法務委員会 第14号
- 発言数
- 59 件
- 登壇者
- 10 名
- 会派数
- 4
- 開催日
- 1969/04/18
会議録
○高橋委員長 これより会議を開きます。 法務行政に関する件、検察行政に関する件及び人権擁護に関する件について、調査を進めます。 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中谷鉄也君。
○中谷委員 私は、きょう与えられました時間が二十分でございますので、むずかしい法律論はさておきまして、大臣に実情を訴えるとともに、善処をお願いをいたしたいと思うのです。 私がきょうお尋ねをいたしたいのは、ホ・チ・ハちゃんというベトナムの戦災孤児が日本人の善意によって、杉本さんという高等学校の先生の里子、すなわち杉本さんが里親になろうということを熱望をしておる。このハちゃんという子供さんを預かっているところの仏教国ベトナムのお坊さんの話では、決して困っているから、ベトナムが貧乏だから日本に頼むのではないのだ。日本の仏教徒や日本の国民の熱意にこたえるためにハちゃんを日本にやりたいのだ、こういうふうな状況であります。そこで、実は非常に恐縮でございましたが、私、大臣のお手元にその新聞の記事と写真を一枚ごらんをいただくために差し上げました。この写真は、昨年私がベトナムに参りまして、サイゴンのマジェスティックホテルというホテルに約十日間ほどおりまして、現地大使館の方の協力を得まして、そうして戦乱のベトナムの国を調査をいたしました。そのときのホテルのエレベーターボーイとともに写した写真であります。そういう写真をその後大使館の穴吹という研修生の人を通じましてそのボーイさんに送ってあげたところ、非常に喜んでくれたというたよりがまた穴吹研修生からまいりました。 そこで、私は大臣の考え方といいますか、大臣のお気持ちをお聞きしたいのでありまするけれども、いろいろな外交上の問題、経済協力であるとか、あるいは技術援助であるとか、あるいはまたいい商品を貿易上向こうの国に売るとか、また向こうの品物を買うとか、いろんな問題はあると思いますけれども、一つの国と一つの国との間の親善、一つの国の国民と一つの国の国民との間で仲よくしていく善意が、国と国との海を越えて生きていく、こういうことが私は非常に大事であろうと思うのです。そういうような点で、私自身がとってまいりましたその写真、エレベーターボーイとでありまするけれども、とってもかわいい顔をしている。そういう子供たちと私との間に心と心が通っておるというふうなことも、日本とベトナムとの親善、こういうことに役立つだろうと私は思うのです。外交という大きな問題を論ずるわけではありませんけれども、そういうふうな日本と南越、日本とベトナムとの親善というふうなことは、国民同士の気持ちの通うこと、こういうことがまず基本点において私は大事だろう、こういうふうに考えますが、大臣いかがでございますか。
○西郷国務大臣 ただいま中谷さんの戦争孤児に対しまする御質問でございまするが、中谷さんの非常に愛情に富んだ、また国際親善的な御意見、私もまことに傾聴に値する御意見と思います。すでにどういうわけで上陸できないかという理由は御存じのことと存じまするが、私もなおこのかわいい子供の写真等を拝見いたしまして、中谷先生のおっしゃることはよくわかりますが、やはり一つのことをやりますと、それが前例になってまいるというようなこともございますし、従来の入管としての態度と申しますか、そういうものもございますが、重ねての愛情のあるお話でございますので、私自身もなおさらに検討をさしてもらいたいと思います。
○中谷委員 そこで、ぜひ大臣に御検討いただきたいのは、次の点なんです。要するに、このハちゃんという子供さんが、留学という資格での——留学は大学生以上でなければ認められないんだ、これが従来の入管の方針である、こういうことでございます。私は、この点について、ひとつぜひ大臣に御検討をいただきたいと思うのです。実はこういうふうな質問は、私目くじらを立ててする質問でもないし、与党野党の、ことに与党の先輩の委員、先生方の前で、同僚議員の前で、こういうことを引例として引くのも、私は実は、何と申しますか、心恥ずかしい思いがするわけです。博識の与党委員のおられるところでこういうことを言うのは非常に私心恥ずかしい思いがしますけれども、七つのハちゃんだから、留学というビザがむずかしいんだということなんです。ところが、私は二つ大臣に御検討いただきたい前例を申し上げます。明治四年のことなんですけれども、津田英学塾を開かれた津田梅子さんが、ちょうど岩倉具視さんをいわゆる使節団の首席としての訪米使節団に加わって、そうしてアメリカへ行って英学を勉強されて、そうして津田英学塾を開いた、私たちはこういうふうな歴史的な経験を持っている。これが一つなんです。いま一つ、本日の新聞を見ましたけれども、何か本因坊林海峯さんと、そうしてこれまた若い挑戦者とがいよいよ火花を散らしてやっておる。この林海峯本因坊が日本に入ってきたというのは、たしか十歳か十一歳のときだというふうに私は聞いておるわけです。ですから、ぜひひとつ御検討いただきたいのは、留学というのは大学生以上というふうな方針は、その方針は方針としてでも、例外というものは、ケース・バイ・ケースとしてあっていいのではないかということなんです。私は、やはりそれは結局日本と南越との親善関係というふうな点からも、法がそのような方針の中における例外を認めることについての御検討があってしかるべきだ、こういうことが一点。 第二点といたしましては、私は、やはり政策というものの基本に、人間的な愛情というものがあってしかるべきだ。移民政策というふうな観点から問題があるとか、あるいはまたこれが前例になってはいかぬとか、いろいろな問題がありまするけれども、向こうの仏教徒の人たちは——これは仏教徒が非常に指導的な立場を占めている国でありますけれども、戦災孤児が困っているから日本の人にお世話になるのではないのだ、要するにほんとうにそういう日本人の善意にこたえたいのだ、こういうふうに向こうの人たちも、日本とベトナムの間の親善ということから、このハちゃんという、かわいらしい子供さんを日本にやりたい、こういう一つの目的として理解をしている。また、私はこの機会に申し上げておきたいと思いまするけれども、戦災孤児について、決して日本は大きな国なんだ、ベトナムは小さい国なんだ、そういう気持ちで戦災孤児を引き取るというふうな私は気持ちではない。ほんとうに日本とベトナムとの間に仲よくやっていこうというふうな人間愛と、そして同じアジア人だというような気持ちでこの問題が出発しているということに相なりますると、いま一つは、入管令の特別な事情というふうな問題についても御検討をいただいて、こういうふうな、これは一人の子供さんの問題でありまするけれども、ほんとうに日本とベトナムとの間の、今後末長く続くところの友好親善関係が実り多きものになるか、あるいはまた、これについてそういうものでないことになるのかというふうな問題でもあろうかと私は思うのです。 そういう二点について、ひとつ御検討を入管局あるいは外務省等に御連絡をいただく——入管局にお命じになり、あるいはまた外務省等にひとつ御連絡をいただいて、そういう二点について御検討をいただくということをお約束をいただきたいと思うのです。
○西郷国務大臣 中谷さん御承知のとおり、法規的なことその他のことはもうおわかりでございますから、私も先ほど申し上げましたとおり、それ以外の諸点からひとつ、いまお説もございますので、さらに私どももどうしたらそれが実現できるか、そういう点をあらためて検討してみたいと思います。
○中谷委員 もうそろそろお約束の時間が参ったようでございますので、私は、ほんとうにいま大臣がおっしゃっていただいた、どうしたらこのハちゃんという子供——この子供が日本に来て、そうして将来日本とベトナムとの親善のかけ橋になるような、そういう役割りを果たすことを私は期待をいたしますし、そういうような前向きの形において御検討いただくことを私はお約束いただきましたので、そういう点でひとつお進めいただきたいと思います。私の調査によりますると、前に御配慮をいただいたところのキープちゃんという子供さんも、非常にしあわせに暮らしているようであります。 それから、特に外務省には私は今度の問題について協力をいただいて、そしてさっそく一昨日現地大使館のほうに電報連絡をいただきましたけれども、こういうふうないわゆる里親になるというところの申し込みというのは、過去三年間で約十件程度だ。だから、何もこの問題をケース・バイ・ケースで許したからといって、この問題が移民政策だとかいうものにからんでくるとも、あるいはそのことによって日本の国益を阻害するとも、というふうに私はとうてい思えないわけです。したがいまして、いま一度、大臣、私は先ほど適切な御答弁をいただいたと思いますけれども、前向きでこのハちゃんという子供のしあわせのために検討いただけるということを御答弁いただければ、幸いでございます。
○西郷国務大臣 理屈以外の問題として、再検討してみます。
○中谷委員 では、終わります。
○高橋委員長 岡沢完治君。
○岡沢委員 私は、与えられた時間四十分で、一時半に次の山田委員にバトンタッチするということでありまして、時間を守らさせてもらいます。 最初に、私も過日当委員会で質問したことがございますけれども、大学の自衛官の入学拒否に関連いたしまして、本日東京法務局長から東京都立大学の学長あてに勧告が出されたようでございます。内容については、すでに御承知のとおり、東京都立大学は受験拒否の評議会の決定はこれを取り消すこと、可能な限り受験の機会を与えるよう措置すること——もちろんこれは当該三名に対してだと思います。第三点として、憲法、教育基本法に違反するような差別的取り扱いをすることのないよう配慮すること、ということがその骨子であったと思います。私はこの勧告は当然であると思いますけれども、これについて、まず法務大臣の御見解を聞かせていただき、次に人権擁護局長、お見えでしたら、御意見を聞きたいと思います。
○西郷国務大臣 ただいまお尋ねのとおり、日本自衛官の受験拒否につきまして勧告を出したのでございますが、詳細はあとで局長から説明いたさせまするが、御承知のとおり、憲法十四条並びに二十六条、教育基本法の第三条の明文に照らしまして、今回の入学拒否は基本的人権の侵害であるという結論を出しましたので、本日東京法務局長名をもちまして東京都立大学学長あてに勧告を出したわけでございます。詳細は人権擁護局長から御説明いたさせます。
○岡沢委員 局長の御答弁の前に、私はこの勧告についての法務大臣の御所見を聞いておるわけでございますので、この事実の報告ではなしに、大臣としてはどう思うかということをあらためてお聞きいたします。
○西郷国務大臣 いま申し上げましたような勧告をいたしましたが、私自体も、これは当然の処置であると考えております。
○上田(明)政府委員 本日、堀内東京法務局長から東京都立大学学長團教授に対しまして、自衛官に対するいわゆる受験拒否問題について勧告文を出したのであります。概要はテレビニュースあるいは新聞その他で御承知のことと思いますけれども、あらためて概略を申し上げますと、自衛官が受験の申し込みをした、それは受理された。その後学生が自衛官の受験に反対したということに押されまして、大学のほうでは必ずしもそれに、私のほうの調査では、賛同したという趣旨ではなくて、一派の学生の要求があったものですから、もしこの学生の要求をはねれば、受験ができなくなる、受験生が大体八千五百くらいあったそうですが、ということをおそれたということが一点。また、それを契機として将来の学園紛争がなお一そう激しくなるのをおそれた。そこで大学の評議会で受験せしめないという決定をして、その評議会の決定はもちろん学長が出ておるわけですが、学長がそれに基づいて受験をさせないようにするという決定を一応した。その方法としては、ただ頭ごなしにおまえは受験をさせないのだというような方法をとらずに、相手方に辞退せしめるという方法をとるために、盛んに自衛官に辞退してくれということを言ったわけです。そうして評議会の決定があったのだからしようがないということで、断念をしたわけであります。われわれといたしましては、そういう決定をし、かつ自衛官なるがゆえに辞退せしめるように勧告をする——結果はともかくとして、ということで、いわゆる憲法の平等という原則、教育の機会均等、教育基本法三条、そういう規定に照らして差別的な取り扱いをなしたものといわざるを得ないという結論が出たわけであります。そこで「貴職におかれては、前記自衛官三名の受験を認めない旨の決定を取り消したうえ、可能な限り、これらの者に受験の機会を与えるための措置をとるとともに、」——可能な限りこういう措置をとるというのは、これは追試験を受けさせたいということでありますが、時期的にもおそいかもしれないし、不可能な措置といわれる可能性があるかもしれませんし、その感じはよくわかりません。そこで大学としてもう一度考え直して、もし可能なら、これらの者に受験の機会を与え——つまり追試験という意味です、与えるとともに、今後憲法及び教育基本法の前記各法条に違反するような差別的扱いをしてもらっては困る、しないようにという趣旨の勧告をしたわけであります。
○岡沢委員 法務大臣及び人権擁護局長に重ねてお尋ねいたしますが、都立大学といわず、一般的に大学が自衛官の入学を拒否することは、この勧告どおり憲法違反であるということを公に宣言された。また、大臣も人権擁護局も同じ見解であると解してよろしゅうございますか。
○西郷国務大臣 そのとおりでございます。
○上田(明)政府委員 本件に限っていえば、これは先ほど事実の指摘で申し上げましたが、受験生自体に対する人権侵害で、これは個人として受験をしておるという立場の勧告でありますから、そのほかのことには、この勧告自体は、たとえば委託学生というものには触れておりません。これはあくまでも個人としての資格で受験した人間に対して、こういう差別待遇をしてはならないという意味の勧告文でございまして、その他の委託学生については、この勧告自体の中では触れておりません。(岡沢委員「勧告のことは聞いてない、局長の意見を聞いている」と呼ぶ)委託学生とかそういうふうなものがあるのですが、そのこと自体、一体どういうふうな法律関係になるのかということは十分調査しておりませんけれども、いまここで直ちに結論を出せと申されましても、ちょっと時間の余裕をいただきたい。委託学生……
○岡沢委員 大臣ははっきり違反であるということをおっしゃっているじゃないですか。大臣は肯定されておる。それはそれでいい。あなたの思うとおりでいいのですが、大臣はそれは違反であるということを言明された。
○上田(明)政府委員 おことばを返すようで恐縮ですが、私は、大臣がこの件に限ってというようにおとりになった、こういう個人的なケースの意味でおっしゃったというふうに理解したものですから、必ずしも私としては大臣と違ったことを言ったとは思っておらぬのです。
○岡沢委員 それでは重ねてお尋ねいたします。都立大学の学生の場合は、個人の受験であることは私も事実であると思います。それでは一般的に、防衛庁の派遣学生あるいは委託学生が大学を受験した場合に、それを大学は拒否することは、憲法違反でありますか、違反でないという解釈か、どちらでありますか。大臣と局長両方にお尋ねします。まず、大臣から聞きます。
○西郷国務大臣 お話のとおり、これは個人の立場で受験する場合のみのことでありまして、それについては先ほど来申し上げましたが、防衛庁自体が派遣したり委託したりする問題は、これと多少性質を異にしてくるのではないかと思いますし、その点については、十分まだ検討はしていないわけでございます。
○岡沢委員 この委託学生、派遣学生の問題は、いま起こった問題ではなしに、従来から国立大学でも問題になり、きょうは防衛庁おられませんけれども、これはしかも日本の安全、防衛の立場からも、あるいは基本的人権の立場からも、きわめて大きな問題であります。事情が違うという非常に歯切れの悪い御答弁でございますけれども、場合によると、これは憲法違反でないというようなことをにおわされたような感じすら受けます。この点について、私ははっきりした法務大臣の見解を聞いておかないと、防衛庁自体、あるいは防衛に対する日本国民の合意というような面を考えましても、きわめて重大だと思うのです。この段階で私は唐突な質問をしておるわけではなしに、従来からこの自衛官の入学拒否が憲法違反ではないかという質問を繰り返しておるわけです。私がきょう突然尋ねましたならば、大臣の御答弁も納得いたしますけれども、そういう問題ではなしに、この件に関しすでに国立大学においても何回か問題にされた事案であるだけに、もう少しはっきりした態度でこの席で御答弁になってしかるべきではないか。そうでなければ、国民は、自衛官個人の受験を拒否する場合には憲法違反であるけれども、そうでない場合には憲法違反でない場合もあり得るという解釈をするおそれもあると思います。はっきりしていただきたいと思います。
○上田(明)政府委員 普通ありますのは、派遣学生、委託学生であります。派遣学生につきましては、熊本大学の事件がそうでありますので、現在調査中であります。結論はまだ出しておりません。しかし、派遣学生は、いまから先に結論を出すということはできるだけ差し控えたいと思うのでありますが、大学対個人の色彩が非常に強いということが言えると思います。委託学生につきましては、これは大学対個人じゃなくて、大学対防衛庁の関係になると思います。そういうような問題が実はからんでくるわけです。だから、一律に、本件が、これは個人だから人権侵害にあった。あとの関係はどうだ。少なくとも委託学生については、若干問題がある。相手方が違ってくるのではないかというような問題があるものですから、いましばらくこの点につきましては実情を防衛庁からよく聞きまして、最終的な答えを出したいと思います。
○岡沢委員 私は残念ながら三十分しか時間が与えられず、この問題はむしろきょう派生的にお尋ねしたわけなので、時間がとれないことは残念でありますけれども、しかし、きわめて大きな問題について、しかも先ほど来繰り返しておりますように、ずっと継続的に各地で起こった問題、そういう問題についていままだなお防衛庁とこれから相談をするということは、きわめて無責任ではないか。防衛庁が派遣する学生にしたって、学生には違いないわけだし、まさかその本人が大学に派遣されることを拒否する人を派遣するはずもないし、またかりにそういうことをした場合に、派遣の目的が達せられるとは思えない。防衛庁が憲法違反であるという解釈を政府がおとりになるなら別として、そうでなければ、はっきりした答えが出されてしかるべきではないか。この段階においてなおちゅうちょされるということ自体に、私は、各地で自衛官の入学拒否をめぐって紛争が起こり、あるいは解釈の誤りが続発する傾向を助長しておられるとしか思えないのです。もう少しはっきりと、人権擁護局長の立場から御答弁を求めます。
○上田(明)政府委員 仰せはごもっともなのでありますけれども、われわれといたしましては、実は大学問題につきまして直接手をつけておりますのは、この事件と熊本大学の事件であります。ほかの事件には、現在のところ手をつけておりません。したがいまして、この事件限りでできるだけ没頭するということでありまして、派遣学生の実態あるいは委託学生の実態というところまでは、実は手が回らなかったのであります。これはやがてはもちろんその問題が出てくるということは予想はしておりましたけれども、何ぶん人間の数も少ないし、こちらのほうに没頭して、いま熊本のほうに没頭する。派遣学生の問題は、これは色彩とすれば学校対個人の問題、人権侵害でありますから、何びとかの人権が侵害されたという事実がないと、たとえば学校対防衛庁の関係というような関係になりますと、私のほうの所管かどうか、これは検討しなければならないというようなことで、この実態をよく研究せずに結論を出すのは、実はわれわれとしては控えざるを得ない。先ほどおしかりを受けましたように、派遣学生の実態は何だ、あるいは委託学生の実態は何だということを調べないのはけしからぬ、こういうお話でございますけれども、われわれといたしましては、何ぶん先ほどからも申しましたように、人数も少ないし、出てきた事件に追いまくられているというのが現状でございまして、本件は本件限りということで、個人の場合について一生懸命やってきた、そしてこの勧告を出したということなんでありまして、派遣学生、委託学生につきましては、若干色彩が違いますので、いろいろな人の意見をやはり聞いてみたい。最終的には人権局長私個人の責任というものを免れようという意味ではありませんけれども、その辺の問題につきましては、いろいろ研究してみたいと思います。
○岡沢委員 時間がないので、これ以上局長に質問することをやめますけれども、しかし、先ほどおっしゃった御答弁の中で、都立大学と熊本大学だけを問題にするという御姿勢は、人権擁護局長としてはいかがかと思います。と思いますのは、京都におきましても、東京大学におきましても、自衛官の入学に反対する動きが強いことは、新聞紙上等を通じましても公知の事実であります。これが憲法違反になるかならないかという問題を含めて、当然人権擁護局としては一般的な、個別的なケースとしても御検討があり、御結論が出ておってしかるべきだと思いますけれども、この議論を繰り返しますと時間的な面でほかの質問ができませんので、局長に対する質問はこれで終わりますが、先ほどの東京法務局長の勧告に関連して、この受験拒否の評議員会の決定を取り消すという、この勧告の効力について、法務省はいかがお考えになるのですか、お尋ねいたします。
○上田(明)政府委員 勧告の効力は、あくまでも道義的、社会的責任と申しますか、それを言うだけのことでありまして、法律上強制力はございません。
○岡沢委員 法制局のほうにお尋ねいたしますが、いま人権擁護局長からは、東京法務局長の勧告は効力なしという明快な御答弁がございました。効力がないような勧告をなぜするか、またどこに意味があるかという疑問を、国民は持つだろうと思うのです。私は、教育公務員特例法その他によりまして、大学の管理運営については特別の法的な配慮があることも十分承知いたしておりますけれども、勧告が効力がなくて、憲法違反と法務局長が明快に意思表示をした事案について、かりにこのまま推移された場合どうなるかということについて、政府としてとれる措置についてお尋ねをいたします。 時間の関係上、まず具体的に私から聞きますけれども、文部大臣は、御承知のとおり、大学に対して当然に指導監督の権限を持っておりますが、こういう憲法違反の疑いがあることをはっきりと法務局長から勧告をされた事案を正すために、ここでいう評議会に対して評議会の決定を取り消すべきであるという趣旨の指導監督を文部大臣はすることができますか。
○真田政府委員 お答えを申し上げます。まず最初に、人権擁護局の御当局からなされました勧告が、効力があるかないかという問題でございます。これは効力があるとかないとかいう場合の効力の意味をどういうふうにとるかということでございまして、これは人権擁護局の御性格から申しまして、ほかの官庁の行なったあるいは法律行為なり処分なりをかわって取り消してしまうということはもちろんできませんし、またもとの処分をいたしました国家機関なりその他の機関が、それの勧告を受けて、当然そうしなければ違法に、またそのこと自体が違法になるというような意味合いにおける効力はない。これは先ほど人権擁護局長の仰せられたとおりでございます。これは法律の性格、勧告という文句を使っていることからも、うなずけることだろうと存じます。ただ、全然無意味なのかということになると、これはもちろんそうじゃないのでありまして、人権擁護局が法律に基づいて判断をしてその結論を表明するわけでございますから、非常に権威があるものだと存じます。やはりほかの国家機関は、当該事件に関する公の判断としてこれを尊重するということは、当然だろうと思います。 それから、いまや当該事件について人権擁護局から勧告が出たのだけれども、文部大臣としてはどうしたらいいかという御質問だろうと存じますけれども、これはそちらのほうでまた文部大臣の権限をどうきめていくかという法律がございますので、当然それに従って、その範囲内でなければ文部大臣の職権の行使はできない、これも当然でございます。 それで、東京都立大学の処置について、憲法違反であるから是正しろという勧告が出たという今日におきまして、文部省としては、文部省設置法の規定に基づいて助言と指導をするということは、当然だろうと存じます。ただ、文部大臣の権限は、御承知のように、学校に対しまして指揮監督という法律的な拘束力のある処分をするということができないように仕組まれておりますので、そちらのほうの制約がございますが、その制約の範囲内においては、当然文部大臣として適当な措置をおとりになることだろうと存じます。
○上田(明)政府委員 ちょっと釈明させていただきます。いま社会的責任、道徳的責任を問うのであって、効力がないというふうにあるいは私が言ったのかもしれませんが、この効力がないという意味は、強制的効力がないという趣旨におとり願いたいのでありまして、もし強制的な効力というような発言をしなかったとすれば、前言を取り消します。これは強制的な効力はない。道徳的責任という意味の効力はあるわけです。そして、それに従ってやるのが国民の人権擁護上好ましい、こういうふうに考えるのであります。先ほどことばの足りなかったところがありました分は、訂正いたします。
○岡沢委員 そうしましたら、もし都立大学詳議会がこの決定に従わなかった場合に、当事者として、あるいは文部大臣として、あるいは法務省として、人権擁護局長としてとり得る措置について、政府と法制局の両方の見解をお聞きします。
○上田(明)政府委員 人権擁護局といたしましては、勧告はあくまでもこうしてくださいという勧告でございまして、これ以上、もしこれに従わぬ場合に従えという命令的な、いわゆる先ほど申し上げましたような強制権はございません。これは不問に付されるというなら、人権擁護局といたしましてはいたしかたないことなのでありまして、あとはそれぞれの官庁がこの趣旨に従って適当に措置をされることを希望するということを申し上げたいと思います。
○真田政府委員 詳しいことは文部当局からお答えすべき筋合いかと存じますけれども、かわって私からお答えさせていただきますと、一般的には、先ほど申し上げましたように、大学に対する文部大臣の介入権といいますか、監督権といいますか、これは非常にぎりぎりのところでは法律的に拘束力を及ぼすような指揮監督はできないということに相なっております。ただ、御承知のとおり、学校教育法第十三条というものがございまして、学校が法令違反を行なった場合には閉鎖を命ずるというような規定がございます。はたしてこの規定に該当するかどうか、もう少し検討の余地があろうと思いますけれども、これに当たるということになれば、当然その条文で学校の閉鎖というような強権を発動することの余地がないわけではございません。ただ、学校の閉鎖などということはとてもたいへんなことでございますので、その権限を行使することについては、当然文教政策上の諸般の考慮があってしかるべきなので、直ちに十三条を発動すべきだという意味で申し上げたのでは毛頭ございませんので、その点は御了承願いたいと思います。
○岡沢委員 そうすると、せっかく勧告が出されても、法律の効果は非常に薄い。ただ、先ほどの真田部長のお答えの、法的な拘束力はないけれども、公的な見解として公的機関は拘束されるとおっしゃった意味は、かりにこの三名が憲法違反の行為だということで裁判所に提訴でもした場合に、これは裁判所を拘束するわけにはいかぬと思いますが、一つの公的な判断がなされておる結果、それが裁判に影響するという御意味なのか、あるいは先ほどおっしゃった意味での公権力にこの見解が効果を持つという意味は、ほかに何か含みがあってお答えになったのか、その辺のところをお尋ねいたします。
○真田政府委員 ただいまお尋ねの、当該受験志願者三名が訴訟を起こした場合に裁判所の判断がどうなるかということでございますが、これは申し上げるまでもなく、裁判所の判断を拘束するというような筋合いのものでないことは当然でございます。ただ、御参考になるかどうか、それは裁判所の自由な判断にまかせるべきことだろうと存じます。 裁判所の点はそれといたしまして、それでは他の行政庁なり学校当局に対してどういう効果があるかという御質問の御趣旨だといたしますれば、それは先ほど申し上げましたように、ぎりぎり拘束力はない。ただ、公の機関が法律に基づいて下した判断でございますから、当然これは尊重しなければ、また世の指弾も受けるであろし、私としても当該大学は勧告の趣旨を体して善処するのだろうと存じますが、ただ、これを強制する手段がない、こういう関係でございます。
○岡沢委員 この問題、もう少し突っ込みたいと思いますけれども、貴重な時間をさいて国家公安委員長もお見えでありますから、公安委員長に対する質問に移りたいと思います。 新聞等の報ずるところによりますと、政府と自民党執行部との御懇談の席で、例の昭和二十五年の文部次官通達の改廃について御議論があったようであります。治安をあずかられる国家公安委員長として、この文部次官通達の是非について、現在どういうふうに判断をされておられますか。本席におきましても、たびたび大学は治外法権でないということを、法務大臣も警察当局もその他の方々も言明されながら、現実にはあたかも治外法権的な扱いがなされておる。現にそのことのために大学紛争がエスカレートしたと見られる節もあるわけでございます。大学内の法秩序の維持、治安の維持ということは、きわめて大事な現在の課題ではないか。もちろん大学紛争の解決がこういう治安対策としてのみ考えらるべきでないことはもとよりと思いますけれども、最小限の前提として、静かな教育環境、教育目的を達成するに必要な教育環境を整備するということは、教育行政の基本であり、ここに御列席の法務大臣あるいは国家公安委員長ともに国務大臣としての大きな責任を持っていただいておると私は思いますので、この次官通達の是非について、あるいはこれに対する警察当局のお考え方について、現時点での見解をお聞きします。
○荒木国務大臣 学内におきまする公安条例の解釈適用についての文部次官通達、これは現に生きておると理解をいたしております。公安条例の運用における公共の場所の解釈など当然のことを述べているのでございまして、現在においても効力を持っていることはいま申し上げましたが、ただその第三の項目、すなわち当該学校長の取り締まり措置とか要請があった場合の警察の協力などの用語におきまして、誤解を招きやすい点があるというのが欠陥として指摘し得ると思います。したがいまして、次官通達が出された当時とは情勢の異なる現状におきましては、しかるべき機会に文部当局から各大学当局に対して、次官通達はあくまでも大学当局の管理権が適正に行なわれている場合を前提としているものである、さらに人命の危険その他公安維持上緊急の必要がある場合には、要請の有無にかかわらず、警察がその責務を遂行するために大学内で警察権を行使する場合があることを、十分わかるように徹底するという配慮が欠けておる意味におきまして、御指摘のとおり、あるいは新聞にも報道しておりますように、これが逆用されまして、あたかも大学というものは大学自治の名において治外法権の場であるがごとく誤解され、そういうことが今日特にクローズアップされて、大学の紛争を混迷におとしいれておるという意味における欠陥がありますことは、なるべくすみやかに補正さるべきだ。通達は必要でございましょうけれども、以上少なくとも申し上げるようなことが十分でなかった点において反省さるべきであり、改廃を必要とするもの、かように受けとめております。
○岡沢委員 きのう国家公安委員長は、本会議における御答弁で、官吏の告発義務、刑事訴訟法二百三十九条二項がほとんど無視されているという問題についてお触れになりました。私も同感でございまして、新しく立法をまつ前に、現行法が厳正に執行されるということが、現在の大学園内の暴力事犯あるいは秩序破壊を回復する最初になすべき政府の責任ではないか、あるいはまた学校当局の責任ではないかというふうに感じます。この二百三十九条二項が、ほとんど大学においては無視されておるという現状について、公安委員長はいかがお考えになるか。法務大臣のあわせてこの問題についての見解を聞きます。
○荒木国務大臣 昨日本会議の緊急質問に対しましてお答え申し上げたとおりに、理解をいたしております。結論を申し上げれば、はなはだ遺憾である。すなわち大学、なかんずく国立大学に関してでありまして、あるいは公立大学に関してでありまして、刑事訴訟法は明らかに管理運営の責任者たる大学が、その構成員たる国家公務員、あるいは地方公務員もあり得るわけでございますが、公務員が、法律が要求しておる、義務づけておることをやらないということそれ自体は、警察課題じゃございませんけれども、大学本来の運営の責任の課題であり、怠慢である。また、指導助言をさるべき文部省と一体をなして国民に責任を果たす意味においての努力が足りていないという意味においては、私は、非難さるべきことであると思います。さらにそれを法の命ずるように適時適切にやってもらっておったりせば、いわば火事にたとえればぼやのうちに消しとめ得たはずだ。病気にたとえれば、早期に発見して大病に至らないで済んだはずだ。それがなされないままに次々にエスカレートしていきまして、たいへんなことになって往生するというところまで行って初めて気づく。気づかないよりはよろしゅうございますけれども、もっと早く法の命ずる義務をそのつど果たしておったりせば、およそ大学というのは警察権とは無縁な本来の姿の、正常な状態に返り得たであろうということを思いますと、残念しごくであり、その怠慢は国民の立場から責めらるべきことである、かように思います。
○岡沢委員 法務大臣の御答弁をいただいておると時間がございません、あと五分でございますので。 いまの国家公安委員長の御意見に私も同感なんでございますけれども、そうすれば、すでに文部大臣を経験され、現在国務大臣でいられる荒木国家公安委員長は、同じ国務大臣である文部大臣に対して、その指導助言の範囲内で、現に各地の大学におきまして、いわゆるいま申しました刑事訴訟法で明文をもって規定されておる官吏の告発義務が全く履行されていない、もちろん百九十七条の捜査の協力義務等も無視されておる、あるいは刑事訴訟法百十四条一項の立ち会いについても、その精神が生かされてない、まず大学当局の姿勢の間違っておることについて、私は、国務大臣として、しかるべき発言なりあるいは御要求なり、措置があってしかるべきではないかというように感ずるわけでございますが、重ねてこの点についての見解を聞きます。
○荒木国務大臣 閣議の内容は原則として部外秘密であるという慣例に従っておるわけでありますが、閣議におきましても、いわば国務大臣という立場でお許しをいただいて、同様のことは発言したことはございます。しかし、それを職掌の違います、いわば守備範囲を逸脱して、文部大臣に私の立場で直接こうしてと申し上げることは、むろん慎むべきものでございます。ここで申し上げることじゃございませんが、友人としては昔から教育問題で一緒になりまして、文教制度調査会のメンバーとして、会長としていまの文部大臣がやっておりますときも、しょっちゅう話もしておるという関係から、プライベートには話し合ったことはむろんございます。しかし、それを具体的にすることにつきましては、それなりの文部省の立場における都合も、当然あり得ることであります。また、現にそれがどういう形でなされたかどうかを、私自身が知る由もありません。仄聞すれば、個々の大学に対しましては、ただいまの御指摘の課題につきましても、指導されつつあるということは聞いております、この実効があがっておるかどうかは別問題でございますけれども。以上をもっていまのお尋ねにお答えさせていただく次第であります。
○岡沢委員 この一問で終わりますけれども、昨日来本会議でも問題になりました、今月十二日の有本警部補の死亡事件に関連して、警察当局としては、この事件の発生の真の原因はどこにあるということを考えておられるか、その真因についての国家公安委員会委員長としての側からの御答弁を求めます。
○荒木国務大臣 これは枚挙にいとまない諸原因があり得ると想像されますが、直接的なことは、本会議でも申し上げました、すなわち、一つには、さっき御質問のありました課題について、大学当局が法の命ずるところに従って大学全体のために、国民のために誠実にその義務を果たすということがないことも、相当の原因になっておるであろう。さらにまた、学生の自治会活動というものはおよそ警察問題とは無関係でございまして、正常な学生運動である限り、警察が何ら関与すべき立場ではない。しかし、実情が、学生の自治会活動の名に隠れて、政治的な意図をもって、革命的な意図をもって、言論だけならば別問題といたしまして、具体的、集団的行動を通じ暴力を伴うところの不法行為を続発せしめておる、その学生運動、自治活動それ自体の脱線ぶり、そのことも、当然学内において学長以下管理運営の責任者が、自治会活動の脱線に対しまして指導助言、たしなめる、アドバイスをするというやり方で脱線しないようにする努力がなさるべきであるにかかわらず、むしろ傍観しておる。たまたまそのことをなせば、ゲバ棒をふるってお礼参りに来るというかっこうにおじおそれまして、なすべきことをなしていないひきょうなことも、原因の一つではなかろうか。そういうことを考えるのでございまして、本来は教育的課題として処理さるべき諸問題に対する適時適切な教育的配慮が欠けておることと、自治会活動それ自体の、外部勢力とも結んだような、あるいは外部勢力に使嗾され、あるいは指図されながら動いておるかとも察せられるような、本来の学生活動とずいぶんかけ離れた要素も、また原因の一つではなかろうか。しかもいわんや、昨日も申し上げましたように、投石すれば、当たれば死ぬかもしれぬ、警察官が死ぬかもしれぬ、学生が死ぬかもしれぬ、教職員も死ぬかもしれぬ、あるいは外部の人のたまたま学内におる者にあたるならば死ぬかもしれない、というほどの凶器と考えられるものを投げつけることを平然としておる。仄聞しますれば、岡山大学の例で、現地の新聞には、その投石等をしました学生とおぼしき者が、有本警部補が死んだのは犬が死んだと同じだという感想を述べたという記事が出ておるやに承知をいたします。さような問題についての認識、意識というものが、およそ最高学府の学生らしからざるところまで堕落しておる。これはそういうふうなことを放置するような教育の場の大学の管理運営の責任者たる立場においての努力の不足の結果がしからしめるということ、重複するようでございますけれども、それらの厳粛さが欠如しておることが、直接的な最大原因であろうと私は理解いたします。
○岡沢委員 まだ岡山大学の問題だけにつきましても質問をしたい点がございますけれども、当初のお約束で本会議前に山田委員の質問時間を残すということでございますので、私は、大学問題については今後も質問を続行させていただくことを約束していただくことにして、本日の質問を終わります。
○高橋委員長 山田太郎君。
○山田(太)委員 まず、最初にお断わりしておきますが、この岡山大学は私の地元の大学であります。したがって、新たに入学した新入生あるいは父兄の方々から、早く岡山大学を正常にしてもらいたいという要望が、数限りなく私のもとにも届いております。そのときにあたりまして、このたびの有本君の死亡事件は、警官である前に人間であるという立場から、人間の生命の尊厳を尊重する立場からいいましても、非常に悲しいできごとであり、なき有本君に哀悼の意を表するにやぶさかではありません。 そこで、先ほどからの公安委員長の答弁は聞いておりますが、大学の正常化について、いま公務員の告発義務等々から関連し、あるいは次官通達等に関連しての答弁がありましたが、同じ国務大臣として、公安委員長のこの正常化に対しての基本的な考え方というものを、まず最初にお伺いしておきたいと思います。
○荒木国務大臣 お尋ねの点は、私は、原則として文部大臣の所管する範囲内においてお答えさるべき課題と思います。大学は、教育研究の場であるといわれます。教職員と学生で構成せられ、国立大学ならば、膨大な国帑をつぎ込みながら本来学校教育法が大学というものに法律上国民にかわっての意思として要望しておる姿が堅持されることが、正常化であると思います。私の公安委員長としての立場から申し上げれば、さっきもお答え申しましたように、本来大学が大学らしく法律で要求されておる望ましき姿にある限りにおいては、警察とは関係ない。警察の立場から、いまのカレントトピックスとして関連が出ておりますのは、そこに暴力をはじめとする不法行為があるからであります。だから、その限度において申し上げれば、対症療法的に正常化というお尋ねに対してお答えをするとするならば、その不法事案をできれば未然に防止したい。未然に防止できなければ、現にある不法状態を排除しなければならない。同時にまた、不法行為を行なった者を逮捕せねばならないことも、当然あり得ると思います。あくまでも法の命ずるところに従って、あるいは国民のための大学という有機体のあるべき姿のために、それを害しておる不法行為を排除する責任を果たすことによって、岡山大学なら岡山大学の教育の場の正常化に役立たせるための責任を果たさねばならぬ。そういう関係に立って正常化のために全力を尽くして御協力申し上ぐべきである、かように思っております。
○山田(太)委員 先ほど大臣のことばの中にもありましたが、この岡大の中に掲示板が出ております。そしてその掲示板の中に「一警官の死の意味は何か」という表題で、「この警官の死は、人間の死としてでなく、生物学的な意味しか持たないのではなかろうか」というような表現をしておるのであります。全く一部の学生とはいいながら、この暴力的な学生のあり方にはあくまでも反対し、これは一般学生のためにも、また一般国民のためにも、当然正常な人間に立ち返らしていかなければいけない。これは理の当然だと思います。 そこで、とうとい人命を失ったこの有本君の死の場合でございますが、新聞の報道するところによりますと、非常に用意が不十分であったということであります。これは大臣でなくてけっこうでございますが、なぜこのような死に至らしめたか、そのときの状況を簡単でけっこうですから、御報告していただきたいと思います。
○荒木国務大臣 当時の具体的な状況につきましては、私がうろ覚えのことを申し上げるよりも、政府委員から正確にお答えしたほうが適切と思いますから、政府委員にお答えさせます。
○川島(広)政府委員 四月十二日の早朝、岡山県警察といたしましては、岡山大学に全学バリケード封鎖をし、籠城をしておりますいわゆる暴力学生の数は、おおむね五、六十名というふうに見込んでおったわけであります。大量の警察官を臨時に編成、動員するわけでございますので、この強制捜査の措置をいたしますまで完全に外部に漏れないで済むということは考えられませんので、相当数の応援学生がこれに加わったであろうということも予想の中に入れ、さらにはまた、当時大学の内部には工事現場等もたくさんございましたし、通常とられておりますような敷き石あるいは側溝のコンクリート等については、かなりこれを事前に破壊して集積しておるという情報も当然見込んで、その上で、全体として八百名でございますが、制服の規制部隊としましては五百五十名の警察官を編成いたしまして、慎重に事柄に当たった次第でございます。ただ、御案内のとおりに、有本警部補が殉職いたしましたのは十二日の午前五時四十八分ごろと推定をいたしておりますが、ちょうど先生御案内の東門の正門前、ここで後ほど検証の結果押収しました石の数を数えましても、三千個に及んでおるわけでございまして、しかもいずれも頭大の大きさでございます。そういうふうな投石が、短時間ではございましたけれども、きわめて激しく行なわれた。さらにはまた、その前面にバリケードが構築されておるというふうなわけでございまして、結果においてとうとい警察官の命を失ったわけでございまして、責任者としていたく責任を痛感しているわけでございますが、事柄としましては、事前に周到な計画のもとに措置したものと考えております。ただ、このような結果が起こりましたことから得ました教訓といたしましては、現場の警備の方法なりあるいはまたいま御指摘の警備の改善の問題等について大きな教訓を得ましたので、十分にこれを今後において生かしてまいりたい。これがなくなりました有本君の冥福を祈る道であろう、こういうふうに考えておる次第でございます。
○山田(太)委員 いまの答弁でございますが、情報が漏れないようにするのはむずかしかろうという答弁もその中にありましたが、情報が漏れるような警備体制、これがまず第一番の欠点ではないか。もう一つは、これは警備の人に聞いたことでありますが、午後二時半ごろからすでに敷石を割ったりあるいは石を運んだり、そういう用意をしておる。当然これが投石されるということは、いままでの東京の各大学やあるいは大阪、京都等の大学の場合においても予想されることであった。それをちゃんと承知しておりながら、装備といえばジュラルミンのわずかなたてをせいぜい五、六枚、あとは自動車のハンドルよりもまだ小さいようななべぶた大の、しかもベニヤ板のようなものを持って、しかもあの暴徒学生の数から比較すると、非常にわずかな数でそれに対して立ち向かわせた。なぜそのときに、これは危険だ、いま無理押しをすべきではないというふうな判断ができなかったか、この点が一つ。 それからもう一つは、警察庁としてもっと事前にそのようなことの連絡やあるいは通達といいますか、そのようなことがなぜできなかったのか。これは結果論ではありますが、とうとい人命を失った立場からいいましても、非常に残念でならないし、この点は警察側としても一端のあるいは大きな責任はあるのではないか。なぜ途中でそれをとめられなかったのか。現場へ行ってそのときを想定してみても、あの状態だったならば非常に危険なときだ、なぜこれを無理押ししたのだろうかということが海やまれてならぬわけですが、その点についてはどう考えられますか。
○川島(広)政府委員 確かにただいま御指摘の数々の点には、私たちといたしましても反省いたさなければならぬ問題をたくさん含んでおるものと思います。当時の状況をもう一度具体的に申し上げたいと存じますが、先生も現場をごらんになられたようでございますが、一個小隊を岡山市道のほうから実は持ってきたわけでございまして、非常に激しく投石が来ましたので、フェンス越えの、金網越えの側面から二個中隊を迂回させまして、実は対処したわけでございます。有本君が所属しておりましたのは第二中隊の第一小隊でございまして、これは迂回のほうに回りました中隊でございます。そこでその中隊は全員がいわゆる東門の正門に対峙いたしまして、そこで準備をいたしました大だては——いま県警は八十三の大だてを保有しておりますが、全体で五百五十名の正規部隊を編成しまして、おおむねそれに案分をいたしたわけでございまして、第二中隊の第一小隊はおそらく七、八つのたてを持っておったと思いますが、それで前面に向かって投石を防ぎながら実は横ばいで部隊の移動をしたわけでございますけれども、たまたま有本警部補は職務が小隊長伝令兼記録係という職務でございましたので、横ばいではなくて、石の飛んでまいりますほうに横に向かって行ったわけで、全体の部隊は正面を向かいながら横ばいをしたわけでございますけれども、有本君は当時携帯無線機で本部と送受信をして状況を報告をしておりました。それで報告を終わりました直後、からだを側位に向けたときに石が当たったわけであります。そういう意味では、確かに御指摘のとおりに部隊の指揮統率の面において、あるいはまたいまお答え申しましたように、個人用の大たてが八十三ございますが、有本君のような職務を遂行いたします場合には、どうしても大たてを持つわけにはまいりませんので、これにつきましては、奨来、伝令兼記録係というふうな職務に従事する者につきましては、別途特殊な個人防具を準備する必要があろう。大たてを持ち、携帯無線機を持ち、小隊の標識等を持って、それから記録板をかかえておるわけでございますので、いってみれば七つ道具を持たなければならない職務でございます。そういう意味でたいへん不幸なことではございましたが、非常に重要なる職務に従事しておった有本君でございまして、記録板の最後を見ますと、五時五十九分という数字が残っております。したがって、本人に石が当たりましたのは、おそらく五時五十九分前後であろうというふうに先ほど推定を申し上げたわけでございますが、いろいろ一々御指摘の点につきましては、私たちといたしても、冒頭に述べましたように、今後十分教訓として反省してまいりたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
○山田(太)委員 私の言いたいことは、その点もよく承知しておりますが、ただとうとい人命を失うに至らしめたその指揮官の不用意さ、そういう点は、当然追及されてもやむを得ない状態じゃないか、そういうことを申し上げたかったのであります。将来再びこういうことのないように、もうすでに日大の事件で一人あったわけですから、再びこういう死に至るようなことのないように、切に要望しておきます。 そこで、次に文部省の方に簡単にお答え願えればけっこうですが、まずこの岡大紛争の成り立ち、これは大きな遠因としては、大学の制度、あるいは教官と学生の間が全然隔絶されたいまの状態、ある学生の語るところによると、ある教授が、私は人格者でもなければ、ただあたりまえの人間ですから、人間を教育するなどということはできませんという発言さえしている。時間がありませんから簡単に申し上げますが、また、学生寮に行ってみましても、ほんとに涙の出るようなたいへんなところに住んでおります。昔の旧兵舎を改造して、しかも倒れないように突っかい棒をやって、その中に一人あるいは二人ずつ押し込めたようなかっこうで入っております。ここに教官と学生とのただマスプロによる隔絶だけでなく、愛情と信頼のない姿がある。このような教官の発言やあるいは学生寮の実態を見たときに、これでほんとうにいまの大学の教育ができるのか、何を文部当局はやっているんだろうか、何を大学当局はやっているんだろうかと、涙する思いで一ぱいでございました。このような信頼と愛情のないいまの学園、このことが一番大きな遠因であろうかと思う。しかし、一番の近因は、昨年の九月十七日の事件でございます。そうしてこのデモ隊の一人の学生が、学内である、あるいは道路であるという論争はありますが、逮捕されたということによって、それが起訴に持っていかれた。それが「八尾君を守る会」という、その大きな動力点の一つになってきておる。したがって、わずかな暴力学生、ほんとうにこれで学生かといえるようなわずかな暴力学生、これはわずか四、五十名。岡大の学生は四千数百名から五千名になんなんとしておる。しかし、現実において、スト権の法律的問題はともかくとして、スト権の確立できるほど多くの一般学生も、そのことについては共鳴してきている。したがって警官の立ち入るということが——これは人間を殺傷したりあるいは不当に監禁したりするようなとき、当然のことでしょうが、一般の多くの学生をもその紛争の中に抱き込んでいく、あるいはその中にかり出されていく大きな要素がここにあると思う。このことについて、文部当局とし、また大学当局にどのような指示を与え、どのようなことをやってきたのか。岡山大学のお知らせというものを全部逐一読んでみても、大学当局も非常に腰がふらふらしている。絶えず態度が変わってきたりしている。文部当局は何をしているのだろうかと言いたくなる。この点について、苦情ばかり申し上げたようではありますが、文部当局としては、この後どのようにやろうとするのか。時間がないからこちらのほうから言いますが、それはただ力でもって押えつけていったのでは、これはエスカレートするおそれは非常にありこそすれ、これによって学園紛争が解決するとは、とうてい思えない。したがって、これが殺人事件云々の法的な根拠はさておいて、当然捜査などということが出てくると思う。しかし、そのときにおいても、文部省として、また警察当局としても、一般市民、一般国民、あるいは一般学生に、また学びたい善良な学生、あるいは新入生に対して、よく周知徹底した上においてこれがなされないと、非常に大混乱のエスカレートした状況が想像されるわけです。またそのことを心配しております。この点について、もう時間がありませんので、文部当局とそれから荒木大臣に御答弁願っておきたいと思います。
○久保田政府委員 山田委員の御指摘のとおり、学内のたいへんな苦心にもかかわらず、一方にそうした反警察的な風潮もございます。また一面、だんだんと、暴徒学生の理不尽な動きに対する抵抗からでありましょうけれども、警察アレルギーといったようなものがかなり解消してきてもおると私ども承知いたしております。岡山の場合、御指摘のとおりたいへんな不幸な事件を越こしておりますだけに、学長も非常にきつく指示をしておられるようです。犯人とおぼしき人もわりあいに早く、しかも本人のほうから自首しておられるような事情にあるように承知いたしております。今度のこの事件を契機に、もう一そう強く警察アレルギーから……。
○山田(太)委員 どう納得させるか。
○久保田政府委員 納得させていく手をやるべきだと承知いたしております。
○荒木国務大臣 学校施設が不十分であるかどうか、それをどうするかという課題は、むろん文部当局の問題ではございますが、御質問を聞き違えておればお許しをいただきますが、そういうところに不満があるからエスカレートするかもしれないという御懸念に立ってのお話もあったかと思いますが、治安当局からの立場で率直に申せば、暴力というものは、理由のいかんを問わず悪である、なすべきでないという立場に立って警察責任を果たさねばならない、かように思います。御懸念のような不満がエスカレートするおそれある点は、本来の教育の課題の範囲内において、エスカレートしないように、大学当局で善処していただきたいという要望を申し上ぐべき課題かと存じます。 そこで、有本警部補の殉職に関します犯罪の捜査は、厳重に継続をいたしております。暴力事犯をはじめ不法行為を、法の命ずるところに従って警察責任を果たす行動をすることによってエスカレートするから、法の命ずるところにも従わないでじっとしておるということは、少なくとも理論的には許されないという厳粛な制度のもとに、議会制民主主義を守っていくための責任を課されたのが、警察である。かような見地に立って最初のことも要望をすると申し上げた意味合いでございまして、今後といえども、暴力をはじめとする不法行為があります限り、警察の責任として当然それを排除することが、岡山大学の正常化に御協力申し上げる課題としてとらえて、全力を尽くしていきたいと思います。原則的には私はそう思います。 ただ、実際問題といたしましては、大学当局の協力なくしては捜索その他警察責任を果たします上にはなはだしく不便であり、効果があがらないということも念頭に置いて実際上は行動すべきことも心得ておるわけでございまして、相なるべくは、先刻の御質問にお答え申し上げましたように、無法は許さないという考え方を教職員も学生も原則として持っていただく、そういう考え方に立った自主的な学園の正常化にベストを尽くしていただきたい。それでもなおかつ暴力学生の不法行為がありますならば、場合によりましては、緊急の場合には要請がなくても警察責任を果たすことによって、学園の秩序維持、正常化のために御協力すべきことも出てくると思います。しかし、繰り返し申し上げます。実際問題としては、大学当局の本来刑事訴訟法が要求するところの義務を果たしていただくことをはじめとして、警察というのは、何もいわゆる不当な権力を大学の場に用もないのに押し込んでいくことは、法律上許されないという権限の範囲、職責の範囲を法で明記しておる。それ以上のことをやることは、断じて許されないものである。主権在民の憲法のもとに、秩序を維持するために、公共の安寧秩序を維持するためにこそ必要だから警察が置かれておるものだ。大学のためにも置かれておるものだ。大学が正常である限り、警察が踏み込んでいくことそれ自体は、権力を背景に不法侵入をしたのと同断でございますから、それ自体が処罰さるべき課題であることはあたりまえのことであるというくらいの理屈は、専門の法律学者もたくさんおるわけであって、大学当局は私がかれこれ申し上げる以上に、厳密な法解釈あるいは法の理解を持っておる方々が管理運営の責任者として、そこに公務員としておるわけですから、その方々が、冷静に本来の大学のあるべき姿を学生ともども語り合いつつ、エスカレートしないように努力をしていただきたい。この努力が足りないがゆえに現実に不法行為があるならば、やむを得ませんから、できれば要請に基づき、要請がなくとも、ほうっておけばさらに大火事になりそうだというときには、警察が責任を果たすために大学内に入ることも、法上当然のことであり、そのことは民主国家においてはあたりまえのことだと理解を持っていただきたい、くれぐれも私はお願いを申し上げまして、責任を果たしていきたい、かように思います。
○山田(太)委員 あくまでも一日も早く正常化し、一般学生も巻き込まれないように、文部当局も、また公安委員長も、その点に配慮されて、この後の努力を要望して、私の質問を終わります。
○高橋委員長 次回は、来たる二十二日午前十時より理事会、理事会散会後委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。 午後二時一分散会