商工委員会 第9号
- 発言数
- 103 件
- 登壇者
- 13 名
- 会派数
- 4
- 開催日
- 1969/03/14
会議録
○大久保委員長 これより会議を開きます。 通商産業の基本施策に関する件並びに私的独占の禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。 本日は、鉄鋼企業の合併問題について、参考人として東京大学教授内田忠夫君、大阪市立大学教授木村敏男君、慶応義塾大学教授正田彬君及び立命館大学教授中村忠一君、以上四名の方に御出席を願っております。 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。 参考人各位には、御多用の中を本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。本日は、鉄鋼企業の合併問題について、それぞれのお立場から忌憚のない御意見を承り、もって本委員会の調査の参考に資したいと存じます。何とぞよろしくお願いを申し上げます。 なお、御意見の御開陳は一人十分程度におおさめくださいますようお願い申し上げます。御意見の御開陳のあと各委員からの質疑がありますので、御了承を願います。 なお、内田参考人は出席がおくれております。間もなく出席いたしますので、御了承を願います。 それでは、まず木村参考人にお願いをいたします。
○木村参考人 木村でございます。 こういう場で参考人としてしゃべるのは初めてでございますので、しかも大学が忙しいときに急に申し出られましたので、十分な意見の開陳をしかねるかもしれませんが、あとは質問その他でお答えしたいと思います。 私が申し上げたいのは、要約すれば三点になります。 第一は、合併と経済力の集中あるいは寡占、独占というようなものとの関連であります。第二は、合併と技術進歩あるいは生産力の発展という問題であります。第三は、それらの問題を踏まえての経済政策のあり方ということであります。 第一の問題から入りますが、今度の八幡、富士の合併について、公正取引委員会のほうでは、新聞によりますと、結局のところ三品目あるいは三・五品目というものに問題点をしぼったようであります。そのしぼり方については、いろいろ他の参考人からも意見があると思いますが、私自身も若干意見を持っておりますが、これはあとにしまして、このように三・五品目にしぼってしまいますと、今度の合併の経済力集中あるいは寡占、独占に関連する問題の基本的な問題が独占禁止法のワク外にはみ出してしまう。そこからははみ出して別の問題として扱われなければならなくなってしまうというように考えるわけであります。何と申しましても今度の八幡、富士の企業合併は、両社とも日本の産業の中での最大の巨大企業であります。巨大企業が相互に合併してさらに巨大な企業をつくり上げていく。これは公取あたりでもすでにいろいろ御調査なさっているわけでありますが、いわゆる経済力の一般的な集中、日本経済あるいは産業あるいは製造業というような大きな場におけるところの経済力の一般的な集中についてかなりの変化をもたらすものであります。 たとえば資本金一つをとりましても、八幡一社でありますと、大体製造業の法人企業の資本金のうちの一・五%から二%程度、八幡、富士が合併しますと、二%から三%の集中度になります。そこに系列企業——八幡、富士は鉄鋼業の中でもあるいは日本の巨大企業の中でも特に系列企業の多い会社でございますが、これの資本金をも含めますと、その集中度はおおよそ五%から六%になるのではないか。製造業の中でのそういうような五%、六%を占めるような巨大企業が成立するということは、単に鉄鋼業という範囲を越えまして、日本経済全般においてこの合併の意味するところ大きいことを示しておると思うのであります。 この一般的な集中が好ましくないということは、これは明らかでありまして、そのためにこそ公取におきましても調査を進めておるわけであります。資本金の一般集中の変化を調査して、調査データを発表したりなんかしているわけであります。こういうような大型合併がこの八幡、富士を先頭にいたしまして続くならば、いままで巨大企業が群立いたしまして相互に競争し合ってつくり上げてきたところの日本の産業の民主的な体制、民主的な経済運営のしかた、これに大きな変化がもたらされるのじゃないかというように思います。狭く考えましても、財界の中での発言力にも、あるいは財界地図の中にも変化があらわれるのじゃないか。これは個々具体的にどうのこうのというような形で証明するものではありませんが、非常に重要な日本経済の、あるいはそれを反映する日本の政治体制の変化とつながるのじゃないかというようなことを私は心配いたします。 第二に、もう少し鉄鋼業の問題にしぼって、公取が直接取り上げましたところのいわゆる寡占の問題にしぼってみたいと思います。 公取では三・五品目にしぼりましたけれども、これは実は八幡、富士にとってもあまり痛くない、いわゆる主力品種ではないところの品種であります。大体現在の鉄鋼業では六社ががっちり競争体制を組んでおりまして、それらがそれぞれ多角化をはかっておるわけでありまして、たまたま何らかの理由で多角化をはかっていないような、したがって主力製品でないような、そういうような部分が三・五品目としてあらわれてきているわけであります。また、あるものはいま多角化をはかろうとしている、そういうような過程にあるもの、そういうものも含まれているわけであります。当然多角化されるかあるいは多角化しても魅力のないようなもの、そういうようなものがこの三・五品目であります。これでは鉄鋼業の全体的な構造というものは把握ざれ得ない。私は、むしろ主力品目に重点を置いてこれをどうするか、これがどういう変化をもたらされるかということを検討しなければならぬというように思います。 集約いたしますと、この主力製品、鋼材の各主力製品の集中度というものは、集中的には銑鉄あるいは粗鋼の生産の集中度の中にあらわれるというように思います。多角化し、と同時に系列化を進めておりますから、公正取引委員会でも調査しておるのでありますが、系列化した企業の集中度も含めますと、大体一般的には銑鉄の集中度に近づいていくという傾向がございます。したがって、この銑鉄の集中度がどう変わるかということについて、一言申し上げたいのであります。 私の備えましたデータは、四十一年で若干古いのでありますが、銑鉄で見ますと、富士は二四・三%、八幡が二三・三%であります。両社を合わせてこれが四七・六%になります。さらにこれに系列企業を入れますと、日新製鋼は八幡の系列であり、大阪製鋼も八幡の系列であります。これらを入れますと、この二社合計で五一・九%、五〇%をこえるわけであります。過半数を占めるということになります。いままで二四%にすぎなかったものが、あるいは一社ならば、系列を入れても二七%にすぎなかったものが五〇%をこえる。これはやはり、単に量的な変化ではなくて、質的な変化だというように考えなければならないと思うのであります。さらに三社の集中度を見ますと、三社の集中度は八〇%に達します。五社の集中度は九〇%をこえて九八%に至ります。公取の分類によりますと、いままでの銑鉄の集中度は準高位型、高位型ではなくて準がつきまして、準高位型という範疇に属しておったわけであります。ところが今度の合併によりまして、五社集中度九〇%以上、あるいは三社集中度七〇%から九〇%というところの、高位型という一位上がった型に転化するわけであります。こういうような型の分類は、ただばく然とやられておるわけではないわけでありまして、公取もこれの分類においては、それなりの意味を持たせてやっているわけであります。市場構造がこのように変化するということを意味するわけであります。 こういうような変化が競争制限とどういうような関連を持つだろうか。この合併の問題で、公取の競争制限に関する規定によりますと、非常に厳格といいますか、合併者にとっては非常に甘い基準、すなわち他の企業が、不可避というか、好むと好まざるとにかかわらず追随せざるを得ないというような状況、そういうような状況を競争制限というように言うておるわけであります。われわれがいま問題にしましたこの型は、当然それには当てはまりません。そのようなきびしいといいますか、高い基準には当てはまらない。御承知のように後発メーカーを中心としたかなり強力な競争者がございます。だから、その競争者が存在するということを考慮に入れますと、先ほどの公取の基準には当てはまらない。しかし、明らかにいままでの状態とは変化をもたらすだろうということを私は考えます。八幡、富士が合併いたします前の状態におきましては、八幡、富士の集中度は年年低下をしておりました。他方、川鉄や住金の集中度はどんどん上昇しておりました。で、いままでの競争体制は、いわば八幡、富士の後退、後発の前進というような形で流動しておったわけであります。ところが、今度の合併を契機といたしまして、あるいは合併によって両社が、後に述べますような経営メリットをくみとるという方向を進みますならば、当然にそこでシェアの変動が起こらなくなる。シェアの安定化という方向が出てくる。幾ら競争を激しくしても、両社がっちり組み合ったままで市場シェアには変化が起こらないというような安定化の方向をたどる可能性があります。これが蓋然性かどうかわかりませんけれども、確かにそのような条件がこの合併によって与えられるということが言えると私は思うのであります。当然にそこから国民としては好ましくないような寡占状態あるいは価格の硬直化というような方向が、これは理論的に展望できるのではないかというように思います。そういう意味で、今度の合併は、公取があのようなしぼり方をしておりますが、そのワク外において非常に重要な意味を持っている。そこで公正取引委員会としては、こういう問題をどう考えているのかということを私はむしろ聞きたいし、公取がその統一見解のよりどころにしました東宝、新東宝の合併のあのような基準、そういうような判例などは現在の当面の合併とは質的に違った合併でありますから、これを同列に扱わないで、新たな合併問題として取り組んでいただいて、これがどうしても独禁法のワク内で処理できないものなのかどうか、あるいは外に出さざるを得ないものなのかどうか、そこを見きわめていただきたいというように私は考えておるわけであります。もし独禁法の依然としてワク外であるということがはっきりするならば、その場合はこれに対してはやはり経済政策としての対応策が必要ではないかというように思います。この経済政策の対応策については、あとでちょっと述べますが、いずれにしろ、かなり抜本的な経済政策的な対応ということが必要になるのではないかというように思います。 時間が経過して結論をということですが、ちょっと結論からほど遠いところなんですが、簡単に述べますと、第一点はそれ。 第二点でありますが、第二点としては、では、この合併は全然メリットを持っていないかどうか。私は明らかにこれはメリットを持っているというように思います。それなりのメリットを持っている。ある論者によれば、この合併によって技術進歩がむしろおくれるのではないかということを心配する向きもあります。がしかし、私はこれによってやはり大型のプロジェクトの研究開発が進み得る少なくとも条件が与えられるということは確かである。それをどういうように運営するかは、これは企業の運営の問題でありますが、しかし技術進歩のためのあるいは技術開発のための条件がこれによって与えられる、一歩前進するということも確かだろうと思います。あるいは八幡、富士が申していますように一千トンの製鉄所、大規模製鉄所の建設も個々ばらばらではなくて集中されて早期に達成されるというような可能性、条件も与えられるというように思いますし、あるいは交錯輸送という全く不経済的な輸送をなくするというような効果もございます。だからそういうようなメリットは明らかにあるということを私は承認するわけであります。でき得ればこういうようなメリットは活用したいというのがむしろ私の意見であります。しかし、そうかといって、先ほど申しましたような寡占の弊害が明らかであるというようなものをそのままに放置して、技術進歩のほうを優先せしめるということに対しては、私は反対であります。 そこで、第三で、そういうような合併によるメリットをどうしても生かしたい、生かそうとするならば、そうしてしかも経済力集中や寡占、独占の方向と矛盾しない方向で生かそうとすれば、そこに出てくるところの政策の方向は何かといいますと、この八幡、富士の企業の体質そのものを変える、私的企業としての性格を変えるという方向でしか解決できないのではないかというように思います。この点については、またあとで若干質問があれば答えますが、しかし、私もその点ではまだまだ研究過程でありますので、わかりませんけれども、八幡、富士のような基礎産業で、日本の最大の企業の場合には、この際どうしてもそこに公的な規制がなされねばならないし、その公的な規制も、ただ単に監視委員会とかいうような組織であってはならないのであって、企業体質そのものを変える、公的なものにする。これはほんのたとえばでありますが、三分の一の株式を国が保有する、それを基礎にして公的運営をはかっていく、そういうようなかまえ方が必要になってくるのではないか。そのような企業によって停滞を破って、競争的に業界を運営していくということが必要になってくるんじゃないかというように思います。 時間の関係であとの部分をはしょりましたが、大体要旨はそのとおりであります。(拍手)
○大久保委員長 次に、正田参考人にお願いいたします。 なお、正田参考人にお願い申し上げますが、議事の都合がございますので、まことに申しわけございませんが、十分見当でお願いを申し上げます。
○正田参考人 正田でございます。 今回の合併につきまして、私が考えておりますことの要旨を簡単に申し上げます。 私の専攻は法律学でございますので、私が先日一緒に公取に対して独占禁止法四十五条一項に基づく措置の要求書を提出いたしました内田教授が経済的な面についてのお話をなさると思いますので、簡単に問題点だけを指摘いたします。 私どもが八幡、富士の合併が独占禁止法に違反すると考えております根拠は、これはただいまのお話にもございましたように、市場占拠率の変動が質的であるという点。第二点は、その市場占拠率の変動が質的であると考えられるその背後に、両社が合併することによって総合的な経済力というものが非常に強化される。したがって、単なる市場占拠率のパーセンテージを上回るだけの力を市場において持つことになるのではないかという問題。それから第三に、これは当事者の御発言あるいは取引の相手方、金融業者等の御発言を伺ってみますと、そのすべてが、それの賛否はとにかくといたしまして、この合併によって価格が安定し、競争がなくなるという意味で歓迎しておられる、ないしはそのことをおそれておられる。 いろいろとこまかい問題はございましょうが、こういった事柄を考え合わせて、合併した企業が市場支配力を持つということは間違いがないのではないか。こういった市場支配力の形成が競争経済を基調とする日本の現在の経済体制、それをささえる法制度というものと矛盾することは否定できないし、これに対して一定の制約を加えようとする独占禁止法の適用を受けるべき性格のものではないか、こういう趣旨でございます。その点については、もし御必要がございましたら、詳しくなりこまかく私の考えていることを後刻申し上げます。 そして、この独占禁止法の十五条でありますが、独占禁止法の十五条は、一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合の合併を禁止しております。合併の規制はあらゆる場合に事前に行なわれるわけでありまして、事前に行なわれる以上、それが確定的な事実としてあらわれない段階でその規制が行なわれるのは当然のことでありますから、すべてが予想ないしは予測の問題になります。どういう力を持つ企業が形成されることになるかということを、現在の両社の力を総合的に検討して推測し推認して、そしてその力を評価する、こういう考え方であることは言うまでもございませんから、先ほど申し上げたような事柄から市場支配力としての地位を富士、八幡の合併会社が得ることになるというふうに考えられれば、事前の段階でその力が形成されるのを阻止するということを目的にしているのが独禁法の目的であり、また現在の競争経済体制を維持していくための方策であるというふうに考えるわけであります。そしてこの問題につきまして、従来公正取引委員会は事前調査という形で処理をしてきたわけであります。 この事前調査は、公正取引委員会の委員長のこの委員会での御答弁にもあらわれておるとおりだと私は考えます。下相談についての内示である、こういう性格のものだというふうに考えております。そしてこの下相談に関する内示は、あくまでも当事者側が提供した材料によって、この材料の範囲で、一体この合併はまっ白といえるかあるいはいえないかということを公正取引委員会に質問したということだろうと思います。そして公正取引委員会は、それに対して、当事者からいわば任意に提供された材料を中心にして判断をすれば、この合併の少なくともこの面については独禁法に違反するおそれが非常に強い、その次の一品目についてはそのおそれが決定的とはいえないけれども少し弱い。ほかの品目については別にそれだけの積極的な発言はしない、少なくともいまの状態で届け出を持ってこられれば、これは審判が開始されるであろう、こういう意思表示をしたということだろうと思います。したがって私どもは、その以外の五品目ですかあるいは調査の対象にならなかった品目が白であるという判断を公正取引委員会がなさったものとは考えておりませんし、またそれを白であると判断するだけの根拠が、現在の制度上、公正取引委員会の側には存在していないというふうに考えます。私はそういう意味で公正取引委員会のいままでの事前調査を理解しております。そしていわゆる対応策というようなことが世上、新聞紙上取り上げられておりますけれども、この対応策については当然一定の要件が必要とされるというふうに考えられます。 この要件と申しますのは、少なくとも市場の構造として競争制限的な市場構造が発生するというふうに考えられていたわけでありますから、したがってその市場構造が発生しないだけの措置が現実にとられたのでなければ対応策としての意味を持ち得まいというふうに考えていたわけであります。けさの新聞を見ますと、公正取引委員会は、対応策が対応策としての意味を持っていない、こういうことでございますし、また内下相談というものはこれで打ち切るということ、あるいは両社でもって問題は考えろ、とにかくこれはいま持ってくれば独禁法上認められないというだけの意思表示をけさの新聞で行なったかに拝見したのでありますが、このような公正取引委員会の考え方というか態度が、まさに独占禁止法の制度に裏づけられた現在の段階における非常に適切な、また法的な判断というものが乱用されない形での判断だというふうに考えて、詳しい事情は存じませんけれども、私が考えておりました点とまさに一致するという意味で、法律的なあるいは制度的な意味で、今回の公正取引委員会の対応策に対する態度の決定というものには敬意を表したいと思っております。 ただ一言だけつけ加えさせていただきますが、対応策の問題になった品目だけが今後問題として取り上げられるのではなくて、それ以外の品目も当然今後審査にさらされるということが前提になっているというふうに理解した上でいまのようなことを申し上げるわけであります。 以上で終わらせていただきます。(拍手)
○大久保委員長 次に、中村参考人にお願いをいたします。
○中村参考人 中村です。 大型合併についてのいろいろの寡占の体制の強化に伴うところの問題点について、経済政策なりあるいは企業のあり方なりの問題については、すでに木村先生のほうから説明がございましたが、ほぼ私も同じような意見であるわけなんです。そこで、ひとつ木村先生が残されました、非常に説明が簡単になりましたところの、規模の大型化に伴う経済効果という問題にしぼって、ここで少し説明をしておきたいというふうに思っております。 大型化による規模の利益はないんだというような意見もございますが、これは産業の認識といたしましてはかなり間違った点があるのではないかというふうに思います。規模の利益こそ、大型合併による企業の集約化が現実に日本の資本主義が置かれておる国際環境とこれまでのあり方から見ますと、一つの必然的なコースとなっておる大きな理由であるわけなんです。技術革新に伴いますところの設備の大型化は、鉄鋼業について見ましても、この十年間で非常に顕著なものがございます。昭和三十五年ころ高炉は容積にして千五百立方メートル、ところが現在では二千五百立方メートルと著しく大型化しております。 ところで、この設備の大型化によるコストダウンの経済効果というものは非常に大きいものがあるわけです。たとえば二千立方メートル、それから二千六百立方メートルの高炉を二基備えたある製鉄所と、千六百立方メートルの高炉二基を備えたある製鉄所を比較した場合に、前者のほうが製品コストで約一〇%近く安いといわれております。これは鉄鋼業とか化学工業とか、そういった装置工業にとっては、プラントの大型化がコストダウンに与える影響はきわめて大きいからなんです。大体通常、労働手段というのは機械的労働手段と装置的労働手段の二つに分けられますが、機械的労働手段では、たとえば生産を十倍にいたしますと機械の台数も十倍にしなければならない。したがって機械を置く場所も十倍に広げる必要がある。労働者についてみましても、これまでたとえば十人で済んだ分は、今度は百人必要となるわけなんです。建設費の点から見ても、労務コストの点から見ても、やはり十倍化しなければならないという条件にあるわけです。もちろんこれは管理技術が進んできますと、労働者も少なくて済みます。しかし管理技術を一定としますと、コストは生産量に比例してふえるというように考えなければならない。ところで、装置工業では装置の拡大は容器の面積や体積の変化にかかってくるわけですから、たとえば容器の壁を二倍にいたしますと体積は八倍になります。この場合、単位能力当たりの建設コストは、装置が大型化すればするほど著しく安くつくということになります。また労働コストも生産能力が十倍になったからといって、所要の労働力が十倍になるわけではございません。所要の労働力はほとんど変わらないという場合もかなり多くあるわけなんです。こういった点から見て、規模の大型化の利益は非常に大きいわけです。もちろん小規模の装置を大規模化していくためには、ただ単に装置工業の場合に容器を大きくすればいいというだけの問題ではございません。容器を大きくするためには、かなりの困難な経済的な問題がございます。これは一般にスケール・エフェクトというようなことばで呼ばれております。こういった技術的な困難性の解決ということがこの際問題になるわけなんです。この技術的な困難性の克服にはいわゆるエンジニアリング力がどれだけ確立されているのか、あるいはどれくらい高い水準にあるのかということが重要な問題です。このためには、関連部門の技術あるいは関連部門の研究まで含めて、高い技術面での自主的創造性の開発ということが重要な課題として提起されてくるわけでございます。 ここでまた鉄鋼業にちょっと戻りますと、製鉄所は、前は二千五百立方メートルと言いましたが、現在建設中のものは高炉で約三千立方メートルに達しております。こうなりますと、高炉一本の年間の供給量は約二百五十万トンにのぼります。この高炉及びこれに伴う分塊、圧延その他の加工を適正規模でやるといたしますと、大体高炉を四本設けなくてはならない。つまり粗鋼ベースでは一千万トンぐらいが適正規模だというふうに考えていただけばけっこうかと思います。このような一千万トンの適正規模の工場をつくるといたしますと、資金にして約三千五百億円というものが必要になってきます。これは現在八幡と富士の資本金を合わせたものの約倍近くになる。この巨額の資金をどう調達してくるかということも、この大型化に伴うところの重要な課題になってくるわけでございます。 次に、この超大型化に対応する市場性の問題もございます。たとえば高炉一本で粗鋼ベース年間二百五十万トンを生産できるといたしますと、今後の国内需要の伸びを年間五百万トン、輸出の増加を二百五十万トン、計七百五十万トン増加とかなり大胆に予想いたしましても、毎年新設される高炉が三本もあれば、つまり毎年三本か四本の高炉と申しますと、一セットの製鉄所をつくれば十分でございます。ところが日本には現在大手六社がございます。しかもこれらの各社がそれぞれ一セットの適正規模の製鉄所をつくろうとしておりますし、またこれまで銀行が各社に対してたいへんな貸し出しをやっていますので、激しい企業競争の中で、鉄鋼企業と銀行が組んで一セット主義の設備投資を推し進めるということをやってきたわけでございます。そうしますと、これはたいへんな過剰設備投資ということになります。そこで毎年鉄鋼業界では自主調整という話し合いが続けられ、各社が一本ずつというようなことで設備投資をやってきたわけです。この結果、各社とも鉄鋼バランスが失われ、片肺操業というのが現在日本鉄鋼業の現状なんです。片肺操業と、そうでない場合を比較いたしますと、簡単な例ですが、片肺といわれる高炉一木を設けますと、予備を含めて転炉が二基必要です。高炉二本では転炉は三基でいいわけです。つまりそれだけ片肺操業ではコストヘのはね返りが大きいわけです。そこで国際競争力を備えた適正規模の工場をつくるためには、どうしてもひとつ投資の集約化が必要である。このことから一つの合併問題の必然性も出てきたでありましょうし、またこれは必ずしも大型合併だけではなくて、共同投資という問題もここから生まれてくるというふうに私は考えます。 最後に、よくこういう大型企業が生まれてきた場合には、技術開発力があまりないのじゃないかというような問題を指摘される向きがございます。この点についてちょっと触れておきますと、企業の大型化は必ずしも技術開発力を強化するものではない、たとえばUSスチールはトップの座に安住して技術開発力に対する意欲に欠けておる、もっと一般的に言いますと、トップ企業は技術に本質的に怠慢である、こういうふうにいわれておりますが、これは現代の科学技術の創造開発に関する限りでは現状認識にやや欠けておられるのではなかろうかというふうに思います。 こうした見解では一例としてよく現在鉄鋼業において最も革新的な技術だといわれておりますところのLD転炉の例があげられます。これはオーストラリアの小っぽけな会社が開発したもので日本では世界に先がけていち早く取り入れました。その取り入れたのは八幡や富士ではなくて住金たんです。現在同社では製鋼プロセスの九〇%以上がこの転炉法です。このようにトップ企業が必ずしも技術的に先行していないということは、鉄鋼業以外でも類似の例がございます。たとえば電機工業におけるソニーと日立、東芝の例を考えていただいてもけっこうかと思います。 しかしながら、こういった転炉の例はありましょうが、一般的に見ますと、現代の革新技術を生み出すためには、何といっても強大な技術開発力が必要であるということは間違いございません。USスチールは技術開発の意欲がない、トップの座に安住しておる、こういわれておりますけれども、一説によりますと、USスチールは直接製鋼法を完成してテストプラントを動かしておるというふうにいわれております。この直接製鋼法というのは、現在の製鋼法よりも約一〇%コストを引き下げます。これは特に原子力発電と結びついて、そのコストは電力料金いかんによって大きく左右されます。しかし、原子力発電による安い電力の利用と結びつきますと、直接製鋼法はたいへんなコストダウンを可能とする、まさに製鉄技術ではコペルニクス的転回だといわれておるわけです。 さらにUSスチールはリムド鋼の連続鋳造法をやっております。これは約百億円の研究投資がかかるわけです。これをやりますと鋼材の非常に大量生産が可能で、コストダウン効果がきわめて大きい、こういわれております。このリムド鋼の連続鋳造法の開発には約百億円の金が必要です。このように鉄鋼業で見ますと、改良技術の開発でさえ数十億円、中にはこのように一件百億円をこえるものが出てくるわけなんです。 そうしますと、こういった大型の技術開発は、どうしても大型のいわゆる研究条件を持っておるととろでなければなかなかむずかしいということは言えるわけなんです。 これまで日本の鉄鋼業を見ますと、非常に技術進歩が早くて、どんどんどんどん大型化し、国際的に見て非常に安い鉄をつくるというふうにいわれておりますが、しかし、これまで見ますと、大体導入技術を主体にして、いわゆる技術は借りもので、これを具体化した設備をそのまま輸入し、あるいは設計図面を輸入して日本でつくるというふうな形でやってきておりますので、技術開発という点では非常におくれております。八幡、富士合わせて大体年間六十億前後というのが研究費です。それで、現在では、これはあとで問題になるかと思いますが、技術導入期はほぼ終わっております。したがって基本技術の自主開発ということが研究開発の主要な目標です。そのためには技術開発力を強化しなくてはならないわけです。もちろん、この技術開発力を強化するためには……。
○大久保委員長 中村参考人に申し上げますが、時間がだいぶ経過いたしておりますので……。
○中村参考人 大型開発は、いわゆる研究設備を、条件を大型化しなければならないという問題があるわけです。しかしこれは前も話しましたが、何も大型化、合併だけによって達成される問題ではございません。 さらにあるのは、たとえば共同研究体制をどう持っていくのか、あるいは技術のホールディング・カンパニーをつくったらどうだ、そういったような問題もあって、必ずしも大型合併にしなくてはならないというわけではございませんけれども、今後の日本鉄鋼業が国際的な競争力を十分つけていくためには、研究条件の大型化ということが非常に重要になってくるというふうに考えます。 非常に時間がなくて簡単なんですが、これで、大型の利益、メリットについて、木村さんの足らないところを補足するという形で説明を終わらせていただきます。(拍手)
○大久保委員長 次に、内田参考人にお願いいたします。
○内田参考人 東京大学の内田でございます。交通事情が悪くておそくなりまして申しわけございませんでした。 私たちは今回の八幡、富士の合併に関しましてすでに何回か公式の声明を発表しております。すなわち、昨年六月十五日、大型合併に関する意見書、それからことしの二月二十五日、八幡、富士合併に関する公取委内示について、そして最近では三月八日、独占禁止法四十五条一項に基づく措置要求書、こういう形でわれわれの態度を表明してきているわけでございます。本日はその中のエッセンスといわれるものを抜き出しまして、ここで証言したいと思います。 まず第一に、今回の合併が競争制限になるという意味でございますが、これは経済学的な解釈というものを、われわれとしては要求したいわけでございます。それによりますと、価格支配力の発生ということが事実競争制限のエッセンスになってくるわけでございますが、これは独占あるいはカルテル行為というものだけでなくて、暗黙の協調といわれます協調的寡占の発生を排除するということか競争制限を排除する非常に重要な要素であるということを私たちは繰り返し述べてきたわけであります。そして公取委はこの点、過去の少ない事例にとらわれた法律的あるいは技術的な解釈にとどまるだけでなくて、競争制限の概念の実質的内容をこの際経済学的な観点からもう一度考え直していただきたいというふうに思っているものでございます。 さて、そのような観点から申しますと、今回公取委が取り上げましたいわゆる問題品種、四品種でございますが、それ以外に公取委が調査の対象にはしながら取り上げなかった五品種、あるいは事実調査の対象にならなかった特殊鋼であるとか、あるいは粗鋼であるとかいうようなものでさえ競争制限のおそれが非常に大きいという問題が出てくるのであります。さらにこの点は系列会社といわれますものを含めますと非常に大きくなりまして、ほとんど全品種にわたって、われわれといたしましては、この危険ラインを突破した合併が今回実現しそうであるというふうに考えざるを得ないわけでございます。そして事実の問題といたしまして、現在すでに占有度が高い鋼材につきましては、価格がかなり硬直的でございまして、この点価格管理能力がすでに存在していることを意味している事実が幾つかあるわけでございます。 また、同業者が今回の合併については一応歓迎の意を表しておりますが、これは現在の状態がいま申しましたように管理価格の形成に一歩近づいているという状況から申しますと、ある意味ではそれは決して望ましくないものだというふうに考、えざるを得ません。と同時に、また新規参入計画がいろいろいわれておりますけれども、これはかなり不確定的な計画でございまして、あとで申しますように問題が幾つかあるというふうに思われます。 さて、そのようにいたしますと、今回の合併はあらゆる品種にわたりましてわれわれは問題があると考えるものでございますが、いわゆる公取委が示しました問題品種に対して八幡、富士が現在対応策というもりを出しております。ところが、この対応策自身、われわれの観点から申しますと、実は非常に困難であり、ほとんど不可能であるというふうに考えざるを得ないものであります。 この点につきまして三つの点を考慮したいと思うわけです。すなわち、第一はこの対応策が両社自身の責任で行なわれなければならないということでございます。もう少し具体的に申しますと、政府が介入いたしまして、そして対応策を一緒に形成するということは許されない。すなわち、政府がもし介入するということができるならば、それは適用除外立法があれば別でございますが、現在はそうではございません。事実政府が介入いたしまして、たとえばレールの問題でありますが、これに対して何らかの独占弊害除去の措置を講ずるといたしましても、それには決して永続性の保証はございませんし、また独禁法のたてまえが弊害除去ではなくて事前規制、すなわち原則禁止主義でございますから、これは決して政府の介入によって問題が解決するというわけではないわけです。事実、また過去の実績を見ましても、国鉄に納めますレールの価格はほとんど下がっておりません。ところが、鉄鋼業の合理化はすでに進んでおりまして、この点、今回の調査におきまして、もっと徹底的に過去の実績を調査いたしまして、はたして国鉄との関係が明朗な、かつ経済的な関係であったかどうかということを、もう一度洗い直すべきだというふうに考えるものでございます。 次に、両者の責任でやれということは、他社の計画を、しかも非常に不確定な計画を当てにしてはいけないということであります。この点は、たとえばレールに関して申しますと、八幡の技術が非常に進みまして、現在、富士の釜石の分離されるといわれる工場は非常に古いものであります。こういうものを売却いたしましても、はたしてそれを生産するような経済的な採算が合うかどうか、これもたいへん問題でございまして、現実問題としては、おそらくそういうことは不可能であろうというふうに考えざるを得ないわけであります。 次に、対応策についての第二番目の問題点は、競争制限を生み出す市場構造を実際に変更し得るものでなければならないという点であるわけです。そのことは、事実他社が生産を始めるということが必要でございまして、たとえばブリキについて、伝えられますように、系列会社の株式放出だけではなくて、原料購入が事実八幡、富士以外の会社からできるような体制ができなければいけない。こういうような状況がつくられるとともに、たとえば鋳物に関しましても回避可能性ということがいわれておりますが、これが現実問題としてできるようになること、特に鋳物の場合は中小企業が需要先として多いのでありますから、この点は非常に重要な問題であります。 次に、第三番目の対応策に関する問題点は、机上のプランではなくて、おそくとも合併禁止期間中に事実によって証明されるということが必要だということであります。この点、たとえば先ほど申しましたように、レールは設備を売るだけではだめでありまして、事実レールを生産する会社が現実問題として出てくるという点、あるいは鋼矢板に関しましても、単に特許を公開するということだけではだめでありまして、実際にその鋼矢板の生産に進出する企業があるということが必要だと思われます。 さて、そのような観点から申しますと、今回の対応策はほとんど実質的に不可能である。事実また公取が、昨日の新聞報道では、この八幡、富士の出しましたものに対して問題があるということを言ったそうでありますが、私はその評価を高く見るものであります。 それから、もう一つ重要なポイントといたしまして、新聞紙上その他で伝えられるところによりますと、正式審査を五十日で打ち上げるということがいわれております。これはたいへんなことでありまして、事実、事前調査に十カ月もかかっているのに、正式審査をそのような短期間でできるはずはございません。したがいまして、独占禁止法に許されている最大限度、すなわち九十日をかけてじっくりと審査すべきだというふうに思うことをこの際つけ加えておきたいと思うわけであります。 さて、以上のような観点から申しますと、結局八幡、富士の合併は、八幡、富士以外の人々はほとんどその合併が行なわれなくても困らない、こういうような状態のものではないかと思うわけであります。すでに鉄鋼業におきましては、国際競争力は十分についておりまして、合併のメリットはほとんど認められません。先ほどお話がありましたが、設備投資にいたしましても、技術開発にいたしましても、川鉄あるいは住金のレベルで十分にそれは可能であります。それからまた、経営は、これはごらんになってわかりますように、大規模化したほうが効率化が悪くなっておりまして、たとえば売り上げ高利益率等は八幡、富士よりも川鉄、住金のほうがはるかによろしいわけであります。それからまた、価格管理能力が拡大するとか、そういうようないろいろな問題から申しまして、今回の合併には非常に大きな問題がある。もしそれがイエスということになるならば、独禁法の大黒柱が倒れるということになるだけでなくて、わが国の産業政策あるいはこれから問題になってまいります外資対策が非常に大きな危機に見舞われるというふうにいわざるを得ません。 したがいまして、この際公取委はもちろん、議会におかれましても、十分に慎重に審議されまして、この合併のほんとうの意義を追及していただきたいと思うわけでございます。(拍手)
○大久保委員長 これより質疑に入ります。 質疑の申し出がありますので、これを許します。藤井勝志君。
○藤井委員 たいへん時間が制約されておりますので、きわめて要点をしぼってお尋ねをいたしますから、お答えいただく先生も、私は全部の先生にお尋ねしようと思ったのですが、残念ながら内田先生と正田先生にお尋ねをしぼってお願いをいたしたいと思います。 最初に、私は内田先生のほうにお尋ねをいたしますが、先ほどお話しになった要求書、三月九日ですね、その中に、「競争とは市場に登場する何人も、自分の望む方向に価格を動かすだけの力を持たないことを意味する。」という、こういった内容を拝見いたしたわけでございます。われわれ自由民主党に立場を置く者は、自由主義のよさというものをよく承知いたしておるわけでございまして、競争の原理のまず前提に立って経済の発展が進んでおることも、われわれはすなおにこれを承認し、これを推進しなければならぬ、こう思っておるわけでございますけれども、いまおっしゃったような御意見にあったような考え方は、現実の社会生活においてはたして可能であるかどうか、いわゆる完全競争的な競争という考え方がこの要求書の中にことばとして盛られておるというふうに思うのでありまして、この現実の経済社会においては、完全競争と独占的な要素との混合形態が実際の社会の現実の姿ではないか、私はこのように思うわけでございます。 このようなことを考えますとき、今度の八幡、富士の合併問題について、合併すれば寡占状態を来たす、こういったことに重点を置かれた議論があまりにも表面化しておる。特にこの委員会においては、野党の諸君の質疑の時間を十分にとらざるを得ないという事情もございまして、われわれとしてはまことに言いたいことをほとんど言えないということでございますが、問題は、私は、産業の米といわれる現在の鉄鋼業界は、何といってもあらゆる産業に原料を供給しておる、しかもその鉄鋼業の原材料はほとんど海外に依存しなければならぬという日本の鉄鋼業界の宿命を考えますときは、いわゆる国際競争力をつけるということが最重点的に考えられなければならない。問題は、すべてが完ぺきなということは神さま以外にはないわけでございますので、一つの制度においてもいろいろプラスとマイナスがあると思う。したがって、国際競争力をつけるためには、ある程度競争が完全な姿で行なわれないということは、またやむを得ない現実の経済社会の状態ではないか、このように思うわけでございますから、こういう点について内田先生どのようにお考えになっているか。むしろ完全競争を前提としてものを進めるならば、現在よりももっともっと会社を分割をして、一工場単位一会社と、こういうことに徹底するのが本筋ではないかというふうにさえ、私は極端な考え方のものごとを進めていけばそう思える。だからそこら辺は、私はあくまでこの市場構造というものとの関係においては、そのときのいわゆる企業の適正規模というものがそのときの時代の変化に沿うて変わるべきものである、このように思うわけでございます。 現在はいわゆる国際化時代でございます。いろいろお話を聞いてみて、私の誤解かもわかりませんけれども、私はもう現段階においては日本の範囲でものを考えるべきではない、いわゆる国際的スケールでものを判断し、これが国際的な立場に立ってはたして競争の原理に大きくもとるか、こういうことからものごとの判断をすべきではないか、このように思うわけでございまして、こういう諸点について内田先生のほうからとりあえずお答えを願いたいと思う次第でございます。
○内田参考人 ただいま御質問者が鉄鋼についてはすでに国際競争力がある、こういうことを御指摘になったことは私も全く同感でございまして、先ほども強調したとおりでございます。ところがその国際競争力がどのような状態のもとでもたらされたか、つまり八幡、富士が合併しなければならないような規模の企業がなければならないかというと、そうではないわけでございます。現在最も国際競争力を持っておりますような企業規模は、先ほど申しましたように住金ないし川鉄クラスの規模で十分であり、かつそういうような規模の企業がこれまで競争してきたということが、実は鉄鋼業におきます国際競争力をつけてきたわけでございます。現実問題といたしまして競争から離れた状態が幾つかあるではないか、こういうことの御指摘はまさにそのとおりでございます。ところが、現実がそういう動きをしているということと、それからわれわれがもっと望ましい社会に持っていきたいというような形でものごとを考えることとはまた別でございまして、現在係争点になっております問題は、その現実の動きそのものというものをそのまま率直に認めるか、それとももっとほかのいろいろないき方、もっと民主的でかつ経済を発展させるようないき方を選ぶか、こういう問題にかかってきているのではないかと思うわけでございます。そういう観点から申しますと、私たちのやっております経済学の立場は、しばしば繰り返しますように、競争ということを基本にいたしました経済の運営、この原則をはっきりと守って、しかもそれが法的なことばで書かれた法律のもとにおいて運営されることによりまして経済が発展していくということでございまして、そういう点から申しますと、別に先ほどの御質問者の意図とそれからわれわれが考えております問題との間に大きな食い違いはないというふうに思います。
○藤井委員 いまお答えをいただきました点について、いろいろ私もまたお尋ねをしたいのですけれども、時間の関係で私のほうからひとつちょっとお尋ねをして——お尋ねというか私の意見を述べて、次へ移りたいと思います。 おっしゃるとおり現在の時点においては、日本の鉄鋼は国際競争力において世界的な水準をいっておる。現在は心配はない。しかしわれわれは、日進月歩、技術革新のこの時代においては、五年先、十年先を考えなければならない。こういった点において現在世界の鉄鋼業界というものが再編成をいたしておることは先生御承知のとおりでありまして、アメリカにおいても、アメリカの鉄鋼業界は政治的な圧力を加えて一時的輸入をとめて、そして臨海工業地帯にどんどん新しい設備をやっていることも御承知でございましょうし、あるいはイギリス、あるいは西欧地帯、これは二つか三つのグループに再編成をして、私の聞くところによるとフランスでは二社になっておる、イギリスは御案内のように公社でございますから一社、ドイツは三つか四つのグループ、こういうことにずっと集約してきておるという、この相手のある国際的な競争に耐え忍ぶためには、現在がこうだからという判断でこれを国内的な問題——独禁法だって、お互い人間がつくったのですから、独禁法が神さまの摂理ではないわけで、独禁法が不十分ならこれは改めなければならぬというふうにさえ思うわけでございまして、そういう点について現在国際競争力が十分あるから寡占寡占というこういう問題にこだわり過ぎた考え方は、はたしてこれが国民全体の経済にプラスであるかどうか。特に鉄が産業の米であるというこの認識と、同時に原材料はよそから輸入してきておる。したがってどんどんまたよそへ、そのつくられた鉄を使って自動車を出し、船を出さなければならぬ、こういう関連した宿命的な判断を持つならば、私はひとつ大局的に検討すべきではないかというふうに思う。 以上私は一応申し述べまして、正田先生にお願いをいたしますが、ここで問題は……(発言する者あり)ちょっとここら辺で雑音が入りましたが、もしそういう寡占状態、価格が上がってくれば、そこに公取があるわけでございます。そこで是正すればいい。初めからいろいろなことをなにして悪い点ばかりを強調して、積極的ないい面を見失ってはいけない。悪い問題が派生したらそのとき公取の使命を発揮すべきである、このように思うわけでございます。そこで私はひとつ……(発言する者あり)しばらくお互いひとつ静かにしようじゃないですか、私たちも静かに聞いておるのですから。 先ほど内田先生もそうでございましたが、正田先生、私はきょうの新聞を見て実は驚いたのです。公取の不親切さといいますか、何であんなことをやるのかと、こう思わざるを得ない。何といっても膨大な、ともかく大企業の合併でございますから、相当事前調査に時間をかけなければならぬ。ところがこういったことをやることが——これは私の聞き間違いなら幸いでございますけれども、いかにも試験のカンニングをしておるような、こういうふうな受け取り方というものが間々議論の端々に受け取れたわけでございますけれども、これは全く事情の違うことは私は多言を要しないと思う。事前に十分に親切にいろいろ助言し、そうして青写真をつくる。これは国民経済的立場において当然むだをすべきではない。お互い日本経済をそれぞれの職域においてささえておるわけでございますから、そういう観点から考えますと、きょうの新聞に出ております、公取委員会が対応策についての内相談はもう一回限りで打ち切りますぞというこういう態度を、きのうの午後ですか、新聞記者会見で表明されておる。これは私をして率直に言わせるならば、先ほど申し上げたような、いかにして国際競争力をつけて日本経済全体を発展させようと一生懸命になっておる企業者の努力を何ら考えない、きわめて不親切な態度であって、国民のための公取ではないと私は考えざるを得ない。それに対して何だかわが尊敬する大学の先生方がまことに適切であると、こう言われたことは、私はまことに不適切である、こう考えざるを得ない。ひとつその点について正田先生のほうからお答えを願いたい。 〔発言する者あり〕
○大久保委員長 御静粛に願います。
○正田参考人 ただいまの御指摘の点で国際競争力ということが非常に強くいわれておりますので、この国際競争力という点と法律制度との関連について初めに若干お答えしてよろしゅうございますか。お答えじゃないので、これは内田さんへの御質問かと思ったのでございますが、考えていることを若干述べさしていただきます。 国際競争力と独占禁止法との関係ということで、国際競争力をつけるためには独禁法上、寡占あるいは市場支配力、価格形成力といったようなことが生じてもある程度やむを得ないじゃないか、国際競争力をつけるためには必要だ、こういう御意見でございますが、申し上げるまでもなく、資本取引の自由化が現在進行してきているわけでございまして、日本の企業と申しますものは、日本資本に基づく企業に限定されていないわけであります。国際競争力をつけるべき日本の企業の中には当然外資系企業も含まれておりますし、外資の進出してくる企業も含まれている。こういう状態にさらされている、いわゆる国際化が進んでいる段階においては、私はむしろより強力な力を持つ外資が日本の国内に入ってくることをも考え合わせて——これは目的じゃございません、をも考え合わせて、それを組み込んだ形で競争秩序が維持されていくという要請は、より以上に強くなってきているというふうに考えるわけであります。 したがいまして、先ほど内田教授からメリットの問題は非常に少ないというお話もございましたけれども、そのメリットの問題はさておきまして、国内において市場支配力をあるいは市場支配的地位を形成するような、そういう企業が形成することは国内国外、外資、日本の資本ともになくして、外資を組み込んだお行儀のいい競争秩序を国内につくるということが非常に重要なことだと考えている点をまず申し上げさしていただきたいと思います。 いまの事前調査と今回の公正取引委員会の態度との関係で問題がある、私がけっこうだと申し上げたのはおかしいじゃないかということでございますが、私は、事前の調査というのが正式の審査活動として行なわれていない以上、公正取引委員会としては一応の考え方を出した資料について意見を述べるということ以外には行ない得ないという状態に置かれているだろうと思います。そしてこちらの審議の中でもそういうお話が出たというふうに伺っておりますが、提供することを求めた資料の一部については提供がなされていないというようなこともございましょうし、職権で審査をしたわけでもございません。したがいまして、ここをこうすればこうやれば白くなりますということをいうだけの材料を現段階において公正取引委員会が持っていないというのが実情だろうと思います。そういう段階におきましては、とにかく事前に一応相談をするということはこれは別に否定するわけじゃございませんが、事前に相談をしたときに、まっ白かあるいは疑いがあるか、この点について疑いがあるということを述べるのが公正取引委員会としてはその事前の審査の段階の限界だと思うのでありまして、それを越えて、あまりここをこう手直しすべきである、ここをこうするということになってまいりますと、不十分な材料によって確定的な要求を出すという形になってこざるを得ない、あくまでも提供された材料の中でという範囲に限定されてくるという点で、少なくとも法的な調査、法的な審査という形に入っていない現在の段階においては、けさの朝刊に出ておりますような公正取引委員会がとった態度というのが、これの最もノーマルな態度だろうと思うのであります。
○藤井委員 もう時間が来たからやめます。まことにありがとうございました。
○大久保委員長 中谷鉄也君。
○中谷委員 正田先生にお尋ねをいたしたいと思います。 同僚藤井委員の事前審査に関する質問について、私は次のようなことを感じました。実は、法律相談というようなことで法律事務所へよく人が来るのですけれども、そういうふうなときには自分の有利なことばかり言いまして、ほんとうのことをなかなか言わない、裁判にいって初めて真実があらわれてくるというようなことを間々経験するわけです。こういうことは個人の場合であろうと、八幡、富士というふうな大企業の場合であろうと、私は同じだろうと思います。したがいまして、与えられた、任意に提出ざれた資料だけで白だとか黒だということは私はどだい無理だと思う。 そこで、特にこの機会に先生の御意見を承りたいのは、われわれは事前審査があまりにも長過ぎたという点について非常な批判を持っております。今日のこの段階においては四十九条の「審判手続の開始」を行なうことが一番大事なことであろうかと思うわけです。四十九条には、公共の利益に適合すると認めるときは、公正取引委員会は、審判手続を開始することができるとあります。公共の利益にまさに私は審判を開始することが合致しているものと思いますけれども、特にこの点についての先生の御意見、審判を開始すべきであるという点についての先生の御意見を承りたい、まず第一点の質問であります。
○正田参考人 四十九条に基づきまして審判の開始が行なわれるべきである、公共の利益に適合するというふうに判断されるかどうかという御質問でございますが、私は、独占禁止法の四十九条でいわれております「公共の利益」と申しますのは、たとえば独占禁止法の私的独占あるいは不当な取引制限の禁止規定にいわれております公共の利益というものとは性格を異にする、内容が異なるものであろうというふうに考えているわけです。 〔委員長退席、武藤(嘉)委員長代理着席〕 したがって、どういうことかと申しますと、公正取引委員会は、違反行為があるというふうに考えられる場合には、勧告をするか、審判を開始するかということを行なわなければならない。これを刑事訴訟法のいわゆる起訴便宜主義というような考え方となぜ違うものとして考えるかと申しますと、独占禁止法違反行為は、これは競争秩序、国民経済全体に対する侵害行為を、個人の責任を追及するのではなくして、その侵害行為を除去するところに独占禁止法違反行為を規制することの目的があるわけであります。刑事責任を追及することとは本質的に違うという面で起訴便宜主義的な考え方はここでとることはできないというふうに考えます。したがって、ここでいう公共の利益というのは、独占禁止法全体が意図している、独占禁止法全体の目的というものに照らして、どのようにすれば早く違反状態を除去することができるか、そのためには勧告を行なうほうが適切であるか、あるいは審判を開始することが適切であるか、この二者の択一の判断基準としてのみ意味を持つというふうに考えております。したがって、独占禁止法違反の疑いがあるという形で問題が出てまいりました場合には、勧告あるいは審判開始の決定、いずれかの措置がとられることが必要だというふうに考えるわけであります。
○中谷委員 恐縮ですが、引き続いてお尋ねをいたしたいと思います。 十五条の解釈について、この問題につきましては商工委員会におきましてかなり論議をいたしました。あらためて正田先生の御見解を承りたいと思うのであります。 一つは、競争の実質的制限という解釈につきまして、公正取引委員会は、東京高等裁判所の昭和二十八年十二月七日の東宝・新東宝判決に従うという答弁をいたしております。世間に統一解釈なるものが流布されまして、ずいぶんわれわれ迷惑をいたしたのでありますけれども……、そういうふうな答弁があります。ただしかし、非常にばく然としたお尋ねで恐縮でありまするけれども、東京高裁の判例に従うということでありましても、この場合、この東京高裁の判例を競争の実質的制限についてどのように読むかということは、やはり問題があろうかと思うのです。したがいまして、まずその点について、特に本鉄鋼合併に関しまして、この高裁判例の注目点といいますか読み方というか、そのような点についてお答えいただければ幸いでございます。
○正田参考人 東京高等裁判所の東宝・新東宝事件についての考え方、これは判例を一部読み上げさせていただきますが、「競争を実質的に制限するとは、競争自体が減少して、特定の事業者又は事業者集団がその意思で、ある程度自由に、価格、品質、数量、その他各般の条件を左右することによって、市場を支配することができる状態をもたらすことをいうのであって、いいかえれば、かかる状態においては、当該事業者又は事業者集団に対する他の競争者は、それらの者の意思に拘りなく、自らの自由な選択によって価格、品質、数量等を決定して事業活動を行ない、これによって十分な利潤を収め、その存在を維持するということは、もはや望み得ないということになるのである。」ということ、この条項だろうと思います。この高裁の判旨の中で前段の部分というのが、これはその前の東宝・スバルの事件の判旨をそのまま引用している、東京高裁の踏襲した、いわば確定的といいますか、東京高裁としては考えている見解であるというふうに考えられますので、この前段の部分、すなわち「競争自体が減少して、特定の事業者又は事業者集団がその意思で、ある程度自由に、価格、品質、数量、その他各般の条件を左右することによって、市場を支配することができる状態をもたらす」ということが競争の実質的制限ということの基本的な内容であり、これが判例としていわば二つの判例に共通に使われている文言であるという意味で、これを中心にして考えるべきだというふうに考えます。これが今回の合併の問題ということになりますと、先ほど内田教授の御指摘の中にもございましたように、一つの市場支配的な地位を持つあるいは市場支配的な力を持つ企業が形成されて、そして、その企業を中心にした価格形成が行なわれるということでありまして、したがって、そのような地位ないしは力を持つ企業があらわれてくる、その企業がその力をふるうかふるわないかというところは、これは問題でないという点は、公正取引委員会の御見解を拝見しましてもそのとおりであります。ただ私は、新聞紙上統一見解という形で出ておりますものが、一体どういう形で出たのかという点については、実はあまり詳しく存じませんので、必ずしも公正取引委員会が公にその見解を明らかにしたものとは考えておりませんので、高裁の判例ということでございましたら、二つの判例によって繰り返し強調されている基本的な部分ということが公正取引委員会の主張される内容であろうというふうに理解いたします。
○中谷委員 突然法律解釈をお聞きいたしましてたいへん恐縮でございますが、引き続いて十五条の解釈についてあと一、二点だけお尋ねをいたしたいと思います。 「一定の取引分野」ということについての解釈であります。公正取引委員会の答弁、一節だけを引用いたしまして非常に恐縮でありまするけれども、こういうふうに言っております。「競争の行なわれる場とは、市場において売買される商品、これで一定の取引分野を画してまいるべきだ、こういうことでございます。」ということであります。したがいまして、問題になるのは、中間製品は一体「一定の取引分野」という解釈の中で評価できるのかできないのか、あるいは評価すべきなのか、評価すべきでないのか、この点についてのひとつ先生の御見解を承りたいと思います。言うまでもなしに、粗鋼の問題に関してでございますので、ひとつこの点についても、突然で恐縮でありまするが、お答えをいただきたいと思います。
○正田参考人 中間製品について「一定の取引分野」として考えるべきかどうかという点については、これはかなり問題の余地があることはおっしゃるとおりで、御指摘のとおりだと思います。ただ、これを「一定の取引分野」を個別的になすものとして考えるという考え方をとらないといたしましても、競争の実質的制限という問題を考えていく場合に、完成品のあらゆる取引分野に関してその競争の実質的制限の有無を判断するためには、この中間製品というものの役割り、これが非常に重要な意味を持つということになると考えられます。したがって、そういった中間製品の役割りを鉄鋼生産の実態と申しますかに照らして考えてみますと、やはりこの中間製品をめぐる力というものが完成品をめぐる力の決定的な要因になる、そういう意味で、「競争を実質的に制限する」ような合併であるかどうかという判断の基本的な材料の一つになるというふうに考えることができると思います。中間製品それ自体の取引の実情を実は私が非常に正確に存じませんので、全く取引がなされていないということを前提にして考えた場合には、競争の実質的制限の内容になるという点を申し上げたいと思います。
○中谷委員 同じく十五条の論点。最後に一点だけお尋ねをいたしたいと思います。いわゆる「こととなる場合」という点についてでございます。恐縮ですが、公正取引委員会のこの点についての十日の商工委員会における答弁を読み上げておきます。「「こととなる」というのにつきましては二つ内容がございますが、これは合併との因果関係——合併に関係のないことでありますならば、これは「こととなる」にはならない。因果関係がなければならない。それから「こととなる」の第二の要因といたしましては」お尋ねいたしたいのは以下であります。「合理的蓋然性——可能性でもなし必然性でもなし合理的蓋然性、こういうことがその内容でございます。」ということであります。合理的蓋然性だというふうに公正取引委員会は答弁をするわけですけれども、そもそも十五条そのものが、ある意味では非常にいろんなふうに解釈のできる条文かもしれませんけれども、合理的蓋然性というようなことばがそれほど法律用語としてなじんでいることばなのかどうか、この点についても若干私自身疑問を持っているわけですけれども、「こととなる」というのを先生の立場からはどういうふうに御見解をお持ちなのでしょうか。この点についてお答えをいただきまして私の質問は終わりたいと思います。
○正田参考人 非常に議論があるところでございますが、私が考えておりますことを簡単に申し上げます。 合併規制のこの独禁法十五条の規定は、これは歴史的な変遷もあるわけでございますが、昭和二十四年の改正で認可制度が事前届け出制度に改ためられて、その際に実体的な要件から「こととなる虞がある場合」という表現から「こととなる場合」という形に改められ、これが緩和されたのだ、こういうふうに理解されている向きが多いように思うのであります。ただ、この場合に考えてみなければならないことは、この二十四年の改正の段階におきましては、まだ依然として規模が大きいことそれ自体を違法とする規制が残っておりましたということと、それから競争を実質的に制限することとなるおそれがあるもののうちで公共の利益に反するもの、これが禁止されるというのが二十四年以前の規定であります。公共の利益違反という要件は同時に削られております。つまり一方でしぼる要件が削られているということを考えますと、概念的に「こととなる虞」といういわば重複した文言、これを除去して、そうして公共の利益に反するという要件を除外して、その二十四年以前の改正と実体的には差異のない状態、これが二十四年以降ももたらされているというふうに考えることができるのではないかという点が第一点であります。 それから、「こととなる場合」ということについて、可能性でもなく、必然性でもなく合理的蓋然性という点のお尋ねでございますが、合理的蓋然性が何についての合理的蓋然性かということが問題になるわけであります。つまり合併はあくまでも事前の問題でありまして、事前の調査期間中に判断をしなければならないわけであります。 〔武藤(嘉)委員長代理退席、委員長着席〕 したがってその事前の調査期間においては、その届け出られた合併が合併として成立するかしないかということについて、いまだ確定的な材料は存在していない。突然の経済界の変動その他があれば合併契約を締結していてもあるいは双方合意の上で解約するということも考えられるわけでありますから、合併が成立することについての合理的蓋然性ということであれば、これはまさにそのとおりであるというふうに考えます。競争の実質的制限が行なわれる合理的蓋然性ということになってまいりますと、これは非常に問題が出てくるわけでありまして、どういう条件のもとで、どういう行動が出ればそういう合理的蓋然性があるかということが問題になるわけであります。しかしながら、独占禁止法の考え方といたしましては、やはりその合併企業が成立する合理的蓋然性というのが「こととなる」という文言である。その次に、合併企業がどのような力を持つか、あるいはどのような地位を占めるかという点が競争の実質的制限の判断、ことに事前の判断である以上はそういう判断だろうと思うのです。したがいまして、合併企業がある条件のもとにおいてであれ、合併企業を中心として、先ほど内田教授から御指摘がありましたような、そういう状態をもたらす能力のある企業が成立するということでもって判断する以外には、十五条の判断というのは非常に困難かつ複雑になってくるというふうに考えております。
○中谷委員 終わります。
○大久保委員長 武藤山治君。
○武藤(山)委員 私は内田教授にちょっとお尋ねをいたしますが、先ほどたいへん明快なお答えをいただきまして、私ども聞いておりましてやや満足の感じを持っているのであります。 そこで、いま与党の藤井君からも指摘されましたが、両社が合併に踏み切った大きな動機の一つに、やはり国際競争力をつけるんだ、アメリカと競争しても負けない企業をつくるんだ、そういう大義名分を掲げて、大型化すればあたかもそういう問題が解消するのだという錯覚のもとに合併が提起されたのではないかと私は思うのであります。 そこで、一体いまの世界の鉄鋼業の状態、国際競争の中における日本の鉄鋼生産の価格の問題、こういうような点を総合的に判断をすると、どういう情勢にあるのか、それからこういう情勢が今後五年先ごろ、あるいは十年先ごろどういう状態に変化するのか、これをひとつお尋ねしたいのであります。というのは、両社が盛んに宣伝をしているのは、アメリカが大型の設備をどんどんいま計画をしているから、やがて日本の製鉄業はアメリカにノックアウトされるのだ、こういうような危倶というか不安を大いに宣伝をしているような気がするのであります。そこでこういう、愚問であろうと思いますが、世界の鉄鋼業の情勢について一言意見を聞かしてもらいたいと思います。
○内田参考人 まずアメリカの場合でございますが、御承知のようにUSスチールあるいはベスレヘム、これが一位あるいは二位のシェアを占めております。しかしながら、やはり日本と同じように、こういうところの大きな会社の経営状態あるいは経済効率は必ずしもよくございません。そうしてむしろナショナルあるいはインランド、そういった中規模の会社、シェアで申しますと数%のシェアしか占めないような会社の状況のほうがはるかに経済的な効率もよいような状態になっているわけでございます。したがいまして、将来ということでございますが、一つの手がかりは、鉄鋼の生産がすでに一億トンをこしておりますアメリカの経済を考えてみました場合でも、非常に大きな規模というのははたして鉄鋼業におきまして最適規模であるかどうか、これは一つの、われわれいま申しました例を持っているわけでございまして、そういう観点からすると問題がある。 第二に、この国際価格の問題でございますが、これは私がここであらためて指摘するまでもなく、国際競争力がついているということの最も端的な表現といたしまして、わが国の鉄鋼業におきます価格は、すべての分野におきまして国際的に低位にあるわけでございます。すでにこの点は、アメリカのみならずヨーロッパにおきましても、できるならばわが国から鉄鋼を買いましてそれを自動車の材料にする、こういうような傾向が進みつつあることは御承知のとおりだと思うわけでございます。 最後に、将来の見通しの問題でございますが、これは私かねてから、持論といたしまして、日本経済の高い発展の可能性を評価しているわけでございます。そういう点から申しますと、実は今回の合併が出ました場合に、最初に鉄鋼業界が、特に八幡、富士が言われましたことは、やがて近い将来わが国の鉄鋼の需要は停滞化する、これに対応するためには、設備を大型化しなければいけない、そうしますと、大型の設備を少ししかつくる余地はない、こういう点が合併の理由になっていたのでございますが、これは私は間違いである。その点実は業界の方も、現在ではその考え方を撤回されまして、日本の鉄鋼の需要というのはまだまだ伸びるんだという考え方からまた議論を展開しておられるわけですが、そうであるといたしますと、日本の需要の動きというものに対しまして、それに対する最適な技術開発その他の問題がこれからいろいろ出てくる。私の判断では、繰り返して申しますように、八幡、富士というような合併した会社のスケールではなくて、川鉄、住金のスケールが、将来の、少なくとも数年間におきます動きに対しては最適である。ただ、たとえば直接製鋼法とかあるいは原子力を利用いたしました製鋼法、こういうようなことを本格的にやるんでしたら、これは八幡、富士ではだめだというふうに申し上げてもよろしいかと思います。そういう場合には、本格的に国家が乗り出しまして、場合によっては国立研究所、そういうような形での本格的な研究でなければならない。現在程度の八幡、富士の研究費の使い方、こういうものではそういうものに対して十分に対応できないということを申し上げておきたいと思います。
○武藤(山)委員 私どもしろうとが考えても、日本の一位、二位の八幡、富士が合併するということよりも、しろうと的な考えでいけば、川鉄と住金なり日本鋼管と神戸製鋼なり、そういう六社のもっと下のランクのものが合併をして、そうして三社なり四社で適正な競争が行なわれるというならまだ知らず、一位と二位が合併するということについては、経済的に見てこれはたいへんな被害が生まれるのではないかと思うのであります。これから日本の鉄鋼投資というものがまだ続く、五年あるいは十年、年間七百五十万トンなり一千万トン需要が伸びる、こういう見通しにかりに立った場合に、その設備投資というものは協調させずに、やはり自主的判断で自由に六社に競争をしろというお考えなのでしょうか。それとも、ある程度六社で設備投資の調整というものは話し合って、やはり需給調節というものを考えた設備投資に持っていくべきなのか、その辺は経済的に見た場合、先生のお考えはいかがでございますか。
○内田参考人 まず八幡、富士の合併が実際に実現した場合と、そうでない場合とはかなり話が違ってくると思うわけでございます。もしも合併が万一実現したといたしますと、いわゆるガリバー型寡占、つまり一人の巨人が小人の中で高い地位を占めまして、それが主導的な地位を占める、そういう場合には、この価格支配力ということの実は本質的な問題といたしまして、技術の問題、設備投資の問題、すべてこれに連なってくるわけでございますが、こういう場合には、私としては、好むと好まざるとにかかわらず、先ほど強調いたしました暗黙の協調、こういうような形が出てくると思われるわけでございます。これは非常に望ましくない。経済的にいって、そういう判断をしております。ところが、そうでなくて現在の状況がしばらくの間続く、こういう場合には、私は、現在通産省がやっております設備投資の調整、こういうような形での官僚調整はなるべく早く撤廃いたしまして、企業の自主性におきましてどこまで競争ができるかという点に関する十分なる競争条件をつくり上げることが必要だというふうに思うわけです。 ただし、その場合に、自由競争に関連いたしまして幾つかの問題点が出てまいります。具体的に申しますと、優勝劣敗でございますから、負ける企業も出てくるわけです。そうした場合に、われわれとして考えておかなければならないことは、そのような形で問題が発生いたしました場合に、それに対するマイナスのいろいろな面、特に失業の問題であるとかあるいは停滞の問題であるとか、そういうものに関しましては別の観点から十分なる政策措置がとられることが必要である、こういうことをつけ加えておきたいと思うわけでございます。
○武藤(山)委員 それから、合併した場合、市場支配力が非常に強くなり、まあ独禁法でいう過度の集中が行なわれ、また事業活動の不公正な取引が行なわれる。そういう経済的ないろいろな側面から総合的に判断をして、今回の八幡、富士の合併は好ましくない、こういう近代経済学者の皆さんの判断のようでありますが、独禁法第一条にいう過度の集中やあるいは不公正な取引、そういうものが行なわれるその限界、分岐点、どの程度からを、集中された場合には、これはどうしても経済的によろしくないのだという、非常にむずかしい線の引き方だと思いますが、かつて公正取引委員会は三〇%をめどにするというようなことを一回答えたことがあるのでありますが、内田教授の考えではどの程度が一応そのラインの引ける線とお考えでおりますか。
○内田参考人 これは必ずしも固定的に考えられる問題ではないと思うわけでございまして、正田さんがいろいろ御指摘になりましたように、同業他社のあり方、あるいは需要先のあり方、取り扱っております品種に関する代替性の問題、技術革新の速さの問題、その他いろいろなポイントが考えられなければならないと思うわけでございます。しかしながら、ここで、特に鉄鋼に関しましては、一つの例を申し上げておきたいと思います。 それは、一九五八年におきまして、アメリカにおいて二位のベスレヘムと五位のヤングスタウンが合併を申請した場合のことでございます。その場合の合併は、シェアにいたしまして二〇%前傍のものにしかならないのでありますが、アメリカの独禁法においてはこれを禁止しております。子の場合に、いろいろなことがいわれているわけでございますが、そこから出てまいりますいろいろな独占的な弊害、これが明らかである、たとえ二〇%においても明らかであるというようなことが指摘されているわけでございます。 そういうような観点から申しますと、今回の八幡、富士の合併の場合には、先ほど述べましたように、系列会社も考えますと、ほとんどの品種が五〇%をこえまして、しかも場合によってはほとんど独占になってしまうというものが多いわけでございます。 さて、そういうようなことから考えますと、私は、三〇%という普通これまで言っておられました危険ライン、これに必ずしもこだわるわけではございませんが、鉄鋼の場合には、こういったラインが少なくとも国際的にも一つの基準でございますし、わが国の経済においても適当なパーセンテージではないかというふうに思うわけでございます。
○武藤(山)委員 先ほど先生のお話の中にもはっきり、問題品種の四、対象にした五、対象外の品目でも競争制限のおそれがある、全品目に危険ライン突破のおそれがある、こういう御指摘がありました。私も、この間、通産省から、生産シェアの推移をずっと昭和三十三年から資料にして求めたわけでありますが、それをちょっと見ますと、鋳物用銑で五三・六%、粗鋼が三五・四、重軌条が八五・入、鋼矢板が九八、大型形鋼が五一%、さらに普通鋼材が三九・四、厚板が四〇・五、それから冷延薄板が四〇・二、冷延電気鋼帯が六三・九、ブリキが五九・一、これは通産省の提出ざれた数字で見ても、このようになるわけですね。先生が、全品目について危険ラインを突破するおそれがあると言われるゆえんは、やはりそういうシェアを中心に考えての御判断なのか、それ以外にもっと八幡、富士といういまの形態を総合的に判断して、全品目が危険ラインだとおっしゃっているのか、そういう点はどう御判断されているわけですか。
○内田参考人 基本的には後者の点でございまして、最初に強調いたしましたように、暗黙の寡占、協調、こういうものが発生することを除去することが現在の独禁法の精神に沿うわけでございますし、また、そういうような解釈として十五条がなされるべきであろうというように考えるわけでございます。しかしながら、もちろんこの総合力だけではなくて、品種別の検討も問題でございまして、われわれとしては、総合力を具体的に検討するという場合には、品種別のシェアというものも有力な参考資料として考えるべきだ、このように考えているわけでございます。
○武藤(山)委員 割り当て時間になりますから、正田教授にひとつお尋ねをしておきますが、先ほど与党議員は、公取が本日の新聞に発表したような態度をとることはけしからぬ、たいへんがっかりしたという発言があったわけでありますが、私どもは社会主義者の立場にありながらも、現状のいまの日本の経済を考えたときに、八幡、富士というこの巨大企業が合同することは、消費者にとってあるいは国民経済にとって非常なマイナス面が大きい、ロスも大きくなるという考え方に立つから、公取のとった態度を支持するわけであります。そこでちょっとお尋ねいたしますが、公正取引委員会という場は、非常に性格が裁判所的な性格を持っていると思うのであります。したがって、公取の委員というのは、裁判官に匹敵する立場の人であろうと思うのであります。そういう立場の人が、事前に裁判になる事案を持ちかけられて、裁判官が事前に、いや、お前の犯罪はこういうことになるかもしれぬから、こういう点をひとつ自己批判してこい、こう言って判決を下すとなったら、裁判の場合まさにナンセンスだと思うのであります。しかし、公取というのは経済的な問題を取り扱うところで、犯罪人を出す場所でないから、事前にそういう内容について触れ合い、話し合い、相談をすることは、これは行政相談なんだ、公取委員長は行政相談ということばを使ってきたんでありますが、はたして今日までとられてきた事前審査のあり方というものが、行政相談という範疇で割り切れる問題なのかどうか、その辺を少し法律家としての立場からお聞かせ願いたいと思います。
○正田参考人 いままでの公正取引委員会がしてきたことについて、公取の性格との関係でということでございますが、行政相談なのかどうかという点については、これは問題の余地もあろうかと思います。と申しますのは、行政的な裁量権がある問題ではございませんで、いまも御指摘のように、法的な判断をする機関でございますので、そういう法的な判断をする機関がその機関それ自体の意思として事前に相談に乗るということはどの程度まで認められるかということについては、いろいろ非常にむずかしい限界があるだろうと思います。ただきょうの公正取引委員会のあの結論といいますか対応策に対する返答に出ておりますような形で、少なくとも提供ざれた資料の限りでは、これは審判ないしは審査、そういう手続に持ち込むであろうという判断を事前に当事者に与えることは、これは一応いまも御指摘のように、経済的な独禁政策の執行官庁でもあるわけで、そういう側面も持っているわけであります。これは当然そういった程度のところまでは公正取引委員会としては行ない得る。この前の公正取引委員会の内示ないしは事前調査の段階では、少しそこを逸脱しているのではないだろうか、こういった疑いないしは危倶を持ったのでありますが、本日のような形で問題を処理している限りにおいては、法律的には問題の余地はないというふうに考えております。
○武藤(山)委員 最後に内田教授に一つお尋ねして終わりますが、これは公取の出した資料でありますが、レールの価格です。重軌条の価格の推移を昭和三十三年からずっとグラフにしてみますと、ほとんど変化がないのですね。昭和三十三年に国鉄が買い入れた価格と、昭和四十一年に国鉄で買い入れた価格、また四十二年の価格、ほとんど同じですね。その間にほんのわずかの変動はあったけれども、ほとんど直線のグラフであります。これは先生の御判断では一体どういうところに原因ありとお考えになっておりますか、原因をひとつ明らかにしてください。
○内田参考人 いま御指摘になりましたレールの価格でございますが、すでに申し上げましたとおり、かなり硬直的であります。しかしこれはレールに限りませんで、一般にシェアが高い品目についてはそのような傾向が存在いたします。ところが、わが国の鉄鋼業は、いま御指摘になりました十年ぐらいの期間をとりますと、非常に大きな生産性の向上をなしている。そうして競争が激しい品目につきましては、かなりの価格の下落があるわけでございます。そのような観点から、もしも原価計算を厳密に行ないますならば、レールに関しましても、当然競争的な状態に置かれていたならば、私は価格はもっと下がっているはずだし、そうなっていたであろうというふうに思うわけでございます。この点はもっと実態的な資料に即しまして徹底的な追求が必要であろうというふうに考えております。
○武藤(山)委員 どうもありがとうございました。
○大久保委員長 中村重光君。
○中村(重)委員 参考人にお尋ねをする前に菊池公取委員にお尋ねいたします。 経過については、時間の関係もありますからきょうは申し上げませんが、事前審査、そこで問題点を指摘する、対応策、また内相談、そこで正式の届け出、合併承認、こういうコースをたどっていくということは、これは条件つき承認であり、独禁政策に公取自身が風穴をあけることになるのだということで非常に心配をいたしてまいりましたし、また、そうした観点から質疑を続けてまいったわけであります。だがしかし、けさの新聞等を通じまして、対応策は問題点の解消になっていない、事前相談にはこの後応じない、そうした態度を決定されたようでありまして、公取に対して非常に心強さを感じ、敬意を表することにやぶさかではないわけであります。だがしかし、正式の届け出とともに対応策をつけることを望んでおるのか求めておるのか、そうした報道も一部あるようでございますが、公取としては、この後の扱いをどのようにしようとお考えになっておられるのか、まずお答えを願いたいと存じます。
○菊池説明員 本日は、山田委員長がほかの委員会に出席しておりますので、私が、公取委員会を代表してお答えを申し上げる立場ではございませんけれども、ただいまの御質問に関する限り、会社のほうがどういう態度に出るか、これは私どもわからないわけでございまして、どうしろこうしろという指図をする問題ではございません。
○中村(重)委員 正式の届け出が出てまいりましたならば、過日の当委員会においてお答えがございましたように、四十二条、四十六条、四十八条及び四十九条を適用して適正な措置をするということを山田委員長お答えになりましたし、各委員も委員長の答弁に同意であるというお答えがございましたが、そうした取り扱いをされるのかどうか、お答えを願います。
○菊池説明員 お答え申し上げます。正式の届け出がありましたらば、法律に従いまして、法律に定められた手続を進めることになるわけでございます。
○中村(重)委員 まあ、時間の関係がございますから、重ねてあなたにはきょうお尋ねをいたしませんが、いまのようなお答えは抽象的であって、適切な答弁になっていない。そこで、山田委員長に対して、四十二条、四十六条、四十八条、四十九条、そうした条文に当てはめて取り扱いをする、こういうように理解をしてよろしいかという質問に対して、そのとおりだという答弁がありましたし、山田委員長の答弁に各委員とも同意であるかということに対しては、そのとおりだとお答えになったんでありますから、私も、条文をあげて質問をいたしましたから、適切なお答えを求めたいと思います。
○菊池説明員 お答え申し上げます。この前、山田委員長が答弁申し上げましたことと同感の意をみな表しましたわけでございます。ただ、どの条文を必ず使うかどうかということは、委員会で審議してきめるわけでございますので、いまどの条文を必ず使うということにつきましては、お答え申し上げる段階ではございませんけれども、法律に規定してございます条文を適正に適用してまいるつもりでございます。
○中村(重)委員 不満ですが、時間がありませんから他日に譲ります。 それでは、正田参考人にお尋ねをいたしますが、川鉄あるいは住金が、八幡、富士が合併をすることによってプライスリーダーをひとつ発揮してもらいたい、こういうことで、この合併を非常に歓迎をいたしておるようであります。まあ、人によっては、川鉄、住金等いわゆる後発メーカーが、競争力を持っているのだ、合併おそるるに足らないんだというような点から歓迎をしているのだと言う人もあるし、そうではなくて、いわゆる合併をすることによってプライスリーダーを発揮する、そこに価格の高位安定というものが期待をされる、そうした点からこの合併を歓迎しているのではないかという意見を表明する向きも非常に多いわけであります。正田参考人としては、この川鉄、住金等の、八幡、富士の合併を歓迎をしておることはどういう点にあるのであるとお考えになっていらっしゃるのか、お答えをひとつ願いたいと思います。
○正田参考人 私も、ただいま御指摘のような点についての歓迎の意の表明だというふうに理解をしております。具体的に申しますと、八幡、富士が合併することによって、一方においては非常に大きな脅威を感じるだろうと思います。しかしながら、先ほど内田教授の御指摘にございましたように、低能率といっては悪いかもしれませんが、高いコストの企業が市場支配的な地位を占めて、そうして価格先導力を持つということになった場合に、それに追随し、それに従っていくことによってより大きな利潤が獲得できるということを同業各社が歓迎をしていることの根拠に求めたいと思います。
○中村(重)委員 過日の当委員会において、同僚委員が、三品種並びに鋼矢板、三・五品種ということになるわけですが、これ以外の、公取がその内容を明らかにしなかった五つの品種について質問をしたわけです。山田委員長は、五品種については公取は白という結論を出していない、並びに、この鋼矢板についても結論を出していないという答弁があったわけであります。三・五品種に対しましては、これは当然黒である、あるいは灰色であるということを明らかにしたわけでございますから、四十九条に基づいて審判を開始すべしということを私たちは主張をいたしております。それは別といたしまして、この五品種並びに鋼矢板について結論を出していない、こういうことをはっきり委員会において公取が明らかにしました以上は、これだけでも、もう今度は、内相談に応じないで、正式申請が出てきたということになってまいりますと、当然、この四十九条に基づく審判を開始しなければならないと思いますが、その点に対しての見解はいかがでございましょうか。
○正田参考人 白ということには考えていないというふうに公取の委員長が御答弁になったということでございますが、法律的には当然そういったお答えが出てくる以外には出ようがないといいますか、当然のお答えだろうと考えられます。しかしながら、ここで次の段階で問題になってまいりますことは、少なくとも、公正取引委員会がこの九品目を取り上げられまして、この九品目について一定の資料を請求され、調査を行なわれたということでございます。これは当然、疑いがあるということを前提にして調査をなさったわけでありまして、少なくとも、当事者の任意に提出した資料の範囲においては黒とも白とも言えないというのが現在の状態なのであろうと考えられますし、それ以外には判断の余地はないと思われます。したがいまして、今後当然考えられますことは、疑わしい点が存在すれば、これは公正取引委員会が、独禁法の四十六条に基づく調査、処分等の権限を行使することを含めて審査活動に入る、強制調査を含む審査が正式の審査活動として行なわれることになるのは、これは当然の成り行きであろうと考えられます。したがって、疑いがある以上審査活動が行なわれる。そしてその審査活動の結果によって、審判が開始されることになるであろうということは、当然私どもも予想し、考えている点でございます。が、現在の段階におきましては、審判が開始されなければならないし、審判という場でもって問題が解明されるべきであるということは、一般的には申せるわけでございますが、具体的には、まず、正式の審査活動を行なうということがその前にくるかというふうに考えております。
○中村(重)委員 両社は十二日に対応策を出したようであります。ところが、十三日、委員会を開いて検討した結果、対応策は問題点の解消になっていない。ところが正式届け出をすることになってまいりますと、対応策というものを当然つけて出ずことは間違いない。その対応策につきましては、新規参入にいたしましても、その他合理的蓋然性ということを公取は言っておるのでありますけれども、私は将来を予見をするという形のものは対応策にはならないのではないか。対応策という以上は、いわゆる問題点の解消というか、実証されたものでなければならない。そのように考えるのでございますが、正田参考人はその点どのように対応策のあり方という点についてお考えになりますか。
○正田参考人 対応策が届け出と同時に出されるということでございますが、これは対応策について公正取引委員会が判断をするということではなくて、届け出の内容の一部に対応策というものが含まれているというだけのことだろうと思います。したがいまして、届け出の内容それ自体が検討の対象になるわけでありますが、公正取引委員会がすでに指摘した三品目ないしは四品目については、当然それを除去するための措置が必要とされると考えられます。 それで、この対応策につきましては、先ほど内田教授も御指摘になりましたけれども、両社自身の責任において行ない得ることであるということと、それから第二点は、これは刑事責任の追及じゃございませんので、事実として競争市場、市場構造にどういった変化がそれによって生じてきているかという問題、要するに用意ないしは誠意ということでは対応策としては全く意味を持ち得ない。競争状態あるいは公正な競争秩序が維持できるような市場構造を持続するという具体的な問題の解決が必要であるということになると思われます。そして、本来合併の届け出が行なわれますと、届け出に基づいて審査が行なわれるわけでありますから、法律的には、本来は合併の届け出の状態、届け出の時期においてそういうことが現実に具体化していることが必要であるというふうに考えられます。言いかえますと、届け出の時期において、合併によって生じる力というものについての評価が行なわれるわけでありますから、その時期までに対応策が具体化しているということが必要とされるものと考えられます。もしこれをゆるく解しましても、少なくとも合併禁止期間中に、言いかえますと、いつでも公正取引委員会が審判を開始し得る期間中にその対応策が具体化され、市場構造が競争的市場構造に移行するということが必要であるというふうに考えられます。
○中村(重)委員 先ほど内田参考人からレールの公的独占と申しますか、通産省並びに運輸省等で対応策の補強策といったようなことが新聞紙上等で報道されているという点をとらえての御意見であったと思います。その際適用除外の立法があれば別としてという意味のお答えがあったように思います。御承知のとおりに、第六章第二十一条は適用除外)自然独占に固有の行為という形で「この法律の規定は、鉄道事業、電気事業、瓦斯事業その他その性質上当然に独占となる事業を営む者の行う生産、販売」部門、こうあるわけですね。ところがレールの場合において、公的独占ということで、いわゆる私的独占の対象の外であるという考え方を持つといたしますと、この二十一条の適用除外ということを頭において言っておるのではない。ところがこれは適当なこの条文に対する解釈ではない。これはあくまでここに書いていることをすなおに読むべきことであって、レール等の生産、いわゆるこれの購入というような場合に、国鉄がこれを購入をするという場合といえども、これは公的独占というので私的独占の外に置くべきものではない。あくまでこれは私的独占の範疇において扱わなければならぬと思うのでございますが、その点はいかがでございましょう。
○正田参考人 二十一条が適用される対象として、レールが不適格である、ないしは二十一条がレールに対して適用されるべきではないという点は、ただいまの御質問の御趣旨に同感でありまして、内田教授の場合もそういうことをおっしゃったのではないと解しております。つまりレールにつきましては、行政指導その他によって何らかの価格についての事実上の統制的なそういう作用が政府によって行なわれても、これは独占禁止法の適用の除外されるべき理論的な根拠にはなり得ない。もしそれがなり得るとすれば、レールに関する特別立法というものができ上がった場合には——その当否はこれは問題はございます、それが妥当であるかいなかという点については問題はございますけれども、こまかい、いわゆる法技術的にはそういったことも行なわれ得るであろう。単なる行政指導というような形においては、独占禁止法の法律の適用を排除するだけの力を持ち得ないという趣旨であろうと思います。
○中村(重)委員 先ほど中村参考人は、合併の問題、いわゆる大型合併のメリットという点から、規模の利益は非常に大きいという点を強調された。ところが合併が必ずしも必要でないというおことばもあったようであります。特に技術開発という点においては、共同開発というような御意見もございました。しかし肝心の八幡、富士の合併という問題についてはお触れにならなかった。だから八幡、富士の合併というものが、いわゆるプライスリーダーを発揮する、市場支配力を持つという形において、この独禁政策というものに反する形になってまいりますし、またこの合併によって被害を受ける第三者が訴訟に持ち込む手段というものが独禁法の中にないわけです。これらの点等から、この独禁政策というものがきわめてきびしく運営されていかなければならない、このように感じるわけでございますが、あなたは独禁政策の観点から、八幡、富士の合併に対してはどのような見解を持っておられるのか、ひとつ伺ってみたいと思います。
○中村参考人 私は大型合併というのを、規模の利益という点について話をしたわけですが、これは規模が大きくなればなるほど有利であるということばをこういうふうに解釈する。工場の規模が大きくなることと、企業の規模が大きくなることは別だというふうに近代経済学者の諸君は言われております。しかしぼくは、ここに一つ大きな問題があるんじゃなかろうか。と申しますのは、現在の鉄鋼の製鉄工場を見ますと、一千万トンないし一千二百万トンが最適の規模である。これは四千億円の金が建設資金として必要である。この建設資金の問題から見た場合に、必然的にこうした規模の大きさが出てきますと、当然工場の規模の大きさが出てきますと、企業としての規模の拡大もあらわれてくるのではないか。なぜ企業の規模の拡大と工場の規模の拡大を分離して考えられるのか、これが第一点。 それから、規模の大型化によるところの利益について、たとえば技術的な進歩についても非常に否定的な見解を出されておりますけれども、これは全く現代の科学技術の進歩について無理解であると私は思います。と申しますのは、たとえば革新的な技術を開発するためには少なくとも、たとえばIBMが電子計算機を開発するためには二百億円の投資をやっております。たとえばデュポンがナイロンを開発するためでも一千億円です。こうした研究費はどこから出てくるのか。もちろんこれは現在の日本の企業の規模でこれがまかなえるとは私は考えておりません。そのためには、いわゆる一つには企業の規模を大型化していくということがそれを実現していく一つの方法でありましょうし、また数社が共同していくということもその方法であるでしょうと申したわけです。ただし、この数社が共同してと申しますのは、これはだれがその研究の主体者になるのかという点で、はたして現在の資本主義というワクの中でこれができるのかという点については非常に問題があるわけです。この点はどうなのか。 それから、たとえばまた技術のホールディング・カンパニーという問題にいたしましても、これは一番技術の共同研究よりもさらに研究体制を進めていく上には有利でございます。しかし、日本の企業がいわゆる外資型企業であるといった場合には、これはどう考えたらいいのか。これは鉄鋼業ではございませんが、石油化学の場合を一つ見てみますと、コンビナートで研究組合というものをつくったのです。ところがなかなかうまくいかない。これからさらに技術のホールディング・カンパニーということも考えていくわけなんですが、どうだということも出てきますが、しかしそこには外資企業であるという点、外資と提携しておる。しかも現在の技術は、技術独占ということばがあります。現代の独占の大きな特徴は、資本の輸出からいわゆる技術独占を非常に重要なてこにしてきておるという事実をどう考えるのかという問題があるわけです。こういった点からかなり疑問点が出てくるということがあるわけです。 それから、大型合併はどうなのかという点ですが、富士や八幡が合併ということは、これはなるほど管理価格という問題が生じてくる可能性というものはございます。しかし現在問題になりますのは、八幡と富士がずっとシェアが低下してきておる。現在まで八幡と富士のシェアの低下は、管理価格がなぜできなかったのかということからいきますと、これは常に受け太刀であったといわざるを得ないわけです。したがって、今度の合併はこういった受け太刀——受け太刀と申しますのは、すでに八幡で見られてもおわかりのように、八幡の製鉄所は非常に古い。戸畑の新鋭製鉄所をつくっても、これはすでに戦後二十年以上経過しておる。富士の主力工場である広畑の工場というのは昭和十六年にできておる。これに比べまして、たとえば住金の工場というのは、三十六年からずっと和歌山の製鉄工場をやって、今年度で四基一千万トン体制をとるという。コストの面では非常に安い。片一方はコストが高い。こういうことで、ひとつコストの面でも、現在までの受け太刀ではなくて、むしろ積極的にコストの面でも競争できるということが八幡、富士の合併の大きなねらいであると私は思います。したがいまして、管理価格という問題はむしろ、まあ可能性があるかないかという問題は別にいたしまして、あるとするならば、現在よりも価格の低下の条件の中でいわゆるコストが下がっていく。その中で生まれてくる可能性があるということが一つ。ただしここで問題になりますのは、こういうことがあるのです。問題が一つ出てくるのは、大型の場合可能性がないという声がありましたが、もちろん可能性があるでしょう。あることについて、これには木村さんからも話があったのですが、ここにいわゆる管理機構なり監視委員会をどう設けるのかという問題が次に出てくる。いわゆる寡占の弊害が出てくる可能性があるとするならば、これをチェックするのにはどうしたらいいのか。ところがこの管理機構の委員会と申しますと、現在あるような非常にゆるやかな、たとえば産業構造審議会というようなゆるやかなところではだめだというように私は考えます。
○大久保委員長 時間の関係がありますので、なるべく簡潔に御答弁願います。
○中村参考人 それをもっと管理の面について強力な権限を持った管理機構の委員会、しかもきわめて民主的な体制を持った管理機構の委員会を設けてほしい、そこでチェックできるのではなかろうかというふうに考えております。 さらにその点から問題はもっと発展していくわけですけれども、時間がないようですからここでやめますけれども、そういった点についてはまたあとで質問があればお答えすることにいたします。
○中村(重)委員 私はあなたと議論はいたしません。いまの監視機構の問題等について、この点もまた政府がこれらに介入をしていくというような問題点、これはいままでの経験でおわかりのところでございますが、その点については議論になりますから触れませんが、いまあなたは八幡と富士はシェアが非常に低下している、こういうことを言われた。ところが、これは「エコノミスト」とかその他の出版物によって、この八幡、富士の合併によって市場の占拠率というものが変動する、市場構造が変わってくる、そういうことについて、問題点として指摘されておるということをお認めになるのかどうかわかりませんが、とにかくいま三・五品目の中に出ております鉄道用のレールにいたしましても、これは一〇〇%ということはあなたも御否定にならぬだろうと思う。鋼矢板の九六%も否定されないだろうと思う。それから食かん用ブリキの六三・六%、鋳物用の銑鉄の五四・二形、こういうものは公取自身が認めておるところでございますから、これらの点については弊害であるということはあなたもお認めになりましょう。そうなってくると、八幡、富士の占拠率が非常に低下している、そういう点からこの合併を認めるということについては、私はこれをお認めになるならば矛盾があるのではないか、このように実は考えるわけであります。だから、これらの具体的な事実に対してのお考え方はいかがですか。
○中村参考人 その点ですが、重軌条、鋼矢板、また大型棒鋼あるいは大型形鋼、そういったものは幾らでも、同じ一つの製鉄プラントをつくっていけば、これはロールさえ変えればいつでも転換できる。ただしレールにつきましては四十万トンという制約がございますので、必ずしも競争独占品種のつぶし合いということが、住金にしろほかの企業ではたしてそこに入っていくのが有利かどうかということを考えた上で行動したのであって、現在もし八幡、富士が合併しなくてもこの点はいつまでもシェアが非常に高い、いや小さくなるというような可能性があるかどうかという点については、はなはだ疑問があるというふうに考えております。
○大久保委員長 塚本三郎君。
○塚本委員 最初、公取のほうにお尋ねしたいと思います。 両社から出された対応策では不十分だというふうな新聞報道がなされております。それにつきまして新聞では、レールはこれこれ、ブリキはこれこれ、鋳物銑はこれこれと、こういうふうな解説がなされておるようでございます。そういたしますると、この対応策さえ十分にやればいいという裏面の受け取り方も出てくるわけでございます。問題は対応策自身の問題というふうに受け取られる向きもあるわけでございますが、そういうことですか。
○菊池説明員 お答え申し上げます。新聞に対応策のことについてどういうふうに出ておりましたか、私まだ詳しく読んではおりませんが、私どものほうで昨日申しましたのは、対応策が指摘した問題の解消になっていないということだけを申したわけでございます。あとどういうふうに今後進めるかということは、会社側がどういう申請を持ってくるのか、どうするのか、私どもは存じません。もし出てきましたならば、先ほど御答弁申し上げましたように、正式の届けとして法律に定められた手続で審査してまいるということになるわけでございます。
○塚本委員 もう一つだけ公取にお聞きしますけれども、問題は、おたくのほうが指摘せられたのは三品種に対する対応策が実は不十分だというふうな指摘が報道されております。したがって、文字どおりその三品種に対する対応策が問題だというふうにそのまま受け取られるべきかどうかという、おたくたちのその見解をお聞きしたいというふうに思うわけです。
○菊池説明員 お答え申し上げます。指摘いたしました問題点は、事前相談の段階におきまして出しました一応の結論でございまして、まあずいぶん時間をかけまして慎重にはいたしたつもりでございますが、今後出てきました場合には、公聴会とかいろいろ手続がございますから、法律の定めるところに従いまして審査してまいるわけでございまして、いまここで結論をどうだこうだということを申し上げる段階ではないと存じます。
○塚本委員 こういうことなんです、私のお聞きしたいのは。ずいぶん長い期間をかけて事前相談に応じて審査をなさった。その結果三・五といわれておりますこれとこれとこれ、それからさらにこれ、こういうふうな指摘がなされたわけでございますね。それで、その対応策をいわゆる会社側が出したところ、この三品種に対してこういう点が対応策として不十分だということだから、おたくのほうはこれから検討なさるなら全部検討なさることでございましょう、正式に出ざれたわけじゃないんですから。正式に出されたら実は全部を——あの当時出されたのは正式じゃなかったわけだから、今度出された問題に対してはその全部を正式に御審査なさることでございましょう。しかし前に事前相談でなさった場合においては、相当時間をかけて御審査なさったことだということでございますので、そのあげく出てきたのが三・五なんだ。だからいまおたくの指摘なさったのは、問題とされる気のついた点はこの三品種なんだ。文字どおりそれだけに受け取っていいものかどうかということをお聞きしたい、こういうことなんです。
○菊池説明員 たびたびいままでもお答え申しておりますように、それ以上のことは何も私どものほうは申しておりません。そのとおりでございます。
○塚本委員 木村先生にお聞きしたいと思いますが、富士、八幡の合併は競争制限をもたらすということがずいぶん新聞紙上におきましては報道されております。このことはすでに当委員会におきましても再三議論になったことでございます。そこで、いろいろな見解が出ておるようでございますが、問題は、同業他社が普通の場合ならばやっきになって反対しなければならぬにもかかわらず、この際は同業他社がいわゆる反対の態度に全く出てないだけでなくして、これには暗黙の賛成をしておるようでございます。この事態に対して見解がずいぶん違っておると思うのですね。競争制限にはならないというふうな見解がその一つの見解であり、いや、競争制限になって、高位安定でもってプライスリーダーとして、そういう形になるのだから、おれたちもうまい汁を吸ってやろう、こういうことで実は同業他社がこれには反対しないんだ。私は問題点はここにあるのではないかというふうに見るわけでございます。この点、全く私たちはしろうとでありますが、いままで鉄はあんなに大きな資本がかけられておるにかかわらず激烈な競争をしてきたことは事実でございます。にもかかわらず今度、その激烈な競争はさらに続くんだという見解と、いや、合併をすることによってそれは競争制限がされてしまって、自分たちもまた高位安定でもってその利潤をはむことができる、しょせんそのことが独占価格になってくるんだという見解があるわけでございます。この点簡単にひとつ木村先生のほうから見解を聞かしていただきたいと思います。
○木村参考人 歓迎する理由ですね。まず私自身もどうも解しかねておるところでありまして、相手側が強力になる、またその強力になることをねらっての合併であるわけですから、それとの激突でいままでのようにシェアを広げていくような可能性がなくなる、そういう条件ができ上がることは間違いない。それを歓迎するというのは、一つは、やはり先ほど言われたような、現在のどさくさの場合には別としましても、これまでのようなあの競争体制から安定の体制への変化を期待しているんじゃないか、そこに基礎があるんじゃないかというように思います。いますぐその激突がおさまるかどうかという点については、私もいささか疑問はあります。この際に手を広げてという努力を後発がさらにやるでありましょうし、そういう意味ではある品種に限っては部分的にはまだ競争が激しくなることもあるかもしれない。しかし基本的には、先ほども申しましたように大きな構造変化を示すわけですから、全体としてはその中での安定という方向へ向かう条件がこの際でき上がることは間違いないと私は思います。
○塚本委員 恐縮でございますけれども、私三人の先生方に同じ問題で時間がございませんから簡単にひとつお聞きしたいと思うのでございますが、正田先生、いま申し上げた同業他社が強く反対しないのは、どちらかということの判断に苦しむ。おそらく大衆もそうであろうと思うわけです。この点でお二人の先生方も簡単にひとつ御見解を聞かしていただきたいと思います。
○正田参考人 先ほど申し上げましたとおり、私は同業他社が特に、記憶がはっきりいたしませんが、よい意味でのプライスリーダーになることを望む、こういった発言が同業他社の責任者から出ているということから考えますと、やはりよい意味でのプライスリーダーということは、同業他社に対しても十分な利潤を保証するような、そういう支配力となってほしいということだろうと思います。猛烈な反対が出てこない、あるいは内心反対したいけれども反対できないという企業があるのではないかと考えられるぐらい、今度の合併によって成立する力が強いということも言えるのではないかというふうに判断できるのでありまして、やはり今度の合併によって成立する力が同業他社を反対せしめないだけの力になるということ、そしてそれは今度は、その中でも高利潤が確保できる、したがってよい意味でのプライスリーダーたれという要望が出てくる、こういうふうに考えております。
○中村参考人 いまの御質問ですが、私もそういった管理価格のできる可能性というのは非常に強いと思います。ただし、この場合に問題になりますのは、価格が下がった段階で——現在八幡、富士というのは古い製鉄設備を持っておりますので、非常に価格が高い。これに比べまして住金、川鉄、特に日本鋼管、この三社は非常に安いコストで生産できるところの新鋭工場を持っておる。したがいまして八幡と富士が合併しても自分たちにはそう影響ない、十分に自分たちも競争力があるんだということは認識しておられると思う。その意味でお互いの競争がこの間しばらくの間は続くであろうということは、木村先生も御指摘のとおり行なわれると思います。ただし、将来において、いまも言いましたように、そういった管理価格の形成が出てこないという保証は全くあるとは思われません。そのためにはどういった政策をとるのかということが非常に重要な問題でしょうし、また政策については、産業体制のあり方なりあるいは企業の体質のあり方なり、そういった問題をどこまで本質的に考えていくのか、いわゆる日本の資本主義のあり方それ自体からどう考えていくのかという問題も将来起こってくるだろうというふうに私は考えております。
○塚本委員 木村先生にお尋ねしますが、私は中小企業者の諸君と折衝する機会が非常に多いのですが、彼らが言っておりますることは、一様にこの鉄鋼価格の安定ということをやかましく言っております。 〔委員長退席、浦野委員長代理着席〕 といいますのは、中小企業のおやじさんたちにどうだもうかるかと言うと、いま鉄が安いからもうかるよ、とこう言うわけでございますね。いわゆる価格の上下、たいへん変動が多いということは、もう私たち想像に絶するくらい多いのですね。中小企業者の使う場合——おそらく造船や自動車等はそうではないと思いますが、その場合は工賃よりも材料のほうの変動に非常に心を奪われるということだと思うわけでございます。そういたしますると、私は、中小企業政策の立場からいいますると、これは安定するほうがいいという判断を持っております。しかし、にもかかわらず、それが高位安定になることは法の精神からいって断じて許すことはできないというふうに思うわけです。伺うところによりますと、木村先生、中村先生はやや賛成のほうのような立場においでになると伺っております。もし合併して安定することけっこうでありまするが、そのことが高位安定だったらたいへんだと思うわけです。低位安定になる何か保証的なものはあるでしょうか、ちょっとお二人の方にお聞きしたいと思います。
○木村参考人 私もその点では近経の方々と若干違うのです。近経の方々の意見は、需要の変動に応じて価格が乱高下であろうと、変動すること自体が経済の発展にとって必要だというようにおっしゃるのですけれども、私自身は、やはり安定といっても高位安定じゃなくて低位に安定し、生産力の発展に従って価格が下がっていく方向での規制、何かそういう方向が出されなければいけないのじゃないかというように思います。ところが、いまの独禁法の場合にはそういうことができるのかどうか、私わからないわけです。いまの体制ではやはり私的企業の利潤追求の立場を貫徹する意味での自由競争でありますから、そういう体制がある限りは乱高下するか高位安定するかしか道がない。低位安定させようとすれば、これは中核になるような、そういう指導力を持つようなそういう企業に公的な役割りを果たさせる方向しかないんじゃないか。だからもっとつき詰めて言いますと、そのいまの競争状態から高位安定へ向かうのならこれは反対だ、そういう意味では独禁法がもっとがんばっていただいて、現在の状態のままで合併のほうにいくということには反対してもらいたいというように思うわけです。しかし、そうかといって、いまの競争状態で満足してはおらない。さらにこの低位安定の方向にいくことこそまさに経済政策のねらうべき方向だ、そうであればここで公的な性格を中心的な企業に持たしていって、国会やらその他大衆の監視、管理がきく、そういう条件の形成をこの際真剣に考えるべきじゃないか、そういうような方向が出れば合併禁止するよりはその方向のほうがいいというように選ぶわけであります。
○中村参考人 私も大体木村さんと同じ意見なんですが、現在の大型の利益というものをどこまで追求していくのかということ、設備が大型化していく、プラントが大型化していく、これは鉄鋼業だけではございません、石油化学にしろ、装置産業といわれるものはみなそうなんです。こういったもの、あるいは自動車工業もそうかと思いますが、こういった大型化による利益を国民的な観点からどう還元していけばいいのか、そのためにはどういうふうな政策を考えたらいいのかということが一番重要な問題に差しかかってきておる。たとえばいま自由競争ということがよく問題になります。たとえば独禁法でいまの問題の自由競争、それとたとえば資本の自由化ということも一緒によく問題にされております。近代経済学者間で。ぼくはここに一つ問題があると思う。無防備の形で現在のきびしい国際的な環境の中に日本の産業を置いた場合にどうなるのかという問題と、そこから生まれてくるいろいろな立場、設備の効果、生産性の問題なり、あるいは現在の産業が持っておる経営体質の弱さなり、いろいろな問題から考えていった場合に、価格が高いところできまるというのではなくて、安いところで安定しながら、しかも国際的に見て低い価格で生産ができる、現在鉄鋼業が非常に低価であると、こう申しますのはどこに原因があるかと申しますと、これは労賃がきわめて安いということに依存しておるわけなのであります。現在、日本の鉄鋼業の鋼材トン当たりの労賃は十九ドル、アメリカの鋼材トン当たりのコストは八十数ドルになっております。四分の一以下なんです。この点をどう考えられておるのか。このことは、日本の鉄鋼業が生産性は非常に高いといわれながら、その差というのは、ほかの労賃コストを除いて考えますとそう大きな差がない。むしろ幅は大きい。金融市場についてはトン当たり鋼材で約ハドル高い。原料の取得は、日本は臨海部に製鉄所をつくりましたからコストはずっと安くなってきておりますけれども、それでもなおアメリカその他に比べて約四ドル高い。こういうことをどうお考えになるのか。したがって、こういった欧米の鉄鋼業が巻き返しをやって、一説によりますとアメリカの鉄鋼業は約八千億円以上の設備投資をやっている。ヨーロッパにおきますと、二つないし三つに集約化していく。もちろんヨーロッパの場合は需要の伸びが日本ほどはございませんから、スクラップ・アンド・ビルドを徹底的にやらなければいかぬということになってくると思いますが、現在までそれがサボられて設備が小さかったという点に非常に高いところの原因があります。しかしこういったことを考えまして、いわゆる国際的に再編成が進んでいく、しかも非常に激しい競争の中で現在一番基礎である鉄鋼業をどうするのかという問題になった場合には、やはり規模の大型化によるところの利益を求めながら、しかもそれを国民経済的に見て寡占の弊害が生まれてこないようにどうチェックしていくのか、チェックしながらそういった利益を求めていくにはどうしたらいいのかというような政策をこの際基本的に考えていただくということがまず第一の問題である、一番重要な問題であるというふうにぼくは考えております。
○塚本委員 最後に正田先生にお聞きしたいと思いますが、いわゆる同業他社が反対しないということの私の判断でございますが、その見解をお聞きしたいと思うのですけれども、この五社ないし六社を見てみると、大きいところほど能率が悪いですね。こういう点を考えてみると、またずうたいが大きくなると総身に知恵が回りかねという表現のごとく、確かに研究開発費やあるいは販売促進という意味では大きな実力をあらわすであろう、このこと自身は国際競争力に対して日本にプラスになるという意味で私は賛意を表しておるわけでございます。にもかかわらず、生産ということになりますと、実際にはますます能率が悪くなってくる。だからシェアは合わせて三十何%であるけれども、いまにおれたちが追いついてみせる、こういう住金や川鉄等のいわゆる野武士的な態度でよけいに身動きがとれなくなるし、公共性を持てば持つほど、実はやはり生産能率の悪いところを廃止しようと思っても、いまお話しのように公共的な責任があるから身動きがとれない、そのうちにこちらは安いコストでということの関係で、いわゆる競争を、自分は小さいけれども自由に競争してやろうということによって実は伸びる余地がもっと十分開けるのだ、こういう意味で実は反対しないのだというふうな受け取り方を私はしておるのですけれど、どうでしょうか。
○正田参考人 同業各社の意見は、私もまさに推測の域を出ないわけでございます。ただ、ここで考えられますことは、一つの支配的な力を持った企業というものが成立したときに、一体どういう状態が起こってくるかということでありまして、これが先ほどからお話しのような国家管理なり国有化なり、こういう方式ということが現在の八幡、富士の問題の解決策として考えられるとすれば、これはもちろん一つの考え方ないしは将来の政策の論議の問題で考えられると思います。ただ現実に、いまの時点でそういった力ができたときに、同業他社がどう考えるか、ないしは同業他社はどういう態度に出るかという点は、やはりいまお話しのように、コストの高い企業が合併して支配力を持ち、コストの安い企業がそれに挑戦するということは、これは避けられない一つの事実であるけれども、しかしながら、それに追随することによって利益を得ることができるというふうに考えるのが、これが最も順当な考え方だと思います。そしてそういう価格を支配する力を持つ企業があらわれて、価格を指導することになった場合に、高位に安定するか低位に安定するか、現在の利潤追求を主眼とする企業が、社会事業的精神で低位に安定するということは、これは企業の性質からいって考えられない。力を持てば、同業他社が追随して高位に安定するという方向に向かっていくというふうに考えているわけでございます。
○塚本委員 終わります。
○浦野委員長代理 近江巳記夫君。
○近江委員 初めに菊池委員にお聞きしたいと思うのですが、過日の委員会で、わが党の岡本委員の質問に対して、内示で触れていない五品目について調査が終わっていない、こういった旨の発言があった。それについて、二月二十四日の内示というのは、部分的な回答なのか、あるいは部分的なものとすれば、なぜそのような不完全な段階で回答したか、その辺のところをお聞きしたいと思うのです。
○菊池説明員 お答え申し上げます。指摘いたしました品目以外に検討していないということを私が申し上げた記憶はございません。ずいぶん時間をかけまして検討いたしましたので、九品目につきましては、検討はいたしてございます。
○近江委員 他の委員も出席されておったわけですが、調査が終わっていない、こういうような発言はどなたからもなかったのですか。その点を聞いているのですよ。
○菊池説明員 ただいまの御質問の発言をいたしました記憶はございません。ただ、先ほども申し上げましたように、正式の届け出が出てまいりましたらば、指摘しました品目も、指摘しない品目も、これで何もしないというわけではございません。十分調査をしないで何も言わなかったという記憶はございません。
○近江委員 それではもう一度、それを確認して、また次の委員会でもやりたいと思います。 きょうは参考人の方に来ていただいておりますので、それでは正田教授にお願いしたいと思うのですが、この十五条の解釈でございますが、完全に独占状態にならなければ競争制限にならない、そうした意向を公取委のほうはとっているわけでございますが、十五条というのは、そういうような解釈をしていいのかどうか、このところのあなたの考えを聞きたいと思うのです。 〔浦野委員長代理退席、委員長着席〕
○正田参考人 公正取引委員会が、東京高等裁判所の判例というものを中心にして考えるという御意見だということでございますので、公正取引委員会が、完全な独占にならなければ十五条違反に該当しないというふうに考えているとは、私は実は見ていないのでございます。十五条は、先ほど申し上げましたように、一つの支配的な力ないしは支配的な地位を合併によって人為的に形成すること、これが問題になるわけでございますから、それは完全な独占であると言う必要はないと私は考えております。
○近江委員 それから続いてもう一度お願いしたいのですが、この十五条の解釈というのは、当然一条にうたわれている独禁法の目的に制約をされている、私たちはこのように考えているのですが、あなたはどのようにお考えになっていらっしゃいますか。
○正田参考人 独占禁止法の基本的な目的が独禁法の一条に掲げられているわけでございますから、独禁法の一条の目的を達成するために各条項があるというふうに考えられますので、十五条の解釈に関しては、当然独禁法の一条の目的がかぶってくる。直接論理的にかぶってくるかは別といたしまして、一条のワクの中で十五条が考えられるということだろうと思います。
○近江委員 そうしますと、法第一条には「競争を促進し、」ということがありますが、この十五条は、競争促進に障害をもたらす合併は禁止する、そういう趣旨に解釈すべきである、このように思うのですが、あなたのお考えはどうでございましょうか。
○正田参考人 独占禁止法の一条が、独占禁止法のいわゆる直接的な目的として「公正且つ自由な競争を促進し、」ということを掲げているわけでございますから、「公正且つ自由な競争を促進し、」というこの目的に反するか反しないかということが競争の実質的制限の要件としてあらわれているわけだと思います。したがって、競争の実質的制限という要件を具体的に展開していくということを通して「公正且つ自由な競争を促進し、」という独禁法一条の目的が実現されるということになると思います。
○近江委員 それから公取委のほうは、この複占状態でも、いうなれば両横綱といいますか、それでも有効な競争相手がある、こういう立場で十五条には引っかからない、こういうような見解でおられるわけですが、私たちは非常にむちゃな解釈だと思うのですが、その点についてどういうふうにお考えになっておられますか。
○正田参考人 十五条の規定は、これは人為的な企業結合によって市場構造に変化を生ぜしめるということを問題にしているわけでございます。したがって、人為的な形でもって市場の構造に変化が生じて、そうしてそこにおいて、特に合併企業が支配的な力を持つことになる、支配的な力を持つ合併企業が成立することになるという場合を規制しているわけでございますから、二社あれば競争があるというふうには考えられないと思います。その点は競争秩序という一つの秩序の問題と、それから競争者があるという問題とを混同すると、競争者があればいいじゃないかという議論が出てくる余地はあると思いますが、競争者があるかないかということではなくて、競争秩序が維持されて競争機能が機能として働いているかどうかという問題がここで取り上げられていることだと思います。ただ公正取引委員会の発言なりあるいは見解として私はまだその二社の場合、競争者があればいいのだというふうな意見を聞いたことがございませんので、その点は私は公取の意見についての意見という形では申し上げられないということをお断わり申し上げたいと思います。
○近江委員 それから、先ほどのお話に出てまいりましたが、公取委のほうは昭和二十八年の東京高裁の判決を非常に基準にしておりますが、いうならばたった一つの判決だと思うのです。しかもそれを非常に動かしがたい判決、そういうような扱いといいますか、そういう態度できておられるわけですが、私たちも、非常にそういう点はおかしいのではないか。それも東京高裁ですし、最高裁の権威を私たち別にどうということじゃありませんけれども、最高裁までいかないものをなぜこのように重く見なければならないのかという問題がちょっと理解がしにくいわけです。学者の立場でこの点に対してどのようにお考えになっていらっしゃるか、考えをお聞きしたいと思うのです。
○正田参考人 法律の解釈に関しまして、法律の法的な判断が行なわれます場合に、判例が一つのよりどころになるということは否定できないことだろうと思います。私どもは、判例が合理的な根拠ないしは合理的な構成をとっているかという点から問題を考えていくわけでございますから、したがって、判例自体をまず検討の対象にして、そして判例を必ずしも全面的に容認するというところから出発することは考えるべきではないというふうに思っております。しかしながら、公正取引委員会が、公正取引委員会の一つのいわば審決に対する不服の訴えが東京高等裁判所の特別部に係属する、こういったことからその高等裁判所の判例ないしは判断というものにある程度の比重をかけて、そして検討を進めるということは、その検討のしかたについては一応特に取り立てて非難する必要もない。ただ理論的には、東京高裁の判決なり何なりというのは、ある事件についての東京高裁の判断でございますし、その事件の判断を明らかにする過程で出てきた論理があらゆるものを包含しているかいないかということは、これは当然問題にされるべき事柄であります。それに限定されるということには問題があること、これは他の場合の判例と同じことだろうと思います。が、一つの重要な材料になるという点は否定し得ないのではないかというふうに考えております。
○近江委員 それから「エコノミスト」の三月十一日号四四ページ一番下の段でございますが、「たとえば、其委員は、」云々というこういう事実があるわけですが、これは独禁法の三十八条に触れると私は思うのですが、これは法解釈の上でどうなりましょう。正田さんにお願いしたいと思います。
○正田参考人 この「エコノミスト」の発言を、いま実は私持っておりましたけれどもよく読みませんで、いま初めて拝見したのですが、三十八条に違反するというような問題であるのかどうかという点は、これは私いま拝見して三十八条との関係で考えてみますと、実は判断に苦しむことだと思います。この発言の内容自体がそのとおりであるとすれば、若干問題のある発言というよりも、委員会の出した結論自体が問題があるということになるように思いまして、三十八条の問題よりも、もしこれが事実であるということになれば、この発言をした方々がどういうふうにお考えになったのか、委員会でどういう結論が出たのか、どういう形で結論が導き出されたのかというような点に、法的な判断をすべき段階ではないわけではございますけれども、問題の余地があるのではないかというのが、むしろ法律というよりも私の個人的な感想でございます。
○近江委員 それで、もうきょうは時間がありませんので、そういう御意見を聞きまして非常に確信ができましたので、いままでの公取委員のあり方について今度一回目をあらためてまた公取委員のほうへお聞きしたいと思うのです。 もう一つは、過日近経の学者の——先生方だと思いますが、公取に提出された措置要求でございますけれども、そのとき事務局長が、あれはもう審議済みのことで、いまさら事新しく取り上げるまでもない、こういう意味の発言をなさったように聞いておりますけれども、私たち思うのは、法に従って提出をなさっておるわけです。それをそういうような発言をもしもしたとすれば、局長はきょうは来ておられませんので確かめることはできませんが、私はこれは大問題だと思うのです。もしもそういう発言が事実あったとすれば、これはもう三十八条にいう事件に関する法令の適用について意見を外部に発表してはならない、これにひっかかってくる、このように思うわけです。学者のお一人として、仮定でよろしゅうございます、もしそれが事実であったとした場合どういうようにお考えになられますか、ちょっとお聞きしたいと思います。
○正田参考人 まずこの措置要求書は、いまのお話の中で近経の方々ということでございましたけれども、経済学の方々は近代経済学の方々だと思いますが、それ以外に法律学者が四名入っておりまして、この四名の法律学者は近代経済学的な立場に立つものに限定されていると考えられないということを、まずちょっと申し上げておきたいと思います。この措置要求書の趣旨は、独禁法四十五条に基づいて、公正取引委員会に、「違反する事実があると思料するときは、公正取引委員会に対し、その事実を報告し、適当な措置をとるべきことを求めることができる。」「前項に規定する報告があったときは、公正取引委員会は、事件について必要な調査をしなければならない。」こういう条項がございますので、この条項に基づいて提出されたわけでございます。したがいまして、この四十五条の措置要求といいますか報告と申しますか、それが行なわれた場合には、公正取引委員会が事件について必要な調査をしなければならないということが掲げられておりまして、そして四十六条には、「事件について必要な調査をするため、左の各号に掲げる処分をすることができる。」いわゆる強制処分がそこに掲げられております。そうして私どもは、このような形で行なわれる必要な調査というのは違反容疑事実に対する審査活動であるというふうに理解をしております。しかしながら、従来私どもが伺いました範囲では、そういった意味での審査活動は行なわれておりません。したがって、四十五条のこの規定に基づいて、調査ないしは違反行為があればそれを除去することを公取に求めたわけでございますので、四十五条二項に基づく必要な調査が四十六条のいわゆる強制調査を含めて行なわれるというふうに考えております。たまたま私も、事務局長にこの措置要求書を提出するときに同席したのでございますが、先ほどのお話のような御意見は事務局長からは伺っておりません。むしろ、これをとにかくきょう付けで受理をいたします、こういうことがお答えでございまして、その後そういった御発言があったかどうかはわかりませんが、私どもが知っております限りでは、受理するという御発言があっただけでございますので……。
○近江委員 もうこれで終わりますから。 菊池委員、あなたも公取委員の一名として、学者の方々が出された措置要求に対して、その後公取委員はいまどういう動きをされておりますか。
○菊池説明員 お答え申し上げます。私どもただいまの事務局長の発言は全然聞いておりません。 それから、一般的に四十五条の請求というのは、公正取引委員会が何も知らない場合に、それを、こういう問題があるということを指摘されておる場合が通常でございまして、この問題は私どもすでに調査をしておりまして十分承知をしております。ただ、いまの段階におきまして、正式の届け出がありません段階で、会社がそれを強行しようというふうな意思が出ているわけでもございませんので、いま直ちに四十六条で強制調査をするということを決定はいたしておりません。ただ、これは十分に頭に置いて今後の審査をしていくつもりでございます。
○近江委員 お聞きのように頭に置いてやっていくという程度でございますから、学者の皆さんとしてもさらにまた第二段としてのお考えをしていただきたい。われわれとしても、きょうはもう時間がございませんので、この問題はまた後ほどやりたいと思います。 以上をもって終わります。
○大久保委員長 参考人に対する質疑はこの程度にとどめます。 参考人各位には、御多用中長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、たいへん参考になりました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。 本会議散会後再開することとし、この際、休憩いたします。 午後一時五十六分休憩 ————◇————— 〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕