社会労働委員会 第31号
- 発言数
- 44 件
- 登壇者
- 7 名
- 会派数
- 4
- 開催日
- 1969/06/26
会議録
○森田委員長 これより会議を開きます。 内閣提出の健康保険法及び船員保険法の臨時特例に関する法律等の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。 この際、厚生大臣より発言を求められておりますので、これを許します。厚生大臣斎藤昇君。 〔大橋(敏)委員「委員長、きょうはまだ話がついていないんだ。総理が来たときに、社会党だけ質問させて、民社、公明をなぜさせないのですか。まず、その話が終わってからやりましょうよ、趣旨説明は。何で趣旨説明を急がなければなりませんか。理事会をやりましょうよ、理事会を。われわれはいままでは協力してきましたよ。委員長、そういう考えなら、私たちも考えがありますよ。」と呼び、その他発言する者あり〕
○森田委員長 この際、厚生大臣より発言を求められておりますので、これを許します。厚生大臣斎藤昇君。
○斎藤国務大臣 ただいま議題となりました健康保険法及び船員保険法の臨時特例に関する法律等の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由をさらに詳しく補足説明申し上げます。 まず、健康保険法及び船員保険法の臨時特例に関する法律の一部改正部分について申し上げます。 この法律は、政府管掌健康保険等の窮迫した保険財政に対処し、医療保険制度に関する抜本改革が行なわれるまでの臨時応急の措置を講ずるため、一昨年、第五十六回臨時国会において昭和四十四年八月末までの限時法として制定されたのでありますが、自来、政府といたしましては、抜本改革の早急な実現を期し、与党と一本となって具体策の検討を続けてまいりました。 しかしながら、この問題はきわめて広範多岐にわたるほか、根深い問題点を有し、また関係各界の意見にもかなりの懸隔があるため、容易に結論を得ることができず、今日なお抜本改革の成案を得るに至っていないことはまことに遺憾に存じております。政府といたしましては、今後とも一日も早くこれが結論を得て、医療保険をめぐる諸問題の根本的な解決をはかるよう一そうの努力を続ける所存でありますが、このまま本年八月末をもって健康保険法及び船員保険法の臨時特例に関する法律が失効するとしますれば、きわめて大幅な単年度赤字を生じ、すでに一千二百億円をこえている巨額の累積赤字にさらに上積みされる結果、制度運営に重大な支障を来たすことは必至であります。このため、国としても昨年度に引き続き財政措置を講ずると同時に、抜本改革が実施に至るまでの間の当面の措置としてこの法律の有効期間を延長することといたした次第でありますが、この措置はあくまでも医療保険制度が破綻することなく、懸案の抜本改革に移行するためのやむを得ざる措置としてぜひとも御了承願いたいと存じております。 改正案の内容は、この法律の有効期間を二年間延長し、昭和四十六年八月三十一日までとするものであります。 次に健康保険法及び船員保険法の一部改正部分について申し上げます。 人口構造の推移等に即応して将来のわが国の繁栄を期するためには、次代をになうべき児童の健全な育成と資質の向上をはかることがますます重要な課題となっております。 このため、政府といたしましては、母性及び乳幼児の健康と福祉の向上を期して、本年度において母子保健対策の一層の推進をはかることといたしたのでありますが、これに即応して、医療保険の分野においても分娩時における経済的負担の軽減に資するため、抜本改革の問題とは一応切り離して、現行制度のたてまえのもとで分娩給付の改善を緊急に行なうこととし、昭和三十六年以来据え置かれております分娩費の額を大幅に引き上げることとした次第であります。 改正案の内容は、健康保険及び船員保険における分娩費の最低保障額を現行の六千円から二万円に、配偶者分娩費の額を現行の三千円から一万円に、それぞれ引き上げるものであります。 また、この財源につきましては、保険料によって措置することとし、政府管掌健康保険及び船員保険の保険料率をそれぞれ千分の一引き上げることといたしております。 最後に、この法律の実施の時期につきましては、健康保険法及び船員保険法の臨時特例に関する法律の一部改正部分は公布の日から、健康保険法及び船員保険法の一部改正部分は昭和四十四年九月一日からとしております。 以上がこの法律案の提案の理由及び内容の概略でありますが、何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
○森田委員長 この際暫時休憩いたします。 午前十時四十三分休憩 ————◇————— 午前十一時二十九分開議
○森田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。 質疑の申し出がありますので、これを許します。河野正君。
○河野(正)委員 せっかく総理大臣の出席をいただきましたので、この際、国民がきわめて重大な関心を持っております健保特例法にまつわります点について、若干お尋ねいたしたいと思います。 そこで、まずお尋ねをいたしたいと思いますのは、佐藤総理の政治信条の問題についてでございます。御案内のように、国民は今日、生命と健康の問題でございますから、そういう意味で健保特例法につきましては重大な関心を持っておるところでございますが、それが不幸にも、先週十九日の午後八時五十分、一方的に強行提案が行なわれたわけです。これは私ども当委員会におきましては、私どもの先輩が長い間つちかってまいりました慣例がございます。法案審議というものは、付託されました順序に従って円満な審議を続けていこう、こういう一つの慣例でございますし、慣習でございます。それが今日は一つのルールになっているわけでございます。そういうようなルールを破って、慣例というものを破って、一方的にこの強行提案がなされたというところに一つの大きな問題がございます。 それからいま一つは、御案内のように、いまから二年前、健保特例法に対しまする国会のきびしい議論がございました。その際私どもも、この健保特例法というものが、国民に負担を過重いたしますし、また今日、日本の社会保障というものをどんどん発展させていかなければならぬわけですけれども、そういう立場から、社会保障の後退に通ずる改悪だということで反対をしてまいりました。ところが政府は、当時この特例法というものは当面の暫定措置として二年間の時限を切った特例法である、こういう約束を国民になされたわけでございます。二年前に、これはどこまでも暫定的な措置である、したがって二年で期間を区切って、二年後には医療保険の抜本改正というものを国民の前に提出するのだ、こういうお約束をなさったわけでございます。ところが、いよいよ二年後の今日、そういう国民に対しまする約束、公約というものがじゅうりんをされまして、またぞろ特例法というものが二年間の延長ということで提案をされてまいりました。このことは、総理は常日ごろから、人間尊重の政治あるいは社会開発、こういうことを政治信条としていろいろ国民に示されてまいりました。そういう総理の政治信条にも逆行することでございますし、また国民に対しまする公約違反でもございますし、結論的にはそのことが今後、国民が政治に対していろいろな期待をいたしておるわけでございますけれども、国民の政治不信という点にもだんだん通じていく問題だとも思います。そういう意味で、今度の健保特例法の再提案というものは、きわめて重大な責任があると思います。なるほど総理も、先般の本会議におきましていろいろ御釈明がございました。ですけれども、当委員会としてはこの問題に対して重大な関心を持っておるわけでございますので、あえてもう一度総理の政治的信条というものを承っておきたいと思います。
○佐藤内閣総理大臣 まず最初に、今日補完して申し上げます。 本会議でも申しましたように、期限を切った健保特例法、さらにまた同じような二年間の延長、これはいかに弁解しようともまことに遺憾なことでございます。これは申し上げるまでもないことだと思います。その点を心から私の気持ちを率直に表明したいと思います。 さらにその問題は、いまも御指摘になりましたように、いろいろな事柄でも、公約違反はけしからぬ、そういう非難は当然であります。ことにこの健保の特例法そのものは、私のかねてからの社会開発あるいは人間尊重、それにつながる国民の生命、健康を確保する観点に立って社会保障を進めていく、同時にまた社会保険制度を整備していく、これは社会保障制度の根幹だ、こういうような政治の基本に関する問題でありますだけに、ただいま公約を延期せざるを得ない事態になったことを、心から私は遺憾に思っておるような次第であります。その点が十分理解されておると思って私はこの委員会にも臨んだのでありますが、なかなか本会議では一方的に説明するだけで、所信を説明するだけでどうも事足らない、不十分でございますので、やはり委員会の場におきましてお互いにそれらの点について話し合えば、普通の公約違反、これも重大であるが、そのうちでも特にこういう問題については、政府はぜひ慎重に、またその約束どおりを履行しなければならない問題である、こういう点について心から遺憾の意を表することが適当だと思います。それらの点で私どもの真意が十分伝わっていなくて、これはまことに、さらに遺憾に思う次第であります。 ことに、ただいまも御指摘になりましたが、委員会で強行提案をした、そういう事柄もあるいは慣習に反する、こういうお話ですが、しかしこの点は私はそれぞれ御議論があろうかと思います。本会議で一応提案理由を説明され、しかも国民の生命、健康に関する基本的な重大な問題である。そういう問題であれば、やはり提案をし、立場は立場として、それぞれの意見は意見として、十分委員会を通じて明確にすることこそわれわれの仕事ではないだろうか、かように思います。したがいまして、慣習、慣行に反したという問題は、私は政府としてではございませんで、政党の総裁として、さらに党員同士の審議が円滑にできるように、幾ら意見が相違はしておりましても、審議そのものが閉ざされるようなことがあってはまずいので、この点は総裁として責任を感じますので、よく党員の諸君とも話し合っていきたい、かように思います。 とにかく、本来の問題といたしましては、本会議で私ども遺憾の意を表しておる。ただいまも申すように、事柄の性質上この公約は守らなければならない。その点におきまして非常に責任を感じておる次第です。また、しかし河野君はお立場からも、なぜこの問題が二年の間に抜本的対策ができなかったか、これらの点についても、むずかしさは御理解をしていただけるだろうと思います。政府の努力の足らなかった点を、私はそのむずかしさで弁解するわけではありません。これはむずかしいからこそ二カ年という延長期間をとったのでありますが、そういうことを考えれば、最初からむずかしい問題なんだということを十分承知の上で取り組まなければならない。(「長い」と呼ぶ者あり)長いと言われていまおしかりを受けましたからこの辺でやめますが、いま申し上げるような気持ちでこの問題に取わ組んでまいりたいと思います。
○河野(正)委員 本会議でも、いま総理も、重ねて国民に対して公約違反を犯したことは遺憾であるということでありますから、今後については、ぜひそういう気持ちでこの健保特例法には対処をしてもらいたいと思います。 そこで、あらためてこの際お尋ねをしておきたいと思いますことは、つい先日、自民党の市長会の席上において田中幹事長が、今国会において健保特例法、防衛二法、大学臨時措置法、こういう三つの重要法案が通らなければ、あらためて臨時国会を召集してでもこの重要法案の議了に当たる、こういうことを言われたことを新聞紙上で報道をいたしております。ところが私ども振り返りますと、そのことは、ちょうど二年前にそれと同じようなことが行なわれておるわけですね。そういうことを考えますと、どうもいま総理がおっしゃったように、お互いの党の立場はあるけれどもそれぞれの意見を出し合ってと、こういうお答えもございましたが、どうもいまの新聞報道を見てまいりますと、国民としては、どうかつ的な、そういう印象を受けます。それは二年前がちょうど同じようなかっこうになっておるわけですね。会期が延長され、その後にさらに健保だけの臨時国会が開会をされて、そして一方的に成立させられた。こういうことでございますので、なるほどいま総理からいろいろと遺憾の意を表したり、あるいはまた党の立場でもそれぞれ意見を出し合って、そういう御議論がございましたけれども、いま私が指摘するような、臨時国会を開いてもやるんだ、しゃにむに通すんだ、こういうことを言われますると、私どもいささか二年前のことを回想しながら、非常に遺憾な気持ちがいたします。そこでやはり、お互いに話し合えとおっしゃるならば、私はそれ相応の姿勢を示していただかなければいかぬ。そういう意味で、このような姿勢でしゃにむにやろうというようなお考えがあるのかどうか、ひとつぜひこの際お聞かせいただきたい、かように思います。
○佐藤内閣総理大臣 私も実は新聞を見て驚いておるのです。そういう事柄は重大な事柄で、政府、総理はもちろん知らなければならないことです。総理の知らないうちにそういう新聞記事が出る。しかも責任者から出る。しかもまた、いま言われるように、二年前のことを考えるとこのことは全然無根でもないだろう、根なし草ではなさそうだ、こういうような疑念すら持つということは、たいへん私、申しわけなく思います。ただいま、いま党、政府ともに一体となりまして、当面するこの国会をどういうようにして、どれだけの成果をあげるか、そこに実は最大の努力をしておるのでございます。いま申し上げるように、この次の段階、あるいは来年の段階を考える、そんな気持ちは毛頭ないのです。この点は誤解のないようにお願いいたしたい。これは総裁として責任をもって申し上げます。ただいまのところさような問題はない、政府と党の間で打ち合わせたことももちろんない、このことをはっきり申し上げます。
○河野(正)委員 そこで、ひとつここであらためてお尋ねをしておきたいと思いますのは、五月八日、衆議院におきまする本会議の席上でも、この医療保険の抜本改正というものは百年に一度ともいうべき重要なる変革である、こういうおことばがあったわけでございます。ですから、二年後には抜本改正を出すんだと約束されたが、その問題の取りまとめがむずかしいことも、私ども十分に承知をいたしております。特に、この抜本改正というものがきわめて広範多岐にわたる問題でもございますし、その取りまとめというものがなかなかむずかしかろう。したがって、ここであらためて二年間の特例法の延長ということになっておりますが、しからば二年後にはたして抜本改正というものが提案されるのかどうか、これについても私どもは非常に心配をいたしております。また、二年後にほんとうに抜本改正が出てくるのかどうか。出てこなければまた健保特例法の再提案ということにもなりましょうし、この二年後にはたして抜本改正案というものが出てくるのかどうか、これは一切保障もないわけですから、私どもこの際承っておきたいと思いますのは、それならば、なぜこの医療保険の抜本改正というものができなかったのか、この点はひとつ明らかにしていただかぬと、この二年後の問題もございますので、(「二年後に総理はいない。」と呼ぶ者あり)ぜひひとつ率直な御見解をお聞かせいただきたいと思います。
○佐藤内閣総理大臣 いま不規則発言から言うと、二年後には佐藤はいないだろうという話がありますから、その辺の話まですることは少しよけいなようですが、過去いままでのところで結論が簡単に出ない。これは河野君自身、お医者さんだから御存じだと思っております。私はあえてこの席上で、そういうなぜできなかったかということを申すことは、おさめる方向でなしに、それぞれの責任をここに露骨に打ち出す、その結果が一そう話がむずかしくなるんじゃなかろうか、かように思いますから、しばらく預からしていただきたい。たいへん利害関係が錯綜しておるので、多岐にわたっておるので、そういう関係のあるむずかしい問題だ。各界のそれぞれの協力を得ない限り結論を得られない。だからこそ政府も苦心し、また皆さん方もそれぞれの立場において非常に努力しておられる。問題は、何といっても、どんなにむずかしかろうとも、これは国民の健康に関する問題だ。その意味におきまして、やはり基本的に取り組まなければならない。お互いがやはり話し合い、政府もその場合に応分の援助をする、当然のことだ。幾ら保険制度と申しましても、そういうことがないと話し合いができないというふうに思います。たいへん簡単に、むしろ逃げたようで申しわけありませんが、ただいま私、この席で話をすることはむしろまとめる方向じゃないだろう、それだけはお許し願いたいと思います。
○河野(正)委員 総理も、医療保険の抜本改正をまとめるためにということで、答弁を遠慮されたわけですから、そこで私お尋ねいたしたいと思いますのは、それならば、今国会の予算委員会、また厚生大臣も新聞談話等で、この抜本改正案を今国会中に関係審議会に諮問するという見解を明らかにされておるわけですね。ですから、私どもここではっきりしていただきたいと思いますのは、実際問題として、それならば、今国会中に抜本改正に関しまする政府案というものが取りまとめられる確信がおありであるのかどうか、この点をひとつ明らかにしていただきたいと思います。
○佐藤内閣総理大臣 最近おそまきながら、政府と党とで折衝するような、政府・与党間の原案というものが大体でき上がっております。この方向を聞いております。したがいまして、与党と政府との間に話ができるような状態、これはでき上がってしまうと、今度は法律で定めておりますそれぞれの審議会にはかって外部の団体の了解を求める、こういう方向にいくわけであります。大体その第一段のものはでき上がったように思いますので、私は、むずかしいことではありますが、さらに勇断を持って取り組むならば、全然お先まっ暗だ、かようには思っておりません。
○河野(正)委員 各関係審議会に諮問いたしましても、非常に議論の沸騰するところだと思うのです。そこで、そういう意味で私どもは、今国会中に諮問するところまでこぎつけられますかどうかということを、ここで明らかにしてもらわないと、また二年後が非常に心配になるわけです。ですからこの際、予算委員会でも、またその他の会合でも、関係審議会には今国会中に諮問するんだ、こういう約束をなさっておりますから、それをあらためてここで再確認していただきたい。
○佐藤内閣総理大臣 いまもお答えいたしますように、第一難関というか、第一関門は大体通れるように思っております。そこで第二の関門、次の審議会にかけるという問題、これもただいま厚生事務当局を督励しております。私どもも、これだけ大幅な会期延長をしたことでもありますから、この会期中にもぜひとも審議会にはかり得るように、またそこで結論を出すように、一そうの努力をするつもりでございます。
○河野(正)委員 そこで、少し社会保障に関しまする基本的な点について、若干この際、せっかくの機会でございますから、総理にお尋ねをしておきたいと思います。 御承知のように、日本の社会保障の水準というものが、西欧先進国に比較いたしまして非常におくれておるということは定説でございます。昭和三十七年八月には、総理の諮問機関でございます社会保障制度審議会も、昭和四十五年のわが国の水準というものが三十六年の西欧諸国の水準に追いつくように、こういう方針で進んでもらいたいということを、総理の諮問機関でございます社会保障制度審議会というものが、総理に要望いたしておるところでございます。ところが実際問題として、昭和四十年までは若干の進歩がございましたが、その後は沈滞ぎみというよりもむしろ後退しているのじゃないか、これは総理の諮問機関でございまする社会保障制度審議会がそういうことを実は政府に勧告をいたしておるわけですから、私どもが申し上げているのではございません。沈滞ぎみというよりもむしろ後退する傾向にありはせぬかということをいっておるわけでございます。ところが一方におきましては、日本の工業生産力というものは自由圏において世界第二位にいま躍進してきた。しかも経済の成長率というものは、年々歳々予想をはるかに上回るような成長を遂げつつある。したがって、このまま社会保障政策というものが推進をされますると、総理がしょっちゅうおっしゃっておりまするひずみというものが、だんだん拡大する結果になると思うのです。 ですから、日本の社会保障の拡充をはかっていくためには、現在の日本の経済成長に対応するのだ、こういうたてまえをとらなければ、このひずみというものがますます拡大していくと思うのですね。経済ばかりずっと伸びて、社会保障はそのあとからぼちぼちついていくということになりますから。そういう意味で私は、政府の基本姿勢としてお尋ねを申し上げたいと思いまするのは、社会保障制度審議会も、むしろ後退しておるじゃないかということを勧告をいたしておるわけですから、この際やはり、こういった経済成長に対応した社会保障に取り組む姿勢というものを確立してもらわなければ、この十年間でヨーロッパ並みに追いつくという方針というものはなかなか貫けない、こういうように思います。そこでこの際、せっかくの機会でございますから、総理の社会保障に取り組む基本姿勢について明らかにしてもらいたい、かように考えます。
○佐藤内閣総理大臣 ただいま河野君のお説のとおり、経済が前進し、そうしてGNPも非常にふえてくる、それに相応して社会保障制度も充実すべきだ、そのお説には私もしごく賛成であります。ただ問題は、どういうテンポで、どういう率で整備していくか、こういうことだと思います。御指摘にありましたように、確かにわが国の社会保障制度そのものはおくれておりますし、ただいまの保険制度にしろまだ十分ではない、かように思っております。一部に、保険制度はやめてもう全部社会保障という形で片づけろという御意見、御議論があることも知っておりますけれども、日本の場合は、医療保険制度の形で整備していこう、これがいまの考え方でありますが、それにしても、まだまだもっと中身を充実すべきではないか。ことに現在、成長した場合に、特にわれわれが考えなければならないのは、弱い者、経済成長から取り残された者、それらの負担が加重されるようなことがあってはならない、それに十分救いの手が延ばされること、保険制度であるだけに十分その点を考うべきだ、こういうような点はもちろん私ども注意していかなければならぬと思います。 しかし、そういうこまかな問題よりも、これだけ経済成長をした、これにやはり社会保障制度をマッチさせていく基本的態度がない、これが後退している、そういうような批判を一部からでも受けるような現在のあり方については、政府も大いに反省しなければならぬと思います。私自身は別に後退しているとは思わない。しかし、これだけ経済が成長した、それならばもっと内容は充実してしかるべきじゃないか、そのほうは御指摘のとおりだと思います。そうじゃない。いまむしろそこらが、医療者、同時にまた医療を受けるほう等々におきまして、いろいろ問題を引き起こしておる。そこらに実は問題をかかえておりますから、こんなことが解決されなければならない。 ただ私、申し上げますが、GNPが幾ら世界で第二位になったと申しましても、一位と二位との間の差は非常に大きいし、これからの発展を見ましても、基礎が大きいのですから、一位はどんどんふえていくだろう。二位はその格差は相当ある。しかもまた、日本は人口が多いからこうなっているのだ。フランスあたりの引退したドゴール自身が、フランスの人口を一億にして、そうしてもっと国を富まさなければいかぬ、そういうことを言っているように、人口の多数あること。だからパーキャピタから見れば非常におくれているじゃないかといわれておる。しかしこれなども、最近はイタリアを追い越すようになっておりますから、やや改善されたと思っておりますが、しかし、こんなこともありますので、二位にふさわしい社会保障制度というところまではなかなかいかないかと思います。しかし、個人の生活も確かによくなったのでありますから、取り残される者のないように、いわゆる弱者に対する思いやりをもっと十分にいたしまして、そうして、いま言われますように、経済成長、このことこそ人間の生活、お互いの生活を向上さすために役立たせるのだ、そういう方向にわれわれはものを考えていく、これがものの基本じゃないか。その点は、河野君のいま御指摘になったとおり、私もかように考えております。
○河野(正)委員 自民党に約束を守れと言っておるわけですから、私も与えられた約束の時間を守りたいと思います。そういう意味で最後にお尋ねをしたいと思いますが、医療保険か医療保障かという大きな議論があることを私どもは承知いたしております。ただ、そういう医療保険か医療保障かという大きな議論はございますが、やはり根底を流れるものは社会保障だというたてまえが貫かれなければならぬと思うのです。そういう意味で、なるほど国庫負担にしても、四十二年二百二十五億、四十三年二百二十五億、四十四年も二百二十五億ということでございますけれども、この保険料の総額における比率から言いますると、やはりだんだん率は下がっておるわけですね。保険料の入ってくる額が大きくなりますから、その中の同じ二百二十五億ですからね。そういうことになりますると、四十二年の場合は六・八%の比率だったが、今日は同じ二百二十五億でも五%の比率になっておる。そういうところに、私どもは具体的に、社会保障の後退に通じゃせぬか、こういうことを言っておるわけです。 そこで、もう時間がございませんから最後に申し上げますが、それは、この社会保障の拡充をはかっていかなければならぬ。ところが、この社会保障の拡充をはかっていくについても、中には、所得保障もございますし、医療保障もございます。そういうものが、やはり各部門がバランスをはかりながらそういう拡充が考えられなければ、こちらの部門は拡充されたが、こちらはだんだん取り残されるということであってはならぬと思います。このことは、政治的に強い者が優先をして弱い者が取り残されるという結果になると思うのです。 そこで、政府が四十一年に経済社会への発展をはかるための長期経済計画というものを策定をされた。この中で若干、この社会保障に関しまする長期計画というものの一端はのぞいておるわけです。しかし私は、てんでんばらばらな施策では均衡のとれた社会保障の拡充というものをはかることは困難だと思います。そういう意味で、これは社会保障制度審議会も、年々この制度の改善をはかっていくためには、やはり計画的に改善をはかってもらわなければならぬ、そのためには社会保障を推進するための長期計画というものがぜひ必要だ、ところが政府は残念ながらその社会保障の長期計画については努力が足りないということを、総理の諮問機関でございまする社会保障制度審議会におきましても総理に勧告をいたしておるわけです。私は、経済もそうでございますけれども、やはり社会保障においても、均衡のとれた拡充発展を考えていくためには、どうしても長期計画というものが策定されなければならぬ、そういう長期計画に基づいて年々歳々改定というものが行なわれなければ、むしろアンバランスになるし、また後退を来たす面も出てくるのじゃないか、こういうことを考えますので、そういう点の必要性について、ぜひひとつこの際国民に対してお答えを願いたい、こう思います。
○佐藤内閣総理大臣 社会保障制度の長期的展望に立っての計画的のあり方、これを示せ、こういうお話でございます。私どもは、いわゆる計画経済というものはしておりませんけれども、しかしそれにいたしましても、マスタープランというものなしにこういう問題が進行できるわけではないと思っております。ことに、ただいまの立ちおくれ、これからひとつ中身を充実して、そうして欧米先進国に誇り得るような社会保障制度を確立しよう、こう考えておる場合、日本が長期的展望に立って、そうして総合的な計画を抱きながらそれを進めていくということは絶対に必要だと思います。私、ただいま河野君のお説を聞きながら、今後さような方向で一そう努力したい、かように思っております。
○河野(正)委員 いま私からいろいろ何点かについて御指摘申し上げましたが、社会保障の充実については、発展については、きわめて重大でございますので、ぜひひとつそういう方向で御努力願いたいと思います。
○森田委員長 関連質問の申し出がありますので、これを許します。山田耻目君。
○山田(耻)委員 総理にお尋ねいたしますが、ただいま河野委員のほうからいろいろと、抜本改正をつくるにあたって政府の怠慢なため、国民にしっかり約束をした公約をじゅうりんをするという立場の追及がございました。私は関連でございますから、一点だけお伺いしたいのですが、少しざっくばらんに申し上げて、特例法を通すときはたいへん一生懸命やられましたけれども、抜本改正をつくり上げていくのにはきわめて怠慢である。端的にいえば、抜本改正をおつくりになる御意思がないのではないか、こういう気がいたすほど、政府の御努力なり与党の努力というものは、全く不十分であったという気がいたしてなりません。まあお答えの中に、この国会で抜本改正案を出すように最大の努力をなさる御答弁がございましたが、総理はことしの三月の予算委員会で、わが党の大原委員あたりから指摘をされまして、予算審議をするのに予算関係法案の提出がない限り審議はできぬじゃないか、こういうふうな追及がございまして、政府としても統一見解をおつくりになりました。その統一見解は、この国会中に抜本改正案をつくって所属の審議会、社会保障制度審議会なり社会保険審議会に審議を願う、こういうふうな統一見解を示されているわけであります。公式の場で議論をいたしますとそういう答弁がいただけるわけです。しかし、実際の推移、過程を見ますと、厚生省は事務レベルでたった一回審議をいただいて、一つのものをおまとめ願って、それを政府へ出される。与党のほうは、六月五日、医療大綱案なるものをおつくりになって、政府に審議を求めてお返しになった。その医療大綱の中にも、御存じのように反対意見がくっついております。この反対意見というのは、実現できないというふうなことを国民にも期待させるような反対意見です。右向け左といって小説が書いておりますけれども、まさにおもちゃの兵隊のような医療体系です。これではどこから見ても、真剣にお約束どおり抜本改正に取り組まれておるという姿がうかがえないわけであります。私は、やはり総理の決意というものを——この国会中に、苦しかろうがむずかしかろうが、出すための最大の努力を国民の皆さんに知っていただくことも、総理の公約を果たしていく大切な道筋だと思いますから、ひとつ勇断を持って決意の表明をいただきたいと思うのです。 いま一つ、それに続きまして私考えますのは、この特例法をおつくりになってからいろいろと問題をより多く紛糾さしてきたんですが、医療行政という立場から見まして、やるべきことがまだあるんじゃないか。私は最も身近なことをこまかい立場から言うのですが、たとえば、佐藤総理の郷里であります、私の郷里であります山口県では、たくさん島があります。この島はほとんど無医地区でしょう。奥地農山村もそうなんですよ。この人たちには保険があって医療がないんですよ。こういう実態を片づけていくのに、何のちゅうちょが要りましょうか。看護婦の養成にしてもそうです。国費でめんどう見てあげて、医療体制に万全を期すために看護婦の養成をする。あるいは看護婦が定着しないというのは、人事院勧告すらも守られないような深夜作業の継続、労働条件の劣悪。例として申し上げたんですが、無医村の問題、看護婦対策問題、こうしたことは、少なくとも私は医療行政の中で実現できると思っているんですよ。こういうことは放置しておいて、そうして特例法を進めてきて、抜本改正というものには怠慢の度合いがきわめて顕著だ。国民が政治に不信を抱くのは当然でしょう。こういう事柄をひとつ、こまかいものまで聞きましたけれども、この際総理の強い決意もあわせてお示しいただきたいことをお願いして、私の質問を終わります。
○佐藤内閣総理大臣 山田君から、たいへんにまあ政府として怠っている点、それらについての御指摘がありながら、基本的な態度をいろいろお話しになりました。私もそれらの点につきまして、山田君の言われることについて考えざるを得ない。 まず第一は、政府はとかくどうも法案を通すことには熱心だがあと始末ができてないじゃないか、これは確かに考えさせられる問題であります。だから、いまの抜本対策が必要だといって特例法を設けた、その設けるときにはずいぶん審議に無理もしたと思えるようなことすらもある、だがその後の処置についてそれでは政府がやっているかどうか、こういうところを御指摘になりました。これは私ども今回こそ、特例法を御承認できれば、政府がいま御指摘になったような意味で不断の努力をしなければならぬ。むずかしいことは最初からわかっておりますし、これと取り組む姿勢、これをただいま御注意になりました。この点は政府も与党も同時に大いに反省するつもりであります。 次に、いろいろお話がありましたが、ただいまの無医村や看護婦の問題、これなどはもちろんやらなければならない問題です。ただ、いま医療制度の抜本的な対策と取り組もうというのは、医療保険がもうすでに千二百億の赤字になっている。この状態を早く何とか解決をしない限り赤字は累増されるばかりだ。これはやはり結局は国民の負担でございますから。政府の税というものも、申すまでもなく、御承知のように国民の負担なんです。そういうことを考えると、政府は国民に対しましても、そういうような赤字財政の制度をそのまま温存してはいけない、これをやはり国民が納得のいくように、負担が軽くなるように、しかも取り残された方々にも十分あたたかい救いの手が伸びるような、そういうような処置でこれに対策を立てていくというのが抜本対策でございます。でありますから、政府が国民の負担等を考えて各界の御協力を得なければならないと思います。御指摘になったとおり、政府自身が政局を国民から預けられておる、この立場において、みずからがまずしっかりやらなきゃならない、それはお説のとおりであります。私も総理といたしまして、そういう意味の責任は、ほんとに痛切に感じております。しかしこの点では、私は自分だけでやれるものだとは思っておりません。しかしものによりましては、山田君からいま御鞭撻を受けましたように、私自身が決意をもって最後の断を下さざるを得ない場面もあるのではないか。ことにこの医療問題は、それぞれが利害関係を異にしておるものもありますから、そうなってくると、いまお話しになりましたように、答申の中には実現できないような反対意見まで書いてあるじゃないか、そういうものが出てくるのが現在の審議会の実態だと思います。そういう場合に、政府は責任をもってやっぱり結論を出す、決断する、決意する、こういうことで皆さん方におはかりをしなければならぬことだと思います。どうかそういう意味で、政府は重大なる決意をもってこの問題と取り組む、そういうことをしたいと思います。 そうして、ただいま御指摘になりましたように、この制度も制度だが、保険あって医療なしというようなこの表現は、ほんとに私どもの国ではぴったり当たる。瀬戸内海の多数の島々、いま御指摘になりましたように、医療施設、お医者さんはいない。山間、ここまた同様だ、こういうこと。ただいま選挙区事情についても詳細にお話しになりましたが、私はこれは山口県だけの問題ではないと思う。島においてはすべて医療施設がない。そのために、ずいぶん無理な患者輸送をしたり、あるいは救急処置をとっておる。こういうことがもっと徹底されない限り、保険あって医療なしという、この極端な批判がそのまま当たると思います。そういう点につきましておしかりを受けましたが、また同時に、ただいまのお話は御鞭撻だ、かように私は伺いまして、この上とも御趣旨のあるところを体して、それぞれの面で万全を期するというか、さらに充実をはかっていくように努力したい、かように思いますので、いま直ちに、何ができる、ここまでは申しませんけれども、この看護婦の充実の問題も、あるいは無医村、無医島等の処置につきましてはさらに充実をはかっていくということを、この機会に申し上げます。ありがとうございました。
○森田委員長 田畑金光君。
○田畑委員 一問の質問ということになっておりますので、総理に一つ基本的な姿勢についてお尋ねいたしますが、先ほど来質問にありましたよべに、現行の健保特例法を成立させる際に、佐藤総理並びに当時の坊厚生大臣は、二年以内に医療保険制度の抜本改正を断行する旨をしばしば本会議場において繰り返してこられました。わが党は、あの昭和四十二年八月の健保国会といわれる臨時国会において、本会議において二年の修正案を出して、あの法律の成立を見ただけに、この問題については非常な関心と同時に責任すらも感じておるわけであります。しかるに今回、またまた二年延長する、こういうような挙に政府が出たということは、これは国民に対する、あるいは被保険者に対する大きな公約違反である。しからば、かりに今回の法律提案のごとく二年延長して、はたして二年後に国民の期待する医療抜本改革案が出るのかどうかという問題です。われわれは非常な疑問と不安を持っておるわけです。 総理も御承知のように、一昨年の十一月、厚生省事務当局は医療保険制度の改革試案を発表したわけです。そうして、これをたたき台として、与党の中に設けられたいわゆる医療基本問題調査会は、昨年二月以降、関係十三団体の意見などを聞いて改革案をまとめるために努力してまいってきたはずでありますが、昨年の内閣改造で、いわゆる鈴木調査会の責任者である鈴木さんは総務会長にかわり、そうしてまた新しい西村調査会というものができた、この間厚生大臣もまたかわってしまった、こういういきさつがあります。かくして今回、この国会に特例法の改正法が出されたという国会対策の意味からいって、そういうような目的でようやく基本問題調査会は、去る六月五日に国民医療対策大綱なるものを党から政府に出しておるわけであります。しかも総理も御承知のように、この案の中には全く本文と相反する五つの重要な付帯意見、いわば反対意見、これが付されておるわけであります。たとえばその一つの中には、現行の被用者保険の被扶養者に対する医療給付を国民保険制度の中に取り入れることは適当でない。もう一つ、たとえば診療報酬の支払い方法につき、現物給付にかわる償還制の導入、診療報酬の審査方式、医師の領収証発行義務等につき検討を加える必要がある、こういうような重要な問題をつけて、いわば対策大綱にない、そうしてまた対策大綱の本質的な修正ともいうような付帯意見をつけて、政府に出しておるわけであります。この大綱を政府に渡すにあたり、田中幹事長は、党案を政府に提出するので各省が一致した政府案をまとめてほしいと要請し、今度また逆に党から政府にげたを預けた、こういうかっこうなんだ。 私はこういう事情を見たときに、また二年間この法律はかりに延長されたとしても、政府は一体ほんとうに国民のための医療保障制度を確立することができるかどうか、深く疑問に思っておるわけであります。現に佐藤総理も、五月八日の衆議院の本会議におけるこの問題の質問に対しまして、医療保険の抜本改正は百年に一度ともいうべき重要な変革の問題だ、こういうように見ておられるわけであります。したがって私は、この問題の解決は、結局佐藤総理が総理大臣としてリーダーシップをとるかどうか。党内の調整あるいはまた関係団体との調整にあたり、党利党略を離れて、一部の団体の圧力に遠慮することなく、真に国民の生命と健康を守るための医療制度を確立するだけの政治家としてのリーダーシップを発揮されるかどうかにかかっておると考えておりまするが、総理大臣の決意のほどを特に承っておきたい。毎年毎年厚生大臣はかわっていく。斎藤厚生大臣は別でありますが、ようやくなれてきたころにはもう大臣がかわっておる。これではとてもこの重大な問題に取り組むことはできぬと思います。先ほど佐藤総理はことばを漏らしておられましたが、佐藤内閣も来年の秋ごろにはどうなるかというようなことにもなってくるわけであります。私は、佐藤内閣は、佐藤総理が政治生命をかけて沖繩問題と取り組んでおられることは大いにけっこうだと思います。私は、やはりこの際この大事な問題について、佐藤内閣が生命をかけて取り組むことが大事であると思いますが、佐藤総理に特にその辺の決意を承って私の質問にしたいと思います。
○佐藤内閣総理大臣 いろいろ田畑君からも御意見を交えながらお尋ねがありました。先ほど山田君にお答えしたところとも重複いたしますけれども、重ねて申し上げます。ことに党の案がある程度まとまったということを先ほど申しましただけに、これは河野君の質問に答えたのですが、その点重ねて御披露なさいましたので、もう少し詳しく申し上げなければならぬかと思います。 御承知のように、各党には各党のそれぞれのしきたりがあり、また行き方がございます。与党はその名のごとく、まことに自由民主な党でありまして、いろいろな意見が出ておる。それはもう大いに歓迎するところであります。そういうところであります。しかし、政府自身はさらに、いろいろの案で首をひねるというわけにはいきませんから、政府の責任においてこれを決するものがなければならない。これは田畑君の御指摘になった決意ではないだろうかと思います。党の四役も、党の実情、党内意見を政府に知らす意味におきまして、詳細に報告をしております。しかし四役とも、これから先は政府でひとつ決意してください、こういうことで政府に一任されております。この辺は、私の党のことではありますが、あまり御心配なさらないように、そこはひとつ政府が責任をもって処置していく。これはまた政党として、政局を担当する者としての国民に対する義務でもあります。かように思いますので、その決意のほどは先ほど山田君に答えたとおり変わりございません。ひとつ今後の処置をしばらく監視していただきまして、またその意味において政府は適当に御鞭撻も賜わりたい、かように思います。 私は、いずれにいたしましても今回の問題は、抜本改正、これは口では申しますがなかなか容易なものではない。しかも、いまも御指摘になりましたように、政治家に一番こわい圧力団体、その圧力団体に屈するというか、そういうことがあっては本来の基本のこの制度が曲がる、ゆがめられる、かように思いますので、その点を曲げられることのないよう、御指摘になりましたように、政府の責任においてみずからが正しい道を開く、その決意でこの問題と取り組む決意でございますので、その点、御鞭撻をこの上とも賜わりたいと思います。
○森田委員長 大橋敏雄君。
○大橋(敏)委員 佐藤総理大臣、こんにちは。私は、ほんとうにあなたに会いとうて会いとうてなりませんでした。それは、佐藤総理を心から尊敬し、信頼申し上げると言いたいところですけれども、残念ながら逆なんです。私のこの全身には、佐藤総理に対する要望、不信、不満、あらゆるものが、国民の気持ちが張り裂けんばかりにあるわけです。そこで私は、きょうの日を待っていたわけでございますが、何だか総理大臣には非常にお忙しいお時間がありまして、ゆっくりとお話しする時間もなさそうでございます。 そこで、まず第一点。私たちのこの気持ちを、この公式の委員会の席上でぜひとも全部聞いていただきたいという気持ちから、この社労委員会に極力出席していただきたい。この社労委員会に出席なさる意思がどの程度おありかを、まず答えていただきたい。 それから二年前の健保国会のあの実態は、佐藤総理の記憶の中にも新しいと思います。よもやお忘れではないと思いますが、毎日毎日、国会が空転し、混乱し、国民大衆をほんとうに不信と不安の中におとしいれました。しかしながら、各党の国会正常化の努力によりまして、何とか収拾はついたわけでございますが、あの会期末に国会法の改正が問題になりましたね。つまり議長差し戻し権——強行採決というのは認めない、もしそういうものをやると委員会に差し戻す、こういうことでお約束したはずでございますが、いまだになっておりません。これは健保国会といわれたときの問題でございまして、健康保険法特例法案の審議には重要な関連がありますので、これについても答えていただきたいと思います。 その次に、国民は二年間の時限立法が成立しまして、余儀なくその実施に乗らざるを得なかったのであります。財政当局の話によりますと、健康保険法特例法の実施によって、累積赤字が一千数百億円解消された。ところが、それは結局は国民大衆の犠牲と圧迫の上にしわ寄せされているものであります。したがいまして私は、あの二年間の時限立法が成立した際、必ず二年以内には抜本改正をやりますと断言していらっしゃるその責任についてどうなさる気なのか、これを御返事願いたいと思います。 最後に、医療と医療保険、また医療保険と社会保障などの関係は、先ほど河野委員からも追及されておりましたように、非常に込み入っております。一朝一夕で解決するものでないことは私も知っております。しかし、医師会、健保連、総評、あるいは日経連等々、それぞれの立場からその方針、方向を示しております。そこで私は思うのです。最終的には結局政治力である。佐藤総理のこれに対する熱意、情熱、これできまると思います。最後にその佐藤総理の抜本改正に対する御決意をお伺いして終わりたいと思います。
○佐藤内閣総理大臣 大橋君、たいへん御丁寧なごあいさつをいただいて恐縮でございます。ただ、大橋君は、どうもいろいろ政治不信を抱いておる。ほんとうに政治的に信頼をいただけるなら、わが党にお入りになるだろう。やはり立場上、そこが大橋君と私どもの政党が相違しているゆえんだと思います。だからその点をひとつ究明しようということで、いま大橋君が私に抱いておられるイメージの中にファイトということばがございませんでしたが、大いにファイトをもってそれを究明するという態度であってほしいと思います。よろしくお願いします。お互いにその党の主張を明確にするところに民主政治があり、私ども、国民に対する責務だ、かように思います。これは個人的な問題ではございませんから、御遠慮なしにそういう意味の御批判は堂々とやっていただきたい。よろしくお願いいたします。 ところで、この委員会にぜひたびたび出てくれ、こういうことでありますが、この点につきましては、理事会、あるいは委員長から要求があれば、総理は正当な理由がない限りそれを断わるわけにまいりません。このことははっきり申し上げておきます。したがって、委員長並びに理事会等におきまして、十分御協議願えることだ、かように思います。 最後は、ただいま私の政治力云々のお話がありました。私、冒頭に申しましたように、先ほど来熱意と情熱を燃やしてこの問題と取り組んでおりますが、どうも私の情熱にしても、熱意にいたしましても、他党の方まで動かすわけにいかない、その点がまことに残念であります。いまの総理としての私の熱意に御理解を賜わって、どうかこの問題は、国民のためにひとつ解決する、そういう高度の立場から取り組んでいただきたい、これをお願いしておきます。 国会法の問題は、これまた私が申し上げるまでもないことで、国会の問題でございまするから、特にそれぞれが議運等におきましても取り扱い方を十分検討されること、かように思います。
○森田委員長 山田耻目君。
○山田(耻)委員 ただいま総理に、抜本改正をこの国会でつくるということで御決意なり所感をただしたわけでありますが、当面の主管大臣であります、責任者であります厚生大臣は、この総理の御答弁を受けて、この国会会期中に、抜本改正に取り組む決意と具体的な手順をひとつ明らかにしていただきたいと思います。
○斎藤国務大臣 当院の予算委員会におきましても、でき得ればこの国会中に関係審議会に諮問をいたすように努力をいたしたい、かように申し上げておりました。総理もまた同様、ただいまそういうお答えがございました。私は、その努力をいまも続けておりますので、先般党の改革案について、政府にお示しがありましたが、その際にも、総理が申し上げられましたように、反対意見もついているけれども、これは政府の責任において、関係各省一致した意見をつくってもらいたいということでございますので、もっぱら政府に責任がかかっているわけであります。 そこで、答申をいただきまして以来、私もその答申、党の報告案といいますか、報告を、どういうようにやっていくかということでいま心を砕いているわけでございます。でき得れば、各界の意向はすでに十分承知いたしておりますが、しかし、まだ野党の方々の意見を伺っておりませんので、非公式にでも伺い、そしてこの国会中に少なくとも大綱について諮問のできるようにいたしたい、かように思って努力いたしておるわけでございます。
○山田(耻)委員 話を伺っていますと、この国会で抜本改正の少なくとも大綱については、国会に提示をして審議を受ける、そういうふうな御決意かと私は伺ったのでありますけれども、問題は、厚生省の事務局案というものが昨年暮れにできまして、そうしてそれが自民党、与党のほうに移りまして、最終的に一応形づくられた大綱というのがございましたが、御存じのように、中身もきわめて反対意見が大きい。しかもそれが条件を五項目つけ加えられておる。こうした自民党、与党から出ておる大綱というものを厚生省が受けて、各省関係取りまとめて、そうしてこの国会に出せるだけの見通しがあるのかないのか、聞いているわけです。それが、いまの佐藤総理の政治姿勢を受けられて、主官大臣である厚生大臣として抜本改正に取り組む決意があるとするならば、いま私がお伺いした事柄について、やはり具体的にお答えをいただかなければならないと思うのです。その点についていかがですか。
○斎藤国務大臣 私が申し上げましたのは、また予算委員会その他でも申し上げておりますのは、この国会中に関係の審議会に諮問をいたしたい、かように申しておりまして、この国会に改正案それ自身を提案いたす、これはとうていできない事情でございますので、少なくとも関係審議会に大綱を諮問いたしたい、かように申しておりますので、この点は誤解のないようにお願いをいたしたいと存じます。
○山田(耻)委員 それならば、いまの医療大綱をこの国会中に関係審議会以諮問をするという作業は、今日のところ厚生省としては間違いない筋道として作業を進められておる、こういう御答弁でございますね。
○斎藤国務大臣 さようでございます。
○山田(耻)委員 そうなりますと、作業の一つの目安というものはお示しいただきましたけれども、二年前に、五十六臨時国会できめられたいわゆる二年間の延長、特例法というようなものを受けての厚生省の態度としては、少なくとも公約違反であるし、約束違反ですね。そのことはお認めいただけるでしょう。少なくとも公約違反なり、約束違反ということを、国民怨嗟の中で、しかも、社会保障制度審議会なり社会保険審議会も、政府の怠慢をきびしく叱正しておるわけですね。こういう一つの時点を今日迎えて、厚生省みずからとして、いわゆる作業の進捗に怠慢であったということをお気づきになると思うのです。少なくとも事務局案を与党に示すまでの間をもっと繰り上げて、公約を遂行するというきびしい立場をおとりになっていたら、私はこの国会でこういう答弁を聞くという段階には立ち至らなかったと思うのです。厚生省はなぜ作業の進捗について力を抜いたのか、その点についてひとつ御答弁をいただきたいと思います。
○斎藤国務大臣 厚生省といたしましては、一昨年、四十二年の十一月に厚生省試案なるものを設けまして、そして世間に、試案でありますから問うたわけでありますが、これについて関係のほうからいろいろと御意見があり、いずれにいたしましても与党である党の御意見を伺わなければなりません。そこで、自民党といたしましては、ひとつ医療制度全般にわたって、そして医療保険制度の抜本改正も含めて検討をするということで、医療制度の基本問題調査会で取り組むから、しばらく党の案を得るまで待て、こういう事態になった模様でございます。 そこで、もっぱら党の基本問題調査会の進捗をこいねがっておったわけであります。政府といたしましても、厚生省といたしましても、党に対しましてその進捗方を絶えず要請をいたしておったわけでございますが、なかなか問題が広範でありましたために、その党の改革要綱をおきめいただくまでに、ずいぶんと時日を要しまして、ようやく一月ほど前にまとめたものを政府に示していただいた、こういうことになってまいりました。しかし、いずれにいたしましても、これは政府なり厚生省の怠慢を責められてもことばはないと思います。そのおしかりは十分お受けをいたしまして、今後こういう怠慢のそしりを受けないように、少なくとも二カ年以内にはこの特例法がなくなってもいいというような案をつくって、実施に移さなければならないと、かたく決意をいたしておるわけでございます。
○山田(耻)委員 厚生省の怠慢の指摘は、それはしかたがない、受けるとおっしゃっておるけれども、人間同士ですから、そういうふうに言われると、やはり次の段階にのぼせていきたいと思いますけれども、しかし、怠慢にも過失的怠慢と意識的な怠慢があるのですよ。私は、やはり今日厚生省なり、自民党、あるいは政府全体がおとりになっている思想的な背景といいますか、この医療抜本改正に対する基本的な考え方というのは、保険財政策という立場から、赤字を克服するという立場から特例法を通した。特例法を通してみると、国民の負担はきびしいけれども、保険財政に寄与するところは大きい、だから、むずかしい抜本改正をつくるよりか、しばらくほおかむりをして逃げろ、こういうふうな意図というものが、私はこの二年間に大きく働いたと見るわけですよ。少なくとも、この特例法をお通しになるときの強い意識というのは、現在の医療体系全体を再検討するという呼び水の中で、本心は保険財政の赤字を克服したいという政策中心に特例法というものが通されておる、このように私は見ますけれども、その見方について御異存がございますか。
○斎藤国務大臣 特例法そのものは、このままでまいれば、特例法がなければ保険財政が危殆に瀕する、そこで抜本改正のところまで、危殆に瀕しないようにささえていただきたいというのが、特例法の主眼でございますことは申し上げるまでもございません。
○山田(耻)委員 六月十六日のここにございます「社会保障」という雑誌で、あなた座談会をおやりになっておるのです。この座談会の記事の中に、野党の強い圧力でこの特例法の期限は二年間と定めたが、最初から無理なんだ、こういうふうにお述べになっている記事が出ておるわけです。私はそれが本心でしょうと聞いているのですよ。国会できめて、あれだけ国民に公約をして、そうして国民もそれを強く期待をして、この八月三十一日から新たなる抜本改正の医療体系ができ上がるものと強く期待をしていたのです。ところが、この特例法は、保険財政政策の中核として、赤字の負担を国民に全部背負わせて、そうしてさっきから河野さんのお話もありましたように、国で負うべき二百二十五億という、総体的な率から見たら低下をたどる姿を押しつけておいて、そうしてこの赤字解消をこの中に一切押し込めてしまう。とうてい二年間では抜本改正はできないということを十分承知をしておって、じんぜん日をこの二年間送ってきた。ただあなたがお答えになりました、厚生省の事務局案をつくって与党に出した。その後与党の進捗も、厚生省としてはたびたび督促をしたとおっしゃいましたけれども、三年後には抜本改正をやるというその公約、決議に従って、ただ単なるアリバイづくりをしたと思うのです。だけれども、本心というのは特例法を存続して、とうてい二年間で抜本改正ができるものではない、こういうあなたの気持ちの中に占めておる心情というものが、ゆるやかな雰囲気の中での座談会では本音が出たものである、こういうように私は思うのですよ。いかがでございますか。
○斎藤国務大臣 私は、過去二カ年の間、厚生省も党も安易な考えでいたとは思いません。事柄の内容は非常に複雑でございまするし、また関係団体、関係する各界の御意見も、非常に複雑でございますから。しかし、それを二カ年かかってここまで相当まとめていただいた。しかし、それに対しましても「なお健保改正というと、健保改悪反対といって、もうずいぶんあらゆる方面から御意見も伺っております。しかし、ともかくある程度のところまでやってまいりまして、それだけに長い——長いといいますか、むずかしい問題であって、そう右から左にできるような簡単なものではないという趣旨の話をいたしましたのが、そんな記事になったのだろうと思いますが、私は、先ほど申し上げておりますように、少なくとも大綱はこの国会中に審議会に諮問のできるようにしてまいりたいということで、いま事務当局にも作業をさせておりまするし、またその大綱の最高方針につきましては、いろいろと心を砕いておるわけでございますから、その点はぜひ御了承をいただきたいと思います。
○山田(耻)委員 あなたがそういうことは言わなかったとおっしゃれば、こういうものはそれだけなんですよ。ただ全体的に、この抜本改正を国民が期待をしておるだけに、結果としておくれ、そうして今回の二年間延長、こういう措置をなさるということには承服できない怒りがありますから、その怒りを通して振り返ってながめるときに、厚生省の怠慢、そして所々方々におけるいまのようなことば、こうしたものが総体的に見れば真実であろう、こういうふうに受け取るのは、私は当然だと思います。 本日は時間もございませんから、これで終わりたいと思いますが、これからこうした問題を含めて、全体的な方向について大臣のお考えを承りたいと思います。本日はこれで終わるわけでございます。ありがとうございました。
○森田委員長 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。 午後零時五十一分散会