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63回国会衆議院1970/05/06

外務委員会 第13号

発言数
334
登壇者
16
会派数
5
開催日
1970/05/06

会議録

田中榮一自由民主党

○田中委員長 これより会議を開きます。  航空機内で行なわれた犯罪その他ある種の行為に関する条約の締結について承認を求めるの件を議題とし審査を進めます。質疑の申し出がありますので、順次これを許します。戸叶里子君。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 ただいま議題になっております条約、一応俗に東京条約といわれております条約につきまして二、三質問をしたいと思います。  第一にお伺いいたしたいのは、この条約で見ますと、航空機の登録国の裁判権とか機長の権限あるいは航空機の不法な奪取等に関してのいろいろな規定がしるされておりますけれども、まあ実際問題として、それではいわゆるハイジャックなどを阻止するには、防ぐにはどうしたらいいかというような予防的なものには直接にはならないのではないか、こういうふうに考えるわけでございますが、この点はどういうふうに解釈していいかどうか、これをまず第一にお伺いしたいと思います。

愛知揆一自由民主党外務大臣

○愛知国務大臣 先般「よど号」事件が起こりましたときに、本会議その他でもお答えいたしたところでございますが、東京条約はハイジャックそのものの防止というようなことについては、これでは十分ではない、こういうふうに考えられるわけでございます。したがいまして、この十二月のへーグで開催を予定されております国際会議で、さらにハイジャックそのものについても有効適切な手が国際的に考えられないかということを主題にして、さらに補完的な目的を達成できるようなよい条約をつくろうということに、国際的に考えられておるわけでございますが、しかし、この東京条約そのものの意義はそれならどこにあるかと申しますと、ハイジャッキングというようなものを国際協力で防止したいという意図が示されている。そういう意味で、ハイジャック防止の第一歩であるというところにそれ相応の意義がある、こういうふうに考えている次第でございます。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 いま、外務大臣も、へーグの国際会議でもっと充実したようなものを考えるということでございましたが、いま、日本として何か、こういうことはぜひともこの会議で入れさせたい——改正させたいとかあるいはこういうことは織り込ませたいとか、そういったふうな具体的な御提案をなさるおつもりがあるかどうか。また、そういうふうなものをお持ちになっていらっしゃるかどうか。これをまずお伺いしたいと思います。

愛知揆一自由民主党外務大臣

○愛知国務大臣 御承知のとおり、ICAOで準備されておりますハイジャックの防止条約の骨子が、大体、日本側といたしましても適切な考え方ではないかと考えております。  そこで、内容的にどういう点であるかという点を概略申し上げますと、一つは、まずハイジャッキングを犯罪として規定するということ。それから、したがってハイジャッキングを行なった者を厳重に処罰することを締約国間で約束をすること。それから、裁判権を航空機の登録国及び着陸国の双方に認めるということ。それから、 ハイジャッキングを行なった犯罪人を、犯罪人引き渡し条約もしくは国内法に基づいて、一定の条件のもとに引き渡すか、または、犯罪人引き渡しを行なわない締約国は犯人を起訴、処罰すべきことを規定するというようなことが、大体この条約案の骨子として相談がまとまりつつある要点でございます。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 その内容は、この条約にわりあいに近い。たとえば、裁判権の問題などは、登録国とそれから着陸国と、一応両方あるようにこの条約では解釈できないですか。これは、私、その辺がよくわからないのですが。

西堀正弘外務省国際連合局長

○西堀政府委員 いま、先生がこの条約と仰せられましたのは東京条約でございますか。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 はい、東京条約でございます。

西堀正弘外務省国際連合局長

○西堀政府委員 東京条約では、航空機が登録されている国に裁判権を認める、こういうことになっております。と申しますのは、日本の場合で申しますと、刑法の一条の二によりまして、日本に登録されている航空機の中で行なわれる犯罪もしくはその他の行為というものは日本で裁判権を持つことになっておりますけれども、国によりましては、全然そういうことを書いてない国がございます。そういたしますると、国外における航空機の中で行なわれた犯罪についてどの国も裁判権を持たないという不合理なことが起こりますので、したがいまして、この条約におきまして、登録国が裁判権を持つ、こういうことを規定したわけでございます。  ハイジャッキングの場合は、まあ、着陸国にもある。いま先生の仰せられましたような東京条約の場合ですと、着陸国は持っておらない、こういうことになるわけでございます。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 そういたしますと、それでは、この条約に入っておらない国と入っている国との関係はどういうことになりましょうか。

西堀正弘外務省国際連合局長

○西堀政府委員 この条約に入らない国につきましては、したがいまして、この条約に基づくところの権利義務関係は全然生じないわけでございます。しかしながら、いま申しましたように、この条約に入っていない国におきましても、大半の国は、国外における自国の航空機の中の犯罪につきましては、これは裁判権を持つというのが多うございますので、その限りにおきましては、この条約に入っておっても入っておらなくても変わりはないわけでございます。しかし、これはあくまで事実上の関係でございまして、この条約に基づくところの権利義務関係では、先ほど申し上げましたように、入っていない国で、しかも国外にある自国の航空機の中での犯罪について裁判管轄権を持たないという国がありましたならば、その点は違ってくるわけでございます。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 いまのような差別がついておりますと、やはりいろいろな問題が今後においても起きるんじゃないか。ことに、今回の「よど号」の事件などを見ましても、この条約に入っておらない国に飛んでいくような場合も起きてきたり、いろいろ、入っておらない国との関係がこの条約だけでは解釈できないような、また触れられないような問題が出てくるんじゃないか、こういうふうに思いますけれども、たとえば今度の国際会議等におきまして、できるだけこの条約にすべての国が入るような方法をお考えになる御意思はないかどうか、これを伺いたいと思います。

愛知揆一自由民主党外務大臣

○愛知国務大臣 その点はまことにごもっともな点でありまして、この種の条約にはあらゆる国が参加することが望ましいし、またその効果を十分期待し得ることになりますから、できるだけ多くの国が参加をするように政府といたしましても努力をいたしたい、かように考えております。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 この中の条文に沿いまして二、三点伺いたいと思いますが、第一条の三項に「着陸の滑走が終止する時まで、飛行中のものとみなす。」ということになっておりますけれども、これは厳格に具体的にいいましてどういうふうなことを意味しているのか、お伺いしたいと思います。

西堀正弘外務省国際連合局長

○西堀政府委員 着陸の場合でございますけれども、この「着陸の滑走が終止する時まで、」と申しますのは、航空機が滑走路に到着いたしまして、そうして、ブレーキをかけるのですか、あるいは逆進するのですか、私存じませんけれども、滑走路の一番最後のところまで来ます、それがこの「滑走が終止する時まで、」でございます。したがいまして、滑走路の端からこちらのほうに——われわれタクシーすると申しますが、あれは入らない。したがいまして、滑走路の最後のところでとまって、それからタクシングして、プロペラは回しておりますけれども、ジェットは噴射しておりますけれども、こちらのほうへ来る、それは入らない。要するに滑走路の最終点でございます。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 いまの御説明で、滑走路の最終点のところまでということがわかったのですけれども、それではずっと、タクシングというのですか、こっちのほうへ来る間のときはどういうふうになるのでしょうか。そこまで一緒におきめになったほうが問題がないんじゃないかと思いますが、そこを抜かされた理由はどういうところに上るのでしょうか。しろうとの考えで、ずっと滑走して飛行機がとまるまでというふうに私どもは解釈をしたいわけなんですけれども、その部分を省かれた理由はどういうところにあるのでしょうか。   〔委員長退席、永田委員長代理着席〕

西堀正弘外務省国際連合局長

○西堀政府委員 いま申しましたように、第一冬に関する限りは滑走路の最後の点まででございます。それから以後のタクシングにつきましては、それぞれの国が国内法でやればいいことであって、条約の関知するところではない、こういう考えからこの規定が設けられたものと存じます。  それからなお、五条の機長の権限でございますけれども、ここにおきましてはその範囲が若干広められておりまして、第五条の二項をお読みいただけばわかりますけれども、その場合におきましては、第一条3の規定にかかわりませず、航空機はそのすべての乗降口が閉ざされたとき、それからを飛行中のものとみなす。と同様に、着陸いたしました場合には、乗降口のいずれか一つが乗客がおりるために開かれるとき、これまでを飛行中とみなす、こういうように機長の権限につきましては、時間の関係でこの条約の適用の範囲は若干広められております。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 そうすると、機長の権限がその間においてもあるからいいというふうに理解してよろしいわけでございますか。

西堀正弘外務省国際連合局長

○西堀政府委員 そのとおりでございます。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 そこで第二に伺いたいことは、二条の中に「刑罰法規のうち政治的性質を有し」というものがあるわけでございますけれども、この政治的性質を有するものに反する犯罪というのは一体どういうものであるかを具体的に説明していただきたいと思います。

西堀正弘外務省国際連合局長

○西堀政府委員 ここに申します刑罰法規のうち政治的性質を有するものと申しますのは、特定の政治制度を信奉することを罰するような刑罰法規でございまして、したがいまして、わが国の場合にはこのような法令はないとわれわれ了解いたしております。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 わが国にはないにしても、それでは、たとえばほかの国でどういう国がこういうようなものを持っているのでしょうか、それを伺いたいと思います。

西堀正弘外務省国際連合局長

○西堀政府委員 具体的に国名をあげる用意が私ございませんが、たとえば共産主義を信奉したというようなことのみでもってこれを刑罰に付するというような場合には、この政治的性格を有する刑罰法規というものに入るものと了解しております。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 そうしますと、たとえば反共法というようなものが制定されている、そういうふうなところではこれが該当するということですね。そうしますと、この条約に加盟している国でこのことばを必要とする国がいまありますか。

西堀正弘外務省国際連合局長

○西堀政府委員 反共法でもありますとそういうことになると思いますけれども、先ほど申しましたように私具体的に国名をあげる用意がございませんのですが、ここでは「政治的性質を有し又は人種若しくは宗教による差別に基づくものに反する犯罪」といったように、特殊の国が特殊の理由のみによってこういったことを理由にしてやることをここでもって認めない。ここで人種問題、宗教問題それから政治問題といったように包括的に規定したものとわれわれは了解しております。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 私ども考えますと、人種的、宗教的差別ということはどこでもいわれることですから、これはわかることですけれども、いま説明されました「政治的性質を有し」ということになりますと、質疑応答の中でもはっきりされたように、たとえば共産主義を信奉するというふうなことだけで引っかかってくる、こういうことになりますと、ちょっと今後においても問題があるのじゃないか。   〔永田委員長代理退席、委員長着席〕 こういうことにかけての法の解釈ということに解釈が広がっていきはしないかということを心配するわけでございますけれども、この文章を入れなければならないその理由。たとえば反共ということを対象としてとおっしゃられた。この 「政治的」という意味は、そういうことであるとしか解釈できないと思うのですけれども、そうだとするとこういうものを入れる必要がないのではないか。ただそのまますんなりと読めないような気がするのですけれども、もう一度その点を説明していただきたい。

西堀正弘外務省国際連合局長

○西堀政府委員 反共法がかりに制定されたといたしました場合、それはいまのに該当するわけでございますけれども、いわばこの条約の精神から申しまして、そういった特殊な、たとえば共産主義を信奉することのみでそれがどうのこうのというのじゃなしに、信奉することによって、そういう差別的な、いわば国内法に対するところのディスカレッジングな効果を考えているというのがこの条項でございますから、いまの先生の御質問は逆になるのじゃないかと私考えるのでございます。要するに共産主義を信奉することのみでそれを刑罰に付するようなことはいけないんだという立場でございます。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 どの国がそういうふうなものに該当するものを持っているか、具体的に言えば反共法的なものを持っているかということはいまのところわからないということですけれども、こういうことは私どもも一応知っておく必要があると思いますので、どこの国がそういうふうな考えを持っているかどうか、私いまのところないのじゃないかと思うのですけれども、あったら例を示していただきたいと思うのです。

西堀正弘外務省国際連合局長

○西堀政府委員 いまの政治的性質を有する刑罰法規というのは、たびたび申し上げますように、具体的な国名を私ここで申し上げる用意がないのでございますけれども、たとえば人種のほうは……。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 それはわかっています。

西堀正弘外務省国際連合局長

○西堀政府委員 そういたしますと、これから調査をいたしまして、わかるものは後刻御提出申し上げたいと存じます。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 人種とか宗教のほうは私わかって伺っているわけです。この点いまお話がありましたように調べた上でお知らせいただきたい。私はいまのところ不敏にしてそういうのがあるということを存じておりませんので、あとで出していただきたいと思います。  次の問題で、三条の「航空機の登録国は、当該航空機内で行なわれた犯罪及び行為について裁判権を行使する権限を有する。」ということになっておりますが、行為についての裁判権の行使というのはどういうものをいうのでしょうか。

山崎敏夫外務省条約局外務参事官

○山崎説明員 第三条の第一項に書いてあります実際の行為に関して裁判権を行使する事例があるかということでございますけれども、考え方といたしましては行政罰のうちの過科なんかを科せられるようなものでございます。わが国で調べました限りにおきましては、実はそういうふうなものはないのでございます。しかしながらたとえばアメリカのような場合には、シートベルトを締めなければならないときに締めないというふうな場合には、別に犯罪ではないけれども、一つの行政的な罰として罰せられるということがあるので、ここに「行為」ということばも入れてほしいというふうな要求もありまして、これは広く皆が受諾し得るために行為ということばを入れてあるわけでございます。しかしながら、いま申し上げましたように、わが国に関する限りは行為について裁判権を行使しなければならないという必要はございません。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 ただ行為というだけで私どもが読んでいきますと、どうしても幅広く考えられますね。お茶を飲んでもやっぱり行為だと思うのですよ。だから、そういうふうな行為じゃなくて、それでは規則にきめられているようなことに反する行為というふうに考えていったらいいわけでございますね。

山崎敏夫外務省条約局外務参事官

○山崎説明員 行為といえば人間のやることが全部行為でございますけれども、この行為といいますのは、正確に言えば、一条の第一項の(b)項に出てまいります行為をさすものだと了解いたします。  具体的に申し上げますと、「航空機若しくはその機内の人若しくは財産の安全を害し若しくは害するおそれがある行為又は航空機内の秩序及び規律を乱す行為」でございます。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 次に四条に入りますが、四条で「登録国でない締約国は、飛行中の航空機に対しては、次の場合においてのみ、その機内で行なわれた犯罪につき刑事裁判権を行使することを目的として干渉することができる。」ということが書いてあるわけです。この干渉する場合に空間的な限定がここには書かれておりませんけれども、公海上空まで干渉ということができるのかどうかというのをまず伺いたいと思います。

山崎敏夫外務省条約局外務参事官

○山崎説明員 第四条の干渉の問題でございますが、この第四条の書き出しにございますように、「登録国でない締約国は、飛行中の航空機に対しては、」ということが書いてございます。飛行中でございますから、もちろん公海を飛行中も含めますが、この飛行中の定義は、先ほど先生の御質問がございましたように、わりあい広く解釈されておるわけでございまして、飛行機が滑走路におりて着陸の滑走が終止するまでは飛行中になるわけでございます。したがいまして、この飛行中という意味においては、公海のみならず相手の国の領域に入って飛行機の滑走が終止するまでを含むわけでございます。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 私が質問する点が入るというふうに了解いたします。  そこで、この干渉という範囲ですね。どの範囲までの行為をいうかということが疑問になってくるわけです。たとえば先ごろの「よど号」の例をとってみますと、公海の上空を北上していたときに、韓国の当局が干渉ができるのかどうか、こういうことをまず伺いたいと思います。

山崎敏夫外務省条約局外務参事官

○山崎説明員 第四条で干渉ができます場合は、この条文にあげてありますように、(a)項から(e)項までの規定の場合でございます。したがいまして、具体的な干渉といいます場合は、考えられますのは、たとえば無線通信その他によりまして着陸を命じたりする場合が入ると思います。  それから今回の「よど号」の場合には、韓国はこの東京条約の締約国ではございませんから、条約上の干渉の問題は生じないわけでございます。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 条約上の干渉ということは生じない、それは私もそうだと思います、入っておりませんから。そこで私がことばが足らなかったのですが、具体的な例として、今後もあることですから、伺いたいと思いますのがいまの問題でございます。たとえば韓国が締約国であったとした場合に、「よど号」が北上していった、その場合に、韓国が上空において干渉をするというようなことはできるのかどうかということです。これを伺っているわけです。つまり干渉の範囲というものをもう少し具体的につかみたいものですから、そういうことを伺っているわけです。

山崎敏夫外務省条約局外務参事官

○山崎説明員 この条約にかりに韓国が入っておると仮定いたした場合におきましても、第四条で干渉いたしますのは、そこに書いてありますように、「その機内で行なわれた犯罪につき刑事裁判権を行使することを目的として」のみでございます。したがいまして、かりに韓国がこの条約に加入しておったといたしましても、韓国がその場合にやる行為は、いわゆるハイジャッキングに関する十一条の問題になるわけでございます。具体的にはそういう場合には、ハイジャッキングが行なわれ、また行なわれようとしておる場合には、「締約国は、当該航空機の管理をその適法な機長に回復させ又は保持させるため、あらゆる適当な措置をとる。」ということは、韓国がこの条約の締約国であります場合にはできるわけでございます。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 「あらゆる適当な措置をとる。」という中に干渉が入るわけですか。もう少し詳しく申します。いまお読みになりました十一条の「あらゆる適当な措置をとる。」という中に干渉ということが入るわけですか、干渉というのはそういうように広く解釈をするわけですか。

山崎敏夫外務省条約局外務参事官

○山崎説明員 干渉ということばが出てまいりますのは、あくまで第四条の問題でございまして、第四条が干渉する目的は、あくまで刑事裁判権を行使するという目的でございます。それで先ほどから申し上げましたように、十一条の問題は、ただ機長の適法な管理を回復させることのための措置でございまして、これは干渉とか干渉でないという問題ではないと存じます。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 私が質問しているのに直接お答えにならないからこんがらがってしまうわけですよ。干渉ということをさっき私は伺っていたのです。それで干渉の中で、たとえば「よど号」事件のときに、もしも韓国が締約国であった場合に、北上しているのに対して、そしてそれに韓国が干渉できるかどうかということを聞いたわけですよ。そうしましたら、そういうことにはお答えにならない。その場合に、たとえばこの間のようなハイジャッキングの場合には、十一条でもってやるのだ、干渉の場合には、刑事裁判権の行使の場合だ、こういうふうにおっしゃっているわけですね。だから私が伺いましたことに対して、この間のような北上しているのに対して干渉することはできないのだとかできるのだとかいうことを答えていただけばいいわけです。

山崎敏夫外務省条約局外務参事官

○山崎説明員 お答え申し上げます。  要するに十一条ではあくまで締約国の義務として、また行為として、——条約上の義務ではございますが、機長に航空機の管理を回復させるために、あらゆる適当な措置をとれるわけでございますから、それで韓国の当局が機長を助けるために——飛行中の航空機に対して助けるということはあり得るわけであります。しかしそれは干渉とかなんとかという問題ではないと存じます。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 だから結局、この干渉というものの範囲なり何なりを私は具体的な例を引いていま伺っていたわけですから、いまのような私が引きました例の場合には干渉はできないのだ、こういうふうに考えていいわけでございますね。干渉という面からいえばできないのだというふうに考えてよろしいわけでございますね。

山崎敏夫外務省条約局外務参事官

○山崎説明員 先ほどもお答え申し上げましたように、韓国がこの条約の当事国であると仮定いたしました場合に、何かその犯罪について刑事裁判権をあくまで行使するのだという気持ちを持っておる場合に、まさに干渉という問題が起こるわけでございます。しかし今回の場合はそういう場合ではなくて、要するにハイジャッキングが起こったものに対して、何か機長を助けてやろうということで行なわれたものと私は了解しておりますが、そういう場合の措置でございまして、干渉云云という問題ではないということを私は申し上げたいわけでございます。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 それでは干渉ということでもう少し伺いたいのですが、たとえば強制着陸をするというような場合、それを無視して自分でかってな方向に航行をしようとした、強制着陸させようとしたときに自分でかってな方向に行こうとしたときに、それは見のがすのかそれとも撃墜するのか、こういうふうな場合にやはり干渉ということが出てくるのじゃないかと思うのですが、これはどうでございましょうか。

山崎敏夫外務省条約局外務参事官

○山崎説明員 ちょっと先生の御質問の趣旨をあるいは私が十分理解していないかもしれませんが……。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 たとえば、干渉されて、その干渉に従わなかったときにどうしますかというふうに言ったほうがいいかもしれません。

山崎敏夫外務省条約局外務参事官

○山崎説明員 この第四条は、むしろこういう場合のほかは干渉してはならないということでございまして、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)をごらんいただきましても、あくまで犯罪について刑事裁判権を行使しようという場合に限られるわけでございます。もし先生の御質問の趣旨がハイジャッキングの場合であるということであるならば、それはあくまで十一条の問題でございまして、十一条でその飛行機を救うために、機長の管理を回復するためにできるだけのことをやるということはあり得るわけで、強制着陸を命じ得る場合もあり得ると思います。それはあくまでハイジャッキングを救うためのあらゆる適当な措置でございまして、それは干渉という問題とは全然次元の違う問題だと存じます。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 ハイジャッキングを救うための十一条の方法というのはわかっています。  そこで私が伺いたいのは、ここで「刑事裁判権を行使することを目的として干渉することができる。」ということがあるわけですね。だから干渉もできるけれども、この文章からだけ考えたときに、干渉されても従わなくてもいいのだ、こういうふうに理解してもいいのですか。

山崎敏夫外務省条約局外務参事官

○山崎説明員 結局干渉し得る場合は、自分のところの上空を飛ばれている国が刑事裁判権の行使を目的として干渉するわけでございますから、その場合には、ほんとうに犯罪について刑事裁判権を行使するためであるならば、着陸命令を出して従わせることはできると思います。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 だから、そこで従わせることができるのですが、それに従わなかったらどうなりますかということを聞いているわけです。

西堀正弘外務省国際連合局長

○西堀政府委員 この第四条の規定は、そもそも「次の場合においてのみ、」「干渉することができる。」という、「のみ」という点が非常に強調されておるわけでございまして、そのようにお読みいただきたいのでございますが、たとえば英文で申しますと、次のような場合以外はやってはいけないのだ、干渉することはいけないのだというふうに、メイ・ノット・インターフェア・ウィズ云々と書いてあるわけでございます。したがいまして、いま先生が申されましたように、次の場合以外は干渉してはいけないのだ、したがいまして、それをインターセプトするためにあるいは無線通信その他でもってやる、それに従わないということになりますと、それを撃墜してまでということはこの条約はもちろん期待しておりませんし、そういうことをいたしますことはあるいはこの条約違反を構成するかもしれませんが、いずれにいたしましても、最初に申し上げましたとおり、この第四条はあくまで制限規定でございますから、そういったふうにお読みいただきたいので、そのときそれでは撃墜しないでそれがどうなるかということは、あくまで事実関係でございまして、これはお手上げですというふうに申し上げるよりほかにないと存じます。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 いまの御答弁ですが、大体そういうふうな読み方をするのかなと思ったのです。ただ、たとえばこういうふうな条件でこれだけのものを従わなければいけないのだ、こういうものを従って、そしてこのことに関してだけ干渉することができるのだ、こういうふうに考えていきますけれども、もしかして機内にいる人の条件だのいろいろなことを考えましたときに、従えないようなことがあるかもしれないと思ったわけですよ。従えないような場合に一体どうしたらいいのだろうかということを考えたわけです。それと干渉というものの範囲を考えて、干渉というのはどの程度までの範囲を言うのだろうということとにらみ合わせて考えてみたわけです。そうすると、ここにあげられている(a)から(e)までのことだけについて干渉ができるのだ、それ以外はできないのだ、これが一つですね。もしもこういうことに限っての干渉で従わなかった場合にはもうどうにもしかたがないのだ、撃墜までするといろいろな問題が起こるけれども、この条約違反だということに解釈するのだ、こういうふうにいま御説明があったのですが、その程度のものと理解してよろしいわけですね。

西堀正弘外務省国際連合局長

○西堀政府委員 そのとおりでございます。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 わかりました。その問題は、ちょっとこまかい問題であとでそれに関連して具体的に聞きたかったのですけれども、先に進みましょう。  六条に機長の権限があるわけですけれども、この機長の権限というのは、これは警察権と見てもいいわけでしょうか。これをまず一点伺いたいと思います。

山崎敏夫外務省条約局外務参事官

○山崎説明員 お答え申し上げます。  警察権ということばは非常に広く解し得ると思いますけれども、要するに非常に犯罪的行為、またはこの第一条第一項の(a)、(b)に書いてありますような行為、犯罪的な行為あるいは秩序及び規律を乱すような行為、安全を害するような行為があった場合には、機長はある程度の妥当な措置をとることができる。それには拘束を含むわけでございますから、若干警察官的な行為もできるわけでございますが、全面的に警察権を行使できるというふうな書き方にはなっておりません。あくまで飛行機のそういう安全を害するような場合を中心に書かれておるわけでございます。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 警察権とまではいかないけれども、それに準ずる程度のものであるというふうに理解していいかと思います。  そこで、機長の権限を船長の権限と比べますと、わりあいに機長の権限のほうが少ないように考えられますけれども、これはどういうふうな理由によるものでございましょうか。

山崎敏夫外務省条約局外務参事官

○山崎説明員 仰せのとおりでございまして、船長の権限よりも若干狭く規定されておると思います。これは結局船舶の場合には航海瞬間も長いし、また証拠保存とか調書の作成等を船中でやる必要があるので、ある程度司法警察職員的な権限を与え得るわけでございますが、航空機の場合は、何ぶんにも機長は現実に飛行機を操縦しておるわけでございまして、時間的に本非常に限られておりますし、スペースも限られておりますし、完全な司法警察職員的な行為、措置を全部とることは、実際問題として困難であるということも考えて、この規定では船長ほど広く権限を規定していないわけでございます。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 船長ほどの権限を与えておらないという理由が何かあまりよくわからないのです。船員法を読んでみますと、相当広い権限が与えられておりますけれども、機長の場合には船長に比べてそれほど権限がない。これで間に合うといえば間に合うのでしょうけれども、ただ船長の場合と機長を比べて、特に機長のほうが少たくていいというような、船長のほうに特に強く権限を与えなければならないというような直接の原因というものは一体何であるかということをちょっと疑問に思うんですけれども、そういうものがあったらちょっと示しておいていただきたいと思います。

山崎敏夫外務省条約局外務参事官

○山崎説明員 先ほどの御説明で、私、ちょっとことばが足らなかったかもしれませんが、いま問題になっておりますこの条約の規定としては、これだけの権限しか機長には与えていないわけでございますが、むしろこれ以上の権限を与えることはちょっと無理である。つまりほんとうの警察官的な行為ないし措置を機長にとらせることは、物理的にも時間的にも無理であるということからきたのであろうと考えます。なお、船長の権限につきましては、国際条約上、船長の権限はここまであるんだということを書いた条約はないのでございまして、私が先ほど申し上げましたのは、あくまで日本の国内法の問題として申し上げたわけでございます。国内法で船長の場合と航空機の場合はどれだけ違うかという点につきましては、これは運輸当局その他からお聞きいただきたいと存じます。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 私は、ただ権限を与えればいいということじゃなくて、やはり警察権のところまで及ばないで、そして最小限度のもので効果をあらしめていかなければならないという観点に立っての質問ですから、その点を誤解しないようにしていただきたいと思います。その辺があんまりはっきりしませんけれども、次にいきたいと思います。  先ほど問題になりました十一条なんですが、この十一条では、「当該航空機の管理をその適法な機長に回復させ又は保持させるため、あらゆる適当な措置をとる。」「あらゆる適当な措置」というのは、どういうふうな限度があるのか、この点を具体的に説明していただきたいと思います。

山崎敏夫外務省条約局外務参事官

○山崎説明員 この「あらゆる適当な措置」というのは、結局国内法で許す範囲でできる限りの措置をとるということでございますが、実際問題として飛行中の航空機内の問題でございますから、旅客の生命を考える以上、あまり強い措置はとりにくいというのが実際であろうと思います。しかしながらこの「飛行中」と書いてあります意味は、先ほどから申し上げましたように、滑走路におりてプロペラがとまる、プロペラといいますか、滑走路におりて滑走路の端に行ってとまるまでを含みますから、その段階までの間において、国内法の範囲内において、その乗客の安全を害しない程度において、もし事情か許すならば、何か物理的な力を用いて機長の管理を回復させるということはやり得るわけでございます。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 いまの御説明でございますけれども、これはそういうふうな行き過ぎになったりいろいろむずかしいと思うのですね、これだけの文章では。ですから「あらゆる適当な措置」というものをもう少し具体的にわかるようにしておいたほうがいいんじゃないかというふうに私は考えます。たとえば行き過ぎてみたり、またいろいろ心配でこれ以上できないとかいろいろあると思うのです。ですからここは具体的に、この程度にはこういうものをというふうなことを考えてしかるべきではないかと思いますが、この条約に入る締約国の人たちは、そういうことがわかっているのでしょうか、どうなんでしょうか。

山崎敏夫外務省条約局外務参事官

○山崎説明員 先生仰せのとおり、この「あらゆる適当な措置」が具体的にどれだけ効果的な措置をとり得るかということでございますが、結局機長の立場といたしましても、旅客の安全を第一に考えなければならぬとすれば、また締約国がこれを助けるためにも旅客の安全を第一に考えなければならぬとすれば、なかなか強い措置をとりにくいということは事実でございますが、これはケース・バイ・ケースでございまして、犯人が一人であるとかあるいはわりあいヘルプしやすい場合には、滑走路におりてきた後にでも、これはうまく飛び込んでつかまえるということもできるかもしれませんが、ともかく旅客の安全第一に考えなければならぬという意味において、非常に制限があるということはどこの国でも申しておることでございまして、具体的にそれをどういうふうに措置するかということについて、ほかの外国においても規定しておるものはございません。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 そのときどきによって、ケース・バイ・ケースで適当な措置をとるというふうな解釈のもとに、こういうことばができているとは思いますけれども、平時に私ども考えますと、これだけでは少し不満のような気がいたしますので、質問をしてみたわけでございます。  そこで具体的な例として一つ二つ伺いたいのですが、たとえば飛行機の奪取が継続したままである締約国に着陸している場合に、その着陸国は登録国の要請を受け入れることができるのかどうかということをまず伺いたい。たとえばほかの国へ飛ばせたいというような考えを持っているときに、そういうことをある締約国に着陸している場合に、それを受け入れることができるかどうか。その着陸国が受け入れるかどうか、受け入れられるのかどうか。この点をまず伺いたいと思います。

山崎敏夫外務省条約局外務参事官

○山崎説明員 この十一条一項の趣旨はあくまでその機長のコントロールを回復することにあるわけでございますから、そういう観点から登録国がそのまま飛ばしてほしいと言えば、もちろんその着陸国である締約国はこれに協力すべきであろう。「あらゆる適当な措置」の中にそれが入ると思います。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 具体的な例を伺いますのは、そういうふうな問題が出てくるものですから、私、伺っておくわけなんです。協力をするのだということでわかりました。  そこで、もう一つの問題点として、この着陸国が登録国の要請を無視して行なった措置、たとえば登録国が向こうへ行きたいのだと言っても、まあここにいらっしゃいといって置かせたというような措置をとった場合に、もしそこで重大な惨事が起きたとするならば、着陸国の責任はどういうふうになるのでしょうか。起きた惨事についてどこにも責任がなくなってしまうのじゃないかということを心配するわけです。それはどういうところが負うわけでございますか。

山崎敏夫外務省条約局外務参事官

○山崎説明員 この十一条一項の規定は、先ほども申し上げましたように、機長のコントロールの回復ということに主眼を置いておりますから、登録国の要請がそれをあくまで中心にして行なわれ、そして飛行を継続させたいということであるならば、もちろん着陸国のほうはこれにできるだけ協力するということが「あらゆる適当な措置」の一つであろうと思います。それでその結果かえって何か起こった場合には、結果的に見て結果論として適当でなかったということにはなると思いますが、しかし着陸国としてはそのときの判断で適当と信じてやったのが裏目に出るということもあるわけでございましょう。しかし、したがいまして、そういう問題になってまいりますと、あとは結局両国間の外交交渉の問題になりまして、話し合うほかないのではないか。着陸国のほうでは適当だと思ってやったのだということであれば、まさに条約の義務の履行でありますし、この辺はお互いに話し合う問題であろうと思います。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 私が前に伺ったのは、締約国である着陸国は登録国の要請を受けるかどうかと言ったら、それは受けますというふうにおっしゃったわけです。いま私が伺ったのは、もしも受けなかった場合ということを伺っているわけなんです。もしも受けなかった場合に、つまり着陸国が登録国の要請を無視して、そしてもしも問題が起きたときには、その責任というものはどうなるのですかということを私は聞いたわけなんです。そうしましたら、そういう場合にはやはり登録国の要請を無視した着陸国に責任が出てくるのじゃないですか。お互いに話し合うというところまでいかないのじゃないでしょうか。この間の「よど号」はうまくいきましたからいいですけれども、これはやはり今後問題になってこないとも限らないことだと思います。たとえは韓国にこの間——一つの例を引きますならば、韓国から先に行きたいと言ったときに、もしも韓国のほうで、それでは困るのだ、いてほしいと言ったときに何か惨事が起きたとする、そうすれば、結局その責任というものはどこにあるわけなんですか。どこにいくわけですか。やはり登録国の言うことを聞かなかった国に責任が負わされることになりはしないかと思って私はこの点を伺っているわけです。こういう問題が私は今後においても出てくるのじゃないかと思うわけなんです。

山崎敏夫外務省条約局外務参事官

○山崎説明員 その辺は非常にむずかしい問題でございまして、結局着陸国としては適当と信じて措置をとる場合もあって、それが登録国の意思に反しておるというふうな場合にはどうなるのかという御質問でございますけれども、要するにこの条約の目的は、登録国も着陸国も機長の適法なコントロールを回復すること、そして乗客の安全を確保することにあるわけで、同じ目的を両締約国は持っておるわけですから、おのずからその辺で話し合いはつく問題であって、結果論からだけ見て必ずしも判断し得ないだろうと思います。したがいまして、先ほどから申し上げましたように、これはその起こっておる時点における話し合いあるいはその後の両国間の話し合いによってケース・バイ・ケースで話し合うほかないのじゃないか、この条約はそこまでははっきり書いてないと申し上げるほかないと思います。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 どの国も問題を起こさないようにうまく処理していこうと考える善意はよくわかります。しかし、今日の国際情勢が非常に複雑ですし、そしてまた国の形というものもいろいろな形があるし、その国の考え方もいろいろあるし、イデオロギー的にも違っております。そうなってきますと、この間のハイジャックの例がいい例でございますけれども、うまくこの間はいったけれども、それを教訓としていかなければいけないと私は思うわけです。そこで、例としてこういう例があり得そうだと思うので私は聞いたわけなんですけれども、そういうことは大体ないだろうというふうなお気持ちでこの問題を処理していかれると、私は間違いが起きると思うのです。だから、よく考えておいていただきたいと思うのは、いま私が指摘いたしましたようなケースが出てこないとも限らないと思うのです。ですから、こういうふうなケースの場合にも、そしてしかもこの着陸国が登録国の言うことを聞かないで起きた惨事、そうしたときには一体どうなるかということを考えると、私は身ぶるいをします。どこも責任が負えない。結局着陸国が言うことを聞かなかったからということで責任をなすりつけられるかもしれないけれども、そういうことは私のところは知らないということになるかもしれない。そうすると、非常にいろいろな問題が波及してきますし、たいへんな問題になると思うのです。ですから、こういうことがないように、そういうこともこの間の教訓から勘案いたしまして、今度の国際条約等での議論のときには何かお考えになっておいていただきたい、こういうことを私は申し上げたいのですが、この点については外務大臣どうお考えになりますか。

愛知揆一自由民主党外務大臣

○愛知国務大臣 いま御質疑並びに御意見を伺っておりまして、ごもっともだと存じますが、なかなかこれはむずかしい問題だと思うのでありまして、飛行中並びに締約国の中に着陸をしていた場合、その両方を含めてでございますが、その場合、締約国である場合は、着陸国としては、この東京条約で書かれている趣旨は、国内法上あらゆる適当と認める措置をとるというのがたてまえであろうと思います。そしてそこにかぶってくるのは、やはり乗客の生命の安全ということで、そして機長に管理能力を回復させるということが主眼であると思いますから、いまの御意見のような点は、あるいはこの東京条約ではそこまで突っ込んでは考えられていない、こういうふうに理解すベきではないかと思います。しかし同時に締約国としては、登録国がこうしてほしいというような意向があった場合に、それと反対の、締約国としては適当と認める措置をとって、その結果惨害が起きた場合においては、これは私のしろうと論かもしれませんが、条約上当然に起こってくる賠償責任というものではなかろうかと思います。ただその際においては、そういう場合が不幸にして起こったときの事後の処理において、たとえば外交上の話し合いが起こるような場合には、そこに至るまでのプロセスというものが相当ものをいうのではないだろうか。常識論でございますけれども、一応そういうふうに考えられます。しかし御指摘がございましたように、わが国としてはまことに異例なハイジャックの経験を不幸にして持ったわけでございますから、それらの経験者と言っては語弊があるかもしれませんが、非常に異例とも思われるような体験を持った国でございますから、へーグの会議等におきましても、これは日航の当局もそういう意向のようでございますけれども、この不幸な経験を生かして関係国の人たちにも十分いろいろの知恵を出してもらいたいということをいっておりますし、そういう態度で会議に臨みたい、こういうふうに考えて、おります。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 あと二つほどことばのことで伺いたいと思うのですが、十三条の三項に「2の規定に基づいて抑留された者は、その国籍国のもよりの」というふうにあるわけですけれども、「その国籍国のもよりの」というのは、その者の国籍の、という意味でしょうか。

山崎敏夫外務省条約局外務参事官

○山崎説明員 仰せられたとおりでございまして、その抑留された者の国籍、その国籍の本国、たとえばアメリカ人が抑留されたとすれば、そのアメリカのもよりの適当な代表、領事とかその他にすぐ連絡をとるということでございまして、ある意味で人権保護的な規定でございます。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 そのあと十四条の一項の六行目に「その者の国籍国、」とありますね。それで、もしそれとこっちのと意味が同じだとするならば、いまおっしゃったような意味であるとするならば、十三条の3も正確に「その者の国籍国」としたほうがよかったんじゃないでしょうか。「その国籍の」というよりも、十四条の「その者の国籍国、」のほうが私は正しいように思いますけれども、こういうふうに使い分けをしていらっしゃる理由はどういうところにあるわけでしょうか。英文を見ましても同じなんですね。十三条は「その者の」を落とされたのですか。

山崎敏夫外務省条約局外務参事官

○山崎説明員 お答え申し上げます。  つくられました英語のテキストその他を参照しました限りにおきましては、仰せのとおり同じでございますが、ただ日本語のテキストをつくります場合には、十三条第三項の場合は「抑留された者は、」ときてすぐでございますので、「その国籍国」で十分わかるとわれわれは考えたわけでございますが、先生の御指摘の十四条の場合には、その間に文章が入っておりますので、確実にするために「その者の」を加えたわけでございます。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 これは私たいしてこだわる必要はないと思うのですけれども、十四条のときも「その着陸国に恒久的な居所を有する者でもないときは、その者の」とあるのですから、同じに前のものを受けているのじゃないかと私は思うのです。それが違うとなると、読み直さなければならないのでしょうか。

山崎敏夫外務省条約局外務参事官

○山崎説明員 十三条の第三項の場合には、「2の規定に基づいて抑留された者は、その国籍国」というふうに単なる一文でございますが、十四条の場合には非常に文章が長うございまして、最初から三行目に「降機した者が」ときて、それを受けて「その者」が三回出てくるわけでございます。「その者の入国を拒否する着陸国は、」その次には、「その者の国籍国」、それから「その者が恒久的な居所を有する国又はその者が航空機による旅行を開始した国」というふうに「その者」を受けなければなりませんので、誤解を避けるために「その者の」を全部繰り返して用いたのでございます。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 いまの説明、何かわかったようなわからないような、さっきの最初の十三条のときの説明どおりにいけば、「その者の」ということで書かれたほうが私はよかったと思うのです。ことばですから私は別にこだわりませんけれども、いまの三つを受けているからどうとかこうとかという説明では私は納得できません。できませんけれども、それほどの問題でもないですからそのままにいたしますが、私は十三条は英文からいっても「その者の国籍国、」としたほうがよかったのじゃないかと考えます。  これは意見が違うということで先にまいりますが、もう一つだけ。これは私ちょっと間違っているかもしれませんし、わからないことなんですが、十条に「航空機の所有者」ということばがありますし、十一条には「占有権を有する者」ということばがありますし、十条には「運航者」ということばがあります。これは三つとも違うのですか。たとえば十条の「航空機の所有者」というのは、持っている人をいうのでしょうね。それから「占有権を有する者」というのが十一条にありますね。それからどこかに「運航者」とありましたね。

山崎敏夫外務省条約局外務参事官

○山崎説明員 十条の「航空機の所有者若しくは運航者又は運航の受益者」でございますが、「航空機の所有者」は明らかに航空機の所有権を有する者、それから航空機の「運航者」という者は、その所有権のあるなしにかかわらず航空機を運航している者、ちなみに「運航の受益者」というのは、航空機をチャーターしたような場合でございます。それから第十一条の第二項の「占有権を有する者」というのは、これは少し広い概念でございまして、その飛行機を現、実に動かして占有している者でございますから、チャーターした者、たとえば日航がアメリカの飛行機をチャーターしておりました場合には、その日航がその占有権を有する者になるわけでございます。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 そうしますと、運航者というのは機長は別ですね。機長は別で、それを運航している者。たとえば、どういう人のことをいうのですか。

山崎敏夫外務省条約局外務参事官

○山崎説明員 運航者といいますと、ちょっと具体的な人間を感じやすいのでございますが、この条文の読み方といたしましては、実際は航空会社を意味するとお考えいただければいいと思います。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 わかりました。  では、私はこの程度で私の質問を終わりたいと思いますが、今回のハイジャックの事件等でいろいろな問題点やら、そうしてまた私どもが、今後繰り返さないためにも考えなければならないものやら、いろんなものが教えられたと思うのですが、そういうふうなことを勘案した上で国際条約の意見として外務省としては持っていって、ほんとうにいいものにしていただきたいということを要望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。

田中榮一自由民主党

○田中委員長 大久保直彦君。

大久保直彦公明党

○大久保(直)委員 この東京条約ずっと見てまいりますと、先ほど大臣の御答弁にもございましたけれども、むしろハイジャック防止ということは第二義的な感じがいたしまして、機内の犯罪及び乗っ取りに対する事後処理の面がかなり表に出ているのではないか、このような感じがいたすわけでございますが、しかしこの東京条約の提案理由の説明の中でも「この条約は、航空機内の犯罪等の行為の防止を国際協力によって解決していく上できわめて有意義なものであり、また航空機の不法奪取につきましても、それを国際協力によって防止する第一歩として意義があると認められます。」とこのように述べておられるわけでありますが、私も確かに第一歩としての意義を十分認めるわけでございますが、ただ現実問題としまして、わが国としましてはこの東京条約というものが、先ほど大臣のお話にもあったICAOですか、それから国連並びにその専門機関の加盟国のみによってできておる。しかし現実問題は、やはり日本の立場で考えますと、北鮮並びに中国のこの条約の加盟並びに協力がないと、このハイジャック防止の効果ある防止はできないのではないかという懸念を抱くわけでございますが、この十二月に予定されておりますへーグでのハイジャック防止条約では、北鮮並びに中国の問題についてはどういうふうになるのか。さらに具体的に大臣のお考えを伺いたいわけでありますけれども、二つの国が加入するかまたは非加入は別としまして、日本としては現実の問題としてこの両国の協力がどうしてもほしいわけですが、加盟できる道を開くべく努力をすべきではないか、このような感じを抱くわけでありますけれども、初めに大臣からそのことについてお伺いしたいと思います。

愛知揆一自由民主党外務大臣

○愛知国務大臣 これは先ほど戸叶さんの御質問にもお答えいたしましたとおりに、こうした種類の条約については、もう世界じゅうの各国が加盟しておるということでなければ十全の意味がないと思いますから、いわゆる分裂国家等につきましても、ぜひこの条約に参加をするように政府としては関係国にも呼びかけて協力を求めたい、かように考えておるわけでございます。この種の条約については、私常識論で申すのでありますけれども、いわゆるオール・ステーツ・フォーミュラと申しますか、そういうかっこうの条約であることが性格上も望ましいと思いますし、またこの種の性格のものについては、どうしてもやはりそういった考え方を国際的に打ち出していかなければならないのではないかと思います。そしてたとえば条約の効力を発生させるための批准の寄託国が複数国になっている条約が最近相当あるわけでありますが、やはりそういう点もこうしたような性格の条約についての一つの考え方が出てきておるのじゃないかと私考えているわけでございます、そういう意味も込めましてぜひそういうふうな考え方で進めるべきであると思っております。

大久保直彦公明党

○大久保(直)委員 北鮮と中国の加盟につきましては、私現実にはかなりむずかしいだろうという認識を持つわけなんですけれども、いま大臣の積極的な御答弁を伺ってぜひともそれが実現できるように重ねての努力をお願いしたいと思います。  もう一つ、東京条約の会議にはキューバとソ連がたしか参加をしておったと思うのですけれども、キューバとソ連は署名をしましたでしょうか。

愛知揆一自由民主党外務大臣

○愛知国務大臣 これは残念ながら署名しておりません。

大久保直彦公明党

○大久保(直)委員 会議に参加をして署名をしないということにつきましては、何かそこに適当な理由なり何なりがうかがえるわけでございますか。

西堀正弘外務省国際連合局長

○西堀政府委員 ソ連それからキューバも参加いたしたのでございますが、署名しなかったということにつきますその理由、私はちょっとここで御説明申し上げる用意がございませんですが、ソ連は御承知のようにICAOには加盟しておりません。しかしながら本件には東京条約の採択会議には参加したわけでございます。ICAOの非加盟国でこの条約の当事国になっておるのは残念ながら一カ国も現在ございません。それからキューバにつきましてもこれはその理由を私はつまびらかにしておらないのでございますけれども、大臣から申し上げましたように署名ももちろんいたしておりません。

大久保直彦公明党

○大久保(直)委員 では内容に入りたいと思いますけれども、ただこの東京条約は総体的にかなり裁量権が大きくうかがえるわけなんですけれども、もちろん事件がケース・バイ・ケースでありますので、具体的にはむずかしいかと思いますが、判断の基準といいますか、何か明確な基準なり指針なりを各条項にわたってもっと前向きにしておいたほうがいいのではないかという感じを強く持つわけでございます。先ほども戸叶委員の質疑等を伺っておりましても、各国によってその受け取り方がかなり違うのではないかという疑惑を持つわけですけれども、その辺はいかがでございましょうか。各国の受け取り力が相当異なってくるのではないか。

西堀正弘外務省国際連合局長

○西堀政府委員 はなはだ申しわけございませんが、先生の御質問の趣旨がちょっとわれわれわかりかねるのでございます。おそれ入りますが、もう一回具体的に御質問していただければありがたいと思います。

大久保直彦公明党

○大久保(直)委員 犯罪の疑わしい理由だとかいろいろな面において、かなり、機長にしましてもまた裁判の問題にしましても、その国々の裁量権によって処理される面が非常に大きくうかがえるわけなんです。あとで具体的に伺ってまいりますけれども、裁判権の問題等について、登録国また締約国、着陸国等の調整の問題、そういったことについて日本で私たちがこの東京条約を承認する場合に、ある程度そういったことが、これから具体的に伺うわけですが、各国とのいろんな調整の問題等で、別の立場が出てくる気配はないか、その懸念はないかということを伺いたい。

西堀正弘外務省国際連合局長

○西堀政府委員 この東京条約は先ほど冒頭に私戸叶先生の御質問に対してお答え申し上げましたとおり、国によりましては、国外にある航空機の中で行なわれる犯罪について裁判権を持たないような国がありますので、そういった不合理をなくするために、それぞれ登録国は裁判権を持とうじゃないか、こういうのがこの趣旨でございますので、裁判権が競合することはもちろんございます。その競合をどういうふうに解決するかはもちろん問題でございますけれども、それからもう一つは、それぞれの国が裁判権を持つわけでございますから、そのそれぞれの国の国内法によってその裁判権を持った国は処理するわけでございます。したがいまして、先生いま御心配になりましたように、国によってそれじゃ違うじゃないかという点はそのとおりでございます。

大久保直彦公明党

○大久保(直)委員 第一条の第二項の中で「いずれの国の領域にも属しない地域」云々というのがございますが、これは南極と解釈してよろしいわけですね。

山崎敏夫外務省条約局外務参事官

○山崎説明員 具体的には仰せのとおり南極でございます。

大久保直彦公明党

○大久保(直)委員 第二条で、先ほど戸叶委員もいろいろとお聞きになったので私もこれはよくわからないのですけれども、第一点、「第四条の規定の適用を妨げることなく、」という、この四条云々という適用を入れた理由はどういうことなんでしょうか。

西堀正弘外務省国際連合局長

○西堀政府委員 この趣旨は、航空機内で行なわれる犯罪でありましても、政治的性質を有するか、あるいは「人種若しくは宗教による差別に基づく」刑罰法規に反するものは、条約の適用が仏外される結果となっておるわけでございますが、その行為が第四条に規定するような何らかの意味で領空の通過国に影響を与えるといったような場合は、その当該領空を通過される国は、その第四条に列挙されております(a)から(e)でございますか、そういった措置をとり得るのだ、こういうためにここの「第四条の規定の適用を妨げることなく、」という文言が入れられたわけでございます

大久保直彦公明党

○大久保(直)委員 これはむずかしいかと思いますけれども、このまん中辺から、この条約のいかなる規定も、政治的性質または人種、宗教による問題とございますが、何か具体的な事例をもって明快に御説明いただくわけにはまいりませんでしょうか。

山崎敏夫外務省条約局外務参事官

○山崎説明員 この第二条の規定は、そういう政治的性質を有する犯罪とか、あるいは人種差別に基づく犯罪とか、宗教差別に基づく犯罪というものを規定している国があるとすれば、そういう問題についてはこの条約は別にそれを承認するものではないということを意味しているわけでございますが、具体的に、たとえば非常にまあわかりやすく申しますれば、ある国の飛行機が、黒人のすわる席と白人用の席とを区別して飛行機をつくっておって、その場合黒人の人が白人用の席にすわったならばそれは犯罪であるというふうなことになっておりますような場合には、そういう犯罪なんかはこの条約は関知しないということを言っておるわけでございます。そういう問題についてまでどうこう、保護するとかそういうことは言っていないというわけでございます。

大久保直彦公明党

○大久保(直)委員 政治的性質云々というのは、先ほどもはっきりしなかったわけなんですけれども、日本で政治犯の定義というのはございますのですか。

山崎敏夫外務省条約局外務参事官

○山崎説明員 御質問の趣旨を十分私が理解しているかどうかわかりませんが、政治犯ということばでとらえます場合には、日本の刑法におきましても内乱罪等は政治犯でございます。しかしながらここに言います政治的性質を有する犯罪というものは内乱罪等は含まないとわれわれは解釈しております。したがいまして先ほど国連局長から御答弁がありましたように、わが国に関してはこの条約に関する限りは該当することはないというふうに了解しております。

大久保直彦公明党

○大久保(直)委員 先ほどの国連局長の御答弁、重ねて伺いたいわけなんですけれども、この第三条の三項によりますと、裁判権が路銀国以外でも行使できることになっておるわけでございますが、これは十三条の最後を見ますと着陸国にもある。また四条では登録国以外の締約国にもある。こういう三つの受け取り方ができるわけですけれども、この重なり合ったいわゆる裁判権ですね、これはどういうふうに調整一するかという問題が一点。   〔委員長退席、田中(六)委員長代理着席〕  それから十四条、十五条で、着陸国は犯罪またはその行為を行なった者を裁判してもよいし、また犯罪人として引き渡してもよい。しかしそのまま釈放して旅行を継続させてもよいことになっているわけでございますが、そういう十四条、十五条の規定と、それから十六条で犯罪人の引き渡しの義務ということ々創設してないわけでございますけれども、こういう十四条、十五条の関連、またこの十六条での規定によりますと、登録国に裁判権が設定されてもそれが有効に生かされないといいますが、働かないのではないか、こう思うわけなんですけれども、これはいかがでしょう。

西堀正弘外務省国際連合局長

○西堀政府委員 先生の御懸念になりますように、裁判権がそれぞれ一カ国、二カ国、あるいは極端な例を申しますならば三カ国にまたがることももちろんございます。要するにその二カ国ないし三カ国の間で裁判権が競合するわけでございます。したがいまして、その場合にどちらの国が裁判権を行使するかということは、そのときのケース・バイ・ケースでそれぞれ決定されるわけでございます。  それから犯罪人の引き渡しのところでございますが、この条約では犯罪人引き渡しの義務を設定しない、これは先生のおっしゃるとおりでございまして、これにつきましても現在のところ、たとえば日本で申しますならば日米間には犯罪人引き渡し条約がございますし、それから国によりましては、日本の場合もそうでございますけれども、国内法では犯罪人引き渡し法を持っておりますので、それぞれのケースによって、その条約に従ってやりますかあるいは国内法に従ってやりますか、これもまたケース・バイ・ケースで決定いたす、こういうことになっております。

大久保直彦公明党

○大久保(直)委員 このケース・バイ・ケースの要因が、その犯罪者の中にその登録国の国民がいるかいないかということも問題にされるのではないかと思うのですけれども、この三条の規定、それからおしまいのほうの十四条、十五条並びに十六条の規定が、やはり将来相当何か紛争の種になるおそれがあるのじゃないか。登録国、着陸国、締約国の間でスムーズに円滑に話がいけばまあそれにこしたことはないわけなんですけれども、その調整の問題ですね。ただケース・バイ・ケースということだけでこの調整がスムーズにいくということはちょっと考えられないのではないか、こういう懸念を持つわけでございますが、その点……。

西堀正弘外務省国際連合局長

○西堀政府委員 先生の御懸念になりますとおり、確かにそういった紛争は起きるわけでございまして、したがいまして、この条約におきましても、二十四条でございますか、この紛争につきましての処理方法を規定しているわけでございます。したがいまして、この紛争条項を利用するかどうかはまたそのときの問題でございますけれども、いずれにいたしましても先生御懸念のような、まあ各締的国の意見が合致しないというときは紛争の起こる余地はございます。

大久保直彦公明党

○大久保(直)委員 では先ほど問題になりました四条について重ねて伺いたいと思うのですが、(a)項にあります「当該締約国の領域に対して影響を及ぼす」という条項でございますが、この「領域に対して影響を及ぼす」ということは具体的にはどういうことでしょう。

山崎敏夫外務省条約局外務参事官

○山崎説明員 この書き方は実は非常に広い書き方でございまして、実は通商航海条約なんかの条項なんかにもこういう書き方が出てくるわけでございますが、具体的に何が影響を及ぼすかということはちょっとなかなかケース・バイ・ケースに判断いたさないとわかりませんが、その国の秩序を乱すとかかなり重大な場合を考えておるのだと思います。あまりお答えにならないかもしれませんが、一般的にこういう場合には影響を及ぼすということばをもってあらわしておるわけでございます。

大久保直彦公明党

○大久保(直)委員 その次の場合においてのみ干渉することができるという「干渉」でございますけれども、「干渉」というのは具体的にはどの程度までを干渉として認めるのか、予ての点をお願いしたいと思います。

山崎敏夫外務省条約局外務参事官

○山崎説明員 干渉のしかたはいろいろあると思いますが、何ぶんにも飛行中の航空機に対する干渉でございますから、限定されております。たとえば無線通信によって着陸を命令するというふうなことあるいは空軍機で強制着陸を命ずるというふうなことが考えられると思います。

大久保直彦公明党

○大久保(直)委員 関連で伺いますが、(c)項に「当該締約国の安全を害するものである場合」こういうふうにございますけれども、たとえば防空識別圏の中に入ったということを事由にして裁判権を設定するため、または行使するために干渉するということは認められますでしょうか。

山崎敏夫外務省条約局外務参事官

○山崎説明員 先ほど戸叶先生の御質問に対してもお答えしましたように、これはあくまで機内犯罪の問題でございまして、防空識別圏に入ったということだけで干渉できるわけではございません。

大久保直彦公明党

○大久保(直)委員 なぜそんなことを聞いたかといいますと、この四条はいわゆるハイジャッキングの問題は関知しないんだ、さっきそういう山崎さんの答弁があったわけでございますけれども、私は必ずしもそうは言い切れないのではないかと  いう感じがするわけなんです。むしろ四条でもハイジャックに対するいろいろな干渉が可能なのではないか、こういう解釈をするのですが、先ほど戸叶委員の御質問の中でもハイジャッキングは四条で関知しない、むしろ十一条に限定されるのだというような趣旨の御答弁がありましたが、その辺をひとつはっきりと……。

山崎敏夫外務省条約局外務参事官

○山崎説明員 先ほどの答弁で、四条はハイジャッキングに全然関係はないんだというふうに私がもし申し上げたような感じがございましたら、それは確かに誤りでありまして……(戸叶委員「そうおっしゃったですよ」と呼ぶ)いや、これは干渉する場合のことを私は申し上げたわけでございまして、干渉し得るのは機内で行なわれた犯罪について刑事裁判権を行使する場合だけであるということでございます。ですから機内で行なわれた犯罪というものの中に、ハイジャッキングがその航空機の登録国において犯罪とされている場合にはもちろん犯罪となるわけでございます。

大久保直彦公明党

○大久保(直)委員 では逆に伺いますが、「よど号」のケースをもう一回想定しまして、「よど号」が韓国沿岸を北進した場合に、この四条で韓国が締約国であった場合に干渉できるというふうに解釈されるわけですけれども、そういう解釈でよろしいわけですか。

西堀正弘外務省国際連合局長

○西堀政府委員 この第四条に列挙されておりますところの犯罪でございますけれども、 ハイジャッキングの場合(a)から(e)のいずれにも該当しないというケースは現実的に考えますとないのじゃないかと思うのでございます。ただ、実際問題としてハイジャッキングの場合には、おそらくここに掲げられているような犯罪が行なわれるというのが普通の場合じゃないかと思うのでございますが、それに加えましてハイジャッキングという罪が今度のICAO条約によって設定されますならば、ますますこれは明確になるわけでございますけれども、それがないといたしましても、いま申しましたようにおそらくは同じように(a)から(e)の犯罪も行なわれていると考えざるを得ないと思います。かりにそのような場合におきましても、この第十一条の規定によりまして締約国は機長が航空機の管理を回復または保持せしめるための適当な措置をとるということになっておりますので、したがいまして、いまのような場合に相当しない場合でも問題はない、これは先ほど山崎参事官の申したとおりでございます。

大久保直彦公明党

○大久保(直)委員 四条の「干渉」というケースでございますけれども、やはり締約国の自主的な判断によって干渉というのが行なわれることになると思うのですが、たとえば日本政府が該当締約国に対して干渉を依頼するなんということはあり得るのでしょうか。

山崎敏夫外務省条約局外務参事官

○山崎説明員 御質問の趣旨を私十分理解しているかどうかわかりませんが、ハイジャッキングの場合になりますと、ハイジャッキングそのものをかりに着陸国のほうが犯罪としておるならばその犯罪について干渉することはあるし、しかも(a)ないし(e)に該当する場合には干渉することはあるというわけでございますが、ただ普通の犯罪の場合には、着陸国が自主的に判断する問題であって、登録国のほうから刑事裁判権を行使してくれということを特に依頼するということはちょっと考えられないわけでございます。

大久保直彦公明党

○大久保(直)委員 現状においては干渉の依頼ということは考えられないというふうに承っておきます。  六条に移りたいと思いますが、ここで機長の警察権とまでいかないまでも、「目的に必要な妥当な措置(拘束の措置を含む。)をとることができる。」ということが明記されているわけでございますが、この飛行中の機長に「拘束の措置を含む」という「拘束の措置」でございますが、この間もある民間会社のある機長会では、この一項目については非常に歓迎を示しているそうでございますけれども、具体的に、じゃどういうことになるのかということを話し合ったときに、コーパイがおりましても機長というのは必ずあそこの席におるわけなんですが、拘束するといっても具体的に、じゃどういうかっこうでその拘束することが考えられるかという問題については、あまりいい手はない、こういう返事が返ってきたわけなんです。実際にあの狭い機内で、もし酔っぱらいなり、他の乗客に危害を加えるような者が出た場合、そういう単純なものからもっと政治的な犯罪のにおいのある行為が生じた場合、拘束するという取りきめはあるのですけれども、どんな形の拘束が予測されてこういったことになったのか、現実問題として非常に行動がしにくいのじゃないかと思うのですが、たとえば具体的に酔っぱらいが出て、機内であばれて他の乗客に暴行をふるったというようなことがあった場合、その場合の拘束というのはどんなことになりますでしょうか。

山崎敏夫外務省条約局外務参事官

○山崎説明員 今回のような、よど号事件のような場合には、なかなか実際問題としては拘束がむずかしいとわれわれは思うのでございますが、いま先生の御質問になりましたように、ある一人の人が酔っぱらってあばれたという場合には、機長は別に単独で行動する必要はないわけでございまして、ことに第二項にもございますように、他の乗り組み員に対して援助を命じることもできますし、さらに乗客に対しても援助を要請できるわけでございます。援助を義務づけることはできませんが。まあ、多数で飛びかかって取り押えて手を縛るということぐらいはこれでできるのではないかと思います。ただ、それがいろんな凶器その他を持っておる場合には、実際問題としてどこまでできるかということになりますと、これはなかなかむずかしいことは事実でございます。

大久保直彦公明党

○大久保(直)委員 私もいまの山崎さんのお考えに全く賛成なんですけれども、手を縛っていいというのなら、手錠ぐらい持たすようにしたらどんなものでしょうかね。

寺井久美運輸省航空局審議官

○寺井説明員 お答えいたします。  手錠を持たせるというような具体的な措置につきましては、これは特に国際間の問題でございますので、関係航空会社等と具体的な手段につきましては目下検討いたしておる段階でございまして、持たせるとか持たせないとかいうところまで決定いたしておりません。

大久保直彦公明党

○大久保(直)委員 確かに現実問題とすれば、ごく善意に解釈して、手を縛るぐらいのことは生じ得るのじゃないかと思うのですね。その場合、まさか自分のベルトをひっこ抜いて手を縛るわけにまいりませんし、そうすると、あらかじめひもを用意しておくかということになると思うのですけれども、その辺はどうでしょうか。また現実問題、確かに拘束したほうが私はいいと思うのですけれども、ただ拘束できるというこの条項があっても、現実問題、機長としては拘束のしようがないんじゃないか。こういう問題が残っていると思うのですが、その辺はいかがですか。

寺井久美運輸省航空局審議官

○寺井説明員 ただいまの御意見のとおりでございまして、具体的な措置というものは今後に残っております。したがいまして、たとえばおっしゃるように適当なひもを用意するとか、場合によっては手錠を用意するというようなことにつきましては目下検討中でございます。

大久保直彦公明党

○大久保(直)委員 そうすると東京条約では拘束できるけれども何もできないぞと、こういうことでございますね、まあ実際問題として。

山崎敏夫外務省条約局外務参事官

○山崎説明員 東京条約は「必要な妥当な措置」、それには「拘束の措置を含む。」と書いてあるわけでございますから、その国の考え方によって手錠を持たせてもいいわけでございまして、東京条約はそこは各国の判断ないし措置にまかしておるわけで、手錠を持たすことも当然できると思います。

大久保直彦公明党

○大久保(直)委員 続いて第二項について伺いたいと思いますが、機長は、「旅客に対しては、援助を要請し又は承認することができるが援助を命ずることはできない。」と、こういうふうにあるわけですけれども、援助云々ということは、そのために生じた損害といいますか、旅客に援助の協力を求めた、そのために旅客が相手から暴行をふるわれたりいろんなもので損害を生じた場合、その補償の問題はどういうふうになっておりますでしょうか。  つけ加えますけれども、陸上の警察法によりますとこれはかなり、たとえばおまわりさんなんかがどろぼうを追っかけていってつかまえてくれと言った場合に、その人がつかまえそこなって逆に暴行を受けたり損害を受けますと、これはちゃんと補償があるのですね。

山崎敏夫外務省条約局外務参事官

○山崎説明員 乗客が犯人の逮捕に協力することによってけがをしたような場合、これはやはりその乗客とまあ第一次的には航空会社との間で話し合って、これは常識論かもしれませんが、航空会社としては妥当な補償をすべきものだと私は考えます。ただその場合に、そのけがしたのをどうしてくれるという問題についてこの条約がそれをどうしろと規定しているわけではございません。ただ常識的には当然航空会社はそういうものについては補償すべきであろうと考えます。

大久保直彦公明党

○大久保(直)委員 たとえばこの国際条約で機長の権限を大幅に拡大をして、乗客に対してその事件に対する援助を要請することができる、こう明記したわけなんですが、要請してそのあとのことは航空会社にまかせっぱなしということになるわけですか。いまの山崎さんの答弁ですとそういうふうに受け取られますが。

山崎敏夫外務省条約局外務参事官

○山崎説明員 先ほど申し上げましたように、そういう場合に具体的に航空会社はどうしろということまでは書いていないのでございます。ただ関連でございますけれども、第十条に、逆にその援助を要請された乗客が犯人をなぐって傷つけたとかそういう場合には免責されるということが、この十条には書いてあります。しかし逆に乗客が犯人になぐられてけがをしたという場合については、そこまでは条約は触れていない。それは結局それぞれの国内法によって処理すべきだという考えになっておるわけでございます。

大久保直彦公明党

○大久保(直)委員 くどいようで申しわけないのですけれども、機長にそれだけの権限を負託してその権限の拡大をはかったことは非常に望ましいと思うのですけれども、ただそのことによって生じたいろんな損害問題をやはり責任を持ってきちっとめんどうを見ておいてあげないと、権限を与えたけれども、あとのことはよくわからんぞというのでは、与えられた機長のほうも戸惑うのじゃないかと思うのですが、いかがでしょうか。日本の場合だったらどういうふうになるわけですか。

寺井久美運輸省航空局審議官

○寺井説明員 具体的な例を申し上げられませんが、たとえば日本航空の中でこういう事件が発生して機長がお客に援助を求めた、そうしてお客がけがをしたというような場合に、日航がどうするというふうなものははっきりきまっておりません。これはやはりそのときのケース・バイ・ケースで日航がある程度の補償を当然考えるであろうということでございます。

大久保直彦公明党

○大久保(直)委員 いま山崎さん十条とおっしゃいましたけれども、確か十条は免責条項であると思うのですが、ただ旅客の措置ですね。逆に今度機長の判断がおかしくて、自分は別にそういう意図はなかったけれども、機長が見て、信ずるに足る理由だと思って妥当な措置をとった。ところがそれが全く思い違いといいますか、見込み違いであった場合、その旅客に対する機長の不当行為に対して、旅客のほうの補償はこれは求め得るのですか。

山崎敏夫外務省条約局外務参事官

○山崎説明員 機長の判断が適当でなくて、やる必要のないことについて援助を一般の旅客に対して要請して、そしてその旅客がけがをしたというふうな場合でございますね。そういう場合は常識論といたしまして、やはり航空会社に対してその旅客は補償要求をし、あるいは訴えを起こすということは当然できるとわれわれは思います。ただしかし、それはあくまで国内法にゆだねてあるということでございます。

大久保直彦公明党

○大久保(直)委員 その国内法、いますぐどれがどれだということは御答弁いただけないかと思いますけれども、機長が要請した云々じゃなくて、この十条にある規定は機長が行動を起こした場合の対象となった者ですね。その対象となった者は、もし異議を申し立てするならば、その相手はあくまで民間航空会社になるわけですか。

山崎敏夫外務省条約局外務参事官

○山崎説明員 御質問の趣旨を取り違えていたかもしれませんが、機長がそういう犯罪を犯すような犯人だと思って何かやろうとしたら、それは別に何でもなくて、そのために犯人と間違えられた人がけがをしたという場合でございますと、それはまさに日本の領土内によく起こりますような事件と同じように一種の不法行為でございますから、機長に対してその犯人と誤認された人は損害賠償を請求できると思います。これは普通の国内法の規定に従って当然請求できると思います。

大久保直彦公明党

○大久保(直)委員 前に戻りますが、第九条の第一項に「当該航空機が着陸する領域の属する締約国の権限のある当局に引き渡すことができる。」こういう文言がございます。この「引き渡すことができる。」ということは、引き渡さなくてもいいという解釈にもとれるわけでございますけれども、それは両面考えられてよろしいわけでございましょうか。

山崎敏夫外務省条約局外務参事官

○山崎説明員 仰せのとおりでございまして、引き渡す引き渡さないということは機長の判断でございます。

大久保直彦公明党

○大久保(直)委員 この飛行機の不法奪取並びにいろいろな犯罪につきましては、確かに登録国並びに締約国、そして着陸国と非常に複雑な関係の中で事の問題が処理されなければならない非常に複雑な内容を含んでいると思うわけでございますけれども、いま伺った裁判権の調整の問題でありますとか、あるいは機長に与えた権限の範囲の問題、具体的な内容の問題、またそれによって生じられるミステークに対する処理の問題等も、今度のハイジャッキングの十二月の条約のときにはさらに詰めて、むしろ明確な、この条項を読んだだけで明らかに判断できるような国際条約ができることを強く希望いたしまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

田中六助自由民主党

○田中(六)委員長代理 曽祢益君。

曾禰益民社党

○曽祢委員 初めに外務大臣に伺いますが、この東京条約を今日まで批准しなかった理由でありますが、一つ考えられることは、日本側がこれをやっても、あとでも御質問申し上げたいと思うのですが、いろいろ政治犯罪人の庇護権の問題等も出てくるし、また前に質問された委員諸君から御指摘があったように、こういう条約加盟国が必ずしも日本の付近の社会体制の異なった国にないというような実際上の問題もあったらしい。それからもう一つ考えられるのは、日本側の国内法がまだ整備されてなかった。いろいろな理由が考えられるのですけれども、外務省、外務大臣としては、なぜ今日まで東京条約の批准を見送ってこられたのか、この点を伺いたいと思います。

愛知揆一自由民主党外務大臣

○愛知国務大臣 おおよそ二つの観点から批准が今日までおくれておったわけですが、一つは、ハイジャッキングの防止ということについてはこれでは不十分であるというようなことで、たまたま今年の十二月にあらためて会議があるということがプログラムに現実に載っておった関係もございます。もう一つは、やはり国内法の整備の問題で、これがなかなか進みません関係で今日まで延びておりましたが、しかし先ほど申しましたように、不十分ではあるけれども国際協力でハイジャッキングを防止するということについては確かに一歩前進になりますので、外務省としてはと申し上げれば正確だと思いますが、実は批准をもう少し早くしたかったわけでございます。しかしそういう点から申しますと、国内法規の整備ということがやや意に満たない進み方でありましたので今日までおくれてまいりましたが、不幸にしてよど号事件というものがあり、この際早急にと思いましたことと、それから十二月には、ひとつ不幸なる経験者として、よりよき条約について相当の発言ができる、こういうふうに考えまして、会期切迫のおりからでございますが、政府として国内法規の整備と相まって急速にその措置をとることにいたしたわけであります

曾禰益民社党

○曽祢委員 本来ならば当委員会においてもこの条約の審議と並行して、これに伴って出されております三つの法案、すなわち、一つは航空機奪取そのものを特別刑法的に重く罰する法律、それから、公安委員会から出されている、この条約十三条に基づくいろいろ警察的な措置ができるための法律、もう一つは、むしろ東京条約に一番近い、航空機内における犯罪、不法行為等に関する機長その他の権限等に関する航空法の改正でありまするが、これらのことが不幸なる「よど号」事件々契機としてわりあいにぱたぱたときまったことは、これはおくれながらよかったと思うのです。そこで外務大臣に伺うのですけれども、われわれは一々これらの国内法にからんで審査できません、その時間がございませんが、結果的にはこの東京条約を国会が承認し、これが国内法的な効果を持つにあたってのそっちの国内法の面で、いまの三つの政府の提案されているのはむろん閣議で通過したわけでしょうけれども、外務省の詳細なる検討から見て、これでいまのところ必要にして十分だ、こういうようにお考えかどうか。むろんこのほかにいろいろ、犯罪人引き渡しだとか政治亡命あるいはハイジャックそのものを厳罰するようなICAO条約案もいまできておりますが、それはそれとして、東京条約を批准するという観点から見ると、いまの三つの国内法の改正案で必要にして十分か、この点を伺いたいと思います。

愛知揆一自由民主党外務大臣

○愛知国務大臣 この点は閣議でも十分審議いたしたつもりでございますけれども、東京条約の批准をいたしますにつきましてはこの三法律案でさしあたり十分である、こういうふうな見解に立って法案の、審議をお願いいたしたわけでございます。

曾禰益民社党

○曽祢委員 条約の内容に若干触れて御質問いたしますが、私は先ほど来の戸叶委員あるいは大久保委員と政府側の応酬を聞いておりまして、第四条について私は特別に質問するつもりではなかったのですが、どうも何かすれ違いになっているような感じがしてならないのです。つまり「よど号」というものがみんな頭にあるわけだ。「よど号」みたいな事件が、日本が登録国である、つまり日本の飛行機の上で起こった、強奪事件でも何でもいいですけれども。それがまたたとえば非常に国際的にやっかいな韓国の付近の——付近といいますけれども、必ずしも領空でなくて付近に行った場合に、かりに韓国がこの条約の当事国であったような場合に、この韓国側の考えによって第(a)項、あるいは確かにハイジャックが行なわれておるし、その犯人がかりに韓国人だった場合、あるいは被害者の旅客の一人に韓国人がおって(b)項の場合、あるいは韓国の考え方によっては、そういったようなハイジャックを行なった犯罪がそのまま引き続いて北鮮に行ってしまうようなことはとんでもない韓国の安全を害するものだというふうに見る場合もあり得ると思う。そういうような場合をおそらく各委員も心配されて、私もそういう場合はどうかなという感じがするのでもう一ぺん伺います。第四条は、いかなるときに干渉が行なわれ得るのか。むろんその飛行中の航空機の場合、その機内において行なわれる犯罪について刑事裁判権を行使することを目的として干渉する、これはいいんですけれども、その航空機がたとえば韓国なら韓国の領空内のときに限るのか、公海においてもそばならできるのか、それらのことからもひとつ説明を要すると思うのです。伺います。

山崎敏夫外務省条約局外務参事官

○山崎説明員 先ほどの私の説明が十分でなかったかもしれませんが、ハイジャッキングそのものに関してこの条約が直接書いておりますのは十一条でございまして、十一条はそういうふうな場合に着陸国といいますか、その上空を飛んでいる飛行機に対してあらゆる適当な措置をとって、できるだけその機長にコントロールを回復させるということが主眼なんでございます。  それで、第四条に戻りまして、結局韓国がかりにこの条約の加盟国であると仮定した場合に、そしていま曽祢先生御指摘のように、その中に自国民がいるというふうな場合でございますが、その場合でもその機内で行なわれた犯罪について、機内で行なわれている行為が自国の刑罰法規で犯罪になる場合には確かに干渉できるわけでございます。非常に具体的に申し上げますれば、韓国がこの条約の締約国になり、しかも韓国がハイジャッキング処罰法を持っておればそれはまさに機内で行なわれた犯罪についても韓国は刑事裁判権を行使し得るわけでございます。しかもそこで自国民がインボルブしておるということであれば、確かにその場合には第四条が働いて干渉できると思います。

曾禰益民社党

○曽祢委員 それはおかしいですよ。大体飛行中の航空機を強奪するいわゆるハイジャックというものを防止する法律があろうがなかろうが、日本の現在の現行法だって赤軍派のやったことはあらゆる点からいろいろな併合罪に当然値するものだと思うのですね。韓国側もああいうことがもし韓国の飛行機の中で行なわれたとすれば、当然にこれは何らかの意味で管職権を持って処罰する立場にあると思うのです。   〔田中(六)委員長代理退席、委員長着席〕 そうではなくて、日本の航空機が——第一、上空というけれども、四条の場合どっちなんですか。領空のときだけでしょう、どうなんですか。付近の公海上の公の空の場合にまで安全に関係あるから干渉できるのですか。そこまでは私は第四条は認めてないのじゃないか、ハイジャックであろうがなかろうが、干渉できる場合というのは自分の領空の上だけだと思うのですが、どうなんですか。その点を明確にしてください。

山崎敏夫外務省条約局外務参事官

○山崎説明員 仰せのとおり、これはおもに領空を飛んでいる場合のことでございます。ただ、私がちょっと申し、ましたように、韓国がかりにこの条約の締約国であり、しかもわがほうが今度つくりましたようなハイジャッキング処罰法をつくって、それを国外犯としておる場合には、かりに日航が公海上を飛んでいるような場合行なわれたハイジャッキングであっても、自国に着陸した場合に、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)のいずれかの条件に合致すれば干渉できる、こういうわけでございます。

曾禰益民社党

○曽祢委員 話が全然違うのですよ。飛行中の場合なんだ。だから原則としてではなくて、領空以外にはできないのか、それともこの条約によってそういうような海賊行為みたいなものは——海賊行為は公海においても取り締まることはできるのだから、国籍のいかんを問わず、たとえばそういうハイジャックが、いい例だと思うけれども、そういうような航空機上の犯罪が行なわれていることを察知した場合には、自分の国の領空でなくても、たとえば第(b)項のように自分の国民が直接関係している場合あるいは(c)項のような国の安全等に関係する場合等々から見て、領空外にもいわゆる干渉が行なえることを書いているのか。第四条が基本的に重要なんですよ。国際的な海賊行為として公空でも取り締まることにしているのか。重要な点ですから、もっと明確な返事をしてください。

西堀正弘外務省国際連合局長

○西堀政府委員 先ほどから山崎参事官がお答え申し上げているとおりなのでございますけれども、要するにいま曽祢先生が申されましたように、もちろん現在のところハイジャッキングという罪は、事日韓について申しますならば、日本もまだ制定しておりませんし、それから韓国も制定しておりません。しかしながら先ほど私が申しましたとおり、ハイジャッキングという犯罪が行なわれた場合には、曽祢先生のおっしゃったとおりそのほかの、いわゆる普通の犯罪も併合して行なわれると存じます。したがいまして、そういった普通の犯罪につきまして、韓国の法律がそれを国外犯と規定しております場合にはもちろんこれがかかりまして、それで干渉できる、こういうことになるわけでございます。したがいまして、それにプラス今度のICAO条約におきましてハイジャック罪というものが制定されましたならば非常にはっきりいたすわけでございますけれども、それがない現在におきましても、ハイジャッキングというものは普通の犯罪も併合されておる。しかもその普通の犯罪につきまして、それが国外罪ということになっておりますならば、韓国のほうが刑事裁判権を持つわけでございますから、それを行使するために干渉することは、こういった次  のような例につきましてはできる、こういうことでございます。

曾禰益民社党

○曽祢委員 それはわかるのですよ。そこまではヒントが合っているのですが、干渉するあれですね。自分の領空に来ればいいですよ。着陸した場合、あるいはその犯罪人があとで韓国なり何なりに来た場合、国外の犯罪でも罰し得るのだから罰する。そうじゃなくて、そういうものが、たとえばこの間の「よど号」を想定すればいいのです。韓国に入る前に付近の公海のいわゆる領空でないところ、日本海の上を飛んでいた。そういう場合にまで干渉ができるのか。これはなかなか重大な問題だ。だからその点はどうだということを四条の解釈として聞いておるのですよ。

西堀正弘外務省国際連合局長

○西堀政府委員 この条約において予想されているのは、もちろんその当該国の領空ということにわれわれは考えておったのでございますが、いまのような御質問に対しましてはこの条約には触れておりません。したがいまして、よその国の領空、すなわちいまの「よど号」で申しますならば、日本の領空まで入ってきて韓国の空軍機がどうこうするというようなことはもちろんできませんけれども、公海の上空におきましては、これはできるものとわれわれは考えます。その点につきましては、先ほど申しましたようにこの条約は触れておりません。したがいまして、われわれとしては常識的に公海の上空までは、ここに掲げておりますところのこういった制限の範囲内におきましてはできるものと考えざるを得ない。公海の上空につきましてはこれこれの条件に合致する限りできるものと考えざるを得ないと存じます。

曾禰益民社党

○曽祢委員 わかりました。異議はありますが、そこまで明確になりました。  それからこの条約でやはり一番問題の一つは、他の同僚議員からも御指摘があったように、犯罪人引き渡しとの関係ですね。そこで、犯罪人引き渡しについての日本の基本的な立場、これは一方においては国内法による問題、それから外国との個々の条約がある場合——先ほど国連局長も日米間の犯罪人引き渡し条約があるということを言われましたが、外務省、日本政府としての犯罪人引き渡しに関する一般的な立場はどうなんですか。つまり、言いかえるならば、個々に犯罪人引き渡し条約がない場合には引き渡しの義務は生じないのか。この点をどういうふうに考えておられるのか。

西堀正弘外務省国際連合局長

○西堀政府委員 犯罪人引き渡しに関しましては、アメリカそれからイギリス、この両国は国際条約がない限り引き渡さないという政策をとっておるようでございますけれども、日本の場合には、日米につきましては犯罪人引き渡し条約がございます。したがいまして、これに従いますし、それ以外のことにつきましても、国内に犯罪人引き渡し法がございますので、それによりましてケース・バイ・ケースで引き渡すこともあり得る。それから日本と同じような政策をとっておる国がベルギーとかフランス、ドイツ、イタリア、スイス、中国、インド。こういった国々は国内法によりまして犯罪人引き渡し法を持っておりますので、必ずしも国際条約は必要としないという政策をとっております。

曾禰益民社党

○曽祢委員 ですから日本の立場は、これはもう特別に条約のあるアメリカ合衆国とはその条約によって処理されるわけですが、それ以外についてもやはり犯罪人引き渡し法の規定に従い、また大体相互主義的な——ケース・バイ・ケースというと何か全然プリンシプルがないようでありますが、必ずしも、そうでなくて、大体相互主義的な立場、たとえば犯罪人引き渡し法を持っている国との間では慣行として犯罪人引き渡しが行なわれ得るということになっているのかどうか。実際上あまりよく知らないので、これはほんとうに聞きたいわけですが、一般論としてそういうことが言えるのかどうか。全然ケース・バイ・ケースなのか。

山崎敏夫外務省条約局外務参事官

○山崎説明員 日本の犯罪人引き渡しに対する基本的な立場は、逃亡犯罪人引渡法というものがございまして、それに書かれてあるわけでございますが、日米間のように犯罪人引き渡し条約があればそれに従って処理する、しかしそういうふうな条約がない場合でも犯罪人引き渡しを請求している国から相互主義に基づく保証がなされた場合には引き渡すことになっております。それについても一応の手続がその法律の中に書かれております。

曾禰益民社党

○曽祢委員 こういったようなハイジャックみたいなものを犯罪人引き渡しの条約がある国の場合には引き渡すべき犯罪の中に加えろ、あるいはそういうものはなくとも国内法上原則として引き渡さるべき犯罪に指定しろというふうなことはこの次のICAO条約が取り扱うべき問題だと思うのです。ですからいまの東京条約がそこまでいっていないのは大体やむを得ないと思うのですが、むしろ十六条の規定に対してはどうなんですか。この点はむしろ義務を生じないということのほうを強調しているというふうに解釈していいのですか、この条約に関しては。ちょっとその点を聞きたい。

山崎敏夫外務省条約局外務参事官

○山崎説明員 仰せのとおり十六条二項では「この条約のいかなる規定も、犯罪人引渡しの義務を設けるものと解してはならない。」という制限的な規定がありますけれども、第一項におきましてはたとえば「締約国において登録された航空機内で行なわれた犯罪は、犯罪人引渡しに関しては、当該犯罪が行なわれた場所のみでなく当該航空機の登録国の領域においても行なわれたものとみなす。」というふうに書かれておりまして、その犯罪の行なわれた場所が問題になる。公海上だからどうのこうのというふうなことがないように、場所についてはなるべく広く解釈して落ちこぼれのないようにするという趣旨は、この条約にもあると思います。しかしながら先生仰せのとおり、その犯罪、ハイジャックなんかの犯罪人を引き渡すか引き渡さないか、またそれを引き渡し条約の中に入れるか入れないかという問題は、この次ヘーグで行なわれます条約において論議さるべき問題であろうと思います。

曾禰益民社党

○曽祢委員 もう一つの問題は、やはり政治亡命の問題だと思うのです。そこで、普通の犯罪人だということになれば、ハイジャックの場合に、条約の加盟国でなくともそういったような相互主義が行なわれるような国の場合には、日本側も、たとえば赤軍派の学生の引き渡しを要求し、また向こうもそういうことを日本に対して要求するという相互主義が成り立つと思うのです。ただその場合に一番問題になるのは、特にこういうケースは社会体制が異なった国に逃げる、政治的意図で、犯罪行為は確かにけしからぬけれども、いい悪いは別として、もう一つの政治的目的で自分らが逃亡する、あるいは旅客をそっちに引っぱっていく、あるいは飛行機そのものを持っていくというような政治的意図からやった犯罪があり得るわけですね。そういう場合に、どういうハイジャックを厳重に禁止する条約をつくっても、それから自分の国が引き渡さない場合には必ず自分の国の法律でハイジャック行為そのものを処罰しろという法律を今度のICAO条約でつくってみても、最終的にはそういったような政治亡命のケースの場合には、実際上抜け穴になるおそれが非常に多いのではないかと思うわけです。そこで実際問題として、日本外務省として、そういったような政治亡命関係のことを従来どう考えておったのか。それからこの条約の批准を求めるにあたって、とかく今後不幸にして起こり得るハイジャックのケースがどうも政治亡命にからんでくるケースが非常に多いのじゃないか。したがって、そういったような政治亡命の場合には一体日本としてはどういうふうな基本方針でいくのか、あるいはまた日本が、非常に社会体制というか、むしろ分裂国家の隣にすわっているようなものなので、従来からもたとえば国民政府台湾から逃げてきた者を政治亡命を認めないのはけしからぬという議論もありました。あまり政治亡命天国をつくってしまうと両方から逃げてこられたのではとてもたいへんだろうと思うのです。ですから、日本における政治亡命のあれをどう考えるか、ハイジャックの場合にはどう考えるか、この点についてひとつ外務省の基本的見解を伺いたいと思います。

愛知揆一自由民主党外務大臣

○愛知国務大臣 まことにごもっともなお尋ねでございまして、これはハイジャック問題とは関連も大いにございますが、また別な観点からも、不幸にして日本の周辺に分裂国家があるというような現状からいっても、真剣に検討を要する問題であると考えまして、かねがね検討いたしておりますが、ただいままだ的確に外務省の見解としてこうやったらよろしいという結論的な考え方にまではまだ到達いたしておりません。

曾禰益民社党

○曽祢委員 これは非常に重要な問題でありますとともに、いま東京条約の批准にあたって、この点が明確でないから非常にけしからぬという議論は成り立たないと思うのです。ですけれども、この次のハイジャックそのものを禁止するICAO条約のような場合には、これもやはりもう一つの、触れているかもしれませんが、正面から取り組めないこの政治亡命のことについて、日本側としてはどういうきちんとした態度をとるか、日本に亡命してきた場合、それから日本から航空機を利用してハイジャックが行なわれて、そうしてそれが政治的な逃亡のケースになり得る場合にはどう考えるか、これをぜひ検討していただきたい。  最後にそれに関連して、現に「よど号」で起こっておる事件からひとつはっきり御答弁願いたいのですけれども、私は、北鮮側が今度の「よど号」事件全体を通じて、むしろスマートに自分が条約に加盟していないこの東京条約の十一条に即するように、それはとにかくいろいろの理由はあったろうけれども、乗員、乗客のみならず機体もさっと返してくれたわけです。これは確かにスマートで、私は非常に心持ちはいいのですけれども、しかしやはりわれわれから見れば、赤軍派のあれは普通犯罪人だと思うのです。政治亡命に値しないと思うのです。しかしそれは問題はあり得ると思うのです。われわれはやはり北鮮側のそれ以外の行動が非常にスマートで感謝をするが、しかしやはり日本としては赤軍派のあばれ者を普通犯罪人として引き渡しを要求するのがほんとうだと思う。その点に関する明確なお答えをお願いします。

愛知揆一自由民主党外務大臣

○愛知国務大臣 北鮮側の「よど号。」事件に対してとった処置については、私もいま曽祢さんのお述べになりましたと同様の感じを持っておる次第であります。  それから犯人の引き渡しの問題でございますが、これは事件の直後から政府が言っておりますように、たてまえとしては引き渡しを求める筋合いのものであると思いますけれども、北鮮側のその後の動向等もまた同時に十分見きわめる必要もあろうかと思いますが、まだ政府としてとるべき態度を決定するに至るだけの考え方をきめておらない次第でございます。

曾禰益民社党

○曽祢委員 引き渡しを求めるのが筋合いであるとともに、少なくともこれはもてはやすような扱いはすべきじゃないのじゃないか。これは北鮮側の法権の内容に立ち入るようであれですけれども、ほめそやすような行動はされないものと理解するのですが、そういうものを見きわめて、やはり処置はきちんとしていただきたいということを要望しておきます。  私はこの質問はこれで終わります。

田中榮一自由民主党

○田中委員長 この際、午後二時より再開することとし、暫時、休憩いたします。     午後一時六分休憩      ————◇—————     午後二時十四分開議

田中榮一自由民主党

○田中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  航空機内で行なわれた犯罪その他ある種の行為に関する条約の締結について承認を求めるの件について質疑を続行いたします。不破哲三君。

不破哲三日本共産党

○不破委員 簡単に、二、三御質問をいたしたいと思います。  それで、航空機上の犯罪というものは、どうしてもこれは国際的な関係をいろいろ持ってくる。それについて整理をし、権限を明らかにする、これは今度の条約の趣旨だと思います。そして、先ほども御説明ありましたように、ハイジャックの問題というのは、この条約案の主要な対象というよりは、航空機上の犯罪一般を対象にするということであると思いますけれども、そうなりますと、これはかなりケースも多いし、いろいろな面で国際的な関係について考えておかなければいけない問題が多々あると思うのです。それでこの条約によりますと、第三条で、航空機内で行なわれた犯罪及び行為については、航空機の登録国が裁判権を行使する権限を持つというふうに規定されておりますけれども、この航空機に対して登録国以外の国が裁判権行使といいますか、あるいは特定の措置をとる点が、第四条と第十一条に設けられております。最初にこの二つの条項について質問をしたいと思うのです。  まず第一に、第四条の問題ですけれども、ここでは(a)から(e)までの五項目について、この条件の場合にその犯罪につき刑事裁判権を行使することを目的として干渉することはできる、非常に限定はされておりますけれども、登録国以外の締約国が干渉できるということを指定しております。それでまず伺いたいのは、この干渉の範囲の問題ですけれども、先ほどの午前中の質疑への答弁で、この範囲はその登録国でない締約国の領空と公海上といいますかを含むという説明がありました。そしてその際に、他国の領空は当然含まれないものと思うという説明がありましたけれども、この条約全体を見ますと、領空の問題、範囲の問題については非常に厳密な規定を各条文ごとに設けております。この第四条は、「飛行中の航空機に対しては、」ということで、その範囲については何ら限定がないわけですね。飛行中の航空機というのは、第一条では「動力が離陸のために作動した時から着陸の滑走が終止する時まで、」これはどこの国の領空であろうと、あるいは公海上であろうと、その区別なしにこのことが規定をされているわけです。実際上、第四条が範囲の問題としてどこまで及ぶかということは、非常に大きな、今後の条約の適用上いろいろな問題を生む問題でありますけれども、この第四条が実際に他国の領空の上には適用さしれないのかどうか、適用されないとしたら、それの根拠は条約上どこにあるのか。どうも、私の解釈では、これはすべての空域といいますかを含むというように解釈をせざるを得ないような感じがいたしますけれども、その点についてまず明確に伺いたいと思います。

西堀正弘外務省国際連合局長

○西堀政府委員 この第四条の規定は、午前にも申し上げましたとおり、非常に制限的な規定なんでございます。この日本文におきましては、次の場合においてのみ干渉できると、こうわれわれは訳しましたけれども、英文を見ますと、メイ・ノット・インターフェアというふうに非常に制限的に書いておりますので、したがいまして、これは元来こういったことができないのだというのが大前提でございます。しかしながら次のような(a)から(e)に掲げておりますような特殊な場合においてはできる、こういうことでございますので、したがいまして、これはきわめて制限的に解釈しなければならない。したがいまして、この飛行中の航空機という場合におきましても、他国の領域においてまでこれができるとわれわれは解釈すべきものではない、こう考えております。

不破哲三日本共産党

○不破委員 しかしこの条約では、一方では航空機の登録国は当該航空機内で行なわれた犯罪については、それがそれの領空で行なわれようと裁判権を持つということを第三条で規定をしているわけで、それに対して第四条で登録国以外の国の権限を規定をしておるわけですね、制限的に。確かに(a)から(e)までの内容では制限されているけれども、その干渉のできる地域的な範囲ですね、これについては第四条に明確な制限規定はないというふうに解せざるを得ないのですけれども、その点のいま言われた解釈が国際的にも認められている解釈なのかどうか、あらためて伺いたいと思うのです。と申しますのは、たとえばハイジャックというような問題に関しては、これは日本の周辺ではきわめてまれで、この間初めて起きたわけですけれども、一般に航空機上の犯罪ということになりますと、これはかなりいろいろなケースが想定されるわけですね。その場合に、たとえば日本の国内で飛行機が飛んでいる場合でも、(a)から(e)項に該当する犯罪が日本の領空内で行なわれないという保証はないわけで、干渉の内容についてはあとで伺いたいと思うのですけれども、この点はかなり、今後の適用上、条約上も疑義を残さない解釈を明らかにしておく必要がある問題だと考えますので、それは日本政府側の解釈なのか、それとも国際的にも妥当するものと認められている解釈なのか、その点を重ねて伺いたいと思います。

西堀正弘外務省国際連合局長

○西堀政府委員 この条の解釈につきまして、ちょっと御参考までに申し上げますけれども、国際民間航空条約、これの第一条におきまして「締約国は、各国がその領域上の空間において完全且つ排他的な主権を有することを承認する。」こういうことになっておりまして、要するに国際民間航空というものに対するところの排他的な主権というものは、あくまで領空ということにわれわれとしては考えている。したがいまして、その領空の範囲を越えたところの、いわば公海の上空でありますとか他国の上空でありますとか、そういったものは一般国際法によらざるを得ない。一般国際法ということになりますと、今度十二月の外交会議で採択されることが予想されておりますところのICAOのハイジャッキング防止条約、これによりましてハイジャッキング罪というものはいわゆる一般国際法上の海賊行為、われわれは空賊ということばを使いますけれども、として新たにこれが創設される。そういうことになりますと、これは他国の領域、公海の上空といったものにおきましても、適当と認められるところの措置がとり得ることになるわけでございますけれども、現在はそこまでいっていないということになりますと、この第四条の規定では、自国の上空ということになるわけでございます。先ほど申し上げましたように、非常に制限的に考えなければいけませんので、したがいまして、それ以外のところは一般国際法、それでは現在の一般国際法では何かと申しますと、ハイジャッキング罪というものはまだ制定されておりませんので、したがいまして、それは他国の領域というようなことはとうてい考えられないとわれわれは考えておりますので、これは単に日本政府の解釈というよりは、いずれの政府もそのように制限的に当然考えているとわれわれは考えております。

不破哲三日本共産党

○不破委員 次に、この干渉という行為の内容ですけれども、刑事裁判権を行使することを目的とした干渉という場合に、先ほどは無線による強制着陸の要請とかという事例があげられましたけれども、たとえば捜査官ないし権限を持った捜査官が同じ機内に乗り込んで、たとえばこの刑事裁判権を行使することを目的としてその犯人に対して警察権を機内で行使するというようなこともこの干渉の中に含まれるかどうか。つまり干渉ということばの行為としての内容、これについて少し概念の範囲を伺いたいと思うのです。

西堀正弘外務省国際連合局長

○西堀政府委員 第四条のそもそも前提がここに書いてございますとおり、飛行中の航空機でございますから、したがいまして、飛行中の航空機に対する干渉ということになりますと、おのずからその制限と申しますか、その範囲はきめられてくる。と申しますことは、たとえば無線によりましてこれをインターセプトするとかあるいは空軍を使って強制着陸を要請するとか、そういうことに、要するに航空機の航行に対するところの干渉ということにならざるを得ないので、その航空機の中に入ってその査察官を云々というようなことはこの条項では考えられないと存じます。

不破哲三日本共産党

○不破委員 それから第四条でもう一つ伺いますけれども、第二条にある政治的性質を有する、それから人種的、宗教的差別に基づく犯罪の除外といいますか、「第四条の規定の適用を妨げることなく」ということは、第四条に規定されているような性質の犯罪やそれに対する締約国の干渉の場合には、たとえ政治的性質を有するものであっても第四条の規定は適用されるというふうに理解をしていいのでしょうか。この「適用を妨げることなく、」ということの意味を伺いたいと思います。

西堀正弘外務省国際連合局長

○西堀政府委員 ただいまの御質問、私、趣旨をあるいは取り違えてお答え申し上げるかもしれませんけれども、第二条におきまして「第四条の規定の適用を妨げることなく、」といいますのは、たとえばこういった人種、宗教それから政治的性格を有する刑事犯罪に関する刑罰法規、これは条約の適用が除外されるということにはなっておりますけれども、その行為が第四条にあるようなものについては、すなわち領空通過国に影響を与えるといったような場合には、この第四条に規定する措置を領空通過国がとることができる、こういうことでございまして、その逆の、第四条をとる場合に第二条の規定にかかわりなくということまでは、ここまでは書いておらないのでございますから、したがいまして、あるいはちょっと御趣旨に沿わなかったかもしれませんけれども、こちらの第二条でいっておりますところの文言というのは、あくまで第四条を適用するにあたって、第二条のほうは関係ないのだ、こういうことでございます。

不破哲三日本共産党

○不破委員 次に第十一条について伺いたいのですけれども、第十一条の一項では、締約国は機長に権限を回復させるために「あらゆる適当な措置をとる。」という、ふうに規定をされています。この場合の「締約国」というのは、その飛行中の航空機が領空にいようがいまいが、つまりすべての締約国が任意といいますか、こういう措置をとることができるというふうに規定をされているのか、それとも特定の締約国をさしているのか、限定されているのか、無限定かということをまず伺いたいのです。

西堀正弘外務省国際連合局長

○西堀政府委員 事実問題として、非常に離れておるような締約国の場合は考えられないと思いますけれども、これの規定の解釈といたしましては、あらゆる締約国、すなわちこの条約の当事国となるところのあらゆる締約国が、みずから適当と思われるところの措置をとることができる、こう解釈いたしております。

不破哲三日本共産党

○不破委員 その場合に、これは先日私どもが経験したことでも、ハイジャッキングなんかが行なわれた場合の措置のとり方というのは、結果として非常に微妙で、とり方によっては大きな影響をもたらすことがあり得るわけですね。その際に、いろいろな締約国が自分の判断で措置をとれるという場合、たとえばこの前もいろいろ問題になりましたけれども、いざというときに機長の判断を尊重しなければいかぬとかいうことが原則的なやり方としていまいわれている。ところが、そういう状況の中で機長に権限を回復させるという目的は目的なんですけれども、実際にとられる措置は、それぞれの締約国がかってにいわばやれるという場合に、これが非常に複雑な結果をもたらすこともあり得るわけですね。この点について、この「あらゆる適当な措置」というものが、ここでは「あらゆる」という形で実際は無限定にいわれているわけですけれども、これは大体どんな措置でもとれるというように規定をされていると考えて——それぞれの国が判断をすれば、たとえばそれぞれの国が強制着陸させることが適当であるというように判断をすれば、これは第十一条一項に従ってやれる、あるいはこの前問題になりました誤った情報を流しての誘導ですね、ああいうこともとれるというように、締約国の場合ですけれども、この場合の「あらゆる適当な措置」というのは範囲が限られていないものかどうか。  それから、そのことが生み出すいろいろな矛盾や摩擦、紛糾、そういうものについてどう考えられているか、その二点を伺いたいと思います。

西堀正弘外務省国際連合局長

○西堀政府委員 ここで申します「あらゆる適当な措置」というのは、要するに国内法の許す範囲内でできる限りの措置をとるということを意味すると解釈せざるを得ないわけでございますが、しかし、航空機が飛行中の場合におきましては、これは申すまでもないことながら、旅客の生命の安全を考えるという以上は、強硬な措置はとり得ないというのが私は実情であろうかと思います。したがいまして、ここに「あらゆる適当な措置」と書いておりますけれども、これは確かに非常に包括的なあれでございますけれども、実際問題といたしましては、旅客の航行の安全というコンシダレーションが非常に働かざるを得ない、こう考えます。したがいまして、この条約のこの条項の解釈といたしまして、明確な、あらゆる場合についての想定をした規定はございませんが、おのずからそこには制限がある。これは常識的に考えざるを得ないのじゃないかと存じております。

不破哲三日本共産党

○不破委員 次の問題ですけれども、この条約は第五章で国の権利と義務について規定されています。ここでは主として締約国がいわば着陸国になった場合の権利義務の関係が規定されていると思うんですけれども、まず総括的に伺いたいのは、ハイジャックなりあるいは犯人を乗せた飛行機が日本に着陸をしてくるという場合に、この第十二条から第十五条にかけての一連の規定は、相手の国、つまりその飛行機の登録国がこの東京条約に加盟をしている場合にだけ日本の義務が働くのか、あるいは相手の国が加盟をしていなくても、そういう犯人なりあるいはハイジャッキングが行なわれた場合に、日本はこういう措置をとるということになるのか、そこの関係を伺いたいと思います。

西堀正弘外務省国際連合局長

○西堀政府委員 それは当然のことながら、その航空機の登録国でございますね、これがこの条約の当事国になっている場合に限られるわけでございます。

不破哲三日本共産党

○不破委員 この第十二条から第十五条を見てみますと、第十二条だけは機長という場合に、「他の締約国において登録された航空機の機長に対し、第八条1の規定に基づいていずれの者をも降機させることを容認する。」というふうに限定されれているわけですね。それで第十三条以下の「第九条1の規定に基づいて」つまり重大な犯罪を犯すと認めた者ですね。これを引き渡す場合とか、第十四条、特に第九条1の場合とそれから第十一条1の場合については、機長というのが無限定で書かれておりますね。これは第十二条の「他の締約国において登録された航空機の機長」というのがそのまま第十三条に受け継がれるという解釈なんですか。それとも第十二条と第十三条、第十四条でこれだけ明確に区分していることを見ますと、重大犯罪やハイジャックの場合には、登録国が締約国でなくても、十三条以下の義務は日本は負うということになるのか、その点の解釈を明確にしてほしいと思います。

西堀正弘外務省国際連合局長

○西堀政府委員 確かに先生御指摘のように、第十二条におきましては機長のあれに限定を付しておりますし、十三条その他においては付しておられませんけれども、これはたとえば十三条を例にとりますと、「機長が第九条1の規定に基づいて」云々とありまして、九条を見ますと、そこに限定があるわけでございますから、あえて限定がなくとも、それはやはり十二条の限定を受けた機長と同じように解すべきものと存じます。

不破哲三日本共産党

○不破委員 そうしますと、この外務省の説明書によりますと、現在の当事国は二十二カ国だとして、アジア関係の国は、日本がこれに加わることを除けばフィリピンと台湾だけになるわけですね。そうすると、たとえば近隣諸国が非常に多いわけですけれども、その中でもこの当事国以外から日本へいろいろな航空機が来た場合でも、この東京条約は当てはまらない。非常に限定された作用しか実際には持ち得ないということになるわけですね。わかりました。  それから次に第二十二条ですけれども「この条約は、効力を生じた後は、国際連合又はその専門機関の加盟国による加入のため開放される。」というように非常に限定された開放のしかたをしているわけですね。それでわれわれが日本の状況を考えてみる場合に、この限定は非常に大きな意味を持ってくる。国際連合にもその専門機関にも入っていない非常に多くの国が日本の周辺にはあるという場合に、この条約は実際に有効な航空機の犯罪の防止をやるためには非常な制約になると思うのですけれども、こういう性質の条約で加入国の限定をするというのはどういう考え方と根拠に基づくものでしょうか。

西堀正弘外務省国際連合局長

○西堀政府委員 確かに先生のおっしゃいますとおり、たとえばハイジャッキングというような犯罪を考えてみました場合には、われわれが申しますオールステート・フォーミュラー、これが望ましいのでございますけれども、たまたまこの条約はICAO国際民間航空機関、これが主宰をいたしましてできた条約でございますので、その加入条項につきましても、こういうように国連またはその専門機関の加盟国というような限定を受けたというのが事実なのでございまして、したがいまして今後われわれといたしましては、十二月にヘーグで行なわれますところの外交会議で採択を予想されておりますハイジャッキング条約におきましては、できるならばそういった限定を付さないということが望ましいわけでございますが、これにはそれぞれの諸外国の思惑もございましょうし、われわれとしてはそういう努力はいたしますけれども、それは十二月の外交会議におきますところの動向をよく見て、日本といたしましてはもちろんそれを希望いたしますけれども、これは今後の問題であろうかと思います。この東京条約につきましては、先生御指摘のとおり、確かにその点はあまり思わしくない加入条項になっておるわけでございます。

不破哲三日本共産党

○不破委員 以上で質問を終わります。

田中榮一自由民主党

○田中委員長 本件に対する質疑はこれにて終了いたしました。      —————◇—————

田中榮一自由民主党

○田中委員長 次に、窒息性ガス、毒性ガス又はこれらに類するガス及び細菌学的手段の戦争における使用の禁止に関する議定書の締結について承認を求めるの件を議題とし、審査を進めます。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、これを許します。石井一君。

石井一自由民主党

○石井(一)委員 ただいま議題となっておりますこの議定書は、一九二五年に調印されたというふうに理解いたしておりますので、いまから四十五年前にそういう問題が起こったわけでございまして、当時を想起いたしますと、第一次世界大戦が終わった後で、戦争ブームとでも申しますか、非常にそういうことがはなばなしい時代であったというふうに理解いたしておりますが、それから後に第二次世界大戦を経て二十数年間というのが経過しておる今日、その議定書が調印された時期と今日とでは、非常に大きな時代の変遷というものがうかがわれるわけでございます。今回これを批准しなければならないという理由は、説明書にも書いてありますので、国連軍縮委員会などの討議その他私十分理解をいたしておるわけでございますが、それにいたしましても、第二次世界大戦後、一体世界に合法的な戦争というものが認められておるのだろうかどうか。ある意味では国連憲章によって戦争というものはもう非合法化されておるというふうにも解釈もできます。しかしながら、現実にはベトナムその他でも火が吹いておる。こういうことを考えますときに、私はまず最初に、現在国際法上において戦争ということが認められておるのかどうか、あるいは戦争というものは第二次世界大戦後非合法化されておって、ただ自衛のための局地戦争その他しか残っておらないものか、この辺の基本的な見解をまずお伺いしたいと思います。

愛知揆一自由民主党外務大臣

○愛知国務大臣 まずこの条約論的な見解といいますか、これを条約局長から説明をお聞き取り願いたいと思います。

井川克一外務省条約局長

○井川政府委員 確かに御指摘のとおりに、いわゆる戦争、法律上の戦争というものがあり得るかどうかという御指摘でございまするが、国連憲章で一般的に武力行使というものを禁じておりますし、国連憲章の認めておりまするのは国際連合に基づく制裁措置及び第五十一条の自衛権の発動のみでございます。したがいまして、今後従来観念によりまする戦争宣言というふうなかっこうのもとに行なわれます戦争というものはあり得ないと思いまするけれども、しかしながら戦争というものの問題は概念規定でございまして、しからば戦争宣言を行なわないものは戦争ではないかということになりますと、実態的な意味の戦争というものはやはりいまの国際社会においても行なわれ得るわけでございますので、それを戦争と呼びますならば、遺憾ながらいまだに戦争というものがあり得る。いずれにいたしましても従前から結ばれ、あるいはまた今後も結ばれるいわゆる戦時法規というものは、そのような実態的な戦争の場合には適用がある、それを武力行使と呼びますかどうかは別にいたしまして、適用があるというのが現在確立した解釈だと思っております。

石井一自由民主党

○石井(一)委員 私の質問は、議定書に関する条約的な問題が多いと思いますので、どんどん政府委員から御答弁をいただきたいと思いますが、私が調査いたしましたところでは、これに類する条約といたしまして、陸戦ノ法規慣例二関スル規則、一九O七年にでき上がっておりまして、日本は一九一二年に加入をいたしております。それからもう一つそれより古い、それの親条約とでも申しますか、陸戦ノ法規慣例二関スル条約というのがございますが、私はこれらも同じような趣旨の毒ガスその他の戦争に対する行為を規制しておる法律であるというふうに解釈をいたしております。私の解釈違いかもわかりませんが、この議定書を読んでおりますと、最初に「締約国は、前記の使用を禁止する条約の当事国となっていない限りこの禁止を受諾し、」というふうに書いてございますが、すでにこの条約に加盟し批准をしておるのであれば、さらにこれに加入する必要があるのだろうかどうかということが第一点。  もう一点は、先ほど申しました陸戦ノ法規慣例二関スル条約というのは、すべての加盟国がパーティーにならなければならないという全加盟条約の規定がうたい込まれておる。その場合に、何か片一方のもとのほうの法律は全加盟条約であり、いま議題となっておるこの議定書というのはそういう構成にもなっておらない。そうすると、そこに一つの矛盾といいますか、どちらかが優先するというふうな一つの原則が出てこなければいけないんじゃないか。非常にわかりにくいところがありますので、この辺をひとつ教えていただきたいと思うのでございます。

西堀正弘外務省国際連合局長

○西堀政府委員 このジュネーブ議定書におきましては、いま先生が申されましたとおり、「締約国は、前記の使用を禁止する条約の当事国となっていない限りこの禁止を受諾」するという、こういうことを宣言しておるわけでございますが、それで「前記の条約」という中には当然陸戦ノ法規慣例も含まれております。したがいまして、ジュネーブ議定書は議定書成立以前に作成された陸戦ノ法規慣例も含む諸条約における禁止を前提としてそれをさらに拡大する表現になっているわけでございます。ジュネーブ議定書における禁止といいますのは、陸戦ノ法規慣例の中でいうところの特別の条約をもって定める禁止、これにちょうど該当するわけでございまして、両者の間には全然矛盾がないと私は存じます。

石井一自由民主党

○石井(一)委員 それではその次に毒性ガスその他ということばがございますけれども、一体これはどういう種類が含まれてくるのか。あくまでも人命に危害を与える毒性のものなのか。それ以外のいろいろな関係のものがあると思いますが、特別に化学的な分析を要求しているわけじゃございませんけれども、政府委員の見解としてはどこまでのものが入るのかということをまずお伺いさしていただきたいと思います。

西堀正弘外務省国際連合局長

○西堀政府委員 私もその化学的な内容に立ち入ってまでは御説明できないのでございますけれども、ここで申しております毒ガスという名称は非常に慣用的なものでございますので、ガス状、液状または固体状、このいずれのものであるとを問いませず、直接的なその毒作用によりまして敵の兵員を殺傷するために用いられる化学物質をさしておると了解いたしております。  この毒ガスの種類といたしましては、肺に障害を起こし窒息によって死を招くところのホスゲンなどの窒息ガス、それから血液組織の酸素利用を妨害して死に至らしめるところの青酸それから塩化シアン等の血液ガス、それから皮膚をやけどをしたように発泡させるところのマスタードなどのびらんガス、それから神経系をおかしてすみやかに死に至らしめるGBそれからVX等の神経ガスなどがございます。  これらがいわゆる致死性の毒ガスといわれておるものでございますけれども、このほかに非致死性、死に至らないところのガスといたしましては、一時的に涙を流さしたりあるいは嘔吐を催させるところのCS、CN、DMなどの擾乱剤及び催涙剤または一時的に精神の錯乱を起させるBZなどの精神錯乱剤がございます。

石井一自由民主党

○石井(一)委員 ただいまお伺いいたしました説明では、たいへん広範囲の、いわゆる毒を含んでおる有毒性の化学剤ということだけでなしに、無障害のものもかなり含んでおるというふうに私解釈したわけでございますけれども、防衛庁の代表の方お見えになっておりますか。いま政府委員がお答えになったような毒ガス類をいま防衛庁は何か持っておられる、貯蔵しておられる、その辺はいかがでございますか。

半田博防衛庁防衛局運用課長

○半田説明員 防衛庁ではただいま催涙剤を除きまして、いわゆるそういった致死性の毒ガスというようなものは、保有もしておらなければ使用もいたしておりません。

石井一自由民主党

○石井(一)委員 それでは警察庁の関係者の方にお伺いをさせていただきたいのでございますけれども、ただいま政府委員が御説明になった毒性のこういうふうなものを警察は一切使用しておられないか、あるいは万やむを得ぬ状態においてはこういうものを使用されておるか、その点をお伺いさせていただきたいと思います。

山田英雄警察庁警備局警備調査官

○山田説明員 警察が保有しております催涙ガスはクロルアセトフェノンだけでございます。この催涙ガスは一時的な催涙効果で人の行動を抑制する、そういう作用を有するにとどまっておりますので、国際条約その他でいわれております毒ガスには、その性能上からいいましても含まれないというふうに考えておるわけでございます。

石井一自由民主党

○石井(一)委員 それではもう一度外務省の政府委員にお伺いするわけでございますけれども、外務省の見解では、ただいま防衛庁並びに警察庁の代表の方がお答えになったそういう毒性の催涙剤もこの条約に含まれておる、こういうふうに解釈になるのか、それともそれは除かれるというふうに解釈になるのか。

西堀正弘外務省国際連合局長

○西堀政府委員 私が先ほど申し上げましたのは、毒ガスの種類にどんなものがあるか、こういった一般的な御質問かと思いまして、全部を掲げたのでございますけれども、このジュネーブ議定書におきましては、それらの要するに大量殺戮に寄与するような化学兵器でありますとか生物兵器を禁止しているのでございまして、われわれの見解と申しますか、この点につきましては国際間に合意が見られないのでございますけれども、催涙ガスというようないわば暴徒鎮圧のためのガスといったものは含まれていないということに解釈いたしております。

石井一自由民主党

○石井(一)委員 私はこの質問の中で、警察あたりが使っておられる催涙剤等がいけないというふうなことを決して申しておるわけじゃございませんけれども、そういたしますと、ただいまの政府委員の見解では、いま日本の国の中にはこの条約の中で問題になっておる毒性というものは存在しない、こういうことになるのじゃないかと思うのであります。防衛庁はごく一部のそういうものしか持っておられないし、それはこの条約に当てはまらない。次に警察庁のほうもそういう当てはまるような毒性のものは使用しておられない。こういうふうに解釈した場合に、それではわが国にはこの議定書の対象になっておる毒性のものは、秘密にどこかにあるかもわかりませんけれども、それは政府の関知すべき筋合いのものじゃないということになりますと、具体的にそういうものがない平和国家である。その場合に、全然ないものに対して、それを使わないという議定書に入るということが私にはちょっとふしぎに思えるのですが、その辺はいかがでございますか。

西堀正弘外務省国際連合局長

○西堀政府委員 全くないかというように仰せになりますというと、これは実験と申しますか、予防措置、防衛措置でございますね、それをするためにあるいは実験室その他において若干あるのかもしれませんけれども、このジュネーブ議定書が予想し、ないしはそれを防止しようと考えておりますところの意味におきますものが日本にないことは、これは先生のおっしゃったとおりでございます。したがいまして、それの使用だけを禁止するというこの議定書は意味がないじゃないかということは、なるほど考えようによってはそうでございます。またさるがゆえに日本は軍縮委員会に「おきまして、この毒ガスその他のものの使用を禁止するということだけでは不満足でありますので、と申しますか不完全でありますので、使用のみならず、化学兵器、生物兵器の開発、製造それから貯蔵、こういったものをすべて禁止しよう、こういう提案をいたしておるわけであります。」たがいまして国際条約として望ましい姿としては、この使用のみならずこういったいわば根源の開発、製造、貯造といったものも禁止すべきであるとわれわれは考えております。しかし現在ありますこの条約、これにつきましては、昨年の第二十四回国連総会におきまして日本もその共同提案国になったのでございますけれども、決議におきまして、まず第一歩として、使用を禁止するこのジュネーブ議定書にまだ当事国になってない国は当事国になろうじゃないかというようなことを決議いたしたこともございますし、それから軍縮委員会におきますところの日本の立場から申しましても、——日本の立場から申しましたならばもちろん全く第一歩でございますけれども、全面的な禁止を主張している日本が、使用程度のことを禁止しているところのこの議定書にいまだ当事国になっていないということは、これはつじつまが合わないと存じますので、したがいまして、これの批准をお願い申し上げている、こういうことでございます。

石井一自由民主党

○石井(一)委員 御趣旨はよくわかりましたし、いわゆる道義的な意味でも、軍縮委員会での日本の立場ということも考えてもちろんこれに批准を与えようということだと思うのでございますけれども、こだわるわけじゃありませんが、先ほどの前段のお答えの実験とかなんとかいうのが問題になってあるわけじゃないのであって、これを禁止するというのは、大量の殺害というような非常に大きな戦闘行為におけるこれの使用ということでありますが、ところがそういうものすら自衛隊にも警察にもどこにもないという場合には、私はこのもの自体の毒ガスがどうだとか何だとかいうよりも、日本としての一つの道義的な国際社会におけるステータスといいますか、そういうふうな考え方から平和国家としてこれに参画するのだ、そういうふうなものにもつと意味があるんじゃないか。国内的には何といいますかそういう物騒な、私がいま一つの仮説として聞いておるような問題は全然ない、こういうふうに解釈していいんじゃないんですか。その点ひとつ御確認をいただきたいと思います。

西堀正弘外務省国際連合局長

○西堀政府委員 そのとおりでございます。

石井一自由民主党

○石井(一)委員 それでは次に、この問題に関して国連の場でいろいろ各国の主張がなされて、日本が積極的な参画をしておられることも承知しておるわけでございますけれども、一つは、これに関連して生物学兵器の禁止に関する議論で英国案が出されておる。これは私が解釈いたしておりますものでは、生物に危害を与えるそういう兵器については禁止しようじゃないかというふうなことが主張されておるのでございますけれども、それよりもさらにこの製造、貯蔵すべてを禁止しようというソ連案が出ておる。そこに多少のニュアンスの違いというふうなものがある。さらに私が理解いたしておりますのでは、日本の代表である朝海代表は、最初にはソ連案に対する支持の表明をなされたようでございましたけれども、安倍代表はどちらかというと、ソ連案ということまで含めるというのは少し無理じゃないかというふうな感触をその主張の中で示されておるというふうなことを伺っておるわけでございますけれども、この辺の軍縮委員会並びに国連の場における最近の動向について簡単に御説明をいただきたいと思います。

西堀正弘外務省国際連合局長

○西堀政府委員 まず日本の立場は、先ほど申し上げましたとおり化学兵器及び生物兵器すべてについて、使用のみならず開発、製造、貯蔵、これらを禁止すべきである、こういう立場を昨年の朝海代表も打ち出したわけでございます。それでいま先生のお話はそこに少し違ったところがございますのですが、英国は化学兵器及び生物兵器といううちの生物兵器、これについてのみ開発、製造、貯蔵それから使用を禁止する、こういう提案をいたしたわけでございます。それからソ連は化学兵器、生物兵器の両者についてこれの使用——使用とはジュネーブ議定書もございますので言わなかったようでございますが、要するに開発、製造、貯蔵を禁止する、こういうことをソ連が言ったわけでございまして、その限りにおきましては確かに朝海代表の両兵器を禁止するというのとは合致するわけでございますけれども、ソ連はそういうことを言いながら実は検証規定というものは全然なかったわけでございますので、その点が日本としてはとうていのめない。英国のほうは生物兵器のみでございますけれども、これは査察の規定も含んでおる。そこで、日本の主張いたしておりますのは化学兵器及び生物兵器両方、それに査察条項をきちっとつけたものをつくらなければならない、これが日本の主張でございます。  そこでこの査察と申しますか検証の規定というのは、実は生物兵器につきましてはこれはある程程可能であり、また化学兵器に比べますならば容易でございますけれども、化学兵器といいますのは、これは平和的に利用されるものと軍事的に利用されるものとが紙一重でございまして、これを製造、開発その他を禁止するということになりましても有効な査察、禁止のための有効な検証ができるかどうかという点が非常に困難な問題でございます。したがいまして、日本といたしましては、いまなお化学兵器、生物兵器の全面的な禁止、しかもそれの有効な検証というのをうたっておるわけでございますけれども、いかにしてその検証を有効にするかという点につきまして、まず専門家の意見を聞いて、そうしてそれができ次第にそういった全面的な禁止の条約をこしらえようではないか、こういう点から、まず有効な検証の方法にはどういうふうなものがあるかということで、専門家の会議を実は日本が提唱している、こういうことでございまして、朝海代表がソ連の提案をサポートしたというようなことではなしに、たまたまBC両方の兵器、その点につきましては検証の規定が、先ほど申しましたように違いますけれども、その点がソ連の主張と若干合致したというような様相を呈したわけでございますけれども、検証規定を欠いておるという意味におきまして、その点が非常に差がございますので、その点念のために申し上げた次第でございます。

石井一自由民主党

○石井(一)委員 もう私の聞きたいことはほとんど終わったのでございますが、締約国がかりにこの議定書に違反をした場合にどういう制裁を受けるようになっているわけでございますか。

西堀正弘外務省国際連合局長

○西堀政府委員 この議定書に違反をいたしまして、これら兵器を使用した国に対する制裁という御質問でございますが、この議定書に関する限りは制裁規定はございません。しかしながら先生ここでごらんになりますとおり、御提出申し上げております議定書の二ページ目の二行目でございますけれども、「この宣言の文言に従って相互に拘束されることに同意する。」というところがございますので、かりにある当事国がこの議定書に違反をいたしましてそれを使ったという場合においては、他の当事国はこれに拘束されない。要するに相互に義務を受けたわけでございますから、相手国がこれに違反したという場合には、こちらもその拘束から免れることになります。これが制裁といえば制裁といえるかもしれません。

石井一自由民主党

○石井(一)委員 なおフランス共和国政府がこの議定書の寄託国になっておるのはどういう理由でございますか。

西堀正弘外務省国際連合局長

○西堀政府委員 国際条約ができましたときに、それの寄託国というのは特にどこでなければならぬというような、はっきりした国際間の規則と出しますか、慣行というようなものもないわけでございますけれども、大体いままでのところでは、普通その条約がつくられたところが寄託国になるのが非常に多かったわけでございます。この議定書はジュネーブでつくられたわけでございますけれども、当時、これは一九二五年でございまして国際条約その他のことにつきましてフランスが、いわば国際会議と申しますか、国際的なこういったものを取り扱う国家として、米英などに比べまても相当はでな活躍をしておった当時でございますので、この当時の条約にはフランスを寄託国にしているものが非常に多うございます。それから現在におきましては、寄託する先といたしましては、国連ができましてから国連ということもございますし、それからその他の国も多うございますけれども、当時はヨーロッパのこういった国々が非常に多かった、それだけのことでございまして、特に申し上げるべき理由はないかと存じます。

石井一自由民主党

○石井(一)委員 以上で終わります。

田中榮一自由民主党

○田中委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後三時七分休憩      ————◇—————     午後三時二十九分開議

田中榮一自由民主党

○田中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  航空機内で行なわれた犯罪その他ある種の行為に関する条約の締結について承認を求めるの件を議題といたします。  本件に対する質疑は先刻すでに終了しておりますので、これより討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  航空機内で行なわれた犯罪その他ある種の行為に関する条約の締結について承認を求めるの件は、承認すべきものと決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

田中榮一自由民主党

○田中委員長 御異議なしと認めます。よって、本件は承認すべきものと決しました。      ————◇—————

田中榮一自由民主党

○田中委員長 次に、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とオーストラリア連邦との間の協定の締結について承認を求めるの件、所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国とイタリア共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とグレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国との間の条約の締結について承認を求めるの件及び所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国とインドとの間の協定を修正補足する議定書の締結について承認を求めるの件、以上四件を一括議題として審査を進めます。  各件につきましては質疑及び討論の申し出もございませんので、直ちに採決いたします。  右四件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕

田中榮一自由民主党

○田中委員長 起立多数。よって、四件は承認すべきものと決しました。     —————————————

田中榮一自由民主党

○田中委員長 おはかりいたします。  本日議決いたしました五件に対する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

田中榮一自由民主党

○田中委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決します。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————

田中榮一自由民主党

○田中委員長 次に、窒息性ガス、毒性ガス又はこれらに類するガス及び細菌学的手段の戦争における使用の禁止に関する議定書の締結について承認を求めるの件を議題とし、質疑を続行いたします。戸叶里子君。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 先ほどちょっと席をはずしまして、自民党の同僚議員の御質問があったかもしれませんが、重複したらお許しを願いたいと思います。  先ほどの御質問の中で、毒性ガスというのはどういう種類のものを含んでいるのかという御質問があったと思いますが、それに対しまして、人命に危害を与えるものだけでなくて、ガス状のもの、液体、それからまた直接的なもので敵を殺すようなもの、あるいは窒息させるようなもの、あるいは酸素を断って危害を与えるようなものというふうなびらん、神経を麻痺させるようなものというふうに、たいへん広範にお述べになりましたが、それらはいずれもこの中に含まれている、この議定書で禁止されているというふうに了解するわけでございますが、この辺のことをちょっとさっき伺いそこなったものですから、もしもそういうものが全部この中に含まれないとするならば、どの範囲のものをこの議定書では禁じているのかということをまず伺いたいと思います。

西堀正弘外務省国際連合局長

○西堀政府委員 さきほど私がびらん性とかいろいろ申し上げましたが、あれは御質問が毒ガスとはどんなものかという御質問だと私承知いたしましたので、毒ガスの種類の一般をこの議定書とは関係させずに申し上げた次第でございます。この議定書におきまして禁止されるところのこれらのガスといいますのは、ここに書いておりますとおり、窒息性ガス、毒性ガス及びこれらに類するガス、こういうことでございますので、おのずからその範囲は、私が先ほど申し上げました一般論としての毒ガスの範囲よりは非常に狭くなりまして、何と申しますか、窒息性、毒性及び無能力化するところのガスというように、大量殺戮兵器としてのガスということに限定されるわけでございます。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 そうしますと、たいへんにこれは範囲が狭められてくると思います。先ほどガスの種類はいろいろ御説明になりましたが、その範囲が狭められますけれども、この議定書の名前から見ましても、「窒息性ガス、毒性ガス又はこれらに類するガス」というふうなことが書いてあるのですけれども、これらに類しないガスというのは一体どんなものでしょうか、これらに類するガスというのはどういうことでしょうか。

西堀正弘外務省国際連合局長

○西堀政府委員 先ほども申し上げましたとおり、これらに類するガスといいますのは、結局窒息性ガス、それから毒性ガスと同じような殺傷効果を与える毒ガスというものだと存じます。したがいまして、単にマスタードのごとく皮膚に作用いたしまして障害を与えるびらんガスや、それから議定書成立当時には存在していなかった、たとえば神経ガス等は、「これらに類するガス」というものの中に該当するわけでございます。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 そうしますと、「これらに類するガス」というふうなことばが使ってあるのですけれども、英文ではアザー・ガセスということばが使ってありますね。そうすると、こういうものとこういうものとほかのガスというふうに私は読むわけなんですけれども、そういうふうに読まないで、「これらに類するガス」ですか。

西堀正弘外務省国際連合局長

○西堀政府委員 確かにその英文ではアザー・ガセスでございますけれども、仏文を見ますというと、ガス・シミレールとなっておりまして、日本語に訳しましたように「これらに類するガス」ということになるわけでございます。それでは英文のほうがアザー・ガセスになっているんじゃないか、こういう仰せでございます。英文のアザーというものにつきましても、われわれ調べてみたのでございますけれども、調べましたあれは、要するに仏文のテキストのシミレールに相当するシミラーと同一の意味だ。法文におきましてアザーというようなことばが使われました場合には、特売のものを列挙したあと、ここで申しますと、窒息性のガス、それから毒性のガス、こういった特定のものを列挙した後に用いられるところの英文のアザーというものは、アザー・サッチライク、こういう意味でございます。これは、実はわれわれ調べましたのではブラック・ロー・ディクショナリーというような、法律のディクショナリーにそれがディファインされているわけでございまして、したがいまして、仏文によるところのシミレールと全く同じ、要するにシミラー・ガス、こういうことでございまして、窒息性ガス、毒性ガス、それからそのほかのガス一切という意味ではなくて前の特定のガス、それと類似するもの、こういうふうに解釈するのが正しいとわれわれは考えております。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 そうしますと、もう少しわかりやすく分けると、毒ガスの中には先ほどからも説明がありましたように、致死性のものと、それからそうでなくて、たとえばある程度麻痺をさせるとか、本能をどうかさせるとか、無能力にさせるとか、こういったものがあるわけですね。そうすると、致死性のものだけを対象にするのであって、致死性でないものはこの中に含まれない、こういうふうに判断するのでしょうか。それをどういうふうに分類をして——たとえばこの議定書に該当するようなガスというのはこうこうこういうものであるということでおあげになることができましょうか。私は、ガスの名前をあまりよく知りませんから、これはどうですかどうですかというふうに聞くだけの知識を持っておりません。いずれわが党の専門家が来てそういうことは伺うと思いますけれども、大ざっぱに言いましてどういうものをこの議定書に述べているガスと了解しているか、これを聞かせていただきたいと思います。

西堀正弘外務省国際連合局長

○西堀政府委員 非常に一般的な概念的な規定としては、国際条約にそういったことを規定したものはございませんのでちょっと申し上げかねるわけでございますけれども、必ずしも致死性でなくてもいいのじゃないかと私どもは存ずるのでございます。むしろ、このように分けたらよろしいんじゃないかと思います。  非常に一般的な分け方といたしましては、要するに、あるガスを受けると、そのガスの効果が、その場所を去ることによってたちまちなくなってしまう、いわばその効果が一時的なもの、こういったものと、それから、そうでなしに、非常にその効果が激しくて、永久にと申しますか、非常に長い期間その効果が残るといったようなものを、ここで禁止の対象としているガス、こう観念したほうがわかりやすいんじゃないかと存じます。  それで、ここに、致死性化学剤というものにつきましてもいろいろな分類方法があるのでございますが、たとえば、このジュネーブ議定書における分類、それから国連事務総長の報告における分類、その例といたしまして、また出ておるわけでございますけれども、明確に一般論として、これこれのものがこれだよというようにはちょっと概念規定としてはできないと思うのでございます。したがいまして、例示といたしましては、窒息性ガスでありますとホスゲン、毒性ガスでございますと青酸とか塩化シアン、そのほか、これに類似のガスといたしましては、びらん剤といたしましてマスタード、神経剤としてGBとかVX、そのほかの毒素といたしましてはボツリヌス毒素でございますとか、こういったもの、こういうふうにわれわれは観念いたしております。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 それじゃよく使われる催涙ガスとか、何かこう錯乱させるような錯乱剤、こういうようなものはこの中には入りませんか、入りますか。枯れ葉剤、こういうものはどうですか。

西堀正弘外務省国際連合局長

○西堀政府委員 先生のおっしゃいました催涙ガ  ス、これはもちろん入りませんし、それから、その他の擾乱ガスというようなものも入りません。最近使われておりますような枯れ葉剤といったようなものも、この議定書の禁止対象ではございません。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 私は、ちょっと疑問に思うのです。と申しますのは、外務省からいただいた「化学・細菌(生物)兵器とその使用の影響」という本の中で、ウ・タント国連事務総長がこういうことをいっているのです。一七ページですが、「一九二五年のジュネーブ議定書を承認するようとのアピールを更新すること。」「ジュネーブ議定書に含まれる禁止条項は、現在存在するあるいは将来開発されるすべての化学、細菌ならびに生物剤(催涙ガスその他の擾乱剤を含めて)の戦争での使用に適用されるものであるということを確認すること。」ということで、催涙ガス等がはっきりこの議定書の中に入っているわけですね。私どもはそういうふうに了解していたのでございますが、いまの答弁で、そういうものは議定書に含まれていない、こうおっしゃるといたしますと、どちらがほんとうなんでございましょうか。

西堀正弘外務省国際連合局長

○西堀政府委員 確かに先生おっしゃいますとおり、この本の一七ページ、これはウ・タントの報告でございますけれども、そのように書いてございます。これは、われわれが了解いたしますのは、あくまでウ・タント国連事務総長が自己の意見を述べたものである。また、このような意見を持っておる国としてはスウェーデン等があるのでございますけれども、ジュネーブ議定書の解釈の確定の問題ということになりますと、議定書当事国のみが決定する問題でございまして、現在のところ、ここにいっておりますところの催涙ガスその他の擾乱剤というものがこの議定書の禁止の対象に含まれるといった統一解釈は得られていないのでございます。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 そうしますと、この議定書できめられる毒ガスの範囲というものは、これに加盟する国々がきめるものであって、国連のこういう議定書に対して非常に力があるその事務総長が言ったことは、意見として、聞かなくてもいいんだ、こういうことになるわけですか。そうなると、私は非常に問題が大きいと思うのです。いかに私見であるにしても、こういうことをはっきりいっていらっしゃるのですよ。「議定書を承認するようとのアピールを更新すること。」しかもこういうものは「確認すること。」というふうに、一つの命令的な文章が出ていますね。それを、ここに入った国々が、私のところではそういうものは認めません、私のところではそういうものは認めませんということになったら、こんな議定書は意味がなくなりませんか。

西堀正弘外務省国際連合局長

○西堀政府委員 国際条約の解釈といたしましては、あくまで、やはり当事国の間の合意がなったものということが確定解釈でございまして、さらに、その後に、その解釈をと申しますか、その禁止対象を増大したらいいではないかというような意見、ここで申しますならばウ・タントの勧告意見でございますが、こういったものが出、あるいはまた、現に当事国でございますスウェーデン等は、まさにこのウ・タントと同じような意見を有しておって、そういった決議案も出たのでございますけれども、これは、先ほども申し上げましたとおり、日本のみならず、二十何カ国でございましたか、その決議には棄権をいたしておりますというような状況で、やはり当事国間の確定解釈、統一解釈としてはそこまでいっていないのだ。したがいまして、国際法といたしましては、全部の当事国の合意が得られるもの、特にこういった制限規定でございますので、それは拡張解釈に対するところの反対の当事国がある限り、あくまで制限的に解釈するのが常道でございますので、われわれといたしましては、先ほど申し上げましたように、これらの催涙ガスあるいはその他の擾乱ガスというものは含まれていないというのが現行実定法の立場でございます。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 資料をいただきましても、毒ガスを禁止する議定書とか、いろいろなものがあったわけですね。たとえば毒ガス投射物禁止へーグ宣言とか、へーグ陸戦法規慣例条約とか、いただいた資料の中にもあるわけですが、日本としては初出から、催涙ガスというものはこういう毒ガスの範疇の中に入らない、こういうふうに了解をしていらっしゃったわけですか。いつもそういうふうな態度をとっていらっしゃったわけでしょうか。この点を伺いたい。

西堀正弘外務省国際連合局長

○西堀政府委員 これは過去の歴史になるわけでございますけれども、このジュネーブ議定書の採択会議ではございませんで、そのあとに開かれました国際連盟の軍縮委員会の準備委員会じゃなかったかと存じますが、イギリスから、この議定書の禁止範囲の中に催涙ガスも含めたらどうかというような提案がありまして、実はそれに対する賛成の意見を表明したことがございます。その後に開かれました国際連盟の、今度は軍縮委員会そのものでございますけれども、その際にも、日本政府としてはそういった意見を述べたことがあるのでございますが、これはそういう理想論的な提案が成立しなかったのでございまして、成立しない以上、先ほど申し上げましたように制限規定でございますので、当事国といたしましてはやはり制限的な解釈をせざるを得ない、こういうことでございます。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 そのイギリスが出されたというのはいつごろですか。

西堀正弘外務省国際連合局長

○西堀政府委員 イギリスの提案は、一九三〇年の国際連盟の軍縮委員会準備委員会でございます。それから先ほど申し上げましたのは、たしか三二、三年にわたって開かれました国際連盟の軍縮委員会、そのもの、この二回でございます。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 日本で、やはり催涙ガスはこういうふうな毒ガスの中に入れて、そしてこれは戦争に使うべきではない、こういうことの意見を持ってそういう意見も吐かれてきたとするならば、なぜその意思を貫こうとなさらないのですか。そういう意思を貫いていかれたらいいと思うのです。せっかくそういう意見を二度も三度も吐いていられるのだったら、その意思をそのとおりにやっていけばいいのに、それを、こういうものは入れるべきじゃないというふうに変わられた理由はどこにあるのですか。

西堀正弘外務省国際連合局長

○西堀政府委員 先ほどから申し上げておりますとおり、これは入れるべきでないというのがわれわれの立場じゃございませんので、あるいは私申し上げている間にそういったことばを使ったかもしれませんけれども、私の意図したところはそうではなしに、こういったものは実定国際法の解釈としてここには含まれていないのだという解釈論を申し上げたのみでございまして、立法論の立場から言いましたならば、もちろんそのほうが望ましいかもしれませんけれども、これはやはり各当事国の合意がなければなりませんので、将来こういった問題が進みまして、おも立った国々がこれを含めるべきだというようなコンセンサスが得られるというような時代がまいりましたならば、あるいは日本もこれに同調するというようなことに相なろうかと存じますけれども、先ほどから申し上げましたとおり、これは実定国際法の解釈として申し上げた次第でございます。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 実定国際法の解釈としてそうお考えになっているけれども、日本としては一体どっちをお望みになるのですか。

愛知揆一自由民主党外務大臣

○愛知国務大臣 この問題は、ただいま国連局長からるる御説明いたしましたけれども、多数国間の条約の有権的な解釈を決定するのは、やはりその条約に参加をした国の全体の合意ということが必要である、こういう筋目の議論から申しまして、いわば常識的に言えば、ほかの座敷でそれに対して何らかの決議、解釈の決議が行なわれましても、それは条約の有権的な決議にはならない。こういう一つの筋目の議論である、かように存ずるわけでございます。そういう意味におきまして、国連の総会、あるいはその他の場におきまして、解釈の問題としてはこれこれのものは入らない、あるいは入る入らないよりも前に、日本としてはそういうところで意思表示をすべきでない、こういう態度で棄権をした場合もありますことはただいま御説明申し上げたとおりでございます。  もう一つの問題は、将来の立法論の問題としていかがすべきかということにつきましては、またこれからもいろいろ御審議をいただくことと思いますけれども、現に軍縮委員会でこれらの問題等についてもっと広い範囲で各国もそれぞれの意見を出しておる関係もございますから、今後の問題としては十分慎重に日本政府として立法論として態度をきめるべきものである、かように考えている次第でございます。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 立法論として日本の政府としては積極的にそういうものを入れたほうがいいというふうなお考えで臨んでいかれるというふうにまで理解してもよろしゅうございましょうか。まだそこまではいっていないのでしょうか。

愛知揆一自由民主党外務大臣

○愛知国務大臣 これはまだそこまで言い切るだけの日本としての態度はきめておりません。立法論としてそういう問題が検討に値する問題であるということは言えると思いますけれども、やはりいろいろの他の条件と総合的に考える必要があるのではないか、かように考えております。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 先ほどスウェーデンの決議案のことをおっしゃいました。確かにここに出されておりますスウェーデンの決議案では、賛成が八十で反対が三で棄権が三十六、この中に日本が入っていたと思うのです。その理由として、先ほど私伺わない前におっしゃったんですけれども、結局このいまの催涙ガスの問題が出てきて、そしてそれが棄権というふうになられたように外務大臣のいまのお話やらそれから国連局長のお話を総合してわかったわけなんです。  そこで、先ほどからもお話がありましたように、日本では、国際連盟の軍縮委員会等ではたびたびそういうものを入れたほうがいいということを言っていらしたということの過去の歴史もあるわけですね。さっき一九三〇年、三二年、三三年の例をお引きになりましたが、私の聞いている範囲でも三一年の軍縮準備委員会でジュネーブの議定書で、禁止をされている化学剤の範囲、特に催涙ガスについては含まれるというような解釈をとっていたというふうに聞いているわけです。またそういうことがたしか「化学戦と国際法」という山下教授の本の中にも出ていたわけですね。だからそういうことから見ましても、日本はたびたび催涙ガスというものはこの毒ガスの中に入れて使うべきでないということを言われていたにもかかわらず、さて公式の場になるとやはり諸般の情勢から、そういうものを入れるのは考えるべきだとか、あるいはいまの段階では多数の国がそういうことを入れてないから日本ばかり主張してもしかたがない、そういうお気持ちはわかります。私どもとしてはそれじゃ弱過ぎると思いますけれども、でもそういう過去の歴史があるのですから、やはりもっと積極的にそういうものを入れていっていただきたい。いろいろ検討してなどということでなしに、どうしても入れるんだというウ・タント事務総長と同じような考え方にならなければ平和ということを念願する日本としてはまずいのじゃないか、こういうふうに考えますけれども、この点はどういうふうにお考えになりましょうか。

愛知揆一自由民主党外務大臣

○愛知国務大臣 お答えを繰り返すことになって恐縮なんでありますけれども、一つは要するに多数国間の条約というものの有権的な解釈というものはやはりそれをきめるべき場があるので、ただいま申しましたように、国連の第一委員会あるいは国連の総会というようなところで有権的な解釈を決定するのはいわば場が違うということで棄権をいたした。それから同時にまた、実態的にもこれに対しては相当各国にも意見がいろいろあるようでございますから、今後の各国の動向なども見守って、立法論として新たに考える問題としては検討の対象になり得る、かように私は考えているわけでございます。それから一九三一年等において日本が催涙ガス等について意見を発表しておりますのは、私の理解している点あるいは間違いかもしれませんが、これは私の理解しているところでは、立法論としてそういう主張がなされたことがある、かように存じております。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 いまの大臣のおことばを返すようですけれども、毒ガスの問題につきましてはいろいろな毒ガスというものがあるわけでございまして、私もそういうふうなこまかいいろいろなことは知りませんけれども、そのものを使うことによって人間にいろいろな非常に悪い影響、ときには死なせる問題だけでなくして、そのガスに当たったために神経が麻痺して将来使いものにならなくなるような人間も出てくるわけでございますから、十分そういうことを考慮して毒ガスといわれるようなもの、致死に至るものでないもので丸使わないようにさせるというふうな積極的な意見を出していただきたい、こういうことを私は希望します。  そこで第二の問題に移りますが、政府から出去れました説明によりますと、わが国は化学・生物兵器は使用のみならず、開発、生産、貯蔵をも有効な管理のもとに禁止することを主張している、こういうふうに書いてあるわけでございます。瀞ガス兵器というのは当然平時においてもそこまでしていかなければ意味がないと思いますけれども、この議定書は日本の政府がそういう考えを持っているにもかかわらずそこまで行ってないのじゃないか、こういうふうに考えるわけでございますから、日本としてこの際そういう希望を持っているならば、それをこういうふうにすべきであるというような提案をなされるところまで進んでいくべきじゃないかと思いますが、それらに対してのお考えいかがでございましょうか。

愛知揆一自由民主党外務大臣

○愛知国務大臣 これはまず第一に国際間の武力紛争の手段ということが一番の前提であり、目的であるわけでございますから、そういう考え方のもとにおいて使用だけではなくて、生物、化学両兵器について使用はもちろんのこと、製造、開発、貯蔵等についても、これを禁止すべきであるというのが、大体において政府の主張であり、これが軍縮委員会でもそういう線の主張をいたしておることは、先ほど来御説明いたしておるとおりでございます。同時に国際間の武力紛争の手段として貯蔵までも禁止をするということを主張するからには、やはりそれにふさわしい保障がとられなければならないということですね。何もかにもできそうもないことまで持ち出して、これをあげつらうのは、私はかえって適当ではないと思います。この一九二五年の条約は何しろ四十年前あるいはそれ以上前のことでございますから、この条約の中には、いま思えばずいぶん穴もありますし、改善の余地もあると思いますが、これは昨年の国連総会の決議もあったことでもございますから、軍縮一般に対する政府の姿勢として、たいへんおそくなって相済まぬことではありますけれども、この際、これの批准ということに踏み切って、同時に将来といいますか、もう近い将来でございますけれども、軍縮委員会等において十分日本としての主張をするのにふさわしい、また有効適切な提案というものを積極的、前向きに、あるいは建設的にやっていきたい、こういう決意をいたしておる次第でございます。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 ソ連は開発も貯蔵もやめようといっているというふうに聞いております。そして一九六八年の九月の十九日に軍縮委員会にCB兵器禁止に関する作業文書を出したというふうに聞いておりますし、これもたしか採択されていると思うのです。そうして今度は——イギリスのほうは採択されていませんが、提出だけされていますね。そこにもう一つ、イギリスのほうがB兵器禁止に関する作業文書を提出したというふうに聞いております。まあ二つあるわけでございますけれども、日本としてはどちらの案を支持されるのでしょうか。これもやはり今後の参考になりますので、伺っておきたいと思います。

愛知揆一自由民主党外務大臣

○愛知国務大臣 ただいまもちょっと触れましたように、BC全部をひっくるめて有効適切な案ができれば一番望ましいと思います。しかし、同時に査察というようなことについて、ことにB兵器などにつきましては、非常にむずかしいのではないだろうかという考え方から、場合によりましては、各国の合意のもとに専門委員会をつくり、そしてそこで徹底的に査察、検証の方式を網み出してもらうというようなことも、前進する意味で有意義な考え方ではないだろうか、というふうにも考えておるわけでございまして、ソ連の提案、イギリスの提案、それぞれにまあ率直に申しますと、利害得失あるいは実行性、非実行性というような点で、いろいろまだ検討の余地があるのではなかろうかと思いますから、各国のそういう提案も十分頭に入れ、また各国の建設的な意見も取り入れながら適切な日本政府の態度というものを最終的にきめたいと考えておるわけであります。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 日本にもこういうふうな、いわゆるこの議定書の中に含まれるような毒ガスが配置されているのではないかということが、予算委員会等で楢崎委員から指摘されましたが、その問題につきましては、私は楢崎委員にまかせまして、きょうは質問をいたしません。  そこで、次の質問に移りたいと思いますが、アメリカはたしか入っていませんね。たしかニクソン大統領が細菌戦を目的とした毒性物質による兵器の使用と製造を全面的に禁止するというような声明を発したということを私は聞いているわけでございます。そこで、そういうふうに言われているからには当然廃棄すべきであり、またあるときには上院の承認を求めるというようなことまで言っているわけでございますけれども、その後一体おやりになったのか、アメリカは入ったのでしょうか、入らないのでしょうか、どういうふうな状態になっておりますか。

西堀正弘外務省国際連合局長

○西堀政府委員 米国政府は、これは国際会議の場におきましても、その後申しておるのでございますけれども、近く批准のためにこれは議会に提出するということをいっております。しかし、ごく最近の情報で申し上げますと、議会に提出のために、その裁可を求めるべく大統領の手元にのぼっておりますけれども、まだ大統領のサインを得られませんので、それはまだ提出されるに至っておりません。しかし、近く批准するんだということは、たびたびわれわれに繰り返しております。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 ドイツは批准しておりますか。

西堀正弘外務省国際連合局長

○西堀政府委員 ドイツは当事国でございます。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 そうしますと、東西ドイツのどちらが批准しておりますか。

西堀正弘外務省国際連合局長

○西堀政府委員 ドイツは戦前に当事国になっておりまして、戦後になりましてから、もちろんそれを継承しておるわけでございますが、実は東独がさらにこれの適用を受けるという宣言をいたしております。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 そうしますと、東独も近くこれの当事国になるというふうに理解していいのですね。

西堀正弘外務省国際連合局長

○西堀政府委員 要するに、戦前に当事国になりましたが、ドイツ全体でございます。これを継承して当事国は西独と考えて——もちろん当事国とわれわれ考えておるわけでありますが、それにプラス、これは何年ですか、ちょっと私、表を持っておりませんが、東独の領域にもこれを適用するんだという宣言をいたしております。ただし、その宣言はチェコを通じて通報されたようでございますけれども、寄託国であるところのフランスからは、そういう宣言がなされたという通知が実は各国に発せられていないわけでありまして、その点いわば複雑な関係になっております。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 中国もやはりこれに加入しておりますか。

西堀正弘外務省国際連合局長

○西堀政府委員 中国につきましても、ただいま私が東独につきまして申し上げましたと同じようなことがございまして、中国は戦前に当事国になっておりまして、なおかつ戦後、中共がいまの領域にもこれを適用するんだという宣言を発しております。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 そうしますと、いわゆる台湾政府、それから中国のほうも、これを承認するといいますか、そういうふうに両方ともこの議定書を承認している、こういうふうに理解してよろしいわけですか。

西堀正弘外務省国際連合局長

○西堀政府委員 先ほど申し上げましたとおり、中国が戦前に当事国になり、その後こういった条約を、議定書をわが領域に適用するということを中共が言っているわけでございますけれども、われわれといたしましては、この結果でございますこの議定書の当事国として、二つの中国があると解釈すべきではない。この議定書の当事国たる中国は一つでありますけれども、加入手続をとった国民政府はもちろんのこと、北京政府もまた議定書を順守するという旨を約束している、そういった事実関係にすぎないとわれわれは解釈いたしております。それから、申すまでもないことでございますけれども、この議定書にわが国が締約国となりますことは、もちろんわが国がこの北京政府を承認するといったようなこととは全く無関係でございます。もっと申しますならば、この北京政府がこういった宣言をなすことによりまして、全当事国によって形成されるところのいわば、何と申しますか、条約社会といったようなもの全体に対して、この議定書を順守するという義務を負っているとわれわれは解釈いたしております。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 中国の状態が非常に複雑なものですから、政府の答弁としてはそういうことをおっしゃるのでしょうけれども、私たちから見れば、中華人民共和国それからいまいわゆる政府の言っていらっしゃる中国、両方とも当事国であるのですが、そうではなくて、一方の中国といいますか、台湾の政府だけはこれを当事国と見なす、中国のほうは議定書を確認はしておるけれども、確認をしておるだけだ、そういうふうにお考えになっておる。そうすると、ほかのこの議定書の中に入っている国々はどういう理解のしかたをしているのでしょうか。日本と同じ理解のしかたをしているのですか。

井川克一外務省条約局長

○井川政府委員 先ほど国連局長が申し上げましたとおりだと思います。当事国というものはやはり一つの国でありまして、それが中国という国である。しかし、北京政府もこれを守るということを声明している。したがいまして、現実の中国の全領域にこの条約自体としては適用があるわけでございます。そしてたとえば、最後の戸叶先生の御指摘の点でございまするけれども、最後の点を、たとえば東側から見た場合と西側から見た場合と、結局結果は同じになるわけだと思いまするけれども、東側の国々から見た場合は、おそらく中国というものが当事国であって、その正統政府が北京政府である、その北京政府が中国を代表して入っている、しかし、中華民国政府も前から入っておってこれに拘束される、したがって全体に拘束されるのだというふうに考えておるに相違ないと思います。したがいまして、東側から見ましても、この当事国が二つであるという理解はしていないと思います。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 たいへんかってなむずかしい答弁をされているように私は思うのですけれども……。それでは、いま日本の立場から考えてみまして、当事国が中国だ、こういうふうに考えてみたといたしまして、もしですよ、もし中共が議定書に違反するようなことがあった場合には、どっちに抗議するのですか。国府に抗議するのですか。

井川克一外務省条約局長

○井川政府委員 違反すると戸叶先生おっしゃいましたけれども、結局戦争がなければいいわけでございますけれども、こういうふうな戦争法規はどの国がどうしたということよりも、先ほど国連局長が申し上げました、こういう条約によってでき上がっているところの国際社会、条約社会というものに対して義務を持っているのだ、そういうふうに私どもは理解しておりますし、おそらく世界の人々も少なくともこの分裂国家という現状におきまして、あるいは部分核停その他宇宙条約あるいはもう一つの新しい条約などをつくりましたときのことから考えましても、その人たちがまた世界各国の常識だといたしましてこれに入ることによって、二つの国というものを認めるということではなくて、みんなのものが、いわゆる政府と称されるものがみんな入って、その入ったところの条約社会に対して義務を持ってもらいたいのだ、そのことが現在の国際法の発展あるいは国際社会の秩序維持あるいは平和への努力に貢献するのだ、こういうふうに考えていると私は思います。また世界の意見もそうだと思います。したがいましてそのときに、はたして違反行為があったならば二カ国関係においてどうなるかというふうなところは、これはもうおそらくことばだけの問題であって、条約全体が禁止していることをやってはならないのだ、やらないのだというところに価値があるのだと思います。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 おっしゃるところもごもっともだと思います。ただ問題は、私がいままで質問をしてまいりましたように、毒ガスというようなものを戦争に使ってはいけないのだという、その毒ガスの種類というものがもう少しふやされていかなければいけない、たとえば催涙ガスとかそういうものまで入れなさいということを申し上げてきたのですけれども、そうなってまいりまして、いろいろなガスがずっと入ってくる、そういうふうなことを考えましたときに、幅広くなってくるのと、もう一つは、私の意見として言いたいことは、こういうふうなものは戦争のときには使ってはいけないのだ、こういうふうに言われるわけですけれども、いま戦争というようなものは定義づけられない状態になっておりますね。いま国連で戦争とは何ぞやということは私は言えないと思うのですよ。だから紛争とかなんとか、そういうふうなことならあると思いますけれども、そういうふうなことから考えていきますと、いわゆる国家間の紛争とかあるいはそういうものにまでこういうものは使うべきものではない、こういうふうな観点に立って見たときに、理想的なところまで行ったときに、一体こういうふうな議定書に示されているところと違うようなことが起きたときはどうなるだろうか、こういうことを疑問に思ったものですから、質問をしたわけでございます。これに対する答弁は要りません。  そこでもう一つの問題は、この留保条項ですね。資料をいただきましたけれども、その留保条項のついている国は中国ではなくて、中共のほうだけでございますか。この資料によりますとそうなんでございますけれども、そうなんですか。

山崎敏夫外務省条約局外務参事官

○山崎説明員 仰せのとおり戦前の中華民国が加入いたしましたときには留保しておりません。戦後北京政府がこれの加入を承認したときには相互主義を条件としたわけでございます。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 アメリカがいまカンボジアとかあるいはベトナムなどでいろいろな毒ガスを使っていると思うのですけれども、こういうふうなことに対してはどういうふうに解釈をしたらいいか、これを説明していただきたいと思います。

西堀正弘外務省国際連合局長

○西堀政府委員 われわれの了解する限りにおきましては、米国軍はカンボジアにおきましてはもちろん、ベトナムにおきましても、この議定書でもって禁止の対象となっておりますところのガスは使用していないと存じております。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 政府のほうで使用していないというふうに断定されてしまえば、私はあとことばを継ぐことはできないと思うのです。というのは、どういうガスがどれで、どういうガスがこの議定書に合うかということを名前をあげることができませんから、その名前とカンボジアその他で使っているガスと名前が合わなければわからないわけですから、これは専門家におまかせしたいと思います。  警察の方がおいでになっていると思いますが、警察は学生などの暴動を鎮圧するためどういうガスを使っておられますか。その種類を述べていただきたいと思います。

山田英雄警察庁警備局警備調査官

○山田説明員 警察が装備として保有しておりますのは、クロルアセトフェノン、通称CNと称されている催涙ガスでございます。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 このガスの種類とかいろいろなものにつきましては、あと同僚の議員から質問されますので、私はこの程度で質問を打ち切りたいと思います。

田中榮一自由民主党

○田中委員長 速記をとめて。   〔速記中止〕

田中榮一自由民主党

○田中委員長 速記を始めて。楢崎弥之助君。

楢崎弥之助日本社会党

○楢崎委員 明日本格的な質問をいたしたいと思いますが、きょう戸叶委員の質問に関連をして一、二お伺いしておきたいと思います。  ジュネーブ議定書は正文は何になっておりましょうか。二つ原本が出されておりますが……。

山崎敏夫外務省条約局外務参事官

○山崎説明員 議定書の一番あとのほうに書いてございますように、「この議定書は、フランス語及び英語の本文をともに正文とし、」とございますから、英語とフランス語でございます。

楢崎弥之助日本社会党

○楢崎委員 私はこの提出されております本案の名称について大きな疑問があるわけです。作為的なこれは訳文である。どうしてかというと、窒息性毒ガスまたはこれらに類するガス、いままで政府の答弁あるいは国際条約の訳文を見てみると、英語のほうにアザー・ガセス、こちらを使ってあるのです。その他になっている。これが大部分の訳です。日本政府も去年あるいはおととしの私の質問に対して、佐藤さんはその他のガスと訳した。それをわざわざここに提出された本案は、フランス語のほうを故意に用いてこれらに類するとなっておる。これは非常に重要な解釈上の差異をもたらすものである。私はまず本件の名称について大きな疑問を呈したいと思います。

西堀正弘外務省国際連合局長

○西堀政府委員 これは実は先ほど戸叶先生の御質問に対してお答え申し上げたのでございますけれども、英文は確かにアザーでございますけれども、この英文におきまして——英文と申しますか英語による法律文におきまして、この場合のようにある特殊なものを特記いたしまして、そのあとにアザーとくるというときには、どういった意味かを検討いたしましたところ、これは法律辞書によったのでございますけれども、先ほども申し上げましたとおりこういうものはアザー・サッチライクの意味である。要するにこれらに類するガスという意味であるということが英文の場合にもはっきりありました。それから仏文につきましては、これもはっきりとガス・シミレールと書いてありますので仏文につきましてももちろんそのとおりでございます。なるほどわれわれいままで英文によるほうが多かったものでございますから、その他のガスと訳出していたこともございますけれども、これのほうが正しいとうことでございますので、改めるにはちゅうちょしないということで正しいほうをわれわれとしては採用した、こういうことでございます。

楢崎弥之助日本社会党

○楢崎委員 それを私が作為的にこうされたとなぜ指摘するかというと、これらに類するということになると窒息性、毒性ガス等に類するというほうにウエートがかかる。したがって、窒息性ガス、毒性ガス、またはその他ということになると、その窒息性あるいは毒性と次元の違うものまで含まれる解釈が出てくる。もしきょうの問題になっております催涙ガスがこれに含まれるかどうか。あなた方は国際的な定説ということを盛んに答弁の中で言われておりますが、いっそういう定説になりましたか。催涙性ガスをあなた方はこの議定書から対象外にするために、ことさらにこれらに類するというふうに訳し直された。これは私は大きな疑問があります。このために私は参考人も要請したいと思う。どうしてその他が間違いでこれらに類するが正しいか、ただいまの答弁では不十分であります。再答弁をお願いします。

西堀正弘外務省国際連合局長

○西堀政府委員 先ほどもお答え申し上げたことを繰り返すことになりますので、はなはだ恐縮なんでございますけれども、確かに英文ではアザー・ガセスでございます。そしてその英文、特に法律文におきましては、これは先ほど申し上げたと同じことを繰り返さざるを得ないのでありますが、それが作為的であるというふうにおっしゃられますとわれわれとしては非常に心外なのであります。と申しますのは、この場合に仏文もチェックいたしました結果、ガス・シミレールということ、これはとりもなおさずこれらに類するガスということでございますし、われわれあやまちがあったならば、あるいはよりよき訳文があったならば、それに改めるにちゅうちょすべきではない、こういうことで直した次第でございまして、非常に作為的であるというのは、実は私自身は非常に心外なんでございます。  それから定説があるというように私が申したことはございませんので、それがいま、この議定書の当事国になっているものの実定国際法と申しますか、この議定書の当事国間において一致したところの合意が見られる、コンセンサスが見られる解釈が、先ほど申しました催涙ガス、これが含まれていないのだ、こういうことでございまして、定説とかなんとか、そういう学説上の問題ではございません。あくまでこれは実定国際法たるこの議定書の解釈の問題でございます。

楢崎弥之助日本社会党

○楢崎委員 関連ですから、もう一問で関連を終わりたいと思います。  いままでの、政府関係でもよろしゅうございますが、国会の答弁では、すべて「その他」になっております。「これらに類する」というふうに訳し直されたのは、今回が初めてでしょう。私は政府刊行の国際条約集を持ってきてもよろしい。はっきり答弁をお願いします。

西堀正弘外務省国際連合局長

○西堀政府委員 確かに、先生のおっしゃいますとおり、いままでわれわれの出しておりましたのは「その他」となっております。これはしかし、あくまで仮訳でございまして、今回お出しいたしますのは、これが法制局の審議も経ましたところの、われわれといたしましての定訳でございます。しかし、仮訳として「その他の」と出しておりました当時におきましても、これは議事録をお調べいただくとわかりますとおり、その意図するところは、この英文のアザー・ガセス、それがアザー・サッチライクという意味であるといった御説明は申し上げておりますので、その点はひとつ議事録をごらんいただければわかることと存じます。

楢崎弥之助日本社会党

○楢崎委員 一応関連ですから、これで終わります。

田中榮一自由民主党

○田中委員長 細谷治嘉君。

細谷治嘉日本社会党

○細谷委員 私は、戦争中に若干毒ガスの製造に関係したことがあるわけでありますが、最初にお尋ねいたしたいことは、一九二五年、ジュネーブの議定書というのができたわけでありますが、それから、ことしは一九七〇年でありますから、ずいぶん年数がたっておるわけですが、今回これを批准しようと、こういうことにした外務大臣のお考えを、まずお聞きしておきたいと思うのです。

愛知揆一自由民主党外務大臣

○愛知国務大臣 お答えいたします。  一九二五年のこの条約がなぜいままで批准されなかったか、ことにその当時調印をしてありながら批准をしなかったかということについては、当時の状況もずいぶんよく調べたつもりでございますけれども、公に詳細に申し上げるほどの資料はございません。ただ申し上げることができるのは、第一次大戦後、その当時において一八九九年のへーグの宣言、それから一八九九年と一九〇七年のへーグ陸戦法規慣例条約の締約国に、日本は当時からなっております。同時に、このへーグ宣言あるいはへーグ陸戦法規に裏づけられて、一九二五年の、いま批准、承認をお願いしておるこの条約に盛られておるような毒ガスの使用禁止は、一般的に国際法化、慣例的になっているというふうに解すべきものである、こういうふうな関係から、特に批准をあらためてしなくてもいいのではないかというような考え方が当時からあったように考えられるわけでございます。しかし今日におきましては、今朝来御議論がありますように、BC兵器の禁止という問題については世論も非常に高まっております。国際的にもそうであります。また昨年は国連総会で、この一九二五年の条約について、まだ批准しなかった国については早く批准をして締約国になるようにという勧告が、昨年の二十四回の国連総会でも全会一致で採択された、こういう関係がございますので、これにこたえて、日本におきましてもBC兵器禁止への、少なくともこれが第一歩になり、環境を整備するという意味で、この際批准をすべきである、かような立場に立ったわけでございます。

細谷治嘉日本社会党

○細谷委員 いまのお答えでありますが、国連でこの問題が非常に重要な問題として取り上げられた理由には、一九二五年代と今日の兵器、いわゆるBC兵器の内容、おそろしさ、こういうものに雲泥の差があるのではないかと思うのでありますが、大臣の御認識はいかがですか。

愛知揆一自由民主党外務大臣

○愛知国務大臣 相当な開きがあるものと思われますが、同時にこの一九二五年の条約だけではカバーできないような重大な問題があると思いますから、先ほど来るる申し上げておりますように、軍縮委員会を中心にして、政府といたしましてもいろいろ前向きに建設的な努力をいたしておりますことは御承知のとおりでございます。

細谷治嘉日本社会党

○細谷委員 第一次世界大戦当時使われたもの、これは主として化学兵器でありますけれども、簡単にいえば、一番最初に使われたものは塩素ガス、風下のほうに向けて塩素のボンベのバルブを開いてやった、こういうことでありますけれども、最近いろいろな本に書かれてある、あるいはこのウ・タント国連事務総長の報告の内容に書かれてあるとおり、今日のBC兵器というのは当時と雲泥の差がある、こういうことはもう大臣もお認めになったので、私もそうだと思うのです。  そこでお尋ねいたしたい点は、BC兵器、たいへんおそるべきものでありますが、一九二五年にジュネーブの議定書ができて、日本も批准はしておりません。アメリカも批准をしてないわけですね。言ってみますと、当時これをやろうじゃないかと先に言い出したところが批准をしてなかった、こういうことでありますが、その後今日まで、日本も第二次世界大戦を味わってきました。いまベトナムでたいへんな侵略戦争が行なわれておるわけでありますけれども、こういうところでこのBC兵器が使われたというふうにいわれておりますが、外務大臣どうお考えですか。

愛知揆一自由民主党外務大臣

○愛知国務大臣 ベトナム戦争にこういう兵器が使われているかどうかということについては、先ほど政府委員からも御答弁申し上げましたとおりでございまして、われわれとしてはそういうものが使われていないと理解いたしております。

細谷治嘉日本社会党

○細谷委員 これは二、三年前に出た「生物化学兵器」という本でありますけれども、これによりますと、新聞等にも書かれてありましたが、使われておるということは明瞭じゃないのでしょうか。たとえばこの本にこう書いてあります。参考に読みますと、「国務省スポークスマンは、「ベトコンいぶり出しのための嘔吐・催涙性ガスだが、砲爆撃よりは人道的であって、国際法にも国際慣習にも触れるものではない」という趣旨の釈明をした。同時に、アメリカは毒ガスの使用禁止をうたった一九二五年のジュネーブ議定書を批准していないので、これを守る必要はないが、一九四三年のルーズベルト大統領のガス不使用宣言の原則は守っているともいった。」こういうふうに書いてあるわけであります。こういうふうになりますとアメリカは批准してないわけですから、ルーズベルト大統領の不使用宣言だけを守っていればいいのだ、こういうことでやはり使ったというふうに言わざるを得ないわけですけれども、いかがですか。

西堀正弘外務省国際連合局長

○西堀政府委員 ただいま大臣から申されましたとおり、このジュネーブ議定書で対象にしておりますようなガスは、米国軍がベトナムにおいて使ったというようなことはないとわれわれは存じております。

細谷治嘉日本社会党

○細谷委員 使ったことはない、大臣もあるいは局長もこういう御答弁なんですが、この間予算委員会でも問題になりましたが、日本の戦争中につくったイペリットを銚子沖に埋めた、それが漁網にひっかかって、漁民がたいへんな中毒を起こした。戦争中にイペリットを日本がつくった、あるいはくしゃみ剤等をつくったことは間違いないわけですね。アメリカでもずいぶんこの方面の研究をやっていることは、もうどなたも知っておることです。そういたしますと使ったことはないと言い切るのは、私はずいぶん問題があると思うのですが、いかがですか。まあアメリカばかりじゃなくて、日本も過ぐる第二次大戦で使っておらぬと言い切れますか。

西堀正弘外務省国際連合局長

○西堀政府委員 先ほど私申し上げましたのは、このジュネーブ議定書で禁止の対象になっているガスが使用されたことはないということを申し上げたのでございまして、米軍がベトナムにおいて主として使用したといわれておりますのはCSという催涙ガスの一種でありまして、これは先生御承知のとおり、胡淑様のにおいを有し、目、鼻、のどに強い刺激を与えるということになっておりますけれども、その効果は全く一時的なものでございまして、そこの散布された場所から去りましたならばその効果はたちまち消えうせるといった、このジュネーブ議定書の禁止の対象には入っていないガス、これは先生ただいまも申されたとおり使用されたようでございますけれども、先ほど来申し上げておりますのは、あくまでこのジュネーブ議定書の禁止の対象になっているところのガスといったものは全然使用されてないとわれわれは承知いたしております。

細谷治嘉日本社会党

○細谷委員 先ほどもちょっと質問がありましたが、ジュネーブ議定書の対象になっておる物質が非常に問題だと思うのですけれども、私がまず申し上げておきたい点は、このウ・タントの報告にも書いてありますように、一九二五年にこの議定書ができたために、第二次世界大戦等で、批准国ではないけれども大っぴらに化学兵器等を使うことについては遠慮をしただろう、そういう点の効果はあったというふうにウ・タントの報告も書いております。それはそのとおりであろうと思うのです。しかし問題は、A兵器、いわゆる原子爆弾というものはどこで実験してもこれは確認することができるわけでありますけれども、BC兵器はA兵器、アトム兵器と違いましてなかなか確認できない。こういうことでありますから、たいへん私はこの批准について心配をしておるわけです。資料にもありますが、どこの国でも批准したところについては拘束されるけれども、批准されておらぬところについては拘束されない、先方が使ったらおれも使うぞ、こういう条件があるわけですね。したがって、これが核兵器と違いまして、一体この条約批准の効果というものがどこまで期待できるのかということについて私は非常に心配をしておるわけです。大臣、この批准によって大きく効果が期待できると信じられますか。

愛知揆一自由民主党外務大臣

○愛知国務大臣 私は、先ほど申しましたように、この批准をしたからといってそれで安心のできるようなものではない。現にジュネーブの軍縮委員会にも日本は昨年以来参加をいたしておりますし、またBC兵器についての政府の考え方もずいぶん率直かつ広範に述べておるわけでございますが、そういったような建設的な前向きな考え方について列国が合意をして、そしてそれが実効をあげることによって初めて万全を期し得るものである、そして今回のこの批准はそれに対する前向きの姿勢を大いに示すということに私は主として大きな国際政治上の意義があるのではないか、かように考えておるわけでございます。

細谷治嘉日本社会党

○細谷委員 ところで、国際政治上の意義があるということでありますが、日本ではこれを研究しておりませんか、いかがですか。

西堀正弘外務省国際連合局長

○西堀政府委員 毒ガス兵器として日本で研究しているというようなことは全然ございません。

細谷治嘉日本社会党

○細谷委員 この前予算委員会で、先ほどの楢崎委員からこの問題に関係した質問があったわけですけれども、中曽根防衛庁長官は、いわゆる神経剤といわれるものについて、それらしきものは試験管内でできたけれども、そのものはつくっておらぬ、また研究材料としても持ち合わせておらない、こういうあやふやな答弁をされておりましたね。楢崎委員が取り上げられましたその研究報告という論文では御承知のように、もしそういうものがまかれた場合に除毒を一体どうするのか、こういう点に研究の対象があったわけですね。ところが、除毒の研究の対象になったそういう神経剤も持ち合わせておらぬ、それらしいものだ、そういうことになりますと、一体何のために研究したのか。いかに大臣のことばでも、部下の研究者をなめた話だろうと思うのですね。どだい化学研究報告というのはなっておらぬということになるわけですね。あんなばかな答弁はないと私は思うのですよ。そういう答弁と同じような姿勢でここにお答えいただいては、これは話が一向進まないのじゃないか、こう思うのですよ。あれについての感想はいかがですか。あなたいま、日本でそんなもの研究してないと答弁された。そんなはずはないわけですけれども、中曽根大臣は、それらしきものしかできていない、試験管の中だ、こら言っておりますね。ちゃんとあの研究報告では、そういう神経剤についてはきめられた標準法に基づいて、それがどの程度の純度であって、どの程度のものについてどういう除毒剤が効果があったか、こういう研究をしているわけですから、そのものでなければ研究報告はうそだということになるわけですね。こんなばかなことないと思うのですが、あれについていかがお考えですか、お尋ねしておきます。

愛知揆一自由民主党外務大臣

○愛知国務大臣 これはいわば私の守備範囲でございません。私は中曽根君の答弁がそのまま正しいものと了承いたしております。

細谷治嘉日本社会党

○細谷委員 そうしますと、正しいと言うわけでありますから、あの研究報告はまるきりうそだ、役に立たぬものだ、こういうことになるわけですね。そうとしか理解できないわけです。私はこれはたいへんなことだと思うのです。ずっと前の質問でありますが、私はそういうところに問題点があるということをまず指摘しておきたいと思うのです。  ところで、先ほどもちょっと質問がありましたが、この「窒息性ガス、毒性ガス又はこれらに類するガス及び細菌学的手段の戦争における使用の禁止」という場合に、個々のサブスタンスでなくていいわけですけれども、一体どういうものが対象になるのか、この辺を承っておきたいと思うのです。

西堀正弘外務省国際連合局長

○西堀政府委員 このジュネーブ議定書の禁止の対象になっていますガスといたしましては、たびたび繰り返すことになりまして恐縮でございますけれども、ここに書いておりますとおり、「窒息性ガス、毒性ガス又はこれらに類するガス及びこれらと類似のすべての液体、物質又は考案」こういうことでございます。「窒息性ガス」と申しますのは、ホスゲンのように肺組織を侵して窒息に至らしめる作用を持っておるものでございますし、「毒性ガス」というのは、青酸のように中毒作用を血液に及ぼして致死効果を与えるものをさしておるものと考えております。それから「これらに類するガス」というのは、いま申しました「窒息性ガス、毒性ガス」と同様な殺傷効果を与える毒ガスを窒息性ガス及び毒性ガスに付加したものでございます。そのものといたしましては、マスタードのように皮膚に作用して障害を与えるびらん性ガスや、議定書成立当時は存在していなかったたとえば神経ガスといったものがこれに該当すると考えております。それから「これらと類似のすベての液体、物質又は考案」と申しますのは、単に気体状の毒ガスばかりでなく、液体、固体を問わず同様の効果を及ぼす物質及び考案物の使用を禁止したものと考えております。

細谷治嘉日本社会党

○細谷委員 「窒息性ガス」はホスゲンのようなもの、「毒性ガス」というのは青酸のようなもの、「又はこれらに類するガス」というのは神経剤等だ、「細菌学的手段」というのはまあ具体的に書いてありますから……。  そういたしますと、神経性のガスあるいは神経を錯乱させるようなものは入っておりますか。たとえばLSD、これは最近麻薬に指定されたようでありますけれども、こういうものはどうなのか、催涙性のガスは一体どらなのか、この辺をひとつ明らかにしていただきたいと思うのです。

西堀正弘外務省国際連合局長

○西堀政府委員 これは先ほども戸叶先生の御質問に答えたのでございますけれども、要するにこのジュネーブ議定書で禁止の対象になっておりますのは、窒息性と毒性、こういったガスと同じようにその効果が持続的なもの、したがいまして、催涙ガスのように、それにさらされた場所からその者が立ち去りますと数分後に回復するといったものは文理解釈上当然含まれていないとわれわれ考えておりますし、それからこれがいまのところこの議定書の当事国全体のコンセンサスの得られているところの確定解釈でございます。

細谷治嘉日本社会党

○細谷委員 そうしますと、催涙性のガスは「これらに類するガス」の中には含まれておらぬ、こういうことですね。

西堀正弘外務省国際連合局長

○西堀政府委員 そのとおりでございます。

細谷治嘉日本社会党

○細谷委員 このウ・タント総長の報告、それからどのあれを見ても、化学兵器というふうにいわれておる中には、そして戦争中にも使われたものとしては、明らかに催涙性のガスは入っておるのですよ。たとえば第一次大戦のときにはアダムサイトなんというのはずいぶん使われたものなんですね。そうでしょう。これが全然入らないというわけですか。やたらに使っていいというわけですか。これはたとえば戦時中ということですが、平時は別だなんという議論もあるようでありますけれども、催涙性のガスは入らぬ、さらに先ほど私がお尋ねいたしたLSDのようなそういうものは、これに類するガスに入るのか、入らないのか、これもお答えいただきたいと思うのです。

西堀正弘外務省国際連合局長

○西堀政府委員 先生の申されますとおり、確かにウ・タント事務総長の報告には、催涙ガスというものは戦争用化学剤として分類しておることは確かでございますけれども、これもあくまでウ・タント事務総長の勧告の中の意見として出されたものでございます。先ほど来申し上げておりますとおり、このジュネーブ議定書、いわば国際法の面におきまして、解釈としはこの催涙性ガスは含まれていない、こういうことでございます。  それから先生の御指摘になりましたLSD、これはごく最近に用いられるようになりましたものでございますので、現在のところ、まだ国際的に確定した解釈というものはできていないということでございます。

細谷治嘉日本社会党

○細谷委員 そうしますと、お尋ねしたいのですけれども、催涙剤の中に、一三五ページに「付録III」でありますが、「致死指数」というのがあります。これはすベてに使われておるわけですね。一体「致死指数」というのはどういうところから、これに類するか、類しないのか、区別されておるのですか。

西堀正弘外務省国際連合局長

○西堀政府委員 「致死指数」と申しますのは、その表の上にございますけれども、「致死効果をひきおこす吸入量薬剤の空気中の濃度とばくろ時間の積として表わされる。」こういった指数でございます。

細谷治嘉日本社会党

○細谷委員 私が聞いておるのは、これだって死ぬのですよ。そうでしょう、これを吸い込んだら。致死指数という、これは限界がありますね。「許容限界」というのもありますね。死ぬのですよ。ですから、私はこれらに類するガスというのは、具体的にはどういう線で、これはそうじゃない、これはそうである、そういう区別をなさるのか、たとえば催涙剤であると同時に、ほかのほうも神経をおかさないとも限らぬ。あるいは皮膚のびらん、現にいま使われておりますクロルアセトフェノンあたりでも皮膚のただれを起こすことはもう間違いないのですね。イペリットと比べて強弱はあるにいたしましても、そういう線は具体的に一体どういうところで線をお引きになっておるのか、これをお尋ねしているわけです。

西堀正弘外務省国際連合局長

○西堀政府委員 ただいまの致死指数でございますけれども、これは全く実験としての致死指数でございまして、いわば小さな動物に多量に注入するとか、これに吸わせるとかいった上での致死指数、特にこの場合におきましては、この催涙ガスの種類によりまして、そういった種類の部類分けという観点から、こういうことが行なわれているのでございまして、このウ・タント事務総長の報告自体にも、他の本文のほうをごらんいただきたいのでございますが、これは二六ページにございます。たとえば「僅かな数の化学剤とりわけいくらかの催涙ガスの場合には死亡することはまずない。これらの化学剤は暴動と騒乱を鎮圧するために多くの国の政府によって使われてきた。」こういうように書いておりまして、要するに催涙ガスであるが、暴動鎮圧のため、もしくは治安維持のために使われるといった場合には、要するに非常に希薄された形でもってこれが使用されるのでございまして、催涙ガスの部類別の目的をもってなされる、こういった実験のときに行なわれますように、小さな動物に非常に多量のものを注射するなり、吸わせるなりした場合とは、次元と申しますか、全く違う問題である。この本文にも書いてありますとおり、死亡するなどということは考えられもしない。これが実情ではなかろうかと存じます。

細谷治嘉日本社会党

○細谷委員 少し答弁が技術的じゃないんですね。致死指数とか致死量、たとえばLD50、これはみんな動物実験でやっておりますよ。その動物の体重というものを人間に引き直してやっておるというのが事実なんです。そういう点からいきますと、一体この場合の致死量が、たとえばLD50ならLD50で示した場合に、どの辺からはこの議定書の対象になるサブスタンスだ、これ以下はそうじゃないんだ、こういうグレンツがなければならないはずですよ。それをあなたはお答えにならないですね。そうでなければ一向明確じゃないでしょう。しかし、これは先ほど楢崎委員が質問されておって、これも明瞭じゃなかった。一定の限界がなければ——単に涙が出る程度、催涙程度だ、ですからこれは議定書の対象にならないんだ。同じようにたとえばベトナムで使われておるといわれておる、いわゆる葉っぱをみんな落してしまう、落葉させるという場合、あるいは除草をしてしまう、こういう薬も対象にならないのですか、どうですか。

西堀正弘外務省国際連合局長

○西堀政府委員 べトナムで使用されているといわれておりますところの、いわゆる枯れ葉剤、これは植物に対しまするものであり、このジュネーブ議定書がつくられた当時のことを考えますと、これは当然人に対するところの危害ということを念頭に置いたものでございますので、この枯れ葉剤は、ジュネーブ議定書の禁止の対象にはなっておりません。

細谷治嘉日本社会党

○細谷委員 そこまでかなり抽象的に聞いて、きわめて限界が明瞭になってまいりました。  そこでお尋ねしたいのでありますが、きょうお答えできなければ、ひとつ一覧表をいただきたい。そこまではっきりしてきますと、私は現在明らかになっておるもので、この議定書の対象になるものは何か、具体的な一覧表を出していただきたいと思うのです。もうきわめて明瞭になってきているのですね。たとえば窒息性ガスはホスゲンのようなものだ、ホスゲン以外に何があるのか、毒性ガスは青酸のようなものだ、それ以外に何があるのか、これに類するものというのは。いわゆるサリン系の神経剤は入るわけですが、これも無限に発展していくと思うのですね。現在解明されておる品物ではどういうものがあるのか。それから細菌学的手段、そういうものについても対象になるものは、一体何が対象になるのか、それをはっきりしていただきませんと、これはどうにもならないと私は思うのですが、いかがですか。

西堀正弘外務省国際連合局長

○西堀政府委員 いま御要望のリスト、できるだけわれわれのできる範囲において詳細なものを御提出申し上げたいと存じます。

細谷治嘉日本社会党

○細谷委員 警察庁警察庁いらっしゃいますか。——それでは、いまの資料を出されるそうでありますから、たいへんお忙しいところでありましょうけれども、ひとつこの議定書の審議中にぜひ出していただきたい、こういうふうに思います。  そこで次に、私はお尋ねしたいのでありますが、大臣のこの提案理由の中に「開発、生産、貯蔵をも有効な管理のもとに」ということばがあるわけです。いままで若干質問をいたしまして「有効な管理のもと」というのは、一体何をさすのか、私はだんだんわからなくなってきた。「有効な管理」というのは、具体的にどういうことなんでしょうか。

愛知揆一自由民主党外務大臣

○愛知国務大臣 これは少し補足をする必要があると思いますけれども、先ほど申しましたように、この一九二五年の議定書というのは、ごらんいただきますように、実質的にはほとんど一枚の紙でございます。そうして資料としては、できるだけ御要望に沿うようにいたしますけれども、何ぶんこれは多数国間の議定書でございますから、多数国が約定し、合意をし、少なくとも大多数の国々が具体的にこうこういうことをやるのだということでなければ、日本政府が一方的にこうこうだと申しましても、多数国間の条約でございますから、私は意味がないことだと思います。同時に、提案理由の中で触れましたことは、先ほども申しておりますように、BC兵器の使用の禁止ということだけでは、これは目的が達成できませんから、さらに進んで生産にも、貯蔵にも、あるいは管理、査察ということに及んで十全の効果をあげるようなものにつくりあげたいというのが、政府の考え方でございまして、これは、現在御審議をいただいておりまするこの議定書の範囲を、はるかに越えるものになろうかと想像されるわけでございます。それらの点については、日本政府といたしましても、すでに軍縮委員会で提案というか、主張をいたしておりますし、御承知のように、イギリス案もあればソ連案もございます。それぞれに利害得失、一長一短もあるようでございますけれども、その間に処して、できるならば日本政府といたしましても、意欲的な考え方で、具体性があって、各国が守り得るようなものをつくりあげることが適切であると考えております。したがって、たとえば査察の問題にいたしましても、査察が有効に行なわれなければならないようなことについてはどうするかということについて、これはせっかく軍縮委員会というようなものもりっぱに機能しているわけでございますから、場合によれば、さらに多少の時間はかかりましょうけれども、各国の専門家委員会というようなものをも開いて、そして有効、適切な、この範囲ならば査察ができるというような方法論が、専門的にも合意ができるような、そういう持って行き方をすべきではないか、かように考えておるわけでございますが、何ぶん問題は、きわめて専門的な問題でもございますし、同時にまた、世界的な期待を受けている問題でもあると思いますから、さような意味合いで、各国のまじめな前向きの協力を得ながら、そういう結論づけをするようにこの上とも一そうの努力をしたい、かように考えておるわけでございます。

細谷治嘉日本社会党

○細谷委員 一向わからないですね。査察という制度、これは放射能のようなものでありましたら、かくれもなく測定ができますけれども、これはコルベンの中でもつくることができるわけなんですね。ドイツの研究を受けてアメリカが開発した新しい神経剤なんというものは、もうほんの一滴皮膚についただけでも人の命がなくなる、こういうふうに文献ではいわれております。ですから、実験室の中で、フラスコの中でつくられるようなものですね。言ってみますと、農薬に二つ三つの反応を行なえば、そういうものはすぐできる、こういうものなんであります。ところが先ほど私が質問したように、学者のそのサブスタンスそのものを検知する公認の方法すらも否定する答弁がなされている限りにおいて、「有効な管理のもと」というのは、一体どういうことなのか、一向できないじゃないか、こういうふうに結論せざるを得ないのであります。いまの大臣の御答弁でも「有効な管理は」必要でありましょう、しかし、それだけでは、いまの答弁だけでは意味がないのじゃないかと思うのです。戦争などになれば、これは、もう大義名分というのは、いろいろ立てるわけでありますから、これは向こうが使ったから、こっちも使ったのだ、こういうことになります。いまの答弁では、日本も第二次大戦のときには、全然使っておらぬ、こういうことでありますけれども、イぺリットはどんどん生産した。くしゃみ剤なども、どんどん生産していった。ドイツは有機燐剤をどんどん開発した。これは使わなかったようでありますけれども……。そういうことで、そういう品物で余ったものは海に捨てましたけれども、現に一日相当量というのをつくりながら、いつの間にかなくなっているわけでありますから、使っておらぬということはないわけですね。そういうことからいき、いまの答弁からいっても、一体「有効な管理」というのは、どうも期待できないの、じゃないかという感じがいたします。私は、この議定書を批准することについては大賛成であります。なぜ日本が、その当時批准しないのかという疑問を持ったくらいでありますから、大賛成でありますけれども、やる以上は、やはり効果を期待しなければならぬと思うのです。ところが「有効な管理のもとに」やるのだ、こういうふうに主張しているのだけれども、一向明確な答弁が得られない。そこで、この点について、お答えがあるならお聞きをしたいのでありますけれども、さらにこの問題に関連して、沖繩には有機燐剤があるでしょう、どうなんですか。

西堀正弘外務省国際連合局長

○西堀政府委員 有機燐剤、おそらくGBと称するものだと思いますけれども、これは沖繩に現在のところございます。

細谷治嘉日本社会党

○細谷委員 二、三日前の新聞かと思うのですけれども、沖繩のGBかどうか知りませんが、もっと性能のいいのができているのでしょうから、それもあるのだろうと私は思うのですけれども、これをアメリカのほうに運ぶということになっておりましたね。ところがアメリカのほうで断わってきたというんですね。ほんとうですか。

西堀正弘外務省国際連合局長

○西堀政府委員 その間の事情をちょっと詳細に御説明申し上げますと、昨年の十二月に米国の陸軍省は、沖繩の科学兵器の撤去作業は、昭和四十五年の春まで、ことしの春までには完了するということが予想されると発表したのでございます。それで、ただその輸送のための国内法上の手続に時間がかかっていたのでございます。本年四月六日に、国防省は、保健・教育・福祉省が国防省の輸送計画の検討を終了いたしまして、その結果国防省がその計画をワシントン州とオレゴン州、この両州の当局に通報すべきことというようなことの勧告を行ないました。かつ本件計画の実施を承認したということを発表いたしたのでございます。しかしながら、これに対しまして、オレゴン及びワシントン両州の知事が、輸送の安全確保のために州に対して非常に過重な負担を課しているといったような理由によりまして、搬入を延期するための差しとめ命令というものを発出するように裁判所に対して要請した由でありまして、国防省がその輸送を一時延期したということがいわれているのは、おそらくこのためであろうかとわれわれは考えております。しかしながら、米国防省からは、沖繩からの毒ガス撤去の基本方針には何らの変更を行なっていない。この米国の国内的な問題が解決し次第、沖繩からの毒ガス撤去が実施されるものとわれわれは考えております。

細谷治嘉日本社会党

○細谷委員 いまのおことばですと、州のほうに負担がかかる、こういうので延びておるということでありますけれども、新聞にはそう書いてないようですね。アメリカのほうの住民から、持ってこられちゃ困るという猛烈な反対があったからアメリカへの搬出をやめておる、こういうふうに新聞には書いてありますが、そうじゃないのですか。

西堀正弘外務省国際連合局長

○西堀政府委員 直接的にはこのオレゴン及びワシントン両州の知事が、いま申しましたような理由でもって、裁判所に対して差しとめ命令を発出するよう要請したわけでございますけれども、そのもとには、おそらくそういった世論もあったのではないかと存じます。

細谷治嘉日本社会党

○細谷委員 アメリカのほうに、住民の反対等で、運ぶのは困る、沖繩にあるのはよろしい、これは有効な管理といえますか、どうですか。

西堀正弘外務省国際連合局長

○西堀政府委員 これは現在アメリカの裁判所において係争中のものでございますから、この点につきましては発言を差し控えたいと存じますけれども、先ほどから先生の有効な有理とおっしゃいますところは、どうも伺っておりますと、その提案理由の説明の中にございますのは、あくまでジュネーブ議定書の中において使用が禁止されているそれとの関係ではございませんので、われわれはいまジュネーブで…かれております軍縮委員会の場におきまして、このBC兵器の使用の人ならず、開発、製造、貯蔵、そういったものの全面的な禁止を一応主張しておるわけでございます。そのためには有効な管理、検収と申しますか、査察と申しますか、これが必要であるというようなことから、またこの点につきまして専門家の会議というものをわれわれは提唱しておるわけでございますけれども、その点について、有効な管理という字が出てきておるのでございまして、ジュネーブ議定書自体の内容とは、その有効な管理というところはちょっとかみ合っておらぬのでございます。

細谷治嘉日本社会党

○細谷委員 それはわかっているのですよ。それはわかっているのですが、いまのような姿で有効な管理を主張していく、そうしてこれを批准することによって軍備縮小の主張、わが国の立場を強める、こういうふうに説明されておるわけですね。どう主張しようと、基本的態度、先ほど来すでに幾つか指摘しております。そういうようなことで、有効な管理というものを主張したって一向実効があがらないのではないか。こういうことを私は申し上げておるわけです。それで御理解いきましたか。ところで、私はいろいろな有効な管理というのは、ことばの上では簡単にこう何字かで書かれてありますけれども、たいへんむずかしいものだ。これはちょっとなかなか信用できないのではないか、こう私は思うのです。アトミックエネルギーと違ってこれはどういうことばを使おうと、なかなか期待できないのではないかと私は思うのです。ところで、これには書いてございませんけれども、このCB兵器というのは、ある意味では原子爆弾以上に、これは兵はある程度防御しておるのでしょうが、住民にとっては原子爆弾以上にこわいものだということがいえると思うのですね。そこで、開発なり生産なり貯蔵等、こういうものを有効な管理のもとに置いただけではよろしくないのであって、もっと進んで現に相当蓄積されておるものをやはり廃棄していく、こういうところまでいかなければいけないのではないかと私は思うのでありますけれども大臣いかがですか。

愛知揆一自由民主党外務大臣

○愛知国務大臣 先ほど来お話を伺っておりますと、根本は同じじゃないかと思うのです。ただ有効な管理といったって何もできぬじゃないかといわれてしまえばもうそれまでのことであって、それはたいへんむずかしい、原子核兵器というようなことよりはもっとむずかしい問題であるということの認識に私も立っておりますから、そこでこれは日本、だけがどうこうと一人よがりのことをいっておるだけではだめで、やはり国際協力の中でほんとうに良心的にかつ専門的な知識経験を十分に生かしてやっていかなければ、そのむずかしいところを達成することはできない。現に貯蔵ということも禁止すべきだと主張しておることは当然廃棄にも及ぶ考え方であると私はかように存じます。  それからもう一つ先ほど御質問がありました点でありますが、沖繩の問題については政府委員から御説明したように、十二月二日にいわば日本とアメリカとの間ではもう話がきまったわけですが、アメリカ側の運搬上の問題で実際の移転が予定より延びておりますことは私も遺憾に思っておりますが、この点についてはアメリカとしても日本との約束もございますので、対内的に、国内的に米政府としては非常な努力をいたしております。そうして住民の人たちに安心感を与えるべく十全の措置をやっておるようでありまして、きわめて近い機会に進展があるものと私は期待しております。

細谷治嘉日本社会党

○細谷委員 大臣、お尋ねしますが、この議定書を批准する際に、たとえば核の場合には非核三原則というのがあるわけですけれども、日本のこれに対する決意というのを何らかの形で中外に表明するということをお考えになっておるのか。言ってみますならば、これはある意味では核兵器以上に陰惨なものなのでありますから、この批准に際して政府なり国会の決意を明らかにしておく必要があるのではないか。たとえば、言ってみますならば、よそが使おうと使うまいと、こういうものは使うべきじゃない、そんな条件つきじゃなくて、断固こういうものは排除していくべきだ、こういうような基本的な立場に立って表明をする御意思があるかどうか、これを承っておきたいと思う。

愛知揆一自由民主党外務大臣

○愛知国務大臣 まず第一に、この議定書については、ずいぶん多くの国が留保をいたしておりますことは、御承知のとおりでございますが、今回、幸いにして、国会の御承認が得られた場合におきましては、政府としては、そういう留保というようなことは、全然、いたすつもりはございません。  それから、第二に、何か特別に宣言でもやらぬかというお話でございますが、これは先ほど来申しておりますように、もうすでに軍縮委員会に吹きましても、堂々と日本側の主張というものはやっておりますし、いまさら私はその必要もない。それよりは、きょうもさんざん御非難を受けましたけれども、何が具体的にできるかということについて、その実体について、われわれお互いの気持ちにあるようなことが建設的に前進できるような内容のものをつくり上げるということにできるだけの努力をすべきであって、いまさら抽象的な、一枚の紙を読み上げただけでは私は有効ではない、かように考えております。

細谷治嘉日本社会党

○細谷委員 一枚の紙に書いただけ、あるいは批准しただけで済むようなものじゃない。非常にこの問題についてはむずかしい。問題は、やはりこういうような兵器は使うべきじゃない、戦争をやらないと、こういう観点に立ってあらゆる努力を払う、こういうことが必要であると私は思うのです。  いろいろとお聞きしたわけでありますけれども、やはりどうも私も釈然としないものが幾つもございます。しかし、私は、一時間ばかしの質問でございまして、立ち入った個々の問題についての質問はできませんけれども、二五年以来今日までの長い経過の後にこれを批准するわけでありますから、この実効があがるようにあらゆる努力をしていただかなければならぬのじゃないか。私は、冒頭申し上げましたように、この条約の対象については、どんどん拡大こそすれ、対象をしぼるべきじゃない。言ってみますならば、この二五年にできた「これらに類するガス」というのは、今後発見されるであろうあらゆるガスもこういう中に含むという形で、ウ・タントも言っておりますが、書かれた字句であろうと思うのでありますけれども、これは非常に狭い解釈をされているところもたいへん問題があろうかと思うのです。この議定書を批准するからには、ひとつ十分な効果が上がるように特段の御努力をお願いしておきたいと、こう思います。  以上で終わります。

田中榮一自由民主党

○田中委員長 本日は、この程度にとどめ、次回は、明七日午後一時から理事会、午後二時三十分から委員会を開会することとし、これにて散会いたします。     午後五時三十四分散会

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