産業公害及び交通対策特別委員会 第7号
- 発言数
- 101 件
- 登壇者
- 16 名
- 会派数
- 4
- 開催日
- 1969/04/09
会議録
○委員長(加藤シヅエ君) それでは、ただいまから産業公害及び交通対策特別委員会を開会いたします。 まず、委員の異動について報告いたします。 一昨七日、山崎昇さんが委員を辞任され、その補欠として田中寿美子さんが選任されました。 また、昨八日、小平芳平さんが委員を辞任され、その補欠として多田省吾さんが選任されました。 —————————————
○委員長(加藤シヅエ君) この際、参考人の出席要求につきまして、おはかりいたします。 群馬県安中市等におけるカドミウム汚染対策に関する件の調査のために、本日、特別委員会に、金沢大学医学部教授石崎有信君、岡山大学農業生物研究所教授小林純君、財団法人日本公衆衛生協会カドミウム研究班班長重松逸造君、はるな生活協同組合高崎中央病院院長高柳孝行君、萩野病院院長萩野昇君の五名を参考人として出席要求したいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(加藤シヅエ君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。 —————————————
○委員長(加藤シヅエ君) 産業公害及び交通対策樹立に関する調査を議題とし、群馬県安中市等におけるカドミウム汚染対策に関する件の調査を行ないます。 本件につきまして、本日は五名の参考人の方々から御意見をお伺いいたします。 参考人の方々に一言ごあいさつ申し上げます。 本日は、御多用のところを本特別委員会に御出席くださいまして、まことにありがとうございました。本件につきまして当委員会におきまして調査を行ないましたが、直接この問題を研究しておられます各位からその実情をお伺いいたしまして、調査の参考に資したいと存じておりますので、よろしく御意見の御発表をお願いいたします。次に、本日の議事の進め方でございますが、順次御意見をお述べいただくことにつきまして、まことに恐縮でございますが、時間の関係もございますので、大体お一人十五分間程度におとどめをお願い申し上げておきたいと存じます。次いで各委員から質疑もございますので、これに対してお答えをいただきたく、これまた、よろしくお願いいたします。ではどうぞ皆さまよろしくお願いいたします。 これより順次参考人の方々から御意見を聴取いたします。 最初に、石崎参考人にお願いいたします。
○参考人(石崎有信君) 金沢大学医学部の石崎でございます。 本日の委員会は、群馬県安中地区の問題が主体であるように承っておりますが、私はその地区の調査には加わっておりませんので、何も直接意見を申し上げるものは持たないのであります。前に関係しました対馬の調査のことと、それからカドミウムに関する産業公害に関する一般的なことを申し上げておきたいと思います。 対馬においてカドミウムによる被害があるかどうか、影響があるかどうかということが最初に調査されましたのは、昭和四十一年でございます。もうすでにかなり年数がたっております。そのときに私どもの研究室から人が行きまして、いろいろのサンプルを持って帰ったりして分析いたしました。そのことをすでに学会誌などに報告しておりますが、その後データをいろいろ吟味してみました結果、対馬に樫根という部落がありますが、これが鉱山の古い廃滓を田に埋めてならした、その上に建っているというような状況になっておりますが、そこの住民には、確かにカドミウムによる悪影響があらわれていると判断したのであります。 その根拠としてあげ得るものは、四十歳以上の男女合計してわずかに五十九名の数字でございますが、尿の中に、たん白反応がプラス、陽性、かつ、糖反応が少なくとも疑陽性以上に出ました者、両方出ております者が九名ございました。うち七名が女なんです。で、そのたん白及び糖反応のほかに、アミノ酸の排せつ量をはかりました。また、燐及びカルシウムの排せつ量を見ております。そのアミノ酸及びカルシウムの排せつの関係から見まして、確かに、男のほうは問題ありませんで、七名の女のうち五名は、神通川流域に見られるイタイイタイ病と同じ方向の尿所見であると判断いたしました。 その結果、先ほど申し上げたように、カドミウムの悪影響を受けていると判断いたしましたが、しかし、これらの人たちは、疾病として取り扱うべきかという点については、私は健康者として取り扱っていくほうが実用的であると思っています。同時に、レントゲン検査がそのとき行なわれましたが、私どもの大学へ持ち帰ってのそれぞれの専門家による診断では、骨のレントゲン所見に異常のある人はないという結論に達しました。で、尿には変化があるが、骨にはまだ異常が出ていないという段階の人が数名あるということなんです。 そのほかの地区につきましては、この四十一年に、私は直接関係いたしませんでしたが、宮城県の鶯沢町ですか、その地区の調査結果が他の研究班員によって報告されています。また、この地区のレントゲン写真は、宮城県の方が金沢へ持ってこられて、見る機会を得たのでありますが、それらをみな総合いたしまして、宮城県の鶯沢町には異常者がないというふうに私は判断いたしております。 で、安中地区につきましては、私、何もお話し申し上げる資料を持ちません。 この富山県の神通川流域のことは直接主題でないようでございますが、カドミウム中毒を考えるための参考として申し上げてみますと、一昨年の十二月に私がここで意見を申し上げたその後の私どもの研究及び経験の発展は、私ども考えましたあのイタイイタイ病という疾患がカドミウム中毒に基づく腎性の骨軟化症であるという考え方、それを立証する方向、それに一致する方向の結果だけあらわれてきております。 で、昭和四十三年に約六千名ばかりの住民検診が行なわれまして、四十二年に行なわれなかった地区を主体にしました。そのときに、先ほど申し上げた考え方で検診方法をきめまして検診を行なったのでありますが、その考え方が間違っているという例外は一つもあらわれてまいりませんでした。はっきりした数字は忘れましたが、かなり患者が発見されております。 それからまた、あのときに、私は、神通川の水がかなり古い過去において強い汚染があったと考えられる、それが、証明することはなかなか困難だろうが、将来できるだろうということを申し上げておきましたが、最近、私どもは、過去の汚染の指標になるものは何かないかとさがしまして、昔からあの地区にずっと長く住んでいる生物というと、人間と、それから樹木があるということを思いつきました。で、あの地区は、たいてい家の回りに杉の木がありますので、その杉の木の年輪を調べてみるということをやってみたんです。その結果、昭和十年代にあの地区の杉の木が非常に発育が阻害されているということが確かめられました。昭和二十年代になると、それがすっかり回復する。また、杉の木に含まれております亜鉛及びカドミウムの量が、そのような所見と一致する異常に高い値を示しておる。その杉の所見から、私は、昭和十年代に神通川がひどく汚染された、しかも、その汚染は地下水を汚染しているということの立証になると私は思います。そのことにからみまして、このイタイイタイ病の主因となったカドミウムの入り方が、飲料水を介して入ってきたのが主因であると私は考えております。また、その根拠の一つは、最近私どもが行ないました食品の分析、厚生省の依頼で食品のかなりの種類を分析いたしておりますが、案外に、自然の食品の中に高いカドミウムの量を含んでいるものがあるということを見つけました。ひどいものになりますと、バイカイの肝臓に——巻貝の一種ですが、高いのは二〇〇PPMになっている。いま問題になっております神通川流域の米の含有量が一PPM程度ですから、その二百倍程度の数値がある。それから軟体動物一般に多くて、イカの肝臓の中に五〇PPMから一〇〇PPMくらいの数値がある。それからタコの肝臓にも三十何PPM。私ども非常によく食べますカキ貝ですが、あのカキ貝も、カキ貝全体として——肝臓だけでなくカキ貝全体として、やはり一PPMに近いカドミウムを含んでいるということがわかりました。また、野菜類にもかなりカドミウムの多いものがあります。 このような自然食品の中に含まれているカドミウムがはたして有害かどうかということは、今後大いに研究してみなければ、はっきりしたことは申せないんでありますけれども、現在のところ、私の衛生学的立場の見解では、これは無害であると考えております。その証拠の一つは、富山県の海岸にある、こういうイカやバイガイ、そういったものをたくさん食べる入善町の住民にこのイタイイタイ病検診が行なわれたことがありますが、その結果は、全然イタイイタイ病的な変化、先ほど申し上げた尿の変化も何もないということがはっきりしております。少なくとも、普通の取り方、摂取のしかた——めしのかわりにイカの肝臓ばっかり食えば、それは知りませんが、普通の食べ方では、こういった自然食品に含まれているカドミウムは相当多巨星になっても心配はない。また一面、それから類推して、米の中のカドミウムも、現在の量、含まれている量では、まず人体に害はないと推定いたしております。ただしかし、これらの食品につきましても、何といいますか、自然でなしに、いろんな人工的な異常環境による汚染の場合は、これは別であります。これは有害であるかどうかは大いに吟味しなければならない問題だと思います。 以上要しまするに、このイタイイタイ病、カドミウムの害を考えます場合に、この自然の食品の中の量はそう問題にならないのですが、むしろ、水、それから空気の中にじんあいとしてまざる場合が大いに問題になりましょう。そういった経路から人体へ入ってくるものが危険であろうというふうに私は考えております。 これで終わります。
○委員長(加藤シヅエ君) ありがとうございました。 では、次は岡山大学の小林純参考人にお願いいたします。
○参考人(小林純君) ただいま御紹介にあずかりました小林でございます。 水銀やカドミウム、こういった重金属によります公害病は、御承知のように、一たん発病いたしますと非常に悲惨な慢性病となりまして、治療がなかなか困難で、なおらない、こういうことです。ですから、有毒な重金属が知らず知らずの間に飲食物を通じまして徐々に体内に蓄積されてまいりまして発病に至るわけでありますから、したがいまして、重金属によります公害病というのは、特に早期に予防するということに重点を置きまして住民の健康管理を行なうということが厚生省の責任であると思います。そのためには、カドミウムなんかの有毒な重金属の一日当たりの摂取量の計算にあたりましては、かなりの正確さと、また、それに安全度を計算に入れまして、この公害の関係住民に発病の危険性があるかいなかということを正確に判断する必要があると思います。 きょう問題の中心となりました安中、対馬、こういったところは、実は私が昭和三十六年、七年ころから、対馬は三十八年からですが、すでに調べ始めておったのでありますが、それはどういう動機からかと申しますと、富山のイタイイタイ病の原因が神岡鉱山によるカドミウムによる公害であるということを立証するために、私が、患者やあの地区の人たちが食べました食物、そういったものからたくさんのカドミウムを発見、検出いたしまして、カドミウムに深い疑いを持ちました。そうして、それを証明する、そういう意味で三つの証明を行なったのであります。それで、最初の証明は、神岡鉱山の神通川の稲の鉱毒の大きな被害とイタイイタイ病患者の発生場所とが一致するかいなか、それから二番目は、動物実験によりまして、カドミウムを食べさせますと、動物の骨が溶け出してくるかどうかというような、カルシウムの代謝出納実験というものを行ないましたが、これも成功いたしました。それから第三番目が、つまり、他の同じような鉱山地区で、たとえ少数であってもイタイイタイ病と同じような患者が発生しておる場所があるかないか、もしこの発見に成功すれば、富山のイタイイタイ病の原因がカドミウムによる公害であるという証明になる、こういうことで、以前から、対馬、安中、そういったところに調査のほこ先を向けていったわけであります。それが、たまたま今回の問題の中心になったわけであります。 で、私は厚生省のカドミウムなんかによります環境汚染に関する研究班の一員となっておりますが、それは、最初に富山のイタイイタイ病がカドミウムによる公害であるということを三十八年か九年ころに厚生省の公害課へ持ち込みまして、お調べいただいたのがきっかけになりまして、四十年から入っております。それでその班員の一人といたしまして、今回も公害地の資料の分析のクロスチェックには参加してきたわけであります。ところが、先日厚生省から発表されましたカドミウム汚染に関する見解、そういう文書が出ておりますんですが、この文書の作成にあたりましては、私は何ら前もって相談を受けておらないのであります。そこで、きょうここに与えられました機会を利用させていただきまして、厚生省発表の内容につきまして私の見解を述べてみたいと、こういうふうに考えます。 今回の厚生省発表の一番大きな問題点は、住民の一人当たりのカドミウムの一日当たりの摂取量を比較してみたところが、神通川の流域では非常にそれが大きい、ところが、安中や対馬はそれがはるかに小さい、したがいまして、直ちに安中や対馬で発病する危険性は起こらないであろう、というのがその結論であるようであります。 そこで、厚生省から当時配付されました、本のようにとじたものや、ガリ版刷りをとじたものなんかがありますんですが、ここに白い表紙でガリ版刷りになっております「カドミウムによる環境汚染に関する厚生省の見解と今後の対策」、これの九ページの下のほうをごらんいただきます。そうしますと、「富山県のイタイイタイ病発生地区では往時川水が直接飲用され、その川水中には〇・五から〇・七PPM程度のカドミウムが含まれていたと推定されている。これに基づいて計算すると、水からのカドミウムの摂取量は一日当たり約一ないし一・四ミリグラムとなる。」、間に一枚表をおきまして、さらにその次のページに続きまして、「そこで往時は食物と水から合計約一・六から二ミリグラム一日当たり、のカドミウムを摂取していたのではないかと考えられる。」、こういうふうになっております。 そこで、私がこの問題を検討するにあたりまして——ただいま配付いたしました私の十枚ばかりとじたものを見ていただきます。この資料の一番最後に——私のはとじてないんですが、実はNHKが解説用として、厚生省の発表のありました直後に、NHKテレビで厚生省の発表を解説するために、棒グラフにつくった写真ですね。この写真をごらんいただきますとわかりますですが、棒グラフに書き直してまりまして、数字をグラフの長さで示してあります。これは、その直後の、夜の「ニュースの焦点」という番組で全国放送されましたNHKの解説に使われました図であります。こういった図とか、あるいは先ほどの厚生省の発表の文書を見ますと明らかでありますように、神通川の場合には主として川水を飲んだことに原因があるのであって、川水に比べますと、農作物から摂取したカドミウムの量ははるかに量が少ない、しかも、農作物自身のカドミウムの摂取量も、この図に出ておりますように、神通川のほうが安中や対馬よりも多い、だから安中や対馬では直ちに発病する危険性はない、こういうようなのが厚生省の発表内容の要約である、こういうふうに思われるのであります。 そこで、これを検討してみます。 まず、発病の最大の原因ときめつけられました神通川の川水が、以前に、はたして〇・五から〇・七PPMのカドミウムを含んでいたかどうかということが問題になってまいります。そのために、神通川の流量、一年間に一体どのくらい神通川の水は流れ出しておるかということを調べてみます。そのためには、建設省の河川局が毎年日本の重要河川の流量を測定して発表しておりまして、それは「流量年表」という大きな本になりまして、毎年出版されております。それによりますと、富山市の神通大橋——これは患者か発生しました婦中町よりも下流になります。これは、神通川の両岸の広大な水田地帯をかんがいしますのに必要な水、すなわち牛が首用水とか、大沢野用水、あるいは神保用水、こういったすべてのかんがい用水を取り去った残りの水でありますので、この富山市の神通大橋におきまして一年間の流量をはかったのは、おそらくは実際はかなり減っている値だと思いますが、しかし、毎年の神通大橋での神通川の流量を平均してみますと、およそ一年間に七十億トン、こういう数字が出ております。ですから、牛が首用水なんかをこれに加えますと、もっと数字は大きくなるはずであると思うわけでありますが、かりに七十億トンのままで計算してみたといたしますと、次のようになります。すなわち、神通川の水が〇・五から〇・七PPMを含み続けておったと仮定いたしますと、その七十億トンの水の中には年間に三千五百トンから五千トンのカドミウムが含まれて神通川から流されておった、こういう計算にならざるを得ないのであります。そうして、この三千五百トンから五千トンというカドミウムは、主として上流の神岡鉱山が毎年流したと、こういうまあ推定になるわけであります。 ところが、いま配付しました私の資料の二ページ目を見ていただきます。この二ページ目は、神岡鉱山の事業の概要書から複写したものでありまして、この図、これは昭和四十一年の神岡鉱山の成績を中心にして図に書いてあります。すなわち、この上の表のまん中あたり、赤くアンダーラインがしてありますが、カドミウムの昭和四十一年の生産量というのが出ておりまして、それは二十五万七千九百七十二キログラムである。すなわち、およそ二百六十トンであるということがわかるのであります。それから次に、この図のまん中の図で、四十一年度の粗鉱の生産量、鉱石の生産量が百五十一万五千トンと、だんだん昭和二十五年から伸び続けまして、昭和四十一年にはそういう数字で採掘された、掘られたということがわかります。つまり、百五十一万トンの鉱石を掘り出しまして、その中から二百六十トンのカドミウムが取れたというわけであります。このカドミウムというのは、御承知のとおり、最近は非常に高価な金属でありまして、鉱山としまして、鉱石中のカドミウムを極力全部回収するようにつとめてきておりまして、ただいまでは神岡鉱山の廃石の中のカドミウムはきわめて少ないという現状にあります。それで、百五十一万トンを昭和四十一年に掘り出しまして二百六十トンのカドミウムが取れたに過ぎない。そうしますと、先ほど申しました神通川に往時には三千五百トンから五千トンが流れていたという数字とは非常に大きな食い違いが生じてまいります。 しかも、私の資料のもう一つ前の第一ページ目の数字をごらんいただきますと、神岡鉱山が明治年間から最近に至りますまで掘り出しました毎年の鉱石量の推移が示してあります。私たちが承知しております限りでは、神岡鉱山が昭和三十年から三十一年にかけまして巨大なダムを建設しまして、鉱山の排水をほとんど全部その中へたくわえるということになりましてから、神通川へのカドミウムの流出は実質的にはとまってしまっております。ですから、それ以前の三十年間をかりに取ると、つまり昭和元年から昭和三十年までの間の鉱石の生産量をこの図から見ますと、戦時中には百万トンほど掘った年があるけれども、三十を平均すると、五十万トンにも足りない、こういうことがこの図から見当がつきます。としますと、その五十万トンの中には、カドミウムは八十トンぐらいしか含まれていなかったんではなかろうかということになりまして、しかも、このカドミウム八十トンのうちで、一部はいまでも神岡鉱山の鹿間なんかの堆積場の中に残っておりますし、また、カドミウムの一部は製品となりまして、ほかへ運び去られた分もあると思います。しかし、それを全部無視しまして、カドミウムの八十トン全量が神通川へ捨てられたと仮定いたしましても、七十億トンの水によってそれを薄めていったとしますならば、神通川のカドミウムの濃度は、大ざっぱに年間を通じて〇・〇一PPMであったというふうに考えられます。 以上のとおりでありますから、厚生省発表の〇・五から〇・七PPMというのは、かなり、五十倍以上もオーバーに見積もってあるのではないかと、こういう、私の見解でありますが、感じがいたします。そうしますと、富山のイタイイタイ病の発生のおもな原因は、水を直接飲んだということではなくて、むしろ、米を食べたことがおもな原因であったのではないか、こういうことになってまいります。 私のほうで、現在、カドミウムを含みました米を安中から取り寄せまして、また、普通の米も使いまして、ネズミにこれを与えまして、内臓にどのぐらいカドミウムがたまっていくかを比較しております。その結果は、普通の配給米を食べてすらもネズミの内臓にカドミウムがたまりますが、カドミウム米を与えますと、そのたまり方は一そうはなはだしい、そういう結果が出つつありまして、これまた学会で発表する予定であります。 で、水の中のカドミウムにつきまして、もうちょっと加えさせていただきます。それは、対馬の樫根地区の住民が以前に飲んでおった井戸水には、カドミウムが神通川以上にあったということであります。で、私の配付いたしました資料の八ページ目——下に番号が打ってあります。しまいから三枚目です。八ページ目に、右側にイモ畑の写真がありまして、その下側に第三表として、(A)、(B)、(C)、(D)、(E)という五つの井戸を分析した成績が出ております。これは私の分析したものでありまして、厚生省とは無関係であります。その結果によりまして、(B)の「長瀬鶏郎、春」——長瀬春というのは女の人の名前でありますが、イタイイタイ病で死んだ人でありますが、いずれ萩野さんからお話がありますが、(B)の「長瀬鶏郎、春」、この家族が以前に飲んでおった井戸水には、カドミウムが、この表のとおり、〇・二二五PPM含まれております。神通川のさきの計算によります〇・〇一PPMの二十倍の濃度であります。それからまた、(A)の「一宮為吉」としてありますが、この一宮為吉の井戸は、ここにありますように、三十八年と三十九年の二回私が調べたところでは、〇・〇三五と〇・〇二六PPMでありましたけれども、今回、つまり昨年厚生省の調査の時点におきましては、この(A)の井戸のカドミウム濃度は非常にふえておりまして、〇・一一五PPMとなっております。それは、厚生省の今回発表の黄色い本の四六ページから四七ページに出ております。四六ページ及び四七ページにその〇・一一五というのが出ておりまして、井戸水という欄の一番上に、「現在は飲用せず」としてありまして、「永瀬義一郎」とありますのが、これが、私が分析しました(A)の井戸と全く同じ井戸であります。それは、永瀬義一郎というのと、それから一宮為吉という両家は同じ井戸を二軒共同で使ってきておったためでありまして、永瀬義一郎も、それから一宮為吉、一宮朝、これみな同じ人たちが飲んだ井戸水であります。 どうして今度の厚生省のときのほうがカドミウムが多くなったかと申しますと、昨年の調査時には、昨年の秋は非常に晴天が続きまして、井戸が濃くなっておった、それで私の調べた値よりも高くなったのではないか、こう考えられます。ですから、結局、(B)の長瀬鶏郎及び春の井戸水も、私が調べた〇・二二五PPMよりも、あるいは昨年は、調べていったら高かったかもしれませんが、すでにこの長瀬鶏郎の井戸は鉱山側によりましてセメントで封鎖されておりまして、水を取ることができなかったという話であります。 とにかく、(A)と(B)の井戸水は、樫根地区ではカドミウムが多い井戸でありまして、しかも、この二つの井戸水を飲みました三軒の家からそれぞれイタイイタイ病の患者が一人ずつ出ておるのであります。すなわち、私の資料の八ページを、しまいから三枚目ですが、見ますと、さっきのイモの写真のあるあれですが、これ、昨年の四月に日本衛生学会で発表しました講演要旨の複写であります。これを読んでいただきますとわかりますように、長瀬春、それから永瀬トヨ、一宮アサ、この三名がイタイイタイ病の患者として、現在は死んでおります。 とにかく、飲み水に関しまして、樫根地区で一番カドミウムが多いと思われる二つの井戸を使った人たちからイタイイタイ病の患者が出たということは、つまり、神通川の川水よりもカドミウムの含有量が多かったということも原因しておるというふうに感じられます。この三名のイタイイタイ病患者については、後ほど萩野さんから御説明があると思います。 次に、今度は農作物につきまして、つまり、食物からのカドミウムの摂取量が、厚生省の見解では、今日でも富山の米のほうが、安中や対馬の米よりも多いのだというふうになっておりますが、これにまた問題があります。時間の関係で詳しいことは申し上げませんですが、富山の場合は、患者の発生しました婦中町の全地域の農家から米を少しずつ取り寄せまして、その平均値を分析から出した、そうしてカドミウムの農家の一日当たりの摂取量を計算したというのがあれば、これは至当なことでありまして、問題ではないのでありますが、しかしながら、厚生省の今度の資料のデータは、ある特定の少数の水田から、水口と中央と水尻とから米を取りまして、その分析値を平均しただけでありまして、一日の農家の摂取量を計算する基礎としては非常に不完全であるというふうな感じがいたします。それからまた、その中にはカドミウムの多いモチ米が三点も入っておった。ですから、まあそういうのを除いてみますならば、婦中町のカドミウム米のカドミウムの平均というものは、かなり低下してきたのじゃないか。これに対して、今度の厚生省の発表の安中の米の場合は、高崎市内の米が計算に入れて平均が出してあります。たとえば、高崎市内の〇・一PPMというような非常に低い米を平均値に加えまして、安中の米はカドミウムが富山よりも少ないというふうになっております。ここも問題がありまして、こういったことからも、米からの農家の摂取量というものがどうもこのとおりであるかどうかということについて疑問が感じられます。 それから畑作物について申しますと、つまり、イモや野菜、麦、そういったものでありますが、実は、米というものはカドミウムをわりあいに摂取しない。吸収しない。野菜や麦は米よりも非常にたくさんカドミウムを吸い上げます。厚生省の見解では、米以外の食物として、麦とかイモ、野菜、そういったものは、婦中も安中も対馬も同じ程度に汚染されております、三地区とも同じ程度にカドミウムを摂取しておると出ておりますが、実はこれに問題があります。富山の婦中町は、御承知のとおり、農地は全部水田でありまして、ほとんど畑はありません。しかも、水田の全部は単作水田でありまして、雪が深い関係で、裏作の麦はつくらない。また、たとえ畑がありましても、サツマイモのようなものは富山ではつくっておりません。そして、神通川の水を畑にかんがいするということはありませんから、畑作物は汚染度が安中なんかよりははるかに少ないということが言えます。特に、それから安中では、煙によりまして汚染された野菜を食べておりますから、この汚染された野菜から来るカドミウムというものは相当な量と考えられます。したがいまして、安中、対馬の畑作物からのカドミウムの摂取量は婦中より多いと思われます。 それで、最後になりますが、安中の、煙によりますカドミウム汚染につきまして、ちょっとごらんいただきます。私の資料の三ページ、四ページ及び五ページに示してあります。四ページの上の図は、工場の煙突に近い桑の葉ほど、カドミウム、亜鉛、鉛の含有量が高い。遠ざかるにしたがって、それが明瞭に減少した傾向を示しております。それから右の下側には、私どもの研究所の桑の葉が対照として示してあります。それから四ページの下の図は、同じ場所に育ちました安中の農作物でも、カドミウムの含有量が種類によって非常に違い、したがいまして、カドミウムをなるべく吸わない農作物をつくったほうが住民の健康のために有利であるということが言えます。それから五ページは、安中の土の層別のカドミウムの含有量を示したものでありまして、表層の十センチほどには、カドミウム、亜鉛、鉛がたまっておりましてカドミウムが三〇PPMほどありますが、二十センチほど深くなりますと、深い層のほうは全く異常はない。私どもの倉敷のほうと全く変わりはない。つまり、煙によって、どろの表面十センチほどが汚染されておると、こういうふうに考えられます。 それからもう一つ、最後に、この安中の製錬所の煙だけじゃなくて、排水処理に問題がありまして、きわめて悪いと言わざるを得ない。この排水は、工場の出ぎわでは〇・三二PPM。これは厚生省のクロスチェックで、私は〇・三二PPMと出しましたが、もう一人の東工大の先生は〇・〇三PPM。私のほうがネグられまして、この東工大の先生の〇・〇三PPMだけが厚生省の文書の中に入っております。これは厚生省の本の中の三十五ページの表の一〇に私の出したクロスチェックの値が数字として出ておりますが、そういうことでありまして、この出ぎわのカドミウム〇・三二と、きわめて高い値を示しておりますから、排水処理はしなければならない。このまま延長水路、排水路で河川に放流してはならないということが考えられます。そしてまた、これがこの碓氷川に放流されております。最終地点では大体十分の一に減っております。数字はどこにありましたか、もう時間がなくなりましたから申し上げませんが、大体この延長水路によって十倍ぐらいにだんだん薄まっていって、つまり、パイプがどっか不完全であって、重金属がぞろぞろ逃げ出しておって、ほかのいい水と入りまざって十倍ぐらいに希釈されている。それが碓氷川に出ておる。こういうことでありまして、排水路そのものも不完全であり、その逃げ出したカドミウムがこの製錬所の下の水田にあらわれてきて、そうしてその水田の米が汚染されている。こういうことになるわけであります。 そのように考えてきますならば、先ほどの厚生省の発表にありますような、神通川が最もカドミウム汚染がひどい、一日の摂取量が多いということは、むしろ逆であって、安中や対馬のほうがかえって多いんじゃないかというふうに考えられてくるのであります。こういったことは、先ほど申しましたように、重金属の問題は、住民の健康がおかされる前に早く発見して予防しなければならない、にもかかわらず危険性は現実に迫っておる、そしてこのまま放置すれば企業者の加害責任も重くなりますし、住民の間からも病人が出てくるのではないかというふうに考えられますので、私は、何もこの現地を刺激する意味で申し上げておるのでは全くありません。その点は誤解なさらぬようにお願いしたい。むしろ、鉱山側から、加害責任が軽いうちにこれを教えてもらったことを感謝していただきたい、私はこういうふうに考える次第であります。 終わります。
○委員長(加藤シヅエ君) どうもありがとうございました。 次は、日本公衆衛生協会カドミウム研究班班長重松参考人にお願いいたします。
○参考人(重松逸造君) 私は、本日、日本公衆衛生協会カドミウム研究班の班長としてお呼びいただいておりますので、その立場から、昭和四十三年度に本研究班が実施いたしました、群馬県、宮城県及び長崎県における調査結果について申し上げたいと思います。 初めに、本研究班の性格につきまして簡単に申し上げておきますと、これは、厚生省が特定の研究課題について昭和四十三年度公害調査研究委託費の一部を日本公衆衛生協会に委託いたしまして、本協会がわれわれ研究者に呼びかけて研究班を結成したものであります。したがいまして、本研究班としましては、与えられた研究費の範囲内で、昭和四十三年度という限られた期間に特定の研究課題について研究を実施したわけでありますが、申し上げるまでもなく、これは各研究者にとっては、それぞれ独自に実施あるいは計画しております研究の一部にすぎないということであります。 本研究班の課題は、「カドミウム等微量重金属による環境汚染に関する研究」ということで、先ほどの三県の調査を実施いたしましたが、途中から長野県と大分県の調査もあわせて委託されております。また、本研究班とは別に、同じ昭和四十三年度委託研究費で、日本公衆衛生協会は「食品中のカドミウムに関する暫定指導基準の設定に関する研究」の研究班を組織しております。また、厚生省は、「飲料水中のカドミウムの暫定基準設定のための調査研究」の研究委員会を委嘱しておりますが、たまたま私が両研究グループにつきましても代表者になっておりますので、これらの研究につきましても、もし時間の余裕がございますれば、簡単に触れておきたいと思います。 さて、カドミウム研究班がただいま申し上げましたような条件のもとで実施いたしましたのは、群馬県では安中市周辺、碓氷川、柳瀬川及びその流域の川水十八試料、東邦亜鉛株式会社安中製錬所の排水三試料、井戸水十八試料、川どろ及び製錬所排水放流路のどろ十八試料、水田土壌三十三試料、米三十三試料の合計百二十三試料であります。宮城県では、鉛川、二迫川及びその流域の川水九試料、三菱金属鉱業株式会社細倉鉱業所排水二試料、井戸水四試料、水道水二試料、川どろ七試料、水田土壌九試料、米九試料、合計四十二試料であります。長崎県におきましては、対馬の佐須川、椎根川とその流域の川水十一試料、東邦亜鉛株式会社対州鉱業所の排水二試料、井戸水十試料、水道水二試料、川どろ及び排水口のどろ十二試料、水田土壌十試料、畑の土壌五試料、米十試料、カンショ——イモでありますが、カンショ及びハクサイ七試料の合計六十九試料、総計二百三十四試料につきまして、カドミウム、鉛、亜鉛などの分析と、各研究者によるクロスチェックを行なったのであります。 その結果を要約いたしますと、 まず、現在飲用に供しております水のカドミウム濃度は各地区とも〇・〇一PPM以下でありまして、国際基準並びに今回設定いたしました暫定基準よりも低くなっておりました。 次に、排水のカドミウム濃度では、細倉鉱業所が〇・一一ないし〇・一四PPMと、高濃度を示しております。安中製練所は〇・〇一五ないし〇・〇五〇PPMと、昭和四十二年度に調査しました神岡鉱業所とほぼ同じ程度、対州鉱業所は〇・〇〇四ないし〇・〇〇五PPMと、飲料水の基準値以下になっておりました。 川水のカドミウム濃度でありますが、宮城県鉛川が〇・一六PPM、二回再調査行なっておりますが、それぞれ〇・〇七三、〇・〇五五PPMと、いずれも高濃度を示しております。ただし、その下流の二迫川は〇・〇〇ないし〇・〇三PPMとなっております。次いで、長崎県佐須川、椎根川は、上流、中流とも〇・〇〇二ないし〇・〇四二PPMと、やや濃度が高く、群馬県碓氷川、柳瀬川は、最も高いところで〇・〇二七PPM、その他はいずれも〇・〇一PPM以下と低くなっておりました。 川どろのカドミウム濃度は、これらの三地区とも、排水口直下を除きますと、いずれも神通川の場合より高濃度でありまして、一PPM以上から一〇PPM以上に及んでおりました。 水田土壌のカドミウム濃度は、三地区とも一般に神通川流域より高濃度であります。特に碓氷川流域では最高五二PPMを示すものがありました。 農作物のうち、米のカドミウム濃度は、いずれの流域についても神通川流域よりは低くなっておりましたが、今回の三地区につきましては、佐須川、椎根川流域が〇・三三ないし一・五七PPM、平均〇・七一PPMと、比較的高くなっております。碓氷川、柳瀬川流域が〇・一〇ないし〇・九八PPM、平均で〇・四九PPMで、これに次いでおります。鉛川、二迫川流域は〇・〇五ないし〇・七五PPM、平均〇・一二PPMと、比較的低い値になっておりました。米以外の農作物につきましては、佐須川、椎根川流域のカンショとハクサイの成績しかありませんが、ハクサイが乾燥状態で二・六一ないし七・四二PPM、平均五・二七PPMと、かなり高くなっておりました。 以上申し上げました結果より、今回調査いたしました三地区の水、どろ、土壌などについて見ましたカドミウムによる環境汚染の程度は、神通川流域以上であります。特に、碓氷川、柳瀬川流域の水田土壌に高度のカドミウムが認められたわけであります。これらの成績につきまして、研究班としては、いろいろな問題点を認めているわけでありますが、特に、水、どろ、土壌などが高濃度であるわりあいには、農作物、特に米のカドミウム濃度が、いずれも神通川流域より低かったというこの事実を今後さらに研究する必要のあることを、研究班としては結論として強調いたしております。なぜ低かったか、ただいま小林参考人が言われたようなことも一つの要因かもしれませんし、あるいは農作物自身の品種的な差があるかもしれませんし、その他、カドミウムがいかにしてこういう農作物へ移行していくか、さらにまた、農作物をはじめとする飲食物より人体へどうしてカドミウムが入っていくかというような問題は今後の問題点として当研究班も指摘いたしております。 それから、最初ちょっと触れました、食品のカドミウム暫定基準の問題でありますが、この研究班といたしましては、要するに、食品の暫定基準あるいは暫定指導基準といったものを現段階ではなかなかきめるわけにはいかない。しいて言えば、食品、特にお米をその指標といたしまして、環境がどの程度カドミウムで汚染されているかといった、そういう判断尺度という表現ならばある程度可能ではないかということで、先般厚生省が発表しておりますような成績を研究班として答申したわけであります。ただ、結論だけを一口に申し上げますと、そういう環境汚染の判断尺度としてのお米のカドミウム含有量濃度は、玄米で乾燥物として測って、〇・四PPMあたりが適当ではないかということであります。もちろん、これの判断尺度にはもう一つ条件がついておりまして、このお米をとるときのサンプリングの方法、これを特に強調いたしておりますので、この点にも御注意いただきたいと思います。 それから飲料水のカドミウム濃度につきましては、これも同時に先ほどの飲料水のカドミウム暫定基準の設定に関する委員会が研究いたしました結果、これは〇・〇一PPMという基準を答申いたしております。そのように厚生省からも発表があったように思います。この数値につきましては、すでにWHOが国際基準として推奨している濃度でもあります。その意味からいいまして、大体水の基準としてはこの辺が、国際的にいいましても、また、わが国の実情からいいましても、適当ではなかろうかと考えているわけであります。 なお、最後に、食品の基準にいたしましても、水の基準にいたしましても、これは世界的に同様でありますが、ほんとうにこの基準でだいじょうぶかどうかということになりますと、まだ明快なるデータが全部そろっているわけではありません。その意味からいいまして、最初に環境汚染に関連して申し上げましたように、飲食物へのカドミウムの移行のしかた、さらに、それより人体への移行のしかたというものについての根本的な研究をじみちに推進していただくよう、私個人としてお願い申し上げておきたいと思います。 終わります。
○委員長(加藤シヅエ君) どうもありがとうございました。 では次に、はるな生活協同組合高崎中央病院院長高柳参考人にお願いいたします。
○参考人(高柳孝行君) 高柳です。 私たちが鉱害地域の住民の要望に基づいて検診に取り組んでから、まだ半年しかたっておりません。ここに参加されている諸先生方は、すでに長い間公害に関した研究を重ねておられる方々ですので、私としては一度は参加をちゅうちょしたのですが、いままで鉱害で生活を脅かされ、健康をむしばまれてきた地域住民の声を代弁し、少しでも鉱害に関連した人体への障害があるならば、早急に鉱害対策が講じられなければならないという立場から、今日ここに参加さしていただいた次第であります。 本日は、安中における住民検診の結果と、あわせて鉱害に対する私たちの考え方を述べたいと思います。精密検診については、現在行なっている最中ですので、その点御了承願いたいと思います。 私たちは、昨年十月東邦亜鉛安中製錬所から東へ約八百メートルにある西岩井地区の住民検診を行ない、その愁訴及び高い尿たん白陽性率が認められたことから、従来の鉱毒、特に重金属その他によると思われる農作物被害の実態にかんがみ、「人体への影響は放置しておけば今後憂慮すべき問題を提起している」と総括して報告しました。その後、各方面から間接的に御批判を受けましたが、今回はさらに製錬所に近接する北野殿地区において百二十一名の住民検診を行ないましたので、その結果を中心に、住民の健康の状態について、ありのままを報告したいと思います。 北野殿地区は、標高二二五・九メートルの丘陸地にあり、製錬所のちょうど南側に相当します。受診対象は二十歳以上で、受診者の平均年令は男女とも五十三歳でした。受診者の多くは、四七%に当たりますが、何らかの神経痛様の疼痛を訴えており、呼吸器症状がそれに次いで一二・四%、胃腸症状が一一・〇%、その他、頭痛、息切れ、動悸などが認められました。 また歯の状態を見ますと、すでに二十代から、特に女性では虫歯、抜け歯、入れ歯が目立ちまして、何らかの異常がある者は、男性で八六・九%、女性では九四・七%でした。また、一部入れ歯は男女とも五八%に認められ、健康者は二十代、三十代のみにしか認められません。五十歳代からになると、総入れ歯、総抜け歯が目立ちまして、男性で二一・七%、女性では三八・六%と、高率に認められます。 また、二月九日歯科医師を含めて行なった岩井地区の歯の集検では、義歯を装着している人は農業を職とする人に多く、歯石沈着が顕著に認められるものが全体の三三%で、女性に若干多いのですが、職業との関係は特に認められませんでした。歯石沈着は、単に口腔内の不潔が原因とも考えられませんので、今後他地域との関係など、さらに検討してみる必要があると思います。 また、問題の尿の検査所見ですが、たん白尿イコール腎障害とは言えないわけでして、生理的たん白尿が存在することも私たちにとっては常識です。しかし、いわゆる生理的たん白尿は一%以下であり、一般的には、重松先生も言われているように、尿たん白陽性率は相当鋭敏な検査法を使っても七−八%、糖尿病は五−六%程度です。 私たちは、感度の低いペーパー法と併用して、鋭敏なズルホサリチル酸法で尿たん白の検出を行なっております。その場合、判定がプラス・マイナスの中には生理的なものが入ることはあり得るわけですが、カドミウムによる腎障害によって排出される尿たん白が二万から三万という低分子量のたん白であると言われているところから、私たちは、他の所見とあわせて、尿たん白プラス・マイナスも精密検診の対象としております。 尿たん白陽性率は、厳密な意味でのプラス以上をとりましても、北野殿の男性で一二・二%、岩井では一四・六%です。女性は、北野殿で一七・五%、岩井では一二%となり、平均的な陽性率から見てかなり高率であると言わなければならないと思います。プラス・マイナスを含めてその陽性率を見ますと、女性の場合、岩井で三三・六%、北野殿では五四・一%となります。 尿糖に関しては、テステープ法で、男性の七・三%、女性では八・一%と、やや高めでした。集検を通して、たん白尿、糖尿とも認められた者は、男性は二名、女性は七名です。 さらに、尿たん白プラス・マイナスも含めて在住期間との関係を見ますと、北野殿の場合ですが、男性では四十年以上住んでいる人にのみたん白尿が認められます。女性では三十年以上という在住者に陽性率が高く見られます。つまり、四十歳以上の女性で三十年以上在住者の尿たん白陽性率は六一・五%です。三十年以下では四七%でありました。 また、出生数との関係を見ますと、四十歳以上で五人以上の出産婦の場合、尿たん白陽性率は六八・一%、五人以下では四八・六%でした。このパーセンテージは、富山におけるイタイイタイ病が、その地域に三十年以上のキャリアを持った多産婦に多発しているところから、たん白の陽性率及び地域のカドミウム汚染とあわせて注意しなければならない傾向であると思われます。 また、ふん便潜血反応を、潜血食の指導なしで、男性二十七名、女性では五十六名について行ないましたが、陽性を呈するものは、男性で三三・三%、女性では二五%でした。これは、口腔内出血や痔疾患などの存在、ある種の食品、薬物によっても陽性を呈するのですが、私たちが同様の方法で胃腸症状を有する外来患者について行なった場合の陽性率とほぼ同程度であり、鉱害地域でも潜在的な胃腸障害の存在を示唆するものとして注目する必要があると思います。 現在、製錬所周辺で問題になっているのは、重金属、特にカドミウムによる環境汚染であります。鉱害地は丘陵を形成しており、桑霜害はなく、昔から養蚕が盛んで、米、麦なども国から表彰されるほどの一等地でしたが、鉱害が広がるにつれて、魚は住まなくなり、レンゲソウやセリが絶え、麦や米の収穫は激減し、桑を食わせると蚕がしぼんで死んでしまい、農民は農業をする張り合いすら失っているのが現状です。また、地域住民の話では、鉱害地で取れた雑草や蔬菜類は家畜が食わず、ノネズミさえ住みつかないと言われております。野性の動物たちは、彼らの生存権を脅かす環境からは本能的に逃避するものであり、それに比べて、人間だけが、全国にも類のない有毒重金属によって汚染された環境に住みついているとすれば、そこに人体に対する何らかの障害が起こらない、あるいは心配ないということはむしろふしぎな話です。このレポートを総括して、さきに述べたように、鉱害との関係で人体への影響は現在進行形であり、今後適切な対策がとられなければ重大な問題になり得ると考えます。 公害問題が政治的な問題としてとらえられ、あるいは運動として発展することをあまりにも警戒し、あるいはそれを抑制しようとするために、かえって政治的な心づかいが被害者を拡大し、死にまで追いやっているのが、いままでの公害の歴史です。現在の公害対策が、生活環境基準の制度化でなく、亜硫酸ガスなどにも見られるように、相変わらず排出基準中心主義であるところにも重大な欠陥と立ちおくれが指摘されると思いますが、いざ公害問題が起こった場合、被害者は農民、漁民であり、四日市その他で見られるように、地域住民であります。現代の公害の問題の基軸が独占資本による産業公害であるならば、医師として被害者救済の立場から、私たちの向かうべき方向は明らかです。そうした観点から、今回の厚生省のカドミウム汚染に関する研究調査報告には強いに不満があり、言いたいことはたくさんあるのですが、一つだけ要望を述べたいと思います。 厚生省見解は、調査の結果を総括して、いま直ちにいわゆるイタイイタイ病が発生する危険があるとは考えられないとして、カドミウムによる慢性的障害を、いわゆるあの悲惨なイタイイタイ病のワクにはめ込むような印象を一般に与えておりますが、慢性カドミウム中毒の初期、つまり、一期、二期が安中の場合に特に問題であり、医学的には早期鑑別診断基準の確立が早急に望まれるところであります。また、それ以上重要なことは、現在の進行しつつある環境汚染から考えて、長年にわたって多量のカドミウムを地域住民は現実に摂取しているわけであり、一たんおかされた腎障害が治癒したという報告がない限り、初期の段階での患者救済と同時に、可及的すみやかに鉱害対策を国は指導すべきであり、完全な鉱害対策なしには、もちろん現在考えられているような工場の拡張は国益に反しても許すべきことじゃないと考えます。 最後に、私たちは、地域住民の健康を守るという立場から、一人でも富山のような患者を安中から出してはならないと思っております。一人の患者の周囲には非常に多くの被害者が当然考えられるからです。そうした意味で、製錬所周辺における、特に重金属を含む大気、環境汚染の状態及びカドミウムの毒性から考えて、それの人体に及ぼす影響については神経質であり過ぎることはないと考えます。私たちは、これからも、独自に精密検診を通して初期患者の診断に努力したいと思います。 以上です。
○委員長(加藤シヅエ君) どうもありがとうございました。 では最後に、萩野病院院長、荻野参考人にお願いいたします。
○参考人(萩野昇君) 萩野でございます。一番最後の証人でございます。若干重複する点もございますが、私が今日まで対馬、安中における患者の発生状態、その地区のカドミウムの汚染状況との因果関係、こういうことについて御説明申し上げたいと思います。 今日までに対馬に一回、安中に二回出かけまして、その地区の患者をつぶさに調査したのでございます。 富山のイタイイタイ病の原因がカドミウムであり、その排出源が神岡鉱業所であるのでございますから、他の地区の同種鉱山の川下には当然同種患者が発生しても不思議じゃないのでございます。まず結論から御説明したいと思います。お手元に配付いたしました附表第一、患者の状態でございますが、富山は重症でございます。現在、富山県の認定では重症だけをイタイイタイ病と認定しておられるようでございます。対馬は中等症、安中はまあ軽症と申しますか、そのようでございます。鉱山のキャリアから申しますと、富山のイタイイタイ病のカドミウムの発生源である神岡鉱山のキャリアは九十年でございます。対馬の対州鉱業所は二十年プラスアルファ、安中は二十年ぐらいでございます。カドミウムによる汚染の方向は、富山は水質汚濁でございます。対馬も水質汚濁、それに若干大気汚染がまじっております。安中は大気汚染が主体でございまして、水質汚濁もまじっております。カドミウムのおもなる侵入経路は、富山は消化器から入っております。対馬もやはり消化器を通して入っております。安中は呼吸器からも相当量入っているようでございます。カドミウムのおもなる侵入方法でございますが、富山は水と米、対馬は水と米、そのほかにイモとか、ハクサイとか、野菜が相当原因をなしています。安中はオカボである麦、野菜、そのほか米、水が最後にきているようでございます。先ほど、前参考人もお話しになりましたが、食べものの中で何が一番関係があるかと申しますと、イカやバイなど、これは副食でございます。相当量でございましても、毎日食うものじゃございません。米は、その土地の百姓が保有米にとりまして、朝から晩まで三百六十五日食っております。ここに私は、米とほかの副食物との、原因物質を含む含有量、その他食生活で大きな問題があるのじゃないか、こういうふうに思っておりますが、富山の場合には一ないし一・二PPMでございます。対照は〇・〇七PPM。〇・四四PPMから三・三六PPMの間にあるようでございます。対馬は平均〇・七一PPM。〇・三三PPMから一・五七PPMの間にあるようでございます。安中は〇・四九PPM、これは平均値でございます。最高は〇・九八PPMでございます。 このような状態でございます。これから詳細にひとつこれを御説明申し上げたいと思っております。 対馬のほうへは、昭和三十九年の九月に、ここに御同席の小林教授のお供をいたしまして私は参ったのでございます。対馬の東邦亜鉛の対州鉱業所のすぐ横、下流にあります樫根部落に一宮アサさんという患者がいたのでございます。私は小林教授と一緒にこの一宮アサさんをおたずねをいたしまして、詳しくからだを見せていただきましたが、その臨床症状は富山のイタイイタイ病と全くそっくりでございました。そこで、見たけれども、イタイイタイ病であったというのじゃ、どなたも御信用いただけないと思いましたから、この患者をリヤカーに乗せまして、そうして対州鉱業所の診療所まで運びまして、ここでレントゲン写真をとっていただき、その他の検査をしたのでございますが、この一宮アサさんは、まことにりっぱなイタイイタイ病でございました。しかし、富山のイタイイタイ病よりは軽症でございます。これが若干話題になったようでございます。 この一宮アサさんが私たちに言いますには、私の部落のすぐそばの永瀬トヨさんが昨年の五月十三日になくなったのだけれども、私と全く症状が一緒だった。そうすれば、永瀬トヨさんもやっぱりイタイイタイ病だったのじゃないだろうかということを言いましたので、その永瀬トヨさんはどこにかかっていたかと聞きますと、厳原町の協立医院にかかっていた、こういう答えがありましたから、私たちはさっそくその協立医院に出かけまして、永瀬トヨさんのレントゲン写真があるかないか確かめましたところが、あるというので出していただいたのでございます。これは宝の山でございました。見たところ、やっぱりイタイイタイ病の所見がございました。すなわち、われわれは、その時点において生きている一人のりっぱなイタイイタイ病患者、すでに死亡はしておりますけれども、イタイイタイ病患者の症状を残しておるレントゲン写真を発見したのであります。この樫根部落の井戸水の中から、小林教授は大量のカドミウムを検出されたのでございます。この井戸水を毎日飲料水として使用していました一宮アサさんはイタイイタイ病になったのでございます。また、永瀬トヨさんもその井戸水を使用していたのでございます。これらの井戸水は、私たちが帰りましてから、どういう意味か知りませんが、対州鉱業所からの指示によって、工場からコンクリートの支給をされて閉鎖させております。しかし、水はもちろん、米、野菜、イモ、それらの植物は一切現在でも汚染されているのでございます。 安中には二回調査に参っております。第一回は四十年の三月、第二回は四十四年の三月、実は先月でございます。第一回のときは、地理不案内でございまして、事前調査も不十分のために、患者見みることもできないで、要領を得ないまま帰えらざるを得なかったのでございます。第二回の先月は、安中市の碓氷病院で、ここに御同席の高柳先生の御協力を得て、私は多数の患者をつぶさに拝見したのでございます。そのデータは目下整理中でございますので、軽々しくいまここでその成績を申し上げるわけにはまいらないのでございます。しかし、現在の状態から、このまま放置すれば、遠からず重症であるイタイイタイ病患者が発生する危険があるということを、二十数年間イタイイタイ病と取っ組んでまいりました私が御報告できることは事実でございます。 しからば、カドミウムなどの公害病は一体どのように発生してくるのか、これを簡単に御説明いたしたいと思いますが、第一、原因物質が直接に呼吸器を通して体内に入る。この代表例は四日市公害でございます。大気汚染によりまして、植物も人間もともにおかされるのでございます。しかし、公害が悪臭のために予期されますので、生命の危険に陥るということは比較的少ないのでございます。二、原因物質が中間宿主を介して腸管を通して人体内に入る。この代表例は水俣病でございます。工場排水によりまして、水質が汚染、汚濁され、有機水銀は中間宿主である魚や貝類の体内に入り、それを通して人体内に入ってまいりますが、味覚を減ずることがございませんので、知らず知らずのうちにこれをたくさん食べ、重症となってまいります。三、原因物質が直接に、また間接に中間宿主を介して人体内に入る混合型。これがイタイイタイ病でございます。カドミウムが水から直接に、また米を介しまして間接に体内に入りますから、慢性的経過をたどり、原因が非常にわかりにくく、死亡者も多いのでございます。四、原因物質が呼吸器を通して直接に、また腸管を通って間接に人体内に入る。これが安中の公害でございます。 ここでイタイイタイ病の御説明を申し上げますが、イタイイタイ病という病気は、カドミウムに汚染された土地に住み、この土地の水を飲み、この土地の米を食べ、この土地でとれた魚を食い、この土地でお産をいたしまして、この土地に三十年のキャリアを有する婦人が主としておかされて発病する病気でございます。 それなら、イタイイタイ病をどういうふうに分類すればいいのかと申しますと、発病から死亡までの経過、まだこれがイタイイタイ病であるかどうか判断がつかないような軽い状態、全身の骨が七十二ヵ所もぼきぼき折れて、痛い痛と言って死んでいく、これまでの経過を五期に分けております。この第四期までは海外文献にもあるのでございますが、私は一期つけ加えまして、私の分類といたしまして、五期に分けております。第一期、潜伏期。農繁期や過労のあと、腰や足の痛みが起こり、入浴や休養により軽快する。特に所見はない。ごく初期でございます。第二期は警戒期。疼痛は著明になってまいりまして、歯頸部に黄色のカドミウム・リングがあらわれる。尿のたん白はプラス、プラス・マイナス、マイナス等がモールスの符号のように出没してまいります。第三期は疼痛期。全身に疼痛が著明になってまいりまして、特に恥骨部落痛が特徴としてあらわれてまいります。全身の骨の萎縮、脱灰が著名となり、貧血が出てまいります。つまり、疼痛と骨の萎縮脱灰と貧血、これを私はイタイイタイ病のトリアスと申しております。特有の歩行、すなわちバッチルガング——アヒルがおしりを振って歩くようなかっこうを示してまいります。レントゲン写真を見ますと、骨粗鬆症となっております。尿たん白は常に陽性となってきて、尿糖もあらわれてき、プラス・マイナスもあらわれてまいります。第四期は骨格変形期。この時期になりますと、疼痛はますます激烈になってまいりまして、歩くこともできなくなる。脊椎の圧迫のために身長は短縮してまいりまして、三十センチぐらい縮んでまいります。レントゲンで見ますと、ミルクマン症候群、骨の湾曲、骨改変層、ハート型骨盤というような、りっぱな条件がそろってまいりまして、これを骨軟化症といっております。尿の蛋白や糖は常に陽性となっております。第五期、骨折期。この時期が実に悲惨になってまいります。骨の萎縮、脱灰は高度となり、あたかもボール紙を巻いたようになって、自然骨折を起こしてまいります。自動車事故、スキー、がけから落ちて骨が折れるのではございません。便所に行くときに、畳のへりにつまずいて足の骨を折るのでございます。 このような状態でございますが、いま私がこの三地区を調べてみますと、富山は、四期、五期の重症がこれに当たっております。対馬は二期、三期の状態でございます。安中は一期、二期に当たるのではないだろうか。と申しますと、鉱山のキャリア、住む人のキャリア、三十年のキャリアといいますと、四期、五期が三十年のキャリアになってまいります。二期、三期でございますと二十年のキャリア。その他の状況で、一期、二期の状態でまだ進行中であるというように私考えたい。 しからば、これらの一期、二期、三期、四期、五期の相違はどこからくるか。これを研究するためには、カドミウムの発生源である関係鉱業所の歴史も調べてみる必要があるのでございます。 富山の場合は、上流の神岡鉱業所のキャリアは九十年と申しましたけれども、神岡鉱業所の歴史は養老年間から七百二十年でございます。以来非常に長いのでございまして、明治七年に三井財閥の一環となってからは年々隆盛をきわめ、大東亜戦争の間は軍管理工場として軍の監督を受け、増産を続けてまいりました。つまり明治七年から数えまして九十年くらいのキャリアになるわけでございます。 対馬の東邦亜鉛対州鉱業所は、キャリアは二十年プラスアルファといたしましたが、千三百年の昔から、藤原時代の昔から産銀鉱山として栄えたのでございます。大正年間はスイス人のC・ファーブルが経営して、ベルギーに送鉱していたようであります。昭和十四年になりましてから日本亜鉛がこれを買収いたしまして、昭和十六年に東邦亜鉛と改名しております。昭和十八年に浮遊選鉱となったのでございますが、大東亜戦争で重油配給がないために休山いたしました。戦後再開いたしますが、二十二年に製錬所を全焼し、二十三年に再建いたしております。しかし、その規模は神岡鉱山よりもはるかに小さく、戦争中に重油配給さえもらえなかった。そうして汚染地区もまた小範囲なのでございます。昭和二十三年以来のキャリアは二十年でございますけれども、戦争で休山したその昔の実績を加えますと、二十年プラスアルファとなるのでございます。 安中は、この東邦亜鉛の製錬所がございますが、これはキャリア二十年。昭和十二年に日本亜鉛株式会社製錬所として設立をしまして、最初はベルギーから原料を輸入いたしますが、間もなく中止し、次いでオーストラリアから鉱石を輸入、電気亜鉛の製錬をしておりました。昭和十六年に東邦亜鉛と改名されましたが、十七年には戦争のため鉱石輸入が途絶し、しようがございませんので、廃品回収のしんちゅうから銅をとってこれを製錬しておりました。昭和二十三年の九月に対州鉱山から出たところの原料を運んでまいりまして、電気亜鉛とカドミウムの製錬を開始しております。現在では、カナダ、南米から原料を三万トン、対馬からは二千トン、これらで仕事を進めておりますので、昭和二十三年から考えるべきであって、キャリアを二十年といたしております。このキャリアが、先ほど御説明しましたように、患者発生に寄与しておるようでございます。つまり、三十年のキャリアがない、だからまだ患者発生には至らない、しかし、患者を発生させつつあるというこの事実でございます で安中の場合は、工場の排煙が大きな原因となっております。安中工場は、御存じのように、神岡鉱業所とは異なりまして、乾燥様式をとって、水蒸気で盛んに水分を蒸発さしており、工場排水よりも工場排煙の影響が大きいのではないだろうか。工場排水による場合は、その排水によって、かんがいされる水穂の根から水を通してカドミウムが吸収されるのでございますが、オカボである麦や野菜には比較的カドミウムが入りにくいのでございます。これに反しまして、排煙からの大気汚染によります安中では、米の中のカドミウムは比較的少なく、麦、野菜、桑の葉などがカドミウムを多く吸収して全滅しているようでございます。そういう関係から、専門家による検査対象は、神通川の前例をならうことなく、米でなくて、麦や野菜や桑の葉などを調査していただかなければならないんじゃないかと思っております。その理由は、工場排水の影響の全く考えられない製錬所の裏の小高い丘陵地、野殿地区の桑の木がすっかり枯れて、これを食べた蚕は糸を吐かなくなって死んだようでございます。 さらに、詳細に安中工場へ入って検査いたしますと、あの危険な第一次鉱滓が野積みにされておる。雨ざらしになっておるのでございます。正門を入りまして左手の小高いところに、あふれ落ちんばかりの第一次鉱滓が野ざらしになっておる。雨が降ればどうなる。もし台風が来たら一体どうなる。この鉱滓は流れ出して工場排水となります。つまり、そこに含まれておるカドミウムが流れ出るのでございます。工場排水は延長放流をしてあるとはいうものの、先ほどの御説明のように、その途中でこの汚水は地下に漏れて、そしてほかの水に入ってきておる、こういうデータが出ているようでございます。 次に、私たちの行ないました安中の検診におきましては、一部ではございますが、肺のある部分に、結核とも思われない、けい肺とも思われないような、ふしぎな陰影を私は見たのでございます。言わしていただけば、「カドミウム肺」であるのじゃないか。もちろん、この推定の証明は、その患者の死亡後、死体解剖によりまして、詳しく肺を上中下それぞれ別個に調べまして、その部分にカドミウムが特に多いというようなことを定量分析しなければ断定できないのでございます。また、骨盤大腿部の写真をとってみますと、ちょうど富山のイタイイタイ病患者の初期の場合に出るウンバウツオーネのごく始まりじゃないかと思われるような所見が認められるのでございます。しかし、もちろん今後の精査を要するのでございます。 で、一方、群馬県で実施されました安中地区の検診では、右の上腕肩甲部のレントゲン写真をとっておるようでございますけれども、一番大事な骨盤大腿部の写真はとってないようでございます。もし、こういうことでございますと、確実な診断を下すことはできないのでございます。また先ほど申しましたように、カドミウムの米の中の定量は十分してあるようでございますが、一番必要な野菜や桑の葉、こういうような定量はしてしないようでございます。 公害病は、近代医学におきましても一番新しい未開発な疾患でございます。御存じのように、産業の発展とともに発生してきた疾患でございます。カドミウムが水に溶けて直接に、また、食べものを通して間接に人体内に入り、腸管を通して体内に入り、各部、各臓器をおかすのでございます。特に骨を著しくおかして、あのような悲惨なイタイイタイ病になるのでございます。このことは世界においても初めてのことでございます。このアブノーマルな事実が日本で初めて起こり、富山で初めて発見されたのでございます。カドミウムの粉末が気管、肺を通して人体内に入り、中毒を起こしたという例は、日本以外の他の国でも報告されておりますが、その患者数はごく少数でございまして、一例報告の範囲を出ないのでございます。そういう事情でございますから、まだまだこういう疾患の研究は不十分な点が多いのでございます。 私、先ほどからここでも出ておりましたが、三月二十七日の、厚生省より発表されましたカドミウム汚染についての見解を拝見いたしましたが、若干その調査方法において、本日私がここで指摘しましたような調査不十分な点があるのではないであろうか。もしそのようなことがあるとすれば、そのようなデータで結論をお下しいただいては危険があるのではないか。私たちは、イタイイタイ病の研究に二十数年を費やしております。小林教授の御尽力によりまして、動かすべからざるデータを学会に発表し、そうして冨山のイタイイタイ病は公害病と認定になったのでございます。もし、いまこれと同じような不幸なことが日本の国の他の地区で起こったら、これはたいへんなことだと心配いたしております。 時間がございませんから、結論を申し上げたいと思います。 対馬も安中もカドミウムに汚染されております。そうして、この汚染された地区に患者が発生しつつあります。富山のように、手足の骨が七十二ヵ所もポキポキ折れるあの悲惨な末期の重症イタイイタイ病患者が出てしまってからでは、時期はすでにおそきに失するのでございます。いたずらに住民に不安を与えないという政治的配慮はまことにけっこうなことでございまして、私も全く同感でございます。しかし、そのために正しい学問が少しでもゆがめられることのないようにお願いしたいのでございます。予防医学は、患者発生防止にあらゆる手段を尽くしていただきたいと思います。政治は、国民の健康を守るために、公害の防止にき然たる態度をとっていただかなければならないと思っております。 終わらしていただきます。
○委員長(加藤シヅエ君) ありがとうございました。参考人の皆々さま、御苦労さまでございました。 以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。 これより質疑に入ります。 参考人及び政府側に対して質疑のある方は、順次御発言をお願いいたします。
○黒木利克君 それでは高柳さんにお尋ねしたいと思いますが、先ほどの御発言を聞いておりますというと、安中にはすでに公害が起こらぬのがふしぎだ、人体への影響が現にある、イタイイタイ病の発生中だ、進行中だ、重大な問題だというような御発言がございました。実は、ことしの二月二十三日の朝日新聞を見て、私もショックを受けたのでございますが、きょうの御意見の御開陳と同じように、安中地区にイタイイタイ病が進行中だというような談話が取材されております。これは、最後に萩野さんがおっしゃったように、住民を脅かすことが本意ではないんだ、予防医学というか、そういうことは事前に手を打つ必要がある——これは人命に関係がありますから、まことにそのとおりでございますが、しかし、こういう発表につきましては、相当な根拠というか、学問的なやはり理由が明らかでありませんというと、住民は非常に鋭敏で、おびえておるわけでございますから、その辺のかね合いはむずかしいわけでございますが、私はそういう意味で、高柳さんがおやりになりました調査について、どういう御根拠があるのか、二、三お伺いしたいと思うのであります。 と申しますのは、カドミウムの研究班長の重松さんからの意見の御開陳で明らかになりましたように、このカドミウムが食品にどれくらい含まれておるかとか、あるいは、この暫定基準と申しますか、重松さんは暫定基準というのもどうかと自信がなくて、暫定指導基準も、判断の尺度なら現在においては可能だが、というような、非常に慎重な御発言がございました。この問題は世界にもあまり例がない。あるいは安中ではまだ半年しか研究なさっていないというのでありますから、こういうことで、どのような根拠があるかということを問うのもどうかと思いますけれども、しかし、一応われわれ一昨年来、この問題についてはこの委員会で勉強いたしまして、かなりの知識も持っておるわけでございますが、そういう知識から、ひとつ安中における高柳さんの御調査のやり方について二、三お伺いして確かめておきたいのでございます。 第一点は、新聞では六十四名の検診をなさった西岩井地区でございますが、それから今日の御発言では、北野殿地区というのですか、百二十一名の検診をなさったという御報告でございましたけれども、一体これはどのような目的でおやりになったのか。つまり、イタイイタイ病の調査をするためにということでおやりになったのか、あるいは単に希望者いらっしゃいというようなことでおやりになったのか。その辺の、検診をなさった、人々をお集めなさった目的というか、あるいは検診に来た人たちにどのような趣旨をおっしゃったのか、その辺からお伺いしてみたいと思うのです。
○参考人(高柳孝行君) お答えします。 その地域でカドミウムの公害問題が問題になったのは、県会で、安中東邦亜鉛周辺でカドミウムが富山に次いで多く検出されているということが問題になりまして、それが地域住民の耳に入りまして、それならば健康について見てもらいたいということが私たちの病院のほうへ要請がありました。その要請に基づいてやったのが検診であります。お話のように、カドミウムによる汚染、それを検診するために私たちは特にやったわけではありません。ということは、県では四十歳以上の人を成人検診という名目でやっています。しかし、私たちは、二十歳以上の人、要するに成人を対象にしてやったわけです。そういう意味では、地域の健康状態がそれではどういうことになっているのかということが目的で、まずやったわけです。その後さらに地域の要請がありまして、北野殿地区、現在では、いままでの先生方の分析の結果でもいろいろカドミウムあるいはその他の重金属によって汚染された地域でありますが、そこでは全戸に集団検診をやるという回覧を回しまして、希望者を募っております。北野殿地区の百二十一名については、大体対象人口の三〇%をやっております。その中には、四十歳以上でなく、二十歳以上の人はすべて対象になっております。——以上でよろしいですか。
○黒木利克君 やはり、その調査は小林先生の本にもございますけれども、対照グループと比較してというのが常道だと思うのでありますけれども、一体対照グループというものをどんなふうにおとりになっておったのか、対照グループはおとりになっていないのかどうか、お伺いします。 それから新聞を見ますと、先ほどの御発言もございましたが、尿の検査をなさっておりますけれども、この新聞にもある、群馬医大の先生でありますが、辻という教授が、単にたん白が尿の中にあると言うても、農村では農夫症という、尿にたん白が出てくる場合が多いのだというような反駁をなさっておるようでございますが、われわれ審議会でも、いろいろ専門家からの御意見を聞いて勉強したところによりますと、尿のたん白だけではなしに、尿の糖、たん白がいずれも陽性で、血圧は正常だというのが一つのカドミウム患者の特色だというふうに聞いておりますが、一体安中の検診の場合に、そういう血圧の関係まで調査なすったのかどうか、お伺いしてみたいと思います。
○参考人(高柳孝行君) お答えいたします。 イタイイタイ病と慢性カドミウム中毒というものの理解のしかたが、ちょっと納得できないのですが、イタイイタイ病というのが、萩野先生も言われるように、四期五期のことを指しているわけです。カドミウム中毒は、もっとその先の一期二期三期があるわけです。ですから、イタイイタイ病がないというのと、カドミウム中毒がないというのとは、同じじゃないと思うのです。その点、御理解お願いしたいと思います。 さらに、農夫症との関係ですが、農夫症は一つの独立疾患ではないわけです。八つの症状を組み合わして成っているわけでして、その農夫症といわれる人の基礎疾患には何があってもいいのです。たとえば、高血圧あるいは心臓病、腎疾患、貧血、そのほかの疾患があっても、それに関係なく一定の症状をある点数以上持っていれば農夫症というわけです。だから、農夫症の基礎疾患にカドミウム中毒があっても、決してふしぎではない。そういう意味で、私たちも集団検診を通して農夫症調査をやっております。その結果は資料の中には入っていないけれども、一応御報告いたしますと、二十歳代の特に女性について見ますと、平均の農夫症総点数は〇・七五です。三十歳代になりますと一・七七、四十歳代三・六〇、五十歳以上になりますと四・一〇。ですから、農夫症といわれる中には、基礎疾患としてのカドミウム中毒があってもいいわけでして、五十歳以上の四・一〇という数字は、農夫症として何らかの基礎疾患があると考えられる場合の点数に近いわけです。そういう意味で、農夫症というのは一つの症状をあらわした病名じゃないわけでして、だから、カドミウム中毒と農夫症というものを同じレベルで、農夫症かカドミウム中毒かということは全く意味のないことだと思います。 以上です。
○黒木利克君 ちょっと、カドミウム中毒とイタイイタイ病は違うのだというようなお話でございますが、カドミウム中毒が三期とか四期とかになればイタイイタイ病だという御説明でございますが、ともかく、このカドミウムによる中毒の患者であるということを明らかにするには、やはり一つの診断基準みたいなものがなければならぬと思うのであります。富山県のイタイイタイ病の専門家グループによる審査会の診断基準というのが、われわれも聞いたのでありますが、萩野先生も参加なさっておつくりなさったのだと思いますが、そういうような診断基準を当てはめてみられたことがあるのか、あるいはこういうようなカドミウム中毒なりイタイイタイ病の診断のための必要な検査というものをすべておやりになって、こういう御発表をなさったのかどうか、この辺のことが一番私ども問題とするところでございますが、その辺はどうでございましょうか。
○参考人(高柳孝行君) お答えいたします。 イタイイタイ病の診断基準というのはあります。しかし、安中にはいわゆるイタイイタイ病は現在ありません。萩野先生も言われるように、いわゆる慢性カドミウム中毒の初期症状と思われる患者さんというか、検診の結果からはそういう傾向があるということをぼくたちは言っているわけです。厚生省の今度発表いたしました資料の中にも、慢性カドミウム中毒の初期の診断、早期診断の確立が今後望まれるということがありますように、慢性カドミウム中毒の初期診断学というものはいまだに確立されていないわけです。ですから、それに基づいた検診がされなければ、カドミウムによって人体がおかされている心配がないということは全く言えないわけでして、現実に環境の汚染がある、さらにそういうカドミウム中毒の症状を持った人がいる、とすれば、もちろん診断基準が早急に確立される必要はあるのですけれども、カドミウム中毒として今後観察していく必要が十分あるわけです。そういう意味で私たちは早期診断基準というものを学者の先生方に確立してもらいたいし、私たちもそういう意味ではこれからも努力をしていきたいと思っているわけです。
○黒木利克君 大体わかりましたが、ただまあ新聞ではイタイイタイ病と認められる患者が多いというようなことが記事に載っておるものですから、そういう御発言があるようですからお伺いしたのですが、ただいまの御答弁お聞きいたしましたからわかりました。ただカドミウム中毒にしてもイタイイタイ病にしても、一応の診断基準的なものがあるわけですから、そういうものを当てはめてみて判断を下して公になさらないと、いろいろやはり、先ほどおっしゃったように、住民が非常におびえるわけですから、そういう点を懸念して申し上げたのでございます。 この高柳さんの研究の結果は、学会に発表なさったり、あるいは県当局等に何か資料でも御提出になっておるのでありましょうか、お伺いしたいと思います。
○参考人(高柳孝行君) 特に学会にも県にも資料は提供しておりませんが、何らかの形でだいぶいろいろなところで手に入れているようです。
○黒木利克君 それじゃ最後に、小林さんの意見の御開陳と石崎さんの御発言とちょっと食い違いがあったように気がついたのでございますが、石崎さんは、自然食品中のカドミウムというものがあまり人体に影響がないというような御発言、それに対して小林さんは、人体に大いに影響があるという御発言で、それは小林さんはお医者さんでないのですから、人体への影響というものの発言の権威というものはお医さんよりも少ないとは思いますが、ちょっと食い違いがあるようで、われわれどちらがほんとうかなあと思うのでございますが、その辺のところ、どちらでもけっこうでございますから、お教え願えれば幸いでございます。
○参考人(小林純君) 先ほど私が計算しましたように、神通川の水の中のカドミウムは厚生省の発表のように、あんな過大なものでないということになりますと、米からとったカドミウムのほうがはるかに大きいということで、ですからおもな原因は米であろうということを申しましたのと、それから現在安中あたりからカドミウムを含みました米を取り寄せましてネズミを飼っておりますのですが、そういったカドミウムを含んだ米からは動物体内へのカドミウムの集積が非常に大きい。つまりからだへカドミウムがだんだんと濃縮されていくということを申し上げたわけであります。
○黒木利克君 それでは、安中では土壌中のカドミウムの含有量が神通川流域に比べて高いのに米の中の含有量が神通川のほうが低いのはどういうわけでしょう。それから、先ほどの人体への影響について金沢大学の先生にもお伺いしたいと思います。
○参考人(石崎有信君) 米のカドミウムがはたして有害か無害か、私これはぜひ早く突きとめねばならぬ問題だと思っておりますが、いまのところおそらく安全だろうと申し上げた根拠、それは、ネズミで実験いたしますと、小林先生がおっしゃるように、水の中に入っているものとほとんど同程度に蓄積します。しかし、ネズミと人間とはすっかり違います。で、これに私の推定に有力な判断が出てきたのですが、アメリカで豚を使って亜鉛の吸収の実験をやっているのです。それは、穀類の亜鉛は非常に吸収が悪い、穀類だけで豚を養うと亜鉛欠亡症になってしまうという実験があるのです。この亜鉛とカドミウムはそういった基礎的な化学反応ではよく似た物質ですから、おそらく同じに反応してくるのじゃないか。で、ネズミでよく吸収されるが豚では吸収されない亜鉛と同じように、カドミウムの吸収も悪かろうと推定しております。それからもう一つほかの根拠は、現実に神通川流域のイタイイタイ病の新発生は減りつつあるのです。それは新発生はありますが、新しい年齢からはちっとも出てこない。で、米の含有量は下がってはいるだろうが知れた量だと私は推定している。同じ米を食っておっても発生してこないということに一つの根拠がございます。それから小林先生は、水のことを低い濃度になるという御計算ですが、私も一昨年ここで証言しました時代には、小林先生と同じ試算を試みまして、とてもに神通川の水では説明がつかないと困っておったのです。しかし、その後、第一にこれは大きな考え間違いがあったと思ったのは、雪解けの大きな増水期と八月の渇水期と水量はすっかり違うのですが、出てくるカドミウム量は同じなのです。ですから、濃度はうんと違ってくる。カドミウムの有害性は、何も年中飲まなければならないことはないのです。たまにぐっとこういうものを飲んだって同じに作用をするのです。それで、季節的に非常に大きな変動が考えられることと、もう一つは、先ほど申し上げた杉の木の所見なんであります。なぜ杉の年輪があんなに狭くなるか、発育が阻害されたか、それは地下水汚染を考えるより考えようがないのです。そうなりますと、杉さえまともに太らない水を住民が飲んだということが一番大きな原因だと私は推測したのであります。
○委員長(加藤シヅエ君) ちょっと速記をとめてください。 〔速記中止〕
○委員長(加藤シヅエ君) 速記を起こしてください。
○参考人(小林純君) ただいま石崎先生から、ネズミと人間とでは違う、だからネズミではカドミウムは確かに体内にたまるけれども人間ではたまらないのじゃないかと、こういうお話があったのですが、ところが、人間のじん臓、肝臓というものを分析してみますと、非常にたくさんのカドミウムがたまっております。もう日本国じゅうだれにもたまっておりますし、生まれたときの赤ん坊には全然カドミウムはありませんが、五十歳、六十歳になると非常にたくさんのカドミウムがたまっておりまして、たとえばじん臓を灰にいたしますと、その中には何千PPMというカドミウムがたまっております。それはふだん私どもが食べます米その他の食物からきているわけでありまして、私どもふだん水からカドミウムは取っておらないのです。ですからやはり日本人の常食である米、この中のカドミウムが海外の米のカドミウムよりも多いということから考えまして、当然これは米から人体にカドミウムがたまったのである。特に日本人はアメリカ人なんかよりもカドミウムが体内にたくさんたまっております。そのことは私どもふだん飲んでいる水からではないということが言えますし、それからネズミと人間では全然違うということになれば、ネズミを使ってのすべての医学的な研究は意味がないということになってまいりますので、ですからそれが違うということはちょっと石崎先生は早計な御判断じゃないかというように考えます。 それから神通川の米の中のカドミウムが昔もいまも変わっていないのに発病は現在減っているというお話がありましたのですが、神通川流域の米の被害は、カドミウムによる被害は、昭和三十年に鉱山がダムをつくりましてから非常に減っております。あの当時は、米の水田の水口では非常に激しい鉱毒が発生しておりまして、それが私どもが調査した報告が戦時中に出ております。その当時に比べますと、現在は米の被害は全然ないと言っていいほどでありまして、結局ひどい当時は、カドミウムの米の中の含有量は現在よりずっと多かったというように考えられるのであります。だから患者が減ってもあたりまえである。 それから渇水期と増水期とその濃度が違うんじゃないか、神通川の中のカドミウムの濃度が違うんじゃないか、こういうお話でありますが、大体あの辺の農家の話によりますと、雨が降ったりして神通川が増水したときに白く濁った水が流れてきてそれが水田に入ると稲が枯れるんだ、こういうふうになっておりまして、おもに雨が降ったり増水したときにこそカドミウムがたくさん流れてきたわけでありまして、そのことは、私がお配りいたしました小さい紙の一ページ目の上のほうに書いてあります。この上のほうにどういうときに——ダムが決壊したとかなんとかいうようなことが出ておったと思いますが、そういうぐあいに、雨が降ったりしたときに、増水したときにこそカドミウムが鉱山から流れ出しまして、晴天の乾燥したときには廃滓は流れ出ておりません。ですからやはり流量と流れたカドミウムというものは大きな目で見てみれば比例しておった。ですから先ほどの計算では、私は大ざっぱにいいんだ、こういうふうに考えます。
○松澤兼人君 いま米の問題が出てまいりました。自然の状態において米自体にカドミウムが含まれていると考えられるのですけれどもカドミウムが多いか少ないかということによりまして非常に人体に対する影響があると思います。普通の場合、玄米でどのくらいカドミウムがPPMで含まれているか。
○参考人(重松逸造君) 日本の総平均、日本の各府県の農業試験場のたんぼから数点ずつ米をいただきまして二百何点の米を以前に分析したことがございます。その総平均は〇・〇六幾らでしたか、〇・〇七PPM、そういったような値になっております。これは自然に日本のどろの中にカドミウムが微量ながらある。これを吸いますのと、それから肥料にカドミウムが幾分含まれておりまして、特に過燐酸石灰の中のカドミウム、これが多少は影響しているかと思います。特に日本は、御承知のように、肥料をたくさん使う国ですから、そういう肥料からのカドミウムも多少由来しているかもしれない、こう考えます。
○松澤兼人君 重松先生にちょっとお伺いいたしますが、工場で主たる原料としてカドミウムを使っている、そういう場合に、その排水からカドミウムが流れていって、それが農作物なりあるいはそれを利用した場合、何か人体に影響がございますか。
○参考人(重松逸造君) ちょっとただいまの御質問の意味は、工場排水中にカドミウムが含まれておって、それが農作物などに被害を与えるかという御質問でございましょうか。 これはまあ、工場でいろいろな方式でカドミウムの精錬をやっておりますが、その処理の方法によりまして、またその処理が終わってからの排水のあと始末のしかたによりまして、実際にその川などへ放流する排水中にはかなりの濃度のカドミウムから、また処理さえよければ非常に微量のところまで下げ得るというのがいままでの研究班のデータで示されておるわけであります。 その意味で先ほどちょっと御報告申し上げましたように、今回調査いたしました範囲の工場排水では、宮城県における鉱山の排水が一番高濃度でございまして、あとの群馬県と長崎県の鉱山は、神岡鉱山の場合あるいはそれ以下の微量であったということであります。もちろんこれは排水の濃度が何PPMといいますと非常に高いようでございますが、現実にはその川の水で薄められておりますので、先ほどの議論とも関連いたしますが、その川の流量というものとの関連を考慮した上で実際に水田土壌、農作物についての影響を考えていかねばいけないと思います。 いずれにいたしましても、いままでの調査では、排水にはともかく自然にある川のカドミウム量よりはたくさんの量が流し出されておりまして、そのためにやはり下流地域は影響を受けている、土壌も影響を受ければ、それに伴って農作物も影響を受けているというデータがいままでの研究班の成績であります。
○松澤兼人君 私の質問のしかたも悪かったわけなんですけれども、いままでお話を聞いておりますと、神岡鉱業所なりあるいは安中製錬所という場合ですけれども、カドミウムを主たる原料としまして工場で何かほかのものをつくる、そういう場合にやはり排水の中にカドミウムが含まれるということは当然あり得ることかと思いますけれども、そういう鉱山や鉱業所、製錬所ではなくて、そういう工場が主としてカドミウムを使用して、その結果排水の中にカドミウムが流し出されて問題を起こしたという、そういう事例を御調査になったことがございますか。
○参考人(重松逸造君) これは、当研究班は直接にはやっておりませんが、いま御指摘のような事例は一つ二つございます。 本来、鉱山、製錬所というのはカドミウムというのを取るためにやっておるのでございますから、少しでも流したくない。それに対しまして、そういうほかの目的の工業生産にカドミウムを使っている、たとえばカドミウム電池、カドミウムメッキ、そういう工場では排水中にやはりカドミウムを出していきまして、そのために農作物に被害を与えるということはあり得ると思います。 昨年は、その意味では洲本で農作物あるいは水田土壌に相当高濃度のカドミウムが出たという報告がございますし、それから当研究班が途中から実施いたしました諏訪湖の場合も、カドミウムメッキ工場からの排水で一応あの辺の土壌あるいは魚介類も汚染されておるというデータも出ております。ただ、それらとまた人体の結びつきという点は先ほど来のお話のように、まだ十分は究明されておりません。
○松澤兼人君 もう一つ重松先生にお尋ねいたしますけれども、この二段式中和槽とかあるいはろ過槽とかというようなものの設備をいたしましたら、相当程度カドミウムをとることができるかどうか。 もう一つは、ろ過槽あるいは中和槽というものはどうしてもカドミウムが沈でんするといいますか、たまって、そのあとの処理というものがやっぱり問題になるのじゃないかと思うのですけれども、その辺のところはいかがでしょうか。
○参考人(重松逸造君) その点につきましては、私もしろうとで意見を申し上げるわけにはまいりませんが、御指摘のように、そういう非常にいい設備で中和したり、沈でんをしました場合の、そのあとの廃滓をどう処理するかというのは、おっしゃるとおり非常に大問題だろうと思います。
○松澤兼人君 萩野先生にお伺いしますが、これはいただきましたNO.1と書いてございます一ページ目ですけれども、これは全く先生、簡単にモデル的にお書きになったので、「カドミウムの主な侵入経路」というのがありますけれども、「主な」と書いてありますから、そのほかにもあるわけだと思いますけれども、先生の御承知されている範囲内で呼吸器というものを主たる侵入経路としてあげなければならないという、そういうイタイイタイ病なりあるいはまた先ほどお話がありました慢性カドミウム中毒といったようなものは他に事例がございますか。
○参考人(萩野昇君) 安中の場合に、呼吸器をおもな侵入経路と書いたのでございまするが、あとの説明で若干水からも、というふうにつけ加えてあります。カドミウムで呼吸器から入った事例は日本にはございません。なぜかと申しますと、現在、日本のカドミウムの製錬様式が浮遊法、岩石を縦軸としてクラッシャーにかける。ボール・ミルにかける。その前の時点で水に入れてしまうのです。ですから、粉末として出ないのでございます。そのまま流れますから、工場排水の中に含有される可能性が非常に多い。安中の場合は、乾燥様式と申しますか、水蒸気を蒸発させるのです。そうしてとる。若干様式が——一応は水に溶かすのでございます。浮遊法にするのでございますが、その途中の加工方法が違っております。ここに水蒸気と一緒にその大きい煙突の中に、数万、数十万の球がございます。蒸発のときにその球にぶつかってミネラルだけが吸着し、落ちる。水蒸気だけがたつ。理屈はけっこうでございますが、実際はそうはまいりません。ここに呼吸器として書かしていただいた原因があるわけでございます。これは一つの簡単なモデルでございます。よろしゅうございましょうか。 海外には文献がございます。これは水溶浮遊法、いわゆるそういう方法をとらないで、工場の中で亜鉛蓄電池工場あたりでカドミウムを扱っておりまして、粉砕いたしました気泡を吸い込みまして、ブラウン——髪の毛の茶色の御婦人が体じゅうイタイイタイと泣いている。あるいは粉末を吸いまして、肺水腫を起こした。そういう事例がございます。日本では、私は寡聞にして見てもおりませんし、聞いてもおりません。以上でございます。
○松澤兼人君 先生が排煙のほかにやっぱり水もかかわりあっているというふうにおっしゃっているのをよく覚えているわけでございます。この呼吸器を主たる侵入経路としてそういうカドミウム中毒が起こるというようなことは、他に日本においてはその事例がないというお話でございます。よくわかりました。 そこで、萩野先生にお伺いいたしたいのですが、先ほどの病状の進行の段階ですか、先ほど高柳さんがおっしゃった病状は、これは集中的にやれば多少の経費をかけて、萩野先生がうしろのほうに「イタイ・イタイ病の治療法」というふうに書いてございます。こういうふうに治療を、もしいたしましたとすると、安中の場合はそれ以上に進行しないようにできる、あるいは完全に治癒することができる。その点につきまして、萩野先生と高柳先生にひとつお伺いしたいと思います。
○参考人(萩野昇君) お答えいたします。 まことにありがたい御質問でございます。私、こういうものをここへつけまして何ら報告いたさなかったのでございます。その意味がどこにあるかということを御指摘いただいたのでございます。石崎先生お帰りになる時間、ほかの質問の方おいでなさるのではございませんか。——ではちょっとだけ。実は私は御存じのように、先ほど黒木理事から御質問がございました——私じゃなくて、高柳先生のほうへ。私は学会にも、新聞紙にも、私が安中へ参りました経過は一切発表いたしておりません。と申しますのは、学会で発表しようと思いまして発表していないのでございます。ただ今回は参議院の参考人として出た関係上、学会に発表以前に若干漏らしたのでございます。それで、先ほど申し述べましたように、安中には軽症があるとここに書いてありますが、これは軽症と書いてございますけれども、患者の軽症でございまして、イタイイタイ病の軽症とは書いてございません。それで、この軽症というのはむずかしいのでございます。この程度のものであれば、カドミウムの慢性中毒によっても起こり得る、それ以外の原因でも起こり得る。ですから、学者といたしまして、これをはっきり学会報告することには、これらの患者の死体解剖をしないことには、体内からカドミウムを見つけないことには、その検査によりましてこれがカドミウムであるということをはっきりつかめないことには、私、橋本課長の前に出られないのでございます。いずれつかみましたら持っていこうと思っておりますが、それまでは持っていきません。 それで、この時点においてなぜこう書いたかと申しますと、私、結論で申し上げましたように、予防医学というものは違っております。われわれの第一線では、開業医として熱が出ている、下痢している、われわれには赤痢と診断する権限が与えられております。私たちが赤痢と診断いたしますと、即時にこれは隔離所に隔離される。もし細菌検査の結果赤痢菌が出なくても、私は厚生省からおしかりを受けないのでございます。予防医学、それと同じ意味において私はまだ根拠はございません。しかし、予防医学自体がそういうものでございますから、治療してやっていただきたい。もしこれが慢性カドミウム中毒であって、イタイイタイ病の分野に入る軽症であると仮定せば、必ずよくなります。彼女たちは元気になって楽しい、最底の生活を続けていくだろう。このまま放置すれば、たいへんなことになります。ここに私、今日、先ほど申しましたように、データそろっていない、整理していない。しかし、この第一表のようなものを書いて、非常に粗雑ではございますが、これは先ほども御指摘になりましたように、呼吸器から入るのかとおっしゃいますと、ほんとうのところは、これは消化器でございます。しかし、わかりやすくするために、失礼でございますが、皆さんしろうとさんでございます。われわれ第一線の開業医、二十数年間取っ組んできた私が簡単にしろうとさんに御説明するときにはこう書いたほうがわかりやすいだろうと思って書いたので、医者の間ではこれは通りません。学会にはこういうものは出しません。きょうは参議院の方に御説明するために……、(笑声)そういう意味でまことにいい御質問でございまして、萩野参考人感謝いたしております。
○委員長(加藤シヅエ君) ちょっと速記をとめていただきます。 〔速記中止〕
○委員長(加藤シヅエ君) 速記をつけてください。
○田中寿美子君 一問だけということですので。 石崎先生は、神通川の流域からの亜硫酸ガスがカドミウムを溶かすところのいわゆる媒体説というのをお出しになったと思うのですね。実は安中の東邦亜鉛、私も去る二月末に参りました。あそこは東邦亜鉛の会社から七百メートルくらい離れた丘陵地にあります。あそこは亜硫酸ガスが明らかに、工場のほうは九九・九%出していないといいますけれども、ほんとうにみんなぜんそくが起こっています。私も非常にのどを痛めました。そこであそこの土壌に排煙からのカドミウムが非常にあるということは小林先生かねて強調していらっしゃるところでございますが、そうしますと、石崎先生のおっしゃる排煙中の亜硫酸ガスが亜硫酸となってカドミウムを溶かして土壌の中に入る作用があり得る、こういうふうに先生の説は考えてよろしゅうございますでしょうか。
○参考人(石崎有信君) それはかなり違うんです。神通川の場合は六十キロ上流にある話です。廃滓の今日の推定量で五百万トン、それだけためてある。そこへ亜硫酸が作用して溶かし出したという話なんでして、安中の話は煙突も認めませんし、それは直接出て、亜硫酸が直接その地区に影響しているのであって全然話が違うんです。ですから、安中の亜硫酸がどういうふうに作用しているかは私何も申し上げておりません。
○多田省吾君 石崎先生は、カドミウムを亜硫酸が溶かすという新しい説を発表されたわけでありますけれども、もう一つ考えられることは、いわゆる中性洗剤ABS、アルキルベンゼンスルフォン酸ソーダ。ハードなやつが界面活性剤としてカドミウムを溶かすということがあり得ないのかどうか。先ほど石崎先生が、水と空気が人体に大きな影響を与えると、空気の場合はどういう影響を与えるか、これをお聞きしたい。
○参考人(石崎有信君) 界面活性剤については、私何も勉強したことありませんからお答えしかねるのですが、ともかく神岡鉱山に積んである廃滓は、一ぺんその活性剤を働かして溶けるものというか、浮遊するものをとったあとなんですから、しかもそれが長年積んでいる、野積みになっている上に働いたということですから、この際界面活性剤を考えることはないと私は考えております。 それからもう一つは、要するに、カドミウム中毒が起こっております外国の報告その他で、空気中のじんあいの形で浮遊してそれを吸い込んだという形が、外国の報告はみんなそれなんです。それでそういう形でじんあいの形で浮遊するものを吸い込むという形が十分考えられると申し上げただけであります。
○内田善利君 私の質問も先ほど田中委員がされたわけですが、亜硫酸ガス媒体説ですけれども、対馬にしても安中にしてもカドミウムあるところ亜硫酸ガスがあるわけですが、亜硫酸ガスが水に溶け込むときに一緒に溶け込むのか、その辺をお伺いしたいのですが、またこのことについてまことに恐縮ですが、小林教授にも見解をお聞きしたいと思いますけれども、参考意見として。
○参考人(石崎有信君) 私が亜硫酸ガス説を思いついたのは対馬と神岡の差なんです。対馬の廃滓の積んである谷のところに、横に林が青々と茂っているんですね、廃滓と隣接して。ところが、神岡鉱山の古い廃滓場のほうは、その両側のがけがすっかり赤茶けて焼けておる、それでそれを思いついたのです。で、実はこれ小林先生が、昭和十八年に堆積場の写真をおとりになったのを持っていらっしゃってそれを見せていただいた。そのときに廃滓の積んであるすぐ横に煙突が高々とそびえている、あの煙突、一体何が出ている煙突だろうと考えたのです。夜汽車のベッドの中で眠れぬままに考えた。あそこから亜硫酸が出ているんじゃないか、そうすると、それは雨に当然溶けますわね。あるいはぬれたところへ亜硫酸ガスがかかれば当然作用しますね。当然溶けて出るのじゃないかということを思いついて、帰ってさっそく実験してみましたら、簡単に溶けて出てくるのです。それからもう一つ、これを私どもの理学部の分析化学の木羽教授に話しましたら、それには有力な文献があると、木羽さんのところの助教授の方が、これはほかの銅山の鉱石なんですが、それを筒の中へ入れておきまして、それに毎日水を少しずつたらしてやるのです。そうすると、そのまま毎日たらしていると、その下へけっこう亜鉛が溶けて出てくる、水だけで。それは風化現象です。そういうことを実験しているから、それに亜硫酸がまざれば溶けて出るのは当然の話です。その対馬の、あそこの廃滓のためてあるところから出ておる小川に亜鉛もカドミウムもかなりの濃度が見られますが、それからまた、その井戸水もほとんど同じように出てきます。それはいま水を少しずつ入れたと同じ現象で風化で溶けてきた程度です。それが亜鉛にして二〇PPM、カドミウムにして〇・二PPM近い数字ですか、水だけでそれだけ出る、そこへ亜硫酸が作用すればうんと高くなることは当然だと私は思う。
○参考人(小林純君) われわれの考えておりますことを申し上げますと、神岡鉱山が昔亜硫酸ガスを出しておりますあのあたりの山がはげておりますことは御承知のとおりです。しかしながら、大鉱山としましてあの程度のはげ方は非常に少ない、たとえば秋田県の小坂鉱山などへ参りますと、もう見渡す限り青いものが全然ない。非常なものすごい荒れようであります。そういった場合に、石崎先生のおっしゃるように、岩石や土が一体煙に溶けるかどうか、溶けてまざっていくかどうかという問題が起きてまいるわけでして、特に神岡鉱山の鉱滓の中には石灰分が非常にたくさんあります。アルカリ性を呈しております。ですからカドミウムが煙によって溶けます前に、大量の石灰が煙によって溶かされましてまず酸性になることが前提となります。ところが、堆積物は現在まだ石灰がたくさんありまして、アルカリ性ですから、煙によってカドミウムが溶けるには酸性になるのが前提でありますが、酸性になっておらないということや、あるいはまた、煙突の近いほどカドミウムが多いのです、実は。堆積場は神岡鉱山の第一堆積場と申しまして、一番古い、一番下の堆積場の近くに煙突がある、この第一堆積場が一番廃滓中のカドミウムが多くて、煙突からだんだん遠く離れて第二、第三と遠くなるに従いまして堆積物中のカドミウムが少ない。そういたしますと、石崎先生のお話とちょうど逆になってしまうというようなことが実はありまして、石崎先生にえらいたてついて申しわけないのですけれども、私にはなかなか煙によってそう簡単に岩石というものは溶けないんだと、こういうふうに——私は大学時代に土壌学を専攻しました関係でそういうふうに考えますし、かりに溶けたとしましても、神通川の水量は非常に大きな水量ですから、それが下に影響することはまずない、そういうふうに考えます。
○小笠原貞子君 昨年の十一月八日の朝日新聞にこういうふうに出ているんです。金沢大学で開かれたイタイイタイ病の診断委員会が、萩野先生がお出しになった対馬の患者のレントゲン写真を見て、これはイタイイタイ病だと石崎先生が判断されて初めて公表されたと、こういうのを私見ておりましたし、また最近、三月二十八日の第三十九回日本衛生学会で先生が特別講演をなさいました中でいまの亜硫酸ガスのことをお話しになって、神通川流域にイタイイタイ病が多く、しかも重症だった、それに比して対馬の場合には亜硫酸ガスが排出されていなかったからイタイイタイ病が軽症で済んだ、こういうふうなお話をされているというのをこれも新聞で読みました。今度は厚生省の見解というのを見ますと、三地区にはイタイイタイ病というのは発生していない、こういうふうになって出てきたわけなんで、その辺のところ、先生はイタイイタイ病というふうに公表なさったあとでございますから、その辺の食い違いをどういうふうに理解したらいいのか、どういうふうに先生のほうでお考えになっていらっしゃいますか、そこだけお伺いいたしたいと思います。
○参考人(石崎有信君) 萩野先生が持っておいでになりましたレントゲン写真について、私はレントゲン写真について何も専門家でございませんから、私が判定したものではございません。その場に居合わせたその診断委員が、これはイタイイタイ病と同等なものと見ていいと皆さんおっしゃったから、私もそれを御紹介しただけでありますが、で、それはすでに数年前になくなった方のでありまして、四十一年に私どもの教室から行って調査したときにはなかったということを先ほども申し上げただけでございます。おそらくあれだけの汚染があれば、イタイイタイ病といえるものが発生しておって一向ふしぎがない、過去にはあったことは事実だと私は思います。 それから何でしたか。
○小笠原貞子君 先生がこれはイタイイタイ病であるというのを公表されたという記事が出ていますから、だけれども、先生はそれは御自分で判断したのじゃなくてという御説明なら、あれは朝日の記事のほうがちょっと間違ったということになるわけでございますね。それならそれでけっこうです。どこで食い違ったかなと私はわからなかったものですから。
○参考人(萩野昇君) それにつきましてちょっと申し上げたいのですが、よろしゅうございましょうか。——ただいまの御質問まことに的を射た御質問でございます。私、失礼ですけれども、しろうとさんだと思ってまいりましたけれども、なかなかくろうとさんのようです。 御説明いたしたいのは、私がイタイイタイ病と言った時期のイタイイタイ病は、手足が七十数ヵ所も折れて、アクロバットダンスをしているような悲惨な患者だった。その後の研究によりましてだんだんイタイイタイ病のベールがぬげてまいりまして、この程度ならイタイイタイ病と言っていいのじゃないか、こういうふうに理解が深まってきたのでございます、予防医学の観点から。そこで、私が小林教授のお供をして対馬へ行ったときに、私自身が富山のイタイイタイ病とはニュアンスが若干違うと思った。これは事実なんです。しかし、持って帰って、ながめておればながめるほどイタイイタイ病になっている。というのは、そもそも私自身がどんどん見ているんです。そして、この状態のこれがイタイイタイ病と言えるかなと思って見ている。患者は経済的に通えませんから、二、三年後来てみるとそれがりっぱなイタイイタイ病になっている。そうすると、二十四年間一緒に私は患者と生きておりますから、あれがやっぱりイタイイタイ病だったのだ、こういうことで富山県に対しまして強く発言いたしました。そこで、その時点においては、金沢大学の専門の方がイタイイタイ病じゃないと御判定になった。ごもっともでございます。イタイイタイ病を見たことのない方が判断されるのだからごもっともなことでございます。私は患者とともに生きておるのでございます。私は金沢大学は母校であります。しかし、学問の上でははっきり言いたい。学長にさからおうという気持ちは毛頭ございません。そこで、だんだん月日がたちますと、ほかの診断委員の方も、だんだんイタイイタイ病というのをおわかりになってきて、先ほど申し上げましたように、昨年の秋の診断委員会では、私は、悪いことでございますが、黙ってこの写真を出しました。これは対馬のだと言って出しますと案外反対を食うと思いましたから、黙ってすっと出しましたら、イタイイタイ病ではないかという御発言だった。そこで、それを代表されまして、その責任者である石崎先生から、これはイタイイタイ病であったという発言があった。つまり朝日新聞の記事も間違っていないということを御訂正いたしたいと思います。 それから、なぜそんなに狂いがあるかというと、診断委員の方が御勉強なさったのじゃないか、患者とともに生きておいでにならないので、金沢に一年に一度か二度おいでになる。それで御勉強なさって、やはりイタイイタイ病という意味の解釈が違ってきた、こういう意味で私は私の信念は曲げないつもりであります。
○委員長(加藤シヅエ君) それではまだ時間がございますから、石崎参考人にまだ半まで待っていらっしゃっていただきますから、どうぞ。一回終わりましたから、今度は最初の順序にしまして、田中委員に御質疑に入っていただきます。
○田中寿美子君 それでは、いま石崎先生に排煙の問題を出したものですから、ついでに小林先生、排煙の中に含まれているカドミウムが安中の場合に土壌に入ってそして野菜その他に、特に穀類に相当な影響があるのだというふうなことを強調していらっしゃると思うのですが、排煙がカドミウムを運ぶやり方というのは、どういうふうにそこに入っていくというふうにお考えになっていらっしゃるか。 それから厚生省は排煙に関しては調査をしなかったのですが、今度のこの調査では。それで、そのことは認めていらっしゃるわけです。衆議院の公害特別委員会でもやらなかった。今後やると言っていらっしゃるわけですが、排煙にカドミウムが含まれて、どのようにして土壌の中に運ばれるか。小林先生いかがですか。その経路を御説明いただきたいと思います。
○参考人(小林純君) 先ほど私の資料で申し上げましたとおり、この桑の葉を鉱山の煙突から距離別に調べたところ、あのとおり非常にはっきりした関係が出てまいったということ、それからまた、この鉱山からおよそ六百メートル程度のところで垂直的に土層を調べたところ、表面の十センチばかりのところが非常にカドミウムが多くて、三〇PPM程度の値が出た。ところが、十センチよりも深くなりますと、急激にそれが減っていったということがありますので、これはいずれにしても煙が運んだものである。なぜならば、私が調べました山の手地区は鉱山の排水は入らない、鉱山の排水より高いところにあります。特に山の桑畑ですから、排水は全然関係はない。しかもそういった距離別にずっと差が出るし、また垂直に見ても差が出る。というのは、もう煙以外に判断のしようがない、こういうことになるわけであります。そこで、そういうふうに判断したわけでありますが、現在鉱山は最近設備をよくしてあまり出しておらないとおっしゃっているのですが、これは結局鉱山が始まって以来のものがここにどろの上に集積してきた。ですから現在の分ばかりじゃないのだ、そういうふうに考えられます。ここの五ページの図でさっき申しましたように、同じ薬師堂の墓地というのは目測で約六百メートルぐらいだと思います。それから、その次に安中の岩井の上原とありますね。これは大体千七百メートルの距離です。ここではカドミウムが三・七PPMと、表層のところですが、かなり墓地の三〇、四〇に比べますと減っております。それからさらに二千五百メートルになりますと、三PPMと、これはカドミウムだけではなくて、亜鉛や鉛もみな減っております。それでもなおかつこの薬師堂墓地の深い層のどろよりもまだ多い。それからまた、私どもの研究所のどろよりもまだ多い。こういうような結果になっております。こういったつまり風によりまして煙突の煙が運ばれていって、結局この六百メートルのちょうど半円形、煙突を中心にして半円形を描いた場合に、約十センチの深さのどろの中に三〇PPMのカドミウムがある。半円形が接近すればするほど、カドミウムはたくさんそこに落ちている。遠ざかるに従ってカドミウムはだんだん落ち方が減っていっている。ですから、ずっとこれを計算していけば、カドミウムが煙突からいままでに出た総計というものは全部出てくるわけです。亜鉛も全部出てまいる。そういうことになります。
○田中寿美子君 ついでに、そういう土壌の中でつくられた野菜、これは私、厚生省の調査を見ると、野菜類その他米以外はほとんど全部推定ですね、カドミウム含有量は。で推定というのは一体どういうふうにお出しになったのかと思っているわけなんですけれども、そういうふうな食品がからだの中に入って濃縮されていくというか、蓄積されていくという過程というのは、これはお医者さんのほうがいいかもしれませんが、萩野先生なり、小林先生なりの御意見を聞かしていただきたいのですが、どのようにして中毒症を起こしていくようになっているのか、濃縮の過程ですね。
○参考人(萩野昇君) お答え申し上げます。先ほど小林参考人からお話しございましたように、日本国じゅうの人間を随時死体解剖されまして、この各部、各臓器の中に含まれているカドミウムを御検出された成績を拝見いたしますと、肝臓とかじん臓には驚くべきカドミウムが入っております。それにもかかわらず発病していない人が多いのです。ここに非常におもしろいニュアンスがあると思います。私非常にこの点悩んだのです。と申しますのは、なぜほかの地区の人たちのカドミウムが多いのに発病しないのだろうか。これはカドミウム自体の性質によるのじゃないか。カドミウムという重金属は体内に入りますと非常に排出しにくい。排出する量はとる量よりも少ないのです。ですからたまっていく。ただ、体内にたまってもまだイタイイタイ病にならないのであります。言いかえますと、骨がおかされてこなければイタイイタイ病にならない。じゃ骨のおかされる動機はどういう動機かと申しますと、やはりお産です。胎児の骨はどこからくるか。子供を一人お産みになりますと、歯ががたがたになる。ですから、この地区の御婦人は歯が早期に落ちてくる。高柳参考人のお話にもありましたように、歯が落ちてまいります。これは私たちが過去の学会に報告をいたしておりますが、そういたしますと、この骨がおかされることによってイタイイタイ病になり得るのであって、それなら出産というカルシウムがからだの中から抜ける——子供の骨のために、母親のカルシウムがとれていくのだ。これはどこでもそんなことでおかされるのじゃないか。それはおかされるのでございます。しかし、微量にずっととっておりますと、たとえばバイの中にたくさんカドミウムが入っている。バイは主食じゃございませんから四六時中食べません。たまたま食べる。それが入る。しかし、バイを毎日食べますと食当たりしたり中毒したりいろいろする。しかし、そんなにバイを毎日食いませんから、やはり問題は米である。しかし、それらに入ったカドミウムはいつの日か、たまってまいります。問題は、あの地区においてあの水を飲み、あの米を食べ、あの地区でお産し、三十年のキャリア、つまりお産のときにどっとたくさんのカドミウムを水と米から毎日とった場合に骨に入る。これは先ほど石崎参考人がおっしゃいましたように、昭和十年代のときに多いのじゃないか。その後あの地区に来た人はイタイイタイ病になる様子がございません。ですから、これらに私は原因があると思っております。御質問のお答えに、つまり十分は御説明はできないのですが、そこらにかぎがあるのじゃないかと思っております。 それからついでにお許しを得まして、先ほど石崎先生と小林先生の論争がございました。水と米、亜硫酸ガス——亜硫酸ガスのほうは小林教授の御専門でございますので、私控えさせていただきますが、私は石崎先生は母校の学長でございます。小林教授はカドミウム説を立てていただいた恩人でございます。どちらの味方もしたくないのであります。ただし、学者として事実を申し上げます。ここに富山県の地図がございます。ここに富山市がございます。この地区には患者が出ていない。神通川をまたいで一部こちらにかかっております。全然出ておりません。なぜかと申しますと、富山市の市長がえらかった。神通川の水と井戸水でつくってくれると富山市も全滅だったでしょうけれども、常願寺川の汚染されていない水で水道をつくった。そんなら富山市の人たちは汚染された地区の米を食べないかというと食べております。やはり食べております。この地区の人たちは汚染地区の米も食べておりますが、しかし、汚染されない地区の米も食べております。ですから、一人も出てこない。私はここに出ていないと学会で発表したのですが、その後一人出ました。そうしますと、さっそくマスコミにたたかれました。おまえの出ていないというところから出たじゃないか。おまえの学説は違うのじゃないか。そこで私調べましたところが、重大なことがわかってまいりました。彼女は未亡人でございます。夫をなくしましてからある男の保護を受けている。その彼は本妻をイタイイタイ病でなくしている。そうして本妻がなくなったあと、彼はここに住んでおりまして、ここから富山市へ商用で絶えず入ります。その入り口にいる富山市の彼女を二号としております。彼女は農家でございますからお金がございません。毎日米をやりました。彼女はその米を四六時中毎日毎日食べまして、残った米を近所の富山市民に売って副食を買っている。そういたしましたら、コロニーのように彼女だけが汚染されない地区から出たのでございます。こういうことを考えますと、石崎先生の言われるのもごもっとものように思います。つまり、水が違えば出ないのでございます。しかし、この地区からの米を食べたばかりに出たというのが出てまいります。ですから、こういう事実がございますが、私は米も水もフィフティフィフティのように解している。私は第一線の医師として、患者の発生状況から見た先ほどの水と米との論争の御参考までに状態を申し上げたいと思ってつけ加えたものでございます。
○参考人(小林純君) 私からもちょっと申し上げたいと思います。 先ほど来、米が原因であるか水が原因であるかという論争があるわけでありますが、水銀の場合は、無機水銀でなくて有機水銀が原因であるというふうになっております、水俣病の場合にはですね。ところが、いまここでの論争は、大気汚染とかあるいは水の汚染が原因であるとすれば、無機のカドミウムが原因であって、お米のようなものに含まれる有機のカドミウムは原因じゃないと、こういうことになってくるわけでして、ちょうど水銀の場合と逆になってしまうわけです。ところが、私ども日本人は、この公害地を除けば、その大気からも水からもカドミウムは幾らもとっておりません。全然取っていないと言っていいわけなんです。それにもかかわらず、先ほど申しましたように、五十歳、六十歳になると非常にたくさんのカドミウムが体内に集積してまいりまして、私どもはじん臓を分析すれば、カドミウムを分析すれば死んだ人の年齢がわかる、そう言うてもあまり間違いじゃない、それほどたまるのであります。結局それはふだん水や大気以外から、つまり米からとっているカドミウムが年齢とともに集積した結果であろうと、こういうふうに私は考えるのであります。それからじん臓と肝臓にカドミウムが非常に集積するということを申し上げておるんですが、私どものある分析によりますと、男性の生殖器官に非常にたくさんたまりまして、睾丸あるいは前立腺、そういったところへもカドミウムがたまりますが、アメリカのティプトンという人が実は日本人も入れて非常にたくさんの人の内臓の分析を、重金属分析をやっておりますが、このティプトンという人は女性です。ですから男性のこういう部分は避けたんだというふうに考えられます。実はティプトンの成績にはこの部分は入っておらないんですが、私どもの分析では非常にたくさんたまります。
○田中寿美子君 時間が、まだあとの方もございますが、私非常にたくさん聞きたいわけでございますけれども、時間がございませんから、まとめて問題点だけ言わしていただいて、先生方にお答えいただいて、ほかの方の御質問にかわりたいと思うんです。 一つは、今度のこの厚生省のやった調査のしかたについて私いろいろと疑問を持っておりましたけれども、先ほどから各先生方の御報告でだいぶああ、そうかということがわかりました。それで、これは一番——班長におなりになったのが重松先生でございますが、重松先生は予算と特定の目的と、それから指定された範囲でやったんで必ずしも満足ではなかったというふうな意味のことが言われたように思うんでございますが、この結論といいますか、評価ですね、評価として出されておりますものは、小林先生全然知らなかったと言われたんですが、ほかの委員もみんなこれについてはみんな承知の上で出されたものなのかどうかということでございます。 なお、調査については、私が現地に二月末に行きましたとき、東邦亜鉛のほうでは通産省の調査を待っている、その結果の指導に従うというようなことを言っておりました。一体通産省がどれだけのことをやったのか。この間、予算委員会で尋ねたときはやったようなことを言っておられたんですが、どれくらいのことをしたのか、これは通産省のほうから答えていただきたいと思うんです。それで評価についていろいろ問題点があって、今後やるべきことについてもあげられておりますが、一体、規模——調査団の構成メンバーとか今後の予算なんかもどのくらいとって、どういうことをやろうとしているのかというようなことは厚生省のほうからお答えをいただきたいと思いますし、まあ先生方のそれに対するコメントもいただけたらと思います。なぜ米だけでほかの野菜をやらなかったか、これに出ております推定の基準というのは、ちょうどころ合いに出ているんですね、みんな。カドミウムの許容量の国際基準というのが一体どれだけのものがきちんとあるのか、これも重松先生に言っていただきたいと思います。水に関してはあると思いますけれども、ほかのものもあるのかどうか。 それから、第二点目の問題は、発生源の対策、発生源というのは結局あの場合は、安中の場合は東邦亜鉛の安中製錬所でございますが、あの製錬所の排煙、排水のところで一体どのくらいにしたらいいと思っておられるのかということ、これは小林先生でしょうか。で、実は煙突が二本あって、あそこに乾式と湿式と両方やっていて、二本の大きな煙突がある。だけどそのほかに十数本あるんですね。そして西野殿の地区に参りますと、あそこに煙はもうもう来ているんです。こういうことに対して一体通産省はどうしようとしているのか、また、どうあるべきだと小林先生は思われますか、それが第二点目です。 それから第三点目は、住民の検診をなさった高柳先生ですね、私はそこに行きましたとき、住民やら市議会の方やら、市当局の人、たくさんの人に会いましたけれども、みんな市はお手あげのようでございました。経費がないということで、厚生省も地方自治体におんぶしていたようなんでございますが、一体ほんとうに検診というものをする場合に、もっと十分の手当てがあってしかるべきなんじゃないか、その点で自治体が非常に弱いのじゃないかと私思ったんですが、その辺を高柳先生並びに自治省ですね、これは公害問題に関して全国歩きますと、ほんとうにみんな自治体が無力である、予算はほんの少ししかない、何とか国でしてくれというような意見が出てきますし、それから通産省、水ならば経企庁、それからことにあそこは農作物の被害があるんですが、それに関しては農林省が把握しているのかどうか、そういったことを住民の立場に立って守るものというのがないんですね。これは自治体がするよりほかしょうがないのじゃないかと思うのですが、その辺を自治省の方、どう思うか、農林省の方は、一体あそこの農作物の被害その他をどう把握しているか、そういったこと、それぞれの関係者にお尋ねして、私の質問はそれだけにさせていただきます。
○参考人(重松逸造君) 二つ御質問をいただいたわけでありますが、第一点のこの評価については、研究班としてはどの程度一致した意見かという御質問だと思いますが、ちょっと誤解をしていただいていると思うのでございます。われわれこの研究班は、先ほど申し上げましたように、厚生省公害調査研究委託費というものの委託を日本公衆衛生協会が受け、そしてわれわれ研究者として研究班に参加したわけでありまして、したがいまして、この研究班の調査研究究並びにその報告というのはあくまでも科学的な事実を冷静に、客観的に判断するというのが任務であります。したがいまして、ごらんいただいていると思いますが、この黄色い表紙の報告書が研究班の報告でございまして、それに基づいて厚生省がいろんなものをおつくりになったのは、われわれ研究班の関知せざると言ってはことばが過ぎますが、全然立場が違うわけでございます。その点、ひとつ誤解のないようにお願いいたしたいと思います。 それから第二点の、国際基準についての御質問でございますが、水につきましては先ほどちょっと触れましたように、WHO——国際保健機構が推奨と申しますか、勧告しております基準がございます。これは〇・〇一PPMであります。飲料水の基準であります。それからまた、WHOがきめました国際基準より少し前に、同じWHOが出しております、ヨーロッパの飲料水基準という中では、やはりカドミウムの基準をつくっておりますが、これは〇・〇五PPM——国際基準より少し高くなっております。おそらくヨーロッパの土質と申しますか、土壌の性質を考えて、少し高い目に設定したんだろうと思います。それから飲食物、特に食べものにつきましては、まだ世界各国確たるそういう基準などは設けていないと思います。これは当然いろいろ食べる食品の種類によりまして、カドミウムの摂取量が違ってまいりますから、その点で非常に困難なわけで、まあわれわれが四十二年度にやりました食品中の基準もそういう意味では基準としてはなかなか示せない、お米の基準もこれは基準ではなくて、判断した尺度であると申し上げたのはそのためであります。それから空気中の濃度に関しましては、これはだいぶ前から産業衛生、いわゆる職業予防という目的で基準がきめられております。アメリカにおきましては、カドミウムのメタル、金属という形、並びに、向こうではソリュブル・ソールツ、水溶性の塩化物ということでございましょうか、これに対しましては、これはPPMではございませんで、ミリグラムでございますが、〇・二ミリグラム・パー立方メーター、つまり一立方メーター中に〇・二ミリラグムというものを最高濃度として——最高許容量といっておりますが、——としてアメリカでは定めております。 いまのはメタル並びにそのソリュブル・ソールツでございますが、カドミウム・オキサイド・フューム、つまり酸化カドミウムの蒸気というのでは〇・一ミリグラム・パー立方メーターできめております。 それからわが国におきましても、産業衛生協会というところで、やはり職場環境の空気中の酸化カドミウムの基準を一九六三年にきめておりますが、これもやはり酸化カドミウムとして〇・一ミリグラム・パー立米ということであります。そういうことで、それ以外の基準というものは、まだ基準という形ではないということであります。
○参考人(小林純君) 私から、先ほどの御質問に対しまして、東邦亜鉛の安中の排水の問題を御質問になっておられましたので、ちょっとお話し申し上げます。 厚生省のこの本の三六、三七ページに表−9として出ておりますが、その表の中の数字の三行目です。「東邦亜鉛排水口」、これを見ますと、ずっと右のほうに、硫酸は一五四〇PPM、カドミウムは〇・〇五、それから鉛、亜鉛と出ております。それから少し下がって、まん中よりちょっと下のところですが、十二番にも「東邦亜鉛延長放流路放放口」というのがありまして、そこでは硫酸は十五分の一になっておりますが、カドミウムは実は三分の一にしかなっておりません。それから鉛もやはり十分の一以下になっておりますし、亜鉛も十分の一以下になっております。 同じサンプルを私が分折したのは、その前のページ、三五ページの表の10でありまして、これの三番をごらんいただきますと、三番の東邦亜鉛の排水口のカドミウムだけが私のほうは〇・三二となって、〇・〇五に対して六倍になっております。ところが——ここに硫酸の数字が一六八・〇とありますが、これはミスプリで、一六八〇として私は報告したわけであります。それから十二番ですね、ごらんのごとく、そのずっと下、川に放流する口にいきますと、大体十分の一以下になっておる。こういうことから見ますと、〇・三二というカドミウムがこれは正しいのじゃないかという御推定がつくと思います。また、私どもではこれは三度やり直しております。実は、〇・〇五とお出しになった先生がありましたので、私のほうでその後またやっておりますが、やはり〇・三二が正しいのであります。そうしますと、東邦亜鉛の排水量、水の量は非常に大きい。先ほど重松先生から、ほかの鉱山とか、たとえば宮城県の鉱山とは大差ない濃度だとおっしゃいましたが、実は水の量のほうが問題になります。同じ水の量であれば、濃度が同じであれば全体として同じだと言えますが、東邦亜鉛の排水は、ここに全部の排水となりますので相当大きな量であります。それで、ですから、一昨年か神岡鉱山からちょろちょろ流れていたのを見つけたり、あるいは宮城県で見つけた水量と比べると、この東邦亜鉛のほうは、全部の排水量ですから、非常に大きな量です。この量を〇・三二PPmというカドミウムで放任しておくというのは、私はこれは危険であると思う。これは当然〇・一とかなんとかで工場排水の出口の量は規制すべきである。そうしなければやはり危険が伴う。ですから、煙と同時に排水に問題があります。そうして、この〇・三二を取りましたマンホールというのは、ふだんわれわれが行ってもその水は絶対に取れない、工場の許可を得まして取らなければ取れない場所である。われわれが取りますのは、この十二番の最後の末端の放流路放流口のあるところである。ここでは、先ほど申しましたように、非常に逃げてしまって、水田に出てしまったかすをつかまえているようなもんです。ですから、その点でやはり鉱山側を通産省において十分指導をしていただかなければならない。こういうふうに思います。 それともう一つは、資料の7のまん中の表です。まん中の表をごらんいただきますと、小麦粉と米の分析値が出ておりますのですが、この中に、小麦につきまして、岡山県と、私どもの岡山大学農業生物研究所、オーストラリア、カナダ、アメリカ、こういう数字が出ております。これをごらんいただきますとわかりますが、カドミウム含有量は、外国から輸入しますパンの小麦はカドミウムを全然含んでおりません。これは検出限度以下なんです。日本産の岡山県あるいは私どもの研究所の小麦でもこれだけ持っております。つまり、日本産の小麦でも米でも、農作物は全国にわたってカドミウムが多いという傾向が出ております。したがいまして、日本人は特にカドミウムに対しては警戒をせなければならない。ふだんでも外国人よりはたくさんとっている。ですから、やはりこの公害地の場合は特にこれに気をつけなければならないのじゃないか。ですから、ただ対照と申しましても、外国を対照に使えば非常な大差が出てくる。ですから、日本のかなり高いところを対照にとるか、または外国のこういうゼロというのを対照にとるかによって、これは同じ対照であっても違うのだということをひとつ御記憶願いたいと思います。
○参考人(重松逸造君) ちょっと誤解があるといけませんので一言つけ加えさせていただきますが、小林先生も口がすべっておっしゃったのだとは思いますが、この研究班——これはいままでのわれわれの研究班全部同様のやり方でございますが、それぞれの分析の専門家が集まりまして、分析方法を打ち合わせをして、そうしてこの地区のサンプルはだれがいわば主戦投手で分析をする、そうして、それに対して救援投手といいますか、クロスチェックをだれとだれがやるということでやっているわけであります。したがいまして、本研究班の報告書の四ページから六ページに書いてございますが、この五ページの上から四行目でごらんのように、群馬県の資料につきましては、「水および泥については岩崎班員が分析し、小林班員がクロスチェックを行なった。」ということでございますので、これのやり方についてはきちんとルールどおりやっておりまして、自分だけの成績が正しいのだというような言い方を——そういうつもりでおっしゃったんではないと思いますが、研究班としては、いままでそういうやり方でやっているのだということを御理解いただきたいと思います。
○参考人(小林純君) 私から申し上げます。 一番最後の表に、私から厚生省にその当時提出しました分析値が載っております。これをごらんいただきますと、三番目ですが、先ほどから問題になっております東邦亜鉛工場北側マンホール、東邦亜鉛排口のカドミウムは「〇・三二」となっておるのであります。ですから、さっき言われたように、クロスチェックとして採用なさっているわけですが、このように結果が二人の間で非常に大幅に違った場合に、どうして違ったかということをやはり重松先生のほうでもう一度チェックなさって、どちらか正いほうを御採用なさるべきであったと思うのです。全然一方的にきめるのはどうか。私のほうはクロスチェックのほうである。ですから、主任のほうがやったことがいつも正しいかどうかということはそれは問題でありまして、いろいろの数字をかみ合わせ考えますと、私は〇・三二のほうが正しいのじゃないか。硫酸やいろいろな濃度から見ましても、ちゃんとそういうふうに出ております。ですから、もし疑問がありますれば、あのマンホールでサンプリングをしてもう一度分析をしたほうが一番いいんじゃないか、このように考えます。
○参考人(重松逸造君) 内輪の話になって申しわけございませんが、いまおっしゃったようなことは当然やっているわけでございますんで、これ以上この問題はやめにしていただきます、この席では。
○委員長(加藤シヅエ君) 田中委員に対してお答えを。
○参考人(高柳孝行君) 自治体の公害対策についてだったと思うんですけれども、自治体では、特に安中市では以前厚生省、通産省が十月の末調査に入りまして、三月末、あるいは四月には結果を出すといって帰ったわけですが、その結果を待たずして橋本公害課長が、安中市には公害の心配がないと言ったことについて、安中市で広報として、東邦亜鉛の公害問題は全く心配がないという意味のことを住民全員に配っているわけです。そういう分析結果も出てないのにかかわらず、そういう広報などを使って心配ないんだ、心配ないんだということを言っている。そういうところからも自治体の公害対策というものが非常にずさんである、あるいは公害問題についてそれほど真剣に取り組んでないじゃないかという印象は持っていたわけです。しかしその後、厚生省のほうからこのようなデータが出されたあと、県及び安中市では、早急に県の公害対策協議会、安中市ではやはり公害対策協議会を結成しております。しかし、その会がまだ第一回の会合を持ったという話は聞いてないんですが、そういう会ができた以上、やはりそういう会の活動を今後期待したいと思うんです。それと独自にといいますか、私たちがいままでの集検からチェックしました人たちについては、今後も検診、診断を続けていきたいと思います。
○委員長(加藤シヅエ君) 通産省政務次官、答弁を。
○政府委員(植木光教君) お答え申し上げます。 通産省は、鉱山から排出されますカドミウムにつきまして厳重に監督を続けてまいりましたが、特に昨年、四十三年度でございますが、全国の亜鉛を産出しております鉱山及び製錬所五十五につきまして、坑廃水の水質調査を行ないました。先ほども研究班の御報告がありましたが、通産省の調査の結果によりましても、利水地点においてカドミウム含有量が〇・〇一PPMを下回っております。若干問題がありました鉱山につきましては、それぞれ施設改善等の指示を行ない、また追跡調査を行なっているのでございます。また、大気中に排出されますカドミウムにつきましては、全国の製錬所周辺の大気中のカドミウムの含有量を調査いたしております。問題の安中製錬所でございますが、昭和四十三年十月に東京鉱山保安監督部が排水の水質検査を行ないまして、〇・〇一PPM以下の結果を得ました。排水については問題はないと考えております。また、鉱煙につきましては、十一月の二十六日から十二月二十五日まで、大気中の硫黄酸化物の検査を行ないました。この結果は〇・〇一六PPMでございまして、環境基準の〇・〇五PPMを下回っておします。広域的な汚染については問題がないと考えております。ただし煙突が低いために、短時間の特定の気象条件下におきましては局地的な範囲に対して高濃度をもたらすおそれが考えられますので最悪の気象条件においてもそのようなことがないように、排ガス速度、排ガス温度、集合排煙方法及び煙突の高さなどを検討いたしまして、さらに改善指示を行ないつつあるところでございます。なお、東京鉱山保安監督部では、鉱煙による影響の調査をいたしました。これは三月二十四日から二十八日まで、製錬所周辺の大気中のカドミウム調査を行なったのでございます。これは現在分析中でございまして、今月中には、四月中には分析結果は明らかになると思います。これにつきましては厚生省と密接な連絡をとりながら、必要に応じて予防施設の強化、あるいは住民の健康、衛生及び農産物に対する被害の予防につとめてまいる所存でございます。
○説明員(下河辺孝君) 若干補足させていただきますが、厚生省の調査は八月中旬に行なったわけでございますが、その後、東京の監督部としましても、安中製錬所に対しまして種々の改善の指導をやっております。その後改善いたしました点といたしましては、主として水について申し上げますが、工場内から浸透してくる水を押える堀を掘っているわけでございます。それの修復をして、外部に流れることのないようにする工事、あるいは沈でん池の横に堆積されている沈でん物等を整理して、きちんと堆積するところに堆積させる。あるいは堆積物が雨水によって流出崩壊することのないようにし、あるいは冷却水が開渠になっているところがありまして、そこにきたない水が、あるいは粉塵のようなものがまじる可能性がありますので、そういうものをすべて密閉させるというような工事をしているわけでございます。また、さらに汚水の放流量を減らすということが最大の解決策でございます。なるべく水を循環して使用させる、あるいは製錬所の冷却水にきたない水がまじることのないようにパイプライン、そういうものを整備させるというような工事を現在させておるところでございます。なお、八月以降十月に監督部が調査いたしました時点におきまして、延長放流路の放水口における濃度は、厚生省が八月に調査されたときの濃度の約二分の一程度に減少しております。さらにまた、三月採水いたしまして、現在分析中でございますが、近々その結果が出るものと思っております。それから、先ほど安中製錬所の延長放流路から水が漏れているのではないかというような御指摘がございましたのですが、昨年の七月に、監督部が出口と入り口の流量を測定したデータがございますが、それによりますと、出口と入り口の流量というものは一応きちんとそろっている。したがいまして、出る水もあるけれども入る水もあるのだということであれば、まだ問題点としては残るわけでございますけれども、三十八年につくりましたヒューム管工事でございますから、われわれといたしましては、そういうようなことはないのではないかというように一応考えておる次第でございます。また、厚生省のほうで調査されました時点で放流路の入り口と出口の濃度が違っているという点が一つの問題でございますけれども、これは入り口がそのものの水を取っているわけでございます。この製錬所の放流口はどういうわけか、金ケ崎用水路から分流いたしました用水路、これが碓氷川に入る直前のところで放流されているわけでございます。その放流口がちょうど川底にあいている。川底からその延長放流路の水が出ているというような構造になっておりまして、調査のときに東京の監督の係官も立ち会いをしたわけでございますが、それから聞いた話によりますと、排水がそこから出まして、それが金ケ崎用水路から来る水にまじったあとのものを取ったというように聞いておりますので、そうことが事実であれば、入り口の濃度が違うということも技術的に説明がつくのではないか、このように考えます。もう一点、停電のときにガスが出るのではないかというような問題がありましたけれども、この製錬所は現在六万ボルトの二系列入ってるわけでございます。調べてみますと、一つのラインによる停電の回数というのはごく少ない。しかし、片方が年間十何回というような停電があるようでございましたので、停電回数の少ないほうにすべてのこういう公害防止施設の配電を切りかえるという工事をさせるようにいたしまして、近々その工事にかかる予定でございます。以上でございます。
○説明員(橋本道夫君) 今回の調査につきまして、私どもこの三つの点につきましての水質関係の従来の考え方を中心とした調査をしていただきたいということでお願いしてございまして、その内容の予算しか組まれていないという重松委員のお話はそのとおりでございます。環境汚染の碓氷川の流合点、このことにつきましては、私たち純行政ベースで別途に大気汚染のチェックを現在いたしております。いままでのデータでは、はっきり言うには弱いということで公表いたしておりませんが、いずれこの点については詳細なことを申し上げたいと思っておりますが、粉じんのカドミウムの量については、現在のあれだけのコントロールをしたものでカドミウムの量をはかってもほとんど問題にならない量になるのではないかと思っておりますが、過去にさかのぼっての資料をどう扱うかということにつきましては、通産省ともよく打ち合わせをした上で最終的に私どもの見解を出したいと思っております。ただその途上で、現在はかっております中に、大気汚染としては中等度汚染のところと水質汚濁の両方集合するところがある。そこが一番高くなっているということは明らかになっているわけでございます。 それからもう一つは、この流域の環境汚染の調査と食品の暫定の調査と水の研究と、この三つを純粋の研究グループとしてやっていただいたわけでございます。私どもは行政的には一切干渉いたしておりません。協力する点は協力するといっていたしておりますが、一切のとりまとめは研究班自身としておやりいただいておるということでございます。私どもは、これだけの調査をしていただきまして、行政で現在の段階でどう判断するかという点につきまして、行政としての見解を出したわけでございます。先ほど重松委員は、厚生省見解は研究班と関係ないとおっしゃいましたが、確かに厚生省は行政として書いたものでございます。行政として書いたものは、三つの環境汚染の調査、それから食品についての暫定の考え方、水についての暫定の考え方、この三つを基調として、現在この程度までわかっている、この程度まではわからないが、行政としては一体次の段階でどうするかということは、私どもは行政としてはやりはっきりいたさなければならないポイントとして出しております。もしもこれを学者の責任ではっきり行政として判断を言ってくれといいますと、公害の場合、わからないことばかりでございまして、なかなか結論が出ません。私も公害課長をした最初は、全く学者にお願いしてやってもらいましたが、ほとんどわからない、わからないばかりなんです。この点で現在までわかってる範囲、現在までわからない範囲ということで、行政として当面四十四年度において何をするかという点につきましては、私どもの責任で書いた資料はこれだという点は御了解願いたいと思います。それから推定の方法につきましては、これは食品の暫定基準をやっていただいた研究班の先生方には資料は見ていただいております。学者としてここまで言えということは無理であろうと私ども思っております。私はそういうことはお願いできないことだと思っております。学者の方が、これを、やり方をごらんになって、行政としてはそういう角度でやる以外にしようがあるまい、そういうことを聞いております。そういうことで、私ども資料を、一切の資料を公開いたしまして、あらゆる、反対の人にも全部資料を提供して、それによってどういう意見が出るかということによって次の対策を組もうと思っております。経費的には十分じゃございません。公害研究委託で五百万程度、医療研究費関係で、これは富山県だけで六百万程度入っております。そのほか機器整備関係で三、四百万円の金が入っております。その意味におきまして、カドミウムだけで千数百万円の金を昨年投入いたしました。私どもはまだまだ不十分であると思っております。それから四十四年度の計画といたしまして、厚生省見解の中によってごらん願いたいと思いますが、ここに書いてあります立場は、一一ページにございますように、一番のポイントは、いま直ちにいわゆるイタイイタイ病が発生する危険があるとは考えていないが、安全性を見込んで今後これらの地域を要観察地域として継続的な対策を行なっていくということでございます。調査研究だけに限っておりません。予防対策を打つということになっております。そういうことで調査研究だけじゃなしに、やれるものはどんどんやっていこう、しかしながら、純粋にいままでわかったデータと、いまわからないこととあわせて、行政の当面としては歯切れのいいことは絶対言えません。いま重松委員が、こういうことになって、要観察ということでしか行政としてはこの段階としてまだ言えないのじゃないか、措置としては対策をとるということを出しているわけでございます。四十四年度の対策といたしまして、ここにございますように、一つは環境汚染対策としまして、例のカドミウムによる環境汚染に対する考え方という資料をつくりまして、関係のあらゆる先に配付しております。それに対してどのような反論があるかということを私ども実は期待しながら待っておるわけでございますが、カドミウムの暫定対策の考え方というものに対して、全くけしからぬ、間違った考え方だということはいまの段階では、まだ寄せられておりません。この考え方自身については、それほど大きな誤りはないのじゃないかというように私どもは考えておりますが、いずれこの点につきましては、本年五月研究集会を開こうと思っております。純粋に学問ベースで論議をしていただこうということでございまして、先ほど多くの参考人の先生からお話のありましたような、早期における鑑別診断基準、これを四十四年度の医学研究の最重点にしたいと思っております。イタイイタイの病状に及ぶまでに、過程臨床症状だけで鑑別診断ができるかどうか、これを一番の焦点に置きたいというように思っております。環境汚染対策につきましては、暫定基準の考え方に立ちまして、ここにございますように、今度は全国調査をしたいと思っております。といいますのは、バックグラウンドはどこまでかわからないというのがいま非常につらいポイントでございまして、この点につきましては、地球化学の人あるいは地球物理の人、大幅に入っていただくという形をとりまして、一体日本のような地質のところで、どのようなカドミウムのバックグラウンドがあるかということにつきまして、かなり広範な調査をやってもらおうと思っております。このほうは純粋にサイエンスサイドの方にやっていただく、医学というよりかむしろそのほうから進めたいと思っております。もう一つは、現地につきまして、水田、土壌中のカドミウム、あるいは先ほどのお話にありましたように、あそこの丘陵地帯のカドミウムという点につきまして、われわれの推定の大気汚染の考え方でサンプリングを全部システマティックにやろうということを考えております。それによりまして大気と水と一般のバックグラウンドを全部分ける形のサンプリングをやる、そうして対策をどう進めるかということをぜひとも考えたいと思っております。 それからここにございますように、この点につきましては、厚生省だけの手では十分ではないと思いますので、農林省ともよく連絡をとっていたしたいと思っております。 それから土壌の中で、一体どういうぐあいに植物に入ってくるかという点で、私ども多くのわからないポイントがございますので、この点は農林省にもお話しいたしまして、農林省も、厚生省と全面的に協力してやろうというお話をいただいておりますので、それによって処理をしていきたいと思っております。 それから製錬所のまわりにおきましては、これは私どもわずか二十一サンプリングですが、常時動いている機械で監視する以外にはないと思っております。数地点に常時監視網、こういうものを張りまして、それによりまして大体どの辺が一番高くなるか大体推定がついております。それによってそこの動向というものを全部つかまえていこう、そのデータによって次の対策をまたさらにこまかく打っていこうという考え方を持っております。これには常時観測網としまして、汚染と気象両方そろえてみたいと思っております。これにつきましては、県を全面的にバックアップをいたしまして、私どもの調査研究費でやりたいと思っております。 それから一方、保健対策のほうにつきましては、私たち現在、県にお願しまして、できるだけ多くの疫学資料というものを集めております。この点につきましては、先ほどお話ししました本年五月の研究集会に一切出して論議をしていただこうという考えでございます。 それからもう一つは、鑑別診断を徹底してやりたいということでございまして、私どもここで諸先生方にもお願いしたいことは、怪しいと思う患者があったら出していただきたいということでございます。それも徹底的に医学的な鑑別診断をする。それが四十四年度の非常な大事なポイントじゃないかと、こういうぐあいに思っておりますので、鑑別診断といいますことは、われわれが要観察という程度のあぶなさを感じておるということでありまして、先ほど対馬に以前患者があったということ等も全部その判断の基礎に入っております。現在その患者さんは死んで、おりません。そういうことによってわれわれは、行政としていろいろな問題がございますが、そういうようなことが専門家から言われておるということが頭にあって、要観察ということにして鑑別診断に徹底を期すという考え方に立っております。あとは地域保健サービスといたしまして、現地の公衆衛生組織とできるだけ組んでやっていきたいということと、そのような医学的な保健サービス的な成果というものを、本年の秋に、国際学会で重金属の世界的なエキスパートが集まってきますので、そこで五月にやられたことと、十一月ですかに国際的な人と一回やってみよう、それでほんとうの研究の方向がどちらかということについてのはっきり決意する、あるいは研究の方向づけというのをしたいというふうに考えております。 発生源対策につきましては、われわれのほうでも感づいたところは厚生省見解にも書いております。この点につきましては、すべて企業側に直接申しておりますし、通産省側のほうにも、こちらから参りまして十分お話し合いをしまして、通産省のほうでもこれに対する手を打っていただいておる。また、企業のほうからもやっていただいたことについてあとで報告をしていただくということでやっておるわけであります。 以上のようなことでございまして、来年度の計画といたしましては、環境汚染の問題とバックグラウンドの問題及び鑑別診断の問題、純粋医学の問題ということで、厚生省は積極的は進めたいというふうに考えておるわけであります。あくまでも要観察という態度で臨んでおることだけを最後に申し上げておきます。
○委員長(加藤シヅエ君) 委員長から申し上げます。たいへん時間が経過いたしましたので、あと三人の質疑通告者がございますから、順次発言を許しますが、参考人の方だけに答弁していただくようにして、政府委員に対しての御質疑は後日に譲るというように質疑をお願いいたしたいと思います。それでは多田委員。
○多田省吾君 萩野先生に最初にお尋ねしたいのですが、この前の安中市における碓氷病院等で診断なさった結果で第一期、第二期症状のおそれもある。また、二ヵ月間調査したならば第三期の初期があるかどうかあるいはわかるかもしれない、こういうことを記者会見等でおっしゃったのです。もし三期の初期等の症状があらわれた場合は、一期も二期も相当いるということはいえるのじゃないか、こう思います。 それから上気道感染、まあカドミウム肺等の傾向があるということを申されましたけれども、先ほど石崎教授も粉じんからあるいは空気中から感染したということも外国に例があるということを申されましたが、カドミウム肺ということが外国においてどういう例があるのか。 それから第三点は、いま厚生省あるいは県のほうで調べているところの二千名にわたる集団検診でございますか、それはいわゆるレントゲン写真が非常にイタイイタイ病の検診に大事であるということをお聞きしましたけれども、この骨盤大腿部の写真とか、そういったものはとってないようにみえますけれども、そういうものをとらないで、はたしてイタイイタイ病のいわゆるカドミウム中毒の結果がとれるものかどうか、まずその三点をお尋ねしたいと思います。
○参考人(萩野昇君) お答え申し上げます。イタイイタイ病という病気は、先ほどから申し上げましたように、カドミウムの慢性中毒によって起こるのでございます。それでカドミウムの慢性中毒でこういう症状になるということを突き詰めますまでには、二十数年の月日が必要だったのでございます。それまでにはいろいろなケース、死体解剖、それからレントゲンの検査、その他の理学的検査をいたしまして、一つのイメージをつくり上げたのでございます。で、対馬のイタイイタイ病である、ないというときにも、私発言させていただきましたが、われわれの最初の考えは、骨が折れて実に悲惨であるという状態の患者を私はイタイイタイ病と呼んだのでございまして、はからずもこの呼び名は世界じゅうに鳴り響いたんでございますが、骨が折れない以前の患者をどうするかと申しますと、二十数年の臨床経験によりまして、これはカドミウムから来ているということは感ぜられるのでございます。しかし厳密には、死体解剖の結果あるいは尿からのカドミウムの排出量その他の成績によって判定しなければならないのでございます。 ここまでは前置きでございますが、こういうような状態から、一期、二期、三期をきめるとなりますと、非常に問題がむずかしくなってまいります。現在の安中の患者さんを、これは私が見ましても、りっぱにイタイイタイ病の分類という、この分類の一期、二期に該当するように思うのでございます。しかし、学者としまして、これはイタイイタイ病の分類による一期、二期であると言い切るまでのデータがそろっていない。ですからもう少し日をかけて調査したい。また、地元の先生方にも御調査をお願いして、そのデータを見せていただきたい。もし三期、四期の症状の者が一名でもおりますと、これはりっぱにこの一期、二期がカドミウムによるものということが言えると思うのであります。もしそういう者がいない場合、そこでこの付表一が出てきたのでございます。もしいないということは、鉱山の歴史、米の汚染程度、いろいろのぐあいでキャリアが足りない。三十年のキャリアがあってはじめてイタイイタイ病になるので、十五年のキャリアか二十年のキャリアであれば、当然その途中の二期、三期の状態で進行中なのでございます。ここに第一線の臨床医といたしましての、このような公式の責任のある参考人といたしましては、もう少し研究させていただかないとはっきりは申し上げられない。ただし予防医学という点から見ますと、これは先ほども申しましたように、赤痢をわれわれが症状決定で隔離できるのでございますから、やはり先ほどから橋本公害課長の言われるように、要観察地帯として、また松澤先生のおっしゃったように、早期に加療を加えるべきじゃないかというように思っております。御質問に十分お答えできたかどうかわかりませんが、時間の関係で次に移ります。 カドミウム肺というものがあるか、これは文献に載っておりません。しかし、二十数年患者に取り組んでおります。患者とともに泣き、ともに喜び、ともに生活しておりますと、寝てもさめてもカドミウムのことが頭に浮かんでくる。そうすると、インスピレーションと申しますか、非常に、科学的ではございませんが、カドミウム肺じゃないかという感じがいたします。もちろん先ほど申し上げましたように、ゼクチオンいたしまして、その部位にカドミウムをたくさん定量分析の結果証明していただかないことには言えないことでございます。しかし、そういうものは、やはりけい肺と同じようにあり得るのじゃないか。それでは文献にあるかと申しますと、文献にはございません。じゃ、ないものをなぜおまえ言うのかとおっしゃいますが、イタイイタイ病自体が文献にはなかったのでございます。われわれの暗中模索の二十数年の研究成果がそういう病気を見つけて、これを公害病に指定していただいたんでございまして、われわれは長い体験からそういうようなものがあってしかるべきじゃないかという感じがするのでございます。 なお、これは現地の先生方にお願いをいたしまして、死体解剖の結果、こういうものがあるのかないのか、別の機会に御報告申し上げたいと思います。 それから第三の御質問でございますが、群馬県の検査それから対馬の検査、これらについて、はたして骨盤大腿部がとってあるかどうか、私は拝見しておりませんが、まだ判明しておりませんが、漏れ承るところによりますと、とってないそうでございます。イタイイタイ病の検診に上腕と肩甲背部をとる。これは私がお願いしたことでございます。また、骨盤と大腿部をとる。これも私が考え出したのでございます。大学のオーソドックス、権威のある大学のレントゲンの教授にお願いしましてもそれはナンセンスだ。そういうとり方なんかないとおっしゃる。現に九州大学、温研から送ってまいりましたイタイイタイ病の疑いの患者さんの写真が全部私によって却下された。却下とは変ですが、その写真を見たって、私、診断できないんでございます。なぜこのようにおとりいただけないか。それと同じように、群馬のほうも上腕、肩甲部はとってあるようでございますが、骨盤大腿部はとってないそうです。いやしくも検査をなされる先生方、イタイイタイ病の検査をされるのなら、なぜそういう写真をおとりくださらないのだろうか。私は、ここに日本の最も不愉快な権威主義があるんじゃないか。開業医の言っている、言い出したことなんかばからしくてやれない。われわれは大学の権威にかけてわれわれのとおりやる——けっこうでございましょう。しかし、それじゃ私は結論が出ない。もしそういう検査をなさるなら、なぜ一言御連絡いただけないんだろうか。おまえが見つけた病気、おまえが二十数年やっている、どうしたらいいんだ。私は、学問というものは権威主義じゃなくて、実績主義だと思うんです。それなくしておやりになること自体に私は不満を持っております。ですから、私はこういう成績は信用できない。つまり私たちが、しいたげられた先ほどの御質問にありましたけれども、地方でやっていて自治体はどうか。あいつは気ちがいだ。あれはばかだ。神岡鉱山から金をもらおうとしている。しいたげられ、圧迫され、その中で二十数年研究を続けてまいりました。そういう事態が、この日本の国で、一方においてイタイイタイ病が公害と認定されていること自体、それと同じことがその地区で起こると、私はその地区のお医者さんも不幸であるし、患者も不幸だ。こういうような意味で、私の講演の最後にちょっと触れたのであります。 だいぶ御質問の本題からははみ出しましたが、御質問にお答えしたいことは、骨盤大腿部をおとりにならないでイタイイタイ病の診断を写真できめよう、これはナンセンスでございます。どうかそういうことのないように、ひとつ関係官庁を御指導いただきたいと思っております。
○多田省吾君 委員長にお願いしたいんですが、政府側出席予定者、私たちも五人ばかり通告したわけです。五人とは申しません、一人でけっこうです。あの橋本公害課長に一問だけ、先ほどもお答えになったのだし、こちらも通告してありますので、一問だけお願いしたいと思います。
○委員長(加藤シヅエ君) 速記とめて。 〔速記中止〕
○委員長(加藤シヅエ君) 速記起こして。
○多田省吾君 一問だけでございますので、あまり長い時間じゃなくて、橋本課長に端的にお答え願いたいんですけれども、この前の二十二日の予算委員会の一般質問でも、私は厚生大臣あるいは武藤公害関係の部長にお尋ねしたわけですが、そのときも、もう萩野博士がすでに対馬で四期か五期のイタイイタイ病患者を発見している。こういうことも、安中市のことも申しました。斎藤厚生大臣もそれぞれお医者さんもあっちこっちにおられるようでありますから、そういった結果を持ち寄って、いままでのデータで検討する、こうおっしゃっています。ところが、この厚生省の発表では、住民を不安がらせないように慎重に扱いたいという趣旨ではありましょうけれども、いま直ちにイタイイタイ病が発生する危険があるとは考えられないというような、こういう御所見を発表なされることはちょっとおかしい、納得いかない、すでに萩野博士が、いるとおっしゃった。萩野博士の発表では、大体なくなっておるけれども二人だという発表があった。武藤部長の発表では、なくなっている人が三人だ、私はおかしいじゃないかと言ったら、三人ですとはっきり言っている。別府の温研にいる患者さんはあれは三人のほかだと、こう武藤部長は答弁されております。それからいま言ったような集団検診でどうして三十人もイタイイタイ病の診察をされ、また発見され、従事してこられた萩野博士等の意見を入れて、骨盤大腿部のレントゲン写真をとるように厚生省で指導しないのか、それがわれわれとして納得できない、その点を端的にお答え願いたい。
○説明員(橋本道夫君) 非常に簡単にお答え申し上げますと、そこの文章だけをお読みになっていただかないで、そのあとに要観察までをつけて、それを一つの文章としてお読み願いたいということでございます。 それから三人の方につきまして、私はやはり専門の先生が御診断になったわけでございますが、やはり診断書にそれに対する所見が全部そろっておって、それが公式に確認されているということでなければ、私は政府としては言えないと思います。そういうことで、そういうことをおっしゃったお話があるということには耳を傾けなければいけないと思っておりますから、要観察をつけたと感じております。 それから県がやりますことにつきましては、萩野先生を加えてはどうかということは厚生省からはサジェストしております。しかし、純粋に県費で研究をやることで、医学の世界というのはいろいろ分野がありますから、大学の研究という場合には、それに対しても国が介入することはできません。ただ私は研究班を組むときは、五月に研究会開くときは、萩野先生も皆さんも加わってやっていただこう、こういうふうに思っております。
○多田省吾君 次に、参考人の方に続いてお尋ねいたします。私たちも去年の十二月に第一次、ことしの二月に第二次、三月の二十日第三次と、公明党としても調査団を派遣いたしまして、工場見学等詳しくやらせていただきました。まだ現在も続けておりますが、その結果でお尋ねしたいのですけれども、先ほども通産省の発表では、排水口の入り口のカドミウムは〇・〇一PPMだ、厚生省の発表では〇・〇二PPMだ、小林教授の発表では〇・三二PPMだと、非常に違っておるわけですね。私たち詳しく調べた結果とんでもないことが行なわれておる。たとえば厚生省や通産省で調べにくる前の晩に、大量の石灰をどっと流してしまう、こんなことをやったらもうPPMが下がることは当然だと思います。それから雨が降った場合が非常に困る。先ほど萩野博士がおっしゃったように、鉱滓が、第一次鉱滓が広い露天に出ております。雨が降ったときには私たちの調査では一〇〇PPMぐらい流れている。一〇〇PPMくらい排水口から出ている。それからやはり雨に対する対策が会社で考えられていない。それから第三点は、小林教授がおっしゃったように、確かに五年前につくられた排水口がところどころこわれている。私たちの調査では碓東小学校付近でこわれたのを見つけております。それが水田にどんどん流れております。それから排水口も非常にもうそういう硫酸塩などが付着して詰まっているのではないかと思われる節もあるし、また、排水口の入り口と比べると、出口ではもう三分の一くらいしか出ていないのではないかということも十分私たちの調査では考えられます。確かに先ほど厚生省がおっしゃったように、出口近くからぶくぶく出ておりますから、河川の水と一緒になって、その時点においては、これはカドミウムのPPMが下がることは十分考えられます。だけど、小林教授の実験では、出口から二十メートルばかり手前の実験だった。それで、入り口と出口は相当違っている。こういった点を私たち調査しておりますので、小林教授からそういったことが行なわれたら、これは調査なんというのは何もならないのじゃないかと、こう考えられますし、そういった点に対するそういうおそれはないのかどうか、御所見を承りたい。
○参考人(小林純君) 東邦亜鉛の例の排水口の末端につきましては、昨年四月二日に個人で参りまして、やはり水をとって分析しております。その成績は、私の配分資料の七ページに出ております。七ページの一番上の表です。四番目の「上豊岡、碓氷川へ放流直前の東邦亜鉛廃水」、これを見ますと、カドミウムは〇・一八PPMになっておりまして、厚生省の調査されました秋のサンプルよりはかなり濃い。それが碓氷川へ放流されておった事実があります。こういった分析は、現在原子吸光分光分析法を使いますと、非常に簡単に分析がだれでもできるわけでありまして、そう人によって値が違うということはあり得ないのです。このくらいの値ですと、しろうとがやってもすぐ出る。そういう装置ができているわけです。ですから、私はそういう御質問に対してはやはり同感いたします。それから、安中付近の水路におきましても、先ほど言った水田の小さなかんがい水路にもパイプから漏れ出したせいで〇・一三とか〇・幾らという値が出たのだと、こういうふうに考えます。ついでにしかし申し上げさしていただきますと、結局安中の工場の排水というものはもう少し完備した処理をしなければいけない。このままで幾らパイプを完全にしても、結局濃いのが今度碓氷川に流れるだけであって、現在は工場の近くへ漏れ出しておりますが、それが漏れなくなって碓氷川に放流されるだけであります。ですからもう少し徹底的な排水処理をやる必要がある、こういうふうに考えます。 で、去年実は神岡鉱山に私、参りまして、非常にきらわれて入れなかったのでありますが、しかしながら、去年秋拝見しました神岡鉱山の排水処理は非常に完備しております。おそらくもう神通川にカドミウムの痕跡も出ておらない、そういうことを断言できるのでありまして、こういう問題が起きまして、それから特に私は昭和十八年以来神岡鉱山と縁があるのですが、去年の秋を見ますと、もうこれは実に完備した排水処理である。実にこれはもう世界じゅうさがしてもないほどりっぱなものである、そういうふうに感じまして、やはりやろうと思えばここまでできるのだということを痛感したのでありますが、やはりこれは安中の工場におきましても、もう少し神岡にならっていい処理を、根本的な処理を考えていただきたい。せっかく通産省の方がいらっしゃっていますので、そのように御指導いただきたい、こう思っております。
○多田省吾君 実は三月二十日に村上所長に会いました。そのときには所長は排水口のいわゆるカドミウムの量は、残念ながら〇・〇一PPMには及ばず〇・〇二pPMは出ておりますと、はっきり認めております。ところが、通産省の調べでは〇・〇一PPM以下であると、こういうのもちょっとおかしいし、それから先ほど言ったように、雨の処置も全然なっていない。そのほかいろいろありますけれども、時間がありませんので端的に申しますが、たとえば水田中のカドミウムの含有量なんというのは、もう石灰流してもどうしようもないので、これは調査反応ですね、非常に高いカドミウム含有量というものが出ておるわけです。なぜじゃお米の含有量が少ないのかという点は非常に疑問だと思うのです。先ほど小林教授は、それはお米をとった場所がちょっと違うのじゃないか、こういうお話もありましたけれども、確かに一番カドミウムが含まれているようなところのお米をとっていないような感じを私は受けているわけです。 それからもう一つは、井戸水だって一番排煙が入っているところの、いわゆる南方にあるところの北野殿の付近の井戸水は全然とっていない。木村すみさんというおばあさん、いま寝ているわけですが、その辺は最も甚大な排煙の影響を受けているのに、そこの井戸水なんかは全然調査してない。野殿地区の畑のカドミウム含有量、これは小林教授は岩井地区などはお調べになったかもしれないが、野殿の排煙によって一番汚されているところはお調べになっておりませんし、また、拝見しましても、厚生省の研究班の御調査でもどうもお調べになっていないようでございますが、この野殿地区の排煙は、これは野菜あるいは麦などいろいろ最も重大な関係がありますので、これは調べなければならないのじゃないか。このように私たちは思っております。それで、水田と申しましても、排見しますと、やはり排水が出ているような地域は相当水田のカドミウム含有量が高いようでございます。そういった地域をピックアップしてお米を調査すれば、もっともっとお米の中のカドミウムの含有量が多いのじゃないか。こういうふうに思います。この点について小林教授にお伺いしたいと思います。
○参考人(小林純君) 安中地区のこの水田のどろ、これは実は私どもの取りきめで、表面から二十センチのどろを取りまして分析する。こういう取りきめになっております。先ほど申しましたように、安中地区はカドミウムが表層の、人がいじってないところですと、十センチほどにカドミウムが集積しておりまして、それより深いところには集積しておらない。こういう事実がありました。しかもあの辺は土層が非常に深い。かなり深く掘りましても根が十分入っていける土層、土質になっております。したがいまして、安中地区ではどろの中のカドミウムは確かに神通川流域より多い。多いのですが、それは表面の土についての比較でありまして、結局稲の根はカドミウムが多いところでは成長がにぶりまして、カドミウムの少ない、つまり深い層へ、深い層へと稲やなんかの根はいくわけです。ですから特に煙をひどくかぶった畑を見ますと、初め根が表層から下の層に届かない。小さいうちはひどく被害を受けております。ところが、根が土をやぶって下の層に出たとたん急激に野菜なんか大きくなり始めて、非常なうらできができるという傾向があるのでありまして、根が下の層まで食い込んでいってなかったやつは、そこで死んでしまう。食い込んでいったやつは野菜が大きくなる。そういうことから見ますと、稲の場合も深い層に根が食い込んでいったために、表層だけではカドミウムがものすごく多いけれども、お米自体ではそれほど多くならない。それから神通川のほうは砂利の層が下にありまして、つまり根がはびこる層の深さが非常に浅いわけでありまして、下に神通川の伏流水が通っております砂利層があります。そういう関係で根が砂利のほうに入ってもしようがないので、結局表面のカドミウムのわりあいに多い耕土に根が張ります関係で、どろのカドミウムはわりあいに少なくてもお米にはわりあいに出てくる。そういう結果になりますから、必ずしも表面のどろのカドミウムとお米のカドミウムは正比例はしない。それから、いま重松先生から十センチ——私ども調べましたのはただの十センチだけの表層ですから、深い層は見てないわけでして、深い層にはカドミウムがなくて、それで、安中の場合には根がそこまで届いた。神通川の場合は深い層に礫があって、根がいってもしようがない。こういうことがありますし、それからもちろん気候や品種や土質、いろいろな条件が影響します。それからどろのPHとか、いろいろなものが影響しまして、石灰なんか多量に与えればあるいは吸収度が減るかもしれない。それから私どものほうで、ポット栽培、稲の栽培実験をやっておりますが、カドミウムを同じ量だけ加えまして、同じ稲を同じ条件で栽培しましても、二年続けてやりますとかなり成育が違って、被害のあらわれ方が違ってまいります。やっぱりその一年ごとの気候の相違とかそういうものがかなり影響するということであります。ですからそういうことで必ずしも比例はしないということ。それから野殿地区が汚染が最も大であるというお話ですが、私、実はそこへ参りませんでしたのですが、いろいろ地形を見ましたり、それから煙突との距離なんか見ますと、岩井地区よりは野殿地区のほうがはるかに煙の影響を受けやすい地区であって、そこには水の影響は全然なくて、煙だけの影響を受ける地区です。鼻から吸ったカドミウムとその地区の畑作物のとったカドミウムが両方が影響していると思います。この地区はぜひ調べる必要があると、そういうふうに私は考えております。
○内田善利君 時間がありませんので簡単に質問したいと思いますが、萩野博士にお願いしたいと思います。 まず第一点は、工場からカドミウムが地域を汚染していくわけですが、いま排水と排煙について論ぜられておりますが、その他には地域汚染の状況は考えられないかどうか。 二番目には、富山県の実情を、先生富山にいらっしゃるわけですが、お聞かせ願いたいと思います。まだ患者がふえているということも聞いておりますが、その点と一期・二期症状の方々もいま萩野先生が治療されておられるかどうか。また、その効果等をお伺いしたいと思いますが、そうして対馬の地域の人たちは、自分もちょっと神経痛があると、初期の症状ではなかろうかと、そのような不安を感じている地域住民があろうかと思います。私も知っておりますが、そういった症状の方もおります。幸いにして本年度は厚生省の橋本公害課長のほうで、そういった新しい患者はどしどし出していただきたいということでございますが、これまたあとでお聞きしたいと思っておりますけれども、そういった場合にどういうふうな治療をされるつもりだろうか、これは先生からお伺いしたいと思うわけですが、三番目は、二月二十七日の長崎新聞で、昨年の十一月十八日から長崎の県衛生部と厚生省で健康調査をしたわけですが、その調査結果がすでに発表になっております。それにもかかわらず、今回の厚生省の発表は、人体調査、健康診断の結果が発表にならずして、イタイイタイ病の発生する危険は考えられないというような発表があっているわけですけれども、この発表に対して萩野先生の御意見をお伺いしたいと思います。以上質問いたします。
○参考人(萩野昇君) 数たくさんの御質問でございますが、随時お答えしたいと思っております。工場でカドミウムなどを扱っている場合に、排水と排煙以外にあるかという御質問でございます。やはりございます。先ほど言いましたように、排水によるものは世界で初めて日本に起こり、私たちが初めてこれを発見したのでございますが、排煙による場合は、いま安中が考えられるわけでございます。対馬も煙の関係が加わっているようでございます。じゃあそれ以外にはないかと申しますと、カドミウムを扱っている工場の中で、紛末にした場合に、空気中にカドミウムの紛が飛散する、神岡鉱山のようにボールミルにかける前にすでに水に溶かして、その水に溶かしたものをボールミルにかけておりますと、室内に飛散いたしませんが、それ以外の方法でございますと、どうしても紛になりまして散るのでございます。これを吸ってカドミウム中毒になっている例が外国にございます。一例報告で出ております。日本では幸いにしてこのような例はきょう現在まで見当たっておりません。しかし、将来は工場内感染、これもひとつお気をつけいただきたいと思っております。そのほかに、ではあるかというお話でございますが、先ほど申しましたように、安中の第一次鉱滓が、皆さんごらんになったろうと思いますが、私はたずねましてまずびっくりいたしました。この危険物がここに野積み、山のように——私質問したわけです。「雨が降ると、これ、どうなりますか」、「かたくて、とてもとても上を流れますよ」というお返事でございます。もっとも三無主義でございますから、においもなければ何もないという工場長の御説明のとおり、あのとおりでございましたら間違いないのでございましょうが、看板に偽りありでございまして、大いに危険でございます。これも排水に関係してくるんでございますが、そのほかにお気をつけいただきたいのは、トラックが入りましてタイヤにつけて、そうして相当持ち運んでいる例もあるようでございます。トラックがタイヤにつけまして、しかし、この量は微々たるものでございまして、はたして人間公害になるかどうか問題にはなっておりません。しかし、そういうものも一応あり得る。しかし、ここでお答えするのは工場排水の場合、それから煙の場合、それから日本にはまだ起こっておりませんが、粉末による従業員の室内感染、こういうものが考えられるのでございます。富山県の場合でございまして、非常に患者さんたちは助かっております。まことに申し上げにくいことなんでございますが、こういう席上で責任のある回答をしなければなりませんので、歯に衣を着せないでお答えをいたしたい。知事にしかられるかもしれませんが、県自体は非常に消極的でございます。厚生省は非常に積極的に御指導をいただいております。私この点、橋本課長、専門の責任者である橋本課長に対してはもちろん、厚生省の皆さんに非常に敬意を表しております。厚生省は非常に積極的に御指導をいただいております。そういたしまして患者救済は医療面においてはほとんど万全に近いものがある。重症患者はもちろん、軽症患者、要観察者、すべて治療しております。また、患者たちは手を合わして拝んでおります。非常に私は厚生省に感謝しておるのでございます。ただ県はいまだに何か態度不明でございます。事実を申し上げますと、厚生省が公害にかかわる疾患という御発表をされたのでございますが、日本の国に公害病ということばが医学界にないのでございます。ないから厚生省は橋本課長が公害にかかわる疾患とおっしゃるのは当然でございまして、公害病であるという発表ができないのであります。公害にかかわる疾患というのはイコール公害病であるということでございまして、近い将来には、各大学にも公害病科、公害病ということばが出てくると思うのでございます。それを富山県は公害にかかわる疾患だから公害病ではないのだというような断定もしております。そのほか、あらゆる点において厚生省に対しては、厚生省の患者救済というありがたい御処置に対して、これをそむくような言動をとっております。しかし、最近では県も、衛生部長が非常にいい方でございまして、私は衛生部長は非常に間に入ってお困りなのではないか、衛生部長はさすが厚生省から派遣されている衛生部長でございまして、前向きの姿勢でつらい立場を厚生省の指令のとおりあるいは自分から積極的に患者救済に乗り出しておられます。しかし、そこに何かもやもやとした暗雲低迷し、どこからか後からリモートコントロールされたという面が出て、これに水をかけるようなものがございます。なぜそういう状態か、これは私はうかがい知ることができませんけれども、工場誘致を政治的生命としている県首脳部が一つでも工場誘致をしたい。その場合にそういうようなことを言われるということはマイナスになるという考え方からいたしますと、私は非常に残念でございます。人命がすべてのものよりも第一番に尊重されなければならないものでございまして、私たちの考え方からいいますと、総理の次には厚生大臣が来まして、厚生大臣の指示によって大蔵省は予算を支出し、通産省は工場規制をする。これが民主国の当然の姿じゃないか。もう一歩言いかえると、首相——これは失礼なことばで申しますけれども、やはり首相自体が厚生大臣の経験者のような方がおなりいただけると、日本はもっと文化国家になり得るのじゃないかというように私考えております。私の私見でございます。お許しいただきます。それで大体、これ以上申しますと、帰って知事にしかられますので、これくらいにさしていただきます。 それからその次に一期、二期の患者でございますが、これは鑑別診断につきましては非常にむずかしゅうございます。私自体が非常に悩むことがあるのでございますが、その治療法は十分にやはり、これ先ほどとダブりますが、やらしていただいております。それにつきましては何か御質問、ちょっと聞き漏らしましたので……。
○内田善利君 対馬の場合、非常な不安に思っておる者がありますが、こういった人たちに対する治療の問題です。
○参考人(萩野昇君) そこで対馬の場合でございますが、ここで先ほどの多田委員の質問の関連事項になりますので、ちょっと触れさせていただきますが、先ほど小林教授は三名とおっしゃいました。私は二名と申し上げました。なぜ一緒に行って狂うのか、こういう疑問を持たれたと思うのでございます。私は臨床医としまして二名と申し上げました。というのは、私があると言った以上は、厚生省から資料を出せとおっしゃいますと資料を出さなければならない。それで資料の整っているものを、一宮アサさんと永瀬トヨさんだけをここでしゃべらしていただいておるのであります。この二名は、私りっぱな証拠書類を持っておりますからお出ししたいと思います。またがって私が認めていただいた、すでに金沢大学でお認めになっております長瀬ハルさんの場合は、やはり一宮アサさんが、長瀬ハルさんは私と全く同じ状態で死んだんだと言うので、小林教授にお供いたしまして、この人の証拠をつかもうと思っていろいろ調べたんでございますが、ついに臨床医といたしまして長瀬ハルさんがイタイイタイ病であったという証拠書類を見つけることができなかったのであります。すでに死亡いたしていますから。ですから、この方も客観的に申しますとイタイイタイ病であったのだろう、ですから三人だということは言えるのでございますが、後日証拠書類を出せと必ずおっしゃいますので、私は二名と申し上げました。一宮アサさんと永瀬トヨさんの証拠書類を持っております。それで二名と申し上げました。これは多田先生にひとつお含み置きいただきたい。 それから対馬の患者でございますが、その後もう一度参りたいと思いましたけれども、地元の反対で、来たら部落に入れない、足の一本もたたき折るというようなことを承っておりますので、行けないのでございます。小林教授も昨年おいでになりましたけれども、ついに目的を達せずお帰りになったように漏れ承っております。ところで、対馬の患者でございますが、これはやはり私申し上げたいと思うのは、厚生省の橋本課長のほうからは、群馬県へも長崎県へも、その道の先輩と申しますか、専門家と申しますか、の人たちと連絡をとるように、相談するようにという御指示は行っているようでございますし、私も課長に直接そういうお話は承っております。しかし、県自体がお招きいただけない。そうして患者が出ていないという資料を橋本課長のほうへお出しになった。厚生省といたしますと、県の報告、調査委員会の報告、これをおまとめになって政治的発言もされるのはお仕事でございます。先ほども言ったように、それぞれの方が間違った資料をお出しになりますと、厚生省は間違った判断を下さざるを得なくなります。しかし、ここに救われることがございます。先ほどから再三私が言いますように、予防医学と実際の医学は違うんだ。学会でわれわれが発表する場合には、われわれが研究したことを口から出す場合には、まず学会に発表する。そうして批判を受ける。その後公にしていく、これが私、学者のルールと思っております。で、橋本課長の手元へ届くこういう資料は、結局長崎県がお出しになるので、厚生省からは萩野にも見てもらうようにという指示が出ているようでございます。にもかかわらず、私は拝見していない。しかも、プライベートに送ってまいりましたデータが、私はとてもイタイイタイ病であるとかないとか判断のしようがないような資料、言いかえますと、先ほど申しましたのと一緒に、御苦労されないでアカデミーの権威のもとでおやりでございますから、そんな写真なんかとらなくても、これでおまえわかるだろうということでございます。しかし、その写真ではわからないのでございます。たとえば、骨盤大腿部の写真が参っていない。そういたしますと、私たちは判断のしようがないわけでございます。ですから、わからないと言ってお返ししたのでございます。今度も長崎県の写真を見せていただきますと、私はどのように診断するかわかりませんが、ぜひ見せていただきたい。この点につきましても、実は私、昨日上京すると同時に、羽田からすぐ厚生省にお伺いして橋本課長にお会いしておるのです。橋本課長は、五月に全部まとめて学問的な検討会などをやりたい、おまえもぜひ入ってもらうのだ、まことに正しいことだと思っております。それで私たちは、この機会にやはり歯に衣を着せないで申し上げたい。きょうの委員会も、私出ると言いましたら、橋本課長は、歯に衣を着せないで言ってくれというお話でございます。まことにその点におきまして厚生省の方々に私は敬意を表しております。内輪話でございますが、やはり前向きの姿勢でやっていただいておるということは認めるのでございます。しかし、歯切れが悪いということは、これは資料がないので歯切れをよくされようとしてもされないのじゃないか、私は学者として臨床医として、そういうふうに思っております。立場が逆であっても若干私は歯切れが悪くなる。ただ非常にうれしいことは患者が出ていない、ということには私はきのうも抗議を申し込んだのでございます。出ていたのでございます。現在時点においては出ていない。ここのニュアンスの御質問だと思うのでございますが、これはやはり長崎県の欠点があるのじゃないか。長崎県が厚生省に御報告される前に私たちに見せていただいて、それから御報告されたほうが県のメンツが立ったのじゃないだろうか。そうしてそれをおまとめになったほうがよかったのじゃないか。アドバイスがあったにもかかわらず、長崎県はわれわれをお加えいただけなかった。そうして厚生省に御報告になった。厚生省はその報告をおまとめになった。しかし、非常に客土が汚染された、出る可能性があるのだ、出なければならない、おかしいなというお気持ちがあったから要観察者として今後見てきたいというおことばがあとについているようでございます。私といたしますと、要観察者として見てきたいということばとともに、もう一言治療してきたいというおことばがほしかったんでございますが、もちろん先ほどから聞いておりまして、今後治療していくんだというお気持ちがあるということを十二分に悟ったんでございます。そういう意味であくまでもあれは中間発表として私は承りたい。そして五月にほんとうの発表をお出しになるんじゃないか。それと同時に、患者がどんどん進行しておるとしますと、これは政治の大きな責任でございますから、一日も早く要観察者として観察すると同時に、救済の手を伸ばしてやっていただきたい。予防医学からいいますと、それは決して悪いことではないと思います。まことに長くなりまして、主観をまじえ、若干お耳ざわりのこともあったと思いますが、時間の関係上、これぐらいでお答えを終わりたいと思いますが、いかがでございますか。
○参考人(小林純君) ちょっといま萩野先生の御発言に対しまして私から、ちょっと誤解があるように思われましたので申し上げさしていただきます。 私が配布しました資料の八ページです。これは去年、先ほど申しましたように、萩野先生と私とで共同発表しました講演の内容でありますが、これの八ページのまん中のあたりをごらんいただきますと、「三名の患者中、最も重症であったと推定されるのは表3の井戸水(B)を生涯飲用した長瀬春である。同女は樫根部落で生れ、裕福な家庭で男子三人を出産し、昭和二十九年六十七歳で死亡した。看護にあたった家族の談話によると、」とありますが、これは萩野さんお聞きにならなかった、私がたずねて行って家族に聞いたのですが、その家族は長瀬シゲさんです。現在大分別府の療養所で療養中の長瀬シゲさんのことであります。その長瀬シゲさんに私が会いまして、水をもらったり、それから看護したりしたことを詳しく伺った。そうすると「四十歳頃から足腰が痛み、戦後疼痛が特にはげしく、便器に尿を取るのに三人がかりで行い、掛布団の重みに痛みを訴えるため、ヤグラを作ってその重みをなくし、また柔らかい敷布団を何枚も重ね、しかも尻の下にゴム輪を敷いた。けれどもイタイイタイを連発し、終りの五年間程は身動きができなかった」と、こう言って長瀬シゲさんが私に詳しく説明してくれたので、そうしてこれは萩野先生とも御相談の上で、患者だろうというふうに断定したわけであります。そのときに長瀬シゲさんは非常にふしぎそうな目つきをしまして、私の顔をのぞき込みまして、あなたは遠くからどうしてそういう患者がうちにおったということがわかったんですかといって、非常にふしぎそうに何べんも何べんも聞いたので私はよく説明をしました。そしてお宅の飲んだ井戸水はどうですかと、その水も分析したわけです。そしてできれば、長瀬春さんは土葬にしてありますので、そのお墓の骨をひとつこういう研究用の資料として何とかしていただくわけにいきませんかといって長瀬シゲさんにお願いしましたけれども、自分一人で——自分はこの家に来た稼である、したがって、自分の一存ではどうにもならないというので、その日はお別れしたのですが、その長瀬シゲさんが、去年から、もう一年前から対馬を逃げ出しまして、神経痛という名のもとに逃げ出しまして、別府で治療を続けておるわけでありまして、そうしてその長瀬シゲさんは神経痛であるというふうに一般に言われておるわけでありますが、私はどうも長瀬シゲさんが島を逃げ出す、こういう理由は、やはり自分の看病したしゅうとめ、おかあさんの病気と同じものが発生したのではないかと心の中で考えて、そして逃げ出していまだに治療しているのではないかというふうに想像いたします。その根拠はどこにあるかと申しますと、実はこの長瀬さんは裕福なうちでありまして、鉱山の所長が、以前私の聞いたところでは、長瀬シゲさんのうちへ寝泊まりして生活しておった。それからまた鉱山は長瀬さんの山を何回にもわたって相当高い値段で買い取って鉱山が使っておるというような、いろいろ鉱山と長瀬さんのうちとの関係が非常に深いので、長瀬さんとしては、一身上の都合で、自分がイタイイタイ病だということは言えないだろうということをある島の老人から聞きましたので、ついでながら申し上げさしていただきます。
○小笠原貞子君 安中へ行ってまいりまして現地の人といろいろお話をいたしましたら、やはり自分たちの命の問題だというふうに考えられて、私もこれはたいへんな問題だというわけで、ぜひ小林先生のいろいろなデータを通してお伺いしたいと思って、きょう来ていただけるようになってたいへん喜んだのですが、結果的には、一番最後になってしまってもう時間がなくてたいへん残念だと思っているわけです。それでほんとうに聞きたいだけのわずかを伺わせていただきます。 まず、小林先生にですけれども、きょうずっと伺っておりましたら、こういうことがもっと事前に研究班の中で討議されていたらもっともっと違った結果が出てくるんじゃないかと、そう思ったんです。私はそれでふしぎに思ったんですけれども、萩野先生がメンバーに入っていらっしゃらないというのは先ほど橋本課長のほうからお伺いしたので、なるほどそういうむずかしいことがあるのかなと、じゃ厚生省としてはそんなむずかしいワクをとっぱらって、実地にやっていらっしゃる萩野先生もすぐ入れていただきたいというお願いで済まそうと思ったわけです。小林先生の場合にはこのメンバーには会員として名前が書かれていらっしゃるわけなんですね。そうしましたら、いままでのお話聞いていますと、どうもその辺のところがわからなかった、会員としてそれじゃ一緒にお米の問題を安中で調べるのだったら、どういう範囲から、そして、米を田んぼの中だったらどういうところからお米をとって調べようとかいうふうなことも御意見としてお出しになれるはずじゃなかったかとも思われますし、それから、いろいろ伺っているとその辺がわからないので、先生調査なさるときに御一緒に行っていただけていたのか、御都合が悪くていらっしゃれなかったのか、その辺の事情、どういうわけでそういうことになって、もし、行っていらしゃらないように私はお見受けいたしますけれども、それは班長さんとして何かの問題があって小林先生いらっしゃらないようになったのか、だんだん聞いてみますとちょっと先ばしったようなあれがございますけれども、そういうふうな事情というのがどういうふうなんだったかということもお聞かせいただきたいと思います。 それからこの厚生省見解というのは、これ学会に発表するものじゃありませんし、これが大きく新聞に取り上げられまして一番関心をもって見るのが現地の人たちだし、私たちも関心をもって見たわけなんですが、これで見ますと、非汚染地域での玄米でも〇・三ないし〇・四PPMが出てくるということがある。だから安中の場合でいけば〇・四PPMだ、これで計算すると一日の摂取量がほかの食品と合わせて〇・三ミリぐらいだということで、この〇・四PPMという、そこのところが相当なウエートを占めて出てくるわけなんですけれども、この辺のところの〇・四PPMという値を小林先生どうお考えになるか。それからまた端的に申し上げれば、この〇・四PPMだと言われるこの安中でのお米を、住んでいるわけですし、自分でお米をつくっているわけだから、これをずっと食べていかなきゃならない。このまま食べていってだいじょうぶなのか。いますぐ直ちになんということばでたいへんあれでありますけれども、これを食べていってだいじょうぶなのかどうかという点をお伺いしたいと思います。安全度というものを考えると、大体一日の摂取量というのは何ミリグラムで押えたらいいというふうに小林先生はお考えになるのか。また、その辺についても、実際臨床でやっていらっしゃった萩野先生のほうにもその辺のところ御一緒にお伺いしたいと思うわけです。 それからまとめて質問だけ先にさせていただきます。 重松先生にお伺いしたいんですけれども、実は安中の東邦亜鉛の工場でいろいろと書いて出しているのがあるんですね。「重松博士との面談記録」というふうになって、先生が会社側にお話しになったというのが項目になって出ているのを私ちょっと見せてもらったんです。そこにたくさん、何項目か、九項目ぐらい出ているんですけれども、時間がございません、一つだけ、いらっしゃるので萩野先生とお二人に関係しますので伺わせていただきたいと思うんですけれども、重松先生がこうおっしゃったと書いてあるんですね。「なお、昨年萩野医師が昔撮ってきたレントゲン写真を金沢大学の石崎教授が見てイタイイタイ病だと発表したことがあったが、萩野医師が撮って来た写真はかつて私が金沢大学にいた頃、萩野医師を入れて読影し、これはイタイイタイ病ではないとの見解に達していたものである。」とおっしゃっていることになるわけなんです、これで見ますと。だから、その辺のところを萩野先生とそれから重松先生にお伺いしたい。「第一、たった一枚のレントゲン写真で決めつけることはどうかと思う。」というのがあとについているわけなんですけれども、そういうことをちょっと考えてみますと、何かこう非常に工場で出しているというものが私には何かを考えて出しているというふうに思えるので、心配いたしますので、聞かせていただきたいと思うわけです。 で、公害課長さんのほうにはまたこの次にお伺いしたいと思いますけれども、いままでのお話を伺ってみると、厚生省見解というのがもう大きく、私に言わせれば、ゆらいできたというように結果的には思えるわけなんですね。それで、重松先生に先ほど御苦労されたと思いますが、学者としてのこう客観的なデータでお出しになったと、それが厚生省見解でこういうふうにまとめられたというこの見解をごらんになりまして、班長さんとして、自分たちが班としてまとめた結果が正しく見解にまとめられているというふうにお思いになるかどうか。最後そこの辺の御所見を伺わしていただきたいと思います。
○参考人(小林純君) それじゃ私が最初お答えいたします。 私は先ほど申しましたようなぐあいで、厚生省のこのカドミウム関係の委員の一人でありまして、分析を担当してまいりました。ただきょうはそれから離れて萩野先生のおっしゃったように、歯に衣を着せないで自分の考え方をざっくばらんにガラス張りに申し上げさせていただいたので、非常に仲間割れをしたような感じを皆さんなさったと思いますが、その点はきょうは御了解いただきたいと思います。というのは、私は、昭和十六年から農林省で鉱毒関係、鉱害関係の担当官をしておりました。そういう関係で鉱毒関係は私の専門として長年やっておりますから、かなりの経験と自信を持っておるわけでありまして、それであえて申し述べさせていただいたというわけであります。昔は、私が農林省におりました当時は、農作物の被害、これが人体まで及ぶということはだれも考えたことがなかったのであります。農作物が全滅したとか半分に減ったとかということで、その賠償金が支払われたり、あるいはそれを直す方法を考えたり、そういう対策が講じられてきたわけでありますが、この富山県のイタイイタイ病で初めて農作物が今度は人体にまで影響を及ぼすのであって、単に農作物の被害だけの問題ではないのだという非常に大きく発展してきたわけであります。私の生涯の鉱毒関係の仕事の中で一番大きく飛躍したことになるわけであります。そういうことで私は、農林省以来長年鉱毒関係を調査してきたわけであります。実は先ほども調査に出席したかというお話でありましたのですが、実は一度も出席しておりません。実は安中地区の調査が十月にありまして、あのときは厚生省の委員会のメンバーが幾つかに分かれまして、対馬のサンプリングに行く班とか、あるいは安中のサンプリングに行く班とかいろいろ分かれまして、私は安中の調査班として予定されておったわけであります。ところが、出発直前になりまして、ちょっとおまえ出席しないでくれ。サンプルの分析はお願いすると、そういうようなお話が重松班長からありまして、私はですから出席しないで、サンプルを受けまして分析したわけです。 それから私がたびたび申しました分析結果というのは、厚生省から受けた仕事と私個人でやりました分析値とを混同なさらないようにしていただきたいと思いますが、個人でも調査していたわけであります。それに基づいて、今度は厚生省がおつくりになった場合もあるわけであります。 それから米の平均値が〇・四ミリグラムというのは妥当かと、こういうことでありましたのですが、これはやはりさっきの安中の場合は、高崎市の米も非常に低い米が平均値の計算には入っておりますから、もう少し患者の発生しそうなところだけを選んでしぼっていけば、まだ平均値は高くなるということを申し上げたわけです。そういうことで、もう少し上がると思います。 それから一日にどれだけのカドミウムをとっても安全かと、こういうお話ですが、これはなかなかわからない問題であります。ただ、富山の場合に、先ほど申しましたように、米からのカドミウムが主体であったと考えますと、まあ一PPM前後のカドミウムを戦時中ピーク時にはかなり米の被害が出ておりましたから、平均一PPMぐらい十分あったと思います。婦中町の各農家から米を全部集めて、つまり患者の発生した全地域の米をまぜて平均しますと、おそらく一PPMぐらいあったのじゃないか。そういう米をかりに四、五百グラムぐらい摂取したとしますと、やはり〇・四とか〇・五ミリグラムぐらいの米を食った。カドミウムを食った。しかしながら、戦時中だけそこにおった人たちでは発生しておらない。三十年ぐらいの長年いた人だけなっておるということになりますと、戦前戦後おしなべて平均してみますと、もう少し差があるだろうということになりますと、まあ、〇・三ミリグラム前後のカドミウムを三十年間ぐらいとり続けたと、一日当たりですね。そういう場合におばあさんがかかる——非常にお産をたくさんなさったおばあさんがかかったぐらいで、まだ抵抗力のある人はかからなかったと、そういうふうに考えられます。 そうしますと、今度は先ほどの一日の安全なカドミウムの摂取量というのはどの辺に置いたらいいかということになりますと、いまの〇・三ミリグラムということは私の推定で相当の仮定でありますが、〇・三ミリグラムでその危険の限界が出てくるといたしますと、相当の安全度を見越せば、健康本位——企業をあと回しにして健康本位で見ますれば、その十分の一——〇・〇三ミリグラムの摂取量であれば、これはもう完全に安全であろう。ですから、すべての農作物や水の規制の管理の標準にして規制していったならば、これは非常に理想的なものになるけれども、しかしそのかわり、相当な農作物が廃棄処分を受けるとか、あるいはほかのでん粉工場に回すとか、酒をつくるとか、アルコールにするとか、いろいろの利用法はありましょうが、食べるわけにいかなくなってくる、こういう感じがいたします。 それからいまの〇・〇三ミリグラムといたしますと、先ほど重松先生からお話しになったように、水は〇・〇一PPMですでに厚生省が規制を決定しております。ですから、水からの摂取量は最高の場合に〇・〇一PPMですから、普通の場合は〇・〇三ミリグラムの半分以下——半分よりずっと少ないと思われますが、しかし、米のほうがかなり問題になってまいります。普通の配給米でも、先ほど申しましたように、〇・〇七PPM持っておりますから、これを四百グラムとるといたしますと、米だけでもう〇・〇三ミリグラムに接近してまいりますので、ちょっと〇・〇三ミリグラムという線は相当きつい線になると、だからもう少し余裕を実際は見ていかなければいけないのじゃないか、そういう感じがいたします。 それからもう一つ、レントゲン写真の永瀬トヨさんのことについて萩野先生にお尋ねになっておりましたが、あれは対馬の鉱山側の発表によりまして、あれは永瀬トヨさんのレントゲンの写真ではないのだというプリントを私は配付されているのを見ました。あれは本人が死んだときにレントゲン写真はお墓に葬ってしまったのだ、それなのに萩野さんはそういうお墓の中からレントゲン写真を持ち出して、それで患者がいたとかいないとか言っているということを私何かの記事で読んだのです。それで、ちょっと申しますが、あれは間違いなく厳原町の協立病院の院長さんにお目にかかりまして、その当時はまだこのイタイイタイ病が全然問題にならず、鉱山側ももう患者をリヤカーで運んでいけば、すぐレントゲンで見てくれる。そういう開放的な時代でありましたので、協立病院からちゃんと写真をくれましたし、それからこれは常識ですが、そういう病院のレントゲンのフィルムを患者が死んだからと言って病院がすぐ患者に返してお墓に入れる、そういう習慣はないので、たいてい病院に保存したままになっておりますので、それを萩野さんと私とでいただいてきたので、ですからお墓の中から取り出したという記事は、あれは間違いだということをちょっとつけ加えさせていただきます。
○参考人(萩野昇君) 許容量という問題は、有毒重金属カドミウムによって起こる疾患でございますから、許容量はゼロが当然でございます。あっていけない。しかしあるじゃないか。だれだってあるじゃないかと、これが問題なんでございます。しかし、ここに現実に日本の基幹産業である以上はこれも育成しなければならない。人命も大事だ。そこに許容量が生まれてくるのでございまして、私たちはなるべく低い許容量をこいねがっております。なぜかと申しますと、微量ながらでも入ってまいりますと、イタイイタイ病になるのでございます。対馬、安中、もちろんキャリアの不足がございます。もし三十年のキャリアになりますと、必ずイタイイタイ病が出てまいります、土地が汚染されているのですから。もし起こらないものであれば富山に起こりっこない。厚生省が認定されるということはあり得ない。起こり得るのでございます。ただし私たちは、臨床家といたしましてデータが出ないことには患者が起こったとは申しません。しかし、起こり得るのでございます。で、十年後、このままで放置すれば必ず患者が出るということは、私臨床医として半生をかけてまいりました。断言できることであります。ただ私たちが参りましてから対馬では、工場がコンクリートをやってふさがした。その水を使えないようにした。自分の工場の他の水源からの水道を補給している。そしてそれをその後おいでになった先生がたがお調べになって、許容量以下だとおっしゃる。これは私けっこうだと思うのでございます。予防医学が徹底してきたのだという見方で、けっこうだと思います。そういう意味で、厚生省の発表の今後要観察地帯として観察を続けていくということに非常にありがたいと思っております。で、先ほどの御質問の、当然このまま放置すれば患者が出る。しかし、いまのようにして要観察地帯として観察をお続けになれば、加害者である工場はもちろんできるだけのことをいたしますし、今後は患者の発生も減ってまいります。出なくなるのじゃないか。神通川におきましても現在まだ出ております。なお出ております。ここに問題があるのでございます。先ほども何べんも同じことを言うようでございますけれども、これは説明の関係上しようがないのでございまして、私がイタイイタイ病を発見した時代においては、全身数十ヵ所の骨が折れて、タコのようにアクロバットダンスをしているのをイタイイタイ病と言ったのです。そのときは四面楚歌、学会に報告しても取り上げてもらえない。母校である金沢大学に報告しても取り上げていただけない。その時点において協力者があらわれた。どなたかと申しますと、きょうここに御出席の重松教授でございます。彼は金沢大学の教授でございます。そして私にひとつ協力してやろう、おまえの言うことはなかなかおもしろい、それでほかの教授が助成金を御申請になりましたけれどもだめだったのを、重松教授がおもらいになって研究着手された。私といたしますと、ほんとうに救い神があらわれたような感じでございました。その時点において対馬へ参りまして写真をとってきたのでございます。先ほどから何回も言うように、症状はりっぱなイタイイタイ病だった。写真をとった、見た、イタイイタイ病であったけれども、富山のイタイイタイ病とはニュアンスが違う。どこが違うかと申しますと、キァリアが足らなかったことが一つ。きょうナンバー1の付表で御説明いたしましたように、キャリアが足らなかったことが一つ。加害者である鉱山が戦争中軍需工場に指定にならないで重油配給がないために休山しておったということが一つ。それからもう一つは、対馬へおいでになった方は御存じでありましょうが、李ラインの近くでございます。晴れた日はすぐそこに朝鮮が見える。現在まで密貿易の拠点としてここは栄えておるのでございます。あの薄ぎたない密貿易宿へ入ってまいりますと、朝から魚を食わしております。土地が肥えておりません。カドミウムがあるために米が取れません。白菜も甘蔗の花もまつ黄色になっている。できが悪うございます。必然的に食べるのは小魚でございます。半農半漁、朝早くから季ラインまで出かけまして魚をつかまえてくる。その魚を朝から食べている。私たちが対馬へ参りましたときに朝から魚を食べさしてくれました。魚というものは御存じのようにカルシウムが多うございます。カルシウムを取ることによって同じカドミウムによるイタイイタイ病のニュアンスが違ってくる。と申しますのは、富山のイタイイタイ病は骨粗鬆症よりも軟化症の傾向が強い。カルシウムを多分にとりますと、軟化症の影が薄れてくる、粗鬆症のほうが強くなる。どうもイタイイタイ病ではあるがニュアンスが違う。そこでずばりと言えば言えるのでございますが、私たちはいつでも謙虚な気持ちで言い過ぎしないように、自分で自分の気持ちを絶えず押えております。重松教授にその写真をお目にかけに行ったときに、重松教授は初めイタイイタイ病じゃないかとおっしゃったんです。だが私は、ちょっと先生ニュアンスが違います、そう言えば少し違うようだというふうなやりとりがあったのですが、そこでなぜそのときにニュアンスが違うかといいますと、違っていたから違うのだ。で、そこでその写真が専門家のレントゲンの先生、成形外科の先生のほうへお見せいたしましたら、富山のイタイイタイ病とはニュアンスが違うじゃないかと、ごもっともでございます、私自体がそう思ったのであります。そうおっしゃらないほうがどうかしている。しかし、その写真を帰ってながめまして——患者も見始めたのでございますが、だんだん患者が私のほうへ多くなってまいりました。そうしてその患者の中には大きいはっきりした患者は掘り尽くして、だんだん軽いものに手をつけてまいりますと、対馬の写真と同じような状態の患者があの地区からどんどんと私見つけ出した。いろいろな検査をしますと、これもやはりイタイイタイ病である。つまり重症ではない、中等症、骨粗鬆症の傾向が強い。で、これを申し上げましたけれども、母校である大学でも相手にしていただけなかった、金沢大学。その前に、私小林教授の御紹介で、小林教授のお供をいたしまして岡山大学の成形外科の教授児玉俊夫博士にその写真をお見せしたのであります。児玉教授は、これはりっぱなイタイイタイ病といっていいんじゃないかというアドバイスがあったのであります。しかし、私自身は悩んだんでございます。若干ニュアンスが違うんだ。これをどう解釈すべきかということで、富山県立中央病院、多賀一郎という院長がおられる病院でございますが、この病院は私が鉱毒説を唱えましたときに、鉱毒ではない、栄養であると発表されまして、名古屋の学会で、やはり鉱毒説などを唱える学者もいるが、これは何ら根拠がないのであって、このイタイイタイ病という俗名の病気は、潜在性骨軟化症と名前をつけようじゃないかと提唱された病院でございます。この病院で私は共同研究したのでございますが、意見が対立して、意見が合いませんから、けんか別かれをせざるを得ない。そうして共同研究を別れた病院でございますが、そこへ私また持っていったんでございます。多賀先生、これどう思われますか、やはりイタイ病と言われてもいいじゃないかというお話でございまして、しかし、多賀院長もイタイイタイ病であるとは言い切れなかったんでございますが、いろいろその後その写真を機会あるたびに出して、現地のイタイイタイ病と比べております間に、やはりこの原因はいま申し上げたように、キャリアの不足、食生活の相違によるものである。ですから私はイタイイタイ病の中等症の中へいれるべきであるという結論に達したのであります。それで小林教授とおはかりいたしまして、三十九年に言った学会研究報告が四十三年に出ておるわけでございます。なぜおくれたかと申しますと、いま一度出かけて、もう一度写真をとって、そうしてもう少し徹底的に検査をしたいという意味で学会発表をおくらしたんでございます。その後、向こうの現地の状況が、われわれが対馬に渡るのを許さない状況でございましたので、ついに私たちは対馬へは行けませんでしたが、富山県の患者の認定基準がだんだんゆるんできた。昨年の十月の北陸医学会で先ほど御在席されました石崎教授が、私が唱えていたとおり骨粗鬆症の状態をイタイイタイ病というべきだということを御発表いただいたのでございますが、そういうようなわけで、カドミウムによる慢性中毒、しかも、このように多発したのは日本で初めてでございまして、富山県で私たちが初めて手をつけたのでございます。ですから日も浅うございます。われわれの研究は一日一日と進んでおりますが、その間に研究の態度と申しますか、診断の基準が一歩一歩明らかになってきたのでございます。そういうことでございまして、まことに長くなって申しわけございませんが、いまではあの写真は先ほど石崎教授のお答えのように、りっぱにイタイイタイ病であると、富山県のイタイイタイ病診断委員会で認定を受けております。その点どうぞ誤解なさらないように、先生、そういうわけでございますからひとつよろしく……。
○参考人(重松逸造君) 最初に研究班のことについて質問があったわけでございますが、申すまでもなく、われわれの研究班はどこの御用研究班でもございませんで、あくまでも冷静に科学的に研究をするという目的でやっているわけでございます。この研究班につきましては、特にどういうサンプリングをするかという、つまり試料の取り方というのは、これはもう研究の中でも一番重要な部分でございまして、これはもちろん、研究班として最も討議をしてきめたことでございます。現地調査云々といいますのは、これはいま小林教授も言われましたように、みんなが手分けをしていっただけでございます。ただ私ももう忘れましたが、なぜあれを小林先生は途中でやめてもらったかというのは、たしか現地であまり新聞に書き立てて雑音が大きくなり過ぎたものですから、おそらく小林先生にも御迷惑かけちゃいかぬという、ただ単純な理由だったように覚えています。まあ、いずれにしても、それ自身はたいした問題ではないと思います。 それから何か面談云々の話が出ましたが、これはあの東邦亜鉛の人たちがわれわれの研究班の研究経過についてお尋ねがあったときに、私その班長としていろいろお話をしたことがございますが、いまの萩野先生との云々という話はだいぶん間違って伝えられております。したがいまして、私ここでどうだこうだということを申し上げる必要もないと思います。いま萩野先生の御説明のとおりでございます。あの時点ではこう、そしていまの時点ではこうだと萩野先生おっしゃいましたが、私も全くそのつもりでおります。 それから最後のお尋ねの、厚生省見解についてはどうだということでございますが、これはわれわれの研究班の成績をもとに行政的な見解を出されたわけでございます。これはいつも申し上げるんですが、われわれは研究者としましては、あくまでも事実だけを出す。ただ、まあいままでは御存じのように、しばしばわれわれの科学的な事実というのが逆に悪用されまして、ここまでしかわからない、あるいはこれだけ疑問が残っているんだから何もしないというようなことにしばしば悪用されたわけでございますが、これは私個人としては常に申しておりますが、科学的な事実に基づいてそれから先をやるのはあくまでもこれは行政的な決意であり、あるいは政治的な決意の問題である。たばこを吸い過ぎれば肺ガンになるというのは確かに学問的にはまだ幾つか問題点はありますが、禁煙運動を起こすということは、これはそれだけの科学的な事実に基づいた行政的あるいは政治的な決意の問題ではなかろうかと、それと全く同様に考えております。まあ、その意味では、今回の厚生省の見解は、橋本公害課長も心配しておられますように、全文を初めから終わりまで全部読みますと、大体この研究班の皆さん方が考えておった意図がほぼ表現されているのではないかと考えております。ただ先ほども私ちょっと触れましたけれども、このカドミウム問題、環境汚染の実態、あるいは飲食物に関してのデータというのはかなり集まったわけでございますけれども、やはり一番大切な人体への影響といいます部分がこれは実はわれわれだけでなしに、世界じゅうまだわからないところがたくさんあるわけでございます。その中では、わが日本は萩野先生はじめ皆さん方の御努力によって、おそらく世界ではトップ・レベルのいまわかり方がしているんでございますが、それにしても問題点がまだたくさん残り過ぎている。したがいまして、やはり一番大切なその部分を本気でひとつ取り組まにゃいかぬ。これはいまの公害問題みたいにはなばなしくはありません。非常にじみちな研究になりますが、しかし、これをやらないで、いくら何とかの基準はどうだということを論じましても、結局は推定、推定に終わるわけでございます。その意味では、私個人としましては、その部分の問題、目立たないじみちな研究かもしれないけれども、それにやはりこれからは全力を入れるべき段階に来つつあるのではないか。もちろんいま現在起こりつつあります発生源あるいはそれからの飲食物に対応した直接の公害防止策はすぐにいま手の打てることでございますし、これはやっていただかたくちゃいけないことは申し上げるまでもないわけでありますが、いまのような研究に並行してじみちな研究も並行して、スタートしていい時期ではなかろうかと思っております。
○小笠原貞子君 いま重松先生のほうから、なぜその前の日にお断わりしたか忘れた、それはたいしたことでないというふうにおっしゃったので一言申し上げたく立ち上がったんですけれども、おっしゃいましたように、ほんとうに研究班としてはだれのための研究班でもないと、おっしゃったとおりの立場でやっていただきたいと思う。しかし、いまのお答えでは、私は納得できない。あしたから一緒に調査に行こうという方に、前日になって行かないでいただきたいということは、相当いろいろと配慮されなければならないことだったと思いますし、お忘れになったというような、そういう簡単なものじゃないと思うんです。また、おことばの中でいろいろ雑音もあるから御迷惑をかけないほうがいいということをおっしゃいましたが、そのいろいろ雑音があるから迷惑をかけないほうがいいとお思いになったのは、先生自身がそうお思いになったのか、どこからそういう雑音があるからというふうなことで問題が出されてきたかというようなことは、私はもうきょう御返事いただかなくてもいいと思いますが、これはやっぱり私としては、もう少し考えさせていただかなければならない問題だと思う。いままでイタイイタイ病だけじゃなくて、水俣病にしても公害病が一体どこに障害があって、これだけの犠牲者を出してきたかといいますと、やっぱりそれはほんとうに大きな企業が、先生たちの正しい結果を信頼して、そしてそのとおりに認めないというところからきて、もうたいへんこの公害に関しては圧力というものは私たちは感じているわけなんです。決して、おっしゃったことがたいしたことじゃないとおっしゃったことでは、私は納得できないということで一言申し上げておきたいと思います。
○参考人(重松逸造君) おっしゃるとおりでございまして、もし、そういう雑音と申しますか、どこかの圧力でそういうことになるということになれば、これはゆゆしき問題でございますが、ちょっとその点、私の説明も足りなかったと思いますが、先ほど申し上げましたように、このサンプリングというのは、一番重要なことで、全部事前にきまっております。先ほどのどこの土を何センチから取るとか、たんぼのどろだとか、稲もどこから何メートルのところから取るとか、全部きまっておりまして、ただ、あとは現地に行って、研究班としては実際に取る作業を一応責任を持って見るという役目だけのことでございまして、その意味では、別にわれわれはどなたに行っていただこうと、研究班員の中でみんなが自由に振り分けたぐらいでございますから、そう気にもとめていないことでございます。それでそう申し上げたのでございます
○木島義夫君 私は、こういうことに対する自分の知識がいかになかったかということを告白するようなものでありますが、私は千葉県の出身でありまして鉱山もない。したがって、鉱山に関するこのような病気とかなんとかいうことは知りません。ただ、十数年前から、何かこのイタイイタイ病とか、水俣病等が日本のある地域においてあると、非常にそれは困った病気であるということだけは承知しておったが、きょうここへ出てきて初めてその内容がはっきりした。それからまた、このことに関しまして関係の諸先生方がいかに苦労されたかということを現実に知りまして、私は国会議員の一人としてこれらの関係された方々に深く感謝の意を表したいと思うのであります。ことに諸先生方みんなそれぞれの立場において御尽力くださったのでありますが、ことに萩野先生ですか、えらくここまで持ってくるのに内と外との御苦心、実際涙が出るようであります。 次に、私は簡単に聞きたいと思ってここへ立ったことは、萩野先生のお話で、骨盤や大腿部を見れば病気の判断ができるとかなんとかいうようなことを聞いて、私は知識が乏しかったせいか、これは御婦人、ことに老婦人がかかる病気であるということを知りましたが、しかし、御婦人のうち、妊娠中にことにそういう病気のもとができるという話でありますが、妊娠しない御婦人はこの病気にかかるのですか、この点を私は聞きたいです。それからなお、男子といえどもこの病気のもとになるカドミウムといいますか、そちこちに長い間にたまると、しからば男子もかかるのであるのか、ぼくは男性の一員として特に質問いたしたい、こう思います。これだけをお伺いします。
○参考人(萩野昇君) お答え申し上げます。大部分が妊娠しております。症状から申しますと、妊娠の回数の多い方がやはり重症になるようでございます。妊娠しない人がいるかと言いますと、一名おります。妊娠しない方ですが、この方は頭がまつ白でございまして、やせ浪人のようにいかり肩の男性的な女性でございます。ただ神通川の改修工事と申しますか、神通川は九十二回堤防が切れております。そのときに川底のカドミウムが入った砂が下流に流れておりますけれども、そのときの神通川の川水につかって石を運んだ、そういう経験者であります。妊娠しない方ももちろんなりますが、妊娠した人のほうが多いのであります。 そこで、男性でございますけれども、現在まで二百七十七名の患者がございます。
○木島義夫君 男性で……。
○参考人(萩野昇君) いや全部でございます。そのうち六名が男性でございます。男性はどうしてかかるかと申しますと、男性でかかった方をつぶさに診察してみますと、全部頭が白くて、しかもからだが平生弱くて、じん臓、糖尿病がひどくて、これまた先ほど言いましたように、神通川の改修工事のときにササ舟を持っていてこれに労働するとか、ササ舟を持っていなくても絶えず神通川の改修工事に行って働いていた、そして夏場の暑いときにはのどがかわくとすぐ神通川の水に口をつけて飲んでいた、こういう人たちが男性で六名かかっております。女性で妊娠しない人も一名入っております、二百七十七名のうちには。男性は六名入っております。 以上でございます。
○木島義夫君 それから私は、これはやはり政治家の端くれとしていまお話を承ったのですが、そのことは諸先生方のいろいろな話を聞くと、さっきも言いましたように、日本の医療行政の欠陥をこれは暴露したものだ、これは医療ばかしの欠陥じゃない、日本の政治にはそういう欠陥が各方面にあります。われわれ政治家としてここに集まった方々、ひとり自民党ばかしでなく、社会党その他の方々もともどもに日本のこの大きな欠陥を除かなければ日本は一等国になれないということを私はかたく信じます。どうぞ相提携してひとつやっていきたいと思います。(拍手)
○委員長(加藤シヅエ君) ほかに御発言もなければ、本件に関する質疑は、本日はこの程度にとどめておきます。 参考人の方々に申し上げますが、本日は、長時間にわたり貴重な御意見を開陳していただきまして、まことにありがとうございました。皆さま方の御意見を参考にいたしまして、今後十分に検討いたしたいと存じております。本日はどうもありがとうございました。 これにて散会いたします。 午後六時四十六分散会 —————・—————