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61回国会衆議院1969/05/06

商工委員会 第23号

発言数
37
登壇者
8
会派数
2
開催日
1969/05/06

会議録

大久保武雄自由民主党

○大久保委員長 これより会議を開きます。  この際、おはかりいたします。  去る四月二十五日の商工委員打合会の記録につきましては、当日の会議録に参照として掲載することといたしたいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

大久保武雄自由民主党

○大久保委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように取り計らうことにいたします。      ————◇—————

大久保武雄自由民主党

○大久保委員長 内閣提出、特許法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案の提案理由説明は、去る四月十五日聴取いたしております。  これより質疑に入ります。質疑の申し出がありますので、これを許します。中谷鉄也君。

中谷鉄也日本社会党

○中谷委員 特許法というきわめて難解な、かつ特殊な法案でありますが、これについての質問をいたしたいと思います。  資料要求が約三十ないし四十、質問をいたします政府委員の方もかなりの数に及びますが、この法案について、どのような点で特許庁と質問者の私との間に基本的な食い違いが出てくるのだろうか、そしてその基本的な食い違いというのが最後まで私の質問の総論あるいは個別的な具体的な問題、あるいは法案の各条審議の中にあらわれてくるのではないか、また私自身は質問の中でそのような点に留意しながら質問をしていきたい、こういうつもりでありますが、本日は最初の質問でありますので、私の質問をしたい態度、姿勢、そういうようなものについて、ひとつ一時間あまりお尋ねをいたしたいと考えます。  言うまでもなしに、特許法の第一条には「この法律は、発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もって産業の発達に寄与することを目的とする。」こうあります。いわゆる工業所有権四法というものが憲法の体系の中におけるところの権利を確定し、権利の保護に関するところの法律であることは言うまでもありません。問題は、この権利というものをどのように見るか、このあたりに私は問題があると思う。  実は、大臣の御出席をお待ちいたしておりましたのは、次のようなことばについて、大臣の御感想でけっこうですから、御所見と申しますか御答弁をいただきたいと思うのです。実は特許法の改正が問題になりまして、各方面からいろいろな批判が出てまいりました。それについて昭和四十四年三月二十六日、特許庁は「特許法改正に対する批判についての特許庁の見解」なるところの文書を、各委員その他各方面に配付されたようであります。その文書の中に次のようなことばが出ております。積み残しがずいぶんたくさん出ておるのである、こういうふうな「積み残し」というふうなことばは、少なくとも特許法について理解が足らない本委員にとりましては非常に抵抗を感ずることばです。これは特許庁の人も特許庁の関係の弁理士の諸君も、全部の人たちがそういうことばを使っておるようでありますけれども、私の質問の趣旨は御理解いただけると思いますが、ひとつ大臣の御答弁をいただきたいと思います。

大平正芳自由民主党通商産業大臣

○大平国務大臣 中谷委員から非常に広範で非常に深い構想で御質問をちょうだいするということでございまして、私どもといたしましても、そういう深い御検討を十分お願いいたしたいと思います。  問題は、わが国の技術の水準と申しますか、わが国の産業は、総じていままで外国からの技術を借りて、それを活用することによって今日まで先進国に追いついてまいることができたのでございますが、技術の格差は歴然といたしております。したがって、私どもといたしましては、通商産業行政の一つの大きな柱はこれから技術政策に置かなければならないのではないか、そう考えております。そのためには、どういたしましてもわが国の国民のすぐれたブレーンを技術の分野で大いに引き出してこなければなりません。幸いにいたしまして、わが国民は非常に教育水準も高いし、また技術の開発の意欲も旺盛でありますことを私は非常に頼もしく考えております。したがって、特許庁に対しまするみずからの発明等に対しての権利を求める件数が、諸外国に比較いたしましても劣らないどころか、それを上回るだけの申請が出ておりますことは大いに歓迎すべきものと考えております。不幸にいたしまして、これを在来の仕組みで十分消化しきることができなかったのでございます。こういう事態を積み残しという表現で言っておったそうでございますけれども、この表現は必ずしも私は適切でないと思うのでございます。本来ならば、そういう旺盛な発明意欲を受けて、十分これをこなしきるだけの行政能力が政府に用意がなければならなかったのでございます。罪は政府にあるわけでございまして、国民の側にないわけでございます。したがって、積み残しというような表現は必ずしも適切でないと思いまするが、しかし申請がありました以上は、これに何らかの回答をできるだけ早い機会に差し上げて、権利の保護に遺憾のないようにいたすのが行政の責任であろうと思うのでございまして、そういう表現が適切であるかと問われるならば、それは必ずしも適切とは思わない。しかし現実はそのように多数の未処理の案件をかかえて苦悩しておるということだけは御理解をいただきたいと思います。

中谷鉄也日本社会党

○中谷委員 非常に丁寧な御答弁をいただきましたが、私の最初の質問は、どちらかといえば非常にムード的な質問をさしていただいたつもりなんです。と申しますのは、提案理由の説明の中には「未処理案件が累積し」ている、正確にそういうふうに記載されているわけでございますね。言うまでもなしに、未処理案件ということばが正確な表現だと思うのです。だからといって、私自身、そのことを何も目くじらを立てて、滞貨ということばが審議会答申の中に出てきているとか、特許庁見解の中に積み残しということばが出てきているということを取り上げて云々するつもりはないのです。ただしかし、じゃ長官の御答弁をいただきたいと思いますが、次のようなことだけは言えるんじゃないでしょうか。私は、特許庁におけるところの迅速な審理とそうして公正な審理というものが特許庁に対する信用の柱だと思っている。そうして出願人とういのは、まさに願いを込めてそのような出願をしてきていると思うのです。権利というのは、単に財産的にそれが換算されるというだけのものではなしに、発明をした人間の血と涙も私はそこに通っておるべきものだと思う。喜びも悲しみも私はそこに通っておるものだと思う。同じような審査、審判というものを私は大事にしたいと思う。審査、審判というものを私は準司法的な手続——われわれは公正取引委員会に対しての質問等もある程度抑制的な質問をする。このような質問については口一ぱいのことを言わないで、ある程度この問題については配慮をするというのも、公正取引委員会というのがいわゆる準司法的な役割りを果たしているからだと思うのです。もしかりに裁判所で未処理事件のことを積み残しだとかあるいは滞貨だとかいうふうなことばが出たとするならば、それは私は国民の権利を守る裁判所としては適当でないことばだというところの批評が出てくるだろうと思うのです。ところで現実の特許庁のお仕事というのは、滞貨ということば、あるいは積み残しということばが現実のものとして特許庁の見解の中にも出てくる。弁理士会もそのようなことばを使う。各種団体もそのようなことばを平気で使っている。これが私は現実の状況だと思うのです。長官、一体こういう滞貨とか積み残しなんというふうなことばは、私は権利というものがきわめて即物的なもの、いわゆる単にお金として換算されている、そういう感じがいたします。だから私は今後、質問のポイントは、いわゆる積み残しというふうなことばが特許庁見解の中にあらわれてきているような考え方で特許法の改正というものがあってはならない、発明者の保護というか、血の通った権利というものがどのように保護されるべきものか、出願者というものについてどのように保護がされるべきか、こういう観点から私は質問を続けていきたいと思いまするけれども、長官は非常に特許法についてはお詳しいと伺っておりますが、積み残しとか滞貨とかいうふうなことばが何の抵抗もなしに使われるようになったのは一体いつごろからでございましょうか。この点についての御答弁をいただきたい。

荒玉義人特許庁長官

○荒玉政府委員 いま中谷先生おっしゃったポイントは、要するに出願の件数、これは量的だけではございません、質的な面もございますが、そういった出願と処理のギャップといいますか、それが問題の発端でございますが、問題になった点は、きわめて大ざっぱに申しますと大体十年ぐらいでございます。実は現行法は御承知のように三十四年法でございますが、ほとんどそれぐらいからやはりそういったギャップというものが目立ってくるわけでございます。ただ、当時は大体処理期間が二年少々でございましたが、いまや四年以上でございます。十年間に期間として倍、そういった事実はいつからとおっしゃれば、私は十年ぐらいかと思います。

中谷鉄也日本社会党

○中谷委員 そういうことを伺っているのではないのです。未処理件数の累増ということが問題になっておるということは万々承知の上でお尋ねをしておる。ただ、それが未処理案件などということばでもって呼ばれておった時期が私はあると思うのです。最初から生き生きした権利を確定するものについて、先ほど私が引用いたしましたけれども、裁判所の中で滞貨があるのだとか、あるいはとにかく本年度は積み残しがあったのだというようなことばは使いませんということを言いましたね。要するに、それはほんとうに審査、審判を通じて特許庁自身が権利というものを単に金銭に換算できるものだというふうなかっこうで見ている。逆に言うと、審査・審判官のほうも仕事に追われまくって、非常に苦しい仕事の中で滞貨、積み残しというふうなことばで、それでは一体審査・審判官はどうなるんだろうか。そうすれば、審査・審判官というのは、きわめてぎりぎり一ぱいの精神的労働をするところのそういう検察官や裁判官や、その他の準司法的な手続をしているところの各種委員会の委員にも匹敵すべきものとして、われわれはそれらの人たちに対して社会的な尊敬と信頼を持ちたいと思っている。ところが、積み残しだとか滞貨だなんというようなことばがあるとすれば、審査・審判官というのは荷物の運搬人なのか、貨物の運搬人なのかということにいわざるを得ないと思うのです。そういうふうなことばに私は抵抗を感ずるというのです。少なくとも特許法に初めて取り組んだ一人の委員として、だれもが平気で何の抵抗もなしに積み残しなどというふうなことばを使っていることに対して非常な抵抗を感ずる。こんなことばは大正十年に清瀬さんが一生懸命になって特許法についての質問をされて、「特許法原理」という本をお書きになった、そのころからそんなことばが平気で使われておったのでしょうか。一体いつごろから積み残しというふうなことばが俗語として、皆さん方がそういうことばを何の抵抗もなしに使う時代が来たのでしょうか。いつごろなんでしょうか。そういうことばが抵抗もなしに使われているというところに本特許法の改正の問題点があり、審査・審判官に対する待遇問題等もそういう観点から理解されねばならないのじゃないでしょうか、こういう趣旨の質問を申し上げている次第です。

荒玉義人特許庁長官

○荒玉政府委員 その次に申し上げるつもりでございました。滞貨ということばがいつから普通になったかという点は、実は私自身はっきりいたしません。ただ、四十一年に特許法等の改正ができたころではないかと思います。もちろんいまおっしゃったように、正確にいつからとは申せません。したがいまして、ことばとして私自身適当だと思いません。要するに未処理件数が多くなったというのをきわめて常識的にとらえたかと思います。積み残しとさっき言いましたが、むしろ通常では滞貨ということばが普通のようでございます。したがいまして、そういうことばの背景に質の変化があったのではないかということだと思いますが、質の変化が私はあったと思います。ただ未処理件数が逐年多くなったということを端的にとらえた常識的な表現だと思います。もちろん適当だと思いません。したがって特許庁の処分がそのために云々されるということには私はならないかと思います。

中谷鉄也日本社会党

○中谷委員 実はこういうふうなことばに私自身非常な抵抗を感じた。そういう中で若干の若い審査官の諸君とも私はお会いいたしまして、そうしていろいろ意見などの交換をいたしました。そういう中で私が感じたことを大臣に申し上げておきたいと思う。審査官とかいうふうな人たちは、私の友人の裁判官だとかと共通の一つの傾向を私は持っていると思うのです。要するに名利を求めない、お金もうけをしようというふうなことをあまり考えているのじゃない、とにかく現在自分の与えられた仕事について非常な自信と使命感に燃えて仕事をしている。私は本来専門職なんだという人に共通する感じを持ちまして、やはり準司法的な仕事をしておられるだけあって、私が長くつき合ってきた裁判官とよく似ている、こういう感じを持ったわけであります。  そこで、私はこういうことを申し上げてどういうことを大臣にお聞きしようとしているかと申しますと、この改正案の提案については、特許庁長官の見解あるいはまた改正提案理由説明等によりますと、各方面の意見を聴取された、こういうことに相なっておりますね。当然のことだろうと思うのです。審議会において審議をしたということも承知をいたしております。もちろんその審議というものが適当であったか、期間において短過ぎはしなかったか、いろいろな問題はあとで質問をいたしますけれども、しかし問題は、特許庁の柱をなしておるところの審査官の諸君が、この改正案については納得ができない、この改正案は特許行政を前進させるものではなしに、労働強化をもたらす、労働強化をもたらすだけではないのだ、適正迅速かつ公正な権利の保護を保障しないんだ、こういう趣旨の見解が圧倒的でございますね。  まず事実関係をお尋ねいたしたいと思いますけれども、第一線で働いておる実務家、これは特許庁の柱であり、審査官の諸君は特許庁の宝である、この人たちがこの法案については非常な疑問を持っている。その点については長官いかがでしょうか。

荒玉義人特許庁長官

○荒玉政府委員 今度の改正案自身から少し御説明いたしますと、柱は二つございます。一つは出願の早期公開、第二は審査請求制度でございます。御承知のように、特許権というのは二つの機能がございます。発明を公開する代償として独占権を与えるわけでございます。——まず、今度の改正の前提からちょっと申し上げませんとあとの問題にならぬと思いますので、はなはだ恐縮ですが……。現行法のままでやれるという点が一つの大きな問題になってきます。いま先生おっしゃった諸君の中には現行法でやれるという考え方もあるように私聞いております。もちろん、現行法でやれるならあえて私は改正をいたす必要もないと思います。   〔委員長退席、武藤(嘉)委員長代理着席〕 ただ、それが人員だけふやすのか、あるいはその他いろいろ総合的判断をした場合に、私といたしましては現行法のままではやれないという一つの見解でございます。この点が、現行法でやれるじゃないか——ただ、やれるじゃないかというのは、どうしたらやれるかという具体的な問題になるかと思いますが、その点に対して一つの考え方の大きな相違がございます。したがいまして、私といたしましては、先ほど言いましたように、審査官の意見は、答申が出てから一年になっておりますが、一年の間組織を通じてそれぞれ見解も聞いております。ただ、その際に、やはり一番大きな問題は、現行法の体系で特許法が持つ社会的使命を果たすことができない、きわめて困難であるという点につきましては、もちろん全部ではございませんが、諸君のそういった考え方と非常に分かれるところでございます。私といたしましてそういった諸君の理解と協力を得るべく努力をしてまいったわけですが、そのあたりの基本的な認識という点につきましては、先生御指摘のような意見の相違がございます。  ただ問題は、一体この制度がどういうふうになるかという点につきまして、特に審査請求制度がいかなる効用を発揮するかという点につきましては、これは将来の問題でございます。御承知のように、現にやっておりますのは、オランダが五年ちょっとの実績がございます。審査請求率が五年間で四四%でございます。ドイツが昨年の秋から実施をいたしております。まだほとんど実績がございません。したがいまして、審査請求制度が一体どうなるかという点につきましては、これは将来のことでございます。いろいろ見解の相違、見通しの差があるかと思います。したがいまして、後日、資料要求がございますから、一応われわれの計画を申し上げますが、やはりやらないよりか効果がある、こういうふうに思います。そのあたりがいろいろ将来の問題でございますので、見解の相違があるかと思います。  ただし、私、法律改正だけでいまの問題が解決するとは思っておりません。やはり法律改正と同時に、人員も含めて業務拡充、あるいは運用面その他のいろいろの改善とあわせて特許法が持つ社会的な使命を果たしていきたい、かように思っておりますが、ただいまおっしゃったような前提につきまして意見の相違があることは十分私承知しております。

中谷鉄也日本社会党

○中谷委員 本件の改正がいわゆる未処理案件の処理に有効かどうかという論議、あるいはオランダ、ドイツ等における法制がストレートに日本に適用されていいのかどうか等の問題については私は掘り下げて質問をいたします。きょうは連休明けですから、もう一つ事実関係だけをお尋ねをしておく。関係諸団体について賛成の立場も反対の立場もあることは承知をいたしております。しかし何と言ったって特許行政の推進役、特許行政のそのエネルギーというのは審査官、審判官であることは間違いございませんね。もちろん特許庁に働いておる多くの事務官諸君もそのとおりでありまするけれども、その審査官、審判官のうち大部分の審査官の諸君がこの法案については、第一線に働いている実務家として、しかもそれは結局もうかるとかもうからないというふうな商売人の話ではないのです。私つき合ってみましたけれども、ほんとうにこれらの諸君は名利を求めるというような気持ちが非常に少ない。そういう諸君が大部分反対をしておる。こういう事実については率直に私は認めざるを得ないと思う。反対の見解がはたして正鵠を得ているものか、それとも、長官が先走っておっしゃったけれども、改正に理由ありとする特許庁、政府の見解が正しいのかということは、これはあとで論議をいたしましょう。問題は、そういうふうな大部分のまじめな審査官諸君がこの法案については危惧の念を持っている、反対の意向を表明している。この点についての事実関係についてだけひとつお答えをいただきたい。

荒玉義人特許庁長官

○荒玉政府委員 事実関係、問題はどの程度かということだと思います。いろいろ意見の表明をどうとらえるかという問題もございますが、いま中谷先生の言われた大部分だというのは、正確に大部分かどらかという点につきましては、これは大部分がどの程度かという問題でございますが、これは私事実は承知しておりません。といいますのは、おそらく組合の諸君がそれぞれアンケートしたその結果でございますが、私といたしましてその結果を見ておるわけでございません。あるいは最近署名ということでしょうが、どの諸君がどう署名したか、あるいはどういうテーマについてやったかというあたりの事実は、これはおそらく組合の諸君の内部問題だろうと思います。私自身、大部分かどうかという点につきましては、事実関係は存じません。ただ、いま先生がおっしゃったような、そういった先ほど申しました前提条件その他についての意見の相違はございます。したがいまして、事実関係とおっしゃいまして大部分どうかという点については、私ははっきりした数字その他は承知しておりません。

中谷鉄也日本社会党

○中谷委員 長官のこの法案に対する非常な熱意はわかります。二月の十四日にあなたは審議会の中で、庁内の意見は統一をしたい、こういうようなことを発言されておりますけれども、その後、私の見るところでは、そういうふうな意見の統一というのはできないままに今日に参っている。私は、これは単なるいわゆる他の役所というふうに特許庁という役所を見ないのです。要するに、独立官庁というようなことばがこの場合法律的にいって正しいのかどうかは別といたしまして、検察官あるいは裁判官というのは、何も裁判所が役所ではなしに、一人一人の裁判官が一つ一つの裁判をおやりになる。検察官がその検察権の行使をする。審査官、審判官についても、たとえば法に除斥の原因についての規定があるような、そういうふうな特段な職務の公正というものを期待されている、と同時にまたそのような職務を期待されている、こういうことでございますね。  そうすると、最近次のような新聞の報道がございました。四月の二十四日の毎日新聞であったと思いますけれども、制度改正に対して審査官の諸君が反対の決議を行なったということが報ぜられております。そこで私は官房長にお尋ねをいたしたい。提案理由の説明の中にも、各方面の意見を謙虚に聴取をする。ましていわんや特許庁のようなお仕事というのは、審査官、審判官の協力なくして、この法案をどんなに改正したって、人がついてこなければ断じて動くものではございませんね。それは特許法の審査、審判というものがある限りもう大前提だと私は思うのです。そのことについて、まさに風のたよりに聞くところによりますと、何か国家公務員法に基づく人事院規則の一四−七でしたか、とにかく政治活動の違反だとか違反でないとかいうふうなことを通産省の一部で言ったとか言わぬとかいうふうな話がある。全く私に言わせればそんな雰囲気というものが問題だと思うのです。これは私大臣にお聞き取りをいただきたいと思いますけれども、最近さっそくそういうことについては与党のほうではお引っ込めになられたようでありますけれども、自民党、与党の一部の方が裁判特別委員会というふうなものをおつくりになるということを、とにかく構想らしきものを言われた。さっそく最高裁の裁判官が裁判官会議をいたしまして、事務総長がこれに対する声明をお出しになりましたね。若い裁判官に聞いてみると、ああいう特別調査委員会というふうなものがもしできたならば、ぼくは別に金もうけをしたくて裁判官になったのではないけれども、もうさっそく弁護士になる、こういうふうに言っているわけなんです。私は特許庁という役所をこの法案の質問のために見せてもらいに行きましたけれども、あそこにおったらずいぶん洋服の修理代がかかるだろうと思われるくらい狭いところでがたがた仕事をしておる。あっちの机の端にひっかけ、こっちの机の端にひっかけというふうな、たいへんな役所でございますね。審査、審判というから、私は一人一人個室でもあってお仕事をしておられると思ったけれども、大部屋でごった返しをしておられる。あれでとにかく冷静かつ非常に快適な職場環境などということが言えるのだろうか。全くたいへんな職場環境だというふうに私は見てきた。その職場環境におるところの審査官の諸君が、この法案について、自分たち実務の第一線におる者の感覚として、この法案はよくないのだと思うというふうな反対意思の表明をするというふうなことは、むしろ大通産省としては歓迎をすべきことではないか。むしろそういうふうな生き生きとした意見が出てくることこそ、たとえばこの委員会におけるところの法案の審議というふうなものも前進させることになるのではないかというふうに私は考えますけれども、風のたよりに聞いた話ではありますけれども、一四−七の六項がどうのこうのというふうな話があります。まさかとは思いますけれども、ひとつ官房長この点についての御見解を承りたい   〔武藤(嘉)委員長代理退席、委員長着席〕

両角良彦通商産業大臣官房長

○両角政府委員 お答えいたします。特許庁の審査官諸君が新聞に今回の改正法律案についての反対の意向を表明されたという事実につきまして、通産省当局が国家公務員法上の違反云々ということを論議をいたしたことはございません。

中谷鉄也日本社会党

○中谷委員 まさにそうで当然だと思うのです。風のたよりの話ですから念のために確かめてみただけのことですが、では長官にお尋ねいたします。裁判所から裁判官と裁判所書記官を除いて裁判は成り立たない。特許庁から審査官と審判官を除いて特許行政というのは成り立ちませんね。その審査官諸君が、組合活動の一環としてであろうが、あるいは審査官としてのやむにやまれぬ気持ちであろうが、そういうふうな気持ちで決議をする、このことは何ら国家公務員法違反でもなければ、むしろ長官としてもひとつそういうことは希望し歓迎をすべきことであろうと思いますが、いかがでしょうか。

荒玉義人特許庁長官

○荒玉政府委員 われわれの仕事というのは制度改正だけでございません。あらゆる運用について審査官諸君の意見というものは正常なルートを通じてそれぞれ知り、それに対するわれわれの考え方も出して、そこでよりよき特許庁の進むべき道を発見するというのが普通だろうと思います。したがいまして、われわれといたしましては、そういうことは当然やるべきことだと思います。ただ、先ほど中谷先生おっしゃったのは、具体的な事実の問題でございます。それは制度改正その他という問題は、やはり慎重で、それぞれが詳細なる議論を戦わすことでございます。したがって、審査官諸君がそういう形で意見を言うということは、私、いまおっしゃったような望ましいことだと思っております。ただ某月某日の問題につきましては、それはあたかも審査官全員がそういった印象を与えるというところに、私はむしろ問題があると思います。したがって、当然われわれといたしましては、審査官と議論するということでございますが、その問題につきましては、全体がそう言ったという印象を与えるというところは、私は少し適当かどうかという点については問題があろうかと思っております。

中谷鉄也日本社会党

○中谷委員 ではその問題については、私のほうから決着をつけておきましょう。  いずれにいたしましても、あの新聞に報ぜられたところの決議については、各部の審査官諸君がとにかく全部連名で署名をしておられますね。ですから、だれとだれとがこの決議に参画をしておるかということは明確なんです。正確に調べてみれば、大部分の審査官諸君が反対をしておる。しかも決議に参加した人もおるということは明確なんですから、そういうふうな印象を与えたというか、そういう印象を受けたようなことに受け取るほうが間違いなんです。だから、今後こういうふうな問題について、明るい特許庁という立場からいって、私はひとつぜひとも特許庁の中で——建物もずいぶんぼろい建物ですね。驚きました。とにかく中の机の並べ方もあれほど間が詰んで並んでおるというふうには夢にも思わなかった。ずいぶんたいへんな仕事をしておられる。だから、私は先ほど目くじらを立てることではないと言いましたけれども、滞貨ということばとか積み残しということばがああいう職場環境の中から当然に出てくるわけでございますね。幾ら何でも、裁判所でああいうことばが——そういう意味で私は申し上げておきたいと思うのです。  そこで念のためにお尋ねをいたしておきますけれども、先ほど長官の御答弁の中に、ちょっと気にかかった点がございますので、質問をする必要がないほどあたりまえのことですけれども、五言をしておきます。  特許法の四十七条がございますね。この特許法の四十七条には、審査官の職務の独立の規定が規定されております。これはあたりまえのことですね。施行令の十二条には資格が法定されておる。要するに審査官というのは検察官ほどの身分保障はないけれども、検察官との違いは何かというと、検察官一体の原則というふうなものによって支配されない。一人一人審査をやる。合議の場合は一人一人合議体が審判をする。そういう点ではむしろ検察官よりも独立の権限を与えられておるところの役所である。私はそういうものとして理解しておりまするけれども、いかがでございましょうか。

荒玉義人特許庁長官

○荒玉政府委員 個々の事件について審査官、審判官が独立した権限を行使することは、先生のおっしゃったとおりでございます。

中谷鉄也日本社会党

○中谷委員 そこで、この問題については一応おきますが、あと、次のようなことを私は大臣にお尋ねしたいと思います。  要するに、大正十年に旧法ができまして、そしてその後、昭和三十四年に大改正があって、三十五年から施行された。その間、三十四年当時の会議録等をかなり詳細に検討をしてみましたけれども、人員を増加しましょう、機構の拡充をいたしましょう、そういうことによって滞貨の一掃をはかっていきましょう、そういうことができるのです、ということで昭和三十四年の大改正をおやりになった。ところが、一体どうかというと、昭和三十六年には審査官要求数はゼロ、次の年もゼロというふうに、こういう行政運営面の充実が怠られてきている。そういうふうな中で昭和三十九年に、あとで同僚委員の中で、この問題だけはぜひ私が質問したいという電子計算機の導入問題というのがあって、これが事務処理のおくれに拍車をかけたということが論証されなければならない。そして四十一年の審議に入って今日にきておる。昭和三十四年、昭和三十九年、そのつど、そのつど、人員の充実、機構の拡充によって滞貨を一掃いたします、決して特許庁の職員に過重なノルマを課すようなことはないように配慮をいたしましょう、というふうに、ずっと政府は答弁をしてこられた。たとえば昭和四十一年の本会議においてもそのような答弁がなされている。ところが、現実に未処理案件が山積をいたしておる。法改正のたびごとに、未処理案件は減るのですよ、減らしますよ、と言ってきて、累増してきたことについて、一体政府としてその責任はどのような形において見解を御表明になるのだろうか、この点は私はどうしてもお聞きせざるを得ない点です。大臣の御所見を承りたい。

大平正芳自由民主党通商産業大臣

○大平国務大臣 御答弁申し上げる前に、先ほどの長官並びに官房長とあなたのやりとりを拝聴しておりまして一つ感じたことを、恐縮でございますが申し上げさしていただきます。  あなたは、審査官という独立的な立場と責任を持たれた方々を、あるいは裁判官あるいは公取の委員、そういった立場となぞらえられまして、その人たちの意見が反対であるというようなことは重大なことでないか、そういう御指摘でございました。私はそれを拝聴しておりまして感じたのは、もし法律の解釈と運用、判断をされる独立の立場におられる裁判官が、こういう法律ではとても自分たちが運用できないというようなことになれば、私は国家の組織はめちゃめちゃになるだろうと思います。やはりわれわれは立法と行政と司法という分界は厳に守ってまいらなければなりませんし、したがって、独立の立場を行政府の中において持たれておる方々は、与えられた法律の運用に万全を期していただきたいと思うのでございまして、もし、どうも反対であるということで特許行政がこわれるというようなことになると、これは重大な新たな問題が起こると思うのです。特許庁内にいろいろな御意見がありますことは私もかねがね聞いております。荒玉君も聞いておるだろうと思います。したがいまして、現実にお仕事をされておる方々が感じ取っておりますことに対しましては、私もできるだけ謙虚に聞きたいと思いますし、荒玉君もまた聞かれておることと思うのでございまして、そういう御意見を私どもが聴取することは熱心にやらなければならぬことだと思うのでございますけれども、だからといって、そういう意見があるから法改正云々というところまでまいりますと、若干今度は抵抗を感じるのでございます。いま中谷さんのおっしゃったことは、そういう部内の現実に仕事をやっておる諸君の意見も十分聞けという意味におきまして、そのように私は受け取っておきたいと思います。  それからいまの第二の問題でございますが、未処理案件が累増したことに対応して、政府は機構、人員の拡充によりまして労働強化等を招来しないようにいたしますとたびたび言明したじゃないか、にもかかわらず、現実の事態はだんだんと未処理案件の累増という結果を来たして今日に至ったが、これに対しての責任はどう感じておるかという御質問でございます。私は、わが国の国民の発明意欲、技術開発意欲というものはたいへん旺盛であるということは先ほど申し上げたとおりであり、国民のバイタリティの一つのあらわれと思いますが、われわれが驚くほどのバイタリティを示していただいておるわけでございまして、そのことはたいへん歓迎すべきことだと思っております。これが一定の件数の申請が行なわれるということでございますならば、政府も見当がつくわけでございますけれども、年々歳々異常な勢いで申請件数がふえてまいるということは、当時の政府としては十分予測がつかなかったのではないかと思うのでございます。しかし、常識的なふえ方でございますならば、機構と人員の充実でもちまして対処してまいるということは、行政府の責任者として、当然そうあるべきだとしてお答えになったことと推察するわけでございます。したがって、第一は、異常な申請件数の累増を来たしたということに対してまでなかなか政府は責任を負えないと思いますが、第二の問題として、しかしそれにいたしましても人員と機構の充実が十分でなかったじゃないかという御指摘がございますならば、その御指摘はそのまま私どもは受けとめたいと思います。おっしゃるとおりだと思います。これも行政府の一つの部局といたしまして、特許庁にどういう機構と要員を付与すべきかというようなことは、特許庁長官がきめるわけにはまいりませんで、国全体のバランスを見て、政府でおきめいただいておるわけでございまして、まことに隔靴掻痒の感があったと思うのでございまして、そのあたりは御同情いただきたいと思います。しかし、そういうことをかこっておったのでは、現実の未処理案件の異常な累増に対しまして行政責任が持てないということでございまして、何とかそこに道がないものかということで、必要な審査官をはじめといたしまして、スタッフの充実を期してまいり、ようやく政府側の理解も深まりまして、全体として行政府にある定員をふやすということが非常に困難な客観情勢にあるにもかかわりませず、去年もことしも特許庁につきましては、かなり増員をお認めいただいておるわけでございます。しかし、それをもってしてもなお現実の需要に対応することができないということで、この改正ということを考えたものと思うのでございます。  しからば、この改正によってそういった事態が解消できるかどうか、これは今後の問題でございますが、私は、ものごとの改正に絶対的にいい、絶対的に悪いというようなものは実はないと思うのでありまして、どういう改正点におきましても、メリットとデメリットはあるだろうと思います。また、反対もあるし賛成もあると思います。ことにいま御指摘のような特許案件につきましては賛否いろいろな御意見があることば当然だと思いますし、また、それは大いに歓迎すべきことだとさえ感じます。しかし、これに対応してどういう改正措置を講ずるかということになりますと、この改正は満点であると自負するわけでは決してございません。いろいろな欠陥もございますし、いろいろな難点もあろうかと思いますが、現在よりは一歩前進できるという期待をもちまして、荒玉長官以下非常な心血を注いでこの改正案に挺身しておられるのであります。私はじっと見ておりまして非常な感動を覚えておるのでございます。行政府の長官といたしまして、できたら無難にある時期を自分の与えられた任務を終えるというのが普通イージーな行き方でございますが、異常な熱意をもって日夜もう非常に献身されているもので、私は実は非常に感動いたしておるのでございまして、この誠意というもの——荒玉君も金をもうけたいためでは決してないと思いますし、また、高い地位につこうというような野心もないと思います。一生懸命にやっておられるわけでございまするので、そういった点は中谷委員におかれましても十分おくみ取りいただきたいと思います。

中谷鉄也日本社会党

○中谷委員 大臣から非常に基本に触れるような、そうしてまた、いい御答弁があったと私は思うのです。率直に申しまして、これは法案審議の最初の日ですので、私申し上げておきたいと思いますが、こんな話があるんです。これは荒玉長官ひとつこのまますらっとお聞きいただきたいのですけれども、荒玉長官もあまり改まって委員会に気負い立って出てこないほうがいいのではないか、とにかく少し思いつめているのではないかという感じがするんです。法の改正というのは、やはり法的安定性というのが大臣非常に問題でございますね。先ほど申しましたように、大正十年の法というのが昭和三十五年まで続いたわけでございますね。そうして結局三十九年に一部改正があって、そうして四十五年から施行しようというわけでございましょう。そんなのは率直に言ってたいへんなことだと思うんですよ。とにかく国会議員ほど資料の集めやすいものはないといわれておるけれども、こうして特許法というものに取り組んでみましたけれども、なかなかどうしてどうして、とにかく実にややこしく、むずかしいわけです。それがいわゆる国会審議の過程などというものを十分知らない国民は、一体この特許法についての理解を深めることができるだろうか。そういたしますと、昭和四十九年か五十年にはまたここで大きな問題が出てまいりますね。そういたしますると、結局法の体系といいますか、適用されてくるいろいろな協定その他の関係において、三十五年、三十九年、四十五年、それから四十九年か五十年ごろのPCTの問題、大正十年の問題についても若干関係がないとはいえないだろうが、これはさておいて、こんなに四つも法というものがごちゃごちゃになってくるというようなことは異常なことではないか、この点を私は問題にしたいと思うんです。滞貨が異常であるということ以上にこれはたいへんなことだ。実はきょう私は法務省の宮脇参事官に別のことをお聞きしようと思って御出席をいただいているのですけれども、たとえば刑法の全面改正ということが叫ばれましたのが、これは宮脇さんがおられるところで私がこういうことを申し上げるのは、記憶をたどりながら申し上げるので、非常に恐縮でございますけれども、たしか昭和十四年でなかったかと思うのです。その後、戦後刑法の全面改正というのが、ああいうふうに敗戦を迎えましたために一応ストップして御破算になって、そしてたしか昭和三十年前でございましたでしょうか、再び審議会が発足をいたしまして、現在四十四年でございますが、いまなおえんえんとして十四年間刑法の審議会が続いておるわけでございましょう。全面改正が一体昭和五十年になるのか、昭和五十五年になるのか、草案はできておるけれども、いつのことかわからない。徹底的に話を詰めて、詰めまくって、だれもかれもとにかく論議の余地がない、全くもうこれで問題がないのだというときになって初めて法というものが姿をあらわしてくる、こういうものでなければならぬと私は思う。もちろん長官のほうの御答弁としては、もうとにかく制度の改革というものをやらなければ現実の処理ができないのだというふうにおっしゃるかもしれないけれども、しかしそれではあまりにも拙速に過ぎるうらみというものがあるだろうと私は思うのです。ですから、いまこの場合、この法案の審議の際に、私は何といっても未処理案件が何十万件あるというこの現実はたいへんな現実であろうと思いますけれども、もう一度これはさらっとお聞きいただきたいと思いますけれども、突き詰めずに、ひとつこの問題については法的安定ということ、この問題の側面というものを見のがしていただいては私困ると思うのです。そういうものでなければならないと思う。こういう点で法の安定というものがはたして保たれるのだろうかどうか。一体こういう権利に関する法律、しかも手続も含んでおる、裁判関係では民事訴訟法と民法とが一緒になったようなもの、これが昭和三十四年の改正というものはもちろん旧制度的な改正であったのだ、そう新しくしていないのだとおっしゃってしまえばそれまででございますけれども、いずれにいたしましてもこれは大改正でございました。これを十年を経ずして、施行期日が四十五年ですから、ちょうどもう十年たって再び大改正になってしまうというふうなことが、法的安定という立場から見てはたしていいのかどうか、少なくとも拙速のうらみというものは私はあるだろうと思うのです。こういうふうな点を私は先ほどから指摘をしているのであって、そういう点について第一線におるところの審査官の諸君が、これはとてもじゃないけれども、こういうことではこの法改正というものは危険だ。これは私は実務家として申し上げていると思うのです。先ほど大臣のほうから裁判官のお話がありましたけれども、裁判官はどんな法律でももちろんこれについて適用しなければなりませんけれども、しかし裁判官自身が、こんな法律はとてもじゃないけれども、手続法でございますね、訴訟指揮も何にもできない、こういうふうな法律ではとても裁判の遅延を来たすというような裁判官の意向というものがあれば、法務省だってこんな手続法は出さないであろうということは、私は慣例というものは確立していると思うのです。何か裁判官に審査官あるいは審判官をなぞらえることは間違いでない、私はそれはいいことだと思うのです。   〔委員長退席、武藤(嘉)委員長代理着席〕 それらの諸君が非常な反対をしておる。反対というのは、反対のための反対ではないわけです。危惧を感じている。自分の職務の遂行について非常に使命感に燃えておればこそ非常に危惧を感じている。それらの点について私はいま一度冷静にひとつ、その特許法改正について、特許行政について情熱をお持ちになることはけっこうだし、そのことは非常にりっぱなことだと思いますが、何か法的安定という観点から問題を理解されなければならない、こう思いますが、ひとつ法的安定ということについて大臣の御所見を承りたいと思います。

大平正芳自由民主党通商産業大臣

○大平国務大臣 きょうは最初のやりとりでございますから、少し感想めいたことでよろしゅうございますか——お許しいただきたいと思います。私も十六年半役人生活をやりまして、日本の政府の一隅にあったわけでございますが、当時の私どもの頭で特許庁という役所があることは知っておったのです。知っておったけれども、これはあまり問題になる役所ではなかったのです。何か商工省の外局に古色蒼然たる役所がある、それで非常にじみなお仕事をされておるような印象で、この特許行政というのがその当時非常に深刻な問題になった記憶は私にはないのでございます。ところが、いま、その後なぜこんなに特許行政が世間の問題になるかと申しますと、問題は、技術の花といいますか、撩乱と咲いてきたわけでございます。第一次の産業革命からずっとたちまして、第二の産業革命、第三の産業革命といわれるような非常に振幅の激しい大きな変化がここほんのわずかな間に、もう一挙に咲いたような感じをあなたもお受けになるだろうと思うのでございます。だから、あなた言われる法律的安定というのは、実体の経済社会が相当な安定度を持っておる状態でございますならば、おっしゃるとおり、そういうラインで事を運ぶべきでもございまするし、また運び得たと思うのでございますけれども、もう撩乱たる花が咲いてきまして、それでこれをどのように法体系の中で消化し、位づけてまいるかというようなことになってまいりますと、みんなが戸惑ったのではないか、したがってこういう改正が望ましいのではないか、確たる自信はないけれども、ここをやってみようじゃないかという過程がずいぶんあったのではないかと私は推察するのでございます。仰せのように、政治の一番根本は、やはり法律的な安定というものを可及的にはかってまいることであることに違いないと思います。できたらそうすべきであると思うのでございますが、時代があまりに振幅の激しい変革期に差しがかっておりますがゆえに、これに対しまして適応する姿勢といたしまして、いろいろなくふうがこらされたり、いろいろな試行錯誤があったりしておるのがいまの姿じゃないかと思うのです。そういう中でこの特許法の改正というものにつきましても、非常に厳格な論理的な一貫性とか、法律的な非常に緻密な御検討を加えますと、いろいろな問題が私はあると想像いたしましけれども、こういう時期にあるという点で法律的な安定につきましても、ある程度のディスカウントをもっていただくだけの度量をお示しいただきたい、こう思います。

中谷鉄也日本社会党

○中谷委員 こういうふうな反省というのは、やはり私はしているのです。法的安定ということばが非常に保守的になってしまう、進歩的でなくなってしまうという面は、私はあると思うのです。だからといって、制度というもの、法、しかもそれが国民の一人一人の権利にかかわってくる問題について、私はかなり憶病なというか、非常に慎重な面がなければならないのじゃないか。ほかの法律改正とは若干違ってくるということだけは、私はいつも感ずるわけなんです。ことに権利法についての試行錯誤というのは、ちょっと手続問題ですから、これは試行錯誤されてしまっては、制度というものはなかなかあと戻りしませんですから、これはたいへんなことだと思うので、そういう点の危惧というのがあって、私は今後の質問の中であらゆる点をひとつ提起をしていきたいと思います。  そこで、ずっと改正の足取りをたどってみまして、これは同僚委員の中に、この点だけでもひとつ集中的に聞きたいという人がおるのですけれども、長官に対する質問ですが、例の昭和三十九年の電子計算機の導入、これがとにかく大失敗だった。とにかくもう特許庁は拙速主義で改正して滞貨を解消するということを三十四年に言っておる、三十九年に言っている、四十一年に言っておるけれども、とにかくさっぱりだめじゃないか。たとえばその例には、三十九年の電子計算機の導入というものがあったじゃないか。たしか七億円でございましたね、そういうことでおつくりになった。ちょっと話をこまかくいたしますけれども、当初計画をしておった何%が適用業務になったんだろうかというようなことを非常にみな問題にいたしておりますね。従来からの委員会の中においても論議がされていないわけではない。本会議においても電子計算機のことは持ち出されておる。要するに、こういうふうな問題について、極端なことを言う人は、電子計算機を事務の過程の中に導入した、その部分だけがいわゆる滞貨原因になっているんだ、こういうふうに言う人もあるわけなんです。この点については、長官、どのようにお考えになりますか。きょうはひとつ資料要求程度のことの質問で、わかっている範囲でお答えをいただきたいと思います。

荒玉義人特許庁長官

○荒玉政府委員 電子計算機導入につきましは、短期で見るか長期でみるかという点がございます。いまやっておりますのは、いわゆる出願業務、ですから書頼を受け付け、そうして審査官の手元にまた返ってくる、こういうことでございます。それから機械検査、御承知のように審査資料を迅速に——大体現在ウエートは出願のほうが多うございます。たしかに、短期的に見た場合に、いま先生のおっしゃったような一つの問題はあろうかと思います。ただ、御承知のように、特許庁といいますのは、中間書類全部含めますと、年間百万件以上の書類の流れでございます。そういったものをいわゆる人手だけでやっていくということはきわめて困難でございます。したがいまして、短期的には、先生おっしゃったように確かに問題あったと思いますが、長期的にはやはりそういう方向で考えていく。もちろん、計算機を導入するということは、内部の事務体制そのものを改善しなければいかぬと思います。この点につきましては、現在まで私十分とは思っておりません。しかしロングランに見て、そういうものを含めた電子計算機に即応するような体制を制度としては考えていかなければいかぬと思います。特に機械検査の問題につきましては、これは現在まだ七つくらいしか入れておりませんが、やはり逐年拡大していくつもりでございます。そういった方向はやはり電子計算機でなければやれない。もちろん、全分野を一時にやるつもりは毛頭ございませんが、したがいまして、長期的に見れば、やはり私はそういう方向で進めていくべきだろうというふうに基本的に考えております。

中谷鉄也日本社会党

○中谷委員 話が出たついでですから、こまかい質問を一つだけしておきます。総務課長さんか何かにお答えいただきましょうか。  職業病の問題ですね。電子計算機が失敗だということを言う人の中にこういうことを言っておる人がおりますね。要するに、過去五年で、五十三人のパンチャーのうち二十六人の人が書痙病、パンチャー病とも言いますね、こういうようなものにかかって、そうして配置がえになっている、こういう事実があるということを聞いたわけなんです。いろんな職業病というのが最近各職場に出てきておりますが、こういうふうな比較をおとりになったことがありますか。要するに、電子計算機のいわゆるパンチャー、どの程度の人のうちどの程度の人が職業病にかかって、そうして配置転換になる、特許庁の割合とよその電子計算機の仕事をしている人の割合が一体どうなっているか。これはやはり何といっても人権の問題ですから、しかもノルマが過重になるのじゃないかということが制度改正で一番問題になっているときだから、そういうことをお調べいただいておると思いますから。ひとつ簡単に御答弁願いたい。

荒玉義人特許庁長官

○荒玉政府委員 ただいま他の省庁の比較がございませんが、私ちょっと基本的に申し上げますと、あらゆるものを、パンチングを現在の職員のみでやる意思も毛頭ございませんし、計画もございません。やはり現在の職員は通常の業務をやりまして、上積みは外注でやるという基本姿勢でございますので、制度改正をやったからそれだけ労働過重だというふうには私は計画していないつもりでございます。

中谷鉄也日本社会党

○中谷委員 制度改正がノルマの過重につながるかどうかということは問題点の一つですから、これまた再度は言いませんけれどもいずれ論議をいたします。要するに、先ほどお尋ねした資料について、労働過重というふうなことについて論議をするのだけれども、電子計算機の話が出たので、簡単な質問だけ一言しておきます。つまりよその電子計算機を使っておる業者、従業員たちのいわゆる職業病の発生比率というようなものについての調べはあるのかないのか、質問はこの点だけです。

星埜一彦特許庁総務部総務課長

○星埜説明員 お答え申し上げます。他の省庁の電子計算機を使っております職種につきまして、職業病発生等につきまして特許庁と比較したことはございません。

中谷鉄也日本社会党

○中谷委員 私が先ほどから言っているように、法的安定ということを言って、その技術革新になかなかついていけない何か一つの要素を持っておるんですけれどもね。電子計算機のそれを調べてください。極端に多いですよ。私が言った数字が間違いなければ、これは非常に多いんですよ。お話にならないんですよ。一体何でこんなに多いのだろうか。この数字を私、実は疑ったくらい多い。しかし、どうも公務災害補償の認定その他の手続において、これはうそじゃない数字なんです、配置転換になっているのは。こんなことについて、なぜだろう、よその職場と比べてどうだろうというふうなことについてお調べをいただけないということについて私は遺憾だと思う。これは全く資料要求するほどのこともない、私の手元の資料要求の中に入っていないことですけれども、調べてください。  それから長官に私はお尋ねしますが、同じようなことです、しかし大事なことです。要するに、もうなくなってしまった人はものを言いませんから、私は申し上げたいと思いますけれども、若い審査官の諸君の中で過去三年間の間に自殺をされた方がおりますね。何人おられますか。

荒玉義人特許庁長官

○荒玉政府委員 私の聞いた範囲では三、四名というように聞いております。ただし、原因が労働過重かどうかという点につきましては、私自身、労働過重というふうには、ほんの私の聞いた範囲でございますから、そうでない者もあるかもしれませんが、直接そういう関係はないと私は聞いております。

中谷鉄也日本社会党

○中谷委員 大臣にお尋ねというか、御所見を承っておきたいと思うのです。死んだ人はもうものを言いませんし、なくなった方の原因が何であったかというようなことを御遺族の方に、なくなってもうかなりたったときに、委員会でほじくり出して調査というようなことを求めることは、私は適当でないと思うのです。ただ、こういうことだけは言えると思うのです。労働過重といっておる、その労働過重ということばの意味でございますね。要するに、積み残しというようなことばはあるけれども、重い荷物をかついで審査官や審判官がえっさらえっさら走るという意味の労働過重ではございませんね。もう頭の中のしんのところで、はたしてこれが——四法というものが頭の中にあって、どの権利を与えていいのか悪いのか、一体従来との関係はどうなるのか、いわゆる第三者に対する影響はどうなんだろう、いつまでに審査しなければいかぬかということが頭の中にある、そういうふうな心労でございますね。私が言っている労働過重という意味も、肉体的に疲労するというよりも、疲労度などというものではあらわせない、寝てもさめても審査、審判のことを考えざるを得ない。審判官については審決を書かなければいかぬだろうし、審査官については、そのことについての審査の結果を書かなければいかぬ。どのような文章で、どう書いたらいいんだろうかということについて、これらの人の仕事というものは、交通整理の警察官の仕事はたいへん疲労度の高い仕事だと思いますけれども、しかし勤務が終わってしまって、うちにお帰りになったら交通整理の警察官は仕事を忘れることができますけれども、審査官の場合には、書類を役所に置いてあっても、家までその仕事がついて回るわけでございますね。寝ておっても、自分の担当している事件は一体どうなんだろう、こういう経験はもうずいぶん長い間の政治家の生活をおやりになったところの大臣には十分理解していただけると思うのです。外務大臣をおやりになって、通産大臣をおやりになって、夜も日本の国のことを思って眠れないということがあると思うのですが、審査・審判官というものもやはり別の専門職としてそういうふうな気持ちがあるだろうと思うのです。長官は実態はお詳しいのかしりません。自殺原因が何であるとかないとかということについて断定することについては、なくなった人はものを言わないから、私はそういうようなことを断定する勇気はない。私も決してそういう労働過重が原因だったとは言いません。だから長官のほうも、労働過重が原因でなかったと思うという趣旨のことも、これは一応やり取りの中では伏せておいていただきたい。ただ、次のようには言えるのではないでしょうか。いわゆる審査官の実定員と、四名の自殺された方、過去三年間で四名です。その比率というものをとってみた場合に、よその役所では何名公務員がおる。たとえば千名の公務員がおるといたしますと、過去三年間に何人自殺者が出たということのそういう比較をとってみますと、これまた審査官の自殺をされる方の数というものは非常に多いんだということを私は断言をしてはばからないのです。自殺原因が何であるとかということを、死んだ人はものを言わないから私は言いません。そういうふうなことを考えてみますと、これはこうした特許法の制度改正というもの、その問題を考えなければ、法の運用というのは人なんですから、そのことを考えなければ、私は非常に問題があると思う。ひとつ、私はこうして発言をしてしまったのですから、一体役所における——これは行政管理庁か何かにお願いしてもいいと思うのですけれども、公務員の各役所における数と、そうして自殺をされるような人の数の比率、そういうようなものは、私はあとでお聞きするかもしれませんけれども、特許庁が特に多いような傾向があると思う。私は裁判所の職員のことをずいぶん詳しく調べたことがありますけれども、こういう傾向はございません。そういうような点を今後ひとつ次回に質問をするときまでに準備をしておいていただきたい。このことだけのお約束をひとついただきたいと思います。

荒玉義人特許庁長官

○荒玉政府委員 資料は準備いたします。

中谷鉄也日本社会党

○中谷委員 宮脇さんに長いこと待っていただいたので、一言だけ資料要求ですからお聞き取りをいただきたいと思います。  改正案の六十五条の三をごらんをいただきたいと思います。要するに補償金請求の条文でございましたね。そこで、すぐ出していただける資料は、現在四法の関係の、工業所有権関係の訴訟が何件係属しておるか、そしてその審理期間はどのくらいか。ことに和解で終結するのがかなり多いんですね。そういうふうなことをわかる範囲で、そうですね、昭和三十五年の施行からひとつ今日までの一覧表をまず出していただきたい。それが一つ。  そこで、これはかつての審議会の委員であった原先生なども言っておられるが、今度の法の改正が出てきた場合にずいぶん訴訟がふえてくるだろう、ふえてくるんでないかということを原先生は言っている。そうして私自身別な人から聞いたところによると、そのふえ方というものは異常なものがあるというふうに聞いておる。そうすると、一体法務省のほうではどの程度ふえてくるというふうに試算をされるか、ひとつこの試算をお出しいただきたい。そうして現在の裁判所の体制の中で、そういうふうな訴訟というものは何件までまかなうことが可能なのか、この点もひとつ裁判官増員の問題にも関係をしてまいりますから御検討いただきたい。現在の東京の工業所有権部、特別部などというものは、裁判官給源の問題をめぐりまして、一気に増員できるものではないと思うのです。そういう点をひとつ資料として、次回にお尋ねをいたしますから御準備をいただきたい。  そこで一点だけ御答弁をいただきたいのは、裁判所としてはこの特許法の改正についてどの程度相談を受けたのですか。法務省ですけれども、裁判所の関係も含めてひとつ御答弁をいただきたいと思います。

宮脇幸彦法務省民事局参事官

○宮脇説明員 お答えいたします。工業所有権の審議会に出席いたしましたのは、法務省の民事局長及び最高裁事務総局の行政局長でございます。私どもはこの審議会の答申が出ます前に相談をいたしまして、民法その他の実体法に対する影響とか、あるいはただいまお尋ねの訴訟に対する影響も十分検討をいたしまして、私どものほうで受け入れることができるという判断に達したわけでございます。

中谷鉄也日本社会党

○中谷委員 そのことが受け入れられないと言ってしまえば話は終わりだから、そういう御答弁があるのは当然ですから、その試算を正確に出してください、分析をさせていただきますから。  委員長、実はあと私はきょう資料要求を若干読み上げようという点が一点と、それから、なかなか質問が進まないけれども、区切りがあるので、あと二、三点だけ質問をしようと思っておったのですけれども、一、二点の質問もかなり時間がかかりますので、きょうはひとつこの程度にいたします。資料要求については、あすは私の発言の番ではないようですが、できましたら委員会の終わったあとで資料要求についての発言をさせていただいて、次回まで質問を留保させていただき、きょうはこの程度で終わっておきたいと思います。

武藤嘉文自由民主党

○武藤(嘉)委員長代理 次回は明七日水曜日に開会することといたしまして、本日はこれにて散会いたします。    午後零時二十八分散会

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