法務委員会 第5号
- 発言数
- 48 件
- 登壇者
- 7 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1969/03/07
会議録
○高橋委員長 これより会議を開きます。 内閣提出、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を議題として、前回に引き続き質疑を行ないます。 質疑の申し出がありますので、これを許します。岡沢完治君。
○岡沢委員 裁判、特に刑事被告人の場合は、憲法三十七条によりましても、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受けるというのが国民の権利であることは、言うまでもありません。これが実際には民事、刑事ともきわめて長期の裁判が、残念ながらはなはだ多い。八海事件等もしばしば問題になりましたけれども、今度学生諸君が大量に起訴されました公安事件の場合なんかは、いまから新聞等では十年裁判ということが予測されているわけです。おそらくそうなりますと、学生諸君も、三十をこえた人生の半ば過ぎまで被告人としての扱いを受けるおそれもあるわけです。そういうこともあわせまして、私は、この委員会でも、裁判の迅速化ということについてはしばしば議題になりましたけれども、現実は残念ながらほとんど改善されてないというのが実態ではないかと思います。今度、この法案によりまして、裁判官の増員の要求がございます。必ずしも反対ではございませんけれども、裁判官の数をふやすというだけが必ずしも裁判の迅速化の道ではないと思うわけであります。私は、少し余談になるかもしれませんが、今度の大学紛争なんかを見ましても、一つの大きな原因は、社会の近代化、あるいは工業化、あるいは非常な進歩と大学の封建性とが調和がとれてなかった、いわば社会の進歩に大学の機構あるいは教授の頭の中がついていけなかったというところにも一因があろうかと思います。同じような意味で、裁判所の場合、昔から裁判官の化石化ということばがございます。失礼なことばかと思いますけれども、やはり一面の真理を含んでおるのではないか。ことに国会の後進性を考えますと、私たちも発言するのにちょっと勇気を要するわけでございますけれども、それはさておきまして、やはり裁判所自体も、近代的な運営、あるいはまた裁判官の適材適所による能率の発揮というようなことも、当然考えられていいのではないか。電子計算機等も一部御購入になったりして、その意欲はわかりますけれども、たとえば思い切っていかにしたら裁判が迅速化できるかということについて、裁判所内部の問題としないで、むしろ裁判を受ける側の国民を代表する人々、あるいは——やはり日本の場合、残念ながら、私は、ある意味では経済人が一番先頭を切って新しい時代に合うような姿勢を示しておる。それが日本におきましては、国民総生産が自由世界で第二位になった、敗戦国にかかわらず、ここまで発展をした大きな要素だという気もいたします。それだけに、そういう経済人なんかも思い切って諮問委員会のメンバーにでも採用するなり、あるいは新しいマネージメントの専門家を呼ぶなり、幅広い立場から裁判の迅速化について、機構上、あるいは人的配置上、あるいはまた手続上、あるいはまた刑事訴訟法、民事訴訟法の改正を要するものはそういう法律上、多角的にあるいは長期的にその迅速化について取り組んでいただくべきではないかと思うわけでありますけれども、これについての最高裁の御所見を伺いたいと思います。
○寺田最高裁判所長官代理者 ただいま岡沢委員から御指摘のございました問題はきわめて重要な問題と存ずるわけでございますけれども、私どもも常々そういう立場からいろいろ考えてまいってはおるわけでございます。御承知のとおり、五年ばかり前に内閣で臨時司法制度調査会というものがございまして、その調査会でいろいろ司法制度に根本的なメスを入れるということで御検討いただいたわけでございますが、その際には、単にいわゆる法曹、すなわち裁判官、検察官、弁護士だけではなしに、国会議員の方にもお入りいただき、またいわゆる経済界と申しますか、そういう法曹以外の方もお入りになりまして、そうしていろいろ幅広く検討していただいたわけでございます。そうしてその際に意見が出まして、御承知のとおりの意見書の形で発表されたわけでございまして、その中にはただいま御指摘のございました裁判事務の近代化というようなことにつきましても、いろいろうたわれておるわけでございます。そうしてそういう点からまいりますと、裁判所の場合、まことにお恥ずかしわけでございますけれども、近代化と申しますいわばもう一つ前の段階に実はあったわけでございます。御承知のとおりの宅調というような、自宅で執務をする、それも自宅で執務をするほうが本人がやりいいからそうやるということではなしに、裁判所では執務をするような施設になっていないという原因で自宅で執務をするという、まことに前近代的な執務体制があったわけでございまして、そういう点につきましては、その後数年間にわたる予算の御配慮によりまして逐次改善されてまいっておりまして、ただいま参議院で御審議いただいております四十四年度予算が成立いたしますと、第一次五カ年計画が一応終わるわけで、これによりまして一応地方裁判所の本庁なり甲号支部のそういう面の施設の改善ということにある程度のめどがつくということに相なっておるわけでございます。ただ、それ以外のもっと近代的な機構という点につきましては、これは私ども経済界等の御意見を伺うこともきわめて必要であろうとは思いますけれども、ただ、裁判所は特定の財界人と結びつくことはいかがかと思いますし、ある意味ではむしろそういう点では進んでおると考えられますアメリカとかあるいはイギリス等のやり方というものを学ぶということが、また必要なのではないかということで、再々向こうのほうにいろいろ調査の者を派遣いたしまして、研究を続けておるわけでございます。いま岡沢委員からお話のございましたコンピューターにつきましても、これは統計の面では三、四年前から採用いたしておりますけれども、まだきわめて低い段階のものでございまして、もう少し幅広く裁判事務に寄与するような形で利用するという点につきましては、これまた四十四年度予算で調査費が計上されまして、この点につきましてはアメリカの制度をまねまして大いに研究をしてまいりたい、かように考えておるわけでございます。 以上、これをもってお答えといたしたいと思います。
○岡沢委員 いまの総務局長の御答弁、一般論としてはそのとおりだと思いますけれども、現実にはなかなか民事も刑事も非常におくれる事件が多いわけでございます。その具体的なおくれの原因等についてもぜひ御究明をいただいて、私は、やはり迅速な裁判ということが——特に民事の交通事件なんかの場合、せっかく苦労して判決をもらってもから判決だ、意味がないわけでございます。裁判に対する信頼という意味からも、ぜひ真剣に取り組んでいただきたい。 いま総務局長の御答弁の中に、外国の制度ということが出てまいりましたので、それに関連して、私もたまたまこの間大阪へ帰りましたときに、大阪地裁の私の友人の判事と話しておりましたら、その判事の意見として、日本でもいわゆる外国には例があります巡回裁判所の制度をこの際考えてみていいのではないか。ことに、それはアメリカのような広い土地とは違いますけれども、しかし、すでに当委員会でも問題になりました簡易裁判所の廃止ということになりますと、なかなか地元の反対があってやりにくい。また、いなかに裁判所があるということは、われわれ法の支配が近代化の一つの基礎だということを考えました場合に、できるだけそういう司法機関がすみずみまで行き渡るということは、必ずしもマイナスではないというよりも、むしろいい意味での価値があるというふうに考えております。だからといっていなかに裁判官を派遣するとなると、いろいろな事情から、人員だけの問題ではなしに、御本人の希望、能率等を考えた場合、非常にむだが多い。裁判所の庁舎と書記官なり事務官は常時そこに置きながら、裁判官はたとえば大阪とか東京とか仙台とか札幌とか高松とかあるいは福岡とかに集中してプールをしておいて、幸い交通機関、通信機関等もきわめて発達した現在でございますから、巡回して、しかもやはりそういう場合ですと、交通専門の裁判官がたくさん簡裁を回って交通事件を裁いていく、一方で民事専門の裁判官がその事件を裁いていく。週のうちであるいは月のうちの第一水曜日は大体交通事件を入れるということにいたしますと、非常に能率的な、効率的な、しかも裁判官自体も、御自分の専門の事件が多いわけでございますから、自信を持った、しかもまた均衡のとれた判決ができるのではないか。そうしてそういうことによりまして、判事ないし判事補なりが子弟の教育その他で大都市を離れることを非常にいやがられるというようなマイナス面もカバーできますし、一方で大都市におられることによって裁判官同士の研修も、あるいは勉強のための資料等も容易になると思うわけでございます。あるいはまた、われわれが弁護士時代に非常に感じましたのは、苦労して、まあ民事事件の場合、結審近くまでいったところで裁判官が更迭をされ、また新しい裁判官に一からやり直してもらうというようなことで、事件がむだな繰り返しをやることによって、裁判所にも負担をかけながら、結局当事者にとっても判決がおくれるという例が非常に多いわけであります。そういうマイナス面も防げるのではないかと思いますけれども、これはいますぐ御採用いただくというわけではごいざませんが、こういう方向で御検討いただく価値がある問題ではないかと思いますが、御所見を伺いたいと思います。
○寺田最高裁判所長官代理者 ただいまのお話の巡回裁判の問題は、実はこれは私どもとしても数年前から長官所長会同等で論議の対象となっておる事項でございます。先ほど申し上げましたように、いろいろな機会に外国の制度を視察に派遣いたしておりまして、そういう者が行きました場合に、まあ日本の現在の制度は大陸法系の制度、英米法系の制度と若干ミックスしておりますが、その際にいわゆる英米法系の裁判制度に学ぶところが非常に多いのではないかという印象を受けて帰る者が、非常に多いわけでございます。その中の一つに、いまお話の巡回裁判制度があるわけでございます。ただ、アメリカでは巡回裁判制度というものがだんだんいまでは後退してまいって、名称的なものになっておるようにも聞いておるわけでございますが、イギリスではお話のとおり、いままだ残っておるようでございます。ただ、これにつきましても、私も詳しくは存じませんけれども、いろいろ聞くところによりますと、二、三年前からこれの改革についての委員会ができて、いま調査されておるというふうにも聞いております。これは巡回裁判制度というものも非常にプラスの面がありますとともに、同時に若干のマイナスの面があることは、これは常識的に考えてもはっきりすることでございまして、事件数とかあるいは距離とか、そういうこととの相関関係であると思います。そういう点で日本で検討されてまいっておるわけでありますが、ただ、そのイギリスのような巡回裁判制度を直ちにとることには日本では非常にちゅうちょを感ずるわけでございますが、いま岡沢委員からお話のございましたような、書記官その地の職員は現地に置いて、裁判官だけが巡回するという制度、これは日本でも非常にとりやすい制度でございますし、また現実に、そういうことばは使っておりませんけれども、ある程度行なわれておるわけでございます。イギリスのように裁判官が書記官以下を引き連れて巡回するという制度は日本には全然ございませんけれども、現地に書記官以下を配置しておいて、そこへ裁判官が巡回していくという制度は、非常に変則的な形ではございますけれども、たとえば乙号支部の小さなところでは、そういう形になっておるわけでございます。岡沢委員、法曹であられますのでよく御存じではございましょうが、岡沢委員のおられます大阪の場合には、たまたま大きな支部ばかりでございますのでそういうことになっておりませんけれども、その御近所でございますたとえば京都の場合ですと、園部の支部というものは、事務量が非常に小さいわけであります。そういうところへは巡回してまいるというような形をとっていますし、また奈良県の宇陀のような裁判所は、ほとんど一人前の十分の一の事務量しかない。そういうところには、裁判官を配置しないで、巡回的にやっているわけでございます。 なお、簡易裁判所も、いわゆる総合配置という形で、つまり二庁に一人くらい置くという形をとりますと、これがまた一種の巡回裁判的な形になるわけでございます。長官所長会同等でいろいろ論議されております中には、こういう制度をもう少し拡充してはどうか、それからさらに進みましては、たとえば高等裁判所の支部のようなところも、巡回的にはやれないものであろうかということもいろいろ検討はいたしておるわけでございますが、これの長所と短所と申しますか、利害得失についてなお検討中であるということになっておるわけでございます。 それから最後にちょっとお触れになりました、裁判官の転任によって事件がおくれるという点、この点も実は前々から国会でもときどき御指摘をいただく問題でもございますし、また、部内では当然非常に研究しておる問題でございます。裁判官のいろいろな関係から、つまり全国的になるべく均質の判事を置く、しかも個々の裁判官があまりに地理的に不利な条件には置かれないようにするという両方の面から、裁判官の転任ということは避けられない事項でございます。しかしながら、それによって特定の事件の審理がおくれるということも、これも絶対に避けなければならないことでございますので、そういう点を勘案いたしまして、特殊の事件で長引いておるようなものがあります場合には、その裁判官はなるべくそのままとどめ置くということを相当配慮しながら人事異動が行なわれておるわけでございますが、何ぶんにも二千名以上の裁判官の問題でございますし、また事件は数万件とあるわけでございますので、その間に個々の事件について途中で裁判官が数回かわったために御迷惑をかけるという例が出てまいっておることは、きわめて遺憾なことでございまして、今後はなるべくそういうことのなくなるような方向で善処してまいりたい、かように考えておるわけであります。
○岡沢委員 いまの御答弁にもございましたし、なるほど運用の面では巡回裁判制度に近いものが行なわれておることを私も理解いたしておりますけれども、制度として思い切ってそれを御検討いただく時期にきておるのではないか。しかし、実際の場合、大阪なんかで見ますと、確かに簡裁の判事さんで二つの裁判所を兼ねておられますけれども、大きなふろしきを下げて電車を待ったりバスを待ったりしておられます。非常に非能率であります。簡裁の判事さんにはお年寄りが多いわけであります。これはやはり思い切って車ぐらいは用意するということによって、非常に能率的に、あるいはまた健康上も快的な条件で裁判をしていただける。まあ比較できる問題ではありませんけれども、防衛庁予算では、F4Eファントムの場合、一機で二十億に近い予算を食うわけであります。もしその予算で十分な迅速な裁判が、あるいは国民の信頼に値する裁判が担保されるならば、非常に安い防衛予算にもなるのではないかという感じもいたしまして、ぜいたくをしていただくという意味ではなしに、少ない人員でもいかに能率をあげるかということを考えました場合に、諸般の条件をそろえることによって、私は一人の裁判官で二人、三人分の仕事をしていただくという方法も考えられるのではないか。ぜひ前向きで、いわゆる生産性向上というような面とは裁判所は縁の遠い存在かもしれませんけれども、経済性ということについては思い切った新しい感覚を取り入れてもらえたらという希望を申し述べまして、その問題は終わります。 先ほどイギリスの話が出ましたので、私は、まあこれは直接裁判所に関係することではございませんけれども、裁判の当事者の一方であります検察官の問題につきまして、裁判所から見られた意見をちょっと聞いてみたい問題がございます。それは御承知のように、いま検察官志望が非常に少なくて、検察官の増員問題もありますけれども、一方で定員にも満たない欠員も現に存在しております。そういう点を考えました場合に、検察官の絶対数を減らすという意味じゃなしに、裁判の効率化あるいは捜査の迅速適正化という面からも、私は検察官のむしろ増員をしたい。ところが検察官にはわりと希望者が少ないということも踏まえまして、イギリスで行なわれておりますように、刑事裁判の立ち会いを国が委嘱する弁護士にやらすという方法も、一つのアイデアとしてこの際検討に値するんではないか。これは民事事件の場合、国の代理人の指定を受けて弁護士が担当させていただいていることは御承知のとおりですが、単に検察官の人員を減らす、あるいは人員を別な面へ使うという意味だけではなしに、ある意味では、捜査は検察官がやるけれども公判は弁護士がやるということによって捜査の公正を担保したり、あるいはまた、国民から見ても刑事訴追というものがいかにも公益の立場でなされるものだということを理解しやすくするのではないか。また、私たちの数少ない経験からいたしましても、捜査に無理がありましても、一たん起訴されますと、公判を担当する検事さんは、捜査検事の顔を立ててなかなかすなおに捜査の無理をお認めにならないというようなケースも、間々見受けられるわけであります。そういう点から、これはまあ直接には法務省なり検察庁に関連することでありますけれども、事件の当事者ではありませんが、両方を総括される裁判所の立場から、そういうアイデアにつきましてもしお考え方を、これはあまり責任を感じていただかなくて、総務局長の個人的な見解でもけっこうでございますから、御披露いただけたらと思います。
○寺田最高裁判所長官代理者 この問題は、法務省の御所管の問題でございまして、法務政務次官や所管の調査部長もおいでになります席で、私個人的としても意見を申し述べることはいかがかと存じますが、せっかくのお話でございますので、私の感じとでも申すものを申し上げたいわけでございます。 先ほど申し上げましたように、いろいろ外国へ行って見てまいりました者の報告では、英国の制度というものに非常に学ぶべき点が多いというのは、一般的な印象でございます。ことに司法制度に関しまして、非常にみな感心をするわけでございます。ただ、非常に感心いたしますと同時に、次に感じますことは、英国の制度というものがいかにも長い伝統と歴史の基礎の上に築かれておるものであって、いわば人間の頭で理論的に考えてつくり上げたものではないという点でございます。実はこの点は臨時司法制度調査会の御視察団がおいでになりましたときも、いまお話しのイギリスのいわゆる法務総裁でありますとか公訴局長官でございますとか、そういう方に面会をされて、いろいろ話を聞かれた報告も出ておるわけでございますが、そういうものから受けられた臨司の我妻会長なり委員の方々の御感想も、これは非常にすぐれた制度である。しかし、また同時にこの制度は、いわゆるすぐたとえばわが国で取り入れてできるものではないというのが、一般的な感想であったようでございます。御承知のとおり、イギリスの場合には長い間のいわゆる私人訴追と申しますか、被害者が刑事事件の訴追をするという伝統がございまして、それが百年ぐらい前から何でも警察の手に移った。つまり個人にやらせたんでは費用その他に無理があるということで、警察のほうで訴追をするということで、その制度はいまでも残っておるようでございますが、その点ですでにもう日本とは違うわけでございます。そうしてさらに五十年ぐらい前から、いわゆる検事に当たるようなもの、つまり公訴官というようなものができたように聞いております。そうしてそういう前提で、しかしながら法廷ではあくまでもバリスターがやる。公訴局の長官はただ訴えを提起するだけである。しかしながら、それも特殊な事件であって、大部分の相当多くの事件というものが警察みずからが訴追をする、こういうような制度の上にでき上がっておるということが第一点でございます。 それからもう一点は、これまたつとに御承知のとおりのいわゆる弁護士の二元制度でございます。つまりバリスターとソリシターというものから成り立っておって、バリスターというものが非常に高い地位のものである。同時に、ソリシターというものが非常な数がおりまして、たとえば警察の中にもソリシターがいるというような、あるいは警察の仕事をおもにやっておるソリシターがいる。こういうようなすそ野があるわけであります。そういうソリシターのすそ野の上に築き上げられましたバリスターでございますから、そのバリスターというものは、日本の現在の弁護士とはかなり性格の違うもののようでございます。 しかし、もしかりに日本で百年なり二百年かかってそういう制度が逐次でき上がってまいりますれば、それはあるいは司法制度としては非常に好ましい形であるかとも思うわけでございますけれども、しかし、それを直ちに、たとえば法律へ取り入れてそういうものをつくるということは、おそらくそう容易なことではあるまいというのが、臨司の結論になって、御承知のような意見書が出たわけでございます。そういう点からまいりまして、その一部分だけをとってやるということには、なかなか問題があるのではないか。ただしかしながら、学ぶべき点は非常にあるというのが、これはあるいは私個人の感想かもしれませんけれども、たとえば臨司でもそういう意見が比較的多かったように記憶いたしておるようなわけでございまして、個々の裁判官で岡沢委員にそういうお話を申し上げる方もきっとかなりいると思いますけれども、そういう場合に、いろいろそういう前提があるということも、ひとつ御理解をいただきたい、かように考えるわけでございます。
○岡沢委員 局長の御答弁もごもっともだとは思うのですけれども、いまのこれだけスピード化した時代に、三十年、五十年を待ってという意味で私は質問しているのではなしに、またそのままイギリスの制度を直ちに日本に採用するということを御提案申し上げておるわけではなしに、検察官の不足という現状をも踏まえながら、ある意味では日本におきましても司法研修所制度を通じまして法曹一元化の一歩を踏み出しておるわけでございまして、また弁護士にその意味では責任とあるいは公益的な自覚を与えるという意味からも非常に大きないい刺激になるというような面も踏まえまして、前向きで日本に合うような方向で御検討いただく価値のある問題ではないかということで、問題の提起をさしてもらったわけでございます。 法務省のほうから、これについて何かお答えをいただけるようでございましたら、お願いいたします。
○影山説明員 いまのバリスターによる公訴の遂行の問題でございますけれども、いま最高裁総務局長からお答えしたと同様な感じを持っております。 問題は、何ぶんにも人為的につくった制度ではなくて、全く沿革的に発達してきまして、総務局長のお話によりますように、弁護士一つを取り上げても、ソリシターとバリスターと分かれておるというような事情がございまして、ヨーロッパの主要諸国でもイギリスだけの制度でございますので、ただ国を当事者とする訴訟に、先ほど岡沢委員もおっしゃったように、検事をもって指定代理人にするほかに、弁護士さんにお願いして訴訟を遂行していくということもあり得ますが、これを公訴全体に取り入れるについては、要するに木に竹をついだようにならないように、十分検討する価値がある問題と考えております。
○岡沢委員 この問題は、私が弁護士であって、検察庁となわ張り争いをするという気持ちはさらさらございませんのですが、ぜひ前向きで、しかもおっしゃるように、歴史的な諸条件がイギリスでこういう制度を生んだということはわかりますけれども、しかし、イギリスと日本というのはわりと似た面もあるわけでございますし、やっぱり思い切った頭の切りかえということも、先ほど申しました生産性の向上と結びつけて必要ではないか。すべての制度、それはまあその国の歴史とか諸条件を無視して考えられてはいかぬこともわかりますけれども、しかし、それでは、その土地に育ったものしか取り入れないということでは、私は少し保守的過ぎるという感じがいたしますので、新しい視野からの御検討をお願いいたします。 で、質問を変えるわけでございますけれども、いま弁護士会等においても、地裁、簡裁の事物管轄の問題が大きく議論されているわけであります。特に民事の場合、総額が十万円以下というのはいかにも現在の実情に合わないという感じがいたしますが、これについての裁判所の御見解を聞きます。
○寺田最高裁判所長官代理者 ただいま岡沢委員からお話がありました事物管轄の調整の問題は、実は裁判所としては、当面の最も緊急かつ重要な問題点であるとして、つとに取り組んでまいっておるわけでございます。御承知のとおり、先ほど来たびたび引用いたします臨司の意見書におきましても、金額その他の範囲は明示しておりませんけれども、事物管轄を調整すべきだ、むしろ簡裁の事物管轄の範囲を拡張すべきだ、こういう答申になっているわけでございます。ただ、その具体的な範囲については、いわば法曹三者で話し合うというのが臨司の趣旨であるようでございます。 そこで、臨司が終わりまして、すぐ私どもとしては法務省にも御連絡し、また弁護士会にもお願いして、法曹三者で、場合によりますれば学者も加えまして法曹四者で、委員会なり何らかの会合を持ちまして、この問題をも含めます幅の広いいろいろなお話し合いをしてまいりたい、かように考えたわけでございますが、御承知のとおりの弁護士会のいろいろな御事情がありまして、なかなかその会合が開きにくいわけでございます。弁護士会のほうでは、弁護士会と裁判所、弁護士会と法務省となら話し合いはするけれども、法曹三者なり法曹四者の集まりでは話し合わないというような御方針のように承っておるわけでございます。で、そういうことであればしかたがないから、裁判所と弁護士会、裁判所と法務省、あるいは法務省と弁護士会がおやりになればおやりになる、こういうことで、私どもとしては法務省ともお話し合いをしながら、弁護士会とお話し合いを進めてまいっておりまして、すでに五年近くの日時が経過いたしておるわけでございます。その話し合いの席上におきましても、なかなかこの事物管轄の問題に入ること自体について非常に御異論がおありになりまして、案の提案自体ができないような状況でございます。私どもいたしましては、これはこまかい数字をいま読み上げることは省略さしていただきたいと思いますけれども、特に民事の場合には、昭和二十九年にきまりましてからすでに十五年を経ておりまして、当時地裁のほうが約四割、簡裁のほうが約六割ということでございましたのが、今日では逆転いたしておるわけでございます。その間に消費者物価にいたしましても、その他の公務員給与あるいは景気の上昇、その他いろいろな要素も考慮いたしますと、少なくとも二倍ないし三倍に引き上げることは、これは拡張ではなくて、むしろ単なる調整である、かように考えまして、いろいろお話し合いをしておるわけでございますけれども、御承知のとおりの日弁連の総会の決議というものもございます関係もございまして、話し合いが非常に難航しておるような状況でございます。しかしながら、今後とも粘り強く話し合いを進めまして、やはりこういう問題は、できれば弁護士会の御協力を得て法務省にお願いして法案を出していただきますことが、いろいろな意味で好ましいことで、弁護士会といわば衝突した形で法案をお願いするということは好ましいことではないというふうに考えますものでございますから、いままで粘り強くやってまいっておるわけでございます。ただ現状は、まことに遺憾ではございますけれども、なかなか前進しないような状況で、ほんとうにそういう意味では無力感に打たれておるというのが実情でございます。
○岡沢委員 これは局長を責める気持ちはないわけでございますけれども、問題になってからでも五年間、私もこの問題を議題にした大阪の弁護士会の会に出たことがありますけれども、文字どおり小田原評定で、私は裁判所が弁護士会に気を使われることもわかりますし、できることならば法曹三者、あるいは学者も交えて四者で一致した結論が出ることが望ましいことは言うまでもありませんけれども、しかし、全く時代に合わないということも明らかであります。これは提案権は法務省にあるわけなんでして、結局は国会において議決をすればいいわけであります。あまりに気を使い過ぎられまして、結局は国民のための裁判ということが忘れられて、弁護士のための裁判所であったり、また裁判所のための裁判所であったりしてはならないわけでございますから、私は、これはやはり立法機関であり、国権の最高機関である国会の場に法務省として思い切って素材としてお出しになる、そうしてこの場で大いに議論を戦わして、多数に従うということが正道ではないか。ここにお出しになるまでに議論をし尽くされるということは、いわばある意味では国会軽視ということも言えるわけでございます。法務省に確信がおありになれば、これは日弁連の意向を全く無視していいという趣旨で発言するのではなくして、日弁連内部にもいろいろ意見があるわけでございますから、それだけに、私は独自の見解で公益の代弁者の立場から法務省の勇気をお願いしておきたい。法務省の御見解を聞きます。
○寺田最高裁判所長官代理者 法務省からお答えいただきます前に、ちょっと先ほどの説明を補足させていただきたいと思いますが、岡津委員お話しの点は、もうお話のとおりでございます。私どもも、決して弁護士会との間で完全に話を煮詰めた上で法務省にお願いするという気は、毛頭持っておらないわけでございます。毛頭持っておらないと申しますか、必ずしもそれを期待して、そうでなければならないと考えておるわけではないわけでございます。ただ、従来の経緯がございますから、一応私どもの意見も述べ、先方の意見も伺って、そうして先方の御趣旨がどういうところにあるかということぐらいは整理をして、そうしてこういう意見の対立があるという形で法務省へ持ち込めば、法務省でさらにいろいろ立法作業等をお進めいただきますにつきましても、少なくともその賛成論、反対論の焦点がはっきりするであろう。それだけのことはいたしたいと考えたわけで、決して論議をし尽くして云々、国会軽視というような気持ちは毛頭ないわけでございますので、その点はひとつ御了解いただきたいわけでございます。そしてまた同時に、確かに五年というものは非常に長い日数でございますが、しかし、これについて詳しく御説明申し上げますと、非常に長くかかりますし、弁護士であられる岡沢委員もある程度御存じのことかと存じますので、省略いたしますけれども、いろいろの経緯がございましてこういうことになってまいったわけでございます。しかしながら本日、弁護士であられる岡沢委員からこういう御激励をいただきましたことは、私どもとしては非常に心強く感ずる次第でございまして、そういう趣旨によりまして、今後弁護士会とも積極的に話を進める方向で努力をいたしたい、かように考えるわけでございます。
○影山説明員 この問題は、非常に重要な問題でありまして、五年近くの歳月を費やしたわけでございますけれども、裁判所からもいまお話がありましたように、論点、資料等を、まず事の性質上裁判所がいろいろなお考え方をお示しになって、それによって立法にかかるというようにいたしたいと考えておりますので、なお裁判所とも常に緊密な連絡をいたしまして、前向きの姿勢で取り組んでいきたい、こういうふうに考えております。
○岡沢委員 私のきょうの質問の全体を通ずる趣旨は、裁判の迅速化、能率化、生産性の向上なんです。この事物管轄も、大きくこれに関係があると思うんです。お答えにくいかと思いますけれども、やはりこれは一つのめどということが必要だと思います。国会の場合も、非常に非能率な運用をして国民からおしかりを受けておりますけれども、一応会期というめどがあって、場合によったら深夜国会もやるわけでございますから、この事物管轄ということについて、やはり法務省として、あるいは裁判所の御希望として、これは先ほど寺田総務局長がお答えになりましたように、全く時代に合わないわけでありますから、まあこの国会が無理であっても、この辺でぜひ提案をしたいというようなめどづけについての心づもりでもけっこうですが、一応おっしゃっていただかないと、これは弁護士会自体も責任があると私は思いますけれども、ほんとうにきまらない。田中先生もここにおいででございますが、弁護士というのはお互いに一言居士が多うございまして、理屈ばかりを繰り返しているという感じがなきにしもあらず、私自身が弁護士でありますから申し上げてもいいと思いますけれども、日弁連の意思統一、これは私は非常にむずかしいような気もいたします。それだけに、むしろ主導権を——別に日弁連の意向を無視してくれという意味ではありませんけれども、それをも結論の出るのを待ってというのであれば、おそらくそれは全くめどづけできない。しかし、事情は変わっているということを考えました場合、やはり提案権をお持ちである法務省が、独自の見解で、独自の御判断で改正案を国会に御提出になるというのが、むしろ職務に忠実なゆえんではないかと思うわけでございますので、その辺についての見通しを聞きたいと思います。
○高橋委員長 岡沢委員の質問は、全法務委員の共鳴するところでありますから、ひとつ力強い答弁をしてくださいよ。
○影山説明員 先ほど最高裁総務局長からもお話がありましたように、裁判所もこの問題については真剣に取り組まれておられまして、法務省も、何らかの時期にはぜひこれは事物管轄の問題を解決しなければならないということを、十分に考えておるわけであります。したがいまして、なお若干の時日を拝借して、大いに検討をしたいというふうに考えております。
○岡沢委員 法務省としてはお立場上これ以上言えないかもしれませんが、いまお聞きいただきましたように、法務委員長、自民党の御所属で、しかも弁護士であります、御賛成の御趣旨の発言がございましたが、国会に出していただきました場合、これはおそらく与野党とも反対意見があまりなしに——これはもちろん法案の内容を見なければわかりませんが、方向としては改正を要するという気持ちは、国民の代表である議員の立場から、私は当然期待してもらって間違いないのではないかというふうに感じますだけに、御勇断をお願いいたします。 次に、先ほど来私は裁判の迅速化と結びつけて、裁判官をふやすことに反対ではないけれども、しかしそれがすべてではないし、むしろ個々の裁判官に優秀な人材を得て、しかもその方々が能率的に運営していただけるような諸条件を完備する、人的な配置の問題も含めまして質問さしていただいたわけでございますけれども、そういう意味から、私はもう一つ、裁判所の、あるいは裁判官の補佐役として書記官という立場がございますが、この書記官に人を得るかどうかということも、裁判迅速化と大きな問題があるような感じがいたします。待遇の問題その他もございますけれども、やはり書記官に人材を得るための一つの方法として、書記官から裁判官に昇進する道が開かれておるということも、人材が書記官に集まるゆえんでもあろうかと思います。御承知のように、いま大学出の法学部の卒業生は、非常に数多いわけであります。また、司法試験を受ける学生の数も、きわめて多い。ところが、修習生に採用されるのは限度がある。かりに書記官なり、あるいは裁判所事務官なり、あるいは場合によったら速記官なり、そういう立場から、裁判所部内からの裁判官への昇進の道が開かれた場合には、非常に勇気づけにもなるし、人材を集める一つの方法ではないかという感じがいたします。もちろん書記官が職務を離れて司法試験の勉強ばかりされては困りますけれども、そういうことではなしに、むしろ内部でまじめな書記官、能力のある書記官は、内部裁量によってでも裁判官への道が開かれる。これは常時、裁判官が書記官には接しておられるわけですから、その能力、法律的素養その他は御判断できる機会があるわけなんで、必ずしも試験制度でなくても、私はその公正が担保されるのであれば、裁量によっても昇進の道というものは開いてもいいのではないか。これは大きな制度上の問題はありますけれども、現在まででも、もちろん簡裁の判事その他への道は若干開かれておりますけれども、実際にその数はきわめて少ないし、もしくは狭いと見てもいいのではないかと思いますが、この辺についての最高裁の御見解を伺いたいと思います。
○寺田最高裁判所長官代理者 ただいまお話しのような問題は、非常に重要であり、かつきわめてデリケートな要素を含んだ事項であろうと存じます。私ども書記官あるいは事務官その他の、俗にいわゆる補助職員といいますか、一般職と申しますか、そういう裁判官以外の裁判所の職員の待遇という問題、それからそれの昇進といいますか、将来という問題については、常々心を痛めて配慮いたしておる問題でございます。 で、その場合にいろいろなルートが現在でもすでにあるわけでございますが、たとえば書記官研修所で現在相当高度の教育をいたしておりまして、こういう諸君はある程度の書記官の実務をつとめますと、かなりの者が司法試験に合格してまいっておるようでございます。これはむろんそれぞれの個々の人間の実力の問題でございまして、一般の待遇の問題ではございませんが、ある意味では書記官陣営というものの実力のつきましたことの一つの反映であると思います。ただ、部内の制度といたしますと、いま御指摘の特任簡裁判事に採用するという道でございます。これもいまお話しのとおり、全体の書記官の数から見ますると、非常に狭い道であろうと思います。しかしまた、同時にこの道をあまりに広げますことは、これはある意味において先ほど来問題になっております簡易裁判所の権限をどうするかという事項と関連を持ってまいるわけでございます。先ほど来いろいろ弁護士会との関係で御説明申し上げました中には、簡易裁判所の裁判官の素質というものに伴います弁護士会側の御不満というものが相当な要素として入っているということは、私どもも十分理解しておるわけでございます。そういうことでございますので、実は十年余り前から特任簡裁判事の採用につきましても、相当厳格な選考試験をいたしまして採用するということになってまいっておりまして、そういう関係で、おそらく法廷で御接触になりますいわゆる特任簡裁判事も、簡裁の発足当初の特任簡裁判事と比べると、相当質的に変わっているということもお認めいただけると確信するわけでございますが、ただ、そういうことになりますと、逆に今度は書記官諸君が簡裁判事になってまいるという道は、それだけ険しくなるということは免れがたいと思います。しかしながら、これはある意味ではやむを得ないことでございまして、書記官は簡裁判事にすることによって優遇するということが本筋であるべきではなく、やはり書記官は書記官として、あるいは事務官として待遇もよくし、また働きがいのある仕事にしてあげるということのほうが、ある意味では本筋であろうかと思います。そういう意味で、御承知のとおり、書記官については一六%の号俸調整というものが特別に認められておるわけでございますし、またいろいろな主任書記官以上の職の者につきましては、それぞれ最高二四%までの管理職手当等がつくということになっておりまして、そういう点では相当な待遇になろうかと思います。その基本になります号俸自体が一等級、二等級というところの書記官も相当おるわけでございまして、われわれ公務員の給与全体の水準はどうかということは別といたしまして、一般の職員として一等級、二等級という地位は、これは一般の行政官の方々と比較しても相当な地位であるわけで、そういう地位に書記官の方をつけておるということは、われわれはそういう点についていろいろ配慮いたしておる一つのあらわれであるわけでございます。そういう意味で、今後ともこういう等級を上げていく、それからなお調整の問題につきましても十分検討を加える、そういうことで書記官自身の待遇を高め、また書記官の権限を広めていくということが、書記官に対する一つの励ましになるのではないか、かように考えておるわけでございます。
○岡沢委員 私も、いまの局長のお答えのとおりに、必ずしも書記官から判事あるいは簡裁判事への道を開くことだけがいい人材を集める道とは思いません。むしろそれは邪道かもしれませんが、しかし、大学出身の若い書記官も多い、また書記官研修所で勉強した有能な書記官もおる。そういう人の場合に、希望を持たせてやるということも、やはり法曹が門戸を閉ざして独善におちいるということの反省の意味からも必要ではないかというふうに考えまして、これも将来の問題としてぜひ御検討をいただきたいということでございます。 もう一点その点についていいますと、いままでの特任簡裁判事の場合、大体書記官としては功なり名を遂げたといいますか、年齢のいった人が多過ぎて、それが簡裁の判事になりますから、やれやれということで、どうしても弁護士から見ても、当事者から見ても、ちょっと信頼するに足らない方々があり得たんだと思います。むしろ私は、大学出の若い書記官に若い時代に簡裁判事の道を与えるということも、一つの道ではないかということで御提案さしていただきます。 最後に、地裁、簡裁、家裁の調停委員の問題でございますけれども、平均年齢大体どれくらいになっているか。もし御資料がありましたら、お答え願いたいと思います。
○寺田最高裁判所長官代理者 調停委員の平均年齢は、地裁と簡裁は大体民事で一般的に採っておりますので、大体六十五歳程度でございます。それから家裁のほうは、それよりは若干低い六十三、四歳という平均年齢になっております。家裁のほうは、どうもかなり御婦人の方が多いということも、ひとつ関係しておるかと思います。そういう程度でございます。
○岡沢委員 この調停委員の選任方法、これはどういうことになっておるのか。もし家裁と簡裁違いましたら、分けてお答えいただきたいと思います。
○寺田最高裁判所長官代理者 この調停委員の選任につきましては、最高裁判所の規則として調停委員規則というものがございます。その調停委員規則というものに基づきまして選任することになっておるわけでございます。最終の責任者は裁判官会議でございますが、それについては、それぞれ各方面の御意見を伺うことになっておる面がございます。規則上そういうことになっておりますのは、たとえば公害関係の調停委員等について、通産省関係のほうの御意見を伺うということがおもでございます。ただ規則にはそうなっておる程度でございますが、実際の運用といたしましては、かなりの数が弁護士からなっていただいておるわけでございまして、それにつきましては弁護士会の御推薦を仰ぐということになっております。それからまた、最近交通事件の関係の調停が非常に多くなってまいりましたので、そのほうの関係の調停委員を依頼いたしておるわけでございますが、それにつきましては、たとえば医師の方をお願いするについては医師会、それぞれの土地の医師会の御推薦を仰ぐ。それからまた交通安全協会というのが各地にございます、そういうところの御推薦を仰ぐこともあるというようなこともいたしておるわけでございます。なお、ところによりましては、調停協会というものがございます。その調停協会の御意見を伺うという扱いをしておるところもあるようでございます。大体、そういうのが選任の実情でございます。
○岡沢委員 いま年齢について御答弁がございましたが、地裁、簡裁で六十五歳、家裁の場合で六十三、四歳、まあこの年齢から見て、私が提案さしてもらわなくても、問題があるということは御理解いただけると思います。これだけ急速な時代の進歩、冒頭に大学紛争に触れましたけれども、やはりある意味では学生と教授、教官との感覚のズレということも、大学紛争の一つの原因であろうと思う。調停委員は、生きた事件を処理していただく重要な職責であります。調停委員のための調停であってはならないわけでございます。ところが、いま選任方法についても御答弁ございました。規則上はそのとおりでございましょうけれども、実際は、弁護士の場合は、もう第一線の弁護士としてはあまり体力的にも、頭の点でも、御自信のない方がむしろ調停委員を買って出て、まあ余生を楽しんでおられると言うと語弊がありますけれども、もちろんそうでない有能な、あるいはまた健在な委員さんも弁護士出身でもおられますけれども、一般的な傾向としては、むしろ実際の実務、実際の事件はやらないけれども、調停委員で、ちょっとことばに語弊がありますけれども、生活の手段としておられるという方もなきにしもあらずでございますし、また弁護士会の調停委員の選任の場合は、大体いままでの調停委員の方々が、自分の新しい人を推薦してこられる。形式上は裁判官会議でおきめになるようでございますけれども、実際には人選の範囲といいますか、門戸は非常に狭い、片寄り過ぎておるというのが実態ではないか。いま御答弁ございましたように、確かに交通とか公害とか特殊の部門については、特定の専門的な委員をお選びになる事実もあるようでございますけれども、それはもうきわめて少ないし、その人たちは常任の調停委員でない場合のほうがむしろ多いわけでございます。全体の空気としては、感じとしては、どうしても時代のズレを感ずるような方々に調停委員として御就任いただいている場合が、各地とも多いのではないかという感じがいたします。事件そのものは生きたものでございますし、やはり時代を反映したものである。六十歳をこえておられるとなれば、みな明治の方々でございますが、事件を起こす大部分の人は、若い大正、昭和生まれの人が中心だろうと思います。お年寄りになられてからは、おそらく事件らしい事件はない。もちろん調停委員の場合、長い人生経験による貴重な御体験が解決の非常に大きな示唆になる場合もなきにしもあらずでございますけれども、しかし、現実の実生活を第一線でやっておられない方々、あるいは新しい教育とは全く違った環境、そういう教育をお受けになった方々が、はたして解決の任に当たっていただくのが適当かどうかということは、この辺で検討すべき時期に来ているのではないか。調停委員の選任方法、特に年齢等も踏まえて、御抱負があれば、あるいは御見解があれば、聞かせていただきたいと思います。
○寺田最高裁判所長官代理者 いま岡沢委員から御指摘のありました調停委員の高齢化という問題、これも実は私どもかねがね問題にしておる事項でございますし、高齢化の防止ということについても、いろいろな対策を検討もし、ある程度は実施もいたしておるわけでございます。ただ、実際に非常にむずかしいと申しますのは、適任の方が若い方の中に決してないわけではない。それもたとえば二十とか二十五ということではちょっと問題にならないといたしましても、少なくとも四十とか四十五という方の中には、非常に適任の方も多々おられるわけでございます。しかしながら、そういう方は、いま岡沢委員からお話しございましたように、社会の第一線で非常に忙しい仕事にタッチしておられる。そこで、なかなかよほどの方でないと引き受けていただけないわけでございます。そうかといって、四十や四十五でいわば遊んでいるというような方では、それは必ずしも調停委員にふさわしいか、疑問になるわけで、そういう忙しい方にこそお願いしたいわけでございますが、そういう忙しい方にはなかなか引き受けていただけないというところに悩みがあるわけでございます。しかし、常にそういう点は、所管であります民事局なり家庭局から各地の所長に十分連絡しまして、できる限りそういう方向で選任するように指導はいたしております。そうして、それぞれ各地でくふうをして、決して毎年マンネリでやっておるというわけではございません。毎年更新することになっておりますので、その際に相当慎重に検討はいたしておるようでございますが、結果はやはりいまのようなことになっておるというのが実情でございます。 ただ、一つつけ加えさせていただきたいと存じますのは、これは調停委員、調停委員と私ども俗に呼び、いまのお話もそういうお話でございましたが、これは正確には調停委員に選任されるべき、指名されるべき地位にある者、いわば調停委員候補者でございまして、実際の調停委員というのは、それぞれの事件のときに裁判所から指名するのが調停委員であることは、これは申すまでもないことでございます。そこで、こういうふうに全体の調停委員の年齢はかなり高年齢になっておりますけれども、各裁判官がそれぞれの事件について選任いたします際には、相当その点を慎重に配慮して、そして事件事件に応じて年齢のふさわしい人を選ぶという配慮は、かなりいたしておるわけでございます。特に民事の関係では、多くの場合に一人は弁護士さんを加えるのが普通でございますし、弁護士さんの場合には、特別の方以外には、年齢による差というのはそう多くはないのではないかというふうに考えられます。そういう点で、実際の指名につきましては相当な配慮をいたしておりますし、それからなお、家庭裁判所などでは、家庭裁判所の調査官というものも、調停についてもいろいろな補助をさせたり、調査をさせたりすることができるようになっております。そういうものに、ある程度若い感覚を注入する一つの手だてとするというような配慮も、いたしておるわけでございます。しかし、お話しの点はまことにごもっともなことでございまして、今後ともそういう線で努力してまいりたい、かように考えておるわけでございます。
○岡沢委員 御答弁、そのとおりだと思います。むずかしい問題もあるかと思いますけれども、しかし、門戸を広く広げてもらった場合に、いまの調停委員の知人だけをさがす、あるいは裁判官の個人的なつてを通じて調停委員をさがすということは、確かにむずかしいかもしれませんけれども、案外たとえば定年の早い役所あるいは会社等もございますし、特に教職員の方々で、年齢のいった方なんというのは——日教組の思想に幻惑された方は困りますけれども、そうでなければ、調停委員の適任者というものは、わりあいに多いと私は思うのであります。そういう点で、広い視野からお求めいただく。もちろん日当その他の問題もございまして、現在の調停委員に与えていただいておる手当で、十分かどうかという問題もあるとは思いますけれども、特に有能な方に無理をして頼んだ場合には、別途に報酬等の道も、これは考えてもいいのではないかということも含めまして、ぜひ年齢、選択の範囲等について御検討いただきたいということをお願いいたしまして、私の質問を終わります。 ————◇—————
○高橋委員長 次に、内閣提出、犯罪者予防更生法の一部を改正する法律案を議題として、質疑に入ります。 質疑の申し出がありますので、これを許します。大村襄治君。
○大村委員 まず、法務省にお尋ねいたしますが、地方更生保護委員会の組織と業務の内容につきまして、簡単に御説明をお願いしたいと思います。
○鹽野政府委員 地方更生保護委員会の組織について、まず御説明いたします。 地方更生保護委員会は、法務省の地方支分部局でございまして、全国に八個所置かれております。八個所と申しますと、ちょうど高等裁判所の所在地と同じ場所に置かれているわけでございます。その組織を簡単に申しますと、委員と事務局職員というものから構成されているわけでございます。 業務につきましては、主として仮釈放の審査と、それから管内の保護観察所の事務の監督ということを担当しているわけでございます。
○大村委員 次に、地方更生保護委員会の委員の数、身分、任命方法等はどうなっておるか、お尋ねします。
○鹽野政府委員 委員の数は、全国八個所の他方更生保護委員会の委員総数で四十四名でございます。 それから身分は常勤の国家公務員でございますが、普通の公務員と違っておりますことは、任期制になっているということでございます。任期は三年と定められております。 それから任命につきましては、普通の公務員と同じように、法務大臣の任命でございます。
○大村委員 今回の改正案におきまして、委員を増員するようになっておりますが、その理由は何ですか。
○鹽野政府委員 今回の犯罪者予防更生法の一部改正法律案でございますが、その内容は三点ございますが、その第一点が、ただいま御指摘の委員の増員の問題でございます。この委員の数につきましては、お手元に犯罪者予防更生法の一部を改正する法律案参考資料という数枚つづりの資料を差し上げてございますので、ごらんいただきたいと思います。この資料の一番最後のページ、ページ数で申しますと九ページでございますが、この「各委員会別の新委員数および部数等」という一覧表でございます。この下の欄に「旧委員数」と書いてございます。すなわち関東で九名、それから一番左の四国が三名ということで、その他は五名ないし六名、こういうことで、全体で四十四名ということになっております。 ところが、仮釈放等の事件が非常にたくさんございまして、委員の負担が非常に大きいわけでございます。その状況は、さらにその一覧表の下の欄に書いてございます。これは四十二年の統計でございますが、三万一千六百七件という数を処理しているわけでございます。かような状況でございますので、委員の増員をはかりまして、負担の軽減をはかり、事務を能率化させよう、こういうところにねらいがあるわけでございます。
○大村委員 いま、事件の数が多くて事務の負担が大きいというお話があったのですが、全体の件数は九ページの資料でわかりますけれども、委員の一人当たりの事務量は一体どのようになっているか。また、地方の委員会によって繁閑の差があるようでございますが、その辺の実情はどうなっておるか、お尋ねいたします。
○鹽野政府委員 先ほど申し上げました一覧表で、四十二年の統計で申しますと、仮釈放等の事件が三万一千六百七件ということに相なっております。この表をごらんいただきますとおわかりのように、関東の地方委員会での数が九千九百二十八件ということで、現在関東地方更生保護委員会の委員が九名でございますので、一人当たり年間に一千百件の仮釈放等の事件を処理する、こういうことになるわけでございます。それからその次に事務の負担の大きいのは、近畿でございます。これは五千八十一件に対して委員が六人でございますので、委員の一人当たりの負担は年間八百四十七件というような数になっているわけでございます。現在のところ、この一覧表から見まして、一番負担量の少ないのは中国でございます。中国は二千二十二件、年間でございますが、委員が五人で、平均いたしますと約四百四件、一人の委員の負担が四百四件ということでございます。 このように、委員会によりまして若干のアンバランスがございますが、特に関東、近畿というようなところの負担が、非常に大きくなっているわけでございます。 それからさらに、これは仮釈放等の事件ということで件数をあげてございますが、これは刑務所からの仮釈放で出す、それから少年院から仮退院で出すというほうの数字だけをあげているわけでございまして、御承知のように、仮釈放で出所いたしますと、保護観察に付せられることになりまして、保護観察をしておりますうちに再犯におちいったとか、あるいはまた順守事項に違反するというようなことで、保護観察ではまかないきれないというような状況になりますと、仮釈放を取り消しまして、また刑務所へ戻すということになるわけでございます。少年院の仮退院につきましても同様でございます。これは家庭裁判所が戻し収容するということになります。この家庭裁判所に対しまして、戻し収容申請というような手続をするわけでございます。このように、ここに掲げてあります件数は、出すほうの件数だけでございまして、このほかに、成績の悪い者をまたもとの施設へ戻すという手続決定もあるわけでございます。これが全国を通じて、年間大体三千件ほどございます。私どもこれを特殊事件と申しておりますが、これだけの件数が、特殊事件として各委員会、各委員の負担になっている。こういうような現状でございます。この面から申しましても、かなりな大きな負担になっている、こういうことでございます。
○大村委員 仮釈放、仮退院だけでも、一番多い関東では一人当たり年間千百件、比較的少ない中国でも一人当たり年間四百四件、いずれも一年三百六十五日で一日に一件以上に当たるわけでありますが、まさか出たものをめくら判を押すわけでもないので、一体仮釈放の審理手続というのは、どういったような手順を踏んで、また一件当たりの審理期間はどのくらいかかるのか。また、刑法の二十八条、これによりますと、三分の一以上とか、そういう一定の期間が来ますと、通知があってそれをやるようになっておりますけれども、刑期のどのくらい過ぎた人に対して仮釈放などが行なわれるのか。その辺の事務の実態と申しますか、実情について、あまり長く言われますと長くなりますから、ひとつ要点を簡単に、わかりやすく話していただきたいと思います。
○鹽野政府委員 仮釈放の審理手続並びにその実情についての御質問でございます。 仮釈放と申しましても、刑務所から仮釈放になる仮出獄というもの、少年院から出てまいります仮退院というもの、それから拘留刑に処せられている者につきましての仮出場、いろいろあるわけでございます。 まず、代表的な仮出獄について、概略を御説明いたします。仮釈放の審理に入ります前段階がございますので、それを一言つけ加えさしていただきます。受刑者が刑務所に入りますと、刑務所のほうでは直ちに本人からいろいろ事情を調査いたしまして、身上調査書というものをつくります。そして、なるべく早い機会に、本人が釈放になった場合に帰る場所、帰住地と申しておりますが、帰住地の保護観察所に、その身上調査書を送ります。保護観察所では、担当の保護司をきめまして、保護司が帰住地の環境の状況を調査する。また必要に応じてこれを調整させる。こういう手続をとるわけでございます。そして、保護司のほうから環境調査調整報告書が観察所に戻ってまいります。そういたしますと、この環境調査調整報告書を本人の収容されております刑務所に送りますと同時に、担当の地方更生保護委員会にも送る、こういうことになるわけでございます。刑務所は自分のところに収容している受刑者の生活状況はよくわかっておりますが、さらに、釈放後の環境の状況というものも知ることができるわけでございます。そうこうしているうちに、だんだんと刑期が進行いたしまして、仮釈放の時期が近くなってくる。さらに刑の執行の成績を見ておりまして、刑務所としてはもう仮釈放してもよかろうという段階になりましたときに、地方更生保護委員会に対して仮釈放の申請をする、こういうことになるわけでございます。 そこで正式の仮釈放の審査が始まるわけでございますが、その際に、委員会といたしましては、最初の身上調査書、それから環境調査調整報告書、それから仮釈放の申請書というような書類をこまかく検討いたしまして、必要な場合には裁判記録も取り寄せて検討いたします。裁判記録を検討いたしますと、御承知のとおり、本人の生育歴とか、それから犯罪の動機とか、犯罪後の本人の心境、あるいは裁判時の本人の態度、心境というようなものも、ある程度明確にすることができるわけでございまして、このような記録の検討をいたしまして大体問題点を把握いたします。それから担当の委員が、これは私どもは主査委員と申しておりますが、施設に参りまして本人に面接する。そしていろいろ問題点について質問をし、話を聞く。実際問題としては、面接の結果、さらに新しい問題がいろいろできてくるというのが実悟のようでございます。そこで戻りまして、またそういう面につきまして記録の調査をする。さらに必要に応じて保護観察所等に調査の依頼をする、照会をするというような手続が行なわれる。さらに面接の必要があれば、二回、三回と面接を重ねることもあるわけでございます。このようにして審査が大体主査委員の手元で終了しました段階で、委員の合議にかかるわけでございます。三人の委員の合議によって仮釈放が相当であるか不相当であるか、あるいは相当の場合にはいつ仮釈放をするのが最も本人のために役立つかというような結論に達しまして、最終の決定がなされる、こういうことでございます。 大体手続はそのようでございますが、それでは申請を受け付けてから結論が出るまで、審理期間がどれくらいかかるかという点でございます。これは大方の事件は申請を受けましてから二月あるいは三月というのが大部分でございます。ただし、いま申し上げましたように、事件によって非常にいろいろな問題を蔵している事件もございますので、さような事件につきましては、中には六カ月ぐらいかかっているのもございますし、まれには一年くらいかかるというような事件もあるわけでございます。 それから審査の結論でございますが、仮出獄の事件につきましては、従来の統計を見ますと、大体申請の八五%程度が許可になっているというような状況でございます。少年院の仮退院につきましては、もっと許可の率が高くなっております。九〇%をはるかにこえるような率になっているようでございます。 それから先ほどお尋ねの中に、どの程度刑の執行が終わった者が仮釈放になっているかというお尋ねも含まれていたように存じました。この点につきましては、大体従来の統計を見ますと、刑期の七割あるいは八割以上の執行を受けたというものが仮釈放になっているという数が大部分でございます。 以上、概略でございますが、お答えいたしました。
○大村委員 伺ってみますと、なかなか複雑な、たいへんな仕事だと思うのでありますが、今回の改正案によりまして、委員は四十四人が五十二人と、全体で八人ふえることになっておりますが、この程度の増員によって事務処理上どのような効果が期待できるか、この点の御説明を願いたいと思います。
○鹽野政府委員 ただいま申し上げましたように、事件数が非常に多いわけでございまして、この点を解決するために委員の増員をはかる、そして事務処理の能率化をはかる、こういうことでございます。したがいまして、先ほどの参考資料の最後の一覧表にございますように、増員分八人を平均にばらまくということではございませんので、私どもが計画しておりますのは、非常に事件数の多いところに重点的に配置をしていこうということで、先ほどの表の上の欄に、「委員数」と書いてございますが、これが私どもが増員を認めていただきました場合に配置しようとする人員の数でございまして、関東に三人、近畿に三人、それから中部、つまり名古屋でございますが、ここに一名、それから北海道に一名、こういう増員を計画しているわけでございます。事務の負担量から申しますと、北海道はそれほど大きな負担量ではございませんけれども、御承知のとおり何ぶんにも地域が非常に広うございまして、仮釈放するにつきまして、一々委員が施設に面接に行く必要がございまして、さような地理的な事情もあわせて考慮いたしまして、特に北海道につきましても一名増員する、こういう措置をとりたいと考えているわけでございます。 かような措置をとりました結果、事件数が——まず見当で申しますと、先ほど申しましたように委員一人の年間負担数が千百件余りでございますが、これが三名の増員によりまして年間八百二十七件という程度に負担量を軽減することができるわけでございます。近畿につきましても、同じような割合で負担が軽減するわけでございます。かなり審理を充実させ、また能率化させることができるだろうというふうに期待しているわけでございます。
○大村委員 大体わかりましたが、なお関連してお尋ねしたいのですが、委員数五人という割り当てのところは、三人の合議制の組み合わせばどうなるのでしょうか。三人の倍数の六人、九人、十二人ならわかりますが……。
○鹽野政府委員 まことにごもっともな御指摘でございまして、委員会の現実の審理の場合の構成員数は、一応三人でございます。したがいまして、本来は、三の倍数でなければおかしいわけでございますが、従来それだけの員数がございませんので、このような場所によっては五人ということになっておりますが、五人のところは、二部構成をいたしてございます。委員の一人が二つの部をかけ持ちしているということで処理しているわけでございます。
○大村委員 次に、今回の法改正において、事務局長を委員の兼務でなく、専従制にすることにいたされておりますが、その理由は何であるか。また、事務局長を専従制にすることによって、専務局の運営上どのような効果が期待できるか。この二点についてあわせて御説明願います。
○鹽野政府委員 今回の政府案の内容の第二点が、ただいま御指摘の事務局長の専従制ということでございます。これは御承知のとおり、現在の制度では、委員のうちの一人が事務局長を兼ねる形になっております。これは、おそらく制度の制定の当初は、委員会と事務局との意思の疎通を円滑にするというところに目的があったのだろうと思われるのでございますが、先ほど来申し上げておりますように、委員の事務負担量が非常に過重でございますので、委員の仕事をフルにやっていると、事務局長のほうの仕事ができない、事務局長のほうの仕事に精を出しますと、委員のほうの事務処理がなかなかはかどらない、こういうジレンマにおちいっているわけでございます。そこでこの際は、委員は委員の仕事に専従していただく、それから事務局長は事務局長として事務局の監督に専従していただく、そのほうが機構の運営が充実し、さらに能率化するのではなかろうかということで、このような方法をとったわけでございます。当初、この制度ができましたときにねらいました委員会と事務局との意思の疎通という面につきましては、この委員会制度も発足以来すでに二十年ほどもたっておりまして、機構運営も安定いたしておりますので、私ども見ましたところ、現在は、委員と事務局長というものを分離いたしましても、特段の問題はなかろうかというふうに考えているわけでございます。 さらに、事務局長の専従制をとります一つの大きな理由は、事務局の仕事がだんだんふえていくという問題があるわけでございます。これは、ただいま私ども検討いたしておりますが、更生保護委員会、すなわち刑務所から出た者で行き場所のない者を一時収容するという施設でございますが、更生保護委員会に関する許可認可事務あるいは施設に対する補助金の交付というような仕事が、現在法務大臣の権限となっているわけでございます。これを政府全体の行政機構の合理化、簡素化の方針にのっとりまして、やがてこの仕事を地方更生保護委員会の仕事に権限を委譲しようということを私ども考えているわけでございます。そうなりますと、さような事務的な問題でございますから、委員の御負担ももちろんでございますが、主として事務局職員の活動にまつ面が多いわけでございまして、そのために事務局長の監督事務というものは非常に重要になってくるわけでございます。さような点が一点あるわけでございます。 それからもう一点つけ加えさせていただきますと、先ほどお手元に差し上げました参考資料の七ページ目をちょっとごらんいただきたいのでございますが、七ページ目に「参考図」というふうに書いてございまして、「旧組織」とございますが、その中に事務局長(委員兼務)、その下に総務部長、審査部長というふうに部長制をとっております。各委員会とも部長が二人置かれている、こういうかっこうになっているわけでございます。ところが、委員会の事務局の職員と申しますと、全国八委員会を通じましても現在百九十一人でございまして、一番多い関東で四十名を少し上回る、その他の委員会は、大体二十名前後の事務局職員なのでございます。その二十名前後の事務局職員の中で部長が二人いて、その下に課長が普通四人いる、こういうようなことで、監督系統が非常に屋上屋を重ねるというような形になっておりますので、今回この法律案が制定されますとともに、私どもといたしましては、この部長制を廃止いたしまして課長から事務局長に直結するということで機構の簡素化、能率化を考えているわけでございます。そういう面から申しましても、事務局長を専従制にするということは、非常に大きな改正の問題点だということになっているわけでございます。
○大村委員 次に、方針の問題についてお尋ねいたします。 委員会による仮釈法の審理に時間がかかり過ぎるのではないかという意見が一方においてありますが、一面犯罪者があまり早く釈放されるのは国民一般に危害を及ぼすのではないかというような御批判もあるようでありますが、この仮釈放と更生保護委員会の審理の問題について、法務当局は、こういった批判に対してどのような方針で臨まれるお考えであるか、できればひとつ政務次官にお答えいただきたいと思います、方針の問題ですから。
○小澤(太)政府委員 いまのお尋ねでございますが、いまお話しのような御批判もございますが、また裏を返せばそれぞれの特徴もございます。したがいまして、その両方をにらみ合わせた上で考えていくのが妥当ではないかと考えております。 なお、実情につきましては、保護局長から御説明いたさせます。
○鹽野政府委員 ただいま政務次官から御説明申し上げたとおりでございますが、これは何分にも裁判によって施設に収容されている者を仮釈放しまうということでございまして、場合によっては再犯の危険性ということが非常に大きいという場合もあるわけでございます。委員会といたしましては、慎重に審理をいたさなければならないのでございまして、その結果ただいまのような審理機関になっております。先ほども申しましたように、大部分は二カ月、三カ月というところで、必ずしもこの種の審理としては長過ぎるということはないように考えております。 それから審理にあたりましては、再犯のおそれということを非常に慎重に考えておりますので、早く仮釈放することによって再びたいへんな事件が起こってくるというようなことは、まずあるまいという万全の考え方でやっているわけでございます。ただ、この問題は、再犯のおそれということを非常にこまかく考えますと、今度は仮釈放することが非常にむずかしくなるという問題がございますので、政務次官のお話のように、両方のバランスをとって結論を出していくということが必要であろうということで、そういう方針で委員会の運営をはかるという考え方でおるわけでございます。
○大村委員 終わります。
○高橋委員長 次回は、来たる十一日午前十時より理事会、理事会散会後委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。 午後零時一分散会