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58回国会衆議院1968/01/30

本会議 第3号

発言数
14
登壇者
7
会派数
2
開催日
1968/01/30

会議録

石井光次郎自由民主党議長

○議長(石井光次郎君) これより会議を開きます。      ————◇—————  議員請暇の件

石井光次郎自由民主党議長

○議長(石井光次郎君) おはかりいたします。  議員大石八治君から、海外旅行のため、二月十日から十九日まで十日間請暇の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

石井光次郎自由民主党議長

○議長(石井光次郎君) 御異議なしと認めます。よって、許可するに決しました。      ————◇—————  国務大臣の演説に対する質疑

石井光次郎自由民主党議長

○議長(石井光次郎君) これより国務大臣の演説に対する質疑に入ります。江田三郎君。   〔江田三郎君登壇〕

江田三郎日本社会党

○江田三郎君 私は、日本社会党を代表して、わが国政治の直面する焦眉の問題について所信を述べるとともに、佐藤総理にお尋ねしたいと思います。  内外ともに大きな分かれ道に立つ日本は、時代の課題に対する深い洞察と強い実行力とを政治の指導者に切に求めております。ところが佐藤内閣の政治は、羅針盤も持たず大洋を行く船のごとくであります。外交においても内政においても、佐藤内閣が国の将来を誤る方向に向いているのではないかと不安を深める国民が日に日にふえているのであります。(拍手)一年前の総選挙で、自民党の得票率はついに過半数を割りましたが、今日佐藤内閣の政策を支持する者は、この得票率をさらに下回っておることは言うまでもありません。  年頭の記者会見で総理は、「独立の気力なき者は国を思うこと深切ならず」という福澤諭吉のことばを引いておられます。しかし、総理の言われる国防意識高揚の助けにこれを引くことほど福澤精神のはなはだしい取り違えばございません。論語読みの論語知らずとはこのことであります。(拍手)総理の引用したことばに続けて、福澤諭吉は「学問のすすめ」の中で、自分でものごとの理非を見分けて処置を誤らないのが他人の知恵によらざる独立であり、自分で働いて自分の生活の道を立てるのが他人の財によらざる独立であるということを言っておるのであります。  アメリカのベトナム政策と、それが日本の安全とアジアの平和に及ぼす重大な脅威について、総理は、アメリカの知恵によらざる独立の判断を堅持してこられたでしょうか。ドル危機にゆさぶられる日本経済の現状が、他人の財によらざる独立の経綸と言えるでしょうか。いずれも、いなであります。  日本はいま、国の安全とアジアの平和の確保について、また一億国民の生活の向上と繁栄の手だてについて、ほんとうに独立の考えに立った政策とは何かということに、深く思いをひそめなければならぬときであります。国を思うこと深切でなければならないということの今日における核心はこの点にあるのであって、国防意識の高揚とか核アレルギーの解消を騒ぎ立てることは、政治の指導者としての見識、時代の流れに対するその感覚を疑わせる以外の何ものでもありません。(拍手)  総理は、一部学生の暴力を非難します。しかし、私たちはお互いに政治家なのであって、刑事でもなければ検察官でもありません。学生たちの行動と、それに対する国民一般の反応を含めて、それらのできごとの全体が物語る政治的意味合いを受けとめることこそ、政治家の任務でなければなりません。(拍手)昨年の羽田事件からさきの佐世保の事態に至る一連のできごとにひそむ深い政治的意味を、総理は、治安取り締まり官としてではなく、政治家として直視されなければなりません。  佐藤内閣の最近の政策、とりわけ日米会談をはさむここ半年ほどの政府の動きに、平和憲法の精神をいよいよ危うくするおそれを国民は感じています。民主主義と国民生活の安定を脅かすものを読み取っております。憲法は、国民一般の間の道義の感覚、正義の感覚の政治的表現であります。それに合致しない政治の指導者が、国民に法の順守を求め、愛国心を説き、青年の教育を語るのは、とほうもない偽善ではないでしょうか。(拍手)そうした偽善、あるいは、もっとはっきりいえば、うそないしはその場限りの出まかせは、いまや佐藤内閣の政治の最も大きな特徴になりつつあります。(拍手)その特徴が余すところなくあらわれているのが、安全保障及び沖縄返還の問題に対する政府の態度であり、核兵器を持たず持ち込ませないという、総理の施政方針演説における発言であります。  エンタープライズは、日本寄港にあたって核兵器を積んではいないと政府は言います。他方で、総理は、国民に核アレルギーからの脱却を求めて、おられます。エンタープライズが、第七艦隊核戦力の中核であり、常時核武装されていることは、世界の常識であります。(拍手)かねて、常識と現実の尊重を強調する政府が、アメリカの核配備に関する世界の常識に反した説明を国民に吹聴するのは、こっけいであり、子供だましであり、あるいは裸の王さまであります。(拍手)もし、エンタープライズが、核兵器をどこかに一時預けにしてきたというのが真実ならば、補給と休養に来たわけでもないと艦隊の責任者自身が説明しているのでありますから、この船は、一体何のために日本に来たのか、全く説明ができないのであります。政府は、目的も意義もはっきり説明できないことのために、佐世保に警官隊を大動員し、政治的不信を招く危険をおかしたのでしょうか。そうではありますまい。そうでなくとも人気のさっぱり上がらない総理が、取るに足らない目的のために、そのような政治的冒険をおかすはずはありません。  日本政府の意思に反して行動しないというアメリカの約束を信頼して間違いないと政府は言います。しかし、すでに幾つかの実例があるではありませんか。一九六〇年のU2型スパイ飛行機の事件に際し、アメリカ政府は、撃墜ののがれられない証拠をソ連から突きつけられるまでは、頑強に事実を否定していました。一九六四年八月のトンキン湾事件について、当のアメリカ国内に、最近になって再び、当時の公式発表に対する疑惑が表明され出したことは、総理も御存じだと思います。水爆を積んだアメリカのB52爆撃機が、さきごろデンマーク領で墜落事故を起立した事件は、最も新しい教訓であります。デンマークは、ノルウェーとともに、平時において、その領土内に核兵器を持ち込むこと、その領空を水爆パトロール機が飛ぶことをアメリカに許しておりません。アメリカは、デンマークの意思に反して、水爆搭載機を飛ばしていたのであります。  端的に申しましょう。エンタープライズが、核装備のまま佐世保にやってきたこと、この船の日本寄港が、日本本土に核兵器を持ち込ませないという政府のこれまでの政策のはっきりした変更を意味することは明白な事実だと私は思うのであります。(拍手)国民の多くもそう思っております。諸外国もまたそう思っているに違いありません。政府も、だからこそ佐世保の教訓にもこりずに、今後もエンタープライズの寄港を押し通すと意地になっておるのではないでしょうか。  つまり政府は、中国の核開発に対抗するアメリカの核戦略に日本を全面的に結びつけるという重大な道に踏み出したのであります。核兵器についてのこれまでの留保を一切取り払った日米安保体制強化の階段を登り始めたのであります。(拍手)  さらに、佐世保での記者会見で、艦隊の責任者が寄港の目的を聞かれて、第七艦隊に配属されているアノーカの艦船は、近くまで来たときには必ず日本に寄るのが慣例になっていると述べていることから考えてみても、西太平洋水域に配属されているポラリス潜水艦の日本寄港は時間の問題ではないでしょうか。いかに総理でも、核兵器をはずしたポラリス潜水艦などというお化けを発明するわけにはいきますまい。(拍手)  沖縄の返還も、アメリカの核兵器におおわれて暮らすことを、本土並びに沖縄の国民に受け入れさせていく方向で実現をはかろうというのが政府の態度であることは、さきの臨時国会や、訪米後の記者会見などにおける総理の発言に、すでに疑う余地もなくにじみ出ておるのではないでしょうか。施政方針演説において、「安全保障上の要請を踏まえつつ現実的な解決策を生み出すべく努力する」と言っておられるのも、そういう意味ではありませんか。  もしそれが政府の方針でありますならば、もし核兵器に対する歯どめをはずした日米安保体制が、日本の安全確保のためにも、沖縄の施政権回復のためにも、ほかに選択の余地のない最良の道だと総理が信じて疑われないならば、総理は何ゆえその信ずるところのありのままを国民に訴え、日米軍事協力の真実を告げて、国民の審判を求められないのでしょう。総理は、国の安全保障について国民的論議を起こすべきときだとしばしば言われますが、そのためにはまず政府が真実を告げなければなりません。(拍手)偽りの説明と、その陰に隠れて進められる既成事実の積み重ねのもとでは、国民的論議の公正は期待できないのであります。  ジョンソン大統領のベトナム政策をめぐって、アメリカの国民の間に大統領に対する信頼感のギャップ、つまり大統領の言うこととやることのはなはだしい食い違いに対する不信感ということがいわれておることは、総理も御承知だと思います。いま日本の国民の間にも、総理に対する信頼感のギャップが広がっていることに総理は気づいておられるでしょうか。もし総理が、佐藤内閣の進みつつある方向こそが国のため国民のため最も賢明な安全保障政策だと思われるならば、いたずらにことばをもてあそぶことをやめられて、アメリカ核戦略との完全な一体化なしには日本の安全を守ることができないのだと正直に言われなければなりません。(拍手)そのために日本の国民が何を支払わなければならないかを正直に言われなければなりません。その上であなた方と私たちとどちらの考え方が世界の大局、アジアの大局に沿った日本の真の安全と繁栄の道であるかを堂々と国民に問おうではありませんか。(拍手)  日本の安全にとっていま最大の問題は、ベトナム戦争であり、その背景をなすアメリカの中国敵視のアジア政策であります。北ベトナム爆撃のアメリカの飛行機は、中国国境からただの三十秒も離れていない目標を爆撃し、中国領空に侵入して撃墜された事件も、これまでにしばしば起こっております。昨年の秋、米中衝突の危険を警告した演説の中で、アメリカのマンスフィールド上院議員は、「アメリカは現在薄氷の上に立っている」と言いました。朝鮮半島の形勢は、エンタープライズの日本海出動など、極度に重大化しています。日本もまた薄氷の上に立たされております。日本が立たされておる薄い氷は、その地理的条件からいって、アメリカ以上に危険だといわなければなりません。(拍手)  こうした状況において、戦争を終わらせ、アジアの国際緊張を緩和することに役立つあらゆる努力を尽くすことこそ、国の安全に責任を負う政府の最高の責務でなければなりません。ところが総理は、ベトナム和平に努力すると語り、日本の安全を論じながら、アジアにおける破局の食いとめと緊張緩和の何らの具体的政策、何らの具体的行動をも明らかにされないではありませんか。プエブロの拿捕事件についても、公海上のできごとだというアメリカの一方的説明を支持しようとしておられるのではございませんか。日本を取り巻くアジア、極東の形勢が、今日のようにいちずに危機激化に向かっていては、日本がいかに深くアメリカの核保護のもとに入り込もうと、国民の福祉を犠牲にして防衛費をふやそうと、わが国の安全の度合いを高めるごとはいささかもできないどころか、かえって緊張激化の悪循環の中に日本を一そう深く入り込ませるだけであります。(拍手)  日本の安全確保にとって目下最大の急務は、一つはベトナム戦争を終わらせることであり、もう一つは中国との間の不自然な関係に終止符を打つことであります。  ベトナム和平の道を探求するための根本は、ベトナム人民自身の手に彼らの運命の決定をゆだねること、そしてベトナム人民以外のいかなる外部勢力もこれに干渉しないことにあります。三木外務大臣は、ベトナム人の自決に触れられましたが、同じ演説の中の北爆問題に関する見解は、自決の原理に矛盾しておるのではないでしょうか。ウ・タント国連事務総長は、昨年七月の演説において、ベトナム人民の抵抗運動の原動力は民族主義であると述べ、ベトナム人民がこの戦争を民族独立戦争として戦っているのであることを、アメリカとその同盟国が認識しない限り、戦争は終わらないと警告いたしました。アメリカは、いまだにそのことを認識しないようであります。あるいは、認識したがらないようであります。総理の特使として、かつて現地を視察した松本元駐英大使の報告は、早くからそのことを認識していたように思います。さすが練達の外交官であります。総理は、自分の特使の観察よりも、戦争当事者たるアメリカの大統領の主張のほうが正しいと考えておられるのでしょうか。(拍手)共産主義の侵略に戦争の源があると心から信じておられるのでしょうか。政府や自民党は、社会党の国際情勢に対する見方や外交政策を、イデオロギー的、観念的だと批判するのが常でありますが、ベトナム戦争をもっぱら共産主義の侵略という観点からとらえることこそ、ベトナムの現実から遊離した、イデオロギー的見方の最たるものといわなければならないのであります。(拍手)  アジアの一国として、日本がいまなさなければならないことは、そのような立場からアジア問題に対処することの根本的な誤りを、アメリカに直言することだと思います。ところが、総理はジョンソンのベトナム政策に全面支持を誓われたように国民の目には見えるのであります。そのことは、北爆に対する総理の態度にも示されています。北爆の無条件停止が、和平に至る最初の、そしてたった一つのきっかけであることは、いまや全世界の責任ある指導者の一致した考えであります。北ベトナム外相の最近の声明が伝えられてからは、なおさらそうであります。昨年の臨時国会で、総理は、わが党の勝間田委員長の質問に対する答弁の中で「私は、アメリカに対して、いわゆる北爆を支持するというような声明はしておりません。」と述べながら、それに続けて、ハノイの側にそれに見合う措置云々というジョンソン大統領の主張をそのままオウム返しにしておられます。一体、総理は、北爆問題についてのアメリカ政府の主張を支持しながら、同時に、ベトナム和平に、日本がアジアの平和愛好国にふさわしい国際的影響力を発揮する余地があると考えておられるのか。戦争は、南ベトナムの国境を越えて広がる様相を濃くしつつあります。この成り行きを総理はどう見通しておられるのでしょうか。また、外務大臣は、「日本がアメリカと関係の深い国であってしかも軍事的に圏外に立っている」と言われましたが、政府は、わが国がアメリカの戦争努力の圏外に立っておると思っておられるのか。ほんとうにそう信じ込んでいるとしたら、めくらであります。あるいは、耳をおおうて鈴を盗むのたぐいであります。(拍手)  ベトナム戦争は、日本の安全に脅威を及ぼすだけでなく、ドル防衛への協力の要求という形でわが国の経済にも圧迫を加えつつあります。三十五億ドル以上の昨年のアメリカ国際収支の赤字のうち、ベトナム戦争に原因する赤字が十五億ドルだといいます。戦争をやめさえすれば、アメリカの国際収支はたちどころに改善されるわけであります。戦争を続けたままのドル防衛への日本の協力は、国際通貨体制安定のための協力ではなくて、実はベトナム戦争政策への協力にほかなりません。(拍手)ドル不安の日本経済へのはね返りを解消し、円の地位を守るためにも、ベトナム戦争の一日も早い終結が日本自身の最高の利益になっているのであります。そして和平実現のためには、初めに言いましたように、問題の解決をベトナム人民自身の民族自決にゆだねるという、ただ一つの正しい出発点に日本政府が立たなければなりません。アメリカにそのことをわからせるよう、あらゆる努力を尽くさなければなりません。そうでなければ、三木外相の言われる相互保障方式の構想もただの思いつきにとどまり、日本がアメリカの誠意の保証人になるとした場合、不渡り手形に裏書きをするようなことになるだけであります。(拍手)  日中関係の正常化と両国共存の条件の確立は、日本の安全とアジアの平和のためのもう一つのかぎであります。施政方針演説が、中国に対する日本の政策についてただの一言、それもただ「これまでどおり政経分離の原則のもとに、」と述べているにすぎないことは驚くべきことであります。外務大臣の演説にも政策らしいものは何もありません。これでは、日本政府がまじめに日中関係の改善を志していると人にわからせるのは無理であります。  中国に共存の姿勢を求めるならば、それにふさわしい政策をこちら側が、ことばではなく、具体的行動を通じて相手方に示すべきであります。共存の意思を具体的に裏づけるために、日本政府は、最小限度、中国の国連代表権問題について、アメリカとともに重要事項指定決議案の提案国になることをやめて、国連の世界的普遍性を取り戻すことに努力をすべきであります。(拍手)政府はまた、輸出信用について中国に対する差別待遇をやめなければなりません。台湾との関係あるいはベトナム戦争下のアメリカに対する遠慮などの政治的理由による現在の差別待遇は、政府のいろ政経分離のたてまえにも、そもそも反するではありませんか。(拍手)日本がこうした具体的行動によって、国交正常化への一貫した熱意と共存の身がまえを示し出したときに、初めて先方からしかるべき反応を期待することができるのであります。(拍手)  ベトナム戦争その他アジアの問題はもとより、核及び一般軍縮、その他世界のあらゆる重要問題について、中国の参加しない効果的な協定は何一つ考えられない以上、日中関係改善はわが国安全保障政策の最も優先的な課題だといめなければなりません。政府や自民党は、中国の核兵器の脅威についてしきりに国民の注意を喚起しますが、それならばなおさらのこと、正常な関係の実現を急がなければならない道理ではありませんか。中国が核開発に乗り出すはるか以前から、日本はソ連のはるかに巨大な核軍備と隣合って暮らしております。これに国民が深刻な脅威を抱かない一つの大きな理由は、いまはなき鳩山総理の識見と勇気によって日ソ関係が正常化され、お互いの理解が深められてきたからではないでしょうか。  中国の核兵器に対して、日本が、アメリカの、あるいは自分の核兵器をもって対抗することは、極東における際限のない核軍備競争を引き起こすのに役立つだけで、国民の感ずる脅威は少しもなくなるどころではありません。たとえ日本の周辺に迎撃ミサイルの網を張りめぐらしたところで、日本の置かれた位置からいって、その効果を期待することはできず、ただアメリカの防衛に奉仕するにすぎません。アメリカは昨年九月、中国の核兵器を対象とするいわゆる薄い迎撃ミサイル網をつくることを決定いたしましたが、もしアメリカ自身がそれほどに中国の核兵器をおそれているのだとしたら、そのアメリカにたよった日本に、どんな効果的な防衛の手だてがあるというのでしょうか。核兵器に対して核兵器で防衛しようというのは、奇跡を望むにひとしいことであって、核時代における真の安全は、平和そのものの中にしかあり得ません。  核開発が進むについて、核兵器に対する中国指導者の態度も次第に慎重になってきた確かなきざしが見られます。中国人だけが核戦争に生き延びて、廃墟の上に新しい文明を築くことができるというような発言は、もはや聞かれなくなったのであります。中国は、自分のほうから先に核兵器を使うことは絶対にないと、繰り返し保証しています。そのことの意味を私たちは正当に評価しなければならぬと思うのであります。(拍手)  総理は日本人のいわゆる核アレルギーを治療したがっていますが、原子力の平和利用に関する限り、原子力開発が基本法の定める平和利用、公開、民主の三原則にのっとって進められる限り、国民の間に総理の心配されるような核アレルギーはないのであります。国民が絶対に是認できないとしているのは軍事利用であって、これに対する抵抗反応は、どんなに敏感であっても敏感過ぎるということはありません。国民は、政府の唱える原子力の平和利用が、やがて軍事利用にすりかえられるだろうとおそれておるのであります。(拍手)核兵器に対するわが国民の絶対否認の感覚こそ、人間として最も正常な感覚であります。(拍手)  日本の安全保障政策は、この感覚と、そして平和憲法の原理の上に立てられなければなりません。この足場の上に、アジアにおける緊急緩和への一貫した努力を積み重ねていくことが、日本の安全を確保する最良の道であり、最も現実的な方策であります。それこそはまた、沖縄支配の継続を正当化するアメリカの口実を打ち破り、九十万人の日本人を日本国憲法のもとに復帰せしめる最も確かで、最も早い道筋であります。  政府・自民党は、社会党の非武装中立の政策を非現実的だと批評し、一片の中立声明を出すことで国の安全が守れると思い込んでいる空想論だと申します。自衛隊を一挙に解体できると主張する無責任なおしゃべりだとも言います。だが私たちは、政府や自民党が宣伝したがっているたぐいの現実無視の夢想家ではありません。あなた方の言う現実主義は夢を見ることもできないほど老い果てて、干からびているのに対して、私たちの現実認識は絶えず夢を見る若さに満ちておるのであります。(拍手)  私たちは、安保条約をやめるにあたって、アメリカに対し、それが日本の安全にも、極東の平和にも、さらには日米両国民の真の友好のためにも有害であり、アジアにおける民族自決と社会変革の現実に逆行するものであると、粘り強い交渉を始めます。アジアにおける緊張緩和のため、関係国が相互に独立を尊重し、平和的に共存できる不可侵条約その他あらゆる可能な政策の実現につとめます。日本の核非武装を宣言し、志を同じくするすべての国と非核クラブ、非核武装地帯などの実現を目ざして協力を深め、核保有国をして、非保有国に対する核兵器の使用またはおどしを行なわないことを、個別にもしくは集団的に誓約させ、また核兵器実験の全面禁止、核兵器使用の禁止など、核軍縮への一連の努力を強めるでしょう。国連を真に普遍的な国際機関とすることに貢献するのと並行して、その平和維持活動に対しても、憲法の精神と規定にのっとったやり方で、効果的な協力につとめるでしょう。不要になる防衛費負担の相当部分をアジアの新興諸国の経済発展に役立てることによって、イデオロギーに左右されない、ほんとうの相互理解と友好協力の雰囲気を、日本のまわりにつくり出すことにつとめるでしょう。  私たちの主張する非武装中立の日本とは、いわばそうした多面的な努力の総合が到達すべき目標であって、それらの努力なしに、一片の中立声明だけでそれを手に入れることができると思うほど、私たちは空想論者ではありません。  自民党政府の安全保障政策なるものは、日本を取り巻く国際関係の現実に対する、日本の独立の認識に基づくものではありません。それは現実ではなく、単なる既成事実の次から次への積み重ねの上にふくれ上がってきた雪だるまにすぎません。日本がいま抜け出さなければならないのは、総理の言う核アレルギーからではなく、この既成事実の慢性中毒症からだと私は言いたいのであります。(拍手)  もし総理が、本心から、核兵器をつくらず持たず持ち込ませないという国民総意の上に立つ政策を忠実に守っていくと言われるのならば、少なくとも総理の率いる自民党が、今国会における非核武装決議その他同趣旨の提案に反対するなどということは、よもやあるはずがないと思いますが、(拍手)そのことを総理は保証できますか。エンタープライズが核兵器を積んでいなかったという証拠、確信ではなしに証拠を国民の前に示すことができますか。沖縄の返還は核兵器と関係のない問題であると言明できますか。  総理に対する信頼感のギャップは、内政問題についてもいよいよ著しいものがあります。社会開発は佐藤内閣の表看板であったはずでありますが、明年度予算の政府案に示されているように、いまやその看板さえはずされてしまった感があります。一世帯一住宅の五カ年計画は、三年目を終わる明年度中に、達成率が五割に満たないことになっております。残る最後の二年間に、はたしてどれだけのことができるでしょうか。質も量も不足の住宅予算であります。社会保障、生活環境整備その他国民生活の安定に直接かかわる分野は軒並み足踏みであるのに加えて、間接税の増税や各種公共料金の値上げが予定されております。総理が政治の指導性を一番発揮しておられるのは、まさに物価引き上げにおいてであります。(拍手)  これと対照的に、防衛予算は今年度に対して明年度は一〇%をこえる増加率で、予算編成方針の中で、防衛費が重要項目の一つに数え上げられたのは、まさに十一年ぶりのことであります。歩行者優先の政治などと、かつて総理は国民を喜ばせるような標語を宣伝されたことがありますが、歩行者とは歩兵のことをいうのでありましょうか。  勤労者の生活に負担を重くする言いわけに、政府は財政の硬直化ということをしきりに言いますが、いわゆる財政の硬直化なるものはひとりでに生じたものではありません。たとえば、農地報償や、在外資産補償におおばんぶるまいをするがごとき、もし必要があれば、社会保障の全体的な計画の中で処理されなければならない事項を、そうした全体の計画と関係なく、財政の長期的な見通しにも考慮を払われないで、もっぱら自民党の票田維持の方便として、国費の乱費を続けてきたことが大きな原因になっておるのであります。(拍手)国の補助金行政に見られるように、中央官庁のなわ張りを維持する手段でしかなくなっているこのからくりを、自民党が選挙地盤培養のためにこれに便乗して、各省の間の予算ぶんどりに拍車をかけてきたことが大きな原因になっておるのであります。目新しい事業計画が次から次に考え出され、予算をふくらますだけであって、その効率的な使い方や、事業そのものの効果の度合いにはほとんど関心を払わない行政の無責任体制に大きな原因があるのであります。(拍手)  こうしたそもそもの原因にメスを入れることなしには、問題は何一つ解決するはずはないのであります。解決どころか、硬直化是正の予算と称しながら、どたんばになって恩給増額をむしり取るとは一体どういう神経なのでしょう。  都市の過密、農村の過疎を一般的にいわれる数々の問題について、根本が正されないのでは解決は不可能であります。解決の最小限の条件は、一つには、なわ張り主義と権限の温存に閉じこもる官僚機構、行政機構のつくり直しです。二番目には、強い政治の指導力です。そうして三番目は、国民の多数の利益を反映し、もっぱら社会的、公共的見地に貫かれた計画の確立です。少なくともこれらの条件が整わない限り、解決は望めません。そのことは土地問題にはっきりあらわれております。物価問題懇談会は、すでに、土地の公共性という大原則に立った一連の具体策を政府に勧告しておりますが、政府の都市三法案には、それは全然反映されておりません。施政方針演説で、総理は、公共優先の観点から土地問題を再検討すべきだと言っておられますが、それは一体政府の政策なのか、感想なのか、夢なのか、それともため息なのかと言いたいのであります。(拍手)  このように、国民生活にかかわる差し迫った問題についても、総理の言うことは、実行の裏づけのない、ただのことばだけであります。政府は広告会社ではないのでありますから、総理がキャッチフレーズのくふうにうき身をやつすのは、商売を間違えておるといわなければなりません。(拍手)広告会社でも、近ごろは誇大広告の取り締まりが多少やかましいのです。(拍手)まして総理は政治家なのでありますから、実際に問題を解決してみせなければなりません。解決の確実な希望を国民に与えなければなりません。社会の連帯や国を愛する心は、そうしたまじめな、希望のある政治と、それへの国民の民主的な参加を通じて、おのずから生まれてくるのであって、民族精神とか、国家意識とかの空疎な説教によって突然出てくるものではありません。(拍手)  総理は、明治百年を強調し、これからの百年に思いをいたされるそうでありますが、これからの一年あるいは五年のことさえもじみちに取り組めないで、どうして百年の計を語ることができるでしょうか。(拍手)きょうの問題を解決できないでは、自民党は明治百年の追憶の党と化し、有権者の七割が昭和生まれで占められつつある現代の日本の政治を語る資格を全く失うのではないでしょうか。  総理は、「民族の理想として、国際社会における名誉ある地位を占めることを念願している」と言われます。本末転倒ではないでしょうか。この国土に、日本民族のどういう共同社会を築いていくべきか。その理想とそれに至る具体的な道筋を明らかにするのがまず先決であって、それによっておのずから国際的尊敬をかちうるというのが、ものの順序ではないでしょうか。(拍手)そういう具体的な内容がない、総理のいわゆる民族の理想なるものは、結局世界の列強に連なるという富国強兵の夢の再現ではありませんか。  外務大臣は、過去において日本が自給自足経済を試み、あるいは大陸国家たらんとしたときは失敗だったと述べ、これを歴史のとうとい教訓としておられます。つけ加えたいのは、うわついた中身のない民族意識や大国主義の鼓吹が、政府の指導者によって行なわれたときも失敗でありました。(拍手)政府が治安体制の強化を政治の中心に据えたり、教育やマスコミ機関に対する権力的干渉を意図したときも失敗でありました。(拍手)すべて歴史のとうとい教訓であります。明治百年の教訓であります。  総理の施政方針演説は、私の聞いたところ、また、おそらく国民大多数の印象では、単なることばの継ぎはぎの域を出ません。総理が取り上げたような問題の項目があることは、国民はみな知っています。それをどう解決したらよいかを悩んでいます。そして、政治の責任者の具体的な答えを求めておるのであります。施政方針演説をもう一度やり直されるおつもりで、私の提起したすべての問題について総理のはっきりした考え方を聞かしてほしいと思います。社会党の言うことは具体性がないとあなたは好んで言われます。総理の言うことに現実性があり、具体性があることを、とくと見せていただきたいのであります。(拍手)  もう一度申します。日本が敗戦の犠牲でかちえた憲法を羅針盤として、平和と繁栄の道を進むのか、大きなあやまちを犯した富国強兵の夢を捨て切らないで、ついに核安保の階段を登るのか、いま日本は、運命の岐路に立たされておると思います。(拍手)   〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕

佐藤榮作自由民主党内閣総理大臣

○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 江田君にお答えいたします。  私の演説に対する御批判と、並びに御意見を詳細に述べられました。私がお答えを必要としない面もあるようであります。それらの点を勘案いたしまして、私がお答えしなければならないと、かように感じました点をお答えいたしたいと思います。  まず第一、日米協力関係ということについて御批判がございました。私はもうすでに御承知のことだと思いますが、日本は、戦争に負けてからいわゆる平和国家として出発いたしました。他国に対して脅威を与えない、また、攻撃的な兵器も持たない、いわゆる平和国家として日本は世界において主要なる地位を占めたい、これが私どもの念願であります。  ところが、現実の問題で見ますると、平和憲法で認めております自衛権そのものはありますけれど、国際情勢はさようになまやさしいものではございません。私どもは、きびしい国際環境下にありまして、この国の安全を確保するという問題があるわけであります。社会党の諸君は、しばしば口を開けば中立主義を唱えられます。そうして一切装備をしないという、こういうのが社会党のお考えであります。各国がさような状況になれば、それはそのときにおいてそれも役立つでございましょう。  しかし、現実はさようななまやさしいものではない。私どもは、あらゆる場合においてこの国の安全を確保する、そのために、ただいま日米安全保障条約を締結しておる、このことは御承知のとおりであります。そうして日米安全保障条約、これを築きましたのは、アメリカの軍備だけが、私どもはたよりになるというわけではありません。アメリカ自身が、世界の平和、繁栄について私どもと同じような考え方を持っておる。ここに日米両国のパートナーシップができ上がるのであります。私は、この関係において日米間の関係を十分見ていただきたいと思います。  福澤先生が好んで引用されました、独立の気力なき者は国を思うこと深切ならずと言われた。これは明治初年においての発言でございます。その時分のわが国の力、これは御想像になればおわかりだと思います。開国したばかりの日本であります。そのときに、独立の気力なき者は国を思うこと深切ならずと喝破されたのであります。私はここが大事だと思います。国家あるいは国防、こういうことが戦後においては禁句になって、そんなことは使われない。これを使えば何か反動であるというような批判を受けたものであります。しかし、ただいまは、こういうことも皆さん方も快く聞いてくださる、そういう時代に変わっております。  私は、いまの福澤先生のこのことばを思い起こすのであります。政府が、あるいは条約がいかにできましても、それだけで国の安全は確保されるわけではありません。国防のもとはやはり人なんだ、国民なんだ。そうして、その国民がその国を愛するという、独立さすという、他人にたよらないという、そういう気持ちになって初めてりっぱな国ができるのであります。(拍手)  私が、ただ他人にたよらない、かように申しまして、誤解を受けては困るのであります。いま日米協力では、軍事的にはいわゆる米国の軍事力、ことに核のかさのもとに日本の安全が確保されておるということでありますから、これは全部他人にたよらないというものではありません。しかし、私どもは憲法で、この日本の国は平和国家として出ていこう、そうして核兵器は、あの苦い経験から再び持たない、持ち込みもしない、製造はもちろんしない、かように決したのであります。こういう状態のもとにおいて、この国の安全を確保しようという、そのために、同じ思いをしておるアメリカと提携する、これが一体何で間違いでありましょう。(拍手)この点では、日米協力体制、これをもっと強めることこそ、国民の期待するものであります。  御承知のように、日米安全保障条約が締結された際に、これは日本を戦争へ導くものだ、必ず戦争に巻き込まれるものだ、今日もなお同じような議論をしておられます。しかし、戦後二十数年、日本が繁栄への道をたどり得たもの、これは日米安全保障条約のたまものであります。(拍手)私どもは、国民大多数がこの体制が望ましい、かように支持しておりますので、この安全保障体制を維持していくこと、このことをはっきりこの機会に申し上げておきます。(拍手)  次に、ドルの危機についていろいろお話がございました。江田君も御承知のように、いまアメリカと日本との関係におきましては、貿易の約三割、輸出入ともアメリカと貿易をいたしております。アメリカから資材も買いますが、同時に、日本製品がアメリカに喜ばれておる、こういう関係であります。したがいまして、この状態は、私どももその重要さを忘れるわけにはまいりません。もちろん、日本はアメリカだけと貿易をしておるわけではありませんから、その他の地域につきましても、十分考えまして拡大強化をはかっていきますが、ただいまの、ドル危機云々からアメリカと貿易をすることが非常な危険であるという、この考え方は当たらないということを申し上げたいのであります。(拍手)  次に、最近起こりました一部学生の暴力の問題についてお答えをいたします。この点では江田君も同じ政治家だ、佐藤も同じ政治家ではないか、そうすると、同じ立場でものごとを考えたらどうだという御注意であります。たいへん違う点があるのであります。私は、ただいま政局を担当して、総理であります。野党の領袖である江田君とは、立場が違います。私は、暴力行為で社会秩序が破壊されるのを見過ごすわけにはまいりません。(拍手)政局を担当する以上、国民のために社会秩序を確保すること、これは私が警察権を使おうが、そういうことは当然のことである。これこそ私に課せられた職務なのです。これをやらないで総理はつとまらない、このことをはっきり申し上げます。(拍手)しかし、御指摘になりましたように、あの種の行為が行なわれたこと、その背景を十分考えたらどうだ、そういうことがございますが、この点は私も江田君と同じ考え方を持っております。かような事態について、政治家はこれをただ取り締まるだけが能ではございません。よくその意味合いを考える、これは私どもがとらなければならないことでございます。  次は、航空母艦エンタープライズの入港についての、いろいろのお話がございました。大事なことは、航空母艦が、日米安全保障条約に基づいて、そして入港した。そこで、いままで主として問題になりました点は、原子力が推進力であるために海水が汚濁されるのではないかということでございます。これは昨年の夏以来科学的調査をいたしまして、さような危険はない、これは他の潜水艦の場合においても同様である、その危険はないということがはっきりいたしました。そうすると、今回問題になりましたのは、ただいまのお話にもありましたが、核武装をしておるかしておらないか、核の持ち込みを許さないといった日本政府の方針がこれによって曲げられるのではないか、あるいは日本が核武装をするのではないか、こういう御心配のようであります。私は、江田君もよく御記憶だと思いますが、この席でしばしばはっきり申し上げておりますが、日本は核を製造もしないし、持たないし、持ち込みも許さない、これは日本のはっきりした態度であります。そこで、かような状態はアメリカ側にもよく伝えられております。安全保障条約では、いわゆる事前協議を必要とする事項がきめられております。その一つは、重要なる装備の変更、いわば核兵器、核武装する、こういうようなことは装備の重要なる変更でありますから、この持ち込み等について、事実があればこれは事前協議の対象になるわけであります。私どもは、日本としてこの点は、持ち込みはいけないということをはっきり申しております。また、アメリカ自身も、日本の政府の意思に反した行動はとらないという約束をしておるのであります。したがいまして、ただいまのこの心配は一切ないのであります。(拍手)したがいまして、私はこの種の事柄をはっきり申し上げまして、そうして、疑うのもいいかげんにされたらどうか、かように私は申し上げるのであります。(拍手)  次に、安保条約から、日本はアメリカの核戦略の片棒をかつぐのではないかというお話がございました。これはとんでもない詭弁でございまして、日本はなるほど、アメリカの核の抑止力、これはたよりにいたします。しかし、日本自身が核兵器を製造せず、核を持たないし、持ち込みも許さない、こういう立場でございますから、いわゆるアメリカの核戦略の片棒をかつぐというものではございません。私どもは、これははっきり社会党の諸君にも理解していただきたい、せつ然と分けていただきたい事柄でございます。  そこで、この核についてのお話でありますが、一言触れられましたように、平和利用についてはこれを進めると言われる。これはもう申し上げるまでもなく、原子力基本法が制定されております。これは社会党の皆さんからも賛成を得たものであります。そして問題になりますのは、核兵器と核の平和利用、これをせつ然と観念的にも分け、実際にも区別するということがいま行なわれておらないということであります。とにかく何としても、この平和利用の核、同時に核エネルギー、また核兵器そのものとを結びつけて、そして政府を攻撃する、あるいはエンタープライズが入ってくれば、そういう機会にこそこれを混同した議論をする、そういうことを盛んにやっておられる。先ほど誇大広告を非難されましたが、社会党の皆さんにこのことばは返上しておきます。(拍手)  次に、中共問題についてお話をいたします。中共問題については、日本の態度は何ら変わっておりません。したがいまして、この際、特に声を大にして申し上げることはないように思います。私どもは、いつも、平和を愛好する国、相互に独立を尊重し、お互いに内政に干渉しないというその立場で共存していこう、これが日本の考え方であります。だから政経分離の形で経済的に、あるいは文化的な交流をしようというのが今日の態度であります。これについて、これは国民もよく承知しておりますが、私は中共自身を非難するわけではありませんが、いかにも中共のあり方は共存の考え方でないというような非難をただいま一般にされておる。こういう点が改正されればたいへん仲よくなれるのではないか、私はかように思います。(拍手)  また、ベトナムの北爆についてのいろいろの御批判がございました。北爆支持をしておるのではないかということでありますが、私どもは、北爆の戦争がエスカレートすること、これはもう絶対に反対であります。一日も早く平和が招来されること、したがいまして、そういう意味において、この北爆自身を支持する、そういうような簡単なものでないこと、これを御理解いただきたいのであります。私どもは、一日も早くここに平和が招来される、そのために北爆もやめる、浸透もやめる、こういうことでお互いに平和の話の場につく、これが必要なのでございます。(「浸透はどっちだ」と呼ぶ者あり)浸透は北からの浸透であります。  以上の点を申し上げまして、いわゆる社会党のかねてから主張されておる非武装中立宣言というものは、私はこれは空想ではないかと思います。したがいまして、もっと現実に即したことをやっていただく。私は総理として、一番大事なことは、現実問題をいかに処理するかということであります。お話のうちにも、どうも総理は十分それらの点について考えがないようだが、もっと現実の問題と取り組めという御注意がございました。このことは私ばかりじゃありません。社会党におきましても十分考えられまして、現実の問題と取り組んで初めて社会党もりっぱな国民政党になれるのではないかと、かように、よけいなことですが、申し上げておきます。(拍手)  次に、エンタープライズの核兵器を備えておらないという確証を出せということ、これは先ほど申したので、私はこれを疑うことは、これは話の筋が違う、かように思います。  次に、沖縄の返還と核装備のお話がございました。  沖縄の返還、祖国復帰、これは沖縄同胞百万ばかりではございません。わが日本国民のほんとうの血の願いであります。そういう意味におきまして、私は、まず沖縄の祖国復帰、これを考えることが、今日私に課せられた責務だ、かように考えております。そういう意味であらゆるくふうをいたし、ジョンソン大統領と話し合って、ようやく両三年のうちに復帰のめどをつける交渉をしようというところまでなりましたので、そういう際に十分外交交渉をいたしまして、沖縄の方々の輿望にこたえるようにいたしたいものだと思います。  そこで、問題の沖縄の基地の問題であります。この前の臨時国会でも申しましたように、この沖縄の軍基地については、私はまだ考えがまとまってないということを申し上げました。今日も同じ考え方でこの問題と取り組んでおります。申し上げるまでもなく、ただいまの祖国復帰、これにまず力をいたすことであります。そうして、ただいまの問題と国民の動向、世論の動向等を勘案いたしまして最終的に決定すればいいことだ、かように考えております。  次に、核非武装の決議の問題であります。私は、もう御承知のように、施政方針演説でもその前にも、しばしばいわゆる三原則なるものを発表しております。したがいまして、私はこの際、この機会に国会においてかような決議をされる必要はないように思っております。私はそういう意味で反対であります。はっきり申し上げておきます。  次に、社会開発の問題についていろいろお尋ねがございました。これはいずれ予算委員会等におきまして詳細に申し上げるつもりでございますが、ただいま御指摘になりましたように、たいへん予算の硬直した状態で、予算編成も骨の折れた状態であります。しかしながら、私は、いわゆる社会保障や社会資本の充実等につきましては、十分気をつけたつもりであります。ことに中小企業、その他学童あるいは児童、老人福祉等についてもこまかな注意をいたしたつもりであります。ことに私、金額はわずかでありますが、皆さんとともどもに、原爆被爆者の援護の制度がはっきりきまりましたことなどは、これは国民にも喜んでいただくつもりでございます。  また、最後の問題として、いろいろお話がございましたが、この民族の理想ということについては、これは主として江田君のお話を聞いた、かように御了承をいただきたい。(拍手)     —————————————

石井光次郎自由民主党議長

○議長(石井光次郎君) 大平正芳君。   〔大平正芳君登壇〕

大平正芳自由民主党

○大平正芳君 私は、自由民主党を代表いたしまして、わが国が当面せる若干の重要問題につきまして、政府の所信をただしたいと思います。  まず、核政策についてお尋ねいたします。  私は、核エネルギーの利用とその制御の問題が、好むと好まざるにかかわらず、これからの政治が取り組まねばならない最大の課題になるであろうと考えます。現実の政治が直接間接すでに核の影響下にあります。総理も、「今日の核時代をいかに生くべきかということがすべての国に共通した課題である」と言われております。そこで、まず、この問題との取り組み方を中心に政府の考えを伺いたいと思います。  現にわが国は、与野党の一致した支持を得て、核エネルギーの平和利用を進め、原子力発電はすでに実用化の域に達しております。原子力商船の建造もいよいよ着工の段階に立ち至りました。放射線の利用も、医学、農業、工業その他広範な分野にわたって着々成果をおさめつつあります。原子炉の基数は世界第六位に位し、原子力関係の技術者の数は実に一万人に達しております。かくて、核エネルギーの平和利用の推進が、わが国の科学技術水準の向上、産業構造の高度化、国民福祉の増進に大きく貢献することが期待されております。  一方、わが国は、核エネルギーの軍事利用、さらには核兵器の軍拡競争という愚かなゲームに参加することなく、核兵器の製造、運搬のみならず、その持ち込みをさえ認めないというきびしい政策を、これまた与野党の一致した支持を得て堅持してまいりました。一方、部分的核爆発禁止条約には、共産党を除く各党の同調を得て参加いたしております。近く成案が期待されておりまする核拡散防止条約の早期締結につきましても、各党の間に大きい見解の相違は見られないようであります。世上、日本の与党と野党が、特に外交と防衛の問題で常に相交わることのない平行線をたどっておるとして、これを憂うる向きがあります。しかし、現代の最も大きい問題である核政策について、ほとんど完全に近い一致を見るに至っておりますることは注目に値することであります。(拍手)  ところが、核政策の堅持とその運用に、はたして各党一致の確信と積極性があるかと申しますと、直ちにそのようには受け取れない節があります。政府は、しばしば、核兵器の持ち込みを認めないという方針を明らかにしております。それを支持し、激励することこそが、みずからの信奉する核政策に沿った当然の態度であると思いますが、(拍手)それとは逆に、政府はひそかにその持ち込みを黙認しようとしておるかのように宣伝し、国民の不安をいわれなくかき立てておる動きが見られますることは、日本にとってまことに不幸なことであります。(拍手)与野党の間の論戦も、その底におきまして、そのような最も基本的なことに信頼を欠くようでは、いつまでもあげ足とりに終始し、ついに不毛に終わることを私はおそれるものであります。(拍手)また、核に関する知識の摂取に対して、核兵器反対に向けられると同様の関心と情熱が示されておるようには思われないことも、日本の核政策の前進にとりまして残念に思われてなりません。(拍手)  核エネルギーにはそれ自体の論理があります。その利用には無限の原野が残されております。核兵器の体系も日進月歩であります。このことに無関心であってはならないと思います。また、われわれはいま、核時代の入り口に入ったばかりであります。今日までの乏しい知識と経験で、核政策全般についての抜き差しならない速成の結論を急ぐことを十分戒めてかかる謙虚さが必要であると思います。(拍手)われわれは、核の研究、開発にはどん欲でなければなりません。そうしなければ、核エネルギーを有効にコントロールできるはずはないからであります。(拍手)同時に、核兵器の取り扱いにはあくまでも慎重でなければなりません。いな、その廃棄を目ざして、核軍縮その他の国際的な協調に積極的に参加してまいらなければなりません。そのためにも、わが国の核に関する知識は、高い水準のものでなければならないと信ずるものであります。(拍手)  もとより、日本は史上唯一の被爆国であり、核の攻撃に対しきわめてもろい地政学的立場にあります。核に対する憎悪と恐怖、すなわち、いわゆる核アレルギーの感情が、他国に比し格段に強いものであることは理解することができます。しかし、それだからといって、核に対する知識の摂取に、日本がアレルギー的であってよい道理はないと思います。  最近、米国の空母エンタープライズが佐世保に寄港いたしました。この寄港をめぐって展開された反対運動は、今後とも周到な診断と解明を要する運動でありました。ただ、かかる運動をささえた要因の一つに、この寄港が、米国による日本の核基地化に通ずるものではないかという素朴な不安と、核に対する潜在的な恐怖があったように思います。もし、そうだとすれば、このことは、相互信頼に根ざした日米関係の実体に対する理解と、政府が堅持し、野党も支持する日本の核政策が、いまなお国民の間に定着するに至っていないことを示すものであると思います。  私は、この際、政府に対し、不退転の決意をもって、日米関係と日本の核政策に対する国民の理解を深められるよう、いま一段の努力を要請するものであります。(拍手)また、総理も言われますように、核時代におけるわが国の威信を高め、平和への発言権を確保し、国際社会に建設的な提言を行なうために、核に対する知識の摂取とその水準の向上をはかるため、一そう積極的に施策せられるよう政府に要求するものであります。総理の御決意のほどを承りたいと思います。(拍手)  次に、当面の沖縄問題についてお尋ねいたします。  この問題につきましては、前国会において、愛知揆一君より詳細な質疑がありましたので、私は、補足的に一、二の点にしぼってお尋ねいたします。  これまで米国は、沖縄が日本領土の一部であり、究極的には日本に返すという公約を掲げつつも、その返還の時期は、アジアの情勢が緩和を見てからだと言い続けてきました。したがって、従来の沖縄政策は、日米協力による沖縄の民生福祉の向上に重点が置かれ、施政権の返還問題は、公の議題にはならなかったのであります。しかるに、その後、沖縄現地におきましてはもとより、  昭和四十三年一月三十日衆議院会議録第三号日本本土におきましても、アジアの情勢いかんにかかわらず、施政権の早期返還実現の声が異常な高まりを見せてまいりました。これにこたえて佐藤総理の沖縄訪問となり、「沖縄の復帰なくして日本の戦後は終わらない」という歴史的声明となったのであります。(拍手)  総理、私は、あなたの悲壮な決意をよく理解することができます。また、この問題にまっこうから取り組み、これを昨秋の日米首脳会談における主要議題にまでのぼせたあなたの決意を、十分評価するものであります。その結果、沖縄の施政権を返還するという基本方針のもとに、日米間で沖縄の地位について共同かつ継続的な協議を行なうということが合意されました。それは確かに大きい前進でありました。  ところが、この合意に対し、国民の一部に強い不満が見られます。しかし、それは沖縄問題に対する理解の不足によるもののように私には思われます。何となれば、アジアの緊張緩和を待つことなく施政権の返還を実現するためには、とりわけ沖縄における米軍基地の処理につき、日米両国の間で合意がなければならないからであります。しかもそのことは、安保条約はもとより、日本の堅持する核政策との関連において多くの問題を提起することになるからであります。  はたせるかな、その後における沖縄問題討議の中心は、安保条約と核政策に集中しております。だから私は、総理の昨年来の努力の成果は、沖縄問題の討議をその中核的な問題点に誘導したところにあると考えるものであります。その結果、野党の間においても、沖縄の米軍基地が、日本本土におけるそれと同様のものである限りにおいては、沖縄の本土復帰実現のため、あえてこれを認めようとする空気が出てまいりました。私は、このことによって沖縄問題処理の底辺がすでにでき上がりつつあるものと考えるものであります。  これからの問題は、総理がしばしば言明されておるように、アジアの緊張を前にしての沖縄における米軍基地の機能と、日本の核政策並びに安保条約との関係をどの次元において調和させるかに帰着すると思います。そうしてこの問題は、いうところの国民的合意とアメリカ側の理解ある譲歩がなければ、真の解決には至り得ないものであります。われわれは、もとよりその早期解決を希求するものではありますが、拙速であってはならないと思います。何となれば、沖縄問題の解決は、単に施政権の返還をもって終わるものではなく、沖縄の永続的な安定と繁栄を保障するものでなければならないからであります。(拍手)  この問題の解決は容易ならぬ問題であると思います。しかしながら、同時に、それは決して不可能のものではないと私は考えます。客観情勢は、静かではあるが、解決への方向に漸次熟しつつあると考えられるからであります。(拍手)  第一に、核兵器を含めて近代兵器の体系は日進月歩であります。ビッグリフト、すなわち大軍の短期移動も現実のものとなりつつあります。したがって、陸上基地の効用に変化の徴候が見られつつあるように思われるからであります。  第二に、野党の立場であります。沖縄復帰の願望は、党派を越えた、民族の血の要求であります。その悲願達成のためには、野党各派が、その従来の主張を、可能な限り緩和する雅量を示すことが期待できるように思われるからであります。(拍手)  第三に、米国の立場であります。日本との友好関係維持は、米国にとってもその貴重な国益であります。日本との間の政治的摩擦を極力避け、沖縄問題解決のために相当の対価を支払うごとが、アメリカにとっても賢明であるように考えられるからであります。  総理、あなたは復帰の際における基地の地位につき用心深く言明を避けておられます。しかし、政府は、近く沖縄問題につき、外交折衝に移られるとのことです。私はもとより政府による精力的な外交の展開を望みますが、それ以上に大切なことは、政府がしんぼう強く沖縄問題に対する国民の理解を深めることに努力を傾けることであると思います。そのために政府は、外交折衝に支障のない限り、進んでその苦悶するところ、その構想するところを国民に示し、沖縄問題の討議の実質的な前進を促し、その本格的解決に資すべきであると思います。総理並びに外務大臣の御所見をお伺いいたします。  次に、安全保障の問題についてお尋ねいたします。  近来、日本の安全保障の問題が院の内外を通じて活発に論議される傾きが見られます。政府においても防衛意識の高揚、ないしは国防教育の問題を取り上げられております。戦時中は平和を論ずることが禁句であり、戦後においては軍事力に論及することがタブーとされておりました。そのいずれの態度も健全であるとは言えないと思います。その意味におきまして、私は、最近における防衛論議の傾向を歓迎すべきものと考えます。  しかし、問題は、安全保障の問題をどういうベースにおいて取り上げるかにあると思います。防衛という以上、防衛すべき客体がはっきり把握されていなければなりません。そうすれば、それに必要な手段の組み立てが可能になるからであります。  私は、端的に申しまして、日本の安全保障の根本をつちかうものは、日本を守るに値する国家に仕上げる努力であると思います。(拍手)そのためには、日本の民主政治が秩序正しく運営され、日本の社会秩序が健全に維持され、経済や文化の営みが活力に満ちたものでなければなりません。総理も言われるように、戦後の日本は焦土から立ち上がって奇跡的な復興を遂げ、世界有数の工業国にまで発展いたしました。高い技術力とすぐれた労働力に象徴される旺盛なエネルギーは、われわれの大きい財産であります。教育水準にも顕著な向上が見られます。国民生活の内容と水準も着実に充実を見ております。それでもなお政治の信用がきびしく問われ、社会の秩序にも風格のある落ちつきが見られません。また、一人当たりの国民所得も比較的低位にあり、住宅、交通をはじめとする生活環境には大きいひずみが見られます。確かに現在の日本は、正直に言って、住みよい世界であるとは言えないようであります。われわれは、正しい民主主義を公私の生活に生かすとともに、今後国民の旺盛な成長力の生み出す資源を国民生活の面に有効に配分し、物心ともにバランスのとれた住みよい日本を建設しなければなりません。その努力がそのまま安全保障の根本に通ずるものであると確信いたします。(拍手)  守るに値する国は、しかしながら、そのような内政面の充実だげによってでき上がるものではありません。まず、国民的エネルギーの外に対する展開目標が確立されていなければなりません。総理も言われるように、日本が国際社会における枢要な国家としての地位を保ち、国際社会に建設的な役割りと責任を果たす国になるようつとめねばならないと考えます。  明治の日本は、富国強兵と和魂洋才という目的と手段の巧みな組み合わせによって、日本の独立を守り、その近代化に成功をおさめたのであります。今日の日本は、もはやその当時のような寡民小国ではなく、その国際的地位の高さも、昔日の比ではないのであります。日本は、もっと壮大な目標を持ち、もっと積極的な責任と役割りを世界に対して持つべきであります。  戦後の日本は、激しい分裂と動揺を繰り返す世界の中にあって、平和国家として相対的には一番少ない防衛力を持ち、外交の手段として武力を行使することがなかったのであります。また、帝国主義的野心を捨て去り、平和共存の理念のもと、他国を敵視することなく、各国との活発な交流を続け、日本の安全と繁栄を守ってまいりました。私は、それが日本のとるべき正しい道であったと信じます。今後も、日本は、一そうの勇気をもって、かかる平和共存への道を追求し、そのユニークな文化的所産と平和に徹する精神をもちまして、世界に貢献するところがなければならぬと思います。すなわち、その質量ともにすぐれた国民的エネルギーを動員して、世界があげて苦悶する平和の問題や南北の問題の打開のため、経済力だけではなく、その知識力や技術力をも供給する役割りと責任を果たさなければなりません。(拍手)かくすることが、そのまま日本の信用とその安全の世界的定着に通ずるものであると確信いたします。  もとより、具体的安全保障の手段も同様重要であります。日本は、戦後、核武装に通ずる単独防衛の方式もとらず、非武装中立の方式をも退け、日米安保条約を軸とする地域的な集団安全保障方式を採用してまいりました。本来、安全保障の方式に完全無欠なものを期待することはできません。現実には、ぜいぜい、より安全でより危険の少ない方式を自主的に選択するよりほか道はないのであります。また、総理自身がしばしば軍事力の偏重を戒めておられますように、力を過大評価することも誤りであれば、力を過小評価することもまた危険であります。  日米安保体制は、そのような考慮の上に立って選択された体制であり、戦後長きにわたって、世界各地の紛争をよそに、日本の安全と復興を保障してまいりました。安保体制が、かくして戦後のきびしい歴史的試練に有効に耐えてきた体制である以上、また、その改廃を求める内外の要因がどこから見ても見当たらぬ以上、これを堅持し、これに対応する義務を忠実に果たすことが、日本の選ぶべき最も堅実な道であると思います。(拍手)安全保障の根本理念とその具体化の方法につき、総理並びに外務大臣の御所見を承りたいと思います。  なお、最近、朝鮮における三十八度線を中心に新たな緊張が再燃し、ソウルにおけるゲリラ事件、次いで米国情報収集艦プエブロ事件が発生し、これが日本に至近の距離を持つものであるだけに、国民はその成り行きに憂慮を込めた深い関心を持っております。政府は、当の米国をはじめとして国連その他第三国と、そのすみやかなる平和解決のため話し合いを続けておるようでありますが、その後における事態の推移、わが国のこの事件に対する立場並びに今後これにいかに対処しようとするかについて、総理並びに外務大臣の御所見をお伺いいたします。  最後に、財政危機の打開について政府の決意をただしたいと思います。  昨秋来、財政当局は硬直化による日本財政の危機を精力的に訴えてまいりました。事実、今日の日本財政は数多くの硬直化要因を包蔵し、このまま放置せんか、財政による資源配分の弾力性をそこない、フィスカルポリシーの運営を危殆におとしいれることになりかねないと思います。  もっとも、日本経済がこれからも旺盛な成長を続け、豊富な担税力の培養に成功すれば、財政規模の拡大を可能にし、いわゆる硬直化要因の相対的比重を薄めることが期待されます。私も、事態がそのような好ましい方向に推移することを希望するものであり、また、その可能性を一がいに否定するものではありません。しかし、世界経済の低迷、労働力の給源の浅さ、国際収支の構造的変化等を考えますと、かかる安易な期待の上に安住して、硬直化要因の加速度的な肥大化を放置することは許されないことであります。したがって、われわれの当面する課題は、まず将来に向かって硬直化要因の肥大化を食いとめつつ、他方において既成の要因をしんぼう強くつみ取っていくことであると信じます。英国やドイツの轍を踏むことは、わが国の断じて避けねばならないことであります。(拍手)  ところが、いうところの硬直化要因をしさいに検討すると、その禍根はひとり財政金融の分野にとどまらず、広く従来の制度や慣行の中に深くその根をおろしておることがわかります。たとえば、旧態依然たる府県制度をはじめとして、中央・地方を通ずる行政機構の肥大化が目につきます。国鉄の経営は重大な危機にさらされております。食糧管理制度や社会保障制度の一部は、すでに財政力の限界を越えようとしております。人事院の勧告制度や仲裁裁定制度の運用は、ようやくマンネリ化の傾きを示しておると言えます。まだ、政府に対する依存過剰の傾向は、至るところに見られる現象であります。  私は、これら一切を悪として、退けようとするものではありません。あらゆる制度や慣行には、それ相当の合目的性を持っておるからであります。また、政府の機能が、時代の推移とともに、ますます分化する傾向にあることも、これを是認するものであります。しかし、それら一切の制度や慣行は、財政力の限界内において、時代の要求にきびきびと対応する弾力性がなければなりません。ところが、今日の日本の制度と慣行の機能は、ようやく硬直化を示しつつあり、同時に、日本の財政は、それが供給し得る栄養分を越える機構と要員と機能を重苦しくになっておるように思えてならないのであります。  このような数々の警戒すべき傾向に対して、政府は、まず行政機構の簡素化と公務員の定員の年次計画的な縮減に手を染められました。私は、その決意と措置に心から敬意を表するものであります。また、明年度予算案の編成にあたっては、総合予算主義を採用するとともに、硬直化要因の芟除にきびしい態度を貫かれたことは、われわれの多とするところであります。しかしこれは、政府が問題解決への姿勢を一応整えただけでありまして、その前途はなお遼遠であります。頼むところは、政府の勇断であり、これを理解し、受容するであろう国民の英知であります。もはや国民は、甘い迎合的な政治の姿勢に顔をそむけつつあると私は考えます。(拍手)心ある国民は、真実は真実として、困難は困難として、ありのままこれを受けとめる用意があるものと思います。  私は、政府に対し、真実は真実としてこれを国民に伝え、困難は困難としてこれを国民に訴える率直な態度を要求いたします。世界の目もまた政府の態度を注目しております。かかる事態に、その主役となって対処される総理並びに大蔵大臣の御決意を伺いまして、私の質問を終わります。(拍手)   〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕

佐藤榮作自由民主党内閣総理大臣

○内閣総理大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。  核時代にいかに生くべきかということにつきまして、大平君の御指摘になりました点は、まことに当を得たものだと、かように考えております。大平君は、核政策の確立ということについてたいへん強調されました。私は、確かにこういう時代、核というものについて正しい知識を持つこと、これが最も国民に要望されることだと思います。したがいまして、ただいまるるお話がございましたが、あるいは重複するかもわかりませんが、この機会に国民に納得がいくように、私はさらに説明を加えてみたいと思います。  御承知のように、わが国の核政策につきましては、大体四本の柱、かように申してもいいかと思います。  第一は、核兵器の開発、これは行なわない。また核兵器の持ち込み、これも許さない。また、これを保持しない。いわゆる非核三原則でございます。(「うそをつくな」と呼ぶ者あり)うそを言うなというやじが飛んでおりますが、さようなことはございません。この点ははっきりしております。  第二は、核兵器による悲惨な体験を持つ日本国民は、核兵器の廃棄、絶滅を念願しております。しかし、現実問題としてはそれがすぐ実現できないために、当面は実行可能なところから、核軍縮の点にわれわれは力を注ぐつもりでございます。したがいまして、国際的な規制あるいは管理などについていろいろ意見を述べておる次第でございます。このこともなかなか容易なことではありませんから、粘り強く取り組んでいかねばならないのであります。  第三に、平和憲法のたてまえもありますが、私どもは、通常兵器による侵略に対しては自主防衛の力を堅持する。国際的な核の脅威に対しましては、わが国の安全保障については、引き続いて日米安全保障条約に基づくアメリカの核抑止力に依存する。これが第三の決定であります。  第四に、核エネルギーの平和利用は、最重点国策として全力をあげてこれに取り組む、そして世界の科学技術の進歩に寄与し、みずからその実益を享受しつつ、国民の自信と国の威信を高め、平和への発言権を強める、以上の四つを私は核政策の基本にしておるのであります。  大平君が強調しているように、われわれは、核エネルギーの平和利用についてはどん欲に立ち向かわなければなりません。原子力基本法は、「原子力の研究、開発及び利用を推進することによって、将来におけるエネルギー資源を確保し、学術の進歩と産業の振興とを図り、もって人類社会の福祉と国民生活の水準向上とに寄与することを目的とする。」とうたっております。十年前ようやく研究、開発に着手したわが国も、すでに世界第六位の原子炉基数を持つようになりました。また、近く原子力商船の建造に着手するところまで来ております。しかしながら、核エネルギーの利用分野を考えてみますると、まだまだ日本の場合はほんとうにその初歩の域を出ていないというのが実情であります。動力として、熱源として、核エネルギーが石油、石炭にかわるという、そういう時代もそう遠い将来ではございません。核エネルギーは、このほかあらゆる面において、医療、農耕、建設、運輸等々におきましてこれが利用されております。核エネルギー開発の進歩に伴う恩恵を享受するのはわれわれの当然の権利でもありますが、そのためには、国民の核エネルギーに対する基本的な認識を深めていかなければなりません。  そこで、一番大切なことは何かと申しますと、先ほども声を大にして申しましたが、核兵器と核エネルギーの平和利用について、せつ然とこれを区別することであります。考えをはっきり分けて、そしてこれの取り扱いにはっきりした態度をすることであります。しかし、ややもするとそれが混同されがちなのが、わが国の現状であります。世界の大勢が核エネルギーの平和利用についてどんどん進んでいる中で、これまでわが国は、ともすればこれを一部科学者の問題として扱い、国民的命題として取り上げてこなかったところに、無用の混乱を招いた原因があるのではないかと思います。これはもちろん、政治家の責任でもあることを率直に反省しなければなりません。私は、今後勇気をもって、核エネルギーの平和利用について具体的に国民諸君の理解を得たいと思います。  御指摘のように、いわゆる核アレルギーといわれる素朴な国民感情が存在しております。原子力空母エンタープライズの寄港にあたって生じました混乱も、それに基因するものであります。しかしながら、核問題に対する基本的政策につきましては、安全保障条約を除くその他の点については、与野党ともほとんど完全に一致していることは大きな意味があると思います。近く国連総会の議題となる核拡散防止条約につきましても、共産党を除く他の政党の賛成を得ていることは、御承知のとおりであります。したがいまして、今後は国民的総意として核エネルギーの平和的利用に向かって民族の英知を結集すべきだ、かように私は考えております。(拍手)  第二に、沖縄の問題についてのお尋ねでありました。沖縄問題に対する私の態度は、まず祖国に復帰したいという沖縄同胞の念願を実現することにあります。この点については、野党も異論のないところだと思います。しかしながら、具体的に返還を実現する方法については、政府と野党との間にはかなりの違いがございます。申すまでもなく、私は、日米両国の友好親善関係を維持、増進することがわが国の第一の国益だと信じております。したがいまして、沖縄の返還につきましても、米国との友好親善の基礎に立ってこれを解決することが、これを実現するのに最短の道であると確信をしております。  次に、問題は、沖縄の基地のあり方であります。安保条約を否定する政党もございますから、この点でいろいろ取り扱い方が違うのは当然であります。沖縄の基地が、日本及び極東の安全に重大なる役割りを果たしているという冷厳な事実を見のがすことはできません。この冷厳なる事実を踏まえて、私はこれから米国との間に、核心に入った返還交渉を行なうはずでございますが、率直に申しまして、基地のあり方については、いまのところ私は白紙で臨むといわざるを得ないのであります。御指摘のように、核兵器を含めた近代兵器の進歩の問題、輸送手段の開発、また国際情勢の変化など、いまの時点では予測を許さない要素が存在することを思えば、この交渉が直線的なものであってはならないことが御理解いただけると思います。私はいろいろの観点からこの問題に取り組んでまいりますが、その背景になるものは、国民的合意の達成であるのはもとよりであります。拙速であってはならないという大平君の御注意がございましたが、この事柄は、重大な国家利益の観点から、与野党を問わず、国民全体の御支援と御理解を期待している次第でございます。(拍手)  第三は、安全保障問題であります。しばしば申し上げているとおり、わが国は、戦後、自由を守り、平和に徹するという国是をもって再スタートいたしました。そして他国の内政には干渉しない、国際紛争の解決は武力によらないという外交の基本方針を持っておるのであります。このようなわが国の態度は世界の大部分の国に理解され、もはやわが国が他国を武力によって侵略するという危惧を持っている国はないものと確信しております。しかし、われわれが他国を侵略したり、他国の内政に干渉しないからといって、よその国がわが国を侵略したり、わが国の内政に干渉してこないという保障はどこにもないのであります。このため、われわれは、通常兵器による武力侵略に対応できる最小限の自衛力を持ち、国際的な核の脅威に対しては、日米安全保障条約をもって、これに対処しているわけであります。われわれは、国民の総意として、この平和国家として発展するという方向を今後も堅持するわけでありますが、経済繁栄の面だけに目を奪われて、国際的現実というものから目をそむけてはならないのは言うまでもありません。現在わが国の社会は、大平君が指摘しているように、政治の信用がきびしく問われ、社会の秩序にも風格のある落ちつきが見られず、国民的エネルギーの展開目標が確立されていないという、これはお説のとおりだと私も思います。このため、私は、施政方針演説で、民族の理想として、国際社会における名誉ある地位を占めることを念願していると申し上げたのであります。これは決して大国主義を鼓吹したものではありません。国際社会におけるわが国の新しい役割りがあるということを申し上げたものであります。この目標を達成するためには、われわれ日本国民が置かれている国際的現実というものを、はっきりと見きわめる必要があります。そこから、われわれの国際的責任も、発展途上国に対する援助の理念もにじみ出てくると思うのであります。また、現実の国際情勢は、単独防衛が不可能だという認識も生まれてくるのでありますが、戦後二十三年の平和と繁栄という事実によりまして、日米安保体制を選択したわれわれの判断が賢明だったことが理解されると思います。(拍手)したがって、私としては、日米安保体制を堅持していくことをこの際はっきり申し上げておきたいのであります。(拍手)しかし、どんなに自衛隊の整備が整備され、どんなにりっぱな国際間の条約を結んでも、国民に自分の国を守り、興隆させていくという独立の気概がなければ何にもならないのであります。国防の基本は人であるという簡明なことばは、まさしく真理だと私は思っております。  私は、総理大臣として、国の安全を確保するという基本的な課題は責任をもって遂行する決意でありますから、国民各位が日本人としての独立心を持ってもらいたいと念願している次第であります。(拍手)  プエブロ号拿捕事件についてのお尋ねがございました。わが国の近海海域におきまして発生したプエブロ号拿捕事件は、国連安保理事会における米国代表の説明やわれわれが入手した情報を総合すると、プエブロ号が公海上において拿捕されたもののようであります。もし、事実それが公海上における外国軍艦の拿捕事件であるならば、国際法上から見てきわめて遺憾といわなければなりません。いずれにしても、われわれとしては、この問題が一日も早く平和裏に解決され、プエブロ号及び乗り組み員がすみやかに釈放、送還されることを期待してやみません。  また、三十八度線を越えて発生したゲリラ事件もわれわれの重大な関心事であります。朝鮮半島における休戦協定が順守され、アジアの平和が維持されることを強く要望いたします。と同時に、関係国と緊密な連絡をとり、平和的解決に今後とも一そう努力する決意でございます。  最後に、財政の硬直問題についてお触れになりました。いずれ大蔵大臣から詳細にお答えいたしますが、問題は、御指摘にもなりましたように、不退転の決意で臨むこと、これはもちろんでございます。なかなか困難な問題があります。行政機構一つの改正にいたしましても、また、その他の制度、慣行等、これは今日までにそれぞれの理由があってできたのでありますから、たいへん困難な、またむずかしい問題だと思います。しかし、すでにこの問題に取り組んだ私は、この際に国民の協力をも要請いたしまして、ぜひとも目的を達成するようにつとめてまいるつもりでございます。(拍手)   〔国務大臣三木武夫君登壇〕

三木武夫自由民主党外務大臣

○国務大臣(三木武夫君) 総理が大体お答えになりましたので、補足することもないと思いますが、第一番には、沖縄の施政権返還に関する協議、これが外交交渉に差しつかえない限り協議の経過を国民に明らかにして、国民の協力を求めるべきではないか、私も同感でございます。できる限り差しつかえない限り交渉の経過を明らかにして、国民の協力を得たいと思います。  第二は、安全確保に関する大平君の、まずみずから守るに値する国の国家建設、みずからの防衛努力、日米安全保障条約、それだけでは足りなくて、やはり世界における安定と繁栄のために日本が協力することが安全保障のために必要であるという大平君の所説には全く同感でございます。そういうことにおいて、内外の諸政策を通じて世界の平和、安定のために寄与することが、とりもなおさず日本の安全確保に通ずるものである、さように考えるものでございます。(拍手)   〔国務大臣水田三喜男君登壇〕

水田三喜男自由民主党大蔵大臣

○国務大臣(水田三喜男君) 御指摘のとおりに、経済情勢の変化に応じて、財政政策を機動的に有効に行なおうとするためには、財政の弾力性を確保するということが前提条件でございますので、今回の予算編成に関しましても、特に財政体質の改善ということに一歩を踏み出したのでございますが、硬直化の打開ということは決して短時日の間に解決される問題ではございません。したがって、政府としましては、今後さらに引き続いて打開への努力を続けるつもりでございます。幸いに、去る二十五日の財政制度審議会における総会におきまして、今後の運営を協議しました結果、歳入のあり方、歳出のあり方、定員、機構のあり方という財政運営の根本的な方向とあわせて、食管、地方財政、公共事業、社会保障、文教、科学技術、経済協力、国鉄、給与制度、こういう現行諸制度の全般に関して、合理化の検討をする、そうして十一月ごろまでにはこの結論を出すということを財政制度審議会が決議いたしました。したがって、政府としましては、これらの審議に並行してさらにこの打開の問題に引き続いて努力するつもりでございます。(拍手)      ————◇—————

山村新治郎自由民主党

○山村新治郎君 国務大臣の演説に対する残余の質疑は延期し、明三十一日午後一時より本会議を開きこれを継続することとし、本日はこれにて散会せられんことを望みます。

石井光次郎自由民主党議長

○議長(石井光次郎君) 山村新治郎君の動議に御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

石井光次郎自由民主党議長

○議長(石井光次郎君) 御異議なしと認めます。よって、動議のごとく決しました。  本日は、これにて散会いたします。    午後四時三十二分散会      ————◇—————  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 赤間 文三君         外 務 大 臣 三木 武夫君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         文 部 大 臣 灘尾 弘吉君         厚 生 大 臣 園田  直君         農 林 大 臣 倉石 忠雄君         通商産業大臣  椎名悦三郎君         運 輸 大 臣 中曽根康弘君         郵 政 大 臣 小林 武治君         労 働 大 臣 小川 平二君         建 設 大 臣 保利  茂君         自 治 大 臣 赤澤 正道君         国 務 大 臣 木村 武雄君         国 務 大 臣 木村 俊夫君         国 務 大 臣 田中 龍夫君         国 務 大 臣 鍋島 直紹君         国 務 大 臣 増田甲子七君         国 務 大 臣 宮澤 喜一君  出席政府委員         内閣法制局長官 高辻 正巳君         内閣法制局第一         部長      真田 秀夫君      ————◇—————

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