外務委員会 第11号
- 発言数
- 77 件
- 登壇者
- 6 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1969/04/07
会議録
○北澤委員長 これより会議を開きます。 国際通貨基金協定の改正の受諾について承認を求めるの件を議題とし、審査を進めます。 質疑の通告がありますので、これを許します。伊藤惣助丸君。
○伊藤(惣)委員 まず大蔵大臣に伺いたいのですが、アメリカの国際収支均衡化は絶望的ではないと思いますが、たとえ均衡化が成功したとしても、アメリカの金準備が一九五〇年代前半の二百億ドル台までに、そしてこれに対する対外公的流動負債が百億ドル以下というような状態までに復元するということは不可能に近いと思います。政府の見通しについて伺いたいと思います。
○福田国務大臣 どうも人の国の国際収支の見通し、私がこう思うというようなことをなかなか申し上げにくいのですが、人がこう言っているということを申し上げます。 つまり、いま非常に国際収支がむずかしい状態で、御承知のように、ニクソン新政権は、あるいは財政の圧縮をやる、あるいは税の一〇%課税を継続して施行する、あるいは金利引き上げ政策をとる、いろいろな形の対策をとっておりますが、なかなか大ごとであるというふうに私は思います。しかし、根本的な問題はベトナム戦争だろうという見方、これが一般的であるというような感じが私はするのです。ベトナム戦争のおさまり、これに伴いましてアメリカの国際収支は著しく改善されるであろう、こういう見方が多いわけです。何にいたしましても、ああいう大規模な戦闘が行なわれており、五年間にわたって、今日になりますと二百八十億ドルに及ぶ戦費の支出が行なわれておる。容易ならざる状態であろう、かように存じます。
○伊藤(惣)委員 人がこう言っているというのではなくて、やはり大蔵大臣としては私もこのように思うとかいう発言を承りたいわけです。その点、補足していただきたい。 このアメリカの国際収支均衡が一九五〇年ごろの状態までに復元し得ないとするならば、ドル危機、また現行国際通貨体制、いわゆる金ドル体制の危機は、現行体制の強化というような保守的手段ないしはSDRによる補強といったようなことでは、その危機を阻止することは困難だと思うわけです。その点はいかがですか。
○福田国務大臣 いま世界の経済は一体どうなっているかということを考えてみますと、戦前に比べますと、戦後は非常に飛躍的な伸びをしておるわけです。これはやはり科学技術の進歩、それがそうさしたと思いますが、私は全体として見れば、そういうふうな状態になっていくと思います。 そこで、問題になってくるのは、そういう成長経済下において流通手段がどうか、決済手段がどうか、こういうような問題であります。アメリカはかつて多額な金を保有しておったが、その金を今日百億ドル近くまで減らしておるわけですね。その形によって、アメリカのドルを世界の流動性として供給をしてきた。そういうことで、世界が今日までなめらかにいったんですが、さて、アメリカが金をさらに減らして、そしてドルを世界各国に供給するというようなことは、もう限界であるというふうに考えられるわけであります。そういうようなことから、世界の有識者が衆知をしぼりまして、SORというようなことを考え出したわけでございますが、これが外務大臣もしばしばおっしゃるように万能薬じゃないのです。また、人類の国際協力、こういう努力が必ずいろいろな手段を発見、開発していくだろうと思います。しかし、SDRというものができる、そしてアメリカの国際収支も、それを背景として、SDRを基盤として、安定というか、そういう度合いを強めるというようなことでありますと、私は、当分世界経済の成り行きというものについては、これは基本的にはもう心配はないのだ、また以前のようなわりあいに高い調子の経済発展を続けていくというふうに見ておるのであります。
○伊藤(惣)委員 このSDRの制度創設は、現在の金為替本位制について原理的に変化させるものではないと思いますが、国際基軸協定としてのドルに加わる負担を幾ぶん緩和せしめる程度の効果しかないと思えるわけですが、その点いかがですか。
○福田国務大臣 SDRができますと、これから世界の貿易がどうなるか、それに対応するいままでの仕組みのもとにおける国際通貨供給がどうなるかという状況に応じまして、弾力的にSDRを追加し得る、こういう体制になりますので、たとえばわが国に例をとりますと、いま三十二億ドルの外貨でありますが、昨年のいまごろはどうであったかというと、十九億ドルですね。それで、国際収支の変動の幅、そういうものを考えますと、十九億ではなかなかむずかしいわけです。かりに世界的な不況であるというようなことになって、貿易が不振である、そういうようなことになると、十九億が十億減り、十五億ドル減るということにならぬとも限らない。そうすると、日本の貿易というものはできないわけですね。なかなかできない。そこで、そういうことになっては困るというので、緊縮政策をとり、引き締め政策をとって、そして経済の立て直し、国際収支の改善をはかる、これがいままでもずっと三年ごとくらいに行なわれてきた景気循環でございますが、もしSDRができたということになると、その額はきわめて少額ではありますけれども、日本にとって三億とかそこらのものでございますけれども、それでもそれだけ国際収支の天井が高くなった、こういうようなことから、日本としては非常に助かるわけでございます。そういう効果は各国とも絶大なものがあるであろう、かように思うわけであります。伊藤(惣)委員 いままでのSDRの評価についてはまちまちで、たとえば金ドルに次ぐ支払い手段としてのいわゆる第三の通貨と称して、人類の英知の産物であると高く評価すると思えば、他方では、国際収支の赤字をSDRによってたな上げしようとする米国と、それに反対するEECとの妥協の産物である、そしてIMFに無用の制度を付加するようなことになって、かえって国際通貨制度の混乱を来たす、こういう二つの見方があるわけであります。この協定の改正によって国際通貨制度の面で混乱を引き起こすような心配があるのではないか、こう思うわけでありますが、その点について大蔵大臣、いかがでございますか。
○福田国務大臣 これが出たから経済社会、国際金融社会が混乱をする、これはもう私はゆめゆめ考え得られないことであるというふうに思います。プラスの面がある。そのプラスの面がどの程度のものであるかということは、今後の国際協力、これが決定していくだろう、こういうふうに思っておりますので、国際社会は相協力してこの制度を円滑に有効に運営していくということをしてまいる、これがこの制度の価値を決定していくのではあるまいか、さように考えております。
○伊藤(惣)委員 現在のいわゆる金ドル体制下にあっては、国際収支の調整機能が十分に働かず、各国の間の不均衡が生じ、特にアメリカの国際収支が悪くなり、そしてSDRを発動した場合は、金ドルがEEC諸国に偏在している現状から、SDRも特定の国に集中偏在する危険があるのではないか、こう思うわけですが、その点はいかがですか。
○福田国務大臣 これは、国際決済通貨が特定の国に偏在するということは非常にこわいことでありまして、そういうことがあっては実はならないのであります。さようなことで、今度新しい第三の通貨、SDRというものができる。それにあたりましては、それが偏在をされてはならない、こういうことで、その規定の中に、これを阻止する仕組みをいろいろつくっておるわけであります。そういう心配はございません。
○伊藤(惣)委員 このSDRは金価値保証を付せられているわけでありますけれども、その効果を否定的に見た場合には、直接には金や通貨の裏づけを持たない帳簿上の資産であるわけですね。また肯定的な見方をした場合には、信用手段であり、また国際協力のいかんによっては世界通貨としての機能を保有するまでに成長するかもしれない、こう思うわけです。しかし、SDRが成長するためには、国際協調のいかんにかかわるわけでありますけれども、アメリカのドル防衛、またこれに関連して保護貿易主義などで、アメリカ、欧州、日本との間に対立感が深まってくるというようなこともあるわけです。こうした対立がこじれますと、国際協調にも大きなひびが入りかねない。こういう点が危惧されるわけです。 外務大臣に伺いたいのですが、これらの各国の利害がからむいわゆる対立感ですね、これを克服し得ると考えられているのか。また、SDRはIMF通貨体制の中で大きな機能を発揮し得るまでに成長し得る、こういう見通しを持っているのか、この点を伺いたいわけです。
○愛知国務大臣 ただいま大蔵大臣からもいろいろお話がございますように、また先般私も申しましたとおり、IMF体制というものができた経路を静かに振り返ってみましても、やはり新しい意欲的な体制をつくるまでには、いろいろの議論やあるいは従来の考え方にとらわれた危惧の念なども出るのはむしろ当然かと思いますけれども、いろいろそういう論議や経過をたどってIMF体制ができてからあとの情勢をごらんいただけば、私は、そうした意欲的な新しい考え方というものは相当の成果をあげておると考えるわけでございます。今回のSDRの創設につきましても、十カ国蔵相会議等の経過もよく御承知だと思いますけれども、各国のいろいろの今日までやってきました経験を取り入れ、また新しい考え方を十分に検討し合って、ひとつこれでいこうという考え方がきゅう然として起こってまいったわけであります。先ほど来御意見のありますように、いろいろの見方もございましょうが、一たび関係各国がこういうふうな意欲を示して、そして中にはもうすでにそれぞれの国内の手続もとり、それぞれの国会等におきましても所要の手続を経たものもだんだん出てきておるような状況からいたしまして、私どもとしてもこの目的とするところに協力をしていく。協力ができなかったならばということを考えるよりも、関係国間の協力体制というものをひとつ十分発揮できるように建設的に盛り上げていくということが必要である、かように考えるわけであります。また現実に、先般もお話が出ましたように、フランスはどうか、EECはどうか、それぞれ考え方の多少違うところもございますけれども、私は、大勢として十分所期の目的が発揮できるような運びになるものと信じます。またそういうふうに日本としても力を用いていくべきではないだろうか、かように考えているわけであります。
○伊藤(惣)委員 大蔵大臣、その点についていかがですか。
○福田国務大臣 SDRは、確かに私は、世界の経済が保護主義にいくという傾向には抑制的な働きをすると思います。つまり、先ほど申し上げましたように、各国とも、さあ国際収支が悪くなったという際に、自国の国際収支を守るために、輸入防遏、そういうようなもろもろの手段をとるということになりますが、このSDRがありますと、国際収支の天井がそれだけ高くなりますから、そこまで追い込まれるチャンスが少なくなる。こういう意味合いにおいて、SDRは世界の通商の自由という上に貢献をする、かように考えます。世界の通商の自由の問題、そういう問題は、基本的には通貨の問題でなくて、各国の通商政策、まあ孤立主義的な保護主義政策をとるのか、あるいは世界全体を自由に交流するような体制へ持っていこうという方向をとるのか、どっちの方向で国際社会の意見が一致するかというところできまると思いますが、そういう中において、SDRというものは自由化のほうにいい影響を持つと思います。
○伊藤(惣)委員 本改正協定を効果あらしめるためには、まず、先ほど大蔵大臣も答弁されましたが、アメリカのベトナム戦争の終結を早急に実現させる必要がある、そしてアメリカの国際収支を改善せしめることにある、こういったことがいわれているわけでありますが、このような中で、わが国は、アメリカのベトナム政策、いわゆるベトナム支持の外交政策に対して、その改善を求めるべきではないかと思うわけですが、その点について伺いたいと思います。
○愛知国務大臣 ベトナム戦争の問題については、しばしば政府として申しておりますように、まず第一に、戦闘行動が停止されるということを何よりも希求いたしておるわけでございます。拡大パリ会談も、何か期待に反するような点もないではありませんけれども、やはり関係当事者が全部一堂に会して世界的な期待をもって進められておる限りにおいては、私は、この希望というものは必ず達成できるであろうと考えます。これは日本だけの問題ではなくて、世界的な期待を受けておることでありますので、必ずそういう方向にいくものである、そして平和状態といいますか、戦争のない状態になりました場合においては、十分平和的な建設に対して協力をする用意をもう十分に練り上げておく必要があろう、かように考えておるわけでございます。
○伊藤(惣)委員 私たちは、現在の政府の軍事または経済面でのアメリカ一辺倒、または対米依存という一つの姿勢について、いままでいろいろな角度から取り上げてまいりまして、わが国はあくまでもそういう点についてはフリーハンドを持つべきである、そのほうが国益にかなっていくのではないか、また国益を考えた場合にはそのほうがいいのではないかという面から、いろいろ軍事、経済面にわたって強く政府に要望はしてきておりますけれども、今回の場合も、特にわが国のアメリカ依存の経済体制というものから脱却して、特に中共などを含めて貿易を促進させる、そして貿易の構造の改善をしていく、そして行く行くはわが国の自主経済の確立をすべきではないか、こういうふうに思うわけですが、大蔵大臣及び外務大臣の見解を伺いたいわけです。
○愛知国務大臣 日本自体の立場から申しましても、経済成長率がここ数年来のような状況でいきますれば、またいくことが私は望ましいことだと常識的に考えるわけですけれども、その場合におきましては、たとえばエネルギー資源というようなことを一つ例にとってみましても、どこの国とも平和であって、どこの国からも日本として望ましい条件でそういう資源が入ってきて、日本の経済の繁栄をつくりあげる基盤を末長くかたいものに固めていくということが、絶対的な必要な条件ではなかろうかと思いますから、いま仰せになりましたような基本的な考え方については、私も全然御同感でございます。同時に、世界的に貿易通商という関係からいえば、自由な活発な経済交流が行なわれるということが基本的に一番望ましいわけでございますから、ただいまアメリカとの関係におきましても、通商上その他いろいろ問題をかかえておりますが、これらに対しましても、第一義的に日本の国益としていかにあるべきかということについては十分考え、かつ用意をして、対米交渉等についても十分日本の国益が伸びるようにいたしたい、かように考えておるわけでございます。
○福田国務大臣 基本的には、ただいま外務大臣からお答えがあったと同じく私考えております。ただつけ加えますと、アメリカと経済交流が非常に多いわけです。これを減らさなければならない、減らしたほうがいい、それはそのとおりですが、現在アメリカと貿易の割合が多いから、アメリカに対して経済的な自主性がないとか、また政治的にもどうも日本は従属的であるとか、そういうふうな考え方をすべきものではない。仲よくしているから、あるいは交流の程度が高いから国が従属的だというふうに考えるべきではなくて、あくまでもわれわれは経済交流の度合いは度合いといたしまして、自主的に事を判断し、独立国として堂々たる行動をすべきものであり、またしておる、かように考えております。決して御心配のようなことはありませんから、これは念のため申し上げます。
○伊藤(惣)委員 以上で終わります。
○北澤委員長 これにて本件に対する質疑は終了いたしました。 —————————————
○北澤委員長 これより討論に入ります。 討論の申し出がありますので、これを許します。穗積七郎君。
○穗積委員 いままで審議されましたSDR協定につきまして、私は、社会党を代表して反対の討論をいたします。 これはもうすでに質問の中でも明確にいたしておりますから、ごく簡潔に要所を申し上げまして、政府の今後の反省を求めておきたいと思うのです。 このSDR制度というものは、国際支払い通貨の流動性が欠如してきた、その原因は国際的な経済の生産力の膨張、貿易量の拡大、その経済のボリュームの発展に伴って、金にリンクした国際支払い通貨というものがそれに追いついていけない、ここに主要な原因があると政府は把握されておるようでありますが、これは事実に反することでありまして、われわれの見るところでは、国際通貨の総量が、今日の国際経済の興隆発展に対して絶対量の不足ということは見受けられない。したがって、主要な問題は、国際的な不協力体制、すなわち、資本主義諸国間における協力の側面の反対に対立競争の側面、それから国際的な協力をたてまえといたしておるべきであるにかかわらず、民族的なエゴイズムの経済政策、これが主要な原因であると思います。特にIMF制度というものは、言うまでもないことでありますけれども、米ドルを金にリンクいたしまして、他の国の通貨というものはドルにリンクして、そして為替レートの上下幅というものをこれでコントロールをして、そうして世界資本主義のドルによる支配体制をつくった、これは政治的、外交的に言いますならば、アメリカの核を中核とする軍事同盟体制の経済的な裏返しでありまして、これが破綻をしたということが、いまの国際通貨の流動性欠如の主要な矛盾であり、原因であると考えます。特に一国の国内通貨というものを、同時にそのものを国際通貨の性格を持たせ、それを実行せしめ、そしてその基礎になっておりますアメリカの経済財政政策というものは、国際不協力の中で、アメリカの一方的な世界資本主義経済あるいは後進地域の経済に対する支配政策をとってきておったわけです。したがいまして、いまの国際支払い通貨の流動性の欠除というのは、アメリカのインフレと国際収支の赤字の危機の中にのみ主要な原因があると言わざるを得ないと思います。 それでは、アメリカのインフレと国際収支の赤字はどこからきておるかといえば、言うまでもなく、先ほど申しましたように、NATOあるいはCENTOあるいはSEATO、NEATO等々の、世界を取り巻く反社会主義軍事体制をつくる、そして特にエスカレーション政策が採用されるようになりましてから、われわれ日本の位いたしますアジア地区における後進民族の解放運動を抑圧する、そういう意味で、トンキン湾作戦以来、挑発戦争、侵略戦争が行なわれてきた。これのみではありませんが、いま申しましたような世界の軍事支配体制というものが、第一の、アメリカのインフレと国際収支の赤字を招くに至ります非生産的にして、かつ世界の平和を脅かす危険のある政策として、その根源があるわけでありましょう。今日アメリカの財政を見れば、まさに軍国主義体制でありまして、かつてのわが国における東条内閣時代の予算を思わしめるのであります。一国の予算の主要な部分が軍事予算になっておる。一国の国家権力内における軍部の発言権、地位というものが異常な発言権を持っており、ここが軍事外交政策をコントロールする。さらに、国内における国民経済全体の総生産の中で、軍需産業に対する投資率並びに生産量というものは、これまた三〇%をこえるような異常な経済体制になっておる。これがすなわちアメリカの軍事同盟体制とIMF体制を悪用いたしました非常に危険な政策で、これが赤字軍需膨張財政を組ましめ、財政インフレの段階にアメリカの経済を追い込んできた。この主要な原因をわれわれは見なければならないと思うのです。 いまのアメリカの赤字とインフレを起こすに至りました第二の主要なものは、言うまでもなく海外投資でありましょう。アメリカの国家独占資本主義は高度の段階にまいりまして、貿易による経済交流だけでなくて、資本の海外投資、これによる驚くべき高率な利潤率の吸い上げをやっておるわけですけれども、そのときに、海外投資に伴います過当投資といいますか、これが第二の原因である。 第三は、国内の経済政策におきましては、独占資本の景気後退を食いとめようとする政策のために、過熱政策をとってきております。 主要な政策としては、この三つのものがアメリカのインフレと国際収支の赤字を招いておる根本的原因である。それがドルの危機となってあらわれてきた。このドルの危機を救うための、自信のない、そしてびほうの策がSDR制度であるとわれわれは言わなければならぬと思います。 先ほど申しましたように、世界の国際通貨が金地金に固く縛られておる。これは自然現象あるいは経済現象によって、他の原因によりましてこれが左右される、あるいはチェックされる条件が多いわけですね。それからさらに不合理なことは、一国の通貨を国際支払い通貨としてその位置を継続せしめること、これは非常な矛盾だと思います。したがって、この国際協力を口とする国際不協力あるいは特にアメリカ独占資本主義のエゴイズム、これが私はいまの世界経済の流動性を欠除せしめてまいりました主要な原因であると見ます。そうでありますならば、ここで新しい合理的な国際通貨というものは、すべての国が共同で対等に発言をし、管理し得る国際通貨、その方向へ発展すべきであるにかかわらず、びほうの策として、SDRは金の保証のもとに、特にアメリカのドルの流動性欠除を補完するものとして出ておるのでございます。 こういうことは、結論を申しますならば、世界の資本主義の安定成長、あるいは国家間における不均衡を是正する、そして特に後進地域の経済開発を促進して、単に貿易を拡大するだけでなくて、戦争の原因をここで国際的に除去していく、こういう方向へ向かうべきであるにかかわらず、それに向かっていないということでございましょう。これはいままでの質疑応答の中で明瞭になりました事実であります。 この事実に基づいてこの制度を見ますならば、制度の中におきまして、まず第一、発動の条件については八五%の賛成ということがありますから、EEC諸国の反対があれば、これは発動できないという仕組みになっておって、そこでチェック・アンド・コントロールという制度があるんだということになっておりますけれども、これはアメリカとEEC諸国の間におけるエゴイズムの妥協と調和によってのみ行なわれるものでありまして、日本並びにその他の、特にアジア、アフリカ、ラテンアメリカ諸地域の経済から見ますならば、これに対して何のチェックを与える力も実はないわけでありましょう。こういうことになってまいりますと、発動をいたします総量が、五カ年間にリーズナブルなものとして当面は約百億ドルということがいわれておったのにかかわらず、われわれが質問の中で指摘いたしましたように、すでにアメリカはこれを割りまして、初年度において四十億ないし五十億ドル、しかもこの批准を早くして発動を早くさせようとしておる。その主要な原因は何かというならば、外務大臣、大蔵大臣が提案理由の中で御説明になりましたように、国際的な経済、貿易あるいは生産力の膨張に伴う、それに見合う国際通貨のプロポーショナルな、合理的な補完力、そういうものをはるかに乗り越えておるわけでしょう。したがって、このSDR制度というものは、国際協力と国際間の調和を前提としてのみ成り立ち得るものであるにかかわらず、私どもが指摘いたしましたように、アメリカのドル防衛、アメリカのいままでの内外政策を何らチェック、コントロールすることでなしに、むしろそれから出てきました破綻をこれはしりぬぐいするものにすぎない。現にそのことをもうすでにこのアメリカの要求が——また一昨日発表になりましたニクソンのドル防衛対策の中で、SDR問題に触れておりますが、それらは全部、世界経済の調和、ハーモニゼーションをいかにして取り戻すかということではなくて、アメリカの当面の利己的な必要のために、SDRの発動とそれから割り当てを早く実行しよう、こういうことでありますから、そのよって立つ説明の基礎が現実にはくずれておるわけでございましょう。 第二に大きな矛盾は、このクォータといいますか、各国へのSDR割り当ての量であります。これは不合理きわまるIMFに対する投資額に比例をいたしました割り当てになっておる。イギリスをとりますならば一一・五%、それからわが国はこれに対しまして一二・四%、これはやがて漸進的に改良する可能性があるんだし、その方向に向かおうとしておるけれども、そういうことではなくて、ここでもし、言うがごとく、国際的なハーモニゼーションの中にこの制度を打ち立てるのだということが真実でありますならば、少なくともこの割り当て制度は根本的に、貿易量あるいはまた生産量、生産性、これらを基準といたしました合理的かつ公平なものでなければならないにかかわらず、既存の権利、既存の支配権を基準にいたしました割り当てでありまして、わが国といたしまして、日本の経済の利益から見ましても、はなはだしくこれはわれわれとしては納得することができない制度になっております。また、過当に発動いたしましたSDRが、これは割り当てを受けました国のインフレと国際収支の赤字を克服することが条件になっておりますが、それに対してチェック、コントロールする制度というものは、制度上どこにもない。さらに割り当てを過当だと思ったものに対しましては、後に、二十四条でございましたか、消却をする制度が含まれておりますが、これまた気休めのものでありまして、現在の進行の状況と、国際政治におけるアメリカの国際的な発言力、それに屈従する日本、こういうことから見ますと、これは全く気休めな歯どめにすぎない。こういうことでありますから、この制度というものは、いまの国際通貨の流動性欠如を補完するということ自身に役立たないばかりでなくて、むしろいまの国際経済における内部矛盾というものをさらに延長し、さらに拡大し、そしてやがてインフレへと——国際収支の赤字の解決にはむしろならないで、これはへたをすれば、国際的な金融恐慌に発展する一つの道程になる危険すら私は感ずるわけでございます。 そのほか、制度上のこまかい点等につきましては、すでに速記録に残しました質問の中で私どものこの制度に対する疑問の問題点は提起いたしておりますので、それらの発言と合わせまして、私どもがこの協定改正に賛成のできない、反対の態度の主要な理由といたしたいと思います。
○北澤委員長 これにて討論は終局いたしました。 これより採決を行ないます。 国際通貨基金協定の改正の受諾について承認を求めるの件を承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕
○北澤委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。 おはかりいたします。 ただいま議決いたしました本件に対する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○北澤委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。 ————————————— 〔報告書は附録に掲載〕 ————◇—————
○北澤委員長 次に、国際情勢に関する件を議題とし、調査を進めます。 質疑の通告がありますので、これを許します。大柴滋夫君。
○大柴委員 過般北京において結ばれた古井さんと中国の代表との覚書貿易の共同コミュニケに対して、若干の質問をしたいと思います。 まず内容に入る前に、中国と日本との間の原則的な問題について、外務大臣に質問をしたいと思うのでありますが、考えてみますと、この百年に、いま日本では明治百年とかいろいろいわれているのでありますが、日本と中国との間には幾つかの不幸な戦争があったろうと思うのであります。日支事変、あるいは中国を足場にして戦われた日露戦争、あるいは第一次世界大戦、あるいは満州事変、あるいは第二次世界大戦というように……。いずれにしても、日本の軍が中国大陸に渡りまして、中国人の家を焼き、中国人民を殺しておるのでありますが、われわれ日本人はたいへん中国に迷惑をかけてきた、われわれ社会党あるいは日本の多くの人はそういう見地に立っているわけでありますが、日本政府なり愛知さんは、一体そういう見地に立っておられるわけでありますか。
○愛知国務大臣 ただいま歴史的にいろいろの点から御意見を承りましたが、過去において不幸な関係にあったということにつきましては、お互にわれわれとしても反省もしなければならぬこともあり、また将来いろいろと考えなければならぬことがある、かように考えるわけでございますが、歴史をたどってみますると、わが国としては、ほかの国あるいは地域等に対してもいつも友好関係ばかりにはなかったということについても、深く考えを及ぼさなければいかぬ点もあるように考えるわけでございます。
○大柴委員 アメリカとも戦争をやっておりますし、あるいは朝鮮、いろいろ関係があるのでありますが、特にこの百年、人を殺すとか家を焼くとか、あるいはもろもろの面において中国の大衆に日本民族はたいへん迷惑をおかけしている、私自身はそういう反省を持っているわけでございますが、大臣は、そういう反省にはいろいろの事件があったというだけで、そういう反省はお持ちにならないわけでありますか。
○愛知国務大臣 反省ということにもいろいろの点があろうかと思いますが、私はただいま申しましたように、そういう不幸な関係にあったということは、常に頭に入れて考えなければならない、こういうふうに考えておるわけでございます。
○大柴委員 若干の見解の相違がありますから、先へ論を進めますが、要するに、大陸には中華人民共和国ができているわけであります。そうしてわれわれの判断によれば、この大陸にある中華人民共和国の政権の安定度あるいは経済の成長、そういうものから判断するに、中華人民共和国は将来国力が発揚し、だんだんりっぱな国となるとか、強い国となるとか、いろいろ判断がありますけれども、よいほうへは向かう、そうして悪くなっていくということは当然考えられないのでありますけれども、外務大臣の見解はいかがでありますか。
○愛知国務大臣 これはかねがね歴代の内閣でも申しておりますように、日本が隣国として中国の大陸を控えておる。七億の国民がおられる。この国と将来におきまして、お互いにその政権とか主義は違うにいたしましても、友好関係に立ちたいということを考えるのは、私は自然の成り行きであろうかと思いますが、なかなかいろいろの条件や環境がございますために、また先方のいろいろな考え方もありましょうが、それらの間の関係に処してなかなかクリアカットな関係が打ち出されないということは、私どもとしても、非常にむずかしい問題であると考えると同時に、これはよほど慎重に真剣に考えていかなければならない問題である。いまお述べになりましたように、関係が悪くなるというようなこと、あるいは悪くしょうというようなこと、そういうようなことは毛頭考えるべきではないと考えております。
○大柴委員 先般、昨年よりもたいへん率は減ったのでありますが、関係者の非常な努力によって、再び覚書貿易というものが続けられるようになっておるわけでありますが、政府としては、覚書貿易に対して一体どういう考えを持っているのか。たとえば、日本は何とかして日本の物資を売り、あるいは中国からものを買う、経済上、取引上、こんなものはたいしたこととは思っていないのかどうか、あるいはいるのかどうか、あるいはまたこの覚書貿易を通じて日中国交回復へのステップにしたいというような、松村さんとか、なくなりた高碕さんのような考えを持っているのかどうか、それをお聞きしたいのであります。
○愛知国務大臣 中国大陸との間には、申すまでもございませんが、国交関係が現実にございませんから、そういう状況下におきまして、しかし、事実上経済の問題その他におきまして交流ができるということは、私は望ましいことであると思います。したがって、覚書貿易につきましても、いろいろの変遷があり、また今回も古井代議士が非常な苦労をされたと思うのでありますけれども、ともかくも覚書貿易が一年間ではあり、また、これは貿易の関係でございますから、売るもの、買うもの、あるいは売りたいものというような観点からいって、数量その他で必ずしも多くはなかったけれども、とにかくこういう関係が結ばれた——つながれたと申したほうがより正確かと思いますが、その点はよかったことであると考えております。
○大柴委員 この覚書貿易拡大の方向に向かって、この何年間か政府としては具体的に努力なすったことがあるのでありますか。あるいはこれは全く当事者にまかせておって、政府は政府として別のからへ閉じこもっていて、といって、結果が出れば、それに対して適当に発言をしているというのか。そうでないならば、何か具体的に努力したということはありますか。
○愛知国務大臣 これは政経分離ということばを使いますと、いろいろとまた御批判があるものかと思いますが、要するに、国交がないということが一つの事実でございますが、その条件下において、しかし経済関係等において交流をするということは、私いま申し述べましたように適切な措置であると考えておるわけでございます。しかし、同時に、政府として直接この仕事に当たっているわけではございませんから、政府が当面直接に関与することはございませんけれども、たとえば現実の問題として、率直に申しまして、いまの状況では、日本が買えるものと申しますか、輸入をするものが現実において非常に乏しいわけでございます。そこで、たとえば、本来ならば、お米の問題のごときは、これは一両年来もそうであると思いますけれども、経済上の、ただ単なる貿易ということからいえば、なかなかこちらも買いにくい事情にありますけれども、少しでもつなぎになるということであれば、国内事情も無理をしてこれを買い入れることにしておるというような点において、あるいは食肉の輸入というようなことについても、これは非常に大きな国民の保健上の問題でございますけれども、何かこれに対して適切な措置はなかろうかというような考え方、こういう点に立ちまして、できるだけ側面的に覚書事務所の仕事が円滑にいけるようにという配慮につきましては、ずいぶん真剣に取り組んでまいったつもりでございます。
○大柴委員 どうも、配慮はあるけれども、われわれとしては具体的な方向というものを見るわけにはいかないわけであります。それで、いろいろなことを言ってもしようがありませんから、論を進めますけれども、今回古井さんが書かれたコミュニケ、これには相当政府のいままでの意向と反対するようなことが書いてあるだろうと思うのです。たとえば、日本政府がとっている政経分離の方針は中国敵視政策である。それから、日本政府は二つの中国をつくる陰謀に参画している。三つ目は、日米安保は明らかにアジアの人民に向けられた日米の軍事同盟である。こういうようなコミュニケが書かれて、その上に、行き来で七千万ドルでありますか、覚書貿易ができるわけでありますけれども、政府と違った意向の上に、しかもこれが全世界に公表されて、しかも貿易が事実上行なわれるとするならば、外務省あるいは日本政府としては、このことをどういうように評価するのでありますか。
○愛知国務大臣 これは申し上げるまでもないところでございますが、いわゆる民間貿易としての交渉といいますか話し合いで、その内容として双方の方々がっくり上げられた書類でございますから、それにまた、これに直接参加された民間代表としての古井代議士がまだ東京にも帰ってまいりませんので、十分その間の経緯などを承知いたしません上では、何ともいま政府といたしましてこれにコメントすることは差し控えたい、私はかように存じているわけでございまして、まあいろいろの事情などもあったのではないかと想像はされますけれども、想像を前提にして何か意見を申し上げるということは、これは政府としては、ただいまの段階では差し控えなければならないところである、かように考えておるわけでございます。
○大柴委員 それでは、ひとつ政府の態度がおきまりになってからそのことは質問するとして、今度のコミュニケは、中国がきわめて明白に日本政府に対する態度を表明しているだろうと私は思うのであります。その一つが、先ほど言ったように、政経分離、これに対する意見、それから台湾に対する意見、それから日米安保に対する意見でありますが、もし将来日本と中国本土との間に話し合いが行なわれるとするならば、これらの問題が話し合わるべき大きな要件になるであろう一こういうようにわれわれは判断をするわけでありますけれども、外務大臣はいかがでありますか。
○愛知国務大臣 いま申し上げましたように、このいわゆるコミュニケというものについてとかく論評をすることは、これらに至りますまでのいろいろの考え方、経緯などについて私どもとしてはもっと承知をしたい、それまでは論評を差し控えるというのが、これは私は当然のことではないかと思うのでございます。それから、現在の政府の考え方というものにつきましては、しばしば申し上げているとおりでございますし、また、今後につきましても、これは政治の全責任を負うところの日本政府としての態度はどうあるべきかということにつきましては、個人的な見解その他ということとは違って、非常に重大なことでございますから、これは別の立場から明らかにしていくべき性質の問題ではなかろうか、かように考えておる次第でございます。
○大柴委員 質問の一つは、署名者が自由民主党衆議院議員古井さんなんですね。これには田川君も、終わりまではいなかったけれども、中途までは参加しておられるわけです。新聞を見ますと、藤山さんであるとか、松村さんも賛成の意向なんですね。そうすると、自由民主党の中の代議士が幾人かこれに参画して、判を押し、幾人かこれに賛成をしているのも、何か単なる個人的な取引の代表だと言われるのには若干ふに落ちない点があるのでありますが、その辺のところはいかがでありますか。
○愛知国務大臣 先ほど来申しておりますように、これはいわゆる覚書貿易の当事者として、つまり民間貿易の当事者として扱っておられる問題でございまして、それに対していろいろの意見もすでに出ておりますけれども、政府として云々ということは、まだいまの段階では新聞に報道されましたコミュニケだけが資料でございますから、私の立場といたしまして、ここに論評することは差し控えたいと思います。 また、自民党も、もうこれも申すまでもないところでございますが、多くの党員、多くの国会議員がおるわけでございまして、政党人として、あるいは政治家として、どういうふうに取り上げていくかということについては、おのずからまた別の、何と申しますか、意見のまとめ方というものもあるはずでございまして、これは私から御答弁の限りではござまいせんが、党としてどうこうというところにも、何ぶんその衝に当たられた民間代表としての資格の古井代議士がまだ帰ってもきておりませんので、おそらく党としても十分その間の経緯などを説明を聴取するということになろうかと思いますので、それからあとの問題、こういうふうに考えておるわけであります。
○大柴委員 覚書貿易が民間貿易だ、こうおっしゃるわけでありますが、民間貿易には、御存じのとおり、友好貿易、友好商社というのがありまして、友好貿易とはやはり何らかの面において違うのではないか。わざわざ何も、中国もあるいは日本も、あなたのようなことを言うのなら、覚書貿易なんというものは要らないわけであります。みんな友好商社なり友好貿易にしてしまえばいいわけでありますので、これを存続し、これの拡大を望むというならば、覚書貿易は覚書貿易として、政府としては何らかのそこに意義があるだろうと思うのでありますが、どうでありますか、それは。
○愛知国務大臣 これはいわゆるLT貿易ということで始まった一つの行き方であって、少なくとも当時は、こういうLTあるいはそれを継いだM丁というようなやわ方が本来の、本筋の日中間の貿易であるべきだという考え方だったろうかと想像するわけでございますが、いまもお述べになりましたように、いろいろ友好貿易というようなものも現に相当行なわれておる。それと一体どう違うかということでございますが、違いとしては、覚書によって事務所ができて、その間における橋渡しを双方がやって、そしてそれによっていわゆる覚書貿易ができておるわけでございますから、単なる友好商社と向こうとの貿易というものとは多少そこに違いがあることは、これは事実の上の問題であろうかと思います。先ほど申しましたように、政経分離ということばを使いますと、いろいろとまた批判の対象になろうかと思いますけれども、いわゆる政経分離ということで私どもが考えておったことは、正式の国交、外交関係というものはない、この現実のもとにおいて、なるべく円滑に貿易が行なわれるようにと、そういう配慮からこの覚書貿易というものができておる。したがって、先ほど申しましたように、側面的に十分なことをしなかったではないかというおしかりはおしかりとしまして、政府としてもその成り行きに関心を持っております。そうして、今回は額も非常に少なかったけれども、とにかく一年間続いたということは、先ほど申しましたように、その限りにおいてはよかったと考えておるわけであります。
○大柴委員 この覚書貿易の前身であるLT貿易でありますが、これは、この貿易の拡大を通じてあるいは日本と中国との間に船を行き来するとか、あるいはまた飛行機の乗り入れをやるとか、いろいろ事実上の国交再開への方針を、国交が事実上ない中国との間に開く一つの橋渡しのようなものだと、こういうように理解して期待したのでありますけれども、何か大臣の言うことは、ちょっと民間貿易に毛がはえたものぐらいで、たいしたことはないのだというような意向でありますが、実際は、いまの政府としては、この覚書貿易なり、前身であるLT貿易の精神をどういうように受けとめているわけでありますか。
○愛知国務大臣 そこが、国交はないのだけれども、それを事実の問題として、そしてそれを政経分離ということばで従来慣行的にいわれておったと思いますけれども、お話しのように、いわゆるMTあるいはLTというようなことで、たとえば一つの問題としては、双方が新聞記者の交換というようなこともできた。米中会談というようなことがよくいわれておりますが、米中会談は何回やってもなかなか中身はできなかった。また、現に行なわれていない状況であって、その中には、たとえば学者の交流とかあるいは新聞記者の交換とかいうようなことも、アメリカ側としては欲しているようでありますが、それも現にできていないが、こういう点が、日本の場合においては、こういうふうな日中間のパイプがあることによって現に行なわれているということは、現実のいろいろの複雑な国際情勢下において隣国との間にこういうことが行なわれているということは、従来は賢明なやり方であったのではないか、私はこういうふうに考え、その趣旨は私は前にもしばしば申し上げているとおりでございます。
○大柴委員 問題を進めますけれども、しばしば総理大臣なりあなたの口から政経分離ということを聞くのであります。寡聞にして、われわれはこのことの真意というものがどうもよくわからないのであります。具体的に政経分離というのはどういうものであるか、説明してほしいのであります。たとえば見ようによっては、愛知さんなら愛知さんが衆議院の食堂で昼めしを食べられる。たいへんその昼めしがおいしいことは期待するけれども、衆議院の食堂の存在を認めない、御飯を食べたいけれども、その存在を認めないというように、覚書貿易なり中国との貿易の拡大は認める、あるいは欲しているけれども、中国というものの存在は認めないというような判断をわれわれはせざるを得ないのであります。具体的に私ども代議士がわからぬのでありますから、ここにおられる人々なり、あるいは日本の国民大衆がわかるように、中学の三年生がわかるような例を引いてひとつ御説明願えませんか。
○愛知国務大臣 これは、ただいまもここで申し上げておりますように、原則的なことを言えば、いわゆる中華人民共和国政府との間に正常な国交がないということ、つまり外交関係がないということ、これはまあその御批判は別として事実の問題です。そしてそういう両国の関係のもとにおきまして、経済問題なり人的の交流なりの問題について、双方が合意のできるようなことで交流をしていこう、これが私どもからいえばいわゆる政経分離ということばで従来呼んでおったやり方であり、方式である。これはその御批判は別にすれば、事実の問題としてはだれにでもおわかりになることではないであろうかと考えるわけでございます。
○大柴委員 たとえば長いこと問題になっていた中国のプラント輸出に輸銀の問題がありますね。これをほかのソビエトとかあるいは共産圏の国に対して使っているのに、中国だけに非常にきびしい。そしてまた、きびしいことを政府が、吉田書簡なりあるいはいろいろ総理大臣なりあなたなりが示唆をしておられる。こういうことは経済に対する政治の介入であって、本来、中国との間の貿易など、採算がとれればそういうものを許してもよろしいんだろうと思うのです。そこへあなたたちが介入するのは、政経分離ではなくて、まさにあなたたちのイデオロギーを中国貿易の中に持ち込む、そういうことだと思うのでありますが、そればどうでありますか。
○愛知国務大臣 これも従来しばしば御論議のあったところでございますし、ことに最近は、たとえば衆議院の予算委員会でも、政府側から、担当の大臣その他からもこもごもお答えいたしておりますが、輸銀につきましてはケース・バイ・ケースでやります、適当なプロジェクトがあって、そして所定の手続でこれが適当であるということであるならば、それはそれで認めます、それがケース・バイ・ケースの内容の考え方でございますということを申し上げておるわけでございまして、これは文字どおりケース・バイ・ケースで処理をする。そして適当な手続というものは、御案内のように、輸銀ならば輸銀においては、輸銀の法律もあり、あるいはそれによっての貸し出しの手続、内規というようなものもある。これは過般の衆議院の予算委員会で輸銀の責任者からも同様な趣旨の答弁があったとおりでございます。
○大柴委員 このごろになってケース・バイ・ケースになったのでありますが、一時これをほとんど使わせなくて、何年か前、プラントまできまったのに、わざわざこれを取り消したことがありました。そういう政府の態度を、われわれは、政府は政経分離だ、政経分離だと言いながら、介入している、こういうことを言うのであります。じゃ全然初めから輸銀についてはケース・バイ・ケースでありましたか、あるいはいまでも何か許可した具体的案件がここ二、三年ありますか。
○愛知国務大臣 これは当時のことでございますから、私からあまり詳しく申し上げるだけの資料がございませんけれども、あの当時、たとえば周鴻慶事件とか、いろいろの複雑かつ微妙の問題があった。そしてそのときの環境の中において、輸銀の使用ということはこれはどうかというので、あの当時、いわゆる吉田書簡というようなものも出ましたし——あの吉田書簡は政府のものではございません。ございませんけれども、当時の政府の態度というものがあの書面の上にもあらわれておる、そういうものであると思います。そしてこれが一段落いたしまして、そのあとにおいて、輸銀の問題はケース・バイ・ケースで処理をいたしますということは、私はここ数年来の内閣の変わらざる態度であると考えております。 それから、これは通産当局あるいは大蔵当局から御説明するほうがより正確だと思いますが、現実に輸銀使用の具体的プロジェクトというようなものは、現在ございませんように私は聞いております。
○大柴委員 あれだけ政府がいじめれば、商売人がそんなものを持ち出すはずはないと思うのです。 それはそれとして、あなたの政経分離の原則論を聞いていると、正式な国交がないので、政府としてはいろいろ発言を控えておる、こういうようなことが政経分離の政治がとにかく出ないような理屈でありますが、私は、それ以上に、国交がないがゆえに、政府としてはいろいろ——たとえば、いつか川島さんがインドネシアで何かアジアの会議のときに周恩来総理に会ったことがありますね。そしてそのとき、川島さんのほうから、どこかワルシャワあたりの大使館くらいで少し日本と中国の話を煮詰めてみようではないかと提案したら、周恩来総理が笑って、こんな重要な問題は日本の大臣なりあるいは自民党の実力者と話をしたいと、こうたしなめられた、こういう話を聞いたのでありますけれども、このことの真偽は別にいたしまして、これだけ大きな新興国をわれわれはしかも隣に控えて、政経分離だ、政経分離だと、何かかたくなな態度をとらないで、もう少し積極的に、自民党の実力者なりあるいはあなたみずから、香港なりパリなりで中国と話し合いを進めるような前向きな考えは全然持っておらないわけでありますか。あるいはそれも何か検討中でありまして、後ほどでもお返事するのでありますか、どうでありますか。実際は、佐藤さんなりあなたの腹はどうなんですか。
○愛知国務大臣 的確なお答えにならないかもしれませんけれども、これも予算委員会あるいは当委員会においてもお話を申し上げましたように、たとえば現に北京でありますかどこでありますか、それもさだかでありませんけれども、日本人の新聞記者あるいは商社の人が自由を拘束されておる。その安否もさだかでございません。こういう人道的な問題は緊急を要する問題でもあり、大切な問題でございますから、政府といたしましても、外交機関のチャネルで話し合いに向こうさんも応じてくれるなら、そういうところで話し合いを進めたい。これは、実は昭和三十年に遺骨の相互交換の問題で両方の総領事程度の接触があったことも実例がございますくらいですから、いわんや人道的な問題でもございますから、こちらは門をたたいて、あらゆる在外公館の非常な積極的な活動をいたしましたが、残念ながらまだ反応がない。こういうわけでございますので、そうした問題などについて、いわゆる外交機関を通じての接触というようなこと、こういうことについては私どもも前向きに考え、かつ措置もいたしておるようなわけでございます。
○大柴委員 何か日本の新聞記者がつかまったとか、あるいは商社の人間がつかまったというのは、それはスパイ活動をやるとか、それなりの理由が私はあるだろうと思うのです。しかし、その種の問題と——日本と中国の閉ざされた二十何年かの国交回復に向かって政府が一つの定見を持たない。やろうという意思は持っている。やろうということは言うにしても、そういうことでは、はなはだ日本のためにもアジアの平和のためにも悲しいことだろうと思うのであります。何かそこにそういう問題をすりかえなくて、大きな構想というものは全然ないわけでありますか。
○愛知国務大臣 たとえば、こちらのことだけを取り上げていろいろ御高説を伺うわけでございますけれども、先方としてももう少し胸襟を開いて出てくるというようなことがあることを私は期待してもいいのではないかと思いますし、大きな構想とおっしゃいますが、これは長期の展望からいって、中国の本土と現実のような関係で決してこれで満足すべきものではないということは、私どもとしては十分考えているわけでございますが、現実の状態におきましても、私は、今回のこのいわゆるコミュニケについて、これを前にしてやはりいろいろの御質問があるわけでございますけれども、このコミュニケのでき方自身については、もう少しその衝に当たった方のいろいろの環境、その他についての考え方も伺ってみなければ、何とも今後どうしたらいいかということをこのコミュニケとの関係においては申し上げる段階ではないと思うわけでございます。
○大柴委員 日本は中華民国、台湾政府を承認しているわけでありますが、この台湾政府というのは、少なくとも中国本土の七億の人民から信頼を失って逃げてきた政府であり、同時に、その成立の基盤というのはアメリカの軍によっててこ入れをされている。アメリカの軍がなかったならば、おそらく台湾にも中国に対する祖国復帰運動というものが起きているだろうと思いますし、また将来起きるだろうと思いますけれども、そういう中国本土の大衆から見捨てられた政府であり、アメリカのてこ入れによって成立している政府である、こういうようにわれわれは判断をするのでありますが、外務大臣はいかがでございますか。
○愛知国務大臣 その辺のところが私はたいへんむずかしい問題だと思うのでありまして、よく敵視政策ということがいわれるわけでございますけれども、国民政府側も一つの中国、一つの政府ということの主張をかたくしておる。また中共側も同様にそういう主張を非常にかたくしておられることはいまさら申し上げるまでもないわけでございますが、中国のそうした状態について、これまたかたくななとおっしゃるかもしれませんが、私は、日本として、外国の立場からこれに対してとかく論評するということは差し控えるべきではないかと思うのでございます。 それから、台湾というところには、御意見のようなそういう見方もございますけれども、また同時に、小さなところではあるかもしれませんが、数千万の国民、人民がおって、そうしていわばユニークな経済繁栄というようなことを現実にやっておるということも、また客観的な事実としてこれは認めなければならない事実ではないかと思うのでありまして、その辺のところがまことにむずかしい問題であると考えるわけでございます。
○大柴委員 あなたの言をかりれば、中共政府なり蒋介石政府も、中国は一つだ、こういうようなことを言っているから、自由民主党政府もまた中国は一つなんだ、こういう説をおとりになるのでありますか、あるいはならないのでありますか。
○愛知国務大臣 双方が一つの中国ということを非常に強く主張しておるということを客観的な事実として申し上げたわけでございます。 それから第二には、そうした双方の態度について、第三国である日本として、これに対してとかく論評とか注釈をすべきでない、そういう立場にある日本として、なかなかこの中国問題というのはむずかしい問題でございますということを申し上げたわけでございます。
○大柴委員 そうすると結局、一つの中国論、二つの中国論というのもとらない、ただ何にもない、現実に北京も台湾もそう言っているから、われわれはそういう客観的事実を認める、それから二つ目には、第三国であるわれわれは何も言わない、こういうことでありますか。
○愛知国務大臣 そういうことを言うことは、中共政府からよく敵視政策ということが言われますけれども、やはり他国の内政に干渉するかのようにとられるような言動というものは、少なくとも日本政府としてはこの段階においてすべきでない、私はこのように考えておるわけでございます。
○大柴委員 御存じのとおり、北京のほうの政権は、台湾は中国の一部であって、必ずこれは解放する、しかたにはいろいろある、こういうようなことを言っているわけであります。そしてまた、蒋介石の政権のほうも、何か理屈だけはそういう展望を——やがて大陸へ行って、共産中国は滅びるのだ、こういうような展望を持って、それぞれ言い合っているわけでありますが、日本政府としては、将来この蒋介石政権というものの施政権が中国本土に及ぶであろう、こういうような想像は持っているわけでありますか。
○愛知国務大臣 ただいま申し上げたとおりでございまして、そういうことに対して日本政府としてとやかく論評すべきものではないというのが日本政府の態度であります。
○大柴委員 そうすると、結局政治的な方針は何にもないということですね。
○愛知国務大臣 かりにAならAという国があるといたしまして、これが大小いろいろな形態もありましょうが、分裂している場合に、そのどっちに日本政府が加担するというようなことは態度を表明しないことが、日本政府の立場として、これが日本の立場を守るゆえんであろう、かように私は考えるわけでございまして、評論的に、あるいはまたいろいろ自由な立場でいろいろの意見は、それはあり得ると思いますけれども、日本政府の現在の立場としては、この中国問題につきましては、いま申し上げましたような態度をとることが、現在における日本の立場、日本の利益を守るゆえんであろうか、かように私は信じておるわけであります。
○大柴委員 しかし、実際には、先ほど言ったように、中国本土のほうへはケース・バイ・ケースで輸銀の使用も事実上は認めるような理屈ではあるけれども、認めておらぬ。いまはない。台湾のほうに対してはずいぶん合弁会社をつくるとか、事実上AならA、BならBの国の、そのBのほうはたいへん力を入れているわけではありませんか。だから、このことを二つの中国をつくる陰謀だ、こういうふうに中国は言っているのではないのですか。あなたたちは何も言わない。何も言わないけれども、事実上台湾とはすべての面において関係がある、こうではないのですか、中国の判断は。
○愛知国務大臣 御案内のように、台湾との間にはやはり相当量の通商の量があるわけであります。それから決済の方法にいたしましても、あるいは日本の国益からいって輸入したいものもございます。支払い関係その他からいいましてもきわめて円滑にいっておりますから、コマーシャルにこの関係が円滑にいっているということもまた現実でございます。これを阻害することは、これは国益に反することではないかと思います。
○大柴委員 いつでありますか、アメリカのジョンソン大統領と佐藤総理と結んだ何か声明に、中国の脅威、こういうことばが使ってありましたけれども、中国のわが国に対する脅威というものは具体的にどういうものでありますか。
○愛知国務大臣 まず第一に、いわゆる佐藤・ジョンソンの共同声明は、ここに持っておりませんけれども、感じ方としては、中共の周辺の国が脅威を受けているということについて共通認識を持っておるということがその趣旨であったかと考えるわけであります。これはやはり客観的の事実として、周辺の隣国が脅威を感じているということは、私は否定できない事実であろうかと考えるわけでございます。話は長くなって恐縮なんでありますけれども、日本自身にいま現実に中共が攻めてくるとかどうとかいうような意味の脅威は、私はないのじゃないかと思いますけれども、それは、やはり日本が自国の安全を守るということで、憲法に許される自衛力と、それから日米安保体制の抑止力ということを組み合わせた日本の守りの体制というものがあるから、これは中共だけに対してではございませんが、日本の安全を守り得ているのである、かような認識に立っておるのがわれわれの考え方の基本であります。かように申し上げるのが私の考え方でございます。
○大柴委員 中共の周辺の国の中共から受ける脅威というのは、具体的にたとえばベトナムとかカンボジアとか、あるいは北鮮なり南鮮なりというような周辺の国、あるいはソビエトかもしれません、あるいは日本かもしれませんが、その国のどういうことをいうのでありますか。
○愛知国務大臣 これはしかしやはり他国の考え方でございますからなんですが、たとえばいまお述べになりました以外にも、中共とインドとの関係もございましょう。現に中ソの国境紛争もございます。とにかく何かしらぬ、ことにいわゆる中立政策というような政策をとっておる国々が、あるいはビルマにしてもそうでございましょう、そういう国々が現実に脅威を感じているということは常識的な見方ではないのでございましょうか。私はそういうふうに感じます。
○大柴委員 それは人の国のことですからいろいろあるでありましょうけれども、実は私は、一昨々年でありますか、ベトナムのホー・チ・ミン大統領をたずねたことがあるのであります。あるいはベトナムの民衆と十日ばかりいろいろ話し合ったことがあるのでありますが、ああいうようにベトナムの内紛につけ込んでわざわざ戦争を買って出て、しかも全世界の軍事基地を持ちながら、あるいは日本の沖繩から、あるいはグアム島からベトナムを攻撃するというような、アメリカのあの侵略政策に匹敵するような脅威というものを今日中国も与えているのでありますか。
○愛知国務大臣 これはいまもお話のございましたように、よその国の人たちの考え方ですから、これを詳細に私がその国の人の立場になって申し上げるわけにもまいりませんけれども、しかし、たとえば八回にわたって核爆発の実験が行なわれている。そうして情報などによれば、これの戦争の、何といいますか、行動力というものもどんどん進歩発展している。そうしてそれを背景にして、やはり周囲の陸を境にした国境の国々が現に国境紛争をしている。これはどちらがどういう理由でどういう発動をしたのかというようなことについては、いろいろの見方もございますが、しかしまた、中共政策のいわばどちらかといえば勢力の弱い国々が、どういう脅威を受けるであろうかということで相当頭を悩ましていることも、また私は疑いのない事実だと思うのでございます。これは何も核でどうとかいうことではないにしても、それを背景にして、通常兵器によりあるいはそのほかのゲリラ的な戦法によって、いつ何どきどういうことの目にあうともしれないというような脅威を感じているということは、私は客観的な事実じゃなかろうかと存ずるわけでございます。
○大柴委員 あれだけ朝鮮から日本の沖繩から、あるいはフィリピンから、いろいろアメリカの核によっておどかされている中国というものが、核実験をやるというようなことも、中国人民の立場に立てばあたりまえだろうと私は思うのであります。しかし、この議論をいろいろやっている時間はありませんし、きょうは共同コミュニケの問題をめぐってでありますから、いずれ政府の態度が正式におきまりになってから質問を続行したいと思います。 きょうは、もう時間の関係上これで終わります。
○北澤委員長 本日はこの程度にとどめ、次回は公報をもってお知らせすることとし、これにて散会いたします。 午後三時五十七分散会