法務委員会 第24号
- 発言数
- 120 件
- 登壇者
- 14 名
- 会派数
- 4
- 開催日
- 1969/06/27
会議録
○進藤委員長代理 これより会議を開きます。委員長が所用のため、指名により私が委員長の職務を行ないます。 この際、理事辞任の件についておはかりいたします。 理事濱野清吾君から理事を辞任いたしたいとの申し出がありますので、これを許可するに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○進藤委員長代理 御異議なしと認め、さように決しました。 次に、理事の補欠選任についておはかりいたします。 ただいまの濱野清吾君の理事辞任に伴い、理事が一名欠員となりましたので、この補欠選任をいたしたいと存じますが、理事の選任につきましては、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○進藤委員長代理 御異議なしと認めます。よって、委員長は、理事に鍛冶良作君を指名いたします。 ————◇—————
○進藤委員長代理 次に、裁判所の司法行政に関する件、法務行政に関する件、検察行政に関する件及び人権擁護に関する件について、調査を進めます。 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。畑和君。
○畑委員 私は、本日は三つの案件について質問をいたします。その一つは、青森の刑務所の所内におけるリンチ事件の問題です。それから司法修習生の七月入所の特別なはからいの案件、これは最高裁のほうにお尋ねいたすのですが、それからさらにまた目下エスカレートいたしております東大裁判の問題について、これまた最高裁にお伺いします。 まず、順序といたしまして、答弁者のそろっている関係から、最初に刑務所の事件について質問をいたしたいと思います。この件につきましては、われわれの社会党議員団あてに投書が参っております。ところでこれは、この文面によりますと、ほかの各党にもいっているようであります。差し出し人は青森市の弁護士の長谷川さんという方と同じく渡辺さんというお二人の弁護士さんからであります。若い弁護士さんのようでありますが、この二人からわれわれのところへ要請書という投書が参っております。実はこの前の金曜日にこの件について質問をいたそうと思っておりましたところが、たまたま委員会が流れたものですから、きょうになってしまったわけです。この間におきまして、新聞によりましてはこの事件を報道いたしておりまして、その新聞の報道するところによりますと、検察庁のほうでも捜査に乗り出したというような記事が書いてございました。したがいまして、この件、矯正局長と同時に、また刑事局長のほうにもお尋ねをいたします。もちろん大臣にもお尋ねするのでありますけれども、こまかい点については、まず矯正局長にお尋ねいたしたいのですが、この要請書を見てみますと、傷害事件で青森の刑務所に収容されております既決囚の草部孝一というのと丸島勝弘という、刑事でつとめておる二人についての公務執行妨害と傷害という刑務所内での事件、この事件についての裁判が行なわれて、そのうちの一人は国選弁護、一人は私選弁護についておる。この二人の弁護士の方が刑務所を訪れて事実の調査をいたしたところが、はしなくもこの二名の被告から、刑務所内でのリンチ事件についての事実を打ち明けられた、こういう案件であります。元刑務所の保安課長の補佐でありました高橋義博という人が、訓戒に名をかりた暴行を行なった、これに端を発して、非常に内心怒りを持った被告人両名が、ふんまんやるかたなく、数日後同刑務所の第一工場内における作業場で作業中、同保安課長補佐に対してなぐりかかった事実が起訴されているのだということであります。しかも、その課長補佐を両名でなぐったあと、刑務所の所員多数によって集団暴行を受けたということの訴えがあったそうでございまして、人権擁護をもって任ずる両弁護士が、このままでは捨ておけない、どうも事実のようであるということで、われわれ各党の議員団あてに同文の要請書を出しておるわけであります。 その要請書を一々読み上げますと、長くなるわけでございますから、一々これを読み上げません。ほんとうは時間がありますれば全部読み上げて、こういう事実がこまかくあったかどうかということについて、おそらく調査をされたであろう矯正局、それからさらに刑事事件として捜査の開始を始めたという検察庁のほうで、一々それに対しての答弁を伺うわけでありますが、時間が非常に長くなります、しかも各党にも要請が来ている関係上、ほかの野党の方々からも関連して質問がある予定であります。したがって、時間を節約するために一々こまかくは申しませんけれども、大ざっぱに申しまして、そういう事件があった。結局公務執行妨害や傷害で起訴されたけれども、そういう事件になった発端が、刑務所の課長補佐の暴行が発端であるということと、それからそのあとの起訴されている事実についての暴行のときに、ほかの多数の刑務官によって集団暴行を受けたということであります。このことについて、おそらく矯正局でも、新聞にも出たことでもありますし——この前の時点におきましてならば調査不十分ということもありましたでしょうが、新聞にも出ておりまするし、この点詳細な調査をされたと思います。もしこういうことが事実といたしますならば、きわめて遺憾なことでありまして、捨てておくわけにはまいらぬのでありまして、この点、調査の結果がいかがであるか、まず矯正局長のほうからひとつ御答弁いただきたい。
○勝尾政府委員 ただいまのお尋ねの点につきまして、最初に、青森刑務所に丸島勝弘及び草部孝一という両名が服役中であることば事実であります。それからさらにこの両名が、ことしの二月の十七日に、午前八時十分ごろに工場内で、同工場を巡視に来ました同刑務所の保安課長補佐の看守長高橋義博に対しまして暴行を加えまして傷害を加えたという事実がありまして、その事実が、検察庁によって取り調べの結果、本年四月二十八日、公務執行妨害、傷害罪で起訴されまして、現在青森地方裁判所で審理中でございます。 お尋ねの看守の受刑者に対する暴行の事実につきましては、この高橋保安課長補佐に対する傷害等の事件に関連して、その事件の前後にこのような事実があったということの報告は、当時私のほうへは届いておりません。本件につきまして刑務所側がその事情を知り得ましたのは、ことしの六月の十三日の午後一時半ごろに地元の報道機関の記者七名が青森刑務所に来所いたしまして、当日ただいま御指摘がありました弁護士が新聞記者に対して二月十七日の看守長に対する暴行傷害の原因が、二月の十五日に収容者が暴行を受けたということが原因なのであるということ、さらにこの二月の十七日の際に二十数名によって暴行を受けたということがあるということを新聞記者に発表をいたしました。その新聞発表に基づいて青森刑務所に取材をしに来たときに、初めて施設側としては事情を承知したわけでございます。施設側といたしましては、事柄の重要性にかんがみまして、これは施設側が調査をするということよりも、すべて検察庁において徹底的に調査をしてもらうことが適切であるという判断をいたしまして、当日直ちに検察庁にその事情を通知いたしまして、捜査方を依頼いたしたわけでございます。検察庁においては、その後直ちに捜査を開始いたしまして、現在に及んでいるという事情でございまして、ただいま述べましたような事情で、私のほうの調査は、検察庁が捜査中でございますので、私のほうとしてはやっていないというのが実情でございます。
○畑委員 刑務所でのできごとであるので、しかも途中でそういういきさつで、むしろそういうことがあったかないかわからぬけれども、そういうことがあったようだということを初めて知った。ところで、かえって部内のことであるからということで、検察庁のほうに捜査を依頼したということなんです。処理としては適切だと思うのでありますが、ただそういたしますと、矯正局のほうでは、しいて詳しく調べようとはしない、ただ検察庁のほうにまかせておる、こういうことになりますね。
○勝尾政府委員 仰せのとおりでございまして、私のほうとしては検察庁の調べを待つという態度でございます。
○畑委員 そうすると、おのずと検察庁の関係のほうになりますけれども、法務省の刑事局長でしょうか、この関係は。その辺の捜査の模様等、いろいろ捜査の秘密に関することもあろうと思うけれども、こうして訴えられた事件、要請書によって私たちのほうへ来た事件について、大体あらましの点を、差しつかえない限り、ひとつ知らしてもらいたい。
○川井政府委員 青森地検からの報告によりますと、地検は刑務所からの連絡に基づきまして、直ちに調査を開始いたしました。調査の過程におきまして、一応の容疑が認められるということで、看守長並びに看守数名の者につきまして事件を立件いたしまして、犯罪の容疑のもとに捜査をただいま行なっておるということでございます。なお、その過程におきまして、先日現場の検証というようなことも行なったという報告に接しております。 なお、その後ごく最近、電信報告によりますと、これらの件について、また別な告発を受理している。したがって、それらも合わせて一緒に捜査を続けているところである、こういうことになっております。
○畑委員 捜査の途中であるから、いろいろこまかいことは言えないということになるのだと思うのです。ということになると、中身は一つもなくなっちゃうから、私、これ読むつもりはなかったのですけれども、その両弁護士の訴えについて、読んでみます。早口に申します。 (一) 昭和四四年二月一五日草部は同刑務所内の配膳当番であったところ同じく当番の丸島に「おかずは何か見てくれ」と頼まれたのでそれに応じたまたま食料が運ばれて来る前方に運搬の邪摩をするような格構で立ったことから刑務官の注意を受けた。草部は同刑務官に対して右行為は故意になしたものではないと弁解したところ、そこに来あわせた前記保安課長補佐がみとがめ、草部を同所保安課取調室(六畳間位床コンクリート)に連行した。そして同人は草部に対し「お前のような奴は口でいってもわからないから暴力で判らせてやる」といって草部を同取調室床に正座させたうえ平手で草部の左ほほを七回乃至一〇回殴打した。 (二) 昭和四四年二月一七日本件公訴事実の行為を被告人両名がなした後、同刑務所警備課員二〇名が無抵抗の被告人両名を作業所(第一工場)から保安課室に連行せんとする際同工場廊下に於いて両名に対し各々約一〇名の警備員(計二〇名)が両名の身体をコンクリート床に足でおさえつけ両名の頭部を半長靴でふみつけ床にすりつけ、さらに数人が半長靴をはいた足で両名の身体、頭部を蹴り上げた。そして同じく数人が警棒で同人の身体を所かまわずメッタ打ちにした。 (三) 同日右暴行の後前記警備課員が抵抗不能状態の草部を捕繩でしばり保安課取調室に連行する途中、刑務官Aは草部の前方に付きっきりでその間中、苦痛にもだえる草部の腹部を半長靴をはいたままの足で一〇数回に亘って次々に連続して蹴り上げた。 (四) 同日右のような状態で保安課に連行された草部は六名ほどの刑務官によって同課取調室につれ込まれた。そしてそのうちの前記作業場担当にあたる刑務官Bは草部に対し「よくも俺の顔をつぶしてくれたな」と申し向け草部の顔面を手拳をもって連続的に五、六回殴打し続けた。 さらに次いで刑務官Aは草部に対し「衣服を脱げ」と命じ草部を全裸の状態にした。そして同人は「やきを入れてやる。お前も頭が安いかもしれない(注−すぐかっとなること)が俺も頭は安いんだ」というやいなや両手で竹刀をにぎり横振りに草部の背、尻を連続的にかなりの勢いで一五同位強打した。同時に刑務官Cは「懲役の分際で担当を殴るなんでざけるな」と怒号し平手をもって草部の左右両ほゝを連続的に約二〇回位殴打し続けたものである。 この間他の四人ほどの刑務官はいずれも同取調室の草部の四囲をかこんでいた。 (五) 右一連の暴行により草部は当時頭部出血及び腫張の創傷及び身体打撲の傷害を受けたが右傷害はしばらくの期間回復しなかったということである。 ということが実は訴えられたというわけでありまして、「右両名の供述はほぼ信憑性のあるものと思料されます。」こういうことで、これが事実のようであります。しかし、これを捜査してみなければわからぬのだけれども、そちらからある程度の内容が答弁されるかと思いましたけれども、捜査の秘密のような点もあるやで、その答弁がありませんでした。大体こういう事件のようです。若干は違うかもしれませんけれども、こういう事件のようでありますけれども、こういう問題がいまだに起こるということは、これは人権問題として許しがたい問題だと思う。いまの刑務所がだんだんと衣がえをしていき、監獄法はそのうち改められるというような機運に向かっている際に、こうした公務員による暴行陵虐事件に当たるわけでありますから、非常に問題だと思う。この点について、ひとつどしどし徹底的に糾明していただきたい。 そういう程度で、それ以上のことは御答弁ないのだけれども、いつまで長くしてもほかの関係もございますから、ほかの問題に進みたいと思いますけれども、この問題について法務大臣、まだ結果がわかっておらぬけれども、あなたの管轄下において行なわれたこういう事件でありますが、この事件に対してどういう見解をお持ちか、承りたい。
○西郷国務大臣 ただいま弁護士さんのお書きになったその事実を拝聴しておりましたが、これは御承知のとおり、青森刑務所において弁護士さんが被疑者からそういう事実をお聞きになった、ただ被疑者が申したそのままの御報告と思いますが、われわれも、刑務所の看守その他につきましては、受刑者の人権を尊重して行き過ぎのないようにということは常にやかましく申しておるのでございますが、青森刑務所等は四百数十名を収容した刑務所でございますが、そのうちの四分の一以上が暴力団員でございます。そういうようなこともあって、粗暴にわたる行動等もあるようでありまして、看守も非常に苦労をいたしておるようであります。しかし、ただいま伺いました事実は捜査中でございますから、近く実態は真相がはっきりすると思うわけでございます。事実といたしますればはなはだ遺憾しごくに存じますけれども、私といたしましても捜査中でございますから、その結果を見て判断いたしたいと考えております。
○松本(善)委員 関連して。法務大臣に一問伺っておきますが、この種の事件といいますのは、被害者が監獄の中におる。それで看守が相手でありますので、被害者の立場は非常に弱いわけであります。へたをすると押えつけられてしまうという危険が、きわめて大きいわけであります。こういうことを弁護士に話をし、こういうふうな問題にしてもらうということだけでも、内部ではたいへんな心理的ないろいろな圧迫を受ける性質のものであると思う。そういうことについては相当慎重な配慮を払わなければならないと思いますけれども、この点について、法務省としてどういうふうに考えておやりになっておるか、この点だけお伺いしたいと思います。
○西郷国務大臣 大局から私の考えを申し上げますが、いまお尋ねのようなこと、私もさように存じます。しかし、何と申しましてもわれわれといたしましては受刑者の人権を十分に尊重いたし、収容中にりっぱな人間に更生していただきたい、そして社会に出てまた働いていただきたいということを期待いたしますので、前提といたしまして、受刑者の人権尊重ということが一番大事だと思います。しかし、いま仰せのとおり、多くの中にあるいは間違いをしでかす者もないとは言えない状況でございますが、この上とも、われわれといたしましてはそういう大局的な見地に立ちまして、受刑者に対してまいりたいと考えております。詳細は矯正局長から……。
○勝尾政府委員 まず、私のほうといたしましては、職員に対していろいろむずかしいことを教える前に、まずしてはならないことを徹底的に教える。その、してはならないということの最も重要なものが、収容者に対するいわゆる暴行、こういうことは理屈抜きに、してはならないということを、もろもろの研修の基本としていま教えるようにいたしております。それからさらに収容者が施設に対していろいろな不平不満を持つことがあるわけでございますが、その点につきましては、直接の戒護は保安系統の職員がやっているわけでございますが、保安系統の職員のほかに、いわゆる教育とか分類とか保護というものを担当しておる職員、これをひんぱんに保安の看守のほかに施設内を巡回をさせて、いろいろ様子を見させる。さらに何といいましても施設長がやはりひんぱんに所内を回って歩くということを励行いたしまして、いささかでもそういうような気配が感ぜられた場合には、十分調査をしていく、現在こういう具体的な方法で指導をいたしております。
○松本(善)委員 刑事局長に、その点についての配慮について伺いたいと思います。
○川井政府委員 ただいま大臣並びに矯正局長からお答え申し上げたとおり、私も同じような考え方でございます。
○松本(善)委員 けっこうです。
○畑委員 この問題は以上の程度で終わります。重ねて申すようでありますけれども、囚人といえども人権があるのでありまして、先ほど松本君からも言われたように、ただそういった不法行為があった場合、捜査について非常に困難な場合があるのでありまして、何か新聞の報道するところによりますと、隔離して調べておるというような話も聞きました。そういったやり方はよろしいと思う。そういう形でもなければ、なかなか刑務所内でそのままの状態において調べるということは、いろいろな威圧その他がありますから、ほんとうの真実はきわめられないだろうと思う。ひとつそういうことでこの事件は徹底的に、やり出したことは最後まではっきりけじめをつけてもらいたい、かように思います。 それからその次に、最高裁来ていますね。総長もいますか。——最高裁のほうを中心にお尋ねいたします。それは二つございますが、一つは司法修習生の七月入所の特例の問題、もう一つは東大事件の裁判が最近非常にエスカレートをしておりまして、収拾がつかないというような状態にあるように見受けられます。この点に対して質問いたしたい。いずれも他党から、またわが党の猪俣先生等からも関連質問があろうと思いますけれども、私が最初に質問申し上げます。 まず最初に、司法修習生の問題について御質問いたします。この間の東大の事件で、東大の学生は卒業がたいへんおくれた。それで六月卒業になる。ほかの大学にもそういうところがあるかないかわかりませんが、ほとんどほかにはないようであります。ところでこの問題は、特に東大の学生に限ったという——そういうつもりでもないのかもわからぬけれども、そういう結果になっておる。そういうことで特別のはからいではないか。そして卒業させて採用するということ、しかも入所をずらしてまでやる必要がどこにあるのか。大体司法修習生の採用の要件は、大学卒業が要件になっておらぬことは御承知のとおり。大学を卒業すればしたほうがいいに違いないけれども、しかし、それが要件になっておらぬ。ほかの公務員とは違います。ほかの公務員に関しては、内閣のほうの特別のはからいで、東大等卒業がおくれたところも、卒業してからおくれて採用するというような措置をとったので、それに見習ってやったというようなお話もあるようでありますけれども、それはちょっと筋が通らぬのではないかという見解を私も持つ者なのです。しかも最高裁のほうでは実務修習庁を裁判所、検察庁、弁護士会ということにしておって、この三者が協力して三位一体というか、法曹一元化をねらってやっておるというのが、いまの司法修習生の制度でありまして、私は非常にいい制度だと思うのです。私自身は、この制度の始まる前の古い制度では、弁護士は弁護士の事務所に最初一年半か何か修習するということが義務づけられておった時代がある程度ありましたが、そういうことを一切要しないということになった最後のときが、たまたま私の弁護士生活の最初でありました。こういう制度でなかったわけです。私は、たまたま弁護士の修習生をずっと初めからいままで、二十三期生に至るまでほとんど欠かさずに担当しております経験から申しましても、私はこの制度は非常にいい制度で、ほかの国にもあまりない、しかも日本のほかの役所等にもない、一番いい制度だといままで思っておるのです。そういうことで、将来裁判官になろう、あるいは検察官になろう、あるいは弁護士になろうという人、あるいはまだ考えが固まらぬ人、いろいろあると思うのですが、そういう人たちが初めからしまいまで全部同じ教育を二年間受ける。そして最後に自分の意思で進んでいく道をきめる。こういうことは非常にいい。おのおのがめったに経験できないことを経験するのでありまして、そして最後に自分の信ずるところに従って進むということなのであります。ところで、こうして途中で七月入所を許すということになると、そうした体系がくずれやせぬか、こういうことが心配されるわけであります。今度のは一時的な処置だ、あるいは戦後の混乱した時代にも特別な配慮をしたこともある、こういうことを言っておられるようでありますが、これはやはり言いわけにすぎないのじゃないか、かように思います。しかもその前に何か東大の法学部長の平野さんあたりと前もって研修所長あたりが話し合った模様がある。そしてたとえ十名ぐらいになっても、特別の入所を許して特別の教育をする、こういうようなことまで言っておるという情報が入っておるのであります。けれども、そういう点で各地の弁護士会が非常に硬化をしております。日弁連あたりもいまふき上げておりまして、七月一日実施という目標を控えて、最悪の場合は修習生の受け入れを拒否する、こういうような動きすら見える。私も法曹出身といたしまして非常に心配をしておるわけでありますけれども、その辺の事情についてお尋ねいたしたいのであります。ひとつその辺事務総長なり人事局長なりからお答え願いたい。
○矢崎最高裁判所長官代理者 最初に、私からお答え申し上げたいと存じます。学生の間でいろいろ学校の問題が起きまして卒業が延期されるようなおそれがある、そういう心配が二月ごろになってだいぶん出てまいったわけでございます。そこで、その扱いについての根本的な考え方でございますけれども、中途退学をしてこなければ司法研修所にもう採用しないよ、授業を受けて卒業してきたらもう来年回しだ、こういうような扱い方は、どう考えてみても気の毒ではないか。これはやはり卒業してから行きたいという者は卒業してきてから採用して、そして十分修習して法曹三者の後継者を養成すべきじゃないだろうかというのが、根本的な考え方であったわけでございます。そこで、二月の中旬に司法研修所から各大学、たとえて申しますと東大、京都大学、中央大学、早稲田大学、九州大学、名古屋大学、東北大学、北海道大学、一橋大学、大阪大学、全沢大学、岡山大学、大阪市立大学、明治大学、静岡大学、神戸大学、東京都立大学、慶応大学、立命館大学、日本大学に、それぞれその卒業の見込みは一体いつだろうかという照会を出したわけでございます。そういたしますと、その大学の中で、東京大学、京都大学、中央大学、岡山大学、日本大学、これを除いた大学からは、三月中に完全に卒業させますという返事が参ったわけでございます。そこで、三月の初めになりまして、もう一度それではよく聞いてみようということになりまして、東京大学、京都大学、中央大学、岡山大学、日本大学に対しましていつ卒業になるだろうかということを重ねて聞きましたところが、東京大学以外の大学からは全部三月中に卒業させるという返事が参ったわけでございます。先ほどの御質問にございましたように、東京大学だけが結果的には三月中に卒業できない、こういうことに相なったわけでございます。そこで、それでは卒業してこなければもう採用しない、四月に中途退学してこなければ司法研修所ではもう受け入れないということが、法曹三者の後継者の養成のためにはたしていいことかどうかというようなことを検討いたしまして、結局のところ、やはり先ほど申し上げましたように、法曹三者の後継者の養成のためには、これは卒業をしてから来たいというものは当然採ってやっていいのではなかろうかということで、これを採用することに方針を立てたわけでございます。そこで、なるほどそういうような時期のズレがございませんでしたならば、これは全員まとめて同じときから修習を始めて、そうして同じときに修習を終える、これが一番理想的な形であることは、もう御指摘のとおりでございます。しかしながら、事態はそういう事態でございません。そこでいろいろと検討いたしまして、最初は卒業してきた者につきましては、四カ月間司法研修所で修習をしてもらって、それから実務修習に出てもらったらどうだろうかというようなことで、日本弁護士連合会の司法修習委員会のほうにもお話ししたのですが、それでは受け入れる側のほうで困るのではないだろうかというようなお話もございまして、それならば、いまの二十三期の修習生が司法研修所の前期修習を終えてそれから実務修習に出ますのが、七月十二日でございます。七月一日に採用をするとすれば、あと十二日間あるわけでございますけれども、弁護士会のほうではそういうような御事情だとすれば、七月一日に入ってもらって、そして十二日間だけ別の特別のクラスをつくることなくしてみんな一緒に十二日間やってもらって、それで入れてもらったらどうだろうか、そして実務修習は全員一緒にやってもらって、そしてその上で今度は研修所に入ってもらう。しかしながら、裁判所法で規定されておりますように、御承知のとおり、二年間という修習期間は法律できまっておるわけでございますので、これはあと三カ月だけは延びることはやむを得ない。そういうような方針でやっていったらどうだろうかというようなことに相なっておるわけでございます。
○畑委員 そこで問題となるのは、便宜主義がいろいろ詰まってきてしまったようです。一体前期の中央での修習、それを四カ月やって、それを基礎にして地方の弁護士会へ送る、あるいは検察庁あるいは裁判所、これの実務修習を十六カ月やるわけですね、ということなんだけれども、いまの答弁によると、受け入れる側が反対するものだから、しかたがないから四カ月のかわりに十二日だけ教育して、それから実務修習地方へ回す、しかも二年間の修習という法律の規定があるから、したがって二年間たたなければ、全部一緒に実務修習をやってきて、その人たちはそれからまた後期の四カ月の修習をやって、それからまた四カ月の修習をやらなければならぬ、こういうちぐはぐが起こるのです。だから、便宜主義はいかぬと言うのです。それよりも、何よりもかによりも一番最初に日弁連や検察庁に相談すべきだった。それをしないから、こういうことになった。それをしないで——、法曹一元化という理想がある。それで三者でやることが理想なんだ。それを最初に相談をして、東大の問題、あるいは卒業がおくれる学生の問題は何とか処理したい——私は心情はわかります。私も東大の一応先輩ですから、わかりますけれども、やはり筋をくずしてはいかぬ、法曹一元化の筋をくずしてはいかぬという、非常にとうとい教訓だと私は思う。あなた方の便宜主義、しかも最高裁判所が担当するのだから、ほかの検察庁や弁護士会に相談する必要はない、こういった態度が、今日の混乱を招いておる、こう私は思うのです。カリキュラムを一体どういうふうに編成するのか、私自身非常に問題だと思うのです。結局、最初に各弁護士会あるいは検察庁に相談をされてから、それでどうしたらよろしいかということをすべきだったのに、あなた方だけのほうできめてしまって、それで学生のほうへそういうことを言っているから、学生もなるべく卒業をしてそれから司法修習生にも採用されたい こういうふうに考える人が三十一名おった。ところで、もう学士号なんか要らないというので、ちゃんと四月入所して採用になったのが二十六名、それから五名の人が来年回しにする、こういうことだそうであります。この点が、あなた方の最初の考えが非常に間違っておったのではないかと私は思う。どうお考えですか、事務総長。各弁護士会で非常に問題になっておるのです。だんだんエスカレートして、日弁連も今月中に総会をやることはできないから、来月の十二日かにやることになったそうです。しかし、おたくのほうは既定方針どおりやるのかやらぬのか。なるべく問題をちゃんと解決してからやらぬと大きな問題になると思うのですけれども、入所を依然として七月一日で認めてやるのか。その辺ひとつ十分に、これからでもおそくないからよく協議をしてきめるべきだと思う。根本的には、前もってほかの機関に相談をせずにあなた方の心情だけでやったことが間違いだった。その裏をいろいろ勘ぐる人がたくさんあります。私はそう勘ぐりたくないのでありますけれども、東大の若いエリートをやはり採っておこう。これから人事の毎年毎年の裁判官なり検察庁につとめる人なりをうまく年ごとに配分する関係で、来年になってしまうと、来年が多くなってしまう。ことしが少ないというような配慮その他があったろうと思う。それもあったろうと思うのですけれども、無理に勘ぐりたくないのですけれども、そういうことをいって東大と特に差別をつける、こう言ってだいぶいきまいておる人も多いようでありますけれども、私はそこまでは勘ぐりたくないのでありますけれども、やはり一番最初が大事ではなかったか、かように思うのですが、事務総長の御見解を伺いたい。
○岸最高裁判所長官代理者 東大出身者の若干名——二十数名について七月採用のやむなきに至った事情、これはただいま人事局長から御説明申し上げたとおりであります。当初、そういう扱いをするのは東大出だけを特別扱いするのだ、そうして国に便利な裁判官や検察官を養成する、そういう意図でなされておるのだ、そういうようなことが言われました。畑委員は、御自分はそういうことは勘ぐりたくないとおっしゃっておられますが、もっぱらそういうことで反対の火の手が上がったわけであります。弁護士会との連絡は、先ほど人事局長ちょっと申し落としたと思いますが、もう三月中に、例年の例によりましてどこどこへは何名、どこどこへは何名、こういう人たちが配属される予定だからということを連絡いたしております。そうしてまた、卒業時期の関係によっておくれる者も出る、その人の名前までも通知いたしておるのであります。その当時は、そのことについて弁護士会からは何らの異議も何にもございませんでした。ただ、特別のエリートを養成するのだ、そういう非難がちょいちょい耳に入ったわけでありますが、先ほど人事局長から御説明申し上げたところによって、これはもうやむを得ない自然の成り行きに従ってかようになったわけであります。その後、そういうことが、時がたつに従いまして、今度協議しなかったのはけしからぬ、そういう非難が最近になって起きてきたわけであります。しかし、いざ最終決定を、採用決定をいたす前に、人事局長が日弁連の司法修習委員長のところへ出かけていって事情を説明し、またある弁護士会からはわざわざ会長でしたか、指導担当の弁護士さんでしたか、人事局長のところへ来られまして、そしていろいろ事情を聞かれ、その弁護士会でも一般のそのときの空気に従って受け入れ反対の決議をするつもりだということでありましたが、人事局長からの説明を聞いて納得して、今日ではついにその弁護士会はそういう受け入れ反対の決議などはいたしておりません。これは当人たちにとってみれば、自分とかかわりのない原因によって卒業がおくれたわけです。そういう人たちは来年回しだということは、これはいかにも常識的に考えましてもおかしいことじゃないか。先ほど人事局長も申しておりました。そういうわけでありますので、今回の措置はやむを得ざる措置であります。しかし、最近になりまして、私どもも日弁連の当局の方といろいろ意見をかわしまして、そしてその了解を得ておりますが、日弁連からは一応最高裁の長官あてに文書が参っておりまして、それに対して最高裁判所からもお答えいたしておりますので、そういう事情をもう少し人事局長から説明してもらいたいと思います。
○矢崎最高裁判所長官代理者 日本弁護士連合会から、六月になりまして、追加採用するということは志望別分離修習の契機になるのじゃないだろうか、そういうことがあっては非常に困るというお話がございました。それにつきまして、裁判所のほうからは、決してそういうことはないのだ、先ほど御説明申し上げましたような経過を書きまして、そしてこういうような関係でやむを得ずそういう処置をとるようになった次第なんだという事情をお話し申し上げ、書面でも差し上げ、そして将来今回のような不測の事態が生じたような場合にはあらかじめ早い機会に御連絡申し上げますから、というようにお話し申し上げた次第でございます。決して東大生だけについて特別な扱いをして、そして裁判官あるいは検察官等の後継者をつくるのだというような意図でやったものではないということは、はっきり申し上げることができると存ずるわけでございます。また、現に残っておりまする東大生の中で、半分は弁護士志望でございます。そしてその次に裁判官、その次検察官、それからまたほかに行かれる方というようになっておりまして、残っておられる方であとで修習を受けたいという人のお気持ち自体も、決して裁判官や検察官だけになろうというような気持ちを持っておられるわけではないのでございます。要するに、法曹三者の後継者の養成のためという根本的な扱い方は、決して変わっておるわけではございません。
○畑委員 事務総長と人事局長の御答弁もわからないわけではないのです。私もそう勘ぐりたくないわけですけれども、たまたま臨時司法制度調査会ですか、あの辺あたりも、そうした志望別の特別修習、分離修習というような答申ですか、案ですかが出ているようなこともにらみ合わせて、やはりそういう一つの契機になるのではないかという心配をだいぶしている向きが多いのです。そこで、あなた方の心情としてはわかるのですが、それならば、日弁連なり検察庁なり三者の最高のところで最初に相談をされて、それからこうしたいのだという相談をもちかけられてすべきだったと思うのだが、どうもそういうことがなかったらしいのですけれども、あったのですか、なかったのですか。その点はなかったと私は思うのです。それをやっておれば、何だいまさらそんなことを言うてと言えるのだけれども、あなた方がそれをやられなかったから、いまになって各地の弁護士会等から突き上げられる、こういうことになるのだ。そうして志望別修習、分離修習の契機になるということが、やはり一応大義名分になるような感じがするものだから、それでいまおたくのほうでは苦しい立場になっておると思うのです。やはり最初が大事だったと思うのです。そうすれば誤解も受けなかったと思う。 そこで今度は一緒に修習ということになると、先ほど冒頭に申し上げましたように、わずかに前期修習が十二日間、それから各実務修習を地方へ分配するということになると、しかも二年間修習の義務があるということになっておりますから、そうすると、おかしなふうになるのではないか。その辺がどうも行き詰まってくるのではないか。あくまで分離なら分離で四カ月前期修習をやって、それからごめんどうでも弁護士会に別に頼むということのほうが筋が通る。両方折衷するようなことになるもの、だからおかしなことになってしまうと私は思うのだが、その辺ほかの最高のトップのほうでも相談をされたかされないかということが一つ。それから、この問題をどう処理されるか。やはり既定方針どおり進まれるということかどうか、その結論だけをひとつ事務総長にお尋ねしたい。
○岸最高裁判所長官代理者 この協議の問題、最初に法務省や日弁連と協議したらよかったじゃないか。いまから見れば、こういうことで誤解を招くという結果になりますと、なるほどそのとおりとは存じますけれども、先ほども経過で申し上げたとおり、何らの恣意もなく、何らの特別な意図もなかったのでございます。しかも、先ほども申し上げましたが、三月には、それぞれ氏名を、だれだれ何名、そういう配属別の文書を各単位弁護士会に送らしたわけであります。これは三月中のことであります。初め相談すべきじゃなかったかということを強く言われるなら、なぜそのときにもう少しざっくばらんに裁判所側にそういうお申し出がなかったか、むしろ私はさように考えます。 それから法務省の関係ですが、これは直接私が受けたのではなくて、人事局長が法務省の人事課長から、一般の行政官庁については、大学を卒業してくる者についてはそれを待って採用するのだ。したがって、裁判所の場合でもやはり、そういう連絡がありまして、そのことばのニュアンスは、私はじかに受けておりませんからわかりませんけれども、そういうことで法務省のほうからそういう話があるということは、法務省においてもやはり御承知の上のことであります。ですから、最初のうちは、協議しなかったからどうとか、そういうことは全然問題になっていなかった。むしろ特別の養成をやるのじゃないか、私どもはその点に重点を置いておりました。ところが、最近になって、今度裁判所に対する論難の的が協議協議ということになってまいりましたので——その前に、何回か人事局長が日弁連の担当の委員長そのほかの方に会って説明もしております。私も日弁連の事務局長とも話して、また文書の交換などいたしまして、日弁連の上層部とは完全に了解がついておるものだと私は思っておりました。ただ弁護士会の内部の事情によってこれがもたもたしておるということは、はなはだ遺憾に思う次第であります。したがいまして、私どもとしては従来の方針を変更する考えは持っておりません。
○畑委員 結局いつ幾日にだれをどの地方裁判所に回すといったような通知を出してあるから、だから承知をしておるものだと思っておった、こういうのがいまの事務総長のお話、しかもあとになって問題にするのはおかしいということですけれども、やはり一番最高のトップレベルクラスで相談をされて、それから各地方にそういうような氏名まで出すということの道を踏むべきではなかったか。やはりあくまでそこが歯切れの悪いところが残るので、そこで、最高裁側が、おれのほうだけできめるんだという意識が必要以上におありになるんじゃないか。そういうことが法曹一元化を害するもとになりゃせぬかということを私は心配している。そのことです。まあしかし、そういう態度で臨まれるならそれでしかたがありませんけれども、そのことを私は言いたいんで、別にあなた方のほうのあれを、非常に心情的に——特別に何とかしてやろう、自分の意思で卒業がおくれたんじゃない、そういうことを何とかしてやろうという心情そのものには、私は同感です。ただ、やり方について、法曹一元化の本旨に基づいて、まずほかのトップレベルで話をして、それからやるべきではなかったか。そうすれば、こういう混乱は起きなかったんではないかと私は言いたい。 まあ、それきりでありますが、以上で、ほかの関連の方もまだあるようですから、私の質問はこれで、この件については終わります。
○猪俣委員 関連してちょっと一点だけ。東京、大阪、神戸等の大弁護士会がみんな数回開いていろいろの決議をやっておりますが、そうして、いずれもこの二十三期の司法修習生の問題について日弁連の臨時総会を開催することを要求し、裁判所が態度を変えない限りにおいては、二十三期のその特別の三十一名の修習生については、弁護士会としては修習を引き受けないという決定をすべしということに相なっておりますが、まあ不幸にして最高裁判所の意見と日本弁護士連合会の意見と食い違って、日本弁護士連合会が裁判所の態度が変わらざる限り修習を引き受けないということに相なりましたならば、仮定の問題ですけれども、これはどういうことになりますか。
○矢崎最高裁判所長官代理者 私どものほうといたしましては、できるだけそういうようなことのないように、この上とも最善の努力を払いまして、そうして弁護士会のほうとも十分の連絡をとって、実務修習を受け入れていただけるように極力努力いたしたいと存ずる次第でございます。
○猪俣委員 最善の努力をなさることはもっともでありますが、ほとんど一緒にして六百四、五十名の弁護士がそういう意見で、署名しているという報告がきております。これが、裁判所側がいま言ったように絶対態度を変更する意思がないということに相なりますると、各地の弁護士会でもって立ち上がってくると、これは日弁連の決議は、私は裁判所に不利になるんじゃないかと思うのです。皆さんの期待しておるようなことにならぬのじゃないか。そういう場合に一体どう対処するかをきめておかぬでいいだろうか、こう思うわけですが、念のためにもう一度、これは総長、答弁してください。
○岸最高裁判所長官代理者 日弁連の総会でどういう結果になりますか、これは私ども予測できないところであります。どういう結果になりますかどうか、しかし、これは仮定の問題で、いまからそれを公にしていきり立つということも、裁判所としては差し控えたいと思います。先ほど人事局長が申しましたとおり、そういう受け入れ拒否というような異例な現象の起こらないように、日弁連当局によくお願いするほかないと思います。なお、最近日弁連のほうへお答えした私名義の書面において、今後このような特別な事情によって異例な事態が起きた場合には十分に連絡をする、ですからよろしくお願いする。こういう趣旨の文書を差し上げてあります。
○鍛冶委員 ちょっと、私も関連して一言だけいまのことで……。私も、この問題聞きまして、これは容易なことでない、というのは、ほかのことじゃない、いま猪俣さん言うたように、結論が容易ならざる結論でありましたので、非公式ながら日弁連の責任者の内意を承りに行きました。行きましたら、いま畑さんが言われたように、いろいろの意見はありましたが、最後の結論は、初めからよく協議してやってもらえばよかったと、こういうことのようでございます。いま最高裁のあなた方の御意見を一口でいえば、連絡はあったんだが、協議というところまでやっておらなかったことが不十分だったと、こういうことになりはせぬか、こう思うのですが、これは今後ひとつ大いに気をつけてやっていただくことを希望いたします。 それから、修習生を受けるか受けぬかということ、日弁連の責任者にそのことを言うたら、それはあなた、われわれの使命なんだから、それを受けぬというようなことになったらそれはたいへんなことで、われわれはそういうことは考えておりません。それはたいへんなことになる。そういうことだから、私は安心してきたのですが、そういう意見を述べておる者があるということだけは間違いないです。いまよく何かと問題になる青年法曹協会ですか、そういう人々はそういうことを言ったんだそうですが、どうもはなはだ穏やかならぬ意見だと思って、私も憂慮にたえないことです。そこで、私はいつも言うのですが、何と申しましても、弁護士会というものは、私は、司法の三本柱の一本だと思っておる。裁判所と法務省と弁護士、この三本の柱によって司法が成り立っておると思う。その三本の柱が、ただ三本並列でおっては成り立つものではありません。三本の柱がいまここで一本にならなければ、一つにまとまらなくては、仕事ができないわけなんです。だから、意見を述べられることはどこまでも述べられてよろしいが、最後はここで一つになって司法を全うしようということでなくてはいかぬものだと心得ておるわけでございますので、意見は幾ら言われてもよろしいが、修習生を引き受けることを拒絶するなどという穏やかならざることは、今後あってはたいへんだ、こう思いまするので、この点はわれわれも大いにつとめまするが、裁判所のほうも、そういう間違ったことのないことにひとつつとめられる。また、あなた方のほうでも注意せなければならぬことがあれば大いに注意してもらって、そういうことを根絶するようにつとめていただくことを、ここに関連して私の希望として述べておきます。
○岡沢委員 私も、それに関連しまして二、三質問申し上げたいと思います。いま畑委員の質問に対する総長の答えの中で出てまいりました、事務総長名の日弁連会長あての文書を拝見いたしました。その中に「戦後に最高裁判所がとった前例および本年度における各省庁の取扱い方針等をも参酌し、」ということばがございます。この中身は、そういう先例がいつどういうふうにあったかというふうな点も含めて、お答えいただきたいと思います。
○矢崎最高裁判所長官代理者 ちょうど戦後のことでございますけれども、昭和二十一年に復員してまいりまする方たちが、時期を異にいたしまして、これは全く個人的な事情によらない理由によりまして分かれて復員してまいったわけでございます。そこで、その方々につきましては、二十一年には、最初に二十六名、それから次に二十三名、こう分けて採用いたしました。そして研修を済ましてもらったわけでございます。また二十三年には、大学の卒業が約五カ月おくれて出てきた方が、数名おいでになったわけでございます。この方々につきましては、五カ月おくれで採用いたしまして、研修所で研修を済ましていただいた、こういうような実例もあるわけでございます。本年度につきましては、私のほうは法務省の人事課長から連絡を受けたのでございますけれども、東大等の留年学生の中で上級職採用の内定者については、卒業してから採用するという閣議の御了解が成立したからというような趣旨の御連絡を受けたわけでございまして、それによって各省庁では卒業してから後に採用をする、中途退学してきた者は採用しないというような御方針だということを承知したわけでございます。
○岡沢委員 前者の終戦直後のことについてはよくわかりましたけれども、各省庁の場合、上級職は原則として卒業が条件でございますけれども、御承知のとおり、修習生は必ずしも大学卒業が条件でないわけでございまして、現に修習生になるために中途退学をしてくる人、または大学を出てこない方もあるわけでございますから、わざわざ三カ月おくらして特別クラスを設置する。先ほど畑委員から指摘の、あるいは日弁連から指摘の問題点があるわけでございますから、必ずしもそういう方法を採用しなくてもいい道もあったんではないかと思うわけでございますが、この点についてはいかがでございますか。
○矢崎最高裁判所長官代理者 これも先ほど申し上げたのでございますけれども、六十名に達する在学生につきまして、君たちは中途退学しなければ本年度は司法修習生として採用しないよということはいかにも酷で、そういう措置はとうていとるに忍びなかったわけでございます。したがいまして、それらの者につきましては、全部個人個人に当たりまして意見を聞きまして、どちらを希望するかということを十分に確かめた上で、中途退学して来たいから採用してほしいというものにはそういうふうに、それから学校を卒業して来たいからそのとき採用してほしいというようなものはそういうふうに、というような措置をとったわけで、要するに四月に中途退学しなければ、もう一年延期して翌年でなければ採用しないぞということはいかにも忍びないということから、先ほど来も申し上げたような措置をとるように相なったわけでございます。
○岡沢委員 先ほど来の局長、事務総長の御答弁によりますと、結局この方針は変えない。結論からいうと、東大の特別クラスを設置するということになろうかと思います。私自身はやむを得ない措置だというふうに理解いたしますけれども、もう一度確認いたしたいのは、このことがいわゆる志望別分離修習にはつながらないということを明確にしていただきたいということがまず一点。それからまた法務省のほうでは、これについて日弁連のああいう態度と比較して、どういう御方針をおとりになるかということ。その二点について、法務省と事務総長と両方からお答えいただきたいと思います。
○岸最高裁判所長官代理者 仰せのとおり、今回の措置は特殊な例外措置でありまして、エリート養成とか、あるいは志望分野別の養成とか、そういう問題とは全く関係なしに、やむを得ずとられた措置であるということをはっきり申し上げておきます。
○西郷国務大臣 この問題は、先ほど来裁判所側からるる御説明になりましたが、学園紛争の結果そうなったわけで、裁判所も非常に若い者が気の毒だという気持ちからなさったと思うのですが、いまお尋ねの件は、他の行政官庁も大体その方針をとっておるようでございますから、これはやむを得ない措置と私も考えます。
○岡沢委員 二十三期の修習生が、それぞれクラス別に反対決議をしているようであります。その反対決議の中身を見てみますと、いま御指摘になったようなことのほかに、いわゆる東大卒業生が比率からいって任官希望者が多い。これが志望別修習の前ぶれになるおそれがあるということをいっておりますが、実際の過去の数字から見て、東大卒業生は、ほかの大学その他の卒業生と比較して、任官希望者が多いのかどうかという点が一つ。 それから、時間の関係でまとめて質問いたしたいと思いますけれども、先ほど総長のほうで、日弁連の上層部とは了解ができたように思うという御答弁が畑委員の質問に対してございましたけれども、私の承知している限りでは、そういうふうに簡単に楽観していいのかどうか、非常に疑問でございます。そういう意味からいいましても、先ほど指摘いたしました日弁連の回答に対する岸総長の六月十二日付の御回答書以来、何らか、日弁連と最高裁とのこの件に関する意見の食い違い等について、これを調整する努力を実際になされたのかどうか。また今後なさる用意があるのかどうか。 それから、第二十三期の当該修習生に対して、どういう説得の努力をしておられるのか。私は、一部の弁護士会員の動きあるいは修習生の動きの中には、事態を非常に悪く解釈して、誤解のもとに、偏見のもとにする危惧が多いような感じがするわけでございますが、それを理性と説得という努力をなさる必要があるのではないかということを感じますので、その点についてお尋ねいたします。
○岸最高裁判所長官代理者 修習生が反対決議をしたということは、一両日前に私どもの耳にも入りました。けれども、本日ここに参ります直前に、その決議を取り消した、そういうことも伝わっております。それから東大出身で任官希望者が多いかということですが、これは正確な数字は私ただいま持ち合わせておりませんけれども、幾らか多いということは申せると思います。それから日弁連の上層部とのいろいろな話し合い、これは私が書簡いたす前後にわたっていたしております。そしてお互いに了解をし合っております。
○岡沢委員 最後に、もし不幸にして来年も同じような学園紛争が続いて卒業延期が行なわれる場合に、やむを得ない措置としてこういう特別クラスの設置ということをお考えになっておられるかどうか、お尋ねします。
○岸最高裁判所長官代理者 具体的なそのときになってみなければ——また、どういう事情か、そのときによって策が講ぜられると思います。そういう特殊な事態が発生した場合には、十分事前に連絡するということを私の書簡でも申しておりますので、今後こういう紛争は、お互いに相互理解に立てば起こり得ないと考えております。
○岡沢委員 私も司法修習制度というのは法曹三者で構成、運営されるべきものだと考えますので、今後ともこういうことのために日弁連と最高裁が対立するということは、非常に不幸な事態でございますし、また修習を受ける、祝福されるべき三十一名の当該者にとっても、非常に気の毒なことだと思うのです。同期の仲間からつまはじきされるというようなことにならないように、それについては受け入れる側の、特に御担当の最高裁の格別の配慮が要求されると思って、その点についての善処を希望して、私の質問を終わります。
○進藤委員長代理 松本善明君。
○松本(善)委員 関連して数点をお聞きしておきたいと思いますが、この問題は志望別分離修習の第一段階ではないんだというお話でありましたが、この志望別分離修習という考えは、もう一切今後とも最高裁は考えなくなったのか、そういうことは、これだけの反対運動の経過を見ましても、この中で、やはりそれは間違っている、こういうふうに考えたということであるのかどうか、この点をお聞きしたいと思います。
○矢崎最高裁判所長官代理者 志望別分離修習の点につきまして、最高裁判所がそういうように考えているというようなことは、いままで何もないわけでございます。司法修習諮問委員会が開かれました際にいろいろな意見が出まして、そういうような点も一つの問題として提起できるというような趣旨で問題の提起があったわけでございます。したがいまして、最高裁判所としてそういう方針を決定しているというようなことは、全くないわけでございます。
○松本(善)委員 この経過の中で、岡山大学で卒業の時期が三月ときまる前に、在学中の者から卒業まで採用を待ってほしいという問い合わせをしたところが、最高裁からはがきで、卒業しないでも採用するということを答えてきた。中央大学でも、同じような問題があったということを聞いております。それから、最高裁が三月十八日に東大生に対して面接をした機会に、午前と午後の二組に分けてやって、午前の組は個人面接だけやって、午後の組の初めに大法廷で矢崎さんが話をされた。その話の中で、東大生は、七月採用の特別クラスはどんな少なくてもつくる。そして卒業して入所しても損のないようにする。卒業しないと、ハーバード大学やコロンビア大学に留学できないというような話を聞いた。全体としてできるだけ卒業してくるようにすすめられたという印象を受けておるというふうに、私は聞いております。これは岡山大学なんかの問題の場合と違い、午前と午後でも違うわけです。これは、どうしてこういうことになったのか。一体最高裁は方針が変わったのかどうか、その間の経緯を話してもらいたいと思います。
○矢崎最高裁判所長官代理者 岡山大学の関係でございますが、二月の十五日に司法研修所から岡山大学に照会をいたしましたところが、岡山大学からは卒業の時期がよくわからぬという回答があったわけでございます。ところが、先ほど御説明申し上げましたように、三月五日に人事局から岡山大学に再照会をいたしましたところが、三月二十五日に卒業が予定されているという回答があったわけでございます。ところで、いま松本委員がおっしゃったその本人からは、二月中に司法研修所に照会状が参っておりまして、そして三月の十日に司法研修所長から照会状が人事局に参ったわけでございます。三月五日には、人事局のほうは岡山大学から三月二十五日に卒業の予定だということを聞いているわけでございます。そこで、これはおかしいなということで、もう一ぺん岡山大学に照会したわけでございます。そういたしますと、やはり三月二十五日卒業の予定は変わらないんだという返事があった。そこで、その御本人に対しては、岡山大学からその回答があった二、三日後の三月二十二日に、岡山大学については三月二十五日にもう卒業されることになっていますよという返事を出したわけでございます。御本人が岡山大学におるのですから、岡山大学にお聞きになればいいと思うのですけれども、こちらのほうに聞いてまいりましたので、そこでそういう返事を出したわけでございます。要するに、岡山大学につきましては、御本人に返事を出すときに、もうすでに卒業の時期もはっきりいたしておったわけなんでございます。 それから第二点で、午後に東大生に対しまして私がいろいろと説明をしたということについては、まさにそのとおり説明したわけでございます。そこで、卒業してくるような方向で説明したかどうかといいますと、これはそうでない。全く客観的に、どちらでもいいと説明したわけでございます。それは、外国に留学するような場合には、御指摘のような問題はあるわけなんです。たとえて申しますと、外国の大学で留学を受け入れるような場合には、おそらく日本の大学を卒業したということを一応条件にするのではないかと思うわけでございます。それで、日本の大学を卒業しないで司法研修所の修習を終えてそして外国の大学に留学したいという人につきましては、これはやはり何かその際特別の依頼状なり証明書、そういうものを出して、そして留学ができるように措置してやらないと、なかなかむずかしい問題が出るのじゃないかと思います。しかし、そういうことは、客観的にこういうようなことはあるということはもちろん説明はいたしておりますけれども、それによって大学を卒業してきなさいというような趣旨で言っておるわけではないのでございまして、現にそれを聞かれた人の中で、相当数の方が四月に中途退学しておいでになっておるわけでございます。ただ客観的な問題点として一応とにかく説明しただけのことでございます。卒業を強要したというようなことは、別にないわけであります。
○松本(善)委員 それから弁護士会の反対決議の問題ですが、すでにずっと各弁護士会が反対決議をしてきておるわけですが、この問題については、弁護士会の反対がそのままであっても強行する。こういう考えでいままで答弁されておるのかどうか。私どもが聞いておる範囲では、弁護士会は了解したというふうには少しも聞いておりません。何か上層部で了解したというようなことのようでありますけれども、一体公式の話なのか、だれが一体そんなことをやっておるのか、その辺の経緯を話していただきたい。二点ですね。弁護士会反対のまま強行するという考えなのか。上層部と話がついたというのはどういう意味なのか、この点お答え願いたい。
○矢崎最高裁判所長官代理者 反対でも強行すると言うといかにもこれはかどが立つのでございますが、これは先ほどから申し上げておりますように、四月に中途退学してこなければ一年卒業を延ばすと申しますか、採用を延ばしまして、そして採用しないというのも、これまたいかにも非情なやり方なんで、これは三カ月おくれて出てくればやはり採用してやるというのが、われわれ法曹三者の後継者の養成者として当然とらなければならぬ措置かと思うわけでございます。そこで、弁護士会のほうに対しましては、何とか受け入れてもらえるように十分に努力をいたすつもりでおるわけでございます。そして先ほどお話がございましたが、上のほうで了解がついておるというような趣旨のことでございますね、これは裁判所の立場もよくわかるということでございまして、これは実際にその総会が開かれた場合に、それが一体どういうような結論になるか、これは弁護士会の内部での事柄でございますので、私どものほうといたしましては、これはそのときになってみないとどうもわからないわけでございます。そのときになりまして、できるだけ私どもの立場が理解されるよう、これからも継続して努力してまいりたいと思うわけであります。
○松本(善)委員 お話を聞いておると、最高裁だけが人情深くて、弁護士会はまことに人情の薄い人間の集まりであるかのような答弁をしておるけれども、そういう態度だから私はいけないのだと思う。弁護士会や、それから修習生、裁判官の中でも、問題提起をして投書をされた人まであるわけです。そういう問題があるけれども、法曹の養成制度のあり方として根本的に問題じゃないかという提起、これだけ多くの人が提起をしておるのです。私たちは人情がたいへん厚いのです、あなた方は薄いのです、こういう態度、考え方でおられるならば、事は絶対に解決しない。そこを、最高裁はなぜこんな反対運動が起こっているかということを、真剣に考えなければならないと私は思うのです。そして弁護士会が反対しても強行するのかどうかということについて、もう一度お答え願いたい。それからもう一つは、いま岡沢君からもお話が出ましたけれども、実際に一緒に修習する人たちが、私の聞いている範囲では、四百八十五名中四百五名が反対の署名をしている。もっとふえているかもしれませんが、十クラスのうち八クラスが反対決議をしている。一体一緒に修習する者の考えを聞かないでできますか。しかも私の聞いている範囲では、この修習生の代表が最高裁と話をしたいというのに、会わないというのです。これが事実なのかどうか。どうしてそういう態度をとっておるのか、この二つをお答え願いたい。
○矢崎最高裁判所長官代理者 修習生の方々がそういうような反対の決議をしているということも、研修所のほうから聞いてはいるわけでございます。最近何か各組でまた決議をいたしまして、そしてあとから入ることが予定されている人たちに対して、君たち辞退したらどうだという書面を送ったようでございます。しかしながら、何かその後にやはり考え直したと見えまして、あれは取り消す、そういうようなつまはじきはしないということをあとから来ることが予定されている者に対してまたあらためて通知をしたようでございます。司法修習生につきましては、これは御承知のように司法研修所長の監督下に属しているわけでございます。たとえば落第生を一名も出すなというような決議なんかもさきにしたようでございますが、そういうようなことにつきましては、われわれのほうでは監督をしておられる司法研修所長からお話を承るのが筋でございまして、司法修習生諸君に随時会ってわれわれのほうが直接話を承るということは、これは差し控えるべきものではないか。日常とにかく研修所にいる人たちでございますから、研修所長が会って、そして十分話を聞いて、私のほうに伝達していただくことがあるとすれば研修所長からお伝えいただくということが、筋ではなかろうか、こういうように思ってお目にかからなかったというのが実際でございます。
○松本(善)委員 それではこういうふうにお聞きしましょう。私は、弁護士会が反対のままでも強行するのかということについてまだ十分お答えがいただけないのだけれども、そういうことはしない、できるだけそういうふうにならないように、反対にならないように努力する、弁護士会が反対のまま強行するという考えはない、こういうことですか。その点はっきりお答えいただきたい。
○岸最高裁判所長官代理者 総会を間近に控え、この問題が総会で取り上げられますときに、いまのような質問に対してのお答えは、差し控えるべきだと思うのです。どっちにころぶにしましても、かえって事を荒立てるだけと思います。 それから先ほどの上層部は話がついておるということ、これは決して上層部が密約をしているという、そういうものではなくて、上層部同士で——上層部といったら語弊がありますが、弁護士会の当局の方、それから裁判所の私どもと十分話し合って、その結果、この六月六日付で日弁連会長から石田最高裁長官あての書面が参りました。それに対して、長官の意を受けて六月十二日付で事務総長の名で連合会会長にお答えをしております。お答えをしましてからだいぶ日がたっておりますが、これについてどこが不足とか、そういう話を何ら受けておりません。そういう意味で申しておりますから、上層部がちゃんと密約しておるのだ、そういうふうにはおとり願いたくないと思います。
○松本(善)委員 最後に一つ確かめておきたいのですけれども、これをそのままやった場合に、いままである組に入れて七月から修習をやっていって、そして最後に前期修習の分をやる、別の組にするのではない、こういう趣旨ですか。この辺はきまっているのですか。
○矢崎最高裁判所長官代理者 現在のところは、あとから入る人たちをそれぞれのクラスへ全部ばらまいて入れまして、特別の一組はつくらないわけでございます。ばらまいて中に入れまして、一緒に修習してもらう。そして足りないところを時間を二時間か三時間延ばして補習をするというような方針のように聞いているわけでございますけれども、どうか松本委員におかれても、御賛同の上、何とかひとつそれができるようにお願い申し上げたいわけでございます。
○松本(善)委員 この問題は、法曹の養成制度というものについての非常に重大な問題なんです。このことを契機にしてやはり一番反省すべきことは、最高裁が、岸さんは連絡をしたと言われるけれども、十分に意思疎通をしていれば、こういう問題はあとを引くということではなくて、問題として起こらなかった。私たち、この問題一を契機に、最高裁が司法修習制度のあり方について、弁護士会、それから法務省もそうでありますけれども、法曹三者が一緒になってきめていくことなのだということについてさらに再認識を強くされて、こういうことが起こらないように、そしてまたこの問題について適切な解決をされるように要求して、私の質問は終わります。
○畑委員 最後に残った問題が、東大事件の裁判の問題であります。この問題につきましてもほかの委員のほうから関連質問があるはずになっておりますけれども、時間がだいぶ経過をいたしておりまして、あとのスケジュールの関係もあるようでありますから、簡単にまず基礎的な質問をいたしたい。 御承知のように、東大事件の裁判は、分割裁判になっておる。これはそもそもこうした事件であるからということでもあるが、被告人もまた弁護人団も、統一裁判を要求し続けて今日に至っている。裁判所のほうではこれを分割裁判にするという既定方針で、四十グループに分けて審理を進めようという姿勢で今日まできております。ところで、被告も弁護人団も、あくまで統一裁判を要求する。したがって、拘置所におる被告は、いままで一人もおそらく出廷していないと思う。これはあとで聞きますが、裸になって水をじゃぶじゃぶかぶって、それで着物を着たまま水浸しになったからだであくまでも出廷を拒否しておる。その根本の理由は、やはり統一裁判を要求するということです。弁護人団もそれを支持して、統一裁判を要求する。保釈になっている被告は出廷しておる模様であります。これもあとで聞きますが、欠席している者があるかないか。これも出てまいりまして、統一裁判を要求して騒然となる。裁判所は裁判所で、威令を示そうというようなこともあるのでしょう。訴訟指揮権は裁判長にあるので、例の法規を運用して、監置処分にしたり、退廷命令を出したり、機動隊を導入したりということで、連日新聞がこの事実を報道しない日はない、こういうようなことでありまして、まことに異例の裁判であります。一体この問題をどうするかということは、非常に重要な問題だと思います。異常な裁判であります。このままの状態を続けて、裁判所の権威というもので最初の方針どおりやるつもりかどうか。ともかく統一裁判を要求するということが当面の混乱のもとで、それを許す許さぬということが当面の問題でありまして、いろいろな方面でエスカレートしておる。裁判長の中でも、いろいろタカ派もありハト派もあるといううわさもある。できるだけ対話でやるという人もおれば、裁判所の威厳を示そうというので、ことさらわれわれが常識的に考えて妥当と思われる以上のきびしい措置をとって、マスコミなどにもてはやされておるような裁判長もおるようです。しかし、私どもが一番心配しておるのは、一体これでいいのかということであります。何とかして裁判をしなければならない。被告はもう五カ月も拘置所につながれておるわけです。人権の問題である。しかも被告は出廷しないで裁判は続けられておって、最近になると、証拠調べまで被告も弁護人もいないままでやられておるといった例まである。一方また弁護団は、結局これは弁護権の放棄ではないかという非難も日弁連の内部でも一部あるようでありますが、反面また弁護団の立場に立って考えてみれば、これも無理もないことである。大体ほとんど同じ弁護士、弁護人が今度の多数の被告についておる。統一裁判でやれば一緒に済んでしまう。ところが、四十グループに分ければ、その弁護士が全部の法廷に出なければならない。これだけかかり合って一ぱいだ、こういうようなこともあります。そうかといって、弁護人を選任する権利は十分ある。また弁護人になる権利もあるわけです。したがって、これを奪うわけにはまいらぬ。そうすると、結局、分離裁判をしたことが弁護権の侵害になっておるということにもなっておるんじゃないか、かように思います。裁判所は、前のメーデー事件等でだいぶ長い裁判になったというようなこともあるし、今度の場合、学生たちが体制批判の立場に立っておるから、もう話し合ってもだめなんだというような考えから、こまかく刻んで、刑事事件というものは一人一人の裁判なんだからというようなことで、それで分離裁判を各グループ別にやる。しかも、それが起訴状一本主義に反して、もう裁判する前から、この男はどういうグループに属してどういう役割りを占めたというようなことを、裁判官会議できめる際に、そういう資料まで配っておる。これはあとで、この前の猪俣さんが質問をしたことがそのままになっておりますから、その関連でお聞きになると思いますけれども、そういう問題もありまして、いま裁判官の例の弾劾裁判所のほうに、その前の裁判官の訴追の委員会のほうに、該当の裁判官が爼上にのぼって、訴追の要求をされておるというようなことにまで発展しておる。こういうようなことでありますが、非常に憂慮すべき問題だと思うのです。結局は、いまいった統一裁判を要求しておることがもとなんでありまして、これをいまさらくつがえしてまたもとへ戻すと権威に関する、こういうことであるいはこのまま続けておられるかもしらぬけれども、われわれの見解からすれば、最初からもう統一裁判をすなおにやったほうがよかったんじゃないか。いまさらそうは曲げられぬということかもしらぬけれども、そうしたほうがむしろ事件を妥当に処理することができる。同じ弁護人が全部についているんだし、法廷がないといったって、特別の法廷をつくればいい。こういう事件もたまにはあることはあるんだから、特別の大きな法廷をつくっておいたほうがよろしい、東京や大阪あたりには。そうしてこういう事件は特別に処理したほうがいい。そうして大いに関連するものがあるんだから、一人一人の刑事事件だというふうに処理するわけにもまいらぬ。そうして途中で分離を適当にやるということでやったら、こうした混乱はなかったというふうに、私は実は最近考えるわけです。その点について承りたいのですが、ます。そのグループは何グループに分けられておるのか。それから被告人は、拘置所におる人は、一人もとうとう最後まで出廷していないかどうか。それから保釈になっておる被告は、出廷しない例があるのかどうか。おそらく全部出廷していると思う。そうだとすれば、もう五カ月にも拘置が及んでいるのだから、全部保釈したらどうか。ここで私がそう言ったって、一人一人の裁判官がやることだからそういうことは言えないと言うかもしれないけれども、一つの政治論というか、これを処理する問題として、これは五カ月も、もうこれ以上も続くであろう、この被告を拘置しておくということは、これは人権問題というか、ゆゆしい問題、これを何とか解決する考えはあるのかどうか。最高裁は、そういう点で、地裁がやっていることだけれども、最高裁がやはり大きな立場でこれを処理する方針を考えておられるかどうか、こういうことを一度承りたいのですが、まず、先ほど言ったこまかい問題について、最初に答弁してもらいたい。
○佐藤最高裁判所長官代理者 いわゆる東大事件と申しましても、どれを言うのかというのが必ずしも明確ではございません。本年の一月九日の安田講堂前の事件、翌十日の秩父宮ラグビー場事件、それから一月十八、十九のいわゆる東大事件、こういうものをかりに広い意味で東大事件、このように考えてみますると、係属している人員は六百七名でございます。当初係属した人員は六百七名でございます。そのうち、すでに裁判が済んだ者が百三十九名、まだ裁判が済まない者が四百六十八、かようになっております。まだ裁判が済んでいない四百六十八のうち、四百三十五という数の人が、いわゆる合議事件の被告となっておるわけでございますが、この四百六十八のいわゆる未済でございますね、このうち、勾留されております者が現在三百八人ぐらいでございます。六月二十三日現在で三百八人と聞いております。その余の人が保釈ないし在宅、かようになっておるわけでございます。厳密な数字はなかなか正確に私どもも把握できないので、概数申し上げますと、そういう傾向でございます。 ところで、先ほど二番目の、勾留されておる者が出廷を拒んでおるかどうかという点でございますが、新聞等でもよく報道されておりますように、勾留されている人たちが、お話にもございましたように、衣類を脱いで裸になって抵抗して出廷を拒むというのが、全部が全部そうかといいますと、それも厳密には私ども把握いたしておりませんが、やはり相当あるように聞いておるわけでございます。それから保釈になっている人は、出てきているという事実もあるように思います。多少例外はあるかもしれませんが、大体の傾向はそういうことでございます。
○畑委員 拘置されておる人たちで出ておるのもあるのですか。何かほとんど出ておらぬというふうに聞いておるが、その辺はどうでしょう。徹底しているのかどうか。
○佐藤最高裁判所長官代理者 私のほうも、毎日毎日確認しましても、東京地裁自体非常に忙しいので、これはまた全体を把握できませんが、勾留した人の中で一、二出廷した例がある、これはむしろ例外になるかもしれませんが、そういうことのようであります。
○畑委員 いま数字を聞くと、なるほど相当大きな数字なんで、なかなか統一裁判も無理な点もあるかもしらぬけれども、しかし、原則としては、いま言ったものを全部東大事件とすること自体はむずかしいかもしれないけれども、たとえば東大の中へこもってやって、あの十八、十九日ですか、二日間にわたってやった事件、あるいはまたラグビー場事件、こういうことぐらいは、分けてやれるんじゃないかと思うのですが、弁護人や被告人が要求しているのは、そういったいわゆる広い意味の東大事件なのかどうかわかりませんが、そうだとすると、三百、四百くらいになる。なかなか大きな人数でありますが、しかし、統一裁判が私はやはり原則だと思うのですね〇大体、この間新聞でも見ましたけれども、いわゆる転向組というか、頭を下げて、それで早く裁判になった人でも、裁判官が違うと、そういうふうに認めた者でも、頭を下げた者でも、ひとりは実刑、ほかの人は執行猶予、こういうようなことになる。私も弁護士だからよく経験していますが、裁判官によってえらい違いがある。国の法律の名において、憲法のもとでの法律においてやるんだけれども、執行猶予をつけるかつけないかということは、人によってえらい違いがある。こういう点でも、やはり同じようなことをやった人たちは一緒に裁判するのがほんとうだと思う。同じ裁判官でやる。そうすれば、量刑の不公平がない。それが端的に物語っていると私は思うのです。せっかく頭を下げた人たちが、どういうことをやったか、その内容はよくわからぬけれども、一人は、幾ら転向したって責任を持つべきだということで実刑をくらわした、ほかは大部分が常識に従って執行猶予にした、こういうような不公平が現実にあるんだ。そういうような問題もあるから、できるだけ統一裁判をやるのが望ましい。今度の問題も、統一裁判で根本的にもめているものだから、ひとつ考え直したらどうだというのが、私の考えです。いつまで権威権威といってやっておっても、実態的に真実をつかみ得ないし、それは被告や弁護人がいなくても、刑事訴訟法がこの間改正になっているから、それでやれることばやれる、規定的にはやれるけれども、実態的真実をつかむことができない。また、被告の人権も、それだけ擁護できない。弁護士が出廷したらいいじゃないかといっても、先ほど言ったように、毎日毎日あって、それで全部の弁護士がそれに関係しておるということになれば、それによって忙殺をされるというようなことで、実質的に弁護権の放棄というような形にならざるを得ないということもあるので、大体分離裁判自体も相当無理だと私は思う。多数になれば混乱するだろう、それから三人の裁判官ではなかなかむずかしいだろう、大人数になると入りきらない、こういう点の配慮もあったかもしらぬけれども、分離裁判に踏み切ったこと自体が、相手が相手でもあるし、いまのようなエスカレートした状態になっておると思う。この辺について、裁判所のほうでは何か方針を考えないのか、あるいは考えようとしないのか、弁護団ともう少し話し合ってやってみる考えはないのか。いまあたかも弁護士と裁判官が敵対し、私は非常に憂慮すべき事態だと思うのであります。その辺もう少し弁護団と、統一裁判、分離裁判の中間を行くような形の、ある意味の統一裁判をやるような形か何かそういうことを考えて話し合ったらどうか。そうでなければ、このまま裁判所は権威権威でやっていっても、権威がますます失われるだけであります。権威を通したと思っても、結果的に権威は失われている。こういう事態が、最近の東大事件だと私は思う。この辺でまたひとつじっくり話し合ってやる考えはないかどうか、この点を承りたい。
○佐藤最高裁判所長官代理者 確かに御心配いただいているような状況でございます。そこで、この事件が——いわゆる東大事件でございますね、構内の安田講堂前で起きた事件以降は、弁護団のほうで強く統一公判ということを要求してこられました。そこで、所長代行のところで、各裁判官の依頼も受け、それから弁護人も参集されて、約一月半にわたりまして十分に統一公判を要求される趣旨というものを聞いたわけでございます。そして、その聞いたところは随時刑事の裁判官の全員に伝えて、先ほど仰せになりました統一公判というものの意味は何かということ、あるいは裁判の対象は何かということが結局問題になるわけでございますが、そういう本質的な問題をひんぱんに論議せられました。しばしば夜おそくに及んだわけでございます。そういうことをずっとやってまいりましたけれども、従前の弁護団の態度と違いまして、一月十八、十九事件以降におきましては、弁護人のほうは統一公判以外には考えないということで、そこに話し合いの余地が全然なかったわけでございます。かたがた裁判所のほうは、先ほど申し上げたように、非常に真剣に裁判のあり方、裁判の方式というものを検討してまいったわけでございますが、先ほど仰せのように、同じ機会に発生したといいましても、刑事責任を問われておりますものは、個々の被告人が特定の日にどこでどういうことをしたか、石を投げたか、そういうことの有無、これからそれの刑事責任の有無ということが、当面問題にならざるを得ないわけでございます。そのバックグラウンドとしては、いわゆる東大事件あるいは大学の問題ということがありましょうけれども、刑事裁判において問われておりますのは、個々の被告人について、起訴状で主張されている事実の有無、刑事責任の有無ということの問題である。そうなると、これはまた各人公訴事実も、日時、場所等も違い、形態も違うわけでございまして、同じ行動だからというふうにはまいらないと思います。統一をすることによりまして、個々の被告人のそういう個別的な事情というものが無視されてしまっていいものだろうかということが一つ問題になりますし、それから担当裁判官として、いわゆる認識能力の限界というものがあるではないか。何百人という被告人を一緒に裁判するということは、一度に何百の数学の問題を与えられて、それを同時に解くがごときことになるわけでございまして、証拠を検討する場合、AならAという証人の証言を聞く場合には、その証言を聞きながら、同時にその何百という被告のことを考えて聞いてこなければならないということにもなるわけであります。そういうことがはたして裁判官として可能なのかということを、真剣に討議をしてまいりました。それから法廷の秩序の維持ということも考え、十名前後というもののグループ分けというものが結局妥当であるということで、裁判官会議においてそういう方針が決定されたといういきさつでございます。それを横川所長代行が弁護団に伝え、もちろんそれが最終的なものではないので、それについてなお弁護人のほうの意見があればもちろん聞くという弾力的なものでございますが、それを示して回答を期待したのでありますが、ついにその回答がなかったということで終わったわけでございます。そういうことで約一月半の間非常にひんぱんに弁護団とも話し合いをし、それから非常に真剣に刑事裁判官の全員がこの問題を検討した、そのあげくの果てがこの方式であったわけでございますが、さて、先ほど仰せのとおりのような状況が各法廷で現出しているわけです。裁判所といたしましては、従前もそうでございますが、弁護人が来られる場合に、これをお断わりした、面会を断わられたということはないのでございます。むしろ各部におきましては、法廷を開く前に、各それぞれ担当の弁護人に呼びかけを行ないまして、法廷を開く前に準備をしたいから、話し合いをしたいからということは全部の部でやったわけでございますが、それに対しても応答はなかった、こういうようないきさつで法廷がそれぞれ開廷され始めたというのが、現在の姿なのでございます。これは、もちろん事は東京地裁のことでございまするので、私の立場からああしろこうしろということは言えないわけでございますが、先生の御心配している問題というものは、当然のことでございますし、それから先ほど申し上げた東京地裁でも、弁護人のほうが話し合いたいということがあれば——むしろ裁判所のほうが話し合いたいということで呼びかけをしたんでございますが、応答がなかったというようなことですし、弁護人のほうとの対話、こういうものがまた実現すれば、それはもちろんまたそこでいろいろ審理方針、こういうものも考えるという余地はあるわけなのでございます。先生の御心配になっている点が——ただ、私のほうからも、先ほど申し上げたように、東京地裁にああしろこうしろということは言えないわけでございますが、適当な機会に、こういう御心配に基づくところの話が国会であったという旨は、伝えたいと存じておるわけでございます。
○畑委員 この種の事件は、大体みんな最初に統一裁判をやって、それから適当に分離をして、そして最後に統一して判決の段階に入るということが一般的であるわけです。したがって、今度の問題もそういう手続を踏めば、こういうことにはならなかったとも思うのです。そうでなくて、そういうことをやっても、あるいはそれは体制を徹底的に批判する人たちだからむずかしい点もあろうけれども、最初に統一裁判をやって、起訴状の朗読をして、それですれば、例の起訴状一本主義に反する云々という問題で訴追問題等も起きなかったと思うのでございますが、いまとなってはしかたないんだけれども、いまからでも話し合いの余地は——もし弁護団のほうからあれば、それに応じて打開をはかるように、最高裁のほうとしては、直接指揮はそういう点ではできないけれども、そういった趣は伝える、こういう話がありますけれども、結局裁判所のほうからむしろ話を出して、そしてもう一度ここで考え直すということのような機会をつくるように、ひとつ指導してもらいたい。そういうふうにやってもらいたいと私は思うのですが、このままではどうもしかたがないんじゃないかと思うのです。その点は、そういう考えございませんか。あなたのほうから地方裁判所のほうに話して、そういうふうに持っていかせるようにサゼスチョンをするということは考えませんか、どうですか。
○佐藤最高裁判所長官代理者 事は具体的裁判の問題になりますし、私どものほうで統一公判にしたらどうだというようなことは、むしろ慎むべきことなのでございまして、そういうようなことはちょっと私の立場としては言えないわけでございます。
○進藤委員長代理 猪俣委員。
○猪俣委員 先般私は当法務委員会で、いわゆる裁判所では起訴状一本主義にもとったような行動をやっているじゃないですかという質問をいたしました。ところが、当時答弁に出ておられた最高裁の方は、初耳であって自分らは知らぬ、いずれ調査して御報告いたします、こういうことであったわけです。ところが、今月の十七日になりまして、羽仁五郎氏を先頭に五十四、五名の、これはおもに学者、文化人——政党人は入っておりませんが、訴追委員会に対しまして、裁判官訴追の申請書を出したわけなんです。その裁判官は横川敏雄裁判官、東京地方裁判所の代行判事。そこで、裁判官が訴追委員会の問題になるようなことが起こってまいりました。この訴状を見ますると、結局一月九日の安田講堂の事件、一月十日の秩父宮ラグビー場事件、その前の事件もそうだが、この事件のときには、この裁判所でこの被告たちの派閥、所属大学、それから自白の有無、その見込み、分離希望の有無、保釈の有無、逮捕歴、さらに参考欄には東大ストライキ実行委員長、リーダー、準リーダー、こういう地位、役割りまでも全部記入したものを一覧表をつくっておられる。これは裁判官に先入観念を与えてはならない——憲法三十七条の公平な裁判の要求から、刑事訴訟法はこの起訴状一本主義をとって、先入観念というものを与えてはならぬということが原則になっているわけです。ところが、裁判官がこういう一覧表をもってやられるとすると、どうもこれは刑事訴訟法の精神、根本には憲法三十七条の精神に違反するのではないかということが訴追の趣旨になっているようでありますが、この趣旨で私はこの前質問をしたのですが、その後、御答弁はいただかなかった。機会がなかったわけですが、そこで、あらためてどういう順序でこういうことをされたか、結局これは分離公判をなさる便宜上からやられたと思うのでありますけれども、しかし、憲法の精神、刑事訴訟法の精神を裁判所自身が破るということは、重大問題です。こういうことが他に及びますと、全く刑事訴訟法の根本概念がくずれてまいります。それについてのお答えをいただきたいと思うのです。
○佐藤最高裁判所長官代理者 まず、いま御指摘の三つの書面、リストと申しますか、そういうものが、公判で当該事件を担当する裁判官には何も知らされていないわけでございます。その問題のリストは、上智大事件、安田講堂前事件、それからラグビー場事件、この三つのものでございますが、これらはいずれもいわゆる法廷合議事件ではないのでございます。われわれ単独事件と呼んでおりますが、死刑、無期または短期一年以上の懲役もしくは禁錮に当たる事件というのが法廷合議事件で、合議体で審判すべきこととされている事件でございます。それ以外のものを単独事件と呼んでおりますが、これは一人の裁判官のところに配点されるわけでございます。そうしてこれらの事件、そのほかもそうでございますが、被告人が一人一人その起訴状によって個別に起訴されたという状況でございまして、それが単独事件であるために、各単独係にずっと配点されたということがまず一つございます。そこで弁護人のほうは、併合して審判を希望いたします場合に、たくさんの裁判官を相手にしてその希望を伝えるということは、実際はできないわけでございます。そこで、これは従前もそうであったのでございますが、所長代行をたずねて、所長代行が窓口になって併合というようなことを話し合ってもらいたい、こういうことで、従前からそういうプラクティスが生まれてきていたわけでございます。その場合に所長代行は、各裁判官の依頼を受けました上で、窓口となって弁護人と話をしていくという姿であったのでございますが、他方この単独事件を合議に移すということがありまして、われわれは裁定合議事件と申しております。単独事件も、事案が複雑であり、審理に長期を要するというようなたぐいのものは、合議体で審判することができるように裁判所法上なっているわけでございます。東京のように大世帯の裁判所ではしからばどうするかと申しますと、裁判官会議の議によりまして裁定合議委員会というものが古くから設けられているわけでございます。その委員会の長として所長代行、それから他の四人は合議体から二名、単独体から二名の裁判官、こういう五人の裁判官からなるところの裁定合議委員会が、問題とされた事件を裁定合議事件とするのが適当であるかどうかということを検討いたしまして、それが裁定合議事件相当ということになりますと、これが合議事件として合議部のほうに配点がえされるということになるわけでございます。近時のように、先ほど申し上げたごとく多数の学生被告がそれぞれ個別に起訴されてまいりますと、非常にたくさんの単独裁判官のところに別々にいくわけでございます。でございますから、それを適当に併合して合議体で審判してもらいたいという弁護人の要望にこたえまして、しからばいかなる基準でそういうような併合というものを考えたらいいのかということになりますと、実は弁護人も多忙でございまして、それぞれの被告人に面接してそれぞれの事情というものを把握するに至っていない場合が非常に多いのでございます。ラグビー場事件におきましては、せめてリーダー格の被告、事件を争って審理が長くなりそうな被告だけでも併合して合議体でやってもらいたいというような希望がむしろ弁護人のほうからある、そういうようなことで、裁定合議委員会におきましては、そのような弁護活動の観点から便宜と思われる事項をも含めまして調査をいたした、そしてそこに併合の基準となるべき事項を、ファクターを幾つか掲げてさらに弁護人と話を続けていった、こういうことであるわけでございます。その過程にできましたものが先ほど御指摘の書面でございますが、それは裁定合議委員会がその職責上調査いたしました過程においてでき上がった、そして弁護人に交付された書面であるわけでございまして、当該事件を担当すべき裁判官というものには、それは知らされていないのでございます。そういう意味におきまして、上智大の場合のこの種の書面には、秘の表示がいたしてあるのでございます。それは関係者以外には秘の扱いであるということであります。ほかの安田講堂前の事件、秩父宮ラグビー場事件においては、秘の判は押してございませんが、同様の趣旨において作成され、同様に扱われたものでございます。そしてそのような弁護人の防御ということをも勘案いたしましたその表というものを弁護人に渡して、そして弁護人との間で適当なるグループ分けの話を進めていったというのが、従前の行き方でございます。ところが、一月十八、十九のいわゆる東大構内の事件以降は、そういうことがもうすでに行なわれ得なくなったわけでございますが、それまではむしろ弁護人のほうから所長代行に対してそういうあっせん方を求めてくるということで、また、これは弁護人の立場を考えても無理からぬことでございまするので、裁定合議委員会の長としての所長代行としては、各裁判官の依頼を受けまして、窓口となってグループ分け等の問題について検討してまいった、こういうことであるわけでございます。で、それらの書類は公判を担当する裁判官には見せられていないということでございます。
○進藤委員長代理 この際答弁される方に申し上げますが、時間の関係もありますので、答弁は簡明にお願いいたします。
○猪俣委員 私がお尋ねしないことまでも詳細にしゃべられたのでありまして、ただ担当する裁判官には渡ってないとおっしゃるけれども、私の調査したところによると、戸田という裁判官が横川さんと一緒になってこの刷りものを弁護人に渡したり説明したりしたそうでありますが、この人は秩父宮ラグビー場事件についての担当裁判官だ。ほかの裁判官も、たいていみな御存じだそうです。あなた方は秘としたかもしれぬけれども、みなわかっておる。一応何グループかに分けるには何かの基準を必要としますが、学校別ぐらいまではいいと思うのですけれども、その人の逮捕歴だの、リーダーだの、準リーダーだの、そういうことを書くということは、これは全く裁判官に予断を抱かせることになる。あなた方は担当裁判官は全然知らぬのだとおっしゃるが、実情はそうではないのです。現に戸田さんなんかも担当している。この人がやはり代行と一緒になって——この人は第二代行だ、こうおっしゃるのだが、そういう制度があるのかないのかわかりませんが、一緒になってやっていらっしゃる。そういう点について、こういうやり方はよほど私は問題があると思うのです。しかし、事が大きな問題になりますから、もう少し裁判所でもよくお考えになって、相当実情もわかっているわけなんですから、担当裁判官が全然知らないというようなことは、そうは受け取れぬです。担当している裁判官もあるのです。その辺はどうなんですか。
○佐藤最高裁判所長官代理者 私どもはやっておるわけじゃございませんけれども、東京地裁で聞いていることを申し上げたわけで、裁定合議委員会のメンバーでそういう調査に関係した人は、当該事件の公判審理には関係していない。その書面は裁定合議委員内部だけのこと。それから弁護人との折衝の過程において弁護人に交付されている、こういうふうに聞いております。戸田判事は、仰せのとおり第二所長代行という立場で第一所長代行を補佐するのでございますが、この判事は当該書面の作成等には関係しておりません。わきにいてあるいはちらっと見たかもしれないけれども、その中身まで承知してはいない、こういうふうに言っておられるのでございます。なお、リーダーのお話が先ほどもあったのですけれども、これは私がお答え申し上げたとおり、弁護人のほうから、せめてリーダーとか、事実を争って証拠調べが長くなる者をまとめてもらいたいというお話があって、そして弁護人の弁護活動の便宜ということの意味でそういう条項を込めた資料をつくった、こういうことであるというふうに聞いているわけでございます。
○猪俣委員 弁護人の側は、私調べておりません。いまあなたが弁護人の要請だとおっしゃったことは、実はぼくはそういうふうに納得できないのです。そんなことを弁護人が要請する道理はないと思うのです。ことに統一裁判を主張している弁護団が、そんなことを要求する事情はないと思うのです。それからこの戸田という人は、ちらっとわきにいたかもしれぬというようなことをおっしゃるが、二人一緒になって、一人は第一代行、一人は第二代行で、二人一緒になってこの文書を配付していたらしいです。横にいてちらっと見たなんという関係ではないんだ。それは実は裁判官なんだ。もう少し事情をよくお調べになってください、私のほうでも弁護団の事情を調べますから。そして答弁なさらぬと、それはおかしな答弁になる。
○佐藤最高裁判所長官代理者 いま先生の仰せの中で、統一を要求しているのにと仰せになりましたが、これは一月十八日、十九日の事件の前のことでございます。上智大事件というのは、その前の年の十二月でございますし、それから一月九日、十日の事件、その当時は弁護人との間でそういういわゆる対話というものがあった時代でございまして、でございますから、そういう話が弁護人との間に出たということはあり得るので、その当時は、何も統一公判というものを弁護人が主張されておった時代ではございません。統一を言われ出したのは、一月十八日、十九日の東大事件からでございます。
○猪俣委員 私のほうでも弁護団から事情をよく聞いてみましょう。水かけ論になります。 そこで、私は畑君の次に二番目の質問になっておるけれども、ちょっと失礼だが、もう一点質問して、私はこれでやめます。それは、法務大臣にお聞きするのですが、昨日鹿地亘なる人物が無罪の判決を高裁で受けた。これがアメリカのキャノン機関というものにつかまって、そしてこの国会の問題にもなった。そしてこの法務委員会で非常に論議された。ところが、この鹿地を電波法違反で調べたのは、いま厚生大臣をやっておる斎藤当時の国警長官と自民党の代議士である田中元警視総監。それでこの二人は、公判の途中証人として出てだんだんわかったのですが、このキャノン機関としょっちゅう連絡をとっておった。これは公判で証言として出てきた。そこで、これはアメリカのUPIが電報を打ったように、日本の警察機関、国家機関がキャノン機関と了解の上で留置したということが、だんだん公判の途中明らかになってきた。これが無罪になった。それで十八年かかっています。そこで、私がお尋ねすることは、検察庁はこれをまた上告するかどうか。判決はこういうスパイ行為をやった事実がないのだという結論なんですよ。そういう結論の場合に、一体上告するかしないか。上告するなんという論拠はないと思うのだ。判決を見れば、鹿地はスパイしたなんという事実はない、こういうのですよ。ところが、アメリカと一緒になって彼をスパイに仕立てたのは、いま自民党の幹部になっておる人たちなんですからね。そういう責任もあるから、自民党政府としては多少讀罪の意味もあるとぼくは思うのだ。いままで一審、二審と十八年かかっていますよ。それで終始彼は否認しているのにかかわらず、検察庁は起訴し、一審は有罪であったが、二審になってすべてが明らかになって無罪になった。この辺でひとつ救ってやってもらいたいと思うのだ。この辺で釈放してやったらどうですか。その陰にはいまの自民党の幹部がやはり関係があって、一体斎藤国警長官や田中警視総監はどういうことになるのか。当時私が激しく法務委員会で追及したのにかかわらず、スパイだ、スパイだと言い張っておった。それが無罪になった。そんな事実はないと、こういう。いま責めてもしかたがありませんが、一体これはどうなさるつもりであるか。私どもは、これはお願いになるか知らぬが、ぜひ上告だけはやめて、これで青天白日の身にしていただきたいのだが、どうですか。
○西郷国務大臣 きのうのことでございますので、検察においてもいかに対処するか、目下検討中と考えます。
○進藤委員長代理 岡沢完治君。
○岡沢委員 時間がございませんので、きわめて簡単に二、三の問題、出頭拒否と公判手続について、裁判所の特に法律的な見解を聞きたいと思います。 御承知のとおり、刑事訴訟法の二百八十六条の二という規定は、昭和二十八年に法律第百七十二号で新しく制定された規定でありますが、この規定が実際に裁判所で適用され、被告が出頭拒否、したがって欠席のまま判決までいった例が何件ほどあるか、お尋ねいたします。
○佐藤最高裁判所長官代理者 四件と承知いたしております。
○岡沢委員 具体的にちょっと名前を……。
○佐藤最高裁判所長官代理者 事件を申し上げますと、放火事件、窃盗事件というような刑法犯でございます。
○岡沢委員 たしか二百六十一人起訴されたメーデー事件については、最初八グループの合議制でなさって、結局、弁護団等の激しい抗議で統一公判になさった。いわゆる公安事件では、この二百八十六条の二を最後まで適用された例はないと解釈してよろしゅうございますか。
○佐藤最高裁判所長官代理者 私どもは承知してないのであります。私どもが報告を受けて承知しておりまするのは、先ほど申し上げたような被告が一人の事件でございます。
○岡沢委員 それでは、二百八十六条の二についての裁判所の見解を聞きたいわけでございますけれども、二百八十六条の二によりますと、「被告人が出頭しなければ開延することができない場合において、勾留されている被告人が、公判期日に召喚を受け」、云々とあります。結局、この条文からいいますと、被告人が勾留されていることが二百八十六条の二の前提だと思いますが、そういうふうに解してよろしゅうございますか。したがって、勾留されていない被告人については適用がないというふうに解釈してよろしゅうございますか。
○佐藤最高裁判所長官代理者 仰せのとおりだと思います。
○岡沢委員 そうすると、この二百八十六条の二を適用する場合に、もし被告人が保釈中であったり在宅起訴の被告人であった場合は、勾留されることが前提になるというふうに解すべきでしょうか。
○佐藤最高裁判所長官代理者 ちょっといまの御質問の趣旨わかりかねたのですが、勾留されているものについて保釈になっておる者はどうか、こういう意味でございますか。
○岡沢委員 ええ。
○佐藤最高裁判所長官代理者 これは解釈の問題になりますので、私の立場からこうだと言うわけにもいかないと思うのでございますけれども、この二百八十六条の二という規定が設けられた趣旨は、現に身柄が拘束されているということが前提で、それから召喚状が出されているということ、そういう場合のことであろうと理解してまいっておるわけでございます。
○岡沢委員 私は個々のケースについて聞いているのではなしに、法解釈でございますから、やはり最高裁の刑事局長は一応明快な御解釈があってしかるべきだと思います。そういう意味から私が聞きますのは、もし保釈中の被告人が出廷をしないという場合には、この条文の適用がない。もしこの条文を適用する場合には、保釈を取り消して勾留することが前提になるのではないかという意味のことを聞いているわけです。
○佐藤最高裁判所長官代理者 仰せのとおり、保釈の取り消し、あるいは拘引はできると思います。出廷を強制するという方法におきましては、保釈中の者を拘引はできると思います。
○岡沢委員 もう一つ。この規定は、一番最後のところに、「裁判所は、被告人が出頭しないでも、その期日の公判手続を行なうことができる。」とある。この公判手続は、たとえば起訴状朗読の冒頭手続から判決の言い渡しまで全部含むのか。したがって、最初から最後まで、出頭しないままで判決までいくことが、法の解釈上可能であるのかどうか。特に憲法三十七条の二項の規定「刑事被告人は、すべての誰人に對して審問する機會を充分に與へられ」るべきであるという趣旨の規定との関連その他において、最高裁としてはどういうような解釈をとられるか、お尋ねいたします。
○佐藤最高裁判所長官代理者 最高裁とおっしゃいましても、私は事務総局の者でございますので、別に判例を出す立場でもございません。それについての判例を用意してまいっておりませんので、どういうふうな判例が出ておるか承知いたしておりませんので、お答えいたしかねます。
○岡沢委員 これは具体的にすぐに事件として遭遇する場面が、十分に予想されるわけです。したがって、これは事務総長からでもけっこうでございますけれども、法曹人として、最高裁の事務総局に立場を置かれる裁判官の身分をお持ちの局長として、特に刑事局長のお立場から、やはり個人的な見解はあってしかるべきだと思います。法解釈についての個人的な見解——最高裁の見解というふうには受け取りませんから、お答えをいただきたいと思います。
○佐藤最高裁判所長官代理者 私が個人的な立場でここで意見を申し述べるということは、どういうことになるのでございましょうか。
○岡沢委員 最高裁の刑事局長というお立場から、やはり二百八十六条の二というのは、実際の裁判で現に適否を検討すべき時期にきておると思うのです。この場合、最高裁としての一応の一解釈——、最終的な権威のある解釈は最高裁判所の判断で出されるべきだとは思いますけれども、しかし、事務総局としても一応の指針というものがなければ、私かえって第一線の裁判官あるいは裁判所の統一、公平という考え方から見ても、基準がない場合にかえって混乱を生ずるのではないか。一応この辺で御見解を出されてしかるべきではないか。もしきょう御答弁がむずかしい場合は、次回にでも、あるいは文書にでもしてお出しいただきたいと思います。
○佐藤最高裁判所長官代理者 そういうふうな問題を私のほうから現場に出せという御趣旨でございますか。
○岡沢委員 現場にではなしに、やはり最高裁の事務総局として、二百八十六条の二についての一応の解釈がないということはあり得ないわけなんで、当然私は見解として、われわれ国民の代表者にも知らしてもらうべきではないかという意味であります。
○佐藤最高裁判所長官代理者 おそらく現在東京地裁で当面しておる問題のことを頭に置いてのことだと思います。そうであるならば、なおさら私の立場からはいまは言えないわけであります。もちろん東京地裁の各法廷においての具体的な事件において、そういう考え方というものが具現していくのだろう、かように思っております。
○岡沢委員 私は、一つの事件についての裁判を求めているわけではないわけです。刑訴法二百八十六条の二の解釈について、専門家である刑事局長がないということは、あり得ない。解釈論を聞いておるわけです。
○佐藤最高裁判所長官代理者 刑事訴訟法のことでございますれば、どうぞ法務省のほうに御質問を願いたいと思います。
○岡沢委員 それでは法務省の、法務大臣、刑事局長がお見えでございますから、お尋ねいたします。
○川井政府委員 刑事訴訟法は私の所管の法律でありますので、つくったときの気持ちになり行政解釈を申し上げたいと思います。 公判手続の中には、一切の手続が入る、これが立法したときの法務省の考え方であり、また行政解釈であり、また大体通説ではないかと思います。しかし、裁判の結果またどういうふうな解釈が出るか、それはまた具体的裁判の結果をまたなければならないと思います。
○岡沢委員 それでは、いまの川井局長の御答弁では、起訴手続から判決の言い渡しまで一切被告人の出頭なしに手続を進め得るというふうに解釈してよろしゅうございますか。
○川井政府委員 法務省としての解釈でございます。
○岡沢委員 そこであわせましてお聞きいたしますが、弁護人が終始出廷を拒否した場合、これは国選弁護その他の手続がありますけれども、一応裁判所としてはどういう法的な規制あるいは対策を一般的に考えられるかどうか。別に東京地裁における具体的なケースを予想してではございませんが、これはやはり最高裁の刑事局長、法務省の刑事局長、両方にお尋ねいたします。
○佐藤最高裁判所長官代理者 弁護人の問題でございますね、これがいわゆる必要弁護の事件であれば、弁護人ないままに審理を進めるということは、疑問だと考えます。
○川井政府委員 弁護人が初めから出廷しない場合に、その弁護人を強制的に出廷を命ずるという手続上の規定というものは、私は、ないんじゃないかと思います。したがいまして、いま佐藤さんが言われたように、弁護人なければ開廷することができない事件においては、国選弁護人を付して、そして審理をしていく、こういうのが、刑事訴訟法の構造になっておると思います。
○岡沢委員 時間の関係で、あと一問で終わりますけれども、東京地裁を中心にした学生裁判、あの数からいいましても、規模からいいましても、非常に大問題をかかえておることはここでちょうちょうすることは避けたいと思いますが、その関連におきまして憲法三十七条の「すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。」この法条からいたしまして、東京地裁の裁判官の数、事務官の数、書記官の数、速記官の数、あるいは法廷の設備その他で、他の事件に、いま申しました憲法三十七条等の規定が阻害されるような心配が考えられると思うのでございますが、それに対する対策、たとえば他の裁判所からの裁判官の応援とか、あるいは事務官、それらに対する超過勤務手当の、労働条件の面からの対策、先ほど申しました法廷の設備、こういう点について格別の御用意があるのか、対策についてお考えがありましたら、お答えいただきたいと思います。
○寺田最高裁判所長官代理者 ただいま岡沢委員からお話のございました点、私どもも最も関心をもって処置しておる問題でございます。ただいま東京地裁の事件が非常に新聞に大きく出ておりますけれども、私ども全国的な視野におきまして統計その他を絶えず見守っておりまして、そうして配置の適正ということを考えております。いまお話のございましたように、地方によりましてはやや余裕のあることもございますので、そういうところから応援ということも、実際にもいたしております。また、東京地裁内部でも、いろいろくふうをいたしております。さらに、先般国会で御審議いただきました定員法の改正によって、増員の御処置もいただきました。これも重点的に配置いたしまして、万全を期しておるような実情でございます。
○岡沢委員 終わります。
○進藤委員長代理 松本善明君。
○松本(善)委員 時間の関係でごく簡単に伺いますが、人権擁護の問題で法務大臣に伺いたいんですが、中部電力でこういう事件が起こっておるわけです。共産党員らしいということで、会社のほうから家族に、共産党員に対して会社としては重大な決意で対処する、こういう手紙を出している。私、直接中部電力の副社長にお会いしたところが、それはよくない、間違っておる、会社の方針ではないのだというようなことを言われたわけでありますけれども、こういう事件がいまだに起こるということについては、たいへん遺憾に思うわけであります。結社の自由という憲法で保障された人権の保障について、法務省としてどういう決意で対処をしておられるか、法務大臣に伺いたいと思います。
○西郷国務大臣 具体的な事件でございますから、法務当局から説明させます。
○松本(善)委員 人権擁護局長に答えてもらうなら、一緒にこういうことを答えてもらいましょう。この事件について、すでに人権擁護局は調査をしておると思いますので、その調査の経緯、それから見通し——もう三カ月もたっておるので、もっと早く事は進まなければならないと私は思いますが、このことについての経過をお話しいただきたいと思います。あとで法務大臣に一般的な方針を聞きたいと思います。
○上田(明)政府委員 この事件が津地方法務局から私のほうに報告されましたのは、四月三十日でございます。そしてそれ以後ずっと現地で調査して、それ以前——おそらく報告以前から調査していたと思います。それでもう三カ月たつというお話でございますが、この事件は、四月七日に発電所に出入りする寺沢廸夫外一名から津地方法務局四日市支局に対して申告があったので、同支局において調査を続けておる。しかし、これは重大な問題であろうというので、津地方法務局を経由しまして私のほうに申告があった、それが先ほど申し上げました四月三十日でございます。そしていままでの報告によりますと、調査の段階では大体どうなっているかという私のほうの問いに対しまして、現地からの報告では、会社の人八名をすでに調査した。それから手紙を受け取った家族七名の方々の事情について、各地の法務局に嘱託をしなければなりません。と申しますのは、その被害者という人々は同一場所においでになりますけれども、手紙を受け取ったという家族のほうの事情を聞いていきたいというので、各法務局に対して嘱託をいたしております。それでいまだ三名について回答がない。その回答を待って処理することにしたい。確定的な処理の時期はいつごろになるだろうかという私のほうの問いに対しまして、ちょっと申し上げかねるというのが現地の報告でございますが、われわれといたしましては、できるだけ早く処理するように現地に指示したいと思います。 それから、現地の調査があるいは若干おそいというふうにお考えになるのもごもっともだとも思いますけれども、これははなはだ言いわけがましくなるのでありますが、事件担当庁になっておるのは、実は四日市の支局でございます。四日市の支局には、専任の人権擁護職員がおらないのでございます。したがいまして、これに協力して当然津から人権擁護局の支局員が出向くわけでございます。津には四人おるわけでございます。そうして同局が昨年度に受理した人権審判事件は、実に七百六十余件にのぼっておる。常に六十件前後の事件をかかえてやっておるわけであります。全国統計の上では、全国一忙しい庁になっておるわけでございます。そういうこともあって若干おくれているのじゃなかろうかと思っておりますが、われわれといたしましては、こういうふうな問題は、先ほどお話しになりました結社の自由なり思想の自由なりに対する問題として、できるだけ早く処理するようにという指示をいたしております。
○松本(善)委員 法務大臣も人権擁護局長も聞いてもらいたいのですが、この事件は、ここの組合はいわゆる同盟系で、不正確ではあるけれども、いわゆる民社系の組合であります。この組合も、厳重に会社に抗議しておる。私が先ほど申しましたように、副社長もそれは間違っておる、実は会社の方針ではない——私はその会社の方針ではないという点に若干の疑いは持っておるのだけれども、会社の当局者もそう言っておる。人権擁護局がここで忙しゅうございますという答弁をいまごろするという感覚で、一体仕事はいいのか。私がちょっと動いただけのほうが、人権擁護局より早いじゃないですか。そういうことでいいのかどうかということについて、人権擁護局長と法務大臣の慎重な調査というのもいいけれども、間に合わなくちゃいかぬのですよ。実効がなくちゃならぬのですよ。そういう点についての法務当局のお考えを聞きたいのです。
○上田(明)政府委員 いま申し上げましたような事情で、申し立てがありましたら、直ちにその申し立ての事態を会社側だけで事を処理するということは、私のほうではやっておりません。それに関連する事件は一応調査して、しかも第一、人権侵害があったかどうかという問題が、まず一つあります。それから人権侵害だとかりにいたしますれば、あとどうするか、ちょうど刑事でいえば量刑の問題になるわけでありますが、それはどれに該当するかという事情も調査しなければなりません。ただ人権侵害かどうかというだけの問題ではないのでありまして、私たちの処理といたしましては、御承知のように、処置猶予——処置猶予というのは、御承知のような、検察庁でいえば起訴猶予みたいな処分です。それから説示、これは口頭によって今後こういうことをしてもらっては困るということをじゅんじゅんと説く。それから勧告、これは文書によって正式に今後こういうことのないようにということ、そういうようなことをやるという問題もございますので、いろいろの事情というものも調査しなければならぬ。ただ一律に人権侵害かどうかというだけにしぼってやるわけじゃございませんので、現地からの報告によれば、大体通常このぐらいはかかっておるのではないかと私は考えております。
○西郷国務大臣 松本さんのおっしゃるとおり、なるべく早くやらぬと時期を失する点もございますので、局長も答弁しましたが、内容が内容だから、非常に慎重を期するために多少時間を要するようでありますけれども、やはり時期というものがありますから、今後できるだけ迅速に結論を出すようにつとめたいと存じます。また例の件は、会社も途中で気がついて取り消したというお話でございますが、憲法の規定もございますし、なすべきことではないことはもう言うまでもないと思います。
○松本(善)委員 終わります。
○進藤委員長代理 次回は、公報をもってお知ら、せすることとし、本日は、これにて散会いたします。 午後一時三十二分散会