商工委員会 第18号
- 発言数
- 136 件
- 登壇者
- 12 名
- 会派数
- 4
- 開催日
- 1969/07/10
会議録
○委員長(八木一郎君) ただいまから商工委員会を開会いたします。 特許法の一部を改正する法律案を議題とし、まず政府委員から補足説明を聴取いたします。荒玉特許庁長官。
○政府委員(荒玉義人君) 特許法等の一部を改正する法律案の内容を御説明いたします前に、今回の改正の背景となりました特許制度の現状について申し上げたいと思います。 最近における技術革新の進展は、特許制度に大きな影響を与えております。すなわち技術革新により技術のライフサイクルは短縮され、アイデアから開発までの期間あるいは商品の寿命は短くなっております。その結果、発明者の側には権利の早期設定という要請が、また第三者の側には出願された技術内容の早期公開という要請が生じたのでありますが、他方、技術革新は出願の増加、出願される技術の高度化、複雑化、検索すべき技術文献の増加等を通じまして審査期間の長期化をもたらしたのであります。 そのため特許制度は時代の要請に沿うことができなくなり、技術の進歩という面から見て大きな問題となってきたのであります。そこで審議主義をとる各国は、このような事態を打開するため、審査官の増員等処理能力の増強につとめるとともに、特許制度そのものの改正を行ない、また行なおうとしております。わが国におきましてもこのような事情は全く同様でございまして、世界でも群を抜く出願件数とその伸長率を背景として、昭和四十三年度末における特許、実用新案の要処理期間は四年八カ月にも達しております。 特許庁といたしましても審査官等の増員、待遇改善、環境整備、資料整備の充実等処理の促進につきまして最大限の努力をしてまいったのでございますが、やはりこのような方策だけでは現在の事態を打開することは困難であり、制度そのものの改正をあわせ行なうことがどうしても必要であるとの結論に達しました。そこで工業所有権審議会におきまして二年間にわたって、審議を行ない、その答申に基づきましてこの法案を作成したわけであります。 もちろんこの制度の改正だけで現在の事態が完全に解決されるとは考えておりません。この制度改正と並行いたしまして、審査官の増員等、処理能力の増強につとめるつもりでございます。 また数年後には特許協力協定いわゆるPCTへの加入という問題があります。これは国際間の技術交流の進展という事態に対応しまして、各国が協力して特許の面からその交流の促進をはかろうとするものでありますが、今回の改正はその方向と矛盾するものではなく、現在の特許行政の置かれている難局を解決すべくその早期実施をはかりたいと考えておるのでございます。 次に、法律案の内容を御説明申し上げます。 この法律案は四カ条と附則二十一カ条から成っておりまして、第一条は特許法の改正、第二条は実用新案法の改正、第三条は意匠法の改正、第四条は商標法の改正を内容としております。今回の改正は主として特許法及び実用新案法を対象としているのでありますが、それとの関連で意匠法、商標法についても若干の条文整理をいたしました。 改正の要点の第一は、出願の早期公開制度を採用したことであります。現在出願された発明、考案は、審査の後、出願公告という形でその内容を公表しているのでありますが、審査が遅延しているため、その時期は平均いたしまして出願から三年以上経過しております。したがって発明等はその間眠っていることになり、技術進歩の速度をおくらせるとともに、市松研究、重複投資が行なわれる原因となっているのであります。そこで審査の段階いかんにかかわらず、出願から一年六ヵ月を経過した後はすべての出願の内容を公表することといたしました。この一年六ヵ月という期間は、優先権主張のできる期間が第一国出願日から一年間であるので、その間に公開することは適当でないこと、あまり早く公開すると出願人の実施のための準備ができないこと等を考慮して定めたものであります。公開の方法は、特許につきましては明細書及び図面の全文を、実用新案につきましては請求範囲及び図面を印刷公表するものであります。また公開された発明等の出願人に対しましては補償金請求権を認め、その保護をはかっております。出願人にとりましては自己の発明等の内容が公表されるのでありますから、それに対して保護が与えられなければならないのでありますが、出願の大部分が無審査で公開されることになることから、第三者の利益との調整も考えて実施料相当額の補償金の請求権を認めることとしたのであります。 しかし出願公開から出願公告までの期間が長期化いたしますと、その間は第三者の実施を差しとめることができないのでありますから、出願人が不利益をこうむる場合も考えられます。そこでそのような事態を防止し、出願人の保護をより実質的なものとするため、緊急審査及び紛争調停機関の設置等の措置を行ないたいと考えております。すなわち緊急審査は法律の運用によりまして、紛争が起こった場合等に優先的に審査をするものであり、紛争調停機関は、補償金に関する紛争等が起こった場合に、それを簡易、迅速かつ安い費用で解決するためのものでございます。 第二は、審査請求制度を採用したことでございます。現行法におきましては、すべての出願を出願順に審査しているのであります。しかし出願の中には特許権等は要らないが他人が特許権等を取得して自己の事業の実施が妨げられることをおそれて出願しているものや、あるいは出願後の技術進歩のためにその技術が陳腐化し、もはや特許権等を取得しても何らの効果を持ち得ないものが含まれております。そのような出願は、同じ内容の他人の出願が権利にならないという保証があれば、必ずしも審査を必要としないものでございます。 そこで特許につきましては出願日から七年、実用新案につきましては出願日から四年の審査請求期間を設けまして、その間に審査請求があったものだけ審査をすることにいたしました。そういたしますと審査請求をしない出願は審査をする必要がなくなり、その分の審査能力を他の出願の審査に振り向けることによりまして審査の質を維持しつつ処理の促進をはかることができるのでございます。審査請求をしない出願には特許権等は与えられませんが、いわゆる先願の地位を持ちまして、後日になって同じ内容の他人の出願がありましても、それには特許権等が与えられないという防衛的意味を持つことになります。 この審査請求をしない出願の比率は、業界におけるアンケート調査や外国の実例等を勘案いたしまして、特許については二割、実用新案については三割と予想しております。なお審査請求料といたしまして特許につきましては八千円、実用新案につきましては四千五百円を徴収することにいたしておりますが、この請求料が負担となって発明意欲が阻害されないように、請求料を納付する資力がない者に対しましては減免の措置を講ずることといたしております。 第三は、審査前置制度という新しい制度を採用したことでございます。審判請求件数と処理能力との間には現在大きなギャップがございまして、そのため審判の処理の遅延は審査の場合よりも著しく、昭和四十三年度末の要処理期間は七年四ヵ月となっております。 審査前置制度は審判請求件数の大部分を占める拒絶査定不服、審判につきまして請求から三十日以内に補正のあったものについては、これをなるべく同じ審査官に再審査させるというものであります。この再審査において審査官が特許査定を行なえばその請求はもはや審判を行なう必要がなくなりますので、拒絶査定不服上審判の処理は大幅に促進されることになります。 第四は、出願公告後特許権設定登録までの間のいわゆる仮保護の権利を強化したことでございます。現行法におきましては、出願公告後の出願人のための仮保護の権利の効力といたしましては、登録後侵害者に対する損害賠償請求権及び不当利得返還請求権の行使が認められておりますが、差しとめ請求権はないことになっております。これは出願公告後拒絶査定されるものがあることを考え、不確実な状態で差しとめ請求権のような強い権利を与えることは適当でないという理由によるものでありますが、今回早期公開制度を採用したことに伴い、出願公告後拒絶査定されるものの比率が少なくなること等を考慮いたしまして出願公告の段階で差しとめ請求権を認めることにしたのでございます。 第五は、先願の範囲を拡大したことであります。現行法におきましては請求範囲外の記載事項は、いわゆる先願の地位すなわち同じ内容の後願を排除する力を持っておりませんので、後日になってそのような事項を内容とした出願があった場合は、それに特許権等が与えられることになります。しかし、その記載事項についてもすでに発明されたことは事実であり、しかもそれは将来公開されて公知技術となることも確実なのでございますので、後日そのような事項を内容として出願された発明に特許権等を付与することは特許制度の趣旨から見て適当でないと考えられます。また現在請求制度を採用した場合には、先願の範囲を請求範四に限定すると、先願の請求範囲が確定するまで先後願の審査ができなくなります。そこで先願の範囲を拡大し、明細書に記載された事項全部に先願の地位を認めることにしたのでございます。 第六は、補正に関する規定を整備したことでございます。早期公開制度の採用に伴い、公開後は補償金請求権が発生することになりますので、その後請求範囲が大きく変動いたしますと第三者に不測の損害を与えることになり、また請求範囲を一つの目安としてサーチをするのが通常であることから考えても問題であります。 そこで公開後における補正の時期及び内容につきまして最小限度の制限を加えることにいたしました。すなわち公開後は補正のできる範囲を拒絶理由通知があった場合の指定期間等に限ることとし、また請求範囲を全く変えてしまうような内容の補正は認めないことにしたのであります。ただし改正法施行日以前の出願についてはそのような制限は適用せず現行法どおりとすることにしております。 第七は、手数料、登録料の値上げを行なったことであります。現行の手数料、登録料は昭和三十四年に定めたものでありますが、その後の諸物価の値上がり等社会経済情勢の変動を考慮してそれを五〇%引き上げることにいたしました。ただし出願料だけは審査請求料を別途徴収することにしたこと等の理由によりまして据え置きといたしております。 最後に、本改正による処理促進の効果について申し上げたいと思います。本改正を実施した場合の処理所要期間がどのくらいになるかということは、今後における出願の伸長率、審査請求率、審査官等の増員の可能性等の前提があり、予測のむずかしい問題ではございますが、出願の伸びを毎年四・五%増、審査請求率を特許八〇%、実用新案七〇%、審査官の増員を毎年七十名といたしますと、本改正により予想される審査負担の増加を考慮いたしましても昭和四十八年度末におきましては平均要処理期間は二年六カ月と見込まれるのであります。これは本改正を行なわない場合の平均要処理期間四年一カ月と比較いたしますと大幅な改善になると考えております。 なお、本改正に伴う予算といたしましては、本年度に公開公報発行費、公開公報閲覧室整備費等三億四千六百万円を計上しており、また本改正のため四十五名の増員を行ないまして新しい制度の円滑な実施に支障がないようにいたしております。 以上今回の改正案の趣旨及び主要点につきまして御説明申し上げた次第でございます。
○委員長(八木一郎君) 続いて質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言を願います。
○小柳勇君 私は、本日総括的な問題を質問をいたしまして、具体的なもの及び逐条的なものはまた後日に質問いたしたいと思います。 この特許法改正の問題に入ります前に、技術革新及び技術の進歩というものが根底にありますので、その問題について大臣に二、三質問いたしたいと思います。英国でも数年来そういう問題で非常に悩んでおるようでありますが、技術の進歩、技術革新に伴いまして若い頭脳が、科学者が海外に出ていく。日本の待遇が悪いのもありましょう研究の便益もございましょう、科学的頭脳が海外に輸出され、海外に出ていくという問題がございます。そういう問題に対して英国も非常に悩んでおったようでありますが、わが国でもそういう問題、具体的に聞いておりますが、大臣として、責任者としてどういうふうにこの問題をお考えになっておるのか、まずその問題からお聞きしていきたいと思います。
○国務大臣(大平正芳君) わが国の経済が万事非常に順調な成長を遂げたように一見見えますけれども、実際は内実に入ってみますと、問題が非常に多いのでございます。とりわけ技術面におきましては先進国に対しましてたいへんなおくれをとっておるわけでございまして、わが国の産業は、いわば借りものの技術で間に合わせに運営しておると申し上げても大きな失当でないような状況でございます。技術を買っておる金額が去年は二億三十万ドルくらいになっておりますが、われわれが輸出しておる技術はその十分の一にも満たない二千四百万ドルというような、非常に貧しい記録でございます。したがいまして、日本の産業をこれから育て上げて、国民のしあわせにつないでまいりますためには、そして先進諸国と十分競争力を培養してまいりますためには、技術開発という点が、とりわけ独創的な、自前の技術を身につけるということが一番大事なことだと思います。産業政策の中核的な課題であると思います。そういう点から申しまして、せっかくすぐれた頭脳が養成されておりまするのに、これが海外に移るということはたいへん困った事態であると思います。この憲法下におきまして居住ないし職業の選択という自由が保障されておりますので、強権的にこれを規制するという道はないと思いますけれども、われわれといたしましては、できるだけ日本人の技術者の皆さんが安んじて、また誇りを持って、希望を持ってみずからの職場に御精進ができるような環境を宮比ともにつくっていかなければならないと考えます。御指摘の問題は非常に重要な切実な問題でございまして、政府としても特段の配慮を加えていかなければならない課題であると思います。
○小柳勇君 第二の問題は、特許制度が技術の開発にとって大きな役割りを果たしておるのは認めますが、特許制度以外に、政府として新しい技術の開発なり技術革新のためにどのような施策をとろうとされるか。たとえば技術の大学校など、ちらちら新聞などでも見かけますけれども、通産大臣として飛躍的な技術の進歩発達のためにどういうような施策を考えておられるかお聞きいたしたいと思います。
○国務大臣(大平正芳君) 技術政策は政府全体の課題でございますが、私どもの所管におきましては、第一の問題は工業技術院を頂点にいたしましたわれわれが持っておる技術研究機関の研究開発能力というものめ向上をはかることは当然でございますが、それと民間の研究機関との連携協力を密にしてまいるということが第一点でございます。 それから第二点といたしまして、日本の産業界におきましてもようやく技術開発投資がこのごろとみに多くなってまいりまして、ヨーロッパの水準にまで来ておりますことはたいへん喜ばしいことではございますけれども、何さままだ日本の企業は、巨大な企業といえども技術の蓄積はもとより資本の蓄積等きわめて希薄でございまして、大きな技術の開発のプロジェクトに手を染めるだけの、実力を持っておりません。したがいましてビッグプロジェクトという大型技術の開発は、何としてもわれわれ政府のほうが牽引力になりましてやってまいらなければならぬ。たとえば大型コンピューターの開発でございますとか、あるいは脱硫技術の開発でございますとか、海水淡水化の問題でございますとか、そういった大きな問題につきましては政府みずからが手を染めて、その成果を広く民間が活用するというような環境をつくり上げなければならぬ。現に予算で御承知のとおりビッグプロジェクトにつきましては相当の予算を計上いたしておるわけでございます。 それから第三点といたしまして、最近の産業の状態から申しまして、海洋開発でございますとか、あるいは情報産業でございますとか、あるいは住宅土産業でございますとかいう個々の単品産業ではなくて、非常に機能が複合した集積された産業というものが概念されて、それに対する接近がいま考えられておる段階になってきておりますので、政府といたしましては、そういう機能集積産業というものを実体化するために、その先行的な役割りを果たさなければならないということで、たとえば電子計算機等につきましては、ハードウエアの技術援助をいろいろいたしておりまするけれども、同時にソフトウエアの開発という点もやはり政府がよく指導的にやらなければならぬ。それから住宅産業などにつきましても三兆円をこえる投資をいまやっておりますけれども、それが実際は非常に原始的な形でやっておりますことは悲しいことでございまして、もう少しこれを近代化した量産体制に持っていくだけの技術開発を考えなければいかぬのじゃないかというような点で、われわれのほうで調査を始めておるというような点が、まずあらまし私考えているところでございます。
○小柳勇君 科学独自の問題はまた科学技術などで質問しますけれども、これから私が質問してまいります特許法の改正というものは、言うならば科学技術の発達をささえておるものである、そう理解いたします。積極的には、いま大臣が言われたように、各産業の分野における科学技術に金をかけて技術の革新なり科学の発達にもっと政府が力を入れなければならぬが、したがって、いまのに関連してもう一問質問いたしますならば、そういうように政府が金をかけて科学技術の発達に力を入れておる比率と、今日からわれわれが論議しますこの特許法の改正、いわゆる特許制度によってその技術者の競争心をあおり、あるいは産業界の競争心をあおりながら科学の発達、技術の革新に拍車をかけてまいる、大臣としてはどちらにウエートを置いておられるのか。数字的には言明できぬかもしれませんが、陰に陽に、表と裏としてどういうような態度をもって通産大臣としてのつとめをやっておられるのか、お聞きしておきたいと思います。
○国務大臣(大平正芳君) いま御指摘の問題は、二者択一という比較の問題としてとらえますよりは、私といたしましては、技術の積極的な開発、そして政府がその先導的な役割りをどうするかという問題が問題としてございますと同町に、並行して、われわれの頭脳の所産である発明その他の考案がいち早く活用されるという状況、そしてそういう人たちの権利が保護され、あるいはいろいろなダブった研究投資がセーブされ、国民経済的なロスが救われるという問題とは、二者択一でなくして、同時に並行して進めなければならない課題でございまするから、全く同じウェートを置いて追求しなければならない課題であると私は思っております。
○小柳勇君 答弁はそのとおりでしょうけれども、私の舌わんとするところは、たとえばビッグサイエンス、巨大科学の発明などには相当の金をかけなければならないし、その方向にありますね。日本はいまその方向にあります。したがって、たとえば国立大学などにも相当の金をかけて発明なりあるいは技術の発達をはかろうとしておる。そのようにばく大な金をかけて技術の発達をはかろうとするならば、この特許法、特許制度というものも、これは団体なり個人の発明意欲をあおって、特許権を持って、それが経済的にも権利が確立するから、みずから発明なりをいたしますけれども、政府がそういうふうにやって科学の発達に金をかけると同様に、日本の科学の発達を念願しますならば、特許制度にももう少し金をかけてよいのではないかと思いますので、大臣の見解を聞いておるわけであります。そういう意味から大臣の見解をもう一ぺん聞いておきたい。
○国務大臣(大平正芳君) よくわかりました。その点につきましては全く私同感でございます。特許制度に予算、要員を惜しむべきではない。それはセーブする金よりは失う金がずっと多い。それは小柳さんと私全く同感でございます。
○小柳勇君 次の点は、資本自由化に対する特許制度の問題について、これを大臣から見解を聞きますが、資本自由化が第二次まで進んでまいって、この特許権をたてにとった外資の攻勢が今後激しくなると考えます。したがって、産業界でも早期の対策を望んでおるにもかかわりませず、特許の実施権の強制公開に踏み切ることも可能であると表明しただけであって、その後具体的な対策というものはやってないように考える。したがって、外資攻勢の歯どめとして特許法に期待をかけるところは大きいのであるが、この点に対してこれも大臣から見解を聞いておきたい。
○国務大臣(大平正芳君) 仰せの問題、非常に重大な問題でございますが、特許法の中の構造にかかわる問題でございますので、恐縮でございますが、長官にまず説明をさせます。
○政府委員(荒玉義人君) 御質問の趣旨は、特許法以外の場でどうするかという問題、これは私申し上げられませんが、特許法の中では、御承知のように、そういった場合の規定は、現行法九十三条にございますところの「特許発明の実施が公共の利益のため特に必要であるときは、その特許発明の実施をしようとする者は、通商産業大臣の許可を受けて、特許権者又は専用実施権者に対し通常実施権の許諾について協議を求めることができる。」以下の規定でございます。問題は「公共の利益」というのがどの幅でかぶってくるかということでございます。これは各国大体こういった特許法の規定を持っておる国が多うございます。全体として、この前、資本自由化を契機に政府全体、内部で思想統一いたしまして、その場合には、国民経済上重大な影響を与えるという場合には九十三条の適用をいたしまして、そういった国全体の不安を、こういった条項の発動によって除いていくという基本的な見解で現在進んでおる次第であります。
○小柳勇君 もう一問大臣に質問いたします。これは特許法の改正に関連いたしますが、工業所有権審議会の答申の序文にも書いてありますけれども、「最近における出願の激増とその内容の高度化、複雑化によって」云々と書いてあります。技術が複雑になりますし、内容が非常に高度化する。で、特許を審査するということは、審査官が初めての問題を扱ってまいる。全部審査官がわかっておるような問題は、だれかが特許を取っているわけですね。新たな問題、新たな問題が常に出てまいります、急速度に技術の発達のテンポが増大してまいりましたので、したがいまして、特許を出願されてこれを審査するということは、科学が発達すれば発達するだけ時間がかかるものだということではないか。これは時間がかかるのは当然ではないか。そうしますと、この内容の高度化、複雑化によって、出願されたものが審査され滞貨されるということは、これは当然ではないかと私は考えるわけです。過去にもそうでありましたろうし、将来もそうではないか。ここにいま長官が説明されたものでは、現在は四年一カ月であるけれども、将来は二年六カ月としますと、こう書いてありますけれども、いまそういうような見解であるけれども、来年はどういう技術が発達するかもわからぬ、その技術については一件を審査をするのに相当勉強しなければ審査官が判定できないのではないかというような問題を考えますと、この特許制度というものは、もう出願の多寡を予想するより、技術の発達を考えるならば、当然滞貨が出るもの、時間がかかるものと考えてかからなければならぬのではないか、したがいまして、その定員増なりあるいは予算増なりあるいは特許庁の庁舎の増築なりというものは、技術の発達につれ、高度化につれて当然やらなければならぬのではないか。これはその人員が現在どうあって、内容がどうあってということ、あるいはこの法改正すればこうなりますということより、もっと必然的なものではなかろうかと、少しこれは哲学的になりますけれども、ではないかと思うが、そういたしますと、もう法改正などを考える前に、庁舎を大きくしましよう、定員もふやしておかなきゃなりません、審査官もうんと余裕をもって先に先に科学を勉強させておかなければ審査はできません。出てきたものは非常な高度のものでありまして、一件審査に何カ月もかかります。そういうことはあらかじめ大臣としては予想してかからなければ、特許制度の完全な運用はできないのではないかと思いますが、いかがです。
○国務大臣(大平正芳君) 私、実務の内容につきましては不敏にしてよく承知しませんけれども、いま小柳さんが御指摘の、必然的な傾向というようなものは、おっしゃるとおりだと思います。したがいまして、この法改正があろうとなかろうと、特許関係の予算、要員、施設の改善、充実、そういった点は私の責任といたしまして執拗に追求していかなければならない、特許制度運用上の最大の問題だと心得ております。ただ、そういうことはこの法案が成立しようとしまいと、とにかくやらなければならない課題でございますが、多少泣き言になるかもしれませんけれども、特許庁といえどもこれは一つの行政組織の一環でございまして、これは政府全体の立場から、特許庁にどれだけの要員、どれだけの予算を配分すべきかというまた別な観点からの要請がございまして、したがいまして財政当局あるいは行管当局と私どもの間に、いつも意見の間隔、距離が、常に不幸にしてあるわけでございます。それからまた要員の確保にいたしましても、だれでも頭数をそろえたらいいというものではなくて、実際はその審査にたえるだけの能力を持った方においでいただかなきゃいかぬわけでございますから、このように技術者が不足した今日、一般的な状況のもとにおきまして、われわれがかりに十分の予算が与えられたといたしましても、それだけの要員を充足できるかできないかという問題は、事実問題として別にあると思うのでございます。そういうわけでございまするから、今度の改正案のねらいは、そういうギャップをどうして埋めるかという役割りをになったものとしても御理解をいただかなければならない御提案でしょうかと私は考えております。
○小柳勇君 次に、文部省もきょう見えておりますね。この法案の改正に長くつき合ってもらうのも恐縮ですから、文部省の問題を先に質問しておきたいと思います。それは特許権を所有された研究者あるいは大学教授などが、それを、たとえば国立大学では国の費用で研究される場合が大部分であろうと思うが、その特許権というものがその大学に帰属しているところもある、それから教授個人に所有されているのもあるようです。あるいはその中間的なものもあるようです。研究所などではその職務発明の問題に規定があって、所有の形がはっきりしているようでありますけれども、国立大学などではどうもまちまちのようでありますが、文部省としてはどのように把握しておられるのか、お聞きをします。
○政府委員(安養寺重夫君) お答えいたします。 現在、国立大学の研究の成果によりまして、国が特許権を取得しておりますのは約四百五十件ばかりでございます。その半数は職務、勤務規則なくして、個人の任意の寄付によるというものが半数でございます、現在実施いたしております研究の結果といたしまして。したがいまして当然これは国費を使用し、国の施設を利用してその研究の結実として特許権取得に至るというようなものに至りますれば、本来、筋として国の財産として帰属せしむべきものではないかというような考え方もございます。二年ほど前いろいろ問題がございまして、その後、受託研究等の問題もからみまして、文部省といたしましては引き続き国立大学の関係者と寄り寄りこの権利関係を明らかにしようということで検討いたしているわけでございます。現在のところ、国立大学の紛争等がございまして多少一とんざしております。ただ、申しましたように、各大学の取り扱いがばらばらでございますし、学者各位の御意見には研究の自由、自主性、また結果の公開というようなことの考え方から、必ずしもことごとくのものが国有財産として帰属すべきかどうかという認定の問題としてはむずかしい。実際の処理としていろいろそのあたりの点を検討すべき問題があるというふうな御意見もございまして、鋭意検討中でございます。いっまでもやっておくわけにいきませんので、われわれとしましてはいま受託研究の問題について、あわせて急いでいるわけでございます。まだ明確な結論は得ておりません。
○小柳勇君 二年前に、もうこれは私が実は問題にしたわけです。いまなお研究中であるということ、不満ですが、昭和二十五年に日本の学術会議が政府に勧告をして、職務発明規定をつくるように、そして国立大学の教授も適用されるはずですね。したがってそれが国有財産法によるならば、当然特許権も国有財産の一つと見なければならぬのではないか。大学の教授が個人でこれを所有しておれば、国有財産の横領と判定しなければならぬ。今日までなお二年間も十分な実態把握がないということは、どうですか。それ、もう一回、あれば率直に言ってください。問題です。
○政府委員(安養寺重夫君) 再度のお尋ねでございますが、御指摘のように国家公務員である大学の教官、研究者が、自分の職務といたしまして、したがって当然国費を投入し、国の物的条件にささえられまして、その結果として明確に特許権というものを生じたという場合には、筋といたしましては当然これは国の財産として帰属すべき問題だと思いますが、したがいまして、現在検討しておりますのは、そういう考え方を、個々具体の場合にどういうように適用するかという問題として検討いたしておるわけでございます。大筋については、われわれとしても、申しましたような筋で議論をしたい、かように考えているわけでございます。
○小柳勇君 ではまた局長なり大臣に質問いたしますが、きょうは資料を要求しておきます。すでに取得した大学の特許、それから出願中の特許の一覧表を私のほうにお出し願いたい。これには国有のもの、個人のもの、法人のものなど、その種類別に御提出を願いたいと思いますが、いかがですか。
○政府委員(安養寺重夫君) お話の件は、できるだけ早くととのえたいと思います。
○須藤五郎君 関連で一問。いま小柳さんの質問で、大学の研究の結果できた特許権は国に所属するというお話がありましたが、その法的根拠はどういう法によってそういうことになるのでしょう。
○政府委員(荒玉義人君) 御承知のようにこれは特許法三十五条、いわゆる職務発明の規定でございますが、特許法にある発明というものは、これは自然人の行為でございます。原始的には発明者、個人の場合でございます。ただ、それが職務に属する——中身は省略いたしますが、いわゆる職務発明といった場合には、国がその権利を承継できる。これは国だけではございません。一般の会社でも同じでございます。そういうような規定のつながりがございます。問題は、特に大学の場合は、これは文部省の所管でございますが、いろいろ複雑な要素、条件がございます。したがってどういう場合に職務発明に該当するかといいますと、他に金を出したとか、いろいろすべての要件が職務発明の範囲を規定するわけでございます。先ほど文部省から話しましたのは、それぞれの大学の中で、それぞれの業務があるでしょう。要は大学内部の管理規定で、どの範囲のものが職務発明かということを規定していく、そうしてその権利の帰属を明確にしていく、これは大学内部で、それを文部省が御指導していくのだろう、そういう関係になると思います。
○小柳勇君 次の問題長行に……。最近外国からの出願も急増しておると聞いております、その事情や、国際審査協力協定の動きなどを顧慮しながら検討する必要がありますから、国際的な外国の事情についてまずお聞きをしたいと思います。 まず一つは、フランスなどの無審査制度をとっておる国が、最近一部審査を行なうようになった。また、反対にアメリカ、イギリスなどの審査主義をとっていた国も、発明の早期公開などの必要から種々の改正を行なっているようでありますので、まずアメリカ、フランス、イギリス、この三つの国について概要を御説明願います。
○政府委員(荒玉義人君) まず一般的にいいますと、従来無、審査主義のフランスが審査主義に逐次移行しているという傾向がございます。背は医薬、特に医薬だけは非常に問題があるということで、医薬は審査しておったわけですが、やはり出願人の希望があれば審査をするというたてまえの改正を行なっております。それでいわゆる無審査主義から審査主義への移行は一つの傾向かと思います。アメリカの場合は、現在われわれが提案しておりますいわゆる早期公開制度、あるいは審査請求制度につきましていろいろ審議が行なわれた過程で、最近アメリカはそういう制度をとらない、現行法で、一部もちろん改正の動きはございますが、基本的にはやはりそういった審査主義それ自身の問題につきましては、おそらくアメリカは近く改正ということにはならないと思います。イギリスにつきましてはどういう方向か、まだ確かに承知しておりませんが、大体審査の長期化というのはイギリスも全く同じ事情でございますので、将来どっちの方向で検討されるか、いまのところはっきりいたしませんが、オランダ、ドイツ、その他の事情を参酌して、まあ一つの問題を現在審議中でございます。
○小柳勇君 概要についての説明ということで質問いたしましたが、具体的にここに私、炎を持っているのですけれども、出願する件数、それを審査する審査官の定員、あるいは予算などの炎をここに持っておりますけれども、アメリカにしろイギリスにしろ、出願件数はもちろん日本よりも少ないけれども、定員が多い。そのスケールが、私は冒頭に大臣に質問いたしましたように、特許制度によって技術を発達せしむるようなもの、あるいは経済的な競争をやらせようとするもの、あるいはコントロールをするようなもの、そういう思想によりまして、出願件数に対して審査官の定員などがべらぼうに多いわけですね。予算ももちろん多いのですけれども、そういうように諸外国の制度は、ただ一口に概要と申しますと簡単ですけれども、具体的に言いますと、一本と雲泥の差があると私は感ずるわけです。そういう面で具体的に長官から説明を求めたいと思います。アメリカとそれからイギリス、フランス。
○政府委員(荒玉義人君) フランスの場合は手元にございませんので、後ほど補足いたします。 まずアメリカでございます。一九六七年で、全体の人間が二千五百二十八人、それに対しまして審査官千二百七名、残りはその他の職員になっています。それから年間処刑件数、これは特許だけです、九万六千八百十一件、一人当たり八十件でございます。それからイギリスは一九六七年でございますが、全部の定員が千五百三十五人、審査官数五百十四人、残りはもちろん一般職員でございます。年間処理件数三万四千四百三十五件、一人当たり六十七件、これは一九六七年イギリスは急激に落ちておりますが、一年前の一九六六年は百十・八、こうなっております。それに見合います日本、これは現在は、四十四年度は御承知のとおり総定員千八百名でございますが、一応一九六七年ということで同じ年度をとりますと、総定員が千六百二十五人、審査官数、これは予算定員でございます、七百十七人、年間処理件数十二万三千八百五十四件、一人頭百七十二・七、一応比較いたしますとそういうふうになっております。
○小柳勇君 大臣、以上のように諸外国の出願及び審査官の定員なり、あるいは一人当たりの処理件数などがもう日本と雲泥の差がございまして、そういうものが技術の発達にも大きな影響をしておるのではないか、日本はいま技術が追いつきつつありますけれども、そういう気がいたします。 それから、あと具体的な問題はまた後日質問しますから、次は、いまこの法改正で見習おうとしておるオランダ、西ドイツの場合ですね。この問題をオランダと西ドイツの特許制度について御説明願いたいと思います。
○政府委員(荒玉義人君) オランダの制度と西独でございますが、オランダは一九六三年法で改正をいたしまして、大体出願の早期公開制度、審査請求制度両方共通でございます。ただし制度自身細部にはもちろん差はございます。まず早期公開で、これは公開の時期は日本のいまの原案と同じでございまして、出願の日から十八ヵ月という意味では同じでございます。それから公開前の審査、これも大体日本のいま提案いたします法案と同じで、実体審査をしないという意味では同じでございます。公開の方法がリスト公開でございます。われわれの原案は、御承知のように一応実用新案は要部公開、特許は全文でございます。オランダはリストでございます。補償金請求権につきましては大体同じでございます。それから審査請求のためにいわゆる予備審査ができる。こういう意味で、その点はちょっと日本と違っています。大体比較して主要な点は以上でございます。西独は公開の時期はオランダと同じ、それから方法がわれわれの法案の特許と同じでございます。全文でございます。それから補償金請求権、これは大体同じだと思いますが、行使の時期が公開と同時にできる、もちろん裁判所は必要な場合には訴訟の中止をいたしまして、特許庁の処分まで待つということで、いわゆる補償金請求権の行使の時期が違います。それから新規性調査機関でございまして、これは本審査と新規性調査、出願人の選択でいずれか選択できる、こういう制度になっております。あとの細部は省略いたしますが、おおむねを御説明申し上げました。
○小柳勇君 出願件数と定員一人当たりの処理件数はわかっていますか。
○政府委員(荒玉義人君) 西独は一九六七年で総定員二千二百五十六、審査官六百二、それから年間処理件数が五万六千三百十八、一人当たり九三・六。オランダは同じく一九六七年、総定員四百七十三、審査官百三十一、処理件数七千九百二十一、一人当たり六〇・五でございます。
○小柳勇君 わかりました。オランダ、西ドイツの実態も日本と比べまして雲泥の差でありますが、具体的問題はまた別にいたします。 次はPCTの問題と関連がありますから質問いたしますが、現在の各国の制度で、発明者が数カ国で保護を受けようとするには、各国別に出願しなければならない。この重複出願や重複審査のむだを省く方法として提案されたのが特許審査協力協定だと思うが、現在考えている協定案の内容はどういうものでしょうか。
○政府委員(荒玉義人君) 概略ポイントだけ申し上げたいと思います。まず現在と比較したほうがわかりやすいと思いまして、現在、先ほど小柳先生おっしゃいましたように、一人の発明につきまして数カ国出願——もちろん発明によりましては数ヵ国以上でございますが、日本人でいいますと、日本人が発明いたしましてアメリカにも出願する、西独にも出願する、フランスにも出願する等、大体われわれは普通日本で見ておりますと数ヵ国に及んでおります。そうしますと、それぞれ国が独立してそれぞれの出願について審査をする。で、審査の時期は国によってまちまちでございます。そういたしますと出願人が非常に不便である、といいますのは、見込みがあれば数ヵ国出願するけれども、見込みがない場合には、もう出願しても意味ないですからやめるという場合もございます。出願人から言いますと、各国に出願するというのはきわめて費用がかかることでございます。そういった出頭人側の不便と、それから一方、審査をする立場でございますと、同じものについてそれぞれの特許庁が独立した、審査をするということはやはりむだではないか。そういった出願人の側の事情と、それから審査する側の負担軽減をどういう形ではかっていくかということでございます。具体的に申しますと、各サーチ機関といっておりますが、日本なら日本がサーチ機関になれば日本に対して日本人が国際出願といっていますが、国際出願をいたします。そうすると日本はサーチ機関の場合はそれを一応サーチいたしまして、おおむねこういった関連文献がある、いわゆるサーチ・レポートでございますが、それを出願人に提示する。そういたしますと出願人はそのサーチ・レポートを基準にいたしまして、日本で言えばアメリカに出願するかあるいはドイツに出願するかという判断の材料をやるわけです。そういたしますと、先ほど言いましたように、現在よりか出願人に有利でございますから、そうして出願人がサーチ・レポートを見てアメリカに権利を持っていきたいということになればアメリカを指定するわけです。そうするとアメリカの特許庁はその日本の出したサーチ・レポートを一応審査の資料にいたしまして、初めからすべてサーチするよりか利益になる、こういった構成でございます。概略申しますとそういった出願の不便と特許庁の負担軽減という意味で先ほど申したような骨子でPCTが進んでいるわけでございます。
○小柳勇君 長官は衆議院の委員会で四、五年後にはこの協定に加入するために特許法の改正が必要であろう、こういうことを言明しておられるようであるが、この協定に臨むわが国の基本的な態度についてまずお伺いいたします。
○政府委員(荒玉義人君) ちょっと正確に——私衆議院段階で申し上げておりますのは、PCTに加入するために今回の改正ということは申し上げておりません。要するにPCTの方向と今回の改正は矛盾いたします。これははっきりしております。といいますのは、基本的にはPCTというのは御存じのように単一の特許法じゃないわけです。EEC特許みたいに単一の特許法がございまして、特許庁も一本だという構想ではございません。これはやはり現在の各国の主権を尊重するということでございますから、権利はそれぞれの国に存在するわけでございます。したがいまして特許法自身はそれぞれの国の特許法で必要かつ十分でございます。したがいまして今度の改正はPCT加入のための条件ではございません。むしろ条件といいますのは多項制、これが条件になります。多項制といいますのは御承知のように請求範囲、まあクレイムといわれておりますが、そういった請求範囲といいますのは権利の実体、特許では一番大事な部分、それをPCTに加入するためには多項制にしなければいかぬ。これは非常におわかりにくいかと思いますが、現在の日本特許法は一項、一項でしか請求範囲が記載できないわけです。これをPCTに加入するための条件といたしましては多項にしないと参加資格がない、こういうことになっております。で、そういった意味でやっぱり多項の問題が当然今後の問題になります。で、多項を採用するかどうかといいますのは、今度の法改正とは少しも関係ございません。したがいまして、われわれといたしましては残された問題がございます、多項を初めといたしまして。そういった検討を今後重ねてまいります。そうしてPCTへの準備体制に対処したい。こういう意味でございます。基本的には、PCT加盟ということは、われわれ特許庁だけではございません、日本の産業技術あるいは国際的な影響、出願人がどこまで利益するか、あるいは特許庁がどこまでついていき、どこまで負担軽減になるか、こういった総合判断を重ねまして、そうしてわれわれとしてはできるだけ参加の方向で考えていきたいという趣旨でございますので、誤解のないようにお願いいたします。
○小柳勇君 長官の誤解ないようにというのは、そのとおりです。四、五年後にはPCTに加盟したい。加盟するためには多項制の問題なり化学物質特許権の問題を検討しなければなりません。そうでしょう。そうでないと、いまおっしゃったように日本の特許は一項制でありますから、多項制を検討しなければなりません。そういうことを私は聞いているわけです。その多項制なりあるいは化学物質特許の問題についてはどのようにいま対処しておられるかということです。
○政府委員(荒玉義人君) ちょっと厳密に申しますと、化学物質特許の問題は、これはPCT加盟の条件ではございません。したがいまして、問題は多、項の問題でございます。で、現在多項といいますのは、これはおそらく法律の条文にすれば一条くらいかと思いますが、特許の権利範囲の解釈をどう考えていくか、あるいは将来多項にした場合に、一体、現在のような体制でやれるか。あるいは資料整備その他万般の審査体制というものにきわめて重大な影響がある。もちろん、権利解釈でございますので、裁判所その他にもおそらく影響する。と同時に、一口に多項と申しましても、これは各国それぞれ長い間の伝統がございまして、アメリカ式の場合、西独式の場合は必ずしも名前は同じ多項でございますけれども、なかなかそれぞれの国の特色がございますが、われわれといたしましてはどちらが円滑にいけるかというようなきわめて重大問題がございます。私たちは、現在、各国のいずれの多項が是か非か、そのためには準備態制としてどういうことを考えなければいかぬかということを現在調査しております。場合によれば、もっと精密な調査をいたしまして、そうして問題点をはっきりいたしたい。現在は問題点の明確化のための調査段階でございます。で、化学物質特許権につきましても、これは先ほど言いましたようにPCTと関係ございませんが、やはり日本の化学工業技術も進歩いたしております。そういった問題を踏まえて、この問題につきましても、化学物質特許、一口に物質といいましても、なかなかそう簡単でないようでございます。そういった細部の問題を考えるにつきまして、細部の調査、そういうものを現在やっておる段階でございます。で、そういった調査の結果、問題がはっきりいたしました場合には、もちろん、審議会でできるだけ早い機会に審議をいたしたい、かように考えております。
○小柳勇君 加入の準備ですが、実はこの間特許庁を見学したときに聞いたのですよ。だれがどのくらい準備しておるのか。あまりよく知らないものですから、今度また長官の案内で視察するときに聞きますけれども、実際準備をやっておるのかどうか。四、五年先には加入しなければならぬ。加盟したい。そのためには多項制の問題もありましょうが、いろいろ国際的な資料の収集の必要もありましょう。あるいは検索の問題もございましょう。そういう準備体制があるのかどうかと聞いたら、あまりどうもそのときに一生懸命やっているたくさんの人も見かけなかったが、現在やっているんですか。
○政府委員(荒玉義人君) これは準備段階は特許庁だけという問題でございませんで、産業界の代表者あるいは弁理士の方々がそれぞれ実際やっておられますので、各国の長所、短所を実務の上からやっておりますので、三者構成で進めております。そういう意味でやはり特許庁だけの影響にはとどまりません。そういう三者構成で進めております。
○小柳勇君 この法改正に反対する意見の中に、四、五年先にはPCTに加盟しなければならぬ。そのためには現在の特許法をどうせ改正しなければならぬから、三十四年に改正して、今度改正して、また五年先に改正すると、審査官にしてもあるいは出願人についても、二重、三重の改正では苦労するから——苦労するというよりも混乱をするから、そのPCTの加盟のときの法改正まで今度の改正を延ばしたらどうか。もう少し十分に日本の特許制度を検討して、法改正を延ばしたらどうかという意見がありますが、長官の意見を聞きたい。
○政府委員(荒玉義人君) これは私三十四年に全面改正をいたしました経験ございまして、それから今度の改正でございますが、私基本的に申し上げますと、特許法の改正といいますのは、やはりそのとき必要なものを重点的にやったほうが私は基本的には効率的だと考えております。といいますのは、やはりたくさん項目をやりますと、制度といいますのは、これはいろんな運用その他に…題がある事項でありますと、たとえば先ほど言いましたように多項、あるいは今度の場合でも影響はございます。一つ一つそのときどきの一そのときどきといいましても、終局的には補足説明で申しましたような技術革新の影響、こういったような影響の多い部分を重点的にやはりそれぞれ取り上げていくという改正のほうが非常に効率がいい。といいますのは、今度多項は、御承知のように、先ほどから繰り返しますが、これは法律は一条でございますが、実務的にはきわめて重大な影響を与える問題でございます。したがって、方向が間違っておれば、これは私は問題かと思います。今度の改正も多項も、方向としては矛盾したものではないわけでございます。したがいまして、やはりいまは、御承知のように審査のおくれを何とかしょうという問題でございます。五年待ちますとどの程度になるか、これは先生の御想像にまかせますが、現在三分の一の滞貨を翌年度に持ち越しているわけでございます。三分の二処理している。この傾向がいいとは思いませんが、五年たてば少なくとも減る方向には責任者といたしまして考えられない。そうすると、やはりすべきことはいまの段階でやる。それをこなした上で新たなる多項制に取り組むということが、能率といっちゃ語弊がございますが、円滑に制度を運用するという面から申しましても、むしろ一つ一つこなしていくということのほうが私は合理的ではないか、かように考えます。
○小柳勇君 われわれ実は特許法の運用についてはしろうとですから、反対意見の方の意見ももっともだと思うし、長官はその責任者ですから、今回法改正やっても決してそういった混乱は起こさないという自信を持っておっしゃっておるようでありますが、ただPCTに四、五年先には加盟しなければならぬ。そのためには一条にしろ多項制の改正もしなければならぬ。こういうこともまた事実ですから、法改正をそれまでひとつ延ばしたらどうか、こういうことも一つの意見ではないかと思います。もう少しそういう問題、具体的な資料をもって検討してみたいと思いますが、時間もないので次の問題に入ります。 これは昭和二千四年の三月十二日当参議院の商工委員会で特許法案に対する附帯決議がなされておる。出時もいまと同じように相当滞貨があったようで、滞貨の処理のために次のようにせよという附帯決議がなされているのであります。 第一は、「審査、審判の促進に努め、特に滞積せる未処分の出願を一掃するため画期的方途を講ずること」。第二は、「審査官、審判官の増員を行い、併せてその待遇を速やかに改善し、有能なる人材の確保に遺憾なきを期すること」。第三点は、「設備、資料、備品等を充実するとともに、執務環境の改善及び執務能率の向上を図ること」。 これが当委員会の決議でございます。音時の法改正等の審議の速記録を読んでみましても、ちょうど今回の法改正のときの論議のようなことをやっぱり同じように言われておる、記録の中に書かれております。そのときもやはり滞貨が相当あった。それを処理するためにこういう決議がなされておるんですが、この附帯決議を当時から見て滞貨を一掃するためには、せっかくこれとこれと三項目書いてあるのだから、それを完全にやれば、十年たった今日滞貨処理のためにこのような法改正をする必要はないかと思うが、この決議をどういうふうに十年の間に処理されたか、御説明願いたいと思います。
○政府委員(荒玉義人君) われわれといたしましても百点満点とは思っておりませんですが、やはり御趣旨の、実現化のために現在まで努力してまいったわけでございます。具体的に言いますと、三十四年から今日までに審査官の定員が四百六十六人、審判官の定員は七十八人増員をはかってまいりました。あるいは機構でございますと工業所有権研修所及び審査第五部その他審査長、審判長の拡充をしてまいったわけでございます。さらに附帯決議の趣旨で実現を見ましたのは、審査・審判官の待遇改善でございまして、三十五年四月から御承知のように調整額、審査官八%、審査官補四%の調整額の支給によりまして待遇の改善をはかってまいった次第でございます。執務環境につきましても、これは面積から言いましてもふやしておりますが、そういった庁舎の整備等をはかってまいったわけでございます。このような施策の結果、審査・審判官の処理能力は逐年向上いたしまして、四十三年度の処理実績は三十四年度——この改正は三十四年度でございますから、三十四年度に比較いたしまして審査一・八倍、審判二倍に達したのでございます。ただし、出願の伸びはこれを上回っておりまして、毎年の未処理案件というものは御承知のように多くなってまいりました。したがって、われわれといたしましてももちろん百点とは思っておりませんが、われわれなりに努力してまいったわけでございますが、現在出願の伸びに応じた処理体制がないということも事実でございまして、人員拡充をはかると同時に、制度改正をいたしたいと、かように考えている次第であります。
○小柳勇君 大臣に質問いたしますが、さっき諸外国の例を具体的に数字を示してもらいまして、出願件数は日本よりも少ないが、審査官の数、定員は多い。そうして一人当たりの処理件数は約三分の一くらいですね。それだけまた技術も高度でございましょうし、念入りに見ているでしょう。しかも速く見ているでしょうね。あの庁舎に一昨日参りまして、まだ新庁舎ができたはかりでありますから整とんもできていないと思いますが、二分化されている。古いほうと新しいほうと二分化されて、手押し車で書類がずっと回っているような実態であります。ああいうものをもう少し合理化したら処理が速かろうと思ったのです。それから狭い部屋で審査しておられるぐあいも見てまいりました。そういうことで、基本的には、言うならば、冒頭に大臣に質問しましたように、科学技術の発達のためにばく大な投資をする、同様に特許制度の処理能力を高めて審査期間を短くして、そうしてもっと科学の発達に寄与するという立場をとるならば、たとえばいまの定員を倍にして——科学技術の発達のために投ずる国家予算に比べたら微々たるものではないかと思いますね。現在、審査官が十年から十一年、いわゆるベテランになりますと、他に職を求めて去られる方が二十名なり一千名なりあるようです。入りまして七年くらいは一生懸命勉強をしなければならぬということで、やはり研修室がつくってございますが、十年くらいしますとほんとうの一流、一人前のベテランになる。十年から十一年、十二年目ごろ有能な審査官が他に職を求めて退職される。それを保有するためには十年かかりますね。だから、単に見せかけの数字だけを示しても審査能力というものはちっとも進歩しない。したがって、優秀な人を採用して、しかも十年間一生懸命に勉強してもらって一人前になって、それから処理能力がうんとつく。ただ冒頭に言いましたように、技術が高度化いたします、あるいは科学が発達いたしますというと、審査能力はつきしても、勉強する期間はあるいは倍加するかもしれません。審査能力というものと科学技術の発達の程度というものは、非常に簡単に数字で割り切れるものではないと思う。だから反対意見の中に、この法改正よりも、とにかく定員をふやして、これこれの定員をふやせばいまの滞貨は何年すればこうなるんだという具体的な意見すら出ている。そういうものもありますから、もう正攻法でいくならば、とにかく職場環境を整えて、そうして書類の流れをスムーズにして処理能力を高めるには、人員をふやす、そうしてベテランの審査官が退職しないように処遇してまいる。昇進の道もありましょうし、あるいは勉強の期間をより与えることも必要でありましょう。生活に余裕を与えることも必要でありましょう。労働条件の向上も必要でありましょう。そういうこと一をまずこの参議院商工委員会の三十四年の決議を考えましてもやらなければならぬし、今日このぶち当たる問題を解決する最も近道ではないかと思いますが、大臣いかがでしょうか。
○国務大臣(大平正芳君) 執務環境の整備の問題でございますが、いま仰せのように旧庁舎と新庁舎に分かれて不便をいたしておりますけれども、これは近く後期の庁舎の整備を行ないまして、新庁舎に全部まとめるということで、ことしから始めるわけでございます。それから内部の事務処理の機械化、合理化、そういったことを、いまコンピューターも入れまして、これにのせておるのでございますが、まだ全部システム化しておるわけではございませんで、まだ十分改善すべき余地が私はあると思うのでございます。 それから第二の点、要員の確保でございますが、これは先ほどの御質疑にもお答え申し上げましたように、所定の水準以上の能力を持たれた方に来ていただかなければならぬわけでございますが、実際上そういった充足が必ずしも容易でないという事情は、先ほど事実関係として申し上げたのでございます。しかしせっかくお入りいただきましても、ある期間を経ますと転職をされるという事実もあることは御指摘のとおりでございまして、特許庁に誇りを持って長くお働きをいただくような環境、処遇、そういうことを考えるのが御指摘のとおり本筋だと思うのであります。ただ、これは先ほども定員、予算等について申し上げたと同じことになるんでございますけれども、給与制度というのは公務員全体の体系としてでき上がっておりまして、特許庁の職員もそのらち外におるわけじゃないのでございます。だから、いまの給与体系の中でどういう立場をその職務を評価いたしまして与えるかという給与政策の問題になってまいるわけでございまして、先ほど長官から調整額というようなものを差し上げることによってようやく多少の配慮はいたしていただいておるわけでございますけれども、独立した俸給表にするというようなことを毎年執拗に人事院当局に求めておりますにかかわりませず、これがいまだ実現に至っていないわけでございますが、それにいたしましても限度があるわけでございまして、国家公務員全体の給与体系、水準からの制約がある、その中でわれわれは可能な限り処遇の改善につとめなければならぬと考えておりますが、そういった制約がございまして、なかなか思うにまかせない事情にあるわけでございます。 それから第三点といたしまして、反対される方々の御意見として、定員も充足し予算も充足していけば何も法律改正する必要はないじゃないかという御意見、私もよくそれは理解できます。それが本来オーソドックスな解決の方法だと思うのでございますが、いままで申し上げましたような事情で、必ずしもそれが十分でないという制約のもとで、しかも現実に生きた問題として未処理案件が累積している、何とかせなければならぬという非常に切実な課題をかかえておりますので、そういうオーソドックスな解決の方法は、法律の改正があるなしにかかわらず、われわれはどこまでも追求してまいりますが、それとあわせて制度的な改正も考えさせていただきたいという気持ちでございます。
○小柳勇君 今回の改正が滞貨処理のためと銘打ってありますが、滞貨処理のためならば別の方法があるではないかという意見があるわけですね。したがって、滞貨処理というのも一つの理由であるけれども、たとえば西ドイツのように早期公開制度が将来の日本の特許制度として必要である、日本の技術の発達なりあるいは経済の発展に寄与するためには早期公開制度というものが必要である、そういうふうな理由が滞貨処理と同等あるいはそれ以上のウエートであるのかないのか、長官から聞いておきたいと思います。
○政府委員(荒玉義人君) 本日の補足説明で最初に申し上げたかと思いますが、少し繰り返しになることをお許し願えれば、基本的には、やはり技術革新、技術革新といいますのは、相矛盾する要素をもたらしているわけであります。で、相矛盾するといいますのは、技術革新をもっと具体的に言いますと、発明のアイデアから製品までは非常に短くなっております。これはわれわれが白書でも申し上げたかと思いますが、一昔前は百年くらいのもののタームで基本発明は考えられた。いまや木木的なものでも、ものによりますが、大体十年以内、普通の利用程度の発明になりますと、もっともっと短い期間で発明のアイデアから製品が出てくるわけであります。で、もう一つは、いわゆる商品のサイクルといいますか、だんだん急激に売り上げが上昇して急激にタウンする、この傾向は 年一年激しくなる、そういう意味では、やはり早く技術を公開してくれという要請と、早くやはり権利の設定という要請が出てまいります。一方、技術革新といいますのは、出願の量的拡大、特に日本が激しゅうございます。大体先進国でございますと、やや増という程度でございます。日本の場合は御承知のように、まあ年次のとり方によりますが、十年程度とれば約倍でございますが、年率にすれば七%程度の伸びでございます。一方、中身は、高度化といっておりますけれども、大体明細書のページ数だけ比較いたしましてもこれは十年前と比べて約倍ないし八割増、大体倍近いくらいのページ数になる。一方、御承知のように審査といいますのは、既存の文献があるかないか、まあ文献のみではございません、公報類につきましても、明細書のページ数と同じような傾向で増加しております。そうしますと、量的、質的に見ましても、審査といいますのは、やはり先ほど先生御指摘のように非常にむずかしくなってきております。まあそういった相矛盾する要請をどこで調和していくかということになると思うのであります。早期公開制度といいますのは、先ほどの技術革新のテンポに合わせるために、やはり審査をして公開をしているということでは、どうしても長期化するし、同時に、かりに短くなりましても、部門別に非常にアンバランスがございます。われわれいつも数字は平均で申し上げているわけですけれども、やはりわれわれの審査旭力と出願の点からいいますと、やはり分野ごとに相当の差はございます。そういった意味で審査をしておれば、その面の技術開発のテンポに、世の需要に応じていけないという一つの要請というのが背景にございまして、それが早期公開という制度のねらいであって、それは技術革新の要求に応ずるための私は政策だろう。で、一方、審査に直接結びつきますのは、むしろ請求制度でございます。これは先ほど補足説明で申しましたような、やはり現在のような時代ですと、すべての出願を審査するということは、やはり個人としても国家としても、あり余る能力があれば別でございますけれども、だんだんそういう旭力に限界があるといたしますと、お互い選択をして、必要なものだけやっていく。それが発明の本質にも合ってくるということから、審査請求制度が成り立ってくる、したがいまして、そういう意味では柱は二本でございます。単なる審査促進と同時に、やはり別の技術革新からくる要請、私はそれが背景になっておるかと、かように考えます。
○小柳勇君 そこのところが非常なこれからのこの委員会の論点だと思うのですよ。ただ滞貨一掃のためだというだけならば、ほかの方法もさがさなければならない。それはもう端的に言うならば、職員団体などの意見にあるように、たとえばこれこれの定数というのをふやしてくださいと、事務職員の仕事を、審査官がやっておるような仕事を返してくださいと、そして何名増員されたならは現在の滞貨は何年間のうちにはこうなりますという具体的な数字まで出ておる、これも一つの方法であろうと思う。ただ早期公開制度というものが今後の産業の発展なりあるいは技術の進歩に寄与するのだという確信があるならば、これはもう滞貨処理と同等のウエートをもってこれから論議していかなければならぬ。そういう意味では米国上院のキントナー報告以降の米国特許庁の事務改善の資料がございます。したがって早急にこの事務改善の資料、実施状況、その成果の資料、そういうものを私のほうに資料として届けてもらいたい。 それともう一つは、特許庁の中に働く人たちがこれは審査するわけですから、その人たちの意見というものも相当以上にこれを取り上げて、どうしたら一体現在の滞貨を一掃できるかということは、常に長官も大臣も相談していかなければならぬことだと思う。今回の改正案が出まして私ども奇異に感じますのは、その特許庁の職員の団体の代表の方が再三再四見えて、詳細な、具体的な資料をもって、これは改悪になりますよと、この法案が通りましても決して滞貨の促進になりませんと。そういう資料をたくさんわれわれここに持っておる。そうしますと、実際仕事をやる人はそういう人ですから、ここで改正案が通ったとしても、これは滞貨の一掃にならぬではないかという危惧は一ぱいあるのであります。この法案を通しても、結局はやるのはその人たちだから、かえってこれは滞貨がふえるのではないかという心配もあるわけですから、したがって、そのいまの第一のアメリカの資料と、第二は、大臣が出されております工業所有権審議会の答申の冒頭に兼子会長が大臣に書面をつけておられますけれども、本審議会は制度改正部会において審査云々と書いてある。したがって、この制度改正部会の規則及び細部の審議を小委員会にゆだねたと書いてあります。その小委員会の記録を、私どもこれを審議する上に参考にいたしますから、ひとつ出してもらいたいと思います。重ねて言いますならば、一工業所有権、審議会の制度改正部会及び改正小委員会の審議経過の記録を出してもらいたい。それはなぜかといいますというと、さっき長官のこの補足説明の中で、これこれの法改正をやりますというと、まあ滞貨あるいは今後の審査期間は二年六カ月くらいで何とかできるようにいたしましょうと言われた、ところがその見通しがいろいろまちまちである、一貫しておらぬというようなことも聞いておったのです。だからこの部会や小委員会の中で審議された過程で、いろいろ資料が出ておるでしょうから、そういうものを少し検討して、そうして長官が言われるこの法改正の中にあるその見通しというものが正しいということをわれわれが把握しなければ、この法改正というものを私たちが通すわけにまいらぬと、私はそう思うわけであります。したがって、資料として議事録を出してもらいたい。 それからもう一つは、最後の第三の資料は、今度総定員法が通りましたために、それによって特許庁の職員の定員も当然きまっていくでありましょう。今後どうなるかという不安があるようです、職員団体の中に。そういう不安があっては法改正も協力できぬということのようですから、その総定員法による特許庁の各課別の定員が実は、ほしいわけです。そしてトータルしてどうなるか。現在の各課の動きと比較して、法改正後これから一体どういうふうに特許庁の審査事務が推移していくかということを見たいと思うので、この資料をひとつ出してもらいたい。 以上三つの資料を早急に出してもらって、次の私の審議の参考にさしてもらいたいと思います。 もう一つは、大臣でも長官でもいいんですが、これは質問でございますけれども、たとえば中政連——中小企業政治連盟という団体から、詳細な法改正に対する反対の意見が出ている。その中には、大企業ではたくさんの研究員を持っているし専門に特許に携わる者がおるからよいが、中小企業や個人はとてもたいへんだ。早期公開制度はたいへんである。これはもう大企業優先の法改正であるから絶対反対だと、こまかに理由を付して反対理由が出ています。わが日本社会党としても、その点を一番心配しておるわけです。この法改正というものは、中小企業なり個人にとってはたいへん不利なものである。早期公開で、ばく大な資料が出て、それを見るだけでもたいへんだ、こういう心配をしておるのでありますが、こういうものに対してどうお考えになりますか。専門ですから長官から……。
○政府委員(荒玉義人君) 中政連に私参りましていろいろ話をしておりますが、ポイントは二点。一つは、これは衆議院段階でも議論が出まして、早期公開いたしますと大企業がそれを模倣する。中小企業である権利者が、それに対してもちろん訴訟の手段がございますが、実際上はなかなかできないから非常に不利だというようなことが第一。この点につきまして私いささか御説明申し上げたいと思いますのは、いわゆる中小企業基本法でいう中小企業、大企業というのとは、特許の場八日はいささか様相を異にしております。といいますのは、特許といいますのは、自分で独特の技術開発をやるという企業でないと、初めから乗ってこないわけです。もちろん中小企業の中には私いろいろあると思いますが、衆議院の公述人の中でもそれぞれニュアンスがございますが、やはり独特の技術開発をやっておる中小企業になりますと大企業とそう差はない。といいますのは、人員はもちろん少のうございますが、やはり少ないだけに専門分野でございます。中小企業がたくさんやるということは、独特の技術開発はできないわけでございます。専門分野はもう固定しておるわけです。そういった意味で、やはり中小企業らしい長所と能力、特色を持ったのが特許出願してくるのでございます。全部ではございません。その面は私理解していただきたいと思います。 それから公開公報が出れば調べられるじゃないか。これは調べろといって私は出しておるわけではございません。現在の出願公告も見たくない場合には見ない。ただ独特の技術開発をいたしますと、他人が何をするかということがわからなければ、せっかくの技術の果実が有効適切にならぬ。したがって中小企業の中で独特の分野でやっておる中小企業の方々が見れるような形にいたしたい、こう思っておるわけでございまして、まあそういった点を私承知しておりますが、それに対する私の考え方はこういうことでございます。
○委員長(八木一郎君) ここで暫時休憩し、再開は午後一時半といたします。 午後零時五分休憩 午後一時五十六分開会 —————・—————
○委員長(八木一郎君) ただいまから商工委員会を再開いたします。 休憩前に引き続き質疑を行ないます。質疑のある方は順次御発言を願います。
○川上為治君 私は、この法律案につきましては非常に重大に考えておるのですが、以下四、五点くらいの問題につきまして質問します。 まず人員の問題でありますが、特許庁の人員の増加の状況を説明していただきたい。
○政府委員(荒玉義人君) 最近十年間の増員状況を御説明いたします。 三十四年、これが——増員の場合、御承知のように定員法の場合と、それから予算のときは一応増員がきまりまして、それからいわゆる凍結分、カット分とそれぞれございますが、一応統一いたす意味で総定員法の定員を申し上げますと、三十四年度が、期末のいわゆる総定員で九百六十五名で、この指数を一〇〇といたしますと、三十五年度が一〇九、三十六年度が一一六、三十七年度一二一、三十八年度五、三十九年度一三六、四十年度一四七、四十一年度一六一、四十二年度一六八、四十三年度一七八、四十四年度一八七でございます。で、四十四年度で申し上げますと、総定員法は千八百名でございます。
○川上為治君 そういう人員の増加につきまして努力のあとは認めるのですが、もっと大ぜい増員を要求したいのです。これは特許の滞貨は大体五年分ぐらいある、これを処理するには人員を増加する以外になかなか手はないと思います。ですからこの特許庁の人員増加について、政務次官はどういうふうにお考えですか。
○政府委員(植木光教君) ただいま川上委員がお話しなさいましたとおりでございまして、これまでもこの点につきましては最重点施策といたしまして努力をしてきたところでございますけれども、御承知のとおり政府全体といたしましては定員抑制策をとっているという状況で、たいへんきびしい環境の中にあるわけでございます。したがいまして、いま長官から御説明申し上げましたような増加も、政府全体といたしましては大幅な人員上昇ということになっているのでございます。しかしながら、けさからもいろいろお話がございましたように、これでは私どもとしてはきわめて不満足でございまして、今後もさらに最重要の問題として、行政管理庁あるいは大蔵省に対しまして最大限の努力をしなければならないというふうに考えているところでございます。
○川上為治君 滞貨のふえる状況と人員の増加のバランスですね、それはどういうふうになっていますか。特許庁長官にお伺いいたします。
○政府委員(荒玉義人君) 先ほど総定員が出ましたので、出願も、御承知のような特実だけじゃございません、意匠、商標ございますが、一応それを含めて、大体出願の伸び率が三十四年度と四十三年度と比べまして、二〇二でございますから、倍でございます。そして未処理案件は三十四年度一〇〇に対しまして、四十三年度三〇三で、定員は先ほど申し上げましたように一七八、そういう関係になっております。
○川上為治君 今後どういう増員の計画を持っておりますか。これを明らかにしてもらいたいですね。
○政府委員(荒玉義人君) 今後われわれといたしまして、まず今度の改正の期待は、要するに特実中心でございますが、大体審査官を中心といたしまして全部でこれは私の希望といたしまして、大体本来ならばいろいろ大幅な希望もございますが、政府全体いろいろな角度から勘案いたしまして、全部含めまして百三十名程度の増員はぜひお願いしたい。これはもちろん要求ベースでも何でもございませんので、窮屈な状況を諸般判断いたしまして、大体少なくともその程度のものの増員は私として希望いたしたい、かように思います。
○川上為治君 百三十名程度ではとても足りぬと思うのですが、行政管理庁はどういうふうにこれを受けとめますか、百三十名の増員に対して。
○説明員(石原寿夫君) 特許庁が職員の方々のたいへんな御努力にもかかわりませず、特実だけでもたいへんな未処理件数をかかえて、一件の処理平均期間が四カ年をこえるというような行政実態は、これは常識的でないわけでございまして、臨時行政調査会の意見も強くこの点を指摘しました関係もありまして、自来行政管理庁としましては、毎年百名内外の増員を認めてまいったわけでございます。細部にわたりましてはいろいろ御不満の点もあろうかと存ずるのでございますが、今後膨大な未処理件数を処理して、毎年累増しております出願件数をも消化し得るということにつきましては、特許庁とされましていろいろ業務の御計画をお持ちのようでございますので、いま長官からは百三十という希望数字が出ておりましたが、具体的にその内容が確定しました段階で、よく御事情を承って、御相談に応じてまいりたいと、こういうふうに存じております。
○川上為治君 臨時行政調査会はどういう等中をしておりますか。
○説明員(石原寿夫君) 先ほど申しましたように技術革新の観点から特実の未処理案件が多いということは適当でないということで、それの処理体制を強化する方向で考えるべきだという意見でございます。
○川上為治君 それは人員をふやせということですか。
○説明員(石原寿夫君) 細部にわたって書いてはございませんが、人員もその一部でございましょうし、事務の機械化と申しますか、事務そのものの処理体制の強化ということも含むかと存じます。
○川上為治君 この問題は、人員をふやさぬと、なかなかたいへんだと思うのです。人員をふやす方向で行管は査定してもらいたいですね。 それから、ただ人員をふやしてもどうにもならぬ点がある。これは技術職員ですから、どうにもならぬということがありますから、そういう点につきましてはどうですか。
○政府委員(荒玉義人君) 過去大体五年間で、いわゆる技術者、大学を卒業した技術者を新規採用してまいっておりますのが、大体七十名ないし九十名の範囲でございます。大体七十名から九十名採用してまいりました。それで、実際に採用してみますと——やはり一応おおむね程度というところで理解していただければいいと思いますが、大体七十名から九十名という一つの線は、やはり実際上の限度が私はあると思っております。といいますのは、全体で理工科系の学生数はふえてはございます。しかし、これは民間の経済活動の旺盛に伴いまして、きわめて需要が増大しておりまして、人事院の上級試験合格者、これは横ばいないし減少の傾向にございます。したがいまして、われわれは御承知のように上級公務員試験を合格した中から採るのが原則でございます。そういった傾向から見ますと、やはりここに一つの限度がある。それと同時に、やはりわれわれは技術者ならだれがどういう専門でもいいというわけではございません。やはり電気、化学、機械等を中心とした出願が多うございます。特にこういった部門につきましてはなかなか合格者の充足率というものは低うございます。そういった全体の公務員試験の合格者並びに職種別のわれわれの需要、供給という面から見ますと、やはり七十名ないし九十名くらい。現在の状況でここに一つの限度があるのではないか。もちろん採用には努力いたしますが、客観的にはそういう一つの限度があると考えております。
○川上為治君 そういう公務員試験とか、資格にとらわれるから、そういうことになるのですよ。公務員の試験なんか通らなくてもいいじゃないですか、どうですか。
○政府委員(荒玉義人君) これは特許庁の審査官も一つの公務員でございまして、やはりいろいろ採用した結果の実績を見ましても、上級を通ってやはり審査官にするといったことでないと、いまの待遇なりあるいはいろいろな点で、正規のルートを通じたことでないと、なかなか仕事の面も円滑に行かない。したがいまして、もちろんわれわれといたしましては、たとえば公務員試験のない業種がございますが、そういったものも一部やっておりますが、やはりこれはその他全体の公務員の点から見まして、上級を通ってくるということのほうが望ましいと同時に、今度は全然別途なやり方につきましても、現在の制度その他から見て、なかなかむずかしいのではないか、残念ながらかように考えております。
○川上為治君 公務員試験を受かった者だけ採用しておるという話ですが、二郎業者のほうからも採用しておるという話もありましたが、業者のほうからのはどういう方を採用しているんですか。
○政府委員(荒玉義人君) 先ほど申し上げましたのは、要する特許庁プロパーの採用によります審査官といいますのは、職種によりまして試験科目がない業種がございますが、それは一部特許庁で人事院といろいろお話しいたしまして採用しております。いまおっしゃいましたのはむしろ非常勤職員といいますか、会社を定年退職したといったような方々をわれわれは使っております。たとえば資料整備でございますとか翻訳等、これに現在五十八名、それからいろいろ審査のお手伝い、事務の補助というので七十名、それは先ほど言いましたように大体高齢の方々で技術関係で長い間会社その他で仕事をした方々を採用しております。
○川上為治君 待遇はどうですか、そういう人々に対する。
○政府委員(荒玉義人君) 十八日勤務で一日が二千六百五十円でございます。
○川上為治君 非常に少ないですね。非常勤の人に対する待遇も少ないし……。また審査官の待遇はどうですか。
○政府委員(荒玉義人君) 秘書課長から数字を御説明いたします。
○説明員(京本善治君) お答え申し上げます。まあ上級甲の人を採用いたしますと初任給は二万九千円程度、こういうことに相なっております。
○川上為治君 これは一般公務員とどういうように違いますか。大体二割くらい上がっているんですか。
○説明員(京本善治君) 一般公務員、まあ行政職給料表(一)の適用をしておる公務員に比べますと、行(一)の場合は正確な数字を言いますと二万七千六百円、こういう金額でございます。ところが特許庁の場合は四%の調整額がオンされますから、二万八千七百円、先ほどは二万九千円と申し上げましたが、正確に申し上げますと二万八千七百円ということになっております。もちろんこれ以外に一般の俸給表の中でも特別の取り扱い、あるいは給与に関する特別の法律というのがございますから、そういうものを通用される人の初任給は若干またこれと違ってございます。
○川上為治君 これは一般の職員と違って非常に重要なかつまたあまり来たがらぬ仕事ですから、どうしてもこれをふやさなければいかぬのですね。これは人事院はどういうふうに考えておりますか。
○政府委員(尾崎朝夷君) 特許庁の審査官、審判官につきましては、その仕事の特殊性ということと技術的な職員を採用するということで、私どもとしましては特別に俸給の調整額をつけているわけでございます。一般的には八%の調整額をつけているわけでございますが、まあこの関係はたとえば社会保険その他の、審査官あるいは人事院にも審理官、公平審理官がおりますけれども、そういう職員には現在何も措置しておりません。そういう関係で、私もバランス上は高目にきめておるというつもりでございまして、その他職務の格づけにおきまして、審査官につきましては毎年等級別定数の改定を行なっておるわけでございまして、大体この五年間に上位等級の定数は約二倍半に格つけがえをしてきている。そういう状況で、できるだけの配慮をはかっておるつもりでございます。
○川上為治君 大体八%くらい一般の公務員よりももっとふやさなければならぬでしょうね、これは。そうしないと特許の問題はやはり依然として滞貨を重ねていきますよ。だからそういう点についてどういうふうにお考えになりますか。
○政府委員(尾崎朝夷君) 滞貨云々の問題がございましたけれども、これはもうやはり待遇の問題及びそれ以外の問題であるというぐあいに考えておるわけでございます。待遇の問題といたしましては、やはりいろんな職員間のバランスの問題が一番大事でございますので、その関係を私どもとしては十分考慮していかなければならないというふうに考えておりまして、現在私どもとしましては、いままでの特許庁職員の状況というものに対しまして、先ほど申し上げましたように最大限の努力を払ってまいっておるわけでございます。たとえば、ほかの研究あるいは教育、そういう職員に対しまして決して遜色のない給与になっておるというふうに考えております。
○川上為治君 こういう種類の業種といいますか、職種といいますか、そういうのは他にたくさんありますか。
○政府委員(尾崎朝夷君) 御承知でございますけれども、こういう、何と申しますか、独立的な審査を行なうという関係といたしましては、ほかにもいろいろございます。たとえば海難審判庁、そういう審判関係とか、公取の審判関係あるいは審査官にいたしますと社会保険あるいは労働保険、人事院の公平審査、いろいろございます。ただ特許の特徴といたしましては、そういう上にいわば理科系統の人を採用しておるということだろうという考えを持っております。そういう方々につきましては、また別途研究あるいは教育、そういう関係とのバランスの問題もございますので、その両面を考慮して措置していく必要があるというつもりで考えております。
○川上為治君 退職金はどういうふうになっておりますか、特許庁長官。
○政府委員(荒玉義人君) 普通公務員の場合とその点は変わりございません。
○川上為治君 この仕事については非常に力の要るたいへんな仕事なんですが、そういう職にあった人が退職する場合には、一般公務員並みというのはおかしいですね。これを改良する必要はありませんか。
○政府委員(荒玉義人君) われわれといたしましても現在の調整額の増額、これは人事院当局とたびたび毎年話しておるわけでございます。できるだけそういった調整額の増加ということによりまして、安心して職員がその地位にとどまるということを私は強く希望しておるわけでございます。ただ退職金その他になりますと、全く違った形でいいかどうかということになりますと、われわれとしても検討をしなければいけないと思いますが、とりあえずといたしましては、やはり調整額を増加する、将来の問題といたしましては特別俸給表の問題ございますが、とりあえずとしては、ぜひ調整額を増加していただきたい、こういう線で人事院と折衝を進めております。
○川上為治君 審判官等をやめて他の民間の企業界に出る人は非常に多いのですか。
○政府委員(荒玉義人君) 年度によりますが、大体二十名前後というふうにお考えいただけばけっこうだと思います。
○川上為治君 ほかのたとえば工業技術院とか、そういうところの技術者よりも非常に多いと思いますが、いかがでしょうか。少ないと思いますか。
○政府委員(荒玉義人君) 大体そう大差はないと思います。離職率は特許庁の場合は三・八七%のようでございますが、全官公庁の研究者の場合でございますと離職峯二・七一%、年度によって、五年間それぞれ取りますと四・云々でございますが、大体五年間平均取りますと三・七一%ですから、そう大きな差はないという実績でございます。
○川上為治君 人員はもっともっとふやしてもらいたいです。それからまた待遇も退職金とかあるいは普通の給与とか、そういうものをもっともっとふやして、安心して働いてもらうようにしなくちゃいけないと思います。それから人員をふやしても、また待遇をふやしても、どうもならぬということがございますか。
○政府委員(荒玉義人君) 量的拡大と同時に質的向上か思いますが、この点につきましては、やはり従来研修によりまして、そうして実際の技術を習得さすという点も私は不十分だと思っております。したがいまして、何とか資質向上のためには国自身今後思い切った手を打つ必要がある。具体的に申しますと、やはり各専門分野ごとによってそれぞれやり方は違うと思いますが、たとえば大学の知識がすぐ役に立たない分野がございます。こういった場合にはかなり長期間実際の国の機関なりあるいはその他適当な機関で技術の勉強をする、あるいはある分野は審査官になってから実際の技術を習得する、それぞれ部門別におきまして、やり方は変わると思いますが、やはり金も投じまして、長期的な実際の技術を習得するというふうな方法で、思い切った抜本策を考えたい、それが審査官の資質を向上し自信を持って出願の処理に当たれる根原ではないか、従来私は大いに欠けた点があると思いますが、今後として最重点の施策として考えていきたい、さように思います。
○川上為治君 特許庁は人員の増員もやる、それから待遇の改善もやるというのですが、これを行政管理庁あるいは人事院のほうでは、これは特許庁の言うとおりというか、その増員について必要性があればその増額について必要限度のものをやはり認めてやる意思がありますか、今後。
○説明員(石原寿夫君) 先生御案内のとおり本国会で総定員法の成立を見ておりますが、総定員法が考えておりますところは、公務員の絶対数を抑制しながら、しかも行政需要の変化に応じて人員を配置していこうということでございますので、私どもとしましては今後特許庁の御意見を十分伺いながら総定員法の示す精神に沿いまして考えてまいりたいと思います。
○川上為治君 ことしの予算のとき私どもは行政管理庁に人員の強い要求をしたのですが、そのときに、その人員に対してはやはり多いということで切られたのですよ。だからそういうことがないようにしなきゃいかぬですね。そういう意思はありますか。
○説明員(石原寿夫君) ちょっと、失礼でございますが、先生の御質問の趣旨がくみ取れなかったのですが。
○川上為治君 ことしの予算の上で人員をふやしてくれという強い要求をしたのですよ、私どもが。百何人は認めたのですね。それよりも特許庁は五十名か四十名か非常にふやして要求したのですよ。それを百何名に切ったのはどういうわけですか。
○説明員(石原寿夫君) 特許庁の御要求の基礎になりましたいろいろな条件に対します見解が、特許庁と私どもとの間で食い違った。査定で申しますと、私どもが人員を査定します条件が特許庁のおっしゃるとおりに査定しなかったということでございます。細部、ちょっと記憶で申しますと、たとえば特許庁が昭和四十八年度における一件当たりの平均処理期間を一年七カ月というような御計算であったかと思うのでございますが、私どもは一年と十ヵ月というふうに考えたわけでございます。それから特許庁のお考えでは三カ年の間に審査官の充員を急ぎたいというお考えであったかと記憶しますが、私どもはこれを五年間と考えておりますという点、それからもう一つは、出願の伸び率に対する判断が私どもと特許庁と食い違った点があったかと思いますが、そういうものが総合されまして、特局庁の御希望どおりの数字は出なかったかと思います。しかし全体として申し上げておきたいのでございますが、昭和四十四年度の査定結果をごらんいただくとわかるわけでございますが、いろいろ差し引きをしまして、純増の形で数字が出ておりますのは文部省、法務省、厚生省それから総理府の公取がございますが、それに特許庁、これだけでございます。たしか特許庁は八十九名ぐらいの純増として出ておるわけでございます。その点ひとつ御了解をいただきたいと思います。
○川上為治君 公務員のほかのいろいろな部局の数は非常に多いと思います。だからこれを削減してもこの特許庁の問題など、そういう重要なものはもっともっとふやすべきですね。それが欠けておると思いますが、どうですか。
○説明員(石原寿夫君) なかなかこれは非常にむずかしい問題でございまして、たとえば厚生省の看護婦など人命に直接影響するものも、これはやはりふやしていかねばなりませんし、法務省の御案内の登記専務でございますが、これも業務量は特許庁と同じような状態に置かれていると記憶しておりますが、なかなか比較の問題となると非常にむずかしいわけでございますが、先生御指摘のお気持ちなりお考えを十分この際考えさせていただきまして、今後特許庁とよく御相談したいと思います。
○川上為治君 お気持ちをくんで十分やるとおっしゃいましたが、一般の行政職は非常に人数が多いと思いますよ。だからそれを削減して、そしてこっちのほうを、必要なものをよけいふやしていかなければならないと思うのですね。そういうお気持ちはありますか。
○説明員(石原寿夫君) 総定員法の考え方それ自体が、いま先生御指摘のとおりでございまして、現在総定員法と同時に、運用の問題として三カ年五%減ということをやっております。これは欠員をためていただいて、出血人員整理をやるというわけではございませんが、そういう欠員の保留になった数字などを見合わせながら行政需要のふえておるところに人員を配置していく、これは総定員法の考え方でもありますし、当然私どもその方針にのっとって考えていくべきだと考えております。
○川上為治君 それをもっと徹底してやってもらいたいですね。それから、人員の増あるいは待遇をよくしてやるということがやはりこの滞貨処理の一つの大きな課題だと思います。これは今度の予算編成のときは十分その点を考えてやってもらいたいと思います。 その次に、審査請求料ですね。これは今度の改正法律によりますと幾らになっておりますか。
○政府委員(荒玉義人君) 審査請求料は、特許の場合は一発明の場合八千円でございます。実用新案は四千五百円でございます。
○川上為治君 これは少し少ないと思いますがね。もっと高くしなくてはいかぬだろうと思いますが、これに対してはどういうふうにお考えになっておりますか。
○政府委員(荒玉義人君) 請求料につきましては、先生のおっしゃいましたように、もっと高額にして、そうして選択をきびしくして、できるだけ経済性の伺いものだけを審査して、そのかわり早く行なうという御意見と、それから現在の原案でも非常に荷過ぎるという両論ございます。で、その点につきましては、やはり現在は御承知のように二千円の出願料で全部審査をしておるわけでございます。そういった現実と、それからやはり制度が有効適切に運用される担保としての点と、それからやはり出願人の負担等々を勘案いたしまして原案を提出したわけでございます。したがって、高額にしてやるという点も確かに有利な点もございますが、諸般の情勢を考えまして一応原案のように考えた次第でございます。
○川上為治君 審査請求率はどのくらいありますか。
○政府委員(荒玉義人君) 一応われわれが予想を立てておりますのは、新しい出願につきましては、実用新案はこれは非常に防護的なものが多うございますし、大体七割の請求率、特許は八割の請求率というふうに考えています。根拠は、これは請求料との相関関係の面もございますが、一応業界において、現在出願しておるものを新しい制度に切りかえた場合に、どの程度請求があるかということを一応基本として考えたのが、先ほど申し上げた請求料でございます。
○川上為治君 外国ではどういうふうになっておりますか。審査手数料の問題とそれから審査請求の率の問題ですね。
○政府委員(荒玉義人君) 請求料はこれは出願料と同寺に申し上げたほうがおわかりかと思います。日本でございますと特許で出願料は二千円、これは現行法据え置きでございます。審査請求料八千円。オランダ、出願料が一万二千円、審査請求料が二万五千円。西独が出願料が四千五百円、審査請求料は二万七千円。 それから請求率の実績で一番参考になりますのはオランダの場合でございます。といいますのは、もう五年間の実績が出ております。西独の場合で昨年十月実施でございますが、これはちょっと御参考としてはいかがかと思いますので、オランダの例を申し上げますが、大体五年間で四四.五%、それでこれは内国の場合と外国の場合がやはり差がございますが、外国の場合は四一.一%、オランダの場合は外国が非常に多うございます。総合では四四・五%そういった五年間の実績でございまして、請求期間はまだあと二年ございます。一応の実績はさようになっております。
○川上為治君 いまの話を聞きますと、外国のほうは少し高いですね。この審査請求の率は少なくて、かつまた料金は少し高いですね、日本の場合のこの改正の場合と。そういうふうにしなければこれ片づかないと思うのです。政務次官はどう思いますか、これに対して。
○政府委員(植木光教君) いまお話しのように、外国の場合に比べまして請求料が低い、また請求率はおそらくオランダなどに対比いたしましても高いのではないかというような予想でございます。いろいろ請求料を幾らにするかという取り方があろうかと思いますけれども、やはり特許あるいは実用新案につきましては、これがわが国の経済その他公共に益する点が非常にあるわけでございますので、したがいましてそういうものをも勘案をいたしまして、大体この線が妥当ではなかろうかということで出したのが八千円であり四千五百円でございまして、御理解をいただきたいと思います。
○川上為治君 その次は、最後に情報の問題を利用しての特許の改善を聞きたいと思います。最近情報の問題につきましては非常にやかましくいわれておるのですが、この情報産業をどういうふうに特許に適用するのかというのはたいした問題であると思います。これに対して大臣はどういうふうにお考えになりますか。
○政府委員(荒玉義人君) きわめて重大な問題でございまして、われわれとしても将来これが特許問題を解決する有力な手段だという認識のもとに諸般の準備を進めております。現状は、残念ながら特許の審査に直接使うというところまでシステムが完全でございません。合金を初めとして一部実施着手の段階で七品目程度現在やっております。御承知のように発明の構成条件は、たとえば合金の場合、御承知のように原料物質、それをどういうふうな作用、濃度条件、圧力条件あるいは触媒等々、その結果できたものがどういう品位、品質の合金であるかというふうに、きわめて発明の構成要素が一定しております。 〔委員長退席、理事剱木亨弘君着席〕 そういった分野につきましては、これもいろいろ問題があるにしても、ある程度やりやすい。やる場合に日本だけがやりますとむだでございます。同じシステムで日本は日本の文献を入れる、アメリカはアメリカの文献を入れる、それぞれ相互に同じシステムのものが交換されますと非常に役に立つ、そういった方向でわれわれは進めていくし、進めなければならない。もちろん日本だけの問題でございませんので、いわゆる国際的な協力機構、PCT、アイシレパットと専門家が称しております、そういった国際機構が現にできておりまして、そういった国際機構を通じまして具体的に同一歩調をとって進めてまいりたいと思います。ただし審査の場合ですと、きわめて厳格な検索といいますかサーチが要求されますので、そう簡単にそのシステムがあすからでもできるというわけではございません。これも予測でございますが、大体十年間でいまのスピードですと文献のカバレッジが一割程度しか電子計算機に入らないということでございます。もちろん各国とも共通の悩みでございまして、そのスピードを早くして、そうしてわれわれはもっと大量の文献を入れまして実際の効果をあげるようにいたしたいというのが第一でございます。 第二は、これは民間との関係でございますが、やはり民間の場合におきましてもそう特許庁の審査ほどの精密度でなくて、いわばもっと目の荒いところでそういうサーチをしてもらうときわめて有益であるという強い希望がございます。ただそれが特許出願をしたものが特許性があるかということでなくて、企業の場合は、御承知のように何を開発するかという前の段階からそういうことが必要になってくるわけです。われわれが現在審査のために使っておるやり方では、非常に正確度を要求しますから、自然に先ほど申しましたようにスピードがおそいのでございます。もう少し目の荒いところでひとつやってくれぬかという要望がございます。どの程度の目の荒さでやり得るかという点につきましては、現在産業界と共同でいろいろ考えていますが、もしそれができますならば、これは通産省といたしましても電子計算機を活用いたしましてそういった民間側のサーチの便益に供したいと、真剣にきわめて具体的に取り組んでおる段階でございます。
○川上為治君 特許に関する情報センターをつくるという話があるのですが、それはほんとうですか。
○政府委員(荒玉義人君) いま通産省の中で考えていますのが、先ほど申し上げました後者の点で、それが特許情報センターという仮称でいま作業中でございますので、おそらくその私が申し上げました後者のことだと思います。
○川上為治君 後者かどうか知りませんけれども、特許の情報センターはやはりつくるべきだと私は思う。予算は幾らくらいになっていますか。
○政府委員(荒玉義人君) これはいろいろ試案がございます。ただ問題は、先ほど言いましたように一口に荒いと申しましても、どの程度のものがはたして業界の需要に合っていくかというあたりとも関連ございまして、したがいまして、実はそちらのほうが先決でございまして、そのやり方いかんによって金額も変わってくるかと思いますが、まあそういった意味でいろいろ考え方はございますが、いま具体的に全部が何億というところまで、具体的にはなっておりません。ただこれは、われわれは国の機関ということでなくて、やはり御承知のようにこういったものは民間の需要が着実に反映できるようなやはり機構にする、そういう方向で新しい機構を考えておる段階でございます。
○川上為治君 この特許の滞貨を処理するためには、やはり情報センターみたいなものをつくって一生懸命やらなくちゃならぬと思うのですよ。それでこれが予算を獲得する場合には、大臣は強力に進めてもらいたいと思います。大臣の見解どうですか。
○国務大臣(大平正芳君) いま長官からお答え申し上げましたように、まあ情報活用システムをつくり上げなければならぬわけで、まだ部分的にしかできていないわけでございますが、それより前に現在小型、中型のコンピューターを使っておりますけれども、できればこれを将来は大型のものに置きかえていかなければならないのじゃないか、システムがだんだん進んでいくに従いまして情報消化の能力を持たにゃなりませんので、ハードウエア、ソフトウエア両面にわたりまして、仰せのような方向で予算の充実につきましてはできるだけ努力をしてみたいと考えております。
○塩出啓典君 それでは二、三の点を質問いたしまして、こまかい点は次の機会に譲りたいと思います。 政府はこの七十万件に及ぶ処理案件をこの法案の成立によって解消できると主張しておるわけでありますが、まあしかし今回の法案の内容はいろいろ問題になりましたように、早期公開によって特許情報が早期に入手できる、それと審査請求制度を活用いたしまして非常に請求率が低下する、そういうので非常にこの特許の審査が迅速化される、そういうお考えで進めておるようでありますが、この審査請求率の低下、そういう点から考えるならば、やはり五十歩百歩で、これからどんどん特許もふえてくる、そういう点でもっと根本的な対策を考えていかなければならない、そのように考えております。そういう点で先ほどお話がありましたように、情報産業、そういうものをやはりどんどん活用していく、あるいはまたこの前衆議院の委員会における参考人のお話によりますと、西ドイツあたりは特許の資料を手に入れるにしても、何か十一階建てのビル等があって、そうしてボタン一つですみやかにそういう資料が入手できる、そのような点が非常に進んでいる、そのようなことを承ったわけでありますが、そういう点からして、わが国の現在の状態がどの程度おくれておるのか、また今後そういう点をやはり改善していくならば、どの程度促進できるように考えておるのか。そういう今後の特許庁の考え方をお聞きしたいと思います。この制度の改正だけでは、現在の時点では、完全に解決されるとは考えていない。そこで、定員の増加、そういうことも考えておられるわけでありますが、それ以外に、具体的に、今後の方針としてどういうことを考えて進めておられるのか、その点をお聞きしたいと思います。
○政府委員(荒玉義人君) 特許法の改正だけで問題解決できない、これはもう私のたびたび申し上げるとおりでございます。それで、まずわれわれといたしまして、先ほどから議論が出ました定員の量的拡大、これはもちろんでございます。やはり実際の仕事をする人の質的な向上、先ほども申し上げましたが、そういったものは、どうしても、思い切って考えていく必要がある。それから、たとえば資料整備にいたしましても、やはり新しい時代、次から次へ技術の国際交流が激しい時代におきましては、やはりそういった資料整備の抜本改善化、これは機械化を含めて、そういったことは、どうしても改正するとしないとにかかわらず必要でございます。あるいは環境といたしましても、御指摘のような庁舎問題がございます。先ほど西独のお話がありましたが、われわれから見れば、非常に理想的なうらやましい姿でございます。それで、とりあえずわれわれといたしましては、現在の古い庁舎と新しい庁舎をできるだけ早い機会に統合いたしまして、そうした審査の事務が迅速化されるような環境整備を一日も早く実現をはかっていきたい。そういった人間の質的向上、あるいは資料整備等を含めた環境整備、執務環境等の整備は、これは私は制度を改正するといなとにかかわらず、きわめて重大なことだと、したがって、そういった実現のために努力しなければいけないと考えておる次第でございます。
○塩出啓典君 いまそういう点で、この機械化の導入とか、そういう具体的な案はまだできていないわけですか。
○政府委員(荒玉義人君) 現在、いわゆる電子計算機を使っておりますのは、先ほど情報検索と申し上げましたが、これはまだ緒についたばかりでございます。実際の実務の面から申しますと、出願関係の事務に使っておるわけでございます。それで、もちろんこの点につきましては、いろいろ私自身も将来のために改善すべき余地があると思っております。電子計算機を入れるということは、出願人の書類をどうやっていくか、あるいは内部の事務の流れをどうしていくかという点につきまして、必ずしも十分でなかったということを私も考えておりますが、そういった従来の路線をさらに実効あるようにいたすということは、これは第一でございます。 それから情報検索は、先ほども言いましたような意味におきまして、精密度を要求されておる審査でございますので、いまのところは、残念ながら現状では大幅な効果をあげるという段階ではございませんですが、これは先ほどから言いますように、われわれも国際的な協力のもとに一年一年この拡大、これはシステムが開発されれば直ちにインプットしていくわけでございます。そういったシステム開発のために日本も努力するし、外国とも協力してやっていきたい、かように考えております。
○塩出啓典君 、だからそういう点、今回のそういう改正ではなくして、特許情報の処理をいかに円滑にしていくか、そしてまた現在の資料のそういう保存とかそういうような点をもっとこういうように改善すべきであるとか、そういうような今後の具体的な計画というものができているかということをお聞きしたがったのですが、そういう点はどうですか。
○政府委員(荒玉義人君) 資料整備等につきましては、ロングランでこういった方向でやっぱり考えるという意味の計画はございます。
○塩出啓典君 それからひとつわれわれが非常に心配いたしますのは、やはり早期に特許を公開する、そうしてそれが審査請求をいたしまして決定するまでの期間にその特許というものがどんどん活用されるわけでありますが、そうすると、そういう人に対するまあ補償金の請求制度、そういうのがあるわけでありますが、こういう問題についてやはりかなり補償金請求に関する裁判といいますか、そういうのが今後ふえてくるのではないか、そういう点をわれわれ考えているわけなんですが、特許庁としてはそういう点はどういうお考えを持っていますか。
○政府委員(荒玉義人君) 公開されたあとの措置につきましては、制度といたしましては補償金請求権でございます。で衆議院段階でも私申し上げたかと思いますが、補償金請求権はありましても、権利の行使は出願公告からという原案でございます。そういたしますと、もちろん請求の時期にもよるかと思いますが、公開されてそういった模倣が起こる場合も、当然制度としては考えざるを得ないわけでございます。その対策といたしましては、一つはもちろん権利の行使でございますので、当事者同士話し合いがつけばそれで解決するわけでございますが、話し合いがつかなければ出願公告から訴訟するということでは、特に小企業の方々の不便もあると思います。事実上のそういった紛争処理機関といたしまして、発明協会にいわゆるあっせん機関というものを樹立いたしまして斯界の権威者のあっせんといいますか、事実上の調停ということによりましてそういった円滑化をはかりたい、これが第一点。 第二点は、やはり請求がございまして、いわば模倣があるといいますのは、権利といたしましてはいわば火のついた権利でございます。そういった紛争解決のためには、やはりほかの権利と緊急度は違うわけでございますので、そういった場合には、いわゆる緊急審査制度を活用いたしまして、一日も早く出願公告かあるいは拒絶かはっきりいたしまして、そういった権利者側の不安解消のための措置を講じたいと考えております。
○塩出啓典君 そういう点でこの裁判所の機構も充実すべきではないか、また、そういうものの処理のために新規性調査機関、そういうものを新たに設置すべきではないか。そのように思うわけでありますが、あるいは多項クレーム制あるいは緊急審査制度、ノーハウの保護、また、実用新案は簡易審査などにとどめて、特許に重点を注ぐなどの問題については審議会で無視された。そういうことでございますが、なぜそのようなことになったのか、その点をお聞きしたいと思います。
○政府委員(荒玉義人君) たくさん御質問でございますので、全部網羅することはあれでございますが、第一の新規性調査機関でございますが、先ほど川上先生からの御質問にも関連すると思いますが、われわれといたしましては何らかの形の新規作調査機関を樹立するつもりで進めております。ただ新規性調査機関がないと、この制度が完全でないかどうか、こういう問題かと思いますが、私は新規性調査機関は望ましいと思いますが、これは絶対要件だとは考えておりません。ただし早急にそういった機関を樹立すべく努力いたすつもりでございます。といいますのは、請求制度といいますのは御承知のように発明の本質からきておると思います。そうして発明の本質といいますのは、出願の当時には発明自身も経済価値もありません。ところがその後企業はそれが防衛的なものかどうか、あるいはそれは技術として利用するかどうか、こういった面の調査をいたしまして、そうして請求するかどうかを企業側で判断するわけです。その際、先ほど言いましたように新規性調査機関があるということは私望ましいと思いますが、それが絶対要件だという点につきましては、やはり私は絶対要件でないというふうに、それは企業みずからの開発の過程ということが、請求するかどうかという一つの有力な判断になるということだと思います。ただし、先ほど言いましたように、これは特許を出願した段階の需要もさることながら、企業としてはこういうものを開発したい、あるのかどうかという、むしろ発明を生むべくスタートする前段階でそういった必要があるというふうにもわれわれは考えておりますので、そういった官民の需要を含めた意味の機関というものの早急な樹立、これは絶対私も必要ではないか、かように考えております。その多項制の問題につきましては、けさの小柳先生の御質疑にお答えしたと同じでございますが、この点につきましては私は多項の問題といいますのはきわめて特許の本質の問題と同時に、実務的にもいろいろな問題を含んでおるわけでございます。したがってそういった法案といたしましては、簡単な条文でございますが、含む意味は基本的なものを含んでおるわけであります。したがって今度の法改正と矛盾するならばあるいは同時にすべきかと思いますが、矛盾しない制度でございますので、十分中身を詰めて、それからやるということのほうがむしろ至当ではないかという判断でございます。 〔理事剱木亨弘君退席、委員長着席〕 それからノーハウの問題でございますが、これも御承知のように特許出願といいますのは技術としてはきわめて先の段階でございます。ノーハウといいますのは、実際にそれを開発いたしまして生産段階に入る過程において出てくる場合が通常でございます。したがって特許明細書の中にいわゆるノーハウというものがあらわれてくるという場合は、絶無とは申しませんが、大体の場合でございますと、むしろ特許以後に企業が開発し、生産段階で生じたいわゆる企業の秘密でございます。そういう意味では公開されたからといいまして、そういったノーハウに対してきわめて重大な影響がある事項というふうには私は考えておりません。 それから実用新案の簡略審査という問題でございます。実用新案につきましては四十一年度の改正でいわば簡略審査を提案して御承知のように各界の賛同を得ず、最後は、審議未了になったいきさつがございます。なぜそういういきさつになったか。そういういきさつになったについては、やはり御承知のように実用新案と対照である考案、発明というものは質が変わらぬわけでございます。それを簡略にやっていくという意味の各界の批判がございます。そういったものを考えますと、四十一年度ではだめだ、今度はいいというふうには、なかなかわれわれとしては当時の、審議会の先生方の賛同を得なかったということでございます。もちろん一人そういう意見はございましたが、全体の賛同を得ないのを、われわれは今回の法案で提出する意図は毛頭ございません。 以上でございます。
○塩出啓典君 最後に、今回の特許法の改正につきましては特許庁の審査官あるいはまた職員非常に大ぜいの人がこれに反対をしていると聞いているわけでありますが、そういうやはり反対を押し切ってこの特許法を改正するのかどうか、そういう点、今後の問題としてもあまりよくないのじゃないか、そのように私は思うわけでございますが、大臣のお考えを聞きたいわけでございます。
○国務大臣(大平正芳君) 今度の私どもの提案した改正法案につきましての反対が各方面にありますことを承知いたしております。とりわけ私どもの部内の直接仕事を御担当いただいている諸君、このうち相当部分の方が反対の意向を持っていることも承知いたしております。そうしてその理由とするところも理解できるものがございます。ただ、私ども今日の時点におきまして特許案件の処理が極度の渋滞を来たしているという事実、技術の進歩が非常に激しい速度において進んでいるということ等、特許行政の間の調和がはかられていないという事実に対して、行政責任者といたしまして何らかの方法を講じなければならないわけでございまして、反対の皆さんがおっしゃっておりますように定員、施設、予算その他その充実につとめますことは、けさほど小柳委員の御質疑にお答え申し上げましたとおり、不断にこの改正法案を出す出さないにかかわらず、われわれが絶えざる緊張を持って追求しなければならぬ目標でございまして、それに対して十分努力してまいる所存でございます。反対される方々とわれわれとの違いはただ一点、そういう状態が十分充足されない現実の事態に対して、いまの特許行政の渋滞をどうするかということでございます。それを考えまして、御反対のあることも重々承知しながら審議会でも御検討いただいたことでございまするし、この改正案を御審議いただき成立さしていただきまして、両々相まちまして時代の要請に行政が適応ずるようにすることが私どもの責任であると存じて御提案申し上げておる次第でございます。
○委員長(八木一郎君) 本件についての本日の審査はこの程度とし、次回に渡ります。次回は七月十五日午前十時開会いたします。 本日はこれにて散会いたします。 午後三時十七分散会 —————・—————