法務委員会 第3号
- 発言数
- 198 件
- 登壇者
- 20 名
- 会派数
- 5
- 開催日
- 1968/12/19
会議録
○永田委員長 これより会議を開きます。 この際、参考人出頭要求に関する件につきましておはかりいたします。 ただいま本委員会において調査中の北朝鮮帰還問題について、本日参考人として日本赤十字社副社長田邊繁雄君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○永田委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。 なお、参考人の出頭手続等につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○永田委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。 ————◇—————
○永田委員長 次に、裁判所の司法行政に関する件、法務行政に関する件、検察行政に関する件及び人件擁護に関する件について調査を進めます。 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。神近市子君。
○神近委員 十月二日と三日の各新聞の夕刊と朝刊に出ていたんですけれども、日本における駐留軍の犯罪の八五%を日本側が裁判にしないでアメリカに処分をまかせるということが、アメリカの上院の軍事委員会で報告されているのです。八五%を日本で処分しないでアメリカに渡す、何だか私どもは変な気がするのですけれども、それは事実でございますか。何か間違いの報告でございますか。
○川井政府委員 ただいまの新聞記事の内容でございますが、アメリカの国会で国防総省の担当官から新聞記事に出ているような内容の報告をしたことは事実のようでございます。私どもも、毎年こういうふうなことがあちらのほうで報告になっておりますので、そのつどこちらのほうの数字と適合いたしましていろいろ検討しておるのでございますが、アメリカの軍隊が出ているところの各国の平均の放棄率が八四%でございます。日本の場合にはそれが一%高くて八五%である、こういうふうな説明が基本になっているようでございます。 そこで、ちょっと説明が必要だと思うのですが、アメリカでいっている裁判権を放棄したということは、日本の場合とたとえばNATO諸国なんかの場合とはかなり事情が違うわけでございます。日本の場合には、検察官が調べまして、軽微な犯罪であるとか、あるいは弁償して被害者のほうがあえて処罰を望まないとかいうふうなものにつきましては、検事が裁判所に公訴を提起しないで、御承知のように起訴猶予にするという権限が与えられているわけでございます。米軍の関係者につきましても軽微な犯罪につきましては、地位協定とかなんとかいうことにのっとらずに、検事が日本人と同じように起訴猶予にすべきものは起訴猶予にしているわけでございます。ほかの諸国においては起訴猶予ということが認められない国が多くて、犯罪があれば一応起訴するという形になっていますので、ほかの諸国においては確かに取りきめなんかに基づいて放棄をしたということが当てはまりますけれども、日本の場合におきましては放棄をしたということは当てはまらない。検事が率先的に調べて起訴しない、起訴猶予の処分をしたというものがほとんど大部分でございますので、その数字の中で八五%と書いてございまするけれども、そのほとんどは検察官のほうが起訴猶予、不起訴の処分にしたというものが大部分でございます。
○神近委員 八五%ということですけれども、それは日本人の犯罪で検挙されて起訴猶予になる数字に見合う数字なんですか。
○川井政府委員 大体それに見合っておると思います。詳しく御説明いたしますと、四十二年度における法務省の統計によりますと、アメリカ軍の構成員などで犯罪を犯して処理された者は、反則金なんかに乗ってくる道交を除きまして、窃盗とか殺人とかいうふうな刑法犯だけで、実質的にいいますと起訴したものは百九十一名ございます。それから先ほど申しましたとおり、起訴するに足らないということで起訴猶予にしたものが四百四十二名ございます。それで、刑法犯についての起訴率を見ますと、起訴率は三〇・二%ということに相なっております。それから今度は先ほどの軽微な道交法違反でございますが、この道交法違反を入れまして全体として起訴率を見ますと、起訴率は二二・二%ということになっております。
○神近委員 いまの数字はアメリカ人の数字でしょう。私が伺ったのは、日本人の犯罪が起こって起訴猶予になさる、この犯罪の数と起訴猶予とのパーセントを伺ったのです。
○川井政府委員 いまあとから申し上げたのは日本の数字でございます。私のほうで調べた数字でございます。
○神近委員 あなた聞き違えておるのです。日本人の場合を聞いているのです。
○川井政府委員 いま申し上げたのは、日本におるアメリカ人の数字です。——わかりました。それでは次に日本人の場合を申し上げます。日本人の場合は、外国人を含めて計算してございまするけれども、刑法犯について申し上げますると、起訴人員が一年間に四十五万九千三百六十四名でございます。それから起訴猶予にいたしましたのが十九万九千七十二名、したがいまして、起訴率は六九・八%でございます。これに特別法犯を加えまして、先ほどの道交を加えて起訴率を見ますと、これが八・四%という起訴率に相なっております。
○神近委員 NATOも同じことだということを新聞はいっていますけれども、これを見ても、NATOよりも日本のほうがアメリカには丁重なような印象を与えます。NATOよりも日本のほうがこの起訴は少ない数になっております。それで、これはどの条約に基準するのですか。どの行政協定に書いてあるかと思って、夕べずいぶんさがしましたけれども、私にはさがせなかったのですが、どれによるのですか。
○川井政府委員 あるいは御趣旨を間違えて私が了解しているかもしれませんが、これは安保条約の六条に基づく行政協定の十七条の関係になるわけであります。
○神近委員 アメリカ兵の犯罪の種類にはどういうものが多いのですか。何か新聞では無銭飲食があるということ、酔っぱらってか、お金がなかったのかあるのか知りませんが、食べ逃げをやるということ。それから売春はもうほとんど公然と行なわれているでしょう。それからもう一つはけんか、小さなけんかで日本人を傷つけたというようなことがあると何かに出ていましたけれど、それはどういう件数くらいでしょうか。
○石原説明員 ただいまの罪種別の点でございますが、先ほど刑事局長から答弁されましたように、米国の国会における証言が出ましたので、私どももそれに見合うような統計をつくるべく、いま検察庁に照会して取り調べ中でございます。まだその集計が全部出ておりませんが、概して申し上げますと、それほど悪質なものは多くございませんで、主としてございますのが業務上過失致死傷の事件、自動車事故の事件、それから道路交通法違反の事件でございます。大体これで間違いないだろうと思うのでございますが、年間検察庁で受理いたします米国の駐留軍人関係の事件は約二千件でございます。そのうちの千をちょっと欠けるくらい、九百七、八十程度が道路交通法違反でございます。それから業務上過失傷害、自動車事故に該当すると思われますものが大体七百件前後でございます。それを足しますと千六百程度になるわけでございますが、それ以外の事件につきましては、なるほど傷害等がございますが、これが二百件に足るか足らないか、これは暴行と傷害と一緒でございますが、その程度でございます。それから御指摘の売春防止法の点を調べますと、この点は特別にその分の統計はとっておりません。売春の点では、先生も御承知のとおり男のほうが処罰される場合はほとんどないのでございまして、女性なので統計表には出てこないのではなかろうか、かように思っております。
○神近委員 売春はもう公認したようなものですね。この間、佐世保の保健所が困ったようですけれど、保健所でちゃんと健康診断をしてあてがっているというような事実があるので、あれは前の赤間法務大臣に、どうも困るのじゃないか、あれは両罰でなければならないというふうなことを申し上げたら、それはもっともだというような御意見で、改善の意思があるような御表明があったわけですけれど、これらの売春は、アメリカ兵が来れば資本金が出て、女をさがして連れてくるというくらいのことになっておりますから、日本の性病の蔓延ということに大きな関係があると思います。交通事故が多いということも、これはやはり道路の問題に関係があると思うのです。 このきょういただいた請願の中にも、刑法の一部改正に関する請願というのが来ていますけれども、これにも十三歳の少年のことが問題になっています。だけれども、ああいうアメリカ兵がどんどん売春婦を使うというようなことが、この少年たちのいまの状態に、あるいは現在の少年犯罪というものに影響があるとお考えですか。これは局長どういうふうにお考えになりますか。
○川井政府委員 売春の問題は、なるほど米軍の関係においても社会的なできごととして目立つものがございますけれども、私ども警察当局なんかから情報をもらって観察をしているところでは、かなりいろいろな地区にいろいろな形のものがまた出てきているやに見受けられるわけでございます。 そこで、私どもとしましては、もちろんこの外国人の関係も含めまして、全体として現在の売春防止法のたてまえでもってそれが十分であるかどうかというようなことにつきましては、関係官庁と連絡をとりまして、かなり早い時期からいろいろ事務的な情報の収集、交換やら、それに基づいて現行法の穴はないかというようなことについて検討をいたしております。そこで、まだ的確にどういうふうな点をどういうふうにしたら現状にうまく合うかというようなことについて結論が出る段階まで至っておりませんけれども、鋭意真剣に検討をいたしておる段階であります。 それから、米軍の関係の売春の現象というものが一般に日本の社会に与える、あるいは特に青少年に与える影響ということがかなり憂えられておるのじゃないか、こういう御指摘であったと思いますけれども、それらも確かにいろいろなことが総合して現在青少年の非行ということにつながってくると思いますけれども、日本におる外国人のいろいろな非行というふうなものが、また反射的に日本の社会に何らかの影響を与えていく、これはもうとうてい否定できないことだ、こういうふうに考えますので、内外を問わず全体を一つとしての観点からの検討ということが必要ではないかというふうに思っております。
○神近委員 佐世保、岩国、浦賀というこの三つの軍港で、一番たくさん多発する犯罪はどういうようなものですか。それはわかりませんか。常識的でいいです。はっきりした数字を出せということは申し上げません。佐世保、岩国、浦賀、こういうような米兵の出入りが激しいところで、いま佐世保は大騒ぎですけれども、この原潜災害は別にして、風俗的な、あるいは日常的な犯罪はどういうような犯罪が多いですか。
○川井政府委員 この前の国会のときに、神近委員から、いま御指摘の米軍基地の周辺における売春事犯に限って御質問が出ましたので、特に横須賀をも加えて、私数字を申し上げた記憶がございますけれども、それ以外にそれらの地区でもって特にどういうふうな犯罪が特徴的であるかということは、ちょっと私の記憶で申し上げることはたいへん乱暴だと思いますので、至急また調べて、もう少し具体的な資料で、この次また適当な機会に御質問をいただいてお答え申し上げることにしたほうがいいと思います。
○神近委員 大臣がお忙しいところをお見えになりましたから、大臣に御質問を転換しようと思います。 今月が人権宣言二十年の記念月間だということは御承知のとおりでございます。十二月十日に武道館で式典が行なわれたようでございますけれども、大臣はそこに御出席になっておりますか。
○西郷国務大臣 式典に出まして、主催いたしました。
○神近委員 そのとき、いろいろ演説があっただろうと思うのです。新聞が書くかと思って注意しておりましたけれども、一向取り上げなかったような状態だったのですけれども、総理大臣、議長というふうに並んで、最高裁長官の演説があったと思いますけれども、それはお聞きになっておりますか。そしてどういうテーマが取り上げられたというような印象を得ていらっしゃいますか。
○西郷国務大臣 横田最高裁長官も出席されまして、祝辞をお述べになりましたが、人権宣言二十周年の式典の際のお話でございますので、長官の述べられました要点は、人権を今後ますます尊重しなければならぬという点を強調されたと思っております。
○神近委員 それは、ああいうところで人権宣言二十周年ですから、そういうことはおっしゃるだろうと私は考えていました。だけれども、ほんとうに法務行政に人権を行使するというような決心がおありであるか。人権の問題については、私どもの国は未成年者のような感じがするのですけれども、十分に尊重されているとお考えですか。まだその点で不十分なところがあるというふうにお考えですか。どちらですか。
○西郷国務大臣 先生のお説のとおり、ことに新憲法下におきましては、民主主義のことから考えましても、やはり人権が一番尊重されなければならぬわけでございますけれども、現在の国内の情勢を見ましても、十分人権が尊重されておるとは言い切れない面がございますので、先般の式典のあとも、全国から集まってまいりました人権擁護委員の全国大会をいたしまして、今後もあらゆる機会を通じまして人権尊重の観念を広めるように努力をいたしたわけでございます。
○神近委員 ついこの間、八海事件の阿藤周平という人が無罪になりました。この人は一回は無罪になりながら、死刑の宣告を受けて、十七年出たり入ったりですけれども、非常に悲しい人生を送った人なのです。それで、この無罪という事実が出たときに、国民はあっけにとられたような感じがあったのです。何も関係のない国民が十七年、一番盛りの人生を入れられていたということで、非常に同情が強かった。そのことを考えると、今日やはり——これも新聞ですけれども、国連で、死刑を廃止するか、あるいは死刑を行なう犯罪範囲を限定するかというようなことがテーマにのぼっているようですけれども、それに対して日本の法務関係の方々はどの程度関心をお持ちになっているか。このテーマをひとつ真剣に考えてみようじゃないか、あるいは研究しようじゃないかというようなムードが起こっておいでになるのか、それともあの武道館ではでな式典をして、記念切手を三百万枚ですか出しただけで、国際的な何かみえをつくっておこうというような考えか、その点どういうふうにお考えになりますか。
○西郷国務大臣 いま国連におきましての死刑問題の検討というようなことに言及されましたが、これは非常に厳粛な問題でございます。御承知のとおり、現在刑法改正につきまして、全般にわたって時間をかけてつくっておりますが、その中で死刑の問題等も十分真剣に論議されていると考えますが、いま国連でも取り上げているというお話を伺いましたが、やはり非常に大事なことでございますから、われわれも常に根気よく、人権尊重の問題については、あらゆる機会に徹底普及するようにつとめてまいりたいと考えております。
○神近委員 いま局長からお話を承っていたのですけれども、これはNATOも同じようですけれども、駐留軍に対する扱い方が寛大ではないかという疑惑を持っていて、私はいま刑事局長にお尋ねしたところですけれども、占領中に私どもが多少アメリカに対する気がねだの——これは日本だけでなく、NATO諸国も同じようなことをやっている。そうすれば、占領中は一そうそれが強かったというようなことが考えられるのじゃないかと思いますけれども、この点で、占領中の裁判で死刑にきまって、十七年も二十年も勾留されている人たちに対する再審を行なっていただきたいという法案が提出されておりますけれども、これは局長にも御返事いただきたいのですが、そのときの裁判と今日の裁判と——今日は独立したからややパーセントが減っているかもしれない。だけれども、その時分の日本の裁判に対する態度と非常に違うのではないかと考えるのですけれども、大臣はどういうふうにお考えになりますか。
○川井政府委員 先に事務的なことを私から御答弁申し上げたいと思います。 占領後においても、たとえば昨年なんかの数字を見れば、日本人の起訴率とアメリカの軍人の起訴率というものを比べて見て非常に隔たりがある。かなり軍人に対しては有利な取り扱いをしているというふうに見受けられる。したがって、占領中においては、なお占領軍の関係においては遠慮して寛大なといいますか、必ずしも適当でない措置をしたのではないかという疑いがあるが、どうだろうか、こういう御趣旨だと拝聴いたしました。 そこで結論は、私はいろいろな、特に死刑事件なんかの記録などを見ておりますので、具体的なものから申しまして、占領中において、特別故意に進駐軍の関係において、あるいは進駐軍の指示、命令、その意向というようなもののために、日本の裁判がゆがめられたというようなことはなかったと確信をいたしております。これは前回に最高裁判所の刑事局長も一緒に呼ばれまして、同じような御質問がありまして、最高裁判所事務当局からも、いろいろ資料を調べたり数字に基づいて考えてみましても、そういうようなことはなかったものと確信している、こういうような明確な答弁があったことを記憶いたしておりますが、その後におきまする研究によりましても、そういうことはなかったと私は思っておるわけであります。 それから、去年の数字のことですが、あるいは後に適当な機会にまたこまかい御質問があろうかと思いますが、一、二私のほうで調べたところでは、たとえば昭和四十二年度で、強盗とかというような悪質犯ですね、その悪質犯で日本人とそれから米軍人との関係を比較してみますと、一般日本人の場合には強盗の起訴率が九四%でございます。それからアメリカ人の場合には数がずっと少のうございますけれども、パーセンテージをとりまして九三%でございます。これはほぼ同じ起訴率になっておるわけでございます。悪質な犯罪につきましては開きがほとんどないということでございます。 ところが、一番多いのは、先ほど課長から申し上げましたように、事故の事件あるいは自動車の事件でございますが、その自動車の事件では、業務過失で人をひき殺したり、それからひき逃げをしたという事件が一番悪質でございますが、そういう事件だけをとって計算いたしてみますると、一般日本人の場合に、公判請求をして体刑を求刑するというような措置をとったのは三・五%でございます。あとは略式命令で罰金で一応確定しておる。ところが、米軍人の場合には、公判請求をしましたのは、業過の事件では七・一%でございます。約倍の起訴率を示しております。もちろん数は少のうございますが、そういうようなことになっております。 時間がございますれば、なるべく詳しい数字と内容を持ってまいりまして、包み隠さず率直に申し上げる態度でもとよりおりますが、ちょっと時間をいただいて説明いたしますれば、悪質なものにつきましては、むしろ合理的な処理をいたしておる。あとは、大部分は非常に軽微な犯罪、たとえば道交違反なんかはアメリカの各州によりまして道路交通規則がかなり違っております。そういうようなものは、きのう突然日本へ来たというようなことで、すぐ車を運転して銀座とか新宿あたりへ出てくるというようなことで、記号その他の点で必ずしもはっきりしない、記号の表示の場所が違っているというようなことで、一回注意すればあとからすぐ間違いなくやれるというような軽微な犯罪が多いというようなことで、そういうような軽微なものについては起訴猶予率が確かに高くなっております。全体としましては、従来からも申し上げたように、悪質、それから善良なものを合わせて考えてみるならば、米軍人関係の起訴率は、日本人の全体のパーセンテージよりも非常に低くなるというような内容がございます。 また時間がございますれば、順次その内容について御説明を申し上げたいと思います。
○神近委員 それでは、いまお急ぎの参考人がお見えになりましたから、あなた方に対する質問をちょっと延期いたします。 —————————————
○永田委員長 この際、田邊参考人に一言あいさつ申し上げます。 本日御多用中のところ御出席をいただき、まことにありがとうございました。 北朝鮮帰還問題について忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じますので、よろしくお願いいたします。 それでは質疑の申し出がありますので、これを許します。松本善明君。
○松本(善)委員 在日朝鮮人の帰国問題につきましては、本委員会でもたびたび問題になったわけでありますが、過ぐる九月に、わが党の宮本書記長を団長とする代表団が朝鮮民主主義人民共和国を訪問いたしました。私もその一員としてこれに参加をしたわけでありますが、この帰国問題について朝鮮赤十字会の意向を確かめてまいりました。その後、日本赤十字社が朝鮮赤十字会に対して手紙を出されたことによりまして、一歩前進の方向に進んでいるというのは、たいへんけっこうなことだと思うわけであります。現在、その後どういうふうになっておるかということについて、御説明できる範囲で御説明いただきたいと思います。
○田邊参考人 九月二十八日付で日本赤十字から朝鮮赤十字会あてに具体的な提案をいたしたのでございます。これは書簡の形でいたしたのでございます。 その内容は、御承知と思いますが、いわゆるカルカッタ協定による申請済み帰還未了者に対する措置について、コロンボ会談で両者意見の一致を見た合意書案に基づいて、若干時日がたっておりますので、所要の修正を施したものを文書にしたためまして、朝鮮赤十字会の合意を求める、こういう提案であります。それからもう一つは、協定が終了したあとで帰還を希望する人たちの帰還の方法について、コロンボ会談で日朝両赤十字団体で協議した結果を根幹として取りまとめたものでございます。こういった内容の手紙を先方に送りましたところ、朝鮮赤十字会から、手紙だけではわからない数点があるので会談をしたいということを申してきたわけです。そこで、私どものほうでは、モスクワ会談、コロンボ会談、二回もやっておりますので、その経験にかんがみまして、会談を妥結させるためには、あらかじめ先方でわからないという点を十分承知いたしまして、それを検討した上で会談に臨みたいので、わからない点を言ってほしいということを言っておりましたところ、それについて返事が参りまして、帰還者を迎えに来る先方の配船に乗ってくる朝鮮赤十字会の代表の入国問題について、コロンボ会談で日本赤十字が約束した事項がございますが、それについては、その後一年近くも日にちがたっておるのに、あまり前進しておらない、こういう点がわれわれのわからない点であるということがはっきりしたわけでございます。入国手続をできるだけ簡単にするということについて、そういうことを言ったわけでございます。まあコロンボ会談におきましては、入国手続をできるだけ簡単にすることについて、政府が妥当な考慮を払っていただくように日赤としても今後十分に努力するということを約したわけでございます。その点は今後も同じじゃないかということを言っておるのであります。その他、若干名称とか言い回しの点についても意見があるということを言ってまいりました。主として向こうが言ってまいりました点は、朝鮮赤十字会代表の入国問題についてでございます。
○松本(善)委員 いま申されました、コロンボ会談での、朝鮮赤十字会代表の入国許可手続を簡単にするということについて、政府が妥当な考慮を払うように日本赤十字社が努力するということを確認してこられたということでありますが、これはもちろんのことと思いますが、政府は了承の上で、そういう態度をおとりになったんでしょうね。
○田邊参考人 そうでございます。
○松本(善)委員 この問題はどういう問題なのかということをちょっと簡単に説明していただけませんか。
○田邊参考人 まあ、私どもの承知している範囲で申し上げます。 北朝鮮の国を日本が承認しておりませんので、北朝鮮政府が発行した旅券というのは、入管法上正当の旅券とは認められておりませんので、北の人たちが、朝鮮赤十字会の人たちが船に乗って入国するためには、領事館等の在外公館へ出頭して、そこで出国証明書の交付を受けてくることが必要だということが法律上の要請になっていると聞いておりますので、そのことを向こうに話したわけでございます。具体的に申しますれば、ナホトカあるいはモスクワというところへ行って渡航証明書をもらってくるということが法律上のたてまえであるということを向こうに話したわけでございます。説明したわけでございます。それに対して向こうは、それはたいへんだからもっと簡単に、たとえば新潟でそういう証明書の交付を受けるようにできないだろうかということで要望があったわけでございます。その点は、コロンボ会談では結論に到達しませんので、これは政府の権限に属することでございまして、赤十字がかってにきめることでございませんので、これはひとつ会談が妥結したあとで、日赤として政府に妥当な考慮を払っていただくように努力するから、それで了承してもらいたいということで、先方もそれで了承したことであるのでございます。
○松本(善)委員 その妥当な考慮というのは、ナホトカとかモスクワとかいうことでなくて、朝鮮赤十字会の要望に沿うような方向でという意味でありますか。
○田邊参考人 まあ、そういう気持はわれわれ十分持っておりますけれども、いましかし、国として入管法の運用上どれが妥当な——見解がいろいろと入管法上のたてまえもございましょうが、できるだけ簡単にしていただくようにお願いしたいという趣旨でお約束したわけでございます。
○松本(善)委員 わかりました。そうすると、この問題が解決をいたしますと、在日朝鮮人の帰国問題は大体事が運んでいく、こういう見通しでございましょうか。
○田邊参考人 大体そういうふうに考えております。またそうであることを私は希望いたしております。
○松本(善)委員 あと入管局長に聞くことがありますが、神近先生の質問の間ですから——よろしいですか、続けて。
○神近委員 この問題に関連して副社長にお尋ねしたいのは、コロンボ会談はどういう成り行きで決裂したのですか。
○田邊参考人 この話し合いの内容については、そうたいして意見の相違はなかったわけでございます。話し合いをまとめるその最後の段階に入りまして、話し合いをまとめる形式ですね、取りまとめ、それについて意見が食い違ったのでございます。と申しますのは、帰還者、あるいは出国者といってもいいのですが、北朝鮮へ帰る出国者の帰還の手続について、これは当然日本政府から出国のための必要な手続を受けなければならない。あるいはその他帰還者が持ち帰るお金とか荷物の問題、あるいは生活に困っている方々に対する港に出るまでの経費の援助の問題など、帰還者の日本国内においての日本政府の取り扱いの手続を説明したわけです。その説明した事項を向こうさんは、あなたたちの話したことばをそのとおりやるということを約束してくれ、それは法的拘束力のある約束をしてくれということで、向こうが強く主張したわけであります。したがって、それは政府を縛るようにしてもらいたいということが向こうの要望であるようにわれわれは解釈したわけであります。法的拘束力のある合意にしてもらいたい。私のほうでは、それは確認ということでいいではないかということで、どうしても話し合いがつかなかったわけでございます。今回それが日本赤十字社の保証ということでよろしいじゃないかということで、私どももそういう趣旨で提案を向こうにいたしておるわけでございます。
○神近委員 国内の費用というものはたいしたことじゃないでしょう、鉄道で連れていくだけのことで。新潟に行っての宿泊とか、それから雇い入れの船の費用、そういうものはどちらの負担になっているのですか。
○田邊参考人 その点につきましては、コロンボ会談ではそうたいした意見の違いはなかったのです。生活に困窮しておる者に対しては日本側が日本政府において援助をする、これも向こうは了承したわけでございます。それから船は先方が配船する、朝鮮赤十字会の負担において配船を行なうということでございますし、その他の経費の問題については、向こうは朝鮮赤十字会が負担をするということを提案しておりました。これも別段こちらに異存はなかったわけでございます。
○神近委員 帰りたいという人を帰すということに、そんなつまらない手続上の——お金がそんなにかかるというわけではないし、人道的にお考えになって、そんな決裂はお避けになるべきじゃなかったかと思うのですけれども、この点はいかがですか。あなた方の身銭を切ってというわけではないし、赤十字のお金だったら国からもらう金だし、それで好意が足りなかったということが前提になっているのではないのですか。
○田邊参考人 日本赤十字としましては、帰還者が帰ること、これは自己の希望によって北朝鮮に帰るということは当然のことでございますので、これを援助したいという気持ちにおいては終始変わらなかったのでございます。ただ、これは日本の国の政府の一つの政策として、今日北朝鮮赤十字会と日本の赤十字とが合意をして、政府を縛ってしまうような法的拘束力のある合意文書を取りかわすということはできないというたてまえで向こうに話したわけでございます。この点は向こうも了解いたしまして、今日、その点は問題は残っておらない、こう思うわけでございます。
○松本(善)委員 日赤のほうはけっこうでございます。
○永田委員長 この際田邊参考人に一言ごあいさつを申し上げます。 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席くだされ、貴重なる御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上、げます。 それではどうぞ御退席ください。 松本善明君。
○松本(善)委員 いまの問題に関係して、入管局長にお伺いしたいのですけれども、政府のほうでいまの朝鮮赤十字会の代表の入国問題についていろいろ検討されておると思うのですけれども、いまの状況をお話しいただきたいと思うです。
○中川(進)政府委員 おっしゃるとおり、ただいまいろんな角度から検討しておりますが、まだ結論は出ておりません。
○松本(善)委員 いつごろまでに結論が出る見通しでございますか。
○中川(進)政府委員 これは先生御承知のとおり、いま問題になっておりますのは、いわゆる暫定処理が終わった後の話でございます。いわゆる暫定処理なるものは、一万七千あるいは一万五千、大体一万五千以上の人が少なくともその対象になっておるわけでございまして、どんなに早くやりましてもこれは八カ月くらいかかるわけでございます。初めに合意ができてから五十日以内に、それから六カ月以内に片づけるということになりますと大体八カ月。それから後の、また帰還希望者がたくさんだまった場合の入国措置の問題でございますから、非常に——非常にということもございませんが、かなり先の話でございます。そこで、もちろん話を詰めるためには、なるべく早くその先のことまでも考えて、一万七千人の処置の終わったときにどうするということを考えるべきでありましょうが、それほど急ぐこともないというあれがございます。客観的には私どもはそう考えます。ただし、ただいま田邊参考人もお述べになりましたごとく、これが大きな問題になっておることは承知しておりますし、また、これが片づくということによりまして、北朝鮮赤十字との会談が非常に前進する可能性が出てくるということも承知しておりますので、できるだけ早い機会にこの問題は検討して結論を出したい、かように考えております。
○松本(善)委員 それに関係をいたしまして、昨日在日朝鮮人の再入国の問題について、東京高等裁判所で法務省が敗訴の判決を受けました。この機会に在日朝鮮人の人権の問題を含めて朝鮮民主主義人民共和国との関係も改善するようにしてもらいたいということで、法務大臣にもお話をしたのでありますけれども、報道によりますれば、上告をされた。私どもは、上告しないで、確定をさせていくというのがいいんじゃないかというふうにお話ししたんですけれども、上告をされたという報道を聞いておりますが、どうしてそういうことになったのか、どういう理由なのかということを簡単にお話しいただきたい。
○中川(進)政府委員 ただいま御指摘の、北鮮に対する私どもの立場からの出入国管理上の問題点でございます。 まず私どもといたしましては、日本におります朝鮮半島御出身の方々が、人道的な経緯に基づきまして北鮮にお帰りになるということを必ずしも絶対的に禁止するつもりはございません。これは御承知のとおり、昭和四十年十二月に三名の方に対しまして再入国を認めましたし、また、昨日新聞にも報道せられましたごとく、新たに八名の方に対しまして北鮮の再入国を認めました次第でございます。 ところが、ただいま先生御指摘の、昨日東京高等裁判所におきまして国が敗訴、控訴棄却というものを申し渡されました訴訟事件に関しまする問題は、これは北鮮の建国二十周年記念に参加するための再入国の申請でございます。これは私らといたしましては、政治的な行事に参加する非常に政治的な行動であるという見地から、日本の国交あるいは国益、公安、そういう点に好ましくないという見地で、その再入国の申請は認めなかった次第でございまして、私といたしましては、法務省のとりました処置は正しいと考えておりますので、逆に申しますと、高等裁判所の判決には服従しかねるということで上告いたした次第でございます。
○松本(善)委員 そういたしますと、結局、在日朝鮮人の海外旅行の自由というのを一般的に否定するわけではない。それは認めるのだ。認めるのだけれども、今回のはそういう建国二十周年というのだから困る、こういう趣旨ですか。
○中川(進)政府委員 これは一般的に認めるとか一般的に認めないとかいうことではございませんで、あくまでもケース・バイ・ケースによって処理したい、かように考えております。
○松本(善)委員 そうしますと、この在日朝鮮人が外国へ行って、日本人と同じように外国へ旅行してくる、これは基本的人権である。判決の趣旨もそうであります。私たちも、日本にいる外国人が自由に外国に行って旅行してくるという、これは当然の基本的人権だと思うのですが、この権利は在日朝鮮人にはないという考えで上告をされたのでありますか。
○中川(進)政府委員 一がいにないというつもりはございませんで、あくまでケース・バイ・ケースであります。私ども上告いたしましたのは、この許南麒氏一行の北朝鮮建国二十周年記念式へ参列のための旅行に関する再入国ということに関しまして、あくまでこれを断わるのが正しいと思って上告したのでございます。
○松本(善)委員 私のお聞きしておりますのは、法務省として、在日朝鮮人に海外旅行の自由という基本的人権を保障するという立場で行政に当たっておるのかどうか、その点をお聞きしているのです。
○中川(進)政府委員 その点は、先ほどから申し上げましたように、ケース・バイ・ケースに基きまして善処したい、かように考えております。
○松本(善)委員 ただ権利というのはあるかないかなんです。あるけれども、ケース・バイ・ケースによって認めない場合もあるのだというのか。ないのだ、しかし認めることもあるのだというのは、やはり違ったことなんですね。そういう基本的な、原則的な態度は、そういう海外旅行の自由という基本的人権を認めるという立場に立っておるのか、それは認めないけれども、特別認める場合もあるのだ、こういう立場に立っておるのかということをお聞きしておるのです。
○中川(進)政府委員 私どもといたしましては、これはやはり日本の国益なり公安なりというものに支障がない限りは、何も日本にいる外国人の方の出入国を特に制限するというつもりはございません。
○松本(善)委員 そうしますと、こういうことですか。基本的な権利はあるけれども、国益に反するかどうかということを判断をするから、ケース・バイ・ケースによって変わるのだ、こういう趣旨ですか。
○中川(進)政府委員 さような趣旨でございます。
○松本(善)委員 けさの朝日新聞の報道によりますと、「この判決に承服すれば、在日朝鮮人の北朝鮮への往来を禁止している現在の方針そのものがくずれ、その結果、韓国との外交関係が悪化したり、国内の韓国系、北朝鮮系の対立が一層激しくなる恐れがあるとして、上告したという。」と報道されておるのです。これは事実でしょうか。
○中川(進)政府委員 上告はいたしましたが、先生のほうが私より法律の専門家でいらっしゃるわけで、理由づけのほうはまだ上申しておりません。
○松本(善)委員 この報道も、火のないところに煙はないということであろうと思いますが、こういうことが基本的人権を左右することになってはいけない。私がいま読みましたようなことが、基本的人権というものを左右するということになってはいけないんじゃないか。それが今度の高裁の判決の趣旨でもあると思う。さらに検討をして、この問題について前進されるように希望をいたしまして、質問を終わります。 —————————————
○永田委員長 神近市子君。
○神近委員 さっきの話を中断しましたので、ちょっと問題がまるで変わったことだったものですから、まだ大臣もお見えにならないので……。私は、さっきなるほど道路の交通違反による犯罪が一番多いとおっしゃったのはよくわかります。日本の道路が非常に過密になっているということ、それから広い国に自動車を走らせなれているという点で、それを見過ごしておやりになるという点はよくわかりました。これはずいぶんつまらないことかもしれませんが、駐留軍の奥さんが酔っぱらって、郊外のどこかで、青梅かどこかで事故を起こしたことがありましたね。人をひき殺したか何か、あれはどうなさいましたか。
○川井政府委員 たぶん横須賀のマラリン・ローランドという人が自衛隊の列へ突っ込んで犯した事件、ほかにもあったかと思いますが、あの事件が一番有名といいますか、ちょっと社会を衝動した事件でございますが、目下公判中でございます。日本の裁判所で裁判中でございます。何回も裁判を重ねておりますが、間もなく結審して判決がある段階だと思っております。
○神近委員 きのう猪俣先生が、平沢貞通の問題で死刑が執行されるのでないかということをおそれておいでになったのですけれど、再審中は執行はないわけでしょう。これはできないわけでしょう。
○川井政府委員 法律の規定上は、再審中でありましても執行ができることになっております。しかし、最近の実務の取り扱いの慣行といたしましては、再審とかその他の問題がかかっておる際には、なるべくそれが済むまで執行を待つというのが実際の運用の状況でございます。
○神近委員 そうすれば、執行された人たちは再審しないでいた人たちですか。
○川井政府委員 原則としてそうでございますが、過去において再審の請求中のものを執行した事例がほんのわずか、一、二件ございます。それは、数回再審の申し立てをいたしておりますけれども、内容が全く同じ内容の再審の申し立てでございまして、同じように機械的に裁判所でその申し立てが却下になった、こういう事例でございまして、三回ぐらいまで待っておりましたけれども、四回、五回と重ねましたけれども、新しいのは出ません。全く同じものだということで、再審請求という権利を乱用と言っては言過ぎかもしれませんけれども、そうなっては死刑の執行ということはできないのではなかろうかということで、他との関係もありまして、そういう極端な例につきましては、形だけ再審請求中でございましたけれども、執行した事例が一、二ございます。
○神近委員 この間無罪になった阿藤周平という人は、一度間で無罪になっておりますね。そしてまた控訴されて、また死刑ということになり、そして今度最終的に解放されたのですけれど、 〔委員長退席、田中(伊)委員長代理着席〕 ああいう事犯がやたらにあっては、とても私ども国民は不安だと思うのです。 一例をあげますと、免田栄の事件があるでしょう。二十三年に人吉で起こった事件。これはもうはっきりと、西辻という判事がはっきり調べて、二年間調書を読み、それから四十人の証人を得て、無罪の判決があったのですよ、兼審の決定が。それがまた死刑ということで、いま四十歳ぐらい、十七年ぐらい監禁されている。一体そういうようなことが、日本の法務官僚のなさることに非常に不信を抱かせているのです。熊本から何だか知らない人が電話をたいへんよこしてくださるのですけれど、熊本市で救護運動が起こっておりまして、そしてたくさんの人が署名して、お金を出し合って、このかわいそうな無実の人をというようにやっている。私は、その点で、日本の法務官僚という人たちは——戦前からの人たちに限るようです。今日の人たちは改善されておいでになると思うのですけれど、この戦前の、あるいは駐留軍がいた間あたりまでは尾を引いていて、そして何でも、自分たちは、国民の安全というようなことを考えないで、安易に死刑、死刑といっておやりになったというような印象が強いのです。たとえば免田栄のズボンにも、シャツにも、おのにも、血痕が一つもなかったのですよ。そして今日それが出てくれば、今日の科学では、二十年前の血痕でもちゃんとはっきり有無がわかる。それだけ科学が進歩したのですけれど、いまそれがどうしても出てこない。このズボンも、ちゃんと犯人がいるのに、この証拠物件がなくなるということは、一体これはあり得ることかどうか。そして、あってよいことかどうか。それが出てくれば、今日の科学では、血痕があるかないかということがわかるのですけれど、それは一体どういうような整理のしかたで、そしてわざと出さないのか。そのときの裁判を肯定するために出さないのか、あるいは火事かどろぼうに取られたのか、どちらだとお考えになります。
○川井政府委員 死刑が確定した、最高裁判所で死刑の判決を支持したということで、法律上は死刑が確定した、そういうふうな者に対して、死刑を執行するか、あるいはその事実について疑いがあるということで再審の申し立て、あるいは再審の審理をそれによって続けて、またほかの結論を出すか、法律のたてまえといたしましては、およそ死刑事件というものは二つに一つしかないわけでございます。そこで、いまおあげになりましたケースにつきましては、再審の申し立てもありましたし、あるいは再審の申し立てが適法かどうかというようなことにつきまして、検察官のほうと相手方との間にいろいろまた訴訟関係でもってやりとりがあったということは、私もよく承知いたしておりまするし、それから本件の審理をめぐって証拠物件と目されるものの一、二のものが紛失したというふうな事情も報告を受けております。ただ、紛失したといわれておる証拠物件がどういうふうな事情でなくなったかということは重大な問題でございますから、ただいま御指摘になったような、いかなる理由でなくなったかということについていろいろ調査をするように指示をし、またその報告を求めておりまするけれども、どういうふうな事情でそれがなくなったかということについては、その事実関係、真相がなかなかわからないようでございます。そういう証拠物がなくなるということはたいへん申しわけないことであるし、適当でないことでありますけれども、実務の実際の面では、警察がまずいろいろ資料を収集して、それから検察官のところへその証拠物件を添えて送ってくる。それから検察官のところにきたものを裁判所にまた提出をして、裁判官がそれをまた調べて判決を言い渡す。済むとその証拠物件がまた検察庁のほうに戻ってくるということでございまして、組織の違ったものが同じ物件をぐるぐると何度も、重大な事件であればあるほどいろいろ問題が複雑になってくる。こういうふうなことと、それから非常にたくさんの事件がございますので、いろいろ同じような物件が何万点となく検察庁の倉庫一ぱい、ごらんになるとわかりまするけれども、非常なたくさんのものでございますので、もちろんたくさんあるからいいかげんにしていいということじゃございませんけれども、実務の実際としては非常に複雑錯綜しておるというようなことのために、人手が足らなかったとか、あるいはたしかこの事件は警察関係が地警と国警とに分かれたとき、それからまた戦争が終わりまして間もなくの事態であったというようなことから、人手も十分でなかったというような事情がございましたために、証拠物件の管理が適当でなかった。管理が適当でなかったことについては重々おわびを申し上げなければいけませんけれども、今日といたしましては、その関係はどういう事情でなくなったかということは、いまのところもうこれを確定するすべがないわけでございます。ただ、紛失したといわれるその証拠物件が、本件の犯罪の成否を決するに必要不可欠なものであるかどうかということにつきましては、いろいろ見方もあるわけでございまして、その他の証拠をもっていたしましても、この被告人の刑事責任を十分立証できる、こういうふうな考え方のもとに検察当局は立っておりますので、紛失したことは紛失したことといたしまして、犯罪の成否につきましてはそれは決定的な力を持つものではない、こういうふうな考え方にいま立っておるわけでございます。それから、本人はいろいろ再審の請求その他の申し立てがございまするので、かなり日が延びておりますが、今日まで執行はいたしておりません。
○神近委員 その問題ですけれど、いま民事訴訟が起こっています、そのなくしたということについて無責任だということで。これは弁護士さんのすることだから私どもわかりませんけれど、ただ、一体裁判というものは、何とかもうちょっと簡単にできないものですか。あれを無罪にした西辻という判事さんは、調書を読むのに二年かかっておりますよ。調書を読んで、四十人の証人を得るというのに二年かかった。あの調書というものが山のようで、これはほかの方からも聞きましたけれど、弁護士さんがよくおっしゃるんですけれど、山のようなものを読むのに何日かかるとか、二カ月かかるとか、寝る時間だって必要ですからそういうことを言われるのだけれど、あなた方の仕事は、書類のページをくって、そしてそれに大体の時間を食われてしまって、一体それに感情がついていきますか。私はそれを何とかもう少し改善する必要があると思うのです。 〔田中(伊)委員長代理退席、大竹委員長代理着席〕何千枚というような調書を読むにはたいへんな時間がかかるということをよく言われるのですけれど、一体、そういうことでこの裁判をおくらせ、いまおっしゃったように何万人というような裁判をしなくちゃならない。そうすれば、あるいは無意識の誤判も起こると思うのですけれど、それを何とか改善するというような方法はないものですか。
○川井政府委員 裁判が長引いているということは、まことに適当でないことでございますので、訴訟遅延ということを何とか知恵を出し合って協力して解消するということは、最も大事なことだと思います。裁判所のほうとも、検察、法務当局とも、また弁護士ともいろいろ連絡いたしまして、訴訟の迅速ということについていろいろの面から検討をいたしております。検討いたしておりまするけれども、御指摘のとおりなかなか成果があがりません。 なぜあがらないかという問題でございまするけれども、私どもの立場から弁解をさしていただきますと、検察官というものは、重大な事件においては、殺人事件なんか身柄を拘束して調べるということでございますが、警察官は四十八時間しか調べる時間がございません。検事はそれを受け取って二十四時間の間に、拘束をするか釈放するかという決心をしなければいけません。したがって、夜中であろうと朝五時でありましょうとも、検察官は時間で調べますので、超過勤務というのは検察官にはないわけです。検事は、犯人を逮捕したときから七十二時間までの間に、その人を拘留するか釈放するかということについて、どんな重大な事件でありましても決心しなければなりません。そこで、決心いたしまして裁判所に拘留請求いたしますと、御存じのとおり十日間の勾留令状が出ます。そうすると、検察庁、検事と警察が協力をいたしまして、その十日間の間に起訴するか不起訴にするかをきめなければなりません。ところが、その間にどうしてもきまらないというような場合、重大な事件であれば、裁判所が認めればもう十日間拘留が延ばしていただける。そうすると、通じて二十三日間の間に、どんな重大な事件でございましょうとも検察官は起訴、不起訴をきめなければいけません。言いかえてみますと、検察官は、どんな事件でございましょうとも二十三日間の間に起訴、不起訴、これは証拠が十分で犯罪が成立するかどうかという心証を得なければいけません。ですから、検事は二十三日の間に決心をしているわけでございます。検事の段階においては、二十三日の間に検事の段階の裁判は済んでいるわけでございます。それがなぜ十何年もかかるかという問題でございます。あとは裁判所の問題でございます。裁判官の訴訟指揮がよろしきを得て、そして訴訟が進行していくならば、有罪か無罪かの判断というものは、十何年も二十年もかかるはずのものではないと私は思うのです。書類を幾らめくっておりましても、何万ページありましても、それほどたいして時間がかかることではございません。ですから、極端な言い方を私の立場から言わしていただくならば、裁判が延びるということは、訴訟を主宰する裁判官が、積極的な立場でもって訴訟を迅速化することに主体性を持って努力をしていただくということがまず第一だと思うのであります。そのことに検察官と弁護士とそれ以外の関係者、当事者が全面的に協力をするということが最も必要なことじゃなかろうか、こう思っております。しかしながら、そうは申しましても、新しい憲法のもとで、いま書類が非常にたくさんございまするし、それから何でも簡略にやって白黒を早くきめればいいというふうなものではございませんので、手続を複雑にすることによって、一面において疑いをかけられた者の人権を保護していこう、こういう趣旨もございますので、訴訟の迅速ということには、本来性質上当然の制約があるというふうにも考えられます。ですから、非常に複雑な手続によって、その間において人権がそこなわれることを防ごうというふうな大きな目的も度外視することはできませんので、これはおことばを返すようで失礼でございますけれども、やはり民主主義下における裁判制度というものは、ある程度時間がかかることは腹に入れてかからなければいけない。それにしても、現実は長過ぎるということがただいまの御指摘だと思いますので、なお一そう関係方面と協力いたしまして、真剣に迅速化ということにあらゆる面で努力をしなければいけない、こう思っております。
○神近委員 大臣もおいでにならないし、時間がずいぶん過ぎましたから、終わります。
○大竹委員長代理 岡沢完治君。
○岡沢委員 それでは、入管局長はお急ぎのようでございますから、先ほど松本委員が質問したことと関連するわけでございますけれども、昨日東京高裁で判決のありました朝鮮民主主義人民共和国よりの再入国の問題についてお尋ねをいたします。 最初に、もうすでに上告をなされたという新聞報道がございましたが、なされましたか。
○中川(進)政府委員 いたしました。
○岡沢委員 その上告の判断は局長がなさったのか、大臣がなさったのか、あるいは政府の意思としてなさったのか、どちらですか。
○中川(進)政府委員 大臣の御決裁を得てやりました。
○岡沢委員 先ほどの松本委員に対する御答弁で、上告の理由の主たるものとして、建国記念行事に参加するというのは政治的な性格があるという意味のことをおっしゃいました。東京高裁のいわゆる近藤判決におきましても、「建国記念行事は世界各国において行なわれている極めて普遍的かつ開放的な行事であり、海外居住のその国の国民がそれへ参加することを、他国が拒止する理由も通常はない筈である。本件の場合も同様であって、被控訴人らが祖国の建国記念行事に参加することをわが国の政府が差止めることを特に正当とすべき理由も見出せない。」これは私の意見ではなしに、裁判所の、しかも高等裁判所の意見であります。私はこのほうが私個人としては納得できますし、おそらく国民の一般の感情としても、先ほど局長がお答えになったように、建国記念行事に参加することが政治的意図であり、それが日本の国益に反するという解釈とは、説得力ははるかにこの判決のほうが強いと思うのでありますが、局長の御見解を承ります。
○中川(進)政府委員 私どもといたしましては、先ほども申し上げましたように、先生とは考え方が違いまして、まさにこういう人の再入国を認めることは日本の国益、公安に不適当であるということで、この高裁の判決には承服いたしがたいということでございます。
○岡沢委員 答弁になっていないじゃないですか。不適当というのは、どういう理由で不適当だということをおっしゃってください。あるいはいま私が読み上げました東京高裁の判決の理由について、何か反発すべきことがあったらおっしゃってください。
○中川(進)政府委員 その点は、先ほど申しましたように上告をいたしましたが、上告の趣意書をまだ提出しておりませんので、それにおきまして詳細に述べますが、大体の考え方といたしましては、政治的な目的を伴うこういう旅行を認めることは——旅行による出国を認めないというわけではありません。出国は自由でございますが、その結果また日本へ帰ってくる、再入国を認めることは、日本の国益、公安から見て適当でないという考え方でございます。
○岡沢委員 どういう点が日本の国益に反するかということをお答えいただくべきだと思うのでございますけれども、お答えございませんか。——判決にもうたっておりますように、憲法前文の精神あるいは憲法二十二条の精神からいたしましても、海外渡航の自由というのは日本国民の基本的な人権の一つだ、その国民の権利は、同様に日本に在住する外国人にも当然適用さるべきだという考え方は、私は正しい解釈だと思いますし、おそらく国際法上も認められている考え方だと思うのであります。それに反する御見解をお出しになる以上、もっと具体的な国益に反するという理由をおあげにはならなければ、国民も納得しないし、もちろん事件の当事者も納得しないだろうと思います。 では、次に続いてお尋ねいたしますが、一審、二審におきまして国側として、法務大臣として主張されました、いわゆる朝鮮民主主義人民共和国とは国交がないという理由は、上告理由としてはそれほど重要視されておらないわけでございますか。
○中川(進)政府委員 国交がないということは、もちろん大きな理由の一つでございますが、これは判決にもございますように、ことにこの前の第一審にございましたように、国交のない国、たとえば中共に対しまして相当な数が行っておるという点から、単に国交がないというだけでどれもこれも全く同一の取り扱いだということには必ずしもならない、こういう考えでございます。
○岡沢委員 いま局長がおあげになりましたが、わが国と正式な国交のない中華人民共和国に対しましては、すでに昭和三十二年三月から本年十一月十二日までの間に八百九十七件許可されております。先ほどの松本委員の質問に対する御答弁によりましても、朝鮮民主主義人民共和国に対しましては、昭和四十年に三件と、きのうの八件だけであります。あまりにも差があるような感じがいたします。しかも朝鮮民主主義人民共和国に対する申請も二千百件ほどあったはずであります。どうしてこういうふうな差が生じてきたのでありますか。
○中川(進)政府委員 それは先ほどからしばしば申し上げますように、そこへ対して再入国を認めるということが、日本の国益、公安上適当でないという考慮に基づいてとられた措置でございます。
○岡沢委員 お答えにくいだろうとは思いますけれども、やはり私は、局長がほんとうの良心に従った御判断を率直にお述べになることのほうが、局長の公務員としての責務に忠実なゆえんであるし、また日本の国益に合すると思うのでございますけれども、どうしてもおっしゃりにくい事情もわからないではありません。 それでは、松本委員も聞きましたけれども、大事な問題だと思いますので、重ねてお尋ねをいたしますが、今度の近藤判決で示されました海外渡航の自由と申しますか、一時的海外旅行の自由というものは、日本国憲法が認める基本的自由権の一つであり、国際法上も確立されておるものだという解釈についてはいかがでございますか。
○中川(進)政府委員 私は何もここで訴訟論争をやるつもりはございませんが、その点に関しまして、私どもとしましては納得のできない点があるのでございまして、内国民に対しまして憲法上の保障があることは当然でございますが、外国人に対しましては、その外国人の出入国を許すということは、国があくまで政策的に考慮決定してしかるべきものと考えるのでございます。もちろん、外国人に対しましても、先ほど松本委員に私が申し上げましたごとく、基本的人権というものを尊重すべきことは十分承知しておりまして、私どもといたしましては、もちろんこの基本的人権を極力尊重いたすように処置したいのでございますが、ときによりましては、国の政策、国益ということから、基本的人権の享受の態様がそれとうまく合わないということが起こり得るのもやむを得ない、ことにこの出入国に関しまして、外国人に対しましてはこういう事態が起こり得るのもやむを得ないというのが私どもの考えでございます。
○岡沢委員 この判決にもうたっておりますけれども、「日本国の領土内に存在する外国人は、日本国の主権に服すると共にその身体、財産、基本的自由等の保護をうける権利があることは明らかである」という考え方は、私は正しいと思いますし、ことに私は、一般外国人と違いまして朝鮮の方々は、ここで御指摘申し上げるまでもなしに、かつては日本人であり、みずからの意思で日本に来られた方もありますし、あるいはまた日本の軍の要求、あるいは場合によれば応召、徴用というような義務づけられた形で日本に送られてこられた方も多いわけであります。今度の申請の方々も、すべてこれ従来から日本に居住しておられた方であります。戦前からの方が多いようであります。朝鮮民主主義人民共和国の方々には、いわゆる大韓民国の国籍を有する方と違って、永住許可申請権は有しておられないけれども、しかし、在留期間の制限を受けないという点では、永住権者と同じ扱いをなさるべきだと私は思うのであります。だから、外国人の中でも特別の地位におられると見ていいと思うのです。そうでなければ、日本におられる朝鮮の、特に大韓民国の国籍の方には自由がある、朝鮮民主主義人民共和国の国籍を持つ方には、海外渡航についてあるいは一時的海外旅行について制限を受ける、非常に不合理な解釈結果が出てくるわけであります。こういう点からいいましても、いまの局長の御答弁は納得できないので、重ねて見解の披露を求めます。
○中川(進)政府委員 もちろん、先生御指摘のごとく、日本におります朝鮮半島御出身の大部分の方が、終戦前あるいはつい講和発効まで日本の国民であられたということは、私ども承知しております。しかしながら、今日におきましては、とにかくこういう方々は外国人であるということも、また厳然たる事実であります。ただ、昔日本人であったということはございますが、外国人であるということにおきましては、私どもは、先ほど申し上げましたように、この外国人の出入国というものは、あくまでその滞在を許しておる国が主権行為としてその国の都合によってこれを規制してしかるべきものである、かように考えるのでございます。
○岡沢委員 局長さんはおそらく御自分の御判断、御意思とは違った処置をとっておられると思われますので、これ以上局長さんを責めても——おそらく佐藤内閣の姿勢、特に大韓民国との外交上の問題等を配慮された政治的な御判断からの結果だと思います。しかし、それはやはり間違っておるのであって、一審のみならず、高等裁判所においてまで重ねて法務大臣が敗訴されたという事実は、やはり謙虚にいままでの処置の誤りについて再検討なさるべき時期が来ておるのではないか。私個人の判断では、憲法の精神を持ち出すまでもなしに、これからの日本の将来を考えました場合、私も、イデオロギーからいたしますと朝鮮民主主義人民共和国のイデオロギーとは違いますけれども、そういうイデオロギーの相違を越えて、特に最も近い国の一つであるだけに、相互理解と申しますか、あるいは公正な信頼関係というのが、日本の今後の平和外交の上にもきわめて大切であるというふうに感じましたので、あやまちを改めるにはばかることなかれで、私は、局長として、ぜひ大臣にもあるいは政府に対しましても、かたくなな、あるいは大韓民国に遠慮し過ぎた外交姿勢を改められるほうが賢明ではないかということを意見を述べまして、大臣おられませんけれども、局長からもお伝えいただきたいということで、この問題に対する質問を終わります。 続きまして白鳥事件についてお尋ねいたします。 白鳥事件の村上国治さんのことにつきましては、この委員会でも松本委員からたびたび質問がございました。私は、その事実の問題とか裁判の適否をここで論ずるつもりはございませんけれども、局長も御存じのように、村上さんに対する判決がございましたのは昭和三十八年十一月でございます。その前に十一年間の未決勾留がございます。御承知のとおり刑は二十年でございますが、本年の五月二十六日をもちまして刑法二十八条にいうところの刑期の三分の一を経過し、仮釈放の要件ができております。ことに未決期間を含めますとことしの十月で満十六年の拘禁でございました。実質的には刑期の四分の三をすでに経過しておるわけであります。私の聞きます範囲におきましても、網走の務刑所内における作業態度は、所長さんはじめ全職員も称賛されるほど模範囚であるということであります。村上さんの仮釈放につきましては、村上国治さんの故郷である北海道上川郡比布町長が身元引き受け人をみずから買って出られ、地元の町議会は満場一致で早期釈放の決議をされて、その要請書を当局にお出しになっておられます。その地元の比布町だけではなしに、上川郡の六カ町村の村長さん、村議会においても同様の決議がなされ、また旭川市長さん、刑務所のある網走市長さん、市会議長さん、また市会議員の中では、三十名の議員さんの中の二十六名までが、早期釈放のための署名や要請行動に参加しておられます。また全国では、この村上さんの早期釈放を願う嘆願署名が六十万も集まっておるというふうに聞いております。村上さんは逮捕以来一度の保釈も許されない。未決十一年に引き続きまして先ほど申しましたように満十六年間、新しい憲法では例を見ないほど長期の勾留に耐えておられるわけであります。 個人的なことを申し上げて恐縮でございますが、村上さんと私とは同じ年齢の四十五歳でございます。私も白髪でありますが、村上さんは非常な白髪になられて、からだも小さくて、一見六十歳くらいのような肉体の現象を示しておられるというふうに聞いております。一刻も早い仮釈放の特別の処置を必要としておられる状態にあるのではないかというふうに私は感ずるわけであります。村上さんの釈放につきましては、これも私はイデオロギーその他を全く越えまして、人道的な立場からもあるいはまた法律上も、仮釈放の可能な時期に参っております。また行刑成績の上からも社会復帰に何の支障もないのではないか。これがやはり、地元の比布町長さんはじめ、先ほど申しましたような署名嘆願に形の上であらわれたのではないかというふうに考えております。また聞くところによりますと、網走の刑務所所長さんも法務省の関係の方々も、好意的にその時期を配慮しておるというふうなおことばもいただいておるようではございますが、現実にはまだ仮釈放の決定はないわけであります。もちろんこれは法律的に見ました場合に、所管は地方更生保護委員会の専属ではございますけれども、やはり法務省の御姿勢と申しますか、そのお考え方が、更生保護委員会のほうにも間接に大きく響くということを考えることが通常ではないかと思います。私は、ぜひともこの人道的な見地からも、あるいは行政の精神からいいましても、先ほど申しましたような諸般の事情がございますだけに、網走といえば日本の中でも北海道のさい果てでもあります。酷寒の網走でことしもまたお正月を迎えられるというようなことのないように、格別の配慮をお願いしたいわけであります。先ほど冒頭に事実問題あるいは裁判問題に触れないということを申し上げましたけれども、公知の事実といたしまして、いま再審を検討中の札幌高裁におきましても、例のきめ手となりました弾丸鑑定書が偽造であったということも明らかにされておることもぜひ御配慮いただきまして、私がいま申し上げましたような趣旨での格別の御姿勢を法務省としてもお示しいただきたい。これについての局長の御見解を求めます。
○鹽野説明員 いわゆる白鳥事件の仮釈放の問題でございますが、先般松本委員からもこれに関する御質疑をいただいたわけでございます。本件は、先般もお答え申しましたように、ただいま北海道の地方更生保護委員会で仮釈釈放の審理を進めているところでございます。ただいま御指摘のございましたように、この村上国治という受刑者につきましては、網走刑務所における受刑の成績はきわめて良好であるというふうに私ども行刑当局から聞いております。それからたくさんの陳情があったということ、これも、私自身もこの事件につきましての陳情を受けておりますので、それらの陳情者の方々から現地にもこれこれの陳情がなされているということの御説明をいただきまして、その点も承知いたしております。この事件は、先ほども申しましたように、北海道の委員会で審議中でございます。御承知のとおり、委員会の仮釈放についての審議につきましては、法務省から何ら指示、指揮等をすべき問題ではございません。むしろ、この問題の取り扱い、考え方につきまして、私がここで意見を述べますことは、かえって委員会の独立の判断に影響を与えるおそれもございますので、法務省ないしは私の考え方というものは控えさせていただきたいと思います。 ただ、御指摘のような、すでに現実の問題として十六年間も獄窓に収容されているという事実もございます。いろいろの事情を判断いたしまして、北海道の委員会においては慎重に審議を進めることも考えております。
○岡沢委員 この問題の質問はこれで終わります。 それからまた、通告しておりました在日台湾人の法的地位その他の問題についての質問は、もう少し準備をしとうございますので、次回に譲らせていただきます。
○大竹委員長代理 午後二時より再開することとし、この際、暫時休憩いたします。 午後零時四十四分休憩 ————◇————— 午後二時十九分開議
○永田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。 国政調査関係の質疑を続行いたします。山田太郎君。
○山田(太)委員 まず、きょうものどをいためておりますので、なかなか聞き取りにくい点もあるかと思いますが、その点は御了承願っておきます。 そこでまずお伺いいたしたいことは、昨日の法務委員会の引き続きのようではございますが、舌足らずの点もあったやに見受けますし、また、きょうあるいは他日協議なさってからお答えをいただく、そのように申し上げております準起訴手続の改正の件でございます。本旨を間違えられると困りますので、一言お断りしておきますが、あくまでも現在の検察行政が全国民の信頼のもとに運用されていくことが大切である。また民主主義国家を維持していく上においても、国民のためにもそれが非常に重要なことであるということが一番の根本の理念でございます。ほかに何も他意はないのでございますから、その点はまず御了承願っておきます。そこで、きのう申し上げたのは、刑事訴訟法第二百六十二条の改正の件は再び申し上げておきたいのでございますが、いま現在は職権乱用の条項になっております。そこで刑事補償法第二十五条のそのきめられた内容を二百六十二条に盛っていこう、そうして贈収賄の当人が告訴し、あるいは告発することはないわけですから、その二つの文字は抜いたほうがいいんじゃないかという提案を申し上げたわけです。そこで、その根本はあっせん収賄罪が、きのうの刑事局長の御答弁では請託を受けるという点と、もう一つは不正の行為と、この二点が大きな問題点にもなっておるというお話しをお伺いいたしました。また事実そのとおりだとも思いますが、よしんばその条文があったといたしましても、一番大切な問題は、その運営のいかんによる、これが一番の根本問題ではないかと思います。その運営のいかんによって、いま現在の検事の起訴独占、その問題において多々論議はあると思います。しかし最初に申し上げたとおりに、現在の検察行政が国民からの信頼をあくまでも受けていく立場において、これは新聞論調や、あるいは多くの国民の投書を見ても、あるいは私が耳にした国民の声にいたしましても、これは非常に心配する向きが多々あるわけでございます。そこで純粋な立場からきのうの提案を申し上げたわけでございます。したがって準起訴手続を改正して、そしていま現在の検事の起訴独占を云々するという問題は、これもまた前提として大きな問題ではありましょうが、現在その検事の決定をチェックするのは検察審査しかない。しかもそれには拘束力がない、勧告だけしかできないということになってくれば、これは適格審査会——これはまた別の問題でございますから、その案件、その事件に対してはやはり検察審査会しかないということにも現在の状態ではなっておるわけです。そこで準起訴手続を改正して、そして涜職の罪の章を、御承知のとおりこれは職権乱用も含まれております。そこで一条を追加して、涜職の章を全部これに当てはめたらどうだろうか。これは当然検討し、あるいはいろいろな論議もあり得ると思いますので、直ちに御答弁をいただこうとは思わない。よく協議して、どういう点が不都合であるか。きのうのある大臣の答弁ではないのですけれども、私も弁護士出身ではありませんし、その点未熟なところは御了承願うとして、十分検討していただいて、そして他日、次の通常国会において、もう一度検討をし考慮を願う、そういうことにしておきたいと思います。 そこで、それに関連をして一点だけお伺いしておきたいのでありますが、ここ十年の準起訴手続の請求件数、もしおわかりならば大体の数でけっこうです、唐突にお伺いすることですから。もし資料があるならば参考までにお答えしていただきたいと思います。
○川井政府委員 ただいま的確な資料を用意してまいりませんので、至急調べまして、また次の機会に御報告申し上げます。
○山田(太)委員 では次の問題に移ります。 先刻御案内のことでございますが、刑事補償法のことについてでございます。これは申すまでもないことでございますが、今月の十一日の一流の新聞に報道されていることでございます。まず最初のところだけを読ましてもらいましょう。「殺人を犯しながら精神病のため”心神喪失”で無罪となった男が、それまで拘置されたことについて国に刑事補償を請求していたが」、これに対して二十六万五千円の支払いを認める決定が行なわれた。その他多々書いてあるわけでございます。これは全部読んでもいいのですが、時間の関係でむだを省きまして刑事局長にお伺いいたします。この殺人事件で殺された者には一銭の補償も出ないのに、殺した加害者のほうに国から二十六万五千、まだはんぱがつくかもしれませんが、補償金が支払われておる。これは一般常識から考えても理解できない。このように記事の内容もなっております。これは当然国民のほとんどがこの感じをぬぐうことはできないと思うのでございますが、刑事局長はこのことに対してどのようにお考えになっておるか、お伺いしておきたいと想います。
○川井政府委員 私も社会正義という観点からいたしまして、異常といいますか、非常に合理的でないような気がいたします。かりに法律がそういう場合に補償ができる、こういうふうな規定ができており、またしたがいまして請求権があるといたしましても、問題になった人の、ないしはその周辺にある人の倫理的な感情というのでしょうか、合理的な、国民的な社会上の通念といわれるような常識からいいまして、おそらくは法自体も、そういうふうな場合にはあえて請求をしない、それは遠慮するというようなことを期待してできている法律ではないかというふうにも考えているわけでございますけれども、本件の場合におきましては、いろいろな事情があったことと思いますが、あえてこういう請求がありましたので、請求があった以上は、法律の規定に基づいて裁判所はこういう決定をした、こういうことになっております。
○山田(太)委員 では続いてお尋ねいたしますが、この補償金ですね。これは憲法第四十条ですか、この条項によって支払われているのだ、これは私、先ほど申し上げたとおり専門家じゃないものですから、一応お伺いしておきます。
○川井政府委員 御指摘のとおり、基本的には憲法四十条の規定に基づいて、それを具体化するためにできております刑事補償法の規定に基づいて支払われたものでございます。
○山田(太)委員 そこで次にお伺いいたしますが、犯罪成立の一般要件といいますか、これは私の知る範囲では、構成要件該当、それから違法、それから有責、この三つであると聞いております。そこで、この事件の経過並びに事件の内容について御承知であったならばお伺いしてみたいと思います。
○川井政府委員 四十二年の五月のことでございますが、この事件の被告人が、当時居住いたしておりましたアパートの隣の部屋に住んでおった夫婦に対して、日ごろからその夫婦が、自分の行動について、それを原因として安眠の妨害といいますか、自分の安眠を妨害しているというようなことを根に持ちまして、その隣に住んでおる夫婦を出刃ぼうちょうでもって切りつけまして、出血多量のために両名を死傷させたという事実関係につきまして、殺人罪で裁判所に起訴をした、こういう事実関係でございます。
○山田(太)委員 あわせて、ついでに、その無罪となった理由、これは当然答弁も予測されることでございますが、少し詳しく説明していただきたいと思います。
○川井政府委員 検察官がこの事件は起訴いたしまして、すでに公判で審理が続けられまして、具体的な事情が一応公表されておりますので、そういう前提で詳細のことを申し上げたいと思います。 検事が公訴をする前に、多少その犯罪の動機等に納得できないものがございましたので、あるいは精神的に問題があるのではないかということを考えまして、東京地検の担当検事が、東京地検の中に設けられておる精神診断室というものがございます、ここに常時精神科の医師がつとめておりますので、その医師に一応の診断を求めたわけであります。医師はその拘置の期間、被告人を常時監視いたしまして、その勾留の期限までに、精神分裂病の病質者ではあるけれども、まだ精神病というところまで断定ができない状況であるということで、しさいに検察官がその医師の説明を聞いた上、法律上の心神喪失には当たらない、しかし、あそこに書てございます心神耗弱というのがございますが、それより少し程度の低いもの、それは刑事責任があるのだということに刑法上きめられておりますので、その心神耗弱に該当するものであるということに一応判断をいたしまして起訴、不起訴を思案いたしましたけれども、いかにも残虐な犯罪であるし、心神喪失でなければ、耗弱ということならば、やはり起訴して刑事責任を求めたほうが適当だということに決定をいたしまして、東京地裁に殺人罪で公訴を提起した、こういう案件でございます。 そこで裁判所に事件が移りましていろいろ攻撃、防御の方法が行なわれまして、また弁護人のほうからも、当時の状況は耗弱ではなくて喪失の状況にあったものだということが考えられるので、ぜひもう一回あらためて別な医師に精神鑑定をお願いいたしたいということを裁判所に申請いたしまして、その申請が認められまして、今度は裁判所の命令でもってあらためてこの精神銅定が行なわれたわけでございます。 これは、かなり時間をかけて行なわれました結果、結論といたしましては、やはりこの犯行当時においては、心神耗弱というよりは、むしろ心神喪失の状態において行なわれたもの、医学的には精神分裂病者であった、こういうふうに認定するほうが妥当だ、こういう結論が出たわけでございます。そこで、検察官が依頼して行ないました精神鑑定の結果と、裁判所が命令で行なった精神鑑定の結果とが、ここでややニュアンスの相違が出てきたわけでございまして、結局裁判官はあとの精神鑑定のほうを信用いたしまして、本件は心神喪失によって行なわれた犯行である。したがって先ほど御指摘になりました構成要件に該当しておりまするし、また違法な行為でありますけれども、責任がない、いわば有責性がないということで無罪の判決が下された、こういうことでございます。 この無罪の判決につきまして、先ほど申しました補償法に基づきまして請求がありまして、あらためて裁判所がそれをいろいろ審理いたしました結果、やはり補償することが適当だろうということで、この前ここで御審議をいただきました六百円から千三百円までという間で、最低の六百円というところでもって補償の決定がなされた。こういう事情になっております。
○山田(太)委員 無罪になった経緯とそれから刑事補償法が適用された経緯、それはいまの御説明でよくわかったわけですが、そこで、問題を再びもとへ戻して提起申し上げたいことは、まずこれは、一般の方の投書にこのように出ております。やはり論点を進める上からこれは一つの参考になる問題でございますから、全部を読みたいと思います。これも一流の新聞の十二月十四日の記事でございます。これはやはり国民の声を代表した声だと思いますので……。まず、読みます。「精神病者とはいえ殺人、傷害という凶悪な行為をした者に無罪判決のため刑事補償法が適用され、二十六万余円を支払われるとのニュースにはあ然とし、今さらのように立法に際しての原案作成者とこれを審議する国会議員の知性とでも言うべきものの重要さを感じさせられた。」国会議員という名前も出ております。「旧法の心神喪失の責任無能力者のケースは払わずともよいとの規定があったことは正しい措置だったはずなのに、人権尊重のみを重要視した結果、こんな不合理きわまるものが制定されたのだろう。人権の重要さを認める点では人後に落ちないが、誤った人権尊重には徹底的に反対だ。この場合、殺傷した事実は明白であり、精神鑑定の結果が出るまで拘置されるのは当然だろう。しかるに無罪であるからとて国が補償責任を負うなどとは途方もないことだ。しかも被害者側は一家の柱石である主人が殺され、妻女が傷つけられているのに、どこからも何の補償も与えられないで泣き寝入りでは、事の順序を誤り片手落ちもはなはだしい。緊急な法改正を要望する。」これは一国民の投書でございますが、初め申し上げましたように、国民の声を代表した声じゃないか、このように判断いたしますので、まず読み上げました。 それから、専門家の立場の方でございますが、これは宮沢教授がこのようなことをおっしゃっています。「刑事補償は、人がなんらの過失なくして抑留または拘禁された場合には、有罪とされた場合以外には、その損害を国が補償するのが衡平の原則に合すると考えられてみとめられるものであるから、抑留または拘禁されることにつき、本人に過失があるときは、補償しないと定めても(旧刑事補償法はそう定めていた)、本条(註、憲法四〇条)に反するとはいえない。本人の過失によって抑留または拘禁された損害をも、国民全体の負担で補償すべきことを本条が要求しているとは解されない」とされ、補償法三条一号の消極的要件の規定は「当然というべきで、そういう明らかな補償請求権の濫用に対して国民の負担において補償するのは、むしろ本条の精神に反する」。補償法三条一号、この内容がこのたびの殺人罪の刑事補償法適用という面については、これはそう解釈するのは、ここはちょっと間違いかと思いますが、この考え方の論理においてはやはり同じような解釈をしていらっしゃるんじゃないか。 また、これは一橋大学の植松教授でございますが、「被告に刑事責任がないとしても、違法行為が立証されれば、国は責任をとらなくてもよいように同法を改正すべきだと思う」。 このような意見を参考のために述べてみたわけでございますが、これは、われわれしろうとが考えてみても、刑事補償法の無罪ということと、それから、憲法四十条の無罪ということとの趣旨は違うのではなかろうか。あえてここで断わっておきますが、この二十六万五千円何がしですか、これは心神喪失の結果、無罪に裁判の判決が出た方が、やはり家族等の生活等もあって、そうして万やむなくこの刑事補償を請求されたのかもしれませんから、その点について云々は、これはまた別問題でございます。その点をとやかく申し上げているわけではありませんから。しかし、憲法四十条の無罪と、それから、刑事補償法の無罪と、これはおのずから、字は同じであっても、これは違いがあるんじゃなかろうかという、これはしろうとの判断でもできるわけでございますが、この点についてはどうでしょうか。
○川井政府委員 たいへん法律家の間でも、御指摘の点をめぐって議論のあるところでございます。 憲法四十条にいうこの無罪というのは、刑事補償という趣旨から考えてみて、憲法四十条にいう無罪の中に、本件のような心神喪失による無罪というようなものを初めから含んでいないんだ、補償という趣旨を憲法の四十条できめたのは、そういうようなものまでも補償するということを憲法四十条が要求しているんではない、こういう説もあるわけでございます。その説に従えば、四十条を受けてできました刑事補償法の無罪というのは当然にもう、そういうような無罪は含まないということでもって読むんだというような有力な説があるわけでございます。ところが、御承知のとおり、憲法四十条の趣旨、しかも明確に憲法という規定の中に刑事補償の根拠法規が確然と掲げられたということ、それから、旧刑事補償法のときには明確に、心神喪失による無罪は補償しないんだということの明文の規定があったわけであります。ところが新しい憲法を受けて変えた新しい刑事補償法には、あえてその規定を削ったといういきさつから考えますと、彼此考戴いたしまして、総合して考えてみまして、この憲法の四十条の中にも、新しい刑事補償法の中にいうところの無罪も、これは一切の無罪を含むんだ、その無罪の中に甲乙ないんだ、こう解釈するのが適当だ、こういう見解もあるわけでございます。 そこで、このいまの無罪の読み方について、積極、消極の二つの説が前から対立しているのでございますけれども、現に刑事補償法を立案いたしました当時の法務省の考え方、それからまた、国会におけるその趣旨の説明というようなものは、あとのほうの説、四十条の無罪の中にはあらゆる一切の無罪をいうのであって、いまの三条一号のいわゆる権利の乱用にわたるようなものは別といたしまして、それ以外の無罪は、責任性があっての無罪であっても、違法性がない無罪でありましても、すべての無罪を含むんだ、こういう趣旨で立案したものであって、これが憲法四十条の趣旨を尊重するゆえんだというふうに説明してきておるわけでございます。 いまの運用といたしましても、そういう運用に相なっているわけでございますが、その陰には、先ほど申し上げましたように、心身喪失で無罪になったというふうな場合においては、それをしも、何といいますか、世間にこれだけのショックを与えるというような事柄でございますから、それほどのことをあえてやるというような人はおそらくないだろうということで、続々と心神喪失の無罪が刑事補償を請求するというようなことはあるまいというふうな大きな期待がひそんでいたことは間違いないと思います。と申しますのは、私ども調べたところでは、たとえば昭和四十年に起訴した事件の中で、心神喪失を理由に無罪になりましたのは四十九件報告になっておりますが、その中で、刑事補償法の規定に基づきまして補償を請求したのは一件もございません。それから、翌昭和四十一年には三十六人無罪の言い渡しがございまして、これにつきましては、請求をしたものが一件ございます。それから四十二年には、心身喪失で無罪の言い渡しを受けたものは二十件ございます。その二十件につきましては、一件も請求の申し立てをした人がございません。この経過から見ましても、ほとんど大多数の国民の常識というものは、かりに権利として認められておりましても、請求しないでそれをがまんしておるというのがやはり健全な常識ではないか、こう思うわけでございまして、たまたま特殊な事情か何かがございまして、先般問題になったようなケースが出てきた、こういうことで、異例中の異例というふうに見てもよろしいかと思います。まあしかしこれにつきましてもいろいろと御批判なり御指示を受けまして、最も妥当なひとつ考え方を政府として考えていかなければならないと思っております。
○山田(太)委員 いまの前段の御答弁は、これは当然いまの法を擁護する立場からの御答弁だったと思います。またその立場をとられのが当然かとも思いまするが、ここで一つお伺いしておきたいことは、この心神喪失で無罪になった事件で、いまあげられたのは年次を追ってあげられました。そうしていかにも少ないという印象を受けるわけでございます。また、それを当然ねらわれての御答弁だったとも思いますが、しかしこのたびの事件、あえて事件ということばを使いますが、これが大きなショックを与えているのは事実でございます、国民に対して。また私の調査した範囲においても、相当やはり請求している件数があります。そこで、もう一度念を入れてお伺いいたしますが、ここ十年で、これは当然お調べもついていると思いますが、未遂の事件も含めて、心神喪失によって無罪になって、そうして刑事補償法が適用された、これは何件あるでございましょうか。
○川井政府委員 これは調べれば、裁判所の出している司法統計と、それから法務省の出しております法務統計というふうなものを、両方総合いたしまして確実な数字を出すことはそう手間はとれませんけれども、きょうはさしあたり四十年、四十一年、四十二年と、三カ年間の分だけを調べてまいりましたので、特に御質問がございませんでしたけれども御参考までに申し上げたわけでございます。 なお申し上げたいのですが、私はこの数字がもっと多いことを実は期待していたわけでございます。これは刑事補償法が継続審議になっておりまして、私自身、どういう道をつけて、この刑事補償というものをほんとうに合理的な姿のものにしていったらいいかということで、五十八国会が終わってからも今日まで非常に苦心をしている段階でございまして、一番苦心の要点の一つは、この心神喪失なんかの場合の補償というものを費用補償の面におきまして、それからさらに非拘禁の場合の補償を社会党案のように設けるにいたしましても、その合理性、特に被害者補償というようなものがほとんど考えられていない今日において、どういうふうな制度をつくったらば最も——どんなケースが出てきても国民がショックを受けないといいますか、納得してもらえるような案、どれが一番いいだろうかということで非常に実は苦心しているわけでございまして、やはりこういうようなものについては法律でもって補償しないというふうな規定を設けることも一つの案だろうと考えたこともあったわけであります。そうしますると、現行法でそういうふうな場合におきましても補償が得られるのだというような既得権のようなかっこうになって今日も運営されてきておりますものを、今日直ちにそれをまた旧法時代に戻しまして、そうしてそういうふうな場合には補償しないんだ、こういうふうに法律が書けるか書けないか。書くとしましても、それだけの十分な合理性が出てくるかどうかということにつきまして、外務省を通じまして、ほとんど世界各国のこの点についての、まだ重要な点が二、三ございますけれども、五十八国会を終わりましてすぐに照会を発しまして、いまかなりのものが続々私の手元に集まって、係官が整理をいたしております。いろいろな国がいろいろな苦心をいたしておりますけれども、補事補償全体の体系につきましては、なかなかうまいあれが出てこないということでございまして、私は——こういうような非常に非常識——健全常識から見まして非常に非常識だと思われるようなケースがたくさん出てくるということならば、これが一つのきっかけとなって大きな法改正ということの動機になるのではなかろうかというようなこと、ここ二、三年間の状況を見てみましたところが、ただいま申しましたような、あるかないか、あっても一件という程度のことであるということでございましたので、期待はともかくといたしまして、やはり大多数の国民の考え方というものは健全であった、こういう印象を得たわけでございますので、私、特にそういう意味でおっしゃったわけではないと思いますけれども、少ないか多いかということについてはあまりこだわっていないわけでございます。
○山田(太)委員 そこで私の調べた資料によりますと、やはり三十三年に一件、これは殺人事件でございます。それから三十八年、これも殺人事件、これが二件あります。それから四十三年、もちろん決定の日にちは違いますよ、判決の日にちで言いましたけれども。決定の日にちで申し上げますと、補償決定の年月日が四十三年になっておりますのが三件あります。ことしです。すでに三件あります。ということは、いま刑事局長のおっしゃったように、非常に少ないので、たった一件しかなかったので安心しました——安心ということばは使われなかったと思いますが、それはいまのデータの年次が違う場合でございまして、四十三年にはすでに三件も決定されておるわけです。これはもちろん未遂事件も含まれております。したがって、あのように新聞紙上をにぎわし、また国民の多くの人に衝撃を与えたこの事件があった以上は、当然将来多発するのではないかというおそれなきにしもあらずではないか。したがって、いまの法がある意味においては不備である。いまの刑事局長の御答弁にもありましたが、将来これが多発するならば、当然改正を予想しなければいけないのではなかろうかというふうな答弁だと受け取ったのですが、どうでしょう。
○川井政府委員 先ほど申し上げましたように、憲法四十条の解釈につきましては甲説、乙説がありますので、その後の憲法解釈の進歩と、また高等裁判所の判決の発展というふうなものを考えあわせまして、こういうふうな場合においてはこれを補償から省くということも四十条の精神に違反するものではない、こういうふうな確信が得られますれば、政策論として改正したほうがいいということになりますれば、政府といたしましては、大多数の国民の納得するような方向に法律を改正していくのが私どもの義務であろう、こういう結論でございます。
○山田(太)委員 そこで、法改正に向かっての意欲的な答弁だと解してけっこうでしょうか。
○川井政府委員 いま直ちに憲法解釈の問題として、十年ほど前に四十条の解釈について政府としてあらゆる一切のものを含むと解釈したほうが憲法の精神に沿う、こういう決断のもとに刑事補償法をつくり、またそういう立場で運用してまいりましたので、今日ほぼ十年という年月を経過しました段階で、直ちにこれが四十条に、そう解釈しなくても精神に違反しないんだというふうに踏み切るためには、やはりそれに踏み切るだけの覚悟と、それから十二分の研究を必要とすると思います。もちろん、いままでもいろいろな研究はいたしておりますけれども、なお踏み切るか踏み切らないかということをきめるための十分な検討ということをこれから始めたい、こういう段階でございます。
○山田(太)委員 答弁が非常におじょうずといいますか、どうもどっちでもとれるような刑事局長の答弁なんですがね。先ほど申し上げましたように、たった一件だったということは違う、私の資料によりますと。また、最初御答弁がありましたように、憲法四十条の精神は、このような請求はなされないだろうということが、四十条の規定の底にはあったに違いない。そう望んでおります。しかしそれはもう裏切られておるわけです。しかも国民に大きな衝撃を与えた。しかも四十三年だけで三件もある。このときに至っててんで考えようとしないというのは——これは考えようとしないとさえもとれるわけです。いまの答弁はどちらともとれる。そんな答弁は常識で考えてちょっと解せない答弁なんですがね。もう一度お願いします。
○川井政府委員 その前に一つ申し上げておきますが、あとで申し上げようと思ったんですが、該当事例はいままでに六件しかないですね。
○山田(太)委員 これは四十三年が三件……。
○川井政府委員 ですから三十三年に一件、三十八年に二件、それからことし四十三年に三件ございますが、そのうちの一件は四十一年の十二月に判決の言い渡しがあったものでありまして、合わせて六件でございますが、これは私どもよく調べております。ことしになって確かに二件なり三件という数字が出てきて、多くなったということは御指摘のとおりでございます。 それから御質問の要点でございますが、この憲法解釈は憲法解釈としてさることながら、日本の検事というものは、毎度申し上げていることでございますが、起訴猶予の権限があるわけでございます、起訴の権限ですから。先ほどの検事の段階で精神診断室でお医者さんが検討したときに、精神病とは言えないけれども分裂病質者だ、こういったときに、さらに検事が十二分に、また別な医者にもう一回診断させるというような時間的余裕でもあれば見せて、さらにまた供述の内容ということを十二分に検討するような時間的な余裕があれば、今日十日間ではどうしようもありませんけれども、そういうような十分な時間があれば、これはやはり法律上は心神喪失と認めたほうが妥当だとこう思えば、これは起訴しないほうがいいわけでございます。起訴しなければ無罪になりませんので、補償の問題は当然起きてこないということになるわけです。裏があるわけでございまして、検事は起訴、不起訴について絶対権を持っておりますので、検事が起訴した以上は、これはもう間違いなくといいますか、まず有罪の判決が確信できる、その時点においてはそういうふうな確信のもとに公訴を提起するわけでございますので、それがさらにその後における裁判所の審理の過程でもって責任性がないということで無罪になった、こういうふうな場合におきましては、あとから批判しますと、起訴、不起訴の全権をまかされておる検察官の見込みが違ったと言っては言い過ぎでございましょうけれども、時間的な経過がございますから、ですけれどもそういうふうな検察の組織をとっておる限度におきましては、憲法四十条の解釈にも響いてまいりまして、運用としましても、四十条の精神としましても、責任性がないということではねられた場合におきましても理論上これを補償してやるというのが、常識論は別です、法律理論上の問題としては理にかなっているのじゃないだろうかというようなところが、いまの刑事補償法をつくったときの政府当局の考え方でございます。
○山田(太)委員 いま法理論上はということばをお使いになりましたが、これはやはり法の根本の精神というものは、 これはあくまでも安寧と秩序、国民を守る立場であり、国民を保護する立場である。その立場からいいましても、全国民の常識から疑われるようなことが多いです、そういう適用をされるならば。これがまず大前提です。そこで、その法理論は正しくない法理論とさえも即断したって間違いじゃなかろうという、刑事局長でさえもおかしいという気持ちを持っているのです。これはやはり何かの盲点があるのです。常識で考えておかしい、しかし法理論上は適用しても間違いじゃない。しかし全国民が考えておかしいという以上は、この法にやはり盲点があるに違いないということがわかります。一番最初に御答弁になったのは、ある意味においては、脆弁だとさえも言えるのじゃなかろうかと思うのです、ことばは悪いですが。そういうものを請求するものはないだろうということを予想したという意味です。もう一度申し上げると、盲点があるに違いない。しかも憲法の第四十条は、無実の罪であった、冤罪をそそぐ意味において国家が補償する、これは当然です。やはりしかしここには有実がある。無実じゃない、有実なんです。ちゃんと構成要件がそろっています。したがってそこで考えられるのは、憲法は憲法だけによって解釈すべきであるのに、憲法があるがゆえに民法あり、刑法あり、そして刑事訴訟法がある。この刑事訴訟法の無罪を、この条項をもって憲法の無罪を判断しようというところに大きな法理論の無理があるかもしれませんよ。われわれのごときが責めるべき問題ではないかもしれませんが、考えてみて、これは順序が倒錯したような考え方である。したがって、そこにこの法の不備があるゆえに全国民が納得しないような危惧が出てくる。これは大きな盲点がある。これはおわかりになると思います。盲点がないという判断や言いのがれがあるのだったらおかしいと思いますが、どうでしょうか。
○川井政府委員 刑事補償法を改正しなくても、他の法律ないしは運用を改正することによって、いま国民が非常にふしぎに思っているようなことが解消できるならば、憲法の解釈はあらゆる一切のものを含むという解釈をそのままにしておきましても、差し迫ったこの事態をまかなうことは可能だと信じます。したがいまして憲法の解釈をこういうふうに定めて、それに基づくところの刑事補償法をこういうように定めて、こういうふうに改正すべきだという御所論ももちろん敬服に値する所論であることは当然でございますけれども、私どもの立場からいうならば、憲法の解釈に甲論、乙論があるということである場合に、憲法の解釈でございますから、一たん取りました解釈をそう簡単に変えるということは、私はやはり妥当ではないと思います。なるべく憲法の解釈を、憲法全体の精神でもってこれを広く国民のいろいろな権利を保障していくという観点でもって解釈する考え方のほうがいいんじゃないか、こう思いますので、その辺のところは、いまなかなか踏み切れないということを率直に申し上げました。 そこで、かりに憲法の解釈を踏み切れなくても、したがって、刑事補償法の改正という手段によらなくても、ほかの方法でまかなうことができるならば、そういう方法をとるということも研究したいということでございますので、憲法の問題、刑事補償法の問題、それからいまの警察制度の問題、それから検察官の起訴、不起訴、特に精神障害者に対する運用の問題、それから、あとからおそらく御質問が出るだろうと思いまするけれども、昨日の刑法の部会で審議になりました保安処分の問題というような制度ができるならば、この点に関する問題は一挙に解消してしまうわけでございます。したがってそういうふうな点、あらゆる面を改正いたしまして——問題があるということはよくわかりました。ただ、あとはどういう方法で改正するか、こういう問題でございます。
○山田(太)委員 では、この問題は、盲点があるということをお認めの上での御答弁だと思いますので、一応これで次に移らしてもらいます。 そこで、この場合、あとに残る心配の問題は、今度は被害者の問題です。現時点においては、ことばは違いますけれども、心神喪失の殺害者、これが刑事補償を受けて、そうして殺されたほう、あるいは傷害を受けたほう、あるいは殺された家族については、ただの一円の補償もないわけですね。ここにまた、いま国民の、世論ということばは大げさですけれども、それが非常に沸騰しているのはこの点だと思います。常識で考えてみても、旧法の場合は、ちゃんとそれには補償しなくてよかったのが、今度、事実目の前において補償されている。しかも殺された家族は、いまも新聞を読みましたように、いなかのほうで奥さんが子供を連れて、しかも生活に悩みながら細々と暮らしている。その時点は心神喪失であったとはいいながらも、 これはまた別の論点でお話ししますが、国民感情からいうても、常識からいっても、非常におかしな問題です。人権尊重の立場からいっても、心神喪失で殺したほうの人権の尊重はされて、殺されたほうの家族、傷害を受けたほうの当人の人権尊重はされてないと極論さえしてもいいと思うのです。この点についてはどうでしょう。
○川井政府委員 刑事補償の範囲をいまよりずっと広げて、不拘束の在宅起訴の場合にも、無罪になった場合に補償をすべきだ、それから、あらゆる一切の訴訟費用も無罪になったら補償すべきだという、いろいろな御意見が前国会から特にきつく主張されてまいりまして、その際に、私ここで御答弁申し上げたことでございまするけれども、いろいろの補償のバランスをとってやはり考えてみるべきじゃなかろうかということを申し上げまして、たとえば、遠慮がちに申し上げたのですけれども、被害者補償というようなことは、今日必ずしも現実的には具体化されていないように思います。それらのものとのバランスの上にあって、調節の上に立って補償の限度というものを徐々に広げていく。私広げていくことにいささかも反対ではございません。バランスの上に立って広げていく。すべて国税でまかなわれる費用でございますので、額は必ずしも多くないといたしましても、たてまえ論としては非常に重要な問題だと思う。で、被害者補償の点についても、むしろ私のほうから御答弁を申し上げたことをいま記憶しているわけでございます。 〔委員長退席、大竹委員長代理着席〕 そこで、おっしゃることにつきましては、私も趣旨におきましては全く同じような考え方でございます。被害者の補償というものについても何らかの措置を講ずべきではないかということでございます。 ただ、あまり詳しくなって失礼かも存じませんが、法律の面だけで申し上げますと、被害者というのは、加害者の不法行為によって害を受けたものであるわけですね。したがいまして、また、その遺族なりというような人たちも、その加害者に対して、法律上は民法上の何らかの請求ができることになっております。しかしながら、いま交通事故なんかの場合におきましては、かなり多額の賠償が認められたり、あるいは自賠法の規定なんかに基づきましてかなり多額の補償が行なわれていることになっておりますけれども、殺人とかあるいは傷害とか窃盗とかいうようなものは、加害者のほうにほとんど財産的な基礎がない場合がほとんどでございますので、かりに民法上の手続をとりましても、むしろ費用倒れで、実際上の補償が得られないということで、多くは泣き寝入りというような事情になっているのが現実だろうと思います。したがいまして、そういう現実を踏まえまして、法律的には、形だけは、民法の十分な規定に基づきまして補償の形はつくっているけれども、これは絵にかいたもちであって、現実の補償は得られないという現実になっておりますので、できますれば、そういう場合の被害者補償というものを、国がこれを行なうという制度がとれるならば、それはいまのギャップを埋めるためにも非常に適切な政策であろう、私もそう思います。ただ、これは申し上げるまでもないと思いまするけれども、被害者の補償を国が行なうという場合の理論構成というようなもの、先ほど申し上げましたほかの補償との調節、バランスの問題、それから国の財政というものの基本的な考え方が、民法の規定があるのに、あえて現実に補償が行なわれないというので、国家がすべてそれを補償していくというふうな態度が、国家財政の基本理念からどこまで認められるかどうかというような、またむずかしい基本的な問題もございます。そういうような問題もございますので、いま法務当局だけの立場でもって被害者補償について直ちに検討を開始したいというふうなところまで、ここでは申し上げられません。
○山田(太)委員 法理論の立場からの、兼ね合わせての御答弁ではありましたが、その点もわからないわけではありません。しかし、当然いまの国民常識からいいまして、たとえて言えば、一例でございますが、心神喪失者等による殺人あるいは傷害等にいまの補償をする、国において補償をする、それが妥当であるという考えは、これは当然だと思います。いま直ちに作業を始めるか始めないか、これは別問題としても、しかし、いまの時点においてここまで国民が、 これは全国民と言ってもいいと思いますが、こんな法律があったのかという注目の眼を浴びておりながら、もしその作業を始めないとするならば、これは当局の怠慢にもひとしいことであるという糾弾を免れないと思いますが、どうでしょう。
○川井政府委員 いろいろな事態ができてきて、その事態をあらゆる角度から検討いたしまして、原因がどこにあるかということを突きとめて、それを解決するためにはどういう方法が一番いいかということをきめていくのが私ども政府に職を奉ずる者の責任であることはよくわかっております。したがいまして、御指摘になりましたこの事件は、私たちも含めて、大多数の国民が確かに異常な感じを持ったことはいなめないと思います。この方法を迅速に、どういう方法で、またどういう方針でいったら一番いいかというようなことについては、もうすでに私は部内においては検討を進めておるところでございます。
○山田(太)委員 もう一度、しつこいようですが、国家補償の問題ですね。遺族に対する補償あるいは傷害を受けた人の補償、それについての検討も始められたほうがいいのじゃないかと思いますが、どうでしょうか。
○川井政府委員 すぐ法律制定に結びつくかどうかというふうな意味ではありませんで、すでにこの刑事補償法の一部改正案が継続審議に、議員提案の形で相なっておりますので、それについて政府の立場としてどういう意見を述べるか、またさらに政府として適当な案があるならば積極的に政府から提案するのが、予算を伴う法案でございますので、それが筋だろう、こういう観点に立ちまして、その辺のところをかなりこの夏から暮れにかけて煮詰めてまいっております。その過程において大蔵当局との折衝、最高裁判所との交渉あるいは検察庁、警察庁との、担当現場の係官との意見の交換というようなことを通じまして、それが先か被害者補償が先かということについても真剣な議論を戦わされております。そういう意味合いにおきましては、被害者補償がどうあるべきかということはすでにかなり前から検討がされている、こういうふうに考えても差しつかえないと思います。
○山田(太)委員 そこで、まずそれの早いことを要望しておきまして、もう時間も経過しておりますので、最後にただ一点だけ。 それは厚生省にも当然言うべきことでございますが、精神病対策ですね。これは犯罪の予防の立場からも、法務省としてもある意味においてはリーダーシップをとって、そうして犯罪予防の立場からこの精神病患者に対しての対策というものをもっといまより以上の——いまも進めていらっしゃると思いますが、いま現在はこのように進めておる、そうしていまも人員、件数を読み上げられましたが、あのように多くの数でございます。将来はそれに対してどのように向かって、法務省として犯罪予防の立場からどのような対策をしていこうかという所見を伺って、私の質問を終わりたいと思います。現状とこれからと。
○川井政府委員 現状は、結論を申し上げて、必ずしも満足すべき状況ではございません。法務省としましては、検察庁という役所の仕事を統轄しておりますので、検察庁は一線の捜査当局から事件が送られてこない限りは、町に出て予防のためにいろいろな方策をするという法律的な権限が与えられておりませんので、第一義的には、心身障害者の犯罪というようなことについての予防的措置は、私どもよりはもっと別な担当官庁において主体性を持って行なっておることでありますから、私どもはそれについて側面から協力を申し上げるという体制をとっております。 それから、現在具体的にどういうことをやっておるのかということになりますと、たとえば四十年には、検察官が調べた結果、これは心神喪失で起訴はできないということで不起訴に落としましたのは、四百四件ございます。四十一年には三百六十七件、昨年、四十二年は三百十五件ございます。あとは検察官としては心神耗弱程度で有罪がもらえるという見込みで起訴いたしましたところが、冒頭に申し上げましたように、四十九件とか三十六件とか二十件とかいうような無罪が出てきたという結果に相なるわけでございます。 そこで、起訴猶予にいたしまして不起訴にいたしました分につきましては、御承知の精神衛生法の規定に基づきまして、直ちに野放しにすることなく、再び同じような犯罪を犯すおそれがあると思われるような者につきましては、措置入院の措置をすべて例外なしにとっております。それから先ほど言ったように、起訴いたしましても無罪になったというような場合におきましても、これを放しますとなお危険でございますので、これらの者につきましても、精神衛生法の規定に基づきまして、間を置かずに直ちに病院に措置入院ができるように、手続をすべて講じております。 それから検察庁の中には、先ほど申しましたとおり、診断室を設置し、東京、大阪等の大都市では医師を常時常任でもってお願いしまして、手広く診断を行なって、そして起訴か不起訴かをきめるための資料を提供さしておる。その他の地区におきましては、嘱託医の制度をとりまして、それも遺漏のないようにいたしておりますので、一応いまの範囲内でできるだけのことは法務省としてもやっておるつもりでございますけれども、なお起訴と不起訴の間でもってかなりの数字が出てまいっておりますので、その辺のところはもう少し予算をたくさんいただいて、その予算によってより診断室の拡充をはかりまして、間違いのないような診断をするというようなことも詰めてみたいと考えております。 将来の問題といたしましては、先ほどちょっと触れましたように、各国に設けられておりますような保安処分という制度を設けて、そして刑罰ではなくて、保安処分でもって治療でまかなっていくというような制度をぜひとも国会の協力を得まして早く実現いたしたい、かように考えております。
○山田(太)委員 最後に、国民の安全のために保安処分等も含めて適正な処置を積極的に講ぜられることを要望いたしまして、私の質問を終わります。
○大竹委員長代理 中谷君。
○中谷委員 三点お尋ねをいたします。資問の順序は、刑事補償の問題と、それからいわゆる産業スパイ罪の問題、それにシンナー遊び対策、この三つですが、その順序でお尋ねをいたします。 一番最初に、厚生省にお尋ねをいたしますが、先ほど刑事局長のほうから御答弁のありました心神喪失者の犯行、犯行を犯したとされている精神病者、精神障害者、この人たちが犯行当時精神衛生法等によるどのような措羅を受けていたか、この点についての確認はできているのでしょうか。たとえば医療を受けていたかどうか。精神衛生相談所その他の施設の指導を受けていたかどうか。全く放置されていたか。気違いに刃物ということばがございますから、この点刑事補償問題以前にそれらの問題が気にかかりますので、ひとつお尋ねをいたします。
○佐分利説明員 精神障害者の犯罪をどうしますかの前に、精神衛生法に基づくいろいろな管理の問題でございますが、端的に申しますと、全国の正確な実態は把握いたしておりません。ただ、いろいろ事件が起こりましたときに、そのつどさかのぼって確認をしておるわけでございますが、具体的な例で申し上げますと、先般の大熊実の場合でございますが、これは精神衛生センターあるいは保健所がこの障害者を把握していなかったわけでございます。またその前にございました智子ちゃん殺しの丸岡の場合でございますが、これは精神衛生センターのほうも保健所のほうも、把握いたしておりました。このような状況でございまして、必ずしも全部の精神障害者が現在衛生当局で把握され、適正医療を受けるように指導されておるわけではございません。しかし、年々こういった行政把握率も向上してまいりまして、現状においてはそういった方たちの過半数は、衛生当局の指導下に置かれておるというふうに思っております。
○中谷委員 保安処分についての法制審議特別部会での結論のようなものがまとまっているわけですが、刑事局長のほうにお尋ねします。法勝省のほうでは、たとえば昭和三十八年の精神障害者処遇百分率については、全く放置されているものが六四・七%という統計が出ておりますが、これは犯行当時どのような処遇を受けていたかということは、今後の犯罪防止という観点からも当然そのようなお調べができていることだと思います。気違いに刃物ですから、もう一ぺんやられたらたまったものじゃないので、その以前に犯罪をどう防止するかという観点からの、少なくとも検察庁に送致されたものについての御調査はおありだろうと思いますが、お答えいただきたい。
○川井政府委員 ちょっと御質問の趣旨が……。
○中谷委員 じゃ、もう一度言いましょう。こういうことです。検察庁のお仕事は、事件について、犯罪の今後の防止をはかるという一つのお仕事の目的もある。またその被疑者、犯罪者がどのような環境のもとにおいて犯行を犯したかということも、重大な一つの着目点である。したがって、精神障害者の犯行については、その精神障害者が医療を受けていたか、精神衛生相談所などその他の施設の指導を受けていたかどうか、全く放置されていたかということについては、十分な統計があると思うが、念のために先ほど御答弁になった犯罪者の数について、その割合を御答弁いただきたい、こういう趣旨の質問でございます。
○川井政府委員 御趣旨よくわかりました。数の少ないことでございますし、特に起訴、不起訴については、結定する前に入念な調査の必要が当然ありますので、一件一件についていま御指摘のようなことを十分に考えた上で事件処理が当然なされているものと思います。ただ、いま的確にそれでは精神障害者の場合において、少年と同じようにカードをつくってこまかく以前の処遇の状況とその後の追跡調査というようなことまでやっているかどうかということは、私いまちょっと承知いたしておりませんけれども、これはおそらく、そういう観点でまた統計を集めれば、かなり簡単に御趣旨に沿うような数字が出てくるんじゃないか、こういうふうに思います。いまは用意いたしておりませんけれども、そういう点について、さっそくまた部内について調べてみたい、こう思います。
○中谷委員 厚生省にお尋ねいたしますが、要するに医療を受けている、その他措置を受けているものと放置されているものとの比率というものを先ほど御答弁いただきましたが、犯罪を犯すその精神障害者の比率も、全体としての精神障害者の犯罪とほぼ相応することになるのでしょうか。
○佐分利説明員 警察庁の統計によりますと、刑法犯の検挙人員の中で昨年度精神障害者の占めます割合は、ほぼ〇・四%、約三千名というような数字になっております。これは年々かなり減少してまいっておるわけでございます。また精神障害者の全国の実数というものが、正確に把握されておりません。したがって、昭和三十八年にサンプル調査によります精神衛生実態調査というのをいたしておりますが、そのときの推計では、精神障害者の数が百二十四万、パーセントにいたしますと一二・九%というふうな数になっておるわけでございます。そこで、なお今後詳細な検討をいたしたいと考えておりますが、精神障害者の中で罪を犯しますものの割合は、むしろ精神障害者でない一般国民の中で罪を犯すものの割合よりも少ないのではないかというふうに一応考えております。
○中谷委員 質問と御答弁が違いましたね。私が申し上げたのはこういうことなんです。精神障害者について、医療を受けているものとか放置されているものとかいうものの比率については、先ほど御答弁がありました。そこで精神障害者で犯罪を犯したもの、その犯罪を犯したものと全体の精神障害者との比率についても、御答弁があったわけなんです。私がお尋ねしておるのは、精神障害者で犯罪を犯しておるものでいわゆる放置されているものと医療を受けているものとの比率は、全体の医療を受けているもの、放置されているものの比率と相応するのでしょうか。それとも犯罪を犯すというふうな傾向を持った精神障害者の場合には、あるいは比率の上において放置されているもののほうがいわゆる精神障害者の徴候その他によって多いとか、あるいは少ないとかということなのでしょうか、どうも私は比率は相応すると思いますが。こう質問したのです。
○佐分利説明員 これも、全国的なはっきりした数字をただいま持っておりません。したがいまして、二、三の事例から類推するわけでございますが、一たん罪を犯しますと、検察官とか警察官から知事に通報されます。そういう意味で、一度罪を犯したようなものは把握されておるわけでございます。多くの場合は措置入院になるわけでございますが、措置入院にならない場合も、在宅治療を受けるというような形をとっておるわけでございます。そういうような関係で、罪を犯した方たちのほうが、むしろその他の精神障害者よりも、 一般的に申しますと医療の管理下にはよく入っておるのではないかというふうに考えております。
○中谷委員 統計の数字が出ませんが、要するに私がお尋ねしておるのは、病院へ入っていて、病院のさくを乗り越えてきて、看護婦を突き飛ばしてきて、そして暴行傷害をやったという場合は、これはたいへんなことでしょうけれども、それよりも納得しないのは、たとえば国電に乗って、そのはたにおる人間が野放しになっておる精神病者だった、それにとにかく突き殺されたというふうなことでは、全く気違いに刃物で、お話にも何にもならないじゃないかということなんです。そこでそういう比率をお尋ねしたのですけれども、質問が少しこまか過ぎたかもしれませんから、刑事局長に対する質問に移ります。 そこで、いろいろなことをきわめて詳しくお考えいただいているようですが、憲法上の問題があるということはなるほどよくわかります。非常にむずかしいと思うのです。そうすると、そういう憲法上の問題についての検討と、国民感情としては、刑事補償することについて、あるいはせざるを得ないことについて、納得しないものがあるというふうなことの中で、たとえば刑事補償の額、いわゆる最低の額と最高の額が刑事補償にきまっておりますが、特に精神障害者については額をとりあえず当面下げるとか、あるいはまた特に刑事補償法の規定の中にあります四条でございますが、刑事補償について裁判所が補償の額を定めるにあたって考慮さるべき事情のうち「その他一切の事情を考慮しなければならない。」とある「その他一切の事情」という中に精神障害者の犯罪というふうなことは入るだろうと思うのです。特にこの条文の中に精神障害者の犯罪であるとかなんとかということをお入れになることは、すぐ思いつくことなのでございます。そこで法改正を次の通常国会に直ちに提案されるとかどうとかということとは別に、改正するとするならばこういう点がもう少し問題として考えられるという点をひとつ御答弁いただきたいし、先ほど局長のほうでお話がありました、刑事補償法の改正をまたずに、補償の問題についで解決できる問題があるということであるなら、これはどういうふうなことなんだろうか、このあたりについて、ひとつ私見あるいは刑事局で御検討になっている諸点について、御答弁をいただきたいと思うのです。
○川井政府委員 最初の点でございますが、六百円から千三百円という範囲をきめておる。本件の場合には、先ほど申し上げましたとおり、一番最低の六百円の裁判の決定がなされております。この辺のところは、やはり裁判官は十二分に制度の趣旨とこの事案の内容を考えられまして、いまあげられましたような条文の根拠に基づいてそういう算定をされたものと思います。そういうふうなきめられたワクの中で裁判官の自由判断にまかせることが相当か、あるいはもっと額を下げて——憲法は憲法としての趣旨を尊重しながら、その額をもう少し下げるというような特別な規定を設けるということも一法ではないか、こういうサゼスチョンだと思います。貴重な御意見だと思いますので、これからのわれわれの検討の中に加えさしていただいて、さらにまた検討してみたいと思っております。いま直ちにおまえの考えはどうだ、こう聞かれますれば、私はやはりきめられた額の範囲内でもって裁判所の健全な判断にまつということのほうが適当じゃないか。心神喪失の場合のみを取り上げて額を算定してくるということになりますと、心神喪失なるがゆえに、その理由だけでもってこういう額でいいんだという合理性というのが、これは法律的な説明は御承知のとおりなかなかむずかしいと思います。感情として、常識論としてはよくわかりますけれども、おそらく除くかあるいはいまのようなままで置いておくかというほうが、法律的な説明としては合理性がある。特にそれだけを抜き出して考えるということになりますと、ほかにもいろいろな例がございますので、それとの関連において考えていきますると、かなりむずかしいものがあるのではないかと思いますが、なお検討させていただきます。 それからあとの点でございますが、当面改正の問題点として考えておりますのは、現行の刑事補償法そのものについてどういうふうな手を加えるかというふうなことではなくて、先般の国会でもっていろいろ御指摘を受けました、不拘束の分とかあるいは費用補償の面というようなものにつきまして検討をしておる。その段階、過程において、現行の刑事補償法との関係がどうあるかということで、先ほどのいわゆる消極的要件を刑事補償全般にわたってどういうふうなところに線を引くかというようなことが非常に大きな一つの問題点になっております。
○中谷委員 そこで刑事局にお尋ねをしたいのですけれども、いずれにいたしましても無罪の判決を受けるということは、昨日も刑事局長のほうから御答弁がありましたが、裁判所の御裁判を信用する、そういう前提からいけば、間違った起訴をしたということにならざるを得ないと思うのです。そこで、私が刑事補償の問題を補償すべきだという議論になっていく一つの立論の根拠でもあるのだろうと思いますけれども、それはともかくといたしまして、起訴前における精神鑑定の実情については先ほどお話がありましたが、現在の検察庁の実情で十分なのかどうか、予算措置その他においても十分なのかどうか。要するに起訴をして無罪が出るということがあるからこういう問題か起こってくるわけで、もしかりに精神鑑定その他について、非常に困難な問題がありまするけれども、それらの問題についての対策、精神鑑定上の施設がかなり十分であれば、不起訴で落とすものもかなり出てくるだろう、あるいは無罪の数も現在よりも少なくなるかもしれない。この程度の無罪はやむを得ないんだ、このぐらい出てくるのはあたりまえだというわけには、私はいかないだろうと思うのです。そのあたりについて、ひとつ御答弁を願いたいと思います。
○川井政府委員 前の質問でたいへん重要な点を落としまして申しわけございません。当面法律改正しなくても何か措置を考えているかというような御質問にお答えしなければならなかったのでございますが、あわせてお答え申し上げます。 検事が起訴前に精神状態について起訴、不起訴をきめるために十分な施設と時間的な余裕を持つということが、やっぱり一番必要だと思います。 それからもう一つは、これは理論ではございませんけれども、精神に故障がある者のやった犯罪は、ほとんどがいわゆる身体犯、殺人とか放火とか傷害とかというふうなものでありまして、動機が必ずしもはっきりしないけれども、かなり残虐な方法による社会的な注目を浴びるようなケースが多いわけでございますので、その付近の住民感情といたしましては、かなりきつい批判が集中してきているというふうな状況に相なっておりますので、それらの住民感情を受けましてその捜査をし、また起訴、不起訴をきめる段階で、捜査官の考え方にもそういう感情はかなり影響を及ぼしておることは否定できないと思います。そういうふうないろいろな状況がございますので、今日かなりな施設を設けて、いわゆる簡易診断というものをやっておりますけれども、簡易診断だけでは先ほど申し上げましたとおり必ずしも十分ではありませんので、御承知の鑑定留置の手続をとって、十分時間をかけて鑑定をさせて、その結果を待って起訴、不起訴をきめるというようなことも、法務当局とては検察に対し指導をしておるところでございます。したがいまして、最近の鑑定留置の統計を考えてみますと、順次鑑定留置の数も多くなっているのでございまして、最近のあれといたしましては、大体年間三百人らか五百人くらいのところが鑑定留置をしているというふうな状況になっておりますので、この制度ができた当時から比べてみまするというと、最近はかなりそれを活用いたしまして遺漏のないようにはかっておる次第でございます。
○中谷委員 私は、次のように思います。厚生省の御答弁によりますと、精神障害者の中で全く放置されているものがほぼ半分というところの御答弁であります。これは精神障害者の家族などの精神障害者に対するところの熱意の不足その他ということもあるのでありましょうけれども、私は、やはり厚生行政あるいは政府として、これらのものが放置されているという実情は全く遺憾であるし、社会防衛的な見地からいいますと危険きわまりない、こういうふうに言わざるを得ません。だとすると、被害者についての措置が気違いに刃物ということで泣き寝入りするというふうなことはおかしいというのは、単に精神障害者が支払い能力がないからということではなしに、やはり放置している政府の責任というふうなものは、私は被害者補償の議論の中に入れていただかなければいかぬというふうに思うわけです。 そこで、厚生省にお尋ねをいたしまするけれども、厚生省としては決して放置していることが本意ではないだろうと思うのです。予算その他の面で、あるいは精神障害者の家族などのいろいろな偏見等もあるというようなことで、そういう状態になっているのだろうと思うのですけれども、これは法務省のお仕事かもしれませんけれども、今後少なくとも放置されている状態が急速になくなっていく。半分放置されているという状態が、一年後、二年後にはほとんど放置されていない、何らかの形で医療機関と接触をしているというふうな状態は当分望めないんだろうと思いますが、そういうことになってまいりますと、被害者補償というのはむしろ国の責任ということも加味して考えられなければならない。ただ被害を受けた人が気の毒だ、それは加害者が精神障害者で支払い能力がないからだというふうな恩恵的なものではないと私は思うのです。政府の責任、厚生施策の欠陥がそこにしわ寄せされているという考え方が基本におかれなければ、補償の額等についてもおかしなものになる、非常に恩恵的なものになってしまうということだと思うのです。この点について、これは見通しばはなはだ暗いのですけれども、厚生省のほうから、放置されている人数というものが、率というものが早急に改まらないだろうということなのかどうか、御答弁いただくと同時に、被害者に対して補償するという補償の考え方については、ひとつ刑事局長のほうから御答弁をいただきたい。
○佐分利説明員 お答えいたします。精神障害者の把握の問題でございますが、私どもといたしましては、機構、人員その他も整備いたしまして、できるだけ早く全部が指導下に置かれるようにつとめてまいりたいと思っております。また、そのような計画に基づいて来年度の予算要求等もしておるわけでございますが、この精神障害者の対策の場合最も大切なことは、やはり一般国民からの精神障害者の診察と保護に関する申請、こういうものがどんどん出てまいりませんと、行政当局としてはなかなか把握できないわけでございます。また精神障害と一口で申しますが、その中にはいわゆる精神分裂症のようなはっきりした精神病もございますが、アルコール中毒だとか、あるいは精神薄弱とか、あるいは精神病質とか、こういった普通の方との判別が非常に困難なような患者もございます。そういうふうないろいろ医学的なむずかしい問題もございます。しかしながら、厚生省といたしましては、できるだけ皆さま方の御期待に沿うような方向に持っていきたいと思いまして、いま鋭意努力をしておるところでございます。
○川井政府委員 被害者補償の考え方というのは、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、考え方それ自体が非常にむずかしいと思います。外国にもあまり例がないようでありますし、また歴史的に見ましてもほとんど先例になるものはない制度でございますので、これを制度として国が補償するのだというたてまえをとるということになりますれば、これはいまここでどういう考え方でいくかというようなことを簡単にお答え申し上げるだけの自信もありませんし、また資料も持ち合わせておりません。聞くところによりますと、イギリスとニュージーランドですか、二カ国において生命犯に限って何らかの被害者補償の制度と見られるような制度があるやに聞いておりまするけれども、まだこの辺につきましても、こまかい具体的な詳細な資料を私点検いたしておりませんので、被害者補償のあり方、その考え方、額のきめ方というようなことにつきましては、さらにもう少し研究をさしていただいた上でお答えをすることをお許しいただきたいと思います。
○中谷委員 質問を終わりますが、諸外国の総病床数及び人口対病床数を見てみますと、私の記憶するところでは、イギリスなどについては、日本よりは非常にいいように思うわけなんです。たとえば日本は人口一万人に対するところの総病床数についてはたしか八十五、いずれにいたしましても九十以下のように伺っております。そういたしますと、たとえば、少なくとも先進国といわれている日本でそういうふうな状態、そんな日本においてイギリスに行なわれておるところの制度が行なわれていないということになれば、当然これは政府の責任だし、被害者補償の考え方というのは、恩恵的なものではなしに、まさに国が責任の肩がわりをするということでなければならないだろうと思うのです。そういうことについてはひとつ十分に御検討いただきたいということだけを申し上げまして、厚生省に対する質問を終わりたいと思います。 次に、産業スパイ罪についてお尋ねをいたします。 産業スパイ罪の新設を法制審の特別部会できめたということですけれども、したがって、まだ刑法の全面改正が作業中でありますから、あまりこまかいお尋ねをすることは適当でないかもしれませんが、かなり問題があると思うのです。そこでまず最初に通産省にお尋ねをいたします。十八日に産業スパイ罪の新設がきまったということですけれども、産業スパイ罪の考え方というのは、財産的なものを保護するという倫理的な色彩が非常に多い。そういうような中で、日本の技術開発だとか、産業政策だとか、貿易の自由化だとか、あるいは資本の自由化などということの関係において、産業スパイ罪ということが一体どの程度考えられたのだろうか。私は、技術開発ということが当面日本経済の課題であるという中において、非常に疑問を感ずる点があるのです。 そこで、通産省に対して産業界のほうから、経済団体のほうから、いわゆる産業スパイ罪などというものを制定してもらわなければ困る、ノーハウというようなものの保護について努力してもらわなければ困る等々の要望というのは、現在までにあったのでしょうか、この点についてお答えをいただきたい。
○小山説明員 お答えいたします。現在の産業界の急務といたしまして技術開発が大きな問題であるということは、まことに先生御指摘のとおりでございます。産業スパイ罪の問題につきましては、私どもはたまたま不正競争防止法を所管している課でございまして、先般一月でございますが、商工委員会でやはり先生お尋ねの節にもいろいろお答えを申し上げたわけでございます。全通産省いずこにも業界から何も話がないかということになりますと、まだ十分調査いたしておりませんけれども、ある程度聞きました範囲内では、いまのところ特に産業スパイい罪について法的規制の正式な要望があったということは、聞いておらない次第でございます。
○中谷委員 おいでいただいた法務省以外の方に、先にお尋ねをしておきます。科学技術庁の関係の方にお尋ねをいたしたいと思うのです。 実は、産業スパイ罪の新設がきまったということは、昨日のきょうでございます。そこで、産業スパイ罪についてお尋ねをすることは、差し控えます。ただ、一つ念のためにお聞きしておきたいと思いますけれども、原子力基本法によりますると、その第二条に、原子力の研究開発及び利用については、平和、民主、自主、そうして公開、とにかく民主、自主、公開という基本的な方針というものがはっきりきまっておる。そうすると、原子力基本法の公開ということと、原子力基本法の適用を受ける企業が、とにかく産業スパイ罪というふうなことで——ちょっとお答えいただくための参考に読み上げておきますが、何かこんな規定をきめたらしいのです。「企業の役員または従業者が、正当な理由がないのに、その企業の生産方法その他の技術に関する秘密を第三者に漏らしたときは、三年以下の懲役または五十万円以下の罰金に処する。」とあるのです。あと続きますが、要するに、原子力基本法の公開の原則と、その産業スパイ罪の漏らしちゃいかぬというようなこととの関係についてとなれば、産業スパイ罪のことをお尋ねすることになりますけれども、科学技術庁としては、少なくとも原子力基本法の公開の原則が、他のどんな法律によっても破られてはならない。ジョンソンの覚え書きについてまできょうはここでお尋ねいたしませんけれども、その点についてひとつ明確にしておいていただきたいと思うのです。
○馬場(一)政府委員 お答え申し上げます。産業スパイ罪そのものは、私も新聞の報道以外に存じておりませんので、お答えいたしかねるわけでございますが、原子力基本法の第二条に、ただいま先生御指摘のような条文がございます。この条文は、原子力の開発、利用は平和の目的に限りというのが一番最初にございますが、法文の趣旨としましては、原子力の開発、利用は平和利用に限るのだというのが大目的、大方針でございまして、それを担保いたすといいますか、その目的を達成しますために、原子力の開発、利用は民主的な運営でやっていくのだ、それから自主的にやるのだ、その成果は公表するのだという関連でこの条文ができておるというぐあいに聞いております。したがいまして、われわれはこの原子力基本法の原子力の開発、利用を平和目的に限るという精神は、これがいろいろなことによって侵されることがあってはならないということは、先生御指摘のとおりでございます。
○中谷委員 きのう決定したばかりであまりこまかいことを聞くのは恐縮ですが、大臣にお尋ねをいたします。原子力基本法の公開の原則というのは、産業スパイ罪などというものによって侵されてはならない、そんな趣旨でこの法律が、将来審議会のほうから回ってまいりまして、刑法全面改正の中で法務省が御提案になるときも、絶対にそんなものとしては御提案になるのではないのだということを一言だけお答えをいただきたいと思います。
○西郷国務大臣 いまのお尋ねは、産業スパイの関係のことにつれての御質問と思いますが、御承知のとおり、法制審議会の刑法部会でこれをやりまして、ようやくスパイ罪の点を出すことにきめたように聞いておりますけれども、まだ総会、委員会等を経ておりませんし、いずれきまれば私も報告を受けるわけでございまして、まだきまっておりませんので、いまお尋ねの問題につきましても、的確なお答えができかねる次第でございます。
○中谷委員 こういうようにお尋ねします。刑法の全面改正が数年後に迫っておりますが、審議会からどういう答申があるかは別として、少なくとも法務大臣としては、原子力基本法という、原子力平和利用という、日本の国にとって当面非常に大事な問題、その原子力の平和利用に関する公開の原則を破るような法律は、提案するというようなことは断じてないということだけはお答えいただけるでしょうね。
○西郷国務大臣 原子力の公開の原則ということでございますが、いま申し上げましたとおりに、それに関連しての御質問で産業スパイの問題、それがどういうふうになるかということとあわせて考えませんと、それがまだ確定しておりませんのにそうだということを申し上げるのはちょっと無理じゃないかと思いますので、正確を期するために、いま少し時間をかしていただきたいと思います。
○中谷委員 刑事局長にお尋ねいたします。審議会の審議の状況ですが、原子力基本法との関係においては、どういう点が論点になりましたか。
○川井政府委員 実は、昨日十五回の部会で保安処分が議論され、一昨日この産業スパイ罪が議論されました。刑事法部会は、私が直接出ましてい弔いろ万端の協議にあずかるのが筋合いで、そういうふうにしてまいったのでございますけれども、国会のほうでどうしてもお許しがございませんで、私、きのうとおとといはまるきりここに出ておりましたので、全然出る機会が実はございませんでした。先ほどお昼の三十分の間に、出ておりました係の者に大急ぎで来てもらいまして、いろいろ問題点を聞いたわけでございます。いわんや私、大臣にこのむずかしい問題を御説明する時間は、正直に申し上げて全然なかったわけでございますので、本日は確信をもって具体的な正確なことを申し上げることができないので、一応その点は前提として御了解を賜わりたいと思います。 ただいまの御質問の点でございますが、原子力基本法との点については、きのう、おとといの部会では格別問題が出ていなかったようでございます。しかしながら、小委員会でもって長い間これを練ってきましたので、原子力基本法との関係についても、もちろんこれをネグレクトして議論をしているというようなことではございませんで、いろいろな場面場面でもってその問題が出ていることは間違いないところでございますが、本日、私の持っておる知識で申し上げますならば、おそらく原子力基本法の公開の原則と、ただいま部会でもって一応の決定を見ましたいわゆる産業スパイのこの法律との関係というのは、これは無関係ではないか、関係がないんじゃないかというふうに考えております。
○中谷委員 そうでしょうか。大いに関係があるのじゃないかと思うのです。関係がないとすれば、生産方法及びその他の技術に関する秘密ということと公開。生産方法及びその他の技術に関することは、少なくとも原子力基本法の適用を受けるものについては、秘密であってはならない。大いに関係があるのじゃないでしょうか。
○川井政府委員 関係ないということばがたいへんまずかったのでございますけれども、ないと申し上げましたのは、法律家でありますから法律的に申し上げますけれども、産業スパイ罪の、秘密という構成要件の中に、原子力基本法という法律に基づいて公開の原則が定められておりますから、考え方は、それに関することは初めからこの構成要件の秘密の中に入ってこないという一つの考え方であります。かりにこの中に入ってきましても、違法性の問題で当然はずれる、という意味で法律的にも関係がない。これは私のいまの知識でございます。
○中谷委員 よくわかりました。私はそういうお答えであればいいのです。要するに、原子力基本法には公開の原則が規定されていますから、この関係においてはいわゆる産業スパイ罪——というふうに申し上げます。何かむずかしい罪名がついているようですが——におけるところの秘密には当たらない、関係しない。要するに、原子力基本法のほうがこの関係においては優先するのだというふうにお伺いをしておきます。 その次に、刑事局長にお尋ねをいたします。一体審議会ではどうだったんでしょうか。産業スパイ罪というのはまだ立法されておりませんが、こういうふうなものを新設する趣旨ですね。ノーハウといわれているような企業の秘密というものを財産権というふうなものとして認めて、それをとにかく利得を目的として盗み取る、あるいは漏らすというようなことは、倫理的に見てけしからぬことだというようなことを小野先生をはじめとする刑法の専門家の方、大家の方がお考えになった。言うてみれば、刑法の審議会でありますから非常に刑法的であることは当然なんですけれども、倫理的な色彩が非常に濃いと私は思うのです。しかし、刑法の御専門家であるし、同時にたいへんな学者の方々のお集まりではありますけれども、企業の公正な競争を確保するということ、そして将来の技術開発についてこのことがメリットがあるんだというふうなことを力点に置いてこれを新設されたのか、それとも人さまのもの、会社のものをよそに漏らすなんということは、道徳上、倫理上許しがたいことだというふうな、財産権保護という従来の刑法のお考えの上に立ったものなのか。全面改正で立法して出てきたということなら立法趣旨となるのでしょうけれども、どうもこの辺が私の知識をもってしてははなはだ不明確です。そしてまた、先ほど通産省の方の御答弁がありましたけれども、産業界のほうからは産業スパイ罪についての新設の要望は、少なくとも通産省のほうは私の知る限りにおいてはない。何か私は刑事法部会が非常に倫理的なことで独走をしているような感じもするのです。その点はいかがでしょうか、お答えいただきたいと思います。
○川井政府委員 立法にはそれぞれ動機がございます。まず動機でございますが、最近日本におきましてもいわゆる生産手段を盗み取るといいますか、探知、収集をいたしまして、そして金をかけ、精力を注いで得た他人の成果を不正な手段でもって入手して、経済的な巨利を博しようというふうな者が出てまいりました。それは御承知のとおり、文書の窃盗でありますとか、横領でありますとかというふうな既存の刑法の法令でもって起訴されました実例が、すでに最近数件出ております。あわせて最近、世界各国におきまして、いろいろ刑法改正の議が国会その他各界の問題になっておりますけれども、比較法的にそれらの他国の刑法を研究いたしましても、最近の経済の伸展とともに、この種の立法を持っておる国が、むしろ先進国においては多いようでございます。ときあたかも、わが国におきまして刑法の全面改正という大作業を始めておる最中でございますので、過去五十年間におけるいろいろな社会の進展というふうなものを十分に見て、法務当局におきましても、法制審議会におきましても、いろいろの人を呼んだりあらゆる資料を集めまして、どういうふうな新しい法規が必要か、また古い法規につきましてはどういうふうな修正が必要かというようなことを議論をいたしまして、その中から立法の動機というものを探り出してきたわけでございます。これは動機の点から申し上げたわけでございますが、動機があって、政策として立法が必要だ、こういうことになりますというと、今度は刑法の場面に戻りまして、ただいま御指摘がございましたように、そもそもこういう法規を設けた場合に、一体何を保護するのか、この法規のねらっている保護法益とは何だ、そしてまた、その法益を保護するためにこういうような構成要件を設けた場合の、その立法の趣旨、目的というふうなものは、刑法的な観点から考えるならば、どういうようなところにあるんだというようなことが、順次議論の対象となって、初めは雲をつかむような話でございましたけれども、順次要綱から、ただいまお読み上げになりましたような法案の形になって、一昨日の部会にかけられた、こういうことでございます。これはまた、さらにその後総会にかけられて、どういう結論になるかわかりませんけれども、さらにまたこれから審議が重ねられていくということになりまして、結論といたしましては、近代企業の発展に即応いたしまして、企業の健全な競争を保護するということが、立法趣旨だろうと思います。ひいて、当該企業の経済的な利益を保護するというのが、刑法上の、罰条の保護法益になるということができるかと思います。
○中谷委員 保護法益はわかりましたし、立法の動機も、御説明としてはわかりました。 科学技術庁にお尋ねをいたします。科学技術基本法案要綱、現在この問題についていろいろな根回しが行なわれておりますが、要するに国の施策ということで、一体どういうふうなことが国の施策として大事だろうかというようなことを、科学技術庁としては当然お考えになっておられるわけですが、その中で、「科学技術に関する情報の流通の円滑化を図る」、それから「科学技術に関する国際交流の推進を図る」、まずこの二つについてお尋ねをいたしますが、要するに、科学技術の開発というのは、企業が企業の中で企業の秘密ということで技術を閉じ込めてしまっておるというふうなことでは、科学技術の開発ということはあり得ない。私は、まず科学技術庁に、科学技術の開発についての基本的なお考えはそういうことなのかどうか、ひとつお答えをいただきたいと思います。
○馬場(一)政府委員 科学技術基本法、これは現在国会に出ております。その中に、先生御指摘の、科学技術情報の円滑な推進あるいは国際協力というようなことがうたってございます。そこで言っております科学技術情報は、科学技術全体のレベルアップをいたしますために、非常にたくさんの分野における、いわゆる公開された科学技術情報、これはいろいろな文献の形になっておったり、あるいはデータになっておったり、さまざまの態様のものがございます。これをできるだけ広く、研究者あるいは開発者が処理し切れないようなことではなくて、円滑にそれを流していく、それがレベルアップになる、こういう考え方で円滑な推進ということをうたっております。したがいまして、そこでいっておる科学技術情報は、世の中で公になっておりますいわゆる文献、あるいはデータ、あるいは特許というようなものになっております科学技術情報の円滑な推進、こういうことでございます。それと対比しまして、各企業の中において、その企業の利益なり、営業の目的を達しますために、その企業内における研究開発が進みまして、いずれそれはその企業の営業なり生産に反映いたします、そういう技術、これは企業内の技術でございますけれども、これをその一つ一つの企業のものまで全部公開するとか、あるいは流通をはかるということとは、その科学技術基本法でいっておる「情報の流通の円滑化」という情報の意味が、少し違うのではなかろうかと思います。
○中谷委員 なるほど、科学技術基本法は国の施策として書かれておりますから、そういうことかもしれませんが、こういうことは言えるのでしょうね。企業が企業の秘密だということで開発された技術というものを企業のエゴイズムによってとにかく確保しておく。そしてとにかくそれを何ら発表しないというようなことでは、少なくとも科学技術の総合的な開発、日本経済、日本産業全体の発展というものには役立たない。そういうことは、少なくとも科学技術の開発にとってマイナスだということは常識的に言えると思うのですが、いかがでしょうか。
○馬場(一)政府委員 たいへんむずかしい問題でございますが、企業が自分の会社で投資をしまして、長年かかりまして開発しました技術、それはどういう目的で企業が金をかけて開発するのか、結局、その企業の繁栄というか、将来の発展のためにそういうことをするのだろうと思いますが、それはやはりその企業で開発しました限りのものは、その企業の中での一つの成果としてその企業が使うといいますか、その企業のものとして保護されるということで、やはりそれはそれとして、いろいろな科学技術が発展する大事な一つのポイントであろうかと思っております。 一方、その各企業の中で開発されました技術は、なるべくその一つの企業の中に閉じ込めておかないで、できればその成果は広く関係の分野に利用されたほうがいい、それが科学技術の向上になるという面も、確かにあろうかと思います。その場合には、正当な対価をもってその技術が他の企業に使われる、それが全体として科学技術の進歩に役立つというような面も、御指摘のように確かにあろうかと思います。
○中谷委員 通産省にお尋ねいたしますが、通産省は科学技術の技術開発ということについて非常に熱意を持っているわけですけれども、技術開発上考えられることは、技術開発に関する企業間における二重投資などということははなはだむだなことであって、こういう技術開発というようなことは総合的に行なわれなければならないということはあたりまえだと思いますが、こういう点はいかがでしょうか。
○小山説明員 お答えいたします。私もしろうとでございますから、お答えがはずれているかもしれませんけれども、これは二つの面があると思います。一方におきまして、先生御指摘のように、なるべくむだを避けると申しますか、そういう点が大いに科学技術の推進に役立つということだろうと思います。たとえば、特許制度というものは、まさに公開して重複研究を避ける。その反対給付として、その反面独占権を与えるということが、公益と私益のバランスがとれるということだろうと思います。しかし、また一面におきまして、全般的な研究を統一的にやっていくことも、むだを避けるという意味から国の利益にもなりまして、お互いに研究に応じて競争が行なわれるということが、またいろいろ刺激になって、科学技術の振興に役立つという点もあろうかと思います。詰めて言えば、その両者のバランスをいかにうまくとっていくかということじゃないかと思います。
○中谷委員 科学技術庁と通産省にお尋ねいたしましたが、それじゃ刑事局長にお尋ねをいたしますが、企業の役員または従業員が正当な理由がないのに云々とありますね。要するに、正当な理由ということの関係においてお尋ねをしたいのですが、従業員の中の技術者、研究者、こういう人がみずから到達したところの科学技術、これらについて、日本の学界のために、あるいは世界の学界のために研究発表をする、そのことは科学技術の開発進歩に非常に役立つ。一体こういうことは、この産業スパイ罪に触れるということなんでしょうか。そういうふうなことで御論議があったのでしょうか。それは、生産方法その他の技術に関して会社、企業が秘密にしているものを外部に漏らしたということの、会社との関係におけるところの就業規則上の問題にとどまるのだということなのか。研究発表ということは正当な理由があるのかということ、そういうような研究者の学問の自由とか、研究発表の自由というようなものをも、このスパイ罪などというものでくくろう、そして企業の中におきまして研究者を閉じ込めておこうという考え方なのか。審議会の御専門の方が御審議されたので、研究の自由だとか、学問の自由とか、あるいは発表の自由というようなものではないだろうと思うのです。あるいは企業は対する忠誠心においては、研究者も研究の発表は制限されるのだ、それはあたりまえなのだというふうなお考えなのか。私は、少なくとも産業スパイ罪の関係においては、そのような発表については民事上の制裁を受けることはあっても、刑法上の処罰を受けるなどというようなことは、産業スパイ罪というようなもので予想すべきことではない、そう考えますが、いかがでしょうか。
○川井政府委員 この案は、法務省当局とはある面で独立性を持った法制審議会の下部組織である刑事法特別部会が一応の案を内定したということでございますので、法務当局の立場からのお答えではありませんで、示された案について法務省の刑事局長としての法律的知識においてお答えを申し上げます。 要するに、正当な理由がないということは、言いかえてみるならば、違法性があるかないかということに置きかえていうことができると思うのでありますが、ただいまおあげになりましたような例の場合で申し上げますならば、要するに企業の秘密をその従業者ば漏らしてはいけない、こういうことでございますから、企業と何ら関係なしに、学者としての立場でもって開発をされた、こういうふうな事柄でありますれば、それは学界において学者としての立場でもって発表されるということは、おそらく本条と関係はないであろうということになると思いますけれども、従業員ならば、雇用契約に基づいてそこでもって労働力を提供するという義務を負っているものでございますから、その労働力を提供するという雇用契約に基づいて行なっておる企業の仕事の一環として、企業の内容として開発を行なったというふうな事項であるならば、それは自分の学者的立場において開発された知識であると同時にまた企業の秘密ということにもなろうかと思いますので、そういうふうな場合であるならば、それは同時に企業の秘密になりますから、雇用契約に示されておる企業に対する誠実の義務との関係におきまして、ある程度それは制限される。場合によっては、事項によってはこの法律の秘密にかかる、それは正当な理由がないということになる場合もあるのではないか、こういうふうに解釈します。
○中谷委員 該当する場合もあるのではないかということは、該当しない場合もあるということです。突然の質問で、刑事局長には御準備をいただいていなくて、私の思いつきばかりで申し上げて恐縮なのですけれども、企業におけるノーハウの管理につきましては、ずいぶんいろいろなケースがあると思うのです。いわゆる技術者としてみずから発明をしたという場合、しかしそれを同時に企業に譲渡したという場合、いろいろな場合があると思うのですけれども、いずれにいたしましても、そうすると、産業スパイ罪といわれるものは、技術者が研究者である場合、研究者の基本的な人権といっていいと思いますが、研究成果発表の自由をも企業の秘密、すなわち企業の財産権保護ということで制約する法律だ、ある場合においてはそういう法律だというふうにお答えになるのでしょうか。この点は、おそらく刑法全面改正で立法化されるということになると、全国の研究者などあたりからかなりの論議を巻き起こすことだろうと私は思うのです。特にノーハウにつきまして、一体どこまでが研究者としての研究の成果なのか、企業の秘密なのか、これはきわめてあいまいなのです。その点については、研究者の研究発表の自由を阻害しないようなかっこうにおいて今後とも注目をしていただきたいということを、ひとつ大臣のほうから御答弁をいただきたいと思います。方針として御答弁をいただきたい。
○西郷国務大臣 お話でもございますので、今後十分注意してやっていきたいと思います。
○中谷委員 この法文は疑問百出なのです。これは何か解説によりますと、企業の生産方法その他の技術に関する秘密ということになっておるわけですけれども、その技術に関する秘密というのは科学技術だけだというふうな解説をしておる新聞があるけれども、少なくとも条文からは科学技術だけだということは必ずしも出てこないと思うのです。そういうふうに法務省が解釈されるのだったらそれでいいということでありますけれども、この規定のしかたは、白紙規定と申しますか、きわめて拡大解釈されるおそれがあると思うのです。大体科学技術だけに限るとおっしゃいましても、科学技術庁の専門家の御意見を私伺ってもいいと思いますけれども、刑事局長さんのほうで科学技術とは何かというふうなことについては、少なくとも科学技術庁においたってそうはつきりした定義があるものじゃない。それをましてその他の技術に関する秘密というふうな規定のしかたをして、それが法制審議会のほうの説明か何かでは、科学技術に限るとおっしゃっている。科学技術に限るとおっしゃっているから限られているのだと思いますけれども、その科学技術ということだってきわめてあいまいもことした概念だ。ひとつ今後にあたりましては、罪刑法定主義の規定との関係において心配のないような明確なものにしていただく。この点についても、審議会のほうでは御専門家の中で御議論があったと思うのですが、科学に強い方もお集まりになっていると思いますが、これはいかがですか。
○川井政府委員 産業スパイ罪というものをつくるについては、いろいろな問題がたくさんあるということはまさに御指摘のとおりでありまして、経営の秘密を秘密の中に含めることを主張する者もありますけれども、経営の秘密は除いて、科学技術的な秘密だけに一応とどめよう、いわゆる生産方法についての科学的な部面にこれを限定するということで、なるべくその秘密の範囲をしぼって運用に間違いなきを期するように法律の文言の面で適正を期したいというのが、この法制審議会の小委員会における議事録を見ましても、全部がそういったような方向でもって意見が一致しておるようでございまして、これはほかの国の法律と比べていただくとよくわかるのでありますが、おそらくほかの国でできておる同種の法律と比べてみて、構成要件が一番しぼられているのじゃないかと思います。特に秘密の範囲においては、非常にしぼられた形でもって出てきている。その他の構成要件においても、かなりしぼられた形でもってでき上がっておるということがいえると思いますけれども、ただいま御指摘のような科学的秘密とは何ぞや、あるいは生産手段とは何をいうのかということになりますれば、刑法的な概念としてはまたそれぞれこまかい議論が必要かと存じます。いずれまた国会にかかって政府の立場においてこれを提案するというふうな段階になりますれば、政府の責任において、法務省の責任において、ここにいうところの科学的な秘密とはこういう概念の内容であるということを明確に申し上げる時期があると思います。
○中谷委員 よく勉強しておりませんが、ドイツ連邦共和国、オランダなどのこの種法案を見ましたけれども、それほど、おっしゃるほど構成要件が日本がはっきりしておるというわけではないと私は思います。ことにその他の反トラスト法との関係においてこれは理解しなければいかぬ問題だろうし、そういう点について不備なもの、その他の法律において規制できるものがあるのに、非常に率直にいえば、何か産業スパイ罪ということでこれをお出しになっているというふうな感じがするわけなのです。ことに法制審議会が、では一体日本の今後の産業のあり方、経済のあり方、あるいはまたその中における技術開発というものについて、経団連あるいは技術関係の専門家などの意見を議事録に正確におとどめになっているのか、どうもそういうことは私はないと思うのです。個人的な意見くらいお聞きになったでしょうけれども、私はそれほどよくおやりになったとは思わないのです。われわれみたいなしろうとが見ましても、疑問百出だということを申し上げておきます。 それでは次に、最後の質問をいたします。問題は、なるほど不正競争防止法等によってまかなえるかもしれないし、独禁法、たしか八十条だったと思いますが、それらの規定を若干手直しすることによって防止できる面がむしろ私は多いと思うのですが、いずれにしましても、刑法の全面改正というのは二、三年先のことだということは、常識的に予想できます。そうすると、現在産業スパイというようなことが盛んにいわれている。産業スパイの例については、枚挙にいとまがないわけです。それから、企業からいえば、盗まれるほうがどうかしているんだ。本来、情報の収集とかいうふうなことは、企業としての至上命令なんだ。ありとあらゆる手段をもって情報を収集しなければ、企業の技術開発のためにお金をつぎ込むような、そんなもったいないことができるかというのが、私は企業家の気持ちであろうし、また技術開発というのは、一面そのようなものを持っていると思うのです。それをただ単に倫理的な面で不公正競争けしからぬというふうに押えていることに、私は若干問題があるだろうと思うのですが、しかし、いずれにしても、むやみやたらに盗んでくるということはよくない。そうすると、産業スパイ罪をつくるとおっしゃったが、その産業スパイ罪ということは、何年先かわからぬ。この過渡的な状態について、一体法務省はどういうふうにしてそういう反社会的、反倫理的不公正競争に類するようなことを防止されるのか、なかなか防止できないと思いますが、少なくとも当面刑法のこの罪でいくとか、あるいは不正競争防止法を手直しするとか、いろいろな問題があると思いますので、ひとつその点をお答えいただきたいと思います。
○川井政府委員 私がこの法案を決心いたしまして——私じゃございません、法務大臣が決心をいたしまして、ここでもって御審議をお願いするということならば、私、豊富な資料で自信を持っていかなる御質問に対してもお答えする闘志と自信がございますけれども、これはまだ法制審議会の部会で審議して発表になったということでございますので、いろいろなお答えは遠慮して申し上げるわけでございますけれども、この法律の実現ということはかなり先のことになりますので、その間にいろいろ不正なことが起きればどうするかという御質問でございますが、これはいままでも横領罪とか、背任罪とか、あるいは窃盗罪とかいうような刑法の規定でもってかなりのものがまかなわれておりますし、それからそれ以外の不正競争防止法なんかの特別法の規定に基づきましても、それに該当する分についてはいろいろ処置がなされておりますので、こういう法律がなければ、その間におけるそういう事態に対しましては、既存の法規の活用でもってそれをまかなっていく、こういうことだろうと思います。ただ問題は、よくあげられる例でございますけれども、従業員が会社の最も秘密とする企業秘密を、たとえばフィルムかなんかで撮影する、その撮影したフィルムを非常にばく大な利益を得て他の競争会社にこれを売り渡すというような事例もあるようでございますけれども、これはどうも写真をとったということが窃盗したことにはなりませんので、どの法律にもひっかからないということになりますと、そういうような事態がたくさん出てくれば、それを何らかの方法でもって法律的処置をしなければならぬということになれば、いま法制審議会が提起いたしましたような、いわゆる産業スパイ罪というようなものは、これに答える一つの方案ではないか、こういうふうに考えております。
○中谷委員 あと十分で質問終わります。それで一点だけお尋ねしておきますが、この案については、私はやはりどこかに憲法上の問題があるのではないかと思われる点が一点あります。それはこれらの地位にあったものについても同様だ、こうありまして、これは一体そうすると、何か雇用されたときに、あなたはもう企業の秘密を漏らしちゃいけませんよ、ということで、これは退職しても企業の秘密を漏らしてはいけませんよということで、二十五年つとめた、そうして退職をしても、それは一体この法に触れるのか。退職をしたときにその約束をした場合に触れるだけであって、退職をしたときに約束をしなければこの産業スパイ罪には触れないのか。何か職業選択の自由とかいうふうなことについて、非常にきびしくこの法律は縛っている。どうも私はこの点、不安を感じます。技術者というのは、次から次にいろいろな企業に移ることによって技術の開発ができるということも聞いております。一つの会社に入ったら、あなたは退職したときにおいても、企業の知り得た秘密、二十五年間知り得た、その間の秘密を漏らしちゃいけませんよということであれば、退職した後も、それまでは約束があったことになって秘密を漏らしたら、この産業スパイ罪の範囲に入るのかということになると、何か職業選択の自由等を中心とする人権侵犯の疑いがある感じがしますが、まさかそんなことはないと思いますが、これは明確にしておいていただきたい。
○川井政府委員 退職前の現職の状況におきましては、先ほどちょっと触れましたように、雇用契約に基づく民法上の誠実義務というものがありますから、それに基づいての守秘義務というものが課されて、これは守らなければならない義務があるということは、当然のことであろうと思います。問題は、ただいま御指摘のように、それじゃ退職してしまった後においてまで、そういう法律でもってそれを縛る、しかも罰則で縛るというのは、憲法の精神にどうかというお話は、しごくごもっともな御質問だと思います。ただ、雇用関係の義務というものは、雇用関係をやめたとたんにすべてが解消するものかどうかということにつきましては、いろいろ民法上の議論があろうかと思います。特に守秘義務というようなものは、退職後におきましても明確な契約のもとに合理的な範囲できめられたものであるならば、それは今日の民法上のたてまえといたしましても認められるのではないか、すなわち、憲法の精神に反しないものではないかというふうに思うわけでございまして、一般企業の場合に、無制限に退職者について、あくまで死ぬまでこの守秘義務をしているというようなかっこうであれば、これははなはだ適当でないということが考えられますけれども、ごく限られた事項について、最高の秘密と思われるようなものについては、ある時期を限っての間は退職後においてもこれを他に漏らさない、こういうふうな雇用契約の本旨に含まれた特約がなされているということであって、その特約の範囲が法律の精神からいって合理的なものである、こういうことでありますれば、私は合理的な範囲で定められた期間と定められた事項については、退職者につきましてもその守秘義務の履行を求めて、それに違反した場合におきましては、そういう反倫理的な、反道徳的な行為について刑罰をもって律するということは、憲法の精神に反しないものであろう、こう理解をいたします。
○中谷委員 この点についての質問は終わります。軍事秘密がどうのこうのという一番争いになりそうな点がありますけれども、どうも私のほうも準備不十分だし、刑事局長さんもあまり御準備をされていないようですから、きょうはこの程度にいたしておきます。 そこで、シンナー遊びといわれているものについて、はなはだ憂慮すべき状態がありますので、これは一問だけ質問をいたしまして、お答えをいただいて終わりたいと思います。 たいへん警察庁、文部省の方、それから通産省の方にお待ちいただいて申しわけありませんが、一点だけをお尋ねをいたします。まず全部各省とも対策をひとつお述べいただきたい。そして警察庁のお見通しとしては——四十三年度は非常に激増している。四十四年度は、対策としては押えるということがこれはもう至上的な一つの目的であるけれども、見通しとしてはとても押え切れないのではないだろうか、これは一体どうなんだろうかというような点が一つあると思うのです。それらの問題についてひとつ。 〔大竹委員長代理退席、委員長着席〕 それから文部省のほうにはやはり対策、ことに冬休みに入りますので、ひとつぜひともそういう関係についての対策を御答弁いただきたい。ことに文部省としては、従来までこのシンナー遊びについてのいろいろな点について、小中学校あるいは高等学校等において、シンナー遊びはいけないというようなことの通達、あるいはそういうことが先生からお話があったということを私、あまり聞かないのですけれども、文部省としてはいつごろから対策に本腰を入れられたのか。どうもおそきに失するのはないか、こういう感じがいたします。もし反省すべき点があったら、そういう点も含めて御答弁をいただきたい。 通産省につきましては、ひとつシンナーについて何らか技術上の考慮を加えて、シンナーを吸う、シンナー遊びをしないということができないものかどうか。こんなところには相当な金をつぎ込んででもやっていただきたい点だと思うのです。こういう点をお答をいただきたいと思うのです。 そして最後に大臣にお尋ねいたしますけれども、シンナー遊びというものは、この調子でいくと、かつてのヒロポンの流行のようなかっこうのものになってくる。少年が自殺するなんということは、とんでもないことだと思うのです。そこで、シンナー遊びについて、何らかの、青少年保護条例だとか、あるいは少年法その他による補導ということ以上の立法措置も、そろそろ考えていただかなければいかぬのじゃないかというふうなことについて、御検討いただけるかどうか。シンナー遊びというようなものを抜本的に、法の力によって——だけではいかぬと思いますけれども、規制すべき時期に来ているのじゃないか。そういうふうな単独法をあえてつくってもいいのじゃないか、こういう感じがしますが、大臣の御答弁をいただきたい。 お待ちいただいて簡単な質問になりましたけれども、これで質問を終わりますので、的確にそれぞれ御答弁をいただきたいと思います。
○西郷国務大臣 いまシンナー遊びについて御説明がございましたが、最近ほんとうにシンナー遊びというようなものが青少年の中にはやってまいりまして、最近はそのために死者まで出しておるというような発展ぶりで、非常に憂慮されまするが、なおかつ法務省としては、それらのシンナー遊びをしておる者がその結果犯罪を犯したり、あるいは犯さないでも、犯罪を犯す傾向が見られますので、いまおっしゃったとおり、少年法その他でこれを更生せしめねばなりませんが、現在の法律、施設等で完全にできるとも思えませんので、これは法務省だけでなく、関係各省もございますので、十分検討を加えまして、万全を期していきたいと考えております。
○本庄説明員 最初に一言おことわりしておきますが、実はシンナー遊びという用語がきわめてまずいからやめてくれというような世論がございまして、と申しすまのは、シンナー遊びという遊びがあるんならひとつおれもやってみたいというようなことが一つの普及の原因だということがいわれておりますので、私たちのほうではシンナー乱用ということばに最近切りかえております。きょうの答弁も、シンナー乱用という用語で答弁を申し上げます。 四十四年度の見通しはどうかという御質問でございますが、四十四年度の見通しを申し上げます前提といたしまして、ごく簡単に四十三年度の状況を申し上げてみたいと思います。シンナー乱用につきましては、昨年の夏ごろから群馬県を中心とする関東、東京、北海道をはじめといたしまして、西のほうに漸次広がってまいりまして、本年は昨十八日までに乱用によって死んだ者、これが六十二名、ほかにシンナーを用いました自殺が四十三名、合計百五名という数字を示しております。死なないまでも、シンナーを乱用いたしまして精神障害あるいはその他の肝臓障害等の障害を残しておるものは非常にたくさんあるようでございまして、その実数は必ずしも正確にはつかんでおりません。しかしながら、全国の警察でシンナー乱用で補導をいたしました者の数につきまして申し上げますと、ことしの一月から十一月末までで、一万八千七百三十二名補導いたしております。これは全部少年でございます。成人については、それ以外に相当数ある模様でございます。で、傾向を月別に見ますと、九月までは逐月ふえております。十月に入りましてからやや鈍化しておりまして、十一月には少し減っております。その間警察庁といたしましても、基本的な対策といたしまして三つ、一つはシンナー類を不必要な者の手に入らぬようにする。要するに根元を絶つ。もう一つは、シンナー類の有害性のPRを学校、職場、家庭、あらゆる面にわたって徹底的に行なう。もう一つは、それでもなおかつシンナーを乱用する者に対する補導を強化する。この三点に指向いたしまして、関係の行政庁にもたびたびそれぞれの施策を強く要望いたすとともに、関係業界にも販売の自粛、規制等について強く要望をいたしておる次第でございます。それらの施策が逐次浸透していったためかどうかはわかりませんが、十一月になりましてからやや増加の傾向が鈍ってまいりましたので、まず私はこの辺で一応ピークである、というよりは、むしろピークにしたいという気持ちでやっておりまして、四十四年につきましては、先生の御要望におこたえできるような答弁を、もし次にする機会がございましたら、できるようになりたいと思っております。
○望月説明員 シンナー乱用の影響というものは、青少年の生命あるいは健康に非常に重大な影響を及ぼすものでございます。文部省といたしましても、この問題につきましては重大関心を払っておるつもりでございます。また現実にその青少年を預り、教育をされておる学校の関係者あるいは学校を設置しておられる教育委員会等、かねてから児童生徒の心身にきわめて大きな影響を及ぼす問題でございますので、健康、教育等学校における平素の教育活動を通じて、事故の防止につとめてきておるところでございます。しかしながら、いろいろな努力にもかかわらず、先ほど御紹介もありましたように、やはり多くの青少年がシンナー乱用をしているということでございますので、文部省といたしましても、この問題につきまして、特に教育関係者が十分関心を払ってもらいますよう、先般高等学校の校長の会議あるいは教育委員会の担当課長会議等におきまして、この問題について特に留意をしてもらうようお願いしたところでございます。また、先般業者のほうで未成年の者に対してシンナー等の販売につきましては、あるいは学校の生徒については教師の証明書がなければ売らぬというような申し合わせをなさいましたので、この点につきましては、十一月十八日に高等学校教育課長、中学校教育課長連名で教育委員会のほうにその趣旨を私のほうからも連絡申し上げ、学校に十分その趣旨を徹底していただくようにお願いしたわけでございます。 なお、シンナー乱用のみならず、非行の大きな原因の一つでございます青少年の不満あるいは心の悩み、そういうふうなものをやはり学校教育を通して解消していくことが、非常にこの問題の大きな解決の要素だと思うわけでございまして、私どもその観点から、単にシンナーのおそろしさを子供たちに説くだけでなく、やはりそういう面で学校も、教育委員会も、文部省も、力を合わせて生徒指導の充実というようなものにつきまして今後とも一そう努力をしてまいりたい、このように考えております。
○菊地説明員 申し上げます。シンナーと申しますのは、塗料のラッカーを使うときにあわせて用いるものでございますけれども、これは大部分が専門の業者が扱っておりまして、家庭用に使うために町で売られておるのは非常に少のうございます。全体から見れば少のうございますが、やはり千トン以上のものは出ておるといったようなわけでございます。実は以前にはシンナーとしてはベンゾールを使っておりまして、昭和三十四年までベンゾールを使っておりましたけれども、これはある程度有害性があるということで、ずっと害の少ないトルエンを中心にした現在のシンナーに変えたといういきさつがございます。それでもなおかつこういう事態が起こりましたので、業界は非常に憂慮いたしまして、たとえば塗料工業会技術委員会とかといったような場で相当真剣にいろいろ対策を考えております。たとえば、もっとほかに全く害のない溶剤はないのか、あるいはこれを使うにしても、いまのような吸引のもとになるような、そういう形でないやり方は何かないのか、いろいろな面から現在協議しておりますけれども、いままでのところ、どうもこれといったきめ手がないというようなことで非常に困っておりますけれども、なおわれわれとしてはあきらめずに前向きで検討していきたい。業界もそのつもりでおりますので、いまのところ、これ以上のことは私にはお答えしかねます。ただ、それが出るまではどうにもしょうがないということではしかたがありませんので、先般検察庁から通達が出ております、たとえば証明書を持ってこない子供には売らないとかといったような通達が出ておりますが、その通達を厳重に実施するようにといったような通達を通産省から関係団体へ出したり、それから地方の各通産局にそういうふうな線を指導するようにといったようなことをいたしまして、できるだけのことはやっているような状態でございます。
○田中(伊)委員 外国の例はどうですか。
○菊地説明員 外国は、大体みんな現在のところ同じものを使っております。
○田中(伊)委員 やはり外国にも死者は出ておるのですか。
○菊地説明員 どうも私、よく存じませんけれども、シンナー乱用というのは、日本だけの現象であるかのように思っております。
○永田委員長 神近市子君。
○神近委員 さっき赤十字の方が参考人としておいでになって、私は質問中でしたけれど、しり切れトンボになってしまいましたから、ほんの一問大臣にお尋ね申し上げたいと思います。 いま琉球が復帰運動の端緒としてアメリカ人に対する裁判権の取り戻し運動が起こっているということが、十月二十二日の新聞に出ております。私は、そのことにはいま触れません。ただ占領中われわれの裁判がどんなにひどいものであったかということ、そして松川事件だとか青梅事件だとか、こういうようなものが全部無罪となっているのです。占領中の裁判で死刑の宣告を受けた人は、いま五人残っております。これは平和条約の二十七年の百五号の法律によってずっと継続されておる人たち、連合国人が日本の戦争時代に日本で受けた裁判の見返りとして、この裁判に対する不服ができるような、一年の時限法なんです。私どもはその時限法の見返りとして、この再審の問題の法律を出しているのです。ところが、この裁判に——いま、竹内景助というのはなくなりましたけれども、この六人の裁判に関係した検事、判事というような人が九人残って、まだ法務省に残っていらっしゃるということを伺ったのです。それで自分たちが占領中にやった裁判の誤り——はっきりと誤りだということは、もういろいろな材料からいま出てきております。それを阻止される。そしてそう言っちゃ悪いけれど、法務省の皆さんおいでになるのですけれど、官僚同士の自己防衛というようなことで、これに反対が行なわれるのじゃないかというおそれがある。幸いにこの問題は非常に人道的なものですから、与党の方々も非常に御好意で協力していただいているのですから、ひとつそれを頭に入れておいていただいて、法務大臣ともなれば、自分たちの下の人たちに動かされるということがないとも限らないと思うのですけれど、人道というものは決してそういうような小さな私情によって行なわれてはならないということをお考えになって、ひとつ継続審議になっております法律をぜひ来たる国会では通していただきたい、こういうことをお願いしたいのです。いまの議長が法務大臣のときに私は予算委員会でお尋ねしたのですけれども、自分の地元であれほどの騒ぎが起こっている事件を石井さんは御存じなかったのです。私は、そういうような非人道的な法政をやっていただきたくない。現大臣は有名な明治の名士の御血統と承っています。今年は人権宣言二十年の年でございますから、ぜひこの人道的な法案を通していただくようにお願いし——それをお願いするつもりでしたら、さっきの騒ぎで結論を得ないで終わりましたから、ぜひひとつその点についての大臣のお約束をいただきたいと思います。
○西郷国務大臣 お話ではございますが、戦争中の裁判といえどもやはり適正に行なわれたものと考えます。いろいろ初めて伺いましたが、よく実情はわからぬのでございますけれども、概念としては適正に行なわれたのじゃないかと思います。 なお、お話の死刑等につきましては、厳粛な問題でもございますから、もちろんこの西郷もきわめて慎重に対処するつもりでございます。 なお、お話の法案につきましても、今後慎重に検討を加えてまいりたいと考えます。
○永田委員長 この際、暫時伴憩いたします。 午後五時十一分休憩 ————◇————— 〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕