外務委員会 第31号
- 発言数
- 104 件
- 登壇者
- 10 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1969/07/04
会議録
○北澤委員長 これより会議を開きます。 旅券法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。 午前中の委員会は一時半まで開きますが、法務大臣、外務大臣、両大臣の御出席を得ていたしますが、ひとつきょうは法務大臣に対する質問をなるべくまとめて、そうして皆さんの質疑をお願したいのです。 質疑の通告がありますので、順次これを許します。戸叶里子君。
○戸叶委員 きょうは法務大臣がお見えでございますので、法務大臣にまずお伺いしたいと思います。 佐藤総理大臣もよく国益国益ということを言われますけれども、どうも実際にはほかの国の顔色を見ているというような面がときどき多いように思われるわけです。せっかくのプラント輸出が民間ベースでまとまっても、政府の横やりでだめになったケースが過去においてもございました。そこで、中国とか北朝鮮のような近隣諸国に対しては、その主義、政策というものを越えて、もっと弾力のある友好関係政策といいますか、友好的な政策というようなものをとることが国益に合するのではないか、こういうふうに考えますけれども、これらの国との友好関係を促進するようなことはお考えにならないかどうか、まず法務大臣に伺いたい。 と申しますのは、この旅券法の改正をいま私たちは審議しているわけでございますが、この審議にあたりまして、いろいろやはり法務省との関係も出てくるわけでございまして、これらの問題については、外務大臣にはお聞きする機会がございますが、法務大臣にはお聞きする機会がないものですから、この際、あらためて伺っておきたいと思います。
○西郷国務大臣 私どもも、相手国に対しましていろいろ区別してものを考えるというような考えは全然持っておりませんし、いまお尋ねの中共貿易等も大いに促進していただきたいと考えています。
○戸叶委員 相手国との差別を考えずにいこうとしておられるということでございました。そこで、いま一つの例を引いてみますと、北朝鮮との貿易は、きのうの政府が出された資料を見ましても、輸出が二千二百万ドルでしたか、輸入が三千四百万ドル、合計五千何百万ドルかの取引をしているわけでございますので、こういうことは当然国益に反することではない、国益にプラスになることだ、こういうふうに考えてもよろしゅうございましょうか。
○西郷国務大臣 北鮮は未承認国ではございますけれども、相互に貿易が行なわれることは大いにけっこうなことだと思います。
○戸叶委員 相互に貿易があることは認めていらっしゃる、こういうことですね。そうすると、いまのことは国益には反しないことだというふうにお考えになっている、こういうふうに理解してよろしいんじゃないかと思いますが、だといたしますと、こういう人たちが取引に行くというようなことは、別に国益に反することではない、こういうふうにお考えになっていらっしゃいましょうか、この点だけを確かめておきたい。
○西郷国務大臣 まあ、いろいろの場合があると思いますけれども、大局的見地から考えまして、さように考えます。
○戸叶委員 日本と北鮮なり中国なりの国とは、今後においても別に差別をしていこうという考えはない。そして貿易において実績をあげている国であるから、そういうふうな国と貿易をしていくことは国益に反しない。そしてそういうふうな国益に反した行動をする人に対しては、そういう人の行動に対しては認める——認めるとまではおっしゃらないかもしれませんけれども、そういうふうな国益に反しない行動、そういう貿易をやっている人は国益に反しない人である、こういうふうにおっしゃったと思いますが、それでよろしゅうございますね。
○西郷国務大臣 やはり慎重に考えなければいかぬと思いますけれども、貿易をどんどんやるようなことは、私は一向差しつかえないというふうに考えております。
○戸叶委員 そこで、貿易の面で、実はきのう中国貿易をやっていらっしゃる方で、実務をやっている方から、旅券を発給してもらうのにたいへん不自由があるということをお聞きいたしました。私も認識を新たにしたわけなんですけれども、何か旅券申請をする前に十五通ぐらいの書類と招待状を出して、そして事前に審査をしてもらう。その上で旅券の申請をする。しかも事前審査に三週間から一月くらいかかる。これでは貿易をしようと思っても、西欧諸国にどんどん競争でとられてしまう。とても間に合わない。だからもっと早くするような方法を考えてもらわなければ困る。しかもその書類というものは法務省へいったりいろいろな省へいっているんだということになりますと、やはり法務省のほうでもその人の身上とかいろいろなことを調査なさるんじゃないかと思うのですけれども、そういうふうな手数を法務省のほうでもなお今後もお続けになっていくのかどうか、どの程度に思想調査とかいろいろなことをなさるのか、この点もはっきりさせておいていただきたいと思います。
○山下政府委員 共産圏に行きます場合に、現在の制度として、私たちは渡航趣意書というものを事前に出していただきますが、これは関係方面と相談するのに相談する場所がかなり多くありまして、それを次々に回していくということでは非常に時間がかかるので、同時に協議いたすということで、便宜のため設けた制度でございまして、法律に基づくものでも何でもなく、今後はこの点もなるたけ早く審査ができるように善処してまいりたいと思います。
○戸叶委員 何通も出すということも手数でしょうけれども、それだけじゃなくて、たいへん審査に時間がかかるということが私は問題だと思うのです。ですから、そういう点をよくお考えになっていただきたいと思うのですが、法務省としては、大臣、こういうふうな書類をおとりになって、そして中国へ行くとか北鮮——北鮮行きはそういうふうな事前審査はしていませんけれども、中国行きの人なんかというのは、やはりその人がどういうふうな行動をして、どういう考えを持ってなんということを詳しくお調べになるのでしょうか。この点も念のために伺っておきたいと思います。
○西郷国務大臣 私どもは憲法の趣旨を尊重いたしまして、そういう思想調査とかそういうことはすべきではないと考えておりますし、またいままでやっておらぬと思います。 先ほどの趣意書の点は、御答弁がありましたように、できるだけそういう煩瑣の点、迷惑をかけないように、当方において必要があれば控えをとって回す、そういうような措置をとりまして御希望に沿いたいと思います。
○戸叶委員 いまの大臣の御答弁では、出された書類について、いろいろと思想調査なりその人の身上なんかについて調査してない、憲法違反だからそういうことはしてないのだ、こういうふうにおっしゃいましたけれども、そのとおりに了解していいのでしょうか。そうだとすると、少し時間がかかり過ぎると思うのですね。何のためにそういうものが必要であろうかということと、時間がかかり過ぎるというように考えるわけなんですが……。
○西郷国務大臣 やはり相手国が未承認国であるような場合には、役所のことでございますから慎重を期するために、非常に時間がかかっておったのではないかと思いますけれども、今後そういう点ももっと迅速に審査を進めるように、行かれる方の迷惑されないように、両省協力して御希望に沿ってまいりたい、かように思います。
○戸叶委員 慎重を期するためにというおことばはよくわかりますけれども、その慎重を期するためにということが、今日まで非常に行き過ぎていたのじゃないか。そうでなければ三週間もとてもかかる必要はないと思うわけなんですね。ところが、そういうようにかかって、しかも法務省のほうでなかなか——旅券の許可は外務省だけれども、いろいろな面で法務省のほうに障害があるというようなことを私どもは聞いているわけなんです。そうでなければたいへんけっこうだと思うのですけれども、そういうように聞いておりますので、いまの法務大臣の御答弁では、憲法には違反しないようにあまり人のことを思想調査などはいたしませんということ、それから今後はいろいろ早目に手続をしますというようなことで、一応はそこまでにいたします。 そこで、いまのような状態でまいりますと、たとえばパリなんかにちょっと行っておりました人が、急に商談で中国なり何なりに行かなければならなくなる、そういう場合もあると思うのです。これは悪意があってじゃなくて、そういうふうな場合に、いまのような申請をして行かなければならないとしますと、パリでその人は日本の大使館に行って、今度は中国に行くのですよといって手続をするわけですね。すると、それが今度は日本の政府に問い合わせがくるわけですね。そうすると、そのときに書類をまたそろえなければならない。これがまた、普通に日本から行くにしても三週間も一月もかかるのに、パリから行こうとして手続をすれば、今度は三週間や一月では済まないと思う。またそこで十五通もの書類をととのえるということは容易じゃないと思うのです。だから、そこで気がついた商談などというものはとうてい間に合わなくなってしまうというおそれがあるわけでございますけれども、こういう点は、これは外務省のほうの質問になるかもしれませんが、ついでですからはっきりさしておいていただきたい。
○山下政府委員 在外で急に中国なりに行かれたいという人に対しては、趣意書の要点を在外公館に出していただきまして、電報でもって本省にいってきてもらって現在やっております。だから在外におられて中共に行こうとする人は、日本から中共に行かれる方よりも特別長くかかるという事例はないというように了解しております。
○戸叶委員 そうしますと、日本から手続をして行くよりも、在外でやったほうが早く片づくということになりますね、電報でずっとやっていっちゃうのですから。
○山下政府委員 電報で趣意書の内容を本省に連絡していただいて、それから手続をするわけで、むしろ在外の場合には電報の期間だけ長くなるということでございます。
○戸叶委員 いま何かたいへん気負い込んで、電報でもって片づけると言うから、ずいぶん早くやれる、これはパリあたりに行って手続をしたほうがいいなというように考えたのですが、そうすると、趣意書でかかっている時間が三週間なり一月ある。今度はパリで手続する場合には電報の期間だけ、二、三時間だけ日本でするよりも長くなるということですか。
○林説明員 たとえば香港等におきまして中共に急に行きたいという場合には、たとえば春季あるいは秋の広東交易会に急に行きたい——おそらく駐在員が多いと思いますが、そうしますと、非常に数が多いので、事務的な処置の問題がございます。しかし、電報形式という方法もございます。それから、在外で処置したほうが、実を申しますと、旅券の発給、つまり旅券をつくる作業が、東京の旅券課におきましては現在非常に数がふえておりまして、一日全国的に扱ってつくらなければならない数が三千ないし四千ございます。そういう点で、むしろ在外公館で旅券を作成するほうが事務的には早いこともございます。
○戸叶委員 その点は、きのうも参考人の意見を聞いておりまして、非常に気になったことなんですけれども、そうしますと、日本の場合に十五通なり何なりを外務省に事前審査のために持っていく。それが趣意書の内容を電報だけでいって、そして今度は、その十五通なり何なりの趣意書はどうするわけですか、在外にいるときには。
○林説明員 その電報を、内容によりまして直ちにコピーしまして、そして関係機関に配付するということでございます。
○戸叶委員 そういうことができるのでしたら、日本から行く場合にも、何も一々きちんと書いて十五通コピーをとらないでも済むのじゃないですか。電報でもってコピーでずっと回すとするならば、日本から行く場合にもそれでいいじゃないですか。
○林説明員 たとえば春秋の広東におきます交易会に参加するために、日本から出発していきたいと申して旅券の申請をされる方のほうが圧倒的に多いのでございます。大体最近の数から申しますと、二千五百から三千というふうに非常に中国側へ渡航しようという日本人がふえております。これに引きかえまして、パリとかあるいは香港はそれほどの数はございません。
○戸叶委員 ですから、結局春秋に行く一つのきまった貿易の人たちならばそういうことができるけれども、パリで新しく商談に気がついて、これから中国へ行こうという人は、そのときには間に合わないというふうに理解してもいいわけですね。春秋に行くという人は大体においてきまっているわけですね。だから、その人はどういう人柄で、どういう身分でどうだということがわかっておりますね。ところが、そうじゃない人で、これから商売をする人があるかもしれない。パリへ行ってみた——パリでも香港でもどこでもいいですが、そこへ行ってみたら、ヨーロッパの人と話していたら、どうしても中国へ行きたいというふうなことになった、自分もそれに加われそうだなということで行こうとした場合、たいへん急ぐわけですね。そういうときには、春秋に行っていないから、これから新しく参加しようということになりますと、事前審査の趣意書というものがそろっておりませんから、どういうふうにしてやったらいいかということになるのじゃないか、当然間に合わなくなるのじゃないかという懸念を持つのですが、この点はどういうふうに処理なさいますか。
○林説明員 渡航趣意書を事前にお願いして出していただいておるわけでございますが、何せ遠いところでございますので、中国側からの日本の商社あるいにメーカー等を招請する招請状というものが、場合によりましてはおくれるかと思います。そういうことで、前後の事情がございますけれども、われわれとしましては、特に在外におきまして商機を逸しないように今後は配慮していきたいと思っております。
○戸叶委員 それでは念のためにもう一度申し上げますが、事前審査のための趣意書の件はなるべく簡単にして、三週間から一月もかかっていたのをもっと時間を狭める、それからよそにあって中国へ行かなければならないというような問題ができたときにも、非常に有利に考えるというふうに理解してよろしろわけですね。
○林説明員 何せ未承認の共産圏へ渡航します際の、いま申し上げました趣意書の問題でございますけれども、さて趣意書の段階が済みましてから、正式申請を経て、さらに旅券を作成するという段階におきましても、現在日に三、四千の申請書がございます。そういうことで、この改正案を出しております理由と申しますのは、できるだけ簡易化して機械化へ持っていきたいという意味もございます。したがいまして、現在のようなシングルパスポートというシステムでなければ、それが改善し得て、過半数のものがマルティプル五年というふうになりますれば、むしろそちらの面からしても簡易化、迅速化することもできる、総合して全体として見ましても簡易化に寄与するのではないかと思います。
○戸叶委員 前進させてもらえるというふうなことにとっていきましょう。 法務大臣の時間がおありのようですから、法務大臣のほうに質問を変えていきたいと思いますが、この法律の十三条一項五号というのはこれまでもいろいろと問題になった条文でございます。ここで私どもがどうしてもわからないのは、法務省のお考えを伺いたいと思いますのは、「日本国の利益又は公安と害する虞があると認めるに足りる相当の理由がある者」というふうに書ていあるわけですが、この「国の利益又は公安を害する虞がある」というような行為とは一体何だろうというふうにいろいろ考えるのですが、なかなか了解できないのですが、何か基準なり例なるあったらお示しを願いたい。法務大臣はどういうふうにお考えになるかを示しておいていただきたい。
○吉橋政府委員 旅券法十三条一項五号の国益または公安を害する云々の基準はいかんというお尋ねですが、外務省から入国管理局を経て先ほどお話があった趣意書が一通添付されて公安調査庁へ参ります。公安調査庁といたしましては、この条文に基づいて、公安上の見地から見解をまとめて、それを入国管理局を経て外務省へ回答いたしておるのでございます。 しからば、いかなる標準をもって公安を害する、国益を害するおそれがあるかと申しますと、私のほうとしては、主として公安を害するかどうかというような点の回答をいたすわけですが、具体的にいえば、渡航する人の組織的な背景あるいは過去における行動歴及び渡航の意図等はもちろんのこと、広く客観的に、その人の渡航自体によってわが国の公安を害されるおそれがあるかどうかというようなことを、既存の資料に基づいて調べて、意見をつけるのであります。
○戸叶委員 過去のいろいろな行動歴とかその背後の組織力とかそういうものを基準にしてお調べになるということですけれども、たとえばどういうふうな行動歴を持った人あるいは組織力を持った人をチェックなさるのですか、これは公安としては出さないほうがいいというふうにおきめになるのですか。
○吉橋政府委員 御承知のように、公安調査庁におきましては、破壊活動防止法に基づいて、ある種の団体の調査の一環としていろいろ資料あるいは調査結果を入手しておりますので、それに照らしていまのような基準に該当するかどうかというような点を一応調べてみるというもとになるわけでございます。
○戸叶委員 そういうのをお調べになるのに、どういうふうなバックを持っている人はだめだとか、それからどういうふうな行動歴を持っている人はだめだとかいうようなことは、大体きまっているわけですね。だとしますと、きょう出してくれとは申しませんけれども、参考のためにそれを資料として出していただきたいと思います。基準をお書きになったのがあったら示していただきたいと思います。
○吉橋政府委員 具体的にどのような場合に、渡航についての反対意見と申しますか、拒否権等をつけるかという点につきましては、個々の事案に即しまして、いま言ったような基準、あるいはそれぞれの状況、事実を総合判断してやっておる事柄でありますから、一般的にはちょっと申し上げかねるかと思います。
○戸叶委員 そういうふうに基準をきめて適当にやられますと、私どもも納得ができない面がいろいろあるわけでございます。そこで、できるだけそういうことは公表していただきませんと、その人は、なぜ却下されたんだろうかということで、非常に不審に思いますし、旅券法の精神からいってもおかしいんじゃないかというふうに思います。 そこで、いまお出しになれないということでございますが、時間もないですから、ケースによりましてそのうちお伺いをしにいきたいと思っておりますから、そのときにお示し願いたいと思います。 私はまだいろいろ質問があるわけですが、法務大臣がたいへんに時間の関係でお急ぎですから、外務省のはあとにいたしまして、法務大臣にもう一つだけ伺っておきたいことがあります。 それは十九条の一項の五号でございますが、ここに書いてあることは、「一般旅券の名義人の渡航先における滞在が当該渡航先における日本国民の一般的な信用又は利益を著しく害しているためその渡航を中止させて帰国させる必要があると認められる場合」には返納させるということですね。旅券を返納させる場合はどういうときかというと、「日本国民の一般的な信用又は利益を著しく害している」、こういうふうなことばを使ってあるのですけれども、これでもってそういう人を帰そうとするその判断というものが、やはり非常にむずかしくなってくると思うのです。先ほどの例と同じでございますけれども、一体だれがどういう形で国益をそこなうのか、どういう人が公安を害するのかというような基準というものが、私どもは非常に了解に苦しむわけです。 そこで、いまの場合で、たとえばこういうふうなことは一般的な信用または利益を害するというふうな判断を、何を基準にどういう形で認定をさ出るかということかどうしても私はわからないものですから、この点をお伺いしたいと思いますし、それから、時間を省いて申し上げますと、たとえば日本の国内においては、社会党なら社会党が自民党の政策のこういうところが悪いというようなことを言います。自民党は自民党で、日本の社会党がどうのこうのと言う。こういうことは何でもないのですけれども、そういうふうな政党の批判まで——政党というよりも、政府の批判をしたことでも、これは強制送還ということになるのか、強制帰国させられるのか、それとも、あるいは中国なら中国へ行って共同声明を出して、その内容によって、時の大臣が国の利益を害すると判断をしたときには、これはは強制的に帰国をさせるか、こういう点なんでございますが、この点の判断のしかたというものをお示し願いたいと思います。
○西郷国務大臣 外務省のことは私存じませんけれども、常識的に判断いたしまして、在外における場合だったら、在外の公館長の考えによって認定を下すと思いますし、また重要な点は、本省の外務大臣の指示を受けて決定するのではないかと考えます。
○戸叶委員 それはそのとおりだと思います。在外の公館長が認定を下すのだと思いますが、その認定の基準、しかたですね。これは国に害がある者だとか、これは公安を害するとかいうようなことが非常に問題になってくると思うのです。 そこで、法務省に伺ったのは、法務省のお考えを伺っておるのですが、たとえば議定書とか共同声明とかを出したのが、それがもし時の政府なり何かを批判するようなことが書いてあるときには、それは法務省としてはやはりまずいとお考えになるか、その点をはっきりしておいてください。外務省はまたあとでお伺いしますから。
○西郷国務大臣 いまお尋ねのような点は、政党が違えば政策的なこともいろいろ違ってまいりますから、そういうことは何ら差しつかえないと私は考えております。
○戸叶委員 あと、利は外務省に聞くことが多いのですから、この程度にいたします。
○北澤委員長 帆足計君。
○帆足委員 法務大臣に久方ぶりで委員室でお目にかかりました。二十年前、緑風会で御一緒に仕事をしておりました当時、私もまだ若くておりましたし、大臣は当時まことにスマートで、美青年でございました。私も白髪を加え、大臣も少しお太りになられ、貫禄がおつきになって、御先代の敬天愛人の南洲翁の面影をほうふつとさせられるお姿を私は拝見いたしまして、御同慶の至りでございます。 緑風会時代から、西郷大臣の思考方法が冷静で、そうして非常に公正であることは、私よく存じておりますので、敬意を表しつつ御質問申し上げますが、要点は二つでございます。 一つは、これはむしろ大臣に事情を御説明するだけのことでございますが、大間の移動の問題は、旅券及びビザに関連しております。旅券法はその中核でございますが、朝鮮人の帰国につきましては、すでに愛知外務大臣にもよく説明しておきましたが、すでに、日朝共赤十字の同意とともに、国際赤十字も参加いたしまして、公平な帰国協定ができておりましたが、その付属覚え書きには、帰国者数が減ったときには船の数を減らし、帰国者数がふえたときには船をふやす、そしてまた、帰る人が全然いなくなったときには、帰国事実が終わったことを互いに確認した上で終わりとしよう、そういうことになっておりました。また、私ども一万数千人で帰国協力会という機構をつくりまして、朝鮮は長い間植民地関係にありましたから、その民族感情をよくするのにお役に立ちたいと思いまして、自民党の岩本副議長さんが委員長になり、私が幹事長になりまして、朝鮮の友よお元気にお帰りなさい、朝鮮の友よお元気に、こういうスローガンで御協力してまいりました。しかるに、どういう手違いか、遺憾ながら、国際赤十字にも、日本赤十字にも——国際赤十字にすら御相談なくして、突如としてこれを打ち切りになりました。いかなる行き違いか、まことに残念でございます。当時西郷さんがおられましたならば、私は最初に訴えて、これは思いとどまってもらうべきであったのに、残念でありますが、事ここに至る以上は、愛知さんは、まことにそういう点がある、あとは赤十字にまかせて、一カ月か二カ月以内に便法を講じよう、特に一万七千人に対しては赤十字に責任があるし、その後のことも、あとは野となれ山となれというのではなくて、やはり五十八万の朝鮮人がおることであるから、年々千人ぐらいは多くなったり少なくなったりしながら帰国者は自然発生的に出てくるであろう、そういう人たちに飛行機で帰れとか、香港から帰れとかいうことは過酷である、したがって、何らかの形で帰り道をつけねばならぬが、それはやはり赤十字に頼むのがいいから、もとほど政府は深入りしないけれども、赤十字の民間ベース、人道べースにまかせるという便法をとって解決しようと思う、こういうお約束ができておりましたが、双方いろいろ行き違いもありましたでしょうが、今日に至っております。そういう次第でありますから、この問題につきましては国際赤十字も責任を感じておりまして、私に書面もよこしております。突如として打ち切られた点はまことに遺憾である。いわば利用するときだけ利用されて、あとその後のことは見通しもつかぬというようなことでは、あまり愉快な感じを持っていないという意味の書簡も参っております。したがいまして、タイミングの問題もございましょうけれども、御念頭にお置きくださいまして、人道と赤十字の観点から御解決になる、政府があまり重荷を負わなくてもよい方式だろうと私は思っておりますので、御参考までに申し上げます。 さて、このたびの旅券法の問題につきましては、私自身が戦後最初の日本人としてモスクワに参りまして、また北京を訪れました。あのときが原因になりまして、当時スターリンと会うことができまして、日本人の捕虜送還の解決の糸口をつくりました。また、上海沖合いの漁船問題の解決の糸口も見つけましたし、また中国との間に六千万ポンドの第一次貿易協定の調印もしてまいりました。長い目で見ますと、やはりよいことであったと私は思っております。いまでは経団連の植村会長さんまでがソ連を訪問するようになりまして、帆足君、当時は苦労をかけたけれども、やはり先駆者の払った税金と思ってがまんしてもらいたいというようなことを冗談話で言われた。このように世の中は移り変わってまいりまして、今日モスクワや東欧諸国を旅行するがごときことは、もう常識になってまいりました。ニクソン大統領ですらもルーマニアを訪問するというような状況に移り変わったのでございます。 ところで、旅券法の問題につきましては、したがいまして慎重であらねばならず、憲法及び人権宣言、ユネスコ憲章等とも矛盾するものであってはならないと私は思っております。いまこうして旅券法を慎重に良心的に審議しておりますが、この旅券法の運用について、詳しく書かれておりませんために、戸叶議員からも質問がありまして、これに対してきわめて常識的な答弁が法務大臣からございました。法の運用にあたりまして、当該責任大臣のその解釈についての御答弁というものは、法の運用にあたっての解釈の基準になるべきものと私は考えておりますが、これは、国会における担当大臣の答弁というものはその場の言いのがれであって、やがて窓口の属僚諸君から無視されてよいものでしょうか。ちょっとどどいつをうなったくらいのものであると取り扱われてよいものであるか、それとも法の解釈を峻厳な立場で補うものであるというふうに私どもはとってよろしいのか、法務大臣の御見解を伺っておきたいと思います。
○西郷国務大臣 たいへんむずかしい御質問でございまするが、やはり何と申しますか、法律をきびしく考え過ぎれば弊害もあるし、また甘過ぎてもいかぬと思いますが、それは適正妥当な解釈をいたしていかなければいかぬのじゃないか、かように考えます。
○帆足委員 その適正妥当な解釈の一つの重要な基準として、制定当時の担当大臣の——属僚各位でなくて、担当大臣の解釈を承っておるのでありますから、その担当大臣の御解釈というものは権威あるものと私は信じますが、そのように考えてよろしゅうございましょうか。
○西郷国務大臣 私もさように考えます。
○帆足委員 このことは、私の苦い経験から申すのでございまして、時間がございませんから、なるべく簡単にしますが、思い出してもぞっとするような事件があるのであります。と申しますのは、旧来の旅券法に憲法と抵触するおそれのある条項が二つございまして、しばしば裁判所において違憲判決を受けて、政府が敗訴したのもそこから起こっておるのでございます。一つは、旅券発給にあたりまして、直接かつ著しく国益を阻害する者については、政府は旅券を発行しなくてよいという条文がございました。これは「者」とありますから人物でございまして、これは鉱石ではございません。生物でございます。人類でございます。したがいまして、人の審査でございますから、鉱物の審査や地理学の審査でなくて、その人間の審査でございますから、これについては慎重を要する。国益を阻害する人間と認定されたならば、当人の名誉にも関する問題でございますから、したがいまして、外務大臣と法務大臣との協議によってこれはきめる。審議会は一応省略されておりますけれども、両大臣の協議を要する。第二には、この結論に対して不満である当人は、これに対して裁判所でなくて、両大臣にまず抗告し得る、再審査を要求できる。最後の手段が裁判ということになるのでございます。世の中のことは、裁判というのは最後の手段でありまして、通常、公共の福祉等に関する問題につきましては、むしろ大臣の判定、行政機関の手続等に、多くの場合は審議会が設けられたり、諮問委員会が設けられたり、あるいは運営規則のようなある種の基準がありまして、その妥当な基準によりまして事が運ばれるというのが例でございます。したがいまして、裁判によれはよいではないか——先日国際法学者が参考人となって出きましたときにも、裁判は最後の手段であるということばもありまして、これの認定についての審議機関がないということが一つの欠点であろうという意味の御発言もありました。そこで、このことは、ただいま戸叶議員からもお尋ねしたことでございますけれども、国益及び公共の福祉を阻害する——今度は「者」という表現は使っていない。もっとやわらかな表現を使っておるようでございますけれども、もとは「者」というので、私がソ連に参りますときにも、私は国益を阻害する人間であるか、こう尋ねましたところが、そういう失礼なことはちょっと国会議員に対してできません。またそういうこともありません。したがいまして、困ってしまいましてね、ソ連に到着すると国益を阻害する者になるかもしれない、そういうような答弁でありまして、要領を得ませんでした。そこで、二度目の、私も裁判所に抗議いたしましたが、清水幾太郎君でしたか、裁判所に抗議いたしまして、そして著しくかつ直接国益を阻害する者という認定は下せないということで、政府のやり方が不当であるという裁判がしばしばあったのであります。私は当然のことと思うのでございます。したがいまして、まず「者」ということについて、そういう解釈が当然常識的になされますし、第二に、昨日も愛知外務大臣に申し上げたのですが、公共福祉とか国益とかいうことばがきわめて抽象的でありまして、先ほど西郷大臣が非常に聡明に仰せられたように、政党の政策などによって、立場で価値判断が違うのでございますから、公共福祉が、時の多数党または一内閣、一政府、その大臣の意見でこれが代表されるとしたならば、与党の見解はおおむね国益であって、野党はおおむね国賊ということにもなり得るのでございます。野党の主張はおおむね国賊、もしそういうことが許されるならば、立場をかえて考えますと、今度は私が法務大臣または外務大臣になりましたときに、与党の愛知さんなりその他の方がワシントンに行かれるときに、社会党は、社会主義の国であるから資本主義の影響はあまり強く受けないほうがいい、ワシントンに行く回数は減らしてもらいたい、国益を害する——国益とは何ぞや、時の政府の、国民の多数が信頼している政府の言うことこそ国益である、こういうような態度をとったならば、憲法の共通のルールというものはこわれてしまう。したがって、最近の法学者の申しますように、国益という概念は、野党が考えても与党が考えても、その大多数がこれはちょっとひど過ぎるというところに国益という概念をとどむべきである。昨日これを卑俗な例で申し上げましたが、ミニスカートに対しまして、ある種の文部大臣、たとえば荒木文部大臣などでしたら目を回して、これは風俗壊乱として、その女学生を退学せしめたでございましょう。しかし、今日は、ミニスカートは案外かわいらしくてさわやかでいいではないか。しかし、いわば越中ふんどしのままラッシュアワーに乗り込むとするならば、社会党といえ、共産党といえ、党派を越えて、これはちょっとひど過ぎる、自由の度が過ぎて放縦である、かくて軽犯罪法、すなわち公共福祉に反するということになると思う。公共福祉とはかくのごときものであり、まして、与党、野党の大部分がうべなうことが公共福祉でありまして、特定政党、特定内閣、特定大臣の個人の見解、主観、政策——ある内閣の政策にじゃまになるとか、じゃまにならぬとかいうことではないというのが、今日のおおむねの憲法学者の解釈でありまして、御承知のように、二カ月ばかり前にこのような趣旨の裁判の判決が下りまして、国益とは時の政府の時の政策を意味するものではない。これはアメリカにおきましても、フルブライト外務委員長は民主党に属しておりますけれども、非常に手きびしくベトナム戦争を批判しておりまして、しかし、だからといって、フルブライト委員長を国益阻害と称して処罰したという例も聞きませんし、フルブライト委員長に対して国益阻害としてアジアの旅行を禁止したということも聞きません。まさにかくのごときが民主政治であろう。すなわち、愛知さんなり西郷さんから、帆足君、いまこの旅行をされることは政府としては困るし、われわれの信念からいえば国益阻害のように思うから、多少言論を慎んでもらいたいというようなプライベートアドバイスというものがあってしかるべきだと私は思います。しかし、それはアドバイスにすぎないのでありまして、私が行くことが、またかりに私が世界各地を旅行いたしますことが、それが時の政府の政策に多少の障害を及ぼすとしても、それはままにならぬのは世の中だということわざのとおり、何事でも政府の思うとおりにいくものではありません。一億の同胞がおりますから、政府の意見と違う者が参りまして意見を述べましても、それによって政府が倒れるものでもありませんでしょうし、相当の論理と自信を持っております政府であります以上は、たいしたことはないのであります。また、ときとしては政府の意見に対して直言の士がおることも、また国の安全のための安全弁になり得ることは、ファッショがあらわれる直前の斎藤さんの粛軍演説でもこれは立証されておるとおりでありまして、その変わった立場からでも国を思うがために、当時の与党の政策と異なる見解、異なる行動があっても、それが度を過ごさない限りはよろしいというのが今日の民主主義であろうと思うのでございます。 そこで、第一の問題は、国益及び公共福祉というものについての解釈が、最近の憲法学者の解釈及び裁判所の解釈が私は正しいのであろうと思います。これにつきまして最終的御答弁を法務大臣に求めますのは過酷でありますから、あえて御答弁は求めません。しかし、深刻な問題がここにあるということ、すなかち、憲法と政府と一般の野党及び一般国民大衆三つの間に、必ずしも全部を一つにまとめて簡単にきめるような基準がないということ、基本的人権を守らねばならぬゆえんは、したたがいまして学問、信条、思想、宗教の相違によって人を区別しないこと、フイフイ教から申しますならば、キリスト教徒は憎らしいでしょうし、キリスト教徒から申しますならば、仏教に必ずしも全面的に同意はできません。このようなことでありますので、この問題につきまして、公共福祉というものは——当時旅券法ができましたときに、共産党員というと、破壊主義者のように思われておりました。ちょうどメーデーの流血事件がありました直前に、最初の旅券法ができましたから、共産党の方は御迷惑なさったと思いますけれども、私どもも当時共産党に現在以上の偏見を持っておりました。しかし、そのときに質問がありまして、法務大臣の答えは、思想、信条、全部自由であって、共産党は合法政党であるから、刑法に触れない限り、共産党員であっても旅券法に何ら他と差別待遇はいたしませんという答えがありました。ところが、その後、実施するにあたりましては、この問題がしばしば障害になりましたことは御承知のとおりでございまして、その障害とは、すなわち、審査に手間をとったという名目のもとに期間がかかりまして、発給までの期間が明示されておりませんから、結局ある会議に出席しようと思っても、回答が延引しておるままに、ついに日は過ぎてしまいまして、船は出ていく、煙は残る、残る煙がしゃくの種、ありのままの事実はこういうことになった場合が非常に多かったのでございます。かくのごときことは公正を欠いておる。 かりにこれを外国の例にとってみますると、同時にまた、当時旅行法の解釈に対して政府当局が答えたことでは、国益を阻害する者というのは人物であって、そしてそれはギャングまたは密輸入業者、アヘン密売者または女子誘拐業者等であると答えております。同じことが外国の法令にもありまして、密輸及び外貨不正行為を行なう常習犯、海賊、奴隷商人、女子供誘拐業者、麻薬仲介者、故意に兵役をのがれようとする者——これは宗教的、良心的兵役の問題は別個になっております。憶病者で故意に兵役をのがれようとする者、こじき、浮浪者、詐欺常習犯で、公共の秩序、道徳を乱し、したがってそれによってその国の名誉を汚すおそれのある場合、こういうふうに詳しく列記してありまして、これが国益阻害の具体的定義であって、西郷法務大臣が言われたように、政党政派の、極端にいえば趣味、もっと系統的にいえば政策の相違、政見の相違によって人生を区別すべきことは、旅券法においてこの状況においてはできない。先ほどの西郷法務大臣のお答えは私は正しいと思うのでございます。 最初の旅券法ができたときにも、そのようにはっきりした御答弁があったにかかわらず、その後、それは、実行に移されませんでした。したがいまして、お尋ねしたのは、この法律の解釈にあたって、その基準となる両大臣の御答弁が速記録に載っておりますから、この問題が裁判になりましたときは、両大臣のお答えをもってわれわれはこの法案の解釈と考えたい、こういう意味で申し上げたいのでございます。 時間がありませんので、第二の問題に移りますが、第二は、今度は国による差別でございます。 このたびの問題は、昔は社会主義国を差別いたしましたが、いまは社会主義国の中の特定国をさしておるがごときものでございますが、また、そのために、未承認国、未条約国ということを考え出したのでございます。この窮余の一策は、主として朝鮮民主主義人民共和国、通称北朝鮮に問題があろうと察せられるのでございます。この問題につきまして、第一、憲法上に、中国はよいけれども、北朝鮮は悪い、北朝鮮は悪いけれども、チェコスロバキアはよいというような区別がどうして成り立つか、これは論理的に成り立たないと私は思うのでございます。このことは、憲法学者もそのように申しております。そうすると、問題は、基本的人権から離れた、きわめて卑俗なる利害の問題でありまして、実際ざっくばらんに申しますと、韓国政府がやきもちやきで、やぼでありまして、北朝鮮に貿易をしたり、参ったりした人がおりますと、ぐやきもちをやいて頭にきてしまう。韓国とは深い外交関係にもありますし、貿易、経済援助関係にも現実にございます。保守党の立場としては、これを無視することはできないことはよく存じております。しかし、いかに韓国といえど、基本的人権を無視してまであばれるということは、韓国の名誉を汚すものであると同時に、日本側といたしましては、国益阻害でなくて、朴政権の政策の阻害になるのでありますから、朴益阻害というべきであって、朴益阻害のためにわれわれが差別待遇を受けねばならぬ理由はごうもない。中国につきましては、蒋介石がその点は中国流におおらかでありまして、北京に参りまして、そして北京料理を召し上がったところで、世界の大局に影響するものでもない。滅びるときには滅びるし、興るときには興る。これは三国志に書いてあるように、天の勢いである。少なくとも蒋介石殿にはそのくらいの見識があると思いますが、朴殿にはそのような広いお考えがない。まことに残念なことであります。その朴殿が外務省のアジア局長をいじめまして、何かというとすぐやってきて、しつこく食い下がってくる。これにはさすがの外務大臣もまいりまして、いつぞやビニロンの技術者が日本に参りますときにも、石井さんのような聰明な朝日新聞出身のインテリ長老議員の方が、あしたはもう判こを押すとはっきり外務委員に約束しておきながら、翌朝、朴殿の使者におどされて、ついに判こを押さなかった。これは国益のためでなくて、朴益ではあるまいかと私は思うのでございます。朴益もまた国益に連関しておるではないかといわれましても、それならば、人権と関係のある問題でありますから、朴益の被害者になる者の身になってみれば、これにレジストする権利があることは、ジェファーソンのアメリカ憲法の解釈に詳しく書いてあるとおりでありまして、時の政府に都合がよかろうが悪かろうが、人間が待っておる本来の権利がある。この本来の権利は、政府に都合の悪いときもある。悪いときがあっても、なおかつ尊重せねばならぬ。私どもが、またリベラリストの皆さまが社会主義に一まつの不安を持っていらっしゃる気持ちはわかる点が一つあります。それはたとえ社会正義のためであろうとも、個人の人権を不当に弾圧するようなことはがまんできない。おそらく良心的ラジカルデモクラットの皆さんが共産主義に対して疑いを差しはさむゆえんはこの一点であろうと思います。私ども人道主義的、科学的社会主義者としまして、やはり自分の権利は守るけれども、それが極端なファシスト、ギャングまたは人さらいのような手合いでない限りは、保守的であるからといって、正常な市民の人権を侵害すべきものでないと私は確信いたしております。したがいまして、社会党内閣ができましても、愛知さんにパリやワシントンに行くパスポートを出し惜しんだり、時間を延ばして、船は出ていくというようなつらい思いをさせたくないと思うのでございます。これが野党、与党の正義の、すなわち憲法の共通のルールであろうと私は思うのでございます。 そこで、この問題がいかに危険な問題であるかということを申し上げますと、思い出してもぞっとしますが、ちょうど四月の春雨のころでございました。外務省の井口事務次官のところに参りまして、私はモスクワ行きの旅券を発給してもらいたいことを督促しました。私が国益阻害の人物でないことはすでに明確になった。それは外務省当局がそう言うのですよ。あなたは尊敬すべき議員であり、紳士であるから国益阻害の人物ではない、第二には、あなたの生命、財産を保護するために行かせない、そのためにパスポートを出さないのであるから、あなたに対する好意であると、こう言うのです。そこで私は、急に私に好意を持つようになってくれてうれしいけれども、男が男に対して好意を持つのは多少レスビアンの傾向がある、女の外務次官であるならば、私は喜んでその好意を受けたい心持ちにも多少ならないでもないが、しかし、あなたは、去年私が肺炎で死ぬような思いをしたときにも、桜草一つ持って私の見舞いにも来なかった、私の生命、財産を心配するのは私個人である、私の妻である、もし外務省の言うがごとく生命、財産に危険があるならば、まず私が行かないし、私の妻や娘たちが行かせないであろう、こう反駁いたしまた。そうすると、井口さんは返すことばもなく、横に西欧課長さんもおりまして、返すことばもありませんから、返すことばもないのに旅券を発給しないことは、これは国内に例をとってみれば、私が下関行きの切符を買おうとするのに、あなたが東京駅長であって、帆足君は下関まで行けば、九州生まれだから、必ず門司に寄るだろう。九州に行けばフグを食べるのは常識であって——ときには肝も、くちびるをなでながらしびれない程度に肝を食べるのがわが家の得意とするところでございます。したがって、生命、財産の危険があるから、下関行きの切符は出さない、こう東京駅長が言ったら、これは何であるか。ほんとうに私のことを心配して門司に行かせないならいいけれども、門司に私が行けば、自分の恋いがたきがいて、帆足君と仲よくなるおそれがあるという下心があってそうしたのならば、あたかも当時の外交政策に多少じゃまになるから行かせないというのと、類推すれば同じことです。そういうことをすれば、それは憲法違反ではないか。例をわかりやすくいえばこういうことです。これほど言ってもわからないならば、あなたは行政官としての資格はない、ギャング、モモンガ、赤シャツ、野太鼓、古ダヌキ、煮ても焼いても食えないやつ、法律違反者、ありとあらゆる形容詞を私は並べまして自覚を促しましたところが、一言も答えません。そして言うことには、帆足君、これは力と力の問題である、君のほうの力が強ければ、力で多数で押し切ったらいいだろう、ぼくのほうは外務次官をしておって権力を握っているから、力を握っているから、君にやらないだけの話だ。そこで私は、それでは裁判に訴えよう。君は裁判に訴えたところで間に合わない、裁判は半年や一年はかかる、その間にくたびれてしまうであろうし、たぶん政府が負けるであろうけれども、力で押し切るだけの話である、こう言いましたから、やはりあなたは行政官でなくて、ギャング、モモンガのたぐいである。赤シャツ・野太鼓・古ダヌキ・私はこう言いましたら、では名誉棄損罪で私を訴えると言いますから、訴えていただいたら私の最も喜ぶところ、直ちに洛陽の紙価は高まり、人気は向上し、私はその何倍の悪罵をもって——こういう時の行政権で法律を曲げることはできないのです。三権分立でございますから、行政官は行政上都合が悪くても、憲法の規定と法律の規定はやはり守らねばならぬ。帆足計君がモスクワに参ることが、当時のダレス長官及び司令部の気にさわって、外務省が多少窮境に立っても、それは基本的人権であるから、これはやむを得なかった、基本的人権だけは守る政府である、こう言えば、ある意味において国威の発揚になるではないか、こう言ってけんか別れをしまして、それはたいしたことはありません。 ところが、二度目に池田正之輔君と一緒に北京に参ろうとしますと、十一名の議員のうち私にだけ旅券をくれないのです。なぜくれないのかといいますと、君にやらないのは、前に旅券法違反をしたからだ。旅券法違反をしたという証跡はどこにあるか。当時裁判をいたしまして私は勝ったのでございまして、政府は負けたのでございます。私の家内の証言によりまして、モスクワに行くのに生命、財産の危険はない、たとえ北極探険に行っても徳川義親公にお供をしてマラヤにトラ狩りに行っても、それは私の任意に選ぶ危険であって、政府がとめる危険は、ペスト、コレラの流行、その地方に広く内乱が発生した、そういうときに警告をして、そこに船が行くのをとめる、そういう場合に限られておるのであって、もっと危険なのは、当時は新宿裏のほうが危険でありましたから、うちの家内は、主人が二次会、三次会をやって新宿裏を散歩するよりも。モスクワに行ったほうが安全だと思いますと証言した。こういうことでありますから、裁判官もにっこり笑いまして、これは帆足計君をモスクワ経済会議に出したくないという一政党、一内閣の政策のために、彼の基本的人権を奪ったのであるから、これはいわれなき言いがかりであるという判決が下ったのでございます。 この例をもちましてよくわかると思うのでございますが、しかるに岡崎さんは——当時オニゴンというあだ名でございますから、オニゴンといったほうが言いやすいし、きわめて印象的でございます。この富士自転車の社長、そして古手官僚のオニゴンが、私に対してこう言いました。君が訴訟で負けなかったことは、もう事務官から聞いて知っておる、しかし、ぼくは復讐のためにこれをやるんだ、復讐の思いに燃えてこれをやるのである、したがって君だけを省いた、十一人のうち十人だけきょう出発した、きみだけがきょう残る、ぼくはこれによってすがすがしい気持ちがしたと言った。オニゴンにすがすがしい気持ちをさせるために旅券法というものができているものでしょうか。法律を、自分がすがすがしい気持ちをするために仁丹の代用に旅券法を使っていいものかどうか。オニゴンまだ生きているならば、この速記録を読んで反省してもらいたいと私は思うのでございます。 このような外務大臣に会った私はまことに不幸なものでありまして、新聞記者が参りまして、帆足さん、俊寛の気持ちはどうですかと言いましたから——当時、風見章氏はさすがにすぐれた先輩です。私はそういう恥ずかしいことはできない、帆足君と一緒でなければ出発しない、最初の道を開いたのは帆足君ではないか、その人がいまや犠牲に供せられて、自分が団長として行くということは、それは道義が許さないから、私はあなたが旅券をもらうまで飛行機を延ばす、風見章氏はそう言いまして、私は涙を流してその道義をうれしく思いました。新聞記者には、俊寛の気持ちはどうかとひやかされました。すると、その晩ラジオを聞いておりますと、突然外務大臣がマニラに出かけて、犬養健法務大臣が外務大臣兼任になったというラジオ放送がありました。私はがばっとはね起きて、天はわれに幸いを与えたもう。近衛内翻りときに、私は、愛知さしも御承知のように、内閣の嘱託をしておりまして、近衛さんの隣の部屋に、富田官房長官を助けて一緒に住んだ時代がありました。犬養さんのところに参りまして事情を詳しく話しますと、犬養さんは、それはあまりにもひどい、ぼくは人道主義の立場から、そういう話を聞けばがまんできない、人は私を弱虫のように言っておるけれでも、一片の友情も持っておるし、それでこのために何とかするから、いわば鬼のいぬ間の洗たくということばがあるから、二日だけ待ってもらいたい、オニゴンのいない間に私が旅券を発給する、こう言いまして、二日後にめでたく旅券をもらいまして、風見さんと一緒に北京に参りましたときには、さすがの池正も腰を抜かさんばかりに驚いて、君も腰の強い、意思の強い男だと池正にほめられたことがあるのであります。 このような卑俗な例を長々と申し上げましたのは、この旅券法という一片の法律の中に、人間の基本的人権という問題があること。西郷法務大臣におかれては明治維新を御承知でしょう。維新の日までは、百姓は土地に縛りつけられて農奴とされておって、移動の自由はありませんでした。鹿児島からかってにお江戸に行くこともむずかしく、大神宮さま、お伊勢参りがやっと許されるのが限度でございました。いわんや海外に出ることは許可されておりませんから、ペルリの黒船に乗って海外の事情を知ろうとした吉田松陰は、御承知のように刑場の露と消えました。ただいまそういうような国の迫害がなくなりまして、自由、平等、博愛という人類の理想がだんだん前進いたしまして、いまでは国際連合までたどりついたわけでございます。 このときに、未承認国の中に差別をつけるのは、一体どういう法律と憲法に従っておやりになるのか。私は、その根拠が見つからずに、外務大臣があとで苦労されることを見るに忍びず、側隠の情から申し上げるのでございます。外務省の属僚諸君は——属僚諸君ということばは悪いです。お役人の方々は、輔弼の責任が足らないのでございまして、あとで外務大臣に苦労させることのないように、特に法制局の方、きのうも第三部長が見えておりましたが、高辻さんくらいに頭のワクが大きいならば——私が最初にモスクワに参りますときも、高辻さんはこの問題を深く理解されておられた方の一人です。ですから、この問題が憲法及び人権憲章と抵触するということをもう一度法制局で御研究ください。なんなら私が講師となって出席してもけっこうです。 こういう重要な欠陥がありますから、それではどう直せばよいかとなれば、一つは実際の問題ですから、与党のメンツも立てねばなりません。いかに正論を唱えても少数党であって、そして少数党の言うことがいつも通るとなるなら、石が浮かんで木の葉が沈むということになりますから、われわれは自分が少数党であるということも知っております。しかし、人権に関する問題、論理に関する問題は、与党の諸先輩にも理解してもらえると思うのでありまして、問題の点がそこにあるとするならば、しからばその弊害を最小限にするのにはどうすればよいか。 第一は手続きの問題であると私は思う。第二は、国によって差別する法的根拠がないから、実際上のお取り扱いによって差別がほとんどない程度にすること。それから事前審査の制度を設けること。それから審査期間を——黙っておっていつまでも返答せぬというのが一番悪いくせでございます。審査期間がいつまででなくてはならぬということを置くこと。それから、国の承認、未承認、個人の思想、信条のいかんによって渡航の差別待遇をしてはならぬ。差別待遇をし得ることは、ただいまの例にあげましたようなギャングとか阿片輸入者とか十年以上の刑を受けた者とか、そういう具体的例をもって示して、一方的にみだりに差別待遇をしてはならぬ。私は、若干修正の余地があろうと思うのでございます。あるいはまた現状のごとく横すべりということばは悪いのですけれども、旅券というものは、これを法律的に見ますと、戸籍謄本と同じでございます。その人間が異常な精神錯乱の人物でないということを証明する戸籍謄本でございます。問題はビザにあるのでございます。ビザによって相手国が受け入れないのでございますから、本質はむしろビザにあるのでございまして、旅券は戸籍謄本と同じであるというのが、法学者の大体定義でございます。 これらのことも御考慮くださいまして、私のほうも研究いたしますから、また理事懇談会等におきまして、それではどの程度に歩み寄り、どの程度に修正し、修正ができないならば、どの程度に運用上の了解事項を持つか等の点を御審議願いたいと思うのでございます。 私がただいま申し上げましたことは、一社会党の党利党略のために申し上げたのではなくて、海の国日本、船の国日本、貿易の国日本、そしてやがて世界に生きねばならぬ日本、そして人権と自由を尊重せねばならぬ日本、そういう立場から明治を顧みながら申し上げ、さらに最近オニゴンの例など、自分の苦い体験からこれを申し上げたわけでありますから、再び敬愛する両大臣がオニゴンなどということをいわれないように、そういう機会をつくらないように、担当の各部局長の諸君も補弼の任を尽くされまして、何かこの辺によい打開策はないかということを御研究くだされ、また理事懇談会におきまして、何とか、貿易の国、海の国日本の目先の国益でなくて、真実の国益を、悪益でなくて、日本国民の国益を守るためにどうすればよいかということにも、いましばしの慎重な御審議をお願いいたす次第でございます。 少数党でございますから、言論にも限界がありますが、御情聴くださいまして、両大臣に深くお礼を申し上げます。 外務大臣から前向きのお答えがございますれば伺っておきたいと思います。
○愛知国務大臣 昨日に引き続きまして、本日も、帆足委員の御体験から出ておる切々たる御意見を拝聴いたしまして、私どもとしても非常に考えるところがございます。 ただいまお述べになりました中で、私はいままでもいろいろ御説明につとめておるつもりでございますが、法律案の修正ということは政府としては考えられませんけれども、ただいまお述べになりましたようないろいろの御意見を十分ひとつ念頭に置いて、運用上も善処方を考えてみたい、かように存ずる次第でございます。
○帆足委員 それでは、委員長並びに理事各位におまかせいたしまして、私はただいま物価の委員長をいたしておりまして、そちらのほうに戻らねばなりませんから、よろしくお願いいたします。 それから法務大臣、昔なじみの法務大臣でありますからよろしく。
○西郷国務大臣 ただいま外相から御答弁がございましたが、私も全く同感でございますから、そういう線で今後とも努力をしたいと考えております。
○穗積委員 議事進行で一言お願いいたします。 実はさっきから私審議について政府の御答弁を伺いましたが、重複して同じことを聞きませんけれども、まだ法務大臣からぜひお尋ねして御答弁をいただきたいことがございます。ごく簡単に数点にわたってでございますから、たいした時間はとりませんから、次の機会にぜひ御出席をいただきますように、当然のことですが、あらかじめお願いしておきます。よろしく御考慮をいただきたいと思います。よろしゅございますね、法務大臣。どうですか。
○西郷国務大臣 委員会の出席要求がございますれば出てまいります。
○北澤委員長 この際、暫時休憩いたします。 午後一時三十五分休憩 ————◇————— 午後四時三十四分開議
○北澤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。 旅券法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を続けます。 質疑の通告がありますので、順次これを許します。戸叶里子君。
○戸叶委員 私は、この間質問をいたしましたのに続きまして、二、三点伺いたいと思います。 まず最初に伺いたいことは、十六条に「(外国滞在の届出)」というのがございまして、これは旅券の名義人で外国に住所とか居所を定めて三カ月以上滞在する者は、もよりの領事館なり何なりに届け出をしなければならないということがあるわけでございますが、これは国交回復の国は何ら差しつかえないですが、未回復の国の場合、三カ月以上滞在ということになった場合にはどうしたらいいのか、この点をはっきりさしておいていただきたいと思います。
○山下政府委員 大体においてこの条項は国交のある国のことを想定しておりまして、たとえば国交のない中共などに行かれた場合にどうするかということは、まだきめておりませんけれども、できれば郵便などで香港の総領事館なりに届けてもらうということにしたいと考えて検討しております。
○戸叶委員 中国の場合はそれでいいかもしれませんけれども、ほかの国交未回復の国の場合は、やはり香港の総領事館ですか、朝鮮にしてもベトナムにしても東ドイツにしても。
○山下政府委員 それもこれから十分検討して、どこに届けていただくかをきめたいと考えております。
○戸叶委員 ちょっとその御答弁は残念だと思いますね。というのは、いま旅券法を審査しているのですよ。そしてそちらでは、どうせもう一カ月や二カ月のうちには通そうとしていらっしゃるわけでしょう。それだのに、そういうふうな三カ月以上滞在されたときにはどうしたらいいかということがきめられないで、旅券法を出されているというのは、私はちょっと納得ができないですね。そういうときにはこうするということをきめた上でお出しになるのがあたりまえじゃないですか。
○山下政府委員 これはこの前も御説明しましたように、まず公館のある地域、ここで紛争が起こると保護の事務が多くなるので、いろいろ必要があるために記録をつくって、また学校の経営などにも参考にいたしているわけでありますが、こういう公館のないところにおいてはいままでやっていないわけで、これから香港なり——ハノイの場合には香港がやはり都合がいいと思います。それから北鮮の場合どうするかという問題もこれから出てくると思います。また東独の場合には、できればベルリンの総領事館にしたいと考えておりますけれども、最終的に実施いたしますのは、これが通りましてから、おそらく十カ月くらいしてから施行になると思うので、それまでにはぴしっときめたいと考えております。
○戸叶委員 早くおきめになっておいていただきたいと思うのです。 そこで、私はきのう参考人の意見をいろいろ聞いたんですけれども、その中でちょっと了解できなかった問題等がございますので、その点を二、三はっきりさしておきたいと思うのです。参考人の意見を聞きましたところが、いわゆる横すべりですね、それを一ぺんした人は未来永劫旅券はもらえないからたいへんだということを田上先生でさえもおっしゃったわけですね。そこで、私は、これまでは外務省のほうの答弁では五年というふうに聞いていたのですけれども、学者の先生でさえも未来永劫もらえないようになるということをおっしゃられたものですから、ちょっと気にかかっているのですけれども、この点をはっきりさしておいていただきたいと思います。
○山下政府委員 田上先生はおそらく旅券法のほうを考えて、旅券法においてはそういうことになっているということを言われたのだと思いますけれども、刑法の三十四条ノ二項に、罰金刑の場合には五年が時効だということが明記されているので、これは両方を読みまして、実際五年で時効になる、こう解釈しております。
○戸叶委員 そうしますと、旅券法の表面上はそうなっているけれども、刑法の三十四条ノ二項で、五年たてば自然にその刑は——刑といいますか、禁止されている期間というものは消えるんだと、こういうふうに了解していいわけですね。 そこで、もう一つの点ですが、十三条の「(一般旅券の発給等の制限)」のところで、やはり、参考人の意見として田上先生が述べられたことがございます。そのときに私ちょっと了解できなかったのですが、十三条の一、二、三号ですね。これはつまり死刑とか長期五年以上の刑に当たる罪について訴追されている者とか、禁錮以上の刑に処せられてその執行を終わるまでまたは執行を受けることがなくなるまでの者、こういうところが一、二、三号ですけれども、こういう人たちはほとんど旅券はもらえませんというふうなことをおっしゃったと思います。私は、この関係で旅券をもらっている人もあるように聞いていますけれども、この一、二、三号に該当する人で旅券をもらっている人もあるんじゃないでしょうか。この辺のところをはっきりさしていただきたい。
○山下政府委員 これはケース・バイ・ケースに応じて関係当局とも相談しまして、実際に取り扱いをきめておりますけれども、たとてば四十三年の場合には、二十七件中二十三件に旅券を出して、実際に拒否した件数は四件でございます。
○戸叶委員 そうしますと、いわゆるこの条項で読みますと、執行猶予などになっている人でもケース・バイ・ケースで旅券を出していたのだ、こういうふうに了解していいわけですね。そのあとの四号で、二十三条の規定に該当して刑に処せられた者、いわゆる横すべりですね。このことに対しまして田上先生は、これは秩序罰であるから出すのだ、むしろ制限は少ないと考えてもいいというようなことをおっしゃったのを私は記憶しております。つまり、一、二、三号のほうは非常にきびしく制限されるのだ、しかし、四号のいわゆる横すべりをした人のほうの刑は、むしろ秩序罰であるから制限は少ないと考えていいんだというような証言をされたのですけれども、私はこの点をちょっとふしぎに思いまして、あの日に外務省に聞きたかったのですが、参考人だけに聞くというのでそのままにしてしまったのですが、これはどういうふうに理解していいか。田上先生おっしゃったように理解していいのかどうか。いま伺いますと、一、二、三号の場合には、執行猶予の場合でも、二十七人のうちで二十三人まで許していたということになりますと、その逆で、いわゆる横すべりの人はたいへんきびしくするのだというふうなことになるのかどうか、ちょっとその辺のところを伺っておきます。
○山下政府委員 これはいままで実例がないわけでありまして、今後起こるケースで、もし二十三条の前段のほうの例があればなおいいのですけれども、これもあまり例がありませんで、実際には、今後実際のケースに当たってみないと、われわれとしても何とも言いかねる問題だと考えております。
○戸叶委員 実際になってみないとわからないとおっしゃるのですけれども、この文章といいますか、この法文から見ますと、一般旅券の発給等の制限でしょう、十三条は。そうしてその中に「外務大臣又は領事官は、一般旅券の発給又は渡航先の追加を受けようとする者が左の各号の一に該当する場合には、一般旅券の発給又は渡航先の追加をしないことができる。」というので、その追加もしないし、それから発給もしないのだというふうなきめつけ方じゃないわけですね。そこに余裕が残してあるわけですね。だから、そういう意味からいうと、田上先生のおっしゃったのもなるほどと思われますけれども、先生自身がお話しになったのは、一、二、三の刑事罰を受けている人にはきびしくすべきだけれども、いわゆる横すべり的な人には情状酌量してもいいのだ、これは刑事罰を受けるものじゃなくて、秩序罰だから、こちらのほうをゆるくしてもいいのだということをおっしゃったと思いますけれども、こういうお考えは、外務省はとられるようなお考えはないかどうか。しないことができるであって、しなければならないというのと、しないことができるというのは、法律の書き方が違うと思うのですが……。
○山下政府委員 「しないことができる。」となっておるのでありまして、必ず渡航先追加をしない、旅券を発給しないというわけじゃないので、これは一、二、三のところで先ほども申し上げましたように、三十件くらいのうちでわずか四、五件しか拒否してない実情で、新しく設けた二十三条の二項のあれに対してどの程度これが比率が変わってくるかということは、私もちょっと申しかねるわけで、おそらく同じような比率になるのじゃないかというふうに理解しておりますけれども……。
○戸叶委員 大切なところですから、くどいようですけれども、もう一度申し上げますが、そうしますと、二十三条に該当する人は必ず旅券を取られちゃって、そして五年間は絶対に動かすことはできませんということでもない、ある程度そこには含みがあって、ケース・バイ・ケースで違うのだというふうに理解してもいいでしょうか。この辺をはっきりしておいていただきたい。
○山下政府委員 それは当然いまの十三条のところに書いてありますように一、二、三と同じようなことになって、その一部の場合に旅券を発給しないというようなことがあるということになるのじゃないかと考えております。
○戸叶委員 私は、この旅券法で罰則を除けば一番いいと思うのですけれども、罰則を除くなり、あるいは罰則を一部修正するなり、何かそういうふうな御意思はございませんか。大臣にちょっと伺いたいのですが……。
○愛知国務大臣 実はこの旅券法の改正については、いつも申し上げておりますように、もっと早く提出して御審議を願いたかったわけですが、昭和四十年以来今日まで時間がかかってきたというのも、いまおあげになりましたようなこういう点についても、なかなか議論がございまして、むずかしかったわけでございます。やはり法律の上で違法ということになるものについて罰則を全然つけないということは、法の秩序を守る、あるいは立法に当たる者の心がまえといたしましても、御審議を願う政府の立場からすると、どうしてもこうせざるを得なかった、こういうわけでございますので、私は、戸叶委員のお話しになることもよくお気持ちわかりますけれども、法案ということからいって、政府に罰則をやめるような修正に応ずる気持ちはないかと言われる点については、まことに遺憾ながら、その気持ちはございませんと御答弁せざるを得ないわけでございます。
○戸叶委員 罰則規定があるからには、その罰則を受けないで済むようなことを考えていただかなければならないと思います。そういう点をよくお考えになっておいていただきたい。これは要望として申し上げます。 それからもう一つのことは、日本は査証免除の取りきめというのをアメリカとの間にしておりませんね。日本とアメリカとの間は非常に交通の行き来が激しいと思うのです、通商航海条約なんか結んでおりますから。ところが、ほかに査証免除の協定を結んでおる国が何カ国かあるわけですが、日米間にそういうものを結ばないという理由は何かあるのでしょうか。
○山下政府委員 従来から、アメリカは、外国から移住してくる者についてはかなりきびしい制限をしておりまして、ヨーロッパの国もアメリカと何回も査証免除の協定を交渉しております。われわれも話し合いました。しかし、現実には、アメリカの場合はカナダ、メキシコ以外とは査証免除の協定をしておりませんで、そのかわりに、四年間通用の査証を出すということになりまして、いまでは一回アメリカが査証を出せば、目的は何であれ四年間は通用するという査証をお互いに出し合っております。
○戸叶委員 わかりました。 それでは、先ほど大臣が罰則規定をなくさせるようにいろいろと考えるというようなこともあり、また、この前にそれに似たような御答弁をいただいておりましたので、要望だけを申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。 その一つは、なるべく旅券法は一、二年中に改正していただきたい。というのは、やはりある程度の制限が行なわれておりますので、これを改正してもらいたい。 第二は、十三条の一項五号の運用については、渡航の自由をそこなわないように十分に考慮をしていただきたい。つまり、大臣なり何なりの判定によって国の利益を害するとか公安を害するというようなところですね。だいぶいままで長いこと問題になって、今後においても問題になるのじゃないかと思われるところ、この点を考えていただきたい。 それからもう一点は、二十三条の二項の罰訓の運用はついて、情状酌量のある配慮を加えていただきたい。 この三つの点を要望したいと思いますが、これに対する御答弁を伺って、私の質問を終わりたいと思います。
○愛知国務大臣 まず第一の、さらに一、二年の機会に改正を考えよという御要請でございますが、これは一般的に旅行の自由ということが基本的な人権の問題でございますし、それから国際情勢も日に日に新たになっていくと思いますので、そういうことも加味いたしまして、とくと検討いたしだいと思います。 それから二番目の十三条一項五号の問題は、これもしばしば申し上げましたように、ここに並んでおります一号から四号までが非常にきびしいものでございます。それと並べておるわけでございますから、運用上まことにこれは限定的に良識をもって運用すべきものである、かように存じております。 それからその次は、二十三条の罰則の問題でございますが、これもただいま山下部分からもお答えをいたしましたが、これは違法の事実があれば罰金の対象にせざるを得ないわけでございますけれども、たとえばその者の旅券のその後における扱いその他につきましては、御要望のありますような点、十分しんしゃくしてまいりたい、かように存じます。
○北澤委員長 米田東吾君。
○米田委員 私は、今度の旅券法一部改正のいわゆる問題点というものが、大体いままでの審議を通して明らかにされていると思いますし、改良部分は、ほとんど一致してこれについては賛成の各党の態度のようでありますが、これとあわせて抱き合わせで出てまいっております改悪部分、この部分については、これは相当な基本的人権にもかかわる重要な問題を含んでおるということで、審議がいま尽くされておるという段階だと思うのであります。 〔委員長退席、田中(榮)委員長代理着席〕 私は、その改悪部分の中でも、とりわけ第十三条一項五号、この運用にあたって出てきております特に朝鮮民主主義人民共和国、未承認国の中でも、政府の資料からいきましても、一番差別扱いを受けておるこの北朝鮮でね、これとの関係を大体重点にして、政府の御見解をお聞きしていきたいと思っておるわけであります。 この法律が制定されました昭和二十六年の十一月十六日、これはこの旅券法がこの委員会を可決成立、通過した日でございます。いまの委員長が当時自民党を代表して賛成討論を述べておられるのでございます。そのときの議事録を私ずっと取り寄せまして検討いたしておるわけでありますが、その議事録でわかりましたのは、当時の大橋国務大臣の所見等によりますと、いま問題になっておるような十三条一項五号の解釈、そして政府の行政権、運用権、こういうものが出てくるような状態ではない、こういうふうに思われるのでありますが、一体それがいつからどういうふうに変わったのか、きわめてこの点は重要だと私は思うのでございまして、その辺からひとつお聞きをしていきたいと思うのであります。 〔田中(榮)委員長代理退席、委員長着席〕 きのう参考人の方からも、この点については意見として述べられておるのでございまして、現にこの十三条一項五号の運用にあたって、卒直にいって、一番被害を受けておる日朝貿易等の関係の業界の方々、これはおそらく骨身にしみておるだろうと思うのでありますが、私も、きのう参考人の御意見をそういう面で非常に切実なものとしてお聞きをしたわけでございます。 そこで、大臣にお聞きしたいのでありますけれども、この議事録をもう一回ひとつ大臣から確認していただく意味で、私は読んでみたいと思うのであります。 共産党の林委員からの質問であります。質問の内容は、要するに、この十三条一項五号の国益、公安条項、これが乱用されるのではないか、特に思想とかあるいは所属する政党のいかんによって乱用されるのではないかという心配から質問を展開されておるわけでありますが、これに対して大橋国務大臣の答弁でございます。関係の部分だけ私読むわけであります。「御指摘のごとく、第十三条の特に第五号につきましては、これの記載のいたし方がきわめて漠然といたしておりますので、これを具体的に運用いたします際において、濫用を戒める必要があるということは、これはまったく同感でございます。法務府といたしましては、本案を実行いたしますにつきましては、外務当局におきまして必ずもっと具体的な説明を関係機関に指示されて、濫用を戒められるということを期待いたしておるわけでございまして、その詳細な具体的な項目を外務省において御研究になるに際しましては、法務府といたしましても十分御協力いたしたい、かように考えております。」こういう答弁でございます。ここでは、いわゆる乱用については十分自戒をする、しかも外務当局が特に慎重にその点を配慮されることを期待をするし、法務省としても協力をしていくということを明確に言われておるわけであります。 それからいま一つ、黒田委員のほうからこの第五号が乱用されるおそれがあると予言しておられまして、後日人権じゅうりんの問題を起こさないように、そういうことで林委員と大体同様の質問をされておるわけであります。これに対しまして大橋国務大臣はこういうふうに言っておられます。「私は本法を実施いたします際におきましても、必ず外務当局におきまして、アメリカの例にならったような具体的詳細なる項目によりまして、この濫用を予防する措置を講ぜられるということを期待いたしておりますし、またそのことにつきまして、法務府といたしましても、できるだけ御助力をいたしたい、かように考えておる次第であります。」こういうふうに明確に繰り返しておられるわけであります。 そこで、私は大臣からお答えいただきたいのでありますけれども、この法案が審議されておるいわゆる立法の精神というものは、こういうふうに当時の外務大臣の答弁に対して法務大臣が付言されて、そして乱用を戒める。しかもこの十三条一項五号については、これはきのうの参考人も言われておりますけれども、「刑法の内乱罪、外患罪、国交を害する罪等はこれに当るでありましょうし、また刑法以外の法律としましては、外国為替及び外国貿易管理法、麻薬取締法、銃砲刀剣類等所持取締令等の違反になるごとき行為は、」要するにこれに該当する。これは黒田委員の質問に対して、大橋国務大臣がはっきりこのように答弁をされておるわけであります。要するに、これは刑法上の、特にここに列挙してありますような、私が読み上げましたような罪に該当するもの以外は、ここでいう国益、公安というこの条項には当てはまらないということもいわれておるわけであります。こういうことが確認されて、しかも乱用をしないということが明確に政府から答弁をされて、そうしてその上にこの法案が通っておるわけであります。この国会における大橋国務大臣の答弁、考え方というものは、現在も愛知外務大臣において生かされておると私は思うのでありますけれども、まず、この考え方について大臣から確認されますか、どうですか、お聞きをしておきたいと思います。
○愛知国務大臣 この点は、私も、今回の御審議にあたりまして、しばしば私の見解を申し上げておりますが、実は先ほども申し上げましたように、第十三条に列挙されております他の各号をごらんいただきましても、これは罪にいたしましても非常に重い場合を規定いたしております。そういう点から申しましても、立法の趣旨というものはおのずから限定的である。したがって、国益を害する行為、「著しく且つ直接に日本国の利益」を害するような行為というものはどういうものかといいます場合に、昨日から今日にかけまして帆足委員からも非常に詳細に御意見がありましたが、たとえば帆足委員が外務大臣になられたとき、私は日米親善論者だから、そのときの外務大臣と意見が違うからといって、私がアメリカに行く旅券を申請するような場合に、これを拒絶することはまさかあるまいな、まさにそういうふうに解釈、運用をいたすべきものである、かように私は考えるわけでございます。 したがいまして、重大な犯罪行為とか、あるいは重大な日本の国益を害するような反逆的な行為とかいうようなことが念頭にあって、これは律すべきものである。さような意味合いにおきまして、ただいまこちらにも第十二国会当時をはじめといたしまして、過去における政府の見解あるいは御質疑等を議事録によってもここに持っておりますけれども、前々から政府の見解として申しておりますことはそのとおりでございます。それ以上にこれを広げるということは全然考えておりません。
○米田委員 私は本委員会にきょう初めて出ておりますので、過去の委員会における大臣の御答弁は残念ながらお聞きしておらないわけであります。それで、くどいようでありますが、私のお聞きしているのは、この十三条一項五号というのは、いわゆる国益、公安条項、それはここに当時の法務大臣が言っておりますように、そういう刑罰に値するような限られた者が渡航する場合にはお断わりする条項になる、こういうことであったのが、現在は外交上の配慮というものがこの条項を根拠にして行政当局によって執行されておる。これは従来の例からも、きのうの参考人の御意見からも、それからまた私どもが承知しておる点でも、そういえると私は思うのであります。したがって、いま大臣は、いままでしばしば答弁したとおりだとおっしゃいますけれども、どういう御答弁をされておるのか私はわかりませんけれども、大橋国務大臣が二十六年十一月十六日、これは第十二国会でありますが、この国会で答弁されたその精神というものは、愛知大臣も確認されるのかされないのかということです。されるとしたら、いまの外交上の配慮というものが一体これに付加されてよろしいものかどうか。どういう事情でいつからそういうふうに変わってきておるのか、その点を実は私はお聞きしておるわけでありますから、ひとつお答えをいただきたいと思います。
○山下政府委員 第十二回国会において、法制局の林政府委員の答弁の中にも、「必ずしも国内法で刑罰法令のどの場合に当るというだけに限るわけではない」ということを申し上げておりまして、その当時から必ずしもいわゆる国内の犯罪だとかそういうことだけではないということを申しておりまして、その翌年における——帆足委員からいろいろ話がありましたけれども、二十七年のときにすでに問題が生じたのが、これが十三条一項五号の、モスクワの経済会議に出るという問題で議論されてあります。
○米田委員 そういうことを聞いておるのじゃないのです。私は、これはやはり重要な問題でありますから、大臣にいまお伺いしているわけであります。帆足先生の関係は、私も記録でわかりますけれども、それは要するに十三条一項五号、あなたのほうがそこに根拠を求めて、国益に反するということで断わった。それから争いが出て、これは繰り返すまでもない経過をたどっておるわけであります。だから、この立法の段階においてはそういうことは予想しておらない。また、国権の最高機関である国会しそういうことを認めておらない。だから、いつからそういうふうに変わったのか、こういうふうに私はお聞きをしておるわけであります。いまあなたが読まれたことは、少なくともこの日にこの法案は採決をされておる。ずっと討論が続けられて、賛成討論、反対討論が出て、そして旅券法は衆議院の外務委員会では多数で可決をされているのでありますけれども、この記録の中には、あなたがおっしゃったようなことは出ておりません。あとかから考えたことじゃないかと私は思うのでありますが、ひとつ大臣からその点明確に御答弁いただきたいと思います。
○愛知国務大臣 本件につきましては、ただいまお読み上げになりました当時の大橋国務大臣の見解、こういう見解は現在と変わっておりません。同時に、同じく第十二国会当時、あるいはその他の機会におきまして、国務大臣あるいは政府委員が責任を持ってお答えいたしたこと、これ全部が一つの国会における政府の公式見解でございますから、その範囲を出るものではございません。その中におきまして今後においても運用してまいる。従来の政府の答弁におきましては、日本国の刑法の第何条何条という各条項に照らした犯罪というものだけには限定しておりませんというのが、ただいまの山下政府委員の答弁でございます。そのことは、従来の議事録の上においても明らかになっております。そしてしかも、事柄の性質上不明確でありますから、そこを突き詰めて御懸念をお持ちになるのだと思うのでありますけれども、これにつきましては、昨日も申し上げましたように、政府の責任でございますから、なお一そう良識をもつて、決して過去において起こりましたような不必要な論争や御迷惑をかけるようなことはしないで、運営に当たってまいりたい、そういう私どもの政府の気持ちというものを率直に今回の御審議の際にも申し上げている次第でございます。
○米田委員 大臣の後段の御答弁については私もよくわかりますので、いまさら何か過去のことをほじくり出してどうこう言っているわけではありません。しかし、これはこの法案の審議にあたりましてきわめて重要な問題なのです。それから、いま法律改正をされようとするその部分は、さらにその危険性がより強まってくる内容を含んでおる、そういうことでありますから、私は真剣にお聞きをしているわけであります。 そこで問題は、きのうの田上教授の御意見の中にもありましたけれども、この国益、公安条項というものは、外交上の配慮というものが含まれるのかどうか。これは私は大いに議請のあるところではないかと思うのであります。時の政府の政策やあるいは外交的なテクニック、いろいろな配慮によっていわゆる国益、公安というものが常に変わっていくということでも、これはたいへんなことだと思うのです。しかし、全然否定していいかどうかということになりますれば、これまた議論があるし、幾つかの説もあるということも私は聞いているわけであります。しかし、これらはやはり主導権者である国民の立場からいたしますと、基本的人権である憲法第十三条の精神、憲法第二十二条の精神というものは、より最大限に守ってもらわなければならない。ある意味では、それはこの外交的配慮というものに優先する最も基本的な権利であるし、それを生かすのが政治ではないか、それを生かすのが国益ではないか、こういうふうにも思うわけであります。したがって、私は、野放しにこの外交上の配慮ということがいわゆる国益、公安そのものだというふうに認めることはできないのであります。こういう点が私は一番重要な点だと思いますが、これにつきましては大臣のお考えはいかがでございましょう。
○愛知国務大臣 お尋ねのお気持ちは非常によく理解できます。ただいまもお話しのとおり、国益というものの中に外交的な考慮というようなものが全然入らないのか、入ってもいいのかということになりますと、私は入らなければならない場合もあり得ると思います。これは最高裁の判例などにも認められておるものもございます。要するに、先ほど申しましたように、できるだけこれは限定的に、そして人権というものを尊重して運用する。ただ、これには昨日来私もぎりぎりのところまで申し上げているわけでございますけれども、国際情勢というものはきわめて流動的である。ことにわが国は、そう言うとしかられるかもしれませんが、周囲に三つも分裂国家を持っておりますね。ここはたいへんかじのとり方のむずかしいところでございますから、そういう点につきましても、政治家としての見識をもってお互いにやっていかなければならないこともある。かような点につきましては、どうかひとつ御了察を賜わりたいと存じます。
○米田委員 私がいま持っている資料は、おそらくきのう参考人の方が配られたのだろうと思いますけれども、この委員会にあったので私持っているのでありますが、外務省の昭和三十年十月二十四日の「北朝鮮との貿易及びその他の関係を樹立することの可否について(要旨)」という資料であります。これは外務省通達になるのか、あるいはどういう文書になるのか、正確なものがありませんからわかりませんけれども、これが出ておるわけであります。きのうの参考人の方の御意見の中でも、これが災いしているということを申されております。これは原文は私わかりませんが、原文がありましたらひとつ読んでいただきたいと思うのでありますけれども、いかがでございますか。
○山下政府委員 外務省の中でいろいろな問題を検討したペーパーがあったし、現在もあることは事実でありますが、そういう決定をしたことはないはずです。それはどういうペーパーか、内容をよくあれしなければわかりませんが、そういう外部に発表したようなペーパーがあったということは記憶しておりません。
○米田委員 そう御答弁されましても、これは一般の本にも出ておりますし、この旅券法、出入国管理法、外国人との関係についての雑誌にはみんな出ております。私がいまお聞きしている昭和三十年十月二十四日の外務省通達でありますか、どういう文書か、文書の性格はわかりませんけれども、当時古屋貞雄代議士が朝鮮に旅行したいということで旅券を申請されてから、外務省がいろいろ各省と相談されたりして検討されて、外務省の統一見解としてまとまったということ、これはもう公然たる事実になっておるのですよ。ですから。そういうことはないなんというのは、私はどうも納得できないわけであります。外交上の秘密文書か何かで出せないというなら出せないで、はっきり言ってください。全然ないのがこういうふうに出ておるということはないと思う。もしそうだとすれば、いままでだって、外務省は、ちゃんとそういう雑誌に対して取り消しを要求されるなり何なりやらなければならないはずなんです。黙認しておられて、そういうものはないはずだというのは、ちょっとどうかと私は思いますから、はっきりしていただきたい。
○山下政府委員 その書類を拝見しないと、一体どういう書類かということがわかりませんけれども、おそらくその書類に書いてあっても、その書類によってわれわれが旅券で縛られているということはないはずです。
○米田委員 では、私読みましょう。そう長い文章でないから。 「一、目下古屋貞雄代議士他数名から北朝鮮への旅券下付申請が提出されており、又貿易業界から北朝鮮との貿易再開についての要望が提出されている。二、韓国としては此のような日本側の風潮に激昂し、我国に対し抗議を繰返すと共に李承晩ライン附近に於て多数の日本漁船を拿捕し、漁船員を抑留している。三、此の様な事態に処して、日韓関係の調整は殆ど不可能と思われる。四、現在の処韓国については国連決議によって合法政府として認められているのみならず、多数国家によって承認されているが、他方北朝鮮を承認している国家は社会主義国国群十一に限られており、今後北朝鮮に国際的に接近する必要はない。五、現在、我国と韓国との貿易は輸出六千百万米弗・輸入五百八十万米弗であるが、北朝鮮との貿易には見るべきものはない。六、以上の事情にてらして北朝鮮との貿易及びその他の接触を認めないこととする。」これは要旨であります。それはいまあなたがおっしゃったように、原本あるいは原文書というものはわかりませんが、大体皆さんが言われていることを推定すればこうだというふうにまとめたのじゃないかと思いますけれども、これは法律雑誌なんかにも出ております。いま私が読み上げたのはそういうことでありますが、これはどうでございますか。
○山下政府委員 もしそういう文書があって、そういうものに縛られて、現在もなお縛られているとするならば、接触をしないということで、旅券の発給はできないということに解釈されますと、正規な旅券が一通も出てないはずでありますが、昭和三十五年以来国会議員の方並びに同行の方に旅券をお出ししているということであります。
○米田委員 それは認めますそれは現実に私も行ってきましたから認めますが、しかし、皆さんから出された資料によりましても、これは議論は尽くされておりますけれども、昨年の北朝鮮は十二名、しかもそれはほとんど国会議員とその同行者、これは数は十二名でありますけれども、他と比べてほとんど渡航はないといっても差しつかえないくらいの状態ではないか。しかし、それにしても、あることは認めます。けっこうだと思う。ただ問題はあなたのほうで現在私が読み上げましたこういう外務省の基本的態度というものがあって、そうしてやむにやまれず断わり切れなくて、国会議員だととかそういうものについては十一、二名認めてきておる。基本的態度は変わっておらない。ここで私が読み上げたとおり。「接触を認めないこととする。」というこの態度は一貫しているということであるならば、重要だと思う。この法案の審議にあたりまして、皆さんのほうでいろいろ御答弁なされましても、何かその場だけの答弁で終わってしまうのじゃないか。法案が通ってしまえば、法案はまた生きものとして効力を生むわけでありますから、しかも皆さんが運用されるわけでありますから、また同じようなことが繰り返されはせぬかという心配を私はするわけでありまして、そういう点でお聞きをするわけでありますけれども、どうでありますか。
○山下政府委員 旅券の発給に関しては、何らそういうものに縛られておりません。
○米田委員 わかりましたから、これからずっと質問していきまして、また確認をしていきたいと思います。 それで、いまの御答弁で、私も、一応この段階におきましては差別してないということで了承して、次に入るわけでありますけれども、問題は、一点聞いておきたいのでありますけれども、国会議員とその同行者が、国益、公安の面からいっても、十三条一項五号の面からいきましても、外交上の配慮からいきましても、入国の旅券を出さざるを得ないということで認められた。しかし、数が示しておりますように、他のほうはほとんど認めておらない。結果的に横すべりで入らざるを得ない。それが大体あなたのほうの資料によると、約百名前後、こういうことなんでありますけれども、国会議員とその同行者が認められておるというのは、どういう根拠で、どういう法律解釈でそうなっておるのでありましょうか。それだけまず聞いておきたい。
○山下政府委員 未承認の国については、いろいろ問題がございまして、中共の場合におきましてもソ連の場合におきましても、いろいろな経緯がございまして、だんだん現状のようなことになってきたわけでありますが、北鮮の場合におきましては、承認されておらない国のうちで一番事態がおくれておりまして、国会議員の方々の場合には、いろいろの要請から関係各省の間でもひんぱんな交渉をいたしまして、お出しするような結果になったわけで、それが前例となりますと、その範囲は非常にスムーズに出るようになるのでありますが、それ以外のものはその具体的ケースにおいてまた非常な折衝を要するわけであります。その場合に、どうも折衝がかなり困難で、 いろいろ折衝しなければなりませんと申し上げると、それでは自分はソ連に行くとかいうことを申されて、そのあとはわれわれは存じてないわけで、実際には申請が出されてないという形になってしまうわけで、これはわれわれもほんとうに申請が出されれば、すぐオーケーが出せる状態にはないもので、そういう結果になっておると思うのでありますが、実際には、そういう結果から、現在まで国会議員の方とかその同行者の方だけに旅券をお出ししているという状況になっている次第であります。
○米田委員 非常に微妙な御答弁だと思うのでありますが、いまの御答弁によりますと、出さないほうが悪いような御答弁でありますけれども、多少時間がかかっても出してくれば何とかするのだ、どうもそういうふうにとれますけれども、これはこんな議論をしていても始まりませんけれども、私どもが承知しているところでは、しかもきのう業界の代表が二人とも参考人としての御意見が出ておりますが、一致している点は、共産圏渡航については事前に趣意書をとられる。その段階でほとんど通るか通らぬかということがきまってしまう。特に未承認国の中でも、北朝鮮とかそういうところについては、他の北ベトナムだとか東独だとか中国だとか、そういうところ以上にきびしい。ほとんどこれはもう通らない。そういうことだから、結局は引き下がらざるを得ない。それからもう一つは、業界の方々はやはり商売が優先でありますから、いつまでも待っておるということが一つは困難だということと、それから、何かやってあとでかたきをとられたらたいへんだ、貿易できなくなってしまう、そういうことで、できるだけあなたのほうを刺激しないように、頼むにしても、基本的人権があることを承知しながらも、きわめておっかなびっくりで結局お頼いせざるを得ない。こういうようなことで、最終的にはあなたが御答弁せられたように、あるいは受付という段階までいってないかもしれません。その前段に至る経緯は、いまいみじくも部長さんの答弁されたように、そういう事実があって出ておらないということなんですね。そのことをやはり認めていただかなければならぬと私は思うのであります。ただ、国会議員はなかなかそうはいかない。しかも国権の最高機関の構成員としてなかなか権限があり、外務省はなかなか拒否することができないということで通したということであれば、またそういうこともわかります。しかし、行政官たる者は、法律に根拠を置かないで行政執行は私はできないと思う。運用の問題もありましょうけれども、やはりその執行の根拠というものは、常に法律に根拠を置かなければならぬ。そうなると、不公平になったり、いろいろな政治悪というものが、そこから出てくると私は思います。やはりしっかりとした根拠を持っておかなければならぬと私は思うのであります。そうしますと、根拠法規の面では区別はない、区別すべき根拠法規もないし、そういう該当の項目もない、こういうことで理解してよろしゅうございますか。国会議員と他の者の区別ですね。
○山下政府委員 全然区別はございません。ただ、たまたまそういう国会議員の方には出すという前例ができて、それに乗って事務的にすうっといってしまう。国会議員の方の場合でも、一番最初に行かれたときは、相当いろいろな各省との相談もあったわけであります。
○米田委員 ひとつ大臣からも御配慮いただきたいと思うのでありますけれども、いまさら先輩の大政治家であり、博識の大臣に申し上げるのも恐縮でありますけれども、たしか中国の孫文だと思いますが、もともとこの世の中に道というものはなかったのだ、だれかが歩くことによって、そのあとを続くことによって、道というものがだんだん開け、できていったのだ、そういうことばがよくいわれるわけでございます。これは私どももよくそういうことばを使いますけれども、これは私はやはり世の中の進歩をあらわしておると思うし、文明や社会の進展というものをあらわしているだろうと思うし、それから、国民の人権というものも、私は、そういう面では常に前に前にと拡大されていかなければならないということをあらわしていると思うのであります。そういう点からいいまして、 いまも御答弁いただきましたが、法的に根拠のないことでありましたならば、私は、国会議員に出す以上は、国民にも差別なく、あなたのほうで裁量をされるというその分野は一応認めたといたしましても、原則的にはやはり出してやる、その道はだんだん広げてやるというふうにしていかなければならぬのじゃないか。これは皆さんのほうも裁判でもやられたら、私は反証できないと思うのです。また、裁判が問題ではなくて、行政官というものはそういうものではないか、そういうふうに私は思いますので、国会議員が昨年は十二名同行者を含めていっておる。この朝鮮行きの旅券という道は、今後もひとつ道をだんだん広げて、そしてしっかりとした、断ち切ることのできない道にしていただくように、最高責任者の大臣からも、私はひとつ確信のある答弁をいただいておきたいと思うのであります。
○愛知国務大臣 そのお気持ちには、私も非常によくわかりますし、賛成でございます、考え方には。というのは、あらためて今回も、帆足さんのほんとうに御自分で御体験になったところを私も思い起こしながら、ほんとうにこれは先覚者の苦しみであったと思うし、同時に、状況が全くあの当時に比べれば、いまよくなってきたと思います。先ほど申しましたように、国際的の環境もよくなることを期待し、また、そういうことをやりながら、この旅券法の運用というものも前向きにできるようにしたい、これが私のほんとうの気持ちでございます。全体とすれば、今度のこのやり方によって非常によくなる。それから、たとえば未承認国との間にいたしましても、ほかのところとはだいぶ定着してきた。やり方、慣行がだんだん定着してまいっております。こういったことも踏んまえまして、私は抽象的にしか申し上げられませんけれども、そういう気持ちで運営していきたい。 それから、国会議員とほかと、私は、こういう問題について法律的に差別すべきものじゃない、かように考えておりますから、これはただいま山下君からお答えいたしましたとおりに、この法律の適正な運営ということで御理解をいただきたいと思います。
○米田委員 大臣の御都合もあるそうでありますから、もう一件だけきょうの段階でお聞きをして、あとは次の委員会に私は引き続き質問さしていただきたいと思います。というのは、六月二十五日付をもちまして、東京都の、住所を私は正確に覚えておりませんが、清水克巳、水野和夫、村田隆、今泉英昭、この四人が、朝鮮行きの旅券の申請をするために、渡航趣意書を外務省に持っていった。しかし、いろいろ事情がありまして、従来の方針等もあって、受け付けるわけにはいかないけれども、二通だけは 一応お預かりしておきましょう、こういうことになって今日に至っておるということを聞いておるわけであります。 実は私も、はっきり申し上げまして、日朝協会の——これは日本と朝鮮民主主義人民共和国との友好を目標とした一つの親善団体で、私は日朝協会の会員でもございますが、その日朝協会は、毎年朝鮮に対しまして、いわば国民使節的な、国民外交的な、そういうゆるやかな親善使節団というものを派遣しているわけです。私は、その二回目の団長として、共産党の林百郎議員と一緒に一昨年行ってきたわけです。去年はその三回目として、たしか長谷川正三さんでございましたか、団長として行ってこられました。ことしは、今度たしか四回目になると思いますが、国会が八月五日まで続いておりますので、国会議員は行けない。そこで、この清水克巳さんという者を団長にして、五名の代表団を派遣しようということになっておるわけであります。いま申し上げたのは四名でありますが、あといま一名、千野しげるという方がおられまして、そしてこれも手続をとることになっているわけであります。これは決して悪いことをしてくるわけでもありませんし、ほんとうに私は、いま正常な国交関係のない国にこそ、いわゆる国民的な、幅広い国民的な幅広い国民使節というものを送って、漸次やはり国交というものを正常に戻していくという努力は、これは当然歓迎されるべきことだと思いますので、こういうものについては、国益の面からいっても、私は皆さんから賛成をしてもらわなければならないのではないかと思うのでありますが、この方に対しましては、これは期日があるわけです、七月二十日から約二十日間という期日がありわけでございますので、おくれてしまうと、これまた、いま法律で禁止している横すべりで行かなければならぬということになる。そういうことは、国民使節としては恥でありますから、とうてい私は許されないと思うのであります。そういう点で、ひとっこれは差別をしないで出してもらわなければならないものではないかと思いますけれども、御見解はいかがでございますか。
○愛知国務大臣 いまこの旅券法の改正につきましては、非常に慎重に、真剣に御審議をいただいているところでございまして、この法律案は、衆議院でかりに御審議が終わりましても、参議院の審議を経なければ、まだこれは法律としては制定ができません。現在私どものよるべきところは現行の旅券法でございます。それから、先ほど私は申しましたように、国会議員その他の方々でも、よるべき法律に差別があってはいけないと申したのでございまして、やはり、この点になりますと、御意見が違うかもしれませんが、国益という点から考えていかなければならない。これは率直に申しまして、これも御意見がおありのところと思いますが、政府といたしましては、大韓民国政府との間に国交ができまして三年有半でございますか、国交ができてまだそう時間もたっておりません今日におきましては、友好国との間の親善友好関係を確立するということが、政府の見解としてはわが国益に沿うゆえんであると思います。
○米田委員 大臣の御答弁は大臣の御答弁としてわかるわけでありますけれども、これは私が申し上げたように、出しなさいという質問をしているわけじゃない、御見解はいかがでございますということを聞いているわけであります。これはいま大臣が言われましたように、いろいろ配慮をしなければならない国際的な問題もあると思います。しかし、道はついておるわけでありますから、したがって、皆さんのこれに対するお考えというものが前向きなのか、それともどうなのか、御見解はいかがでございますかという意味はそういうことであります。この委員会で白黒をはっきりさせようとは思っておりません。むしろ、そういうことは不適当だと思いますから、したがって、御見解をお聞きしているわけであります。
○愛知国務大臣 よくわかりましたこの法律が改正になりましたならば、いまのような気持ちで十分ひとつ私も考えてまいりたいと思います。
○米田委員 では、大臣の御都合もありますので、これで一応区切らしていただきまして、終わりたいと思います。
○北澤委員長 次回は公報をもつてお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。 午後五時四十二分散会