科学技術振興対策特別委員会 第4号
- 発言数
- 51 件
- 登壇者
- 9 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1967/12/21
会議録
○沖本委員長 これより会議を開きます。 最初に、閉会中審査申し出に関する件についておはかりいたします。 本委員会は、閉会中もなお、科学技術振興対策に関する件について調査を行なうため、議長に閉会中審査の申し出をいたしたいと存じますが、これに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○沖本委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。 ————◇—————
○沖本委員長 なお、本委員会に参考送付されました陳情書は、科学技術の開発促進に関する陳情書及び科学技術振興費増額等に関する陳情書の二件でございます。念のため御報告申し上げます。 ————◇—————
○沖本委員長 科学技術振興対策に関する件について調査を進めます。 質疑の申し出がありますので、これを許します石野久男君。
○石野委員 きょうは、私、茨城県のガンマフィールドで起きました事故についてお尋ねしたいのですが、農林省の方もおいでになっているようですし、原子力局のほうからも、ひとつまたいろいろ御答弁いただきたいと思います。 最初に、茨城県の大宮町にあるガンマフィールドにつとめていた久下沼さんという方が最近なくなられました。この件につきましていろいろな情報がありますし、私どもは、その病気の原因が何であるかということはまだはっきりはしておりませんけれども、病名が急性骨髄白血症というのですか、そういうようなことになっているそうでございまして、多分にやはりガンマフィールドの仕事との関連性があるように思われるわけです。しかも、ここでの事故は久下沼氏だけではなく、従前にここでつとめた方にも類似のようなこともあると聞いておりまするので、そういうことについて、この際ひとつ、久下沼氏のなくなった病状とかあるいはそれらの事情についての説明を、まず最初にしていただきたいと思います。
○熊取説明員 私、放射線医学総合研究所の障害臨床研究部長をやっております熊取でございます。 ただいまのことについて、なるべく簡単に、概略かいつまんでお話ししたいと思います。 久下沼さんは、私どもの放射線医学総合研究所の病院のほうへ十月三十日入院されまして、そうして十一月二十一日なくなられたわけでございます。詳しいことは申しませんが、来られましたときは、おつとめになっておられましたところで検査されました血液検査のデータ、それから、それまで管理されておりましたフィルムバッジの被曝線量のデータ、そういうものをお持ちになってこられたわけでございます。臨床的に見ますと、白血球の減少が著明であったということ、それから血小板の減少も著明であった。したがいまして、視診によりまして、出血傾向が強いということが見られたのであります。そしてその後の血液検査並びに骨髄の検査によりまして、これは白血病であるというふうに断定いたしまして、輸血その他の処置を講じたわけでありますが、出血傾向が非常に強くなりまして、ついに十一月二十一日、不幸な転帰をとられたというわけでございます。それで死後、御家族の御同意を得まして、病理解剖を行ないました。それによりましても、この臨床診断は誤りではなかったということでございます。これが大体の概要でございます。 この方は放射線のそういう取り扱い者でございましたので、どういう被曝があったかというようなことを特に念入りに調べましたが、私どもに持ってこられました限りにおきましては、特に過剰な被曝があったというふうなこともないようでございました。 この病気と放射線の被曝との関係ということでございますが、現在の医学的な知識におきまして、白血病がどういう原因で起こるかということ自体がわかっていないのであります。そうして、放射線の被曝ということがそれを誘発する一つの原因であろうということはわかっているわけでございます。しかし、一体この放射線のどれくらいの線量を受ければ出るのかというようなことは、すべて明らかになったわけではございません。たとえば広島なんかの被爆者の調査によりますと、百ラッド——ラッドというのは、レントゲンというようなことと同じようにお考えいただいていいと思いますが、それ以上被曝した人は、被曝線量がふえるにつれて白血病の発生率も高くなるというふうなことはわかっておりますが、それ以下の線量につきましては、これは各国連の科学委員会のレポートなんか見ましても、まだわからぬということでございます。したがいまして、この久下沼さんの被曝の状況とこの病気というものの関係は、はっきり申しますと、ちょっとつけられないということでございます。つまり、この被曝があったからこの病気が誘発されたということは、積極的には言えないと思います。 それからまた、先ほど申しましたように、この白血病自体の原因というものがわかりませんし、それからどのくらいの線量、つまり百ラッド以下の非常に少ない線量、そういう場合にどういう関係があるかというようなことはまだ不明でありますから、これは全く無関係ということももちろん言えないわけでございます。ただ、私どものいままで得られましたデータでは、これを積極的に被曝と結びつけるということはなかなか困難だ、私はそういうふうに思います。 以上で、一応私の説明を終わりたいと思います。
○石野委員 久下沼さんの被曝線量というのは、いままで持っておったバッジなんかによりますと、どの程度のものなんですか。
○熊取説明員 私のところへ持ってこられましたものによりますと、一九六一年から、大体二週間に一度このフイルムバッジの検査をしておりますが、全部十ミリレム以下というふうなデータでございます。つまり非常に少ない——少ないといいますか、一度三十ミリレムというのがあるということでございますが、これも問題になるようなあれではございません。つまり、いまの法律とか、あるいは国際放射線防護委員会の勧告しております量以下でございます。
○石野委員 死因がどういうものであったかということについての判定は、これはなかなかむずかしいのだということ、それは私たちも聞いております。だからといって、たとえば百ラッド以下の場合にはどうなんだということについても、熊取さんの言われるように、それが白血病と全然無関係だとも言えない事情があると思うのです。この久下沼さんのほかに、たとえば寺門さんだとか高橋さんだとかというような、アルバイトで来ておられた方が同じような病気の死に方をしているといわれ、われわれそう聞いておるわけなんでございますが、これらの事情については、これは関係の方から、いま何か調査がありましたら、一応ひとつ説明だけ聞かしておいてもらいたいと思います。
○龍野説明員 いま言われました二名の人については、一人は高橋きのえで、昭和三十六年十月から三十九年六月まで勤務しておりましたが、水戸の国立病院で死亡しております。この原因は胃ガンでございまして、解剖の結果は、食道の接合部のガンの浸潤ということで、後ほどガンが全身に及んだ。それからもう一人、寺門亮一というのが、昭和三十八年の六月から三十八年の九月まで勤務しておりまして、この人が急性白血病ということで死亡しておるわけです。しかし、実際にこの人が勤務した日数は五十四日でございます。そしてその診断は、水戸の日赤病院の耳鼻科でしておるのですが、詳しい事情は、私どもから連絡していろいろお聞きしたのですけれども、白血症であるというその診断の結果については、これは間違いないというだけで、それがどういう原因であるかということについての病院のほうの御見解は、言えないといいますか、わからない点があるというお話でした。
○石野委員 久下沼氏にしても、あるいは高橋、寺門氏にしましても、いずれもこれは、長い短いはありましても、ガンマフィールドに働いておりまして、健康であった方々が、急に白血病というような形のものとか、あるいは胃ガンだとか子宮ガンだとかいうような形でなくなっていて、放射能が直接に関係したかどうかということについての診断結果というものは、はっきり出ていないようでございますけれども、仕事の関係とこの病死の関連性、全然無関係とも言えないわけでございます。ことに私は、久下沼氏のような場合、急性骨髄白血病というような形、それから寺門氏の場合でも、とれもやはり急性白血病ということになっておりまして、一般に放射能によって出てくる病気と関連性は非常に深いわけであります。病原についての医学的な診断では、たとえば法律上の規定している線量までいってないんだというようなことで、無関係だという結論になりそうでございますけれども、われわれから見ておりますと、こういう問題を、法律がきめている線量以下であるから、もうそれは全然関係ないんだという形にはできないと思うのです。ことに、これらの人々は、従来その家系的な系図の上から見ても、いままでそういう病気をしておる者がいたわけではありませんし、しかもまた、健康にいままで働いておった人々でございますから、私は、直接にガンマフィールドによるいわゆる放射線量を受けたかどうかということはわからないけれども、ガンマフィールドにおける放射線管理の問題について、今後やはり相当程度、この種の問題と関連して、注意をしていかなくてはいけない点が多々あるのじゃないかというふうに思われます。そういう点で、この放射線管理の衝に当たる当局としては、こういう問題についてどういうふうに考えていられるかということを、まず最初にひとつ聞いておきたいと思うのです。これはまた、あとでいろいろお尋ねすることの関係もありまするので、ひとつこの際、当局はどういうふうにこういう問題について考えていられるかということの御所見だけ承っておきたいと思います。
○藤波政府委員 放射線利用に関連いたします安全の管理につきましては、御説のとおり重要な問題でございますので、われわれ常々厳重なる規制、監督を行なっておるわけでございます。御承知のように、放射線防止法に基づきましてやっておるわけでございますが、いま具体的に問題になっております農林省の大宮の育種場につきましても、水戸事務所の監督のもとに、毎年の立ち入り検査等も十分に行なっております、その結果は、この育種場はきわめて整備されておりまして、日常の管理も、この法律に基づきまして要請されております十分なる管理を行なっておるものと、われわれ考えております。 なお、この法律の安全基準のもとは、先生御承知のとおり、国際放射線防護委員会の勧告に基づきます数字を基礎といたしておるわけでございまして、十分厳格なるものであろうとわれわれ判断しております。 具体的に、いま問題になりました職員の久下沼氏個人についての記録におきましては、被曝線量は、先ほど熊取博士から御説明がありましたように、二週間の最大の記録を取りましても三十ミリレムが一回、あとは十ミリレム以下でございまして、トータルいたしました集積線量にいたしまして、年間二百六十ミリレム程度でございますので、いま申し上げました基準量から申しますと、けた違いに低いものになっておるわけでございます。 なお、引き続き御指摘がございました寺門氏等につきましては、これは臨時雇いのアルバイトでございまして、こういう人につきましては、照射中は絶対に管理区域の中には立ち入らせないことになっておりまして、したがいまして、放射線とは、その意味におきまして、関係がないと存じておるわけでございます。 いずれにいたしましても、この種の放射線利用施設につきましては、今後とも十分なる監督をやってまいりたいと存じております。
○石野委員 高橋、寺門の諸君は、放射線を照射中には中に入れないのだし、放射線とは全然関係がないのだというようなことでございますが、しかし、照射をしたあとの育種場の中で働いておることでございますから、他の地域とはまた違った環境にあろうかと思うのです。で、これらの人々には、たとえば作業中はバッジなどはつけさしておるのでございますか。そしてまた、その人たちはどのくらいの被曝線量になっているのだという記録は出ておるのでございますか。
○藤波政府委員 ただいま申し上げましたように、久下沼氏につきましては、職員でございまして、管理区域の中に立ち入ることがあるわけでございます。規定によりますバッジ類等は当然つけておりますし、それを二週間一ぺんの現像によりまして、記録をいたしております。なお、きめられました血液検査等の身体検査についても、所定のとおり、むしろ、さらに詳しく申し上げますれば、法律で規定されました回数以上に、注意してやっておるようでございます。 なお、寺門アルバイトにつきましては、先ほど申し上げましたような事情でございますので、バッジとか身体検査等は、職員並みのことはやっておりませんが、ただ、申し上げましたように、照射中、管理区域——照射圃場の中はもちろんでございますが、そのまわりの管理区域にも、立ち入らないということにいたしております。
○石野委員 立ち入らないようにしているのだけれども、どれくらいの線量の被曝があったかということがわかっておるのですか、と聞いているのです。
○藤波政府委員 アルバイトについては、わかっておりません。
○石野委員 被曝線量が法定基準以下であれば何でもないのだ、ということの言いわけというのは、まあわれわれはそれを絶対のものだと思いませんから、特に事故などが起きた場合に、われわれはそれはだいじょうぶだと思っておったけれども、案外にそれが原因で病気になっているかもしれないわけですし、ことに大宮なら大宮という町で、いままであの付近で百姓をやっておった諸君が、あるいはまた、その辺に住んでおった普通の市民が、白血病というものでなくなるということが、案外にガンマフィールドに関係した者に多かったという比率が出てくれば、おのずからわれわれは、やはりガンマフィールドの勤務あるいはその地域における住民の放射能被曝による病気の発生というものを考えざるを得なくなるわけです。そういうふうになってしまうことが、私たちは決していいとは思いませんので、そういうことにならないようにしなければいけない、こう思うわけです。たまたま大宮のガンマフィールドに勤務した方々が、この一、二年の間に、こういうようにして、それに関連するらしく思われる病原によってなくなっておるわけです。ことに熊取さんからお話がありましたように、久下沼さんの場合は、線量は非常に少ないのだということですけれども、急性骨髄白血病というのですか、そういう放射能に関連あるらしき病気でなくなっているわけでございますから、私は、今後のこともあるので、こういう問題については、国際的な基準よりももっときびしく、そしてまた、規定されたより以上にきびしい検査をしておりましても、やはりこういう事態になったとしました場合には、これはやはり考えなければならぬ問題があろうと思うのです。ことに、放射能については、放射能を受けることによって、病気をなおしたり、非常に健康になる人もおりますし、あるいは放射能が一定の基準以下にある場合に、それによって病気が出てくる人も、体質的にあるだろうと思います。個人差があると思うのです。そういう個人差があった場合に、その個人差を一般的の基準で規定することは非常にむずかしかろうと思いますけれども、だからといって、それはほっておいていいというわけじゃないと思うのでございます。ことに、久下沼氏の場合のごときは、学校を卒業してからずっと、ガンマフィールドにつとめておられて、それまでの間に、別に親類関係にもそういう病気をした者もいない、本人も非常に健康であったのが、急にこうなったということになりますと、何かやはり作業上の事由があったのじゃないかということを考えざるを得ないわけなんですね。たまたま線量が少ないからということだけで、関係がないのだということになりますと、こういうところに働いている人たちにとっては、非常に不安感が出てくると私は思うのです。したがって、こういう問題に対する対射能管理はもちろん十分にすることも大事だし、同時に、この種の形でなくなった諸君に対する当局の手当てといいますか、そういうような問題も、これは考えてやらなければならぬことじゃなかろうか、こういうようにも私は思うわけです。大事なことは、これからあと、こういうものを出さないようにするためにはどうしたらいいか。職場の関係じゃなくて、その個人本人が持っている体質から出てきているものである場合は、これはもうどうにもならないかと思いますけれども、しかし体質の上からいえば、従来そういう不健康な状態はなかったように見受けられるわけです。もし体質上にそういう不安な状態があるのだというなら、あるようなこともはっきりさせなければいけないと思うのです。そうなってまいりますと、職場に働いている方々についての健康管理とか、あるいは放射能管理というような問題については、従来のやり方だけでは不十分なんじゃなかろうか、何か考えなければならぬものがあるのじゃないだろうか、こういうふうに私は思うのですが、そういう点について、これを管理している方々やあるいは現場におる方々は、どういうふうにお考えになっていらっしゃるか、ひとつ御所見を承っておきたいと思います。
○藤波政府委員 先生のお話は、放射線管理にあたって、法律で定められた最低限度の処置だけでは不十分ではないか、こういう意味もあろうかと思います。なお、こういうまぎらわしさをできるだけ防ぐという観点も考えあわせますと、おっしゃるように、われわれも、今後こういう施設の職員の採用等につきましては、アルバイトといえども、事前の健康診断をするとか、あるいは管理区域に入らない者については、フイルムバッジ等はつけなくてもいいことにはなっておりますけれども、念のためそれをつけるというようなことについて、検討いたしてみたいと考えます。
○石野委員 私は医者じゃありませんから、病気の原因のことについては、あれこれ言うだけの知識もありませんし、これ以上のことを多く突き詰めてお尋ねすることは、なかなか困難なのでございますけれども、しかし久下沼氏の死因というのは、どう考えてみても、やはり職業的な立場から出ておるようにしか思えないのです。これは本人が高等学校を出ましてからずっと職場につとめておる、この間数年間にわたりましての健康状態をいいましても、そんなに悪いものじゃございませんように聞き及んでおりまするし、それから、従来とっておる健康診断等の点からでも、そういうことが言えると思うのです。しかし病気がこういう形で出ているということになれば、やはり仕事の上で、ある時期、何かの点で、そういうような管理状態から逸脱したことがあって、それがこういう原因になるような事態をつくったのだろうというふうに考えられるので、こういう点は、私はやはり病気のめんどうを見ておられた熊坂さんたちのところの診断結果では、記述がいろいろ出ておると思いますけれども、しかし環境の情勢を考え、本人の健康状態などを考えますと、これは全然無関係だというふうにほっておくということは、ちょっと職場の立場からしましても、無慈悲なのではないか、というより、むしろやはりその本人にとってはかわいそうなんじゃないかというふうに私たちは思うわけなんですよ。それだけじゃなくて、もしこの本人が、こういうような病気になるような何か体質的なものがあるというならこれは別ですけれども、そうでなかったら、やはり同じに働いている人々に、またこんな状態が出てくることの心配があります。そういうことに対して、やはり不安感なく働かすということも非常に大事だと思うので、この人たちに対しては、当局のほうではどういうふうに手当てをなさったのですか。その点ちょっと聞かしておいてもらいたいと思います。
○近藤説明員 久下沼さんの場合は、先ほどから御説明がございましたように、死因について、放射線の照射によるとは断定しがたいわけでございますが、その反面、放射線照射と全く無関係であるとも断定いたしかねますし、他にその原因について確証もすることができない状況にございますので、この種の労働災害の一般の民間の場合の例等にもかんがみまして、公務災害の適用ができないかどうか、こういう点につきまして、目下人事院と折衝中でございます。 それから、寺門さんの場合につきましては、作業の実態から申しまして、きわめて短期間でございますし、そういう危険な作業には従事させておった事実がございませんので、いまの段階で、さかのぼって公務災害として扱うということは非常にむずかしいと思います。
○石野委員 そうしますと、近藤さん、これはいま人事院との間で折衝している、こういうことでございますね。
○近藤説明員 さようでございます。
○石野委員 いま人事院のほうは来ていないのですが、これは皆さんが人事院のほうと折衝していなさるのだから、われわれその労を多としなければいけないし、なるべくやはりそういうふうにやってほしいと思います。 私たちの考えでは、この種の問題は、先ほど申しましたように、いろいろな規定だとか法律上の扱いもあろうと思いますけれども、環境情勢をずっと考えてみて、久下沼さんなどの場合には、明らかに職務上からきているとしか思えないのでございますから、こういう点は、人事院との折衝の上で、ぜひひとつ公務災害という扱いをしてほしい、その努力をしていただきたいということを、私はお願いしておきたいと思います。 それからなお、これは藤波さんにお願いしたいのですが、放射能管理の問題については、私は大宮の地域にずっとおりまして、あそこは、御承知のように相当大きい土地を持っておって、そして育種場の作業をしておるわけでございますけれども、その育種場のまわりはまだ相当広うございますから、警戒をして、なるべく一般人を近寄せないようにしておるのです。おるのだけれども、御承知のように、あの付近は、禁猟区になったりしておりまして、鳥類が非常に多いんですね。だから、解禁時になりますと、猟をする方々がみんなそのさくを破ったりしまして中へ入る。結局働いている人は、照射中はそこに近づけませんが、何も知らない狩りうどたちは、えものを追ってどんどん中へ入ってくるのが数多く見受けられるわけでございます。周囲を見てみますと、さくなんかもずいぶんこわれておりますし、何も知らない人がえものを追って近づいてくる。結局もうフィールドのすぐそばまで来てしまって、猟銃をぶっぱなしている、こういう状態がしばしばございます。これはこんなことにしておきますと、場合によったら、十分管理しているつもりであるけれども、一般人に対してたいへんな被曝事象を起こしてくるというような事態も考えられないわけじゃございませんので、外郭の管理について、もっともっと注意をしていただかなければならないのじゃないかというふうに、われわれ現地にいてそういうことを感じるわけです。周囲の人々は、むしろガンマフィールドというものを一つの見せものにして、観光物にしておるわけでございまして、むしろ町は、それで観光客を呼ぶというようなことをしております。したがって、そういうことになれっこになってしまいますと、日常おる人々は、そういう放射能障害の危険ということをあまり感じなくなってきまして、平気であの近くに近づいていくという人々が、作業している人々よりも周囲の人々に多く出てくるわけでございますので、私は、やはりこの場の管理につきましては、外郭管理というものをもっと厳重にしていただかないとよくないのじゃないかと思います。フィールドの外側の土手は非常に高いものだし、照射するのも、その下のほうを照射しているから、放射能は外側に出ていくとは考えられませんけれども、放射能がどういう形で散るかもわからないという危険があるわけでございますので、この点は特に管理してもらいたい。これを管理させるには、やはり相当程度予算的措置なども考えられなければならない。やはり作業をする人に無理をさせないことが一つと、そういう外郭管理について、もう事故さえ起きなければどうでもいいというようなことではなくて、現場の施設というものが十分管理できるようにさせることが大事だと思います。こういう点では、十二分に予算面におけるところの配慮をしてもらわないといけない。近所の人々からときどきそう話を聞くし、それから、人によりますと、こういうことも言う。あの近くにある松の木がよく枯れてきている、これはやはり放射能の障害だろうというようなことまで言われるようになってくるのでございますから、やはり外のほうの管理をもう少し真剣にやっていただくことが大事だ。ひとつ来年度の予算なんかについても、相当配慮していただかなければいけないのではないか、こう思いますが、この際、これらのことについての十二分の対処方を、はっきりとお答え願っておきたいと思います。
○藤波政府委員 農林省のほうともよく連絡をとりまして、おっしゃるような点、心配のないように善処してまいりたいと存じます。
○石野委員 近藤さんにお尋ねしますが、あそこで働いている人たちの人員の問題等について、農林省としては、これはなるべく無理をさせないことが大事だと私は思います。それから、また、あそこへ働きに来る人たちにしましても、アルバイトで来る人が多いわけでございます。ところが最近は、フィールドを管理している方を必要な人員だけ集めることが非常にむずかしい、なかなか来てくれる人も少ないというような事情もあったりする。そこで採用するにあたって、もうだれでもいいからということで、予備知識も何も与えないままで採用したり何かするというようなことがあったりすると、私はよくないと思います。放射線を使うということについては、やはり当然いろいろな教育も必要なんだろうと思いますし、また、そういう姿勢で働いてもらわなければいけないのだ、こういうように思いますが、そういう点については、人を詰めてしまいますと、無理が重なるということになりますので、やはりある種の人員についての潤決な処置というものが大事なんだろう、こう思うのですけれども、そういう点についての配慮をひとつ積極的にやってもらわなければいけないのではないか、こう考えます。そういう点の十二分な配慮をしていただきたい、こういうように思っておるのですが、あそこについての人員計画では、どういうような考え方を持っておられますか。
○近藤説明員 おっしゃるように、作業の性質から申しまして、臨時職員に依存するということはできるだけ少なくしていきたいというふうに考えておりまして、定員の問題につきまして、目下検討いたしている次第でございます。
○石野委員 目下検討しているというのは、なるべく臨時職員を使わないようにするというためでございますか。
○近藤説明員 さようでございます。
○石野委員 政府は、なるべく人員を詰めよう、こうしておられるわけです。定員はなるべく減らそうとしておられるわけです。ところが、こういうような新しい作業で、臨時職員を相当使うということに依存してきているところでは、定員削減という政府の考え方とはすれ違ってくるわけです。ですから、よほど体制を考えないといけないと思うのです。これは科学技術庁の問題ではありませんけれども、次官にひとつ……。これは農林省の方は、きょうはほかにお見えになっていないのですが、事務当局のほうではそういうように考えておっても、実際には予算的措置の上からいえば、かえって予算を切られてしまって、現場ではそういう気持ちがあってもできはしないという実情になるのです。きょう科学技術庁の次官にこういうことを言っても無理かと思うけれども、やはり関連する仕事ですから、農林省に対して、このことをはっきり、事務局で考えていることを裏づけするように、対策を立ててもらうような配慮をしてもらいたいと思いますが、次官からひとつ………。
○天野政府委員 石野先生の御発言、ごもっともだと思いますし、私たちの科学技術庁としても、関連性が非常にある省でもございますので、農林省当局、大臣、あるいは事務次官、政府次官等に、きょうの御発言の内容を申し入れしまして、できるだけ善処するようにお話しいたしたいと思っております。
○石野委員 最後に、これは原子力局長にしっかりとひとつ考えてもらいたいと思いますことは、原子力局は、放射能とかあるいは原子力の開発に関連する放射能の問題については、心配要らないのだ、心配要らないのだ、というようなことが非常に先に立ってしまいまして、当然考えなくてはならぬことまでも、もうだいじょうぶなんだから、法律は十分考えているのだから、ということだけを先行させるという傾向が強い。ことに、今度の場合などは、科学的な側面あるいは法律的な側面から、放射能の被曝線量というものは少ないのだからもうだいじょうぶなんだというようなところへ、問題をみんな片づけてしまうという傾向があるようです。しかし、先ほどの結論から見ましても、事実上やはり職場の中から出てきている。病人がそこから出ているということは、大体推測できると私は思うのです。ただ、問題は、個人的な体質がおもになっているのか、職場の問題がおもになっているのかという差は幾らかあると思いますけれども、少なくとも、職場の関係から出てきているということがはっきり出ていると思うのです。原子力局は開発に意をとられて、放射線管理とかあるいは安全性の問題について、口では、注意せにゃいかぬのだ、注意せにゃいかぬのだと言いながら、案外に実質の面では、軽視しているという面が多いように、私には見受けられるのです。こういう点は改めてもらわなければならぬと思いますが、局長は、そういう点について、今後真剣に対処する考え方があるかどうか。この際、この大宮ガンマフィールドの問題に関連しての所見を、ひとつ最後に聞かしていただきたい。
○藤波政府委員 最初にも申し上げましたように、われわれは現在考え得る最善の努力をいたしまして、安全管理を行なっておるわけでございます。原子力の利用につきまして、この放射線利用のみならず、原子力発電もそうでございますが、推進してまいります場合に、経済性もさることながら、安全の問題を第一義に取り上げてやっていきたい、こういう基本的態度は守ってまいりたいと思います。
○沖本委員長 石川君。
○石川委員 ただいま石野委員のほうから、大宮の育種場の関係については、るる御質問がありましたから、私は別につけ加える余地はないのですが、その前に、実は私、きょう質問をする予定の議題としては、来年度の科学関係の予算について、大蔵省の責任ある人に来てもらって、どうも新聞に伝えられるところによると、科学関係はばっさりやられるのじゃないかと、こともなげに報道されておる、そういうことを質問したかったわけでありますが、大蔵省の人が、ちょうど予算の編成時期で忙しいことはわかっていますけれども、だれも出られないということであります。そのこと自体が、実は科学関係が軽視されているということの一つの証明じゃないかという感じがいたしまして、実は私は非常に憤慨しているわけなんですけれども、出ていない人に質問してみてもしかたがありませんから、その点は省略をいたします。二十五日に、来年度の予算のことについて、科学技術特別委員会が超党派的に懇談をしようということで、これに代行することになりましたので、来年度の予算のことについては、きょうは大臣が出ておりませんけれども、政務次官のほうで、よほどふんどしを締めてかかってもらわなければとんでもないことになるということで、ひとつ対処してもらいたいということを、特に要望しておきたいと思います。 いまの石野さんの質問に関連する問題でありますが、つけ加えて質問する余地はありませんが、ただ一つ、最後に藤波局長のほうから話がありましたように、原子力科学の発展というのは相当おくれておるだけに、何とかしてこれに追いついて、これを追い越すという態勢をとらなければならぬということのためにも、安全性というものは絶対に不可欠の条件である。これは私から言うまでもないと思うわけであります。そういう点では、いまの育種場で起こった問題は、ICRPの基準に照らしてみますと、二百六十ミリレム程度で、そのことが原因ではないであろうというようなことだけで、解決したと思われては困る問題ではないか。いたずらな恐怖心かどうかわかりませんが、現実に相当の恐怖心というか、警戒心を与えていることは間違いのない事実なんであって、そういうことが、この育種場に働くことに対する警戒心を深め、そこで働いたのではとんだことになるんだというようなことになれば、あそこの仕事も進まないわけであるということで、念のためにお伺いをしたいと思うのでありますけれども、この放射能の問題は、私から言うまでもないわけでありますが、未知の世界が非常に多いわけなんです。たとえて言いますと、何ミリレムくらいまではだいじょうぶなんていうことがICRPで発表されますと、ここまではだいじょうぶなんだというふうに考えるのが常識のようになっているわけですが、実はそうではないわけです。一ミリレムといえども、これは危険なんです。やむを得ない場合には、ここまではしかたがないであろうという、許容された限度がICRPとして発表されておるわけであって、実はゼロでなければならぬ。ゼロでなければならぬけれども、ここまではやむを得ないという最高限の数字を、ICRPとして発表されておるのであって、ここの限度まできていないんだから当然だいじょうぶなんだ、というような考え方で今後対処されては困るという問題だということを、特に御注意申し上げたいと思うのです。ということは、私は実は電気の問題で、実験をしたわけじゃないんですけれども、私と友だちとで、漏電した場合にどっちが抵抗するかということを、まあ遊び半分にやったことがある。非常な個人差があるということを発見して驚いたことがあるわけです。この放射能に対しましても、個人差というものは相当あるんじゃなかろうか、こういう感じがするわけです。したがって、そういう点にもからんで、未知の世界が相当にあるということと関連をする問題だろうと思うのですけれども、ICRPで発表された数字自体に、まだまだ未知の世界、これから解明されなければならぬ問題がたくさんあるのではなかろうか。したがって、今度は二百六十ミリレムであるからまあ問題がなかったはずなんだ、ということだけで事足れりとする態度について、私は厳重に警告を発しなければならぬ、こう思っております。 それで、念のために伺いたいのですが、この二百六十ミリレムというのは、フィルムバッジでもって計算をされた結果であるというふうに言っておりますけれども、これは四六時中のものが全部それにとられておったのかどうか、どういうときにフィルムバッジをつけるのか、現場に出るときだけつけるのか、事務のほうの職場におるときもそれをつけるということになっておるのか、あるいは仕事が終わったらそれをはずして帰ってしまうのかというような、扱い方がいろいろあると思うのです。そういう点はどういうふうに扱われておるかということを、一応念のために伺いたいと思うのです。
○藤波政府委員 フィルムバッジは、職員につきましては、事務をとっているときも通じまして、出勤時間中、常時つけておるのでございます。
○石川委員 本人の不注意ではずすということになれば、これは本人の不注意ですからやむを得ないのですけれども、普通の人と比べて、二百六十ミリレムだから多くはないんだ、こういういうふうになっておりますが、勤務時間中だけですね。勤務時間からはずれた場合には計算に入っておらないということになると、普通の人と比べて多い少ないということは、勤務時間中だけのフィルムバッジのこれだけでは対象にならないんじゃないか、これはしろうと考えですけれども、そういうことも言えるわけで、それとあと一つ、二百六十ミリレムというのは、ほんとうに正確にはかられた数字なのかどうかということを、確信をもって言えるわけですか。その点、ひとつ念のために伺いたいのです。
○藤波政府委員 先生のおっしゃるように、放射線の世界は、厳密に言うと、まだ未知の世界が残っておると思います。私自身も、そういう点、専門でございませんので、学理的なことまで申し上げることはできないわけでございますが、現在、国際放射線防護委員会で出ております一つの許容基準、それをもとにして、わが国の法律も作成されておるわけでございますが、この数字は、遺伝線量なども考慮いたしました相当厳密なもの、現在の学科技術の力をもって定め得る範囲において、厳密なものであるというぐあいに私ども了解をいたしておるわけであります。もちろん、先生おっしゃるように、その許容限度以内であっても、少なければ少ないほどいいということは言えるものと思っております。われわれといたしましても、できるだけ被曝というものは少なくなるようにという態度ではやっておるわけでございます。
○石川委員 私伺ったのは、二百六十ミリレムというのは、ほんとうに正確にはかられた数字かどうかということについて、どうも一まつの疑惑なしとしないわけなんですよ。ほんとうにこれだけのものであれば、白血病になるには、それだけの理由だとは言えないかもしれませんけれども、主として言えることは、こういうことが原因であろうというふうに、常識的に考えられるわけなんで、そういう点で、二百六十ミリレムというのは、ほんとうにそんなものだったのだろうかという疑問も、われわれは持たざるを得ないわけなんです。その点どうなんですか。
○藤波政府委員 やや詳しく補足して申し上げますと、一応本人が受けましたいままでの年月の累積の線量は八百七ミリレムとなっておりまして、二週間ごとにはかりまして、現像してやっておるわけでございます。一番多い二週間が、昭和四十年八月三十日から九月十三日の間の二週間が一番多いときでございまして、そのときでも三十ミリレムでございます。それ以外の各二週間はすべて十ミリレム以下であったわけでございます。しかしこの十ミリレムというのは、正確に申し上げますと、実はゼロに近いときでも十ミリレムという記録をいたしております。と申しますのは、非常に少重の被曝である場合には読み取りの誤差等もございますので、十ミリレム以下である場合はすべて十ミリレムという記録をいたしまして積算いたしました数字が、先ほど申し上げました現在までの数年間で八百七ミリレム、年間で二百六十ミリレム、こういうことでございます。現在の基準は、一応年間五千ミリレムということになっておりますので、その対比から申し上げまして、きわめて低い比率であるということを申し上げたわけでございます。
○石川委員 五千ミリレムというのは、こういう業務に携わる人のICRPの許容量が、普通の場合は五百ミリレムであるけれども、十倍まではやむを得ないという数字が五千ミリレムです。したがって、五千ミリレムまではいいのだという考え方がにじみ出ているようですけれども、そういう考え方でこれに対処されては困ると思うのです。 それと、あと一つは、私が最初に申し上げたように、個人差が相当あるということです。医学の世界では、この問題は、熊取さん、どうなんですか。これは、ある程度解明されておる問題ですか。
○熊取説明員 いま症例が白血病でございますので、白血病の個人差というようなお話がございましたが、個人差と申しますのは、いろいろな場合にもあるので、それをどういうふうな医学的検査をすれば個人差というものが出てくるかというふうなことを、いろいろ研究しているのでございますが、現在のところ、この白血病に限りましても、その個人差を、確かにこういうことがあったら白血病になりやすいのだというふうなところを、確実に言うことはできないと思うわけでございます。
○石川委員 いまの熊取さんの話がありますように、個人差の問題、放射能を受けた場合に、それにどう反応するかという個人差の問題は、これは未知の世界だと思うのです。これからまだ解明されなければならぬ余地がたくさんあるし、私ちょっと余談として申し上げたのですが、実は電気の場合なんかも、二人並べて、片一方は敏感に飛び上がるほど感じても、片一方はほとんど感じない、全然感じないというような場合もあるんですね。私の体験では、あるわけです。それと同じようなことで、この放射能の場合も、個人差によって相当反応のしかたが違うのじゃないかというようなことを考えながら、やはり放射能というものはゼロでなければならぬのが原則であるということから出発をしないと、非常に大きな問題を今後残すのじゃないかということを私は憂えているわけです。そういう点で、たとえば育種場でもって人を採用する場合に、人手が足りないということもあって、やたらに、とにかく安全なんだ、心配ないんだというふうなことで、どんどん採用するというやり方は、かえって禍根を残すおそれが、今度の場合のように出てくるのじゃないかということをおそれるわけです。したがって、採用の場合に、やはり体質的な問題からいって、個人差というものは、ある程度私はわかると思うのです。そういう点はやはり一応吟味をするという注意も必要なんじゃないか、こう私は思うのですが、その点、龍野さんどうお考えになっておりますか、お伺いしたいのです。
○龍野説明員 採用の場合には、正規職員は、これは健康診断をしまして採用するようにしておりますが、今後は、臨時職員につきましても、やはり採用の際に健康状態を十分調べた上で採用したいというふうに考えております。
○石川委員 それじゃ、あと三宅先生のほうから重要な質問もあるようでございますし、うちの委員のほうから相当質問が尽くされておりますから、私はこの程度でやめますけれども、ICRPの数字に依存し切った形ではなしに、ほんとうに安全性というものを虚心たんかいに、白紙に戻って、ゼロでなければならぬというところから出発しなければならぬのだ、あるいは個人差の問題、あるいは未知の世界が相当あるのだということで、安全性というものがほんとうに確立したという上に立ってでなければ、原子力の科学というものは進歩を期することができないのだという考え方で、育種場の問題については、いずれ私もよく調べてみたいと思っておりますけれども、あの問題は、放射線の育種場にいたがために出た病気であるというふうにみなが受け取っておるということはぬぐえない事実だと思うのです。そういうような恐怖心をぬぐい去るという意味でも、責任は重大だと思うので、採用の問題をはじめといたしまして、相当慎重にこれから対処してもらわなければならぬ、こう思っております。 では、私はきょうの質問は一応これで終わります。
○沖本委員長 三宅正一君。
○三宅委員 ほんのわずかの時間、科学技術の予算の問題と科学技術の開発の体制の問題につきまして、主として私の意見を申し上げまして、そちらの御意見も承りたいと存じます。 私は、財政硬直化の今日、科学技術の予算なんというものはなかなか思うようにふえないと思うのであります。そうして、財政硬直という問題は、私の見るところをもっていたしますれば、ここのところ何年も続く状況でございまして、そうして、いろいろのところで日本は予算が足りませんからやかましいので、いまのままでは、科学技術の予算というものを画期的にふやすということはなかなか不可能ではないかと思うのであります。その意味におきまして、ことしはことしで、ひとつ大いにわれわれもがんばりますけれども、根本的に、体制及び予算の取り方につきまして、ここで一ぺん考えてみる必要があるのではないかということを思うのであります。私は本年、ソ連の招待で一ヵ月ソ連におりました。黙って見ておりますと、革命後五十年たちましたソ連というものは、あと五十年、半世紀たちますと、アメリカを科学技術的にも追い越すのではないかという印象を私は抱いたのであります。ソ連の状態は——共産圏全体でありますけれども、個人主義経営になれた農民が、国営農場や共同経営をやりますから、農業が弱点であります。しかし、ソ連におきましては、半世紀たちまして三代目になっておりますから、個人経営の経験も何も持たない若い諸君が、大きな機械で、そして土曜日と日曜は休んでやったほうがよろしいという感覚になりまして、心理的な抵抗がなくなりましたことで、私は、あと十年たつと、ソ連は食糧の輸出国になるのではないかと思うのであります。これは非常に大きなことであります。 同時に、もう一つ大きな問題は、科学技術の開発体制というものが、アメリカよりすぐれておると思うのであります。アメリカもたいしたものでありまして、たとえば、日本から戦争で絹が行かぬようになりますと、ナイロンを、デュポンが一社の力をもって開発いたしました。これはたいへんなものだと思います。思いますけれども、今日のようなビッグサイエンスの時期におきまして、営利会社がもうけのために、幾ら大きな財閥といえども、自己開発をやる限度などというものは、私はたかが知れていると思うのであります。ともかく金星に届くというようなことだとか、ビッグサイエンスをほんとうにやりまするについては、それはもうあらゆる科学者の分業と協業が必要なのでありまして、それは電子計算機械の数学者も必要であれば、無重力の状態に入りますから、医学の協力も必要であります。そういう意味において、資本主義の体制で営利会社が技術開発をやるというような、そういう体制では、私はもう時代おくれじゃないかと思うのであります。ソ連は、大体においてアメリカよりも百年おくれておったのでありますが、もう最近は、全部とは言わぬけれども、少なくとも特殊な科学においては、アメリカを乗り越しております。原爆では一歩おくれましたけれども、水爆ではアメリカより先に越している。そして、ミサイルの開発だとか金星への到着だとかいうような方面においては、明らかにアメリカを一歩乗り越しておるのであります。私は、アメリカ人が能力がないなんと思わない。ロシア人よりアメリカ人のほうが、混合人種として、かえって能力があるのじゃないかと思いますが、体制の結果だと思うのであります。すなわち、ソ連においては、個人の会社が自分の会社の利益のために技術を開発するなんということでなしに、民族全体、国全体の大きな見地からいたしまして、技術の総合開発をやっております。これは私は実におそろしいと思うのでありまして、そういう点について、それは社会主義の国でもない日本において、ソ連と全く同じことをやれと言うのではありませんけれども、いいところはとらなければならない。そういう意味において、今日の日本の科学技術の開発体制というものが実に立ちおくれになっておるということを、私はほんとうに痛感するのであります。実は、私はこれを見まして、日本でもって有力な財界の幹部と話をいたしましたときに、ある財閥、三井、三菱という日本における代表的な財閥の重役が言っておったのでございますけれども、自分のところに電気の部門がある、造船の部門がある、あるいは化学工業の部門がある。そうすると、それぞれの技術者が別々に勉強しておって、自分のところだけでも横の連絡というものがないのだ。国全体になれば、実にそういう点の連絡がないのであって、確かにそういう点では、ソ連の科学技術体制、もし言えば、社会主義の科学技術の開発体制のほうが、資本主義の科学技術の開発体制よりもすぐれておるのだということを肯定されたのでありますが、まずこの点について、大局的に政務次官の御意見を伺いたいと思います。
○天野政府委員 ずいぶんむずかしい御質問をいただいたわけですが、私も三年ばかり前にソ連から招待を受けまして、ソ連を約一カ月間ばかり訪問し、各種設備、各種機関、各種研究団体等を特に御案内をいただきました。 いま先生のおっしゃるとおり、原子爆弾ではアメリカのほうが一歩進んでおるが、宇宙開発ではソ連のほうが一歩も二歩も進んでおるという、そのときの印象で帰ってまいりましたが、残念なことには、日本の科学技術の現在の状態、私ここでおこがましいようなかっこうでお話しすることはどうかと思いますが、私の所見で申し上げますならば、戦争を放棄したということが、科学技術の進歩を非常におくらしている大きな原因の一つではなかろうか、アメリカもソ連も自分の国を守るために、相手の国を押えるために、営々そのところにだけ力を入れておった結果がそうなったんじゃないか、というような感じもいたします。 それと同時に、いま三宅先生のおっしゃるように、社会主義的国家ではございませんから、全部を統一してやるということは非常に不可能であろうと考えます。私、今度政務次官を拝命いたしまして、各研究所長と懇談をいたしたのでありますが、微々たる予算で微々たる施設でというお話でございましたので、私は各所長さんにお伺いしたのですが、一体、日本の科学技術庁関係の研究所の実態はどうなのか、実績はどうなのか、成績は一体世界の水準に比較してどうか、ということを質問したのですが、大方の研究所長さんの御意見では、特殊なものは世界の一流に比してそう劣るものではない、あるものによっては、世界ではるかに優秀な成績のものもあるという説明でございました。そこで、私はちょっと皮肉った意味で、それでは、予算は少なくても、科学技術の研究所というものはりっぱにやっていけるんですなという話をしたところが、いや、それでは困るというお話でございました。 いずれにしろ、科学技術庁が、できましてまだ十年そこそこの役所でもあり、陣容等も、残念なことには、他の古い役所と違いまして、官僚陣というか事務陣営といいますか、すべて内容的に寄せ集めのような感じの非常にする役所であると私は感じております。そういうところにも、なかなか強力に持っていくことのできかねている現状もあろうかと思いますが、これは現実の問題がそうでありますから、それでどうにもならないということではいけないと思います。そういう点で、私もそう長い期間ではないと思うのでありますが、大方の、理解ある皆さま方の御協力を得まして、一応軌道に乗っておるものは世界の一流の水準にまで持っていくことが、やはり私たちの仕事であると考えておりますので、御意見等も十二分に尊重いたしまして、この問題に取り組んでまいりたいと思います。
○三宅委員 どうも、私の質問と多少ピントが合わぬのですが、確かに軍事目的のために技術を開発する、その開発が一般の産業技術の進歩に影響するということはあります。ありますけれども、そういう片ちんばな技術開発というものは、大局から見れば大きな災いでありまして、私は、平和日本がほんとうの意味の技術開発をやれる体制をつくらなければだめだと思うのであります。同時に、技術研究所の所長の会議において、日本はものによっては一流だと言っておられました。私は日本人の能力は決して劣らぬと思います。しかし、現実に、たとえば日本における技術輸入をごらんになりまして、輸入と輸出じゃてんでバランスがとれておらぬところを見ましても、要するに、よそで開発した技術を買ってきてやっておるのが日本の現状でありまして、これは非常に立ちおくれておるということは明らかであります。たとえば、東芝関係とアメリカとが大きな原子力関係などで合弁しようというときに、初めは技術だけ買おうと思ったら、資本輸出で合弁の会社にしなければいやだというようなことで、なかなか日本に入ってこないというような状態であります、私はその意味において、決して日本はうぬぼれちゃならぬと思うのであります。 それは別といたしまして、そういう意味において、私は体制の問題と予算の問題の両方について申し上げるのでありますが、平和国家の日本といたしまして、技術開発を個々の会社にまかせておきますと、これは営利中心に考えますから、たとえば古くは足尾鉱山がございますけれども、いま富山県にイタイイタイ病というものがある。これはわれわれしろうとであっても、神岡鉱山の鉱害からきている病気であることは明らかですけれども、あれを完全に防除するだけのことを会社にやらしたら、会社はつぶれるかもしれません。したがって、どうしたって、足尾鉱山の田中正造翁の抵抗のとき以来、水俣病でもそのとおりでありまして、個人の会社、しかも過当競争をやっている個人の会社でその鉱害を全部除去しろなんと言ったって、それはできることではありません。したがいまして、私は、日本の科学技術の開発計画というものは、大きな予算を持って、そして総合的に、体制といたしましても、個々の会社だけの目標でなしに、全体を総合化させまして、分業と協業をやらせるという体制をつくらなければならない。何もソ連をそのままにまねしろというものではありません。そういう体制をつくるとともに、開発いたしました科学技術については、新しい科学技術の開発、工業化の開発をやったら、同時に、公害をどうやって防ぐかということも、同じぐらいの予算で研究するという体制にしなければうそだと私は思うのです。そうして、ものによっては、開発いたしました技術を会社が独占するのでなしに、小さい会社、中小企業にやらせるということによって、バランスのとれた日本の産業体制というものをつくることをほんとうに考えなければならぬと思うのであります。 私は、きょうはちょうどおいでになっておりますから、もし何ならお伺いをしたいと思いますけれども、実は心配しておりますのは、農薬だってそのとおりであります。ともかく、農薬の普及ということが、いもち病をなくしたりいろいろいたしました効果はあります。ありますけれども、同時にドジョウがおらぬようになった。タニシがおらぬようになった。そうして、チョウがおらぬようになった。バッタがおらぬようになった。ドジョウだけが死んで、人間に何らの影響がないなんということは、私はあり得ないと思うのであります。あれで何十年の間、いまの農薬をそのまま使った米を日本人が食っておりますと、おそらくは何年かたったときに、敏感な連中から気違いができたり、よだれを出すような者ができたりする危険性は、私は確かにあると思うのであります。なかなか個々の営利会社も、非常にきく農薬を出す。きく農薬は、それは反作用として人体にも悪い、ドジョウが死ぬんだから悪いんだが、なかなかきく農薬は使うが、その公害を全体として防除するなんということについては、私はやはり総合的な科学技術の体制があって、予算の半分ぐらいはそっちに回すぐらいのほんとうのことをやらなければ、できはしないと思うのであります。科学技術が進んで、人間がかたわになっちゃったり気違いになったのでは何にもならない。 そういう意味において、体制の整備というものが必要だと思うのでありますが、私の見るところをもっていたしますれば、いまのままのやり方では予算は取れない。予算をほんとうに取ろうといたしまするためには、何といっても——私は一つの案を持っておりますので、これをひとつ提案いたしまして、そうして御賛成であれば、このために努力をしたいと思う。それは、法人の利益の一〇%ぐらいのものは、科学技術開発費として特別に拠出させるという体制をつくったらどうかということを私は考えるのであります。現に、御承知のとおり、交際費のために、飲食やいろいろで、何千億の金を日本の法人は浪費しております。そんなものには高い税金をかけるが、科学技術にその法人の利益の一〇%なり一五%なりを出しましたものは無税にいたしまして、経費で落とさせる。そうして、それを総合いたしまして、学術会議がやってもよろしい、何がやってもよろしい、官僚統制でなしに、ひとつ学者の自治的な統制の上に、日本において基礎科学としてはどれだけ開発するか、公害の防止にはどういうふうに金を使うか、そうして、個々の開発についてはどうやるかということを、本気に考えた体制をやるべきではないかと思うのであります。そういたしますれば、ともかくガソリン税を道路開発に特定の目的で回すということによって、どんどん道路開発の費用がふえてくる。それに国費をある程度プラスしているという状態でありまするから、交際費などに使っておりまするものは、これは弊害があるから押える。同時に、法人の利益の一〇%くらいのものは、ひとっこれを科学技術の開発費として回す。その開発のやり方は、いま申しましたとおり、個々の会社の営利ということよりは、もっと大局的に、基礎科学の開発もやるし、個々の工業の開発も、技術の開発もやりますが、それと同じぐらいのウエートを持って公害防止をやる。新しい技術が出たら、それに対して必ず公害防止の一つの開発も進んでおるという行き方でなければ、いま農薬のことを申し上げましたけれども、水俣病だって、一つの会社にその対策をやらせたらつぶれますから、だから役所は、明らかにあの公害は会社の水銀から出ているとか、あるいは鉱毒から出ていることがわかりましても、つぶれるからして、現実において、つぶすわけにもいかぬというようなことで、調査会をつくりましても、あやふやな結論しか出さずに、その場のがれだけをやっているという状態は、私は、政府側においてもお気づきになっておるところだと思うのであります。私は、そういう意味におきまして、日本の科学技術のほんとうの開発をやりまするために、特定の財源を、ひとつ自然に、日本の工業が伸びれば伸びるほど予算もふえてくるというその特定の財源といたしまして、法人所得税の一〇%がよろしいか一五%がよろしいか、それはそれぞれ検討をしてもらうけれども、そういう財源を獲得することを本気に考えたらどうだろうか、というふうに思っておるわけであります。だから、何もしゃべる必要もないのだけれども、もし政府のほうでも御賛成であり、委員会においてもそれはよかろうという話になりますれば、私自体は、ひとつ来年の春の予算委員会におきまして、この点を一ほんとうの世論を起こさなければだめでありますから、ひとつ御協力を得まして、予算委員会で、全体の政府の姿勢といたしまして、国の世論といたしまして、やれるように私は持っていきたいと思うのであります。ともかく、いまのような状態でせせこましい予算をつくって、原子力のほうへ予算を回したら、今度は宇宙開発のほうへは予算が回らないとか、そうして、大事な公害防止のほうの技術開発をやることに金が回らないという、そういうやり方をやっておったら、私はだめだと思うのでありまして、この点について御意見があったら、お教えを願いたい。もし御賛成でありまするならば、私は、たとえば諸外国等の間における技術開発の予算の割合だとか、あるいはその資料等についても要求をいたしまして、御協力を得ましてやりたいと思っております。だから、きょうは、ひとつ新しい大臣も来てもらって、ちょっとそのことだけ話し合ってみたいと思った次第でございまして、その点を、政務次官から御意見を伺いたいと思います。
○天野政府委員 科学技術の開発の方向は、各個人個人でやっておったのでは能率があがらないことは、これはもう周知の事実でございます。いわゆる日本の宇宙開発の一元化という問題も、ようやく皆さん方の御協力によりまして、かっこうがついてきたような状態でございますが、すべて総合的に開発をするという先生の御意見には、私も賛成でございます。と同時に、開発をするのに予算的な裏づけがどうも少ないので、各種の調査、研究、開発をするのに非常に困るから、特殊な財源をつくり出してこれに充てるという考え方にも賛成でありますが、先生の御意見をそのまま、きょうは大臣が出席されておりませんので、私のほうから大臣のほうにその旨をお伝えいたしまして、何らかの機会に、大臣から先生のほうに御返答をしてもらうようにいたしたいと思いますので、きょうのところは、その点で御了解願っておきたいと思います。
○三宅委員 私はこれで質問を終わりますけれども、日本の百年の大計を考えますときに、科学技術の推進ということはほんとうに大事なことでありまして、それには、いまも申しましたとおり、体制と予算と両方必要でございますので、ひとつこういう点につきまして、省内においても一ぺん御相談を願い、われわれはわれわれとして、科学技術特別委員会においても同僚とも相談をいたしまして、こういう問題こそ——科学技術はいつも超党派で、ずいぶんわれわれの先輩がいろいろな仕事を進めてくれたわけでありまして、私もそういう立場でやりたいと思いますので、ひとつ内部で御検討おきを願いたいと思います。
○沖本委員長 本日はこれにて散会いたします。 午前十一時五十分散会