法務委員会 第10号
- 発言数
- 95 件
- 登壇者
- 12 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1969/03/25
会議録
○高橋委員長 これより会議を開きます。 内閣提出、訴訟費用臨時措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。 これより質疑に入ります。質疑の申し出がありますのでこれを許します。大村襄治君。
○大村委員 本法案の内容に入る前に、まず次の諸点についてお伺いいたしたいと思います。 本法の第一条を見ますと、「民事訴訟費用及刑事訴訟費用二関スル特例ハ当分ノ内本法ノ定ムル所ニ依ル」と規定されております。ところが、本法は昭和十九年に制定されておりますので、すでに二十数年を経過しておるのでありますが、この特例を今後もそのまま存置するお考えかどうか、この点をまずお尋ねいたします。
○影山説明員 ただいま御指摘の点でございますが、仰せのように、訴訟費用臨時措置法は、昭和十九年に戦時中の特別臨時法として成立いたしたものでございますが、その後やはり戦後の激しいインフレの時期等がございましたが、依然としてこれを存続させてまいったわけでございます。しかし、もう二十年もたっておりますし、特に執行官に関する規定がこの法律に入っておったのでございますが、これも執行官法という独立の法律に移ることになりまして、内容はただ民事訴訟費用、刑事訴訟費用の額についてのみ引き上げをしているだけの法律となったわけでございます。そこで、もはやこの法律は早急に廃止するのが適当と考えておるわけでございます。ただ、これを廃止いたしました場合に、その方法として、ここに盛られている事項を民事訴訟費用法と刑事訴訟費用法の二つの法律によって訴訟費用の点を規定しようとするものでありますが、何ぶんにも民事訴訟費用法は明治二十三年の法律でございます、もちろん累次の改正はございますが。刑事訴訟費用法は大正十年のたいへん古い法律でございます。そこで、訴訟費用臨時措置法を廃止いたしまして、民事訴訟費用法と刑事訴訟費用法の二本でまいります場合には、単に文語体を口語体に書きかえたり、あるいはかなをかたかなからひらがなに改めたりするにはあまりに古い法律でございまして、種々問題があるわけでございます。そこで法務省といたしましては、最高裁の事務当局とも密接な連絡を保ちまして、現にこの民事訴訟費用法、刑事訴訟費用法の改正に着手しておるところであります。そこで、遠くない機会にこの二つの法案について御審議を仰げるのではないか、かように考えております。
○大村委員 いま御説明があったように、もとになる民事訴訟費用法は、旧憲法のできた明治二十三年から存続しておるわけでございまして、証人の日当あたりは「二円以内」なんて書いてある。まあ法律の博物館みたいな感もするのでありますが、そのように検討はされているということで、その検討はいつ出るのか。また、その検討をする際の問題として、日当とか旅費とかいう、単に金額の点が問題になるのか、そのほかにより根本的な点に改廃を要する点があるのか、その辺もあわせてお尋ねしたいと思います。
○影山説明員 この点は、単に金額の点のみでございませんで、基本的にいろいろな訴訟費用に数えていい費目というものを全部洗ってみておる状態でございます。ただ金額の点だけですと、この臨時措置法にも若干便利な点はございまして、たとえば今回御審議をお願いしております証人日当というようなものですと、民訴、刑訴を通じて引き上げが可能でございますけれども、そうでなく、民事訴訟法、刑事訴訟法について、いま根本的に検討を加えているという状態でございます。
○大村委員 根本的に検討を加えるということでありますので、その点はまた後ほど煮詰まったところでお聞きすることといたしまして、金額の点だけを見てみましても、民事調停法の九条とか、あるいは家事審判法の五条あたり、旅費、日当について「最高裁判所の定める」云々ということで、最高裁判所の規則に譲っておる。それを受けて、民事調停法による申立手数料等規則とか、あるいは家事審判法による申立手数料等規則があって、実情に合うような定めを行なうことができるようになっており、そういう事例もありますので、訴訟費用法の根本的検討をする際に、金額の定め方についてどのような方式によることがいいのか、それは国会の審議を仰ぐという意味におきましては、現行の行き方も一つの行き方であるとは考えますけれども、あまり毎年のように金額だけ変えるというのを出すというのはいかがかと思うのでありますが、その点についての法務省の考え方を、この際ただしておきたいと思うのであります。できましたら、ひとつ次官お願いいたします。
○小澤(太)政府委員 ごもっともな御意見でございまして、元来ならば、民事、刑事両方ともに費用の改正をやるべき筋合いのものだと思います。ですけれども、先ほど申し上げましたような事情で、たとえば訴訟費用の範囲をどこに求めるかという問題とか、あるいはこれは問題になるかどうかわかりませんが、弁護士強制の問題などもございますし、あるいはまた印紙によって訴訟費用を納めておりますその法律との関係があるとか、いろいろございまして、検討に時間を要しておるというのが実情でございます。しかし、これはいつまでも臨時措置で、しかも毎年毎年物価や賃金の指数に応じてスライドさせていくということも芸のないことでありますから、基本的な問題としては、できるだけ早く両基本の法律の改正をしたい、こういうことで検討を進めておるという実情でございます。それから、これの現在の手数料に準じてきめられておるものもありますし、あるいはこれを準用するのもあります。あるいは最高裁できめておりますのも、おおむねこれを基準としてきめておるのであります。そういうのがありまして、やはりこれが中心的なものさしになる、こういうふうな状態でございますから、これまたそういう点もお話しのとおり考慮に入れて将来には改正すべきものだ、かように考えておる次第でございます。
○大村委員 それでは内容に入ります。本法案の提案理由を見ますと、日当の最高額をそれぞれ百円ずつ上げる、その理由は「最近における賃金及び物価の状況等を考慮いたしまして、」云々と説明されておるのでありますが、昨年に引き続いて引き上げをはかることとした理由、また引き上げ額をそれぞれ百円にした理由などについて、少しく詳しく説明していただきたいと思います。
○影山説明員 現在、証人の日当について千二百円でお願いしておりますのを千三百円に上げる、その計算上の根拠とでもいうものを申し上げますと、これは前回の千円を千二百円に改定していただいたときと同じ方式をとりました。すなわち、賃金と物価の各上昇率を過去三年にわたりまして平均してみまして、それによって出た率を現行の千二百円に乗ずるという方式をとったわけでございます。それによりますと、証人の日当の場合には、いまの上昇率は、証人の日当及び鑑定人の日当を通じまして七・三%ほどになります。これを千二百円に乗じたわけでございますが、それによりますと、証人については千二百八十八円ということになり、それから鑑定人の日当についてこれを見ますと、千七十三円余ばかりに相なりますので、これを数字をまるめまして、証人については千三百円、それから鑑定人については千百円というふうにいたしたわけでございます。
○大村委員 最近の証人と鑑定人の金額の改定の推移を見ますると、四十一年で千円と七百円、四十三年で千二百円と千円、今度の改正で千三百円と千百円、そういうふうに見受けられるのでありますが、前回の改定と同じような理由で、賃金と物価の上昇率七・三%ですか、そういうものを用いたということで、これが大体百円だ、こういうようにやられたというふうに解してよろしいわけですか。
○影山説明員 はい。
○大村委員 それでは昨年の改正で千円から千二百円、七百円から千円に増額されたのでありますが、これは最高額だということでありますので、昨年の改正によって日当の最高額を支給した件数が、実績として全体でどのくらいあるか、また平均の支出額は、それぞれの最高額に対しましてどの程度になっておるか、実績についての状況を説明されたいのであります。
○佐藤最高裁判所長官代理者 実施ないし運用の問題の御質問でございますので、裁判所の側からお答え申し上げます。平均支給額のほうから先に申し上げます。これは昨年改定後の、つまり四十三年におきまする実績がまだ資料が整っておりませんので、四十二年のしかございませんではなはだ恐縮でありますが、それで申し上げさせていただきたいと思います。四十二年のときは、予算の単価が、証人につきましては五百五十円でございました。証人の予算単価五百五十円のときの証人の平均の支給額を申し上げますと五百六十円、それから鑑定人等の予算単価七百円であった当時でございますが、これの平均支給額を見ますと、鑑定人につきましては約六百九十円、通翻訳人等につきましては約七百円というような支給実績でございます。昨年の改定後の資料はまだできておりませんので、恐縮でございましたが、四十二年のを申し上げたわけでございます。 それから日当の最高額支給の状況というお話でございますが、四十三年、昨年増額していただきました後、全国的な資料がまだ整いませんので、とりあえず東京地方裁判所の実情にのっとって申し上げますと、最高支給の証人につきましては、約五%でございます。それから鑑定人につきましては約二五%、このくらいの割合の方々が、それぞれ最高額の支給を受けておる、こういう実情でございます。
○大村委員 ただいまの裁判所の資料によりますと、最高が証人で五%、鑑定人は二五%という——しろうと考えでは、この法律の最高限もあまり高くないと思うのであります。しかも最高限の支給率が非常に少ないという、少し意外な感じもしたわけでございます。大体忙しい人を相当長い時間引っぱっておいて、しかも最高額よりも低いということで、その点はたしてそれでいいのかというような感じもするわけでございますが、なお続いて伺います。 民事訴訟費用法第九条、刑事訴訟費用法の第二条の規定を見ますと「証人ノ日当ハ出頭又ハ取調一度ニ付キ」というように規定されておりますが、実際問題として、証人の尋問に要する時間もまちまちである。そうしますると、この法律の規定に基づいて実施する場合に、支給についての何らかの基準が必要ではないかと考えるのでありますが、実情ははたしてどうであるか。また、遠隔地から呼び出される証人の場合は、これは別に旅費は出るのでありましょうが、結局証人として出頭するに要する時間などを考慮すると、今回の改正案の最高額の引き上げによりましても不十分であるが、というような点も予想されるのでありますが、遠隔地の証人等に対しては、現在の制度として何か考慮されている点があるのかどうか、こういった実施の基準なり実施の状況についてお気づきの点があれば、お話を願いたいと思うのです。
○佐藤最高裁判所長官代理者 まことに御指摘のとおりでございます。いまの御質問の趣旨は、旅行の間の日当でございますが、それがないということはどうか、こういう御質問と承ったわけでございますが、それはいわゆる旅行日当というものは、現在の制度ではない。これは一つの難点であろうかと思います。それからそれはそれといたしまして、しからば遠方から来た証人についてはどのくらい支給しているか、こういう御質問になるわけでございますが、私どもは、この額の支給にあたりましては、もちろん法定額の範囲内において各裁判所できめるところではございまするが、それをある程度統一的な運用というものが好ましいということがございまするので、まず、尋問の時間というものを基準の一つにいたしておるわけでございます。尋問時間というものを基本的な基準にいたしまして、さらに待ち合わせ時間、その他それぞれの地方の状況に応じて実情に合った支給の基準というものをまた各庁において定めて運用しておるということで、たとえば先ほどの御質問の中に、尋問の時間はわずかでありましても、裁判所にそもそも来るためにバスの待ち合わせ時間が非常に長いというようなことになりまして、結局その当該証人の拘束時間というものが長くなってくるならば、それはただ尋問時間だけではいけないのではないかということで、それは尋問時間にプラスしてそういう事情を勘案してきめていただく、こういうことにいたしておるわけでございます。
○大村委員 事情がまちまちですから、個々の場合に即応して額をきめなきゃいかぬというお話はよくわかるのでありますが、何かその統一した基準か、そういったものを各裁判所にそれを参考にしてやるような扱いをされているのかどうか、その点お尋ねしたいのです。
○佐藤最高裁判所長官代理者 いたしております。毎年、昨年もそうでございましたが、法律が出ますと、それを各庁に知らせると同時に、予算執行上適正な執行ということもありますし、それから支給の便宜に資するという観点からも、一応の基準というものをこしらえまして、各庁に御参考にお示ししているわけでございます。それによりますと、先ほど申し上げましたように、まず証人の尋問に要した時間というものをきめます。二時間以内の場合には四百円以上六百円以内、二時間をこえ四時間以内の場合には六百円をこえ九百円以内、四時間をこえた場合には九百円をこえ千二百円以内、まずこういう基準を設定いたしまして、さらに出頭に要した時間、尋問の開始がおくれた場合の待ち合わせの時間、それから当該証人がかりに一時間にしろ尋問を受けるということのためにその日の全収入が失われてくるというような、たとえば失業対策労務者、かような方を例にとって考えますと、かりに三十分あるいは一時間の尋問でありましても、裁判所に出てくるためにその日の収入を失うというような状況になるようなお気の毒な方については、この基準にかかわらず、そういうような事情を考慮いたしまして、現在のワク内におきましてカバーできるように、こういうふうに各庁にお知らせいたしておるわけでございます。
○大村委員 基準の考え方はわかったのでありますが、二時間、四時間ずっと刻んで段階を示していただいていることはわかったのでありますが、実際問題として、何時に裁判所に来い、それで行きましても、審問の始まる待ち時間もあるのですが、そういったものは、一体いまの刻みの時間の中に含まれるのかどうか。要するに、出頭時間のほかに、着いてからのあれもあると思うのでありますが、その点はどうですか。
○佐藤最高裁判所長官代理者 先ほど申し上げましたように、まず尋問時間というものを一応基準にいたしますが、さらにそれに加え、いろいろな勘案を必要といたしまして、尋問がおくれた、そういう場合の待ち合わせの時間というものも考慮する、こういうことでございます。
○大村委員 最後に、法務省にお尋ねいたします。この証人と鑑定人で金額に昔から格差がある。しろうと考えに見ますと、鑑定人は専門知識があって証人より安いのはおかしいのではないかという素朴な疑問があるのでありますが、今度の改正案も、その差が残っている。どういうお考えであるか、お尋ねいたします。
○影山説明員 御指摘のとおり、証人と鑑定人の日当額は、現在のところ証人のほうが高くきめられております。これは証人と鑑定人の日当の本質をどう解するかという問題であろうかと思われます。現在のところでは、証人につきましても、鑑定人につきましても、その日当の性質としては、裁判所に呼ばれたために働けなかった、つまり何か利益を失っている。それを俗に逸失利益などと申しておりますが、そういう利益の損失と、それから出頭時に要する弁当、湯茶代その他の雑費と、その二つで日当というものは構成されるのだろうというふうに考えられます。ただ、鑑定人と証人の場合に、いまの二つの要素を両方並行的に考えるか、あるいは鑑定人については別に鑑定料というものが出るのが普通でございますので、そこで主として鑑定人の場合は出頭雑費のほうに重点を置いて考えるべきではなかろうか、そういうふうに若干のニュアンスの差がございますので、前回の改正を踏襲いたしまして、今度の改正においても二百円の差を維持したわけでございます。
○大村委員 終わります。
○高橋委員長 中谷鉄也君。
○中谷委員 法案について大村委員のほうからもお尋ねがありましたが、訴訟費用の証人等の日当を幾ら支給するかということの判断基準ですね、どういうもので判断されているのか、その点をお尋ねいたしたいと思います。
○影山説明員 これは謝金と同じように、いろいろな賃金の指数がありますので……。
○中谷委員 ちょっと違います。質問が不明確でした。幾ら以下、こうなっていますね。その幾ら以下で、具体的に証人に幾ら支給するか、最高額以内で幾ら支給するかということは、どういう点を基準にしておられますか、こういう質問です。
○影山説明員 それではいまの質問は支出の実情というふうに考えられますので、最高裁判所のほうからお答え願うことにいたします。
○佐藤最高裁判所長官代理者 ただいまの御質問は、支出の実情でよろしいのでございましょうか。
○中谷委員 法案は、最高額を「千二百円以内」を「千三百円以内」に、「千円以内」を「千百円以内」にと、こう相なっておりますね。そこで法案によりますと、現行法では千二百円までは支給できるということはあるけれども、千二百円以内なら、どんな場合に千二百円を支給し、どんな場合に千円を支給し、どんな場合に八百円にするかという、その基準でございますね。それは一体どういうことに相なっているのでしょうか。
○佐藤最高裁判所長官代理者 わかりました。法律の許された範囲内において、いかにこれを基準を設けて支給するかという御質問に相なると思います。先ほども申し上げましたように、まず尋問の時間、それは拘束されているという意味の時間でもあるわけでございますが、尋問の時間の長短ということをまず一つ設けます。それからそのほかに先ほど申し上げましたように、尋問時間ということにかかわらず、待ち時間というものが多くなったという場合もございますので、そういう待ち時間というものも考えるわけでございます。それからさらには、尋問の時間が短くても、地方等によりましては、定期的なバス等がひんぱんでないような場合には、そもそも裁判所に出てくるために相当時間的にかかるということがあり得るわけでございまするから、そういうような場所におきましては特にそういうような状況を考慮するということ、大体的にはそういうようなことでございますが、さらには、当該証人の職業と申しますか、地位と申しますか、そういうものにつきまして、かりに三十分であると申しましても、三十分尋問を受けるために裁判所に出てきた、そういうために一日の収入を失ってしまうというような方がいるといたしますれば、それはこの日当の範囲内においてできる限りそういう逸失利益を補償しようというような考えで、そういうような場合には支給にあたっては特に考慮していただきたいということを、私どもは各庁に申し上げておるわけでございます。
○中谷委員 そこで、尋問時間の長短が当然日当の額の算定の一つの基準になるということでございますが、そういたしますと、たとえば尋問時間について何時間ぐらいであれば、もう当然その余の条件は配慮するまでもなしに最高額を支給すべきだというふうなことはあるのでしょうか。そうすると、尋問時間の長短、そういうことが基準になるということはわかりましたけれども、具体的にもう少し、では一つずつ御答弁をいただきたいと思います。まず、時間の長短から……。
○佐藤最高裁判所長官代理者 時間の長短——先ほど申し上げたとおり、中身はさておきまして、尋問の時間ということが、まずまいるわけでございます。
○中谷委員 そうじゃないのです。たとえば、きょうは証人に呼び出されて半日尋問されたというようなことはよくありますね。たとえば、そうすると、そういうふうに証人として一生に一ぺんあるかないかということで半日も尋問されたということであれば、もうその余の条件を配慮するまでもなしに最高額を支給するということになっているのかどうか。だとするならば、たとえば裁判所では三十分の尋問ならばとか、総合的に判断されているようですけれども、時間については、この程度の時間のときには最高額以内のうちでこの程度支給はしなければいけませんよというような、そういう基準についての配慮の取りきめ、通達、会同等における話し合い、そういうものはあるのでしょうか、こういう質問なんです。
○佐藤最高裁判所長官代理者 おそらくいまの御質問は、たとえば二時間の尋問を受けたという場合に、最高限の現在の千二百円を支給できるのか、こういうことでしょう。
○中谷委員 違います。率直に言えば、裁判官の裁量で幾らでも支給できるわけですね。十分間の尋問であっても、最高額支給できます。ただしかし、その裁量は、この程度の時間の場合にはもう最高額は支給しなければなりませんよ、というふうなことであろうかとも私は思うのです。尋問時間がかりに長短のうちで、十分であっても、最高額を支給されても別にそれは私はいいと思うのです。ただしかし、各裁判所が全国にあるわけですから、要するに時間の長短が一つの基準になっているとすれば、具体的にこの程度の尋問をしたときには、もう他の条件を配慮するまでもなしに最高額を支給しなさいよというふうな、時間の長短を基準にされる場合の、その時間の長さ、これ以上の場合はもう最高額の支給だというふうな一つのめどというものがあるのではないのですか、こういう質問なんです。
○佐藤最高裁判所長官代理者 先ほど申し上げたとおりでございまして、通達で各庁にお知らせ申し上げました一応の参考の基準と申しまするのは、二時間以内の場合が四百円以上六百円以内、二時間をこえ四時間以内の場合が六百円をこえ九百円以内、四時間をこえました場合は九百円をこえ千二百円以内、かように時間で刻んではございます。ただ、証言の難易というようなことで、そこのところ、なおかげんできるか、こういう御質問かなと思ったのでございますが、そういうことでよろしゅうございましょうか。
○中谷委員 そこで、いまの基準なんですけれども、証人として二時間尋問を受けるということは、証言がそれほどむずかしい証言ではないとしても、たいへんなことだと思うのです。たいてい普通の証人といえば、三十分程度で終わってしまうことが多いのではないでしょうか。そういたしますと、いまの一つの基準の立て方は、非常に証人の日当についてはきびしい立て方、要するに低く押えた基準のように思われます。そういうふうな基準というものは、今後とも従来どおり維持していかれるのかどうか、この点が一点。 実際の実務上は、現場の第一線の裁判官は、そういう基準というものがかなり何といいますか、低いというふうにお感じになっているのではないかと思う。そうすると、具体的にそういう最高裁判所の一応の通達が、事実上私は通達だからといってそう守られなくても、この種の通達であればやむを得ないと思うのですが、事実上守られていないのではないかと思いますが、これはいかがでしょうか。
○佐藤最高裁判所長官代理者 御質問の趣旨がわかったのでございますが、先ほどちょっと通達の御説明を申し上げるときに落としてしまいましたが、待ち合わせ時間、尋問時間、その他情状の証人であるかどうかということも、額決定にあたって考慮していただきたいということは、申し上げているわけでございます。ですから、先ほどお話のございましたように、わずか三十分でも、情状の証人と犯罪事実についての証人とはまた違うということもあろうかと思いますので、そういう点は、通達におきましても触れているわけでございます。 そこで、御質問は、一体この日当額決定にあたってはどういう観点から考えたらいいのかということに帰着する御質問と了解したのでございますが、これはまあ証人の日当の本質は何ぞやということにもからまる問題かと思います。諸外国の実情は詳しくは存じませんのですが、おもな国では、やはり拘束時間、尋問時間というようなものを基準にいたしておりまして、いわゆる御苦労さまというような気持ちの込もった額というようなことについては、必ずしも配慮していないようにも思われます。問題は、証人の日当の性質が何かというところから実は出てくるわけで、従前の国会におかれましてもこの点はかなり論議されたところなのでございまするが、証人の日当につきましては、報酬等を請求できる立場の鑑定人、国選弁護人等の日当と、同じ日当ということばを使いましても、そこは区別して考えなければいけないのではなかろうかというような意見が、従前ございます。そこで、特に出頭雑費のほかに、いわゆる逸失利益というようなものを込めた日当の性質というものを考えていくべきではなかろうかということになっていると了解しているわけでございます。 この額が、現場の裁判官が受け取るのを相当と考えるところの額よりも低いのではないか、先ほどの御質問でございますが、現場の裁判官といたしましては、あるいはこれは少し安いじゃないかというふうにお考えの場合もあると思います。つまりこれだけ証言して、わざわざ裁判所に出向いて証言をしてくれて裁判に協力してくれたのに、それに報いる日当の額としては低きに失するだろうというふうなお考えも、これは否定できないだろうと思うのでございます。それは結局全体的な証人の額を一部分だけ、今後も努力して最高限を引き上げていくということの問題であると、私は考えているわけでございます。
○中谷委員 もう一度お尋ねしますけれども、要するに、こういうことをお聞きしたわけですよね。二時間までは四百円から六百円だという基準をおきめになっておられますけれども、私は、どうもそういうきめ方でいいのかどうか、疑問があります。そこで実際の現場の第一線の裁判官は、二時間以内四百円から六百円というような基準を、実際どの程度そういうふうな基準を守っておられるかどうか、私はちょっと守りにくいんだと思うので、その実態とのズレがあればお答えいただきたい、こういう御質問だったので、そういう資料がありますかどうか、まず…。
○佐藤最高裁判所長官代理者 具体的な個々的な資料は、実はないのでございます。昨年増額されました後の状況として、東京地裁の刑事の最高額支給の割合というものを五%と申し上げた程度でございます。
○中谷委員 そうすると、もう一度お尋ねしますけれども、証人尋問に要した時間、それから待ち時間、交通の便、不便等との関係における支給額を証するような資料というものは、ないということになるわけですね。
○佐藤最高裁判所長官代理者 ごく最近のところの資料はございません。従前調査いたしましたものは、尋問の時間がどのくらいであるか、一般に証人の所要の尋問時間はどのくらいであるか、あるいは待ち合わせ時間がどのくらいであるかというものは、やや古くなるのでございまするが、ございまするが、いまお尋ねのような趣旨に沿って整った資料というものは、現在ございません。
○中谷委員 そうすると、私が聞いているのは、待ち合わせ時間と尋問時間の長短の資料はある。従前そういう資料はある。しかし、その資料と日当の支給額との結びつきを推定できるような資料は、従前資料としてでもあるのですか。
○佐藤最高裁判所長官代理者 大体全国的なレベルで見ますると、一致しております。ただ先ほど東京の例を申し上げまして、証人日当の最高額支給の割合が約五%と申し上げました。これは全国的な平均よりも高いようでございます。これはなぜ高いか、こういうことでございますが、特に困難な事件が多いということ、それから物価等も高い大都会であるというような諸要素が勘案されているのであろうと推測している程度でございまして、御質問のような趣旨に沿ったしっかりした資料というのは、実はまだつくっておらない次第でございます。
○中谷委員 じゃ、私、全体としての質問をしておきたいと思いますけれども、拘束時間で日当の何千円以内ということをきめることが、先ほど局長の御答弁のありました逸失利益という点からいって、それほど意味があるのかどうだろうか。たとえば大工さんとか左官屋さんとかいう職人さん、それがことに自分が個人的に働いているという人ではなしに、どこかの企業に属してそういう職種で働いているという人だと、朝出勤しなければその日一日仕事ができないということだとすると、証人に呼び出されたいわゆる拘束時間がたとえ十分であろうが一時間であろうが、その日一日働けない。そうすると、最近和歌山などの関係でいいますと、万博の影響を受けて大工さんの手間賃が三千五百円、来年、七〇年になると五千円から七千円になるのではないかということまでいわれている。こんなことで、一体この訴訟費用の日当などというものが実情に合っておるのかどうか。なお、拘束時間でそういう基準を設けることが一体適当なのかどうか、この点いかがでしょうか。
○佐藤最高裁判所長官代理者 逸失利益の補償という面から考えますと、確かに御質問のような問題があるわけでございますが、これは、やはりそこは日当であるということで、ある程度定型的に額というものは考えざるを得ないと思うのでございまして、外国の例等も参考にして見ますると、それはやはり損失の補償であるというふうな考えに基づいて英国でもアメリカでもできているようでございますが、ただ、その場合でもなおかつ、たとえばアメリカにおきましては四ドルの定額というようなことになっておりますし、イギリスにおきましては尋問時間というものでそこを区別しているというようなことで、そこはやはり日当ということからきまして、ある程度の額というものでいかざるを得ないのではなかろうか、こういうふうに思うのでございます。
○中谷委員 実際に証人として出頭してきて、日当は要りませんという人がかなりおりますが、これは何%くらいあるでしょうか。何かその理由の一つに、とにかく非常に低額なので、とてもそんなものはもらって帰る気にならぬ、証人として呼び出されたほうの精神的な負担がずいぶんたいへんなので、そのことがそういう日当として評価されたことに何かどうも気持ちがそぐわないということで、放棄される人がかなりおりますが、何%くらいありますか。
○佐藤最高裁判所長官代理者 全国的に見ますと、証人の中の五〇%ということでございまして、取り調べられた証人の数というのは、相当あるわけでございます。
○中谷委員 五〇%とおっしゃったのですが、そうすると、証人として取り調べられた証人で、当然日当請求ができるという証人で、そのうちの二人に一人というものが放棄していることになるのですか。五〇%となると、そうなんでしょうかね。
○佐藤最高裁判所長官代理者 刑事裁判のほうで申し上げたのでございまするが、刑事裁判のほうにおきましては、五〇%でございます。これは知らないためということではなく、召喚状にももちろん請求権があると書いてございますし、それから出頭されました場合には、必ず請求されるかどうかということは、経理のほうから言っているわけでございます。
○中谷委員 民事局長にお尋ねいたしますが、最高裁の民事局長さんのほうはどうなんでしょうか。その放棄の関係の統計です。
○矢口最高裁判所長官代理者 その関係の統計は、ちょっとございませんので、はっきりいたしかねます。
○中谷委員 調査部長さんにお尋ねいたしますが、その五〇%というのは——一生懸命になって訴訟費用の増額の法案を審議しているわけですけれども、もしそうだとすると、二人に一人放棄だということになると、これはかなり放棄率は高いですね。その原因は、一体どこにあるというふうにお考えでしょうか。
○影山説明員 これはいろいろ理由があると思われます。たとえば、非常に時間が短くて額が非常に少ないということもありましょうし、それから証人として、ことに民事関係などに出てまいりますのは、当事者と非常な深い関係があるものでございますから、そういう点で証人日当を、勝てば相手方から取れるのですけれども、当事者との関係から見て放棄するという人が、私ども実際に見ておりますと、かなり多いようでございます。
○中谷委員 この法案についての関連の質問でありますので、この程度にしておきますが、部長さんのほうの御方針といいますか、考え方ですが、こういう放棄が多いということは、それはそういう成り行きにまかせるということ——これは裁判所のことだから、とにかく実態は調査することがあっても、成り行きにまかせるということですか。 それと、最高裁のほうにひとつ御答弁をいただきたいと思いますが、一体原因はどこにあるとお考えになりますか。それと、そういうふうな日当放棄ということの原因の一つに、日当額が低い。だから、もうとにかくもらってもむしろしかたがないというような気持ちが、かなり——何か証人の日当をもらえますよと裁判長が言ったときの証人の態度などからわれわれも感ずる場合がありますが、そういうことだとすると、われわれが審議している法案の日当額の最高額というのは、非常に実情に沿わないものではないかという感じがいたしますが、この点いかがでしょうか。
○影山説明員 これを成り行きにまかせるというつもりは、決してございません。裁判所等からもいろいろ実情の統計等もいただきまして、将来十分検討したいと思っております。
○佐藤最高裁判所長官代理者 刑事の関係で申しますと、いわゆる情状証人というのが、刑事の関係の証人の中では六割を占めております。このいわゆる情状証人という方々は、被告の側の証人が多いわけでございまして、被告の利益のために出て来られるというような関係で、あえて日当を請求されないというのが、相当多いわけでございます。残りはどういう振り分けになるかと申しますと、被害者、目撃者、捜査官、その他、かようなことになっております。刑事のほうで申しますと、情状証人が非常に多いという事情があるわけでございます。
○中谷委員 訴訟費用のうちの日当等が、若干ではありますけれども実情に沿うように改正されたということについては、いいことだと思うのです。ただ、そういたしますと、やはり訴訟救助と、それから法律扶助の問題というのが出てくると思うわけです。ことに民事関係については、そういうふうな費用というのが当事者の負担になりますから……。 そこで私は、次のようなことを人権擁護局長さんにお尋ねをいたしたいと思います。法律扶助制度について、むずかしい、そして詳しいことは、この法案の審議に関しての関連質問ですから、お尋ねするつもりはありませんが、たしか日弁連の会長の水野さんなども非常に努力をされて、法律扶助の制度が確立されまして、もうすでに定着をいたしました。若干ではございまするけれども、その予算等についてもふえてきております。そういうふうな中で私がお尋ねをいたしたいのは、法律扶助協会の協力団体というのは、日本弁護士連合会、各弁護士会のほかに、自由人権協会であるとか、新聞社であるとかというものが入っておりますけれども、地方公共団体も、その財団法人法律扶助協会の協力団体として明記されておりますが、これは念のためにお尋ねをいたしたいと思います。
○上田(明)政府委員 仰せのとおりであります。
○中谷委員 そこで、法律扶助の考え方でございまするけれども、たとえば昭和四十一年度においては、扶助申し込み件数が三千九百九十件で、扶助決定件数が千七百七件——そのことをお尋ねするのではございません、というふうなことで、先ほど申しましたように定着をいたしてきているわけですから、具体的な事案でありまするけれども、富山のイタイイタイ病というたいへん残酷な、たいへん深刻な病気があります。厚生省においても、この問題についてはアプローチしているようでありまするけれども、かりに次のようなことをお尋ねをいたします。法律扶助協会の扶助申請にあたっては、従来と違って最近では、法律扶助協会の、要するに対応する各地方の弁護士会がありますが、どの弁護士さんにこの事件は代理人としてやってもらいたいというふうな、そういう扶助申請のしかたというのが、かなり出てきておると思うのです。そのことは、実務的に法律扶助協会のほうではそれを受けて、特にそういう指名があったんだからということで、会員である弁護士会の指名された弁護士がその事件の受認をするかどうかについての検討を始めるというふうなことに相なっているようでありまするけれども、そういうことは、もちろん法律扶助協会の制度の運営の一つの進歩として評価しておられるわけでございますね。
○上田(明)政府委員 法律扶助の申請がございますと、法律扶助協会のほうでは、その当該地の弁護士会に連絡いたしまして、適当な弁護士を紹介してほしい、こういうことを言うわけでありますが、その際、申請人のほうから弁護士を特定してやってくれということを言う権利自体はございませんけれども、事情としてそういうことは申し上げることができます。そうしますと、弁護士会のほうでは、なるべくそういうふうに申請人の希望する弁護士を選任しておるのが、現状のようであります。
○中谷委員 この財団法人法律扶助協会については、扶助協会の寄付行為がすでに明定されておりまするけれども、「本協会は、法律上の扶助を要する者の正義を確保し、その権利を擁護することを目的とする。」とあり、その第五条には「前条の目的を達成するため左の事業を行なう。」ということで一、二、三の各号の事業が規定されておりますが、そうすると、すでにどの弁護士にやってもらいたいということについての扶助申し込みは許されておる、そういうことになっておる。そうすると、訴訟費用だけどんどん上がっていって、そういうふうな実際に当事者主義の原則だというようなことがいわれておるけれども、力があまり違い過ぎるというふうな場合が、最近の公害裁判で非常に多いと私は思うのですが、その場合に、協力団体である地方公共団体が、この事件について——たとえば富山のイタイイタイ病の事件についてひとつ法律扶助協会としては力を入れてやってほしいということで、かりにその法律扶助協会にある町が百万円、この市が二百万円という金の寄付をするということは、そのことは別に法律扶助協会の側からいいまして——寄付行為であるとか、支部細則であるとか、地区協議会規則だとか、扶助協会取り扱い規則、受認準則、あらゆるとにかく扶助事件に関する規則等を私は調べてきましたけれども、そのことは何ら法律扶助協会自身において拒むべき法律上の根拠はないし、そのことはむしろ私はけっこうだと思いますけれども、本質は、法律問題として、法律扶助協会が各地方公共団体からお金を受けることは、何らこの法律扶助協会の寄付行為に抵触するものでないと思いますけれども、いかがでしょうか。
○上田(明)政府委員 現在では、地方公共団体から事業費として約一千万円の寄付を受けております。したがいまして、私の知っている限りでは、そういう場合に寄付行為を直接積極的に禁止する規定はないと記憶しております。
○中谷委員 自治省にお尋ねいたします。参議院の予算委員会で、富山の婦中町の問題に関して、自治省の御見解が富山県の知事の見解と違ったの違わぬのというふうなことで新聞に報道されました。そこであのケースというのは、要するに弱者であるところのイタイイタイ病の患者あるいはその遺族である原告の諸君と、そして強者であるところの企業者との間の訴訟について、婦中町がその対策協議会か何かにお金を補助したということなのです。私は、このケースについてきょうお尋ねするつもりはない。あらゆる町が金を出しやすいようにしたらいいと思う。それならいま言ったように、どの事件、それはという事件を指定しまして、自治省等についても御関心をお持ちいただいている財団法人法律扶助協会に寄付をするということは、自治法の規定に何ら触れるものではない。法律扶助の精神にも沿うものだ。従来すでに地方公共団体が寄付しているわけですが、この点について、簡単に法律問題としてお答えいただきたい。
○森説明員 御存じのとおり、地方自治法二百三十二条の二に「普通地方公共団体は、その公益上必要がある場合においては、寄付又は補助をすることができる。」この条文にいま具体に言われました事件が該当するかどうかということであろうと思います。 そこで、参議院の予算委員会で御質問になった点は、中谷先生言われましたように、この法律扶助協会そのものではなく、対策協議会でございましたので、これは法制局の見解もそのとおりでございますが、一般的にはこの公益上の事由に該当しないのではないか、このように私のほうの大臣からも御答弁申し上げた次第でございます。 そこで、実は私、法律扶助協会ということについてまだ十分知識を持っておりませんので、なおよく検討をいたしますが、弱者といいますか、そういう者について、一般的に法律扶助協会が公益上の見地から適当とされたものでもあり、そういう活動がより活発に行なわれるために、一般論として地方公共団体が大ものといいますか、そういう寄付なり補助金なりを出すということをこの条項によって禁止しているとは思えない点もございます。しかしながら、さらに一応御質問で具体的に言われましたような事件になってきた場合に、はたしてそういう意味であるいは特定の補助行為についてすでに確定しているこの訴訟費用をどうこうするということが、完全に密接に連関しておるときにどうなるかということについては、なおちょっと検討さしていただきたい、こう思います。
○中谷委員 法律問題ですから、別にそうむずかしい問題ではないと思います。財団法人法律扶助協会というものがある。従前、法律扶助協会については、地方公共団体はその協力団体として明記されている。すでにもう金はずっと従来から寄付しておられる。そして法律扶助協会の活動がだんだん進歩していったために、最近ではどの弁護士にやってもらいたいということも、扶助申請者は言うことができるようになった。そしてこの事件についてということで、法律扶助協会自体の問題として、それを拒むべき法律上の規定はどこにも見当たらない。そうすると、地方公共団体は、その法律扶助協会に対して、この事件についてということで、そのまま——財団法人というのは、公益上のものでございますね、そこへ寄付するということは、法律上問題はないと思われる。地方自治法上も問題はないと思われる。しかし、あるいはあるかもしれないというふうなお答えなのか、どうもよくわからないというお答えなのか、全然私は問題はないと思います。公益的な団体に対しての寄付なんだから、まさに地方自治法の予想している条文にもぴったり当たると思うのですけれども、もしかりに問題があるとすれば、どの点でしょうか。問題がないと思うけれども、ないという積極理由から述べていただいて、あるとすればこの点だと思いますが、ということを若干言っていただきたいと思います。
○森説明員 非常に厳密な法律解釈になりますと、実は公益というような概念は非常にあいまいな概念でございますので、ここではっきりお答えすることはむずかしいかと思いますが、ただいま申し上げましたように、一つの前提として、たとえばある原告あるいは原告団がいて、その人の訴訟費用を直接ストレートに地方団体が支出するとするならば、おそらくこれは何人も公益に該当しないのじゃないかと判断されると思うのであります。ところが、それと同じ実態になることを公益法人である法律扶助協会を通してやったらどうなんだ、こういうふうに問題を簡単に省略してしまいますと、そうすると、前段の前提からいうとおかしくなってきやしないか。しかし、一般的に法律扶助協会というものが公益法人としてあって、そこに一般的な活動のために地方団体がしかも応分の寄付、補助をすることについては、あるいは問題はなかろう。これはもちろん問題がないから出しておるのだろうと思います。しかしながら、その先のところで、前段に言ったようなこととどの程度結びつくのかというようなことが、補助金を出すときにさらに——補助金でございますから使途をいろいろ調べて出すはずでございますから、そういう点について問題があるかと思います。
○中谷委員 関連ですけれども、もう少し詰めます。これは、予算委員会で問題になった補助金じゃないわけですよ。結局寄付金になりますね。そうすると、法律扶助協会支部の独自の判断が出てきますね。たとえば富山の法律扶助協会の支部であれば、イタイイタイ病に取り組むことがいま最大の仕事なんだ。かりにそうだとしますと、私は現地の実情はよくわかりませんが、各地方公共団体がそういうことでそのことを予想しながら結局寄付をする、それがそのことに使われたとしても、これはそうだというふうな前提を私のほうも簡単に図解をいたしますが、これは自治省としても、そうだとすると、全く法律上一点の疑義もないということになりますね。要するに、法律扶助協会の支部に対する寄付ですね。法律扶助協会の支部自体としては、今度は支部自体の判断として、もうとにかくその支部が現在取り組んでおる事件というのはイタイイタイ病以外にないのであるという支部の独自の判断で今度おやりになったということになれば、地方公共団体もその事件については見捨てておくわけにいかぬわけです。何とかしなければいけないと思っている。ところが、何か自治省がむずかしいことをおっしゃられるということがあるのだろうと私は思うのです。だから私は、現地の人がそういうことを希望しているかどうかはちょっと知らないけれども、そういう一つの法律的な便法でもあるかと思って、扶助協会というものを考えてみた。しかし、そのことは別として、そういうふうな仕組みであるならば、自治省としても全く何ら法律的には問題がないということにならないでしょうか。どうですか。
○森説明員 ここでその解釈について即答申し上げることは、私ちょっとできかねますが、いま申し上げましたような事情でございますので、なお検討させていただきます。しかし、前段に前提で申し上げたようなことが、かりに二百三十二条の二に触れるとすれば——触れるか触れないかももちろん御議論があると思いますが、かりに触れるとすれば、それと同じ事態になることが、法律扶助協会というものを通したからそれで触れなくなるのじゃないかと言うのも、あまりに形式論過ぎるのじゃないか。やはりそういう点は実質を判断しなければならないと思います。いま先生がお触れになりましたように、富山のイタイイタイ病の対策ということが、おそらく地方公共団体としても、どういうふうに解決するかは別といたしまして、何らかの形で解決をしたい。住民がそういう被害を受けておることは事実でございます。だれが加害者であるか被害者であるかということは別として、被害を受けておることは事実でございますから、それについて適切な救済措置を講じていくことも、これは地方公共団体の任務でございます。だから、そういうことを総合的に考えて、いま先生おっしゃったような方法がこの二百三十二条の二に該当するかどうかということは、なお検討させていただきたいと思います。
○中谷委員 これは突然お尋ねをいたしましたが、何か参議院の予算委員会で問題になった補助金よりも、ずいぶん地方公共団体はこのやり方だとすると——おせっかいかもしれませんが、現地の方々はこういうやり方を望んでおるかどうかということもわかりませんけれども、もし正義の実現ということからいうと、私は自治省としても、その点であれば非常に処理しやすいと思う。これは質問した以上、私のほうでも責任がございますので、検討はいつごろまでに終わっていただけるかということについて、ひとつこの機会にお答えをいただきたい。
○森説明員 この法律扶助協会を主管している官庁とも十分相談をいたしまして、できるだけ早い機会に見解をまとめたいと思います。
○中谷委員 訴訟費用が上がるということについてはけっこうだ。しかし、それが弱者の負担になることは反対だ。非常に困る。その問題について、いろいろな訴訟救助だとか法律扶助というものがなければいかぬ、こういうふうにお尋ねしていって、いま出したわけですね。政務次官にひとつ法務省としてのお気持ちを御答弁いただきたいと思いますが、イタイイタイ病というふうな陰惨な、悲惨な事件で苦しんでいる人が、何百人もおる。それで六億近くの訴訟が行なわれようとしておる。ところが、その金というものは、実際十何年もとにかく苦しい生活をしている人には、なかなかないと思うのです。だから、何らかのかっこうで地方公共団体も許されるならば、あらゆる方法を使ってこれらの人を援助したいという気持ちだろうと思うのです。だから、そういう点について法務省としても前向きで御検討いただけることだと思いますが、前向きでひとつイタイイタイ病の法律扶助の問題を御検討いただけるかどうか、御答弁いただきたい。
○小澤(太)政府委員 ただいまのイタイイタイ病の事件ですが、私どもとしましては、まさに法律扶助協会の仕事だ、こう思います。したがいまして、希望としては、地方自治体が一般的な問題として、個々の訴訟についてこれを援助するのだということは自治省としても言いかねると思いますけれども、一般的な扶助協会の活動を援助するというたてまえで、そのような寄付があるということが願わしいことだ、かように思います。
○中谷委員 そこで、今度は総理府にお尋ねをいたします。関連の問題提起ですので簡単にいたしますが、これは委員会のほうでまだ論議されていないようですけれども、公害紛争処理法案でございますね、これについて訴訟費用の関係との関連でお尋ねするわけです。イタイイタイ病というふうな事件がかりに——これもまさにかりにですが、当事者のほうから申請があったとすれば、この問題は当然紛争処理法案に書いてある中央委員会のほうで処理すべき事案だろうと思うのです。地方にまかしておけないたいへんな事件だ、私そう思いますが、その点お聞きしたいということが一点。 それからいま一つ、第二点にお尋ねしたいのは、イタイイタイ病の裁判というのは、とにかく原告のほうも相当鉱業法の百九条に対しての御主張もしておられるということですね。だから、裁判の結果がいつ出るかということについては、かなり注目に値するところだ、一日千秋の思いで原告は待っておるだろうと私は思うのですけれども、その裁判係属中に公害紛争処理法に基づくところの申請が出た場合には、一体これは裁判のほうはどうなるのか。これはひとつ最高裁の民事局——法務省の民事局長さんかどなたかおられましたらお教えをいただきたい、御答弁をいただきたい。それが二つ。 それから三つ目は、この紛争処理法案というものはいいのか悪いのか検討の段階ですけれども、またこれもお金が要るようにできておりますね、結局。要するに、どこに行ったって金が要る。要するにその費用を払えと書いてありますね。その費用を払うか払わぬか、どういうふうなことかというと、政令できめると書いてある。イタイイタイ病のような患者がかりに申請を出してきて、中央委員会で当然係属するでしょう。中央から当然富山のほうに行って泊り込みでおやりになることになるのですね。そういう費用までとにかく払うとなれば、むしろたいへん高いものにつくんじゃないかというふうなことが、これは当然こんな場合は政令——こまかい政令はきめなければいかぬだろうけれども、イタイイタイ病のようなケースの場合は、ずいぶん十何年ものあれで貧困な人が多い。こんな場合は、当然費用というものは免除されることになるだろう。政令はまだ御検討中のようだと思いますけれども、こんな点についても、この機会にひとつ御答弁をしておいていただきたい。要するに、どこへ行ったって、裁判の調停、行政官庁のこういうことについてまで費用が要るということは、私おかしいと思うのですよ。総理府のほうから御答弁をいただきたい。
○野村説明員 まず第一点の、イタイイタイ病が今度出しております公害紛争処理法案の中央委員会の所轄かあるいは都道府県の所轄かという御質問かと思いますけれども、この法案の第二十四条第一項を見ますと、一号では健康に関して非常に重大事件、これにももちろん該当いたしますし、それから第三号の公害による被害が二県以上にまたがるケース、これにも該当いたしまして、これは当然中央委員会の所掌になると思います。 それから第二点の裁判と紛争処理との関係でございますけれども、この法案に関係しますので、まず私のほうからお話ししますと、この法案では特に裁判との関係についてはうたっておりません。しかし、和解の仲介と調停とそれから仲裁とを分けなければならぬと思います。それでまず調停につきましては、調停手続とこの法案の手続とは、並行して別個に手続が進むと思います。したがいまして、訴訟がすでに行なわれたものにつきましてこの紛争処理法案の紛争処理機関に申請が出ましても、それは両者並存する。ただし、私どもとしましては、この法案によりまして公害につきまして特別な制度をつくるという趣旨からいいますと、裁判の手続を中止しましてこちらのほうの制度に持っていくということが望ましいと思いますけれども、その判断は結局裁判所でやるということになると思います。 それから費用の点でございますけれども、この法案の四十四条によりますと、紛争処理の手続に要する費用を書いてございます。それによりますと、原則当事者負担、しかし政令で定める場合、あるいは都道府県にあっては条例で定める場合には、負担されなくてもよいということになっております。いまこの政令を各省で検討中でございますけれども、一般の常識からいいますと、通常の私人間の私的紛争の処理でございますから、これに要する費用については、当事者がこれによって便益を受けるという意味で、相当部分当事者が負担するのが一般だと思います。しかし、本法案につきましては、公害問題の特殊性等を考えまして、総理府といたしましては、当事者の費用負担ができるだけ少なくなるようにということで政令をきめるよう検討したいと思っております。お尋ねがあった委員会がいろいろ調査をする費用、立ち入り検査なりあるいはいろいろ出張するそういう費用につきましては、当事者負担ということは考えておりません。
○中谷委員 民事局長さん、念のために、お答えは要りませんけれども、私のほうから申し上げておきますけれども、紛争処理法案というものが、率直に申しまして、裁判との関係は一体どの程度信頼ができるのかということについて、実際に公害被害を受けておる人なんかは非常に深刻に、最も注目しておるだろうと思います。現地の人たちがそういう紛争処理法を利用して申請するのかどうかというようなことについて、私全然知っていないわけですけれども、この法案ができる以上は、そういう公害で苦しんでおる人たちがその法律を利用することであってほしいと私は思うのです。 そこで、最高裁の民事局長さんにおいでいただいておりますので、次にお尋ねしておきたいと思います。一つは、参議院の予算委員会でも問題になりましたが、要するにイタイイタイ病についての訴訟について、二つ問題点が出ております。一つは、予算委員会で問題になりました、それは六億を上回る訴訟になってまいりましたね。そうすると、印紙代だけでもたいへんなものだと私は思うのです。そういうふうなものは、とてもじゃないけれども病気で苦しんでいて払えない。そうなってまいりますと、民事の規定を最大限に活用しまして、訴訟費用の免除、訴訟救助がされなければならないということだろうと思うのです。そこで、これはあまりにも訴訟の請求金額が大きいし、富山の裁判所で御決定になることではありましょうけれども、かなり予算的な問題もあると思うのです。そういたしますと、最高裁のほうとしても、その種のいわゆる社会的な事件といいますか、そういう事件である以上は、最大限にむしろ前向きで訴訟の費用の救助については検討すべきだろうというようなことを、私はやはり富山の裁判所に御連絡を——どういう決定をしろとかなんとかということを申すのではなくて、御連絡をしていただきたいと思うし、そういうことは、司法行政として当然許されることだろうと思いますし、していただきたいことだと思うのです。そういう点を含めて、このイタイイタイ病についての膨大な金額を原告が負担しなければいかぬということでは、とても訴訟はやり切れないだろうと思う、乗り切っていけないだろうと思う。さらに、そういう中では訴訟救助というものが生かされなければならないと思いますが、この点については、民事局長さんいかがでございましょうか。
○矢口最高裁判所長官代理者 中谷委員がいま御指摘になりましたように、イタイイタイ病の事件は三次の請求に分かれておるわけでございますが、その請求金額を合計いたしますと、正確には六億九千五百万円、約七億の請求になるわけでございます。といたしますと、実はそれに張ります印紙だけを考えてみましても、約三百五十万円の印紙を要するということに相なるわけでございます。ただこの事件は、第一次の事件につきましては訴訟救助等の申し立てがなく進行されておりまして、第二次の、人数で申しますとこれが一番多いのでございますが、三百五十三名が、合計五億七千万円を請求しております事件につきましては、ただいま御指摘の訴訟救助の申し立てがなされておるわけでございます。第三次の事件は、ごく最近に起こりました事件で、まだその種の申し立てがなされておりません。ところで、第二次の事件だけ見てまいりましても、五億七千万と申しますと、印紙額は約二百八十五万円という印紙を要するわけでございます。訴訟救助の申し立てがなされておるところを見ますと、おそらくこういったものもひっくるめて救助しろというお申し立てだろうというふうに了解するわけでございます。私ども訴訟救助の問題といたしましては、これは中谷委員つとに御承知のように、各裁判所が各審級ごとに決定するわけでございまして、いま仰せになりましたように、具体的な事件でございますので、あくまで現地の裁判所がその事件について自己の判断に基づいて適正な判断をするという問題でございます。ただ、一般的な問題として申し上げますれば、ただいま御指摘のように、この種の損害賠償請求事件、これはこのほかにもたとえば交通訴訟等の事件もございますが、この種の損害賠償請求事件は、これを請求する側に裁判の費用というものは相当負担でございますので、裁判所は、これまでの例から見てまいりますと、一般的には勝訴の見込みがなきときではない、いわば絶対にだめだということにはならないという場合、訴訟救助に対してとるべき条件をゆるく解釈いたしまして、大体救助決定を与えておられるのが通常のようでございます。しかし、これはあくまで一般的な問題でございますので、この事件につきましては、あくまで現地の裁判所がおきめになるというふうに御承知おきいただきたいと存じます。 ところで、そういうふうにおきめになりました場合には、いま申しました印紙等も張らなくて済みますし、それからまた証人とか鑑定人の日当でございますとか、鑑定料でございますとか、そういったものも、裁判所は支弁をすることに相なります。印紙を張らないという場合には直ちに予算の問題は生じませんが、証人の日当のたてかえとか鑑定人の日当、鑑定料のたてかえ等の問題になりますと、これは裁判所が具体的に裁判費から費用を出さなければいけませんが、そのときのものは、そういう決定がありましても、これは当然国が支出すべきものでございますので、裁判費から支障なく支出し得るよう、私どもといたしましては万全の準備をいたしておるわけでございます。
○中谷委員 そういうことでひとつぜひとも御準備をいただきたいと思います。 そこで、あとこの機会に法務省の刑事局長さんにお尋ねをしておきたいと思います。きょうは全く一点だけお尋ねをいたしておきますが、公害犯罪というものについて審議会のほうで問題になっておりますけれども、この点についてはすでに指摘をされた人も何人かいるようでありますが、審議会において公害犯罪として予想されていると申しますか、考えられているところの公害と、公害対策基本法などで考えられている公害との間に、ズレがあるんじゃないか。だから、公害罪というようなものをつくるのだったら、もっと公害の範囲をたくさんその公害罪の中にほうり込むべきではないかというような議論があるようであります。そこで、構成要件とか立証とかいろいろな問題があるのだろうと思いますけれども、そういうふうに現在公害対策基本法その他の、いわゆるわれわれが公害と言っているものが全部公害犯罪というものに入っていない、非常にしぼられてしか入っていないということの問題、そういうことになった経過は、どういうところにあるのか。なお、要するにとにかく公害犯罪についてはもっといろいろなものを規定すべきだという意見については、どういうふうに相なっているのか、この点をひとつ御答弁をいただきたいと思います。
○川井政府委員 法制審議会の刑事法特別部会というところで、公害罪の新設についていま検討中でございます。去年の秋ごろに特別部会で、公害の関係について現行法に不備があるんじゃないかというようなところから、何か的確にこれを処理するような刑罰法規が必要だろうというようなことになりまして、部会で審議を続けているわけでございますが、その過程におきまして、ただいま御指摘になりましたように、公害対策基本法には六つの公害の類型が規定されておりますが、その六つの類型につきまして、個別にいままで検討がなされております。結論といたしましては、その六つの中で大気汚染、水質汚濁というような問題につきましては、構成要件のしぼり方とかあるいは具体的な事件としてのとらえ方とかいうようなことについて、かなり具体性があるということが一応大勢を占めておりますけれども、その他のたとえば騒音とか振動とか悪臭とかいうふうな公害につきましては、刑法の中に設ける犯罪類型として、いろいろな面でなかなか困難性があるんじゃないかというのが、現在の大体の実情でございます。 そこで、いまの段階では、水質と大気の関係につきましてある程度の案がまとまりつつある段階でありますけれども、先般予算委員会でも指摘がありましたし、なお引き続きこの刑事法部会は継続して審議をいたしておりますので、ただいま御指摘のその他の類型のものにつきましても、あわせて検討を続けておる段階でございます。
○中谷委員 通産省お待ちいただきましたので、通産省に一点だけお聞きしておきます。 通産省にお尋ねしたいのは、訴訟救助とかあるいは法律扶助ということも、非常に大事な問題であります。ただ、この裁判というのは、一般的にも具体的にも非常な弱者と大企業の強者との間の訴訟だという点に、私は非常に問題があると思うのです。そこで、鉱業法の第百九条というものを根拠にして、この裁判は損害賠償請求を行なわれているようでございますね。そこでこの裁判に対する若干の要望ということで訴状に——普通だったらこういうことはなかなか書かないと思うのですのですけれども、これは特に切実な気持ちがあったのだろうと思うのですが、代理人が次のように書いております。「この裁判において予想される被告側の態度は、科学的事実はまだ究明されていないとして、ぼう大な費用と時間のかかる証拠調を求め、これにより長期裁判にもち込む点にあると思われます。」ということを指摘しているわけです。それで私は、特に鉱政課長さんおいでいただいておりますので、また通産省は企業サイドだというようなうわさもあるので、これは明確にこの委員会できょう御答弁いただきたいと思いますけれども、訴訟がフェアに行なわれなければいかぬ、公明正大にやられなければいかぬというわけで、原告の代理人などが訴訟準備のためにとにかく工場の現場を見たいという場合には、私は、被告は社会的な責任において絶対にそれを拒むべきではないと思う。見たいというところは全部見せてあげて訴訟に応ずべきだと思う。これは通産省としては、ことに鉱政課などにおいては、当然そういう点を行政指導をされるべきだと思います。これは企業秘密だとかなんとかいうけれども、ある程度の企業秘密はあるかもしれませんが、当然そういう行政指導をすべきで、訴訟が公正に行なわれるということが、私はあらゆる問題の基本であり、民主主義の基本だと思う。そういう点で私は通産省の態度を御答弁いただきたい。
○林説明員 通産省といたしましては、このイタイイタイ病の解決につきまして、特に患者の方々の救済あるいは紛争になっております損害賠償問題が早期に解決されるということを強く念願してまいっております。したがいまして、鉱業法に基づきます和解の仲介というふうな仕組みもございまして、そういう手続で当事者の方々の気持ちがまとまるならば、そういうことで私ども本件の解決に積極的に乗り出すということも考えていたわけでございます。不幸、御案内のとおり、当事者間で訴訟という形をとらざるを得ないような結果になってまいりました。そういたしますと、いま先生から御指摘がございましたように、工場見学の点でございますけれども、裁判という重要な、絶対公正に進められなければならないこの手続の進行に対しまして、私どもいずれかの当事者に裁判の進行に対してインフルエンスを与えるということは、行政当局としてはむしろ慎まざるを得ないというふうな判断をしておるわけでございまして、基本的には、先ほど申し上げましたように、患者の救済、特に賠償の早期解決につきまして、機会があり、あるいは申し出があれば、積極的にあっせんの労をとりたいという所存でございます。
○中谷委員 よくわかりませんけれども、現地ではそれほど通産省のあっせんということはあまり期待していないのじゃないかと私は思うのです、率直に言って。ただ、私が聞いているのは、次のようなことなのですよ。要するに、強者である会社のほうは、会社の内容を見せなさい。鉱業法百九条は、損害と原因との間の因果関係さえ立証できれば足る無過失責任の規定でございますが、それさえ立証できればいいのだから、現場を見なければいけないということは出てくると思うのですよ。結局見せないのは、強者の会社のほうは見せたくない。弱者の原告のほうはどうしても見たい。そこで壁を張って見せないということになれば、強者が得をし、弱者が裁判として非常に不利益をこうむる。だから、私は、通産省としてはまさに裁判の公正、裁判の適正、裁判の迅速な進行ということになるならば、行政指導としてどんどん見せなさい。それでこそとにかく大企業なんですよという指導をするのが、通産省のお立場であるし、それでこそ通産省も公害問題について考えていないことはないのだなということになりますという質問なんです。裁判の公正のためにこそ、そういう行政指導を通産省はおやりになったらどうですか、こう聞いているのですよ。
○林説明員 現場検証という裁判上の公正な手続も進んでおる段階でございますので、私ども行政当局としては、利害の対立しておりますこの紛争に対して、法的な手続に影響を与えるような形でタッチすることは、差し控えたいと考えております。
○中谷委員 通産省にお尋ねしますけれども、通産省全部の意見ですか。率直に申しまして、これは私は商工委員会に行ってもう一ぺん大臣に質問したいと思いますけれども、裁判で、とにかく見なければ困るのだ、調査しなければならぬのだと、かりに原告代理人が言っている場合があるとする。それによって行政指導として見せて、しかも——とにかく公害というのはないほうがいいのですよ。損害賠償訴訟であると同時に、今後公害を起こしてはいかぬのです。そういう点から、とにかく原因というものを徹底的にあらゆる人の目に触れてみさせるほうがいい。こういう悲惨な事故をなくすのが、とにかく基本だと思う。見せないわけにはいかぬ。見せないという理由はどこにもないと思う。裁判に負けたくないから見せないのですよ。見せても、原因があって結果があったら、負けてもいいじゃないですか。原因があって結果があったら、そういう態度を私はとるべきだと思う。何かいま、裁判のことについてだし、行政指導するつもりはないというのは、通産省全体としての意見なのか。大臣なんかとそれは打ち合わせをされた御意見なのですか。一体通産省としてそういうふうなことを全体の省議にかけられて、そういうふうな意見をいつきめたのですか。
○林説明員 裁判の公正な進行をはかるために、御案内のとおり、現場検証という法的な手続があって、昨年行なわれておりますし、それからさらに、本検証も近く行なわれるというように聞いております。通産省の本来の立場から申し上げますと、そういった利害関係の紛争対立というふうな形でなくて、お互いに話し合いをして解決しようという姿勢に入るような場合には、当然私ども産業官庁といたしまして行政指導をやってまいりたいという所存には変わりないわけでございます。ただ、現在の場合で、会社側がいやだというのを、無理やり工場を見せろというふうな指示をする立場にはないということを申し上げたのです。
○中谷委員 課長にお尋ねしますけれども、会社はいやだと言っているのか、いやだと言っていないのか、はっきりしないのですよ。大企業がいやだなんというのはおかしいという前提で、私は言っているのです。万が一そういうことをやったらという前提で言っているのですよ。会社がいやだということは、はっきりしているのですか。あなたとばかり押し合いをしてもしようがありませんから言いませんけれども、現場検証の前提として、あらかじめその準備として見ておくということは、代理人としては必要だと思うのです。裁判所がやる現場検証の前提として、見ておく必要があると思うのです。そういうことを拒むというふうなことは、大企業ともあろうものが、フェアではないと思うのです。通産省としては、おやりになったらどうか。ただ先ほどから総理府、最高裁、法務省、それぞれ答弁されましたけれども、私の率直な感想を言わしていただくと、通産省はやはり企業サイドだという感じを受けるのですよ。だから、私は、結局大企業が少なくとも裁判を——とにかく私人対私人の裁判、道で二人が会ってなぐり合いをしたというふうな八っあん熊さんの裁判じゃないのですよ。大企業の社会的な責任があると思うので、大企業の社会的責任を裁判で果たすかどうかということ、原因と結果というものを、大企業自身も、被告自身も、明確にみずからとにかく真相を徹底的に究明していくべきだ。だれの手によってでも因果関係が究明されたらいいという立場に立つならば、原告代理人に見せることは当然だし、そういう態度こそ大企業の社会的責任だと思うのです。この点についてもう一度お尋ねしますけれども、通産省のおっしゃったことは、それは基本態度としておきめになった見解ですか。それとも一個人の見解ですか。いずれにいたしましても、いまの見解では私は納得できませんよ。
○林説明員 お答え申し上げます。いま私が申し上げましたことは、政府委員でございます局長の了解を得て御答弁をいたしたわけでございます。
○中谷委員 いつですか、そういうことをおきめになったのは。
○林説明員 ゆうべ思想統一をいたしました。
○中谷委員 わかりました。そうすると、あらためて二十八日の日に商工委員会で——いまの問題は非常に重大な問題だと思いますし、厚生省、通産省、常に比較をされまして、公害問題については非常に不熱心だとか、企業サイドだという御批判があるわけで、いまの答弁は容易にそのことと結びつきやすい答弁だと思いますので、あらためて御検討いただきたい。これはゆっくり時間をかけて、二十八日に質問をいたします。 なお、最高裁の民事局長に一点だけ質問が落ちておりましたのでお尋ねいたしますが、とにかく七億近くの請求金額であると同時に、原告の側の何百人でございますね、その原告のうち、どれだけの人が傍聴可能な健康状態にあるのかというようなことも問題だろうと思いますが、代理人の数も何か何百人——しかし、何百人といっても、どれだけ出廷していただくかという問題もあると思いますし、いずれにしても富山地方裁判所の大法廷といわれている法廷は、傍聴可能な人員は六十名くらいだと聞いております。だとすると、この問題について裁判所法上の問題としてお尋ねいたしたいと思いますけれども、何か別に裁判所の法廷というのは、たとえば公会堂であるとか、あるいはどこかの会場であるとか、そういうものをお使いになったからといって、裁判所法上の法廷であることを妨げるものではないように私は思いますけれども、この点はいかがでございましょうか。
○矢口最高裁判所長官代理者 原告の側が申しましたところを合計いたしますと、四百二十七名ということでございますけれども、名を連ねておられます弁護士さん方の数は、二百九十数名というふうに承知いたしております。ただ実際には、これまでのところ法廷に常時お出になっております弁護士さんは、大体二十四、五名のようでございます。それからこれは大きい第二次の事件がまだ具体的に進行しておりませんので、原告本人の出廷数が少ないのだろうと思いますが、現在のところは、十数名が交代で法廷に見えておる、原告本人としては、という状況のようでございます。なお、その点を除きましても、傍聴の余裕は、実は中谷委員御指摘のように、大体六十席ほどでございまして、そのほかいわゆる報道関係の席が三十席ほどという状況で進行いたしておるわけでございます。ただ、裁判所といたしましては、富山の現在使用しております一番大きい法廷でございますが、広さは大体百七十平方メートルほどでございまして、最高裁の大法廷が特別広うございますが、それ以外の法廷といたしましては、現在裁判所の施設といたしましては最も大きい法廷に属するものでございます。もちろん、大きければもっと大きいものを用意すべきかという問題もございますけれども、これは中谷委員も御承知のように、法廷ということになりますと、やはり原告の方と被告の方がそこで十分に主張を戦わされ、なお裁判所も適宜訴訟指揮を行ないまして、法律の議論にいたしましても、また事実の発見におきます証拠調べの問題にいたしましても、これが双方で真実を発見するためのできやすいような規模ということが、まず問題になるわけでございますので、あまり大きいところでやるということになりますと、法廷の円滑な進行の問題、あるいは秩序維持の問題等、やはりいろいろの問題が出てまいります。そういうことで、実は現在のところ、百七十平方メートル前後の法廷というものをわれわれとしては一応設け得る最大のものとして設けておるような次第でございます。御指摘の裁判所外で法廷を開くということも、裁判所法上認められておるではないかという点でございますが、確かに、裁判所法六十九条にそういった条文がございます。これはたとえば法定伝染病があったような場合でございますとか、いろいろな特殊な場合を元来予想しておるわけでございます。これによりましていま御指摘の公の広い施設を使うというようなことになりますと、いま申しました設備等の関係上必ずしもそぐわないのではないかというふうに考えておる次第でございまして、傍聴に来ていただく方、あるいは原告本人の方々、それぞれ裁判の進行については十分な関心をお持ちだろうということはよくわかりますが、できることならば傍聴を順次交代してやっていただくというようなことでお願いできないだろうかというふうに、私どもとしては現在のところ考えておる次第でございます。
○中谷委員 民事局長さんのお話はお話としてよくわかりますけれども、原告がもう思い詰めた気持ちで訴訟を起こしたその訴訟について、出頭できない、傍聴できないということも、これは非常に残念なことだと思います。そこで、裁判というものが厳粛かつ秩序正しく行なわれなければならないということは当然のことで、まさにこのイタイイタイ裁判などというのは、非常にそういう思い詰めた気持ちでやっている裁判でございまして、法廷の秩序を乱すというような人は、一人も私はおらないと思う。そうすると、最高裁のお考えとしては、たとえば大法廷というようなもの、ある地方公共団体で決議いたしましたが、どこかの富山市の公会堂でも借りてというようなことも、私一ぺんぐらい——裁判長の顔を見たい、どんな人が裁判してくださっているか見たいという人もいると思うのですね。一ぺんぐらいはそういうところでおやりになったらどうだろうかということを考えるし、いま一つは、私は昔そういうことをおやりになったことがあるような気がいたしますけれども、検討問題として、たとえば裁判所の廊下などに、秩序正しくするというようなことで原告のある部分の人はすわらせるとか、あるいは外へ、そのかわりほかの法廷のじゃまにならないようなマイクをつけるというふうなことで、たとえば一号法廷でやっているなら二号法廷でその裁判の状況がわかるようにするとか、何かやはり公開の原則というような基本的な原則との関係、自分の裁判がどんなことかわからない、裁判長の顔もわからぬというようなことはちょっと……。そんな何かいろいろな苦しまぎれの方法であっても、原告代理人の弁護団というのは非常に真剣に裁判に取り組んでいる人たちだと思いますし、そういうことも、最高裁としても——きょうはどういうふうにしていただきたいということを私申し上げませんが、御検討いただきたいということでひとつお答えいただきたいと思います。
○矢口最高裁判所長官代理者 先ほど申し上げましたように、なかなかむずかしい問題でございますので、十分検討はいたしたいと存じますが、先ほどるる申し上げました点を十分ひとつ御理解をいただきたいと思います。なお検討さしていただきます。
○中谷委員 これで私の質問は終わります。法務省の民事局長さんにせっかく御出席願ったのですが、質問がなくなりましたので、これで終わります。 ひとつ委員長に私お願いしておきたいのですが、先ほどの鉱政課長の答弁非常に意外ですので、同僚の山田委員の質問が終わった後、委員部のほうでお手配がいただけるようでしたら、鉱政課長さんではなしに、鉱山石炭局の局長か政務次官かをひとつ……。山田君のあと、一言だけですが、私質問いたしたいと思いますので、そういう部分だけ質問を留保して終わりたいと思います。さっきの答弁というのは全く納得できないし、通産省のためにも私は非常に残念に思いますから、二十八日もと言いましたけれども、この機会にきちっと決着をつけておいたほうがいいと思いますから。そういうことで質問を終わります。
○高橋委員長 御希望のように善処いたします。 次回は、来たる二十八日午前十時より理事会、理事会散会後委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。 午後零時三十八分散会