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61回国会衆議院1969/03/17

外務委員会 第6号

発言数
103
登壇者
8
会派数
3
開催日
1969/03/17

会議録

北澤直吉自由民主党

○北澤委員長 これより会議を開きます。  日本国とユーゴースラヴィア社会主義連邦共和国との間の文化協定の締結について承認を求めるの件を議題とし、審査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。戸叶里子君。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 ただいま議題になりました文化協定について、二、三質問をしたいと思います。  今月の初めに外務審議官がユーゴへ行って、両国の相互の協力と今後の両国間の接触について話し合いをして、国民議会の外務委員長、副総理と会ったということが新聞に出ておりましたが、この協定についての話し合いはなすったかなさらないか、まずお伺いしたいと思います。

愛知揆一自由民主党外務大臣

○愛知国務大臣 御承知のように、ユーゴ国からは、一九六七年の四月に、パビチェヴィッチという外務第一次官が来られまして、この人が来日いたしましたときに、ユーゴは貿易の関係あるいは文化の関係その他でも日本との間の国交の親善関係を一そう増強したいという御希望で、もちろん、われわれとしてもこれに異議があるはずもございません。そして、私どもにも向こうから機会があったら最近の機会に来ないかというお招きもあったようなわけなんですが、なかなかそうもまいりませんでしたが、今回、そういう前々からの向こうの希望もございましたので、近藤審議官を出張させたわけでございます。その際には、特にこの文化協定についての話し合いというものはございませんでしたが、一般的な意見交換をして帰ってまいりました。  それからなお、これについては、御案内のように、まだきのう帰ったばかりで会っておりませんが、東欧諸国に、植村甲午郎氏を団長とする東欧に対する経済使節団が三週間ほど前に出発し、昨日一行は日本に帰ったわけでありますが、私も一両日中にその話を聞こうと思っておりますが、ユーゴとの間におきましても主として経済上の話はいろいろと出ておるようでございます。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 外務審議官が行かれましても、この文化協定の関係のことはお話しをしないで、一般的な問題を話した。それから経済団体といいますか、そういう方々も行かれて、そして経済問題、貿易問題については話しをしてこられた、こういうことでございますね。その経済団体として行かれたというのは、経団連の会長を団長とする政府の代表団が行かれた、そのことをおっしゃっていらっしゃるのでしょうか。  そして、ついでに、貿易経済の問題についておそらくお話し合いになったと思いますけれども、その内容等がまだ全然おわかりになっていませんか。それとも何か具体的に、貿易はこういうふうに、経済ではこういうふうにというようなことをおきめになってきたかどうか、この点もお伺いいたします。

愛知揆一自由民主党外務大臣

○愛知国務大臣 近藤審議官が参りましたときに、特に文化協定の締結についての話というために参ったわけではございません。そういう意味で申し上げました。一般的な意見交換であり、同時に、東欧諸国に対して、いろいろ経済関係の先方の希望などもございますようですから、それを十分聞いてくるということが主たる目的でございました。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 いま経済関係のこと、貿易関係のことをちょっとお聞きしたのですけれども、この問題は具体的にお話し合いをなすったのかなさらなかったのかということについて、御答弁をいただいておりませんけれども……。

愛知揆一自由民主党外務大臣

○愛知国務大臣 大体ユーゴとの間の問題については、一般的に申しまして、向こうからは、日本から買いたいもの、あるいは技術協力その他で先方からこちらの協力を求めるもののほうが原則的に多い。ところが、こちらからは、向こうから適当な、貿易で申せば買うものがなかなか折り合いがつかないというようなことを、双方のこれからの交流について意見の交換をしようというのが主たる目的でございます。  それから、先ほど御答弁漏れいたしましたが、植村甲午郎氏は経団連の団長である植村さんでありますが、外務省として経済界の各権威者の方々に御参加をいただいて、そして経済使節団を編成いたしまして、東欧諸国の、ところによって違いはございましょうけれども、政府首脳をはじめ経済界その他の権威筋との間に意見交換、親善の実をあげるということを目的にしてまいったわけでございます。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 いまのお答えの中にもありましたように、ユーゴのほうからの経済協力を日本に求めてくることが多いということでございましたけれども、何かそれに対して日本の政府の人が、具体的に経済協力をこういうことでしょうというようなお考えはいまお持ちでしょうか。それともいま何もお持ちになっていらっしゃらないのでしょうか。

愛知揆一自由民主党外務大臣

○愛知国務大臣 要するに、一言で言えば、貿易関係についてはできるだけ均衡のとれた状態で拡大をしていこうということで、先方ももちろんそれを希望いたしましょうし、こちらもそれを希望するところでございますから、そういう趣旨で、双方の経済界の権威者が隔意なく意見を交換する。それから先方からも、ときどき偉い人といいますか、参りまして、日本の実情も、工場その他の見学もよくしておりますが、こちら側も、先方からの要請が非常に強いわけで、国内の実情をよく見てほしいということで、その要請にもこたえたわけで、帰ってから、先ほど申しましたように、植村さんたちにはまだ会っておりませんけれども、その間公電等によりますれば、相当の交換の実をあげておられるように聞いております。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 この協定を推進していくといいますか、この協定を具体的に何か進めていく意味においての予算的措置というものは考えておられますか。全然考えておられませんか。

兼松武外務省情報文化局文化事業部長

○兼松説明員 経常の予算のワク内で実施しております。毎年取れる予算、確保される予算で実施しております。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 それはどのくらいですか。

兼松武外務省情報文化局文化事業部長

○兼松説明員 ユーゴスラビアとの協定の実施のため特別な予算が要るということにはなっておりません。毎年、各国との文化交流というものは、経常予算のワク内で実施しているわけでございます。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 前年度よりふえておりますか、ふえておりませんか。といいますのは、今度ここで協定を結ぶからには、やはり何かいろいろ文化的な交流なり何なりすると思うのですけれども、それに予算が伴わないことでは、協定を結んでも何にもならないじゃないかというふうに考えるわけですが、この点はどうなっておるかをお尋ねいたします。

兼松武外務省情報文化局文化事業部長

○兼松説明員 ユーゴスラビアとの文化交流については、従来からかなり活発に行なわれておりまして、この協定を結ぶために特別の予算をつけなくとも、ワクがございまして、そのワクの中で、できる限りユーゴとの交流を盛んにするために振り向けていくということで処理できるというふうに考えております。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 その程度で十分できるかどうかということも、私どもちょっと疑問に思いますけれども、これはあとでまたずっと数字で一度出していただいて、参考資料にしたいと思いますから、出していただきたいと思います。  第五条に、「各国政府は、自国における科学、技術又は産業に関する機関において」云々とあると思うのですけれども、この協定はアラブ連合との協定を参考にしてつくられたということでございますが、アラブ連合の場合には技術または工業というふうに書いてあると思うのです。英文のほうを見ますと、両方ともインダストリアルとなっているわけですけれども、ここでは「産業」にして、アラブ連合のときには「工業」にした、その違いはどういうところにあるわけでしょうか。

兼松武外務省情報文化局文化事業部長

○兼松説明員 ユーゴスラビアの「産業」についての御質問でございますが、実際的な差異はないものと了解いたしております。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 私ども日本人が受ける感じとしては、「工業」という場合と「産業」とでは「産業」というと非常に広いように思うわけなんです。アラブ連合のときには「工業」という字で訳していて、今度こっちで「産業」と訳しているのは、何か違いがあるのかしらと思うのですが、それではアラブ連合のときにも「産業」と使っていいわけですか。「産業」でも「工業」でも日本語では変わりないと了解していいわけですか。

兼松武外務省情報文化局文化事業部長

○兼松説明員 「産業」のほうが意味は広いわけでございますが、趣旨は、アラブ連合の場合と実質的に違わないというふうに考えております。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 ちょっと了解できないですね。こうやって比べてみますと、アラブ連合のときも「産業」にしておいたらよかったんじゃないかと思いますけれども、これはいかがですか。感じとしては私はそう思うのです。幅が広いような気がするのです、「工業」という場合に限られるよりも。

兼松武外務省情報文化局文化事業部長

○兼松説明員 確かにお説のとおり多少、日本語と英語のことばの意味の差がそれほどなくても、ことばに表現した場合、そこに若干差があらわれる、御趣旨のとおりでございます。ただそういう点もございますけれども、この場合には、工業、産業二つの用語の訳があり得るわけでございます。訳と申しますか、これは正文が英語になっておりますので、意味としてはその正文の意味を伝えるということで、「産業」というふうにしてございます。多少広くなっておるかと思いますが、実質的にアラブ連合の場合より意味が広くなっているということではございませんので、この場合には、そういう一般的な用語を使用したということでございます。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 やはりこれからの問題としては、工業というより、産業という字を日本語の場合使ったほうがいいような気がしますけれども、この考え方間違っていないですか。今後の問題として伺っておきたいと思います。

兼松武外務省情報文化局文化事業部長

○兼松説明員 御指摘のとおり、今後の日本文の作成につきましては注意いたしたいと思います。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 ユーゴからは、文化協定の問題については、三十二年以来申し入れがあったということだそうでございますけれども、十年間も今日まで引き延ばしていた理由は何かあるのですか。

愛知揆一自由民主党外務大臣

○愛知国務大臣 過去の経緯は、私も実はよく存じませんけれども、両国間のいろいろの関係が最近特に緊密化してきたことと、それから特にその中で、まず文化協定を結びたいということで、文化協定についてはそうわがほうとしても異議はございませんので、締結をした、こういう経過のようでございます。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 大体そういうことはわかるのですけれども、ただ、十年間も引き延ばしてきていらっしゃった、そこに何か理由があったかどうかということを具体的にお伺いしたわけです。  それからもう一つ、ついでに伺いますけれども、有効期間三年、たいへん短い期間にしておりますけれども、大体五年くらいが適当じゃないかと思います。あるいは文化協定なんかは期限をずっと長くしたほうがいいのじゃないかと思いますが、特に三年というふうにした理由は何でしょうか。これを伺いたいと思います。

兼松武外務省情報文化局文化事業部長

○兼松説明員 先方とも協議いたしましたけれども、大体三年、五年、場合によっては十年という例もございますが、さしあたり、ユーゴとの協定の最終的な案文を固めます際に、アラブ連合との協定を主として参考にいたしまして、先方もアラブ連合との協定が三年になっておるということで、それでは自分のほうも三年でお互いに最終有効期間をきめようじゃないかということになった次第でございます。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 日本がいままでに文化協定を結んだ国、あるいは今後締結しょうと考えている国、そしてそういうふうな国の有効期間、こういうようなものをちょっと参考までに出していただきたいと思います。

兼松武外務省情報文化局文化事業部長

○兼松説明員 従来の例を申し上げますと、大部分が五年でございまして、ここのユーゴスラビアとアラブ連合が三年、それからインドが十年、こういうようになっております。プリントにした資料をさっそくお手元に差し上げたいと思います。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 いままで文化協定を結んだ国とか今後締結しょうとしている国、こういうものはあとで表にしてくださるのですか。いまおわかりですか。

兼松武外務省情報文化局文化事業部長

○兼松説明員 いま差し上げます。  最初に締結いたしたのがフランスでございます。その次にイタリア、これは一九五三年から始まりまして、六一年までの間に、フランス、イタリア、メキシコ、タイ、インド、ドイツ、アラブ連合、イラン、パキスタン、英国、ブラジルというふうになっております。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 この表を見ましても、大体有効期間が三年というのは短いほうですね。何かそこに、アラブ連合が三年にしたからユーゴを三年にしたというふうなことのほかに、何かあったのでしょうか。

兼松武外務省情報文化局文化事業部長

○兼松説明員 特別な理由はございません。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 私どもしろうと考えからしますと、文化協定なんかは長いほうがいいと思いますので、この辺をちょっと疑問に思ったのです。  そこで、もう一つ伺いたいのは、三条で、「自国の大学その他の教育研究機関における他方の国の文化に関する問題を取り扱う講義の創設及び拡充を奨励するものとする。」というふうにありますが、きょう文部省どなたか来ていらっしゃいますか。——何かこれは特別いま御予定がおありかどうか、そしてその講義の創設というものを計画していらっしゃるかどうかということを伺いたい。

兼松武外務省情報文化局文化事業部長

○兼松説明員 御存じのように、文化協定を締結いたしますということは、特に第三条に書いてございますようなお互いの努力を通じまして、さらに理解を深めていくということでございますので、各国と協定を結ぶ際にもこういうことを考えておりますが、実際に拡充、創設の問題につきましては、協定ができましてから考慮するというふうにお互いに了解しております。ただ、現在でもユーゴにおきましては、東洋研究あるいは東洋語学科等で、日本語をはじめ東洋の諸国に関する研究を行なっておる大学その他の研究機関がございますし、わが国におきましても、ロシア語を扱っておる学科がある大学その他の施設におきましては、あわせて、ユーゴにおける六つの国語、スロバキア語、クロアチア語その他の国語についても、一種のスラブ語系の研究ということで研究を行なっております。

北澤直吉自由民主党

○北澤委員長 曽祢益君。

曾禰益民主社会党

○曽祢委員 直接文化協定に関係は薄いかもしれませんが、外務大臣に伺いたいのですけれども、この間、ユーゴの共産党の大会が開かれまして、多分十六日付で終わったのではないかと思いますが、この大会はかなり重要な党の大会でありますけれども、政治的な意味合いもあるのではないかと思います。第一、参加者から見ると、東ヨーロッパの共産国からはルーマニアだけが来ている。初め東欧諸国はかなり参加のほうに傾いておったようでありますが、何ぶんにも親分のソ連のほうが不参加ということをきめたために、東ヨーロッパ各国の共産党が結局ボイコットせざるを得なくなったようであります。同時にまた、西欧並びにわが国のような諸国から、これははっきり言って、民主社会主義国といいますか、共産主義ではない政党にも招待状が出まして、わが国からも日本社会党も出たようですし、私のほうも参加代表としてではありませんけれども、この会合にゲストとしての代表を送りました。そんなわけで、ユーゴが従来とってきたいわゆる自主的な外交の道、これは必ずしもソ連のパターンに従わない独自の道を行く。かといって、それが全部西欧型の議会制民主主義ではないけれども、相当おもしろいといってば語弊があるかもしれないけれども、独自の道を探求している政党だと思います。そういう大会が開かれまして、一方、ソ連を中心とする世界共産党会議が開かれる。そして、このユーゴの共産党の大会においてば、むろん外交の独自性といいますか、非同盟政策はやっているわけですけれども、そのほかに、特にチェコスロバキアに対するソ連の軍事的干渉政策をはっきりと非難する、こういうような点が特色であったのではないかと思うのです。そういう問題について、おそらく外務省の出先のほうからもいろいろな御報告があったと思うのですけれども、これらの問題についてどういうふうな報告なのか。また、このユーゴ共産党の動き並びにユーゴの世界的な立場、こういうものに対してどういうふうに外務省として評価されているか、伺っておきたいと思います。

愛知揆一自由民主党外務大臣

○愛知国務大臣 先ほどもちょっと触れたわけでございますが、私どもとしても、この東欧諸国の動向というものは、非常に関心を引くわけでございます。したがって、できるだけ的確な情報をとる、また情勢の分析に資したいと思いまするので、在ユーゴ日本大使はもちろんでございますけれども、そういう方向で活躍をしております。いろいろ状況も相当によく掌握できる状態になっておるように思いますが、さらに、先ほど申しましたように、外務省からも審議官を派遣する、あるいはまた一般的に具体的な問題は持っていないのではありますけれども、やはり経済界の人たちからもそういう目で見てもらうということも必要かと思いましたので、特に東欧経済使節団というものも編成し、かつ、これを派遣した。これはいま仰せになりましたような点について着目しておるからでございます。  そこで、ユーゴの党大会がどういうふうな展開をするであろうかということも興味はございますが、常識的に言えば、チェコ事件というものをどういうふうに判断するか、評価するかということが中心の課題になるのではなかろうか、こういう点を着目いたしておるわけでございます。  それから、わが国としては、これら東欧諸国との間におきましても、本日御審議をいただいております文化協定などもその一つでございますが、その他の面におきましても、友好関係を結ぶ、経済関係においても均衡のある拡大をはかっていくということが、当面のわが政策として適切ではないだろうか、こういうふうに考えておるわけでございます。

曾禰益民主社会党

○曽祢委員 大体わが国が結ぶ文化協定は、むろん一方交通ではないので、わが国の文化を知らしめることによって国交に資するということ、同時に、一方交通ではないという意味は、その締約国のほうの文化も日本に紹介するのは、直接にはむろん向こうの国がやることであるけれども、これを観迎する、なるべくそれに便宜を与える、こういう面があると思うわけですね。だから、本協定においても、その趣旨があちらこちらにあるわけですけれども、特に私は、ユーゴの問題を受け入れ側にだけ限る——むろん日本の文化を向こうに送り出すことに大賛成なんですけれども、同時に、ユーゴの場合には、かなり日本のためにも、研究の課題として重要性があるのではないかと思う。  これはたいへん恐縮ですけれども、私はこの二点に集約できると思うのです。  第一は、ユーゴの独自の外交路線、これは国の外交ですね。それがあれだけの、実はソ連圏にほとんど接しておりながら、思い切った自主外交をやっている、いわゆる非同盟政策というものも、これを守るだけの気魄と体制というものは、これは相当わが国においても——日本では非常に中立主義というものが流行しておりますが、こういうように現実にソ連圏にほとんど境を接した国が、どういうふうにしてどういう体制で、この非同盟政策を守っていくか。それは決して軍事体制ばかりじゃない、あらゆる面においてこの非同盟政策をバックアップする体制として、これは大いに研究すべき興味のある点だと思う。  それから第二には、そういう外交ばかりではなくて、ユーゴが持っている世界的な特色とも思われる点は、やはり独自のマルクシズムの解釈、しかも、そのマルクシズムの解釈を、現実に国でやっている体制が、東欧諸国にしろ、あるいはいまいわゆる共産圏の中においてはソ連型、中国型の違いはあっても、これはほんとうはマルクスの教えに反している。国家が枯れて死んでいくどころではなくて、国家権力が万能だという独裁主義だと思うのです。そうでなくて、ユーゴにおいては、少なくともこれがほんとうのマルクスの教えと私は思うのですけれども、国家権力が逐次後退していく。国家権力のみならず、さらに権力の象徴である共産党そのものが、もう国に命令する立場にないのみならず、指導する立場からいっても、指導ではなくして、第二線に引いていくというような、そういった新しい——かといって、それが直ちに西欧型議会制民主主義には批判を持っているので、そこにはいくようにいっていない。私は、そういう意味で、わが国みたいなところではパターンにならないと、これはユーゴの方にはっきり言っておる。わが国の憲法のたてまえが議会制民主主義ではっきりしている。ですけれども、たとえば東南アジアなり、あるいは中南米の諸国に対しては、一つの学ぶべきものを持っているのではないか。少なくともいままで行なわれているマルクシズムの見解よりも、確かにまじめな進歩性といいますか、特に後進国に対するマルクシズムの影響という意味では、なかなかこれは示唆を持っているのではないか。そういう意味では、わが国のマルクシズムの勉強そのものが非常に古い。あるいは共産圏そのままを盲目的に信奉するというか、方向があまりにはなはだしいのに対しては、一つの清涼飲料水の意義もあるのではないか。  そういうような二つの、国の外交路線と中立というもののパターンとしての国の行き方と、マルクシズムの解釈における現実性といいますか、柔軟性といいますか、それはやはり後進国に対する一つのサゼスチョンを含んでおるやに思われる。そういうような見地があるからこそ、西欧の議会制民主主義政党も、友党ではないけれども、決して敵視しないどころではなくて、ある意味の好意的な期待を持って見ているという点があると思うのです。  はなはだかってな自分の意見を申して恐縮ですが、そういうような意味において、戸叶委員も触れられましたが、ここに書いてあることをほんとうに文字どおりにやる必要があると私は思う。たとえば第三条においても、これはむろんユーゴ側がわが国においてやる場合に、こっちがこれを奨励することでしょうけれども、私は、真剣に、単に文部省ばかりではなくて、外務省としても、こういったようなユーゴの独自の行き方、独自の文化——広い意味で文化だと思うのですが、こういうものを講義するみたいなものは大いに奨励してしかるべきであると考える。それから第二条の学生、教授、技術家その他の交換についても、従来わが国からも非常に有力な人が行って、マルクシズム研究者も行って、非常にいい、おもしろいといって帰ってきた人が多いのですね。こういうものは大いに日本のために奨励すべきだというふうに私は考えます。ですから、単に文化協定ならああけっこうだ、いいだろうというのが普通ですけれども、私はこの日本とユーゴの文化協定は、日本の自主的な判断によった立場から、大いに積極的にこういうユーゴの研究を奨励する必要がある、かように考えて——そう言ってしまうと、まるで賛成討論みたいになって恐縮ですけれども、思っているのですが、いかがですか。

愛知揆一自由民主党外務大臣

○愛知国務大臣 まず政治的な関係でございますけれども、これは私も先ほど申しましたように、非常に日本としても関心を深くしてしかるべきではないかというふうに考えておるわけでございます。ところが、政界の交流にいたしましても、少なくとも政府筋から言いますと、向こうはたとえば大統領も来ておるわけですが、こちらからは総理大臣と外務大臣は最近行っておりませんが、向こうのほむがむしろ率直に申しまして積極的であります。そこで、先ほど申しましたように、こちらもいろいろの関係ですぐ出かけられないものですから、とりあえず近藤審議官を派遣し、あるいは経済使節団を派遣したというようなことなんでありますけれども、日本側としても、ユーゴの今後とるべき政策といいますか、外交姿勢といいますか、これに対してはいろいろと学ばなければならないこともあるし、こちらのほうももっと積極的に接触を保っていきたい、基本的にはさように考えております。  それから、ただいまもお話がございましたが、文化協定は、結ぶからには、ほんとうに誠実に、またそういう目的からいっても、お話しのとおりに実現をしたい。向こうからも学者その他の人を派遣してもらって、大いにその意見を傾聴したいし、こちらからもまた日本の相当の権威者なりあるいは若い人が行って、意見を大いに吸収してくることが、絶対に必要だと思っております。  それで、先ほど来いろいろお話がございますが、私といたしましては、東欧圏との間に文化協定ができるのは今度初めてで、ほかにも希望しているところも一、二あるわけで、ひとつユーゴスラビアとの間の文化協定の実績によりまして、これをこれからいい実績ができるように、それをまた踏んまえて、かの東欧諸国との間にも将来は考えていってしかるべきじゃないか、こういうように考えておるわけでございます。

曾禰益民主社会党

○曽祢委員 私これで終わります。

北澤直吉自由民主党

○北澤委員長 これにて本件に対する質疑は終了いたしました。

北澤直吉自由民主党

○北澤委員長 これより討論に入りますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  日本国とユーゴースラヴィア社会主義連邦共和国との間の文化協定の締結について承認を求めるの件を承認すべきものと決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

北澤直吉自由民主党

○北澤委員長 御異議なしと認めます。よって、本件は承認すべきものと決しました。  おはかりいたします。  ただいま議決いたしました本件に対する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ声あり〕

北澤直吉自由民主党

○北澤委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————

北澤直吉自由民主党

○北澤委員長 この際、三時十分まで休憩いたします。     午後二時四十四分休憩     —————————————     午後三時十四分開議

北澤直吉自由民主党

○北澤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  国際通貨基金協定の改正の受諾について承認を求めるの件を議題といたします。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。戸叶里子君。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 ただいま議題になりました協定の質問をいたします前に、外務省にまずお願いしておきたいことがございます。  それはたいしたことではありませんけれども、この協定の参考資料として出されました中で、十三ぺ−ジの上の段のおしまいから六行目、「その加盟国の意向てを考慮に入れるものとし、」とありますから、ことばの違い、ミスプリントと思いまして、たいしたことはないと思いましたけれども、ところが、多数国間条約集の中にも同じ、ミスプリントがありますので、こういうことはもう少し注意をしていただきたいということをまず先にお願いしたいと思いますが、いかがでございますか。これだけを読んでミスプリントとして了解をしましても、条約集はそれではどうなっているだろうと思って見ますと、同じような間違いがしてあるわけです。こういうことがないようにしていただきたいと思います。

高島益郎外務省条約局外務参事官

○高島説明員 先生の御指摘のミスプリントは、参考資料として添付しました新旧対照表のことでございますか。——これは確かに先生の御指摘のとおり、誤りでございますので、さっそく訂正させていただきます。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 これだけの、ミスプリントならまだ問題はないと思いますけれども、多数国間条約集の中にも同じミスプリントがしてあるのです。だから、少し不注意過ぎやしないかということで、私は注意を促しているわけです。こっちが間違っているからこっちのほうも間違えるというようなことがないように注意をしていただきたい。ことばだけで、たいしたことはないかもしれません。私ども読めば、これは間違っていて、「て」をずっと下のほうに入れて、そうしてたとえば「その加盟国の意向てを考慮に入れるものとし、また、」とあるのを、その加盟国の意向を考慮に入れるものとして、と読めば読めるのですけれども、新旧の参考資料だけでなくして、多数国間条約集として出されているものにも同じミスプリントがあるということは、少し問題じゃないかと思いますので、お気をつけになっていただきたいということをまずお願いしたいと思います。

北澤直吉自由民主党

○北澤委員長 戸叶君に申し上げますが、大蔵大臣の外務委員会出席の時間は一時間でありますから、ひとつさしあたり大蔵大臣に対する質問を集中してお願いしたいと思います。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 しかし、国際通貨基金協定について審議するのですから、間違っているところは直していただいて入りたいと思ったものですから、まっ先に質問しました。

北澤直吉自由民主党

○北澤委員長 了解しました。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 そこで、大蔵大臣に主として質問申し上げたいと思いますが、まず第一に、国際通貨不安の基本的原因はどこにあるかということを伺いたいと思うわけです。  今日まで続いている国際通貨不安というものは、ほとんど定着して一九六九年にも引き継がれようとしております。こういう動揺は、単に部分的な一国の国際収支の赤字の問題ではなくして、現行の国際通貨体制そのものの動揺につながる性格を有していると思います。国際通貨不安の基本的原因はどこにあると大蔵大臣はお考えになるかをまず伺いたいと思います。

福田赳夫自由民主党大蔵大臣

○福田国務大臣 不安といいましょうか、欠陥といいましょうか、長期的に見ますと、世界経済が戦後非常な勢いで発展をする、その発展する勢いに対しまして国際通貨がよけいに必要になってくる、それに対していままではドルがその役目を果たしてきたのです。そのドルの背景にはアメリカが膨大な金を持っていた。戦後三百億ドル——四百億ドル世界で金があるといわれた、その三百億ドルも持っておった。それがだんだんと減って、今日では百億ドルを切ろうかというところまで減ってきておるので、もう限度にきておる。そうすると、これから世界の伸び行く経済に応ずる通貨の供給をどういうふうにしてやろうかという根本問題があるわけなのです。そこへ持っていって、この二、三年来、世界の基軸通貨といわれるのはドルとポンドでございますが、そのポンドのほうで不安が起こってきた。現に昨年秋にはデバリュエーションをやっているわけです。こういうような実情でございます。さらにヨーロッパ大陸で経済強国といわれ、自由主義諸国におきましてはアメリカに次ぐ金の保有を誇っておったフランス、これが昨年の五月ゼネストを契機といたしまして、経済が非常に苦しいところに追いこまれた。賃上げなんかの問題もかなり響きを持ったと思います。そこで、フランの逃避が行なわれる。こういうようなことからフランの前途を危ぶむ向きが出てきて、そういうようなことで、当面ばポンド、フランに根ざしておる、こういうふうに見ておるのです。遠因がある。そこヘポンド、フランという当面の近因が出てきておる。そうしてこれが世界全体にどういう影響を及ぼすかということで、これがいま国際通貨不安といわれるものの原因であろうというふうに考えております。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 いま大蔵大臣がおっしゃいましたように、過去二十年間、IMFの体制のもとで金とかドル、ポンドを基軸として、いわゆる金ドル体制が確立した一九四七年当時に比べて、アメリカやイギリスの経済地位が相対的に低下したこと、そしてさらに現在各国の経済力の格差に大きな変化が起こって、各国通貨の間に不均衡が生じてきた、そういうことがあると思うわけでございます。過去のドルは、強力なアメリカ経済、アメリカの生産力に裏づけられていたからこそ、一種の神通力ともいったものを持っていて、金の裏づけがドルの権威の根源なのではないかといわれたのも、一面の真実を含んでいたと思います。しかし、現在ではアメリカだけが負債超過であるにもかかわらず、基軸通貨国であるという特権的な地位にあることを利用して赤字国であるということは、私は許されないと思います。そこで、各国通貨の関係は、一九四九年以来ほとんど変更されておらず、経済力と通貨との間に不均衡が生じつつあります。そこで、基本的にはこの点が解決しないことには、国際通貨事情の不安というものは解消されないのじゃないか、こういうふうに考えるわけでございますけれども、この点についての大蔵大臣のお考えはどうでございますか。

福田赳夫自由民主党大蔵大臣

○福田国務大臣 お話のように、金というものを背景としてIMF体制なるものができた。そのIMF体制の中で、働きバチというか、実働部隊として活躍したのがドルとポンドです。その片足のポンドのほうにちょっと不安があるものですから、これは全体の体制に不安を投げかける、こういうことかと思いますが、私はドルは依然として非常に強い立場をとっておると思うのです。いまちょっと変調期にあると思います。これは一にベトナム戦争に約二百五十億ドルから二百八十億ドルもお金を使うと見られておる。おそらくその一割は外貨払い、つまり、金払いというような負担になってはね返ってくると思うのです。この問題が解決すると、アメリカの国際収支というのはきわめて大幅な改善を見る、こういうふうに見ておるのです。おるのですが、当面どうも戦争の負担が非常に重くのしかかっておる、こう見ておるのです。ですから、少し世界政治全体を大きく見ると、ベトナムは和平の方向だ、そういうふうに見ますと、アメリカの国際収支体制というものは、また非常な強力な地位を取り戻す、こういうふうに見ておるのですが、とにかくドルだけでどうというわけにもまいりません。ヨーロッパにおいて基軸通貨であるポンドの地位が不安であるということが、大きく世界全体に迷いを与えておる、こんな見方をしておるのであります。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 結局ドルとポンドの安定を引き戻さなければいけないということになるわけですけれども、そこで、いま大蔵大臣のお話の中で、ドルはこれからまたもとに戻ってくる、いまアメリカの経済情勢がよくない、国際収支が思わしくない、しかし、それの大部分はベトナム戦争によるものだというふうなお話でございました。そうすると、アメリカがベトナム戦争につぎ込まなくなれば、経済的な国際収支の面もよくなってくるのだというふうなお話でございますが、一体どのころに国際収支が戻ってくるというふうな想定をなすっていらっしゃるか。というのは、やはりこの協定を日本が批准いたしますからには、そういうふうな見通しも立てておきませんと、これが発動するしないの問題にもなってきますので、一応どんな見通しを立てていらっしゃるかを伺いたいと思います。

福田赳夫自由民主党大蔵大臣

○福田国務大臣 これは大きくは、ベトナム戦争の見通しが、つまりドルの強弱の見通しに大きくつながってくる、こう見ておるのです。ベトナム戦争については、戸叶先生のほうが、私なんかよりよほど的確な見通しを持っているのじゃないかと思いますが、まあ私は、流れは和平和平へと流れておる、そのタイミングはどういうふうに向かうだろうか、私にはわかりません。わかりませんが、そういう方向に流れておるということだけは信じて疑わないのです。そういうところから言うと、もう今度は国際収支を改善し得る方向に向かっておる。アメリカの国際収支というのは、ベトナム戦争が始まる前は、大体輸出が輸入を非常に超過しておったわけですね。五十億ないし六十億ドルの輸出超過で、そしてそのおおよそ半分を海外駐兵費負担、それからその残りの半分を海外への経済援助、こういうふうに使っておったわけなんですが、昨年のアメリカの貿易を見てみると、五、六十億もずっとあった輸出超過がほとんど消え去って、ない。もう輸出超過は十億とかそこらの程度になっておるようです。ところが、国際収支はどうだというと、大体総合収支において均衡という状態を出現しておる。それはなぜかというと、ヨーロッパで通貨不安がある、そういうようなことで、ドルを買いましょうというので、資本移動で、偶然というか、大きく貿易上の不足を補っておる、こういうかっこうでバランスをとったのです。だけれども、私どもは、これでアメリカの国際収支がほんとうに回復されたという見方はしておりません。やはりこれは本質的にはかなりの輸出超過の状態を実現し、かつベトナム和平というものが実現されないと、どうも国際収支というものは安定しない、こういうふうに見ておるのであります。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 アメリカの国際収支の安定に二つの例をあげられました。その一つとして、ベトナム戦争の成り行きいかんということによって、非常にアメリカのドルの強弱ということにも影響がある、こういうことを言われたわけで、それに対しまして、やはりある程度の、一体いつごろどういうふうになっていくかという見通しを立てないと——この協定に入って、そして日本がSDRの引き出し権を持っていくわけですから、発動するまでにはある程度の見通しというものが必要じゃないかと私は考えるわけです。  そこで、いまベトナム戦争の問題については、どういうふうになっていくか、だんだんいいほうに向かっていくという程度のことをおっしゃったわけですが、お隣にちょうど外務大臣がいらっしゃいますから、この協定とにらみ合わせて考えられる、つまり、アメリカのドルがよくなるといいますか、強弱ですね、アメリカのドルが強くなる、国際収支が強くなっていくということを考えて、このSDRというものが発動していくわけなんですから、そういうことを考えて、一体いつごろがよくなるだろう、ベトナム戦争ともからんで、その情勢の判断を外務大臣にしていただきたいと思います。

愛知揆一自由民主党外務大臣

○愛知国務大臣 ベトナム戦争の終結については、もう前々から申し上げておりますように、その一日もすみやかな平和的解決ということが望ましいわけでありますけれども、これはちょっとまだ見当がつかないというのがむしろ現実の姿かもしれないと、たいへん心配しておるわけでございますが、しかし、先ほど大蔵大臣からも言われましたように、アメリカのドルの問題は、必ずしもそれだけの点からだけ律し得られることではなくて、アメリカ自体としてのドルの安定ということについても、いろいろの努力が今後とも続けられるだろうと思います。また、昨年の三月のジョンソン声明以来、アメリカ国内におけるいろいろの政策の転換ということも、相当ドルの強化というか、防衛についてはかなりの実績をあげているんじゃないかと私は思いますが、いろいろの努力が積み上げられ、総合されてよくなるのであって、ベトナムが終わったらこうだとか、一九七七年にはこうだとか、これは事の性格上なかなか言えないのじゃなかろうかと思うのです。  そこで、やはりSDRというようなものが創設されるということは、国際的な協力で、ドルはもちろんのことでございましょうが、ほかの国の通貨の安定ということにも国際協力でやっていこうという大きな目標を持っているわけでございますから、それらの目標に向かうような総合的な努力が、国際的に実りがだんだんとできてくる。これは相関的に見なければならぬ問題ではなかろうか、こういうふうに考えておるわけでございます。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 いま外務大臣のおっしゃったのは、国際情勢なりあるいはベトナムの戦争の成り行きというものを中心にして考えられた答弁だろうと思います。  そこで、私どもがいま伺いたいのは、このSDRに関連してでございまして、このSDRというのは、IMF協定の改正の中の一環として今度はそういうものができるわけですね。そうすると、そのSDRというものができて、そしてそれが発動するまでにはやはり一つの手続が必要になるわけですね。拒否権が一五%あるわけです。EECの国が拒否すれば、これは発動しないわけです。そしてしかも、いままでのいろいろな答弁を勘案してみますと、アメリカの国際収支がある程度よくならないうちはこれは発動しないだろう、というのは、EECのいわゆる拒否権によって発動しないだろう、こういうことが言われているわけです。だとするならば、今日のアメリカの国際収支の状態においてはSDRというものは発動しないんじゃないか、こういうふうに考えるわけですけれども、それに対しての大蔵大臣のお考えはいかがでございますか。そういう点から私はいまベトナムの問題とも関連して聞いてみたわけです。だからその点をお伺いいたします。

福田赳夫自由民主党大蔵大臣

○福田国務大臣 ことしのアメリカの経済はどうなるか、こういうことと、アメリカの国際収支はどうなるか、非常に関係が深いわけですが、ニクソン政権になってから大方の人の見方は、ジョンソン政権時代と違って、多少低目の成長率ということを考える政策をとるのじゃないか、人的スタッフなんか見て、そんなような傾向も見受けられるのです。しかし、はたしてどういう政策がとられるのかということは、まだはっきり大統領の政策として打ち出されてきていないのです。そこで、アメリカの経済がことしどういうふうになるか、これに対して見方が非常にいま混迷をするというか、見通しがたい状態でございますが、大方の人の見方は、多少前よりは引き締め政策をとるのではないか。それからまた、ジョンソン政権のときとられました、法人、個人に対して課しました一〇%増税ですね、この増税の効果というものがもうそろそろ出てくる時期になってきている。それで、いまアメリカ経済はかなり明るい見方をしておりますが、もう少したつと、あるいはこれが鎮静というか、多少ダウンする傾向に向かうのじゃあるまいかというような見方をする人が多いのです。多いのでありますが、しかし、まだ新政権の新政策が公式に発表されておるわけでもないし、私ども聞かれますと、なかなかこれは見通しがつかないのですというふうに答えざるを得ないのでありますが、まあ、そういうドル防衛という多角的な努力をしておるということは、これは事実であります。さらにそれが強化されるというような傾向をたどると思います。そうすると、アメリカ自体の努力も国際収支という面に出てくるであろうし、またかたがた、ベトナム戦争がだんだんと水の低きにつくがごとく流れる、これも注目していいのではないか、私はそういうふうに思うのです。SDRの動く前提として、ドルに対する見方というものが非常に重要視されておりますが、このドルに対する私の見方、これはそういういろいろな観測を加えまして、不安は起きない、こういうふうなことでございます。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 そうしますと、具体的に伺いますが、SDRは、八%の批准国があった場合には一つのSDRというものが認められるわけですけれども、これが発動するまでにはまた一つの手続が必要になるわけです。その場合に、アメリカの国際収支というものがいまのような形ではおそらく認められないだろうというような意見が強いわけですけれども、大蔵大臣としては、すぐに発動が認められるだろうという認定の上のお立ちになるのですか、それともしばらく間を置いて認められるだろうというふうにごらんになるのですか。この点ちょっと伺っておきたい。

福田赳夫自由民主党大蔵大臣

○福田国務大臣 この協定の効力が発生するそのあと、これをどういうふうに実施面に発動していくか、こういう討議に入るわけですが、お話しのとおり、アメリカの国際収支がどうなるであろうか、これが発動の前の最大の焦点になるわけです。その焦点をどういうふうに理解していくか。これはどうせ秋ごろに——あるいは多少ズレるかもしれません。その時点にする議論でありますが、私は、ドルはだんだんといいほうに向かう、悪いほうに向かう要因というものはない、こういうふうに見ておるので、比較的楽観論をとっております。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 そこで、私は二つの疑問点を持つわけです。その一つは、いま大蔵大臣のおっしゃった、ドルがいいほうに向かっていくであろうから、おそらく早く発動するのではないかという見方、それからもう一つは、いままで分析されてきたようないろいろな客観情勢で、一体そんなに早くドルがよくなるだろうか、強くなるだろうかどうかという見方、それからもう一つは、この一五%の拒否権の問題ですけれども、EECが一緒にならなかった場合、たとえばフランス人が抜けたような場合には、一五%の拒否権というものが作用をしなくなるわけですね、数字で合わしていきますと。そうなってきた場合に、アメリカが国際収支が合わないにもかかわらずこれを発動した場合には、非常に大きな問題が出てくると思うのです。というのは、アメリカがIMFの出資額に応じてその割り当てのSDRの権利を持つわけですから、非常にたくさん持つわけですね。ところが、後進国はその出資額の割り合いが少ないですから、やはりSDRの引き出し権というものも少ないわけですね。そうしますと、アメリカが赤字であるというか、国際収支がよくないにもかかわらず、これが発動したというような場合を考えてみますと、アメリカが非常によくそれを使える、引き出し権の数字がたくさん使える、そうなってくると、やはりアメリカだけにドルの収支というものがうまくいってしまって、ほかの国は相変わらず困る形になるのではないかということを考えるわけです。だから、EECの一五%の拒否権というものがくずれた場合にもちょっと心配になるし、あるいはまた一五%の拒否権が使われるのだけれども、ドルの国際収支というものがよくなるか、アメリカの国際収支がよくなるかどうか、そしていつ発動をするかどうか、二つの心配を素朴な気持ちで考えるわけです。この点についてのお見通しを伺いたいと思います。

福田赳夫自由民主党大蔵大臣

○福田国務大臣 ドルがどういうふうになっていくだろうか、ドルの前途に対する見通しいかんということは、先ほどからるる申し上げておるわけで、私は不安を持ちません。これからだんだんとドルの地位は強化される、こういう見方をしておるのです。同時に、もしSDRが発動されるということになれば、世界の通貨体制というものがまた明るさを増すということで、世界通貨の基軸となっておるドル、これの地位がまたさらにそれによっても強化される、こういうふうに考えるわけであります。それに対して、戸叶さんが拒否権が発動されるというようなことがあったらたいへんじゃないか、これはまあSDRが発動しない、こういうことでありまするが、このSDRというのは、これは戦後世界の経済が伸びる、それに対する通貨の供給がドルで行なわれたわけでありますが、それにも限界があるじゃないか、これからどんどん世界経済が伸びいくためには、やはり新しい決済方式が必要じゃあるまいかということから創出された制度であります。まあ長い目の世界経済をどういうふうに動かすかという制度でありまするが、しかし、ときたま世界的通貨不安という時期に際会して、この問題が実を結ぼうとしておるものですから、このSDRがこの際発動されるということになりますと、当面の差し迫った通貨問題に対しても緊急的な効果を発揮する、こういうふうに見ておるわけなんです。私は、そういう意味においても、当面の国際通貨不安というものに対処するという上からいいましても、このSDRが早く発動されたほうがいいと思っておるのです。おそらく、私の見通しとしては、アメリカの国際収支の見通しがどうだからということで拒否権が発動され、そして、これが動かない状態に塩づけにされておるというようなことは、まずまずあるまいと思うのでありますが、しかし、このSDR問題というのは、また通貨問題というのは、多分に世界政治の面とも関係がありますから、どういうことが起こりますか、これは予断を許さないと思いますけれども、私自身は、まあノーマルな状態におきましては、そう不安はなく発動されるだろう、こう見ております。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 いろいろお話があったわけでございますけれども、非常にドルというものによって支配されるし、今後においてもSDRが非常にドルによって支配される可能性がある。そうすると、非常に危険性もあるということを言わざるを得ないわけです。それは、たとえばアメリカのドルやポンドが基軸通貨であるから、今日の経済状態ではしかたがないにいたしましても、アメリカの場合には、負債超過であっても、基軸通貨国であるという、そういう特権的な地位にあることを利用して、赤字国であってもしかたがないというようなことで、非常な特権性がそこにあるような気がするわけです。だから、このSDRに対して、私たちは非常に疑惑の考え方を持たざるを得ないような感じがするわけですが、それは考え方の違いとして、次に、先ほどからお話がありました国際協調という問題について、質問してみたいと思うのです。  先ほど愛知外務大臣も、国際協調という意味でこれは必要だというふうにおっしゃったし、また、総理大臣の施政方針の演説の中でも、国際通貨不安の問題に触れられまして、ひとしく国際協調による国際通貨体制の安定に期待を寄せるということが強調されていたわけでございます。もし、国際通貨体制の危機に対処する方策が、国際協調のみに依存するとするならば、欧州においても、先ほどお話がありましたように、六八年十一月においてのフランスのフランの切り下げに対する各国要請の拒否、そしてまた、あるいはドイツでマルク切り上げ要請に対しての拒絶のように、国際協調に寄せる期待に対しては、きわめてきびしいものがあるんじゃないかというふうに私は考えるわけです。赤字国に対するスワップ供与とか、あるいは国際決済銀行を通ずる、要するに政策協調も、国際協調の一例ではありましょうけれども、それは自由化された世界経済における最後の政策手段であって、国際協調によるインターナショナリズムというものは後退して、ナショナリズムにウェートが移り始めると、国際協調というものはだんだんにくずれていくのが実情ではなかろうか。こういうきびしい、流動的な国際経済のもとにおいて、あまり国際協調に依存をすることは危険度が高いのではないか、こういうようなことを考えますけれども、この点についての大蔵大臣のお考えはどうでございましょうか。

福田赳夫自由民主党大蔵大臣

○福田国務大臣 私は、逆のような考え方ですね。つまり、わが日本が非常な弱小国ならば格別、もうここまで、世界第三位の経済強国だというところまできますと、日本だけがいいでは済まされない。やっぱり国際社会の中で平和と繁栄のために尽くすところがなければいかぬ。世界全体を繁栄させ、世界全体を平和にして、その中で初めて日本の平和があり、繁栄がある、こういうところに日本の地位というものがきておるのじゃないか、そういうふうに思います。そういうところから、これから日本は——まあ戦後、率直に言えば、アメリカのおかげとか、アメリカのかさの下で成長してきた日本ですが、もうそういうものは捨てて、ほんとうに日本みずからが世界の平和と繁栄に尽くす、こういうふうに国全体、また民族全体の考え方を切りかえなければならぬ時期に来ておるのだ、そういうふうに思うのです。また、世界の環境も国際協力というものを受け入れる環境になっておる。もう戦前とはまるっきり違うと思うのです。戦前なら、それは戸叶さんがいまおっしゃったように、あるいは国際経済の関係から、自分の国の国際収支を守るというために、高率の関税を課す、あるいは為替管理を非常に厳重に張りめぐらす、そうしてブロック経済体制——英帝国主義経済だ、フランス帝国主義経済だ、そういうブロック経済が発展したわけですが、いまはもうまるっきり違うのです。たとえば、そういうようなブロック化の傾向でもありますと、ケネディラウンドというような提唱が出てきて、それをぶっつぶす、あるいはさあ、どこかの国で通貨不安だ、これが破裂したら世界に大きな災いを及ぼすというので、集まるのが十カ国蔵相会議、これはしょっちゅう集まって、そういう現象面の処理をしておるのです。さらにIMF体制、これは世界の通貨不安を世界協力、国際協力のもとに守っていこうという体制です。通商の面ではOECD、そういうようなことで、これも低関税、世界の自由交易ということを進めておる。世界環境というものはまるっきり違ってきておるし、同時に、そういう環境の中でもうわが国がひとり栄えることはできない。わが国は世界全体の繁栄に貢献して、初めて日本の繁栄もほんとうにあり得るという、そういう時期に来ておる。こういうふうに考えて、国際経済協調体制というものに大いに期待を持ち、またこれに貢献をしていきたい、かように考えます。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 私は、国際協調ということに対して全然反対とかいうのじゃなくて、それだけに依存しておるという行き方には非常に危険があるのじゃないかということを述べたわけでございます。今日、世界の経済活動におきましても、だんだんに地域化の傾向を強めております。たとえば、その契機となったのがEEC、一九五八年の結成であり、一九六〇年にはEFTAというのができております。欧州の自由貿易連合の発足、それから同じく中南米諸国によるLAFTA、ラテンアメリカ自由貿易連合の結成、中近東ではアラブ共同市場が発足しております。またアジアでは、一九六五年に、ASEANといいますか、東南アジア諸国の連合が発足をしているわけです。これらの地域化の内容はそれぞれ特有の性格を持っておりますけれども、いずれも地域間の経済関係を強化しようとする点においてみな共通性を持っていると思います。こうした各国の地域化傾向に対して、国際通貨問題をめぐる情勢変化に処する道として、単に他国との協調関係に依存するだけでなくして、再編成に直面している世界経済に対応する方策がとられなければ、通貨不安の根本的解決にはならないのじゃないか、こういうことを考えるわけでございますけれども、それでいま申し上げたわけでございますが、こういう点に対してどういうふうに大蔵大臣はお考えになっておられますか。

福田赳夫自由民主党大蔵大臣

○福田国務大臣 最近数年間の世界の大きな一つの傾向は、南北問題、つまり、先進諸国は、発展途上の国々の開発発展がなければ、先進諸国といえども繁栄、発展を続けることが非常に困難である、そういう認識のもとに、先進諸国はその財力を投入して発展途上の国々の開発に当たるべきである、こういう風潮が一つの世界政治の上の傾向だ、こういうふうに思います。戸叶さんがおっしゃるのは、そういう問題に触れておるのか、触れておらないのか存じませんけれども、やはり低開発国の資源を開発し、これらの人々の購買力を増すということによって、先進国も栄えていく、こういう考え方は非常に徹底した考え方になっておるのです。しかも、先進国が寄り集まって、その国の国民総生産の一%に相当する額を援助しなければならないというような申し合わせをするとか、いろいろな努力をしておる。そういうことによって、世界の経済全体を発展させていく。そういうことからいいますと、後進諸国を育て上げる生みの親ともいうべき先進諸国の経済も強大にしなければならぬ。そういうところからいうと、いま御審議願っているSDRというこの制度のごときは、大きな働きをなしているのではなかろうか、こういうふうに見ておるわけなんです。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 いま大蔵大臣のお話を伺っておりますと、後進国地域の貿易、発展等にも非常に役に立つ、こういうことはあとから問題にいたしますけれども、いままでのお話を伺っておりますと、SDRというようなものの創設を考え出さなければ国際通貨体制というものは安定しない、これがぎりぎりの方策であるというふうにお考えになっていらっしゃるのかどうか。そういうふうに聞き取れるのですけれども、これ以外にはないのだというふうなお考えでやっていらっしゃるのですか。

福田赳夫自由民主党大蔵大臣

○福田国務大臣 私どもは知恵はないのですが、世界じゅうの人が知恵をしぼってこれだというのがこのSDRなんです。つまり、経済が戦前に比べて非常な勢いで発展するのですね。そうすると、これに伴って国際決済手段というものもどうしてもふえなければならぬ。それを、戦後二十四年間というものは、アメリカがその保有する金を減らし、ドルを放出して、世界の購買力を注入してきた。ところが、その限度に来ちゃった。アメリカもこれ以上国際収支を悪化させるわけにもいかないし、金を減らすわけにもいかぬというところまで来ておる。そうすると、何か通貨をさがさなければならぬ。そしてみんなが集まって知恵を出した。これがSDRなんです。私はじかに聞いたわけじゃございませんけれども、大蔵委員会の話を聞いておると、水田前大蔵大臣は人類の英知の結集であるという表現でこれを説明したそうでありますが、とにかくほかにこれにかわってという案はいまのところ見当たらないというのが現状かと思います。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 それでは日本にとってどういう利点があるのでしょうか、これをまず伺いたいと思います。

福田赳夫自由民主党大蔵大臣

○福田国務大臣 この制度は、日本なんかは非常に均てんするのではないかと思うのです。日本の経済の体質、これは資源が乏しく、外国からものを取り入れて、その取り入れたものにわれわれの頭を使った価値の添付をして、これを高く外国に売る、こういうことで生きておるわけであります。また、これ以外に日本国がうまくやっていく道というものはないのではないか、こう思います。そういうことを考えますと、世界じゅうの経済が発展し、世界じゅうの経済の交流が増してくるということ、これくらい日本に有利な環境というものはないだろうと思います。そういう問題に真正目から取り組んで貢献していくというSDR、これはわが日本から見れば非常に期待していいものではないか、かように思います。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 国内問題に置きかえて考えてみたいと思うのですけれども、SDRというのは実際の通貨ではないわけですね。ですから、国民経済の利用価値は全然ないと思います。それは設備投資などの再生産に結びつくということが全然ないわけです。だから、日本の国に直接国内の問題として役に立つということは何もないのではないか、私はこういうふうに考えます。ただ、国際協調の中にあって、貿易をなにしてかにしてというようなことはあるかもしれません。しかし、直接国内の再生産に結びついて、日本の経済に有利であるということは、直接的に言えないのではないか、私はこういうふうに考えます。

福田赳夫自由民主党大蔵大臣

○福田国務大臣 去年までのことを考えますと、わが国は外貨の保有量が十九億ドルです。ところが、去年の見通しは、これがさらに減るだろう、三、四億ドル減るのではないか、こう見ておったところが、三、四億ドルの減りどころじゃなくて、逆に十二億ドルもふえるといったような国際収支の状況なんです。  そこで、私が申し上げたいことは、国際収支はゆれが非常に大きくなってきておる。昭和四十三年で見ますと、マイナス三・五億ドルと見ておった赤字が十二億ドルの黒と出た。十五億五千万ドルのフレがあるわけです。それは見通しが悪いといえば悪かったに違いありませんが、とにかくそれだけの相違が出得るゆれがあるわけです。そこにもってきて、去年の初めは十九億ドルしか外貨を持っていない。もし十九億ドルの中で、今度は逆にマイナス十五億ドルのフレが出たら、一体日本の経済はどうなるか。貿易も何もやり得ないような状態になる。そういう経験は戦後わが国はずいぶんしておるわけです。昭和三十二年ですか、岸内閣の初期、そのとき非常な外貨不足で、これをほうっておいたら一体どうなるか、貿易もできなくなるのではないかというので、アメリカから三億ドル借款をやって、やっとつないだことがあります。それから池田内閣になりましてから、昭和三十七年ですか、非常な国際収支の逆調で、引き締め政策をとる、こういうことになった。それが直ったかと思うと、昭和三十九年にこれまたたいへんな逆調になりまして、引き締め政策をとり、国の経済がもうこれでかれ切ってしまうのではないかという見通しをする人まであったのです。それがやっと吹き返して今日になっておりますけれども、つまり、ある決済手段、この天井を高く持たなければ、これはやっていけないのです。いま幸いに三十億ドルの外貨を持つようになった。かりに不況がきた。アメリカの景気が悪くなった。輸出も純化していく——日本の輸出にアメリカの経済は響くわけです。そうすると、日本で輸出が不振になる。その不振になっただけ日本の経済は全体としてしぼむわけでございますけれども、これをしぼませないためには一体どうするかといえば、これは諸外国からものを輸入して、そして輸入物資を基礎として日本の国内の建設を進める、こういうことにいたしますれば、日本の経済の成長発展の速度というか、進行の方向、速度というものは変わらないで済むのです。つまり、いままで日本の経済はどうであったかというと、外貨の保有が少なくて、国際収支がちょっと悪くなった、さあ引き締めなければならぬというので引き締めをする、ちょっと引き締めをしたものだからよくなった、またゆるめる、ゆるめてちょっと二、三年好景気になるが、またこれが行き過ぎて、引き締め政策に移る、こういう引き締めと成長ということで、日本経済の発展途上うんと大きなロスをしておるわけです。これはまた非常に日本経済の中に不均衡をもたらしておる。インフレとデフレの波に洗い流されるところの国民、これはたまったものじゃない。今度は三十億ドルの外貨を持っておりますから、多少輸出不振だといっても、そういうことなしにいけるのです。そこへSDRがきた。もっとわれわれは外資の決済手段の天井が高くなるわけです。ですから、非常に大胆に政策を実行できる。しかも、世界経済の動きに一喜一憂することなしにやっていけるかまえというものができる。先ほどこれは何も日本の経済に関係がないというようなお話でありますが、それはとんでもないことで、わが国としてはたいへん稗益するところ甚大である、かように考えております。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 いま大蔵大臣がお話しになりましたように、日本はいま国際収支が黒字で三十億ドルの外貨を持っている。そうなってきますと、SDRに加盟というか、入りましたときには、日本は今度はこれを引き出すほうじゃなくて、引き出されるほうになるのじゃないですか。国際収支が黒字になっているのですから、もっと低開発国なり何なりに引き出されるほうになっていくのじゃないですか。

村井七郎大蔵省国際金融局長

○村井政府委員 多少技術的なところもありますので、その技術的な面に限りましてお答えさせていただきますが、おっしゃるように、国際収支がいいときは、IMFのほうから言ってまいりまして、その指示によりまして提供する。もちろん限度はございますけれども、そういう指示がございますと提供するというわけでございますが、その場合は、何しろ相当な黒字がある、ポジションも強いということが前提になっておりまして、そういう場合には、先ほどのお話もございますように、国際協力という面から助け合う。しかし、問題は悪いときでございまして、先ほどの大臣のお話にもございましたように、悪いときに引き締めるかわりに、それを使って交換可能通貨、外貨を取得するというところに妙味があろうかと思います。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 いま大蔵大臣の御答弁、たとえば三十億ドルの黒字なんだ、これをさらに貿易を拡大していって、SDRに加盟していけば、SDRの引き出し権によってもっともっとこれをふやしていけるんだというふうにとられる御説明があったので、私は、これはそうじゃないんじゃないかということで、いま伺ったわけなんです。それだけの黒字ならば、これはIMFのほうでチェックして、日本の国はよそのほうに引き出し権をやるわけですよ。だから、日本はそれを使って日本の必要な外貨をとるというのじゃないのですよ。だから、黒字になった場合には、そこにも一つの問題があると思うのです。  それからもう一つの問題は、IMFの割り当て額に応じてSDRの権利というものも持てるわけですね。たとえば日本がIMFに三・四%の割り当て額をしているとするならば、そのあれに応じてSDRの創出がきまれば、そのうちの三・四%か何かの権利を持つということになるわけなんですね。そうですね、局長。

村井七郎大蔵省国際金融局長

○村井政府委員 おっしゃるとおりでございまして、配分は各国のクォータに応じまして配分するわけですが、それを表明いたしますときの表現は、たとえば各国通貨の一〇%というような表現になろうかと思いますが、おっしゃる真意は何によって割り当てるかというと、各国の割り当て額に比例配分いたしまして割り当てる、こうなろうかと思います。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 そこで、大蔵大臣、いまのような局長の御答弁でもわかりますように、IMFの出資比率でSDRが配分されるとなると、米英は非常にIMFの出資率が多いわけです。だから、SDRの場合にも非常に有利になるわけです。それからフランスを除いたヨーロッパ諸国には不利となるわけです。それからまた、開発途上国の中でも有利、不利の国が出てきて、非常に不公平になるわけです。そういう関係から見ましても、SDRの定着化というものには問題があるのじゃないか、こういうふうに私は考えるわけですが、この点はいかがですか。  そして特につけ加えたいことは、後進国といいますか、実際に貿易を盛んにしていきたい、そしてたくさんのSDRの配分を利用したいという国は、比較的IMFの出資額が少ないために、利用できるワクも非常に少ない。こういうことが非常に不便だと思うのです。アメリカなりイギリスは非常に多いけれども、ほかの利用しなければならない国ほど少なくなっているというふうに考えられて、非常に不公平じゃないか、こう考えるわけです。

福田赳夫自由民主党大蔵大臣

○福田国務大臣 まず第一の問題、つまり、IMFに対するクォータが定着する傾向にあるが、警戒すべきではないか、こういうようなお話でございますが、これは定着されては困るのです。ことにわが国のごときは、世界まれに見る高度の成長発展をしておる経済国でございますから、これが前の比率でこれに対するクォータが定着したということになると、非常にアンバランスになってくる。そこで、わが国としては、どうしてもいまきめられておるクォータについては変えてもらわなければならないという気持ちは持っておるわけです。しかし、この気持ちをいつどういう形で実現するかということになると、これはいろいろな国際間の利害関係がありまして、なかなかそう簡単ではないのです。しかし、そういう希望を胸に秘めながら、どういうふうにしてこのクォータを変えていくかということについては、思いをめぐらしておる、こういうふうに御了承願いたいと思うのです。  それから第二の、発展途上国について不公平ではないかというふうなお話でございますが、不公平というのはまあ当たらぬと思うのですがね。これは発展途上国といえども、経済の力がつくに従いましてこのSDRを使う機会も多くなってくるわけでありますが、やはり発展途上国は、これと関係の深い先進国の経済が発展をする、それに伴って、それに連動しながら発展していくという面が多いのじゃないか、そういうふうに思いますので、経済の比率からいえば、少ないクォータでいいのだけれども、特にクォータを多くするのだという考え方はとられておりません。しかし、発展途上国の経済発展につきましては、これは世界関税政策の関係で特恵関税が与えられるとか、あるいは低開発国開発金融機構ですね、これによる援助が与えられるとか、いろいろな角度でいろいろな問題が提起されておりますので、総合的に考うべきである、こういうふうに見ておるのであります。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 決算委員会のほうが何か大蔵大臣に来ていただきたいようでございますが、あとに質問を延ばすにいたしましても、ちょっとしり切れトンボですから、二、三点だけ続けさせていただきたいと思います。  いまの問題が一番問題だと私は思うのです。私どものしろうと的な考えからいいましても、SDRによって開発途上国の貿易が盛んになるのだ、国際通貨の流動性を高めて、この通貨がよく動くようになって、そして貿易も盛んにさしていくのだというふうなことを考えた場合に、米英のようなドルなりポンドの基軸通貨国の場合には、貿易なんかでもやろうと思えばいろいろな形でやれる可能性がある。むしろ開発途上国こそいろいろ引き上げていかなければならない。そのためにもSDRが必要である、こういうふうなことしか私は考えていなかったわけです。ところがずっと読んでいってみますと、やはりいまのSDRの配分といいますか、使える額ですね、そういうものがそういう国ほどたくさんなければならないのに、やはりIMFの出資額に応じてということになりますと、非常に少ない。非常に使わなければならない国ほど少ないということが考えられまして、割り当てをずっと表を見ていきますと、これじゃどうもあまりためにならないなという気がしたわけです。ですから、私はその点を伺ったわけで、その点はやはり問題点でございますね。これは大蔵大臣もお認めになりますね。米英は非常に有利だけれども、ほかのこれらの開発途上にある国はあまり潤わないということはお認めになりますでしょう。大蔵大臣のことばとしては、いやそれでも少なくてもいいんだとおっしゃるかもしれませんけれども、私どもとしてはちょっとあまり……。

福田赳夫自由民主党大蔵大臣

○福田国務大臣 開発途上の国ですね、これは経済か流というか、貿易の量もまた少ないのです。ですから、そういう少ない貿易量の国はたくさんの外貨が必要なはずはないのです。まあその国は、やはり世界経済が全体として発展する、それに伴って伸びていく、その伸びていくのに伴いまして、またその必要とするクォータークォータというか、決済手段もふえていく、こういう形だろうと思うのですね。どうも非常にセンチメンタリズムというか、小さいものにと言うが、私ども実際の経済の動きから見ると、ちょっと理解が届かないような気がするのです。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 そこら辺がやはり問題点だと思うのです。やはり福田大蔵大臣はもう少し愛情の政治というものをお考えになっていただきたいと思います。  何かたいへん急いでおられるようなんで、間を飛ばしまして、この次の機会に譲りますが、もう一点だけ伺いたいのは、SDRの創出額というのは総務会できめられることに協定上なっておりますけれども、世上伝えるところによりますと、年間十億ドルから二十億ドルといわれておりますが、政府の見通しはどうなんでしょうか。

村井七郎大蔵省国際金融局長

○村井政府委員 いまのところは、はっきりした、どういうところでどうふうにやるかということはきまっておりませんが、おっしゃるように、八五形というのは、総務会の投票の八五%でございますので、総務会の場できめられるということは間違いないと思いますが、その量を幾らにするかという点につきましては、これはまだそういう議論をしたことがございません。世上伝えられておりますのは、全くの試算、いわばプライベートな意味の試算でございまして、二十億ドルとか三十億ドルとかいっておりますが、これはそのときそのときの状況に応じて、いろいろな与件を組み合わして決定する、そういうことに相なるのではないかというふうに思っております。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 そうしますと、いまのところ一切わかってない。世上はそういうふうに伝えられているけれども、わかってない。そうすると、日本でもどの程度の金額をそれに配分するかということもわかってない、こういうことでございますか。

村井七郎大蔵省国際金融局長

○村井政府委員 いまのところ、そういうことでございます。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 それじゃ、私たいへんにふしぎに思うことが、この四十四年度の特別会計の中にあるわけなんです。そういうふうにわかっていらっしゃらないにもかかわらず、外為特別会計の貸借対照表の中を見ますと、二百六十一億ですかの特別引出権純累積配分額というものが載っているわけなんですね。全然ワクもわからなくて、日本がどれだけ積むのかもわからないのに、これだけのものが外為の特別会計の貸借対照表に出ているというのは、一体何を基準にしてこういうものを出しておおきになるのですか。

村井七郎大蔵省国際金融局長

○村井政府委員 先ほど申し上げましたように、これは協定が成立いたしまして、その上で、そのときの状況で総創出額をきめるという段取りになっておりますので、私たちは一応のいろいろあり得る場合を想定して予算を組むということしか道はないわけでございますが、そういたしますと、いろいろな方法はあるにしましても、その中で考えられますことは、たとえばわが国の割り当て額は七億二千五百万ドルである。それで、かりにその一〇%を、つまり、各国の割り当て額の一〇%を最初の発動額とするということになりますと、七千二百五十万ドルということになるわけでございますが、かりにそれを換算してみますと、相当な、二十億ドルというような場合に七千万ドル弱、先ほどのお話で三・四%ということにいたしますと、二十億ドルで六千八百万ドルということになるわけでございます。したがって、七千二百万ドルクォータの一〇%というとこらへんは、予算の積算の一つのめどとして考えてみてもいいのではないかということで、特別会計に組んだわけでございます。これはもちろんそういう意味におきましてあくまでも予算でございますので、最高限という意味で御審議を願っておるわけでございます。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 まだ協定は通ってないわけですよね。それでどうなるかわかりません。発動するかもしないかもわからない。日本だってこれは留保するかもしれないし、どういうふうになるかわからない。それでまた、創出額もどれだけになるかもわからない。こんなふうになるだろうという想定といまおっしゃいますけれども、私どもには、大蔵委員会でも、全然どのくらいになるかわかりません、一切日本はわかりませんと言っていらっしゃるわけです。そういうふうに、わからないけれども、大体このくらいじゃないかと想定してみて組むなんていうのは、ちょっと国民をごまかしているんじゃないですか。私どもでさえもそういうやり方に対しては納得できませんね。

村井七郎大蔵省国際金融局長

○村井政府委員 これはまさにそういう意味で方法が二つある。一つは金額を限らないで御議論願うということも、実際の姿から申しますと、それがある意味では一つのやり方かもしれませんが、それでは、協定を発効いたしまして、私たちもいろいろ義務を負う、たとえば配分を受けまして、将来これが解散するというようなときにその分を返すという意味におきましては、まさにその債務負担行為ということにも該当いたしますので、やはり限度を限って、この限度の中ではSDRというものを日本が受ける、また義務も発生するというかっこうで、しかも外為特別会計という会計でその義務を履行するという意味におきまして、その特別立法を大蔵委員会のほうにもお願いしておる。そういう関連におきまして、やはり一応の限度を設けておくということのほうがすっきりした筋合いではないか。したがって、金額はわかりませんが、それを一応の最高限度といたしまして、そしてその限度内でその義務を負うという形にしたわけでございます。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 こういう種類のものは、もしも協定が批准されて発動した場合には、予備費なり何なりで出すという性質のものじゃないのですか。

村井七郎大蔵省国際金融局長

○村井政府委員 確かにそれも一つの方法かと思いますが、私は、国会の御審議を願うという意味におきまして、予備費以上にこういう金額を一応出して、それを最高限度として御審議を願ったほうが、より具体性があるのではないか、かように思った次第でございます。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 ですけれども、私たちは——これはあれですか、国会の承認を得なくてもいいのですか、バランスシートというのは。

村井七郎大蔵省国際金融局長

○村井政府委員 御承知のように、外為特別会計と申しますのは資金会計、これはもう先生のほうが御承知だろうと思いますが、外貨の売買をやっておりますので、一々円の支出、受け入れというものを歳出、歳入に立てておりませんで、利子とか経費とかいうものを歳出に立てておるという資金会計の形をとっております。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 それはわかりますけれども、バランスシートというのは、未確定のものについては一般に記載能力はない、そういうふうにいわれていると私は思うのですけれども、予定としてこれを記載したということは、やはりいま言ったようなことから違反するのじゃないですか。はっきりと記載できないはずのものじゃないのですか。

村井七郎大蔵省国際金融局長

○村井政府委員 それは全然違反していない。戸叶先生もよく御承知だろうと思いますが、こういう資金会計を御審議願うときには、一応の予定というものがないと、数字がないと、幾らの収受をするかめどがつきかねるものですから、そのめどをつけるという意味におきまして、またその結果、円資金を必要といたしますが、その円資金のしりの手当て、しりといいますか、たとえば国債で幾ら借りるとか、資金会計が幾ら円を借りるという、その借り入れ限度額というものを作定いたします必要からも、一応の予定を立てませんと、資金会計といえども、幾らの形で運営するかということが予測できないわけでございますので、これはずっと何年間来そうしておるわけでございますが、資金会計におきましても、外貨の収入支出の一応のめどを、その年間のめどを立てて御審議を願うというふうになっておるわけでございます。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 いまの局長の御答弁を伺っておりますと、それではやはり大体世上伝えられているこのくらいのワクである、このくらいの支出額であるということを想定して、一応のめどを立ててここに書いておありになるということなんですから、私たちが聞いたときにも、国会で、全然わかってません、何も知りません、これからきめられることですなんという答弁はよしていただきたい。やはりある程度、こんなふうに言われていますけれども、この程度のもので、日本としてもこのくらいのものを目当てにしていますぐらいのことをおっしゃってもいいのじゃないか。こういうものを書かれていて、しかも大蔵大臣の答弁は、大蔵委員会で、何もきまっていません、まだわかりません、これではあまり私たちはばかにされるのじゃないかと考えるわけです。この点をはっきり訂正していただきたいと思います。

村井七郎大蔵省国際金融局長

○村井政府委員 戸叶委員の御趣旨はよくわかりましたので、これからの答弁には十分気をつけまして、そういう趣旨を織り込んで必ず御答弁するようにいたしたいと思います。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 いまからそういう趣旨を織り込まれてもおそいと思うのです。国会の答弁というものは、大体だまし答弁だと思うのです。ですから、またここでだまされたかという気持ちで、私とてもいやな気持ちがしていますから、その点をよく留意しておいていただきたいと思います。

北澤直吉自由民主党

○北澤委員長 本日はこの程度にとどめ、次回は、来たる十九日午前十時三十分より理事会、十一時より委員会を開会することとし、これにて散会いたします。     午後四時二十五分散会

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