商工委員会 第20号
- 発言数
- 276 件
- 登壇者
- 13 名
- 会派数
- 4
- 開催日
- 1969/07/17
会議録
○委員長(八木一郎君) ただいまから商、工委員会を開会いたします。 まず、委員の異動について報告いたします。 七月十六日、中村英男君が委員を辞任され、その補欠として阿具根登君が選任されました。 —————————————
○委員長(八木一郎君) まず、参考人の出席要求に関する件についておはかりいたします。 特許法等の一部を改正する法律案、審査のため、参考人の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(八木一郎君) 御異議ないと認めます。 なお、その日時及び人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(八木一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。 —————————————
○委員長(八木一郎君) 前回に引き続き、特許法等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行ないます。 質疑のある方は順次御発言を願います。
○竹田現照君 この間の質疑について、けさ文書で、憲法違反でない理由についての返事をいただきましたけれども、この間私が質問いたしましたように、この印刷物の最後のほうの四番目に、補償金請求権の問題が云々と書いてありますが、こういうことで発明の出願者に対する保護というものがなされているので、憲法違反にならない、そういうことになっておりますが、この間もお尋ねしましたとおり、その保護の条件となっている補償金請求権なるものが、事実上発明者の保護にならないようになっているというのが私の見解なんです。ですから、有名無実のようなかっこうになる補償金請求権を与えるということでは、政府側の言っていることというのは有名無実になっている。そういうことでは理解ができない。そういうふうに私は主張したわけです。 その前にお尋ねしますが、これはこの間の私に対する答弁の速記録をそのまま書いたのですか、それとも速記録とは別なんですか。ちょっと先にお尋ねしておきます。
○政府委員(荒玉義人君) 今度の制度、特に早期公開に伴う問題につきまして憲法違反かどうかという議論がございます。それを法制局と協議いたしまして、その問題に対します政府の公式見解ということで拠出いたしました。
○竹田現照君 それでは、これはやっぱり論議の関係がありますから、一応会議録に載せておく必要があると思いますから、政府の統一見解なるものをここではっきり読み上げて、会議録に残してください。それから質問を始めます。
○政府委員(荒玉義人君) 早期公開制度が憲法違反でないとわれわれ考えておりますが、その理由は次のとおりでございます。 特許制度は発明を保護するとともに他方発明を公開することによりましてそれを社会一般の知識とし、それを土台としてより以上の研究開発を可能にしようとするものでございます。したがって出願された発明が公開されるということは当然予想されているということができます。現行法の出願公告はこのような考え方を基礎としており、今度採用しようとしております早期公開制度も同様でございまして、早期公開が出願人の意思に反して強制的に行なわれるものであるから憲法違反であるという意見はあたらないと存じます。 発明者は特許権が確立する前でありましても自分の発明につきまして財産的利益を持っております。早期公開制度をとることによりまして、この財産的利益に影響を与えることになるからそれについては公共の福祉という観点から必要性があるかどうか、また出願人に対して適正な保護が与えられているかどうかということが憲法第二十九条との関連において考慮されなければならないと思います。 特許制度の現状は審査の遅延のため出願された発明の公開がおくれ、重複研究、重複投資、重複出願が行なわれる等国民経済的に見て大きな損失となっているとともに発明者にとりましても特許権の設定がおくれる等の不利益を招来しております。早期公開制度は審査請求制度と相まってこのような弊害を除去するためのものであり、まさに公共の福祉に適合するものでございます。 公開された発明の出願人に対する保護といたしましては、その発明の実施者に対する補償金請求権を認めることにしておりますが、これはわが国の特許制度が審査主義を採用しており、審査の段階に応じて保護を与えていること、第三者の利益とのバランスを考えなければならないこと等を勘案して定めたものであり、通正妥当なものでございます。 したがいまして早期公開制度は憲法違反になるおそれはないと考えております。
○竹田現照君 順次公開制度についてお尋ねをしていく中で、憲法問題にも触れていきたいと思っております。 そこで、大臣お見えになりましたからお尋ねいたしますが、早期公開は産業政策である、今後わが国も自前の技術を開発していかなければならないとお答えになっておりますが、この技術格差是正策として、政府は、このほかにどんなような計画をお持ちになっていらっしゃるのか。そして、この早期公開制度というものは、この計画の中でどのような役割りを持っておられるのか、その関連性についてひとつお尋ねをしておきたいと思います。
○国務大臣(大平正芳君) この前も本委員会で申し上げましたとおり、今日わが国の産業は、いわば外国からの借りものの技術で運営されておると申しあげても過言でないと思います。いままでは、先進諸国に追いつくということが最大の目標でございまして、精一ぱいそのために努力を傾注してきた、そのこと自体は評価されてしかるべきだと思いますけれども、追いつくことはできましても、追い越すことはそういう制度ではできない。したがって、どうしてもユニークな自前の技術を身につけるようにしないといけないということは、どなたが考えられましても当然の道行きであろうと思います。そこで、政府がいまやっておりますことは、まず大型研究は政府が責任を持ってやるということをいたしておりまして、その成果を民間に、ある段階で移すということをやっております。それから民間の研究投資につきましては、金融の上から、あるいは税制上の保護を加えて極力これを奨励してまいり、ようやくヨーロッパ並みの水準まで、絶対額においては、いっておるのではないかというところまできておるものと思います。それから今後さらにそういった政策をもう少し大胆に、また大規模に進めてまいる必要がありますことは当然でございます。いまお尋ねの早期公開制度でございますが、本来、各委員から御指摘いただきましたように、出願がなされて審査が非常にスピーディーに運びまして、早期公開制度なんかとらなくても十分これは活用できるという環境であればよろしいのでございますけれども、今日のように長い間、発明、考案が眠ったままの姿に置いてあるということは、わが国の技術の水準を高める上からいいまして非常に不幸なことでございます。したがって、オーソドックスの解決方法として、審査を急ぐ、その要員を充実し、設備を整備し、予算を増額してまいることは当然のことでございますが、あわせて早期公開制度を導入さしていただきまして、この眠った状態にあるアイデアをわが国の技術水準の向上に役立たせるような契機をつくらなければならないという産業政策上の要請も加味されて今度の提案に踏み切ったような次第でございます。
○竹田現照君 この特許法の目的は、法律の第一条にもありますように、まず第一に「発明の保護」と、いうことを最優先に考えなければならないことは当然であります。発明というものは、特許出願をしなくても秘密にしておけば、ノーハウとして独占的に支配できる性格のものですから。しかし特許制度というものは公開を前提とする。しかし公開を前提とするということは、同時に、十分な保護も与えなければならない、そのことが前提でなければならぬ。特にこの審査主義のもとでは、特許性を有するか有しないかという、審査を十分に行なった結果公開されるというのが原則なわけですけれども、新しい制度のこの早期公開というものは、無審査のままに公開をされるわけですから、言ってみれば国における強制公開という形ですから、それだけになお発明に対する保護、出願人が満足をするような保護というものを十分に与えなければならないと思うのですけれども、先日来お伺いをしているこの補償金請求権なるものが、実質的にその用をなさないと私は考えるのですけれども、それでは外国等でもいろいろ論議されたようでありますが、損害賠償権、あるいは差しとめ請求権、こういうようなものもこれは認めていないわけですけれども、その点の理由は、なぜお認めにならないのか、これもひとつお聞かせいただきたい。
○政府委員(荒玉義人君) 公開の状態でいわば完全な特許権と同じような効果を与えない理由は、御承知のように特許権の対象は発明でございますが、それを審査をしていくといいますと、その審査の過程におきまして権利の強弱は当然出てくると思います。差しどめ請求権並びに損害賠償といいますのは、これは完全な審査をした結果、特許権というものによって初めて出てくる、いわば完全な権利と思いますが、公開中は、この前も申しましたように、特許性のないものが六割ないし半分混在しておる。そういった状態で全く特許権と同じ効果を与えるということが、第三者との利益調整から見て適切かどうか、こういう判断をしなければいけないと思います。先ほどの特許法の目的は、やはり発明者を保護すると同時に、第三者との利益調整をどうする、それが全体の産業経済の発達にどうなっていくかという、そういう絶えず二面を持っておると思います。そういう見地からいいますと、やはりまだ完全な権利でないという場合には、完全な権利と同じような保護を与えることはむしろ問題だということで、原案のようになった次第でございます。
○竹田現照君 そうすると、この無審査で公開をするのだから、この間のお答え、いまもありましたけれども、約半分、あるいはそれ以上のものが特許の価値のないものだとして拒絶をされるものが含まれておる。だからこれを認めない、ごうなんですね。そうしたらそういう状態の中で、認めた場合というのはどんな弊害が起こるんですか。
○政府委員(荒玉義人君) まず第三者の側から見れば、たとえば損害賠償、差しとめ請求といいましても、あとでくつがえる場合がきわめて多うございます。つまり公開中で全く特許権と同じに差しとめ——特に差しとめ請求というのは御承知のようにきわめて強力な権利でございます。一挙に事業を停止しなければならぬという効果を持っております。そういった効果を持たしますと、むしろ第三者のほうは思わぬ損害をかぶる。もちろんあとで損害賠償請求という制度がございます。そういった可能性を多くはらんでいるということになりますと、もちろん権利関係から見ましてきわめて不安定なものになってくるというおそれが出てくるというふうに考えております。
○竹田現照君 その無審査公開のため半分近いもの、あるいはそれ以上のものが拒絶をされるものが含まれている、だから認められない。そうしますと、その反対の論拠も私は成り立つのじゃないかと思うのですね。無審査公開の中で、それじゃその半分近いものが、逆に特許権を得られるものも含まれているわけですね。含まれることになるわけですね。そうすると、半分拒絶をされる性質のものを持っているからいろいろと第三者云々ということで認めない。本来保護されるべき性格を持っているものを、まあ問題外とはしないんでしょうけれども、結果的に問題外になる。それは私はちょっとどうもおかしい。だめになるものだからそうなるのだ、それじゃ、それと同じ数みたいなものは当然特許権として保護されるべき性格を持っているものが含まれているわけです。そうしたら、含まれているものに不十分な保護だけで済ますということは、私は国の責任で何らかの保護は当然に与えてしかるべきじゃないか。それが損害賠償権でありあるいは差しとめ請求権という形で要求をされたとしても、先ほどのお答えからいけば、これを断わる理由というのは私は出てこない。だめなものも半分あるけれども、いいものも半分あるわけですから、いいもののほうに特許法の精神からいくならば、力点を置いて保護を与えることを考えることが、私は先のような気がするのですが、いまのお答えでは、与えられないものが含まれる、そっちのほうに力点を置いて考えられるというのはどうも主客転倒のような感じがするのですけれども、これはどうなんですか。
○大矢正君 いまの竹田君の質問に関連して明確にお答えをいただきたいと思いますることは、私は私なりの意見を述べてお答えを願いたいと思いますが、それは基本的には、先ほど来長官が言われていることは、産業政策の立場からきた要請が前提となって答弁をされているように思われるわけです。なるほど特許制度というものをわが国が明治以来取り入れてきた基本的な立場というものは、国民経済を発展させるという最大の目的があり、その目的にひとつ沿う方向として公開する。そのかわり保護または独占を与えるということがあると思うわけであります。同時に、見方によっては、特許というものを産業政策の立場でどうとらえるかという見方と二つあると私は思うのでありますが、あなたが先ほどから答弁をされていることは、たとえば重複投資であるとかあるいは重複研究であるとか、あるいはまた早く公開をされることによって得る利益ということが中心になって答弁をされているのでありますが、それが大きな発明であろうとも小さな発明であろうとも、発明する者の権利を、あるいは財産を、あるいはアイデアを、いかにして保護するかということに関するあなたの答弁がないわけです。早期公開制度というものが行なわれることによって、資力のない者や力の弱い者が不利益をこうむるのではないかというわれわれの懸念に対して、一向にあなたの御答弁がない。あなたの答弁は、あくまでも、重複投資を避けるとかというような産業政策の見地からだけ重複投資をとらえているのであって、もう一つ裏の面から、早期公開というものの弊害あるいは個人の権利権限を侵すのではないかということに関しての答弁がないように私には思われるので、いまの竹田委員の質問に対するお答えとあわせて、ひとつ明確に産業政策の見地からだけではなくて、個人の財産権の保護なりアイデアの保護なり——保護が特許制度の一つの主眼であることは間違いないわけですから——その面についてのお答えを願いたいと思います。
○政府委員(荒玉義人君) 先ほど、保護の制度といいますのは、これは産業政策ということでございませんで、特許制度の中でどの程度の保護が可能かという問題だと思います。それで、申し上げましたのは、これは特許法で御承知のように、審査主義をとっておる国、無審査主義をとっておる国、それぞれ保護の態様は違うと思います。それで、われわれの制度はやはり審査を、たとえば審査主義、その場合には、おのずから審査の段階によって保護の程度があるというのが竹田委員の御質問でございますが、これは日本だけではございませんで、ドイツ、オランダ、そういった審査主義をとっている場合には、公開にどの程度の保護を与えるのかというのが、同じ共通した考え方であります。と申しますのは、やはり公開の段階では完全な審査をしないわけです。そうなると、完全な審査したあとと、権利というものはおのずから差がある。先ほど竹田先生おっしゃったような、こちらから見れば権利のあるものだけに、特許性のあるものだけに権利を与えるわけですが、こうした時点においては第三者は全然わからないわけです。審査していれば、それは特許性があるかというのは、もちろん、一応確定するわけでございますが、公開の段階ではまだ第三者はわからない。そういった場合に、全く完全な権利と同じような保護を与えることはどうかという判断があるわけでございます。これは私の持論であります。それに関しては、私は、産業政策という問題はとりあえず入ってこない問題であろうと思います。 それから大矢先生のは、基本的に、一体今度の早期公開制度あるいはその制度に触れて発明者の利益にどうなっていくかという全体の総合判断だろうと思います。もちろん、今度の場合の制度といたしましては、私はメリット、デメリットそれぞれあると思いますが、まずわれわれメリットと考えますのは、もちろん国の審査能力の拡充その他の努力は講ずるのでございますが、補足説明で申し上げましたように、やはり技術革新という急激な状況下におきましては、いまのままでは、いまの制度では、やはり審査が長期化するということを予想せせるを得ません。その場合に、発明者は自分の権利を早く設定してもらいたいという要求もあり、あるいは今度逆に、発明者はその発明のみならず、次の発明を生む可能性を持ったものでございます。そうしますと、いまのような形で公開がおくれますと、むしろ新たなる開発という面から見てマイナスのあることも当然でございます。したがって、発明者の側から全体見れば、次の発明を生む一つの契機を早く与えてもらいたい。同時に、早く、できるだけ現在より早い時期に権利を設定してもらいたい、こういう利益から見れば、私は今度の制度はその目的に合致すると思います。ただし、いわゆるデメリットと予想されますのは、公開されてそうして模倣があった場合にどの程度の実際上の救済措置が与えられるか。これに対しましては、いわば、繰り返しますと、補償金制度、それがどの程度実効があがるか、こういうことであろうと思います。もちろん権利といいますのは、権利者が執拗に権利を主張するということでないと、法律が与えましても実施はできないと思います。それは現在の特許権の侵害訴訟の場合も私はその点は言えると思います。そういったやはり権利者がそういう角度から権利を行使していくという一つの努力というものと相まって、今度の補償金請求権が実効をあげていくということかと思います。ただこの前衆議院で議論になりました出願公告の場合は推しとめ請求があるけれども、今度は差しとめ請求がないけれども、その点はどうかという議論でございます。その点は、先ほど申しましたように一応の限度がある。しかし実際上法律的にはそういった権利はございますが、ただ、この前から言いましたように、やはり訴訟で争わなきゃ最後の結着つかないという問題がございます。それに対しましては、われわれといたしましても、事実上の行為といたしましても、できるだけそういった方々、資力のない方々が訴訟の段階にいかなくって解決できるような事実上の措置、いわばあっせん機関を設け、法律措置とともに、そういう事実措置をあわせてこの権利が実効あるような運用をしてまいりたいというわけでございます。
○竹田現照君 どうも私の質問にお答えになっていないような気がするんですけれどもね、だめなものに力点を置いてちょっと考えていて、保護が与えられるべき性格を持つ、いわゆる特許権を取れる者に力点を置いて考えていないんじゃないか。第三者とかいろいろなことを言われていますけれどもね、それでは話が逆じゃないかというのが私の質問なんです。早期公開で半分特許を与えられる性質を持っているものがあるんなら、もう少しそっちのほうに力点を置いて考えれば、こういうかっこうにはならないんじゃないか、こう言っているのです。
○政府委員(荒玉義人君) 別な比較をしたほうがあるいはおわかりかと思いますが、無審査で公開したとき完全な特許権を与えるという制度もございます。いわゆる無審査国におきましては無審査のままでもちろん公開いたしまして、そうして完全なる特許権を与える。ただその完全なる特許権の場合も、これはフランスの例でございますと、一応政府は特許性を保証しない、ギャランティしない。したがって、訴訟になれば権利者のほうから、これは特許性あるんだ、こういった立証をしていくという制度ももちろんあります。しかし、審査主義といいますのは、審査の結果特許性を出前に判断いたします。そうすると、その結果特許性ありといったのが、いわば強い特許権、したがって相手方が無効というまでは特許権としては成立する、そういうのが審査主義のもとの特許権だと思います。そうしますと、これからその審査の段階において、権利の強弱はあっていいという前提だろうと思います。で、公開の場合には、先ほど言いましたように審査をしないままの状態でございます。全く同じ特許権というにはふさわしくない。それは制度としては私はそういうことだと思います。
○竹田現照君 もう先ほどの私の質問にお答えになったのは、半分拒絶される性格のものも含まれているから、損害賠償やそういうものの権利を与えるということはちょっと問題があると言われたわけですね。しかしまた私は逆に、それじゃ半分拒絶されない性質のものが逆にあるのだから、そっちのほうに力点を置いて考えれば、損害賠償の請求権とか差しとめ請求権というものをそれじゃ与えてもいいという説だってこれは成り立つじゃないか、半々なんですから。圧倒的にどっちかがというならこれ別ですけれどもね。一昨日の質問の中では半々なんですよ、特許をやられるものと断わられるものとはですね。じゃあ半々であるならば、この特許法の精神からいって、発明を保護すべきもののほうに力点を置いて考えるべきじゃないか。逆のことが、全然ぼくの主張しているところでは成り立たないものではないのではないかという気がするのですが、これはどうなんですか。
○政府委員(荒玉義人君) あとから考えれば、先生のおっしゃるように特許性があるないというものは確定すると思います。しかし、公開の段階においては、少なくとも第三者はわからないわけです、確定的には。何割といいましても、それはあとから大体そうだというだけでございまして、公開の段階ではだれもわからないわけでございます。確定しない。で、そういったいわゆる未確定の段階には、むしろ強い権利を与えるということが、特許権と同じような効果を与えることが弊害だからということが審査主義のたてまえでございます。審査といいますのは、あくまで審査してその結果強い権利を与えると同時に第三者もそれが客観的にわかる、そのための審査をする。ですから、いまおっしゃいましたのは、結果から見れば——繰り返すようで恐縮ですが——特許性は半分あるいは四割というだけでございまして、当該公開の段階には確定しないわけでございます。で、確定しないものに強力な権利を与えるということは、先ほどから言いましたように、弊害があるから、とっていない、こういうことかと考えます。
○竹田現照君 ですから、冒頭からの質問のように、今回のこの新しい制度というものは、たいへんな数の滞貨を処理するために出されたわけですね。ですから、言ってみれば、無審査で公開するというのは出願人の責任じゃないですね、そういうふうなこの新しい制度を設けるということは。これは言うならば行政上の欠陥を出願人の何か責任のような形に転嫁をされて早期公開制度というようなものが設けられて、無審査のまま公開をされて、そのためにいままで与えられている、発明者に対する、出願人に対する保護というものが狭められるとすれば、これはちょっとおかしい。それから、一昨日も特許の実情はどうだというのは、さっきから私はくどいように言っているように、どれぐらい特許を与えられるのだと言ったら、四十ないし五十だと、こう言うのですね。そうすると、半分近いものがいままでの実績からいっても保護を与えられるべき性格のものが含まれているのであれば、現行制度を少しでも踏襲をしつつ、いま政府側がお答えになっているようなこともやろうとすれば、やはりその発明の保護というもののほうに力点を置いたようなかっこうに移行していくというのが私は筋だと思う。ところが、それがどうも逆になっている、今回の改正案では。ですから私はまあ繰り返し聞いておる。だから、長官が先ほどから説明していることも成り立つとすれば、私が質問していることだって成り立つわけですね。弊害を与えるものが半分いる、だから与えない。しかし弊害を与えないものも半分あるのだから、それじゃ、そっちのほうへ力点を置けという私の主張だって、これは全然成り立たない論拠じゃないのですね。半々なのだから、どっちに力点を置くかは、いまの特許法の精神からいって、私の主張するほうに力点を置くべきじゃないか、こう言っているのです。
○大矢正君 しつこいようですが、これは法律の改正の最も重大なところだから、繰り返し関連質問でお尋ねをするわけですが、私自身しろうとではありますが、現行法それ自身を読んでみましても、特許制度というものを、わが国あるいは世界的にもそうでありますが、設けたその考え方に合致しているかどうかという点について多少の疑点があります。なぜかといえば、それはまず第一に保護されることである。保護がない限りにおいて発明はない。出発はそこにあるわけです。そのかわり、また、保護するその見返りとして公開をするということなんですから。ところが、われわれが考えてみるに、現行法ですら保護が不十分ではないのか、現行法ですら保護が十分に行なわれていない。保護が行なわれないところに発明はないという原則からいたしますると、今度の改正案というものは、改正じゃない、改悪する案と言ってもいいでしょうが、これではますます保護されないではないか。保護がされないということは、言いかえるならば、発明の奨励にはならないのではないか。保護を与えないで、どうして発明が奨励されますか。だからわれわれに言わせると、どう考えてもこれは産業政策上の要請として、早く公開をすることにより、重複した研究投資その他の部面だけをとらえて法の改正をしているのではないかと思われる。ここが焦点なんですよ。ですから、この法律の改正の中で、あなたはおそらくおっしゃられると思いますが、いや、それは保護を与えているのだ、なぜかといえば、補償金請求権というものを、そういうものをきちっと認めるから、だから保護されるではないかとあなたはおっしゃられるが、補償金の請求というものは、過去においても事実問題としてあったが、効果は何らあがっていない、現実問題としては。制度、して私は定着化しているとは言いませんが、実情の問題としてはそういうものが裁判所その他で実際にやられたが、何ら効果があがっていない。そういう中で、補償金請求権というものだけをよりどころにしたこの制度の改正というものが、はたして保護することによって発明を奨励するということになるのかどうかということが私は問題だと思うのですよ。どうも長官と私どもの議論には、すれ違いがあっていかぬような気がするのですよ。ですから、われわれの立場は、とにかく保護することだと、前提は。保護しなければ奨励にはならぬのだ、そこに力点を置いている。このわれわれの力点は決して間違いじゃないと思う。あなたも否定できないと思う。そういうことについてあなた自身がどう思うかということと、もっと具体的にせんじ詰めていくと、現行法と今度の改正を比較をしてみた場合に、今度の改正案のほうが現行法上りも絶対に早期公開に見合う程度の保護が与えられているというあなた確信が持たれるかどうかということだと思います。あわせてひとつお答え願いたい。
○政府委員(荒玉義人君) 発明を保護するという点につきましては、私は基本的には変わりないと思います。発明を保護して、同時に第三者との利益調整をどう考えていくか。たとえば審査が長くかかっております。これは発明を保護することからいえば致命的でございます。特に消費のサイクルの早い時代におきまして、やはり審査がおそくて権利設定がおそいということは、これは制度の運用の面ももちろんでございますが、むしろ保護から見れば問題がある。竹田先生は、それは政府の責任じゃないか、こういう御見解でございますが、私は、もちろん政府の責任もある。ただ、それだけではないと思います。それは、技術革新のテンポといいますのは非常に急激でございます。それに合わせるように全部人員をやればいいじゃないか、そういうことでございますが、実際上やはり運用面全部を考えてみまして、それには、繰り返しになりますが、一つの限度がある。そういった場合には、やはり新たなる事態に即応して、権利が現在よりか早い時期に設定をされるということが、発明者の保護から見てぜひやられなければいかぬ、こういうふうに考えるわけでございます。したがって、基本的には、現在の制度と比べて早く審査をしていく体制を制度の上からつくっていくということは、発明者の利益の保護という面から見て、私すぐれておるというふうに考えております。
○竹田現照君 どうも議論が平行線ですから、時間もありますからいずれまたこれはあとにやることにして、先に進めます。 実は、衆議院の会議録ができてから法制同等についても十分にお尋ねするつもりであったのですが、きょうできてきたのです。ちょっと私の質問に間に合いませんので、詳しいことはまたいずれのときにやらなくちゃいかぬと思いますが、補償金の問題で質問を続ける関係でちょっとお尋ねしますが、衆議院で、出願人の発明に対する支配権というものは財産権として認められるべきものだということをお答えになったそうですけれども、そのとおりでよろしいですね。
○政府委員(角田礼次郎君) そのとおりでございます。
○竹田現照君 そうすると、この権利の侵害に対して、憲法第二十九条による保障というのは当然に与えられるべきだ、政府側は第一項の公共の福祉云々と言われますけれども、その規定がないわけですね。ですから、私は違憲論を持ち出してこの間からお尋ねをしているわけですけれども、あれですか、そのことが二十九条の二項の公共の福祉、それから先ほどからお聞きをしている補償金の請求の問題で十分に保護が与えられていることになるのだ、そういう御見解ですか。
○政府委員(角田礼次郎君) 一応特許権が確立する前であっても、発明者が持っている自己の発明についての支配権というものは、その財産的利益の面で評価されるから、財産権であると考えてよかろうということを申し上げたのであります。そういたしますと、直ちに憲法二十九条との関係が問題になるわけでございます。二十九条の一項で、財産権は侵してはならないと書いてある。ところが、先ほど来議論されておりますように、早期公開制度自体の目的は別の目的ではございますけれども、その制度が採用されることによって、発明者と申しますか、出願者が持っているその財産権に影響がある、ここではマイナスの影響があることはこれまた間違いないわけであります。そこで、それは二十九条一項に違反する、こういう論議になるのだろうと思います。まあ、かりに憲法違反という議論が正しいとするならば、そういう筋道になろうかと思います。そこで、昨日も申し上げましたけれども、二十九条の一項で、財産権は侵してはならないと書いてありますけれども、これはいわゆる財産権の絶対不可侵、天賦人権的な考え方というものは今日の日本国憲法では脱却しているはずではございます。侵害の対象、つまりここでいう侵害の対象となる財産権の内容は、二項で、公共の福祉に適合するように法律で定めると請いてありますから、そこで既存の財産権の内容について定めていた法律の規定が改正されて、新たに公共の福祉に適合するように、かりに財産権の内容が定め直された結果、形式的にはかりに侵害されたと同じような内容を来たしても、それは公共の福祉に適合するように定められた結果である、それは一項の違反にはならないだろう、つまり二項は一項の不可優性に対してあらかじめ制約を許したものである、一項と二項とは合わせて読むべきものであろう、こういうことを言ったわけであります。この問題を、いまの特許法の改正に引き合わせてみますと、現在は早期公開制が特許法にない、特許法を改正して、早期公開制を設けるわけであります。それはここで言えば、公共の福祉に適合するように法律の規定を改正したわけであります。しかし公共の福に適合しなければいけないわけでございますから、そこで公共の福祉に適合するかどうかということが実証されなければならない、そこが今度は二つに分かれてくると思いますが、公共の福祉に適合しているかどうかということについては、第一は早期公開制を採用する目的が合理的であり、それが必要であるということが証明されなきゃいけない、それは先ほど来見解が分かれて、御指摘の点と特許庁長官との間で議論が行なわれているわけでございますが、ここに書いてあるような、この点に書いてあるようなことが、一応私どもの考えておる早期公開制度が合理的な、必要なゆえんである、こういうことだろうと思います。それからかりに早期公開制度それ自体合理的であり、必要であったとしても、それに伴う出願者の発明権に対するマイナスの影響というものは必要最小限度でなければいけない、必要があるから幾ら侵害をしてもいいということではなくて、やはり行政目的といいますか、ここに書いてあるような目的に相応して、最小限度でなければならない、しかし最小限度であっても、そこにマイナスがあることは事実でございます。そこで、それに対しては十分にそれに対する対価といいますか、てん補する制度がなければいけない、それは補償金請求権でまかなわれているだろうというのがここに書いてある四の説明であります。ただその補償金請求権についても、実効性があるかないかということはむろん問題になると思います。実効性がなければ、それは私のいまの説明が成り立たないわけでございます。これは私どもとしては、先ほど来特許庁長官が御説明申し上げているように、実効性がある、またそれにふさわしいてん補制度である、穴を埋める制度である、こういう御説明をしているわけであります。一応法律というものの筋道は、そういうわけでございます。ただそれが実体的に説明できるかどうかということは、私、衆議院でも実体的に説明されなければだめだということを申し上げましたけれども、先ほど来、それは特許庁長官が御説明しているところだ、こういうことであります。
○竹田現照君 そこがこの私どもの主張とのすれ違いのあれなんですね。私は失態的にそぐわないという見解を持っているんですね。で、この法律の構成の、補償金請求の道は、この間、須藤先生とのやりとりもありましたけれども、模倣、盗用、これは適法行為としているわけです、法律の構成上。それを適法行為としているということは、模倣、盗用ということについて、そういうとをするものをまあ国が保護していることになる、適法ということになると、そうなりますね。そうして一面では請求者の補償金請求という行為については、国は何らの保護というものを与えていない、いまの法では。補償金請求ということについて。そうすると、逆に、請求権の行使というものは公告まではだめだということになっているでしょう。だから公開から公告までの間には何も国は保護を与えていない、そうでしょう。これではお答えになっていらっしゃる公共の福祉という名分のために発明者の権利というものを押える一方の法律ではないかというのが私の主張なのです。そういうことにならないか、どうなんですか。模倣、盗用は適法だといっているそのことについて、請求者は何もできないのですかね。それじゃ一方的に、国が、何か模倣したり盗んだりする者に保護を与えて、盗まれる者に何も与えていないというのでは、片手落ちもいいところだと思う。それは誤解でしょうか、私の解釈の。
○政府委員(荒玉義人君) 補償請求権は公開のときからございますが、いわば権利の行使は出願公告だ、こういつているわけでございます。権利の行使は出願公告ということでございます。権利自身は公開のときからあるわけでございます。その違法、適法といいますものは、これは要するに違法の場合には、いわゆる損害賠償請求権等が発生する、こういうことでございます。その損害賠償は今度補償請求権ございますので、関係ない、そういうふうなことで違法行為ではない、適法ということでございまして、権利者もこれはたとえばやはり権利者と第三者が一応話し合いをして補償金請求をきめるわけでございますが、あくまで主導権は権利者にあるわけです。同時に第三者もその間にかってにやったと言いましても、出願公告になればこれは一応強力な特許権が発生するわけでございますので、そう簡単に、公開されたからといって第三者がやれるという状態ではない、と言いますのは、自粛行為というのは長期的に続くわけでございます。公開から出願公告までじゃなくて、出願公告のあとからやらなければ実際の事業にならない。そうなると、いわば強力なる特許権が出てくるわけでございますので、そう簡単に何でもかんでも第三者がやれるということには、私はならぬと思う。同時にロイアルティーをきめる主導権、補償金に該当する額をきめる主導権というのは、あくまで権利者にあるわけでございます。そう簡単に第三者が実施できるという問題ではないと思います。
○竹田現照君 簡単に模倣できないといっても、そういうことが全然心配ないのであればこれは話になりませんが、まあらち外ですけれども、そういうことがこの特許の問題、発明に関しては多いわけですね。ところがいまおっしゃいましたけれども、特許権を取ってしまえばいろんなことは確かにあるでしょう。しかしそれまでの間というものは何もない、発明者に。模倣するものには警告を与えるというだけでしょう、出願人に与えているのは。だからどうも片手落ちな法律だとぼくは主張しているのです。そこで、公共の福祉に関連してお尋ねをしますが、いまの法律の九十三条に、公共の利益のために云々というのがあるのですね。「公共の利益のための通常実施権の設定の裁定」という項目がございます。ここで言っているところの「公共の利益」と、憲法で言うところの「公共の福祉」というものは同じことなのですか。
○政府委員(荒玉義人君) 差はないというふうに解釈しております。
○竹田現照君 差はないとすると、現在の法律にあるものと、これからつくろうというものとの関係でお尋ねをしますが、この九十三条の「公共の利益」というものは、実際にどのようにいままで運用されたことがあるのですか。
○政府委員(荒玉義人君) 具体的なケースは一件もございません。
○竹田現照君 一件もないとすると、この九十三条の基準になるというようなものはこれもまたないのですか。
○政府委員(荒玉義人君) これはまあ資本自由化に関連いたしまして、これが具体的問題となりまして、一応政府全体としてのこれに対する統一見解というのがございます。非常にこまかくなっておりますが、一般的に申し上げますと、「公共の福祉」というのは、ただ、普通いわれておりますのは、たとえば生命に影響する、まあ医薬の特許等は、これはもちろん公共の福祉でございまして、そういったことではなくて、もっと国民経済上重大な影響を与えるという場合にも九十三条が適用される余地があるというようなことで、一応の統一見解をつくっておる次第でございます。
○竹田現照君 それで、この早期公開も、九十三条で言うところの実施権の裁定も、これは両方とも公共のための発明の実施ですね。ところで、この九十三条の発明、その発明の実施には、国が裁定して、また実施利用についても国が裁定を行なっている。ところがこの早期公開の場合には、発明の実施については国は何の規制もしないし、そのまま第三者の侵害にさらされることになるわけですね。そして補償金の額というものについても国は何らの規制もしないで、すべてこの当事者にまかされているわけですね。私法上の問題にゆだねているわけですね。そうすると、同じ産業政策上の理由なのになぜ扱い方が違うようなことになるのですか。その理由をちょっとひとつ説明してください。
○政府委員(荒玉義人君) 九十三条の場合は、権利者と非権利者の話し合いを、特許庁、通産大臣がそういった話し合いを、公共の福祉に適用するかどうかという角度から最終的にきめるという個別的具体的な関係だと思います。今度の早期公開制度自身は、むしろ権利者と不特定多数人との利害調整をあらかじめ法律できめておるわけでございます。したがいまして、そういった九十三条のような個別具体的でなく、不特定多数というところに制度の差があると考えます。
○竹田現照君 どうもいまの御説明はあれですが、それじゃこの発明というものは、この特許性のある発明というものは、審査のあと先に関係なく、価値というものはあるはずですね。これは確認していいですね。
○政府委員(荒玉義人君) 発明自身の価値は、経済的価値といいますのは、これは発明者と第三者との客観的条項でございまして審査とは無関係であります。
○竹田現照君 そうしたら財産的価値もまた、公告のあとであろうと先であろうと変わりはない、これもまたそのようにとっていいですね。
○政府委員(荒玉義人君) 先ほどからの価値といいますのは、何も客観的に何ぼということじゃございませんので、発明者とそれを実施する側、そういったところの客観的な価値でございます。ただ、同一発明につきまして出願公告というか、一応安定すると、その意味では価値が出るという場合もございます。そういう程度のことかと思います。
○竹田現照君 いまの質問でもそうですが、どうしても先ほどから言っているように、早期公開に対して私法上の問題にゆだねていく、そうして模倣、盗用者にどうも力点が置かれているように、保護を与えていると受け取られるようなことについては、そういうように取られることについては、私はどうも納得をしませんけれども、先ほどの法制局のあれもありますし、また議事録ができましたらもう一ぺんそれを検討しながら、後ほどまた質問を続けていきたいと思っています。 それで、いまも話しましたけれども、発明者を保護するという意味で、西ドイツのように請求権の行使が、公開されれば直ちに補償金の請求ができるというようにして、いま日本の裁判ではなかなか時間がかかってしようがないそうですけれども、特許の裁判所——これは裁判所のほうでなかなか反対が強いのだそうですけれども——そういうようなものをつくって、補償金請求訴訟というふうなものがうまいぐあいにできるようなかっこうというものは、いま日本の場合はちょっと実施が不可能ですか、そういうことはちょっとお考えになれないですか。
○政府委員(荒玉義人君) ドイツの場合は、裁判のやり方といいますか、特許紛争は、全国に九十三ヵ所地方裁判所がございますが、八ヵ所が専属管轄ということで、しかもその裁判所は特許紛争に対する、ベテランにやらしておるという一つの特色と、もう一つは、これはドイツは御承知のように特許と実用新案二本立てでございますが、日本と違いますのは、実用新案は無審査でございます。無審査で長年ある程度の権利保護をはかっておるという長い間の歴史と伝統がございます。そういった二つの面が日本とまた迷うと思います。日本の場合は、これは審議会でもいろいろ御議論された経過を考えてみますと、まず公開から直ちに請求権行使といたしますと、いわば社会的な風土からいって、むしろ権利乱用という弊害を非常に誘置するという懸念、これが一番大きく、そこが、やはりドイツと事情が違うというのと、先ほど言いましたように、裁判所自体の実際上の、何といいますか、やり方というものが、非常に特許紛争になれておる、いないというようなこと。で、御承知のように日本の場合には特許性があるかどうかということは、たとえば権利になったあとにおきましてもいわば審判という、特許庁という専門機関によって無効を判断するということになっております。そういったいろいろ裁判所と特許庁との権限分配というものを考えますと、いきなりドイツのような形が妥当かどうかという点は問題があるのではないかと思っています。
○竹田現照君 問題があるというのは、あれですか、裁判所との関係なんですか。
○政府委員(荒玉義人君) 裁判所の関係と同時に、権利者側でいわば権利——本来特許でないというものに対していわゆる訴訟を提起するといったような弊害、もちろん最終的には裁判所で判断することでございますが、そういったむしろ弊害が問題だと申し上げておるわけでございます。
○竹田現照君 それでは、次にこの補償金の問題について、「実施料相当額」云々ということを書いてありますけれども、これはものによりけりですね、その額もですね。そしてまた特許庁のほうで基準を定めるといっても、これはケース・バイ・ケースでいろいろやるわけですけれども、実際の裁判を行なった場合に、その妥当な額というものがはたして取れるものか、取れないものか、これはたいへんむずかしい問題だろうと思うのですけれども、その点はどうお考えになっていますか。
○政府委員(荒玉義人君) 現行法の百二条で、これはいわば特許権の侵害訴訟でございますが、そういった場合に、第二項でございますが、「特許権者又は専用実施権者は、故意又は過失により自己の特許権又は専用実施権を侵害した者に対しての特許発明の実施に対し通常受けるべき金銭の額に相当する額の金銭を、自己が受けた損害の額としてその賠償を請求することができる。」。この意味は、特許紛争の場合でございますと、いわゆる損害賠償といいましても、幾ら損害があったかということがなかなかむずかしいというのが実際でございます。ただし、いわば「通常受けるべき金銭の額」といいますのは比較的算定が容易である。したがって、損害が立証できなくても、「通常受けるべき金銭の額」は最低取れますよというのが現行法の場合でございます。もちろんこれは比較の問題でございまして、やはり損害額よりはいわゆる通常受ける金銭の額のほうがこれは容易でございます。で、まあわれわれが基準を考える場合におきましても、もちろん発明ごとによって違います。あるいは利益を基準にする場合もございましょうし、あるいは売り上げ高を基準にする場合もございます。いろいろございますが、こちらのほうが比較的容易であるということも事実でございます。そういった意味で現行法は成り立っておるという意味は、今度も、私が類推して、類推といいますか、同様に考えていいと思います。ただ先ほど申し上げましたように、なかなか具体的な発明につきまして、これは容易でない面もございます。そういった面は発明の成熟と発明の種類、医薬の場合と機械の場合、いろいろございますが、そういった、できるだけ過去の社会的に確立された実例等を参酌いたしまして、そういったことを明確にしたいというふうな考え方でございます。
○竹田現照君 その他の事情を考慮してというのがありますが、これと損害賠償との性格がだいぶ違うのですが、どう違うのですか。
○政府委員(荒玉義人君) いま先生のおっしゃったのは、答申段階での「一切の事情を考慮して」というのが法案には削除になっておる、こういう意味じゃないかと思います。そういう意味でございますと、これは、何か「通常受けるべき金銭の額」といいますと、機械的にきまったものであるというふうな印象を避ける意味で、実施の態様なりそういった全体の総合判断という意味で「一切の事情」を答申の段階で入れたわけでございますが、法制局審議の場合の論議で、百二条に、現に現行法にあるわけでございます。それと差はないわけでありますから、当然、「通常受けるべき金銭の額」の場合には「一切の事常を考慮して」しかるべしという考え方で落とした経緯がございます。実体は何ら変更はございません。
○竹田現照君 この新しい制度を実施することによって、これは長官はあまり心配になってないようですが、私がちょっと心配しているのは、模倣、盗用なんというのはかなりの数が出てくるのではないか。長官は先ほどのお答えの中で、それほど簡単にできるものではない、こう言うのですが、認識の相違がだいぶありますけれどもね。私が心配をしているように、模倣、盗用等というようなことで、いろいろな紛争が出てくる。それに伴って補償金請求権の問題をめぐって、またいろいろな係争というものが出てくる。そういうようなことや、あるいはまた補償金が折り合わない、そういう裁判がだんだんたくさん起きてきた場合は、いままでそういうあれがありませんけれども、新しい制度を導入することによって、そういう紛争がたくさん出てくるというそういうときの裁きぐあいというか、そういうようなことについてはどういうふうにお考えになりますか。あまり心配ないですか。
○政府委員(荒玉義人君) これは制度上はいわば裁判でございます。法務省とその点はいろいろ打ち合わせました結果、その点、法務省としては問題ないということでございます。ただ私たち実際訴訟の場ですべてを解決するということが妥当かどうかという判断は持っております。それで、やはりこういつたものは技術と同時にいまの「通常受けるべき金銭の額」と言っていますそういう経理的なエキスパートが一種のあっせんをしていくということが、これは望ましいことでございます。したがって、訴訟の前の段階としてそういった事実上紛争を解決できるような機関、これはぜひつくりたい、つくるつもりでございます。そういうことによりまして実効をあげる一つの手段にいたしたいと思っております。そういうふうに考えております。
○竹田現照君 その紛争を解決する機関をぜひつくりたいという具体的なお考えはどうですか。
○政府委員(荒玉義人君) まあ発明協会がございますが、そこで斯界の権威者を常時登録いたしまして、先ほど言いましたように技術あるいは法律、経理関係の大体三者構成になるのですが、そういった方々を、具体的な事件に応じまして委嘱いたしまして、そうしてもちろん両当事者が同意しないと成り立ちませんが、そういった場合には斯界の権威者にあっせんをしてもらう、あっせんを出してもらうということでございます。とりあえず五百万程度いま予算を計上しておりますが、これは必要に応じましてさらに増額をするという意向を聞いておりまして、その機構を使っていきたいと考えております。
○竹田現照君 その発明協会の調停といいますか、何といいますか、そういうものは執行力はないわけですね。執行力がないということになると、やはり結果的には裁判所で争うということになり、あまり問題の解決には役立たないんじゃないですか。なぜ私はそれを聞くかというと、これはちょっと衆議院の公聴会の中で、発明協会かな、間違っていたら改めますけれども、発明協会というのは何か特許庁の御用団体じゃないかというような参考人の発言がありましたが、あれは発明協会のことだったですね。そうすると、御用団体のようなものが調停をしてみたところで大体まとまるわけはないじゃないですか。有名無実のものになってしまうんじゃないですか。
○政府委員(荒玉義人君) 私たちは発明協会が特許庁の御用団体とはごうも思っておりません。御承知のように、発明協会の会長は松下会長でございまして、特許庁長官は松下会長の発明協会を御用機関とは露も思っておりません。 それからいまのあっせんの問題は、これは何も特許庁云々でございませんで、われわれは発明協会というのはできるだけ発明者の保護をやっていただく協会だと思っております。訴訟にいく前の段階でそういう当事者の紛争を解決することが発明者のためになるわけでございますから、それをあえて発明協会が発明者保護のためにやろうということでございまして、われわれとしては大いに歓迎いたします。したがって、われわれの仕事とは直接の関係はございませんので、先生おっしゃった云々というのは、私は無関係じゃないかと思います。
○竹田現照君 これは私が言っているんじゃないんですね、そういうような参考人の発言があったから、しかも何か大半の会員を持っている東京支部ですか、それがそういうふうに思っているようでは、そこへ調停を依頼してもだめじゃないか、そういう心配があったから聞いているわけです。 それで、補償金請求の範囲でお尋ねをいたしますけれども、可能な範囲というのは公開時の請求範囲と公告時の請求範囲の双方時に含まれるものとするというのは、これはダブっていなければということではなくて、公開後補正を行なって広がった場合でも、その広がった部分が公告時の請求範囲にさえ入っていればいいのかどうか、これはどうですか。
○政府委員(荒玉義人君) 拡大した場合には、広がった場合には、公開のあと手続をとりますから、それが出願公告のときとダブっていれば、当然権利の範囲になる、そう考えております。
○竹田現照君 それは入っていればいいんですわ。 次に補償金を請求するためには、出願人は実施者に対して出願の内容を書面で通知しなければならない、そういうことになっていますね。この規定は中小企業だとか個人企業の人にとってはたいへん不利益なように思いますが、それは特許で目につきにくいような部分、これはどうしても簡単にはわかりませんから模倣、盗用した人に警告文を出す時期がおくれる、おくれればそれだけ補償金請求の期間が短くなる、そうすればそういうような場合に、そういう侵害者がそういうことを実施をした時期までさかのぼって補償金を請求できるというようなことに変えるというようにこの規定を修正をするお考えはないですか。 それから出願人のそういうことを侵害をした者が自分の居所を転々としたというような場合、警告文を出すところがさっぱりわけがわからなくなる、こういうような場合も当然に想定をされる、これは大会社であれば別ですけれども、そういうような場合どうですか。
○政府委員(荒玉義人君) 六十五条の二の第一項の問題でございますが、大体公報、まあ公報のコピーを提示すれば、ここで言う内容を知らしたということになるんじゃないかと私は思います。したがって、その点は自分が出願した公報のコピーを添付すればいいということでございます。 それから警告をしなくても六十五条の三の一項の後段で「当該警告をしない場合においても、出願公開がされた特許が出願に係る発明であることを知って」おれば、これは警告と同じでございます。ですからその点は知ったということ、もちろんこの場合立証しなければいけませんが、そういうことにつながると思います。 それから住所不定といった場合に、これはむしろ公示催告それ自身も有効でございませんので、やはり逃げていれば先ほど言いました六十五条の三の後段で知っているんじゃないかというふうなことで争うということだと思います。
○委員長(八木一郎君) ここで暫時休憩し、再開は午後一時といたします。 午前十一時五十八分休憩 ————————————— 午後一時十四分開会
○委員長(八木一郎君) ただいまから商工委員会を再開いたします。 まず委員の異動について報告いたします。 本日、阿具根登君が委員を辞任され、その補欠として中村英男君が選任されました。 —————————————
○委員長(八木一郎君) 午前に引き続き、質疑を行ないます。質疑のある方は順次御発言願います。
○塩出啓典君 今回の特許法の改正にあたりまして、工業所有権審議会が長期にわたって審査をしたわけでございますが、その結果について非常に各界の反対が多いわけであります。そういう点、われわれとしても審議会がはたして全体の意見を十分くみ上げたのかどうか、そういう点に非常に疑問を抱くわけでございますが、この審議会の委員の決定、そういうものについてはどういう考えでこのメンバ一を選んだのか。その点、長官よりお答えをいただきたいと思います。
○政府委員(荒玉義人君) 委員はできるだけ各層の意見が反映するような形で選んでございます。
○塩出啓典君 いまのは、ちょっと答弁にならないですね。もう少しくわしく。
○政府委員(荒玉義人君) 審議会の委員は三十七名でございます。それで中小企業関係者といたしまして七名、それからいわば大企業関係者七名、それから法曹界四名、それから学識経験者といたしまして十五名、それから官庁では最高裁の行政局長、法務省の民事局長、科学技術庁の振興局長、それと私の四名、そういう構成です。
○塩出啓典君 私がいただいた資料を見ますと、中小企業の代表が二名、大企業の代表が九名、そのようになっておるのでございますが、七名というのは一体どういう内容でございましょうか。
○政府委員(荒玉義人君) 大條委員——これは特許制度擁護連盟、それから佐々木委員——これは東商関係で、中小企業委員会のたしか委員長であります。それから日本工学会の会長の辻委員、それから全国中小企業団体中央会から遠山委員、それから中小企業金融公庫から馬場委員、それから日本商工会議所常務理事の三輪委員、それから全国鞄協会副会長の渡辺委員。 以上七名でございます。
○塩出啓典君 それでは、これは中小企業というよりも、中小企業、それからまた特許制度擁護連、そういうのを含めて七名になるわけでございますが、企業側は計算しましたら九人、そういう点は、私は委員の選び方自体に非常に公平性を欠いているような気がするわけでございますが、そういう点はどうなんでございましょうか。
○政府委員(荒玉義人君) これは、それぞれの関係団体に対して、われわれといたしましては指名でどなたという言い方をしておりません。先ほどの中小企業団体中央会あるいは日商にしろ、適当な人をそれぞれ推薦していただくということで、そういう形で処理しております。
○塩出啓典君 それでは長官にお尋ねいたしますが、今回の特許法の改正において、やはりいろいろ問題になる点があると思うわけであります。委員をこのように選んだということも、そういう問題があるからやはりこういう人を呼んだと、そういうやはり考えがあると思うんでありますが、特許庁といたしまして今回の法改正にあたってはどういう点に一番大きな問題があるか、どういう考えのもとに人選をしたのか、その点を答えていただきたいと思います。
○政府委員(荒玉義人君) 御承知のように、この審議会は工業所有権制度の全般にわたっております。そうして今回の答申が現在の法案の骨子になっております。その他残された問題もございますが、いわば全般にわたっておりますので、できるだけ各層各界の代表の方々を広く網羅する方針でございます。先ほど申し上げましたようにやはり中小企業者の方、大企業の方あるいは法曹界あるいは学識経験者等々、そういう人選は、あくまで工業所有権関係者の広い意見を反映するというつもりの人選でございます。
○塩出啓典君 これは、あとからまた質問さしていただきたいと思うんでありますが、科学情報のはんらんということが非常にいま大きな問題になっているわけでありますが、そういう点から、今回の改正によりまして公開公告というものが年間に二十万件以上出ると、そういうことで非常にやはり科学情報のはんらんということで、これは大いに問題になると思うんでありますが、そういう点については、そういう関係者は委員の中に含まれていないのでございますか。これは特許庁としましては、そういう必要がないと考えておったのかどうか、その点お聞きしたいと思います。
○政府委員(荒玉義人君) 今回の改正の骨子はいわゆる公開制度に伴う情報の問題でございますが、むしろこの角度からはまず利用者はどうか、利用者といいますのは、先ほど言いましたように大企業、中小企業、これはすべて利用者でございます。あるいは国の立場から見てどうかというのは、本委員会に出席しておられます科学技術庁の振興局長。そういった利用者並びに全体を見ておる方という構成でこの問題を審議してまいったわけでございます。
○塩出啓典君 この問題につきましては、あと振興局長にお聞きするといたしまして、この工業所有権審議会の報告書によりますと、四十三年四月十九日に中間報告を公表し、民間各界の意見を聞いて改正案をまとめたと、そのように書いてありますが、民間各界の意見はどのようにして聞いたのか、またその結果はどうであったのか、その点を御報告願いたいと思います。
○政府委員(荒玉義人君) 二つの方法で意見を求めたわけです。一つは全国各地の主要な都市でございますが、そういったところにわれわれ出向きまして——大阪のこときは私が参りましたのですが、千名近く集まっておられました。そういった形で御意見を伺った。もう一つは、これはそれぞれの団体、たとえば経団連等、あるいは中小企業関係は日本商工会議所あるいは中央会、そのほか業種別の団体と接触いたしまして、中身を御説明し、そうして御理解を深めてまいったのでございます。もちろん弁理士会あるいは特許協会、これは申すまでもございません。そういった各界の意見を総合してわれわれとして提案した次第でございます。概要は——もちろんそれぞれの立場からの御意見がございます。私いつも申し上げることでございますが、制度自身それぞれの長所短所がございます。ただわれわれといたしましては、やはり現行法では工業所有権の機能が減殺される傾向にあるということで御説明申し上げたわけでございます。そういう意味で私たちがそれぞれに話した感じでは、全体としてはやはりある程度何とかせざるを得ないという大勢と考えております。ただし現行法でも人をふやせばできるじゃないか、特許庁の力でできるじゃないか、こういう御意見もございます。したがって大勢としてはわれわれの各団体その他と接した限りにおいては、趣旨には御賛同を得ておる。ただし一部にはそういった御意見も私承知しておるつもりでございます。
○塩出啓典君 現行法ではだめだと、これはやはりふくわかるわけでありますが、じゃほんとうに全国のそういう日本特許協会とか、あるいは発明協会とか、あらゆる各層があるわけでありますが、この法案に対するそういうような意見、そういうものをいま長官のお話ではアンケートを取って調査もしたと、あるいはまた全国通算六カ所ですか、説明会を開いて、そういう説明をし、そういう意見等も聞いたと、そういう各界のその時点におけるアンケートの回答、意見あるいは要望、そういうやはり資料がございましたら、それを御提出いただきたい。いまの長官の答弁では十分それはわかりませんので、お願いしたいと思うんですが、その点はどうですか。
○政府委員(荒玉義人君) 正式に文書で出ておるところは文書で御提出いたします。
○塩出啓典君 それから日本特許協会を通して二百六十社にアンケートを取った。その結果いわゆる審査請求をするパーセントが何%か、そういうような調査をやったということをこの前この委員会でもお聞きしたわけでありますが、日本特許協会を通して二百六十社の企業のいわゆる特許担当者に対するアンケートではないかと思うんでありますが、その状況がどうであったか、その点お聞きしたいと思います。
○政府委員(荒玉義人君) 四十二年の十月に、先ほどお話のございましたように、特許協会加盟各社二百六十社に照会いたしました。そうしてこの趣旨はどの程度の請求率になるだろうかということで、まあ抽象的にやっても意味がございませんので、現在出願しておる一番新しい時点の出願を基準にいたしまして、おおむねどの程度かという調査をいたしました。その場合に特許、実用新案、それぞれでは異なります。あるいは請求料を幾らにするかということで差がございますが、かりに請求料二千円の場合におきましては特許請求八九・三%、実用新案七七・三%、合計八三%。それから請求料六千円の場合には特許は八二・九%、実用新案七一・八%、合計七七・一%。請求料一万円の場合ですと、特許七七%、実用新案六〇・九%、合計六八・七%。一応そういう結果を得ております。
○塩出啓典君 このときには、そういう審査請求の率だけの調査であって、ほかに特許法の改正についてのアンケートは全然とらなかったわけですね。
○政府委員(荒玉義人君) 請求率だけでございます。全体につきましては、もちろん特許協会の中で非常に活発な議論がございまして——それは、むしろ特許協会が意見をまとめるための内部の問題と思いまして、われわれ自身とっておりません。
○塩出啓典君 それで、いままで何回も委員会で問題になったわけでありますが、特許庁内部において非常に今回の法案に対して反対が多いわけでありますが、そういう点、この法案を出す前に、よく現場の担当者、そういう者の納得というか、そういうものが足りなかったのじゃないか、われわれはそう思うわけですが、そういう点はどうなんですか。
○政府委員(荒玉義人君) われわれは審議会の事務局でございます。したがいまして、各委員の議論を中心といたしましてそういった取りまとめをいたします。と同時に、われわれ自身としても内部で——いわば企画委員会の中の制度改正だけの小委員会がございまして、そういった内部の機構を通じましていろいろな問題点について論議を重ね、そうしてその小委員会の議論の際にも、できるだけ広い層の意見を吸収するという形でやってまいったわけでございます。それから中間報告は昨年の四月出てまいりました一応の骨子でございますが、答申は十一月でございますが、補正のところを除けばほとんど同じでございます。で、もちろん、われわれは、そういった中川報告については外部に中身を説明し、理解を得ると同時に、内部ではすべての職員の理解を深め、そうしてそういった理解と協力を得るべく努力してまいったわけでございます。それから正式答申が昨年十一月でございますが、法案段階では、大体、今度は答申の趣旨をほとんど法文化したということでございます。その段階におきましても、もちろん特許庁の内部の各組織を通じて職員の理解を求めるべくわれわれとして努力してまいったつもりでございます。
○塩出啓典君 結局、努力したけれども、そういう納付の線までいかなかったわけですね。そのまま法案を出しちゃったわけですね。そういう点、私は大臣にもお聞きしたいと思うのでありますが、やはり特許庁のそういう連中がわれわれのところに参りまして——いろいろ事情も聞いてみたわけでありますが、やはり彼らには彼らなりの言い分もありますし、言うなれば生涯特許庁でめしを食っていく、そういう連中であります。決してイデオロギーに左右されているのでなく、ほんとうに特許行政というものをよくしていこうという気持ちで言っている点には変わりないわけでありますが、そういうような、しかも審査官あるいは部課長クラスにおいてすら必ずしも賛成ではない、そういう空気の中で強行して法案を通しても、結局は問題を残すのじゃないかと思う。そういう点でもう少し通産大臣としても、ほんとうにやはりどういう点で下の人たちが反対をしているのか、そういうような意見を直接代表に会ってでも聞いて——私が思うのは、何も滞貨の問題はきのうきょうに始まった問題じゃないのです。一刻も早いのがいいわけでありますけれども、そういう問題を押し切ってまで早くしなければならぬという理由はないと思います。半年なり一年なり、もう少し待って、やはり検討すべきではないか。そのことを強く主張したいわけでございますが、そういう点、通産大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
○国務大臣(大平正芳君) 仰せのように、この改正法案につきましていろいろな向きから反対があることを承知しております。とりわけ特許庁内部の職員からも反対の声があがっておることもよく承知いたしております。したがって内部の了解を十分取りつけて、あと執行上支障がないようにすべきじゃないかという御意見はごもっともに存じます。ただ塩出委員も御承知のように、これは十分前から工業所有権審議会で長い御審議をいただいた経緯を持っておりまして、こういう事態に対処いたしまして、早急にやらなければならぬことだけにしぼりまして、最小限度の改正を考慮したわけでございます。したがって、私どもとしては、仰せのように部内の諸君のまだ完全な了解を得ていない向きもありますけれども、私の責任におきまして十分の理解と協力が得られるように努力をいたしまして、施行の円滑を期してまいらなければならぬと考えておるわけでありまして、それは不可能ではなくて、われわれの努力によりましてできることと思っておりますので、この改正案は、もう少し手元にあたためて十分の了解を得てからということではなくて、この法案と並行いたしましてベストを尽くさしていただきたいと考えております。
○塩出啓典君 まあ実は私たちも、この特許法の改正案というものが最初出たときに、非常にいい考えだ、別に何も問題ない。そのように最初は考えておったわけでありますが、いろいろ研究してみますと、そういう問題があるわけであります。大臣は、この法案が通ってから、そういうふうにつとめると言われますけれども、やはり何事も、ものごとが成ってから説得するよりも、同じ説得するなら、その前に何らかの話し合いを持つなり、またこの特許法というものがもう一たび通ってしまえば、悪いからすぐもとに返すという、そういうものでもありません。日本の産業界全体に及ぼす影響も、これはものすごいメリット、デメリット等もあると思うわけでありまして、そういう点で私らとしてはこの法案が通ってからそういうように尽くすのではなくして、ものごとのやっぱり可能性からいうならば一刻も早いほうがいいのではないか、私はそのように思います。そういう点でやはり現場の人たちのそういう意見というものをこの審議の過程においてやはり聞くべきである。ぼくはそのくらいの注意は必要じゃないかと思うのですが、その点はどうですか。
○国務大臣(大平正芳君) 仰せのとおりでございまして、いま言われたように、現場の諸君が十分了解して積極的に協力していただくようにすることが私の任務だと思います。で、この問題につきましては、長官はじめ特許庁の管理者の諸君がいままで努力をしてまいり、現に努力をしつつあるわけでございまするし、本法をお認めいただきました上は、なおさら努力をすることは当然の任務であると思います。私は、そういう御趣旨に沿いまして、私の責任において、ペストを尽くさしていただきたい、こう申し上げておるわけでございます。ただ、本案がそういうことのためにせっかくのチャンスを逸するということになることはいかにも残念でございますので、こいねがわくばこの点私どもを御信頼いただきまして、法案の御審議を進めていただいて、いま仰せのような状況を招来するように私を中心に努力を重ねるということに御信頼を賜わりたいと思います。
○塩出啓典君 それは、あくまでも私は意見として申し上げたわけで、あとはひとつ通産省の判断で善処していただきたい、そのことをお願いする次第であります。 それと、もう一つ、発明協会でございますが、われわれのところにきた書類によりますと、発明協会としてはこの特許法の改正には全面的に賛成である、そういうような意見が来ております。ところが、東京の支部では反対だ。——われわれとしては、発明協会の特許法改正に賛成だという意見はほんとうにやはり全国の意見を代表しているのかどうか、その点に非常に憂いを持つわけであります。この発明協会がそういう結論を出すに至った根拠といいますか、そういうのはどうなんでしょうか。
○政府委員(荒玉義人君) 発明協会内部のことでございまして、私全部承知はいたしません。ただ、聞くところによりますと、協会の中で特許法改正の委員会を別途に設けておると聞いております。そういった中で審議していく。その際には当然各地の意見を参酌してやるし、その委員会で審議しているのではないかと聞いております。もちろん私、発明協会内部のことでございますので、全部承知はしていないのは残念でございます。先ほど申し上げたようなふうに私自身は聞いております。
○塩出啓典君 そういう点が、私は非常に、この法改正にあたって特許庁がより広い意見を聞くという点において非常に私どもは不満を感ずるわけです。実際に発明協会内部においても、上のほうは賛成でも下のほうは反対かもしれない。今回のこの審議会のメンバーもほとんどそういう上のほう——もちろん代表するわけですから、それはやむを得ないかもしれませんけれども、しかしその代表している人たちがほんとうに全体の意見というものを公平に反映していなかったら何にもならないと思うのです。そういう点で、全国のそういう発明家というものは、全部これは発明協会に含まれているとわれわれ聞いているわけですが、そういうような現場の第一線でほんとうに一生懸命やっている人の声というものが、これもまた一つの意見として反映してこなければならないのじゃないか、そのように思うわけなんですけれども、そういう点、どうでしょうか。
○政府委員(荒玉義人君) 発明協会の東京支部が含まれております擁護連盟、これには改正問題を含めまして二、三私出席して、私自身いろいろ意見を聞いております。しかし私自身といたしまして、あるいはわれわれ全庁をあげて賛成者だけの意見を聞いたつもりもございません。われわれ自身、制度はそれぞれの利害得失を持っておるというふうに初めから承知しております。そういった形でわれわれは忌憚のない各界の意見を聞いておるつもりでございます。ただ、いま審議会その他それぞれで、あなたの意見は全体の意見ではない——こういうのは私失礼だと思いますが、それはあくまで内部のそれぞれの団体におけるそれぞれの意見形成というものはあってしかるべきだと思います。繰り返すようですが、われわれといたしましては、賛成の意見だけ聞いた覚えは毛頭ございません。公平に多くの意見を聞いてまいったつもりでございます。
○塩出啓典君 それでは、先ほど私お願いしましたように、そういう各界、各団体から特許庁において現在までいろいろアンケートをとり、掌握してきたその実態というものを、資料として御報告願いたいと思います。 それから次に、先ほどちょっとお話ししてあります科学情報の管理という点からお聞きをいたしたいと思うのでありますが、これはまず科学技術庁にお伺いしたいと思います。 最近とみに、科学情報が非常にはんらんをし出しまして、これは近い将来、科学者にとっては非常に大きな問題になるのではないか。だからそういうたくさんの、あまりにも膨大な情報がはんらんしておるために、その情報をもらっても、それをどう活用するか、そういうのが非常に切実な問題になるだろう、そのように言われております。大体、ある文献によりますと、科学全体では十三年ごとに文献量は倍増していく、化学関係などでは八年で二倍になる。そのようにだんだん情報はものすごく増加していっておるわけでありますが、そういう情報管理という問題については、担当庁である科学技術庁としてはどのような体制でやっておるのか。その点をまずお聞きしたいと思います。
○政府委員(佐々木学君) ただいま御指摘のとおり、最近の科学技術の急速な進歩によりまして、科学技術情報が飛躍的に増加しつつあるわけでございます。最も典型的な情報源でありますところの文献を逐次とってみますというと、現在世界で科学雑誌、技術雑誌等の定期的に刊行されておりますのが大体五万種類、特許が大体七十万件程度、そのほか単位論文、レポート、学会発表資料、これが大体十万種類といわれておるのであります。したがいまして、こうした論文に含んでおりますところの情報件数は大体年間三百万件くらいであろうというふうにいわれておるわけでございます。こうした膨大な科学技術情報を今後いかにして収集し、そして必要な向きに提供するかということが今後の大きな問題になってくると思うのであります。科学技術庁といたしましては、現在こうした科学技術文献の収集、提供、管理は、特殊法人でありますところの日本科学技術情報センターを中心にして行なわせておるわけでございます。 簡単にこの活動状況を申し上げてまいりますというと、日本科学技術情報センターにおきましては、四十三年度におきまして、大体理工系を中心にいたしまして、六千八百種類の定期刊行物を収集いたしております。今後、四十四年度はさらに七千四百種類程度のものを集めたいと思っておるのでありますけれども、こうした文献を集めただけでは十分な提供業務というものは行なえないわけであります。研究者はそうした文献を一〇〇%読んで、そして必要なものを選び出すというにはあまりにも時間と手数がかかりますので、これをアブフストラクトをつくりまして——大体一つの論文につきまして二百字前後に内容をまとめたアブストラクトをつくりまして、そして各専門ごとに、たとえば化学とか電気とか、大体九種類の部門に分けて、これを抄録しようとしておるわけでございます。昭和四十三年度におきましては、大体四十が件のこうした抄録をつくったのでありますけれども、四十四年度におきましては大体五十万件程度の抄録をつくる。これを九部門に分けて配付いたしますと、研究者にはその専門の分類に従いましてこの簡単なアブストラクトを読んでいただいて、そのうちでこれはと思うものがあればオリジナルな文献に返って、そのオリジナルな文献の複写をして差し上げる、そして研究していただくということを考えておるわけでございます。それでも、なおかつ今後文献が激増いたしますと、そのアブストラクトさえ読む時間もなくなってくるわじゃないか、こういうことも長い将来には考えられるわけであります。そこで、現在世界各国でも考えられ、研究されておるのでありますけれども、クリアリング・ハウスという機能を一つ考えております。これは研究者に、どういうことはどこへ行って聞けばすぐわかる、あるいはこういう研究はどの先生がやっているんだといったような案内的な機能といいますか、そういうような機能を持たせた機関を設立する必要があるということで、一部この情報センターにもそういう機能を持たせた活動をさせておるわけでございます。さらに現在は、この文献を抄録いたしますときにキーワードをつけまして、このアブストラクトさえ読まないで、ただ研究者のほうからこういう内容を持った研究論文がないかという質問が将来はこようかと思うのであります。そういう場合には、その注文によりましてその技術内容を分類し、さらにキーワードを組み合わせまして、そして蓄積してある電子計算機の中からその要求する文献を全部引き出していくという、いわゆる情報検索といいますか、この技術を現在研究中でございます。これが実際に行なわれるためには、ある程度の文献がインプットされておりませんと、これは役に立ちませんので、すぐにはこういう情報検索のサービスができるという段階にはいっておりませんけれども、現在アメリカの国立医学図書館で発行いたしておりますいわゆるメドラスという磁気テープを借りてまいりまして、これによってこういう情報検索の技術を現在研究していると同時に、一方においてはそういう情報検索の事態に備えまして、現在抄録を電子計算機に覚えさす場合にキーワードをつけながら覚えさしていく、そうして将来たいへんな情報の洪水化という事態に、研究者に必要な文献をできるだけ早く、しかもできるだけ安い段階で供給していきたい。そういう構想を現在持ち、かつ実施中でございます。
○塩出啓典君 それで、今回特許法が改正になりますと、そういう早期公開によりまして、出願した公告が全部公開をされる。そういう点で非常に膨大な情報量の増加を来たすわけでありますが、これはある雑誌で、ある大学の教授が言っておることでありますが、科学情報の利用の有効な態勢が整備されなければ、ある研究がすでに世界のどこかで行なわれたかを調べるより、研究を繰り返していったほうが手っ取り早いというような、そういう事態を生み出すかもしれない。だから情報は、十分精選し、むだを減らす必要がある。あるいはまた情報を早く知らせることも肝心であるが、むだな情報をなくするということも、それ以上に肝心だ。そういうようなことが言われておるわけであります。そういう点で今回改正になりまして、いままでは出願数の中の約四割程度は印刷されて情報として流されておったわけでありますが、今回は出願したら全部出る。しかも今度は、もう一回審査をいたしまして、いままでの分も同時に出る、そうなると、やはり非常に情報がふえる。しかもその情報の大半はやはりむだな情報である。そういう点、いわゆる迅速性という点から言うならば、これは早いわけでありますが、情報のはんらんということから考えると、それはマイナスの結果があるわけであります。そういう点、佐々木局長も審議会のメンバーとして加わっておられたわけでありますが、やはりメリット、デメリット、そういう問題について、私どもは早期公開というのはデメリットのほうが多い。かように判断をしておるわけでありますが、そういう問題に対する科学技術庁の見解、同時に特許庁の見解をお聞きしたいと思います。
○政府委員(佐々木学君) たいへんむずかしい御質問でございますけれども、現在あります一般の文献に載っております科学技術情報でも、そのことごとくが非常に有効な情報であるということではないわけでございます。たとえば、すでに過去に発表したものを別の雑誌に発表したといったような文献もあるのでございますので、科学技術情報が数多くある場合には、どうしてもその中から価値ある情報を選択するということは、やむを得ない事態ではないかと思うわけでございます。情報センターにおきましても、先ほど申しましたような何千種類の情報雑誌を購入しておりますけれども、その中からことごとくの論文を抜くわけではありませんで、その中を十分読みまして、そうして、これはという論文だけを拾いあげて、こういうふうなアブストラクトにしておると、こういうわけであります。したがいまして情報を入手するということは、なかなか努力が必要と思われるわけでありますけれども、先ほどの御指摘のように早期公開におきましても、これもまあ玉石混淆で半分は価値のない情報であるかもしれないと思うんでございます。けれども、その程度と申しては何でございますけれども、情報はすべての場合にこういう玉石混淆でありますので、その中から必要な価値のある情報を抜いてくるということは、やむを得ないことではないかというふうに考えるわけでございます。
○政府委員(荒玉義人君) 特許文献は、御承知のように学術文献と同様に、あるいはそれ以上値打ちのあるものだ。といいますのは、御承知のように開発する段階におきまして相当コストがかかるわけです。コストを回収するということが必要になってくる。そのためには他人が権利を取っていない情報をいち早く知るということが、どうしても開発の場合必要になるというふうに考えられるわけでございます。その際、現在では見れないわけです。早く見たいという要請がまず企業の側から出てくるわけです。その際、現在の出願公告されたものでも、企業はすべてを見るわけではございません。やはり企業は自分の守備範囲なり、あるいは将来マーケットがあるというところで、企業といいますものはあらゆる情報の中を選択して、将来自分の企業に必要なものを集中していく、こういうことかと思います。その際、できればおっしゃいますように全部特許性のあるというものが望ましいと思いますが、やはりそれより先にタイミングといいますか、早い時期にそれを知るという要請のほうが——セレクトするためのもちろん煩雑さはありますが、それよりタイミングが優先するというふうに、われわれはこの公開公告制度について考えます。
○塩出啓典君 長官が言われるように、やはり早いということは非常にいいと思うんですね。けれども実際、今回の特許法の改正によりまして、おそらく各企業も、そういう社内の特許関係の人員を増員しなければならない。それはやはり当然言えると思うんですね。これは大体、全国の各企業でそういう特許関係で、今度の法改正に伴ってどの程度の増員を必要としておるか、そういう資料はございますか。
○政府委員(荒玉義人君) 内々に企業には計画があると聞いております。ただし企業の場合ですと、具体的に確定しない間は、おそらくあるいは内部事項でございますので、今度の場合にどの程度増員するかという数字はございません。
○塩出啓典君 まあそういう点で、もちろん早期公開をすれば情報は早く入るわけでありますが、しかしこれは特許庁の審査官、あるいは事務官等の陣容を充実して、そうして審査を早くしていく。そうしてその早期公開ではなくして、審査された、選ばれた情報を流す。それにはもちろん予算と人員が要るわけでございます。それは、政府がそういう人員をふやすことはできないといって、ここでこういうような方法になって、そうして各企業においてそういうメンバーをふやす。そうなると、私は日本産業全体としても大きなマイナスではないか、そのような点を考えるわけであります。ところが、この法律を改正するにあたって、はたして各企業においてどれだけいままでよりプラスアルファの予算が必要であるか、人員が必要であるか。そういうような点も詳細につかんでなくして、こういう法案を行なうということは、私は非常に日本の国全体としても大きなマイナスである、また特許庁としてはいいかもしれないけれども、国全体としては大きなマイナスじゃないか。まあそのように思うわけですけれども、そういう点はどうですか。
○政府委員(荒玉義人君) 現在見れない公開公告が出たから、企業がすべて見なければならないという前提については、いささか私自身疑問を持っておる次第であります。といいますのは、企業がなぜ早期に情報がほしいかというのは、あくまでそれが企業の開発をより効果的にする、ひいてはそれが国際競争力をつけてくる原動力であるということから、企業はスタートするわけであります。したがいまして、そういったビヘービアの企業というものは、何も出たから知らなきゃならぬということにはならないので、あくまで企業が、それが将来の自分のためにより大きな開発に導く、こういう要請をまずベースにすべきであろう。そのためには、いまは見れない、だから見て効果をあげるというのが今度の公開公告に対する企業の立場でもございます。したがいまして企業によりましては、われわれのほうはそんなことは関心ないという人もあるでしょう。われわれのほうは、従来その面はやろうと思ってもやれなかったから、この際大いに増員して、そのためには効果的な開発の体制をつくっていくということならば、それは企業は思い切った増員をするでしょう。そういった、むしろ企業のそれぞれのものの考え方というものは、私はこの問題についてまちまちだろうと思うんです。そういった意味では、むしろ現在は見れないのを見れる体制にするというふうに企業は判断する。だから、それが必要のないものは見る体制をつくる必要はないということではないかと思います。
○塩出啓典君 それは昨日の新聞に載っておったわけでありますが、鉄鋼連盟に情報処理委員会をつくってデータセンターをつくることを検討する。結局、非常にふくれ上がる科学技術情報あるいはまた特許情報、そういうのが非常に現在ふくれ上がる一方である。そういう状態に対処していくには一つの企業ではできない。鉄鋼業界でいえば八幡といい、富士といい、日本でも最も大きな大企業でありますが、そういう企業ですら、はんらんする特許情報の処理はできない。だから鉄鋼連盟として業界でまとめてやろう。そういうようなやはり動きになってきているくらい、現状ですらすでに情報は非常にはんらんしておる。そういうやはり現在の情勢じゃないかと思うんですね。そういう中で早く公開する、これはわれわれも異存がないわけです。だけれど早くする方法に、早期公開をして年間に二十万以上の情報を流す、それをもっと、やはり特許庁内において審査を迅速にする方法をもっと検討して、そうしてやはり選択された情報を流す。私は、そのようにやはり検討すべきじゃないかと思うんですね。まだまだやはりそういう点において、これはあとでいろいろ質問申し上げようと思うんでありますが、特許庁の定員自体においても、審査官の認められた定員も、実際にはないと思う。百五十名近くも事務系のほうに回しておる。それをちゃんと定員どおりの審査官がいてやっておったならば、こういう事態もこなかったんじゃないか、私はそう思うんですよね。だから、こういう法律を改正するのも、必要ならばやむを得ないかもしれませんけれども、その前にもっとやはり特許庁としてやるべきことがある、そっちのほうをぼくは先にやるべきじゃないかと思うんですね。私はそう思いますけどね。そういう点どうですか。
○政府委員(荒玉義人君) 本改正の一番前提になる問題で、たびたび論議のあるところでございますが、われわれといたしましては制度改正と並行して、もちろん人員の拡充を含めたことは当然やらなければならない。それをやってこい、こういうお説でございましょうが、たびたび申し上げますように、いまの全体の特許庁の定員、これをふやしてはおりますけれども、早くやるためには大幅ということになります。審査官ももちろん大幅でございます。大幅な定員増加という問題、これはまあ非常にきびしい。と同時に、かりに定員がございましても審査官の採用ということも、たびたび申し上げるように、一つの限度がございます。その前提を全部初めから直していらっしゃいということだと思いますが、やはりこれはそう一朝一夕にその問題が解決するというふうに考えられぬならば、その解決を徐々にはかると同時に、新たなる事態に即応した制度の改正、両者併用してやっていくということがきわめて実際的だ。また、そのほかにいろいろ考えられはいたしますけれども、実効しその他から見れば、新たなる技術革新にふさわしいためには両者併用していくべきではなかろうか、こういうふうに申し上げたつもりでございます。
○塩出啓典君 まあひとつ、そういう点、私は、産業界を担当する通産大臣にもよくこの点を検討していただきたいと思うのですけれどもね。 二十万以上の情報——これは、もちろん一つの業界が全部要るわけではないかもしれませんけれども、いずれにしてもやはり現在よりも三倍にふえることは間違いないわけであります。いわゆる公開の場合、それが三倍にふえるわけですから、そういう点、やはり各企業、あるいはまた、そういう中小企業、あるいは町の発明家、そういう人にとって、その公報の印刷代だけでもばく大な金額になると思うのですね。審査庁の抜本的増員ができない——それは、いままでの慣例からすればできないかもしれませんけれども、しかしやはりそれは、もちろん定員のワクもあるかもしれませんけれども、時代は変わってきているわけですから、時代に即応した抜本的な手を打たなければならぬ。それが私は大臣のやるべきことじゃないかと思うのですね。そういう点で私は、こういうような法案を通す前に、もっとやはり特許庁の人員を抜本的にふやす、むしろ、そのことのほうが日本産業全体のプラスであるならば、私は、当然大蔵省を説得して、それくらいの人員はふやすべきだ。必要のないのをふやすのはいけないかもしれませんが、やはりふやしたほうが全体としてプラスであるならば、当然ふやすべきだと思うんですね。そういう点、通産大臣のお考えはどう外すか。
○国務大臣(大平正芳君) 特許庁の要員の充足の問題でございますが、これはこれまでも毎年毎年予算編成の最後まで残る問題として取り上げてまいりまして、財政当局も相当な理解を示しますて、逐年増員を認められてきたわけでございますが、しかしこれとても、われわれが計画しておる要員にはほど遠い状況であることは御指摘のとおりでございます。しかし、今後も、この法の改正案が成立する、成立しないにかかわらず、この問題は強く執拗に要請して実現をはかってまいるつもりでございます。 それから第二の情報管理の問題でございますが、科学情報管理の問題並びに特許情報の管理の問題で、民間側に十分これをこなす体制が十分整備されていない。あるいは非常に情報がはんらんいたしまして、民間の多くの企業が要員の充足をはからなければならぬ、増員をはからなければならぬということになりはしないかという御心配でございますが、御指摘のとおり、そういう事情が起こり得るかと思うのでございます。したがって、これは情報を流す側も十分注意しなければなりませんけれども、受け入れ側におきましても、鉄鋼連盟の話がございましたが、中小企業、個人等の情報管理の場合の組織化と申しますか、最小の経費で最大の情報が確保されるような仕組みをわれわれが指導してまいりますことも、いまの産業政策にとりましては、御指摘のとおり非常に重大な問題だと思いますので、そういう点にはいろいろの配慮をさせていただきたいと思います。
○塩出啓典君 これは、この法案が通ってしまえは、あとになってはもうすでにおそいのじゃないかと思うのです。そういう点で長官も先ほどから、早いいほうがいい——確かにそれは早い情報にこしたことはないと思いますけれども、早くしかも玉石混淆した情報のはんらんよりも、早くしかも選択されたそういう情報が提供されるほうがより望ましい、この考えには長官も異論がないと思いますが、その点はどうですか。
○政府委員(荒玉義人君) 早くて的確、これが理想でございます。
○塩出啓典君 であるならば、早くて的確な情報を流す。これはもう早くて、しかも玉石混淆の情報を流すよりはいいにきまっておるわけなんですから、やはりその方向にもっとぼくは強力に進めていくべきじゃないかと思うのです。そういう点において、定員の問題一つにいたしましても、特許庁の立場というものが政府内において強力に反映されていない。そういう点でこの法案が通ってしまってあとからでは、もうおそいわけですから、いまここでこの法案を——いままで長い間審議をしてきた法案ではありますが、まだまだそういう点の十分な検討というものはなされていない、私はそのように思うわけです。科学技術特別委員会との連合審査、そういうものも一応は要望したわけでありますが、そういう点でやはり特許庁といたしましても、もう少しそういう情報のはんらんというものは国全体にどういう影響を及ぼすのか、私はもっと詳細に検討すべきじゃないかと思うのです。そういう点で特許庁に一つの調査をお願いしたいことは、今度の法律の改正に伴って各企業において、これは鉄鋼連盟の傘下の会社でもいいと思うのでありますが、具体的にやはりどういう影響を及ぼすのか。そのために、いままでよりどれだけの人員を増員しなければならないのか。そうなると情報が早いというメリットよりも、そういう面のデメリットのほうが大きいのではないか。そういう点をわれわれは心配するわけであります。長官はメリットのほうが絶対多いと確信するから、これを推進されているんじゃないかと思うのですけれども、私はそういう裏づけとなる資料、そういうものがわれわれにはないわけであります。そういう点で各企業がこの法案の改正に伴って、どのように体制を変えていかなけりゃならないか、そういう点、これは全部といかなくても、やはり代表を選んで、それを調査していただいて、その資料の御提出をいただきたい。それをお願いしたいと思うのですが、どうでしょうか、その点。
○政府委員(荒玉義人君) 企業は、いろいろ内部の計画はそれぞれ会社によりましてあると思います。ただ、企業の中の計画というのは、あくまで法案が確定した後でございます。私の聞いた限りにおきましても、いろいろ案がある。案があるけど、まだ法案が確定しないと社内としての方針にならぬ、こういう段階でございます。 それともう一つは、先ほど言いましたように、企業はあくまで開発を進めていくためにどうしていくかという場合に、これを使うわけでございます。その効果というのは、おそらく金何ぼの利益だというところに私は出てくるとは思います。そういう意味で、あくまで企業は一つのいろんな方法だということでございますので、先生のおっしゃるようなデータを直ちに集めるということは実際上むずかしいのじゃないか、こういうふうに推察しております。
○塩出啓典君 それでは、この問題はあとにいたしまして、次に、特許公報、あるいは公開公告の印刷の問題、あるいは秘密性の保持の問題、そういう点についてお聞きしたいと思いますが、まあ産業スパイ、そういうようなことが最近いろいろ論議されておりますが、特許出願というのは、現行法では出願公告までが秘密にされなければならない、そのようにいわれておりますが、この秘密保持については大体どのような規定がございますか。
○政府委員(荒玉義人君) 秘密保持の問題は、内部の問題と外部に発注した業者——内部は御承知のように秘密保守義務がございまして、それに違反すれば刑法上の責任も問われるわけでございますので、これはもちろん職員は当然そういった形の処理ということでございます。問題は、おそらく外注したらどうかということでございますが、現在でも特許庁の印刷工場の能力は十分でございません。一方、公告すべき件数というものは逐年増加しております。どうしてもやはり外注に依存せざるを符ないということから現在外注をしております。で、その担保といたしましては、契約を結びまして、そうして秘密を保持する義務を課しております。そういった契約によりまして漏洩の責任を追及するということにいたしておるわけでございます。
○塩出啓典君 現在、この印刷で外注に出しておるのは大体何パーセントぐらいか、どういうのを外注に出しておるのか、また、どこに外注を出しているのか、その点をお聞きしたいと思いますが……。
○政府委員(荒玉義人君) 大体外注は四四%、これは全部の公報を特許に換算いたしまして比較してみますると、大体四四%が外注でございます。それで、外注に出すものは現在は特許の大部分でございます。特許の公報の大部分、それから外注先は大蔵省の印刷局と株式会社桜井広済堂、二つでございます。
○塩出啓典君 桜井広済堂にはどの程度出しているのですか。
○政府委員(荒玉義人君) 外注の四分の三でございます。
○塩出啓典君 まあ今度もしこの法律の改正が通りますと、いままでの三倍の印刷量になるわけでございますが、そうなると、いずれにしてもこれは外注せざるを得ない、そういう状態になってくると思うんですね。現在でもすでに四四%、大蔵省は別としても、三〇%は民間に出しているわけでありますが、そういう点で、われわれは一つは秘密性の問題、そういう点を心配するわけでありますが、いままで外注に出して出願書類等が紛失したとか、そういうような事故は全然なかったのかどうか。
○政府委員(荒玉義人君) 紛失でなくなったという事実は聞いておりません。
○塩出啓典君 ということは、あるということですね、紛失でなくなったということはないというのは。
○政府委員(荒玉義人君) 先生のおっしゃるような事例は、私聞いておりません。
○塩出啓典君 聞いてない。その点どうですか、総務部長。
○説明員(藤田正次君) 同様でございます。
○塩出啓典君 これは、われわれの調査では、そういう事実が過去において何件かあった、そのように特許番号でわかっておるわけでありますが、そういうことをやはり長官や総務部長がわかっていないということは、どういうことなんですかね。労務管理上最も大事な出願書類の紛失等の事件が長官にも総務部長にもわからない、そういうようなやはり庁内の体制というものには問題があると思うんですがね。なければ幸いだと思うが、その点はどうですか。
○政府委員(荒玉義人君) 先ほど言いましたように、私そのような事実は承知しておりません。先生御指摘の点がございましたら、厳重調査して善処いたしたいと思います。
○塩出啓典君 ここでその問題を、どれがなくなったということをせんさくするのは、この目的ではありませんが、やはり今後そういう外注がふえてくれば、そういう危険性は多いわけであります。もちろん人間のすることですから、あるいは万に一つ、千に一つはそういうこともあるかもしれない。けれども、そういうことがあっても結局わからない、そういう体制自体が私は一番問題じゃないかと思うんですね。そういう点で、この問題はあとで特許庁長官に私から申し上げてその事実を調査願いたい、そのように思います。それから外注が今度ふえるわけでありますが、これはどこの印刷に出す予定でございますか。
○政府委員(荒玉義人君) 現在のところまだどこに発注するかきめておりません。
○塩出啓典君 きめていなくとも、この法案が通ってからきめるということでは非常におそい、やはりこういう印刷をするには単なる印刷会社どこでもいいというわけではないと思う。やはり大事な生涯をかけた血と汗の納品である特許出願の書類であるから、やはり安心してまかせるところに委託しなければならないと思います。そういう印刷所がなければこの特許法の改正自体も机上の空論になってしまうと思う。おそらく特許庁においてもやはり何個所かの候補というか、最終決定でなくとも、そういうやはり候補の印刷所というものはすでにきまっておるのではないかと思いますが、その点がまだきまっていないとすればこの法案の審議はあまりにもでたらめだと思いますが、その点はどうですか。
○政府委員(荒玉義人君) 仰せのようにどこの印刷工場でもいいという問題ではございません。したがいまして、事前の調査はわれわれとしていたしております。どういった能力を持っておるのか、あるいは印刷の技術その他を見てどういう適格要件が必要か、そういう事前の調査はすべて終わっております。でございますが、御承知のようにこれは入札制度その他できまることでございます。われわれは多くのところに発注するということは秘密漏洩、事務手続その他の面から妥当ではない、こう考えておりますが、そういう意味で、もちろん調査は十分してまいっておりまして、成立すれば直ちに入札によりまして候補名を決定するという段階にございます。
○塩出啓典君 いままで桜井広済堂ですか、あそこにずっと出しておったわけですが、これはどういう理由でここにずっと出しておったんですか。
○政府委員(荒玉義人君) これは大体タイプ打ちでございまして、タイプ打ちを多量に受注できるという印刷会社というのは桜井に限られる、そういったいわば能力的な面と、それから先ほどの秘密保持義務の問題がございまして、そう多くのところに発注するということは適当でない。それから管理その他全般を考えまして、現在のところ桜井にいたしておる次第でございます。
○塩出啓典君 これはそういう一つの話で、そういう事実を確かめたわけでありませんが、いずれにしてもこの特許公報の印刷というものは非常にやはりばく大な量である。公開公報にいたしましても、そういう点から発明協会の幹部が中心となって昭和四十一年の改正のときに印刷会社をつくった、そういう公報が印刷される、公開公報が印刷されるということをもくろんでそういうものをつくった。そういうようなことも聞いておるわけでありますが、ひとつこの特許関係の書類の印刷、そういうものについては、秘密漏洩という面と、またそういうさまざまな利権に結びついていくということが断じてあってはならない。そういう点は厳重に注意をしてやっていただきたい、そのことをお願いいたします。で、この書類の紛失のことについてはあとでお願いしたいと思います。 それから次に、時間もないので最後の質問にしたいと思うんですが、定員の問題でございますが、特許庁にも電子計算機を導入いたしまして、そうして出願あるいは登録事務、そういうものをコンピューターにやらせる、そうして人員もかなり減ると、そういう想定のもとにコンピューターを導入したと聞いておりますが、このコンピューターの効果については長官も先般衆議院の委員会において答弁をしているわけでありますが、このコンピューターを導入した結果、大体出願係は何名になる予定で、実際はどうなっているか、この電算機の導入によって定員が予定どおり減ったのかどうか、よく私が聞きたいのは電子計算機がほんとうに力を発揮しているのかどうか、その点が聞きたいんです。ちょっと質問のしかたがよくないかもしれませんが。
○政府委員(荒玉義人君) 当初の予定と実績の比較、ちょっといま資料ございませんので、できるだけ早く提出したいと思います。
○塩出啓典君 それではその点は、特許庁から電算機導入のときに、出願か登録か、それぞれ何名減ると、そういうやはり予定表が出ているわけでありますが、それに対して現実はどうなっているのか、その点を資料として次回に御提出願いたいと思います。 それから電子計算機は現在出願のみに使って登録には使っていない、登録のほうは実験中である、そういうように聞いておりますが、これはどうなんでしょうか。
○政府委員(荒玉義人君) 現在出願が大部分でございまして、一部いわゆる機械検索に使っております。それから登録の問題につきましては、これは登録業務のうち、電子計算機でやります場合、たとえば年金関係、この権利者は納めておるかどうか、いつ納めるべきか、そういうものはわりに実験の結果効果があるようでございますが、個別の件の移転関係ということにつきましては、まだ実際に移すには問題があるというので、実際まだ実験中でございます。
○塩出啓典君 最初の予定は、大体いつからこの登録業務もやる予定になっておったわけですか。
○政府委員(荒玉義人君) 現在正確にデータがございませんので、一緒に御説明いたします。
○塩出啓典君 私のいただいた資料では、四十年の一月登録事務開始と、そのように聞いておるわけでありますが、これは多少あとから変わったかもしれません。いずれにしても四十年の一月でありますと、もう四年たつわけでありますが、かなりおくれておる、このことは事実でございますか。
○政府委員(荒玉義人君) おくれておりますのは事実でございます。
○塩出啓典君 そういう点がなぜおくれているのか、いつになればほんとうにできるのか、その点が非常に心配でございます。これは私どもが思うのは、電算機が入ってそのために人員が削減できる、そういうわけでコンピューターを入れた手前、事務系の職員はもうふやすわけにいかない、そういう点から結局審査官がこっちへ回わされたのじゃないか、そのように思うわけですが、その点はどうなんですか。
○政府委員(荒玉義人君) 審査官の定員云々の問題はその以前からの問題でございます。したがいまして、電子計算機導入には面接の関係はございません。
○塩出啓典君 大体この電算機もただで使っているわけでなく、かなりのやはりばく大な金額を使って電算機を入れているわけでありますが、予定どおりいかないということはこれは非常な損失だと思うのです。そういう点は一体どこに原因があるのか、はたしてこれは登録業務に活用の可能性があるのかどうか、その点はどうなんですか。
○政府委員(荒玉義人君) ですから先ほど申しましたように、登録業務のすべてにはいまの段階では問題がある。先ほど言ういました一部年金等場合には……。ただ、その一部だけに入れて全部に入れないと効果がございませんので、そこらあたりのネックというものをどうしたらいいかということの実験段階でございます。したがって来年からという段階にはいまのところございません。
○塩出啓典君 そうすると、審査官を事務系に回したということは、これは電算機が予定どおり動かなかった、そういうことは関係はないわけですね。
○政府委員(荒玉義人君) ですから、電算機は三十九年以降でございまして、その前からの問題でもございますので、直接の関係はない、こう申し上げたわけでございます。
○塩出啓典君 間接の関係は。
○政府委員(荒玉義人君) ただ、これは人員の算定基礎で御承知のように全体の定員がきまるわけであります。あとそれぞれ各省と折衝するわけでございますが、これは一般的には、われわれももちろん努力をいたしますが、やはり政府全体の定員減という場合に審査官に重点がいくという傾向があることは事実でございます。もちろんわれわれといたしましては、衆議院段階でも申し上げましたように、できるだけバランスのとれた人員増加ということをお願いしてまいっておるわけでございますが、全体の削減というもとにおきましては、一般事務系というものがなかなか御納得をいただけないというのが基本でございます。
○塩出啓典君 大蔵省の方おられますか。いまの定員の問題でございますが、実際には審査官がだいぶ事務関係に回っているわけですね。そういう点で、これは済んだことをいまさら何だかんだ言っても始まらないわけでありますが、これはもう早急に審査官はやっぱり審査官の定員どおりもとへ返して、事務の足りないところは補充する、そのように返すのがぼくは当然じゃないかと思うのです。その点、きめられた定員を横流しするなんということは非常に、やみだと思うのですね。そういう点で、早急に審査官をもとへ返す、そういうことは現実にはできないわけですか。
○説明員(亘理彰君) 定員につきましては、行政管理庁と協議しましてきめてまいるわけでございますが、全体として、長官からもお話がございましたように、政府の全体の公務員の数を押えていくという方針の中でできるだけの努力はしてまいったつもりであります。その場合に、審査官と補助職員とのバランスをどうするかということは一つの問題でございまして、基本的には審査の職権がありますのは審査官でございますから能率の向上の問題もございますが、審査官が充実していかなければならない、同時にその審査官の機能を十分発揮させるためには、いろいろな設備等の充実と相まって、その事務職員の充実ということも必要であろうと思います。現在、非常に審査官の定数が一般の事務職員に回っておりますのは、そういう審査官と事務職員とのバランスだけの問題であるのか、あるいは審査官というのは、申すまでもなく特殊な専門的な知識を要する技術者の方々でございますから、一定以上の資質を備えた審査官の充員がなかなか実際問題として容易でないということにありますのか、その辺のところをよく確かめてみまして、今後行政管理庁その他関係方面とも相談いたしまして、できるだけ実際に即した充員ができますように考えてまいりたいと思います。
○塩出啓典君 ひとつ通産大臣にもお願いしたいことは、やはり先ほどから申しますように、一番いいのは、もっと定員をふやし、審査をすみやかにやっていく。現在は七十万件の滞貨があるといいますけれども、これはやはり特許を審査していくためのランニングストック、こういうのもやはり二十万件なり三十万件は必要じゃないかと思うのですね。そうなると、いま滞貨の分は七十万件でも、あと四十万か五十万、そういうわけで定員をふやして——定員をふやすといっても決して不可能な数ではない、ちゃんと法律できめられた定員だけあれば何とかやっていける。いままでずっと積もり積もって——それだけちゃんとやっていれば問題はなかったわけであります。べらぼうに天文学的な定員の増加ではない、これは決して不可能な定員増加ではないと思うのです。その定員をふやしたほうが国全体のことにプラスするならば、もちろんそれは政府のそういうワクはあるにしても、やはり当然定員をふやして、そのためにやはり所管大臣の通産大臣として大いに現状を話していただいて、願わくばこういう弊害の多いデメリットのかなりあるそういう早期公開制度、情報のはんらんをもたらすようなそういうものはできるだけやめて、やっぱり現状のままでもっとすみやかに審査ができる、そのようにもっていくのが最も理想的な、しかも現在反対している人たちもすべて納得をするそういうやり方じゃないかと思うわけであります。そういう点で、私は大臣としてもっとこういう面を積極的に進めてもらいたい。ただ政府のワクがあるからしかたないのだ、これでは私は通産大臣として非常に無責任でありますし、大臣として十分働いたとはいえないのじゃないか、そのようにぼくは思うわけですけれども、そういう点どうでしょう。
○国務大臣(大平正芳君) 先ほどもお答え申し上げましたように、定員の充足あるいは新規定員の要求、これにはわれわれとしては可能な限りの努力をしてきたつもりでございますし、財政当局、行管当局もかなりの理解を示してくれたのでございます。しかし、それがわれわれのもくろみどおりまいらなかったということも御指摘のとおりでございます。しかし、今後なお一段の熱意をもちまして充足に当たりたいと思います。
○塩出啓典君 すると、これは衆議院でも問題になりましたキーパンチャーの問題でございますが、非常に現在キーパンチャーの人員が不足しておる。それで、しかもキーパンチャー病というのが非常に続出をしておる。そのように聞いておるわけでありますが、現在定員が何名不足しているのか、またいわゆるキーパンチャーの職業病にかかった人が過去においてどの程度あるのか、その点をお聞きしたいと思います。
○政府委員(荒玉義人君) パンチャーだけの定員は三十四名で、現在二十四名でございます。係長二名、これは除きましてパンチャーだけでございます。 いま公務障害で認定しつつあるというのが一名でございます。いわゆる疑いがあるというのは五名でございまして、一名は公務障害で現在認定申請中ということでございます。
○塩出啓典君 五名というのはいまの二十四人の中の五名ということなんですか、それとも別に五名ですか。
○政府委員(荒玉義人君) 別でございます。
○塩出啓典君 いままでずっとキーパンチの仕事をやってきた人は、この二十四人よりもほかにもっとおると思うのですが、延べ何人の人がこの仕事に従事をしたのか、その点どうですか。
○政府委員(荒玉義人君) 六十六名でございます。
○塩出啓典君 六十六名のうち、そういう症状が出たのは全部で五名、そのように取っていいわけですか。
○政府委員(荒玉義人君) さようでございます。
○塩出啓典君 これは私がお聞きしたのでは、そういうキーパンチャー病になって配置転換をした数はもっと多い。これは五名に間違いございませんか。
○政府委員(荒玉義人君) 配置転換した数はもっと多うございます。六十六名のうち二十六名、これは配置転換。先ほど、言いましたのは病気の疑いがあるということでそれぞれの診断を受けて、そういった疑わしいのが五名で、一名は現実に公務障害として認定申請中である、こういうことでございます。
○塩出啓典君 そうすると、定員が十足りないわけで、これはやはりどういうわけで定員が不足しているのか。今後やはり法案が改正になりますと、パンチの業務も非常にふえてくると思うのですがね。そういう点で、人員が少ないということは、残った人に仕事の量がかぶさっていって、ますますそういう危険がふえていくと思うのですが、そういう点はどうですか。
○政府委員(荒玉義人君) 欠員が十名ございまして、われわれとしてはできるだけ埋めたいというのが第一次的な努力の目標でございます。いろいろ試験をいたしたわけでございますが、なかなか適任者がいないというのが残念ながら現在の状況でございますが、われわれといたしましてはできるだけ充足していきたい。 ただ、今度の新しい仕事につきましては、外注ということで処理いたしたいと思います。したがいまして、充足が第一次的でございますが、充員と外注で、とりあえずは外注で処理したい。したがって、現在残っておる方々に新しいものを労働強化するという計画では毛頭ございません。
○塩出啓典君 人事院のほうのキーパンチャーに対する一つの作業条件に関する規則というのは、これはどうなっているのですか。
○政府委員(島四男雄君) キーパンチャーの作業につきまして、昭和四十年三月五日に事務総長通達を発しまして、各省庁の長に対しまして、作業環境等の管理に関する基準を示して指導を行なっております。その内容と申しますのは、作業時間、体感、平均生産タッチ数等、それからさらに騒音であるとか、照明、室内の温度その他につきまして、それぞれ基準を定めまして、その点について各省庁にそのような基準でやっていただきたいという旨をお示ししたわけでございます。
○塩出啓典君 この仕事は、たとえば何年は同じ仕事をしてもいい、そういう規則はございますか。
○政府委員(島四男雄君) その点は別にその通達の中では特に示しておりません。しかしながら、こういうキーパンチ等に従事する職員が非常にいろいろ症状を訴えておる事実に着目いたしまして、私どもではそういうキーパンチその他いわゆる打鍵作業に従事する者のいわゆる障害というものがどういう原因で起こるのか、また、それについてどういう対策を講じたらいいかというような点についての研究会議を実は設けて、各界の権威ある教授連中にお集まり願って研究を重ねているところでございます。
○塩出啓典君 で、これはいまさつき二十六名配置転換をされたという話ですが、これは大体どういう基準で配置転換をしているわけですか。
○政府委員(荒玉義人君) 医者の所見を求めまして、その結果によって配置転換をいたしております。
○塩出啓典君 ということは、医者が見て、これはもう絶対そういうキーパンチャー病の心配がある、医者が見てそういう兆候があらわれたら配置転換する、そういうことですか。
○政府委員(荒玉義人君) そういったパンチャーに適さないというふうな事実がございましたら、三カ月ないし六ヵ月パンチャーの仕事を離れまして、そして一般の仕事に切りかえていく。その間、医者の所見——絶えず医者と相談しながら、そうしてこれはもはやパンチャーの仕事に適さないというような場合には配置転換をしていくというような方針で進めております。
○塩出啓典君 大体三年以上たつとそういう病状があらわれてくる可能性が多い。そういうわけで三年以内で配置転換をしている、そういうふうに聞いたんですが、そういうようにやっておるんですか。
○政府委員(荒玉義人君) この者につきましては医者といろいろ相談しますと、大体三年程度たちますとそういったおそれが出てくるということでございますので、一応われわれは、大体三年程度たった後には、できるだけ配置転換していくという方針でやっております。
○塩出啓典君 きょうは時間がありませんので、この問題はこの程度にしておきますが、ただ、いま長官の答弁を聞きまして、キーパンチャーをしている人に対する労務管理といいますか、そういう点が非常に十分でない。これはおそらく特許庁でも一番問題になっているそういう職場でありますが、そういう人たちがそういう病気になりますと、もうハンドバッグも持てないし、しびれる。そういうように聞いておりますが、そういう問題についても、やはり特許庁自体の労務管理が非常によくない。こういう大事な問題ならば、私は長官はもう人に聞くのではなくて、当然知っていなけりゃならぬ問題じゃないかと思うんですね。そういうことが今回の特許法改正についても、下の意見を聞いてもらえないという、そういうことがやはり大きな一つの反対の原因になっておるんじゃないか、そのように私は思います。そういう点で、今後キーパンチャーの仕事もふえてまいるわけでありますが、ただ病気になってから配置転換するとか、そういうようなことではいけないと思うんですね。もっともっとやはり事前に配置転換するなり、そういうもっと人間性のある処置をとるべきだと思います。そういうことをしないからなかなか定員も集まらない、そういう状態になってくるんじゃないか。そのように私たちは思うわけですけれどもね。そういう点で、キーパンチャーは、実際に症状が出てから配置転換するんじゃなくて、もっともっとやっぱりそういう以前に手を打っていく、そういうやり方を検討すべきじゃないか、そのように思うわけですが、その点どうですか。
○政府委員(荒玉義人君) もちろん平素から定期的な診断は実施しております。大体一年に二回ぐらいの診断を実施して、あらかじめそういう症状が出ない前の予防措置は講じております。将来もさらに講じてまいります。
○塩出啓典君 現在このキーパンチャーの仕事をやっている人は、長い人は何年やっていますか。これは総務部長でもいいと思いますが、大体。
○説明員(藤田正次君) 二十四人の現在のパンチャーのうちで、一番長いのは四年数カ月だと思います。
○塩出啓典君 いまのお話では、二年以上やったらあぶないというのに四年数カ月もおる人は、症状が出ないからといって、そういう仕事続行させること自体がぼくはよくないと思うのです。そういう事実をほったらかして、一生懸命やっているといっても、それはやはり事実が証明していますよ。そういう点で人事院のほうはどうなんですか。四年何カ月もこういう仕事をやらしてそれで心配ないんですか。
○政府委員(島四男雄君) 先ほども申しましたように、現在この点につきましてまだこれといった明確な基準が必ずしも確立されてはおりませんが、ただ一般論といたしますれば、相当長期にわたるこの種の作業は、やはり健康上若干問題があるという点は言わざるを得ないと思いますが、はたして三年がいいのか、四年がいいのか、その点につきましてはよく研究を待たなければ、いまここで結論を申し上げるわけにはいかないと思います。
○塩出啓典君 だから結論が出なければ出ないで、いつまでも延ばして置くのではなくして、これならば安全だという点でとどめてやっていかなければ、それは本人にとってみれば自分のからだ一つしかないわけですから、やはり本人に症状が出ないからといって、三年以上はあぶないのに、四年以上やらしているというのは、これは人が足りないからといえばそれまでかもしれませんけれども、人が足りないからといって一人一人の人がそういうふうに過酷な条件のもとでしているということは、ぼくは人道的にもやはりよくない、そういう点を早急に検討すべきである。こういうやはりキーパンチャーの病気の問題は、前々からもやはり問題になっていると聞いておるわけですが、そういうような点も、今後の情勢に対して、一つ一つやはり——これはキーパンチャーの問題かけを取り上げたわけでありますが——いろいろやはり特許庁内には、法改正前に、もっともっとやはり独自に解決していかなければならない問題もあると思うのです。書類の運搬にしても、持って運ぶか、シュートでさっと送るか、そういう流れとか、そういう問題はやはりもっともっと検討して、それでやったけれどもなかなか滞貨がたまってできない、それで最後の手段としてそういう法改正をするならわれわれは話がわかるわけでありますが、そういうやはり庁内としてやるべき点もちゃんとやらないで、ただ法を改正すればいいんだ、そういうやり方ではあまりにもその特許庁で働いている人たちもかわいそうではないかと思うのです。そういう点で私は最後に通産大臣にもお願いしたいことは、そういうやはりもっと特許庁内部において事務の増進のために、あるいはまた労務管理の上に、もっともっと改善すべき点があるのではないか。これはあすわれわれも現地に参加さしていただくわけでありますが、自分の目で見て検討して、また意見を申し上げたいと思っておりますが、そういう点をさらに検討して、願わくばそういう反対の多い法の改正をする前に、何らかの手を打って、そうしてこの滞貨をなくし、審査を迅速にする方法を検討していただきたい。そのことを通産大臣にお願いしてきょうの質問はこれで終わりたいと思います。
○須藤五郎君 この委員会でまず一番問題になっている点は、早期公開によって発明者の財産権が侵されるという点で、いま非常に論議が深まってきておるわけでありますが、それに対しまして、特許庁のほうから——特許庁と言っていいですか、政府と言っていいんですか、竹田委員の要求に対して文書で回答がまいりました。この文書の回答一、二、三、四、五となっておりますが、この二のところで、「財産的利益に影響を与えることとなるからそれについては公共の福祉という観点から必要性があるかどうか、又出願人に対して適正な保護が与えられているかどうかということが憲法第二十九条との関連において考慮されなければならないであろう。」こういう一応財産権の問題を、私たちの主張をある程度認めておるわけですが、これをあとのほうで公益という問題を出してまいりまして、そうして早期公開が発明者の財産権を侵すものではないというふうな論拠にいっておりますが、特に特許庁長官は七月二日の衆議院の委員会におきまして、中村重光委員の質問に対しまして、早期公開から起こるところの模倣、盗用は違法でないという意見を開陳されたらしいのですが、私はこの会議録を手に入れようと思ってもまだ出ていない。きょう出るらしいのでその会談録はここへ持ってくることはできませんでしたが、傍聴しておった人から私聞いたわけですが、こういう意見を述べておる。この問題は前の委員会でも問題になりまして内閣法制局の方も政府当局が盗用は違法でないというようなことばを使われているとするならば、それは適当ではないというような意見を述べられたと思うのですが、わざわざ私はきょう参議院の法制局の方にきていただいたのは、内閣法制局の方の意見だけで私たちは納得することができないと思うので。というのは、内閣法制局の方はこの法案をつくるにあたって参加をされた人でありますから、法律をつくった当事者に法律の不備を私たちが責めてもこれは問題にならないというふうに考えます。法制局を私は疑うわけじゃないですけれども、しかし、つくった本人の意見をうのみにするわけにはいかないでしょう。そこで私は今度はこの法案製作と何ら関係のない参議院の法制局の方にきていただいたのです。だから参議院の法制局の方はこの政府答弁に支配され、左右されるのではなく、厳正な立場に立って法律家としての立場で私は憲法に対する意見を伺いたいと思うのですが、憲法二十九条では財産権の問題がはっきり明確にされておると思うのですが、発明家が特許権を出願する。ところがその特許権ができる過程において早期に公表されてしまう。そうすると、そこから起こってくる問題は、やはり模倣、盗用という問題が起こってきて、大きく財産権が侵されることになると思うのですが、その点、参議院の法制局のほうではどういうふうに考えていらっしゃるか伺いたい。
○法制局長(今枝常男君) 二点にわたっての御質問のように思いますが、一つは早期公開が結局において財産権の侵害にならないかということと、早期公開された段階での盗用が違法になるかどうかという問題の二点あるわけでございますが、憲法論からいきますと、確かに仰せのとおりに早期公開いたしますと、これを他の者が盗用する危険性というものは明らかに出てまいると存じます。したがいまして、そういう危険性にさらすような状態に国の側でこれを置きまして、そうしてしかも、そういう危険を擁護し、あるいは心配するという措置も講じないで公開のままにいたしますければ、これはつまり結局においては、憲法の問題にかかわりを持ってくるのじゃないかと存ずるわけでございます。そこで、この法案で考えております早期公開がそういうように危険性にさらしつばなしの法改正かどうかによって憲法の問題にかかってくるかどうかということがきまるのではなかろうか、こう存ずるのでございます。そういう意味から申しますと、早期公開はするけれども、それと同時に相呼応して早期公開に伴う損害というものがあったら、これは補償させるという方法を講じておることによりまして、一面においてはそういう損失を補償しなければならぬというような面からいたしまして、盗用を避けようという作用を持ち来たすでございましょう。そういう意味において、危険にさらしたことのほうの擁護になりますし、また他面には、それにもかかわらずその盗用をいたした場合には、その損失を補償させる、こういうことになっておりますので、なお事後の救済を一応講じられる、こういうことになりますので、この早期公開主義ということと、それから盗用者から相当の損失を補償させるということは、これは表裏一体をなしたものと考えていかなければならないであろう、どうもこのように考えられるわけでございまして、その意味におきましては、一方には公開をさせるが、一方には損失補償の道を開いているということによって、この公開がすぐに憲法の問題にかかわってくるということはあるいはむずかしいのではないか、こう存じているわけであります。 残りますことは、損失補償だけでいいかどうかという問題がございましょうが、これはまだ出願して審査を経ておりませんので、権利として確定いたしておりませんので、この段階ではこれ以上進むことは過剰ではないかという立場から損失補償にとどまったのではないかと思いますが、そういう点は、むしろ直ちに違憲かどうかにかかわる問題として取り上げることは困難じゃないかというような考え方があるわけでございます。 それでもう一つの問題につきましては、これは先ほど来申しましたことで、おのずからあるいはおわかりいただけるかと存じますが、出願をいたしまして、審査を経ない段階におきましては、まだそれを法上の権利としてとらえることがむずかしい、それが将来においてあるいは審査の結果権利であったということになるかもしれませんけれども、その段階においては権利ということがむずかしいというわけで、そこでそういうものを盗用したのは違法とは言えないというような御答弁があるいはあったのかと存じます。これは私承知いたしておりませんのでございますが、あるいはそうかと存じますが、もっと事こまかに申しますれば、実は事後において考えれば、それが侵害であった場合もあるいはあり得るかもしれないということになるかとは存じます意味において、違法ではないとはっきり言い切ることが適当であるかどうかということに問題そのものは残るかと存じますけれども、ともかくその段階においてそれが権利でない、したがって違法でないというきわめて法律的な言い方としてはそういう考え方もあるいは成り立つのじゃないかと、このように考えておるのでございます。
○須藤五郎君 違法でないと言うならば、あとで補償をさせるというようなことも義務的には起こってこないかもしれない。いわゆる違法であったから補償するという結果が起こってくると思うのです。それならば、それが特許が許されるかどうか、許可になるかどうかという前は、まだ未定の問題であるから、そのときに盗用することは違法でないという意見が成り立つとお考えになるなら、あとで補償という問題が起こってくるのですから、それならば違法だったということになるでしょう。そのように違法であるか違法でないか、特許権がおりるかおりぬかわからぬような段階で盗用することは違法でないと、政府出局の責任者がはっきり国会の場で明言することは、これは行き過ぎじゃないですか。妥当な発言ですか、これは。
○法制局長(今枝常男君) 政府の御発言が妥当であるかどうかということは、私の立場から御批判申し上げる立場にはないわけでございますので、そういう点からのお答えは差し控えさせていただきたいと存じますが、ただ、権利かどうか、違法かどうかという問題になりますと、これはつまり法形式上の問題でございます。形式上から申しますと、まだ権利が設定されていないので、それだけで違法と言い切れないという言い方もあるのじゃないかということを申し上げたのでございます。しかし、実質的には、ある人の発明を盗んだことになるので、それは実質的には適当なことではない。そこで、少なくともそれに対しては適当な補償をさせることが公平だという立場に立って、少なくとも補償の道を開くということが必要ではないか、それはあるいは権利の設定がもっと早く行なわれておれば、それが権利の侵害という形の損害賠償にまでなり得るかもしれませんけれども、それはその特許というものに伴う特質から言って、権利にまで確定するのにある期間を要するというようなことから、形式的に権利として設定することがむずかしい、そこで権利の立場は直ちにはとれないけれども、実質上はこれと同じようなものとして扱うという意味において損失補償の道が開かれたのじゃないか、そういう意味におきまして、損失補償の道が開かれておるということは十分理解し得るように考えておるわけであります。
○大矢正君 関連。これは両法制局にその見解をお尋ねしたいと思いますが、いま言われておることは、従来と異なって、一年半で公開をするということでありますからして、社会一般の目にとまる時間的な早さという上においては、過去においては出願公告がおおむね三年ちょっと程度ということから見ますと、一年半ほど早まるということになりますね。そこで、その代償というか、その償いといいますかのために補償金請求権というものを新たに認めるということなんでありますが、ことばで、あるいは文章の上で、文字の上で明確なように、補償余すなわち金で償うということは、その補償金請求権というものが完全に行使をされた場合にはあるかもしれませんが、しかし、この知的財産というか、無体財産権というものを守る、保護するという立場からいくと、金の問題だけではないはずであります。まだほかにもその権利が存在しておると思います。そこに知的財産というか、無体財産権の本質というものがあるわけですね。そうすると、金の問題だけ裏打ちをすれば、一年前も二年前も早く一般に公開をすることによって保護がされておるということになるのかどうかという疑点が私どもにあるわけです。この点ひとつ参議院の法制局の見解と、答弁できないというならできないで、したくないならしたくないでけっこうですけれども、まあひとつ私の言うことが無理なのか、あるいはそれはここで言うべきでない、裁判所で言うべきだとか、いろいろ御意見があろうと思いますが、お答え願いたい。内閣の法制局もひとつ同様にお答え願いたい。
○法制局長(今枝常男君) それでは先に私一言だけ申し上げさしていただきます。 ただいま御指摘の点はまことにごもっともな点であると思います。それで、問題は二つにかかっておるかと思いますが、いままでの公開よりも早くなった、一年半で公開してしまうということで、早くなったということで、私は確かに一つの問題があると思います。ただ、一年半がいいのか、二年がいいのか、三年がいいのか、その期間がどの辺が適当かということは、そのときの諸般の事情からきまってくる問題でございます。それからこれは法的にどれだけがいいということがはっきりきまっておる問題でございませんので、いわば立法政策上どこまでが妥当かという問題ではないかと存ずるわけでございます。それで、妥当性についていま私のところで申し上げる立場にはございません。 それからもう一つは、補償だけで足りるかという問題でございますが、これも問題としてまことにごもっとものことと思います。それは完全な権利になっておればそれは補償だけではなくして、盗用しておる苦があればこれに差し止めを命ずるということまでできるわけでございますから、あとから金で補償させるということだけでは完全な権利となった場合に不十分であるということは、まことに御指摘のとおりでございます。しかし、これは先ほど来申しましたように、はっきりした権利として確立することがこれはある意味では技術的な面からかもしれませんけれども、確定し得ない状態にあるので、そういう不確定な形で取り得る限りの処置をとるという場合に、それがどの辺でおさまるべきかということかとも存じます。たまたま現行法で見ますと、これは確かに仰せのとおり期間は長いのでございますが、出願公告がされたあとは権利となっておりますけれども、少なくとも現行法では補償だけであるということは、それも一つの行き方としていままで認められてきておるのではなかろうかと存じますが、そういうような意味で、まだ権利までに至らない公開の段階では、補償程度にとどめることが妥当な線であろうという考え方も一つの考え方として成り立ち得るのじゃなかろうかというように考えておるわけでございます。
○政府委員(角田礼次郎君) 御指摘の点でございますが、私は補償請求権の問題については何回も申し上げておりますが、補償請求権以外の面があるのじゃないかという点についてお答えいたしたいと思います。その点につきましては、私は衆議院でもこういうふうに御説明いたしたのでございますが、まだ特許権になっていない、つまり早期公開される瞬間における出願者の持っている何かある力、これには二つの性格があるだろう。私権的な面でこれは二十九条の問題として財産権の不可侵の問題。財産権の補償の問題ということで補償請求権で一応説明してきたわけであります。もう一つの公権的な面といいますか、国家に対して特許をしてくれという請求する力というのが、断然出願されておりますが、一定の手続に従って従来恒久的な権利にされる一つの地位というものを持っているはずであります。それについてはまた別の面がある。しかし、それは早期公開によって、今度の改正によって減ったという点があれば、それはまた問題になるわけであります。ところがこの点につきましては、これは特許庁長官のほうからまた御説明があるかもしれませんが、先願の問題にからむ問題があるわけでございますが、そういう点についても措置が講ぜられております。別にそれによって、何と申しますか、国家に対して特許を請求し得る権利があぶなくされるということはないはずである、そこで、そういう意味で私権的な面では補償請求権、それからこちらのほうでは公権的な面でも措置ができている、こういうふうに私どもは考えております。
○須藤五郎君 政府の考え方には、要するに発明者の権利を侵しても、金さえ払ったらいいんじゃないか、補償金さえ払ったらいいんじゃないかという、人のほっぺたを札たばでひっぱたくような、そういう私は根性があると思うのですよ。しかし発明者といえども、芸術家といえども、自分のものが盗用された、模倣されたということで、金銭で済ますという気持ちはないんですよ。それは先ほども大矢さんが言ったと同じことなんです。それでは解決のできない問題があるんですね。精神的な損失というもの、これは非常に大きいんですよ。だから著作権の上では——同じ財産権でありながら、著作権の上では盗用したような場合は、もう人格的にその人は葬り去られるというような、社会的な制裁があるわけなんですよ。それほど重大なものだ。その重大な問題を、特許庁長官が、模倣、盗用は違法じゃないというようなことばで片づけてしまって、それで私は国に行政官の代表として、そのことばはふさわしいことばかどうかと思うのですよ。法律的にはいろいろの理由はつくと思うのですよ。しかし、そういうことばを発言することがふさわしいことかどうか。そこで大臣、どうでしょうか、こういう発言を政府代表がしておって、これで一般大衆は、国民は納得するでしょうか。好ましい発言でしょうか、どうでしょうか。
○国務大臣(大平正芳君) 衆議院段階から参議院を通じましてこの論議を私も聞いておりまたのでございますが、この議論は、法律論としていたして、御質問もそうでございましたし、政府の法解釈というものが問われたわけでございますから、長官としては法律論として、まだ権利にまで確定的に定立していない一つの状態でございますから、これにどの程度法律的保護を加えるかという、立法政策上の配慮から、これを違法としてきめつけるということは若干きつ過ぎやしないか、その状態にふさわしい補償金請求権というものを配することによって、カバレージをとっていくということが、立法政策として許されるという考え方によって、法律論としてはそういう表現で、その状態は必ずしも違法と言えないということを申し上げたように私も聞いたのでございます。いま須藤先生の御質問は、いわば行政官のマナーとして、そういう法律論、純粋な法律論というよりは、マナーとしてどうかということでございますが、この点は荒玉君も特許行政をあずかっている責任者でございますし、私の見るところ、非常に人格高潔な有能な、かつ誠実な方でございますから、国民に対して一片の法律論で、問題を全部法律的に解釈して白黒をきめるというような水気のない方であるとは私は思いません。その点はマナーの問題としては十分心得ておられると思いますけれども、問題の議論の平面がどうも法律論でございましたから、そういう表現になったものと思います。その点は須藤委員におかれましても御了解をいただきたいと思います。ただ荒玉君の発言の中で、私は、昨日ちょうど内閣の法制局のほうから御説明がございました模倣、盗用ということば、これは不用意に出たことばだと思うので、これは内閣の法制局のほうからも、必ずしも適切な表現ではなかったと、法律的に言ってもこういう点は。確かに模倣ということ、そういう表現はいいかと思いますけれども、盗用ということばを使ったから、よほど須藤先生も勘にさわったのではないかと思うわけでありますが、その表現は荒玉君の御発言でございますけれども、必ずしも適切でなかった、ある機会にこれは取り消しておいたほうがいいと思います。
○須藤五郎君 荒玉長官のあのことばから受ける印象は、模倣、盗用してもかまわぬぞ、こういうふうに受け取れるのですよ、それを聞いた人は。これは政府の責任者として言うべきことばじゃないと思うのですよ。やむを得ずそういうことが起こった場合、やむを得ない補償をするのでしょう、あとで。それをやむを得ず補償しなければならぬような事態を、違法でないのだといって、それを政府当局が是認する、またそれに奨励するように受け取られるようなことばは、吐かないほうがいいと思うのですよ。私はだからいま大臣が部下をかばった発言があったわけですが、長官もこの際すなおにそのことばを取り消されたほうがいいのじゃないですか。
○政府委員(荒玉義人君) 私なりあるいは法制局でもそういう見解があったかと思いますが、これはさっき大臣が申されましたように、あくまで法律的な理論構成の問題でございます。いわば違法があるということは、絶対排他的権利があって、それから損害賠償なり差しとめ請求等が出てくる、そういう場合の違法行為という意味でございまして、たしかあの質問も違法行為かどうかというあたりの質問に対して、私はそういう厳格な意味で御質問者もあったし、そういう意味で私も答弁したつもりでございます。あくまでどういうふうに構成していくかということの意味、それ以上はございません。したがって公開されたから全部使いなさいということを奨励するわけでもございません。権利者がもちろんそういうことをすれば、第三者の実施者もただで済まないし、同時に、企業としては信用がありますから、公開から出願公告の間だけ仕事をするわけじゃない、出願公告からはこれは一人前の特許権の待遇を受けるわけです。そういう意味では企業としても安閑として使えるものでもございません。したがって、あくまで質問者と私の答弁と言いますのは、そういう法律構成の意味でございまして、公開したらみな大いに使え、こういう趣旨で申し上げたつもりはないと思います。そういう誤解があれば、そういう意味で申し上げたということをあらためて釈明させていただきます。
○須藤五郎君 模放ということばまではまあいいけれども、盗用ということばを使ったことが、それは行き過ぎじゃないか、政府当局で盗用などということばを使うのはふさわしくないということを、大臣も言っているでしょう。だから盗用ということばを使ったのは間違ったというふうにすなおに取り消したらいいのですよ。
○政府委員(荒玉義人君) その点については、私昨日そういうことで訂正させていただいたつもりでございますが、本日もそのとおりに考えております。
○須藤五郎君 この問題は、法的に見ても私たちは違法だという立場に立っているのですね。だから、法的に見てもこの問題は私は解決しないと思うがね、やはりモラルの問題として、いま大臣があそこまで言われたから、長官もいま釈明をなすったから、私はこの点はこれ以上追及しないでおきましょう、まだ法的論争はあとを引くかわかりませんけれども、この論争はこれできょうは打ち切りますよ。それで、大臣は御用事があるようですから、ほかの国際的な重要な用件らしいから、私この際がまんをして、どうぞお帰りを願いますがね、しかし大臣、 いつも共産党の賛同になって席を立たれるというのでは困るのですよ。 そこでもう一つ、この間小柳さんの質問に対しまして、特許庁長官でしたかだれでしたか、国が特許権を持っておるものが、私は数をちょっと聞き漏らしたのですが幾つあると、こういうふうにおっしゃったと思うのです。そこでその数を、「明日をひらく特許」という本を沈みましたらその中に出てきておるのです。だから数はわかりましたから、いま質問する必要はないのですが、しかし国が特許権を持つというその内容ですね、どういう特許を国が持つのか。
○政府委員(荒玉義人君) 御承知のように、これは国に限らず、一般的に法人の中で発明国もまあ一種の法人でございますが、法人の中で発明したとき、どういうふうな帰属のしかたかという問題だろうと思います。いわば現実的には、発明といいますのは、個人にまず最初に帰属いたします。その場合に、いわば職務発明は、この範囲がもちろん問題ですが、そういった職務発明というものは、法人内部のいろいろ規則その他によりまして、法人自身が取得できるということでございます。したがって、この場合大学で申し上げますと、大学の中で、どういったものは国に属する、どういう場合は個人かというのを一々きめた大学もございます。あるいはきめてない大学もございます。そういった仕組みから国有特許というものが出てくるとお考えいただければ幸いかと思います。
○須藤五郎君 私たちは、国立大学といえども、それを研究し発明した教授並びに研究者、学生にその特許権は帰属すべきものだと、こういうふうに思うのですがね。そうなると、同じ国立大学の音大ですね、音大、芸大。芸大の美術部で教授とそれから学生が合作をしたその絵の著作権ですね、絵の著作権、彫刻の著作権、それから音大の教授、学生たちがつくった音楽の著作権の帰属、こういうものはそうするとやっぱり何ですか、国に著作権が移る場合があるのですか、どうですか。特許権と著作権の関係で私はちょっと聞いておきたい。
○政府委員(荒玉義人君) まあ著作権の場合は私はよく存じませんが、少なくとも特許法でいう三、十五条のような規定はないと思います。で、三十五条は、先ほど申し上げましたようにこれはいろいろ複雑でございますが、要するに、いわば職務発明といいますのは「その性質上当該使用者等の業務範囲に属し、かつ、その発明をするに至つ方行為がその使用者等における従業者等の現在又は過去の職務に属する発明」、これがいわば職務発明でございます。そういった場合の帰属問題を著作権の場合はきめてないと思います。したがって、まあ著作権で恐縮ですが、会社の中で、こういったものはだれに属するということを会社の内部できめるということは自由にまかされる。ただ特許法の場合には、一応そういう職務発明といいますのは通常の発明と違って使用者と被用者の関係がございます。で使用者は強い。被用者は弱い。その間の調整のために、特許法の特別の規定かございますが、著作権はそういった関係はおそらく自由契約にまかされておると思います。そういった意味では、そういった職務発明の場合に、会社、国が権利を取る場合があり得るということは当然予想される。ただ具体的にどの範囲で取るかどうかという点は、あくまでその内部の規定にまかされておる、これが特許法の体系でございます。
○須藤五郎君 そこでね、あなたのほうの説明で、特許権も著作権もともに財産権だという説明があるわけですね。ところが、著作権の財産権だけが守られて、特許権の財産権というものはこれが守られない。こういう結果が起こってきておるように思うのですね。これは何だか私は非常におかしいと思うのですね。著作権でも、音楽学校の教授が、学生と研究室でそこのピアノを使い、そこの楽器を使い、そこの五線紙を使って、そうして共同作で一つの作品をつくり上げるということはあるのですよ。美術学校ならば、美術学校の粘土を使い形をつくるのですね、塑像の場合。それから、美術学校の、なんですよ石こうを使い、そうしてものを一つつくる。その帰属は国家に属してしまって、作名には制作者としての権利はないということではないと思うのですね。それを幾つも形をつくって売ることは私はできると思うのです。それでその利益はやはりつくった人に帰属するものだと思うのですよ、絵でも何でも。ところが発明の場合は、同じ立場でやられても、発明だけが国家に利益が帰属している、特許権が帰属してしまうということは、どう考えても私は何だか片手落ちのような不平公なような感じがするわけなんですがね。どうですか、こういうことをどういうふうに考えているのでしょう、法制局。
○政府委員(角田礼次郎君) 実は私も著作権の専門家じゃございませんけれども、いまここでちょっと法律の規定を見たところから申し上げますが、著作権法の第六条に「官公衙学校社寺協会会社其ノ他団体ニ於テ著作ノ名義ヲ以テ発行又ハ興行シタル著作物ノ著作権ハ発行又ハ興行ノトキヨリ三十年間継続ス」という規定がございます。これは特許法のように、真正面からいわゆる職務発明みたいな規定ではなくて、いまの問題に対する直接の答えにはなりませんけれども、法人の著作権というものを一応前提としてこういう規定が設けられておる。御指摘のように著作をする事実行為はあくまで自然人で、法人がやるはずがないが、とにかく法人の著作権というものが一応何か著作権法の議論の中で前提となっているということが六条の理論で推察される。そこでいろいろ学説を調べてみましたら、再説あるそうでございます。そこで現行著作権法の解釈としてはなかなかきまっていない。そこで、これはすでに提案されておりまして、まだ審議、議決はされておりませんが、改正著作権法を見ますと、その点も十五条という規定を設けまして、その限りにおいてはかなり明確に書いております。「法人その他使用者」——これは「法人等」というわけですが——「の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成する著作物で、その法人等が自己の著作の名義の下に公表するものの著作者は、その作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがない限り、その法人等とする。」と書いております。したがいましてこれを裏返してきますと、この十五条に定める要件に合致する場合には法人等に著作権が帰属する、それ以外のときには被用者に帰属する、こういうふうに読むのではないかと私は思います。ただし、これはちょっとここだけで読んだわけでございますから、あまり自信はございません。
○須藤五郎君 えらい著作権の問題を言って済まないような気がしますが、ある劇団なら劇団に従事する音楽家が作曲して、それで会社がそれを使用する。それはその限りにおいては会社に使用の自由があるわけですね。しかし著作権というものは譲り渡すときは、会社に対して著作権譲渡の証書を書くのです。それを書かなければ著作権というものは永久に著作した著作人、作者に帰属するのです。だからそういう簡単な、法人、会社に——ある劇団に所属した作家が書いたものは、劇団に著作権が移っていくというものではないのです。そこでその会社が興行するときには、興行しますということをその著作権者の承諾を求めて、そこで契約の取りかわしをして、そして初めて使用することができるのですよ。私も事実劇団に所属してやってきましたからわかりますが、そうかってに使用しているものではないのです。だから著作権というものはあくまでもその人にある。譲渡する場合には譲渡したという一札を書いて、書類にして初めてそれが成立するということです。だから大学教授が研究したものが、これは特許権をほかに譲渡しますというふうに一札書いて、この契約がはっきりすれば、それは大学教授の自由ということになりますから、それが国に帰属しても支障がないと思いますが、そうでなしに、大学で研究の過程でひとつ自分にアイデアが浮かんで、それから出てきた発明を全部国家が持ってしまうというようなことは、私はやっぱり大学教授に対する財産権の否定だ、こういうふうに私は思います。だからおそらくこういうことは、大学の教授たちがやった研究に対する特許権は——国が持っている特許権は二千二百三十件とこの本に出ておりますが、おそらく大学教授はそういう契約はしていないだろうと思うのですね。だからそういうことは私はやはり研究者に特許権は帰属すべきものだ、それでないと著作権と特許権との財産権に対する扱い方があまりはなはだしく食い違っているように思うのですよ。
○政府委員(荒玉義人君) ちょっと私の説明不十分な点があったかもしれません。最初は自然人である人ですから、大学の場合は先生に嘱するわけであります、最初は。その際、大半の中で、いわば規則というものがあるのとないのとございます。あった場合には、先ほど申しました三十五条の職務発明は国に渡すという規則になっておるわけであります。それが一種の契約でございます。したがって、特許を受ける権利者は先生でございますから、それが権利者になる、そうしてそういったあらかじめ定められた契約に該当する事項に基づいて譲渡する、そうして権利者は大学すなわち国になる、そういう意味では特許法のたてまえもそうなっておるわけでございます。いきなり最初に国が権利者というものではございません。
○須藤五郎君 それは何ですか、この特許法じゃなしにほかにそういう法律があるわけですか。
○政府委員(荒玉義人君) もちろん特許法の三十五条は、そういった職務発明の場合における使用者と被用者といいますか、そういった関係を規律しておるわけでございます。したがって、いわば職務発明の基本的なものが三十五条にあるわけでございます。そうしてあれは、たとえば職務発明にいたしましても、大学によっていろいろ事情が異なるわけでございます。たとえば金をもらったといってもいろいろ事情がございますでしょうし、そういった職務発明の範囲はどういうものか、これはそれぞれの会社なり大学によって皆違うわけであります。そういうものの範囲を定めておって、その範囲に属するいわば職務の発明はいまの契約に該当するような内部規程に基づきまして、その範囲に属すれば発明者である先生から大半に譲渡される、あるいはその範囲でないものは譲渡する義務はない、こういうふうに実際は運用されるわけでございます。もとはやはり三十五条からきておると考えられます。
○政府委員(角田礼次郎君) ちょっと私もことばが足りなかったと思いますが、現行法の解釈としても両説あるようでございますけれども、法人に使われている者がその業務の職務の内容として著作をする、そういう場合の著作物の著作権で、しかもそれを法人の名義をもって公表したもの、あるいは法人の名義をもって公表することが予定されているようなもの、そういうものは法人に帰属をする、しかしそれ以外の場合は個人に帰属をするということもむろんあり得るわけでございます。それから先ほど読み上げました新著作権法の十九条も、先生の御指摘になった、引例されたような例とは実は違うのでありまして、それは私この要件を満たすならばということを申し上げたと思いますが、それには「法人の発意に基づく」というのが一つございます。それから「法人等の業務に従事する者が職務上作成する著作物」、これは同じことでございます。それから第三には「その法人等が自己の著作の名義の下に公表するもの」、そういうものの著作者は法人になりますぞと書いてありますから、裏返し言いますと、そういう三つの要件を満たさない、つまり法人の発意に基づかない、あるいは法人の著作の名義のもとに公表なしない、あるいは法人の業務に従事する者が職務上作成しないというものはこれは問題ないと思いますが、そういうものは個人に帰属する、こういうことになると思います。
○須藤五郎君 その問題は、著作権法審議のときに大いに議論しましょう。いま映画会社で、映画監督が一本の映画をつくるでしょう。その映画会社は、その映画監督のつくった著作権は会社が取り上げる、こういうことを言っているのですよ。今度の新しい著作権法にもそういう面が強く出てきておるのです。それに対して監督は、著作権は永久におれたちのものだ、こういうふうに主張して、いま論争されている最中です。だからこの点はもっとあとで別に論争することにしましょう。 そこで特許庁長官、大正十一年法だと思うのですが、それでは任務発明と勤務発明と、こう二つに分けているわけですね。ところが昭和三十五年法になりますと、これが一つになりまして職務発明と、こういうふうになっておるのですね。三十五年法には任務発明、勤務発明と、こういうことばが使われていないわけなんですね。これは一体どういうところからこういうことになったんでしょうか。
○政府委員(荒玉義人君) 大正十年法と現行法でございますが、その幅に関しては、そう大差はないと考えております。したがいまして新法三十四年法が大正十年法と……
○須藤五郎君 三十五年法ですよ、三十五年の四月一日だから。
○政府委員(荒玉義人君) いま公布で言っておりますので、はなはだ相済みませんが、公布は三十四年でございます。いずれにいたしましても、大正十年法と三十四年法はそう大差はございません。
○須藤五郎君 そうすると、今度私はこれをこの間からずっと読んでみましたら、昭和四十三年、特許庁版「明日を開く特許」という本の二百七十七ぺージに工業技術院勤務発明規程というのがあるのですね。この勤務発明規定ですね、昭和二十七年一月二十九日工業技術院訓令第百三十四号これは今日でも有効なんでしょうかどうでしょうか。
○政府委員(荒玉義人君) これは昨年の春に新法三十五条の表現を使って改正されております。
○須藤五郎君 そうするとあれですか、昭和二十七年一月二十九日付の百三十四号訓令というものは、これはいまもうないというふうに理解していいわけですか。
○政府委員(荒玉義人君) だから改正されておるわけでございます。
○須藤五郎君 ないんですね。
○政府委員(荒玉義人君) ですから、規程はございます。ただし、改正の内容は、旧法の特許法の中のことばじゃなくて、新法のことばを使って勤務発明の範囲を定めておるわけでございます。
○須藤五郎君 それはこれに出ていないのですね、その改正されたものが。
○政府委員(荒玉義人君) 編集に間に合わないものですから、古いのを使ってはなはだ恐縮でございますが、そういうような事情でございます。
○須藤五郎君 それじゃ改正された——どういうところが改正されたのですか。
○政府委員(荒玉義人君) いま手元に新しい規程ございませんので、後日御説明いたしたいと思います。
○須藤五郎君 それでは、ぼくのところにその新しいものをひとつ資料として届けてください。 ちょっと質問がもとに戻りますが、国が特許権を持っておる、その特許から得るところの特許料というものですね、それは一体年間どのくらいあがっておりますか。
○政府委員(荒玉義人君) 政府全体で五千万円でございます。
○須藤五郎君 その五千万円は国庫に全部入ってしまうのだろうと思いますが、しかし、それ全部国に入ってしまうのですか。やはりその発明した人たちにも何か払われるのじゃないですか。
○政府委員(荒玉義人君) 発明者に還元いたしますのは、四十二年で約七百万円でございます。歳入のほうは別途に歳入として計上されるということになっております。
○須藤五郎君 五千万円、政府が大学教授なり学生が発明した特許権で五千万円収入を得て、それでわずか七百万円くらいしか還元をしないのですか。ずいぶん搾取をすることになるわけですか。
○政府委員(荒玉義人君) 実施の程度に応じまして発明者にいわば奨励金を還元するわけでございますが、ただ問題は、現在でございますと一人が五十万円で頭打ちであったわけでございますが、本年度からそれを百万円にいたしまして、百万円までは一人がもらえるということにいたしたわけです。これはいろいろ内部で、先生おっしゃいましたように、もっとたくさんやったほうがかえって励みになるのじゃないかという意見と、やはり一人に多額のものを与えるということは全体の立場から見てどうだろうかという両者ございまして、先ほど思いましたように限度額がある。われわれといたしましては、五十万円を百万円にしたわけでございますが、むしろ発明奨励的な面と、あるいは試験場等が多うございますが、そこらあたりの横の振り合いというものもある程度考慮しなければなりませんので、一応頭打ちがございます。そういった頭打ちが非常に影響しておる点は事実でございます。先ほど言いましたように、人事その他全体のバランスということの要素を入れておりますので。そういう状況でございます。
○須藤五郎君 あなた不用意に使ったことばだと思うのですけれども、もっとたくさんやるからというようなそんなことばは使わぬほうがいいですよ。大学教授が発明した、それに対して当然払うべき金なんですよ、その教授の発明によって五千万円国が金をもうけるならば、もっと余計やったらというふうな、そんな下等なことばは使わぬほうがいいですよ。もっとたくさんお払いしたほうがとかなんとか適当なことばがありますよ。あなたそんなことばは使わぬほうがよろしい。ときにことばで失敗をなさるといかぬですから言っておきます。 私は、発明者に特許権が全部帰属すべきものだという立場から申しますならば、その発明から得た費用は全部その人たちに帰属すべきものだ、こういうことを申し上げたいのですよ。その特許権の権利は何ですか、やはり十五年となってその御本人が死なれても家族がそれを受け継ぐとか、家族にも大学教授に払われたと同じ金額がそのまま十五年間はずっと支払われる、こういうことになっているのですね。
○政府委員(荒玉義人君) 家族に対しては全く本人と同一な扱いにいたします。
○須藤五郎君 今回の法改正が問題解決の上々策だというふうにお考えになっておるでしょうか。どうでしょうか。
○政府委員(荒玉義人君) 現段階におきますれば良策だというふうに考えております。
○須藤五郎君 滞貨がたくさんふえて処置に困っておるという話、これはまあ他の皆さんもたくさんやられましたが、私はくどくは申しませんがね、その滞貨がたまっているのはいまに始まったことではなく、前々からずっときているわけなんですね。それに対して政府は一つも手を打ってなかったということ、これは言えるのじゃないでしょうか。その手を打ってなかったということは、やはり政府の怠慢だと、処置を誤ったと、こういうことになるのじゃないでしょうか。
○政府委員(荒玉義人君) 十年間で人員を倍近く増強しております。その間むしろ一般の政府機関の職員は減る傾向にある中にも、われわれといたしましては倍近い人員増加をはかってまいった次第であります。もちろん、私も繰り返しますように、あらゆる面で百点ということではございませんが、政府は政府なりに私は努力してまいったと信じておるわけでございます。人員の面その他資料整備関係の予算等々含めましても、ほかの役所並みではございませんで、金の面でもこの前申し上げましたように一般会計約二倍、特許庁は五倍の予算増でございます。人員二倍、予算五倍、そういった意味ではそれなりの努力をしてまいったつもりでございます。もちろん十分だとは思いませんが、何ら考慮を払わずに今日の事態に至ったというふうにはわれわれは考えておりません。
○須藤五郎君 このやはり「あすを開く特許」の二百五ページにはこういう数字が出ているのですね。特許実用新案処理件数の比較というところに、処理件数、日本はこれは昭和四十年度ですか、十万五千三六十八件なんですね、それに対して審査官の数が五百七十八人、一人当たり処理件数が二百五十三となっていますね、それからアメリカでは処理件数が十万二千百六十五、審査官数は千二百、一人当たり処理件数が八十五、ドイツは処理件数が四万八千二百三十、審査官数が六百、一人当たり処理件数が八十と、こうなっている。そうしますると、日本の審査官はアメリカやドイツの審査官に比べましたらたいへんに私は能力家だと思うのですね。一人でドイツやアメリカの三倍の仕事をしておると言わなければならぬのですね。こういう状態はいつから起こったんですか。
○政府委員(荒玉義人君) 外国と比べた処理件数といいますのは、今日の問題でございません、大体相当前からの傾向でございます。ただいま先生おっしゃいました単純に比較することがいいかどうか、これには非常に問題がございます。といいますのは、日本の場合でございますと、数から言いますと実用新案のほうが半分以上でございます。実用新案といいますのは比較的図面等で判断できる、いわば審査の面から見れば楽な出願でございます。あるいは日本の場合は御承知のように一発明一請求範囲、外国の場合には一発明につきまして請求範囲は数項認めております。そういった諸般の事情を考慮いたしますと、もちろん正確な比較というのは困難でございますが、単純件数で比較するものではないと思います。ただ、アメリと比べて実際どうかという点につきましては、そういった件数でなくて、いろいろ制度その他を勘案しますと、そう大差はないというふうに一応われわれとしては考えておるわけでございます。
○須藤五郎君 それじゃそこまであなたはっきりおっしゃるならば、アメリカやドイツの滞貨数はどのくらいあるのですか。
○政府委員(荒玉義人君) 一九六七年で申しますと、アメリカの場合にはわれわれと同じような計算をいたしまして、つまり年度末で未処理案件を当該年度の処理で割りますと二年一ヵ月でございます。西ドイツは五年二ヵ月でございます。
○須藤五郎君 いや、滞貨数を、件数はどのくらいあるかということを私は伺ったんですよ。
○政府委員(荒玉義人君) 一九六七年の年度末未処理件数、アメリカ二十万七百三十九件、西独二十九万五千四百九十七件でございます。
○須藤五郎君 いま私は日本の処理件数を述べて、そして日本の、審査官はアメリカやドイツの三倍からやっておるということを申し上げたら、あなたは日本の特許は新案特許が多くて、そうしてこんなにたくさんできるのだというふうにお答えになったと思うのですがね。そうすると、そういう新案特許が多くて、できるというのに、何で滞貨がこういうふうに七十万件もできてしまったかと、こういうことになろうかと思うのです。
○政府委員(荒玉義人君) もちろんわれわれの場合は特許並びに実用新案を申請するわけですね。それで件数から言いましても大体実用新案のほうが特許よりも多うございます。それでこれは内部でわれわれが審査官にいろいろ処理してもらう基準といたしまして、これは一応の目安でございますが、いわば処理負担から言いますと、実用新案が〇・五、国内特許が一、外国特許が四、これがいわばそれぞれの出願を一応質的に比較して、審査のなにというものの基準としております。そういった意味では、日本の場合には実用新案が多いということは、それだけ一人当たりの件数からいいますと、特許に比べて実用新案は容易でございますから、したがって、全体の数字が多くなる、こういう意味でございます。未処理案件ももちろん六十八万件と申しますのは、特許、実用新案を全部含んだものでございます。外国の場合は、西独の場合は実用新案審査ありませんし、特許だけでございます。アメリカの場合はもちろん特許だけでございます。そういった形の場合には、未処理案件も少ないし、特に西独の場合は五年二カ月でございまして、一人当たりの処理が少ないということになれば、日本の四年、現在は四年八ヵ月が五年二ヵ月、こういう関連がございます。
○須藤五郎君 滞貨七十万件の公開公報の印刷は外注にする、こういうふうなことを聞いておりますが、これはほんとうでしょうか。
○政府委員(荒玉義人君) そのつもりでございます。
○須藤五郎君 先ほども公明党の方が外注先はどこだというふうにお尋ねになりましたが、外注先はきまっていないという御答弁ですが、私たちが察知したのによりますと、外注先はすでにきまっている。凸版と大日本印刷だ、こういうふうに伺っているのですが、凸版と大日本印刷はお考えになっていないのですか。
○政府委員(荒玉義人君) 実にいま先生おっしゃったのは、私も初めてでございます。ただ、先ほど言いましたように、これは相当能力がないとできませんので、したがってその準備はやっております。どの程度能力があるかどうか、こちらの要求に合うのかどうかといった点は、これはわれわれ下調査はしております。そうしておそらくその中から資格要件に該当したものが何社かあると思います。そういった資格要件者は、これはもちろん確定しております。ただ法案が通らないのに、そういうのを決定すること自身がこれは不見識なことであるのでございますので、法案成立後直ちにそういった入札行為を実施するつもりでございます。そういう段階でございますので、いま二社おっしゃいましたが、私たちもいま初めて聞いたような次第でございます。
○須藤五郎君 外注費は一体年間どのくらい考えていらっしゃるのですか。
○政府委員(荒玉義人君) まあ公開公報につきましては、大体年度によって異なると思います。といいますのは、四十四年度、一−三月でございますので、三ヵ月分といたしましては三億二千二百、それから四十五年度は非常にピークになりますので、約十三億を考えております。それから四十六年度、これは未処理案件分の残りと、平年度分合わせまして七億一千五百、それから四十七年度ここでようやく平年度ベースに返りますが、六億九千、約七億、四十八年度七億、大体、一応いまの推定はそういうふうに考えております。
○須藤五郎君 その外注費は一体どこから捻出されるわけなんでしょうか。
○政府委員(荒玉義人君) 一般会計からいただくつもりでございます。
○須藤五郎君 先ほど外注は民間にすると、こういうふうにお答えでしたが、この七十万件の膨大な発明の文書ですね、外注するとなると、その中には漏れるおそれがあると思うのですね。これは各委員もやはり同じような意見を持っていらっしゃると思うのですが、やはり外注となれば外に運び出さなければならぬ、その運ぶ途中で漏れるようなことが起こるかわからぬ、そのときには一体その漏れた責任はどういうふうに処置なさるのか。それとも絶対漏れないとおっしゃるならば、漏れないような方法として具体的にどういう方法を考えていらっしゃるのか、それを伺っておきたい。
○政府委員(荒玉義人君) 私たちといたしましては漏れないような措置をやっていきたいと思います。たとえば先ほど現在の公告公報でもございましたように、業者には契約上制裁を科することによりまして、まさかの場合にはもちろん印刷業者の責任を追及いたしたい。ただ、出願人に対しましては、もちろんこれは私の責任でございます。で、故意、過失がありまして、そうして出願人に損害を与えたという場合には、もちろんこれは国が責任をとりますと同時に、私自身の責任でございます。
○須藤五郎君 それは当然のことだと思うのですがね。先ほどもちょっと話が出ましたが、いま産業スパイという問題が非常にやかましく言われて、社会的な問題になっていると思うのですが、やはりそういうときに、この発明家の秘密が絶対守れるというその保証がない限り、出願人は非常な不安を持つわけなんです。自分がせっかく苦労してつくった発明が他に漏れてしまいやしないか、そういう点で非常に危惧の念を現在持っておるわけですが、具体的にはどういう方法をおとりになるつもりですか。秘密漏洩を防ぐ手段としてどういうことを考えていますか。
○政府委員(荒玉義人君) だから具体的に言いますと、業者には秘密保持義務を課して、業者の自粛態勢、これは当然でございます。したがいまして現在の公告公報にも同じおそれがございます。そういった措置を厳重にとるということが、この問題先生が御心配のないようなためには、大体現在やっておることをさらに励行していくということで、必要かつ十分だと考えております。
○須藤五郎君 学校の入学試験問題すら漏れることが往々にしてあるわけですね。あの学校の入学試験問題というのは、大体刑務所で印刷することになっていますよ。これは高いへいで囲まれて、そうしてその印刷する当人は外に出ることのできない囚人が印刷する、持ち出すこともできないというような、ああいう条件の中でもその試験問題がたまたま外に出る、漏れてしまうというようなことがあるのですからね。私はそういうふうに外注をして、そうしてあらゆる秘密を保持しなければならぬ問題が外に持ち出されるということは、これはおそらく私はたくさんの模倣、盗用というような問題が起こってくるのではないだろうか。今度産業スパイいうようなものが意識的にそれを盗み出そうとかかりますからね。これはちょっとやそっとの防衛策ではなかなかむずかしいのじゃないか、こういうふうに私は思うのですよ。そこで、この問題、もし外注するほどなら、そういうことの絶対ないような手段を講ぜられる必要があると思うのです。いまから大いに研究をしておいて、絶対そういう不詳事が起こらないように、出願者には迷惑のかからないように、また、あなた方が責任をとらなければならぬような、そういうことの起こらないようにやっていただきたい。 そこで、もし政府当局——あなたのほうに、具体的な方法がはっきりとしましたならば、私たちに対しましてもその方法なりを示していただきたい、こういうように思いますが、まだ具体的な案はできていないでしょう。できているならば、ここでおっしゃってくださってもいいですよ。
○政府委員(荒玉義人君) 具体的と言いますと、先ほど言いましたように、現在やっておることを確実に実施してまいるということだと思います。と言いますのは、現在、主として特許につきまして、外注をやっておるわけでございます。業者には、先ほど言いました秘密保持義務を厳格に励行せしめ、われわれは絶えず会社を指導監督するという手段を着実にやることが、御指摘の心配を解消する方法だと思っているわけでございます。
○須藤五郎君 それじゃ長官、その模倣、盗用が第三国において、ある国においてそれがなされた場合は、どういうふうな措置をなさいますか。
○政府委員(荒玉義人君) これは第三国という場合でもいろいろございます。本来、日本の権利が保護されておる場合、あるいは全然保護がない場合。で、韓国の場合には商標権の保護だけでございます。特許、実用新案、意匠の保護はございません。これは現在でもございません。それは現在も全く同じでございます。それから台湾、これは御承知のとおり相互主義で保護しております。たとえて言いますと、そういった国では、もちろん日本人は出願をするという形によって保護をはかっていくということになるわけであります。
○須藤五郎君 そうすると、韓国においてはできない。それから台湾ならば、日本人が台湾に出願すれば、それが守られる。出願しなければ、守られない。まあこういうことだと思うのですが、もしも韓国が模倣、盗用をして——韓国は労働賃金が非常に安いですね、日本の三分の一くらいですね。そこで物をつくる。おもちゃにしても、ほかの物にしても、そこでつくる。それが今度は逆に日本へ入って来る。そうすると、品物の価格の点において、とても日本製品は太刀打ちができなくなってしまうと、こういうことが起こってくるだろうと思うのですよ。これは処置がないんですか、どうにも。
○政府委員(荒玉義人君) それが特許権に抵触する場合には、韓国から日本に輸入する際に水ぎわで処置できるという手段がございます。
○須藤五郎君 それは、私がいま質問したのは、特許権のできる前ですよ。出願から特許権のできるまでに、四年間かかるんですね。今度の公表によって、公開によって、模倣、盗用で即座にそれが品物になって日本に入って来た場合、どうするかということです。
○政府委員(荒玉義人君) 当然に国内で補償金請求権を請求するという形で対抗できると考えております。
○須藤五郎君 その場合、なんですか、国内と一緒で特許権ができたら補償請求権で処置しようとおっしゃるのですか。
○政府委員(荒玉義人君) 品物が入って、それが販売し使用される、これは特許の実施でございいすから、もちろん、補償金請求権の対象になる行為でございます。
○須藤五郎君 それが国内のように簡単にできるのですか。国際的な関係でしょう。それであなたのおっしゃるように、それはそう簡単に補償金を取ったりなんかすることできるのでしょうか、どうでしょうか。
○政府委員(荒玉義人君) メーカーはもちろんこうでございますが、販売業者なり使用者に請求できる。さかのぼって、買った販売業者なり使用者は、もとのメーカー——日本にはいないわけですが、そういったさかのぼって内部の求償関係外処理するということになります。したがって、あくまで販売業者、使用者、これは国内のものにはできるわけでございます。そういった措置で逐次メーカーにさかのぼっていくという措置が取ることは可能でございます。
○須藤五郎君 じゃこれまでそういうことをやられた例はありますか。そういうことが実際に行なわれた——非常にあんた簡単にそういうことを、いますけれども、実際にこれに当たった場合、そういうことは簡単になかなかできることじゃないと思いますよ。
○政府委員(荒玉義人君) 一般に、これは現行法は特許権になったあとでございますが、その場合には、ものによるわけでございますが、いきなりメーカーに行くのか、あるいは販売業者のところから侵害行為を押えていくのか、それはそれぞれの場合によりまして方法があると思います。メーカーのみしかいけないということにはならないのでございます。
○須藤五郎君 長官、えらい簡単に割り切ってお答えになっていますけれども、それはなんじゃないですか、あんたのことばだけの問題で、実際に当たった場合は、とうていそんなこと簡単にできることじゃないと私は思いますよ。だから、あんたたちとしては、そういうことの起こらないように万全の策を講じていくことがまず第一重要だと思うのですよ。起こったらこうするのだということばで割り切っても、それはもうとてものことじゃないが、できっこないと私は思いますよ。
○政府委員(荒玉義人君) 現在輸入業者を、侵害事件ということでいろいろ問題になっている例がございまして、われわれも召喚を受けておるわけでございますから、そういったメーカーはもちろん外国におるわけでございます。輸入業者を押えることによりまして実効はあがるということは現在でもあり得るわけでございます。
○須藤五郎君 現在では、秘密保持の義務で発明が外に漏れないように発明者を保護しておりますね。これは当然だと思うのですが、その発明が外に漏れるケースが今度の制度の改正を強行すると、そうするとその外注制度によりまして、いままで申してまいりましたように発明が外に漏れるケースが私は出てくると思うのですよ。なぜこういう秘密保持の義務よりも外注制度という制度を優先させるのかどうかという点です。外注のときには秘密保持の点は一体どうするのか。えらいくどいようですが、何で外注を優先させるのかという点を……
○政府委員(荒玉義人君) 繰り返すようですが、現在でも半分近いものは外注しておるわけでございます。そうして、そういった事態を考え、それからわれわれの工場能力をさらに拡大することは私たち考えております。といいますのは、特許庁全体といたしまして、できるだけ外注でできるものは私は外注していきたい。で、先ほどからいろいろ議論ございましたように、審査官なり事務系職長その他をやはりわれわれとしてはさらに拡大したい、その際に工場の能力まで上げるほどの人員確保ということになると、これはますます困難でございます。したがいまして、われわれは過去の実績を考えまして、将来金でやれる仕事はできるだけ外でやるという方針で考えております。
○須藤五郎君 私たちは、反対の考えを持っているんですよ。そういう危険な秘密漏洩の起こるような外注というようなことはできるだけ避けて、いまの工場の拡張なり何なりをしたらいい。外注に何億という金をかけていくならば、やはり特許庁内の工場を拡張するとか人員を増加することによってそういう危険の少しでも起こらないように考えていく、ほうが上々の策ではないか。あなたは今度の改正案は上策だと、こういうふうにおっしゃるが、それは私は上策ではなく、工場の拡張、人員の増加という問題でこの危険防止を、秘密漏洩の危険のないようにはかっていくべきだと、こういうように私は考えます。というのは、特許法の二百条で特許庁の職員は特殊の事務に従事するということで、国家公務員法よりも重い秘密漏洩に対する刑罰が課せられているわけですが、外注を受けた工場の工員なりだれかがかりに秘密漏洩したとするならば、それはどの法律によってどのくらいの刑罰を受けるのかですね、その法的根拠と刑の量というものですね、そういうものも述べてもらいたい。
○政府委員(荒玉義人君) 会社の従業員は公務員ではございませんので、罰則はございません。
○須藤五郎君 それじゃ罰則のない人たちを相手に外注をしているということでしょう。これはとんでもない危険なこっちゃないですか。罰則があるとするならば法的に示さなきゃならぬが、法的にはないんでしょう。
○政府委員(荒玉義人君) 先ほど言いましたように公告公報の場合に支障を生じてないわけでございますので、したがって、われわれはもちろん業者に対しては指導監督もいたしますということによりまして、その間の円滑な運用をしてまいりたいと、かように考えておる次第でございます。
○須藤五郎君 長官、それはあなたの希望的観測であって、私が先ほど言ったように、試験問題すらも漏洩する時代ではないか、今日産業スパイの盛んな時代ではないか、罰則も何もないところへ物を注文して、そうしてそれが漏洩しても、どうしても罰する道がないでしょう。野放しじゃないですか。必ず漏洩が起こってくるのです、こういう問題は。だからそういうことが起こらないように責任ある当局としては、工場の拡張なり増員をして、そうしてやっていくのが、これがし策ではないか。だからあなたの言っているこの法律は、下策ですよ。もっと上策を、責任ある上策をとったらどうですか、それを私は言うのですよ。 長官もだいぶ疲れているように見受けますので、それと時間も五時に追ってきておりますので、きょうのところはこれで賛同を打ち切っておきます。また後日あらためて質問をすることにいたしたいと思います。
○委員長(八木一郎君) いまの答弁はありませんか、最後の……。
○政府委員(荒玉義人君) いま先生のおっしゃいましたのは、法律制度じゃなくて公開公報を発行する場合にどうしたらいいかという問題でありますが、これはわれわれといたしまして特許庁のあらゆる機能を全部拡充するのか、それとも先ほどたびたび申し上げましたように、やはり全体を考えて一つの限度があるとすれば、どこを先に充実していくということが望ましいかという判断にかかっておると思うのでございます。で、私たちといたしましては、先ほどから繰り返しますように、やはりこれ以上人員を拡充して能力をアップしてわれわれの工場を拡充するということを考えるよりか、むしろやはり外注体制を現在やっておるわけです、それを確立して、そういった問題のないような形で運営する方向でやったほうがいいか、こういうことになりますと、繰り返して恐縮でございますが、私といたしましては、むしろ後者の道を選ぶということのほうが、与えられた条件においてはむしろやむを得なし、そのほうがいろいろな面から見ていまの段階では得策ではないか、かように考えておる次第でございます。
○委員長(八木一郎君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、これをもって散会いたします。 午後四時四十七分散会