文教委員会 第19号
- 発言数
- 20 件
- 登壇者
- 4 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1969/05/28
会議録
○大坪委員長 これより会議を開きます。 午後一時より再開することとし、暫時休憩いたします。 午後零時三分休憩 ————◇————— 午後一時四十一分開議
○大坪委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。 著作権法案及び著作権法の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律案を一括して議題とし、審査を進めます。 質疑の通告がありますので、これを許します。岡沢完治君。
○岡沢委員 最初に著作権制度の改正の基本的な方針についてお尋ねいたします。 これは大臣と長官の両方にお尋ねいたしますけれども…… 〔発言する者あり〕
○大坪委員長 静粛に願います。——質問者の前に立たないようにしてください。——質問の妨害になりますよ。 〔「休憩、休憩」と呼ぶ者あり〕
○大坪委員長 休憩はいたしません。質疑中です。——質疑の妨害をしないようにしてください。
○岡沢委員 それじゃ質問を続けます。 重ねてお尋ねいたしますけれども、著作権制度改正の基本的な方針について、端的に申し上げまして、この法律が権利者保護を重点に考えられる法律であるか、あるいは利用者のための法律であるか、この両者の関係等を中心にして、著作権制度改正の基本的な姿勢を最初にお尋ねいたします。
○坂田国務大臣 その点はわれわれは両方だと考えておりまして、むしろその調整をどこに求めるかというところが苦心をいたしたところでございます。詳しいことにつきましては政府委員からお答えを申し上げたいと思います。
○安達政府委員 いま大臣からお話のございましたところを補足さしていただきますと、改正についての具体的な基本方針といたしましては、およそ三つを考えておるわけでございます。 第一の点は、著作物の利用手段が非常に発達してまいったこと、あるいは著作者等の権利の国際的水準等が上がってきておるというようなことに関連いたしまして、こういう最近の実情に適合するように著作者の権利なりあるいは著作物の利用に関連を有する権利あるいは実演家等の権利につきまして定めまして、これらの権利の適正な保護をはかるということでございまして、具体的に申し上げますれば、たとえば著作物の保護期間の原則を、著作者の死後三十七年を死後五十年とする、あるいはレコードを用いてするところの音楽等の放送、演奏等につきまして著作者に権利を認める、こういうような点、あるいは実演家、レコード製作者あるいは放送事業者等につきまして著作隣接権という制度を創設して保護するというのが第一の点でございます。 第二の点は、著作者等の利益と公共の福祉との調和をはかり、著作物の公正な利用がはかられるようにする、こういうことでございまして、著作権の制限に関する規定を整備したというのが第二点でございます。 第三点は、この法律で規定するところの権利、著作権なり著作隣接権というものの権利を実効あらしめる、こういうことでございまして、権利が侵害された場合の救済制度を整備するとか、あるいは罰金を強化するとか、あるいは紛争の簡易な解決をはかるためにあっせん制度を設ける。こういうようなことによりまして、著作権者あるいは隣接権者等の保護をはかるとともに、著作物、実演等の公正な利用が確保できるように、そしてまたこれらの権利の保護が実効あるようにしよう、こういうことでございます。
○岡沢委員 特に大臣の御答弁ではその両方を保護するという御答弁がございました。しかし、大臣も十分御承知のとおり、この著作権者と利用者とはむしろ利害が対立する、場合によっては金銭的な利害の対立があるというのが、この法案の中身だろうと思います。その両方を保護する——じょうずな逃げ方でございますけれども、あまりにも政治的な御答弁過ぎるのじゃないか。法の第一条によりますと、「この法律は、著作物並びに実演、レコード及び放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もって文化の発展に寄与することを目的とする。」この法条から見る限り、やはり著作者等の権利の保護というようなことが全面的に出ているといわざるを得ないかと思います。この法案の前段階における文化局の試案第一条によりますと、その目的として、著作者云々の「権利について定め、公共の利益との調和を考慮して、これらの者の人格的又は経済的な利益の保護を図り、」ちょっと条文も変わったようであります。変わったところに私は意味があるような気がいたしました。そういう意味から、私の質問も両面に関連するし、両方の保護の必要なことも承知いたしつつ、あえてそのいずれを第一義的に考えるかということをお尋ねしたわけでございますから、その点に留意した御答弁を願いたいと思います。
○坂田国務大臣 ただいまの先生の御指摘はやはりそのとおりでございまして、まず第一義的には著作者の権利を保護するということを主眼とお考えいただきたいということでございます。
○岡沢委員 時間の関係で次の質問に移らしていただきます。 提案理由の説明等にも、この従来までの現行法では、国際的に立ちおくれた、あるいは実情に合わなくなったということを指摘されておりますけれども、具体的にどういう点が実情に合わない、どういう点が国際的な関係で立ちおくれているかということを、すでに指摘されている点もありますけれども、さらに詳しく御答弁いただきたいと思います。
○安達政府委員 まず第一に、国際的に立ちおくれておる点ということでございますが、現在日本が加入いたしておりますところのベルヌ条約という条約は、おおむね二十年ごとくらいに改正が行なわれておるわけでございまして、最近の改正は、昭和二十三年ブラッセルで行なわれましたブラッセル改正条約、それから一昨年スウェーデンのストックホルムで行なわれましたストックホルム改正条約、こういうものがあるわけでございますけれども、わが国は現在、昭和三年、一九二八年にローマで改正されましたローマの改正条約に加入しているにとどまっておるわけでございます。ところが、ベルヌ条約国、すなわちベルヌ同盟国は現在五十九カ国ございますけれども、その七割に該当いたします四十二カ国が——その中にはイギリス、ドイツ、フランス、イタリア等のいわゆる先進国が含まれておるわけでございますが、そのうち四十二カ国はブラッセル改正条約に加入しておる。日本はその前の二十年前の昭和三年の改正条約に入ったままである、こういうことでございます。 それが具体的にどういう点にあらわれておるかと申しますと、一つは、ブラッセル改正条約に入りますと、著作者の著作権の保護期間を原則的には著作者の生きている間と死後五十年にするというのが条約上の義務になっておるわけでございます。したがいまして、いま申し上げました四十二カ国ではすべて保護期間が死後五十年以上になっている。ところが、現在におきましては、先ほども申し述べましたように、保護期間が生きている間と死後三十七年となっておる。こういうところが国際的基準から見て明らかに立ちおくれておるということでございます。 それから第二点といたしましては、レコードを用いて音楽を放送する、あるいは演奏するという場合におきまして、これはレコードによろうとなまによろうと、世界各国ともその音楽の著作者の権利を認めておるわけでございます。ところが、わが国の現行法では、レコードを用いてする場合には、出所を明示すれば、だれの作詩、作曲であるということを明示すれば、あとは自由である。こういうように、いわゆる録音物を用いてするところの放送、演奏等につきまして著作者の権利を認めていない。ところが、このブラッセルの改正条約によりますると、こういうことは認められないということになっておるわけでございます。逆にいえば、五十九カ国のうち四十二カ国はすべてこういうものの権利を認めておる、レコードによる、録音物による放送権、音楽の演奏権を音楽の著作者の権利として認めておる。こういうことでございますので、そういう点の立ちおくれがあるわけでございます。 それから第二に、実情に合わなくなっている点と申し上げますると、現行法は明治三十二年、一八九九年、十九世紀の最後のときにできたわけでございまして、それ以後数回の部分改正はございますけれども、実情に合わなくなった。その当時なかったラジオ、テレビの点が——もちろんラジオ等につきましては手当てがいたしてございますが、テレビ等の現在のような状況には合っていないということもございまするし、また一番明らかにおかしいと思われるのは、たとえば現在の法律によりますと、著作物を私的使用に使う、自分の用に供するために複製するという場合でございますと、現行法では、器械的または化学的方法によらないで私的使用のために複製することはよろしいということになっておりますが、しかし、リコピーやゼロックス、テープコーダー等がございまして、現在それぞれ個人的な目的ではリコピーなりテープコーダー等にとっておるわけでございます。こういうような場合は全部著作権侵害ということになるわけでありまして、こういうところは現在のような複製、録音手段が発達した今日の実情には明らかに適合しなくなっておるというような点でございます。また現行法では、当初第一条におきまして複製権、「著作者ハ其ノ著作物ヲ複製スルノ権利ヲ専有ス」と書いてございますが、その後改正がございました。先ほど申しましたラジオというものの発達によりまして、放送権あるいは録音権というようなものを設けておるわけでございますが、これは第何条の二というようにつけ加えまして、法律の体系としても実情に合わなくなっているというようなことが具体的にはいろいろあるわけでございまして、そういうような現在の複製手段というものが非常に発達しておる、あるいは民間放送が非常に発達して、著作物の利用度合いが非常に広くなっておる、大きくなっておるというような状況下では、現在の十九世紀の最後の年にできた法律ではとうてい間に合わなくなっている、こういう状況でございます。
○岡沢委員 この法律案につきましては、われわれのような少数野党の一委員にまで各界から意見や要望を多数聞くわけであります。この法案が出るまでの経緯を考えてまいりますと、昭和三十七年に発足した著作権制度審議会が四年間の審議を経て答申を出された。しかし、それ以後また二年間ぐらい法案作成におかかりになっておる。昨年も閣議決定までされながら国会には提案されなかった。非常に複雑な事情があるようにわれわれ自身も感ずるわけでございますけれども、関係団体ごとの意見聴取あるいは意見調整が十分なされておるのかどうか、その辺の事情をお尋ねいたします。
○安達政府委員 著作権の改正作業の段階といたしましては、ただいまお述べになりました著作権制度審議会におけるところの審議がございます。これはいまお話のございましたように昭和三十七年から約四年間かかりまして審議会の答申が出たわけでございますが、その間小委員会、総会等全体で二百八十回もやっておるわけでございますが、総会に対する中間報告をするとか最終報告をする場合に、それぞれの小委員会におきまして関係団体から文書による意見を求め、あるいはさらに特に問題のあるような点につきましては具体的に関係の方々に来てもらって意見を聞く、こういうようなことにいたしたわけでございまして、関係団体の意見をも入れつつ四十一年の四月に審議会の答申があったわけでございますが、さらにこの答申に基づきまして、文部省では、四十一年の十月に、著作権及び隣接権に関する法律草案を文化局の試案として一般に公表いたしたわけでございますが、この試案を発表いたしまして、ただ意見だけでなくて、具体的に法律の案の形でこれに対する意見を求めたわけでございます。そういう意見を参考にしつつ法制局において審議をしてもらいまして、四十三年の一月には、さらにもう一度書き直した案を第三次案として公表して、これもまた関係団体からの意見を聞いて、昨年の四月に閣議決定があったわけでございますが、さらにその案につきましても、なお関係団体、関係者等の意見を聞きながら、今度の最終の法案を国会に提出した。こういうことでございますので、そういういろいろな段階におきまして関係団体なり関係の方々の意見は十二分にいれておる、こういうことでございます。 ただ、実際問題といたしますると、関係団体が、先ほども御指摘ございましたように、権利者と使用者との間でやはり利害その他からの意見の対立があるわけでございまして、両方とも全部まるまるのむというわけにはいかないわけでございます。したがいまして、団体としては、十ある意見で六つか七ついれられたとしても、三つ残っていれば、なお意見があるというところで、なかなか全部の人々が、もう全然意見がなくなりましたというところまではいかない。やはりそこに相互の調整といいますか、そういうものを加えなければならないというところで、なおその意見が出てくるところがあろうかと、こういうように考えております。
○岡沢委員 次に、この改正案で著作者の権利はどのように拡張されたかあるいは制限されたか、その中身、その概要をお尋ねいたします。
○安達政府委員 まず著作者の権利でございます。これにつきましては、まず第一の点は、著作者の人格権というものをはっきりと認めたということでございます。従来は、著作者の氏名称号を変更したり、隠匿する、あるいは著作物またはその題号に改ざん変更を加えるというようなことはしてはならないという一般的禁止規定があったにとどまったのでございますが、今度は、著作者の権利としては、著作者の人格権というものと、それから著作権というもの、すなわち前者は、著作者の著作物との関係において生ずるところの人格的な利益を擁護するという意味において、著作者人格権というものを確立する。これを私法上の権利として確立する。その内容といたしましては、著作者は著作物を最初に公表するかどうかを決定する権利がある、あるいは著作者名を表示するかどうか、すなわち変名、無名でするかどうかというような権利、あるいは著作物、題号に変更を加えられない権利、こういうようなものを著作者人格権としてはっきりした。それからまた、直接著作に手を加えないけれども、著作者の名誉、声望を害するような方法で著作物を利用するということは著作者人格権の侵害であるということを明らかにしたのが第一点でございます。 第二点といたしましては、著作権の内容を整備したということでありまして、具体的には、たくさんございますが、たとえば著作物の翻訳、編曲、翻案等をした場合に、その翻訳物、翻案物等を利用する場合には、その翻訳者の権利のみならず、その原作者になる者の権利ということをはっきり認めたというようなこと、これが先ほど来申し上げておりますところのレコード等を用いてする著作物の放送、演奏等について著作者の権利を認めるというようにしたというような点でございます。 それから第三点は、先ほど申しました著作権の保護期間を延長したということでございます。 それから、実演家等の権利につきましては、従来は著作権法では、演奏歌唱というものを著作物として保護しておったのでございますが、その演奏者、歌唱者だけでなくて、俳優とか舞踊家、そういう著作物を演じまたはこれに類する芸能的行為を行なう者あるいは音楽の指揮者であるとか演劇の演出家というようなものを実演家として保護しようというようにしたわけであります。それで、実演家には、その実演を録音、録画する、あるいはその録音物、録画物を複製する権利あるいは放送する権利というようなものを認めたのでございます。それからまた、商業用レコードを用いて放送または音楽有線放送をする場合には、実演家に二次使用料を支払うべきものとしたということでございまして、レコードの二次使用権というものを実演家に認めたということでございます。 それから、レコードの製作者の権利については、従来著作権として保護しておったのでありますが、隣接権者として保護すると同時に、レコードの二次使用の使用料請求権というものを実演家と同様に認めたということでございます。 また、放送事業者につきましては、従来著作権法上は全然保護の対象にしていなかったわけでございますが、放送事業者が著作物なり実演等の伝達の非常に重要な機関であるということにかんがみまして、放送事業者についてこの隣接権者としての権利を認めた。こういうようなことが著作者、実演家、レコード製作者、放送事業者、これらの者についての権利を拡大し、あるいは確立し、明らかにしたというようなことでございます。
○岡沢委員 今度の法案では、いままで法律的には珍しい著作者人格権とか隣接権というようなことばが出てきたわけでございますけれども、民法その他の一般法との関連で、この新法がかりに成立した場合に、どういう影響、それからどういう改正等が必要かどうか、この辺のところをお尋ねいたします。
○安達政府委員 この著作権はいわゆる無体財産権ということでございまして、その一般的な私法上の権利として民法の原則なり民法の規定が適用されることはもとよりでございますけれども、この著作権法に定めることは民法の特例になるわけでございまして、いわば民法の特別法的な性格を持っておるわけでございますが、特にこの著作権法によりまして民法の一般原則を変更したというようなものはなくて、著作者の権利あるいは隣接権者の権利として適切なものを適切に定めた、こういうことでございます。
○岡沢委員 本日の質問はこれで終わります。
○大坪委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。 午後二時九分散会