外務委員会 第20号
- 発言数
- 169 件
- 登壇者
- 9 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1969/05/16
会議録
○北澤委員長 これより会議を開きます。 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とグレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国との間の条約の締結について承認を求めるの件、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とオーストラリア連邦との間の協定の締結について承認を求めるの件及び所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国とイタリア共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件、以上三件を一括議題とし、政府より提案理由の説明を聴取いたします。田中外務政務次官。 ————————————— 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び 脱税の防止のための日本国とグレート・ブリテ ン及び北部アイルランド連合王国との間の条約 の締結について承認を求めるの件 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び 脱税の防止のための日本国とオーストラリア連 邦との間の協定の締結について承認を求めるの 件 所得に対する租税に関する二重課税の回避のた めの日本国とイタリア共和国との間の条約の締 結について承認を求めるの件 〔本号末尾に掲載〕 —————————————
○田中(六)政府委員 ただいま議題となりました所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とグレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国との間の条約の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。 わが国と連合王国との間には、昭和三十七年九月四日に署名された所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための条約が締結されていますが、近年連合王国が行ないました税制改正に伴い、同条約の規定を整備し、あわせて OECDモデル条約案に沿った修文を行なう等の全面的改訂を行なう新条約締結のための交渉を昭和四十三年四月以来ロンドン及び東京において行ないました結果、昭和四十四年二月十日に東京において、わがほう愛知外務大臣と連合王国側ピルチャー駐日大使との間でこの条約に署名を行なった次第であります。 この条約は、本文三十カ条からなり、その規定は、OECDモデル条約案にできる限り従ったものであります。条約のおもな内容は次のとおりであります。事業利得につきましては、相手国にある支店等の恒久的施設に帰属する利得についてのみ相手国において課税できるものとし、船舶または航空機による国際運輸からの利得につきましては、相互に全額免税としております。投資所得に対する源泉地国での課税につきましては、配当については一五%、利子及び使用料については一〇%をこえない税率で課税し得るものとしております。さらに、政府職員、短期滞在者、短期滞在の教授、学生などの受け取る報酬や手当などにつきましては、原則として滞在地国で免税としております。 この条約の締結によりまして、二重課税の回避及び脱税の防止の制度を通じ、両国間の経済、技術及び文化面での交流は一そう促進されるものと期待されます。 よって、ここにこの条約の締結について御承認を求める次第であります。 次に、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とオーストラリア連邦との間の協定の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。 政府は、オーストラリアとの間の所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための協定を締結するため、昭和四十三年二月以来キャンベラ及び東京において交渉を行ないました結果、昭和四十四年三月二十日にキャンベラにおいてわがほう甲斐駐オーストラリア大使とオーストラリア側マクマーン大蔵大臣との間でこの協定に署名を行なった次第であります。 この協定は、本文二十三カ条及び付属議定書からなっており、その協定のおもな内容は次のとおりであります。事業利得につきましては、相手国にある支店などの恒久的施設に帰属する利得についてのみ相手国において課税できるものとし、船舶または航空機による国際運輸からの利得につきましては、相互に全額免税としております。投資所得に対する源泉地国での課税につきましては、配当については一五%利子及び使用料については一〇%をこえない税率で課税し得るものとしております。さらに、政府職員、短期滞在者、短期滞在の教授、学生などの受け取る報酬や手当等につきましては、原則として滞在地国で免税としております。 この協定の締結によりまして、二重課税の回避の制度を通じ、両国間の経済、技術及び文化面での交流は一そう促進されるものと期待されます。 よって、ここにこの協定の締結について御承認を求める次第であります。 最後に、所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国とイタリア共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。 政府は、イタリアとの間の所得に対する租税に関する二重課税の回避のための条約を締結するため、昭和三十九年以来ローマ及び東京において交渉を行ないました結果、昭和四十四年三月二十日に東京においてわがほう愛知外務大臣とイタリア側ジャルディノ駐日大使との間でこの条約に署名を行なった次第であります。 この条約は、本文二十九カ条及び付属議定書からなり、その規定は、OECDモデル条約案にできる限り従ったものであります。条約のおもな内容は次のとおりであります。事業利得につきましては、相手国にある支店などの恒久的施設に帰属する利得についてのみ相手国において課税できるものとし、船舶または航空機による国際運輸からの利得につきましては、相互に全額免税としております。投資所得に対する源泉地国での課税につきましては、配当については一五%、利子及び使用料については一〇%をこえない税率で課税し得るものとしております。さらに、政府職員、短期滞在者、短期滞在の教授、学生などの受け取る報酬や手当等につきましては、原則として滞在地国で免税としております。 この条約の締結によりまして、二重課税の回避の制度を通じ、両国間の経済、技術及び文化面での交流は一そう促進されるものと期待されます。 よって、ここにこの条約の締結について御承認を求める次第であります。 何とぞ御審議の上、以上三件につきすみやかに御承認あらんことを希望いたします。
○北澤委員長 これにて提案理由の説明は終わりました。 三件に対する質疑は後日に譲ることといたします。 —————————————
○北澤委員長 太平洋諸島託信統治地域に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件を議題といたします。 質疑の通告がありますので、順次これを許します。戸叶里子君。
○戸叶委員 ただいま議題になりました太平洋諸島信託統治地域に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定について、二、三質問をしたいと思います。 この地域は、日本が国際連盟の委任統治としてあった地域だと思います。そこでお伺いいたしますが、この委任統治地域の主権というものはどこに帰属するのかということをお伺いしたいと思います。 学説的に区別をいたしますと、国際連盟の主権説、それから委任地域の主権説、受任国の主権説ということがあるわけでございますが、このいずれを確定見解として考えておられるかをまず伺いたいと思います。
○高島説明員 国際連盟時代の日本の委任統治地域たる南洋群島に対する主権がどこにあるかという問題につきましては、国際連盟時代いろいろ学界その他で議論がございました。いま先生もおっしゃったとおりいろいろな説がございます。日本につきましては、特に連盟を脱退した以後の日本の統治についてどう考えるべきかという点が当時政府で問題になりました。もしかりに国際連盟自体に主権があるという立場をとりますと、これは日本の統治自体が根底からくつがえされるということにもなりかねない、そういう考慮もございましただろうと思いますが、当時、連盟脱退の時期に、日本政府といたしまして閣議決定をいたしまして、ドイツは国際連盟規約において主たる同盟国及び連合国に一切の権利権原、請求権を放棄した、その規定をとらえまして、主権は第一次大戦における主たる同盟国、つまり、イギリス、フランス、日本、イタリア、この四カ国と連合国たるアメリカのために放棄されたものであるから、したがって、この五カ国が主権を持つという立場を当時確定いたしまして、そういう観点から、たとえ日本が連盟を脱退いたしましても、依然として、日本を除く四カ国に対する関係で、日本は統治を継続し得るという立場を決定いたしました。そういう経緯がございます。ただしかし、いずれにいたしましても、主権問題がいろいろ学界の協議の対象になったことは事実でございますけれども、主権がどこにあったかということは、それほど統治の実態とはあまり関係のない問題であったかと思います。と申しますのは、統治自体は、いまお配りいたしましたけれども、そこにございます委任統治条項に基いづて、日本が委任を受けて統治をしたということがあったわけでありまして、主権がどこにあるかということは学界の協議には確かになったわけでございますけれども、はっきり国際的に確定した見解というものは当時から存在いたしません。
○戸叶委員 いま言われた四カ国、もう一度おっしゃってくださいませんか。
○高島説明員 第一次大戦におきまする主たる同盟国と申しますのは、日本を含めましてイギリス、フランス、イタリアでございます。アメリカは連合国でございまして、結局国際連盟に参加いたしませんでした。そういう関係から、連盟規約との関係におきましては、主たる同盟国がこの主権の所有者であるというふうに当時政府は解釈しております。
○戸叶委員 そうしますと、この場合には主たる同盟国が主権を持っていた、そういうふうに考えていいわけですね。いま私もここへ来て拝見したのですけれども、書類ですね。これは読むひまがなかったのです、けさ見せていただいたものですから。これはもう少し早く出しておいていただければ、ゆうべ読むことができたと思いますし、また参考資料にもすることができたので、いまのような問題を伺うにしても多少わかりやすかったのじゃないかというふうに考えるわけで、ちょっとおそいものですから、これを読んでいない、そういう立場で質問をしますから、御了承願いたいと思います。急いで通そうとなさる条約でしたら、こういうものも、なるべく早く、こっちの条約とやはり付随していただきたいと思うのです。読む余裕があるようにしていただきたいと思うのです。 いま委任統治国主権の存在はわかったのですが、それでは、国際連盟ではなくて、国際連合の国連憲章による信託統治地域における主権は一体どこにあるのか、こういうことが問題になってくると思うのです。そこで、委任統治制度と同じように、何かいまの主権の説は三カ国が一緒にやっておるわけですね。主権説をとっておられるわけです。そうすると、いまの信託統治地域においての主権というものがどこにあるのかということを伺いたいと思います。
○高島説明員 先ほど申しましたのは、国際連盟時代の委任統治につきまして、特に日本の委任統治につきまして、当時の日本の政府がそう解釈したというふうに申し上げた次第でございます。現在国連からの信託統治地域といたしましては、いま残っておりますのは、わずかに太平洋の諸島と、それからオーストラリアが統治しておりますニューギニア、二つだけでございます。したがって、実際の問題といたしまして、この主権の帰趨ということを議論する意味は、結局両地域が最終的にどういうふうになるかという問題とも多少関連するかと思いますが、いずれにいたしましても、この二つの信託統治地域の統治協定というものが国連で締結されております。国連で締結されました統治協定におきまして、結局統治協定が続く限りは、この統治協定に基づいて国際連合の憲章に基づく信託統治が引き続き行なわれるわけでございます。 最終的に信託統治地域の目標は、自治または独立の達成ということでございます。したがって、自治または独立の達成というかっこうでその信託統治地域が独立する場合、またはある国に合併する場合、いろいろございましょう。いずれにしても、最終的決定がとられる場合におきましては、信託統治協定そのものが廃棄されるわけでございます。廃棄される場合には、国際連合自体が廃棄するような手続をとるわけでございますので、結局最終的なきめ手を持っているのは、国際連合自体と現に統治しておる統治権者と、この両方の合意がなければ信託統治協定自体が廃棄できないことでございますので、そういう意味で、主権がどこにあるかということは必ずしもはっきりいたしませんけれども、最終的な地位をきめるための前提といたしましては、国際連合と国際連合のもとに信託統治しております統治権者と、両者の合意に基づかなければ信託統治協定を廃棄できない。廃棄できなければ、したがって独立も達成できないというかっこうになりますので、私のほうで、主権がどこにあるかということにつきまして決定的な見解を申し上げることはできませんが、そういう意味で、信託統治地域の将来の運命を握っているのは国連と信託統治地域の統治権者であるというふうに考えております。
○戸叶委員 いま高島さんがおっしゃいましたように、この信託統治制度は、その目的である七十六条のbに「自治又は独立に向っての住民の漸進的発達を促進する」というふうに書いてあるわけです。それをいま自治または独立に向かって住民の漸進的発達を達成するということばでおっしゃったんだろうと思いますけれども、やはりそういう目的から考えてみますと、主権はその地域の人民にあるべきじゃないか、こういうふうに私は考えるわけです。そうしなければ、いま言われたような目的というものは達せられないじゃないか、こういうふうに考えるわけでございますが、この点の考え方はいかがでございましょうか。
○高島説明員 国連におけるいままでの信託統治地域の統治の実情及び統治後の独立または自治の達成という実際の経緯から申しましても、いろいろ国連の中におきましても、また各国政府の間におきましても、主権がどこにあるかという問題が、実は議論されたことはございません。議論する必要が実はなかったわけでございます。したがって、私どものほうといたしましても、いま先生がおっしゃったように、統治地域の住民に不利があるのではなかろうかというお話も、確かに一理あるかと思いますけれども、そうであるということを法律的にはっきり申し上げる立場に実はないわけでございまして、実際上の必要も、そういう観点から、私のほうではないというふうに考えております。
○戸叶委員 私は、いまの信託統治制度の終局の目的は、その地域の独立であるし、それを促進するのが施政国の義務だと思うのです。そうなってきますと、いま私が申し上げたような考え方のほうがいいのじゃないかというふうに考えたものですから、意見としてお伺いしたわけでございますが、信託統治という国がいまのところ世界に二つしかないというふうなことも述べられたわけでございますけれども、これはやはり学説として一つの固まった考え方を持っているなり、私どもとしては知っておかなければならないのではないかという点で、しかも委任統治、信託統治というふうな二つの問題がいまちょうど出てきておりますので、質問をしたわけでございます。 そこで、いまの主権の問題がそうでございますが、それではこの委任地域と信託統治地域の住民の国籍というのはどうなっているか、これをまずお伺いしたいと思います。
○高島説明員 委任統治時代も、南洋群島における住民の国籍につきましては、当時の委任統治条項におきまして、第二条に「受任國ハ本委任統治條項二依ル地域二野シ日本帝國ノ構成部分トシテ施政及立法ノ全権ヲ有スヘク」云々という規定がありまして、実際上日本の領土と同じように統治を続けてまいったわけでございますけれども、連盟と日本との間におきまして、この統治地域の住民の地位につきましては、日本国籍は持たせない、ただし日本に帰化した場合はもちろん別であるということで、連盟の了解を得まして、そういう立場で、島民という名前でもってこれを統治してまいりました。また、現在の信託統治地域におきまする国籍につきましても、同じように、米国の国籍ではなくて、市民——信託統治協定の第十一条にございますけれども、「施政権者は、信託統治地域の住民のために信託統治地域の市民権を規定する」云々と、「信託統治地域の市民権」というかっこうで、米国の国籍ではなくて、信託統治地域のシチズンというかっこうの地位を与えております。
○戸叶委員 そうしますと、委任統治の場合にも、それから信託統治の場合にも、施政国の国籍がなくて、そしていわゆる無国籍ということになるわけですね。国籍がないというのですから、無国籍ということで解釈するわけですか。
○高島説明員 これは実は領土であるかないかという問題に非常に密接に関係する法律上の問題であると思います。領土である場合は、たとえどのような人種であろうと、当然その国の国籍を取得すべきものであります。ことに選択をしてその国の国籍をとらないという場合は別でございますけれども、当然前提といたしましては、その領土の割譲を受けた国がその国籍を与えるということになります。しかし、この委任統治あるいは信託統治といいますのは、先ほど先生御指摘のとおり、その島民に実は主権があるのではなかろうかというふうな御説もございましたとおり、そういう意味で、領土ではございません。領有権は実は統治権者にないわけでございます。したがって、その国籍を与えるわけにいかないわけであります。特別な施政であるということで、市民権というものを現在の信託統治条項で付与しているわけでございます。
○戸叶委員 そうしますと、海外旅行なんかをするときはどうなるわけですか。無国籍として扱われるわけですか。
○高島説明員 これも規定が実はございまして、同じく第十一条の第二項に、「施政権者は、信託統治地域の住民が信託統治地域又は施政権者の領土的境界外にあるときは、これに外交上及び領事上の保護を与えなければならない。」ということで、もちろんアメリカの国籍による旅券を持って旅行するというわけではございませんけれども、特別な証明書を持って旅行し、そしてこれに対する外交上の保護は米国が与えるということになります。
○戸叶委員 そうしますと、かつて沖繩で扱われたような形をとるというふうに理解してよいわけですか。
○高島説明員 そのとおりでございます。
○戸叶委員 いまの国籍とか、あるいはいま伺ったような問題は、やはりあとのいろいろな参考になりますから伺いたかったのですが……。 そこで、旧委任統治地域にあったわが国と国民の財産の処理というものがどうなっているか。占領軍の当局によって没収されたといわれますけれども、その事実関係がどうなっているか、明らかになっておらないように思いますので、この点をはっきりさせていただきたい。
○高島説明員 少し詳しくお話し申し上げますが、現在の信託統治地域の占領地たる、これは南洋群島でございますけれども、南洋群島に対しましては、米国は終戦の前年、一九四四年の一月三十日から進攻を開始いたしまして、まずマーシャル群島から進攻を始め、逐次占領を始めて、もちろん全部の島を占領するというわけにはとうていまいりません。全部の島は九十八でございますから、全部占領することはできませんで、主要な島で、特に日本軍がいるような島を逐次占領いたしまして、マーシャル群島の占領を終わりましたのが四月の下旬でございます。それからカロリン群島につきましては、ここは大体スキップオーバーいたしまして、マリアナ群島、テニヤン、サイ。ハン、これに対しまして六月から進攻を始めました。これもその後相当な激戦が行なわれたことは、先生御承知のとおりでございます。そのようにいたしまして、サイ。ハン、テニヤン等のマリアナ群島の主要な島を占拠いたしました。最後に残ったカロリン群島につきましては、逐次占領を始め、全体の占領を終わりましたのが、ちょうど一年後の一九四五年の一月一日、この時期になりまして、南洋群島全島に対する制圧を終わった。史実によりますと、そういうことになっております。 そうしまして、この進攻作戦に伴って、すぐ引き続き軍事占領、こういう事態におきまして、海軍当局は軍政のいろいろな用意をいたしまして、まず第一番に、進攻と同時に軍政府を設置するという布告を掲げ、軍政のもとにおいていろいろな布告をいたしました。その布告の中で、敵産のみならず、すべてそこにある一切の外国の財産、こういうものを全部没収するというような手続を定めまして、そのような布告を各島丸ごとに実は掲示いたしてまいった次第でございます。 その結果、日本の財産のみならず、ごくわずかでございますけれども、日本以外の国の国家財産あるいは日本以外の国の私人の財産、そういったものも若干ございました。このような財産につきましては、後ほど米国が返還の手続をとっております。日本の財産に関しては、返還もしなければ補償もしないという立場をはっきりいたしまして、これは実は米国が戦争中に対敵取引法という国内法を制定いたしまして、米国内にある一切の敵国、つまり、ドイツ、日本、ハンガリー、ブルガリア、そういった国の一切の財産を没収いたしまして、これに対しましては返還措置も補償の措置もとっておりません。これはきわめてはっきりしております。もっとも、占領地域におきましては、そのような国内法の適用があるわけはございません。当然国際法の支配下において占領を行なうべきものでございますけれども、何しろ非常な激戦が行なわれた結果占領したというような事態でございますので、ヘーグの陸戦法規にもいろいろございますけれども、原則は、私有財産は没収してはならないという規定がございます。ただしかし、その原則の例外といたしまして、戦争の必要上やむを得ない場合は破壊または押収してよろしいという規定が、全体の例外としてございます。これは私有財産にとどまらず、一切の公私有財産を含めましてそのような規定があるわけでございます。したがって、戦闘状態が終わった後において占領する場合と、そうでなくて、非常な戦闘が行なわれ、その戦闘の結果占領するという場合とは、やはり財産の取り扱いにつきまして、ヘーグの陸戦法規におきましてもかなり違った取り扱いを受けております。 そういうことで、マーシャル群島、マリアナ群島、カロリン群島、すべてそれらの島々におきまする一切の日本財産の没収、そうしてそれがそのまま引き続いて信託統治協定に基づく信託統治地域に引き継がれたということでございますので、日本の政府といたしましては、ここにございました国有財産、私有財産一切を含めて請求権を行使する根拠を失った。そのことが実は平和条約第四条の(b)項にございますとおり、「日本国は、第二条及び第三条に掲げる地域のいずれかにある合衆国軍政府により、又はその指令に従って行われた日本国及びその国民の財産の処理の効力を承認する。」ここにございます第二条地域、要するに第二条に掲げる地域でありますが、そこにある米国軍政府によって行なわれた日本国及び日本国民の財産の処理の効力を承認せしめられておるわけであります。したがって、先ほどちょっと触れましたとおり、その処理の実態がヘーグ陸戦法規に必ずしも全部完全に一致していない場合におきましても、平和条約の平和的戦後処理におきましては、日本はそのような米軍の財産処理の効力を承認せしめられておるというのが実情でございます。このような四条の(b)の規定を根拠にいたしまして、日本としましては、委任統治地域にございました公私有財産の日本の一切の請求権はないという立場で交渉した次第でございます。
○戸叶委員 いまいろいろとお述べになったわけでございますが、先ほどもお話がありましたように、占領軍の出した布告というものの中には、敵産管理のもとに日本の財産を置くということがたしか出されたと思うのです。しかし、一般の日本人の個人の財産については、特に何にも布告には載せてなかったのではないかと思うのですけれども、その点をもうちょっとはっきりさせていただきたい。これが一つ。 それから、ヘーグの陸戦法規の上からいえば、個人の財産なり何なりというものは没収できないのだけれども、例外的な規定で今回の場合には没収したということばを使っていいのですか。何か知らないのですけれども、没収されたんだというふうないま説明があったわけでございますね。そうだとすると、ヘーグの陸戦法規の例外的規定というものは、どういうふうなときに一体使われるものかということと、この二つの点をはっきりさせておいていただきたい。
○高島説明員 マーシャル群島からマリアナ、カロリン、すべての群島につきまして、占領当局が掲示いたしました布告の中に、敵産管理に関する規定がございまして、その中で、財産は一切がっさい——先生のおっしゃるような国有財産のみならず、私有財産までも含めまして、一切がっさいの財産を包括するような表現になっておる。そういうことで、当時日本の財産のみならず、日本以外の財産ももしありとすれば、そのようなものも含めて一切がっさい没収される。しかし、そのうち、日本の財産以外の財産で請求があったものについては、後ほど返還されたというのが実態でございます。 それから、ヘーグ陸戦法規につきましては、これは先ほど申しましたとおり、戦争の必要性という問題は、これは交戦当事者自体が判断する問題で、戦争の必要があった場合には破壊してよろしい、また押収してよろしいという規定は、ヘーグ陸戦法規にはっきりございますし、その解釈するものがどう解釈するかということは、交戦国当事者が解釈するというふうにわれわれ考えております。 御参考のために読みますと、第二十三条でございますけれども、「特別ノ條約ヲ以テ定メタル禁止ノ外特ニ禁止スルモノ左ノ如シ」これは戦争の害敵手段の説明でございますけれども、この最後から二番目のところに、「戦争ノ必要上萬已ムヲ得サル場合ヲ除クノ外敵ノ財産ヲ破壊シ又ハ押収スルコト」というふうな規定になっております。これは、従来から国際法の学者もそのような解釈をいたしております。ただしかし、先生のおっしゃるとおり、どのような場合に破壊してよろしいか、押収してよろしいかということは、非常な生死の境にある軍人の判断でございますので、われわれはいまここでこういう場合ということは説明できません。ただしかし、実際に南洋群島における戦争というのは非常に激しくて、大体米軍の戦闘形式といたしましても、上陸の前にさんざんに破壊、爆撃し尽くして、その上で上陸するということでございますので、その段階において残っていた日本の財産というものがどのようなものであったかということは、非常に想像いたしかねます。それから占領後、日本の軍人はもちろんでございますけれども、一般のシビリアンも含めまして全部収容いたしまして、逐次これを戦争終了後日本に帰還せしめております。そういうわけで、実際にもちろんそれらの帰還した日本人が持っていた所有財産を没収したわけでは決してございません。そうではなくて、持ち切れなくて残っていた、いわゆる遺棄された財産ということで没収されたということでございますけれども、そういう財産として敵産管理人が判断したものは、一切がっさい没収されたということでございます。
○戸叶委員 持ち切れなくて遺棄されたものという判断というものは、あとになってみれば、私たちは残してきたんだと言わないとも限らないと思うのですけれども、その辺のところは別にいたしまして、私どもがいままで考えておりましたのは、この南洋諸島にあった個人とかあるいは法人の私有財産というものは、敵産管理を行なったにすぎないのであって、これを没収してもいいものとは解釈できなかったわけです。これはむしろ所有権はそのまま日本の法人または個人に属するものではないかということを考えていたわけなんですけれども、今回の場合は、そうすると陸戦法規のいわゆる例外規定によって、当然これは日本のほうでは没収されてもしかたがないんだ、没収されるべきものだというふうな理解のもとに、この協定を結んでおられたのかどう。私どもはそこまでは考えられないで、やはり何としても国有財産なり個人の財産を自由に没収するということはちょっとできないのじゃないかしらというふうに、しろうと考えかもしれませんけれども、そういうふうに考えるわけです。そこで、いま高島さんのいろいろな御意見を伺っておりましても、国際法による敵産管理ということはあり得るかもしれませんけれども、これを没収するというふうな法的な根拠というものの強いものを私としては何か感じられないのです。ですから、その辺のこと、もうちょっとはっきりさせておいていただきたいというふうに考えます。
○高島説明員 米国の国内法では、敵産管理人、カストディアンという名前を使っておりまして、実はカストディーということばから受ける印象といたしまして、いかにも財産を管理するだけであって、戦争が終わりますればしかるべき人に返還するということの印象を受けますけれども、先ほど申し上げましたとおり、米国におきましては非常にきびしい措置が戦時行なわれております。対敵取引法という中で、敵産管理人を指名いたしまして、指名された敵産管理人に対して、日本、ドイツその他一切の敵国の公私有財産を没収させる、そして戦後も返還も補償もしないという規定をはっきり定めております。したがいまして、アメリカといたしましては、国内においてそのような考え方をとっていたことは事実でございます。また、占領地におきましても、これは朝鮮の例がございますけれども、先生御承知のとおり、軍令三十三号の規定によりまして、戦争も何も行なわれなかったああいう土地においてすら、一切がっさいヴェストする。ヴェストするということばを使っておりますけれども、これによって管理人に一切がっさいの所有権を帰属せしめる。この帰属せしめた財産を韓国政府に移転させるという措置をとっております。これに比べますと、南洋群島の場合には状況はだいぶ違いまして、そういう平時ではもちろんございません。実際上破壊しなければならなかったケースも相当ございますし、それからまた、当時島民は疲弊こんぱいいたしておりまして、米軍の調べたところによりましても、実は千四百十五人死んでおります。そういう人に対しまするいろいろな措置が米国として必要だったことは事実でございます。そのために、日本の財産を使っていろいろそういう方面の措置に充てたということも考えられます。いろいろ理由があったと思いますけれども、いずれにいたしましても、米国といたしましては、戦争の必要上やむを得ずそういうことをやった、われわれといたしまして、先生おっしゃるとおり当然にそういうような日本の財産を一切がっさい没収されたというふうには必ずしも考えません。これは必ずしもそう考えません。ただしかし、戦争の必要上そのようなこともやむを得なかったのではなかろうかというふうには考えます。
○戸叶委員 やむを得なかったんじゃなかろうかというふうなことばで、大体私の意見もそれほど違っていなかったというふうに理解するわけなんですけれども、そういうふうに理解してよろしいわけでございますね。 そうしますと、平和条約の十四条の(b)項というのは、旧委任統治地域に対しては、少なくとも財産の管理の事実を認めただけというふうな形に理解してはいけないわけですか。この辺もはっきりさしておいていただきたいと思います。
○高島説明員 先生のおっしゃったのは、十四条のどこでございますか。——二項でございますか。
○戸叶委員 平和条約の十四条の(b)項です。「この条約に別段の定がある場合を除き、連合国は、連合国のすべての賠償請求権、戦争の遂行中に日本国及びその国民がとった行動から生じた連合国及びその国民の他の請求権並びに占領の直接軍事費に関する連合国の請求権を放棄する。」ということです。
○高島説明員 この第十四条におきましては、日本の一般的な賠償の義務を規定いたしまして、ただしかし、日本が戦争しなかった連合国につきましては、十四条の第二項におきまして、その国にあった日本の財産を処分してよろしいという規定がございます。それ以外のことは一切がっさい連合国としては放棄するということでございまして、これはこの十四条の規定は、実は南洋群島には全く関係ございません。南洋群島は米国の領土でもございませんし、あれは全く日本の領土と同じように統治した地域でございますので、十四条は南洋群島に関しては関係ございません。
○戸叶委員 韓国の問題のときにこれが出たものですから、その例をいま聞いてみたわけなんですが、韓国の場合には国際法上違反であるということを、あのときにも私どもは指摘しました。ただ、あのときには、はっきりと軍令第三十三号というもので、一つの例をつくっているわけですね。ですから、私どもは、国際法に違反だということをあのときも指摘しましたし、いまでもそう思いますし、いま高島さんも、平和時であるからというようなことばも述べられたような、割り切れない面もあると思いますけれども、今回の場合はそういうものがないものですから、その辺のことをいままで申し上げたような質問の形で、実は疑問に思った点をはっきりさせたいと思いました。しかし、いままでの御答弁では、はっきり没収されてもいいんだというふうなことまでには言い切れないようなものがまだ私の中にも残っておりますけれども、これ以上この問題は質問してもしかたがありませんから、先に進みたいと思います。 そこで、このミクロネシアとの問題は、非常に長い間交渉が続けられていたということを聞くわけでございますが、なかなかそれが解決できなかったという理由をまずお伺いしたいと思います。 それから、この問題が国連などにおきましても非常に何だびかいろいろ議論されていたということを聞いておりますので、その間の経緯を説明をしていただきたいと思います。
○東郷政府委員 ミクロネシアは、一九四七年に国連の信託統治になりまして、その後五〇年ごろから、ミクロネシアの住民が、戦争中こうむった有形、無形の損害に対する補償をしてもらいたい、特に日本からそれを取ってもらいたいという話が出てきました。しかしながら、わがほうから見れば、そういう問題はたてまえとしては平和条約で片づいておる問題であるということでございますので、アメリカが、当時国連における信託統治理事会で、この問題に関しては矢面に立っていろいろ扱ってきたわけでございますが、その圧力がだんだん強くなるにつれて、アメリカのほうもこれは早く片づけようという気分になりまして、わがほうと五〇年代の初めから話をするようになりました。しかしながら、わがほうはにわかにこれに応ずることも、いろいろ平和条約との関係もございまして、いわば法律論争のようなことをやっておったわけでございます。 それから一方、国連の信託統治理事会では、年を追うてこの問題を早く解決しなければいかぬという声が強くなりまして、近年では、いつまでも片がつかないならば事務総長の仲介でも求めなければならぬではないかということになりまして、米国のほうもわがほうも、これはやはりミクロネシア住民のためにも解決すべきだというふうに機が熟してくるまでに、実は十年以上経過したわけでございます。
○戸叶委員 二十年間もなかなか話がまとまらなかったというにはいろいろあったろうと思いますけれども、そこで、この協定の形を見ましても、そういうふうなまとまりにくかったということを反映してか、それとも全然関係ないかどうかわかりませんけれども、先ごろの説明の中にも、前文で「信託統治地域の住民の福祉のために自発的拠出を行なうことを希望し、」と書いておきながら、同時に、平和条約に規定されている信託統治地域に関する日米間の財産請求権の処理の問題についてその最終的解決を確認することに意見の一致を見るに至ったというふうな説明をしているわけですね、説明文の中に。そうすると、この自発的拠出というのと平和条約の四条の(a)項とは性格が違っているのに、こういう書き方をしているというのは、何か矛盾をしているのじゃないかというふうな考えを私は持つのですけれども、自発的拠出と財産請求権処理というのは、性質が違うんじゃないでしょうか。私の考え方が間違っているかどうかということを一ぺん確かめておきたいと思います。
○高島説明員 戸叶先生の御指摘のとおり、住民の福祉のための拠出と、それから平和条約第四条に基づく処理という問題とは、全く法律上性質の違う問題でございます。先生の御賢察のとおり、この条約自体が、そういう非常に相反する、全然法律上違いまする問題を一緒にまとめた協定でございます。したがいまして、前文にございますとおり、一つは住民に対する同情の念を表明すること、二番目は福祉のための自発的拠出を行なう、三番目に平和条約第四条の解決をする、この三つのことをこの条約の中に取りきめてございます。
○戸叶委員 そうすると、自発的拠出というのと、それから平和条約の四条の(a)項というのとの関連性というのはどういうふうになってくるわけですか。全然関連性がなくて、前のほうの自発的拠出というのは精神的なものだ、それからこの四条のほうは具体的、実質的なものだ、こういうふうに了解したほうがいいのでしょうか。
○高島説明員 ただ、法律上は確かに、申しましたとおり、二つの問題は関係ございませんけれども、拠出をするにあたりまして、いままで長い間平和条約締結後懸案になっておりました四条の問題をこの際解決しておきたいということで、この問題を同時に解決した次第でございます。
○戸叶委員 そうしますと、もう一度念を押しますと、第二次世界大戦中の敵対行為の結果こうむった苦痛に対してたいへん同情いたします、それで住民福祉のために自発的拠出を行ないます、そういうふうな気持ちで、四条の問題もこれで片づきます、こういうふうなわけでございますか。
○高島説明員 前に申しましたとおり、法律上は関係ございませんけれども、事実の面でいま先生の御指摘のとおり関連はございます。
○戸叶委員 大体わかりました。 そうすると、その次に、日本とアメリカとの関係なんですが、日本とアメリカと五百万ドルずつ出すわけですね。五百万ドルずつ出しますね。そうすると、効力の発生の要件として、日本は国内法の手続が必要である。そうすると、アメリカの場合は、日本の効力が発生すれば、日本が国会で承認をすれば、もうそれでこの協定が効力が発生するのだというふうにここに書いてあるわけでありますけれども、そうすると、アメリカの国内法の手続というものは全然要らないのかどうかということが疑問になってくるのですが、この点を伺いたいと思います。
○高島説明員 この条約の効力発生要件につきましては、第四条に規定がありますとおり、日本につきましては、国内法上の手続が終わって、その旨を米国に通知したとき、それから米国につきましては、これはそのような国会の承認を得る条約にしないで、いわゆる行政取りきめにしたいという希望に基づきまして、米国のほうといたしましては、特別な国内法上の手続を必要としないたてまえになっております。ただ、その結果、条約自体は発効するけれども、米国といたしましては、国会の承認を得ない条約でございますので、この五百万ドルの拠出手続につきましては、やはり国会の承認を得て拠出ができる段階で、初めて両方日本と合わせまして福祉のために使うということになるわけでございます。したがって、協定が発効して直ちに五百万ドル出されるということでなくて、日本につきましては、来年度の予算で御承認を得た上で、その五百万ドルを三年間に分けて拠出する、米国のほうも、来年日本と同時に拠出する意図であるけれども、国会の都会がございますので、万一国会で承認を得られないという段階になります場合には、日本もそれに応じておくらせるということになるわけでございます。
○戸叶委員 そうしますと、この条約が日本の国会で批准された場合には、効力は発生するけれども、まだアメリカのほうでも予算を組まなければ、そして日本のほうでも予算を組まなければ実施はできないということになるわけですね。 そこで、ここには、この条約を実施させるためには細目取りきめが必要だと番いてあるわけですが、この細目取りきめというものは、日本の五百万ドルに対する細目取りきめですか、それとも全部の細目取りきめですかという点が一つ。 それからもう一つは、どういう機関でこの細目取りきめをやるかということが一つ。 それから日本の場合には、生産物及び役務の供与と書いてありますけれども、それは両方のを合わせての生産物及び役務か、日本から出す場合は生産物及び役務の供与ですけれども、アメリカの五百万ドルというものは全然違うふうに使うのかどうか。この三つの点を伺いたいと思います。
○東郷政府委員 第三の点は、日本のほうは生産物及び役務、米国のほうは特にそういうことではなくて、キャッシュでもよろしいということでございます。 それから第一の細目取りきめは、主としてわがほうの供与いたしますものは生産物及び役務でございますから、それに関する細目取りきめということを念頭に置いたものでございます。 それから細目取りきめに関する機関といたしましては、いわゆる外交ルートで事務的に扱うと考えております。
○戸叶委員 そうしますと、いまのところ、別に細目取りきめのことは考えていない、これから効力を発する実施の段階で、住民の福祉ということを考えて話し合った上で、細目取りきめをするというように了解してよろしゅうございますか。
○東郷政府委員 そのとおりでございます。
○戸叶委員 それから沈船引き揚げに関する交換公文の中で、「同地域の領水内にある」ということが書いてありますけれども、これは領海にしないで、領水としたのは、もっと広い範囲という意味ではないかと私は理解するのですが、それはどういう意味なんでしょうか。
○高島説明員 これは領海と同じでございます。
○戸叶委員 領海を含めてもっと広い範囲に解釈するのが領水じゃないのですか。そうじゃなくて、領海を使っても領水を使ってもどっちでもいいんでしょうか。
○高島説明員 どちらでも同じでございます。
○戸叶委員 それじゃもう一点だけ伺いたいのですが、戦時において敵国の領海内で沈没した艦船の所有権というものはどういうふうになっているか、そして公船と私船との場合に区別があるかないか、この点も伺っておきたいと思います。
○高島説明員 先生のお尋ねは、この協定に基づく沈船のことでございますか。
○戸叶委員 これもあるし、また一般的にもあると思います。
○高島説明員 まず第一番に、この協定によります沈船につきましては、これは当然ほかの財産と同じように没収の対象になっておるとわれわれは考えております。 それから、一般的に申しまして、領海内、つまり領水内にございます船舶につきましては、沈船はやはりその領海の属する国に属するものというふうに考えております。
○戸叶委員 それは公船も私船も同じですね。——私の質疑はこれで終了いたします。
○北澤委員長 穗積七郎君。
○穗積委員 最初に大胆にお尋ねいたしますが、日本の委任統治時代の統治の状況、それから対住民関係の状況はどういうことでしたでしょう。御存じでしたらお聞かせいただきたい。
○愛知国務大臣 当時、該地域は、国際連盟の委任統治領でありましたから、法律的あるいは条約的にいえば、該地域は日本内地と同様の施政下にあった、まず第一に法律的にはさように理解いたしております。 それから当時の住民は、当時の日本国に対して相当の親愛の情を持っておったのではなかろうかと感ぜられます。そのことが、今回のこの問題の処理につきましても、日本から何らかの形で——その根拠についていろいろ見方もございましょうが、私の理解するところでは、必ずしも法律上の権利、権原ということではなくて、何か日本から協力、援助をもらいたいという気持ちが非常に強いのも、そういったような関係も根ざすところがあるのではなかろうか、かように考えております。
○穗積委員 事務当局にお尋ねします。 これは戦時、日本統治時代には軍事目的に使用いたしておりましたね。その法的根拠はどこにありますか。これが一点。 それから、当時の島々におりました人種並びにに人口、その状況。
○高島説明員 南洋委任統治地域の連盟時代の委任統治条項というのがお手元にございますが、そこの第四条に「土着民ノ軍事教育ハ地域内警察及本地域ノ地方的防衛ノ為ニスル場合ヲ除クノ外之ヲ禁止スヘシ又本地域内二陸海軍根拠地又は築城ヲ建設スルコトヲ得ス」という明文の規定がございます。現在の国際連合のもとにおきまする信託統治地域につきましては、このような制限はございませんけれども、連盟時代の委任統治地域につきましてはこういう制限がございました。したがって、これを軍事基地化するということは、国際連盟時代は認められなかったというふうに考えております。
○穗積委員 人種、人口はわかりましたか。お調べ中でしたらあとでもいいですよ。
○東郷政府委員 当時の詳細な国政調査のようなものではございませんが、現在九万人余り、おそらく人口は当時とそう変わってないと存じます。
○穗積委員 トータルは十万人ですね。
○東郷政府委員 十万人足らずでございます。 原住民の種族は、マレー方面から東に移ってきたものあるいは東方ポリネシア族の西に移ったものともいわれておりますが、幾つかの種族の混血であろうということでございまして、人種学上ミクロネシア族と総称されますチャモロ族とカナカ族の二種類に分けられるそうでございます。
○穗積委員 これらの各人種の相互間の関係は、日本の統治時代と今日まで通じまして、どういう状況でしょうか。
○東郷政府委員 人種上二種類ということでございますけれども、これらの二種類の人種がマリアナ群島、カロリン群島それぞれにまざっておるようでございます。 わが国との関係は、最近の特にマリアナ台風のときの例でもわかりますように、信託統治時代になりましても、旧委任統治時代をしのんで、わが国に対してはなつかしみと親近感を持っておる、こういうふうに聞いております。
○穗積委員 私がお尋ねしたのは、現地住民の間の人種差別がありますね。人種の種類が異種類がありますね。その相互関係を聞いているのです。日本との関係でなく……。
○東郷政府委員 その二つの人種間に特に争いがあるということはないようでございます。
○穗積委員 そうすると、日常の経済生活、文化生活あるいは結婚等、そういう問題は全部うまく融和、混流しておるわけでしょうか。
○東郷政府委員 一般的にそういうことであると承知いたしております。
○穗積委員 ちょっと二つ一緒に質問したものですから、あと先いたしまして、いまの軍事的な問題、それを先に質問いたしましたが、事のついでですから、ちょっとあとにいたしましょう。 そこで、現地住民の諸君は主権はいま持っていないわけですね。主権は持っていない。しかし、自治組織あるいは経済組織、生活組織というものはございますかどうか。そしてまた、それらの諸君は共通の政治的、経済的、文化的な要求を出す場合には、どういう機構、組織を通じてそれをまとめ、要求しているのか。それで異人種があるとすれば、その人種間における組織の違い、あるいは意見の対立、あるいは自治能力、経済能力の差異、こういうものがございましょうか、どうでしょうか。 このことをなぜお伺いしますかといいますと、今度の、賠償だか補償だか援助だか贈与だかわからないような、あいまいなものでございますけれども、目的はあくまで、アメリカではなくて、住民の福祉のためということになっております。そうして貴重なわれわれの税金を、国内のみじめな人をそのままにして、やる以上は、それがここの表題にうたわれておるような目的のために実施されなければならない。そうなりますと、アメリカが要求を出したのではなくて、住民が出したわけですね、日本の援助を得たいと。その気持ちには、被害意識を持った賠償請求権のような気持ちと、それからいま大臣の言われたような、親愛の情を持った好意的なプレゼントを要求するという気持ちと、錯綜しておるようですけれども、いずれにいたしましても、請求をする発端は、これは住民から出ておるわけです。そうしてそのわれわれが贈りましたものが、アメリカの利益ではなくて、住民の福祉に限って直接利用されなければならない。そういうことになりますと、私は、いまの人種の問題、それから人種相互間の問題、各人種内における組織の問題、それから自治能力、自治機構の問題等々につきまして非常に関係があると思うので、お尋ねするのです。その魚度からお尋ねしておるのですから、私の質問しておる角度、趣旨を御理解の上で、再質問しないでいいようにお答えをいただきたいと思っております。
○東郷政府委員 先生御指摘のように、現在は信託統治下にございまして、ミクロネシア人自身が主権を持っておるという形ではございません。高等弁務官がおりまして、これが行政の責任に当たっております。が、同時に、ミクロネシア人自身の声というものが——最初のうちは私も存じませんが、信託統治権者としてのアメリカが、ミクロネシア人の声というものを聞いていかなければならぬという方針をはっきりとるようになりまして、具体的には一九六五年にミクロネシア人の二院制の議会を始めたわけでございます。一般議会と代議員、そう訳されておりますが、一般議会のほうは、任期二年で全地域から二十一名の議員が出ております。代議員のほうは、ミクロネシアを六つの地区に分けまして、任期四年で各地区から二名ずつ十二名で、これが上院という形になります。こういう組織の立法機関もできるようになりました。現実に今回の問題に関しましても、こういうミクロネシア人の機関が非常に強く高等弁務官を動かしまして、国連なりあるいは日米交渉なりということになったようなわけでございますし、またこの議会において、ミクロネシアの将来の問題をどうすべきかという点についてもいろいろ意見を出しております。行政府の高等弁務官府は、現実にはミクロネシア人がまだ要職にはついておらぬようでございますけれども、各六つの地区があるようでございますが、その各地のそれぞれの行政機関にはミクロネシア人も入って、行政にも当たっておるようでございます。幸い高等弁務官府の施政も現地ミクロネシア人の意向を反映し、またこれを立法なりさらに行政にも参加さしていこうということでございますので、先ほど先生御懸念のような点は、われわれとしてはだいじょうぶなのではないか、こう思っております。もっとも、何ぶんにもまだ予算にいたしましても米国政府の出資金が大部分を占めておるようなわけでございますから、今日まだ施設権者の意向というものが全体の行政に強く反映されるという事情もあるかと存じますけれども、しかし、今回のわがほうの経済協力に関しては、先ほど申しましたようなミクロネシア人の立法機関もあることでございますし、十分わがほうの意図は実現されるものと考えております。
○穗積委員 日本統治時代の文盲率、それからアメリカ統治に移ってから現在の文盲率、どんなことになっておりますか。
○東郷政府委員 ちょっと御即答いたしかねますので、後日にお答えさしていただきたいと思います。
○穗積委員 それでは突然のことですから、文盲率の数字はよろしゅうございます。ただ、一般的に観測されて、どの程度の自治能力、それから知的能力を持っておるかということをお尋ねしておきたいのです。 それから同時に、できればついでに、地元住民のおもなる産業、あるいは労働に服しておるのが大多数だと思いますけれども、その職種ですね、主要な職種、農業とか漁業とかが主ではないかと思いますけれども、それがどういう比率であるか、それらをちょっとお話しください。そのほかありましたら……。
○東郷政府委員 堂ノ脇事務官からお答えいたさせます。
○穗積委員 ちょっとお尋ねいたしますが、外務省で戦前、戦後この現地に行かれた経験のある方いないのでしょうか。
○堂ノ脇説明員 堂ノ脇でございます。私、二月の中ごろに現地に出張して、最近の現地における住民の生活を見てまいったわけでございますが、まず、現地住民の生活の状況から申しますと、一人当たり年間所得が約二百ドル足らずのきわめて貧しい生活を送っておるということでございます。そうして大部分のミクロネシア人たちは、政府官庁の職員として、米側からの予算に基づく収入に依存して生活しておるという状況でございます。 それから現地自身の産業といたしましては、タロイモとかバナナとかいうものを主力としておりますけれども、農業といたしましては、ヤシ、コプラを中心としたものが中心でございます。 それから漁業は、パラオ地区に若干ございまして、ヴァンギャップというアメリカの会社が進出しておりますけれども、そこで雇われている者が数十名ございます。 それから教育施設は、戦後アメリカの統治下になりまして、最もアメリカが力を入れましたのは教育面及び病院施設でございまして、現在では義務教育として中等教育までを実行しているという状況でございます。 文盲率の点につきましては、詳しくはさらに調べてあとから御報告いたしますけれども、少なくとも人口の四分の一は英語を日常語として使っている。それから四十歳以上の者、およそ人口の四分の一でございますけれども、これは日本語を共通語として使用しているという状況でございまして、あとは各地区ごとに、サイパンではサイ。ハン、マリアナ地方のチャモロ語、パラオのほうではパラオのことば、トラックのほうではトラッキーズと申しますトラック地区の土着のことばを使っております。
○穗積委員 現地民の新聞は発行されておりましょうか。
○堂ノ脇説明員 お答えいたします。 一つだけ「マイクロネシアン・フリー・プレス」というのがございまして、ガリ版刷りでサイ。ハンで発行いたしておりますけれども、それ以外は現地民の新聞はございません。
○穗積委員 それは英文ですか。
○堂ノ脇説明員 はい、英文で発行されています。
○穗積委員 部数は。
○堂ノ脇説明員 部数は数百部と聞いております。
○穗積委員 それを読んでおるのは、行政機関または議会に出ておる諸君が見るくらいのものですね。
○堂ノ脇説明員 そのとおりでございます。
○穗積委員 編集権はむろんアメリカですね。
○堂ノ脇説明員 編集権は、言論の自由ということで、現地人が持っております。
○穗積委員 それからもう一つは、住民の組織ですね。先ほど言った議会と、それからアメリカがやっておる行政機構、そのほかに、自主的、任意な住民組織はありますか。
○堂ノ脇説明員 お答えいたします。 各六つの地区にそれぞれ立法議院がございます。そのほかに、おもな都市及び各村落にそれぞれ村議会あるいは市議会というものがございまして、こういうものは完全に民選の議員によって構成されてございます。 それから、そういう地方の段階では、立法府だけではなくて、行政の面でも主導権を持って行政を行なっているという状況でございます。
○穗積委員 それは日本の末端の町内会みたいなものですか。
○堂ノ脇説明員 そのとおりでございます。
○穗積委員 そうすると、それからもう一つお尋ねしますが、たとえば、私ども見たことも調べたこともないからわからない、空想的想像ですけれども、主要産業、主要労働は農業と漁業だということのようでありますけれども、漁業協同組合みたいなもの、漁業者の組織ですね、産業組織、経済組織、それから漁業者の組織というものはございましょうか。 それから、土地の所有制は認められておりましょうか。土地の所有制はどうなっておりましょうか。所有権を持った生産農民であるのか。たとえば、私見聞した例を一つ申しますと、キューバの革命前というものは、土地の所有権はアメリカの農業会社がほとんど独占いたしておりまして、それで原住民というものは季節的な低賃金労働者にすぎない。農奴ですね。ここにおいてはどうでしょうか。
○堂ノ脇説明員 まず、農業、漁業などの分野におきます協同組合等の組織でございますが、現地におきます協同組合は、私が見聞してまいりました限りでは、主として共同マーケットと申しますか、商業の分野で住民たちが資本を出し合って、ゼネラルストアと申しますか、百貨店のようなものを主要な都市に二つとか三つとか持っておりまして、そういうものが協同組合的なものとして存在しております。 あと漁業、農業の分野に関しましては、いまだにきわめて原始的な産業形態に近うございまして、そういうものが存在するという話は特に承っておりません。 土地の所有に関しましては、このミクロネシア地域は非常に土地資源が少のうございまして、ミクロネシア人たちが土地の所有権を持ち得る、それ以外の外国人は、アメリカ政府及び米国人を含めまして借地ができるというだけの条件にして、住民の権益というものを保護しておるというふうに了解しております。
○穗積委員 それから、いまの農業、漁業、商業等の、多少なりとも投資資本あるいは経営資本というものがあろうかと思うのですが、それらは土着資本でございましょうか、アメリカの資本によるものでしょうか、その両者の合体であるのか、主要な資本構成はどういうふうになっておりましょうか、投下資本まで含めて。
○堂ノ脇説明員 ミクロネシアの経済活動の状況につきましては、国連の信託統治理事会に対しまして、アメリカ政府が信託統治権者といたしまして毎年年次報告書を出しておりまして、その中にも若干経済活動状況について触れてございます。具体的に商業の分野においてどれくらい現地の資本が占めているという数字は、私まだ見ておりませんけれども、現地の資本の中でも、特に商業資本、それからレストラン等のサービス産業に対しましては、現地の資本が著しく伸びておるということ、それから、そういう現地の資本に対して米国等の先進諸国から投資を導入したいという希望が非常に強いというふうに了解しております。
○穗積委員 事前の質問はその程度にいたしますが、事前に申し上げておきます。あとで、日本から拠出いたしましたものですね、両方から出しておるわけですけれども、それの福祉のための使用計画、それがいまの現地住民の実際の産業、生活状態、組織、これに照らし合わせながらどういうふうに活用されるかということですね。そのことをあとでお尋ねいたしますから、あらかじめ準備しておいていただきたい。 それで、高島参事官に返りますが、私の第一問。そういたしますと、日本は第四条の規定に反して軍事使用しておったということになるわけでございますな。そうでしょう。そうなると、それの国際法上の責任問題もあろうかと思うのですが、その問題はどういうふうに処理されたのか、われわれはどういう責任を感ずるべきであるか、その点をちょっと説明してください。
○高島説明員 先ほど申しましたとおり、日本が戦争前あるいは戦争中に委任統治地域の軍事利用を行なったということは、これは委任統治条項第四条違反であるとわれわれは考えております。これに対する処理は、戦後の平和条約の中で処理されたというふうに考えております。このことは、すでに戦争中に、先生御承知のように、一九四三年十一月にカイロ宣言で、太平洋の島は日本から分離するという方針を原則としてきめております。それから戦後も、占領政策の基本目的の中に、はっきりこの委任統治地域の日本からの分離ということを定めております。そういうことは、そういうこと自体実は戦争中における日本のそのような委任統治地域利用に対する一つの処理だったというふうにわれわれは考えております。
○穗積委員 大臣にお尋ねいたします。いまお聞きのとおりでございますが、現地住民が自発的に提起した戦争損害の請求問題、その中には、いまの戦時中の条約違反の責任を追及するものが入っておるのか入ってないのか。ここでの請求は、戦争中にこうむった直接の被害、それに対する請求の意味であるのか、これが第一問です。 そして関連いたしまして、日本側は、その請求の国際法上の法的な義務としては、あくまでこれは認めないという立場でおられますけれども、精神的な面では、多少の道徳的または政治的な責任を感じておるということが、この取りきめの中に意識されておるわけですね。そして、文章にも出ておるわけでございますが、それが向こう側からの提案されました内容——内容というよりは、趣旨でございますが、原地住民がその補償要求をするという趣旨の中にどう含まれておったか、日本はそれをどう受け取ったか、その経過についてお尋ねいたします。
○愛知国務大臣 該地域の住民としては、昭和二十五年ごろから、国連の信託統治理事会に対して陳情を数回にわたって行なっておるわけでございます。しかし、わが国としては、政府としては、この補償というような法律的あるいは条約的な根拠に基づいたものについては、一般的に処理されてあるのですから、そういう法的な要請に対しては応じ得る立場にないという態度をずっと引き続き続けてきておるわけであります。しかし、提案理由の説明の中でも申し上げたつもりでありますし、また協定案の中にもそういう趣旨がにじみ出ているというようなただいまのお話もございましたが、私もさように考えるわけでありまして、法律的に損害を補償するのだということは、こちらはさように理解しておりませんけれども、しかし、不幸にしてこの地域が第二次大戦中に激戦のところになって、多くの住民が死傷もしましたし、また物質的には精神的にも非常な苦痛をこうむった。このことも、また実際の事実上の問題でございますから、そういう点を胸に入れまして、そして、人道的と申しましょうか、あるいはもう少し感情的と申しましょうか、あるいはさらには道徳的とも申しましょうか、そういう気持ちを入れて、該地域の住民の福祉のために自発的な拠出を行なって経済的な協力をしてあげたい、こういうところでこの話に大団円を告げたい、こういう気持ちでございます。
○穗積委員 そうすると、向こうからの要求の理由というものは、日米戦争中にこうむった被害に対する補償請求、そういう気持ちだけですね。日本の統治そのものに対する不満、あるいは日本の使用が条約に反しておったという責任を追及する、そういうものはないわけですね。
○高島説明員 日本の統治に対する不満ということではございませんで、国際連合の信託統治理事会ではっきり申しておりますとおり、ウォー・ダメージ、戦争損害に対する請求ということで問題を提起しております。
○穗積委員 それでわかりました。 次にお尋ねいたしますが、そうなると、戦争による被害の実情と、その被害を与えた責任の問題になるわけですね。だれに責任があるかということですね。被害状況を概略報告してください。 これは何かというと、いま言うように、法律上は責任は感じないけれども、経済援助ではない、しかし、そういう道徳的または政治的な責任を意識しながら、十八億円という額がきまってきたわけですね。そうなりますと、この中の額の決定については、これは被害実情というものが計算の意識の中にあると思うのです。それでお尋ねするわけです。だから、被害の実情を第一にお尋ねいたします。そうして、その責任はアメリカにあるのか、日本にあるのか、だれの手によって被害を受けたか、それをお尋ねいたしますから、そういうことを含んだ質問でありますから、何なら一括してお答えいただいてもけっこうですし、順を追うてお答えいただいてもけっこうです。
○愛知国務大臣 私から概括的にお答えをいたしたいと思いますけれども、いま申しましたような経過でございますから、当初、昭和二十五年当時から住民が要請したのは、戦争損害を補償してくれということで話は始まったわけでございますが、被害の実情がどういう状況であったかということにつきましてはともかくといたしまして、その損害補償をしてくれといったときの終始しております要請の額というものは二千二、三百万ドルと理解をいたしておりますので、現地住民の人としては、これは想像が入りますけれども、やはり損害を踏んまえての要請の形でございますから、大体二千二、三百万ドルというところが彼らの頭にある要求の額ということに理解してよいのではないだろうか、こういうふうに考えております。 それから責任の問題については、これは先ほども申しましたように、日本の国際連盟委任統治当時の問題につきましては、一般的にサンフランシスコ条約によって処理ができていると理解をいたしておるわけでございますけれども、この現地の住民の気持ちとしては、激戦が行なわれて非常な損害を受けたのだからということで、日米両国に対してそうした償いを期待しておるという気持ちではなかろうかと思います。したがって、そういう点を考慮に入れ、かつ、そういったような問題でございますから、ずいぶん長い年月かかって、ようやくこういうことで決着がつくようになったわけでございまして、今回のこの決着によりまして、先ほど来御説明いたしておりますように、苦痛に対する同情の表明——これは日米両国が同情を表明しておるわけでございます。それから、日米両方から自発的な拠出という考え方に基づいて、この処理に十八億円ずつ出そうということであり、かたわら、平和条約四条(a)項に対する特別取りきめの処理というものもこれで完結をする、こういうふうなことが考え方の経過並びにわれわれとして得ました結論でございます。
○穗積委員 二千二、三百万ドルの要求のときに、これは金額に換算したわけですけれども、それに対しては積算の基礎というものが示されておると思うのですね。精神的、肉体的、または物質的にこれだけの被害をこうむったので、それに対して二千二、三百万ドルが妥当であろうという要求だと思います。そういう点は現地民の要求として出ておりましょうか。そうならば、被害状況というのは、現地民自身が体験をし、現地民自身が集約した被害状況でありますから、それで一目りょう然になるわけですね。そして同時に、当時の日本の機関が実情を見れば、それが水増しであるか、妥当なものであるか、あるいは過小なものであるかもわかると思うのです。そこらのいきさつをちょっとお話しくださいませんか。
○東郷政府委員 実際の被害という問題につきましては、国連の調査団あるいは米国政府の調査団というものが現地を訪れまして、いろいろ直接話を聞いて調べたようでございます。その内容は、戦闘行為からきた財産の損害というのが、そもそもその戦闘がたまたまミクロネシア諸島で行なわれたという事実からきた損害でございまして、現実には日本軍のたまもあれば、米軍のたまもあったわけでございますが、そういう物的損害、それから、たとえば日本軍が飛行場をつくるということで、強制疎開させられた、あるいは強制労働させられたといった種類の問題、それから現実に栄養失調で死んだとか、あるいは戦争の際に死んだとか、命を落としたものが、いま申したような調査の結果千四百二十数名。こういうものを全部調査団が集めました結果、先ほど大臣が申されたような二千何百万ドルという数字が出てきたそうでございます。それに基づきまして、米国施政当局も、ミクロネシアのしかるべき相手方といろいろ話を重ねたようでございます。われわれ推察いたしますところでは、今回日米間に妥結しました数字ということで、ミクロネシア人側も納得したと申しますか、さような話し合いが施政当局とミクロネシア側との間に、これは表向きどうというよりも、現実にそういう話し合いが進められたものと理解しております。
○穗積委員 私は、審議の資料として、日本機関が責任を持って調査したり、あるいは現地民が被害の実情を出したり、それからアメリカまたは国連が調査をしたというような事実があるなら、その資料を先に出されてしかるべきだと思います。私は必ずしも五百万ドルという金に結びつけてだけ考えない。さっきも言ったように、われわれもまた精神的、政治的、道徳的な責任は日本国民として感ずべきものもありましょう、賠償するしないは別として。そういう点からいきますならば、死者については千四百人程度という。これは国連の調査団の報告だということですが、そのほかの、いまおっしゃいましたような強制労働——強制労働にははたして賃金が払われなかったのか、ただ働きをさせたのかも、われわれ実情がわからない。それから餓死あるいは病死、中には日本の駐在しておる官、軍あるいは一般国民が差別待遇をしたり、不当な、人権をじゅうりんをしたというような事実も、抽象的にいえば考えられることです。アメリカ側にもそれはあるでしょう。そういうような資料を、一応この問題に国会が取り組む以上は、日本国民自身にその実情をまず報告すべきものではないかと私は思うわけでございますが、それはいまお尋ねして、なければ審議を進めないというようなことではありません。しかし、ありましたらどの調査でもけっこうですから出していただきたいと思うのです。大臣、そうお考えになりませんか。大臣の政治的なお気持ちを聞きたい。
○愛知国務大臣 私、政治的に申しますと、先ほど来申していることに尽きるわけでございますけれども、損害の補償ということではわれわれは応ずるわけにいかないわけでございますから……(穗積委員「補償と関係ないですけれども関係なく聞いているのです。」と呼ぶ)関係ない問題でありますから、その点をひとつお考えいただきたいと思うわけでございます。 なお、資料等につきましては、提出し得るものがございましたら提出をさせていただきたいと思いますけれども、ただ、その数字と今回の処理とは、政治的に言えば、相互の関連は持たさない、そこで政治的な解決ということになっているわけでございますから、その点だけは御念頭に入れておいていただきたいと思います。
○穗積委員 その点は初めから理解しているのです。局長または参事官、どうですか。無理なことを言っているわけじゃないですよ。
○東郷政府委員 具体的な、だれがどういう被害を何ドル受けたというような数字は、実は調査団自身がみずから確認したとか確証するとかいうことは非常に困難であったという形が出ておりまして、国連その他に公表された資料の中には、個々の被害についてまで言及したものが実はないわけでございます。われわれも、話の途中、参考までにいろいろ話を聞くようにつとめましたが、具体的に被害を金額にすればこうだという詳細な資料というものは、実は遺憾ながら持ち合わせておりませんし、また、わがほうも終戦後そういう調査をみずからする立場になかったものでございますので、個々の被害についての資料というものは、遺憾ながらあまり御期待に沿えないのではないかと思います。
○穗積委員 日本側に調査がなければ、先ほどお話がありましたように、国連の調査団が出ておるわけですから、そういう正当な機関から出ておれば、必ず調査団の報告というものがあってしかるべしだと思うのです。この委員会にはその報告書すら資料として出てないでしょう。ちょっとおかしいことではないかと思うのです。私は、このことは、十八億円という金が妥当であるかどうかということと必ずしも結びつけて言っておるわけではないのですよ。ですけれども、これにはそういうものが意識の間に含まれておる。だから重要な資料ではないか。それをまずわれわれは認識することから出発しようというのがこの取りきめの起点ですから、加害意識がなくてその精神的な責任を感ずるとか、同情を示すとか、そんなことはあり得ぬことですよ。そうであるならば、未開発地域に対する経済的贈与としてこの問題を出したらいいでしょう。そうじゃないですか。現地民の要求が事の始まりになって、それをアメリカが取り次いで、アメリカも要求する、それに応じてこういう取りきめがなされたという経過でありますから、協定そのものの構造がそうなっておるわけですね。だから、その被害事実というものがなければ、被害意識というものは持てないわけだ。わからないわけですよ。いまここで国連の調査団の報告を持ってきてくれということを言っておるわけではありませんが、そういうばく然としたことではちょっといささか不熱心じゃないでしょうか。われわれは子供みたいなものだ、適当に承認しておけというような話になってくるわけですね。われわれは国民に対しても説明できませんよ。一体どういう事実があったのでしょうかと聞かれたときに、何か知らぬがあったようだという話では、はなはだ無責任なことではないかと思うのです。それで伺っておるのですから、だからそういう前向きの態度で御答弁をいただきたいのですよ。
○愛知国務大臣 おっしゃることはごもっともです。そこでただ、先ほど申しましたように、一つは、法律的に言えば、その数字がこうだからといって、これに対応したわけではございませんということが一つと、それからもう一つ、国連の信託統治理事会から派遣された調査団、それの報告というようなもの、これは先ほど申しましたように、御審議をいただく上に御参考にしていただきたい。この資料は提出をいたします。ただ、この資料の中に、先ほど東郷局長から申し上げましたように、やはりいろいろの関係が国連の側にもあろうかと私推察するのでありますけれども、穗積委員がおあげになりましたような各項目について、御納得いただけるような数字が必ずしもその中に入っていないということは、あらかじめお断わりしておきたいと思います。
○穗積委員 事務当局、高島先生、それでいいですね。少なくとも調査団の報告くらいはちょっと見せなさいよ。隠しておく必要ないじゃないですか。これは大いに国民に認識させなければ、それなくして金を出す理由はないですよ。十八億といってあなた方はばかにしておるけれども、われわれの金ですから大金ですよ。
○高島説明員 国際連合の調査団の報告というのは相当膨大なものでございまして、調査団を派遣されるつど、あとかなり詳しいものが出されております。ただ、先ほど大臣から御答弁いただきましたとおり、その内容の中に先生の御参考になるような数字がございませんものですから、そういう意味で、必ずしも御納得いただけないかもしれませんが、内容はお出しいたします。
○穗積委員 資料で出さぬでもいい。また機会があるときに、口頭でこういうことだということでもけっこうです。こういうのでは話にならない。それで言っておるのです。 次にお尋ねしますが、こういう戦争被害の責任はどうですか。国際法上の問題ですけれども、その現地民に与えた、つまり、戦争に関係のない第三国民に与えた戦争による死傷その他の被害、これは一体どっちに責任があるのでしょうか。この責任を、これはいささか法律上の問題でもありますから、あとあとのために伺って——なぜこういうことを聞くかというと、日本が一番責任を感じなければならぬ中国問題がまだ解決していない。これは事の大小じゃない。事の性質の問題、原則の問題ですから伺っておるのです。あそこにおける戦争によって現地民に被害を加えた。その戦争の被害というものの責任は、一体アメリカにあるのか、日本にあるのか、両方にあるのなら山分けで責任を感ずべきものなのか、どうでしょう。
○高島説明員 この信託統治地域につきましては、先ほど御答弁いたしましたとおり、第四条の規定がございまして、第四条の規定に違反して、日本が築城、また軍事的な根拠地に使ったという事実はございました。もしそのようなことがなかりせば、あそこは占領にならなかったのでございますし、その意味におきまして、現地の住民に何ら被害を与えずに済んだということは言えます。そういう意味におきまして、もちろん責任は日本側にあるわけでございますけれども、この問題は、先ほど御答弁いたしましたとおり、平和条約によって完全に処理されたというようにわれわれは考えております。ただ、現在の協定は、そういう問題とは別個に、信託統治理事会を中心にしまして、米国並びに日本に対しましてかなりきびしい要求が長年続きました。その関係といたしまして、今回のような解決に発展いたしたというのが実情でございます。
○穗積委員 この協定の額の取りきめその他使用の方法等について伺っておるのではなくて、むしろ一般的に国際関係における戦争行為があったときに、それによって交戦国の国民でない第三国の国民が被害を受けたときのその加害責任ですが、これは戦時国際法上どう解釈されているかということを日本の外務省の見解を伺っておるわけです。これは一般的な原則としてです。外務大臣から答えてもいいし、条約局長からでもけっこうですが、これは大事な問題でございましょう。
○高島説明員 法律的に申しますと、戦場における一般私人の取り扱いにつきましては、現行国際法といたしましてヘーグの陸戦法規がございます。これに基づきまして行なわれる限りにおきましては、交戦当事者間において何らの責任関係は生じません。ただ、これに違反する場合におきましては、戦後においていろいろ取りきめが行なわれます。
○穗積委員 ヘーグの条約から見て、この具体的な例に当てはめてどう解釈されておりますか。
○高島説明員 私、先ほど来御答弁しておりますとおり、ヘーグの陸戦法規以前の問題といたしまして、日本の委任統治条項の違反の問題としてとらえておりますので、その観点から、平和条約によって処理されたということに理解いたしておる次第でございます。
○穗積委員 私が伺っているのは、日本があそこを軍事目的に使用し、占拠しておったというその法源を聞いているのではないのです。戦闘行為が二カ国の間で行なわれた、また多数国でもいいですけれども、その交戦国の国民でない者に被害を与えた場合に、その被害の責任があるのかないのか、あるとすればだれが負うべきものであるかということを、一般的に国際法の原則として外務省はどう考えているかということを聞いているわけですから、これに逃げ込まないでやっていただきたい。
○高島説明員 その問題に対しまして、先ほどヘーグの陸戦法規に照らして戦後の平和条約において検討されたということをお答えしたわけであります。
○穗積委員 そうすると、責任はないということですね。
○高島説明員 穗積先生の御質問の意味を私、必ずしもよくとらえていないかもわかりませんが、要するに、戦争が行なわれます場合に、陸戦におきましては、陸戦のヘーグの戦争法規に照らして、戦後、責任問題、賠償問題等が処理されるという原則を申し上げたわけでございます。
○穗積委員 外務大臣、どうでしょうか、これじゃちょっとあいまいでございますね。この問題は、この具体的ケースだけではなくて、他の国との関係においても重要な意味を持っておるし、今後においても重要な意味を持つと思います。
○北澤委員長 法理論だけはっきり答えてください。
○穗積委員 法理論を伺っておるのです。さっきの法理解釈では、外務省は交戦国に責任はないということです。
○高島説明員 私、責任がないということをお答えしたわけではなくて、要するに、交戦国がヘーグの陸戦法規に従って交戦したかどうかということは・戦後処理において判断され、その判断に基づいて賠償その他の取りきめが行なわれるということを申し上げたのであります。
○穗積委員 だから、その交戦権が正当なものであるならば、責任はないということですよ、あなたの論理は。そこで、この場合はかくかくの意味で日本の交戦権は不当なものであった、こういう解釈ですか。だから責任はあるのだ……。
○愛知国務大臣 条約論としてはいろいろの論議があろうかと思いますけれども、私は政治的に考えまして、いまの御審議願っておりますこの案件については、国際連盟の委任統治領であったところの島々が、その委任統治を受けた条項に違反しておったところがあるのではないかというような点が一つの問題であろう、かように私解釈しておりますので……(穗積委員「そうです、それは違反行為を認めた」と呼ぶ)その場合に、委任統治条項に違反した事実はあったと私も思われますが、そういった点はまずサンフランシスコ条約において処理がついている。しかし、若干のそういうことも念頭にありますから、それらもあわせていわば政治的な解決をはかった、これが妥当だ、かように考えるわけでございます。 それから、正常な場合というと語弊があるかと思いますけれども、ある国とある国が交戦をし、そうしてその処理は、講和条約というか、そういったような条約によって処理がつくのが常道である、こういうふうに考えますから、必ずしもその問題とこの当面の案件とは——当面の案件のほうがもう少し複雑な要因がある、こういうふうに理解していいのではないかと考えます。
○穗積委員 だから、私はさっき聞いたでしょう。日本が不当に軍事目的に使用しておった、その条約違反の責任が、この現地民の請求の中に含まれておるのか。その条約違反の責任追及が入っておるのかと言ったら、入っていないと言う。理由のいかんを問わず、とにかく受けた被害、実害そのものに対して、苦痛並びにその損害を受けておるから、それに対して何とかしてくれ、こういうことだけだということになっておるわけですね。そうなりますと、戦闘行為そのものの問題になってくるわけですよ。日本がこの条約の四条に違反をして軍事目的に使用しておったということは、この場合には除外されておるわけだ。被害の原因というものは、私は大多数アメリカによる被害だと思うんですね。アメリカ軍の攻撃による被害だと思う。国連の調査団は、撃ち込まれておった鉄砲の弾はどこ製のものであり、大砲はどの程度撃ち込まれたというところまで調査してある。大多数アメリカ軍の加害ですよ。理由のいかんを問わない、現地民の要求というものはそういうものだ。受けた危害、実害の苦痛並びに損害に対する請求ということがこっちとしてはつかみにくいことで、向こうは請求でしょうけれども、こっちはとにかく何らかの意味における責任を感じる、こういうことでしょう。どうでしょうか。さっき高島さんのおっしゃいました条約違反、軍事使用に関する四条違反ということは、これはさっき私とあなたの問答の中でもう済んでおる。済んでおるのです。こんなものはこの請求の中へ——この請求あるいはこのプレゼントを受ける主体は、アメリカじゃないですよ。協定はアメリカと結んでいますけれども、あくまで現地民のみですよ。そのいわば受益者、唯一の受益者ですね。いま言いましたように、実害そのものを問題にしているわけですから。そうなりますと、攻めてきて——日本はあそこのミクロネシア人に戦争をしかけた覚えはないでしょう。あるいはミクロネシア人のおるところに、アメリカ人と入り込んで一緒にそこへ鉄砲を撃ち込んだ覚えはないと思うんだ。爆弾を落とした覚えはないと思うんですね。そうなりますと、向こうが受けたのは、もう一〇〇%近くアメリカ並びにアメリカ軍の兵器による殺戮、被害、こういうことになります。——答えられぬならあとにしてもいい。
○北澤委員長 簡単な問題じゃないか、それは。はっきり答えなさい。不勉強だ。
○穗積委員 何もいやがらせを言っているのじゃない、まことに良心的かつ謙虚、誠実にやっているだけだ。何も不当なことを言っているわけじゃない。
○東郷政府委員 同じことをまた人間をかえて申し上げますが、とにかく先ほどからのお話のように、委任統治条項云々の件は今回の協定とは関係がございませんということ、それから戦争状態があったという事実に基づいてミクロネシア住民が被害を受けた、この問題も、平和条約の中でその責任の問題、その補償の問題は、法律的な問題としては済んでおるわけでございます。たとえばこの問題について、平和条約の条文の中に賠償が入っておらないということは、つまり、法律上の問題としては、このミクロネシアに対する賠償なりという問題は、すでにそのときにミクロネシアの施政の責任にあった米国がもう解決済み、法律的には解決済みということで、平和条約ができたわけでございますので、純粋に法律的な問題としては存在しないわけでございます。その後、いろいろのいきさつがございまして、やはり住民が被害を受けたという事実について、また何年か後、新たな観点から経済協力ということで——まあそこが非常にむずかしい点でございますし、またそういう法律的な問題もからんでおったために、今日まで交渉が延びてきたわけでございますが、いずれにいたしましても、新たに両方が経済協力を差し伸べるということで、すべて法律的に済んでおったこの問題も、道義的、政治的にも取り上げていこう、こういうことでございます。
○穗積委員 この問題提起は、原住民があくまでイニシアをとっておるわけですよ。そうでしょう。アメリカも並行して自主的にこの問題を提案しておるのですか。アメリカは取り継いだわけでしょう。どっちですか。 〔委員長退席、田中(榮)委員長代理着席〕
○東郷政府委員 先生お話しのとおりでございます。もともと原住民が主体の問題でございます。
○穗積委員 そうでありますならば、それじゃ問題を残しながら前へ進みましょう。そのほうが問題点がさらにはっきりしますからね。 アメリカのいまの信託統治の権限はいかなる法律によるものでございますか。
○高島説明員 国連憲章に基づきまして、そのもとで締結された信託統治協定でございます。
○穗積委員 国連憲章信託統治条項によるものですね。それでいいですね。そして、それをいまアメリカは軍事的目的に使っておりますね。審議の促進に協力するために二、三問一括して聞きますから、ちょっとメモされながらお答えください。 軍事的目的に使っておる法源はどこにあるのか。それから、信託統治条項によっての信託受託でありますならば、これはアメリカ、統治国の目的ではない。現地民の育成のためという目的は、あくまで現地民の目的に沿わなければなりませんね。そうすれば、期限あるいはこれを一体いつまでに独立させるつもりであるのか、そしてまた、その過程においてアメリカはいかなる努力をしておるか、すなわち、民主的な諸権利あるいは自治能力の培養のためにどういう方法をとり、どういう進歩、発展があるか。先ほどおっしゃったように、任意的な議会制度は中央並びに地方に認めてきておる。そういうプリングアップの義務というものが信託統治受託者にあると思うのです、信託統治条項によっては。領土権も移譲してかってにやれということじゃないのですよ。ですから、いまの沖繩の問題も同様に、その信託統治条項に従ってこれをプリングアップする義務があるわけですよ。権利よりはむしろ義務です。その義務を一体いかなるふうに——文化的にはさきには義務教育云々の話があった。それから、経済的に一体いかなるプリングアップをしておるのか、また、政治的には議会あるいは執行機関をいかにプリングアップしておるか、自治能力をいかに培養しておるかということですね。同時に、第一問の軍事的目的使用については、いま一体どのように使っておるのか。それで総括としては、一体いつこれを信託統治状態を終了するつもりであるのかどうか。現地民はその信託統治状態を早く脱却して独立をしたいという要求があるのかないのか。それらのことを一括して、アメリカ統治に移りましてから以後の状況を一括して明らかにしていただきたいのです。 まず、権限から説明してください。
○高島説明員 初めに、法律上の問題だけお答えいたします。 先ほど申しました信託統治協定の第一条に、「太平洋諸島地域は、ここに戦略地区として指定され、」云々という規定がございます。第五条に「国際連合憲章第七十六条(イ)及び第八十四条に基く自己の義務を履行するに当っては、施政権者は、信託統治地域が、国際的平和及び安全の維持に関して、国際連合憲章に従ってその役割を果すことを保障しなければならない。この目的のため、施政権者は、次の権利を有する。」と定めまして、第一項に「信託統治地域に海軍、陸軍及び空軍の根拠地を建設し、且つ、要さいを建設すること。」第二に、「右地域に軍隊を駐とんさせ、これを使用すること。」という規定がございまして、国際連盟当時の委任統治地域とは全く違いまして、現在の信託統治制度のもとにおける信託統治地域におきましては、軍事的にこれを利用することを必ずしも禁止しておりません。これは憲章の七十六条の信託統治制度の基本目的の中に書いてございますとおり、まず第一番に、「国際の平和及び安全を増進すること。」という目的が信託統治制度の第一目的にあがっております。これに根拠を置いておるというふうに考えております。
○穗積委員 私の第一問に対する答弁はそれでわかりました。 それから次だ。
○東郷政府委員 現地人の自治能力の向上あるいは独立と申しますか、そういう方向に対する施政権者としての米国政府の努力があるいはおそいのではないかという御批判もあろうかと存じますが、これも先刻申しましたように、最近になりまして、とみに住民の自治能力の向上ということには顕著な努力をしておるようでございます。いつまで、今後どうするかということについても、米国政府が特に最近になりましてから研究を急いでおるといういろいろの徴候がございます。 二、三年前、ミクロネシアの議会からいろいろ要望がございまして、米国政府から、一九七二年に国民投票をして、どうするかきめようという案も米国議会に送られたようでございますけれども、これはまだ実現に至っておりません。現在、米国議会は七二年の国民投票云々について何らの措置をとっておりません。現在、ミクロネシア議会筋の希望としては、やはりある時期に、ちょうど現在プエルトリコが米国との間に自治権を有しながら米国の一部になっておる、そういう関係にございますが、そのような形が一番望ましいのではないか、そういうことができなければ、やがて独立を考えたほうがいい、こういうような意見も表示しておるようでございますが、それらの点も勘案して、米国政府としても、ミクロネシアを今後どうするかということに取り組んでおるようでございます。ただ、何年までにどうしようというところまで計画が具体化しておらぬようでございますが、それもミクロネシア側の自治能力の向上、現地住民の希望ということとにらみ合わせながら、今後さらに研究が進められるものと思います。 軍事的利用につきましては、われわれの承知いたしておりますところでは、クェゼリンの一部が閉鎖地区になりまして、これがミサイル関係に使用されておるということでございますが、その他の地域におきましては、現在われわれの知る限り、軍事的な使用は行なわれておらぬようでございます。最近になりまして、マリアナに新しい基地をつくるのではないかというようなことがいろいろニュースにも出てまいりますが、米国政府全体として、海外の基地の問題をいろいろな角度から検討はしておるということは聞いておりますが、このミクロネシア地区について具体的に計画があるということはまだないようでございます。
○穗積委員 この問題は、私ども日本はアジア・アフリカ地区に位するし、われわれはアジア人であるわけだ。したがって、これらの、いままで諸帝国主義あるいは植民地主義によって不当な支配を受けたり、信託統治条項で独立を享受することができなかった諸民族に対して、日本が率先して、あらゆる機会にその独立解放への要求というものを積極的に主張すべきだし、努力すべきだと思うのです。したがって、今度の協定交渉の中でも、そういうことが行なわれたかどうか、それに対してアメリカはどういう態度をとったか。個別折衝だけではなくて、国連の場において、信託統治地域に対する早い当事者の義務遂行を常に点検をし、追及をし、そして国連の場においても、AA諸民族の独立への要求というものをサポートする必要がある、そういうふうに思いますが、この協定交渉の経過において、そういうことのいきさつを、ひとつ大臣からお話しをいただきたいと思います。
○愛知国務大臣 率直に申しまして、ミクロネシアの所属、将来の問題について、協定の交渉の過程あるいは国連の場等におきまして、日本としての具体的な願望を表明したり、あるいはそれに対しての努力の方向づけをしたことはございません。まだそこまで実はいっておりません。しかし、私の気持ちとすれば、先ほど来申しておりますように、今回御審議を願っておりますこの協定というものが、幸いにして国会の議決、御承認をいただくというようなことになれば、これは一つの大きなステップになると私は思います。と申しますのは、ミクロネシアの住民の人たちが、これは最初は法律的な要請ということで出たにいたしましても、今回のこういう話し合いでとにかく満足をしてくれている。そうして、たとえば日本のこれからの漁業その他の関係におきましても、ますますこのミクロネシア人の協力も従来に増して得られることになると思います。それから、日本人との間の感情的な関係というものも、私は格段によくなってくるのではないかと思います。そういうような環境が改善されるに伴って、今後のあり方について、できるならばよき相談相手になる、そしてミクロネシア人の自主的な願望というものが漸次達成できるように、私どもとしても親身になってお世話をできるような環境がだんだん少しずつでき得るのではなかろうか、こういうところを踏んまえて対処いたしたいと考えております。
○穗積委員 先ほど戸叶委員もお尋ねになりましたので、重複は避けますが、この地域に残してまいりました日本国家並びに国民の財産権益、権利ですね、これも資料が出ておりませんが、口頭でけっこうですから、報告をしていただきたいと思います。
○堂ノ脇説明員 終戦当時にわが国がこの地域に所有しておりました財産は、大きく分けまして、この領海内に沈みました艦船、それからこの地域にわが国及び国民が残してまいりました土地建物等の財産、それからわが国及び国民が残してまいりました動産という三つの分類に分かれると思いますが、詳細な評価額につきましては、何ぶんにも非常に激烈な戦闘行為がございまして、記録が散逸する、それから財産自身も滅失する、関係者も引き揚げてまいりましてから離散するという状態で、全体の把握がきわめて困難でございます。しかし、少なくとも日本政府の財産といたしまして当時郵便局で保管しておりました現金などで、アメリカ側に引き渡したと記録されております金額が百八十六万円、それからその前に戦闘中に米側に押収されたと見られます郵便局の保管現金が四百八十二万円、総計六百六十八万円の債権を日本側が持っていたということになります。 次に、沈船につきましては、昭和二十八年ころの資料でございますけれども、商船が五十五隻、約二十五万トン、それから軍艦が十九隻残されているということになっております。これらの沈船のスクラップとしての価額は、引き揚げに要する費用も考慮の中に入れますと、ほとんど現在ではないといわれております。 それ以外の私有財産につきましては、先ほども申しましたとおり、資料も散逸し、全体としての把握が非常に困難であるという状況でございます。
○穗積委員 不動産はありませんか。
○堂ノ脇説明員 不動産につきましても、まだ当時は土地の登記制度というものが現地で確立しておりませんで、全体の統計は出ておりません。
○穗積委員 これはさっき戸叶委員が指摘されましたが、明らかにこれらはアメリカに没収されたわけですね。不法不当な没収ですよ。対韓賠償の場合も、かの地域にありました日本の財産権益、権利というものは、これは正確な計算評価はできませんでしょうけれども、あの賠償問題を決定するときには考慮の中に入ったわけです。今度は全然入ってないですね。入っておりますか、入っておりませんか。
○堂ノ脇説明員 先ほど申しましたのは日本側の財産でございますが、逆にアメリカ側が日本に対して今回放棄いたすことになりました財産というものがございまして、これは国連の現地視察団の報告書にも出てまいりますけれども、現地の島民が持っておりました円通貨あるいは郵便貯金債権、そういうものを米側が引き継いで処理をするというか、そういうものを債権者に対して支払いを行なったということがございます。で、少なくとも現地住民の終戦当時におきます郵便局貯金の金額は百八十六万円であるといわれております。
○穗積委員 平和条約の規定に伴いまして、旧委任統治地域における財産請求権問題で、日米間で処理すべきものに特別処理の問題があるわけです。これは今度はパーになった、こういうことか。そうでしょう。あなたが予想されるものはどういうものであったわけですか。これなかりせば特別取りきめをしなければならない。四条による特別取りきめの主題となるべきものはどういうものですか。
○高島説明員 第四条(a)項に規定がございまして、第二条に掲げる地域に関係いたしまして、特別取りきめが行なわれるということになっております。そういたしますと、第二条では、(a)項の朝鮮関係は済んでおります。それから(b)項の台湾及び膨湖諸島に関する問題は、現在も残っております。それから(c)の千島列島、樺太、これは現在まだ法律的にその帰属も決定いたしておりませんので、解決のしようがございません。(d)項の委任統治地域につきましては、今回の協定で処理されます。それから(e)、(e)につきましては、全然問題はございません。したがいまして、残りますのは、(b)及び(c)にある二つの問題でございます。
○穗積委員 この問題が今度の協定で解決済みになる、こういう了解ですね。そうでございますね。——まあいろいろお尋ねしたわけですけれども、まだあとお二人も御質問があって御迷惑でもございましょうから、少し省略いたしまして、前に進みましょう。 これは先ほど最初に私が質問いたしました要旨で、大体もう御答弁をいただく用意ができておると思いますけれども、これを出しました後に、住民の福祉のためにどういうふうに使うかということですね。その計画はもうできておりますか。できていないとすれば、アメリカが現地民と相談をしてかってにやるわけでございますか。それについて委任されておる、もしそうであるとすれば、それの執行について、日本にあとそれを検討する権限が残されておるのかどうか。そうでなければ、第三のケースとしては、出資国として共同でこれを執行する、どの類型でこの話ができておるのか、それらのことを、私がお尋ねをしたのは主要なことだけですけれども、細目にわたればまだ幾らもありますが、ひとまずお尋ねしたことに対してお答えいただきたいと思います。そうでなければ、アメリカのためにやるのか、現地民のためにやるのか、わけがわからぬですよ。アメリカの現在の信託統治をわれわれが資金援助をするということになるわけだ。そんなばかばかしいことはやるべきではないです。内政干渉でもありましょう。また逆にいえば、ドル防衛のための不当な協力である、そういう点、そういう疑問を含んでお答えいただきたいと思います。
○東郷政府委員 この協定にも書いてございますように、住民福祉のためにわが国が経済援助をしようということでございまして、これは具体的な細目に関しましては、今後の細目取りきめできめる、こういうことになっておりまして、われわれの一般的な考え方といたしましては、たとえば道路の整備とか港湾の整備とか、そういったようなもの、住民の社会生活、経済生活の基本になるようなところにこの援助をしたいと考えておりますが、今後細目取りきめを進めるにあたりましては、施政権者である米国を通じまして、ミクロネシア人の最も必要とするところ、最も希望するところを十分考慮に入れまして、協定の趣旨に沿った、われわれの目的に沿った細目取りきめをつくってまいる考えでございます。
○穗積委員 これは現地民の福祉のためにこれをやる、これをやる根源は、現地民の戦争被害に対する同情あるいは道徳的責任の自覚、それによって現地民の民生安定あるいは民生向上のためにのみ限ってやるべきだと思う。先ほど私がお尋ねいたしたように、まだ非常に原始的な第一次産業の中で、しかも非常に原始的な経済生活状態です。いまお話のような道路、港湾の修理なんというものは、アメリカのみがやるべき責任の問題ですよ。現地民の生活に関係があると言うが、現地民の生活は、日本が封建社会時代から経験したことですけれども、まっ先にやるべきものはやはり経済生活の向上です。道路、港湾の建設は、なるほど近代化の途中においてはこれは現地民の福祉に関係がありましょう。しかしながら、先ほどお話があったような、原始的な経済状態、原始的な生活状態の中における福祉の重点というものは、そんなところにいくべきではないので、この計画は見当違いです。われわれはそういうものに賛成するわけにはいきません。名前の上では現地民の福祉、現地民の要求にのみ発した協定、拠出、そしてそれはまだ非常に立ちおくれておる現地民の福祉のためにやるのだということになっておって、アメリカが当然やるべきことを——その道路、港湾は軍目的に使われるでありましょう。だれのためにやるのですか。そうなると、駐屯いたしておりますアメリカの兵隊のため、この役務その他を拠出する。これはあとで伺いますが、おそらくは他の賠償のケースと同じように、日本の建設業者がそれを請け負う場合もあるでしょう。だが、だれのための、何の目的のための拠出であるかわからない。これは非常な誤りです。だから、もっと現地民の文化生活に直接関係があり、福祉に関係があり、あるいは自治能力を早くブリンギング・アップするための育成のために使う、経済あるいは生活の改善のために使う、それが主要でなければならないと思うのです。現地民にやるならば、先ほど十万の人口だと言われたが、十万の人口に対して三十六億円というものは必ずしも少ない補助ではないわけです。施政権者のみがやるべき港湾、道路の改修のために山分けでいこうと、そんなばかな話はないですよ。それは根本的な誤りです。この提案理由の説明なり条約の精神から見まして、羊頭狗肉とは全くこのことではないでしょうか。
○愛知国務大臣 この三十六億円の使い方については、協定にもございますように、日本国としては四十五年度予算、これに組みまして、それから四十五年度を含む向こう三カ年間に使用方法を具体的にきめて、当然予算としても御審議を願うことに考えておりますが、現在までのところ、たとえばアメリカ側にいたしましても、一九六九会計年度で、ミクロネシアには三千万ドル以上の予算が組まれておるようでございますが、日米両方のこの話し合いの合意しております点は、当然に予算などで見るべきもの以外のもので、現地住民の福祉に直結するもの、こういう考え方でございます。ですから、その中にはいま東郷局長があげられたことも含まれると思いますが、ただいま穗積委員のお話にございましたような趣旨で、これはまだ細目をきめておりませんけれども、根本の眼目はそこにあることでありますから、その趣旨に応ずるように適切な使途ができるようにいたしたい、かように考えております。
○穗積委員 私は、これは先ほど言われたとおり、法律的な義務はないと思います。政府の解釈とわれわれも一致しておる。だがしかし、この方々が、責任はどこにあろうと、戦争という不当な、自分たちに関係のない第三者国同士の戦争によって被害を受けた、その被害をどうして救うかということですから、ある意味でいいますならば、現地民一人一人のこれを処理するための権利だと思うのです。そうであれば、殺された人の遺族、あるいは戦争被害のために傷害を受けて労働能力が何%か落ちておる、そのために生活も困窮しておる。あるいは遺児があって、遺児に対して教育すらできない、生活もできない。それをまず救うということでなければならない。この権利の根源というものは、私は被害者一人一人にあると思うのです。それに公平にこたえるようにしなければいけない。直接こたえるようにしなければいけない。それはなかなかむずかしいことでしょう、事実調査をすることは。だからまとめてでいいですよ。まとめてでいいから、したがって、さっき言われた地方議会、中央議会を通じて、現地民の諸君の要望がその議会を通じて民主的に積み上げられて、それに対して日本並びにアメリカが積極的に協力をする。道路計画はだれが立てたのですか。議会の形はとっておるかもしれぬが、アメリカの権力によってつくられたものでしょう。それは誤りじゃないでしょうか。そしてまた、ここで手続上のことをお尋ねしますが、その計画については、日本はアメリカに対して平等な発言権があるわけですね。それを一点、さっきお答えがなかったので伺いたい。それから、それがそのとおりに実施されておるかどうかについて、日本はこれを追求する権限が残されておりますか。その計画は、先ほどすでに道路、港湾の話が出ておりますが、これは条約のつらからいえば、まだ話のないはずなんですね。それは一体どこから出たものでしょうか。住民の自発的な拘束されざる自由な状態の中で出た要求でございましょうか。施政権者アメリカがかってに考えたものであるのか。その計画というものが本来はここで示されなければならぬわけですよ。そのとおりいかぬでしょう。相手国のあることでありますし、現地民の要求がありますからね。日本としては少なくともこういう方向へ使うべきものであると考える、少なくとも日本の出した分については、まずこれを優先すべきである、この方針であとの計画折衝にあたってはやるつもりである、あるいはそれが計画どおりに、約束どおりに行なわれておるかどうかについては、これはあとの追跡権を保留してあるものであるということの説明があってしかるべきだと思うのですね。
○東郷政府委員 ただいま私が港湾、道路と申しました結果、たいへんな誤解をお与えしたようでございますが、ただいま私申しました趣旨は、これは一つの経済運営でございますから、すぐ目の前の問題もさることながら、やはり長期的に民生が向上し、経済も繁栄するという観点からの事業ということも考えられるのではないかという趣旨から申したわけでございます。港湾とか道路とかいって、アメリカないしはミクロネシア側と具体的な話があったわけではないのでございまして、もし長期的なことを考えますならば、先ほど申したようなこともあり得ようか。そういう点は、今後の細目取りきめの際の問題でございまして、その際は、先生が御心配になるようにアメリカから道路計画を押しつけられてそれをやるなんということはとうてい考えられないことでございまして、わがほうとしてはわがほうとしての、これがよかろうというものもございますし、また、ミクロネシアの人たちの希望するところをいれて、最も協定の趣旨に沿うような計画を今後の実施計画でつくっていくということでございます。ただいまの二つの例について、アメリカ側から圧力があるとか、そういう話がすでに出ておるということではございませんので、どうか誤解のないように御了解願いたいと思います。 〔田中(榮)委員長代理退席、委員長着席〕
○穗積委員 実施計画についての方法論的な態度はわかりました。 それで、目的についてさきに私が言いましたように、住民福祉に直接役立つものに日本は極力努力すべきである。少なくとも日本の拠出した分についてはそういう態度を貫くべきである。それでなければ日本国民の現地民に対する好意というものは生きませんよね。そしてまた、御説明がいまなかったと思いますけれども、実施計画の実施状況を監視する発言権は当然あるわけですね。
○東郷政府委員 発言権と申しますか、向こうのきめたものをそのまま押しつけるということではなくて、わがほうの意見も十分反映して計画をつくっていくということでございますので、その意味では発言権は十分あるわけでございます。
○穗積委員 それはだいじょうぶですね、監督権か監視権は。ことばではどうでもいいけれども、それは確認されたものとして理解いたしたいと思います。 それから、この協定を実施することに伴って、特にわが国にとっての経済的メリットといいますか、この地域を拠点とする漁業あるいは漁船の安全、寄港等々に非常に多くの利益があるということですが、これはどういうことで確約されて保証されておるのでしょうか。こっちのばく然とした希望ですか。
○東郷政府委員 今日でもミクロネシア水域には日本漁船が多数出漁しておりまして、これがあるいは緊急の場合に向こうの港に避難するとか、あるいは港の施設を使えないために油の補給とかそういうことで非常に不便を感じておる、こういう事態が現にあるわけでございまして、今回の協定の機会に、ミクロネシアの統治権者である米国政府は、トラック及びパラオの漁港を日本の漁船に開放する、こういう約束をしたわけでございます。これは協定が動き出すようになりますれば、日本の漁船が補給その他のために立ち寄ることができるようになる。これは協定発効とともに、そういう事態になります。その結果として、わが国の漁船が受ける直接、間接の経済的利益が期待される、こういうことでございます。
○穗積委員 それからもう一つ最後に——あとは省略いたします。まだこまかいことを聞けばあったのですけれども、外務大臣がお立ちになる前で心がせいておられるようでございますから、友情をもって積極的に協力いたしましょう。 そういう意味で、最後に一つにいたしますが、これによりまして信託統治地域側の請求から日本は完全に免除され、免責されるのだということですが、これはいまの施設権者がアメリカである以上は、そのアメリカとの間に協定を結んだのですから、そういうことはないでしょう。もしそれが近く独立した場合に、あの協定はアメリカの権力によってわれわれが無理やりに承諾させられて、すなわち、その請求のあれを放棄せしめられたのだ、強制によるものであるから、われわれはこれを完全なものとして認めるわけにいかぬというような——これはなぜかといえば、いまのイニシアも権限も住民にあるわけですから、そういう点からいきますと、その点の保証というものがわれわれとしては一応必要であろう。意地悪く言うわけではありません。住民に対しては十分な理解と協力を惜しまないものでありますけれども、それはまた別な形があると思うのですね。こういう形での協力保証というものはきちっとしておかなければいけないから、それで伺うわけです。免責の保証というものはアメリカだけと結んでいいものかどうか。いま、かの十万の住民は独立しておりませんから外交権がないわけですけれども、すでに二院制ではありましても議会制度があって、そしてこの問題のイニシアというものは住民の発意によるものなんですね。そうでありますならば、住民が免責をするという何らかの意思表示があってしかるべきだというふうにわれわれは思う。協定上はありませんよ。むろん外交権がないからありませんけれども、そういう何らかの保証というものが示される必要があるのではないか。日本国民としてはそういう気持ちの意思表示がほしいのですね。議会を通じてでもいいでしょう。いかがでしょうか。
○愛知国務大臣 これは協定上には、いまのミクロネシアのステータスと申しますか、これが直接に外交関係を持っておりませんからあらわれておりませんけれども、法律的にいえば、現に施政権を持っておるアメリカが住民の意向を代表し、そしてミクロネシアの住民としてもこの協定については満足しておるということが、この協定を結ぶにあたりまして十分に明らかにされておりますから、私は、その点については、法律上、条約上の直接のミクロネシア住民代表との間の調印というものはございませんけれども、政府といたしましては、十分の確信、保証を持っておるつもりでございます。
○穗積委員 だから私は、一つの適切な方法としては、それだけに限りません。私の思いつきの一つですけれども、幸いにして中央議会があるなら、中央議会においてそういう意思表示があってしかるべきではないかというのです。感謝と免責の意思表示……。
○愛知国務大臣 これは直接に現在外交関係を持っておりません。ゼロですから……。
○穗積委員 いや、内面指導でもいいですよ。
○愛知国務大臣 これはまあ何かしかるべき方法でもございましたならば、考えることができればたいへんけっこうなことだと思います。ただ、条約的あるいはそのほかの方法によってこれを明らかにすることはできないということは、現在のステータスからいってやむを得ないことと存じます。
○大河原説明員 ただいまの大臣の御答弁に補足いたしまして、この取りきめは四月十八日に署名を見ておりますが、たまたまその日にサイパン支庁のサブランという人が参りまして、かねて日本側から台風の災害見舞いその他に対して非常に好意的な措置をとってもらってありがたかった、自分がそのお礼を兼ねて日本へ参りましたその当日に、このような協定ができ上がったことは、自分として国へ持って帰る何よりのおみやげであるということで、非常に喜んで帰った、こういう事実がございますことを申し上げます。
○穗積委員 これでやめます。
○北澤委員長 本日はこの程度にとどめ、次回は、来たる二十一日午前十時より理事会、十時十分より委員会を開会することとし、これにて散会いたします。 午後一時十五分散会