外務委員会 第8号
- 発言数
- 31 件
- 登壇者
- 6 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1969/03/25
会議録
○北澤委員長 これより会議を開きます。 国際通貨基金協定の改正の受諾について承認を求めるの件を議題とし、審査を進めます。 本日は、本件の参考人として堀江薫雄君、新田俊三君の御両名の御出席を願っております。 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。 本日は、御多用中にもかかわらず御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。 今回、参考人各位の御意見を承ることになりまして、本件の審査に多大の参考になることと期待いたしておる次第でございます。各位におかれましては、忌憚なく御意見を御開陳くださるようお願い申し上げます。 なお、念のため申し上げますが、御発言の際はその都度委員長の許可を得ることになっておりますので、さよう御了承願います。 議事の進め方につきましては、お一人十五分ないし二十分程度において順次御意見の御開陳を願い、その後委員から質疑が行なわれることになっておりますので、お答えを願いたいと存じます。 それでは、まず堀江参考人からお願いいたします。堀江参考人。
○堀江参考人 私、堀江薫雄でございます。 国際通貨基金協定の改正の受諾につきまして、参考人として本委員会にまかり出たわけでございます。 本件につきましては、すでに政府当局からも詳しき説明や、あるいは質疑応答もありましたと伺いましたので、本日私からは一応の説明と参考意見を申し上げ、あと御質問がございましたならばそれにお答え申し上げたい、かように考えるのであります。 本件は、IMF協定の規定改正とIMF加盟措置法との並行審議でありまするし、これらの実質的な中心問題は、IMFの特別引き出し権、すなわちSDRの受け入れであります。そこで、そのSDRにつきまして、私見を申し上げたいと思う一のであります。 まず、SDRを必要とする目的やその背景から申し上げます。 御承知のとおり、世界経済が発展していくためには、世界貿易等が順調に発展し、国際間の支払い決済が順調に拡大していくことが必要であります。そしてそのためには、国際間の支払い決済手段の準備、すなわち、世界全体としての準備資産の総量、換言いたしますると、国際流動性が適度に増加していくことが必要であります。もし国際流動性が不足するようなことにでも相なりますると、各国は国際収支の赤字を懸念いたしまして引き締め政策をとり、縮小均衡政策に入りがちとなり、世界的なデフレーションを招くおそれができてまいりましょう。またその結果は、不景気やあるいは失業なども出てくるわけであります。 現在、その国際流動性は主として金と米ドルから構成されております。御承知のとおりであります。 その中で、金につきましては、その生産が自然の条件によって左右せられ、また近年は、金は工業用、装飾用、医療用、その他いわゆる退蔵用のためにも、民間需要が増加の一途をたどっておるのでありまして、貨幣用目的の金への増加に多くを期待できないのが実情であります。先生方も御承知のとおり、南ア連邦を主生産国といたしまして、世界には年間十三、四億ドル程度の新産金がありまするが、これが全部貨幣用金に回ったといたしましても、せいぜい年間二%以下の増加でありまするのに対しまして、世界経済の発展や世界貿易の拡大は、これまた御承知のとおり年間八%前後の伸びであるわけであります。そこへ前述のとおり、もっぱら民間需要に金が食われてしまって、ここ一、二年は世界全体の貨幣用金は減少しておるのが実情で、金による国際流動性の増大は現状では望めない次第でございます。 次に、米ドルにつきましては、その国際流動性への供給は、米国の国際収支が赤字になる結果であり、米ドル札の増札、乱発を意味するものであります。したがいまして、米国の国際収支の赤字がふえ、米ドルの供給が増加しますればしまするほど、米ドルに対する信任、信用が低下する。逆に、そうしてかりに、米国の国際収支が改善して黒字になり、米下ルに信用が増すようになりますると、その結果は世界の国際流動性が不足する。このようにいたしまして、いわゆる流動性ジレンマを内包いたしておるのであります。 以上のことは、元来が米国という一国の国内通貨である米ドルが、同時に国際通貨すなわち国際流動性であることからくる帰結でもあります。それはすなわち、米国という一国の利害に基づき、一国だけの管理によって運営されている米ドルが、世界経済全体の発展すなわち世界利害を左右するところに問題があるわけであります。そこで、ドルが増発されるとなりますれば、世界のインフレになるという結果にも相なるわけでありまして、通貨不安も出てくるわけかと思います。 このようにいたしまして、一昨年十一月の英ポンド切り下げ後に起こりましたたびたびのゴールドラッシュにも見られますように、米国がこれ以上国際収支の実質赤字を継続することは許されない状況になっておるのであります。 そこで、再び金に戻りまして、国際流動性を増加させるために金価格を引き上げればよいという考え方もあるのは御承知のとおりでありまするが、金は各国通貨の共通の尺度であり、また各国間に貨幣用金の偏在が見られることなどを考えますと、金価格の引き上げは、国際通貨制度に大きな混乱を招くおそれが強いわけでありまするし、また信用制度へ対して危険もあると思われるのであります。また、金価格引き上げによる流動性増強は、やり方によりましては、国際流動性が一挙に過剰になり、世界的インフレを招来する危険もなしとしないのであります。また、金価格引き上げ後流動性は増加して、しばらくはいいとしましても、何年かたちますと再び金価格引き上げを繰り返さなければならなくなるといったようなこと、その他いろいろマイナスもあるのであります。 以上のように、在来のおもなる国際流動性である金と米ドルによっては、今後国際流動性の適正な供給を確保し得ないという状況になってまいりましたので、これを補充するという意味をもちましてつくり出されたのがSDRというわけであります。このSDRの制度の創設によりまして、国際流動性が不足するという問題には、解決の端緒がついたと私は思っておるのであります。 今日、このSDRがっくり出される背景といたしましては、一九六三年のIMF総会以来――ちょうど私はこのときも出ておったのでありまするが、そのとき以来、当初は十カ国蔵相会議、蔵相代理会議の手で検討せられ、その後、十カ国蔵相代理とIMF理事会との合同会議でもって長年にわたり検討し、論議せられた上、結局一九六七年、一昨年九月のリオデジャネイロのIMF総会、これにも私は出ておったのでありますが、この総会でもって、IMF協定の一部としてSDRの大綱を採択する決議が行なわれたのであります。しかし、これを実際に発効せしめるための細目につきましては、さらに引き続き協議検討が続けられたのであります。その論議は、ポンド切り下げの一九六七年秋から一九六八年春にかけて続けられまして、昨年三月末に至りまして、ストックホルムの十カ国蔵相会議でようやく合意が成立いたしたわけであります。しかし、その十カ国のうち、一カ国だけは態度を留保いたしましたまま議決いたしました。次いで、昨年の五月に、全体としてIMF協定改正案を検討し、IMF加盟各国総務、すなわち各国蔵相の賛成をとりつけて、その改正原案はIMF原案として確定したのでございます。 この確定案は、加盟国の国の数では全体の六〇%、投票権数では全体の八〇%以上の国が国会の批准を終わって通告しますれば、IMF改正が成立することに相なるわけであります。 なお、この発効と別に、SDRの発動と申しまして、SDRを実際に動かす場合は、IMF総務会の重要事項として、投票権の八五%の賛成を必要とするということになっておるのであります。 ところで、現在、すなわち先週末くらいのところでありまするが、IMF加盟国数百十カ国中の六〇%、すなわち六十七カ国中の三十七カ国がすでに批准、通告を済ませました。その投票権数では八〇%必要のところが、大体五三%程度が批准を済ませた次第であります。それが現状であります。 なお、これは私の私見でありまするが、ちょうど今月の初め、私は、日独経済合同委員会会議のためにドイツに滞在中でありましたが、そのころ、西独の国会でもSDR関係のIMF改正を批准いたしたのであります。その記事が新聞にも出ておりましたし、日本とドイツとは国際金融界で似た立場にあるように私も思いますので、参考までに日本の立場に関する私見を申し上げます。 第一は、本来、日本は、一九六三年の当初から十カ国蔵相会議の一員として、SDR原案作成には常に積極的に取り組んできたいきさつもあり、また世界の指導国の一員として国際流動性創出の責任もあるということ。それから第二に、IMF協定改正が有効になった後、先ほど申しましたように、SDRの発動、すなわち、実際に動かすための条件折衝の役割りに日本が参画するためにも、その前提である批准決定をおくらせてはならないというふうに私は思うのであります。また、そういうことは万なかろうとは存じまするが、万一SDR発動のとき、批准していないというような場合を想定いたしますと、日本へのSDR配分ももらえないおそれもなきにしもあらずであります。それから第三に、SDRは、前述べましたとおり、国際流動性増加のためにつくるのではありますが、これが創出されますと、御承知のように、最近の国際通貨不安解消のための一助となりまして、国際金融の安定、ひいては日本の経済にとって最も重要な世界経済や世界貿易の発展のため、一大裨益をするというようなこと、これら三つをあげましたが、その他にも多少あります。それらの理由から、日本ももはや批准決定を急ぐ必要があるのではないか、これは私の私見であります。 なお、最後に、SDRそのものの内容や性格、またその仕組みにつきましては、ここに私もいただきましたけれども、当局の説明があるわけでありますから、詳しくは申し上げません。SDRというのは、IMFによって計画的に創出せられ、従来のIMFの一般勘定と別に、別勘定をもって整理されることになっております。そして、IMF加盟国に対しまして、それぞれの割り当て額に比例して案分されるのであります。SDRには金価値保証がつけられますが、それは金や米ドルに取ってかわるといったものではなく、金・米ドル等の在来の準備資産を補充するというのが主たる目的であります。また、SDRは、そのままの形で対外決済に用いられるものではなく、その国の国際収支が悪化した場合には、いつでもこれと引きかえにIMFの指定する――ガイドするという文句を使っておりますが、IMFのガイドする他の国から、必要な交換可能通貨を入手できる仕組みになっておるのであります。 あと、内容その他につきましては、いずれ御質問もあるかと思いますので、私の話はこれだけで終わりたいと思います。どうもありがとうございました。
○北澤委員長 次に、新田参考人にお願いいたします。
○新田参考人 今回の改定で特に問題となります点は、SDR創設に関する第二十一条から第三十二条に至るまでの追加、附表F、G、H、Iの追加に関するものであろうかと思われます。それで、この点を中心に、若干意見を述べてみたいと思います。 最初に、このSDRに関しまして、世間にいろいろ誤解があるようでありますので、この点をただしておきたいと思います。それは、SDRの出現によりまして、これを金の束縛から解放された第三の通貨であるというような理解のしかたが比較的多かったのではないかということであります。これはたいへんな誤解であります。この点は、第二十五条の第三項、第四項、第五項、第六項、これらの諸項を見ていただければ、通貨として機能するためには、非常にきびしい制約が課せられているということがおわかりになるだろうと思います。つまり、原則として国際収支の必要にしか使用できない、参加国は一定限度までしか受け取る義務がないということ。引き出し通貨の種類や方法については、IMFが指定する。それから、原文にはリコンスティチューションとなっておりますが、返済――復元と訳してもよろしいと思いますが、要するに、返済の義務があるということであります。これらの性格から、とうていこれは通貨として機能する性格のものではないわけであります。それであれば、SDRはいかなる規定を与えるべきかといいますと、これは国際協力の上に立つ一種の信用創造であるということが言えるのではないかと思うのであります。要するに、それを利用して、他国の通貨を引き出し得る権利にすぎないということであります。 それではこのSDRが従来の単なる借金の証文書と全然同じかというと、必ずしもそれはそうは言えない性格があるわけであります。それはどういうことかと申しますと、国際収支が赤字になった場合に、いつでも必要な外貨にかえられ、決済に使われますから、その結果、形式的には赤字国から黒字の国へと、これは帳簿上の問題でありますが、流通するような形をとって寄ります。こういう点から、最初に述べました世間の誤解が生じたのではないかと思われるわけです。 しかし、ここで、限られた時間で私が最も重点を置いて申し上げたいことは、このSDRがいま述べましたようにうまく機能する、簡単に申し上げますと、うまく運営されるためには、一つの重要な前提条件があるということであります。その前提条件というのは、第二十四条第一項に書かれてありますように、まず国際流動性が不足しているということがはっきりしておらなくてはならないということが一つであります。それからキーカレンシー国の国際収支、これがともかく均衡しておらなくては話にならないということであります。具体的には、この場合のキーカレンシー国と私が申し上げた国は、アメリカを当然意味するわけであります。つまり、SDRが構想どおりに運営されるためには、ともかく現在の国際通貨の不安の源でありますところのアメリカの国際収支の赤字が解消されない限りは何にもならないということであります。つまり、その前提をほったらかしにしておきまして、SDRの機能を幾ら論じても、それは全く意味がないというふうに端的に申し上げてもよろしいかと思います。そのことは事実的にもはっきりしているわけでありまして、もしもアメリカが恒常的な国際収支の赤字国であり、ヨーロッパが恒常的な黒字国であったといたしますと、こういった条件のもとでのSDRの発動というのは、結果的にはアメリカの赤字を西ヨーロッパの負担、特にEECの負担においてなすという結果になりかねないわけでありますから、この点を特にフランスを先頭にいたしまして、EEC諸国が厳重にSDRの合意の前にクレームをつけているところであります。他方、SDRの配分が、この協定案に見られておりますとおり、赤字国に限って、しかもIMFへの現行出資率に応じて割り当てられるということを考え合わせますと、現状のままで、つまり、アメリカも国際収支が赤字であるという国際収支の国際的なアンバランスを前提にした上でのこの運営と申しますのは、結果的にアメリカが約四分の一の引き出し権を持つことになり、最も大きな恩恵を受けることになる。他方、後進国にとっては、全くこれは何ら恩恵に浴することができないという結果になるのは、きわめて明白であるかと思われます。わが国の場合でも、十億ドルないし二十億ドルという想定では、三千五百万ドルないし七千万ドル程度の引き上げしか見られないことになるわけであります。 それで、SDRの問題のかぎを握ると思われますところのアメリカの国際収支の動向が実は最大のポイントになるわけでありますが、この点に関しましては、全く悲観的と言わざるを得ないわけであります。御承知のとおり、アメリカの国際収支は、一九五〇年朝鮮動乱の勃発以降、一九五七年を唯一の例外といたしまして、ずっと赤字を続けてきております。五〇年から平均して年はぼ二十億程度の赤字を出しているわけでありますが、この赤字の性質というものが、単なる政治的要因のそれではなくて、アメリカの国際市場におきますところの競争力の低下、これを本質としているところに問題の深刻さがあるわけであります。アメリカの国際収支の赤字要因というのは、よく指摘されますとおり、貿易外収支と資本収支の赤字によって代表されるわけでありまして、貿易収支そのものは黒字であったわけでありますが、一番問題なのは、アメリカの一番頼みとする貿易収支の動向が、特に一九六五年以降きわめて険悪な様相を呈し始めておるということであります。この点を具体的に申し上げますと、昨年は総合収支においてこそ一億八千万ドルの黒字を出しておりますが、いま申し上げました最も重要な貿易収支、アメリカの国際収支をささえていた唯一の存在である貿易収支の黒字が、わずか一億ドル足らずに転落したわけであります。しかも、この総合収支の改善と申しますのは、きわめて例外的なアメリカに対する外国人投資の増大、それからドル防衛政策の一環としての中期債券を大量に増発し、各国に売りつけた効果があらわれているということによるわけでありまして、決して安定的な黒字ということは言えないわけであります。 こういうふうに考えますと、アメリカの国際収支が恒常的に改善される余地はなく、しかも一方におきまして、SDRの発動にあたりましてあるいはSDRの合意にあたりまして、キーカレンシー国の国際収支の均衡が絶対の前提とされるという、この矛盾がいかに調和されるかが最大のポイントになってくるわけであります。言うまでもなく、この問題は容易に解決されるわけはないわけであります。端的に申し上げますと、今次のIMF体制は、いま申し上げましたアメリカの国際収支が赤字であるという前提と、それから一方アメリカのドルをほとんど吸収する形になりましたEECの、両者の妥協の産物として成立した性格がきわめて強いということであります。 このことは、後ほど条文に具体的に即しながら若干述べてみたいと思いますが、まずアメリカの立場を先に申し上げますと、一体このSDRの合意の前提となっておりますところの国際流動性の問題につきましては、アメリカはそれを口実にはしておりますけれども、世界的に見ました場合に、私どもは、どうも流動性が不足しているというその証拠を見つけることができないわけであります。むしろ、貨幣用金が不足している、あるいは金それ自体が物理的に不足しているというのは、文字どおり物理的現象でありまして、私どもが特に強調しなくてはならないのは、貨幣用金が不足しているのではなくて、金に対してドルが過剰であるという現象であります。つまり、なぜドルが過剰であるかということは、言うまでもなく、いままで強調してきておりましたアメリカの国際収支の赤字によるドル散布であります。あるいはアメリカの対外投資、こういうものの累積、ドル残高の累積が主としてEECに見られる。EECにとってはドルが過剰になっているということであります。私どもの見解によりますと、流動性は不足どころか、過剰であります。その点を特にこのSDRの合意の前に強調しておきたいと思うのであります。現に一九六三年の、いま堀江参考人がおっしゃっていた十カ国蔵相会議では、一つの統一見解が出されておりまして、それによりますと、国際流動性は現在不足していない、将来アメリカの国際収支が均衡した暁には不足するかもしれない、こういう統一見解を出しております。つまり、SDRというのは、国際流動性の問題からもともと出てきた問題なのですが、それがいつの間にかアメリカのドル危機の問題と結びつけられているというところに、たいへん大きな問題があるのではなかろうかと思います。流動性の問題はかりに生ずるとしても、なおかつ将来の問題である。論理的に制約して申し上げますと、まずアメリカの国際収支が均衡し、その上で世界の貿易量と貨幣用金並びにキーカレンシーとのバランスがあらためて問題にさるべきであります。ところが、この点につきましては、もともとこういう形でSDRの構想が出てきたにもかかわらず、現在議論はたいへん混乱しておりまして、アメリカの国際収支の均衡が達成した上でSDRを持ち出すのでは事がおそいという見解、つまり、アメリカの国際収支の赤字の問題にこれを発動しなければ意味がないという議論と、もともとのSDRの構想、つまり、アメリカの国際収支が均衡した上で初めてこれは論理的にも実際的にも問題にさるべきだという見解が、奇妙に交錯しているわけであります。 この二つの議論の交錯は、端的に申し上げますと、アメリカが国際収支が赤字だから、したがって、SDRという形を利用して現在のドル残高のたな上げをはかろうという立場、そういう立場に対して、もともとのSDRの構想、つまり、流動性の問題として将来への展望を持って持ち出した西ヨーロッパとの食い違い、これがきわめて明瞭となっておりまして、いよいよその対立がおおい切れなくなってきた。そしてこのIMFの改定自体が、実は二つの性格からなっているという結果になったわけであります。その点は、二十一条以下の追加に関する条約におきましては、SDRの創設に関してアメリカの意見をいれているようでありながら、実は旧規定の改正の面におきましては、西ヨーロッパ、特にEECですね、とりわけかってフランスのドプレ蔵相が強硬に主張したフランスの意見が、旧規定の改正の中に多分に盛り込まれているという点で、はっきりしているわけであります。つまり、今回の改定は、SDRをともかく発動して現在の国際収支のたな上げ、赤字の解消に早急に役立たせようというアメリカと、そうはさせない、しかし、これを一挙にアメリカと対立関係に持っていったのではIMF体制そのものが一挙に崩壊することになりますから、EECといえども一定の妥協をせざるを得ない。そしてその妥協の点をどこに求めたかというと、旧規定の改正の中に、特に金の重視、場合によっては金の復位と言ってもよいかと思いますが、この点の性格を明確に打ち出して、かなり成果をかちとっているということであります。 先ほど堀江参考人のほうからも御指摘がありましたとおり、EECがSDRの具体的発動条件について拒否権を持ったということもあげなくてはならないわけでありますが、旧規定の中で、特にいろいろアメリカにとっては必ずしも有利でないと思われるところもありますので、それを若干指摘しておきたいと思います。 特に増資並びに金出資の変更につきまして、第三条でありますが、拒否権をEECは持っております。 それから平価一律変更につきましても、今回改定によって拒否権を持ったわけであります。特に第四条第七項の場合には、かりにアメリカの金価格引き上げがあった場合に、このドル残高の償還につきましては、一定のクレームをアメリカにつけることができますので、これはアメリカにとっては、場合によってはアメリカとEECとの間の金の保有量のドラスチックな変更になりかねないわけであります。たいへん重要な修正だと思われます。 また、第四条第八項におきましても同じような問題がありますが、特に協定の解釈について、とかくこれまでいろいろトラブルがありました問題につきましても、第十八条におきまして解釈委員会が新しく設置され、そしてここにおいても拒否権を持っているということも、たいへんEEC側にとっては重要な武器になるのではなかろうか。 そして特に第五条の内容に関しましては、金の重視という傾向が一そう顕著でありまして、つまり、これによりましてゴールドトランシュ、スーパ一・ゴールドトランシュの区別を明確にしているわけであります。この改正によりまして、結論的に申し上げますと、ゴールドトランシュ引き出しの無条件制約が確立したと申してよろしいかと思います。つまり、ゴールドトランシュが全くないと同一視される結果になったということであります。他方、スーパー・ゴールドトランシュにつきましては、債権国に対して一・五%の利息が与えられることになります。また、クレジットトランシュにつきましても、その流動性にはかなり制約が課せられることになるということです。この点を一言で申し上げますと、金と信用の区別を明確にするということでありまして、これまでキーカレンシー国の国際収支を口実にしてゆるめがちでありましたところの金の規制に対して、金の規制がかなりきびしくなったということが言えるのではなかろうかと思います。 結論的に申し上げますと、SDRに見られるアメリカ側の主張と、旧規定の改正に主として見られるヨーロッパ、EEC側の主張とが妥協した形で、今回の改定が成り立ったというふうに考えるべきではないかと思います。 そう考えますと、こういった妥協の産物としてのIMF協定の改定案に従って、今後各国が動くとしますと、たとえば具体的にSDRの発動が問題になります場合に、それによって現在の国際通貨体制の不安が除去されるかというと、むしろ逆でありまして、それをきっかけとしまして、各国の利害対立がむしろ激しくなるのではなかろうかということが考えられるわけであります。現在の国際通貨体制の問題が、単なる制度上のトラブルの問題ではなくて、アメリカの国際収支の赤字、しかもこれが主としてEECとの競争戦の結果あらわれた構造的現象でありますから、こういう根深い要因を持ってきている問題であるところから、制度上の問題を多少いじくったところで、実はどうにもならない問題であるということを意味しているわけであります。この対立が具体的にどういう形であらわれるか、これは残念ながら私にはよくわかりません。ただ、はっきり言えることは、金価格引き上げという手段はなかなかとり得ないということであります。金価格引き上げも、世間で一般的にいわれている有力な説でありますが、現在のところ、アメリカの大統領権限、つまり、一九三四年の金準備法の大統領権限は一九四三年六月末で一応消滅しているはずであります。しかし、それにもかかわらず、金準備法第八条、第九条によりますと、財務長官の権限で金価格が変更し得るような規定が一応残っておるわけであります。しかし、一般の通説としましては、一九四五年のブレトンウッズ協定第五条によりまして、金価格引き上げを行なう場合は議会の同意が必要だということになっているはずであります。これは一般的解釈としてそうだろうと思います。そうなりますと、アメリカの議会というのは、事が重要である場合に限ってごたつくという歴史的特質がございますから、金価格引き上げを相談して二日も三日もたっているのでは、大混乱が起こること、これは間違いないわけですね。そういった意味から、アメリカが金価格引き上げを議会の同意という手続を経て行なうということは、ちょっと技術的に考えられないのではないかと思うわけであります。実勢としましては、現在の二重価格制度が、いろいろ問題をはらむ形ではありますが、おそらくこのままなしくずしに続き、事実上のドル切り下げが行なわれると見るのが至当ではなかろうかと思います。ドルが事実上不換紙幣化しているということは、これはいろいろな証拠から類推できるわけでありますが、かりに金価格引き上げを行なう場合でも、必ずアメリカは一時売却停止をやるに違いない。しかし、事実上、他国の通貨当局に対してもアメリカは金の交換を拒否していると見るのが至当ではなかろうかと思います。この証拠はあまりありませんけれども、たとえば一九五七年五月二日に発表されましたアメリカと西ドイツの間の交換文書におきましては、プレッシング西ドイツ連邦銀行総裁が、マーチン・アメリカ連邦銀行理事長にあてまして、西ドイツが手持ちのドルを金にかえるということはしないということの一応の確約書を与えているわけでありますが、表になかなかそれがあらわれるというわけには実はならないわけであります。しかし、事実上もうアメリカは金の交換に応じない立場をとっていると見て差しつかえなかろうかと思います。そういたしますと、いまの事態が進むと、だんだん金を重要視する西ヨーロッパのブロックと、ドルの切り下げに自国通貨の切り下げをリンクしていくブロックと、これは予想の問題で何とも確言できるわけじゃありませんが、二分化していくということも一応有力な推論として考えられるわけであります。 そうしてわが国の場合に、いままでの叙述から、いかなる態度をとるべきかということも、私として特にはっきりとしたものがあるわけではありませんが、少なくともいまのアメリカの国際収支のあり方が構造的で、解消がおそらく将来にわたって不可能であろうという事態と、一方における西ヨーロッパ側の生産力の発展を基礎にするところの台頭と考え合わせますと、わが国がやはり進むべき道というのは、早急にいまのますます弱るドル依存から脱却して、自立化の道を歩む方向をとるほかはないのじゃなかろうかということ、これは最小限言えることではなかろうかと思います。 いろいろまだ申し上げたいことがあるわけですが、時間が少しオーバーしておりますようなので、もし何か御質問があればそのときに申し上げたいと思います。以上です。
○北澤委員長 これにて参考人の意見の開陳は終わりました。 ―――――――――――――
○北澤委員長 参考人に対する質疑の通告がありますので、順次これを許します。穗積七郎君。
○穗積委員 両参考人に対して、私は野党の理事でありますが、貴重な御意見をお聞かせいただきましたことを、同僚とともに厚くお礼を申し上げます。 なお、申し上げておきますが、きょうは二時から本会議がございまして、一時間六分しかもうないわけです。きょうの質問は私のほか二名、都合三名でございますから、一人大体二十分くらいしかないものですから、簡単な質問をいたします。問題は簡単ではないかもしれませんが、なお、技術的な問題とか条件等につきましては、これは政府当局に条約を中心にいたしましてお尋ねいたしますので、きょうは、尊敬すべき両参考人に対して、基本的な認識を深めるために二、三お尋ねしたいと思います。簡潔にお答えいただいてけっこうであります。 私ども、今度の金ドルの流動性の不足の問題については、新田助教授がお話しになったと全く同じ認識を持っております。すなわち、絶対量において国際通貨の流動性が不足してきたというふうに考えるよりは、むしろ国際協力の破綻ないしは特にアメリカの内外政策の不均衡、矛盾がここにあらわれてきているのではなかろうか、私どもは総括すると、この二点に考えるわけです。ですから、先ほどの御陳述では、堀江さんにお尋ねいたしますが、産金の絶対量が不足してきて、いまドルは不換紙幣になっておるけれども、一応金にリンクするというたてまえに立っておる国際通貨制度を見れば、そこから見ても、非常な絶対量不足が生じてきているのだ、その補完のためにSDRが必要であるというような印象を受けたわけですけれども、これはおことば不足であって、これだけを言っておられるわけではないと思うので、私はお尋ねするのですが、そういう私どもの認識に立って、いまの金ドルの流動性の不足というのは、一体どこからきておるものと認識すべきものであるか。この基本原因を追及しなければ対策もまたびほうの策に終わり、先ほどもお話がありましたように、いまの国際関係の内部的矛盾の拡大と混乱を増すだけではないか。特に、最後にまたお尋ねいたしますが、これは日本の国の立場に立って、メリットが一体どれだけあるのかということを考えますと、基本の認識が一番必要だと思いますので、その点を該博な経験と御知識を持たれる堀江参考人からサゼスチョンを与えていただきたいと思うのです。
○堀江参考人 穗積先生にお答え申し上げます。 まず、国際流動性の構成の中に、金とドルが主としてある。そしてドルはかくのごとく増発され、国際収支が赤くなって、海外にも出ておるから、流動性自体は不足していない、そういう認識は一応成り立つと思います。しかし、一皮むいてこれを分析いたしますと、同じ流動性の中の金そのものと、また金にかえ得ると約束されていたドルとの関係が一時と変わってきた。そのドルが大いに増発され、ヨーロッパ市場だけでも、二百五十億ドルもの資金がユーロダラー市場として存在しておる。ある程度流動性として役立ってはおるけれども、その流動性の中に、すぐれた流動性とそうでない流動性がある、そうでないものが敬遠されるという意味において、全体として流動性不足も成り立ち得ると私は考えるのであります。 それは、しからば金ドルの関係がどうだという御質問に相なるわけでありますが、過去の経過として、ドル万能時代にIMF制度が創立され、アメリカの経済力の絶対的な優位をもとにしてIMF制度自体ができた当時に比べますと、明らかに金とドルとの関係が悪くなったことは事実でありまして、過去は過去として、しかしながら、ドルの国際収支赤字が世界全体の流動性をまかなってきたという役割りも認むべきであろうと思いますし、現在に立って将来を見れば、そのドルをこれ以上悪化させないで、一番すぐれた流動性である金を中心にして、金の映像であり、リフレクションであるドル、そのドルがこれ以上悪くならないために国際収支を均衡させるということにしますと、それを補充するものとして、新たな準備信用手段をこしらえるということに相なるわけであります。金ドルの関係が悪化したことは事実でありまして、現実に、アメリカ当局もドル請求に対してはなかなか金を交換しないということでありますが、繰り返し申しますように、過去において十七、八年にわたり、アメリカのそのドルの流出が世界全体の国際流動性をまかなってきたといったことは、その役割りを認め、そして今後にわたって金とドルと、それから新たにできるはずのSDR、この三つの調整と申しますか、ハーモニゼーションをうまくやっていくということが最も重要な問題であろうと思うのであります。ことにドルにつきましては、アメリカ自身の管理運営でありますが、SDRにつきましては、IMFという国際機関を通ずる共同の国際管理運営によって、世界全体の必要量に応じた適正なSDRを供給していこうということでありますから、私申し上げましたように、今後の国際流動性の増強なり、また適正な供給なりに一つの進歩であることはいなめない、こういうふうに思うのであります。
○穗積委員 国際通貨の流動性の欠除という問題提起になっておりますが、私どもはやはりもっと正確に言えば、すべてではありませんが、基本的にいえば、やはり先ほど新田助教授も言われたように、アメリカドルの危機がむしろいまの国際資本主義経済間の矛盾の中心ではないかというふうに思うのです。そうなりますと、これの危機を打開するための補完の方法としてSDRというものを考えてみますと、本末転倒ではないか。むしろこれはSDRの運営におきましては、その国の国際収支の均衡がとれることが条件のようになっておりますけれども、その問題の追及は文書にはありますけれども、現実は全然なされていないのではないか。すなわち、アメリカのドル危機の原因というものは、対外的な戦争政策あるいは軍事政策、それから対外投資、それから国内経済で見れば、景気の無理な維持のための過熱政策、そこから当然インフレが生じてまいりましょう。それがドル危機の基本ではないかというふうにわれわれ考えるわけです。そしてここで行き詰まってきたので、これを取り戻し、かつ国際協力関係あるいは国際的関係の調整、衡平を取り戻そうという反省に立つならば、そういうふうにSDRというものは、表面は新たなる国際協力の樹立に役立つ、こういうふうに幻想を抱かせがちでありますが、現実はそうではなくて、先ほど御指摘がありましたように、貿易収支と貿易外収支との黒と赤との関係がやや補完をしてきておったのに、その矛盾というものは、行き詰まりというものはむしろ拡大しつつある。特に昨年以来の――これは堀江先生も他の論文でもお書きになっておられるように、昨年度は、国際貿易は純粋に見れば黒は一億ドルです。したがって、一昨年度に比べますと、六分の一か七分の一以下に急激に激減をしておる。それじゃこれが回復する見込みがあるかといえばない。ニクソン政権の内外政策を見れば、もっと拡大する危険すらあって、まあないというふうに考えられるわけです。だから、それを少しく追及してみますと、つまり、アメリカというのは、IMFを通じまして世界資本主義経済を管理、コントロールしておるその立場、その通貨の性格が二面性があるわけですけれども、それからいきますと、先ほど申しましたような原因によるアメリカの内外政策の是正そのものが、国際通貨の流動性の行き詰まりを打開するための前提条件ではなかろうか。その問題にはその国の国際収支の回復、バランスが必要であるというふうにいわれておりますけれども、それを通じていまのアメリカの矛盾というものをチェックする力は、とうていこの条約の中からは見出すことはできない、こういう認識についてもし間違いがありましたらお教えを仰ぎたいと思うのです。いかがでございましょうか。
○堀江参考人 簡単にお答え申し上げます。 現在の国際通貨不安、それがドルの矛盾ないしアメリカの内外政策の矛盾から出てきたということにおいては、私も同感であります。しかし、同時に、過去においてドルの果たした役割りも大きかった。それは先ほど申し上げたとおりであります。今後の構想につきましては、私が最初に申し上げましたとおり、ドルが、すなわちアメリカの国際収支が改善することを前提として、その改善を見きわめた上で今度はSDRの発動をしようということに規定上相なっておるのでありまして、そのためにこそ発動を八五%マジョリティーに持っていってある。御案内のとおり、EECが一六・六%あるということで、EECに六カ国の統一意見ができまするならは、それに対する制約もできるようなことに相なっておるわけであります。 なお、もう一つお答えいたしますと、アメリカ自身の過去における分析なり説明なりは、穗積先生と私大差はない見通しでありまするが、しかし、アメリカの経済力、いわば通貨の裏づけをなす経済力という点については、まだまだ何と申しましても強力であるわけであります。私もさる論文に書きましたとおり、昨年度のアメリカの国際収支ははなはだ悪かった。実質は、直接特需を除けば九千万ドル少々の黒字でしかなかった。それに対して先ほどお話もありましたとおり、いろいろと手練手管を加えたような人為的な策もあって、その上でありますけれども、たとえばアメリカの貿易収支だけを取り上げてみまして、一時七十億ドルから、少なくなっても三、四十億ドルの黒字であった貿易収支が、そんなに十億ドル以下ないし一億ドル前後に落ちたという背景には原因があるわけでありまして、ベトナムの戦争とか特に国内の過熱が原因でありまするけれども、輸出の増大の程度が非常に低くて、輸入が非常に大きかったということがそれを証明しておりまするように、輸出が問題であるわけであります。しかし、このことは、別の角度から見ますと、アメリカの貿易収支のパターンがすでに変わりつつあるのであって、アメリカがいつまでも数十億ドルの貿易黒字を計上するのではなくて、貿易収支ではだんだんと黒字が減るか、ときとして赤にもなりかねないという情勢、それはいろいろ原因がありますけれども、最大の一つとしましては、アメリカ資本の直接投資が海外に出ていって、アメリカでつくっておったものをその現地でつくる、したがって、そこへはアメリカから輸出する必要がなくなって、かえってその国でかつてのアメリカ製品が生産されるということになり、その国の輸出にプラスするわけであります。したがいまして、アメリカの貿易収支は、だんだん貿易収支の黒が減り、資本収支の黒がふえてくる傾向に変わりつつあるように私は見ておるのであります。ただ、御案内のとおり、アメリカは自由経済政策をとっておりまするし、特に資本に対しては政府当局も弱い国でありまするので、その投下された海外投資に対する規制と申しますか、交通整理ができておらない。ヨーロッパでばく大な利益をあげたアメリカ企業の利益がアメリカに返ってきていないというようなところに問題があるのでありまして、一例としてこれは申し上げましたが、アメリカの経済力という点からいいますと、国際収支主ないしは金銭債務上のプラス、マイナス、そういったものも加えて、少なくとも現在そんなにいまだ破綻を来たす程度ではない。しからば、現在の段階において国際流動性を増強するために、その第一義となる金を中心にして、ドルと、新たに国際管理で創出するSDR、この三つをうまくハーモナイズすることによって、今後は少なくとも流動性に関しては一応の安定なり進歩があると私は見るのであります。 もう一つつけ加えますと、国際通貨不安、この問題については、おのずからまた別途の性質の問題でもあるし、国際流動性問題と多少の関連はありますが、別の角度で見なければならないと思うのであります。その例をごく簡単に申しますと、昨年十一月の西ドイツのマルクとフランスのフラン、この両方の関係がそれを物語っておるのであります。その際、ドル自体はさして影響をされなかっただけでなしに、ヨーロッパのかって強かった、また現在も相当強いドイツとフランス、両国の通貨を中心にして、経済力の格差が為替相場に出てきたということでありまして、流動性そのものを本体としてこしらえていくSDRは、間接的なプラスこそあれ、直接に通貨不安には必ずしも関係がないというのが私の見解であります。
○穗積委員 ここで問題になりますのは、国際的な協力並びに国際間の格差といいますか、へんぱの調整といいますか――ハーモニーといったほうが正確かもしれません。そういう点から見ますと、それは一つの、今度のSDEをジャスティファイするための観念的なことばにすぎないのであって、これをきっかけに国際間における不調和または偏在性を是正する何の手がかりもここでは見つけられない。先ほどおっしゃったように、なるほど拒否権がございます。賛成八五%というマジョリティーを高くしておる点もありますけれども、一方においてはこのSDR引き出しの配分といいますか、割当を見ますと、古い、根拠のないIMFの出資額によってプロポーショナルに出てくる。そうなると、日本の立場から見れば、全く現状を無視した不均衡、不公平がありますし、さらに後進国に対しては一そうであろうと思うのであります。ですから、実は国際的な協力または国際的なハーモニーということばが、美化されるために観念的に使われておりますけれども、現実の中においても、この制度の中においても、何らそのきざしは見受けることができない。そういうことでありまするならば、過去の誤り、過去の不公平は、歯どめがないのでありますから、もっと拡大する。その過去の誤りと、これからも続くであろう誤りをしりぬぐいするための信用創設ではないか、こういうふうに思われるわけです。その点は先ほどお話がありませんでしたが、私ども第三通貨の創設なんという甘いイメージは持てません。それはなぜかといえば、先ほど言ったように、金にリンクして制限されておるからであるし、第三のハーモニーを中心にした管理通貨であるというならば、基本的な基礎条件を全部ここへ提出しなければ、国際的なハーモニーを取り戻すための新たなる通貨の創設とは言えない。むしろ矛盾の拡大であり、過去の誤りと矛盾のしりぬぐいのびほう策にすぎないではないか、こういうふうに私どもは思われてならないのです。これはイデオロギー上そういうふうにかってに思うのではない、現実を分析してみればそうなるのではないか。このことに対しての先輩のお教しえをひとつ仰いでおきたいと思います。
○北澤委員長 穗積委員に申し上げますが、大体時間も来ておりますから、いまの質問で終わっていただけますか。
○穗積委員 不十分ですが、あと政府に質問しますから……。
○堀江参考人 穗積先生にお答えいたします。 IMF割り当て額につきましては、IMF創立後すでに二十数年たっておりまするので、その当時のデータをもとにした――多少途中でニューデリー総会あたりで修正がありましたけれども、ほとんどもとと変わらない。現在の相変わらぬ出資額については、はなはだ矛盾があり、経済力の発展した国あるいは人口の増加した国、そこらの新しい要素等を取り入れて、いずれできるだけ早くIMF出資額の訂正は行なうべきだと思いますし、日本国としても当然その主張はなすべきものだと思います。 それから国際流動性ないしこれからの国際通貨問題に対する態度、対策としましては、やはり第一に問題となるのは、各国のそれ自身の国際収支節度が第一だと思います。特にアメリカのような世界的な役割りを持った国の国際収支節度が第一であって、これが過去においてはなはだしりが抜けておったということは、事実認識において私も何ら異議がない、むしろ賛成なところであります。いずれにしても、それぞれの国がその国の国際収支を守っていく、節度を守っていくということ。第二に、それをもとにして各国が国際間協力を強化し、提携していくということであります。幸いに戦後二十四、五年世界経済が限りなくここまで発展してきたゆえんは、やはりこのIMF、ガットを中、心にした国際経済の協力、国際金融の協力があったからここまできたのでありますけれども、率直に申しますれば、どんな秩序も二十四、五年もたちますとやはり限界が来たと見るべきでありまして、この点についても、協力に多少支障が出てきた。ただし、私は国際協力の将来に不信を抱くものではないのでありまして、協力のしかたとか国際協力の次元が少々変わってきた、いまその次の高度の国際協力のしかたを生み出すための過程である、私はそういうふうに考えるのでありまして、そのためのワンステップとして、流動性解決のためにSDRもけっこうじゃないかというのが私の考え方であるわけであります。 御指摘の、SDR制度はアメリカのしりぬぐいになるではないかといったことでありますが、一部はそういうことが想像できないわけでもありませんけれども、これはやはり世界全体を舞台とし、世界全体のための新制度でありまして、各国がそれぞれ利用、活用できるわけであります。そのSDRなるものは、お話しのとおり、第三通貨といったような通貨的性格はほんの少々しか持っていない、むしろ通貨的性格と人為的な管理的な信用手段、この両性格を備え持っておる。しかし、アメリカの連銀総裁ウィリアム・マーチンも言いましたように、制度というものはやはり育てていくべきもの、それはちょうど木を植えて育てると同じようで、木はつくり出すものでなくて、育てていくものだということでよく例にとられますが、SDRがシマウマの黒か、あるいはシマウマの白かということと同じでありまするが、だんだんと通貨的性格もそれに付与していくためには、やはりささえになるものは国際経済協力、国際金融協力であると思うのであります。 必ずしも質問にお答えしませんでしたけれども……。
○穗積委員 実は両参考人に、貴重な機会ですから、まだ基本的な問題についてお二人にお教えを仰ぎたいと思っていたのですけれども、先ほど申しましたような状態で、ほんの入り口のところだけで時間が来てしまいまして、たいへん残念ですが、厚く感謝を申し上げます。
○北澤委員長 広沢賢一君。
○広沢(賢)委員 簡単にお聞きします。 一つは、このSDRの割り当て額について、いろいろ世間で俗にいわれておりますが、大蔵委員会でも質問したのですが、五年間に百億ドル、一年間に二十億ドルの予想というのが一番いろいろいわれています。これをいろいろ計算しますと、アメリカは四億九千万ドルで、六六年の国際収支の赤字が十四億ドル、イギリスは二億二千万ドル、現在BISから四十億ドルの借金をしようとしているんですね。それから日本においては、これは先ほど言われましたのが大体二十億ドルの計算だと思いますが、一年二十億ドル、そうすると、日本は七千万ドル、百二十億ドルもしくはそれ以上の貿易規模でずっと進んでいくという日本で、これだけの額です。そうすると、これがたとえうまく発動しても、この数字の上からいうと、ほとんど取るに足らない、もしくは気安めじゃないか。端緒だとさっき言われましたように、ほんのちょっぴり端緒じゃないかということが一つ。そういうことの懸念がないかどうか。 それから、このSDRは、先ほどいろいろ堀江先生が言われましたが、たとえば国際収支の安定が第一だ、これはさっきしつこく言われました。もしこれが発動するということになると、むしろアメリカは安心して、国際収支がしり抜けになるおそれがある。先ほど言われました国際競争力の低下の一番の原因は、やはり軍事費、軍備に技術や予算を集中した結果、アメリカは国際収支におくれをとった、こういう点があるのです。いまABMの問題が出ています。そういう点から見ますと、やはり世界企業の資本収支が黒になっていく、世界企業が進んでいくという形になっても、こういう問題のしり抜けがあると、たとえばドゴールがそれを非常にきびしく批判をしたような立場で、今度の改定でEECはそういうあれを持っていますが、アメリカを相当強く責めあげました。たな上げにするならこういうことをやらなければいかぬというので責めあげましたのは、先ほど新田参考人のお話でよくわかりました。そうすると、やはりしり抜けになるおそれがあるということに対して、SDRだけで――ほんの端緒のSDRでもってやってみなければわからぬと堀江先生がおっしゃいましたが、こういう不確かなものでかえってアメリカの国際収支のしり抜けを安心さしてしまうというようなことがあったら、かえってマイナスではなかろうかということです。これが第二点。 それからもう一つは、これは大蔵委員会でもずいぶん議論しましたが、先生も言われていましたが、第三の通貨なんというのは、ほんの少々しかその要素を持っていないというのですが、ある大臣は、第三の通貨なんというとぼけたことを言いましたが、国際管理通貨などというものは、世界全部の政府、それから世界の日銀、こういうものがなければ、金と関係のない管理通貨などというものは世界的に通用するはずがない。あたりまえの話ですが、各国とも資本競争を非常に激烈にやっておる。そうすると、金を離れたときに国際通貨は成立しない、これはどうかという問題。それから、たとえば金を離れた国際通貨などをつくってみても、一国でも先進国が管理通貨になったら、だんだんインフレ的になる、そしてそれが世界的になる。これは世界的に非常に大きな理想の社会ではなくて、資本主義は競争が原理ですから、だからそういう場合には、世界的なインフレで混乱を起こすということですね。したがって、これはシュバイツァー常任理事も言っておる。それからIMFの中の議論でも、この条文でもいっておるように、金の重視というものは大きく貫いておると思うのです。それについて堀江先生のお考えはどうか。 それからもう一つは、新田先生にお聞きいたします。 ドル依存から脱却して自立すべきである、私はそのとおりであると思います。大蔵大臣も、大蔵委員会で、日本は金保有をふやさなければいかぬという決意のほどをあらわしました。わきで聞いていた、近代経済学に染まっていた人が首を振っておりましたけれども、しかし、これは大蔵大臣のほうが正しいので、金の保有をふやさなければならぬ。そうすると、新田先生は西ドイツの交換文書の例をあげて、金の保有をふやすということはなかなかたいへんだ、こういう問題が出ております。日本でどういう形でもって――三億三千万ドルしかない金保有ですから、これは金価格改定などがあったらたいへんなことになるということはだれでも知っておりますから、それについての具体的な方法があったらお聞かせいただきたいと思います。 もう一つは、自立すべきであるというのは、たとえば日本とソビエト、中国、それからアラブの石油でもいいですが、その他の発展途上国に対して、日本が重化学工業品をどんどん輸出してブラント輸出をする、そうして輸出入銀行のあれをどんどん適用してもいいですが、その見返りとして、十年間に分割で石油、原料、食糧、その他日本が必要とするものを輸入する、その間の為替レートについては、円と元、円とルーブルの問題といい、いろいろなスライド制の問題もありますがこういう問題については学者の方はいかにお考えになっておるかいこの諸点についてお聞きしたいと思います。
○堀江参考人 お答え申し上げます。 第一の、SDRの割り当て額がIMFそのものの出資額に応じておるということは、穗積先生の御質問と一致しておりますが、先ほどお答えしたとおりでございまして、これは二十数年たってはなはだ無理がある、日本もこの改定には大いに発言すべき問題児と思っております。日本への割り当て、先生の言われた七千万といったようなことも、その結果少なくなっておるわけでありまして、その点はおっしゃるとおりであります。 それから、SDRが発動することが、結局においてアメリカを国際収支節度をなからしめて、アメリカのマイナスになるのではないかという先生の御意見であります。過去においてアメリカが国際収支上大きな間違いをしたということは、私が先ほど申したとおりでありますが、間違いをしたアメリカが経済力を持っておったから、まだ過去においてはカバーされ得たのだ、今後、将来にわたってさらにマイナスを続けていくと、これはとんだことになるという意味において、先生と同感でありまするが、幸いに、端緒であるSDR制度の発足にあたりましても、法規上アメリカの国際収支が改善することを前提にいたしておりまするし、そのためにEECが一六・六%の投票権も持ち、発動を規制するということに相なっておりますし、日本なども、アメリカの国際収支がバランスすることを何も遠慮する必要はないのであって、日本もまた同じ要請をなすべきだと私は考えております。 それから第三に、理想的にいえば、世界の日本銀行とおっしゃいましたが、世界の中央銀行のようなものができないと、そういった国際的管理通貨はできなかろうという点も、ある程度ほんとうだと思います。しかし、その問題は、世界中央銀行というものはやはり各国の主権と接触するわけでございますので、まだまだうんと時間のかかる問題であって、やはり管理通貨が国内において支障なく行なわれるように、国際社会でそういう機運が醸成することを待たなければならない、また、先生の言われたとおり、それまでの期間は、相当長い間依然として金の貨幣的役割りが大きいというのが私の持論であるわけであります。先般、九月、十月にやりました国際通貨基金総会でも、金の妥当な役割りを認めるといったことで、ほとんどの代表の演説が一致しておったということであるわけであります。しかし、発展する世界経済において、一の金を一として考えるだけでなしに、金をもとにして金の作用を反射させながら、金のより広い活用をはかるといった方法もあり得るわけであります。御案内のとおり、考え方としましては、二つの極端な意見がある。一つは金本位制そのものを実行すること、復元すること。もう一つは金の非貨幣化を実行すること。しかし、現在の国際金融社会において行ない得ることは、金の妥当な貨幣的役割りを認めながら、二つの極端な考え方の間で、国際協力によって、また各国の国際収支節度によって、できるだけ最善を強調していくということ以外にないと私は思うのであります。 最後に御質問の、SDRを実行したら世界的なインフレになりはしないかという御心配、ごもっともとも思いますが、しかし、そのために、SDR発動に際しましても、また、SDRが実行になった後の管理当局者も、すでに二十数年の実績をあげておるIMFという国際機関、それが国際管理、共同管理するわけでありまして、妥当な線でSDRを生み出していく。幾らSDRを発行するかといった問題も、これからの問題でありまして、必ずしも二十億ドルときまったわけではない。むしろこの問題がSDR発動の最大焦点だと思うのであって、それはあくまで世界経済の必要とする最小限度ということでいいだろうと思うのであります。 もう一つ最後に、金の価格改定があったら日本はどうだ、得をしないじゃないかといったことでありますが、この問題については、直接、間接二つの考え方があると思います。一つは、直接の考え方で、わずか三億少々しか持たない、こんな仮定論で、金の価格引き上げがあったら、もうかるものが少なくしかもうからないといったことはあるわけでありますが、より重要な日本経済への問題は、世界経済や世界貿易が支障なく順調に発展していくことが大事であるかと思うのであります。日本は、あくまで貿易立国と申しますか、国際収支依存の国でありますから、世界貿易や世界経済が順調に発展することが直接、間接に大きくプラスになるのでありまして、過去において日本の金のため方は少なかったが、同時に、経済は発展したといった役割わがありますと同様に、将来にわたりましても一番大事なことは、世界経済が混乱しないで順調に発展すること、それが間接に日本に利益することだと思うのであります。ただし、将来の日本の成長については、やはり多少成長の速度はおそめても、金を少々さらにためていくという配慮はあってしかるべきものと考えております。
○新田参考人 御指摘のとおり、日本経済は、貿易の拡大のスケールに比して、金・外貨準備の増加というのはたいへん低い。一九六〇年から六六年の間の貿易の増加に対する準備の増加を比率で見ますと、日本はわずか一一・三%です。つまり、貿易の増加額が五十九億二千五百万ドルであったのに対して、準備の増加額が六億七千二百万。最近はきわめて好調なようでありますが、長期的に見ますと、こういうような状態であります。これはフランスが同様の計算をやりますと、七四%というたいへん高い比率を示しているのと対照的であります。フランスは、これはまた問題があるわけですが、特に積極的な換金政策を進めていくという政治的な配慮もあったために、こういう高い比率を出しておるわけです。しかし、いまあげましたフランスと日本の間に、スイス、ポルトガル、オーストリア、スペイン、イタリア、西ドイツ、南アフリカ、ベルギー等々の、要するに世界のほとんどの国が入っておりまして、日本の下にあるのはイギリスとアメリカだけであります。アメリカの場合は、これは唯一のマイナスの国になっております。ですから、これは世界的レベルから見まして、準備の持ち方としてはきわめて少ないほうどころではなくて、最低の部類に属すると見てよろしいかと思います。ただし、ここで申し上げておきたいことは、一つには、政府とアメリカとの間にいかなる合意があったかよくわかりませんが、政治的な観点から金の購買を差し控えるというようなことがあったかもしれませんが、事実の問題としては、日本経済の体質からいって、金準備をふやす余裕がなかったと言うほうが正確ではないかと思うのです。このことは、もう単なる金の購買政策というような形での問題ではなくて、たとえば日本の対米市場依存率であるとか、そういうほうで、市場の構造問題に一つは関係しますし、一つは、日本経済のいわば近代化の度合い等々にも関係するわけですから、今後の問題として、いま申し上げました金準備の問題を考える場合に、日本経済の体質とその世界経済における地位、とりわけアメリカとの関係、これが最大に問題になるのではないかと思います。ですから、金を無理してふやしたらアメリカ依存から脱却できるという問題ではなくて、日本経済の構造そのものを改善し、あるいは貿易政策等の基本的な変更、こういった基礎からやり直していきませんと、実はそう簡単に金をふやすといってもなかなかむずかしいのではないかと思います。 それから、御指摘になりましたように、ブラントの輸出国たるべきだということは、戦前と違いまして、重化学工業化の進展というのが、日本の場合たいへん高くなってきておりまして、これはほぼ西ヨーロッパ並みになっておると考えて差しつかえないのじゃないかと思います。それから、貿易品に占める工業製品の比率ももう七〇%以上をこえておるわけでありますから、その貿易の対象としまして、たとえば後進国よりは、むしろ先進国依存の体質になっておるのではないかということが言えるのじゃないかと思います。その点からいいまして、特に御指摘がありましたように、社会主義圏との貿易、そういう問題は、今後の日本経済の自立化にとって大きな有望な市場になるのではないかという気がいたします。また、後進国の開発問題につきましても、日本経済のいわば近代化、重化学工業化という問題を踏まえて、きわめて長期的なブランのもとに取りかからないと、即効薬としての地位というものは戦前に比べて著しく低下しているわけでありますから、非常に長期的な、計画的な取り組みをやらなくてはならないのじゃないかと思います。 それから最後に、社会主義圏との貿易の場合に、たとえば円とルーブルとの問題が出てまいりましたが、これはソビエトあるいは社会主義国といいましても、現在の世界経済では、やはり金を基準とするほか貿易のありようはないわけであります。社会主義圏の中で、たとえばルーブルと東ドイツのマルクとの関係であるとかいう比率がきわめて理論的に整然といっておるかというと、必ずしもまだそうは言えない面がある。やはり社会主義圏といえども、金といういわば世界貨幣を媒介とするほかは、これは国際市場にリンクすることができないわけでありますから、日本の場合も、社会主義圏と貿易するから、たとえば金は必要ないというふうな形には一挙にいかないわけであります。今後の見通しとして、ニクソン政権が出てまいりまして、いろいろたとえば変動為替レートの問題等が話題になっておりますけれども、どういう方向をとるかはちょっとなかなか予断しがたいわけでありますが、かりに変動為替レートのような形での解決がはかられる事態になりましても、そのとき、日本の持っておる経済的な実力が最後はものをいうわけでありますから、最初に私が参考人として申し上げましたように、国際通貨の一番基礎になっている国際競争力の問題ですね、いずれ最後はこの点に帰着していくほかはないのではないかというふうに考えます。 簡単でありますが、以上お答え申し上げます。
○広沢(賢)委員 時間がないですから、最後に一つだけ。 堀江先生のお話を聞いていると、今度のSDR創設に伴うEEC国とアメリカとのいろいろなやりとりがありましたが、その中で、堀江先生のお考えは、アメリカの国際収支のしり抜けを防ぐために、EEC国がきちっといろいろな条件を一ぱいつけたということを先ほどお二人からいろいろと承ったわけですが、賛成、反対を問わず、そういう条件をぴしっとつけなきゃならぬ、賛成するにしてもこれはアメリカに対してのきびしい条件をつけなければいけない、付帯条件なり何なり日本の国の意思を示さなければいかぬ、場合によっては、EEC国が賛成する前に日本がとことこと賛成するのではなくて、もったいぶってアメリカにいろいろな条件をつけた上でなければ安心できない、こういうふうに解釈してよろしゅうございますか。
○堀江参考人 SDRが現実に発動する前の折衝におきまして、事実問題として、一六・六%を持っているEECと、二二%を持っているアメリカ、ことに肝心のドル不安を持つアメリカとが具体的に折衝を始めるだろうと想像されますが、その際に、法文上にもありまするように、アメリカの国際収支がこれ以上はなはだしく悪化しないといった見きわめがつくことが前提になり、しかも今後一年に幾ら発行するか、五年でどの程度といったようなことも、そこらで折衝の結果合意に達して、初めてSDRは動き出すもの、そういうふうに思うのであります。日本でも、この協定改正を発効した上で発動論議に遠慮なく発言してよろしい問題だと考えます。
○広沢(賢)委員 以上で終わります。
○北澤委員長 阿部助哉君。
○阿部(助)委員 まず第一に、新田先生に教えていただきたいのでありますが、この問題で、最終的には一応認めたとしても、フランスからは相当強いSDR創設についてのいろいろな意見、ある意味では抵抗と言って差しつかえないんじゃないかと思われる意見が出たようでありますが、なぜフランスはそのように抵抗したのかということを少しくお教えいただきたいと思います。
○新田参考人 この問題は、実はたいへん根が深いわけです。一つは、フランスは、御承知のとおり、戦前三十年間にわたって停滞を続けておりまして、終戦後、つまり戦争直後に、いわば政府の指導のもとに近代化計画を進めてまいりまして、現在第五次計画が進行中なのでありますが、徹底した重化学工業化政策というものをとってきたわけであります。その際、フランスの復興というものをささえたのは、端的に申し上げますと、EECという存在であったと言ってよろしいかと思います。この場合、EECを基礎にしてフランスが発展するということは、EECはそれなりに完全に利害が一致しているわけですね。たとえば、ことごとくこれ戦争によって荒廃した国である。生産力は根本から破壊されてしまっている。ですから、まず欧州石炭鉄鋼共同体の利用のような形から出発しで、最後は原子力共同体、ユーラトムのような形までの共同作業というのはたいへん円滑にいったわけであります。ところが、御承知だろうと思いますが、イギリスその他の自由貿易連合に属する国、とりわけイギリスが、このままでは経済がもたないので、何とか入りたい。それに対して、たとえばイギリスがEECに入ることによって一番被害をこうむるのはフランスであると見てよろしい。それはいろいろ理由がございます。特に農業問題なんかがその最大の問題だろうと思います。ところが、このイギリスを警戒するということは、すなわち、イギリスとぴったりその背後にあるアメリカを警戒するので、フランス人のことばで言うと、アングロサクソン系はすべて締め出せということになるわけでありますが、こういう形で対米的な警戒心がたいへん強いということが一応言えるのではないかと思います。だけれども、この点を、フランスがたとえばアメリカ資本の導入をきらっているというような形で考えたらたいへんな誤りでありまして、フランスは現在でも積極的にアメリカ資本の導入は奨励いたします。ただし、これは一切の政治的なひもつきがないという形で、アメリカの資本をフランスが利用するという形で利用しておりますから、反米的と申しましても、たとえばアメリカ資本はすべて締め出すという形で行なっているわけじゃないわけですね。いずれにしましても、EECの中で経済的に発展を遂げまして自立してきますから、その経済的発展にのっとって、ドゴールが世界的にいろいろな波乱を招くような発言をしているという現状であります。ですから、これは資本主義的な一つの法則として言っていいと思うのですが、フランスが一応資本主義として復興して独自の立場を持ち、それから政治的にも軍事的にも独自の主張をなし得るようになりますと、戦後の、何でもアメリカにたよってアメリカの言うとおりになっていたというころとは、たいへん違ったものになってこざるを得ないわけですね。一般的に西ドイツもそうですし、資本主義の発展にとってこれが必要だとある限りは、アメリカの言うことをだんだん聞かなくなってくる。政治的にも軍事的にも、そういう側面が次第に増大しているということをフランスが最も象徴的に示しているのではないかと思うのです。それでよろしゅうございましょうか。
○阿部(助)委員 私も必ずしも国際協力というものを否定するものではありませんけれども、堀江先生の先ほどのお話で、アメリカにもいろいろな間違いといいますか、いろいろなことがあって、いまドルが不振になっておる、こういうお話でありますが、もう一つ、確かにいろいろな貢献もあったろうと思いますけれども、ある意味で、また別の見方をしますれば、IMFの第四条でドルと金を同列に置くなんということ自体、非常にアメリカの不遜な態度ではないだろうかという感じがするわけです。 それで、戦後二十年来の歴史を見てまいりますと、やはり第二次大戦でどこの国でも物資が不足であった、アメリカから資本財を入れなければいかぬ、しかし払うものがない、結局持っておる金をある意味で不等価交換でみんな吸い上げられた、そうしてアメリカのドル支配というと少しきついかもわかりませんが、いわゆるアメリカのドル支配という形で今日まで行なわれてきた。ところが、それがいまのような状態で、いろいろな国もそれぞれ復興はしてきた。また、この状態を見ますと、この辺でやはりアメリカ自体にもう少し規制してもらわなければいかぬという点では、先生のお話もあったわけですが、その見通しというものが一体あるのだろうか。何かアメリカのいまの資本輸出であるとか、対外援助であるとか、軍事政策というものが、これはもう、このどれをやめるということのできないアメリカ資本主義の本質なのじゃないだろうか。だから、これから気をつけますということで一体なおるのだろうか。これが本質だとすれば、ドルのいまのような形から規制しろと外国で言ってみても、できないのじゃないか。そうすると、ドルの国際収支が均衡したらSDRが発動するといっても、実際問題としてそれなしにこれは発足せざるを得ないんじゃないか。そうすると、前提条件が、先ほど新田先生のお話にありましたように、くずれて、安定したら発足するというのから、安定するために発足するというところに変わりはせぬだろうかという感じがするのですが、いかがでしょうか。
○堀江参考人 一九四〇年代に発足しましたIMFの当初の規定に、金と同列にドルを置いた。その金に裏づけられたドルに対して平価をきめたといったことは、二十数年たってあとから振り返れば、先生のような観測も可能であろうと私も思うのであります。しかし、同時に、二十数年、アメリカがともかくも世界経済の円滑な運営に果たしてきた役割りも、彼らの今日のふしだらを露呈するまで役目を果たしたことも、認めなければならないと思うのでございます。 最後に、今後のアメリカの国際収支が均衡するか、あるいはまた均衡に近づくかの問題でございます。私はアメリカ政府の顧問でも、また医者でもありませんので、的確な処方せんは書きがたいわけでありますが、現実にアメリカの国際収支が収支均衡して、一文も赤字を出さぬといったような数字的正確さをもって均衡するというのは、はなはだむずかしかろう。事実またそれが即刻SDRの発動のときにそうなりますと、曲がりなりにも流動性を供給しておるアメリカの役割りも、それで減ずるわけでありまして、SDRのためにも多少困るかもしれません。結局、アメリカの国際収支が、過去十年ないし十五年、長くいえば二十年にわたって慢性的大赤字を続けた状態が改善して、改善の徴候が見え、何らか改善の方向に向いてくるといった確証がなければ、SDRは発動すべきではないということであろうかと思うのであります。
○阿部(助)委員 予鈴が鳴ったということで、本会議の準備もせなければいかぬので、たいへん残念でありますが、教えていただく時間がなくなりましたが、最後に一つ、新田先生に、これはたいへん将来のことでありますけれども、先日私たち勉強会を開きましたときに、もしSDRが発動したらどこの国が一番最初にこれを活用するだろうという質問をぶしつけにしたわけであります。その方は、おそらくアメリカであろう、だいぶお考えになったようで、こう言っていいのか悪いのか、迷ったようでありますが、アメリカであろうと、こういう話をされたわけですが、私もそう思っておる。まあこれは予測で、たいへん恐縮なんでありますが、時間が来たので、これで終わりますが、先生はどうお考えになりますか。
○新田参考人 私もそう思います。
○阿部(助)委員 では以上で終わります。
○北澤委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。 参考人各位には、長時間にわたり貴重な御意見を御開陳いただきまして、まことにありがとうございました。 本日はこの程度にとどめ、次回は、明二十六日、午前十時から理事会、十時十分から委員会を開会することとし、これにて散会いたします。 午後一時五十四分散会