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59回国会衆議院1968/10/17

商工委員会 第3号

発言数
144
登壇者
20
会派数
3
開催日
1968/10/17

会議録

鴨田宗一自由民主党

○鴨田委員長代理 これより会議を開きます。  小峯委員長所用のため出席が遅れておりますので、委員長の指名により、私がその職務を行ないます。  この際、おはかりいたします。  先般、各地の産業経済の実情を調査するため委員を派遣いたしましたが、派遣委員各班からその報告書を提出されております。これを参照として本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鴨田宗一自由民主党

○鴨田委員長代理 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――   〔報告書は本号末尾に掲載〕      ――――◇―――――

鴨田宗一自由民主党

○鴨田委員長代理 通商産業の基本施策に関する件について調査を進めます。  本日は、産業構造改善等に関する問題について参考人から意見を聴取することになっておりますが、本日の参考人として、東洋経済新報社論説副主幹熊本孫三郎君、国民経済研究協会主任研究員竹中一雄君、株式会社経済雑誌ダイヤモンド社論説主幹鈴木建君、法政大学教授力石定一君、以上四名の方に御出席を願っております。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  参考人各位には御多用の中を本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。  本日は、特に大型合併問題についてそれぞれのお立場から忌憚のない御意見を承り、もって本委員会の調査の参考に資したいと存じます。何とぞよろしくお願い申し上げます。  なお、初めに各位から順次大型合併問題についての御意見の骨子を五分程度お述べ願い、しかる後、詳細につきましては、各委員の質疑によりお答えを願うことといたしますので、あらかじめ各位の御了承をお願い申し上げます。  それでは熊本参考人にお願いいたします。

熊本孫三郎東洋経済新報社論説副主幹

○熊本参考人 熊本でございます。  ただいま御指名によりまして、大型合併についての所見を述べよというようなことかと思われますが、これは特に鉄鋼問題とか、それに限ったわけではございませんで、一般的な問題かと思われますが、現在富士、八幡製鉄両社の合併が日程にのぼっておりますので、そのことにも関連して私の考えるところの一斑を述べさせていただきたいと存じます。  合併問題につきましては、法律の基準としましては、独占禁止法第十五条に、「国内の会社は、左の各号の一に該当する場合には、合併をしてはならない。」「当該合併によって一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合」こういうふうに書いてございますが、合併一般につきましては、私ども、時代の進展とともに、各産業によりましてその規模が、またその産業の特殊性によって基準がきめられなければならぬということは申すまでもないことでございますが、今日鉄鋼問題に関して申し上げますならば、私ども四月二十七日の東洋経済新報の社説におきまして、われわれの態度をはっきり書かせていただきました。  結論から申し上げますならば、富士、八幡等の大型合併に対しては、われわれは賛成できない、まずその経営首脳者に重大なる反省を求めたいという考え方を明らかにいたしました。  その第一の最も重要なる理由は、この二つの会社が合併しますことによって、日本の市場におけるシェアが非常に大きくなる、そういう理由からでございます。そしてこの市場の支配力が大きくなりまして、独占禁止法第十五条にいう、先ほど引用さしていただきました、つまり実質的な制限の起こる可能性が濃い。この法律は、合併した後のことを想定して、その可能性についてここに規定してあると思われます。今日両社を合併しまして、これは昭和四十二年度におきまして、年間二千二百万トン以上の粗鋼ベースにおける生産力となること御承知のとおりでございます。ここに、私どもの同僚が調べました鉄鋼連盟の資料によって見ますと、両社が合併することによって粗鋼のベースによる両社のシェアは三五・七%にのぼります。これに富士、八幡両社の系列会社を含めますと、実に四七・九%という半分近いシェアに迫ることになります。その他レールとかなんというものはほとんど一〇〇%、それからブリキとか珪素鋼板というものは六〇%をこえるというような非常に大きなシェアを占めることになります。それから特殊鋼におきましても、この子会社、系列会社等を含めますと、実に五三・七%、過半を占めるということになります。これらの二社の系列会社は大体において完全なるコントロールのもとにあるといっていいかと申されます。これは資本出資の面においても、人事におきましても完全なる支配権を握っておる。そうしますと、われわれが心配するのは、そういう市場の実質上の制限が行なわれる可能性がありはしないか、こういう点が最大の理由でございます。しかも今日の状況から見ますと、労働組合までも合併を支持するような機運にありまして、ここにいわゆるアベック闘争といいますか、賃上げによるところのコスト・アップを価格に転嫁する可能性が生まれるという危険がございます。いわゆるアメリカ、ヨーロッパ等におけるクリーピングインフレーションというものの可能性がここに展開しまして、物価問題としても非常に重要なのであります。もちろん市場支配力をもって及ぼし得る可能性が出るということは、社会の不公正という問題から見ましても、価格関係を通じて国民所得の分配にゆがみを生ずる。それだけでなしに、今日当面している最も重大なる物価問題に脅威を及ぼすという可能性がありはしないか。そうして資源の配分をゆがめることになりはしないか。もしも完全なる競争が行なわれておりまするならば、あるべき価格水準に落ちつきまして、消費財といわず、生産財といわず、その価格に適応したところの資源の配分が行なわれるはずでございますが、これをゆがめる結果になりはしないか、こういうことをわれわれはおそれるのでございます。  と申しましても、私どもは、合併によって起こりますデメリットだけを完全に認めて、もちろんメリットを認めないというわけではございませんですが、そのメリットと申しますのは、経営の規模が拡大することによりまして、管理費というものに若干節約とか、いろいろの合理化の面が起こることはわれわれも認めます。しかしながら、私が申し上げました、以上のような弊害が起こる可能性のほうがより一そう大きいという、われわれはそういう判断でございます。製鉄所の規模からいいますならば、合併しなくても十分にペイしていけるような規模になりつつあります。現在新しい工場が各社ともできておりまして、富士、八幡御両社とも最近におきましては、近くでき上がるという君津の製鉄所が第一号炉ももう近くできると聞いておりまして、あるいは将来大分の鶴崎あたりにも大きな工場ができる可能性といいますか、計画ができつつありまして、これらの工場が完成しますならば、製鉄所一つ当たりの単位におきましては、世界のいかなる製鉄所にも対抗し得るような生産の合理化といいますか、その面においてひけをとらない、そういうことが言い得るのでございます。その意味におきまして私が先ほど申し上げました懸念されるデメリットという点のほうが、全体としましてはるかに多いのじゃないか。そういう意味におきましてわれわれはあの新聞記者に対する意見発表がありました翌日、われわれの同僚が相談いたしまして、これは日ごろから私どももいろいろこういう問題を考えておりまして、さっそくわれわれの意思をはっきりと打ち出す必要がある、そういう意味におきまして四月二十七日号の社説にわれわれの所見を述べさせていただきまして、もとより私個人完全にこれに同意するものです。その後におきましても雑誌に掲載させていただきましたのですが、この最初の社説をごらんいただきますならば、われわれの考えの骨格がここに示されているかと存じます。  時間も経過いたしましたので、あとでまた御質問がありますならば、所見をあらためて申し述べさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。

鴨田宗一自由民主党

○鴨田委員長代理 次に、国民経済研究協会主任研究員竹中一雄君にお願いいたします。

竹中一雄国民経済研究協会主任研究員

○竹中参考人 竹中でございます。鉄鋼の大型合併を中心にお話し申し上げたいと思います。  日本の鉄鋼業は、御存じのように生産量においては自由世界第二位、輸出においては全世界第一位という非常に強い国際競争力を持った産業になっております。これは生産性の面を見ましても世界第一位でありますし、価格面におきましても多くの製品について世界で最も安い鉄鋼価格が今日日本にあるわけであります。  どうしてそういう事態が生じたのかということを考えてみますと、いろいろな理由はありますけれども、最も大きな理由の第一として、アメリカやヨーロッパの鉄鋼業が寡占体制の上にあぐらをかいて、カルテルやコンツェルンの支配の上にあぐらをかいているときに、日本の鉄鋼業が激しく活発な企業間の競争を行なった、そういうことが今日の日本の、世界のトップレベルをいく鉄鋼業が発展した基本的な理由の一つであろうかと思います。  そういたしますと、今日話題になっております八幡、富士の合併がはたしてそういう企業間の活発な競争を制限することにならないかどうか、競争を減少させることにならないだろうかということが大きな問題になります。これは独占禁止法に触れるかどうかという問題にかかわるわけであります。御承知のとおり、よくいわれますように、レールでありますとか、鋼矢板でありますとかあるいは珪素鋼板、ブリキなどは八〇%前後の非常に高いシェアを占める結果になるわけですけれども、同時に、合併会社の主力製品でありますところの大型形鋼でありますとか、あるいは熱延薄板類あるいは冷延鋼板、コイル、こういったものがいずれも非常に高いシェアになる。系列会社を含めますと大体において六〇%前後のシェアを占め、かつ大事なことは、第二位のメーカーのシェアが大体一〇%台であって、その間に、一位メーカーと二位メーカーの間に非常に大きな差ができる。こういうことは経済理論の常識からいって、非常に価格を管理する可能性が強まってくることを意味しているわけであります。  先日話題になりました紙の三社合併と比べてどうかということがよく問題になるわけですけれども、両者を比べてみますと、幾つかの点で大きな違いがあります。たとえば紙の場合は、洋紙、板紙合わせた紙全体の中に占める王子系三社のシェアは二四・六%でありますけれども、鉄鋼二社の場合は、粗鋼ベースにおいて四五%をこえるシェアを持つというふうに、鉄鋼の場合のほうがはるかに高いシェアを持つわけであります。もう一つ大きな違いは、紙の場合は、わずかではあっても輸入品がある。将来、場合によっては輸入品との競合が多少は発展するかもしれないという事態があったわけですけれども、鉄鋼業は、先ほど申し上げましたように世界のトップレベルをいく産業であって、輸入品との競合はほとんど問題にならない。同時に、紙の場合は同業他社が曲がりなりにも実質的には反対であるという態度を表明いたしましたけれども、鉄鋼の場合は、関連同業他社の社長さん方の発言を新聞、雑誌等を通じて見ておりますと、新会社のプライスリーダーシップを期待する、つまり新会社の価格安定力を期待するというふうに非常に違いがありまして、そういうことは鉄鋼の場合のほうがはるかに価格を管理する、寡占価格の形成される可能性がより大きいことを示しているかと思います。  合併会社が主として合併を合理化する理由にあげるのは、規模の経済ということでありますが、今日問題になっておる大手二社の合併については、合併したからといって後発各社がやっている工場以上の大きな規模のプラントができるわけではありません。大体富士、八幡の建設計画を見ますと、工場の規模といたしましては、川鉄、住友金属が現在持っているあるいは建設しつつある工場と同程度のプラントができるだけであって、事実日本の鉄鋼業の過去を見ましても、最も規模の大きい企業が最も優秀な成績をあげているかというと、決してそうではなくて、規模がより小さい後発メーカーのほうがより優秀な成績をあげているという結果になっているわけです。つまり鉄鋼業の場合は、現在の大手各社のスケールは大体において経済的に必要な最適規模に達している、あるいはそれを上回っているのが現状であります。あるいは合併をすれば研究開発が進むというようなこともいわれる場合もありますけれども、これも過去の実例あるいはアメリカの各社等の研究を参考にいたしましても、規模が拡大したからといって必ずしも研究開発のテンポが進まない、むしろ経営内部の体制を合理化していくことのほうがより重要だという結論になっているかのように思います。よく産業再編成を進めるためにもし鉄鋼大手二社の合併を認めないならば独禁法を改正する必要があるかのように発言される方がおられますけれども、御承知のとおり現在日本では年々千件前後、千件に近い合併がありますけれども、ほとんどすべては実は独占禁止法に抵触しない合併であります。独占禁止法に抵触するあるいは抵触する嫌疑がきわめて濃厚な合併は、先ごろ自主的に取り下げました王子三社の合併と富士、八幡の合併だけであります。近い将来うわさにのぼっている合併の中において、独禁法に抵触するかもしれないような合併が話題にのぼっているところは現在は見当たりません。つまり産業再編成のために独禁法を改正する必要があるというのは全く当を得ない間違った議論であって、企業が合併するのに障害になるというのは富士、八幡製鉄の合併の場合だけである。現状では少なくともそうなっておるというふうに思います。  合併が効果をあげるかどうかというのは全くケース・バイ・ケースでありまして、今年度の経済白書に掲げられている表にもありますように、合併会社の多くは、合併したことによってかえって生産性が低下したり、利益率が同業他社と比べて低下しているケースも非常に多いのでありまして、これは全くケース・バイ・ケースであります。むしろ独占禁止法を尊重して各企業間の活発な競争を展開することが国際競争力を強化し、日本の国民に安い適正な価格で鋼材を供給する基本的な条件でありまして、独占禁止法を前提にすることによって初めて効果のある産業再編成も、経済の望ましい発展も期待できるかと思います。  以上で終わります。

鴨田宗一自由民主党

○鴨田委員長代理 ありがとうございました。  次は経済雑誌ダイヤモンド社の論説主幹鈴木建君にお願いいたします。

鈴木建株式会社経済雑誌ダイヤモンド社論説主幹

○鈴木参考人 所見を述べさせていただきます。  御承知のように国際化時代ということで、産業構造の体質改善ということが非常に重要な課題になっているわけでございますが、特に日本の場合は、資源がない、原材料の自給ができないということで、貿易立国ということでございますから、国際化時代に国際的な競争力というものを一そう強化していかなければならないということが産業政策の基本になっているのだと思います。そういうことでございまして、一方におきまして日本の企業というものが非常に数が多い、同時に多品種、いろいろなものを少量生産をやっているというような産業構造の状態にある。そういうことで貿易の自由化以来、設備の近代化、大型化によりまして大量生産に入ってきたということで、自動車、鉄鋼というようなものは商品としての国際競争力は非常に高まってきた、その結果輸出が伸びているというのが現状だと思います。しかし一方におきまして、単に商品の国際競争力さえ強ければいいかと申しますと、資本の自由化というような問題が出てまいりまして、企業の総合力というものがやはり競争の基本になるという時代になったわけでございます。それで資本と技術、それから資金の調達力とか販売力とか、また資源の獲得とか、そういうことは資金の調達力につながるわけでございますが、要するに設備の大型化ということ、巨大化ということで、資金も非常にたくさんかかるというようになりましたし、またこれまでは導入技術でまいりましたが、自主技術を開発しないとこれからの技術競争には勝てないという問題が非常にやかましくなってきたというのが現状でございます。そうするとやはり技術開発に大型のプロジェクトをやるためにはばく大な資金が必要になってくるというような問題も出てきております。特に私は、日本の国民総生産が第二位というように上がってまいりましたし、生産がふえていきますと、海外の資源の開発確保という問題が今後非常に重要になってくるのではないかと思います。  それからまた、生産したものを売るために海外の市場の開発ということで、発展途上国に対しましては、やはり経済協力、いろいろな形で市場に対する資本の投資もやっていかなければならぬというような時代に入ってきているということでございます。そこで、企業の国際競争力強化、体質改善をはかりますためには、業務提携とか共同投資とか、いろいろな方法もありますが、やはり合併のメリットが大きい、合併によりまして、いろいろな資本力、資金調達力、技術の開発力、再投資力、そういう規模の利益というものが出てくるということで、王子三社の場合も、結局拡大する需要に対しまして、国内の資源がなくなったから、今後海外の資源をカナダなりどこなりに求めなければならない、そのためには総合的な資本力を強めなければならないというところに大きなねらいがあったのだと思います。  いま問題になっております富士、八幡の合併につきましても、メリットとデメリットがあるということでございますが、デメリットの面としてはシェアの問題がいろいろと問題になっておる。けさの新聞でも品種別に取り上げられておりますが、これはシェア論だけでいいかどうか。たとえばヨーロッパみたいに成長率の低い国の場合と、そしてまた日本の場合のように成長率が高い国、それから次から次へ後発のメーカーが大型の設備をつくっていくと、大きく市場も変わっていく。変化が激しいところでシェアを固定的に考え、その問題だけで合併がどうかということを言っていいか、もっと日本経済全体の立場から検討すべきではないか。特に産業政策の基本はそういう再編成の方向に向かっているわけですから、集中化をして、そのあとで、そこからマイナスの面が出たら、それを独禁法の立場からきびしく取り締まるというような形もとれるのではないかというふうに考える次第でございます。  時間が参りましたので、一応これで……。

鴨田宗一自由民主党

○鴨田委員長代理 ありがとうございました。  次に法政大学教授力石定一君にお願いいたします。

力石定一法政大学教授

○力石参考人 資本主義が始まって以来、市場における自由競争というのが社会的資源の配分を最適化してくるということが長い間信じられてきたわけでありますけれども、自由競争が必ずしも資源配分を最適化しないものがだんだんと出てまいりました。経済の内部も寡占化が進んでまいりますと同時に、なかなか競争によって資源配分を最適化できない。一番最初にそういうものとしてあらわれましたのが公益事業であります。公益事業は非常に規模が大きくて、ほとんど一社でもってコストの非常に低いものを供給できる。そこで競争なんかやるとかえって業界が共倒れになってしまう。したがって資本的独占を認めて、その価格形成その他について公共的に管理するというやり方がとられるようになってきた。市場における消費者のフィードバックがきかなくなってきたので、行政的な方法でもって国民の監視下に置いて、価格形成や投資のあり方を監視していくというやり方を公益事業体は採用してきたわけです。一番最初にこの公益事業体の中でそういう独占の認められたのは、電電公社みたいな、ああいうほとんど初めから競争は問題にならぬというふうなものであります。その次に電力のようなものは、初めは一生懸命競争したわけであります。ところがどうも競争してみると競争はお互いに傷つけ合うだけであって、しかもたいへんたくさんの資源を使ってむだなことをやってしまうというので、やがて電力産業も公益事業体として管理するようになってまいりました。  そういうふうにして規模の利益が非常に大きくなり、市場の吸収能力を越えるくらいの大きな設備能力のものをやるようになってまいりますと、だんだん自由競争のフィールドから出ていくものが出てくるわけです。そのすれすれのところへきたのが鉄鋼業でありまして、鉄鋼業は国際的に見ますと、フィールドからはずして一社独占を認めて、公共的に管理しようというふうなやり方をとっている国と、そうではなくて、まだ競争の余地があるからやらせよう、そういう境目みたいな産業であります。たとえばイギリスの場合は一社独占を認めて、国有化をして管理をしていくというふうなやり方をとっている。オランダとかイタリアとか、こういうふうな国もいま大体一社独占を認めてやっておりますし、フランスでは二社くらいに集中してやらせる、こういうやり方をとっているわけであります。アメリカは比較的数が多く、競争体制をとっているのですが、ちっとも競争しないで寡占の上にあぐらをかいているという状態が見られるわけであります。  日本の鉄鋼業は御存じのようにいままで競争でやってきたわけであります。しかしながら、その競争の中で資源の配分の競争について最適化できたかというと、確かに価格の面から見ますと、外国の鉄鋼価格は大体階段状に上がっておりますけれども、日本の場合は長期的に見ますと少しずつ下がっていって、十年間に八%くらいの下落をした。これは非常におもしろい特徴なんです。しかしながらトレンドとしてそうなっているのですが、価格の年々の内部の動きを見ますと、非常に乱高下をやっている。あるときは鋼材価格が下がってしまって、薄板が三万三千円くらいのところに下がって、コストを割るようになって経営者も青くなる。労働組合のほうも、雇用問題が発生しないか、あるいは系列企業も整理されやしないかとひやひやする。そういうふうな状態にときどきおちいりながら、景気が立ち直ってくるとまた価格がぐっと上がるというような乱高下をしながら少しずつ下がっていくというような形の価格ビヘービアが見られるわけであります。したがって、望ましい生産性の上昇に合わせて価格が段階的に下がってくる。長期的には、たとえば製造コストはこの十年間に二五%から三五%ぐらいまで下がるところまできているのです。そこまでいかないで、八%ぐらいのところになるものは、そういう非常などろ沼状態でときどき足を引っぱられるから、多少下がりぎみになって、国際比価から見て多少安いという形になっているわけです。だから、非常にへたなやり方で何とか価格を外国よりも少し下げてきたというやり方になっているのではないか。  なぜそういうふうなことになるかというと、これは市場の需要範囲を越えるような投資競争をやるからであります。一つの高炉を建てると、いま二百五十万トンの能力があるといわれておりますけれども、これを二つ建てれば五百万トンか六百万トンの能力がある。年間の粗鋼の需要増大率は大体六百万トン、七百万トンという規模で発展していくわけですから、需要と供給との間で六社もそこに入り込んでやったら、たちまちどろ沼になってしまうわけであります。したがって、どうしても各社は投資競争を抑制しようと努力する。しかし、なかなかこれがうまく調整ができなくて、御存じのような過当競争を行なう。この過当競争の結果、過剰能力をつくり出して、いま言ったような冷や汗をかくような価格下落に見舞われる。これは一つの破滅的競争の姿ではないかというふうに私は考えます。  これを資源の社会的な配分の観点から見ますと、この投資競争を通じてどれだけ資源が大規模にむだにされているかということを数字的に見ますと、たとえば粗鋼能力で一千万トン過剰能力ができた、昭和四十年ころにはそのくらい能力過剰がございましたが、この場合に、この一千万トンをつくるには四千億円くらいの設備投資資金が必要であります。四千億円くらいの設備投資資金が、一年間にわたって、その能力過剰という形で眠ってしまうわけです。これの金利費用はたいへんなものです。しかも、四千億円というのは、日本の社会保障費総額の半分近くであります。そういうふうなたいへんな社会的資源がむだに使用されてしまう。  あるいは、いま最適規模が八百万トンから一千万トンの能力のプラントをつくるのが一番いいのだということで建設を進めているわけでありますけれども、そのぐらいの能力に達するまでの間に大体一社でもって年間七百億ぐらい資金が投入されればいいほうであります。四千億もお金を投じて、まとまった一千万トンの規模をつくるわけでありますから、六、七年かかるわけです。六、七年かかってやっと非常に安いコストのところへ生産設備の規模が達成されるというふうな形になるわけです。  これは、どうしてそうなるのかと言いますと、各社は資金調達能力が限られておるし、各社がお互いに一度に一千万トンの規模のものをつくれば、一ぺんに過剰になってしまうことをおそれて、少しずつ、一本ずつ、お互いに輪番みたいな形で建てていくわけです。そうすると、六、七年かけてそういうものをつくることになる。ほんとうならば、計画的に行なえば、一年半から二年くらいで一千万トンくらいの規模のプラントなんかすべてできてしまう。そうなれば、金利費用からいいましても、また生産コストの点からいいましても、非常に安くできるわけです。建設費用の面で見ますと、大体二百五十万トンずつ四社でつくって、あわせて一千万トンにした場合と、一千万トンの高炉を一社で一ぺんにぽんと投資した場合と比べますと、一ぺんに投資した場合のほうが一千億円くらい建設費用が安い。そのいろいろな付帯工事なんかを入れますと二千億円近く安くなる。そういうことがわかっておりながら、お互いに競争で、むだなんだけれども少しずつやっておる。そして六、七年かかってやっと完成するわけです。  大体いまの技術進歩は、六、七年ぐらいかかりますと、生産の最適規模はもっともっと前に進むわけです。われわれは五百万トンくらいの規模の設備をいま持っておりますけれども、これを完成するために六、七年かかってやっと達成します。しかし、その六、七年の間に、建設の途中ですでにもうほんとうは一千万トンのほうがいいのだということに技術進歩の結果なるわけです。われわれはいま一千万トンのものを六、七年かけてやろうとしていますけれども、この過程で、おそらく、あと数年したら、二千万トンのほうが実はよかったのだ、御苦労さんだったということになってしまう。ですから、一千万トンの一番有効なやつをぽんとつくって、その次にまた一千万トンつくるというふうにして、短期に最もコストの安い建設をやろうということになりますと、いまのような無秩序な競争体制というのは適しないわけです。こういうふうにして社会的資源が必ずしも有効に使われない、むだなことをやってその結果価格は多少外国より低いというふうな状態をつくり出しているということはたいへん問題なのでありまして、むしろ社会的資源の有効利用という観点からすると、社会開発その他も非常におくれているわけでありますから、そちらの方向に資源がむだなく使われるように投資調整をちゃんとやって計画的に行なう。と同時に、投資効率がよくなりますと、その結果を価格に反映するようにコントロールをしていくというやり方が、これからは必要なのではなかろうかと思います。そのために、六社の競争体制というものを何とか集中化する。私は、鉄鋼のようなものは、イギリスの労働党がやっておりますように一社独占がほんとうは望ましいのだと思います。こういう形にいますぐいく条件がないとすれば、少なくとも八幡、富士ぐらいは集中的な投資のメリットを発揮して、君津に両方の力を一本に集中して、一千万トン規模のものを七、八年かけてやるのではなくて、二、三年ですぐ到達するような投資計画にしたほうが、社会的に望ましいのではないか。そういうふうにして資源を低生産部門、社会開発の分野に回すようにして、むだなことをしないようにしてもらうことが一つ。  それからもう一つは価格の面で、そういう集中化をしていきますと、先ほどもお話がありましたように、市場支配力が非常に高くなる、寡占化のおそれが確かに出てまいります。こういう寡占の弊害を除去するためにどうしたらいいか。独禁法の観点からすると、競争で寡占化の弊害を防ぐというわけですけれども、そういうふうなものが独禁法の手に負えなくなったような産業であるとするならば、これは独禁法のワクの中で処理するのではなくて、イギリスの場合でも、スケールメリットはあるけれども独占の弊害もあるというふうなどっちつかずでどうしようもない場合は、独禁法からはずして、政府が産業再編成公社というものをつくって、ここから政府出資を行なって、半官半民の会社にするとか、あるいは一社独占の国有企業にするとかいう形で政府がこれを統制していく。そして価格が適正なところへつくように、いわば行政的フィードバックを働かして管理する以外にない。こういうふうな種類の産業というのが鉄鋼産業なんじゃなかろうか。  寡占には三つ型がございまして、集中型寡占といいまして、非常に規模が大きくて、しかも製品には別に差異がない。そしてすぐ価格競争をやってどろ沼競争になる、しかも生産規模が市場の規模を非常に越えやすい。集中型寡占はどうもそっちの方向にいく傾向が強いわけです。  それから二番目の寡占は製品差別型寡占といいまして、非耐久消費財、繊維だとかくつだとか、こういうふうなものは、大きくなるけれども、それほど市場の範囲をずっと越えてしまうような、三社、一社ぐらいで全部供給してしまうようなそういう力はございません。製品差別性を持ちながら競争していくわけですから、こういうものは独禁法のワク内で競争をやらせながら能率を発揮させる、こういう指導が必要であります。  その中間のものは、製品差別性を持ちながら同時に集中型であるというもの。製品差別性を持っているために、集中型で最適規模がかなり高いのですけれども、それに限度があるというものが複合型寡占、中間型なんです。自動車とかテレビとかラジオとかいうふうなもの、こういう複合型寡占に関しましては競争のメリットというものがありますから、これは独禁法のワク内で処理していく。しかしこの場合も問題が最近起こっておりますのは、自動車や電気機械や電子計算機のようにワールドエンタープライズとの競争の観点からすると、研究投資の最適規模が非常に大きくなってきて、どうしてもワールドエンタープライズと競争していくには研究投資の面で企業の研究開発を統合しなければならぬというふうな問題が起こってまいります。そうすると、これもある程度合併を進めざるを得ない。そういうふうになって競争を残しながら合併の効果も出していくというふうなやり方が必要でありますので、自動車とか電気機械のようなものについては、数社で競争させながら、その中の一社はフォルクスワーゲンやルノーのように混合企業にしておいて、独占の弊害が起こりそうなときには、ルノーなんかは率先して価格を下げてフォードの価格を引き下げるというふうな、そういう競争的公企業というやり方がヨーロッパで出てきている。こういうやり方でもって処理するのが適している産業、それから自然的独占を認めて公共的に管理せざるを得ない産業、いろいろな産業がありまして、その産業に応じて独占に対する対策は、独禁法でいくか、公共的規制あるいは産業再編成公社のようなやり方でいくか、いろんなやり方があるわけでありまして、日本の鉄鋼業の問題は、そういう産業政策についての幅広いパースペクティブの中で処理しなければならない問題になってきているのじゃないか、こういうように考えます。     ―――――――――――――

鴨田宗一自由民主党

○鴨田委員長代理 これより参考人に対する質疑に入ります。始関伊平君。

始関伊平自由民主党

○始関委員 ただいま四人の参考人の方々のそれぞれのお立場からの御意見、たいへん興味深く拝聴しました。そこで私は、私が平素考えておりますこと、また疑問といたしております事柄を申し上げながら若干御質問を申し上げたいと思います。  戦後の日本の鉄鋼業の発展のあとを振り返って考えてみますと、昭和二十四年でございましたか、旧日鉄が解体されて純然たる私企業である八幡、富士の二社が誕生したということと、その後間もなく主要な平炉メーカーが鉄鋼一貫の体制をとったということがその始まりだろうと思います。規模におきましては若干の違いがございますけれども、比較的つぶのそろった五社ないし六社がほぼ対等の条件で競争をしながら今日の隆盛を見るようになったと申して差しつかえなかろうと思います。しかしながら、つぶのそろった五社ないし六社がそろっておりましても、それだけではあまり競争にはならない。やはり何と申しましても、非常な経済の高度成長の中で自分の会社のシェアをふやしていこうという企業の非常に強い内在的な欲求、それを実現させるためのいろんな技術、経営の改善なり販売競争というものによってこれができてきたのだろうと思います。一般的に、私どもの経験から申しましても、経済の成長の激しいところでは独占の弊害というのはあまり起こらない。と申しますのは、いま申し上げたように、シェア競争が非常に激しいからだと思います。これは経済の理論のほうでもそうなっておると聞いておりますが、そこで私はこの合併に賛成の立場の鈴木さんにお尋ねいたしますが、あなたが御賛成になりますのは、日本の鉄鋼業における成長というものはやはり今後相当期間続くであろうというお見通しに立ってのことだろうと思いますが、その点と、それから、しかしながら一方におきまして、過去十年間に五倍にもなって、年の伸び率は一八%くらいでございますが、しかし最近では、生産量から輸出量を引いた国民の一人当たりの消費量というものは五百キロちょっとにふえておりますね。これはフランスやイギリスを抜いて、アメリカの六百キロ台に迫っておるのですが、この辺で日本の鉄鋼業というのはやや頭打ちになるというお考えでありましょうか。この辺の見通しが、当面の問題としては、私は今度の大型合併が寡占をもたらすおそれがあるかないかという議論に非常に関係があると思いますので、最初にその点を鈴木さんにお尋ねいたします。

鈴木建株式会社経済雑誌ダイヤモンド社論説主幹

○鈴木参考人 お答えいたします。鉄鋼は年率にして一七、八%と大きく伸びてきたのでございますが、もちろん今後はそういう高い率では伸びないかもしれません。しかし、まだ、四十七年度でございましたかには九千万トンというふうになるわけでございまして、大体年に六百万トンずつくらいはふえていくだろうという見通しが行なわれておるわけでございます。いまおっしゃいましたように、いろんな自動車だとか家庭用電気器具とか、そういうようなものを通じての消費、個人消費、国民一人当たりの消費というものはかなり高くなってきており、アメリカの線に近づいておりますが、一方におきまして公共企業その他に対して、資本主義が発展すると地下にまで資本の投資が行なわれると申しますか、公共事業その他の面における鉄鋼の需要というものは、国内だけでもまだ今後かなり伸びる可能性があるのじゃないかと思います。そういう点から、今後とも伸び率で一〇%くらいは伸びるのではないかというふうに考えております。

始関伊平自由民主党

○始関委員 それでは次に、大型合併には反対のお立場の熊本参考人にお尋ねをしたいと思います。  いま鈴木さんからお話のございましたような条件のもとに八幡、富士の合併がかりに行なわれたとしても、私は極端な過当競争の弊害というものはなくなるだろうと思いますけれども、また八幡と富士が一緒になるのですから、この二社間の競争はなくなりますけれども、自由かつ公正な競争を阻害するおそれはまずないのじゃなかろうかと思います。大体、硬直的な寡占体制というようなことをおっしゃいますけれども、シェアそのものが流動しておる。過去十年くらいこの方の歴史は、川鉄、鋼管、住金のシェアがだんだん富士、八幡のシェアを食ってきたという歴史でもわかりますように、シェアそのものが流動しておりますし、また経済成長が行なわれてその環境の中で競争が行なわれれば、シェアそのものは流動的なんじゃないかという感じが私はいたしております。それは合併後大体三五、六%というように私は承知しておりますが、この場合の競争相手の鋼管、川鉄、住金ないし神戸製鋼、これはいずれも強力であって、紙の場合とはちょっと比較にならない。鋼管は福山に、川崎は水島に、住金は鹿島に、神戸製鋼は加古川に、いずれも五百万トン、六百万トンないし七百万トンの新鋭臨海製鉄所をつくって一歩も引かぬ。現に住金の日向社長、川鉄の藤本社長は三、四カ月前にこの委員会に出てまいりまして、われわれは八幡、富士の合併によって何ら脅威を感ずるものではない、一歩も引かぬ、幾らでも競争しよう、設備調整なんかよせといったような議論もあったくらいでありまして、これだけ強力な競争相手がおるという状態のもとにおいて、しかもシェアが流動的なんですから、お話しのような硬直化による寡占の弊害というものはそれほど問題にする必要はなかろうじゃないかという気がいたします。  それからもう一つ申し上げたいことは、需要業界、造船にしても自動車にしても電機にしてもかなり大きい。たとえば造船のほうで使う厚板だって、いますべての会社がつくっておる。こういう状況のもとにおきまして、私はこれをそう毛ぎらいするという理由はないのじゃなかろうかと思います。  それからもう一つは、鉄鋼製品については輸入の完全な自由化が行なわれておる。これは熊本さんのところの雑誌の論説かと思いますが、したがいまして、鉄が時期的に不足になれば輸入したらいいのですね。ところが通産省が鉄鋼メーカーに遠慮して輸入しないというような事実があるらしい。私も気がついておりますが、これはやり方が悪いので、あなたがおっしゃるように需要家、ユーザーが輸入を要請すればいいので、のみならず鉄鋼業そのものの資本の自由化もできておる。こういう諸般の情勢を考えますと、私は、メリット、デメリットがあるということなんですけれども、デメリットとしての方面というものはそんなに心配する必要はないのじゃないかと思います。ただ、あなたのお書きになったものだろうと思いますが拝見しますと、いずれはとか遠い将来においてはという文句があり、いずれは寡占の弊害が出てくるだろうということがつけ加えてあったように思うのでございますが、以上の点につきましてひとつ御見解をあらためてお伺いしたい。

熊本孫三郎東洋経済新報社論説副主幹

○熊本参考人 ただいまの御質問にお答えいたします。将来の鉄鋼需要の見通しと、それから八幡、富士が合併いたしましても、大手の鉄鋼メーカーが現存する、そういうことで、あまり市場支配ということは心配しなくてもいいのじゃないかというような第一番目の問題点かとうかがわれます。この今度の合併論が構想されましたその当時、おそらく一年以上前からそれを両社の社長はお考えになっておられたと思います。そのときの動機というものを私推察いたしますと、昭和三十六年以降からの非常な高度成長の時代、設備過剰の時代もございました。そういったような苦い経験から、そしてまた、将来における日本の鉄鋼需要というものが、いままでのような高度の成長を遂げられないのじゃないか、むしろ需要が停滞するのじゃないか、そういう場合に、両社が合併しないで他の社と同じように設備競争の渦中に入ったならばたいへんなことになる、両社とも得がいかないし、日本の鉄鋼業界としても不安定じゃないか、そういうことが合併論を構想される重大なる一つの動機であったかと思われます。ところが、その後合併が発表されましてから今日までの情勢を見ましても、今年六千九百万トンの生産が行なわれるというような見通しでございまして、一千二百万トンからの輸出もしており、まさに鉄鋼業界は今日非常な好景気の絶頂にあるかと思います。将来におきましても、先ほど鈴木さんがおっしゃったように、私は少なくとも一割ぐらい、年平均一割あるいはさらにそれ以上の需要が伸びるということが予想されます。御承知のように鉄は産業の米でありまして、日本の工業はすでに重化学工業、金へんの産業というものが非常に大きなウエートを持っております。この産業に食わすところの米がますます需要が増大するということが第一点。  それから公共事業等におきましても、道路にしましても、あるいは住宅等にいたしましても、耐震耐火というような建築構造物というものに移行していく、そういう意味におきましても鉄がますます需要される型に移行するだろうことは間違いないと思うのです。それからまた東南アジア等海外の市場に着眼いたしましても低開発国がほんとうに開発されるに至るまでには、日本の鉄鋼需要というものがますます海外からも需要されるということは予想されます。したがいまして、鉄鋼九千万トンが私はおそらく五、六年あるいは十年もしたら一億二千万トンくらいの日本の鉄鋼の生産規模になるのじゃなかろうか、このように予想されるわけであります。そうしますと、現在計画されております各社の高炉の予定地はすでに買収等もできました。全部完成いたしますと、ここに一億二千万トンの壮大なる鉄鋼事業が建設されるということになるかと思います。そうしました場合スケールメリットというものを完全に発揮する、年間八百万トンないし一千万トンというような製鉄炉がフルに動くというような明るい前途が予想されるのでございます。  そこで、合併を支持なさる立場の人は、需要がますます展開するのだから、三社が合併したところで競争を阻害しないじゃないかという論がございますが、私はそれには紆余曲折があると思います。やはりあるときにおいては生産が過剰になるというような可能性もあります。そういうときにやはりカルテル操短とか管理価格というものが途中に起こり得る可能性がございます。そういう不況とか過剰設備がなくても、製鉄事業そのもののパターンからいたしまして、やはり管理価格というところの可能性が私は多分にあると思うのであります。それは、たとえば現在におきましても、ブリキだとかあるいは珪素鋼板なんというものはほとんど八幡、富士が圧倒的な大きなシェアを持っておる。そういう品種のみならず、それからまた過去における製鉄事業の歴史を見ても、ヨーロッパ、アメリカにおいても最もカルテル的な最も寡占的な産業であるということをわれわれは銘記しなければならないと思います。アメリカのカーネギー財団によって合併されましたUSスチールを盟主とするこのアメリカの鉄鋼業というものは、それぞれ数も相当ございますが、あれだけの大規模な産業で数も相当あるアメリカにおきましても、実はアドミニスタードプライスが行なわれている。そのためにケネディ大統領になったときに、ああいう価格引き上げを阻止するという強い要請ですね、自分の政治的な権力を発動しても価格を上げたものからは政府は資材を買わないというような強い圧力をかけてまでもケネディ大統領が乗り出さなければならなかったことは、いかにこの現代社会におきまして世界的に鉄鋼事業そのものが、非常に大きな装置産業を持ちまして――そんなに何十、何百というような企業ではございません、数が少なくなりますればそこにカルテルの可能性がある。のみならず戦後の日本の製鉄事業の経過を見ますと、たびたびカルテル論、公販価格制度と称しまして価格に対する規制をする、そのために弊害が起こったことがございまして、われわれはすみやかにそういうカルテル的な勧告操短をやって実際の市場相場が公販価格を上回るようなことはやめてもらいたい、それは消費者に迷惑だということを警告を発したことがございます。それは設備においてシェア競争が行なわれたら市場競争が行なわれるのじゃないかということに対する私は反省にもなると思います、いままでの歴史の経過を見まして。  そういう意味におきまして、そしてまた現在この八幡、富士以外の大手の鉄鋼会社等の社長の言動をわれわれが実際インタビューいたしましても、もうそれぞれの八幡、富士に次ぐ後発各社は、各地の製鉄所のプランができまして、それがだんだん完成していきますと、非常に保守的な行動になり得る可能性を私ははらんでいると思うのであります。ライバルとして強敵ができたように思われますけれども、内心はやはり自分たちの価格安定の力になっていくということを半分は喜んでいる面もあるのじゃなかろうか、そういうふうにわれわれは推察するわけでございます。そうしますと、ここに八幡、富士という非常に大きなシェアを持ち、またプライスリーダーにもなる資格を持ったものがあるということは、そういう将来におけるカルテル的なものをやりやすくするような地盤が築かれつつあるのじゃなかろうかという懸念を私は持つ次第でございます。  戦後、あなたが振り返られまして、御承知のように日本の製鉄事業が発展したのは、旧日鉄が分離されまして、そして新たに新興会社が高炉部面に進出していく、その競争によって今日の盛大なる姿を現出したものだと思うのです。私は、将来におきましても日本が競争をやっていくならばわれわれの必配が少なくなる、そういう意味におきましても正々堂々と八幡、富士が各社それぞれの道を行く、しかもそのユニット、研究開発等におきましても一人前にりっぱに成長していくところの資格を持った業者だというふうに私は思うのであります。  それから輸入に関する問題でございますが、日本の国際競争力はまさに鉄鋼においては世界一、私ども商社等の話を伺いましても、およそ一割ぐらいは海外の相場よりも安く売っておるということを聞いております。したがいまして、日本の値段が高くなったら輸入すればいい、自由化があるじゃないかといいますが、まずCIF価格を国内の相場がはるかに越えたとき、そして国内が過熱しまして、何もかにも日本の生産では間に合わないというような場合にのみ輸入が行なわれよう、したがいまして、日本のコストというものが国際的に安いですから、日ごろは国内相場よりも一割なら一割安くていいはずでございます。将来のことをいうとこれは安閑としてはおれませんが、日本の現状におきましては、世界一日本の製品は安い。ものによっては二割も三割も安い鋼材等があるということを私どもは聞いております。したがいまして、海外との輸入や輸出の面において日本が競争をするために両社が合併しなければならぬという論は全くナンセンスだ、私はそういうふうに考えます。  研究開発等におきましても、八幡、富士等のユニットになっております場は、りっぱになし遂げられる資格があると思うのでございます。アメリカの鉄鋼業等におきましても、USスチール等が必ずしも技術の改善の第一線になっているのではない。ほかの小さな会社のほうがかえって個々の技術の改善に寄与している。他社がその特許なら特許を買うとか、いろいろなくふうが行なわれておる。御承知のように日本でも単に八幡と富士のみではございません、各社がいろいろくふうしておられます。  それから日本の海外との関係におきまして、現在日本の鉄鋼の技術は非常に進歩した部面がございまして、特許料等の支払い、それからこちらのいただくもの、両方の差額において、むしろ出超勘定になっておる。イタリア、イギリス等へ日本が技術輸出する、そのためにアメリカその他に払う技術の特許料を差し引いてなお剰余があるという今日の日本の製鉄業の現況であります。  今後いろいろ問題がありましょうが、しかし資本の自由化と申しましても、何をことさら――特殊鋼等ごく一部の分野におきましては私は存じませんが、大部分の熱間、冷間圧延部門に外国の資本が、アメリカの資本等が入ってきてやる可能性は全くいまのところ問題にならない。日本人自身の競争によって鉄鋼業の進歩ははかられていくのではないか、かように思う次第でございます。

岡本茂自由民主党

○岡本(茂)委員 関連ですからきわめて簡単に、まず熊本さんにお伺いしたい。  第一には、いま問題の富士、八幡の両社の合併の問題ですが、両社は本来一本の会社であったものが二つに分かれて、そしていまや北海道から九州に至る同系の工場をたくさん持って生産している。そこに設備のむだがあるのかないのか、そこに相当設備のむだがあるということをお認めになりますかどうかということ。  第二には販売網でございます。したがってそれからくる運賃のむだというものが多い。これが全国交錯して、北海道から九州において得意先もそういうふうになっておる。相交錯しておる別個の運送系統を一つにすれば非常に浪費が省ける、運賃だけでも五十億も省ける、こう言っておるのでございます。そのむだはお認めになるかどうか。  それから第三には、技術の開発力の問題、これは研究費は少ないよりは多いほうがいいわけです。研究員の努力が十分でさえあれば、研究費は多々ますます弁ずるわけです。いまお話のUSスチールが必ずしも大いなる発明をせられてない。これは仰せの例もございましょう、日本の例もありましょう。しかしそのお話を発展させれば、小さいほどえらい発明ができるようになる。そんなことはないので、日本でも研究開発費の増額、拡大というものに非常に努力いたしておる。いま富士、八幡が別個の研究施設をもって多大の経費を重複して使っておる。その中には一緒にすればこれがもうベストである、こっちはベストであるというものが一本になって出てくるわけです。そういう研究開発上の利点というものをお認めになるのかならないのか。  それから輸出の問題は、いま御説明があったので思いついたわけですが、輸出は一千二百万トン、最近はそこまで上がってまいりました。だから世界一だ、世界一だからそれで甘んじていいのかどうかという問題、つまり日本が能力の限りを尽くしてそれが最大の輸出であるかどうかということ。つまり、いまの程度の過剰設備をかかえ、資本蓄積を十分行なわず、技術の開発も不十分でやっておってなおかつ一千万トンの輸出をしておる。もっとも配当も一割そこそこの配当しかできないわけです。それをさらに力を尽くして集中して大きく伸ばす必要は私はあると思うのだが、いまの一千二百万トンの輸出で甘んじていいのかどうか。この四点について……。

鴨田宗一自由民主党

○鴨田委員長代理 実は持ち時間の関係もありまするし、先生方もこれからまだ各参考人の方々に御質問をいたしたいという申し出もありますので、御答弁はひとつ簡単にお願いいたします。

熊本孫三郎東洋経済新報社論説副主幹

○熊本参考人 それじゃ簡単にお返事させていただきたいと思います。  設備のむだにつきましては、私ども高炉が非常にできる前に圧延部門等においてむだといいますか余剰があるということを聞いておりました。確かにその点は認めますが、しかしだんだん需要がふえるに従いましてこれらのものが活用される時期も参りますし、スクラップ・アンド・ダウン、古いものをつぶせばこの点はだんだん解消されていくのじゃないか。  それから輸送費につきましては、これはマーケット全体の問題でございまして、アメリカの西海岸へ日本が輸出できるというのもそういう地理的な条件かと思いますが、これは商売でいろいろくふうをなさってやっていただきたい。  それから研究費は、私は小さいほどいいというふうに申し上げたのではございません。もう一つ例をあげますならば、イギリスの、実はナイロンに匹敵するポリエステル樹脂、あのケースなんか、イギリスの小さな会社、ブリティッシュプリンタースという会社がくふうしまして、ICIがそれを買い取って、そうしてあれだけの大きな世界的な事業にして、日本もその特許をいろいろ買っておる。そういうふうに多元的な研究のセンターが必要だということを申し上げたわけです。とかく一つの大会社なりあるいは役所みたいな研究所は、あぐらをかいて非常に官僚的な色彩になって、その一つ一つの個人個人のイニシアチブというものは押しつぶされる危険があるということです。したがいまして富士、八幡等のユニットになっておりましたならば、富士も八幡もそれぞれのセンターで研究なさっており、そういうところに機会が多く与えられる、そういう意味において私は必ずしも一緒にならなくても、研究開発の可能性があると思う。  それから輸出の問題につきましては、これは私は決して一千二百万トンで満足しているという意味で申し上げたのではございません。これはますます、むしろ合併しないことによって、各社が競争することによって輸出もなお促進されるのじゃなかろうか、こういうことを私は申し上げたいと思います。  それから資本蓄積等の問題におきまして、なるほど現在のUSスチールその他アメリカ等の会社にはばく大なリザーブがございます。戦争におきましても、日本のような非常に廃墟となるような被害をこうむらないで、そうして過去の蓄積が十分にものを言っている。しかしこの工場のコストなり前向きの競争力においては決して日本は劣らない。資本の蓄積が足らないということは、これは鉄鋼事業だけにとどまりませんが、この点についても、私将来性があるという意味においてそれほど悲観すべき問題ではなかろう、かように考えております。

岡本茂自由民主党

○岡本(茂)委員 私いろいろ意見がございますが、きょうは関連ですからこの程度にさせていただきますが、私がいまお尋ね申し上げてお答えをいただきましたことについて、ダイヤモンドの鈴木さんから御所見を伺いたいと思います。

鈴木建株式会社経済雑誌ダイヤモンド社論説主幹

○鈴木参考人 お答えいたします。設備のむだという点につきましては、八幡なら八幡の古い設備は合理化投資によりましてどうやらいまのところは――私なんかも赤字ではないかと思っていたのですけれども、会社のほうでは赤字でないと言っておりますし、今度君津の二号炉をつくるにあたりまして、八幡製鉄所の古い炉はみんな破棄するという形でリプレースが今後は進んでいくというような形になるようでございます。  それから輸送のむだというのは、確かに室蘭の製品が九州のほうに参ったり、それからまた九州の八幡の製品が北海道のほうに参ったり、そういう交錯輸送というものが行なわれておりますので、そういうものを合併後整理しますと、鉄鋼重量物はかなり運賃が高うございますから、そういう面ではかなりの経費のコストダウンになってくるというふうに思います。  それからまた技術の開発力は、それは確かに小さい企業でも十分やる。立石電機なら立石電機というものもやるでしょうし、またソニーも小さいところでやって大きくなったということもございますが、現在両社合わせても六十億かそこらの研究投資しか行なわれていない。それでこれはまたダブってやっておる。これが一緒になったら、今後資金調達力が大きくなって百億くらいな研究投資も行なわれるでしょうし、両方の技術陣が一体化しての人間のそういう頭脳の力も発揮できる。それからまた今後たとえば原子力製鋼というような問題とか、いろいろな未知数の問題があるわけですが、そういう大型プロジェクトを開発する場合、これは政府も援助するでしょうし、そういう場合にそういう強力なる企業がいいということは、一体となって開発できる、そういうメリットもあるのではないか、こういうふうに考えております。

始関伊平自由民主党

○始関委員 もう時間が切れそうという感じになってまいりましたので問題をしぼりまして、最後に力石参考人にお尋ねをいたします。  あなたはたいへん独特のお立場にお立ちのようでございまして、自由競争原理というものを必ずしも万能のものとはお考えにならない、こういうお立場のように拝聴いたしました。自由競争の最も重要な場面の一つが設備投資の自由という問題になりますね。日本の鉄鋼業はこの設備投資の自由という場面を通じまして、いろいろごたごたもあったようですけれども、今日の発展を来たした、このように考えます。そこで、これまでは過去十年間においては高炉の増設数が大体三十本だった。六社といたしますと十年間で五本、つまり二年に一本くらいの割合で高炉ができたので、高炉一本つくりますには一年半から二年だということでございますから、あなたが先ほど御指摘になった高炉の完成までの間にそれほど時間があかないというような点でも、まずまずの成果をあげていたのだろうと思います。ところが伸び率は、伸びることは非常にすいすい伸びるのだけれども、これからはいままでほどはいかないだろう。それから生産の規模が非常に大きくなって、一工場で五百万トンないし六百万トン、これはほぼ一年分の成長率に当たる、こういうお話でございますと、言うまでもありませんが、ざっと計算してみますと、いままでは十年間で三十本だったものが、今度は十年間で二十本くらいでいい。したがって一社当たりにしますと三、六、十八で、三本くらいというふうなことになるのかと思います。これを間違えますと、先ほどお話のように四千億、五千億の遊休設備ができて、会社自体も損だが国民経済的なロスが非常にある、それから時間がかかるので中間のロスもたいへんだ、これは御指摘のとおりだと思うのです。それで、そういうような観点に非常に重点を置いて考えれば、いわゆる投資の主体といいますか、これをもっと制約すべきだ、一社ということも考えなければならぬ、また二社ということも考えなければならぬ、こういうようなお話でございまして、もっともな点が多いと思うのですが、そういうことになれば、もはや私企業としての存続は認められないのだ、自由競争がないから私的独占だから公社化すべきだ、こういう御意見でございますね。私がお尋ねしたいと思いますのは、この二つの御主張が不可分の関係に立っておるのか、あるいは切り離して、公社化の問題はあとに回しても、一応いまの状態では不十分だけれども、八幡と富士の合併にはそれだけのターニングポイントといいますか、いま鉄鋼業の情勢の変わりつつある段階においては相当の意義があるということにお考えなのかという点をひとつお尋ねいたしたい。  それから、時間がありませんので今度は鈴木さんにちょっと伺いますが、私はいま申し上げましたように自由経済の立場に立って、自由競争を阻害することなしに鉄鋼の大型合併というものが相当なメリットを与えるだろう、国民経済的に影響が多いだろうという立場に立つ者でございますが、ただ一つ気になりますのは、企業体があまり大きくなりますと、経営の管理ないしは労務の管理というような面で若干のロスができるのではないかという心配があるのです。親方日の丸的な気分が生まれたり……。鈴木さんは御賛成のお立場のようですから、その点について御意見を承りたいと思います。

力石定一法政大学教授

○力石参考人 富士、八幡が私的企業として合併が認められるということになりますと、おそらくこれに対抗して川鉄、住金の対抗的な集中化の可能性も出てくる。といいますのは、非常に大きな規模で支配力を持っておる、そしてたとえば非常に合理化がかりに進んだといたしますと、これに対抗するためにはやはり対抗的な措置が必要であるというのでこの合併要請も出てまいります。ですから八幡、富士を私企業として認めると、川鉄、住金はいろいろな社内の事情がございましてなかなかできないだろうというふうに考えておりましても、実際は、もし富士、八幡がいままでのような殿さま的なやり方をしていれば何とか独立でもって川鉄、住金も対抗していけるでしょうけれども、われわれが望ましいのは、富士、八幡が最も近代的、合理的な経営方式をとる、そして近代化を進めて競争力を強めていくことであります。そうなりますと、これにやはり対抗上の措置を他の二社もとらざるを得なくなる。USスチールの場合には二十数%でありますが、八幡、富士の場合には三六%、その下にあるいろいろな系列企業を入れますと、先ほど竹中さんが言われましたように四十数%という非常に高い粗鋼生産のシェアに達しますから、こういうような強力な力を持った企業に対しては対抗的な合併が起こってくる。それをまた認めなければならぬ。そうすると、これは複占化状態に近くなってまいります。複占化状態に近くなってくれば、これはプライスリーダーというか、かなりの価格支配力が出てまいる、こういうふうな道行きをたどっていく可能性がございますので、この際はやはり八幡、富士については公私混合、すなわち政府出資の持ち株会社という昔の日本製鉄がそうであったような形にする、そうして価格や設備投資も公共的なコントロールを行なう、そうして他の企業がもし集中合併を要求してきた場合には、これも混合企業にせざるを得ないという状態、混合企業を選ぶか、競争のメリットを生かしてやっていくか、そのどちらかを選ばなければならないという状況に置いたほうが長期的に見てよろしいのではないかと思います。  それからもう一つは、寡占的な支配力ができ上がった後における弊害がどういう形であらわれるかということで、先ほど市場支配力の問題で寡占化の形成ということが問題になりましたけれども、私は、寡占価格の形成によって鉄鋼業が直ちに停滞するかどうかということについては、まだ疑問を持っております。競争がかなり残るだろうという意見もございます。この意見に対しては一定の賛成の要素があるわけです。しかし、その場合の競争は、電力企業が二社の間で競争しても破滅的競争を行ないますように、寡占化についても競争が激烈に行なわれると、こういう巨大な装置産業の競争はどろ沼化のおそれもまたあるわけであります。どろ沼化の競争をするか、あるいは寡占的なあぐらをかいて、高価格をつけて、その上に停滞するか、あるいはその高価格を利用して、より一そうの借り入れを行なって、設備を拡大し、打って出て、ますますシーソーゲームをして、寡占的こんとんと高価格との間の乱闘を繰り返していくか、そういうふうな運命をたどるのであって、集中度を高めて、そこで寡占的こんとんから有効競争に行けるかどうかについては非常に不安がございます。鉄鋼業のような産業については、有効競争は有効ではない、こういうふうに私は考えておりまして、有効競争が有効な産業というのは、先ほども私が言いましたような、複合型寡占であるとか、製品差別型寡占等の有効競争が有効でありますけれども、こういうふうな鉄鋼業のようなものについては、そういううまいぐあいに、競争もある程度残るし、集中の利益も得られるというふうな綱渡りは、私企業のもとでは非常にむずかしいわけです。そこで、こういうような投資計画や、価格についての管理をしてやっていく。富士、八幡についてそういうふうな処置をとっていく必要があるのではないか。独禁法の場合は、独禁法の観点からいいますというと、一応、十五条に違反する、そういう立場をとって、そして政府のほうで合併を混合会社の形で進めていけば、これは政府の直接管理下に入るわけでありますから、これは適用除外を受けられる。こういう形でいくのが自然なのであって、独禁法のワクを何とか広げて、ここで措置しようといたしますというと、複合型寡占、製品差別型寡占の場合、競争をどうしてもやらなければならぬ、そして、合併しないほうがいい、スケールメリットもあまり得られないというふうなものがいわば集中の支配をねらって申請してきた場合に、拒否しにくくなってまいります。だから、独禁法というものは、ここで残しておきたい。残しておきながら、こういうふうなスケールメリットが非常に大きい、競争のむだなものは別の処理をする、こういうふうなやり方をするのはフランス、イタリア、イギリス型の処置のしかたであって、独禁法のワク内で認めてしまうか、イエスかノーかというようなやり方をとるのはアメリカ型のやり方でありまして、日本のような中進国では、もっとヨロッパ型のやり方で処理していかないとむずかしいのではないか、こういうふうに思っております。

鈴木建株式会社経済雑誌ダイヤモンド社論説主幹

○鈴木参考人 合併した場合に、要するに企業があぐらをかいたり、また労務管理の面に問題が出てくるのじゃないかということについてお答えいたします。  もちろん、合併によるメリットと申しますのはいろいろあるわけですが、そのメリットをほんとうに発揮するのは経営者の手腕いかんに関する問題だと強く認識いたします。したがいまして、経営者の合併後の使命は非常に重要になってくるわけでありまして、特に鉄鋼の場合は、現在でも、大企業、基礎産業としての企業の公共性というものはかなり強いわけですが、それが合併でより一そう強くなるということにおきまして、主要産業の輸出増進のためにも、良質の製品を安価に提供するということを基本的理念として、その使命感に徹しなければならぬという問題がございます。同時にまた、企業が大きくなると動脈硬化になるということがございますので、徹底的に合理化し、管理機構を簡素化していくということをやらなければなりませんし、それからまた、コンピューターの導入によって管理が助けられる、こういうことも積極的にやらなければなりませんし、GE社のやっている目標管理を東芝が導入してやっているように、そういう目標管理というような、従業員のバイタリティを自主的に発揮するような経営方式も積極的に導入する、そういうあらゆる努力が必要になってくるのではないか、そういうふうに考える次第であります。

始関伊平自由民主党

○始関委員 どうもありがとうございました。時間がございませんから、これで終わります。

鴨田宗一自由民主党

○鴨田委員長代理 次は佐野君。

佐野進日本社会党

○佐野(進)委員 参考人の皆さんに若干の時間質問したいと思います。  いまそれぞれお話を聞いておったわけですが、私は三点に分けて、それぞれ各参考人に関連することになろうかと思いますが、御質問をしてみたいと思います。  まず一番最初に、大型合併、特に鉄鋼の合併の問題に関連して、力石さんを除きまして、三人の方に最初御質問をしたいと思います。それは、熊本さんと竹中さんはおおむね同じ方向の御意見の発表があったように私としては理解いたしますが、鈴木さんはその面からいうと、何かちょっとニュアンスが違っているように考えますので、そういう面における質問をしてみたいと思います。  まず第一に、この合併が近ごろの経済情勢の中で大きな問題になりつつある背景、特に大型合併が問題になりつつある背景の中で一番大きなことは、いわゆる資本の自由化をはじめとする国際的な競争力に対応するわが国の経済のあり方、特にそれが企業の面において大型合併が必要であるという意見と、むしろ大型合併というものがそういう面において弊害をもたらすのではないかという議論、もちろんそれは錯綜した面がございますから、一がいに一律に言い切れるものではないのですが、そういうような議論が非常にあるわけです。したがって、その面から見てまいりました場合、いま三人の御意見をお伺いしながら私も感じたわけですが、その感じた点について二つばかりお聞きしておきたいと思うわけであります。  その一点は、まず熊本さん、竹中さんに共通しておられることは、日本の鉄鋼産業が今日飛躍的に躍進を遂げてきたその背景に、各企業間における自由競争があって、いわゆる企業間における自由な競争を前提として今日の躍進がもたらされてきたのであって、このことは、現在の時点からちょっと先を展望した場合においても変わらないように考えられるという御意見の開陳であったようであります。それに対して鈴木さんは、国際競争の現在の情勢の中においては、いままでは自由競争が一つの前進の基盤であったということについては否定されておらないようですけれども、これ以後は、企業における一つの合併なり、あるいはこれからの時代に即応してそれらの体制をつくっていかなければならないのだ、こういうようなニュアンスの御発言があったように私はお伺いしているわけですが、そこで御質問を申し上げたいことは、いわゆる資本の自由化なり開放経済体制下なりにおいて、これから先、短期的な展望でもけっこうだと思うのですが、いわゆる国際的な市場性、特にベトナム戦争をはじめとする国際緊張の面も関連いたしまするが、鉄鋼生産についての需要の伸び、国内的な需要ではありませんが、国際的な需要について、どのようにお三方は御見解を持っておられるか。一千万トンとか二千万トンという抽象的な御返事はさっきありましたけれども、今日の鉄鋼業が置かれておる国際状況の中で、合併しなければ打ち勝つことができないという一つの見通しのもとに合併が打ち出されておるわけであります。ひとつ、それに対応する国際経済の情勢について、特に鉄鋼業を取り巻く情勢について、短期的な展望についてお三方の見解をお伺いしておきたいと思います。

熊本孫三郎東洋経済新報社論説副主幹

○熊本参考人 いまの御質問にお答えしたいと思うのですが、私は、やはり国内は経済の成長率以上に需要は伸びると思うのです。それから海外の輸出市場におきましては、アメリカ等はどっちかといえば日本に対する防衛態勢です。そのためにいろいろ新しいくふうをこらして、新投資も行なわれるであろうことは日本として覚悟していなければならないと思うのですが、現状におきましては、何もアメリカはこわくない、むしろ輸入制限などやらない限りにおいては、日本はまだまだアメリカ市場に対しても伸びることができる、そういうふうに私は考えております。ただ東南アジア市場、アフリカ市場が、遠い将来における発展の可能性はありますけれども、まあかりにベトナム戦争等が終わりまして、先進諸国の援助がどこまで手が伸びるかというような問題とのかね合いとなっております。アメリカ等の輸入制限が非常に強化されるならば、やはり日本の鉄鋼市場というものは一時苦境に立つこともあるのじゃなかろうか、そんなふうに考えておりますが、しかしむしろ鉄鋼等の合併問題は、中心的な問題としては、やはり国内市場にどういうインパクトを与えるかということを私は中心に考えているわけでございます。

竹中一雄国民経済研究協会主任研究員

○竹中参考人 お答えいたします。国際競争に打ち勝つために合併をするというのは、多くの方がいわれているように口実でありまして、現に合併当事会社の社長さん御自身が、ある雑誌のインタビューで、国際競争力は十分にあります、国際競争力のためということを私は言った覚えはありませんというふうに御発言になっておるわけであって、それは私はためにする口実であろうというふうに考えます。  それから需要の将来は、私は海外面においても国内面においても将来性は非常に大きいというふうに考えます。特に国内につきましては、先ほどもお話に出ました社会開発を大がかりに進めるとか、あるいは大規模な公共投資をやっていくとか、都市の高層化をはかっていくとか、すべて鉄鋼需要の拡大につながる社会開発をこれから大いにやる必要があるのでありまして、先ほどのお話では一億二千万トンという予想数字が出ておりましたけれども、そう遠くない将来に、少なくとも現在考えられるところでは、一億二千万トン程度の国内需要は十分に期待できるだろう。そこで問題は、規模の経済という、スケールメリットと市場の規模、大きさとの関係が問題でございまして、市場の規模が大きくてもスケールメリットが非常に大きい場合は、これは場合によっては中央で集中的に運営する必要があるわけです。たとえばヨーロッパ諸国のように、それぞれの国の国内の鉄鋼需要がせいぜい二千万トン前後というような国の場合には、現在製鉄所の適正メリットは一千万トンというふうにいわれておりますから、適正規模に達した製鉄所でやろうとすると一社とか二社ということになりますから、これは明らかに集中化して国の企業としてやる必要が出てくるだろうと私は思います。ところが日本の場合には、いま申し上げましたように、約一億二千万トンという市場のスケールが予想される。そうしますと、機械的に計算をいたしますと、適正規模が一千万トンとすれば十二社、あるいは将来もっと適正規模が大きくなって二千万トンになれば六社というものが十分に存立可能なわけであって、こういう条件の場合には、できるだけ独占禁止法を尊重して競争のメリットを生かしていくことが国際競争に打ち勝つ、世界市場でも国内市場でも品質のいい鉄鋼を供給していく基本的な条件になるだろう、そういうふうに考えます。

鈴木建株式会社経済雑誌ダイヤモンド社論説主幹

○鈴木参考人 長期的には、先ほども申しましたし、また皆さんもおっしゃいましたように、鉄鋼の需要はやはり国際的に伸びると思います。ただ短期的に見ました場合に、短期とおっしゃいましたが、たとえばニクソンの大統領が有力だといわれているのですが、当選した場合に、国内中心主義で保護政策が強化されるというようなことが一つの懸念になっておりますが、そういうあれに対しましては、要するにアメリカのユーザーは十五ドル違っても愛国心を忘れないけれども、二十ドル違えば愛国心を忘れるとか、まあ数字は若干開きがあるかもしれませんが、そういうふうにいって、日本の鉄鋼は五十ドルとか幾らとか大幅に違うということで非常に定着化して使われている、自動車工業なんかでも使われているということで、そういう面ではかなり強いわけでございますが、しかし一方におきまして、私、昨年ロスアンゼルスに参って鉄鋼のことを若干調べたのでございますが、商社が三十ぐらいありまして、そして過当競争をやっている。それで日本の鉄鋼が非常に価格の競争をやるので商社のほうから文句が出るような状態だということを現地で伺ったのでございますが、そういうような過当競争というものも、合併によって今度は――いままでみたいなことをやったのでは日本の輸出は共倒れになるというので自主的な輸出調整に入っておりますし、値段も五ドル上げるというようなことになってきておりますけれども、そういう点からいえば、いわゆるめちゃくちゃな競争というものはなくなってきておるという意味で、むしろ有効競争的な面になるのでプラスではないかと思います。それからまた最近日本の機械類の輸出が、総輸出額の中で三十六年ごろはたしか三五%ぐらいだったと思うのですけれども、六五%ぐらいに機械が競争力がついて非常に上がってきておる。そういう形での鉄の輸出というようなものもあるということで、需要はわりあい楽観していいのではないか、そういうふうに思います。

佐野進日本社会党

○佐野(進)委員 それでは、関連した質問ですが、次に鈴木さんと力石さんに御質問申し上げたいと思うのです。いまのように需要については長期的に何ら不安がないし、短期的にもそう問題がない、あるのは、国内における一つの合併を促進する要因は当事者間における会社の内部に主たる原因があるというような、それぞれの御見解のように私は聞きました。これは間違いがあれば訂正していただきたいと思うのですが、そういうことになりますと、当面、少なくとも短期的な情勢の中においては、合併を促進しなければならない国際的、国内的諸情勢はないと判断しつつも、しかし当面二つの大会社が合併を非常に熱心に推進しつつあり、あるいはまたこれが通産省をはじめとする日本政府内部においても非常に強い意見として開陳されつつあるということは、将来その意見が発生する一つの条件があろうと思うのです。したがって、そういう点について鈴木さんと力石さんにお尋ねをしてみたいと思うのですが、その一つは、技術革新というか、いわゆる開放経済体制下になることによって外国と激しい競争を行なっていかなければならぬ。それにはいま問題はないけれども、しかし必然的にそれが将来出てくる。外国の体制が強くなれば強くなるほど相対的にこちらの力が弱まってくるということになって、それに対応する力というものが必要になってくる。その対応する力というものは企業の集中化であり、合併である、こういうような理論展開が提起されつつある一つの条件になっておると思うのですが、そうした場合、技術革新というのは、一体一企業の中において、いわゆる企業問競争の中において解消され得べき段階であるのかどうか、むしろそれを超越した一つの段階に到達しつつあるのではないかというような感じをだれしも持つような形になると思うのですが、そういう点について、二社が合併することによって、先ほど岡本さんのほうの御質問もありましたけれども、技術革新をする際における一つの非常に大きなメリットになるのだ、こういうような表現をされておりますが、はたしていまある有力五社ですか六社ですかの中におけるところの技術革新というか、そういう面におけるところの研究の段階が、いま要請されつつある外国との関連の中における相対峙した関係の中でどの程度の力を持っているのか、あるいはどういうような形にしたらそれを解消することができるか、それが大型合併によるのが一つの方法なのか、あるいは大型合併によらず、さっき力石さんがおっしゃったように自由競争の限界を越えた、ある程度の一つの段階における政策的な面における一つの対策というか、設備というか何というか、そういうものをしなければならぬのかという点についてはどのように考えるか。これが時間的に――時期的にというより時間的にいかなる時間が予想されるか、いわゆるそう長い期間ではなくて。そういう点についてお二人の見解を伺いたいと思います。

鈴木建株式会社経済雑誌ダイヤモンド社論説主幹

○鈴木参考人 お答えします。技術にりきましてあまり専門家ではないわけなんですが、いろいろな技術は、要するに戦後日本がみんな外国からいただいたりアメリカからいただいた、導入してまいったわけでございますが、これは鉄鋼ばかりではございませんけれども、だんだん日本の力が強くなりましたので、技術の交流というような形、また技術だけ日本に売るのではなくてさらにその製品をつくってかせごうというような形で、資本の自由化という問題が日本に圧力となってきているのだと思います。それで、鉄鋼の場合は、現在当面の問題としては特に負けておるものはないと思いますが、たとえばUSスチール社がリムド鋼連続鋳造の量産技術を最初に開発しておるけれども、これは一切海外に売らないというような形が出ておるわけでございます。それからまた鉄鋼の分野においてもまだ開発すべき未知数の点が非常に多いというふうに鉄鋼会社は言っておるわけでございまして、なるほどそうかなというのが私の考えでございます。それで、やはり技術というものはそれぞれの企業が秘密にするものですから、それが共同開発というようなことになっても、肝心の部門はなかなか出さないのではないか、それが合併になって初めて両方が総力を発揮するのではないかということは一応考えられる、そういうふうに考えております。

力石定一法政大学教授

○力石参考人 日本の鉄鋼業はいま大きな勢いで伸びてきて、世界市場のシェアを非常に拡大し、アメリカをノックアウトの状態にしている。最近、私アメリカに行きましたけれども、西海岸はほんとうに日本鉄鋼業の圧力がひんぴんとかかっております。それから自動車も相当出ております。こういうふうにして技術を教えてくれたアメリカに対して非常に挑戦するような、いわばアメリカにとってみれば敵に塩を送ったような形になっているわけです。これからはこういうようなことを二度と繰り返したくないというので、いま話がありましたリムド鋼の連続鋳造とか、あるいは高張力鋼の技術だとか、直接製鉄法だとか、いろいろな新しい革新的な独創的な技術については、開発しても技術独占です。他の国に与えないで、自分の世界市場におけるシェアを確保する、世界市場の独占的な地位を確保するために技術独占をする段階に国際競争が入ってきたということは事実だろうと思います。したがってアメリカとしては、技術を全然与えないか、与える場合には資本参加を要求するという問題が出てまいりましたパルプの場合にも資本参加の問題がありましたし、鉄鋼の場合も、いま全然ないという話もありましたけれども、案外将来そういう技術独占問題からやむを得ず資本導入をすることもあり得るかもしれない、そういう状況になりつつあることは事実だろうと思います。したがって、いままでの国際競争とこれからのいわばドルウィークの状態――いままではトルギャップで他の国がドル不足で困っていたのに、今度はドルウィークになりましたから、向こうはこれ以上塩を送りたくないという状況のもとでの国際競争の次元がかなり変わってきているということはおっしゃるとおりだろうと思います。そして、そういう観点から独創的な技術開発力をつけなければならない。いままでのところ八幡が四十数億円年間の研究投資をやっています。富士が二十数億ですけれども、これに比べまして、いま言いましたような種類の技術開発のための金額は大体百億円程度、直接製鋼法の場合は五百億円くらいが要るわけです。そうしますと、これを合わせても足りないくらいの状態である。いわんやこれを二重三重に同じようなことをやってもしかたがないのであって、いままでの日本の技術は、たとえば八幡の技術貿易収支は黒字であるといわれておりますけれども、非常にイミテーション型の技術にすぎないのです。本格的な独創的な技術を開発したわけではございません。そういう意味では国際競争の面で、いままでのプラントレベルにおけるスケールメリット、それから労賃が安いという面では、価格面における国際競争力はいまのところありますけれども、静態的に見てそうですけれども、動態的に今後の発展を考えると、非常に問題があろうかと思います。  そういう観点から、研究投資を集約化するだけでなくて、政府の研究投資の投入が必要でありましょうし、それは政府レベルで別に研究してそうして会社へ持っていくというやり方ですと、これは基礎研究ないし応用研究どまりなんです。実際の工業化段階の研究というものは企業とぴたっと一致したようなことでやらないと――たとえば新幹線開発は、国鉄の研究所と国鉄経営とぴしゃっと結びついた。絶えず企業のレベルとフィードバックしていなければならない。そういう観点からいきますと、国家的であって同時に企業と密接する国営企業型のものが予想される。東洋経済に「ビジネス」という雑誌がありますけれども、それで技術者が集まりまして、日本の技術の国際競争力の点数をつけております。上のランクにずっと出てくるのは鉄鋼とか国鉄とか電電公社とか、こういうふうな大体国家的なバックのあるところで、いままで国家資本主義でやってきたところは国際レベルに、ある程度イミテーション型のものが多いけれども、独創的なものに新幹線のようなものも含まれておるという形で出てきます。ずっといきまして新興成長産業部門は非常に点数が悪いわけです。ですから新興産業部門の技術開発能力をつけるといっても、国家的な経営形態と国家的な援助と結びつけて、向こうは私企業でたいへん大きなワールドエンタープライズですけれども、こちらは国家が肩を入れた形で、ナショナルエンタープライズで対抗していかなければやっていけないという形になっている。ちょうど後進国が国家資本主義の形態で先進国に対抗しているのと似たような形が中進国であらわれているという意味で、混合企業形態というのは研究開発の問題とも深い関連があるというふうに私は考えております。  それからこれは混合形態というものを、ただ技術開発の問題だけでなくて、価格をたとえばガラス張りでやるといいましても、私企業の場合はどうしても秘密にいたしますから、そういうふうなものについて公企業の場合はちゃんとガラス張りで把握できるわけです。それをもとにしてプライスリーダーシップをとれば、いろいろ私的なプライスリーダーシップでなくて社会的プライスリーダーシップができるわけです。そういうふうに企業を誘導していくとか、いわばコストテストプラントといいますけれどもそういうふうなものにしていく。そして寡占的に、なまけてしまってイギリスのように停滞してきた、そういうときにはイギリスの場合でも国有化を解除した後にも一社だけ国有部門を残しておる。それに積極的にストリップミルをやらして他の企業を刺激しているというやり方をとっておりますけれども、しかし国営企業というものは非能率でだめだということが日本では支配的ですけれども、全体としてヨーロッパあたりでは、国営企業というものは能率的過ぎて困る、たとえばイタリアでは私企業のモンテカチーニ・エジソンは国営企業のENIに押されて、最近は国家持ち株会社IRIが持ち株参加いたしまして、民間企業から混合企業の形になっているというふうなことで、だんだんそういう世の中になってきているので、昔の古くさいビスマルク型の国営企業の方針というふうなイメージとはだいぶ違った形が世界的に出てきている。そういう意味で技術革新に伴う大型化というものを考えますと、そういう営経形態が必要ではないかというふうに考えております。

佐野進日本社会党

○佐野(進)委員 それでは時間もあまりございませんから次に進んでまいりたいと思います。  大体技術革新の問題と企業の大型化、いわゆる合併ということが、そのこと自体によって問題の直接的な解決に至るような甘い情勢ではないというようなことを私いまのお話で把握できたわけですが、そういたしますと、そういういうような諸情勢の中で企業の大型合併がいま非常に重大な問題として提起されておるわけですが、私ここでさっき熊本さんからお話がありました点に関連して御質問したいのですが、問題は、企業合併、特に五つか六つの競争企業がある中での二社間における大型合併は、必然的に残された企業の反対、反発、あるいはまたそれらの企業がいわゆる焦燥感というか、そういう形の中で何らかの具体的な行動に出る、これが普通あり得る状態だと思うのです。したがって、紙の問題についてはそういう状況が出たというお話が先ほどあったわけですが、今度の場合、先ほどお話がございましたが、同業間の住金であるとか川鉄であるとか、そういうところで比較的反対が起きない、結局管理価格を予想して、その管理価格に三社の製品がなることによってみずからの会社の利益を守ろう、いわゆる他力本願的な要素が多分にある、こういうような御説明があったのですが、はたしてそういうことが日本の企業の場合、特に鉄鋼業の場合可能なのかどうか、この点いま少しく要点だけでもけっこうですから御説明を願いたいと思います。   〔鴨田委員長代理退席、委員長着席〕 反対が起きないことは、管理価格を想定している、管理価格ができることが他業種についても非常に利益だ、そういう判断があったから合併に対して反対しないのだ、こういうふうに、聞き間違いであるかどうか、聞きましたので、その点ひとつ明確に、要点だけでけっこうですから御説明をお願いします。

熊本孫三郎東洋経済新報社論説副主幹

○熊本参考人 ただいまの御質問にお答えします。大体あなたが御理解くださったとおりのことを申し上げたつもりでございますが、これまでは非常な競争心を起こして設備なんかの競争をやってきたわけです。その間一時設備過剰になりまして、政府の勧告操短とかあるいは公販価格制度というものがとられまして、そういう不況期を切り抜けてきたわけでございます。それから昭和の初期の日本の、これは鉄鋼事業だけではございませんが、日鉄に合併する以前の重要産業統制法なんというものは、どちらかといえば非常に慢性的な不景気のもたらしたカルテルであり、企業の合併も、旧日鉄ができましたのが、やはり昭和の初期の恐慌でどうにもならなくなったので合併に追い込まれていった。それから旧王子製紙が富士、樺工を合併いたしましたのも、非常な設備過剰なり不況によりまして、あのときは興業銀行の結城総裁があっせんして王子に合併させた。その後の経過等を振り返ってみましても、製紙会社は、三菱製紙あるいは北越製紙も戦後残ったかと思いますが、そんなに王子の独占といいますかカルテル的な要素を不満には思っていなかった。相当相手のシェアは大きくても、自分は自分なりのシェアを確保することができる、どろ沼による非常な不景気をきらう、これが昭和の初期における、一九三〇年代におけるカルテルなりいろいろなトラスト、大体大企業ベースにおけるものの考え方だったかと思うのです。ところが、第二次大戦後のいわゆる寡占体制下のパターンというのは、不景気でなくともお互いになれ合いの価格なり生産調整をやろうとするのがアメリカあるいはヨーロッパ的な型の傾向かと思われますが、日本にもやはりそういう可能性があると思うのです。今度の景気変動におきまして、昨年あたりから卸売り物価の下方硬直性があらわれているというのも、何とかして賃上げ等のコストアップを卸売り物価に転嫁しよう、そういう動きがある。そのときには自分の業界において、自分よりはシェアが大きくても、それが生産制限をするようなときにはぴしっとやってくれる、それから値段も値くずししないという、そういう暗黙の期待がやはり入っておって、ほんとうはライバルが非常に強大なものになるので反対すべきところを反対していない。もう一つの理由は、ただずうたいが大きいだけでは必ずしも強敵ではない。そういう二つの要素が現在からみ合っておるのではなかろうかと私は思う。  それからついでながら申し上げますれば、先ほどほかの委員の方からの御質問に、ほかの自動車とか造船とか、鉄鋼のユーザーに非常に大きな反対はないじゃないかということがありましたが、それらの業界もやがてアメリカのように成熟した産業になってきますと、そういうオリゴポリと申しますか、カルテル的なコントロールを加える可能性が将来生じてくるわけですね。あるいは自分たちの業界にもそういう大型合併が起こり得る。そういう場合に鉄鋼がかりに管理価格という要素を持ちましても、自分たちの製品はユーザーに転嫁するという、やはりそういう可能性を読んでおるのではないか。結局縦断的に、何にもカルテル的な対抗手段のない消費者、ユーザーに転嫁されてくる、そういう日本経済の構造的な体質の悪化を私はおそれるわけです。  そこで、この鉄鋼というもので半分近いシェアを占めるような大企業ができる、これは何としてもこの辺で反省して、やめていただいて、日本の産業を競争型のものにしていく。ヨーロッパやアメリカはやはり成熟した資本主義のオリゴポリが非常に支配的な力を日本以上に持っておる。日本は今日まで現在それほどの弊害は起こっていない。ですから先進諸国のそういう模範にならないような例をならってもらいたくない、これが私どもの日本の経済界に対する非常に大きな願望なのでございます。それでありますがゆえに、いろいろの議論もございますけれども、ひとつ独占禁止法の趣旨を守っていただいて、そういう大型合併をしなくともりっぱにやっていける産業は堂々と競争経済の原理を展開していただきたい、そんなふうに思っておる次第でございます。

佐野進日本社会党

○佐野(進)委員 それでは、その次に同じような問題なんですが、政策的な面で、いまいわゆる国内の同業関係の人たちが反対しない点について御質問申し上げたいわけですが、これは熊本さんと竹中さんと力石さん、三人の方が同じように言われておったと思うのですけれども、結局二つの会社が合併することによって、鉄鋼――粗鋼の関係ですが、約四五%から五〇%近くまでシェアを持つようになる。したがってこのことが、紙の場合は二四・六%でこ、れは輸入も若干あるが、鉄鋼の場合輸入がない、こういうようなところから非常に独占的な形態が強く浮き上がってくる、こういうようなお話があったわけですが、私はこの場合関連して考えられることは、現在でも八幡なり富士なりが単にシェアがブリキは何十%、粗鋼は何十%という形だけでなく、これは熊本さんですかもお話しになっておられたようですが、系列会社を含めると非常に大きな市場占有率を持っておるわけですね。したがってこういう面から、もし二社が――今度は仮定の問題になりますが、現在でもそういうような系列会社を含めたシェアがあることに関連して、二社が合併することによりより強大なものになる、強大なるシェアを持つ新しい会社と、そこにおける系列会社、それから新会社以外の企業における系列会社というような形が、一つの経済的な状態の中で当然出てくると思うのです。そうしたとき、それらの系列会社の社会的に経済的に占める位置というものは、現在の状況に相対比して強化されるのか、弱体化されるのか、いまでも系列の締めつけというものは相当大きいと思うのですね。資本的にあるいは販売の面においても、いろいろな面において大きいと思うのです。そういうときに、二つの会社が合併する形の中において、そういう関連企業というものがどういうような位置づけに立たされるのかということが、中小企業問題として――中小企業だけではなく、大きな会社で系列に入っておるものもありますけれども、中小企業としても非常に重大な課題になると思う。こういう点についてひとつ御説明を願いたいことと、特に力石さんがお話しになりました、いわゆる新しい独禁法の除外された形態の中における一つの企業というものを公共事業的なものとして、そういう会社の設立が望ましいのだという見解等がありとするならば、その見解に基づくいまの系列企業は、一体どういうような位置づけを現在の社会情勢の中において行なわれるのか、これは非常に大きな課題となってくると思うし、当然その課題を検討しないで結論を出すことはできないのではないかという気がいたしますので、この点について、抽象的になりますけれども、ひとつお答え願いたいと思います。

力石定一法政大学教授

○力石参考人 いまの系列と合併の問題でありますけれども、こういうふうに考えたらよろしいかと思います。合併をしないで、独立会社のままでいままでと同じような破滅的競争を続けていきますと、成長率が高いときは比較的安定しておる寡占価格の上に何とかやっていける。そのかわり、成長がときどきバウンドいたしますね。二、三年おきにリセッションを起こす。おそらく設備投資競争をいまの体制のままで続けていくとして、そのとき価格がかなり下落いたします。そのときに、もはやお荷物をかかえていけなくなって、かなりの部分を八幡、富士の系列会社から切ってくるだろう。いままで昭和四十年のときにはあぶなかった直前までいきましたけれども、おそらく今度のリセッションを経てこの次のリセッションのときには持ち切れなくなる。それに対抗するためには、お荷物をたくさんかかえていくのでなく、かなり切っていく。そこに雇用問題の発生のおそれがあると思うのです。そういう形で雇用問題が発生した場合においては、八幡、富士の経営者は死にもの狂いで合理化を敢行するだろうというふうに考えます。いまこれが私企業のまま合併していくという形になりますと、その場合には、そのときにおいてある程度系列会社をかかえる能力が、いわばいろんな生産品種を合理化するとか、あるいは投資を集約化するというようなところで、ある程度合理化の効果が出てきて、そのプラスで何とかお荷物をかかえてやっていくという形があり得るかと思います。しかし、その場合でも系列会社に対する将来の競争の中で、かなり激しい、ぎくしゃくした状態があらわれてくるだろうと思うのです。私が考えますのは、いまの投資競争、昭和四十二年の長期的な設備投資計画に従って、将来どういう経営状態になるかということをシミュレーション分析したものがあるのです。一応仮定を設けますと、価格が少し下がってまいりますと、大体いまの野放しの投資競争をやった場合に、価格が若干二、三千円下がった水準において、売り上げ高、内部留保率がどのくらいになるかということが推定されておりますが、大体四十四年から四十五年のころになりますと、いまの私企業のままで野放しで設備投資競争をやった場合には、売り上げ高、内部留保率が赤字になる。そうして配当もタコ配をやらざるを得なくなって、配当もできなくなって、経営者も首になるおそれがある。そういう見通しのもとに、野放し競争のもとでは経営というものがあぶないというので、そこはひとつ合併で何とかしょうというので、集中投資のメリットを使って何とか経営体を安定させようという方策が出てきたのだろうと思います。その見通しのもとに、集中投資のメリットを、いま言ったように寡占の弊害を伴う形で価格をつり上げながら、その集中の利益は規模の利益もありますけれども、同時に寡占化するところによる価格安定の利益もありますから、その二つを合わせて、お荷物をかかえていくという形でいって、しかもそれでリセッションのときにはそれが相当動揺いたしますけれども、そういう形でいくのか、あるいは価格の面における寡占的な弊害を除処しながら、集中のメリットだけをうまく利用して、そしてすっきりとした形に経営を持っていくというやり方を考えていかなければならないのじゃないか。こういうマイナスの状態に入った場合においては、系列企業はたいへん迷惑を受けるわけでありますから、そこで私の考えているのは、公私混合形態にいたしますと、その合理化過程――投資の集中化と品種のいろいろな調整と、それからスクラップ・アンド・ビルド、そういうようなものをやっていく過程に対して、国民的な介入が可能になります。したがって、たとえば釜石のような場合には関連産業がたくさんありますが、あそこの鉄鋼施設は完全に老朽施設だからスクラップにしてしまう、そういうことになりますと、全体が崩壊に瀕してしまう。そういうふうなことが起こらないように、その場合には企業としては、たとえば直ちに機械工業に品種を転換するように設備投資計画あるいはビルド政策をとらせるとか、そういうふうな雇用全体の安定を考えながら近代化、合理化をやっていくような、そういう発言権を国民、地域社会、労働組合あるいは系列企業というものがちゃんと持つという意味においても、混合経営形態というものは有効ではなかろうか。したがって、わがままに私企業の巨大利潤ということだけを考えて行なうところの合理化か、あるいは無理のない、社会的なひずみの起こらないような形の合理化を進めていくか、その二つのうちの一つを選ぶということになりますと、私が言ったようなやり方のほうがいいのではなかろうかということが第一です。  それからもう一つは、系列企業の中で、いま言いましたお荷物のような系列企業とは別に、非常に優秀な機械工業が育ってくる可能性もあるわけです。その場合においては、この機械工業は公企業のもとでつながっている企業でありますから、ある意味において忠実に公企業化されます。そうすると、この機械工業は――これはイギリスでやっているのですけれども、鉄鋼産業が国有化されますと、その出資した機械工業は他の私企業の機械工業に対して競争を行なう。そうして、その機械工業が寡占の弊害を起こした場合においては、競争によって価格を下げていくというやり方をとっておりますけれども、鉄鋼産業についても、そういうふうな競争的な公企業をつくり出して、他の私企業による寡占の弊害を、競争を通じて是正していくというような効果を発揮するように系列企業を指導していく、こういうことも公企業化によって可能になってくるわけです。そういうふうにして前向きに近代化、合理化を進めていくということが必要なのでありまして、寡占の弊害のない近代化の道を選ぶためには、経営形態をどうしてもここで考えなければならない。そうしないと、野放しのような場合には、たいへんな出血、それから合併の場合には、やはりいろいろな形でスクラップ・アンド・ビルドがありますけれども、それは経営者の独断で大体やられますから、社会的な問題に対しての責任というふうな配慮が社会的に――リップ・サービスということがありますけれども、実際的な形において社会的に責任を果たすような合理化をやらせるということになりますと、なかなかむずかしいであろう。したがって、私企業のままの野放し方式もいけないし、私企業のままの合併もあまりよくないと考えて、私の案を主張している次第でございます。

佐野進日本社会党

○佐野(進)委員 それでは時間がきましたから、最後に一つだけお聞きして終わりたいと思います。  私は、大体お話を聞いた範囲内における質問は終わったと思うのですが、そこで一つ問題になるのは、一番先にお話がありまして、熊本さんはじめ皆さん全部触れておられますが、結局今度の大型合併に対して独禁法との関係、公取との関係になりますが、独禁法の範囲内でこの問題をどう処理するかということになれば――いわゆる独禁法を改正するとかどうとかいう問題を除外して、独禁法の範囲内でこの問題を処理するということになりますと、非常にむずかしいという見解が共通しているように感ぜられるわけです。四人のお方ともお話を聞いて、また十五条の法律の条文に照らしてみても、そういうように感ずるわけですが、これについて、お四方の見解を最終的に――力石さんのようなお話も含めて可能なのかどうなのか、現在の独禁法のもとにおいて大型合併を進められていくのにはむずかしい条件があるんだというふうに私は感じたのですが、その点についての御見解をお聞きして、質問を終わりたいと思います。

小峯柳多自由民主党

○小峯委員長 熊本参考人から順次お願いいたします。

熊本孫三郎東洋経済新報社論説副主幹

○熊本参考人 私、当初に申し上げましたのですが、繰り返して申し上げますと、系列会社を含めまして、特殊鋼を除く鋼材部面におきまして、粗鋼部面では四七・九%という非常に大きなシェア、半分近いシェアを持っておるわけです。こまかい品種別に見ましても、もしも合併したならば、実質的に競争を制限する可能性が多分にあり得るという意味におきまして、やはりこれは独禁法の趣旨に反するのじゃなかろうか、そういうふうに私は考えます。  それじゃ独禁法を改めればいいじゃないかというような御意見もあるかもしれませんが、私はやはり日本の経済が自由経済、そしてそれを独禁法というものが一つの核となりましてささえてきた、またその自由経済によって日本がさらに発展する可能性がある、そう思います。しかも、もしもその独禁法のワク内においてシェアの半分近くを系列会社を合わせて占めるような鉄鋼事業に合併の許可を与えるとしましたら、おそらく他の主要産業なるものも拒否する理由がもうなくなってくる。そうなりますと、実質上独禁法が存在しても独禁法の趣旨がもう不在だということになりまして、これは非常に大きな先例を残すことにもなりますし、それからくどいようですが、鉄鋼というものが日本の重化学工業の中心となる経済の今日の時代において、食糧で言えば鉄がいわば主食みたいなものですね。そしてそれが鉄鋼をユーザーとする産業に非常に大きな影響を及ぼす。のみならず、政府の財政支出、その他にも非常に大きな影響を与える。それから国際的な輸出産業としても鉄鋼そのものが日本の最大の輸出の品目となっておりますし、それから鉄鋼を素材とする機械工業等が非常に大きな日本の輸出のウェートを占めつつある今日、やはり自由競争によって国内市場を中心としまして鉄鋼産業がますます国際競争にうちかつような力を整えていくことが日本経済を発展さすゆえんじゃなかろうか、こういうふうに思うわけでございます。

竹中一雄国民経済研究協会主任研究員

○竹中参考人 鉄鋼の大型合併が独占禁止法に違反するかどうかという点に限ってお答えしますと、そういうことの最終的な判断は当然公正取引委員会がお下しになるわけですけれども、私個人としては、これは第十五条に抵触する、違反するというふうに考えております。ただ、この機会にどうしても申し上げたいことは、公正取引委員会というのは、御承知のとおり準司法的な機関であります。それにもかかわらず、一部の方々が政治的に圧力を加えるのではないかというそういう不安、疑惑を国民が持つような言動が一部の公務員の方々やその他の方によって行なわれる、そういうことには十分注意を払っていただきたい、こういうふうに申し上げたいと思います。

鈴木建株式会社経済雑誌ダイヤモンド社論説主幹

○鈴木参考人 お答えいたします。公取の十五条の基準というものがはっきりしていないのですが、かりにシェアが三〇%をこえた場合に危険であるというその点からだけ申しますと、粗鋼の場合も抵触するでしょうし、その他の重軌条、鋼矢板、大型形鋼、珪素鋼板、ブリキなどいろいろ抵触するわけでございます。ただ、川鉄が今度重軌条に進出するとか、鋼矢板に住金が出てくる、それから大型形鋼に川鉄が出てくる、あるいはブリキなんかも川鉄がやっているとか、そういうふうな形で川鉄なんかは苦労はしているようですけれども、そういうふうに新しく進出してくる新鋭の製鉄所ができますと、みんな大型機械を持ちますので、いろんな製品を出すということになりますので、その点、現時点のシェアばかりを見て競争力がなくなるというふうには私は思いません。

力石定一法政大学教授

○力石参考人 私は先ほどから申しますように、十五条に違反するので、両会社はこれを取り下げて、政府に頼んで公社化してくださいというお願いをして、政府は積極的にそちらのほうへ指導していく、国民のほうもそちらのほうをサポートしていくということが必要だろうと思います。

佐野進日本社会党

○佐野(進)委員 どうもありがとうございました。

小峯柳多自由民主党

○小峯委員長 堀昌雄君。

堀昌雄日本社会党

○堀委員 最初に、いま竹中参考人がちょっと苦言を呈された点でありますけれども、この問題は実は明日の当委員会で少しきちんと処理しておきたいと思いますが、今度の王子及び八幡、富士の合併の問題については、私ども新聞で承知するだけでありますけれども、特に通産省がたいへんな熱意を傾けていろいろ支援をしておられる。通産省として産業政策としての意見を述べることは、私は通産省設置法から見ても別に問題はないと思いますが、個別の問題にわたって各種の方法、手段をいろいろとりながら行なわれているやに新聞でわれわれは見受けているわけでありまして、このことは確かにいま竹中参考人がおっしゃったように、どうもいまの国の機構の状態から見て適切でない、こう判断しておりますが、これは明日少しきちんと処理をいたしたい、こう考えております。  ただもう一つ、どうも鉄だけが他の産業に比べて通産省との関係が正常でないような気がしているわけです。私は実は長く大蔵委員会におりましたけれども、本来商工委員会で議論すべき粗鋼減産等の問題を大蔵委員会でも論議してまいりました。それはなぜかと申しますと、要するに粗鋼減産が長く続くために、このような違法なカルテルによって異常な価格の高騰が起きているにもかかわらず、通産省がそのまま放置している、そのことは公共投資に非常に大きな影響を与えるではないかという関連において問題を処理してきた例があるわけでありますけれども、これらの面で過去における粗鋼減産のやり方、その公開販売制度の問題等、いろいろな点で本来は独禁法に違反することを通産省が行政指導の名のもとにねじ曲げてきた、この鉄鋼行政についての問題点が、最後に集約的に出てきたのが私は八幡、富士の合併問題ではないかという感じがしているわけですが、この問題について各参考人はどのようにお感じになっているかを最初に伺いたいと思います。

熊本孫三郎東洋経済新報社論説副主幹

○熊本参考人 ただいまの御質問ですが、私も過去十年ばかり論説の仕事に関係いたしまして、鉄鋼その他産業政策を勉強させてもらっておりますが、どうも鉄鋼というものが基礎産業として何か特別扱いをしてこられたのではなかろうか、当局の方が特にそういうふうにお考えになってこられたのではなかろうかと私は思います。何か鉄鋼事業法案というようなものをつくって許可制にしたいとかいうようなお話を、何回となくうわさの程度かもしれませんが、漏れ聞いたことがございます。  それから、いま堀さんからお話がありましたし、私も先ほどちょっと触れさせていただきました鉄鋼の公開販売制度、価格その他数量あるいはその勧告操短、こういうことがかえってシェア争いをこれまで激化さしたのではないか。設備調整とか、あるいは通産省自身が内部の設備投資計画等の調整に参加される。そうしますと、やはり自分のシェアがほしいですから、当面の需給見通しということよりも、そういうことに走り過ぎている。それで過剰になれば政府が勧告操短をやってくれる。いわば本来なら独禁法にも許容されております不況カルテルを申請して、公取の監督下に行なわれるべきが独禁法としては趣旨でございますね。それが公然と行なわれてきたということもシェア争いを拡大させた。しかし、この近年、ほんとうに日本の鉄鋼事業というものが近代的な投資に腰を据えてかかられて、幸い需給状態もいいので、そういうことはなくなってまいりましたが、やはり政府といいますか、行政当局自身も産業政策の基本としまして、特に鉄鋼につきまして特別扱いをする必要があるのかどうか、私は非常に疑問に思っております。むしろ特別扱いする必要はないのじゃなかろうか、そんなふうに考えております。

竹中一雄国民経済研究協会主任研究員

○竹中参考人 御質問、私も同感の点が多いと思います。特に、事実かどうかわかりませんけれども、国民は鉄鋼の大手会社と通産省というのは一体ではないかという疑惑を非常に広い範囲で持っておる。また、少なくともそういう疑惑を持つに足るだけの幾つかの材料があります。さっきからお話にありました公販価格制度の問題もそうですし、粗鋼カルテルの問題もそうですし、あるいは通産省の高い地位におられた方が大手の鉄鋼会社の役員に大部分そのまま横すべりでおなりになるとか、いろいろなことがあるわけで、そういう不安を国民に抱かせないような処置をとっていただくことが、この問題を公正取引委員会で公正に冷静に判断して決定するために必要なまず第一の前提条件でないかというふうに私は考えております。

鈴木建株式会社経済雑誌ダイヤモンド社論説主幹

○鈴木参考人 皆さん御指摘なすったように、八幡製鉄所が商工省の中にあって、それから民間に来たというような歴史的な関係もあるでしょうし、一番初めの日鉄時代からの関係もあるでしょうけれども、昔の商工省時代からの役人の方がたくさん行っていらっしゃる、そういう点がやはり国民的な疑惑を招く点じゃないかと思います。それから、通産行政というものは、要するに日本は明治以来ずっと物がなかったものですから、生産を中心にやってきたと思うのです。それでだんだん供給超過の時代といいますか、バランスがとれてきて、そろそろ今度は消費者行政というものを中心にいままでの生産行政を転換していかなければならぬ時代にだんだん変わってくる。今度の合併というのはいろいろな産業の構造改善の問題として必要としましても、それが実現したあとにおきましては、むしろ鉄なんかの場合は消費者第一主義、また有効競争を促進するということが基本になっていかなければならぬのではないか。そういう前向きの姿勢が必要ではないかと思います。保護的な政策は、鉄に限らず農業のほうもそうですが、ぼくはそれが物価を上げる原因になっておるというふうに考えます。

力石定一法政大学教授

○力石参考人 私は、鉄鋼業のような非常に大規模な装置産業で、競争が必ずしも資源配分を最適化しない、そういう産業部門においてむりに競争をやっておるというひずみが通産行政にあらわれておるんじゃないか。ですから、寡占的こんとん状態になって価格が下がれば、行政価格で底入れをする。投資活動があんまり野放しになると困るので、そこを何とか調整しようとする。これは当然他の計画的なやり方に持っていかなければならぬものを、競争を温存しながら、あまりひど過ぎるのを調整するという形でそれを解決する。そういう形の行政カルテルといいますか、強制カルテルといいますか、そういうような感じのものになったと思うのです。それは必ずしも望ましいものではなくて、しかもその達成された成果といいますか、投資競争をほんとうに計画化したかというと、あまり計画化しておりませんし、価格の面に関しましても、大体どろ沼のときにはささえを当てるのですけれども、今度は景気がよくなってくると、上がってきたときにこれを押えるような価格指導をやらなければならぬのに競争をやらす。競争をやりますと、今度はもう需要が強くなっておりますから、価格を上げてくる。ですから、世論のほうもすぐカルテルだからいかぬというような形で、競争なら何とかなるというふうに考えるところに問題があると思うのです。設備投資競争も価格競争も鉄鋼の分野においては資源配分を最適化しないのだという観点で、ほんとうの意味における計画的なコントロールをしなければならない。それがゆがめられておる。それはコントロールのしかたが先ほどから話がありますように、国民と財界の意思決定との間をうまく調整されるのが公的な機能なんですけれども、その国民全体の意識がその意思決定に反映されないような形の官財協調になっておる。官民協調ということがいわれるのですけれども、実質は官財協調になってなれ合っている。私は実は、独禁法をきびしくして、競争をやらせて、不況の場合には不況カルテルに持っていけという案には反対なんです。そういう方向ではなくて、社会的なコントロールをより強めて、もっと社会的な責任が果たされるような形で、いろいろな人々がその決定に参加していく。経済計画における非常に重要な部門別産業計画の問題なんですから、そういう形で扱う。形だけは、有沢先生なんかをはじめとして、いろいろな審議会ができておりますけれども、その審議会の構成が真の意味における三者構成になって、もっと国民的な納得のいく線に落ちつけて、過当競争が起こりそうな場合にはちゃんと制御する、価格についても、寡占価格をつけるような場合は、どろ沼競争にならないように制御するとともに、寡占価格を柳制するようなコントロール形態になっていくのが望ましいのですが、そういうほんとうの意味における民主的な経済計画の一環にこの公共的介入がなっていない。そういう方向から国民が批判すべきなのであって、競争をやらせるということでは問題は解決しないのではないか。解決しないから中途はんぱな官財協調になってしまうというふうに考えております。

堀昌雄日本社会党

○堀委員 実は私ども二、三年前に社会党としての鉄鋼政策を発表したことがございました。当時まだ産構審は君津以下のものについては認めておりませんでしたので、私どもは当時、ここまでで私的な製鉄工場の新設はひとつストップをして、以後は公私合営の新しい会社をつくって、それに集中的投資をやって、一千万トンユニットの製鉄所を順次つくっていくことが望ましいのではないか、あわせて研究開発については国家的機関によって研究開発をやってもらいたいという、力石先生がいまお述べになりましたようなことを約三年前に公式に発表したことがあるのでありますが、事態はその後非常に変わってまいりまして、今日の状態になりました。私も実は力石先生と同じ考えではおりますが、いまの先生の考えは、自民党政府の現状である中では、必ずしも私どもの願っているようにいくかどうかについてはちょっと疑問を私も実は感じておるというのが現状でございます。私はそういう公私合営の場合でも、やはりその他の民間の製鉄会社が残っていて、その公私合営のものとの競争の中で問題を解決していくべきであろうし、先生の御指摘のような適切なプライスリーダーとしての役割りは公私合営の会社が社会的な立場において考えるべきだと考えております。私は先生のお考えとほとんど同じなんでありますが、どうもいまの状態はそういうふうになっていかない、われわれがそういう期待をしてもなっていかないのではないかということを強く感じておるわけであります。  そこで、ひとつお伺いをいたしたいのは、いろいろな角度で問題が提起をされておりますけれども、やはり日本の将来の成長の問題を見るときに、私ちょっとこの間一週間ばかり欧州を見てまいりまして非常に感じたのでありますが、日本ではどうもフローのほうに非常に目がいっておりまして、ストックの問題をもう少し考え直してみる必要があるのではないか。ですから欧州で、たとえば西ドイツでどんどん合併をするとか、あるいは金融の問題で申しますと、向こうで大いに自由化をするとか、いろいろなものがありまして、それをストレートに日本に持ってきて、欧州がこうだから日本もこうだ、欧州で金融自由化をしているからこっちも大いに自由競争をやらせろ、こういう発想は、私はどうもやはり問題がある。鉄の場合でも、さっきもお触れになっておりましたけれども、一人当たり五百キログラムというのは、これはフローの問題であって、ストックの差は非常な、著しい差がありますし、結局ストックの小さいところはフローが大きくなるのはどうも必然的経過のようでありますから、それから見ますと、日本経済というのは、まだ相当に鉄の面でも日本のフローというのは大きくならなければ、よそのストックに追いつかないわけでありますから、相当長期的な展望では需要は大きいのではないか。どうも富士、八幡の感触は、これまで少しディフェンスに回り過ぎておりまして、ディフェンスに回っておるものだからやや成長を低成長に見がちになる。見がちになるところでディフェンスをするためには一緒になっていこう、どうもこの考え方は将来の日本経済の長期的展望に立つと、やはりうしろ向き的発想のほうが強過ぎまして、いまの日本経済の長期的成長の余力を踏まえるならば、もう少し前向きに考えるほうがいいのじゃないか。それはいまちょっと申し上げたストックとフローの関係、特に私は、日本が恵まれていると思いますことは、やはり人口が大きいというのは国内市場が非常に大きい。国内市場が大きいことが今日日本の成長を大きく支えてきた一つの柱でありまして、向こうの人口の少ないところで、さっきも竹中参考人がお話しになりましたけれども、ともかく国内市場が十分にないところで国際的に打って出るというのは、今日の段階には非常に困難が出てくるんじゃないかという点では恵まれておるし、逆に非常に不幸な点は、一人当たりの土地面積、平地面積が著しく小さい。これがまた結果としては私はやはり大きなプレッシャーになって、いまの成長要因に残念なことでありますけれども逆に働いてきておるという感じがいたします。ですからそういう観点に立ちますと、今度の合併問題というものは、皆さんいろいろお触れになっているもので、過去にあれだけのシェアのものが今日あれだけ減ってきて、そうしてなおかつ企業の責任は何ら問われていないというようなところのほうにこそ問題があるのであって、これはそういう考え方を入れかえて、そうして新たなスタートで発足するほうが私は八幡、富士の企業のためにもプラスになるのじゃないか。やはりうしろ向きになってディフェンスをすればシェアが下がるばっかりで、決して八幡、富士のためにもならないし、結果としては日本経済のためにならないのじゃないか、そういう感じがするのでありますが、ひとつその点について鈴木参考人はどういうふうにお考えになるか、ちょっと意見をお伺いしたいと思います。

鈴木建株式会社経済雑誌ダイヤモンド社論説主幹

○鈴木参考人 確かにいまおっしゃったような点があることは否定できないと思うのです。しかし、そういう点があったことは確かにあると思いますが、一つはやはりああいうトップメーカーとしまして、経営のあぶないようなものが出てきたときには、八幡さん頼むというようなことでそういうのをかかえ込んでいったり、そういうのが系列子会社みたいなものをずいぶんたくさんかかえ込みまして、またかかえ込んでからも体質改善をうまくやらなかったのがぶら下がっておるのがみんな業績が悪いというような形になったということは反省すべき点があると思います。そういうふうに思っております。   〔委員長退席、宇野委員長代理着席〕

堀昌雄日本社会党

○堀委員 そこで私は、たいへんこの論議が多くなっておりますが、さっきもちょっとお触れになりましたが、王子三社の問題はちょっと一応一段落をした感じでございます。しかし私は、王子三社の問題とこの八幡、富士の問題というのは、何かいま二つ出ておりますから並べて考えられておるように思うのですが、たいへんな次元の相違のものが偶然二つ出てきたために並べられている。なるほどその大きさにおいては、一番大きいところから三番目までが一緒になり、一位と二位が一緒になるという点では確かに私は要素が似ておると思いますが、しかし、紙というものは最終消費財でありまして、紙からものができるのじゃなくして、紙をつくったらそこでおしまいです。通産省の皆さんに申し上げたいと思うのですが、日本の今後の産業政策というのは、企業が大きくなればいい、企業に利益になればいいということが産業政策の基本であってはならないと私は思うのです。要するに、その企業が国民にどれだけ奉仕をするか、国民経済、日本経済全体にどれだけ奉仕をするか、その奉仕の大きさがものさしになるわけで、その企業そのものの利益がものさしになるということで今後の産業政策はあってはならない。これまではある程度やむを得ない点があったかもしれません。しかし今日世界第二位の生産力などといっておる段階にきて、依然としてそういうことでは私は問題があろう、実はこういう感じがしておるわけであります。ですからその点で、鉄というものはさっき話があった米みたいに、ここからがスタートで、これがすべての日本の、これからの海外競争をする土台になるものと、終末の紙とのシェアの問題を同次元で考えるというのはどうも問題がある。王子の問題というものは、いうならば小さな問題、八幡、富士というのはこれには比較できないほどの日本経済にとって大きな問題、こういう感じがしておりますが、その点については皆さんどんなお考えでしょうか。熊本参考人から簡単にひとつ。

熊本孫三郎東洋経済新報社論説副主幹

○熊本参考人 まったく堀さんの御意見に私同感でございます。先ほども申し上げましたが、やはり鉄に管理価格が行なわれておるということは、国民経済的な反響が非常に大きゅうございます。  それから合併によっても競争が行なわれることだろうというようなことを言ってはおられますが、これは何か合併によって国民の要望をになうような特殊な会社があるかのようにかりに経営者が考えておるとすれば、日本なんかにも、現在所得政策というようなことで、そういう巨大な資本に対して国民の世論を喚起して、生産性向上の利益は単なる株主の利益、あるいは経営者の利益、あるいは従業員の利益でなしに、社会全体に還元しなければならないという意見でございますが、それは世論としてそういう考え方は、経済学的な思想としましては尊重していいし、私も賛成できるのでございますが、実際の問題としまして価格をきめる場合に、これだけは株主のものでございます、これだけは従業員のためでございます、これだけは消費者のためでございますというようなことは、実際の政策としてはあまり意味をなさないわけでございまして、そのときの市場の状況によりまして、あるいは自分たちの業界が非常に生産過剰なり、その他利益がないというとき、あるいは従業員から突き上げられて賃上げを余儀なくされるという場合には、まず自分の会社の回りを優先させるということになりがちでございます。また現在の資本主義社会において、それを錯覚を起こすというような考え方は私は間違っておって、むしろ利益というものを追求することによって、そこに値段が高くなって、利益が多くなれば競争によって設備が拡張されて、それが埋め合わされることによって、その企業の生産性向上の利益が社会に還元をされる。これはもう古典経済学以来の基本であろうかと思います。リカードのいう利潤率の平準化、それは今日においても自由経済において貫徹すべき考え方ではないかと思います。それにもかかわらず、実際問題としてアメリカやヨーロッパのように、あれ以上の寡占的な資本主義経済の弊害が激化しましたならば、やはりそういう所得政策というようなこと以上をこえた、ここに社会的なコントロールをしなければならない、そういうことが私は考えられるのではないかと思うのです。それはどういう形がいいのか、先ほども問題が出ましたが、特殊法人、特殊公社みたいにすればいいのかどうかという問題がございましょうが、しかし現在イギリスにできておる鉄鋼公社でございますが、第一次労働党内閣のときに行なわれた鉄鋼公社の姿、その後保守党になって民間のものに振りかえましたね。そのあとづけを見ますと、現在新しく国営にされましてからの状況は私詳しく調べておりませんが、イギリスの鉄鋼事業そのものが、戦争からの統制経済を受け継いで、そしてカルテル的な鉄鋼連盟を中心に、政府お役所と一体となって非常に非能率な形の統制経済をやっているというように私は観察しております。非常にまずい国内の鉄鉱石を使うとか、国内の石炭を使うとか、プール計算をしまして……。ですから、ほんとうの意味の自由経済的なメリットですね、一番安いところから原料を買ってきて、そして最も能率のいい工場をつくって、たとえば海の付近に工場をつくるとか、幾らかやっておりますが、そこに徹底し得ないところにイギリス経済の悩みがある。イギリス経済に共通する問題でもございましょうが。したがいまして、輸出等におきまして、現在のようなイギリスの鉄鋼公社、公営企業の形でどれほど進出することができるのか。私は、日本の競争相手としましてイギリスの鉄鋼公社は取るに足りず、そういう意味で、よほど生まれかわったようにイギリスがやらない限り、あのような方式は日本においては学ぶべきものじゃない。もちろん鉄鋼公社論なり特殊会社論というのはそれぞれの根拠がございましょうが、いまはやはり日本はこの自由主義的な方向において努力をして、競争によって生産性向上の利益を社会に還元する、これが一番とるべき日本の立場じゃなかろうか。そうしまして、実際問題として、それにもかかわらず、アメリカ、ヨーロッパ、それ以上のオリゴポリの弊害というものが起こりましたならば、やはり根本的に考えなくちゃならぬ時代があるいは遠い将来におきましては来る、そういうふうに考えますが、現在の日本におきましては、繰り返して申し上げますが、やはりこの自由経済を原理とする経済政策を展開すべきじゃなかろうか。少し御質問の趣旨にそれまして、時間を食いまして恐縮でございます。

竹中一雄国民経済研究協会主任研究員

○竹中参考人 御指摘のとおり、鉄鋼業の場合のほうが製紙業の場合よりもはるかに大きなウェートを持った問題であろうと思います。問題は、鉄鋼業のある私企業が自分の経営内部の事情に基づいていろいろな行動をおとりになることはもちろん自由でございますけれども、そういうことが法律に抵触するかどうかということにかかわる問題でありまして、先ほどから話の出ておりました公社化とか特殊法人化という問題は、それはまた別の問題として議論すべき問題であって、今日の大型合併を認めるかどうかという問題とは別の問題だというふうに思います。お話のございましたように、遠い歴史の将来においては、あるいは公社化ということが問題になる時期も来るかと思いますけれども、現在そういう半官半民会社なり特殊法人をつくるということは、これは旧日鉄を再現するだけであって、国民にとっても、日本の経済の成長にとっても、何もプラスにならないというふうに考えております。

鈴木建株式会社経済雑誌ダイヤモンド社論説主幹

○鈴木参考人 企業の合併というものは本来なかなかできないものだと思うのであります。そして、企業がほんとうに強い場合には吸収合併という形になる。今度の富士、八幡の合併の場合には、かなり後発に追い上げられてきた面というのは確かにあると思います。しかし、これが合併してほんとうにメリットを上げるならば、決して国民経済にとってもマイナスにはならぬと思いますし、合併しましても四社になるわけで、住友金属とかなんとか、かなりバイタリティーのある会社もございますししますから、競争の制限というふうにはならない、またそうなった場合には、先ほどのお説のように公社なり何なりにするということも、また将来その必要性があったら当然そういう考えが出てくるでしょうし、また先ほど堀先生がおっしゃったヨーロッパでストックの問題を感じられたということは、私も去年ヨーロッパでそういう問題を感じたのでありますが、いわゆる過当競争ばかりでなく、もっと安定的にあれして、輸出その他の点でもっと外貨なり何なりも取得する、そういうことは何か日本経済にとって安定成長に結びつくようだ、単に過当競争で日本一だと言ったって、そんなものは何の権威にもならないということを、去年ヨーロッパで痛感した次第でございます。そういう意味でも合併したほうがいいんじゃないかと私は考えるわけです。

力石定一法政大学教授

○力石参考人 確かに、鉄鋼業における寡占の問題は、パルプの問題とは違う質的に重要な問題を持っております。たとえば、アメリカのエクスタインという経済学者がアメリカの管理価格について調査しておりますが、アメリカの管理価格は、御存じのようにちょっと階段状に上がってきたわけです。もし、この階段状に上がってきた鉄鋼価格が他の製品と同じ歩き方をした場合においては、卸売り物価はどうなるであろうか。鉄鋼価格は卸売り物価をずっと引き上げてきたわけですよ。おそらく卸売り物価の上がり方は四〇%ダウンするだろう。ですから卸売り物価の上昇率は、他の製造工業の製品と同じくらいの上がり方にとどまって高価格の上昇がとどまったならば、四〇%引き下がっただろう。これは産業連関分析でやっているのですけれども、それだけ大きな波及効果を鉄鋼価格というものは持つ、産業の米という性格を実は持っているわけです。そういう意味で、この価格形成については非常に慎重な配慮をしなければならぬし、そういう意味で重要な着目点だろうと思います。日本の場合は、これが先ほど言いましたように若干下向きだったわけです。十年間に八%くらいのダウンです。製造コストから見ますともっと下がっている。ところが金利償却なんかが途中かぶさって、これは設備の過当競争の結果そういうものをおんぶして競争する結果、総コストで見ますともう下げられない。だから価格競争によって価格を下げることができない。一定のところへくると引き上げなければいけないというふうな形になっているわけで、ですからそういう金利償却をできるだけ負担を少なく投資を合理的にやることによって、総コストのダウンに価格形成を近づけていくということにすれば、階段状に下げていくことができるわけです。日本の場合は、先ほど言いましたように八%しか十年間に下がってないのですから、国際価格から見ると多少安いのですけれども、それは先ほど言った投資のめちゃくちゃなやり方を通じてあがなったところの価格低下なわけです。ですから、こういう価格低下のあり方というものは、必ずしも経営にとって望ましくないばかりか、国民経済的にも必ずしも望ましくない。資源がそういう形でたいへんな浪費が行なわれるわけです。いま委員の方からおっしゃいましたけれども、もっと前向きに積極的におやりになる必要があるのじゃないかということは確かに当然であるけれども、ただ前向きという場合に、非常に野方図な投資計画をつくって生産能力の過剰をつくり出しても、八幡製鉄の稲山さんあたりは、着物のそであげをするようなもので大したことはないのだという形で、過剰設備になったら生産調整でカバーすればいいというふうな、非常にのんびりとした鈍感な投資競争のやり方をなさったのでは、やはり社会的資源の使い方としまして非常に問題ではないか。そういう意味で、高度成長のときには自由にやらせておいて、寡占的な弊害ができてきたならば、国有化、社会化を考えればいいというふうなことでは、この高度成長のひずみがますます是正されないで進んでいくでありましょう。社会的な部門と民間部門との間のアンバランス、それから低生産性部門と高生産性部門のアンバランス、地域間のアンバランス、そういうようなアンバランスを含む形で成長してきたにもかかわらず、そういう社会資源の配分を民間が野方図な形でやってきたために、そういうひずみが出てきたわけです。したがって、ひずみのない高度成長ということを考えるとすると、高度成長下においてももっと計画的な、目的を持った計画的な高度成長を考えなくてはならぬ。高度成長は大いに自由競争で野放しにしてやろうという説には私は反対なんです。これはもっと社会的な均衡というものを考えてやる、そういう意味での前向きな姿勢が必要なのであって、いわゆる野方図な前向きでは困るということを言いたいわけであります。

堀昌雄日本社会党

○堀委員 最後に、鈴木参考人にお伺いしたいのですが、大体熊本参考人、竹中参考人は、非常にシェアが大きくなって市場支配力が強くなるからどうしても管理価格的なことになるだろうというお考えのようですが、鈴木さんは必ずしもそうではないというお考えのようですが、しかし、御案内のようにビール三社が値上げをいたしましたね。これは大蔵大臣も反対、企画庁長官などはこれはやらすべきでないということを国会で発言をしておりますけれども、ビールは値上げになってしまったわけでございますね。大体ああいうふうな寡占状態になりますと、政府がどう言おうとこう言おうと、資本主義というのは自由でありますから、その値段を上げたからといって文句の出る筋合いではないわけでして、結局ここでずいぶんがたがた言っても、言っただけのことで何にも起きないというのが、私はいまの寡占の状態の問題だと思うのです。かつて朝日とサッポロが合併をしたいという話が私が大蔵委員会当時にありました。私は、もし朝日とサッポロが合併するなら、それはもうずっと設備から生産価格について介入させてもらう、それでなければ合併反対だ、こう言ったわけです。   〔宇野委員長代理退席、委員長着席〕 私はやはり寡占というものの性格は、それはなるほどビールと鉄はちょっと違いますけれども、キリンが持っているシェアといまの新日鉄のシェアというものはまさに同じくらいのシェアになるわけでありましてね。だからビールの価格というものはキリンの意思できまるわけですから、キリンが上げようと思うならば上がるし、キリンが上げまいと思えば上がらないというのが私はいまのビールの情勢だと思います。そういう卑近な例を引いて恐縮でありますが、私は、これだけのシェアを持つ新日鉄ができるならば、これは経営者の良識は信じたいんですけれども、しかしやはり資本主義ですから、もうけるということが一つの前提になるとするならば、まあなりふりかまわないという場合もあり得ると思うのですね。その点について鈴木参考人はどういうふうにお考えになりますか。

鈴木建株式会社経済雑誌ダイヤモンド社論説主幹

○鈴木参考人 確かにビールの場合は、私に言わせれば、一社ぐらい、上げなくてもむしろシェアの拡大に努力するというような勇気ある経営者がいてもいいと思ったんですが、同じように上げたわけでございます。まあ鉄の場合も、富士、八幡というものはきょうだいが分かれていたために、競争は両社間で非常に激しかったわけでございます。それで、先ほど力石さんがおっしゃったような、非常に価格の変動が激しかったという点があるでしょうし、そういう二社の競争が一番激しかったから、これが一緒になったからある程度市況が落ちついてくるということはあるのではないかと思います。しかし、それが四社の競争、ことに後発の追い上げが非常にバイタリティーが強いということから見て、価格をつり上げてもうけるというようなふうにはいかないんじゃないか。また、鉄鋼という商品から見て、それは国民経済的にも許せないことだと思うのです。そういう意味におきまして、そういう弊害がもし出るような状態がきた場合には、それを行政指導なり何なりで厳重にあれしていく。また、たとえばそういうような形にならぬように新会社の中に、永野構想ですか、需要者も入れた何か経営顧問みたいなものをつくるというようなたしか発想があったと思うのですが、そういうような社外重役を、消費者なんかのあれを入れるということもまた考えられるんじゃないか、もしそういう弊害があるとすれば。私はないと思うのですけれども……。私個人としてはないと思います。

堀昌雄日本社会党

○堀委員 そういう経済行為というのは人間の良識だとか、そんなものの外で問題が決定されてくる性格のものでありますから、私は何も、ここへこの前稲山さんや永野さんがお見えになって、われわれはそういうことをしませんとおっしゃったのに対して、あなた方しますよ、こういう意味のことを言っているわけじゃないわけですね。しかしそういう人間の良識じゃどうにもならないいろんなメカニズムからくる結果は、それがやはり今度のビール三社に象徴的にあらわれているんじゃないか。あそこであれだけの値上げをしなくても現在のビール三社はやれるわけですね。しかし、ともかくまあ私は大蔵省もまずいと思うのですがね。十円ぴしっと税金を取ればいいものを七円という、これは多分にここいらは問題がある、大蔵省の事務当局に問題があると思っていますけれども、三円端数で上げやすいような問題を残しておくから、それならそれを取ってしまえということが起きた。だからそういうことは、何といいますか、いまのメカニズムからくる問題ということを見ないと非常に問題があるし、もう一つ、いま、もしそういうことが起きたら事後的に問題を処理したい、こうおっしゃっていられるわけですけれども、事後的にできないのが今度のビールの問題なんですよね、実際に。事後的にできないのです、いまの資本主義の仕組みでは。ですから、その点私は、事後的に処置するおそれのあることはしないというのがいまの日本の独禁法の立場ではないのか、それが国民経済に役立つことになるのではないか。裁判で言いますと、疑わしきは罰せずですが、ちょうど独禁法の場合には疑わしきは認めずということのほうが独禁法の体系から見て正しいのではないか、こういう感じがいたすわけであります。  もう時間がないから私の意見だけを申し上げておきますけれども、そういう意味では、さっきお述べになった特殊鋼、あらゆるシェアがともかく半ばを越しておるというようなことは、これは全く異常の状態だということだけを私は痛感をいたしましたので、この点を申し添えまして、私の質問を終わります。

小峯柳多自由民主党

○小峯委員長 近江巳記夫君

近江巳記夫公明党

○近江委員 先ほどからだいぶ意見が出ておるようでありますが、鈴木さんにお伺いいたしますが、合併をもしもなさった場合いろいろな弊害が考えられるわけです。先ほどもいろいろな話がありまして、そうしたプライスリーダーシップ等による管理価格の問題とか、いろいろな問題が出てまいります。そういうことに対して行政指導で何とかやっていけばいいのではないかという話があったのですが、そこのところをもう少し具体的に、どういうような方法があるのか説明を願いたい。

鈴木建株式会社経済雑誌ダイヤモンド社論説主幹

○鈴木参考人 合併した場合に、合併によってすぐプライスリーダーのそういう弊害が出てくるというふうには思いません。思いませんが、しかしかりにそういうような事態がきた場合、絶対にこないと思いますけれども、きた場合、たとえば地下カルテルというようなものをつくる、それは公取が立ち入り検査をするとか、いろいろなそういう手は公取としてきびしくやれるのではないかというふうに思います。そのほかまた通産省のほうで、これは財界は好ましいことではないと言っていますが、監視機構をつくる、そういう措置もとられるのではないか、とることができるのではないか、そういうふうに考えております。

近江巳記夫公明党

○近江委員 そうした監視機構等についてもどのような法的規制が伴うか。結局そういうものがない。そういう監視機構でどれだけ実効があがるかということは非常に疑問だと思います。また公取だってどれだけそれだけの権限を持ってやっていくか。たとえば十七条の二によって分割命令の措置等がとれるというような意見も一部ありますけれども、それが実際できるかということになると、非常に疑問だと私は思います。そういう点で先ほど来そうした合併のことについてそういういろいろな弊害の問題が出ておりましたけれども、われわれとしては非常に危惧を覚えるわけです。そこで十月四日の読売新聞によりますと、公取委員会が設置を予定している独占禁止懇話会に通産省が協力をしないということをきめたというような内容があったように思うのですが、そういう一連の、通産省が考える公取の改組論とでもいいましょうか、そういうような意見が非常に出ておるように聞いております。通産省が合併に積極的な推進の方向をとっておる、こういう点でいま独禁法の改正という問題が非常に大きな問題になってきているのではないかと思うのです。この独禁法の改正という問題が出ておることに対してどういうようにお考えになっていらっしゃるのか、まず竹中さんからひとつお聞きしたい。

竹中一雄国民経済研究協会主任研究員

○竹中参考人 私は、初めに申し上げましたように、独占禁止法を尊重することが、国民にとっても、経済の成長にとっても、国際競争力の強化にとっても役立つというか、大事な前提であるというふうに考えますから、少なくとも第十五条の規制をゆるめる方向での改正ということはやるべきでないというふうに思います。実事、現在話題になっております、これは新聞その他の情報ですから不確かですけれども、いろいろ話題になっている合併を見てみますと、独占禁止法に抵触する、ないしは抵触する疑いが非常に濃厚な合併はごく限られておりまして、王子系三社なり鉄鋼大手二社の合併がそれでありまして、したがって、ここで独禁法を改正するという議論をされるのは、富士、八幡のために改正する、一私企業のために国の法律を変えるという疑惑を国民に与えるわけですから、その際は、そういう問題は考えられるべきでない。それはまた、この富士、八幡問題と切り離して、これが正しく否認されて、鉄鋼業で望ましい経済環境がつくられ、そのあとでいろいろ、逆に独占禁示法を強化していくべき――いろいろ問題点はあろうかと思いますから、そういうことは、また別の機会に検討されるべきだというふうに思います。

近江巳記夫公明党

○近江委員 力石さん、そのことについて……。

力石定一法政大学教授

○力石参考人 私は、独占禁止法というものは、先ほど言いましたように、産業に応じて非常に役に立つところがあるし、それからまた、それを機械的に当てはめると、かえって国民経済的にマイナスになるという産業分野もあるということを申しました。鉄鋼の場合には、独占禁止法の観点から合併を認めないということで突っ放すだけでは問題が解決しないので、そのほかの形態を採用する。しかし、十五条というものは、他の分野において、市場支配力だけをねらって、何も規模の利益がないような、そういう合併申請があった場合には、全部拒否していかなければなりませんから、この条項を強化しなければなりませんし、むしろ独占禁止法全体としては強化したほうがいいのではないかと思います。ただ、独占禁止法が経済憲法であるかのごとく考えて、あらゆる産業について、全部これでやるという考え方をしますと、弊害もまた出てきます。たとえば、集中度三〇%というのは、あまり機械的に考えますと、国民経済的な規模がアメリカよりも低いこの国におきまして、アメリカでは三〇%だと規模の利益を享受するだけの企業が形成可能である。ところが、日本の場合、三〇%というと、規模の利益を越えてしまう。こういうふうな場合においては、非常に扱いに困るわけです。自動車部門なんかもそういう傾向は出てくると思いますけれども、二社ないし三社くらいに集約化する必要性が出てくる。こういうときに、それでなければとうていワールドエンタープライズに対して対抗できない。こういうときに、独占禁止法はどういう立場になるかといいますと、シェアが高くなり過ぎるから、とにかくそういうようにたくさんの企業でやりなさいという回答しか出せないわけです。その場合には、われわれ困るので、ワールドエンタープライズに対抗するには別の形のものを考えていかなければならないだろうということが一つと、もう一つ、たとえばワールドエンタープライズが入った後において、自動車なんかがこれと競争しますと、その場合には、ワールドエンタープライズは非常に大きな競争力を持っているので、日本の自動車の合併は、独禁法上はセーフになるかもしれないのです。しかし、独占禁止法上セーフになっても、ワールドエンタープライズがどんどん力を強めていって、日本の戦略的な輸出産業である自動車部門のにない手がワールドエンタープライズだということになってしまうと、これは日本国の国民経済の成長にとってもマイナスになる。そういう意味で非常にまずいことが起こってくる。独占禁止法上セーフであるというふうなことが起こっても、そういう場合は非常に困るわけです。ですから、独禁法というものの射程範囲がどの程度のところにあるのかということをよく考えないといけない。たとえばヨーロッパへ行きますと、社会化が非常に進んでおる。イタリアには独占禁止法はございません。小さい国ですし、集中度を非常に高くしないとスケールメリットは享受できない。ですから、自動車なんかはワイアットは八〇%のシェア、あるいはENIとかモンテカチーニは化学産業において五〇%以上のシェアがある。こういうシェアがある場合に、これを小さく解体してしまっては、これは国際競争にどうしても太刀打ちができない。そこで向こうは独占禁止法ではなくて、憲法の中に、独占集中度が非常に高くなって市場支配のおそれがある問題については、社会化をする一つの手段として、国家の持ち株会社ENIがこれをやる。いまのモンテカチーニとエジソンとの合併、これはあまり弊害がきついので、IRI化されましたけれども、こういうふうな措置を同時に併用しなければ、独占禁止法であまり機械的にやっていると、国民経済的にマイナスになることもあるのです。いわばワールドエンタープライズが日本に入りやすいような方向、そういう形に独占禁止法を使ってはいけない。そういうような場合には独禁法のワク外で処理する方法を用意しておかなければならない。こういうふうに思うのですが、そこで、独占禁止法というものをあまり経済憲法のような形で祭り上げてしまうというのは反対だ、しかしこういうことを射程範囲でやるということについては、独占禁止法の範囲で、より強化したほうがよろしいだろう、こういうふうに私は考えています。

近江巳記夫公明党

○近江委員 それから、先ほどの弊害のところへまた戻りますが、もし合併が実現した場合、中小企業と競合したマイナス、この辺について、経済的な圧迫という具体的の面、それをどのようにお考えになっていらっしゃいますか。竹中さんにお伺いします。

竹中一雄国民経済研究協会主任研究員

○竹中参考人 合併になっても、すぐには競争は減らないというような見方も一部にありますけれども、これは程度は問題でありましょうけれども、競争がいまより少なくなることは明らかだと思うのです。現に、たとえば昭和四十二年という年をとりますと、これは年初にわりと鉄鋼価格が高くて、後半にぐっと低くなってくるわけですけれども、その価格の下がりぐあいとそれから上位企業のシェアの大きさをとりますと、非常にきれいな相関関係がありまして、シェアが高いものほど下がり方が小さく、シェアの小さいものほど下がり方が大きい。現在もそういうわけですから、合併によってシェアの大きくなるものがふえてきますと、特に先ほど申しましたように、主力品種なりがそういうことになりますと、下がり方はより少なくなる、むしろ逆に、引き上げられる線がふえてくるというふうに考えられます。そうしますと、大体私は合併したからといって、鉄鋼の今日の寡占価格は、いわゆる暴利をむさぼるような高価格は、これはできないだろうと思います。ただ問題は、企業別に非常にコストの差がありまして、コストの比較的低い企業もあれば、高い企業もある。そういう場合に、寡占価格ができますと、どうしてもコストが高いほうの価格にしわ寄せになる。そういう形で、全般的に鉄鋼価格水準が、現在アメリカやヨーロッパで見られますように上昇してくるわけですが、そうなりますと、鉄鋼のユーザーの中で、たとえば鉄鋼値段が上がっても、その値段をさらに自分の製品に転嫁する、つまり、ある大きな産業の企業がありまして、鉄鋼業界から買う鋼材価格が高くなった、しかし、その分は、今度は自分が売る製品に転嫁できる力を持っている、そういう企業は、合併から受ける圧迫といいますかマイナスはほかに転嫁するのですから、まだいいわけですが、お話のありました中小企業の場合は、そういうふうにはなかなかできない。つまり鉄鋼価格が上がった分だけは、結局は自分がかぶる、そういうことで、お話のありましたように、中小企業の場合には不利になるケースも幾っか出てくるかというふうに思います。いままでですと、好況期には鉄鋼価格が非常に暴騰する、あるいは不況期には下がるということですから、非常に大きく変動しておりますのは、主として市中で売られる相場が変動しておるのであって、いわゆる鉄鋼業界のひもつき販売といわれております大口ユーザー向けの価格は、変動しておりますけれどもそれほど大幅でない。そうなりますと、鉄鋼価格が上がるときは上がる、下がるときは下がらないということになると、経済全体が硬直化して、そのことから来る経済成長のテンポが鈍化してくる。そういうことになれば、日本の中小企業というのは、やはり経済が高い成長を続ける中でそれぞれ発展してきたのですから、全体として日本の経済成長がそういうことでゆがみが生じてくると、その面からもまたいろいろ問題が生じてくるだろうというふうに考えております。

近江巳記夫公明党

○近江委員 それから、公取がいよいよ審議に入って、審判を下すわけでありますが、それだけにわれわれは公取の中立性の確保といいますか、それは非常に大事だと思うのです。特に公取委員の人事について、いままで通産省から委員が来ておるわけですね。ことばを悪く言えば、ひもつきとでも言いましょうか、いままで二十七年から始まっておりますが、山本さん、高坂さん、それから菊池さん、また十月の二十五日ごろに任期が切れると思うのですが、合併問題等についても通産省が非常に力を入れておる、そうした背景を考えますと、公取委員の人事ということは今後の問題として私は非常に大事だと思うのです。この辺についてどのように考えていらっしゃるか、ちょっとお聞きしたいと思うのです。竹中さん、熊本さん。

竹中一雄国民経済研究協会主任研究員

○竹中参考人 公正取引委員会は御承知のとおり合議制でありますから、少なくとも独占禁止法を尊重する考え方の持ち主であれば、その中から一番適正な方がおなりになればいいのであって、かりにその中の一人の人が通産省に長い間おられた、あるいは通産省の御推薦の方がお入りになった、そういう場合でも、もし通産省が非常に公正な産業政策をおとりになっていらっしゃるのであれば、国民は別に疑惑は持たないかもしれませんけれども、今日のように、先ほどから話題になりましたように、どうも通産省は一私企業のために行動しているのではないかという、そういう疑惑があるような状態では、なかなかそういう人選、通産省の方がおなりになるということにもいろいろな問題が生じてくる懸念があるように考えます。

熊本孫三郎東洋経済新報社論説副主幹

○熊本参考人 私も竹中さんの意見と同様でございます。そういう誤解を招くような方を委員にするということは避けられたほうがよろしいんじゃなかろうか、こう思います。ただ、いままで、なくなられた渡辺喜久造さんですか委員長、あるいは山田現在の委員長、私個人的にも存じ上げておりますが、私はりっぱな方だと思うのです。山田さんなど、日本銀行におられたから、営業局長時代からいろいろお話を承った、やはり自由主義を尊重していこうという信念をかたく守っておられる方だと私は信頼しております。ほかの一人一人の委員の方は、私は詳しく存じ上げませんが、できるだけ中立な立場、それとやはり産業なり経済のこともわかる、両方の資格を持っておられるのが一番最適任者じゃなかろうか、かように思われます。

近江巳記夫公明党

○近江委員 それから鉄鋼の公販制、また勧告操短、それから設備調整等、通産省の行政指導、そうしたカルテル行為と独禁法との関係ですね、この辺のところのお考えを少し聞きたいと思うのです。竹中さん。

竹中一雄国民経済研究協会主任研究員

○竹中参考人 本来は、実体的には、いまお話しになりましたような行為は独禁法の精神に違反する行為だというふうに考えますけれども、通産省が指導されておやりになるわけですから、形式上は私的独占禁止法には違反しないという形になっております。したがって、こういうことは非常に望ましくないのであって、漸次撤廃される方向へ持っていかれるべきだというふうに思います。漸次じゃなくて、直ちに撤廃される方向へ持っていくべきだと思います。ただ問題は、いままでの経過を見ておりますと、通産省が非常に中途半ぱな介入をされ公販価格なりあるいは設備調整をやられますと、かえって競争が非常に過当に――たとえば投資計画一つとってみても、非常に水増しされた計画を出して、それを調整の場でダウンして決定するというふうに、かえって競争がより混乱状態におちいっておるのであって、むしろここは、それぞれの企業がはっきりとマーケッティングの機能あるいは経営の機能を強化して、適正な投資が行なわれるような体制へ持っていくということのほうが重要ではないかと思います。いままで過当競争のロスとか弊害、あるいは過当競争によって非常に過剰設備ができたということを、再々鉄鋼業界の方はおっしゃるわけです。確かに企業を経営されておる方から見ると、競争が激しいことはいつもどろ沼のようにたいへんだというふうにお感じになるでしょうけれども、全体として国民経済の立場、日本経済全体の立場から見ますと、鉄鋼は決して過剰設備ではない、現在でも少し景気がよくなるとたちまちフル稼動になって――現在でもフル稼動でありますけれども、少し景気が行き過ぎると過熱状態におちいる、そういうことを繰り返しておるわけであって、決して過剰な設備がたくさん鉄鋼業においてつくられているという事態にはなっていないと思うのです。問題は、とかく不況になりますと、これは政府の財政金融政策のほうにも問題があるかと思いますけれども、景気が悪くなると過剰ができる。しかしこれは景気が悪くなれば過剰が出るのはどの産業でもそうでございまして、鉄鋼業の競争のせいではないというふうに考えております。むしろ現在までの状況からいいますと、鉄鋼が非常にたくさん投資をしたために、たとえば好況期にも比較的銑鉄でありますとか半製品の輸入が少なくて済んでいる。もし鉄鋼業が不況期でもフル稼動できるように設備投資を調整して少ない投資で押えていきますと、これは好況期にはたいへんな鋼材の輸入量になって、ただでさえ好況になると悪くなりがちな国際収支がもっと早く悪くなって経済成長が十分できない。そういうことになったのでありまして、現在においては決して投資の規模が過大とは言えない。むしろ企業がそれぞれの責任においてやられるべき事柄であるというふうに思います。  お話の、行政指導とかいろいろな形で介入されるわけですけれども、これは非常に問題でありまして、介入のしかたがいいかげんですと、これは結局は業界の言いなりといいますか、業界のやることを通産省が代弁するという形になりますし、逆に介入の度合いが非常に強いと、戦時中ではありませんけれども、官僚統制という形で企業経営に責任を負わない者が企業の行動を決定するという、そういう逆の弊害もまた生じてくるわけで、やはり全体として経済を望ましく計画的に運営していく中で、適正な競争が維持されるような環境を政策的に介入してつくっていく、公正取引委員会の活動を強化して適正な競争が行なわれるような環境をつくっていくということが私は産業政策の基本でないだろうかというふうに考えております。

近江巳記夫公明党

○近江委員 終わります。

小峯柳多自由民主党

○小峯委員長 参考人各位には御多用の中、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきましてありがとうございました。たいへん参考になりました。委員会を代表して厚く御礼申し上げます。どうもありがとうございました。      ――――◇―――――

小峯柳多自由民主党

○小峯委員長 次に、通商産業の基本施策に関する件及び公益事業に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。中村重光君。

中村重光日本社会党

○中村(重)委員 時間がだいぶおそくなりましたから、そのものずばり尋ねてまいりますから、答弁も簡明でけっこうです。  公益事業局長には、先般御就任になりました際に、九州電力の料金の値下げを中小企業団体並びに消費者団体が強く要求をしておる、そのことについて十分検討していただきたいということを御要請申し上げておったわけです。  そこで、九つの電力会社の中で九州電力の料金が全国一高いということは御承知のとおりだと思います。中小企業団体あるいはまた消費者団体が料金を下げてもらいたいという、そうした強い数年来の要求に対してどのようにお考えになっておられるか、まずそれを伺ってみたいと思います。

本田早苗通商産業省公益事業局長

○本田説明員 九州電力の料金が他の八社の料金に比べて高くなっておるということは御承知のとおりでございまして、九州地区の中小企業者からこれについて御要望のあるということも伺っております。  ただ、それぞれの電力会社の料金は、それぞれの電力事業者ごとに適正な原価に適正な利潤を加えたものできめていくという規定になっておりまして、いわば各社別の原価にのっとってきめるというたてまえに法律上なっておるわけでございます。かような原則から、九州電力の実情を見ていりますと、水力の発電所を持っておるわけでございますけれども、他の地区と比べまして、水力地点としては小規模な地点になっております。たとえば、全国平均の発電所の能力というのは、一カ地点で八千キロワットというのに対して五千キロワット程度になっております。かようなことで、地点として不利であるのみならず、地形的に利用率が低くなるというような地形になっております。かような意味で、水力としても割り高になる実情にあるわけであります。  それからもう一点は、需要の伸びでございます。産業経済の発展に伴いまして、電力需要は各電力会社とも急速に伸びてまいったわけでございますが、九州の場合は、産炭地を持っておるという関係で、石炭の需要が三十六年度に比較いたしまして、四十二年度では、増加どころかむしろ一割減少になっておるというような実情を反映いたしまして、電力需要の伸びが他地域に比べましてかなり低いという実情になっております。この低いという実情は、新鋭の設備を投入していくチャンスが少ないということで、新鋭設備を投入いたしますと、火力についてはかなり割り安な電力を発電できるわけでございますが、新鋭の設備の投入が他の地区よりもかなりテンポがおそくなったというような状況にあります。また九州地区は離島が多くて、離島発電の半ば以上を九州電力が保有している。御承知のように、離島につきましては、海底ケーブルによる送電、これはかなり割り高なものでございますが、それのみならず、小規模なディーゼル発電ということでやるわけでございますので、非常に割り高な要素が入るわけでございます。これが他地区に比較しまして、九州は非常に離島発電が多いというような事情がございます。  それからもう一つは、供給地域が非常に広くて、需要の密度が低いという実情になっております。かような関係で、たとえば配電の柱の一本当たりの販売量というのが、全国で六・九というのに対しまして、四・三というふうに三分の二程度になっておるわけでございまして、需要の密度が低いために配電の経費がかさむし、また配電ロス等も多くなるというような負担が大きいわけでございます。  もう一つ特殊な事情といたしまして、御承知のように産炭地でございますので、石炭火力を電源としてできるだけ活用していくというたてまえをとってまいったために、現在では重油専焼発電はまだ発電所が全然ございませんで、現在は新しい計画があるというにとどまっておりまして、現在のところ全部石炭火力でやっております。御承知のように、石炭火力では重油専焼火力に対しましてかなり割り高につくというような諸要素がございまして、九州電力の発電原価としては、他の会社に比べましてかなり割り高につくという実情がございます。かような実情ではございますが、いろいろ会社としても合理化に努力しておりますし、また火力発電の熱効率の向上にも努力するというようなことでございまして、最近は経理状況もかなり改善されてはまいっております。しかしながら、他面公害対策の推進も必要な状況になっておりますし、福岡等の都市におきましては配線の地中化工事というものを推進する必要が出てまいっております。あるいは供給の信頼度といいますか、電圧、サイクル等の保持のために電力系統の強化というようなものもこの際張力に進めていく必要もあるという情勢もございまして、原価上昇の要素もかなり持っておるというような実情を考えてまいりますと、近い将来におきまして料金を引き下げるということはむずかしいのではないだろうか、こういうふうに考えておる次第でございます。

中村重光日本社会党

○中村(重)委員 他の八社と九州電力との料金の格差の理由というのか、それは大体お答えのような点も私はあると思います。そこで局長は、それでは九州電力の現行料金は妥当であるという考え方の上に立っていらっしゃるのか、お伺いいたします。

本田早苗通商産業省公益事業局長

○本田説明員 二十九年に九電力会社が一斉に料金改定を行ないまして、その後各社の事情に応じまして料金改定を行なっておるわけでございますが、九州電力につきましては三十六年に料金の改定を行ないました。その以後そのまま据え置きになっておるという実情でございますが、通産省といたしましては、業務の経理の監査をいたしておりまして、それらの点についての判断をいたすわけでございますが、現在のところ適当であるというふうに考えておる次第でございます。

中村重光日本社会党

○中村(重)委員 二十九年に一斉に料金の引き上げをやった。九州電力は三十六年。その後他の会社では料金の引き上げをやったという事実はある。ありますが、局長はまだ御就任後間もないのですから、その一つ一つについてお答えの言質をとらえていろいろ申し上げませんが、そこで九州電力の瓦林社長が、中小企業団体との話し合いの場においてなされたものかどうかは別といたしまして、十年間料金の引き上げはやらないというように言明をしたということが伝えられております。九州電力の場合は、お答えになりましたようなもろもろの他の八社と比較をいたしましての悪い条件というものがある。この後はいまの高物価の中において資材費も上がっていくであろうし、人件費もまた上がっていくであろう。それから産炭地であるという点から、炭鉱の終閉山というものは、なおこの後も相当行なわれるであろうということが考えられるのですね。してみると、いわゆるコストの上昇ということは、これは当然出てくるものだと考えなければならぬ。ところが、需要の伸びということになってまいりますと、これまたお答えのような点がありまして、いわゆる需要密度というものが低いということは、現在のように、産業にいたしましても、人口にいたしましても、大都市に集中しておる。そして政府の後進地域の開発ということは、順調にというよりも、全く行なわれていないということを申し上げてもよろしいと思う。そのようなことを考えてまいりますと、瓦林社長が十年間料金を上げないという言明をきれておるということは、経理状況等々から考えてみて、現行において料金引き下げの余裕があるというような判断も出てくるのではないかと私は思いますが、その点、あなたはそうお考えになりませんか。

本田早苗通商産業省公益事業局長

○本田説明員 九電社長がどういうふうな事情でお話しになったのか、承知いたしておりませんが、御指摘のように人件費は逐年上がってまいっておりますし、先ほど申し上げましたような諸要素で発電コストが上昇するという要因はいろいろあるわけでございます。しかしながら、他面、いままでの電力需要の増加は、先ほど申しましたように、石炭が一割減になったというものを含めて、電力需要の増加が他の地区と比較してかなり低い。全体として必ずしも全国平均のテンポになっておりませんけれども、全体として四十二年度におきましては百十三億キロワットアワーの電力需要があるわけでございますが、その中で石炭のウエートは一割前後というふうに非常にウエートが小さくなっておりまして、他の電力需要の増加が主体になって増加しておるというような事情がございますから、電力需要もある程度期待できると思います。  それから、先ほど申し上げましたように、重油専焼火力の計画が進んでおりまして、そのうちこれらが稼働に入る。これに伴ってかなり発電原価としても下がる要素がある。その上、各面にわたってさらに企業の合理化を進めるというようなことを考慮して言われたものであろうと思いますので、いま現在で引き下げ得るということを前提にして、これから先十年下げないと、こういうふうに申したものかどうか。私としては、むしろいま申し上げたような事情ではなかろうかというふうに思うわけでございます。

中村重光日本社会党

○中村(重)委員 合理化を進めておる。また、合理化を進めていくということを言っている。どういう合理化を進めてきたのか、また、進めようとしているのか。その点どうですか。

本田早苗通商産業省公益事業局長

○本田説明員 今後どれだけ上がるかという問題がございますが、従来のなにでございますと、熱効率におきまして、昭和二十六年ごろが二〇%の熱効率であったわけでございますが、四十二年度におきます熱効率の実績は三五・六%というふうになっておりまして、八割弱の熱効率の上昇になっております。もとより、これがこの調子で上昇できるかどうかという問題はございますが、なお、さらに熱効率上昇の余裕は若干はあろうと思います。  それから、電力の損失率でございますが、最近は一〇%前後でございまして、二十六年ごろは二一%、三十一年で一六%前後でございますので、これもロス率はかなり低下してまいっておる。  それから従業員一人当たりの販売量でございますが、三十一年が三十一万三千キロワットアワーでございましたが、四十二年の実績でまいりますと、一人当たり八十六万九千キロワットアワーというふうで、一人当たりの販売量がかなり上がっておる。こういうふうに逐次増加しております。  なお、今後の問題といたしましても、重油専焼火力等の稼働ということに伴いまして、人員等についても、新規採用というような点についてはできるだけセーブして、人員の面でも節約するというような効用があると思います。

中村重光日本社会党

○中村(重)委員 いまお答えになりましたようなそうした合理化、それを進めてまいりますと、九州電力の全国一という料金が、格差がなくなるというような判断の上に立っていらっしゃいますか。

本田早苗通商産業省公益事業局長

○本田説明員 九州の電力需要の構造が東京あるいは関西のような需要の密度の高いところと違っておりますから、こうした合理化が東京、関西等々と全く格差のない状態になるというふうに考えるのはむずかしかろうと思いますが、こうした努力によって格差の縮小する可能性は出てまいるのではないかというふうに思います。

中村重光日本社会党

○中村(重)委員 それから料金格差、原価計算の中に占める燃料費の割り高の理由として、いわゆる石炭専焼火力、これをおあげになったのですが、ところが、九州電力は産炭地にあるがために、そのためのいわゆる有利性というものがあったわけですね。してみると、そのことがいわゆる炭鉱の終閉山という形において不利になったというようにお考えになっていらっしゃるのか。であるとするならば、炭鉱の終閉山がいわゆる燃料費としてどの程度のコスト高になったとお考えになっていらっしゃいますか。

本田早苗通商産業省公益事業局長

○本田説明員 あるいは御質問の趣旨からはずれるかとも思いますが、産炭地であったために石炭価格が割り安で引き取れた、したがって石炭火力発電原価が他の地区よりも安かったであろうという点はあったかと思いますが、現在のところ、他の八電力の平均をとってみますと、火力発電の中で石炭火力と重油専焼火力の比率は半々ということになっております。そして、九州の場合は先ほど申し上げましたように石炭火力ばかりで、いまのところまだ重油火力は動いておらないという実情なんでございますが、重油火力と石炭火力の発電原価は、総じて言いますと石炭火力のほうが高いというのがいまの実態でございますので、石炭がなくなるということになった場合に発電原価が高くなるのではないかという点につきましては、今後重油専焼火力で補うならば、発電原価は下がる要素がある、こういうふうに考えるべきではないかと考えております。

中村重光日本社会党

○中村(重)委員 石炭と比較いたしますと重油が若干安いというような点から、お説のようなことも考えられるわけですね。ところが、現在重油専焼火力あるいは石炭との混焼火力もある、こういうことになってまいりますと、石炭だけでもって大体足りる。火力と水力がどうかということになってまいりますと、私の調査によると、六〇%程度火力のほうがはるかに高い。水力も水質が非常に悪いですね。小規模であり、山が浅いという関係から非常に悪い。そういうことにはなってまいりますが、しかし大体石炭で足りる。ところが水力を使っているところも、施設費というものは石炭と比較をいたしますと比較にならないですね。ダムをつくったりなんかいたしますから、施設費というものは非常に高くなっているのですよ。需要の伸びに従って、そうしたいわゆる水力のダムを建設していかなければならぬということになる。だから産炭地なるがゆえに重油専焼ではない、いわゆる石炭火力の専焼であるという、そのことだけをとって、非常にコストというものが高くなるのだとばかりは私は言えないと思う。したがって、炭鉱の終閉山に伴いまして、どの程度いわゆる燃料費というものがコストアップしているのかということが出てこなければ、いまのお答えではいわゆる高いという理由が明白になってこないような感じがいたします。  実は先般、委員長も一緒に九州各地を視察いたしまして、九州電力の幹部の方々にもお話を伺ったのです。私は、石炭の終閉山に伴いまして、輸送費等も相当かさんでくるのではないか、それが燃料費のコストアップになってくるのではないかということを、実は私なりに考えまして質問をしたのですが、そのときの私どものそうした懇談会に出席しておりました重役は、その点はコストアップにはならないというようなお答えがあったわけです。別に私は誘導質問したわけじゃなかったのですけれども、そういうお答えがあったので、いまのあなたの御答弁で見ると、どうも私どもはぴったりこないのです。重油専焼と石炭専焼火力との比較という点は、これはお説のとおりであろうと思いますが、やはり産炭地なるがために石炭専焼火力の優位性というものは、いまもたいして変わっていないのじゃないかと思います。問題は、その設備が非常に老朽化しているというようなこと、新鋭設備ではないとかいろいろな点があげられるならば、話は別なんです。だから私は、積極的な理由づけにならないような感じがいたします。ですが、その点は、まだ質問はたくさんございますから、それはよろしいです。  ただ、お尋ねいたしますが、中小企業団体が昨年のたしか大分大会の際に、九州電力の料金は高い、その高い理由ということについては、いまあなたがお答えになりましたような点については、ある程度中小企業団体の人たちも知っておると思うのです。知っておるんだけれども、どう計算してもやはり高いという考え方というものが頭から去らないのですね。それで今度の佐賀大会においても、さらに積極的な値下げ運動をするという決議がなされたわけです。そして大衆運動を起こすというようなことも新聞等に報道されておったわけですが、相当積極的な運動を展開されるということに私はなろうかと思うのでございます。なおまた中小企業団体と九州電力との間に値下げ交渉も行なわれておると伝えられておるわけです。そして今度中小企業庁に御栄転になりました黒部前通産局長があっせんをしておるということも伝えられておるわけです。そのような中小企業団体の値下げ運動というものは、これはやはり適当な運動ではない。料金が妥当であるということになってまいりますと、これはやはり無理な運動である、無理な要求であるというような声に実はなってこようかと思うのでございますが、あなたはどのようにお考えになっていらっしゃるか。  それからこれは、中小企業庁長官がおいでになったわけなんで、お答えが一緒になるのかどうかわかりませんけれども、長官からも中小企業の振興という立場から、中小企業団体が毎年毎年繰り返しておるこの料金値下げ運動に対して、どのようにお考えになっておられるか、ひとつお答え願いたいと思う。これは関係がございますから、中小企業庁長官から先にお答え願いたい。

乙竹虔三中小企業庁長官

○乙竹説明員 昨年の大分の大会それから引き続きまして佐賀の大会、また中小企業団体の全国大会が先日埼玉の上尾市で行なわれたのでございますが、この場合の決議としても、実は九州電力の料金が高い、これを引き下げてほしいという非常に強い要望があったわけでございます。中小企業庁長官の立場で申し上げますと、特に九州は地域差のあるところでございまして、これの開発をしていくためには中小企業の振興、特に機械工業等を中心にする振興をどうしてもはかっていかなければならぬ、その場合に電力料金というものは一つのきめ手でございます。したがいまして、私たちは地域経済の立場から考えましても、特に九州の中小企業向け電力料金については非常に大きな関心を持っておるわけでございます。で、先生御指摘のように、高い。高い理由があるということは、われわれ説明も聞いておるのでありますけれども、極力電力会社側の合理化を進めまして、特に中小企業向けの電力料金を引き下げてほしいということを私としては強く希望する次第でございます。

本田早苗通商産業省公益事業局長

○本田説明員 中小企業団体が三年にわたって、特に小口電力料金の引き下げについて御要望があったことは、先ほども申し上げましたように承知しておりますが、先ほど申し上げましたように電力料金のたてまえというのは、電気事業者ごとの原価で料金をきめていく、しかも特定のものに特に差別的な料金ではいけないというたてまえできめていくということになっておるわけでございまして、そこで今回の問題になっております小口料金について、これを是正することができるかどうかという問題になるわけでございますが、たてまえからいくと、そういうことではまずいということになるわけでございまして、原則的な申し方をすると、そういうことで小口電力について引き下げを特に行なって、しかも原価でございますので他と調整をするということに相なりますと、電灯が高くなるとか大口が高くなるとかいうようなことに相なりますので、非常にむずかしい問題だというふうに考えるわけでございます。

中村重光日本社会党

○中村(重)委員 だからあなたは中小企業団体の料金値下げ運動、値下げ要求というものは、これは実現性のない無理な要求である、こうお考えになっていらっしゃるのですか。

本田早苗通商産業省公益事業局長

○本田説明員 現在の料金制度のもとでは、非常にむずかしい性質の問題であるというふうに考えます。

中村重光日本社会党

○中村(重)委員 現在の料金制度の中ではむずかしいとおっしゃるのはどういうわけでございますか。

本田早苗通商産業省公益事業局長

○本田説明員 原価に基づいて料金を定める、それから需要者の中でやはり差別的でないような考えで料金体系を組むべきだというたてまえからまいりますと、むずかしいということを申し上げるわけでございますが、御承知のように三十六年に料金改定を行ないましたが、二十九年の料金と比較いたしますと、あのときの改定では、九州の場合には全体として一〇・五%の値上がりになっておるわけでございます。あのときの料金算定の基準から申し上げますと、小口電力については九・八、大口電力が一〇・七、業務用電力は一一・九、電灯が一〇・七というふうな値上げ幅で料金が改定されたわけでございますが、これは当時の需要構成、それに要する経費等を考えて、こうした値上げ幅で料金改定を行なったものだと思いますが、したがいまして前回の料金改定におきましては、小口電力は若干値上げ幅は小さく改定をされたというような事情になっております。

中村重光日本社会党

○中村(重)委員 積み上げ方式みたいなもので、あなたのいまのお答えを聞いていると、当初の基礎というものが正しかったという判断の上に立っていらっしゃる。私は、三十六年の値上げの際に、これは内容的に間違っている、もっと大口の料金を引き上ぐべきであるという、そうした根拠をあげて、実は反対した。だから、何も局長がおかわりになったから前のことをすべて変えてしまって新しいやり方をしなさいと私は言わないのです。しかし、積み上げ方式みたいなものは、前が間違っていなければよろしいのです。ほんとうに、いまあなたがお答えになったように、小口の料金の引き上げ幅が少なければそれだけ安くしたということになる。しかし基礎になるものが間違っておったならば、小口の引き上げ幅は小さくても、それは必ずしも妥当とはいえないのです。そうでしょう。だからあなたはやはり、ことし御就任になったならば、そうした中小企業団体やあるいは消費者、一般の家庭の婦人を中心とする消費者団体が、何としてもこれを下げてもらいたいという血の叫びを上げているんだ。そして中小企業庁長官も、いわゆる中小企業の振興の立場から、これは何とか引き下げをしてもらいたいという強い熱望を持っているのです。だから、だめだというので片づけるのではなくて、やはり内容を検討していくという態度が私はあってしかるべきだと思う。私企業であっても公益事業ですよ。そのくらいの熱意がなければ、私は、あなたの任務はつとまらないと思う。だから、現行の制度のもとでは、というようなことではなくて、やはりあらゆる角度から検討をして認可をしておるのでしょうけれども、三十六年の当時の認可が正しかったとばかりは言えない。また事業の伸びのいろいろな変化だってある、大企業と中小企業との場合においては。これは、電気料金というようなものが相当引き上げられても、そのコストの中に吸収できるものか、あるいはできないものか。中小企業団体のように非常に生産性が低いような場合においては、その影響は大きいわけです。そういうことをあなたのほうでは真剣に検討してみるというくらいの熱意があってしかるべきだと思う。公益事業というものは、私はそういうところに重要な意義を見出さなければならぬと思うのです。これは地域独占なんだから、決して電力企業というようなもの、それのみを保護するという立場の上に立ってはなりません。公益事業というようなものは、やはり消費者、国民の立場の上に立って考えていかなければならない。そのためには、原価主義ですから、どうしても現在の料金では経営ができません、引き上げてもらわなければならぬという場合、原価計算の上に立って申請をしてまいりますと、これを認めていくのです。いままで認めてきたのです。やはりそういう場合に、この事業がずっと伸びてきた。そうなってまいりますと、これは事業の伸びというものと、人件費であるとかその他の経費というようなものが、これもまたずっとコストアップしてくるでしょう。そういう場合にこれを引き下げる余地がないのかどうかというようなこと、また内容的にいろいろな変化が出てきておるはずなんだから、これをさらに再検討して電力企業に対して是正を求めていくというような態度があって私はしかるべしと思う。あなたはそのようにお考えになりませんか。きょうは中小企業庁もお見えでございますから、ひとつ公益事業という観点の上に立って、本田局長のお答えのあとに、小島参事官からもひとつお答えを願いたい。

本田早苗通商産業省公益事業局長

○本田説明員 御説のとおり公益事業でございますから、電力会社というものを中心に考えていくべきじゃないという御指摘は全くそのとおりで、そうした考えでやってまいりたいというふうに考えております。先ほど申し上げましたのは、中小企業振興のためにという考え方を基礎にしまして料金をいじるというのはむずかしい問題だ、こういうことを申し上げたわけでございまして、先ほど御指摘のように、要素がいろいろ変わる、変わった実情によって判断をすべきであるという点については全くそのとおりであろうと思います。監査に基づいて諸種のデータについては判断をすべきであろうと思いますし、前回の監査の実態も、もう一ぺん見直してみたいというふうに考える次第でございます。

小島英敏経済企画庁国民生活局参事官

○小島説明員 中小企業の電力につきましては、いま中小企業庁のほうからのお話がございましたが、特に電灯料金につきまして企画庁のほうから申し上げますと、物価指数の中で、現在約二%のウエートを持っております。二%のウエートと申しますのは、決してこれは小さいものではございません。非常に大きな影響を持っておりまして、特にほかの消費者物価が最近非常に値上がりがはなはだしい状況でございますので、個々の電力会社の電力料金、電灯料金自身について、いまの水準が適正であるかどうかという点についての判断は、実はわれわれのほうは十分な資料もございませんけれども、一般的には、極力合理化につとめてもらって、長期的な安定、可能な限りはむしろ引き下げをしていただくということが非常に重要だと思いますし、通産省で適切な指導をしていただくことを期待しておる次第であります。

中村重光日本社会党

○中村(重)委員 本田局長に特に私は申し上げておきますが、公益事業ということで原価主義になっていますから、申請がある、そのときに認可する。もちろん申請のとおりではなくて、内容を検討して認可をしておられる。そのあとはほったらかしですよ。先ほど私が申し上げましたように、値上げ申請のときだけ検討して、認可したらそれで終わりだという考え方は間違いですよ。あなた方は料金の検討については、その次の値上げ申請が出てきたときだけ検討するんじゃありませんか。それではいけないですよ、公益事業というものは。もっと国民の側を向いて行政をおやりにならなければいかぬ。経済企画庁も小島参事官では責任のある答弁は私はできないのだろうと思うのですけれども、物価対策上いわゆる公益料金を一年間ストップしなければならぬとかなんとかいっているときに、上げるのを押えるということだけではなくて、現に中国電力は進んで引き下げたのです。あとでこの点についても内容についてお答えを願うのですが、これも通産省が積極的な行政指導をやって引き下げたのではないのです。それと、先ほど本田局長は、現在の料金は妥当である、現在の制度の中においてはこれを引き下げさせることは無理であるというようなことをお答えになったのですが、黒部前通産局長があっせん案なるものを出しているわけです。あっせんするということは、中小企業団体の値下げをしてもらいたいという、その要求をしておる中小企業団体の、一〇〇%でなくたって、ある程度のいわゆる納得のいくような形がなければ、あっせんというものは成り立たない。あっせんに乗り出すということは、やはり何らかの案というものを持っておらなければならぬのだろうと私は思う。してみると、いまのあなたのお答えとは矛盾してくるように思う。だから、どのようなあっせん案をお示しになっていらっしゃるのか。この点ちょっとお答え願いたい。

本田早苗通商産業省公益事業局長

○本田説明員 黒部指導部長が福岡の通産局長としてあっせん案を検討したということでございますが、あっせんという段階が結論を得るに至っておらないという事情でございまして、相互にまだ検討しておる、さらに、新しい局長として両者の事情も聞いて考えるという事情でございますので、あっせん案についてはこの際御容赦願いたいというふうに思います。

中村重光日本社会党

○中村(重)委員 いまのを、たいへん申しわけないのですが、ちょっと打ち合わせをしておって聞き漏らしたのですが、あっせん案というものを出しておるのですね。

本田早苗通商産業省公益事業局長

○本田説明員 あっせんについての考え方は一応出したと聞いておりますが、それについての結論は出ておらない、相互でまだ検討するということでございますので、この際この席で内容について申し上げるのは控えさしていただきたいというふうに考えております。

中村重光日本社会党

○中村(重)委員 私も、ある程度は承知をいたしておりますが、この席でお答えできないということでございますから、こういうことでしょうとは私は申し上げません。私も、それでは控えます。せっかくまとまるものがまとまらないということになりましては破壊ということになってまいりますから控えます。控えますが、何か適当に形をつければよろしいという無責任なあっせんだけはおやりにならないように、少なくともいま進めておられるであろうところのいわゆるあっせん、これは後任の局長が続いておやりになるんだろうと思います。的はずれのあっせんになったのではしょうがないと思うのです。私は的はずれのあっせん案ではならないというふうに思います。それが中小企業団体の振興に寄与していくということでありますならば、あえて申し上げませんけれども、値下げできるものを値下げさせないようにして、一つの会社の値下げをするとそのことがさらに全体へ及ぼすであろうというような、特定の企業を守るという立場の上に立って、値下げの方向ではなくて違った方向で問題を糊塗していこうというような態度は、少なくとも責任ある行政当局はおとりになるべきではないということだけははっきり申し上げておきます。  そこで、中国電力の値下げの内容はどういうことになっておりますか。

本田早苗通商産業省公益事業局長

○本田説明員 三・九%の引き下げでございまして、電灯で一・一%、小口で三・九%、大口で七%、電力の計で申しますと五・七%引き下げという内容で改定が行なわれたわけでございます。

中村重光日本社会党

○中村(重)委員 大口中心の値下げということになりますね。大口が七%でしょう、小口が三・九%ですか、電灯が一・一%、そうすると、大口の需要者のための値下げが中心であるということになりますね。これについてはどのようにお考えになりますか。

本田早苗通商産業省公益事業局長

○本田説明員 その質問に対するお答えは、資料として用意してきておりませんので、的確にお答えできかねますが、やはりコストの実情を反映してこうした結論になったのではないかというふうに思うわけでございますが、現在資料を持っておりませんので、お許し願います。

中村重光日本社会党

○中村(重)委員 水道事業も公益事業でありますが、東京都の水道料金の引き上げについて、いわゆる美濃部方式というものがございます。家庭の水道料金は上げない、中小企業等の小口の料金はできるだけ上げない、吸収力のある大口の利用者の料金を上げていく。そういう配慮が美濃部方式として考えられておったわけです。電気料金そのものに対しましても、こうした方式というものは、歓迎すべきものだ、大いに参考に値するというようには、あなたお考えになりませんか。

本田早苗通商産業省公益事業局長

○本田説明員 電気事業法の規定のたてまえからいきますと、そうした配慮を大幅に入れていくということは問題があるのではないかと思いますが、考え方自身としては、そうした方式も一つの考え方であると思いますが、現行規定でいきますと、こうした方式をとることはむずかしいのではないかというふうに考えるわけでございます。

中村重光日本社会党

○中村(重)委員 いまのお答えは、どういう意味ですか。どうして電力事業の場合にそうした方式というものが――あなたからいえば考え方はわかるような気がする、電力の場合は無理だ、こういうことですか。そういう行き方は弊害だととられるのですか。どうしてですか。

本田早苗通商産業省公益事業局長

○本田説明員 十九条の二項乙四号のところに「特定の者に対して不当な差別的取扱いをするものでないこと。」という規定がございますので、政策的意図によって、ある部門が非常に厚薄ができるということになるのは、この規定のたてまえからいきますと触れるのではないか、こういうふうに考えます。

中村重光日本社会党

○中村(重)委員 特定の者に対する不当な差別と、こうおっしゃるのですか。その意味が私にはわからない。あなた方も、申請がなされた場合、前の規則の上に立って、平均した料金の値上げを認めてないのです。できるだけ家庭料金を押えていこうとする。押えていくべきである。小口に対してはできるだけこれを押えていくべきであるという私どもの主張をある程度は是認をして、そういう配慮がなされておるはずなんです。しかし、あなたのお答えの線からいったならば、それもいわゆる特定の者に対する不当な差別ということになってくるではありませんか。これと、中国電力の場合、初めあなた方が認可されたその料金が平均して下げられているのではない。大口に対して七%、小口に対して三・九%、電灯に対して一・一%というこの値下げだって、同じような率におけるところの引き下げでないではありませんか。これも不当なる差別ということになりませんか。

本田早苗通商産業省公益事業局長

○本田説明員 要した経費に対して料金をきめていくというたてまえで考えますと、先ほど先生、九州の中小企業の電力需要の実態に変動がきたという場合に、その変動に応じて考慮すべきではないかという御指摘がありましたけれども、そうした事情に基づいて格差が生ずるということは、これはあってやむを得ないのではないかと存ずる次第でございます。それから、美濃部方式の実情を私よく存じませんが、家庭はそれほど上がらずに、業務用等はかなり大幅に上がっておったというように思うわけでございますが、こういう意味の格差をつけるという点については、先ほど申し上げた規定との関係で問題があるのではないか、こういうふうに思うわけでございます。

中村重光日本社会党

○中村(重)委員 あなたのお答えに対しては納得いかないのですが、これは法律案の審議でありますと納得いくまで徹底的に質疑をしなければなりませんが、法律案の審議ではありませんから、あらためてまたお尋ねをすることにいたします。  そこで、電力会社というものは公益事業である、そういう点からして先ほど申し上げましたように一つの地域独占という形において保護されている。保護されている反面においては当然の責任というのか義務が課されているはずなんですね。いわゆる供給義務というのはその一つだと思います。離島、僻地等においてはその供給義務というのが十分に満たされておるとお考えになっておられるかどうか。

本田早苗通商産業省公益事業局長

○本田説明員 各電力会社ともいろいろ努力はいたしておりますが、十分にその供給責任を果たしておるかということになりますと、なお努力を要する点があろうというふうに思うわけでございます。

中村重光日本社会党

○中村(重)委員 具体的な事例をあげて私はお尋ねをしたいと思います。  私は、委員長も一緒に長崎県に参りましたが、壱岐、対馬、またその他の私がいま申し上げましたような離島、僻地は、いわゆる需要密度というものが非常に低いのですね。したがってコスト計算からいたしますと利益の二倍の経費が投じられている。やはり事業ですからちゅうちょするという点もあるだろう。あるだろうけれども、その供給義務は果たすべく最大限の努力をしておるという。まあ最大限かどうか別として、相当な努力を払われておるという事実は実は認めてまいりました。しかし声を大にしなければそれをやらないということですよ。ここに問題がある。私は役所も指導監督が不十分だと思う。たとえば長崎県は農漁業というものが産業としては中心で、九〇%はそういうことなんですね。そういう場合に、するめ等の加工をする場合、いわゆる動力線が引き込まれてないのです。だからするめの加工は天日でやっている。雨ざらし日ざらし、雨が降ってもそのまま。だから品質は低下する。産業の振興に及ぼす影響は大きいですよ。こういうことにはもっと積極的に動力線でも引き込む。そして受益者の負担というようなものがあまり課せられてまいりますと、非常に零細な農漁業者でございます、加工業者でございますから、これはもうとうていその負担にたえない。そういう場合は会社にできるだけの努力をしていただく。さらにまた農山漁村電気導入法というような、そうした制度を適用していくというような形においてすみやかにその動力線を引き込んでいく、こういうことでなければならぬ。私は当委員会においても数回にわたってこの問題を取り上げてまいりました。なかなかこれが実施されない。ようやく先般、先ほど申し上げましたように、対馬におきましてある一カ所それが実現をしたということであります。一緒に参りました重役の方々に私は敬意を表した、これは委員長御承知のとおりなんですけれども、そういうことなんです。こういうことを当委員会において声を大にしてあなた方に要求し、また会社に対して要求していかなければ、進んでそういう供給義務を果たしていないというところに問題があるのです。また役所もそれをさせないところに問題がある。そのような点に対して、この後どういう態度でお臨みになりますか。

本田早苗通商産業省公益事業局長

○本田説明員 御指摘のとおり公益事業でございまして、法律にも明らかに供給責任をうたってあるわけでございます。これにつきましては、御指摘のとおり積極的に指導してまいりたい、できるだけすみやかに実現するように指導したい、こういうふうに思うわけでございます。

中村重光日本社会党

○中村(重)委員 新電気事業法によって広域運営という新しい制度が実はつくられた。その制度がどのように運営されていっておるか、またどのように運営されなければならないかという点についてお答えを願います。

本田早苗通商産業省公益事業局長

○本田説明員 広域運営につきましては、今後電力の需要の増加に伴いまして、また各種の社会的、経済的な条件によりまして、原価の高騰という要因が多々あることは申し上げたわけでございますが、こうした総括原価の高騰を抑制して、長期に安定した電力料金を維持し、さらに合理化によりまして将来引き下げの可能性を実現していくための努力をするということのために、広域運営を行なうということになっておるわけでございますが、現在のところ、たとえば火力の経済融通、こういうことによりまして、必要な際に相互の間で融通するということに伴いまして予備供給力を節約できる、したがいまして、それが電力のコストの引き下げに連なる、あるいは輪番開発を行なうというようなことで、一つの電気事業者としては、たとえば九州の場合、唐津のようなところでは三十五万キロのように、一割もの大きな容量のものを一つの施設として持つという場合は、故障等の場合非常に困るわけでございますが、広域運営による融通というものを前提にして、効率的な大きなロットの火力を開発する、あるいは委託開発によりまして電発に大きな幹線送電線を設置して、これによって送電経費を節減するあ、るいは規格を整備いたしまして資材の融通を行なう、あるいは技術の交流を行なうことによりまして原価高騰を抑制する効果をあげてまいりたい、こういうようなことで運営することを行なっておるわけでございます。

中村重光日本社会党

○中村(重)委員 お答えのようなこと、いわゆる積極面というものがこの広域運営の場合に考えられなければならぬ。私どもはもっとこの新電気事業法の中において、広域運営というものに対して期待するところがあったわけです。ところが、現実はそういう形で連営されておるのか。あなたは御就任になったばかりで、いま一つ一つ検討していらっしゃらないと思いますから、あなたにお尋ねすることは無理だと思いますが、現実はそうした期待にこたえるような運営をすべてやっておるとは私は考えられないと思います。東京電力等において最近非常に積極的に、いわゆる広域運営のあるべき方向へと進められているように承知して力強く感じております。ほかの会社のすべてはつまびらかではございませんですけれども、ある会社によっては緊急避難的にこれは考えられておる。いわゆる渇水時である、したがってどうしても電源が不足をする、だからしてこの広域運営において他社の応援を求めなければならない。こういうことになってまいりますと、その応援をする会社、コストの非常に高くつくところの古い発電設備、それをもって供給をしていくということになると非常にコストが高くなる。そうすると、自分のところの発電コストよりも高いものを今度は応援を受けなければならないということになる。これは緊急避難です。非常に消極的な、本来の広域運営の意義からするとはずれておる。私はそういうことであってはならぬと思う。いま私が申し上げたように、そういう緊急避難的なものであってはならぬと考えておりいます。わゆる基幹産業でしょう。したがって地域格差というものがあることは好ましいことじゃないです。だから、ある意味においては料金のプール計算的な意義というものを私は広域運営に期待しておったのです。あなたは、広域運営というものはどういうような目的でもって運営されなければならないのかということに対してはお答えになりました。そういう方向へいきますと、ある意味においてはプール計算的な、広い意味のそういうことにも私はなろうかと思うのであります。だから、広域運営に対してもっと積極的な面を見出すように運営さるべきではないかと思うのですが、どのような指導方針をもってお臨みになるのか、ひとつお答えを願いたい。

本田早苗通商産業省公益事業局長

○本田説明員 広域運営のねらいとしては先ほど申し上げたとおりでございまして、ただ御指摘のように、全面的にその効果をあげるような広域運営がいま行なわれておるかということに相なりますと、なお考えねばならぬ点がいろいろあろうと思います。御指摘の渇水融通のような緊急時には、いずれもが予備能力を使う際に割安なほうの予備能力を使うということでコストの引き上げを防止しておるわけでございますが、さらに御指摘のような料金のプールという問題になりますと、できるだけ委託開発あるいは大型の共同開発というような形でこれの成果をあげていくということも一つの方法であろうと思いますが、その点につきましてはさらに検討さしていただきたいというふうに存ずる次第であります。

中村重光日本社会党

○中村(重)委員 時間もありませんから、広域運営の問題についてはあらためてまたお尋ねをすることにしたいと思いますが、私はこの広域運営については積極面を出すべきだと思うのです。また、少なくとも公益事業というような責任をお考えになるなら、各電力会社としても異論はないというところではないか。実際私が申し上げたようなことになってまいりますと、少なくとも三十万、四十万ボルトくらいの相当高圧の送電という形になってまいりますと、何といってもロスが出てまいります。だからそういう点については、技術的な問題それから設備上の問題等々いろいろあろうと思いますけれども、せっかく電気事業法という新しい法律をつくった、その中にこれが柱になっておるということを考えてまいりますと、私はいまのような消極的なものであっては、結局電気料金というものを引き下げるという意味におきまして、一つの安定というものをはかる上については不十分ではないかという感じがいたします。  そこで、またあとに戻りますが、先ほどあっせん案の問題についてはこうあるべきだということについては申し上げたわけでございますが、どういう形においてあっせんが実を結ぶのかわかりませんが、少なくとも誠意をもって問題の解決に当たるべきだと私は思いますけれども、それだけの熱意があなたにおありかどうか、ひとつその点のお答えを重ねて願っておきたいと思います。

本田早苗通商産業省公益事業局長

○本田説明員 今回、福岡通産局長にあっせんを考えてもらうわけでございますが、この点につきましては緊密に連絡をいたしまして、満足するような結論を得るように努力いたしたいということを申し上げたいと思います。

中村重光日本社会党

○中村(重)委員 自治省から松島税務局長お見えでございましょうが、先般もお尋ねしたわけですが、現行の電気ガス税が従価税になっている。九州電力の場合、地域的な諸条件が他の八つの会社と比較をして非常に悪い。そのために電力料金が高い。高いのに対して従価税ということになってまいりますと、税金も高い。ますますもって需要者の負担が大きくなってくる。このことを考えてみますと、やはり従価税ではなくて従量税ということにしなければならないのではないか。電気ガス税は悪税であるということで、私どもはすみやかにこれが撤廃されることを望んでおるわけですけれども、いま直ちに是正をしてもらわなければならないのは、この従価税を従量税に直していく、そしてそうした料金が税金のためにさらに高くなり需要者の負担が過重になるということにならないように、これを直していかなければならないと思いますが、四十四年度の予算の中においてこの点をどのようにお考えになっていらっしゃるのか、お答えを願いたいと思います。

松島五郎自治省税務局長

○松島説明員 一般に消費税は、御承知のとおり従量税、従価税という二つのやり方がございますけれども、税としましては、消費行為にあらわれます担税力を見出して課税をするというものでございますので、担税力は一般には価格によって表現されるのが一番適当であると考えられております。だから消費税につきましては、従価税が一般的な場合には適当であろうといわれておることは御承知のとおりでございます。  電気ガス税につきましては、いま御指摘のありましたように、電気ガス税それ自体についていろいろ御批判もあるところでございます。それは別にいたしまして、電気料金の違いが税金にも反映するのはおかしいではないかという御指摘でございますけれども、いま申しましたように消費税という形をとっております限りは、やはり価格に応じて納めていただくというのが適当ではないか、基本的には、やはり先ほど来いろいろ御議論がございますような電気料金それ自体の問題をどうするかということにかかっているのではなかろうかというふうに考えております。

中村重光日本社会党

○中村(重)委員 ガスなんかの場合は、高い場合は、いわゆる消費者の選択ということでほかの燃料を使うということだってありますね。電気の場合はこれはあり得ない。そうしてみると、やはり負担の公平ということを考えなければならないと思います。消費税というのは、そういう形式論ではなくて、実態が、本来的にいえば、これはプール計算というのが一社化という形において行なわれ、すべて公平な負担というものが全国民になされるべきだ。必ず受益者負担という形において後進地域に住んでいる者は高い料金を払わなければならない、こういうことでは本来済まされないのですよ。そういうことをせめて電気料金等の場合において是正をしていくというところに、私はほんとうの意味の生きた政治というものがあるのだというように思っているのです。だから形式論からいえばあなたの言われることはわかりますけれども、しかしそういうことを離れて、実態がどうあるべきかということで考えていかなければならないのじゃないかと思います。そうは思いませんか。

松島五郎自治省税務局長

○松島説明員 この点につきましては、昨年でございましたか今年でございましたか、さきに先生から御指摘のあった問題でございます。私どももいろいろ検討をいたしておるところでございますが、ただ従量税にするといたしましても、現在の電気ガス税の税収入額というものを前提として従量税をかりに考えたといたしますと、全体の数量によって割り算をいたしまして、一キロワットアワー当たりなら一キロワットアワー当たり、単位当たりの税額を出しますと、これはもちろん電気料金に上下がございますので、おそらく平均のところになると思います。そうなりますと、結局高いところはそれによって従来よりは安くなりますけれども、逆にいままで低かったところを上げなければならぬというような問題も出てまいるわけでございまして、そうなりますと、実際問題として、いままでよりも高くなるところの御理解を得るということは、なかなかむずかしい問題でございます。結局それは減税というような問題と関連いたしませんと、なかなか問題が解決しない面もございます。そういう点もございますし、また電気料金のきめ方それ自体も、私専門家ではございませんので、あるいは間違っているかもわかりませんが、いまいろいろときめ方が電気の種類によってあるようでございます。そうなりますと、そのきめ方いかんによっては、たとえば先ほど先生がおっしゃったように、一般家庭用などはうんと低くというようなきめ方をいたしますと、従量税で課税をしますとかえって高くなるというような結果が出ないとも限らないという問題もございます。そういう点、私どもいろいろ技術的にも検討いたしましたけれども、現在の段階で直ちに従量税に持っていくということには、なおいろいろな問題があるのではないか、かように考えております。

中村重光日本社会党

○中村(重)委員 前回お尋ねしたときもきょうもまた変わらない。私はどうしてもこれは納得いきませんが、あらためてこの点についてはお尋ねすることにいたします。  かけ足ではしょってお尋ねをしておるわけですが、そこで、電気料金の問題についていろいろと合理化が進められている。その合理化の内容についてもお答えを願ったわけですが、最近ある新聞で九州電力の料金の問題について報道しておりましたのを読んだのですが、電力事業に従事する労働者の賃金は非常に高い、それから短時間労働である、労働条件も非常によろしいということが報道されておったのですが、私はそうは思っていないので、私の調査した、たとえば九州電力の場合におきましては一・八二%のアップになっておる。これは全国の平均と同じだというように見ているわけです。諸外国の例等を、時間の関係から私からお尋ねをしないで申し上げますが、先進諸国においては、電気労働者の賃金というものは他の産業から比較いたしますと二〇%ないし三〇%高い、日本の場合はそういうことはないというようになっておるわけですが、労働省はこの点に対しては、この電力企業に働く労働者の賃金あるいは労働条件が他の産業と比較をいたしましてどういうことになっておるか、また九州電力と他の電力会社との労働者の賃金の比較はどうなっておるのか、労働条件を含めてお答えを願いたいと思います。

佐竹一郎労働大臣官房労働統計調査部調査課長

○佐竹説明員 ただいまお尋ねがございました電気産業とその他の産業の賃金についてお答えいたします。  昨年一年間の賃金を賞与も含めて電気産業で見ますと七万四千十二円、こういう数字になっております。これを全産業で見ますと四万八千七百十四円、約五割方電気産業が高い、かような数字になっております。ただ、先ほども先生おっしゃられましたように、賃金は機械的に比較するのがいいのかどうかという問題もあるわけでございます。たとえば全産業で見ますと、平均年齢が三二・四歳である。ところが電気産業でありますと三六・五歳である。あるいは平均勤続年数を見ますと、全産業では九・八年、ところが電気産業では一五・六年、かようにそこに従事しております労働者の性質というのはかなり違っております。したがいまして、平均賃金が約五割高いということが他の産業に比べて割り高である、かようなことは一がいには申せないのではないか、かように考えております。  電力会社の地域差につきましては、ただいま手元に資料を持っておりませんので……。

中村重光日本社会党

○中村(重)委員 非常に合理化が進められておるために最近災害が非常に多く発生しておるというようなことで、特に死亡であるとか、重傷事故が最近非常に多くなっておるように統計では出ているわけですが、この点はどうですか。

細野正労働省労働基準局監督課長

○細野説明員 電気企業における災害についてのお尋ねがあったわけでございますが、電力会社関係だけの統計はちょっとございませんので、電気企業全体について見てまいりますと、度数率、強度率とも年によって波はありますけれども、趨勢的には落ちる方向に向いておるわけございます。死亡等もたとえば三十九年、四十年は約二十人ないし二十一人でございましたが、四十一年、四十二年は九人、十五人というような状況でございまして、必ずしも増加の傾向には、四十二年までの統計でございますが、出ていないという状況であります。

中村重光日本社会党

○中村(重)委員 九州電力の場合は死亡災害が昨年の実績を九月ですでに上回っておる、こういう実績になっておるのではないかと思いますが、御調査になっておりませんか。

細野正労働省労働基準局監督課長

○細野説明員 個々の事業関係の統計は本省のほうにまだ参っておりませんので、その確認をいたしておりません。

中村重光日本社会党

○中村(重)委員 検針と集金制度が現在委託制度になっておって、労災法上いろいろ問題があるのですが、東京電力はたしか解決をしたようにも聞いておるわけですが、他の八社の関係はどうなっておるのか、またこういうことをいつまでも放置しておいてはいけないと思うのですが、その点はどうなんですか。

細野正労働省労働基準局監督課長

○細野説明員 労災補償関係につきましては、先生いまお尋ねございましたように、東電がまっ先に労災補償に準ずるような措置をとるということで解決いたしました。ほぼそれにならって各社そういう方向で処置をしておられるというように私どもは聞いておるわけでございます。

中村重光日本社会党

○中村(重)委員 いろいろ問題があるようです。定年退職した人が実際は委託でもってやったりというような、相当高年齢の人たちがやっている。一がいにいかないという点がある。しかしもし事故があった場合、正式な雇用関係がないという場合に、労災法上もいろいろな問題が出てくるだろうと思う。だからいい方面へ右へならえさせて問題を解決させていく、そういう指導を今後とも積極的に進めていただく必要があると思いますから、その点をひとつ要請をしておきたいと思います。  これで電力関係を終わりますが、先ほど申し上げましたように、特に公益事業局長は御就任になった直後でございますので、新たな決意をもって――公益事業に対する関心というものは非常に高いわけです。だから、誤らないような公益事業のあり方というものに徹せられて十分な指導監督をやっていく、そして受益者の利益に資する、消費者の利益を守っていく、こういうことを強くやっていただきたい。公益事業であります以上、原価計算に基づいて当然適正な価格というものは保障されておると私は思うわけです。ただ需要者だけが犠牲になるという形であってはならない。そういう点は十分な配慮を要請しておきたいと思います。  対馬の東邦亜鉛の問題について、先般私も委員会で視察に参りました際に現場を実は見でまいりました。この東邦亜鉛というのは対馬という孤島においての唯一の産業である。あそこで働いている労働者も対馬の人たちである。これが地域経済に及ぼす利点というものも非常に大きいわけです。ところが鉱害が一つ発生をするということになってまいりますと、地域住民の不安、被害、またそのことは企業自体の経営にも重大な影響を及ぼしてくることにもなろうと思います。新聞紙上等を通じてその後厚生省がどういう取り組みをしておるのかということも承知しております。時間の関係もありますし、六時程度という委員長の要請がありますから六時程度までに終わりたいと考えておりますので、簡潔にお答え願いたいと思います。  私ども現場を見まして、保安上に問題があるように感じます。私から申し上げますが、廃液に石灰が添加されているのです。そうして砂利層でもってろ過されているのですね。そうして池から今度は川へと放流されておるわけです。ところが池が粘土である。それが漏ってまいりますと、相当地下に浸入することにもならないかということが一点。もう一つは、砂利層でろ過いたしますね。そうなってまいりますと、そのかすがたまるわけです。そのかすの中には非常に有毒性のものがある。これをほかへ持っていって、奥のほうにあるのですが、第二ダムをつくってそこに捨てておるわけです。その措置がどうなのかという問題が一つあるわけですね。だから、土砂をとって検査をしたり、あるいは川の水を検査をしたり、いろいろな検査を絶えず怠らないようにやってまいりますと、そうした被害といわれておるイタイイタイ病というものが、富山の場合と同じかどうかということは別といたしまして、これは御承知のとおり学者の発表によりましても同じだということもいわれて非常な不安もあるわけです。先般参議院の商工委員会においてこの問題が取り上げられ大きく報導されておりますために、地域住民は実はたいへん刺激を受けておりまして、ある報道機関の人が行きますと、病人が会って話をすることも何か警戒するというような傾向すら実はあるというようなことも言われているわけですが、かといって、この地域産業、地場産業の育成をしなければならぬという点からこれを隠蔽をしておくということになってまいりますと、これはたいへんな人道上の問題ということも出てまいります。だから保安対策というものはきわめて重要な問題であろうと思うわけでありますから、この点に対しては通産省も鉱山保安局長がおられるわけですから、その保安面についてどのようにお考えになっておられるかという点、それから厚生省としては、現在進めておりますところの措置というものは適切であるとお考えになっていらっしゃるのかどうか、ひとつお答え願いたいと思います。簡潔でけっこうです。

橋本徳男通商産業省鉱山保安局長

○橋本説明員 確かに先生のおっしゃいますように、鉱山から出ますいろんなこういった問題、これが地元住民に不安感を与え、またいろんな被害を与えるというふうなことになりますれば、産業自体の基礎にも大きく影響するわけでございます。それで、ここの鉱山につきましては、三十二年以来数回にわたりまして鉱山監督局でいろいろ検査をやっております。ところが御承知のように、その当時の検査はいまのようなカドミウムというものが実はまだ問題にはなっていない、まだ科学もそこまで進歩しておりませんでしたので、そういったものについての分析が実は行なわれていなかった。ところが、御承知のようにこのカドミウム問題がクローズアップいたしまして、実は昨年の十一月に監督局で非常に精密な検査をしたわけでございます。そういたしましたところ、もちろんここにつきましては思わしい数値ではないというふうな観点からいろいろ改善の指示をいたしました。それで先生御承知のように、中和槽で十分中和をし、そうして現在十カ所程度においてそれを処理をしておるものを一カ所へ集めなさい、一カ所へ集めることによって合理的なかつ非常に効果的な処理ができるというふうなことから実はそれをさしたわけでございます。それをさしたが、やはりこういった問題についてのフォローアップが必要であるというようなことから、本年八月にまた監督局で再度検査をいたしております。同時に厚生省におきましても、これまたそういう人体に及ぼす影響等もございますので、厚生省のほうでも検査を実はやってもらっておるわけでございます。したがいまして監督局の検査からいたしますれば、大体これで問題はないという感じはいたしておりますが、こういったようなものは要するに住民の納得するような形において解決する必要があるであろうということで、現在は厚生省の結果を待っております。しかし監督局といたしましては、いろんなそういった形におきまして改善の指示をやっておりますし、それからいまお話のございました堆積場につきましても、集約的な処理をやりますと、適量の石灰を入れることによってこれが完全中和されるというふうなことからいたしますれば、現在の処置でまずまずだいじょうぶであろうというふうな考え方を実はとっておるわけでございます。ただ、しかし問題があるとしますれば、非常に昔の場所、こういったものにつきましても、やはり堆積場について問題があると思いますので、こういった昔からの堆積場につきましては、それをさらに高品位のものは精練をやり、かつまたその昔の堆積場から出てくる水を、廃液をこの中和槽の中に再度入れまして、そこで中和処理をするというふうなところまでやらしておりまして、まずだいじょうぶだろうと思いますが、引き続きこれにつきましての水質検査は継続してやっていき、厚生省の最終的な見解と相まって、住民に不安のないように処置していきたいというふうに考えております。

武藤き一郎厚生省環境衛生局公害部長

○武藤説明員 対馬の、先生御質問の問題につきましては、厚生省といたしましては四十年度、四十一年度と調査したわけでございます。  簡単に結論を申しますと、四十年度の調査では、問題の樫根部落の住民につきましては、対象地区といわゆる比較しました地区とございまして、若干尿糖あるいは尿たん白の陽性率がやや高かったわけでございます。したがいまして、四十一年度につきましては、さらにエックス線の直接撮影によりまして精密検査を行ないました結果、要精密検診者がありましたので、さらに骨盤のエックス線の直接撮影を実施いたしましたが、その当該要精密検診者につきましては、これは老人性の骨変化が主要なものでありまして、いわゆる富山にありますイタイイタイ病等の類似の所見は発見されなかったわけでございます。ただその間一、二の患者につきまして、ある学者がイタイイタイ病ではないかというような疑問を提起されたのでございますけれども、専門家の間ではそれは否定されております。それから、本年度はこの富山の問題等がいろいろ問題になりましたので、四十三年度につきましては、八月の終わりに川水あるいは井戸水等の採取をさらに実施をいたしております。それから十月の中旬ちょうどいま十六、十七日と聞いておりますが、さらに農作物あるいは水田土壌等につきましても採取をいたしまして検査をいたす予定にしております。  それからなお、いろいろ住民等の不安を解消するために、長崎県に健康診断をするように依頼いたしまして、本年度中にはさらに住民の健康診断を重ねて行なう予定にいたしております。厚生省といたしましては、なるべく早くこういう調査の結果を出しまして、住民の方の不安を解消したい、かように考えております。

中村重光日本社会党

○中村(重)委員 厚生省は直接調査に当たっておられるのではなくて、日本公衆衛生協会というものに委託をしてやっているわけですね。しかもそういう中で、長崎県だけではなくて、宮城県であるとかあるいは群馬県であるとか、そしてその一つに長崎県も入っているという調査のあり方に問題を感ずる。これほど大きな問題点になっているということに対してもっと積極的な取り組みをなさる必要がある。四十年と四十一年はおやりになった。四十二年は何をしておったかということになる。先般私が参りました際には鉱山保安監督局長は実は来ていなかったのだけれども、通産局長は来ておった。これは委員長も一番御存じなんだけれども、そのときの通産局長の答弁を聞いてみると、全くよそごとのような答弁であって、鉱山保安監督局が責任の担当ではあったにしても、やはり富山のカドミウムの汚染であるとか水俣の問題等々、あれほど大きな問題になっているわけなんだから、通産局もそれから鉱山保安監督局も全体が一体となってやるというもっと積極的なかまえがなければいけない。そういうことについてはきわめて消極的なものを感じたし、それから長崎県の支庁長にお尋ねしたら、これも全く何にも知らぬというような態度であった。そういうような態度であってはならぬと思うのですね。それと、厚生省は長崎県に対して、もう独自の立場でやらしておられるのでしょう。独自というか、実はあなたがお答えになりましたように委託をしてやっておられる。委託費を幾ら出しておられるのか。ほんのわずかの、二階から目薬みたいな費用を出しておるにすぎないのでしょう。どうですか。

武藤き一郎厚生省環境衛生局公害部長

○武藤説明員 私どもとしましては、四十年度、四十一年度の調査の結果、住民には特別の問題が見つからなかったわけでございますので、四十二年度には行なわなかったわけでございます。しかし、また最近、先生御指摘のように各地でいろいろ問題が出てきましたので、さらに四十三年度重ねて調査をする、こういうような状態になったわけでございます。

中村重光日本社会党

○中村(重)委員 長崎県に対して委託費としてわずか四十万出しているだけでしょう。それから特殊な機械が要るからといって二百万円程度する機械の三分の一の補助をしているにすぎない、そういうことでしょう。そういったことでいいのかどうか。これは実はたいへん不安の中にあるわけですが、そういう態度でよろしいとお考えになっておりますか。

武藤き一郎厚生省環境衛生局公害部長

○武藤説明員 現在のところ、金額は少のうございますけれども、私どもがやっております調査については、不十分ながら、問題を明らかにする上においては決して不十分であるということは考えておりません。

中村重光日本社会党

○中村(重)委員 いま十六、十七日にかけて、三人か幾らか入って農作物の調査をする、それで長崎県が独自でやるといっても、四十万円やそこらの金でいまあなたが言われるような十分な調査なんということは期待できないと思う。もっと積極的な取り組みをする必要があると思うのです。  それから橋本局長に一つ重ねて申し上げておきますが、会社がこの保安設備のためにどの程度費用を投じているのか、それから常時この保安のためにどの程度の経常費を支出しておるのか、実はわかりません。ともかく、いま申し上げましたように、それぞれ会社としても、前に農作物に非常な被害が出たというので注意は払っておるようでございますけれども、なお、いわゆるかすの処理等々、問題点もあるように私は感じたわけです。いま厚生省がやっている調査は、カドミウムの汚染があるかどうかということの調査ですね。ところがあなたのほうは、鉱山保安という立場からより積極的に政府としても援助するところは援助していく、長期低利の融資の措置もある、あるいは公害を防止するという政府の責任もあるわけですから、そういう点からあとう限りの措置も政府はやっていく、そして絶対にこの公害を起こさない、こういうことで措置していただきたい。特に要望を申し上げまして、あの島の中における唯一の産業である地域経済の発展という上から、人命の尊重という立場からきわめて重要な問題点ですから、ひとつあなたの決意のほどを伺って私の質問を終わりたいと思います。

橋本徳男通商産業省鉱山保安局長

○橋本説明員 先生のおっしゃいましたこと、まことにそのとおりでございまして、これから監督局といたしましても、従来もやっておりますが、引き続いて追跡調査をし、かつまた会社に対しまして可能な限りわれわれとしても手を差し伸べていき、住民の安心と、それから企業自体が今後もうまく経営が進められるように十分考えてまいりたいと思います。

小峯柳多自由民主党

○小峯委員長 本日の議事はこの程度にとどめます。  次回は、明十八日金曜日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時八分散会

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