文教委員会 第20号
- 発言数
- 113 件
- 登壇者
- 6 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1969/06/04
会議録
○大坪委員長 これより会議を開きます。 著作権法案及び著作権法の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律案を一括して議題とし、審査を進めます。 質疑の通告がありますので、これを許します。唐橋東君。
○唐橋委員 私は、この前の質問の際に、問題を提出して、その問題によって質問をいたします、こういう提案的な発言をしておきました。そしておおよそ十項目以上の項目を出して、時間の関係で中途にしてありますので、それらのものを踏まえながら質問するわけでございますが、したがって、出していただいた資料を一通りまた見てみますと、私の第一の質問は、著作権の法体系全体についてまずお伺いしたいというのがきょうの質問の第一でございます。といいますのは、これだけの膨大なものですから、この法だけでなくて施行法というものが当然考えられるのではないのか、それについてはどのような考え方でこれに進むのか。単に政令だけに譲っていって、この膨大な法案が成立した場合に実施できるというような自信は、私ども一通り見ていますと、おそらくないと思います。ですから、施行法についてはどのように考えているのか、まずこれをお聞きいたします。
○安達政府委員 まず第一点といたしまして、著作権法案と、ほかにただいま御審議いただいております著作権法の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律案というのがございまして、関係法律の整理等、必要な手続は法律で御提案申し上げておることが第一点でございます。 それから第二点といたしましては、この法律の中で、法律で規定すべき事項はすべて法律で規定をいたしておりまして、その他施行のため必要な細目の手続等につきましては政令で定めるところによるというところはございますけれども、この法律と手続等を定めた政令をもってすれば、この著作権法の施行の目的を達することができる、かように考えておるわけでございます。 それから第三点といたしまして、これと著作権の仲介業務に関する問題があるわけでございます。これにつきましては、現在著作権ニ関スル仲介業務ニ関スル法律というのがあるわけでございまして、それによってすれば、一応この新著作権制度の趣旨は実現できると思うわけでございます。
○唐橋委員 各関係法律の施行に伴う整理は、私はわかります。これは関係条文ですから当然整理をしなければならぬと思います。私がお聞きしているのは、あなたは確かに施行法がなくとも政令によってできる、こう言うようですが、全部が政令に譲っていいもの——私はあとでもいろいろ具体的事例を出しますが、当然これは本法に入れておくべきものである、こういうような考え方を私としては持っているわけでございますが、いまの御答弁で、あとは全部施行法がなくとも政令でできる、こういうはっきりした御見解なんですね、もう一度。
○安達政府委員 政令でできる範囲は、この法律によりまして政令で定めるところによるというように掲記してあるところでございます。 なお、それからこの法律の施行に伴う経過措置等が特に問題になるわけでございますが、その点は附則においてその必要な経過的措置は定めておるわけでございます。したがいまして、これ以上にこの著作権法施行のためのさらに新しい立法が要るとは、ちょっと私どもとしては了解しがたいところでございます。
○唐橋委員 施行法についての当局の考え方はまあわかります。 もう一つ、いま御指摘になりました仲介業務に関する法律——この新しい法律は、このまま成立すればこの四十五年の一月一日に施行になる。そうした場合に、仲介業務法はまだ出ておりません。出ていない場合に、この新しい著作権法と、それが成立して実施された場合、この仲介業務法との間に、現在の法律との間に非常にいろいろな問題が出てくるのじゃないか、私はこういうように考えております。そうしますと、当然これは著作権法と一緒に出すべきものではなかったのか。同時にあの答申を見ても、必ずこれは一緒に答申になっているんです。その仲介業務に関する答申の中にもいろいろ問題点が指摘されております。とすれば、この仲介業務法を一緒に出し得なかった理由、出さなかった理由といってもいいのです。と同時に、今後すぐに、成立後すぐに出す準備に入っているのか、こういう点についてひとつ明白にしていただきたい。
○安達政府委員 著作権ニ関スル仲介業務ニ関スル法律は昭和十四年の制定にかかわるものでございます。新しい著作権制度の改正に伴って、この著作権ニ関スル仲介業務ニ関スル法律にも手を入れるべきではないか、こういうような考え方もあるわけでございまして、そういう考え方に立ちまして、政府といたしましては、著作権制度審議会に著作権制度の問題と、それから半年ほどおくれまして仲介業務の改善に関する諮問をいたしているわけでございます。それに対しまして、この著作権法の問題の答申よりも半年ほどおくれまして、昭和四十二年の五月に、著作権等に関する仲介業務制度の改善についての答申もいただいておるところでございます。 そこで、この著作権法と仲介業務に関する法律についてどういうように考えるかということでございますが、まず、この新しい著作権法に伴いまして仲介業務制度についても改善をすべき点があるという考え方もあり得るわけでございまするし、時代に即応した形で新しい仲介業務法をつくるということも当然考えなければならないところでございます。しかしながら、現在の仲介業務法、それから著作権制度審議会からいただきました著作権の仲介業務制度の改善に関する内容を比べてみますると、その両者間におきまして基本的な点についての変更はない、現行制度の改善であって、改革までいかない御答申でございます。といいますのは、たとえば仲介業務については許可制にする、あるいはこの料金についてはやはり認可制にする、こういうような点は答申においても現行法の仲介業務法と全く同じ考え方に立っておられるわけでございます。したがいまして、そういう点であるならば、特にこの著作権法と同時にこの国会に仲介業務制度の改善の法律を提出しなくても、一応この新著作権制度の実施は現在の仲介業務制度のもとでもできる、こういう考え方になるわけでございます。 そういう考え方に立つわけでございますので、将来の姿といたしましては、この著作権法の新しい施行に伴いまして仲介業務に関する法律をも改正したい、こういう考え方を持っておるわけでございます。したがって、同時には提出しないけれども、引き続いて仲介業務に関する法律の改正問題も取り組みたい、かように考えておるわけでございます。 それならばなぜ同時に出さなかったか、こういうお尋ねがあろうかと思いますけれども、それについては内容的には、先ほど申しましたように改善すべき仲介業務法の制度が従来の制度と根本的に異なるものがないということと、それから新しい著作権制度のあり方を国会の御審議をいただきまして、そこである程度の方向が出たところで、やはりそれとも勘案しながら、この仲介業務制度の法律を続いて提出して御審議願ったほうがよくはないだろうか、こういうこと、あるいは事務的に申しますれば、新しい著作権制度のよりよいものをつくるために、事務当局といたしましてはそちらのほうにまずは力を注ぐ必要があった、こういうような事情で今度同時には提出いたしていないわけでございますが、できるだけ早い機会にこの仲介業務制度についての新しい法律等も提出して御審議をいただきたい、かように考えておるところでございます。
○唐橋委員 一応考え方としては理解できるのです。しかし、新しい今度の著作隣接権等ができて、やはりそれに対する仲介業というような問題も、これは当然改正しなければならない、触れなければならない、こういうように全面的な改正でございますから。まあ近い将来と、こういうことなんですが、この問題は、いわゆる利害関係者の意見が特に仲介業券関係においてはいろいろ出てくると思うのです。それらについて、まず法を上げて、そしてそのあとで仲介業務法を出すんだ、こういう御答弁なんですが、あなたたちが現在まで長い間この法案に取り組まれて、当然いまの仲介業務に関する方々ともいろいろな意二交換を持たれる機会があったと思うわけです。新しい法が成立するとすれば、その法で、仲介業務として改正しなければならない点、一番問題になっている点はどこですか。
○安達政府委員 その直接のお尋ねの前に、前の著作隣接権に関する仲介業務の御指摘ございましたので、それを先に答えさせていただきますと、著作隣接権についての仲介業務の問題につきましては、著作権制度審議会からの答申では、もう少し推移を見てから考えるべきである、こういうことになっておるわけでございますが、しかしながら、著作隣接権の二次使用料の徴収等につきましては、現在御審議を願っておりまする著作権法案について必要最小限支障がないようにできるような定めをいたしておることが第一点でございます。 それから第二に、この仲介業務制度の改善でいま一番問題になされたことはどういうことかというお尋ねでございますが、一つは、先ほども申しましたこういう仲介業務の現行制度を維持するかどうかということ、つまり仲介業務について許可制をとるかどうかということが問題でございました。これはやはり現行法どおり許可制をとる。それからもう一つの問題は、料金について、これを認可制にするかどうかという問題。これも現行法どおり認可制にするということでございます。 それから第三点といたしましては、仲介業務者を複数にするか、単一にするかという問題がございました。これにつきましては、現行法では別に単一でなければならないという規定ではございませんけれども、たとえば音楽の演奏権等について見ますと、現実に業務の実施を許可いたしておる団体は一つであるということでございます。この点について審議会としては一番議論されたところでございます。それについては仲介機関は単一であることが合目的的であるとは言い得るとしても、単一でなければ公共の福祉に反する結果を招くものであるとまでは言いがたいものがある。したがって、制度として単一制をとることには問題があると考える。したがって、たてまえとしては複数制をとることとするが、その態様としては仲介機関存立の趣旨、目的からして、単一制の利点をできる限り取り入れ得るような許可基準を定めて、かつ、その運用をはかることが必要である。こういうことで、制度としては単一制ではないけれども、許可基準としての運用上単一制の利点を十分考慮するように、こういう点でございます。 特に中心的な問題はその三点でございます。 〔委員長退席、久保田(円)委員長代理着席〕
○唐橋委員 ですから、いまのように大きく仲介業のあり方が議論になってこの答申に出ているのです。単一にするか複数にするか。実際は複数を認めながら、現実は一つのほうがいい。こんなような議論が繰り返されて、しかも隣接権については、いまあなたが答弁されたようにいろいろ議論がある。それなのに、これほど答申の中で仲介業務についての議論が行なわれているのを、今度はこの法律が他方にできる。そうすれば、いまのような仲介業務法ができないために、そこに非常な混乱が生ずるし、そして成立したあとすぐに出された場合に、いろいろな運営上において持ってこられた場合に、それならばいまのような答申の趣旨に沿うて議論があるのを、あなたたちはどのような点で今後はそれを許可していくのか、こういう点が明白でない。それはいまあなたの答弁で、答申の内容を出されてそのまま言っておるじゃないですか。だからこの仲介業務に関する法律がやはり同時に出されるべきであり、もし時間的な問題でできなかったとするならば、仲介業務としてはこのような答申があるが、このような方向で私たちは考えておるんだという、法律が成立したあと、新しい仲介業務ができるまでの正しい態度というものが、答申の趣旨を受けて必要だ、こう私は考えるのですが、そのような基本的な方針、そういうものは現在のものでやっていけると冒頭に申されましたね。現在のものでやっていけるというが、答申がこうなんです。答申というのは、現在のものが問題にされながら答申が出ているのですよ。だから現在のものをやっていったときに、答申でいろいろ問題になったような点が問題にならないのか。それに対してはどのような態度をとるんだ、こういうようなことをお聞きしているわけです。
○安達政府委員 まず新しい著作権法と、仲介業務法が現在のままであった場合に大きな混乱が起こるかどうかという御指摘でございますけれども、これはそういう混乱は全然起こらない。たとえば料金が、現在認可制であるものを、これを新しい答申で認可制をやめるということであれば、これは非常に問題が生ずるわけでございます。しかしながらその点は同様である。あるいは仲介業務の実施を許可制にするのを、今度は許可制をやめるのだということになれば、これは非常に問題がございますけれども、そういう問題はないわけでございます。したがいまして、特に問題になるのは音楽の著作権の仲介業務でございます。この新法におきまして、音楽の著作権につきまして、レコードの二次使用権を認めるという権利の内容の幅は広がるわけでございますけれども、このやり方自体、その徴収することが、その業務が許可制であり、その料金が認可制であるということは違いがございませんから、したがいまして、その権利の幅が広がったとしても、現行制度の仲介業務で受けとめて何らの混乱はないということはあり得るかと思うのでございます。ただ、答申に——運用上でできると思うのでございますけれども、使用者の意向等をこの著作権の仲介業務者の事業の運営の上で反映させるべきであるというようなことが出ておるわけでございます。これはそういう制度化することも考えられるわけでございますが、必ずしも制度化しなくとも、なおさしあたりは運用でもいけるわけでございまして、したがいまして、この新法の実施というものは、受け皿の仲介業務というものの根本的なあり方が異ならない以上は、現行の法律が昭和十四年の法律であるから新しい現代に即応した装いを新たにする必要はあるといたしましても、混乱を生ずるとか、そういうことはもう全然ございませんから、その意味での両者同時でなければならないという理由はないのではないだろうかと思います。
○唐橋委員 まあ私の質問がちょっとまだことば足らずの点があるのですが、私はこの仲介業務というものを非常に重視しております。したがって、混乱はない、こういうことですが、私は非常にやはり混乱は現実出てくるんじゃないかというような見方を持っています。これについては、またあとで時間があれば具体的例をあげて議論したいと思います。ただ、私の最もおそれるのは、やはりいわゆる独占的形態ですね。複数か単数かということは、独占的形態に対するやはり大きな議論だったと思うのですよ。それは現在は、御承知のとおり現在あるものは独占的形態になっておる。そうすれば、それに対して新しい仲介業法が出ないうちは、いまおっしゃいましたようにその独占的形態がますます大きくなっていく。そういうものを私はほんとうに議論しておかなければならないこと、そういう点、たとえばいま音楽著作権にしたって、その独占的形態が、今度新しい分野がふえるので非常に大きくなる、こういうような点が私はやはり心配されるんですが、いまのこの仲介業に認可され、料金を徴収している団体、それと現実に関連していくときに、私がここで言いたいのは、あのいろいろ議論のあることが改正されないで、むしろ悪い半面が、いままで議論されて改善しようとしておることが改善されないままで強化されていく傾向がないのか、それに対してはどう思うのだ、こういうことを申し上げたいのであります。
○安達政府委員 独占の問題につきましては、これを料金の認可制というところが一つの歯どめになるわけでございますが、独占であるから、その使用料の徴収価格についてこれを厳重な制限下に置いて認可制にする、こういう歯どめを十分活用していくということが大事だと思います。同時に、業務の実施にあたりまして独占の弊害が出ないように、これは監督官庁であるところの文化庁といたしまして十分なそういう監督をいたしまして、事実上の独占に伴うところの事業運営がそういうようにならないように指導、助言、監督をしていくということが必要だろう、こういうことでございます。これは現行法下に法律の体系としても認められているところでございます。
○唐橋委員 たとえばいまの仲介業を見てみまして、これは一切の個人の権利を自動的に委託を受け、しかもその仲介業務は営利的なものであってはならないし、必ずその著作権者を守ってやらなければならない。こういうような立場の中にありながら、現実は、いままで例をとってみると、音楽者の著作権のあの内容の一つの争いというものが現実出てきておる。これは長い間の争いだから、いろいろ具体的事例は私よりむしろあなたたちのほうが十分お聞きになっているだろうと思うのです。それがいま改革の糸口についておる、こういう状態であるにかかわらず、私からいえば改革が手一ぱいでないのか、こういうような点があるにかかわらず、いまのようなそういう基準というものが、新しい仲介業法が提出されないままこの新法によっていくときに、今度は業務の一つの大きな広がり、そういう中においてますます現実の問題としていろいろ心配な点が出てくるが、それらに対して法律上のたてまえからでなしに、現実からのたてまえとしてはどう考えます。
○安達政府委員 一つは、先ほど申しました文化庁の指導、助言、監督を十分強化するというこが一つでございます。同時に、使用者の側の意向といいますか、そういうものも十分考慮に入れた運営がなさるべきである、こういうようなことで、現実にも音楽著作権協会の中で、そういう使用者等も入れた会合を開きまして、そういう使用考の見た音楽著作権協会に対する意見というものも聞いて、そしてその運営が十分民主的に行なわれるように私どもとしても指導し、協会等もそういう手続をとっているところでございます。したがいまして、そういうものを今後法制化するという問題の前に、まずは実行上そういうものをやるようにしたい。こういうことで、この事実上の独占から生ずるところの弊害の排除につきましては十分努力していきたい、かように考えておるところでございます。
○唐橋委員 なお、あとでと思いましたが、そういう十分に監督を強化するとか指導を強化するという問題が出ましたので、ここで質問しますが、たとえば音楽著作権協会では外国との契約、おそらく四十カ国と契約していると思います。そういうような契約内容、それからさらにそれらに対する料金がどのくらいになっているのか。あなたたちは非常に監督を厳重にするといいますが、向こうの代表機関と音楽著作権協会という日本の代表機関との契約条項、そういうものについては文化庁はどういう立場をとられているのです。
○安達政府委員 現在、三十二カ国、四十四団体の外国の音楽著作権団体と相互契約を結んで、相互に音楽著作権の使用料を徴収して権利者にお互いに送付する、分冊する業務を行なっているわけでございます。文化庁との関係では、その外国との相互契約の内容につきましてはこれを文化庁に届け出するということになりまして、私どもとしましてその届け出のあったものにつきましてはこれを十分チェックする、こういうことでございます。
○唐橋委員 その場合の料金等はどのくらいになっているか、文化庁として把握できるのですか。
○安達政府委員 現在、音楽の使用料といたしまして、外国人とそれから国内の権利者に払う率はおおむね半々ということになっておるわけでございます。そういう使用料の中で必要な手数料を差し引きまして、これをそれぞれの外国の団体に送付しておる、こういうことでございます。
○唐橋委員 それで、いまは音楽の問題を出しましたが、その他外国関係の著作権に伴う国際収支というのか、そういうものを資料としてひとつまとめて出してみていただきたい。出せますか。
○安達政府委員 はい。
○唐橋委員 それでは次の質問に入ります。 もう一つ、私は仲介業務に対して一緒に出すべきだという意見をまだ捨てないのですが、もう一つここで非常に明らかでないのは、法案全体を読んでみて、条約関係に対する態度が明白でないわけです。私は理解できないのです。たとえば五十八条の「本国」というのは、他のこの種条約等で考えてみると、どこをさしているのか。「外国を同条約の規定に基づいて本国とする著作物」、こういう場合に、私は解釈上において非常に問題があると思うのですが、この場合の「本国」というのは、あなたたちはどういう理解をしてこれを法案の中で考えているのですか。
○安達政府委員 この「本国」と申しますのは、ベルヌ条約に定められたところの本国でございまして、現在日本の入っておりますところのローマ規定の四条で、公にせざる著作物に関しては著作者の属する国をもって著作物の本国とする。公にしたる、発行した著作物に関しては第一発行の国をもって本国とするということでございます。その本国の定めに従ってこの五十八条の本国を定めるといいますか、解釈するわけでございます。
○唐橋委員 ローマ規定の四条三項、こういうことなんですが、そうすると、この条文全体を見て、いま申しましたようなローマ規定をもって一切この法案を考えていますか。
○安達政府委員 この五十八条の規定にございますように、「文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約により創設された」云々と書いてございますので、このベルヌ条約によってその本国を解釈する。したがって、いまの日本の法律体系からいえばローマ規定でございますけれども、今後ブラッセル改正条約に入るとかあるいはストックホルム改正条約に入るということになれば、その解釈に従って本国というものが定められてくるわけでございまして、現在のところローマ改正条約もまた多少の変更等はございますけれども、ブラッセルの改正条約——ローマとブラッセルでは本国の解釈についての、規定についての変更はございませんので、これはベルヌ条約に定めるところのその本国ということでございます。
○唐橋委員 いまの本国の解釈から、この法律全体の条約に対する態度はわかったのでございますが、そうした場合、今後この国際条約に対する方向といいますか、態度といいますか、これは文化庁としてはどのように考えていますか。
○安達政府委員 現在著作権についての国際的な条約といたしましてはベルヌ条約が代表的なものでございまして、現在わが国は一九二八年のローマ改正条約に加入したままである、こういうことでございます。その後一九四八年にブラッセルにおいてブラッセル改正条約、そしてまた一昨年、一九六七年ストックホルムでストックホルム改正条約が成立したわけでございまして、今後わが国といたしまして、現在のローマ規定国であることをやめてブラッセル改正条約国になるということも一つの理想であり、そういうことも十分考えられるわけでございます。 ただ、この前もちょっと申し上げましたように、現在御提案申し上げておるところの著作権法案では、このブラッセル改正条約に加入することについてはやや困難がある。そこで、われわれとしては今後そういうブラッセル改正条約等にも加入し得るような体制にしたいという希望は持っておるわけでございますが、同時に、著作権制度を考える場合において、国内の事情に最も適合したということがやはり必要なわけでございまして、ここに書いてございますように、日本のように非常に多数の喫茶店がございまして、そこで音楽が広範に使われておるというような国はあまりないわけでございまして、そういうような国柄に応じて、そういうところに当分の間レコードの二次使用権を認めないということもこれまたわが国の実情からやむを得ないことであろう、こういうことでございます。 ただ、条約に加入するかどうかは別といたしましても、今度の改正によりましてレコードの二次使用権が放送の面で確立されておるわけでございますし、また権利といたしましては喫茶店等には当分の間それを及ぼさないということでございますから、あるいは保護期間につきましても死後五十年の原則をとっておるわけでございますので、国際的な内容的な基準としてはもうブラッセル条約にほとんどすれすれのところまできておる。ただ、そのところが法律の附則等で若干の差し引きがあるために、ブラッセル改正条約に入ることはなお困難な事情があるだろう、こういうことでございます。しかしながら、これにつきましてもなお外務省等とも相談いたしまして、ブラッセル改正条約に入れるかどうかについてはさらに検討を続けたい、かように考えておるところでございます。
○唐橋委員 この問題は重要な問題ですから、なおあとで私以外にもわが党のほうからいろいろ国際間の問題が出てくると思いますので、このくらいにして打ち切っておきますが、ただここでサンフランシスコ平和条約十五条(C)の戦時加算の問題であります。今度五十年になったのですから、この機会に、著作権における戦後の解消とでも申しましょうか、これは当然出してよかった。これは著作権全面改定における、この機会における文化庁あるいは文部省の基本的態度として出すべきでなかったか、こういうように考えるのでございますが、この戦時加算についてはどう考えられたのですか。
○安達政府委員 まず、戦時加算というものでございますが、この戦時加算と申しますのは、戦争期間中その著作権が稼働し得なかった、すなわちその間は著作権としての行使が実効的にできなかった、そういう連合国及び連合国民の著作権の存続期間については、通常の著作権の存続期間に戦争期間を加算する。こういうことで、具体的に申しますれば昭和十六年の十二月七日から平和条約の発効いたしました昭和二十七年の四月二十八日までの間、約十年と四カ月余の期間を加算する。こういう制度でございまして、この義務は日本国との平和条約の第十五条(C)の規定によっているわけでございまして、これを戦時加算と呼んでいるのでございます。このような戦時加算の制度を今度の法律改正についてどう扱うか。つまり考え方としては、戦時加算のあった当時は通常の保護期間が三十年であった。それが今度五十年に延びたのだから、当然この戦時加算のところはその中に埋没してしまったのではないか。だから事実上もうそれが含まれている以上、五十年にする以上は戦時加算の制度をやめていくべきではないか、こういう意見が一つあるわけでございます。しかしながら、事は実は平和条約の第十五条(C)の規定の解釈の問題になるわけでございまして、条約の解釈としてそういうことができるかどうかというところの問題があるわけでございます。 そこで、一応この考え方として、そういう保護期間の延長の中で埋没させるという方向で検討もしたのでございます。外務省とも協議いたしましたが、それは日本国との平和条約第十五条(C)の解釈であって、通常の期間、すなわちノーマルピリオドというのは平和条約批准時において著作権法で規定する保護期間ではない。著作物の保護が要求されるそのときの国内法の定める保護期間、つまり通常の保護期間であるから、ある著作物について保護が要求されたときの通常の保護期間と解される。したがって、それを五十年に延ばしたから従来の戦時加算の制度はやめろということは平和条約上の義務を履行しないことになる。こういう関係からいたしまして、戦時加算の制度はやはりなお残す、すなわち五十年にプラスする、こう いう考え方になったわけでございます。
○唐橋委員 そうしますと、実際十一年になりますね。現実として、場合によっては十一年になってくるでしょう。だから、五十年プラス十一年になるというような状態は、平和条約の問題であろうとも、この著作権の全面改正という大きなときに、文部当局あるいは外務当局においていま私が申し上げたような趣旨を主張したのか、当然主張すべきではなかったのか。こういう点を私は非常に重視したいのでございますが、それに対してはどうですか。
○安達政府委員 この戦時加算の問題につきましては、著作権制度審議会でも特に特別小委員会を設けまして十二分に審議をしたのでございます。それで著作権制度審議会といたしましては、方向としてはなるべく解消するような方向で検討してもらいたいというような答申もあったわけでございます。ちょっと答申を読んでみますと、「平和条約により連合国民に与えられる通常十年余」十年五カ月余でございます。実質は日で計算いたしますけれども、「十年余の保護期間の戦時加算は、当時著作者の死後三十年を原則とした保護期間の下において設けられたものであり、今回保護期間が大幅に延長されることを考慮し、この機会にその解消をはかることが適当である。」すなわち、内容的にはむしろ解消すべき方向ではないか、こういうことでございます。私どももそういう方向で外務省と再三交渉いたしたわけでございますけれども、条約の解釈として、通常の保護期間、ノーマルピリオドというものは、そのときにおける期間ではなくて、著作権法が変われば変わったときの通常の保護期間と解すべきである、こういう解釈は法制局なり外務省から曲げられないということでございましたので、やむを得ずそういうことで戦時加算の制度を残すということにしたのが実情でございます。
○唐橋委員 その実情についてはあとでまたいろいろ議論が出ると思いますので、先に進みます。 そのように十年以上の戦時加算をする。他方においては、今度もう一つ翻訳権の十年留保規定がつけられてくる。こんな問題が私は対比して考えらるべきものではないか、こう考えますので、この翻訳権十年留保規定を放置したといいますか、その理由をひとつ明白にお願いしたい。
○安達政府委員 まず第一に、この翻訳権を留保するということの国際的な状況でございます。現在ベルヌ同盟国が五十九カ国ございますが、このうちこの翻訳権の留保をしている国は五カ国であるということでございます。そういうことはわが国の国際的地位から見てどうであろうかということが第一点でございます。 それから第二点といたしましては、万国著作権条約にのみ加入している国、すなわちアメリカ合衆国等の国との関係では、翻訳権十年留保の制度は動かない。すなわちアメリカの著作物は本来の著作物の保護期間保護しなければならないが、ベルヌ同盟国の著作物についてはそういう制度を適用するということについての相互の間の不均衡の問題が一つあるわけでございます。これが第二点でございます。 それから第三点といたしましては、翻訳物というものの考え方でございます。翻訳すること自体は著作権として保護されるほどの貴重な保護法益であるわけでございますけれども、翻訳物を読む場合には、翻訳の日本文を読むのであるけれども、翻訳物によって得られる利益と申しますか、たとえば翻訳を読んで読者が感銘を受けるのは、翻訳のよさもありまするけれども、何よりもまずその原作の内容であるわけでございます。すなわち原作を読んでいるわけでございます。読むのは日本字で読むわけでありますけれども、内容は原作であるというようなことからいたしました場合に、たとえば編曲については編曲者が保護されることもありますけれども、原曲者がまず保護される。それならば原作者もやはり同等に保護するということが著作権尊重の精神からしては当然ではないだろうかということが第三点でございます。 それから第四点といたしましては、翻訳権を留保したような時代におきましては、交通の事情その他からいたしまして原著作者の許諾を得ることについて相当な困難を伴ったということがいえるわけでございますけれども、現在のような段階になりますると、日本の国内におきましても代行業者等もあるわけでございまして、許諾を得るという困難性が乏しいのではないだろうか。これが第四点でございます。 それからその次に、現在この翻訳権十年留保、十年内に翻訳物が発行されなければ翻訳権が消滅するということで、この規定を使って翻訳をいたしておるところの翻訳物の全体の翻訳出版物の中で占める率を見てみますと、すでに保護期間が切れていて当然許諾を要しないものが三三・三%でございます。それから保護関係にない国、たとえばソ連とか、そういう保護関係にない国のものは自由にできるわけでございます。これが七・五%でございます。それから保護期間内のものでベルヌ条約国のもので、許諾を得て印税を払っているもの、すなわち、まだ十年に満たないものの場合一七%。それから万国著作権条約によるもの、たとえばアメリカのものでございますと、十年たってもなお翻訳物が出なくても許諾を得なければならない。万国条約国のもので、許諾を得て印税を払っているものは二一・一%。ベルヌ条約国のうちで十年留保によって十年たって翻訳物が発行されないから無許諾でできるというものが二一・一%でございます。したがいまして、全翻訳出版物のうちで、この規定を使って、許諾を得ずして翻訳を出しているところのものは約二一%であるということで、全体の翻訳出版物の中で占める量というものはそれほどではないのではないだろうかということがいえるわけでございます。 しかしながら、この翻訳権の十年留保の制度というものを放棄した場合におきましては、現状に何かの混乱を生ずることがないように、漸進的に これをやっていかなければならないということで、まず第一点は、従来すでに十年以前に発行されて、翻訳権が消滅しているものについて、これが復活するかどうかという問題があります。これについては、見解としては復活するという意見もありますが、復活させないという規定を置いたということと、それから新法施行前に発行された著作物については、旧法の規定によるところの翻訳権の消滅の制度を存続するということで、いうならば十年間はこの翻訳権十年留保の制度を続ける、こういうことによって現状に急激な変更を加えることなく、原著作者を尊重する精神に立って、わが国の国際的地位にかんがみて、こういう翻訳権の制度を十年後に放棄するという改正案を提出しておるところでございます。 〔「定足数が足らぬぞ」と呼ぶ者あり〕
○久保田(円)委員長代理 定足数あります。続けてください。
○唐橋委員 大臣、この点はひとつ大臣に御答弁いただきます。 翻訳権十年留保の規定は、いま御答弁いただいたように、国際情勢の中で歴代の政府代表が、国際会議の中で努力して持ってきた日本にとってはいわば唯一の有利な条件でないのか。特に日本のように翻訳国といわれる国の場合の文化の進展ということについてですね。そう考えますと、いままでの政府の努力、こういうものを、そう被害がないんだ、あるいは実際留保しているのは五カ国程度なんだから、日本も大国になったからいいじゃないか。 〔久保田(円)委員長代理退席、委員長着席〕 あるいはまた、いま理由をあげられたように、外国の許諾を得るに困難ではないのか。こんな理由なんですが、外国の許諾を得るに困難ではないのかということは、私はやはり理由にならないと思います。そういうようないろいろなこまかい議論は別としても、長い間日本の文化の進展に寄与してきたというのは、私はやはり翻訳権十年留保の規定の功績というものは偉大なものがあると考えます。そういう場合に、なるほど経過規定がございます、実害がございません、こんなことで、私は、いま国際間でも相互主義の原則はとっておらず、その国の法律によるということが明瞭に認められてきているときに、わざわざこちらから捨てることはないだろう、こういうように考えるのでございますが、この点はやはり当局よりも大臣——きょうは文化庁長官はどうしたのです。こういう問題について直接の責任者の文化庁長官あたりがやはり明確な態度をとるべきだと思うのです。この点についてはっきりと責任者の態度をお聞きしたいと思います。このことは、この種関係者にとって非常に関心の深い、いわゆる日本の文化の進展に関心を持つ人たちの大きな関心の的になっていると思いますので、ひとつ明確に御答弁願いたいと思います。
○坂田国務大臣 唐橋先生の御指摘の点につきましては、十分考えられるべき御意見だとも考えるわけでございます。したがいまして、私どものほうでも十分慎重に考えたわけで、特に審議会におかれましても、この答申におきまして、「ベルヌ条約における留保を放棄して翻訳権をも一般の検能と同様に取り扱うこととすべき段階にきていると考える。ただし、従来のわが国の主張の経緯、出版界に対する影響等をも考慮し、その取扱いについては、十分慎重を期する要がある。」というような経緯もございまして、いろいろのことを勘案した結果、ただいま御提出申し上げておるようなことになったわけでございます。
○唐橋委員 私のきょうの質問は、一応この前問題を出した中で、重要と思われるものを一応御質問申し上げて、政府の考え方を出していただき、その政府の考え方をさらに議論したい、こういうことなので、詰めの質問はいたしません。ですから、いまの大臣の答弁等もそのままお聞きして、あと私のほうとしては、あるいはわが党の次の質問者の方々は、いろいろと意見を交えた質問になると思いますので、一応考え方だけをお聞きしておきます。 次の質問に入ります。 この著作権法の中で、やはり非常に問題になるのは、全体の姿勢、かまえとでも申しましょうか、著作権を保護するという重要なものが、いわゆる文化の進展等によっていろいろな出版形態あるいはその他の伝達形態が出てきた中で、最もおそろしいのは、その制限を縮小していく方向ができるのでないのかということが、一番留意しなければならない問題だと思います。なおあとで問題を出しますが、たとえば映画会社の場合、放送会社の場合に、個人の著作権というようなものがそのような名によって縮小されてこないのかというような観点は、著作権という基本的な性格を考える場合に、最も重要なものだと思うわけでございますが、そのような観点に立ちながら見てみますと、どうも公益とか、いま申しましたような理由の中において、著作権が縮小されている、このような点がいろいろと指摘できるだろうと思うわけでございます。 いろいろ事例はございますが、二、三あげてみます。たとえば三十三条、三十四条に、教科用図書、学校放送等に著作物を利用するにあたって、その旨を著作者に通知すべき義務があるわけでございますが、これはやはりいま申し上げましたような趣旨からというと、そういうものを実施してしまったあと通知してもいいし、事前に通知してもいいようなあいまいな規定じゃないか。いま申し上げましたような考え方からいえば、これはやはり事前に許諾を得るべきものでないのかというような点が一つ。 それから六十八条の中で、これもやはりいろいろ議論を呼んでおる項だと思いますが、「放送事業者は、その著作権者に対し放送の許諾につき協議を求めたがその協議が成立せず、又はその協議をすることができないときは、」、こういうような場合の規定なんですが、著作者の立場からいえば、それを文化庁長官の裁定を求めてまで放送を強行する、こういうことは基本的に私は問題だと思うのですよ。いま申し上げましたように事前の問題、使ってしまってから通知を受けたってしかたがないのですよ。あるいは私はどうしても放送したくない、こういうようなときに著作者の権利があるわけです。片っぽう放送局のほうでは放送したい、このような場合に、強制許諾を今度文化庁の裁定を受ければできる、こういう点が私はやはり非常に大きな問題になってくる。こう思うわけでございますし、その他二、三あげなければならない問題もありますが、ともかくいま申し上げましたような点で非常に制限しておるということがうかがうことができるのでありますが、これに対してはどう考えますか。
○安達政府委員 まず、教科書に著作物を利用したい、ある文学作品を教科書に載せたい、こういう場合のことでございます。現在は、現行法によれば、修身と国語に入れる場合においては、出所を明示すれば自由に使ってよろしい、こういう規定があるわけでございます。これは教育の場においては著作権を制限することもやむを得ない、こういう考え方が国際的にも広く行なわれておるところでございます。ところが現実には、文芸家協会と教科書協会と話し合いをいたしまして、ある程度の金額を一方のほうでは著作権使用料といいますか、一方のほうではお菓子代だというようなことで払っておるのが実情でございます。 そこでこの新法のところで、これをどうするかということにつきまして、これを国語と修身というふうに——修身はいま教科書がないわけでございますし、そういう現行法を改めて、一般的に教科書については掲載するということを認める、すなわち著作権を制限する、こういう考え方に立ったわけでございますが、しかし、ただで使うというのはどうであろうかということで、そこに補償金を著作権者に支払う、こういうことで、教科書というものには最善の教材を入れたい、ある著作者が、自分はいやだと言った場合には、その著作者のものは載らないということでは、教育の目的上困るじゃないかということで、最善のものを子供たちに与えたいということで、著作権を制限して、著作権者の許諾なくして教科書用図書に掲載できる。ただし、その場合には補償金を支払いなさい、こういうことにいたした点が第一点でございます。 その場合に、著作者の人格的な利益といいますか、人格権というものを考えなければならぬ。したがって、その場合に、その著作物の内容をそのまま載せるということであれば、その著作者の人格的利益も別に問題ないわけでございます。料金はといいますか、補償金は支払われる、こういう状況にあるわけでございます。しかし、ある程度の教育上の必要で変更するとかいうようなこともあり得るということも考慮して、あなたのものを使いますよということを著作者に知らせる、こういう意味で通知義務というものを規定したのでございます。したがって、たてまえとしては著作権者の許諾なくして使える、補償金を支払う。通知義務というものは、著作者が自分のものが知らないうちに使われていないようにしょう、そして人格権の行使の発動を促す余地を与えよう、こういう意味でございます。したがいまして、この通知の時期というものを、特にいつの時期でやらなければならないということでなしに、あなたのものを使いますよ、ということを著作者に知らせるという意味でございますので、特に時期は明示しなかったという考え方に立っておるわけでございます。これが教科書への掲載の場合の考え方でございます。 それから放送の強制許諾というものがございます。これは現行法にも規定がございます。現在のベルヌ条約のローマ改正条約にも、ブラッセル改正条約にも、一昨年のストックホルム改正条約にも、この制度が国際的に認められておるわけでございます。それは一種の放送というものの公共性というものにかんがみて、やはりある程度著作者も忍んでいただく、こういう考え方で強制許諾の制度があるわけでございまして、その文化庁長官云々のことは、現在のベルヌ条約のどの規定に本ございますけれども、放送権についての条件は、「同盟国ノ国内法ノ規定スル所ニ依ル」ということで、限定をすることができると書いてございまして、「但シ右条件ハ之ヲ規定セル国ニ於テノミ効力ヲ有スベシ右条件は如何ナル場合ニ於テモ著作者ノ人格権ヲモ又協議調ハザル場合ニ於テ権限アル機関ノ定ムル公正ナル補償ヲ受クル著作者ノ権利ヲモ害スルコトヲ得ザルベシ」。こういう規定がございます。すなわち、この補償金について、権限ある当局が定めるということが、条約にも規定されておるところでございまして、その条約の規定、現行法の規定をそのまま六十八条に規定を出しておるというところでございまして、しかもこれについては、なるべく著作者の利益が守られるように、七十条等におきまして、七十条第三項の第二号で、「第六十八条第一項の裁定の申請に係る著作権者がその著作物の放送の許諾を与えないことについてやむを得ない事情があるとき。」は、文化庁長官は裁定をしてはいけないということにしておるわけでございます。たとえば特定の放送事業者に、自分の著作物については独占的に許諾を与えておるというような場合に、ほかの放送事業者がやりたいといってきた場合に、これを認めるかどうかについては、むしろ認めないで、文化庁長官は裁定できないというような形にいたしまして、現行法よりもより一そう著作者の立場を擁護する、こういう考え方に立っておるわけでございます。
○唐橋委員 いまの御説明にもありましたように、公益とか教育上の立場、こういうような、非常に私たちも否定し得ない重要な立場があると思うのです。しかし、と同時に、著作権法の中においては、やはりこの著作権を守るという至上命令があるわけです。そういう立場に立った場合に、これは教育上必要だから、本人の許諾なしにあるいは教科書に載せる。これは放送をやれば非常に採算がとれるし、非常にいいから、そして文化庁の裁定を求めてもこれをやるんだ、こういうような点は、やはりこの著作権の根本的な性格の論議になると思います。それについては、先ほど申し上げましたように、意見を出さないで、いまの政府の考え方だけをお聞きしますので、質問を先に進めますが、この点は非常に重要な問題だと思いますし、と同時に、それと同じようなのが、やはり絶版権にもあると思います。本人がやめたい、絶版したい、こういうときに、今度はいわゆる出版社のほうで、それは損害があるからだめなんだということで、強制的にやはり現実できる。こういう問題もやはり出てくると思います。いま二つの点について考え方をお聞きしましたので、絶版の権利についての考え方をひとつお聞きしたいと思います。
○安達政府委員 これは八十四条の第三項でございますが、「複製権者である著作者は、その著作物の内容が自己の確信に適合しなくなったとき」たとえば好戦的な小説を書いた、ところが自分は思想が変わったというときには、あるいは学説を変えたというときには、その著作物の出版を廃絶したい、こういうようなことが起こるわけでございまして、「その著作物の出版を廃絶するために、出版権者に通知してその出版権を消滅させることができる。」すでに出版権を設定して、ある本屋に出版させる複製権を与えておっても、なおそれをやめることができる。こういう規定を置いておるわけでございまして、これについては実は現行法でも同じ規定があるわけでございまして、「ただし、当該廃絶により出版権者に通常生ずべき損害をあらかじめ賠償しない場合は、この限りでない。」自分のほうはもう出さないからという以上は、それに伴って出版権者が損害をこうむるならば、その通常生ずべき損害はやはり著作者が払った上でないといけない。ということは、著作者は同時に自分の著作物について自信のあるものを出す、しかしながら、なおその確信が変わった場合は、その廃絶権を認めるけれども、そのときには出版権者に通常生ずべき損害を払う、こういうのが最も妥当な線であろうということで、これは現行法と内容は全く同様でございます。
○唐橋委員 いま三つほど問題点を出しましたが、放送の場合を先ほど申し上げましたように、この絶版権の場合も、絶版の権利と賠償の義務ということは別個な問題ではないのか、こういう場合に賠償義務が絶版権に優先するという現行法のたてまえについてもやはりいろいろ議論があり、当然そのようなこともこの新しい法案で私たちは相当議論すべきだ、こう私は思います。したがって、それについての議論はあとでいたしますが、さらにこのことは映画の問題について非常に大きな議論が出てまいりました。映画会社優先でないのか、こういう議論は当然起こってまいったのでございますが、ちょうど時間になりましたので、午後の質問に譲りまして、この映画問題の考え方をお聞きしたいと思います。 午前中の質問はこれで終わります。
○大坪委員長 午後三時より再開することとし、暫時休憩いたします。 午後一時三分休憩 ————◇————— 午後三時二十四分開議
○大坪委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。 著作権法案及び著作権法の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律案の両案について質疑を続行いたします。唐橋東君。
○唐橋委員 午前中に引き続いて質問いたしますが、午前中は放送の強制許諾といわれる六十八条についてお伺いしたわけでございますが、これらに対する議論は相当出てこなければならないと思うわけでございます。しかし、その点についての議論はあとに残しまして、先に質問を進めたいと思いますが、それは、答申あるいはこの法案が発表になったあと非常に議論を呼びました映画の著作権、著作者に関する件でございます。いまの法案では、御承知のように、映画製作者と創作者、この間での関係を整理しよう、このようなことでありますが、その中で、あとでも申しますが、経過の中で私たちが一番お聞きしたいのは、いろいろ、第一次案、二次案、あるいは三次案、四次案となっている中で、現在の法案の中で非常に不審に思ったのは、「契約に別段の定めがない限り」という項目が前の案にはありました。しかし、今度はそれがなくなった。これが一つの最大の焦点になってきたと思うわけでございますが、その間の経過だけをまず一番最初にお伺いしたいわけです。
○安達政府委員 映画の著作権の帰属につきまして、審議会の答申におきましては、映画の著作者は映画の形成について創作的に寄与したものを著作者とするけれども、著作権は映画製作者に帰属すべきものとする、こういう答申が出たわけでございます。そういう答申に従いまして立案をしてまいったわけでございますが、その間に、映画の権利者あるいは政府与党で検討いたしておる段階において、やはり映画の著作者に契約によって権利を留保する余地を認める必要があるのではないか、こういうような意見も出てまいったわけでございます。昨年の案におきましては、そういう案を一応持っておったわけでございますが、さらにまた、これについて政府与党部内でいろいろ検討していく段階におきまして、映画の権利関係を明白にして、映画の利用の円滑をはかることが必要である、こういうことで、「契約に別段の定めがない限り」というのを削除するということになったわけでございまして、したがいまして、結果的には審議会の答申の線に戻ったというのが、現在のこの著作権法案の内容とするところでございます。
○唐橋委員 答申に戻ったという理解は、私は非常に問題があろうと思います。ここで、この前資料を提出いただきました中で、各外国の例を資料としていただきました。確かに著作権が会社にある、製作者にあるという国の資料は出ましたが、その間における契約条項——今度の法案では、私からいえば無権利状態になった、こう言わざるを得ないわけです。監督その他、ここでいろいろ議論しなくても、皆さんおわかりのようにですね。製作者に帰属した場合には、現在の日本の映画会社の状態から見てみても、五社協定といわれるようなものが現在まで行なわれておる状態の中で、さらにこの法律によって確定されてくるというような場合には、著作権の立場から見ても非常に大きな問題をはらんでおり、むしろその中では、私は著作者は無権利状態である、こういうように言わざるを得ないわけでございます。その間の議論等は私省略いたしまして結論だけを申し上げますが、その場合に外国の例等を見てみても、なるほど著作権は会社にある場合がある。しかし、いま私が申しましたように、その間において必ず契約が行なわれておる。こういうように理解されているのですが、その点については、「契約に別段の定めがない限り」、こういうように条文を書くとした場合に、いま私が申しました、心配しておるこの無権利状態に対しては、あなたたちはどうお考えになるか。
○安達政府委員 まず、二十九条におきましては「映画の著作物の著作権は、その著作者が映画製作者に対し当該映画の著作物の製作に参加することを約束しているときは、」ということでございますので、当然参加契約の段階があるわけでございます。そこで契約の自由と申しますか、契約によっていろいろな条件を定めることができるということでございまして、一つの方法といたしましては、映画の著作権は帰属するけれども、これについて債権的な契約によって映画の著作者が映画製作者の権利の行使について条件等を付するということが可能でございまするし、さらにいえば、一たん映画製作者に帰属するこの著作権の一部について買い戻しをするといいますか、そういうような再譲渡を受けるということも参加契約の段階で可能になる、こういうことも実際上はあり得るわけでございます。現在、映画のあらゆる権利は映画製作者に帰属するという五社協定等もあるわけでございまして、その面におきましては、帰属するというようにいたしましたとしても、現状に大きな変更を加えるものではないということがいえるわけでございまするし、同時に、こういう二十九条の規定がある、こういう規定があるということを前提にいたしまして、参加契約の際に種々の条件等を両者においてきめていくことができる、こういうことでございます。したがいまして、そういうような形においての映画著作者の地位というものは、この規定をもってしてもなお守ることができるというようにいえるかと思うのでございます。
○唐橋委員 参加契約の関係は著作権の権利関係にいささかも制約されるべきじゃない、こういうのが法を整理していく場合に、私たちは十分整理しておかなければならないことだと思うのです。参加契約と著作物の権利関係、これを一緒にしていくというそこに非常な問題があり、いま御答弁にあったように、やはり映画会社を重視した法であると言って決して過言でない、私はこういうように考えるわけです。その点について、いまの御答弁で、参加契約の中で著作物の権利関係をほんとうに入れていいのかどうか。あなたはいまその中に当然出てくるでしょう、こういう考え方をいたしておりましたが、そのような著作物の権利とそれから映画に参加する権利、こういうものをごっちゃにしたところに非常な問題がある。こういうように考えますが、もう一度、参加契約の中に著作物の権利関係を入れてよろしいのだ、このような見解なんですか、そこをひとつ明白にしていただかないと、非常に混乱が出てまいります。
○安達政府委員 この第二十九条にも書いてございますように、「映画の著作物の製作に参加することを約束しているときは、」ということでございますので、「映画の著作物の製作に参加」ということでございますから、その著作権の問題に入るということは当然であろうと思います。かりに「契約に別段の定めがない限り」という規定があった場合においても、この契約というのは、いわゆる映画の参加契約と申しますか、映画の製作参加契約の中でということでございまして、つまりこの二十九条で規定していることは、この著作者等が、その著作物の製作に参加しようという約束があって初めてそういう著作権の帰属が出てくる、そういうことを書いている半面、製作参加契約の段階で、著作者がその経済的利益等を確保できる余地を確保しよう、こういう考え方で出ておるわけでございますから、したがって製作に参加することを約束しているその契約におきまして、著作権に関連する問題をその中に入れるのは当然であると考えておりまするし、現在でも五社協定等ではそういうような形で参加契約が結ばれておるということもあるわけでございます。
○唐橋委員 今度は逆に聞きますが、具体的な問題として、著作権の場合には、本人がなくなっても、今度死後やはりその権利者に譲渡等ができますね。会社がつぶれた場合どうなりますか。
○安達政府委員 映画の著作権の保護期間につきましては、この法律では公表後五十年ということになっておるわけでございます。したがってその場合に、その著作者が債権的な関係で映画製作者に対して何らかの権利を持っている場合は、映画会社がつぶれたときには、普通の会社がつぶれた場合においてその債権者が持っている権利と同様な状況になるわけでございます。 それから、かりに著作権の再譲渡を受けていたというような場合、その著作権の一部の再譲渡を受けておれば、それはこの映画の著作物の著作権が存続する期間は、その死後においてももちろんその相続人に移る、こういうことになるわけでございます。
○唐橋委員 その点については、もう少し議論を深めてまいらなければならないと思うのですが、もう一つあとでも隣接権についてお伺いいたしますが、放送事業者が放送のために製作した映画を劇場で上映する。こういう場合、あるいはまた海外においても上映を行なうときには関係実演家の承諾が要る、こういうことになっておりますが、映画製作の場合には、いま申しましたように、権利が会社関係にあるというような関係の上からだと思うが、製作したものの自由になってきておる。そして著作者という権利者のほうには何らこれは発言権がない。権利関係が存しない。こういうようなことが、いまのような解釈から当然出てきておるのですが、このような差というものについては、やはりいまのような考え方から当然出てくる矛盾だと思います。これについてはどうお考えになるか。
○安達政府委員 映画につきまして、二十九条では二つの種類の映画と申しますか、規定をしておるわけでございまして、いわゆる一般の映画につきましては、この映画の著作者の権利は、著作者が参加契約を結んだときは、その著作権は映画製作者に帰属するということでございます。したがって、この映画が海外に輸出される、そういう場合においては、これは著作者は別段の権利を持っていない、こういうことでございます。ただ、放送事業者が、もっぱら放送のための技術的手段として製作する映画の著作物、放送を目的にしてつくったけれども、それが固定して、これをさらに他の放送等に利用することもあるかもしれない。そういう場合におきましての著作者の権利は、その放送に利用すること、すなわちその著作物を放送する権利とか、それを有線放送するとか、あるいはこれを公に伝達する権利あるいはその著作物を複製し、その複製物を放送事業者に頒布する、こういう権利だけは、その映画製作者であるところの放送事業者に帰属する。その他の権利は、これは帰属しない。ということは、これは当事者の関係が、もっぱら放送用のために製作したという目的等からして、それを海外に出すとかそういうような場合には、これはまた別であるから、その場合には、権利はまだその映画製作者としての放送事業者には帰属しない。こういう関係で、その放送事業者がもっぱら放送のための技術的手段として製作する映画、たとえば「おはなはん」というようなものが映画としてなった場合においても、それはもっぱら放送の用に供することの権利だけが映画製作者としての放送業者に帰属して、その他の権利は帰属しない、こういうたてまえになっておるわけでございます。
○唐橋委員 もう一つ、ここで明確にしておきたいのは、著作権の一つの性格ですが、私は、やはり財産権の中に含まれる、こういうように理解しますが、財産権と著作権の関係はどんなふうになっていますか。
○安達政府委員 この法律におきまして、著作者の有する権利というものを二つに分けておるわけでございます。十七条で、著作者は著作者人格権と、それから狭い意味においての著作権を享有する、こういう関係になっておるわけでございます。この中で著作権といっておりますのは、第二十一条から第二十八条までに規定する権利、ということは、著作物を経済的に利用する権利でございます。したがいまして、著作権が帰属するというのは、経済的利用権が帰属するということでございまして、著作者人格権というものは、映画製作者に帰属するわけではなく、著作者が依然として持っておる、こういうことでございます。
○唐橋委員 もう一つ、憲法二十九条の財産権という問題と著作権という問題を、もう少し明確に御答弁願いたい。
○安達政府委員 いま御指摘のとおり、この著作権は、憲法にいうところの財産権でございまして、その財産権の内容については法律をもって定める、こういうことでございます。つまり二十九条の第二項で「財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。」こういうことでございます。
○唐橋委員 財産権の内容は法律できめる、こういうことなんですが、そうしますと、いま法律できめようとするこの著作権、これは、いま御説明のあったようにきめていこう、こういうところに非常な問題ができてくる。したがって、この著作権と映画の問題、二つに分けていったその考え方、ここに大きな問題があり、そこに私たちがどうしてももう少し明確にしていかなければならない問題があるわけでございますが、そういう点で、いわゆる財産権の不可侵というもの、これを今度は分けていった形になりませんか。いわゆる財産権というものの不可侵というのが憲法の精神ですね。それを片一方は著作、片一方は著作権、こういう二つの分け方でいまの映画の著作権の所属をきめていく、こういう場合に、この関係をどう理解したらいいのですか。
○安達政府委員 著作権という著作者が有する権利につきまして、いわゆる財産権としての著作権というものと著作者の著作物との間に生ずるところの人格的利益を守るという権利、いわゆる著作者人格権、こういうように二つに分けて考えるという考え方、これは現行の著作権法もそういう考え方に立っている。いわゆるそうした二元論という考え方に立脚して立法されており、この法案もそういう考え方に立っているということが一つあるわけでございます。 それからもう一つ、帰属するといいましても、一つの点は、制作契約に参加する、製作に参加するということを約束するわけでございます。そこで、そこの点において、そういう場合に著作権が映画製作者に帰属するということで契約をするということができるわけでございます。したがって無理無体にこれを奪うというわけではないのでございます。 それから第二点は、それをその映画製作者が持ったならば、それがだれにもいかない、もう取り返しのつかないものではなくて、これはまた取り返しのつくものである、再譲渡を受けることができるものである、また先ほども申し上げましたように債権的な条件をつけることも可能である、こういうことでございますから、財産権を侵害する云々の問題は生じない、こういうように考えております。
○唐橋委員 この点についての議論も、なおまたあとで深めていかなければならない問題だと思いますが、質問を先に進めまして、著作隣接権について、今度それを新しく二十年にした根拠について伺いたい。
○安達政府委員 著作隣接権の保護期間をどのようにするかということにつきましては、審議会でもいろいろ議論のあったところでございます。現在演奏歌唱については、一応一般の著作権と同様でございます。それからレコード等につきましては、会社との場合が多うございますが、この場合は公表後三十年ということになっているわけでございます。これをどのようにするかについていろいろ議論があったわけでございますが、現在、著作隣接権を考える場合に、一つのモデルといいますか、パイロットの条約として実演家、レコード製作者及び放送事業者を保護するためのいわゆる隣接権条約というのがございます。これによりますと、著作隣接権の保護期間は二十年を下ってはならないということで、二十年が最低限になっておるわけでございます。この隣接権条約というものが、一つの隣接権のあり方についてのモデルであるというような意味から、それにひとつこれをならうほうがいいのではないかということが一つでございます。 それからもう一つは、隣接権条約自体にわが国が早急に加入するとの考え方はまだございません。まだこれに入っておる国が十カ国程度ございますので、これに入る段階にまだ来てないと思うけれども、もしその外国の隣接権をも保護する状況になった場合に、外国の保護との関係も考えなければならない。条約上二十年のものをわが国がそれよりもさらにこれを延ばすということについては、なお問題のあるところではないかというのが第二点でございます。 第三点といたしましては、いわゆる著作隣接権の内容で、実演家とレコード製作者の権利といたしまして、いわゆる商業用レコードの二次使用について、二次使用料の請求権というものを与えることになったわけでございまして、これは従来ない権利でございました。こういう新しい権利を与えるということは、その権利の内容が豊富になることである。そういうことからして、その権利の保護期間について三十年とするのは、少しく保護が厚過ぎるかもしれないというようなことからして、一応隣接権条約に定めるところの二十年というものを一つの基準として、それにまずはよることにしてはどうかということで、二十年という答申が出、それに基づいてこの法案がつくられておる、こういうことでございます。
○唐橋委員 国際関係で二十年というのは、いま御説明になったとおりでございますが、この隣接権条約には現在はまだ早い、しかし入るというような予想で一応二十年という設定も当然じゃないのか、そういうのが一つの理由になっておる、こういうことでございますが、隣接権条約は、いま説明ありましたようにまだ十カ国程度です。その場合にいち早く隣接権というものを設定していった場合に、隣接権に入っていない未加入である他の国との関係、あるいは加入されておる場合との関係、そういう場合の取り扱い、あるいは差、違い、そういうものは、ひとつどんなふうに考えられますか。
○安達政府委員 この隣接権の保護する実演、あるいはレコード、放送等につきまして、どのようなものが保護されるかということにつきましては、この法律の七条、八条、九条に、保護を受ける実演というのがございます。国内において行なわれる実演、それから保護を受けるレコードに固定された実演、それから保護を受ける放送において送信される実演というものは、これを保護する。こういうことになるわけでございまして、したがいまして、原則といたしましては、外国人の実演でも、国内において行なわれる実演についてはこれが保護を受けるということになるわけでございますが、この附則の第二条の第五項で「著作隣接権に関する規定は、国内に常居所を有しない外国人である実演家については、当分の間、適用しない。」国内に常居所を持っておる外国人には、日本人と同様の保護を与えるけれども、国内に常居所を有しない外国人の実演家については、当分の間適用しない、こういうような規定を置いておるわけでございます。日本がもし隣接権条約に加入いたしますと、附則の第二条の第五項というようなものについては検討を要しまするし、さらに隣接権に加入しておる国においての実演、それからレコード、そういうものを相互に保護する義務を生ずる、こういうことでございます。
○唐橋委員 隣接権についてはあとでやります。質問を前に進めます。 五十年後の著作権がなくなった場合、他の外国の例によっては有償公有という制度を持っておる。こういう国があるわけでございますが、これは今後十分検討していかなければならない非常に重要なものであると私は考えるわけでございますが、有償公有制というものを私たちは考えておりますが、いま立案の過程において、このような議論が出されてあったかどうか。そしてまた、それに対してはどう考えられているか、これについて。
○安達政府委員 有償公有制度と申しますのは、著作権の保護期間が消滅した後、なおこの著作権を公有として、その場合にはその使用料等はこれをたとえば著作者等の共済とか、その他後進の育成とか、そういうものに使う。そういう基金をつくってそこに入れて使うというような制度でございまして、フランスとかイタリー等に一部行なわれておるわけでございますが、これについて審議会でいろいろ検討いたしたわけでございますけれども、この審議会の答申では、このたびの改正の機会においては、保護期間等を、原則として著作者の死後五十年と延長するということが適当である。その上さらに有償公有の制度をとるということは、利用者の負担の増加ということを考慮すれば、必ずしも適当ではなく、また、従来の社会意識からしても、著作物の使用について、永久に使用料を支払うべきものとすることは、かなり問題のあるところである。したがって、この制度の採用は将来の課題にしようということで、このたびの改正の機会においては採用しないことが適当である。こういう結論が出たわけでございまして、この有償公有制度をとるとすれば、基金を設けるとか、その他相当いろいろな点を検討しなければならない点でございますので、将来の課題に譲って、このたびの改正の機会には採用しなかったというのが経過でございます。
○唐橋委員 これで終わりますが、ひとつ委員長のほうで配慮していただきたいのは、私のきょうの質問は、およそ問題になる点を、この前とさらに今回で政府当局の考え方を聞いたので、速記録を十分私たちは検討したいと思うのです。その上にいろいろな問題がやはり出てくると思うので、速記録はできるだけ早くひとつ出すように、委員長のほうで取り計らってください。いいですか。
○大坪委員長 承知しました。
○唐橋委員 それから資料として、仲介業務の現在並びに今後出されようとしておるもの、出されようとする法人、それの仕事のおおよその内容、そういう点をひとつ一覧にして出していただけませんか。現在あるもの、あるいは今後こういう点について出てくるだろう、こういうように予想されるものもあれば加えて………。
○安達政府委員 仲介業務に関する点につきましては、著作権制度審議会の答申が出ておりますから、その答申とその説明書の資料はございます。それをお手元に差し上げることは可能でございますが、法案の要綱のようなものはまだつくっておりませんものですから……。その審議会の答申と、それを見やすくしたようなそういう資料と現行法との対照というようなものでございますれば用意をいたしたいと思います。
○唐橋委員 その資料と、現在仲介業務を営んでいる法人。それと今度新しく隣接権が出てくれば、そういうものに対して仲介業務をやりたい、こういうようなものが出てくれば、そういうような情勢も含めながら現在ある仲介業務の全部の一覧、これをひとつ出していただきたい。
○安達政府委員 承知いたしました。
○唐橋委員 以上で終わります。
○大坪委員長 小林信一君。
○小林委員 最初に、いま唐橋さんとの応答の中で私非常に問題に思ったことがあるのです。というのは仲介業務法の問題ですね。あなたはこの法案が審議をされた後に業務法を考えたいというお話でありましたね。私の考えるところでは、唐橋さんの質問も、元来これは密接不離なもの、だから一つの著作権法が改正になるならば、同時にこのほうもそれに応じて——答申案の中にはその必要がないというようなことが書いてあるけれども、たとえば日本音楽著作権協会、これなんかの問題は、音楽の関係ではこの協会が全部その衝に当たって、いわゆる著作権を持っているような形ですね。そういう具体的な問題を考えれば当然並行して法律改正がなされなければならぬ、こういう趣旨で唐橋さんは質問したと思うのですよ。しかしあなたの答弁は、この著作権法案を一応審議して、そのあとでこれをやりたいというような御答弁であった。それから受ける印象では、この著作権法というのは試みに国会に出してみろ、そしてこの国会の中でもってこれが通過しなくてもいいのだ、いろいろ問題が出るだろうから、その問題を整理する中でもって成案にすればいいという、何かこの国会に提案をする意図というものが非常に弱いように考えられるのですが、どうですか。
○安達政府委員 国会に法案を提出する以上は、この国会の御審議をわずらわす以上は、最善と思う案を提出いたしまして、そして慎重にしかもすみやかに成立をはかっていただきたい、こういう趣旨で出しておるわけでございまして、試みに出すというような、そういう不遜な考えはちっともございません。 ただ、仲介業務法との関連を申しますと、現在著作権ニ関スル仲介業務ニ関スル法律というものがあり、その法律のもとで業務を認可された、たとえば音楽著作権協会があり、そしてそれが文化庁長官監督のもとに使用料の認可制のもとに運営されておる。こういうことでございまして、これは現在の著作権法下でも新しい著作権法下でも同様になるわけでございます。改善の方向として審議会が出されたことは、現行法と基本におきましてはほとんど変わりがない。したがいまして、その答申に盛られたことは、法律として装いを新たにすることは望ましいけれども、それをしなければこの著作権法自体の運営が困難になるとかあるいはその趣旨が達せられない、そういうようなことはないわけでございまして、したがいまして、その仲介業務法がなるべくすみやかに国会に提出されることが望ましいのでございますけれども、一緒でなければ困るということはないということで、著作権法を提出いたしますと同時に準備を早くいたしまして、仲介業務法もなるべく早い機会に国会で御審議をいただきたい、こういう気持ちでいっぱいでございます。
○小林委員 もちろんここでもってあなたが、これは試みでございますなんてことは言えないと思う。しかし、いままでの経過から見て、そういう点もうかがわれるし、本国会に提案をされて、委員会のほうでもなるべく小委員会あたりに回して、あまりこの問題では真剣にやらなくてもよろしいというような空気があるわけなんです。そうすると、政府と与党の中でもって大体そんな考えで出し、おそらくこの法案が継続審議になってもう一ぺん再検討するようなそういう余裕を持つか、あるいはここで提案をされてこれが通過する場合には相当大幅に修正をされる、そういうふうなことを考えれば、仲介業務法を出しても、これもまたどんな目にあうかわからぬから、一応この法案の審議の状況を見て仲介業務法を出そうというような意向が、いろいろな諸情勢からうかがわれるわけです。しかもあなたのことばの中からもそういう点がうかがわれたわけであって、そうなると、この法案をはたして真剣に審議していいかどうか、これは問題にもなるわけですが、あなたからさようでございますなんということは聞くことはできぬと思うから、これはやむを得ないと思います。しかし、もしそうであるなら、私はきょう長官がいれば長官にそういう点をはっきり責任を持って言ってもらおうと思ったわけですよ。大体出さなくてもいいとあなたはおっしゃるけれども、大勢からすればやはりこれは並行して出すべきで、信念を持ったあなた方の法案である以上、仲介業務法もやはりこれに付随して当然出してくるものだと私は思うのですね。それが私どもはそういう疑義を持っておる。おそらく政府側にもそういう不安があると思うのですが、そういうようなものがあってはならないことを警告しながらこれから質問に入りますが、もう一つ、その質問応答の中で、先ほど映画の問題について、製作者に著作権があって著作者には著作権がない、これは不適当じゃないかという質問があったのですが、この製作者に帰属するという条項をつくるについて、政府と与党で相談をしておる間にというふうな御説明があったのですね。これを聞いていてほんとうに私たちは、この法案審議はわれわれには何のためにさせるのかというような気がするのですよ。昨年というふうなことばも使ったし、あるいは答申に戻ったというふうなことばもあるし、その中であなたは平気で政府と与党との話し合いでということを盛んに言った。この法案を政府の責任で出すのか、政府と与党の合作の中でもって出してくるのか。法案というものは、私は、だれに相談しようが、そういうような理由を述べるべきものじゃないと思うのですよ。やはり政府の責任で、文化庁の責任でもって出しておるということを言わなければならぬ。それは与党ばかりじゃない、あなた方は業者とも話をしただろうし、著作者とも話をしただろう。話をしないのは野党くらいなものだ。国民全体と話をするというのはいいのですがね。あなたは与党と話をした、相談の結果だ、こういうことを平気で言うけれども、これはそういう権威のない法律か、その点ひとつはっきり伺いたい。
○安達政府委員 法案は閣議決定で、政府の責任で提出したものでございます。その間に、法律を作成する段階といたしましては、著作権制度審議会の答申があり、あるいはまた関係者との話、あるいは各方面からの意見等を参考にする、こういうようないろんな手続をとって行なわれておるわけでございまして、その間政府で決定する場合に、通常の法案において見られるように、やはり与党等の御意見もこれは当然反映するというが現在のたてまえであろうと思うわけでございます。そういう経過をむしろ率直に御報告申し上げたということでございます。御了承願いたいと思います。
○小林委員 それはあらゆる法案がそうでしょう。しかし、そういうことを最近はもう平気でもってあなた方は言うようになってきた。そこに大体国会のこういう審議の権威というものがなくなり、国民との遊離というものが出てくるわけなんです。私はそれは気をつけなければならぬことだと思う。文化庁長官もあなたと同じような考えですか、長官にかわってきょうあなたは説明しているわけだから、もしあなたが責任持って答弁できないなら……。
○安達政府委員 文化庁の次長とし、政府委員としてそのように申し上げているわけでございまして、当然文化庁の長官の考えでもあるわけでございます。
○小林委員 考えでもあるというのは、こういうところで政府と与党との話し合いでこうなりました、そうあなたは言明しますか、長官もそういうふうに言明をしますという、あなたは責任を持ちますか。
○安達政府委員 最終的に政府の責任において提出したものでございます。ただ、その間の……。
○小林委員 そうじゃないよ。あなた、ぼくが質問しているのに何だ。
○大坪委員長 小林君、しばらくお聞き取りください。
○安達政府委員 その間の事情を申し上げたということでございます。
○小林委員 だめだよそんな、ごまかしちゃ。あなたがそう説明した、政府と与党との話し合いの中で、相談の結果でこういうふうになりました、このことばはそのままやはりあなたは生かしているわけでしょう。その点については少しも間違いじゃない、しかもそれは文化庁の長官としても責任を持ちます、こういうわけですか。
○坂田国務大臣 ただいまの問題は、その手続を率直に申し上げたわけでございまして、あくまでもこの法案は政府の責任において出したわけでございます。しかしながら、御承知のとおりに、やはり政府案といたしまする場合にはそういうような手続をとることは事実でございますので、そのことを申し上げているわけでございます。
○小林委員 これは単にいまの問題だけではない。国会に臨む文部省のお役人さんたちの態度という基本的な問題だと思うから、ぼくは幾らでも追及していくわけですがね。 映画に関係する条項で、一体世間では何といっているか知っていますか。すでにこの問題をめぐって、著作権法というのは著作者の権利を守る法律でなければならぬのに、これを利用する人たちのためにこの法案というものは非常に傾いてきた。それが第一次案から第五次案まで出す過程でもって盛んに変転をしておる。どっちへ傾いたかというと、利用者のほうへ傾いてきて、いわゆる金もうけをする、著作物を利用する人たちのほうに傾いてきて、いまや著作権法というものは一つの汚職の渦中にある、こういうことまで世間はいっているわけですよ。あなたがいまのような言を吐けば、ますますこの法案に対する疑惑というものは高まってくると思う。それでもいいか。
○安達政府委員 映画の著作権の帰属につきましては、これは先ほど唐橋先生も御指摘になりましたように、映画製作者との関係は、いろいろ各国での差はございますけれども、映画製作者が行使しやすいようにしておるというのが実情でございます。たとえばアメリカでは映画製作者が著作者として著作権を持っておりますし、またイギリスでは製作者が著作権者であるときめておるわけでございます。イタリア、オーストリアでは日本と同様に著作権の帰属を製作者にいたしておるわけでございます。したがいまして、そういうことから、このどうするかについては御指摘のようにいろいろな御意見があるところでございますけれども、そういう映画製作者に帰属させ、推定譲渡させ、あるいは本来映画製作者を著作権者とする法制もあるわけでございますから、現在この法案が、映画製作者の利益、企業の保護であるという考え方ではなくて、映画の著作物の経済的利用を円滑ならしめるにはどのようにしたらいいか、そういう観点からこのような案になったということを御了承いただきたいと思います。
○小林委員 問題をはぐらかしちゃだめですよ。そんなことはこれからの審議の中で聞くことだ。いま映画の条項をめぐって、いわゆるその筋書きを書いた人あるいは俳優、監督をした人、こういうふうな人たちから、いままでのこの法案の変転をする中でだんだんそういう人たちの意向というものは無視されちゃって、そうして製作者だけに著作権が認められるような形になったということは非常に残念である。しかし、その経緯というものが、あなたのおっしゃるように政府と与党との話し合いの中で進展をしてきた。したがって製作者が、自分たちが著作権をとるために相当そういう中に入っていった。したがって、いま著作権をめぐってそういういわゆる黒い霧というものが感ぜられるというふうに、著作権法というものがすでに批判を受けているわけなんです。その受けている中で、あなたが審議の中で公然と、この条項は政府と与党との話し合いの中でこう変わりました、ああ変わりましたということを言っていいかどうかという質問を私はしているわけなんです。言ってもいいですか、そういうことは慎むべきですか。これを見て下さい、著作権の問題をめぐって、映画関係のいわゆる製作者以外の人たちというものは、こんなに苦情を持っているのだ。
○安達政府委員 再々申し上げておりますように、政府の最終責任におきまして現在法案を提出しているわけでございまして、その間政府、与党云云ということを申し上げたのは、率直に申し上げたわけでございますけれども、こういう席でそういうことを口にするのは慎むべきだ、こういう御指摘につきましては、十分注意を今後いたしたいと思っておるわけでございます。
○小林委員 それでいいですよ。それだけ言ってもらえば私はいい。それをあなたが、それだけの弁解をするのもいやがる。妙な、映画の問題がどうだこうだというふうなことを言う。(「こまかい問題は小委員会でやれ」と呼び、その他発言する者あり)いや、これは基本的な問題じゃないか。こまかい問題はこまかい問題で小委員会でやるのだが、いまのような基本的な問題は——ではひとつ理事会でも何でも開いてやってもらいたい。
○大坪委員長 小林君に申し上げます。質問を続けてください。
○小林委員 では、委員長に言いますよ。いまのような意見のあるのは、理事会でひとつ審議のしかたというものを検討してください。
○大坪委員長 質問を続けてください。どうぞ不正常発言を慎んでください。
○小林委員 不正常じゃないよ。みんな痛いから、何とかしてごまかそうとするんだ。 それでは質問に入ります。 これは世紀の法案ですね。この法案を制定するに当たっては、掲げる目的というものは、大体これは全法案の方向を示すものだと思うのですよ。そこで、この目的の問題についてひとつ大臣、長官、そして責任ある担当者、こういう人たちの御意向を承りたいのですが、それの前に、こういう目的を掲げて大法案をいま審議をしようとするわけですが、この著作権法の制定をしなければならぬというその必要条件というものを、必要さを、いまの社会情勢、客観的ないろんな条件というものをどういうふうにつかんでこれをいま出されておるか。まずその態度からお伺いしておきます。
○安達政府委員 現行の著作権法が一八九九年、十九世紀のものでございますので、これをさらに二十世紀、さらには二十一世紀にも持ちこたえられるような法律に整備するというのが第一の方針でございます。実際の関係、実態的な必要から申しますと、一つは著作権の内容というものは、国際的な一定の基準というものがございます。したがいまして、わが国の現行法ではその国際的基準からは下回っておる。たとえば著作権の保護期間にいたしましても、あるいはレコードを用いてする音楽の演奏権を制限しておる、こういうような国は世界にないということで、これを改めたい。あるいは権利者の要望も強い、こういうようなこと。あるいは現在著作権法はテレビ等を考慮してはつくられていないわけであります。日本のようにNHKや多数の民放がある国は、世界でも診しいくらいの国であります。そこで著作物、実演等の利用も非常に広大——量的にも質的にも広範に行なわれているわけでございます。あるいは複製手段、リコピーとかテープとか、あるいはビデオテープとか、そういうような物理的、化学的な手段というものも非常に進歩してまいっておるわけでございます。こういう中におきまして著作者の権利を守るということが、そしてまた著作者の権利の内容を充実するということが第一に大事なことでございます。同時に、著作物が利用されるということによって、著作者もまた喜ぶでありましょうし、また、それによって文化の向上も期し得られるわけでございますから、著作物の利用の円滑を期するというような配慮を加える。そういう意味におきまして、まずは著作者等の権利の確立、充実をはかるということが第一義、あわせて公正な利用に留意して、そして文化の発展に寄与する、こういうことがこの法律の目的であると存ずる次第でございます。
○小林委員 たいへんに充実した御答弁で……。 国際的な基準を下回っておる、おくれておる、これももちろんのことですが、何といっても一番当事者が要求するものは、二番目におっしゃって、最後一番にしたわけですが、民放、こういうものは全く諸外国に比べて非常に日本の発達というのが多様に行なわれておることでは、これは確かに日本は特殊な事情にあると思うのですね。そういう中で著作者というものの権利を守っていくということについては、非常に複雑になってきておる。だから一日も早く著作権法というふうなものを確立してほしい、こういう要望が強かったと思うのですよ。まあ、それを世話をやかなければならぬ文化庁としては、当然この法案の制定というものは急がなければならなかったと思うのです。したがって、何といっても一番根本のものは、著作者の権利を守るということが私は一番大事だと思う。あとのほうにあなた、何かつけ加えたのですが、それもやはり言わなければならぬでしょうが、私はそう考える。だが、この法案の第一条の目的を読むと、どうもそういうふうに受け取れないのです。また、世間でもそう言っております。そういうふうに批判をしておる声が非常に強い。これは皆さんもお聞きになっておると思うのです。したがって、それに対して解明できるような御説明を、私はこの際それぞれから承りたいのです。
○安達政府委員 第一条をごらんをいただきますと、「この法律は、著作物並びに実演、レコード及び放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、」ということで、はっきり権利を定めるということを言っておるわけでございまして、その場合に、「これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、」ということでございます。「留意しつつ」ということでございますので、それはいわば二次的になるわけでございます。そうしてその「著作者等の権利の保護を図り、」というようにございますから、保護をはかることに重点があるということは、この文章からお読み取りいただけると思うのでございます。そして「もって文化の発展に寄与することを目的とする。」、こういう趣旨でございます。
○小林委員 大臣からもこれは承りたいと思うのですが、私の考えや、それから私にいろいろ言う人たちの意見を聞けば、最初の「著作物並びに実演、レコード及び放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、」これはいいですよ。「権利を定め」なんだから、別にここで権利を擁護する——「定め」だから擁護の初めになるかもしれませんが、とにかく定められることはけっこうである。しかし、ここにも問題があります。ほんとうに著作権を擁護するというならば、実演、レコード及び隣接権ですね、隣接権というものを一緒にしたということは、必ずしも公平でないという意見もありますが、とにかく権利を一応定めるという点については、これはだれも異議はありません。しかし、二番目が最も重大であって、「文化的所産の公正な利用に留意しつつ、」これは二次的なものであって、最後の「著作者等の権利の保護を図り、」ここのところが主だというふうにあなたはおっしゃるけれども、印象からすれば、この権利保護というものをひとつ制約する形になっておる。確かにつけ加えたいことばでしょうけれども、それをつけ加えることによって権利保護というものが非常に弱くなってきておる。こういうことは、諸外国の著作権法と比べれば非常に日本は特殊なものになっておる。だからこの二番目のことばというものは、「文化的所産の公正な利用に留意しつつ、」というその条項というものは抜くぐらいにしてほしい。そしてやはり強く著作権者の権利の保護をはかる、そうしてもって文化の発展に寄与するというようにすべきじゃないか。何となくこの法案の目的に盛られておることばというものは、ほんとうにあなたが最初おっしゃったこの著作権法が制定されなければならぬ社会的な情勢というものから出発しながら、実際に法案をつくるについては、著作権擁護というものは非常に弱くなっておる。したがって、それに準じて内容を調べると、そういう傾向が強い。こういうことを私も考えたし、そういうことを言っておる人たちがたくさんあるのですが、それに対してお考えをおっしゃっていただきたいし、これは文教行政という面からしても、私は大臣からも一言御意見を承りたいと思うのです。そうしてこんなことは、私は固執しちゃいかぬと思う、政府と与党と幾ら話し合いをすべきであっても。
○安達政府委員 この著作権法でこういう目的の規定を定めておるものはほかの国の著作権法にはあまりないことでございまして、これをどのようにきめるかについてはずいぶんと苦心をしたところでございます。 そこで字句にこだわると恐縮でございますが、たとえば「留意しつつ、」というところで点を打って、そして「著作者等の権利の保護を図り、」、これは相当苦心した経過をいま御説明申し上げておるところでございます。そういう点と、それから目的よりも実態がどうなっているかということがむしろ中心であろうと思うわけでございまして、この「所産の公正な利用」ということからいいますれば、たとえば死後五十年にしろ、そういう保護期間に限定を設けること自体もやはり「公正な利用」というような点で、財産権であればこれは永久であるという考え方もないわけではございませんけれども、保護期間の限定をするとか、あるいは教育のための利用を容易にするとか、あるいは報道目的のために利用しやすいようにするとか、そういうような内容がこの公正な利用に留意するというところでございまして、この内容として、権利の制限に関する規定というものはほとんどがベルヌ条約によって許されておるものを採用しているにすぎないわけでありまして、それを越えて、いわゆる世界の基準を越えてわが国だけがきびしい制限をしておるということは一つもございません。したがいまして、この内容あるいはまた権利の内容といたしましては、たとえば著作隣接権、著作者人格権というものをつくるとか確立するとか、あるいは権利の内容を広くするとか豊かにするというような配慮をいたしておるわけでございます。したがいまして、この目的をお読みいただくと同時に、この内容をもあわせ見ていただければ、この法律の趣旨が権利者の保護を第一義とし、かつ他面においては公正な利用にも留意をしておる、こういうことをお読み取りいただけると思うわけでありまして、しかもその権利の内容にしろ制限にしろ、特に国際的基準からこれを落としておるというようなものは原則的にないわけでございますので、わが国の法律だけが特に権利の制限にきびしいというようなことは一つもございません。
○坂田国務大臣 ただいま文化庁次長から御説明申し上げましたとおりだと私も考えております。したがいまして、その第一条が書かれてあるわけでございますけれども、一体なぜわれわれはこういう著作権の法律を出すか、あるいはまた著作者の権利を認めるかというならば、その著作者が制作をいたしました成果、所産というものが、広くは人類のために、文化の発展のために、またその国の文化の発展のために、そしてまた将来新たなる文化を創造するためにそういう所産が非常に大事である。したがってそれはある程度文化に寄与する、あるいは新たなる創造を生み出すものとして利用されるということにあるかと思うのであります。 そういう意味からいいますると、もちろんそういう諸権利というものが認められなかった、あるいは時代的にあるものは無視されてきた、それをやはり権利を認めていこう。まあ、今度の隣接権の問題にいたしましてもそうだと思いますけれども、同時にそのものが人類のためにあるいは一般社会のためにある程度利用されるということを考えなければいけないので、そういう意味合いにおきまして「公正な利用に留意しつつ、」というこのことばはまことに意義深いことだと私は思うわけでございます。やはりその間における、基本的にはあるいは第一義的にはその権利を定めるわけでございますけれども、やはりその文化的所産というものの公正な利用ということも一面においては考えなければならない。そこにおのずと何らかの調整と申しますかあるいは制限と申しますか、そういうことが公正に行なわれる限りにおいてはむしろ非常に望ましいことである。そしてそのことも単に日本だけが非常に制限をきつくしておるということでなくて、ただいま次長から申し上げましたようにほぼ世界的な水準にもある、ということであるとするならば、それでいいのではないか、そういうふうに思うわけでございます。 まあ個々の実態等につきまして、あるいは多少問題点があるというところがあれば、またいろいろ御指摘もいただきまして、われわれのほうでも十分考えてみたいというふうに思うわけでございますけれども、一応この第一条に書きました意味はただいま申し上げましたようなことでございます。
○小林委員 少しくどいようですが、これは私どもだけでなくて非常に大ぜいの方たちからの意見でありますので、もうしばらくこの問題についてお聞き願いたいと思うのです。 いま大臣がおっしゃったこと、それから次長がおっしゃったこと、私もそのとおりだと思うのですよ。しかし、そうであってもこの文章の表現のしかたからすると、当事者たちにはすなおに受け取れないところがあるのです。もう少しこれを深く探ってみれば、なお私は私のほうに言い分があるような気がするのです。というのは、いま「文化的所産の公正な利用」、こういうことで文化の発展に寄与する、そういうことをより多くより高度のものにする、そういう目的を持つことは私はいいと思うのです。それならば、現状行なわれておる著作者と、そしてそれを利用する出版会社とか映画会社とか放送会社というものとの関係は一体どんなであるか、あなた方がこの法案をつくるについてそういう実態というものをある程度調査もされておると思うのですが、そういう両者の関係というものをどういうふうにつかんでおられるか、お聞きいたします。
○安達政府委員 この法案の作成の過程におきまして、著作権制度審議会の審議の過程、あるいはその後の草案の作成、あるいは最終案の作成の過程におきまして、権利者、使用者あるいは特にそういう方面に関心のある人、そういう方々から終始いろいろな御意見を聞き、それらの妥当な調整をはかるということに腐心してまいったところでございます。ただ、私ども強調したいことは、そこでも、中心にはやはり著作者等の保護、権利の擁護ということに重点を置いて、たとえば保護期間の延長にしろ、レコードの二次使用の問題にしろ、常にその著作者なり実演家等、権利者の権利の内容を確保することに重点を置いた内容となっているものと思うわけでございまして、この権利の制限の規定は、先ほど来申し上げておりますように、それぞれ条約等に定めるもの、あるいは各国の立法例、そういうものを参照にいたしまして、特に必要なものを規定したということであります。
○小林委員 私はもっと具体的なものをお聞きしたかったんですよ。というのは、出版会社とそして本を書く人、この力関係というものは一体どうだ、こういうところをつかんでこられれば、いまのような問題というものはもう少し私が申し上げているところを御理解願えるんじゃないかと思うのです。というのは、書く人はやはり財政的には、経済的な面では非常にうとい。ところが利用するほうでは、出版会社というふうなもの、放送会社というふうなところは経済的な力というものをしっかり持っていますから、いやならおまえのところは使わぬぞという強さというものがある。売り手と買い手の関係があるわけですね。しかもその売り手と買い手の関係というものは、片方が非常に力を持っているわけです。片方は経済的には非常にうとい。そういう中でもしこの関係というものがつくられるならば、大臣が言うように、高度の文化的所産というものをつくるということよりも、やはり乱造するというふうな傾向になってきて、私は必ずしもこのことばどおりのものにはならないと思うのですよ。だから、法律というものはかえってそういう弱い創作者のほうに力を入れてやって、そうして簡単には売らぬぞという姿勢の中によい創作というものが生まれるんじゃないか。ばかにこの文化的所産の公正な利用、そういう社会的な公益的な面を強くすれば、著作者のほうは弱くなる。弱くなれば、自分の主義とか理想とかというふうなものもときには曲げてその利用者の意に応じなければならぬようになれば、ほんとうの文化的所産というものにならず、ほんとうに文化の発展というものに、大臣がおっしゃるような寄与というものは私はできないと思うのです。だから、私はそういう二つの力関係というものを考え、この法案の使命というものは、あくまでも著作権の保護、権利を保護する、そこに重点を置いていかなければいかぬ。それがまぎれるような表現のしかたや、あるいは内容を盛ってはいけない。これから私は内容を逐一申し上げ、そういう点を御理解願いたいと思うのですが、いまの私の考え方はどうですか。
○安達政府委員 この法案の目的が著作者、実演家等の保護の充実に力点を置くということでございますから、その使用者との関係において、そういう人たちの権利が守られやすくする、そういう考え方に立って私どももやっておるつもりでございます。ただ、両者の関係については、この著作権法だけでは守られない問題がたくさんあるわけでございまして、そういう問題はむしろ団体協約とか標準契約とか、そういうような形の中でこれを擁護していくという必要性が相当あるわけでございまして、そういうものにつきましては、文化庁といたしましても、標準契約の作成についていろいろお手伝いをしたり、あるいは団体協約等についての相談にあずかったりして、この法律と同時に、その裏づけとなる実態の法律外の問題等についても十分助言等をいたしまして、権利者等の保護に欠けるところのないようにいたしてまいりたい、こういう二つの点に留意をいたしておるということをつけ加えさしていただきます。
○小林委員 そのあなたのあとのほうで言っていることが最も危険だと世間では言っていますよ。文化庁が、著作権者は個人では弱かったら団体をつくれ、組合をつくれ、そうしてそれでまた中に文化庁が入っていろいろ世話をやいてやる、文化庁の何か口を出すところをたくさんつくっておこう、文化庁の何か立場というものをつくるような、そういう姿というものが法案の中に強くあらわれておる。いわゆるすべてが官僚が介在をする、干渉をする、そういうものでもって事態をおきめようとするところに、どっちが今度は強くなるかといえば、利用するほうが強くなるわけですよ。あなた方は弱い者に味方するよりも強い者に動かされるほうが、いまからどうか知りませんが、いままで多かったわけです。したがって、それと同じような形になりはしないかということでもって、文化庁が口を出す点がこの中にたくさん盛られておりますね。長官のいろんな権限というものを盛られておる。そういうものはなるべくなくすほうがほんとうに著作権者の権利を守ることになりゃしないか、こういうことを言っていますよ。どうです。
○安達政府委員 標準契約とか団体協約等について、私どもが特に積極的に入っていくというようなことはもちろんいたしておりません。求められればということでございますので、その点は御了承願いたいと思います。 それから、この法律の中に文化庁長官というものが多く出ておるということでの御意見でございますが、これは幾つかの分野に分けてちょっと御説明申し上げたほうがいいと思うので申し上げさしていただきますと、まず、教科用図書等への掲載、教科書に掲載する場合においては、子供のために最もよい教材を与えてやりたい、こういう考え方からいたしまして、経済的利用権としての著作権には制限を加えて、著作権者の許諾を要せずして掲載することができる。こういう規定をいたすと同時に、それではあれであるから、そういう場合には補償金を著作権者に支払うこととしょう、こういうことにしておるわけでございます。その補償金の額についてどうするかという問題があるわけでございまして、これを両者間の話し合いだけにするということも考えられましょう。ただその場合に、御案内のとおりに教科書の定価については現在文部大臣の認可を要するというようなことになっておりまするし、教科書の定価があまりにも高くなるというようなことについては、やはり配慮すべきところもあるわけでございまして、したがいまして、文部大臣の配下にあると申しますか、その文化庁の長官が、その補償金の額についてこれを定める、こういうようないわゆる教科書というものの面から文化庁長官が出ておるところが一つございます。 それからもう一つは、いわゆる著作物の強制許諾というような場合において文化庁長官が裁定をする、こういうことでございます。この法律でも、そういうたとえば著作権者等が不明の場合に、著作物を利用したい、著作権者を幾らさがしても出てこない、著作権者が不明であるという場合には、その著作物は使えないということでは、文化の進展に差しつかえがあるだろう、そういうものは使い得るようにしよう。しかし、その場合には一定額の補償金を著作権者のために供託さしておくというわけでございまして、それではその額をどうするかということをきめなければならないわけでございますから、それは文化庁長官が定める。こういうようにしておるわけでございまして、これはむしろ不明な著作権者の権利を守るとともに、著作物の利用を円滑にする。その場合の金の額はやはり文化庁長官がきめなければならぬということは当然なことでございまして、条約等でも、そういう場合には権限ある当局が定める補償金というようなことばを使っておるわけでございます。これは現行法でも文化庁長官があるわけでございまして、この法案でもって文化庁長官の出番を多くしたというようなことではないわけでございます。 それからもう一つは、著作権の紛争についてのあっせんの制度というのが出てまいります。これは現在ない制度でございますけれども、審議会等の審議の過程で、著作権の紛争を簡易にかつ合理的に、まあまあではなくて、十分著作権の基礎の上に立った、そしてまた簡易な解決を権利者、使用者双方のために設けることが適当であるということで、その場合には文化庁長官みずからあっせんするのではなくて、文化庁長官が委嘱する三人以内の人がこの紛争のあっぜんに当たるということでございまして、したがいまして、その制度自体は新しい制度でございますけれども、文化庁が出しゃばるという意味ではなくて、そういうような形において著作権紛争を合理的にかつ簡易に解決するための手助けをしよう、こういう内容でございます。
○小林委員 前の、あなたのおっしゃった所在が不明であるという者の権利を認めるための心配はいいですよ。しかし、その協定ができずに著作者の許諾が受けられない、そういうふうな場合の裁定の問題ですね。これはもう著作権者というものは不要だと言っております。こういうものを設けるためにかえって著作権者の権利というものは薄くなるんだ、そしてこれを利用する人たちが利益を受けるんだ、それがやはりこの第一条の目的からそういうふうに出発している、こういうふうにいわれておるわけですね。それは一つの例としていま取り上げたわけですが、これからそういうふうな具体的な問題について、私はもう少しあげて、この第一条の問題というものをもう少し御検討願いたいと思うのです。 そこでいまあなたは、それも長官が独断でやるわけじゃないんだ、三人の審議官をつくって云々というお話がありましたね。ところが、いままで、この法案をつくるについて審議会をつくりましたね。その審議会の委員の選び方、構成のしかたというふうなものにだいぶ問題がありますよ。やはりほんとうに弱い著作権者というものの意向を聞こうとしない、大きな業者の代表というふうなものを入れて、そして第一条にこういう目的が書かれるような著作権法案をつくってしまった。したがって、いまの裁定の場合の審議官を云々という話があるのですが、それも確かに名前はいいかもしらぬけれども、その人の選び方によって、ほんとうに守られなければならぬ著作権者の権利というものは守られない、こういう意見があるのです。著作権制度審議会の委員の名前をそこであげてみてくれませんか。
○安達政府委員 順次申しますと、国士館大学教授の東季彦氏、それから日本レコード協会会長安藤穰氏、それから作曲家・東京芸術大学教授の池内友次郎氏、それから東京大学教授、これは国際私法の専門の人ですが、池原季雄氏、それから文化財保護審議会の会長稲田清助氏、それから評論家の浦松佐美太郎氏、日本新聞協会事務局長江尻進氏、それから弁護士の戒能通孝氏、それから日本音楽著作権協会理事長春日由三氏、それから愛知学院大学教授勝本正晃氏、それから音楽家・日本音楽家連合会会長紙恭輔氏、それから国塩耕一郎氏、映画監督の五所平之助氏、日本民間放送連盟専務理事酒井三郎氏、それから全国観光社交事業連盟副会長新貝義雄氏、劇作家菅原卓氏、一橋大学教授田上穣治氏、洋画家・武蔵野美術大学教授田中忠雄氏、それから谷村裕氏、これは前大蔵次官でございます。それから金沢大学学長の中川善之助氏、弁護士の中松澗之助氏、それから作家・日本文芸家協会会長丹羽文雄氏、講談社社長・日本書籍出版協会会長野間省一氏、それから著作権の専門家でございます野村義男氏、元法制局長官・首都高速道路公団理事長林修三氏、日本観光協会会長平山孝氏、それから作詩家・日本音楽著作家組合委員長藤田正人氏、日本放送協会——NHKの放送総局副総局長藤根井和夫氏、東宝株式会社副社長馬淵威雄氏、俳優の守田俊郎(坂東三津五郎)氏、以上三十名でございます。
○小林委員 その構成のしかたからいわゆる利用者を重視した審議会であった。したがって、これからこの法案の中に盛られておる審議委員を構成するというふうな場合に同じようなことが繰り返されるのじゃないか。だから文化庁はあまり口を出さなくてもいいような、二人の間の契約でもって仕事ができるような法律にすべきである、こういう声が強いのですよ。それは何から生まれてくるかというと、その目的を構成した、そういう考え方から出発しているので、この中の目的の中にあげた第二項、こういうものを掲げることによって、いまあなたたちはこの法案をつくる精神というものが確立しているからいいのですが、この法律が順次いろいろな人によって運営をされる場合には、この第二項というものは強く意識されるのじゃないかというような点から反対をしておる人もあるし、私どもも、つけ加えたいことかもしれぬけれども、こんなことはよけいなことだ、こういうふうに申し上げたいわけであります。 それから先ほど唐橋さんの質問の中にあった有償公有制、いわゆる五十年を過ぎた著作権については権利がなくなる、そのことについて唐橋さんのほうからは、有償公有制をとったらどうかという意見があったら、その必要はない、やはりその利用者の利益をはかっていかなければいかぬ、こういうふうにお話がありましたが、そこら辺に、ものの考え方、問題のとらえ方というのに違いがあるのじゃないかと思うのですよ。その人が死んで後五十年、そこまでは認められるわけですね。しかし、その後も有償公有制というような制度を設ける中で取り上げられる、浮かび上がってくるような作品というものは、これは相当優秀なものですよ。つまらぬものはその後に利用されるなんということはめったにないと思うのです。先ほど文部大臣が言った、日本の文化の発展に寄与するという精神からすれば、死後五十年たって、まださらにこれがいろいろと利用されるというふうなものだったら、私は、これをもっと高く評価して、そしてその著作権というものが何らかの形でもって生きるようにすることが、ほんとうにその文化的所産として尊敬されるもとになりやしないかということになると思うのですよ。これらの考え方を私どもは総合して、第一の目的というものはもう少し考え直す必要があるのじゃないか、こう考えておるわけですが、あなた方は間違いない、こうおっしゃるのですけれども、これから内容を一つ一つ点検をしながら、私はこの問題をもっと深めていく指摘をしたいのです。 そこで私は五時までという時間でございますが、お願いしたいのは、あなた方は第一次から第五次まで、政府と与党との間でもって話をして、法案をいろいろと変えてきたわけです。残念ながら、私どもは第三次の案というものはもらってありますが、第一次、第二次、第四次、そういうふうなものはもらってないのですが、審議をするのに、あなた方から一々第一次から第二次がどう変わったということを聞くかわりに、そういうものを私たちに渡すことができるかどうか。渡してくれるなら渡してもらって、そうして勉強しておいて、ここはこう変わったが、どういう考え方で変わったかというふうに質問させてもらいたいと思うのですが、ありますか。
○安達政府委員 いままで公表いたしましたものといたしましては、最初の著作権隣接権に関する法律文化局試案というのと、それからいま御指摘になりました第三次案と称して去年最終決定する前に関係者の意見を聞くためにまとめたもの、それだけでございまして、その間法制局の審議等の間で字句その他いろいろしょちゅう動いておるわけでございます。特にいま二次案とか四次案、五次案、そういうようなものは別にございません。 それから、いまの有償公有の点でございますが、これは私どもなり審議会でも将来の課題にするということでございまして、これが絶対的にいけないとか、そう言っているわけではございませんので、今回の改正においては取り上げない、将来の課題としたい、こういうことでございます。それからもう一つ、利用者というのは商売上これを利用する人だけということではなくて、一般国民が著作物を利用しやすくする、こういう意味で申し上げておりますので、そのようなことを御了承いただきたいと思います。
○小林委員 私もそういうふうに承知して利用者の利益ということを言ったわけです。そうすることによってやはり偉大な創作というものはほんとうに高く評価され、それがやはりいろいろ後世に影響してくるのじゃないかと思うのです。映倫だとか悪書追放だとかというようなことをことさらしなければならぬような現時点において、これはどっちに重点を置いて考えていかなければならぬか、いまのような公有の問題も、そうであればあるだけ、将来において考えるのではなくて、この機会にお互いの論議の交換の中で決定をしていかなければいけない、こう思っておるものであります。 時間が五時までだそうでございますので、質問を留保して終わらしていただきます。
○大坪委員長 次回は、来たる六月六日金曜日午前十時より理事会、午前十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。 午後五時三分散会