませんか。やはりこの種の事件について国民の安心のできるような態度を政府はとるべきだ。
○范説明員 ━━━━━━━━━━━━━━━━
○門司委員 そういう答弁をされますと、ほんとうに国会自身が何か非常に侮辱されて愚弄されているようだ。比較的効果の少ないものであって、いままで見送っておった、事件が起こったからやむを得ずこれはやるんだということなら、どうにもなりはせぬ。これは私ぐずるわけでもなければ、文句を言うわけでもありませんけれども、こういう条約のできます経過、しかもこれは六三年にできている条約ですね。そうしてそれがいままでずっと批准してなかったということも、先ほどの質問者もその点は質問されておったようであります、政府の怠慢じゃないかということを聞かれておったようでございます。その上に、しかも、去年の十二月にはワシントンに行って、十三カ国の代表でしょう、これは名前もここの記録には書いてありますよ。これは読んでもいいですが、そのとき参加された国、そのときの発言というようなものはここに書いたものがあります。ごく簡単な記録でありますが、記録であります。だから、こういうものを見ますと、やはり何としても日本の今日のこの種の問題に対して国民が非常に心配しておるときの政府の責任者としては、あまりにも答弁が、軽率ということばを使えばどうかと思いますけれども、課長限りでできなければできないと言われてしかるべきであって、何か国会でほんとうに真剣に審議をし、国民もまた、こういう条約に批准をして法律のできることにかなり大きな期待を持っていると思うのです。要するに、事件の事後の処理として国会がこういう処置をとったんだということで、かなり私は、国会の態度というもの、政府の態度というものが、国民にこの種の事件に対する安心感を与える一つの大きなポイントだと思う。しかし、それが何かどうでもいいような条約であり、しかたがないからこしらえたんだというようなことになりますと、このままこれを見のがすわけにはまいらぬということになろうかと思います。私は、委員長に対してもはなはだ気の毒ですけれども、大臣の出てくるまで一応質問を保留さしていただきたいと思います。
○范説明員 門司先生の先ほどの御質問に対しましては、私の御答弁はいろいろ不当な点がございましたので、取り消しをお願い申し上げたいと思います。
○荒木国務大臣 この条約を批准するのがこれまでおくれたのはどういう理由かというお尋ねに対して、私からお答え申し上げます。 この条約は、航空機内の犯罪と安全危害行為を抑制し、秩序を維持することに関する多数国問国際条約としては唯一のものであり、本問題を国際協力によって解決していく上で有意義な条約であると認められたため、わが国としては、すでに一九六三年この条約が策定された際にこれに署名し、その後各国の批准状況を考慮しつつ関係国内法を整備の上批准すべく検討していたものであります。しかして、この条約の承認を求めて国会に提出するのが今日までおくれていたのはまことに遺憾でありますが、この条約は昨年十二月に発効を見たことでもあり、また今回の日航機の事件を契機としてハイジャッキングの防止にもかなり役立つものであるので、一刻も早く締約国となるため、今回急いで批准の手続をとることとした次第であります。
○門司委員 いまのは大臣の答弁ですけれども、先ほどの問題にも少し関連するようですけれども、その当時の会議録をちょっと見てみますると、十三カ国の代表はおのおの「東京条約の早期かつ広範な批准の必要性のみならず、新条約案を至急に発効せしめる必要をも表明した。」こう書いているわけですね。にもかかわらずやってないのですが、私はその点を聞いたのです。こういう問題はできるだけ早く批准をしてもらいたいと思う。これ以上私、この問題では追及いたしません。 その次に聞いておきたいと思いますことは、民間航空機に対しまする一つの問題として危惧せられるのは、日本にはあるいはないかとも思いますが、武器の輸送というようなことがありはしないかという一つの懸念であります。それからもう一つは、民間航空機には、武器とは名がつかなくても、ある種の爆発物あるいはその他のものは絶対に送ってはならない、これに積んではならないという規定はございませんので、ある種のものがこれに搭載される危険は私はあり得ると思う。それらの問題に対して、どこでそれをチェックして、どういう形で安全性を保っておるのか。もしその点がおわかりなら、ひとつ御答弁を願いたいと思います。
○范説明員 航空法の第八十六条に爆発物等の輸送禁止という規定がございまして、「爆発性又は易燃性を有する物件その他人に危害を与え、又は他の物件を損傷するおそれのある物件で運輸省令で定めるものは、航空機で輸送してはならない。」続いて第二項に、「何人も、前項の物件を航空機内に持ち込んではならない。」という規定がございます。これを受けまして、会社におきましては、運送約款で持ち込み制限の規定を設けております。
○門司委員 これは汽車もみんな同じことで、危険物を積み込んでもいいということはまずないのです。私がさっき聞きましたのは、これはどこでチェックしているかということ、ただそこだけの、航空会社の規定だけでチェックしているのですか。それとも警察官その他が立ち会ってやっていますか。
○范説明員 運送約款で、航空会社は同意を求めてその荷物の開披を求めることができるということになっておりまして、疑いが持たれて、これに開披を求められてこれを拒否したというような場合には、輸送を引き受けないという仕組みになっております。 〔砂田委員長代理退席、委員長着席〕
○門司委員 もう私の受け持ち時間はあまりありませんので、長く話しているわけにまいりません。この問題の法案の内容にちょっと触れておきたいと思いますけれども、この法案の内容で一つだけ聞いておきたいと思いますことは、少年犯罪に対してはどういう処置をするのですか。七十二時間抑留することはできるということにもなっておりまするが、特別の取り扱いを何かするようになっていますか、それを全部ひっくるめた一般法でやるということですか。これは子供がもしおった場合の、犯罪者であった場合の取り扱いはどうなりますか。
○高松政府委員 日本の刑事法令の適用にならない犯罪、この法律の対象としたものは、刑事法令の適用にならない犯罪でございます。したがって、外国の少年が公海の上で、航空機の中で殺人をやったという場合が、いま先生御指摘になったような事犯になると思います。この場合は、成人たると少年たるとは問わず、同じ手続でこの法律の三条による拘束を行なう、こういうことになります。
○門司委員 これは明確になったのでありますが、その次に、これはこの法律を全部読めばいろいろわかるのでありますけれども、ただ、法律用語として問題になりはしないかと考えられるもの、この理由書の中に書いてあるものでもわからぬのでありますが、「犯罪その他ある種の行為」と書いてありますことは、これは法律の中で明確にしておいたほうがやはりよくはないかと考えるのだが、これはどういうことですか。
○高松政府委員 この条約の第一条のところに、「この条約は、次のものについて適用する。(a)刑法上の犯罪 (b)航空機若しくはその機内の人若しくは財産の安全を害し若しくは害するおそれがある行為(犯罪であるかどうかを問わない。)又は航空機内の秩序及び規律を乱す行為」、こういうものに対してこの条約は適用されるということがございます。これの(b)に当たるものがその「犯罪その他ある種の行為」、こういうことになるわけでございます。
○門司委員 条約はここに書いてありますが、おおよそ問題になるのは、やはり私は「ある種の行為」なんということを書いてあることにいろいろな疑義が出てきますし、法律はできるだけ明確にしておかぬと、国民には実際わからぬのですね。それで、こういうことを書いておくと、一方的の官僚の独裁でものが処置されるという危険性が私は生まれてくると思う。しかも犯罪であろうとなかろうとやられるのだということになると、一体何をやられるのだかわからなくなる。私はあまりこのごろの日本の官僚は信用するわけにいかないのじゃないか。ことに警察権の乱用なんということになると、人権の問題にもすぐ関係してくる。したがって、これらの問題については法案をかりに、かりに通すということはどうかと思いますが、通さなければならぬと思いますが、これが通るといたしましても、もう少し明確に会議録なりなんなりに私は残しておく必要がありはしないか。たとえばこういう犯罪だというようなことぐらいは、やはり説明を求めたほうがいいような気がしますが。
○高松政府委員 この法律案の一条からこの法律案が対象にしておりますことは、その犯罪行為でございます。題名の「その他ある種の行為に関する条約」は、これはこういう条約の名前になっておりますので、このある種の行為については、この法律の対象外である。それでこれらについては機長が飛行機からおろす、降機するということがこの条約の内容になっているわけでございます。したがいまして、この法律の中である種の行為に関する規定、あるいは解釈上、それを入れる必要はないわけでございます。
○門司委員 どうも何だか一向すっきりしないような答弁で、これ以上私は議論することは——これはたとえ条約がそうなっておるからといって、それを受けてそのまま都合のいいところだけそういうふうに直しておりますというような考え方は、私はどうかと思うのですね。実際は国内法に直します場合は、国際法でかなりあいまいなところは——いろいろ条約の関係はあります。それは世界の現在の状態が、やはり国際法ということになりますと、いろいろ国の事情がありますので、条約にはかなり抽象的なもののあることは当然でありまして、これは出てくるのであります。議論する際にも、やはりかなり遠慮をしてしないと、政治的にも、うっかり発言などしていると、えらいことになるという危険性もあるわけであります。したがって、国際条約の中には往々にしてそういうものがあるものでありますが、しかし、それを受けて国内法はかなり明確にしておきませんと、国民がかなり迷惑をする危険があろうかと私は思いますので、お聞きをしたのであります。 それで、これは全然この条約とは別の問題でありますが、ここで聞くことがいいのか悪いかということ、それから、いまおいでになっている方々で判断ができるかどうかということが一つありますけれども、今度の事件に対する犯罪人の引き渡しを要求する意思がありますかありませんか。
○川島(広)政府委員 乗っ取り犯人の九名の者につきましては、目下懸命に捜査を続行しているところでございます。したがって、いずれ捜査が完了いたしますれば、当然のことながら、逮捕状を請求するということに相なろうかと存じます。ただ、お尋ねのございました犯人の引き渡し云々につきましては、北朝鮮側の態度、出方というものも静観しながら、関係の機関において慎重に協議を遂げた上で、そのようなときに相なろうかと存ずる次第であります。
○門司委員 大体、時間が来たようでありますが、この種の犯罪については国民は、さっきから申し上げておりますように、かなり関心を持っておりまするし、不安にかられておりまするので、国内のこういう事犯の起こらないようにするということについては、先ほどからいろいろな御質問があり、さらに御答弁があったようでございますが、起こった後の処置等についてもやはり適切な処置がとられませんと、国民はかなり不安があると同時に、ある意味においては、こうした行為に出る者にある種の自信を与えるような悪い結果が出てきはしないかということを実は私は考えるわけでありまして、この点等については、いまの御答弁でも満足するわけにはまいりませんが、しかし、当局は当局としての態度もあるいはお考えもあろうかと思いますから、その点をひとつ御忠告を申し上げるというほどではございませんが、ひとつ、一応申し上げて、要望いたしまして、私の質問をこれで打ち切りたいと思います。
○菅委員長 青柳盛雄君。
○青柳委員 この法律案について二、三お尋ねいたしたいと思いますが、最初に第一条でございますが、これは「条約第十三条第一項の規定による機長の引き渡す者」というのは、条約第九条第一項の規定に基づいて引き渡しする者の意味でありますけれども、第九条第一項は「機長は、航空機の登録国の刑法上重大な犯罪であると認める行為を当該航空機内で行なったと信ずるに足りる相当な理由がある者を、当該航空機が着陸する領域の属する締約国の権限のある当局に引き渡すことができる。」と規定しております。ところで、条約第九条の一項にいうところの「航空機の登録国の刑法上重大な犯罪」というのは、どのような犯罪をさすのであるか。締約国の刑法は幾つもありまして、その国の特殊性に基づいて規定されておりますから、何が重大な犯罪とされているのか、これを詳しく調査しないとわからないわけです。政府は、この点について、締約国の刑法を調べておられるのかどうか。 なぜこのような質問をするかと申しますと、本法案の第一条は「機長の引き渡す者」は、わが国として当然これを重要容疑者として受け取る義務を負うというたてまえになっております。いま盛んに論ぜられているハイジャックのように、いずれの締約国もおそらく重大な犯罪としているものにつきましては、機長の認定に誤りは少ないかもしれませんけれども、機長が、それほど明白でない犯罪が航空機内で行なわれたのに、これをかってに重大な犯罪であるというふうに即断をして引き渡すという可能性がないとは限らないのであります。そういう場合でも、わが国はその引き渡す者を無条件に引き取らなければならないものなのかどうか。これはわが国の主権にかかわる問題でありますから、明確にしておかなければならないと考えるわけでございます。この点に関し、条約第九条第二項は「機長は、1の規定に基づいて引き渡そうとする者を航空機に乗せたままいずれかの締約国の領域内に着陸する場合には、できる限りすみやかに、可能なときはその着陸の前に、当該締約国の当局に対し、その者を引き渡す意図を有する旨及びその理由を通告する。」と定めておりますので、その通告を受けたわが国といたしましては、その理由が「航空機の登録国の刑法上重大な犯罪であると認める行為を当該航空機内で行なったと信ずるに足りる相当な理由」に該当するかどうかということを、自主的に判断する余地は残されているわけでありますけれども、それにしても、締約国の定める前述の「刑法上重大な犯罪」というのは、具体的にどんなものであるかは詳細に調査しておきませんと、突発的な場合でも、わが国の自主的な判断に誤まりなきを期するということに至らないと思うのであります。もしそういうような調査をしておかないというと、機長の誤った判断、認定にわが国は踊らされて、後日、世間のもの笑いにされないとも限らない、かように考えます。それとも、この一条の規定は、機長の引き渡す者は無条件に引き取る義務があり、わが国の警察官等はこれをそのまま受け取るんだという趣旨のものであるのかどうか、この点をお尋ねいたしたいと思います。
○高松政府委員 九条一項の「刑法上重大な犯罪」が具体的にどういう範囲のものであるかということでございますが、ここにいわれておりますシリアスオフェンスというものについては、これは条約の会議でも、各国ともいろいろ議論があったようであります。それで、これを具体的に定義づけるということは非常に困難である。それで、結局はケース・バイ・ケースで定義づけていくより方法がないというふうなことになったようでございます。 そこで、この法律案の一条によりまして、これを受け取る義務ができるわけでございますが、ただ、三条の身柄の拘束の問題につきましては、これは犯罪人引渡法による引き渡しを当然前提にいたしておりまして、犯罪人引渡法によれば、日本においても、あるいは請求国においても、死刑、無期または長期三年以上の刑に当たるものでなければ犯罪人の引き渡しを行なわないというたてまえになっております。そういう意味では、受け取るにつきましては、やや機長の判断による幅というふうなものが若干考えられますが、拘束につきましては、そういう逃亡犯罪人引渡法の規定がございまして、それに該当する者以外は拘束を行なわない、こういうたてまえになっておりますので、理論上はいろいろ考えられますけれども、実際的な問題としては、一応それで解決できているというふうに考えております。
○青柳委員 いまの御答弁ですと、一応その機長の判断を尊重するといいますか、正しいものと見て引き取ることは引き取っておいて、それから後に三条の規定の適用について考える、そういうふうにも考えられるのでありますけれども、しかし、先ほど申しましたように、あらかじめ着陸以前に可能ならば、着陸するからということとその引き渡す理由を通告してくる。その場合、どの程度理由を明確に知らせるかわかりませんけれども、判断をする余地は当然残されているのじゃないか。だから、いまお話のあった懲役三年以上の刑に当たるような犯罪と思えない犯罪を航空機内で犯したにもかかわらず、これは重大犯罪である、航空機の登録国の刑法からいえばどういうことになっているかわからないけれども、機長はそういうようなときに、各国の重大犯罪という部類がどういうものであるかということは当然調査しておかなければいけないのじゃないか。そのことを私は思うわけであります。 次に、問題の第三条について質問いたしますが、三条一項は、重要容疑者を拘束するためには、その重要容疑者が「逃亡犯罪人引渡法の規定による引渡しに係る犯罪に該当する行為をしたことを疑うに足りる相当な理由があるとき」でなければならないときめております。同法にいうところの「逃亡犯罪人引渡法の規定による引渡しに係る犯罪」という表現は、きわめて法律技術的なものであって、一般の人々には十分理解できにくいと思われるのであります。しかし、それは要するに、逃亡犯罪人引渡法第二条の引き渡しに関する制限規定、すなわち同条各号の一に該当する場合以外の犯罪をさすものというふうに考えられるが、この点はどうなのか、その解釈に誤りがあるかどうかを聞きたいわけでありますが、もしそういう解釈が正しいとすれば、航空機の登録国の刑法上重大な犯罪に該当するものであっても、たとえばそれが政治犯罪であるとき、あるいはそれが日本の領空内で行なわれた場合で、わが国の法令上刑罰を科したり、またはこれを執行することができないと認められるとき、その他であると考えられます。そういうときには拘束できないと考えることができるわけでありますけれども、この解釈についてお尋ねをいたしたいと思います。
○高松政府委員 いま御指摘のとおりでございます。逃亡犯罪人引渡法によって引き渡しのできない犯罪については、第三条の働く余地はございません。したがって、身柄を受け取ったときは、直ちに入国警備官のほうに引き渡しをするということになるわけであります。
○青柳委員 次に、拘束ということばで表現されている法概念でありますけれども、日本の刑事訴訟法には逮捕とかあるいは勾留とかいうことばが使われておりますし、それから逃亡犯罪人引渡法には拘禁とか仮拘禁ということばが使われている。ところで、憲法第三十三条の逮捕に対する保障、つまり「何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が發し、且つ理由となってみる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。」という規定及び憲法第三十四条の抑留、拘禁に対する保障、つまり「何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに辯護人に依頼する権利を與へられなければ、抑留又は拘禁されない。又、何人も、正當な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその辯護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。」という人権保障の基本的な規定との関係、これをどう理解すべきものであるか。刑事訴訟法は、裁判官の発した逮捕令状による逮捕または現行犯逮捕による場合は、逮捕のときから二十四時間あるいは通算して七十二時間は、裁判官の発する勾留状がなくとも被逮捕者を拘禁できることに定められておりますけれども、機長が引き渡そうとする者を引き受けた日本の警察官等は、一体その者を刑事訴訟法にいう現行犯として逮捕したものと考えるのかどうか、それとも緊急逮捕か。いずれにしても令状はありませんから、この警察官等がこれを拘禁する、抑留するその権限が司法官憲の発するものによらないというところに問題がありますので、お尋ねをしたいと思うのであります。
○高松政府委員 日本の刑法の適用のある犯罪、外国の飛行機の中ででも日本の領空において犯罪が行なわれた場合には、当然に刑事訴訟法の手続によって現行犯逮捕あるいは緊急逮捕あるいは通常逮捕という手続に入ってまいります。この法律の対象にいたしておりますのは、そういう日本の刑法でできないもので、そうしてこの条約によって身柄の抑留を義務づけられているもの、こういうものでございます。したがって、これは行政手続ということで考えられているわけでございます。 御指摘の憲法三十二条あるいは三十四条、三十五条、あるいは前にさかのぼりまして三十一条というようなものがございますが、これらの規定は刑事手続に関するもので、行政手続については一応直接の適用はないというふうに考えられております。そういう意味で、ただ三十一条の規定の根本趣旨からいえば、やはり法定の手続によって、刑事手続以外によっても生命、自由の束縛に対しては、やはり法律によらなければこれができないというふうに考えられますので、ここで、その権限規定としてこの法律によってそういう行政手続上の権限を認める、こういう趣旨でございます。
○青柳委員 時間がありませんので、もうちょっとお伺いいたします。 先ほど指摘いたしました憲法三十四条の規定では、拘禁している理由が公開の法廷で示されなければならないということになっております。七十二時間も拘束できるのであれば、この拘禁の理由を本人の要求に基づいて公開の法廷で開示するということが必要でありますけれども、刑事訴訟法には八十二条以下に規定があります。これは裁判官が勾留状を発した後のことでありますけれども、憲法三十四条の規定から見ると、きわめて不徹底なもので、本来七十二時間以内でも拘禁の理由は公開の法廷で示されなければならない。七十二時間が過ぎたころになって、裁判官が勾留令状を発した後に初めて勾留理由開示をするという、全く人権尊重の立場からいえばおくれたやり方であります。これは日本人相手の場合が多いわけでありますが、本件の場合は行政措置だとかなんとかおっしゃいますけれども、人権の自由を拘束することでありますから、憲法の精神からいえば、当然外国人などは人身保護的な措置を受けるであろうということを期待する権利があるわけです。それについて少しもこの法律はきめていない。ただ、引き渡しを受けた者の所属する国籍の出先官憲に連絡をとるという程度のことしかこの条約にはありません。だから、日本の法律とすれば、七十二時間拘束している間に人権保障の規定を設けるべきではないかと思うのですが、これはどうお考えでしょうか。
○高松政府委員 従来から行政手続による身柄の拘束は他にもいろいろ例がございます。たとえば出入国管理令による強制収容あるいは警職法に上る保護、泥酔者の保護、それから伝染病その他の隔離、精神衛生法による入院措置というふうなものは、行政措置として裁判官の令状によらないで身体の自由を拘束するという形をとっているわけでございます。 それから憲法三十四条の勾留理由の開示その他につきましては、一応刑事手続ではございませんので、本条の中には入れてございません。ただ、条約によりまして、関係国、国籍国その他に通知をする、あるいは領事条約に基づいてその当該の領事に通知するという義務は当然あるわけでございますし、それらの事項は、本人にももちろん予備審問にあたってそういうことを告げるわけでございますから、そういうことで実際上は支障がなかろうと思います。 なお、先ほど答弁を落としましたが、「拘束」という文字を使いましたのは、そういう逮捕なりあるいは逃亡犯罪人引渡法による拘禁なり、そういうものとは違った性質のもの、違った行政上の措置としてのものというふうに考えまして、特に目新しい「拘束」ということばを使ったわけでございます。
○青柳委員 もう一点だけ、二、三分で終わりにいたします。 第五条について、入国警備官が引き渡しを受けるということになっておりまして、先ほどのお話では、本人が日本からどこかよそへ行くというのであれば行かせるし、そうでない場合には上陸許否をする。だから、当然上陸拒否をするような御答弁でありましたけれども、これは出入国管理令の第五条の規定に該当する場合にはという意味だろうと思いますけれども、それ以外の根拠が何かあるかどうか、それだけお尋ねいたします。
○伊藤説明員 御指摘のとおりでございまして、五条に該当する場合は拒否をいたします。該当しない場合には上陸を認める、こういうことになろうと思います。
○青柳委員 終わります。
○菅委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。 —————————————
○菅委員長 これより討論を行なうのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。 本案に賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕
○菅委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。 おはかりいたします。ただいま議決いたしました法律案に対する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○菅委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。 ————————————— 〔報告書は附録に掲載〕 —————————————
○菅委員長 次回は、明八日午前十時から理事会、十時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。 午後一時四分散会